(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-16
(54)【発明の名称】キメラ受容体およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/63 20060101AFI20240409BHJP
C07K 16/42 20060101ALI20240409BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240409BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240409BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20240409BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240409BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240409BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240409BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240409BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240409BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240409BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240409BHJP
C12N 5/078 20100101ALI20240409BHJP
C12N 5/0781 20100101ALI20240409BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20240409BHJP
C12N 5/0784 20100101ALI20240409BHJP
C12N 5/0786 20100101ALI20240409BHJP
C12N 5/0787 20100101ALI20240409BHJP
C12N 5/0735 20100101ALI20240409BHJP
C12N 5/074 20100101ALI20240409BHJP
C12N 5/0775 20100101ALI20240409BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240409BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240409BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240409BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240409BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240409BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240409BHJP
A61K 35/18 20150101ALI20240409BHJP
A61K 35/19 20150101ALI20240409BHJP
A61K 35/15 20150101ALI20240409BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20240409BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20240409BHJP
A61K 35/545 20150101ALI20240409BHJP
【FI】
C12N15/63 Z
C07K16/42 ZNA
C07K16/46
C07K19/00
C07K14/705
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N5/078
C12N5/0781
C12N5/0783
C12N5/0784
C12N5/0786
C12N5/0787
C12N5/0735
C12N5/074
C12N5/0775
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P37/04
A61K48/00
A61P43/00 105
A61K35/17
A61K35/18
A61K35/19
A61K35/15
A61K35/12
A61K35/28
A61K35/545
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568216
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(85)【翻訳文提出日】2023-12-12
(86)【国際出願番号】 US2022028202
(87)【国際公開番号】W WO2022236142
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519028678
【氏名又は名称】センティ バイオサイエンシズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】ゴンザレス-ジュンカ アルバ
(72)【発明者】
【氏名】ログエブ アッセン ボヤノブ
(72)【発明者】
【氏名】フランケル ニコラス
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA91Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZB091
4C084ZB211
4C084ZB261
4C085AA14
4C085AA16
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB36
4C087BB37
4C087BB38
4C087BB44
4C087BB57
4C087BB63
4C087BB64
4C087BB65
4C087CA04
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZB09
4C087ZB21
4C087ZB26
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
Vセットおよび免疫グロブリンドメイン含有2(VSIG2)に特異的な抗原結合ドメインを含むキメラタンパク質が本明細書に提供される。VSIG2に特異的な抗原結合ドメインを含むキメラタンパク質を対象とする、細胞、ポリヌクレオチド、ベクター、組成物、および方法もまた、本明細書に提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Vセットおよび免疫グロブリンドメイン含有2(VSIG2)に特異的な抗原結合ドメインと、異種分子または部分とを含む、キメラタンパク質であって、
前記抗原結合ドメインが、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、
(a)前記VHが、
GFTFSNS(配列番号2)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、
SDGGLY(配列番号3)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、および
QGVRPFFDY(配列番号4)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)
を含み、かつ
前記VLが、
RASENIYSYLA(配列番号11)またはRASENLYSYLA(配列番号12)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、
NAETLPE(配列番号13)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、および
QHHYVIPWT(配列番号14)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)
を含む;または
(b)前記VHが、
配列番号1の前記VH領域アミノ酸配列に含有される重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、配列番号1の前記VH領域アミノ酸配列に含有される重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、および配列番号1の前記VH領域アミノ酸配列に含有される重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)
を含み、かつ
前記VLが、
配列番号9の前記VL領域アミノ酸配列に含有される軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、配列番号9の前記VL領域アミノ酸配列に含有される軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、および配列番号9の前記VL領域アミノ酸配列に含有される軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)
を含む;または
(c)前記VHが、
配列番号1の前記VH領域アミノ酸配列に含有される重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、配列番号1の前記VH領域アミノ酸配列に含有される重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、および配列番号1の前記VH領域アミノ酸配列に含有される重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)
を含み、かつ
前記VLが、
配列番号10の前記VL領域アミノ酸配列に含有される軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、配列番号10の前記VL領域アミノ酸配列に含有される軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、および配列番号10の前記VL領域アミノ酸配列に含有される軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)
を含み、
任意選択で、参照抗体のCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3のアミノ酸配列が、KabatまたはChothiaナンバリングスキームに基づき定義される、キメラタンパク質。
【請求項2】
前記VH領域が、配列番号1のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のキメラタンパク質。
【請求項3】
前記VL領域が、配列番号9のアミノ酸配列を含むか、または前記VL領域が、配列番号10のアミノ酸配列を含む、請求項1または請求項2に記載のキメラタンパク質。
【請求項4】
前記抗原結合ドメインが、一本鎖可変断片(scFv)を含み、
任意選択で前記scFvの前記VHおよびVLが、ペプチドリンカーによって分離され、
任意選択で前記抗原結合ドメインが、構造VH-L-VLまたはVL-L-VHを含み、VHが重鎖可変ドメインであり、Lが前記ペプチドリンカーであり、VLが軽鎖可変ドメインであり、および/または
任意選択で前記scFvが、配列番号19~35および配列番号69~74からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載のキメラタンパク質。
【請求項5】
前記キメラタンパク質が、キメラ抗原受容体(CAR)であり、前記異種分子または部分が、膜貫通ドメイン、一つ以上の細胞内シグナル伝達ドメイン、ヒンジドメイン、スペーサー領域、一つ以上のペプチドリンカー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリペプチドを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のキメラタンパク質。
【請求項6】
前記CARが、免疫応答を阻害する一つ以上の細胞内阻害ドメインを含む阻害CARであり、前記一つ以上の細胞内阻害ドメインの各々が、酵素阻害ドメインまたは細胞内阻害共シグナル伝達ドメインを含む、請求項5に記載のキメラタンパク質。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のキメラタンパク質をコードする、操作されたポリヌクレオチド。
【請求項8】
請求項7に記載の操作されたポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載のキメラタンパク質、請求項7に記載の操作されたポリヌクレオチド、または請求項8に記載の発現ベクターを含む、単離細胞。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか一項に記載のキメラタンパク質、請求項7に記載の操作されたポリヌクレオチド、または請求項8に記載の発現ベクターを発現する、操作された細胞の集団。
【請求項11】
前記細胞または細胞の集団が、前記細胞表面上に発現された一つ以上の腫瘍標的化キメラ受容体をさらに含み、任意選択で、前記一つ以上の腫瘍標的化キメラ受容体の各々が、キメラ抗原受容体(CAR)または操作されたT細胞受容体である、請求項9に記載の細胞または請求項10に記載の細胞の集団。
【請求項12】
T細胞、CD8+T細胞、CD4+T細胞、ガンマデルタT細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、制御性T細胞、ウイルス特異的T細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、B細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、自然リンパ球系細胞、肥満細胞、好酸球、好塩基球、好中球、骨髄細胞、マクロファージ、単球、樹状細胞、赤血球、血小板細胞、ヒト胚性幹細胞(ESC)、ESC由来細胞、多能性幹細胞、間葉系間質細胞(MSC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、およびiPSC由来細胞からなる群から選択される、請求項9~11のいずれか一項に記載の細胞または細胞の集団。
【請求項13】
有効量の請求項9~12のいずれか一項に記載の細胞または操作された細胞の集団と、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な賦形剤、またはそれらの組み合わせとを含む、医薬組成物。
【請求項14】
対象において腫瘍細胞に対する細胞介在性免疫応答を刺激する方法であって、腫瘍を有する対象に、治療有効用量の、請求項1~6のいずれか一項に記載のキメラタンパク質、請求項7に記載の操作されたポリヌクレオチド、請求項8に記載の発現ベクター、請求項9~12のいずれか一項に記載の細胞もしくは操作された細胞の集団、または請求項13に記載の組成物を投与することを含む、方法。
【請求項15】
腫瘍を有する対象を治療する方法であって、治療有効用量の、請求項1~6のいずれか一項に記載のキメラタンパク質、請求項7に記載の操作されたポリヌクレオチド、請求項8に記載の発現ベクター、請求項9~12のいずれか一項に記載の細胞もしくは操作された細胞の集団、または請求項13に記載の組成物を投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年5月7日に出願された米国仮出願第63/185,896号、および2021年11月24日に出願された米国仮出願第63/283,147号の利益ならびに優先権を主張し、これらの各々は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(配列表)
本出願には、EFS-Webを介して提出され、その全体が参照により本明細書に援用される配列表が含まれる。20XX年、XX月に作成された該ASCIIコピーは、XXXXXUS_sequencelisting.txtと称され、サイズがX,XXX,XXXバイトである。
【背景技術】
【0003】
背景
T細胞などの免疫応答性細胞の特異性および機能をリダイレクトするために使用されるキメラ抗原受容体(CAR)系養子細胞療法は、リンパ系悪性腫瘍を有する患者において有効性を示している(Pule et al., Nat. Med. (14):1264-1270 (2008)(非特許文献1); Maude et al., N Engl J Med. (371):1507-17 (2014)(非特許文献2); Brentjens et al., Sci Transl Med. (5):177ra38 (2013)(非特許文献3))。CAR T細胞は、化学療法によって薬剤耐性および腫瘍進行がもたらされたCD19発現悪性腫瘍を有する患者において完全寛解を誘導することが示されている。CD19 CAR療法の成功は、固形腫瘍などの他の悪性腫瘍の治療に対して楽観論を提供する。
【0004】
固形腫瘍のためのCAR療法を開発する際の1つの課題は、好適な標的の欠如である。適切なCAR標的を特定する能力は、同じ標的抗原を発現する正常な細胞を損傷することなく、腫瘍を効果的に標的化し、治療するために重要である。したがって、正常細胞または組織を標的とせずに、腫瘍細胞を標的とするCARベースの固形腫瘍療法に対するニーズがまだある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Pule et al., Nat. Med. (14):1264-1270 (2008)
【非特許文献2】Maude et al., N Engl J Med. (371):1507-17 (2014)
【非特許文献3】Brentjens et al., Sci Transl Med. (5):177ra38 (2013)
【発明の概要】
【0006】
概要
上述のニーズを満たすために、本開示は、VSIG2(VSIG2)に特異的な抗原結合ドメインを含むキメラタンパク質に関する。
【0007】
一つの態様において、Vセットおよび免疫グロブリンドメイン含有2(V-Set And Immunoglobulin Domain Containing 2、VSIG2)に特異的な抗原結合ドメインと、異種分子または部分とを含む、キメラタンパク質であって、
抗原結合ドメインが、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、
(a)VHが、
GFTFSNS(配列番号2)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、
SDGGLY(配列番号3)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、および
QGVRPFFDY(配列番号4)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)を含み、VLが、
RASENIYSYLA(配列番号11)またはRASENLYSYLA(配列番号12)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、
NAETLPE(配列番号13)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、および
QHHYVIPWT(配列番号14)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む、または
(b)VHが、
配列番号1のVH領域アミノ酸配列に含有される重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、配列番号1のVH領域アミノ酸配列に含有される重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、および配列番号1のVH領域アミノ酸配列に含有される重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)を含み、
VLが、
配列番号9のVL領域アミノ酸配列に含有される軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、配列番号9のVL領域アミノ酸配列に含有される軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、および配列番号9のVL領域アミノ酸配列に含有される軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む、または
(c)VHが、
配列番号1のVH領域アミノ酸配列に含有される重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、配列番号1のVH領域アミノ酸配列に含有される重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、および配列番号1のVH領域アミノ酸配列に含有される重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)を含み、
VLが、
配列番号10のVL領域アミノ酸配列内に含有される軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、配列番号10のVL領域アミノ酸配列内に含有される軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、および配列番号10のVL領域アミノ酸配列に含有される軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含み、
任意選択で、参照抗体のCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3のアミノ酸配列が、KabatまたはChothiaナンバリングスキームに基づいて定義される、キメラタンパク質が本明細書に提供される。
【0008】
一部の実施形態では、VH領域は、配列番号1のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、VL領域は、配列番号9のアミノ酸配列を含むか、またはVL領域は、配列番号10のアミノ酸配列を含む。
【0009】
一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、一本鎖可変断片(scFv)を含み、任意選択でscFvのVHおよびVLは、ペプチドリンカーによって分離され、任意選択で抗原結合ドメインは、構造VH-L-VLまたはVL-L-VHを含み、VHは重鎖可変ドメインであり、Lはペプチドリンカーであり、VLは軽鎖可変ドメインであり、および/または任意選択でscFvは、 配列番号19~35および配列番号69~74からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0010】
一部の実施形態では、キメラタンパク質は、キメラ抗原受容体(CAR)であり、異種分子または部分は、膜貫通ドメイン、一つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメイン、ヒンジドメイン、スペーサー領域、一つまたは複数のペプチドリンカー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリペプチドを含む。
【0011】
一部の実施形態では、CARは、免疫応答を阻害する一つ以上の細胞内阻害ドメインを含む阻害性CARであり、一つ以上の細胞内阻害ドメインの各々は、酵素阻害ドメインまたは細胞内阻害共シグナル伝達ドメインを含む。
【0012】
別の態様では、上記の態様または実施形態のうちのいずれか一つのキメラタンパク質をコードする操作されたポリヌクレオチドが本明細書に提供される。
【0013】
別の態様では、上記の態様または実施形態のうちのいずれか一つの操作されたポリヌクレオチドを含む発現ベクターが本明細書に提供される。
【0014】
別の態様では、上記の態様もしくは実施形態のうちのいずれか一つのキメラタンパク質、上記の態様もしくは実施形態の操作されたポリヌクレオチド、または上記の態様もしくは実施形態の発現ベクターを含む単離細胞が本明細書に提供される。
【0015】
別の態様では、上記の態様のうちのいずれか一つのキメラタンパク質、上記の態様もしくは実施形態の操作されたポリヌクレオチド、または上記の態様もしくは実施形態の発現ベクターを発現する操作された細胞の集団が本明細書に提供される。
【0016】
一部の実施形態では、細胞または細胞の集団は、細胞表面上に発現された一つ以上の腫瘍標的化キメラ受容体をさらに含み、任意選択で、一つ以上の腫瘍標的化キメラ受容体の各々は、キメラ抗原受容体(CAR)または操作されたT細胞受容体である。
【0017】
一部の実施形態では、細胞または細胞の集団は、T細胞、CD8+T細胞、CD4+T細胞、ガンマデルタT細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、制御性T細胞、ウイルス特異的T細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、B細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、自然リンパ球系細胞、肥満細胞、好酸球、好塩基球、好中球、骨髄細胞、マクロファージ、単球、樹状細胞、赤血球、血小板細胞、ヒト胚性幹細胞(ESC)、ESC由来細胞、多能性幹細胞、間葉系間質細胞(MSC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、およびiPSC由来細胞からなる群から選択される。
【0018】
別の態様では、有効量の上記の態様もしくは実施形態のいずれか一つの細胞もしくは操作された細胞の集団、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な賦形剤、またはそれらの組み合わせ、を含む医薬組成物が本明細書に提供される。
【0019】
別の態様では、対象において腫瘍細胞に対する細胞介在性免疫応答を刺激する方法が本明細書に提供され、方法は、腫瘍を有する対象に、上記の態様もしくは実施形態のうちのいずれか一つのキメラタンパク質、上記の態様もしくは実施形態のうちのいずれか一つの操作されたポリヌクレオチド、上記の態様もしくは実施形態のうちのいずれか一つの発現ベクター、上記の態様もしくは実施形態のうちのいずれか一つの細胞もしくは操作された細胞の集団、または上記の態様もしくは実施形態の組成物の治療有効用量を投与することを含む。
【0020】
別の態様では、腫瘍を有する対象を治療する方法が本明細書に提供され、方法は、上記の態様もしくは実施形態のうちのいずれか一つのキメラタンパク質、上記の態様もしくは実施形態のうちのいずれか一つの操作されたポリヌクレオチド、上記の態様もしくは実施形態のうちのいずれか一つの発現ベクター、上記の態様もしくは実施形態のうちのいずれか一つの細胞もしくは操作された細胞の集団、または上記の態様もしくは実施形態の組成物の治療有効用量を投与することを含む。
【0021】
一部の態様では、本開示は、Vセットおよび免疫グロブリンドメイン含有2(VSIG2)に特異的な抗原結合ドメインと、異種分子または部分とを含むキメラタンパク質を提供し、抗原結合ドメインは、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VHは、QGVRPFFDY(配列番号4)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)を含む。一部の態様では、VLは、軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、および軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含み、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3のアミノ酸配列は、配列番号9または配列番号10のVL領域アミノ酸配列に含有される。一部の態様では、VLは、RASENIYSYLA(配列番号11)またはRASENLYSYLA(配列番号12)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、NAETLPE(配列番号13)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、およびQHHYVIPWT(配列番号14)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む。
【0022】
一部の態様では、本開示は、Vセットおよび免疫グロブリンドメイン含有2(VSIG2)に特異的な抗原結合ドメインと、異種分子または部分とを含むキメラタンパク質を提供し、抗原結合ドメインは、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VHは、重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、および重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)を含み、CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3のアミノ酸配列は、配列番号1のVH領域アミノ酸配列に含有される。一部の態様では、VLは、RASENIYSYLA(配列番号11)またはRASENLYSYLA(配列番号12)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、NAETLPE(配列番号13)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、およびQHHYVIPWT(配列番号14)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む。一部の態様では、VLは、RASENIYSYLA(配列番号11)またはRASENLYSYLA(配列番号12)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、NAETLPE(配列番号13)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、およびQHHYVIPWT(配列番号14)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む。
【0023】
一部の態様では、本開示は、Vセットおよび免疫グロブリンドメイン含有2(VSIG2)に特異的な抗原結合ドメインと、異種分子または部分とを含むキメラタンパク質を提供し、抗原結合ドメインは、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、
VHは、GFTFSNS(配列番号2)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、SDGGLY(配列番号3)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、およびQGVRPFFDY(配列番号4)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)を含む。一部の態様では、VLは、軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、および軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含み、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3のアミノ酸配列は、配列番号9または配列番号10のVL領域アミノ酸配列に含有される。一部の態様では、VLは、RASENIYSYLA(配列番号11)またはRASENLYSYLA(配列番号12)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、NAETLPE(配列番号13)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、およびQHHYVIPWT(配列番号14)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む。
【0024】
一部の態様では、本開示は、Vセットおよび免疫グロブリンドメイン含有2(VSIG2)に特異的な抗原結合ドメインと、異種分子または部分とを含むキメラタンパク質を提供し、抗原結合ドメインは、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VLは、軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、および軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含み、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3のアミノ酸配列は、配列番号9または配列番号10のVL領域アミノ酸配列に含有される。一部の態様では、VHは、重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、および重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)を含み、CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3のアミノ酸配列は、配列番号1のVH領域アミノ酸配列に含有される。一部の態様では、VHは、GFTFSNS(配列番号2)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、SDGGLY(配列番号3)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、およびQGVRPFFDY(配列番号4)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)を含む。
【0025】
一部の態様では、本開示は、Vセットおよび免疫グロブリンドメイン含有2(VSIG2)に特異的な抗原結合ドメインと、異種分子または部分とを含むキメラタンパク質を提供し、抗原結合ドメインは、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VLは、RASENIYSYLA(配列番号11)またはRASENLYSYLA(配列番号12)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、NAETLPE(配列番号13)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、およびQHHYVIPWT(配列番号14)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む。一部の態様では、VHは、重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、および重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)を含み、CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3のアミノ酸配列は、配列番号1のVH領域アミノ酸配列に含有される。一部の態様では、VHは、GFTFSNS(配列番号2)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、SDGGLY(配列番号3)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、およびQGVRPFFDY(配列番号4)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)を含む。
【0026】
一部の態様では、本開示は、Vセットおよび免疫グロブリンドメイン含有2(VSIG2)に特異的な抗原結合ドメインと、異種分子または部分とを含むキメラタンパク質を提供し、抗原結合ドメインは、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VHは、GFTFSNS(配列番号2)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、SDGGLY(配列番号3)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、およびQGVRPFFDY(配列番号4)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)を含み、VLは、RASENIYSYLA(配列番号11)またはRASENLYSYLA(配列番号12)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、NAETLPE(配列番号13)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、およびQHHYVIPWT(配列番号14)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む。
【0027】
一部の態様では、VH領域は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の態様では、VH領域は、配列番号1のアミノ酸配列を含む。
【0028】
一部の態様では、VL領域は、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の態様では、VL領域は、配列番号9または配列番号10のアミノ酸配列を含む。
【0029】
一部の態様では、本開示は、Vセットおよび免疫グロブリンドメイン含有2(VSIG2)に特異的な抗原結合ドメインと、異種分子または部分とを含むキメラタンパク質を提供し、抗原結合ドメインは、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VHは、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の態様では、VH領域は、配列番号1のアミノ酸配列を含む。一部の態様では、VL領域は、配列番号9または配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の態様では、VL領域は、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の態様では、VL領域は、配列番号9のアミノ酸配列を含む。一部の態様では、VL領域は、配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の態様では、VL領域は、配列番号10のアミノ酸配列を含む。
【0030】
