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特表2024-516621イヌ細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)に対するイヌモノクローナル抗体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-16
(54)【発明の名称】イヌ細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)に対するイヌモノクローナル抗体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20240409BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240409BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240409BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240409BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240409BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240409BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240409BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240409BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240409BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20240409BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20240409BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20240409BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20240409BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240409BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240409BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12P21/08
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K16/30
C12N15/861 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/867 Z
C07K16/46
A61K39/395 U
A61K39/395 G
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565183
(86)(22)【出願日】2022-04-20
(85)【翻訳文提出日】2023-12-13
(86)【国際出願番号】 US2022025614
(87)【国際公開番号】W WO2022226102
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】63/177,692
(32)【優先日】2021-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】500429103
【氏名又は名称】ザ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ ペンシルバニア
(71)【出願人】
【識別番号】523398673
【氏名又は名称】ベチジェニックス リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】メイソン ニコラ ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】シーゲル ドナルド エル.
(72)【発明者】
【氏名】チェスター ニコラス
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA14
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA43
4C085AA13
4C085BB11
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA24
4H045EA28
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、イヌ細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)に対して特異的な、イヌ抗体、結合ポリペプチド、およびscFvに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イヌ細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)のエピトープに特異的に結合する抗原結合ドメインを含む、抗体またはその抗原結合断片であって、
該抗原結合ドメインが、
i. SEQ ID NO:6、25、40、または74に記載される重鎖可変領域のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域;および
ii. SEQ ID NO:8、27、または42に記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域
を含み、
該重鎖可変領域が、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含み、HCDR1が、(SEQ ID NO:1、20、および35)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、HCDR2が、(SEQ ID NO:2、21、および36)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、かつHCDR3が、(SEQ ID NO:3、22、および37)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、かつ
該軽鎖可変領域が、3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含み、LCDR1が、(SEQ ID NO:4、23、および38)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、LCDR2が、(VDG、GNY、およびGNS)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、かつLCDR3が、(SEQ ID NO:5、24、および39)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、
抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
完全長抗体、Fab、および単鎖可変断片(scFv)からなる群より選択される、請求項1記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項3】
完全長抗体である、請求項2記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項4】
前記抗体がイヌ抗体である、請求項3記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項5】
前記抗原結合ドメインが、SEQ ID NO:6、25、40、または74に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項1記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項6】
前記抗原結合ドメインが、SEQ ID NO:6、25、40、または74に記載されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域からなる、請求項1記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項7】
前記抗原結合ドメインが、SEQ ID NO:8、27、または42に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1~4のいずれか一項記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項8】
前記抗原結合ドメインが、SEQ ID NO:8、27、または42に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域からなる、請求項1~4のいずれか一項記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項9】
i. SEQ ID NO:6に記載されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域;および
ii. SEQ ID NO:8に記載されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域
を含む、単離された抗体またはその抗原結合断片。
【請求項10】
i. 3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む重鎖可変領域であって、HCDR1が、(SEQ ID NO:1、20、および35)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、HCDR2が、(SEQ ID NO:2、21、および36)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、かつHCDR3が、(SEQ ID NO:3、22、および37)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域;ならびに
ii. 3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域であって、LCDR1が、(SEQ ID NO:4、23、および38)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、LCDR2が、(VDG、GNY、およびGNS)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、かつLCDR3が、(SEQ ID NO:5、24、および39)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域
を含み、
該重鎖可変領域と該軽鎖可変領域とがリンカーによって隔てられている、
イヌ細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)のエピトープに特異的に結合する抗原結合ドメインを含む、単鎖可変断片(scFv)。
【請求項11】
i. SEQ ID NO:6、25、40、または74に記載されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域;および
ii. SEQ ID NO:8、27、または42に記載されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域
を含み、
該重鎖可変領域と該軽鎖可変領域とがリンカーによって隔てられている、
単鎖可変断片(scFv)。
【請求項12】
SEQ ID NO:29、44、または76に記載されるアミノ酸配列を含む、単鎖可変断片(scFv)。
【請求項13】
SEQ ID NO:29、44、または76に記載されるアミノ酸配列からなる、単鎖可変断片(scFv)。
【請求項14】
イヌ細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)のエピトープに特異的に結合する抗原結合ドメインを含む、完全長抗体であって、
該抗原結合ドメインが、
i. 3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む重鎖可変領域であって、HCDR1が、(SEQ ID NO:1、20、および35)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、HCDR2が、(SEQ ID NO:2、21、および36)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、かつHCDR3が、(SEQ ID NO:3、22、および37)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域;ならびに
ii. 3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域であって、LCDR1が、(SEQ ID NO:4、23、および38)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、LCDR2が、(VDG、GNY、およびGNS)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、かつLCDR3が、(SEQ ID NO:5、24、および39)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域
を含む、完全長抗体。
【請求項15】
i. SEQ ID NO:6、25、40、または74に記載されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域;および
ii. SEQ ID NO:8、27、または42に記載されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域
を含む、完全長抗体。
【請求項16】
SEQ ID NO:10、12、14、16、31、46、71、72、または73に記載される重鎖アミノ酸配列、およびSEQ ID NO:18、33、または48に記載される軽鎖アミノ酸配列を含む、完全長抗体。
【請求項17】
SEQ ID NO:10、12、14、16、31、46、71、72、または73に記載される重鎖アミノ酸配列、およびSEQ ID NO:18、33、または48に記載される軽鎖アミノ酸配列からなる、完全長抗体。
【請求項18】
いずれかの前記請求項記載のscFvまたは完全長抗体をコードする、単離された核酸。
【請求項19】
イヌ細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)のエピトープに特異的に結合する抗原結合ドメインを含む抗体またはその抗原結合断片をコードする、単離された核酸であって、
該抗原結合ドメインが、
i. SEQ ID NO:7、26、41、または75に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる、重鎖可変領域;および
ii. SEQ ID NO:9、28、または43に記載される軽鎖可変領域のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる、軽鎖可変領域
を含み、
該重鎖可変領域が、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含み、HCDR1が、(SEQ ID NO:1、20、および35)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、HCDR2が、(SEQ ID NO:2、21、および36)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、かつHCDR3が、(SEQ ID NO:3、22、および37)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、かつ
該軽鎖可変領域が、3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含み、LCDR1が、(SEQ ID NO:4、23、および38)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、LCDR2が、(VDG、GNY、およびGNS)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、かつLCDR3が、(SEQ ID NO:5、24、および39)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、
単離された核酸。
【請求項20】
前記抗体またはその抗原結合断片が、完全長抗体、Fab、および単鎖可変断片(scFv)からなる群より選択される、請求項19記載の核酸。
【請求項21】
前記抗体が完全長抗体である、請求項20記載の核酸。
【請求項22】
前記抗体がイヌ抗体である、請求項21記載の核酸。
【請求項23】
前記重鎖可変領域が、SEQ ID NO:7、26、41、または75に記載されるポリヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる、請求項19記載の核酸。
【請求項24】
前記重鎖可変領域が、SEQ ID NO:7、26、41、または75に記載されるポリヌクレオチド配列からなる核酸によってコードされる、請求項19記載の核酸。
【請求項25】
前記軽鎖可変領域が、SEQ ID NO:9、28、または43に記載されるポリヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる、請求項19記載の核酸。
【請求項26】
前記軽鎖可変領域が、SEQ ID NO:9、28、または43に記載されるポリヌクレオチド配列からなる核酸によってコードされる、請求項19記載の核酸。
【請求項27】
i. SEQ ID NO:7、26、41、または75に記載されるポリヌクレオチド配列を含む核酸配列によってコードされる、重鎖可変領域;および
ii. SEQ ID NO:9、28、または43に記載されるポリヌクレオチド配列を含む核酸配列によってコードされる、軽鎖可変領域
を含む抗体またはその抗原結合断片をコードする、単離された核酸。
【請求項28】
i. 3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む重鎖可変領域であって、HCDR1が、(SEQ ID NO:1、20、および35)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、HCDR2が、(SEQ ID NO:2、21、および36)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、かつHCDR3が、(SEQ ID NO:3、22、および37)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域;ならびに
ii. 3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域であって、LCDR1が、(SEQ ID NO:4、23、および38)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、LCDR2が、(VDG、GNY、およびGNS)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、かつLCDR3が、(SEQ ID NO:5、24、および39)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域
を含む単鎖可変断片(scFv)をコードする、単離された核酸。
【請求項29】
i. SEQ ID NO:7、26、41、または75に記載されるヌクレオチド配列を含む、重鎖可変領域;および
ii. SEQ ID NO:9、28、または43に記載されるヌクレオチド配列を含む、軽鎖可変領域
を含み、
該重鎖可変領域と該軽鎖可変領域とがリンカーによって隔てられている、
単鎖可変断片(scFv)をコードする、単離された核酸。
【請求項30】
SEQ ID NO:30、45、または77に記載されるポリヌクレオチド配列を含む、単鎖可変断片(scFv)
をコードする、単離された核酸。
【請求項31】
SEQ ID NO:30、45、または77に記載されるポリヌクレオチド配列からなる、単鎖可変断片(scFv)
をコードする、単離された核酸。
【請求項32】
請求項19~32のいずれか一項記載の単離された核酸を含む、ベクター。
【請求項33】
発現ベクターである、請求項32記載のベクター。
【請求項34】
DNAベクター、RNAベクター、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、およびレトロウイルスベクターからなる群より選択される、請求項32および33のいずれか一項記載のベクター。
【請求項35】
請求項32~34のいずれか一項記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項36】
真核生物または原核生物起源のものである、請求項35記載の宿主細胞。
【請求項37】
哺乳動物起源のものである、請求項35または36のいずれか一項記載の宿主細胞。
【請求項38】
細菌起源のものである、請求項35または36のいずれか一項記載の宿主細胞。
【請求項39】
イヌ細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)に結合する抗体またはその抗原結合断片を生成する方法であって、請求項35~38のいずれか一項記載の宿主細胞を培養する工程を含む、方法。
【請求項40】
請求項1~17のいずれか一項記載の完全長抗体またはscFvと、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
【請求項41】
その必要のある対象においてがんを処置するための方法であって、請求項1~17のいずれか一項記載の抗体またはその抗原結合断片を、該対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項42】
前記がんが、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)に関連している、請求項41記載の方法。
【請求項43】
CTLA-4が、がん関連細胞上に発現している、請求項42記載の方法。
【請求項44】
前記がん関連細胞が、Tリンパ球である、請求項43記載の方法。
【請求項45】
前記抗体またはその抗原結合断片が、イヌCTLA-4に特異的に結合する、請求項41記載の方法。
【請求項46】
前記抗体またはその抗原結合断片が、完全長抗体、Fab、および単鎖可変断片(scFv)からなる群より選択される、請求項41記載の方法。
【請求項47】
前記抗体またはその抗原結合断片が、完全長抗体である、請求項46記載の方法。
【請求項48】
前記抗体がイヌ化抗体である、請求項47記載の方法。
【請求項49】
前記対象がイヌである、請求項41記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、35 U.S.C. §119(e)のもとで、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、2021年4月21日に出願された米国特許仮出願第63/177,692号に対する優先権を得る権利がある。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
本発明は、米国国立衛生研究所によって授与されたHHSN261201800042Cのもとで、政府の支援を受けて行われた。政府は、本発明に関して一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
免疫系とがんとの間の相互作用の理解の進歩により、ヒト患者における腫瘍に対する免疫療法の開発の成功がもたらされた。これらの新しい免疫ベースの処置は、臨床において大きな成功を収めており、ますます最前線の治療法になっている。実際、ヒトがん免疫療法は現在、外科手術、放射線療法、および化学療法と並ぶ処置の柱の1つとして認識されている。獣医学的がん免疫療法の分野もまた、過去10年で急速に進歩したが、動物特異的な治療法の利用可能性、およびそれらの特定の効果の完全な理解は、依然として存在する課題である。
【0004】
チェックポイント阻害療法は、T細胞を負に制御する受容体を阻害することによって働く、有望な免疫療法戦略である。事実上、これらの治療法は、T細胞機能を抑制する、免疫チェックポイントと呼ばれる天然の「ブレーキ」を取り除く。これらの負の受容体は通常、免疫応答が毒性になることを防止する際に重要な役割を果たすが、多くのがんは、この負のシグナル伝達を利用して、それらに向けられたT細胞ベースの免疫応答を鈍らせる。T細胞を制御する重要な免疫チェックポイント受容体の1つは、細胞傷害性Tリンパ球タンパク質4またはCTLA-4である。CTLA-4は、活性化T細胞上に通常発現しており、抗原提示細胞上に通常発現しているそのリガンドであるB7-1(CD80)およびB7-2(CD86)との結合時に、T細胞に負のシグナルを送達する。このようにして、CTLA-4は、エンジンに対するガバナーのように機能し、免疫系の過剰な活性化を防止する。イピリムマブなどのCTLA-4を遮断する抗体は、ヒト患者における使用についてFDAの承認を得た最初のチェックポイント阻害剤療法であり、黒色腫などの免疫原性がんの処置において有用と証明されている。
【0005】
したがって、当技術分野において、腫瘍特異的T細胞上のCTLA-4の遮断を通して、イヌ対象において獣医学的がんを処置するために使用することができる、イヌ抗体の開発の必要性がある。本発明は、この必要性に対処し、満たす。
【発明の概要】
【0006】
本明細書において記載されるように、本発明は、イヌ細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)に対して特異的なイヌ抗体、結合ポリペプチド、およびscFvに関する。また、本発明の抗CTLA-4抗体、結合ポリペプチド、およびscFvを含む、イヌ患者において疾患、特にがんを処置するための方法および組成物も含まれる。
【0007】
一局面では、本発明は、イヌ細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)のエピトープに特異的に結合する抗原結合ドメインを含む、抗体またはその抗原結合断片であって、
該抗原結合ドメインが、
i. SEQ ID NO:6、25、40、または74に記載される重鎖可変領域のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域;および
ii. SEQ ID NO:8、27、または42に記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域
を含み;
該重鎖可変領域が、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含み、HCDR1が、(SEQ ID NO:1、20、および35)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、HCDR2が、(SEQ ID NO:2、21、および36)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、かつHCDR3が、(SEQ ID NO:3、22、および37)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み;かつ
