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特表2024-516697ろう付けされた熱交換器の製造のためのアルミニウム合金製の帯材または板材
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  • 特表-ろう付けされた熱交換器の製造のためのアルミニウム合金製の帯材または板材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-16
(54)【発明の名称】ろう付けされた熱交換器の製造のためのアルミニウム合金製の帯材または板材
(51)【国際特許分類】
   C22C 21/00 20060101AFI20240409BHJP
   C22F 1/04 20060101ALI20240409BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20240409BHJP
【FI】
C22C21/00 J
C22F1/04 Z
C22C21/00 E
C22C21/00 D
C22F1/00 614
C22F1/00 623
C22F1/00 627
C22F1/00 630A
C22F1/00 630K
C22F1/00 630M
C22F1/00 640A
C22F1/00 641A
C22F1/00 651A
C22F1/00 651Z
C22F1/00 681
C22F1/00 682
C22F1/00 683
C22F1/00 685Z
C22F1/00 694A
C22F1/00 694B
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 686A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567892
(86)(22)【出願日】2022-04-21
(85)【翻訳文提出日】2023-12-14
(86)【国際出願番号】 FR2022050750
(87)【国際公開番号】W WO2022234207
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】2104619
(32)【優先日】2021-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517422951
【氏名又は名称】コンステリウム ヌフ-ブリザック
【氏名又は名称原語表記】CONSTELLIUM NEUF-BRISACH
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】プゲ,リオネル
(72)【発明者】
【氏名】ダニエルー,アルメル
(57)【要約】
(質量%で)Si:0.25%超で0.70%未満;Fe:0.25%未満で少なくとも0.08%;Cu:0.60%超で1.10%未満;Mn:1.40%超で2.00%未満;Ti:0.15%未満で0.05%超;Mg:0.05%未満;Zr:0.01%未満;Cr:0.01%未満;Zn:0.20%未満;不純物:各々0.05%未満でかつ合計0.15%未満;残りはアルミニウム、という組成のアルミニウム合金製のコア層を有する、ろう付けされた熱交換器製造を目的とする帯材または板材。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろう付けされた熱交換器の製造を目的とし、コア層、任意にはコア層の一方または両方の面上の被覆層、および任意にはコア層と任意の被覆層との間に設置された、コア層の一方または両方の面上の中間層を有する帯材または板材において、コア層が、
- 0.25%超、好ましくは0.30%超、好ましくは0.35%超、好ましくは0.40%超で、かつ0.70%未満、好ましくは0.65%未満、好ましくは0.60%未満、好ましくは0.55%未満のSi、
- 0.25%未満、好ましくは0.20%未満で、かつ少なくとも0.08%、好ましくは0.10%超のFe、
- 0.60%超、好ましくは0.70%超、好ましくは0.80%超、好ましくは0.85%超で、かつ1.10%未満、好ましくは1.00%未満、好ましくは0.95%未満のCu、
- 1.40%超、好ましくは1.50%超で、かつ2.00%未満、好ましくは1.80%未満、好ましくは1.65%未満のMn、
- 0.15%未満、好ましくは0.12%未満、好ましくは0.10%未満で、かつ0.05%超のTi、
- 0.05%未満、好ましくは0.02%未満、好ましくは0.01%未満、好ましくは0.001%未満のMg、
- 0.01%未満、好ましくは0.005%未満のZr、
- 0.01%未満、好ましくは0.005%未満のCr、
- 0.20%未満、好ましくは0.10%未満、好ましくは0.05%未満、好ましくは0.01%未満のZn、
- 各々0.05%未満で、かつ合計0.15%未満の不純物、
- 残りはアルミニウム、
という組成(質量%)のアルミニウム合金製である、帯材または板材。
【請求項2】
コア層の一方または両方の面上および/または任意の中間層の自由面上において、ろう付け用アルミニウム合金、好ましくは、4.00~13.00質量%のSi、1.00質量%未満のFe、および好ましくは0.20%未満、好ましくは0.10%未満、好ましくは0.05%未満、好ましくは0.02%未満のZnを含む4xxx系の合金である被覆用合金でクラッドされていることを特徴とする、請求項1に記載の帯材または板材。
【請求項3】
4xxx系のろう付け用アルミニウム合金が(質量%で)、
- 5.00~13.00%、好ましくは6.00~11.00%、好ましくは7.50~10.50%のSi、
- 0.60%未満、好ましくは0.50%未満、好ましくは0.30%未満のFe、
- 0.40%未満、好ましくは0.10%未満、好ましくは0.05%未満のCu、
