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特表2024-516654神経上膜修復デバイスおよびその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-16
(54)【発明の名称】神経上膜修復デバイスおよびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/04 20130101AFI20240409BHJP
   A61L 27/24 20060101ALI20240409BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20240409BHJP
   A61L 27/58 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
A61F2/04
A61L27/24
A61L27/54
A61L27/58
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565943
(86)(22)【出願日】2022-04-27
(85)【翻訳文提出日】2023-12-20
(86)【国際出願番号】 AU2022050386
(87)【国際公開番号】W WO2022226590
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】2021901244
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514316178
【氏名又は名称】オーソセル・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェン、ミンハオ
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン、ポール
【テーマコード(参考)】
4C081
4C097
【Fターム(参考)】
4C081AB18
4C081AC01
4C081BA12
4C081BA16
4C081BB06
4C081BB07
4C081BB08
4C081CD121
4C081CD172
4C081CD27
4C081CD29
4C081CD31
4C081CE02
4C081CF032
4C081DA02
4C097AA20
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC05
4C097EE19
(57)【要約】
主題発明は、切断されたまたは損傷を受けた神経および/または神経上膜を、そのような治療を必要とする患者において修復することと一般的に関連する。特に、本発明は、切断されたまたは損傷を受けた神経および/または神経上膜を修復するデバイスおよび方法を提供する。いくつかの態様では、第1の表面と第2の表面とを含む柔軟なコラーゲン膜を備え、前記第1の表面が複数の突き出たコラーゲンの束を有し、および前記第2の表面が複数の開口部を備え、前記開口部および前記コラーゲンの束が、前記第1の表面および前記第2の表面が共に配置されるとき、自己嵌合型連結を形成するように配置構成される、切断されたまたは損傷を受けた神経および/または神経上膜をin vivoで修復するためのデバイスが提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面と第2の表面とを含む柔軟なコラーゲン膜を備え、前記第1の表面が複数の突き出たコラーゲンの束を有し、および前記第2の表面が複数の開口部を備え、前記開口部および前記コラーゲンの束が、前記第1の表面および前記第2の表面が共に配置されるとき、自己嵌合型連結を形成するように配置構成される、切断されたまたは損傷を受けた神経をin vivoで修復するためのデバイス。
【請求項2】
前記開口部および前記コラーゲンの束が、前記第1の表面および前記第2の表面が共に配置されるとき、相互にインターロックするように構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記柔軟なコラーゲン膜が、細長い外形の膜である、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記柔軟なコラーゲン膜が、前記第1の表面および前記第2の表面が相互に自己連結するように共に配置可能である方式で、哺乳動物神経の少なくとも長さ方向の部分の周囲にin situで巻き付けられることが可能なように構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記柔軟なコラーゲン膜が厚さ200ミクロン未満である、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記柔軟なコラーゲン膜が厚さ100ミクロン~200ミクロンである、請求項4に記載のデバイス。
【請求項7】
柔軟なコラーゲン膜が厚さ100ミクロン未満である、請求項5に記載のデバイス。
【請求項8】
前記柔軟なコラーゲン膜が厚さ75ミクロン未満である、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記哺乳動物神経が、切断されたまたは損傷を受けた神経上膜を含み、および前記デバイスが、前記切断されたまたは損傷を受けた神経の周囲に巻き付けられたとき、前記切断されたまたは損傷を受けた神経上膜を4週間未満のうちに修復する能力を有する、請求項4から8のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記柔軟なコラーゲン膜が80%を上回るI型コラーゲンを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記柔軟なコラーゲン膜が85%を上回るI型コラーゲンを含む、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記柔軟なコラーゲン膜が90%を上回るI型コラーゲンを含む、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記柔軟なコラーゲン膜がIII型コラーゲンをさらに含む、請求項10から12のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項14】
ヒドロキシアパタイト、増殖因子、走化性因子、または細胞外マトリックス分子のうちの1つ以上をさらに含む、請求項1から13のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項15】
前記増殖因子が、塩基性線維芽細胞増殖因子、腫瘍増殖因子ベータ、骨形態形成タンパク質、血小板由来増殖因子、およびインスリン様増殖因子からなる群から選択される、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記走化性因子が、フィブロネクチンもしくはヒアルロナン、またはその組合せである、請求項14に記載のデバイス。
【請求項17】
前記細胞外マトリックス分子が、アグリカン、ビグリカン、およびデコリンからなる群から選択される、請求項14に記載のデバイス。
【請求項18】
切断されたまたは損傷を受けた神経を修復するin vivo方法であって、
(i)第1の表面と第2の表面とを含む柔軟なコラーゲン膜を備え、前記第1の表面が複数の突き出たコラーゲンの束を有し、および前記第2の表面が複数の開口部を備え、前記開口部および前記コラーゲンの束が、前記第1の表面および前記第2の表面が共に配置されるとき、自己嵌合型連結を形成するように配置構成される、切断されたまたは損傷を受けた神経をin vivoで修復するためのデバイスと、
(ii)欠陥部位において、前記柔軟な膜を、切断されたまたは損傷を受けた神経の少なくとも長さ方向の部分の周囲にin situで巻き付けることと、ここにおいて、前記切断されたまたは損傷を受けた神経が切断されたまたは損傷を受けた神経上膜を含む、
(iii)前記デバイスが、前記切断されたまたは損傷を受けた神経上膜が修復されるまで、4週間未満である時間の期間、その場に留まることを可能にすることと
を含む方法。
【請求項19】
前記開口部および前記コラーゲンの束が、前記第1の表面および前記第2の表面が共に配置されるとき、相互にインターロックするように構成される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記柔軟なコラーゲン膜が、細長い外形の膜である、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記柔軟なコラーゲン膜が、前記第1の表面および前記第2の表面が相互に自己連結するように共に配置可能である方式で、神経の少なくとも長さ方向の部分の周囲にin situで巻き付けられることが可能なように構成される、請求項18から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記柔軟なコラーゲン膜が厚さ200ミクロン未満である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記柔軟なコラーゲン膜が厚さ100ミクロン~200ミクロンである、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記柔軟なコラーゲン膜が厚さ100ミクロン未満である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記柔軟なコラーゲン膜が厚さ75ミクロン未満である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記神経が切断されたまたは損傷を受けた神経上膜を含み、および前記デバイスが、前記切断されたまたは損傷を受けた神経の周囲に巻き付けられたとき、前記切断されたまたは損傷を受けた神経上膜を4週間未満のうちに修復する能力を有する、請求項21から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記柔軟なコラーゲン膜が80%を上回るI型コラーゲンを含む、請求項18から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記柔軟なコラーゲン膜が85%を上回るI型コラーゲンを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記柔軟なコラーゲン膜が90%を上回るI型コラーゲンを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記柔軟なコラーゲン膜がIII型コラーゲンをさらに含む、請求項27から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記デバイスが、ヒドロキシアパタイト、増殖因子、走化性因子、または細胞外マトリックス分子のうちの1つ以上をさらに含む、請求項18から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記増殖因子が、塩基性線維芽細胞増殖因子、腫瘍増殖因子ベータ、骨形態形成タンパク質、血小板由来増殖因子、およびインスリン様増殖因子からなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記走化性因子が、フィブロネクチンもしくはヒアルロナン、またはその組合せである、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記細胞外マトリックス分子が、アグリカン、ビグリカン、およびデコリンからなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記切断されたまたは損傷を受けた神経上膜の修復が、瘢痕組織形成、または患者の周辺組織に対する修復された神経の線維性癒着を伴わない、前記デバイスの神経および/または神経上膜への奏功的一体化を含む、請求項18から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記奏功的一体化が、下記事項:
(i)前記デバイスが前記修復された神経から突き出ないこと、
(ii)前記欠陥部位において、瘢痕組織形成がほとんどまたはまったく存在しないこと、
(iii)前記患者内の周辺軟組織に対する前記修復された神経の線維性癒着がほとんどまたはまったく存在しないこと、
(iv)組織学的検査が、神経修復部位において新たな血管形成された神経上膜様組織を明らかにすること、
(v)連結後しかるべき時間の期間が経過した後に、炎症反応のエビデンスが存在しないこと、
(vi)免疫組織化学により、豊富に存在するニューロフィラメントが新規神経上膜組織に隣接して検出されること、
(vii)十分に組織化された神経線維が前記神経修復部位に対して遠位側で観察されること、および
(viii)修復部位を横断する奏功的軸索再生のエビデンス
のうちの1つ以上を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
(i)切断されたまたは損傷を受けた神経上膜を含むドナー神経を提供することと、
(ii)第1の表面と第2の表面とを含む柔軟なコラーゲン膜を備え、前記第1の表面が複数の突き出たコラーゲンの束を有し、および前記第2の表面が複数の開口部を備え、前記開口部および前記コラーゲンの束が、前記第1の表面および前記第2の表面が共に配置されるとき、自己嵌合型連結を形成するように配置構成される、切断されたまたは損傷を受けた神経をin vivoで修復するためのデバイスを提供することと、
(iii)前記ドナー神経をその場で縫合し、次に前記切断されたまたは損傷を受けた神経上膜を格納するために、前記柔軟なコラーゲン膜を、前記ドナー神経の少なくとも長さ方向の部分の周囲に巻き付けることと、
(iv)前記切断されたまたは損傷を受けた神経上膜が修復されるまで、4週間未満のある時間の期間、前記デバイスがその場に留まることを可能にすることと、
を含む、in vivo神経移植方法。
【請求項38】
前記開口部および前記コラーゲンの束が、前記第1の表面および前記第2の表面が共に配置されるとき、相互にインターロックするように構成される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記柔軟なコラーゲン膜が、細長い外形の膜である、請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
前記柔軟なコラーゲン膜が、前記第1の表面および前記第2の表面が相互に自己連結するように共に配置可能である方式で、神経の少なくとも長さ方向の部分の周囲にin situで巻き付けられることが可能なように構成される、請求項37から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記柔軟なコラーゲン膜が厚さ200ミクロン未満である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記柔軟なコラーゲン膜が厚さ100ミクロン~200ミクロンである、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記柔軟なコラーゲン膜が厚さ100ミクロン未満である、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記柔軟なコラーゲン膜が厚さ75ミクロン未満である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記神経が、切断されたまたは損傷を受けた神経上膜を含み、および前記デバイスが、前記切断されたまたは損傷を受けた神経の周囲に巻き付けられたとき、前記切断されたまたは損傷を受けた神経上膜を4週間未満のうちに修復する能力を有する、請求項40から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記柔軟なコラーゲン膜が80%を上回るI型コラーゲンを含む、請求項37から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記柔軟なコラーゲン膜が85%を上回るI型コラーゲンを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記柔軟なコラーゲン膜が90%を上回るI型コラーゲンを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記柔軟なコラーゲン膜がIII型コラーゲンをさらに含む、請求項37から48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記デバイスが、ヒドロキシアパタイト、増殖因子、走化性因子、または細胞外マトリックス分子のうちの1つ以上をさらに含む、請求項37から49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記増殖因子が、塩基性線維芽細胞増殖因子、腫瘍増殖因子ベータ、骨形態形成タンパク質、血小板由来増殖因子、およびインスリン様増殖因子からなる群から選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記走化性因子が、フィブロネクチンもしくはヒアルロナン、またはその組合せである、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記細胞外マトリックス分子が、アグリカン、ビグリカン、およびデコリンからなる群から選択される、請求項50に記載の方法
【請求項54】
前記切断されたまたは損傷を受けた神経上膜の修復が、瘢痕組織形成、または患者の周辺組織に対する修復された神経の線維性癒着を伴わない、前記デバイスの神経および/または神経上膜への奏功的一体化を含む、請求項37から53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記奏功的一体化が、下記事項:
(i)前記デバイスが前記修復された神経から突き出ないこと、
(ii)欠陥部位において、瘢痕組織形成がほとんどまたはまったく存在しないこと、
(iii)前記患者内の周辺軟組織に対する前記修復された神経の線維性癒着がほとんどまたはまったく存在しないこと、
(iv)組織学的検査が、神経修復部位において新たな血管形成された神経上膜様組織を明らかにすること、
(v)連結後しかるべき時間の期間が経過した後に、炎症反応のエビデンスが存在しないこと、
(vi)免疫組織化学により、豊富に存在するニューロフィラメントが新規神経上膜組織に隣接して検出されること、
(vii)十分に組織化された神経線維が、前記神経修復部位に対して遠位側で観察されること、および
(viii)修復部位を横断する奏功的軸索再生のエビデンス
のうちの1つ以上を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
切断されたまたは損傷を受けた神経および/または神経上膜をin vivoで修復するための修復キットであって、
(i)第1の表面と第2の表面とを含む柔軟なコラーゲン膜を備え、前記第1の表面が複数の突き出たコラーゲンの束を有し、および前記第2の表面が複数の開口部を備え、前記開口部および前記コラーゲンの束が、前記第1の表面および前記第2の表面が共に配置されるとき、自己嵌合型連結を形成するように配置構成される、切断されたまたは損傷を受けた神経および/または神経上膜をin vivoで修復するためのデバイスと、
(ii)前記デバイスを保持するための滅菌容器と、
(iii)前記デバイスを、修復を必要とする神経および/または神経上膜に連結するための指示書と
を含むキット。
【請求項57】
縫合糸、鉗子、縫合針、フィブリン糊、および組織に接近するための付属ツールのうちの1つ以上をさらに含む、請求項56に記載の修復キット。
【請求項58】
前記組織に接近するための付属ツールが、クリップ、基準分銅、アスピレーション装置、および圧縮ゲージからなる群から選択される、請求項57に記載の修復キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張および関連出願
本出願は、2021年4月27日出願のオーストラリア国仮特許出願第2021901244号の優先権を主張し、同号はここにおいて参照によりそのまま組み込まれる。
【0002】
主題発明は、切断されたまたは損傷を受けた神経および/または神経上膜を、そのような治療を必要とする患者において修復することと一般的に関連する。
【背景技術】
【0003】
神経は、ニューロンの周辺プロセス(または軸索)を担持する。神経細胞体は、脊髄(運動ニューロン)内、脊柱に沿って所在する神経節(脊髄感覚神経節)内、または身体の器官全体を通じて見出される神経節(自律性および腸神経節)内に存在する。神経は、軸索、シュワン細胞、および多岐にわたる結合組織の鞘から構成される。外部被覆(神経上膜)は、神経束に対する外部圧力を和らげ、また神経周膜を取り囲むコラーゲン性の結合組織からなる。神経周膜は個々の神経束を取り囲み、そして神経内膜微小血管内の内皮細胞と共に、血液神経関門として機能する。神経内膜は神経周膜内部に存在し、そしてシュワン細胞および軸索を取り囲むコラーゲン組織から構成される。神経束群は、神経周膜および神経上膜によりそれぞれ取り囲まれた2つ以上の神経束から構成される。神経のトポグラフィーは遠位側において一定であり、感覚神経または運動神経のいずれかである神経束の群を有する。ニューロンは、神経細胞体(soma)(細胞体(cell body))および軸索から構成され、長さ数フィートに達し得る。
【0004】
神経に対する損傷は、物理的傷害または腫脹(たとえば、手根管症候群)、自己免疫疾患(たとえば、ギラン・バレー症候群)、感染症(神経炎)、糖尿病、または神経を取り囲む血管の不具合により引き起こされる可能性がある。神経傷害は慢性能力障害の主原因である。神経傷害の管理が不十分であると、それは筋萎縮と関連し、そして切断された軸索が遠位神経との連続性を再構築することができないとき、有痛の神経腫を引き起こすおそれがある。神経は傷害後に再生する可能性を有するものの、この能力は切断された神経セグメントとの適切な接触をもたらす再生性の神経線維に厳密に依存する。
【0005】
損傷を受けた神経の修復は、神経(神経上膜)を取り囲む保護性の被鞘に対する損傷、切断された神経の近位断端と遠位断端との間のギャップ、および損傷を受けた神経が再生する能力の限界を含むいくつかの要因により妨害される。
【0006】
様々な無縫合神経修復法が、生物学的接着剤の使用を含め探求されてきた。接着技術の長所として、適用の簡便性および修復時間の迅速性といった可能性が挙げられる。残念ながら、チューブまたは導管のようなデバイスの補助を仰がずに、ほとんどの神経修復において確実な神経融合を保証するには、フィブリン糊のような生物学的接着剤は接着性および引張強度に乏しい。
【0007】
末梢神経再生を誘導するためのチューブまたは導管は、材料、たとえばポリラクチド、ポリラクチド/ポリグリコリドコポリマー、アクリル性コポリマー、実行型中皮性チューブ、または様々なその他の合成ポリエステル等から一般的になる。これらの材料からなるチューブまたは導管を使用する短所として、たとえば、免疫応答、瘢痕組織の誘発、および適用の難しさが挙げられる。たとえば、このような導管の多くは硬質過ぎ、またin vivoでの用途に容易に適合しない。
【0008】
神経を修復する際の主な問題の1つとして神経上膜の修復が挙げられる。現在利用可能なデバイスおよび技術を使用した場合、神経上膜の治癒が不十分であることがしばしば見出される。このようなデバイスは、神経内の空隙またはギャップを埋め、または切断された神経の癒合さえ実現する能力を有することが明らかにされているが、修復された神経は、瘢痕組織;患者内の周辺軟組織に対する線維性癒着;炎症、ニューロフィラメント増殖の欠如、および修復部位を横断する軸索の不再生といった問題を多くの場合有する。
【0009】
したがって、患者において、切断されたまたは損傷を受けた神経および/または神経上膜を修復する安全で有効な手段を提供する材料および技術に対する必要性が存続する。
【発明の概要】
【0010】