該軽鎖可変領域が、3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含み、LCDR1が、(SEQ ID NO:4、23、および38)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、LCDR2が、(VDG、GNY、およびGNS)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、かつLCDR3が、(SEQ ID NO:5、24、および39)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、
抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0008】
ある特定の態様では、抗体またはその抗原結合断片は、完全長抗体、Fab、および単鎖可変断片(scFv)からなる群より選択される。
【0009】
ある特定の態様では、抗体またはその抗原結合断片は、完全長抗体である。
【0010】
ある特定の態様では、抗体はイヌ抗体である。
【0011】
ある特定の態様では、抗原結合ドメインが、SEQ ID NO:6、25、40、または74に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項1記載の抗体またはその抗原結合断片。
【0012】
ある特定の態様では、抗原結合ドメインは、SEQ ID NO:6、25、40、または74に記載されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域からなる。
【0013】
ある特定の態様では、抗原結合ドメインが、SEQ ID NO:8、27、または42に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1~4のいずれか一項記載の抗体またはその抗原結合断片。
【0014】
ある特定の態様では、抗原結合ドメインが、SEQ ID NO:8、27、または42に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域からなる、請求項1~4のいずれか一項記載の抗体またはその抗原結合断片。
【0015】
別の局面では、本発明は、
i. SEQ ID NO:6に記載されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域;および
ii. SEQ ID NO:8に記載されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域
を含む、単離された抗体またはその抗原結合断片を含む。
【0016】
別の局面では、本発明は、
i. 3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む重鎖可変領域であって、HCDR1が、(SEQ ID NO:1、20、および35)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、HCDR2が、(SEQ ID NO:2、21、および36)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、かつHCDR3が、(SEQ ID NO:3、22、および37)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域;ならびに
ii. 3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域であって、LCDR1が、(SEQ ID NO:4、23、および38)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、LCDR2が、(VDG、GNY、およびGNS)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、かつLCDR3が、(SEQ ID NO:5、24、および39)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域
を含み、
該重鎖可変領域と該軽鎖可変領域とがリンカーによって隔てられている、
イヌ細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)のエピトープに特異的に結合する抗原結合ドメインを含む、単鎖可変断片(scFv)を含む。
【0017】
別の局面では、本発明は、
i. SEQ ID NO:6、25、40、または74に記載されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域;および
ii. SEQ ID NO:8、27、または42に記載されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域
を含み、
該重鎖可変領域と該軽鎖可変領域とがリンカーによって隔てられている、
単鎖可変断片(scFv)を含む。
【0018】
別の局面では、本発明は、SEQ ID NO:29、44、または76に記載されるアミノ酸配列を含む、単鎖可変断片(scFv)を含む。
【0019】
別の局面では、本発明は、SEQ ID NO:29、44、または76に記載されるアミノ酸配列からなる、単鎖可変断片(scFv)を含む。
【0020】
別の局面では、本発明は、イヌ細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)のエピトープに特異的に結合する抗原結合ドメインを含む、完全長抗体であって、
該抗原結合ドメインが、
i. 3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む重鎖可変領域であって、HCDR1が、(SEQ ID NO:1、20、および35)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、HCDR2が、(SEQ ID NO:2、21、および36)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、かつHCDR3が、(SEQ ID NO:3、22、および37)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域;ならびに
ii. 3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域であって、LCDR1が、(SEQ ID NO:4、23、および38)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、LCDR2が、(VDG、GNY、およびGNS)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、かつLCDR3が、(SEQ ID NO:5、24、および39)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域
を含む、完全長抗体を含む。
【0021】
別の局面では、本発明は、
i. SEQ ID NO:6、25、40、または74に記載されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域;および
ii. SEQ ID NO:8、27、または42に記載されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域
を含む、完全長抗体を含む。
【0022】
別の局面では、本発明は、SEQ ID NO:10、12、14、16、31、46、71、72、または73に記載される重鎖アミノ酸配列、およびSEQ ID NO:18、33、または48に記載される軽鎖アミノ酸配列を含む、完全長抗体を含む。
【0023】
別の局面では、本発明は、SEQ ID NO:10、12、14、16、31、46、71、72、または73に記載される重鎖アミノ酸配列、およびSEQ ID NO:18、33、または48に記載される軽鎖アミノ酸配列からなる、完全長抗体を含む。
【0024】
別の局面では、本発明は、いずれかの前記請求項記載のscFvまたは完全長抗体をコードする、単離された核酸を含む。
【0025】
別の局面では、本発明は、イヌ細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)のエピトープに特異的に結合する抗原結合ドメインを含む抗体またはその抗原結合断片をコードする、単離された核酸であって、
該抗原結合ドメインが、
i. SEQ ID NO:7、26、41、または75に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる、重鎖可変領域;および
ii. SEQ ID NO:9、28、または43に記載される軽鎖可変領域のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる、軽鎖可変領域
を含み;
該重鎖可変領域が、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含み、HCDR1が、(SEQ ID NO:1、20、および35)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、HCDR2が、(SEQ ID NO:2、21、および36)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、かつHCDR3が、(SEQ ID NO:3、22、および37)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み;かつ
該軽鎖可変領域が、3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含み、LCDR1が、(SEQ ID NO:4、23、および38)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、LCDR2が、(VDG、GNY、およびGNS)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、かつLCDR3が、(SEQ ID NO:5、24、および39)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、
単離された核酸を含む。
【0026】
ある特定の態様では、抗体またはその抗原結合断片は、完全長抗体、Fab、および単鎖可変断片(scFv)からなる群より選択される。
【0027】
ある特定の態様では、抗体は完全長抗体である。
【0028】
ある特定の態様では、抗体はイヌ抗体である。
【0029】
ある特定の態様では、重鎖可変領域は、SEQ ID NO:7、26、41、または75に記載されるポリヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる。
【0030】
ある特定の態様では、重鎖可変領域は、SEQ ID NO:7、26、41、または75に記載されるポリヌクレオチド配列からなる核酸によってコードされる。
【0031】
ある特定の態様では、軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:9、28、または43に記載されるポリヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる。
【0032】
ある特定の態様では、軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:9、28、または43に記載されるポリヌクレオチド配列からなる核酸によってコードされる。
【0033】
別の局面では、本発明は、
i. SEQ ID NO:7、26、41、または75に記載されるポリヌクレオチド配列を含む核酸配列によってコードされる、重鎖可変領域;および
ii. SEQ ID NO:9、28、または43に記載されるポリヌクレオチド配列を含む核酸配列によってコードされる、軽鎖可変領域
を含む抗体またはその抗原結合断片をコードする、単離された核酸を含む。
【0034】
別の局面では、本発明は、
i. 3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む重鎖可変領域であって、HCDR1が、(SEQ ID NO:1、20、および35)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、HCDR2が、(SEQ ID NO:2、21、および36)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、かつHCDR3が、(SEQ ID NO:3、22、および37)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域;ならびに
ii. 3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域であって、LCDR1が、(SEQ ID NO:4、23、および38)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、LCDR2が、(VDG、GNY、およびGNS)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、かつLCDR3が、(SEQ ID NO:5、24、および39)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域
を含む単鎖可変断片(scFv)をコードする、単離された核酸を含む。
【0035】
別の局面では、本発明は、
i. SEQ ID NO:7、26、41、または75に記載されるヌクレオチド配列を含む、重鎖可変領域;および
ii. SEQ ID NO:9、28、または43に記載されるヌクレオチド配列を含む、軽鎖可変領域
を含み、
該重鎖可変領域と該軽鎖可変領域とがリンカーによって隔てられている、
単鎖可変断片(scFv)をコードする、単離された核酸を含む。
【0036】
別の局面では、本発明は、SEQ ID NO:30、45、または77に記載されるポリヌクレオチド配列を含む、単鎖可変断片(scFv)をコードする、単離された核酸を含む。
【0037】
別の局面では、本発明は、SEQ ID NO:30、45、または77に記載されるポリヌクレオチド配列からなる、単鎖可変断片(scFv)をコードする、単離された核酸を含む。
【0038】
別の局面では、本発明は、請求項19~32のいずれか一項記載の単離された核酸を含む、ベクターを含む。
【0039】
ある特定の態様では、ベクターは発現ベクターである。
【0040】
ある特定の態様では、ベクターは、DNAベクター、RNAベクター、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、およびレトロウイルスベクターからなる群より選択される。
【0041】
別の局面では、本発明は、上記の局面または本明細書において開示される任意の局面もしくは態様のいずれか1つのベクターを含む、宿主細胞を含む。
【0042】
ある特定の態様では、宿主細胞は、真核生物または原核生物起源のものである。
【0043】
ある特定の態様では、宿主細胞は、哺乳動物起源のものである。
【0044】
ある特定の態様では、宿主細胞は、細菌起源のものである。
【0045】
別の局面では、本発明は、イヌ細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)に結合する抗体またはその抗原結合断片を生成する方法であって、上記の局面または本明細書において開示される任意の局面もしくは態様のいずれか1つの宿主細胞を培養する工程を含む、方法を含む。
【0046】
別の局面では、本発明は、上記の局面または本明細書において開示される任意の局面もしくは態様のいずれか1つの完全長抗体またはscFvと、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物を含む。
【0047】
別の局面では、本発明は、その必要のある対象においてがんを処置するための方法であって、上記の局面または本明細書において開示される任意の局面もしくは態様のいずれか1つの抗体またはその抗原結合断片を、該対象に投与する工程を含む、方法を含む。
【0048】
ある特定の態様では、がんは、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)に関連している。
【0049】
ある特定の態様では、CTLA-4は、がん関連細胞上に発現している。
【0050】
ある特定の態様では、がん関連細胞は、Tリンパ球である。
【0051】
ある特定の態様では、抗体またはその抗原結合断片は、イヌCTLA-4に特異的に結合する。
【0052】
ある特定の態様では、抗体またはその抗原結合断片は、完全長抗体、Fab、および単鎖可変断片(scFv)からなる群より選択される。
【0053】
ある特定の態様では、抗体またはその抗原結合断片は、完全長抗体である。
【0054】
ある特定の態様では、抗体はイヌ化抗体である。
【0055】
ある特定の態様では、対象はイヌである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
本発明の好ましい態様の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むと、より良く理解されるであろう。本発明を例証する目的で、現在好ましい態様が図面に示されている。しかし、本発明は、図面に示される態様の正確な配置および手段に限定されないことが、理解されるべきである。
【0057】
図1】イヌCTLA-4(cCTLA-4)に対するライブラリパンニングからの、ファージのインプットおよびアウトプットの結果を表示する表である。推定400億個のイヌscFv形質転換体を含有する包括的なイヌIgM/IgG/λ/κscFvファージディスプレイライブラリに、ビオチン化avitag-cCTLA-4に対する4ラウンドの固相選択(「パンニング」)を行った。インプットおよびアウトプット(溶出液)中のファージの数を、各パンニングラウンド後の標的に結合したファージの%および抗原特異的結合物の濃縮と共に報告する。
図2】イヌCTLA-4抗原に対するパンニング後の、イヌファージディスプレイライブラリの濃縮を示す。ビオチン化avitag-cCTLA-4を、ストレプトアビジンでコーティングしたマイクロタイタープレート上に、4℃で一晩捕捉させた。ウェルを、PBSで洗浄し、PBS中2%ミルク(MPBS)で、37℃で1時間ブロッキングした。初期ライブラリ(P0)および各ラウンドのパンニング後に得られたポリクローナルライブラリ(P1~P4;MPBSで1:1000希釈)を、コーティングしたプレートに添加し、37℃で1時間インキュベートした。プレートを、0.5% Tweenを補給したPBS(PBST)で洗浄し、結合したファージを、2%ミルク中の1:5000希釈のHRPコンジュゲート抗M13 mAb(GE Healthcare)を用いて検出した。プレートを、再度洗浄し、結合したファージを、ABTSで検出した。ODを、Molecular Devices Spectra Max 340分光光度計を用いて、30分後に405 nmで読み取った。抗原なし、イヌCD19、およびヒトavitag-CD3でコーティングしたプレートを、陰性対照抗原として用いた。並行パンニング作戦由来の、イヌCD19に対する第4ラウンドのパンニングからのポリクローナルファージを、陽性対照として用いた。
図3】組換えイヌCLTA-4に対する結合についての、パンニングラウンド3および4からのイヌscFv抗体のスクリーニングを示す。イヌCTLA-4に対するパンニングラウンド3からの12クローンおよびパンニングラウンド4からの12クローンを、無作為に選択し、scFvファージELISAによってcCTLA-4に結合するそれらの能力について試験した。24クローンはすべて、cCTLA-4に結合した。これらの24個のscFvのヌクレオチドシーケンシングにより、20個のユニークな抗体が明らかになり、その大多数(17個)は、ラムダ軽鎖を含有していた。ファージなしおよび無関係のMERS(中東呼吸器症候群ウイルス)特異的ファージを、陰性対照として用いた。イヌCTLA-4に対する第4ラウンドのパンニングからのポリクローナルファージを、陽性対照として用いた。
図4】ELISAを用いた、クローンP4-8および追加の可溶性CTLA-4 scFv(ハイスループットスクリーニング(HTS)発現アッセイを介して特定された)のcCTLA-4に対する結合を示す。cCTLA-4に結合するユニークなscFvクローンが、クローンP4-8に加えて(図3)、HTSアッセイを介して特定された(A1、B10、D5、およびG11)。ユニークな、可溶性の、HAタグ付加、精製scFvを、ELISAによって、増大する濃度のcCTLA-4に結合するそれらの能力について試験した。0.25 ug/mlの可溶性scFvを、各ウェルに添加し、結合したscFvを、APコンジュゲート抗HA抗体を用いて検出した。すべてのクローンは、様々な親和性でcCTLA-4に結合した。無関係のMERSタンパク質に対する可溶性単鎖を、陰性対照として用いた。
図5図5A~5Bは、CTLA-4特異的可溶性scFvが、cCTLA-4のその同族リガンドCD80およびCD86に対する結合を阻害することを示す。1.0および3.0 pmolの組換えヒトCD86-Fcキメラ(図5A)またはヒトCD80-Fcキメラ(図5B)を、ELISAプレートに一晩結合させた。ウェルを、5%ミルク/PBS 0.05% Tween 20でブロッキングした。ビオチン化cCTLA-4細胞外ドメイン(ECD)を、示されたモル比で各可溶性scFvと、RTで1時間プレインキュベートし、その後、プレートに添加して2時間インキュベートした。洗浄後に、ストレプトアビジン-APコンジュゲートおよびその後のAP比色基質を用いて、CD80またはCD86に結合したcCTLA-4を検出した。いかなる抗体も存在しないビオチン化cCTLA-4および非ビオチン化cCTLA-4を、陽性対照および陰性対照として用いた。「na」=抗体なし。
図6】抗イヌ-IgGの発現レベルを示す表である。
図7】完全長イヌ抗イヌCTLA-4 mAbのELISA解析を示す。
図8図8A~8Bは、精製された完全長モノクローナルイヌIgGとしての、その同族リガンドCD80(図8A)およびCD86(図8B)に対するCTLA-4結合の阻害のアッセイを示す。
図9】A1 VHフレームワーク領域のB10 VHフレームワーク領域での置換が、抗イヌCTLA-4クローンA1の生成を救済することを示す表である(改変クローンはmut2と標識されている)。
図10】膜発現イヌCTLA-4に結合する抗CTLA-4 mAbクローンの評価を示す。FcγRII(CD32)を欠くK562細胞を、イヌCTLA-4を発現するように遺伝子操作した(KT32δ.cCTLA4)。KT32δ細胞(上段)およびKT32δ.cCTLA4細胞(中段)を、イヌアイソタイプIgG1として再フォーマットした3つの抗CTLA-4クローンとインキュベートし、表面標識を、抗HA抗体を用いて検出した。抗原特異的結合を確認するために、抗CTLA-4クローンを、最初に可溶性cCTLA-4タンパク質とインキュベートして、抗原結合部位をブロッキングし、次いで、細胞表面標識に用いた(下段)。
図11図11A~11Cは、完全イヌIgG分子として再フォーマットしたscFvクローンが、cCTLA-4に結合して、組換えヒトおよびイヌCD80およびCD86とのその相互作用を阻害する、それらの能力を保持することを示す。完全長の二価IgG抗体を、選択したscFvのVH鎖およびVL鎖を別々の重鎖発現プラスミドおよび軽鎖発現プラスミド中にクローニングすることによって、単離されたscFvから作製した。接着293T細胞に、軽鎖プラスミドおよび重鎖プラスミドを一過性にコトランスフェクトし、3日後に、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーを用いてプレート上清からmAbを精製した。図11A. mAbを、ELISAによって、増大する濃度のcCTLA-4に対する結合について評価した。図11B. mAbを、cCTLA-4と組換えヒトCD80(左のグラフ)およびrhuCD86(右のグラフ)との相互作用を、示されたモル比で阻害するそれらの能力について評価した。同様に、図11Cは、示されたモル比での、cCTLA-4と組換えイヌCD80(左のグラフ)およびCD86(右のグラフ)との相互作用の阻害を示す。
図12A図12A~12Cは、CTLA-4特異的クローンが、イヌCTLA-4に対して高い結合親和性を示すことを示す。図12Aは、A1mut2抗体に対するCTLA-4結合を示す。
図12B図12A~12Cは、CTLA-4特異的クローンが、イヌCTLA-4に対して高い結合親和性を示すことを示す。図12Bは、B10抗体に対するCTLA-4結合を示す。
図12C図12A~12Cは、CTLA-4特異的クローンが、イヌCTLA-4に対して高い結合親和性を示すことを示す。図12Cは、D5抗体に対するCTLA-4結合を示す。
図13】抗原提示細胞上のその同族リガンドへの結合時のCTLA-4の正常な機能、およびCTLA-4シグナル伝達の抗体ベースの遮断の戦略を示す図である。
図14】ELISAによる、ユニークな可溶性CTLA-4 scFvのイヌCTLA-4に対する結合を示す。パンニングラウンド3(P3)および4(P4)からのユニークな、可溶性の、HAタグ付加、精製scFvを、ELISAによって、増大する濃度のcCTLA-4に結合するそれらの能力について試験した。0.25 ug/mlの可溶性scFvを、各ウェルに添加し、結合したscFvを、APコンジュゲート抗HA抗体を用いて検出した。すべてのクローンは、様々な親和性でcCTLA-4に結合した。無関係のMERSタンパク質に対する可溶性単鎖を、陰性対照として用いた。市販のポリクローナル抗CTLA-4抗体を、1つのアッセイにおいて陽性対照として用いた(左上のグラフ)。
図15】活性化イヌT細胞に対する抗CTLA-4 mAbクローンの結合を示す。イヌPBMCを、2.5 ug/mlコンカナバリンAで活性化し、活性化後48時間および72時間で収集し、示されたような各々のHAタグ付加抗CTLA-4 mAbクローンで標識した。結合した抗CTLA-4抗体を、抗HA抗体を用いて検出した。プロットは、CD5+、7AAD-細胞にゲートをかけている。
図16】イヌ制御性T細胞に対するA1mut2 mAbの結合を示す。T細胞リンパ腫を有するイヌ由来のイヌPBMCを、最初に、A1mut2または無関係のMERS mAbのいずれかで表面標識し、次いで、透過処理して抗FOXP3 mAbで標識した(上段)。並行して、透過処理後に、細胞を、抗MERS抗体またはA1mut2およびFoxp3のいずれかで再度標識して、CTLA-4の細胞内貯蔵物を検出した(下段)。プロットは、CD45+、CD5+、CD4+、およびFOXP3+細胞にゲートをかけている。
図17図17A~17Bは、ネコCTLA-4に対するA1mut2結合の評価を示す。リンパ系悪性腫瘍を有する2匹のネコ由来のPBMCを、CD5およびHAタグ付加A1mut2または無関係のMERS mAbのいずれかで表面標識した(図17A)。次いで、標識細胞を、透過処理し、MERSまたはA1mut2で再度標識して、CTLA-4の細胞内貯蔵物を検出した(図17B)。抗HA二次抗体単独を、追加の陰性対照として用いた。プロットは、CD5+リンパ球にゲートをかけている。
図18図18A~18Bは、イヌアイソタイプIgGC(イヌIgG3)およびIgGB(イヌIgG2)として発現させたA1mut2が、ヒト補体を固定することを示す。図18A. 4つの異なるIgGサブクラスの各々として再フォーマットしたHAタグ付加A1mut2の連続希釈液を、SA捕捉したビオチン化cCTLA-4に結合させた。ヒト血清補体または熱不活性化(HI)ヒト血清補体を、プレートに添加し、その後、抗ヒトC1q IgG HRPコンジュゲートおよびHRP基質で検出した。図18B. cCTLA-4に結合したA1mut2 IgGサブクラスの存在の確認。イヌCTLA-4に結合したA1mut2 IgGの連続希釈液を、APコンジュゲート抗HA IgGおよびAP基質を用いて検出した。
