(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-16
(54)【発明の名称】原発性高シュウ酸尿症1型の治療のためのin vivoレンチウイルス遺伝子療法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/867 20060101AFI20240409BHJP
C12N 15/54 20060101ALI20240409BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20240409BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240409BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240409BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240409BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240409BHJP
A61K 38/45 20060101ALI20240409BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240409BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240409BHJP
A61K 38/13 20060101ALI20240409BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20240409BHJP
A61K 31/436 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
C12N15/867 Z ZNA
C12N15/54
C12N15/113 Z
C12N15/11 Z
C12N5/10
A61P3/00
A61K48/00
A61K38/45
A61K35/76
A61P43/00 121
A61K38/13
A61K31/573
A61K31/436
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565998
(86)(22)【出願日】2022-04-26
(85)【翻訳文提出日】2023-12-25
(86)【国際出願番号】 EP2022061107
(87)【国際公開番号】W WO2022229223
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522289264
【氏名又は名称】セントロ デ インベスティガシオネス エネルゲティカス メディオ アムビエンタレス イ テクノロジカス オー.エー.,エム.ピー.
(71)【出願人】
【識別番号】522289275
【氏名又は名称】コンソルシオ セントロ デ インベスティガシオン ビオメディカ エン レッド (セイベエエレ)
(71)【出願人】
【識別番号】518158123
【氏名又は名称】フンダシオン インスティチュート デ インベスティガシオン サニタリア フンダシオン ヒメネス ディアス
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セゴヴィア サンス ホセ カルロス
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア ブラヴォ マリア
(72)【発明者】
【氏名】モリノス ヴィセンテ アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア トッラルバ アイーダ
(72)【発明者】
【氏名】ニエト ロメロ ヴィルヒニア
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA44
4C084AA13
4C084BA24
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4C084ZC211
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4C086AA01
4C086AA02
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4C086DA10
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4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZC21
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZC21
4C087ZC75
(57)【要約】
本発明は、核酸を含むレンチウイルスベクター(LV)に関し、核酸は、5’から3’に肝細胞特異的プロモーター、好ましくはETプロモーター、最適化されたアラニン-グリオキシル酸及びセリン-ピルビン酸アミノトランスフェラーゼタンパク質(AGXT-RHEAM)をコードするヌクレオチド配列、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)、好ましくは突然変異WPRE、及び少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくとも1つのコピー、好ましくはmiRNA-142を含む転写単位を含む。本発明のレンチウイルスベクターは、LVがその機能を実行するために必要なバックボーンエレメントを更に含み、バックボーンエレメントは、以下の:5’長末端反復(5’LTR)、プライマー結合部位(PBS)、psiパッケージングシグナル、野生型HIVウイルスのステムループ4(SL4)領域、Rev応答エレメント(RRE)、及びDNAフラップセントラルポリプリントラクト(cPPT)のうちの少なくとも1つ、並びに3’長末端反復(3’LTR)、又はそれらの任意の組み合わせである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸を含むレンチウイルスベクターであって、前記核酸が、以下の:
配列番号16の全長にわたって少なくとも98%の配列同一性を有する、遺伝子操作された肝細胞特異的プロモーターと、
最適化されたアラニン-グリオキシル酸及びセリン-ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(AGXT-RHEAM)についてコードするヌクレオチド配列であって、前記AGXT-RHEAMタンパク質が、配列番号52の全長にわたって少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有する、ヌクレオチド配列と、
配列番号21の全長にわたって少なくとも98%の配列同一性を有する、突然変異最適化ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)と、
少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくともコピーであって、前記miRNA標的配列が、miRNA-142-3、miR-181、miR-223、又はmiR-30bからなる群より選択される、少なくとも1種のmiRNA標的配列の少なくともコピーと、
を含み、
前記遺伝子操作された肝細胞特異的プロモーター、前記WPRE及び前記少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくともコピーが、前記AGXT-RHEAMタンパク質に作動可能に連結され、前記AGXT-RHEAMタンパク質の発現を調節する、レンチウイルスベクター。
【請求項2】
前記アラニン-グリオキシル酸及びセリン-ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(AGXT-RHEAM)のアミノ酸配列が配列番号52のみからなる、請求項1に記載のレンチウイルスベクター。
【請求項3】
前記遺伝子操作された肝細胞特異的プロモーターのヌクレオチド配列が配列番号16のみからなる、請求項1又は2に記載のレンチウイルスベクター。
【請求項4】
前記突然変異最適化ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)のヌクレオチド配列が配列番号21のみからなる、請求項1~3のいずれか一項に記載のレンチウイルスベクター。
【請求項5】
前記最適化されたアラニン-グリオキシル酸及びセリン-ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(AGXT-RHEAM)タンパク質についてコードするヌクレオチド配列が配列番号29のみからなる、請求項1~4のいずれか一項に記載のレンチウイルスベクター。
【請求項6】
前記少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくともコピーが、配列番号22の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%の配列同一性を有するmiRNA-142-3の標的配列の4つのコピーのみからなる、請求項1~5のいずれか一項に記載のレンチウイルスベクター。
【請求項7】
前記核酸が、以下の:
a)5’長末端反復(LTR)と、
b)プライマー結合部位(PBS)と、
c)psiパッケージングシグナルと、
d)野生型HIVウイルスのステムループ4(SL4)領域と、
e)Rev応答エレメント(RRE)と、
f)DNAフラップセントラルポリプリントラクト(cPPT)と、
g)3’長末端反復(LTR)と、
を更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のレンチウイルスベクター。
【請求項8】
前記レンチウイルスベクター中に含まれる前記ヌクレオチドが、
h)d)とe)との間に位置するDenvRF1領域と、
i)e)とf)との間に位置するDenvRF2領域と、
を更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のレンチウイルスベクター。
【請求項9】
前記レンチウイルスの全長ヌクレオチドが、配列番号30(LV.ET.AGXT-RHEAM.142-3pT)と少なくとも95%、好ましくは98%の配列同一性を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のレンチウイルスベクター。
【請求項10】
配列番号30との配列同一性が100%である、請求項9に記載のレンチウイルスベクター。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のレンチウイルスベクターで形質導入した実質的に純粋な細胞集団。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載のレンチウイルスベクター、又は請求項11に記載の実質的に純粋な細胞集団と、薬学的に許容可能な担体又は希釈剤とを含む薬学的組成物。
【請求項13】
医薬として使用される、請求項1~10のいずれか一項に記載のレンチウイルスベクター、請求項11に記載の実質的に純粋な細胞集団、又は請求項12に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
原発性高シュウ酸尿症の治療を必要とする被験体の治療に使用される、請求項1~10のいずれか一項に記載のレンチウイルスベクター、請求項11に記載の実質的に純粋な細胞集団、又は請求項12に記載の薬学的組成物であって、該方法が、前記レンチウイルスベクター、前記細胞集団、又は前記薬学的組成物を前記被験体に投与することを含む、レンチウイルスベクター、実質的に純粋な細胞集団、又は薬学的組成物。
【請求項15】
前記原発性高シュウ酸尿症が1型である、請求項14に記載の使用のためのレンチウイルスベクター、実質的に純粋な細胞集団、又は薬学的組成物。
【請求項16】
前記使用が、免疫応答抑制剤、好ましくはデキサメタゾン、シクロスポリンA、シクロスポリンH及び/又はラパマイシン、又はそれらの任意の組み合わせと組み合わされる、請求項13~15のいずれか一項に記載の使用のためのレンチウイルスベクター、実質的に純粋な細胞集団、又は薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子療法の分野、特に原発性高シュウ酸尿症1型の治療に含めることができる。具体的には、本発明は、原発性高シュウ酸尿症1型を治療することができる遺伝子療法用のレンチウイルスベクターに関する。
【背景技術】
【0002】
原発性高シュウ酸尿症1型(PH1)(OMIM番号259900)は、遺伝性の稀な常染色体劣性代謝疾患である。PH1は、AGXT遺伝子によってコードされるアラニン:グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ(AGT、EC2.6.1.44)酵素の欠損により引き起こされる。ヒトでは、AGT活性は肝ペルオキシソームに限定されている。この酵素は細胞内でのみ活性であり、細胞外空間には分泌されない。PH1は、肝臓におけるシュウ酸塩の過剰産生を特徴とする。シュウ酸塩は哺乳動物における代謝の最終産物であり、通常は尿によって排出される。大量に産生されると、尿腔(尿路結石症)及び腎組織(腎石灰化症)に形成されるシュウ酸カルシウム(CaOx)の凝集により最初に影響を受ける臓器は腎臓であり、間質性線維症及び腎不全を引き起こす。腎損傷の結果として、糸球体濾過率(GFR)が低下し、慢性腎疾患が増加する。最終的に、PH1患者の約60%が40歳までに末期腎疾患に進行する。その後の、シュウ酸症と呼ばれる広範なCaOx沈着を伴う全身性病変は、PH1患者の生命を危険にさらす(非特許文献1、非特許文献2)。欧州高シュウ酸尿症コンソーシアム(European Consortium of Hyperoxaluria)(http://www.oxaleurope.com/)が提供しているPH1患者に対する現行のガイドラインでは、腎機能が既に損傷している場合、全身性シュウ酸症が現れる前に予防的臓器移植を推奨している。したがって、理想的には、疾患が診断された直後に可能な限り早く適用できる新規の治療アプローチが必要とされている。腎機能の低下を予測する正確な検査及び利用可能な遺伝子診断が存在しないため、シュウ酸塩レベルを低下させ、腎機能を維持することを目的とした、疾患の初期段階での新規の治療を導入すべきである。
【0003】
遺伝子療法は、AGXT遺伝子の機能コピーの送達によってAGT活性を回復させることにより、1回の投与で治癒させる可能性を有する。現在、遺伝性代謝性肝疾患に対する遺伝子療法は、ほとんどがin vivoアプローチに基づいている。肝類洞内皮細胞は有窓構造を有し、肝細胞へのアクセス及び遺伝子導入を促進する(非特許文献3)。AAVベクターは、前臨床モデル及び臨床試験で示された顕著な安全性及び有効性プロファイルを考慮して、in vivo肝臓指向遺伝子療法に広く採用されている。凝固障害血友病の治療のための凝固因子の肝臓へのAAVベクターに基づく遺伝子導入は、遺伝子療法の最も成功した用途の1つである(非特許文献4、非特許文献5)。PH1の特定のケースでは、機能細胞が欠損細胞からのシュウ酸塩過剰産生を補うことができない自律細胞疾患であるため、高シュウ酸尿症の表現型を戻し、疾患を修正するために、治療後に達成されるべき修正細胞のパーセンテージは高いものであると考えられる(非特許文献6)。PH1マウスにおけるアデノウイルスベクター又はアデノ随伴ウイルスベクターを使用して、遺伝子療法の有効性の概念の前臨床証明が提供されている(非特許文献7、非特許文献8)。この成功にもかかわらず、AAVベクターの非組込み性は、導入遺伝子が肝臓の成長中に希釈され、免疫応答により目下効果的な再投与が妨げられることから、小児患者への適用の課題となっている。さらに、AAVカプシドに対する広範な既存の免疫は、適格患者の割合を減少させる。PH1患者の約30%が乳児発症型であるため(非特許文献9、非特許文献10)、小児患者への単回投与後に生涯持続する可能性を有する遺伝子療法戦略を開発することが非常に重要となる。
【0004】
レンチウイルスベクター(LV)は、標的細胞のゲノムに安定して組み込まれる能力及びヒトにおけるベクター成分に対する既存の免疫の低い有病率により、肝臓遺伝子療法にとって魅力的なビヒクルである。近年、血友病Bの治療のためのLV保持FIXの使用は、マウス、イヌ及び非ヒト霊長類において有望な結果を示している(非特許文献11、非特許文献12、非特許文献13)。本発明において、血友病Bの治療に使用されるベクターに基づくLVが使用される。これらのLVは、転写(合成肝臓特異的プロモーター)と転写後の制御(肝臓及び脾臓の抗原提示細胞で異所性に発現するベクターからの任意のmRNAの分解に関与する、造血細胞に特異的なマイクロRNA142標的配列)との組み合わせによって、肝細胞への導入遺伝子発現を標的とするように設計されている(非特許文献11)。さらに、提案されたLVには、タンパク質により高い安定性を付与するAGXTの強化バージョンが含まれている(非特許文献14)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Cochat et al., 2012
【非特許文献2】Sas et al., 2020
【非特許文献3】Piccolo & Brunetti-Pierri, 2015
【非特許文献4】George et al., 2017
【非特許文献5】Pasi et al., 2020
【非特許文献6】Danpure, 2009
【非特許文献7】Salido et al., 2006
【非特許文献8】Salido et al., 2011
【非特許文献9】Sas et al., 2019
【非特許文献10】Mandrile et al., 2014
【非特許文献11】Annoni et al., 2013
【非特許文献12】Cantore et al., 2015
【非特許文献13】Milani et al., 2019
【非特許文献14】Mesa-Torres et al., 2014
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】レンチウイルスベクターコンストラクトを示す図である。A. レポーターレンチウイルスベクター:LV.ET.eGFP.142-3pT。開発したレポーターレンチウイルスベクターは、緑色蛍光タンパク質(GFP)を体系化するeGFP遺伝子を発現する。この導入遺伝子の肝細胞特異的発現は、2つの異なる転写制御エレメントである、合成エンハンサー、マウスTTRエンハンサー及びマウスTTRプロモーターの一部からなる特異的肝プロモーター(TTR)、並びに抗原提示細胞(APC)における導入遺伝子発現、したがって、免疫応答の発生をブロックするための、造血特異的miRNA-142-3の4つの標的配列の存在により達成される。B. 治療用レンチウイルスベクター:LV.ET.AGXT-RHEAM.142-3pT。レポーターレンチウイルスベクターと同じレンチウイルスベクター構造から開発され、レポーターLVと同様にAGTタンパク質のより活性型を体系化する、5つのアミノ酸変化を有するAGXT遺伝子の改善バージョンであるAGXT-RHEAMを発現し、治療用導入遺伝子の肝細胞特異的発現は、2つの異なる転写制御エレメントである、特異的肝プロモーター(TTR)及び造血特異的miRNA-142-3の標的配列の4つの反復の存在により達成される。
【
図2】遺伝子療法アプローチ有効性研究のin vivo試験プロトコルを示す図である。提案した戦略の有効性を研究するために、2種類の実験を実施した。A. C57BL/6成体雄マウスに単回用量のレポーターレンチウイルスベクターを静脈内注射し、4週間後に屠殺した。その後、標的組織である肝臓において、組み込まれたレンチウイルスベクターのゲノムコピー数、及び形質導入細胞のパーセンテージを分析して、形質導入有効性を決定した。さらに、脾臓、肺、骨髄、リンパ節、胸腺、脳、睾丸、膵臓、及び腎臓におけるベクターコピー数(VCN)の分析により、手順のセキュリティーを決定するために生体内分布研究を実施した。B. PH1のマウスモデルにおけるAGXT発現レンチウイルスベクター治療効果の分析のために、以下のプロトコルを実施した。成体Agxt1
-/-雄マウスに異なる用量の治療用レンチウイルスベクターを静脈内注射した。さらに、3つの異なる対照群を含め、そのうちの2群はレポーターレンチウイルスベクターを非注射又は注射したAgxt1
-/-マウスで構成し、他の1群は非注射C57BL/6野生型マウスで構成した。治療の3週間後、全てのマウス群にエチレングリコール負荷試験を行い、シュウ酸塩産生における過負荷を誘発するために、飲料水において0.5%エチレングリコールを補充させた。負荷試験中に、2つの異なるPH1エンドポイントである尿シュウ酸塩濃度及び体重を測定した。治療後、マウスを屠殺し、腎臓損傷を特定した。屠殺後、治療用レンチウイルスベクターの形質導入有効性を、肝臓におけるVCN及びAGXT発現により分析した。レポーターレンチウイルスベクター注射Agxt1
-/-マウスにおいて、形質導入細胞のパーセンテージも分析して、治療用レンチウイルスベクターで得られた結果を完成させた。
【
図3】レンチウイルスベクター注射マウスの標的組織に組み込まれたウイルスゲノムの数を示す図である。標的組織である肝臓におけるレンチウイルスベクターの組込みは、レンチウイルスベクター注射の4週間後に、qPCRによるVCNの定量によって分析した。C57BL/6マウス及びAgxt1
-/-で実施した実験のデータを示す。非注射対照マウス(n=3)は、どのマウス系統においてもレンチウイルスベクター組込みを示さなかった。C57BL/6マウスで実施した実験に関しては、2つの異なるレポーターレンチウイルスベクター用量(1×10
8TU/マウス及び2.5×10
8TU/マウス)(n=3)を試験した。低用量では二倍体ゲノム当たり0.55(0.34~0.56)のレンチウイルスベクターコピーが観察されたが、高用量では二倍体ゲノム当たり1.03(0.94~1.56)のレンチウイルスベクターコピーが得られた。さらに、Agxt1
-/-マウスに2つの異なる用量のLV.ET.eGFP.142-3pTを静脈内注射した結果、1.4×10
8TU/マウスを注射したマウスの肝臓で0.11(0.09~0.49)のVCN(n=4)、5×10
8TU/マウスを注射したマウスで0.84(0.73~1.58)のVCN(n=5)となり、3つの異なる用量のLV.ET.AGXT-RHEAM.142-3pT(2.5×10
8TU/マウス(n=6)、5×10
8TU/マウス(n=10)及び1×10
9TU/マウス(n=6))では、それぞれ0.615(0.39~1.46)、0.765(0.45~1.19)及び1.165(0.85~0.32)のVCNとなる。
【
図4】in vivoレンチウイルスベクター治療後のAgxt1
-/-注射マウスの肝臓におけるAGXT発現分析を示す図である。C57BL/6野生型マウスにおける生理的マウスAgxt発現との比較。治療用レンチウイルスベクター注射Agxt1
-/-マウスにおけるAGXT発現をRT-qPCRによって分析した。AGXT発現表現は、ハウスキーピング遺伝子を参照した。異なる発現レベルを有する2つの異なるハウスキーピング遺伝子をこの分析に使用して(低レベルの発現であるmsTbp、及び高レベルの発現であるmsActb)、in vivo遺伝子療法戦略後のレンチウイルスベクター組込みによって誘導されたAGXT発現(より低い発現レベル)と比較した野生型マウスにおける生理的Agxt発現(より高い発現レベル)の間の差を決定した。A. LV.ET.AGXT-RHEAM.142-3pT注射Agxt1
-/-マウス及び非注射野生型マウスの肝臓におけるmsTbp発現を参照したAGXT発現。2.5×10
8TU/マウス(n=6)、5×10
8TU/マウス(n=10)及び1×10
9TU/マウス(n=6)の用量を投与した治療用レンチウイルス注射マウスは、それぞれ、msTbp発現の%として表される10.88(5.62~16.79)、12.11(4.38~14.48)及び19.88(18.52~28.55)のAGXT発現となり、これは投与した用量と相関する。非注射Agxt1
-/-マウス(n=8)はAGXT発現を示さなかった。さらに、野生型C57BL/6マウス(n=4)は、Agxt1
-/-治療マウスにおいて達成されたものより有意に高い、msTbp発現の8563%のAgxt発現(6996%~8939%)を示した。B. LV.ET.AGXT-RHEAM.142-3pT注射Agxt1
-/-マウス及び非注射野生型マウスの肝臓におけるmsActb発現を参照したAGXT発現。msActbハウスキーピング遺伝子発現の%として表されるAGXT発現は、2.5×10
8TU/マウスの治療用レンチウイルスベクター用量を投与したAgxt1
-/-マウスで0.1041(0.06007~0.2452)(n=6)、5×10
8TU/マウスで注射したマウスで0.1857(0.08878~0.2966)(n=10)、1×10
9TU/マウスで注射したマウスで0.3088(0.1707~0.4418)(n=6)であった。msActbを参照したAgxtの生理的発現は340.5%(141%~374.5%)であった。Agxt発現レベルの差はハウスキーピング遺伝子に依存するが、群間の差は維持された。
【
図5】レポーターレンチウイルスベクターC57BL/6及びAgxt1
-/-注射マウスにおける形質導入細胞のパーセンテージを示す図である。レポーターレンチウイルスベクター注射野生型C57BL/6及びAgxt1
-/-マウスの肝臓切片におけるeGFP発現肝細胞のパーセンテージを、免疫染色及びその後のQuPath(商標)ソフトウェアによる画像分析によって特定した。A~E. 全てのマウス群の肝臓切片におけるeGFPに対する免疫染色の代表的な画像。緑色:eGFP、青色:DAPIで染色された核。F~H. C57BL/6マウスの肝臓切片におけるeGFP及び肝細胞特異的マーカーであるマウスアルブミンの二重免疫染色の代表的な画像。赤色:eGFP、緑色:マウスアルブミン、青色:DAPIで染色された核。I. 形質導入肝細胞のパーセンテージ。C57BL/6マウスで実施した実験に関しては、2つの異なるレポーターレンチウイルスベクター用量(1×10
8TU/マウス(n=3)及び2.5×10
8TU/マウス(n=3))を試験した。これは、それぞれ1.751%(1.132%~5.556%)の陽性肝細胞及び12.92%(10.72%~13.81%)の陽性肝細胞に対応する。さらに、Agxt1
-/-において、2つの異なる用量を試験し(1.4×10
8TU/マウス(n=4)及び5×10
8TU/マウス(n=5))、それぞれ1.777%(0.399%~4.572%)のeGFP陽性肝細胞及び5.5059%(2.109%~8.754%)のeGFP陽性肝細胞となった。
【
図6】生体内分布分析を示す図である。提案した治療戦略の安全性を決定するために、2つの異なる用量のレポーターレンチウイルスベクターを注射したC57BL/6野生型マウスにおけるレンチウイルスベクター組込みゲノムの数を分析した。注射野生型C57BL/6マウスの異なる組織に組み込まれたLVゲノムコピー数をqPCRによって分析した。レポーターレンチウイルスベクターゲノムの組込みは、標的組織である肝臓、並びに肺、脾臓、及び骨髄でのみ観察された。1×10
8TU/マウスを注射したC57BL/6マウス(n=3)は、肺で2.72(2.33~6.2)、脾臓で0.21(0.14~0.32)、骨髄で0.05(0.04~0.09)のVCN値を有するオフターゲット形質導入を示したが、より高用量の2.5×10
8TU/マウスを注射したマウス(n=3)は、肺で4.94(0.185~7.79)、脾臓で0.35(0.25~0.55)、骨髄で0.13(0.09~0.18)のVCN値を示した。
【
図7】PH1エンドポイント。エチレングリコール負荷試験中のシュウ酸塩尿濃度を示す図である。基礎時点並びにエチレングリコール負荷試験の3日目及び7日目での尿シュウ酸塩の定量(μmol/24時間)。示した全てのマウスに、0.5%のエチレングリコールを飲料水に添加した7日間のエチレングリコール負荷試験を行った。2つの異なる陰性対照群を示すと、一方はAgxt1
-/-非注射マウス(n=8)で構成され、もう一方は、2つの異なる用量のLV.ET.GFP.142-3pT(1.4×10
8TU/マウス及び5×10
8TU/マウス)にて注射したAgxt1
-/-マウス(n=9)で構成される。野生型C57BL/6非注射マウス(n=5)で構成される陽性対照群も含まれる。治療用レンチウイルスベクター注射Agxt1
-/-マウスを、投与した用量(2.5×10
8TU/マウス(n=6)、5×10
8TU/マウス(n=10)又は10×10
8TU/マウス(n=6))に従って3つの異なる群に分ける。基礎データは、野生型マウスと比較して、治療及び非治療Agxt1
-/-マウスでより高いシュウ酸塩濃度を示す。エチレングリコール負荷試験中、尿シュウ酸塩レベルの増加が全ての群で観察されたが、この増加は、異なる用量のLV.ET.AGXT-RHEAM.142-3pT(2.5×10
8TU/マウス、5×10
8TU/マウス又は10×10
8TU/マウス)でのAgxt1
-/-治療マウス及び野生型C57BL/6マウス群と比較して、非治療Agxt1
-/-マウス(非注射及びLV.ET.eGFP.142-3pT注射Agxt1
-/-マウス)の場合に大きかった。この差は、エチレングリコール負荷試験の7日目に5×10
8TU/マウスのLV.ET.AGXT-RHEAM.142-3pTを投与したAgxt1
-/-マウスの場合に、未治療群と比較してはるかに大きかった。さらに、エチレングリコール治療の7日目に、5×10
8TU/マウスの治療用LVで治療したAgxt1
-/-と野生型C57BL/6マウスとの間に有意差は認められなかった。
【
図8】PH1エンドポイント:エチレングリコール負荷試験中の体重変化を示す図である。エチレングリコール負荷試験中の体重経過を分析した。動物の体重は、負荷試験前の基礎時点並びに負荷試験の3日目及び7日目にて測定した。この図では、各動物の基礎体重に対する体重の増減を示している。2つの異なる陰性対照群を示すと、一方はAgxt1
-/-非注射マウスで構成され、もう一方は、2つの異なる用量のLV.ET.GFP.142-3pT(1.4×10
8TU/マウス及び5×10
8TU/マウス)にて注射したAgxt1
-/-マウスで構成される。野生型C57BL/6非注射マウスで構成される陽性対照群も含まれる。治療用レンチウイルスベクター注射Agxt1
-/-マウスを、投与した用量(2.5×10
8TU/マウス、5×10
8TU/マウス又は10×10
8TU/マウス)に従って3つの異なる群に分ける。治療用レンチウイルスベクター治療マウスの場合、負荷試験の7日目に体重の減少は観察されず、増加が観察されたが、未治療マウス(非注射又はレポーターレンチウイルスベクター注射Agxt1
-/-マウス)の場合、負荷試験中に重量喪失が見られた。さらに、野生型C57BL/6マウスと5×10
8TU/マウス又は10×10
8TU/マウスの用量にて治療用レンチウイルスベクターを注射したAgxt1
-/-マウスとの間には有意差は認められなかったが、一方、これらの群と非治療マウスとの間には有意差が認められた。
【
図9】PH1エンドポイント。腎臓損傷スコア。エチレングリコール負荷試験後の腎臓損傷発症を示す図である。エチレングリコール負荷試験を行った治療マウス及び非治療マウスの腎臓損傷を決定するために、腎臓の組織試料を「腎臓損傷スコア」に従って以下に分類した。0:損傷なし、1:構造は正常だが、拡張した管等の幾つかの損傷徴候がある、2:構造が部分的に影響を受け、拡張した管の存在が増加する、3:組織構造が大きな影響を受け、腎石灰化症の段階を示すシュウ酸カルシウム結晶の存在が観察できる。A. 各マウス群のヘマトキシリン-エオシン腎臓切片の代表的な画像。各群からの腎臓損傷スコアが0~1の試料の代表的な画像(腎臓損傷なし又は軽度の腎臓損傷を示す)、及び腎臓損傷スコアが2~3の試料の代表的な画像(中程度又は重度の腎臓損傷を示す)である。各群のマウスの総数に対する、そのレベルの腎臓損傷を発症したマウスの数を各画像に明記する。異なるマウス群に従って、2つの異なる陰性対照群を示すと、一方はAgxt1
