(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-16
(54)【発明の名称】進行性前立腺癌の診断を支援するシステム及び関連する方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
A61B5/055 380
A61B5/055 382
A61B5/055 383
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565878
(86)(22)【出願日】2022-04-27
(85)【翻訳文提出日】2023-12-25
(86)【国際出願番号】 EP2022061221
(87)【国際公開番号】W WO2022229265
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(71)【出願人】
【識別番号】516247100
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・グルノーブル・アルプ
【氏名又は名称原語表記】Universite Grenoble Alpes
(71)【出願人】
【識別番号】595040744
【氏名又は名称】サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シャンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(71)【出願人】
【識別番号】511264559
【氏名又は名称】オスピス シヴィル ド リヨン
【氏名又は名称原語表記】HOSPICES CIVILS DE LYON
(71)【出願人】
【識別番号】504217063
【氏名又は名称】サントル レオン ベラール
(71)【出願人】
【識別番号】523165352
【氏名又は名称】ユニヴェルスィテ クラウド ベルナール リヨン 1
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】スーション,レミ
(72)【発明者】
【氏名】ジャウエン,トリスタン
(72)【発明者】
【氏名】ホアン-ディン,アウ
(72)【発明者】
【氏名】ゴニンダ-ル,クリステル
(72)【発明者】
【氏名】ルヴィエール,オリヴィエ
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AA03
4C096AA04
4C096AA11
4C096AA17
4C096AC05
4C096AD14
4C096DC22
4C096DC32
4C096DC33
4C096DE08
(57)【要約】
本発明は、進行性前立腺癌のコンピューター支援検出(CAD)のためのシステム及び方法に関する。進行性前立腺癌の自動診断は困難であり、いくつかのMRIスキャナーで機能する方法は、異なるスキャナーからの画像で実施された場合にはうまく機能しない。
本発明者らは、4つの異なるタイプのMRIスキャナーで撮影された265人の患者のMRIデータと生検結果を含むデータベースを機械学習技術を用いて研究することにより、進行性癌の存在を自動的に決定する方法を確立し、この方法を、第一のデータベースとは異なるMRIスキャナーで撮影された270人の患者のMRIデータを含む別のデータベース上で実施したところ、高い感度と特異性を示した。
この方法は、前立腺の一部分のスコアを計算するシステムにMRI画像を供給し、スコアに依存する基準が検証されたかどうかに基づいて、その部分に進行性癌が含まれていると決定することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
進行性の前立腺癌の診断を支援するためのシステム(10)であって、前記システムは、制御モジュール(15)を含み、前記制御モジュール(15)は、
- 被験者の前立腺の周辺領域の少なくとも第一の部分の、少なくとも一つの磁気共鳴画像を受信することであり、前記画像が、ピクセルのセットを含み、前記画像は、各ピクセルについて、前記前立腺の対応する領域の見かけ上の拡散係数値を含む、
- 第一のスコアを計算する、及び、
- 前記計算された第一のスコアに基づく第一の基準が検証された場合には、前記第一の部分が進行性癌を含むと決定し、又は前記第一の基準が検証されなかった場合には、前記第一の部分が進行性癌を含まないと決定する、
ように構成され、及び、
前記第一のスコアは、以下の量x
1及び量x
2の少なくとも一方の関数として計算され、
【数9】
ここで、Wは、前記第一の部分の正規化されたウォッシュイン速度又は正規化されたウォッシュアウト速度の値であり、前記ウォッシュイン値又はウォッシュアウト値は、ヘルツで表され、前記第一の部分の磁気共鳴画像のセットから推定され、ADCは、前記第一の部分の前記見かけ上の拡散係数値の百分位数であり、mm
2/sの単位で表され、a
1は第一の定数であり、Wが正規化されたウォッシュイン速度値である場合には、前記第一の定数は、-6×10
-3mm
2と-10
-3mm
2の間に含まれ、前記百分位数は40以下であり、Wが正規化されたウォッシュアウト速度値である場合には、前記第一の定数は、2×10
-2mm
2と15×10
-2mm
2の間に含まれ、前記百分位数は15以下であり、
【数10】
ここで、b
1は、10
-7mm
2/s
2と14×10
-7mm
2/s
2の間に含まれる第二の定数であり、ADCは、前記第一の部分に対応する全てのピクセルの前記見かけ上の拡散係数値の20と45の間に含まれる百分位数であり、TTPは、前記第一の部分のピークまでの時間値であり、秒単位で表され、前記ピークまでの時間値は、第一の瞬間から第二の瞬間までの時間持続時間であり、前記第一の瞬間は、前記前立腺における造影剤の到着時間であり、前記第二の瞬間は、前記第一の部分のMRI信号の最大コントラスト濃度の時間である、システム。
【請求項2】
Wは、正規化されたウォッシュイン速度であり、前記第一の定数a
1は、-5×10
-3mm
2と-3×10
-3mm
2の間に含まれる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記百分位数は、0と30の間に含まれる、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第二の定数b
1は、10
-7mm
2/平方秒と9×10
-7mm
2/平方秒の間に含まれる、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
ADCは、前記第一のスコアが前記ピークまでの時間値の関数として計算される場合には、前記第一の部分に対応する全てのピクセルの前記見かけ上の拡散係数値の25番目の百分位数である、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記第一の部分に対応する各ピクセルについて、ウォッシュイン値又はウォッシュアウト値が推定され、Wは、前記各ピクセルについて推定された前記ウォッシュイン値又はウォッシュアウト値の平均値である、請求項1~5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記第一の部分の複数の画像が所定時間中に取得され、前記所定時間は、造影剤が前記前立腺に入る所定時間又は造影剤が前記前立腺から出る所定時間であり、各画像は、各ピクセルについて、前記前立腺の前記対応する領域のT1-重み付け信号の強度値を含み、前記制御モジュールは、各画像について、前記第一の部分に対応する前記ピクセルの正規化された強度値の平均値を計算するように構成され、各正規化された値は、測定された値を、前記造影剤が前記前立腺に入る前の同じ前記ピクセルの値で除算した値に等しく、前記正規化されたウォッシュイン速度の値は、時間の関数として計算された平均値の曲線の上向きの勾配であり、前記正規化されたウォッシュアウト速度は、曲線の下向きの勾配である、請求項1~5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記制御モジュール(15)は、前記スコアを閾値と比較し、第一の量が前記閾値以下である場合に、前記第一の部分が進行性癌を含むと決定するように構成される、請求項1~7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記スコアは、第一の量x
