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特表2024-516626複数のビームのための負荷平衡化を伴う粉末床溶融付加製造
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  • 特表-複数のビームのための負荷平衡化を伴う粉末床溶融付加製造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-16
(54)【発明の名称】複数のビームのための負荷平衡化を伴う粉末床溶融付加製造
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/34 20140101AFI20240409BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20240409BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240409BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240409BHJP
   B23K 26/342 20140101ALI20240409BHJP
【FI】
B23K26/34
B23K26/21 Z
B33Y10/00
B33Y30/00
B23K26/342
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565223
(86)(22)【出願日】2022-04-13
(85)【翻訳文提出日】2023-11-30
(86)【国際出願番号】 EP2022059930
(87)【国際公開番号】W WO2022223411
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】102021110091.7
(32)【優先日】2021-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523397665
【氏名又は名称】ニコン エスエルエム ソリューションズ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ルーカス マティセク
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168BA35
4E168CB04
4E168DA13
4E168KA07
(57)【要約】
ワークピースを製造する方法であって、少なくとも2つのビーム源のうち複数n個[n≧2]のビーム源を使用して、層の表面領域(A)のn個の位置の集合(L)上に、対応する複数n個のビームスポットを投影するために、層の領域(A)の表面への照射を行うことにより、溶融可能材料の層の領域(A)を溶融させるステップであって、ここで、各ビーム源が、所定の溶融速度(R)および視野(F)(I)を有し、L,RおよびFのインデクスがそれぞれのビーム源を表しており、すなわち、0<i≦nであり、かつインデクスを表す全てのビーム源の集合がl={1,…,n}である、ステップを含み、当該方法は、最初に少なくとも第1のビーム源すなわち少なくとも第1のインデクスi=1についての領域(A)の最適溶融時間t(i)が推定され、少なくとも第1のインデクスi=1についての表面領域(A)および視野(F)の交差集合(IS)が、少なくとも
を割り当てることによって決定される場合に、より効率的に動作する。これにより、交差集合のサイズ(|IS|)を、最適平均溶融時間t(i)と対応するi番目のビーム源の溶融速度Rとの積と比較することができ、関係t・R<|IS|が真である場合、減数表面Sが(II)に従って決定可能となり、ここで、それぞれ(III)ごとにk>1の条件のもとで、α∈{0.25,0.2,0.15,0.1,0.05,0.025,0.01,0.005,0}である。次いで、i番目のビーム源を使用して溶融可能な位置の集合L:=IS-Sを割り当てることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピースを製造する方法であって、
-少なくとも2つのビーム源のうち複数n個[n≧2]のビーム源を使用して、層の表面領域(A)のn個の位置の集合(L)上に、対応する複数n個のビームスポットを投影するために、前記層の領域(A)の表面への照射を行うことにより、溶融可能材料の層の領域(A)を溶融させるステップであって、
・各ビーム源が、所定の溶融速度(R)および視野(F)を有し、

【数1】
であり、さらに、
・L,RおよびFのインデクスはそれぞれのビーム源を表しており、すなわち、0<i≦nであり、かつインデクスを表す全てのビーム源の集合はl={1,…,n}である、
ステップを含む、方法において、
前記方法はさらに、少なくとも、
1.1 少なくとも第1のビーム源すなわち少なくとも第1のインデクスi=1についての領域(A)の最適溶融時間t(i)および/または最適溶融領域のサイズ
【数2】
を推定するステップと、
1.2 少なくとも第1のインデクスi=1についての前記表面領域(A)および前記視野(F)の交差集合(IS)を決定するステップであって、すなわち、少なくともi=1について
【数3】
を割り当てるステップと、
1.3 関係t・R<|IS|および/または
【数4】
が真である場合に、前記交差集合のサイズ(|IS|)を、前記最適溶融時間t(i)と対応するi番目のビーム源の溶融速度Rとの積および/または前記溶融領域の最適サイズ
【数5】
と比較し、次いで、
1.3.1 S⊂ISおよび
【数6】
の少なくとも1つを有する減数表面Sを決定し、ここで、各
【数7】
に対する条件のもとではα∈{0.25,0.2,0.15,0.1,0.05,0.025,0.01,0.005,0}であり、
1.3.2 L:=IS-Sを割り当てる、
ステップと、
1.4. ステップ1.3.2の後に、i番目のビーム源を使用して、Lの位置で前記溶融可能材料を溶融させるステップと
を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
ステップ1.3での前記関係t・R<|IS|および/または
【数8】
が真でない場合、前記方法がさらに、少なくとも、
2.1 各
【数9】
に対する条件のもとで、S⊂ISの減数表面Sを決定するステップと、
2.2 L:=IS-Sを割り当てるステップと、さらに任意選択手段として、
2.3 補正された最小平均時間
【数10】
および/または前記溶融領域の補正された最適サイズ
【数11】
を計算し、その後、ステップ1.2およびステップ1.3の後続の実行に対して、t(i)を
【数12】
により置換し、かつ/または
【数13】
を|Lopt’|により置換し、ここで、<t>は
【数14】
として定義される、ステップと
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記方法がさらに、
3.1 IS={ }の場合およびIS={ }の場合にのみ、L:={ }を設定するステップ、および/または
3.2 IS≠{ }の場合およびIS≠{ }の場合にのみ、残りの全てのi∈Iについて、ステップ1.1、ステップ1.2、ステップ1.3、ステップ2.1、ステップ2.2およびステップ2.3のうちの少なくとも1つを反復するステップ、
を含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
ステップ1.3.1が、さらに、
4.1 第1の方向
【数15】
に対して平行な少なくとも1つの第1の線Bi,jを定義するステップと、
4.2 第1の蛇行線Bi,jを使用して、前記減数表面Sの第1の境界を決定するステップと、
4.3 前記第1の蛇行線を、ΔSを低減する第2の方向
【数16】
へシフトさせるステップであって、ここで、
【数17】
である、ステップと
を含む、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記第1の方向と前記第2の方向とは、相互に線形に独立している、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記第1の線Bj,iは、前記第1の方向
【数18】
に対して平行に蛇行した蛇行線である、請求項4または5記載の方法。
【請求項7】
前記位置の集合Lにおいて前記溶融可能材料を溶融させるステップは、前記i番目のビーム源がi番目のビームスポットtを投影し、これにより前記i番目のビームスポットを溶融ベクトル
【数19】
の倍数である線に沿って移動させながら、前記i番目のビーム源を旋回させるステップを含み、ここで、前記蛇行線Bi,j,Bi,kのうち少なくとも1つは、交互に直交しかつ溶融ベクトル
【数20】
に対して平行である連結セクションから成る、請求項4から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記方法がさらに、前記減数表面Sを決定する前に、前記領域Aの一部Cを専用のi番目のビーム源に割り当てるステップであって、ここで、前記条件がC⊂Fに適用され、さらにステップ1.3.1および/またはステップ2.1において条件
【数21】
が観察される、ステップを含む、
請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
ステップ1.2の前に、前記視野Fのインデクスが、条件
【数22】
に従うようにソートされ、
【数23】
に対するインデクスiを除いて、反復ごとにインデクスの値を1ずつ増大させながら、ステップ1.2およびステップ1.3が反復される、
請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
