(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-16
(54)【発明の名称】スラリー及び方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20240409BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568221
(86)(22)【出願日】2022-04-15
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 US2022071757
(87)【国際公開番号】W WO2022236220
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515167067
【氏名又は名称】エー123 システムズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】A123 Systems LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ジャン リンホン
(72)【発明者】
【氏名】チェン シャオルイ
(72)【発明者】
【氏名】フー シャオチェン
(72)【発明者】
【氏名】ワン シーチン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ユ テファン
(72)【発明者】
【氏名】ジオネット ポール
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA02
5H050DA09
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA01
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5H050EA10
5H050EA12
5H050EA15
5H050EA23
5H050EA24
5H050EA28
5H050FA13
5H050FA16
5H050GA02
5H050GA05
5H050GA10
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA09
5H050HA10
5H050HA14
(57)【要約】
リチウムイオンバッテリのためのカソードプレリチオ化層を形成するための方法及びシステムが提供される。一例では、カソードプレリチオ化層を形成するためのスラリーは、ナノスケールカソードプレリチオ化試薬の均一な分散体を含む溶媒を含む。スラリーは、多孔質カソード活物質層上に流し込まれ、乾燥され、カレンダー成形されて、カソードプレリチオ化層を形成する。いくつかの例では、スラリーは、100s
-1の剪断速度で最大5000cPの粘度を有する。このようにして、カソードプレリチオ化層と多孔質カソード活物質層との間の層間剥離及び界面インピーダンスは、非多孔質又は低多孔率カソード活物質層上に流し込まれたより大きいスケールのカソードプレリチオ化試薬を有するより高い粘度のカソードプレリチオ化層と比較して低減する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソードプレリチオ化層を形成するためのスラリーであって、前記スラリーが、
溶媒中のナノスケールカソードプレリチオ化試薬の均一な分散体を含み、
前記スラリーが、100s
-1の剪断速度で最大5000cPの粘度を有する、スラリー。
【請求項2】
前記スラリーが、100~5000cPの粘度を有する、請求項1に記載のスラリー。
【請求項3】
前記スラリーが、10~100cPの粘度を有する、請求項1に記載のスラリー。
【請求項4】
前記スラリーが、10~70%の固形分を有する、請求項1に記載のスラリー。
【請求項5】
前記ナノスケールカソードプレリチオ化試薬が、Li
3N、Li
2O、Li
2O
2、Li
2S、Li
5FeO
4、Li
2CO
3、Li
2C
2O
4、Li
2S/Mナノ複合材料、LiF/Mナノ複合材料、及びLi
2O/Mナノ複合材料のうちの1つ以上から構成され、Mが、1つ以上の金属である、請求項1に記載のスラリー。
【請求項6】
前記均一な分散体が、前記ナノスケールカソードプレリチオ化試薬の分解を触媒するカソード触媒を更に含み、前記カソード触媒が、1つ以上の非リチウム化金属酸化物若しくは非リチウム化金属ホスファートから構成される不活性カソード触媒、及び/又は1つ以上のリチウム金属酸化物若しくはリチウム金属ホスファートから構成される活性カソード触媒を含む、請求項1に記載のスラリー。
【請求項7】
前記カソード触媒が、前記スラリーの50重量%以下で含められ、
追加のカソード活物質が、含められていない、請求項5に記載のスラリー。
【請求項8】
カソード触媒が、含められていない、請求項1に記載のスラリー。
【請求項9】
前記均一な分散体が、結合剤を更に含み、前記結合剤が、PAN、PEG、PVDF、PTFE、PHFP、PMMA、PAA、ポリ(4-ビニルピリジン)、ポリビニルピロリドン、CMC誘導体、又はそれらのコポリマーのうちの1つ以上から構成されている、請求項1に記載のスラリー。
【請求項10】
結合剤が、含められていない、請求項1に記載のスラリー。
【請求項11】
前記均一な分散体が、導電性炭素添加剤を更に含み、前記導電性炭素添加剤が、カーボンブラック、カーボン繊維、カーボンナノ粒子、CNT、酸化グラフェン、及びグラフェンのうちの1つ以上から構成されており、前記溶媒が、DMF、NMP、DMAc、DMSO、MeCN、THF、及びトルエンのうちの1つ以上から構成されている、請求項1に記載のスラリー。
【請求項12】
リチウムイオンバッテリであって、
正極、負極、及び前記正極と負極との間に挟まれたセパレータを備え、
前記正極は、
正極集電体及び多孔質正極活物質層を含む正極基板であって、前記多孔質正極活物質層が、前記正極集電体の第2の側面の反対側の前記正極集電体の第1の側面にコーティングされており、前記正極集電体の前記第2の側面が、前記セパレータに面する、正極基板と、
前記正極集電体の反対側の前記多孔質正極活物質層上にコーティングされたプレリチオ化層であって、前記プレリチオ化層が、プレリチオ化試薬と1つ以上の添加剤との均一な分散体から構成されている、プレリチオ化層と、を備え、
前記多孔質正極活物質層及び前記プレリチオ化層が、別個のスラリーベースのコーティングとして形成され、
前記多孔質正極活物質層の多孔率が、40%超である、リチウムイオンバッテリ。
【請求項13】
前記1つ以上の添加剤が、プレリチオ化の間の前記プレリチオ化試薬の分解を触媒する触媒、結合剤、及び導電性炭素添加剤のうちの1つ以上を含む、請求項12に記載のリチウムイオンバッテリ。
【請求項14】
前記プレリチオ化層が、最大200μmの全厚を有し、
前記プレリチオ化層が、最大範囲まで前記多孔質正極活物質層の上に延在し、かつ/又は最大浸透深さまで前記多孔質正極活物質層内に浸透し、
前記最大範囲及び前記最大浸透深さの合計が、前記全厚に等しい、請求項12に記載のリチウムイオンバッテリ。
【請求項15】
方法であって、
均質な混合物を粉砕して、カソードプレリチオ化スラリーを形成することであって、前記均質な混合物が、カソードプレリチオ化試薬を含む、形成することと、
前記カソードプレリチオ化スラリーを、カソード集電体上にコーティングされた多孔質カソード活物質層上に流し込んで、スラリーコーティングされたカソード基板を形成することと、
前記スラリーコーティングされたカソード基板を乾燥させることと、
前記乾燥したスラリーコーティングされたカソード基板をカレンダー成形することと、を含み、
前記カソードプレリチオ化スラリーが、100s
-1の剪断速度で最大5000cPの粘度を有し、
前記多孔質カソード活物質層が、前記カソードプレリチオ化スラリーを流し込む前に、追加の別個のスラリーを前記カソード集電体上に流し込むことによって形成される、方法。
【請求項16】
前記カソードプレリチオ化試薬が、粒子形態にあり、
前記均質な混合物を粉砕することが、前記カソードプレリチオ化試薬を300nm以下のD50サイズに粉砕することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記多孔質カソード活物質層は、前記カソードプレリチオ化スラリーがその上に流し込まれる前に乾燥している、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記多孔質カソード活物質層は、前記カソードプレリチオ化スラリーがその上に流し込まれる前に湿っており、