図19図19A~19Bは、A1mut2が、イヌT細胞のレスポンダー頻度および増殖能を増大させることを示す。イヌPBMCを、Cell Trace Violet(CTV)で標識し、10 ug/mlのA1mut2または無関係のMERS抗体のいずれかの存在下で、2.5 ug/mlのConAで刺激した。細胞を、72または96時間で収集し、抗CD5 mAbおよび生存率色素7-AADで標識した。細胞を、FACS Canto IIで捕えて、FlowJoソフトウェアによって解析した。レスポンダー頻度(少なくとも1回の分裂を経験した細胞の数)および増殖能(細胞あたりに産生される娘細胞の平均数)を決定した。図19A. 1匹のイヌ由来の代表的なヒストグラム。図19B. 刺激後96時間で計算した、9匹の健康なイヌのレスポンダー頻度および増殖能。
図20】A1mut2が、イヌT細胞からのIFN-γの産生を増大させることを示す。イヌPBMCを、10 ug/mlまたは20 ug/mlのいずれかの、A1mut2または無関係のMERS抗体のいずれかの存在下で、2.5 ug/mlのConAで刺激した。上清を96時間で収集し、上清中に存在するIFN-γを、ELISAによって測定した。1匹の健康なドナーイヌの三連の実験由来のデータを示す。水平バーは中央値を表す。
図21】表面プラズモン共鳴(SPR)を用いた、選択した完全長イヌmAbによる、イヌ抗cCTLA-4結合の速度論的速度定数、解離平衡定数、および抗体/抗原相互作用の半減期を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
詳細な説明
定義
別段定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書において記載されるものと同様または均等な任意の方法および材料を本発明の試験のための実施で使用することができるが、好ましい材料および方法が本明細書において記載される。本発明の説明および主張において、以下の術語が使用される。
【0059】
本明細書において使用される術語は、特定の態様を説明することのみを目的とし、限定を意図したものではないことも理解されたい。
【0060】
冠詞「1つ(a)」および「1つ(an)」は、該冠詞の文法的目的語の1つ(one)または1つ(one)より多い(すなわち、少なくとも1つ)を指すように本明細書において使用される。例として、「1つ(an)の要素」は、1つ(one)の要素または1つ(one)より多い要素を意味する。
【0061】
量、時間的持続期間などのような測定可能な値に言及する場合に本明細書において使用する「約」は、指定された値から±20%または±10%、より好ましくは±5%、より一層好ましくは±1%、さらにより好ましくは±0.1%の変動を包含することが意図され、これは、そのような変動が開示される方法を行うために適切であるからである。
【0062】
本明細書において使用する場合、用語「抗体」は、抗原と特異的に結合する免疫グロブリン分子を指す。抗体は、天然供給源または組換え供給源に由来するインタクトな免疫グロブリンであることができ、インタクトな免疫グロブリンの免疫反応性部分であることができる。抗体は、典型的には、2本の重鎖ポリペプチドおよび2本の軽鎖ポリペプチドを含む、四量体の免疫グロブリン分子である。各ポリペプチド鎖は、抗原に結合する3つの相補性決定領域(CDR)を含有し、抗体の抗原特異性を規定する。
【0063】
本明細書において使用する場合、用語「抗体("antibody"および"antibodies")」はまた、完全長抗体に由来するポリペプチドまたはポリペプチド複合体を含むことができる。これらのポリペプチド複合体は、天然に存在してもよいし、または単鎖抗体もしくは抗体断片から構築されてもよく、かつ抗原特異的結合能を保持する。本発明の抗体は、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fv、FabおよびF(ab')2、ならびに単鎖抗体(scFv)、イヌ化抗体、イヌ抗体、ヒト化抗体、およびヒト抗体を含めて、様々な形態で存在し得る(Harlow et al., 1999, In: Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY;Harlow et al., 1989, In: Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, New York;Houston et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883;Bird et al., 1988, Science 242:423-426)。
【0064】
用語「抗体断片」はインタクトな抗体の一部を含むかまたはそれに由来するポリペプチドを指し、かつインタクトな抗体の抗原結合決定可変領域を含む。抗体断片の例としては、限定されないが、Fab、Fab'、F(ab')2、およびFv断片、直鎖抗体、scFv抗体、単一ドメイン抗体、例えば、標的に対して十分な親和性を示すVLまたはVHドメインのいずれかからなるラクダ科動物抗体(Riechmann, 1999, Journal of Immunological Methods 231:25-38)、ならびに抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。抗体断片としては、ヒト抗体もしくはヒト化抗体またはヒト抗体もしくはヒト化抗体の一部も挙げられる。
【0065】
本明細書において使用する場合、「抗体重鎖」は、その天然に存在するコンフォメーションにおいてすべての抗体分子に存在する2つのタイプのポリペプチド鎖の大きい方を指す。
【0066】
本明細書において使用する場合、「抗体軽鎖」は、その天然に存在するコンフォメーションにおいてすべての抗体分子に存在する2つのタイプのポリペプチド鎖の小さい方を指す。κおよびλ軽鎖は、2つの主要な抗体軽鎖アイソタイプを指す。
【0067】
本明細書において使用する場合、用語「合成抗体」は、組換えDNA技術を使用して生成される抗体、例えば、本明細書において記載されるようにバクテリオファージによって発現される抗体などを意味する。本用語はまた、抗体をコードするDNA分子の合成によって生成されており、DNA分子が抗体タンパク質、または抗体を指定するアミノ酸配列を発現し、DNAまたはアミノ酸配列が、当技術分野におい利用可能であり、かつ周知である合成DNAまたはアミノ酸配列技術を使用して得られている、抗体を意味すると解釈されるべきである。
【0068】
本明細書において使用する場合、用語「抗原」または「Ag」は、免疫応答を引き起こす分子と定義される。この免疫応答は、抗体産生もしくは特異的な免疫担当細胞の活性化のいずれか、または両方をともない得る。当業者は、事実上すべてのタンパク質またはペプチドを含めた任意の巨大分子が、抗原として働くことができることを理解するであろう。さらに、抗原は組換えまたはゲノムDNAに由来し得る。当業者は、この用語が本明細書において使用される場合、免疫応答を誘発するタンパク質をコードするヌクレオチド配列または部分的ヌクレオチド配列を含む任意のDNAが、したがって、「抗原」をコードすることを理解するであろう。さらに、当業者は、抗原が遺伝子の完全長ヌクレオチド配列によってのみコードされる必要がないことを理解するであろう。本発明は、限定されないが、1種より多くの遺伝子の部分的ヌクレオチド配列の使用を含むこと、およびこれらのヌクレオチド配列は、望ましい免疫応答を誘発するために様々な組み合わせで配置されことが容易に明らかになる。さらに、当業者は、抗原が「遺伝子」にコードされる必要は全くないことを理解するであろう。抗原は、生成、合成され得るか、または生物試料に由来し得ることが容易に明らかになる。そのような生物試料としては、限定されないが、組織試料、腫瘍試料、細胞、または生体液を挙げることができる。
【0069】
本明細書において使用する場合、用語「抗腫瘍効果」は、腫瘍体積の減少、腫瘍細胞数の減少、転移数の減少、寿命の増加、またはがんの状態に付随する様々な生理的症状の改善によって顕在化される生物学的効果を指す。「抗腫瘍効果」は、そもそも、腫瘍の発生の防止における本発明のペプチド、ポリヌクレオチド、細胞、および抗体の能力によっても顕在化され得る。
【0070】
本明細書において使用する場合、用語「自己の」は、後に個体に再導入されることになる、同じ個体に由来する任意の材料を指すことが意図される。
【0071】
「同種異系の」は、同じ種の異なる動物に由来する移植片を指す。
【0072】
「異種の」は、異なる種の動物に由来する移植片を指す。
【0073】
本明細書において使用する場合、用語「がん」は、異常細胞の急速かつ制御されていない増殖を特徴とする疾患と定義される。がん細胞は局所的に広がることができ、または血流およびリンパ系を通って体の他の部分に広がることができる。様々ながんの例としては、限定されないが、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮頸がん、皮膚がん、膵臓がん、結腸直腸がん、腎臓がん、肝臓がん、脳腫瘍、リンパ腫、白血病、肺がんなどが挙げられる。ある特定の態様では、がんは髄様甲状腺がんである。
【0074】
本明細書において使用する場合、用語「保存された配列修飾」は、そのアミノ酸配列を含む抗体の結合特性に有意に影響を及ぼすこともなく、該結合特性を変化させることもないアミノ酸修飾を指すことが意図される。そのような保存された修飾としては、アミノ酸の置換、付加、および欠失が挙げられる。修飾は、当技術分野において公知の標準的な技法、例えば、部位特異的変異誘発およびPCR媒介性突然変異誘発によって、本発明の抗体に導入することができる。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が同様の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられるものである。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野において定義されている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷の極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ分枝側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が挙げられる。したがって、本発明の抗体のCDR領域内の1つまたは複数のアミノ酸残基を同じ側鎖ファミリーの他のアミノ酸残基と置き換えることができ、本明細書において記載される機能アッセイを使用して、GFRα4に結合する能力について変化した抗体を試験することができる。
【0075】
「共刺激性リガンド」は、本用語が本明細書において使用される場合、T細胞上の同族共刺激性分子に特異的に結合し、それによって、例えば、ペプチドが負荷されたMHC分子とのTCR/CD3複合体の結合によってもたらされる一次シグナルに加えて、限定されないが、増殖、活性化、分化などを含めたT細胞応答を媒介するシグナルをもたらす、抗原提示細胞(例えば、aAPC、樹状細胞、B細胞など)上の分子を含む。共刺激性リガンドとしては、限定されないが、CD7、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、PD-L1、PD-L2、4-1BBL、OX40L、誘導性共刺激性リガンド(ICOS-L)、細胞間接着分子(ICAM)、CD30L、CD40、CD70、CD83、HLA-G、MICA、MICB、HVEM、リンホトキシンベータ受容体、3/TR6、ILT3、ILT4、HVEM、Tollリガンド受容体に結合するアゴニストまたは抗体、およびB7-H3と特異的に結合するリガンドが挙げられる。共刺激性リガンドは、特に、T細胞上に提示される共刺激性分子、例えば、限定されないが、CD27、CD28、4-1BB、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3と特異的に結合する抗体、およびCD83と特異的に結合するリガンドも包含する。
【0076】
「共刺激性分子」は、共刺激性リガンドと特異的に結合し、それによって、T細胞による共刺激性応答、例えば、限定されないが、増殖を媒介する、T細胞上の同族結合パートナーを指す。共刺激性分子としては、限定されないが、MHCクラスI分子、BTLA、およびTollリガンド受容体が挙げられる。
【0077】
用語「調節不全の」は、CTLA-4の発現または活性のレベルの文脈で使用される場合に、その他の点では同一の健常な動物、生物、組織、細胞、またはそれらの成分におけるCTLA-4の発現レベルまたは活性と異なる、発現または活性のレベルを指す。用語「調節不全の」は、その他の点では同一の健常な動物、生物、組織、細胞、またはそれらの成分における調節と比較した、CTLA-4の発現および活性のレベルの調節の変化も指す。
【0078】
「コードする」は、定義されたヌクレオチド配列(すなわち、rRNA、tRNA、およびmRNA)または定義されたアミノ酸配列のいずれか、ならびにそれらから得られる生物学的特性を有する、生物学的プロセスにおいて他のポリマーおよび巨大分子の合成のための鋳型として働く、遺伝子、cDNA、またはmRNAなどのポリヌクレオチド中の特定のヌクレオチド配列の固有の特性を指す。したがって、遺伝子は、細胞または他の生物システムにおいて、その遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳がタンパク質を産生する場合、タンパク質をコードする。そのヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、通常、配列表に提供されるコード鎖と遺伝子またはcDNAの転写のための鋳型として使用される非コード鎖との両方を、遺伝子またはcDNAのタンパク質または他の産物をコードすると言うことができる。
【0079】
別段の指定がない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、互いに縮重バージョンであり、同じアミノ酸配列をコードするすべてのヌクレオチド配列を含む。タンパク質およびRNAをコードするヌクレオチド配列は、イントロンを含むことができる。
【0080】
「有効量」または「治療的有効量」は本明細書において互換的に使用され、特定の生物学的結果を達成するのに有効な、本明細書において記載される化合物、製剤、材料、または組成物の量を指す。そのような結果としては、限定されないが、当技術分野において適切な任意の手段によって決定されるウイルス感染の阻害を挙げることができる。
【0081】
本明細書において使用する場合、「内在性」は、生物、細胞、組織、もしくはシステムの内部からの、または該内部で生成される任意の材料を指す。
【0082】
本明細書において使用する場合、用語「外来性」は、生物、細胞、組織、もしくはシステムの外部から導入される、または該外部で生成される任意の材料を指す。
【0083】
本明細書において使用する場合、用語「発現」は、特定のヌクレオチド配列の、そのプロモーターによって駆動される転写および/または翻訳と定義される。
【0084】
「発現ベクター」は、発現させるヌクレオチド配列に機能的に連結された発現制御配列を含む組換えポリヌクレオチドを含むベクターを指す。発現ベクターは、発現のために十分なシス作用エレメントを含み;発現のための他のエレメントは、宿主細胞によって、またはインビトロ発現システムにおいて供給され得る。発現ベクターとしては、当技術分野において公知のすべてのもの、例えば、コスミド、プラスミド(例えば、ネイキッドまたはリポソームに含まれる)、ならびに組換えポリヌクレオチドを組み込むウイルス(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)が挙げられる。
【0085】
本明細書において使用する場合、「相同な」は、2つのポリマー分子間の、例えば、2つの核酸分子、例えば、2つのDNA分子もしくは2つのRNA分子間の、または2つのポリペプチド分子間のサブユニット配列の同一性を指す。2つの分子の両方におけるサブユニットの位置が同じ単量体サブユニットによって占められている場合;例えば、2つのDNA分子のそれぞれにおける位置がアデニンによって占められている場合、これらは、その位置において相同である。2つの配列間の相同性は、一致するかまたは相同な位置の数の一次関数であり;例えば、2つの配列における位置の半分(例えば、長さが10サブユニットのポリマーにおける5個の位置)が相同である場合、2つの配列は50%相同であり;位置の90%(例えば、10個のうちの9個)が一致するかまたは相同である場合、2つの配列は90%相同である。
【0086】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」、「イヌ化」、および「キメラ」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含む、免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはそれらの断片(例えば、Fv、Fab、Fab'、F(ab')2、もしくは抗体の他の抗原結合部分配列)である。大部分は、ヒト化、イヌ化、およびキメラ抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、望ましい特異性、親和性、および能力を有するマウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種または非イヌ種(ドナー抗体)のCDRの残基に置き換えられているヒトまたはイヌ免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合によっては、ヒトまたはイヌ免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)の残基が、対応する非ヒトまたは非イヌ残基に置き換えられている。さらに、ヒト化、イヌ化、およびキメラ抗体は、レシピエント抗体にも移入されたCDRまたはフレームワーク配列にも見られない残基を含むことができる。抗体性能を洗練させ、最適化するために、これらの改変は行われる。一般に、ヒト化、イヌ化、およびキメラ抗体は、少なくとも1つの、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含むと考えられ、CDR領域のすべてまたは実質的にすべては非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域のすべてまたは実質的にすべてはヒト、イヌ化、免疫グロブリン配列のものである。ヒト化およびキメラ抗体はまた、最適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部を含むと考えられる。世界保健機関(WHO)国際一般名称(INN)専門家グループは、非ヒト由来抗体が「ヒト化」とみなされるための要件を定義した。ガイドラインに従って、International Immunogenetics Information System(登録商標)(IMGT(登録商標))DomainGapAlignツール(www.imgt.org)によって、候補抗体とヒト配列の比較を行わなければならない。このツールは、抗体生殖系列可変領域遺伝子のIMGT(登録商標)データベースに照会し、ここでは、アライメントスコアが生殖系列配列可変領域エクソンに対してのみ作成され、したがって、CDR3とJ領域の一部が分析から省かれる。抗体が「ヒト化」されるためには、「他の種よりもヒトに近いこと」に加えて、最上位の「ヒット」がヒトである必要があり、かつヒト配列に対する同一性が少なくとも85%でなければならず、さもないと、抗体は「キメラ」として指定されるであろう。さらなる詳細については、Jones et al., Nature, 321: 522-525, 1986; Reichmann et al., Nature, 332: 323-329, 1988; Presta, Curr. Op. Struct. Biol., 2: 593-596, 1992を参照されたい。
【0087】
「完全ヒト」は、分子全体がヒト起源のものであるか、またはヒト型の抗体と同一のアミノ酸配列からなる免疫グロブリン、例えば抗体を指す。
【0088】
本明細書において使用する場合、「指示資料」は、本発明の組成物および方法の有用性を伝えるために使用することができる刊行物、録音物、図、または任意の他の表現媒体を含む。本発明のキットの指示資料は、例えば、本発明の核酸、ペプチド、および/もしくは組成物を含む容器に貼ることができるか、または該核酸、ペプチド、および/もしくは組成物を含む容器と共に出荷することができる。あるいは、指示資料は、指示資料および化合物がレシピエントによって共同で使用されるという意図で、容器とは別に出荷することができる。
【0089】
本明細書において使用する場合、「同一性」は、2つのポリマー分子間、特に2つのアミノ酸分子間、例えば、2つのポリペプチド分子間のサブユニット配列の同一性を指す。2つのアミノ酸配列が同じ位置に同じ残基を有する場合;例えば、2つのポリペプチド分子のそれぞれにおける位置がアルギニンによって占められている場合、これらはその位置において同一である。アライメントにおいて2つのアミノ酸配列が同じ位置に同じ残基を有する同一性または程度は、パーセンテージで表されることが多い。2つのアミノ酸配列間の同一性は、一致するかまたは同一の位置の数の一次関数であり;例えば、2つの配列における位置の半分(例えば、長さが10アミノ酸のポリマーにおける5個の位置)が同一である場合、2つの配列は50%同一であり;位置の90%(例えば、10個のうちの9個)が一致するかまたは同一である場合、2つのアミノ酸配列は90%同一である。
【0090】
「単離された」は、天然状態から変化したまたは取り出されたことを意味する。例えば、生きている動物中に天然に存在する核酸またはペプチドは「単離されて」いないが、その天然状態の共存する物質から部分的にまたは完全に分離された同じ核酸またはペプチドは、「単離されている」。単離された核酸またはタンパク質は、実質的に精製された形態で存在してもよいし、または例えば宿主細胞などの非天然環境に存在してもよい。
【0091】
本発明において、一般に存在する核酸塩基についての以下の省略形が使用される。「A」はアデノシンを指し、「C」はシトシンを指し、「G」はグアノシンを指し、「T」はチミジンを指し、「U」はウリジンを指す。
【0092】
別段の指定がない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、互いに縮重バージョンであり、同じアミノ酸配列をコードするすべてのヌクレオチド配列を含む。タンパク質またはRNAをコードするヌクレオチド配列というフレーズは、タンパク質をコードするヌクレオチド配列がある種のバージョンにおいてイントロンを含むことができる範囲内で、イントロンを含むこともできる。
【0093】
本明細書において使用する場合、「レンチウイルス」はレトロウイルス(Retroviridae)科の属を指す。レンチウイルスは、非分裂細胞に感染することができるという点でレトロウイルスの中でユニークであり;これは、かなりの量の遺伝情報を宿主細胞のDNAに送達することができるので、遺伝子送達ベクターの最も効率的な方法の1つである。HIV、SIV、およびFIVがレンチウイルスのすべての例である。レンチウイルスに由来するベクターは、インビボでかなりのレベルの遺伝子導入を達成するための手段を提供する。
【0094】
用語「機能的に連結される」は、制御配列と異種性核酸配列の間の機能的連結であって、後者の発現をもたらす機能的連結を指す。例えば、第1の核酸配列は、第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的な関係で配置される場合に、第2の核酸配列と機能的に連結される。例えば、プロモーターは、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を及ぼす場合に、コード配列に機能的に連結される。一般に、機能的に連結されるDNA配列は隣接しており、2つのタンパク質コード領域を結合する必要がある場合、同じリーディングフレーム中にある。
【0095】
免疫原性組成物の「非経口」投与は、例えば、皮下(s.c.)、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)、または胸骨内の注射または注入技法を含む。
【0096】
本明細書において使用する場合、用語「ポリヌクレオチド」は、ヌクレオチドの鎖と定義される。さらに、核酸はヌクレオチドのポリマーである。したがって、本明細書において使用する場合、核酸およびポリヌクレオチドは互換的である。当業者は、核酸はポリヌクレオチドであり、これは、単量体「ヌクレオチド」に加水分解され得るという一般的知識を有する。単量体ヌクレオチドはヌクレオシドに加水分解され得る。本明細書において使用する場合、ポリヌクレオチドとしては、非限定的に、組換え手段、すなわち、通常のクローニング技術およびPCR(商標)などを使用する、組換えライブラリーまたは細胞ゲノムからの核酸配列のクローニング、ならびに合成手段によるものを含めた当技術分野において利用可能な任意の手段によって得られるすべての核酸配列が挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
本明細書において使用する場合、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」は互換的に使用され、ペプチド結合によって共有結合したアミノ酸残基から構成される化合物を指す。タンパク質またはペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含まなくてはならず、タンパク質またはペプチドの配列を構成することができるアミノ酸の最大数に制限はない。ポリペプチドとしては、ペプチド結合によって互いに結合した2つ以上のアミノ酸を含む任意のペプチドまたはタンパク質が挙げられる。本明細書において使用する場合、本用語は、一般に当技術分野において、例えば、ペプチド、オリゴペプチド、およびオリゴマーとも呼ばれる短鎖と一般に当技術分野においてタンパク質と呼ばれる長鎖との両方を指し、これらには多くのタイプが存在する。「ポリペプチド」としては、数ある中でも、例えば、生物学的に活性な断片、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチドの変異体、改変ポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質が挙げられる。ポリペプチドとしては、天然ペプチド、組換えペプチド、合成ペプチド、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0098】
本明細書において使用する場合、用語「プロモーター」は、ポリヌクレオチド配列の特異的な転写を開始するのに必要とされる、細胞の合成機構または導入された合成機構によって認識されるDNA配列と定義される。
【0099】
本明細書において使用する場合、用語「プロモーター/調節配列」は、プロモーター/調節配列に機能的に連結された遺伝子産物の発現に必要とされる核酸配列を意味する。場合によっては、この配列はコアプロモーター配列でもよく、他の場合では、この配列は遺伝子産物の発現に必要とされるエンハンサー配列および他の調節エレメントを含むこともできる。プロモーター/制御配列は、例えば、組織特異的様式で遺伝子産物を発現するものでもよい。
【0100】
「構成的」プロモーターは、遺伝子産物をコードするかまたは指定するポリヌクレオチドと機能的に連結される場合に、細胞の大抵のまたはすべての生理的条件下で、該遺伝子産物を細胞で産生させるヌクレオチド配列である。
【0101】