ステップ1.2の前に、前記視野Fのインデクスが、条件
【数24】
に従うようにソートされ、IS={ }に対するインデクスiを除いて、反復ごとにインデクスの値を1ずつ増大させながら、ステップ1.2およびステップ1.3が反復される、
請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記方法が、ステップ1.2を反復するステップであって、ここで、交差集合ISが、j≧2の少なくとも1つにつき、
【数25】
として決定される、ステップを含む、
請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記方法がさらに、流れ方向
【数26】
において、前記粉末床の上部にわたる不活性ガス流を形成するステップであって、ここで、
【数27】
は、流れ方向の成分が前記溶融可能材料の層に対して平行であることを記述する、ステップを含む、
請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
13.1
【数28】
に対して平行に第1のセクションBi,jの終端点
【数29】
とBi,jの他の任意の点
【数30】
との間で測定された距離が一意であり、すなわち、
【数31】
であり、または、
13.2 dに対して直交するように前記第1のセクションBi,jの終端点
【数32】
とBi,jの他の任意の点
【数33】
との間で測定された距離が一意であり、すなわち、
【数34】
であり、ここで、
【数35】
である、
請求項4および12記載の方法。
【請求項14】
前記ベクトル
【数36】
が、不活性ガス流の流れ方向
【数37】
とは反対の成分を有する、
請求項12または13記載の方法。
【請求項15】
それぞれ隣接する位置の集合L,L間およびL,L間の境界である少なくとも2つの異なる第1のセクションBi,j,Bq,rが存在し、ここで、前記第1のセクションの終端点SQi,jと前記第1のセクションの終端点SQq,rとが同様に存在する、請求項10から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記条件13.1または前記条件13.2のいずれかがBi,jおよびBq,rの双方に適用される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記条件13.1がBi,jおよびBq,rの双方に適用され、ここで、L,L,LおよびLがそれぞれ、
【数38】
に対して実質的に平行に延在する線によって、m個の部分Ls,1,Ls,2,…,Ls,m(m≧2)に分割され、ここで、
【数39】
であり、同じ第2のインデクスを有する部分が、
【数40】
に対して平行に位置合わせされており、さらに、前記同じ第2のインデクスを有する部分のみが同時に照射される、
請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記最適溶融時間t(i)が、関係
【数41】
および/または
【数42】
を使用して決定され、ここで、|A|は領域Aのサイズであり、
【数43】
であり、t(0)=0であり、さらにL=0である、
請求項1から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
記憶媒体であって、実行される際に、付加製造装置の制御装置に請求項1から18までの少なくとも1項記載の方法を実行させるように命令するプログラムを含む、記憶媒体。
【請求項20】
支持部と、複数n個のビーム源と、前記n個のビーム源の動作を制御するように構成された制御装置とを備え、ここで、溶融可能材料を溶融させるためにn≧2である、付加製造装置において、
前記製造装置はさらに、請求項19記載の記憶媒体を含む、
ことを特徴とする付加製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末床溶融結合法のための方法および装置、ならびに当該方法を実行するための命令を含む記憶媒体に関する。
【0002】
関連技術の説明
3D印刷プロセスとも称されている複数の付加製造技術が存在する。これらの技術のうちの1つにいわゆる粉末床溶融結合法がある。きわめて簡潔に要約すると、粉末床溶融結合法とは、粉末層を支持構造体上に反復適用し、電子ビーム、レーザービームもしくは任意の他の種類の放射ビーム(以下、集合的に「ビーム」と略称する)を使用して各粒子を加熱することによって、粉末粒子を別の集塊または先行して付着されている集塊に選択的に付着させることから成る。粉末床の表面をビームで走査することによる粉末床の粒子の付着は、粒子の付着結果を生じさせるプロセスが物理的であるか化学的であるか(溶融、焼結、溶接、放射により誘起される化学反応など)にかかわらず、溶融と称される。具体的には、製造されるべき製品の断面ビューが、最上部の粉末層の表面上でビームスポットを移動させることによって、新たに適用される各最上層にいわば書き込まれる。各書き込みステップの後に新たな粉末層を加えることによって、いわゆる粉末床が形成される。粉末床には、既に製造されたワークピースの部分が埋め込まれている。最終製品に応じて、時には付加的な補助構造体を粉末層に「書き込む」必要があるが、本明細書ではこうした様態には焦点を当てておらず、これらについてはワークピースの一部分と考える。全ての層が書き込まれると、場合によりその付着した補助構造体を有するワークピースが粉末床から除去され、必要に応じてさらなる処理に供されうる。製品なる用語とワークピースなる用語とは、当該分野ひいては本明細書においては、互換的に使用される。
【0003】
粉末床溶融プロセスはきわめて有用であるが、所与のワークピースの製造時間が短縮されることが望ましい。このために、粉末床の各層上にワークピースの各層の部分(すなわち「断面ビュー」の一部分)が独立して書き込まれるように複数のビームを使用することが提案されている。さらに、特にいっそう大きなワークピースの製造のために粉末の上向き面が増大される場合、供給される複数のビームを粉末床の上方の種々の位置に分配して、ビーム拡大および視差に起因する欠陥を低減することができる。しかし、当該アプローチは制限を有しており、例えば第1のビームによって発生するフュームが別のビームと干渉する可能性があり、これは製品の品質にとって有害である。粉末床における熱放散またはビームスポット歪に関連する他の問題も発生する。ビームスポット歪は、粉末床上に形成されるビームスポットの楕円歪の増大効果を、近似的な法線方向の入射からの入射角の偏差を増大させる関数として記述するものである。
【0004】
国際公開第2016/075026号には、粉末床の表面を複数の表面セクションへと仮想的に分割することによってマルチビームレーザー粉末床溶融結合法を最適化することが提案されており、ここでは、各ビームが照射され、これにより当該ビームに割り当てられた単一の表面セクションにおける粉末粒子が溶融される。1つの層における全てのビーム書き込みが終了すると、すなわち、次の粉末層を粉末床に適用できるようになると、それぞれ異なるビーム源の「ビームオン時間」とも称される各ビーム源のランタイムが比較され、ランタイムの差を補償するために、表面セクション間の境界が調整される。例えば、ビーム源#1がビーム源#2よりも短いビームオン時間を有する場合、層#lを書き込む際に、ビーム源#1に関連する表面セクションとビーム源#2に関連する表面セクションとの境界がシフトされ、ビーム源#1に関連する表面セクションの表面領域が増大され、ビーム源#2に関連する表面セクションは減少される。これにより、次の層、すなわち層#l+1が溶融される際のビーム源のアイドル時間が短縮される。代替的に、実際に照射された表面の領域を比較し、この比較に基づいて、実際に照射された表面の差が補償されるように、表面セクション間の境界を調整することもできる。
【0005】
国際公開第2020/178216号には、マルチビームレーザー粉末床溶融結合法のビームスポットの位置を制御して、2つのビームスポットを接続するいずれの線においても(時間的な点ではなく)、粉末床にわたる不活性ガス流の流れ方向に対して平行となるようにすることが提案されている。
【0006】
独国特許出願公開第102013205724号明細書には、ビーム源のビームが粉末床の一部を走査する方向と不活性ガス流の流れ方向とを調整することによって粉末床プロセスを改善することが提案されている。こうした調整は、走査方向および不活性ガスの流れ方向の角度を[22.5°,337.5°]の間隔、好ましくは[90°および270°]の間隔へと制限することによって達成することができる。
【0007】
独国特許出願公開第102018203233号明細書には、粉末床プロセスにおけるワークピースの断面ビューを少なくとも2つのレーザーによって走査することが提案されている。各レーザーに断面ビューの領域が割り当てられ、すなわちそれぞれ割り当てられた領域が対応するレーザーによって走査される。断面ビューのこれら2つの隣接する領域の境界は鋸歯状線であり、これにより製造されるワークピースの強度が高められる。
【0008】
国際公開第2016/110440号も、マルチビーム粉末床プロセスに関する。各ビームは1つずつの視野を有し、これらの視野のうち少なくとも2つが重なり合っている。走査速度を改善するために、少なくとも2つのビームの視野が重なり合っている粉末床の部分に、少なくとも部分的に断面ビューを配置して、ビームによって照射することが提案されている。断面ビューは同時にビームによって走査され、ここで、同時に照射されるスポット間の距離は、ビームの照射スポットが少なくとも部分的に、好ましくは完全に重なるまで、時間に伴って減少する。ビーム強度は、走査される断面ビューの各スポットに供給されるエネルギを一定に維持するために、重なりが増大するにつれて低減される。