第1の側面では、本発明は、第1の表面と第2の表面とを含む柔軟なコラーゲン膜を備え、前記第1の表面が複数の突き出たコラーゲンの束を有し、および前記第2の表面が複数の開口部を備え、前記開口部および前記コラーゲンの束が、前記第1の表面および前記第2の表面が共に配置されるとき、自己嵌合型連結を形成するように配置構成される、切断されたまたは損傷を受けた神経上膜をin vivoで修復するためのデバイスを提供する。
【0011】
第2の側面では、本発明は、切断されたまたは損傷を受けた神経上膜を修復するin vivo方法であって、
(i)第1の表面と第2の表面とを含む柔軟なコラーゲン膜を備え、前記第1の表面が複数の突き出たコラーゲンの束を有し、および前記第2の表面が複数の開口部を備え、前記開口部および前記コラーゲンの束が、前記第1の表面および前記第2の表面が共に配置されるとき、自己嵌合型連結を形成するように配置構成される、切断されたまたは損傷を受けた神経上膜をin vivoで修復するためのデバイスを提供することと、
(ii)前記柔軟な膜を、切断されたまたは損傷を受けた神経の少なくとも長さ方向の部分の周囲にin situで巻き付けることと、ここにおいて、前記切断されたまたは損傷を受けた神経が切断されたまたは損傷を受けた神経上膜を含む、
(iii)前記デバイスが、前記切断されたまたは損傷を受けた神経上膜が修復されるまで、ある時間の期間、その場に留まることを可能にすることと
を含む方法を提供する。
【0012】
第3の側面では、本発明は、第1の表面と第2の表面とを含む柔軟なコラーゲン膜を備え、前記第1の表面が複数の突き出たコラーゲンの束を有し、および前記第2の表面が複数の開口部を備え、前記開口部および前記コラーゲンの束が、前記第1の表面および前記第2の表面が共に配置されるとき、自己嵌合型連結を形成するように配置構成される、切断されたまたは損傷を受けた神経をin vivoで修復するためのデバイスを提供する。
【0013】
第4の側面では、本発明は、切断されたまたは損傷を受けた神経を修復するin vivoでの方法であって、
(i)第1の表面と第2の表面とを含む柔軟なコラーゲン膜を備え、前記第1の表面が複数の突き出たコラーゲンの束を有し、および前記第2の表面が複数の開口部を備え、前記開口部および前記コラーゲンの束が、前記第1の表面および前記第2の表面が共に配置されるとき、自己嵌合型連結を形成するように配置構成される、切断されたまたは損傷を受けた神経をin vivoで修復するためのデバイスを提供することと、
(ii)前記柔軟な膜を、切断されたまたは損傷を受けた神経の少なくとも長さ方向の部分の周囲にin situで巻き付けることと、
(iii)前記デバイスが、前記切断されたまたは損傷を受けた神経が修復されるまで、ある時間の期間、その場に留まることを可能にすることと
を含む方法を提供する。
【0014】
第5の側面では、本発明は、
(i)神経上膜を含むドナー神経を提供することと、
(ii)第1の表面と第2の表面とを含む柔軟なコラーゲン膜を備え、前記第1の表面が複数の突き出たコラーゲンの束を有し、および前記第2の表面が複数の開口部を備え、前記開口部および前記コラーゲンの束が、前記第1の表面および前記第2の表面が共に配置されるとき、自己嵌合型連結を形成するように配置構成される、切断されたまたは損傷を受けた神経をin vivoで修復するためのデバイスを提供することと、
(iii)前記ドナー神経をその場で縫合し、次に前記神経上膜を格納するために、前記柔軟なコラーゲン膜を、ドナーおよびレシピエント神経の少なくとも長さ方向の部分の周囲に巻き付けることと、
(iv)神経の癒合が生ずるまで、前記デバイスがその場に留まることを可能にすることと
を含む、in vivo神経移植方法を提供する。
【0015】
いくつかの態様では、開口部およびコラーゲンの束は、第1の表面および第2の表面が共に配置されるとき、相互にインターロックするように構成される。
【0016】
いくつかの態様では、膜は細長い外形の膜である。
【0017】
いくつかの態様では、柔軟なコラーゲン膜は、第1の表面および第2の表面が相互に自己連結するように共に配置可能である方式で、哺乳動物神経の少なくとも長さ方向の部分の周囲にin situで巻き付けられることが可能なように構成される。
【0018】
いくつかの態様では、哺乳動物神経は、切断されたまたは損傷を受けた神経上膜を含み、ここにおいて、柔軟なコラーゲン膜は厚さ200ミクロン未満であり、およびここにおいて、デバイスは、切断されたまたは損傷を受けた神経の周囲に巻き付けられたとき、切断されたまたは損傷を受けた神経上膜を4週間未満のうちに修復する能力を有する。
【0019】
いくつかの態様では、時間の期間は、デバイスが修復される神経または神経上膜に奏功的に一体化するのを可能にするのに十分である。奏功的な一体化は目視的または組織学的に評価可能である。
【0020】
いくつかの態様では、損傷を受けた神経または損傷神経上膜は欠陥部位を引き起こす。
【0021】
第6の側面では、本発明は、神経および/または神経上膜をin vivoで修復するための修復キットであって、
(i)第1の表面と第2の表面とを含む柔軟なコラーゲン膜を備え、前記第1の表面が複数の突き出たコラーゲンの束を有し、および前記第2の表面が複数の開口部を備え、前記開口部および前記コラーゲンの束が、前記第1の表面および前記第2の表面が共に配置されるとき、自己嵌合型連結を形成するように配置構成される、切断されたまたは損傷を受けた神経および/または神経上膜をin vivoで修復するためのデバイスと、
(ii)前記デバイスを保持するための滅菌容器と、
(iii)前記デバイスを、修復を必要とする神経および/または神経上膜に連結するための指示書と
を含むキットを提供する。
【0022】
任意に、修復キットは、縫合糸;鉗子、縫合針、フィブリン糊、および組織に接近するための付属ツール(たとえば、クリップ、基準分銅、アスピレーション装置、および圧縮ゲージ)のうちの1つ以上をさらに含む。
【0023】
この特許のファイルは、カラー表現された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面(複数可)を含むこの特許のコピーが、特許商標庁より、要請および必要手数料の支払いに応じて提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の神経修復デバイス(10)の前臨床試験における外科手技を示す図。坐骨神経を完全に切断し、次に神経上膜微小縫合糸を用いて修復した(16)。非吸収性の縫合糸(18)を使用して、修復部位(20)のいずれか側において、神経断端(12)に取り付けられた本発明の神経修復デバイス(10)により修復部位(20)を格納した。
図2】末梢神経傷害のラットモデルにおける、A)本発明の神経修復デバイス、およびB)FDA認可されたコラーゲン神経デバイス(NEURAWRAP(登録商標))の留置を示す図。白矢印-移植されたデバイス。
図3】末梢神経傷害のラットモデル(治療後4週間)を示す図-A)およびB)本発明の神経修復デバイスを用いた神経修復;C)本発明の神経修復デバイスのコントロール(未施術の対側部);D)およびE)FDA認可されたコラーゲン神経デバイス(NEURAWRAP(登録商標));F)FDA認可されたデバイス(NEURAWRAP(登録商標))のコントロール(未施術の対側部)。白矢印-神経デバイス;緑矢印-神経デバイスの周辺軟組織に対する癒着。
図4】ラット末梢神経傷害試験に由来する神経組織のH&E染色剤を示す図。A)本発明の神経修復デバイス;B)FDA認可されたコラーゲン神経デバイス(NEURAWRAP(登録商標))。黒色のスケールバー=500μm 青矢印-デバイス;緑矢印-神経線維;黄色星印-炎症細胞。
図5】四肢麻痺を有する人々における、腕および手の機能を改善するために神経を移植した後の運動リカバリーを示す図。M3またはそれより良好なリカバリーは、機能的運動リカバリー(FMR)として分類される。
図6】四肢麻痺を有する人々を対象とする、神経移植の公表された試験と比較した、CG-006における三頭筋機能のリカバリーを示す図。
図7】本発明の神経修復デバイスの超越構造を示す図。本発明の神経修復デバイス内の柔軟なコラーゲン膜は、平滑面である第1の表面と粗面である第2の表面とを含む二重層を含むことを認めることができる。第1の表面および第2の表面は、共にロックするように嵌合する能力を有する。
図8】本発明の神経修復デバイスの粗面側のコラーゲンの束が、デバイスの平滑な側面の孔内に、それらがin vivoで見出される条件に類似する多湿条件下で重なり合うとき、神経を包み込み、そしてその形状に保つための嵌合性の接着表面を生成する(VELCRO(登録商標)の作用に類似する)ように没入することができることを示す図。これは、本発明の神経修復デバイスが、軟組織の圧縮から神経を保護し、そして神経保護のための神経上膜のような障壁構造として作用するのを可能にする。
図9】遠位部位における有髄軸索の測定を示す図。4週間後に、NEURAWRAP(登録商標)製品の場合68%であったが、それと比較して本発明の神経修復デバイスは、97%の軸索の保存を誘発したことを認めることができる。
図10】パネルAは、粗面(第1の表面)が内部および平滑面(第2の表面)が外部となるように折り畳まれた柔軟なコラーゲン膜のSEMを示す図。パネルBは、第1の表面(粗面)を横方向から示す図;パネルCは平滑面(第2の表面)のアライメントを示す図;パネルDはコラーゲン原線維のスペーシングを示す図;パネルEは柔軟なコラーゲン膜内のコラーゲン線維直径の頻度分布を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
主題発明は、切断されたまたは損傷を受けた神経および/または神経上膜を、そのような治療を必要とする患者において修復するためのデバイスおよび方法を提供する。下記の説明において、医療用デバイスおよび神経修復と関連するいくつかの用語が利用される。本明細書および特許請求の範囲の理解に明確性および一貫性をもたらすために、そのような用語に付与される範囲を含め、下記の定義が提供される。
【0026】
本明細書において、「1つの態様」、「一態様」、「事例的態様」、「さらなる態様」、「代替的態様」等と記載する場合、いずれも文語的利便性のためである。そのような態様と関連付けて記載されている任意の特別な特性、構造、または特徴が、本発明の少なくとも1つの態様に含まれるということが意図される。本明細書内の様々な場所にそのような慣用句が現れても、それは同一の態様を必ずしも意味しない。それに加えて、ここで開示される任意の発明またはその態様の任意の要素または制限は、任意および/またはすべてのその他の要素または制限、あるいはここで開示される任意のその他の発明またはその態様と組み合わせることができ(個別にまたは任意の組合せで)、ならびにすべてのそのような組合せが、それに対して制限を設けずに本発明の範囲と共に検討される。
【0027】
別途定義されなければ、ここで使用されるすべての用語(技術的および科学的用語を含む)は、本発明が属する当業者により一般的に理解される意味と同一の意味を有する。用語、たとえば一般的に使用される辞書で定義されるもの等は、本明細書および関連する技術分野の文脈におけるその意味と整合する意味を有するものと解釈されるべきであり、そしてここでそのように明示的に定義する場合を除き、理想化されたまたは過剰に形式張った意味合いで解釈されるべきではないとさらに理解される。周知の機能または構築物は、簡潔化および/または明確化のために詳細に記載されない場合もある。
【0028】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が別途明示しない限り、複数形もやはり含むように意図されている。用語「~を含む(comprises)」および/または「~を含むこと(comprising)」は、本明細書で使用されるとき、記載される特性、整数、ステップ、操作、要素、および/またはコンポーネントの存在を規定するが、しかし1つ以上のその他の特性、整数、ステップ、操作、要素、コンポーネント、および/またはその群の存在または付加を排除しないものとさらに理解される。本明細書で使用される場合、用語「および/または」は、関連するリスト化された項目のうちの1つ以上のあらゆるすべての組合せを含む。本明細書で使用される場合、慣用句、たとえば「X~Y」および「約X~Y」等は、XおよびYを含むものと解釈されるべきである。本明細書で使用される場合、慣用句、たとえば「約X~Y」等とは「約X~約Y」を意味する。本明細書で使用される場合、慣用句、たとえば「約XからYまで」等とは、「約Xから約Yまで」を意味する。