一部の態様では、本開示は、Vセットおよび免疫グロブリンドメイン含有2(VSIG2)に特異的な抗原結合ドメインと、異種分子または部分とを含むキメラタンパク質を提供し、抗原結合ドメインは、抗体またはその抗原結合断片を含み、抗体またはその抗原結合断片は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、
VLは、配列番号9または配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の態様では、VLは、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の態様では、VL領域は、配列番号10のアミノ酸配列を含む。一部の態様では、VLは、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の態様では、VL領域は、配列番号10のアミノ酸配列を含む。一部の態様では、VH領域は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の態様では、VH領域は、配列番号1のアミノ酸配列を含む。
【0031】
一部の態様では、本開示は、Vセットおよび免疫グロブリンドメイン含有2(VSIG2)に特異的な抗原結合ドメインと、異種分子または部分とを含むキメラタンパク質を提供し、抗原結合ドメインは、VSIG2との結合について、参照抗体またはその抗原結合断片と競合し、
参照抗体またはその抗原結合断片は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VHは、GFTFSNS(配列番号2)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、SDGGLY(配列番号3)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、およびQGVRPFFDY(配列番号4)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)を含み、VLは、RASENIYSYLA(配列番号11)またはRASENLYSYLA(配列番号12)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、NAETLPE(配列番号13)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、およびQHHYVIPWT(配列番号14)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む。一部の態様では、参照抗体またはその抗原結合断片のVH領域は、配列番号1のアミノ酸配列を含む。一部の態様では、参照抗体またはその抗原結合断片のVL領域は、配列番号9または配列番号10のアミノ酸配列を含む。
【0032】
一部の態様では、本開示は、Vセットおよび免疫グロブリンドメイン含有2(VSIG2)に特異的な抗原結合ドメインと、異種分子または部分とを含むキメラタンパク質を提供し、抗原結合ドメインは、参照抗体またはその抗原結合断片と本質的に同じVSIG2エピトープに結合し、参照抗体またはその抗原結合断片は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、VHは、GFTFSNS(配列番号2)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、SDGGLY(配列番号3)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、およびQGVRPFFDY(配列番号4)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)を含み、VLは、RASENIYSYLA(配列番号11)またはRASENLYSYLA(配列番号12)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、NAETLPE(配列番号13)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、およびQHHYVIPWT(配列番号14)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む。一部の態様では、参照抗体またはその抗原結合断片のVH領域は、配列番号1のアミノ酸配列を含む。一部の態様では、参照抗体またはその抗原結合断片のVL領域は、配列番号9または配列番号10のアミノ酸配列を含む。
【0033】
一部の態様では、本開示は、Vセットおよび免疫グロブリンドメイン含有2(VSIG2)に特異的な抗原結合ドメインと、異種分子または部分とを含むキメラタンパク質を提供し、抗原結合ドメインは、参照抗体またはその抗原結合断片によって結合されるVSIG2エピトープと同じであるヒトVSIG2のエピトープに結合し、参照抗体またはその抗原結合断片は、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、
VHは、GFTFSNS(配列番号2)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、SDGGLY(配列番号3)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、およびQGVRPFFDY(配列番号4)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)を含み、VLは、RASENIYSYLA(配列番号11)またはRASENLYSYLA(配列番号12)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、NAETLPE(配列番号13)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、およびQHHYVIPWT(配列番号14)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む。一部の態様では、参照抗体またはその抗原結合断片のVH領域は、配列番号1のアミノ酸配列を含む。一部の態様では、参照抗体またはその抗原結合断片のVL領域は、配列番号9または配列番号10のアミノ酸配列を含む。
【0034】
一部の態様では、キメラタンパク質の抗原結合ドメインは、F(ab)断片、F(ab’)断片、または一本鎖可変断片(scFv)を含む。一部の態様では、抗原結合ドメインは、一本鎖可変断片(scFv)を含む。一部の態様では、scFvのVHおよびVLは、ペプチドリンカーによって分離される。一部の態様では、抗原結合ドメインは、構造VH-L-VLまたはVL-L-VHを含み、VHは、重鎖可変ドメインであり、Lは、ペプチドリンカーであり、VLは、軽鎖可変ドメインである。一部の態様では、ペプチドリンカーは、配列番号19~35からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、scFvは、配列番号70~75からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0035】
一部の態様では、キメラタンパク質は、抗体-薬物コンジュゲートであり、異種分子または部分は、治療剤を含む。
【0036】
一部の態様では、キメラタンパク質は、キメラ抗原受容体(CAR)であり、異種分子または部分は、膜貫通ドメイン、一つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメイン、ヒンジドメイン、スペーサー領域、一つまたは複数のペプチドリンカー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリペプチドを含む。一部の態様では、CARは、膜貫通ドメインを含む。一部の態様では、CARは、一つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。一部の態様では、CARは、免疫応答を刺激する一つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメインを含む活性化CARである。一部の態様では、CARは、免疫応答を阻害する一つまたは複数の細胞内阻害ドメインを含む阻害CARである。一部の態様では、細胞内阻害ドメインは、酵素阻害ドメインを含む。一部の態様では、細胞内阻害ドメインは、細胞内阻害共シグナル伝達ドメインを含む。一部の態様では、CARは、抗原結合ドメインと膜貫通ドメインの間のスペーサー領域を含む。一部の態様では、スペーサー領域は、配列番号39~51からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0037】
一部の態様では、本開示は、本明細書に記載されるようなキメラタンパク質および薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な賦形剤、またはそれらの組み合わせを含む組成物を提供する。
【0038】
一部の態様では、本開示は、本明細書に記載されるようなキメラタンパク質をコードする操作されたポリヌクレオチドを提供する。
【0039】
一部の態様では、本開示は、本明細書に記載されるような操作されたポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供する。
【0040】
一部の態様では、本開示は、本明細書に記載されるような操作されたポリヌクレオチドまたは本明細書に記載されるような発現ベクター、および薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な賦形剤、またはそれらの組み合わせを含む組成物を提供する。
【0041】
一部の態様では、本開示は、本明細書に記載されるような操作されたポリヌクレオチドまたは本明細書に記載されるような発現ベクターを用いて単離細胞に形質導入することを含む、操作された細胞を作製する方法を提供する。一部の態様では、本開示は、上記の方法によって産生された、操作された細胞を提供する。
【0042】
一部の態様では、本開示は、本明細書に記載されるような操作されたポリヌクレオチド、本明細書に記載されるような発現ベクターを含む単離細胞、または本明細書に記載されるような操作されたポリヌクレオチドもしくは発現ベクターおよび薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な賦形剤、もしくはそれらの組み合わせを含む組成物を提供する。
【0043】
一部の態様では、本開示は、本明細書に記載されるような操作されたポリヌクレオチドまたは本明細書に記載されるような発現ベクターを発現する操作された細胞の集団を提供する。
【0044】
一部の態様では、本開示は、本明細書に記載されるようなキメラタンパク質を含む単離細胞を提供する。一部の態様では、本開示は、本明細書に記載されるようなキメラタンパク質を発現する操作された細胞の集団を提供する。一部の態様では、キメラタンパク質は、単離細胞または細胞の集団において組換えにより発現される。一部の態様では、単離された細胞または細胞の集団は、細胞表面上で発現された一つまたは複数の腫瘍標的化キメラ受容体をさらに含む。一部の態様では、一つまたは複数の腫瘍標的化キメラ受容体のぞれぞれは、キメラ抗原受容体(CAR)または操作されたT細胞受容体である。一部の態様では、細胞または細胞の集団は、T細胞、CD8+T細胞、CD4+T細胞、ガンマデルタT細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、制御性T細胞、ウイルス特異的T細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、B細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、自然リンパ球系細胞、肥満細胞、好酸球、好塩基球、好中球、骨髄細胞、マクロファージ、単球、樹状細胞、赤血球、血小板細胞、ヒト胚性幹細胞(ESC)、ESC由来細胞、多能性幹細胞、間葉系間質細胞(MSC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、およびiPSC由来細胞からなる群から選択される。一部の態様では、細胞または細胞の集団は、自家である。一部の態様では、細胞または細胞の集団は、同種である。
【0045】
一部の態様では、本開示は、有効量の本明細書に記載されるような細胞または操作された細胞の集団、および薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な賦形剤、またはそれらの組み合わせを含む医薬組成物を提供する。
【0046】
一部の態様では、本開示は、有効量の本明細書に記載されるようなキメラタンパク質を発現する遺伝子修飾された細胞、および薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な賦形剤、またはそれらの組み合わせを含む医薬組成物を提供する。一部の態様では、医薬組成物は、腫瘍を治療および/または予防するためのものである。
【0047】
一部の態様では、本開示は、それを必要とする対象を治療するための方法を提供し、方法は、本明細書に記載されるようなキメラタンパク質、ポリヌクレオチド、発現ベクター、本明細書に記載されるような細胞または細胞の集団を含む組成物または医薬組成物の治療有効用量を投与することを含む。
【0048】
一部の態様では、本開示は、対象において腫瘍細胞に対する細胞介在性免疫応答を刺激する方法を提供し、方法は、腫瘍を有する対象に、本明細書に記載されるようなキメラタンパク質、ポリヌクレオチド、発現ベクター、本明細書に記載されるような細胞または細胞の集団を含む組成物または医薬組成物の治療有効用量を投与することを含む。
【0049】
一部の態様では、本開示は、腫瘍を有する対象を治療する方法を提供し、方法は、本明細書に記載されるようなキメラタンパク質、ポリヌクレオチド、発現ベクター、本明細書に記載されるような細胞または細胞の集団を含む組成物または医薬組成物の治療有効用量を投与することを含む。
【0050】
一部の態様では、本開示は、本明細書に記載されるようなキメラタンパク質を含む、腫瘍を治療および/または予防するためのキットを提供する。一部の態様では、キットは、対象における腫瘍を治療および/または予防するための一つまたは複数の抗原特異的細胞を産生するためのキメラタンパク質を使用するための、記載された指示書をさらに含む。
【0051】
一部の態様では、本開示は、本明細書に記載されるような細胞または細胞の集団を含む、腫瘍を治療および/または予防するためのキットを提供する。一部の態様では、キットは、対象における腫瘍を治療および/または予防するための細胞を使用するための記載された指示書をさらに含む。
【0052】
一部の態様では、本開示は、本明細書に記載されるような単離ポリヌクレオチドを含む、腫瘍を治療および/または予防するためのキットを提供する。一部の態様では、キットは、対象における腫瘍を治療および/または予防するための一つまたは複数の抗原特異的細胞を産生するためにポリヌクレオチドを使用するための記載された指示書をさらに含む。
【0053】
一部の態様では、本開示は、本明細書に記載されるようなベクターを含む、腫瘍を治療および/または予防するためのキットを提供する。一部の態様では、キットは、対象における腫瘍を治療および/または予防するための一つまたは複数の抗原特異的細胞を産生するためのベクターを使用するための記載された指示書をさらに含む。
【0054】
一部の態様では、本開示は、本明細書に記載されるような組成物を含む、腫瘍を治療および/または予防するためのキットを提供する。一部の態様では、キットは、対象における腫瘍を治療および/または予防するための組成物を使用するための記載された指示書をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0055】
本特許または出願書類は、カラーで作成された少なくとも一つの図面を含む。カラー図面を含む本特許または特許出願公開の複写は、要請かつ必要な料金の支払により特許庁より提供される。
【0056】
本開示のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、以下の説明および添付の図面に関してより良好に理解されるであろう。
【0057】
【
図1】
図1は、Chothia命名スキームを使用した抗VSIG2抗体(Ab)の軽鎖可変領域の配列決定結果を示す。
【
図2】
図2は、Chothia命名スキームを使用した抗VSIG2抗体(Ab)の重鎖可変領域の配列決定結果を示す。
【
図3-1】
図3は、CAR/iCAR形質導入NK細胞からの様々な抗VSIG2阻害性CARおよび抗CEA活性化CARの発現を示す。
【
図4】
図4は、抗VSIG2阻害性CARおよび抗CEA活性化CARを発現するNK細胞による、VSIG2を発現するかまたはVSIG2発現を欠くCEA陽性標的細胞の殺傷を示す。
【
図5】
図5は、抗VSIG2活性化CARを使用したNK細胞によるVSIG2陽性標的細胞の殺傷を示す。
【
図6】
図6は、形質導入NK細胞上の様々な抗VSIG2活性化CARの発現を示す。
【
図7A】
図7Aは、抗VSIG2活性化CARを発現するNK細胞による標的細胞Ls174tの殺傷を示す。
【
図7B】
図7Bは、抗VSIG2活性化CARを発現するNK細胞による標的細胞DLD1の殺傷を示す。
【
図7C】
図7Cは、抗VSIG2活性化CARを発現するNK細胞による標的細胞Ls174tの殺傷を示す。
【
図7D】
図7Dは、抗VSIG2活性化CARを発現するNK細胞による標的細胞DLD1の殺傷を示す。
【
図8】
図8は、FLT3陽性標的細胞および様々な抗VSIG2阻害性CARを発現するNK細胞によるFLT3陽性標的細胞の殺傷を示す。
【
図9】
図9は、FLT3活性化CAR/VSIG2阻害性CAR NK細胞/標的細胞共培養におけるTNFα産生の定量化を示す。
【
図10A】
図10Aは、形質導入NK細胞上の様々な抗VSIG2阻害性CARおよび抗CEA活性化CARの発現を示す。
【
図10B】
図10Bは、対照NK細胞上の様々な抗VSIG2阻害性CARおよび抗CEA活性化CARの発現を示す。
【
図11】
図11は、CEA活性化CARおよび様々な抗VSIG2阻害性CARを発現するNK細胞によるCEA陽性標的細胞の殺傷を示す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
詳細な説明
本開示の実践は、別段の指示がない限り、当該技術分野の範囲内で、分子生物学、化学、生化学、ウイルス学、および免疫学の従来の方法を採用する。そのような手法は、文献で完全に説明される。例えば、Hepatitis C Viruses: Genomes and Molecular Biology (S.L. Tan ed., Taylor & Francis, 2006); Fundamental Virology, 3rdEdition, vol. I & II (B.N. Fields and D.M. Knipe, eds.); Handbook of Experimental Immunology, Vols. I-IV (D.M. Weir and C.C. Blackwell eds., Blackwell Scientific Publications); A.L. Lehninger, Biochemistry (Worth Publishers, Inc., current addition); Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (3rdEdition, 2001); Methods In Enzymology (S. Colowick and N. Kaplan eds., Academic Press, Inc.)を参照されたい。
【0059】
定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての用語、表記および他の科学用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有することが意図される。いくつかの事例では、一般的に理解される意味を有する用語は、明確におよび/またはすぐに参照するために本明細書で定義され、そのような定義を本明細書に含めることは、必ずしも、当該技術分野において一般的に理解されるものに対する差異を表すものと解釈されるべきではない。本明細書に記載または参照される技法および手順は、一般的に周知であり、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual 4th ed. (2012) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NYに記載される広く利用されている分子クローニング方法論などの当業者による従来の方法論を使用して一般的に使用されている。必要に応じて、市販のキットおよび試薬の使用を伴う手順は、別段の記載がない限り、概して、製造業者が定義したプロトコルおよび条件に従って実施される。
【0060】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が別段であると明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。「含む」、「など」などの用語は、別段の指示がない限り、限定することなく包含を伝達することを意図する。
【0061】
本明細書で使用される場合、「含む」という用語はまた、別段の指示がない限り、列挙されている要素から「からなる」および「本質的にからなる」実施形態も具体的に含む。
【0062】
「約」という用語は、示される値およびその値の上下の範囲を示すとともに、それを包含する。特定の実施形態では、「約」という用語は、指定値±10%、±5%、または±1%を示す。ある特定の実施形態では、適用可能である場合、「約」という用語は、指定値±その値の一つの標準偏差を示す。
【0063】
本明細書で使用される場合、「細胞介在性免疫応答を刺激すること」または「免疫応答を刺激すること」という用語は、一つまたは複数の細胞タイプまたは細胞集団による、免疫応答をもたらすシグナルを生成することを指す。免疫刺激活性は、炎症誘発性活性を含み得る。様々な実施形態では、免疫応答は、免疫細胞(例えば、T細胞もしくはNK細胞)の活性化後に生じるか、または非限定的に、CD28、CD137(4-1BB)、OX40、CD40およびICOS、ならびにB7-1、B7-2、OX-40L、および4-1BBLを含むそれらの対応するリガンドを含む、受容体を介して同時に媒介される。かかるポリペプチドは、腫瘍微小環境中に存在し得、腫瘍細胞に対する免疫応答を活性化し得る。様々な実施形態では、炎症誘発性ポリペプチドおよび/またはそれらのリガンドを促進、刺激、またはリガンドが受容体を刺激することは、免疫応答性細胞の免疫応答を増強し得る。特定の理論に拘束されるものではないが、複数の刺激シグナル(例えば、共刺激)を受け取ることは、T細胞が阻害され、共刺激シグナルの非存在下で抗原(「T細胞アネルギー」とも呼ぶ)に応答しない場合があるT細胞介在性免疫応答など、堅牢で長期的な細胞介在性免疫応答を担持するために重要である。共刺激シグナルの様々な効果は、特に互いに組み合わせて変化し、部分的にしか理解されないが、共刺激は概して、例えば、同族抗原を発現する標的細胞の完全および/または持続的な除去を仲介する際の、抗原に強力に応答する、T細胞またはNK細胞などの長寿命、増殖性、およびアポトーシス抵抗性細胞を生成するために、遺伝子発現の増加をもたらす。
【0064】
本明細書で使用される場合、「キメラ抗原受容体」または代替的に「CAR」という用語は、少なくとも細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞質シグナル伝達ドメイン(本明細書では「細胞内シグナル伝達ドメイン」とも称される)を含む組換えポリペプチド構築物を指す。
【0065】
本明細書で使用される場合、「活性化CAR」または「aCAR」という用語は、同族aCARリガンドと結合する際に免疫応答を開始、活性化、刺激、または増加させる活性化CAR発現細胞におけるシグナル伝達またはタンパク質発現の変化を誘導する能力があるCAR構築物/構造物を指す。
【0066】
本明細書で使用される場合、「阻害CAR」または「iCAR」という用語は、共刺激シグナルを含む、一つまたは複数の一つまたは複数の刺激シグナルを受信しているか、または受信した免疫応答性細胞の活性化の低減などの、同族iCARリガンドの際の免疫応答を阻害、減弱、低減、減少、抑制、または抑制する阻害CAR発現細胞におけるシグナル伝達またはタンパク質発現の変化を誘導する能力があるCAR構築物/構造物を指す。
【0067】
本明細書で使用される場合、「細胞内シグナル伝達ドメイン」という用語は、第二のメッセンジャーを生成することによって、またはそのようなメッセンジャーに応答することによってエフェクターとして機能することによって、規定されたシグナル伝達経路を介して細胞活性を調節するために細胞内に情報を伝達することによって作用する、タンパク質の機能部分を指す。
【0068】
本明細書で使用される場合、「細胞外抗原結合ドメイン」または「抗原結合ドメイン」(ABD)という用語は、VSIG2特異的結合をもたらす、本明細書に記載されるキメラタンパク質のポリペプチド配列またはポリペプチド複合体部分などの、所定の抗原またはエピトープを特異的に認識するか、または結合するポリペプチド配列またはポリペプチド複合体を指す。ABD(または抗体、抗原結合断片、および/もしくはそれを含むキメラタンパク質)は、ABDが特異的に結合するエピトープ(またはより一般的には、抗原)を「認識する」と言われ、エピトープは、ABDの「認識特異性」または「結合特異性」であると言われる。ABDは、特定の親和性でその特異的な抗原またはエピトープと結合すると言われる。本明細書に記載されるように、「親和性」は、ある分子と別の分子の間の非共有結合分子間力の相互作用の強さを指す。親和性、すなわち、相互作用の強さは、解離平衡定数(KD)として表すことができ、KD値が低いほど、分子間の相互作用が強いことを指す。抗体構築物のKD値は、非限定的に、バイオレイヤー干渉法(例えば、Octet/FORTEBIO(登録商標))、表面プラズモン共鳴(SPR)テクノロジー(例えば、Biacore(登録商標))、および細胞結合アッセイ(例えば、フローサイトメトリー)を含む、当該技術分野で周知の方法によって測定される。親和性によって評価される特異的結合は、ABDとその同族抗原またはエピトープの間の親和性を有する結合分子を指してもよく、KD値は、10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、または10-10M未満である。特異的結合はまた、対象の生物学的分子(例えば、ポリペプチド)の認識および結合を含むことができ、一方、試料、例えば、本開示のポリペプチドを天然に含む生物学的試料中の他の分子を特異的に認識せず、結合しない。ある特定の実施形態では、特異的に結合することは、結合が、同一または類似のエピトープ、抗原、または抗原決定基の第二の調製物と置換または競合し得るような方法で、ABD、抗体、または抗原結合断片のエピトープまたは抗原または抗原決定基の結合を指す。
【0069】
ABDは、抗体であり得る。本明細書で使用される「抗体」という用語は、抗原と特異的に結合する免疫グロブリン分子に由来するタンパク質、またはポリペプチド配列を指す。抗体は、ポリクローナルもしくはモノクローナル、多重鎖もしくは単鎖、またはインタクトな免疫グロブリンであり得、天然源または組換え源に由来し得る。抗体は、免疫グロブリン分子の四量体であり得る。
【0070】
ABDは、抗体の抗原結合断片であり得る。本明細書で使用される場合、「抗原結合断片」という用語は、抗原またはエピトープなどの標的との認識および特異的結合を付与するのに十分である、インタクトな抗体、またはその組換えバリアントの少なくとも1つの部分を指す。抗原結合断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFv、直鎖状抗体、sdAb(VLまたはVH)などの単一ドメイン抗体、ラクダVHHドメイン、およびヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価の断片などの抗原結合断片から形成された多重特異性抗体、および抗体の単離されたCDRまたは他のエピトープ結合断片が挙げられるが、これらに限定されない。抗原結合断片はまた、単一ドメイン抗体、マキシボディ、ミニボディ、ナノボディ、イントラボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、v-NAR、およびビス-scFvに組み込むこともできる(例えば、Hollinger and Hudson,Nature Biotechnology 23:1126-1 136,2005を参照されたい)。抗原結合断片は、フィブロネクチンIII型(Fn3)などのポリペプチドに基づいて足場に移植することもできる(フィブロネクチンポリペプチドミニボディを記載する米国特許第6,703,199号を参照されたい)。
【0071】
本明細書に記載されるキメラタンパク質などの結合分子中のABDの数は、結合分子の「結合価」を定義する。単一のABDを有する結合分子は、「一価」である。複数のABDを有する結合分子は、「多価」であると言われる。2つのABDを有する多価結合分子は、「二価」である。3つのABDを有する多価結合分子は、「三価」である。4つのABDを有する多価結合分子は、「四価」である。様々な多価の実施形態では、複数のABDの全ては、同じ認識特異性を有し、「単一特異性多価」結合分子と呼ぶことができる。他の多価の実施形態では、複数のABDのうちの少なくとも2つは、異なる認識特異性を有する。かかる結合分子は、多価であり、「多特異性」である。ABDが2つの認識特異性をまとめて有する多価の実施形態では、結合分子は、「二重特異性」である。ABDが3つの認識特異性をまとめて有する多価の実施形態では、結合分子は、「三重特異性」である。ABDが、同じ抗原に存在する異なるエピトープに対する複数の認識特異性をまとめて有する多価の実施形態では、結合分子は、「多重パラトープ」である。ABDが同じ抗原上の二つのエピトープをまとめて認識する多価の実施形態は、「二重パラトープ」である。
【0072】
様々な多価の実施形態では、多結合価の結合分子は、特定の標的に対する結合分子の結合活性を改善する。本明細書に記載される場合、「結合活性」は、二つ以上の分子、例えば、特定の標的に対する多価結合分子間の相互作用の全体的な強さを指し、結合活性は、複数のABDの親和性によって提供される相互作用の累積的な強さである。結合活性は、上記の通り、親和性を決定するために使用されるものと同じ方法によって測定することができる。ある特定の実施形態では、特異的な標的に対する結合分子の結合活性は、相互作用が、特定の結合相互作用であり、二つの分子間の結合活性は、10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、または10-10M未満のKD値を有する。ある特定の実施形態では、特異的な標的に対する結合分子の結合活性は、相互作用が、特定の結合相互作用であるようなKD値を有し、個々のABDの一つまたは複数の親和性は、それら自体のそれぞれの抗原またはエピトープへの特異的な結合と認識するKD値を有さない。ある特定の実施形態では、結合活性は、個々の細胞に見られる別個の抗原などの、共有される特異的な標的または複合体上の別個の抗原に対する複数のABDの親和性によってもたらされる相互作用の累積的な強さである。ある特定の実施形態では、結合活性は、共有される個々の抗原上の別個のエピトープに対する複数のABDの親和性によってもたらされる相互作用の累積的な強さである。
【0073】
本明細書で使用される場合、「一本鎖可変断片」または「scFv」という用語は、軽鎖の可変領域を含む少なくとも一つの抗原結合断片および重鎖の可変領域を含む少なくとも一つの抗原結合断片を含む融合タンパク質を指し、軽鎖および重鎖可変領域は、短い可動性ポリペプチドリンカーを介して連結され、一本鎖ポリペプチドとして発現することが可能であり、scFvは、それが由来する無傷抗体の特異性を保持する。本明細書で使用される場合、指定されない限り、scFvは、例えば、ポリペプチドのN末端およびC末端に関して、いずれかの順序でVLおよびVH可変領域を有し得、scFvは、VL-リンカー-VHを含み得るか、またはVH-リンカー-VLを含み得る。
【0074】
本明細書で使用される場合、「可変領域」は、例えば、B細胞中の免疫グロブリン遺伝子またはT細胞中のT細胞受容体(TCR)遺伝子におけるV、J、および/またはDセグメント組換え後の、組換え現象から生じる可変領域を指す。免疫グロブリン遺伝子では、可変領域は、典型的には、それらが誘導される抗体鎖から定義され、例えば、VHは、抗体重鎖の可変領域を指し、VLは、抗体軽鎖の可変領域を指す。選択VHおよび選択VLは、一緒に結合して、抗原特異性および結合親和性を付与する抗原結合ドメインを形成することができる。
【0075】
本明細書で使用される「相補性決定領域」または「CDR」という用語は、抗原特異性および結合親和性を付与する抗体可変領域VHおよびVL内の配列を指す。例えば、一般に、各重鎖可変領域には三つのCDRが存在し(例えば、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3)、各軽鎖可変領域には三つのCDRが存在する(LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)。所与のCDRの正確なアミノ酸配列境界は、Kabat et al.(1991),“Sequences of Proteins of Immunological Interest,”5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(“Kabat”numbering scheme)、Al-Lazikani et al,(1997)JMB 273,927-948(“Chothia”numbering scheme)、またはそれらの組み合わせによって記載されるものを含む、いくつかの周知のスキームのいずれかを使用して決定することができる。Kabatナンバリングスキームの下で、いくつかの実施形態では、重鎖可変ドメイン(VH)のCDRアミノ酸残基は、31~35(HCDR1)、50~65(HCDR2)、および95~102(HCDR3)と番号付けされ、軽鎖可変ドメイン(VL)のCDRアミノ酸残基は、24~34(LCDR1)、50~56(LCDR2)、および89~97(LCDR3)と番号付けされる。Chothiaナンバリングスキームの下で、いくつかの実施形態では、VHのCDRアミノ酸は、26~32(HCDR1)、52~56(HCDR2)、および95~102(HCDR3)と番号付けされ、VLのCDRアミノ酸残基は、26~32(LCDR1)、50~52(LCDR2)、および91~96(LCDR3)と番号付けされる。組み合わせたKabatおよびChothiaナンバリングスキームでは、いくつかの実施形態では、CDRは、Kabat CDR、Chothia CDR、またはそれらの両方の一部であるアミノ酸残基に対応する。例えば、いくつかの実施形態では、CDRは、VH、例えば、哺乳動物VH、例えば、ヒトVHのアミノ酸残基26~35(HCDR1)、50~65(HCDR2)、および95~102(HCDR3)、ならびにVL、例えば、哺乳動物VL、例えば、ヒトVLのアミノ酸残基24~34(LCDR1)、50~56(LCDR2)、および89~97(LCDR3)に対応する。様々な実施形態では、CDRは、非限定的に、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ラクダ、ロバ、ヤギ、およびヒト配列を含む、哺乳類配列である。好ましい実施形態では、CDRは、ヒト配列である。様々な実施形態では、CDRは、天然に存在する配列である。
【0076】
本明細書で使用される場合、「フレームワーク領域」または「FR」という用語は、典型的には、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4配置(N末端からC末端)で、散在性CDRのスキャフォールドとして機能する、抗体可変領域VHおよびVL内の一般的に保存された配列を指す。様々な実施形態では、FRは、非限定的に、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ラクダ、ロバ、ヤギ、およびヒト配列を含む、哺乳動物配列である。特定の実施形態では、FRは、ヒト配列である。様々な実施形態では、FRは、天然に存在する配列である。様々な実施形態では、FRは、非限定的に、合理的に設計された配列を含む合成された配列である。
【0077】
本明細書で使用される場合、「抗体重鎖」という用語は、それらの天然起源立体構造で抗体分子に存在し、通常、抗体が属するクラスを決定する二つの種類のポリペプチド鎖のうちの大きい方を指す。
【0078】
本明細書で使用される場合、「抗体軽鎖」という用語は、それらの天然起源立体構造で抗体分子に存在する二つの種類のポリペプチド鎖のうちの小さい方を指す。カッパ(κ)およびラムダ(λ)軽鎖は、二つの主要な抗体軽鎖アイソタイプを指す。
【0079】
本明細書で使用される場合、「組換え抗体」という用語は、例えば、バクテリオファージまたは酵母発現系によって発現される抗体などの、組換えDNA技術を使用して生成される抗体を指す。この用語はまた、抗体をコードするDNA分子の合成によって生成され、DNA分子が抗体タンパク質を発現する抗体、または抗体を特定するアミノ酸配列を意味すると解釈されるべきであり、DNAまたはアミノ酸配列は、当該技術分野において入手可能かつ周知の組換えDNAまたはアミノ酸配列技術を使用して取得されている。
【0080】
本明細書で使用される場合、「抗原」または「Ag」という用語は、免疫応答を誘発する分子を指す。この免疫応答は、抗体産生、または特定の免疫学的能力を有する細胞の活性化のいずれか、またはその両方を伴い得る。当業者は、事実上全てのタンパク質またはペプチドを含む任意の巨大分子が、抗原として機能することができることを理解するであろう。
【0081】
本明細書で使用される場合、「抗腫瘍効果」または「抗腫瘍活性」という用語は、例えば、腫瘍体積の減少、腫瘍細胞の数の減少、転移の数の減少、寿命の増加、腫瘍細胞増殖の減少、腫瘍細胞生存率の減少、またはがん性状態に関連する様々な生理学的症状の改善を含むが、これらに限定されない、様々な手段によって現れることができる生物学的効果を指す。「抗腫瘍効果」は、本開示のペプチド、ポリヌクレオチド、細胞および抗体が、予防的療法または処置などの、そもそも腫瘍の発生を防止する能力によっても現れることができる。
【0082】
本明細書で使用されるとき、「自家」という用語は、それが後に対象に再導入される同じ対象に由来する任意の物質を指す。
【0083】
本明細書で使用されるとき、「同種異系」という用語は、物質が導入される対象と同じ種の異なる動物に由来する任意の物質を指す。1つ以上の遺伝子座における遺伝子が同一でない場合、2つ以上の対象が互いに同種異系であると言われる。一部の実施形態では、同じ種の個体由来の同種異系材料は、例えば、MHC対立遺伝子などの特定の遺伝子で、抗原的に相互作用するように、十分に遺伝的に異なっていてもよい。一部の実施形態では、同じ種の個体由来の同種異系材料は、例えば、MHC対立遺伝子などの特定の遺伝子で、抗原的に相互作用しないように、十分に遺伝的に同じであってもよい。
【0084】
