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特表2024-516681敗血症の早期検出のためのsFlt1マーカーパネル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-16
(54)【発明の名称】敗血症の早期検出のためのsFlt1マーカーパネル
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
G01N33/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566811
(86)(22)【出願日】2022-04-29
(85)【翻訳文提出日】2023-11-07
(86)【国際出願番号】 EP2022061583
(87)【国際公開番号】W WO2022229440
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】21171488.6
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】グリューネバルト,フェリックス
(72)【発明者】
【氏名】イェーガー,ヴィクトル・ヨハン・ラウル
(72)【発明者】
【氏名】クラマー,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】シュッツ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】フォン ホルタイ,マリア
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーバー,シュテフェン
(72)【発明者】
【氏名】ベクマイヤー,ハイケ
(72)【発明者】
【氏名】ビーンヒューズ-テレン,ウルスラ-ヘンリケ
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA13
2G045AA25
2G045CA25
2G045CA26
2G045DA36
2G045DA42
2G045DA53
2G045FB03
2G045FB06
(57)【要約】
本発明は、診断の分野に関する。具体的には、本発明は、感染の疑いがある対象を評定するための方法であって、前記対象の試料中の第1のバイオマーカーの量を決定する工程であって、前記第1のバイオマーカーはsFlt1である、工程、前記対象の試料中の第2のバイオマーカーの量を決定する工程であって、前記第2のバイオマーカーが、シスタチンC、IGFBP7、心筋トロポニン、クレアチニン、sTREM1、PCTおよびビリルビンからなる群から選択される、工程、前記バイオマーカーの量を前記バイオマーカーについての基準と比較し、かつ/または前記バイオマーカーの量に基づいて感染の疑いがある前記対象を評定するためのスコアを計算する工程、ならびに前記比較および/または前記計算に基づいて前記対象を評定する工程を含む、方法に関する。本発明は、sFlt1である第1のバイオマーカーならびにシスタチンC、IGFBP7、心筋トロポニン、クレアチニン、sTREM1、PCTおよびビリルビンからなる群から選択される第2のバイオマーカー、または前記第1のバイオマーカーに特異的に結合する検出剤および前記第2のバイオマーカーに特異的に結合する検出剤の、感染の疑いがある対象を評定するための使用にも関する。さらに、本発明はさらに、感染の疑いがある対象を評定するためのコンピュータ実装方法、ならびに感染が疑われる対象を評定するための装置およびキットに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
感染の疑いがある対象を評定するための方法であって、
(a)前記対象の試料中の第1のバイオマーカーの量を決定する工程であって、前記第1のバイオマーカーはsFlt1である、工程と、
(b)前記対象の試料中の第2のバイオマーカーの量を決定する工程であって、前記第2のバイオマーカーは、シスタチンC、IGFBP7、心筋トロポニン、クレアチニン、sTREM1、PCTおよびビリルビンからなる群から選択される、工程と、
(c)前記バイオマーカーの量を前記バイオマーカーについての基準と比較し、かつ/または前記バイオマーカーの量に基づいて前記感染の疑いがある対象を評定するためのスコアを計算する工程と、
(d)工程(c)において行われた前記比較および/または前記計算に基づいて前記対象を評定する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
工程(b)において、
(i)シスタチンCの量が前記第2のバイオマーカーとして決定される場合、前記方法が、ビリルビン、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼもしくはヘパリン結合タンパク質(HBP)の量を第3のバイオマーカーとして決定することをさらに含むか、または
(ii)クレアチニンの量が前記第2のバイオマーカーとして決定される場合、前記方法が、アラニンアミノトランスフェラーゼの量を第3のバイオマーカーとして決定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記対象が、救急科を受診している対象である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記評定が、敗血症を発症するリスクの評定および/または前記対象の状態が悪化するリスクの評定である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記基準が、敗血症を発症するリスクがあることが既知である少なくとも1つの対象に由来する各バイオマーカーについての基準であり、好ましくは、前記バイオマーカーのそれぞれについての量が、対応する基準と本質的に同一であるかもしくは類似することが、敗血症を発症するリスクがある対象であることを示し、前記バイオマーカーのそれぞれについての量が、対応する基準と異なることが、敗血症を発症するリスクがない対象であることを示し、
かつ/または
前記基準が、敗血症を発症するリスクがないことが既知である少なくとも1つの対象に由来する各バイオマーカーについての基準であり、好ましくは、前記バイオマーカーのそれぞれについての量が、対応する基準と本質的に同一であるかもしくは類似することが、敗血症を発症するリスクがない対象であることを示し、前記バイオマーカーのそれぞれについての量が、対応する基準と異なることが、敗血症を発症するリスクがある対象であることを示す、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記対象が感染症に罹患しているか、または感染症に罹患していることが疑われる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記試料が血液試料もしくは血液試料に由来する試料であり、かつ/または前記対象がヒトである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
感染の疑いがある対象を評定するためのコンピュータ実装方法であって、
(a)前記対象の試料中の第1のバイオマーカーの量についての値を受け取る工程であって、前記第1のバイオマーカーがsFlt1である、工程と、
(b)前記対象の試料中の第2のバイオマーカーの量についての値を受け取る工程であって、前記第2のバイオマーカーが、シスタチンC、IGFBP7、心筋トロポニン、クレアチニン、sTREM1、PCTおよびビリルビンからなる群から選択される、工程と、
(c)前記バイオマーカーの量についての値を前記バイオマーカーについての基準と比較し、かつ/または前記バイオマーカーの量に基づいて感染の疑いがある前記対象を評定するためのスコアを計算する工程と、
(d)工程(c)において行われた前記比較および/または前記計算に基づいて前記対象を評定する工程と
を含み、
任意に、工程(b)において、
(i)シスタチンCの量についての値が前記第2のバイオマーカーとして受け取られる場合、前記方法が、ビリルビン、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼもしくはヘパリン結合タンパク質(HBP)の量についての値を第3のバイオマーカーとして受け取ることをさらに含むか、または
(ii)クレアチニンの量についての値が前記第2のバイオマーカーとして受け取られる場合、前記方法が、アラニンアミノトランスフェラーゼの前記量についての値を第3のバイオマーカーとして受け取ることをさらに含む、コンピュータ実装方法。
【請求項9】
感染の疑いがある対象を評定するための装置であって、
(a)前記対象の試料中の、sFlt1である第1のバイオマーカーと、シスタチンC、IGFBP7、心筋トロポニン、クレアチニン、sTREM1、PCTおよびビリルビンからなる群から選択される第2のバイオマーカーの量を決定するための測定ユニットであって、前記第1のバイオマーカーおよび前記第2のバイオマーカーのための検出システムを備える、測定ユニットと、
(b)前記測定ユニットに動作可能に連結された評価ユニットであって、好ましくは請求項1~7のいずれか一項に記載されているような、前記第1のバイオマーカーおよび前記第2のバイオマーカーについての保存された基準を有するデータベースと、好ましくは請求項1~7のいずれか一項に記載されているような、前記第1のバイオマーカーおよび前記第2のバイオマーカーの量と基準との比較を実行するための、および/または前記バイオマーカーの量に基づいて感染の疑いがある前記対象を評定するためのスコアの計算を実行するための、ならびに前記比較に基づいて前記対象を評定するための命令を含むデータプロセッサと、を備え、前記測定ユニットから前記バイオマーカーの量についての値を自動的に受け取ることができる、評価ユニットと
を備える、装置。
【請求項10】
前記測定ユニットが、第3のバイオマーカーを決定し、かつ第3のバイオマーカーのための検出システムを備え、前記データベースが、第3のバイオマーカーについての保存された基準を備え、前記第3のバイオマーカーが、
(i)シスタチンCが前記第2のバイオマーカーである場合、ビリルビン、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼもしくはヘパリン結合タンパク質(HBP)であるか、または
(ii)クレアチニンが前記第2のバイオマーカーである場合、アラニンアミノトランスフェラーゼ
である、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記検出システムが、前記バイオマーカーの各々を特異的に検出することができる少なくとも1つの検出剤を含む、請求項9または10に記載の装置。
【請求項12】
感染の疑いがある対象を評定するための装置であって、sFlt1である第1のバイオマーカーならびにシスタチンC、IGFBP7、心筋トロポニン、クレアチニン、sTREM1、PCTおよびビリルビンからなる群から選択される第2のバイオマーカーについての保存された基準を有するデータベースと、好ましくは請求項1~9のいずれか一項に記載されているような、前記第1のバイオマーカーおよび前記第2のバイオマーカーの量と基準との比較を実行するための、ならびに前記比較に基づいて前記対象を評定するための命令を含むデータプロセッサとを備える評価ユニットを備え、前記評価ユニットは、前記対象の試料中で決定された前記バイオマーカーの量についての値を受け取ることができ、
前記データベースは、任意に、第3のバイオマーカーについての保存された基準を備え、前記第3のバイオマーカーが、
(i)シスタチンCが前記第2のバイオマーカーである場合、ビリルビン、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼもしくはヘパリン結合タンパク質(HBP)であるか、または
(ii)クレアチニンが前記第2のバイオマーカーである場合、アラニンアミノトランスフェラーゼ
である、装置。
【請求項13】
sFlt1である第1のバイオマーカー、ならびにシスタチンC、IGFBP7、心筋トロポニン、クレアチニン、sTREM1、PCTおよびビリルビンからなる群から選択される第2のバイオマーカー、または前記第1のバイオマーカーに特異的に結合する検出剤および前記第2のバイオマーカーに特異的に結合する検出剤の、感染の疑いがある対象を評定するための使用。
【請求項14】
第3のバイオマーカーまたは前記第3のバイオマーカーに特異的に結合する検出剤が追加的に使用され、前記第3のバイオマーカーが、
(i)シスタチンCが前記第2のバイオマーカーである場合、ビリルビン、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼもしくはヘパリン結合タンパク質(HBP)であるか、または
(ii)クレアチニンが前記第2のバイオマーカーである場合、アラニンアミノトランスフェラーゼである、
請求項13に記載の使用。
【請求項15】
sFlt1である第1のバイオマーカーに特異的に結合する検出剤と、シスタチンC、IGFBP7、心筋トロポニン、クレアチニン、sTREM1、PCTおよびビリルビンからなる群から選択される第2のバイオマーカーに特異的に結合する検出剤とを含む、感染の疑いがある対象を評定するためのキットであって、
任意に、前記キットは、第3のバイオマーカーに特異的に結合する検出剤をさらに含み、前記第3のバイオマーカーが、
(i)シスタチンCが前記第2のバイオマーカーである場合、ビリルビン、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼもしくはヘパリン結合タンパク質(HBP)であるか、または
(ii)クレアチニンが前記第2のバイオマーカーである場合、アラニンアミノトランスフェラーゼ
である、キット。
【請求項16】
前記評定が、敗血症を発症するリスクの評定である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法、装置、使用またはキット。
【請求項17】
48時間以内に敗血症を発症するリスクが予測される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法、装置、使用またはキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断の分野に関する。具体的には、本発明は、感染の疑いがある対象を評価するための方法であって、前記対象の試料中の第1のバイオマーカーの量を決定する工程であって、前記第1のバイオマーカーはsFlt1である工程と、前記対象の試料中の第2のバイオマーカーの量を決定する工程であって、前記第2のバイオマーカーは、シスタチンC、IGFBP7、心筋トロポニン、クレアチニン、sTREM1、PCTおよびビリルビンからなる群から選択される、工程と、前記バイオマーカーの量を前記バイオマーカーについての基準と比較する、および/または前記バイオマーカーの量に基づいて感染の疑いがある対象を評価するためのスコアを計算する工程と、ならびに前記比較および/または計算に基づいて前記対象を評価する工程と、を含む、方法に関する。本発明は、sFlt1である第1のバイオマーカーならびにシスタチンC、IGFBP7、心筋トロポニン、クレアチニン、sTREM1、PCTおよびビリルビンからなる群から選択される第2のバイオマーカー、または前記第1のバイオマーカーに特異的に結合する検出剤および前記第2のバイオマーカーに特異的に結合する検出剤の、感染の疑いがある対象を評価するための使用にも関する。さらに、本発明はさらに、感染の疑いがある対象を評価するためのコンピュータに実装された方法、ならびに感染が疑われる対象を評価するための装置およびキットに関する。
