(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-16
(54)【発明の名称】電力網の動作周波数をリアルタイムで調整するための電気負荷ネットワーク及び方法
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20240409BHJP
H02J 3/12 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
H02J13/00 311T
H02J3/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023567105
(86)(22)【出願日】2021-09-15
(85)【翻訳文提出日】2023-12-04
(86)【国際出願番号】 AU2021051062
(87)【国際公開番号】W WO2022226576
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523410816
【氏名又は名称】フィルムス・テクノロジーズ・ピーティーワイ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】レビー、ジョナサン
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AA01
5G064AA04
5G064AC05
5G064AC09
5G064CB08
5G064CB10
5G064CB21
5G064DA01
5G064DA06
5G066AA09
5G066DA03
5G066LA06
(57)【要約】
電力網(101)の動作周波数をリアルタイムで調整するための電気負荷ネットワーク(200)が提供される。電気負荷ネットワーク(200)は、コンピューティングデバイスのセット(201)と、コンピューティングデバイスのセット(201)に接続されたサイトサーバ(203)と、サイトサーバ(203)に接続された周波数リーダ(205)とを含み、サイトサーバ(203)は、周波数リーダ(205)から電力網(101)の動作周波数を取得し、動作周波数と基準動作周波数との周波数差を求め、そして、電力網(101)の動作周波数を調整するために、コンピューティングデバイスのセット(201)に、周波数差に基づいてコンピューティングデバイスのセット(201)の集合的な動作電力を変更するように指示するように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力網の動作周波数をリアルタイムで調整するための電気負荷ネットワークであって、
1つまたは複数のコンピューティングタスクを実行するために相互接続されており、前記1つまたは複数のコンピューティングタスクを集合的な動作電力で実行するために、前記電力網によって電力供給されるように前記電力網に電気的に接続するように構成されたコンピューティングデバイスのセットと、
前記コンピューティングデバイスのセットに接続されたサイトサーバと、
前記サイトサーバに接続されており、調整間隔中に前記電力網から前記電力網の前記動作周波数を読み取るように構成された周波数リーダとを備え、
前記サイトサーバは、
前記周波数リーダから前記調整間隔中の前記電力網の前記動作周波数を取得し、
前記動作周波数と基準動作周波数との周波数差を求め、
前記電力網の前記動作周波数を調整するために、前記コンピューティングデバイスのセットに、前記周波数差に基づいて前記コンピューティングデバイスのセットの前記集合的な動作電力を変更するように指示するように構成される、
前記電気負荷ネットワーク。
【請求項2】
前記コンピューティングデバイスのセットのそれぞれは、チップセット電力で動作するチップのセットを含み、前記サイトサーバは更に、前記コンピューティングデバイスのセットの前記集合的な動作電力を変更するために、前記コンピューティングデバイスのセットのうちの少なくとも1つに、異なるチップセット電力で動作するように指示するように構成される、請求項1に記載の電気負荷ネットワーク。
【請求項3】
前記サイトサーバは更に、前記コンピューティングデバイスのセットの前記集合的な動作電力を最大で負荷変化限界だけ変更するように構成される、請求項2に記載の電気負荷ネットワーク。
【請求項4】
前記基準動作周波数は、前記電力網内で許容される最小動作周波数であり、前記サイトサーバは更に、
前記周波数差を前記調整間隔中の前記電力網の前記動作周波数が前記最小動作周波数を下回るパーセンテージ差として決定し、
最大未満パーセンテージに対する前記パーセンテージ差の未満割合を決定し、
前記未満割合を前記負荷変化限界に乗じた値を電力削減値として決定するように構成される、請求項3に記載の電気負荷ネットワーク。
【請求項5】
前記サイトサーバは更に、
前記コンピューティングデバイスのセットの前記集合的な動作電力を前記電力削減値だけ削減するために、前記コンピューティングデバイスのセットのそれぞれに、前記コンピューティングデバイスのセットのそれぞれの前記チップセット電力を削減するように指示するように構成される、請求項4に記載の電気負荷ネットワーク。
【請求項6】
前記サイトサーバは更に、
前記コンピューティングデバイスのセットの集合的なチップセット電力に対する前記電力削減値のチップセット削減割合を決定し、
前記コンピューティングデバイスのセットのそれぞれに、前記コンピューティングデバイスのセットのそれぞれの前記チップセット電力を前記チップセット削減割合だけ削減するように指示するように構成される、請求項5に記載の電気負荷ネットワーク。
【請求項7】
前記サイトサーバは更に、
前記コンピューティングデバイスのセットの集合的なチップセット電力を前記電力削減値だけ削減するために、前記コンピューティングデバイスのセットのサブセットに、それらのコンピューティングデバイスのそれぞれの前記チップセット電力を削減するように指示するように構成される、請求項4に記載の電気負荷ネットワーク。
【請求項8】
前記基準動作周波数は、前記電力網内で許容される最大動作周波数であり、前記サイトサーバは更に、
前記周波数差を、前記調整間隔中の前記電力網の前記動作周波数が前記最大動作周波数を上回るパーセンテージ差として決定し、
最大超過パーセンテージに対する前記パーセンテージ差の超過割合を決定し、
前記超過割合を前記負荷変化限界に乗じた値を電力増加値として決定するように構成される、請求項3に記載の電気負荷ネットワーク。
【請求項9】
前記サイトサーバは更に、
前記コンピューティングデバイスのセットの前記集合的な動作電力を前記電力増加値だけ増加させるために、前記コンピューティングデバイスのセットのそれぞれに、前記コンピューティングデバイスのセットのそれぞれの前記チップセット電力を増加させるように指示するように構成される、請求項8に記載の電気負荷ネットワーク。
【請求項10】
前記サイトサーバは更に、
前記コンピューティングデバイスのセットの集合的なチップセット電力に対する前記電力増加値のチップセット増加割合を決定し、
前記コンピューティングデバイスのセットのそれぞれに、前記コンピューティングデバイスのセットのそれぞれの前記チップセット電力を前記チップセット増加割合だけ増加させるように指示するように構成される、請求項9に記載の電気負荷ネットワーク。
【請求項11】
前記サイトサーバは更に、
前記コンピューティングデバイスのセットの集合的なチップセット電力を前記電力増加値だけ増加させるために、前記コンピューティングデバイスのセットのサブセットに、それらのコンピューティングデバイスのそれぞれの前記チップセット電力を増加させるように指示するように構成される、請求項8に記載の電気負荷ネットワーク。
【請求項12】
前記サイトサーバは更に、
前記サイトサーバが一定期間にわたって前記コンピューティングデバイスのセットの前記集合的な動作電力を変更し続けると仮定して、第1の金銭的利益を決定し、
前記コンピューティングデバイスのセットが、前記一定期間にわたって前記コンピューティングデバイスのセットの前記集合的な動作電力を変更することなく、前記1つまたは複数のコンピューティングタスクを実行し続けると仮定して、第2の金銭的利益を決定し、
前記第1の金銭的利益が前記第2の金銭的利益よりも大きい場合にのみ、前記コンピューティングデバイスのセットに、前記一定期間中に前記コンピューティングデバイスのセットの前記集合的な動作電力を変更するように指示するように構成される、請求項1~11のいずれか一項に記載の電気負荷ネットワーク。
【請求項13】
前記1つまたは複数のコンピューティングタスクはプルーフオブワークを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の電気負荷ネットワーク。
【請求項14】
前記一定期間は、
6秒の期間、
60秒の期間、及び
5分間の期間のうちの1つを含む、請求項12または13に記載の電気負荷ネットワーク。
【請求項15】
電力網の動作周波数を調整するためのコンピュータ実施方法であって、前記電力網は、コンピューティングデバイスのセットに電力を供給するために、前記コンピューティングデバイスのセットに電気的に接続されており、前記コンピューティングデバイスのセットは、1つまたは複数のコンピューティングタスクを集合的な動作電力で実行するために相互接続されており、
前記方法は、サイトサーバにおいて、
前記電力網に接続された周波数リーダから、調整間隔中の前記電力網の前記動作周波数を取得することと、