本開示の単離ヌクレオチド分子には、本開示のポリペプチドまたはその断片をコードする任意のポリヌクレオチド分子または核酸配列が含まれる。かかるポリヌクレオチド分子は、内因性核酸配列と100%相同であるか、または同一である必要はないが、典型的には実質的な同一性を示す。内因性配列に対して「実質的な同一性」または「実質的な相同性」を有する核酸配列は、典型的には、二本鎖ポリヌクレオチド分子の少なくとも一つの鎖とハイブリダイズすることができる。本明細書で使用される場合、「ハイブリダイゼーション」は、様々な厳密性の条件下で、相補的ポリヌクレオチド配列(例えば、本明細書に記載の遺伝子)またはその一部との間に二本鎖分子を形成するための対形成を指す。例えば、厳密な塩濃度は、通常、約750mM NaClおよび75mMクエン酸三ナトリウム未満、約500mM NaClおよび50mMクエン酸三ナトリウム未満、または約250mM NaClおよび25mMクエン酸三ナトリウム未満であり得る。有機溶媒、例えば、ホルムアミドがない場合に、低い厳密性のハイブリダイゼーションを得ることができる一方で、少なくとも約35%のホルムアミドまたは少なくとも約50%のホルムアミドの存在下で、高い厳密性のハイブリダイゼーションを得ることができる。厳密な温度条件は、通常、少なくとも約30℃、少なくとも約37℃、または少なくとも約42℃の温度を含む。ハイブリダイゼーション時間、洗剤、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の濃度、および担体DNAの包含または除外等の様々な付加的パラメータが、当業者に周知である。必要に応じて、これらの様々な条件を組み合わせることによって、様々なレベルの厳密性を達成することができる。
【0085】
「実質的に同一」または「実質的に相同」とは、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド分子が、参照アミノ酸配列(例えば、本明細書に記載のアミノ酸配列のいずれか一つ)または核酸配列(例えば、本明細書に記載の核酸配列のいずれか一つ)と少なくとも50%の相同性または同一性を示すことを意味する。好ましくは、かかる配列は、比較に使用される配列とアミノ酸レベルで、または核酸レベルで、少なくとも約60%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、または約100%相同または同一である。配列同一性は、通常、配列分析ソフトウェアを使用して測定される(例えば、Sequence Analysis Software Package of the Genetics Computer Group,University of Wisconsin Biotechnology Center,1710 University Avenue,Madison,Wis. 53705、BLAST、BESTFIT、GAP、またはPILEUP/PRETTYBOXプログラム)。かかるソフトウェアは、種々の置換、欠失、および/または他の修飾に相同性の程度を割り当てることによって、同一または類似の配列を一致させる。保存的置換は、通常、以下の群、すなわち、グリシン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、リジン、アルギニン、およびフェニルアラニン、チロシン内の置換を含む。同一性の程度を測定する例示的な方法では、e-3~e-100の確率スコアが密接に関連した配列を示すBLASTプログラムが使用される場合がある。
【0086】
本明細書で使用される場合、「コードする」という用語は、ヌクレオチドの規定の配列(例えば、rRNA、tRNA、およびmRNA)またはアミノ酸の規定の配列のいずれかを有する生物学的プロセスにおける他のポリマーおよび巨大分子の合成のための鋳型として機能する、遺伝子、cDNA、またはmRNAなどのポリヌクレオチド中のヌクレオチドの特定の配列の固有の特性、またはそれから得られる生物学的特性を指す。したがって、遺伝子、cDNA、またはRNAは、その遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳が細胞または他の生物学的系においてタンパク質を産生する場合、タンパク質をコードする。ヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、通常配列表に提供されるコード鎖、および遺伝子またはcDNAの転写のための鋳型として使用される非コード鎖の両方は、その遺伝子またはcDNAのタンパク質または他の産物をコードすると称され得る。別段の指示がない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、互いに縮退版であり、かつ同じアミノ酸配列をコードする全てのヌクレオチド配列を含む。「タンパク質またはRNAをコードするヌクレオチド配列」という語句は、タンパク質をコードするヌクレオチド配列がいくつかのバージョンにおいてイントロンを含み得る範囲で、イントロンも含み得る。
【0087】
本明細書で使用される場合、「リガンド」という用語は、受容体と結合する分子を指す。具体的には、リガンドは、別の細胞上の受容体と結合し、細胞間認識および/または相互作用を可能にする。
【0088】
「有効量」および「治療有効量」という用語は、本明細書で互換的に使用され、特定の生物学的結果を達成するのに有効な、本明細書に記載される化合物、製剤、物質、または組成物の量を指す。一部の実施形態では、「有効量」または「治療有効量」は、目的の疾患または障害、例えば、固形腫瘍の継続的な増殖、成長、または転移を阻止、改善、または阻害するのに十分な量である。
【0089】
本明細書で使用される場合、「免疫応答性細胞」という用語は、免疫応答(例えば、免疫エフェクター応答)または前駆体、またはその子孫で機能する細胞を指す。免疫エフェクター細胞の例には、アルファ/ベータT細胞、ガンマ/デルタT細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、肥満細胞、骨髄由来食細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0090】
本明細書で使用される場合、「免疫エフェクター応答」または「免疫エフェクター機能」という用語は、標的細胞の免疫攻撃を増強または促進する、例えば、免疫応答性細胞の機能または応答を指す。例えば、免疫エフェクター機能または応答は、標的細胞の死滅または成長もしくは増殖の阻害を促進するT細胞またはNK細胞の特性を指し得る。T細胞の場合、一次刺激および共刺激は、免疫エフェクター機能または応答の例である。
【0091】
本明細書で使用される場合、「可動性ポリペプチドリンカー」または「リンカー」という用語は、可変重鎖および可変軽鎖領域を一緒に連結するために、単独でまたは組み合わせて使用されるグリシンおよび/またはセリン残基などのアミノ酸からなるペプチドリンカーを指す。一実施形態では、可動性ポリペプチドリンカーは、Gly/Serリンカーであり、アミノ酸配列(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)nまたは(Gly-Gly-Gly-Ser)nを含み、nは、1を超える正の整数である。例えば、n=1、n=2、n=3、n=4、n=5、n=6、n=7、n=8、n=9、またはn=10である。一部の実施形態では、可動性ポリペプチドリンカーは、Gly4Ser[配列番号27]または(Gly4Ser)3[配列番号29]を含むが、これらに限定されない。他の実施形態では、リンカーは、(Gly2Ser)、(GlySer)、または(Gly3Ser)[配列番号22]の複数の反復を含む。一部の実施形態では、可動性ポリペプチドリンカーは、Whitlowリンカー(例えば、GSTSGSGKPGSGEGSTKG[配列番号32])を含む。一部の実施形態では、可動性ポリペプチドリンカーは、(EAAAK)3[配列番号33]を含む。本開示の範囲内には、例えば、WO2012/138475に記載されているリンカーも含まれる。
【0092】
本明細書で使用される場合、「治療(treat)」、「治療(treatment)」、および「治療する(treating)」という用語は、増殖性障害(例えば、癌)の進行、重症度および/または持続時間の低減もしくは緩和、または一つ以上の療法(例えば、本開示のCARなどの一つ以上の治療剤)の投与から生じる増殖性障害の一つ以上の症状(好ましくは、一つ以上の識別可能な症状)の緩和を指す。いくつかの実施形態では、低減または改善は、患者によって必ずしも識別可能ではない、腫瘍の成長などの増殖性障害の少なくとも1つの測定可能な身体パラメータの改善を指す。他の実施形態では、「治療(treat)」、「治療(treatment)」、および「治療する(treating)」という用語は、物理的に、例えば、識別可能な症状の安定化によって、生理学的に、例えば、物理的パラメータの安定化によって、またはその両方によって、増殖性障害の進行の阻害を指す。一部の実施形態では、低減または改善は、腫瘍サイズまたは癌細胞数の減低減または安定化を含む。
【0093】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、免疫応答が誘発され得る生体(例えば、哺乳動物、ヒト)を含むことが意図される。
【0094】
本開示の他の態様は、以下のセクションにおいて記載され、特許請求の範囲内である。
【0095】
他の解釈規則
本明細書に列挙される範囲は、列挙される端点を含む範囲内の値の全ての省略表現であると理解される。例えば、1~50の範囲は、任意の数、数の組み合わせ、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、および50の部分範囲を含むことが理解される。
【0096】
VSIG2特異的キメラタンパク質および抗原結合ドメイン
本開示は、キメラタンパク質、ならびにVセットおよび免疫グロブリンドメイン含有タンパク質2(VSIG2)に結合するかかるキメラタンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。一部の実施形態では、VSIG2特異的キメラタンパク質は、ヒトVSIG2(例えば、Uniprot Q96IQ7、全ての目的について参照により本明細書に組み込まれる)またはそのエピトープ断片に結合する。VSIG2は、上皮細胞上で発現され得る。VSIG2は、健常な上皮細胞などの、一般的に健常であるとみなされる細胞上で発現し得る。VSIG2特異的抗体の例としては、OTI2D8(「2D8」としても知られ、本明細書ではAbと称される)およびOTI5A10(「5A10」としても知られる)が挙げられる。
【0097】
本開示は、キメラタンパク質、および表Aに列挙されるアミノ酸配列のうちの一つ以上を有するVSIG2特異的抗原結合ドメインを含む、かかるキメラタンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0098】
一部の実施形態では、VSIG2特異的抗原結合ドメインは、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を有し、VHは、QGVRPFFDY(配列番号4)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)を含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号1のVH領域アミノ酸配列に含有されるCDR-H1およびCDR-H2のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、および重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)をさらに含む。一部の実施形態では、VSIG2特異的抗原結合ドメインは、軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、および軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)をさらに含み、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3のアミノ酸配列は、配列番号9または配列番号10のVL領域アミノ酸配列に含有される。一部の実施形態では、VSIG2特異的抗原結合ドメインは、RASENIYSYLA(配列番号11)またはRASENLYSYLA(配列番号12)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、NAETLPE(配列番号13)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、およびQHHYVIPWT(配列番号14)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む。
【0099】
一部の実施形態では、VSIG2特異的抗原結合ドメインは、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を有し、VHは、配列番号1のVH領域アミノ酸配列に含有されるCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、および重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)を含む。一部の実施形態では、VSIG2特異的抗原結合ドメインは、軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、および軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)をさらに含み、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3のアミノ酸配列は、配列番号9または配列番号10のVL領域アミノ酸配列に含有される。一部の実施形態では、VSIG2特異的抗原結合ドメインは、RASENIYSYLA(配列番号11)またはRASENLYSYLA(配列番号12)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、NAETLPE(配列番号13)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、およびQHHYVIPWT(配列番号14)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む。
【0100】
一部の実施形態では、VSIG2特異的抗原結合ドメインは、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を有し、VHは、GFTFSNS(配列番号2)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、SDGGLY(配列番号3)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、およびQGVRPFFDY(配列番号4)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)を含む。一部の実施形態では、VSIG2特異的抗原結合ドメインは、軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、および軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)をさらに含み、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3のアミノ酸配列は、配列番号9または配列番号10のVL領域アミノ酸配列に含有される。一部の実施形態では、VSIG2特異的抗原結合ドメインは、RASENIYSYLA(配列番号11)またはRASENLYSYLA(配列番号12)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、NAETLPE(配列番号13)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、およびQHHYVIPWT(配列番号14)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む。
【0101】
一部の実施形態では、VSIG2特異的抗原結合ドメインは、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を有し、VLは、配列番号9または配列番号10のVL領域アミノ酸配列に含有されるCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、および軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む。一部の実施形態では、VSIG2特異的抗原結合ドメインは、重鎖相補性決定領域(CDR-H1)、重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、および重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)をさらに含み、CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3のアミノ酸配列は、配列番号1のVH領域アミノ酸配列に含有される。一部の実施形態では、VSIG2特異的抗原結合ドメインは、GFTFSNS(配列番号2)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、SDGGLY(配列番号3)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、およびQGVRPFFDY(配列番号4)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)を含む。
【0102】
一部の実施形態では、VSIG2特異的抗原結合ドメインは、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を有し、VLは、RASENIYSYLA(配列番号11)またはRASENLYSYLA(配列番号12)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、NAETLPE(配列番号13)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、およびQHHYVIPWT(配列番号14)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む。一部の実施形態では、VSIG2特異的抗原結合ドメインは、配列番号1のVH領域アミノ酸配列に含有されるCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、および重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)をさらに含む。一部の実施形態では、VSIG2特異的抗原結合ドメインは、GFTFSNS(配列番号2)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、SDGGLY(配列番号3)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、およびQGVRPFFDY(配列番号4)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)を含む。
【0103】
一部の実施形態では、VSIG2特異的抗原結合ドメインは、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を有し、(1)VHは、GFTFSNS(配列番号2)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、SDGGLY(配列番号3)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、およびQGVRPFFDY(配列番号4)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)を含み、(2)VLは、RASENIYSYLA(配列番号11)またはRASENLYSYLA(配列番号12)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、NAETLPE(配列番号13)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、およびQHHYVIPWT(配列番号14)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む。
【0104】
一部の実施形態では、VSIG2特異的抗原結合ドメインは、配列番号1のアミノ酸配列を含むVH領域を有する。一部の実施形態では、VSIG2特異的抗原結合ドメインは、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域を有する。
【0105】
一部の実施形態では、VSIG2特異的抗原結合ドメインは、配列番号9または配列番号10のアミノ酸配列を含むVL領域を有する。一部の実施形態では、VSIG2特異的抗原結合ドメインは、配列番号9または配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域を有する。一部の実施形態では、VSIG2特異的抗原結合ドメインは、(1)配列番号1のアミノ酸配列を含むVH領域、および(2)配列番号9または配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域、または配列番号9もしくは配列番号10のアミノ酸配列を含むVL領域を有する。
【0106】
一部の実施形態では、VSIG2特異的抗原結合ドメインは、(1)配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域、および(2)配列番号9または配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域、または配列番号9もしくは配列番号10のアミノ酸配列を含むVL領域を有する。
【0107】
一部の実施形態では、VSIG2特異的抗原結合ドメインは、(1)配列番号9または配列番号10のアミノ酸配列を含むVL領域、および(2)配列番号1のアミノ酸配列を含むVH領域または配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域を有する。一部の実施形態では、VSIG2特異的抗原結合ドメインは、配列番号9または配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVL領域および(2)配列番号1のアミノ酸配列を含むVH領域または配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域を有する。
【0108】
一部の実施形態では、VSIG2特異的抗原結合ドメインは、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を有する参照抗体またはその抗原結合断片と競合し、(1)VHは、GFTFSNS(配列番号2)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、SDGGLY(配列番号3)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、およびQGVRPFFDY(配列番号4)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)を含み、(2)VLは、RASENIYSYLA(配列番号11)またはRASENLYSYLA(配列番号12)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、NAETLPE(配列番号13)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、およびQHHYVIPWT(配列番号14)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む。
【0109】
一部の実施形態では、VSIG2特異的抗原結合ドメインは、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を有する参照抗体またはその抗原結合断片と同じまたは本質的に同じエピトープ(例えば、別個のヒトVSIG2エピトープ)に結合し、(1)VHは、GFTFSNS(配列番号2)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、SDGGLY(配列番号3)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、およびQGVRPFFDY(配列番号4)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)を含み、(2)VLは、RASENIYSYLA(配列番号11)またはRASENLYSYLA(配列番号12)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、NAETLPE(配列番号13)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、およびQHHYVIPWT(配列番号14)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む。一部の実施形態では、VSIG2特異的抗原結合ドメインは、配列番号1のアミノ酸配列を含むVHを有する参照抗体またはその抗原結合断片と同じまたは本質的に同じエピトープ(例えば、別個のヒトVSIG2エピトープ)に結合する。一部の実施形態では、VSIG2特異的抗原結合ドメインは、配列番号9または配列番号10のアミノ酸配列を含むVLを有する参照抗体またはその抗原結合断片と同じまたは本質的に同じエピトープ(例えば、別個のヒトVSIG2エピトープ)に結合する。
【0110】
VSIG2特異的抗原結合ドメインは、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFv、直鎖状抗体、sdAb(VLまたはVHのいずれか)などの単一ドメイン抗体、ラクダVHH、および多重特異性フォーマットなどの、本明細書に記載されるフォーマットのいずれかであることができる。一部の実施形態では、VSIG2特異的抗原結合ドメインは、F(ab)フォーマットである。一部の実施形態では、VSIG2特異的抗原結合ドメインは、F(ab’)フォーマットである。
【0111】
一部の実施形態では、VSIG2特異的抗原結合ドメインは、本明細書(例えば、表1を参照)に記載されるペプチドリンカーのいずれかを有するscFvフォーマットを含む、一本鎖可変断片(scFv)フォーマットである。一部の実施形態では、VSIG2特異的抗原結合ドメインは、構造VH-L-VLまたはVL-L-VHを有し、式中、Lはペプチドリンカーである。
【0112】
キメラ抗原受容体(CAR)
本開示のある特定の態様は、本明細書に記載されるVSIG2特異的抗原結合ドメインのいずれか一つを有し、VSIG2タンパク質、VSIG2由来抗原、またはVSIG2由来エピトープに特異的に結合する能力があるキメラ受容体に関する。いくつかの実施形態では、キメラ受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)である。一般に、CARは、抗原結合ドメインおよび抗原結合ドメインが誘導され得る抗体に対して異種性のペプチドなどの、抗原結合ドメインに対して異種性であるポリペプチド分子を含むキメラタンパク質である。抗原結合ドメインに対して異種性であるポリペプチド分子としては、膜貫通ドメイン、一つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメイン、ヒンジドメイン、スペーサー領域、一つまたは複数のペプチドリンカー、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0113】
一部の実施形態では、CARは、免疫エフェクター細胞に目的(例えば、VSIG2)の特異性を移植または付与する操作された受容体である。特定の実施形態では、CARを使用して、T細胞またはNK細胞などの免疫応答性細胞に抗体の特異性を移植することができる。いくつかの実施形態では、本開示のCARは、1つ以上の細胞内シグナル伝達ドメインに融合された、膜貫通ドメインに融合された細胞外抗原結合ドメイン(例えば、scFv)を含む。
【0114】
一部の実施形態では、キメラ抗原受容体は、活性化キメラ抗原受容体(aCARおよび別段指定されない限り、一般的にCARとも称される)である。いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体のその同族リガンドとの結合は、免疫応答性細胞の活性化を誘導するのに十分である。いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体のその同族リガンドとの結合は、免疫応答性細胞の刺激を誘導するのに十分である。いくつかの実施形態では、免疫応答性細胞の活性化は、標的細胞の死滅をもたらす。いくつかの実施形態では、免疫応答性細胞の活性化は、免疫応答性細胞によるサイトカインもしくはケモカイン発現および/または分泌をもたらす。いくつかの実施形態では、免疫応答性細胞の刺激は、免疫応答性細胞によるサイトカインもしくはケモカインの発現および/または分泌をもたらす。いくつかの実施形態では、免疫応答性細胞の刺激は、免疫応答性細胞の分化を誘導する。いくつかの実施形態では、免疫応答性細胞の刺激は、免疫応答性細胞の増殖を誘導する。一部の実施形態では、免疫応答性細胞の活性化および/または刺激は、上記の応答の組み合わせであることができる。
【0115】
本開示のCARは、第一、第二、または第三世代のCARであり得る。「第一世代」のCARは、一般的にT細胞受容体鎖に由来する、単一の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。「第一世代」CARは、概して、CD3-ゼータ(CD3ζ)鎖からの細胞内シグナル伝達ドメインを有し、これは、内因性TCRからのシグナルの主要な伝達因子である。「第一世代」のCARはデノボ抗原認識を与え、HLAを介した抗原提示とは無関係に、単一の融合分子内のCD3ζ鎖シグナル伝達ドメインを介してCD4+およびCD8+T細胞の両方の活性化を引き起こす。「第二世代」CARは、様々な共刺激分子(例えば、CD28、4-1BB、ICOS、OX40)のうちの一つからの第二の細胞内シグナル伝達ドメインをCARの細胞質尾部に追加して、T細胞に追加のシグナルを提供する。「第二世代」CARは、共刺激(例えば、CD28または4-1BB)および活性化(CD3ζ)の両方を提供する。前臨床試験において、「第二世代」のCARがT細胞などの免疫応答性細胞の抗腫瘍活性を高めることができることが示されている。「第三世代」CARは、複数の細胞内共刺激シグナル伝達ドメイン(例えば、CD28および4-1BB)および細胞内活性化シグナル伝達ドメイン(CD3ζ)を有する。
【0116】
一部の実施形態では、キメラ抗原受容体は、キメラ阻害性受容体(iCAR)である。一部の実施形態では、一つ以上のキメラ阻害性受容体は、脳、神経組織、内分泌、骨、骨髄、免疫系、内皮組織、筋肉、肺、肝臓、胆嚢、膵臓、消化管、腎臓、膀胱、雄性生殖器、雌性生殖器、脂肪、軟組織、および皮膚から選択される組織に由来する非腫瘍細胞上で発現される抗原と結合する。
【0117】
一部の実施形態では、キメラ阻害性受容体(例えば、VSIG2特異的キメラ阻害性受容体)は、例えば、一つまたは複数の活性化キメラ受容体の一つまたは複数の活性を制御、調節、またはそれ以外の場合阻害するための論理ゲートではないものとして、本開示の細胞(例えば、免疫応答性細胞)上に発現される一つまたは複数の活性化キメラ受容体(例えば、活性化キメラTCRまたはCAR)と共に使用され得る。例えば、健常細胞が、腫瘍標的化キメラ受容体によって認識される抗原、および阻害性キメラ受容体によって認識される抗原の両方を発現する場合、腫瘍抗原を発現する免疫応答性細胞は、健常細胞と結合し得る。このような場合、阻害性キメラ抗原はまた、健常細胞上でその同族リガンドと結合し、阻害性キメラ受容体の阻害機能は、腫瘍標的化キメラ受容体を介して(「論理的ゲーティングではない」)免疫応答性細胞の活性化を減少、低減、防止、または阻害する。いくつかの実施形態では、本開示の阻害性キメラ受容体は、本開示の細胞(例えば、免疫応答性細胞)の一つ以上の活性を阻害し得る。一部の実施形態では、免疫応答性細胞は、一つまたは複数の腫瘍標的化キメラ受容体、および腫瘍上で発現されないか、一般的に発現するとみなされない抗原(例えば、VSIG2)を標的とする一つまたは複数の阻害性キメラ受容体を含み得る。同じ免疫応答性細胞における腫瘍標的化キメラ受容体および阻害性キメラ受容体の組み合わせを使用して、標的上の腫瘍外毒性を減少させることができる。
【0118】
一部の実施形態では、本開示のCARの細胞外抗原結合ドメインは、約2×10-7M以下、約1×10-7M以下、約9×10-8M以下、約1×10-8M以下、約9×10-9M以下、約5×10-9M以下、約4×10-9M以下、約3×10-9M以下、約2×10-9M以下、または約1×10-9M以下の解離定数(Kd)で一つまたは複数の抗原(例えば、VSIG2)に結合する。いくつかの実施形態では、Kdは、約2×10-7M~約1×10-9Mの範囲である。
【0119】
本開示のCARの細胞外抗原結合ドメインの結合は、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射免疫アッセイ(RIA)、FACS分析、バイオアッセイ(例えば、成長阻害)、バイオレイヤー干渉法(例えば、Octet/FORTEBIO(登録商標))、表面プラズモン共鳴(SPR)テクノロジー(例えば、Biacore(登録商標))、またはウエスタンブロットアッセイによって決定することができる。これらのアッセイの各々は、概して、目的の複合体と特異的な標識試薬(例えば、抗体またはscFv)を用いることによって、特定の目的のタンパク質-抗体複合体の存在を検出する。例えば、scFvは、放射性標識され、RIAアッセイで使用され得る。放射性同位体は、γカウンタまたはシンチレーションカウンタの使用などの手段によって、またはオートラジオグラフィによって検出することができる。特定の実施形態では、CARの細胞外抗原結合ドメインは、蛍光マーカーで標識される。蛍光マーカーの非限定的な例には、緑色蛍光タンパク質(GFP)、青色蛍光タンパク質(例えば、EBFP、EBFP2、Azurite、およびmKalamal)、シアン蛍光タンパク質(例えば、ECFP、Cerulean、およびCyPet)、および黄色蛍光タンパク質(例えば、YFP、Citrine、Venus、およびYPet)が含まれる。ある特定の実施形態では、CARの細胞外抗原結合ドメインは、細胞外抗原結合ドメインに特異的な二次抗体で標識され、二次抗体は、(例えば、放射性または蛍光マーカーで)標識される。
【0120】
一部の実施形態では、本開示のCARは、VSIG2(例えば、VSIG2タンパク質、VSIG2由来抗原、またはVSIG2由来エピトープ)に結合する細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および一つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、細胞外抗原結合ドメインは、scFvを含む。いくつかの実施形態では、細胞外抗原結合ドメインは、Fab断片を含み、それは架橋され得る。特定の実施形態では、細胞外結合ドメインは、F(ab)2断片である。
【0121】
細胞外抗原結合ドメイン
本開示のCARの細胞外抗原結合ドメインは、VSIG2(例えば、VSIG2タンパク質、VSIG2由来抗原、またはVSIG2由来エピトープ)に特異的に結合する。ある特定の実施形態では、細胞外抗原結合ドメインは、上皮細胞に発現したVSIG2に結合する。ある特定の実施形態では、細胞外抗原結合ドメインは、健常な上皮細胞などの、健常であると一般的にみなされる細胞で発現したVSIG2に結合する。一部の実施形態では、VSIG2は、ヒトVSIG2である。
【0122】
本開示の抗原結合ドメインは、単一ドメイン抗体(sdAb)、例えば、重鎖可変ドメイン(VH)、軽鎖可変ドメイン(VL)、およびラクダ由来ナノボディの可変ドメイン(VHH)を含むが、これらに限定されない、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、二重特異性抗体、複合化抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、およびその機能的断片、ならびに組換えフィブロネクチンドメイン、T細胞受容体(TCR)、親和性を向上させた組換えTCR、またはその断片、例えば、一本鎖TCRなどの、抗原結合ドメインとして機能することが当技術分野で公知の代替骨格と結合する任意のドメインを含むことができる。いくつかの事例では、抗原結合ドメインは、CARが最終的に使用される同じ種に由来することが有益である。
【0123】
いくつかの実施形態では、細胞外抗原結合ドメインは、抗体を含む。特定の実施形態では、抗体は、ヒト抗体である。特定の実施形態では、抗体は、キメラ抗体である。いくつかの実施形態では、細胞外抗原結合ドメインは、抗体の抗原結合断片を含む。
【0124】
いくつかの実施形態では、細胞外抗原結合ドメインは、F(ab)断片を含む。特定の実施形態では、細胞外抗原結合ドメインは、F(ab’)断片を含む。
【0125】
いくつかの実施形態では、細胞外抗原結合ドメインは、scFvを含む。いくつかの実施形態では、細胞外抗原結合ドメインは、二つの一本鎖可変断片(scFv)を含む。いくつかの実施形態では、2つのscFvの各々が、同じ抗原上の別個のエピトープと結合する。いくつかの実施形態では、細胞外抗原結合ドメインは、第1のscFvおよび第2のscFvを含む。いくつかの実施形態では、第一のscFvおよび第二のscFvは、同じ抗原上の別個のエピトープと結合する。特定の実施形態では、scFvは、哺乳類scFvである。特定の実施形態では、scFvは、キメラscFvである。特定の実施形態では、scFvは、重鎖可変ドメイン(VH)および軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。
【0126】
一部の実施形態では、scFvは、配列番号69のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、scFvは、配列番号70のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、scFvは、配列番号71のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、scFvは、配列番号72のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、scFvは、配列番号73のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、scFvは、配列番号74のアミノ酸配列を含む。
【0127】