【背景技術】
【0002】
感染、特に、救急部門に存在する患者などの、より重篤なその徴候および症候を有する患者に生じる感染は、全身性炎症反応症候群(SIRS)および敗血症を含むより生命を脅かす医学的症状に発展することがある。
【0003】
Sepsis-3の定義によれば、敗血症は、感染に対する調節不全の宿主応答によって引き起こされる生命を脅かす臓器機能不全として定義される。敗血症は急速に発症するので、敗血症患者の管理および入院の最初の一時間以内の適切な抗生物質療法を含む正しい治療措置の開始、ならびに静脈内輸液および血管作動薬による蘇生の開始のために、早期の発見が重要である(surviving sepsis campaign guidelines 2016)。1時間遅れるごとに、罹患率および死亡率は徐々に増加する。
【0004】
敗血症の診断は、非特異的で容易に見落とされ得る臨床的徴候および症候に基づく。したがって、患者はしばしば誤診され、疾患の重症度はしばしば過小評価される。これまでのところ、敗血症の診断のためのゴールドスタンダードは一般的に存在せず、特に救急診療科では存在しない。高所得国では、敗血症を発症するリスクがある血流感染を有する患者を検出するために、c反応性タンパク質(CRP)、プロカルシトニン(sFlt1)および白血球(WBC)数が、敗血症性ショックの検出のための乳酸(lactate)とともに、救急部門においてしばしば使用される。低所得国では、診断は主に臨床徴候および症候、いくつかの事例ではSIRSおよびSOFA基準に基づく。しかしながら、最新のガイドラインでは、(臨床化学、BGEおよびSOFAスコアの血液学要素を除いて)乳酸以外に、敗血症を診断するためのバイオマーカーは掲載されていない。sFlt1は、抗生物質療法を潜在的に緩和するためにのみ推奨されているが、強固な証拠はない。敗血症診断におけるsFlt1の限界は、主にさほど高くない感度および特異度である。
【0005】
国際公開第2007/009071号は、sFlt-1に基づいて検査対象における炎症応答を診断する方法を開示している。開示された方法は、VEGF、PlGF、TNF-α、IL-6、D-ダイマー、P-セレクチン、ICAM-I、VCAM-I、Cox-2またはPAI-Iの少なくとも1つのレベルを分析することをさらに含む。
【0006】
欧州特許第2174143号は、感染症ではない原発性疾患を有する患者に対する予後診断のためのインビトロ方法を開示しており、この方法はプロカルシトニンのレベルを決定することを含む。
【0007】
多数のマーカーが敗血症の検出または診断に有用であることが示唆されている。これらには、とりわけ、sFlt1、プレセプシン、GDF-15、sFLT、CRPもしくはインターロイキンのような炎症マーカー、または臓器不全に特異的なマーカーが含まれる(例えば、Spanuth,2014,Comparison of sCD14-ST(presepsin)with eight biomarkers for mortality prediction in patients admitted with acute heart failure,2014 AACC Annual Meeting Abstracts.B-331;van Engelen,2018,Crit Care Clin 34(1):139-152を参照)。
【0008】
国際公開第2015/031996号は、病気および/または処置応答に対する重大なまたは生命を脅かす応答の早期決定のためのバイオマーカーを記載している。
【0009】
しかしながら、感染の徴候および症候を示す患者の信頼できる早期の評価を可能にするバイオマーカーが依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
したがって、本発明は、これらの要求に適合する手段および方法を提供する。
【0011】
本発明は、感染の疑いがある対象を評価するための方法であって、
(a)前記対象の試料中の第1のバイオマーカーの量を決定する工程であって、前記第1のバイオマーカーはsFlt1である、工程と、
(b)前記対象の試料中の第2のバイオマーカーの量を決定する工程であって、前記第2のバイオマーカーは、シスタチンC、IGFBP7、心筋トロポニン、クレアチニン、sTREM1、PCTおよびビリルビンからなる群から選択される、工程と、
(c)前記バイオマーカーの量を前記バイオマーカーについての基準と比較し、かつ/または前記バイオマーカーの量に基づいて前記感染の疑いがある対象を評定するためのスコアを計算する工程と、
(d)工程(c)において行われた前記比較および/または前記計算に基づいて前記対象を評価する工程と、
を含む、方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、「a」または「an」は、それが使用される文脈に応じて、1つまたは複数を意味することができることを理解されたい。したがって、例えば、「an(1つの)」項目への言及は、少なくとも1つの項目を利用できることを意味することができる。
【0013】
以下で使用される場合、用語「有する」、「備える」もしくは「含む」またはこれらの任意の文法的変形は、非排他的な様式で使用される。したがって、これらの用語は、これらの用語によって導入される特徴の他に、この文脈において記載される実体にさらなる特徴が存在しない状況、および1つまたは複数のさらなる特徴が存在する状況の両方を指し得る。例として、「AはBを有する」、「AはBを備える」および「AはBを含む」という表現は、B以外に、他の要素がAに存在しない状況(すなわち、AがもっぱらBのみからなる状況)、および、B以外に、要素C、要素CおよびD、またはさらなる要素などの1つまたは複数のさらなる要素が実体Aに存在する状況の両方を指し得る。「備える(comprising)」という用語は、言及される項目のみが存在する態様も包含する、すなわち、「からなる(consisting of)」という意味で限定的な意味を有する。
【0014】
さらに、以下で使用される場合、「特に」、「より詳細には」、「典型的には」および「より典型的には」という用語または類似の用語は、代替の可能性を制限することなく、追加の/代替の特徴と併せて使用される。したがって、これらの用語によって導入される特徴は、追加の/代替の特徴であり、決して特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。本発明は、当業者であれば理解できるとおり、代替の特徴を使用することによって実行されてもよい。同様に、「本発明の態様において」または同様の表現によって導入される特徴は、本発明の代替の態様に関する制限なしに、本発明の範囲に関する制限なしに、およびそのように導入された特徴を本発明の他の追加の/代替のまたは非追加の/代替の特徴と組み合わせる可能性に関する制限なしに、追加の/代替の特徴であることが意図される。
【0015】
さらに、本明細書で使用される「少なくとも1つの」という用語は、この用語に続いて言及される項目の1つまたは複数が本発明に従って使用され得ることを意味することが理解されよう。例えば、この用語が、少なくとも1つのサンプリングユニットが使用されるべきであることを示す場合、これは、1つのサンプリングユニットまたは2つ以上のサンプリングユニット、すなわち、2つ、3つ、4つ、5つまたは任意の他の数として理解され得る。この用語が言及する項目に応じて、当業者は、上限が存在する場合、この用語がどの上限を指し得るかについて理解する。
【0016】
本明細書で使用される「約」という用語は、前記用語の後に記載された任意の数に関して、その中で技術的効果を達成することができる区間精度が存在することを意味する。したがって、約は、本明細書で言及される場合、好ましくは、正確な数値または±20%、好ましくは±15%、より好ましくは±10%、もしくはさらにより好ましくは±5%の前記正確な数値の周りの範囲を指す。
【0017】
さらに、明細書および特許請求の範囲における「第1」、「第2」、「第3」などの用語は、類似の要素を区別するために使用され、必ずしも時系列的なまたは経時的な順序を記載するために使用されるものではない。
【0018】
本発明の方法は、上述の工程からなり得、または工程(d)で得られた評価のさらなる評価のための工程、処置などの治療措置を推奨する工程などの追加の工程を含み得る。さらに、本発明の方法は、試料の前処理に関する工程などの工程(a)より前の工程を含み得る。しかしながら、好ましくは、上述の方法は、ヒトまたは動物の身体に対して実施されるいかなる工程も必要としないエクスビボ方法であることが想定される。さらに、本方法は、自動化によって補助され得る。典型的には、バイオマーカーの決定はロボット機器によって支援され得、比較および評価はコンピュータなどのデータ処理機器によって支援され得る。
【0019】
本明細書で使用される「評価する」という用語は、対象が敗血症に罹患しているかどうか、敗血症に罹患するリスクがあるかどうか、全体的な健康状態に関して、または敗血症もしくは敗血症および/もしくは感染に伴う徴候および症候に関して悪化する医学的症状を示すかどうかを評価することを指す。したがって、本明細書で使用される評価するは、敗血症を診断すること、敗血症を発症するリスクを予測すること、ならびに/または特に敗血症および/もしくは感染に伴う徴候および症候に関して、対象の健康状態の任意の悪化を予測することを含む。典型的には、本発明に従って言及される評価は、敗血症を発症するリスクの評価(したがって、敗血症を発症するリスクの予測)である。あるいは、評価は、対象の健康状態が悪化するリスクの予測である。さらに、敗血症を発症するリスクまたは健康状態の悪化のリスクが予測される場合、典型的には、予測は予測ウィンドウ内で行われることが理解されよう。より典型的には、前記予測ウィンドウは、好ましくは試料が得られた後、約8時間、約10時間、約12時間、約16時間、約20時間、約24時間、約48時間、特に少なくとも約48時間である。さらに、好ましくは試験試料が得られた後の24または48時間以内に敗血症を発症するリスクが予測され得る。
【0020】
一態様では、24時間以内に敗血症を発症するリスクが予測される。
【0021】
別の態様では、48時間以内に敗血症を発症するリスクが予測される。
【0022】
48時間の期間は、実施例のセクションにおいて試験された。
【0023】
さらに別の態様では、評価は、対象の(健康)状態が将来悪化するか否かのリスクの予測である。感染症に罹患している疑いがあるおよび/または感染症に罹患している対象の「状態の悪化」という用語は、当業者によってよく理解されている。この用語は、典型的には、最終的にさらなる投薬またはその他の介入をもたらし得る状態の悪化に関する。
【0024】
好ましくは、対象の疾患重症度が増加する場合、対象の抗生物質療法が強化される場合、対象がより高いレベルのケアのためにICUもしくは別のユニットに入院する場合、対象が緊急手術を必要とする場合、対象が病院で死亡する場合、対象が入院の30日以内に死亡する場合、対象が退院の30日以内に再入院する場合、対象が、例えばSOFAスコアで測定された場合に臓器機能不全もしくは不全を経験する場合、および/または対象が臓器支援を必要とする場合に、対象の状態は悪化する。
【0025】
当業者は、対象の状態が悪化しない場合を理解する。典型的には、対象が前の段落に挙げた結果を有さない場合、対象の状態は悪化しない。
【0026】
一態様では、対象が以下の転帰のうちの1つまたは複数を有する場合、対象の状態は悪化する:対象がICUに入院した場合、対象が病院で死亡する場合、対象が入院の30日以内に死亡する場合、および/または対象が退院の30日以内に再入院する場合。
【0027】
一態様では、対象の状態が悪化するリスクの予測は、対象の抗生物質療法が強化されるリスクの予測である。
【0028】
一態様では、対象の状態が悪化するリスクの予測は、ICUに入れられる対象のリスクの予測である。したがって、対象がICUに入れられるリスクがあるか否かが評価される。
【0029】
別の態様では、対象の状態が悪化するリスクの予測は、病院で死亡する対象のリスクの予測である。したがって、対象が病院で死亡するリスクがあるか否かが評価される。
【0030】
さらに別の態様では、対象の状態が悪化するリスクの予測は、入院の30日以内に死亡する対象のリスクの予測である。したがって、対象が病院への入院の30日以内に死亡するリスクがあるか否かが評価される。
【0031】
さらに別の態様では、対象の状態が悪化するリスクの予測は、退院の30日以内に再入院する対象のリスクの予測である。したがって、対象が退院の30日以内に再入院するリスクがあるか否かが評価される。
【0032】
さらに別の態様では、対象の状態が悪化するリスクの予測は、対象が臓器機能不全または臓器不全を経験するリスクの予測である。臓器機能不全および臓器不全は、例えば、SOFAスコアを介して評価され得る。したがって、本発明はさらに、(試験試料が得られた後に)対象のSOFAスコアが増加するか、否かというリスクの予測に関する。(少なくとも1点、少なくとも2点、少なくとも3点または少なくとも4点などの)SOFAスコアの増加は、状態の悪化と考えられる。対照的に、SOFAスコアが増加しない場合(但し、対象は最も高いSOFAスコアを有さない)、状態は典型的には悪化しない。予測ウィンドウは、敗血症を発症するリスクの予測のための上記の予測ウィンドウであり得る。
【0033】
連続的臓器不全評価(SOFA)は、臓器の機能不全/不全を定量的に記述する臨床評価と実験室の測定とを組み合わせた実証されたスコアである。呼吸、凝固、肝臓、心血管系、中枢神経系および腎臓の機能不全が個々にスコア化され、合算されて、0から24の範囲のSOFAスコアを得る。好ましくは、SOFAスコアは、Vincent 1996に記載されているように決定される(Vincent et al.Intensive Care Med.1996 Jul.;22(7):707-10.doi:10.1007/BF01709751.PMID:8844239.)。
【0034】
さらに別の態様では、対象の状態が悪化するリスクの予測は、対象が血管作動療法、血行動態の補助(輸液療法など)、(例えば、人工呼吸による、または体外式膜型人工肺による)酸素供給、および/または腎代替療法を必要とするリスクの予測など、対象が臓器補助を必要とするリスクの予測である。予測ウィンドウは、例えば試料が得られた後24または48時間以内に敗血症を発症するリスクの予測に関して上に記載されている予測ウィンドウであり得る。
【0035】
一態様では、「評価」という用語は敗血症の診断を指す。したがって、感染の疑いがある対象が敗血症に罹患しているか否かが診断される。好ましくは、評価は敗血症の早期検出を指す。
【0036】