前記調整間隔中の前記動作周波数と基準動作周波数との周波数差を求めることと、
前記電力網の前記動作周波数を調整するために、前記コンピューティングデバイスのセットに、前記周波数差に基づいて前記コンピューティングデバイスのセットの前記集合的な動作電力を変更するように指示することとを含む、
前記コンピュータ実施方法。
【請求項16】
前記コンピューティングデバイスのセットのそれぞれは、チップセット電力で動作するチップのセットを含み、前記方法は更に、前記サイトサーバにおいて、
前記コンピューティングデバイスのセットの前記集合的な動作電力を変更するために、前記コンピューティングデバイスのセットのうちの少なくとも1つに、異なるチップセット電力で動作するように指示することを含む、請求項15に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項17】
前記サイトサーバにおいて、前記コンピューティングデバイスのセットの前記集合的な動作電力を最大で負荷変化限界だけ変更することを更に含む、請求項16に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項18】
前記基準動作周波数は、前記電力網内で許容される最小動作周波数であり、前記方法は更に、前記サイトサーバにおいて、
前記周波数差を前記調整間隔中の前記電力網の前記動作周波数が前記最小動作周波数を下回るパーセンテージ差として決定することと、
最大未満パーセンテージに対する前記パーセンテージ差の未満割合を決定することと、
前記未満割合を前記負荷変化限界に乗じた値を電力削減値として決定することとを含む、請求項17に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項19】
前記サイトサーバにおいて、
前記コンピューティングデバイスのセットの前記集合的な動作電力を前記電力削減値だけ削減するために、前記コンピューティングデバイスのセットのそれぞれに、前記コンピューティングデバイスのセットのそれぞれの前記チップセット電力を削減するように指示することを更に含む、請求項18に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項20】
前記サイトサーバにおいて、
前記コンピューティングデバイスのセットの集合的なチップセット電力に対する前記電力削減値のチップセット削減割合を決定することと、
前記コンピューティングデバイスのセットのそれぞれに、前記コンピューティングデバイスのセットのそれぞれの前記チップセット電力を前記チップセット削減割合だけ削減するように指示することとを更に含む、請求項19に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項21】
前記サイトサーバにおいて、
前記コンピューティングデバイスのセットの集合的なチップセット電力を前記電力削減値だけ削減するために、前記コンピューティングデバイスのセットのサブセットに、それらのコンピューティングデバイスのそれぞれの前記チップセット電力を削減するように指示することを更に含む、請求項18に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項22】
前記基準動作周波数は、前記電力網内で許容される最大動作周波数であり、前記方法は更に、前記サイトサーバにおいて、
前記周波数差を、前記調整間隔中の前記電力網の前記動作周波数が前記最大動作周波数を上回るパーセンテージ差として決定することと、
最大超過パーセンテージに対する前記パーセンテージ差の超過割合を決定することと、
前記超過割合を前記負荷変化限界に乗じた値を電力増加値として決定することとを含む、請求項17に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項23】
前記サイトサーバにおいて、
前記コンピューティングデバイスのセットの前記集合的な動作電力を前記電力増加値だけ増加させるために、前記コンピューティングデバイスのセットのそれぞれに、前記コンピューティングデバイスのセットのそれぞれの前記チップセット電力を増加させるように指示することを更に含む、請求項22に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項24】
前記サイトサーバにおいて、
前記コンピューティングデバイスのセットの集合的なチップセット電力に対する前記電力増加値のチップセット増加割合を決定することと、
前記コンピューティングデバイスのセットのそれぞれに、前記コンピューティングデバイスのセットのそれぞれの前記チップセット電力を前記チップセット増加割合だけ増加させるように指示することとを更に含む、請求項23に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項25】
前記サイトサーバにおいて、
前記コンピューティングデバイスのセットの集合的なチップセット電力を前記電力増加値だけ増加させるために、前記コンピューティングデバイスのセットのサブセットに、それらのコンピューティングデバイスのそれぞれの前記チップセット電力を増加させるように指示することを更に含む、請求項22に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項26】
前記サイトサーバにおいて、
前記サイトサーバが一定期間にわたって前記コンピューティングデバイスのセットの前記集合的な動作電力を変更し続けると仮定して、第1の金銭的利益を決定することと、
前記コンピューティングデバイスのセットが、前記一定期間にわたって前記コンピューティングデバイスのセットの前記集合的な動作電力を変更することなく、前記1つまたは複数のコンピューティングタスクを実行し続けると仮定して、第2の金銭的利益を決定することと、
前記第1の金銭的利益が前記第2の金銭的利益よりも大きい場合にのみ、前記コンピューティングデバイスのセットに、前記一定期間中に前記コンピューティングデバイスのセットの前記集合的な動作電力を変更するように指示することとを更に含む、請求項15~25のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項27】
前記1つまたは複数のコンピューティングタスクはプルーフオブワークを含む、請求項15~26のいずれか一項に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項28】
前記一定期間は、
6秒の期間、
60秒の期間、及び
5分間の期間のうちの1つを含む、請求項26または27に記載のコンピュータ実施方法。
【請求項29】
電力網の動作周波数をリアルタイムで調整するためのサイトサーバであって、
プロセッサと、
前記プロセッサに接続されたバスと、
前記バスに接続され、コンピュータ可読命令のセットを記憶するように構成されたコンピュータ可読メモリと、
前記バスに接続され、コンピューティングデバイスのセットに接続するように構成された第1の通信インターフェースと、
前記バスに接続され、周波数リーダに接続するように構成された第2の通信インターフェースとを備え、
前記プロセッサは、前記コンピュータ可読メモリから前記コンピュータ可読命令のセットを読み取り、請求項15~28のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成される、
前記サイトサーバ。
【請求項30】
実行されたときに、サイトサーバに請求項15~28のいずれか一項に記載の方法を実行させる命令のセットを記憶する、非一時的なコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力網に関し、特に、電力網の動作周波数をリアルタイムで調整することに関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統は動作周波数で動作する。電力系統が安全に動作するには、動作周波数は、一次動作周波数及び周波数偏差によって定義される安全な周波数範囲または周波数帯域内にある必要がある。例えば、オーストラリアの電力系統の一次動作周波数は50Hzで、周波数偏差は0.15Hzである。これは、電力系統が49.85Hz~50.15Hzの周波数帯域内で動作する場合、供給側が電気エネルギーを発生させ、負荷側が電気エネルギーを消費することが安全であることを意味する。供給側とは、電気エネルギーを発生させる発電所を指し、負荷側とは、供給側で発生した電気エネルギーを消費する機器を指す。供給側と負荷側の間には、電力網または「グリッド」と呼ばれる送配電網もあり、これは、供給側で発生した電気エネルギーを負荷側に伝送及び分配するように設計されている。
【0003】
動作周波数は供給側の電力及び/または負荷側の電力によって変動する場合がある。例えば、電力網の動作周波数は、発電機の故障(すなわち、電力供給の喪失)によって低下する場合もあれば、発電機の起動(すなわち、電力供給の増加)によって上昇する場合もある。電力網の動作周波数は、電力網への負荷の接続(例えば、ピーク時間帯の負荷の増加)によって低下する場合もあれば、負荷が電力網から切断されると増加する場合もある。動作周波数の変動が安全な周波数帯域(オーストラリアでは上記の49.85Hz~50.15Hz)を超えると、供給側(例えば、発電所の発電機)または負荷側(例えば、電気を消費する電気機器)に損傷を与える可能性がある。
【0004】
