(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-16
(54)【発明の名称】苦味が低減された注射可能麻酔溶液
(51)【国際特許分類】
A61K 31/167 20060101AFI20240409BHJP
A61K 31/245 20060101ALI20240409BHJP
A61K 31/445 20060101ALI20240409BHJP
A61K 31/381 20060101ALI20240409BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240409BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20240409BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240409BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240409BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240409BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20240409BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240409BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240409BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240409BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240409BHJP
A61M 5/28 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
A61K31/167
A61K31/245
A61K31/445
A61K31/381
A61K9/08
A61P25/20
A61K47/22
A61K47/26
A61K47/18
A61K31/137
A61K45/00
A61K47/02
A61K47/12
A61K47/10
A61M5/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566444
(86)(22)【出願日】2022-04-29
(85)【翻訳文提出日】2023-11-30
(86)【国際出願番号】 EP2022061597
(87)【国際公開番号】W WO2022229446
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512080963
【氏名又は名称】セプトドント ウ セプトドント サ ウ スペシャリテ セプトドント
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】リチャード,ジル
(72)【発明者】
【氏名】ピサーニ,エミリア
(72)【発明者】
【氏名】バレストラ,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】アルトー,ローラン
【テーマコード(参考)】
4C066
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C066AA10
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD08
4C066EE14
4C066FF05
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4C076DD22
4C076DD24
4C076DD37
4C076DD38T
4C076DD43
4C076DD49
4C076DD51T
4C076DD59
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4C076DD65
4C076FF12
4C076FF39
4C076FF61
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4C084MA05
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4C206AA01
4C206AA02
4C206FA14
4C206FA37
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4C206MA03
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4C206NA05
4C206NA09
4C206NA10
4C206ZA03
4C206ZA04
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、麻酔薬の分野に関する。特に本発明は、麻酔薬と;任意選択的に、血管収縮薬と;薬学的に許容可能な溶媒と;サッカリンナトリウム、ソルビトールおよびアミノ酸のうちの少なくとも2種の混合物を含むか、またはそれからなり、該アミノ酸がセリン、トレオニンおよびそれらの混合物から選択される、苦味抑制剤とを含む、低減された苦味を有する注射可能麻酔溶液を指す。本発明はまた、前記注射可能麻酔溶液を提供する方法、ならびに歯科医療、口腔手術および/または顎顔面手術におけるその使用に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射可能麻酔溶液であって、
好ましくはリドカイン誘導体;テトラカイン誘導体;キシロカイン誘導体;メピバカイン誘導体;プリロカイン誘導体;ブピバカイン誘導体;エチドカイン誘導体;ロピバカイン誘導体;アルチカイン誘導体;およびそれらの任意の組合わせから選択される、麻酔薬と;
任意選択的に、血管収縮薬と;
薬学的に許容可能な溶媒と;
サッカリンナトリウム、ソルビトールおよびアミノ酸のうちの少なくとも2種の混合物を含むか、またはそれからなり、前記アミノ酸がセリン、トレオニンおよびそれらの混合物から選択される、苦味抑制剤と
を含み、
前記溶液の浸透圧が、250mOsm/L~500mOsm/Lの範囲であり、
前記溶液のpHが、2.5~5.5の範囲である、
注射可能麻酔溶液。
【請求項2】
前記注射可能麻酔溶液が、エピネフリンである血管収縮薬を含み、好ましくは、前記血管収縮薬が、酒石酸水素エピネフリンである、請求項1に記載の注射可能麻酔溶液。
【請求項3】
前記麻酔薬が、リドカインまたはその誘導体であり、好ましくはリドカイン塩酸塩である、請求項1または請求項2に記載の注射可能麻酔溶液。
【請求項4】
前記薬学的に許容可能な溶媒が、水であり、好ましくは滅菌水、精製水および浸透水(osmosed water)から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の注射可能麻酔溶液。
【請求項5】
前記苦味抑制剤が、サッカリンナトリウムおよびセリンからなる、請求項1~4のいずれか1項に記載の注射可能麻酔溶液。
【請求項6】
アミノ酸の量が、前記注射可能麻酔溶液の総重量に対して1重量%~6重量%の範囲、好ましくは2重量%~3重量%の範囲である、請求項1~5のいずれか1項に記載の注射可能麻酔溶液。
【請求項7】
サッカリンナトリウムおよび/またはソルビトール、好ましくはサッカリンナトリウムの量が、前記注射可能麻酔溶液の総重量に対して0.01重量%~5重量%、好ましくは0.01重量%~1重量%の範囲であり、より好ましくは0.09重量%である、請求項1~6のいずれか1項に記載の注射可能麻酔溶液。
【請求項8】
pH調整剤;保存剤化合物;安定化剤;造影剤;およびそれらの混合物からなる群から選択される1種または複数の添加剤を更に含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の注射可能麻酔溶液。
【請求項9】
前記保存剤化合物が、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウムもしくはピロ亜硫酸カリウム、アスコルビン酸、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エデト酸二ナトリウム、水酸化ナトリウム、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、フェノール、メタクレゾール、クロロブタノール、チメロサール、フェニル水銀酸塩、およびそれらの任意の組合わせから選択され;好ましくはピロ亜硫酸カリウム、エデト酸二ナトリウム、およびそれらの任意の組合わせから選択され、好ましくは前記注射可能麻酔溶液が、エデト酸二ナトリウム、水酸化ナトリウムおよびそれらの任意の組合わせから選択される保存剤化合物を含む、請求項8に記載の注射可能麻酔溶液。