当業者によって理解されるように、本発明に従って行われる評価は、調査された対象の100%に対して正しいことが好ましいが、通常、100%正しくないことがある。この用語は、典型的には、対象の統計学的に有意な部分が正確に評価され得ることを要求する。部分が統計的に有意であるかどうかは、様々な周知の統計評価ツール、例えば、信頼区間の決定、p値の決定、スチューデントt検定、マン-ホイットニー検定などを使用して、当業者によって、さらなる手間をかけることなく決定され得る。詳細は、Dowdy and Wearden,Statistics for Research,John Wiley&Sons,New York 1983に見出され得る。典型的に想定される信頼区間は、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%である。p値は、典型的には、0.2、0.1、0.05である。
【0037】
本明細書で使用される「対象」という用語は、動物、好ましくは哺乳動物、より典型的にはヒトを指す。本発明の方法によって調査される対象は、感染の疑いがある対象であるものとする。本明細書で使用される「感染の疑い」という用語は、対象が感染の臨床パラメータ、徴候および/または症候を示すことを意味する。したがって、本発明における対象は、典型的には、感染症に罹患しているかまたは感染症に罹患している疑いがある対象である。典型的には、対象は、救急診療科に存在する対象である。
【0038】
有利には、試料は診察時に得られている。好ましくは、試料は、救急診療科での診察時に得られている。しかしながら、試料はまた、プライマリケア医での診断時に取得され得る。
【0039】
本明細書で使用される「試料」という用語は、生理学的条件下で、本明細書で言及される第1、第2および/または第3のバイオマーカーを含む任意の試料を指す。より典型的には、試料は体液(body fluid)試料、例えば血液試料またはそれに由来する試料、尿試料、唾液試料、リンパ液試料などである。最も典型的には、前記試料は血液試料または血液試料に由来する試料である。したがって、試料は、血液、血清または血漿試料であり得る。
【0040】
血液試料は、典型的には、毛細血管、静脈または動脈の血液試料を含む。
【0041】
一態様では、試料は間質液試料である。
【0042】
「敗血症」という用語は当技術分野で周知である。本明細書で使用される場合、この用語は、感染に対する調節不全の宿主応答によって引き起こされる生命を脅かす臓器機能不全を指す。敗血症の定義は、例えば、開示内容全体に関して参照により本明細書に組み入れられるSinger et al.(Sepsis-3 The Third International Consensus Definitions for Sepsis and Septic Shock.JAMA 2016;315:801-819)に見出すことができる。好ましくは、「敗血症」という用語は、Singerら(前記と同じ文献)に開示されているSepsis-3の定義による敗血症を指す。
【0043】
典型的には、試験される対象は、感染症に罹患している疑いがあるものとする。「感染」という用語は、当業者にはよく理解されている。本明細書で使用される場合、「感染」という用語は、好ましくは、疾患を引き起こす微生物による対象の身体組織の浸潤、その増殖および微生物に対する対象の組織の反応を指す。一態様では、感染症は細菌感染症である。したがって、対象は細菌感染に罹患している疑いがある。
【0044】
本明細書の他の箇所に記載されるように、本発明は、リスクのある患者の早期の特定を可能にする。したがって、本明細書に記載される予測の一態様では、試験される対象は、試料が得られた時点で敗血症に罹患していない。特に好ましい態様では、試験される対象は、好ましくは、試料が得られる時点で敗血症性ショックに罹患していない。「敗血症性ショック」という用語は、Singer et al.(前記と同じ文献)において定義されている。したがって、以下の基準が満たされれば、対象は敗血症性ショックを患っている。
・敗血症、すなわち疑われる/文書に記録された感染および感染の結果として2点以上の合計SOFAスコアの変化
・およびMAP≧65mmHgを維持するために昇圧剤を必要とする持続性低血圧かつ十分な量の蘇生にもかかわらず血清乳酸レベル>2mmol/L(18mg/dL)を有する
【0045】
さらに、試験される対象は、SARS-CoV-2による感染に罹患していてもよく、または罹患していなくてもよいことが想定される。
【0046】
本明細書で使用される「決定する」という用語は、本発明に従って言及されるバイオマーカーの定性的および定量的決定を指し、すなわち、本用語は、前記バイオマーカーの存在もしくは非存在の決定または絶対量もしくは相対量の決定を包含する。
【0047】
本明細書で使用される「量」という用語は、本明細書で言及される化合物の絶対量、前記化合物の相対量または濃度の他、それらと相関するかまたはそれらから誘導することができる任意の値またはパラメータを指す。このような値またはパラメータは、直接的な測定によって前記化合物から得られる全ての具体的な物理的または化学的特性に由来する強度シグナル値、例えば、質量スペクトルまたはNMRスペクトルにおける強度値を含む。さらに、本明細書中の他の箇所で明示される間接的測定によって得られる全ての値またはパラメータは、例えば、化合物に対して応答する生物学的読み出しシステムまたは特異的に結合されたリガンドから得られる強度シグナルから決定される応答レベルが包含される。上述の量またはパラメータと相関する値は、全ての標準的な数学的演算によっても取得され得るということを理解されたい。バイオマーカーが、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALAT)またはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ASTまたはASAT)などの酵素である場合、「量」という用語は、酵素の活性も包含し得る。
【0048】
本発明の方法における量の決定は、第1の分子からの第2の分子の放出時に、前記第2の分子の存在もしくは非存在または量を検出することを可能にする任意の技術によって実施され得る。適切な技術は、分子の性質およびバイオマーカーの特性に依存し、本明細書の他の箇所でより詳細に論じられる。
【0049】
典型的には、本発明に従って言及されるバイオマーカーの量は、サンドイッチ、競合または他のアッセイ形式を使用するイムノアッセイによって決定され得る。前記アッセイは、バイオマーカーの存在もしくは非存在または量を示すシグナルを発生する。さらに適切な方法は、その正確な分子質量またはNMRスペクトルなどのバイオマーカーに特異的な物理的または化学的特性を測定することを含む。前記方法は、好ましくは、バイオセンサ、イムノアッセイに結合された光学装置、バイオチップ、質量分析計、NMR分析器、表面プラズモン共鳴測定機器またはクロマトグラフィー装置などの分析装置を含む。さらに、方法は、マイクロプレートELISAベースの方法、完全に自動化されたまたはロボット式イムノアッセイ(例えば、Rocheから入手可能)を含む。本発明による適切な測定方法はまた、沈降(特に免疫沈降)、電気化学発光(電気によって生じる化学発光)、RIA(ラジオイムノアッセイ)、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、電気化学発光サンドイッチイムノアッセイ(ECLIA)、解離増強ランタニドフルオロイムノアッセイ(DELFIA)、シンチレーション近接アッセイ(SPA)、濁度測定、比濁分析、ラテックス増強濁度測定もしくは比濁分析、または固相免疫試験を含み得る。ゲル電気泳動、2Dゲル電気泳動、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)またはウェスタンブロッティングなどのさらなる方法が当技術分野において公知である。より典型的には、本明細書で言及されるバイオマーカーを決定するために特に想定される技術は、以下の添付の実施例に記載されている。
【0050】
本発明に従って決定されるバイオマーカーは、当技術分野で周知である。さらに、バイオマーカーの量を決定するための方法は公知である。例えば、バイオマーカーは、実施例の項に記載されているように測定することができる(実施例1参照)。試験されたバイオマーカーのいくつかは、酵素(アラニンまたはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼなど)である。これらのバイオマーカーの量は、試料中の前記酵素の活性を決定することによっても決定され得る。
【0051】
本明細書で使用される「可溶性Flt-1」または「sFlt-1」(「可溶性fms様チロシンキナーゼ-1」の略語)という用語は、好ましくは、VEGF受容体Flt1の可溶性形態であるポリペプチドを指す。可溶性Flt-1は、ヒト臍帯静脈内皮細胞の馴化培養培地中に同定された。内因性可溶性Flt1(sFlt-1)受容体は、クロマトグラフィーおよび免疫学的に、組換えヒトsFlt-1と類似しており、同等の高親和性で[125I]VEGFを結合する。ヒトsFlt-1は、インビトロでKDR/Flk-1の細胞外ドメインと、VEGFで安定化された複合体を形成することが示されている。好ましくは、sFlt-1は、Kendall 1996,Biochem Biophs Res Commun 226(2):324-328に記載されているヒトsFlt-1を指す(アミノ酸配列については、例えば、ヒトについてはP17948、GI:125361およびマウスsFlt-1についてはBAA 24499.1、GI:2809071も参照されたい。)。
【0052】
マーカーであるシスタチンC(CysC)は、当技術分野で周知である。シスタチンCは、CST3遺伝子によってコードされ、すべての有核細胞によって一定の速度で産生され、ヒトにおける産生速度は生涯にわたって極めて一定である。循環からの排除は、ほぼ完全に糸球体濾過を介して行われる。このため、シスタチンCの血清濃度は、1歳~50歳の年齢範囲では、筋肉量および性別とは無関係である。したがって、血漿および血清中のシスタチンCは、GFRに対するより感受性の高いマーカーとして提案されてきた。ヒトシスタチンCポリペプチドの配列は、Genbankを利用して評価され得る(例えば、アクセッション番号NP_000090.1を参照)。このバイオマーカーは、粒子増強免疫比濁アッセイによって決定され得る。ヒトシスタチンCは、抗シスタチンC抗体で被覆されたラテックス粒子と凝集する。凝集物は、比濁法によって決定される。
【0053】
プロカルシトニン(PCTと略記される)は、ホルモンカルシトニンのペプチド前駆体である。したがって、プロカルシトニンはカルシトニンの不活性プロペプチドである。プロカルシトニンは116アミノ酸から構成され、甲状腺の傍濾胞細胞(C細胞)によって、ならびに肺および腸の神経内分泌細胞によって産生される。PCTは、敗血症を全身性炎症の他の非感染性原因と区別するための有用な生化学的マーカーとして広く報告されている(Kondo,Y.,Umemura,Y.,Hayashida,K.et al.J intensive care(2019)7:22.https://doi.org/10.1186/s40560-019-0374-4)。このマーカーのアミノ酸配列は当技術分野において周知であり、例えば欧州特許第2320237号に開示されている。
【0054】
インスリン様成長因子結合タンパク質7(=IGFBP7)は、内皮細胞、血管平滑筋細胞、線維芽細胞および上皮細胞によって分泌されることが知られている30kDaのモジュラー糖タンパク質である(Ono,Y.,et al.,Biochem Biophys Res Comm 202(1994)1490-1496)。好ましくは、「IGFBP7」という用語はヒトIGFBP7を指す。タンパク質の配列は、当技術分野において周知であり、例えば、GenBank(NP_001240764.1)を利用して入手可能である。
【0055】
「心筋トロポニン」という用語は、典型的には、ヒト心筋トロポニンTまたは心筋トロポニンIを指す。しかしながら、この用語は、前述の特定のトロポニンのバリアント、すなわち、好ましくはトロポニンIのバリアント、より好ましくはトロポニンTのバリアントも包含する。このようなバリアントは、前記特定の心筋トロポニンと少なくとも同一の本質的な生物学的および免疫学的特性を有する。特に、本明細書で言及される同一の特定のアッセイによって、例えば前記心筋トロポニンを特異的に認識するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を使用するELISAアッセイによって検出可能である場合、このようなバリアントは同一の本質的な生物学的および免疫学的特性を共有する。さらに、本発明に従って言及されるバリアントは、少なくとも1つのアミノ酸置換、欠失および/または付加のために異なるアミノ酸配列を有するものとし、バリアントのアミノ酸配列は依然として、好ましくは少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約92%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%、前記特定のトロポニンのアミノ酸配列と同一であると理解されるべきである。バリアントは、対立遺伝子バリアントまたは任意の他の種特異的ホモログ、パラログもしくはオルソログであり得る。さらに、本明細書で言及されるバリアントには、断片が上記で言及される本質的な免疫学的および生物学的特性を有する限り、前記特定の心筋トロポニンまたは上述の種類のバリアントの断片が含まれる。好ましくは、心筋トロポニンバリアントは、ヒトトロポニンTまたはトロポニンIの免疫学的特性と同等の免疫学的特性(すなわち、エピトープ組成)を有する。したがって、バリアントは、心筋トロポニンの濃度を決定するために使用される上述の手段またはリガンドによって認識可能であるものとする。したがって、バリアントは、心筋トロポニンの濃度を決定するために使用される上述の手段またはリガンドによって認識可能であるものとする。このような断片は、例えば、トロポニンの分解産物であり得る。リン酸化またはミリスチル化などの翻訳後修飾のために異なるバリアントがさらに含まれる。好ましくは、トロポニンIおよびそのバリアントの生物学的特性は、アクトミオシンATPアーゼを阻害する能力、またはインビボおよびインビトロで血管新生を阻害する能力であり、これらは、例えば、Moses et al.1999 PNAS USA 96(6):2645-2650)によって記載されているアッセイに基づいて検出され得る。好ましくは、トロポニンTおよびそのバリアントの生物学的特性は、トロポニンCおよびIと複合体を形成する能力、カルシウムイオンを結合する能力、または好ましくはトロポニンC、IおよびTの複合体としてまたはトロポニンC、トロポニンIおよびトロポニンTのバリアントによって形成される複合体として存在する場合、トロポミオシンに結合する能力である。トロポニンTまたはトロポニンIは、当技術分野で周知であり、市販されているイムノアッセイ、例えばELISAによって決定され得る。本発明に従って特に好ましいのは、例えば市販のhs-cTnアッセイを使用する、高感度でのトロポニンTの決定である。
【0056】
アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALAT)は、L-アラニンのα-ケトグルタル酸(α-KG)へのアミノ基転移を触媒し、L-グルタミン酸とピルビン酸を形成する。形成されたピルビン酸は、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)によって乳酸に還元され、同時に還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)が酸化される。吸光度の変化は、アラニンアミノトランスフェラーゼ活性に正比例し、例えば、二色(bichromatic)(340、700nm)比率技術を用いて測定され得る。
【0057】
アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ASTまたはASAT)は、L-アスパラギン酸からα-ケトグルタル酸へのアミノ基転移を触媒し、L-グルタミン酸とオキサロ酢酸(oxalacetate)を形成する。形成されたオキサロ酢酸は、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(MDH)によってリンゴ酸に還元され、同時に還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)が酸化される。NADHのNADへの変換による経時的な吸光度の変化は、AST活性に正比例し、例えば、二色(bichromatic)(340、700nm)比率技術を用いて測定され得る。
【0058】
sTREM-1または可溶性TREM1(またはSTREM1)は、TREM-1(ミエロイド細胞に発現するトリガー受容体-1)の可溶性形態である。したがって、この用語は、TREM-1の非細胞結合形態を指す。TREM-1は、好中球および単球/マクロファージ上に発現することが知られている免疫受容体である。TREM-1は、自然免疫応答に関与する免疫グロブリンスーパーファミリーの最近発見されたメンバーである。TREM-1は、16アミノ酸のシグナルペプチド、184アミノ酸の細胞外ドメイン、29アミノ酸の膜貫通ドメインおよび5アミノ酸の短い細胞質ドメインを有する234アミノ酸前駆体として合成される約30kDの単量体タンパク質である。感染中、受容体発現は変化し、sTREM-1が放出される。したがって、sTREM-1(17kDa)は、活性化された食細胞の膜から放出されるTREM-1の可溶性形態である。典型的には、「sTREM-1」という用語は、少なくともTREM-1の細胞外部分を有するすべての天然に存在する切断されたまたは放出された形態を包含する。
【0059】
マーカー「ビリルビン」は、当技術分野で周知である。ビリルビンは、ジピロールユニットがエキソビニルタイプおよびエンドビニルタイプの両方である開環テトラピロールであるビラジエンのクラスのメンバーである。ヘム分解の産物であり、ビリベルジンの還元によって細網内皮系において産生され、血清アルブミンとの複合体として肝臓に輸送される。ビリルビンは、酸化防止剤としての役割を有する。ビリルビン測定は、ほとんどの医学研究室において日常的に行われており、様々な方法によって(実施例の項に記載されている方法などによって)測定され得る。
【0060】
バイオマーカーであるヘパリン結合タンパク質(HBPと略される)は、37kDaのカチオン性抗微生物タンパク質(CAP37)またはアズロシジンとしても知られている。ヘパリン結合タンパク質は、好中球において合成される37kDaの糖タンパク質である。さらに、ヘパリン結合タンパク質は、ヘパリンを結合する、好中球顆粒由来の抗菌性のならびに単球および線維芽細胞特異的な走化性糖タンパク質であることが知られている。HBPは、セリンプロテアーゼスーパーファミリーに属する。しかしながら、HBPは、プロテアーゼとしては不活性である。ヒトHBPのアミノ酸配列は、UniProtを利用して入手され得る(UniProtKB-P20160(CAP7_HUMAN)参照)。
【0061】
マーカー「クレアチニン」は、当技術分野で周知である。筋肉代謝において、クレアチニンは、クレアチンおよびクレアチンリン酸から内因的に合成される。正常な腎機能の条件下では、クレアチニンは糸球体濾過によって排出される。クレアチニン測定は、急性および慢性腎疾患の診断およびモニタリングならびに腎透析のモニタリングのために行われる。尿中のクレアチニン濃度は、ある分析物(アルブミン、α-アミラーゼ)の排泄についての基準値として使用され得る。クレアチニンは、Popper et al.,(Popper H et al.Biochem Z 1937;291:354)、Seelig and Wust(Seelig HP,WustH.Arztl Labor1969;15:34)またはBartels(Bartels Het al.Clin Chim Acta 1972;37:193)によって記載されているように決定され得る。例えば、水酸化ナトリウムおよびピクリン酸が試料に添加されて、クレアチニン-ピクリン酸錯体の形成を開始する。アルカリ溶液中で、クレアチニンはピクラートと黄橙色の錯体を形成する。色強度はクレアチニン濃度に正比例し、測光法で測定され得る。
【0062】
本発明の方法では、第3のバイオマーカーが決定され得る。特に、本発明の方法の工程(b)において、
(i)シスタチンCの量が前記第2のバイオマーカーとして決定される場合、前記方法は、ビリルビン、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼもしくはヘパリン結合タンパク質(HBP)の量を第3のバイオマーカーとして決定することをさらに含み、または
(ii)クレアチニンの量が前記第2のバイオマーカーとして決定される場合、前記方法は、アラニンアミノトランスフェラーゼの量を第3のバイオマーカーとして決定することをさらに含む。
【0063】
したがって、本発明は、少なくとも2つのバイオマーカー(すなわち、本明細書で言及される第1および第2のバイオマーカー)または少なくとも3つのバイオマーカー(すなわち、本明細書で言及される第1、第2および第3のバイオマーカー)の決定に関する。
【0064】
第1のバイオマーカーはsFlt1である。第2のバイオマーカーは、シスタチンC、IGFBP7、心筋トロポニン、クレアチニン、sTREM1、PCTおよびビリルビンから選択されるものとする。
【0065】
一態様では、第2のバイオマーカーは、心筋トロポニンTまたはI、好ましくはトロポニンTなどの心筋トロポニンである。
【0066】
別の態様では、第2のバイオマーカーはシスタチンCである。
【0067】
別の態様では、第2のバイオマーカーはクレアチニンである。
【0068】
別の態様では、第2のバイオマーカーはIGFBP7である。
【0069】
別の態様では、第2のバイオマーカーはPCTである。
【0070】
別の態様では、第2のバイオマーカーはsTREM1である。
【0071】
別の態様では、第2のバイオマーカーはビリルビンである。
【0072】
シスタチンCが第2のマーカーである場合、前記方法は、第3のバイオマーカーとしてビリルビン、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼまたはヘパリン結合タンパク質(HBP)の量を決定することをさらに含み得る。
【0073】
一態様では、sFlt1、シスタチンCおよびビリルビンが決定される。
【0074】
別の態様では、sFlt1、シスタチンCおよびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼが決定される。
【0075】
別の態様では、sFlt1、シスタチンCおよびアラニンアミノトランスフェラーゼが決定される。
【0076】
別の態様では、sFlt1、シスタチンCおよびHBPが決定される。
【0077】
クレアチニンの量が第2のバイオマーカーとして決定される場合、前記方法は、アラニンアミノトランスフェラーゼの量を第3のバイオマーカーとして決定することをさらに含み得る。したがって、sFlt1、クレアチニンおよびアラニンアミノトランスフェラーゼが決定される。
【0078】
本発明は上記のマーカーに限定されないことを理解されたい。むしろ、本発明は、さらなるマーカーの決定を包含し得る。
【0079】
本明細書で使用される「基準」という用語は、疾患もしくは症状に罹患しているもしくは疾患もしくは症状を発症するリスクがある対象の群または前記疾患もしくは症状に罹患していないもしくは前記疾患もしくは症状を発症するリスクがない対象の群のいずれかに対象を割り当てることを可能にする量または値を指す。このような基準は、これらのグループを互いに分離する閾値量であり得る。したがって、基準は、疾患もしくは症状に罹患しているか、もしくは疾患もしくは症状を発症するリスクがあるか、またはこれらに該当しない対象の群への対象の割り当てを可能にする量またはスコアであるものとする。例えば、基準は、(約48時間以内など、上記の予測ウィンドウ内に)敗血症を発症するリスクがあるか、または配列を発症するリスクがない対象の群への対象の割り当てを可能にする量またはスコアであるものとする。
【0080】
2つの群を分離する適切な閾値量は、疾患もしくは症状に罹患していることが知られているかもしくは疾患もしくは症状を発症するリスクがある対象もしくは対象の群、または疾患もしくは症状に罹患していないことが知られているかもしくは疾患もしくは症状を発症するリスクがある対象もしくは対象の群のいずれかからのバイオマーカーの量に基づいて、本明細書の他の箇所で言及される統計学的検定によって、さらなる手間をかけることなく計算され得る。個々の対象に対して適用可能な基準量は、年齢、性別または亜集団などの様々な生理学的パラメータに応じて変化し得る。
【0081】
典型的には、前記基準は、敗血症を発症するリスクがあることが知られている少なくとも1つの対象に由来する各バイオマーカーについての基準であり、好ましくは、前記バイオマーカーのそれぞれについての量が対応する基準と本質的に同一であるかもしくは類似することが、対象が敗血症を発症するリスクがあることを示し、前記バイオマーカーのそれぞれについての量が対応する基準と異なることが、対象が敗血症を発症するリスクがないことを示す。
【0082】
同じく典型的には、前記基準は、敗血症を発症するリスクがないことが知られている少なくとも1つの対象に由来する各バイオマーカーについての基準であり、好ましくは、前記バイオマーカーのそれぞれについての量が対応する基準と本質的に同一であるかもしくは類似することが、対象が敗血症を発症するリスクがないことを示し、前記バイオマーカーのそれぞれについての量が対応する基準と異なることが、対象が敗血症を発症するリスクがあることを示す。
【0083】
「少なくとも1つの対象」という用語は、1つの対象または2つ以上の対象、例えば少なくとも10、50、100、200または1000の対象を指す。
【0084】
一態様では、前記バイオマーカーについての基準よりも大きいバイオマーカーの量は、(例えば、例えば試料が得られた後のある期間内に敗血症を発症する)リスクがある対象を示す。さらに、前記バイオマーカーについての基準よりも低いバイオマーカーの量は、リスクがない対象を示す。
【0085】
原則として、統計学的に標準的な方法を適用することによって、バイオマーカー量などの所定のパラメータに対する平均または平均値に基づいて、対象のコホートについて基準量を算出することができる。特に、事象の診断を目的とする方法などの検査が正確であるか否かは、その受信者動作特性(ROC)により最もよく説明される(特に、Zweig1993,Clin.Chem.39:561-577を参照されたい)。ROCグラフは、観察されたデータの全範囲にわたって決定閾値を連続的に変動させることにより生じる、全ての感度/特異度のペアのプロットである。診断方法の臨床成績は、その正確性、すなわち対象をある特定の予後または診断に正確に割り当てるその能力に依存する。ROCプロットは、区別を行うのに適した閾値の全範囲について、感度対1-特異度をプロットすることにより、2つの分布間の重複を示す。y軸は、感度、または真陽性率であり、真陽性検査結果の数および偽陰性検査結果の数の積に対する、真陽性検査結果の数の比率として定義される。これは、疾患または症状の存在下での陽性とも呼ばれている。感度は、疾患を有する部分群のみから計算される。x軸は、偽陽性率、または1-特異度であり、真陰性の数および偽陽性結果の数の積に対する、偽陽性結果の数の比率として定義される。偽陽性率は、特異度の指標であり、疾患を有さない部分群のみから計算される。真陽性率および偽陽性率は、2つの異なる部分群からの検査結果を使用することによって完全に別個に計算されるので、ROCプロットはコホートにおける事象の罹患率に依存しない。ROCプロット上の各点は、特定の決定閾値に相当する感受/-特異度の対を表す。完全な識別を有する(結果の2つの分布に重複がない)検査は、左上隅を通過するROCプロットを有し、真陽性率は1.0、または100%(完全な感度)であり、偽陽性率は0(完全な特異度)となる。識別を有さない(2つの群についての結果の分布が同一である)検査についての理論上のプロットは、左下隅から右上隅への45°の対角線となる。ほとんどのプロットは、これらの2つの極値の間に収まる。ROCプロットが45°の対角線を完全に下回って収まる場合、これは、「陽性」についての基準を「より高い」から「より低い」に入れ替えることによって、容易に修正され、逆も同様である。定性的には、プロットが左上隅に近いほど、検査全体の精度が高くなる。所望の信頼区間に応じて、ROC曲線から閾値を導くことができ、これにより、それぞれ感度と特異度の適切なバランスを備えた所与の事象についての診断または予測が可能になる。したがって、本発明の前述の方法に対して使用される基準、すなわち、通常、上述のように前記コホートに対してROCを確立し、そこから閾値量を導出することによって、敗血症を発症するリスクがある対象と敗血症を発症するリスクがない対象とを識別することを可能にする閾値。診断方法に対する所望される感度および特異度に応じて、ROCプロットは適切な閾値を導出することを可能にする。増大したリスクを有することまたは疾患に罹患していることに関して対象を除外する(すなわち、除外)ためには最適な感度が望ましいが、増大したリスクを有するまたは疾患に罹患しているとして対象を評価すべき場合には(すなわち、包含)、最適な特異度が想定されることが理解されよう。
【0086】
本発明の方法の工程c)は、バイオマーカー(すなわち、第1のバイオマーカー、第2のバイオマーカー、および任意に第3のバイオマーカー)の量を前記バイオマーカーについての基準と比較すること、ならびに/またはバイオマーカーの量に基づいて感染の疑いがある対象を評価するためのスコアを計算することを含む。
【0087】
したがって、第1のバイオマーカー、第2のバイオマーカー、および任意に第3のバイオマーカーの量は、それぞれ、第1のバイオマーカーについての基準、第2のバイオマーカーについての基準、および任意に第3のバイオマーカーについての基準と比較され得る。
【0088】
あるいは、バイオマーカーの量に基づいて、すなわち第1のバイオマーカー、第2のバイオマーカー、および任意に第3のバイオマーカーの量に基づいて、スコアが計算され得る。前記スコアは、敗血症を発症するリスクを予測することなど、感染の疑いがある対象を評価することを可能にするものとする。任意に、前記スコアは、適切な基準スコアと比較され得る。