したがって、電力系統が安全に動作することを保証するために、特に安全な周波数帯域外の周波数変動に応じて電力網の動作周波数をリアルタイムで調整するシステム及び方法が必要である。
【0005】
本明細書全体にわたる背景技術のいかなる議論も、当該背景技術が先行技術であること、または当該背景技術がオーストラリアもしくはその他の国において当該分野で広く知られているか、もしくは共通の一般知識の一部を形成していることを認めるものと決してみなされるべきではない。
【発明の概要】
【0006】
電力網の動作周波数をリアルタイムで調整するための電気負荷ネットワークが提供される。電気負荷ネットワークは、
1つまたは複数のコンピューティングタスクを実行するために相互接続されており、1つまたは複数のコンピューティングタスクを集合的な動作電力で実行するために、電力網によって電力供給されるように電力網に電気的に接続するように構成されたコンピューティングデバイスのセットと、
コンピューティングデバイスのセットに接続されたサイトサーバと、
サイトサーバに接続されており、調整間隔中に電力網から電力網の動作周波数を読み取るように構成された周波数リーダとを含んでもよく、
サイトサーバは、
周波数リーダから調整間隔中の電力網の動作周波数を取得し、
動作周波数と基準動作周波数との周波数差を求め、
電力網の動作周波数を調整するために、コンピューティングデバイスのセットに、周波数差に基づいてコンピューティングデバイスのセットの集合的な動作電力を変更するように指示するように構成される。
【0007】
コンピューティングデバイスのセットのそれぞれは、チップセット電力で動作するチップのセットを含み、サイトサーバは更に、コンピューティングデバイスのセットの集合的な動作電力を変更するために、コンピューティングデバイスのセットのうちの少なくとも1つに、異なるチップセット電力で動作するように指示するように構成されてもよい。
【0008】
サイトサーバは更に、コンピューティングデバイスのセットの集合的な動作電力を最大で負荷変化限界だけ変更するように構成されてもよい。
【0009】
基準動作周波数は、電力網内で許容される最小動作周波数であってもよく、サイトサーバは更に、
周波数差を調整間隔中の電力網の動作周波数が最小動作周波数を下回るパーセンテージ差として決定し、
最大未満パーセンテージに対するパーセンテージ差の未満割合を決定し、
未満割合を負荷変化限界に乗じた値を電力削減値として決定するように構成されてもよい。
【0010】
サイトサーバは更に、コンピューティングデバイスのセットの集合的な動作電力を電力削減値だけ削減するために、コンピューティングデバイスのセットのそれぞれに、コンピューティングデバイスのセットのそれぞれのチップセット電力を削減するように指示するように構成されてもよい。
【0011】
サイトサーバは更に、
コンピューティングデバイスのセットの集合的なチップセット電力に対する電力削減値のチップセット削減割合を決定し、
コンピューティングデバイスのセットのそれぞれに、コンピューティングデバイスのセットのそれぞれのチップセット電力をチップセット削減割合だけ削減するように指示するように構成されてもよい。
【0012】
サイトサーバは更に、コンピューティングデバイスのサブセットの集合的なチップセット電力を電力削減値だけ削減するために、コンピューティングデバイスのセットのサブセットに、それらのコンピューティングデバイスのそれぞれのチップセット電力を削減するように指示するように構成されてもよい。
【0013】
基準動作周波数は、電力網内で許容される最大動作周波数であってもよく、サイトサーバは更に、
周波数差を、調整間隔中の電力網の動作周波数が最大動作周波数を上回るパーセンテージ差として決定し、
最大超過パーセンテージに対するパーセンテージ差の超過割合を決定し、
超過割合を負荷変化限界に乗じた値を電力増加値として決定するように構成されてもよい。
【0014】
サイトサーバは更に、コンピューティングデバイスのセットの集合的な動作電力を電力増加値だけ増加させるために、コンピューティングデバイスのセットのそれぞれに、コンピューティングデバイスのセットのそれぞれのチップセット電力を増加させるように指示するように構成されてもよい。
【0015】
サイトサーバは更に、
コンピューティングデバイスのセットの集合的なチップセット電力に対する電力増加値のチップセット増加割合を決定し、
コンピューティングデバイスのセットのそれぞれに、コンピューティングデバイスのセットのそれぞれのチップセット電力をチップセット増加割合だけ増加させるように指示するように構成されてもよい。
【0016】
サイトサーバは更に、コンピューティングデバイスのサブセットの集合的なチップセット電力を電力増加値だけ増加させるために、コンピューティングデバイスのセットのサブセットに、それらのコンピューティングデバイスのそれぞれのチップセット電力を増加させるように指示するように構成されてもよい。
【0017】
サイトサーバは更に、
サイトサーバが一定期間にわたってコンピューティングデバイスのセットの集合的な動作電力を変更し続けると仮定して、第1の金銭的利益を決定し、
コンピューティングデバイスのセットが、その一定期間にわたってコンピューティングデバイスのセットの集合的な動作電力を変更することなく、1つまたは複数のコンピューティングタスクを実行し続けると仮定して、第2の金銭的利益を決定し、
第1の金銭的利益が第2の金銭的利益よりも大きい場合にのみ、コンピューティングデバイスのセットに、その一定期間中にコンピューティングデバイスのセットの集合的な動作電力を変更するように指示するように構成されてもよい。
【0018】
1つまたは複数のコンピューティングタスクは、プルーフオブワークを含んでもよい。
【0019】
その一定期間は、
6秒の期間、
60秒の期間、及び
5分間の期間のうちの1つを含んでもよい。
【0020】
電力網の動作周波数を調整するためのコンピュータ実施方法が提供され、電力網は、コンピューティングデバイスのセットに電力を供給するために、コンピューティングデバイスのセットに電気的に接続されており、コンピューティングデバイスのセットは、1つまたは複数のコンピューティングタスクを集合的な動作電力で実行するために相互接続されている。この方法は、サイトサーバにおいて、
電力網に接続された周波数リーダから、調整間隔中の電力網の動作周波数を取得することと、
調整間隔中の動作周波数と基準動作周波数との周波数差を求めることと、
電力網の動作周波数を調整するために、コンピューティングデバイスのセットに、周波数差に基づいてコンピューティングデバイスのセットの集合的な動作電力を変更するように指示することとを含んでもよい。
【0021】
コンピューティングデバイスのセットのそれぞれは、チップセット電力で動作するチップのセットを含んでもよい。コンピュータ実施方法は更に、サイトサーバにおいて、
コンピューティングデバイスのセットの集合的な動作電力を変更するために、コンピューティングデバイスのセットのうちの少なくとも1つに、異なるチップセット電力で動作するように指示することを含んでもよい。
【0022】
コンピュータ実施方法は更に、サイトサーバにおいて、コンピューティングデバイスのセットの集合的な動作電力を最大で負荷変化限界だけ変更することを含んでもよい。
【0023】
基準動作周波数は、電力網内で許容される最小動作周波数であってもよい。コンピュータ実施方法は更に、サイトサーバにおいて、
周波数差を調整間隔中の電力網の動作周波数が最小動作周波数を下回るパーセンテージ差として決定することと、
最大未満パーセンテージに対するパーセンテージ差の未満割合を決定することと、
未満割合を負荷変化限界に乗じた値を電力削減値として決定することとを含んでもよい。
【0024】
コンピュータ実施方法は更に、サイトサーバにおいて、
コンピューティングデバイスのセットの集合的な動作電力を電力削減値だけ削減するために、コンピューティングデバイスのセットのそれぞれに、コンピューティングデバイスのセットのそれぞれのチップセット電力を削減するように指示することを含んでもよい。
【0025】
コンピュータ実施方法は更に、サイトサーバにおいて、
電力削減値とコンピューティングデバイスのセットの集合的なチップセット電力のチップセット削減割合を決定することと、
コンピューティングデバイスのセットのそれぞれに、コンピューティングデバイスのセットのそれぞれのチップセット電力をチップセット削減割合だけ削減するように指示することとを含んでもよい。
【0026】
コンピュータ実施方法は更に、サイトサーバにおいて、
コンピューティングデバイスのサブセットの集合的なチップセット電力を電力削減値だけ削減するために、コンピューティングデバイスのセットのサブセットに、それらのコンピューティングデバイスのそれぞれのチップセット電力を削減するように指示することを含んでもよい。
【0027】
基準動作周波数は、電力網内で許容される最大動作周波数であってもよい。コンピュータ実施方法は更に、サイトサーバにおいて、
周波数差を、調整間隔中の電力網の動作周波数が最大動作周波数を上回るパーセンテージ差として決定することと、
最大超過パーセンテージに対するパーセンテージ差の超過割合を決定することと、
超過割合を負荷変化限界に乗じた値を電力増加値として決定することとを含んでもよい。
【0028】
コンピュータ実施方法は更に、サイトサーバにおいて、
コンピューティングデバイスのセットの集合的な動作電力を電力増加値だけ増加させるために、コンピューティングデバイスのセットのそれぞれに、コンピューティングデバイスのセットのそれぞれのチップセット電力を増加させるように指示することを含んでもよい。
