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特表2024-516657有機組織を測定する光電子装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-16
(54)【発明の名称】有機組織を測定する光電子装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20240409BHJP
   A61B 5/1455 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
A61B10/00 E
A61B5/1455
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566411
(86)(22)【出願日】2022-04-25
(85)【翻訳文提出日】2023-12-06
(86)【国際出願番号】 EP2022060853
(87)【国際公開番号】W WO2022229073
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】20215487
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523405199
【氏名又は名称】オウルン イリオピスト
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100224672
【弁理士】
【氏名又は名称】深田 孝徳
(72)【発明者】
【氏名】ニッシネン ヤン
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038KK01
4C038KL07
4C038KY03
4C038VA04
4C038VC02
(57)【要約】
【課題】光学的に実行される生物学的測定及び/又は生体信号測定を改善することができる、有機組織を測定するための光電子装置及び方法を提供する。
【解決手段】有機組織を測定するための光電子装置を有機組織に取り付ける。半導体光放射源が、組織に向けて赤外線パルスを繰り返し出力する。単一光子アバランシェダイオードのアレイが有機組織に向けられて、有機組織と相互作用した光パルスの光子を検出する。各光パルスの出力後に、タイミングユニットが、時間測定範囲内における各光パルスの光子の飛行時間を決定する。データ処理ユニットが、時間ウィンドウ内における検出数、及び少なくとも1つの時間ウィンドウ内における検出分布の少なくとも一方に基づいて、時間測定範囲よりも短い少なくとも1つの時間ウィンドウ内における組織の生理学的状態を推定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機組織に取り付けられた、前記有機組織を測定するための光電子装置であって、
組織に向けて赤外線パルスを繰り返し出力するように構成された半導体光放射源(102)と、
前記組織に向けられて、前記組織と相互作用した光パルスの光子を検出するように構成された単一光子アバランシェダイオード(400)のアレイ(106)と、
前記光パルスの各々の出力後に、時間測定範囲(150)内における前記光パルスの各々の光子の飛行時間を決定するように構成されたタイミングユニット(108)と、
前記時間測定範囲(510)よりも短い少なくとも1つの時間ウィンドウ(504、506、508,w1~wn)内で前記組織と相互作用した検出光子を使用して、前記組織内の少なくとも1つの固有の深さ範囲における生理学的状態を推定するように構成されたデータ処理ユニット(110)と、
を備え、前記少なくとも1つの時間ウィンドウ(504、506、508,w1~wn)の各々は、前記組織内の固有の深さ範囲(d1~dn)に対応するように構成され、前記推定は、前記少なくとも1つの時間ウィンドウ(504、506、508,w1~wn)の各々の内部における前記検出の数、及び複数の時間ウィンドウ(504、506、508,w1~wn)の前記検出の分布の少なくとも一方に基づく、
ことを特徴とする光電子装置。
【請求項2】
前記単一光子アバランシェダイオード(400)の各々は、前記組織から前記アレイ(106)に向かって散乱する前記光パルスの各々の単一光子を検出するように構成される、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
単一光子アバランシェダイオード(400)の前記アレイ(106)は、主に脱酸素化ヘモグロビンを含む血液によって吸収される少なくとも1つの波長の検出数、及び主に酸素化ヘモグロビンを含む血液によって吸収される少なくとも1つの波長の検出数、の少なくとも一方を検出するように構成され、
前記データ処理ユニット(110)は、
主に酸素化ヘモグロビンを含む血液によって吸収される少なくとも1つの波長の検出数、及び、
主に脱酸素化ヘモグロビンを含む血液によって吸収される少なくとも1つの波長の検出数と、主に酸素化ヘモグロビンを含む血液によって吸収される少なくとも1つの波長の検出数との間の差分、
の少なくとも一方に基づいて、乳酸に関連する生理学的状態を推定するように構成される、
請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記データ処理ユニット(110)は、複数の前記時間ウィンドウ(504、506、508)の各々の内部における前記組織の前記生理学的状態の推定を時間の関数として実行し、前記推定に基づいて心臓の拍動を分離して決定するように構成される、
請求項1又は3に記載の装置。
【請求項5】
前記タイミング回路(108)及び前記データ処理ユニット(110)の少なくとも一方は、前記時間測定範囲及び前記少なくとも1つの時間ウィンドウ(504、506、508)のうちの少なくとも1つが繰り返し調整可能であるようにプログラム可能である、
請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記半導体光放射源(102)及び単一光子アバランシェダイオード(400)の前記アレイ(106)は非ゼロの距離だけ離間する、
請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記半導体光放射源(102)の出力部分(310)及び単一光子アバランシェダイオード(400)の前記アレイ(106)の入力部分(310)は光学的に同軸である、