【0089】
本明細書で使用される「比較する」という用語は、本明細書で言及されるバイオマーカーに対して決定された量を基準と比較することを包含する。本明細書で使用される比較するとは、量についての値と基準との間で行われる任意の種類の比較を指すことを理解されたい。しかしながら、好ましくは、同一のタイプの値が互いに比較され、例えば、本発明の方法において絶対量が決定され、比較される場合には、基準も絶対量であり、本発明の方法において相対量が決定され、比較される場合には、基準も相対量である、などと理解されるべきである。あるいは、本明細書で使用される「比較する」という用語は、計算されたスコアを適切な基準スコア(core)と比較することを包含する。比較は、手動でまたはコンピュータ支援により実行され得る。量の値および基準は、例えば、互いに比較され得、前記比較は、比較のためのアルゴリズムを実行するコンピュータプログラムによって自動的に実行され得る。前記評価を実行するコンピュータプログラムは、適切な出力形式で、所望の評価を提供する。
【0090】
上記のように、第1および第2のバイオマーカー、または第1、第2もしくは第3のバイオマーカーの量に基づいて1つのスコア(特に単一のスコア)、すなわち単一のスコアを計算し、このスコアを基準スコアと比較することも想定される。好ましくは、スコアは、検査対象由来の試料中の第1および第2のバイオマーカーの量に基づき、第3のバイオマーカーの量が決定される場合には、検査対象由来の試料中の第1、第2および第3のバイオマーカーの量に基づく。
【0091】
計算されたスコアは、少なくとも2つまたは3つのバイオマーカーの量に関する情報を組み合わせる。さらに、スコアにおいて、バイオマーカーは、好ましくは、評価の確立への寄与に従って重み付けされる。したがって、個々のマーカーについての値は通常重み付けされ、重み付けされた値はスコアを計算するために使用される。適切な係数(重み)は、当業者によって、さらに手間をかけずに決定され得る。スコアは、少なくとも2つのバイオマーカーについて訓練された決定木または決定木のセット(アンサンブル)からも計算され得る。本発明の方法で適用されるバイオマーカーの組み合わせに基づいて、個々のバイオマーカーの重みおよび決定木の構造は異なり得る。
【0092】
スコアは、本明細書に記載の対象を評価するための分類子パラメータとみなされ得る。特に、単一のスコアに基づいて評価を提供する人を可能にする。基準スコアは、好ましくは値、特に本明細書に記載される感染の疑いがある対象を評価することを可能にするカットオフ値である。好ましくは、基準は単一の値である。したがって、個々のバイオマーカーの量に関する情報全体を解釈する必要はない。本明細書に記載されているスコアリングシステムを使用すると、値がスコアに数学的に変換されるので、有利には、バイオマーカーについての異なる次元または単位の値が使用され得る。したがって、例えば、絶対濃度についての値が、スコアにおいて、ピーク面積比と組み合わされ得る。適用される基準スコアは、所望の感度または所望の特異度に基づいて選択され得る。適切な基準スコアをどのように選択するかは、当技術分野で周知である。
【0093】
有利には、本発明の基礎となる研究において、第1のバイオマーカーと第2のバイオマーカー、好ましくは第3のバイオマーカーとの組み合わせが、感染の徴候および症候を示す患者の信頼できる早期評価を可能にすることが見出された。例えば、対象の評価は、試験試料が得られた後5時間以内に行われ得る。研究では、医療(非外科的)救急患者である救急診療科に存在する患者を調査した。この目的のために、高い確率で敗血症に罹患している患者と、敗血症なしで感染症に罹患していると疑われる患者とに患者を分けた。様々なバイオマーカーの量を決定し、バイオマーカーを分析し、論理回帰分析によって数学的に組み合わせた。受信者動作特性下面積(AUC)を使用して、バイオマーカーの性能を評価した。AUC値は、区間[a][b]内の関数f(x)の数学的積分である。バイオマーカー対およびトリプレットについても、AUCを調べた。合わせて、最も優れた単一のバイオマーカーAUCよりも改善されたAUCを示したバイオマーカーの組み合わせが特定された。結果は、以下の添付の実施例に記載されている。
【0094】
特に、これらの患者が、例えば救急部門に存在している場合、敗血症、SIRSなどの重篤な合併症を発症するリスクまたは患者の全体的な健康状態の全般的な悪化の早期評価が、薬物投与、身体的もしくはその他の治療的介入および/または入院を含む治療措置を開始するために決定的である。これらの治療措置は、特に、例えば、広域抗生物質の迅速な投与、輸液蘇生、血管作動薬治療、人工呼吸、他の臓器支援(例えば、連続的血液ろ過、体外式膜型人工肺)を含み得る。より高いレベルのケア(例えば、集中治療室、中間治療室)へのトリアージも治療措置として包含される。重度の合併症のリスクが存在しない場合、患者は、退院して自宅に戻り、外来状況で管理されるか、または低いレベルのケア(例えば、一般病棟)で病院に入院することができる。本発明のおかげで、患者を早期にバイオマーカー決定によって評価することができるので、生命を脅かす進行を防ぐことができる。本発明の基礎となる研究で特定されたバイオマーカーの対および3つの組は、医学的決定のための信頼できる基礎であり、評価は、時間効率および費用効率に優れた様式で実行され得る。
【0095】
したがって、本発明の方法は、適切な治療措置を推奨することまたは開始することをさらに含み得る。典型的には、当該適切な治療措置は、International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock(Intensive Care Med,2017)などの敗血症の管理のための医療ガイドラインまたは推奨から選択される。例えば、治療措置は、敗血症の処置またはさらなる診断調査または医師が必要と考えるケアの他の態様であり得る。
【0096】
一態様では、患者がリスクを有すると評価された場合に推奨または開始される治療措置は、以下から選択される。
・典型的には、病原体である可能性が高いと考えられる生物および抗生物質感受性に応じて、セファロスポリン、ベータラクタム/ベータラクタマーゼ阻害剤(例えば、ピペラシリン)またはカルバペネムなどの少なくとも1つまたは複数の広域抗生物質を用いた経験的広域スペクトル療法の投与
・輸液蘇生
・ノルエピネフリンの投与などの1つまたは複数の血管収縮薬の投与、および
・ヒドロコルチゾンの投与などの1つまたは複数のコルチコステロイドの投与
【0097】
本明細書での上で与えられた定義は、以下に準用される。
【0098】
本発明は、感染の疑いがある対象を評価するためのコンピュータに実装された方法であって、
(a)前記対象の試料中の第1のバイオマーカーの量についての値を受け取る工程であって、前記第1のバイオマーカーはsFlt1である、工程と、
(b)前記対象の試料中の第2のバイオマーカーの量についての値を受け取る工程であって、前記第2のバイオマーカーは、シスタチンC、IGFBP7、心筋トロポニン、クレアチニン、sTREM1、PCTおよびビリルビンからなる群から選択される工程と、
(c)前記バイオマーカーの量についての前記値を前記バイオマーカーについての基準と比較する、および/または前記バイオマーカーの量に基づいて感染の疑いがある前記対象を評価するためのスコアを計算する工程と、
(d)工程(c)において行われた前記比較および/または前記計算に基づいて前記対象を評価する工程と
を含む、方法にも関する。
【0099】
本明細書で使用される「コンピュータに実装された」という用語は、方法が、通例、コンピュータまたは類似のデータ処理装置中に含まれるデータ処理ユニット上で自動化された様式で実行されることを意味する。データ処理ユニットは、バイオマーカーの量についての値を受け取るものとする。そのような値は、量、相対量または本明細書の他の箇所で詳細に記載されている量を反映する任意の他の計算された値であり得る。したがって、上述の方法は、バイオマーカーについての量の決定を必要とせず、むしろ既に予め決定された量についての値を使用することを理解されたい。
【0100】
典型的には、前記方法の工程(b)において、
(i)シスタチンCの前記量についての前記値が前記第2のバイオマーカーとして受け取られる場合、前記方法は、ビリルビン、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼもしくはヘパリン結合タンパク質(HBP)の前記量についての値を第3のバイオマーカーとして受け取ることをさらに含み、または
(ii)クレアチニンの前記量についての前記値が前記第2のバイオマーカーとして受け取られる場合、前記方法は、アラニンアミノトランスフェラーゼの前記量についての値を第3のバイオマーカーとして受け取ることをさらに含む。
【0101】
本発明はまた、原則として、コンピュータプログラム、コンピュータプログラム製品、または前記コンピュータプログラムが有形的に組み込まれたコンピュータ可読記憶媒体も企図し、前記コンピュータプログラムは、データ処理装置またはコンピュータで実行されると上記のような本発明の方法を実行する、命令を含む。具体的には、本開示は、以下をさらに包含する:
-少なくとも1つのプロセッサを備え、プロセッサは、本明細書に記載されている態様のうちの1つによる方法を実行するように適合されているコンピュータまたはコンピュータネットワーク、
-コンピュータ上で実行されているときに、本明細書に記載されている態様のうちの1つによる方法を実行するように適合されているコンピュータロード可能データ構造、
-コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されているときに、コンピュータプログラムが、本明細書に記載されている態様のうちの1つによる方法を実行するように適合されている、コンピュータスクリプト、
-コンピュータ上またはコンピュータネットワーク上で実行されているときに、本明細書に記載されている態様のうちの1つによる方法を実行するためのプログラム手段を備えるコンピュータプログラム、
-先行の態様によるプログラム手段を備え、プログラム手段はコンピュータにとって読み取り可能な記憶媒体に記憶されているコンピュータプログラム、
-データ構造が記憶媒体に記憶されており、データ構造が、コンピュータのまたはコンピュータネットワークの主記憶装置および/または作業記憶装置にロードされた後に、本明細書に記載されている態様のうちの1つによる方法を実行するように適合されている、記憶媒体、
-プログラムコード手段がコンピュータ上またはコンピュータネットワーク上で実行された場合に、本明細書に記載されている態様のうちの1つによる方法を実行するために記憶媒体上に記憶され得るかまたは記憶されているプログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品、
-本明細書の他の箇所で定義されているパラメータについてのデータを含む、典型的には暗号化されているデータストリーム信号、ならびに
-本発明の方法によって提供された評価を含む、典型的には暗号化されているデータストリーム信号。
【0102】
本発明は、感染の疑いがある対象を評価するための装置であって、
(a)前記対象の試料中の、sFlt1である第1のバイオマーカーと、シスタチンC、IGFBP7、心筋トロポニン、クレアチニン、sTREM1、PCTおよびビリルビンからなる群から選択される第2のバイオマーカーの量を決定するための測定ユニットであって、前記測定ユニットは、前記第1のバイオマーカーおよび前記第2のバイオマーカーのための検出システムを備える、測定ユニットと、
(b)前記測定ユニットに動作可能に連結された評価ユニットであって、好ましくは上に記載されているように、前記第1のバイオマーカーおよび前記第2のバイオマーカーについての保存された基準を有するデータベースと、好ましくは上に記載されているように、前記第1のバイオマーカーおよび前記第2のバイオマーカーの量と基準との比較を実行するためのおよび/または前記バイオマーカーの量に基づいて前記感染の疑いがある対象を評価するためのスコアの計算を実行するための、ならびに前記比較に基づいて前記対象を評価するための命令を含むデータプロセッサとを備え、前記評価ユニットは、前記測定ユニットから前記バイオマーカーの量についての値を自動的に受け取ることができる、評価ユニットと
を備える、装置。
【0103】
本明細書で使用される「装置」という用語は、評価が提供され得るように、本発明の方法によるバイオマーカーの量の決定およびその評価を可能にするように互いに動作可能に連結された前述のユニットを備えるシステムに関する。
【0104】
分析ユニットは、典型的には、試料と接触させるべき固体支持体または担体上に、固定化された形態で、第1および第2のバイオマーカー、ならびに好ましくは第3のバイオマーカーのためのバイオマーカー検出剤を有する少なくとも1つの反応ゾーンを備える。さらに、反応ゾーンでは、試料中に含まれるバイオマーカーへの検出剤の特異的結合を可能にする条件を適用することが可能である。
【0105】
反応ゾーンは、試料適用を直接可能にし得るか、または試料が適用される搭載ゾーンに接続され得る。後者の場合、試料は、搭載ゾーンと反応ゾーン間の接続部を介して反応ゾーンに能動的または受動的に輸送され得る。さらに、反応ゾーンは検出器にも接続されるものとする。接続は、検出器がバイオマーカーのそれらの検出剤への結合を検出できるようなものでなければならない。適切な接続は、バイオマーカーの存在または量を測定するために使用される技術に依存する。例えば、光学的検出のためには、検出器と反応ゾーンの間に光の透過が必要とされ得る一方で、電気化学的決定のためには、例えば反応ゾーンと電極の間に流体接続が必要とされ得る。
【0106】
検出器は、バイオマーカーの量の決定を検出するように適合されるものとする。決定された量は、続いて評価ユニットに伝達され得る。前記評価ユニットは、試料中に存在する量を決定するための実装されたアルゴリズムを有するコンピュータなどのデータ処理要素を備える。
【0107】
本発明の方法に従って言及される処理ユニットは、典型的には、中央処理装置(CPU)および/または1つもしくは複数のグラフィック処理ユニット(GPU)および/または1つもしくは複数の特定用途向け集積回路(ASIC)および/または1つもしくは複数のテンソル処理ユニット(TPU)および/または1つもしくは複数のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などを備える。データ処理要素は、例えば、汎用コンピュータまたはポータブルコンピューティング装置であり得る。本明細書に開示された方法の1つまたは複数の工程を実行するために、ネットワークまたはデータを転送する他の方法を介してなど、複数のコンピューティング装置が一緒に使用され得ることも理解されたい。例示的なコンピューティング装置には、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、携帯情報端末(「PDA」)、セルラ装置、スマートまたはモバイル装置、タブレットコンピュータ、サーバなどが含まれる。一般に、データ処理要素は、複数の命令(ソフトウェアのプログラムなど)を実行することができるプロセッサを備える。