【0029】
コンピュータ実施方法は更に、サイトサーバにおいて、
コンピューティングデバイスのセットの集合的なチップセット電力に対する電力増加値のチップセット増加割合を決定することと、
コンピューティングデバイスのセットのそれぞれに、コンピューティングデバイスのセットのそれぞれのチップセット電力をチップセット増加割合だけ増加させるように指示することとを含んでもよい。
【0030】
コンピュータ実施方法は更に、サイトサーバにおいて、
コンピューティングデバイスのサブセットの集合的なチップセット電力を電力増加値だけ増加させるために、コンピューティングデバイスのセットのサブセットに、それらのコンピューティングデバイスのそれぞれのチップセット電力を増加させるように指示することを含んでもよい。
【0031】
コンピュータ実施方法は更に、サイトサーバにおいて、
サイトサーバが一定期間にわたってコンピューティングデバイスのセットの集合的な動作電力を変更し続けると仮定して、第1の金銭的利益を決定することと、
コンピューティングデバイスのセットが、その一定期間にわたってコンピューティングデバイスのセットの集合的な動作電力を変更することなく、1つまたは複数のコンピューティングタスクを実行し続けると仮定して、第2の金銭的利益を決定することと、
第1の金銭的利益が第2の金銭的利益よりも大きい場合にのみ、コンピューティングデバイスのセットに、その一定期間中にコンピューティングデバイスのセットの集合的な動作電力を変更するように指示することとを含んでもよい。
【0032】
1つまたは複数のコンピューティングタスクは、プルーフオブワークを含んでもよい。
【0033】
その一定期間は、
6秒の期間、
60秒の期間、及び
5分間の期間のうちの1つを含んでもよい。
【0034】
電力網の動作周波数をリアルタイムで調整するためのサイトサーバが提供される。サイトサーバは、
プロセッサと、
プロセッサに接続されたバスと、
バスに接続され、コンピュータ可読命令のセットを記憶するように構成されたコンピュータ可読メモリと、
バスに接続され、コンピューティングデバイスのセットに接続するように構成された第1の通信インターフェースと、
バスに接続され、周波数リーダに接続するように構成された第2の通信インターフェースとを含んでもよく、
プロセッサは、コンピュータ可読メモリからコンピュータ可読命令のセットを読み取り、上述の方法のいずれか1つを実行するように構成される。
【0035】
実行されたときに、サイトサーバに上述の方法のいずれか1つを実行させる命令のセットを記憶する非一時的なコンピュータ可読媒体が提供される。
【0036】
本開示では、本発明の他の態様も開示されている。
【0037】
本開示の範囲内に含まれ得る他の形態にもかかわらず、以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態を単なる例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本開示の例示的な実施形態が配置された電力系統を示す図である。
【
図2】本開示の例示的な実施形態による電気負荷ネットワークを示す図である。
【
図3】本開示の例示的な実施形態による、サイトサーバによって実行される方法を示す図である。
【
図4】本開示の一実施形態による、電力網の動作周波数の変動に応じたコンピューティングデバイスのセットの動作電力の変動を示すグラフである。
【
図5】本開示の別の実施形態による、電力網の動作周波数の変動に応じたコンピューティングデバイスのセットの動作電力の変動を示すグラフである。
【
図6】本開示の例示的な実施形態によるサイトサーバの例示的な構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
添付図面及び以下の説明において、異なる図面における同様または同じ参照番号は、同じまたは類似の要素を示すことに留意されたい。
【0040】
図1は、本開示の例示的な実施形態が配置された電力系統100を示す。
【0041】
図1に示すように、電力系統100の供給側は、ロータベースの発電所、例えば、石炭火力発電所103、ガス発電所105、及び水力発電所107を含む。電力系統100の供給側はまた、インバータベースの発電所、例えば太陽熱発電所109、111を含む。電力系統100の供給側はまた、本開示の範囲から逸脱することなく、電気エネルギーを発生させることができる他の形態の発電所を含むこともできる。
【0042】
電力系統100は、供給側の発電所に電気的に接続された送配電網101(すなわち、電力網または「グリッド」)を更に含む。電力系統100の供給側は、電気エネルギーを発生させ、その電気エネルギーを電力網101に供給する。電力網101は、発生した電気エネルギーを電力系統100の供給側から負荷側に伝送及び分配する。
【0043】
図1に示すように、電力系統100の負荷側は、電力網101に電気的に接続され、電力網101から伝送及び分配される電気エネルギーを消費する様々な種類の負荷を含む。負荷は、家庭用の家電製品113であり得る。負荷は、産業用の産業機器115、例えば、アルミニウム製錬所の精錬炉であり得る。本開示の例示的な実施形態による電気負荷ネットワーク200は、電力網101の負荷として機能するように、電力系統100内に配置される。電力系統100の負荷側はまた、本開示の範囲から逸脱することなく、他の形態の負荷を含むこともできる。
【0044】
図2は、本開示の例示的な実施形態による、電力網101の動作周波数をリアルタイムで調整するための電気負荷ネットワーク200を示す。
【0045】
図2に示すように、電気負荷ネットワーク200は、コンピューティングデバイスのセット201を含む。コンピューティングデバイスのセット201は、1つまたは複数のコンピューティングタスクを実行するために相互接続されたコンピューティングデバイス2011、2012、2013、及び2014を含む。
図2には4つのコンピューティングデバイス2011、2012、2013、及び2014があるが、コンピューティングデバイスのセット201は、より多くのまたはより少ないコンピューティングデバイスを含んでもよい。コンピューティングデバイスのセット201は、それらの間の通信リンク1~6を介して相互接続することができる。通信リンク1~6は、物理リンクであってもよいし、論理リンクであってもよいし、あるいは物理リンクと論理リンクの組み合わせであってもよい。通信リンク1~6は、ネットワーク通信プロトコルに基づいて動作し、コンピューティングデバイスのセット201を通信可能に接続する。通信プロトコルには、セルラーネットワーク通信プロトコル(例えば、3G/4G/5G通信プロトコル)、インターネット/イーサネット(登録商標)通信プロトコル(例えば、TCP/IPプロトコルスタック)、無線ローカルエリアネットワーク(例えば、IEEE802.11技術規格)、または前述のプロトコルもしくは技術規格の組み合わせが含まれる。通信プロトコルは、本開示の範囲から逸脱することなく、他の通信プロトコルであってもよい。
【0046】
コンピューティングデバイスのセット201は、1つまたは複数のコンピューティングタスクを実行するために、電力網101によって電力供給されるように電力網101に電気的に接続するように構成される。コンピューティングデバイスのセット201のそれぞれは、個々の動作電力で動作する。コンピューティングデバイスのセット201内のコンピューティングデバイス2011、2012、2013、及び2014の個々の動作電力の合計は、集合的な動作電力と呼ばれる。したがって、言い換えれば、コンピューティングデバイスのセット201は、集合的な動作電力で1つまたは複数のコンピューティングタスクを実行する。コンピューティングデバイスのセット201は、例えば、データセンタまたはクラウドコンピューティングネットワーク内の高性能コンピュータとすることができる。
【0047】
電気負荷ネットワーク200は、サイトサーバ203とコンピューティングデバイスのセット201との間の通信リンク7を介してコンピューティングデバイスのセット201に通信可能に接続されたサイトサーバ203を更に含む。通信リンク7は、物理リンクであってもよいし、論理リンクであってもよいし、あるいは物理リンクと論理リンクの組み合わせであってもよい。通信リンク7は、ネットワーク通信プロトコルに基づいて動作し、サイトサーバ203をコンピューティングデバイスのセット201に通信可能に接続する。通信プロトコルには、セルラーネットワーク通信プロトコル(例えば、3G/4G/5G通信プロトコル)、インターネット/イーサネット通信プロトコル(例えば、伝送制御プロトコル(TCP)及び/またはユーザデータグラムプロトコル(UDP)を含むTCP/IPプロトコルスタック)、無線ローカルエリアネットワーク(例えば、IEEE802.11技術規格)、または前述のプロトコルもしくは技術規格の組み合わせが含まれる。通信プロトコルは、本開示の範囲から逸脱することなく、他の通信プロトコルであってもよい。サイトサーバ203はスタンドアロンサーバであり得る。サイトサーバ203はまた、本開示の範囲から逸脱することなく、互いに通信可能に接続された複数の物理サーバまたは論理サーバを含むサーバスタックであり得る。一例として、