1に等しく、Wが正規化されたウォッシュイン速度である場合には、前記閾値は、-0.8×10
-3平方ミリメートル毎秒と2.3×10
-3平方ミリメートル毎秒の間に含まれ、又は、Wが正規化されたウォッシュアウト速度である場合には、前記閾値は、-1.1×10
-3平方ミリメートル毎秒と3.2×10
-3平方ミリメートル毎秒の間に含まれる、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記スコアは、第二の量x
2に等しく、前記閾値は、-1.1×10
-3平方ミリメートル毎秒と3.3×10
-3平方ミリメートル毎秒の間に含まれる、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
各画像が前立腺の移行領域の第二の部分の画像を含み、制御モジュール(15)が、更に、
- 第四の量yの関数として第二のスコアYを計算し、第四の量yは以下の式に従う、
【数11】
ここで、d
0は、第五の定数であり、d
1は、-23820秒/mm
2と-4490秒/mm
2の間に含まれる第六の定数であり、第五の定数は、特に、2.25と13.48の間に含まれ、ADCは、前記第二の部分に対応する全てのピクセルの前記見かけ上の拡散係数値の25以下である百分位数であり、及び、
- 前記算出された第二のスコアYに基づく第二の基準が検証された場合には、前記第二の部分が進行性癌を含むと決定し、又は、前記第一の基準が検証されなかった場合には、前記第二の部分が進行性癌を含まないと決定する、
ように構成されている、請求項1~10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
進行性の前立腺癌の診断を支援する方法であって、前記方法は、制御モジュール(15)を含むシステム(10)によって実施され、前記方法は、前記制御モジュール(15)によって実施され、以下のステップ、
- 被験者の前立腺の周辺領域の第一の部分の少なくとも一つの磁気共鳴画像を受信する(110)ことであって、前記画像が、ピクセルのセットを含み、
前記画像が、各ピクセルについて、前記第一の部分の対応する領域の見かけ上の拡散係数値を含むこと、
- 第一のスコアを計算すること(130)、
- 前記算出された第一のスコアに基づいて、前記第一の部分が進行性癌を含むと決定すること(140)、
を含み、
前記第一のスコアは、前記制御モジュール(15)によって、以下の量x
1及び量x
2の少なくとも一方の関数として、計算され、
【数12】
ここで、Wは、第一の部分の正規化されたウォッシュイン速度又は正規化されたウォッシュアウト速度の値であり、ウォッシュイン値又はウォッシュアウト値は、ヘルツで表され、前記第一の部分の磁気共鳴画像のセットから推定され、ADCは、前記第一の部分の前記見かけ上の拡散係数値の百分位数であり、mm
2/sの単位で表され、a
1は、第一の定数であり、Wが正規化されたウォッシュイン速度値である場合には、前記第一の定数は、-6×10
-3mm
2と-10
-3mm
2の間に含まれ、前記百分位数は40以下であり、Wが正規化されたウォッシュアウト速度値である場合には、前記第一の定数は、2×10
-2mm
2と15×10
-2mm
2の間に含まれ、前記百分位数は15以下であり、
【数13】
ここで、b
1は、10
-7mm
2/s
2と14×10
-7mm
2/s
2の間に含まれる第二の定数であり、ADCは、前記第一の部分に対応する全てのピクセルの前記見かけ上の拡散係数値の20と45の間に含まれる百分位数であり、TTPは、前記第一の部分のピークまでの時間値であり、秒単位で表され、前記ピークまでの時間値は、第一の瞬間から第二の瞬間までの持続時間であり、前記第一の瞬間は、前記前立腺における造影剤の到着時間であり、前記第二の瞬間は、前記第一の部分のMRI信号の最大コントラスト濃度の時間である、方法。
【請求項13】
ソフトウェア命令がプロセッサー(35)上で実行されたときに、請求項12に記載の方法を実施するように構成された、ソフトウェア命令を含むコンピューター・プログラム製品(45)。
【請求項14】
ソフトウェア命令がプロセッサー(35)上で実行されたときに、請求項12に記載の方法を実施するように構成された、ソフトウェア命令を含む情報媒体(50)。
【請求項15】
診断方法であって、請求項12に記載の進行性前立腺癌の診断を支援する方法を用いることと、前記進行性前立腺癌の診断を支援する方法の結果に基づいて、臨床診断を確立することとを含む、診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、進行性前立腺癌の診断を支援するシステム、及び進行性前立腺癌の診断を支援する方法に関する。
【0002】
毎年100万人以上の新規症例がある前立腺癌は、世界中で男性に最も多く見られる癌であり、癌に関連する死因の第二位である。診断は、超音波ガイド下生検に依存する。しかし、超音波では腫瘍が見えないことが多く、超音波の役割は、生検針を前立腺内に誘導することに限られている。
【0003】
通常、医師は12回の系統的な生検を実施する。生検において、臨床的に重要な腫瘍が見逃されることは珍しくない。その結果、患者は適切な治療を受けることができない。
【0004】
他の患者においては、実際の腫瘍が小さく軽度であって患者の健康を脅かしていない場合に、生検針が、癌細胞の孤立した部位内に、誤って入ることがある。その結果、このような患者は侵襲性の治療を受け、場合によっては失禁やインポテンツ等の重篤な副作用を伴うが、医学的利益は得られない。
【0005】
生検の標的性を改善するために、MRI画像中の進行性癌の徴候を認識しようと試みるいくつかの画像処理法が提案されており、例えば、Au Hoang Dinhらの論文である、2016年に学術誌『放射線医学(Radiology)』誌の第280巻第一号117ページに掲載された「辺縁領域における進行性前立腺癌の検出のための前立腺マルチパラメトリックMR画像の定量的解析:マルチイメージャー研究」、2018年に学術誌『放射線医学(Radiology)』誌の第287巻第2号525ページに掲載された「定量的マルチパラメトリックMR画像を用いたグリソン(Gleason)スコア7以上の前立腺癌の特性評価:前立腺生検に適用された患者におけるコンピューター支援診断システムの検証」である。
【0006】
しかしながら、既知の方法では、進行性癌を検出するための信頼性が、経験豊富な放射線科医師が実施するよりも低いままである。加えて、これらの既存の方法は、通常、限られた数のMRスキャナーで取得されたMR画像をベースとして開発されており、それらの信頼性は、元となるベースで用いられたものとは異なるタイプのMRスキャナーを用いて取得されたMR画像上で癌を検出するためにそれらが用いられる場合には、著しく低下する。
【0007】
したがって、放射線科医師が進行性前立腺癌を診断するのに役立ち、既存のシステムよりも堅牢でありながら、進行性前立腺癌を確実に検出することができ、特に、異なるタイプのMRスキャナーを用いて取得されたMR画像でも確実に用いることができるシステムが必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
概要
この観点から、本明細書は、請求項1に記載の進行性前立腺癌の診断を支援するシステムに関する。
【0009】
具体的な実施形態によれば、システムは請求項2から11のいずれか一項に記載のシステムによる。
【0010】
本明細書は、又、請求項12に記載の進行性前立腺癌の診断を支援する方法にも関する。
【0011】
本明細書は、又、請求項13に記載のコンピューター・プログラム製品にも関する。
【0012】