【請求項10】
0.01重量%~5重量%、好ましくは2.1重量%の、リドカイン塩酸塩である麻酔薬と;
0.0001重量%~1重量%、好ましくは0.002重量%の、酒石酸水素エピネフリンである血管収縮薬と;
薬学的に許容可能な溶媒と;
0.01重量%~5重量%、好ましくは0.09重量%、3重量%または3.09重量%の、サッカリンナトリウム、ソルビトールおよびそれらの混合物から選択される甘味剤;ならびに
1重量%~6重量%、好ましくは2重量%~3重量%、より好ましくは2重量%、2.4重量%または2.7重量%の、セリン、トレオニンおよびそれらの混合物から選択されるアミノ酸
を含むか、またはそれらからなる苦味抑制剤と
を含み、
前記量が、前記注射可能麻酔溶液の総重量に対するものである、
請求項1~9のいずれか1項に記載の注射可能麻酔溶液。
【請求項11】
好ましくはリドカインまたはその誘導体である、麻酔薬と;
任意選択的に、好ましくは酒石酸水素エピネフリンである、血管収縮薬と;
薬学的に許容可能な溶媒と;
サッカリンナトリウム、ソルビトールおよびアミノ酸のうちの少なくとも2種の混合物を含むか、またはそれからなり、前記アミノ酸がセリン、トレオニンおよびそれらの混合物から選択される、苦味抑制剤と
を混合することを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の注射可能麻酔溶液を製造する方法。
【請求項12】
歯科医療、口腔手術および/または顎顔面手術の際の麻酔に使用するための、請求項1~10のいずれか1項に記載の注射可能麻酔溶液。
【請求項13】
歯科医療、口腔手術および/または顎顔面手術が、歯の根管を充填することである、請求項12に記載の使用のための注射可能麻酔溶液。
【請求項14】
歯科医療、口腔手術および/または顎顔面手術が、歯のクラウン配置および/または歯根抜去(root extractions)である、請求項12に記載の使用のための注射可能麻酔溶液。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか1項に記載の注射可能麻酔溶液を充填されたプレフィルドシリンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、麻酔薬の分野に関する。特に本発明は、局所麻酔薬と、任意選択的に血管収縮薬と、薬学的に許容可能な溶媒と、サッカリンおよび/もしくはソルビトールから選択される甘味剤、ならびに/またはセリンおよび/もしくはトレオニンから選択されるアミノ酸を含む苦味抑制剤とを含む、低減された苦味を有する注射可能麻酔溶液を指す。本発明はまた、注射可能麻酔溶液を製造する方法、ならびに歯科医療、口腔手術および/または顎顔面手術におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
近年、詰め物、根管、クラウン、および抜歯などの歯科処置の数は、顕著に増加した。ほとんどの処置が、患者の高い快適性を保証するために、リドカイン系麻酔薬などの局所麻酔薬を注射する必要がある。
【0003】
麻酔薬の投与の間、患者の抵抗および不適正な注射技術により、注射された容量の一部が、口腔および舌の上に逆流して、患者が局所経口麻酔薬の苦味および嫌な味覚を経験する場合がある。この経験は、患者、特に小児には良好に受け入れられない。その上、患者の口内の苦味は、麻酔の消失後に最大2時間持続する場合がある。
【0004】
したがって、歯科製品の苦味を排除することが、患者の忍容性を部分的に増大させ、歯科処置に対する患者の見方を変え、口腔ケアのための来診をより快適する。
【0005】
歯科製品の味覚をマスクために行われている試みは少ない。経口麻酔薬の苦味を低減するための主な報告された技術は、不溶性ポリマーによるコーティングを提供すること、甘味剤もしくは香味剤を添加すること、イオン交換樹脂を用いること、シクロデキストリンと複合体を形成すること、および/またはプロドラッグを用いることを扱う。これらの技術では、目的は、麻酔薬が味蕾と接触するのを制限または回避することである。
【0006】
しかし、これらの技術の主な欠点は、それらを、米国食品医薬品局(FDA)の厳格な要件および政策により注射可能製剤で実行することができないことである。事実、注射可能製剤の化合物は、例えば適切な浸透圧などの注射剤の要件を遵守しなければならない。しかし今日まで、注射可能製剤中に矯味剤を添加すると、浸透圧の改変、特に過剰な浸透圧を引き起こし、それらを注射に不適合にする。
【0007】
例えば、米国特許出願公開第2020/206351号は、苦味抑制剤としてのデキストロースの存在、およびこの苦味抑制剤の緩衝剤としての乳酸リンゲル液を含むことにより苦味が減弱した局所麻酔溶液を開示する。しかし、米国特許出願公開第2020/206351号の溶液は、本明細書の以後の実施例に示されるとおり、700mOsm/Lを超える浸透圧を呈する。これは、正常な生理学的範囲(約280~310mOsm/L)より過度に高く、約600mOsm/Lである組織内注射に忍容される最高レベルよりもさらに高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、低減された苦味を有しながら注射、特に組織内注射に適した浸透圧を有する注射可能麻酔溶液を提供することが、必要とされている。
【0009】
さらに、注射可能溶液への化合物の添加は、活性剤の化学的安定性を改変してはならない。特に麻酔薬および/または任意選択的に存在する血管収縮薬は、pH感受性活性剤であり得る。したがって、溶液のpHを適切なレベルで制御することが、肝心である。
【0010】
よって、経口注射可能麻酔薬の苦味を低減または排除することは、依然として難題である。したがって、これらの欠点を克服する注射可能麻酔薬を提供することが、依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
概要
本発明は、
- 好ましくはリドカイン誘導体;テトラカイン誘導体;キシロカイン誘導体;メピバカイン誘導体;プリロカイン誘導体;ブピバカイン誘導体;エチドカイン誘導体;ロピバカイン誘導体;アルチカイン誘導体;およびそれらの任意の組合わせから選択される、麻酔薬と;
- 任意選択的に、血管収縮薬と;
- 薬学的に許容可能な溶媒と;
- サッカリンナトリウム、ソルビトールおよびアミノ酸のうちの少なくとも2種の混合物を含むか、またはそれからなり、該アミノ酸がセリン、トレオニンおよびそれらの混合物から選択される、苦味抑制剤と;
を含む、注射可能麻酔溶液であって、
溶液の浸透圧が、250mOsm/L~500mOsm/Lの範囲であり;ならびに
溶液のpHが、2.5~5.5の範囲である、
注射可能麻酔溶液を指す。
【0012】
一実施形態によれば、注射可能麻酔溶液は、エピネフリンである血管収縮薬を含み、好ましくは血管収縮薬は、酒石酸水素エピネフリンである。
【0013】
一実施形態によれば、麻酔薬は、リドカインまたはその誘導体であり、好ましくはリドカイン塩酸塩である。
【0014】
一実施形態によれば、薬学的に許容可能な溶媒は、水であり、好ましくは滅菌水、精製水および浸透水(osmosed water)から選択される。
【0015】
一実施形態によれば、苦味抑制剤は、サッカリンナトリウムおよびセリンからなる。
【0016】
一実施形態によれば、アミノ酸の量は、注射可能麻酔溶液の総重量に対して1重量%~6重量%の範囲、好ましくは2重量%~3重量%の範囲である。
【0017】
一実施形態によれば、サッカリンナトリウムおよび/またはソルビトール、好ましくはサッカリンナトリウムの量は、注射可能麻酔溶液の総重量に対して0.01重量%~5重量%、好ましくは0.01重量%~1重量%の範囲であり、より好ましくは0.09重量%である。
【0018】
一実施形態によれば、本発明の注射可能麻酔溶液はさらに、pH調整剤;保存剤化合物;安定化剤;造影剤;およびそれらの混合物からなる群から選択される1種または複数の添加剤を含む。
【0019】
一実施形態によれば、保存剤化合物は、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウムもしくはピロ亜硫酸カリウム、アスコルビン酸、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、およびエデト酸二ナトリウムなどのその塩(「エデト酸塩」)、水酸化ナトリウム、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、フェノール、メタクレゾール、クロロブタノール、チメロサール、フェニル水銀酸塩、ならびにそれらの任意の組合わせから選択され;好ましくはピロ亜硫酸カリウム、エデト酸二ナトリウム、およびそれらの任意の組合わせから選択され、好ましくはピロ亜硫酸ナトリウムまたはピロ亜硫酸カリウムであり;より好ましくは注射可能麻酔溶液は、エデト酸二ナトリウム、水酸化ナトリウムおよびそれらの任意の組合わせから選択される保存剤化合物を含む。一実施形態によれば、注射可能麻酔溶液は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含まない。