【0029】
用語「約」とは、本明細書で使用される場合、該用語に続く数値において10%上下する偏差を指す。たとえば、約70%エタノールと記載する場合、63%~77%、すなわち数値70%についてその10%を上回るかまたは下回る範囲を含む。これは、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、および77%のエタノールを含む。
【0030】
用語「患者」は、本明細書で使用される場合、本発明のデバイスおよび方法が適用される任意の哺乳動物について記載する。開示されるデバイスおよび方法から利益を得ることができる哺乳動物種として、ヒト、類人猿、チンパンジー、オランウータン、サル;飼育化された動物(たとえば、ペット)、たとえばイヌ、ネコ、モルモット、ハムスター等;大型動物、たとえばウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ等に対する獣医学的使用;および獣医学を目的とする任意の野生動物が挙げられるが、ただしこれらに限定されない。ヒトまたはヒト以外の動物患者の年齢は、幼齢~高齢の範囲であり得る。
【0031】
用語「外科医」は、ここで使用される場合、文語的利便性のために過ぎない。該用語は、いかなる場合においても限定的に解釈されるべきでない。主題発明のデバイス、装置、方法、技術、および/または手順は、そうすることを望むかまたは必要とし、ならびに本発明の必要な技能および理解を有する任意の人員により利用され得る。
【0032】
用語「神経」および「神経組織」とは、本明細書で使用される場合、哺乳動物神経の構造全体を交換可能に指す。神経は、軸索、シュワン細胞、および多岐にわたる結合組織の鞘から構成されることは、当業者により十分理解されている。外部被覆(神経上膜)は、神経束に対する外部圧力を和らげ、また神経周膜を取り囲むコラーゲン性の結合組織からなる。神経周膜は個々の神経束を取り囲み、そして神経内膜微小血管内の内皮細胞と共に、血液神経関門として機能する。神経内膜は神経周膜内部に存在し、そしてシュワン細胞および軸索を取り囲むコラーゲン組織から構成される。したがって、損傷を受けたまたは切断された神経の「修復」と記載する場合、構造、たとえば神経内膜、神経周膜、および神経上膜等の損傷または切断を等しく指す。
【0033】
用語「修復」または「~を修復すること」、またはその文法的同等語が、患者内の神経、特に神経上膜に対する本発明のデバイスおよび方法のin vivo効果を記載するのにここで使用される。「修復」とは、欠陥部位における空隙または構造的不連続性を少なくとも部分的に充填するのに十分である新規神経および/または神経上膜組織のin vivo形成を指す。用語「修復」は、過度の瘢痕組織形成、または患者の周辺組織に対する修復された神経の線維性癒着を引き起こすことなく、本発明のデバイスの神経および/または神経上膜中への奏功的一体化をさらに包含する。しかしながら、修復は、神経またはその神経上膜の復元において、その欠陥前の生理学的/構造的/機械的状態に至る100%の有効性に該当する、完全な治癒または治療のプロセスを意味しないか、さもなければそれを必要としない。
【0034】
用語「欠陥」、「欠陥部位」、「神経欠陥」、「神経上膜欠陥」、または「神経欠陥部位」、または「神経上膜欠陥部位」は、いずれも、神経および/または神経上膜における破綻を指す。欠陥により、神経および/または神経上膜の性能レベルは最適とはならず、またはその状態は最適とはいえない。神経または神経上膜の欠陥は、三次元的欠陥、たとえば神経または神経上膜のギャップ、キャビティー、孔、または構造的完全性におけるその他の実質的な破綻等を意味するものと理解される「空隙」のコンフィギュレーションを呈する可能性がある。ある特定の態様では、欠陥とは、たとえば内因的または自発的修復が不能である欠陥等である。神経または神経上膜の欠陥は、事故、疾患、および/または外科的操作の結果であり得る。
【0035】
慣用句「切断されたまたは損傷を受けた神経上膜」とは、ここで定義するような修復を必要とする神経上膜の欠陥を含む神経を指す。神経上膜の欠陥は、神経上膜全体を含む神経全体が切断されたという点において完全であり得る。
【0036】
用語「デバイス」は、慣用句「切断されたまたは損傷を受けた神経をin vivoで修復するためのデバイス」、または「切断されたまたは損傷を受けた神経上膜をin vivoで修復するためのデバイス」とここでは交換可能に使用され、および患者内部の切断されたまたは損傷を受けた神経および/または神経上膜をin vivoで修復する際にそれを支援するのに使用可能である「柔軟なコラーゲン膜」を含む物理的対象を指す。
【0037】
用語「奏功的一体化」とは、ここで使用される場合、「ある時間の期間」が経過した後に、本発明のデバイスを神経の欠陥または神経上膜の欠陥内に組み込む能力を指す。当業者は、「奏功的一体化」はどのように評価可能であるか理解するが、しかしながら、要するに、下記事項:(i)修復デバイスは、連結後しかるべき時間の期間が経過した後に、修復デバイスが連結した神経上膜および/または神経とアライメント外に突き出ないこと;(ii)連結後しかるべき時間の期間が経過した後に、連結の部位において瘢痕組織形成がほとんどまたはまったく存在しないこと;(iii)患者内の周辺軟組織に対する修復された神経の線維性癒着がほとんどまたはまったく存在しないこと;(iv)組織学的検査が、神経修復部位において新たな血管形成された神経上膜様組織を明らかにすること;(v)連結後しかるべき時間の期間が経過した後に、炎症反応のエビデンスが存在しないこと;(vi)免疫組織化学により、豊富に存在するニューロフィラメントが新規神経上膜組織に隣接して検出されること;(vii)十分に組織化された神経線維が神経修復部位に対して遠位側で観察されること;および(viii)修復部位を横断する奏功的軸索再生のエビデンス、のうちの1つ以上が奏功的一体化の例である。
【0038】
用語「柔軟なコラーゲン膜」は、ここで使用される場合、本発明のデバイスで使用されるコラーゲン膜を指す。コラーゲン膜は単に可撓性であるだけではなく、柔軟でもある。可撓性として文献に記載される、神経およびその他の組織を修復するための多くのデバイス、たとえばブタ小腸粘膜下組織(SIS)が存在する;しかしながら、本発明で使用されるコラーゲン膜は単に可撓性だけではない。コラーゲン膜は、破断せずに屈曲する(可撓性)能力を有するだけでなく、直ちにまたは容易に折り曲げられるように十分に柔軟である。本発明のデバイス内のコラーゲン膜の柔軟性は、神経を破壊するかまたはそれに対して損傷を引き起こすことなく、損傷を有するが、しかしなおも存続する神経の周囲にin situで容易に巻き付けられるのを可能にする。
【0039】
いくつかの態様では、柔軟なコラーゲン膜は厚さ200ミクロン未満である。さらなる態様では、柔軟なコラーゲン膜は厚さ100ミクロン~200ミクロンである。なおもさらなる態様では、柔軟なコラーゲン膜は厚さ100ミクロン未満である。なおもさらなる態様では、柔軟なコラーゲン膜は厚さ75ミクロン未満である。
【0040】
本発明の柔軟なコラーゲン膜はI型コラーゲンを含む。I型コラーゲンは、2本のα1鎖および1本のα2鎖から構成される。いくつかの態様では、本発明の柔軟なコラーゲン膜は80%を上回るI型コラーゲンを含む。その他の態様では、コラーゲン膜は少なくとも85%のI型コラーゲンを含む。なおも別の態様では、コラーゲン膜は90%を上回るI型コラーゲンを含む。本発明の柔軟なコラーゲン膜はIII型コラーゲンをさらに含む。
【0041】
本発明の柔軟なコラーゲン膜は2つの表面を含む(二重層)。第1の表面は、膜の表面から突き出た複数のコラーゲンの束を含む。図7、パネルA(横断面)に示すように、これらのコラーゲンの束は第1の表面から延在する。俯瞰図(正面)から柔軟なコラーゲン膜を観察すると、粗面のように見えるが、それは複数のコラーゲンの束の存在により引き起こされる。反対に、下方から(底部から)観察するとき、柔軟なコラーゲン膜の第2の表面は平滑に見える。図7、パネルA(平滑)に示すように、コラーゲンの束は第2の表面上には存在しない。
【0042】
用語「コラーゲンの束」とは、ここで使用される場合、右旋性の三重へリックスを形成するように絡み合う3つのポリペプチド鎖から構成されるコラーゲン線維の塊りを指す。コラーゲンの束は、第1の表面の方向に沿って一般的に配置構成される。これらのコラーゲンの束は、哺乳動物の腱、靭帯、および真皮に見出される高密度結合組織において主に見出される。高密度結合組織は「疎性結合組織」とは異なる。疎性結合組織は、緩く配置構成されたファイバー、および豊富に存在する細胞により特徴づけられ、またたとえば体表面を被覆し、そして内部臓器を覆う上皮の下に存在する。
【0043】
柔軟なコラーゲン膜の第2の表面は、I型およびIII型コラーゲン線維を含む疎性結合組織を主に含み、複数の開口部を提供する。これらの開口部は、疎性結合組織において見出されるコラーゲン「ミクロフィブリル」、「フィブリル」、および「線維」の間の、実質的に「空隙」または「ギャップ」である。ミクロフィブリルは、直径約3.5~50nmである。フィブリルは、直径約50nm~50μmである。線維の直径は50μmを上回る。
【0044】
本発明の柔軟なコラーゲン膜はI型およびIII型コラーゲンから主になるが、以下に記載されるように、柔軟なコラーゲン膜の修復効果に悪影響を及ぼさない限り、その他の材料も柔軟なコラーゲン膜に含まれてもよいものと認識される。
【0045】
その他の考え得る材料として、ヒドロキシアパタイト、または組織増殖を促進する薬物;増殖因子、たとえば塩基性線維芽細胞増殖因子、腫瘍増殖因子ベータ、骨形態形成タンパク質、血小板由来増殖因子等、ならびにインスリン様増殖因子;走化性因子、たとえばフィブロネクチンおよびヒアルロナン等;ならびに細胞外マトリックス分子、たとえばアグリカン、ビグリカン、およびデコリン等が挙げられるが、ただしこれらに限定されない。
【0046】
「高密度結合組織」および「疎性結合組織」は、「コラーゲン含有組織」、たとえばコラーゲンを含有する哺乳動物の身体から単離可能である皮膚、筋肉等から容易に取得される。いくつかの態様では、高密度および疎性結合組織を含有する組織は腱から単離される。
【0047】
一般的に、本発明のデバイスは欠陥部位に連結し、そしてその場に固定される。要因、たとえば神経または神経上膜の欠陥のサイズ等が、どのくらい多くの神経または神経上膜が本発明のデバイスにより被覆される必要があるか、その量を規定する。外科医またはその他の当業者は、神経または神経上膜のどの部分が覆われるか、その部分を決定することができる。いくつかの態様において、少なくとも長さ方向の部分(神経または神経上膜に沿う)が修復デバイスにより被覆される。修復デバイスの配置に関する一般的知識が必要とされる。たとえば、神経または神経上膜全体を、修復デバイスを用いて格納する必要はない。同じように、欠陥部位を被覆するだけでは、修復部位の保護には不十分である。
【0048】
用語「巻き付くこと(wrapping)」とは、ここで使用される場合、柔軟なコラーゲン膜を切断されたまたは損傷を受けた神経または神経上膜に連結するという好ましいプロセスを指す。巻き付くことは、神経上膜欠陥部位を含有する神経がなおも存続する、すなわち非切断状態のとき特に有用である。この状況において、欠陥部位を格納するために神経の周囲に本デバイスを巻き付けることは、連結のための最良のオプションである。巻き付くことは、神経または神経上膜が、神経移植期間中の場合のように切断されたときにも使用可能である。この場合、これまでに記載されたように、その他の連結手段が連結を補足するために使用され得る。
【0049】