前記スラリーコーティングされたカソード基板が乾燥されるとき、前記多孔質カソード活物質層の多孔率が増加する、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記スラリーコーティングされたカソード基板が、20~300℃の温度で乾燥される、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記均質な混合物が、前記カソードプレリチオ化試薬とともに非水溶媒中に均一に分散された1つ以上の添加剤を更に含み、前記1つ以上の添加剤が、カソード触媒、結合剤、及び導電性炭素添加剤のうちの1つ以上を含む、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は、2021年5月6日に出願された「METHODS AND SYSTEM FOR CATHODE PRE-LITHIATION LAYER」と題された米国仮出願第63/185,297号の優先権を主張する。上記の出願の全体の内容は、全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書は、概して、特に、リチウムイオンバッテリのための、スラリーベースのカソードプレリチオ化層のための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン二次バッテリ、又はリチウムイオンバッテリは、家電製品、無停電電源装置、輸送、定置型アプリケーションなどを含む幅広い用途で広く使用されている。リチウムイオンバッテリは、バッテリ充電中に、正極活物質(例えば、リチウム挿入/挿入解除物質)を含む正極又はカソードから、負極又はアノードにLi+イオンを通過させ、次いで、バッテリ放電中にLi+イオンをアノードからカソードに戻して通過させることによって機能する。充電/放電プロセスの結果は、第1の充電サイクル中のアノード上における固体電解質界面(SEI:solid electrolyte interphase)層の形成である。SEI層は、形成プロセスが、無視できないLi+消費(特にシリコンベースのアノードで)を結果的にもたらすため、電気化学的性能に悪影響を及ぼす可能性がある。したがって、SEI形成は、リチウムイオンバッテリの第1のサイクルクーロン効率(FCE:first-cycle coulombic efficiency)を低下させ、より低い容量及びより低い初期エネルギー密度、したがって、不十分なサイクル性能を結果的にもたらす。
【0004】
アノードのSEI形成に起因する低FCE及び結果として生じる容量及び初期エネルギー密度損失に対抗するために、プレリチオ化アプローチが、最初の充電/放電の前又は最中に、アノードに余分なLi+イオンを提供するために採用される。プレリチオ化は、アノードの化学処理、又はカソードで比較的高い比容量及び体積容量を有する犠牲的なプレリチオ化試薬の組み込みなどの、いくつかの方式で達成される。後者の場合を発展させると、犠牲的なプレリチオ化試薬は、犠牲的なプレリチオ化試薬によってより大きい割合のLi+イオンが提供されるように、カソードに添加され、これは、同じフルセル容量を達成するためのカソードの減少した総質量及び体積、したがって、改善されたエネルギー密度を結果的にもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アノードプレリチオ化技術と比較して、カソードプレリチオ化は、安全性及びスケーラビリティの観点の両方から有利であり、安全性に関して、カソードプレリチオ化は、揮発性Li金属の取り扱いを伴わず、スケーラビリティに関して、カソードプレリチオ化は、比較的容易に既存のカソード製造プロセスに組み込まれてもよい。しかしながら、カソード活物質層スラリー内へのカソードプレリチオ化試薬の直接含有は、他の問題に悩まされる。一例として、いくつかのカソードプレリチオ化試薬は、水分に対して比較的敏感であり、所望のバッテリ動作電圧ウィンドウの前に、そのようなカソードプレリチオ化試薬の劣化に潜在的につながる(例えば、Li+がアノードに提供される場合)。別の例として、いくつかのカソードプレリチオ化試薬は、一般的な結合剤[例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)]と不適合であり、スラリーゲル化を結果的にもたらし、それによって、処理不能なスラリー又は比較的低品質のカソードコーティング(例えば、低接着性を有する)を結果的にもたらす。更に別の例として、いくつかのカソードプレリチオ化試薬は、一般的なスラリー溶媒[例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)]と混合できず、そのようなスラリー溶媒内におけるそのようなカソードプレリチオ化試薬の保持及び分散を困難にする。
【0006】
1つの代替例は、別個のスラリーベースのコーティングにカソードプレリチオ化試薬を塗布することを含み、それによって、少なくとも、結合剤の選択肢の観点から柔軟性を増加させる(例えば、カソード活物質及び一般的なカソードスラリーの他の成分との結合剤親和性は、相対的な重要性が低下する場合がある)。しかしながら、水分感受性及びある程度の溶媒選択は、そのようなスラリーベースのコーティングをカソードに容易に含めることを妨げるものとして残してもよい。更に、予め形成されたカソード基板(例えば、カソード集電体上に配設されたカソード活物質層)上でスラリーベースのコーティングを層状にすることによって、追加の界面相互作用が、高品質の積層並びにイオン及び電子伝導性に対する障害を提示する場合がある。この方式における不適切なコーティングはまた、不適切な設計(例えば、高い厚さ、あまり効果的でないコーティングプロセスなど)又は配合物(例えば、不親和性組成物など)を有する追加のカソードプレリチオ化層に起因するインピーダンスの増加によって引き起こされ、望ましくない低い放電容量を結果的にもたらす場合がある。更に、カソードプレリチオ化層とカソード基板との間のそのような界面インピーダンス(カソードプレリチオ化層内のインピーダンスに加えて)は、リチウムイオンバッテリの全体的なサイクル寿命及び電力性能を損なう可能性がある。不適切なコーティングに起因する他の問題は、カソード基板からのその後のカソードプレリチオ化の層間剥離又は粉砕(例えば、機械的完全性の喪失)を含み、これは、リチウムイオンバッテリに含まれるカソード基板又はセパレータの細孔を閉塞し、同時にLiイオン経路を閉塞し、インピーダンスの増加に起因する損なわれた電気化学的性能又はセル内の内部短絡に起因するサイクル不能なセルに潜在的につながる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書の発明者らは、上記の問題を識別し、それらを少なくとも部分的に解決するための解決策を決定した。一例では、カソードプレリチオ化層は、スラリーベースのプロセスでカソード基板に適用され、処理パラメータは、結果として生じるカソードの電気化学的性能及び構造安定性を最適化するように調整される。いくつかの例では、カソードプレリチオ化層を形成するためのプレリチオ化スラリーは、カソードプレリチオ化試薬を溶媒中で十分な持続時間、混合及び粉砕して、カソードプレリチオ化試薬を全体に均一に分散させることによって形成される。例示的な実施形態では、カソードプレリチオ化試薬は、カソードプレリチオ化試薬の凝集を低減することによって結果として生じるプレリチオ化スラリーの均質性を更に改善するようにナノスケール寸法に粉砕され、それによって、カソードプレリチオ化層の全体的な機械的完全性を改善し、カソードプレリチオ化層とカソード基板との間の界面インピーダンスを低減する。
【0008】
いくつかの例では、カソードプレリチオ化試薬は、溶媒中でカソードプレリチオ化試薬を混合及び粉砕する前に不活性環境で予備粉砕され、それによって、プレリチオ化スラリーの形成中のカソードプレリチオ化試薬の水分曝露を(例えば、後続の粉砕の持続時間を短縮することによって)低減する。いくつかの例では、カソード触媒、結合剤、及び導電性炭素添加剤のうちの1つ以上が、プレリチオ化スラリーに添加され、カソードプレリチオ化試薬と均質に混合されて、それらとの接触を促進する。しかしながら、特定のカソードプレリチオ化試薬は、カソード触媒なしで分解する。更に、以下に説明されるように、カソードプレリチオ化層は、任意の結合剤なしでカソード基板に十分に接着し、コーティングする(したがって、結合剤親和性に関する潜在的な問題を排除する)。
【0009】
カソード基板は、比較的高い多孔率のカソード活物質層を含むように製造される。更に、プレリチオ化スラリーの組成物及び全固形分は、プレリチオ化スラリーの結果的に得られる粘度を低下させるように制御されてもよい。カソード活物質層の高多孔率を、プレリチオ化スラリーの低粘度とペアリングすることによって、カソードプレリチオ化試薬のナノスケール寸法に加えて、カソード活物質層上のプレリチオ化スラリーの後続のコーティングが、カソード活物質層の少なくともいくつかの細孔がプレリチオ化スラリーによって浸透されることを結果的にもたらす場合がある。いくつかの例では、カソード活物質層へのカソードプレリチオ化層の少なくとも一部分の多孔質浸透によってもたらされる構造安定性は、結合剤の有無にかかわらず、層間接着に十分であってもよい。したがって、そのような浸透の結果として、界面インピーダンス及び層間剥離の問題は、重大性が低減されるか、又は実質的に排除される。更に、カソードプレリチオ化層の全厚を追加的に制限することは、層間剥離、並びに水分暴露(プレリチオ化スラリーのより短い乾燥持続時間、したがって、より短い全体的な処理持続時間に起因して)及びそれを通るインピーダンスを更に制限し、電気化学的性能を更に改善する。
【0010】