- 0.20%未満、好ましくは0.10%未満、好ましくは0.05%未満のMn、
- 第1の変形形態によると、0.20%未満、好ましくは0.10%未満、好ましくは0.05%未満、または第2の変形形態によると、0.50%~2.50%、好ましくは1.00~2.00%のMg、
- 0.20%未満、好ましくは0.10%未満、好ましくは0.05%未満、好ましくは0.02%未満のZn、
- 0.30%未満、好ましくは0.10%未満、好ましくは0.05%未満のTi、
- 任意には、Bi、Y、Srおよび/またはSn、
- 各々0.05%未満で、かつ合計0.15%未満の他の元素、
- 残りはアルミニウム、
を含むことを特徴とする、請求項2に記載の帯材または板材。
【請求項4】
コア層の一方または両方の面上において、好ましくは、質量%で、
- 0.50%未満のSi、
- 0.50%未満のFe、
- 0.25%未満のCu、
- 0.30%未満のMn、
- 0.20%未満、好ましくは0.15%未満のMg、
- 0.70~5.00%、好ましくは0.70から2.50%未満、好ましくは0.70から1.30%未満、好ましくは0.70から1.00%未満のZn、
- 0.15%未満のTi、
- 各々0.05%未満で、かつ合計0.15%未満の他の元素、
- 残りはアルミニウム、
という組成を有する、好ましくは7xxx系の合金である、犠牲陽極タイプの被覆用合金でクラッドされていることを特徴とする、請求項1に記載の帯材または板材。
【請求項5】
コア層の一方または両方の面上において、好ましくは、質量%で、
- 0.10~0.35%のSi、
- 0.70%未満のFe、
- 0.20%未満のCu、
- 0.70~2.00%、好ましくは0.90~1.30%のMn、
- 0.50~1.60%、好ましくは0.90~1.20%のZn、
- 0.15%未満のTi、
- 各々0.05%未満で、かつ合計0.15%未満の他の元素、
- 残りはアルミニウム、
という組成を有する、好ましくは3xxx系の合金である、犠牲陽極タイプの被覆用合金でクラッドされていることを特徴とする、請求項1に記載の帯材または板材。
【請求項6】
コア層の一方または両方の面上において、好ましくは(質量%で)、
- 0.50%未満、より好適には0.20%未満のSi、
- 0.70%未満、より好適には0.30%未満、さらに一層好適には0.20%未満のFe、
- 0.30~1.40%、より好適には0.50~0.90%、より好適には0.60~0.80%、または一変形形態によると1.00~1.30%のMn、
- 0.30%未満、好ましくは0.10%未満、さらに一層好適には0.05%未満のCu、
- 任意にはMg、Znおよび/またはIn、
- 各々0.05%未満で、かつ合計0.15%未満の他の元素、
- 残りはアルミニウム、
を含む、コアとろう付け用合金の間に設置された、好ましくは1xxxまたは3xxx系のいわゆる層間アルミニウム合金でクラッドされていることを特徴とする、請求項2または3に記載の帯材または板材。
【請求項7】
層間アルミニウム合金が(質量%で)、
- 0.15%未満のSi、
- 0.20%未満のFe、
- 0.10%未満のCu、
- 0.60~0.80%のMn、
- 第1の変形形態によると0.02%未満のMg、または第2の変形形態によると0.50%未満のMg、好ましくは0.25%未満のMg、
- 各々0.05%未満で、かつ合計0.15%未満の他の元素、
- 残りはアルミニウム、
を含むことを特徴とする、請求項6に記載の帯材または板材。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一つに記載の帯材または板材の製造方法において、
- コア合金製プレートの鋳造ステップ、
- 任意には、550~630℃、好ましくは580~630℃の1~24時間にわたるプレートの均質化ステップ、
- コア層の一方または両方の面上における被覆用アルミニウム合金での、そして任意にはコア層の一方または両方の面上における層間アルミニウム合金での任意のクラッドステップ、
- 30時間未満にわたる、好ましくは20時間未満にわたる、好ましくは12時間未満にわたる、より好適には3時間未満にわたる最高温度での維持を好ましくは伴う、450~550℃の温度での予熱ステップ、
- 2~6mmの厚みまでの、420~530℃の温度での、任意には均質化され任意にはクラッドされたプレートの熱間圧延ステップ、
- 所望される厚みへの冷間圧延ステップであって、冷間圧延後の帯材または板材の厚みが、好ましくは0.15~3mmである、ステップ、
- 10分~15時間にわたる、好ましくは20分~3時間にわたる最高温度での維持を伴う、240~450℃、好ましくは240~400℃、好ましくは280~370℃の温度での焼鈍ステップ、
という連続ステップを含む、方法。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一つに記載の帯材または板材から少なくとも部分的に製造された熱交換器。
【請求項10】
前記帯材または板材が、耐食性またはろう付け性の劣化なく改善された機械的強度を有している、熱交換器の製造のための、請求項1から7のいずれか一つに記載の帯材または板材の使用。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、場合によっては、一方または両方の面上において、被覆用合金、最も多くの場合アルミニウム-ケイ素ろう付け用合金(アルミニウム協会の命名法による4xxx系)および/またはコアと任意のろう付け用合金の間に設置されたアルミニウム-マンガン合金(アルミニウム協会の命名法による3xxx系)製の層間合金でクラッドされた、アルミニウム-マンガンコア合金(アルミニウム協会の命名法による3xxx系)製の(概して0.05~3mm好ましくは0.15~2.5mmの厚みの)薄い帯材または板材に関する。これらの帯材または板材は特に、エンジンの冷却用ラジエータ、蒸発器、暖房用ラジエータおよびチャージエアクーラ、コレクタ、電気自動車のバッテリ冷却器などの自動車向けの、ならびに空調システム内における、ろう付けによって組立てられた熱交換器の管、コレクタおよびプレートなどの要素の製造を目的としている。これらの熱交換器は、特に自動車のエンジンの冷却システムおよび車室の空調システム内にある。