「誘導性」プロモーターは、遺伝子産物をコードするかまたは指定するポリヌクレオチドと機能的に連結される場合に、該プロモーターに対応する誘導因子が細胞に存在する場合のみ、細胞で該遺伝子産物を実質的に産生させるヌクレオチド配列である。
【0102】
「組織特異的」プロモーターは、遺伝子をコードするかまたは遺伝子によって指定されるポリヌクレオチドと機能的に連結される場合に、細胞が該プロモーターに対応する組織型の細胞である場合のみ、細胞で遺伝子産物を実質的に産生させるヌクレオチド配列である。
【0103】
「シグナル伝達経路」は、細胞のある部分から細胞の別の部分へのシグナルの伝達において役割を果たす様々なシグナル伝達分子の間の生化学的関係を指す。フレーズ「細胞表面受容体」は、シグナルを受け取り、細胞の原形質膜を横断してシグナルを伝達することができる分子および分子の複合体を含む。「細胞表面受容体」の一例は、ヒトGFRα4である。
【0104】
「単鎖抗体」は、単一ポリペプチドとして抗体のFv領域を再現するように、操作されたアミノ酸スパンを使用して免疫グロブリンの重鎖断片および軽鎖断片が互いに連結している、組換えDNA技法によって形成される抗体を指す。米国特許第4,694,778号; Bird (1988) Science 242:423-442; Huston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883; Ward et al. (1989) Nature 334:54454; Skerra et al. (1988) Science 242:1038-1041に記載されているものを含めて、単鎖抗体を生成する様々な方法が公知である。
【0105】
用語「対象」は、免疫応答が誘発され得る、生きている生物(例えば、哺乳動物)を含むことが意図される。本明細書において使用される「対象」または「患者」は、ヒトでもよいし、またはヒト以外の哺乳動物でもよい。ヒト以外の哺乳動物としては、例えば、家畜およびペット、例えば、ヒツジ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、およびマウスの哺乳動物が挙げられる。好ましくは、対象はヒトである。
【0106】
本明細書において使用する場合、「実質的に精製された」細胞は、他の細胞型を本質的に含んでいない細胞である。実質的に精製された細胞は、その天然に存在する状態において通常付随する他の細胞型から分離された細胞も指す。場合によっては、実質的に精製された細胞の集団は細胞の均一な集団を指す。他の場合では、この用語は、その天然状態において天然に付随する細胞から分離された細胞を単に指す。いくつかの態様では、細胞はインビトロで培養される。他の態様では、細胞はインビトロで培養されない。
【0107】
本明細書において使用する場合、用語「治療的」は処置および/または予防を意味する。治療効果は、病態の抑制、寛解、または根絶によって得られる。
【0108】
本明細書において使用する場合、用語「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」は、宿主細胞に外来核酸が移行または導入されるプロセスを指す。「トランスフェクトされた」または「形質転換された」または「形質導入された」細胞は、外来性核酸でトランスフェクトされた、形質転換された、または形質導入された細胞である。細胞としては、初代対象細胞およびその後代が挙げられる。
【0109】
本明細書において使用する場合、フレーズ「転写制御下」または「機能的に連結される」は、プロモーターが、RNAポリメラーゼによる転写の開始およびポリヌクレオチドの発現を制御するように、ポリヌクレオチドに対して正しい位置および向きにあることを意味する。
【0110】
「ベクター」は、単離された核酸を含み、かつ単離された核酸を細胞の内部に送達するために使用することができる物質の組成物である。限定されないが、直鎖状ポリヌクレオチド、イオン性または両親媒性化合物と結合しているポリヌクレオチド、プラスミド、およびウイルスを含めて、多数のベクターが当技術分野において公知である。したがって、用語「ベクター」は、自律複製プラスミドまたはウイルスを含む。本用語はまた、例えば、ポリリジン化合物、リポソームなどのような、細胞中への核酸の移行を容易にする非プラスミドおよび非ウイルス化合物を含むと解釈されるべきである。ウイルスベクターの例としては、限定されないが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターなどが挙げられる。
【0111】
本明細書において使用する場合、用語「特異的に結合する」は、試料中に存在する同族結合パートナー(例えば、T細胞上に存在する刺激性および/または共刺激性分子)タンパク質を認識し、それと結合するが、試料中の他の分子を実質的に認識もせず、それと結合もしない、抗体またはリガンドを意味する。
【0112】
用語「刺激」は、刺激性分子(例えば、TCR/CD3複合体)とその同族リガンドが結合し、それによって、シグナル伝達イベント、例えば、限定されないが、TCR/CD3複合体を介したシグナル伝達を媒介することによって誘導される一次応答を意味する。刺激は、ある特定の分子の発現の変化、例えば、TGF-βのダウンレギュレーション、および/または細胞骨格構造の再構築などを媒介することができる。
【0113】
「刺激性分子」は、本用語が本明細書において使用される場合、抗原提示細胞上および/または腫瘍細胞上に存在する同族刺激性リガンドと特異的に結合する、T細胞上の分子を意味する。
【0114】
本明細書において使用する場合、「刺激性リガンド」は、抗原提示細胞(例えば、aAPC、樹状細胞、B細胞など)または腫瘍細胞上に存在する場合に、T細胞上の同族結合パートナー(本明細書において「刺激性分子」と呼ばれる)と特異的に結合し、それによって、T細胞による一次応答、限定されないが、活性化、免疫応答の開始、増殖などを媒介することができるリガンドを意味する。刺激性リガンドは当技術分野において周知であり、特に、ペプチドが負荷されたMHCクラスI分子、抗CD3抗体、スーパーアゴニスト抗CD28抗体、およびスーパーアゴニスト抗CD2抗体を包含する。
【0115】
範囲:本開示の全体を通して、本発明の様々な局面が範囲形式で提示され得る。範囲形式での説明は単に便宜および簡潔さのためであり、本発明の範囲に対する変更できない制限として解釈されるべきでないことを理解されたい。したがって、範囲の説明は、範囲内の個々の数値だけでなく、すべての可能な部分範囲も具体的に開示しているとみなされるべきである。例えば、1~6などの範囲の説明は、範囲内の個々の数、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3、および6だけでなく、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などのような部分範囲も具体的に開示しているとみなされるべきである。これは、範囲の幅にかかわらず適用される。
【0116】
説明
本発明は、イヌ抗体ファージディスプレイライブラリを用いて、イヌ起源の細胞傷害性Tリンパ球タンパク質4(CTLA-4)に特異的に結合する抗原特異的な単鎖可変断片(scFv)融合タンパク質を特定することができるという発見に基づく。次いで、これらのイヌCTLA-4特異的scFvを、イヌ定常領域を有する完全長抗体に変換して、イヌ対象におけるインビボでの使用に適するようにさせることができる。がんの処置のための、本発明のイヌCTLA-4特異的なscFv、抗体、または抗原結合断片を含む方法および組成物も提供される。
【0117】
細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)またはCD152は、T細胞共刺激性分子CD28と非常に相同である、膜貫通受容体の免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである。CTLA-4は、CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞の活性化後にその表面上で上方制御され、エフェクターT細胞応答の負の制御因子として働く。CTLA-4はまた、疲弊したCD8+ T細胞の表面上で過剰発現している。CTLA-4は、CD80およびCD86に高い親和性で結合し、これらの受容体リガンドとの相互作用についてCD28を打ち負かし、T細胞活性化を阻害する。CTLA-4によるリンパ球活性化の阻害は、CD28を打ち負かすことによるだけではなく、それぞれTCRζ鎖を脱リン酸化し、PI3Kの下流エフェクターを標的とする、チロシンホスファターゼSHP2およびセリンスレオニンホスファターゼPP2Aの動員も介して達成される。CTLA-4は、さらに、抗原提示細胞(APC)に対するその作用を介して間接的に、エフェクターT細胞応答を阻害することができる。APC上のCD80/86に対するCTLA-4の高い結合親和性は、トランスエンドサイトーシスを介してこれらの共刺激性リガンドの除去をもたらし、寛容原性APC表現型を促進することができる。エフェクターT細胞とは対照的に、制御性T細胞は、その表面上にCTLA-4を構成的に発現しており、これは、それらのサプレッサー活性、特に樹状細胞の成熟を阻害するそれらの能力に必須である。CTLA-4に結合し、そのCD80/86との相互作用を阻害するモノクローナル抗体は、T細胞活性化閾値を低下させ、高度に活性化された腫瘍特異的T細胞の増殖を促進することによって、内在性T細胞応答を増強し、Treg機能を阻害して、抗腫瘍免疫を促進する。
【0118】
イピリムマブ、別名Yervoyは、ヒト患者における黒色腫の処置について2011年にFDAにより承認された最初の抗CTLA-4モノクローナル抗体であり、臨床での最前線の治療法になっている。ヒト免疫系とイヌ免疫系との間の類似性を考慮して、本発明は、イヌにおいて抗腫瘍療法として使用することができる完全イヌ抗CTLA-4を提供する。最近開発されたイヌscFvファージディスプレイライブラリを利用して、獣医学的がんのための免疫療法として使用することができる、3つのCTLA-4特異的可溶性scFvを特定し、完全イヌIgGモノクローナル抗体に再フォーマットした。
【0119】
イヌのがんのための免疫療法
イヌは、系統学的にヒトと密接に関係しており、ヒト対応物と類似した生物学的、行動的、および遺伝学的特徴を共有するがんを自然発生的に発症する。そのため、イヌのがん患者は、抗CTLA-4 mAbの作用メカニズムを解明すること、応答の相関バイオマーカーを特定すること、およびチェックポイント阻害剤に対する抵抗性のメカニズムを理解することを手助けする、関連する並行患者集団として働くことができる。さらに、それらはまた、併用療法の安全性および有効性に関するヒト臨床試験デザインに情報を与える際に、重要なトランスレーショナルな役割を果たし得る。イヌCTLA-4(NP_001003106.1)は、ヒトCTLA-4(NP_005205.2)と88%の同一性を共有し、ヒツジ赤血球の投与後にイヌにおいて寛容を誘導することが示されており、これは、ヒトとイヌとの間の保存されたCTLA-4の作用メカニズムを示唆した。加えて、組織球性肉腫およびB細胞リンパ腫を有するイヌ患者において、対照イヌと比較してより高いパーセンテージのイヌ末梢血CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞が、CTLA-4を発現しており、これは、抗腫瘍免疫に悪影響を及ぼす、これらのイヌにおける疲弊した表現型の存在を示唆した。さらに、RNAseqを用いた最近の報告により、イヌCD4+CD25hi T細胞は、高レベルのCTLA-4転写物の発現を含む制御性表現型を発現することが確認された。合わせると、これらの知見は、これらの侵襲性腫瘍型において抗腫瘍免疫を促進することができる治療用イヌ抗CTLA-4抗体の開発の根拠を提供し、かつ、臨床応答の相関バイオマーカー、およびヒト臨床試験に情報を与える最適な併用療法を調べるための価値ある比較可能な試薬を提供する。
【0120】
結合ポリペプチド、抗体、およびscFv
本発明の結合ポリペプチドおよび抗体は、抗体の特定の機能的特色または特性を特徴とする。例えば、結合ポリペプチドおよび抗体は、イヌ細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)に特異的に結合する。好ましくは、本発明の結合ポリペプチドおよび抗体は、高い親和性でイヌCTLA-4に結合する。好ましくは、本発明の結合ポリペプチドおよび抗体は、細胞上で天然に発現しているイヌCTLA-4タンパク質を特異的に認識し、かつその細胞上の他の表面分子には交差反応しない。
【0121】
ある特定の局面では、本発明は、イヌ細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)のエピトープに特異的に結合する抗原結合ドメインを含む、単離された結合ポリペプチドを提供する。ある特定の態様では、抗原結合ドメインは、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む重鎖可変領域、および3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域を含む。
【0122】
ある特定の局面では、本発明は、アミノ酸配列(SEQ ID NO:1、21、または37)を含むHCDR1を含む、単離された結合ポリペプチドを提供する。アミノ酸配列(SEQ ID NO:2、22、または38)を含むHCDR2を含む、単離された結合ポリペプチドも提供される。アミノ酸配列(SEQ ID NO:3、23、または39)を含むHCDR3を含む、単離された結合ポリペプチドも提供される。アミノ酸配列(SEQ ID NO:4、24、または40)を含むLCDR1を含む軽鎖可変領域を含む、単離された結合ポリペプチドも提供される。アミノ酸配列(SEQ ID NO:5、25、または41)を含むLCDR2を含む、単離された結合ポリペプチドも提供される。アミノ酸配列(SEQ ID NO:6、26、または42)を含むLCDR3を含む、単離された結合ポリペプチドも提供される。
【0123】
ある特定の局面では、本発明は、アミノ酸配列(SEQ ID NO:1)を含むHCDR1、アミノ酸配列(SEQ ID NO:2)を含むHCDR2、アミノ酸配列(SEQ ID NO:3)を含むHCDR3、アミノ酸配列(SEQ ID NO:4)を含むLCDR1、アミノ酸配列(SEQ ID NO:5)を含むLCDR2、およびアミノ酸配列(SEQ ID NO:6)を含むLCDR3を含む、単離された結合ポリペプチドを提供する。
【0124】
相補性決定領域(CDR)配列の許容できる変動は当業者に公知であろう。例えば、いくつかの態様では、ポリペプチドは、SEQ ID NO:1、2、3、4、5、6、21、22、23、24、25、26、37、38、39、40、41、または42に記載されるアミノ酸配列のいずれかに対して、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、相補性決定領域(HCDRまたはLCDR)を含む。
【0125】
いくつかの態様では、結合ポリペプチドは、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)に結合する。いくつかの態様では、CTLA-4タンパク質は、SEQ ID NO:53に記載されるアミノ酸を含む。いくつかの態様では、結合ポリペプチドは、抗体またはその抗原結合断片を含む。いくつかの態様では、抗原結合断片は、Fab、単鎖可変断片(scFv)、または単一ドメイン抗体からなる群より選択される。さらなる態様では、抗体は完全長抗体である。さらに他の態様では、抗体または抗原結合断片は、イヌ抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの態様では、抗体または抗原結合断片は、イヌ化抗体またはその抗原結合断片である。
【0126】
ある特定の態様では、結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:6、25、40、または74に記載される重鎖可変領域のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域を含む。ある特定の態様では、結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:6、25、40、または74に記載されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域を含む。ある特定の態様では、結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:6、25、40、または74に記載されるアミノ酸配列からなる、重鎖可変領域からなる。
【0127】
ある特定の態様では、結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:8、27、または42に記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域を含む。ある特定の態様では、結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:8、27、または42に記載されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域を含む。ある特定の態様では、結合ポリペプチドは、SEQ ID NO:8、27、または42に記載されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域からなる。
【0128】
SEQ ID NO:6に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:8に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、単離された結合ポリペプチドも提供される。
【0129】
ある特定の態様では、本発明は、本発明の抗体と同じイヌCTLA-4上のエピトープに結合する抗体(すなわち、イヌCTLA-4に対する結合について本発明の抗体のいずれかと交差競合する能力を有する抗体)を含む。好ましい態様では、交差競合研究のための参照抗体は、本明細書において記載される抗体の1つ(例えば、A1mut2)であることができる。例えば、本発明の抗体との交差競合を実証するために、Biacore解析、ELISAアッセイ、またはフローサイトメトリーを用いてもよい。試験抗体が、例えばA1mut2のイヌCTLA-4に対する結合を阻害する能力は、試験抗体が、イヌCTLA-4に対する結合についてA1mut2と競合することができ、したがって、A1mut2と同じCTLA-4のエピトープに結合すると考えられることを実証する。
【0130】
本発明の抗体は、本明細書において開示されるVHおよび/またはVL配列の1つまたは複数を有する抗体を、改変抗体を操作するための出発材料として用いて調製することができ、該改変抗体は、出発抗体と比較して特性が変化している可能性がある。抗体は、一方または両方の可変領域(すなわち、VHおよび/またはVL)内の、例えば、1つもしくは複数のCDR領域内および/または1つもしくは複数のフレームワーク領域内の、1つまたは複数のアミノ酸を修飾することによって、操作することができる。追加的にまたは代替的に、抗体を、例えば抗体のエフェクター機能を変化させるために、定常領域内の残基を修飾することによって操作することができる。
【0131】
イヌ細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)のエピトープに特異的に結合する抗原結合ドメインを含む、単鎖可変断片(scFv)も提供される。
【0132】
本明細書において使用する場合、用語「単鎖可変断片」または「scFv」は、VH::VLヘテロ二量体を形成するように共有結合した、免疫グロブリン(例えば、マウスまたはヒト)の重鎖(VH)および軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質である。重鎖(VH)および軽鎖(VL)は、直接的に結合しているか、またはペプチドをコードするリンカーによって結合しているかのいずれかであり、リンカーは、VHのN末端とVLのC末端とを、またはVHのC末端とVLのN末端とを接続する。いくつかの態様では、抗原結合ドメイン(例えば、CTLA-4結合ドメイン)は、N末端からC末端に、VH-リンカー-VLの配置を有するscFvを含む。いくつかの態様では、抗原結合ドメインは、N末端からC末端に、VL-リンカー-VHの配置を有するscFvを含む。当業者は、本発明で使用するための適切な配置を選択することができるであろう。
【0133】
リンカーは通常、可動性のためのグリシン、および溶解度のためのセリンまたはスレオニンに富む。リンカーは、細胞外抗原結合ドメインの重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを連結することができる。リンカーの非限定例は、Shen et al., Anal. Chem. 80(6):1910-1917 (2008)およびWO 2014/087010に開示されており、それらの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。様々なリンカー配列が、当技術分野において公知であり、それらとしては、非限定的に、グリシンセリン(GS)リンカー、例えば、(GS)n、(GSGGS)n(SEQ ID NO:58)、(GGGS)n(SEQ ID NO:59)、および(GGGGS)n(SEQ ID NO:60)が挙げられ、ここで、nは少なくとも1の整数を表す。例示的なリンカー配列は、非限定的に、
などを含む、アミノ酸配列を含むことができる。当業者は、本発明で使用するための適切なリンカー配列を選択することができるであろう。一態様では、本発明のscFvは、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含み、VHとVLとは、核酸配列
によってコードされ得る、アミノ酸配列
を有するリンカー配列によって隔てられている。
【0134】
定常領域の除去およびリンカーの導入にもかかわらず、scFvタンパク質は、元の免疫グロブリンの特異性を保持する。単鎖Fvポリペプチド抗体は、Hustonら(Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 85:5879-5883, 1988)によって記載されているように、VHおよびVLをコードする配列を含む核酸から発現させることができる。米国特許第5,091,513号、第5,132,405号、および第4,956,778号;ならびに米国特許出願公開第20050196754号および第20050196754号も参照されたい。阻害活性を有するアンタゴニスト性scFvが記載されている(例えば、Zhao et al., Hyrbidoma (Larchmt) 2008 27(6):455-51;Peter et al., J Cachexia Sarcopenia Muscle 2012 August 12;Shieh et al., J Imunol 2009 183(4):2277-85;Giomarelli et al., Thromb Haemost 2007 97(6):955-63;Fife eta., J Clin Invst 2006 116(8):2252-61;Brocks et al., Immunotechnology 1997 3(3):173-84;Moosmayer et al., Ther Immunol 1995 2(10:31-40)を参照されたい)。刺激活性を有するアゴニスト性scFvが記載されている(例えば、Peter et al., J Bioi Chem 2003 25278(38):36740-7;Xie et al., Nat Biotech 1997 15(8):768-71;Ledbetter et al., Crit Rev Immunol 1997 17(5-6):427-55;Ho et al., BioChim Biophys Acta 2003 1638(3):257-66を参照されたい)。
【0135】
ある特定の態様では、scFvの抗原結合ドメインは、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む重鎖可変領域、および3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域を含む。HCDR1は、アミノ酸配列(SEQ ID NO:1、17、もしくは33)を含み、および/またはHCDR2は、アミノ酸配列(SEQ ID NO:2、18、もしくは34)を含み、および/またはHCDR3は、アミノ酸配列(SEQ ID NO:3、19、もしくは35)を含み、および/またはLCDR1は、アミノ酸配列(SEQ ID NO:4、20、もしくは36)を含み、および/またはLCDR2は、アミノ酸配列(SEQ ID NO:5、21、もしくは37)を含み、および/またはLCDR3は、アミノ酸配列(SEQ ID NO:6、22、もしくは38)を含む。重鎖可変領域と軽鎖可変領域とは、リンカーによって隔てられている。
【0136】
SEQ ID NO:6、25、40、または74に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:8、27、または42に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、単鎖可変断片(scFv)も提供される。重鎖可変領域と軽鎖可変領域とは、リンカーによって隔てられている。
【0137】
別の局面では、SEQ ID NO:29、44、または76に記載されるアミノ酸配列を含む、単鎖可変断片(scFv)が提供される。別の局面では、SEQ ID NO:29、44、または76に記載されるアミノ酸配列からなる、単鎖可変断片(scFv)が提供される。
【0138】
scFv配列の許容できる変動は当業者に公知であろう。例えば、いくつかの態様では、scFvは、SEQ ID NO:29、44、または76に記載されるアミノ酸配列のいずれかに対して、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0139】
別の局面では、SEQ ID NO:10、12、14、16、31、46、71、72、または73に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖、およびSEQ ID NO:18、33、または48に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、完全長抗体が提供される。別の局面では、SEQ ID NO:10、12、14、16、31、46、71、72、または73に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖、およびSEQ ID NO:18、33、または48に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖からなる、完全長抗体が提供される。完全長抗体配列の許容できる変動は当業者に公知であろう。例えば、いくつかの態様では、抗体は、SEQ ID NO:11、13、15、17、19、33、35、49、および51に記載されるアミノ酸配列のいずれかに対して、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0140】
(表1)本発明において用いた配列
【0141】
核酸および発現ベクター
本開示は、ポリペプチドをコードする、単離された核酸を提供する。本開示の核酸は、本明細書において開示される結合ポリペプチド、scFv、または抗体のいずれか1つをコードするポリヌクレオチド配列を含み得る。
【0142】
本発明の一局面は、イヌ細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)のエピトープに特異的に結合する抗原結合ドメインを含む結合ポリペプチドをコードする、単離された核酸を含む。
【0143】