請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記光電子装置(100)は、身体(12)の筋肉エリアに取り付けられて、無線送信機(610)、前記半導体光放射源(102)、単一光子アバランシェダイオード(400)の前記アレイ(106)及び前記タイミング回路(108)を含む筋肉測定デバイス(600)と、無線受信機(612)及び前記データ処理ユニット(110)を含む単独のウェアラブルデバイス(602)と、を備え、前記無線送信機(610)は、前記無線受信機(612)に検出に関する情報を送信するように構成され、前記無線受信機(612)は、前記身体(12)の前記筋肉エリアにおける前記組織の前記生理学的状態を決定するために、前記情報を前記データ処理ユニット(110)に供給するように構成される、
請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記単独のウェアラブルデバイス(602)は、前記組織の前記生理学的状態を決定するために、さらなる半導体光放射源(102’)と、前記単一光子アバランシェダイオード(400)のさらなるアレイ(106’)とを含む、
請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記データ処理ユニット(110)は、1又は2以上のプロセッサ(900)と、コンピュータプログラムコードを含む1又は2以上のメモリ(902)とを備え、
前記1又は2以上のメモリ(902)及び前記コンピュータプログラムコードは、前記1又は2以上のプロセッサ(900)と共に、前記データ処理ユニット(110)に少なくとも前記組織の前記生理学的状態を推定させるように構成される、
請求項1に記載の装置。
【請求項11】
有機組織を測定する方法であって、
半導体光放射源(102)が、前記組織に向けて赤外線パルスを繰り返し出力するステップ(1200)と、
前記組織に向けられた単一光子アバランシェダイオード(400)のアレイ(106)が、前記組織と相互作用した光パルスの光子を検出するステップ(1202)と、
タイミングユニット(108)が、前記光パルスの各々の出力後に、時間測定範囲内における前記光パルスの各々の光子の飛行時間を決定するステップ(1204)と、
データ処理ユニット(110)が、前記時間測定範囲(510)よりも短い少なくとも1つの時間ウィンドウ(504、506、508,w1~wn)内で前記組織と相互作用した検出光子を使用して、前記組織内の少なくとも1つの固有の深さ範囲における生理学的状態を推定するステップ(1206)と、
を含み、前記少なくとも1つの時間ウィンドウ(504、506、508,w1~wn)の各々は、前記組織内の固有の深さ範囲(d1~dn)に対応し、前記推定は、前記少なくとも1つの時間ウィンドウ(504、506、508,w1~wn)の内部における前記検出の数、及び少なくとも1つの時間ウィンドウ(504、506、508,w1~wn)の内部における前記検出の分布の少なくとも一方に基づく、
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記方法は、
単一光子アバランシェダイオード(400)の前記アレイ(106)が、主に脱酸素化ヘモグロビンを含む血液によって吸収される少なくとも1つの波長の検出数、及び主に酸素化ヘモグロビンを含む血液によって吸収される少なくとも1つの波長の検出数の少なくとも一方を検出するステップと、
前記データ処理ユニット(110)が、
主に酸素化ヘモグロビンを含む血液によって吸収される少なくとも1つの波長の検出数、及び、
主に脱酸素化ヘモグロビンを含む血液によって吸収される少なくとも1つの波長の検出数と、主に酸素化ヘモグロビンを含む血液によって吸収される少なくとも1つの波長の検出数との間の差分、
の少なくとも一方に基づいて、乳酸に関連する生理学的状態を推定するステップと、
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記データ処理ユニット(110)が、複数の前記時間ウィンドウ(504、506、508)の各々の内部における前記組織の前記生理学的状態の推定を時間の関数として実行するステップと、
前記推定に基づいて心臓の拍動を分離して決定するステップと、
を含むことを特徴とする、請求項11又は12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機組織を測定する光電子装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液の酸素含有量変動及び心臓の拍動は、透過型酸素濃度計(transmissive oximeter)を使用して非侵襲的な方法で光学的に測定することができる。指先又は耳たぶに取り付けられた酸素濃度計は、典型的には連続点灯するLED(発光ダイオード)を有するが、赤外光を出力するレーザーを使用することもでき、酸素濃度計はヘモグロビンの酸素化に依存する吸光度を測定する。反射型酸素濃度計(reflectance oximeter)は、胸又は腕などの身体部位の一方の側から別の側に光が進むのではなく、身体部位から散乱及び/又は反射して戻ってきた光を測定する点を除き、基本的に透過型測定と同様に測定を行う。しかしながら、これらの測定は、例えば皮膚、筋肉及び静脈血などについては十分に機能しない。
【0003】
ヘモグロビンの酸素化レベルの濃度値の提供には、短光パルスの送信及び受信、並びにこれらの間の時間長の判定に基づく時間領域近赤外分光法(Time-domain near infrared spectroscopy)も使用されている。しかしながら、これらの装置の開発は完全ではない。従って、光学的に実行される生物学的測定及び/又は生体信号測定の改善が待ち望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、測定の改善を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、独立請求項によって定められる。実施形態は、従属請求項に定められる。
【0006】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態例をほんの一例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】飛行時間測定装置の例を示す図である。
図2】有機組織の測定例を示す図である。
図3】光ケーブルを用いた測定例を示す図である。