【0009】
発明の概要
したがって、本発明の課題は、ワークピースを製造するためのコストを低減するという目的で、マルチビーム粉末床溶融プロセスをさらに改善することである。
【0010】
本発明は、粉末床の上層の表面の2つの隣接する表面セクション間の境界を画定するための従来技術の提案が先行の層の書き込み時に測定されたビームオン時間を基礎としているという観察に基づいている。当該プロセスは、最適な境界位置を反復的に探索するため、アイドル時間を著しく累積することになる。さらに、こうしたアプローチは、それぞれ異なる表面セクションにおいて照射される表面領域が層ごとに変化する度合が大きくなるにつれて、より非効率的となる。
【0011】
上記の課題の解決手段は、各独立請求項に記載されている。各従属請求項は、本発明のさらなる改善形態に関する。
【0012】
ワークピースを製造する方法は、溶融可能材料の層(「層」と略称する)の表面領域A(「領域A」と略称する)を溶融させることを含む。実際には、当該層は、粉末床溶融プロセスを使用するかつ/または実行するように構成された付加製造機械の粉末床支持部の上にある粉末床のその時点での最上層でありうる。溶融されることが意図された上層の領域Aが溶融されると、次の層が例えばリコータを使用して粉末床に適用可能となる。初期的には、最上層は、プロセス中に引き続いて堆積される粉末床の第1の層であってよい。
【0013】
既に明らかなように、「領域」なる用語は、層の表面全体を表しているのではなく、その溶融される一部のみを示している。したがって、記号Aは、ベクトル
【数1】
として表現することのできる位置(点)の集合、すなわち、ビーム源が放出した少なくとも1つのビームスポットによって照射すべき、プロセス中に照射される層の表面によって画定される平面内の全てを表現している。したがって、記号|A|は領域Aの表面サイズを表す値であり、すなわち、|A|は領域Aの表面積である。当業者の用語を使用すれば、|A|はノルムであり、一般に
【数2】
と称され、ここでは、単に単純化のためであるが、垂直方向バーの2次集合を省略する。
【0014】
領域Aは照射される層の全領域EAでありうるが、別の例では、領域Aはその一部のみ、すなわちA⊆EAであってもよい。例えば、照射される全領域EAのうち例えばワークピースの輪郭の一部を画定する部分が全領域から減算され、これにより「領域A」が得られる。減算される輪郭部分には、例えば当該輪郭によって画定されるワークピース表面の品質を向上させるために、つねに同じビーム源による照射が行われうる。代替的にもしくは付加的に、「全領域」EAは、例えばフューム管理の改善のために、複数の部分領域に分割することができる。既に述べたように、「領域A」は「全領域EA」の部分領域であってもよい。したがって、一般化するならば、領域Aは、レーザー粉末床溶融結合法を適用することによって製造されるワークピースの断面ビューの少なくとも一部となりうるものであり、ここで、セクション平面は、照射される溶融可能材料の層の位置に対応する。
【0015】
領域Aは複数の部分領域を含むことができ、これらの部分領域を、上述した「照射されるべき全領域の部分領域」からの呼称上の区別のために、セクタと称する。セクタは、相互に間隔を置いて配置することができ、すなわち、領域Aの隣接するセクタ間にギャップが存在していてよい。また、既に明らかなように、領域Aがどの層に関連付けられているかは、本発明にとって重要ではない。必要なのは、領域Aがビーム源の放出したビームによって照射可能であることのみである。特定の層における領域Aを云う場合には、記号Aを使用することができる。つまり、Aは粉末床の第1の層上の領域であり、Aは粉末床の次の層上の領域であり、Aはl番目の層上の領域である。上付き表記が省略されている場合、このことは、積層体における領域Aの位置が重要でなく、任意の番号を取ることができることを意味する。
【0016】
領域Aは、典型的には、製造されるべきワークピースのCADモデルに基づくいわゆる「スライサ」によって決定される。ただし、本発明はこの例に限定されない。
【0017】
「溶融可能材料の層の表面領域Aを溶融させる」なる表現から既に明らかなように、方法は、表面領域Aによって画定される層の溶融可能材料の一部を溶融させるステップを含んでいる。このために、少なくとも2つのビームの少なくとも2つのスポットが、少なくとも2つのビーム源により、表面領域Aを画定する位置の集合上へと投影される。方法は2つのビーム源しか存在しないケースにおいて使用されているが、実際にはこの数はより多い。典型的な値は層のサイズに応じて8~12個であるが、本発明はこの範囲に限定されない。将来の粉末床溶融装置は、さらに多数のビーム源を備えるようになることが予想される。ここで、本発明者らは、“n”によって利用可能なビーム源の総数を表している。利用可能なビーム源の数“n”は、粉末床溶融装置のビーム源の数とは異なっていることもある。例えば、1つもしくは複数のビーム源に領域Aの一部でない輪郭部分を溶融させるタスクが割り当てられている場合、割り当てられたこれらのビーム源は、それぞれの輪郭部分を溶融させている間、領域Aの溶融に寄与することができない。割り当てられた輪郭部分が溶融された後、当該ビーム源を使用して領域のセクションを溶融させることができ、したがって“n”の数を増大させることができる。設置されたビーム源の数よりも“n”の数が小さくなることの他の理由として、ワークピースから除去しなければならない熱エネルギを低減するため、または単純に領域セクションが小さすぎて位置管理が困難となるためなどのことが挙げられる。例えば、あるセクションがきわめて小さい場合、別のセクションの粉末床を溶融させることによって発生するスモークプルームのなかでの動作が得られない間、このセクションの溶融を回避することはほとんど不可能となりうる。したがって、つまり、数“n”は、1つの領域Aを統合的に溶融させるために割り当てられるレーザーの数を表現している。以下で明らかとなるように、位置の集合L[1≦i≦n]に領域Aの位置が割り当てられ、次いで、ここでの位置の集合が対応するi番目のビーム源によって溶融可能となる過程中に当該数を変化させることもできる。このことは、例えば、位置の集合Lの領域のサイズが所定の閾値Tを下回ることが判明した場合に行うことができる。
【0018】
n個[n≧2]のビーム源のそれぞれは所定の視野Fを有し、ここで、インデクスiは対応するi番目のビーム源を示しており、例えば、Fは第1のビーム源の視野であり、Fは第2のビーム源の視野であり、またはより一般的にFはi番目のビーム源の視野である。視野Fは、i番目のビーム源から放出された、対応するi番目のビームによって照射可能な層の表面部分である。実際には、各視野Fは、i番目のビーム源の走査光学系によって画定することができる。視野Fにおける制約は、走査光学系の旋回範囲、(任意選択手段としての)集束光学系の限界、および許容可能なビーム歪の限界によって課されうる。一般に、視野Fは、対応するi番目のビーム源を使用して合理的に溶融可能な層の部分であると理解することができる。したがって、視野Fを、照射可能であって、したがってi番目のビーム源を使用して溶融可能となる層の表面のベクトル
【数3】
の集合として表すことができる。よって、|F|は、対応するi番目のビーム源によって照射可能な層の表面部分のサイズである。さらに、各ビーム源iは、所定の溶融速度R(正の実数)を有しており、ここで、溶融速度は、i番目のビーム源によって溶融可能な表面視野の単位時間当たりのサイズを表す。溶融速度Rは時間当たりの表面積であり、したがって、例えばm/s(平方メートル/秒)などとして測定可能である。例えば、表面を溶融させる際、ビームスポットは、多くの場合に、停止条件に達するまで第1の溶融トレースを定義する第1のベクトルに沿って移動される。次いで、ビームがスイッチオフされ、ビーム源が新たな開始点に再位置決めされる。次に、ビームが再スイッチオンされ、例えば、先行して溶融された溶融トレースに対して平行にビームスポット移動が行われうる。したがって、溶融速度Rの計算により、ビーム源の再位置決めに必要となる時間を考慮することができる。実際には、溶融速度Rは、増大する精度で反復して測定可能となる平均溶融速度と考えることができる。溶融速度Rは種々のビーム源の間で異なりうるものであり、また、溶融されるべき所与の材料にも依存しうる。少なくとも所与の1つの材料では、溶融速度Rは好ましくは少なくともほぼ同じであり、このことは、
【数4】
を意味し、ここで、
【数5】
である。別の例では、溶融速度Rは、単位時間当たりのi番目のレーザー走査のトレース長さ(幅の倍数)であり、ここで、新たなトレースの開始時にレーザービーム光学系の再位置決めに必要となる時間を考慮する必要はない。
【0019】
領域Aを溶融させるステップは、対応する位置の集合Lに対してi番目のビーム源を使用して、層の、それぞれ異なる位置
【数6】
の集合Lを照射するステップを含むことができ、ここで、それぞれ異なる位置の集合の交差は好ましくは空であり、すなわち、好ましくは、関係
【数7】
が維持されている。これは、実質的には、領域Aの各位置
【数8】
が単一のビーム源のみによって溶融されることを意味する。一般に、領域を溶融させるために粉末床溶融装置の全てのビーム源を使用することが好ましいが、このことは必須ではなく、幾つかのケースでは(上述したように)不可能なことさえある。もちろん、種々の位置の集合Lに同時に照射を行うこともできる。実際には、それぞれ異なるビーム源のビームスポットの投影の軌道は、最終的なワークピースにおいてギャップを有さない層の領域における所与の強度および表面品質を保証するために、例えば単一のビーム軌道のセクションの重なり合いと同様に、重なり合うことができる。重なり合う位置の集合を使用した溶融が提案されているが、これは本明細書では排除はしていないものの、意図してはいない。意図しているのは