柔軟なコラーゲン膜を神経または神経上膜欠陥部位の周囲に巻き付けることにより、第1の表面および第2の表面が共に配置され、すなわちオーバーラップし得る。第1の表面(粗面)が神経の外側に向く一方、第2の表面(平滑面)は神経表面に対して内向きとなるように、柔軟なコラーゲン膜は一般的に巻き付けられる。
【0050】
オーバーラップの量は、外科医およびその他の当業者にとって公知のいくつかの要因に依存するが、しかし複数の突き出たコラーゲンの束の少なくとも一部分が第2の表面上の複数の開口部の少なくとも一部分と嵌合することが可能となるように、十分量のオーバーラップが必要とされる。この配置構成は、物理的圧力をほとんどまたはまったくかけずに(最低限度で)コラーゲンの束が開口部と嵌合することを可能にする。すなわち、柔軟なコラーゲン膜の第1の表面および第2の表面は、突き出たコラーゲンの束と開口部との嵌合により共に保持される(自己連結する)。いくつかの態様では、オーバーラップは少なくとも10%である一方、その他の態様では、オーバーラップは少なくとも20%。いくつかの態様では、オーバーラップの程度は、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、および60%からなる群から選択される。
【0051】
いくつかの態様では、柔軟なコラーゲン膜の第1の表面および第2の表面は、より強い嵌合を提供するためにインターロックする。したがって、ここに記載されるように、本発明のデバイスは、神経および/または神経上膜上に配置されたら、縫合糸またはその他の連結手段を必要とせずに自己嵌合型連結を形成することができる。これは、柔軟なコラーゲン膜が一般的に「多湿」環境であるin vivoにおいて適用されるとき、特に当て嵌まる。そうとは言え、外科医より要求されれば、柔軟なコラーゲン膜は、それが神経上に配置されたとき、それをその場に保持するための縫合糸との併用においても適応性がある。
【0052】
用語「縫合糸」は、ここで使用される場合、文語的利便性のために過ぎない。この用語は、いかなる場合においても限定と解釈すべきでない。主題発明の態様は、神経組織を固定および/または結びつけるのに有用な様々なデバイス、物質、および技術のいずれとも利用され得る。これは、縫合糸、ステープル、血管クリップ、ヒドロゲル、フィブリン、ウレタンに基づく接着物質、およびその他のメディカル系接着物質、またはその組合せを含み得るが、ただしこれらに限定されない。
【0053】
慣用句「前記デバイスをその場に留めるのを可能にする」とは、修復を必要とする神経または神経上膜に対して本発明のデバイスを連結させることを指し、これにはデバイスが神経および/または神経上膜に連結している時間の期間も含まれる。
【0054】
用語「時間の期間」とは、ここで使用される場合、本発明のデバイスが、本明細書で定義するように、それが連結した神経または神経上膜と奏功的に一体化した状態になるのに要する時間を指す。いくつかの態様では、時間の期間は4週間未満である。いくつかの態様では、時間の期間は2週間~4週間である。
【0055】
デバイスの長さは、損傷を受けたまたは切断された神経の長さ、損傷を受けたまたは切断された神経の直径(または、ドナー神経が使用される場合には、ドナー神経直径)、縫合糸が使用可能である場所およびその数、および切断されたまたは損傷を受けた神経のin vivoでの場所、ならびにその他の要因を含む、ただしこれらに限定されない、当業者により理解される様々な要因に依存して変化し得る。1つの態様では、デバイスの長さは、およそ0.5cm~およそ3.0cmである。より特別な態様では、デバイスの長さはおよそ0.75cm~およそ2.0cmである。特定の態様では、デバイスはおよそ1.0cmの長さを有する。
【0056】
本発明のいくつかの態様では、方法およびデバイスは、in vivo神経移植で使用される。これは、レシピエント患者内の損傷を受けた神経の全部または一部の除去を必要とし得る。損傷を受けた神経が除去されたら、グラフトが機能を修復するために神経に対して使用可能である。様々な種類のグラフト、たとえば自家移植、同系移植、同種異系移植、および異種移植等が、主題発明内に包含される。グラフトのサイズ(たとえば、長さおよび直径)は、主題発明にとって重要でない。たとえば、神経グラフトの長さは、約1cm~約10cm、または約10cm超であり得る。神経グラフトの直径は、必要に応じて、任意の受傷神経または神経の一部の直径に一致し得る。神経グラフトは、レシピエントの神経の長さ方向に沿ってギャップを架橋するための、または遠位末端と置換するため、すなわちエンドツーエンドグラフティングのための、構造的に完全な神経のセグメントであり得る。あるいは、神経グラフトは、部分的な神経セグメント、または偏心的形状(たとえば神経弁)であり得、また何らかの構造的破綻を有するが、物理的連続性を保つ、裂傷を負った神経を再構築するように意図され得る。
【0057】
ドナー神経が、レシピエント神経断端と共に欠陥部位にエンドツーエンドで配置され、そして適切に位置決定されたら、本発明の修復デバイスが欠陥部位の周囲に巻き付けられるまで、1本以上の縫合糸が、これらをその場に保持するのに使用可能である。あるいは、この手順は、縫合糸を使用せずに、すなわち、本発明のデバイスをドナーおよびレシピエント神経の周囲に巻き付けるだけで実現可能である。
【0058】
任意に、組織接着物質、たとえば生物学的接着剤等が、ドナーおよびレシピエント神経断端に適用される。好ましくは、生物学的接着剤は、フィブリン含有接着物質、たとえばフィブリン糊、フィブリンシーラント、または血小板ゲル等である。生物学的接着剤は、外科技術において周知されている(Suri A et al.[2002]Neurol.India 50:23-26;Alibai E et al.[1999]Irn J.Med.Sci.24(3&4):92-97;Sames M et al.[1997]Physiol.Res.46(4):303-306;Jackson M et al.[1996]Blood Coag.Fibrinolysis 7:737-746;Fasol R et al.[1994]J.Thorac.Cardiovasc.Surg.107:1432-1439)。本明細書で使用される場合、用語「フィブリン糊」、「フィブリンシーラント」、および「フィブリン組織接着物質」は、フィブリノゲンおよびトロンビンを含有する調合物(適用部位においてフィブリン塊の形成を引き起こす)の群を指すために交換可能に使用される。
【0059】
本発明は、切断されたまたは損傷を受けた神経または神経上膜の修復で使用するためのキットも含む。そのようなキットは、検査室または臨床用途を目的として使用可能である。そのようなキットは、ここに記載されるようなデバイス、および患者の神経上膜を修復するために前記デバイスに適用するための指示書を含む。キットは、保管用の容器、たとえばデバイスを保管するための、遮光式および/または保冷式の容器を含み得る。任意に、キットは、神経上膜修復で使用される追加の薬剤、たとえば抗生物質、縫合材料等を含み得る。
【0060】
ここに記載されるキットは、デバイスを神経上膜に適用するための手段、たとえば、鉗子、縫合針、フィブリン糊等も含み得る。キットは、組織に接近するための付属ツール、たとえば、クリップ、基準分銅、アスピレーション装置、および圧縮ゲージをさらに含み得る。
【0061】
キットは使用説明書を含み得る。
【0062】
ここで参照または引用されたすべての特許、特許出願、仮特許出願、および公開資料は、すべての図面および表を含め、それらが本明細書の明示的な教示と矛盾しない範囲で、参照によりそのまま組み込まれる。
【0063】
下記は、本発明を実践するための手順を例証する実施例である。これらの実施例は、例示目的に限定されるように意図されており、すなわち当業者にとって、非常に多くのその改変形態および変化形態が明白であるので、限定的意図を有さない。別途明記しない限り、すべての割合(%)は重量基準であり、またすべての溶媒混合物の割合は容積基準である。
【0064】
(実施例1)柔軟なコラーゲン膜調製物
ブタ内部臓器裏層に由来するコラーゲンセグメントを慎重に分離し、約70%エタノールを含む溶液中に配置し、そして室温で短時間インキュベートした。次に、コラーゲン含有組織を、動作面に対して脂肪面を上にして引き延ばし、そしてできる限り多くの脂肪組織および血液を除去した。
【0065】
存在する脂肪組織を可視化するために、コラーゲン含有組織を、グリセロールで約10分間コーティングした。この時点でコラーゲンは透明であったが、しかし脂肪組織は白色であった。鉗子を使用して、白色の脂肪組織を、解剖顕微鏡下でコラーゲンから分離した。
【0066】
完了したら、コラーゲン含有組織を、密閉された容器に慎重に移し、そして非コラーゲンタンパク質を変性させるために、約1%(v/v)ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)および0.2%(v/v)塩化リチウム(LiCl)を含む溶液中でインキュベートした。インキュベーションを4℃オーバーナイトで行った。
【0067】
次に、変性した非コラーゲンタンパク質を取り除くために、コラーゲン含有組織を100%アセトン中で2回慎重に洗浄した。次に、コラーゲン含有組織から残留溶液、非コラーゲンタンパク質、および核酸を軽くスピンダウンするために、組織を、200mlの容器内、100RPMで遠心分離した。
【0068】
コラーゲン含有組織を慎重に取り除き、そしてもう一度Steripure(登録商)water内で3回洗浄した。任意に、コラーゲン含有組織を、NaOH:NaClを含む溶液内で洗浄し、その後それを100RPMで90分間遠心分離した。
【0069】
コラーゲン含有組織を、次に0.5%(v/v)HCl中に浸漬し、そしてコラーゲンを変性させるためにシェイカー上に30分間配置した。得られた柔軟なコラーゲン膜の機械的構造に対するダメージを回避するためには、HClの濃度およびインキュベーション時間が重要であることが判明した。
【0070】
コラーゲン含有組織を次に取り出し、そしてもう一度Steripure(登録商標)water中で3回洗浄した。
【0071】
コラーゲン含有組織を、次に0.5%(v/v)NaOHを使用して中和した。この段階において、得られた柔軟なコラーゲン膜の機械的特性について予備的なテストを実施してもよい。
【0072】
柔軟なコラーゲン膜を、次にステンレススチールフレームを使用する機械的力(圧縮および引っ張り)を使用しながら操作した。柔軟なコラーゲン膜が、適正なサイズ、厚さ(たとえば、200ミクロン未満、好ましくは100ミクロン未満、いっそうより好ましくは70ミクロン未満)等まで引き伸ばされたら、組織をin situで変性させた。すなわちフレーム内で、1%(v/v)HClを含む溶液中に浸漬した。一般的に、コラーゲン線維の束が整列するまで、振盪しながら100RPMで22~25時間、組織をインキュベートした。
【0073】
柔軟なコラーゲン膜を水で次に洗浄し、そして1%(v/v)SDSおよび0.2%(v/v)LiClの混合物でリンスした。
【0074】
最終的に、柔軟なコラーゲン膜をアセトンで処理し、そしてコラーゲン膜の粗面表面上の突き出たコラーゲンの束が固定化するように、フレーム内でなおも引き伸ばされた状態で風乾した。膜の反対側に平滑面(第2の表面)を創出するために、柔軟なコラーゲン膜を、次に引き伸ばし、圧縮し、および/またはロール状に丸めた。次に、最終的な柔軟なコラーゲン膜を検査し、そしてレーザーカッターを使用して所定のサイズに裁断した。
【0075】
(実施例2) 神経移植
神経移植は、身体的および精神的能力障害の順応化に基づく標準的医療を機能強化式の医療に近年一変させた。複数の試験が、神経移植単独または腱移植と連携した神経移植は、基本的な日常活動の機能においてわずかな強化を可能にすることを明らかにした。これは、SCI、特に四肢麻痺を有する患者において革新的変化をもたらした。
【0076】