【0002】
アルミニウム合金のろう付け技術は、例えばSoudage et Techniques Connexs、1991年11月~12月、p18~29で発表されたJ.C.Kucza、A.UhryおよびJ.C.Goussainの論文「アルミニウムおよびその合金の強力なろう付け」中に記載されている。本発明に係る帯材または板材は特に、NOCOLOK(登録商標)またはCAB(Controlled atomosphere brazing(制御雰囲気ろう付け))タイプの非腐食性フラックスでのろう付け技術において使用可能である。
【背景技術】
【0003】
ろう付けされた交換器の製造に使用されるアルミニウム合金製の帯材または板材に必要な特性は、特に、ろう付け前に管、コレクタフィンおよびプレートを容易に成形するために十分な成形性、優れたろう付け適性、可能なかぎり薄い厚みを使用できるようにするための、ろう付け後の高い機械的強度、使用中の優れた疲労応力耐性、およびろう付け後の優れた耐食性である。当然のことながら、選択された合金が鋳造および圧延し易いものであること、そして帯材または板材の製造コストが自動車産業の要求と相容れるものであることが重要である。
【0004】
(ラジエータなどの)熱交換器用の管の厚みの減少に有利に作用するためには、特に、ろう付け後の材料の機械的特性(詳細には、疲労耐性の主要な因子である、ISO 6892-1規格にしたがって得られた引張り曲線の最大荷重(Rm)(英語で「Ultimate Tensile Strength(極限引張強度)」または「UTS」))を、耐食性もろう付け性も減少させることなく、増大させることが有利である。
【0005】
すでにこの方向性で解決法が提案されてきた。例えば、下記の組成を開示する以下の特許出願を挙げることができる:
- 国際公開第2020/178507号:0.1~0.3%のSi;<0.2%のFe;0.75~1.05%のCu;1.2~1.7%のMn;<0.03%のMg;<0.15%のTi;<0.1%のZn;
- 欧州特許第1183151号明細書;0.4~0.8%のSi;<0.4%のFe;0.5~2%のCu;0.5~1.5%のMn;
- 欧州特許第2017032号明細書:0.3~1.2%のSi;0.05~0.4%のFe;0.3~1.2%のCu;0.3~1.8%のMn;0.05~0.6%のMg;<0.3%のTi;<0.3%のZr;<0.3%のCr。
【0006】
しかしながら、提案されている解決法は、ろう付け後の優れた機械的強度、優れた耐食性および優れたろう付け性の間の優れたトレードオフを必ずしも解決するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2020/178507号
【特許文献2】欧州特許第1183151号明細書
【特許文献3】欧州特許第2017032号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
市場の要求の増大に直面して、耐食性またはろう付け性の劣化なく、既存の合金に比べて改善された機械的強度を有する新規のコア合金の必要性が依然としてある。このようなコア合金は、製品の厚みの減少といういまだに存在する要求に応えることができるものと思われる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
意外にも、出願人は、耐食性またはろう付け性の劣化なく、機械的強度を改善できるようにする組成領域を決定した。
【0010】
一例として、本発明に係る目標は、ろう付け後の工業用帯材または板材について、140MPa超、好ましくは145MPa超、好ましくは150MPa超、好ましくは160MPa超の引張強度Rmを達成することであり得る。
【0011】
実施例において実証されるように、本発明はさらに、耐食性例えばSWAAT試験での腐食に対する耐性を改善するという予想外の利点を有する。
【0012】
したがって本発明は、ろう付けされた熱交換器の製造を目的とし、コア層、場合によってはコア層の一方または両方の面上の被覆層、および場合によってはコア層と任意の被覆層との間に設置された、コア層の一方または両方の面上の中間層を有する帯材または板材において、コア層が、
- Si:0.25%超、好ましくは0.30%超、好ましくは0.35%超、好ましくは0.40%超で、かつ0.70%未満、好ましくは0.65%未満、好ましくは0.60%未満、好ましくは0.55%未満;
- Fe:0.25%未満、好ましくは0.20%未満で、かつ少なくとも0.08%、好ましくは0.10%超;
- Cu:0.60%超、好ましくは0.70%超、好ましくは0.80%超、好ましくは0.85%超で、かつ1.10%未満、好ましくは1.00%未満、好ましくは0.95%未満;
- Mn:1.40%超、好ましくは1.50%超で、かつ2.00%未満、好ましくは1.80%未満、好ましくは1.65%未満;
- Ti:0.15%未満、好ましくは0.12%未満、好ましくは0.10%未満で、かつ0.05%超;
- Mg:0.05%未満、好ましくは0.02%未満、好ましくは0.01%未満、好ましくは0.001%未満;
- Zr:0.01%未満、好ましくは0.005%未満;
- Cr:0.01%未満、好ましくは0.005%未満;
- Zn:0.20%未満、好ましくは0.10%未満、好ましくは0.05%未満、好ましくは0.01%未満;