一部の実施形態では、本開示のscFvをコードするポリヌクレオチドは、配列番号75の核酸配列を含む。一部の実施形態では、本開示のscFvをコードするポリヌクレオチドは、配列番号76の核酸配列を含む。一部の実施形態では、本開示のscFvをコードするポリヌクレオチドは、配列番号77の核酸配列を含む。一部の実施形態では、本開示のscFvをコードするポリヌクレオチドは、配列番号78の核酸配列を含む。一部の実施形態では、本開示のscFvをコードするポリヌクレオチドは、配列番号79の核酸配列を含む。一部の実施形態では、本開示のscFvをコードするポリヌクレオチドは、配列番号80の核酸配列を含む。一部の実施形態では、本開示のscFvをコードするポリヌクレオチドは、配列番号81の核酸配列を含む。一部の実施形態では、本開示のscFvをコードするポリヌクレオチドは、配列番号82の核酸配列を含む。一部の実施形態では、本開示のscFvをコードするポリヌクレオチドは、配列番号83の核酸配列を含む。一部の実施形態では、本開示のscFvをコードするポリヌクレオチドは、配列番号84の核酸配列を含む。特定の実施形態では、VHとVLとは、ペプチドリンカーによって分離されている。特定の実施形態では、ペプチドリンカーは、表1に示されるアミノ酸配列のいずれかを含む。特定の実施形態では、scFvは、構造VH-L-VLまたはVL-L-VHを含み、VHは重鎖可変ドメインであり、Lはペプチドリンカーであり、VLは軽鎖可変ドメインである。いくつかの実施形態では、一つ以上のscFvの各々が、構造VH-L-VLまたはVL-L-VHを含み、VHが、重鎖可変ドメインであり、Lが、ペプチドリンカーであり、VLが、軽鎖可変ドメインである。二つ以上のscFvが互いに連結されている場合、各scFvは、ペプチドが連結された次のscFvに連結することができる。いくつかの実施形態では、一つ以上のscFvのそれぞれは、ペプチドリンカーによって分離されている。
【0128】
【0129】
一部の実施形態では、本開示は、第一のCARおよび第二のCARを提供する。第一のCARの抗原結合ドメインおよび第二のCARの抗原結合ドメインは、本明細書に記載されるか、または当該技術分野において既知の適切な抗原結合ドメインであり得る。例えば、第1または第2の抗原結合ドメインは、1つ以上の抗体、抗体の抗原結合断片、F(ab)断片、F(ab’)断片、単鎖可変断片(scFv)、または単一ドメイン抗体(sdAb)であり得る。一部の実施形態では、第一のCARおよび/または第二のCARの抗原結合ドメインは、二つの一本鎖可変断片(scFv)を含む。いくつかの実施形態では、2つのscFvの各々が、同じ抗原上の別個のエピトープと結合する。一部の実施形態では、第一のCARの抗原結合ドメインは、VSIG2に特異的であることができ、第二のCARの抗原結合ドメインは、癌抗原(例えば、結腸直腸がん細胞などの、腫瘍細胞で発現した抗原)などの、第二の別個の抗原に特異的であることができる。
【0130】
いくつかの実施形態では、細胞外抗原結合ドメインは、単一ドメイン抗体(sdAb)を含む。特定の実施形態では、sdAbは、ヒト化sdAbである。特定の実施形態では、sdAbは、キメラsdAbである。
【0131】
いくつかの実施形態では、本開示のCARは、二つ以上の抗原結合ドメイン、三つ以上の抗原結合ドメイン、四つ以上の抗原結合ドメイン、五つ以上の抗原結合ドメイン、六つ以上の抗原結合ドメイン、七つ以上の抗原結合ドメイン、八つ以上の抗原結合ドメイン、九つ以上の抗原結合ドメイン、または十以上の抗原結合ドメインを含み得る。いくつかの実施形態では、2つ以上の抗原結合ドメインの各々は、同じ抗原と結合する。いくつかの実施形態では、2つ以上の抗原結合ドメインの各々は、同じ抗原の異なるエピトープと結合する。いくつかの実施形態では、二つ以上の抗原結合ドメインの各々は、異なる抗原と結合する。
【0132】
いくつかの実施形態では、CARは、二つの抗原結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、2つの抗原結合ドメインは、可動性リンカーを介して互いに結合される。いくつかの実施形態では、2つの抗原結合ドメインの各々は独立して、抗体、抗体の抗原結合断片、scFv、sdAb、組換えフィブロネクチンドメイン、T細胞受容体(TCR)、親和性を向上させた組換えTCR、および単鎖TCRから選択され得る。いくつかの実施形態では、二つの抗原結合ドメインを含むCARは、二重特異性CARまたはタンデムCAR(tanCAR)である。
【0133】
ある特定の実施形態では、二重特異性CARまたはtanCARは、二重特異性抗体または抗体断片(例えば、scFv)を含む抗原結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体分子の各抗体または抗体断片(例えば、scFv)内で、VHは、VLの上流または下流であり得る。いくつかの実施形態では、上流抗体または抗体断片(例えば、scFv)は、そのVL(VL1)の上流にそのVH(VH1)と配置され、下流抗体または抗体断片(例えば、scFv)は、そのVH(VH2)の上流にそのVL(VL2)と配置され、その結果、全体的な二重特異性抗体分子は、配置VH1-VL1-VL2-VH2を有する。他の実施形態では、上流抗体または抗体断片(例えば、scFv)は、そのVH(VH1)の上流にそのVL(VL1)と配置され、下流抗体または抗体断片(例えば、scFv)は、そのVL(VL2)の上流にそのVH(VH2)と配置され、全体的な二重特異性抗体分子は、配置VL1 VH1-VH2-VL2を有する。いくつかの実施形態では、リンカーは、2つの抗体または抗体断片(例えば、scFv)の間に、例えば、構築物がVH1-VL1-VL2-VH2として配置される場合はVL1とVL2との間に、または構築物がVL1-VH1-VH2-VL2として配置される場合はVH1とVH2との間に配置される。リンカーは、本明細書に記載のリンカー、例えば、(Gly4-Ser)nリンカーであり得、nは、1、2、3、4、5、または6である。一般に、2つのscFv間のリンカーは、2つのscFvのドメイン間の誤対合を回避するのに十分な長さでなければならない。いくつかの実施形態では、リンカーは、第1のscFvのVLとVHとの間に配置される。いくつかの実施形態では、リンカーは、第2のscFvのVLとVHとの間に配置される。複数のリンカーを有する構築物では、任意の2つ以上のリンカーは、同じであっても異なっていてもよい。したがって、いくつかの実施形態では、二重特異性CARまたはtanCARは、VL、VHを含み、本明細書に記載される配置で1つ以上のリンカーを更に含み得る。
【0134】
一部の実施形態では、本開示のキメラ受容体は、二価CARを含む。一部の実施形態では、二価CARは、VSIG2二価CARである。一部の実施形態では、二価のVSIG2 CARは、表Aに示される抗VSIG2配列のうちの一つまたは複数を含む。一部の実施形態では、二価のVSIG2 CARのABDは、それぞれ、同じABDを含む。
【0135】
いくつかの実施形態では、キメラ受容体は、バイシストロニック性キメラ抗原受容体を含む。一部の実施形態では、バイシストロニック性キメラ抗原受容体は、VSIG2 CARを含む。一部の実施形態では、バイシストロニック性VSIG2 CARは、表Aに示される抗VSIG2配列のうちの一つまたは複数を含む。
【0136】
膜貫通ドメイン
一部の実施形態では、本開示のCAR(例えば、本明細書に記載されるVSIG2特異的CAR)の膜貫通ドメインは、細胞膜の少なくとも一部にまたがる疎水性アルファヘリックスを含む。異なる膜貫通ドメインが異なる受容体の安定性をもたらし得ることが示されている。抗原認識後、受容体はクラスター化し、シグナルが細胞に伝達される。いくつかの実施形態では、本開示のCARの膜貫通ドメインは、CD8ポリペプチド、CD28ポリペプチド、CD3-ゼータポリペプチド、CD4ポリペプチド、4-1BBポリペプチド、OX40ポリペプチド、ICOSポリペプチド、CTLA-4ポリペプチド、PD-1ポリペプチド、LAG-3ポリペプチド、2B4ポリペプチド、BTLAポリペプチド、LIR-1(LILRB1)ポリペプチドの膜貫通ドメインを含み得るか、または合成ペプチド、もしくはその任意の組み合わせであり得る。
【0137】
いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD8ポリペプチド由来のものである。任意の好適なCD8ポリペプチドが使用され得る。例示的なCD8ポリペプチドは、限定されないが、NCBI参照番号NP_001139345およびAAA92533.1を含む。CD8膜貫通ドメインの例は、IYIWAPLAGTCGVLLLSLVIT(配列番号36)、IYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCNHR(配列番号37)、およびIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCNHRN(配列番号38)を含む。一部の実施形態では、膜貫通ドメインは、配列IYIWAPLAGTCGVLLLSLVIT(配列番号36)を含む。一部の実施形態では、膜貫通ドメインは、配列IYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCNHR(配列番号37)を含む。一部の実施形態では、膜貫通ドメインは、配列IYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYCNHRN(配列番号38)を含む。
【0138】
いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD28ポリペプチド由来のものである。任意の好適なCD28ポリペプチドが使用され得る。例示的なCD28ポリペプチドとしては、これらに限定されるものではないが、NCBI参照番号NP_006130.1およびNP_031668.3が含まれる。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD3-ゼータポリペプチド由来のものである。任意の好適なCD3-ゼータポリペプチドが使用され得る。例示的なCD3-ゼータポリペプチドとしては、これらに限定されるものではないが、NCBI参照番号NP_932170.1およびNP_001106862.1が含まれる。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD4ポリペプチド由来のものである。任意の好適なCD4ポリペプチドを使用することができる。例示的CD4ポリペプチドには、これらに限定されるものではないが、NCBI参照番号NP_000607.1およびNP_038516.1が含まれる。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、4-1BBポリペプチド由来のものである。任意の好適な4-1BBポリペプチドを使用することができる。例示的な4-1BBポリペプチドとしては、これらに限定されるものではないが、NCBI参照番号NP_001552.2およびNP_001070977.1が含まれる。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、OX40ポリペプチドに由来する。任意の好適なOX40ポリペプチドが使用され得る。例示的なOX40ポリペプチドには、これらに限定されるものではないが、NCBI参照番号NP_003318.1およびNP_035789.1が含まれる。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、ICOSポリペプチドに由来する。任意の好適なICOSポリペプチドが使用され得る。例示的なICOSポリペプチドには、NCBI参照番号NP_036224およびNP_059508が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CTLA-4ポリペプチドに由来する。任意の好適なCTLA-4ポリペプチドが使用され得る。例示的なCTLA-4ポリペプチドには、これらに限定されるものではないが、NCBI参照番号NP_005205.2およびNP_033973.2が含まれる。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、PD-1ポリペプチドに由来する。任意の好適なPD-1ポリペプチドが使用され得る。例示的なPD-1ポリペプチドには、NCBI参照番号NP_005009およびNP_032824が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、LAG-3ポリペプチド由来のものである。任意の好適なLAG-3ポリペプチドが使用され得る。例示的なLAG-3ポリペプチドには、これらに限定されるものではないが、NCBI参照番号NP_002277.4およびNP_032505.1が含まれる。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、2B4ポリペプチド由来のものである。任意の好適な2B4ポリペプチドが使用され得る。例示的な2B4ポリペプチドには、これらに限定されるものではないが、NCBI参照番号NP_057466.1およびNP_061199.2が含まれる。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、BTLAポリペプチドに由来する。任意の好適なBTLAポリペプチドが使用され得る。例示的なBTLAポリペプチドとしては、これらに限定されるものではないが、NCBI参照番号NP_861445.4およびNP_001032808.2が含まれる。任意の好適なLIR-1(LILRB1)ポリペプチドが使用され得る。例示的なLIR-1(LILRB1)ポリペプチドには、これらに限定されるものではないが、NCBI参照番号NP_001075106.2およびNP_001075107.2が含まれる。
【0139】
一部の実施形態では、膜貫通ドメインは、NCBI参照番号NP_001139345、AAA92533.1、NP_006130.1、NP_031668.3、NP_932170.1、NP_001106862.1、NP_000607.1、NP_038516.1、NP_001552.2、NP_001070977.1、NP_003318.1、NP_035789.1、NP_036224、NP_059508、NP_005205.2、NP_033973.2、NP_005009、NP_032824、NP_002277.4、NP_032505.1、NP_057466.1、NP_061199.2、NP_861445.4、もしくはNP_001032808.2の配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%相同であるアミノ酸配列、またはその断片を含むポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、相同性は、BLASTまたはFASTAなどの標準的なソフトウェアを使用して決定することができる。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、一個の保存的アミノ酸置換、二個以下の保存的アミノ酸置換、または三個以下の保存的アミノ酸置換を含むことができる。一部の実施形態では、ポリペプチドは、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも110、少なくとも120、少なくとも130、少なくとも140、少なくとも150、少なくとも160、少なくとも170、少なくとも180、少なくとも190、少なくとも200、少なくとも210、少なくとも220、少なくとも230、または少なくとも240アミノ酸長であるNCBI参照番号NP_001139345、AAA92533.1、NP_006130.1、NP_031668.3、NP_932170.1、NP_001106862.1、NP_000607.1、NP_038516.1、NP_001552.2、NP_001070977.1、NP_003318.1、NP_035789.1、NP_036224、NP_059508、NP_005205.2、NP_033973.2、NP_005009、NP_032824、NP_002277.4、NP_032505.1、NP_057466.1、NP_061199.2、NP_861445.4、またはNP_001032808.2の連続する部分であるアミノ酸配列を有することができる。
【0140】
膜貫通ドメインが由来し得る好適なポリペプチドのさらなる例には、T細胞受容体、CD27、CD3イプシロン、CD45、CD5、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、KIRDS2、CD2、CD27、LFA-1(CD11a、CD18)、GITR、CD40、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD160、CD19、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rα、ITGA1、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(触覚)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、PAG/Cbp、NKG2D、およびNG2Cのアルファ、ベータ、またはゼータ鎖の膜貫通領域が含まれるが、これらに限定されない。
【0141】
一部の実施形態では、膜貫通ドメインは、CARの細胞内ドメインと同じタンパク質に由来する。
【0142】
スペーサー領域
一部の実施形態では、本開示のCAR(例えば、本明細書に記載されるVSIG2特異的CAR)は、細胞外抗原結合ドメインを膜貫通ドメインに連結するスペーサー領域も含むことができる。スペーサー領域は、抗原認識を容易にするために、抗原結合ドメインが異なる方向に配向することを可能にするのに十分に柔軟であり得る。いくつかの実施形態では、スペーサー領域は、ヒトタンパク質由来のヒンジであり得る。例えば、ヒンジは、IgG4ヒンジ、IgG2ヒンジ、CD8aヒンジ、またはIgDヒンジを含むがこれらに限定されないヒトIg(免疫グロブリン)ヒンジであり得る。いくつかの実施形態では、スペーサー領域は、IgG4ヒンジ、IgG2ヒンジ、IgDヒンジ、CD28ヒンジ、KIR2DS2ヒンジ、LNGFRヒンジ、またはPDGFR-ベータ細胞外リンカーを含み得る。いくつかの態様では、スペーサー領域は、抗原結合ドメインと膜貫通ドメインとの間に局在化される。一部の実施形態では、スペーサー領域は、表2に列挙されるアミノ酸配列、または表2に列挙されるアミノ酸配列のいずれかと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるアミノ酸配列のいずれかを含んでもよい。
【0143】
【0144】
一部の実施形態では、スペーサー領域は、配列番号39に示される配列を含む。一部の実施形態では、スペーサー領域は、配列番号40に示される配列を含む。一部の実施形態では、スペーサー領域は、配列番号41に示される配列を含む。一部の実施形態では、スペーサー領域は、配列番号42に示される配列を含む。一部の実施形態では、スペーサー領域は、配列番号43に示される配列を含む。一部の実施形態では、スペーサー領域は、配列番号44に示される配列を含む。一部の実施形態では、スペーサー領域は、配列番号45に示される配列を含む。一部の実施形態では、スペーサー領域は、配列番号46に示される配列を含む。一部の実施形態では、スペーサー領域は、配列番号47に示される配列を含む。一部の実施形態では、スペーサー領域は、配列番号48に示される配列を含む。
【0145】
一部の実施形態では、スペーサー領域は、配列TTTPAPRPPTPAPTIALQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACD(配列番号49)を含む。一部の実施形態では、スペーサー領域は、配列ALSNSIMYFSHFVPVFLPAKPTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACD(配列番号50)を含む。一部の実施形態では、スペーサー領域は、配列FVPVFLPAKPTTTPAPRPPTPAPTIALQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACD(配列番号51)を含む。
【0146】
一部の実施形態では、本開示のスペーサー領域のいずれかをコードするポリヌクレオチドは、表3に列挙される核酸配列、または表3に列挙される核酸配列のいずれかと少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一である核酸配列のいずれかを含んでもよい。
【0147】
【0148】
いくつかの実施形態では、本開示のCARは、2アミノ酸残基~10アミノ酸残基の長さであり、CARの膜貫通ドメインと細胞質領域との間の結合を形成し得る短いオリゴペプチドまたはポリペプチドリンカーを更に含み得る。好適なリンカーの非限定的な例は、グリシン-セリン二重鎖である。一部の実施形態では、リンカーは、GGCKJSGGCKJS(配列番号62)のアミノ酸配列を含む。
【0149】
細胞内シグナル伝達ドメイン
一部の実施形態では、本開示のCAR(例えば、本明細書に記載されるVSIG2特異的CAR)は、一つ以上の細胞質ドメインまたは領域を含む。CARの細胞質ドメインまたは領域は、細胞内シグナル伝達ドメインを含み得る。
【0150】
本開示のCARに使用され得る好適な細胞内シグナル伝達ドメインの例には、限定されないが、T細胞受容体(TCR)の細胞質配列、および抗原受容体関与後にシグナル伝達を調節するように協調的に作用する共受容体、ならびにこれらの配列の任意の誘導体またはバリアント、および同じ機能能力を有する任意の組換え配列が含まれる。
【0151】
理論に拘束されることを望むものではないが、TCR単独を通して生成されるシグナルは、T細胞の完全な活性化には不十分であり、したがって、典型的には、完全な活性化には二次および/または共刺激シグナルも必要であると考えられる。したがって、T細胞活性化は、二つの異なるクラスの細胞質シグナル伝達配列、TCRを介して抗原依存性一次活性化を開始するもの(一次細胞内シグナル伝達ドメイン)、および二次または共刺激シグナルを提供するために抗原非依存的な方法で作用するもの(二次細胞質ドメイン、例えば、共刺激ドメイン)によって媒介され得る。さらに、T細胞シグナル伝達および機能(例えば、活性化シグナル伝達カスケード)は、細胞内阻害共シグナル伝達ドメインを介してT細胞に存在する阻害性受容体によって負に制御することができる。
【0152】
一部の実施形態では、本開示のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、阻害性細胞内シグナル伝達ドメインを含むことができる。一部の実施形態では、阻害性細胞内シグナル伝達ドメインは、一つまたは複数の細胞内阻害共シグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態では、一つまたは複数の細胞内阻害共シグナル伝達ドメインは、ペプチドリンカー(例えば、表1を参照)またはスペーサーもしくはヒンジ配列(例えば、表2を参照)を介して他のドメイン(例えば、膜貫通ドメイン)に連結される。一部の実施形態では、二つ以上の細胞内阻害共シグナル伝達ドメインが存在するとき、二つ以上の細胞内阻害共シグナル伝達ドメインは、ペプチドリンカー (例えば、表1を参照)またはスペーサーもしくはヒンジ配列(例えば、表2を参照)を介して連結することができる。一部の実施形態では、細胞内阻害共シグナル伝達ドメインは、阻害性ドメインである。いくつかの実施形態では、キメラタンパク質の一つ以上の細胞内阻害共シグナル伝達ドメインは、一つ以上のITIM含有タンパク質、またはそのフラグメントを含む。ITIMは、多くの阻害性免疫受容体の細胞質末端に見られる保存されたアミノ酸配列である。一部の実施形態では、一つ以上のITIM含有タンパク質、またはその断片は、PD-1、CTLA4、TIGIT、BTLA、LAIR1、KIR2DL1、KIR3DL1、LIR1、SIGLEC2、およびSIRPalpha(SIRPa)から選択される。一部の実施形態では、一つまたは複数の細胞内阻害共シグナル伝達ドメインは、一つまたは複数の非ITIMスキャフォールドタンパク質、またはその断片を含む。いくつかの実施形態では、一つ以上の非ITIM足場タンパク質、またはそのフラグメントは、GRB-2、Dok-1、Dok-2、SLAP、LAG3、HAVR、GITR、およびPD-L1から選択される。阻害性細胞内シグナル伝達ドメインは、酵素阻害ドメインをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、酵素阻害ドメインは、酵素触媒ドメインを含む。一部の実施形態では、酵素触媒ドメインは、CSK、SHP-1、PTEN、CD45、CD148、PTP-MEG1、PTP-PEST、c-CBL、CBL-b、PTPN22、LAR、PTPH1、SHIP-1、またはRasGAPを含むがこれらに限定されない酵素に由来する。シグナル伝達の酵素調節の例は、Pavel Otahal et al. (Biochim Biophys Acta. 2011 Feb;1813(2):367-76), Kosugi A., et al. (Involvement of SHP-1 tyrosine phosphatase in TCR-mediated signaling pathways in lipid rafts, Immunity, 2001 Jun; 14(6): 669-80)、およびStanford, et al. (Regulation of TCR signaling by tyrosine phosphatases: from immune homeostasis to autoimmunity, Immunology, 2012 Sep; 137(1): 1-19)により詳細に記載され、そのそれぞれが、全ての目的について参照により本明細書に組み込まれる。
【0153】
一部の実施形態では、本開示のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、刺激的な方法、または阻害的な方法のいずれかで、TCR複合体の一次活性化を制御する一次シグナル伝達ドメインを含むことができる。刺激的な方法で作用する一次細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)として即知のシグナル伝達モチーフを含み得る。本開示のCARに使用され得る好適なITAM含有一次細胞内シグナル伝達ドメインの例には、CD3-ゼータ、FcRガンマ、FcRベータベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b、CD278(「ICOS」としても知られる)、FcεRI、DAP10、DAP12、およびCD66dのものが含まれるが、これらに限定されない。
【0154】
一部の実施形態では、本開示のCAR(例えば、本明細書に記載されるVSIG2特異的CAR)は、細胞内シグナル伝達ドメイン、例えば、CD3-ゼータポリペプチドの一次シグナル伝達ドメインを含む。本開示のCD3-ゼータポリペプチドは、NCBI参照番号NP_932170もしくはNP_001106864.2の配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%相同であるアミノ酸配列を有し得る。いくつかの実施形態では、CD3-ゼータポリペプチドは、一つの保存的アミノ酸置換、最大二つの保存的アミノ酸置換、または最大三つの保存的アミノ酸置換を含み得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも110、少なくとも120、少なくとも130、少なくとも140、少なくとも150、または少なくとも160、少なくとも170、または少なくとも180アミノ酸の長さである、NCBI参照番号NP_932170またはNP_001106864.2の連続する部分であるアミノ酸配列を有することができる。
【0155】
他の実施形態では、一次シグナル伝達ドメインは、天然ITAMドメインと比較して、活性を改変(例えば、増加または減少)した修飾ITAMドメイン、例えば、変異ITAMドメインを含む。一実施形態では、一次シグナル伝達ドメインは、修飾ITAM含有一次細胞内シグナル伝達ドメイン、例えば、最適化されたおよび/または切断されたITAM含有一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。一実施形態では、一次シグナル伝達ドメインは、一つ、二つ、三つ、四つ、またはそれ以上のITAMモチーフを含む。
【0156】
いくつかの実施形態では、本開示のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、それ自体でCD3-ゼータシグナル伝達ドメインを含み得るか、またはそれは、本開示のCARの文脈で有用な任意の他の所望の細胞内シグナル伝達ドメインと組み合わされ得る。例えば、CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータ鎖の一部および共刺激シグナル伝達ドメインを含むことができる。共刺激シグナル伝達ドメインは、共刺激分子の細胞内ドメインを含むCARの一部を指し得る。本開示の共刺激分子は、抗原に対するリンパ球の効率的な応答に必要とされ得る、抗原受容体またはそのリガンド以外の細胞表面分子である。好適な共刺激分子の例には、CD97、CD2、ICOS、CD27、CD154、CD8、OX40、4-1BB、CD28、ZAP40、CD30、GITR、HVEM、DAP10、DAP12、MyD88、2B4、CD40、PD-1、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83と特異的に結合するリガンド、MHCクラスI分子、TNF受容体タンパク質、免疫グロブリン様タンパク質、サイトカイン受容体、インテグリン、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、活性化NK細胞受容体、BTLA、Tollリガンド受容体、CDS、ICAM-1、(CD11a/CD18)、BAFFR、KIRDS2、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD19、CD4、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rアルファ、ITGA4、VLAl、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、ITGB7、NKG2D、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(触覚)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、CD19aなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0157】
いくつかの実施形態では、本開示のCARの細胞質の一部内の細胞内シグナル伝達配列は、ランダムまたは特定の順序で互いに連結され得る。いくつかの実施形態では、例えば、2アミノ酸~10アミノ酸長(例えば、2アミノ酸、3アミノ酸、4アミノ酸、5アミノ酸、6アミノ酸、7アミノ酸、8アミノ酸、9アミノ酸、または10アミノ酸)の短いオリゴペプチドまたはポリペプチドリンカーは、細胞内シグナル伝達配列との間の結合を形成し得る。一実施形態では、グリシン-セリン二重鎖を好適なリンカーとして使用することができる。一実施形態では、単一アミノ酸、例えば、アラニンまたはグリシンを、好適なリンカーとして使用することができる。
【0158】
一部の実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、二つ以上の共刺激性シグナル伝達ドメイン、例えば、二つの共刺激性シグナル伝達ドメイン、三つの共刺激性シグナル伝達ドメイン、四つの共刺激性シグナル伝達ドメイン、五つの共刺激性シグナル伝達ドメイン、六つの共刺激性シグナル伝達ドメイン、七つの共刺激性シグナル伝達ドメイン、八つの共刺激性シグナル伝達ドメイン、九つの共刺激性シグナル伝達ドメイン、10の共刺激性シグナル伝達ドメイン、またはそれ以上の共刺激性シグナル伝達ドメインを含む。一実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、二つの共刺激シグナル伝達ドメインを含む。一部の実施形態では、二つ以上の共刺激性シグナル伝達ドメインは、本開示のリンカー(例えば、表1に記載されるリンカーのいずれか)によって分離される。一実施形態では、リンカーは、グリシン残基である。別の実施形態では、リンカーは、アラニン残基である。
【0159】
一部の実施形態では、本開示の細胞は、VSIG2に結合する抗原結合ドメイン、本開示の膜貫通ドメイン、一次シグナル伝達ドメイン、および一つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインを含むCARを発現する。
【0160】
一部の実施形態では、本開示の細胞は、VSIG2に結合する抗原結合ドメイン(例えば、表Aに列挙されるアミノ酸配列のうちの一つまたは複数を有するVSIG2特異的抗原結合ドメイン)、本開示の膜貫通ドメイン、および一つまたは複数の細胞内阻害共シグナル伝達ドメインを含むiCARを発現する。一部の実施形態では、本開示の細胞は、(1)VSIG2(例えば、表Aに列挙されるアミノ酸配列のうちの一つまたは複数を有するVSIG2特異的抗原結合ドメイン)に結合する抗原結合ドメイン、本開示の膜貫通ドメイン、一次シグナル伝達ドメイン、および一つまたは複数の共刺激性シグナル伝達ドメインを含むCARを発現する。
【0161】
ナチュラルキラー細胞受容体(NKR)CAR
一部の実施形態では、本開示のCAR(例えば、本明細書に記載されるVSIG2特異的CAR)は、ナチュラルキラー細胞受容体(NKR)の一つ以上の成分を含み、それによってNKR-CARを形成する。NKR成分は、KIR2DL1、KIR2DL2/L3、KIR2DL4、KIR2DL5A、KIR2DL5B、KIR2DS1、KIR2DS2、KIR2DS3、KIR2DS4、DIR2DS5、KIR3DL1/S1、KIR3DL2、KIR3DL3、KIR2DP1、およびKIRS DPIなどのキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR);NKp30、NKp44、NKp46などの天然細胞傷害性受容体(NCR);CD48、CD229、2B4、CD84、NTB-A、CRACC、BLAME、CD2F-10などの免疫細胞受容体のシグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAM)ファミリー;CD16およびCD64などのFc受容体(FcR);ならびにLY49AおよびLY49CなどのLy49受容体を含むが、これらに限定されない、任意の好適なナチュラルキラー細胞受容体からの膜貫通ドメイン、ヒンジドメイン、または細胞質ドメインであり得る。いくつかの実施形態では、NKR-CARは、アダプタ分子またはDAP12などの細胞内シグナル伝達ドメインと相互作用し得る。NKR成分を含むCARの例示的な構成および配列は、2014年9月18日に公開された国際特許公開WO2014/145252に記載される。
【0162】
さらなるキメラ受容体標的
本開示のある特定の態様は、VSIG2に加えて、目的の抗原と結合するキメラ受容体およびかかるキメラ受容体をコードするポリヌクレオチドに関する。本開示の特定の態様は、VSIG2に加えて、目的の抗原と結合するかかるキメラ受容体のうちの一つ以上を発現するように遺伝子修飾されたキメラ受容体および免疫応答性細胞などの細胞、ならびにかかる受容体および細胞を使用して、固形腫瘍などの悪性腫瘍、および抗原特異的免疫応答が望まれる他の病状を治療および/または予防する方法に関する。悪性細胞は、免疫認識および排除から自身を保護するための一連のメカニズムを開発している。本開示は、かかる悪性細胞を治療するための腫瘍微小環境内の免疫原性を提供する。
【0163】
一部の実施形態では、第一のキメラ受容体は、VSIG2に結合する抗原結合ドメイン(例えば、表Aに列挙されるアミノ酸配列のうちの一つまたは複数を有するVSIG2特異的抗原結合ドメイン)を含み、第二のキメラ受容体は、腫瘍関連抗原(例えば、結腸直腸がん関連抗原)などの、第二の抗原に結合するさらなる抗原結合ドメインを含む。一部の実施形態では、細胞は、VSIG2に特異的な第一のキメラ受容体(例えば、表Aに列挙されるアミノ酸配列のうちの一つまたは複数を有するVSIG2特異的抗原結合ドメインを含むCAR)および腫瘍関連抗原(例えば、結腸直腸がん関連抗原)などの、第二の抗原に特異的な第二のキメラ受容体を発現することができる。一部の実施形態では、細胞は、VSIG2に特異的な第一の阻害性キメラ受容体(例えば、表Aに列挙されるアミノ酸配列のうちの一つまたは複数を有するVSIG2特異的抗原結合ドメインを含む阻害性CAR)および腫瘍関連抗原(例えば、結腸直腸がん関連抗原)などの、第二の抗原に特異的な第二のキメラ受容体を発現することができる。例えば、細胞(例えば、免疫応答性細胞)は、VSIG2に結合する抗原結合ドメイン(例えば、表Aに列挙されるアミノ酸配列のうちの一つまたは複数を有するVSIG2特異的抗原結合ドメイン)を含むiCARおよび腫瘍関連抗原(例えば、結腸直腸がん関連抗原)を標的にするaCARを共発現するか、または共発現する能力があるように操作することができる。VSIG2に加えて、抗原に結合する適当な抗体は、天然または合成、全長またはその断片、モノクローナルまたはポリクローナルに関わらず、腫瘍関連抗原(例えば、結腸直腸がん関連抗原)などの、第二の抗原に十分な強さかつ特異的に結合する、任意の抗体を含む。一部の実施形態では、腫瘍関連抗原(例えば、結腸直腸がん関連抗原)などの、第二の抗原に結合する市販の抗体が使用されてもよい。市販の抗体のCDRは、従来の配列決定技術を使用して当業者によって容易にアクセス可能である。更に、当業者は、かかる市販の抗体のCDRに基づいて、scFvおよびキメラ受容体(例えば、CARおよびTCR)をコードするポリヌクレオチドを構築することができる。
【0164】
T細胞受容体(TCR)
本開示のある特定の態様は、腫瘍関連抗原(例えば、結腸直腸がん関連抗原)などの、第二の抗原に特異的に結合するキメラ受容体に関し、第二の抗原のキメラ受容体は、操作されたT細胞受容体(TCR)である。本開示のTCRは、インバリアントCD3鎖分子との複合体の一部として発現される2つの可変鎖を含むジスルフィド結合ヘテロ二量体タンパク質である。TCRは、T細胞の表面に見出され、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子と結合したペプチドとして抗原を認識する役割を担う。特定の実施形態では、本開示のTCRは、TRAによってコードされるアルファ鎖およびTRBによってコードされるベータ鎖を含む。特定の実施形態では、TCRは、ガンマ鎖およびデルタ鎖(それぞれ、TRGおよびTRDによってコードされる)を含む。
【0165】
TCRの各鎖は、可変(V)領域および定常(C)領域の二つの細胞外ドメインからなる。定常領域は、細胞膜の近位であり、膜貫通領域および短い細胞質尾部がそれに続く。可変領域は、ペプチド/MHC複合体と結合する。可変領域の各々は、三つの相補性決定領域(CDR)を有する。
【0166】