図4】同軸測定の例を示す図である。
図5】単一光子アバランシェダイオード(SPAD)のアレイの例を示す図である。
図6】出力光パルス及び受信光パルスの例を示す図である。
図7】外乱から有用信号を分離する例を示す図である。
図8】一部を偏光板で覆ったSPADの例を示す図である。
図9】ヘモグロビン及び乳酸濃度の勾配変化の例を示す図である。
図10】無線送信を通じて通信する単独部分の測定装置の例を示す図である。
図11】無線送信を通じて通信する単独部分の測定装置の例を示す図である。
図12】データ処理ユニットの例を示す図である。
図13】単一回路基板の例を示す図である。
図14】測定方法のフローチャート例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の実施形態は一例にすぎない。本明細書では複数の箇所において「ある(an)」実施形態に言及することがあるが、このような表現は、必ずしもこのような各言及が同じ(単複の)実施形態に対するものであること、又はその特徴が単一の実施形態のみに当てはまることを意味するものではない。異なる実施形態の単一の特徴を組み合わせて他の実施形態を提供することもできる。さらに、「備える(comprising)」及び「含む(including)」という単語は、説明する実施形態を、言及した特徴のみから成るように限定するものとして理解すべきではなく、このような実施形態は、具体的に言及していない特徴/構造を含むこともできる。実施形態の組み合わせが構造的又は論理的矛盾を生じない限り、これらの組み合わせは全て可能であるものとみなされる。
【0009】
なお、図には様々な実施形態を示しているが、これらはいくつかの構造及び/又は機能エンティティのみを示す簡略図である。図示の接続は、論理的又は物理的接続を意味することができる。当業者には、説明する装置が図及び本文に記載する以外の機能及び構造を含むこともできることが明らかである。測定及び/又は制御のために使用するいくつかの機能、構造及びシグナリングの詳細は、実際の発明とは無関係であると理解されたい。従って、ここではこれらについてさらに詳細に説明する必要はない。
【0010】
図1に、光パルスの光子の飛行時間を利用する光電子装置100の例を示す。半導体光放射源(semiconductor optic radiation source)102は、赤外線パルスを繰り返し出力する。ある実施形態では、半導体光放射源102がCMOS(相補型金属酸化膜半導体)放射源を含むことができる。光放射源102は、1又は2以上の光放射半導体レーザー(optically radiating semiconductor lasers)を含むことができる。複数の半導体レーザーはアレイの形態であることができる。
【0011】
ある実施形態では、光パルスの持続時間が、例えば約1ns未満であることができる。ある実施形態では、光パルスの持続時間が、例えば約500ps未満であることができる。
【0012】
光パルスの繰り返しは、規則的なもの又は不規則なものであることができる。繰り返しは、例えば特定の周波数を有することができる。繰り返し率は調整可能であることができる。
【0013】
光パルスは有機組織に向けられ、これについては図2図3及び図4にさらに詳細に示す。ある実施形態では、例えば有機組織が肉片であることができる。有機組織は生体組織であることができる。ある実施形態では、例えば有機組織が動物の組織であることができる。ある実施形態では、例えば有機組織が人間などの哺乳類の組織であることができる。生きている動物の有機組織は、図2及び図3に示すように表面から内部に向かって皮膚、脂肪及び筋肉という3つの基本層を有していると考えることができる。ある実施形態では、人間などの動物が光電子装置100を装着することができる。
【0014】
ある実施形態では、例えば有機組織が木、草又は苔などの植物の組織であることができる。植物の有機組織は、図2図3及び図4に示すように表面から内部に向かって表皮組織、基本組織及び維管束組織という3つの基本層を有していると考えることができる。しかしながら、層の数が異なる場合もあり、或いはこれらの層が本文書に示す測定にとって重要でない場合もある。
【0015】
有機組織は、1つの器官又は複数の器官を含むことができる。単一器官の組織は、同様に機能する同様の細胞の集合体である。血液は、細胞の組織であると共に流動物質でもある。血液の生理学的状態は、ヘモグロビンレベル、ヘモグロビンレベルの傾向、及び/又は酸素化ヘモグロビンと脱酸素化ヘモグロビンとの間の差分を意味することができる。これに加えて又は代えて、血液の生理学的状態は、組織内での時間の関数としての血液量の変動、すなわち心臓の拍動を意味することもできる。これに対応して、植物組織の生理学的状態は、組織内の少なくとも1つの流動物質に依存することができる。
【0016】
図4に例を示す受光器104の単一光子アバランシェダイオード(single-photon avalanche diodes)400のアレイ106も組織に向けられる。単一光子アバランシェダイオード400が有機組織に向けられるということは、単一光子アバランシェダイオード400の視野(field-of-views)402が有機組織に向けられることを意味する。単一光子アバランシェダイオード400は、有機組織と相互作用した光パルスの光子を検出するように構成される。
【0017】
受光器104の単一光子アバランシェダイオード(SPAD)400は、線形モードではなくガイガーモード(Geiger mode)で動作する。従って、単一光子アバランシェダイオード400の出力は、単一光子によってトリガーされる検出又は非検出のみを示す2値である。
【0018】
図2に、放射源102及び受光器104を皮膚又は表皮層に取り付けた測定例を示す。
【0019】
図3には、光送信ケーブル300及び光受信ケーブル302を使用する例を示す。光ケーブル300、302は、1又は2以上の光ファイバを含むことができる。図3では、光ケーブル300、302が隣り合っているが、これらは同軸であることもできる。放射源102のみが光ケーブル300を有し、光受信ケーブル302を含まない受光器104が皮膚又は表皮層に接触することも可能である。或いは、受光器104のみが光受信ケーブル302を有し、光送信ケーブル300を含まない放射源102が皮膚又は表皮層に接触することも可能である。
【0020】