【0020】
一実施形態によれば、注射可能麻酔溶液は、
- 0.01重量%~5重量%、好ましくは2.1重量%の、リドカイン塩酸塩である麻酔薬と;
- 0.0001重量%~1重量%、好ましくは0.002重量%の、酒石酸水素エピネフリンである血管収縮薬と;
- 薬学的に許容可能な溶媒と;
- (i)0.01重量%~5重量%、好ましくは0.09重量%、3重量%または3.09重量%の、サッカリンナトリウム、ソルビトールおよびそれらの混合物から選択される甘味剤と;
(ii)1重量%~6重量%、好ましくは2重量%~3重量%、より好ましくは2重量%、2.4重量%または2.7重量%の、セリン、トレオニンおよびそれらの混合物から選択されるアミノ酸と、
を含むか、またはそれらからなる苦味抑制剤と;
を含み、
前記量は、注射可能麻酔溶液の総重量に対するものである。
【0021】
本発明はまた、本発明の注射可能麻酔溶液を製造する方法であって、
- 好ましくはリドカインまたはその誘導体である、麻酔薬と;
- 任意選択的に、好ましくは酒石酸水素エピネフリンである、血管収縮薬と;
- 薬学的に許容可能な溶媒と;
- サッカリンナトリウム、ソルビトールおよびアミノ酸のうちの少なくとも2種の混合物を含むか、またはそれからなり、該アミノ酸がセリン、トレオニンおよびそれらの混合物から選択される、苦味抑制剤と、
を混合することを含む方法を指す。
【0022】
一実施形態によれば、本発明による注射可能麻酔溶液は、歯科医療、口腔手術および/または顎顔面手術の際の麻酔に使用するためである。
【0023】
一実施形態によれば、歯科医療、口腔手術および/または顎顔面手術は、歯の根管を充填することである。
【0024】
一実施形態によれば、歯科医療、口腔手術および/または顎顔面手術は、歯のクラウン配置および/または歯根抜去(root extractions)である。
【0025】
本発明はまた、本発明の注射可能麻酔溶液を充填されたプレフィルドシリンジも指す。
【0026】
定義
本発明において、以下の用語は、以下の意味を有する。
【0027】
数字の前の「約」は、前記数字の値のプラスまたはマイナス10%、好ましくはプラスまたはマイナス5%、より好ましくはプラスまたはマイナス1%を意味する。
【0028】
「アミノ酸」は、各アミノ酸に特有の塩基性アミノ基(-NH2)、酸性カルボキシル基(-COOH)および有機基(または側鎖)を有する任意の化学化合物を指す。一実施形態によれば、アミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニンおよびトリプトファンなどの非極性アミノ酸;セリン、システイン、トレオニン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミンなどの極性および非荷電アミノ酸;アスパラギン酸およびグルタミン酸などの酸性アミノ酸;ならびにアルギニン、ヒスチジンおよびリジンなどの塩基性アミノ酸から選択される。
【0029】
「麻酔薬(Anesthetic)」または「麻酔薬(aneathetic)」は、患者に投与された時に麻酔を誘導する任意の薬物を指す。一実施形態によれば、用語「麻酔薬(Anesthetic)」または「麻酔薬(aneathetic)」は、患者の感覚および/または意識の一次的喪失を誘導する任意の薬物を指す。一実施形態によれば、麻酔薬は、局所麻酔薬、即ち、患者の身体の限定的領域での感覚の可逆的喪失を引き起こす薬物である。一実施形態によれば、本発明における局所麻酔薬は、患者の1本または複数の歯、下顎および/もしくは上顎、ならびに/または舌の感覚の可逆的喪失を引き起こす薬物である。
【0030】
「重亜硫酸塩」または「亜硫酸水素塩」は、陰イオンHSO3
-を含む任意の化学化合物を指す。「ピロ亜硫酸塩」は、陰イオンS2O5
2-を含む任意の化学化合物を指す。
【0031】
「苦味抑制剤」は、組成物に添加されると、前記苦味抑制剤を含まないその味覚と比較して前記組成物の苦味を低下または回避する、任意の化合物または化合物の会合物を指す。
【0032】
「緩衝剤」は、pHを標的値に調整および維持するために組成物中で用いられる化合物または化合物の混合物を指す。緩衝剤を含む組成物のpHは、特に少量の強酸または強塩基をそれに添加しても、狭い範囲のみで変動し得る。好ましくは緩衝剤は、弱塩基とその共役酸との混合物、またはその逆の混合物である。緩衝剤の例としては、重炭酸ナトリウムのアルカリ性、中性または酸性物質;ハートマン溶液;リンゲル液;乳酸リンゲル液;酢酸リンゲル液;重炭酸リンゲル液;およびコロイド系薬剤が挙げられる。一実施形態において、緩衝剤は、pH調整剤でない。
【0033】
「造影剤」は、イメージングモダリティのコントラスト分解能を改善することにより病態の特徴づけを助ける任意の化学剤を指す。
【0034】
「有効量」は、麻酔効果を提供するのに必要かつ充分な麻酔薬の量を指す。
【0035】
「注射剤」は、針またはカテーテルを有する装置で患者に投与されるのに適した任意の化合物または組成物を指す。一実施形態によれば、「注射剤」は、シリンジで患者に投与されるのに適した溶液を指す。本明細書において、注射可能組成物、即ち、注射されるのに適した組成物は、それを必要とする対象に投与した場合に有害反応、アレルギー反応または他の不都合な反応を生じないようなものでなければならない。特に注射可能組成物は、注射される組織に適合するpHおよび浸透圧を有さなければならない。その上、ヒトへの投与の場合、注射可能組成物は、例えばFDA事務局またはENAなどの規制当局により必要とされる無菌性、発熱性、一般的安全性および純度規準に適合しなければならない。
【0036】
「リドカイン」または「2-(ジエチルアミノ)-N-(2,6-ジメチルフェニル)アセトアミド」は、アミノ-アミドの基に属し、以下の式(I):
【化1】
を有する局所麻酔薬を指す。
【0037】
一実施形態によれば、用語「リドカイン誘導体」は、先に記載されたリドカインの式のバックボーン、または類似のバックボーンを有し、リドカインの置換基と同一または異なる1つまたは複数の化学基によって任意選択的に置換された、任意の化合物を指す。一実施形態によれば、用語「リドカイン誘導体」は、リドカインの式を含む。一実施形態によれば、用語「リドカイン誘導体」は、以下の式(II):
【化2】
(式中、
nは、整数を指し、好ましくはnは、0、1または2であり;
mは、0または1に等しく;
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、およびR
6は、それぞれ独立して、H、アルキル、アルコキシル、フルオロアルキルなどのハロゲンアルキル、またはヒドロキシルを表し、前記基は、アリールによって任意選択的に置換されている)を有する任意の化合物を指す。
【0038】
mが1に等しい場合、窒素原子は、第四級アンモニウムの形態である(したがって、正電荷を有する)。一実施形態によれば、mが1に等しい場合、式(II)で示される化合物は、対イオンの存在下にある。一実施形態によれば、mが0に等しい場合、式(II)の中にR6基は存在しない。一実施形態によれば、mが0であり、nが1である場合、R1およびR5は、メチルであり、R2、R3およびR4は、Hである。一実施形態によれば、mが1であり、nが1である場合、R1およびR5は、メチルであり、R2、R3およびR4は、Hであり、R6は、置換されていないエチル基、ドデシル基、またはフェニル基により置換されたエチル基から選択される。用語「誘導体」は、テトラカイン;キシロカイン;メピバカイン;プリロカイン;ブピバカイン;エチドカイン;ロピバカイン;またはアルチカインなどの他の麻酔薬にも同様に当てはまる。
【0039】
「パラベン」または「パラベン誘導体」は、パラヒドロキシ安息香酸塩の化学構造をバックボーンとして有する化合物のファミリーを指し;前記化学構造は、1つまたは複数のアルキル基により置換されていても、または置換されていなくてもよい。一実施形態によれば、パラベン誘導体は、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベンまたはブチルパラベンであり得る。
【0040】
「pH調整剤」は、pHを標的値に調整するために組成物中で用いられる化合物または化合物の混合物を指す。本明細書においてpH調整剤は、緩衝剤ではなく、即ち、pH調整剤を含むが緩衝剤を含まない組成物のpHは、少量の強酸または強塩基の添加により変動し得る。pH調整剤の例としては、水酸化ナトリウムおよび塩酸が挙げられる。
【0041】
「薬学的に許容可能な塩」は、非毒性であり、単独での、または賦形剤と組み合わせて、塩の化学的分解の結果として形成された有意な不純物または分解産物を有さず、患者に投与可能である投与剤形を作製するのに適している、任意の塩を指す。一実施形態によれば、薬学的に許容可能な塩は、塩酸塩または酒石酸塩、好ましくは酒石酸水素塩であり得る。