本明細書は、又、請求項14に記載の情報媒体にも関する。
【0013】
本明細書は、更に、請求項12に記載の方法を実施するためのステップを含む、進行性前立腺癌を診断するための方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の特徴及び利点は、以下の明細書を読むと明らかであり、非限定的な例としてのみ示され、関連する図面を参照して作成される。
【
図1】進行性前立腺癌の診断を支援するシステムの概略図である。
【
図2】
図1のシステムによって実施される、進行性前立腺癌の診断を支援する方法の一例としての各ステップのフローチャートである。
【
図3】
図1によるシステムの一例としての特異性を、いくつかのパラメーターの関数として示したグラフである。
【
図4】
図1によるシステムの別の例としての特異性を、いくつかのパラメーターの関数として示したグラフである。
【
図5】
図1によるシステムの更に別の例としての特異性を、いくつかのパラメーターの関数として示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
進行性前立腺癌の診断を支援するシステム10の概略図を
図1に示す。
【0016】
システム10は、制御モジュール15、ヒューマン・マシン・インターフェース20、及びコンピューター・プログラム製品22を含む。
【0017】
より一般的には、システム10は、そのシステム10のレジスタ内及び/又はメモリ内の電子的又は物理的な量として図示されたデータを、メモリ、レジスタ、又は他のタイプのディスプレイ内の物理的データに対応する他の同様のデータに、処理及び/又は変換し、送信、又は記憶装置に格納することができる電子コンピューターである。
【0018】
システム10は、進行性の前立腺癌の診断を支援する方法を実施するように構成される。
【0019】
制御モジュール15は、磁気共鳴画像スキャナー25のような別個の装置25から、被験者30の前立腺の少なくとも一つの磁気共鳴画像を受信するように構成される。
【0020】
制御モジュール15は、例えば、プロセッサー35等のデータ処理ユニット、メモリ40、及び可読情報媒体50の読取装置45を含む。
【0021】
コンピューター・プログラム製品22は、情報媒体50を含む。
【0022】
可読情報媒体50は、データ処理ユニット35によって可読である媒体である。可読情報媒体50は、電子命令をメモリに格納するのに適した媒体であり、コンピューターシステムのバスと結合可能である。
【0023】
一例として、可読情報媒体50は、光ディスク、CD-ROM、光磁気ディスク、ROMメモリ、RAMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ、磁気カード、又は光カードである。
【0024】
可読情報媒体50には、プログラム命令を含むプログラムがメモリに格納されている。
【0025】
コンピューター・プログラムは、データ処理ユニット35上にロードされることができ、そのコンピューター・プログラムがプロセッサー35上に適用される場合には、前立腺進行性癌の診断を支援するための方法を適用させるように適応されている。
【0026】
ヒューマン・マシン・インターフェース20は、システム10を操作する医師等の人間と制御モジュール15との間の情報の送信を可能にするように構成されている。
【0027】
ヒューマン・マシン・インターフェース20は、ディスプレイスクリーン、例えばタッチスクリーンを含む。任意に、ヒューマン・マシン・インターフェース20は、マウス、及び/又は、キーボード、及び/又は、スピーカー、及び/又は、マイクロホンを更に含む。
【0028】
スキャナー25は、例えば、システム10とは別個のものであり、特に、別の部屋又は別の建物に配置され、有線又は無線のネットワークによってシステム10に接続される。
【0029】
可能な変形例では、スキャナー25はシステム10の一部である。例えば、制御モジュールは、磁気共鳴画像(複数可)を取得するようにスキャナー25に命令することができる。
【0030】
別の変形例では、別個の装置25は、磁気共鳴画像(複数可)が格納されるサーバー又はデータベースであり、磁気共鳴画像は、この場合には、例えば、一つ以上のスキャナーによって取得され、ネットワークを介して別個の装置25に送信される。
【0031】
このスキャナーは、マルチパラメトリック磁気共鳴画像(「MRI」)スキャナーであり、以下に示すように、特に、臓器から放出されるT1-重み付け及びT2-重み付けされたMRI信号を測定することにより、異なるMRI法を用いて被験者の臓器の画像を取得することができる。
【0032】
次に、コンピューター・プログラム製品との相互作用におけるシステム10の動作を、進行性前立腺癌の診断を支援する方法の例示的な適用を示す
図2を参照して説明する。
【0033】
進行性前立腺癌の診断を支援する方法は、取得ステップ100、送信ステップ110、選択ステップ120、計算ステップ130、決定ステップ140、及びシグナリングステップ150を含む。
【0034】
取得ステップ100の間に、少なくとも一つの磁気共鳴画像、例えば一セットの磁気共鳴画像、がスキャナー25によって取得される。
【0035】
それぞれの画像は、被験者の前立腺の画像である。
【0036】
被験者は、例えば、前立腺癌に起因した可能性が高い症状を示す患者である。変形例では、被験者は、いかなる症状も示さない。
【0037】
各画像は、被験者の前立腺の辺縁領域(「PZ」)の、少なくとも一部の画像である。
特に、各画像は、前立腺のPZの、少なくとも一部及び移行領域(「TZ」)の少なくとも一部、の画像である。
【0038】
磁気共鳴画像(複数可)のセットは、少なくとも一つの第一の画像と、任意に一つの第二の画像又は複数の第二の画像と、を含む。
【0039】
各画像は、画像要素又は「ピクセル」のセットを含む。
【0040】
上記した一つの又は各々の第一の画像は、例えば、見かけ上の拡散係数マッピングである。このようなマッピングは、前立腺の画像化された領域の見かけ上の拡散係数値の二次元表現である。このようなマッピングにおいて、各ピクセルは、前立腺の対応する領域の見かけ上の拡散係数値を含む。
【0041】
見かけ上の拡散係数は、組織内の水分子の拡散の大きさの尺度であり、拡散重み付け画像法(DWI)によって得ることができる。見かけ上の拡散係数値は、それ自体が既知の方法である、前立腺の第一のT2*-重み付け画像と、少なくとも二つの拡散重み付け画像とのセットから計算され、各拡散重み付け画像は空間方向に対応し、水が対応する方向にどれだけ拡散しやすいかの関数として減衰された、T2*-信号のマッピングである。
【0042】
見かけ上の拡散係数は、平方ミリメートル毎秒(mm2/s)で表される。
【0043】
少なくとも一つの第二の画像は、例えば、ピクセルのセットを含むT1-重み付け画像であり、各ピクセルは、前立腺の対応する領域から発生するT1-重み付け信号の強度の値に関連付けられる。特に、連続するT1-重み付け画像のセットは、所定時間中に取得される。
【0044】
前記所定時間とは、造影剤が、前立腺に入る時間、又は前立腺から出る所定時間である。言い換えれば、造影剤の体積濃度は、その所定時間中に単調に増加又は単調に減少する。
【0045】
例えば、造影剤が被験者に注射され、造影剤の濃度は、前立腺において、特に各第一又は第二の領域において、最大値に達するまで増加し、その後、造影剤が前立腺から排出されるにつれて減少する。前立腺の各領域のT1-重み付け信号強度は、造影剤濃度の関数であり、造影剤濃度の関数として顕著に増加するが、この増加は非直線的である。したがって、T1-重み付け信号強度は、造影剤濃度と同様に、経時的に、増加してから、その後減少する傾向に従う。
【0046】
画像は、注射後の所定時間の間に取得され、この所定時間の間に造影剤が前立腺内に入る。変形例では、画像は、前立腺内の造影剤の濃度が最大に達した瞬間に続く所定時間の間に取得され、造影剤は、その所定時間の間に、造影剤の濃度が最大に達した後に、前立腺から排出される。
【0047】