-/-非注射マウス(n=8)で構成され、もう一方は、2つの異なる用量のLV.ET.GFP.142-3pT(1.4×10
8TU/マウス及び5×10
8TU/マウス)にて注射したAgxt1
-/-マウス(n=9)で構成される。野生型C57BL/6非注射マウス(n=5)で構成される陽性対照群も含まれる。治療用レンチウイルスベクター注射Agxt1
-/-マウスを、投与した用量(2.5×10
8TU/マウス(n=6)、5×10
8TU/マウス(n=10)又は10×10
8TU/マウス(n=6))に従って3つの異なる群に分ける。B. 各動物の腎臓損傷段階を表した。灰色のバンドは腎石灰化症の発症を表す。異なる治療Agxt1
-/-マウス間で、中間用量の治療用レンチウイルスベクターを注射したマウスはいずれも腎石灰化症を発症しなかった。
【
図10】形質導入促進剤:シクロスポリンHは、HepG2細胞株におけるレポーターレンチウイルスベクター形質導入を増加させることを示す図である。HepG2細胞を、異なる投与レジメンのLV.ET.eGFP.142-3pT及びシクロスポリンH(CsH)の組み合わせで形質導入した。CsH無しのレポーターレンチウイルスベクター形質導入細胞と比較した、異なるCsH処理条件との間のeGFP陽性細胞のパーセンテージの増加倍数を表す。第1の形質導入プロトコルにおいて、レンチウイルスベクター形質導入中に、HepG2細胞を異なる濃度のCsH(4μM、8μM又は16μM)に曝した。細胞を0.3のレンチウイルスベクターMOIで形質導入した。各条件の3回の技術的反復を実施した。基礎形質導入レベルは36.67%であり、異なるCsH処理試料では、4μM、8μM及び16μMのCsH条件で37.67%、44.3%及び51.5%の形質導入パーセンテージが認められ、これは、それぞれ1.03倍、1.2倍及び1.4倍の増加を意味する。さらに、別のCsH投与レジメンを試験した。HepG2細胞を形質導入前に16時間CsHで前処理し、レンチウイルス形質導入中にCsHをLV.ET.eGFP.142-3pTと共に添加した。試験したCsH濃度は16μMのみであった。このCsH投与レジメンにおいて、対照群に対して2.35倍のeGFP陽性細胞の増加が認められた。細胞を0.3のLV.ET.eGFP.142-3pTのMOIで形質導入すると、達成された形質導入細胞のパーセンテージは、対照群で13.2%、CsH処理細胞で31.03%であった。同じMOIでの形質導入レベルで観察された差は、おそらく使用したウイルスストックの違いによるものである。
【
図11】LV.ET.eGFP.142-3pTコンストラクトを示す図である。
【
図12】LV.ET.AGXT-RHEAM.142-3pTコンストラクトを示す図である。
【
図13】in vitro及びin vivoでのLV.ET.eGFP.142-3pT形質導入有効性の比較を示す図である。in vitro形質導入有効性を決定するために、HepG2細胞を異なる感染多重度(MOI)にてLV.ET.eGFP.142-3pTで形質導入した。形質導入の3日後に、eGFP陽性細胞のパーセンテージをフローサイトメトリーによって決定した。約1のMOIを使用すると、50%の形質導入パーセンテージが達成されたが、より高いMOIでは100%の形質導入が達成された。in vivo形質導入有効性を決定するために、成体C57BL/6(黒丸)又はAgxt1
-/-マウス(白丸)に異なる用量(1×10
8TU/マウス、1.4×10
8TU/マウス、2×10
8TU/マウス及び5×10
8TU/マウス)にてLV.ET.eGFP.142-3pTを静脈内注射した。対応するMOIは、以前に記載されているように、これらのマウスの肝臓における肝細胞の推定数に従ってのみ計算した(Park et al., 2000、Schmitt et al., 2010)。したがって、マウスに以下のMOI:0.8、1.1、2、及び4で注射した。形質導入肝細胞のパーセンテージは、4週間後に肝臓の組織試料において決定した。
【
図14】デキサメタゾン処理がin vivoレポーターレンチウイルスベクター治療C57BL/6マウスの肝臓における形質導入有効性を改善することを示す図である。提案した戦略との関係において、形質導入促進剤としてのデキサメタゾンの使用を試験するために、in vivo実験を実施した。A. C57BL/6成体雄マウスに単回用量のLV.ET.eGFP.142-3pT(5×10
8TU/マウス)を、デキサメタゾン(Fortecortin(商標))と組み合わせて、又は組み合わせずに静脈内注射によって静脈内注射した。デキサメタゾンは、レンチウイルスベクター注射の12時間前及び2時間前、並びに4時間後の3回の逐次的投与で、5mg/体重1kgの用量にて腹腔内注射によって投与した。4週間後にマウスを屠殺した。その後、標的組織である肝臓において、組み込まれたレンチウイルスベクターのゲノムコピー数、及び形質導入細胞のパーセンテージを分析して、形質導入有効性を決定した。B. 肝臓におけるレンチウイルスベクターの組込みを、qPCRによるVCNの定量によって分析した。2つの異なるマウス治療群を示すと、一方はレンチウイルスベクターのみで治療を受けた群(n=5)、もう一方は併用治療を受けた群(n=5)である。レポーターレンチウイルスベクターのみで治療したマウスでは、二倍体ゲノム当たり1.48(1.2~1.76)のコピーが認められたが、デキサメタゾンでも治療したマウスでは、二倍体ゲノム当たり0.92(0.38~1.4)のコピーが検出され、レンチウイルスベクターのみで治療したマウスと比較して有意に減少した(p<0.05)。C. 肝臓切片におけるeGFP陽性肝細胞のパーセンテージは、免疫染色及びその後のQuPath(商標)ソフトウェアによる画像分析によって特定した。レポーターレンチウイルスベクターのみで治療したマウスでは、4.434%(2.167%~7.55%)のeGFP陽性肝細胞が観察されたが、レンチウイルスベクター及びデキサメタゾンの組み合わせで治療したマウスでは、18.11%(6.381%~19.79%)のeGFP陽性肝細胞が得られ、レンチウイルスベクターのみで治療したマウスに対して有意に増加した(p<0.05)。D及びE. 全てのマウス群の肝臓切片におけるeGFPに対する免疫染色の代表的な画像。
【発明を実施するための形態】
【0007】
第1の態様において、本発明は、核酸を含むレンチウイルスベクター(LV)を提供し、核酸は転写単位を含み、転写単位は、本明細書において、5’から3’に肝細胞特異的プロモーター、好ましくはETプロモーター、最適化されたアラニン-グリオキシル酸及びセリン-ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(以下、AGXT-RHEAMと称する)タンパク質をコードするヌクレオチド配列、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(以下、WPREと称する)、好ましくは突然変異WPRE、及び少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくとも1つのコピーを含むものとして定義され、肝細胞特異的プロモーター、WPRE及び少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくとも1つのコピーは、AGXT-RHEAMに作動可能に連結され、AGXT-RHEAMの発現を調節する。
【0008】
好ましくは、核酸は、以下の:
配列番号16の全長にわたって少なくとも98%の配列同一性を有する、遺伝子操作された肝細胞特異的プロモーターと、
最適化されたアラニン-グリオキシル酸及びセリン-ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(AGXT-RHEAM)についてコードするヌクレオチド配列であって、AGXT-RHEAMタンパク質が、配列番号52の全長にわたって少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有する、ヌクレオチド配列と、
配列番号21の全長にわたって少なくとも98%の配列同一性を有する、突然変異最適化ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)と、
少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくともコピーであって、miRNA標的配列が、miRNA-142-3、miR-181、miR-223、又はmiR-30bからなる群より選択される、少なくとも1種のmiRNA標的配列の少なくともコピーと、
を含み、
遺伝子操作された肝細胞特異的プロモーター、WPRE及び少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくともコピーが、AGXT-RHEAMタンパク質に作動可能に連結され、AGXT-RHEAMタンパク質の発現を調節する。好ましくは、アラニン-グリオキシル酸及びセリン-ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(AGXT-RHEAM)のアミノ酸配列は、配列番号52のみからなる。好ましくは、遺伝子操作された肝細胞特異的プロモーターのヌクレオチド配列は、配列番号16のみからなる。好ましくは、突然変異最適化ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)のヌクレオチド配列は、配列番号21のみからなる。好ましくは、最適化されたアラニン-グリオキシル酸及びセリン-ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(AGXT-RHEAM)タンパク質についてコードするヌクレオチド配列は、配列番号29のみからなる。好ましくは、少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくともコピーは、配列番号22の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%の配列同一性を有するmiRNA-142-3の標的配列の4つのコピーのみからなる。
【0009】
好ましい実施形態において、レンチウイルスベクター中に含まれる核酸は、好ましくは、5’から3’に以下の:
a)5’長末端反復(LTR)と、
b)プライマー結合部位(PBS)と、
c)psiパッケージングシグナルと、
d)野生型HIVウイルスのステムループ4(SL4)領域と、
e)Rev応答エレメント(RRE)と、
f)DNAフラップセントラルポリプリントラクト(cPPT)と、
g)3’長末端反復(LTR)と、
を更に含み、
好ましくは、ヌクレオチドは、d)とe)との間に位置するDenvRF1領域と、e)とf)との間に位置するDenvRF2領域とを更に含む。
【0010】
第1の態様又はその実施形態のいずれかの好ましい実施形態において、レンチウイルスベクターは核酸を含み、核酸は5’から3’に以下のヌクレオチド:
a)5’長末端反復(LTR)と、
b)プライマー結合部位(PBS)と、
c)psiパッケージングシグナルと、
d)野生型HIVウイルスのステムループ4(SL4)領域と、
e)Rev応答エレメント(RRE)と、
f)DNAフラップセントラルポリプリントラクト(cPPT)と、
g)配列番号16の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%の配列同一性を有する、遺伝子操作された肝細胞特異的プロモーターと、
h)配列番号29の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%の配列同一性を有する、最適化されたアラニン-グリオキシル酸及びセリン-ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(AGXT-RHEAM)タンパク質をコードするヌクレオチド配列と、
i)配列番号21の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%の配列同一性を有する、突然変異最適化ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)と、
j)少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくともコピーと、
k)3’長末端反復(LTR)と、
を含み、
a)及びk)の長末端反復領域は、LTRのU3領域における全欠失又は部分的欠失により、実質的に転写的に不活性化されており、g)、i)及びj)は、h)に作動可能に連結され、h)の発現を調節する。第1の態様又はその実施形態のいずれかの好ましい実施形態において、配列番号16、配列番号29、及び配列番号21に対するg)、h)、i)の配列同一性は、それぞれ100%である。
【0011】
第1の態様又はその実施形態のいずれかの好ましい実施形態において、j)の少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくともコピーは、配列番号22の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、最も好ましくは100%の配列同一性を有するmiRNA-142-3の標的配列の4つのコピーのみからなる。
【0012】
第1の態様又はその実施形態のいずれかの好ましい実施形態において、上記レンチウイルスベクター中に含まれるヌクレオチドは、
l)d)とe)との間に位置するDenvRF1領域と、
m)e)とf)との間に位置するDenvRF2領域と、
を更に含む。
【0013】
第1の態様又はその実施形態のいずれかの好ましい実施形態において、上記レンチウイルスベクターのヌクレオチドに含まれる5’長末端反復は、配列番号4の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、最も好ましくは100%の配列同一性を有する。
【0014】
第1の態様又はその実施形態のいずれかの好ましい実施形態において、上記レンチウイルスベクターのヌクレオチドに含まれるプライマー結合部位は、配列番号9の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、最も好ましくは100%の配列同一性を有する。
【0015】
第1の態様又はその実施形態のいずれかの好ましい実施形態において、上記レンチウイルスベクターのヌクレオチドに含まれるpsiパッケージングシグナルは、配列番号10の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、最も好ましくは100%の配列同一性を有する。
【0016】
第1の態様又はその実施形態のいずれかの好ましい実施形態において、上記レンチウイルスベクターのヌクレオチドに含まれるステムループ4(SL4)は、配列番号11の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、最も好ましくは100%の配列同一性を有する。
【0017】
第1の態様又はその実施形態のいずれかの好ましい実施形態において、上記レンチウイルスベクターのヌクレオチドに含まれるRev応答エレメント(RRE)は、配列番号13の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、最も好ましくは100%の配列同一性を有する。
【0018】
第1の態様又はその実施形態のいずれかの好ましい実施形態において、上記レンチウイルスベクターのヌクレオチドに含まれるDNAフラップセントラルポリプリントラクト(cPPT)は、配列番号15の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、最も好ましくは100%の配列同一性を有する。
【0019】
第1の態様又はその実施形態のいずれかの好ましい実施形態において、上記レンチウイルスベクターのヌクレオチドに含まれる3’長末端反復は、配列番号23の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、最も好ましくは100%の配列同一性を有する。
【0020】
第1の態様又はその実施形態のいずれかの好ましい実施形態において、上記レンチウイルスベクターのヌクレオチドに含まれるDenvRF1は、配列番号12の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、最も好ましくは100%の配列同一性を有する。
【0021】
第1の態様又はその実施形態のいずれかの好ましい実施形態において、上記レンチウイルスベクターのヌクレオチドに含まれるDenvRF2は、配列番号14の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、最も好ましくは100%の配列同一性を有する。
【0022】
第1の態様又はその実施形態のいずれかの好ましい実施形態において、上記レンチウイルスの全長ヌクレオチドは、配列番号30(LV.ET.AGXT-RHEAM.142-3pT)と少なくとも95%、好ましくは98%、最も好ましくは100%の配列同一性を有する。
【0023】
第2の態様において、本発明は、第1の態様又はその実施形態のいずれかにおいて定義されるレンチウイルスベクターを含む(例えば、形質導入された)宿主細胞又は実質的に純粋な細胞集団に関する。第2の態様の一実施形態において、宿主細胞又は実質的に純粋な細胞集団は肝細胞である。
【0024】
第3の態様において、本発明は、第1の態様又はその実施形態のいずれかにおいて定義されるレンチウイルスベクター中に含まれるヌクレオチドを含む単離された核酸に関する。
【0025】
第4の態様において、本発明は、第1の態様又はその実施形態のいずれかにおいて定義されるレンチウイルス、第2の態様又はその実施形態のいずれかによる宿主細胞又は実質的に純粋な細胞集団、及び/又は第3の態様又はその実施形態のいずれかにおいて定義される核酸と、薬学的に許容可能な担体又は希釈剤とを含む薬学的組成物を提供する。
【0026】
第5の態様において、本発明は、医薬として使用される、第1の態様若しくはその実施形態のいずれかによるレンチウイルスベクター、第2の態様若しくはその実施形態のいずれかによる宿主細胞若しくは実質的に純粋な細胞集団、第3の態様若しくはその実施形態のいずれかによる単離された核酸、又は第4の態様若しくはその実施形態のいずれかの薬学的組成物を提供する。
【0027】
第6の態様において、本発明は、原発性高シュウ酸尿症、好ましくは原発性高シュウ酸尿症1型の治療に使用される、第1の態様若しくはその実施形態のいずれかによるレンチウイルスベクター、第2の態様若しくはその実施形態のいずれかによる宿主細胞若しくは実質的に純粋な細胞集団、第3の態様若しくはその実施形態のいずれかによる単離された核酸、又は第4の態様若しくはその実施形態のいずれかの薬学的組成物であって、上記レンチウイルス、上記宿主細胞若しくは細胞集団、又は上記組成物を被験体に投与することを含む使用を提供する。
【0028】
好ましくは、第5の態様及び第6の態様による使用は、免疫応答抑制剤、好ましくはデキサメタゾン、シクロスポリンA、シクロスポリンH及び/又はラパマイシン、又はそれらの任意の組み合わせと組み合わされる。
【0029】
一般的な定義
本明細書において使用される場合に、単数形("a", "an", and "the")は、文脈上特段の明示がない限り、複数の参照を含むことに留意されたい。さらに、特段の指示がない限り、一連の要素に先立つ「少なくとも」という用語は、一連の中の全ての要素を指すものと理解されるべきである。当業者は、日常の実験を使用するだけで、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態の多くの均等物を認識し、又は把握することができるであろう。そのような均等物は、本発明により包含されることが意図される。
【0030】
本明細書において、「約」という用語は、概ね、おおよそ、前後、又はほぼを意味するものとして使用される。「約」という用語が数値の範囲と共に使用される場合、それは、記載された数値の上下の境界を拡張することによってその範囲を変更する。一般に、「約」という用語は、本明細書において、明記された値の上下の数値を上下(高低)10%の変動によって変更するために使用される。
【0031】
本明細書において使用される場合、多数の列挙された要素間の接続語「及び/又は」は、個別の選択肢及び組み合わされた選択肢の両方を包含するものとして理解される。例えば、2つの要素が「及び/又は」により接続されている場合、1つ目の選択肢は1つ目の要素を2つ目の要素を除いて適用可能であることを指す。2つ目の選択肢は2つ目の要素を1つ目の要素を除いて適用可能であることを指す。3つ目の選択肢は1つ目の要素と2つ目の要素とを一緒に適用可能であることを指す。これらの選択肢のいずれか1つがその意味の範囲内に含まれ、したがって本明細書において使用される「及び/又は」という用語の要件を満たすものと理解される。2つ以上の選択肢を同時に適用可能であることもその意味の範囲内に含まれ、したがって「及び/又は」という用語の要件を満たすものと理解される。
【0032】
本明細書及び添付の特許請求の範囲全体を通じて、文脈上特段の必要がない限り、「~を含む(comprise)」という語、並びに「~を含む(comprises)」及び「~を含む(comprising)」等の別形は、指定された整数若しくは工程又は整数若しくは工程の群を含むが、あらゆる他の整数若しくは工程又は整数若しくは工程の群も除外しないことを意味するものと理解されるであろう。本明細書において使用される場合、「~を含む(comprising)」という用語を、「~を含有する(containing)」若しくは「~を含む(including)」という用語で置き換えることができ、又は本明細書において使用される場合、時には「~を有する(having)」という用語で置き換えることができる。上述の用語(~を含む(comprising)、~を含有する(containing)、~を含む(including)、~を有する(having))のいずれも、本発明の態様又は実施形態の文脈において本明細書において使用されるときはいつでも、「~のみからなる(consisting of)」という用語で置き換えることができるが、これはあまり好ましくない。
【0033】
本明細書において使用される場合、「~のみからなる(consisting of)」は、クレームの要素に特定されていないあらゆる要素、工程、又は成分を除外する。
【0034】
タンパク質又はヌクレオチド「から本質的になる」タンパク質又はヌクレオチドは、特定のタンパク質又はヌクレオチドと相当に同一のアミノ酸又はヌクレオチド配列を有するタンパク質又はヌクレオチドである。
【0035】
タンパク質又はヌクレオチドとそれぞれ「本質的に同一のアミノ酸又はヌクレオチド配列」を有するタンパク質又はヌクレオチドは、典型的には、このタンパク質又はヌクレオチドと90%超のアミノ酸又はヌクレオチド同一性を有する。この定義には保存的アミノ酸置換が含まれる。
【0036】
本発明の目的における「単離された」という用語は、その元の環境(それが天然に存在する環境)から取り出された生体物質(細胞、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、又はそれらの断片、変異体、若しくは誘導体)を指す。例えば、植物又は動物において天然の状態で存在するポリヌクレオチドは単離されていないが、それが天然に存在する隣接核酸から分離された同一のポリヌクレオチドは「単離された」と考えられる。
【0037】
「核酸」、「核酸分子」、「オリゴヌクレオチド」、及び「ポリヌクレオチド」は、区別なく使用され、リボヌクレオシド(アデノシン、グアノシン、ウリジン又はシチジン;「RNA分子」)又はデオキシリボヌクレオシド(デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシチミジン、又はデオキシシチジン;「DNA分子」)のリン酸エステルポリマー形、又は、一本鎖形、若しくは二本鎖ヘリックスの形の任意のそれらのリン酸エステル類似体、例えばホスホロチオエート及びチオエステルを指す。核酸分子、特にDNA分子又はRNA分子という用語は、分子の一次及び二次構造のみを指し、いかなる特定の三次形態にも限定しない。したがって、この用語には、とりわけ、線状又は環状のDNA分子(例えば、制限断片)、プラスミド、スーパーコイルDNA及び染色体に見出される二本鎖DNAが含まれる。
【0038】
「コード領域」又は「コード配列」は、アミノ酸に翻訳可能なコドンからなるポリヌクレオチドの一部である。
【0039】
「下流」という用語は、参照ヌクレオチド配列の3’側に位置するヌクレオチド配列を指す。或る特定の実施形態において、下流のヌクレオチド配列は、転写の開始点に続く配列に関する。
【0040】
「上流」という用語は、参照ヌクレオチド配列の5’側に位置するヌクレオチド配列を指す。或る特定の実施形態において、上流のヌクレオチド配列は、コード領域又は転写の開始点の5’側に位置する配列に関する。
【0041】
本明細書において使用される場合、「遺伝子調節領域」又は「調節領域」という用語は、コード領域の上流(5’配列)、その中、又は下流(3’配列)に位置し、関連するコード領域の転写、RNAプロセシング、安定性、又は翻訳に影響を与えるヌクレオチド配列を指す。調節領域は、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位及びステムループ構造を含むことができる。コード領域が真核細胞における発現を意図している場合、ポリアデニル化シグナル及び転写終結配列はコード配列の3’側に通常位置する。
【0042】
「転写後調節エレメント」という用語は、転写されるとタンパク質の発現を増強又は抑制する三次構造を生成するDNA配列を指す。
【0043】
「転写制御配列」は、宿主細胞におけるコード配列の発現を提供するDNA調節配列、例えばプロモーター、エンハンサー、ターミネーター等を指す。
【0044】
「プロモーター」という用語は、転写を開始するためにRNAポリメラーゼが結合できるDNA配列を指す。この配列は、転写因子等の転写を調節する種々のタンパク質の結合部位を更に含み得る。プロモーター配列は、DNA配列に密接に局在し、リンカー又はスペーサーによって分離され得る異なるプロモーター断片(異なる断片又は同じ断片のいずれか)から構成され得る。そのようなプロモーターはキメラプロモーターと呼ばれる。
【0045】
本出願において使用される「治療」及び「療法」という用語は、疾患及び/又は症状を治癒及び/又は緩和する目的と共に健康上の問題の改善を目標として使用される一連の衛生的手段、薬理学的手段、外科的手段及び/又は物理的手段を指す。「治療」及び「療法」という用語には、予防法及び治癒法が含まれる。それというのも、両者とも個体又は動物の健康の維持及び/又は回復に向けられるからである。症状、疾患及び廃疾の原因にかかわらず、健康上の問題を軽減及び/又は治癒するために適した医薬の投与は、本出願の文脈内の治療又は療法の形として解釈されるべきである。
【0046】
「治療有効量」という用語は、治療効果を有し、PH1を治療することが可能な物質の量を指す。
【0047】
「個体」、「患者」又は「被験体」という用語は、本出願において区別なく使用され、決して限定することを意図するものではない。「個体」、「患者」又は「被験体」は、任意の年齢、性別及び身体状態であってもよい。
【0048】
本明細書において使用される場合、「薬学的に許容可能な担体」又は「薬学的に許容可能な希釈剤」は、薬学的投与と適合可能な任意の全ての溶剤、分散媒、コーティング剤、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤を意味する。薬学的活性物質用のそのような媒体及び薬剤の使用は、当該技術分野でよく知られている。許容可能な担体、賦形剤又は安定剤は、使用される投与量及び濃度でレシピエントに対して非毒性であり、本発明の範囲を限定するものではないが、追加の緩衝剤、保存剤、共溶媒、アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤、EDTA等のキレート剤、金属複合体(例えば、Zn-タンパク質複合体)、ポリエステル類等の生分解性ポリマー、ナトリウム、多価糖アルコール等の塩形成対イオン、アラニン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、リジン、オルニチン、ロイシン、2-フェニルアラニン、グルタミン酸及びトレオニン等のアミノ酸、ラクチトール、スタキオース、マンノース、ソルボース、キシロース、リボース、リビトール、ミオイニシトース(myoinisitose)、ミオイニシトール(myoinisitol)、ガラクトース、ガラクチトール、グリセロール、シクリトール類(例えば、イノシトール)、ポリエチレングリコール等の有機糖類又は糖アルコール、尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、α-モノチオグリセロール及びチオ硫酸ナトリウム等の硫黄含有還元剤、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン又は他の免疫グロブリン等の低分子量タンパク質、並びにポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーが挙げられる。
【0049】
本明細書において使用される場合、「それを必要とする被験体」という語句には、例えば、止血を向上させるために、本明細書において提供される核酸分子、ポリペプチド、又はベクターの投与から利益を受けるであろう哺乳動物被験体等の被験体が含まれる。
【0050】
本明細書において使用される場合、ヌクレオチド配列に関して「最適化された」という用語は、ポリヌクレオチド配列がそのポリヌクレオチド配列の特性を高めるために突然変異されている、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を指す。
【0051】
「レンチウイルス」(LV)という用語は、ヒト及び他の哺乳動物種において、長い潜伏期間を特徴とする慢性及び致死的な疾患を引き起こすレトロウイルスの属を指す。「ベクター」とは、外来遺伝物質を人工的に細胞内に運ぶために使用できる任意のビヒクルである。したがって、「レンチウイルスベクター」は、核酸を細胞内に運ぶ組換えレンチウイルスを指す。
【0052】
本明細書において使用される「転写単位」とは、5’から3’に肝細胞特異的プロモーター、好ましくはETプロモーターと、最適化されたアラニン-グリオキシル酸及びセリン-ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(AGXT-RHEAM)タンパク質をコードするヌクレオチド配列と、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)、好ましくは突然変異WPREと、少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくとも1つのコピーとを含む、本発明のLVベクター中に含まれるヌクレオチド配列を意味し、肝細胞特異的プロモーター、WPRE及び少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくとも1つのコピーは、AGXT-RHEAMに作動可能に連結され、AGXT-RHEAMの発現を調節する。
【0053】
説明
レンチウイルスベクターは遺伝子送達のための魅力的なツールであるが、形質導入の効率は、所望の治療効果を得るために十分な細胞が遺伝学的に修正されることを確実にする鍵である。残念ながら、in vitroで観察される形質導入の速度はin vivoで達成される形質導入効率に対応しないことが一般的に見出されており、これは、ベクターが、遺伝子修正が所望される組織に直接送達されないか、又は送達できない(例えば、肝臓特異的疾患の場合)が、ベクターが血流に取り込まれ、宿主の免疫応答によって標的とされる非経口経路等の他の経路によって送達される場合に特に強調される。本発明の著者らは、in vitro(HepG2細胞中)及びin vivo(C57BL/6マウス)で使用した同じレンチウイルスベクターの形質導入効率を