電気回路を含むタイミングユニット108は、光パルスの出力と組織からの光パルスの各光子の受信との間の時間間隔を決定する。本出願における「決定する(determine)」という用語は、その様々な文法形態において、計算、演算、結果を導き出すためのデータ処理、又はデータベースにおける検索などを意味することもできる。この結果、「決定する」は、選択又は選別することなどを意味することもできる。
【0021】
放射源102から送信された光パルスは、図1図4に破線で示す、組織を通る様々な経路に沿って進むことができる。放射源102及び受光器104は、光パルスが組織に向けて送信されると同時に受光器104に基準信号114が送信されて光パルスの出力時点(output moment)が決定されるように接続することができる。光パルスの一部は、光パルスの出力時点を決定するための基準信号114として部分反射ミラー又はプリズムなどを介して受光器104に送信できる一方で、光パルスの大部分は組織に向けて送信される。或いは、放射源102が、出力時点を決定するために別の電気パルス又は光パルスを基準信号114として受光器104に直接送信することもできる。一般に、基準信号114は、飛行時間を決定するために組織に向けて送信される光パルスに対して所定の時間依存性を有する。
【0022】
出力光パルス500の光子の一部は、組織から反射及び/又は散乱して単一光子検出器400のアレイ106にぶつかる。これらの単一光子検出器400のいずれかにおいて、検出器400での高速ブレークダウン(high-speed breakdown)の結果として光子を検出することができる。CMOS単一光子検出器では、検出のタイミングジッタが約10ps~50psのレベルになることがある。さらに、このブレークダウンによって即座に論理レベル信号(例えば、3V)が発生できるので、アナログ増幅器は不要であることができる。受光器104は、SPAD検出器400の2Dアレイ106に加えて、複数の時間-デジタル変換器(TDC)を有することができるタイミングユニット108を含むこともできる。一般に、タイミングユニット108は、受光器104の一部であることも、或いは受光器104の外部に存在することもできる。
【0023】
ある実施形態では、半導体光放射源102が単一光子アバランシェダイオード400のアレイ106を検出のために有効にすることができるが、時間-デジタル変換器を制御するのは単一光子アバランシェダイオード400のアレイ106であることができる。すなわち、時間-デジタル変換器は、単一光子アバランシェダイオード400における光子の検出のみに連動して電気エネルギーを消費し、このため一般にエネルギーが節約される。時間測定範囲510の長さは、光パルスの送信からの遅延を使用して決定することができる。この所定の遅延後に検出が停止される。時間測定範囲510は、時間-デジタル変換器の時間範囲に基づくことができる。
【0024】
従って、時間-デジタル変換は、例えば約10ps~50psの分解能で実現することができ、検出された光子の到着時間を測定して光子の飛行時間の分布を再構成することができる。
【0025】
従って、時間-デジタル変換器の機能は、放出されたレーザーパルス500と、光子を検出した全てのSPAD検出器400における発生したブレークダウンとの間の間隔を測定することである。これらの間隔は、放射源102から有機組織を介して受光器104に至る光子の移動時間である。
【0026】
図5に、出力光パルス500、及び有機組織と相互作用した受信光パルス502の例を示す。x軸は、任意のスケールでの時間Tであり、y軸は、任意のスケールでの検出強度及び検出数である。タイミングユニット108は、各光パルスの出力後の時間測定範囲510内における各光パルスの光子の飛行時間を決定する。光子の飛行時間を測定する許容範囲である時間範囲510は、例えば装置の光学部品、(単複の)毛、その他の延長部(other extension)、及び/又は組織の外面上の(単複の)液体の層又は液滴及び/又は組織の外面自体からの反射が測定から除外されるように、光パルスの出力から一定の不感時間後に開始することができる。各飛行時間は、半導体光放射源102からの光パルスの出力時点と、アレイ106の単一光子アバランシェダイオード400による光パルス502の光子の検出時点とに基づく。
【0027】
組織内での散乱により、受信光パルス502は出力光パルス500よりもはるかに幅が広い。データ処理ユニット110は、時間測定範囲510よりも短い少なくとも1つの時間ウィンドウ504、506、508内での組織の生理学的状態を、各時間ウィンドウ504、506、508内における検出の数、及び少なくとも1つの時間ウィンドウ504、506、508内における検出の分布の少なくとも一方に基づいて推定又は決定する。このようにして、有機組織の層状又は非層状構造にかかわらず有機組織を階層的に測定することができる。ここでの「推定する」という用語は、その様々な文法形態において、少なくとも近似的な結果のための計算、演算、データ処理、又はデータベースにおける検索などを意味することができる。
【0028】
生理学的状態は、有機組織の少なくとも1つの器官又は少なくとも1つの器官の少なくとも一部の機能を規定又は推定することができる。有機組織の様々な変化は、光子の移動時間の変化をもたらすことにより、有機組織と相互作用した光パルス502の形状を組織の変化に依存させることができる。すなわち、光子の移動時間は有機組織の状態の関数である。形状は、一定期間にわたる検出の分布を意味する。これに代えて又は加えて、特定の時点における又は時間ウィンドウ内での検出の数も、有機組織の状態の関数として変動することができる。
【0029】
ある実施形態では、単一光子アバランシェダイオード400の各々が、組織からアレイ106に向かって散乱する各光パルスの単一の光子を検出することができる。
【0030】
ある実施形態では、単一光子アバランシェダイオード400のアレイ106が、主に脱酸素化ヘモグロビンを含む血液によって吸収される少なくとも1つの波長の検出数、及び主に酸素化ヘモグロビンを含む血液によって吸収される少なくとも1つの波長の検出数の少なくとも一方を検出することができる。脱酸素化ヘモグロビンは主に静脈内に存在する。脱酸素化ヘモグロビンは、酸素で飽和していない血液中に存在する。酸素化ヘモグロビンは主に動脈内に存在する。酸素化ヘモグロビンは、酸素で飽和した血液中に存在する。
【0031】