図2のサイトサーバ203は、制御サーバ213及びインターネットアドレスサーバ223を含むサーバスタックである。別の例として、サイトサーバ203は、制御サーバ213とインターネットアドレスサーバ223の両方の機能を有するスタンドアロンサーバである。スタンドアロンサーバとしてのサイトサーバ203の例示的な構造を
図6を参照して説明する。
【0048】
電気負荷ネットワーク200は、通信リンク8を介してサイトサーバ203に通信可能に接続された周波数リーダ205を更に含む。通信リンク8は、物理リンクであってもよいし、論理リンクであってもよいし、あるいは物理リンクと論理リンクの組み合わせであってもよい。通信リンク8は、ネットワーク通信プロトコルに基づいて動作し、サイトサーバ202をコンピューティングデバイスのセット201に通信可能に接続する。ネットワーク通信プロトコルには、セルラーネットワーク通信プロトコル(例えば、3G/4G/5G通信プロトコル)、インターネット/イーサネット通信プロトコル(例えば、TCP/IPプロトコルスタック)、無線ローカルエリアネットワーク(例えば、IEEE802.11技術規格)、または前述のプロトコルもしくは技術規格の組み合わせが含まれる。通信リンク8はまた、産業用デバイスまたはコンピューティングデバイスを通信可能に接続するように設計されたデータ通信プロトコルに基づいて動作することもできる。データ通信プロトコルには、Modbusプロトコル、RS232シリアルデータ通信プロトコル、DB25パラレルデータ通信プロトコル、USBプロトコルなどが含まれる。ネットワークまたはデータ通信プロトコルはまた、本開示の範囲から逸脱することなく、他のネットワークまたはデータ通信プロトコルであってもよい。
【0049】
周波数リーダ205は、調整間隔中に電力網101から電力網の動作周波数を読み取るように構成される。調整間隔は例えば50ミリ秒である。周波数リーダ205の一例は、Schweitzer Engineering Laboratories,Inc.によって販売されているSEL Axion 2240デバイスである。調整間隔中、サイトサーバ203は、電力網101の動作周波数をリアルタイムで調整するための方法300を実行するように構成される。サイトサーバ203はまた、本開示に記載の他の方法ステップを実行するように構成される。サイトサーバ203がスタンドアロンサーバである場合、これらの方法ステップはサイトサーバ203において実行される。サイトサーバ203が、例えば、
図2に示すように、制御サーバ213及びインターネットアドレスサーバ223を含むサーバスタックである場合、本開示の範囲から逸脱することなく、これらの方法ステップの実行を制御サーバ213及びインターネットアドレスサーバ223に分散することができる。更に、説明を容易にするために、本開示では、1つまたは複数の特定のステップが、制御サーバ213及びインターネットアドレスサーバ223のうちの一方で実行されるものとして説明されてもよいが、そのような説明は、特定の1つまたは複数のステップが制御サーバ213及びインターネットアドレスサーバ223のうちの他方で実行されるシナリオを除外するものではない。
【0050】
図3は、本開示の例示的な実施形態による、サイトサーバ203によって実行される方法300を示す。
【0051】
図3に示すように、ステップ301において、サイトサーバ203は、周波数リーダ205から、調整間隔中の電力網101の動作周波数を取得する。具体的には、周波数リーダ205によって読み取られた動作周波数は、通信リンク8を介して周波数リーダ205からサイトサーバ203に送信される。
【0052】
ステップ303において、サイトサーバ203は、動作周波数と基準動作周波数との周波数差を求める。基準動作周波数は、電力網101の一次動作周波数、例えばオーストラリアでは50Hzとすることができる。基準動作周波数はまた、安全周波数帯域の下限、または電力網101の最小安全動作周波数であってもよく、オーストラリアでは49.85Hzである。基準動作周波数は、安全周波数帯域の上限、または電力網101の最大安全動作周波数であってもよく、オーストラリアでは50.15Hzである。実際には、電力網101の動作周波数は、ほぼ常に時間とともに変動し、特定の周波数に留まることはない。したがって、基準動作周波数と特定の調整間隔中の動作周波数との間には、ほぼ常に周波数差が存在する。
【0053】
ステップ305において、サイトサーバ203は、電力網の動作周波数を調整するために、コンピューティングデバイスのセット201に、周波数差に基づいてコンピューティングデバイスのセット201の集合的な動作電力を変更するように指示する。例えば、周波数差が、動作周波数が基準動作周波数を下回っていることを示しているとき、すなわち安全のために動作周波数を上げる必要があることを意味するとき、サイトサーバ203は、1つまたは複数のコンピューティングタスクを実行しながら、コンピューティングデバイスのセット201の集合的な動作電力を低下させるようにコンピューティングデバイスのセット201に指示する第1のコマンドをコンピューティングデバイスのセット201に送信する。このようにして、電力網101の動作周波数は、コンピューティングデバイスのセット201の集合的な動作電力の低下に応じて上昇することになる。
【0054】
一方、周波数差が、動作周波数が基準動作周波数を上回っていることを示しているとき、すなわち安全のために動作周波数を下げる必要があるとき、サイトサーバ203は、1つまたは複数のコンピューティングタスクを実行しながら、コンピューティングデバイスのセット201の集合的な動作電力を上げるようにコンピューティングデバイスのセット201に指示する第2のコマンドをコンピューティングデバイスのセット201に送信する。このようにして、電力網101の動作周波数は、コンピューティングデバイスのセット201の集合的な動作電力の上昇に応じて低下することになる。
【0055】
上述したように、本開示におけるコンピューティングデバイスのセット201は、電力網100の動作周波数を調整するために、電力網101の負荷として使用される。特に、コンピューティングデバイスのセット201による電力消費は、電力網100の動作周波数を調整するためにコンピューティングデバイスごとのレベルで制御される。これは、電力系統100がグリーンエネルギーに向けて進化しているときに特に有利である。グリーンエネルギーへの進化に伴い、発電機内のロータの動作を調整することによって電力網101の動作周波数を調整するために伝統的に使用されているロータベースの発電所(例えば、石炭火力発電所103、ガス発電所105、及び水力発電所107)はますます少なくなり、インバータベースの発電所(例えば、太陽熱発電所109、111)はますます多く配置されるようになる。インバータベースの発電所は、単にロータがないので、電気エネルギーを発生させるためにロータの回転に依存しない(太陽熱発電所はソーラーパネルを使用して電気エネルギーを発生させる)。上記の方法300は、いずれのロータの回転も調整せず、コンピューティングタスク(複数可)を実行しながら、電力網101の負荷としてコンピューティングデバイスのセット201の集合的な動作電力を調整する。
【0056】
一実施形態では、コンピューティングデバイスのセット201内の個々のコンピューティングデバイス2011、2012、2013、及び2014のそれぞれは、1つまたは複数のコンピューティングタスクを実行するように設計されたチップのセットを含む。例えば、チップのセットは、中央処理装置(CPU)またはグラフィック処理装置(GPU)用の集積回路であり得る。個々のコンピューティングデバイス2011、2012、2013、及び2014のチップのセットは、1つまたは複数のコンピューティングタスクを実行するために、チップセット電力で電力網101によって電力供給される。チップのセットによって消費される電気エネルギーは、通常、個々のコンピューティングデバイス2011、2012、2013、及び2014によって消費される電気エネルギーのかなりの部分を占める。コンピューティングデバイス2011、2012、2013、及び2014の他の部品(例えば、冷却ファン)も同様にいくらかの電気エネルギーを消費する可能性がある。したがって、個々のコンピューティングデバイス2011、2012、2013、及び2014のチップのセットのチップセット電力を変更することによって、個々のコンピューティングデバイス2011、2012、2013、及び2014の個々の動作電力を変更することは理にかなっている。コンピューティングデバイスのセット201内のコンピューティングデバイス2011、2012、2013、及び2014のチップセット電力の合計は、集合的なチップセット電力と呼ばれる。コンピューティングデバイスのセット201の集合的なチップセット電力は、一般に、コンピューティングデバイスのセット201の集合的な動作電力よりも小さい。しかしながら、チップのセットがコンピューティングデバイスのセット201のそれぞれにおいて電気エネルギーを消費する唯一のものである場合、集合的なチップセット電力は、コンピューティングデバイスのセット201の集合的な動作電力に実質的に等しい。例えば、コンピューティングデバイス2011、2012、2013、及び2014が、コンピューティング機能を提供するためのそれぞれのチップのセットのみを有し、コンピューティングデバイス2011、2012、2013、及び2014を冷却するために別個の冷却システムが配置されている場合、集合的なチップセット電力は、コンピューティングデバイスのセット201の集合的な動作電力に実質的に等しい。
【0057】