図13に示し、ウイルスがin vivoの状況にあるときに形質導入細胞のパーセンテージにおいて大幅な減少があることを示している。さらに、形質導入効率は、in vitro/in vivo、又は局所送達と全身送達とで異なるだけでなく、使用されるレンチウイルスの種類、及び細胞を形質導入し、宿主細胞ゲノムに組み込む能力によっても異なる。特に、標的細胞を形質導入する能力は、明らかにレンチウイルスバックボーンの影響を受ける(Johnson et al., 2021, Mol Therapy)。多くの場合、レンチウイルスバックボーンにおける小さな変化が、その形質導入効率における大きな変化に変換される。この全てを考慮すると、目的の遺伝子(導入遺伝子)を含む特定のレンチウイルスベクターが特定の疾患に対してin vivoで効率的に作用するかどうかを決定することは困難であると断言できる。
【0054】
さらに、血友病(例えば、血友病A)等の幾つかの疾患は、レンチウイルスベクターの形質導入効率がin vivoで細胞の10%にも達しないにもかかわらず、レンチウイルスベクターで治療することができる。これは、これらの場合では、5%という低いin vivo形質導入有効性で、疾患の表現型を戻すのに十分な治療効果を得ることが十分にできるからである。しかしながら、PH1の特定の場合では、少なくとも部分的にPH1表現型を戻すためには、肝細胞の少なくとも40%を修正する必要があり、すなわち、AGXTタンパク質を効率的に産生する必要があるということが広く受け入れられている。Castelloらは、肝細胞移植戦略が成功する可能性は低く、PH1の修正には多数の生着肝細胞が必要とされ、この手順の能力を超える可能性が高いためであることを以前に明らかにしている(Castello et al. 2015. doi: 10.1038/gt.2015.107)。さらに、Jiang及び同僚らは、臨床的治癒を達成するためには、過剰産生する突然変異肝細胞質量の少なくとも75%を野生型肝細胞に置換しなければならないことを一部の専門家が推定していることも明らかにしている(Jiang et al. 2008. DOI: 10.1097/TP.0b013e31816de49e)。しかしながら、本発明の著者らは、
図7~
図9に示すように、肝細胞におけるAGXTタンパク質の発現における欠損を修正することができ、シュウ酸塩蓄積の減少を引き起こし、したがってPH1表現型を部分的に戻すレンチウイルスベクターを開発した。驚くべきことに、本明細書に記載のレンチウイルスベクターによってもたらされるこの効果は、
図5に示すように、上記レンチウイルスベクターがin vivoで細胞の約5%しか形質導入できなかったという事実にもかかわらず達成された。
【0055】
したがって、本発明は、肝細胞への形質導入により、AGXTタンパク質の細胞内レベルを増加させ、PH1を治療するための優れた治療有効性をもたらす、コドン最適化AGXT配列を含むレンチウイルスベクターを提供することによって、当該技術分野における重要なニーズを満たす。本明細書において提供されるレンチウイルスベクター中に含まれる核酸配列の概略図を
図12に示す。
【0056】
したがって、第1の態様において、本発明は、核酸を含むレンチウイルスベクター(LV)を提供し、核酸は転写単位を含み、転写単位は、本明細書において、5’から3’に肝細胞特異的プロモーター、好ましくはETプロモーターと、最適化されたアラニン-グリオキシル酸及びセリン-ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(以下、AGXT-RHEAMと称する)タンパク質をコードするヌクレオチド配列と、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(以下、WPREと称する)、好ましくは突然変異WPREと、及び少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくとも1つのコピーとを含むものとして定義され、肝細胞特異的プロモーター、WPRE及び少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくとも1つのコピーは、AGXT-RHEAMに作動可能に連結され、AGXT-RHEAMの発現を調節する。コード配列及び遺伝子発現制御配列は、それらが、コード配列の発現又は転写及び/又は翻訳を遺伝子発現制御配列の影響下又は制御下に置くような方法で連結されている場合に、作動可能に連結されていると言われる。例えば、肝細胞特異的プロモーター、WPRE及び少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくとも1つのコピーは、AGXTの発現レベルがプロモーター及びWPREによって調節されるように、最適化されたAGXT-RHEAMタンパク質をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結されている。
【0057】
一実施形態において、第1の態様によるLVベクター中に含まれる核酸は、LVがその機能(細胞に感染し、ウイルスゲノムに組み込まれて細胞内で存続する)を実行するために必要なタンパク質についてコードする核酸、及びLVがその機能を実行するために必要な調節配列についてコードする核酸として定義される、1つ以上のレンチウイルスバックボーンエレメントを更に含む。
【0058】
したがって、第1の態様のLVベクターは核酸を含み、この核酸は、1)転写単位と、2)1つ以上のLVベクターバックボーンエレメントとを含む。転写単位及びLVベクターバックボーンに含まれる全ての核酸を組み合わせることができることに留意されたい。これらの2つの成分のそれぞれについて、以下に詳細に説明する。
【0059】
1)転写単位
上記で定義されているように、本明細書において、転写単位とは、本発明のLVベクター中に含まれる核酸配列であって、5’から3’に肝細胞特異的プロモーターと、最適化されたAGXT-RHEAMタンパク質をコードするヌクレオチド配列と、WPREエレメントと、少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくとも1つのコピーとを含む、核酸配列を指し、肝細胞特異的プロモーター、WPRE及び少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくとも1つのコピーは、AGXT-RHEAMに作動可能に連結され、AGXT-RHEAMの発現を調節する。
【0060】
肝細胞特異的プロモーター
肝細胞特異的プロモーターは、標的細胞へのレンチウイルスベクターゲノム組込み後にAGXT-RHEAM発現を導く。
【0061】
幾つかの実施形態において、レンチウイルスベクター中に含まれる核酸配列は、少なくとも1つの組織特異的プロモーター、すなわち、特定の組織又は細胞型における最適化されたAGXTタンパク質の発現を調節するであろうプロモーターを含む。幾つかの実施形態において、レンチウイルスベクター中の組織特異的プロモーターは、標的肝臓細胞における最適化されたAGXTタンパク質の発現を選択的に増強する。幾つかの実施形態において、標的肝臓細胞は、肝細胞又はその前駆細胞である。幾つかの実施形態において、レンチウイルスベクター中に含まれる単離された核酸分子は、標的細胞又は標的組織のゲノム、例えば、肝細胞のゲノムに安定に組み込まれる。
【0062】
幾つかの実施形態において、レンチウイルスベクターは、導入遺伝子発現のための肝細胞特異的プロモーターを含む。一実施形態において、肝細胞特異的プロモーターを含むヌクレオチドは、遺伝子操作された肝細胞特異的プロモーターである。幾つかの実施形態において、標的肝臓細胞における最適化されたAGXTタンパク質の発現を選択的に増強する組織特異的プロモーターは、トランスチレチンプロモーター(TTRp)を含む。一実施形態において、肝細胞特異的プロモーターはキメラプロモーターである。幾つかの実施形態において、キメラ肝細胞特異的プロモーターは、合成エンハンサー、トランスチレチンエンハンサー(以下、TTRエンハンサーと称する)、トランスチレチンプロモーター(以下、TTRpと称する)、及びトランスチレチン5’UT(以下、mTTR 5’UTと称する)のみからなるETプロモーターである。
【0063】
好ましい実施形態において、ETプロモーターの合成エンハンサーは、配列番号17又は配列番号17の全長にわたって少なくとも98%同一である配列を含む。好ましくは、ETプロモーターの合成エンハンサーは、配列番号17又は配列番号17の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列を含む。より好ましくは、ETプロモーターの合成エンハンサーは、配列番号17又は配列番号17の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列である。
【0064】
幾つかの実施形態において、レンチウイルスベクター中に含まれるETプロモーターの合成エンハンサーのヌクレオチド配列は、配列番号17を含むか、それのみからなるか、又は本質的にそれのみからなる。
【0065】
好ましい実施形態において、ETプロモーターのTTRエンハンサーはマウスTTRエンハンサー(mTTRエンハンサー)であり、配列番号18又は配列番号18の全長にわたって少なくとも98%同一である配列を含む。好ましくは、ETプロモーターのmTTRエンハンサーは、配列番号18又は配列番号18の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列を含む。より好ましくは、ETプロモーターのmTTRエンハンサーは、配列番号18又は配列番号18の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列である。
【0066】
幾つかの実施形態において、レンチウイルスベクター中に含まれるETプロモーターのmTTRエンハンサーのヌクレオチド配列は、配列番号18を含むか、それのみからなるか、又は本質的にそれのみからなる。
【0067】
好ましい実施形態において、ETプロモーターのトランスチレチンプロモーター(TTRp)はマウスTTRp(mTTRp)であり、配列番号19又は配列番号19の全長にわたって少なくとも98%同一である配列を含む。好ましくは、ETプロモーターのmTTRpは、配列番号19又は配列番号19の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列を含む。より好ましくは、ETプロモーターのmTTRpは、配列番号19又は配列番号19の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列である。
【0068】
幾つかの実施形態において、レンチウイルスベクター中に含まれるETプロモーターのmTTRpのヌクレオチド配列は、配列番号19を含むか、それのみからなるか、又はそれ本質的にのみからなる。
【0069】
好ましい実施形態において、ETプロモーターのトランスチレチン5’UT(TTR 5’UT)はマウスTTR 5’UT(mTTR 5’UT)であり、配列番号20又は配列番号20の全長にわたって少なくとも98%同一である配列を含む。好ましくは、ETプロモーターのmTTR 5’UTは、配列番号20又は配列番号20の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列を含む。より好ましくは、ETプロモーターのmTTR 5’UTは、配列番号20又は配列番号20の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列である。
【0070】
幾つかの実施形態において、レンチウイルスベクター中に含まれるETプロモーターのmTTR 5’UTのヌクレオチド配列は、配列番号20を含むか、それのみからなるか、又は本質的にそれのみからなる。
【0071】
2つの配列間の配列同一性は、従来の方法によって決定することができる。例えば、BLAST(Altschul et al., 1990. J Mol Biol. 215(3): 403-10)等の当該技術分野において既知の標準的なアラインメント対数を使用することによる。好ましい実施形態において、2つの配列間の配列同一性は、BLASTを使用して決定される。
【0072】
好ましい実施形態において、肝細胞特異的プロモーターは、配列番号17の合成エンハンサー、配列番号18のmTTRエンハンサー、配列番号19のmTTRp、及び配列番号20のmTTR 5’UT、又は配列番号17、18、19、若しくは20の全長にわたってそれぞれ少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列のみからなるETプロモーターである。
【0073】
好ましい実施形態において、肝細胞特異的ETプロモーターのヌクレオチド配列は、配列番号16又は配列番号16の全長にわたって少なくとも98%同一である配列を含む。好ましくは、肝細胞特異的ETプロモーターのヌクレオチド配列は、配列番号16又は配列番号16の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列を含む。より好ましくは、肝細胞特異的ETプロモーターのヌクレオチド配列は、配列番号16又は配列番号16の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列である。
【0074】
幾つかの実施形態において、レンチウイルスベクター中に含まれ、標的肝臓細胞における最適化されたAGXTタンパク質の発現を選択的に増強する肝臓特異的プロモーターであるヌクレオチド配列は、配列番号16のETプロモーターを含むか、それのみからなるか、又は本質的にそれのみからなる。
【0075】
最適化されたアラニン-グリオキシル酸及びセリン-ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(AGXT-RHEAM)タンパク質についてコードするヌクレオチド配列
本明細書において提供されるレンチウイルスベクターは、最適化されたAGXTタンパク質をコードするコドン最適化ポリヌクレオチドを含む。1つの実施形態において、コドン最適化ポリヌクレオチドAGXTは、プロモーター及び転写後エレメントを含む少なくとも1つの、好ましくは2つの発現制御配列に作動可能に連結されている。幾つかの実施形態において、本発明は、AGXTと同様の活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子を含むレンチウイルスベクターを提供する。一実施形態において、レンチウイルスベクター中に含まれ、AGXT-RHEAMについてコードするヌクレオチド配列は、細胞のペルオキシソームにおいて新たに合成されたタンパク質を配置するシグナルペプチドをコードする。
【0076】
好ましい実施形態において、AGXT-RHEAMについてコードするヌクレオチド配列は、配列番号29又は配列番号29の全長にわたって少なくとも98%同一である配列を含む。好ましくは、AGXT-RHEAMについてコードするヌクレオチド配列は、配列番号29又は配列番号29の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列を含む。より好ましくは、AGXT-RHEAMについてコードするヌクレオチド配列は、配列番号29又は配列番号29の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列である。
【0077】
幾つかの実施形態において、レンチウイルスベクター中に含まれ、AGXT-RHEAMについてコードするヌクレオチド配列は、配列番号29を含むか、それのみからなるか、又は本質的にそれのみからなる。
【0078】
好ましい実施形態において、AGXT-RHEAMのアミノ酸配列は、配列番号52又は配列番号52の全長にわたって少なくとも98%同一である配列を含む。好ましくは、AGXT-RHEAMのアミノ酸配列は、配列番号52又は配列番号52の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列を含む。より好ましくは、AGXT-RHEAMのアミノ酸配列は、配列番号52又は配列番号52の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列である。
【0079】
幾つかの実施形態において、レンチウイルスベクター中に含まれるヌクレオチド配列によってコードされるAGXT-RHEAMタンパク質は、配列番号52を含むか、それのみからなるか、又は本質的にそれのみからなる。
【0080】
WHV(ウッドチャック肝炎ウイルス)転写後調節エレメント(WPRE)
本明細書において提供されるレンチウイルスベクターはまた、最適化されたAGXTについてコードするヌクレオチドに作動可能に連結された少なくとも1つの転写後調節エレメントを含む。一実施形態において、上記転写後調節エレメントは、WHV(ウッドチャック肝炎ウイルス)転写後調節エレメント(WPRE)である。一実施形態において、転写後調節エレメントは、ベクターの安全性を高めるために突然変異されている。好ましい実施形態において、突然変異WPREは、遺伝子Xフレームに突然変異を含む。
【0081】
好ましい実施形態において、突然変異WPREを含むヌクレオチド配列は、配列番号21又は配列番号21の全長にわたって少なくとも98%同一である配列を含む。好ましくは、突然変異WPREを含むヌクレオチド配列は、配列番号21又は配列番号21の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列を含む。より好ましくは、突然変異WPREを含むヌクレオチド配列は、配列番号21又は配列番号21の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列である。
【0082】
幾つかの実施形態において、レンチウイルスベクター中に含まれるヌクレオチド配列WPREは、配列番号21を含むか、それのみからなるか、又は本質的にそれのみからなる。
【0083】
少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくとも1つのコピー
本発明はまた、最適化されたAGXT-RHEAMヌクレオチド配列に作動可能に連結された少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくとも1つのコピーを提供する。システムの効率を高めるために、miRNA標的配列の2つ以上のコピーを転写単位に含めることができる。1つ以上のmiRNA標的配列は、同一であっても異なっていてもよい。一実施形態において、レンチウイルスベクター中に含まれる転写単位は、同一であるか又は異なるmiRNA標的配列の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ又は8つのコピーを含む。
【0084】
一実施形態において、標的配列はmiRNA-142-3標的である。幾つかの実施形態において、レンチウイルスベクターは、導入遺伝子産物への免疫応答を低減するために、miRNA-142-3についての1つ以上の標的配列を含む。1つの実施形態において、レンチウイルスベクターは、miRNA-142-3標的配列の1つ、2つ、3つ、好ましくは4つ、5つ、6つ、7つ又は8つの反復又はコピーを含む。幾つかの実施形態において、miRNA-142-3についての1つ以上の標的配列を本発明のレンチウイルスの転写単位に組み込むことにより、所望の導入遺伝子発現プロファイル及び/又は免疫原性の低減が可能となる。特に、miRNA-142-3についての1つ以上の標的配列を組み込むと、血管内及び血管外の造血系統における導入遺伝子発現を抑制することができるが、導入遺伝子発現は非造血細胞において維持される。或る特定の実施形態において、miRNA-142-3等の造血特異的マイクロRNAの相補的配列は、レンチウイルスベクターの3’非翻訳領域に組み込まれ、導入遺伝子コード転写産物をmiRNA媒介下方制御に対して感受性にする。
【0085】
標的配列は、miRNAに対して完全に又は部分的に相補的であり得る。「完全に相補的」という用語は、標的配列が、それを認識するmiRNAの配列に対して100%相補的である核酸配列を有することを意味する。一実施形態において、転写単位に含まれる核酸配列は、miRNA-142-3の標的配列の4つの反復を含む。
【0086】
好ましい実施形態において、miRNA-142-3を含むヌクレオチド配列は、配列番号22又は配列番号22の全長にわたって少なくとも98%同一である配列を含む。好ましくは、miRNA-142-3を含むヌクレオチド配列は、配列番号22又は配列番号22の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列を含む。より好ましくは、miRNA-142-3を含むヌクレオチド配列は、配列番号22又は配列番号22の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列である。
【0087】
幾つかの実施形態において、レンチウイルスベクター中に含まれるmiRNA-142-3のヌクレオチド配列は、配列番号22を含むか、それのみからなるか、又は本質的にそれのみからなる。
【0088】
幾つかの実施形態において、標的配列はmiR-181標的である。幾つかの実施形態において、標的配列はmiR-223標的である。幾つかの実施形態において、標的配列はmiR-122標的である。幾つかの実施形態において、標的配列はmiR-30b標的である。好ましい実施形態において、miRNA標的配列は、miRNA-142-3、miR-181、miR-223、又はmiR-30bからなる群より選択される。
【0089】
転写単位(肝細胞特異的プロモーター、最適化されたAGXT-RHEAMタンパク質をコードするヌクレオチド配列、WPREエレメント、及び少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくとも1つのコピー)の異なる要素についての上記の全ての実施形態は、互いに組み合わせることができることを理解されたい。好ましい実施形態において、レンチウイルスベクターの核酸に含まれる転写単位は、
a)配列番号16の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、最も好ましくは100%の配列同一性を有する、遺伝子操作された肝細胞特異的プロモーターと、
b)配列番号29の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、最も好ましくは100%の配列同一性を有する、最適化されたアラニン-グリオキシル酸及びセリン-ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(AGXT-RHEAM)タンパク質をコードするヌクレオチド配列と、
c)配列番号21の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、最も好ましくは100%の配列同一性を有する、突然変異最適化ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)と、
d)少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくともコピーと、
を含むか又はそれらのみからなり、
a)、c)及びd)は、b)に作動可能に連結され、b)の発現を調節する。更に好ましい実施形態において、d)少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくともコピーは、好ましくは、配列番号22の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、最も好ましくは100%の配列同一性を有するmiRNA-142-3の標的配列の4つのコピーのみからなる。
【0090】
好ましい実施形態において、レンチウイルスベクターの核酸に含まれる転写単位は、
a)配列番号16の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、最も好ましくは100%の配列同一性を有する、遺伝子操作された肝細胞特異的プロモーターと、
b)最適化されたアラニン-グリオキシル酸及びセリン-ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(AGXT-RHEAM)タンパク質をコードするヌクレオチド配列であって、AGXT-RHEAMタンパク質は、配列番号52の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、最も好ましくは100%のアミノ酸配列同一性を有する、ヌクレオチド配列と、
c)配列番号21の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、最も好ましくは100%の配列同一性を有する、突然変異最適化ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)と、
d)少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくともコピーであって、miRNA標的配列は、miRNA-142-3、miR-181、miR-223、又はmiR-30bからなる群より選択される、少なくとも1種のmiRNA標的配列の少なくともコピーと、
を含むか又はそれらのみからなり、
a)、c)及びd)は、b)に作動可能に連結され、b)の発現を調節する。更に好ましい実施形態において、d)少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくともコピーは、好ましくは、配列番号22の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、最も好ましくは100%の配列同一性を有するmiRNA-142-3の標的配列の4つのコピーのみからなる。
【0091】
好ましい実施形態において、レンチウイルスベクターの核酸に含まれる転写単位は、
a)配列番号16のみからなる遺伝子操作された肝細胞特異的プロモーターと、
b)最適化されたアラニン-グリオキシル酸及びセリン-ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(AGXT-RHEAM)タンパク質をコードするヌクレオチド配列であって、AGXT-RHEAMタンパク質は配列番号52のみからなる、ヌクレオチド配列と、
c)配列番号21のみからなる突然変異最適化ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)と、
d)少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくともコピーであって、miRNA標的配列は、miRNA-142-3、miR-181、miR-223、又はmiR-30bからなる群より選択される、少なくとも1種のmiRNA標的配列の少なくともコピーと、
を含むか又はそれらのみからなり、
a)、c)及びd)は、b)に作動可能に連結され、b)の発現を調節する。更に好ましい実施形態において、d)少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくともコピーは、好ましくは、配列番号22の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、最も好ましくは100%の配列同一性を有するmiRNA-142-3の標的配列の4つのコピーのみからなる。
【0092】
好ましい実施形態において、レンチウイルスベクターの核酸に含まれる転写単位は、
a)配列番号16の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、最も好ましくは100%の配列同一性を有する、遺伝子操作された肝細胞特異的プロモーターと、
b)配列番号29の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、最も好ましくは100%の配列同一性を有する、最適化されたアラニン-グリオキシル酸及びセリン-ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(AGXT-RHEAM)タンパク質をコードするヌクレオチド配列と、
c)配列番号21の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、最も好ましくは100%の配列同一性を有する、突然変異最適化ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)と、
d)少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくともコピーであって、miRNA標的配列は、miRNA-142-3、miR-181、miR-223、又はmiR-30bからなる群より選択される、少なくとも1種のmiRNA標的配列の少なくともコピーと、
を含むか又はそれらのみからなり、
a)、c)及びd)は、b)に作動可能に連結され、b)の発現を調節する。更に好ましい実施形態において、d)少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくともコピーは、好ましくは、配列番号22の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、最も好ましくは100%の配列同一性を有するmiRNA-142-3の標的配列の4つのコピーのみからなる。
【0093】
好ましい実施形態において、レンチウイルスベクターの核酸に含まれる転写単位は、
a)配列番号16のみからなる遺伝子操作された肝細胞特異的プロモーターと、
b)配列番号29のみからなる最適化されたアラニン-グリオキシル酸及びセリン-ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(AGXT-RHEAM)タンパク質をコードするヌクレオチド配列と、
c)配列番号21のみからなる突然変異最適化ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)と、
d)少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくともコピーであって、miRNA標的配列は、miRNA-142-3、miR-181、miR-223、又はmiR-30bからなる群より選択される、少なくとも1種のmiRNA標的配列の少なくともコピーと、
を含むか又はそれらのみからなり、
a)、c)及びd)は、b)に作動可能に連結され、b)の発現を調節する。更に好ましい実施形態において、d)少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくともコピーは、好ましくは、配列番号22の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、最も好ましくは100%の配列同一性を有するmiRNA-142-3の標的配列の4つのコピーのみからなる。
【0094】
2)レンチウイルスベクターバックボーンエレメント
上記で定義されているように、レンチウイルスベクターバックボーンエレメントは、LVがその機能(細胞に感染し、ウイルスゲノムに組み込まれて細胞内で存続する)を実行するために必要な核酸配列として定義される。
【0095】
レンチウイルスには、ウシレンチウイルス群、ウマレンチウイルス群、ネコレンチウイルス群、ヒツジヤギレンチウイルス群、及び霊長類レンチウイルス群に属するものが含まれる。
【0096】
幾つかの実施形態において、本明細書において提供されるレンチウイルスベクターは、「第3世代」レンチウイルスベクターである。本明細書において使用される場合、「第3世代」レンチウイルスベクターという用語は、第2世代ベクターシステムの特徴を有し、機能的tat遺伝子を更に欠いているレンチウイルスパッケージングシステム、例えばtat遺伝子が欠失しているか又は不活性化されているものを指す。典型的に、revをコードする遺伝子は、別個の発現コンストラクト上に提供される。本明細書において使用される場合、「第2世代」レンチウイルスベクターシステムは、機能的アクセサリー遺伝子を欠いているレンチウイルスパッケージングシステム、例えばアクセサリー遺伝子vif、vpr、vpu、及びnefが欠失しているか又は不活性化されているものを指す。本明細書において使用される場合、「パッケージングシステム」は、組換えウイルスのパッケージングに関与するウイルスタンパク質をコードする遺伝子を含むウイルスコンストラクトのセットを指す。典型的に、パッケージングシステムのコンストラクトは、最終的にパッケージング細胞に組み込まれる。