造影剤は、例えば、ガドリニウムである。
【0048】
送信ステップ110の間、全ての第一又は第二の画像が、制御モジュール15に送信される。
【0049】
例えば、全ての第一又は第二の画像は、スキャナー25によって取得され、ネットワークを介して、直ちに制御モジュール15に送信される。
【0050】
可能な変形例では、第一又は第二の画像は、スキャナー25によって、データベース又はサーバーに送信され、しばらくの時間、データベース又はサーバー上に保存され、保存時間が経過した後、例えば、医師が、被験者の前立腺に進行性癌が含まれているか否かを確認することを決定したときに、制御モジュール15に送信される。この場合には、進行性の前立腺癌の診断を支援する方法は、取得ステップ100を含まないと考えることができる。
【0051】
選択ステップ120の間に、PZの、少なくとも一つの第一の部分が選択される。
【0052】
例えば、少なくとも一つの画像、例えば、第一の画像(複数可)が、ヒューマン・マシン・インターフェース20上で医師に提示され、医師は、医師が関心があると考える第一の画像の一部分、特に、画像の観点から、医師が進行性癌を含んでいる可能性があると考えるPZの一部分、の輪郭を描く(delineate)。
【0053】
任意に、PZの一連の異なる第一の部分のセットが、例えば、医師によって、第一の画像の複数の領域の輪郭が描かれることによって選択される。
【0054】
可能な変形例では、制御モジュール15によって、例えば、画像上に正方形のグリッドを重ねることによって、第一の画像又は第一の画像の一つ、のような一つの画像が、自動的に複数の部分に分割され、そして制御モジュール15は、PZの、グリッドによって互いに区切られた各領域を、そのような第一の部分の一つであるとみなす。
【0055】
任意に、前立腺の少なくとも一つの第二の部分が選択される。各第二の部分は、TZの一部分である。
【0056】
各第二の部分は、例えば、医師によって輪郭が描かれるか、又は、第一の部分(複数可)と同じ方法で、自動的に選択される。
【0057】
計算ステップ130の間、制御モジュール15は、受信した少なくとも第一の画像(複数可)に基づいて、第一のスコアPを計算する。任意に、以下に詳述するように、制御モジュールは、更に、受信した少なくとも第一の画像(複数可)から、第二のスコアYを計算する。
【0058】
特に、第一のスコアPは、選択された各第一の部分について計算され、及び/又は第二のスコアYは、選択された各第二の部分について
計算される。
【0059】
各第一のスコアPは、第一の量x1、第二の量x2、及び第三の量x3の、少なくとも一つの関数である。
【0060】
第一の量x
1は、考慮される第一の部分について、以下の式に従って計算される。
【数1】
ここで、
- a
1は第一の定数であり、
- ADCは、mm
2/sで表される、第一の部分の見かけ上の拡散係数値の百分位数(percentile)であり、
- Wは、ヘルツ(1Hz=1s
-1)で表される、第一の部分の正規化されたウォッシュイン速度(wash-in rate)又は正規化されたウォッシュアウト速度(wash-out rate)の値である。
Wは第二の画像から推定される。
パラメーターWは、例えば、制御モジュール15によって、以下のようにして計算される。
- ウォッシュイン又はウォッシュアウト速度を、第一の部分の各領域(各領域は、連続する第二の画像の同じピクセルに対応する)について計算し、及び、
- Wを、第一の部分に対応するピクセルのウォッシュイン速度又はウォッシュアウト速度の手段、特に算術手段、として計算する。
【0061】
各領域の正規化されたウォッシュイン速度は、公知の方法で、連続する第二の画像の領域に対応するピクセルの強度値から、時間の関数として、領域のT1-重み付け信号の強度の曲線を生成し、その曲線の勾配を推定することによって計算される。
【0062】
正規化されたウォッシュイン速度又はウォッシュアウト速度は、特に、正規化されたT1-重み付け信号から推定され、ここで、所定の時間におけるピクセルのT1-重み付け信号の強度は、造影剤が前立腺に入る前、例えば、造影剤の注射前又は造影剤が前立腺に到達する前(すなわち、強度増加の開始前)の同一ピクセルのT1-重み付け信号の強度で除算される。
【0063】
ある正規化の方法に対応するパラメーターa1及びウォッシュイン速度又はキャッシュアワー速度(cash-our rates)の対応する値は、別の正規化に対応する値から推定できるため、異なる正規化の方法を用いることができ、互いに等価であることに留意すべきである。
【0064】
可能な変形例では、T1-重み付け信号の全ての値を、造影剤注射前のこの信号の値で除算するのではなく、ウォッシュイン速度又はウォッシュアウト速度を元の値の%で表される勾配から計算する。
【0065】
このような変形例では、a1をmm2で表すのではなく、mm2/パーセンテージで表すことができ、したがって、4に示すa1の値は、mm2で表す場合よりも100倍小さくなる。
【0066】
本発明を実施する際には、ウォッシュイン速度又はウォッシュアウト速度の全てのタイプの正規化を、a1の値及びウォッシュイン速度又はウォッシュアウト速度を表すために用いられる単位に対応する適応と共に、無差別に用いることができることを考慮すべきである。
【0067】
曲線の増加部分の勾配、特に最大勾配(考慮される領域における造影剤濃度の漸進的増加に対応する)は、その領域の正規化されたウォッシュイン速度である。可能な変形例では、領域の正規化されたウォッシュイン速度は、曲線の増加部分の平均勾配である。
【0068】
ウォッシュイン速度又はウォッシュアウト速度は、強度曲線が、正規化された強度値、すなわち、一つのピクセルのT1-重み付け信号の又は異なる時間における第二の画像の領域の強度の値を、同じピクセル又は領域の造影剤が注射される前のT1-重み付け信号の強度で除算した値で作られる場合に、「正規化された」ウォッシュイン又は「正規化された」ウォッシュアウトと称する。このような正規化により、異なるMRI装置から得られたウォッシュイン速度又はウォッシュアウト速度を容易に比較することができる。
【0069】
後述するように、他の正規化方法も用いることができることに留意すべきである。
【0070】
曲線の減少部分(考慮される領域における造影剤濃度が最大に達した後の漸進的減少に対応する)の平均勾配又は最大勾配等の勾配は、その領域の正規化されたウォッシュアウト速度である。実際には、正規化されたウォッシュアウト速度は、多くの場合では、平均勾配である。
【0071】
パラメーターWが正規化されたウォッシュイン速度である場合には、パラメーターWは、例えば、第一の部分の各ピクセルに対応する領域の正規化されたウォッシュイン速度の算術平均である。
【0072】
パラメーターWが正規化されたウォッシュアウト速度である場合には、パラメーターWは、例えば、第一の部分の各ピクセルに対応する領域の正規化されたウォッシュアウト速度の算術平均である。
【0073】
変形例では、正規化されたウォッシュイン速度又は正規化されたウォッシュアウト速度は、各第二の画像の各第一の部分について、第一の部分内の全てのピクセルのT1-重み付け信号の平均値を計算し、時間の関数として計算された第一の部分の平均値の正規化された曲線を生成することによって計算される。生成された時間曲線は、各ピクセルのものと全体的に同じ形状を有するが、これは、考慮される第一の部分における造影剤濃度の平均値が時間と共に増加し、その後減少するからである。この場合には、ウォッシュイン速度値は、生成された時間曲線の増加部分の勾配、特に最大勾配又は平均勾配であり、正規化されたウォッシュアウト速度は、曲線の減少部分の勾配、例えば最大勾配又は平均勾配である。
【0074】
正規化されたウォッシュイン速度又はウォッシュアウト速度は、上記と同様の方法で第二の部分(複数可)についても計算され得ることに留意すべきである。
【0075】
パラメーターADCは、制御モジュール15によって、考慮される第一の部分に対応するピクセルの見かけ上の拡散係数値を増加する順に並べることによって計算され、パラメーターADCは、第一の部分の見かけ上の拡散係数値の百分位数である。