【数9】
であり、ここで、
【数10】
であって、好ましくはβ=0である。したがって、一般的には、領域Aをn個の位置の集合Lに分割することが意図されており、ここで、nは使用されるビーム源の数を表す。好ましくは、nは、領域Aとの消失のない重なりを有する視野を有するビーム源の数、すなわち、
【数11】
についてのそれぞれ異なるインデクスの数を表し、別の例においては、閾値Tよりも大きい領域Aとの重なりを有する視野を有するビーム源の数を表し、すなわち、
【数12】
についてのビーム源のみが考慮される。
【0020】
好ましくは、領域Aを溶融させる前に、最適溶融時間t(i)が決定される(ステップ1.1)。最適溶融時間t(i)を推定するための多くの手段が存在し、好ましい例では、関与する全てのビーム源の溶融速度Rの合計によって領域|A|のサイズを除算することで最適溶融時間を算定することができ、したがって、
【数13】
となる。このケースでは、全てのビーム源がそのそれぞれの位置の集合Lを溶融させるために同じ量の時間を必要とし、すなわちアイドル時間が最小化される。他の推定も使用可能である。例えば、
【数14】
または
【数15】
を使用することができ、ここで、
【数16】
であり、好ましくはβt,i=0である。一般化するならば、最適溶融時間t(i)に適した任意の尺度を選択することができ、好ましくは、t(i)は、
【数17】
に従うように選択される。したがって、最適溶融時間は溶融される表面領域のサイズ|A|に依存するが、上付き表記が層の数を表すという凡例に従い、最適溶融時間は、
【数18】
のように示すこともできる。必要がない限り、簡単化のために、上付き表記および関連するビーム源の示数表記“(i)”は省略する。
【0021】
最適溶融時間t(i)の決定と等価なこととして、同様にもしくは付加的に、対応する溶融領域の最適サイズ
【数19】
を決定することができる。好ましい例では、
【数20】
である。
【0022】
さらに、表面領域Aと第1のビーム源の第1の視野(F)との少なくとも第1の交差集合IS、したがって
【数21】
が決定可能となる(ステップ1.2)。これは、全体として照射可能であって、これにより第1のビーム源による溶融に供されうる層の表面領域Aのベクトルを決定することと等価である。さらに、交差集合ISも同様に決定することができ、ここで、ISはi番目のビーム源に関連する交差集合である。一例では、ISは、一般に、
【数22】
として定義することができる。しかし、以下で明らかとなるように、他の定義も同様に使用可能である。さらに、交差集合IS[i≧2]は、好ましくは、位置の集合Li-1が以下に説明するように決定された後に決定されることに留意されたい。形式的な単純化のためのみであるが、L:={ }、またはより一般的に
【数23】
を定義することができる。
【0023】
さらなるステップでは、少なくとも第1の交差集合のサイズ|IS|は、最適溶融時間t(i)と対応するi番目のビーム源の溶融速度Rとの積と比較され(ステップ1.3)、関係t(i)・R<|IS|が真である場合、減数表面S[S⊂IS]と、(1-α)・(|IS|-t(i)・R)≦|S|≦(1+α)・(|IS|-t(i)・R)およびその等価物
【数24】
のうちの少なくとも一方とが決定され、ここで、それぞれ
【数25】
についての条件が観察される(ステップ1.3.1)。αは誤差マージンと考えることができ(したがってα=0が好ましい)、このことは以下で詳細に定義する。
【0024】
この場合も、インデクス1をインデクスiに置き換えることによって、i番目のビーム源に関連するi番目の減数表面Sを得るためのステップが一般化可能となり、すなわち、条件t(i)・R<|IS|が真である場合のi番目の減数表面Sの一般化が、それぞれ
【数26】
に従う条件S⊂ISおよび(1-α)・(|IS|-t・R)≦|S|≦(1+α)・(|IS|-t(i)・R)(および/または
【数27】
)を使用して決定され、ここで、α∈{0.25,0.2,0.15,0.1,0.05,0.025,0.01,0.005,0}である。より小さい値のαが好ましく、特に好ましい例ではα=0である。α=0の場合、|S|についての制約は、|S|=|IS|-t(i)・Rへと単純化される。Sについてのこうした制約によって、L=IS-Sを決定することができ、これにより、予め選択された最適溶融時間t(i)内でほぼ正確にi番目のビーム源による溶融が予測できる位置の集合Lを決定することができる。したがって、全ての位置の集合{L}が例えば上述したように反復して決定される場合、これらは、領域の溶融時間が最小化されるように選択可能である。ここでの最小化は、提案している位置の集合{L}の決定によって、βt,iおよびαによって与えられる誤差マージン内で、全てのビーム源がそれぞれの位置の集合Lを溶融させるために同じ量の時間を必要とすることの保証が予測可能となるという事実に起因する。ビーム源のアイドリングが最小化される。
【0025】
この場合、本発明者らは、ステップがi=1の最小値から始まってi≦nごとに反復され、次いで各反復において値が1ずつ増大され、すなわちステップ1.1またはステップ1.2の各反復の前にi=i+1が実行されると仮定している。条件
【数28】
は、減衰表面Sが昇順で決定されるという仮定、すなわち、特定のiについて減数表面Sが決定された後に1ずつ増大されるという仮定に基づいている。当該シーケンスは必須ではないが、解除された場合には、条件“k>i”は、「iは、減数表面Sがまだ決定されていない場合、任意の値を取ることができる」と読まれる。これら2つの表現は、ビーム源を再ナンバリングすることによって、特定の減数表面Sが決定された後にインデクスiが1ずつ確実に増大されるように注意しながら減数表面Sを決定する同じシーケンスを取得できることと同等である。
【0026】
もちろん、方法は各層に対して反復することができ、したがって、ワークピースの製造時間が最小化される。所与の粉末床溶融装置では、ワークピースの製造コストが低減される。
【0027】
このことを具体的に言い換えると、つまり、減数表面Sは、選択される領域Aのベクトルの部分集合であり、これにより、位置の集合L=IS-Sによって与えられる表面を照射するための予想時間<t>が、α,βt,iの選択によって与えられる精度で最適溶融時間t(i)に等しくなる。t(i)・R<|IS|が全てのiおよびα=0ならびにβ=0に対して真であると仮定すると、
【数29】
であり、すなわち、n個のビーム源を使用して領域Aを同時に溶融させるために必要となる総時間ttotは、ttot=Max(t(i))であり、装置および溶融される材料に固有の下方限界と同一である。ここで、実際の用途ではワークピースは数千の層を有することもあり、このため各層上の領域の照射における僅かずつの節約が大きなコスト節約へと累積されることを思い起こされたい。
【0028】
所与のiに対してSが決定されると、i番目の位置の集合LがL:=IS-Sを使用して決定可能となり(ステップ1.3.2)、方法は、i番目のビーム源を使用して対応する位置の集合Lの溶融へと進むことができる(ステップ1.4)。ステップ1.4の実行へと続いていく前に、好ましくは少なくともステップ1.2~ステップ1.3.2が、相互のビーム源について、すなわち残りの全てのビーム源(1<i≦n)について反復される。ステップ1.4は、好ましくは、少なくとも2つの異なるL,L(i≠j)に対して同時に実行される。割り当てられた対応する表面Lを同時に照射しているビームの数が多いほど、より良好となる。好ましくは、n個のビーム源の全てが同時に照射を行う。
【0029】
セクションLのサイズが所与の閾値、例えば上述した閾値Tを下回る場合、セクションLはゼロに設定可能となり(L:={ })、これは、ビーム源の数をn-1へ減らすことに等しく、すなわち、|L|<Tの場合、i番目のビーム源がn個のビーム源のプールから除去可能となる。
【0030】
対応する関心集合
【数30】
の照射に必要な時間が最適時間t(i)よりも小さくなり、このケースではt・R>|IS|が真となるほど、領域Aと視野Fとの重なりが小さくなるケースが存在しうる。この場合、単純にL:=ISを割り当てることもできるが、実際には、Lが定義された形状を有することまたはLが領域Aの所定のセクタ内に延在しないことが必要となりうる。したがって、より一般的には、減数表面Sは、それぞれ
【数31】
の条件のもとで、Si⊂ISによって定義される。なお、t・R>|IS|の場合、|S|は好ましくは最小化される。Sが決定されると、L:=IS-Sを使用して、i番目のビーム源によって照射される位置の集合Lが決定され、すなわち、方法がステップ1.4へ進むことができるようになる。
【0031】
条件「各
【数32】
について」とは、平文で読むならば、ベクトル
【数33】
が減数表面Sの1つの要素である各ベクトル
【数34】
に対して、少なくとも1つの視野Fが存在し、これにより、視野Fが当該ベクトル
【数35】
を含み、ここで、インデクスkはインデクスiよりも大きい、ということである。当該条件は、交差集合ISから除去される領域Aのあらゆる点/位置が、位置の集合Lがまだ決定されていない少なくとも1つの別のビーム源により、k>iから照射可能となることを保証する。したがって、インデクスXの集合を形成する限定された数のビーム源のみによって溶融されうる領域Aの任意の位置は、当該集合Xの最大のインデクスを有する位置の集合LMax(X)に、最も遅くに割り当てられる。
【0032】
i番目のビーム源が層の表面を照射する時間の対応する予測値は、他のケース<t>=L/Rと同様に読み出される。一般化するならば、t・R≧|IS|のケース、すなわちステップ1.3の「それ以外の場合」(すなわちt・R≧|IS|の場合)には、ステップ1.3.1およびステップ1.3.2を、条件(1-α)・(|IS|-t・R)≦|S|≦(1+α)・(|IS|-t・R)が解除されている間、実行することができる。