【0097】
幾つかの実施形態において、本明細書において提供される第3世代レンチウイルスベクターは、自己不活性化レンチウイルスベクターである。幾つかの実施形態において、レンチウイルスベクターは、VSV.G偽型レンチウイルスベクターである。
【0098】
或る特定の実施形態において、レンチウイルスベクターは、非分裂細胞に感染することができる組換えレンチウイルスのベクターである。或る特定の実施形態において、レンチウイルスベクターは、肝臓細胞(例えば、肝細胞)に感染することができる組換えレンチウイルスのベクターである。レンチウイルスゲノム及びプロウイルスDNAは、典型的に、レトロウイルスに見られる3つの遺伝子:gag、pol及びenvを有し、これらには2つの長末端反復(LTR)配列が隣接する。gag遺伝子は内部構造(マトリックス、カプシド及びヌクレオカプシド)タンパク質をコードし、pol遺伝子はRNA依存性DNAポリメラーゼ(逆転写酵素)、プロテアーゼ及びインテグラーゼをコードし、env遺伝子はウイルスエンベロープ糖タンパク質をコードする。5’LTR及び3’LTRは、ビリオンRNAの転写及びポリアデニル化を促進する役割を果たす。LTRは、ウイルス複製に必要な他の全てのシス作用配列を含む。幾つかの実施形態において、レンチウイルスは、vif、vpr、tat、rev、vpu、net及びvpx(HIV-I、HIV-2及び/又はSIVにおける)を含む追加の遺伝子を有する。
【0099】
或る特定の実施形態において、レンチウイルスベクターは、非分裂細胞に形質導入するベクターの能力を損なうことなく、HIV病原性遺伝子env、vif、vpr、vpu及びnefが欠失している。
【0100】
5’LTRに隣接しているのは、ゲノムの逆転写(tRNAプライマー結合部位)及び粒子へのウイルスRNAの効率的なカプシド形成(Psi部位)に必要な配列である。カプシド形成(又は感染性ビリオンへのレトロウイルスRNAのパッケージング)に必要な配列がウイルスゲノムから欠落し得る場合、シス欠陥(cis defect)はゲノムRNAのカプシド形成を阻止する。しかしながら、得られた突然変異体は、全てのビリオンタンパク質の合成を指示することが可能なままである。
【0101】
したがって、上記で定義されているように、本明細書において提供されるレンチウイルスベクターは核酸を含み、核酸は転写単位を含む。さらに、別の実施形態において、レンチウイルスベクター中に含まれる上記核酸は、上記で定義される転写単位の上流、すなわち、5’領域にて、5’から3’の順に、以下:a)5’長末端反復(5’LTR)、b)プライマー結合部位(PBS)、c)psiパッケージングシグナル、d)野生型HIVウイルスのステムループ4(SL4)領域、e)Rev応答エレメント(RRE)、及びf)DNAフラップセントラルポリプリントラクト(cPPT)のうちの少なくとも1つ、又はそれらの任意の組み合わせを含む。好ましい実施形態において、レンチウイルスベクター中に含まれる上記核酸は、上記で定義される転写単位の上流、すなわち、5’領域にて、l)d)とe)との間に位置するDenvRF1領域、及びm)e)とf)との間に位置するDenvRF2領域、又はそれらの任意の組み合わせを更に含む。これらのヌクレオチドのそれぞれを以下で更に定義する。
【0102】
別の実施形態において、レンチウイルスベクター中に含まれる上記核酸は、上記で定義される転写単位の下流、すなわち、3’領域にて、k)3’長末端反復(LTR)を更に含む。幾つかの実施形態において、レンチウイルスベクターは、5’LTRのU3領域の欠失を含む。5’LTRのU3領域の欠失は、完全欠失又は部分的欠失であり得る。
【0103】
ヌクレオチドa)~f)及びj)~k)の間で可能な任意の組み合わせが、本発明において、及び上記セクションに記載されている転写単位と組み合わせて含まれることを理解されたい。ヌクレオチドa)~f)及びj)~k)のそれぞれ並びにそれらの好ましい実施形態を以下で更に定義する。
【0104】
さらに、別の実施形態において、レンチウイルスベクター中に含まれる上記核酸は、好ましくは、上記で定義される転写単位の上流に(すなわち、5’領域にて)、好ましくは5’から3’の順に、以下:a)5’長末端反復(5’LTR)、b)プライマー結合部位(PBS)、c)psiパッケージングシグナル、d)野生型HIVウイルスのステムループ4(SL4)領域、e)Rev応答エレメント(RRE)、及びf)DNAフラップセントラルポリプリントラクト(cPPT)のうちの少なくとも1つ、又はそれらの任意の組み合わせを更に含む。好ましい実施形態において、レンチウイルスベクター中に含まれる上記核酸は、好ましくは、上記で定義される転写単位の上流に(すなわち、5’領域にて)、h)d)とe)との間に位置するDenvRF1領域、及びi)e)とf)との間に位置するDenvRF2領域、又はそれらの任意の組み合わせを更に含む。更に好ましい実施形態において、レンチウイルスベクター中に含まれる核酸は、好ましくは、上記で定義される転写単位の下流に(すなわち、3’領域にて)、g)3’長末端反復(LTR)を更に含む。上記と同様に、ヌクレオチドa)、b)、c)、d)、e)、f)、h)及びi)並びにg)の間で可能な任意の組み合わせが、本発明において、及び上記セクションに記載されている転写単位と組み合わせて含まれることを理解されたい。
【0105】
好ましい実施形態において、5’LTRを含むヌクレオチド配列は、配列番号4又は配列番号4の全長にわたって少なくとも98%同一である配列を含む。好ましくは、5’LTRを含むヌクレオチド配列は、配列番号4又は配列番号4の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列を含む。より好ましくは、5’LTRを含むヌクレオチド配列は、配列番号4又は配列番号4の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列である。
【0106】
幾つかの実施形態において、レンチウイルスベクター中に含まれる5’LTRのヌクレオチド配列は、配列番号4を含むか、それのみからなるか、又は本質的にそれのみからなる。
【0107】
一実施形態において、5’LTR領域は、CMVプロモーター、好ましくはキメラCMVプロモーター、及び/又はRU5エレメントを含む。一実施形態において、キメラCMVプロモーターは、CMVエンハンサー及びCMVプロモーターを含むか又はそれのみからなる。好ましい実施形態において、5’LTR領域は、CMVエンハンサー、CMVプロモーター、RU5エレメント、及び/又はそれらの任意の組み合わせを含むか又はそれのみからなる。
【0108】
好ましい実施形態において、キメラCMVプロモーターを含むヌクレオチド配列は、配列番号5又は配列番号5の全長にわたって少なくとも98%同一である配列を含む。好ましくは、キメラCMVプロモーターを含むヌクレオチド配列は、配列番号5又は配列番号5の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列を含む。より好ましくは、キメラCMVプロモーターを含むヌクレオチド配列は、配列番号5又は配列番号5の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列である。
【0109】
幾つかの実施形態において、レンチウイルスベクター中に含まれるキメラCMVプロモーターのヌクレオチド配列は、配列番号5を含むか、それのみからなるか、又は本質的にそれのみからなる。
【0110】
好ましい実施形態において、CMVエンハンサーを含むヌクレオチド配列は、配列番号6又は配列番号6の全長にわたって少なくとも98%同一である配列を含む。好ましくは、CMVエンハンサーを含むヌクレオチド配列は、配列番号6又は配列番号6の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列を含む。より好ましくは、CMVエンハンサーを含むヌクレオチド配列は、配列番号6又は配列番号6の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列である。
【0111】
幾つかの実施形態において、レンチウイルスベクター中に含まれるCMVエンハンサーのヌクレオチド配列は、配列番号6を含むか、それのみからなるか、又は本質的にそれのみからなる。
【0112】
好ましい実施形態において、CMVプロモーターを含むヌクレオチド配列は、配列番号7又は配列番号7の全長にわたって少なくとも98%同一である配列を含む。好ましくは、CMVプロモーターを含むヌクレオチド配列は、配列番号7又は配列番号7の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列を含む。より好ましくは、CMVプロモーターを含むヌクレオチド配列は、配列番号7又は配列番号7の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列である。
【0113】
幾つかの実施形態において、レンチウイルスベクター中に含まれるCMVプロモーターのヌクレオチド配列は、配列番号7を含むか、それのみからなるか、又は本質的にそれのみからなる。
【0114】
好ましい実施形態において、RU5エレメントを含むヌクレオチド配列は、配列番号8又は配列番号8の全長にわたって少なくとも98%同一である配列を含む。好ましくは、RU5エレメントを含むヌクレオチド配列は、配列番号8又は配列番号8の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列を含む。より好ましくは、RU5エレメントを含むヌクレオチド配列は、配列番号8又は配列番号8の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列である。
【0115】
幾つかの実施形態において、レンチウイルスベクター中に含まれるRU5エレメントのヌクレオチド配列は、配列番号8を含むか、それのみからなるか、又は本質的にそれのみからなる。
【0116】
一実施形態において、5’LTRに隣接しているのは、ゲノムの逆転写に必要な配列であり、これはtRNAプライマー結合部位(以下、PBS又はPBS SL23と称する)である。
【0117】
好ましい実施形態において、PBS SL23を含むヌクレオチド配列は、配列番号9又は配列番号9の全長にわたって少なくとも98%同一である配列を含む。好ましくは、PBS SL23を含むヌクレオチド配列は、配列番号9又は配列番号9の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列を含む。より好ましくは、PBS SL23を含むヌクレオチド配列は、配列番号9又は配列番号9の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列である。
【0118】
幾つかの実施形態において、レンチウイルスベクター中に含まれるPBS SL23のヌクレオチド配列は、配列番号9を含むか、それのみからなるか、又は本質的にそれのみからなる。
【0119】
幾つかの実施形態において、本明細書において提供されるレンチウイルスベクターは、粒子へのウイルスRNAの効率的なカプセル化のために、少なくともpsi(Ψ)パッケージングシグナル(psi部位とも呼ばれる)を含む。
【0120】
好ましい実施形態において、psiパッケージングシグナルを含むヌクレオチド配列は、配列番号10又は配列番号10の全長にわたって少なくとも98%同一である配列を含む。好ましくは、psiパッケージングシグナルを含むヌクレオチド配列は、配列番号10又は配列番号10の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列を含む。より好ましくは、psiパッケージングシグナルを含むヌクレオチド配列は、配列番号10又は配列番号10の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列である。
【0121】
幾つかの実施形態において、レンチウイルスベクター中に含まれるpsiパッケージングシグナルのヌクレオチド配列は、配列番号10を含むか、それのみからなるか、又は本質的にそれのみからなる。一実施形態において、PSIパッケージングシグナルのヌクレオチドは、PBS SL23及び以下で定義される野生型HIVウイルスのステムループ4(SL4)領域と部分的に重複する。
【0122】
或る特定の実施形態において、本明細書において提供されるレンチウイルスベクターは、gagタンパク質、DenvRF1、Rev応答エレメント(以下、RREと称する)、DenvRF2、セントラルポリプリントラック(central polypurine track)(以下、cPPTと称する)についてコードする1つ以上のヌクレオチド配列、及び/又はそれらの任意の組み合わせを更に含む。
【0123】
幾つかの実施形態において、本明細書において提供されるレンチウイルスベクターは、少なくとも野生型HIVウイルスのステムループ4(SL4)領域(以下、SL4mgagと称する)を含む。
【0124】
好ましい実施形態において、SL4mgagを含むヌクレオチド配列は、配列番号11又は配列番号11の全長にわたって少なくとも98%同一である配列を含む。好ましくは、SL4mgagを含むヌクレオチド配列は、配列番号11又は配列番号11の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列を含む。より好ましくは、SL4mgagを含むヌクレオチド配列は、配列番号11又は配列番号11の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列である。
【0125】
幾つかの実施形態において、レンチウイルスベクター中に含まれるSL4mgagのヌクレオチド配列は、配列番号11を含むか、それのみからなるか、又は本質的にそれのみからなる。
【0126】
幾つかの実施形態において、本明細書において提供されるレンチウイルスベクターは、少なくともDenvRF1エレメントを含む。
【0127】
好ましい実施形態において、DenvRF1を含むヌクレオチド配列は、配列番号12又は配列番号12の全長にわたって少なくとも98%同一である配列を含む。好ましくは、DenvRF1を含むヌクレオチド配列は、配列番号12又は配列番号12の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列を含む。より好ましくは、DenvRF1を含むヌクレオチド配列は、配列番号12又は配列番号12の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列である。
【0128】
幾つかの実施形態において、レンチウイルスベクター中に含まれるDenvRF1のヌクレオチド配列は、配列番号12を含むか、それのみからなるか、又は本質的にそれのみからなる。一実施形態において、DenvRF1のヌクレオチドは、上記で定義されたSL4mgagのヌクレオチド及び以下で定義されるRREのヌクレオチドと部分的に重複する。
【0129】
好ましい実施形態において、RREを含むヌクレオチド配列は、配列番号13又は配列番号13の全長にわたって少なくとも98%同一である配列を含む。好ましくは、RREを含むヌクレオチド配列は、配列番号13又は配列番号13の全長にわたって少なくとも75%、75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列を含む。より好ましくは、RREを含むヌクレオチド配列は、配列番号13又は配列番号13の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列である。
【0130】
幾つかの実施形態において、レンチウイルスベクター中に含まれるRREのヌクレオチド配列は、配列番号13を含むか、それのみからなるか、又は本質的にそれのみからなる。
【0131】
幾つかの実施形態において、本明細書において提供されるレンチウイルスベクターは、少なくともDenvRF2エレメントを含む。
【0132】
好ましい実施形態において、DenvRF2を含むヌクレオチド配列は、配列番号14又は配列番号14の全長にわたって少なくとも98%同一である配列を含む。好ましくは、DenvRF2を含むヌクレオチド配列は、配列番号14又は配列番号14の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列を含む。より好ましくは、DenvRF2を含むヌクレオチド配列は、配列番号14又は配列番号14の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列である。
【0133】
幾つかの実施形態において、レンチウイルスベクター中に含まれるDenvRF2のヌクレオチド配列は、配列番号14を含むか、それのみからなるか、又は本質的にそれのみからなる。
【0134】
好ましい実施形態において、cPPTを含むヌクレオチド配列は、配列番号15又は配列番号15の全長にわたって少なくとも98%同一である配列を含む。好ましくは、cPPTを含むヌクレオチド配列は、配列番号15又は配列番号15の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列を含む。より好ましくは、cPPTを含むヌクレオチド配列は、配列番号15又は配列番号15の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列である。
【0135】
幾つかの実施形態において、レンチウイルスベクター中に含まれるcPPTのヌクレオチド配列は、配列番号15を含むか、それのみからなるか、又は本質的にそれのみからなる。
【0136】
幾つかの実施形態において、レンチウイルスベクターは核酸を含み、核酸は3’長末端反復(以下、3’LTRと称する)を含む。3’LTRは、レンチウイルスベクター生産中のmRNAポリアデニル化に関与する。
【0137】
好ましい実施形態において、3’LTRは、3’LTRのU3領域の欠失を含む。3’LTRのU3領域の欠失は、完全欠失又は部分的欠失であり得る。
【0138】
好ましい実施形態において、3’LTRを含むヌクレオチド配列は、配列番号23又は配列番号23の全長にわたって少なくとも98%同一である配列を含む。好ましくは、3’LTRを含むヌクレオチド配列は、配列番号23又は配列番号23の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列を含む。より好ましくは、3’LTRを含むヌクレオチド配列は、配列番号23又は配列番号23の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列である。
【0139】
幾つかの実施形態において、レンチウイルスベクター中に含まれる3’LTRのヌクレオチド配列は、配列番号23を含むか、それのみからなるか、又は本質的にそれのみからなる。
【0140】
好ましい実施形態において、3’LTRは、自己不活性化レンチウイルスベクターである野生型HIV-1由来の切断されたU3エレメント(以下、ΔU3と称する)と、エレメントR及びU5(以下、RU5と称する)とから構成される。
【0141】
好ましい実施形態において、ΔU3を含むヌクレオチド配列は、配列番号24又は配列番号24の全長にわたって少なくとも98%同一である配列を含む。好ましくは、ΔU3を含むヌクレオチド配列は、配列番号24又は配列番号24の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列を含む。より好ましくは、ΔU3を含むヌクレオチド配列は、配列番号24又は配列番号24の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列である。
【0142】
幾つかの実施形態において、レンチウイルスベクター中に含まれるΔU3のヌクレオチド配列は、配列番号24を含むか、それのみからなるか、又は本質的にそれのみからなる。
【0143】
好ましい実施形態において、RU5を含むヌクレオチド配列は、配列番号25又は配列番号25の全長にわたって少なくとも98%同一である配列を含む。好ましくは、RU5を含むヌクレオチド配列は、配列番号25又は配列番号25の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列を含む。より好ましくは、RU5を含むヌクレオチド配列は、配列番号25又は配列番号25の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、若しくは100%同一である配列である。
【0144】
幾つかの実施形態において、レンチウイルスベクター中に含まれるRU5のヌクレオチド配列は、配列番号25を含むか、それのみからなるか、又は本質的にそれのみからなる。
【0145】
一実施形態において、RU5ヌクレオチドは、キメラCMVプロモーターとPBS SL123ヌクレオチドとの間に位置する。一実施形態において、PBS SL123ヌクレオチドは、5’LTRヌクレオチドとPsiパッケージングシグナルとの間に位置する。一実施形態において、Psiパッケージングシグナルヌクレオチドは、PBS SL123ヌクレオチドと野生型HIVウイルスのステムループ4(SL4)領域のヌクレオチドとの間に位置する。一実施形態において、DenvRF1ヌクレオチドは、SL4mgagヌクレオチドとRREヌクレオチドとの間に位置する。一実施形態において、DenvRF2ヌクレオチドは、RREヌクレオチドとcPPTヌクレオチドとの間に位置する。一実施形態において、cPPTヌクレオチドは、RREヌクレオチドとETプロモーターヌクレオチドとの間に位置する。一実施形態において、少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくとも1つのコピーは、突然変異WPREヌクレオチドと3’LTRヌクレオチドとの間に位置する。
【0146】
第1の態様又はその実施形態のいずれかの更に好ましい実施形態において、レンチウイルスベクターは核酸を含み、核酸は5’から3’に以下のヌクレオチド:
a)5’長末端反復(LTR)と、
b)プライマー結合部位(PBS)と、
c)psiパッケージングシグナルと、
d)野生型HIVウイルスのステムループ4(SL4)領域と、
e)Rev応答エレメント(RRE)と、
f)DNAフラップセントラルポリプリントラクト(cPPT)と、
g)配列番号16の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%の配列同一性を有する、遺伝子操作された肝細胞特異的プロモーターと、
h)配列番号29の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%の配列同一性を有する、最適化されたアラニン-グリオキシル酸及びセリン-ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(AGXT-RHEAM)タンパク質をコードするヌクレオチド配列と、
i)配列番号21の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%の配列同一性を有する、突然変異最適化ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)と、
j)少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくともコピーと、
k)3’長末端反復(LTR)と、
を含み、
a)及びk)の長末端反復領域は、LTRのU3領域における全欠失又は部分的欠失により、実質的に転写的に不活性化されており、g)、i)及びj)は、h)に作動可能に連結され、h)の発現を調節する。好ましい実施形態において、少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくともコピーは、miRNA-142-3の標的配列の4つの反復のみからなる。
【0147】
幾つかの実施形態において、上記レンチウイルスベクター中に含まれるヌクレオチドは、
l)d)野生型HIVウイルスのステムループ4(SL4)領域とe)Rev応答エレメント(RRE)との間に位置するDenvRF1領域と、
m)e)Rev応答エレメント(RRE)とf)DNAフラップセントラルポリプリントラクト(cPPT)との間に位置するDenvRF2領域と、
を更に含む。
【0148】
第1の態様又はその実施形態のいずれかの最も好ましい実施形態において、レンチウイルスベクターは核酸を含み、核酸は5’から3’に以下のヌクレオチド:
a)配列番号5の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、より好ましくは100%の配列同一性を有する、5’長末端反復(LTR)と、
b)配列番号9の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、より好ましくは100%の配列同一性を有する、プライマー結合部位(PBS)と、
c)配列番号10の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、より好ましくは100%の配列同一性を有する、psiパッケージングシグナルと、
d)配列番号11の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、より好ましくは100%の配列同一性を有する、野生型HIVウイルスのステムループ4(SL4)領域と、
e)配列番号13の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、より好ましくは100%の配列同一性を有する、Rev応答エレメント(RRE)と、
f)配列番号15の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、より好ましくは100%の配列同一性を有する、DNAフラップセントラルポリプリントラクト(cPPT)と、
g)配列番号16の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、より好ましくは100%の配列同一性を有する、遺伝子操作された肝細胞特異的プロモーターと、
h)配列番号29の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、より好ましくは100%の配列同一性を有する、最適化されたアラニン-グリオキシル酸及びセリン-ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(AGXT-RHEAM)タンパク質をコードするヌクレオチド配列と、
i)配列番号21の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、より好ましくは100%の配列同一性を有する、突然変異最適化ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)と、
j)少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくとも1つのコピーと、
k)配列番号3の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、より好ましくは100%の配列同一性を有する、3’長末端反復(LTR)と、
を含み、
a)及びk)の長末端反復領域は、LTRのU3領域における全欠失又は部分的欠失により、実質的に転写的に不活性化されており、g)、i)及びj)は、h)に作動可能に連結され、h)の発現を調節する。好ましい実施形態において、少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくともコピーは、配列番号22の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、より好ましくは100%の配列同一性を有するmiRNA-142-3の標的配列の4つの反復のみからなる。
【0149】
幾つかの実施形態において、上記レンチウイルスベクター中に含まれるヌクレオチドは、
l)配列番号12の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、より好ましくは100%の配列同一性を有し、d)野生型HIVウイルスのステムループ4(SL4)領域とe)Rev応答エレメント(RRE)との間に位置するDenvRF1領域と、
m)配列番号14の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、より好ましくは100%の配列同一性を有し、e)Rev応答エレメント(RRE)とf)DNAフラップセントラルポリプリントラクト(cPPT)との間に位置するDenvRF2領域と、
を更に含む。
【0150】
第1の態様の更に好ましい実施形態において、レンチウイルスベクターは核酸を含み、核酸は5’から3’に以下のヌクレオチド:
a)5’長末端反復(LTR)と、
b)プライマー結合部位(PBS)と、
c)psiパッケージングシグナルと、
d)野生型HIVウイルスのステムループ4(SL4)領域と、
e)Rev応答エレメント(RRE)と、
f)DNAフラップセントラルポリプリントラクト(cPPT)と、
g)配列番号16の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、より好ましくは100%の配列同一性を有する、遺伝子操作された肝細胞特異的プロモーターと、
h)配列番号29の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、より好ましくは100%の配列同一性を有する、最適化されたアラニン-グリオキシル酸及びセリン-ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(AGXT-RHEAM)タンパク質をコードするヌクレオチド配列と、
i)配列番号21の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、より好ましくは100%の配列同一性を有する、突然変異最適化ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)と、
j)少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくとも1つのコピーと、
k)3’長末端反復(LTR)と、
l)d)とe)との間に位置するDenvRF1領域と、
m)e)とf)との間に位置するDenvRF2領域と、
を含み、
a)及びk)の長末端反復領域は、LTRのU3領域における全欠失又は部分的欠失により、実質的に転写的に不活性化されており、g)、i)及びj)は、h)に作動可能に連結され、h)の発現を調節する。好ましい実施形態において、少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくともコピーは、miRNA-142-3の標的配列の4つの反復のみからなる。
【0151】
第1の態様の更に好ましい実施形態において、レンチウイルスベクターは核酸を含み、核酸は5’から3’に以下のヌクレオチド:
a)配列番号5の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、より好ましくは100%の配列同一性を有する、5’長末端反復(LTR)と、
b)配列番号9の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、より好ましくは100%の配列同一性を有する、プライマー結合部位(PBS)と、
c)配列番号10の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、より好ましくは100%の配列同一性を有する、psiパッケージングシグナルと、
d)配列番号11の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、より好ましくは100%の配列同一性を有する、野生型HIVウイルスのステムループ4(SL4)領域と、