サイトサーバ203は更に、コンピューティングデバイスのセット201の集合的な動作電力を変更するために、コンピューティングデバイス2011、2012、2013、及び2014のうちの少なくとも1つに、異なるチップセット電力で動作するように指示するように構成される。特に、サイトサーバ203は、コンピューティングデバイス2011、2012、2013、及び2014のうちの少なくとも1つに、少なくとも1つのコンピューティングデバイスのチップのセットの周波数-電圧設定を変更するための命令を送信することができる。チップのセットの周波数-電圧の変更により、これらのコンピューティングデバイスは、異なるチップセット電力で動作する。
【0058】
本開示における電気負荷ネットワーク200は、電力網101の動作周波数を調整または制御することができ、コンピューティングデバイスのセット201が数千または数万以上のコンピューティングデバイスを含む場合、メガワット(MW)またはギガワット(GW)程度の負荷(すなわち、集合的な動作電力)を提供することができるが、電力網101の動作周波数を調整するために、全負荷の一部のみが、エネルギー市場規制当局(例えば、オーストラリアエネルギー市場運営者またはオーストラリアのAEMO)によって有効にされる。これは、サイトサーバ203が、最大でコンピューティングデバイスのセット201の集合的な動作電力を有効にされた負荷だけ変更するように構成されることを意味する。有効にされた負荷は、本開示では負荷変化限界とも呼ばれる。負荷変化限界は、電気負荷ネットワーク200によって提供される全負荷以下である。
【0059】
一実施形態では、電気負荷ネットワーク200は、電力網101の動作周波数を上げるために使用される。この実施形態では、基準動作周波数は最小安全動作周波数であり、例えばオーストラリアでは49.85Hzである。サイトサーバ203は、周波数差を、調整間隔中の電力網101の動作周波数が最小動作周波数を下回るパーセンテージ差として決定するように構成される。サイトサーバ203はまた、最大未満パーセンテージに対するパーセンテージ差の割合(以下、「未満割合」と呼ぶ)を決定する。次に、サイトサーバ230は、未満割合を負荷変化限界(すなわち、有効にされた負荷)に乗じた値を電力削減値として決定する。以下、電力削減値の決定方法について、2つの実施例1、2を挙げて説明する。
【0060】
実施例1
調整間隔中の電力網101の動作周波数が49.35Hzである場合、電力網101の動作周波数が最小動作周波数49.85Hzを下回るパーセンテージ差は、(49.85-49.35)/49.85=1%である。エネルギー市場規制当局(例えば、オーストラリアエネルギー市場運営者またはオーストラリアのAEMO)によって設定された最大未満パーセンテージが2%である場合、未満割合は(1%)/(2%)=50%となる。その結果、電力削減値は50%×負荷変化限界(すなわち、有効にされた負荷)となる。これは、コンピューティングデバイスのセット201の集合的な動作電力を、50%×負荷変化限界(すなわち、有効にされた負荷)だけ削減する必要があることを意味する。したがって、エネルギー市場規制当局によって有効にされたコンピューティングデバイスのセット201の負荷変化限界(または有効にされた負荷)が3MWである場合、電力網101の動作周波数を上げるためには、コンピューティングデバイスのセット201の集合的な動作電力を1.5MW(すなわち、50%×3MW)削減する必要がある。
【0061】
実施例2
調整間隔中の電力網101の動作周波数が48.85Hzである場合、電力網101の動作周波数が最小動作周波数49.85Hzを下回るパーセンテージ差は、(49.85-48.85)/49.85=2%であり、未満割合は、(2%)/(2%)=100%である。その結果、電力削減値は100%×負荷変化限界となる。これは、コンピューティングデバイスのセット201の集合的な動作電力を、100%×負荷変化限界だけ削減する必要があること、または有効にされた負荷をコンピューティングデバイスのセット201から完全に削除する必要があることを意味する。したがって、電力網101の動作周波数を上げるためには、コンピューティングデバイスのセット201の集合的な動作電力を3MW(すなわち、100%×3MW)削減する必要がある。
【0062】
上述のように、コンピューティングデバイスのセット201の集合的な動作電力は、コンピューティングデバイスのセット201の集合的なチップセット電力を変更することによって変更することができる。特に、コンピューティングデバイスのセット201の集合的な動作電力を電力削減値だけ削減することは、コンピューティングデバイスのセット201の集合的なチップセット電力を電力削減値だけ削減することによって達成することができる。コンピューティングデバイスのセット201の集合的なチップセット電力を削減する様々な方法があり、他の実施形態を除外することなく、2つの実施例3及び4を以下に示す。
【0063】
実施例3
サイトサーバ203、例えば、サイトサーバの制御サーバ213は、コンピューティングデバイスのセット201内のすべてのコンピューティングデバイスを識別するためのマシンID、それらのIPアドレス、コンピューティングデバイスのセット201の個々の予備電力、及び累積予備電力を含むマシンレジスタ1を維持する。説明を容易にするために、マシンレジスタ1内のマシンIDには、1、2、3、4…、758、759、760、…のように連続番号が付けられている。個々の予備電力は、個々のコンピューティングデバイスから削減または増加できるチップセット電力の量を示す。コンピューティングデバイスNの累積予備電力は、コンピューティングデバイス1~Nの個々の予備電力の合計である。例えば、マシンレジスタ1に示されるように、コンピューティングデバイス3の累積予備電力は、コンピューティングデバイス1~3の個々の予備電力の合計で、5.5KWである。IPアドレスは、例えば、インターネットアドレスサーバ223上で動作する動的ホスト構成プロトコル(DHCP)に従って、インターネットアドレスサーバ223によって割り当てることができる。DHCPは、IPアドレスとそれらに関連付けられたリースが各コンピューティングデバイスで一貫していることを保証する。これにより、制御サーバ213は、TCPまたはUDPソケット命令を正しいコンピューティングデバイス201に送信することができ、次に、制御サーバ213は、コンピューティングデバイス201の電力消費設定をコンピューティングデバイスごとのレベルで変更できるようになる。
【0064】
【0065】
サイトサーバ203またはサイトサーバ203の制御サーバ213は、コンピューティングデバイスのセット201の集合的な動作電力を電力削減値だけ削減するために、コンピューティングデバイスのセット201のそれぞれに、コンピューティングデバイスのセット201のそれぞれのチップセット電力を削減するように指示するように構成することができる。具体的には、サイトサーバ203は、コンピューティングデバイスのセット201の集合的なチップセット電力に対する電力削減値の割合(以下、チップセット削減割合と呼ぶ)を決定する。サイトサーバ203は更に、コンピューティングデバイスのセット201のそれぞれに、コンピューティングデバイスのセット201のそれぞれのチップセット電力をチップセット削減割合だけ削減するように指示する。例えば、サイトサーバ203の制御サーバ213は、TCPソケットまたはUDPソケットを介して、それぞれのIPアドレスによって識別されるコンピューティングデバイスのセット201のそれぞれに命令を送信する。命令の受信に応答して、コンピューティングデバイスのセット201のそれぞれは、例えば、それぞれの内部アプリケーションプログラミングインターフェース(API)に従って、そのチップセット電力をチップセット削減割合だけ削減する。このようにして、コンピューティングデバイスのセット201の集合的な動作電力を電力削減値だけ削減することができる。
【0066】
上記の実施例1では、電力削減値は1.5MWである。コンピューティングデバイスのセット201が調整間隔中に35MWの集合的なチップセット電力で動作している場合、チップセット削減割合は1.5MW/35MW=4.3%である。これは、サイトサーバ203が、コンピューティングデバイスのセット201のそれぞれに、周波数-電圧設定を変更することによってコンピューティングデバイスのセットのそれぞれのチップセット電力を4.3%だけ削減するように指示することを意味する。その結果、コンピューティングデバイスのセット201の集合的な動作電力は、1.5MWだけ削減される。
【0067】
上記の実施例2では、電力削減値は3MWであるため、チップセット削減割合は3MW/35MW=8.6%となる。これは、サイトサーバ203が、コンピューティングデバイスのセット201のそれぞれに、周波数-電圧設定を変更することによってコンピューティングデバイスのセットのそれぞれのチップセット電力を8.6%だけ削減するように指示することを意味する。その結果、コンピューティングデバイスのセット201の集合的な動作電力は、3MWだけ削減される。
【0068】
図4は、実施例3による、電力網101の動作周波数の変動に応じたコンピューティングデバイスのセット201の動作電力の変動を示すグラフ400である。
【0069】
実施例4