図6に、脱酸素化ヘモグロビン及び酸素化ヘモグロビンが光パルスの形状及び/又は検出数にどのように影響を及ぼすかについての例を示す。y軸は、光パルス500の強度及び受信光パルス502の検出数を任意のスケールで示し、x軸は、時間Tを任意のスケールで示す。ある意味、図6は、受信パルス502をバーとして示すヒストグラムである。時間スケールでは、各バーの幅が、1つの光パルスについて検出をカウントする積分期間を表す。より確実な測定のために、複数の光パルスの総検出数を各バーにつきカウントすることもできる(図6の例ではこれを行っている)。1つのバーの積分期間は、例えば時間-デジタル変換の時間分解能によって決定することができる。従って、例えば積分期間は約10ps~50psであり、すなわち各バーの時間幅であることができる。しかしながら、他の何らかの積分期間を使用することもできる。いずれのバーも、測定を実行する時間ウィンドウとして単独で使用することができる。しかしながら、例えば時間ウィンドウ504、506及び508内のように複数のバーにわたって測定を実行することもできる。
【0032】
時間ウィンドウ504は、皮膚又は表皮組織に関連することができる。時間ウィンドウ506は、脂肪又は基本組織に関連することができる。時間ウィンドウ504及び506よりも飛行時間が長い時間ウィンドウ508は、動物の筋肉に関連するものと考えることができる。筋肉中の血液のヘモグロビンの酸素化度合いが高ければ高いほど、筋肉に関連する時間ウィンドウ508内での検出数は少なくなる。筋肉中の血液の酸素化ヘモグロビンと血液の脱酸素化ヘモグロビンとの間の差分は、受信光パルス502の形状からも分かる。すなわち、受信光パルス502が短ければ短いほど(実線を参照)、血液の酸素化ヘモグロビンがより多く筋肉中に存在する。植物でも対応する変化を観察することができる。
【0033】
光吸収の変化に基づいて組織内の血液量の変動を検出するために、光学式光電脈波(optical photoplethysmogram:PPG)測定を使用することができる。本文書の実施形態では、少なくとも1つの時間ウィンドウにおける光子検出数が決定されるように、各光パルスの光子の飛行時間を利用して血液量の変動を検出することができる。検出数は光電脈波測定の吸収に関連する。ある実施形態では、血液量の変動の測定速度が、毎秒約10回の測定であることができる。ある実施形態では、血液量の変動の測定速度が、毎秒約5回の測定であることができる。
【0034】
組織の一定の深さdkから時間tの関数として受信される光信号Xdk(t)は、数学形式で以下のように表すことができ、
dk(t)=Hdk(t)+Ddk(t)
ここで、Hdk(t)は、強度の時間変動、すなわち深さdkにおける血液量の変動つまり心臓の拍動に起因する検出数であり、Ddk(t)は、時間の関数としての光損失、及び外乱とみなすことができる組織の動きなどの他の時間変動を含む。組織の動きは、例えば身体又は四肢の動きに起因することができる。
【0035】
受信された光信号Xdn(t)は、組織の深さd1からdnまでの時間の関数として数学形式で一群の方程式の形態で表すことができ、
d1(t)=Hd1(t)+Dd1(t)
d2(t)=Hd2(t)+Dd2(t)

dn(t)=Hdn(t)+Ddn(t)
これらは行列として表すことができ、
d(t)=Hd(t)+Dd(t)
ここで、Xd(t)、Hd(t)及びDd(t)は時間依存行列である。
【0036】
深さd1~dnと測定された飛行時間の時間ウィンドウw1~wnとの間には1対1の対応関係が存在する。時間ウィンドウw1~wnも、飛行時間の範囲とみなすことができる。すなわち、データ処理ユニット110は、複数の時間ウィンドウの各々の内部で組織の生理学的状態の推定を時間の関数として実行することができる。異なるレベルの組織は、動き及び接触の変動に異なる形で反応するので、外乱Ddk(t)は、深さの関数、従って時間ウィンドウの関数として変動するが、血液量の変動、すなわち心臓の拍動の各フェーズは、全ての深さ及び時間ウィンドウにおいて同期的に発生する。このため、図7に示すように、データ処理ユニット110は、外乱を相殺又は低減し、外乱下でも推定に基づいて血液量の変動すなわち心臓の拍動を確実に分離して決定することができる。心拍と呼ぶこともできる心臓の拍動は、例えば主成分分析(PCA)、独立成分分析(ICA)、カルマンフィルタ、デジタルフィルタ、ニューラルネットワーク、人工知能、機械学習などを使用して受信信号から分離することができる。当業者は、外乱の相殺、低減及び/又は有用信号の分離自体に精通している。
【0037】
説明したように、データ処理ユニット110は、時間測定範囲510よりも短い少なくとも1つの時間ウィンドウ504、506、508、w1~wnの内部で組織と相互作用した検出光子を使用して、組織内の少なくとも1つの固有の深さ範囲504、506、508、w1~wnにおける生理学的状態を推定する。少なくとも1つの時間ウィンドウ504、506、508、w1~wnの各々は、組織内の固有の深さ範囲d1~dnに対応する。その後、データ処理ユニット110は、少なくとも1つの時間ウィンドウ504、506、508、w1~wnの各々の内部での検出数に基づいて、少なくとも1つの固有の深さ範囲504、506、508、w1~wnにおける生理学的状態を推定することができる。或いは、データ処理ユニット110は、複数の時間ウィンドウ504、506、508、w1~wnの検出分布に基づいて生理学的状態を推定することもできる。当然ながら、これらの組み合わせも可能である。
【0038】
図8に、アレイ106のSPAD400の一部を偏光板800によって覆った例を示す。偏光板800を使用して、組織に関するより多くの情報を提供することができる。
【0039】
この結果、データ処理ユニット110は、乳酸に関連する生理学的状態を推定又は決定することができる。ある実施形態では、データ処理ユニット110が、例えば組織内の乳酸の蓄積を推定又は決定することができる。
【0040】
ある実施形態では、データ処理ユニット110が、主に酸素化ヘモグロビンを含む血液によって吸収される少なくとも1つの波長の検出数に基づいて推定を実行することができる。ある実施形態では、データ処理ユニット110が、主に脱酸素化ヘモグロビンを含む血液によって吸収される少なくとも1つの波長の検出数と、主に酸素化ヘモグロビンを含む血液によって吸収される少なくとも1つの波長の検出数との差分に基づいて推定を実行することができる。ある実施形態では、データ処理ユニット110が、主に酸素化ヘモグロビンを含む血液によって吸収される少なくとも1つの波長の検出数、並びに主に脱酸素化ヘモグロビンを含む血液によって吸収される少なくとも1つの波長の検出数と、主に酸素化ヘモグロビンを含む血液によって吸収される少なくとも1つの波長の検出数との差分に基づいて推定を実行することができる。ある実施形態では、これらの測定のうちの少なくとも1つを筋肉から実行することができる。