特定の実施形態では、TCRは、三つの二量体シグナル伝達モジュールCD3δ/ε、CD3γ/ε、およびCD247ζ/ζまたはCD247ζ/ηと受容体複合体を形成することができる。TCR複合体がその抗原およびMHC(ペプチド/MHC)と複合すると、TCR複合体を発現するT細胞が活性化される。
【0167】
いくつかの実施形態では、本開示のTCRは、組換えTCRである。特定の実施形態では、TCRは、非天然起源TCRである。特定の実施形態では、TCRは、天然起源TCRとは、少なくとも1つのアミノ酸残基が異なる。いくつかの実施形態では、TCRは、天然起源TCRとは、少なくとも2個のアミノ酸残基、少なくとも3個のアミノ酸残基、少なくとも4個のアミノ酸残基、少なくとも5個のアミノ酸残基、少なくとも6個のアミノ酸残基、少なくとも7個のアミノ酸残基、少なくとも8個のアミノ酸残基、少なくとも9個のアミノ酸残基、少なくとも10個のアミノ酸残基、少なくとも11個のアミノ酸残基、少なくとも12個のアミノ酸残基、少なくとも13個のアミノ酸残基、少なくとも14個のアミノ酸残基、少なくとも15個のアミノ酸残基、少なくとも20個のアミノ酸残基、少なくとも25個のアミノ酸残基、少なくとも30個のアミノ酸残基、少なくとも40個のアミノ酸残基、少なくとも50個のアミノ酸残基、少なくとも60個のアミノ酸残基、少なくとも70個のアミノ酸残基、少なくとも80個のアミノ酸残基、少なくとも90個のアミノ酸残基、少なくとも100個のアミノ酸残基、またはそれ以上のアミノ酸残基が異なる。特定の実施形態では、TCRは、天然起源TCRが、少なくとも1つのアミノ酸残基によって修飾される。いくつかの実施形態では、TCRは、天然起源TCRが、少なくとも2個のアミノ酸残基、少なくとも3個のアミノ酸残基、少なくとも4個のアミノ酸残基、少なくとも5個のアミノ酸残基、少なくとも6個のアミノ酸残基、少なくとも7個のアミノ酸残基、少なくとも8個のアミノ酸残基、少なくとも9個のアミノ酸残基、少なくとも10個のアミノ酸残基、少なくとも11個のアミノ酸残基、少なくとも12個のアミノ酸残基、少なくとも13個のアミノ酸残基、少なくとも14個のアミノ酸残基、少なくとも15個のアミノ酸残基、少なくとも20個のアミノ酸残基、少なくとも25個のアミノ酸残基、少なくとも30個のアミノ酸残基、少なくとも40個のアミノ酸残基、少なくとも50個のアミノ酸残基、少なくとも60個のアミノ酸残基、少なくとも70個のアミノ酸残基、少なくとも80個のアミノ酸残基、少なくとも90個のアミノ酸残基、少なくとも100個のアミノ酸残基、またはそれ以上のアミノ酸残基によって修飾される。
【0168】
キメラTCR
一部の実施形態では、本開示のTCRは、腫瘍関連抗原(例えば、結腸直腸がん関連抗原)などの、目的の第二の抗原に特異的に結合するキメラTCRを作製するために、TCR鎖、例えば、TCRアルファ鎖またはTCRベータ鎖の一つまたは複数の定常ドメインに移植され得る一つまたは複数の抗原結合ドメインを含む。理論に束縛されることを望まないが、キメラTCRは、抗原結合時にTCR複合体を通してシグナル伝達し得ると考えられている。例えば、抗体または抗体断片(例えば、scFv)は、TCRアルファ鎖および/またはTCRベータ鎖などのTCR鎖の定常ドメイン、例えば、細胞外定常ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞質ドメインの少なくとも一部に移植することができる。別の例として、抗体または抗体断片のCDRを、TCRアルファ鎖および/またはベータ鎖に移植して、腫瘍関連抗原(例えば、結腸直腸がん関連抗原)などの、第二の抗原と特異的に結合するキメラTCRを作製することができる。そのようなキメラTCRは、当該技術分野では周知の方法によって作製することができる(例えば、Willemsen RA et al., Gene Therapy 2000; 7:1369-1377; Zhang T et al., Cancer Gene Ther 2004 11: 487-496;およびAggen et al., Gene Ther. 2012 Apr; 19(4): 365-74を参照のこと)。
【0169】
免疫応答性細胞
本開示の特定の態様は、本開示の一つ以上のキメラ受容体またはかかるキメラ受容体をコードする一つ以上のポリヌクレオチドを含むように遺伝子操作された細胞(免疫応答性細胞など)、および固形腫瘍(例えば結腸直腸がん)を治療するためにかかる細胞を使用する方法に関する。
【0170】
いくつかの実施形態では、細胞は、哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態では、哺乳動物細胞は、初代細胞である。いくつかの実施形態では、哺乳動物細胞は、細胞株である。いくつかの実施形態では、哺乳動物細胞は、骨髄細胞、血液細胞、皮膚細胞、骨細胞、筋細胞、神経細胞、脂肪細胞、肝細胞、または心臓細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、幹細胞である。例示的な幹細胞には、胚性幹細胞(ESC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、成体幹細胞、および造血幹細胞(血液幹細胞)、間葉系幹細胞(MSC)、神経幹細胞、上皮幹細胞、または皮膚幹細胞などの組織特異的幹細胞が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、細胞は、本開示の幹細胞に由来するか、または分化した細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、免疫細胞である。本開示の免疫細胞は、本開示の幹細胞から(例えば、ESCまたはiPSCから)単離または分化され得る。例示的な免疫細胞には、T細胞(例えば、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、メモリーT細胞、制御性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、アルファベータT細胞、およびガンマデルタT細胞)、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、樹状細胞、骨髄系細胞、マクロファージ、および単球が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、細胞は、神経細胞である。本開示の神経細胞は、本開示の幹細胞から(例えば、ESCまたはiPSCから)単離または分化され得る。例示的なニューロン細胞には、神経前駆細胞、ニューロン(例えば、感覚ニューロン、運動ニューロン、コリン作動性ニューロン、GABA作動性ニューロン、グルタミン酸作動性ニューロン、ドーパミン作動性ニューロン、またはセロトニン作動性ニューロン)、星状細胞、オリゴデンドロサイト、およびミクログリアが含まれるが、これらに限定されない。
【0171】
いくつかの実施形態では、細胞は、免疫応答性細胞である。本開示の免疫応答性細胞は、本開示の幹細胞から(例えば、ESCまたはiPSCから)単離または分化され得る。本開示の例示的な免疫応答性細胞には、リンパ球系統の細胞が含まれるが、これに限定されない。B細胞、T細胞、およびナチュラルキラー(NK)細胞を含むリンパ系統は、抗体の産生、細胞免疫系の制御、血液中の外来物質の検出、宿主に外来する細胞の検出などを提供する。リンパ系統の免疫応答性細胞の例には、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、胚性幹細胞、多能性幹細胞、および人工多能性幹細胞(例えば、リンパ球系細胞由来もしくは分化し得るもの)が含まれるが、これらに限定されない。T細胞は、胸腺で成熟し、細胞介在性免疫を主に担うリンパ球であり得る。T細胞は、適応免疫系に関与する。いくつかの実施形態では、本開示のT細胞は、Tヘルパー細胞、細胞傷害性T細胞、メモリーT細胞(セントラルメモリーT細胞、幹細胞様メモリーT細胞(または幹様メモリーT細胞)、および二種類のエフェクターメモリT細胞、例えば、TEM細胞およびTEMRA細胞、制御性T細胞(サプレッサーT細胞としても知られる)、ナチュラルキラーT細胞、粘膜関連インバリアントT細胞、およびγδ T細胞を含むがこれらに限定されない任意の種類のT細胞であり得る。細胞傷害性T細胞(CTLまたはキラーT細胞)は、感染した体細胞または腫瘍細胞の死を誘導することができるTリンパ球のサブセットである。患者自身のT細胞は、キメラTCRまたはCARなどの一つ以上のキメラ受容体の導入を通じて、特定の抗原を標的とするように遺伝子修飾され得る。
【0172】
ナチュラルキラー(NK)細胞は、細胞介在性免疫の一部であり、自然免疫応答中に作用するリンパ球であり得る。NK細胞は、標的細胞に対してその細胞傷害性効果を発揮するため、事前の活性化を必要としない。
【0173】
いくつかの実施形態では、本開示の免疫応答性細胞は、T細胞である。本開示のT細胞は、自家、同種異系、または操作前駆もしくは幹細胞からインビトロで誘導され得る。
【0174】
いくつかの実施形態では、本開示の免疫応答性細胞は、欠損TCR-αβを有する普遍的なT細胞である。普遍的なT細胞を開発する方法は、当技術分野、例えば、Valton et al., Molecular Therapy (2015); 23 9, 1507-1518、およびTorikai et al., Blood 2012 119:5697-5705に記載される。
【0175】
いくつかの実施形態では、本開示の免疫応答性細胞は、本開示の一つ以上のキメラ受容体を含む単離免疫応答性細胞である。いくつかの実施形態では、免疫応答性細胞は、本開示の一つ以上、二つ以上、三つ以上、四つ以上、五つ以上、六つ以上、七つ以上、八つ以上、九つ以上、または十以上のキメラ受容体を含む。
【0176】
いくつかの実施形態では、免疫応答性細胞は、T細胞である。一部の実施形態では、免疫応答性細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞である。
【0177】
一部の実施形態では、免疫応答性細胞は、免疫受容体を発現するか、または発現する能力がある。免疫受容体は一般的に、免疫受容体発現細胞におけるシグナル伝達またはタンパク質発現の変化を誘導することができ、これにより、同種のリガンドに結合する際の免疫応答が調節される(例えば、免疫応答を調節、活性化、開始、刺激、増加、防止、減弱、阻害、低下、減少、阻害、または抑制する)。例えば、TCR/CARに存在するCD3鎖がリガンド結合に応答してクラスター化する際、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を介したシグナル伝達カスケードが生じる。具体的には、特定の実施形態において、内因性TCR、外因性TCR、キメラTCR、またはCAR(具体的には活性化CAR)がそれぞれの抗原に結合すると、結合受容体の近くの多くの分子(例:CD4またはCD8、CD3γ/δ/ε/ζなど)のクラスター化を含む免疫シナプスの形成が起こる。膜結合シグナル伝達分子のこのようなクラスター化により、CD3鎖内に含まれるITAMモチーフがリン酸化され、これにより、T細胞活性化経路が開始され、最終的にNF-κBおよびAP-1などの転写因子が活性化される。これらの転写因子は、T細胞のグローバルな遺伝子発現を誘導して、マスターレギュレーターT細胞タンパク質の増殖および発現のためのIL-2産生を増加させることにより、サイトカイン産生および/またはT細胞媒介傷害などのT細胞介在性免疫応答を開始させることができる。
【0178】
複数のキメラ受容体を発現する細胞
いくつかの実施形態では、本開示の細胞(例えば、免疫応答性細胞)は、本開示の2つ以上のキメラ受容体を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、2つ以上のキメラ受容体を含み、2つ以上のキメラ受容体のうちの1つは、キメラ阻害性受容体である。いくつかの実施形態では、細胞は、3つ以上のキメラ受容体を含み、3つ以上のキメラ受容体のうちの少なくとも1つは、キメラ阻害性受容体である。いくつかの実施形態では、細胞は、4つ以上のキメラ受容体を含み、4つ以上のキメラ受容体の少なくとも1つは、キメラ阻害性受容体である。いくつかの実施形態では、細胞は、五つ以上のキメラ受容体を含み、五つ以上のキメラ受容体の少なくとも一つは、キメラ阻害性受容体である。
【0179】
いくつかの実施形態では、二つ以上のキメラ受容体の各々は、異なる抗原結合ドメイン、例えば、同じ抗原または異なる抗原と結合する抗原結合ドメインを含む。一部の実施形態では、二つ以上のキメラ受容体によって結合される各抗原は、上皮細胞型(例えば、同じ上皮細胞型)などの、同じ細胞で発現される。
【0180】
本開示の細胞(例えば、免疫応答性細胞)が2つ以上の別個のキメラ受容体を発現する実施形態では、異なるキメラ受容体の各々の抗原結合ドメインは、抗原結合ドメインが互いに相互作用しないように設計され得る。例えば、第一のキメラ受容体(例えば、VSIG2特異的キメラ受容体)および第二のキメラ受容体を発現する本開示の細胞(例えば、免疫応答性細胞)は、第二のキメラ受容体の抗原結合ドメインとの会合を形成しない抗原結合ドメインを含む第一のキメラ受容体を含み得る。例えば、第一のキメラ受容体の抗原結合ドメインは、scFvなどの抗体断片を含み得、一方、第二のキメラ受容体の抗原結合ドメインは、VHHを含み得る。
【0181】
理論に拘束されることを望まないが、各々が抗原結合ドメインを含む複数のキメラ膜埋め込み型受容体を有する細胞において、各受容体の抗原結合ドメイン間の相互作用は、かかる相互作用が、それらの同族抗原と結合する一つ以上の抗原結合ドメインの能力を阻害し得る望ましくない可能性があると考えられる。したがって、本開示の細胞(例えば、免疫応答性細胞)が2つ以上のキメラ受容体を発現する実施形態では、キメラ受容体は、かかる阻害性相互作用を最小化する抗原結合ドメインを含む。一実施形態では、1つのキメラ受容体の抗原結合ドメインは、scFvを含み、第2のキメラ受容体の抗原結合ドメインは、単一VHドメイン、例えば、ラクダ、サメ、もしくはヤツメウナギ単一VHドメイン、またはヒトもしくはマウス配列に由来する単一VHドメインを含む。
【0182】
一部の実施形態では、細胞の表面上に存在する場合、第一のキメラ受容体のその同族抗原との抗原結合ドメインの結合(例えば、VSIG2に結合するVSIG2特異的キメラ受容体)は、第二のキメラ受容体の存在によって実質的に低減されない。いくつかの実施形態では、第2のキメラ受容体の存在下での第1のキメラ受容体の抗原結合ドメインのその同族抗原との結合は、第2のキメラ受容体の非存在下での第1のキメラ受容体の抗原結合ドメインのその同族抗原との結合の85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%である。いくつかの実施形態では、細胞の表面に存在する場合、第1のキメラ受容体および第2のキメラ受容体の抗原結合ドメインは、両方がscFv抗原結合ドメインである場合よりも少なく互いに会合する。いくつかの実施形態では、第一のキメラ受容体および第二のキメラ受容体の抗原結合ドメインは、両方がscFv抗原結合ドメインである場合よりも85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%少なく互いに会合する。
【0183】
キメラ阻害性受容体
いくつかの実施形態では、本開示の細胞(例えば、免疫応答性細胞)は、本開示の一つ以上のキメラ阻害性受容体を含む。一部の実施形態では、一つまたは複数のキメラ阻害性受容体のそれぞれは、正常な細胞上で一般的に発現される(例えば、健常であると一般的にみなされる細胞)が、結腸直腸がん細胞などの腫瘍細胞上では発現されない抗原と結合する抗原結合ドメインを含む。一部の実施形態では、阻害性キメラ受容体は、VSIG2に結合する抗原結合ドメイン(例えば、表Aに列挙されるアミノ酸配列のうちの一つまたは複数を有するVSIG2特異的抗原結合ドメイン)を含む。
【0184】
一部の実施形態では、一つ以上のキメラ阻害性受容体は、脳、神経組織、内分泌、骨、骨髄、免疫系、内皮組織、筋肉、肺、肝臓、胆嚢、膵臓、消化管、腎臓、膀胱、雄性生殖器、雌性生殖器、脂肪、軟組織、および皮膚から選択される組織に由来する非腫瘍細胞上で発現される抗原と結合する。
【0185】
一部の実施形態では、キメラ阻害性受容体(例えば、VSIG2特異的キメラ阻害性受容体)は、例えば、一つまたは複数の活性化キメラ受容体の一つまたは複数の活性を制御、調節、またはそれ以外の場合阻害するための論理ゲートではないものとして、本開示の細胞(例えば、免疫応答性細胞)上に発現される一つまたは複数の活性化キメラ受容体(例えば、活性化キメラTCRまたはCAR)と共に使用され得る。いくつかの実施形態では、本開示の阻害性キメラ受容体は、本開示の細胞(例えば、免疫応答性細胞)の一つ以上の活性を阻害し得る。
【0186】
共刺激リガンド
いくつかの実施形態では、本開示の細胞(例えば、免疫応答性細胞)は、一つ以上の組換えまたは外因性共刺激リガンドをさらに含むことができる。例えば、細胞が、本開示の一つ以上のキメラ受容体(例えば、本明細書に記載されるVSIG2特異的CAR)および一つ以上の共刺激リガンドを共発現するか、または共発現するように誘導されるように、細胞を一つ以上の共刺激リガンドでさらに形質導入することができる。理論に拘束されることを望まないが、一つ以上のキメラ受容体と一つ以上の共刺激リガンドとの間の相互作用は、細胞の完全な活性化に重要な非抗原特異的シグナルを提供し得ると考えられる。好適な共刺激リガンドの例には、腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーのメンバー、および免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーリガンドが含まれるが、これらに限定されない。TNFは、全身炎症に関与するサイトカインであり、急性期反応を刺激する。その主な役割は、免疫細胞の制御である。TNFスーパーファミリーのメンバーは、いくつかの共通の特徴を共有している。TNFスーパーファミリーメンバーの大部分は、短い細胞質セグメントおよび比較的長い細胞外領域を含むII型膜貫通タンパク質(細胞外C末端)として合成される。好適なTNFスーパーファミリーメンバーの例には、神経成長因子(NGF)、CD40L(CD40L)/CD154、CD137L/4-1BBL、TNF-α、CD134L/OX40L/CD252、CD27L/CD70、Fasリガンド(FasL)、CD30L/CD153、腫瘍壊死因子ベータ(TNFP)/リンホトキシン-アルファ(LTa)、リンホトキシン-ベータ(LTP)、CD257/B細胞活性化因子(B AFF)/Bly s/THANK/Tall-1、糖質コルチコイド誘導性TNF受容体リガンド(GITRL)、およびTNF関連アポトーシス誘導性リガンド(TRAIL)、LIGHT(TNFSF14)が含まれるが、これらに限定されない。免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーは、細胞の認識、結合、または接着プロセスに関与する細胞表面および可溶性タンパク質の大きなグループである。これらのタンパク質は、免疫グロブリンと構造的特徴を共有し、免疫グロブリンドメイン(折り畳み)を有する。好適な免疫グロブリンスーパーファミリーリガンドの例には、CD80およびCD86、両方のCD28のリガンド、PD-1のリガンドであるPD-L1/(B7-H1)が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、一つ以上の共刺激リガンドは、4-1BBL、CD80、CD86、CD70、OX40L、CD48、TNFRSF14、PD-L1、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0187】
ケモカイン受容体
一部の実施形態では、本開示の細胞(例えば、免疫応答性細胞)は、一つ以上のキメラ受容体(例えば、本明細書に記載されるVSIG2特異的CAR)を含み、一つ以上のケモカイン受容体をさらに含み得る。例えば、T細胞などの細胞におけるケモカイン受容体CCR2bまたはCXCR2のトランスジェニック発現は、CCL2分泌性またはCXCL1分泌性固形腫瘍への輸送を増強する(Craddock et al, J Immunother. 2010 Oct; 33(8):780-8およびKershaw et al. Hum Gene Ther. 2002 Nov 1; 13(16): 1971 -80)。理論に拘束されることを望まないが、本開示のキメラ受容体発現細胞上に発現されるケモカイン受容体は、腫瘍によって分泌されるケモカインを認識し、細胞の腫瘍への標的化を改善し得、これは、細胞の腫瘍への浸潤を促進し、細胞の抗腫瘍効果を増強し得ると考えられる。本開示のケモカイン受容体は、天然起源ケモカイン受容体、組換えケモカイン受容体、またはそのケモカイン結合断片を含み得る。本開示の細胞上に発現し得る好適なケモカイン受容体には、CXCR1、CXCR2、CXCR3、CXCR4、CXCR5、CXCR6、またはCXCR7などのCXCケモカイン受容体、CCR1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CCR10、またはCCR11などのCCケモカイン受容体、CX3CR1などのCX3Cケモカイン受容体、XCR1などのXCケモカイン受容体、およびこれらのケモカイン結合断片が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、細胞上で発現されるケモカイン受容体は、腫瘍によって分泌されるケモカインに基づいて選択される。
【0188】
キメラ受容体制御
本開示のいくつかの実施形態は、本開示のキメラ受容体発現細胞(例えば、本明細書に記載されるVSIG2特異的CAR)の一つ以上のキメラ受容体活性を制御することに関する。キメラ受容体活性を制御するいくつかの方法が存在する。いくつかの実施形態では、一つ以上のキメラ受容体活性を制御することができる制御可能なキメラ受容体は、キメラ受容体療法の安全性および/または有効性を最適化するために望ましい場合がある。例えば、二量体化ドメインに融合されたカスパーゼを使用してアポトーシスを誘導すること(例えば、Di et al., N Engl. J. Med. 2011 Nov. 3; 365(18): 1673-1683を参照)は、キメラ受容体療法における安全性スイッチとして使用することができる。いくつかの実施形態では、本開示のキメラ受容体発現細胞はまた、リミドゥシド(IUPAC名称:[(1R)-3-(3,4-ジメトキシフェニル)-1-[3-[2-[2-[[2-[3-[(1R)-3-(3,4-ジメトキシフェニル)-1-[(2S)-1-[(2S)-2-(3,4,5-トリメトキシフェニル)ブタノイル]ピペリジン-2-カルボニル]オキシプロピル]フェノキシ]アセチル]アミノ]エチルアミノ]-2-オキソエトキシ]フェニル]プロピル](2S)-1-[(2S)-2-(3,4,5-トリメトキシフェニル)ブタノイル]ピペリジン-2-カルボキシレート)などの二量体化剤の投与時に、カスパーゼ-9の活性化を誘導し、細胞のアポトーシスをもたらす、誘導性カスパーゼ-9(iカスパーゼ-9)を発現することができる。いくつかの実施形態では、iカスパーゼ-9は、CIDの存在下で二量体化を媒介する二量体化の化学的誘導物質(CID)を含む結合ドメインを含み、これは、キメラ受容体発現細胞の誘導性かつ選択的な枯渇をもたらす。
【0189】
代替的に、いくつかの実施形態では、本開示のキメラ受容体は、キメラ受容体活性を不活性化するか、もしくは阻害する低分子または抗体を利用することによって制御され得る。例えば、抗体は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘導することによって、キメラ受容体発現細胞を欠失し得る。いくつかの実施形態では、本開示のキメラ受容体発現細胞は、ADCCによる細胞死または補体誘導性細胞死を誘導することができる分子によって認識される抗原を更に発現し得る。例えば、本開示のキメラ受容体発現細胞は、抗体または抗体断片によって標的化されることができる受容体をさらに発現し得る。抗体または抗体断片によって標的化され得る好適な受容体の例には、EpCAM、VEGFR、インテグリン(例えば、ανβ3、α4、αΙ3/4β3、α4β7、α5β1、ανβ3、αν)、TNF受容体スーパーファミリーのメンバー(例えば、TRAIL-R1およびTRAIL-R2)、PDGF受容体、インターフェロン受容体、葉酸受容体、GPNMB、ICAM-1、HLA-DR、CEA、CA-125、MUC1、TAG-72、IL-6受容体、5T4、GD2、GD3、CD2、CD3、CD4、CD5、CD11、CD11a/LFA-1、CD15、CD18/ITGB2、CD19、CD20、CD22、CD23/IgE受容体、CD25、CD28、CD30、CD33、CD38、CD40、CD41、CD44、CD51、CD52、CD62L、CD74、CD80、CD125、CD147/ベイシジン、CD152/CTLA-4、CD154/CD40L、CD195/CCR5、CD319/SLAMF7、およびEGFR、ならびにそれらの切断型バージョンが含まれるが、これらに限定されない。
【0190】
いくつかの実施形態では、本開示のキメラ受容体発現細胞は、シグナル伝達能力を欠くが、ADCCを誘導することができる分子によって認識されるエピトープを保持する切断型上皮成長因子受容体(EGFR)も発現し得る(例えば、WO2011/056894)。
【0191】
いくつかの実施形態では、本開示のキメラ受容体発現細胞は、抗CD20抗体(例えば、リツキシマブ)と結合し、ADCCによるキメラ受容体発現細胞の選択的枯渇をもたらす、キメラ受容体発現細胞においてCD32およびCD20抗原の両方からの標的エピトープを組み合わせる高度に発現する小型マーカー/自殺遺伝子をさらに含む。本開示のキメラ受容体発現細胞を枯渇させるための他の方法には、ADCCを誘導することによる破壊のためにキメラ受容体発現細胞に選択的に結合および標的化するモノクローナル抗CD52抗体の投与が含まれるが、これに限定されない。いくつかの実施形態では、キメラ受容体発現細胞は、抗イディオタイプ抗体などのキメラ受容体リガンドを使用して選択的に標的化され得る。いくつかの実施形態では、抗イディオタイプ抗体は、ADCCまたはADC活性などのエフェクター細胞活性を引き起こすことができる。いくつかの実施形態では、キメラ受容体リガンドは、毒素などの細胞死を誘導する薬剤に更に結合することができる。いくつかの実施形態では、本開示のキメラ受容体発現細胞は、本開示の細胞枯渇剤によって認識される標的タンパク質を更に発現し得る。いくつかの実施形態では、標的タンパク質は、CD20であり、細胞枯渇剤は、抗CD20抗体である。かかる実施形態では、細胞枯渇剤は、キメラ受容体発現細胞を低減または排除することが望ましい場合に投与される。いくつかの実施形態では、細胞枯渇剤は、抗CD52抗体である。
【0192】
いくつかの実施形態では、制御されたキメラ受容体は、本開示のキメラ受容体の成分が別個のポリペプチドまたはメンバー上に分配されているポリペプチドのセットを含む。例えば、ポリペプチドのセットは、二量体化分子の存在下で、ポリペプチドを互いに結合させて機能的キメラ受容体を形成することができる、二量体化スイッチを含み得る。
【0193】
キメラ受容体をコードするポリヌクレオチド構築物
本開示の特定の態様は、本開示の一つ以上のキメラ受容体(例えば、本明細書に記載されるVSIG2特異的CAR)をコードするポリヌクレオチド(例えば、単離ポリヌクレオチド)に関する。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、メッセンジャーRNA(mRNA)転写物または修飾RNAなどのRNA構築物である。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、DNA構築物である。
【0194】
一部の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、一つ以上の抗原結合ドメインを含むキメラ受容体をコードし、各ドメインは、標的抗原(例えば、VSIG2)、膜貫通ドメイン、および一つ以上の細胞内シグナル伝達ドメインと結合する。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、一次シグナル伝達ドメイン(例えば、CD3-ゼータドメイン)、および1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインを含むキメラ受容体をコードする。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、スペーサー領域をコードする核酸配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗原結合ドメインは、スペーサー領域によって膜貫通ドメインと接続される。一部の実施形態では、スペーサー領域は、表3に列挙される核酸配列のいずれかから選択される核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、リーダー配列をコードするヌクレオチド配列をさらに含む。
【0195】
本開示のポリヌクレオチドは、目的の遺伝子を発現する細胞からライブラリをスクリーニングすること、遺伝子を含むことが既知であるベクターから目的の遺伝子を誘導すること、または標準的な技法を使用して、目的の遺伝子を細胞および遺伝子を含有する組織から直接的に単離することを含むが、これらに限定されない、当該技術分野で既知の任意の好適な組換え方法を使用して得ることができる。代替的に、目的の遺伝子は、合成的に産生され得る。
【0196】
一部の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、ベクター内に含まれる。一部の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドは、トランスポゾン、CRISPR/Cas9系、TALEN、またはジンクフィンガーヌクレアーゼを介して細胞内で発現される。
【0197】
一部の実施形態では、本開示のキメラ受容体をコードするポリヌクレオチドの発現は、核酸をプロモーターと作動可能に連結し、構築物を発現ベクターに組み込むことによって達成され得る。好適なベクターは、真核細胞で複製および組み込むことができる。典型的なクローニングベクターは、所望の核酸の発現を制御するのに有用な転写および翻訳ターミネーター、開始配列、ならびにプロモーターを含む。
【0198】
いくつかの実施形態では、本開示の発現構築物はまた、標準的な遺伝子送達プロトコル(例えば、US5399346、US5580859、およびUS5589466)を使用して、核酸免疫化および遺伝子療法のために使用され得る。いくつかの実施形態では、本開示のベクターは、遺伝子療法ベクターである。
【0199】
本開示のポリヌクレオチドは、いくつかの種類のベクターにクローニングされ得る。例えば、ポリヌクレオチドは、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルス、またはコスミドを含むが、これらに限定されないベクターにクローニングされ得る。いくつかの実施形態では、ベクターは、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクター、または配列決定ベクターであり得る。
【0200】
一部の実施形態では、プラスミドベクターは、本開示のポリヌクレオチドを宿主細胞ゲノムに組み込むためのトランスポゾン/トランスポザーゼ系を含む。トランスポゾンおよびトランスポザーゼプラスミド系を使用して免疫細胞でタンパク質を発現する方法は、概して、Chicaybam L,Hum Gene Ther.2019 Apr;30(4):511-522. doi: 10.1089/hum.2018.218;およびPtackova P, Cytotherapy. 2018 Apr;20(4):507-520. doi: 10.1016/j.jcyt.2017.10.001に記載されており、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、トランスポゾン系は、Sleeping Beautyトランスポゾン/トランスポザーゼまたはpiggyBacトランスポゾン/トランスポザーゼである。
【0201】
いくつかの実施形態では、本開示の発現ベクターは、ウイルスベクターの形態で細胞に提供され得る。好適なウイルスベクター系が当技術分野で周知である。例えば、ウイルスベクターは、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、およびレンチウイルスに由来し得る。いくつかの実施形態では、本開示のベクターは、レンチウイルスベクターである。レンチウイルスベクターは、かかるベクターが導入遺伝子の長期的で安定的な組み込みおよび娘細胞におけるその増殖を可能にするため、長期的な遺伝子導入に好適である。レンチウイルスベクターはまた、レンチウイルスベクターが非増殖細胞を形質導入することができるという点で、腫瘍レトロウイルス(例えば、マウス白血病ウイルス)に由来するベクターよりも有利である。いくつかの実施形態では、本開示のベクターは、アデノウイルスベクター(A5/35)である。いくつかの実施形態では、本開示のベクターは、少なくとも1つの生物における機能的複製起点、プロモーター配列、簡便な制限エンドヌクレアーゼ部位、および1つ以上の選択可能なマーカーを含む(例えば、WO01/96584、WO01/29058、およびUS6326193)。哺乳動物細胞への遺伝子導入のための多数のウイルスベースのシステムが開発されている。選択された遺伝子は、当該技術分野において既知の技法を使用して、ベクターに挿入され、レトロウイルス粒子にパッケージングされ得る。その後、組換えウイルスを単離し、哺乳類細胞にインビボまたはエクスビボのいずれかで送達することができる。いくつかのレトロウイルス系が当該技術分野で既知である。
【0202】
いくつかの実施形態では、本開示のベクターは、転写開始の頻度を制御するエンハンサーなどの追加のプロモーター要素を含む。エンハンサーは、典型的には、開始部位の30bp~110bp上流の領域に位置するが、いくつかのプロモーターは開始部位の下流にも機能要素を含むことが示されている。プロモーター要素間の間隔は、要素が互いに反転または移動されるときにプロモーター機能が維持されるように、柔軟であり得る。例えば、チミジンキナーゼ(tk)プロモーターでは、活性が低下し始める前に、プロモーター要素間の間隔を50bp離して増やすことができる。プロモーターに応じて、個々の要素は、協力的にまたは独立して機能して、転写を活性化し得る。例示的なプロモーターには、SFFV遺伝子プロモーター、EFS遺伝子プロモーター、CMV IE遺伝子プロモーター、EF1aプロモーター、ユビキチンCプロモーター、およびホスホグリセロキナーゼ(PGK)プロモーターが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0203】
一部の実施形態では、本開示の免疫応答性細胞などの哺乳動物細胞において本開示のポリヌクレオチドを発現することができるプロモーターは、EF1aプロモーターである。天然EF1aプロモーターは、リボソームへのアミノアシルtRNAの酵素送達を担う伸長因子-1複合体のアルファサブユニットの発現を駆動する。EF1aプロモーターは、哺乳動物発現プラスミドに広く使用されており、レンチウイルスベクターにクローニングされたポリヌクレオチドからのキメラ受容体発現を促進するのに有効であることが示されている。
【0204】
一部の実施形態では、本開示の免疫応答性細胞などの哺乳動物細胞において本開示のポリヌクレオチドを発現することができるプロモーターは、構成的プロモーターである。例えば、好適な構成的プロモーターは、脾フォーカス形成ウイルス(SFFV)プロモーターである。好適な構成的プロモーターの別の例は、前初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターである。CMVプロモーターは、プロモーターと作動可能に連結された任意のポリヌクレオチド配列の高レベルの発現を駆動することができる強力な構成的プロモーターである。他の好適な構成的プロモーターには、ユビキチンC(UbiC)プロモーター、シミアンウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳がんウイルス(MMTV)プロモーター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)末端反復配列(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタインバーウイルス前初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、伸長因子1aプロモーター、ヘモグロビンプロモーター、およびクレアチンキナーゼプロモーターが含まれるが、これらに限定されない。
【0205】
一部の実施形態では、本開示の免疫応答性細胞などの哺乳動物細胞において本開示のポリヌクレオチドを発現することができるプロモーターは、誘導性プロモーターである。誘導性プロモーターの使用は、プロモーターがポリヌクレオチドと作動可能に連結されている場合に、本開示のポリヌクレオチドの発現を誘導または抑制することができる分子スイッチを提供し得る。誘導性プロモーターの例には、メタロチオネインプロモーター、糖質コルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーター、およびテトラサイクリンプロモーターが含まれるが、これらに限定されない。
【0206】
いくつかの実施形態では、本開示のベクターは、分泌を促進するためのシグナル配列、ポリアデニル化シグナルおよび転写ターミネーター、エピソーム複製を可能にする因子、および/または選択を可能にする因子をさらに含むことができる。
【0207】
いくつかの実施形態では、本開示のベクターは、ベクターで形質導入された細胞の集団からのキメラ受容体発現細胞の同定および選択を容易にするための選択可能なマーカー遺伝子および/またはレポーター遺伝子をさらに含み得る。一部の実施形態では、選択可能なマーカーは、ベクターから分離され、同時形質移入手順で使用されるポリヌクレオチドによってコードされ得る。選択可能なマーカーまたはレポーター遺伝子のいずれかは、宿主細胞での発現を可能にするために適切な制御配列と隣接され得る。選択可能なマーカーの例には、neoなどの抗生物質耐性遺伝子が含まれるが、これらに限定されない。
【0208】
いくつかの実施形態では、レポーター遺伝子は、形質導入された細胞を同定するために、および制御配列の機能性を評価するために使用され得る。本明細書に開示されるように、レポーター遺伝子は、レシピエント生物もしくは組織には存在または発現されず、その発現が酵素活性などの容易に検出可能な特性がもたらされるポリペプチドをコードする遺伝子である。レポーター遺伝子の発現は、ポリヌクレオチドがレシピエント細胞に導入された後の好適な時期にアッセイすることができる。レポーター遺伝子の例には、ルシフェラーゼをコードする遺伝子、ベータガラクトシダーゼをコードする遺伝子、クロランフェニコールアセチルトランスフェラーゼをコードする遺伝子、分泌型アルカリホスファターゼをコードする遺伝子、および緑色蛍光タンパク質をコードする遺伝子が含まれるが、これらに限定されない。好適な発現系が当技術分野で周知であり、既知の技法を使用して調製されるか、または商業的に入手され得る。いくつかの実施形態では、レポーター遺伝子の最高レベルの発現を示す最小の5’隣接領域を有する構築物がプロモーターとして同定される。かかるプロモーター領域は、レポーター遺伝子に連結され、プロモーター駆動転写を調節する能力について薬剤を評価するために使用され得る。