【0033】
好ましくは、特にt・R≧|IS|の場合(ただし一般的には任意のケースにおいて)、同様にt’とも称される補正された最小時間t(i+1)が後続の反復ステップ1.1において(すなわちi:=i+1の設定後に)、例えば
【数36】
を使用して計算可能となる。この場合、補正された最小時間は、最初に計算されたもしくは推定された最適溶融時間の代わりに、ステップ1.3~ステップ1.3.2の将来の実行の際に使用可能である。こうした最適時間t(i)の調整によって、位置の集合がまだ決定されていないビーム源間の均一な負荷分布が高められ、すなわち|L|(j<j≦n)の変動が低減される。これにより、装置の能力の効率的な利用のさらなる増大が提供され、ひいては対応するワークピースの製造コストが低下することとなる。
【0034】
補正された最小時間を計算するステップは、各反復による(補正された)最適最小時間を再計算することによって一般化することができ、すなわち、ステップ1.1において、t(i)は、
【数37】
に等しい
【数38】
および
【数39】
であってよく、ここで、i=0の場合、項
【数40】
であり、したがって、
【数41】
である。この場合も、好ましいケースではβ(i)=0であり、iは各ステップのi番目の実行を表す。既に明らかなように、上で定義したβt,iは誤差マージンとして機能し、t(i)は“±”の“+”または“-”のいずれかを選択することによって与えられる境界内に入るように選択される。一般に、βt,1=β(i)は各反復につき異なっていてよく、単純化のためのみであるが、本発明者らは同様にβと記述する。補正された最小時間を計算するステップの数は、無視できない大きさのαの影響が累積されていく場合に特に有用である。要するに、どちらの手段も、Lの計算の反復ごとに、最適平均溶融時間tと実際に予測される溶融時間<t>=|L|/Rとの間の潜在差を考慮している。対処がなされない場合、こうした差から、|L|が他の全てのL(1≦j<n)よりも著しく大きくなり、このためにビーム源1~n-1の著しいアイドル時間によって付加製造プロセスの効率が低下するという状況に陥りうる。したがって、この場合も、更新された最適平均溶融時間を再計算するステップは、ワークピース当たりの運転コストを削減することにさらに寄与する。
【0035】
セクションLのサイズが所与の閾値、例えば上述した閾値Tを下回る場合、セクションLは0に設定可能となり(L:={ })、これは、ビーム源の数をn-1へ減らすことに等しく、すなわち、|L|<Tの場合、i番目のビーム源がn個のビーム源のプールから除去可能となる。もちろん、この場合、対応する溶融領域の補正された最小時間および/または補正された最適サイズ
【数42】
を計算することが好ましい。
【0036】
閾値Tは、各i番目のビーム源について個別に定義することができる。これは、例えばオペレータの経験に基づいて、ビーム源ごとに個別に、または全てのもしくは複数のビーム源に対して、手動で設定されてもよい。好ましい例では、閾値Tは、溶融領域の最適サイズ
【数43】
の設定部分であり、例えば、
【数44】
であり、ここで、
【数45】
である。
【0037】
好ましくは、方法はさらに、少なくとも第1の(好ましくは蛇行した)線Bi,jを定義し、好ましくは同様に第2の(好ましくは蛇行した)線Bi,kを定義するステップを含み、ここで、第1の(好ましくは蛇行した)線Bi,jは(好ましくは蛇行状に)第1の方向
【数46】
へ延在し、第2の(好ましくは蛇行した)線Bi,kは(好ましくは蛇行状に)第2の方向
【数47】
へ延在している(ステップ4.1)。第1の(好ましくは蛇行した)線は、第1の方向
【数48】
に対して少なくとも実質的に直交する方向における減数表面Sの延在を制限するために使用可能である。同様に、第2の(好ましくは蛇行した)線は、第2の方向
【数49】
に対して少なくとも実質的に直交する方向における減数表面Sの延在を制限するために使用可能である。したがって、(好ましくは蛇行した)第1の線および第2の線の少なくとも一方が、減数表面Sの第1の境界を決定する(ステップ4.2)。これらの(好ましくは蛇行した)第1の線および第2の線の少なくとも一方は、ΔSを低下させるためにシフト可能であり、ここで、
【数50】
である。さらに好ましくは、別のS(すなわちi<j)の後にSが決定され、i番目のビーム源とj番目のビーム源とが近隣にある場合(または少なくとも重なり合う視野を有する場合)、Bj,i=Bi,jとなる。
【0038】
こうしたシフトの間、第1の(好ましくは蛇行した)線Bi,jは、好ましくは、第1の方向
【数51】
に対して少なくとも実質的に直交するようにシフトされ、かつ/または第2の(好ましくは蛇行した)線は、好ましくは第2の方向
【数52】
に対して少なくとも実質的に直交するようにシフトされ、これにより、ΔSが好ましくは条件1.3.1が満たされるまで低減される。既に明らかなように、2つのベクトル
【数53】
は、好ましくは線形に独立しており(条件5)、特に好ましくは、これらは少なくとも実質的に相互に直交しており、すなわち、好ましくは、
【数54】
である。例外的に、当該ベクトル
【数55】
のインデクスはビーム源とは関連しておらず、各ベクトルを区別するためのみに用いている。ただし、線Bi,jのインデクスは2つのビーム源すなわちi番目のビーム源およびj番目のビーム源に関連付けられており、全てのLが決定された後、(好ましくは蛇行している)線Bi,jが位置の集合LおよびLを分割する。
【0039】
線Bi,jが条件
【数56】
に従う第1の終端点
【数57】
を有し、さらに
【数58】

【数59】
が真でない場合、線Bi,jは、方向
【数60】
に沿って蛇行する。
【0040】
位置の集合Lにおける溶融可能材料の溶融は、i番目のビーム源によりi番目のビームスポットを投影させながら、i番目のビーム源を旋回させることを含み、これにより、i番目のビームスポットを、ベクトル
【数61】
の倍数である線に沿って移動させる。好ましい例では、蛇行線は、交互に連続して、
【数62】
に対して垂直であるセクションまたは
【数63】
に対して平行であるセクションを連結した連結セクションを含むかまたはこれらから成る(ステップ6)。
【0041】
特に好ましくは、方法はさらに、他のビーム源の視野との最小の重なりを有する視野を有するビーム源に対して、最初にステップ1.2およびステップ1.3(および任意選択手段としてもちろん他の全てのステップ)を実行することを含む。次に、各ステップが他の視野との第2の最小重なりを有する視野を有するビーム源に対して実行され、以降これが続行される。これにより、領域のこれらの部分が、最初、最悪の場合には単一のビーム源によってのみ照射され、(考慮に入れられなかった場合)単一のビーム源が他のビーム源より格段に長く動作する状況を創出しうる位置の集合Lにこのようにして割り当てられるので、対応する減数表面Sを計算する際の労力が低減される。最初に、他のビーム源の視野との最小重なりを有する視野を有するビーム源につき、ステップ1.2およびステップ1.3(および任意選択手段としてもちろん他の任意のステップ)を実行し、以降これを続行することは、第1のビーム源(i=1)が最小重なりを有する視野Fを有し、第2のビーム源(i=2)が第2の最小重なりを有する視野Fを有し、以降も同様となるようにビーム源のインデクスをソートすることによって達成することができる。換言すれば、このことは、好ましくは初期的に、少なくともステップ1.2の前に、視野Fのインデクスを、好ましくは条件
【数64】
に従うようにソートし、さらにインデクスi=nとなるまで各反復ごとにインデクスの値が1ずつ増大させながら、少なくともステップ1.2およびステップ1.3を反復することを意味する。もちろん、
【数65】
であるFについては、対応する位置の集合Lが空である、すなわちL={ }であることが明らかであるので、ソートを省略することができる。
【0042】
これに加えてまたはこれに代えて、方法は(同様にステップ1.2の前に)、条件
【数66】
に従うように視野Fのインデクスをソートし、さらにステップ1.2およびステップ1.3ならびに任意選択手段としてのステップ2.1~ステップ2.3のうちの少なくとも1つを各反復ごとにインデクスの値を1ずつ増大させながら反復することを含むこともできる。この場合も、
【数67】
である、インデクスiを有するビーム源の位置は、任意に選択可能である。同様に、当該ソートステップによって、誤差マージンαを小さく維持しながら、すなわち、領域Aの溶融に一般的に寄与するビーム源の回避可能なアイドル時間を低減させつつ、減数表面Sを決定することが容易となる。
【0043】
方法はさらに、減数表面Sを決定する前に、領域Aの部分Cを専用のi番目のビーム源に割り当てることを含みうる。実際には、ビーム源は、全て同じ座標系で動作するように較正されている。しかし、当該較正は完全ではなく、製造プロセス中に劣化する可能性がある。領域Aの特定の部分Cが特定の専用のi番目のビーム源にアプリオリに割り当てられる場合、当該部分Cにおいてワークピースの欠陥を低減することができ、よって、C⊂Fとなり、すなわち部分Cが視野F内に入る。通常、それぞれ異なるビーム源間の負荷分布は劣化するので、このような割り当ては総製造時間を増大させる。本発明の好ましい実施形態では、減数表面Sを決定する場合、例えばステップ1.3.1および/またはステップ2.1において、付加的な制約
【数68】
を考慮することによって、こうした劣化を回避することができる。付加的な制約
【数69】