一例では、カソードプレリチオ化層を形成するためのスラリーは、溶媒中のナノスケールカソードプレリチオ化試薬の均一な分散体を含み、スラリーは、100s-1の剪断速度で最大5000cPの粘度を有してもよい。このようにして、溶媒及び結合剤の不親和性は、カソード活物質層の形成に採用されるものとは別個のスラリー中の均一に分散されたカソードプレリチオ化試薬のナノスケール寸法を利用することによって緩和されるか、又は完全に排除される。更に、界面インピーダンス及び層間剥離から生じるバッテリ性能問題が、カソード活物質層がスラリーとの界面に隣接する比較的高い多孔率を有する例では、スラリーをカソード活物質層上にコーティングするときに、回避される。
【発明の効果】
【0011】
上記の要約は、詳細な説明で更に説明される概念の選択を簡略化された形態で導入するために提供されることが理解されるべきである。それは、特許請求の範囲の主題の重要な又は本質的な特徴を識別することを意味するものではなく、その範囲は、詳細な説明に続く特許請求の範囲によって一意に定義される。更に、特許請求の範囲の主題は、上記又は本開示の任意の部分で言及される任意の欠点を解決する実装に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】導電性基板上に順次配設されるカソード活物質及びカソードプレリチオ化層を有するプレリチオ化されたカソードを含むリチウムイオンバッテリパックを製造するための例示的なプロセスの概略図を示す。
【
図2A】カソードプレリチオ化層を含む第1の例示的なカソード構造の概略図を示す。
【
図2B】カソードプレリチオ化層を含む第2の例示的なカソード構造の概略図を示す。
【
図2C】カソードプレリチオ化層を含む第3の例示的なカソード構造の概略図を示す。
【
図2D】カソードプレリチオ化層を含む第4の例示的なカソード構造の概略図を示す。
【
図3A】第1の例示的なカソードプレリチオ化層のコーティング形態の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
【
図3B】第2の例示的なカソードプレリチオ化層のコーティング形態の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。
【
図4】スラリーベースのカソードプレリチオ化層を含むプレリチオ化されたカソードを形成するための方法のフローチャートを示す。
【
図5A】カソードプレリチオ化スラリーの浸透深さと粘度との間の関係のプロットを示す。
【
図5B】カソードプレリチオ化スラリーの浸透深さと多孔率との間の関係のプロットを示す。
【
図5C】カソードプレリチオ化スラリーの粘度と多孔率との間の関係のプロットを示す。
【
図6】例示的なリチウムイオンバッテリにおける100サイクルにわたる容量保持のプロットを示す。
【
図7】例示的な多孔質カソード活物質層の断面のSEM画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の説明は、カソードプレリチオ化層及びそのためのスラリーを形成するための方法及びシステムに関する。
図1を参照して本明細書に説明されるように、カソードプレリチオ化層が、カソード基板に塗布されて、リチウムイオン二次バッテリ(本明細書では「リチウムイオンバッテリ」と称される)のためのプレリチオ化されたカソードを形成する。カソードプレリチオ化層は、カソード基板上にスラリーを流し込み、乾燥させ、かつカレンダー成形することによって形成され、スラリーは、全体に均一に分散されたナノスケールプレリチオ化試薬を含む。ナノスケールプレリチオ化試薬の均一な分散体は、その比較的小さい物理的寸法と組み合わせて、最終的に形成されたカソードプレリチオ化層の増加した機械的完全性、並びにスラリー処理の容易化及び全体的なスラリー品質の増加を結果的にもたらす。更に、いくつかの例では、スラリーは、溶媒中でナノスケールプレリチオ化試薬と均質に混合及び粉砕された、カソード触媒、結合剤、及び/又は導電性炭素添加剤などの、1つ以上の添加剤を更に含んでもよい。したがって、ナノスケールプレリチオ化試薬と1つ以上の添加剤との間の増加した接触は、プレリチオ化スラリー及び最終的に形成されたカソードプレリチオ化層で実現される。
【0014】
本明細書で使用される場合、スラリー又は電極層中の1つ以上の成分の分散体又は混合物を指すときの「均一な」又は「均質な」は、スラリー又は電極層の任意の所与の部分における成分の実質的に同様の分布を説明するために使用される。更に、「実質的に」は、本明細書において「効果的に」を意味する修飾語として使用される。更に、本明細書で使用される場合、「ナノスケール」は、1μm未満である物理的寸法を指す。例えば、ナノスケール長、ナノスケール面積、及びナノスケール体積は、それぞれ、1μm、1μm2、及び1μm3未満である。
【0015】
更なるスラリー処理パラメータは、スラリー処理の全体的な持続時間が最小化されるように調整され、それによって、ナノスケールプレリチオ化試薬の水分曝露を制限する。一例として、ナノスケールプレリチオ化試薬は、無水溶媒又は不活性雰囲気中で予め粉砕されて、ナノスケールプレリチオ化試薬を1つ以上の添加剤と混合及び粉砕する後続の持続時間を短縮することができる。別の例として、プレリチオ化スラリーは、乾燥の持続時間が最小化されるように、比較的低い負荷で(例えば、カソードプレリチオ化層の比較的小さい全厚を得るために)カソード基板上に流し込まれる。
【0016】
スラリーの組成物及び全固形分は、その比較的低い粘度(例えば、100s
-1の剪断速度で10~5000cP)を実現するように選択される。更に、いくつかの例では、スラリーが流し込まれ、カレンダー成形され、乾燥されるカソード基板は、導電性基板上に配設された多孔質カソード活物質層を含んでもよい。本明細書で使用される場合、「カソードプレリチオ化層」及び関連用語、並びに「カソード活物質層」及び関連用語は、少なくとも以下によって区別される。(i)カソードプレリチオ化層及びカソード活物質層は、別個のスラリーから形成され、カソードの形成中に別個に塗布される、並びに/又は(ii)カソードプレリチオ化層は、リチウムイオンバッテリのプレリチオ化及びリチウムイオンインターカレーション/デインターカレーションを増強するためにカソード活物質層と並行して機能するように配合される(例えば、カソードプレリチオ化層は、バッテリサイクル中にLiイオンインターカレーション/デインターカレーションを単独で駆動するためにカソード活物質層から完全に独立して機能しない場合がある)。例えば、
図2A~
図2Dに示されるように、ナノスケールプレリチオ化試薬を含む(低粘度)スラリーは、多孔質カソード活物質層内の隣接する細孔に浸透し、その結果、十分な層間接着が、スラリーから形成されたカソードプレリチオ化層と多孔質カソード活物質層との間に達成され、界面インピーダンス及び層間剥離が軽減される(本明細書で使用される際、「隣接する細孔」は、第1の電極層と接触又は浸透する第2の電極層に近接して位置する第1の電極層の空孔を説明し、それらの間に介在する細孔が位置しない)。
【0017】
スラリーの粘度、多孔質カソード活物質層の多孔率、及びスラリーから、多孔質カソード活物質層内に形成されたカソードプレリチオ化層の浸透深さの間の対関係は、
図5A~
図5Cに図示されたプロットによって例示される。
図3A及び
図3Bは、高及び低粘度スラリーを塗布されたプレリチオ化層の層間接着の相対的な差を例示する走査型電子顕微鏡(SEM)画像を図示する。
図7は、多孔質カソード活物質層の断面のSEM画像を図示し、その中の細孔の相対的なサイズ関係及びそのような細孔間の距離を例示する。ナノスケールプレリチオ化試薬の均一な分散体を含むスラリーを形成し、スラリーを流し込み、乾燥させ、及びカレンダー成形して、多孔質カソード活物質層上にカソードプレリチオ化層を形成して、それによって、所望の層間接着を達成し、比較的低い界面インピーダンス、及びカソードプレリチオ化層全体にわたるより低いインピーダンスを維持する(例えば、カソードプレリチオ化層の全厚を制限することによって)ための方法が、
図4に詳述されている。したがって、リチウムイオンバッテリパックのリチウムイオンセルに含まれるプレリチオ化されたカソードは、
図4の方法によって形成される。プレリチオ化試薬を含まないカソードを含む例示的なリチウムイオンバッテリに対する、プレリチオ化されたカソードを含む例示的なリチウムイオンバッテリのサイクル性能は、
図6に示されるプロットによって例示される。
【0018】
ここで
図1を参照すると、概略
図100は、リチウムイオンバッテリパック132を製造するための例示的なプロセスを図示する。リチウムイオンバッテリパック132は、複数のリチウムイオンセル130を含み、複数のリチウムイオンセル130の各々は、カソードプレリチオ化スラリー製造プロセス110を介して形成されたプレリチオ化された正極116(本明細書において「プレリチオ化されたカソード」又は「カソード」とも称される)を含んでもよい。
図1は、各々がリチウムイオンセル130の層を形成するプレリチオ化されたカソード116、セパレータ118、及びアノード120を含むリチウムイオンセル130のうちの1つを示す。