ある特定の態様では、核酸は、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む重鎖可変領域、および3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域を含む、抗原結合ドメインを含む。HCDR1は、アミノ酸配列(SEQ ID NO:1、21、もしくは37)を含み、および/またはHCDR2は、アミノ酸配列(SEQ ID NO:2、22、もしくは38)を含み、および/またはHCDR3は、アミノ酸配列(SEQ ID NO:3、23、もしくは39)を含み、および/またはLCDR1は、アミノ酸配列(SEQ ID NO:4、24、もしくは40)を含み、および/またはLCDR2は、アミノ酸配列(SEQ ID NO:5、25、もしくは41)を含み、および/またはLCDR3は、アミノ酸配列(SEQ ID NO:6、26、もしくは42)を含む。
【0144】
ある特定の態様では、結合ポリペプチドは、抗体またはその抗原結合断片を含む。ある特定の態様では、抗原結合断片は、Fab、単鎖可変断片(scFv)、または単一ドメイン抗体からなる群より選択される。ある特定の態様では、抗体は完全長抗体である。ある特定の態様では、抗体または抗原結合断片は、ヒト化抗体またはその断片である。
【0145】
ある特定の態様では、重鎖可変領域は、SEQ ID NO:8、28、および44に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる。ある特定の態様では、重鎖可変領域は、SEQ ID NO:8、28、および44に記載されるポリヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる。ある特定の態様では、重鎖可変領域は、SEQ ID NO:8、28、および44に記載されるポリヌクレオチド配列からなる核酸によってコードされる。
【0146】
ある特定の態様では、軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:10、30、および46に記載される軽鎖可変領域のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる。ある特定の態様では、軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:10、30、および46に記載されるポリヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる。ある特定の態様では、軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:10、30、および46に記載されるポリヌクレオチド配列からなる核酸によってコードされる。
【0147】
SEQ ID NO:8に記載されるポリヌクレオチド配列を含む核酸配列によってコードされる重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:10に記載されるポリヌクレオチド配列を含む核酸配列によってコードされる軽鎖可変領域を含む結合ポリペプチドをコードする、単離された核酸も提供される。
【0148】
3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む重鎖可変領域、および3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域を含む単鎖可変断片(scFv)をコードする、単離された核酸も提供される。HCDR1は、アミノ酸配列(SEQ ID NO:1、20、および35)を含み、ならびに/またはHCDR2は、アミノ酸配列(SEQ ID NO:2、22、もしくは38)を含み、ならびに/またはHCDR3は、アミノ酸配列(SEQ ID NO:3、22、および37)を含み、ならびに/またはLCDR1は、アミノ酸配列(SEQ ID NO:4、24、もしくは40)を含み、ならびに/またはLCDR2は、アミノ酸配列(SEQ ID NO:5、25、もしくは41)を含み、ならびに/またはLCDR3は、アミノ酸配列(SEQ ID NO:6、26、もしくは42)を含む。
【0149】
SEQ ID NO:8に記載されるヌクレオチド配列を含む重鎖可変領域、および/またはSEQ ID NO:10に記載されるヌクレオチド配列を含む軽鎖可変領域を含む単鎖可変断片(scFv)をコードする、単離された核酸も提供される。重鎖可変領域と軽鎖可変領域とは、リンカーによって隔てられている。ある特定の態様では、リンカーは、SEQ ID NO:72に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0150】
SEQ ID NO:30、45、または77に記載されるポリヌクレオチド配列を含む、単鎖可変断片(scFv)をコードする、単離された核酸も提供される。SEQ ID NO:30、45、または77に記載されるポリヌクレオチド配列からなる、単鎖可変断片(scFv)をコードする、単離された核酸も提供される。
【0151】
SEQ ID NO:12、14、16、18、34、および50に記載される重鎖ポリヌクレオチド配列、ならびにSEQ ID NO:20、36、および52に記載される軽鎖ポリヌクレオチド配列を含む、完全長抗体をコードする、単離された核酸も提供される。SEQ ID NO:12、14、16、18、34、および50に記載される重鎖ポリヌクレオチド配列、ならびにSEQ ID NO:20、36、および52に記載される軽鎖ポリヌクレオチド配列からなる、完全長抗体をコードする、単離された核酸も提供される。
【0152】
核酸配列の許容できる変動は当業者に公知であろう。例えば、いくつかの態様では、核酸は、SEQ ID NO:8、10、12、14、16、18、20、28、30、32、34、36、44、46、48、50、または52に記載されるヌクレオチド配列のいずれかに対して少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0153】
ある特定の態様では、本開示の核酸は、第1のポリヌクレオチド配列および第2ポリヌクレオチド配列を含む。第1および第2のポリヌクレオチド配列はリンカーによって隔てられ得る。例えば、ある特定の態様では、scFvの重鎖可変領域および軽鎖可変領域はリンカーによって隔てられている。ある特定の態様では、リンカーはSEQ ID NO.72に記載されるアミノ酸配列を含む。ある特定の態様では、核酸は、5’から3’に、第1のポリヌクレオチド配列、リンカー、および第2ポリヌクレオチド配列を含む。ある特定の態様では、核酸は、5’から3’に、第2ポリヌクレオチド配列、リンカー、および第1のポリヌクレオチド配列を含む。
【0154】
本発明の別の局面は、本明細書において開示される単離された核酸のいずれか1つを含むベクターを提供する。ある特定の態様では、ベクターは、DNAベクター、RNAベクター、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、およびレトロウイルスベクターからなる群より選択される。ある特定の態様では、ベクターは発現ベクターである。
【0155】
本明細書において開示されるベクターまたは核酸のいずれかを含む宿主細胞も提供される。宿主細胞は、真核生物、原核生物、哺乳動物、または細菌起源のものであり得る。FAPに結合する結合ポリペプチドまたはscFvを生成する方法も本明細書で提供され、該方法は、宿主細胞を培養する工程を含む。
【0156】
いくつかの態様では、本開示の核酸は、転写制御エレメント、例えば、プロモーターおよびエンハンサーなどに機能的に連結され得る。適切なプロモーターおよびエンハンサーエレメントは当業者に公知である。
【0157】
ある特定の態様では、核酸はプロモーターと機能的連結されている。ある特定の態様では、プロモーターはホスホグリセリン酸キナーゼ-1(PGK)プロモーターである。
【0158】
細菌細胞における発現について、適切なプロモーターとしては、限定されないが、lacI、lacZ、T3、T7、gpt、ラムダP、およびtrcが挙げられる。真核細胞における発現について、適切なプロモーターとしては、限定されないが、軽および/または重鎖免疫グロブリン遺伝子プロモーターおよびエンハンサーエレメント;サイトメガロウイルス最初期プロモーター;単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモーター;初期および後期SV40プロモーター;レトロウイルスのロングターミナルリピート中に存在するプロモーター;マウスのメタロチオネイン-Iプロモーター;ならびに技術分野で公知の様々な組織特異的プロモーターが挙げられる。可逆的誘導性プロモーターを含めて、適切な可逆的プロモーターは当技術分野において公知である。そのような可逆的プロモーターは、多くの生物、例えば、真核生物および原核生物から単離することができ、これらの生物に由来し得る。例えば、第1の原核生物および第2の真核生物、第1の真核生物および第2の原核生物など、第2の生物で使用するための、第1の生物に由来する可逆的プロモーターの改変は、当技術分野において周知である。そのような可逆的プロモーターに基づくが、さらなる制御タンパク質も含む、そのような可逆的プロモーターおよびシステムとしては、限定されないが、アルコール調節性プロモーター(例えば、アルコール脱水素酵素I(alcA)遺伝子プロモーター、アルコールトランスアクチベータータンパク質(A1cR)に応答性のプロモーターなど)、テトラサイクリン調節性プロモーター(例えば、TetActivators、TetON、TetOFFなどを含めたプロモーターシステム)、ステロイド調節性プロモーター(例えば、ラットグルココルチコイド受容体プロモーターシステム、ヒトエストロゲン受容体プロモーターシステム、レチノイドプロモーターシステム、甲状腺プロモーターシステム、エクジソンプロモーターシステム、ミフェプリストンプロモーターシステムなど)、金属調節性プロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーターシステムなど)、病原性関連調節性プロモーター(例えば、サリチル酸調節性プロモーター、エチレン調節性プロモーター、ベンゾチアジアゾール調節性プロモーターなど)、温度調節性プロモーター(例えば、ヒートショック誘導性プロモーター(例えば、HSP-70、HSP-90、ダイズヒートショックプロモーターなど)、光調節性プロモーター、合成誘導性プロモーターなどが挙げられる。
【0159】
酵母細胞における発現について、適切なプロモーターは、構成的プロモーター、例えば、ADH1プロモーター、PGK1プロモーター、ENOプロモーター、PYK1プロモーターなど;または調節可能なプロモーター、例えば、GAL1プロモーター、GAL10プロモーター、ADH2プロモーター、PHOSプロモーター、CUP1プロモーター、GALTプロモーター、MET25プロモーター、MET3プロモーター、CYC1プロモーター、HIS3プロモーター、ADH1プロモーター、PGKプロモーター、GAPDHプロモーター、ADC1プロモーター、TRP1プロモーター、URA3プロモーター、LEU2プロモーター、ENOプロモーター、TP1プロモーター、およびAOX1(例えば、ピキアで使用するため)である。適切なベクターおよびプロモーターの選択は十分に当業者のレベル内である。原核生物宿主細胞で使用するための適切なプロモーターとしては、限定されないが、バクテリオファージT7 RNAポリメラーゼプロモーター;trpプロモーター;lacオペロンプロモーター;ハイブリッドプロモーター、例えば、lac/tacハイブリッドプロモーター、tac/trcハイブリッドプロモーター、trp/lacプロモーター、T7/lacプロモーター;trcプロモーター;tacプロモーターなど;araBADプロモーター;インビボ調節性プロモーター、例えば、ssaGプロモーターまたは関連したプロモーター(例えば、米国特許出願公開第20040131637号を参照されたい)、pagCプロモーター(Pulkkinen and Miller, J. Bacteriol. (1991) 173(1): 86-93; Alpuche-Aranda et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1992) 89(21): 10079-83)、nirBプロモーター(Harborne et al. Mol. Micro. (1992) 6:2805-2813)など(例えば、Dunstan et al., Infect. Immun. (1999) 67:5133-5141; McKelvie et al., Vaccine (2004) 22:3243-3255;およびChatfield et al., Biotechnol. (1992) 10:888-892を参照されたい);シグマ70プロモーター、例えば、コンセンサスシグマ70プロモーター(例えば、GenBank受託番号AX798980、AX798961、およびAX798183を参照されたい);静止期プロモーター、例えば、dpsプロモーター、spvプロモーターなど;病原性アイランドSPI-2に由来するプロモーター(例えば、WO96/17951を参照されたい);actAプロモーター(例えば、Shetron-Rama et al., Infect. Immun. (2002) 70:1087-1096を参照されたい);rpsMプロモーター(例えば、Valdivia and Falkow Mol. Microbiol. (1996). 22:367を参照されたい);tetプロモーター(例えば、Hillen, W. and Wissmann, A. (1989) In Saenger, W. and Heinemann, U. (eds), Topics in Molecular and Structural Biology, Protein--Nucleic Acid Interaction. Macmillan, London, UK, Vol. 10, pp. 143-162を参照されたい);SP6プロモーター(例えば、Melton et al., Nucl. Acids Res. (1984) 12:7035を参照されたい)などが挙げられる。大腸菌(Escherichia coli)などの原核生物で使用するための適切な強力なプロモーターとしては、限定されないが、Trc、Tac、T5、T7、およびPラムダが挙げられる。細菌宿主細胞で使用するためのオペレーターの非限定例としては、ラクトースプロモーターオペレーター(LacIリプレッサータンパク質が、ラクトースと接触した場合にコンフォメーションを変え、それによって、Ladリプレッサータンパク質がオペレーターと結合するのを防止する)、トリプトファンプロモーターオペレーター(トリプトファンと複合体化された場合に、TrpRリプレッサータンパク質はオペレーターと結合するコンフォメーションを有し;トリプトファンの非存在下で、TrpRリプレッサータンパク質はオペレーターに結合しないコンフォメーションを有する)、およびtacプロモーターオペレーター(例えば、deBoer et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1983) 80:21-25を参照されたい)が挙げられる。
【0160】
適切なプロモーターの他の例としては、最初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配列が挙げられる。このプロモーター配列は、それに機能的に連結される任意のポリヌクレオチド配列の高レベルの発現を駆動することができる強い構成的プロモーター配列である。限定されないが、シミアンウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳房腫瘍ウイルス(MMTV)またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)ロングターミナルリピート(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン-バーウイルス最初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、EF-1アルファプロモーター、ならびにヒト遺伝子プロモーター、例えば、限定されないが、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘモグロビンプロモーター、およびクレアチンキナーゼプロモーターを含めて、他の構成的プロモーター配列を使用することもできる。さらに、本発明は、構成的プロモーターの使用に限定されるべきではない。誘導性プロモーターも本発明の一部として企図される。誘導性プロモーターの使用は、そのような発現が望ましい場合に、機能的に連結されるポリヌクレオチド配列の発現をオンにするか、または発現が望ましくない場合に発現をオフにすることができる分子スイッチを提供する。誘導性プロモーターの例としては、限定されないが、メタロチオニンプロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーター、およびテトラサイクリンプロモーターが挙げられる。
【0161】
いくつかの態様では、適切なプロモーターを含む遺伝子座またはコンストラクトまたは導入遺伝子は、誘導性システムの誘導を通して不可逆的に切り換えられる。不可逆的切り換えの誘導のための適切なシステムは当技術分野において周知であり、例えば、不可逆的切り換えの誘導はCre-lox媒介性組換えを使用することができる(例えば、その開示が参照により本明細書に組み入れられる、Fuhrmann-Benzakein, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2000) 28:e99を参照されたい)。本技術分野に公知である、リコンビナーゼ、エンドヌクレアーゼ、リガーゼ、組換え部位などの任意の適切な組み合わせを不可逆的に切り換え可能なプロモーターの生成で使用することができる。本明細書の他の個所で記載されている、部位特異的組換えを行うための方法、メカニズム、および要件は、不可逆的に切り換えられるプロモーターの生成において使用され、当技術分野において周知であり、例えば、その開示が参照により本明細書に組み入れられる、Grindley et al. Annual Review of Biochemistry (2006) 567-605;およびTropp, Molecular Biology (2012)(Jones & Bartlett Publishers, Sudbury, Mass.)を参照されたい。
【0162】
本開示の核酸は、発現ベクターおよび/またはクローニングベクター内に存在していてもよい。発現ベクターは、選択マーカー、複製開始点、ならびにベクターの複製および/または維持を提供する他の特色を含むことができる。適切な発現ベクターとしては、例えば、プラスミド、ウイルスベクターなどが挙げられる。多数の適切なベクターおよびプロモーターが当業者に公知であり、多くは、対象の組換えコンストラクトを生成するために市販されている。以下のベクターは例として提供され、限定として決して解釈されるべきでない:細菌性:pBs、phagescript、PsiX174、pBluescript SK、pBs KS、pNH8a、pNH16a、pNH18a、pNH46a(Stratagene, La Jolla, Calif., USA);pTrc99A、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、およびpRIT5(Pharmacia, Uppsala, Sweden)。真核性:pWLneo、pSV2cat、pOG44、PXR1、pSG(Stratagene)pSVK3、pBPV、pMSG、およびpSVL(Pharmacia)。
【0163】
発現ベクターは、一般に、異種性タンパク質をコードする核酸配列の挿入をもたらすために、プロモーター配列の近くに位置する便利な制限部位を有する。発現宿主で機能的である選択マーカーが存在してもよい。適切な発現ベクターとしては、限定されないが、ウイルスベクター(例えば、ワクシニアウイルス;ポリオウイルス;アデノウイルス(例えば、Li et al., Invest. Opthalmol. Vis. Sci. (1994) 35: 2543-2549; Borras et al., Gene Ther. (1999) 6: 515-524; Li and Davidson, Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1995) 92: 7700-7704; Sakamoto et al., H. Gene Ther. (1999) 5: 1088-1097; WO 94/12649、WO 93/03769; WO 93/19191; WO 94/28938; WO 95/11984、およびWO 95/00655を参照されたい);アデノ随伴ウイルス(例えば、Ali et al., Hum. Gene Ther. (1998) 9: 81-86, Flannery et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1997) 94: 6916-6921; Bennett et al., Invest. Opthalmol. Vis. Sci. (1997) 38: 2857-2863; Jomary et al., Gene Ther. (1997) 4:683 690, Rolling et al., Hum. Gene Ther. (1999) 10: 641-648; Ali et al., Hum. Mol. Genet. (1996) 5: 591-594; Srivastava in WO 93/09239、Samulski et al., J. Vir. (1989) 63: 3822-3828; Mendelson et al., Virol. (1988) 166: 154-165;およびFlotte et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1993) 90: 10613-10617)を参照されたい);SV40;単純ヘルペスウイルス;ヒト免疫不全ウイルス(例えば、Miyoshi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1997) 94: 10319-23; Takahashi et al., J. Virol. (1999) 73: 7812-7816を参照されたい)に基づくウイルスベクター;レトロウイルスベクター(例えば、マウス白血病ウイルス、脾臓壊死ウイルス、ならびにレトロウイルス、例えば、ラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルス、および乳房腫瘍ウイルスに由来するベクター)などが挙げられる。
【0164】
使用に適したさらなる発現ベクターは、例えば、非限定的に、レンチウイルスベクター、ガンマレトロウイルスベクター、泡沫状ウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、操作されたハイブリッドウイルスベクター、トランスポゾン媒介性ベクターなどである。ウイルスベクター技術は当技術分野において周知であり、例えば、Sambrook et al., 2012, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, volumes 1-4, Cold Spring Harbor Press, NY)ならびに他のウイルス学および分子生物学マニュアルに記載されている。ベクターとして有用なウイルスとしては、限定されないが、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、およびレンチウイルスが挙げられる。
【0165】
一般に、適切なベクターは、少なくとも1つの生物で機能的な複製開始点、プロモーター配列、便利な制限酵素部位、および1つまたは複数の選択マーカーを含む(例えば、WO 01/96584; WO 01/29058;および米国特許第6,326,193号)。
【0166】
いくつかの態様では、発現ベクター(例えば、レンチウイルスベクター)は、宿主細胞に核酸を導入するために使用することができる。したがって、本発明の発現ベクター(例えば、レンチウイルスベクター)は、ポリペプチドをコードする核酸を含むことができる。いくつかの態様では、発現ベクター(例えば、レンチウイルスベクター)は、その中にコードされるポリペプチドの機能的発現を援助するさらなるエレメントを含む。いくつかの態様では、ポリペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターは、哺乳動物プロモーターをさらに含む。一態様では、ベクターは伸長因子1アルファプロモーター(EF-1αプロモーター)をさらに含む。EF-1αプロモーターの使用は、下流の導入遺伝子の発現の効率を高めることができる。生理的プロモーター(例えば、EF-1αプロモーター)は、組み込み媒介性遺伝毒性を誘導する可能性が低い場合があり、かつレトロウイルスベクターが幹細胞をがん化する能力を抑止することができる。ベクター(例えば、レンチウイルスベクター)での使用に適する他の生理的プロモーターは当業者に公知であり、本発明のベクターに組み込むことができる。いくつかの態様では、ベクター(例えば、レンチウイルスベクター)は、力価および遺伝子発現を向上させることができる必須でないシス作用性配列をさらに含む。必須でないシス作用性配列の1つの非限定例は、効率的な逆転写および核内移行に重要なセントラルポリプリントラクトおよびセントラルターミネーション配列(cPPT/CTS)である。他の必須でないシス作用性配列は当業者に公知であり、本発明のベクター(例えば、レンチウイルスベクター)に組み込むことができる。いくつかの態様では、ベクターは転写後調節エレメントをさらに含む。転写後調節エレメントは、RNAの翻訳を向上させる、導入遺伝子の発現を向上させる、およびRNA転写物を安定化することができる。転写後調節エレメントの一例は、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)である。したがって、いくつかの態様では、本発明のためのベクターはWPRE配列をさらに含む。様々な転写後調節エレメントが当業者に公知であり、本発明のベクター(例えば、レンチウイルスベクター)に組み込むことができる。本発明のベクターは、さらなるエレメント、例えば、RNA輸送のためのrev応答エレメント(RRE)、パッケージング配列、ならびに5’および3’ロングターミナルリピート(LTR)をさらに含むことができる。用語「ロングターミナルリピート」または「LTR」は、U3、R、およびU5領域を含む、レトロウイルスDNAの末端に位置する塩基対のドメインを指す。LTRは、一般に、レトロウイルス遺伝子の発現(例えば、促進、開始、および遺伝子転写物のポリアデニル化)に、ならびにウイルス複製に必要とされる機能を提供する。一態様では、本発明のベクター(例えば、レンチウイルスベクター)は、3’U3が欠失したLTRを含む。したがって、本発明のベクター(例えば、レンチウイルスベクター)は、導入遺伝子の機能的発現の効率を増強するために、本明細書において記載されるエレメントの任意の組み合わせを含むことができる。例えば、本発明のベクター(例えば、レンチウイルスベクター)は、CARをコードする核酸に加えて、WPRE配列、cPPT配列、RRE配列、5’LTR、3’U3が欠失したLTR'を含むことができる。
【0167】
本発明のベクターは自己不活性化ベクターでもよい。本明細書において使用する場合、用語「自己不活性化ベクター」は、3’LTRエンハンサープロモーター領域(U3領域)が(例えば、欠失または置換によって)改変されているベクターを指す。自己不活性化ベクターは、ウイルス複製の第1ラウンドを越えたウイルスの転写を防止することができる。したがって、自己不活性化ベクターは、感染し、次いで宿主ゲノム(例えば、哺乳動物ゲノム)に一度だけ組み込まれることができてもよく、かつさらに受け継がれる(passed)可能性はない。したがって、自己不活性化ベクターは、複製能があるウイルスを作出する危険性を大きく低減することができる。