【0076】
「百分位数」とは、パラメーターADCが、配列された見かけ上の拡散係数値のセットの中で所定の位置に現れる見かけ上の拡散係数値の値であることを意味する。
【0077】
例えば、見かけ上の拡散係数値の第十の百分位数は、見かけ上の拡散係数値の90パーセントが厳密に第十の百分位数より優っており、拡散係数値の10パーセントが第十の百分位数以下であるような、見かけ上の拡散係数値である。
【0078】
第二の百分位数は、見かけ上の拡散係数値の98パーセントが第二の百分位数より厳密に優れ、拡散係数値の2パーセントが第二の百分位数より劣るか等しい値である。
【0079】
考慮される部分に対応するピクセルの数が100で割り切れない場合には、百分位数は、その百分位数が含まれる二つのピクセルの間の補間によって計算できることに留意すべきである。
【0080】
特に指定がない限り、二つの限界値の「間に含まれる」値は、両方の限界値を含む範囲に対応する。
【0081】
ADC値は、多くの場合では、平方ミリメートル毎秒(mm2/s)で表される。
【0082】
Wが正規化されたウォッシュイン速度である場合には、第一の定数a1は、例えば、-6×10-3mm2と-10-3mm2の間に含まれる。いくつかの実施形態では、第一の定数a1は、-5×10-3mm2と-1.5×10-3mm2の間、例えば-5×10-3mm2と-3×10-3mm2の間に含まれる。
【0083】
本明細書では、二つの数字の間の符号「×」は乗算を示す。
【0084】
パラメーターADCは、特に、Wが正規化されたウォッシュイン速度値である場合には、40以下の百分位数、特に30以下の百分位数、特に10以下の百分位数である。
【0085】
Wが正規化されたウォッシュアウト速度である場合には、第一の定数a1は、例えば、2×10-2mm2と15×10-2mm2の間に含まれる。
【0086】
パラメーターADCは、例えば、Wが正規化されたウォッシュアウト速度値である場合には、百分位数が15以下であることを示す。
【0087】
第二の量x
2は、考慮された第一の部分について、以下の式に従って計算される:
【数2】
ここで
- b
1は第二の定数であり、
- ADCは、第一の部分に対応する全ピクセルの見かけ上の拡散係数値の、例えば、20と45の間に含まれる百分位数であり、
- TTPは、第一の部分のピークまでの時間値である。
【0088】
第二の定数b1は、例えば、10-7mm2/平方秒と14×10-7mm2/平方秒(mm2/s2)の間に含まれる。場合によっては、第二の定数b1は10-7mm2/s2と9×10-7mm2/s2の間に含まれる。
【0089】
ピークまでの時間値(time-to-peak value)とは、時間の関数としてのT1-重み付け信号の値の曲線上で、第一の瞬間と第二の瞬間との間の時間である。第一の瞬間は、被験者への造影剤の注射後、T1-重み付け信号の値が増加し始める時間(すなわち、注射された造影剤が考慮される第一の部分に入り始める瞬間)である。第二の瞬間は、第一の部分における造影剤の最大濃度の時間であり、T1-重み付け信号の最大強度に対応する。
【0090】
ピークまでの時間値は、例えば、各第二の画像について、全ピクセルのT1-重み付け信号の平均値を計算し、その平均値を時間の関数として計算した曲線を生成し、その曲線上のピークまでの時間値を測定することによって得られる。
【0091】
変形例では、ピークまでの時間値は、第一の部分に対応する各ピクセルについて計算されたピークまでの時間値の平均値である。
【0092】
第三の量x
3は、対応する第一の部分について、以下の式に従って計算される:
【数3】
ここで
- c
0は第三の定数であり、
- c
1は第四の定数であり、
- ADCは、第一の部分に対応する全ピクセルの見かけ上の拡散係数値の25以下の百分位数、例えば、第十の百分位数又は第二の百分位数である。
【0093】
第三の定数c0は、例えば2.41と6.44の間、特に3.5と5.0の間、に含まれる。特に、第三の定数c0は、4.2に等しい。
【0094】
第四の定数c1は、-7570秒/mm2と-4020秒/mm2の間、特に-7150秒/mm2と-5270秒/mm2の間、に含まれる。
【0095】
各第一の部分の第一のスコアPは、第一の量x1、第二の量x2、及び第三の量x3のうちの少なくとも一つから計算される。
【0096】
第一のスコアPは、例えば、第一の量x1、第二の量x2、及び第三の量x3のうちの一つに等しい。
【0097】
第一のスコアPは、可能な変形例では、ロジスティック回帰を用いて計算される。
【0098】
統計学では、ロジスティック回帰モデルは、あるイベントが存在する確率をモデル化するために用いられ、例えば、第一の部分に進行性癌が含まれる確率をモデル化するために用いられる。
【0099】
第一のスコアPは、例えば、以下の式に従ってロジスティック回帰を用いて計算される。
【数4】
【数5】
ここで、xは、第一の量x
1、第二の量x
2、及び第三の量x
3のうちの一つであり、e
0及びe
1は、それぞれ定数である。
【0100】
この場合には、スコアPは、考慮される第一の部分に進行性癌が含まれている確率である。
【0101】
例えば、我々のデータでは、スコアは、
【数6】
x=x
1、a
1=-2.39×10
-3、ADCはADC2(すなわち、ADCの第二の百分位数)、Wは正規化されたウォッシュイン速度、e
0=3.51、e
1=-5.89.10
3であれば、前立腺の辺縁領域におけるISUP≧2の癌の存在に対しての最高のロジスティック回帰モデルであることが見出された。
【0102】
別の変形例では、第一のスコアPは、二つ又は三つの確率を計算することによって得られ、各確率は、第一の量x1、第二の量x2、及び第三の量x3のそれぞれの量について、式4に従って、ロジスティック回帰を用いて計算され、計算された三つの確率を合計することによって得られる。
【0103】
一般的に、計算されたスコアPと、第一の量x1、第二の量x2、及び第三の量x3のいずれか、又はこれらの量の組み合わせ(合計又は重み付け和等)との間に全単斜的な関係(bijective relationship)があれば、多くのタイプのスコアPが想定できることに留意すべきである。
【0104】
例えば,スコアPは、第一の量x1,第二の量x2,及び第三の量x3のうちの一つを定数で除算又は乗算することによって得られ,場合によっては,無次元量xとなる可能性があり、その無次元量は,スコアPを計算するために式5に任意に入力される。
【0105】
前述したように、第一の量x1、第二の量x2、及び第三の量x3の計算に関与するパラメーターADC、WI、WO、及びTTPを表すために用いられる単位も変更することができ、それに応じてパラメーターa及びb1を適合させることができる。
【0106】
任意に、計算ステップ130の間、制御モジュール15は、更に、TZの第二の部分、又は各第二の部分についての第二のスコアYを計算する。
【0107】
第二のスコアYは、第四の量yの関数として計算される。第四の量yは無次元である。
【0108】
第四の量yは、以下の式の関数として計算される。
【数7】
ここで、d
0は、第五の定数であり、d
1は、第六の定数であり、ADCは、考慮される第二の部分における見かけ上の拡散係数値の25以下の百分位数、特に第十の百分位数である。
【0109】
第五の定数d0は2.25と13.48の間に含まれ、特に7.9に等しい。
【0110】
第六の定数d1は、-23820s/mm2と-4490s/mm2の間、特に-15030と-6910の間、に含まれる。特に、第六の定数d1は、-10740に等しい。
【0111】
第二のスコアYは、例えば、以下の式を使って計算される:
【数8】
ここで、yは第四の量である。
【0112】
しかし、第一のスコアPの場合と同様に、第四の量yから第二のスコアYを計算するために、多くの異なる方法を用いることができる。例えば、第二のスコアYは、第四の量yと等しい。
【0113】