図1に例示されるリチウムイオンセル130は、代表的な非限定的な例であることを理解されたい。他の例では、リチウムイオンセル130は、プレリチオ化されたカソード116、セパレータ118、及びアノード120の繰り返し層から形成されたスタックを含み、層は、複数のリチウムイオンセル130の所望の特性に基づいて決定された量で繰り返される。
【0019】
カソードプレリチオ化スラリー製造プロセス110は、プレリチオ化試薬101と1つ以上の添加剤102とを溶媒106中で混合及び粉砕して、プレリチオ化スラリー112を形成することを含んでもよい。プレリチオ化試薬101は、プレリチオ化されたカソード116に組み込まれたときに、リチウムイオンバッテリパック132の初期充電前又は初期充電中(例えば、Li+イオンがプレリチオ化されたカソード116からアノード120に流れるとき)に分解するように選択される、カソードプレリチオ化試薬を含んでもよい。例えば、プレリチオ化試薬101は、窒化リチウム(Li3N)、酸化リチウム又はリチア(lithia)(Li2O)、過酸化リチウム(Li2O2)、硫化リチウム(Li2S)、酸化リチウム鉄(Li5FeO4又はLFO)、及び変換型ナノ複合材料のうちの1つ以上から構成されてもよい。変換型ナノ複合材料は、1つ以上の金属と1つ以上のリチウム化合物[例えば、Li2S、フッ化リチウム(LiF)、及びLi2O]とのブレンドであり、1つ以上の金属と1つ以上のリチウム化合物との間の変換反応は、Li+イオン及び対応する金属化合物(例えば、金属硫化物、金属フッ化物、又は金属硫化物)を放出する。一例では、変換型ナノ複合材料は、Li2S/Mナノ複合材料、LiF/Mナノ複合材料、及びLi2O/Mナノ複合材料(Mは、Co、Ni、Mn、及び/又はFeなどの、1つ以上の金属である)のうちの1つ以上を含んでもよい。いくつかの例では、プレリチオ化試薬101は、粒子の形態にあり、粒子の各々は、その上に形成された表面不純物層を有するコア物質を含む。そのような一例では、コア物質は、Li2O2、Li2O、及びLi2Sのうちの1つ以上を含んでもよく、表面不純物層は、水酸化リチウム(LiOH)及び炭酸リチウム(Li2CO3)のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0020】
プレリチオ化試薬101は、粒子状物質又は粒子の形態にある。プレリチオ化試薬101粒子は、ある範囲のサイズを有してもよく、又はサイズが近いものであってもよい。プレリチオ化スラリー112の調製中に、プレリチオ化試薬101粒子は、ナノスケールサイズに粉砕される。一例として、プレリチオ化試薬101粒子は、プレリチオ化スラリー112内で1μm以下のD50サイズ範囲を有してもよい(例えば、粉砕後)。いくつかの例では、プレリチオ化試薬101粒子は、プレリチオ化スラリー112内で300nm以下のD50サイズ範囲を有してもよい。いくつかの例では、プレリチオ化試薬101粒子は、プレリチオ化スラリー112内で150nm以下のD50サイズ範囲を有してもよい。
【0021】
いくつかの例では、プレリチオ化試薬101粒子は、実質的に丸くてもよい。追加的又は代替的な例では、プレリチオ化試薬101粒子は、粒子がほぼプレート形状であるなどの、フレークであってもよい。追加的又は代替的な例では、プレリチオ化試薬101粒子は、粒子が共通の幾何学的形状に近似せず、粒子が互いに対して形状及び/又はサイズが変動するように、不規則に形状化されてもよい。
【0022】
プレリチオ化試薬101の粉砕は、単一の粉砕工程又は複数の粉砕工程で実施される。例えば、プレリチオ化試薬101は、溶媒106に添加される前に、第1の粉砕工程で少なくとも部分的に粉砕(「予備粉砕」)されてもよく、プレリチオ化試薬101は、溶媒106に添加された後の第2の粉砕工程で更に粉砕されてもよい。あるいは、プレリチオ化試薬101は、溶媒106への添加後にのみ粉砕されてもよい。
【0023】
プレリチオ化試薬101は、最終的に形成されたプレリチオ化スラリー112中の物理的固体の最大100%であってもよい(例えば、プレリチオ化試薬101は、以下で議論されるように、溶媒106中に分散された唯一の固体成分であってもよい)。いくつかの例では、プレリチオ化試薬101は、プレリチオ化スラリー112内の物理的固体の50%以下又は30~90%であってもよい。
【0024】
1つ以上の添加剤102は、例えば、カソード触媒103、導電性添加剤104、及び結合剤105のうちの1つ以上を含んでもよい。示されるように、1つ以上の添加剤102は、1つ以上の添加剤102のうちの少なくとも1つが本開示の1つ以上の実施形態において省略されることを示す、点線で概略的に図示される。一例として、プレリチオ化試薬101は、実用的なカソード電位でカソード触媒103なしで分解する、Li3Nなどの化合物を含んでもよい。そのような例では、カソード触媒103は、プレリチオ化スラリー112又はリチウムイオンバッテリパック132に添加されなくてもよく、又は含められなくてもよい(例えば、初期サイクルの前に)。別の例として、結合剤105は、カソード基板内への最終的に形成されたプレリチオ化スラリー112の十分な浸透に基づいて省略されてもよい(以下に議論されるように)。そのような例では、結合剤105は、プレリチオ化スラリー112に添加されなくてもよく、又は含められなくてもよい。
【0025】
いくつかの例では、カソード触媒103は、プレリチオ化試薬101の前、それとともに、又はその後に溶媒106に添加される。カソード触媒103は、最終的に形成されたリチウムイオンバッテリパック132のプレリチオ化の間に十分なLi+がそこから放出されるように、プレリチオ化試薬101の分解を触媒する任意の物質を含んでもよい。更に、カソード触媒103は、最終的に形成されたリチウムイオンバッテリパック132の第1の充電サイクル中に消費されない可能性があり、かつリチウムイオンバッテリパック132の寿命中に完全に分解しない可能性がある物質を含んでもよい(そのため、少なくともいくつかの残留カソード触媒103は、初期充電サイクルの後にリチウムイオンバッテリパック132に残る場合がある)。
【0026】
いくつかの例では、カソード触媒103は、リチウムベースの活性カソード触媒を含んでもよく、リチウムベースの活性カソード触媒は、充電サイクル中にリチウムイオンを可逆的に放出及び受容し、プレリチオ化試薬101の分解を触媒する任意のリチウム化合物(例えば、リチウム挿入/挿入解除化合物)である[特定の例では、リチウムベースの活性カソード触媒は、脱リチウム化状態にある間(例えば、リチウムベースの活性カソード触媒からのリチウムイオンの放出/挿入解除後)、プレリチオ化試薬101の分解を触媒する]。例えば、カソード触媒103は、1つ以上のリチウム金属ホスファート[例えば、リン酸鉄リチウム(LFP)又はリチウムマンガンリン酸鉄(LMFP)などの、1つ以上のリチウム遷移金属ホスファート]、及び/又は1つ以上のリチウム金属酸化物[例えば、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)などの、1つ以上のリチウム遷移金属酸化物]から構成されてもよい。いくつかの例では、カソード触媒103は、非リチウム金属ベースの不活性カソード触媒を含んでもよい。例えば、カソード触媒103は、1つ以上の非リチウム化金属窒化物、1つ以上の二元非リチウム化金属酸化物/窒化物系、1つ以上の三元非リチウム化金属酸化物/窒化物系、1つ以上の非リチウム化金属ホスファート[例えば、鉄ホスファート(FP)又はマンガン鉄ホスファート(MFP)などの、1つ以上の非リチウム化遷移金属ホスファート]、及び/又は1つ以上の非リチウム化金属酸化物[例えば、コバルト(II、III)酸化物(Co3O4)、ニッケル(II)酸化物(NiO)、鉄(II、III)酸化物(Fe3O4)、又はコバルトフェライト(CoFe2O4)などの、1つ以上の非リチウム化金属酸化物]から構成されてもよい。一例では、カソード触媒103は、部分的に充填されたd軌道及び/又はf軌道を有する遷移金属ベースの化合物を含んでもよく、これは、電子遷移を誘発し、プレリチオ化試薬101の分解のための活性化エネルギーを低下させることができる。
【0027】
いくつかの例では、導電性添加剤104は、プレリチオ化試薬101の前に、それとともに、又はその後、溶媒106に添加される。導電性添加剤104は、電子伝導率を増加させ、カソード基板の調製(例えば、そのカソード活物質層の形成)に利用される炭素の総量を低減させる、炭素質導電性添加剤を含んでもよい。いくつかの例では、導電性添加剤104は、カーボンブラック、カーボン繊維、カーボンナノ粒子、カーボンナノチューブ(CNT)、グラフェン、及び酸化グラフェンのうちの1つ以上から構成されてもよい。
【0028】