に従うことで、部分Cが、i番目のビーム源によって後に照射される、決定された後続の位置の集合Lの部分集合となり、さらに、部分Cによる位置の集合Liの付加的なサイズがステップ1.3.1の負荷平衡化制約(1-α)・(|IS|-t・R)≦|S|≦(1+α)・(|IS|-t・R)において考慮されることが保証される。
【0044】
好ましい実施形態では、ステップ1.2が反復される際に、交差集合IS(j≧2)が
【数70】
として決定される。当該ステップは、多くの利点を提供する。すなわち、メモリ要求が低減され、さらに、適切な減数表面Sの決定が著しく単純化され、さらなるコストの最適化がもたらされる。こうした改善の基礎となる着想は、ステップ1.2~ステップ1.3.2および/またはステップ1.2~ステップ2.3のうちの少なくとも1つの閃光の実行iにおける位置の集合L(i<j)に既に割り当てられている視野Fの部分を、さらなる考察に含める必要がないということである。なお、
【数71】
のとき、条件j≧2を解除することができ、すなわち、ISは、
【数72】
として定義することができる。
【0045】
溶融プロセスの間、すなわちビーム源の作動中、粉末床の上部にわたって流れる不活性ガス流を形成し、これにより視野Fからフュームおよびその他の残留物を除去することが好ましい。好ましくは、層の上面に対して平行な流れ方向における流れは、例えば上層の第1の側に少なくとも1つの入口ノズルを配置し、上層の反対側に少なくとも1つの出口ノズルを配置し、入口ノズルから出口ノズルへの不活性ガス流を形成してこれにより流れ主方向を規定することによって、形成される。換言すれば、方法はさらに、粉末床の上部にわたる流れ方向
【数73】
において不活性ガス流を形成することを含むことができ、ここで、
【数74】
は、溶融可能材料の層に対して平行な流れ方向の(好ましくは正規化された)成分、すなわち、流れ方向
【数75】
の、領域Aへの投影を記述している。例えば、z軸が溶融可能材料の層の表面(ひいては領域A)に対して垂直である場合、デカルト座標
【数76】
が使用され、ここで、
【数77】
は単に正規化係数の設定
【数78】
であり、省略することもできる。通常のごとく、d、dおよびdは、それぞれベクトル
【数79】
のx成分、y成分およびz成分である。
【0046】
層に対して平行な当該流れ方向
【数80】
は、好ましくは、減数表面Sを制限し、隣接する位置の集合LとLとの間の境界を画定する蛇行線Bi,jの延在に相関しており、これにより、2つの位置の集合LとLとの間の境界が、条件
【数81】
(条件13.1)に従う第1の終端点
【数82】
を有する。これは、第1の終端点
【数83】
から境界Bi,jの他の任意の点
【数84】
までの任意の距離が1回だけ存在することを意味する。したがって、Bi,jのいずれのサブセクションも、流れ方向の水平成分
【数85】
によって定義される方向において消失しない延在部を有し、この場合、
【数86】
の関係
【数87】
(条件13.2)は好ましくは実現されないので、Bi,jは直線とならず、流れ方向の水平成分
【数88】
に対して実質的に平行な蛇行線となる。
【0047】
代替的に、境界Bi,jは、流れ方向の水平成分
【数89】
に対して直交するように蛇行することもできる。この場合、関係
【数90】

【数91】
に従い、一方、条件
【数92】
(条件13.1)は、好ましくは実現されない。
【0048】
条件13.1および条件13.2として参照されているこれらの尺度は、それぞれ、いずれの時点においてもビームスポットが他のビームスポットによって発生したフュームの下方に位置するように層全体にわたるn個のビームスポットの運動を調整するために、きわめて単純化されている。
【0049】
上述したように、表面を照射しながらビーム源を旋回させ、これにより、ビームスポットを層上へ投影することができる。したがって、好ましくは、各ビームスポットが、層の表面上を移動し、これにより、それぞれの位置の集合Lのうちの位置
【数93】
において溶融可能材料を溶融させる。換言すれば、位置の集合Lにおいて融通可能材料を溶融させるステップは、i番目のビーム源により領域A上にi番目のビームを照射させ、i番目のビーム源を旋回させて、これによりi番目のビームスポットを移動させるステップを含む。好ましくは、i番目のビームスポットの運動は、不活性ガス流の流れ方向
【数94】
とは反対の成分を有するベクトル
【数95】
の倍数によって記述可能である。ビームスポットは、いわばガス入口へ向かって移動するので、溶融プロセスは、当該ビームスポットによって先行して発生したフュームによる影響を受けにくい。その後、
【数96】
によって定義される方向へ再び移動させながら、ビーム源を切り替えて再位置決めし、Lの他の部分集合の照射を続行することができる。したがって、製造されるワークピースの品質が向上する。
【0050】
例えば、それぞれ位置の集合L,Lと位置の集合L,Lとの境界である少なくとも2つの異なる蛇行線Bi,j,Bq,rがありうる。好ましくは、第1のセクションBi,jの終端点および同様に第1のセクションBq,rの終端点も存在する。当該尺度により、対応する位置の集合L,L,LおよびLが、好ましくは層に対して平行である流れ方向
【数97】
に対して平行にかつ直交するように位置合わせされている。後者のことは、Sについての制約を含めて、条件13.1または条件13.2がBi,jおよびBq,rの双方に適用されている場合に達成可能である。これにより、方法の計算労力をさらに低減することができ、他のビームスポットによって発生するフュームの位置におけるビームスポットを回避するためのアイドル時間を削減することができる。これにより、ワークピースの品質を向上させ、一方で同時にワークピースの製造コストを低減することができる。
【0051】
例えば、条件13.1がBi,jおよびBq,rの双方に適用されている場合、位置の集合L,L,LおよびLは、
【数98】
に対して平行な蛇行線によってm個の部分Ls,1,Ls,2,…,Ls,m(m≧2)へ分割することができ、ここで、
【数99】
であり(係数0.15は{0.1,0.05,0.025,0.01,0.005}のうちの他のいずれかの値で置き換えることができる)、さらに、同じ第2のインデクスを有する部分は、
【数100】
に対して平行に位置合わせされており、同じ第2のインデクスを有する部分のみが同時に照射される。これにより、任意のビームスポットによって発生するフュームが別のビームスポットによる溶融可能材料の溶融に影響を及ぼすことを回避するためのきわめて効果的かつ単純な尺度が提供される。部分の数を増大すれば、ベクトル
【数101】
に対して垂直に測定される2つのビームスポット間の最小距離を増大することができる。また、
【数102】
に対して平行にまたは直交するように蛇行していることは、
【数103】
に対してそれぞれ平行にまたは直交するように測定される、それぞれの線の終端点から当該線の他の任意の点までの距離が一意である(条件13.1または条件13.2がそれぞれの線に適用されている)ことを意味する。
【0052】
好ましくは、領域Aは、不活性ガス流の水平成分
【数104】
に対して少なくとも実質的に平行に延在する少なくとも2n個のストライプへ分割される(全体でc・n個のストライプへ分割され、ここで、cはc≧2の整数である)。好ましくは、溶融の間、2つ置きのストライプにおける位置Lのみが同時に溶融される。したがって、2つのビームスポット間に、少なくとも対応するビームスポットの幅に対応する距離が存在する。ストライプの幅を選択することにより、任意のビームスポットが別のビームスポットによって発生した著しいフューム濃度を有する位置で溶融することを回避できる。したがって、同時に照射される2つのストライプ間には、照射されないc-1個のストライプがあり、その幅は2つのビームスポットを分離する最小距離である。既に明らかなように、少なくとも幾つかのストライプの境界は、好ましくは上述した蛇行線によって与えられる。
【0053】
誤解を避けるためのみであるが、層とは通常のごとく粉末床の上層のことである。さらに、本明細書において、「{ }」とは、通常のごとく空集合を表している。本明細書では、集合が空であることを表すために数「0」も使用している。すなわち、集合Vが空である場合、V={ }およびV=0と表記される。
【0054】
本明細書における「少なくとも実質的に垂直に」または「少なくとも実質的に直交するように」なる表現は、90°の角度が好ましいが、角度が90°±45°、90°±30°、90°±15°、90°±10°、90°±5°、90°±1°または90°±0以内となる偏差が許容されうることを表している。同様に、「少なくとも実質的に平行に」とは、厳密な平行性(±0°)が好ましいものの、完全な平行の位置合わせからの偏差、すなわち0°±45°、0°±30°、0°±15°、0°±10°、0°±5°、0°±2.5°、0°±1°または0°±0°以内の角度が許容されうることである。さらに、ベクトル
【数105】
および
【数106】
で与えられる方向において蛇行する2つの蛇行線は、これらのベクトル
【数107】
および
【数108】
がそれぞれ垂直または平行である場合に、垂直または平行であると見なされる。
【0055】
以下に、一般的な発明のコンセプトを限定するものではないが、図面に関連する実施形態の複数の例につき、例示として本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】付加製造装置を示す図である。
図2】粉末床の上向き面を示す平面図である。
図3図2のDの詳細を示す図である。
図4図2のD11の詳細を示す図である。
図5】位置の集合Lを決定する方法を示すフローチャートである。
【0057】