【0042】
「保存剤化合物」または「安定化剤」は、組成物の分解を防御するために組成物に添加された任意の化学化合物を指す。
【0043】
「サッカリン」は、1,1-ジオキソ-1,2-ベンゾチアゾール-3-オンおよびその塩をバックボーンとして有する化合物を指す。一実施形態によれば、サッカリンは、サッカリンナトリウムである。
【0044】
「セリン」は、2-アミノ-3-ヒドロキシプロパン酸を指す。
【0045】
「甘味剤」は、甘味を提供する天然および人工物質を指す。甘味剤の例としては、サッカリン(サッカリンナトリウムを含む)およびソルビトールが挙げられる。
【0046】
「トレオニン」は、2-アミノ-3-ヒドロキシブタン酸を指す。
【0047】
「血管収縮薬」は、血管収縮を誘導する任意の薬物を指す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
注射可能麻酔溶液
本発明は、麻酔組成物、好ましくは麻酔液状組成物、より好ましくは麻酔溶液を指す。一実施形態によれば、麻酔溶液は、注射可能麻酔溶液である。一実施形態によれば、注射可能麻酔溶液は、
- 麻酔薬と;
- 任意選択的に、血管収縮薬と;
- 薬学的に許容可能な溶媒と;
- 苦味抑制剤と、
を含むか、またはそれらからなる。
【0049】
一実施形態によれば、注射可能麻酔溶液は、
- 麻酔薬と;
- 血管収縮薬と;
- 薬学的に許容可能な溶媒と;
- 苦味抑制剤と、
を含むか、またはそれらからなる。
【0050】
本発明の注射可能麻酔溶液は、注射される組織に適合するpHおよび浸透圧を有する。
【0051】
麻酔薬
一実施形態によれば、麻酔薬は、局所麻酔薬である。一実施形態によれば、麻酔薬は、注射可能麻酔薬である。一実施形態によれば、麻酔薬は、注射可能局所麻酔薬である。
【0052】
一実施形態によれば、麻酔薬は、リドカイン誘導体;テトラカイン誘導体;キシロカイン誘導体;メピバカイン誘導体;プリロカイン誘導体;ブピバカイン誘導体;エチドカイン誘導体;ロピバカイン誘導体;アルチカイン誘導体;およびそれらの任意の組合わせから選択される。一実施形態によれば、麻酔薬は、リドカインまたはその誘導体である。一実施形態によれば、麻酔薬は、リドカイン塩酸塩である。本発明において、Xが麻酔薬の名称である用語「X誘導体」は、麻酔薬Xそのもの、および前記麻酔薬Xまたは前記麻酔薬の任意の薬学的に許容可能な塩のバックボーン上で作製された任意の化学的置換を含む。
【0053】
一実施形態によれば、麻酔薬は、注射可能麻酔溶液の総重量に対して0.01重量%~10重量%、好ましくは1重量%~5重量%、より好ましくは1重量%~3重量%の範囲の量であり、より好ましくは2重量%または2.1重量%である。一実施形態によれば、麻酔薬は、注射可能麻酔溶液の総重量に対して0.01重量%;0.02重量%;0.03重量%;0.04重量%;0.05重量%;0.06重量%;0.07重量%;0.08重量%;0.09重量%;0.1重量%;0.2重量%;0.3重量%;0.4重量%;0.5重量%;0.6重量%;0.7重量%;0.8重量%;0.9重量%;1重量%;1.1重量%;1.2重量%;1.3重量%;1.4重量%;1.5重量%;1.6重量%;1.7重量%;1.8重量%;1.9重量%;2重量%;2.1重量%;2.2重量%;2.3重量%;2.4重量%;2.5重量%;2.6重量%;2.7重量%;2.8重量%;2.9重量%;3重量%;3.1重量%;3.2重量%;3.3重量%;3.4重量%;3.5重量%;3.6重量%;3.7重量%;3.8重量%;3.9重量%;4重量%;4.1重量%;4.2重量%;4.3重量%;4.4重量%;4.5重量%;4.6重量%;4.7重量%;4.8重量%;4.9重量%または5%の量である。
【0054】
血管収縮薬
一実施形態によれば、血管収縮薬は、アドレナリン;エピネフリン;ノルエピネフリン;フェニレフリン;フェリプレッシン;レボノルデフリンまたはそれらの任意の薬学的に許容可能な塩;およびそれらの任意の組合わせから選択される。一実施形態によれば、血管収縮薬は、カテコールアミン;好ましくはアドレナリン、エピネフリンまたはノルエピネフリン;より好ましくはエピネフリン;より好ましくは酒石酸水素エピネフリンである。
【0055】
一実施形態によれば、血管収縮薬は、注射可能麻酔溶液の総重量に対して0.0001重量%~5重量%、好ましくは0.000wt1%~1重量%の範囲の量であり、より好ましくは0.002重量%の量である。一実施形態によれば、麻酔薬は、注射可能麻酔溶液の総重量に対して0.001重量%;0.002重量%;0.003重量%;0.004重量%;0.005重量%;0.006重量%;0.007重量%;0.008重量%;0.009重量%;0.01重量%;0.02重量%;0.03重量%;0.04重量%;0.05重量%;0.06重量%;0.07重量%;0.08重量%;0.09重量%;0.1重量%;0.2重量%;0.3重量%;0.4重量%;0.5重量%;0.6重量%;0.7重量%;0.8重量%;0.9重量%;または1重量%の量である。
【0056】
薬学的に許容可能な溶媒
一実施形態によれば、薬学的に許容可能な溶媒は、水であり;好ましくは薬学的に許容可能な溶媒は、滅菌水、精製水または浸透水である。
【0057】
一実施形態によれば、注射可能な麻酔溶液中の薬学的に許容可能な溶媒の量は、前記注射可能麻酔溶液の総重量に対して50重量%~98重量%;好ましくは70重量%~97重量%、より好ましくは80重量%~98重量%の範囲であり、より好ましくは95.6重量%である。一実施形態によれば、注射可能な麻酔溶液中の薬学的に許容可能な溶媒の量は、前記注射可能麻酔溶液の総重量に対して95重量%、95.1重量%、95.2重量%、95.3重量%、95.4重量%、95.5重量%、95.6重量%、95.7重量%、95.8重量%、95.9重量%、96重量%、96.1重量%、96.2重量%、96.3重量%、96.4重量%、96.5重量%、96.6重量%、96.7重量%、96.8重量%、96.9重量%、97重量%、97.1重量%、97.2重量%、97.3重量%、97.4重量%、97.5重量%、97.6重量%、97.7重量%、97.8重量%、97.9重量%または98重量%である。
【0058】
苦味抑制剤
一実施形態によれば、苦味抑制剤は、少なくとも1種の甘味剤および/または少なくとも1種のアミノ酸を含む、またはそれからなる。一実施形態によれば、苦味抑制剤は、甘味剤およびアミノ酸からなる。一実施形態によれば、苦味抑制剤は、甘味剤の混合物からなる。
【0059】
一実施形態によれば、甘味剤は、人工甘味剤であり、好ましくはサッカリン、より好ましくはサッカリンナトリウムである。一実施形態によれば、甘味剤は、天然甘味剤、好ましくはソルビトール(CAS50-70-4)である。一実施形態によれば、甘味剤は、サッカリン(サッカリンナトリウムを含む)、ソルビトールおよびそれらの混合物から選択される。一実施形態によれば、甘味剤は、デキストロースではない。
【0060】
一実施形態によれば、アミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニンおよびトリプトファンなどの非極性アミノ酸;セリン、システイン、トレオニン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミンなどの極性および非荷電アミノ酸;アスパラギン酸およびグルタミン酸などの酸性アミノ酸;ならびにアルギニン、ヒスチジンおよびリジンなどの塩基性アミノ酸から選択される。一実施形態によれば、アミノ酸は、セリンおよび/またはトレオニンである。一実施形態によれば、アミノ酸は、セリンである。一実施形態によれば、アミノ酸は、トレオニンである。
【0061】
一実施形態によれば、苦味抑制剤は、サッカリンナトリウム、ならびにグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニンおよびトリプトファン、セリン、システイン、トレオニン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、ヒスチジンおよびリジンから選択されるアミノ酸を含むか、またはそれらからなる。一実施形態によれば、苦味抑制剤は、サッカリンナトリウムおよびセリンを含むか、またはそれらからなる。一実施形態によれば、苦味抑制剤は、サッカリンナトリウムおよびトレオニンを含むか、またはそれらからなる。一実施形態によれば、苦味抑制剤は、サッカリンナトリウム、セリン(serin)およびトレオニンからなる。一実施形態によれば、苦味抑制剤は、サッカリンナトリウムおよびソルビトールからなる。一実施形態によれば、苦味抑制剤は、サッカリンナトリウム、ソルビトールおよびセリンからなる。一実施形態によれば、苦味抑制剤は、サッカリンナトリウム、ソルビトールおよびトレオニンからなる。一実施形態によれば、苦味抑制剤は、ソルビトールおよびトレオニンからなる。一実施形態によれば、苦味抑制剤は、ソルビトールおよびセリンからなる。一実施形態によれば、苦味抑制剤は、ソルビトール、セリンおよびトレオニンからなる。