導電性添加剤104は、粒子状物質又は粒子の形態にある。導電性添加剤104粒子は、ある範囲のサイズを有してもよく、又はサイズが近いものであってもよい。プレリチオ化スラリー112の調製中に、導電性添加剤104粒子は、所定のサイズに粉砕される。一例として、導電性添加剤104粒子は、プレリチオ化スラリー112内で0.5μm以下のD50サイズ範囲を有してもよい(例えば、粉砕後)。追加的又は代替的な例として、導電性添加剤104粒子は、プレリチオ化スラリー112内で150nm以下のD50サイズ範囲を有してもよい。いくつかの例では、導電性添加剤104粒子は、実質的に丸くてもよい。追加的又は代替的な例では、導電性添加剤104粒子は、粒子がほぼプレート形状であるなどの、フレークであってもよい。追加的又は代替的な例では、導電性添加剤104粒子は、粒子が共通の幾何学的形状に近似せず、粒子が互いに対して形状及び/又はサイズが変動するように、不規則に形状化されてもよい。追加的又は代替的な例では、導電性添加剤104は、繊維の形態にあってもよい。
【0029】
一例として、導電性添加剤104は、最終的に形成されたプレリチオ化スラリー112内の物理的固体の最大20%であってもよい。いくつかの例では、導電性添加剤104は、プレリチオ化スラリー112内の物理的固体の20%以下又は5~25%であってもよい。
【0030】
いくつかの例では、結合剤105は、プレリチオ化試薬101の前に、それとともに、又はその後、溶媒106に添加されてもよい。結合剤105は、一般的なカソード活物質との親和性にかかわらずに選択された化合物を含んでもよいため、結合剤105は、組成の点で柔軟である(例えば、カソード触媒103が活性のリチウムベースのカソード触媒を含まない例において)。いくつかの例では、例えば、結合剤105は、最終的に形成されたプレリチオ化されたカソード116が充電/放電サイクル中に膨張するときにNMCを結合することができない場合がある。例えば、結合剤105は、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリヘキサフルオロプロピレン(PHFP)、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)、ポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリ(4-ビニルピリジン)、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース(CMC)誘導体、又は任意の上記の化合物のコポリマーのうちの1つ以上から構成されてもよい。いくつかの例では、結合剤105の分子量は、50kDa~5MDaであってもよい。他の例では、結合剤105の分子量は、500kDa~2MDaであってもよい。いくつかの例では、結合剤105は、溶媒106に実質的に溶解するように選択されてもよい(例えば、結合剤105は、PVDFであり、溶媒106は、NMPであってもよい)。
【0031】
例として、結合剤105は、最終的に形成されたプレリチオ化スラリー112内の物理的固体の最大15%であってもよい。いくつかの例では、結合剤105は、プレリチオ化スラリー112内の物理的固体の5%であってもよい。追加的又は代替的に、結合剤105は、プレリチオ化スラリー112内の物理的固体の5~20%であってもよい。追加的又は代替的に、結合剤105は、プレリチオ化スラリー112内で最大10%の濃度を有してもよい。
【0032】
いくつかの例では、溶媒106は、非水又は有機溶媒を含んでもよい。例えば、溶媒106は、ジメチルホルムアミド(DMF)、NMP、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル(MeCN)、テトラヒドロフラン(THF)、及びトルエンのうちの1つ以上から構成されてもよい。
【0033】
いくつかの例では、プレリチオ化スラリー112の全体的な組成物及び固形分は、その所望の粘度を達成するように調整されてもよい。一例として、プレリチオ化スラリー112の全体的な組成物は、1つ以上のプレリチオ化試薬101、1つ以上のカソード触媒103、導電性添加剤104、及び結合剤105を含んでもよい。追加的又は代替的な例として、プレリチオ化スラリー112の固形分は、10~70%又は10~40%であってもよい。一例では、プレリチオ化スラリー112は、100s-1の剪断速度で最大5000cPの比較的低い粘度を有してもよい。別の例では、プレリチオ化スラリー112は、100s-1の剪断速度で100~5000cPの粘度を有してもよい。別の例では、プレリチオ化スラリー112は、100s-1の剪断速度で10~5000cPの粘度を有してもよい。更に別の例では、プレリチオ化スラリー112は、100s-1の剪断速度で10cP~100cPの粘度を有してもよい。このようにプレリチオ化スラリー112を形成することによって、カソード基板上のプレリチオ化スラリー112のコーティング不良を結果的にもたらし、かつ最終的に形成される際にプレリチオ化されたカソード116内で層間分離するか、又は望ましくないほど高い界面インピーダンスを有し、より高い粘度が回避される。
【0034】
いくつかの例では、プレリチオ化スラリー112は、カソード活物質(例えば、その無視できる量よりも多い)を含んでもよい。一例では、プレリチオ化スラリー112に含められる唯一のカソード活物質は、カソード触媒103に含められる(例えば、プレリチオ化スラリー112の50重量%以下で)活性のリチウムベースのカソード触媒であってもよく、追加のカソード活物質がプレリチオ化スラリー112中に含まれなくてもよい。他の例では、カソード活物質が、プレリチオ化スラリー112中に含まれなくてもよい。
【0035】
いくつかの例では、プレリチオ化試薬101(任意選択的に1つ以上の添加剤102を含む)は、遊星遠心ミキサカップ又は他の容器内の溶媒106中で混合されてもよい。他の例では、混合は、より大きい規模で実施されてもよい(例えば、遊星、遠心、及び/又は回転ブレード混合)。いくつかの例では、混合は、溶媒106中の成分(例えば、プレリチオ化試薬101、1つ以上の添加剤102など)の均一な分散を達成するのに十分な持続時間(例えば、24時間)にわたって行われる。いくつかの例では、混合は、2000RPMで行われる。プレリチオ化試薬101のナノスケール寸法は、溶媒106中のその均一な分散と組み合わせて、(最終的に形成された)プレリチオ化されたカソード116の機械的完全性を改善することができる(例えば、プレリチオ化試薬101の凝集を回避し、その粒子間の相互作用を低減することによって)。
【0036】
更に、1つ以上の添加剤102が溶媒106中でプレリチオ化試薬101と混合される例では、プレリチオ化試薬101及び1つ以上の添加剤102の均一な分散体は、それらの間の増加した接触を促進することができる。加えて、プレリチオ化試薬101粒子のナノスケール寸法が、より大きい寸法を有する同様の形状の粒子と比較して全体の表面積を増加させるため、1つ以上の添加剤102と接触するためのより多くの機会が依然として提供される。プレリチオ化試薬101と1つ以上の添加剤102との間のそのようなより多くの接触は、最終的に形成されたリチウムイオンバッテリパック132の電気化学的性能を改善することができる。例えば、プレリチオ化試薬101粒子とカソード触媒103粒子との間により多くの接触が存在するとき、リチウムイオンバッテリパック132におけるプレリチオ化は、より効果的に触媒され、それに応じてより速い速度で進行することができる。
【0037】
したがって、プレリチオ化試薬101の均質な混合物又は溶液は、必要に応じて、溶媒106中の1つ以上の添加剤102を伴って、形成されてもよい。混合後、混合物は、プレリチオ化試薬101の粒子が、サイズを低減し(例えば、300nm未満に)、プレリチオ化試薬101の粒子のサイズ分布が狭くなるように、粉砕されてもよい。1つ以上の添加剤102が溶媒106に添加される例では、粉砕は、1つ以上の添加剤102の添加の前に(例えば、プレリチオ化試薬101のみが粉砕されるように)、又は1つ以上の添加剤102の添加の後に(例えば、1つ以上の添加剤102がプレリチオ化試薬101とともに粉砕されるように)、起こる場合がある。粉砕は、セラミック粉砕媒体などの不活性媒体を、均質な混合物とともに容積に添加することによって達成される。いくつかの例では、容積は、均質な混合物に含められる粒子の所望のサイズ及びサイズ分布を達成するのに十分な持続時間(例えば、24時間)、粉砕されてもよい。粉砕の持続時間が長くなるにつれて、容積に含められる粒子のサイズが減少し、容積に含められる粒子のサイズ分布が狭くなる場合がある。
【0038】
プレリチオ化スラリー製造プロセス110のいくつかの例では、プレリチオ化スラリー112は、スラリーコーティングされたカソード基板114を形成するために、カソード基板上に堆積されるか、又は流し込まれる。カソード基板は、その上に堆積されたカソード活物質層を有する導電性基板(本明細書において「集電体」、「正極集電体」、又は「カソード集電体」とも称される)を含んでもよい。したがって、プレリチオ化スラリー112は、カソード基板のカソード活物質層上に流し込まれる。他の例では、カソード基板は、プレリチオ化スラリー112がその上に直接流し込まれるように、導電性基板のみを含んでもよい。そのような例では、カソード活物質層は、そのプレリチオ化スラリー112が導電性基板とカソード活物質層との間に挟まれるように、流し込まれたプレリチオ化スラリー112上に形成されてもよい(プレリチオ化スラリー112は、カソード活物質層の形成前又は形成後に乾燥及びカレンダー成形されてもよい)。更に、そのような例では、結合剤105は、プレリチオ化スラリー112に含められ、カソード活物質層の成分を導電性基板に結合するように選択されてもよい。