- 不純物:各々0.05%未満で、かつ合計0.15%未満;
- 残りはアルミニウム;
という組成(質量%)のアルミニウム合金製である、帯材または板材を目的とする。
【0013】
本発明は、本発明に係る帯材または板材の製造方法において:
- コア合金製プレートの鋳造ステップ、
- 場合によっては、550~630℃、好ましくは580~630℃の1~24時間にわたるプレートの均質化ステップ、
- コア層の一方または両方の面上における被覆用アルミニウム合金での、そして場合によってはコア層の一方または両方の面上における層間アルミニウム合金での任意のクラッドステップ、
- 30時間未満にわたる、好ましくは20時間未満にわたる、好ましくは12時間未満にわたる、より好適には3時間未満にわたる最高温度での維持を好ましくは伴う、450~550℃の温度での予熱ステップ、
- 2~6mmの厚みまでの、420~530℃の温度での、場合によっては均質化され場合によってはクラッドされたプレートの熱間圧延ステップ、
- 所望される厚みへの冷間圧延ステップであって、冷間圧延後の帯材または板材の厚みが、好ましくは0.15~3mmであるステップ、
- 10分~15時間にわたる、好ましくは20分~3時間にわたる最高温度での維持を伴う、240~450℃、好ましくは240~400℃、好ましくは280~370℃の温度での焼鈍ステップ、
という連続ステップを含む方法も目的とする。
【0014】
本発明は、少なくとも部分的に、本発明に係る帯材または板材から製造された熱交換器も目的とする。
【0015】
本発明は、熱交換器の製造のための、本発明に係る帯材または板材の使用において、前記帯材または板材が、耐食性またはろう付け性の劣化なく改善された機械的強度を有している使用も目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例のSWAAT耐食性試験の際の孔食分析を描いた図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
明細書および請求の範囲において、相反する表示のないかぎり:
- アルミニウム合金の呼称は、アルミニウム協会の命名法に準拠する;
- 化学元素の含有量は、質量%で表わされる。
【0018】
コアアルミニウム合金
本発明に係る帯材または板材は、ろう付けされた熱交換器の製造を目的としており、コア層、場合によってはコア層の一方または両方の面上の被覆層、および場合によってはコア層と任意の被覆層との間に設置されたコア層の一方または両方の面上の中間層を有し、コア層は、
- Si:0.25%超、好ましくは0.30%超、好ましくは0.35%超、好ましくは0.40%超で、かつ0.70%未満、好ましくは0.65%未満、好ましくは0.60%未満、好ましくは0.55%未満;
- Fe:0.25%未満、好ましくは0.20%未満で、かつ少なくとも0.08%、好ましくは0.10%超;
- Cu:0.60%超、好ましくは0.70%超、好ましくは0.80%超、好ましくは0.85%超で、かつ1.10%未満、好ましくは1.00%未満、好ましくは0.95%未満;
- Mn:1.40%超、好ましくは1.50%超で、かつ2.00%未満、好ましくは1.80%未満、好ましくは1.65%未満;
- Ti:0.15%未満、好ましくは0.12%未満、好ましくは0.10%未満で、かつ0.05%超;
- Mg:0.05%未満、好ましくは0.02%未満、好ましくは0.01%未満、好ましくは0.001%未満;
- Zr:0.01%未満、好ましくは0.005%未満;
- Cr:0.01%未満、好ましくは0.005%未満;
- Zn:0.20%未満、好ましくは0.10%未満、好ましくは0.05%未満、好ましくは0.01%未満;
- 不純物:各々0.05%未満で、かつ合計0.15%未満;
- 残りはアルミニウム;
という組成(質量%)のアルミニウム合金製である。
【0019】
コア合金の組成限界は、以下のように理由付けされ得る。
【0020】
ケイ素最小含有量を0.10%とすることによって、コストが高い純粋なベースの使用を回避することができる。0.25%超のSi含有量は、例えばSWAAT試験での耐食性の改善を可能にすることが観察された。したがって、ケイ素含有量は、好ましくは0.25%超、好ましくは0.30%超、好ましくは0.35%超、好ましくは0.40%超である。
【0021】
過度に高いケイ素含有量は、コアの固相線温度を低下させ、ろう付けを危うくする可能性がある。ケイ素を0.70%未満、好ましくは0.65%未満、好ましくは0.60%未満、好ましくは0.55%未満に限定することが好ましい。
【0022】
鉄含有量を0.25%未満、好ましくは0.20%未満に限定することは、特に鉄を含有する粗大析出物の画分を削減することによって、耐食性および成形性にも有利である。しかしながら、高い原価を導くと考えられる、例えば0.08%未満といった非常に低い含有量に下げる必要はない。したがって、鉄含有量は、0.08%以上、好ましくは0.10%超である。
【0023】
銅は、機械的強度に寄与する硬化元素であるが、1.1%を超えると、鋳造時に亀裂を形成するリスクがより高くなる。鋳造時に粗大金属間化合物が形成される可能性もあり、これらの化合物は、金属の均質性の妨げとなり、腐食の開始部位を形成し得る。高い機械的強度を得るためには、銅の含有量は、0.60%超、好ましくは0.70%超、好ましくは0.80%超、好ましくは0.85%超である。好ましくは、銅含有量は1.10%未満、好ましくは1.00%未満、好ましくは0.95%未満である。
【0024】
マンガンは、固溶体によって、およびAl-Mn-Si分散質の形成によって機械的強度に寄与する。有意な硬化を得るためには、マンガン含有量は、好ましくは1.40%超、好ましくは1.50%超である。成形性を低下させ得る鋳造時の多数の粗大相の形成を回避するため、Mn含有量を2.00%未満、好ましくは1.80%未満、好ましくは1.65%未満に限定することが推奨される。