四肢麻痺を有する患者において、神経移植は脊髄損傷に対する「バイパス」として使用される。脊髄損傷が生ずると、3つの異なる損傷領域が存在する。傷害のレベルより上では、上位運動ニューロンおよび下位運動ニューロンの両方は無傷のままであり、継続して機能する。傷害のレベルでは、上位と下位運動ニューロンの両方が損傷を受ける。関係する神経軸索はWallerian変性を受け、そして神経筋接合部において病理学的変化が生ずる。しかしながら、傷害のレベルより下の場合、下位運動ニューロンに対する傷害は認められないものの、しかし上位運動ニューロンの喪失に起因して機能の喪失が認められる。末梢神経(下位運動ニューロン)に対して傷害が認められないという事実に起因して、軸索上でのWallerian変性は、末梢神経において生じない。これらの末梢神経は損傷を受けることはなく、また神経筋接合部は、運動神経終板において無傷のまま多くの場合存続する。神経移植は、ドナーが傷害のレベルまたはそれより下のレベルに由来する神経により供給される筋肉を刺激するように、脊髄損傷のレベルより上に給供される機能性の神経を利用する。神経移植手技の期間中に、受傷末梢神経(レシピエント)は、機能的末梢神経(ドナー)のリダイレクションにより、脊髄と再接続する。ドナー神経が切断され、そして「生存性の」断端(すなわち、末端は脊髄となおも接続している)は、レシピエント神経の遠位断端に結合する。ドナー神経に由来する再生性の軸索はレシピエント神経の神経内膜管内まで増殖し、そしてレシピエント神経の標的器官上の受容体と合体し、脊髄および脳に対する接続性を修復する。
【0077】
神経移植手技は、肘、手首、指、および親指に対する機能を修復することができる。筋肉と比較して、末梢神経にはより多くの冗長性が存在するので、腱移植と比較して、神経移植の場合、より大きなドナーのプールが存在する。これは、外科医が、レシピエントの標的器官に近接してレシピエントに結合し得るドナーを選択することにより、軸索再生に必要とされる距離を低下させ、これにより治療が奏功する蓋然性を増加させることを可能にする。
【0078】
四肢麻痺を有しながら暮らす人々にとって、腱移植を凌駕する神経移植の長所は、感覚機能を修復する能力であり、また肘より下方の機能性の筋肉が欠損していても治療を排除しない。神経移植は、腱移植の機械的試練、たとえば手術時の腱のテンショニング等、および腱の破断、癒着、または過剰のストレッチングに起因する治療後の不具合を回避する。得られた運動は当該機能のために解剖学的に設計された筋肉を動力源とし、自然な生物力学および可動域を保存し、そして腱移植と比較して優れた機動性および制御性を提供するので、神経移植は、運動機能を修復するための、洗練され、有効な解決策である。両方の種類の移植を受けた臨床試験参加者は、腱移植を用いて治療された手はより強く感じるが、しかし神経移植を受けた手は自然な外観を有し、社会的相互関係に対してより順応性が高く、より高い機動性を有し、そして大きな物体の保持および電子機器の使用においてより良好であることを報告した。
【0079】
PubMedデータベース(2020年11月)の調査は、四肢麻痺を対象とする神経移植について12件の臨床試験をもたらし、同試験には、筋肉機能に対するMRC評価スケールを使用する運動リカバリーに関するデータが含まれた(表1)。比較対照トライアルは存在せず、そして8件の試験は一人の患者における転帰を記載する症例報告であった。MRCデータは、肘(三頭筋)、手のグリップ/リリース(指の屈曲/伸長)、および親指のピンチ/リリース(親指の屈曲/伸長)に対する機能を修復するために実施された神経移植について抽出された。参加者は、MRCグレード3以上のRoganovicまで筋肉機能が回復した場合、機能的運動リカバリー(FMR)を達成したものとみなされた。
【0080】
【表1】
【0081】
合計56例の治験参加者が132件の神経移植を受け、そのうちの70件の移植が2つの筋肉機能(指+親指の伸長、または指+親指の屈曲)を対象として、合計202件の筋肉機能を修復するために実施された。メタ分析は、治療後の平均アセスメント時間22.0か月(SD6.0、範囲6~24.9)において、プールされた機能的運動リカバリー率は、61.9%(95%CI:55.2~68.6)であることを明らかにした。指の伸長は、最も奏功的な再建手技であり、81.8%の移植が手術後21.6か月の時点でFMR(95%CI:68.6~59.0)を達成し、また親指の屈曲が最も低く、移植の46.2%が手術後22.8か月の時点でFMR(95%CI:30.5~61.8)を達成した(表2)。これらのデータは、神経移植は腕および手の機能の外科的再建にとって実現可能なアプローチであること、ならびに治療転帰の一貫性および予測性を改善するための新規技術の開発が必要とされることを示唆する。
【0082】
【表2】
【0083】
腕および手の機能の修復は、四肢麻痺を有する人々にとって最も望ましい治療目標であるものの、再建手術は十分に活用されていない。四肢麻痺を有する人々の最大75%が、腕および手の機能を改善するための再建手術から利益を享受することが推定されている。最近の米国調査では、患者の50%未満が再建手術の存在について知らされたが、調査対象の患者の9%が外科治療を受けたに過ぎない。
【0084】
再建手術が十分活用されない理由には多くの要因が関わっている。より広い患者の取り込みに対する主な障壁は、特に神経傷害後に運動機能を修復するためのウィンドウが限定されており、ならびに米国健康管理システムにおける再建手順に関する知識および連携が欠如していることから、専門外科医に対する照会が行われないことにあると思われる。さらなる問題は、神経移植手順を実施する意思を有し、それを実施することができる米国外科医が存在しないことである。四肢麻痺を対象とする神経移植の公表された試験12件のうち3件のみが米国で実施されたに過ぎず、またいずれもワシントン大学医学部により実施された。米国で実施された再建術の大部分は腱移植であり(神経移植と比較してより単純な手技であるが、修復範囲はより限定される)、ドナーとして使用するための完全に機能性の腕筋肉を患者が有することを要求し、また長時間の固定および手術した四肢の物理的リハビリテーションを必要とするので患者にとってそれほど魅力的ではない。
【0085】
神経移植は、四肢麻痺を有する患者を対象として、腕および手の機能を修復するように意図された有望な再建手技である。しかしながら、四肢麻痺を有する人々を対象とした神経移植の公表された試験は、治療転帰における予測性の改善、患者年齢の上下限における治療転帰、傷害後の最適な時期、および損傷後24か月を超える患者における神経移植の有用性について、さらなる調査が必要とされることを明確にした。
【0086】
四肢麻痺を有する患者を対象とする神経移植の使用は上肢麻痺の治療において有望であるが、アセスメント、選択、および適する神経移植の時期は常に複雑である。奏功的神経移植の重要な効果の1つは、外科手技は、脊髄の異なる領域に由来する機能神経を、脊椎内の死滅ニューロンに由来する機能不全の神経に再接続することができなければならないということである。そうするために、外科手技には、手術後速やかに、髄鞘再生のための十分な保護および微環境、ならびに神経軸索の伸長および再接続を実現し得ることが要求される。
【0087】
神経上膜(末梢神経を取り囲む高密度の不規則な結合組織の外層)は脳髄硬膜が伸長したものである。通常の生理条件下では、神経上膜は末梢神経の解剖学的障壁として作用し、神経伸長傷害から保護し、そして神経成長のための栄養分を提供する。神経上膜は複数の神経束を取り囲み、また神経に血液を供給する血管を含む。2つの異なる神経上膜の層が存在する。最外部の層は、血管コンポーネントを含む結合組織からなる。内部鞘はコラーゲン原線維およびコラーゲン線維から構成される。エピニューラル・アレオラ(epineural areola)も、線維芽細胞、様々な量の脂肪、およびヒアルロン酸を含有する。ヒト神経上膜は、末梢神経の断面の最大70%を占め、またI型およびIII型コラーゲンを含有する。
【0088】
奏功的神経移植手技にとって理想的な状況とは、神経移植のための神経上膜と類似した障壁構造をその部位において再構築することである。しかしながら、上肢麻痺を治療する際に行われる神経移植の現在最高水準の外科手技は、神経をエンドツーエンドで接続するために神経上膜上で縫合糸を使用したに過ぎない。一部の外科医は、神経移植のための止血障壁を提供するために、フィブリンシーラントを局所的に適用する場合もある。ほとんどの場合、神経上膜障壁構造の導入といった理想的状況を満たすにはなおも程遠い。神経を修復するための自系神経上膜コンジットの開発ついていくつかの試みがなされているものの、麻痺を有する患者にとって、神経移植用として自系神経上膜組織の提供を受けることはほとんど不可能である。
【0089】
代替的アプローチは、神経修復手術を補助するために開発された神経修復デバイスを使用することである。現行の神経修復デバイス(中空管または鞘のいずれか)は、ポリマーまたは再構成されたコラーゲンのいずれかから構成される(表3)。
【0090】
【表3】
【0091】
これらの神経修復デバイスは、一般的な末梢神経損傷に有効であることが明らかにされているが、神経上膜障壁構造を導入することが不可能であることから、上肢麻痺の治療における神経移植手術での使用にはほとんど適さない。文献によれば、ほとんどの神経修復デバイスは生体適合性に乏しいという問題(癒着、瘢痕組織形成、および神経腫を引き起こす)に悩まされ、容易な操作にとって硬質過ぎ、またドナー神経のサイズがレシピエント神経と異なる場合に、サイズの異なる神経に適合するように調節できない。文献レビューは、四肢麻痺を有する患者を対象に末梢神経を修復するために神経修復デバイスを使用する公表された試験は存在しないことを明らかにした。
【0092】
麻痺を有する患者を対象とする神経移植の未だ満たされない医学的必要性に対処するために、出願人は、神経上膜の天然の構造的、生理学的、および生物学的性能を模倣する、実施例1で議論されたような柔軟なコラーゲン膜を含む修復デバイスを開発した。前臨床性能テストは、本発明のデバイスが、シュワン細胞の移動および軸索の伸長を可能にするための適正な機械的特性、半透過性、および適する分解動力学構造を有することを明らかにした。
【0093】
概念証明エビデンスを、ラットモデルを使用する末梢神経修復の前臨床試験から得た。坐骨神経を完全に切断し、次にヒトの手技における通常の外科的実践法と同様に、3本の神経上膜微小縫合糸を用いて修復した。優良または良好として等級化された縫合糸修復物を、本発明の修復デバイスまたは一般的に使用されるFDA認可されたコラーゲン神経デバイス(NEURAWRAP(登録商標))内に格納した。デバイスを神経上膜に連結するために、デバイスの位置を、デバイスの各末端において非吸収性の「ステイ(stay)」縫合糸を使用してマーキングした(たとえば、図1および図2を参照されたい)。
【0094】
治癒から4週間後、本発明の神経修復デバイスを用いて治療を受けた動物2例の修復部位(図3Aおよび図3B)は、外観において当該動物の対側部上の未治療神経と類似した(図3C)。本発明の神経修復デバイスは神経上膜に十分に一体化したように見え、また突き出ていなかった。瘢痕組織または周辺軟組織に対する神経の線維性癒着は存在しなかった。対照的に、FDA認可されたコラーゲンデバイス(NEURAWRAP(登録商標))で治療を受けた動物の修復部位は、神経デバイスの表面を覆う広範囲にわたる肥厚性で高密度の結合組織を示し、また周辺軟組織に対するそのような結合組織の癒着を引き起こした(図3Dおよび図3E)。NEURAWRAP(登録商標)は神経上膜に一体化したようには見えず、そして対側部側の未治療神経と比較してバルキーな外観のまま存続した(図3F)。
【0095】
組織学的検査は、本発明の神経修復デバイスにおける肉眼検査と整合した。組織学的には、新たな血管形成された神経上膜様の組織は、神経修復部位の組織から形成されたことが判明した(図4A)。炎症反応のエビデンスは認められなかった。本発明の神経修復デバイスに由来するコラーゲン線維は、神経上膜様組織に十分一体化し、また通常の結合組織と外観が類似した。新規神経上膜組織に隣接して、豊富に存在するニューロフィラメントが免疫組織化学により検出され、そして十分組織化された神経線維が神経修復部より遠位側に認められた(修復部位を横断する奏功的軸索再生のエビデンス)。対照的に、FDA認可されたコラーゲンデバイス(NEURAWRAP(登録商標))の修復部位は線維性組織でカプセル化され、軸索エントラップメントおよび神経圧迫を引き起こした(図4B)。リンパ球、形質細胞、マクロファージ、および異物反応性多核巨細胞の浸潤が修復部位において観察された(炎症反応のエビデンス)。ニューロフィラメントおよび軸索成長が修復部の遠位側に認められたが、しかし新規に再生した神経組織は、本発明者の製品の修復部位と比較してそれほど組織化されなかった。