【0039】
導電性基板又は集電体は、アルミ箔などの金属箔であってもよい。いくつかの例では、集電体は、アルミ箔であってもよく、1~20μmの厚さを有してもよい。いくつかの例では、集電体は、アルミ箔であってもよく、約10μmの厚さを有してもよい(本明細書で使用される場合、数値を参照するときの「約」は、5%以下の偏差を包含する)。
【0040】
図2A~
図2Dを参照して以下に詳細に議論されるように、カソード活物質層は、比較的高い多孔率(例えば、カソード活物質層がカレンダー成形されていないときなど、40%超)を有してもよい。そのような比較的高い多孔率は、プレリチオ化スラリー112の比較的低い粘度及びプレリチオ化試薬101のナノスケール寸法(他の添加剤に加えて、存在し、同様にナノスケール寸法に粉砕されている場合)と組み合わせて、プレリチオ化スラリー112による、その流し込み中のカソード活物質層の細孔の少なくとも部分的な浸透を可能にする。しかしながら、カソード基板内のプレリチオ化スラリー112の十分な保持及び浸透を考慮すると、相対的に低い粘度(例えば、100s
-1の剪断速度で10cP未満)は、比較的低い多孔率でカソード活物質層に塗布されたときに問題が少ない場合があるが、一方で、相対的に高い多孔率(例えば、40%超)を有するカソード活物質層は、比較的高い粘度を有するスラリーがそこに塗布されたときに問題が少ない場合がある。したがって、プレリチオ化スラリー112の粘度及びカソード活物質層の多孔率の選択は、当業者にさえ直ちに明らかではない可能性があり、広範な実験が、所望のスラリーの凝集、浸透、及びその後の層間接着のバランスをとるための最適な範囲を決定するために用いられる。
【0041】
カソード活物質層は、プレリチオ化スラリー112の流し込みの前に、別個のスラリーベースのコーティングとして、導電性基板上に調製及び堆積されるか、又は流し込まれる。例示的な実施形態では、カソード活物質スラリーは、プレリチオ化スラリー112とは別個に調製され、カソード基板上における(例えば、形成されたカソード活物質層上への)プレリチオ化スラリー112の流し込みの前に、カソード活物質層を形成するために導電性基板上に流し込まれる。一例では、プレリチオ化スラリー112は、カソード活物質スラリーよりも低い粘度を有してもよい。別の例では、プレリチオ化スラリー112は、カソード活物質層と実質的に同様の粘度を有してもよい。
【0042】
プレリチオ化スラリー112は、カソード基板上に堆積されるか、又は流し込まれる。例えば、カソード活物質スラリーの流し込みの後、プレリチオ化スラリー112は、最終的に形成される際に(例えば、カソード活物質スラリーの流し込み、乾燥、及びカレンダー成形後に)、流し込み(湿潤)カソード活物質スラリー又はカソード活物質層上に流し込まれる。一例では、プレリチオ化スラリー112は、スロットダイコーター又はドクターブレード法を利用して、ロールツーロールコーティングを介して所定の負荷で流し込まれる。追加的又は代替的に、プレリチオ化スラリー112は、押出コーティングプロセス、スピンコーティングプロセス、スプレーコーティングプロセス、及び/又はマイクログラビアコーティング方法を介して流し込まれる。
【0043】
いくつかの例では、プレリチオ化スラリー112がカソード基板上に堆積されて、スラリーコーティングされたカソード基板114を形成した後、溶媒106は、穏やかな加熱で乾燥されるか、又は蒸発される。穏やかな加熱は、スラリーコーティングされたカソード基板114を20~300℃の加熱温度に加熱することを含んでもよい。いくつかの例では、プレリチオ化スラリー112がその上に流し込まれて塗布される前に、カソード活物質層が同様の加熱温度(例えば、20~300℃)で乾燥される。しかしながら、他の例では、カソード活物質層の乾燥前に(例えば、カソード活物質層が依然として湿っている場合)、カソード活物質層上にプレリチオ化スラリー112を流し込むことによって、カソード活物質層上のプレリチオ化スラリー112の保持(及びカソード活物質層とプレリチオ化スラリー112から形成されたプレリチオ化層との間のその後の層間接着)が更に改善される。したがって、そのような例では、プレリチオ化スラリー112及びカソード活物質層は、単一の乾燥プロセスで一緒に乾燥される。いくつかの例では、スラリーコーティングされたカソード基板114が乾燥されたとき、カソード活物質層の多孔率が増加し、層間接着をなお更に改善する。一例として、カソード活物質層の多孔率は、乾燥中の加熱温度の上昇に伴って増加する。
【0044】
スラリーコーティングされたカソード基板114を乾燥させることから形成された乾燥したフィルム又はコーティングは、平滑なプレリチオ化層を得るために所定の密度にカレンダー成形されてもよく、プレリチオ化されたカソード116が形成される。更に、プレリチオ化スラリー112の流し込み、乾燥、及びカレンダー成形のパラメータ(例えば、持続時間、温度、方法など)を調整することによって、プレリチオ化試薬101の分解からのLi+イオン在庫の所望の増加、所望のサイクル寿命、所望のエネルギー密度、及びプレリチオ化されたカソード116の所望の全厚(これらのうちの全ては、プレリチオ化層の全厚に比例して依存する場合がある)などの、様々な用途固有のパラメータに基づいて所定の値又は値の範囲内に、プレリチオ化層の全厚が制御される。例えば、カレンダー成形後、プレリチオ化層の全厚は、200μm以下に制御される。
【0045】
更に、
図2A~
図2Dを参照して以下に詳細に説明されるように、プレリチオ化層は、最大範囲までカソード活物質層から離れて延在し、及び/又はプレリチオ化層は、最大浸透深さまでカソード活物質層に浸透し、最大範囲及び最大浸透深さの合計は、全厚に等しくてもよい。一例として、最大範囲及び最大浸透深さの各々は、プレリチオ化層がカソード活物質層の細孔に部分的に浸透する(例えば、プレリチオ化層の一部分のみがカソード活物質層の細孔に浸透する)ように、0μm超、かつ全厚未満であってもよい。別の例として、プレリチオ化層が、カソード活物質層と面共有接触し、かつカソード活物質層の細孔に浸透しなくてもよいように、最大範囲は、全厚に等しくてもよく、最大浸透深さは、0μmであってもよい。更に別の例として、最大範囲は、プレリチオ化層の全体が、カソード活物質層の細孔に浸透するように、0μmであってもよく、最大浸透深さは、全厚に等しくてもよい。
【0046】
このようにして、カソードプレリチオ化スラリー製造プロセス110は、溶媒106中で(1つ以上の添加剤102の有無にかかわらず)プレリチオ化試薬101を混合及び粉砕して、プレリチオ化スラリー112を形成することと、プレリチオ化スラリー112をカソード基板上にコーティングして、スラリーコーティングされたカソード基板114を形成することと、乾燥したフィルムを圧縮又はカレンダー成形することと、を含んでもよい。カソードプレリチオ化スラリー製造プロセス110内では、当業者によって企図されるように、追加の添加剤又はプロセスが含められるか、除去されるか、又は実質的に変更されてもよいことが理解されるであろう。
【0047】
上記に説明されるように、プレリチオ化層がプレリチオ化されたカソード116内のカソード活物質層に十分に接着されることを確保することによって、最終的に形成されたリチウムイオンバッテリパック132の電気化学的性能は、不適切に接着されたプレリチオ化層を有するプレリチオ化されたカソードを含むリチウムイオンバッテリパックと比較して改善される。更に、以下の表1に例示されるように、リチウムイオンバッテリパック132(プレリチオ化されたカソード116を含む)の電気化学的性能は、プレリチオ化試薬なしのカソードを含むリチウムイオンバッテリパックと比較して改善される。例えば、プレリチオ化試薬なしのカソードを含むリチウムイオンバッテリパックに対して等価な第1の充電容量(FCC)値を達成するために、プレリチオ化されたカソード116は、低減された総コーティング厚さ(例えば、カソード活物質層の厚さとプレリチオ化層の厚さの合計)、及びプレリチオ化試薬なしのカソードと比較して3.4g/ccのプレス密度における低減された負荷を有する。電気化学的性能の観点から、負荷を減少させること(例えば、カソード重量を減少させること)は、比エネルギー密度を増加させ、総コーティング厚さを減少させること(例えば、カソード厚さを減少させること)は、体積エネルギー密度を増加させる。一例では、
図3A及び
図3Bを参照して以下に詳細に議論されるように、リチウムイオンバッテリパック132の第1の充電容量(FCC)は、275mAh/g以上であり、リチウムイオンバッテリパック132の第1の放電容量(FDC)は、225mAh/g以上であり、リチウムイオンバッテリパック132の第1のサイクルクーロン効率(FCE)は、80%以上である。更に、プレリチオ化されたカソード116は、プレリチオ化試薬なしのカソードを含むリチウムイオンバッテリパック132と比較して、リチウムイオンバッテリパック132に対して改善されたサイクル寿命を付与する(例えば、
図6を参照)。
【表1】
例示的なリチウムイオンバッテリパックに含まれる例示的なカソードの負荷及び総コーティング厚さ。