【0108】
評価ユニットは、典型的には、メモリを備えるか、またはメモリへのアクセスを有する。メモリは、コンピュータ可読媒体であり、例えば、コンピューティング装置とともにローカルに配置されるか、またはネットワークを通じてコンピューティング装置にアクセス可能に配置される、単一のストレージ装置または複数のストレージ装置を備え得る。コンピュータ可読媒体は、コンピューティング装置がアクセスすることが可能であり、揮発性媒体と不揮発性媒体の両方を含む任意の利用可能な媒体であり得る。さらに、コンピュータ可読媒体は、リムーバブル媒体および非リムーバブル媒体の一方または両方であり得る。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体を備え得る。例示的なコンピュータ記憶媒体としては、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリもしくは任意の他のメモリ技術、CD-ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)もしくは他の光ディスク記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置もしくはその他の磁気記憶装置、またはコンピューティング装置によってアクセスされ、コンピューティング装置のプロセッサによって実行されることが可能な複数の命令を記憶するために使用することができる任意の他の媒体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0109】
本開示の態様によれば、ソフトウェアは、コンピューティング装置のプロセッサによって実行されると、本明細書に開示される方法の1つまたは複数の工程を実行し得る命令を含み得る。命令のいくつかは、他の機械の動作を制御する信号を生成するように適合され得、したがって、コンピュータ自体から遠く離れたデータ(materials)を変換するためにそれらの制御信号を介して動作し得る。これらの記述および表現は、データ処理の当業者によって、例えば、研究の内容を他の当業者に最も効果的に伝えるために使用される手段である。
【0110】
複数の命令はまた、所望の結果をもたらす自己矛盾のない一連の工程であると一般に考えられるアルゴリズムを含み得る。これらの工程は、物理量の物理的操作を必要とする工程である。必ずではないが、通常、これらの量は、記憶され、転送され、変換され、結合され、比較され、およびその他操作されることが可能な電気または磁気パルスまたは信号の形態をとる。このような信号が具体化または表現される物理的な物品または表明への参照として、これらの信号を値、文字、表示データ、数字などとして参照することは、主に共通の使用の理由から、時に便利であることが判明している。しかしながら、これらおよび類似の用語のすべては、適切な物理量に関連付けられるべきであり、ここでは単にこれらの量に適用される便利なラベルとして使用されることに留意されたい。
【0111】
評価ユニットはまた、出力装置を備えてもよく、または出力装置へのアクセスを有する。例示的な出力装置としては、例えば、ファックス、ディスプレイ、プリンタおよびファイルなどが挙げられる。本開示のいくつかの態様によれば、コンピューティング装置は、本明細書に開示される方法の1つまたは複数の工程を実行し、その後、出力装置を介して、方法の結果、指示、比または他の因子に関する出力を提供し得る。
【0112】
典型的には、前記測定ユニットは、第3のバイオマーカーのための検出システムを決定し、および備え、前記データベースが、第3のバイオマーカーについての保存された基準を備え、前記第3のバイオマーカーは、
(i)シスタチンCが前記第2のバイオマーカーである場合、ビリルビン、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼもしくはヘパリン結合タンパク質(HBP)、または
(ii)クレアチニンが第2のバイオマーカーである場合、アラニンアミノトランスフェラーゼ
である。
【0113】
より典型的には、前記検出システムは、バイオマーカーの各々を特異的に検出することができる少なくとも1つの検出剤を含む。
【0114】
本発明は、さらに、感染の疑いがある対象を評価するための装置であって、sFlt1である第1のバイオマーカーならびにシスタチンC、IGFBP7、心筋トロポニン、クレアチニン、sTREM1、PCTおよびビリルビンからなる群から選択される第2のバイオマーカーについての保存された基準を有するデータベースと、好ましくは、上に記載されているように、前記第1のバイオマーカーおよび前記第2のバイオマーカーの量と基準との比較を実施するための、ならびに前記比較に基づいて前記対象を評価するための命令を含むデータプロセッサとを備える評価ユニットを備え、前記評価ユニットは、前記対象の試料中で決定された前記バイオマーカーの量についての値を受け取ることができる、装置を想定する。
【0115】
典型的には、前記データベースは、第3のバイオマーカーについての保存された基準を含み、前記第3のバイオマーカーは、
(i)シスタチンCが前記第2のバイオマーカーである場合、ビリルビン、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼもしくはヘパリン結合タンパク質(HBP)、または
(ii)クレアチニンが第2のバイオマーカーである場合、アラニンアミノトランスフェラーゼ
である。
【0116】
本発明は、原則として、sFlt1である第1のバイオマーカーならびにシスタチンC、IGFBP7、心筋トロポニン、クレアチニン、sTREM1、PCTおよびビリルビンからなる群から選択される第2のバイオマーカー、または前記第1のバイオマーカーに特異的に結合する検出剤および前記第2のバイオマーカーに特異的に結合する検出剤の、感染の疑いがある対象を評価するための使用にも関する。
【0117】
本明細書で使用される「検出剤」という用語は、典型的には、バイオマーカーに特異的に結合する任意の作用物質、すなわち試料中に存在する他の成分と交差反応しない作用物質を指す。典型的には、本明細書で言及されるバイオマーカーを特異的に結合する検出剤は、抗体、抗体断片もしくは誘導体、アプタマー、バイオマーカーに対するリガンド、バイオマーカーに対する受容体、バイオマーカーを結合するおよび/もしくは変換することが知られている酵素、またはバイオマーカーに特異的に結合することが知られている小分子であり得る。例えば、本明細書で検出剤と呼ばれる抗体は、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の両方、ならびに抗原またはハプテンを結合することができるFv、FabおよびF(ab)2断片などのそれらの断片を含む。本発明はまた、所望の抗原特異性を示す非ヒトドナー抗体のアミノ酸配列がヒトアクセプター抗体の配列と組み合わされた一本鎖抗体およびヒト化ハイブリッド抗体を含む。ドナー配列は、通常、少なくともドナーの抗原結合アミノ酸残基を含むが、ドナー抗体の他の構造的および/または機能的に関連するアミノ酸残基も含み得る。このようなハイブリッドは、当技術分野で周知のいくつかの方法によって調製され得る。アプタマー検出剤は、例えば、核酸またはペプチドアプタマーであり得る。このようなアプタマーを調製するための方法は、当技術分野で周知である。例えば、アプタマーの基礎となっている核酸またはペプチド中にランダムな変異を導入することができる。次いで、当技術分野で知られたスクリーニング手順、例えばファージディスプレイに従ってこれらの誘導体を結合について試験することができる。検出剤の特異的結合は、分析されるべき試料中に存在する別のペプチド、ポリペプチドまたは物質に実質的に結合すべきでない、すなわち交差反応すべきでないことを意味する。好ましくは、特異的に結合されたバイオマーカーは、試料の任意の他の成分よりも少なくとも3倍高い、より好ましくは少なくとも10倍高い、さらにより好ましくは少なくとも50倍高い親和性で結合されるべきである。例えばウエスタンブロット上でのそのサイズに応じて、または試料中でのその比較的高い存在量によって、非特異的結合が依然として明確に区別および測定され得るのであれば、非特異的結合は許容され得る。
【0118】
検出剤は、検出可能な標識に永久的または可逆的に融合または連結され得る。適切な標識は当業者に周知である。適切な検出可能な標識は、適切な検出方法によって検出可能な任意の標識である。典型的な標識としては、金粒子、ラテックスビーズ、アクリダンエステル、ルミノール、ルテニウム、酵素的に活性な標識、放射性標識、磁気標識(「例えば、磁気ビーズ」、常磁性及び超常磁性標識を含む)、および蛍光標識が挙げられる。酵素的に活性な標識としては、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、βガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼおよびこれらの誘導体が挙げられる。検出に適した基質としては、ジアミノベンジジン(DAB)、3,3’-5,5’-テトラメチルベンジジン、NBT-BCIP(Roche Diagnostics製の既成の保存溶液として入手可能な4-ニトロブルーテトラゾリウムクロリドおよび5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-ホスファート)、CDP-Star(商標)(Amersham Biosciences)、ECF(商標)(Amersham Biosciences)が挙げられる。適切な酵素-基質の組み合わせにより、着色された反応産物、蛍光または化学発光が生じ得、これらは、当技術分野で公知の方法によって(例えば、感光フィルムまたは適切なカメラシステムを使用して)、測定され得る。酵素反応の測定に関しては、上記の基準が同様に適用される。典型的な蛍光標識としては、蛍光タンパク質(例えば、GFPおよびその誘導体)、Cy3、Cy5、テキサスレッド、フルオレセインおよびAlexa色素(例えば、Alexa 568)が挙げられる。さらなる蛍光標識は、例えば、Molecular Probes(Oregon)から入手可能である。また、蛍光標識としての量子ドットの使用が企図される。典型的な放射性標識としては、35S、125I、32P、33Pなどが挙げられる。放射性標識は、公知且つ適切な任意の方法、例えば感光膜またはホスホイメージャー(phosphor imager)によって検出され得る。適切な標識はまた、ビオチン、ジゴキシゲニン、His-Tag、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、FLAG、GFP、myc-タグ、インフルエンザAウイルス赤血球凝集素(HA)、マルトース結合タンパク質などのタグであり得るか、またはこれらを含み得る。
【0119】
AST、ALT、ビリルビン、アルブミンおよびクレアチニンなどのバイオマーカーのための好ましい検出剤は、例えば実施例に記載されている(実施例1参照)。
【0120】
バイオマーカーがASTまたはALTなどの酵素である場合、検出剤は、酵素の基質、または検出のために使用される任意の作用物質であり得る(実施例を参照)。
【0121】
一態様では、ALT(ALAT)のための検出剤は、例えばL-アラニンである。
【0122】
一態様では、AST(ASAT)のための検出剤は、例えば、L-アスパラギン酸である。
【0123】
クレアチニンのための検出剤は、例えば、クレアチニナーゼ、または検出のために使用される任意の作用物質である(実施例を参照)。
【0124】
アルブミンのための検出剤は、例えばブロムクレゾールパープルである。
【0125】
ビリルビンのための検出剤は、例えば亜硝酸ナトリウムおよびスルファニル酸、または検出のために使用される任意の作用物質である(実施例を参照)。
【0126】
本明細書に記載されているバイオマーカーの決定は、(例えば、LCまたはHPLCによる)分離工程の後に実行される質量分析(MS)を含み得る。本明細書で使用される質量分析は、本発明に従って決定される化合物、すなわちバイオマーカーに対応する分子量(すなわち、質量)または質量変数の決定を可能にするすべての技術を包含する。好ましくは、本明細書で使用される質量分析は、GC-MS、LC-MS、直接注入質量分析、FT-ICR-MS、CE-MS、HPLC-MS、四重極質量分析、MS-MSもしくはMS-MS-MSなどの任意の連続的に結合された質量分析、ICP-MS、Py-MS、TOF、または前述の技術を使用する任意の組み合わされたアプローチに関する。これらの技術をどのように適用するかは、当業者に周知である。さらに、適切な装置が市販されている。より好ましくは、本明細書で使用される質量分析は、LC-MSおよび/またはHPLC-MS、すなわち、事前の液体クロマトグラフィー分離工程に動作可能に連結されている質量分析に関する。好ましくは、質量分析はタンデム質量分析(MS/MSとしても知られる)である。タンデム質量分析は、MS/MSとしても知られており、2つ以上の質量分析工程を含み、段階の間に断片化が起こる。タンデム質量分析では、直列の2つの質量分析計が衝突室によって接続されている。質量分析計は、クロマトグラフィー装置に連結されている。クロマトグラフィーによって分離された試料は、第1の質量分析計において分別および秤量された後、衝突室において不活性ガスによって断片化され、1つまたは複数の小片が第2の質量分析計において分別および秤量される。断片は、第2の質量分析計において分別および秤量される。MS/MSによる同定がより正確である。
【0127】
一態様では、本明細書で使用される質量分析は四重極MSを包含する。最も好ましくは、前記四重極MSは、以下のように実行される:a)質量分析計の第1の分析四重極でのイオン化によって生成されたイオンの質量/電荷商(m/z)の選択、b)衝突ガスで満たされ、衝突室として作用する追加の後続の四重極において加速電圧を印加することによる、工程a)で選択されたイオンの断片化、c)追加の後続の四重極における工程b)での断片化過程によって生成されたイオンの質量/電荷商の選択(方法の工程a)~c)は少なくとも1回実行される)、イオン化過程の結果として物質の混合物中に存在するすべてのイオンの質量/電荷商の分析、四重極は衝突ガスで満たされているが、分析中に加速電圧は印加されない。本発明に従って使用される前記の最も好ましい質量分析に関する詳細は、国際公開第2003/073464号に見出すことができる。
【0128】
より好ましくは、前記質量分析は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)MS、特にHPLC-MS/MSなどの液体クロマトグラフィー(LC)MSである。本明細書で使用される液体クロマトグラフィーは、液相または超臨界相での化合物(すなわち、代謝産物)の分離を可能にするすべての技術を指す。
【0129】
質量分析のために、試料中の分析物は、荷電分子または分子断片を生成するためにイオン化される。その後、イオン化された分析物、特にイオン化されたバイオマーカーまたはその断片の質量電荷比が測定される。イオン化の前に、試料は、プロテアーゼ、例えばトリプシンでの切断に供され得る。プロテアーゼは、タンパク質バイオマーカーをより小さな断片に切断する。