【0062】
一実施形態によれば、注射可能麻酔溶液中の苦味抑制剤の量は、前記注射可能麻酔溶液の総重量に対して1重量%~6重量%、好ましくは1.5重量%~3重量%の範囲であり、より好ましくは2.09重量%である。一実施形態によれば、注射可能な麻酔溶液中の苦味抑制剤の量は、前記注射可能麻酔溶液の総重量に対して1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5%または6重量%である。
【0063】
一実施形態によれば、注射可能麻酔溶液中の甘味剤(例えば、サッカリンナトリウムおよび/またはソルビトール)の量は、前記注射可能麻酔溶液の総重量に対して0.01重量%~5重量%、好ましくは0.01重量%~1重量%、より好ましくは0.01重量%~0.1重量%の範囲であり、より好ましくは0.09重量%である。一実施形態によれば、注射可能麻酔溶液中の甘味剤の量は、注射可能麻酔溶液の総重量に対して0.01重量%;0.02重量%;0.03重量%;0.04重量%;0.05重量%;0.06重量%;0.07重量%;0.08重量%;0.09重量%;0.1重量%;0.2重量%;0.3重量%;0.4重量%;0.5重量%;0.6重量%;0.7重量%;0.8重量%;0.9重量%;または1重量%である。一実施形態によれば、注射可能麻酔溶液中の甘味剤の量は、注射可能麻酔溶液の総重量に対して1重量%;2重量%;3重量%;4重量%または5%である。
【0064】
一実施形態によれば、注射可能麻酔溶液は、0.01重量%~1重量%、好ましくは0.09重量%のサッカリンナトリウムを含む。
【0065】
一実施形態によれば、注射可能麻酔溶液は、0.1重量%~4重量%、好ましくは1重量%、2重量%または3重量%のソルビトールを含む。
【0066】
一実施形態によれば、注射可能麻酔溶液は、
- 0.1重量%~4重量%、好ましくは1重量%、2重量%または3重量%のソルビトール;および
- 0.01重量%~1重量%、好ましくは0.09重量%のサッカリンナトリウム
を含む。
【0067】
一実施形態によれば、注射可能麻酔溶液中のアミノ酸(例えば、セリンおよび/またはトレオニン)の量は、前記注射可能麻酔溶液の総重量に対して0.1重量%~5.5重量%、好ましくは0.1重量%~5重量%、好ましくは1重量%~4重量%の範囲であり、より好ましくは2重量%または3重量%である。一実施形態によれば、注射可能麻酔溶液中のアミノ酸の量は、注射可能麻酔溶液の総重量に対して0.1重量%;0.2重量%;0.3重量%;0.4重量%;0.5重量%;0.6重量%;0.7重量%;0.8重量%;0.9重量%;または1重量%である。一実施形態によれば、注射可能麻酔溶液中のアミノ酸の量は、注射可能麻酔溶液の総重量に対して1重量%;2重量%;3重量%;4重量%;または5重量%である。
【0068】
一実施形態によれば、注射可能麻酔溶液は、0.1重量%~5重量%、好ましくは2重量%のセリンを含む。
【0069】
一実施形態によれば、注射可能麻酔溶液は、0.1重量%~5重量%、好ましくは2重量%のトレオニンを含む。
【0070】
一実施形態によれば、注射可能麻酔溶液は、0.1重量%~5重量%、好ましくは2重量%のセリンおよびトレオニンを含む。好ましくはセリンおよびトレオニンが、両者とも存在する場合、それらは、1:1の重量比である。
【0071】
一実施形態によれば、注射可能麻酔溶液は、
- 0.01重量%~1重量%、好ましくは0.09重量%のサッカリンナトリウム;および
- 0.1重量%~5重量%、好ましくは2重量%のセリン
を含む。
【0072】
添加剤
一実施形態によれば、注射可能麻酔溶液はさらに、1種または複数の添加剤を含む。
【0073】
一実施形態によれば、添加剤は、pH調整剤;緩衝剤;保存剤化合物または安定化剤;造影剤;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびその塩(「エデト酸塩」)、クエン酸、アスコルビン酸などのキレート化剤;浸透剤;ならびにそれらの任意の混合物からなる群から選択される。一実施形態によれば、添加剤は、緩衝剤;保存剤化合物または安定化剤;造影剤;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびその塩(「エデト酸塩」)、クエン酸、アスコルビン酸などのキレート化剤;浸透剤;ならびにそれらの任意の混合物からなる群から選択される。一実施形態によれば、添加剤は、pH調整剤;保存剤化合物または安定化剤;造影剤;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびその塩(「エデト酸塩」)、クエン酸、アスコルビン酸などのキレート化剤;浸透剤;ならびにそれらの任意の混合物からなる群から選択される。
【0074】
一実施形態によれば、本発明の注射可能麻酔溶液は、pH調整剤を含む。pH調整剤の例としては、水酸化ナトリウムおよび塩酸が挙げられる。
【0075】
一実施形態によれば、本発明の注射可能麻酔溶液は、2.5~5.5、好ましくは2.8~5.5、より好ましくは2.8~5の範囲のpHを有する。一実施形態によれば、本発明の注射可能麻酔溶液は、3.5~5.5、好ましくは3.5~5の範囲のpHを有する。一実施形態によれば、本発明の注射可能麻酔溶液は、4.5~5.5、好ましくは4.5~5の範囲のpHを有する。一実施形態によれば、 本発明の注射可能麻酔溶液は、約5のpHを有する。そのような酸性pHは、特にエピネフリンなどの血管収縮薬が存在する場合に、溶液中に存在する活性剤の経時的分解を制限するために有利である。本発明の溶液の貯蔵寿命の間、pHは、経時的に低下し得る。例えばpHが、製造時に約5に調整される場合、pHは、2.5~5、好ましくは2.8~5の範囲内に低下し得る。一実施形態によれば、本発明の注射可能麻酔溶液のpHは、先に定義されたpH調整剤を用いて調整される。
【0076】
一実施形態によれば、本発明の注射可能麻酔溶液は、緩衝剤を含まない。有利には、該溶液中の緩衝剤が存在しないことにより、pHが溶液の貯蔵寿命の間に溶液中に存在する活性剤に適合しないレベルで維持されることが回避される。例えば、エピネフリンなどの血管収縮薬が、溶液中に存在する場合、pHは、経時的分解を回避するために酸性でなければならない。pHが、緩衝剤の存在により過度に高い値のままであれば、これは、溶液の貯蔵寿命を短縮することになる。
【0077】
緩衝剤は、例えば重炭酸ナトリウムのアルカリ性、中性または酸性物質;ハートマン溶液;リンゲル液;乳酸リンゲル液;酢酸リンゲル液;重炭酸リンゲル液;コロイド系薬剤;およびそれらの任意の組合わせから選択される。
【0078】
一実施形態によれば、本発明の注射可能麻酔溶液は、保存剤化合物および/または安定化剤を含む。
【0079】
一実施形態によれば、保存剤化合物または安定化剤は、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウムもしくはピロ亜硫酸カリウム、アスコルビン酸、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、およびエデト酸二ナトリウムなどのその塩(「エデト酸塩」)、水酸化ナトリウム、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、フェノール、メタクレゾール、クロロブタノール、チメロサール、フェニル水銀酸塩、ならびにそれらの任意の組合わせから選択される。一実施形態によれば、保存剤化合物または安定化剤は、パラベン誘導体、重亜硫酸塩またはピロ亜硫酸塩、アセチルシステイン、システイン、またはチオグリセロールなどの1種または複数のチオール機能を含む化合物、ならびにそれらの任意の組合わせから選択される。
【0080】
一実施形態によれば、保存剤化合物は、ピロ亜硫酸塩であり、好ましくはピロ亜硫酸カリウムまたはピロ亜硫酸ナトリウムである。一実施形態によれば、保存剤化合物は、ピロ亜硫酸塩であり、好ましくはピロ亜硫酸カリウムである。
【0081】
一実施形態によれば、保存剤化合物は、キレート化剤であり、好ましくはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、およびエデト酸二ナトリウムなどのその塩(「エデト酸塩」)である。一実施形態によれば、保存剤化合物は、エデト酸二ナトリウムである。
【0082】
一実施形態によれば、本発明の注射可能麻酔溶液は、重亜硫酸塩またはピロ亜硫酸塩、EDTAまたはその塩、およびそれらの任意の組合わせから選択される保存剤化合物を含む。一実施形態によれば、本発明の注射可能麻酔溶液は、ピロ亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、エデト酸二ナトリウムなどのエデト酸塩、およびそれらの任意の組合わせから選択される保存剤化合物を含む。一実施形態によれば、本発明の注射可能麻酔溶液は、ピロ亜硫酸カリウム、エデト酸二ナトリウム、およびそれらの任意の組合わせから選択される保存剤化合物を含む。