【0025】
亜鉛の限定的添加は、特に銅の含有量が最も高い合金について、電気化学的メカニズムを修正することによって、耐食性に有益な効果を及し得る。しかしながら、この添加は、コアの全体的腐食に対する過度に強い感受性を回避するために0.20%未満にとどめるべきである。好ましくは、Zn含有量は、0.10%未満、好ましくは0.05%未満、好ましくは0.01%未満に限定される。
【0026】
マグネシウムは、機械的強度の有意な増加をもたらす。しかしながら、フラックスを用いた制御雰囲気下での炉内ろう付け(CAB)の場合、マグネシウムの含有量を0.2%未満に限定することが好ましい。本発明によると、マグネシウム含有量は0.05%未満、好ましくは0.02%未満、好ましくは0.01%未満、好ましくは0.001%未満である。
【0027】
チタンは、鋳造時の粒径の制御を可能にする。チタンの含有量は、0.15%未満、好ましくは0.12%未満、好ましくは0.10%未満である。好ましくは、Ti含有量は、0.05%超である。
【0028】
ジルコニウムおよびクロムは、任意に添加可能である。しかしながら、これらは好ましくは存在しないか、あるいは不純物に対応する含有量、すなわち各々0.01%未満、好ましくは各々0.005%未満の含有量で存在する。
【0029】
被覆用アルミニウム合金
本発明に係る帯材または板材は、製造される部品のタイプに応じて概して0.05~3mm、好ましくは0.15~2.5mmの厚みを有し、コア層の一方または両方の面上および/または任意の中間層の自由面上において、ろう付け用合金かまたは部品を腐食から保護するために犠牲陽極の役割を果たす合金であり得る被覆用合金、例えば好ましくは0.70から2.50%未満、好ましくは0.70から1.30%未満、好ましくは0.70から1.00%未満のZnを含む7xxx系、または例えば0.50~1.60%、好ましくは0.90~1.20%のZnを含む3xxx系の、亜鉛含有合金などでクラッドされていてよい。7xxx系の合金は例えば、AA7072合金であってよい。任意の中間層の自由面は、コア層と接触していない中間層の面に対応する。ろう付け層は、コア層の一方または両方の面上および/または中間層の自由面上においてクラッドされていてよく、一方で犠牲陽極は、コア層と犠牲陽極の間の中間層なしで、好ましくはコア層の一方または両方の面上のみにおいてクラッドされていてよいということに留意すべきである。
【0030】
一変形形態によると、犠牲陽極タイプの被覆用合金は、本発明によると、好ましくは質量%で:0.50%未満のSi;0.50%未満のFe;0.25%未満のCu;0.30%未満のMn;0.20%未満、好ましくは0.15%未満のMg;0.70~5.00%、好ましくは0.70から2.50%未満、好ましくは0.70から1.30%未満、好ましくは0.70から1.00%未満のZn;0.15%未満のTi;各々0.05%未満で、かつ合計0.15%未満の他の元素;残りはアルミニウム、という組成を有する、7xxx系の合金であり得る。
【0031】
一例として、AA7072組成物は、本発明に係る犠牲陽極として適切であり得るアルミニウム合金である。その組成は、質量%で:0.05%未満のSi;0.05%未満のFe;0.10%未満のCu;0.10%未満のMn;0.10%未満のMg;0.80~1.30%のZn;各々0.05%未満で、かつ合計0.15%未満の他の元素;残りはアルミニウム、である。
【0032】
一変形形態によると、AA7072組成物は、好ましくは1.00%未満のZnを含む。
【0033】
別の変形形態によると、犠牲陽極タイプの被覆用合金は、本発明によると、好ましくは質量%で:0.10~0.35%のSi、0.70%未満のFe;0.20%未満のCu;0.70~2.00%、好ましくは0.90~1.30%のMn;0.50~1.60%、好ましくは0.90~1.20%のZn;0.15%未満のTi;各々0.05%未満で、かつ合計0.15%未満の他の元素;残りはアルミニウムという組成を有する、3xxx系の合金であり得る。
【0034】
本発明に係る犠牲陽極として適切であり得る3xxx系または7xxx系の合金の各元素の好適な値は、一例として下表1(3xxx-1、7xxx-1、および7xxx-2の欄)内に、質量%で示されている。
【0035】
【表1】
【0036】
ろう付け用合金は好ましくは、4xxx系の合金、好ましくは、ろう付けのために十分な温度間隔を得るためコア合金の固相線に比べて十分低い液相線温度、許容可能な機械的強度および優れた濡れ性を伴う、0.20%未満、好ましくは0.10%未満、好ましくは0.05%未満、好ましくは0.02%未満のZnを含む4xxx系の合金である。これらの合金は、添加元素、例えばストロンチウムを、好ましくは0.05%未満の質量分率にしたがって含有し得る。
【0037】
一変形形態によると、本発明のろう付け用合金は、Y、Snおよび/またはBiを含む。この変形形態は、詳細には、フラックスレスのろう付けにとっての利点を有する。好ましくは、ろう付け用合金は、以下のものを含む:
- 0.01~0.10%、好ましくは0.015~0.08%、好ましくは0.02~0.065%のY;
- 0.01~0.10%、好ましくは0.015~0.08%、好ましくは0.02~0.065%のSn;
および/または
- 第1の変形形態によると、多くとも0.04%、好ましくは多くとも0.03%、好ましくは多くとも0.02%のBi;または第2の変形形態によると、多くとも0.15%、好ましくは多くとも0.12%、そして好ましくは少なくとも0.05%のBi。
【0038】