図1には第1の実施形態が示されている。付加製造装置1は断面図で示されており、側壁7、底部8およびシーリング9によって包囲されたプロセスチャンバ5を有する。底部には、開口81が設けられている。開口の下方には、双方向矢印2によって示されているように、可動に支持された支持部82が設けられている。支持部の上面には、表面14を有する上層を備えた粉末床12が設けられている。概説したように、ワークピース6の一部は、粉末床12内に埋め込まれていてもよい。
【0058】
図1の粉末床の表面14には、n個のビーム源20によって投影されるビームスポット22を照射することができる。複数n=8個のビーム源20が示されているが、これは単に好ましい例であり、他の任意の数n≧2も同様に選択可能である。例えば、図2において、i番目のビーム源20によって放出されたi番目のビームスポット22によって照射される位置
【数109】
における粉末床12の粉末粒子が、同時に溶融される。図1では、簡単化のために、唯一のビームスポット22および唯一の位置
【数110】
しか示していないが、実際には、少なくとも2つのビームスポット22、例えば少なくとも3つ、少なくとも4つもしくは少なくとも5つのビームスポット22が同時に放出されることが好ましい。好ましくは、n個のビーム源20の全てが、それぞれビームスポット22を、位置
【数111】
(すなわち1≦i≦n)へ同時に放出する。ビーム源20は旋回可能であり、したがって、ビームスポット22を表面14上で移動させることができ、各ビーム源20は、位置の集合
【数112】
を照射することができ、ここで、インデクスiは、n個のビーム源のうちの対応するビーム源20を示す。全ての位置の集合Lが照射されると、領域
【数113】
が照射されたことになる(図2を参照)。つまり、領域Aは、ワークピース6の対応する層またはその少なくとも一部の上面であってよい。領域Aへの照射が行われると、支持部が粉末層の厚さ分だけ下降され、新たな粉末層が例えばいわゆるリコータを使用して適用され、開口81の上方へ移動する。続いて、粉末床12の新たな最上層の次の表面14に、ビーム源20を使用して、照射が行われうる。
【0059】
粉末床の表面14の溶融中、フュームが、この表面の位置
【数114】
で発生する。これらのフュームは、破線矢印3によって表されている粉末床12の表面14の上部および上方に不活性ガス流3を形成することによってプロセスチャンバから除去することができる。破線矢印3のそれぞれは、点線矢印
【数115】
によって表されている共通の投影を底部8に有する。つまり、ベクトル
【数116】
は、表面14の上部および上方の不活性ガス流3の水平成分の方向である。換言すれば、不活性ガス流3は、支持部の上向き面に対して平行な成分
【数117】
を有する。
【0060】
制御装置10とも略称されるプログラミング可能な電子回路10により、少なくとも複数のビーム源20が制御される。好ましくは、不活性ガス流3、リコータおよび支持部82の運動のうちの少なくとも1つも、制御装置10によって制御可能である。
【0061】
図2には、粉末床12の層の表面14の平面図が示されている。各十字20~2014は、表面14の上部でのビーム源20の位置(すなわちこの例ではn=14)を表している。あるいは換言すれば、十字20の位置は、表面14上へのビーム源20の投影によって得ることができる。特定のビーム源20の参照を可能にするために、第1のビーム源および第4のビーム源の投影をそれぞれ表す十字のみに下付き文字を付してある(すなわち20,20)。一般的に、20(1≦i≦n)は、i番目のビーム源を表す交差を記述している。さらに、図1に関して既に述べたように、現時点でのn=14の選択は一例にすぎない。n個のビーム源についての唯一の条件は、n≧2である。
【0062】
各ビーム源20は、表面14の所定の部分Fを照射することができる。これらの面F,…,F14は視野Fと称される。図2にはさらに、例示的な領域Aが示されている。本発明の実施形態は、領域Aの各部分をそれぞれ異なるビーム源に割り当て、その後、同時に最大量のビーム源を動作させながら領域Aにおいて粉末を溶融させることを可能にする。ビーム源20のアイドル時間が削減される。領域Aは、ワークピース5のCADモデルに基づいて計算可能であり、「CAD」は「コンピュータ支援設計」を表しており、したがって、CADモデルは、ワークピースの製造を可能にするワークピースの記述である。
【0063】
既に上述したように、ビーム源は、2つのビーム源の区別を可能にするインデクスによって、または他の任意の適切な形式で、ラベリングされている。ここでは、i番目のビーム源20によって照射される位置の集合Lは、第1のビーム源20から始まって昇順で決定される。ここでの昇順は必須ではないが、本発明の説明および理解のために単純化して示している。
【0064】
ビーム源20がラベリングされて、照射されるべき領域Aが決定されると、図5に示されているように、視野Fと領域Aとの交差集合ISが決定可能となり、一般的に
【数118】
となる。したがって、方法は、少なくとも
【数119】
を決定することを含みうる。さらに、最適溶融時間t(1)も決定可能となる。これは、ISを決定するステップの前または後に行うことができる。当該最適溶融時間t(i)は、続いて決定される領域Aの部分Lを溶融させるのに必要な時間の推定値と考えることができる。換言すれば、位置の集合のサイズ|L|は、最適溶融時間t(i)以内で位置の集合Lがi番目のビーム源20によって溶融可能であることを期待できるように決定される。
【0065】
好ましくは、実際の溶融時間t(i)は全て同じであり、この場合、第1のビーム源の最適溶融時間は、
【数120】
として推定することができ、ここで、値Rはi番目のビーム源の溶融速度である(図5を参照)。通常のごとく、i番目のビーム源の溶融速度Rは、試験面Tのサイズと当該試験面を溶融させるのに必要な時間t(i)との商、すなわち、
【数121】
となる。t(1)を決定するここでの例は、t(i)にとって有効な選択肢ではない。一般に、
【数122】
(すなわち
【数123】
)内にある任意のt(i)の値は合理的と考えることができ、一般に、
【数124】
は、マージン、例えばB={0.25,0.2,0.15,0.1,0.05,0.025,0.0125,0.01,0.005,0.001}のβt,i∈Bに対する合理的な範囲と考えることができる。βt,iの値がより小さいことが好ましく、特に好ましくはβt,i=0である。
【0066】
(1)が決定されると、方法は、第1の減数表面Sの決定に進むことができる(図5を参照)。第1の減数表面Sは第1の交差集合ISの部分集合であり、すなわちS⊂ISであり、名称が示唆しているように、ISから減算されて第1の位置の集合Lが決定される。第1の減数表面Sを決定する際には、第1の交差集合ISの点のみが同様に他の視野領域F(k≠1)にも含まれていると考えることができる。より簡潔な形式では、これは、
【数125】
として表現することができ、減数表面Sの全ての点
【数126】
が少なくとも1つの視野Fの要素となり、ここで、kが1より大きい任意の整数値を取ることができるように、これらの点
【数127】
の全てについて視野Fが存在することであると読まれる。当該条件により、交差集合ISから除去された(減算された)点に対して別のビーム源が照射を行えることが保証される。さらに、|S|のサイズが、可能な限り合理的に制約(1-α)・(|IS|-t(1)・R)≦|S|≦(1+α)・(|IS|-t(1)・R)に則するように調整される。これは、|IS|≧(1-α)・t(1)・Rを示唆する。既に上述したように、
【数128】
である。小さい方のαは、より良好に、すなわち特に好ましくはα=0として選択される。Sが決定されると、第1のビーム源によって照射される第1の位置の集合Lが、L=IS-Sとして決定可能となる。
【0067】
ISのサイズが(1-α)・(|IS|-t(1)・R)より小さいために、制約(1-α)・(|IS|-t(1)・R)≦|S|≦(1+α)・(|IS|-t(1)・R)を満たすことができないケースが存在しうる(図5を参照)。当該ケースではS:={ }=0を選択することができるが、消失しない減数表面Sを見出す必要のある他の観察条件も存在しうる。このことは、ISのサイズ(すなわち|IS|)が(1-α)・(|IS|-t(1)・R)よりも小さいので、制約(1-α)・(|IS|-t(1)・R)≦|S|≦(1+α)・(|IS|-t(1)・R)を満たすことができない、というように一般化することができる。当該ケースでは、S:={ }=0を選択することができるが、消失しない減数表面Sを見出すために必要となりうる、または少なくともレンダリングされることが好ましい、観察すべき他の条件も存在しうる。消失しない減数表面Sを選択する1つの例として、近隣の表面L,L間の境界が所定の形状を有するべきケースが挙げられる。
【0068】
既に上述したように、位置の集合Lが閾値Tを超えるサイズを有すること、すなわち|L|>Tであることが好ましい。当該条件を満たすことができない場合、SをISに設定する、すなわちS:=ISとすることができ、これは、利用可能なビーム源のプールからi番目のビーム源を除去することと等価である。
【0069】
続いて、これらのステップを、この例では第2のビーム源である次のビーム源について反復することができる。形式的には、これは、インデクス1を2に置き換え、t(1)に代えてt(2)を使用した後にステップを反復することであると記述することができる(図5を参照)。したがって、こうした反復により、第2の位置の集合Lが提供される。より一般的な手法では、i番目の位置の集合Lが決定されると、またはISおよびSが既知であって位置の集合Lが少なくとも決定可能となると、残りの全てのビーム源について方法を反復して行うことができ、または言い換えればi=nとなるまでi:=i+1として行うことができる。明示的な表現では、これは、好ましくは新たな最適時間t(i)がi∈Iごとに決定されることを意味する。好ましくは、新たな最適時間は、より低いインデクスを有するビーム源によって必要とされることが予測されうる任意の時間の偏差<t>(j<i)を考慮する。例えば