【0096】
この試験から得られた結果は、本発明の神経修復デバイス用いた治療は修復部位において新規神経上膜様組織の形成を引き起こしたことを明らかにした。炎症、神経圧迫、または軸索エントラップメントは観察されず、また本発明者らの製品を使用することで、修復部位を横断して軸索を再生するのに適する環境が提供される。
【0097】
(実施例3) 臨床試験:四肢麻痺を有する患者を対象に腕および手の機能を修復するための神経移植手術の転帰を改善するための本発明の神経修復デバイスの使用。
前臨床的観察に基づき、出願人は、四肢麻痺を有する患者における神経移植の転帰改善を目的とする本発明の神経修復デバイスの使用を調査するために、前方視的症例シリーズ、臨床試験CG-006を実施した。四肢麻痺を有する患者4例を対象に腕および手の機能を修復するために、14件の神経移植を実施した。治療後最長2年間、運動機能のリカバリーを、徒手筋力テストを使用して評価し、そして英国医学研究評議会(MRC)の運動機能に関する標準化された基準を使用して等級化した(下記の表1)。
【0098】
これまでに麻痺した筋肉の機能的運動リカバリーが、治療後12か月の時点で移植の71.4%に認められ、治療後24か月の時点で88.9%まで増加した(図5)。比較として、四肢麻痺を有する人々を対象とした神経移植手術(縫合糸修復法のみを用いる)のメタ分析は、治療後22か月の時点おいて、202件の神経移植から61.9%のFMRを実現した(表4)。
【0099】
【表4】
【0100】
肘伸長の喪失は、四肢麻痺を有する人々のおよそ75%に影響を及ぼす。肘の安定および機能の復元は、自力で移動し(たとえば、ベッドから車椅子に)、圧力軽減活動を実施し、座位の間バランスを保ち、頭上の物に手を伸ばし、および手動車椅子を操作する能力にとって必要不可欠である。
【0101】
肘の伸長は三頭筋筋肉により提供される。神経移植後12か月の時点で、本発明の神経修復デバイスを使用して治療した患者の100%において、三頭筋の機能的リカバリーが観察されたが、それと比較して公表された試験では、21か月時点で73.9%のリカバリーが報告された(図6、表5)。臨床試験に参加した参加者は、治験治療を受ける前には不可能であった一連の日常活動を実施すること、たとえば動き回り、およびベッドにおいて寝返りを打ち、手動車椅子を使用し、およびスライドボードを使用しながらベッドから車椅子に自力で移動すること等が可能であった。
【0102】
本発明の神経修復デバイスは、通常の神経移植手術の試験から得られたデータと比較して、三頭筋機能の修復においてより迅速およびより良好な結果を実証した。このリカバリーレベルは、四肢麻痺に対する標準的な介護治療(身体的リハビリテーション)を使用しても可能とはならない。
【0103】
【表5】
【0104】
全体として、これらのデータは、本発明の神経修復デバイスは、神経上膜代用物として代替可能であり、そして末梢神経の修復を可能にするという位置づけを裏付ける。
【0105】
(実施例4) 上肢末梢神経損傷の再建における神経修復デバイスの評価
本発明の神経修復デバイスの超微細構造的特徴を調べるために、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、および増強式マイクロコンピューター断層撮影法(マイクロCT)を使用した。2年フォローアップを伴う前方視的症例シリーズを実施し、そして報告した。神経移植またはグラフトを必要とした患者に対して神経再建を実施した。参加者は、一方または両方の上肢において単一または複数の神経再建を受けた。
【0106】
方法
構造的特徴付け
すべての分析を、Centre for Microscopy, Characterization and Analysis at The University of Western Australiaで実施した。SEMアセスメントでは、本発明の神経修復デバイスからなる1cm×1cmの四角片をスタブ上に取り付け、そして白金(Pt)の層でスパッターコーティングした。サンプルを、Zeiss 1555 VP-FESEM(高分解能電界放射圧力可変式走査型電子顕微鏡)を使用して分析した。マイクロCTアセスメントでは、マイクロCT下で軟組織を可視化するために、本発明の神経修復デバイスを、造影剤として0.3%ヨードカリウム溶液を用いて最初に染色し、そして3D画像の再構成を、XM Reconstructorソフトウェア、v10.7.3679.13921、Zeissを使用して実施した。このような染色技術は、サンプルに対して損傷を与えることなく高分解能画像をもたらした。
【0107】
臨床試験デザインおよび参加者
患者19例からなる、2年フォローアップを含む前方視的な症例シリーズを実施し、そしてPROCESSガイドラインに基づき報告した。本試験は、Human Research Ethics Committee of St John of God Health Careから承認を受け、そしてAustralian and New Zealand Clinical Trials Registryに登録した(ACTRN12616001157460)。末梢神経損傷のSeddon分類に従い、神経断裂(受傷神経がその結果生じた完全な機能喪失との断絶を喪失した)を有する患者を選択した。組み入れ基準は、過去18か月内に上肢または手に生じた、1つ以上の末梢神経に対する外傷性傷害を有する8~50歳の男性および女性であった。
【0108】
外科的介入
神経移植またはグラフトを必要とした患者に対して神経再建を実施した。参加者は、一方または両方の上肢において単一または複数の神経再建を受けた。主な再建として、肩の腋窩神経に移植した三頭筋神経;二頭筋または三頭筋神経に対する後方腋窩神経、または肘内の二頭筋神経に対するグラシリス神経;前方、中央、または後方の骨間神経に対する回外筋または上腕筋神経、または手内の後方骨間神経に対する橈側手根伸筋神経が挙げられる。すべての外科手技を一人の外科医により実施した(AOB)。最適な外科学的アプローチに必要とされる位置に患者を配置しながら、骨格筋弛緩薬および血栓予防薬を用いた全身麻酔の下で手術を実施した。
【0109】
神経刺激装置およびロケーターデバイスを使用してドナーおよびレシピエント神経を特定し、そして周辺筋膜から切除した。より大きな神経に対して8-0ナイロン、またはより小さな神経断端に対して10-0ナイロンを使用しながら、2本の係留式縫合糸で神経断端を接合した。本発明の神経修復デバイスを、粗面側(第1の表面)を表向きにして接合部位の下方に配置した。次に、神経の近位および遠位断端を横断して少なくとも1.5cmを被覆するように、神経修復デバイスが接合部位の周囲に巻き付けられ、そして神経修復デバイスの粗面(第1の表面)と平滑面(第2の表面)の間にインターロッキング接着接触を創出するために、最低30%重ね合わさるように巻き付けた。これは、ドナー神経とレシピエント神経の間のサイズミスマッチに関係なく、神経修復デバイスと神経の間に適切な接触が生ずること、ならびに神経を軟組織圧迫から機械的に保護することを確実にした。神経を取り囲むデバイスの位置を安定化させるために、フィブリンシーラント(TISSEEL、Baxter、Deerfield、IL、米国)を神経修復デバイスの周囲に配置した。
【0110】
接合部位を保護するために、術後1~2週間、手術された四肢(複数可)をスリング内で保護した。すべての術後療法を外来患者として実施した。
【0111】
転帰アセスメント
毀損した四肢の物理検査を、しかるべく適格性が確認された治験責任医師により、ベースライン時および術後の各クリニック来院時に実施した。機能的アセスメントおよび患者報告転帰を含む有効性のエンドポイントを、下記事項を使用しながら記載した:
【0112】
運動機能
英国医学研究評議会(MRC)評定システムが、徒手筋力テストが関与する運動機能のアセスメントとして筋力を評定するのに使用される。MRCスケールは、上肢について実質的な評定者間および評定者内信頼性を有することが実証されており、また極度の筋力低下が存在する場合であっても使用に適する。
【0113】
感覚機能
識別覚は、感触を通じて物体の特性を認識する能力であり(たとえば、テクスチャー)、また感覚機能の重要な指標である。感覚機能を判定するために、静的2点識別テスト(s2PD)および動的2点識別テスト(m2PD)を使用した。s2PDおよびm2PDは、分離していると認識され得る2点間の最短距離を患者が判別する能力をテストするアセスメントツールである。指に関する正常値は、静的2PDについて6mm未満、および動的2PDについて2~3mmであった。静的テストは遅順応性神経受容体の神経支配密度を測定する一方、動的テストは速順応性神経受容体を測定する。
【0114】
QuickDASH
QuickDASH(Quick Disabilities of the Arm,Shoulder and Hand)質問票は、上肢の筋骨格障害を有する患者における症状および能力障害についての妥当性確認された転帰指標である。11項目が、1(困難を感じない)~5(課題実施不能)の5点スケール上でスコア化される。生スコア値が、100までの最終的なスコアにスケール化され、スコアが高いほどは能力障害が大きいことを表す。さらなる4つの質問から構成される任意的な作業特異的モジュールも、この試験において施行された。
【0115】
視覚的アナログ疼痛スケール(VAS)
疼痛は、末梢神経傷害後の一般的な転帰であり、そして能力障害に顕著に寄与する。逆説的に言えば、疼痛の低下も増加も外科的修復後の神経再生と関連し得る。全体的な疼痛、夜間疼痛、および活動関連の疼痛について参加者の経験を、0(疼痛無し)~10(これまでに最悪の疼痛)の標準化された数値的視覚的アナログスケールを使用しながら評価した。
【0116】
生活の質アセスメント(AQoL-6D)
AQoL-6Dは、妥当性確認された健康関連の多属性ユーティリティー生活の質計測法である。参加者は6次元に展開する20項目から構成される質問票に記入し、各項目には0(死亡)~100(まったく健康)のスコアが割り振られる。
【0117】
有害事象
すべての有害事象および重篤な有害事象をモニタリングし、そして記録した。
【0118】
データマネジメントおよび分析
試験を、承認されたプロトコール(GLP)およびすべての該当する規制要求事項に基づき実施した。アセスメントを個別症例報告書式上に記録し、そしてSt John of God Hospital,Subiaco,Western Australiaが提供するResearch Electronic Data Capture toolを使用してデータを管理した。モニタリングクエリーを生成し、そして、必要であれば、各施設における担当治験責任医師またはその代理者からの問い合わせに応じた。
【0119】
患者報告転帰から得られたデータを、統計分析用としてSPSS(v27)内にインポートした。一元反復測定分散分析を、被験者内要因としてタイムポイントを使用して実施した。Greenhouse-Geisser補正を、データセット(モークリーの球面性検定について有意な結果を戻す)に適用した。事後検定を、ボンフェローニ補正を使用して実施した(該当する場合)。MRCスコアを、メジアおよび四分位範囲(IQR)として報告した。
【0120】
結果
本発明の神経修復デバイスの構造的特徴付け
本発明の神経修復デバイスが神経上膜の二重層構造を模倣するか調べるために、出願人は、SEM、増強式マイクロCT、およびTEMを使用しながら、柔軟なコラーゲン膜の形態学的特性について試験した。増強式マイクロCTは、神経修復デバイスは2つの異なる層から構成され、外層(第1の表面)は高密度で並列に配置するコラーゲンの束を含有し、また内層(第2の表面)は緩んだ束および線維を含有する(そのいくつかは、柔軟なコラーゲン膜に沿って垂直に分布している)ことを明らかにした。コラーゲン原線維のD間隔(D-spacing)が神経修復デバイス内に認められた。神経修復デバイスの厚さは、およそ100μmであり、コラーゲン原線維の平均直径は90nm±20nmであった。