好ましくは、本発明に係る帯材または板材は、コア層の一方または両方の面上および/または任意の中間層の自由面上において、ろう付け用アルミニウム合金、好ましくは4.00~13.00質量%のSi、1.00質量%未満のFe、そして好ましくは0.20%未満、好ましくは0.10%未満、好ましくは0.05%未満、好ましくは0.02%未満のZnを含む4xxx系の合金でクラッドされている。
【0039】
好ましくは、4xxx系のろう付け用アルミニウム合金は(質量%で);
- Si:5.00~13.00%、好ましくは6.00~11.00%、好ましくは7.50~10.50%;
- Fe:0.60%未満、好ましくは0.50%未満、好ましくは0.30%未満;
- Cu:0.40%未満、好ましくは0.10%未満、好ましくは0.05%未満;
- Mn:0.20%未満、好ましくは0.10%未満、好ましくは0.05%未満;
- Mg:第1の変形形態によると、0.20%未満、好ましくは0.10%未満、好ましくは0.05%未満;または第2の変形形態によると、0.50%~2.50%、好ましくは1.00~2.00%;
- Zn:0.20%未満、好ましくは0.10%未満、好ましくは0.05%未満、好ましくは0.02%未満;
- Ti:0.30%未満、好ましくは0.10%未満、好ましくは0.05%未満;
- 場合によっては、Bi、Y、Srおよび/またはSn;
- 他の元素:各々0.05%未満で、かつ合計0.15%未満;
- 残りはアルミニウム、
を含む。
【0040】
一例として、AA4045組成物は、本発明に係るろう付け用合金として適切であり得るアルミニウム合金である。その組成は、質量%で:9.0~11.0%のSi;0.80%未満のFe;0.30%未満のCu;0.05%未満のMn;0.05%未満のMg;0.10%未満のZn;0.20%未満のTi;各々0.05%未満で、かつ合計0.15%未満の他の元素;残りはアルミニウムである。
【0041】
一例として、先行の組成物は、好ましくは0.60%未満のFeを含む。
一例として、先行の組成物は、好ましくは0.10%未満のCuを含む。
【0042】
一例として、AA4343組成物は、本発明に係るろう付け用合金として適切であり得るアルミニウム合金である。その組成は、質量%で:6.80~8.20%のSi;0.80%未満のFe;0.25%未満のCu;0.10%未満のMn;0.05%未満のMg;各々0.05%未満で、かつ合計0.15%未満の他の元素;残りはアルミニウムである。
【0043】
一例として、先行の組成物は、好ましくは0.30%未満のFeを含む。
【0044】
一例として、先行の組成物は、好ましくは0.10%未満のCuを含む。
【0045】
一例として、AA4004組成物は、本発明に係るろう付け用合金として適切であり得るアルミニウム合金である。その組成は、質量%で:9.00~10.50%のSi;0.80%未満のFe;0.25%未満のCu;0.10%未満のMn;1.00~2.00%のMg;0.20%未満のZn;各々0.05%未満で、かつ合計0.15%未満の他の元素;残りはアルミニウムである。
【0046】
一例として、AA4104組成物は、本発明に係るろう付け用合金として適切であり得るアルミニウム合金である。その組成は、質量%で:9.00~10.50%のSi;0.80%未満のFe;0.25%未満のCu;0.10%未満のMn;1.00~2.00%のMg;0.20%未満のZn;0.02~0.20%のBi;各々0.05%未満で、かつ合計0.15%未満の他の元素;残りはアルミニウムである。
【0047】
層間アルミニウム合金
一実施形態によると、本発明に係る帯材または板材は、コア層の一方または両方の面上において、好ましくは(質量%で):
- Si:0.50%未満、より好適には0.20%未満;
- Fe:0.70%未満、より好適には0.30%未満、さらに一層好適には0.20%未満;
- Mn:0.30~1.40%、より好適には0.50~0.90%、より好適には0.60~0.80%、または一変形形態によると1.00~1.30%;
- Cu:0.30%未満、好ましくは0.10%未満、さらに一層好適には0.05%未満;
- 場合によっては、Mg、Znおよび/またはIn;
- 他の元素:各々0.05%未満で、かつ合計0.15%未満;
- 残りはアルミニウム;
を含む、コアと任意のろう付け用合金の間に設置された、好ましくは1xxxまたは3xxx系の、いわゆる層間アルミニウム合金でクラッドされている。
【0048】
好ましくは、本発明に係る帯材または板材の層間アルミニウム合金は(質量%で):Si<0.15%;Fe<0.20%;Cu<0.10%;0.60~0.80%のMn;第1の変形形態によると<0.02%のMg、または第2の変形形態によると<0.50%、好ましくは<0.25%のMg;各々<0.05%で、かつ合計<0.15%の他の元素、残りはアルミニウム、を含む。
【0049】
好ましくは、層間アルミニウム合金は、AA3xxx系の合金である。
【0050】
一変形形態によると、層間アルミニウム合金は、さらに以下のものを含むことができる:
- 1.5~2.3%の含有量にしたがったZn;および/または
- 0.005~0.04%の含有量にしたがったIn。
【0051】
帯材または板材
本発明に係る帯材または板材は、熱交換器の異なる部分、例えば管、プレート、コレクタ、電気車両向けバッテリ冷却システムなどの製造に使用され得る、いわゆるろう付け用帯材または板材である。
【0052】
本発明に係る帯材または板材は、複数の層を伴う、詳細には2、3、4または5層を伴う構成を有することができる。
【0053】
2層を伴う構成は、唯一の面上において1つの被覆層で、詳細には1つのろう付け層または1つの犠牲陽極でクラッドされた1つのコアを含む。
【0054】
3層を伴う構成は:
- その両方の面上において1つのろう付け層でクラッドされている1つのコア層;または、
- その両方の面上において1つの犠牲陽極でクラッドされている1つのコア層;または