【0209】
一部の実施形態では、本開示のキメラ受容体をコードするポリヌクレオチド配列を含むベクターは、キメラ受容体の活性を増加させるポリペプチドをコードする第二のポリヌクレオチドを更に含む。
【0210】
キメラ受容体発現細胞が2つ以上のキメラ受容体を含む実施形態では、単一のポリヌクレオチドは、単一の制御制御要素(例えば、プロモーター)の下で、またはポリヌクレオチドに含まれる各キメラ受容体をコードするヌクレオチド配列について別個の制御制御要素の下で、2つ以上のキメラ受容体をコードし得る。キメラ受容体発現細胞が2つ以上のキメラ受容体を含む一部の実施形態では、各キメラ受容体は、別個のポリヌクレオチドによってコードされ得る。一部の実施形態では、各別個のポリヌクレオチドは、その独自の制御要素(例えば、プロモーター)を含む。一部の実施形態では、単一のポリヌクレオチドは、2つ以上のキメラ受容体をコードし、キメラ受容体をコードするヌクレオチド配列は、同じリーディングフレーム内にあり、単一のポリペプチド鎖として発現される。そのような実施形態では、2つ以上のキメラ受容体は、1つ以上のペプチド切断部位、例えば、細胞内プロテアーゼの自己切断部位または基質によって分離され得る。好適なペプチド切断部位には、T2Aペプチド切断部位、P2Aペプチド切断部位、E2Aペプチド切断部位、およびF2Aペプチド切断部位が含まれ得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、2つ以上のキメラ受容体は、T2Aペプチド切断部位を含む。いくつかの実施形態では、2つ以上のキメラ受容体は、E2Aペプチド切断部位を含む。いくつかの実施形態では、二つ以上のキメラ受容体は、T2AおよびE2Aペプチド切断部位を含む。
【0211】
遺伝子を細胞に導入および発現する方法は、当技術分野において周知である。例えば、いくつかの実施形態では、発現ベクターは、物理的、化学的、または生物学的手段によって宿主細胞に移行することができる。ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための物理的手段の例には、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、微粒子銃、マイクロインジェクション、およびエレクトロポレーションが含まれるが、これらに限定されない。ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための化学的手段の例には、コロイド分散系、巨大分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、ならびに水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル、およびリポソームを含む脂質に基づく系が含まれるが、これらに限定されない。宿主細胞にポリヌクレオチドを導入するための生物学的手段の例には、DNAおよびRNAベクターの使用が含まれるが、これらに限定されない。
【0212】
一部の実施形態では、リポソームは、本開示のポリヌクレオチドまたはベクターをインビトロ、エクスビボ、またはインビボで宿主細胞に導入するための非ウイルス送達系として使用され得る。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、例えば、リポソームの水性内部にカプセル化され、リポソームの脂質二重層内に散在することによって、リポソームとポリヌクレオチドの両方と会合する連結分子を介してリポソームに付着することによって、リポソームに閉じ込められることによって、リポソームと複合体化されることによって、脂質を含有する溶液中に分散されることによって、脂質と混合されることによって、脂質と組み合わされることによって、脂質中に懸濁液として含有されることによって、ミセルに含有または複合体化されることによって、または別の方法で脂質と会合されることによって、脂質と会合し得る。本明細書に開示されるように、脂質会合ポリヌクレオチドまたはベクター組成物は、溶液中の任意の特定の構造に限定されない。いくつかの実施形態では、かかる組成物は、ミセルとして、または「崩壊した」構造を有する二重層構造中に存在し得る。かかる組成物はまた、溶液中に散在して、サイズまたは形状が均一ではない凝集体を形成し得る。本明細書に開示されるように、脂質は、天然に存在するかまたは合成され得る脂肪性物質である。いくつかの実施形態では、脂質は、細胞質内に天然に存在する脂肪液滴、または長鎖脂肪族炭化水素およびそれらの誘導体、例えば、脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール、およびアルデヒドを含有する化合物のクラスを含むことができる。好適な脂質は、商業的供給源から得られてもよく、ジミリスチルホスファチジルコリン(「DMPC」)、ジセチルホスフェート(「DCP」)、コレステロール、およびジミリスチルホスファチジルグリセロール(「DMPG」)が含まれるが、これらに限定されない。クロロホルムまたはクロロホルム/メタノール中の脂質の保存溶液は、約-20℃で保存することができる。クロロホルムは、メタノールよりも容易に蒸発するため、溶媒として使用される。本明細書で使用される場合、「リポソーム」は、封入された脂質二重層または凝集体の生成によって形成される様々な単一および多層脂質ビヒクルを包含し得る。いくつかの実施形態では、リポソームは、リン脂質二重層膜および内部水性媒体を有する小胞構造を有するものとして特徴付けすることができる。いくつかの実施形態では、多層リポソームは、水性媒体によって分離された複数の脂質層を有し得る。リン脂質を過剰な水溶液中に懸濁させると、多層リポソームが自発的に形成され得る。いくつかの実施形態では、脂質成分は、閉鎖構造の形成前に自己再配列を受けてもよく、脂質二重層間で水および溶解溶質を捕捉することができる。いくつかの実施形態では、脂質は、ミセル構造を想定し得るか、または脂質分子の不均一な凝集体としてのみ存在し得る。
【0213】
一部の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドまたはベクターは、本開示の免疫応答性細胞などの哺乳動物宿主細胞に導入される。一部の実施形態では、宿主細胞における本開示のポリヌクレオチドまたはベクターの存在は、サザンブロットアッセイ、ノーザンブロットアッセイ、RT-PCR、PCR、ELISAアッセイ、およびウエスタンブロットアッセイを含むが、これらに限定されない、当該技術分野において既知の任意の好適なアッセイによって確認され得る。
【0214】
一部の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドまたはベクターは、本開示の免疫応答性細胞に安定的に形質導入される。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドまたはベクターの安定した発現を示す細胞は、形質導入後、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも9ヶ月、または少なくとも12ヶ月、コードされたキメラ受容体を発現する。
【0215】
本開示のキメラ受容体が細胞内で一過性に発現される実施形態では、本開示のキメラ受容体をコードするポリヌクレオチドまたはベクターは、本開示の免疫応答性細胞にトランスフェクトされる。いくつかの実施形態では、免疫応答性細胞は、トランスフェクション後約4日間、約5日間、約6日間、約7日間、約8日間、約9日間、約10日間、約11日間、約12日間、約13日間、約14日間、または約15日間、キメラ受容体を発現する。
【0216】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチド構築物は、バイシストロン性キメラ抗原受容体をコードする。一部の実施形態では、コードされるバイシストロニック性キメラ抗原受容体は、VSIG2 CAR(例えば、VSIG2阻害性CAR)および第二の抗原に特異的なCAR(例えば、腫瘍標的化キメラ受容体)を含む。
【0217】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチド構築物は、二価キメラ抗原受容体をコードする。一部の実施形態では、コードされる二価のキメラ抗原受容体は、VSIG2抗原結合ドメインおよび第二の抗原結合ドメインを含む。
【0218】
医薬組成物および投与
本開示の特定の態様は、本開示の1つ以上のキメラ受容体またはかかる1つ以上のキメラ受容体を発現する本開示の免疫応答性細胞を含む組成物(例えば、薬学的組成物)に関する。一部の実施形態では、キメラ受容体またはかかるキメラ受容体を発現する遺伝子修飾免疫応答性細胞を含む組成物は、骨髄障害などの増殖性障害の治療のために対象に全身的または直接的に提供され得る。特定の実施形態では、組成物は、目的の臓器(例えば、障害によって影響を受ける臓器)に直接的に注入される。代替的に、組成物は、例えば、循環系(例えば、腫瘍脈管系)への投与によって、目的の臓器に間接的に提供され得る。増殖剤および分化剤は、組成物の投与前、投与中、または投与後に提供されて、インビトロまたはインビボでのT細胞、NK細胞、もしくはCTL細胞の産生を増加させることができる。
【0219】
本開示の遺伝子修飾細胞を含む組成物は、任意の生理学的に許容されるビヒクル、例えば、血管内投与され得るが、それらはまた、骨または遺伝子修飾細胞が再生および分化のための適切な部位(例えば、胸腺)を見つけ得る他の好都合な部位に導入され得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1×105個の細胞が投与され得、最終的には1×1010個以上の細胞に到達する。本開示の遺伝子修飾細胞を含む組成物は、精製された細胞集団を含むことができる。細胞集団中の遺伝子修飾細胞の割合を決定するための方法は、当該技術分野で周知であり、蛍光活性化細胞選別(FACS)が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、細胞の集団における遺伝子修飾細胞の純度は、細胞の集団における細胞の約50%、約55%、約60%、または約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約97%、約98%、約99%、またはそれ以上であり得る。投薬量は、当業者によって容易に調整することができる(例えば、純度の低下は、投薬量の増加を必要とし得る)。細胞は、注射、カテーテルなどによって導入され得る。いくつかの実施形態では、因子は、例えば、IL-2、IL-3、IL-6、IL-11、IL-7、IL-12、IL-15、IL-21、G-CSF、MCSF、GM-CSF、ガンマインターフェロン、およびエリスロポエチンも含むことができる。
【0220】
ある特定の実施形態では、組成物は、免疫応答性細胞またはその前駆細胞などの、遺伝子修飾された細胞および薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物である。投与は、自家または異種であり得る。例えば、免疫応答性細胞または前駆体は、一つの対象から得ることができ、同じ対象または異なる適合性の対象に投与することができる。一部の実施形態では、本開示の免疫応答性細胞またはその子孫は、抹消血液細胞由来(例えば、インビボ、エクスビボ、またはインビトロ由来)であってもよく、カテーテル投与、全身注射、局所注射、静脈注射、または非経口投与を含む局所注射によって投与することができる。本開示の治療用組成物(例えば、本開示の遺伝子組修飾細胞を含む医薬組成物)を投与する場合、一般に、単位用量の注入可能な形態(溶液、懸濁液、乳剤)で製剤化される。
【0221】
製剤
本開示の特定の態様は、本開示のキメラ受容体、またはかかるキメラ受容体を発現する遺伝子修飾細胞(例えば、本開示の免疫応答性細胞)を含む組成物の製剤に関する。いくつかの実施形態では、遺伝子改変細胞を含む本開示の組成物は、選択されたpHに緩衝され得る等張性水溶液、懸濁液、乳剤、分散液、および粘性組成物が含まれるが、これらに限定されない滅菌液体調製物として提供されてもよい。液体調製物は、典型的には、ゲル、他の粘性組成物、および固体組成物よりも調製が容易である。追加的に、液体組成物は、特に注入によって、より便利に投与することができる。いくつかの実施形態では、粘性組成物は、特定の組織とのより長い接触期間を提供するために、適切な粘度範囲内で製剤化され得る。液体または粘性組成物は、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)およびそれらの好適な混合物を含む溶媒または分散媒体であり得る担体を含み得る。
【0222】
いくつかの実施形態では、滅菌注入可能溶液は、本開示の遺伝子改変細胞を、所望の様々な量の任意の他の成分とともに、十分な量の適切な溶媒に組み込むことによって調製することができる。かかる組成物は、滅菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロースなどの好適な担体、希釈剤、または賦形剤と混合され得る。いくつかの実施形態では、組成物はまた、凍結乾燥され得る。組成物は、投与経路および所望の調製物に応じて、湿潤剤、分散剤、pH緩衝剤、および抗菌剤などの補助物質を含むことができる。
【0223】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、組成物の安定性および滅菌性を増強し得る様々な添加剤をさらに含み得る。かかる添加剤の例には、抗菌防腐剤、抗酸化剤、キレート剤、および緩衝液が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、微生物汚染は、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などを含むがこれらに限定されない様々な抗菌剤および抗真菌剤のいずれかを含めることによって防止することができる。本開示の注入可能な製剤の長期吸収は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅延させる好適な薬剤の使用によってもたらすことができる。
【0224】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、等張性、すなわち、血液および涙液と同じ浸透圧を有することができる。いくつかの実施形態では、所望の等張性は、例えば、塩化ナトリウム、デキストロース、ホウ酸、酒石酸ナトリウム、プロピレングリコール、または他の無機もしくは有機溶質を使用して達成され得る。
【0225】
いくつかの実施形態では、本開示の製剤の成分は、化学的に不活性であり、かつ本開示の遺伝子改変細胞の生存率または有効性に影響を及ぼさないように選択される。
【0226】
本開示の遺伝子改変細胞の治療的使用に関する一つの考慮事項は、最適な有効性を達成するために必要な細胞の量である。いくつかの実施形態では、投与される細胞の量は、治療される対象によって変化する。特定の実施形態では、遺伝子修飾細胞の、それを必要とする対象に投与される量は、1×104個の細胞~1×1010個の細胞の範囲であり得る。一部の実施形態では、有効用量とみなされる細胞の正確な量は、特定の対象のサイズ、年齢、性別、体重、および状態を含む、各対象に対する個々の因子に基づいてもよい。投与量は本開示および技術的知識に基づいて当業者によって容易に確認することができる。
【0227】
異種性部分および修飾
さらなる一連の実施形態では、本明細書のVSIG2特異的タンパク質(例えば、表Aに列挙されたアミノ酸配列のうちの一つまたは複数を有する抗原結合ドメインを含むVSIG2特異的キメラタンパク質)は、追加の部分および/または修飾を含む。
【0228】
薬物コンジュゲート
様々な実施形態では、VSIG2特異的キメラタンパク質は、治療剤(すなわち、薬物)にコンジュゲートして抗体-薬物コンジュゲートを形成する、表Aに列挙されるアミノ酸配列のうちの一つ以上を有する抗原結合ドメインを含む。治療剤としては、化学療法剤、造影剤(例えば、ラジオアイソトープ)、免疫調節物質(例えば、サイトカイン、ケモカイン、またはチェックポイント阻害剤)、および毒素(例えば、細胞毒性剤)が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、治療剤は、本明細書でより詳細に論じる通り、リンカーペプチドを介して抗原結合ドメインに結合される。
【0229】
本明細書に開示される抗原結合ドメイン(例えば、表Aに列挙されたアミノ酸配列のうちの一つまたは複数を有する)に薬物をコンジュゲートするように適合することができる抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を調製する方法は、例えば、米国特許第8,624,003号(ポット法)、米国特許第8,163,888号(一工程)、米国特許第5,208,020号(二工程の方法)、米国特許第8,337,856号、米国特許第5,773,001号、米国特許第7,829,531号、米国特許第5,208,020号、米国特許第7,745,394号、国際公開第2017/136623号、国際公開第2017/015502号、国際公開第2017/015496号、国際公開第2017/015495号、国際公開第2004/010957号、国際公開第2005/077090号、国際公開第2005/082023号、国際公開第2006/065533号、国際公開第2007/030642号、国際公開第2007/103288号、国際公開第2013/173337号、国際公開第2015/057699号、国際公開第2015/095755号、国際公開第2015/123679号、国際公開第2015/157286号、国際公開第2017/165851号、国際公開第2009/073445号、国際公開第2010/068759号、国際公開第2010/138719号、国際公開第2012/171020号、国際公開第2014/008375号、国際公開第2014/093394号、国際公開第2014/093640号、国際公開第2014/160360号、国際公開第2015/054659号、国際公開第2015/195925号、国際公開第2017/160754号、Storz (MAbs. 2015 November-December; 7(6): 989-1009)、Lambert et al. (Adv Ther,2017 34: 1015). Diamantis et al. (British Journal of Cancer,2016, 114, 362-367)、Carrico et al. (Nat Chem Biol,2007. 3: 321-2)、We et al. (Proc Natl Acad Sci USA,2009. 106: 3000-5)、Rabuka et al. (Curr Opin Chem Biol.,2011 14: 790-6)、Hudak et al. (Angew Chem Int Ed Engl.,2012: 4161-5)、Rabuka et al. (Nat Protoc.,2012 7:1052-67)、Agarwal et al. (Proc Natl Acad Sci USA.,2013, 110: 46-51)、Agarwal et al. (Bioconjugate Chem.,2013, 24: 846-851)、Barfield et al. (Drug Dev. and D.,2014, 14:34-41)、Drake et al. (Bioconjugate Chem.,2014, 25:1331-41)、Liang et al. (J Am Chem Soc.,2014, 136:10850-3)、Drake et al. (Curr Opin Chem Biol.,2015, 28:174-80)、およびYork et al. (BMC Biotechnology,2016, 16(1):23)に記載され、そのそれぞれが、その教示のすべてについて、参照によりその全体が本明細書に取り込まれる。
【0230】
さらなる結合部分
様々な実施形態では、VSIG2特異的キメラタンパク質は、表Aに列挙されたアミノ酸配列のうちの一つまたは複数を有する抗原結合ドメインおよび一つまたは複数のさらなる結合部分を含む。ある特定の実施形態では、結合部分は、非限定的に、全長抗体、Fab断片、Fv、scFv、タンデムscFv、ディアボディ、scディアボディ、DART、tandAb、ミニボディ、ラクダVHH、および当業者に公知の他の抗体断片またはフォーマットを含む、抗体断片または抗体フォーマットである。例示的な抗体および抗体断片フォーマットは、Brinkmann et al. (MABS,2017, Vol. 9, No. 2, 182-212)に詳細に記載され、その教示のすべてについて、参照により本明細書に取り込まれる。
【0231】
特定の実施形態では、一つまたは複数のさらなる結合部分は、VHおよび/もしくはVL、Fab重鎖および/もしくは軽鎖断片、またはscFvなどの、VSIG2特異的抗原結合ドメインの一つまたは複数のペプチドのC末端に結合される。特定の実施形態では、一つまたは複数のさらなる結合部分は、VHおよび/もしくはVL、Fab重鎖および/もしくは軽鎖断片、またはscFvなどの、VSIG2特異的抗原結合ドメインの一つまたは複数のペプチドのN末端に結合される。
【0232】
ある特定の実施形態では、一つまたは複数のさらなる結合部分は、VSIG2と異なる抗原またはエピトープに特異的である。ある特定の実施形態では、一つまたは複数のさらなる結合部分は、VSIG2に特異的である。
【0233】
ある特定の実施形態では、一つまたは複数のさらなる結合部分は、非限定的に、反応性化学(例えば、クリック化学)および親和性タグ付けシステムを含むインビトロの方法を使用して、本明細書に記載される抗原結合ドメイン(例えば、表Aに列挙されたアミノ酸配列のうちの一つまたは複数を有する)に結合される。ある特定の実施形態では、一つまたは複数のさらなる結合部分は、Fc介在性結合(例えば、タンパク質A/G)を介して本明細書に記載される抗原結合ドメイン(例えば、表Aに列挙されたアミノ酸配列のうちの一つまたは複数を有する)に結合される。ある特定の実施形態では、一つまたは複数のさらなる結合部分は、本明細書に記載される抗原結合ドメインと同じ発現ベクター(例えば、プラスミド)のさらなる結合部分の間の融合生成物のヌクレオチド配列をコードすることなどの、組換えDNA技術を使用して、本明細書に記載される抗原結合ドメイン(例えば、表Aに列挙されたアミノ酸配列のうちの一つまたは複数を有する)に結合される。
【0234】
官能基/反応基
様々な実施形態では、本明細書に記載される抗原結合ドメイン(例えば、表Aに列挙されたアミノ酸配列のうちの一つまたは複数を有する)は、さらなる部分(例えば、薬物コンジュゲートおよびさらなる結合部分)に結合することなどの、下流のプロセスならびに下流の精製プロセスにおいて使用することができる官能基または化学反応基を有する。
【0235】
ある特定の実施形態では、修飾は、非限定的に、反応性チオール(例えば、マレイミドベースの反応基)、反応性アミン(例えば、N-ヒドロキシスクシンイミドベースの反応基)、「クリック化学」基(例えば、反応性アルキン基)、およびホルミルグリシン(FGly)を生じるアルデヒドを含む、化学反応基である。ある特定の実施形態では、修飾は、非限定的に、親和性ペプチド配列(例えば、HA、HIS、FLAG、GST、MBP、およびストレプトシステムなど)を含む官能基である。ある特定の実施形態では、官能基または化学反応基は、切断可能なペプチド配列を有する。特定の実施形態では、切断可能なペプチドは、非限定的に、光切断、化学切断、プロテアーゼ切断、還元条件、およびpH条件を含む手段によって切断される。特定の実施形態では、プロテアーゼ切断は、細胞内プロテアーゼによって行われる。特定の実施形態では、プロテアーゼ切断は、細胞外または膜結合プロテアーゼによって行われる。プロテアーゼ切断を用いるADC療法は、Choi et al. (Theranostics,2012; 2(2): 156-178.)により詳細に記載され、その教示のすべてについて、参照により本明細書に取り込まれる。
【0236】
治療方法
本開示のある特定の態様は、キメラ受容体を必要とする対象を治療するために、かかるキメラ受容体を発現する本開示のキメラ受容体および遺伝子修飾細胞(例えば、免疫応答性細胞)を使用する方法に関する。一部の実施形態では、本開示の方法は、固形腫瘍などの対象におけるがんを治療するのに有用である。一部の実施形態では、固形腫瘍は、結腸直腸がん、膵臓がん、肺がん、および/または胃がんから選択される。いくつかの実施形態では、固形腫瘍は、結腸直腸がんである。一部の実施形態では、結腸直腸がんは、結腸直腸癌腫である。一部の実施形態では、固形腫瘍は、肺がんである。一部の実施形態では、肺がんは、肺腺がんである。本開示の他の態様は、免疫不全のヒト対象などの対象における病原体感染または他の感染性疾患を治療するための方法において、かかるキメラ受容体を発現する本開示のキメラ受容体および遺伝子修飾細胞(例えば、免疫応答性細胞)の使用に関する。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、既存の状態の緩和、状態の予防、既存の状態の治療、既存の状態の管理、または状態の再発もしくは再発の予防を含むが、これらに限定されない、所望の効果を達成するのに有効な量で、本開示の遺伝子修飾細胞を投与することを含み得る。いくつかの実施形態では、有効量は、本開示の遺伝子修飾細胞(例えば、免疫応答性細胞)の一回または一連の投与において提供され得る。いくつかの実施形態では、有効量は、ボーラスまたは連続灌流によって提供され得る。
【0237】
本明細書に開示されるように、「有効量」または「治療有効量」は、治療時に有益または所望の臨床結果に影響を及ぼすのに十分な量である。有効量は、一回以上の用量で対象に投与することができる。治療に関して、有効量は、疾患の進行を緩和する、改善する、安定させる、逆転させる、または遅延させる、または疾患の病理学的帰結を低減するのに十分な量である。有効量は、概して、ケースバイケースで医師によって決定され、当業者の技能の範囲内である。有効量を達成するための適切な投薬量を決定する際に、典型的にはいくつかの要因が考慮される。これらの要因には、対象の年齢、性別および体重、治療される状態、状態の重症度、ならびに投与される免疫応答性細胞の形態および有効濃度が含まれる。
【0238】
抗原特異的細胞(例えば、T細胞またはNK細胞などの免疫応答性細胞)を使用する養子免疫療法の場合、約1×105~1×1010個の細胞/kg(例えば、約1×109個の細胞)の範囲の細胞用量が通常注入される。対象への細胞の投与およびその後の分化の際に、免疫応答性細胞が、特定の抗原に対して特異的に向けられるように誘導される。いくつかの実施形態では、免疫応答性細胞の誘導には、欠失またはアネルギーなどによる抗原特異的細胞の不活性化が含まれ得るが、これらに限定されない。不活性化は、自己免疫障害などで耐容性を確立または再確立するために特に有用である。遺伝子修飾細胞は、静脈内、皮下、結節内、腫瘍内、髄腔内、胸膜内、腹腔内、および胸腺へ直接を含むがこれらに限定されない、当該技術分野において既知の任意の方法によって投与され得る。
【0239】
治療処置
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、それを必要とする対象における免疫応答を増加させる。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、対象における骨髄障害を治療および/または予防するための方法を含む。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。いくつかの実施形態では、治療に好適なヒト対象は、臨床基準によって区別され得る2つの治療群を含み得る。「進行性疾患」または「高い腫瘍負荷」を有する対象は、臨床的に測定可能な腫瘍を有する対象である。臨床的に測定可能な腫瘍は、腫瘍質量に基づいて(例えば、触診、CATスキャン、超音波検査、マンモグラム、またはX線による白血病細胞の割合に基づく;陽性の生化学的または組織病理学的マーカーは、それ自体ではこの集団を特定するには不十分である)検出され得る腫瘍である。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、それらの状態を緩和する目的で、抗腫瘍応答を誘発するためにこれらの対象に投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍量の低減は、医薬組成物の投与の結果として生じるが、任意の臨床的改善は、利益を構成するであろう。いくつかの実施形態では、臨床的改善には、腫瘍の病理学的結果におけるリスクの減少または進行速度の低減が含まれる。いくつかの実施形態では、好適なヒト対象の第二の群は、「アジュバント群」対象である。これらの対象は、骨髄障害の既往歴があるが、別の治療法に応答している個体である。以前の療法には、外科的切除、放射線療法、および/または従来の化学療法が含まれ得るが、これらに限定されない。その結果、これらの個体は、臨床的に測定可能な腫瘍を有しない。しかしながら、それらは、元の腫瘍部位の近くで、または転移によって、疾患の進行のリスクにあると疑われる。いくつかの実施形態では、この群は、高リスクおよび低リスク個体に更に細分することができる。細分化は、初期処置の前または後に観察される特徴に基づいて行うことができる。これらの特徴は、臨床技術において既知であり、異なる骨髄疾患ごとに好適に定義される。高リスクサブグループの典型的な特徴は、腫瘍が隣接組織に浸潤した、またはリンパ節の関与を示すものである。
【0240】
本明細書に記載の免疫応答の増加の任意の態様およびすべての態様では、特徴または機能の態様の任意の増加もしくは減少または変化は、本明細書に記載の免疫応答性細胞と接触していない細胞と比較される。
【0241】
免疫応答の増加は、免疫応答の増強または免疫応答の誘導の両方であり得る。例えば、免疫応答を増加することは、免疫応答の始動もしくは開始、または進行中の免疫応答もしくは既存の免疫応答の増加もしくは増幅の両方を包含する。いくつかの実施形態では、治療は、免疫応答を誘導する。いくつかの実施形態では、誘導免疫応答は、適応免疫応答である。いくつかの実施形態では、誘導免疫応答は、自然免疫応答である。いくつかの実施形態では、治療は、免疫応答を増強する。いくつかの実施形態では、増強免疫応答は、適応免疫応答である。いくつかの実施形態では、増強免疫応答は、自然免疫応答である。いくつかの実施形態では、治療は、免疫応答を増加する。いくつかの実施形態では、増加免疫応答は、適応免疫応答である。いくつかの実施形態では、増加免疫応答は、自然免疫応答である。
【0242】
一部の実施形態では、さらなる対象群は、悪性疾患に対する遺伝的素因を有するが、悪性疾患の臨床徴候をまだ証明していない対象である。例えば、悪性疾患に関連する遺伝子変異の陽性を検出したが、依然として出産可能年齢の女性は、化学療法、放射線ベースの療法、および/または予防的手術を実施するのに好適になるまで、悪性疾患の発生を予防するための予防的治療において、本開示の一つ以上の細胞(例えば、免疫応答性細胞)を受け取ることから利益を得ることができる。いくつかの実施形態では、対象は、疾患の進行形態を有し得、その場合、治療目標は、疾患の進行の緩和もしくは逆転、および/または副作用の改善を含み得る。いくつかの実施形態では、対象は、それらが既に治療されている状態の既往歴を有し得、その場合、治療目的は典型的には、再発のリスクの減少または遅延を含み得る。
【0243】
併用療法
いくつかの実施形態では、本開示の1つ以上のキメラ受容体を発現する本開示の遺伝子修飾細胞(例えば、免疫応答性細胞)は、他の既知の薬剤および療法と組み合わせて使用され得る。いくつかの実施形態では、本開示の併用療法は、一つ以上の追加の治療薬と組み合わせて投与され得る、本開示の遺伝子修飾細胞を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子組み換え細胞および一つ以上の追加の治療剤は、同時に、同じもしくは別個の組成物で、または連続的に投与され得る。連続投与について、遺伝子修飾物質が最初に投与され得、一つ以上の追加の薬剤が二回目に投与され得るか、または投与順序を逆にすることができる。いくつかの実施形態では、遺伝子修飾細胞は、一つ以上の追加の治療剤を発現するようにさらに改変される。
【0244】
いくつかの実施形態では、本開示の遺伝子修飾細胞は、手術、化学療法、放射線、免疫抑制剤(例えば、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキセート、マイコフェノレート、およびFK506)、抗体、または他の免疫抑制剤(例えば、CAMPATHまたは抗CD3抗体)、サイトキシン、フルダラブメ、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228、サイトカイン、照射法、およびペプチドワクチンと組み合わせて、治療レジメンで使用され得る。
【0245】
いくつかの実施形態では、本開示の遺伝子修飾細胞は、リンパ枯渇剤と組み合わせて使用され得る。好適なリンパ枯渇剤は、免疫療法の前に、リンパ球、例えば、B細胞リンパ球および/またはT細胞リンパ球を低減または減少させる。好適なリンパ枯渇剤の例には、フルダラビン、シクロホスファミド、コルチコステロイド、アレムツズマブ、全身照射(TBI)、およびそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0246】
いくつかの実施形態では、本開示の遺伝子修飾細胞は、化学療法剤と組み合わせて使用され得る。好適な化学療法剤には、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン)、ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン)、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、デカルバジン、メルファラン、イホスファミド、テモゾロミド)、免疫細胞抗体(例えば、アレムツザマブ、ゲムツズマブ、リツキシマブ、トシツモマブ)、代謝拮抗剤(例えば、葉酸拮抗剤、ピリミジン類似体、プリン類似体、およびアデノシンデアミナーゼ阻害剤、例えば、フルダラビン)、mTOR阻害剤、TNFRグルココルチコイド誘導性TNFR関連タンパク質(GITR)アゴニスト、プロテアソーム阻害剤(例えば、アクラルビシンA、グリオトキシン、ボルテゾミブ)、免疫誘導体、例えば、サリドマイドまたはサリドマイド誘導体(例えば、レナリドマイド)などが含まれるが、これらに限定されない。
【0247】
併用療法での使用に好適な一般的な化学療法剤の例には、アナストロゾール(アリミデックス(登録商標))、ビカルタミド(カソデックス(登録商標))、ブレオマイシンスルフェート(ブレオマイシン(登録商標))、ブスルファン(ミレラン(登録商標))、ブスルファン注入(ブスルフェクス(登録商標))、カペシタビン(ゼローダ(登録商標))、N4-ペントキシカルボニル-5-デオキシ-5-フルオロシチジン、カルボプラチン(パラプラチン(登録商標))、カルムスチン(BiCNU(登録商標))、クロラムブシル(ロイケラン(登録商標))、シスプラチン(ピアチノール(登録商標))、クラドリビン(ロイスタチン(登録商標))、シクロホスファミド(シトキサン(登録商標)またはネオサル(登録商標))、シタラビン、シトシンアラビノシド(シトサール-U(登録商標))、シタラビンリポソーム注入(デポサイト(登録商標))、ダカルバジン(DTIC-ドーム(登録商標))、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD、コスメガン)、塩酸ダウノルビシン(セルビジン(登録商標))、ダウノルビシンシトラートリポソーム注入(ダウノゾム(登録商標))、デキサメタゾン、ドセタキセル(タキソテール(登録商標))、塩酸ドキソルビシン(アドリアマイシン(登録商標)、ルベックス(登録商標))、エトポシド(ベプシド(登録商標))、リン酸フルダラビン(フルダラ(登録商標))、5-フルオロウラシル(アドルシル(登録商標)、エフデックス(登録商標))、フルタミド(ユーレクシン(登録商標))、テザシチビン、ゲムシタビン(ジフルオロデオキシシチジン)、ヒドロキシ尿素(ハイドレア(登録商標))、イダルビシン(イダニシン(登録商標))、イホスファミド(IFEX(登録商標))、イリノテカン(カンプトサル(登録商標))、L-アスパラギナーゼ(ELSPAR(登録商標))、ロイコボリンカルシウム、メルファラン(アルケラン(登録商標))、6-メルカプトプリン(プリントール(登録商標))、メトトレキサート(フォレックス(登録商標))、ミトキサントロン(ノバントロン(登録商標))、マイロターグ、パクリタキセル(タキソール(登録商標))、フェニックス(Yttrium90/MX-DTPA)、ペントスタチン、カルムスチンインプラントを含むポリフェプロサン20(ギリアデル(登録商標))、クエン酸タモキシフェン(ノルバデックス(登録商標))、テニポシド(ブモン(登録商標))、6-チオグアニン、チオテパ、チラパザミン(チラゾン(登録商標))、注入用トポテカン塩酸塩(ハイカンプチン(登録商標))、ビンブラスチン(ベルボン(登録商標))、ビンクリスチン(オンコビン(登録商標))、およびビノレルビン(ナベルビン(登録商標))が含まれるが、これらに限定されない。
【0248】
適当なアルキル化剤の例としては、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、ニトロソウレアおよびトリアゼン):ウラシルマスタード(アミノウラシルマスタード(登録商標)、Chlorethaminacil(登録商標)、Demethyldopan(登録商標)、Desmethyldopan(登録商標)、Haemanthamine(登録商標)、Nordopan(登録商標)、ウラシルナイトロジェンマスタード(登録商標)、Uracilmostaza(登録商標)、Uramustin(登録商標)、Uramustine(登録商標))、クロルメチン(Mustargen(登録商標))、シクロホスファミド(Cytoxan(登録商標)、Neosar(登録商標)、Clafen(登録商標)、Endoxan(登録商標)、Procytox(登録商標)、Rev immune(商標))、イホスファミド(Mitoxana(登録商標))、メルファラン(Alkeran(登録商標))、クロラムブチル(Leukeran(登録商標))、ピポブロマン(Amedel(登録商標)、Vercyte(登録商標))、トリエチレンメラミン(Hemel(登録商標)、Hexalen(登録商標)、Hexastat(登録商標))、トリエチレンチオホスホラミン、テモゾロミド(Temodar(登録商標))、チオテパ(Thioplex(登録商標))、ブスルファン(Busilvex(登録商標)、Myleran(登録商標))、カルムスチン(BiCNU(登録商標))、ロムスチン(CeeNU(登録商標))、ストレプトゾシン(Zanosar(登録商標))、およびダカルバジン(DTIC-Dome(登録商標))が挙げられるが、これらに限定されない。追加の例示的なアルキル化剤の例には、オキサリプラチン(Eloxatin(登録商標))、テモゾロミド(Temodar(登録商標)およびTemodal(登録商標))、ダクチノマイシン(アクチノマイシンDとしても知られる、Cosmegen(登録商標))、メルファラン(L-PAM, L-サルコリシン、およびフェニルアラニンマスターとしても知られる、Alkeran(登録商標))、アルトレタミン(ヘキサメチルメラミン(HMM)としても知られる、Hexalen(登録商標))、カルムスチン(BiCNU(登録商標))、ベンダムスチン(Treanda(登録商標))、ブスルファン(Busulfex(登録商標)およびMyleran(登録商標))、カルボプラチン(Paraplatin(登録商標))、ロムスチン(CCNUとしても知られる、CeeNU(登録商標))、シスプラチン(CDDPとしても知られる、Platinol(登録商標)およびPlatinol(登録商標)-AQ)、クロラムブシル(Leukeran(登録商標))、シクロホスファミド(Cytoxan(登録商標)およびNeosar(登録商標))、ダカルバジン(DTIC、DICおよびイミダゾールカルボキサミドとしても知られる、DTIC-Dome(登録商標))、アイトレタミン(Aitretamine)(ヘキサメチルメラミン(HMM)としても知られる、Hexalen(登録商標))、イホスファミド(Ifex(登録商標))、プレドヌムスチン(Prednumustine)、プロカルバジン(Matulane(登録商標))、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード、ムスチン、および塩酸メクロレタミンとしても知られる、Mustargen(登録商標))、ストレプトゾシン(Zanosar(登録商標))、チオテパ(チオホスホアミド(thiophosphoamide)、TESPAおよびTSPAとしても知られる、Thioplex(登録商標))、シクロホスファミド(Endoxan(登録商標)、Cytoxan(登録商標)、Neosar(登録商標)、Procytox(登録商標)、Revimmune(登録商標))、およびベンダムスチンHC1(Treanda(登録商標))が含まれるが、これらに限定されない。