【0083】
一実施形態によれば、注射可能麻酔溶液は、EDTAを含まない。
【0084】
一実施形態によれば、注射可能麻酔溶液中の保存剤化合物(例えば、ピロ亜硫酸カリウムおよび/またはエデト酸二ナトリウム)の量は、前記注射可能麻酔溶液の総重量に対して0重量%~1重量%、好ましくは0.01重量%~0.5重量%、より好ましくは0.02重量%~0.2重量%の範囲である。一実施形態によれば、注射可能麻酔溶液中の保存剤化合物の量は、前記注射可能麻酔溶液の総重量に対して0重量%~1重量%、好ましくは0.01重量%~0.5重量%の範囲であり、より好ましくは0.12重量%である。
【0085】
一実施形態によれば、注射可能麻酔溶液は、0.01重量%~0.5重量%、好ましくは0.12重量%のピロ亜硫酸カリウムを含む。
【0086】
一実施形態によれば、注射可能麻酔溶液は、0.01重量%~0.5重量%、好ましくは0.025重量%のエデト酸二ナトリウムを含む。
【0087】
一実施形態によれば、注射可能麻酔溶液は、
- 0.01重量%~0.5重量%、好ましくは0.12重量%のピロ亜硫酸カリウムと;
- 0.01重量%~0.5重量%、好ましくは0.025重量%のエデト酸二ナトリウムと、
を含む。
【0088】
一実施形態によれば、造影剤は、銀系薬剤;バリウム系薬剤;イオン性ヨウ素;非イオン性ヨウ素;ヨウ化ナトリウム;ヨータラム酸ナトリウム、アミノ糖誘導体;ヨウ素化化合物と混和されたアミノ糖誘導体;ガドリニウム系薬剤;鉄;酸化鉄;鉄・白金(iron platinum);マグネシウム;ペルフルブロン;窒素;ペルフルオロカーボン;タンパク質系および薬学的に調製されたマイクロバブル造影剤;ならびにそれらの任意の組合わせから選択される。
【0089】
浸透圧
本発明の注射可能麻酔溶液は、注射される組織に適合される浸透圧を有する。浸透圧の生理学的範囲は、約280~310mOsm/Lである。組織内注射の場合、浸透圧が600mOsm/Lを超えてはならず、そうでなければ注射される組織に有害作用を引き起こし得ることは当該技術分野のコンセンサスである。特に高張性溶液は、注射した場合に、組織内の体液の何等かの移動を誘導して、それが組織の損傷、疼痛および/または刺激を誘導し得る。
【0090】
一実施形態によれば、本発明の注射可能麻酔溶液は、600mOsm/L未満、好ましくは250mOsm/L~600mOsm/Lの範囲、より好ましくは250mOsm/L~500mOsm/L;250mOsm/L~450mOsm/L;250mOsm/L~400mOsm/L;250mOsm/L~350mOsm/Lの範囲の浸透圧を有する。一実施形態によれば、本発明の注射可能麻酔溶液は、280mOsm/L~600mOsm/Lの範囲;より好ましくは280mOsm/L~500mOsm/L;280mOsm/L~450mOsm/L;280mOsm/L~400mOsm/L;より好ましくは280mOsm/L~380mOsm/Lの範囲の浸透圧を有する。
【0091】
特異的溶液
一実施形態によれば、本発明の注射可能麻酔溶液は、
- 好ましくはリドカイン誘導体;テトラカイン誘導体;キシロカイン誘導体;メピバカイン誘導体;プリロカイン誘導体;ブピバカイン誘導体;エチドカイン誘導体;ロピバカイン誘導体;アルチカイン誘導体;およびそれらの任意の組合わせから選択される、麻酔薬と;
- 任意選択的に、血管収縮薬と;
- 薬学的に許容可能な溶媒と;
- サッカリンナトリウム、ソルビトールおよびアミノ酸のうちの少なくとも2種の混合物を含むか、またはそれからなり、該アミノ酸が、セリン、トレオニンおよびそれらの混合物から選択される、苦味抑制剤と;
を含む。
【0092】
一実施形態によれば、本発明の注射可能麻酔溶液は、
- 好ましくはリドカイン誘導体;テトラカイン誘導体;キシロカイン誘導体;メピバカイン誘導体;プリロカイン誘導体;ブピバカイン誘導体;エチドカイン誘導体;ロピバカイン誘導体;アルチカイン誘導体;およびそれらの任意の組合わせから選択される、麻酔薬と;
- 任意選択的に、血管収縮薬と;
- 薬学的に許容可能な溶媒と;
- サッカリンナトリウム、ソルビトールおよびアミノ酸のうちの少なくとも2種の混合物を含むか、またはそれからなり、該アミノ酸が、セリン、トレオニンおよびそれらの混合物から選択される、苦味抑制剤と;
を含み、
該溶液の浸透圧が、250mOsm/L~500mOsm/Lの範囲であり;
該溶液のpHが、2.5~5.5の範囲である。
【0093】
一実施形態によれば、本発明の注射可能麻酔溶液は、緩衝剤を含まない。
【0094】
一実施形態によれば、注射可能麻酔溶液は、
- 0.01重量%~5重量%の麻酔薬と;
- 0.001重量%~1重量%の血管収縮薬と;
- 薬学的に許容可能な溶媒と;
- 1重量%~6重量%の苦味抑制剤と
を含むか、またはそれらからなり、
前記量は、注射可能麻酔溶液の総重量に対するものである。
【0095】
一実施形態によれば、注射可能麻酔溶液は、
- 0.01重量%~5重量%の麻酔薬と;
- 0.001重量%~1重量%の血管収縮薬と;
- 薬学的に許容可能な溶媒と;
- 1重量%~6重量%の苦味抑制剤と、
- 0重量%~1重量%の保存剤化合物と
を含むか、またはそれらからなり、
前記量は、注射可能麻酔溶液の総重量に対するものである。
【0096】
一実施形態によれば、注射可能麻酔溶液は、
- 0.01重量%~5重量%の、好ましくはリドカイン誘導体;テトラカイン誘導体;キシロカイン誘導体;メピバカイン誘導体;プリロカイン誘導体;ブピバカイン誘導体;エチドカイン誘導体;ロピバカイン誘導体;アルチカイン誘導体;およびそれらの任意の組合わせから選択される、麻酔薬と;
- 0.001重量%~1重量%の血管収縮薬と;
- 薬学的に許容可能な溶媒と;
- (i)0.01重量%~1重量%、好ましくは0.09重量%の、サッカリンナトリウム、ソルビトールおよびそれらの混合物から選択される甘味剤;ならびに
(ii)1重量%~5重量%、好ましくは2重量%の、セリン、トレオニンおよびそれらの混合物から選択されるアミノ酸
を含むか、またはそれらからなる苦味抑制剤と
を含むか、またはそれらからなり、
前記量は、注射可能麻酔溶液の総重量に対するものである。
【0097】
一実施形態によれば、注射可能麻酔溶液は、
- 0.01重量%~5重量%の、好ましくはリドカイン誘導体;テトラカイン誘導体;キシロカイン誘導体;メピバカイン誘導体;プリロカイン誘導体;ブピバカイン誘導体;エチドカイン誘導体;ロピバカイン誘導体;アルチカイン誘導体;およびそれらの任意の組合わせから選択される、麻酔薬と;
- 0.001重量%~1重量%の血管収縮薬と;
- 薬学的に許容可能な溶媒と;
- (i)0.01重量%~1重量%、好ましくは0.09重量%の、サッカリンナトリウム、ソルビトールおよびそれらの混合物から選択される甘味剤ならびに;
(ii)1重量%~5重量%、好ましくは2重量%の、セリン、トレオニンおよびそれらの混合物から選択されるアミノ酸
を含むか、またはそれらからなる苦味抑制剤と;
- 0重量%~1重量%、好ましくは0.02重量%~0.2重量%の、ピロ亜硫酸カリウム、エデト酸二ナトリウムおよびそれらの混合物から選択される保存剤化合物と、
を含むか、またはそれらからなり、
前記量は、注射可能麻酔溶液の総重量に対するものである。
【0098】
一実施形態によれば、注射可能麻酔溶液は、
- 0.01重量%~5重量%の、好ましくはリドカイン誘導体;テトラカイン誘導体;キシロカイン誘導体;メピバカイン誘導体;プリロカイン誘導体;ブピバカイン誘導体;エチドカイン誘導体;ロピバカイン誘導体;アルチカイン誘導体;およびそれらの任意の組合わせから選択される、麻酔薬と;
- 0.001重量%~1重量%の血管収縮薬と;
- 薬学的に許容可能な溶媒と;
- 0.01重量%~5重量%の、サッカリンナトリウムとソルビトールとの混合物を含む、またはそれからなる苦味抑制剤と、
を含むか、またはそれらからなり、
前記量は、注射可能麻酔溶液の総重量に対するものである。
【0099】
一実施形態によれば、注射可能麻酔溶液は、
- 0.01重量%~5重量%の、好ましくはリドカイン誘導体;テトラカイン誘導体;キシロカイン誘導体;メピバカイン誘導体;プリロカイン誘導体;ブピバカイン誘導体;エチドカイン誘導体;ロピバカイン誘導体;アルチカイン誘導体;およびそれらの任意の組合わせから選択される、麻酔薬と;
- 0.001重量%~1重量%の血管収縮薬と;
- 薬学的に許容可能な溶媒と;
- 0.01重量%~1重量%、好ましくは0.09重量%のサッカリンナトリウム;および
0.01重量%~4重量%、好ましくは3重量%のソルビトール
を含むか、またはそれらからなる苦味抑制剤と
を含むか、またはそれらからなり、
前記量は、注射可能麻酔溶液の総重量に対するものである。
【0100】
一実施形態によれば、注射可能麻酔溶液は、
- 0.01重量%~5重量%の、好ましくはリドカイン誘導体;テトラカイン誘導体;キシロカイン誘導体;メピバカイン誘導体;プリロカイン誘導体;ブピバカイン誘導体;エチドカイン誘導体;ロピバカイン誘導体;アルチカイン誘導体;およびそれらの任意の組合わせから選択される、麻酔薬と;