e)配列番号13の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、より好ましくは100%の配列同一性を有する、Rev応答エレメント(RRE)と、
f)配列番号15の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、より好ましくは100%の配列同一性を有する、DNAフラップセントラルポリプリントラクト(cPPT)と、
g)配列番号16の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、より好ましくは100%の配列同一性を有する、遺伝子操作された肝細胞特異的プロモーターと、
h)配列番号29の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、より好ましくは100%の配列同一性を有する、最適化されたアラニン-グリオキシル酸及びセリン-ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(AGXT-RHEAM)タンパク質をコードするヌクレオチド配列と、
i)配列番号21の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、より好ましくは100%の配列同一性を有する、突然変異最適化ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)と、
j)少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくとも1つのコピーと、
k)配列番号3の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、より好ましくは100%の配列同一性を有する、3’長末端反復(LTR)と、
l)配列番号12の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、より好ましくは100%の配列同一性を有し、d)とe)との間に位置するDenvRF1領域と、
m)配列番号14の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、より好ましくは100%の配列同一性を有し、e)とf)との間に位置するDenvRF2領域と、
を含み、
a)及びk)の長末端反復領域は、LTRのU3領域における全欠失又は部分的欠失により、実質的に転写的に不活性化されており、g)、i)及びj)は、h)に作動可能に連結され、h)の発現を調節する。好ましい実施形態において、少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくともコピーは、配列番号22の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、より好ましくは100%の配列同一性を有するmiRNA-142-3の標的配列の4つの反復のみからなる。
【0152】
別の実施形態において、レンチウイルスベクターは核酸を含み、核酸は5’から3’に以下のヌクレオチド:
a)5’長末端反復(LTR)と、
b)プライマー結合部位(PBS)と、
c)psiパッケージングシグナルと、
d)野生型HIVウイルスのステムループ4(SL4)領域と、
e)Rev応答エレメント(RRE)と、
f)DNAフラップセントラルポリプリントラクト(cPPT)と、
g)配列番号16の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%の配列同一性を有する、遺伝子操作された肝細胞特異的プロモーターと、
h)配列番号29の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%の配列同一性を有する、最適化されたアラニン-グリオキシル酸及びセリン-ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(AGXT-RHEAM)タンパク質をコードするヌクレオチド配列と、
i)配列番号21の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%の配列同一性を有する、突然変異最適化ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)と、
j)配列番号22の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%の配列同一性を有するmiRNA-142-3の標的配列の4つのコピーと、
k)3’長末端反復(LTR)と、
を含み、
a)及びk)の長末端反復領域は、LTRのU3領域における全欠失又は部分的欠失により、実質的に転写的に不活性化されており、g)、i)及びj)は、h)に作動可能に連結され、h)の発現を調節する。
【0153】
幾つかの実施形態において、上記レンチウイルスベクター中に含まれるヌクレオチドは、
l)d)野生型HIVウイルスのステムループ4(SL4)領域とe)Rev応答エレメント(RRE)との間に位置するDenvRF1領域と、
m)e)Rev応答エレメント(RRE)とf)DNAフラップセントラルポリプリントラクト(cPPT)との間に位置するDenvRF2領域と、
を更に含む。
【0154】
好ましい実施形態において、レンチウイルスベクターは核酸を含み、核酸は、好ましくは、5’から3’に以下の:
a)5’長末端反復(LTR)と、
b)プライマー結合部位(PBS)と、
c)psiパッケージングシグナルと、
d)野生型HIVウイルスのステムループ4(SL4)領域と、
e)Rev応答エレメント(RRE)と、
f)DNAフラップセントラルポリプリントラクト(cPPT)と、
g)配列番号16の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、最も好ましくは100%の配列同一性を有する、遺伝子操作された肝細胞特異的プロモーターと、
h)最適化されたアラニン-グリオキシル酸及びセリン-ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(AGXT-RHEAM)タンパク質をコードするヌクレオチド配列であって、AGXT-RHEAMタンパク質は、配列番号52の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、最も好ましくは100%のアミノ酸配列同一性を有する、ヌクレオチド配列と、
i)配列番号21の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、最も好ましくは100%の配列同一性を有する、突然変異最適化ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)と、
j)少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくともコピーであって、miRNA標的配列は、miRNA-142-3、miR-181、miR-223、又はmiR-30bからなる群より選択される、少なくとも1種のmiRNA標的配列の少なくともコピーと、
k)3’長末端反復(LTR)と、
を含み、
a)及びk)の長末端反復領域は、LTRのU3領域における全欠失又は部分的欠失により、実質的に転写的に不活性化されており、g)、i)及びj)は、h)に作動可能に連結され、h)の発現を調節する。更に好ましい実施形態において、j)少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくともコピーは、好ましくは、配列番号22の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、最も好ましくは100%の配列同一性を有するmiRNA-142-3の標的配列の4つのコピーのみからなる。
【0155】
幾つかの実施形態において、上記レンチウイルスベクター中に含まれるヌクレオチドは、
l)d)野生型HIVウイルスのステムループ4(SL4)領域とe)Rev応答エレメント(RRE)との間に位置するDenvRF1領域と、
m)e)Rev応答エレメント(RRE)とf)DNAフラップセントラルポリプリントラクト(cPPT)との間に位置するDenvRF2領域と、
を更に含む。
【0156】
好ましい実施形態において、レンチウイルスベクターは核酸を含み、核酸は、好ましくは、5’から3’に以下の:
a)5’長末端反復(LTR)と、
b)プライマー結合部位(PBS)と、
c)psiパッケージングシグナルと、
d)野生型HIVウイルスのステムループ4(SL4)領域と、
e)Rev応答エレメント(RRE)と、
f)DNAフラップセントラルポリプリントラクト(cPPT)と、
g)配列番号16のみからなる遺伝子操作された肝細胞特異的プロモーターと、
h)最適化されたアラニン-グリオキシル酸及びセリン-ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(AGXT-RHEAM)タンパク質をコードするヌクレオチド配列であって、タンパク質は配列番号52のみからなる、ヌクレオチド配列と、
i)配列番号21のみからなる突然変異最適化ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)と、
j)少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくともコピーであって、miRNA標的配列は、miRNA-142-3、miR-181、miR-223、又はmiR-30bからなる群より選択される、少なくとも1種のmiRNA標的配列の少なくともコピーと、
k)3’長末端反復(LTR)と、
を含み、
a)及びk)の長末端反復領域は、LTRのU3領域における全欠失又は部分的欠失により、実質的に転写的に不活性化されており、g)、i)及びj)は、h)に作動可能に連結され、h)の発現を調節する。更に好ましい実施形態において、j)少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくともコピーは、好ましくは、配列番号22の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、最も好ましくは100%の配列同一性を有するmiRNA-142-3の標的配列の4つのコピーのみからなる。
【0157】
幾つかの実施形態において、上記レンチウイルスベクター中に含まれるヌクレオチドは、
l)d)野生型HIVウイルスのステムループ4(SL4)領域とe)Rev応答エレメント(RRE)との間に位置するDenvRF1領域と、
m)e)Rev応答エレメント(RRE)とf)DNAフラップセントラルポリプリントラクト(cPPT)との間に位置するDenvRF2領域と、
を更に含む。
【0158】
第1の態様の更に好ましい実施形態において、レンチウイルスベクターは核酸を含み、核酸は、好ましくは、5’から3’に以下のヌクレオチド:
a)配列番号5の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、より好ましくは100%の配列同一性を有する、5’長末端反復(LTR)と、
b)配列番号9の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、より好ましくは100%の配列同一性を有する、プライマー結合部位(PBS)と、
c)配列番号10の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、より好ましくは100%の配列同一性を有する、psiパッケージングシグナルと、
d)配列番号11の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、より好ましくは100%の配列同一性を有する、野生型HIVウイルスのステムループ4(SL4)領域と、
e)配列番号13の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、より好ましくは100%の配列同一性を有する、Rev応答エレメント(RRE)と、
f)配列番号15の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、より好ましくは100%の配列同一性を有する、DNAフラップセントラルポリプリントラクト(cPPT)と、
g)配列番号16の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、より好ましくは100%の配列同一性を有する、遺伝子操作された肝細胞特異的プロモーターと、
h)最適化されたアラニン-グリオキシル酸及びセリン-ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(AGXT-RHEAM)タンパク質をコードするヌクレオチド配列であって、AGXT-RHEAMタンパク質は、配列番号52の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、最も好ましくは100%のアミノ酸配列同一性を有する、ヌクレオチド配列と、
i)配列番号21の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、より好ましくは100%の配列同一性を有する、突然変異最適化ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)と、
j)少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくとも1つのコピーであって、miRNA標的配列は、miRNA-142-3、miR-181、miR-223、又はmiR-30bからなる群より選択される、少なくとも1種のmiRNA標的配列の少なくとも1つのコピーと、
k)配列番号3の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、より好ましくは100%の配列同一性を有する、3’長末端反復(LTR)と、
l)配列番号12の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、より好ましくは100%の配列同一性を有し、d)とe)との間に位置するDenvRF1領域と、
m)配列番号14の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、より好ましくは100%の配列同一性を有し、e)とf)との間に位置するDenvRF2領域と、
を含み、
a)及びk)の長末端反復領域は、LTRのU3領域における全欠失又は部分的欠失により、実質的に転写的に不活性化されており、g)、i)及びj)は、h)に作動可能に連結され、h)の発現を調節する。好ましい実施形態において、少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくともコピーは、配列番号22の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%、より好ましくは100%の配列同一性を有するmiRNA-142-3の標的配列の4つの反復のみからなる。
【0159】
好ましい実施形態において、本明細書において提供されるレンチウイルスに含まれる全長ヌクレオチドは、配列番号30(LV.ET.AGXT-RHEAM.142-3pT)の全長にわたって少なくとも75%、80%、85%、89%、90%、91%、92%、95%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する。別の好ましい実施形態において、提供されるレンチウイルスに含まれる全長ヌクレオチドは、配列番号30を含むか、それのみからなるか、又は本質的にそれのみからなる。
【0160】
一実施形態において、ウイルス粒子の脂質コートは、宿主細胞の表面に以前に存在していた膜結合ポリペプチドを含むことができる。
【0161】
幾つかの実施形態において、レンチウイルスベクターは、その表面に、ヒト被験体への投与後にレンチウイルスベクターへの免疫応答を抑制する、1つ以上のポリペプチドの改変された発現を有する。幾つかの実施形態において、レンチウイルスベクターの表面は、1つ以上のCD47分子を含む。CD47は「自己タンパク質のマーカーであり、ヒト細胞上に遍在的に発現される。CD47の表面発現は、CD47及びマクロファージ発現SIRPaの相互作用を介して、内因性細胞のマクロファージ誘導食作用を抑制する。高レベルのCD47を発現する細胞は、in vivoでヒトマクロファージによって標的化され、破壊される可能性が低い。幾つかの実施形態において、レンチウイルスベクターは、その表面に高濃度のCD47ポリペプチド分子を含む。幾つかの実施形態において、レンチウイルスベクターは、CD47の高発現レベルを有する細胞株において生産される。或る特定の実施形態において、レンチウイルスベクターは細胞株において生産され、細胞株は細胞膜上にCD47の高発現を有する。特定の実施形態において、レンチウイルスベクターはCD47high HEK293T細胞において生産され、HEK293Tは細胞膜上にCD47の高発現を有するものである。幾つかの実施形態において、HEK293T細胞は、未改変のHEK293T細胞と比較してCD47の増加した発現を有するように改変されている。或る特定の実施形態において、CD47はヒトCD47である。一実施形態において、レンチウイルスベクターの表面は、1つ以上のクラスIの主要組織適合複合体(MHCI)の発現を欠いているか、又はその発現が低下している。或る特定の実施形態において、MHCIはヒトMHCIである。
【0162】
第2の態様において、本発明は、第1の態様又はその実施形態のいずれかにおいて定義されるレンチウイルスベクターを含む(例えば、形質導入された)宿主細胞(例えば、肝細胞)又は実質的に純粋な細胞集団に関する。第2の態様の一実施形態において、宿主細胞又は実質的に純粋な細胞集団は肝細胞である。
【0163】
第3の態様において、本発明は、第1の態様又はその実施形態のいずれかにおいて定義されるレンチウイルスベクター中に含まれるヌクレオチドを含む単離された核酸に関する。
【0164】
薬学的組成物
第4の態様において、本発明は、第1の態様又はその実施形態のいずれかにおいて定義されるレンチウイルス、第2の態様又はその実施形態のいずれかによる宿主細胞又は実質的に純粋な細胞集団、及び/又は第3の態様又はその実施形態のいずれかにおいて定義される核酸と、薬学的に許容可能な担体又は希釈剤とを含む薬学的組成物を提供する。
【0165】
幾つかの実施形態において、第2の態様若しくはその実施形態のいずれかによる実質的に純粋な細胞集団、又は第4の態様若しくはその実施形態のいずれかの薬学的組成物の投与のための組成物は、第1の態様又はその実施形態のいずれかによるレンチウイルスベクターにより、in vivo、in vitro、又はex vivoのいずれかで接触又は形質導入される。
【0166】
本明細書に記載の薬学的組成物は、他の物質を含むこともできる。これらの物質には、抗凍結剤、凍結乾燥保護剤、界面活性剤、増量剤、酸化防止剤、及び安定化剤が含まれるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態において、薬学的組成物は凍結乾燥されてもよい。
【0167】
本明細書において使用される「抗凍結剤」という用語には、レンチウイルスベクターの表面から優先的に排除されることにより、凍結誘発ストレスに対してレンチウイルスベクターに安定性を提供する薬剤が含まれる。抗凍結剤はまた、一次及び二次乾燥中並びに製品の長期保存中に保護を提供することができる。抗凍結剤の非限定的な例としては、スクロース、グルコース、トレハロース、マンニトール、マンノース、及びラクトース等の糖、デキストラン、ヒドロキシエチルデンプン及びポリエチレングリコール等のポリマー、ポリソルベート(例えば、PS-20又はPS-80)等の界面活性剤、並びにグリシン、アルギニン、ロイシン、及びセリン等のアミノ酸が挙げられる。生物学的システムにおいて低毒性を示す抗凍結剤が一般に使用される。
【0168】
1つの実施形態において、凍結乾燥保護剤が本明細書に記載の薬学的組成物に添加される。本明細書において使用される「凍結乾燥保護剤」という用語には、非晶質ガラス状マトリックスを提供し、水素結合を介してレンチウイルスベクターの表面と結合し、乾燥プロセス中に除去される水分子を置き換えることによって、凍結乾燥又は脱水プロセス(一次及び二次凍結乾燥サイクル)中にレンチウイルスベクターに安定性を提供する薬剤が含まれる。これにより、凍結乾燥サイクル中の製品劣化が最小限に抑えられ、製品の長期安定性が向上する。凍結乾燥保護剤の非限定的な例としては、スクロース又はトレハロース等の糖、グルタミン酸ナトリウム、非結晶性グリシン又はヒスチジン等のアミノ酸、ベタイン等のメチルアミン、硫酸マグネシウム等のリオトロピック塩、3価以上の糖アルコール等のポリオール(例えば、グリセリン、エリスリトール、グリセロール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、及びマンニトール)、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、プルロニック(登録商標)、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。薬学的組成物に添加される凍結乾燥保護剤の量は、一般に、薬学的組成物が凍結乾燥されるときに、株の許容できない量の分解を引き起こさない量である。
【0169】
幾つかの実施形態において、増量剤が薬学的組成物中に含まれる。本明細書において使用される「増量剤」という用語には、薬学的製品と直接相互作用することなく、凍結乾燥製品の構造を提供する薬剤が含まれる。薬学的にエレガントなケーキを提供することに加えて、増量剤はまた、崩壊温度を変更し、凍結融解保護を提供し、長期保存にわたる株安定性を高めることに関して有用な性質を付与することができる。増量剤の非限定的な例としては、マンニトール、グリシン、ラクトース、及びスクロースが挙げられる。増量剤は結晶性(例えばグリシン、マンニトール、又は塩化ナトリウム)又は非晶質(例えばデキストラン、ヒドロキシエチルデンプン)であってもよく、一般に、0.5%~10%の量で配合物において使用される。
【0170】
Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)に記載されているもののような、他の薬学的に許容可能な担体、賦形剤、又は安定剤もまた、薬学的組成物の所望の特性に悪影響を及ぼさない限り、本明細書に記載の薬学的組成物中に含まれてもよい。本明細書において使用される場合、「薬学的に許容可能な担体」とは、薬学的投与と適合可能な任意の全ての溶剤、分散媒、コーティング剤、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤並びに吸収遅延剤を意味する。薬学的活性物質へのそのような媒体及び薬剤の使用は、当該技術分野でよく知られている。許容可能な担体、賦形剤、又は安定剤は、使用される投与量及び濃度でレシピエントに対して非毒性であり、追加の緩衝剤、保存剤、共溶媒、アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤、EDTA等のキレート剤、金属複合体(例えば、Znタンパク質複合体)、ポリエステル等の生分解性ポリマー、ナトリウム、多価糖アルコール等の塩形成対イオン、アラニン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、リジン、オルニチン、ロイシン、2-フェニルアラニン、グルタミン酸、及びトレオニン等のアミノ酸、ラクチトール、スタキオース、マンノース、ソルボース、キシロース、リボース、リビトール、ミオイニシトース、ミオイニシトール、ガラクトース、ガラクチトール、グリセロール、シクリトール(例えば、イノシトール)、ポリエチレングリコール等の有機糖又は糖アルコール、尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、[α]-モノチオグリセロール、及びチオ硫酸ナトリウム等の硫黄含有還元剤、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン、又は他の免疫グロブリン等の低分子量タンパク質、並びにポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーを含む。
【0171】
薬学的組成物は、経口、舌下、頬側、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、結膜、直腸、経皮、髄腔内、局所及び/又は吸入媒介投与用に調製することができる。好ましい実施形態において、薬学的組成物は、静脈内、筋肉内、結膜、経皮、腹腔内及び/又は皮下投与に好適な溶液であってもよい。別の実施形態において、薬学的組成物は、舌下、頬側及び/又は吸入媒介投与経路に好適な溶液であってもよい。代替的な実施形態において、薬学的組成物は、髄腔内投与に好適なゲル又は溶液であってもよい。代替的な実施形態において、薬学的組成物は、吸入媒介投与に好適なエアロゾルであってもよい。好ましい実施形態において、薬学的組成物は、髄腔内投与用に調製することができる。
【0172】
薬学的組成物は、当該技術分野において知られている一般的な賦形剤及び担体を更に含んでもよい。固体薬学的組成物の場合、例えば、薬学的グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルカム、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウム等を含む従来の非毒性固体担体を使用してもよい。注射用溶液の場合、薬学的組成物は、抗凍結剤、凍結乾燥保護剤、界面活性剤、増量剤、酸化防止剤、安定化剤及び薬学的に許容可能な担体を更に含んでもよい。エアロゾル投与の場合、薬学的組成物は、一般に、界面活性剤及び噴射剤と共に微粉形態で供給される。界面活性剤は当然のことながら非毒性でなければならず、一般に噴射剤に可溶性である。そのような薬剤の代表的なものは、カプロン酸、オクタン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、オレステリック酸(olesteric acid)及びオレイン酸等の6個~22個の炭素原子を含む脂肪酸と、脂肪族多価アルコール又はその環状無水物とのエステル又は部分エステルである。混合又は天然グリセリド等の混合エステルを用いてもよい。担体を、例えば、鼻腔内送達のためのレシチンと同様に、所望する通りに含むこともできる。坐薬の場合、従来の結合剤及び担体は、例えば、ポリアルカレン(polyalkalene)グリコール又はトリグリセリドを含んでもよい。
【0173】
したがって、注射用の好適な薬学的組成物は、緩衝液(例えば、酢酸、リン酸又はクエン酸緩衝液)、界面活性剤(例えば、ポリソルベート)、任意に安定剤(例えば、ヒトアルブミン)等を含むことができる。しかしながら、本明細書の教示と適合する他の実施形態において、レンチウイルスベクターを有害な細胞集団の部位、すなわち肝細胞に直接的に送達し、それによって、罹患組織の治療剤への曝露を増加させることができる。
【0174】
本明細書において提供されるレンチウイルスベクターは、任意に、治療(例えば、予防的又は治療的)を必要とする障害又は状態の治療において有効である他の薬剤と組み合わせて投与することができる。補助療法と併用又は組み合わせた本明細書において提供されるレンチウイルスベクターの投与は、療法及び開示されるポリペプチドの逐次的、同時、同一の広がりを持つ、同時発生的、併存する、又は同時発生的投与又は適用を意味する。一実施形態において、レンチウイルスベクターは、トリヨードサイロニンホルモン、ヒトインターロイキン6、及び/又はそれらの誘導体等のこれらに限定されない、肝細胞増殖を誘導することができる他の薬剤と組み合わせて投与される。別の実施形態において、レンチウイルスベクターは、デキサメタゾン、シクロスポリンA、シクロスポリンH、ラパマイシン、及び/又はそれらの誘導体等のこれらに限定されない、レンチウイルスベクターに対する免疫応答を抑制することができる他の薬剤と組み合わせて投与される。別の実施形態において、レンチウイルスベクターは、スタチン、鉄キレート剤、及び/又はそれらの誘導体等のこれらに限定されない、VSV-G偽型レンチウイルスの標的細胞における特異的受容体の数を増加させることができる他の薬剤と組み合わせて投与される。別の実施形態において、レンチウイルスベクターは、酸化防止剤、例えばN-アセチルシステイン、及び/又はそれらの誘導体等のこれらに限定されない、形質導入肝細胞におけるアポトーシスをブロックすることができる他の薬剤と組み合わせて投与される。
【0175】
特定の実施形態において、第1の態様又はその実施形態のいずれかによるレンチウイルスベクターは、形質導入促進剤として作用するシクロスポリンH(CsH)と組み合わせて投与される。好ましい実施形態において、CsHは、20mg/kg~1mg/kg、15mg/kg~1mg/kg、10mg/kg~1mg/kg、5mg/kg~1mg/kg、又は5mg/kg~2.5mg/kgの範囲の用量で投与される。一実施形態において、CsHは、レンチウイルスの投与の前、同時に、又は後に投与される。上記範囲における中間の用量もまた、本発明の範囲内であることが意図されている。幾つかの実施形態において、CsHは1回投与される。他の実施形態において、CsHは、2回以上、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、又は少なくとも10回投与される。CsHの反復投与は、同日に行ってもよいし、時間を区切って行ってもよい。一実施形態において、CsHの単回投与の間隔は、毎日、毎週、毎月又は毎年であり得る。
【0176】
医療用途並びに投与のスケジュール、経路及び用量
第5の態様において、本発明は、医薬として使用される、第1の態様若しくはその実施形態のいずれかによるレンチウイルスベクター、第2の態様若しくはその実施形態のいずれかによる宿主細胞若しくは実質的に純粋な細胞集団、第3の態様若しくはその実施形態のいずれかによる単離された核酸、又は第4の態様若しくはその実施形態のいずれかの薬学的組成物を提供する。第6の態様において、本発明は、原発性高シュウ酸尿症、好ましくは原発性高シュウ酸尿症1型の治療に使用される、第1の態様若しくはその実施形態のいずれかによるレンチウイルスベクター、第2の態様若しくはその実施形態のいずれかによる宿主細胞若しくは実質的に純粋な細胞集団、第3の態様若しくはその実施形態のいずれかによる単離された核酸、又は第4の態様若しくはその実施形態のいずれかの薬学的組成物であって、上記レンチウイルス、上記宿主細胞若しくは細胞集団、又は上記組成物を被験体に投与することを含む使用を提供する。
【0177】
好ましくは、第5の態様及び第6の態様の使用は、免疫応答抑制剤、好ましくはデキサメタゾン、シクロスポリンA、シクロスポリンH及び/又はラパマイシン、又はそれらの任意の組み合わせと組み合わされる。
【0178】
本発明はまた、PH1障害を治療、予防、又は回復を必要とする被験体におけるPH1障害を治療、予防、又は回復する方法を提供し、この方法は、治療的有効量の第1の態様若しくはその実施形態のいずれかによるレンチウイルスベクター、第2の態様若しくはその実施形態のいずれかによる宿主細胞若しくは実質的に純粋な細胞集団、第3の態様若しくはその実施形態のいずれかの単離された核酸、又は第4の態様若しくはその実施形態のいずれかの薬学的組成物を被験体に投与することを含む。
【0179】
別の実施形態において、本明細書において提供される、レンチウイルスベクター、宿主細胞若しくは実質的に純粋な細胞集団、又は組成物の投与は、被験体において免疫応答を誘導しないか、又は上記被験体において非常に低い免疫応答を誘導する。
【0180】
幾つかの実施形態において、本発明のレンチウイルスベクター、宿主細胞若しくは実質的に純粋な細胞集団、又は組成物は、単回用量又は複数回用量として投与される。幾つかの実施形態において、本発明のレンチウイルスベクター、宿主細胞若しくは実質的に純粋な細胞集団、又は組成物の用量は、一度に投与されるか、又は複数回の部分用量(sub-dose)、例えば、2つの部分用量、3つの部分用量、4つの部分用量、5つの部分用量、6つの部分用量、若しくは6を超える部分用量に分割される。幾つかの実施形態において、2つ以上のレンチウイルスベクターが投与される。最も好ましくは、本発明のレンチウイルスベクター、宿主細胞若しくは実質的に純粋な細胞集団、又は組成物は、単回用量として投与される。