上記の実施例3では、サイトサーバ203は、コンピューティングデバイスのセット201のそれぞれに、それらのチップセット電力を削減するように指示する。実施例3に記載されたプロセスは、コンピューティングデバイスのセット201が多数のコンピューティングデバイス、例えば25,000台以上のコンピューティングデバイスを含む場合、応答性が低下する。これは、25,000台以上のコンピューティングデバイスに命令を送信し、25,000台以上のコンピューティングデバイスがそれらの電圧-周波数設定を変更するにはより多くの時間がかかるためである。実施例4では、サイトサーバ203は、コンピューティングデバイスのセットの集合的な動作電力を電力削減値だけ削減するために、コンピューティングデバイス2011、2012、2013、及び2014の一部(すべてではない)、すなわちコンピューティングデバイスのセット201のサブセットに、それらのコンピューティングデバイスのそれぞれのチップセット電力を削減するように指示するように構成される。
【0070】
実施例4におけるコンピューティングデバイスのセット201のサブセットを決定する例示的な方法を以下に提供する。
【0071】
上記の実施例1では、電力削減値は1.5MWである。これは、コンピューティングデバイスのセット201の集合的なチップセット電力を1.5MWだけ削減する必要があることを意味する。サイトサーバ203またはサイトサーバ203の制御サーバ213は、マシンレジスタ1から1.5MW(すなわち、1500KW)の累積予備電力を検索する。1.5MWに対応するマシンIDは758である。したがって、サイトサーバ203は、コンピューティングデバイス1~758がコンピューティングデバイスのセット201のサブセットであると判定する。その結果、サイトサーバ203は、コンピューティングデバイス1~758に、それらのチップセット電力をそれぞれ対応する個々の予備電力だけ削減する命令を送信する。例えば、サイトサーバ203の制御サーバ213は、TCPソケットまたはUDPソケットを介して、192.168.0.1(マシンID:1)から192.168.10.13(マシンID:758)までのそれぞれのIPアドレスによって識別されるコンピューティングデバイスのセット201のサブセットのそれぞれに命令を送信する。命令の受信に応答して、コンピューティングデバイスのセット201のサブセットのそれぞれは、例えば、それぞれの内部アプリケーションプログラミングインターフェース(API)に従って、そのチップセット電力をその対応する個々の予備電力だけ削減する。このようにして、コンピューティングデバイスのセット201の集合的なチップセット電力は、電力削減値1.5MWだけ削減され、したがって、コンピューティングデバイスのセット201の集合的な動作電力は、電力削減値1.5MWだけ削減される。
【0072】
図5は、実施例4による、電力網101の動作周波数の変動に応じたコンピューティングデバイスのセット201の動作電力の変動を示すグラフ500である。
【0073】
一実施形態では、電気負荷ネットワーク200は、電力網101の動作周波数を下げるために使用される。この実施形態では、基準動作周波数は最大安全動作周波数であり、例えばオーストラリアでは50.15Hzである。サイトサーバ203は、周波数差を、調整間隔中の電力網101の動作周波数が最大動作周波数を上回るパーセンテージ差として決定するように構成される。サイトサーバ203はまた、最大超過パーセンテージに対するパーセンテージ差の割合(以下、「超過割合」と呼ぶ)を決定する。次に、サイトサーバ230は、超過割合を負荷変化限界(すなわち、有効にされた負荷)に乗じた値を電力増加値として決定する。以下、電力増加値の決定方法について、2つの実施例5及び6を挙げて説明する。
【0074】
実施例5
調整間隔中の電力網101の動作周波数が50.65Hzである場合、電力網101の動作周波数が最大動作周波数50.15Hzを上回るパーセンテージ差は、(50.65-50.15)/50.15=1%である。エネルギー市場規制当局(例えば、オーストラリアエネルギー市場運営者またはオーストラリアのAEMO)によって設定された最大超過パーセンテージが2%である場合、超過割合は(1%)/(2%)=50%となる。その結果、電力増加値は50%×負荷変化限界(すなわち、有効にされた負荷)となる。これは、コンピューティングデバイスのセット201の集合的な動作電力を、50%×負荷変化限界(すなわち、有効にされた負荷)だけ増加させる必要があることを意味する。したがって、エネルギー市場規制当局によって有効にされたコンピューティングデバイスのセット201の負荷変化限界(または有効にされた負荷)が3MWである場合、電力網101の動作周波数を下げるためには、コンピューティングデバイスのセット201の集合的な動作電力を1.5MW(すなわち、50%×3MW)だけ増加させる必要がある。
【0075】
実施例6
調整間隔中の電力網101の動作周波数が51.15Hzである場合、電力網101の動作周波数が最大動作周波数50.15Hzを上回るパーセンテージ差は、(51.15-50.15)/50.15=2%であり、超過割合は、(2%)/(2%)=100%である。その結果、電力増加値は100%×負荷変化限界となる。これは、コンピューティングデバイスのセット201の集合的な動作電力を、100%×負荷変化限界だけ増加させる必要があること、または有効にされた負荷をコンピューティングデバイスのセット201に完全に追加する必要があることを意味する。したがって、電力網101の動作周波数を下げるためには、コンピューティングデバイスのセット201の集合的な動作電力を3MW(すなわち、100%×3MW)だけ増加させる必要がある。
【0076】
上述のように、コンピューティングデバイスのセット201の集合的な動作電力は、コンピューティングデバイスのセット201の集合的なチップセット電力を変更することによって変更することができる。特に、コンピューティングデバイスのセット201の集合的な動作電力を電力増加値だけ増加させることは、コンピューティングデバイスのセット201の集合的なチップセット電力を電力増加値だけ増加させることによって達成することができる。コンピューティングデバイスのセット201の集合的なチップセット電力を増加させる様々な方法があり、他の実施形態を除外することなく、2つの実施例7及び8を以下に示す。
【0077】
実施例7
サイトサーバ203は、コンピューティングデバイスのセット201の集合的な動作電力を電力増加値だけ増加させるために、コンピューティングデバイスのセット201のそれぞれに、コンピューティングデバイスのセット201のそれぞれのチップセット電力を増加させるように指示するように構成することができる。具体的には、サイトサーバ203は、コンピューティングデバイスのセット201の集合的なチップセット電力に対する電力増加値の割合(以下、チップセット増加割合と呼ぶ)を決定する。サイトサーバ203は更に、コンピューティングデバイスのセット201のそれぞれに、コンピューティングデバイスのセット201のそれぞれのチップセット電力をチップセット増加割合だけ増加させるように指示する。例えば、サイトサーバ203の制御サーバ213は、TCPソケットまたはUDPソケットを介して、それぞれのIPアドレスによって識別されるコンピューティングデバイスのセット201のそれぞれに命令を送信する。命令の受信に応答して、コンピューティングデバイスのセット201のそれぞれは、例えば、それぞれの内部アプリケーションプログラミングインターフェース(API)に従って、そのチップセット電力をチップセット増加割合だけ増加させる。このようにして、コンピューティングデバイスのセット201の集合的な動作電力を電力増加値だけ増加させることができる。
【0078】
上記の実施例5では、電力増加値は1.5MWである。コンピューティングデバイスのセット201が調整間隔中に35MWの集合的なチップセット電力で動作している場合、チップセット増加割合は1.5MW/35MW=4.3%である。次に、サイトサーバ203は、コンピューティングデバイスのセット201のそれぞれに、周波数-電圧設定を変更することによってコンピューティングデバイスのセット201のそれぞれのチップセット電力を4.3%だけ増加させるように指示する。その結果、コンピューティングデバイスのセット201の集合的な動作電力は、1.5MWだけ増加する。
【0079】
上記の実施例6では、電力増加値は3MWであるため、チップセット増加割合は3MW/35MW=8.6%となる。サイトサーバ203は、コンピューティングデバイスのセット201のそれぞれに、周波数-電圧設定を変更することによってコンピューティングデバイスのセット201のそれぞれのチップセット電力を8.6%だけ増加させるように指示する。その結果、コンピューティングデバイスのセット201の集合的な動作電力は、3MWだけ増加する。
【0080】
実施例8
上記の実施例7では、サイトサーバ203は、コンピューティングデバイスのセット201のそれぞれに、それらのチップセット電力を増加させるように指示する。実施例7に記載されたプロセスは、コンピューティングデバイスのセット201が多数のコンピューティングデバイス、例えば25,000台以上のコンピューティングデバイスを含む場合、応答性が低下する。これは、25,000台以上のコンピューティングデバイスに命令を送信し、25,000台以上のコンピューティングデバイスがそれらの電圧-周波数設定を変更するには、より多くの時間がかかるためである。実施例8では、サイトサーバ203は、コンピューティングデバイスのセット201の集合的な動作電力を電力増加値だけ増加させるために、コンピューティングデバイス2011、2012、2013、及び2014の一部(すべてではない)、すなわちコンピューティングデバイスのセット201のサブセットに、それらのコンピューティングデバイスのそれぞれのチップセット電力を増加させるように指示するように構成される。