- 0.001重量%~1重量%の血管収縮薬と;
- 薬学的に許容可能な溶媒と;
- (i)0.01重量%~1重量%、好ましくは0.09重量%のサッカリンナトリウム;ならびに
(ii)1重量%~5重量%、好ましくは2重量%の、セリン、トレオニンおよびそれらの混合物から選択されるアミノ酸
を含むか、またはそれらからなる苦味抑制剤と
を含むか、またはそれらからなり、
前記量は、注射可能麻酔溶液の総重量に対するものである。
【0101】
一実施形態によれば、注射可能麻酔溶液は、
- 0.01重量%~5重量%のリドカインまたはその誘導体、好ましくはリドカイン塩酸塩と;
- 0.001重量%~1重量%のカテコールアミン、好ましくはエピネフリン、より好ましくは酒石酸水素エピネフリンと;
- 薬学的に許容可能な溶媒と;
- (i)0.01重量%~1重量%、好ましくは0.09重量%のサッカリンナトリウム;ならびに
(ii)1重量%~5重量%、好ましくは2重量%の、セリン、トレオニンおよびそれらの混合物から選択されるアミノ酸
を含むか、またはそれらからなる苦味抑制剤と
を含むか、またはそれらからなり、
前記量は、注射可能麻酔溶液の総重量に対するものである。
【0102】
一実施形態によれば、注射可能麻酔溶液は、
- 約2.1重量%のリドカインまたはその誘導体、好ましくはリドカイン塩酸塩と;
- 約0.002重量%のカテコールアミン、好ましくはエピネフリン、より好ましくは酒石酸水素エピネフリンと;
- 薬学的に許容可能な溶媒と;
- (i)0.01重量%~1重量%、好ましくは0.09重量%の、サッカリンナトリウム、ソルビトールおよびそれらの混合物から選択される甘味剤;ならびに
(ii)1重量%~5重量%、好ましくは2重量%の、セリン、トレオニンおよびそれらの混合物から選択されるアミノ酸
を含むか、またはそれらからなる苦味抑制剤と
を含むか、またはそれらからなり、
前記量は、注射可能麻酔溶液の総重量に対するものである。
【0103】
一実施形態によれば、注射可能麻酔溶液は、
- 約2.1重量%のリドカインまたはその誘導体、好ましくはリドカイン塩酸塩と;
- 約0.002重量%のカテコールアミン、好ましくはエピネフリン、より好ましくは酒石酸水素エピネフリンと;
- 薬学的に許容可能な溶媒と;
- (i)0.01重量%~1重量%、好ましくは0.09重量%の、サッカリンナトリウム、ソルビトールおよびそれらの混合物から選択される甘味剤;ならびに
(ii)1重量%~5重量%、好ましくは2重量%の、セリン、トレオニンおよびそれらの混合物から選択されるアミノ酸
を含むか、またはそれらからなる苦味抑制剤と;
- 0.02重量%~0.2重量%の、ピロ亜硫酸カリウム、エデト酸二ナトリウムおよびそれらの混合物から選択される保存剤化合物と
を含むか、またはそれらからなり、
前記量は、注射可能麻酔溶液の総重量に対するものである。
【0104】
一実施形態によれば、注射可能麻酔溶液は、
- 約2.1重量%のリドカインまたはその誘導体、好ましくはリドカイン塩酸塩と;
- 約0.002重量%のカテコールアミン、好ましくはエピネフリン、より好ましくは酒石酸水素エピネフリンと;
- 薬学的に許容可能な溶媒と;
- (i)0.01重量%~1重量%、好ましくは0.09重量%のサッカリンナトリウム;ならびに
(ii)1重量%~5重量%、好ましくは2重量%の、セリン、トレオニンおよびそれらの混合物から選択されるアミノ酸
を含むか、またはそれらからなる苦味抑制剤と
を含むか、またはそれらからなり、
前記量は、注射可能麻酔溶液の総重量に対するものである。
【0105】
一実施形態によれば、注射可能麻酔溶液は、
- 約2.1重量%のリドカインまたはその誘導体、好ましくはリドカイン塩酸塩と;
- 約0.002重量%のカテコールアミン、好ましくはエピネフリン、より好ましくは酒石酸水素エピネフリンと;
- 薬学的に許容可能な溶媒と;
- (i)0.01重量%~1重量%、好ましくは0.09重量%のサッカリンナトリウム;ならびに
(ii)1重量%~5重量%、好ましくは2重量%の、セリン、トレオニンおよびそれらの混合物から選択されるアミノ酸
を含むか、またはそれらからなる苦味抑制剤と;
- (i)0.01重量%~0.5重量%、好ましくは0.12重量%のピロ亜硫酸カリウム;および
- (ii)0.01重量%~0.5重量%、好ましくは0.025重量%のエデト酸二ナトリウム
を含むか、またはそれらからなる保存剤化合物と
を含むか、またはそれらからなり、
前記量は、注射可能麻酔溶液の総重量に対するものである。
【0106】
本明細書は、注射可能溶液に関連して記載れているが、任意の技術的特色が、麻酔組成物に可能な他の形態に必要な変更が適用される。
【0107】
麻酔組成物を製造する方法
本発明はまた、麻酔組成物を製造するための、好ましくは注射可能麻酔溶液を製造する方法に関する。
【0108】
一実施形態によれば、本発明の方法は、
- 先に定義された麻酔薬と;
- 任意選択的に、先に定義された血管収縮薬と;
- 先に定義された薬学的に許容可能な溶媒と;
- 先に定義された苦味抑制剤と、
を混合することを含む、またはそれからなる。
【0109】
本発明の麻酔組成物を製造するの方法は、当該技術分野で公知の任意の適切な方法により実行され得る。
【0110】
混合ステップは、例えば機械的攪拌により実行され得る。
【0111】
本発明による麻酔組成物を製造するために混合される異なる要素は、任意の順序で混合されてもよい。
【0112】
注射装置およびシリンジ
本発明はまた、先に定義された注射可能溶液を含む注射装置に関する。一実施形態によれば、注射装置は、シリンジ、好ましくはモノシリンジ、より好ましくは先に定義された注射可能麻酔溶液を含むプレフィルドシリンジである。
【0113】
苦味を低減するための使用および方法
本発明はまた、先に定義された注射可能麻酔溶液の使用に関する。一実施形態によれば、先に定義された注射可能麻酔溶液は、歯科医療、口腔手術および/または顎顔面手術において有用である。一実施形態によれば、先に定義された注射可能麻酔溶液は、患者の疼痛を低減するのに有用である。一実施形態によれば、先に定義された注射可能麻酔溶液は、本発明の苦味抑制剤を含まない注射可能麻酔溶液と比較して低減された苦味を有する。
【0114】
一実施形態によれば、本発明はまた、麻酔組成物、好ましくは麻酔溶液、より好ましくは注射可能麻酔溶液の苦味を低減する方法に関する。一実施形態によれば、本発明はまた、注射可能麻酔溶液が、患者に投与された時に彼/彼女にが感じる苦味を低減する方法に関する。好ましくは本発明の方法により苦味が低減される麻酔組成物は、好ましくはリドカイン誘導体;テトラカイン誘導体;キシロカイン誘導体;メピバカイン誘導体;プリロカイン誘導体;ブピバカイン誘導体;エチドカイン誘導体;ロピバカイン誘導体;アルチカイン誘導体;およびそれらの任意の組合わせから選択される麻酔薬と;任意選択的に血管収縮薬と;薬学的に許容可能な溶媒とを含む。
【0115】
一実施形態によれば、麻酔組成物の苦味を低減する方法は、前記麻酔組成物への甘味剤および/またはアミノ酸の添加、好ましくはサッカリン、セリンおよび/またはトレオニンから選択されるアミノ酸の添加、より好ましくはサッカリンナトリウム、セリンおよび/またはトレオニンから選択されるアミノ酸の添加を含む。一実施形態によれば、麻酔組成物の苦味を低減する方法は、前記麻酔組成物への0.09重量%のサッカリンナトリウム、2重量%または3重量%のセリンおよび/またはトレオニンから選択されるアミノ酸の添加を含む。
【0116】
本発明はまた、本発明の注射可能麻酔溶液の有効量を前記対象に、特に本発明の注射装置で実行される、好ましくは注射により、投与することを含む、歯科医療、口腔手術および/または顎顔面手術の際に対象の口腔の一部または全体を麻酔する方法に関する。一実施形態によれば、注射可能麻酔溶液は、口腔の一部に投与される。一実施形態によれば、口腔の一部は、1本または複数の歯、硬口蓋、軟口蓋、舌、口蓋垂、口底、歯肉、臼後三角、扁桃腺および頬粘膜から選択され得る。
【0117】
一実施形態によれば、対象の口腔の一部または全体を麻酔する方法は、根管を充填する際に実行される。
【0118】
一実施形態によれば、対象の口腔の一部または全体を麻酔する方法は、クラウン配置および/または歯根抜去の際に実行される。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【
図1】本発明の2種の注射可能麻酔溶液(A1およびA2)、それらの対応するプラセボ(P1およびP2)、および対応するマスクされていない製剤(A3:任意の活性剤を有さない製剤およびP3:対応するプラセボ)の、Astree e-tongueシステムを用いることによって得た味覚マップである。
【
図2】70℃での安定性ストレス試験の間の本発明の溶液Bおよび比較溶液Ex3中のエピネフリン含量の経時的推移を示すグラフである。
【0120】
実施例