【0130】
したがって、質量分析工程は、好ましくは、決定されるべきバイオマーカーがイオン化されるイオン化工程を含む。もちろん、試料/溶出液中に存在する他の化合物もイオン化される。バイオマーカーのイオン化は、適切と考えられる任意の方法によって、特に電子衝撃イオン化、高速原子衝撃、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、大気圧化学イオン化(APCI)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)によって行われ得る。
【0131】
好ましい態様において、(質量分析のための)イオン化工程は、エレクトロスプレーイオン化(ESI)によって行われる。したがって、質量分析はESI-MS(またはタンデムMSが行われる場合:ESI-MS/MS)が好ましい。エレクトロスプレーは、化学結合を破壊することなくイオンの形成をもたらすソフトイオン化法である。
【0132】
より典型的には、第3のバイオマーカーまたは前記第3のバイオマーカーに特異的に結合する検出剤が追加的に使用され、前記第3のバイオマーカーは、
(i)シスタチンCが前記第2のバイオマーカーである場合、ビリルビン、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼもしくはヘパリン結合タンパク質(HBP)、または
(ii)クレアチニンが第2のバイオマーカーである場合、アラニンアミノトランスフェラーゼ
である。
【0133】
本発明は、sFlt1である第1のバイオマーカーに特異的に結合する検出剤と、シスタチンC、IGFBP7、心筋トロポニン、クレアチニン、sTREM1、PCTおよびビリルビンからなる群から選択される第2のバイオマーカーに特異的に結合する検出剤とを含む、感染の疑いがある対象を評価するためのキットにも関する。
【0134】
本明細書で使用される場合、「キット」という用語は、典型的には、別個に又は単一の容器内に提供される、上述の構成要素の集合を指す。容器は、典型的には、本発明の方法を実施するための説明書も備える。これらの説明書は、マニュアルの形態であってもよく、またはコンピュータもしくはデータ処理装置に実装されたときに本発明の方法で言及されるバイオマーカーの決定を実行または支援することができるコンピュータプログラムコードによって提供されてもよい。コンピュータプログラムコードは、光記憶媒体(例えば、コンパクトディスク)などのデータ記憶媒体もしくは装置上に、もしくは直接コンピュータもしくはデータ処理装置上に提供されてもよく、またはアクセス可能なサーバもしくはクラウドへのリンクなどのダウンロード形式で提供されてもよい。さらに、キットは、通常、本明細書の他の箇所に詳細に記載されているように、較正目的のためのバイオマーカーの基準量の標準を含み得る。本発明によるキットはまた、放出された第2の分子の検出のために必要とされる溶媒、緩衝液、洗浄溶液および/または試薬などの、本発明の方法を実施するために必要なさらなる構成要素を備え得る。さらに、キットは、本発明の装置を部分的にまたは全体的に備え得る。
【0135】
より典型的には、前記キットは、第3のバイオマーカーを特異的に結合する検出剤をさらに備え、前記第3のバイオマーカーは、
(i)シスタチンCが前記第2のバイオマーカーである場合、ビリルビン、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼもしくはヘパリン結合タンパク質(HBP)、または
(ii)クレアチニンが第2のバイオマーカーである場合、アラニンアミノトランスフェラーゼ
である。
【0136】
上で行った用語の定義および説明は、本明細書および添付の特許請求の範囲に記載されたすべての態様に対して適宜に適用されることを理解されたい。以下の態様は、本発明に従って想定される特定の態様である。
【0137】
1.感染の疑いがある対象を評定するための方法であって、
(a)前記対象の試料中の第1のバイオマーカーの量を決定する工程であって、前記第1のバイオマーカーはsFlt1である、工程と、
(b)前記対象の試料中の第2のバイオマーカーの量を決定する工程であって、前記第2のバイオマーカーは、シスタチンC、IGFBP7、心筋トロポニン、クレアチニン、sTREM1、PCTおよびビリルビンからなる群から選択される、工程と、
(c)前記バイオマーカーの量を前記バイオマーカーについての基準と比較し、かつ/または前記バイオマーカーの量に基づいて前記感染の疑いがある対象を評定するためのスコアを計算する工程と、
(d)工程(c)において行われた前記比較および/または前記計算に基づいて前記対象を評価する工程と
を含む、方法。
【0138】
2.工程(b)において、
(i)シスタチンCの量が前記第2のバイオマーカーとして決定される場合、前記方法が、ビリルビン、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼもしくはヘパリン結合タンパク質(HBP)の量を第3のバイオマーカーとして決定することをさらに含むか、または
(ii)クレアチニンの量が前記第2のバイオマーカーとして決定される場合、前記方法が、アラニンアミノトランスフェラーゼの量を第3のバイオマーカーとして決定することをさらに含む、態様1に記載の方法。
【0139】
3.前記対象が、救急科を受診している対象である、態様1または2に記載の方法。
【0140】
4.前記評価が、敗血症を発症するリスクの評価および/または前記対象の状態が悪化するリスクの評価である、態様1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0141】
5.前記基準が、敗血症を発症するリスクがあることが既知である少なくとも1つの対象に由来する各バイオマーカーについての基準であり、好ましくは、前記バイオマーカーのそれぞれについての量が、対応する基準と本質的に同一であるかもしくは類似することが、敗血症を発症するリスクがある対象であることを示し、前記バイオマーカーのそれぞれについての量が、対応する基準と異なることが、敗血症を発症するリスクがない対象であることを示す、態様1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0142】
6.前記基準が、敗血症を発症するリスクがないことが既知である少なくとも1つの対象に由来する各バイオマーカーについての基準であり、好ましくは、前記バイオマーカーのそれぞれについての量が、対応する基準と本質的に同一であるかもしくは類似することが、敗血症を発症するリスクがない対象であることを示し、前記バイオマーカーのそれぞれについての量が、対応する基準と異なることが、敗血症を発症するリスクがある対象であることを示す、態様1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0143】
7.前記対象が感染症に罹患しているか、または感染症に罹患していることが疑われる、態様1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0144】
8.前記試料が血液試料または血液試料に由来する試料である、態様1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0145】
9.前記対象がヒトである、態様1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0146】
10.感染の疑いがある対象を評定するためのコンピュータ実装方法であって、
(a)前記対象の試料中の第1のバイオマーカーの量についての値を受け取る工程であって、前記第1のバイオマーカーはsFlt1である、工程と、
(b)前記対象の試料中の第2のバイオマーカーの量についての値を受け取る工程であって、前記第2のバイオマーカーは、シスタチンC、IGFBP7、心筋トロポニン、クレアチニン、sTREM1、PCTおよびビリルビンからなる群から選択される工程と、
(c)前記バイオマーカーの量についての値を前記バイオマーカーについての基準と比較し、かつ/または前記バイオマーカーの量に基づいて感染の疑いがある前記対象を評定するためのスコアを計算する工程と、
(d)工程(c)において行われた前記比較および/または前記計算に基づいて前記対象を評価する工程と
を含む、方法。
【0147】
11.工程(b)において、
(i)シスタチンCの前記量についての前記値が前記第2のバイオマーカーとして受け取られる場合、前記方法が、ビリルビン、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼもしくはヘパリン結合タンパク質(HBP)の前記量についての値を第3のバイオマーカーとして受け取ることをさらに含むか、または
(ii)クレアチニンの前記量についての前記値が前記第2のバイオマーカーとして受け取られる場合、前記方法が、アラニンアミノトランスフェラーゼの前記量についての値を第3のバイオマーカーとして受け取ることをさらに含む、態様10に記載の方法。
【0148】
12.感染の疑いがある対象を評定するための装置であって、
(a)前記対象の試料中の、sFlt1である第1のバイオマーカーと、シスタチンC、IGFBP7、心筋トロポニン、クレアチニン、sTREM1、PCTおよびビリルビンからなる群から選択される第2のバイオマーカーの量を決定するための測定ユニットであって、前記測定ユニットは、前記第1のバイオマーカーおよび前記第2のバイオマーカーのための検出システムを備える、測定ユニットと、
(b)前記測定ユニットに動作可能に連結された評価ユニットであって、好ましくは態様1~9のいずれか1つに記載されているような、前記第1のバイオマーカーおよび前記第2のバイオマーカーについての保存された基準を有するデータベースと、好ましくは態様1~9のいずれか1つに記載されているような、前記第1のバイオマーカーおよび前記第2のバイオマーカーの量と基準との比較を実行するための、および/または前記バイオマーカーの量に基づいて前記感染の疑いがある対象を評価するためのスコアの計算を実行するための、ならびに前記比較に基づいて前記対象を評定するための命令を含むデータプロセッサと、を備え、前記測定ユニットから前記バイオマーカーの量についての値を自動的に受け取ることができる、評価ユニットと
を備える、装置。
【0149】
13.前記測定ユニットが、第3のバイオマーカーを決定し、かつ第3のバイオマーカーのための検出システムを備え、前記データベースが、第3のバイオマーカーについての保存された基準を備え、前記第3のバイオマーカーが、
(i)シスタチンCが前記第2のバイオマーカーである場合、ビリルビン、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼもしくはヘパリン結合タンパク質(HBP)であるか、または
(ii)クレアチニンが前記第2のバイオマーカーである場合、アラニンアミノトランスフェラーゼ
である、態様12に記載の装置。
【0150】
14.前記検出システムが、前記バイオマーカーの各々を特異的に検出することができる少なくとも1つの検出剤を含む、態様12または13に記載の装置。
【0151】
15.感染の疑いがある対象を評定するための装置であって、sFlt1である第1のバイオマーカーならびにシスタチンC、IGFBP7、心筋トロポニン、クレアチニン、sTREM1、PCTおよびビリルビンからなる群から選択される第2のバイオマーカーについての保存された基準を有するデータベースと、好ましくは、態様1~11のいずれか1つに記載されているような、前記第1のバイオマーカーおよび前記第2のバイオマーカーの量と基準との比較を実行するための、ならびに前記比較に基づいて前記対象を評定するための命令を含むデータプロセッサとを備える評価ユニットを備え、前記評価ユニットは、前記対象の試料中で決定された前記バイオマーカーの量についての値を受け取ることができる、装置。
【0152】
16.前記データベースは、第3のバイオマーカーについての保存された基準を備え、前記第3のバイオマーカーが、
(i)シスタチンCが前記第2のバイオマーカーである場合、ビリルビン、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼもしくはヘパリン結合タンパク質(HBP)、または
(ii)クレアチニンが前記第2のバイオマーカーである場合、アラニンアミノトランスフェラーゼ
である、態様15に記載の装置。
【0153】
17.sFlt1である第1のバイオマーカー、ならびにシスタチンC、IGFBP7、心筋トロポニン、クレアチニン、sTREM1、PCTおよびビリルビンからなる群から選択される第2のバイオマーカー、または前記第1のバイオマーカーに特異的に結合する検出剤および前記第2のバイオマーカーに特異的に結合する検出剤の、感染の疑いがある対象を評定するための使用。
【0154】
18.第3のバイオマーカーまたは前記第3のバイオマーカーに特異的に結合する検出剤が追加的に使用され、前記第3のバイオマーカーが、
(i)シスタチンCが前記第2のバイオマーカーである場合、ビリルビン、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼもしくはヘパリン結合タンパク質(HBP)であるか、または
(ii)クレアチニンが前記第2のバイオマーカーである場合、アラニンアミノトランスフェラーゼ
である、態様17に記載の使用。
【0155】
19.sFlt1である第1のバイオマーカーに特異的に結合する検出剤と、シスタチンC、IGFBP7、心筋トロポニン、クレアチニン、sTREM1、PCTおよびビリルビンからなる群から選択される第2のバイオマーカーに特異的に結合する検出剤とを含む、感染の疑いがある対象を評定するためのキット。
【0156】
20.前記キットが、第3のバイオマーカーを特異的に結合する検出剤をさらに含み、前記第3のバイオマーカーが、
(i)シスタチンCが前記第2のバイオマーカーである場合、ビリルビン、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼもしくはヘパリン結合タンパク質(HBP)、または
(ii)クレアチニンが前記第2のバイオマーカーである場合、アラニンアミノトランスフェラーゼ
である、態様19に記載のキット。
【0157】
21.前記評定が、敗血症を発症するリスクの評定である、態様1~20のいずれか1つに記載の方法、装置、使用またはキット。
【0158】
22.48時間以内に敗血症を発症するリスクが予測される、態様1~21のいずれか1つに記載の方法、装置、使用またはキット。
【0159】
本明細書を通して引用されたすべての参考文献は、上記で具体的に言及された開示内容およびその全体に関して本明細書に組み入れられる。
【実施例
【0160】
実施例1:バイオマーカーの決定