【0168】
いくつかの態様では、本発明の核酸はRNA、例えば、インビトロ合成したRNAでもよい。RNAのインビトロ合成のための方法は当業者に公知であり;本開示のポリペプチドをコードする配列を含むRNAを合成するために、任意の公知の方法を使用することができる。RNAを宿主細胞に導入するための方法は当技術分野において公知である。例えば、Zhao et al. Cancer Res. (2010) 15: 9053を参照されたい。本開示のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むRNAの宿主細胞への導入は、インビトロ、エクスビボ、またはインビボで行うことができる。例えば、本開示のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むRNAを用いて、宿主細胞(例えば、NK細胞、細胞傷害性Tリンパ球など)をインビトロまたはエクスビボでエレクトロポレーションすることができる。
【0169】
ポリペプチドまたはその一部の発現を評価するために、細胞に導入される発現ベクターは、ウイルスベクターによってトランスフェクトまたは感染させようした細胞の集団からの発現細胞の特定および選択を容易にするために、選択マーカー遺伝子もしくはレポーター遺伝子のいずれか、または両方を含むこともできる。いくつかの態様では、選択マーカーを別のDNA片に載せ、コトランスフェクション手順で使用することができる。選択マーカーとレポーター遺伝子の両方は、宿主細胞での発現を可能にするのに適切な調節配列が隣接していてもよい。有用な選択マーカーとしては、非限定的に、抗生物質抵抗性遺伝子が挙げられる。
【0170】
レポーター遺伝子は、トランスフェクトされた可能性がある細胞を特定するために、および調節配列の機能性を評定するために使用される。一般に、レポーター遺伝子は、レシピエント生物および組織中に存在もせず、レシピエント生物および組織が発現もせず、かつある種の容易に検出可能な特性、例えば酵素活性によって発現が顕在化されるポリペプチドをコードする遺伝子である。レポーター遺伝子の発現は、レシピエント細胞にDNAが導入された後の適切な時点で評価される。適切なレポーター遺伝子としては、非限定的に、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌型アルカリホスファターゼをコードする遺伝子、または緑色蛍光タンパク質遺伝子を挙げることができる(例えば、Ui-Tei et al., 2000 FEBS Letters 479: 79-82)。
【0171】
いくつかの態様では、本開示の核酸は、例えば宿主細胞における、本明細書において記載されるポリペプチドの産生のために提供される。いくつかの態様では、本開示の核酸は、ポリペプチドをコードする核酸の増幅を提供する。
【0172】
処置方法
本明細書において記載される抗体、結合ポリペプチド、およびscFvは、その必要のある対象において疾患または状態を処置するための組成物に含めることができる。組成物は薬学的組成物を含むことができ、薬学的に許容される担体をさらに含むことができる。治療的有効量の薬学的組成物を対象に投与することができる。
【0173】
一局面では、本発明は、その必要のある対象においてがんを処置するための方法を提供する。方法は、SEQ ID NO:6、25、40、または74に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:8、27、または42に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む単離された結合ポリペプチドを、対象に投与する工程を含む。
【0174】
ある特定の態様では、がんは、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)発現細胞に関連している。ある特定の態様では、CTLA-4発現細胞は、がん関連細胞である。ある特定の態様では、がん関連細胞は、Tリンパ球である。ある特定の態様では、CTLA-4発現がん関連細胞は、CTLA-4発現Tリンパ球である。
【0175】
ある特定の態様では、結合ポリペプチドは、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)に特異的に結合する。ある特定の態様では、結合ポリペプチドは、抗体またはその抗原結合断片を含む。ある特定の態様では、抗原結合断片は、Fab、単鎖可変断片(scFv)、または単一ドメイン抗体からなる群より選択される。ある特定の態様では、抗体は完全長抗体である。ある特定の態様では、抗体または抗原結合断片は、ヒト化抗体またはその抗原結合断片である。
【0176】
本発明の組成物は、適切な前臨床および臨床実験および試験で決定された投薬量および経路および時間で投与することができる。組成物は、これらの範囲内の投薬量で複数回投与することができる。組成物の投与は、当業者によって決定されるように、望ましい疾患または状態を処置するのに有用な他の方法と組み合わせることができる。
【0177】
薬学的組成物および製剤
本明細書において開示される結合ポリペプチド、scFv、抗体、または抗原結合断片のいずれか1つを含む薬学的組成物も提供される。組成物の中には、疾患または障害の処置などのための投与のための薬学的組成物および製剤がある。対象、例えば患者に薬学的組成物を投与するための治療方法も提供される。
【0178】
薬学的組成物および製剤は、一般に、1つまたは複数の随意の薬学的に許容される担体または賦形剤を含む。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも1つのさらなる治療的作用物質を含む。
【0179】
用語「薬学的製剤」は、その中に含まれる活性成分の生物活性が有効であることを可能にするような形態であり、かつ製剤が投与されるであろう対象に対して許容されない毒性を持つさらなる成分を含まない、調製物を指す。「薬学的に許容される担体」は、対象に対して毒性を持たない、薬学的製剤中の活性成分以外の成分を指す。薬学的に許容される担体としては、限定されないが、緩衝液、賦形剤、安定化剤、または防腐剤が挙げられる。いくつかの局面では、担体の選択は、特定の組成物によって、および/または投与方法によって、ある程度決定される。したがって、様々な適切な製剤が存在する。例えば、薬学的組成物は防腐剤を含むことができる。適切な防腐剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、および塩化ベンザルコニウムを挙げることができる。いくつかの局面では、2種以上の防腐剤の混合物が使用される。防腐剤またはそれらの混合物は、典型的には、全組成物の約0.0001~約2重量%の量で存在する。担体は、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)によって記載されている。薬学的に許容される担体は、一般に、用いられる投薬量および濃度でレシピエントに対して毒性を持たず、該担体としては、限定されないが、以下が挙げられる:緩衝液、例えば、リン酸、クエン酸、および他の有機酸;アスコルビン酸およびメチオニンを含めた抗酸化剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルもしくはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジン;グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含めた、単糖類、二糖類、および他の炭水化物;キレート化剤、例えばEDTA;糖、例えば、ショ糖、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム;金属錯体(例えば、亜鉛-タンパク質錯体);ならびに/または非イオン性界面活性剤、例えばポリエチレングリコール(PEG)。
【0180】
いくつかの局面において、組成物に緩衝剤が含まれる。適切な緩衝剤としては、例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸、リン酸カリウム、ならびに様々な他の酸および塩が挙げられる。いくつかの局面では、2種以上の緩衝剤の混合物が使用される。緩衝剤またはそれらの混合物は、典型的には、全組成物の約0.001~約4重量%の量で存在する。投与可能な薬学的組成物を調製するための方法は公知である。例示的な方法は、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Lippincott Williams & Wilkins; 21st ed. (May 1, 2005)により詳細に記載されている。
【0181】
製剤は水溶液を含むことができる。製剤または組成物は、組成物で処置される特定の適応症、疾患、または状態に有用な1種より多い活性成分、好ましくは、それぞれの活性が互いに悪影響を及ぼさない、組成物に補足的な活性を有するものも含むことができる。そのような活性成分は、意図された目的に有効な量で組み合わされて適切に存在する。したがって、いくつかの態様では、薬学的組成物は、他の薬学的に活性な剤または薬物、例えば化学療法剤、例えば、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メトトレキサート、パクリタキセル、リツキシマブ、ビンブラスチン、および/またはビンクリスチンをさらに含む。いくつかの態様では、薬学的組成物は、疾患または状態を処置または防止するのに有効な量、例えば、治療的有効量または予防的有効量で組成物を含む。いくつかの態様では、治療的または予防的有効性は、処置を受けている対象の定期的な評価によってモニターされる。望ましい投薬量は、組成物の単回ボーラス投与によって、組成物の複数回ボーラス投与によって、または組成物の持続注入投与によって、送達することができる。
【0182】
製剤としては、経口、静脈内、腹腔内、皮下、肺、経皮、筋肉内、鼻腔内、頬側、舌下、または坐剤投与のためのものが挙げられる。いくつかの態様では、組成物は非経口的に投与される。本明細書において使用する場合、用語「非経口」は、静脈内、筋肉内、皮下、直腸、腟、および腹腔内投与を含む。いくつかの態様では、組成物は、静脈内、腹腔内、または皮下注射による末梢性全身送達を使用して、対象に投与される。いくつかの態様では、組成物は、無菌液体調製物、例えば、等張性水溶液、懸濁液、乳濁液、分散液、または粘性組成物として提供され、これらは、いくつかの局面において、選択されたpHに緩衝され得る。液体調製物は、通常、ゲル、他の粘性組成物および固体組成物よりも調整しやすい。さらに、液体組成物は、特に注射によって投与するのがやや簡便である。一方で、粘性組成物は、特定の組織とのより長い接触期間をもたらすのに適切な粘性範囲内で製剤化することができる。液体または粘性組成物は担体を含むことができ、担体は、例えば、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、ポリオール(polyoi)(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液状ポリエチレングリコール)およびそれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒でもよい。
【0183】
無菌の注射用溶液は、例えば、適切な担体、希釈剤、または賦形剤、例えば、滅菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロースなどと混合して、組成物を溶媒に組み込むことによって、調製することができる。組成物は、望ましい投与経路および調製物に応じて、補助物質、例えば、湿潤剤、分散剤、または乳化剤(例えば、メチルセルロース)、pH緩衝剤、ゲル化もしくは粘性増強添加剤、防腐剤、着香剤、および/または着色剤を含むことができる。いくつかの局面において、適切な調製物を調製するために標準的なテキストを調べることができる。
【0184】
抗菌性防腐剤、抗酸化剤、キレート化剤、および緩衝液を含めて、組成物の安定性および無菌性を増強する様々な添加剤を加えることができる。微生物作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、およびソルビン酸によって確実にすることができる。注射用薬学的剤形の持続性吸収は、吸収を遅延させる剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用によってもたらすことができる。
【0185】
インビボ投与に使用される製剤は、一般に無菌である。無菌性は、例えば滅菌濾過膜による濾過によって、容易に成し遂げることができる。
【0186】
本明細書において言及または引用される論文、特許、および特許出願、ならびにすべての他の文献および電子的に入手可能な情報の内容は、個々の刊行物のそれぞれが参照により組み入れられることが具体的におよび個々に示される場合と同じ程度に、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。出願人らは、任意のそのような論文、特許、特許出願、または他の物理的および電子的文書からのありとあらゆる材料および情報を本出願に物理的に組み入れる権利を保有する。
【0187】
本発明をその特定の態様に関連して記載してきたが、本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができ、および均等物で置換することができることを当業者は理解されたい。本明細書において開示される態様の範囲を逸脱することなく、適切な均等物を使用して、本明細書において記載される方法の他の適切な改変および適合を行うことができることが当業者に容易に明らかになるであろう。さらに、特定の状況、材料、物質の組成物、プロセス、プロセス工程、または工程を本発明の目的、趣旨、および範囲に適合させるために、多くの改変を行うことができる。すべてのそのような改変は、本明細書に添付の特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。ある特定の態様をここで詳細に記載してきたが、同じことが、例示目的のためだけに含まれ、限定を意図したものではない以下の実施例を参照することにより、より明らかに理解されるであろう。
【実施例
【0188】
実験実施例
以下の実験実施例を参照することにより、本発明を詳細にさらに記載する。これらの実施例は、別段の指定がない限り、例示目的のためだけに提供され、限定を意図したものではない。したがって、本発明は、以下の実施例に限定されるとして決して解釈されるべきでなく、むしろ、本明細書で提供される教示の結果として明らかになる、ありとあらゆる変形形態を包含すると解釈されるべきである。
【0189】
さらなる説明なしで、当業者が、前述の説明および以下の例示的な実施例を使用して、本発明の化合物を作製し、利用することができ、かつ特許請求される方法を実施することができると考えられる。したがって、以下の実施例(working example)は本発明の好ましい態様を特に示すものであり、本開示の残りの部分を限定するものとして決して解釈されるべきでない。
【0190】
実験実施例において使用される材料および方法を次に記載する。
【0191】
細胞および細胞株:末梢血単核細胞(PBMC)は、Ficoll-Paque PLUS(GE Healthcare, Chicago, IL)上での不連続密度遠心分離によって、ヘパリン処理した健康なドナーイヌの血液またはT細胞リンパ腫を有するイヌ由来の血液(Treg染色)から得た。ネコ細胞については、血液学的悪性腫瘍を有する2匹のネコの臨床血液学的評価から余った残りのヘパリン処理血液を、最初にACK溶解(ThermoFisher Scientific, Waltham, MA)に供して、赤血球を除去した。細胞を、使用前に、完全(c)RPMI培地(2 mM L-グルタミン(Mediatech, Manassas, VA)、10%熱不活性化ウシ胎児血清(Atlanta Biologicals, Flowery Branch, Georgia)、10 mM HEPES(Gibco, Grand Island, NY)、ならびに100 U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシン(Gibco)を含有するRPMI 1640)で2回洗浄した。示された場合には、ネガティブ選択したイヌT細胞を用いた。PBMCを、(c)RPMIにおいて洗浄し、マウス抗イヌCD11b(クローンCA16.3E10)、CD11c(クローンCA11.6A1)、マウス抗ヒトCD14(クローンTuK4)、およびマウス抗イヌCD21(クローンCA2.1D6)(すべてABD Serotec/Biorad由来)で標識し、続いてヤギ抗マウスIgG Microbeads(Miltenyi Biotec, Bergisch Gladbach, Germany)で標識した。T細胞は、MACS LSカラム(Miltenyi)を用いて、製造業者によって説明されるようにネガティブ選択した。T細胞の純度を、CD5標識およびフローサイトメトリー解析によって決定した。ヒト腫瘍細胞株(K562および293T細胞)は、HEPES、1 mMピルビン酸ナトリウム(Mediatech)、グルタミン、ならびにペニシリンおよびストレプトマイシン(Thermo Fisher Scientific)を補給し、10%ウシ胎児血清を補給したRPMI-1640(cRPMI)において増殖させた。
【0192】
組換えタンパク質の生成。RNeasy Plus Mini Kit(Qiagen, Valencia, CA)を用いて、イヌPBMC細胞から全RNAを抽出した。逆転写を、ランダムヘキサマーおよびSuperscript III逆転写酵素を用いて、製造業者の説明書(Life Technologies)に従って行い、続いてRNAse H消化を行い、いずれかの残ったRNAを除去した。イヌCTLA-4(NCBI参照配列:NM_001003106.1)の細胞外、N末端ドメインを増幅するプライマーを、Primer3ソフトウェア(http://frodo.wi.mit.edu/primer3/)を用いて設計した。プライマー配列は以下の通りであった。
【0193】
3'プライマーを、可動性リンカー、ヒスチジンタグ、およびAvi(ビオチン化)タグを含むように設計した。プライマーは、Sigma-Aldrich(St. Louis, MO)によって合成した。Q5 Hot Start High Fidelity Polymeraseを用いた従来のPCRを、以下のサーマルサイクリングプログラムで用いた:98℃で3分間;98℃で15秒間、65℃で30秒間、および72℃で1分間を30サイクル;72℃で2分間、ならびに4℃まで冷却。cCTLA-4の増幅された細胞外ドメイン(ECD)の期待されるバンドサイズは、590 bpである。cCTLA-4 ECDアンプリコンを、HAタグを含有する発現プラスミドpFUSE(Invivogen, San Diego, CA)中にクローニングした。cCTLA-4 ECDのヌクレオチド配列を、DNA配列解析によって確かめた。cCTLA-4 ECDを含有するpFUSE発現プラスミドを、Lipofectamine 2000(Thermo Fisher Scientific)を用いて、製造業者の指示に従って293T細胞にトランスフェクトし、最大のタンパク質発現のために用いるLipofectamineの量および収集の時間を調べた。CTLA-4ポリペプチドを、ローテーター上で2時間、Ni-NTA樹脂(Qiagen, Hilden, Germany )に結合させることによって、細胞培養培地から収集した。遠心分離した樹脂ペレットを、50 mM Tris-HCl、300 mM NaCl、10 mMイミダゾールを含有するpH 8.0の高塩緩衝液、および50 mM Tris-HCl、150 mM NaCl、10 mMイミダゾールを含有するpH 8.0の低塩緩衝液において徹底的に洗浄した。cCTLA-4 ECDタンパク質を、50 mM Tris-HCl、150 mM NaCl、300 mMイミダゾールを含有するpH 8.0の溶出緩衝液でNi-NTA樹脂から溶出した。緩衝液を1×PBSで交換し、cCTLA-4 ECDタンパク質を、Amicon限外濾過ユニット(MilliporeSigma, Burlington, MA)において濃縮した。タンパク質の生成を、SDS-PAGEおよびゲルのCoomassie Blue染色を用いて評価し、BSA標準を用いてImage Lab 6.0ソフトウェア(Bio-Rad, Hercules, CA)により定量した。
【0194】
cCTLA-4タンパク質のビオチン化および反応産物の検証。およそ0.8 mgの組換えcCTLA-4 ECDタンパク質(以降、cCTLA-4と呼ぶ)を、ストレプトアビジン(SA)でコーティングしたプレートへの結合およびその後のscFvライブラリパンニングに備えて、ビオチン化した。Aviタグは、BirAビオチン-タンパク質リガーゼのビオチン化認識部位として働く。cCTLA-4を、BirAビオチン-タンパク質リガーゼ標準反応キット(Avidity, Aurora, CO)を用いて、製造業者の説明書に従ってビオチン化した。高度のcCTLA-4ビオチン化を確認するために、0、2、4、および8 ugのSAを添加し、試料をSDS-PAGEによって評価した。ビオチン化cCTLA-4+SAの移動は、非ビオチン化cCTLA-4と比較して遅れ、これは、ビオチン化反応が成功し、本質的に化学量論的であったことを示す。ビオチン化cCTLA-4タンパク質が免疫反応性であることを96ウェルプレート形式で確認するために、ELISAが後に続く捕捉アッセイを行った。簡潔に述べると、PBS中の様々な濃度のストレプトアビジンを、マイクロアッセイプレートのウェル中にコーティングした。4℃でのO/Nインキュベーション後に、5%ミルクPBS-Tweenを、RTで1時間添加した。PBS-Tween洗浄をその後行って、ビオチン化cCTLA-4タンパク質の滴定物を、ウェルに1時間添加した。PBS-Tween洗浄後に、抗イヌCTLA-4ウサギポリクローナル抗体(Sino Biologicals, Chesterbrook, PA)を、2つの異なる希釈で、RTで2時間添加した。検出は、1/5000希釈の抗イヌ(HおよびL)鎖APコンジュゲートIgG二次抗体(Jackson Immunoresearch, West Grove, PA)で、RTで1時間であった。TBS-Tween洗浄後に、比色AP基質を添加し、1時間で、プレートを吸光度650で読み取った。結果により、ストレプトアビジンを添加していないウェルにおいてシグナルの欠如が見られたこと、およびシグナルの存在にはプレーティングしたストレプトアビジン捕捉タンパク質の量の増大が必要であったことが示された(データは示していない)。30 ug/mlのストレプトアビジンを、ファージライブラリスクリーニングおよびELISA解析のためのビオチン化cCTLA-4タンパク質の固定化に用いた。
【0195】
イヌCTLA-4発現標的細胞株の作製。抗体検証用のcCTLA-4発現標的細胞株を作製するために、完全長cCTLA-4(NCBI参照配列:NM_001003106.1)を、以下のプライマーを用いて上記のようなRT-PCRによって、イヌPBMCに由来するcDNAから増幅した:
結果として生じた1856 bpアンプリコンを、pMX-ピューロマイシンレトロウイルス発現ベクター(Cell Biolabs, Inc. San Diego CA)中にクローニングした。レトロウイルスを作製して、フローサイトメトリーアッセイにおいてmAbの非特異的結合を低減させるためにFcγRIIを除去するようにCRISPR/Cas9を用いて事前に編集した、ヒト赤白血病K562細胞株(KTδ32)に、安定に形質導入するために用いた。形質導入細胞を、2.5 ug/mlのピューロマイシン二塩酸塩(Sigma, St. Louis, MO)中で選択して、KTδ32.cCTLA-4を生じた。cCTLA-4導入遺伝子の発現を、cCTLA-4を増幅するために合成したプライマーを用いて、RT-PCRによってこれらの細胞において確認した。非形質導入KTδ32細胞を、陰性対照標的細胞として用いた。
【0196】
イヌscFvファージディスプレイパンニング。各ラウンドのパンニングのために、96ウェルCostar 3490 1/2 areaプラスチックマイクロプレートのウェルを、50 ulの20 ug/mlストレプトアビジン(SA)で、4℃で一晩コーティングした(パニング1では24ウェル、パニング2では16ウェル、パニング3および4では8ウェル)。プレートをPBSにおいて洗浄し、ウェルを、PBS中2%ミルク(MPBS)でブロッキングして、37℃で1時間インキュベートした。ビオチン化avitag-cCTLA-4(10 pmol)を、各々のストレプトアビジンでコーティングしたウェルに添加し、プレートに結合したSAによって捕捉させた。37℃での1時間インキュベーション後に、プレートをPBSで洗浄して、遊離CTLA-4を除去した。等アリコートのμκ、μλ、γκ、およびγλのイヌscFvファージディスプレイライブラリを混合し、2%ミルク/PBSにおいてRTで1時間ブロッキングして、50 ulを各々のCTLA-4でコーティングしたウェルに添加した。パンニングは、他のライブラリおよび標的で以前に記載されたように(例えば、Barbas et al. Phage Display: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, 2001)行い、37℃での2時間インキュベーション後に、結合していないファージを、0.5% Tween 20を補給したPBS(PBST)で、最初のパンニング中には5回、およびその後のパンニングラウンド中には10回洗い流した。より長いオフレートを有する結合物を選択するために、各洗浄を、ウェルにおける洗浄緩衝液の5分インキュベーションを伴って行った。SAまたはcCTLA-4上のビオチン化avitagに特異的なscFvファージを捕捉することを回避するために、各ラウンドのポジティブ選択の前に、ファージを、SAでコーティングし、無関係のビオチン化avitagタンパク質(この場合、ヒトビオチン化avitag-CD3εタンパク質、AcroBiosystems, Newark, DE)をプレロードしたウェルに対してネガティブ選択した。この2段階のネガティブ/ポジティブ選択アプローチを用いて、IgM/IgG/κ/λイヌscFvファージディスプレイライブラリに、記載されているように、結合ファージの酸溶出を用いた4ラウンドの選択を行った(Barbas et al.、上記)。
【0197】
scFvファージELISA。ファージディスプレイscFvの結合を検出するELISAのために、マイクロプレートを、上記のようなライブラリパンニングと同様に、ストレプトアビジンおよびビオチン化avitag CTLA-4および対照抗原でコーティングした。抗原でコーティングしたプレートに、PEG沈殿させた初期ライブラリ(P0)および各ラウンドのパンニング後に得られたライブラリ(P1~P4)からのポリクローナルファージの試料をMPBSにおいて1:1000希釈して、またはパンニングの第3ラウンド(P3)および第4ラウンド(P4)のアウトプットプレートから無作為に選んだファージクローンから調製したモノクローナルファージ(PEG沈殿させておらず、ミルク/PBSにおいて1:100希釈)を、コーティングプレートに添加して、37℃で1時間インキュベートした。プレートを、(PBST)で洗浄し、MPBS中の1:5000希釈のHRPコンジュゲート抗M13 mAb(GE Healthcare., Chicago, IL)を添加した。プレートを、再度洗浄して、結合したHRPコンジュゲート二次抗体を、ABTSで検出した。ODを、Molecular Devices SpectraMax 340分光光度計を用いて、30分後に405 nmで読み取った。抗原なし、イヌCD19、ストレプトアビジンのみ、および無関係のヒトavitag-CD3εを伴うストレプトアビジンでコーティングしたプレートを、陰性対照として用いた。
【0198】