本発明はさらに、以下の実施例により示される。
【0121】
実施例1:本発明の注射可能麻酔溶液の実施例
本発明による複数溶液を、調製した:
【表1】
【表2】
【0122】
この表では、成分の量は、注射可能溶液100mLについて与えられている。
【0123】
本発明によれば、先の表の製剤1~25で用いられたリドカイン塩酸塩またはアルチカインを、例えばリドカインの任意の誘導体;アルチカインの任意の誘導体;テトラカイン誘導体;キシロカイン誘導体;メピバカイン誘導体;プリロカイン誘導体;ブピバカイン誘導体;エチドカイン誘導体;ロピバカイン誘導体;およびそれらの任意の組合わせなどの当業者に知られる任意の麻酔薬に置き換えてもよい。
【0124】
実施例2:本発明の溶液による苦味低減の評価
この目標は、本発明の注射可能麻酔溶液の味覚を、対応する味覚がマスクされていない製剤の味覚と比較すること、および本発明の注射可能麻酔溶液の苦味が低減されるかどうかを決定することである。
【0125】
この目的のために、本発明の注射可能麻酔溶液A1(即ち、実施例1の製剤9に対応する、前記注射可能麻酔溶液の総重量に対して、0.09重量%のサッカリンナトリウムおよび3%ソルビトールからなる苦味抑制剤を含む、2.134重量%のリドカイン塩酸塩および0.002重量%の酒石酸水素エピネフリンを含む溶液);本発明の注射可能麻酔溶液A2(即ち、実施例1の製剤3に対応する、前記注射可能麻酔溶液の総重量に対して、0.09重量%のサッカリンナトリウムおよび2%セリンからなる苦味抑制剤を含む、2.134重量%のリドカイン塩酸塩および0.002重量%の酒石酸水素エピネフリンを含む溶液);それらの対応するプラセボ(P1およびP2、即ち、リドカイン塩酸塩を有さない);対応するマスクされていない製剤(A3:2.134重量%のリドカイン塩酸塩および0.002重量%の酒石酸水素エピネフリンを含むマスクされていない活性製剤;P3:リドカイン塩酸塩を有さないマスクされていない対応するプラセボ)の間で、味覚の比較を行った。
【0126】
注射可能麻酔溶液のマスク効果は、有効成分を含有する前記製剤のe-tongueシグナルと、リドカイン塩酸塩を有さない製剤(プラセボ)のe-tongueシグナルとの間の距離の決定により推定される。最良のマスクされた製剤は、最適な距離を与える製剤である。
【0127】
材料と方法
アッセイを、25mlビーカーを用いた48ポジションオートサンプラー上の7つの特異的センサー(AHS、PKS、CTS、NMS、CPS、ANS、SCS)で構成されたアルファM.O.S.センサーを具備したAstee e-tongueシステムで実施した。獲得時間を、分析ごとに180秒間の120秒目で固定した。Astreeシステムで作成されたデータは全て、AlphaSoft V15ソフトウエアによる多次元統計法を使用して処理された。
【0128】
各試料でのe-tongueシグナルを、7つのセンサーにおいて平衡状態で測定した(100秒~120秒の間の平均)。分析のために、三重の反復実験を考慮した。
【0129】
結果
プラセボと製剤とのユーグリッド距離を、試料間の味覚の近接性を評価するために計算し、距離が短いほど、味覚がより近い。結果を、
図1の味覚マップに表す。
【0130】
図1の味覚マップは、以下を示す;
- A3とP3との距離は最長であり、そのためリドカイン塩酸塩により苦味が引き起こされる;
- 製剤が、苦味抑制剤(即ち、ソルビトールまたはセリンのどちらかに組み合わせたサッカリンナトリウム)を含む場合、A1とP1との距離、およびA2とP2との距離は、A3とP3との距離より短く、したがって苦味抑制剤を含む製剤では、苦味がより少ない。
【0131】
結論として、リドカイン塩酸塩及び酒石酸水素エピネフリンの注射溶液中に、0.09重量%サッカリンナトリウムを、2重量%セリンまたは3重量%ソルビトールのどちらかと共に添加すると、味覚がマスクされていない製剤と比較して苦味を低減することが可能である。サッカリンナトリウムをソルビトールまたはセリンのどちらかと共に添加すると、マスクされていない製剤と比較して、苦味をそれぞれ21%および26%低減する。
【0132】
実施例3:本発明の麻酔溶液の浸透圧の評価
本発明の麻酔溶液は、特に口腔の組織への注射のために、注射に適さなければならない。注射溶液の重要なパラメータは、浸透圧である。それゆえ本発明による溶液の浸透圧を決定した。
【0133】
方法
その組成が以下の表に詳述される溶液B1(サッカリンナトリウム/ソルビトール)およびB2(サッカリンナトリウム/セリン)を、200mL容器内の水中で成分を混合することにより調製した。pHを、約5に調整した。
【0134】
浸透圧を、浸透圧計(Loser 16I)を用いて3つの試料について各溶液で測定した。
【0135】
結果
溶液B1およびB2の浸透圧を以下に報告する:
【表3】
【0136】
本発明の溶液は、組織内注射のための600mOsm/L閾値より充分に低く、生理学的範囲に近い浸透圧を有する。
【0137】
実施例4:浸透圧 - 比較実施例
本発明の注射可能麻酔溶液の特性を、米国特許出願公開第2020/206351号に開示された麻酔溶液に比較した。特に注射に関する適切性を評価した(浸透圧およびpHの決定を含む)。
【0138】
米国特許出願公開第2020/206351号は、苦味抑制剤としてのデキストロースの存在、およびこの苦味抑制剤の緩衝剤として乳酸リンゲル液を含むことにより、苦味が減弱された局所麻酔溶液を開示する。
【0139】
米国特許出願公開第2020/206351号の実施例1~3の組成物を、比較目的で再現した。
【表4】
【0140】
3種の溶液Ex1~Ex3は、本発明の溶液B1およびB2として同量のリドカイン塩酸塩を含む(実施例3参照)。溶液Ex3は、同量のエピネフリンを含む。
【0141】
溶液Ex1~Ex3のpHおよび浸透圧を測定し、結果を、上記表に報告する。
【0142】
米国特許出願公開第2020/206351号に開示された麻酔溶液のpHは、ほぼ7であり、したがって経時的な活性剤の安定性を保証するほど充分に酸性ではないが、本発明の溶液は、酸性pHを有する。
【0143】
米国特許出願公開第2020/206351号に開示された麻酔溶液の浸透圧は、組織内注射の600mOsm/L閾値を充分に超えており、したがって注射に適さない。これに対し、同量のリドカインおよびエピネフリンであるが、本発明による苦味抑制剤の存在により、適切な浸透圧を維持しながら(B1では347mOsm/LおよびB2では365mOsm/L)、苦味を効率的に低減することができる。
【0144】
結論。本発明による特定の苦味抑制剤の選択は、適切な浸透圧を有する注射可能麻酔溶液を得ることを可能にする。
【0145】
実施例5:本発明の麻酔溶液の安定性の評価および比較データ
麻酔溶液の活性成分、即ち、麻酔薬および通常存在する血管収縮薬は、苦味抑制剤を添加しても貯蔵寿命にわたり安定であり続ける必要がある。
【0146】
リドカインおよびエピネフリンの化学的安定性に及ぼす影響を、苦味抑制剤の添加について試験した。
【0147】
本発明によるリドカイン塩酸塩と酒石酸水素エピネフリンとの溶液である、0.09重量%サッカリンナトリウムおよび2重量%セリンを苦味抑制剤として含む溶液B3を、試験した。比較の目的で、5%デキストロース乳酸リンゲル液を苦味抑制剤として含む、米国特許出願公開第2020/206351号の実施例3の組成物を、試験した(Ex3)。
【0148】
安定性ストレス試験を、加速安定性試験に対応する70℃で12日間にわたり実行した。
【0149】
方法
溶液B3およびEx3を、6Lジャケット付きタンク内の成分をUPW(超純水)と共に窒素雰囲気下で混合することにより調製した。
【表5】
【0150】
調合の終了時に、溶液を1.7mLガラスカートリッジに充填し、クリンプした(crimped)。カートリッジを、70℃で少なくとも12日間貯蔵した。
【0151】
溶液を、2、6、9および12日後に採取および分析した。
【0152】
リドカイン、エピネフリンおよび関連する分解産物の含量の決定を、蛍光検出および内部標準のスパイキング法を含むイオン対逆相UPLCを用いて実行した。
【0153】
結果
結果から、リドカインの含量は、この麻酔薬が、分解する傾向があまりないために予想されたように、両方の組成物で経時的に安定したままであることが示された。これに対し、エピネフリンは、より分解し易い。しかし
図2に示されたとおり、エピネフリンの分解は、本発明による溶液B3では非常に限定的であり、エピネフリンの初期量の80%が、70℃での12日間のストレス試験後に保持された。これに対し、米国特許出願公開第2020/206351号の溶液Ex3は、エピネフリンの急速な分解をもたらした。
【0154】
それゆえ、本発明による特異的苦味抑制剤の選択は、安定した麻酔溶液を得ることを可能にする。
【0155】
さらに本発明の注射可能溶液は、例えばFDA事務局またはEMAなどの規制当局の要件に適合する。
【0156】
したがって、本発明の注射可能麻酔溶液は、市販の注射可能麻酔溶液の良好な代替品を提供する。
【国際調査報告】