【0249】
好適なmTOR阻害剤の例には、テムシロリムス、リダフォロリムス(デフェロリムス)、AP23573、MK8669、エベロリムス(Afimtor(登録商標)またはRAD001)、ラパマイシン(AY22989、シロルミウス(登録商標))、およびXL765が含まれるが、これらに限定されない。
【0250】
好適な免疫調節剤の例には、アフツズマブ、ペグフィルグラスチム(ニューラスタ(Neulasta)(登録商標))、レナリドマイド(CC-5013、レブリミド(登録商標))、サリドマイド(サロミド(登録商標))、アクチミド(CC4047)、およびIRX-2が含まれるが、これらに限定されない。
【0251】
好適なアントラサイクリンの例には、ドキソルビシン(アドリアマイシン(登録商標)およびルベックス(Rubex)(登録商標))、ブレオマイシン(レノキサン(lenoxane)(登録商標))、ダウノルビシン(ダウオルビシンハイドロクロライド、ダウノマイエム、およびルビドマイシンハイドロクロライド、セルビジン(Cerubidine)(登録商標))、ダウノルビシンリポソーム(ダウノルビシンクエン酸リポソーム、DaunoXome(登録商標))、ミトキサントロン(DHAD、ノバントロン(登録商標))、エピルビシン(エレンス(Ellence)(商標))、イダルビシン(イダマイシン(登録商標)、イダマイシンPES(登録商標)、マイトマイシンC(ムタマイシン(Mutamycin)(登録商標))、ゲルダナマイシン、ハービマイシン、ラビドマイシン、およびデサセトラマイシンが含まれるが、これらに限定されない。
【0252】
好適なビンカアルカロイドの例としては、限定されるものではないが、ビノレルビン酒石酸塩(Navelbine(登録商標))、ビンクリスチン(Oncovin(登録商標))、およびビンデシン(エルジシン(登録商標))、ビンブラスチン(ビンブラスチン硫酸塩、ビンカルウコブラスチンおよびVLB、アルカバン-AQ(登録商標)およびベルバン(登録商標)としても知られる)、ならびにビノレルビン(Navelbme(登録商標))が挙げられる。
【0253】
好適なプロテオソーム阻害剤の例としては、ボルテゾミブ(ベルケイド(登録商標))、カルフィルゾミブ、マリゾミブ(NPI-0052)、イキサゾミブクエン酸エステル(MLN-9708)、デランゾミブ(CEP-18770)、およびONX-0912が含まれるが、これらに限定されない。
【0254】
いくつかの実施形態では、本開示の遺伝子修飾細胞は、CD20阻害剤、例えば、抗CD20抗体、またはその断片と組み合わせて投与される。例示的な抗CD20抗体には、リツキシマブ、オファツムマブ、オクレリズマブ、ベルツズマブ、オビヌツズマブ、TRU-015(Trubion Pharmaceuticals)、オカラツズマブ、およびProl31921が含まれるが、これらに限定されない。
【0255】
いくつかの実施形態では、本開示の遺伝子修飾細胞は、腫瘍溶解性ウイルスと組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、がん細胞において選択的に複製し、がん細胞の死を誘発するか、または増殖を遅延させることができる。いくつかの事例では、腫瘍溶解性ウイルスは、非がん細胞に対して効果を有さないか、または最小限の効果を有する。好適な腫瘍溶解性ウイルスとしては、腫瘍溶解性アデノウイルス、腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス、腫瘍溶解性レトロウイルス、腫瘍溶解性パルボウイルス、腫瘍溶解性ワクシニアウイルス、腫瘍溶解性シンドビスウイルス、腫瘍溶解性インフルエンザウイルス、または腫瘍溶解性RNAウイルス(例えば、腫瘍溶解性レオウイルス、腫瘍溶解性ニューカッスル病ウイルス(NDV)、腫瘍溶解性麻疹ウイルス、または腫瘍溶解性水疱性口内炎ウイルス(VSV))が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、組換え腫瘍溶解性ウイルスである。
【0256】
いくつかの実施形態では、本開示の遺伝子修飾細胞は、タンパク質チロシンホスファターゼ阻害剤、例えば、SHP-1阻害剤またはSHP-2阻害剤と組み合わせて対象に投与される。一実施形態では、本開示の遺伝子修飾細胞は、キナーゼ阻害剤と組み合わせて使用することができる。好適なキナーゼ阻害剤の例には、CDK4阻害剤、CDK4/6阻害剤、BTK阻害剤、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)阻害剤、mTOR阻害剤、MNK阻害剤、および未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)阻害剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0257】
いくつかの実施形態では、本開示の遺伝子修飾細胞は、骨髄由来抑制細胞(MDSC)の調節因子と組み合わせて対象に投与される。MDSCは、多くの固形腫瘍の末梢および腫瘍部位に蓄積する。これらの細胞は、T細胞応答を抑制し、それによってキメラ受容体発現細胞療法の有効性を妨げる。理論に拘束されるものではないが、MDSC調節物質の投与は、本開示の遺伝子修飾細胞の有効性を増強すると考えられる。MDSCの好適な調節因子の例には、MCS110およびBLZ945が含まれるが、これらに限定されない。
【0258】
いくつかの実施形態では、本開示の遺伝子修飾細胞は、免疫抑制性形質細胞の活性を阻害または低減する薬剤と組み合わせて対象に投与される。免疫抑制性形質細胞は、T細胞依存性免疫原性化学療法、例えば、オキサリプラチンを阻害することが示されている(Shalapour et al., Nature 2015, 521 :94- 101)。一実施形態では、免疫抑制性形質細胞は、IgA、インターロイキン(IL)-10、およびPD-L1のうちの一つ以上を発現することができる。
【0259】
いくつかの実施形態では、本開示の遺伝子修飾細胞は、インターロイキン-15(IL-15)ポリペプチド、インターロイキン-15受容体アルファ(IL-15Ra)ポリペプチド、またはIL-15ポリペプチドおよびIL-15Raポリペプチドの両方の組み合わせと組み合わせて対象に投与される。いくつかの実施形態では、本開示の遺伝子修飾細胞は、インターロイキン-15(IL-15)ポリペプチド、インターロイキン-15受容体アルファ(IL-15Ra)ポリペプチド、またはIL-15ポリペプチドおよびIL-15Raポリペプチドの両方の組み合わせを発現するようにさらに修飾される。
【0260】
いくつかの実施形態では、悪性腫瘍(例えば、固形腫瘍)を有する対象は、薬剤、例えば、細胞傷害性剤もしくは化学療法剤、生物学的療法(例えば、抗体、例えば、モノクローナル抗体、または細胞療法)、または阻害剤(例えば、キナーゼ阻害剤)と組み合わせて、本開示の遺伝子修飾細胞を投与される。いくつかの実施形態では、対象は、細胞傷害性薬剤、例えば、CPX-351(Celator Pharmaceuticals)、シタラビン、ダウノルビシン、ボサロキシン(Sunesis Pharmaceuticals)、サパシタビン(Cyclacel Pharmaceuticals)、イダルビシン、またはミトキサントロンと組み合わせて、本開示の遺伝子修飾細胞を投与される。CPX-351は、シタラビンおよびダウノルビシンを5:1のモル比で含むリポソーム製剤である。いくつかの実施形態では、対象は、低メチル化剤、例えば、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤、例えば、アザシチジンまたはデシタビンと組み合わせて、本明細書に記載のキメラ受容体発現細胞を投与される。いくつかの実施形態では、対象は、生物学的療法、例えば、抗体または細胞療法、例えば、225Ac-リンツズマブ(アクチマブ(Actimab)-A;Actinium Pharmaceuticals)、IPH2102(Innate Pharma/Bristol Myers Squibb)、SGN-CD33A(Seattle Genetics)、またはゲムツズマブオゾガマイシン(マイロターグ;Pfizer)と組み合わせて、本開示の遺伝子修飾細胞を投与される。いくつかの実施形態では、対象は、FLT3阻害剤、例えば、ソラフェニブ(Bayer)、ミドスタウリン(Novartis)、キザルチニブ(Daiichi Sankyo)、クレノラニブ(Arog Pharmaceuticals)、PLX3397(Daiichi Sankyo)、AKN-028(Akinion Pharmaceuticals)、ASP2215(Astelias)と組み合わせて、本開示の遺伝子修飾細胞を投与される。いくつかの実施形態では、対象は、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)阻害剤、例えば、AG-221(Celgene/Agios)またはAG-120(Agios/Celgene)と組み合わせて、本開示の遺伝子修飾細胞を投与される。いくつかの実施形態では、対象は、細胞周期調節因子、例えば、ポロ様キナーゼ1(Plkl)、例えば、ボラセルチブ(Boehringer Ingelheim)、またはサイクリン依存性キナーゼ9(Cdk9)の阻害剤、例えば、アルボシジブ(Tolero Pharmaceuticals/Sanofi Aventis)の阻害剤と組み合わせて、本開示の遺伝子修飾細胞を投与される。いくつかの実施形態では、対象は、B細胞受容体シグナル伝達ネットワーク阻害剤、例えば、B細胞リンパ腫2(Bcl-2)の阻害剤、例えば、ベネトクラクス(Abbvie/Roche)、またはブルトン型チロシンキナーゼ(Btk)の阻害剤、例えば、イブルチニブ(Pharmacyclics/Johnson & Johnson Janssen Pharmaceutical)と組み合わせて、本開示の遺伝子修飾細胞を投与される。いくつかの実施形態では、対象は、M1アミノペプチダーゼの阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)の阻害剤、例えば、プラシノスタット(MEI Pharma)、マルチキナーゼ阻害剤、例えば、リゴセルチブ(Onconova Therapeutics/Baxter/SymBio)、またはペプチド性CXCR4逆アゴニスト、例えば、BL-8040(BioLineRx)と組み合わせて、本開示の遺伝子修飾細胞を投与される。
【0261】
いくつかの実施形態では、対象は、本開示の遺伝子修飾細胞の活性または適合性を増強する薬剤を投与され得る。例えば、薬剤は、免疫細胞(例えば、T細胞またはNK細胞)の機能を調節または制御する分子を阻害し得る。いくつかの実施形態では、免疫細胞機能を調節または制御する分子は、阻害分子である。いくつかの実施形態では、プログラム死1(PD-1)などの阻害分子は、免疫エフェクター応答を開始する遺伝子修飾細胞の能力を低下させることができる。好適な阻害分子の例には、PD-1、PD-L1、CTLA4、TIM3、CEACAM(例えば、CEACAM-1、CEACAM-3、CEACAM-5)、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4、CD80、CD86、B7-H3(CD276)、B7-H4(VTCN1)、HVEM(TNFRSF14またはCD270)、KIR、A2aR、MHCクラスI、MHCクラスII、GAL9、アデノシン、およびTGFベータが含まれるが、これらに限定されない。例えば、DNA、RNAまたはタンパク質レベルでの阻害によって、免疫細胞機能を調節または制御する、例えば、阻害する分子の阻害は、本開示の遺伝子修飾細胞の性能を最適化することができる。一部の実施形態では、薬剤、例えば、阻害性ポリヌクレオチド、例えば、阻害性ポリヌクレオチド、例えば、阻害性ポリヌクレオチド、例えば、dsRNA、例えば、siRNAまたはshRNA、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはジンクフィンガーエンドヌクレアーゼ(ZFN)は、遺伝子修飾細胞における阻害性分子の発現を阻害するために使用され得る。一実施形態では、阻害剤は、shRNAである。一部の実施形態では、本開示の遺伝子修飾細胞は、阻害性ポリヌクレオチド、例えば、阻害性ポリヌクレオチド、例えば、阻害性ポリヌクレオチド、例えば、dsRNA、例えば、siRNAまたはshRNA、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはジンクフィンガーエンドヌクレアーゼ(ZFN)を発現するようにさらに修飾され得、遺伝子修飾細胞における阻害性分子の発現を阻害するために使用され得る。
【0262】
一実施形態では、免疫細胞機能を調節または制御する、例えば、阻害する薬剤は、本開示の遺伝子修飾細胞内で阻害される。かかる実施形態では、免疫細胞機能を調節または調節する、例えば、阻害する分子の発現を阻害するdsRNA分子は、本開示のキメラ受容体の成分、例えば、すべての成分をコードするポリヌクレオチドに連結される。一実施形態では、免疫細胞機能を調節または制御する分子の発現を阻害するdsRNA分子をコードするポリヌクレオチド分子は、例えば、免疫細胞機能を調節または制御する分子の発現を阻害するdsRNA分子が、例えば、遺伝子組み換え細胞内で発現されるように、プロモーター、例えば、HIまたはU6由来のプロモーターに作動可能に連結される。一実施形態では、免疫細胞機能を調節または制御する、例えば、阻害する分子の発現を阻害するdsRNA分子をコードするポリヌクレオチド分子は、キメラ受容体の成分、例えば、すべての成分をコードするポリヌクレオチド分子を含む同じベクター、例えば、レンチウイルスベクター上に存在する。かかる実施形態では、免疫細胞機能を調節または制御する、例えば、阻害する分子の発現を阻害するdsRNA分子をコードするポリヌクレオチド分子は、キメラ受容体の成分、例えばすべての成分をコードするポリヌクレオチドの5’-または3’-のベクター、例えばレンチウイルスベクター上に位置する。免疫細胞機能を調節または制御する、例えば、阻害する分子の発現を阻害するdsRNA分子をコードするポリヌクレオチド分子は、キメラ受容体の成分、例えば、すべての成分をコードするポリヌクレオチドと同じまたは異なる方向に転写され得る。一実施形態では、免疫細胞機能を調節または制御する、例えば、阻害する分子の発現を阻害するdsRNA分子をコードするポリヌクレオチド分子は、キメラ受容体の成分、例えば、すべての成分をコードするポリヌクレオチド分子を含むベクター以外のベクター上に存在する。一実施形態では、免疫細胞機能を調節または制御する、例えば、阻害する分子の発現を阻害するdsRNA分子をコードするポリヌクレオチド分子は、それを遺伝子修飾細胞内で一過性に発現する。一実施形態では、免疫細胞機能を調節または制御する、例えば、阻害する分子の発現を阻害するdsRNA分子をコードするポリヌクレオチド分子は、本開示の遺伝子修飾細胞のゲノムに安定して組み込まれる。
【0263】
一実施形態では、免疫細胞機能を調節または制御する、例えば、阻害する薬剤は、阻害分子と結合する抗体または抗体断片であり得る。例えば、薬剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、もしくはCTLA4と結合する抗体または抗体断片であり得る。一実施形態では、薬剤は、TIM3と結合する抗体または抗体断片である。一実施形態では、薬剤は、LAG3と結合する抗体または抗体断片である。
【0264】
いくつかの実施形態では、遺伝子修飾細胞の活性を増強する薬剤は、CEACAM阻害剤(例えば、CEACAM-1、CEACAM-3、および/またはCEACAM-5阻害剤)である。一実施形態では、CEACAMの阻害剤は、抗CEACAM抗体分子である。一実施形態では、本開示の遺伝子修飾細胞の活性を増強する薬剤は、miR-17-92である。いくつかの実施形態において、遺伝子修飾細胞の活性を増強する薬剤は、CD40Lである。いくつかの実施形態において、遺伝子修飾細胞の活性を増強する薬剤は、GM-CSFである。いくつかの実施形態では、本開示の遺伝子修飾細胞は、本開示の阻害分子と結合する抗体または抗体断片を発現するようにさらに修飾される。
【0265】
一実施形態では、本開示の遺伝子修飾細胞の活性を増強する薬剤は、サイトカインである。サイトカインは、免疫応答性細胞拡大、分化、生存、および恒常性に関連する重要な機能を有する。本開示の遺伝子修飾細胞を受ける対象に投与することができるサイトカインには、IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IIL-12、L-15、IL-18、およびIL-21、またはこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。サイトカインは、1日1回、または1日1回を超えて、例えば、1日2回、1日3回、または1日4回投与することができる。サイトカインは、1日を超えて投与することができ、例えば、サイトカインは、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、1週間、2週間、3週間、または4週間投与される。例えば、サイトカインは、7日間、1日1回投与される。いくつかの実施形態では、本開示の遺伝子修飾細胞はIL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-12、L-15、IL-18、およびIL-21などの一つ以上のサイトカインを発現するようにさらに修飾される。
【0266】
いくつかの実施形態では、サイトカインは、遺伝子修飾細胞と同時に、または同時発生的に、例えば、同じ日に投与され得る。サイトカインは、遺伝子修飾細胞と同じ薬学的組成物で調製され得るか、または別個の医薬組成物で調製され得る。サイトカインは、遺伝子修飾細胞の投与直後、例えば、遺伝子修飾細胞の投与後1日、2日、3日、4日、5日、6日、または7日で投与することができる。サイトカインが1日を超えて生じる投薬レジメンにおいて投与されるいくつかの実施形態では、サイトカイン投薬レジメンの最初の日は、遺伝子修飾細胞との投与と同じ日であり得るか、またはサイトカイン投薬レジメンの最初の日は、遺伝子修飾細胞の投与後1日、2日、3日、4日、5日、6日、または7日であり得る。一実施形態では、最初の日に、遺伝子修飾細胞を対象に投与し、2日目に、サイトカインを1日1回、次の7日間投与する。いくつかの実施形態では、サイトカインは、遺伝子修飾細胞の投与後の期間、例えば、遺伝子修飾細胞の投与後、少なくとも2週間、3週間、4週間、6週間、8週間、10週間、12週間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、または1年間以上投与される。一実施形態では、サイトカインは、遺伝子修飾細胞に対する対象の応答の評価の後に投与される。
【0267】
キット
本開示の特定の態様は、がん(例えば、固形腫瘍)の治療および/または予防のためのキットに関する。特定の実施形態では、キットは、有効量の本開示の1つ以上のキメラ受容体、本開示の単離核酸、本開示のベクター、および/または本開示の細胞(例えば、免疫応答性細胞)を含む治療組成物または予防組成物を含む。いくつかの実施形態では、キットは、滅菌容器を含む。いくつかの実施形態では、そのような容器は、箱、アンプル、ボトル、バイアル、チューブ、バッグ、ポーチ、ブリスターパック、または当該技術分野で既知の他の好適な容器形態であることができる。容器はプラスチック、ガラス、ラミネート紙、金属ホイル、または薬物を保持するのに好適な他の材料で作られてもよい。
【0268】
一部の実施形態では、治療または予防組成物は、癌(例えば、固形腫瘍)を有するか、または発症するリスクのある対象に治療または予防組成物を投与するための指示とともに提供される。いくつかの実施形態では、指示は、障害の治療および/または予防のための組成物の使用に関する情報を含み得る。いくつかの実施形態では、指示は、これらに限定されるものではないが、治療的または予防的組成物の説明、投薬スケジュール、疾患またはその症状の治療または予防のための投与スケジュール、予防措置、警告、適応症、禁忌、過剰投与情報、有害反応、動物薬理学、臨床試験、および/または参考文献を含む。いくつかの実施形態では、指示は、容器に直接印刷することができ(存在する場合)、または容器に貼付されるラベルとして、または容器内または容器と共に提供される別個のシート、パンフレット、カード、またはフォルダとして印刷することができる。
【0269】
(列挙される実施形態)
【0270】
1. Vセットおよび免疫グロブリンドメイン含有2(VSIG2)に特異的な抗原結合ドメインと、異種分子または部分とを含む、キメラタンパク質であって、
抗原結合ドメインが、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、
VHが、QGVRPFFDY(配列番号4)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)を含む、キメラタンパク質。
【0271】
2. Vセットおよび免疫グロブリンドメイン含有2(VSIG2)に特異的な抗原結合ドメインと、異種分子または部分とを含む、キメラタンパク質であって、
抗原結合ドメインが、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、
VHが、重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、および重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)を含み、
CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3のアミノ酸配列が、配列番号1のVH領域アミノ酸配列に含有される、キメラタンパク質。
【0272】
3. Vセットおよび免疫グロブリンドメイン含有2(VSIG2)に特異的な抗原結合ドメインと、異種分子または部分とを含む、キメラタンパク質であって、
抗原結合ドメインが、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、
VHが、
GFTFSNS(配列番号2)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、
SDGGLY(配列番号3)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、および
QGVRPFFDY(配列番号4)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)を含む、キメラタンパク質。
【0273】
4. VLが、軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、および軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含み、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3のアミノ酸配列が、配列番号9または配列番号10のVL領域アミノ酸配列に含有される、実施形態1~3のいずれか一つに記載のキメラタンパク質。
【0274】
5. VLが、
RASENIYSYLA(配列番号11)またはRASENIYSYLA(配列番号12)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、
NAETLPE(配列番号13)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、および
QHHYVIPWT(配列番号14)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む、実施形態1~4のいずれか一つに記載のキメラタンパク質。
【0275】
6. Vセットおよび免疫グロブリンドメイン含有2(VSIG2)に特異的な抗原結合ドメインと、異種分子または部分とを含む、キメラタンパク質であって、
抗原結合ドメインが、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、
VLが、軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、および軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含み、
CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3のアミノ酸配列が、配列番号9または配列番号10のVL領域アミノ酸配列に含有される、キメラタンパク質。
【0276】
7. Vセットおよび免疫グロブリンドメイン含有2(VSIG2)に特異的な抗原結合ドメインと、異種分子または部分とを含む、キメラタンパク質であって、
抗原結合ドメインが、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、
VLが、
RASENIYSYLA(配列番号11)またはRASENLYSYLA(配列番号12)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、
NAETLPE(配列番号13)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、および
QHHYVIPWT(配列番号14)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む、キメラタンパク質。
【0277】
8. VHが、重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、および重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)を含み、CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3のアミノ酸配列が、配列番号1のVH領域アミノ酸配列に含有される、実施形態6または実施形態7に記載のキメラタンパク質。
【0278】
9. VHが、
GFTFSNS(配列番号2)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、
SDGGLY(配列番号3)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、および
QGVRPFFDY(配列番号4)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)を含む、実施形態6~8のいずれか一つに記載のキメラタンパク質。
【0279】
10. Vセットおよび免疫グロブリンドメイン含有2(VSIG2)に特異的な抗原結合ドメインと、異種分子または部分とを含む、キメラタンパク質であって、
抗原結合ドメインが、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、
VHが、
GFTFSNS(配列番号2)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、
SDGGLY(配列番号3)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、および
QGVRPFFDY(配列番号4)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)を含み、
VLが、
RASENIYSYLA(配列番号11)またはRASENLYSYLA(配列番号12)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、
NAETLPE(配列番号13)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、および
QHHYVIPWT(配列番号14)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む、キメラタンパク質。
【0280】
11. VH領域が、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態1~10のいずれか一つに記載のキメラタンパク質。
【0281】
12. VH領域が、配列番号1のアミノ酸配列を含む、実施形態1~11のいずれか一つに記載のキメラタンパク質。
【0282】
13. VL領域が、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態1~12のいずれか一つに記載のキメラタンパク質。
【0283】
14. VL領域が、配列番号9のアミノ酸配列を含む、実施形態1~12のいずれか一つに記載のキメラタンパク質。
【0284】
15. VL領域が、配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態1~12のいずれか一つに記載のキメラタンパク質。
【0285】
16. VL領域が、配列番号10のアミノ酸配列を含む、実施形態1~12のいずれか一つに記載のキメラタンパク質。
【0286】
17. Vセットおよび免疫グロブリンドメイン含有2(VSIG2)に特異的な抗原結合ドメインと、異種分子または部分とを含む、キメラタンパク質であって、
抗原結合ドメインは、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、
VHは、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、キメラタンパク質。
【0287】
18. VH領域が、配列番号1のアミノ酸配列を含む、実施形態17に記載のキメラタンパク質。
【0288】
19. VL領域が、配列番号9または配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態17または実施形態18に記載のキメラ。
【0289】
20. VL領域が、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態17または実施形態18に記載のキメラ。
【0290】
21. VL領域が、配列番号9のアミノ酸配列を含む、実施形態17または実施形態18に記載のキメラタンパク質。
【0291】
22. VL領域が、配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態17または実施形態18に記載のキメラ。
【0292】
23. VL領域が、配列番号10のアミノ酸配列を含む、実施形態17または実施形態18に記載のキメラタンパク質。
【0293】
24. Vセットおよび免疫グロブリンドメイン含有2(VSIG2)に特異的な抗原結合ドメインと、異種分子または部分とを含む、キメラタンパク質であって、
抗原結合ドメインが、抗体または抗原結合断片を含み、
抗体または抗原結合断片が、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、
VLが、配列番号9または配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、キメラタンパク質。
【0294】
25. VL領域が、配列番号9のアミノ酸配列を含む、実施形態24に記載のキメラタンパク質。
【0295】
26. VL領域が、配列番号10のアミノ酸配列を含む、実施形態24に記載のキメラタンパク質。
【0296】
27. VH領域が、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態24~26のいずれか一つに記載のキメラタンパク質。
【0297】
28. VH領域が、配列番号1のアミノ酸配列を含む、実施形態24~26のいずれか一つに記載のキメラタンパク質。
【0298】
29. Vセットおよび免疫グロブリンドメイン含有2(VSIG2)に特異的な抗原結合ドメインと、異種分子または部分とを含む、キメラタンパク質であって、
抗原結合ドメインが、VSIG2への結合について参照抗体またはその抗原結合断片と競合し、
参照抗体またはその抗原結合断片が、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、
VHが、
GFTFSNS(配列番号2)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、
SDGGLY(配列番号3)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、および
QGVRPFFDY(配列番号4)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)を含み、
VLが、
RASENIYSYLA(配列番号11)またはRASENLYSYLA(配列番号12)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、
NAETLPE(配列番号13)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、および
QHHYVIPWT(配列番号14)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む、キメラタンパク質。
【0299】
30. Vセットおよび免疫グロブリンドメイン含有2(VSIG2)に特異的な抗原結合ドメインと、異種分子または部分とを含む、キメラタンパク質であって、
抗原結合ドメインが、
参照抗体またはその抗原結合断片と同じVSIG2エピトープに本質的に結合し、参照抗体またはその抗原結合断片が、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、
VHが、
GFTFSNS(配列番号2)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、
SDGGLY(配列番号3)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、および
QGVRPFFDY(配列番号4)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)を含み、
VLが、
RASENIYSYLA(配列番号11)のアミノ酸配列またはRASENLYSYLA(配列番号12)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、
NAETLPE(配列番号13)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、および
QHHYVIPWT(配列番号14)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む、キメラタンパク質。
【0300】
31. Vセットおよび免疫グロブリンドメイン含有2(VSIG2)に特異的な抗原結合ドメインと、異種分子または部分とを含む、キメラタンパク質であって、
抗原結合ドメインが、参照抗体またはその抗原結合断片によって結合されるVSIG2エピトープと同じヒトVSIG2のエピトープに結合し、
参照抗体またはその抗原結合断片が、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、
VHが、
GFTFSNS(配列番号2)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、
SDGGLY(配列番号3)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、および
QGVRPFFDY(配列番号4)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)を含み、
VLが、
RASENIYSYLA(配列番号11)またはRASENLYSYLA(配列番号12)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、
NAETLPE(配列番号13)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、および
QHHYVIPWT(配列番号14)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む、キメラタンパク質。
【0301】
32. 参照抗体またはその抗原結合断片のVH領域が、配列番号1のアミノ酸配列を含む、実施形態29~31のいずれか一つに記載のキメラタンパク質。
【0302】
33. 参照抗体またはその抗原結合断片のVL領域が、配列番号9または配列番号10のアミノ酸配列を含む、実施形態29~32のいずれか一つに記載のキメラタンパク質。
【0303】
34. 抗原結合ドメインが、F(ab)断片、F(ab’)断片、または一本鎖可変断片(scFv)を含む、実施形態1~33のいずれか一つに記載のキメラタンパク質。
【0304】
35. 抗原結合ドメインが、一本鎖可変断片(scFv)を含む、実施形態34に記載のキメラタンパク質。
【0305】
36. VHおよびVLが、ペプチドリンカーによって分離されている、実施形態1~35のいずれか一つに記載のキメラタンパク質。
【0306】
37. 抗原結合ドメインが、構造VH-L-VLまたはVL-L-VHを含み、VHが、重鎖可変ドメインであり、Lが、ペプチドリンカーであり、VLが、軽鎖可変ドメインである、実施形態36に記載のキメラタンパク質。
【0307】
38. ペプチドリンカーが、配列番号19~35からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態36または実施形態37に記載のキメラタンパク質。
【0308】
39. scFvが、配列番号69~74からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、実施形態35または実施形態36に記載のキメラタンパク質。
【0309】