【0041】
図9に、安静から最大負荷までの漸増運動中に、筋肉組織内で乳酸濃度、酸素化ヘモグロビン濃度及び脱酸素化ヘモグロビン濃度がどのように推移するかについての傾向例を示す。縦軸は、乳酸濃度及びヘモグロビン濃度を任意のスケールで示す。横軸は、時間を任意のスケールで示す。
【0042】
高強度活動では、働いている筋肉に十分な酸素を送達してアデノシン三リン酸(ATP)分子を有酸素生成するために、アスリートの呼吸数が増加する。トレーニングの負荷が高い場合には、筋肉への酸素送達が遅すぎて、筋肉が必要とする十分な量のエネルギーを生成することができない。この場合、身体のエネルギー生成は、ある閾値において無酸素条件に移行する(図9を参照)。この条件では、エネルギー生成が乳酸発酵に取って代わられる。従って、上述したようなヘモグロビンの酸素化(酸素化ヘモグロビンHbO2及び/又は脱酸素化ヘモグロビンHb)を測定することで、無酸素条件への移行時点及び特定の筋肉の乳酸閾値を決定することができる。
【0043】
漸増運動中には、酸素化ヘモグロビンHbO2が血中乳酸閾値の時点まで緩やかに減少した後に減少する。この減少は急激なものであり、線形的な場合もある。血中の乳酸は乳酸閾値に達するまで緩やかに増加した後に増加する。この増加は急激なものであり、線形的な場合もある。従って、測定された酸素化ヘモグロビンHbO2と乳酸閾値との間には相関関係が存在する。
【0044】
ある実施形態では、血中の酸素化ヘモグロビンHbO2及び/又は脱酸素化ヘモグロビンHbの勾配変化を評価することによって、乳酸生成の転換点、すなわち乳酸閾値への接近を決定することができる。血中の酸素化ヘモグロビンHbO2の減少及び/又は脱酸素化ヘモグロビンHbの増加が所定の時間T0にわたって継続し、及び/又は当初レベルLOに対する酸素化ヘモグロビンHbO2及び/又は脱酸素化ヘモグロビンHbの変化が所定の変化PT以上である時。このようにして、乳酸生成が乳酸閾値にあることが検出される前に身体運動を軽減又は中止することができる。所定の時間T0及び所定の変化PTは適応的であることができる。所定の時間T0及び所定の変化PTは、例えば性別、運動のタイプ、運動の長さ、年齢、体調、以前の身体トレーニングの量などに応じて変動することができる。
【0045】
ある実施形態では、血中の酸素化ヘモグロビンHbO2及び/又は脱酸素化ヘモグロビンHbの勾配の変化がどれほど急激であるかを評価することによって、乳酸生成の転換点、すなわち乳酸閾値を決定することができる。ある実施形態では、異なる時点で勾配が異なる場合、これらの時点間に乳酸閾値が存在する。ある実施形態では、異なる時点での勾配の差分が所定の値PVよりも大きい場合、これらの時点間に乳酸閾値が存在すると考えることができる。このようにして、乳酸生成が乳酸閾値に到達したことが検出された時点で身体運動を軽減又は中止することができる。所定の値PVは、例えば性別、運動のタイプ、運動の長さ、年齢、体調、以前の身体トレーニングの量(例えば、プロ、上級のアマチュア、通常のアマチュア/運動する人、時々運動する人、運動しない人)に応じて変動することができる。
【0046】
酸素化ヘモグロビンHbO2と脱酸素化ヘモグロビンHbとの間の差分ΔHbも、血中の乳酸と同様の転換点及び変動傾向を示す。生理学理論によれば、差分ΔHbの曲線は、分析された酸素解離点(oxygen dissociation point)辺りに変動期間を示す。身体の代謝状態が変化するのはまさにこの変動期間である。差分ΔHbは、酸素化ヘモグロビンHbO2及び脱酸素化ヘモグロビンHbの、これらの間の差分などの関数であることができる。これに代えて又は加えて、差分ΔHbは、酸素化ヘモグロビンHbO2の変化及び脱酸素化ヘモグロビンHbの変化の関数であることもできる。
【0047】
ある実施形態では、データ処理ユニット110が、動物の検査時に脂肪組織であると想定される組織との相互作用後に受信される光パルス502の中間部分のウィンドウ506内における、複数の出力光パルス500の検出の時間変動を決定することができる。次に、データ処理ユニット110は、脂肪組織である組織との相互作用後に受信される光パルス502の中間部分のウィンドウ506内における検出の時間変動に基づいて、光パルス502の中間部分のウィンドウ506における検出よりも長い飛行時間を有する時間ウィンドウ508における検出の時間変動を補正することができる。脂肪組織は、他の組織よりも血液の循環が少なく、皮膚よりも深い時間ウィンドウ508に関連する組織からの外乱を受けにくいため、データ処理ユニット110は、ノイズ及び組織的外乱の影響を決定してこれを低減することができる。
【0048】
これに対応して、植物の基本組織を使用して複数の出力光パルス500の検出の時間変動を決定することもできる。そして、植物の基本組織も、同様に表皮よりも深い時間ウィンドウ508に関連する組織からの外乱を受けにくいため、データ処理ユニット110は、ノイズ及び組織的外乱の影響を決定してこれを低減することができる。
【0049】
ノイズ及び組織的外乱は、動物又は植物の動きによって生じることがある。
【0050】
ある実施形態では、タイミングユニット108及びデータ処理ユニット110の少なくとも一方を、時間測定範囲510及び少なくとも1つの時間ウィンドウ504、506、508のうちの少なくとも1つが繰り返し調整可能であるようにプログラムすることができる。少なくとも1つの時間ウィンドウ504、506、508は、手動又は自動で調整することができる。手動調整は、ユーザインターフェイス112を通じて実行することができる。このようにして、例えば有機組織を深さ方向に走査することができる。
【0051】
ある実施形態では、半導体光放射源102及び単一光子アバランシェダイオード400のアレイ106を皮膚上で非ゼロの距離だけ離間させることができ、この例を図2に示している。
【0052】
図4に例を示す実施形態では、半導体光放射源102の出力部分310及び単一光子アバランシェダイオード400のアレイ104の入力部分310が、皮膚上で光学的に同軸であることができる。この実施形態では、光放射が、動物又は植物に入る時も、動物又は植物から出る時も、皮膚又は表皮の同じエリアにぶつかる。
【0053】