- それ自体1つのろう付け層でクラッドされている1つの中間層で、唯一の面上においてクラッドされている1つのコア層;または、
- 第1の面上において1つのろう付け層でクラッドされ、もう1つの面上において1つの犠牲陽極でクラッドされている1つのコア層、
を含む。
【0055】
4層を伴う構成は:
- それ自体1つのろう付け層でクラッドされている1つの中間層で、第1の面上においてクラッドされ、もう一方の面上において1つのろう付け層でクラッドされている、1つのコア層;または
- それ自体1つのろう付け層でクラッドされている1つの中間層で、第1の面上においてクラッドされ、もう一方の面上において1つの犠牲陽極でクラッドされている1つのコア層、
を含む。
【0056】
5層を伴う構成は、それ自体1つのろう付け層でクラッドされている1つの中間層で、その両方の面上においてクラッドされた1つのコア層を含む。
【0057】
以上で挙げた構成の各々において、2つのろう付け層、2つの中間層または2つの犠牲陽極が具備されている場合には、それらは、したがって組成および厚みに関して同一であっても異なっていてもよい。詳細には、コア層以外の各層の厚み、すなわちろう付け層、中間層および犠牲陽極の厚みは、本発明に係る帯材または板材の総厚みの、好ましくは4~15%、好ましくは4~11%である。好ましくは、犠牲陽極の組成は、同一である。
【0058】
方法
本発明は、帯材または板材の製造方法において:
- コア合金製プレートの鋳造ステップ;
- 任意には、550~630℃、好ましくは580~630℃の1~24時間にわたるプレートの均質化ステップ;
- コア層の一方または両方の面上における被覆用アルミニウム合金での、そして場合によってはコア層の一方または両方の面上における層間アルミニウム合金での任意のクラッドステップ;
- 30時間未満にわたる、好ましくは20時間未満にわたる、好ましくは12時間未満にわたる、より好適には3時間未満にわたる最高温度での維持を好ましくは伴う、450~550℃の温度での予熱ステップ;
- 2~6mmの厚みまでの、420~530℃の温度での、場合によっては均質化され場合によってはクラッドされたプレートの熱間圧延ステップ;
- 所望される厚みへの冷間圧延ステップであって、冷間圧延後の帯材または板材の厚みが好ましくは0.15~3mmであるステップ;および、
- 10分~15時間にわたる、好ましくは20分~3時間にわたる最高温度での維持を伴う、240~450℃、好ましくは240~400℃、好ましくは280~370℃の温度での焼鈍ステップ、
という連続ステップを含む方法も目的としている。
【0059】
本発明に係る方法の前記被覆用合金は、詳細には、1つのろう付け用合金、または1つの犠牲陽極、または2つのろう付け用合金、または2つの犠牲陽極、または1つのろう付け用合金と1つの犠牲陽極であってよい。
【0060】
好ましくは、本発明に係る方法においては、中間焼鈍は存在しない。帯材または板材は、大きな成形を伴う部品向けである場合、連続炉またはバッチ炉で300~450℃の温度での最終焼鈍を行うことによって、焼鈍状態(質別O)で使用可能である。バッチ炉において、焼鈍は、325~400℃、好ましくは330~400℃の温度で好ましくは行われる。この焼鈍により、成形性が改善される。
【0061】
他の事例においては、帯材または板材は、より優れた機械的強度を導く加工硬化または回復状態、例えば質別H14またはH24(NF EN 515規格による)で使用することができ、この後者の質別は、250~325℃、好ましくは310℃未満の温度での回復焼鈍によって得られる。
【0062】
任意のクラッド材料の設置の前に、550~630℃、好ましくは580~630℃の温度でのコア合金プレートの均質化を行うことができる。この均質化は、圧延された帯材または板材の延性にとって有利であり、帯材または板材が質別Oで使用される場合に推奨される。この均質化は、Mnに対する分散質の併合に有利に作用する。
【0063】
使用
本発明は、少なくとも部分的に本発明に係る帯材または板材から製造された熱交換器も目的としている。
【0064】
本発明は、熱交換器の製造のための、本発明に係る帯材または板材の使用において、前記帯材または板材が、耐食性またはろう付け性の劣化なく改善された機械的強度を有している、使用も目的とする。
【0065】
本発明に係る帯材または板材は、特に自動車向けの、ろう付けされた熱交換器、例えばエンジンの冷却用ラジエータ、蒸発器、暖房用ラジエータおよびチャージエアクーラ、コレクタ、電気自動車のバッテリ冷却器などの製造、ならびに空調システム内で使用され得る。
【実施例
【0066】
実施例1
下表2に質量%で示された組成を有するアルミニウム合金で、竪型半連続鋳造(DC鋳造)で、異なるコアインゴットを鋳造した。
【0067】
【表2】
【0068】
コアインゴットを次に、片面上のみにおいて、組立て総厚みの7.5%を占めるAA4045タイプの合金(9.7%のSi;0.2%のFe;<0.05%のCu;<0.05%のMg;<0.05%のMn;<0.05%のSr;0.02%のTi)製のろう付けクラッドを伴って組立てた。アセンブリを500℃で12時間予熱し、約490℃の温度で熱間圧延し、その後、4mmから0.4mmまで冷間圧延した。320℃で1時間の最終焼鈍により、治金学的質別H24を得ることができた。
【0069】
その後、600℃で2分間の加熱を用いて、50ppm未満のOを有する制御雰囲気下でのろう付け(CAB)の条件を再現するために、21cm×30cmの試料に対して、ろう付けのシミュレーションを実施した。
【0070】
クラッドされた面上の、異なる温度(20℃、110℃および130℃)での引張強度およびSWAAT試験にしたがった耐食性の測定を、ろう付けされた試料に対して実施した。
【0071】