決定ステップ140の間に、制御モジュール15は、各第一の部分について、考慮されるPZの第一の部分が、進行性癌を含むか否かを決定する。
【0114】
特に、制御モジュール15は、第一のスコアPに基づく第一の基準が検証されたか否かを決定し、基準が検証された場合に、第一の部分が進行性癌を含むと決定する。
【0115】
一実施形態によれば、基準は、第一のスコアPが第一の閾値以下という事実であり、この場合には、制御モジュールは、第一のスコアPを第一の閾値と比較し、第一のスコアPが第一の閾値以下の場合には、第一の部分が進行性癌を含むと決定する。第一のスコアPが第一の閾値よりも厳密に上位である場合には、制御モジュール15は、第一の部分が進行性癌を含まないと決定する。
【0116】
これは,第一のスコアPが第一の量x1,第二の量x2及び第三の量x3のうちの一つに等しい場合に顕著である。この場合には、第一の閾値は、例えば「スコア閾値」と称する。
【0117】
スコア閾値は、例えば、第一のスコアPが第一の量x1に等しい場合には、-0.8×10-3mm2/sと2.3×10-3mm2/sの間に構成され、Wは正規化されたウォッシュイン速度である。特に、スコア閾値は、0.55×10-3mm2/sと0.8×10-3mm2/sの間に含まれる。
【0118】
Wが正規化されたウォッシュアウト速度である場合には、スコア閾値は、例えば、-1.1×10-3と3.2×10-3mm2/sの間に含まれる。特に、スコア閾値は、0.85×10-3mm2/sと1.1×10-3mm2/sの間に含まれる。
【0119】
第一のスコアPが第二の量x2に等しい場合には、スコア閾値は、例えば、-1.1×10-3mm2/sと3.3×10-3mm2/sの間、特に、0.9×10-3mm2/sと1.1×10-3mm2/sの間に含まれる。
【0120】
スコア閾値は、例えば、スコアPが第三の量x3に等しい場合には、0.40に等しい。
【0121】
他の基準を考慮してもよいことに留意すべきである。
【0122】
第一のスコアPが式4及び式5を用いて計算される場合には、基準は、第一のスコアPが第一の閾値以上という事実であり、この場合には、制御モジュールは、第一のスコアPを第一の閾値と比較し、第一のスコアPが第一の閾値以上の場合には、第一の部分が進行性癌を含むと決定する。第一のスコアPが第一の閾値よりも厳密に下位である場合には、制御モジュール15は、第一の部分が進行性癌を含まないと決定する。第一の閾値は、例えば「確率閾値」と称する。
【0123】
決定ステップ140の間に、制御モジュール15は、更に、各第二の部分について、考慮されるTZの第二の部分が進行性癌を含むか否かを決定する。
【0124】
特に、制御モジュール15は、第二の基準が検証されるか否かをチェックし、基準が検証される場合には、各第二の部分について、TZの考慮される第二の部分が進行性癌を含むと決定する。基準が検証されない場合には、制御モジュール15は、第二の部分が進行性癌を含まないと決定する。
【0125】
一実施形態によれば、制御モジュールは、第二のスコアYを第二の閾値と比較し、第二のスコアYが第二の閾値以下の場合に、第二の部分が進行性癌を含むと決定する。この場合には、基準は、第二のスコアYが第二の閾値以下という事実である。しかし、他の基準を考慮してもよい。
【0126】
例えば、制御モジュール15は、特に式6を用いて、第二の部分が進行性癌を含む確率を計算し、その確率が第二の確率閾値以上の場合に、第二の部分が進行性癌を含むと決定する。
【0127】
第二の確率閾値は、例えば、式6で用いられる値ADCがADCの第25の百分位数である場合には、0.70と0.77の間に含まれる。
【0128】
制御モジュール15が、第一及び第二の部分(複数可)のうちの一つの部分が進行性癌を含むと決定した場合には、制御モジュール15は、シグナリングステップ150の間に、医師に向けられたメッセージを生成する。
【0129】
このメッセージは、ヒューマン・マシン・インターフェース20によって医師に送信されることが意図されている。
【0130】
このメッセージは、少なくとも一つの第一の部分又は第二の部分に進行性癌が含まれていると決定されたことを医師に知らせるメッセージである。
【0131】
このメッセージは、例えば、進行性癌又は進行性癌を含む第一又は第二の部分(複数可)が、その上に赤色で輪郭が描かれているか、又は、考慮される第一又は第二の部分が癌である可能性が高いことを記載した書面によるメッセージを伴っている、第一又は第二の画像のうちの一つのような、進行性癌、又は進行性癌を含む第一又は第二の部分(複数可)の表示、を含んでいる。
【0132】
このメッセージは、任意に、アラーム信号のような、癌の発見を示す音を伴うことができる。
【0133】
このメッセージは、医師がその情報を理解できるようであれば、どのような形式でもよいことに留意すべきである。
【0134】
その後、医師は、第一又は第二の部分における進行性癌の存在に関する制御モジュールの評価を医師が共有するか否かを決定するために、第一又は第二の画像上で、又は他の方法を用いて、メッセージに示された第一又は第二の部分を詳細に観察することができる。
【0135】
更に、本方法は、第一及び第二の画像を調査した医師が、被験者の前立腺の分析をシステム10によって逆チェックさせることを可能にし、これにより、システムが、医師が見落とされた可能性があるか又は癌が明瞭に現れない前立腺の領域内に癌が存在する可能性があることに、医師の注意を向けるように指示すれば、医師によって見落とされた癌を診断することが可能になる。
【0136】
可能な変形例では、シグナリングステップ150は実施されず、制御モジュール15が進行性癌の存在を決定したという事実が、例えば、単純にメモリ40に格納される。
【0137】
進行性前立腺癌の診断を支援する方法は、例えば、前立腺癌の診断方法の一部として実施され、進行性前立腺癌の診断を支援する方法の間に生成されたメッセージ(複数可)の関数として、前立腺癌が診断される診断ステップを含む。
【0138】
特に、前立腺癌の診断方法は、前立腺癌の治療方法の一部であり、前立腺癌の診断方法を実施することによって診断された前立腺癌を治療するステップを含む。
【0139】
式1~式3及び式5は、本発明者らにより、進行性前立腺癌と診断され、治療を受たことで、生検、マルチパラメトリックMRI及び根治的前立腺切除術を連続して受けた265人の患者からの、MRIシーケンスを含む学習データベース、を用いた研究の過程で決定された。
【0140】
T2-重み付け画像、拡散重み付け画像、及び動的コントラスト強調画像が系統的に記録され、2人の独立した放射線科医師が前向きにレビューした。各シークエンスにおいて、癌が疑われる領域が区分された。コンピューター・プログラムが、これらの領域から、23の定量的パラメーターを抽出した。
【0141】
学習用データベースには、メーカーやタイプの異なるいくつかのMRスキャナーによって、異なる磁場値を用いて、取得されたMR画像が含まれている。
- Siemens社製のSymphonyスキャナー(1.5Tesla、患者数63人、疑わしい病変数233個)、
- General Electric Medical Systems社製のDiscovery MR 750スキャナー(3T、患者数124人、病変数272個)、
- Philips medical systems社製のAchieveスキャナー(3T、患者数52人、病変数173個)。
- Philips healthcare社製のIngeniaスキャナー(3T、患者数26人、病変数56個)
【0142】
モデルは、機械学習技術によって発見され、異なる変数を再帰的にブラウズし、それらを含むパフォーマンスを一つずつテストした。新しい変数は、対応する係数とそれが説明する偏差が、モデル内で統計的に有意であり、モデル内の他の各変数との相関が50%より低い場合に、保持された。
【0143】
閾値は、生検によって良性又は悪性の性質が確定された、疑わしい病変を含む前立腺のMR画像を含む中間データベースを用いて決定され、90%の感度が得られるように選択された。
【0144】