40. キメラタンパク質が、抗体-薬物コンジュゲートであり、異種分子または部分が、治療剤を含む、実施形態1~39のいずれか一つに記載のキメラタンパク質。
【0310】
41. キメラ抗原受容体(CAR)であり、異種分子または部分が、膜貫通ドメイン、一つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメイン、ヒンジドメイン、スペーサー領域、一つまたは複数のペプチドリンカー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリペプチドを含む、実施形態1~39のいずれか一つに記載のキメラタンパク質。
【0311】
42. CARが、膜貫通ドメインを含む、実施形態41に記載のキメラタンパク質。
【0312】
43. CARが、一つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメインを含む、実施形態41または実施形態42に記載のキメラタンパク質。
【0313】
44. CARが、免疫応答を刺激する一つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメインを含む活性化CARである、実施形態41~43のいずれか一つに記載のキメラタンパク質。
【0314】
45. CARが、免疫応答を阻害する一つまたは複数の細胞内阻害ドメインを含む阻害CARである、実施形態41~43のいずれか一つに記載のキメラタンパク質。
【0315】
46. 細胞内阻害ドメインが、酵素阻害ドメインを含む、実施形態45に記載のキメラタンパク質。
【0316】
47. 細胞内阻害ドメインが、細胞内阻害共シグナル伝達ドメインを含む、実施形態45に記載のキメラタンパク質。
【0317】
48. CARが、抗原結合ドメインと膜貫通ドメインの間にスペーサー領域を含む、実施形態41~47のいずれか一つに記載のキメラタンパク質。
【0318】
49. スペーサー領域が、配列番号39~51からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、実施形態48に記載のキメラタンパク質。
【0319】
50. 実施形態1~49のいずれか一つに記載のキメラタンパク質および薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な賦形剤、またはそれらの組み合わせを含む、組成物。
【0320】
51. 実施形態1~49のいずれか一つに記載のキメラタンパク質をコードする、操作されたポリヌクレオチド。
【0321】
52. 実施形態51に記載の操作されたポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
【0322】
53. 実施形態51に記載の操作されたポリヌクレオチドまたは実施形態52に記載の発現ベクター、および薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な賦形剤、またはそれらの組み合わせを含む、組成物。
【0323】
54. 単離細胞を、実施形態51に記載の操作されたポリヌクレオチドまたは実施形態52に記載の発現ベクターを用いて形質導入することを含む、操作された細胞を作製する方法。
【0324】
55. 実施形態54に記載の方法によって産生された、操作された細胞。
【0325】
56. 実施形態51に記載の操作されたポリヌクレオチド、実施形態52に記載の発現ベクター、または実施形態53に記載の組成物を含む、単離細胞。
【0326】
57. 実施形態51に記載の操作されたポリヌクレオチド、実施形態52に記載の発現ベクターを発現する、操作された細胞の集団。
【0327】
58. 実施形態1~49のいずれか一つに記載のキメラタンパク質を含む、単離細胞。
【0328】
59. 実施形態1~49のいずれか一つに記載のキメラタンパク質を発現する、操作された細胞の集団。
【0329】
60. キメラタンパク質が、組換えにより発現される、実施形態56~59のいずれか一つに記載の細胞または細胞の集団。
【0330】
61. キメラタンパク質が、ベクターまたは細胞のゲノム由来の選択された遺伝子座から発現される、実施形態56~60のいずれか一つに記載の細胞または細胞の集団。
【0331】
62. 細胞または細胞の集団が、細胞表面上で発現される一つまたは複数の腫瘍標的化キメラ受容体をさらに含む、実施形態56~61のいずれか一つに記載の細胞または細胞の集団。
【0332】
63. 一つまたは複数の腫瘍標的化キメラ受容体が、キメラ抗原受容体(CAR)または操作されたT細胞受容体である、実施形態62に記載の細胞または細胞の集団。
【0333】
64. 細胞または細胞の集団が、T細胞、CD8+T細胞、CD4+T細胞、ガンマデルタT細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、制御性T細胞、ウイルス特異的T細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、B細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、自然リンパ球系細胞、肥満細胞、好酸球、好塩基球、好中球、骨髄細胞、マクロファージ、単球、樹状細胞、赤血球、血小板細胞、ヒト胚性幹細胞(ESC)、ESC由来細胞、多能性幹細胞、間葉系間質細胞(MSC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、およびiPSC由来細胞からなる群から選択される、実施形態56~63のいずれか一つに記載の細胞または細胞の集団。
【0334】
65. 細胞が自家である、実施形態56~64のいずれか一つに記載の細胞または細胞の集団。
【0335】
66. 細胞が同種である、実施形態56~64のいずれか一つに記載の細胞または細胞の集団。
【0336】
67. 有効量の、実施形態56~66のいずれか一項に記載の細胞または操作された細胞の集団、および薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な賦形剤、またはそれらの組み合わせを含む、医薬組成物。
【0337】
68. 有効量の、実施形態1~49のいずれか一つに記載のキメラタンパク質を発現する遺伝子修飾された細胞および薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な賦形剤、またはそれらの組み合わせを含む、医薬組成物。
【0338】
69. 腫瘍を治療および/または予防するためのものである、実施形態67または実施形態68に記載の医薬組成物。
【0339】
70. 治療有効用量の、実施形態53に記載の組成物、または実施形態55~66のいずれか一つに記載の細胞のいずれか、または実施形態67~69のいずれか一つに記載の組成物を投与することを含む、それを必要とする対象を治療する方法。
【0340】
71. 対象において腫瘍細胞に対する細胞介在性免疫応答を刺激する方法であって、腫瘍を有する対象に、治療有効用量の、実施形態53に記載の組成物、または実施形態55~66のいずれか一つに記載の細胞のいずれか、または実施形態67~69のいずれか一つに記載の組成物を投与することを含む、方法。
【0341】
72. 腫瘍を有する対象を治療する方法であって、治療有効用量の、実施形態53、または実施形態55~66のいずれか一つに記載の細胞のいずれか、または実施形態67~69のいずれか一つに記載の組成物を投与することを含む、方法。
【0342】
73. 実施形態1~49のいずれか一つに記載のキメラタンパク質を含む、腫瘍を治療および/または予防するためのキット。
【0343】
74. 対象における腫瘍を治療および/または予防するための、一つまたは複数の抗原特異的細胞を産生するためのキメラタンパク質を使用するための記載された指示書をさらに含む、実施形態73に記載のキット。
【0344】
75. 実施形態55~66のいずれか一つに記載の細胞または細胞の集団を含む、腫瘍を治療および/または予防するためのキット。
【0345】
76. 対象における腫瘍を治療および/または予防するための細胞を使用するための記載された指示書をさらに含む、実施形態75に記載のキット。
【0346】
77. 実施形態51に記載の操作されたポリヌクレオチドを含む、腫瘍を治療および/または予防するためのキット。
【0347】
78. 対象における腫瘍を治療および/または予防するための一つまたは複数の抗原特異的細胞を産生するためにポリヌクレオチドを使用するための記載された指示書をさらに含む、実施形態77に記載のキット。
【0348】
79. 実施形態52に記載のベクターを含む、腫瘍を治療および/または予防するためのキット。
【0349】
80. 対象における腫瘍を治療および/または予防するための一つまたは複数の抗原特異的細胞を産生するためにベクターを使用するための記載された指示書をさらに含む、実施形態79に記載のキット。
【0350】
81. 実施形態53、または実施形態67~69のいずれか一つに記載の組成物を含む、腫瘍を治療および/または予防するためのキット。
【0351】
82. 対象における腫瘍を治療および/または予防するための組成物を使用するための記載された指示書をさらに含む、実施形態81に記載のキット。
【実施例】
【0352】
以下は、本開示の方法および組成物の例である。本明細書に提供される一般的な記載を考慮して、様々な他の実施形態が実施され得ることが理解される。
【0353】
以下は、本開示の特許請求される主題を実施するための具体的な実施形態の例である。実施例は、あくまで例示の目的で示されるものにすぎず、本開示の範囲をいかなる意味においても限定することを意図しない。使用する数値(例えば、量、温度など)については正確を期すよう努めるが、ある程度の実験誤差および偏差は、もちろん許容されるべきである。
【0354】
実施例1: 抗VSIG2抗体配列決定
方法
抗体配列決定
マウス抗ヒトVSIG2モノクローナル抗体クローン(「Ab」)を配列決定した。簡潔に述べると、免疫グロブリン鎖の各々を含有する試料を、様々な酵素によって消化し、次いでLC-MS/MSによって分析した。ペプチドを、新規ペプチドシーケンシングを使用してLC-MS/MSデータから特徴決定し、次いで抗体配列を構築した。
【0355】
Ab抗VSIG2抗体をペプチド配列決定した。複数の酵素消化のLC-MS/MSデータを、構築した抗体配列にマッピングした。重鎖および軽鎖では、アミノ酸残基の100%が、有意なサポート断片イオンを用いた少なくとも5つのペプチドスキャンによってカバーされた(データは示していない)。
【0356】
軽鎖および重鎖可変領域の配列決定の結果を、それぞれ、
図1および
図2に示す。フレームワークおよび相補性決定領域(CDR)を、Chothiaアノテーションおよびナンバリングスキームに従って注釈付けする。配列を表Aに示す。ロイシン(L)およびイソロイシン(I)が同じ残基質量を有することを考慮して、これらの残基を特定するために追加の分析技術を使用した。
図1に示すように、CDR-L1の21位のイソロイシン残基は、イソロイシンであると決定されたが、100%の信頼度では確認されなかった。
【0357】
【0358】
実施例2: 抗VSIG2活性化CARの産生および評価
CAR構築物をレンチウイルスベクターにクローニングした。レンチウイルスを、Lenti-X 293Tシステムを使用して産生する。調べたCAR構築物の抗原特異性およびドメイン構成を以下の表Bに示し、scFvアミノ酸配列およびヌクレオチド配列を、それぞれ、表Cおよび表Dに示す。
【0359】
【0360】
【0361】
【0362】
活性化CAR NK細胞アッセイ
初代NK細胞をヒトドナーPBMCから単離して凍結する。表Cに記載されるように、選択された活性化CAR(aCAR)を含有するCARレンチウイルスで、NK細胞を形質導入する。
【0363】
殺傷アッセイを実施して、VSIG-2を内因的に発現するヒト結腸直腸腺がん細胞株であるHT29細胞、VSIG2を外因的に発現するLs174t細胞、およびVSIG2を外因的に発現するDLD1細胞を含む、VSIG-2発現細胞の殺傷を評価する。殺傷アッセイは、抗VSIG2 aCARを発現するNK細胞が、VSIG2発現細胞を殺傷する能力を有することを実証する。
【0364】
実施例3: 抗VSIG2阻害性CARの生成
抗VSIG2阻害性CAR(iCAR)構築物を各々レンチウイルスベクターにクローニングした。CAR構築物の抗原特異性およびドメイン構成を、以下の表Eに記載する。iCAR構築物の各抗VSIG2 scFvのアミノ酸配列を表Cに示す。各抗VSIG2 scFvのヌクレオチド配列を以下の表Fに示す。
【0365】
【0366】
NOTゲート抗VSIG2 iCARの阻害活性を試験するために、個々の抗VSIG2 iCARおよび抗CEA aCAR構築物をレンチウイルス粒子にパッケージングし、初代NK細胞に形質導入するために使用する。ウイルスの量はp24力価(形質導入あたり750,000pg)によって設定する。iCAR構築物はpuroRカセットを含有したので、形質導入後4~7日目にピューロマイシンをNK細胞培養物に添加し、その時点で発現をフローサイトメトリーで評価し、殺傷アッセイのためにNK細胞をマイクロウェルプレートに移した。(1)aCAR抗原CEAのみを発現している腫瘍細胞とともに、(2)aCAR抗原CEAおよびiCAR抗原VSIG2の双方を発現している腫瘍細胞とともに、または(3)混合した双方の腫瘍細胞型とともにNK細胞を培養する。16~18時間後、培養物をフローサイトメトリーによって分析し、各型の残りの生きている標的細胞を数える。所与のNK細胞型のaCARが介在する殺傷(基本差分)は、先ず総殺傷(標的のみの条件と比較した標的の減少)を計算し、次に対照(iCARのみ)NK細胞による総殺傷を差し引くことによって定量する。iCARが介在する保護はiCAR抗原の有無にかかわらず、標的間のaCARが介在する殺傷の変化として定量する。殺傷アッセイの上清を、TNFα分泌について分析し、aCARおよびiCAR性能測定基準を、殺傷と同様に計算する。発現分析については、iCARおよびaCARを、それらのそれぞれのエピトープタグについて染色する。結果は、NOTゲート抗VSIG2 iCARの阻害活性を示す。
【0367】
実施例4: NOTゲートに基づく安全性抗原陽性細胞の保護
本実施例では、CEA活性化CARと組み合わせたNOT-ゲートの使用を、安全性抗原(VSIG2)を発現する細胞を使用して評価した。
【0368】
まず、安全性抗原(VSIG2)を発現する細胞株を生成した。SEM細胞に、VSIG2タンパク質を発現するレンチウイルスおよび耐性選択マーカー(ブラストシジン)を使用して形質導入した。細胞を抗生物質抵抗性について選択し、フローサイトメトリーを介して所望のタンパク質の発現を評価した。またSEM細胞に、CEACAM5-EGFPの膜結合型をコードするレンチウイルスを形質導入した。細胞を、EGFP陽性について選別し、CEACAM5およびVSIG2の共発現をフローサイトメトリーで測定した。
【0369】
次に、CEA活性化CAR、および抗HER2阻害性CARを発現するNK細胞を生成した。様々な阻害性ドメインを有する様々な抗VSIG2阻害性CAR(複数の細胞内ドメインを有するものは、膜貫通ドメインに近接する順序で列挙される:LIR1-LIR1、KIR3DL1、KIR3DL1-KIR3DL1、LIR1-KIR3DL1、KIR3DL1-LIR1、KIR2DL1、LAIR1、SIGLEC2、およびSIRPa)。単一の細胞内ドメインのみを有する各々については、同じタンパク質からの膜貫通ドメインを使用した。二つの細胞内ドメインを有するものについては、第一の細胞内ドメインと同じタンパク質からの膜貫通ドメインを使用した。加えて、各CARは、CD8ヒンジ、およびscFvとヒンジの間のV5エピトープタグを含んだ。構築物の説明を表Fに提供する。
【0370】
(表F)抗VSIG2阻害CARドメインおよび構成の説明
【0371】
抗VSIG2阻害性CARの構成要素を表Gに提供する。
【0372】
(表G)-抗VSIG2阻害性CARの構成要素および配列
【0373】
ドナー由来の初代NK細胞をまず増殖させ、次にCARをコードするレトロウイルスで形質導入した。aCARの発現を、MYCタグを使用してフローサイトメトリーを介して決定した。VSIG2安全性抗原系についての発現を
図3に示す。
【0374】
CEA-aCARおよび様々な抗VSIG2 iCARを発現するNK細胞を、CEACAM5単独またはCEACAM5/安全性抗原(VSIG2)のいずれかを発現する標的細胞と共培養した。aCAR単独、iCAR単独、および非標的化iCARなどの適切な対照を使用した。
【0375】
図4に示すように、フローサイトメトリーを使用して、NOTゲート化CAR NK細胞との一晩の共培養後に、標的細胞の低減パーセントを測定した。
図4に見られるように、様々な阻害性ドメインを含む様々なVSIG2阻害性CARは、安全性抗原を発現する標的細胞 (VSIG2、青色のバー)においてCAR媒介性細胞殺傷の有意な低減を示し、CEACAM5のみを発現する標的細胞(赤色のバー)では示さない。この結果は、VSIG2阻害性CARの発現が、安全性抗原依存的な様式でCAR媒介性シグナル伝達の活性化を低減することを示す。
【0376】
実施例5: VSIG2結合剤の特徴解析および安全抗原としての使用
この実施例では、上記の実施例に記載されるVSIG2結合剤を含むCARを、活性化CAR(aCAR)および阻害性CAR(iCAR)としての活性について分析した。
【0377】
本実施例で使用されるVSIG2 CARの概要を以下の表Hに提供する。対応する配列は、上記の実施例3に提供されている。
【0378】
【0379】
VSIG2 scFv配列を使用して、異なるリンカーおよび配向を使用したCD28z aCARを構築し、NK細胞によるVSIG2陽性標的細胞の発現、結合、および殺傷を確認した。NK細胞に、異なるVSIG2-aCARsを発現するレトロウイルスで形質導入した(上記の表Hに示す通り)。モノクローナルVSIG2抗体のマウス配列に基づいて異なるVSIG2結合剤を設計し、CD28 ICDおよびCD3zシグナル伝達ドメインを有する活性化CARとして構築した。上記の実施例4に記載される方法論を使用して、1:8のエフェクター細胞:標的細胞(E:T)比でヒトVSIG2を過剰発現するように操作されたSEM標的細胞と、形質導入されたNK細胞を共培養した。野生型(VSIG2発現なし)標的細胞と比較して、標的細胞死を定量化した。結果を
図5に示す。
【0380】
形質導入後6日目に、異なる結合剤を有するVSIG2 aCARの発現を決定した(
図6)。VL/VH配向は、scFvのVH/VL配向よりも高い平均蛍光強度(MFI)をもたらしたことが観察された。SBSB04750、SB04746、およびSB04744について最も高い発現が観察された。
【0381】
VSIG2-CAR NK細胞を、mKateおよびVSIG2を発現する結腸直腸がん(CRC)標的細胞と共培養した(Ls174t、
図7AおよびDLD1、図 7B)。標的細胞増殖を、赤色蛍光(mKATE)を介してIncucyte(登録商標)で測定した。試験したすべてのVSIG2 aCARは、非形質導入(NV)および対照(SB04501、scFvを含まない非標的化aCAR)と比較して、殺傷の増加を示した。SBSB04750、SB04746、およびSB04744について最も高い殺傷が観察された。選択されたscFvによる殺傷を、
図7C(Ls174t細胞)および
図7D(DLD1細胞)にさらに示す。
【0382】
FLT3 NOTゲートとしてのVSIG2
次いで、FLT3 NOTゲートとしてのVSIG2 iCARの使用を試験した。FLT3およびVSIG2の両方を1:4のE:T比で発現する標的細胞と比較して、FLT3を過剰発現するSEM標的細胞(上述の方法論を使用して生成)と、NK細胞を共培養した。NK細胞に、異なる結合剤を有するFLT3-aCARおよびVSIG2-iCARを発現するレトロウイルスで形質導入した。
図8は、VSIG2 CARが両方の標的細胞株で殺傷の増加を示すことを示す。
【0383】
次いで、NK細胞およびFLT3標的細胞との共培養実験からの上清を、Luminexを使用して分析し、サイトカイン産生を定量した。
図9に示すように、NOTゲートCAR-NK細胞をVSIG2陽性標的細胞と共培養したとき、TNFα産生は減少した。
【0384】
CEA NOTゲートとしてのVSIG2
NK細胞に、選択されたVSIG2結合剤を使用して構築されたCEA-aCARおよび様々なVSIG2-iCARを発現するレトロウイルスで形質導入し、フローサイトメトリーを使用して、NK細胞上のCEA-aCARおよびVSIG2-iCARの発現を決定した(
図10A、対照株は、
図10Bに示す)。
【0385】
次いで、形質導入されたNK細胞を、1:2のE:T比でヒトVSIG2を過剰発現するように操作された標的細胞と共培養した。標的細胞の減少を、VSIG2を発現しない標的細胞(左カラム)と比較した。重要なことに、いくつかのVSIG2 iCARSは、VSIG2依存的様式で、標的細胞のNK媒介性殺傷を有意に減少させた(
図11に示す)。
【0386】
これらのデータは、試験されたVSIG2 scFvが、例えば、活性化CARと組み合わせたNOTゲート技術に対して、安全抗原として使用され得ることを示す。
【0387】
(参照による組み込み)
本出願に引用された公開文献、特許、特許出願、および他の文献は全て、あたかも各個別の公開文献、特許、特許出願、または他の文献があらゆる目的のために参照により組み込まれるように個別に示されるのと同じ範囲まで、あらゆる目的のために、それらの全体において参照により本明細書に組み込まれる。
【0388】
(均等物)
様々な特定の実施形態が図示および記載されてきたが、上記明細書は制限的ではない。本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができることが理解されるであろう。多くの変型は、本明細書の範囲を考慮すれば当業者に明らかとなるであろう。
【0389】
(他の配列)
本開示に関連する他の配列を以下に示す。
【0390】
【手続補正書】
【提出日】2024-01-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0054
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0054】
一部の態様では、本開示は、本明細書に記載されるような組成物を含む、腫瘍を治療および/または予防するためのキットを提供する。一部の態様では、キットは、対象における腫瘍を治療および/または予防するための組成物を使用するための記載された指示書をさらに含む。
[本発明1001]
Vセットおよび免疫グロブリンドメイン含有2(VSIG2)に特異的な抗原結合ドメインと、異種分子または部分とを含む、キメラタンパク質であって、
前記抗原結合ドメインが、重鎖可変(VH)領域および軽鎖可変(VL)領域を含み、
(a)前記VHが、
GFTFSNS(配列番号2)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、
SDGGLY(配列番号3)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、および
QGVRPFFDY(配列番号4)のアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)
を含み、かつ
前記VLが、
RASENIYSYLA(配列番号11)またはRASENLYSYLA(配列番号12)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、
NAETLPE(配列番号13)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、および
QHHYVIPWT(配列番号14)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)
を含む;または
(b)前記VHが、
配列番号1の前記VH領域アミノ酸配列に含有される重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、配列番号1の前記VH領域アミノ酸配列に含有される重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、および配列番号1の前記VH領域アミノ酸配列に含有される重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)
を含み、かつ
前記VLが、
配列番号9の前記VL領域アミノ酸配列に含有される軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、配列番号9の前記VL領域アミノ酸配列に含有される軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、および配列番号9の前記VL領域アミノ酸配列に含有される軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)
を含む;または
(c)前記VHが、
配列番号1の前記VH領域アミノ酸配列に含有される重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、配列番号1の前記VH領域アミノ酸配列に含有される重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、および配列番号1の前記VH領域アミノ酸配列に含有される重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)
を含み、かつ
前記VLが、
配列番号10の前記VL領域アミノ酸配列に含有される軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、配列番号10の前記VL領域アミノ酸配列に含有される軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、および配列番号10の前記VL領域アミノ酸配列に含有される軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)
を含み、
任意選択で、参照抗体のCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3のアミノ酸配列が、KabatまたはChothiaナンバリングスキームに基づき定義される、キメラタンパク質。
[本発明1002]
前記VH領域が、配列番号1のアミノ酸配列を含む、本発明1001のキメラタンパク質。
[本発明1003]
前記VL領域が、配列番号9のアミノ酸配列を含むか、または前記VL領域が、配列番号10のアミノ酸配列を含む、本発明1001または本発明1002のキメラタンパク質。
[本発明1004]
前記抗原結合ドメインが、一本鎖可変断片(scFv)を含み、
任意選択で前記scFvの前記VHおよびVLが、ペプチドリンカーによって分離され、
任意選択で前記抗原結合ドメインが、構造VH-L-VLまたはVL-L-VHを含み、VHが重鎖可変ドメインであり、Lが前記ペプチドリンカーであり、VLが軽鎖可変ドメインであり、および/または
任意選択で前記scFvが、配列番号19~35および配列番号69~74からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、
本発明1001~1003のいずれかのキメラタンパク質。
[本発明1005]
前記キメラタンパク質が、キメラ抗原受容体(CAR)であり、前記異種分子または部分が、膜貫通ドメイン、一つ以上の細胞内シグナル伝達ドメイン、ヒンジドメイン、スペーサー領域、一つ以上のペプチドリンカー、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリペプチドを含む、本発明1001~1004のいずれかのキメラタンパク質。
[本発明1006]
前記CARが、免疫応答を阻害する一つ以上の細胞内阻害ドメインを含む阻害CARであり、前記一つ以上の細胞内阻害ドメインの各々が、酵素阻害ドメインまたは細胞内阻害共シグナル伝達ドメインを含む、本発明1005のキメラタンパク質。
[本発明1007]
本発明1001~1006のいずれかのキメラタンパク質をコードする、操作されたポリヌクレオチド。
[本発明1008]
本発明1007の操作されたポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
[本発明1009]
本発明1001~1006のいずれかのキメラタンパク質、本発明1007の操作されたポリヌクレオチド、または本発明1008の発現ベクターを含む、単離細胞。
[本発明1010]
本発明1001~1006のいずれかのキメラタンパク質、本発明1007の操作されたポリヌクレオチド、または本発明1008の発現ベクターを発現する、操作された細胞の集団。
[本発明1011]
前記細胞または細胞の集団が、前記細胞表面上に発現された一つ以上の腫瘍標的化キメラ受容体をさらに含み、任意選択で、前記一つ以上の腫瘍標的化キメラ受容体の各々が、キメラ抗原受容体(CAR)または操作されたT細胞受容体である、本発明1009の細胞または本発明1010の細胞の集団。
[本発明1012]
T細胞、CD8+T細胞、CD4+T細胞、ガンマデルタT細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、制御性T細胞、ウイルス特異的T細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、B細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、自然リンパ球系細胞、肥満細胞、好酸球、好塩基球、好中球、骨髄細胞、マクロファージ、単球、樹状細胞、赤血球、血小板細胞、ヒト胚性幹細胞(ESC)、ESC由来細胞、多能性幹細胞、間葉系間質細胞(MSC)、人工多能性幹細胞(iPSC)、およびiPSC由来細胞からなる群から選択される、本発明1009~1011のいずれかの細胞または細胞の集団。
[本発明1013]
有効量の本発明1009~1012のいずれかの細胞または操作された細胞の集団と、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な賦形剤、またはそれらの組み合わせとを含む、医薬組成物。
[本発明1014]
対象において腫瘍細胞に対する細胞介在性免疫応答を刺激する方法であって、腫瘍を有する対象に、治療有効用量の、本発明1001~1006のいずれかのキメラタンパク質、本発明1007の操作されたポリヌクレオチド、本発明1008の発現ベクター、本発明1009~1012のいずれかの細胞もしくは操作された細胞の集団、または本発明1013の組成物を投与することを含む、方法。
[本発明1015]
腫瘍を有する対象を治療する方法であって、治療有効用量の、本発明1001~1006のいずれかのキメラタンパク質、本発明1007の操作されたポリヌクレオチド、本発明1008の発現ベクター、本発明1009~1012のいずれかの細胞もしくは操作された細胞の集団、または本発明1013の組成物を投与することを含む、方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0057
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0057】
【
図1】
図1は、Chothia命名スキームを使用した抗VSIG2抗体(Ab)の軽鎖可変領域の配列決定結果を示す
(配列番号103)。
【
図2】
図2は、Chothia命名スキームを使用した抗VSIG2抗体(Ab)の重鎖可変領域の配列決定結果を示す
(配列番号104)。
【
図3-1】
図3は、CAR/iCAR形質導入NK細胞からの様々な抗VSIG2阻害性CARおよび抗CEA活性化CARの発現を示す。
【
図4】
図4は、抗VSIG2阻害性CARおよび抗CEA活性化CARを発現するNK細胞による、VSIG2を発現するかまたはVSIG2発現を欠くCEA陽性標的細胞の殺傷を示す。
【
図5】
図5は、抗VSIG2活性化CARを使用したNK細胞によるVSIG2陽性標的細胞の殺傷を示す。
図5は「(G4S)1」を配列番号29として開示する。
【
図6】
図6は、形質導入NK細胞上の様々な抗VSIG2活性化CARの発現を示す。
図6は「(G4S)3」を配列番号31として、「(G4S)1」を配列番号29として開示する。
【
図7A】
図7Aは、抗VSIG2活性化CARを発現するNK細胞による標的細胞Ls174tの殺傷を示す。
【
図7B】
図7Bは、抗VSIG2活性化CARを発現するNK細胞による標的細胞DLD1の殺傷を示す。
【
図7C】
図7Cは、抗VSIG2活性化CARを発現するNK細胞による標的細胞Ls174tの殺傷を示す。
【
図7D】
図7Dは、抗VSIG2活性化CARを発現するNK細胞による標的細胞DLD1の殺傷を示す。
【
図8】
図8は、FLT3陽性標的細胞および様々な抗VSIG2阻害性CARを発現するNK細胞によるFLT3陽性標的細胞の殺傷を示す。
図8は「(G4S)3」を配列番号31として開示する。
【
図9】
図9は、FLT3活性化CAR/VSIG2阻害性CAR NK細胞/標的細胞共培養におけるTNFα産生の定量化を示す。
図9は「(G4S)3」を配列番号31として開示する。
【
図10A】
図10Aは、形質導入NK細胞上の様々な抗VSIG2阻害性CARおよび抗CEA活性化CARの発現を示す。
【
図10B】
図10Bは、対照NK細胞上の様々な抗VSIG2阻害性CARおよび抗CEA活性化CARの発現を示す。
【
図11】
図11は、CEA活性化CARおよび様々な抗VSIG2阻害性CARを発現するNK細胞によるCEA陽性標的細胞の殺傷を示す。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0091
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0091】
本明細書で使用される場合、「可動性ポリペプチドリンカー」または「リンカー」という用語は、可変重鎖および可変軽鎖領域を一緒に連結するために、単独でまたは組み合わせて使用されるグリシンおよび/またはセリン残基などのアミノ酸からなるペプチドリンカーを指す。一実施形態では、可動性ポリペプチドリンカーは、Gly/Serリンカーであり、アミノ酸配列(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)n
(配列番号29)または(Gly-Gly-Gly-Ser)n
(配列番号24)を含み、nは、1を超える正の整数である。例えば、n=1、n=2、n=3、n=4、n=5、n=6、n=7、n=8、n=9、またはn=10である。一部の実施形態では、可動性ポリペプチドリンカーは、Gly4Ser[配列番号29]または(Gly4Ser)3[配列番号31]を含むが、これらに限定されない。他の実施形態では、リンカーは、(Gly2Ser)(配列番号19)、(GlySer)、または(Gly3Ser)[配列番号24]の複数の反復を含む。一部の実施形態では、可動性ポリペプチドリンカーは、Whitlowリンカー(例えば、GSTSGSGKPGSGEGSTKG[配列番号34])を含む。一部の実施形態では、可動性ポリペプチドリンカーは、(EAAAK)3[配列番号105]を含む。本開示の範囲内には、例えば、WO2012/138475に記載されているリンカーも含まれる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0133
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0133】
ある特定の実施形態では、二重特異性CARまたはtanCARは、二重特異性抗体または抗体断片(例えば、scFv)を含む抗原結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体分子の各抗体または抗体断片(例えば、scFv)内で、VHは、VLの上流または下流であり得る。いくつかの実施形態では、上流抗体または抗体断片(例えば、scFv)は、そのVL(VL1)の上流にそのVH(VH1)と配置され、下流抗体または抗体断片(例えば、scFv)は、そのVH(VH2)の上流にそのVL(VL2)と配置され、その結果、全体的な二重特異性抗体分子は、配置VH1-VL1-VL2-VH2を有する。他の実施形態では、上流抗体または抗体断片(例えば、scFv)は、そのVH(VH1)の上流にそのVL(VL1)と配置され、下流抗体または抗体断片(例えば、scFv)は、そのVL(VL2)の上流にそのVH(VH2)と配置され、全体的な二重特異性抗体分子は、配置VL1 VH1-VH2-VL2を有する。いくつかの実施形態では、リンカーは、2つの抗体または抗体断片(例えば、scFv)の間に、例えば、構築物がVH1-VL1-VL2-VH2として配置される場合はVL1とVL2との間に、または構築物がVL1-VH1-VH2-VL2として配置される場合はVH1とVH2との間に配置される。リンカーは、本明細書に記載のリンカー、例えば、(Gly4-Ser)nリンカーであり得、nは、1、2、3、4、5、または6である(配列番号101)。一般に、2つのscFv間のリンカーは、2つのscFvのドメイン間の誤対合を回避するのに十分な長さでなければならない。いくつかの実施形態では、リンカーは、第1のscFvのVLとVHとの間に配置される。いくつかの実施形態では、リンカーは、第2のscFvのVLとVHとの間に配置される。複数のリンカーを有する構築物では、任意の2つ以上のリンカーは、同じであっても異なっていてもよい。したがって、いくつかの実施形態では、二重特異性CARまたはtanCARは、VL、VHを含み、本明細書に記載される配置で1つ以上のリンカーを更に含み得る。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0274
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0274】
5. VLが、
RASENIYSYLA(配列番号11)またはRASENLYSYLA(配列番号12)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、
NAETLPE(配列番号13)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、および
QHHYVIPWT(配列番号14)のアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む、実施形態1~4のいずれか一つに記載のキメラタンパク質。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0359
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0359】
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0378
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0378】
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0390
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0390】
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】