【0121】
患者人口統計学
参加者合計19例(男性17例および女性2例)が、この試験への組み入れについて適格性が確認された。参加者5例が頚髄損傷を有し、上肢機能を修復するための神経移植手術に対する候補であった。患者8例が腕神経叢に対する外傷性傷害を有し、肩または肘の機能を主に修復するための再建手術を必要とした。患者6例が上肢末梢神経損傷を有し、肩、肘、手首、または手の機能を修復するための手術を必要とした。傷害の最も一般的な原因は自動車事故(60%)であったが、しかしその他の原因として、スポーツおよびレクリエーション関連の傷害、転落、ならびに医原性の原因が挙げられた。すべての患者を、手術後24か月間追跡したが、ただし手術後12か月に死亡(肺感染症に起因)した参加者1例、および6か月後に追跡不能例となった患者2例を除く。
【0122】
転帰の評価
合計36件(運動機能について35件および感覚機能について1件)の末梢神経再建を実施した。末梢神経移植36件のうち、4件は肩、11件は肘、2件は手首を対象とし、および19件は手を対象とした。
【0123】
ベースライン時における神経移植の種類に基づく全体的なMRCスコアの中央値は0であった(IQR-0;n=60)。手術後、6か月時点で、MRCスコア中央値は1まで改善し(IQR2;n=60)、さらなる改善が12か月時点(MRCスコア中央値=3;IQR2;n=59)、および24か月時点(MRCスコア中央値=4;IQR1.25;n=48)において観測された。隣接する標的筋肉の神経再支配が、評価したすべての神経修復において観察された。
【0124】
改善は、QuickDASHスコアにより評価した場合、上肢機能においても、スクリーニング時(ベースライン)、12か月、および24か月来院時に観察された。平均QuickDASHスコアは、ベースライン時において52.9(SD20.8)であり、24か月時点で46.8(SD30.2)まで改善した。QuickDASHスコアの平均的な改善は統計的に有意ではなかったものの、参加者の62%が、ベースラインと比較して12か月時点で、QuickDASHスコアの改善を報告した。
【0125】
最悪の疼痛、安静時疼痛、繰り返し作業を実施している間の疼痛、および夜間疼痛についての平均疼痛スコアのアセスメントは、12か月まで一定のまま留まった。しかしながら、参加者の77%、46%、および54%が、この時点において、ベースラインと比較して、最悪疼痛、安静時疼痛、および夜間疼痛それぞれについて疼痛の減少を報告した。疼痛薬物療法がこのアセスメントの転帰に対して何らかの影響を与えたかどうか調査するために、出願人は、試験期間中の患者の医薬の使用について分析した。この分析は、ベースライン時において参加者が中央値として2種類の疼痛薬物療法を受けていたことを明らかにした(平均1.8;SD1.56、範囲0~4)。これらには、神経遮断薬、抗うつ薬、オピオイド、および非オピオイド鎮痛薬が含まれた。疼痛薬物療法の使用は、中央値として6か月時点で1種類(平均1.4;SD1.40;範囲0~4)、および12か月時点で0種類(平均1.1;SD1.55;範囲0~4)まで減少した。参加者5例が、12か月の期間中に疼痛薬物療法を受けなかったことを報告し、また参加者7例は、ベースラインと比較して12か月の時点でその疼痛薬物療法の使用を有意に減らしたか、または中止した。
【0126】
参加者は、スクリーニング時(ベースライン)、12か月、および24か月の試験来院時においてAQoL-6D質問票に記入した。結果は、手術後のAQoL-6Dスコアの改善を実証した。平均AQoL-6Dスコアは、治療後24か月まで安定に留まった。しかしながら、AQoL-6Dスコアの個々の改善は、6か月時点で参加者の60%、および12か月時点で参加者の54%について報告された。
【0127】
有害事象
9件の有害事象が試験期間中に参加者4例において報告され、すべて神経修復デバイスとは無関係であるとみなされた。12か月の時点で、1件の神経修復が治療不具合(併発性の骨折傷害の外科的矯正後の創傷感染症に起因する)として分類された。参加者1例が、手術後12か月目に肺炎に起因して死亡した。
【0128】
結果
形態学的特徴付けは、神経修復デバイスは神経上膜の構造的および生物学的特性を模倣することを実証した。神経修復デバイスの厚さ(100μm)は、ほとんどのヒト末梢神経に認められる神経上膜の範囲内である(図10)。上肢神経傷害を有する患者19例を対象に、合計36件の末梢神経再建を実施した。結果は、神経修復デバイスを使用する神経再建は、ベースラインと比較して末梢神経機能を修復し、修復された運動機能は6か月経過した時点で再建の90%において維持されたことを実証した。運動機能における改善は、24か月の時点ですべての修復に認められ、再建の96%が標的筋肉に対して能動運動を修復した。
【0129】
考察
その上肢の機能を喪失した患者は、重度の身体障害にある。神経再建術の一助として本神経修復デバイスを使用することで、出願人は、末梢神経傷害に起因して上肢麻痺を有する参加者19例において36件の神経再建を成功裏に実施した。臨床的アセスメントは、再建された神経の90%において、運動機能の改善が、再建部位に近接する標的筋肉に対して、早くも6か月の時点で認められことを明らかにした。12か月時点では、運動機能の改善がすべての再建された神経に認められ、そして再建された神経の97%が標的筋肉に対して能動運動を修復した。疼痛および能力障害の低下も12か月時点でやはり観察され、改善は24か月まで継続した。QuickDASHスコアは、参加者の62%において改善し、そして参加者の77%が最悪疼痛経験の減少を報告した。ベースライン時にその神経疼痛に対して医薬を必要とした参加者の77%において、疼痛薬物療法の使用が減少したかまたは停止した。
【0130】
特に、末梢神経再建を経た患者19例のうち、5例が四肢麻痺を引き起こしたC5~C8脊髄傷害を有した。これらの患者を対象として上肢機能を修復するために実施された神経移植は有望であり、三頭筋機能の修復を目的としたすべての神経移植が、12か月後に、機能的運動リカバリー(MRC3または4)を達成した。三頭筋機能の改善は、参加者が手術前には不可能であった日常活動を実施するのを可能にした(たとえばベッドにおいて寝返りを打ち、手動車椅子を使用し、またスライドボードを使用しながらベッドから自力で車椅子に移動すること等ができる)。これらの結果は、手術後24か月時点でのMRCスコア中央値3を報告したvan Zylら(2019年)で報告された結果と肯定的に匹敵する。
【0131】
出願人は、参加者のすべてにおいて、12か月後にMRCスコアに基づく機能転帰が有意に改善したことを明らかにしたが、疼痛および能力障害スコアはベースラインとは有意に異ならなかった。
【0132】
神経再建の転帰に影響を及ぼす要因が複数存在する。これらには、年齢、性別、受傷神経、傷害と手術の間の時間、グラフトの種類、および使用される修復材料が含まれる。しかしながら、修復材料間の転帰を比較すると、本発明の神経修復デバイスを使用する手術は、文献で報告された転帰よりも比較的良好な転帰を達成したことが明らかとなった。この試験では、神経構築物の97%超が12か月時点で標的筋肉の機能的運動リカバリーを引き起こした。これは、その他の試験(ポリグリコール酸を使用した場合86%、NEUROTUBE(登録商標)を使用した場合76.5%、NEURAGEN(登録商標)を使用した場合75%~88%、およびヒト無細胞神経グラフトを使用した場合65%のFMRを示す)に肯定的に匹敵する。
【0133】
結論
四肢麻痺は、若年の健康な男性に不均衡に影響を及ぼす壊滅的不可逆的状態である。四肢麻痺を有する人々は、その腸または膀胱の自発的なコントロールをほとんどまたはまったく有さない。その下肢および胴部は麻痺しており、またその肩の筋肉において若干の動きを残している場合もあるが、感覚ならびにその腕および手の動きは限定的であるかまたは存在しない。四肢麻痺を有する人々は、その寿命が短縮し、また重大な病的状態を経験する。
【0134】
四肢麻痺を有する人々に対する米国の標準医療はリハビリテーションである。患者は、残りの筋肉機能の増強、代償的技術の採用、装着装具の使用、および環境上の改変に重点をおいた療法を受ける。しかしながら、リハビリテーション単独により運動および感覚機能を取り戻すといった四肢麻痺を有する患者の能力は、その脊髄損傷の範囲によって本質的に限定される。脳と末梢神経の間の結びつきが失われると、物理的療法または薬物療法によってそれを再生させることはできない。
【0135】
四肢麻痺を有する人々およびその介護職員の調査は、機能的リカバリーにおいて、腕および手の機能を取り戻すことが、腸/膀胱の機能、歩行、疼痛管理、または性的機能よりも最優先されることを明らかにした。慢性四肢麻痺にとって(すなわち、最大の神経学的回復に到達した後)、外科的再建はリハビリ療法に対する最も一般的な代替法であり、また残留する機能を戦略的に再配置することによりさらなる腕および手の機能を修復することができる手段を提供する。
【0136】
神経移植は、SCI、特に四肢麻痺を有する患者を対象として、看護補助といった標準的医療を、基本的な日常活動を修復することによる機能強化式の医療に近年一変させた。神経移植は、四肢麻痺を有する人々に対して基本的な腕および手の機能を再構築する。神経移植は脊髄損傷を「バイパスする」のに使用される。複数の神経移植が1回の外科手技において実施可能であり、また1回の神経移植が複数の筋肉標的に対して機能を修復する可能性がある。
【0137】
奏功的な神経移植手技にとって理想的な状況とは、神経移植のための神経上膜と類似した障壁構造をその部位において再構築することであるが、上肢麻痺を治療する際に行われる神経移植の現行最高水準の外科手技は、神経をエンドツーエンドで結びつけるために神経上膜で縫合糸を使用したに過ぎない。ほとんどの場合、神経上膜障壁構造の導入といった理想的状況を満たすにはなおも程遠い。
【0138】
麻痺を有する患者を対象とする神経移植の未だ満たされない医学的必要性に対処するために、出願人は、奏功的に一体化したときに、神経上膜の天然の構造的、生理学的、および生物学的性能を模倣する、柔軟なコラーゲン膜を含む修復デバイスを開発した。前臨床性能テストは、本発明の修復デバイスが、シュワン細胞の移動および軸索の伸長を可能にするための適正な機械的特性、半透過性、および適する分解動力学構造を有することを明らかにした。臨床試験CG-006は、四肢麻痺を有する人々を対象に本発明の修復デバイスを用いて神経移植を行えば、文献から引用される標準的な神経移植(縫合糸のみ)の試験と比較して、三頭筋機能のより迅速でより良好なリカバリーを引き起こすことを実証した。
【0139】
本発明の神経修復デバイスは、神経移植外科技術を単純化しおよびその再現性を高め、繊細な神経組織の手術中の取り扱いを減らし、ならびに治療転帰の一貫性および予測性を高め得る技術である。本発明の神経修復デバイスを使用することで、四肢麻痺を有しながら暮らす米国人にとって機能的に最優先される事項に対処する治療へのアクセスが増加する。
【0140】
参考資料
Van Zyl, N. et al. (2019), Lancet, 394(10198):565-575.
Fox, I. K. et al. (2015), Plastic and Reconstructive Surgery, 136(4):780-792.
Khalifeh, J. M. et al. (2019), JNS, 31(5):629-640.
Bertelli, J et al. (2011), J Neurosurg, 114:1457-1460.
Bertelli, J et al. (2012), J. Hand Surgery, 37(10): 1990-1993.
Van Zyl, N. et al. (2014), J. Hand Surgery, 39(9): 1779-1783.
Sananpanich, K. et al. (2018), J. Hand Surgery, 43(10): 920-926.
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】