【0048】
したがって、プレリチオ化されたカソード116は、リチウムイオンセルアセンブリ126への組み立てに好適である。リチウムイオンセルアセンブリ126を形成するプロセスは、プレリチオ化されたカソード116を対応する負極120(本明細書において「アノード」とも称される)とペアリングすることと、それらの間にセパレータ118を挟むことと、を含んでもよい。アノード120は、アノード活物質を含んでもよい。いくつかの例では、アノード活物質は、1つ以上のリチウム挿入アノード物質を含んでもよい。例えば、アノード活物質は、リチウム金属、グラファイト、グラフェン、リチウムチタン酸化物(Li4Ti5O12又はLTO)、シリコン、シリコン酸化物(SiOx)、スズ、又はスズ酸化物(SnOx)のうちの1つ以上を含んでもよい。セパレータ118は、プレリチオ化されたカソード116とアノード120とを分離して、それらの間の物理的接触を回避するように役立つ。セパレータ118は、比較的高い多孔率、電解溶液中の比較的優れた安定性、及び比較的優れた液体保持特性を有してもよい。セパレータ118のための例示的な物質は、ポリエチレン及び/若しくはポリプロピレンなどのポリオレフィン、又はセラミックコーティングされたポリマー物質から作製された不織布又は多孔質フィルムから選択されてもよい。他の物質が、当業者に知られているように、セパレータ118に使用されてもよい。
【0049】
他の例では、カソードプレリチオ化スラリー製造プロセス110は、代わりに、アノード120の形成に適用されてもよく、アノード適用のための適合及び変更は、当業者によって容易に企図されるであろう(例えば、アノード構成に好適なプレリチオ化スラリー112の組成物を選択することによって)。
【0050】
プレリチオ化されたカソード116、セパレータ118、及びアノード120は、リチウムイオンセルアセンブリ126を形成するために、密閉されたセルハウジング122内に配置されてもよい。いくつかの例では、密閉されたセルハウジング122は、ポーチ若しくは缶、又は当業者に知られているような任意の他のタイプのバッテリハウジングを含んでもよい。
【0051】
密封されたセルハウジング122は、電解質124で充填されて、充填されたリチウムイオンセル128を生成してもよい。電解質124は、プレリチオ化されたカソード116とアノード120との間のイオンの輸送をサポートし、充填されたリチウムイオンセル128の他の成分と密接に接触してもよい。いくつかの例では、電解質124は、1つ以上のリチウム塩、有機カルボナートなどの有機溶媒、及び添加剤を含んでもよい。電解質124は、充填されたリチウムイオンセル128全体に存在してもよく、プレリチオ化されたカソード116、セパレータ118、及びアノード120の各々と物理的に接触してもよい。
【0052】
次いで、充填されたリチウムイオンセル128は、第1の充電/放電サイクルとも称されるセル形成を経て、リチウムイオンセル130(本明細書において「リチウムイオンバッテリ」、「リチウム二次バッテリ」、又は「リチウムイオン二次バッテリ」とも称される)を形成してもよい。リチウムイオンセル130は、他の同様に製作されたリチウムイオンセル130と併せて、使用及びリチウムイオンバッテリパック132における挿入の準備ができている完全に製作された完全なバッテリセルであってもよい。リチウムイオンセル130は、その中の電極(例えば、プレリチオ化されたカソード116及びアノード120)内に化学電位としてエネルギーを格納してもよく、電極は、還元酸化反応を介して化学エネルギーと電気エネルギーとの間を可逆的に変換するように構成されている。
【0053】
このようにして、リチウムイオンバッテリパック132が製作され、カソードプレリチオ化スラリー製造プロセス110は、リチウムイオンバッテリパック132の少なくとも1つのリチウムイオンセル130のプレリチオ化されたカソード116を形成する際に用いられてもよい。いくつかの例では、リチウムイオンバッテリパック132は、1つ以上のリチウムイオンセル130を含んでもよく、1つ以上のリチウムイオンセル130の各々は、カソードプレリチオ化スラリー製造プロセス110、セパレータ118、アノード120、及び電解質124を介して形成されたプレリチオ化されたカソード116を含んでもよい。カソードプレリチオ化スラリー製造プロセス110は、プレリチオ化試薬101を溶媒106中で混合及び粉砕して、プレリチオ化試薬101のナノスケール粒子の均一な分散体を得て、それによって、プレリチオ化スラリー112を形成することを含んでもよい。プレリチオ化スラリー112は、カソード基板(例えば、カソード集電体上に配設された多孔質カソード活物質層)に塗布され、乾燥され、カレンダー成形されて、プレリチオ化されたカソード116(例えば、多孔質カソード活物質層上に形成されたプレリチオ化層を含む)を形成してもよい。いくつかの例では、リチウムイオンバッテリパック132は、複数のリチウムイオンセル130を含んでもよく、複数のリチウムイオンセル130の各々は、同じ構成であってもよい。
【0054】
いくつかの例では、リチウムイオンバッテリパック132は、デバイス内に配置されてもよく、デバイス内で使用するように更に構成されてもよく、デバイスは、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、携帯電話、スマートフォン、グローバルポジショニングシステム(GPS)、タブレットデバイス、又はコンピュータであってもよい。
【0055】
ここで
図2Aを参照すると、リチウムイオンバッテリに使用するための例示的なコーティングされたカソード構造201を例示する概略断面200が示される。形成時に、コーティングされたカソード構造201は、コーティングされたカソード構造201がリチウムイオンバッテリに電力を提供してもよいように、リチウムイオンバッテリ内に位置付けられてもよい。いくつかの例では、リチウムイオンバッテリは、リチウムイオンバッテリパック内の複数のリチウムイオンバッテリセルのうちの1つであってもよく、複数のリチウムイオンバッテリセルの各々は、互いに実質的に同様の構成を有してもよい。一例では、コーティングされたカソード構造201及びリチウムイオンバッテリパックは、それぞれ、
図1のプレリチオ化されたカソード116及びリチウムイオンバッテリパック132であってもよい。
【0056】
コーティングされたカソード構造201は、第1の側面203a及び第2の側面203bを有するカソード集電体202を含んでもよく、側面203a、203bは、カソード集電体202の最小寸法に平行な軸214に対して互いに反対側であってもよい。カソード集電体202は、側面203a、203bのうちの1つに配設又はコーティングされたカソード活物質層204を有してもよく、カソード活物質層204は、カソード集電体202と面共有接触している。更に、カソードプレリチオ化層206は、軸214に対してカソード集電体202と反対側のカソード活物質層204上に配設又はコーティングされてもよい(例えば、カソード活物質層204がカソード集電体202とカソードプレリチオ化層206との間に挟まれるように、カソード活物質層204がコーティングされているカソード集電体202の側面203a又は203bと反対側に)。例えば、カソード活物質層204は、コーティングされたカソード構造201が、軸214に沿って順番にカソード集電体202、カソード活物質層204、及びカソードプレリチオ化層206を含んでもよいように、カソード集電体202の第1の側面203a上にコーティングされてもよい。したがって、カソード集電体202の第2の側面203bは、リチウムイオンバッテリのセパレータ(
図2Aには示されない)に面する(例えば、それに向かって配向される)か、又は面共有接触してもよい。このようにして、セパレータは、コーティングされたカソード構造201の層204、206とリチウムイオンバッテリの電解質(
図2Aには示されていない)との間に延在するリチウムイオンチャネルに対するバリアとして機能しない場合がある。他の例では、カソード集電体202の側面203a、203bの各々は、その上にそれぞれ配設されたカソード活物質層204を含んでもよく、カソード活物質層204の一方又は両方は、カソード集電体202の反対側でその上にそれぞれ配設されたカソードプレリチオ化層206を含む(例えば、コーティングされたカソード構造201は、軸214に沿って順番に、カソードプレリチオ化層206、カソード活物質層204、カソード集電体202、別のカソード活物質層204、及び別のカソードプレリチオ化層206を含んでもよい)。
【0057】
カソード集電体202は、Cu箔、Ni箔、Al箔などの金属シート若しくは箔、又は電気を伝導し、そこを通る電流を許容する任意の他の構成であってもよい。一例では、カソード集電体202の厚さは、1~20μm(例えば、約10μm)であってもよい。しかしながら、カソード集電体202の厚さは、例えば、最大50μmまで広く変化してもよいことが理解されるであろう。
【0058】