中間データベースは、学習データベースと同様に、GE社製のMR750とPhilips Healthcare社製のIngeniaの各スキャナーから得られたMRデータを用い、それぞれは患者数101人と患者数11人から得られたデータである。
【0145】
選択されたパラメーターから式1~3及び5が構築され、その後、そのパフォーマンスが、学習及び中間データベースとは異なる患者からのデータ(MRI画像及び生検)を含むテストデータベース上で評価された。学習データベースは、前立腺癌が確認された患者のデータのみを含んでいるのに対し、テストデータベースは、前立腺癌が疑われるが、癌が確認されていない患者を含んでいる。
【0146】
前立腺癌の診断を支援する方法は、テストデータベース上のMRI画像に実施され、2人の放射線科医師がMRI画像上の第一の部分と第二の部分の輪郭を描くことを含む。
【0147】
放射線科医師により158人の患者のデータから合計238個の疑わしい病変が同定され、生検からは、良性病変が126個(PZ内に114個、TZ内に12個)、グリーソンスコア(Gleason score)が6の癌が34個(PZ内に30個、TZ内に4個)、グリーソンスコアが7以上の癌が78個(PZ内に71個、TZ内に7個)であった。
【0148】
テストデータベースのMR画像は、4つの異なるMRスキャナーによって取得された。
- General Electric Medical Systems社製のDiscovery MR750スキャナー(3T、患者数62人、病変数93個)、
- Philips healthcare社製のIngeniaスキャナー(3T、患者数22人、病変数41個)、
- GE medical systems社製のOptima MR450w(1.5T、患者数66人、病変数91個)、及び
- Philips Healthcare社製のIngenia(1.5T、患者数8人、病変数13個)。
【0149】
式1、式2、式3、及び式5の各々を用いたシステムの感度と特異性は、患者の前立腺の対応する部分の生検から得られた診断結果と比較することにより推定した。システムのパフォーマンスは、感度を90%に設定したときに達成された特異性(「特異性sp90」と称する)から測定された。
【0150】
式1を用いたシステム10の精度は、Wを正規化されたウォッシュイン速度として、テストデータベース上で用いられた場合には、一貫して0.5を超える特異性を示しADCが40以下の百分位数であり、第一の定数a
1は、-6×10
-3mm
2と-10
-3mm
2の間に含まれている。テストデータベース内での、式1を用いたシステム10についての、Wを正規化されたウォッシュイン速度とする、ADCとa
1の関数としての特異性sp90の値が、
図3に示される。
【0151】
図3~5では、閾値より高い特異性sp90の領域を区切る輪郭が示されており、例えば、「0.55」と記された線は、0.55より高いsp90に対応するデータの全ての領域を含んでいる。
【0152】
特に、ADCが30以下の百分位数であり、第一の定数a1が、-5×10-3mm2と-3×10-3mm2の間に含まれる場合には、特異性は一貫して0.55を超えていた。
ADCが10以下の百分位数であり、第一の定数a1が、-4.5×10-3mm2と-3×10-3mm2の間に含まれる場合には、特異性は実質的に0.58を超えているか同等であった。
【0153】
テストデータベース上で、ADCが第二の百分位数であり、第一の定数a1が、-3.96×10-5mm2に等しい値であり、特異性が0.606に等しい場合に、最高のパフォーマンスが得られた。
【0154】
式1を用いたシステム10の精度は、Wを正規化されたウォッシュアウト速度として、ADCが15以下の百分位数であり、第二の定数a
1が、2×10
-2と15×10
-2mm
2の間に含まれた学習データベース上で用いられた場合には、一貫して0.45を超える特異性を示した。式1を用いたシステム10の学習データベース内での、Wを正規化されたウォッシュアウト速度とする、ADCとa
1の関数としての特異性sp90の値が、
図4に示される。
【0155】
特に、ADCが、2と10の間に含まれる百分位数であり、第一の定数a1が、4×10-2mm2と12×10-2mm2の間に含まれる場合には、特異性は一貫して0.50を超える値であった。
【0156】
最高のパフォーマンスは、学習データベース上で、ADCが第二の百分位数、第一の定数a1が、10×10-2mm2、特異性が0.549に等しい場合に得られた。
【0157】
式2を用いたシステム10の精度は、テストデータベース上で用いられ、ADCが、20と45の間に含まれる百分位数であり、第二の定数b1が、10-7mm2と14×10-7mm2の間に含まれる場合には、一貫して0.45を超える特異性を示した。
【0158】
式2を用いたシステム10の、テスト学習データベース内における、ADCとb
1の関数としての、特異性sp90の値が、
図5に示される。
【0159】
特に、ADCが、20と45の間に含まれる百分位数で、第二の定数b1が、10-7と9×10-7mm2の間に含まれる場合には、特異性は一貫して0.50を超える値であった。
【0160】
最高のパフォーマンスは、テストデータベース上で、ADCが、第25の百分位数、第二の定数b1が、5.1×10-7mm2、特異性が、0.539に等しい場合に得られた。
【0161】
システム10が式4を用い、量xが第三の量x3である、異なる場合において、第一の閾値、及び決定された定数c0及びc1の例を、以下に列挙する。
【0162】
a) ADCが最小の百分位数の場合には、第一の閾値は、0.18と0.37の間に含まれ、第七の定数c0は、2.41と3.61の間に含まれ、第八の定数c1は、-5880s/mm2と-4020s/mm2の間に含まれる(最高の結果を与える組み合わせは、第一の閾値が0.28に等しく、第七の定数c0が2.9に等しく、第八の定数c1が-4790s/mm2に等しい値であった)。
【0163】
b) ADCが第二の百分位数の場合には、第一の閾値は、0.17と0.39の間に含まれ、第七の定数c0は、3.55と4.92の間に含まれ、第八の定数c1は、-7150s/mm2と-5270s/mm2の間に含まれる(最高の結果を与える組み合わせは、第一の閾値が0.27に等しく、第七の定数c0が4.17に等しく、第八の定数c1が-6080s/mm2に等しい値であった)。
【0164】
c) ADCが第九の百分位数の場合には、第一の閾値は、0.17と0.38の間に含まれ、第七の定数c0は、4.42と5.92の間に含まれ、第八の定数c1は、-7570s/mm2と-5660s/mm2の間に含まれる(最高の結果を与える組み合わせは、第一の閾値が0.27に等しく、第七の定数c0が5.09に等しく、第八の定数c1が-6500s/mm2に等しい値であった)。
【0165】
d) ADCが第十の百分位数の場合には、第一の閾値は、0.17と0.38の間に含まれ、第七の定数c0は、4.47と5.96の間に含まれ、第八の定数c1は、-7560s/mm2と-5650s/mm2の間に含まれる(最高の結果を与える組み合わせは、第一の閾値が0.26に等しく、第七の定数c0が5.13に等しく、第八の定数c1が-6490s/mm2に等しい値であった)。
【0166】
e) ADCが第25の百分位数の場合には、第一の閾値は、0.14と0.36の間に含まれ、第七の定数c0は、4.59と6.44の間に含まれ、第八の定数c1は、-7430s/mm2と-5260s/mm2の間に含まれる(最高の結果を与える組み合わせは、第一の閾値が0.27に等しく、第七の定数c0が5.49に等しく、第八の定数c1が-6260s/mm2に等しい値であった)。
【0167】
システム10が式6を用いる、異なる場合において、第二の閾値、及び決定された定数d0及びd1の例を、以下に列挙する。
【0168】