【0181】
幾つかの実施形態において、本発明のレンチウイルスベクター、本発明の宿主細胞若しくは実質的に純粋な細胞集団、又は薬学的組成物の用量は、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、又は少なくとも10回反復して投与される。
【0182】
本発明のレンチウイルスベクター、本発明の宿主細胞若しくは実質的に純粋な細胞集団、又は薬学的組成物は、局所的又は全身に投与することができる。1つの実施形態において、レンチウイルスベクターの投与経路は非経口である。本明細書において使用される非経口という用語には、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、直腸又は膣内投与が含まれる。一実施形態において、上記レンチウイルスベクターは、静脈内、皮下、筋肉内に、又は任意の粘膜表面を介して、例えば、経口、舌下、頬側、舌下、経鼻、直腸、経膣により、若しくは肺経路を介して投与することができる。非経口投与の静脈内形態が好ましい。一実施形態において、投与形態は、注射用の溶液、特に静脈内又は動脈内注射又は点滴用の溶液であろう。
【0183】
PH1の治療のための本明細書において提供される組成物の有効用量は、投与手段、標的部位、被験体の生理的状態、被験体がヒトであるか又は動物であるか、投与される他の薬剤、及び治療が予防的であるか又は治療的であるかを含む、多くの異なる因子に応じて異なる。通常、被験体はヒトであるが、トランスジェニック哺乳動物を含む非ヒト哺乳動物を治療することもできる。安全性及び有効性を最適化するために、当業者に知られているルーチン手法を使用して、治療投与量を設定することができる。1つの実施形態において、被験体としては、PH1を有する個体が挙げられるが、これに限定されない。幾つかの実施形態において、被験体は小児被験体であるが、他の態様において、被験体は成人被験体である。
【0184】
本発明のレンチウイルスベクター、本発明の宿主細胞若しくは実質的に純粋な細胞集団、又は薬学的組成物は、単回用量又は複数回用量として投与することができ、複数回用量は連続的に、又は特定の時間間隔にて投与することができる。in vitro又はin vivoアッセイを用いて、投与の最適な用量範囲及び/又はスケジュールを決定することができる。さらに、有効用量は、動物モデルから得られた用量反応曲線から推定することができる。
【0185】
好ましい実施形態において、本発明のレンチウイルスベクター、本発明の宿主細胞若しくは実質的に純粋な細胞集団、又は薬学的組成物は、少なくとも1×109ベクターゲノム/体重1kg、好ましくは1×1010ベクターゲノム/体重1kg、1×1011ベクターゲノム/体重1kg又は1×1012ベクターゲノム/体重1kgの用量にて投与される。より好ましくは、少なくとも又は約4.6×1012ベクターゲノム/体重1kgが投与される。
【0186】
一実施形態において、レンチウイルスの用量は、少なくとも5×102形質導入単位/kg(TU/kg)、5×103TU/kg、5×104TU/kg、5×105TU/kg、5×106TU/kg、5×107TU/kg、5×108TU/kg、5×109TU/kg、5×1010TU/kg、5×1011TU/kg、5×1012TU/kg、5×1013TU/kg、5×1014TU/kg、5×1015TU/kgである。一実施形態において、レンチウイルスの用量は、5×102形質導入単位/kg(TU/kg)~5×103TU/kg、5×103TU/kg~5×104TU/kg、5×104TU/kg~5×105TU/kg、5×105TU/kg~5×106TU/kg、5×106TU/kg~5×107TU/kg、5×108TU/kg~5×109TU/kg、5×109TU/kg~5×1010TU/kg、5×1010TU/kg~5×1011TU/kg、5×1011TU/kg~5×1012TU/kgである。一実施形態において、レンチウイルスの用量は、約1×102形質導入単位/kg(TU/kg)、1×103TU/kg、1×104TU/kg、1×105TU/kg、1×106TU/kg、1×107TU/kg、1×108TU/kg、1×109TU/kg、1×1010TU/kg、1×1011TU/kg、1×1012TU/kg、1×1013TU/kg、1×1014TU/kg、1×1015TU/kg、又は約5×102形質導入単位/kg(TU/kg)、5×103TU/kg、5×104TU/kg、5×105TU/kg、5×106TU/kg、5×107TU/kg、5×108TU/kg、5×109TU/kg、5×1010TU/kg、5×1011TU/kg、5×1012TU/kg、5×1013TU/kg、5×1014TU/kg、5×1015TU/kg、又は約7.5×102形質導入単位/kg(TU/kg)、7.5×103TU/kg、7.5×104TU/kg、7.5×105TU/kg、7.5×106TU/kg、7.5×107TU/kg、7.5×108TU/kg、7.5×109TU/kg、7.5×1010TU/kg、7.5×1011TU/kg、7.5×1012TU/kg、7.5×1013TU/kg、7.5×1014TU/kg、7.5×1015TU/kgである。
【0187】
上記範囲における中間の用量もまた、本発明の範囲内であることが意図されている。
【0188】
本発明のレンチウイルスベクター、本発明の宿主細胞若しくは実質的に純粋な細胞集団、又は本明細書において提供される薬学的組成物は、複数回の機会に投与することができる。単回投与の間隔は、毎日、毎週、毎月又は毎年であり得る。疾患の進行又は上記レンチウイルスの治癒効果に応じて、間隔が不規則になることもあり得る。
【0189】
本発明のレンチウイルスベクター、本発明の宿主細胞若しくは実質的に純粋な細胞集団、又は薬学的組成物の投与の投与量及び頻度は、治療が予防的であるか又は治療的であるかに応じて異なり得る。予防的用途において、本明細書において提供されるレンチウイルスベクターを含む組成物は、被験体の抵抗性を高めるか、又は疾患の影響を最小限に抑えるために、疾患状態にまだない被験体に投与される。そのような量は、「予防的有効用量」として定義される。長期間にわたって比較的低い頻度の間隔にて、比較的低い投与量が投与される。一部の被験体は、生涯にわたって治療を受け続ける可能性がある。
【0190】
項目
本発明は、以下の項目を更に提供する。
【0191】
1.レンチウイルスベクターであって、前記レンチウイルスベクターが核酸を含み、前記核酸が5’から3’に以下のヌクレオチド:
a)5’長末端反復(LTR)と、
b)プライマー結合部位(PBS)と、
c)psiパッケージングシグナルと、
d)野生型HIVウイルスのステムループ4(SL4)領域と、
e)Rev応答エレメント(RRE)と、
f)DNAフラップセントラルポリプリントラクト(cPPT)と、
g)配列番号16の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%の配列同一性を有する、遺伝子操作された肝細胞特異的プロモーターと、
h)配列番号29の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%の配列同一性を有する、最適化されたアラニン-グリオキシル酸及びセリン-ピルビン酸アミノトランスフェラーゼ(AGXT-RHEAM)タンパク質をコードするヌクレオチド配列と、
i)配列番号21の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%の配列同一性を有する、突然変異最適化ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)と、
j)少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくともコピーと、
k)3’長末端反復(LTR)と、
を含み、
a)及びk)の前記長末端反復領域は、前記LTRのU3領域における全欠失又は部分的欠失により、実質的に転写的に不活性化されており、g)、i)及びj)は、h)に作動可能に連結され、h)の発現を調節する、レンチウイルスベクター。
【0192】
2.配列番号16、配列番号29、及び配列番号21に対するg)、h)、i)の配列同一性が、それぞれ100%である、項目1に記載のレンチウイルスベクター。
【0193】
3.j)の前記少なくとも1つのmiRNA標的配列の少なくともコピーが、配列番号22の全長にわたって少なくとも95%、好ましくは98%の配列同一性を有するmiRNA-142-3の標的配列の4つのコピーのみからなる、項目1及び2のいずれか一項に記載のレンチウイルスベクター。
【0194】
4.前記レンチウイルスベクター中に含まれる前記ヌクレオチドが、
l)d)とe)との間に位置するDenvRF1領域と、
m)e)とf)との間に位置するDenvRF2領域と、
を更に含む、項目1~3のいずれか一項に記載のレンチウイルスベクター。
【0195】
5.前記レンチウイルスの全長ヌクレオチドが、配列番号30(LV.ET.AGXT-RHEAM.142-3pT)と少なくとも95%、好ましくは98%の配列同一性を有する、項目1~4のいずれか一項に記載のレンチウイルスベクター。
【0196】
6.配列番号30との配列同一性が100%である、項目5に記載のレンチウイルスベクター。
【0197】
7.項目1~6のいずれか一項に記載のレンチウイルスベクターで形質導入した実質的に純粋な細胞集団。
【0198】
8.項目1~6のいずれか一項に記載のレンチウイルスベクター、又は項目7に記載の実質的に純粋な細胞集団と、薬学的に許容可能な担体又は希釈剤とを含む薬学的組成物。
【0199】
9.医薬として使用される、項目1~6のいずれか一項に記載のレンチウイルスベクター、項目7に記載の実質的に純粋な細胞集団、又は請求項8に記載の薬学的組成物。
【0200】
10.原発性高シュウ酸尿症の治療を必要とする被験体の治療に使用される、項目1~6のいずれか一項に記載のレンチウイルスベクター、項目7に記載の実質的に純粋な細胞集団、又は請求項8に記載の薬学的組成物であって、該方法が、前記レンチウイルスベクター、前記細胞集団、又は前記薬学的組成物を前記被験体に投与することを含む、レンチウイルスベクター、実質的に純粋な細胞集団、又は薬学的組成物。
【0201】
11.前記原発性高シュウ酸尿症が1型である、項目10に記載の使用のためのレンチウイルスベクター、実質的に純粋な細胞集団、又は薬学的組成物。
【実施例】
【0202】
実施例1:材料、方法及び配列
1.1 レンチウイルスベクター構築
緑色蛍光タンパク質の強化バージョン(eGFP)を発現するレポーターレンチウイルスベクター(LV)コンストラクトは、Naldini及びCantoreのグループによって以前に記載されたLVコンストラクト(LV.ET.FIX.142-3pT)(Brown et al., 2007)から開発された。eGFP発現LVは、古典的なクローニング技術によって開発された。LV.ET.FIX.142-3pTをNheI及びSalI制限酵素(New England Biolabs(商標))によって消化して、FIX配列を除去した。NheI及びSalIの標的配列はそれぞれFIX遺伝子の5’及び3’末端にある。両酵素によるプラスミドの消化後、電気泳動及びバンド精製によりLV構造を単離した。
【0203】
さらに、本発明者らは、#241.pCCL.sin.PPT.TTR.GFP.WpreプラスミドからeGFP配列をPCRによって増幅した。プライマーは、NheI(配列番号1 Fw:5’-ATTGGCTAGCATGGTGAGCAAGGGCGAGGA-3’)及びSalI(配列番号2 Rv:5’-CATTGTCGACTTACTTGTACAGCTCGTCCA-3’)制限酵素標的配列をそれぞれ5’及び3’末端にて付加するように設計した。最後に、両配列を連結し、LV.ET.eGFP.142-3pTを得た。
【0204】
LV.ET.eGFP.142-3pTの発現カセットは、遺伝子操作された肝細胞特異的プロモーター(強化トランスチレチン、Genbank寄託番号AY661265から改変)と、抗原提示細胞におけるオフターゲットの導入遺伝子発現を回避すること、したがって、形質導入細胞に対する免疫応答の発生を回避することを目的として、造血系統特異的マイクロRNA142についての標的配列(成熟ヒトマイクロRNA142 配列番号3-miRNA-142-3p:UGUAGUGUUUCCUACUUUAUGGA)とを含む。
【0205】
LV.ET.eGFP.142-3pT配列:
5’LTR(配列番号4):5’LTRは、レンチウイルスベクター生産中のプロウイルス転写に関与する。このレンチウイルスベクターコンストラクトにおいて、5’LTRは、CMVプロモーターのキメラ型及び野生型HIV-1 5’LTRの一部であるRU5から構成される。野生型5’LTRのU3配列の欠如は、このレンチウイルスベクターコンストラクトがTat非依存性であり、したがって、それが第3世代で生産されることを含む。
tggccattgcatacgttgtatccatatcataatatgtacatttatattggctcatgtccaacattaccgccatgttgacattgattattgactagttattaatagtaatcaattacggggtcattagttcatagcccatatatggagttccgcgttacataacttacggtaaatggcccgcctggctgaccgcccaacgacccccgcccattgacgtcaataatgacgtatgttcccatagtaacgccaatagggactttccattgacgtcaatgggtggagtatttacggtaaactgcccacttggcagtacatcaagtgtatcatatgccaagtacgccccctattgacgtcaatgacggtaaatggcccgcctggcattatgcccagtacatgaccttatgggactttcctacttggcagtacatctacgtattagtcatcgctattaccatggtgatgcggttttggcagtacatcaatgggcgtggatagcggtttgactcacggggatttccaagtctccaccccattgacgtcaatgggagtttgttttggcaccaaaatcaacgggactttccaaaatgtcgtaacaactccgccccattgacgcaaatgggcggtaggcgtgtacggtgggaggtctatataagcagagctcgtttagtgaaccggggtctctctggttagaccagatctgagcctgggagctctctggctaactagggaacccactgcttaagcctcaataaagcttgccttgagtgcttcaagtagtgtgtgcccgtctgttgtgtgactctggtaactagagatccctcagacccttttagtcagtgtggaaaatctctagcag
【0206】
キメラCMVプロモーター(配列番号5):この配列はレンチウイルスベクター生産中にプロウイルスの転写を導く。キメラCMVプロモーターは2つの異なる配列から構成されており、1つはエンハンサー活性を有し、もう1つはプロモーター活性を有する。
tggccattgcatacgttgtatccatatcataatatgtacatttatattggctcatgtccaacattaccgccatgttgacattgattattgactagttattaatagtaatcaattacggggtcattagttcatagcccatatatggagttccgcgttacataacttacggtaaatggcccgcctggctgaccgcccaacgacccccgcccattgacgtcaataatgacgtatgttcccatagtaacgccaatagggactttccattgacgtcaatgggtggagtatttacggtaaactgcccacttggcagtacatcaagtgtatcatatgccaagtacgccccctattgacgtcaatgacggtaaatggcccgcctggcattatgcccagtacatgaccttatgggactttcctacttggcagtacatctacgtattagtcatcgctattaccatggtgatgcggttttggcagtacatcaatgggcgtggatagcggtttgactcacggggatttccaagtctccaccccattgacgtcaatgggagtttgttttggcaccaaaatcaacgggactttccaaaatgtcgtaacaactccgccccattgacgcaaatgggcggtaggcgtgtacggtgggaggtctatataagcagagctcgtttagtgaacc
【0207】
CMVエンハンサー(配列番号6):
gacattgattattgactagttattaatagtaatcaattacggggtcattagttcatagcccatatatggagttccgcgttacataacttacggtaaatggcccgcctggctgaccgcccaacgacccccgcccattgacgtcaataatgacgtatgttcccatagtaacgccaatagggactttccattgacgtcaatgggtggagtatttacggtaaactgcccacttggcagtacatcaagtgtatcatatgccaagtacgccccctattgacgtcaatgacggtaaatggcccgcctggcattatgcccagtacatgaccttatgggactttcctacttggcagtacatctacgtattagtcatcgctattaccatg
【0208】
CMVプロモーター(配列番号7):
gtgatgcggttttggcagtacatcaatgggcgtggatagcggtttgactcacggggatttccaagtctccaccccattgacgtcaatgggagtttgttttggcaccaaaatcaacgggactttccaaaatgtcgtaacaactccgccccattgacgcaaatgggcggtaggcgtgtacggtgggaggtctatataagcagagct
【0209】
RU5(配列番号8):RU3を含まない切断された5’LTR。この配列は、形質導入細胞へのプロウイルスゲノムの逆転写(retrotranscription)及び組込みに必要である。
gggtctctctggttagaccagatctgagcctgggagctctctggctaactagggaacccactgcttaagcctcaataaagcttgccttgagtgcttcaagtagtgtgtgcccgtctgttgtgtgactctggtaactagagatccctcagacccttttagtcagtgtggaaaatctctagcag
【0210】
PBS SL23 SL123(プライマー結合部位)(配列番号9):tRNAは、標的細胞形質導入後、及び細胞ゲノムへの組込み前に、プロウイルスゲノムの逆転写中にPBS SL23エレメントに結合される。
tggcgcccgaacagggacTtgaaagcgaaagggaaaccagagGAGctctctcgacgcaggactcggcttgctgaagcgcgcacggcaagaggcgaggggcggcgactggtgagtacgccaaaaattttgactagcggaggctagaaggagagag
【0211】
Ψ(パッケージングシグナル)(配列番号10):このエレメントは、レンチウイルスベクター粒子の二量体化及びパッケージングに関与する。
ctctctcgacgcaggactcggcttgctgaagcgcgcacggcaagaggcgaggggcggcgactggtgagtacgccaaaaattttgactagcggaggctagaaggagagagatgggtgcgagagcgtc
【0212】
SL4mgag(配列番号11):このエレメントは、プロウイルスのパッケージングに関与する野生型mgag HIV-1遺伝子の一部である。
atgggtgcgagagcgtcagtattaagcgggggagaattagatcgcgatgggaaaaaattcggttaaggccagggggaaagaaaaaatataaattaaaacatatagtatgggcaagcagggagctagaacgattcgcagttaatcctggcctgttagaaacatcagaaggctgtagacaaatactgggacagctacaaccatcccttcagacaggatcagaagaacttagatcattatataatacagtagcaaccctctattgtgtgcatcaaaggatagagataaaagacaccaaggaagctttagacaagatagaggaagagcaaaacaaaagtaagaccaccgcacagcaagcggccgctgat
【0213】
DenvRF1(配列番号12):
tcttcagacctggaggaggagatatgagggacaattggagaagtgaattatataaatataaagtagtaaaaattgaaccattaggagtagcacccaccaaggcaaagagaagagtggtgcagagagaaaaaagagcagtgggaata
【0214】
RRE(Rev応答エレメント)(配列番号13):Revは、レンチウイルスベクターの転写産物中でこの配列に結合して、レンチウイルスベクター生産中のプロウイルスの核外輸送を助ける。
aggagctttgttccttgggttcttgggagcagcaggaagcactatgggcgcagcGtcaatgacgctgacggtacaggccagacaattattgtctggtatagtgcagcagcagaacaatttgctgagggctattgaggcgcaacagcatctgttgcaactcacagtctggggcatcaagcagctccaggcaagaatcctggctgtggaaagatacctaaaggatcaacagctcct
【0215】
DenvRF2(配列番号14):
gggttgctctggaaaactcatttgcaccactgctgtgccttggaatgctagttggagtaataaatctctggaacagatttggaatcacacgacctggatggagtgggacagagaaattaacaattacacaagcttaatacactccttaattgaagaatcgcaaaaccagcaagaaaagaatgaacaagaattattggaattagataaatgggcaagtttgtggaattggtttaacataacaaattggctgtggtatataaaattattcataatgatagtaggaggcttggtaggtttaagaatagtttttgctgtactttctatagtgaatagagttaggcagggatattcaccattatcgtttcagacccacctcccaaccccgaggggacccgacaggcccgaaggaatagaagaagaaggtggagagagagacagagacagatccattcgattagtgaacggatc
【0216】
cPPT(セントラルポリプリントラクト)(配列番号15):このエレメントは、標的細胞の形質導入後のレンチウイルスベクターの逆転写中に、陽性DNA鎖転写のプライマーとして作用する。また、プロウイルスDNA核内移行を増加させ、したがって、レンチウイルスベクター形質導入有効性を増加させる。さらに、レンチウイルスベクターのタイトルを増加させる。
ttttaaaagaaaaggggggattggggggtacagtgcaggggaaagaatagtagacataatagcaacagacatacaaactaaagaattacaaaaacaaattacaaaaattcaaaatttt
【0217】
ETプロモーター(配列番号16):ETプロモーターは、遺伝子操作された肝細胞特異的プロモーターである。この配列は、標的細胞へのレンチウイルスベクターゲノム組込み後に導入遺伝子発現を導く。ETプロモーターは、合成エンハンサー、mTTRエンハンサー、及びmTTRプロモーターから構成されるキメラプロモーターである(強化トランスチレチン、Genbank寄託番号AY661265)。
cgcgagttaataattaccagcgcgggccaaataaataatccgcgaggggcaggtgacgtttgcccagcgcgcgctggtaattattaacctcgcgaatattgattcgaggccgcgattgccgcaatcgcgaggggcaggtgacctttgcccagcgcgcgttcgccccgccccggacggtatcgataagcttaggagcttgggctgcaggtcgagggcactgggaggatgttgagtaagatggaaaactactgatgacccttgcagagacagagtattaggacatgtttgaacaggggccgggcgatcagcaggtagctctagaggatccccgtctgtctgcacatttcgtagagcgagtgttccgatactctaatctccctaggcaaggttcatatttgtgtaggttacttattctccttttgttgactaagtcaataatcagaatcagcaggtttggagtcagcttggcagggatcagcagcctgggttggaaggagggggtataaaagccccttcaccaggagaagccgtcacacagatccacaagctcctg
【0218】
ETプロモーターの成分:
合成エンハンサー(配列番号17):
cgcgagttaataattaccagcgcgggccaaataaataatccgcgaggggcaggtgacgtttgcccagcgcgcgctggtaattattaacctcgcgaatattgattcgaggccgcgattgccgcaatcgcgaggggcaggtgacctttgcccagcgcgcg
【0219】
mTTRエンハンサー(配列番号18):
cactgggaggatgttgagtaagatggaaaactactgatgacccttgcagagacagagtattaggacatgtttgaacaggggccgggcgatcagcaggtag
【0220】
mTTRプロモーター(配列番号19):
gtctgtctgcacatttcgtagagcgagtgttccgatactctaatctccctaggcaaggttcatatttgtgtaggttacttattctccttttgttgactaagtcaataatcagaatcagcaggtttggagtcagcttggcagggatcagcagcctgggttggaaggagggggtataaaagccccttcaccaggagaagccgtc
【0221】
mTTR 5’ UT(配列番号20):acacagatccacaagctcctg
【0222】
eGFP配列(配列番号51):この配列は、緑色蛍光タンパク質遺伝子の強化バージョンを体系化する。
tggtgagcaagggcgaggagctgttcaccggggtggtgcccatcctggtcgagctggacggcgacgtaaacggccacaagttcagcgtgtccggcgagggcgagggcgatgccacctacggcaagctgaccctgaagttcatctgcaccaccggcaagctgcccgtgccctggcccaccctcgtgaccaccctgacctacggcgtgcagtgcttcagccgctaccccgaccacatgaagcagcacgacttcttcaagtccgccatgcccgaaggctacgtccaggagcgcaccatcttcttcaaggacgacggcaactacaagacccgcgccgaggtgaagttcgagggcgacaccctggtgaaccgcatcgagctgaagggcatcgacttcaaggaggacggcaacatcctggggcacaagctggagtacaactacaacagccacaacgtctatatcatggccgacaagcagaagaacggcatcaaggtgaacttcaagatccgccacaacatcgaggacggcagcgtgcagctcgccgaccactaccagcagaacacccccatcggcgacggccccgtgctgctgcccgacaaccactacctgagcacccagtccgccctgagcaaagaccccaacgagaagcgcgatcacatggtcctgctggagttcgtgaccgccgccgggatcactctcggcatggacgagctgtacaagtaaa
【0223】
突然変異WPRE(WHV(ウッドチャック肝炎ウイルス)転写後調節エレメント)(配列番号21):突然変異WPREは、ポリアデニル化、核からのRNA輸送及びタンパク質合成の改善により、形質導入細胞における導入遺伝子発現を増加させる。突然変異WPREは、セキュリティーを高めるために遺伝子Xフレームに突然変異を含む。
caacctctggattacaaaatttgtgaaagattgactggtattcttaactatgttgctccttttacgctatgtggatacgctgctttaatgcctttgtatcatgctattgcttcccgtatggctttcattttctcctccttgtataaatcctggttgctgtctctttatgaggagttgtggcccgttgtcaggcaacgtggcgtggtgtgcactgtgtttgctgacgcaacccccactggttggggcattgccaccacctgtcagctcctttccgggactttcgctttccccctccctattgccacggcggaactcatcgccgcctgccttgcccgctgctggacaggggctcggctgttgggcactgacaattccgtggtgttgtcggggaaatcatcgtcctttccttggctgctcgcctgtgttgccacctggattctgcgcgggacgtccttctgctacgtcccttcggccctcaatccagcggaccttccttcccgc
【0224】
142-3pT(配列番号22):造血細胞において特異的に発現する142-3マイクロRNAの標的配列。このエレメントは、転写制御エレメントである形質導入細胞における導入遺伝子の発現特異性を高める。
tccataaagtaggaaacactaca
【0225】
3’LTR:DR3RU5(配列番号23):3’LTRは、レンチウイルスベクター生産中のmRNAポリアデニル化に関与する。この場合、3’LTRは、自己不活性化レンチウイルスベクターである野生型HIV-1由来の切断されたU3エレメントと、エレメントR及びU5とから構成される。組み込まれたウイルスゲノムは、ウイルスプロモーター領域(U3)の欠失を含み、形質導入細胞における潜在的にパッキング可能なウイルスゲノムの転写不活性化をもたらす。
tggaagggctaattcactcccaacgaagacaagatctgctttttgcttgtactgggtctctctggttagaccagatctgagcctgggagctctctggctaactagggaacccactgcttaagcctcaataaagcttgccttgagtgcttcaagtagtgtgtgcccgtctgttgtgtgactctggtaactagagatccctcagacccttttagtcagtgtggaaaatctctagca
【0226】
ΔU3(配列番号24):
tggaagggctaattcactcccaacgaagacaagatctgctttttgcttgtact
【0227】
RU5(配列番号25):
gggtctctctggttagaccagatctgagcctgggagctctctggctaactagggaacccactgcttaagcctcaataaagcttgccttgagtgcttcaagtagtgtgtgcccgtctgttgtgtgactctggtaactagagatccctcagacccttttagtcagtgtggaaaatctctagcag
【0228】
LV.ET.eGFP.142-3pT配列(配列番号26):