フローサイトメトリー。イヌPBMCまたは単離されたT細胞、ネコ白血球、ならびにKTδ32.cCTLA-4およびKTδ32(WT)細胞株を、FACS緩衝液(カルシウムおよびマグネシウムを含むPBS中の1%熱不活性化FBS)において2回洗浄した。細胞を、10 ugのイヌIgGで、RTで10分間ブロッキングし、その後、5 ugのイヌscFv、または500 ngのイヌモノクローナル抗体(mAb)で細胞表面を標識した。mAb結合の特異性を、250 ngのmAbを、標的細胞とのインキュベーション前に1.25μg cCTLA-4 ECDタンパク質とRTで1時間プレインキュベートした、ブロッキング実験において評価した。細胞を、FACS緩衝液において洗浄し、mAb単独、またはmAbの抗原結合部位をブロッキングするために可溶性cCTLA-4 ECDタンパク質とプレインキュベートしたmAbのいずれかとインキュベートした。洗浄後に、APC標識抗HA.11エピトープタグ(BioLegend, San Diego, CA)および生存率色素7-AAD(BioLegend)を添加し、細胞をRTで30分間インキュベートした。PBMCを用いた実験については、示された細胞をまた、ラット抗イヌCD45(クローンYKIX716.13, BioRad, Hercules, CA)、ラット抗イヌCD5 mAb(クローン:YKIX 322.3、ThermoFisher Scientific)もしくはマウス抗ネコCD5 mAb(クローン:FE1.1B11、BioRad)、および/またはラット抗イヌCD4(クローンYKIX302.9、BioRad)で標識した。細胞表面標識後に、細胞を、FACS緩衝液において2回洗浄し、1%パラホルムアルデヒド(Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA)で固定した。細胞を、再度洗浄して、FACS緩衝液に再懸濁し、その後、FACS Canto IIフローサイトメーター(BD Biosciences)で捕えた。データを、FlowJoソフトウェアバージョンX(Treestar, Ashland, OR)を用いて解析した。示されたプロットはすべて、7AAD陰性細胞にゲートをかけている。イヌのPBMCまたは制御性T細胞の細胞内染色のためには、細胞を、適用可能な場合には表面染色し、FACS緩衝液において2回洗浄し、固定/透過処理FOXP3/Transcription Factor Staining Buffer Set(ThermoFisher Scientific, Waltham, MA)に再懸濁した。細胞を、氷上、暗所で30分間インキュベートし、次いで、透過処理緩衝液で1回洗浄した。次いで、細胞を、APCコンジュゲート抗マウスFoxP3(クローン:FJK-16s、ThermoFisher Scientific)またはラットIgG2aカッパアイソタイプ対照APC(17-4321-81、ThermoFisher Scientific)、抗CTLA-4 mAb(0.5 ug)、または抗MERS抗体(0.5 ug、陰性対照)と、氷上で30分間インキュベートした。細胞を、透過処理緩衝液で1回、および1×FACS緩衝液で2回洗浄し、その後、FACS Canto IIフローサイトメーターで捕えた。
【0199】
可溶性scFvの作製。ファージELISAによってcCTLA-4に結合することが確認されたファージクローンを用いて、様々な希釈でTOP10 F'大腸菌(E. coli)(Invitrogen, Carlsbad, CA)に感染させ、100 ug/mlカルベニシリンおよび1%グルコースを含有するLB寒天プレート上にプレーティングした。単一コロニーを用いて、50 ug/mlカルベニシリンおよび1%グルコースを含む20 mlのLBを含有するスターター培養フラスコに接種した。培養物を、37℃で一晩、225 rpmで振盪して増殖させた。10 mlの飽和スターター培養物を用いて、50 ug/mlカルベニシリンおよび0.1%グルコースを含む200 mlのSBを含有する発現培養物に接種した。フラスコを、0.5のOD600まで約5時間、室温で振盪して増殖させ、次いで、0.5 mM IPTGで誘導した。増殖は、RTでO/N、誘導後合計22~24時間であった。培養物を遠心分離し、培地を細胞ペレットから静かに移した。細胞ペレットを、2つのペリプラズム抽出緩衝液で連続して抽出した。緩衝液Iは、100 mM Tris-HCl、20%スクロース、および1 mM EDTAを含有し、pH 8.0であり、緩衝液IIは、5 mM MgCl2を含有していた。抽出は、塊を砕くためのピペットを伴い、抽出物を、氷上で20~30分間保持した。各抽出後に、抽出物を、3400×gで15分間遠心分離し、2つのタイプの抽出物を、合わせて混合した。固定化金属アフィニティクロマトグラフィー精製のために、NaCl(300 mM)およびイミダゾール(10 mM)を添加し、合わせた抽出物を、3400×gで15分間、再遠心分離した。次いで、上清をNi-NTAアガロースに結合させ、scFvを、上記のようなCTLA-4タンパク質と同様に精製した。
【0200】
ハイスループット発現抽出物を、scFv精製用の大腸菌細胞の作製(上記)と類似の2段階増殖プロトコールに従って作製した。cCTLA-4パンニングラウンド由来のポリクローナルファージの感染から結果として生じた単一のTOP10F'コロニーを、50 ug/mlカルベニシリンおよび1%グルコースを含むLBを含有する96ウェル丸底細胞培養プレート中に入れた。プレートを、37℃でO/N振盪した。コンフルエントのウェルのうち5 ulを用いて、50 ug/mlカルベニシリン、0.1%グルコース、および0.5 mM IPTGを含むSBを含有する第2のセットの96ウェルプレートに接種した。コロニーを、バクテリアシェーカーにおいてRTでO/N増殖させた。発現抽出物を、発現プレートのウェルに1/4体積のBEL緩衝液を添加し、RTで1時間振盪することによって作製した。BEL緩衝液は、320 mM NaCl、400 mM H3BO3、pH 8.0からなり、リゾチームを2 mg/ml、EDTAを4 mM、およびベンゾナーゼヌクレアーゼを12.5単位/mlに最終的になるように添加した。リゾチームおよびベンゾナーゼは、Sigma Aldrich由来であった。抽出物を、2.5%ミルク/PBS-Tweenでブロッキングし、30分間振盪した。発現抽出物を、抗cCTLA-4 ELISAにおいて直接用いた。
【0201】
可溶性scFv ELISA。30 ug/mlのストレプトアビジンを、ELISAプレートに添加して、4℃でO/Nインキュベートした。その後、プレートを、5%ミルク/PBS-Tweenでブロッキングした。ビオチン化CTLA-4の滴定物を添加し、洗浄後に、0.25 ug/mlの可溶性scFvを添加して、RTで2時間結合させた。発現抽出物ELISAについては、10~100 ulの抽出物を、ELISAプレートに添加して、RTで2時間インキュベートした。結合したscFvを、RTで1時間インキュベートし、洗浄し、AP比色基質によって検出した、抗HAマウスIgG APコンジュゲート(または陽性ポリクローナルウサギ抗イヌCTLA-4 mAb対照(Sino Biological)については抗ウサギAPコンジュゲート)を用いて検出した。プレートを、650 nmで読み取った。場合によっては、二価scFvを、ELISAおよび阻害研究における使用のために、一価scFvから作製した。簡潔に述べると、2.5 ugの可溶性scFvを、各scFv上のC末端HA分子に結合する、それぞれ1 ug/ml(ELISA用)または5 ug/ml(ブロッキング研究用)の抗HAアルカリホスファターゼ抗体または抗HA-FITC抗体(クローン:HA-7、Sigma Aldrich)とRTで2時間インキュベートして、二価scFv調製物を作製した。
【0202】
ELISAベースの相互作用アッセイ。0.3、1.0、および3.0 pmolの組換えヒトCD86-Fcキメラ(担体フリー)またはヒトCD80-Fcキメラ(担体フリー)(BioLegend, San Diego, CA)を、ELISAプレートに一晩結合させた。ウェルを、5%ミルク/PBS 0.05% Tween 20でブロッキングした。PBS/Tween中の3 pmolのビオチン化または非ビオチン化cCTLA-4 ECDタンパク質を、ウェルに添加して、RTで2時間振盪した。イヌscFvまたはイヌmAbが、プレートに結合したCD80およびCD86とcCTLA-4 ECDとの相互作用を阻害する能力を評価することを目的とした実験のために、cCTLA-4 ECDを、示されたモル比でscFvまたはmAbと、RTで1時間プレインキュベートし、その後、プレートに添加して、RTで2時間、シェーカー上でインキュベートした。洗浄後に、ストレプトアビジン-APコンジュゲート(Jackson Immunoresearch, West Grove, PA)を、RTで1時間添加した。3回のTBS-Tween洗浄を行って、CD80またはCD86に結合したcCTLA-4を、AP比色基質(Invitrogen)を用いて検出した。
【0203】
完全イヌ抗CTLA-4 mAbの作製。選択したscFvのVH鎖およびVL鎖を、イヌ定常軽カッパ(CLκ)ドメインもしくは定常軽ラムダ(CLλ)ドメインのいずれか、またはイヌ定常IgG1重鎖ドメイン(IgGA)を含有する別々の発現プラスミド中にクローニングすることによって、完全長の二価IgG抗体を、単離されたscFvから作製した。イヌCLλおよびCLκを、pFUSE2ss(Invitrogen)中にクローニングして、ブラストサイジン抵抗性を用いて選択することができるpFUSE2ss-CLIg-dλ3、pFUSE2ss-CLIg-dλ5、およびpFUSE2ss-CLIg-dκを作製した。同様に、イヌVH鎖(IgGA-Dとも呼ばれるIgG1-IgG4)を、pFUSEss中にクローニングして、zeocin中で選択することができるpFUSEss-CHIg-dG1(Invivogen)を作製した。可変領域のクローニング用のプラスミドは、単離されたVL領域のサブタイプ(λ対κ)に基づいて選択した。接着293T細胞に、それぞれlipofectamine L2000試薬(ThermoFisher Scientific)を用いて、1.5:1の比の軽鎖プラスミドおよび重鎖プラスミドを一過性にコトランスフェクトした。プレート上清を、3日後に収集し、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーを用いてmAbを精製した。
【0204】
相補性(complementation)固定アッセイ。30 ug/mlのストレプトアビジンを、ELISAプレートに添加して、4℃でO/Nインキュベートした。その後、プレートを、5%ミルク/PBS-Tweenでブロッキングした。200 ul/ウェルのビオチン化cCTLA-4を、プレートに添加し、PBS-Tでの1回の洗浄後に、0.03~10 ug/mlの範囲の、4つの異なるサブクラス(A、B、C、およびD)のHAタグ付加イヌ抗イヌCTLA-4(A1mut2)抗体の連続希釈液を、プレートに添加して、RTで1時間インキュベートした。プレートをPBS-Tweenにおいて3回洗浄し、その後、1:35希釈の正常ヒト補体血清を、1セットのウェルに添加した。プレートを、RTで2時間インキュベートした。陰性対照として、熱不活性化補体(HI)を、並行したセットのウェルに添加した。インキュベーション後に、ウェルをPBS-Tweenで3回洗浄し、結合した補体を、抗ヒトC1q IgG HRPコンジュゲート抗体(BioRad, Hercules, CA)で検出した。プレートを、RTで1時間インキュベートし、PBS-Tweenにおいて3回洗浄し、その後、HRP基質(R&D Systems, Minneapolis, MN)を添加して、比色分析を行った。プレートに対する抗体結合を確認するために、同じイヌ抗体希釈液を用いて、結合した抗体を、APコンジュゲート抗HA IgG(Sigma)で検出し、AP基質(InvivoGen, San Diego, CA)を用いて検出した。
【0205】
インビトロ刺激アッセイ。健康なドナーイヌからのPBMCを、Ficoll-Paque Plus(Sigma, St. Louis, MO)を用いた密度勾配遠心分離によって単離した。細胞を、PBSで1回洗浄し、ACK溶解緩衝液(ThermoFisher Scientific)によってRBCを除去した。細胞を、10% FBSを補給した完全IMDM培地において1回洗浄し、0.5 uMのCell Trace Violet(ThermoFisher Scientific)で標識して、RTで20分間インキュベートした。細胞を、完全IMDMにおいて洗浄し、1×106細胞/mlに再懸濁して、10 mg/mlの抗イヌCTLA-4 mAbまたは陰性抗MERS mAb対照の存在下または非存在下で、2.5 mg/mlのコンカナバリンA(Sigma-Aldrich)と共に96ウェル丸底プレートにおいて三連で培養した。培養の3日目に、上清を収集し、上清中に存在するIFN-γの量を、イヌIFN-γ ELISA(R&D Systems, Minneapolis, MN)によって、製造業者の説明書に従って測定した。活性化後のCTLA-4の細胞表面発現を検出する実験のために、イヌPBMCを、1×106細胞/mlに再懸濁して、解析前に48および72時間、2.5 mg/mlのコンカナバリンAと共に96ウェル丸底プレートにおいて三連で培養した。
【0206】
表面プラズモン共鳴結合アッセイ。Biacore T200バージョン2.0およびHC30M(Xantec Bioanalytics, Duesseldorf, Germany)センサーチップを用いて、可溶性cCTLA-4 ECDに対する抗イヌCTLA-4抗体の結合親和性を決定した。抗CTLA-4抗体を、プロテインA/Gでコーティングした直鎖カルボン酸SPRセンサーチップの表面上に固定化した。簡潔に述べると、各モノクローナル抗CTLA-4抗体を、5.0のpHの20 mM酢酸において2.5 ug/mlに希釈して、60秒にわたって実験用フローセル中に注入した。B10については、440~475 RUが捕捉され、D5については、400~500 RUが捕捉され、およびA1mut2については、485~535 RUが捕捉された。200 nM~0 nMの範囲の、cCTLA-4 ECDの10×1:2連続希釈液を、ランニング緩衝液(10 mM HEPES、pH 7.4、150 mM NaCl、および0.05% Tween20)において二連で調製した。チップにわたる流速は、30 uL/分であり、cCTLA-4 ECD試料とチップ表面との接触時間は、240秒であった。解離を720秒間モニターした。各注入の前後に、レポートポイントを記録し、各解析サイクルでの抗原結合の量を、相対レスポンスユニット(RU)で報告した。レスポンス対抗原濃度のプロットを、BIAcore Wizardプログラムを用いて作製した。CTLA-4の各注入後に、各濃度のアナライトについてのRUを記録した後、チップ表面を、pH 2.0の20 mMグリシンで60秒間再生させた。すべての実験は、25℃で実施した。アッセイデータを、速度論的値を得るためにBiacore Evaluation Software、バージョン2.0を用いて処理して、kon、koff、およびKDとして報告した。
【0207】
実施例1:組換えHAタグ付加イヌCTLA-4の作製
パンニングおよび結合実験のために、cCTLA-4の細胞外ドメインを、クローニングして、ストレプトアビジン(SA)を介したプレート固定化用にビオチン化した。タンパク質生成の成功は、SDS-PAGEによって確認した。SDS-PAGE解析により、約23 kDaのバンドが明らかになり、これは、恐らくタンパク質グリコシル化による違いを伴って、16.4 kDaの予測されるECD単独の分子量よりも高かった。質量分析により、組換えタンパク質の同一性を検証した(データは示していない)。SA結合についてcCTLA-4に結合したビオチンの適切な化学量論を確認するために、増大する濃度のSAをビオチン化cCTLA-4に添加し、SDS-PAGE解析を繰り返した。SAの添加後に、ビオチン化cCTLA-4は、ゲルにおいて遅れ、バンドはもはや23 kDaで特定されず、ビオチン化タンパク質がSAに結合する能力が確認された。ビオチン化cCTLA-4 ECDタンパク質が免疫反応性であることを96ウェルプレート形式で確認するために、捕捉アッセイおよびそれに続くELISAを行った。結果により、ビオチン化cCTLA-4の免疫反応性は、プレートに結合したSAの存在を必要とすることが示された。
【0208】
実施例2:イヌ抗イヌCTLA-4 scFvの単離
推定400億個の独立したイヌscFv形質転換体を含有する包括的なイヌIgM/IgG/λ/κ scFvファージディスプレイライブラリに、ビオチン化cCTLA-4に対する4ラウンドの固相選択(「パンニング」)を行った。cCTLA-4特異的結合物についてのファージの実質的な濃縮は、第2ラウンドのパンニング(P2)から始まり、第4ラウンドのパンニング(P4)まで増大した(図1)。cCTLA-4に対するscFvファージライブラリの選択が、抗原特異的なscFvファージ粒子を生じたことを確かめるために、各ラウンドのパンニングからのポリクローナルscFvファージを、標的抗原としてcCTLA-4を用いたscFvファージELISAによって評価した(図2)。cCTLA-4に対するポジティブ選択を通して捕捉されたscFvファージは、cCTLA-4をロードしたウェルとのみ反応し、SA単独でコーティングしたウェル、または無関係のビオチン化avitag結合タンパク質をロードしたSAでコーティングしたウェルとは反応しなかった。組換えイヌ(rc)CD19抗原が、陰性対照標的抗原として働き、CD19に対して選択されたイヌscFvファージ(Pan 4)およびrcCD19が、陽性対照として働いた。これらの結果により、第2、第3、および第4ラウンドのパンニングにおいて溶出されたファージは、cCTLA-4特異的scFvを含有していたことが実証される。
【0209】
初期スクリーニングにおいて、P3から12クローン、およびP4から12クローンを、無作為に選択して、scFvファージELISAによってcCTLA-4に結合するそれらの能力を試験した。24クローンはすべて、様々な親和性でcCTLA-4に結合した(図3)。これらの24個のscFvのヌクレオチドシーケンシングにより、20個のユニークな抗体が明らかになり、そのうちの17個はラムダ軽鎖を有し、3個はカッパ軽鎖を有していた。
【0210】
ユニークなcCTLA-4特異的scFvを優先してさらに開発するために、可溶性scFvを最初に作製し、精製して、増大する濃度のcCTLA-4に結合するそれらの能力を、ELISAによって確認した。20クローンのうち18クローンの解析のために、十分な量の精製可溶性scFvが得られた。17/18クローンを、cCTLA-4に結合するそれらの能力について試験した(図14)。クローンはすべて、広範囲の結合親和性でcCTLA-4に結合し、クローンP4-8は、他のscFvと比較して優れた結合を繰り返し示した。
【0211】
20個のユニークなscFvが、24個の無作為に選択したクローンの中から特定されたことを考慮して、追加のユニークなcCTLA-4特異的scFvが、P3およびP4に存在する可能性が高いことが仮定された。したがって、さらなる88クローンを、P3およびP4の両方から無作為に選択し、これらの追加の176クローンからの可溶性scFvを含有する発現抽出液を、作製して、scFv ELISAによって解析した(データは示していない)。41クローンが、バックグラウンドの3倍超のシグナルを示した。cCTLA-4に対する結合においてバックグラウンドの20倍超の増大を示した10クローンを、選択してシーケンシングした。これらから、3個のよりユニークなクローンが、P3から特定され(A1、B10、およびC5)、2個のより新しいクローン(D5およびG11)が、P4から特定された。可溶性scFv(A1、B10、D5、およびG11)のcCTLA-4に対する結合を、ELISAによって確認した(図4)。クローンC5は、可溶性scFvとして生成することができなかった。したがって、cCTLA-4の細胞外ドメインに結合する、合計21個のユニークな完全イヌ可溶性scFvが、さらなる解析のために利用可能であった。
【0212】
次に、ユニークな単離されたcCTLA-4特異的可溶性単鎖のいずれかが、腫瘍を有する患者においてT細胞応答を増強することによって治療可能性を授け得る特性である、cCTLA-4とCD80/86との間の相互作用を遮断することが可能かどうかを、判定しようとした。最初に、ビオチン化cCTLA-4が市販のヒト(hu)CD86-FcおよびhuCD80-Fcキメラタンパク質に結合する能力を中心としたELISAベースの相互作用アッセイを、開発した。マイクロタイタープレートに結合した増大する用量のhuCD86-FcまたはhuCD80-Fcを用いて、cCTLA-4は、用量依存的様式でhuCD86-FcおよびhuCD80-Fcの両方に結合することが示された(データは示していない)。次に、20個のユニークなクローンの元の群由来の18個の可溶性scFvと、発現抽出物から特定された4個のユニークな可溶性scFv(A1、B10、D5、およびG11)が、cCTLA-4:huCD86およびcCTLA-4:huCD80相互作用を阻害する能力を、決定した(図5A~5B)。元のスクリーニング群および追加のスクリーニング群由来の17/18クローンおよび4/4クローンが、それぞれ、huCD86に対するcCTLA-4結合の異なる程度の阻害を示した。huCD86に対するcCTLA-4の結合を阻害した元のクローンのうち13個はまた、huCD80に対するcCTLA-4のより高い親和性の結合も阻害し、クローンP4-8およびP3-7が、最大の阻害を示した。huCD86に対するcCTLA-4結合を阻害した、追加のスクリーニングラウンド由来のクローンもまた、P4-8およびP3-7と比較した場合に匹敵するかまたはそれよりも大きい、huCD80/86に対するcCTLA-4結合の阻害を示した(図5)。すべての場合に、scFv:cCTLA-4のより高いモル比の使用は、より大きな阻害を結果としてもたらした(2:1と比較して6:1)。二価scFv(抗HA抗体を介して2つのscFvを架橋することによって作製)を一価scFvと比較した場合に、より大きな結合の阻害が見られた。
【0213】
実施例3:抗CTLA-4 mAbの生成
抗体がパイプラインに沿って有効な治療薬に進むことができるどうかを判定する主な特徴の1つは、その「開発可能性」である。この目的に向けて、CD80/CD86に対するcCTLA-4結合を阻害するcCTLA-4特異的scFvを再フォーマットして、完全長IgG mAbに再フォーマットされるようにする実現可能性を判定した。簡潔に述べると、選択したscFvのVH鎖およびVL鎖を、イヌ定常軽カッパ(CLκ)ドメインもしくは定常軽ラムダ(CLλ)ドメインのいずれか、またはイヌ定常IgG1重鎖ドメイン(IgGA)を含有する別々の発現プラスミド中にクローニングすることによって、完全長の二価IgG抗体を、単離されたscFvから作製した。イヌCLλおよびCLκを、pFUSE2ss(Invitrogen)中にクローニングして、ブラストサイジン抵抗性を介して選択することができるpFUSE2ss-CLIg-dλ3、pFUSE2ss-CLIg-dλ5、およびpFUSE2ss-CLIg-dκを作製した。同様に、イヌVH鎖を、Invivogenから購入したpFUSEss-CHIg-dG1中にクローニングして、全範囲のプラスミドの再フォーマットを完了した。VL領域のクローニング用のプラスミドは、単離されたVL領域のサブタイプ(λ対κ)に基づいて選択した。接着293T細胞に、それぞれlipofectamine L2000試薬を用いて、1.5:1の比の軽鎖プラスミドおよび重鎖プラスミドを一過性にコトランスフェクトした。プレート上清を、3日後に収集し、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーを用いてmAbを精製した。
【0214】
そのリガンドCD80およびCD86に対するcCTLA-4結合を阻害するそれらの能力に基づいて、クローンA1、D5、B10、G11、およびP4-8を選択して、さらなる機能解析のために完全長IgG mAbに再フォーマットした。B10およびD5は、IgG1(IgGA)としての再フォーマットに成功したが、低レベルのクローンA1しか生成できず、クローンG11およびP4-8は、完全長イヌmAbとして生成できなかった(図6)。cCTLA-4に結合し(図7)、かつcCTLA-4とCD80/86との相互作用を遮断する(図8)、クローンA1の優れた能力を考慮して、CDR移植実験を通してA1 mAbの生成を改善できるかを調べた。鎖スワッピング実験を用いると、低い生産性は、A1のVH鎖に局在していた(図9)。クローンB10は容易に生成されたため、A1のCDR領域を、クローンB10のVHバックボーン中に移植した。元のA1 VL鎖と共にトランスフェクトした、結果として生じたキメラA1 VH鎖は、A1mut2と名付けられた完全イヌmAの高収量の生成をもたらした。完全イヌA1mut2、B10、およびD5が、ELISAにおいてcCTLA-4に結合する(図11A)、およびcCTLA-4とCD80/86との相互作用を阻害する能力が、確認された(図11B)。並行して、完全イヌmAbが、イヌCD80/86に対するcCTLA-4の結合を阻害する能力もまた、確認された(図11C)。これらの実験のために、グリシン-セリンに富むリンカー配列によって隔てられたヘマグルチニン(HA)タグを、完全長IgGのカルボキシル末端に付加し、抗体を、タグに対する二次抗体で検出した。これは、アミノ酸配列
をコードする、ヌクレオチド配列
の付加を必要とした。市販されていないイヌCD80およびCD86タンパク質を得るために、それぞれアクセッション番号NP_001003147.1およびABH87294.1のアミノ酸配列を、NCBIデータベースから得た。イヌCD80およびCD86ヒトFcタグ付加構築物を、対応するヒトCD80-FcおよびCD86-Fc構築物(ACROBiosystems, Newark, Delaware;それぞれ、#B71-H5259および#CD6-H5257)をガイドとして用いて設計した。イヌ細胞外ドメイン配列を、トリプルアラニン配列に、続いてヒンジ領域中にCからSへの変異を有する改変ヒトIgG1 Fcに融合させた。天然のイヌCD80およびCD86シグナルペプチドを、マウスIgG重鎖シグナル配列で置き換えた。構築物配列のgBlocksを、IDT(Coralville, Iowa)に注文して、pFUSEプラスミド中にクローニングした。pFUSE cCD80-hFcおよびcCD86-hFcプラスミドを、Lipofectamine 2000で293T細胞中にトランスフェクトして、3日後に細胞培地を収集した。細胞培養上清からのリガンドFc融合タンパク質の精製は、プロテインAアガロース(MilliporeSigma, Burlington, MA)を用いて行った。試料の濃縮、PBSへの緩衝液交換、SDS-PAGE解析、および定量を、組換えイヌCTLA-4タンパク質の生成についてと同様に実施した。
【0215】
実施例4:CTLA-4特異的mAbは、細胞表面発現CTLA-4に結合する
A1mut2、B10、およびD5 mAbが、膜発現cCTLA-4に結合するかどうかを判定するために、KTδ32細胞を、cCTLA-4を発現するように遺伝子改変し(KTδ32.cCTLA-4)、フローサイトメトリー実験において標的細胞として用いた(図10)。クローンはすべて、KTδ32.cCTLA-4に結合したが、親KTδ32細胞には結合しなかった。さらに、CTLA-4結合部位をブロッキングするための各mAbの可溶性cCTLA-4とのプレインキュベーションは、mAb結合を消失させ、これは、膜結合が抗原特異的であることを示した。無関係のMERS mAbは、KTδ32.cCTLA-4に結合せず、これは、選択したクローンがcCTLA-4に特異的に結合していることをさらに示唆した。次に、3つの選択したmAbが、活性化イヌT細胞の表面上のCTLA-4に結合する能力を評価した(図15)。活性化前のCD5+CD4+細胞およびCD5+CD4-細胞の表面上には、ごくわずかな量のCTLA-4が検出されたが、両方のT細胞サブセットは、活性化後48および72時間で、CTLA-4発現の有意な増大を示した。各時点で、CD8 T細胞と比較してより大きなパーセンテージのCD4 T細胞が、CTLA-4を発現した(それぞれ、48時間では50.7%対29.5%、および72時間では56.6%対40.5%)。次に、イヌCD5+CD4+FoxP3+制御性T細胞上のCTLA-4の表面発現および細胞内発現を、A1mut2 mAbを用いて測定した。A1mut2は、T細胞リンパ腫を有するイヌの末梢血から単離されたTreg上の表面発現CTLA-4および細胞内CTLA-4の両方を標識し、これは、CTLA-4がイヌ末梢血Tregによって構成的に発現されていることを確認した(図16)。最後に、イヌCTLA-4およびネコCTLA-4が99%の同一性を共有することを考慮して、抗体の交差反応性を判定するために、ネコ白血球をA1mut2 mAbで標識した。ネコCD5+細胞は、A1mut2で最小限の表面染色を示したが、抗体は、細胞内CTLA-4に強く結合した(図17)。