Elecsys(登録商標)電気化学発光(ECL)技術およびアッセイ方法を、PCTの決定に関して以下に簡単に記載する。cobas e801分析装置によって、PCTの濃度を決定した。cobas e801分析装置を用いたPCTの検出は、Elecsys(登録商標)電気化学発光(ECL)技術に基づく。簡潔には、ビオチン標識およびルテニウム標識抗体をそれぞれの量の未希釈試料と合わせ、分析装置でインキュベートする。続いて、ビオチン標識免疫複合体の結合を促進するために、ストレプトアビジン被覆磁性微粒子を添加し、機器でインキュベートする。このインキュベーション工程の後、反応混合物を測定セルに移し、そこでビーズを電極の表面に磁気的に捕捉する。次いで、結合したイムノアッセイ複合体を遊離の残りの粒子から分離するために、その後のECL反応のためのトリプロピルアミン(TPA)を含有するProCell M緩衝液を測定セルに導入する。次いで、作用電極と対電極との間の電圧の誘導は、ルテニウム錯体およびTPAによる光子の放出をもたらす反応を開始させる。得られた電気化学発光シグナルは、光電子増倍管によって記録され、それぞれの分析物の濃度レベルを示す数値に変換される。
【0161】
SFLT1またはsFLT1(可溶性fms様チロシンキナーゼ-1)は、cobas Elecsys(登録商標)ECLIAプラットフォーム(Roche Diagnostics、ドイツからのECLIAアッセイ)用に開発されたサンドイッチイムノアッセイである、市販のsFLT-1用のECLIAアッセイで測定された。アッセイは、sFLT-1を特異的に結合するビオチン化およびルテニウム化モノクローナル抗体を含む。各血清試料から12μLを使用し、cobas e801分析装置(Roche Diagnostics、ドイツ)で希釈せずに測定した。
【0162】
PCT(プロカルシトニン)は、cobas Elecsys(登録商標)ECLIAプラットフォーム(Roche Diagnostics、ドイツからのECLIAアッセイ)用に開発されたサンドイッチイムノアッセイである、市販のプロカルシトニンECLIAアッセイで測定された。アッセイは、PCTを特異的に結合するビオチン化およびルテニウム化モノクローナル抗体を含む。各血清試料から18μLを使用し、cobas e801分析装置(Roche Diagnostics、ドイツ)で希釈せずに測定した。
【0163】
CysC2(シスタチンC)は、cobas(登録商標)臨床化学分析装置プラットフォーム(Roche Diagnostics、ドイツ)用に開発された市販のCysC用PETIA(粒子増強免疫比濁法アッセイ)で測定された。アッセイは、CysCを特異的に結合する抗体で被覆されたラテックス粒子を含む。抗体試薬と試料を混合してインキュベートすると、試薬中の抗シスタチンC抗体で被覆されたラテックス強化粒子は、試料中のヒトシスタチンCと凝集する。凝集物によって引き起こされる濁度の程度は、546nmで濁度的に決定することができ、試料中のシスタチンCの量に比例する。各血清試料から2μLを使用し、cobas c501分析装置(Roche Diagnostics、ドイツ)で測定した。
【0164】
TNTHSまたはcTNThs(心筋トロポニンT)は、cobas Elecsys(登録商標)ECLIAプラットフォーム(Roche Diagnostics、ドイツからのECLIAアッセイ)用に開発されたサンドイッチイムノアッセイである、市販の高感度cトロポニンT用のECLIAアッセイで測定された。アッセイは、cTnThsを特異的に結合するビオチン化およびルテニウム化モノクローナル抗体を含む。各血清試料から50μLを使用し、cobas e801分析装置(Roche Diagnostics、ドイツ)で希釈せずに測定した。
【0165】
IGFBP7(インシュリン様成長因子結合タンパク質7)は、cobas Elecsys(登録商標)ECLIAプラットフォーム(Roche Diagnostics、ドイツからのECLIAアッセイ)用に社内で開発されたサンドイッチイムノアッセイである、IGFBP-7用の堅牢なプロトタイプECLIAアッセイで測定された。アッセイは、IGFBP-7を特異的に結合するビオチン化およびルテニウム化モノクローナル抗体を含む。各血清試料から10μLを使用し、cobas e601分析装置(Roche Diagnostics、ドイツ)で希釈せずに測定した。
【0166】
ESM1(内皮細胞特異的分子1)は、cobas Elecsys(登録商標)ECLIAプラットフォーム(Roche Diagnostics、ドイツからのECLIAアッセイ)用に社内で開発されたサンドイッチイムノアッセイである、ESM-1用の堅牢なプロトタイプECLIAアッセイで測定された。アッセイは、ESM-1を特異的に結合するビオチン化およびルテニウム化モノクローナル抗体を含む。各血清試料から20μLを使用し、cobas e601分析装置(Roche Diagnostics、ドイツ)で希釈せずに測定した。
【0167】
NGAL(好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン)試験は、NGALの定量的決定のための粒子増強比濁法イムノアッセイである。3μLの血漿を反応緩衝液R1と混合する。短いインキュベーションの後、免疫粒子懸濁液(NGALに対するマウスモノクローナル抗体で被覆されたポリスチレン微粒子)の添加によって反応を開始させる。Roche Diagnostics(ドイツ)からのアッセイ。試料中のNGALは、免疫粒子を凝集させる。光の吸収として測定される光散乱の量によって、凝集の程度が定量化される。試料中のNGAL濃度は、確立された検量線上での内挿によって決定される。試料は、cobas c501分析装置(Roche Diagnostics、ドイツ)で測定された。
【0168】
CREP2(クレアチニン):この酵素的方法は、クレアチニナーゼ、クレアチナーゼおよびサルコシンオキシダーゼを用いた、クレアチニンのグリシン、ホルムアルデヒドおよび過酸化水素への変換に基づいている。ペルオキシダーゼによって触媒されて、遊離した過酸化水素は4-アミノフェナゾンおよびHTIB a)と反応してキノンイミン色素原を形成する。形成されたキノンイミン色素原の着色強度は、反応混合物中のクレアチニン濃度に正比例する。Roche Diagnostics(ドイツ)からのアッセイ。1,7μLの血漿を分析した。試料は、cobas c501分析装置(Roche Diagnostics、ドイツ)で測定された。
【0169】
KL6(シアル酸付加された炭水化物抗原KL-6):試料中のシアル酸付加された炭水化物抗原KL-6(KL-6)は、抗原抗体反応を介して、マウスKL-6モノクローナル抗体で被覆されたラテックスと凝集する。この凝集によって引き起こされる吸光度の変化を測定してKL-6レベルを決定する。試薬は、Sekisui Medical Co.(日本)からのものであった。2.5μLの血漿を分析した。試料は、cobas c501分析装置(Roche Diagnostics、ドイツ)で測定された。
【0170】
suPAR(可溶性ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体)は、ヒト血漿試料中のsuPARを定量的に決定する比濁法イムノアッセイである。試験の第1段階は、ヒト起源の検体(EDTAまたはヘパリン血漿)の、R1試薬とのインキュベーションである。5分間のインキュベーション後、R2試薬を添加し、反応が開始する。反応緩衝液R2は、suPARに対するラットおよびマウスモノクローナル抗体で被覆されたラテックス粒子の懸濁液である。R2添加後、suPAR凝集のプロセスが開始し、蓄積のレベルは、光吸収の測定中の散乱光の量によって決定される。試験開始前に作成された線形の検量線を使用して、ヒト血漿試料中のsuPARの濃度を決定する。ViroGates(デンマーク)からの試薬。10μLの血漿を分析した。試料は、cobas c501分析装置(Roche Diagnostics、ドイツ)で測定された。
【0171】
HAPT2(ハプトグロビン):比濁法で決定される特異的抗血清とともに沈殿物を形成するヒトハプトグロビンの免疫比濁法アッセイ。3.9μLの血漿を分析した。試料は、cobas c501分析装置(Roche Diagnostics、ドイツ)で測定された。
【0172】
HBP(ヘパリン結合タンパク質):HBPの決定は、ポリエチレングリコールポリマー(PEG)の存在下、最適なpH条件で、循環HBPと、クロロメチル微粒子に結合したトリの単一特異性ポリクローナル抗体との間で起こる濁度反応に基づいている。変化の大きさは、試験試料中のHBPの量に比例する。Axis-Shield Diagnostics Ltd.(Scotland)からの試薬。10μLの血漿を分析した。試料は、cobas c501分析装置(Roche Diagnostics、ドイツ)で測定された。
【0173】
BILI(ビリルビン):ジアゾ化されたスルファニル酸は、低pHで亜硝酸ナトリウムとスルファニル酸とを組み合わせることによって形成される。カフェイン/ベンゾアート/アセタート/EDTAの混合物中での希釈によって、試料中のビリルビン(非抱合型)を可溶化する。ジアゾ化されたスルファニル酸を添加すると、抱合型ビリルビン(モノおよびジグルクロニド(diglucoronides))およびデルタフォーム2(アルブミンに共有結合したビリタンパク質-ビリルビン)を含む可溶化されたビリルビンがジアゾビリルビンに変換され、ジアゾビリルビンは540nmで吸収する総ビリルビンに相当する赤色発色団であり、二色性(540,700nm)終点技術を用いて測定される。試料ブランク補正が使用される。
【0174】
ALAT(アラニンアミノトランスフェラーゼ):アラニンアミノトランスフェラーゼは、L-アラニンのα-ケトグルタル酸(α-KG)へのアミノ基転移を触媒し、L-グルタミン酸とピルビン酸を形成する。形成されたピルビン酸は、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)によって乳酸に還元され、同時に還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)が酸化される。吸光度の変化は、アラニンアミノトランスフェラーゼ活性に正比例し、二色(bichromatic)(340、700nm)比率技術を用いて測定される。
【0175】
ASAT(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ):アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)は、L-アスパラギン酸からα-ケトグルタル酸へのアミノ基転移を触媒し、L-グルタミン酸とオキサロ酢酸(oxalacetate)を形成する。形成されたオキサロ酢酸は、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(MDH)によってリンゴ酸に還元され、同時に還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)が酸化される。NADHのNADへの変換による経時的な吸光度の変化は、AST活性に正比例し、二色(bichromatic)(340、700nm)比率技術を用いて測定され得る。
【0176】
実施例2:TRIAGE試験からの患者の分析
TRIAGE Study,Kantonsspital Aarau,Switzerland,Emergency Department.(Schuetz 2013,BMC emergency medicine,13(1),12)。
【0177】
医学的緊急事態のために救急診療科(ED)のケアを受けようとしているすべての治療継続患者をED入院時に含めた。以下に従って、合計4000人の患者から、入院時に感染の疑いがある患者のサブセットを選択し、可能性の高い敗血症症例群または感染対照群に分類した。
・症例(N=64):ICUに入院していたか、またはRhee 2017、「Incidence and Trends of Sepsis in US Hospitals Using Clinical vs Claims Data,2009-2014.」、JAMA 318(13):1241-1249の基準を満たす場合、ED診断の48時間以内に悪化/より高い重症度を有する、可能性が高い敗血症症例。
・対照(n=207):感染の疑いがあるが、ED診断の48時間以内に敗血症がない患者。
【0178】
ロジスティック回帰によってマーカーを数学的に組み合わせ、「受信者動作特性下面積」(AUC)をマーカー性能の一般的な尺度として使用した。
【0179】
敗血症エンドポイントに加えて、ED入院時に感染の疑いがある患者の集団における「一般的な悪化」エンドポイント(すなわち、敗血症診断とは無関係に患者の状態が悪化したかどうか)も評価した。以下に従って患者を症例および対照に分類した。
症例:悪化を以下のように定義する:ケアの増大(すなわち、ICUへの入室)または病院での死亡または入院の30日以内の死亡または退院の30日以内の再入院
対照:感染の疑いがあるが悪化していない患者
【0180】
単一のマーカーより少なくとも1パーセンテージポイント改善されたAUCを有するマーカー対の組み合わせ(二変量マーカー組み合わせ)を表1に示す。
【表1】
表1:二変量マーカーの組み合わせ、それらの共同性能(AUC.bi)、第1のマーカーの単変量性能(AUC.1)および第2のマーカーの単変量性能(AUC.2)、最良の単一マーカーと比較した二変量マーカーの性能改善(Impr.AUC)。
【0181】
二変量マーカー対および3つの単一マーカー全てより少なくとも1パーセンテージポイント改善されたAUCを有する3つ組のマーカーの組み合わせ(三変量マーカー組み合わせ)を表2に示す。
【表2】
表2:三変量マーカーの組み合わせ、それらの共同性能(AUC.tri)、表1に列記されている最初の2つのマーカーの二変量性能(AUC.bi)、第1のマーカーの単変量性能(AUC.1)、第2のマーカーの単変量性能(AUC.2)、第3のマーカーの単変量性能(AUC.3)、二変量マーカーに対する三変量マーカーの性能改善(Impr.AUC)。
【0182】
敗血症エンドポイントが単一のマーカーに比べて改善されていないマーカーの二変量組み合わせの例を表3に示す。表3は、敗血症マーカーを組み合わせることの非自明性を実証している。
【表3】
表3:二変量マーカーの組み合わせ、それらの共同性能(AUC.bi)、第1のマーカーの単変量性能(AUC.1)および第2のマーカーの単変量性能(AUC.2)、最良の単一マーカーと比較した二変量マーカーの性能改善(Impr.AUC)。
【0183】
悪化エンドポイントについて単一のマーカーより少なくとも1パーセンテージポイント改善されたAUCを有するマーカー対の組み合わせ(二変量マーカー組み合わせ)を表4に示す。
【表4】
表4:二変量マーカーの組み合わせ、それらの共同性能(AUC.bi)、第1のマーカーの単変量性能(AUC.1)および第2のマーカーの単変量性能(AUC.2)、悪化エンドポイントについての最良の単一マーカーと比較した二変量マーカーの性能改善(Impr.AUC)。
【0184】
悪化エンドポイントが単一のマーカーに比べて改善されていないマーカーの二変量組み合わせの例を表5に示す。表5は、敗血症マーカーを組み合わせることの非自明性を実証している。
【表5】
表5:二変量マーカーの組み合わせ、それらの共同性能(AUC.bi)、第1のマーカーの単変量性能(AUC.1)および第2のマーカーの単変量性能(AUC.2)、悪化エンドポイントについての最良の単一マーカーと比較した二変量マーカーの性能改善(Impr.AUC)。Impr.AUC値は負である。
【国際調査報告】