tggccattgcatacgttgtatccatatcataatatgtacatttatattggctcatgtccaacattaccgccatgttgacattgattattgactagttattaatagtaatcaattacggggtcattagttcatagcccatatatggagttccgcgttacataacttacggtaaatggcccgcctggctgaccgcccaacgacccccgcccattgacgtcaataatgacgtatgttcccatagtaacgccaatagggactttccattgacgtcaatgggtggagtatttacggtaaactgcccacttggcagtacatcaagtgtatcatatgccaagtacgccccctattgacgtcaatgacggtaaatggcccgcctggcattatgcccagtacatgaccttatgggactttcctacttggcagtacatctacgtattagtcatcgctattaccatggtgatgcggttttggcagtacatcaatgggcgtggatagcggtttgactcacggggatttccaagtctccaccccattgacgtcaatgggagtttgttttggcaccaaaatcaacgggactttccaaaatgtcgtaacaactccgccccattgacgcaaatgggcggtaggcgtgtacggtgggaggtctatataagcagagctcgtttagtgaaccggggtctctctggttagaccagatctgagcctgggagctctctggctaactagggaacccactgcttaagcctcaataaagcttgccttgagtgcttcaagtagtgtgtgcccgtctgttgtgtgactctggtaactagagatccctcagacccttttagtcagtgtggaaaatctctagcagtggcgcccgaacagggacctgaaagcgaaagggaaaccagagctctctcgacgcaggactcggcttgctgaagcgcgcacggcaagaggcgaggggcggcgactggtgagtacgccaaaaattttgactagcggaggctagaaggagagagatgggtgcgagagcgtcagtattaagcgggggagaattagatcgcgatgggaaaaaattcggttaaggccagggggaaagaaaaaatataaattaaaacatatagtatgggcaagcagggagctagaacgattcgcagttaatcctggcctgttagaaacatcagaaggctgtagacaaatactgggacagctacaaccatcccttcagacaggatcagaagaacttagatcattatataatacagtagcaaccctctattgtgtgcatcaaaggatagagataaaagacaccaaggaagctttagacaagatagaggaagagcaaaacaaaagtaagaccaccgcacagcaagcggccgctgatcttcagacctggaggaggagatatgagggacaattggagaagtgaattatataaatataaagtagtaaaaattgaaccattaggagtagcacccaccaaggcaaagagaagagtggtgcagagagaaaaaagagcagtgggaataggagctttgttccttgggttcttgggagcagcaggaagcactatgggcgcagcctcaatgacgctgacggtacaggccagacaattattgtctggtatagtgcagcagcagaacaatttgctgagggctattgaggcgcaacagcatctgttgcaactcacagtctggggcatcaagcagctccaggcaagaatcctggctgtggaaagatacctaaaggatcaacagctcctggggatttggggttgctctggaaaactcatttgcaccactgctgtgccttggaatgctagttggagtaataaatctctggaacagatttggaatcacacgacctggatggagtgggacagagaaattaacaattacacaagcttaatacactccttaattgaagaatcgcaaaaccagcaagaaaagaatgaacaagaattattggaattagataaatgggcaagtttgtggaattggtttaacataacaaattggctgtggtatataaaattattcataatgatagtaggaggcttggtaggtttaagaatagtttttgctgtactttctatagtgaatagagttaggcagggatattcaccattatcgtttcagacccacctcccaaccccgaggggacccgacaggcccgaaggaatagaagaagaaggtggagagagagacagagacagatccattcgattagtgaacggatctcgacggtatcggttaacttttaaaagaaaaggggggattggggggtacagtgcaggggaaagaatagtagacataatagcaacagacatacaaactaaagaattacaaaaacaaattacaaaaattcaaaattttatcgatcacgagactagcctcgatcgaggtcaattcacgcgagttaataattaccagcgcgggccaaataaataatccgcgaggggcaggtgacgtttgcccagcgcgcgctggtaattattaacctcgcgaatattgattcgaggccgcgattgccgcaatcgcgaggggcaggtgacctttgcccagcgcgcgttcgccccgccccggacggtatcgataagcttaggagcttgggctgcaggtcgagggcactgggaggatgttgagtaagatggaaaactactgatgacccttgcagagacagagtattaggacatgtttgaacaggggccgggcgatcagcaggtagctctagaggatccccgtctgtctgcacatttcgtagagcgagtgttccgatactctaatctccctaggcaaggttcatatttgtgtaggttacttattctccttttgttgactaagtcaataatcagaatcagcaggtttggagtcagcttggcagggatcagcagcctgggttggaaggagggggtataaaagccccttcaccaggagaagccgtcacacagatccacaagctcctgccaccatggtgagcaagggcgaggagctgttcaccggggtggtgcccatcctggtcgagctggacggcgacgtaaacggccacaagttcagcgtgtccggcgagggcgagggcgatgccacctacggcaagctgaccctgaagttcatctgcaccaccggcaagctgcccgtgccctggcccaccctcgtgaccaccctgacctacggcgtgcagtgcttcagccgctaccccgaccacatgaagcagcacgacttcttcaagtccgccatgcccgaaggctacgtccaggagcgcaccatcttcttcaaggacgacggcaactacaagacccgcgccgaggtgaagttcgagggcgacaccctggtgaaccgcatcgagctgaagggcatcgacttcaaggaggacggcaacatcctggggcacaagctggagtacaactacaacagccacaacgtctatatcatggccgacaagcagaagaacggcatcaaggtgaacttcaagatccgccacaacatcgaggacggcagcgtgcagctcgccgaccactaccagcagaacacccccatcggcgacggccccgtgctgctgcccgacaaccactacctgagcacccagtccgccctgagcaaagaccccaacgagaagcgcgatcacatggtcctgctggagttcgtgaccgccgccgggatcactctcggcatggacgagctgtacaagtaaagcggcctcgacgggcccgcggaatttcgacaatcaacctctggattacaaaatttgtgaaagattgactggtattcttaactatgttgctccttttacgctatgtggatacgctgctttaatgcctttgtatcatgctattgcttcccgtatggctttcattttctcctccttgtataaatcctggttgctgtctctttatgaggagttgtggcccgttgtcaggcaacgtggcgtggtgtgcactgtgtttgctgacgcaacccccactggttggggcattgccaccacctgtcagctcctttccgggactttcgctttccccctccctattgccacggcggaactcatcgccgcctgccttgcccgctgctggacaggggctcggctgttgggcactgacaattccgtggtgttgtcggggaagctgacgtcctttccatggctgctcgcctgtgttgccacctggattctgcgcgggacgtccttctgctacgtcccttcggccctcaatccagcggaccttccttcccgcggcctgctgccggctctgcggcctcttccgcgtcttcgccttcgccctcagacgagtcggatctccctttgggccgcctccccgcctggaattcgagctccaccgcggtggcggccgctctagagtcgactccataaagtaggaaacactacacgattccataaagtaggaaacactacaaccggttccataaagtaggaaacactacatcactccataaagtaggaaacactacactcgagggggggcccggtacctttaagaccaatgacttacaaggcagctgtagatcttagccactttttaaaagaaaaggggggactggaagggctaattcactcccaacgaagacaagatctgctttttgcttgtactgggtctctctggttagaccagatctgagcctgggagctctctggctaactagggaacccactgcttaagcctcaataaagcttgccttgagtgcttcaagtagtgtgtgcccgtctgttgtgtgactctggtaactagagatccctcagacccttttagtcagtgtggaaaatctctagca
【0229】
LV.ET.eGFP.142-3pTマップ:LV.ET.eGFP.142-3pTコンストラクト。前述の種々のエレメントを
図11に示す。
【0230】
同時に、本発明者らは、AGXT遺伝子の改善バージョン(AGXT-RHEAM)を発現する治療用LVを開発した。本発明者らは、上記で説明したように得られたLV.ET.FIX.142-3pTの単離された構造を使用した。本発明者らは、Eduardo Salidoのグループから快くご提供いただいたAGXT-RHEAM配列(非特許文献14)をPCRによって増幅した。プライマーは、クローニングに使用するために、NheI(配列番号27 Fw:5’ CTA GCT AGC ATG GCC TCT CAC AAG CTG CT 3’)及びSalI(配列番号28 Rv:5’ CAA GTC GAC TCA CAG CTT CTT CTT GGG GC 3’)標的配列をそれぞれ5’及び3’末端に付加するように設計した。最後に、LV.ET.FIX.142-3pT構造及びAGXT-RHEAM配列を連結し、LV.ET.AGXT-RHEAM.142-3pTベクターを得た。
【0231】
LV.ET.AGXT-RHEAM.142-3PT配列:
LV.ET.AGXT-RHEAM.142-3pT配列は、AGXT-RHEAMコード配列で置換されたeGFPを除き、LV.EG.eGFP.142-3pTと同じエレメントを含む。
【0232】
AGXT-RHEAM(配列番号29):Eduardo Salidoのグループによって開発されたこの配列(非特許文献14)は、タンパク質の安定性及び半減期を増加させるために、5つのアミノ酸変化を有するAGXT遺伝子の改善バージョンを体系化する。
ATGGCCTCTCACAAGCTGCTGGTGACCCCCCCCAAGGCCCTGCTCAAGCCCCTCTCCATCCCCAACCGTCTCCTGCTGGGGCCTGGTCCTTCCAACCTGCCTCCTCGCATCATGGCAGCCGGGGGGCTGCAGATGATCGGGCACATGAGCAAGGAAATGTACCAGATCATGGACGAGATCAAGGAAGGCATCCAGTACGTGTTCCAGACCAGGAACCCACTCACACTGGTCATCTCCGGCTCGGGACACTGTGCCCTGGAGGCCGCCCTGGTCAATGTGCTGGAGCCTGGGGACTCCTTCCTGGTTGGGGCCAATGGCATTTGGGGGCAGCGAGCCGCGGACATCGGGGAGCGCATAGGAGCCCGAGTGCACCCGATGACCAAGGACCCCGGAGGCCACTACACACTGCAGGAGGTGGAGGAGGGCCTGGCCCAGCACAAGCCAGTGCTGCTGTTCTTAACCCACGGGGAGTCGTCCACCGGCGTGCTGCAGCCCCTTGATGGCTTCGGGGAACTCTGCCACAGGTACAAGTGCCTGCTCCTGGTGGATTCGGTGGCATCCCTGGGCGGGACCCCCCTTTACATGGACCGGCAAGGCATCGACATCCTGTACTCGGGCTCCCAGAAGGCCCTGAACGCCCCTCCAGGGACCTCGCTCATCTCCTTCAGTGACAAGGCCAAAAAGAAGATGTACTCCCGCAAGACGAAGCCCTTCTCCTTCTACCTGGACATCAAGTGGCTGGCCAACTTCTGGGGCTGTGACGACCAGCCCAGGATGTACCATCACACAATCCCCGTCATCAGCCTGTACAGCCTGAGAGAGAGCCTGGCCCTCATTGCGGAACAGGGCCTGGAGAACAGCTGGCGCCAGCACCGCGAGGCCGCGGCGTATCTGCATGGGCGCCTGCAGGCACTGGGGCTGCAGCTCTTCGTGAAGGACCCGGCGCTCCGGCTTCCCACAGTCACCACTGTGGCTGTACCCGCTGGCTATGACTGGAGAGACATCGTCAGCTACGTCATGGACCACTTCGACATTGAGATCATGGGTGGCCTTGGGCCCTCCACGGGGAAGGTGCTGCGGATCGGCCTGCTGGGCTGCAATGCCACCCGCGAGAATGTGGACCGCGTGACGGAGGCCCTGAGGGCGGCCCTGCAGCACTGCCCCAAGAAGAAGCTGTGA
【0233】
LV.ET.AGXT-RHEAM.142-3pT(配列番号30):
tggccattgcatacgttgtatccatatcataatatgtacatttatattggctcatgtccaacattaccgccatgttgacattgattattgactagttattaatagtaatcaattacggggtcattagttcatagcccatatatggagttccgcgttacataacttacggtaaatggcccgcctggctgaccgcccaacgacccccgcccattgacgtcaataatgacgtatgttcccatagtaacgccaatagggactttccattgacgtcaatgggtggagtatttacggtaaactgcccacttggcagtacatcaagtgtatcatatgccaagtacgccccctattgacgtcaatgacggtaaatggcccgcctggcattatgcccagtacatgaccttatgggactttcctacttggcagtacatctacgtattagtcatcgctattaccatggtgatgcggttttggcagtacatcaatgggcgtggatagcggtttgactcacggggatttccaagtctccaccccattgacgtcaatgggagtttgttttggcaccaaaatcaacgggactttccaaaatgtcgtaacaactccgccccattgacgcaaatgggcggtaggcgtgtacggtgggaggtctatataagcagagctcgtttagtgaaccggggtctctctggttagaccagatctgagcctgggagctctctggctaactagggaacccactgcttaagcctcaataaagcttgccttgagtgcttcaagtagtgtgtgcccgtctgttgtgtgactctggtaactagagatccctcagacccttttagtcagtgtggaaaatctctagcagtggcgcccgaacagggacTtgaaagcgaaagggaaaccagagGAGctctctcgacgcaggactcggcttgctgaagcgcgcacggcaagaggcgaggggcggcgactggtgagtacgccaaaaattttgactagcggaggctagaaggagagagatgggtgcgagagcgtcagtattaagcgggggagaattagatcgcgatgggaaaaaattcggttaaggccagggggaaagaaaaaatataaattaaaacatatagtatgggcaagcagggagctagaacgattcgcagttaatcctggcctgttagaaacatcagaaggctgtagacaaatactgggacagctacaaccatcccttcagacaggatcagaagaacttagatcattatataatacagtagcaaccctctattgtgtgcatcaaaggatagagataaaagacaccaaggaagctttagacaagatagaggaagagcaaaacaaaagtaagaccaccgcacagcaagcggccgctgatcttcagacctggaggaggagatatgagggacaattggagaagtgaattatataaatataaagtagtaaaaattgaaccattaggagtagcacccaccaaggcaaagagaagagtggtgcagagagaaaaaagagcagtgggaataggagctttgttccttgggttcttgggagcagcaggaagcactatgggcgcagcGtcaatgacgctgacggtacaggccagacaattattgtctggtatagtgcagcagcagaacaatttgctgagggctattgaggcgcaacagcatctgttgcaactcacagtctggggcatcaagcagctccaggcaagaatcctggctgtggaaagatacctaaaggatcaacagctcctggggatttggggttgctctggaaaactcatttgcaccactgctgtgccttggaatgctagttggagtaataaatctctggaacagatttggaatcacacgacctggatggagtgggacagagaaattaacaattacacaagcttaatacactccttaattgaagaatcgcaaaaccagcaagaaaagaatgaacaagaattattggaattagataaatgggcaagtttgtggaattggtttaacataacaaattggctgtggtatataaaattattcataatgatagtaggaggcttggtaggtttaagaatagtttttgctgtactttctatagtgaatagagttaggcagggatattcaccattatcgtttcagacccacctcccaaccccgaggggacccgacaggcccgaaggaatagaagaagaaggtggagagagagacagagacagatccattcgattagtgaacggatctcgacggtatcggttaacttttaaaagaaaaggggggattggggggtacagtgcaggggaaagaatagtagacataatagcaacagacatacaaactaaagaattacaaaaacaaattacaaaaattcaaaattttatcgatcacgagactagcctcgagcacgcgagttaataattaccagcgcgggccaaataaataatccgcgaggggcaggtgacgtttgcccagcgcgcgctggtaattattaacctcgcgaatattgattcgaggccgcgattgccgcaatcgcgaggggcaggtgacctttgcccagcgcgcgttcgccccgccccggacggtatcgataagcttaggagcttgggctgcaggtcgagggcactgggaggatgttgagtaagatggaaaactactgatgacccttgcagagacagagtattaggacatgtttgaacaggggccgggcgatcagcaggtagctctagaggatccccgtctgtctgcacatttcgtagagcgagtgttccgatactctaatctccctaggcaaggttcatatttgtgtaggttacttattctccttttgttgactaagtcaataatcagaatcagcaggtttggagtcagcttggcagggatcagcagcctgggttggaaggagggggtataaaagccccttcaccaggagaagccgtcacacagatccacaagctcctggCTAGCTAGCATGGCCTCTCACAAGCTGCTGGTGACCCCCCCCAAGGCCCTGCTCAAGCCCCTCTCCATCCCCAACCGTCTCCTGCTGGGGCCTGGTCCTTCCAACCTGCCTCCTCGCATCATGGCAGCCGGGGGGCTGCAGATGATCGGGCACATGAGCAAGGAAATGTACCAGATCATGGACGAGATCAAGGAAGGCATCCAGTACGTGTTCCAGACCAGGAACCCACTCACACTGGTCATCTCCGGCTCGGGACACTGTGCCCTGGAGGCCGCCCTGGTCAATGTGCTGGAGCCTGGGGACTCCTTCCTGGTTGGGGCCAATGGCATTTGGGGGCAGCGAGCCGCGGACATCGGGGAGCGCATAGGAGCCCGAGTGCACCCGATGACCAAGGACCCCGGAGGCCACTACACACTGCAGGAGGTGGAGGAGGGCCTGGCCCAGCACAAGCCAGTGCTGCTGTTCTTAACCCACGGGGAGTCGTCCACCGGCGTGCTGCAGCCCCTTGATGGCTTCGGGGAACTCTGCCACAGGTACAAGTGCCTGCTCCTGGTGGATTCGGTGGCATCCCTGGGCGGGACCCCCCTTTACATGGACCGGCAAGGCATCGACATCCTGTACTCGGGCTCCCAGAAGGCCCTGAACGCCCCTCCAGGGACCTCGCTCATCTCCTTCAGTGACAAGGCCAAAAAGAAGATGTACTCCCGCAAGACGAAGCCCTTCTCCTTCTACCTGGACATCAAGTGGCTGGCCAACTTCTGGGGCTGTGACGACCAGCCCAGGATGTACCATCACACAATCCCCGTCATCAGCCTGTACAGCCTGAGAGAGAGCCTGGCCCTCATTGCGGAACAGGGCCTGGAGAACAGCTGGCGCCAGCACCGCGAGGCCGCGGCGTATCTGCATGGGCGCCTGCAGGCACTGGGGCTGCAGCTCTTCGTGAAGGACCCGGCGCTCCGGCTTCCCACAGTCACCACTGTGGCTGTACCCGCTGGCTATGACTGGAGAGACATCGTCAGCTACGTCATGGACCACTTCGACATTGAGATCATGGGTGGCCTTGGGCCCTCCACGGGGAAGGTGCTGCGGATCGGCCTGCTGGGCTGCAATGCCACCCGCGAGAATGTGGACCGCGTGACGGAGGCCCTGAGGGCGGCCCTGCAGCACTGCCCCAAGAAGAAGCTGTGAGtcgacaatcaacctctggattacaaaatttgtgaaagattgactggtattcttaactatgttgctccttttacgctatgtggatacgctgctttaatgcctttgtatcatgctattgcttcccgtatggctttcattttctcctccttgtataaatcctggttgctgtctctttatgaggagttgtggcccgttgtcaggcaacgtggcgtggtgtgcactgtgtttgctgacgcaacccccactggttggggcattgccaccacctgtcagctcctttccgggactttcgctttccccctccctattgccacggcggaactcatcgccgcctgccttgcccgctgctggacaggggctcggctgttgggcactgacaattccgtggtgttgtcggggaaatcatcgtcctttccttggctgctcgcctgtgttgccacctggattctgcgcgggacgtccttctgctacgtcccttcggccctcaatccagcggaccttccttcccgcggcctgctgccggctctagataatccataaagtaggaaacactacacgattccataaagtaggaaacactacaaccggttccataaagtaggaaacactacatcactccataaagtaggaaacactacacccggtcgagctcggtacctttaagaccaatgacttacaaggcagctgtagatcttagccactttttaaaagaaaaggggggactggaagggctaattcactcccaacgaagacaagatctgctttttgcttgtactgggtctctctggttagaccagatctgagcctgggagctctctggctaactagggaacccactgcttaagcctcaataaagcttgccttgagtgcttcaagtagtgtgtgcccgtctgttgtgtgactctggtaactagagatccctcagacccttttagtcagtgtggaaaatctctagca
【0234】
LV.ET.AGXT-RHEAM.142-3pTマップ。LV.ET.AGXT-RHEAM.142-3pTコンストラクト。前述の種々のエレメントを
図12に示す。
【0235】
AGXT-RHEAM。アミノ酸配列。配列番号52
MASHKLLVTPPKALLKPLSIPNRLLLGPGPSNLPPRIMAAGGLQMIGHMSKEMYQIMDEIKEGIQYVFQTRNPLTLVISGSGHCALEAALVNVLEPGDSFLVGANGIWGQRAADIGERIGARVHPMTKDPGGHYTLQEVEEGLAQHKPVLLFLTHGESSTGVLQPLDGFGELCHRYKCLLLVDSVASLGGTPLYMDRQGIDILYSGSQKALNAPPGTSLISFSDKAKKKMYSRKTKPFSFYLDIKWLANFWGCDDQPRMYHHTIPVISLYSLRESLALIAEQGLENSWRQHREAAAYLHGRLQALGLQLFVKDPALRLPTVTTVAVPAGYDWRDIVSYVMDHFDIEIMGGLGPSTGKVLRIGLLGCNATRENVDRVTEALRAALQHCPKKKL*
【0236】
1.2 LV生産
実験室グレードのVSV.G偽型第3世代SIN LVを、HEK293T細胞へのリン酸カルシウム一過性トランスフェクションにより作製した。1000万個のHEK293T細胞を150cm2の細胞培養皿当たりに播種し、24時間後に、LVゲノム転写プラスミド(LV.ET.AGXT-RHEAM.142-3pT又はLV.ET.eGFP.142-3pT)並びにパッケージングプラスミドpMDLg/pRRE、pRSV.Rev、及びpMD2.VSV.Gの混合物を含む溶液で細胞をトランスフェクションした。トランスフェクションの6時間後に培地を交換し、2日後に上清を採取した。通常、2回目の採取は、1回目の採取の24時間後に実施した。採取した上清を濾過(0.22μm PES)により清澄化し、20000gにて16℃で120分間、遠心分離により濃縮した。LVペレットを適切な量の塩化ナトリウム0.9%に再懸濁させ、-80℃で保存した。
【0237】
1.3 LV用量設定
LV.ET.AGXT-RHEAM.142-3pT用量設定は、この戦略における標的組織の特異性のために、肝細胞株であるHepG2において実施した。LV用量設定のために、2×105細胞を24ウェルプレートに播種した。播種の24時間後、培養培地中のLVの段階希釈液で細胞を形質導入し、0日目の細胞数を決定した。形質導入の5日後に細胞を採取し、製造業者の使用説明書に従ってNucleoSpin(商標)組織キット(Macherey Nagel(商標))を使用してゲノムDNA(gDNA)を抽出した。
【0238】
形質導入細胞に組み込まれたレンチウイルスベクターゲノムの数(VCN)をqPCRによって決定した。レンチウイルスベクターゲノムのコピーを分析するために、本発明者らは、レンチウイルスベクターのΨ配列に対して設計されたプライマー(配列番号31 Fw:5’ CAGGACTCGGCTTGCTGAAG 3’、配列番号32 Rv:5’ TCCCCCGCTTAATACTGACG 3’)及びプローブ(配列番号33 5’-CGCACGGCAAGAGGCGAGG-3’)(Taqman(商標)、Thermo Fisher Scientific)を使用した。内因性DNAの量を決定するために、本発明者らは、ヒトアルブミン遺伝子に対するプライマー(配列番号34 Fw:5’ GCTGTCATCTCTTGTGGGCTG 3’、配列番号35 Rv:5’ ACTCATGGGAGCTGCTGGTTC 3’)及びプローブ(配列番号36 5’ CCTGTCATGCCCACACAAATCTCTCC 3’)(Taqman(商標)、Thermo Fisher Scientific)を使用した。また、本発明者らは、標準曲線を使用して、試料当たりのΨLV特異的配列のコピー数及び二倍体ゲノム数を決定し、これにより、細胞当たりのLVコピー数(VCN=Ψコピー数/二倍体ゲノム数)を計算することが可能となる。最後に、このパラメータに基づいて、本発明者らは、1ミリリットル当たりの形質導入単位数として定義されるLVタイトルを、以下の式:
タイトル(TU/mL)=0日目の細胞数×二倍体ゲノム当たりのVCN/LV体積(mL)
を用いて計算した。
【0239】
qPCRデータを推定するための標準曲線は、Ψ及びヒトアルブミン配列を含むDNA断片の段階希釈液を使用して作成した。全ての反応は、7500 Fast Real-Time PCR System(Applied Biosystems(商標))で2回繰り返して実施した。
【0240】
LV.ET.eGFP.142-3pT用量設定のために、本発明者らは、上記と同様にHepG2も形質導入した。しかしながら、形質導入後3日目に、GFP発現陽性細胞のパーセンテージをフローサイトメトリーによって分析した。このパラメータは、以下の式:
タイトル(TU/mL)=(0日目の細胞数×蛍光%/100)×(希釈係数/LV体積(ml))
を用いてLVタイトルを計算するために使用した。
【0241】
1.4 実験動物
Agxt1-/-マウス(B6.129SvAgxttm1Ull)は、胚性幹細胞における標的突然変異誘発によって開発された(非特許文献7)。野生型C57BL/6マウスは、Jackson Laboratory(商標)から購入した。
【0242】
1.5 動物の処置
LV.ET.AGXT-RHEAM.142-3pT又はLV.ET.GFP.142-3pTを、成体雄マウス(12週齢~14週齢)に尾静脈注射により投与した。Agxt1-/-マウスで実施した実験によれば、マウスに単回用量のLV.ET.AGXT-RHEAM.142-3pT(2.5×108TU/マウス、5×108TU/マウス、1×109TU/マウス)又はLV.ET.eGFP.142-3pT(1.4×108TU/マウス、5×108TU/マウス)を投与した。LVを200μl/マウスの総量で注射した。野生型C57BL/6マウスに単回用量のLV.ET.eGFP.142-3pT(1×108TU/マウス、2.5×108TU/マウス)を投与した。LVを200μl/マウスの総量で注射した。
【0243】