図10及び図11に例を示す実施形態では、光電子装置100が、人間などの動物の身体12の筋肉エリアに取り付けられる装着可能な筋肉測定デバイス600を単独で含むことができる。筋肉エリアは、例えば大腿又は上腕、ふくらはぎ、首であることができる。筋肉測定デバイス600は、無線送信機610と、半導体光放射源102と、単一光子アバランシェダイオード400のアレイ106と、タイミングユニット108とを含むことができる。光電子装置は、無線受信機612及びデータ処理ユニット110を含む単独のウェアラブルデバイス602を含むこともできる。単独のウェアラブルデバイス602は、例えば手首に取り付けることができる。無線送信機610は、検出に関する情報を無線受信機612に送信することができ、無線受信機612は、身体12の筋肉エリアにおける組織の生理学的状態を決定するために、この情報をデータ処理ユニット110に供給することができる。ユーザインターフェイス112は、検査を行うユーザ又は個人又は職員に結果を提示することができる。無線送信機610及び無線受信機612は、無線周波数、Bluetooth(登録商標)又はWLAN(無線ローカルエリアネットワーク)などの電磁放射を使用して送信を実行することができる。
【0054】
ある実施形態では、単独のウェアラブルデバイス602が、手首の組織の生理学的状態を決定するために、さらなる半導体光放射源102’と、単一光子アバランシェダイオード400のさらなるアレイ106’とを含むことができる。さらなる半導体光放射源102’及び単一光子アバランシェダイオード400のさらなるアレイ106’は、それぞれ半導体光放射源102及びアレイ106と同様のものである。
【0055】
図12に例を示す実施形態では、データ処理ユニット110が、1又は2以上のプロセッサ900と、コンピュータプログラムコードを含む1又は2以上のメモリ902とを含むことができる。1又は2以上のメモリ902及びコンピュータプログラムコードは、1又は2以上のプロセッサ900と共に、データ処理ユニット110に少なくとも組織の生理学的状態を推定させることができる。
【0056】
図13に、有機組織を測定する光電子装置の単一回路基板(single circuit board)1000の例を示す。回路基板1000は、半導体光放射源102と、単一光子アバランシェダイオード400のアレイ106と、データ処理ユニット110とを含むことができる。単一回路基板上に電子回路を統合することにより、光電子装置を装着可能にすることができる。ある実施形態では、パッケージング及びケース材料を正しく選択することによって光電子装置の重量を100g以下に保つことができる。ある実施形態では、パッケージング及びケース材料を正しく選択することによって光電子装置の重量を50g以下に保つことができる。ある実施形態では、光電子装置の重量を10g以下に保つことができる。
【0057】
説明した方法では、組織の様々な及び/又は決定された深さから散乱する光子の検出タイミングに基づいてヒストグラムを形成することができる。すなわち、好適な時間ウィンドウを選択又は設定することによって深さを決定することができる。これらのヒストグラム、すなわちデジタル飛行時間から、混在しながらも異なる深さで異なる形で出現して影響を与える複数の生体信号及び/又は意図せぬ組織の動き(外乱)を分離することができる。深さによる違いによって分離が可能である。図14は、測定方法のフローチャートである。ステップ1200において、半導体光放射源102が組織に向けて赤外線パルスを繰り返し出力する。
【0058】
ステップ1202において、組織に向けられた単一光子アバランシェダイオード400のアレイ106が、組織と相互作用した光パルスの光子を検出する。
【0059】
ステップ1204において、タイミングユニット108が、各光パルスの出力後の時間測定範囲510内における各光パルスの光子の飛行時間を決定する。
【0060】
ステップ1206において、データ処理ユニット110が、時間測定範囲510よりも短い少なくとも1つの時間ウィンドウ504、506、508、w1~wn内で組織と相互作用した検出光子を使用して、組織内の少なくとも1つの固有の深さ範囲における生理学的状態を推定し、少なくとも1つの時間ウィンドウ(504、506、508,w1~wn)の各々は、組織内の固有の深さ範囲(d1~dn)に対応し、推定は、少なくとも1つの時間ウィンドウ504、506、508、w1~wn内における検出の数、並びに少なくとも1つの時間ウィンドウ504、506、508、w1~wn内における検出の分布の少なくとも一方に基づく。
【0061】
図13の組織の生理学的状態を推定する方法は、論理回路ソリューション又はコンピュータプログラムとして実装することができる。コンピュータプログラムは、その配布のためにコンピュータプログラム配布手段上に配置することができる。コンピュータプログラム配布手段はデータ処理デバイスによって読み取り可能であり、データ処理デバイスは、コンピュータプログラムコマンドを符号化し、測定を実行し、任意に測定に基づいてプロセスを制御する。
【0062】
コンピュータプログラムは、コントローラによって読み取り可能ないずれかの媒体であることができる配布媒体を使用して配布することができる。配布媒体は、プログラム記憶媒体、メモリ、ソフトウェア配布パッケージ、又は圧縮ソフトウェアパッケージであることができる。いくつかの事例では、近距離無線通信信号、短距離信号及び遠隔通信信号のうちの少なくとも1つを使用して配布を実行することができる。
【0063】
当業者には、技術が進歩するにつれて本発明の概念を様々な方法で実装できることが明らかであろう。本発明及びその実施形態は上述の実施形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で変化することができる。
【符号の説明】
【0064】
100 光電子装置
102 半導体光放射源
104 受光器
106 単一光子アバランシェダイオードのアレイ
108 タイミングユニット
110 データ処理ユニット
112 ユーザインターフェイス
114 基準信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2023-12-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機組織に取り付けられた、前記有機組織を測定するための光電子装置であって、
組織に向けて赤外線パルスを繰り返し出力するように構成された半導体光放射源と、
前記組織に向けられて、前記組織と相互作用した光パルスの光子を検出するように構成された単一光子アバランシェダイオードのアレイと、