引張強度の測定は、ISO 6892-1規格にしたがって実施した。
【0072】
以下のプロトコルを使用して、耐食性を決定した:
- 各構成について、アセトンを染み込ませた白色吸収紙で予め脱脂した126mm(L方向)×90mm(TL方向)の寸法の試料を調製する;
- 非試験対象面ならびに4つの縁を約0.5cmの幅にわたり、透明なビニル接着テープ(例えば3Mビニル764タイプのもの)で保護する;
- 試験すべき面を、アセトンを染み込ませた吸収紙で清浄する;
- このように調製した試料を、水平に対し約60℃の傾斜を付けて、ラック上に設置する;
- 各試料について、ASTM G85 A3規格にしたがって、49℃の温度で30分間の塩水噴霧段階と1時間30分の湿潤段階の交番を特に含むSWAATサイクル試験(海水酸性化酢酸試験)を実施する。
【0073】
試験期間全体、つまり13日間にわたり、各試料について、毎日、食孔数を読み取った。食孔は、図1に例示されているように、非試験対象面上に適用された接着テープ内に膨れを形成したことから、各試料の裏面で目視できた。図1において、参照番号6は、試料に対応し;参照番号7は接着テープに対応し;参照番号8は孔食に対応し;参照番号9は孔食によって形成された膨れに対応する。
【0074】
食孔数の調査の結果は、下表3に示されている。
【0075】
【表3】
【0076】
上表3で示された情報を補足して、SWAAT試験後の顕微鏡による観察に応じて、各合金について腐食の形態を決定した:
- 比較例-1:深い腐食孔;
- 比較例-2:深い腐食孔;
- 本発明1:腐食深さが基準のものを下回ったことから、基準より優れている;
- 本発明2:腐食深さが基準のものを下回ったことから、基準より優れている。
【0077】
上表3によると、以下の結論を導き出すことが可能である:
- 本発明は、基準合金よりも優れた機械的強度を得ることを可能にする;
- 本発明は、SWAAT試験後の耐食性および孔食感受性に関して基準合金と少なくとも同じ性能レベルを得ることを可能にする。
【0078】
実施例2
質量%で下表4に示された組成を有するアルミニウム合金を用いて、竪型半連続鋳造(DC鋳造)で、異なるコアインゴットを鋳造した。
【0079】
【表4】
【0080】
コアインゴットを1~24時間、550~630℃の温度で均質化した。
【0081】
その後、一方の側にはアセンブリ総厚みの5%を占めるAA4045タイプの合金製のろう付けクラッドを伴い、他方側にはアセンブリ総厚みの10%を占めるAA7072タイプの合金製の犠牲陽極を伴って、コアインゴットを組立てた。ろう付け用合金および犠牲陽極の組成は、質量%で下表5に示されている。
【0082】
【表5】
【0083】
ろう付け用合金および犠牲陽極No.1を、コア-比較例-3のコア上にクラッドした(アセンブリ1)。ろう付け用合金および犠牲陽極No.2を、コア-比較例-4のコア上にクラッドした(アセンブリ2)。ろう付け用合金および犠牲陽極No.3を、コア-比較例-5のコア上にクラッドした(アセンブリ3)。ろう付け用合金および犠牲陽極No.4を、コア-本発明-3のコア上にクラッドした(アセンブリ4)。
【0084】
アセンブリを、450~550℃の温度で予熱し、30時間未満の間最高温度に維持し、約500℃の温度で3mmの厚みまで熱間圧延し、その後、サンドイッチ構造の最終総厚み1mmまで冷間圧延した。340℃で30分間の最終焼鈍により、治金学的質別Oを得ることができた。
【0085】
その後、600℃で2分間の加熱を用いて、50ppm未満のOを有する制御雰囲気下でのろう付け(CAB)の条件を再現するために、21cm×30cmの試料に対して、ろう付けのシミュレーションを実施した。
【0086】
引張強度UTS(=Rm)、弾性限界TYS(=Rp0.2)および伸びE%(=A%)の測定を、ろう付けの前後の試料に対して行った。ろう付け用合金AA4045でクラッドした面上でのSWAAT試験にしたがった耐食性の測定を、ろう付けした試料について実施した。
【0087】
引張強度UTS(=Rm)、弾性限界TYS(=Rp0.2)および伸びE%(=A%)の測定を、ISO 6892-1規格にしたがって実施した。
【0088】
ろう付け前後の機械的性能測定の結果は、下表6中に示されている。
【0089】
【表6】
【0090】
以下のプロトコルを使用して、耐食性を決定した:
- 各構成について、アセトンを染み込ませた白色吸収紙で予め脱脂した126mm(L方向)×90mm(TL方向)の寸法の試料を調製する;
- 非試験対象面ならびに4つの縁を約0.5cmの幅にわたり、透明なビニル接着テープ(例えば3Mビニル764タイプのもの)で保護する;
- 試験すべき面を、アセトンを染み込ませた吸収紙で清浄する;
- このように調製した試料を、水平に対し約60℃の傾斜を付けて、ラック上に設置する;
- 各試料について、ASTM G85 A3規格にしたがって、49℃の温度で30分間の塩水噴霧段階と1時間30分の湿潤段階の交番を特に含むSWAATサイクル試験を実施する。
【0091】
並行して、SWAAT試験期間全体、つまり29日間、41日間、58日間および63日間にわたり、各試料について、毎日、食孔数を読み取った。食孔は、図1に例示されているように、非試験対象面上に適用された接着テープ内に膨れを形成したことから、各試料の裏面で目視できた。
【0092】
食孔数の調査の結果は、下表7に示されている。
【0093】
【表7】
【0094】
上表6および7によると、本発明は、満足のいく機械的強度、詳細には140MPa超のRm(=UTS)と、改善された耐食性、例えば腐食に起因する食孔のより長い期間にわたる不在との間の、最も優れたトレードオフを得ることを可能にする、という結論を導き出すことができる。
【符号の説明】
【0095】
6 試料
7 接着テープ
8 孔食
9 膨れ

図1
【国際調査報告】