LV注射の3週間後、Agxt1-/-マウスにエチレングリコール負荷試験を行った。このマウスモデルにおいて原発性高シュウ酸尿症1型の臨床徴候を発現するには、シュウ酸塩の過負荷が必要であることが報告されている。このため、0.5%のエチレングリコール(Ethylene glycol Reagent Plus(商標)、Sigma-Aldrich、REF 102466)(グリオキシル酸代謝の前駆体)を飲料水において7日間投与した。エチレングリコール負荷試験中、マウスを代謝ケージに隔離し、24時間尿を採取した。さらに、治療全体にわたって動物の体重をモニターした。
【0244】
Agxt1-/-マウスの場合はエチレングリコール負荷試験の開始の7日後、又は野生型C57BL/6マウスの場合はLV注射の4週間後に、マウスを屠殺した。
【0245】
剖検のために、マウスをケタミン(2.5mg/マウス20g)+メデトミジン(0.2mg/マウス20g)で麻酔した。意識を失った時点で、マウスを横隔膜破壊により屠殺し、したがって、以下の分析を容易にするために、20mlのPBS(1×)を注入して、組織から血液を除去した。屠殺した動物において、種々の組織を採取した(肝臓、脾臓、肺、骨髄、リンパ節、胸腺、脳、睾丸、膵臓、及び腎臓)。
【0246】
Agxt1-/-マウスが関与した全ての動物の処置は、パンプローナのCIMA(Centro de Investigacion Medica Aplicada)にて実施された。全ての実験の処置は、欧州理事会ガイドラインに従って、ナバラ大学の倫理委員会及びナバラ公衆衛生研究所によって承認された。動物モデルを使用した全ての実験は、関連する全ての倫理規定に適合していた。C57BL/6マウスが関与した全ての動物の処置は、マドリードのCIEMAT(Centro de Investigaciones Energeticas y Medioambientales y Tecnologicas)にて実施された。全ての実験の処置は、Direccion General de Medio Ambiente of Comunidad de MadridによってPROEX 165-18において承認された。
【0247】
1.6 LV注射マウスにおけるVCNの決定
動物の屠殺後、種々の組織を採取し(肝臓、脾臓、肺、骨髄、リンパ節、胸腺、脳、睾丸、膵臓、及び腎臓)、-80℃で保存した。これらの組織に組み込まれたLVゲノムの決定のために、製造業者の使用説明書に従ってNucleoSpin(商標)組織キット(Macherey Nagel)でゲノムDNAを抽出した。
【0248】
注射マウス組織における組み込まれたレンチウイルスベクターゲノムの数(VCN)をqPCRによって決定した。レンチウイルスベクターゲノムの数を分析するために、本発明者らは、レンチウイルスベクターのΨ配列に対して設計されたプライマー(配列番号37 Fw:5’ CAGGACTCGGCTTGCTGAAG 3’、配列番号38 Rv:5’ TCCCCCGCTTAATACTGACG 3’)及びプローブ(配列番号39 5’-CGCACGGCAAGAGGCGAGG-3’)(Taqman(商標)、Thermo Fisher Scientific)を使用した。内因性DNAの量を決定するために、本発明者らは、マウスタイチン遺伝子に対するプライマー(配列番号40 Fw:5’ AAAACGAGCAGTGACGTGAGC 3’、配列番号41 Rv:5’ TTCAGTCATGCTGCTAGCGC 3’)及びプローブ(配列番号42 5’-TGCACGGAAGCGTCTCGTCTCAGTC-3’)を使用した。試料当たりのLVコピー数及び二倍体ゲノム数を決定したら、VCNを計算した(VCN=Ψコピー数/二倍体ゲノム数)。
【0249】
標準曲線は、Ψ及びタイチン配列を含むDNA断片の段階希釈液を使用して作成した。全ての反応は、7500 Fast Real-Time PCR System(Applied Biosystems(商標))で2回繰り返して実施した。
【0250】
1.7 AGXT発現の決定
注射Agxt1-/-マウスにおける治療用レンチウイルスベクターの機能性を分析するために、本発明者らは、これらのマウスの肝臓における導入遺伝子発現を決定した。このパラメータを特定するために、肝臓からRNAをトリゾールプロトコルによって抽出した。要約すると、肝臓断片をトリゾール中でホモジナイズし、その後クロロホルムを添加して水相を分離した。RNAをイソプロパノール及びグリコーゲンで沈殿させ、エタノール70%で洗浄し、最後にヌクレアーゼフリー水に再懸濁させた。RNA試料中にゲノムDNAが含まれていないことを保証するために、製造業者の使用説明書に従ってDNase Max(商標)キット(Qiagen)を使用してDNaseで試料を消化した。RNA試料を-80℃で維持した。
【0251】
その後、RT-PCR技術を実施し、製造業者の使用説明書に従ってRETROscript(商標)キット(Ambion(米国))によってRNA試料からcDNAを合成した。
【0252】
導入遺伝子発現はqPCRによって決定した。本発明者らは、AGXT-RHEAM(配列番号43 Rv:5’ GTCTTGCGGGAGTACATCTT 3’、配列番号44 Fw:5’ CAAGGCATCGACATCCTGTA 3’)並びに2つのハウスキーピング遺伝子であるマウスTbp(配列番号45 Rv:5’ GATGGGAATTCCAGGAGTCA 3’、配列番号46 Fw:5’ GGGAGAATCATGGACCAGA 3’)及びマウスActb(配列番号47 Rv:5’ CTA AGG CCA ACC GTG AAA AG 3’、配列番号48 Fw:5’ ACC AGA GGC ATA CAG GGA CA 3’)に対するプライマーを設計した。全ての反応は、Fast Real-Time PCR System(Applied Biosystems(商標))で2回繰り返して実施した。導入遺伝子の相対発現の定量は、2つのハウスキーピング遺伝子であるマウスTbp及びマウスβ-アクチンを別々に参照したΔΔCt分析(Schefe et al., 2006)によって実施した。
【0253】
本発明者らはまた、非注射C57BL/6マウスの肝臓におけるマウスAgxtの生理的発現を分析した。非注射野生型マウスの肝臓試料からRNAを抽出し、上記で説明したようにRT-PCRを実施した。遺伝子発現を分析するために、マウスAgxt遺伝子に対するプライマーを設計した(配列番号49 Rv:5’ GACAAAGCCAGTCTCCTTCTAC 3’、配列番号50 Fw:5’ GTGACAGGTGTGGTATGATGAA 3’)。発現分析のために、マウスTbp及びマウスActbもまた、RT-qPCRによって測定した。全ての反応は、Fast Real-Time PCR System(Applied Biosystems(商標))で2回繰り返して実施した。導入遺伝子の相対発現の定量は、2つのハウスキーピング遺伝子であるマウスTbp及びマウスActbを別々に参照したΔΔCt分析(Schefe et al., 2006)によって実施した。
【0254】
1.8 免疫染色による形質導入細胞のパーセンテージの決定
標的組織における形質導入細胞のパーセンテージを分析するために、本発明者らは、免疫染色アッセイを実施して、LV.ET.eGFP.142-3pT注射マウスの肝臓におけるeGFP陽性細胞を検出した。
【0255】
パラフィン切片からの試料をキシレン中でインキュベートし、エタノール希釈を減少させることによって脱パラフィンした。その後、試料をブロッキング溶液(PBS(1×)中10%のロバ血清)中で1時間、及び一晩、ブロッキング溶液中のヤギ-αeGFP(ab6673 abcam(商標))1:100及びウサギ-αmsALB(AHP1478)1:500と共にインキュベートした。翌日、試料をブロッキング溶液中で二次抗体(ロバ-αヤギ AF(商標)488(A11055 invitrogen(商標))、ロバ-αウサギ AF(商標)488(A21206 invitrogen(商標))、ロバ-αヤギ AF(商標)594(A11058 invitrogen(商標)))1:1000及びDAPI 1:1000と共に1時間インキュベートした。続いて、試料をMowiol(商標)でマウントし、Zeiss AxioImager顕微鏡で可視化した。各試料の画像を取得した。
【0256】
肝臓免疫染色試料におけるeGFP陽性細胞の決定は、QuPath(商標)ソフトウェアによって実施した。各画像における肝細胞の合計に対するeGFP発現細胞のパーセンテージを決定した。試料当たり少なくとも10の異なる視野を分析した(400倍の倍率)。
【0257】
1.9 尿シュウ酸塩の決定
マウスから24時間尿を採取して、この期間中に生物体から除去されたシュウ酸塩の総量を測定した。個々の24時間の尿を50μlの5N HCl中に採取し、その量を測定した。尿試料を活性炭で清澄化し、製造業者の使用説明書に従ってシュウ酸塩キット(Trinity Biotech、REF 591-D)を使用してシュウ酸塩酸化による酵素的定量によってシュウ酸塩を測定した。各試料中のシュウ酸塩の濃度(μmol)を決定するために、既知の濃度のシュウ酸塩の参照曲線を作成した(シュウ酸塩標準0.5mmol/l REF 591-3 Trinity Biotech)。最後に、シュウ酸塩濃度及び尿量を使用してシュウ酸塩の定量(μmol/24時間)を計算した。
【0258】
1.10 腎臓損傷の決定:腎臓損傷スコア
動物の屠殺後、腎臓をホルマリンで固定し、パラフィンに包埋した。次に、5μmの切片を得て、ヘマトキシリン-エオシンで染色した。生じた損傷を決定するために、本発明者らは、各試料の段階を、観察された特徴に従って4つの異なる段階に分類した「腎臓損傷スコア」を開発した。
0:損傷なし
1:構造は正常だが、拡張した管等の幾つかの損傷徴候がある。
2:構造が部分的に影響を受け、拡張した管の存在が増加する。
3:組織構造が大きな影響を受け、腎石灰化症の段階を示すシュウ酸カルシウム結晶の存在が観察できる。
【0259】
1.11 形質導入促進剤:シクロスポリンHのin vitro試験
開発したレンチウイルスベクターによる治療後のin vivo形質導入有効性を増加させるために、本発明者らは、in vitro形質導入プロトコル中の形質導入促進剤であるシクロスポリンH(CsH)の効果を試験した。CsHの2つの異なるレジメンを試験した。標的組織起源の重要な関連性のため、肝細胞株であるHepG2細胞を使用した。
【0260】
第1のCsHレジメンのために、2×105個の細胞を24ウェルプレートに播種した。1日後、細胞を、0.3のMOIでのLV.ET.eGFP.142-3pT及びCsHを含む培養培地溶液で形質導入した。異なるCsH濃度を試験した(4μM、8μM、及び16μM)。形質導入の3日後に、eGFP陽性細胞のパーセンテージをフローサイトメトリーによって分析した。全ての条件を3回の実験反復として実施した。
【0261】
第2のCsHレジメンのために、2×105個の細胞を24ウェルプレートに播種した。1日後、培養培地を交換し、細胞を16μMのCsHを追加した培養培地でプレインキュベートした。16時間後、細胞を、0.3のMOIでのLV.ET.eGFP.142-3pT及び16μMのCsHを含む溶液で形質導入した。形質導入の3日後に、eGFP陽性細胞のパーセンテージをフローサイトメトリーによって分析した。全ての条件を3回の実験反復として実施した。
【0262】
1.12 統計分析
群間の有意差は、ガウス分布を使用せずに2つの独立群を比較するために使用されるノンパラメトリック検定であるマン・ホイットニー検定によって決定した。分析はGraphpad Prism(商標)ソフトウェアで実施した。p<0.05の場合に有意な値とみなした。
【0263】
1.13 形質導入促進剤:デキサメタゾンのin vivo試験
本発明のレンチウイルスベクターの形質導入有効性を高めるために、本発明者らは、レンチウイルスベクター投与と自然免疫応答の抑制剤であるデキサメタゾンとの組み合わせを試験した。分析はC57BL/6雄成体マウスで実施した。
【0264】
C57BL/6マウスに単回用量のLV.ET.eGFP.142-3pT(5×108TU/マウス)を尾静脈注射により投与した。さらに、マウスを5mg/体重1kgのデキサメタゾン(Fortecortin(商標))で治療し、レンチウイルスベクター注射の12時間前及び2時間前、並びに4時間後の3回の逐次的投与で腹腔内注射した。レンチウイルスベクターのみを注射した対照群も実験に含めた。
【0265】
4週間後にマウスを屠殺し、形質導入有効性分析(二倍体ゲノム当たりのレンチウイルスベクターの組込み及び肝臓におけるeGFP陽性細胞のパーセンテージ)を実施した。
【0266】
実施例2:レンチウイルスベクターは、静脈内注射後、C57BL/6マウス及びAgxt1
-/-マウスモデルにおいて肝臓を効率的に形質導入する
最初に、開発した遺伝子療法ツールの実現可能性を研究し、形質導入パーセンテージ及び生体内分布分析を実施するための概念実証として、本発明者らは、成体C57BL/6雄マウスに単回用量のLV.ET.GFP.142-3pTを注射したin vivo実験を実施した(
図1a、
図2a)。本発明者らは、2つの異なる用量(1×10
8TU/マウス、2.5×10
8TU/マウス)を試験した。本発明者らは、1×10
8TU/マウスの用量で注射されたC57BL/6マウスにおいて、二倍体ゲノム当たり0.55(0.34~0.56)のレンチウイルスベクターコピーを観察したが、これに対して、2.5×10
8TU/マウスの用量で注射されたC57BL/6マウスにおいて、二倍体ゲノム当たり1.03(0.94~1.56)のレンチウイルスベクターコピーが得られた(
図3)。免疫染色分析により、これは低用量及び高用量でそれぞれ1.751%(1.13%~5.55%)のeGFP陽性肝細胞及び12.92%(10.72%~13.81%)のeGFP陽性肝細胞に対応することが明らかである(
図5)。これらのマウスの代表的な画像は、
図5(A~C、F~H)において観察することができる。
【0267】
次に、レンチウイルスベクターLV.ET.GFP.142-3pTのin vivo形質導入効率を更に特徴付け、同じレンチウイルスベクターのin vitroの形質導入効率と比較するために、HepG2細胞を異なる感染多重度(MOI)でのLV.ET.eGFP.142-3pTで形質導入した。形質導入の3日後に、eGFP陽性細胞のパーセンテージをフローサイトメトリーによって決定した。約1のMOIを使用すると、50%の形質導入パーセンテージが達成されたが、より高いMOIではin vitroで100%の形質導入が達成された。in vivo形質導入有効性の決定のために、成体C57BL/6(
図13、黒丸)又はAgxt1
-/-マウス(
図13、白丸)に異なる用量(1×10
8TU/マウス、1.4×10
8TU/マウス、2×10
8TU/マウス及び5×10
8TU/マウス)にてLV.ET.eGFP.142-3pTを静脈内注射した。対応するMOIは、以前に記載されているように、これらのマウスの肝臓における肝細胞の推定数に従ってのみ計算した(Park et al., 2000、Schmitt et al., 2010)。したがって、マウスに以下のMOI:0.8、1.1、2、及び4で注射した。形質導入肝細胞のパーセンテージは、4週間後に肝臓の組織試料において決定した。
図13に示した結果は、このレンチウイルスベクターをin vivoで使用した場合、in vitro実験と比較して、その形質導入効率が大幅に低下することを示している。
【0268】
したがって、原発性高シュウ酸尿症1型を治療するための遺伝子療法戦略としての治療用レンチウイルスベクターのin vivo投与の実現可能性を試験するために、成体雄Agxt1
-/-マウスに単回用量のLV.ET.AGXT-RHEAM.142-3pTレンチウイルスベクターを静脈内注射した(
図1B)。3つの異なるレンチウイルスベクター用量(2.5×10
8TU/マウス、5×10
8TU/マウス、1×10
9TU/マウス)を試験した。注射の3週間後、マウスに7日間エチレングリコール負荷試験を行い(
図2B)、その後屠殺した。
【0269】
肝臓に組み込まれたゲノムレンチウイルスベクターのコピー数を屠殺時に決定した。肝臓形質導入に用量関連の有効性が認められた。3つの異なる群で達成された肝臓VCNは、2.5×10
8TU/マウスを投与したAgxt1
-/-マウスで0.615(0.39~1.46)、5×10
8TU/マウスを投与したAgxt1
-/-マウスで0.765(0.45~1.19)、10×10
8TU/マウスを投与したAgxt1
-/-マウスで1.165(0.85~0.32)であった(
図3)。本発明者らはまた、非注射マウスでこのパラメータを分析したが、予想通り、これらの動物でレンチウイルスベクターゲノムのいずれのコピーも検出されなかった。
【0270】
対照群として、本発明者らはまた、Agxt1
-/-マウスにレポーターレンチウイルスベクターを注射した。2つの異なるLV用量を試験した(1.4×10
8TU/マウス、5×10
8TU/マウス)。本発明者らはまた、用量関連の肝臓の形質導入有効性を観察した。低用量注射マウスでは、0.11(0.09~0.49)の肝臓のVCNが観察され、一方で、高用量では、0.84(0.73~1.58)の肝臓VCNが観察された(
図3)。さらに、レポーターLV形質導入有効性は、Agxt1
-/-マウスにおいて治療用レンチウイルスベクターで達成された有効性と同等であった。
【0271】
レンチウイルスベクター注射後に達成された形質導入細胞のパーセンテージを特定することを意図して、本発明者らはまた、LV.ET.eGFP.142-3pT Agxt1
-/-注射マウスの肝臓切片における陽性細胞のパーセンテージを分析した(
図5)。1.4×10
8TU/マウスを投与したAgxt1
-/-マウスでは、1.777%(0.399%~4.572%)のeGFP陽性肝細胞が観察されたが、5×10
8TU/マウスを投与したAgxt1
-/-マウスでは、5.5059%(2.109%~8.754%)のeGFP陽性肝細胞が観察された。これらのマウスの代表的な画像を
図5(D、E)に示す。レポーターレンチウイルスベクター及び治療用レンチウイルスベクターは同様に機能すると思われるため、5×10
8TU/マウスの治療用レンチウイルスベクターを投与したAgxt1
-/-マウスでは、同用量のレポーターレンチウイルスベクターを投与したAgxt1
-/-マウスで観察されたものと同様の形質導入パーセンテージが達成されたことが予想された。
【0272】
Agxt1-/-と野生型C57BL/6との注射マウス間の形質導入有効性に関しての差は、マウスの遺伝的背景又はLVラボグレードバッチのタイトル決定の変動性に起因する可能性がある。
【0273】
実施例3:治療用レンチウイルスベクターは、治療したAgxt1-/-マウス肝臓において効率的に発現する
本発明者らは、治療用レンチウイルスベクターAgxt1-/-注射マウスの標的組織における治療用レンチウイルスベクターの存在を確認したが、このコンストラクトが効率的に発現しているかどうかを試験したいと考えた。本発明者らは、治療したAgxt1-/-マウス肝臓における導入遺伝子発現をRT-qPCRによって分析した。参照として、2つの異なるハウスキーピング遺伝子をこの分析に使用して(msTbp及びmsActb)、Agxt1-/-マウスにおけるin vivo遺伝子療法戦略後のレンチウイルスベクター組込みによって誘導されたAGXT発現と比較して、C57BL/6野生型マウスにおける生理的マウスAgxt1発現の間の差を適切に決定した。
【0274】
2.5×10
8TU/マウスの用量を投与した治療用レンチウイルス注射マウスは、msTbp発現を参照した10.88%(5.62%~16.79%)のAGXT発現、及びmsActbを参照した0.1041%(0.06007%~0.2452%)のAGXT発現を示した。5×10
8TU/マウスの用量を投与したAgxt1
-/-マウスは、msTbpを参照した12.11%(4.38%~14.48%)のAGXT発現、及びmsActbを参照した0.1857%(0.08878%~0.2966%)のAGXT発現となった。1×10
9TU/マウスでのAgxt1
-/-治療用レンチウイルスベクター注射マウスは、msTbpを参照した19.88%(18.52%~28.55%)のAGXT発現、及びmsActbを参照した0.3088%(0.1707%~0.4418%)のAGXT発現を示した(
図4)。したがって、異なる治療用レンチウイルスベクターAgxt1
-/-注射マウス間のAGXT発現レベルの差は、投与した用量と相関した。非注射Agxt1
-/-マウスはAGXT発現を示さなかった。
【0275】
さらに、治療用レンチウイルスベクター注射後に達成されたAGXT発現と生理的マウスAgxt1発現との間の差を研究するために、本発明者らは、野生型C57BL/6マウスにおけるこの発現を分析した。野生型C57BL/6マウスは、Agxt1-/-治療マウスにおいて達成されたものより有意に高い、msTbpを参照した8563(6996~8939)のマウスAgxt1発現、及びmsActbを参照した340.5(141~374.5)のマウスAgxt1発現を示した。
【0276】
実施例4:C57BL/6マウスへのin vivoレンチウイルスベクター注射は、オフターゲット形質導入を減少させる
提案した治療戦略のセキュリティーを決定するために、2つの異なる用量のレポーターレンチウイルスベクターを注射したC57BL/6野生型マウスにおけるレンチウイルスベクター組込みゲノムの数を分析した。注射野生型C57BL/6マウスの異なる組織に組み込まれたLVゲノムコピー数をqPCRによって分析した。レポーターレンチウイルスベクターゲノムの組込みは、標的組織である肝臓、並びにこの戦略で使用した投与経路によって起こる可能性のあった肺、脾臓及び骨髄でのみ観察された。1×10
8TU/マウスを注射したC57BL/6マウスは、肺で2.72(2.33~6.2)、脾臓で0.21(0.14~0.32)、骨髄で0.05(0.04~0.09)のVCNを示した。より高用量の2.5×10
8TU/マウスを注射したマウスは、肺で4.94(0.185~7.79)、脾臓で0.35(0.25~0.55)、骨髄で0.13(0.09~0.18)のVCN値を示した(
図6)。これらの組織において組み込まれたベクターゲノムの存在は観察されたが、レポーター遺伝子発現は免疫蛍光分析では観察されず、オフターゲット形質導入に由来するリスクの低下を示している。さらに、腫瘍形成の徴候は観察されなかった。
【0277】
実施例5:治療用レンチウイルスベクター治療Agxt1-/-マウスは尿シュウ酸塩レベルの低下が見られる
Agxt1-/-マウスモデルにおける原発性高シュウ酸尿症1型病理学的表現型分析では、ヒトの表現型により近い表現型を得るためにエチレングリコール負荷試験が必要である。この負荷試験は、これらのマウスの病理学的表現型を分析するために必要なシュウ酸塩産生における過負荷を生じる。
【0278】
7日間のエチレングリコール負荷試験にわたって、マウスを24時間で隔離し、24時間尿を採取した。尿中のシュウ酸塩濃度を、治療開始前(基礎測定)並びに治療の3日目及び7日目の3つの異なる時点で測定した。
【0279】
病理学的表現型を分析するために、3つの異なる治療用レンチウイルスベクター用量の2.5×108TU/マウス、5×108TU/マウス及び10×108TU/マウスを使用した。さらに、3つの異なる対照群:PBS又はレポーターレンチウイルスベクター(LV.ET.GFP.142-3pT)を注射したAgxt1-/-マウスで構成される2つの陰性対照群、及びC57BL/6野生型マウスで構成される陽性対照群を含めた。全てのマウス群にエチレングリコール負荷試験を行った。
【0280】
治療前、尿シュウ酸塩濃度は全ての条件で低かった。エチレングリコール負荷試験の開始後、シュウ酸塩尿濃度の増加が全ての群で観察された。しかしながら、観察された増加は、治療用レンチウイルスベクターで治療した群よりも未治療Agxt1
-/-群で大きかった。さらに、このマウスモデルの特異的特徴であるこの値に関連するデータの分散は、LV治療Agxt1
-/-マウスよりも未治療Agxt1
-/-マウスで大きかった。5×10
8TU/マウスの治療用レンチウイルスベクターを投与したAgxt1
-/-マウスの尿シュウ酸塩濃度は、未治療Agxt1
-/-マウス群の尿シュウ酸塩濃度よりも3日目及び7日目で有意に低かった。重要なことに、7日目にて、5×10
8TU/マウスでの治療用LV注射Agxt1
-/-マウスと野生型C57BL/6群との間に有意差はなかった(
図7)。
【0281】
実施例6:治療マウスはエチレングリコール負荷試験中に体重が増加する
Agxt1
-/-マウスの病理学的表現型を追跡するためのもう1つの重要なパラメータは、エチレングリコール負荷試験中の動物の体重の増減である。このパラメータに関して、本発明者らは、2つの参照時点での全てのマウスの体重動向を分析し、基礎時点での体重測定値と比較した。本発明者らは、未治療対照群の動物の体重の減少を観察した。この減少は、治療用LV治療群では観察されなかった。さらに、体重増加を達成した(
図8)。エチレングリコール負荷試験の7日後に、5×10
8TU/マウス及び10×10
8TU/マウスでの治療用LV注射Agxt1
-/-マウスの体重増加は、C57BL/6野生型マウスと有意差はなかった。
【0282】
実施例5及び実施例6は、修正細胞で観察されたAGT発現は正常肝細胞で観察されたものよりもはるかに低いが、治療動物で得られた表現型修正は予想外にはるかに高いことを示した。したがって、「治療効果を達成するためには40%超の細胞を修正する必要がある」という仮説を考慮すると、予想外の表現型転換度が見出された。最も効率的な群では、形質導入のパーセンテージは20%以下である(レポーターLVを用いた
図5を参照)。
【0283】
実施例7:治療マウスにおける腎石灰化症の発症の減少が認められる
原発性高シュウ酸尿症1型患者の最も重要な臨床徴候の1つは、腎臓実質におけるシュウ酸カルシウム結晶形成による腎石灰化症の発症である。動物の腎臓における損傷を決定するために、本発明者らは、0は損傷なしを表し、1は腎臓実質における軽度損傷を表し、2は腎石灰化症の明らかな徴候を観察できる段階3に変わる可能性のある中程度の損害を表す腎臓損傷スコアを開発して、エチレングリコール処理によって生じた損傷を分類した。このスコアに関して各動物を分類した。この分類に関しては、治療群と比較して、非治療群で腎石灰化症を発症するマウスのパーセンテージが高かった。5×10
8TU/マウスでの治療用LV注射Agxt1
-/-マウスにおいて、腎石灰化症を発症するいかなるマウスも観察されなかった(
図9A)。
【0284】
このスコアを、腎臓損傷なし又は軽度の腎臓損傷(スコア0~1)、及びエチレングリコール負荷試験により腎臓損傷が進行しているマウスを表す中程度又は重度の腎臓損傷(スコア2~3)に単純化すると、未治療Agxt1
-/-マウスと比較して、腎臓損傷の進行が半数の場合の4分の1で発生し、2.5×10
8TU/マウス又は10×10
8TU/マウスの用量での治療用レンチウイルスベクター注射Agxt1
-/-マウスでも腎臓損傷の進行が発生することが観察された。一方、5×10
8TU/マウスでの治療用レンチウイルスベクター注射Agxt1
-/-マウスでは、治療マウス10匹中1匹のみが腎臓損傷進行を発症し、中間用量(5×10
8)で注射したマウスでは腎石灰化症を発症しなかった(
図9B)。
【0285】
【0286】
実施例8:レンチウイルス形質導入プロトコルにおけるシクロスポリンHの使用は、in vitroでの肝細胞株における形質導入有効性を増加させる
以前の実験で観察されたように効果的でないウイルス用量の量を増加させずに修正肝細胞の量を増加させるために、本発明者らは、LV形質導入を最適化する潜在的形質導入促進剤を探した。数ある中でもシクロスポリンHは、CsHの標的タンパク質であるIFITM3が基礎条件下で高度に発現される造血幹細胞(HSC)におけるin vitro LV形質導入を促進することが記載されている。しかしながら、標的細胞としての肝細胞に関するデータは示唆されておらず、試験もされていなかった。この可能性を試験する目的で、肝HepG2細胞を、2つの異なる投与レジメンのLV.ET.eGFP.142-3pT及び異なるCsH濃度で形質導入した。
【0287】
第1の形質導入プロトコルにおいて、レンチウイルスベクター形質導入プロトコル中に、HepG2細胞を異なる濃度のCsH(4μM、8μM、又は16μM)に曝した。細胞を0.3のレンチウイルスベクターMOIで形質導入した。各条件の3回の技術的反復を実施した。基礎形質導入レベルは36.67%であり、異なるCsH処理試料では、4μM、8μM、及び16μMのCsH条件で37.67%、44.3%、及び51.5%の形質導入パーセンテージが認められ、これは、対照試料のそれぞれ1.03、1.2、及び1.4倍の増加を意味する(
図10)。
【0288】
第2のCsH投与レジメンにおいて、形質導入前にHepG2細胞を16時間のCsH前処理に供し、CsHも含めた。試験したCsH濃度は16μMのみであった。このCsH投与レジメンにおいて、対照試料に対して2.35倍のeGFP陽性細胞の増加が認められた(
図10)。細胞を0.3のLV.ET.eGFP.142-3pTのMOIで形質導入すると、達成された形質導入細胞のパーセンテージは、対照条件で13.2%、CsH処理細胞で31.03%であった。
【0289】
同じMOIでの対照条件間の形質導入レベルで観察された差は、解凍-凍結サイクルによるLVタイトルのおそらくは減少によるものである。2つの異なる投与レジメンは独立した実験であった。
【0290】
したがって、注目すべきことに、CsH標的遺伝子であるIFITM3が肝系統で発現していないと考えられているにもかかわらず、形質導入促進剤としてCsHを添加すると、HepG2等の肝細胞株における開発されたレンチウイルスベクターの形質導入効率(in vitro)が増加する。
【0291】
実施例9:デキサメタゾン処理はin vivoレポーターレンチウイルスベクター治療C57BL/6マウスの肝臓における形質導入有効性を改善する
追加の化合物の使用は、形質導入肝細胞の量を増加させるための有用なツールとなり得、それにより、本発明のレンチウイルスによる治療の治療有効性が改善されるであろう。さらに、レンチウイルスベクターが引き起こす可能性のある1型インターフェロン(IFN-1)によって媒介される免疫応答もまた、形質導入有効性を妨害する可能性があり、したがって、上記免疫応答の抑制剤の使用はまた、レンチウイルスベクターのin vivo投与後の潜在的な併用治療を表す。このため、本発明者らは、C57BL/6マウスを、レンチウイルスベクターと組み合わせたデキサメタゾン(Agudo et al. 2012, Molecular Therapy vol. 20 no. 12, 2257-2267に記載されているプロトコルに従う)で処理する実験を実施した。
【0292】
C57BL/6マウスを尾静脈注射により単回用量のLV.ET.eGFP.142-3pT(5×10
8TU/マウス)で治療した。さらに、マウスに、レンチウイルスベクター注射の12時間前及び2時間前、並びに4時間後の3回の逐次的投与で、5mg/体重1kgのデキサメタゾン(Fortecortin(商標))を腹腔内注射した。併用治療の4週間後にマウスを屠殺した(
図14A)。
【0293】
デキサメタゾン及びレポーターレンチウイルスベクターの組み合わせで治療したマウスでは、二倍体ゲノム当たり0.92(0.38~1.4)の組込みコピーが認められたが、レンチウイルスベクターのみで治療したマウスでは、二倍体ゲノム当たり1.48(1.2~1.76)の組込みコピーが検出され、併用治療で治療したマウスと比較して有意に増加した(
図14B)。しかしながら、免疫染色分析は、併用治療で治療したマウスにおけるeGFP陽性肝細胞のパーセンテージにおいて、レンチウイルスベクターのみで治療したマウスに対して4.08倍の増加を明らかにしている(それぞれ18.11%(6.381%~19.79%)のeGFP陽性肝細胞及び4.434%(2.167%~7.55%)のeGFP陽性肝細胞である)。これらのマウスの代表的な画像は、
図14のD及びEにおいて観察することができる。
【0294】
これらの結果は、Agxt1-/-マウスとの関係において、デキサメタゾン及びLV.ET.AGXT-RHEAM.142-3pTの組み合わせが、形質導入有効性、もっともらしくは、治療効果を改善するであろうことを示唆しており、PH1患者の治療のためのレンチウイルスベクターに基づくin vivo戦略の実現可能性を裏付けるものである。
【配列表】
【国際調査報告】