f) ADCが第二の百分位数の場合には、第二の閾値は、0.07と0.75の間に含まれ、第9定数d0は、2.25と13.48の間に含まれ、第十の定数d1は、-23820s/mm2と-4490s/mm2の間に含まれる(最高の結果を与える組み合わせは、第二の閾値が0.4に等しく、第9定数d0が6.5に等しく、第十の定数d1が-11520s/mm2に等しい値であった)。
【0169】
g) ADCが9百分位数の場合には、第二の閾値は、0.07と0.71の間に含まれ、第9の定数d0は、3.83と12.5の間に含まれ、第十の定数d1は、-19500s/mm2と-6280s/mm2の間に含まれる(最高の結果を与える組み合わせは、第二の閾値が0.38に等しく、第9の定数d0が7.3に等しく、第十の定数d1が-11320s/mm2に等しい値であった)。
【0170】
h) ADCが10百分位数の場合には、第二の閾値は、0.06と0.71の間に含まれ、第9定数d0は、3.96と12.51の間に含まれ、第十の定数d1は、-19100s/mm2と-6430s/mm2の間に含まれる(最高の結果を与える組み合わせは、第二の閾値が0.39に等しく、第9定数d0が7.4に等しく、第十の定数d1が-11360s/mm2に等しい値であった)。
【0171】
i) ADCが25百分位数の場合には、第二の閾値は、0.14と0.64の間に含まれ、第9定数d0は、4.9と11.19の間に含まれ、第十の定数d1は、-15030s/mm2と-6910s/mm2の間に含まれる(最高の結果を与える組み合わせは、第二の閾値が0.4に等しく、第9定数d0が7.9に等しく、第十の定数d1が-10740s/mm2に等しい値であった)。
【0172】
量xを第一の量x1、ADCを第二の百分位数とする式4を用いたシステム10は、以下の症例において、一人の放射線科医師の描いた輪郭を用いた場合に、以下のAUC及び特異性(括弧内に他の放射線科医師の描いた輪郭を用いた場合の感度及び特異性の%を示す)を有することが判明した。
- 症例a:AUCは76%と86%の間(78%と87%の間)、特異性sp90は33%と52%の間(28%と63%の間)、
- 症例b:AUCは77%と86%の間(79%と87%の間)、特異性sp90は34%と54%の間(29%と66%の間)、
- 症例c:AUCは78%と88%の間(79%と88%の間)、特異性sp90は37%と61%の間(32%と74%の間)、
- 症例d:AUCは79%と88%の間(79%と88%の間)、特異性sp90は37%と62%の間(32%と74%の間)
- 症例e:AUCは79%と88%の間(80%と89%の間)、特異性sp90は39%と62%の間(38%と72%の間)。
【0173】
「AUC」は、偽陽性率の関数としての真陽性率の曲線下面積から推定されるパフォーマンスである。このような曲線は、当該技術分野では周知であり、しばしば「ROC(Receiver Operating Characteristic)曲線」と称される。
【0174】
式5を用いたシステム10は、以下の症例において、一人の放射線科医師の描いた輪郭を用いた場合に、以下のAUC及び特異性(括弧内に他の放射線科医師の描いた輪郭を用いた場合の感度と特異性の%を示す)を有することが判明した。
- 症例f:AUCは47%と86%の間(35%と83%の間)、特異性sp90は0%と80%の間(0%と82%の間)、
- 症例g:AUCは46%と88%の間(28%と85%の間)、特異性sp90は0%と83%の間(0%と82%の間)、
- 症例h:AUCは46%と89%の間(30%と85%の間)、特異性sp90は0%と83%の間(0%と82の間)、
- 症例i:AUCは50%と94%の間(29%と82%の間)、特異性sp90は0%と83%の間(0%と75%の間)。
【0175】
両量x1及びx2は、ADCの百分位点(centile)と、MRI画像の動的量(すなわち、造影剤が前立腺内又は前立腺外へ流入又は流出する間の値の時間の関数としての変化を反映する量)、すなわち、ウォッシュイン速度、ウォッシュアウト速度、又は、時間対ピーク値(time-to-peak value)と、を組み合わせることに留意すべきである。
【0176】
したがって、本発明の一部は、本発明者らにより、そのような組み合わせが前立腺の一部に癌が存在する可能性を反映していること、及び、共に組み合わせると画像から癌を効率的に発見することを導く値a1、b1及びADC百分位数の範囲が発見されたことにある。
【0177】
本明細書に記載されたコンピューター支援診断方法は、進行性前立腺癌の診断に役立てるために、当該診断法の結果に基づいて臨床診断を確立するために用いることができる。
【0178】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は試験管内(in vitro)又は生体外(ex vivo)で実施される。
【0179】
本方法の初期結果を確認するため、本発明者らにより追加の検証試験が実施された。
これらの結果は、単に一例としてのみ以下に示す。
【0180】
この例では、上述のテストデータセットとは独立した別のテストデータセット(「外部テストデータセット」と命名)で評価を実施した。
【0181】
この新しいデータベースは、1台のスキャナー、GE medical systems 社製のSigna Voyagerスキャナーで画像化された患者数104人、病変数126個が含まれている(1.5T、患者数104人、病変数126個)。
【0182】
これらの104人の患者は、癌が疑われ、他の施設でmpMRIとその後の生検を受けた。
【0183】
前述の試験と同様に、生検時に各病変に将来を見越して(prospectively)割り当てられたPI-RADSv2(Prostate Imaging-Reporting and Data System version 2)スコアを患者のカルテから検索した。次に、mpMRIの報告書に基づき、19年の経験(OR、R1)及び5年(PCM、R2)の経験を有する2人の放射線科医師が、互いの生検所見を盲検化し、T2-重み付け画像、拡散重み付け画像、DCE画像における、最も代表的となる可能性の高いスライスレベルで、対象病変の典型的(retrospectively)な輪郭を描いた。病変のスコアの算出は、その位置に応じてPZ又はTZモデルを用いて実施した。したがって、各病変は、PI-RADSv2スコア(生検時に将来を見越して割り当てられた)と、R1及びR2によって輪郭が描かれた関心領域(ROI)を用いた二つのCADスコアを受けた。その後、PI-RADSv2スコアと本発明により得られたスコアを生検所見と比較した。
【0184】
以下の表は、生検結果の関数としてのPI-RADSv2スコア及び本発明由来のスコアの分布の詳細である。
【0185】
【0186】
上の表において、データは患者数を示す。ISUPは、癌の重症度を測定する国際泌尿器病理学会のグレードの略称である。CADは、本発明によるコンピューター支援診断システムの略称である。
【0187】
新しいテストデータセットでは、R1とR2でそれぞれ輪郭が描かれたROIを用いたスコアAUCは82%(95%CI:76-89)と86%(95%CI:79-93)であった。これらは、生検時に割り当てられたPI-RADSv2スコア(85%、95%CI:79-91、それぞれp=0.82及びp=1)と有意差はなかった。
【0188】
この新しいテストは、全ての患者が、トレーニングデータセットで用いられたスキャナーとは異なる、より新しいスキャナーで画像化されたため、困難に直面していた。それにもかかわらず、本発明によるシステムは、(AUCによって定量化されるような)全体的な診断パフォーマンスだけでなく、(感度及び特異性によって定量化されるような)診断閾値に関しても、頑健な結果を提供した。驚くべきことに、テスト前のデータセットで90%の感度を示した閾値は、内部テストデータセット(85%~89%)及び外部テストデータセット(92%)でも同様の感度を示した。この感度のレベルでは、本発明によるコンピューター支援診断システムの特異性は良好であった(64%~76%)ことから、PI-RADSv2の古典的な閾値よりも優れた感度/特異性のトレードオフを提供できることが示唆された。
【国際調査報告】