【数129】
に対して、またより一般的には推奨最適値からの僅かな偏差を許容するために、
【数130】
または短くは
【数131】
に等しく、ここで、i=0の場合、項
【数132】
であり、したがって
【数133】
である制約
【数134】
に従う、更新された最適時間を決定することができる。この場合も、βt,i=0であることが好ましい。
【0070】
次いで、または同様に更新された最適溶融時間t(i)を決定する前に、次の交差集合が
【数135】
を使用して決定される。
【0071】
ISおよびt(i)が決定されると、方法は、対応する減数表面Sを決定するステップへと進むことができ、ここで、Sは、条件
【数136】
に従い、さらに|IS|≧t(i)・Rの場合、(1-α)・(|IS|-t(1)・R)≦|S|≦(1-α)・(|IS|-t(1)・R)およびα∈{0.25,0.2,0.15,0.1,0.05,0.025,0.01,0.005,0}に従う。
【0072】
ISおよびSが決定されると、方法は、L:=IS-Sを規定し、iを1だけ増大させ(i=nでない限りi:=i+1)、n個の位置の集合L[1≦i≦n]が決定されるまでプロセスを反復することへ進むことができる。この場合、制御装置は、ビーム源20を制御して、それぞれのビームスポット22を対応する位置の集合Lへ投影することができる。
【0073】
図3を参照して、減数表面Sを決定する一例を説明する。図3には、図2のDの詳細が幾つかの追加情報と共に示されている。すなわち、減数表面Sを決定することは、少なくとも第1の蛇行線Bi,jを決定することを含みうる。図3の例では2つの蛇行線が存在し、第1の蛇行線B1,jは流れ方向
【数137】
に対して平行に延在しており、第2の蛇行線B1,kは、
【数138】
に対して垂直に、すなわち
【数139】
に対して平行に延在している(つまり、
【数140】
である)。見て取れるように、第1の蛇行線は、第1の終端点
【数141】
を有している。線Bi,jは、長く、または方向
【数142】
において蛇行している。なぜなら、第1の終端点
【数143】
および蛇行線B1,j上の任意の点
【数144】
としての線B1,jが、第1の終端点
【数145】
までの一意の距離を有しており、よって、蛇行線B1,jは、この例では
【数146】
を好ましい選択として、制約
【数147】
に従っているからである。なお、
【数148】
に対して直交する方向では、蛇行線B1,jの各点の距離は一意でなく、すなわち、
【数149】

【数150】
は真でない。図示されている好ましい例では、第1の蛇行線B1,jは、溶融ベクトル
【数151】
の倍数として記述可能な直線セクションと、溶融ベクトル
【数152】
に対して所定の角度で、好ましくは直交して延在する別の直線セクションとを含んでいる。したがって、対応するベクトルは、
【数153】
と表される。溶融ベクトル
【数154】
は、位置の集合Lを溶融させながらi番目のビームスポットが表面上を移動する際のベクトルである。
【0074】
図3の例では、第1の蛇行線B1,jに対して直交するように蛇行する任意選択手段としての第2の蛇行線B1,kが存在している。このため、この例では
【数155】
である
【数156】
となる。ここでの選択は単なる一例であり、他の選択も同様に使用可能であることを強調しておく。好ましくは、
【数157】
および
【数158】
は、線形に独立している(すなわち、
【数159】
である)。
【0075】
減数表面S(より一般的にはS)を決定する際には、蛇行線B1,jおよび蛇行線B1,k(より一般的にはBi,jおよびBi,k)を単純にシフトさせることができる。好ましい例示的な実施形態では、対応する蛇行線Bi,jおよびBi,kは、S(より一般的にはS)についての条件への追従が得られるまで、それぞれのベクトル
【数160】
および
【数161】
に対して少なくとも実質的に垂直に(すなわち、90°±45°、90°±30°、90°±15°、90°±10°、90°±5°、90°±2.5°、90°±1°または90°±0°以内で)シフトさせることができる。換言すれば、線Bi,jおよび線Bi,kは、減数表面Sの内側境界を画定することができ、一方、外側境界は、対応する視野Fの境界によって、または好ましくはISの外側境界によって形成することができ、ここで、用語「内側」および「外側」とは、本明細書ではi番目のビーム源の対応する投影を表す“x”によって示されている、それぞれi番目のビーム源の視野Fの中心によって定められる位置を指す。
【0076】
図3の例では、減数表面Sを決定するために2つの蛇行線のみが必要である。この例では、これは、第1の視野Fの中心(一般的にi番目の視野Fの中心)に対して相対的な領域Aの位置によるものである。
【0077】
i番目のビーム源の視野Fに対して相対的な領域Aのジオメトリおよび/または位置が異なる場合、減数表面の内側境界を決定するために3つまたは4つの蛇行線が必要となることがある。
【0078】
対応する例が図4に示されている。図4では、図2の別の詳細が、11番目のビーム源の第11の視野F11の投影の中心にセンタリングされた状態で示されている。この場合も、符号11は単なる一例であり、一般化可能である。11番目の減数表面S11を決定する際には、この場合も、B11,j、B11,kおよびB11,lとラベリングされうる蛇行線が使用可能である。S11を決定する際に、第1の位置の集合Lおよび第2の位置の集合Lは既に決定されているので、第11の交差集合IS11は、B1,j’およびB2,j’’によって制限されている。図2から見て取れるように、B1,j’およびB2,j’’によって区切られている表面の左側部分は、視野F内にも、または11番目のビーム源以外の他のビーム源にも存在しない。したがって、S11についての制約
【数162】
は、B1,j’,B2,j’’の間の点およびF13の境界を画定する円の左側の点
【数163】
については満たされえない。よって、Sについての条件に関しては、j’=j’’=11であることが判明し、B11,1:=B1,11およびB11,2:=B2,11が得られる。これにより、単一の蛇行線B11,lの位置のみは、例えば
【数164】
に対して少なくとも実質的に垂直にB11,lをシフトさせることによって決定する必要があり、これは、この例では、
【数165】
に従う。図4では、当該シフトプロセスは、二方向矢印によって示されている。換言すれば、蛇行線B11,1(一般にBi,l)は、S11についての残りの条件が満たされるまで(一例としてSが満たされるまで)、シフトされる。したがって、図示されている例では、|IS11-S11|(一般に|IS-S|)を決定するには、IS11の輪郭と蛇行線B11,5,B11,6およびB11,lとによって囲まれている表面のサイズを決定すれば十分である。サイズ|IS11-S11|が(1±α)・t(i)・Rよりも大きい(または小さい)場合、蛇行線B11,lは、(1-α)・(|IS|-t・R)≦|S|≦(1+α)・(|IS|-t・R)まで僅かに左方へ(または相応に僅かに右方へ)シフトされる。
【0079】
次に、方法は、次の減数表面Si+1(与えられた例ではS11+1=S12)の決定へ進むことができる。
【0080】
例示した方法は、領域Aの溶融に寄与するi番目のビーム源の能力に基づいて減数表面Sを決定するシーケンスが選択される場合、特に簡単に実現することができる。ここでの寄与能力の尺度は、それぞれの視野Fと領域Aとの重なりのサイズと考えることができる。したがって、図2の例から直ちに見て取れるように、
【数166】
または一般に
【数167】
である。なお、
【数168】
の場合、L={ }となり、当該結果がシーケンスのどのステップで割り当てられるかもしくは決定されるかは重要ではない。したがって、好ましい例では、減数表面Sひいては位置の集合Lを決定するシーケンスは、好ましくは領域Aとの最小重なりを有する視野Fを有するビーム源を表すインデクスから開始され、このインデクスは、好ましくは、
【数169】
がiと共に増大するようにソートされる。誤解を避けるためのみであるが、もちろん、|IS|=0であれば、当該方法においてどの時点でL:={ }が実行されるかは重要ではなく、この場合、これは、開始時点、終了時点または他の任意の時点のいずれであってもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 付加製造装置
2 支持部82の移動を示す双方向矢印
3 不活性ガス流
5 プロセスチャンバ
6 (部分的に製造されている)ワークピース
7 プロセスチャンバ5の側壁
8 プロセスチャンバ5の底部
81 底部8における開口
82 可動に支持された支持部
9 処理チャンバ5のシーリング
10 プログラミング可能な電子回路/制御装置
12 溶融可能材料
14 溶融可能材料の上面
20 i番目のビーム源/i番目のビーム源の投影
22 i番目のビーム源20のi番目のビームスポット
i番目のビーム源の視野
i番目のビーム源20によって溶融されるべき位置
【数170】
の集合
【数171】
プロセスチャンバ5内の不活性ガス流の水平成分
【数172】
上記
【数173】
対して少なくとも実質的に垂直なベクトル
【数174】
ベクトル
【数175】
ベクトル
【数176】
ベクトル
【数177】
ベクトル
【数178】
ベクトル
【数179】
ベクトル
i,j 蛇行線(i,j≦n,i≠j)
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】