【0081】
実施例8におけるコンピューティングデバイスのセット201のサブセットを決定する例示的な方法を以下に提供する。
【0082】
上記の実施例5では、電力増加値は1.5MWである。これは、コンピューティングデバイスのセット201の集合的なチップセット電力を1.5MWだけ増加させる必要があることを意味する。サイトサーバ203またはサイトサーバ203の制御サーバ213は、マシンレジスタ1から1.5MW(すなわち、1500KW)の累積予備電力を検索する。1.5MWに対応するマシンIDは758である。したがって、サイトサーバ203は、コンピューティングデバイス1~758がコンピューティングデバイスのセット201のサブセットであると判定する。その結果、サイトサーバ203は、コンピューティングデバイス1~758に、それらのチップセット電力をそれぞれ対応する個々の予備電力だけ増加させる命令を送信する。例えば、サイトサーバ203の制御サーバ213は、TCPソケットまたはUDPソケットを介して、192.168.0.1(マシンID:1)から192.168.10.13(マシンID:758)までのそれぞれのIPアドレスによって識別されるコンピューティングデバイスのセット201のサブセットのそれぞれに命令を送信する。命令の受信に応答して、コンピューティングデバイスのセット201のサブセットのそれぞれは、例えば、それぞれの内部アプリケーションプログラミングインターフェース(API)に従って、そのチップセット電力をその対応する個々の予備電力だけ増加させる。このようにして、コンピューティングデバイスのセット201の集合的なチップセット電力は、電力増加値1.5MWだけ増加し、したがって、コンピューティングデバイスのセット201の集合的な動作電力は、電力増加値1.5MWだけ増加する。
【0083】
一実施形態では、電気負荷ネットワーク200は、エネルギー市場規制当局、例えばオーストラリアのAEMOによって規制される周波数制御プロセスに関与する。電気負荷ネットワーク200によって提供される周波数制御サービス(すなわち、必要に応じて電力網101の動作周波数を上げるか、または電力網101の動作周波数を下げる)は、エネルギー市場規制当局によって認められた場合、オーストラリアでは50ミリ秒の調整間隔で、例えば6秒、60秒、または5分間継続することができる。期間及び調整間隔は、本開示の範囲から逸脱することなく、他の国では異なる可能性がある。エネルギー市場規制当局は、周波数制御サービスの提供に対して電気負荷ネットワーク200の運営者に料金を支払う。しかしながら、電力網101の動作周波数を上げるためにコンピューティングデバイスのセット201の集合な動作電力を低下させると、1つまたは複数のコンピューティングタスクの実行は、悪影響を受ける可能性がある。これは、コンピューティングデバイスのセット201が金銭的利益を得るために複雑なコンピューティングタスクを実行している場合に特に問題となる。一例として、コンピューティングデバイスのセット201は、暗号通貨マイニング、例えばビットコインマイニングのためのプルーフオブワークタスクを実行するために使用することができる。電気負荷ネットワーク200の運営者は、プルーフオブワークタスクを完了すると、一定量の暗号通貨で報酬を得る。別の例として、コンピューティングデバイスのセット201は、例えば生物学的データ分析、天文学的データ分析などの高性能コンピューティングサービスを提供するために使用することができ、電気負荷ネットワーク200の運営者は、高性能コンピューティングサービスを提供することにより金銭的利益を得る。コンピューティングデバイスのセット201の集合的な動作電力を下げることは、コンピューティングデバイスのセット201のコンピューティング速度を低下させることを意味し、これは、コンピューティングタスクの完了及びコンピューティングタスクの完了に対する報酬の受け取りの遅延につながる。この実施形態では、サイトサーバ203は更に、サイトサーバ203が一定期間にわたってコンピューティングデバイスのセット201の集合的な動作電力を変更し続けると仮定して、第1の金銭的利益を決定し、コンピューティングデバイスのセット201が、その一定期間にわたってコンピューティングデバイスのセット201の集合的な動作電力を変更することなく、1つまたは複数のコンピューティングタスクを実行し続けると仮定して、第2の金銭的利益を決定するように構成される。コンピューティングタスク(複数可)の性質に応じて、第1または第2の金銭的利益を決定する際に、例えば、暗号通貨/法定為替レート(例えば、ビットコイン/オーストラリアドル)、ビットコインネットワークの難易度、ネットワーク容量、コインベースの報酬、取引手数料、電力価格、及び周波数制御サービス料金など、1つまたは複数の要因を考慮することができる。
【0084】
サイトサーバ203は、第1の金銭的利益が第2の金銭的利益よりも大きい場合にのみ、コンピューティングデバイスのセット201に、その一定期間中にコンピューティングデバイスのセット201の集合的な動作電力を変更するように指示する。これは、電気負荷ネットワーク200が、エネルギー市場規制当局によって支払われる料金がコンピューティングタスクの実行による金銭的利益よりも高いときにのみ周波数制御サービスを提供することを意味する。
【0085】
図6は、本開示の例示的な実施形態によるサイトサーバ203の例示的な構造を示す。
【0086】
図6に示すように、サイトサーバ203は、プロセッサ2031と、バス2033と、コンピュータ可読メモリ2035と、第1の通信インターフェース2037と、第2の通信インターフェース2039とを含む。プロセッサ2031は、バス2033を介してコンピュータ可読メモリ2035、第1の通信インターフェース2037、及び第2の通信インターフェース2039に接続される。したがって、プロセッサ2031は、これらの構成要素から命令及び/またはデータを受信し、その命令及び/またはデータをこれらの構成要素に送信することができる。プロセッサ2031は、汎用プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)のうちの1つであるが、これらに限定されない。コンピュータ可読メモリ2035は、コンピュータ可読命令のセットを記憶するように構成される。コンピュータ可読命令は、コンピュータプログラミング言語、例えばPythonで書くことができる。第1の通信インターフェース2037は、
図2に示すように、通信リンク7を介してコンピューティングデバイスのセット201に接続するように構成され、第2の通信インターフェース2039は、
図2に示すように、通信リンク8を介して周波数リーダ205に接続するように構成される。
【0087】
プロセッサ2031は、コンピュータ可読メモリ2035からコンピュータ可読命令を読み取り、コンピュータ可読命令を実行して、上述の方法ステップを実行するように構成される。
【0088】
本発明の別の実施形態によれば、コンピュータ可読命令は、非一時的なコンピュータ可読媒体上で利用可能となる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、電気的に消去・プログラム可能な読み取り専用メモリ(EEPROM(登録商標))、CD-ROM、DVD-ROM、フラッシュドライブ、クラウドストレージユニット、ファイル転送プロトコル(FTP)サーバなどであり得るが、これらに限定されない。コンピュータ可読命令のセットは、コンピュータソフトウェアプログラムの形態でコンピュータ可読メモリ2035にロードすることができる。サイトサーバ203のプロセッサ2031によって実行されたとき、サイトサーバ203は、上述の方法ステップを実行する。
【0089】
これらの実施形態に対する様々な修正は、この説明及び添付の図面から当業者には明らかである。本明細書に記載された様々な実施形態に関連する原理は、他の実施形態に適用することができる。したがって、この説明は、添付の図面とともに示される実施形態に限定されることを意図するものではなく、本明細書に開示または示唆された原理及び新規かつ独創的な特徴と一致する最も広い範囲を提供することを意図するものである。したがって、本開示は、本開示及び添付の特許請求の範囲内に含まれる他のすべてのそのような代替、修正、及び変形を保持することが予想される。
【0090】
以下の特許請求の範囲及び本発明の前述の説明では、明示的な言語または必要な含意により文脈上別段の解釈が必要な場合を除き、「含む(comprise)」という単語または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などの変形は、包括的な意味で使用され、すなわち、記載された特徴の存在を特定するが、本発明の様々な実施形態におけるさらなる特徴の存在または追加を排除するものではない。
【0091】
本明細書で使用される「含む(including)」または「含む(which includes)」または「含む(that includes)」という用語のいずれか1つも、その用語に続く要素/特徴を少なくとも含むが、他の要素を除外しないことを意味するオープン用語である。したがって、「含む(including)」は「含む(comprising)」と同義であり、「含む」ことを意味する。
【国際調査報告】