【0216】
実施例5:完全イヌ抗CTLA-4 mAbは、可溶性cCTLA-4に対して高い結合親和性を示す
cCTLA-4に対するA1mut2、D5、およびB10の親和性を評価して、それらが治療的使用に適し得るかどうかを判定した(図12A~12C)。表面プラズモン共鳴(SPR)を用いて、cCTLA-4に対するこれら3つのmAbのオンレートおよびオフレートを決定した(図21)。A1mut2の解離定数(KD)は、ナノモルに満たない範囲にあり、3クローンのうちの最高の結合親和性を示した。他の2クローンは、1桁ナノモルの親和性を示した。したがって、3つのmAbはすべて、治療用チェックポイント阻害剤として評価する候補として働くのに十分な、cCTLA-4に対する結合親和性を示した (図13に図示)。
【0217】
実施例6:完全イヌ抗CTLA-4 IgG2(IgG B )およびIgG3(IgG C )は、補体を固定する
CTLA-4標的抗体の抗腫瘍免疫への寄与が、腫瘍内制御性T細胞を枯渇させるその能力であることがますます認識されていることを考慮して、A1mut2 IgGサブクラスが補体を固定する能力を、インビトロで試験した。以前に実証されたように、IgGBおよびIgGCは、補体を効果的に固定したが、IgG1(IgGA)およびIgG4(IgGD)は、固定しなかった(図18A~18B)。この結果により、A1mut2 Igのこれらのサブクラスは、高レベルのCTLA-4を発現する腫瘍内Tregにほとんど限定される効果である、CTLA-4+細胞の補体媒介性細胞傷害を、開始する可能性を有することが示される。
【0218】
実施例7:クローンA1mut2は、T細胞増殖およびIFN-γ産生を増大させる
cCTLA-4に対する最高の親和性、およびCD80/86に対するcCTLA-4結合の最大の阻害を示したA1mut2が、チェックポイントシグナル伝達を遮断するその能力を通してT細胞増殖を増大できるかどうかを判定するために、イヌPBMCを、Cell Trace Violetで標識し、A1mut2または無関係のMERS特異的mAbのいずれかの存在下で、コンカナバリンAで刺激した。細胞を72または96時間で収集し、A1mut2対MERの存在下で活性化されたT細胞のレスポンダー頻度および増殖能を、フローサイトメトリーによって決定した(図19)。A1mut2は、無関係のMERS mAbと比較した場合、刺激後96時間で、8/9匹のイヌにおいて、マイトジェンに応答するT細胞のパーセンテージ(レスポンダー頻度)および応答細胞あたりに産生される娘細胞の平均数(増殖能)を増大させた。IFN-γ産生を、A1mut2の存在下、ConAで刺激したT細胞の上清において評価した。X/YイヌからのT細胞培養物は、A1mut2を培養物に添加した場合に、96時間でIFN-γ産生の増大を示した(図20)。合わせると、これらの結果は、A1mut2媒介性チェックポイント阻害が、イヌT細胞の増殖およびIFN-γ産生を促進することを示唆し、かつ、腫瘍微小環境内で腫瘍特異的T細胞のプライミングおよびエフェクター応答を増強するmAbとしてのその臨床評価をさらに支持する。
【0219】
実施例8:考察
CTLA-4遮断は、Th1様CD4エフェクターT細胞および疲弊したCD8+T細胞の拡大増殖を誘導すること、および腫瘍内制御性T細胞を排除することによって、抗腫瘍免疫を促進する強力な戦略であると証明されている。これらの効果は、悪性黒色腫、NSCLC、および腎癌を有するヒト患者において特に、臨床的に関連した抗腫瘍免疫をもたらした。しかし、抗CTLA-4療法に対する腫瘍の獲得抵抗性および/または生得的抵抗性のメカニズムのより大きな理解、応答のバイオマーカーの特定、転帰を改善するための最適化されたプロトコールおよび併用アプローチ、ならびに毒性に関するメカニズムの理解および低減が、全奏効率を増大させ、毒性を低減させるために必要とされる。本開示において示される研究は、イヌCTLA-4に対してナノモルのおよびナノモルに満たない親和性で特異的に結合する完全イヌscFvの複数のユニークなクローンを特定するために、強力なscFvファージディスプレイアプローチを採用した。これらのクローンから、完全イヌmAbリード候補を作製し、さらに、開発可能性およびインビトロの機能的能力に基づいて選択して、自然発生がんを有するイヌにおける臨床試験に採用した。そのヒト対応物と類似した特徴を共有する、自然発生腫瘍を有する免疫適格性のイヌがん患者における完全イヌ抗CTLA-4 mAbの使用は、ヒト臨床試験デザインにとって有益な結果を生じるであろう。
【0220】
本開示の研究により、フローサイトメトリーにおいてA1mut2を用いて、イヌCTLA-4に対するA1mut2の特異的結合が確認され、CTLA-4が、マイトジェン活性化後のCD4+T細胞およびCD8+T細胞の表面上で上方制御されることが実証された。より高いCTLA-4発現が、活性化後にCD8 T細胞と比較してCD4 T細胞サブセットにおいて観察され、これは、ヒトCD4 T細胞およびCD8 T細胞における知見、ならびに、CD4+T細胞上の発現がCD8+T細胞(72時間以上)よりも早く(48時間)ピークに達する、イヌにおけるT細胞サブセット上のCTLA-4上方制御の差次的動態と一致していた。ヒトT細胞における研究により、マイトジェンで活性化された全T細胞上のCTLA-4の発現のピークは、刺激後72時間で起こることが実証されている。
【0221】
ヒト研究において、イピリムマブでの単剤療法は、同種異系T:DC MLRアッセイにおけるIFN-γ産生およびT細胞増殖に対して最小限の効果、ならびにヒトT細胞のマイトジェン活性化後のIL-2産生のわずかな増大のみを示した。さらに、応答は、試験した個々の試料の間で変動した。ヒトT細胞におけるインビトロアッセイの応答は、控えめであったが、ヒト患者のサブセットにおける臨床応答は、劇的であり、CTLA-4遮断の多因子の作用メカニズムおよび患者特異的因子が臨床応答に対して有し得る影響を強調する。本開示の研究によりまた、健康なドナーイヌ由来のマイトジェン活性化T細胞の間でのCTLA-4遮断に対するT細胞応答の有意な変動性、ならびにT細胞の増殖およびサイトカイン産生に対する中程度の効果も観察された。ヒトドナーからの結果と類似して、低レベルのCTLA-4表面発現が、休止T細胞上で観察され、これは、理論に束縛されることを望まないが、イヌがん患者におけるA1mut2の使用が、ナイーブT細胞の不適切な活性化をもたらさないことを示唆する。さらに、これらの研究により、タンパク質レベルで、CTLA-4が、制御性T細胞において存在し/上方制御されており、A1mut2依存的な補体媒介性細胞傷害の標的として働き得ることが確認された。実際に、ヒト患者において、一般循環中のTregと比較した腫瘍内Treg上のより高いレベルのCTLA-4発現によって、抗CTLA-4処置後の選択的な枯渇が可能であり、これは、処置後にCD8:Tregの増大をもたらす。A1mut2は現在、効率的に補体に結合し、かつADCCを誘導する、ヒトIgG1サブタイプと機能的に等価であるIgGBとして操作されている(Bergeron et al. Vet Immunol Immunopath, 157:31-41, 2014)。したがって、類似した効果が、イヌ腫瘍における腫瘍内制御性T細胞に対して起こることが予想される。
【0222】
イヌ悪性腫瘍における臨床応答は、黒色腫、胃細胞癌、および尿路上皮癌を有するヒト患者の臨床応答を反映するため、この治療法は、類似した悪性腫瘍に罹患しているペットのイヌの転帰を改善するであろうと予想される。
【0223】
列挙した態様
以下の列挙した態様が提供され、その番号付けは、重要性のレベルを指定すると解釈されるべきではない。
態様1は以下を提供する:
イヌ細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)のエピトープに特異的に結合する抗原結合ドメインを含む、抗体またはその抗原結合断片であって、
該抗原結合ドメインが、
i. SEQ ID NO:6、25、40、または74に記載される重鎖可変領域のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域;および
ii. SEQ ID NO:8、27、または42に記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域
を含み、
該重鎖可変領域が、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含み、HCDR1が、(SEQ ID NO:1、20、および35)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、HCDR2が、(SEQ ID NO:2、21、および36)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、かつHCDR3が、(SEQ ID NO:3、22、および37)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、かつ
該軽鎖可変領域が、3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含み、LCDR1が、(SEQ ID NO:4、23、および38)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、LCDR2が、(VDG、GNY、およびGNS)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、かつLCDR3が、(SEQ ID NO:5、24、および39)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、
抗体またはその抗原結合断片。
態様2は以下を提供する:
完全長抗体、Fab、および単鎖可変断片(scFv)からなる群より選択される、態様1記載の抗体またはその抗原結合断片。
態様3は以下を提供する:
完全長抗体である、態様2記載の抗体またはその抗原結合断片。
態様4は以下を提供する:
前記抗体がイヌ抗体である、態様3記載の抗体またはその抗原結合断片。
態様5は以下を提供する:
前記抗原結合ドメインが、SEQ ID NO:6、25、40、または74に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、態様1記載の抗体またはその抗原結合断片。
態様6は以下を提供する:
前記抗原結合ドメインが、SEQ ID NO:6、25、40、または74に記載されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域からなる、態様1記載の抗体またはその抗原結合断片。
態様7は以下を提供する:
前記抗原結合ドメインが、SEQ ID NO:8、27、または42に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、態様1~4のいずれか1つ記載の抗体またはその抗原結合断片。
態様8は以下を提供する:
前記抗原結合ドメインが、SEQ ID NO:8、27、または42に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域からなる、態様1~4のいずれか1つ記載の抗体またはその抗原結合断片。
態様9は以下を提供する:
i. SEQ ID NO:6に記載されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域;および
ii. SEQ ID NO:8に記載されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域
を含む、単離された抗体またはその抗原結合断片。
態様10は以下を提供する:
i. 3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む重鎖可変領域であって、HCDR1が、(SEQ ID NO:1、20、および35)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、HCDR2が、(SEQ ID NO:2、21、および36)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、かつHCDR3が、(SEQ ID NO:3、22、および37)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域;ならびに
ii. 3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域であって、LCDR1が、(SEQ ID NO:4、23、および38)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、LCDR2が、(VDG、GNY、およびGNS)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、かつLCDR3が、(SEQ ID NO:5、24、および39)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域
を含み、
該重鎖可変領域と該軽鎖可変領域とがリンカーによって隔てられている、
イヌ細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)のエピトープに特異的に結合する抗原結合ドメインを含む、単鎖可変断片(scFv)。
態様11は以下を提供する:
i. SEQ ID NO:6、25、40、または74に記載されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域;および
ii. SEQ ID NO:8、27、または42に記載されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域
を含み、
該重鎖可変領域と該軽鎖可変領域とがリンカーによって隔てられている、
単鎖可変断片(scFv)。
態様12は以下を提供する:
SEQ ID NO:29、44、または76に記載されるアミノ酸配列を含む、単鎖可変断片(scFv)。
態様13は以下を提供する:
SEQ ID NO:29、44、または76に記載されるアミノ酸配列からなる、単鎖可変断片(scFv)。
態様14は以下を提供する:
イヌ細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)のエピトープに特異的に結合する抗原結合ドメインを含む、完全長抗体であって、
該抗原結合ドメインが、
i. 3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む重鎖可変領域であって、HCDR1が、(SEQ ID NO:1、20、および35)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、HCDR2が、(SEQ ID NO:2、21、および36)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、かつHCDR3が、(SEQ ID NO:3、22、および37)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域;ならびに
ii. 3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域であって、LCDR1が、(SEQ ID NO:4、23、および38)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、LCDR2が、(VDG、GNY、およびGNS)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、かつLCDR3が、(SEQ ID NO:5、24、および39)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域
を含む、完全長抗体。
態様15は以下を提供する:
i. SEQ ID NO:6、25、40、または74に記載されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域;および
ii. SEQ ID NO:8、27、または42に記載されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域
を含む、完全長抗体。
態様16は以下を提供する:
SEQ ID NO:10、12、14、16、31、46、71、72、または73に記載される重鎖アミノ酸配列、およびSEQ ID NO:18、33、または48に記載される軽鎖アミノ酸配列を含む、完全長抗体。
態様17は以下を提供する:
SEQ ID NO:10、12、14、16、31、46、71、72、または73に記載される重鎖アミノ酸配列、およびSEQ ID NO:18、33、または48に記載される軽鎖アミノ酸配列からなる、完全長抗体。
態様18は以下を提供する:
いずれかの前記態様記載のscFvまたは完全長抗体をコードする、単離された核酸。
態様19は以下を提供する:
イヌ細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)のエピトープに特異的に結合する抗原結合ドメインを含む抗体またはその抗原結合断片をコードする、単離された核酸であって、
該抗原結合ドメインが、
i. SEQ ID NO:7、26、41、または75に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる、重鎖可変領域;および
ii. SEQ ID NO:9、28、または43に記載される軽鎖可変領域のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる、軽鎖可変領域
を含み、
該重鎖可変領域が、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含み、HCDR1が、(SEQ ID NO:1、20、および35)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、HCDR2が、(SEQ ID NO:2、21、および36)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、かつHCDR3が、(SEQ ID NO:3、22、および37)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、かつ
該軽鎖可変領域が、3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含み、LCDR1が、(SEQ ID NO:4、23、および38)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、LCDR2が、(VDG、GNY、およびGNS)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、かつLCDR3が、(SEQ ID NO:5、24、および39)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、
単離された核酸。
態様20は以下を提供する:
前記抗体またはその抗原結合断片が、完全長抗体、Fab、および単鎖可変断片(scFv)からなる群より選択される、態様19記載の核酸。
態様21は以下を提供する:
前記抗体が完全長抗体である、態様20記載の核酸。
態様22は以下を提供する:
前記抗体がイヌ抗体である、態様21記載の核酸。
態様23は以下を提供する:
前記重鎖可変領域が、SEQ ID NO:7、26、41、または75に記載されるポリヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる、態様19記載の核酸。
態様24は以下を提供する:
前記重鎖可変領域が、SEQ ID NO:7、26、41、または75に記載されるポリヌクレオチド配列からなる核酸によってコードされる、態様19記載の核酸。
態様25は以下を提供する:
前記軽鎖可変領域が、SEQ ID NO:9、28、または43に記載されるポリヌクレオチド配列を含む核酸によってコードされる、態様19記載の核酸。
態様26は以下を提供する:
前記軽鎖可変領域が、SEQ ID NO:9、28、または43に記載されるポリヌクレオチド配列からなる核酸によってコードされる、態様19記載の核酸。
態様27は以下を提供する:
i. SEQ ID NO:7、26、41、または75に記載されるポリヌクレオチド配列を含む核酸配列によってコードされる、重鎖可変領域;および
ii. SEQ ID NO:9、28、または43に記載されるポリヌクレオチド配列を含む核酸配列によってコードされる、軽鎖可変領域
を含む抗体またはその抗原結合断片をコードする、単離された核酸。
態様28は以下を提供する:
i. 3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)を含む重鎖可変領域であって、HCDR1が、(SEQ ID NO:1、20、および35)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、HCDR2が、(SEQ ID NO:2、21、および36)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、かつHCDR3が、(SEQ ID NO:3、22、および37)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域;ならびに
ii. 3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含む軽鎖可変領域であって、LCDR1が、(SEQ ID NO:4、23、および38)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、LCDR2が、(VDG、GNY、およびGNS)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、かつLCDR3が、(SEQ ID NO:5、24、および39)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域
を含む単鎖可変断片(scFv)をコードする、単離された核酸。
態様29は以下を提供する:
i. SEQ ID NO:7、26、41、または75に記載されるヌクレオチド配列を含む、重鎖可変領域;および
ii. SEQ ID NO:9、28、または43に記載されるヌクレオチド配列を含む、軽鎖可変領域
を含み、
該重鎖可変領域と該軽鎖可変領域とがリンカーによって隔てられている、
単鎖可変断片(scFv)をコードする、単離された核酸。
態様30は以下を提供する:
SEQ ID NO:30、45、または77に記載されるポリヌクレオチド配列を含む、単鎖可変断片(scFv)
をコードする、単離された核酸。
態様31は以下を提供する:
SEQ ID NO:30、45、または77に記載されるポリヌクレオチド配列からなる、単鎖可変断片(scFv)
をコードする、単離された核酸。
態様32は以下を提供する:
態様19~32のいずれか1つ記載の単離された核酸を含む、ベクター。
態様33は以下を提供する:
発現ベクターである、態様32記載のベクター。
態様34は以下を提供する:
DNAベクター、RNAベクター、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、およびレトロウイルスベクターからなる群より選択される、態様32および33のいずれか1つ記載のベクター。
態様35は以下を提供する:
態様32~34のいずれか1つ記載のベクターを含む、宿主細胞。
態様36は以下を提供する:
真核生物または原核生物起源のものである、態様35記載の宿主細胞。
態様37は以下を提供する:
哺乳動物起源のものである、態様35または36のいずれか1つ記載の宿主細胞。
態様38は以下を提供する:
細菌起源のものである、態様35または36のいずれか1つ記載の宿主細胞。
態様39は以下を提供する:
イヌ細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)に結合する抗体またはその抗原結合断片を生成する方法であって、態様35~38のいずれか1つ記載の宿主細胞を培養する工程を含む、方法。
態様40は以下を提供する:
態様1~17のいずれか1つ記載の完全長抗体またはscFvと、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
態様41は以下を提供する:
その必要のある対象においてがんを処置するための方法であって、態様1~17のいずれか1つ記載の抗体またはその抗原結合断片を、該対象に投与する工程を含む、方法。
態様42は以下を提供する:
前記がんが、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)に関連している、態様41記載の方法。
態様43は以下を提供する:
CTLA-4が、がん関連細胞上に発現している、態様42記載の方法。
態様44は以下を提供する:
前記がん関連細胞が、Tリンパ球である、態様43記載の方法。
態様45は以下を提供する:
前記抗体またはその抗原結合断片が、イヌCTLA-4に特異的に結合する、態様41記載の方法。
態様46は以下を提供する:
前記抗体またはその抗原結合断片が、完全長抗体、Fab、および単鎖可変断片(scFv)からなる群より選択される、態様41記載の方法。
態様47は以下を提供する:
前記抗体またはその抗原結合断片が、完全長抗体である、態様46記載の方法。
態様48は以下を提供する:
前記抗体がイヌ化抗体である、態様47記載の方法。
態様49は以下を提供する:
前記対象がイヌである、態様41記載の方法。
【0224】
他の態様
本明細書の可変物の任意の定義における要素のリストの記述は、列挙される要素の任意の単一の要素または組み合わせ(もしくは部分的組み合わせ)としてのその可変物の定義を含む。本明細書における態様の記述は、任意の単一の態様としての、または任意の他の態様もしくはそれらの一部と組み合わせたその態様を含む。
【0225】
本明細書において引用されるありとあらゆる特許、特許出願、および刊行物の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。本発明を特定の態様に関連して開示してきたが、本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明の他の態様および変形が他の当業者によって考案され得ることは明らかである。添付の特許請求の範囲は、すべてのそのような態様および均等な変形形態を含むと解釈されることが意図される。
図1
図2
図3
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図6
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図10
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図12A
図12B
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【配列表】
2024516621000001.app
【国際調査報告】