前記光パルスの各々の出力後に、時間測定範囲内における前記光パルスの各々の光子の飛行時間を決定するように構成されたタイミングユニットと、
前記時間測定範囲よりも短い少なくとも1つの時間ウィンドウ内で前記組織と相互作用した検出光子を使用して、前記組織内の少なくとも1つの固有の深さ範囲における生理学的状態を推定するように構成されたデータ処理ユニットと、
を備え、前記少なくとも1つの時間ウィンドウの各々は、前記組織内の固有の深さ範囲に対応するように構成され、前記推定は、前記少なくとも1つの時間ウィンドウの各々の内部における前記検出の数、及び複数の時間ウィンドウの前記検出の分布の少なくとも一方に基づく、
ことを特徴とする光電子装置。
【請求項2】
前記単一光子アバランシェダイオードの各々は、前記組織から前記アレイに向かって散乱する前記光パルスの各々の単一光子を検出するように構成される、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
単一光子アバランシェダイオードの前記アレイは、主に脱酸素化ヘモグロビンを含む血液によって吸収される少なくとも1つの波長の検出数、及び主に酸素化ヘモグロビンを含む血液によって吸収される少なくとも1つの波長の検出数、の少なくとも一方を検出するように構成され、
前記データ処理ユニットは、
主に酸素化ヘモグロビンを含む血液によって吸収される少なくとも1つの波長の検出数、及び、
主に脱酸素化ヘモグロビンを含む血液によって吸収される少なくとも1つの波長の検出数と、主に酸素化ヘモグロビンを含む血液によって吸収される少なくとも1つの波長の検出数との間の差分、
の少なくとも一方に基づいて、乳酸に関連する生理学的状態を推定するように構成される、
請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記データ処理ユニットは、複数の前記時間ウィンドウの各々の内部における前記組織の前記生理学的状態の推定を時間の関数として実行し、前記推定に基づいて心臓の拍動を分離して決定するように構成される、
請求項1又は3に記載の装置。
【請求項5】
前記タイミング回路及び前記データ処理ユニットの少なくとも一方は、前記時間測定範囲及び前記少なくとも1つの時間ウィンドウのうちの少なくとも1つが繰り返し調整可能であるようにプログラム可能である、
請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記半導体光放射源及び単一光子アバランシェダイオードの前記アレイは非ゼロの距離だけ離間する、
請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記半導体光放射源の出力部分及び単一光子アバランシェダイオードの前記アレイの入力部分は光学的に同軸である、
請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記光電子装置は、身体の筋肉エリアに取り付けられて、無線送信機、前記半導体光放射源、単一光子アバランシェダイオードの前記アレイ及び前記タイミング回路を含む筋肉測定デバイスと、無線受信機及び前記データ処理ユニットを含む単独のウェアラブルデバイスと、を備え、前記無線送信機は、前記無線受信機に検出に関する情報を送信するように構成され、前記無線受信機は、前記身体の前記筋肉エリアにおける前記組織の前記生理学的状態を決定するために、前記情報を前記データ処理ユニットに供給するように構成される、
請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記単独のウェアラブルデバイスは、前記組織の前記生理学的状態を決定するために、さらなる半導体光放射源と、前記単一光子アバランシェダイオードのさらなるアレイとを含む、
請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記データ処理ユニットは、1又は2以上のプロセッサと、コンピュータプログラムコードを含む1又は2以上のメモリとを備え、
前記1又は2以上のメモリ及び前記コンピュータプログラムコードは、前記1又は2以上のプロセッサと共に、前記データ処理ユニットに少なくとも前記組織の前記生理学的状態を推定させるように構成される、
請求項1に記載の装置。
【請求項11】
有機組織を測定する方法であって、
半導体光放射源が、前記組織に向けて赤外線パルスを繰り返し出力するステップと、
前記組織に向けられた単一光子アバランシェダイオードのアレイが、前記組織と相互作用した光パルスの光子を検出するステップと、
タイミングユニットが、前記光パルスの各々の出力後に、時間測定範囲内における前記光パルスの各々の光子の飛行時間を決定するステップと、
データ処理ユニットが、前記時間測定範囲よりも短い少なくとも1つの時間ウィンドウ内で前記組織と相互作用した検出光子を使用して、前記組織内の少なくとも1つの固有の深さ範囲における生理学的状態を推定するステップと、
を含み、前記少なくとも1つの時間ウィンドウの各々は、前記組織内の固有の深さ範囲に対応し、前記推定は、前記少なくとも1つの時間ウィンドウの内部における前記検出の数、及び少なくとも1つの時間ウィンドウの内部における前記検出の分布の少なくとも一方に基づく、
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記方法は、
単一光子アバランシェダイオードの前記アレイが、主に脱酸素化ヘモグロビンを含む血液によって吸収される少なくとも1つの波長の検出数、及び主に酸素化ヘモグロビンを含む血液によって吸収される少なくとも1つの波長の検出数の少なくとも一方を検出するステップと、
前記データ処理ユニットが、
主に酸素化ヘモグロビンを含む血液によって吸収される少なくとも1つの波長の検出数、及び、
主に脱酸素化ヘモグロビンを含む血液によって吸収される少なくとも1つの波長の検出数と、主に酸素化ヘモグロビンを含む血液によって吸収される少なくとも1つの波長の検出数との間の差分、
の少なくとも一方に基づいて、乳酸に関連する生理学的状態を推定するステップと、
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記データ処理ユニットが、複数の前記時間ウィンドウの各々の内部における前記組織の前記生理学的状態の推定を時間の関数として実行するステップと、
前記推定に基づいて心臓の拍動を分離して決定するステップと、
を含むことを特徴とする、請求項11又は12に記載の方法。
【国際調査報告】