いくつかの例では、カソード活物質層204は、少なくともカソード活物質、第1の導電性添加剤、及び第1の結合剤から構成されるスラリーベースの層であってもよい。いくつかの例では、カソード活物質は、リチウム挿入/挿入解除物質であってもよい。例えば、リチウム挿入/挿入解除物質は、NMC、LFP、LMFP、リチウムニッケルコバルト酸化アルミニウム(NCA)、リチウムコバルト酸化物(LCO)、リチウムコバルトホスファート(LCP)、リチウムニッケルホスファート(LNP)、及びリチウムマンガンホスファート(LMP)のうちの1つ以上、並びに/又は当業者に公知の任意の数の他のリチウム挿入/挿入解除物質を含んでもよい。追加的又は代替的な例では、カソード活物質は、リチウム混合金属酸化物層状構造物質であってもよい。いくつかの例では、第1の導電性添加剤は、炭素質であってもよい。例えば、第1の導電性添加剤は、カーボンブラック、グラフェン、酸化グラフェン、及び/又はCNTを含んでもよい。いくつかの例では、第1の結合剤は、1つ以上のポリマーを含んでもよい。例えば、第1の結合剤は、PVDF、ポリビニルピロリドン、ポリ(エチレン)オキシド(PEO)又は架橋PEO、PTFE、PMMA、PAA、ポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF-HFP)のうちの1つ以上、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、PEDOTポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)などの1つ以上の導電性ポリマー、セルロース誘導体、及び直鎖、半芳香族、又は芳香族ポリイミド(PI)を含んでもよい。
【0059】
いくつかの例では、カソードプレリチオ化層206は、少なくともカソードプレリチオ化試薬から構成されるスラリーベースの層であってもよい。いくつかの例では、カソードプレリチオ化試薬は、リチウムイオンバッテリのアノードのプレリチオ化中(例えば、リチウムイオンバッテリの初期充電前又はその間)に、Li+イオンを放出するために分解してもよいリチウム化合物を含んでもよい。例えば、カソードプレリチオ化試薬が、Li3N、Li2O、Li2O2、Li2S、Li5FeO4、Li2CO3、Li2C2O4、Li2S/Mナノ複合材料、LiF/Mナノ複合材料、及びLi2O/Mナノ複合材料のうちの1つ以上を含んでもよく、Mが、1つ以上の金属である。
【0060】
いくつかの例では、カソードプレリチオ化試薬は、その上に形成された表面不純物層を有するコア物質の粒子として形成されてもよい。例えば、コア物質は、Li2O2、Li2O、及びLi2Sのうちの1つ以上を含んでもよく、表面不純物層は、LiOH及びLi2CO3のうちの1つ以上を含んでもよい。いくつかの例では、表面不純物層は、水分及び/又はCO2含有雰囲気へのコア物質の曝露を介して、カソードプレリチオ化層206を形成するためのスラリーの調製中に形成されてもよい(例えば、望ましくない副産物として形成されるのではなく、活性的又は意図的に形成されてもよい)。追加的又は代替的な例では、表面不純物層は、リチウムイオンバッテリのアノードのプレリチオ化中にLi+イオンを放出するために分解してもよい、追加の(例えば、二次的な)カソードプレリチオ化試薬として機能してもよい。そのような例では、表面不純物層は、任意選択的に、以下で議論されるカソード触媒などの触媒を用いて、電圧ウィンドウ内で分解してもよい。
【0061】
いくつかの例では、カソードプレリチオ化層206は、カソード触媒を更に含んでもよい。いくつかの例では、カソード触媒は、リチウムイオンバッテリのアノードのプレリチオ化中にカソードプレリチオ化試薬の分解を触媒してもよい。例えば、カソード触媒は、1つ以上の非リチウム化金属酸化物若しくは非リチウム化金属ホスファートから構成される不活性カソード触媒、及び/又は1つ以上のリチウム金属酸化物若しくはリチウム金属ホスファートから構成される活性カソード触媒を含んでもよい。他の例では、カソードプレリチオ化試薬は、カソード触媒を含まない実用的なバッテリ動作電圧ウィンドウ中に分解してもよい。
【0062】
いくつかの例では、カソードプレリチオ化層206は、第2の結合剤を更に含んでもよい。いくつかの例では、第2の結合剤は、カソードプレリチオ化試薬の粒子を互いに、カソードプレリチオ化層206の他の粒子に、及び/又はカソード活物質層204の表面に結合してもよい。例えば、第2の結合剤は、PAN、PEG、PVDF、PTFE、PHFP、PMMA、PAA、ポリ(4-ビニルピリジン)、ポリビニルピロリドン、CMC誘導体、又はそれらのコポリマーのうちの1つ以上を含んでもよい。他の例では、カソードプレリチオ化層206は、第2の結合剤なしでカソード活物質層204に十分に接着してもよい。
【0063】
いくつかの例では、カソードプレリチオ化層206は、第2の導電性添加剤を更に含んでもよい。いくつかの例では、第2の導電性添加剤は、リチウムイオンバッテリの電子伝導率を増加させる炭素質物質を含んでもよい。例えば、第2の導電性添加剤は、カーボンブラック、カーボン繊維、カーボンナノ粒子、CNT、酸化グラフェン、及びグラフェンのうちの1つ以上を含んでもよい。いくつかの例では、カソード活物質層204内の第1の導電性添加剤の量は、カソードプレリチオ化層206内の第2の導電性添加剤の存在(リチウムイオンバッテリにおいて同様の目的を果たしてもよい)に起因して、低減又は排除されてもよい。
【0064】
いくつかの例では、第1及び第2の結合剤は、同じ組成物を有してもよい(カソード活物質との第1の結合剤の親和性及びカソードプレリチオ化試薬との第2の結合剤の親和性に応じて)。他の例では、第1及び第2の結合剤は、異なる組成物を有してもよい(繰り返しになるが、カソード活物質との第1の結合剤の親和性及びカソードプレリチオ化試薬との第2の結合剤の親和性に応じて)。同様に、いくつかの例では、第1及び第2の導電性添加剤は、同じ組成物を有してもよいが、一方で、他の例では、第1及び第2の導電性添加剤は、異なる組成物を有してもよい。
【0065】
いくつかの例では、カソードプレリチオ化層206は、カソード活物質層204のカソード活物質と同じであってもよく、又は異なってもよい、無視できない量の二次カソード活物質(例えば、NMC)を含んでもよい。一例では、二次カソード活物質は、(活性)カソード触媒としてカソードプレリチオ化層206に含まれてもよい。
【0066】
いくつかの例では、カソードプレリチオ化試薬、並びにカソード触媒及び第2の導電性添加剤(存在するとき)の各々は、粒子の形態にあってもよく、粒子は、ナノスケール寸法を有する。例として、カソードプレリチオ化試薬粒子は、300nm以下のD50サイズを有してもよい。別の例として、カソードプレリチオ化試薬粒子は、150nm以下のD50サイズを有してもよい。更に、存在するとき、カソード触媒粒子及び/又は第2の導電性添加剤粒子は、カソードプレリチオ化試薬粒子と同様のサイズ範囲を有してもよい。例として、カソード触媒粒子は、300nm以下のD50サイズを有してもよい。別の例として、カソード触媒粒子は、150nm以下のD50サイズを有してもよい。いくつかの例では、第2の結合剤は、50kDa~5MDaの分子量を有するポリマーであってもよい。他の例では、第2の結合剤は、500kDa~2MDaの分子量を有するポリマーであってもよい。
【0067】
カソード活物質層204及びカソードプレリチオ化層206を形成するそれぞれのスラリーは、別個に調製され、順番に流し込まれる。例えば、カソード活物質層204は、カソード集電体202上に流し込まれた第1のスラリーから形成されてもよく、カソードプレリチオ化層206は、カソード活物質層204上に流し込まれた第2のスラリーから形成されてもよく、第2のスラリーは、第1のスラリーとは別個、かつ独立しており、異なる組成物を有する。このようにして、カソード活物質層204及びカソードプレリチオ化層206は、別個のスラリーベースのコーティングとして形成されてもよい。
【0068】
いくつかの例では、カソード活物質層204は、複数の細孔を含んでもよい。したがって、十分に低い粘度を有するスラリー及び十分に小さいスケールの粒子がカソード活物質層204上にコーティングされるとき、スラリーは、カソード活物質層204とのスラリーのコーティング界面に最も近い(例えば、スラリーがカソード活物質層204に最初に接触する)それらの細孔に染み込むか、又は浸透してもよく、それによって、比較的高い粘度のスラリー及び/又は比較的低い多孔率のカソード活物質層と比較して、カソード活物質層204及び(最終的に形成された)カソードプレリチオ化層206の層間接着を改善する。スラリーのその後の乾燥及びカレンダー成形中に、スラリーは、最大浸透深さに到達してもよく、カソード活物質層204の複数の細孔への浸透を停止してもよい。
【0069】
一例として、カソードプレリチオ化層206の一部分は、最大浸透深さ211までカソード活物質層204の複数の細孔に浸透してもよい。したがって、複数の細孔は、複数の充填された細孔205a及び複数の空孔205bを含んでもよく、複数の充填された細孔205aは、カソードプレリチオ化層206の浸透部分で充填される。それに応じて、カソード活物質層204の複数の細孔に浸透しないカソードプレリチオ化層206の残りの部分は、最大範囲210まで軸214に沿ってカソード活物質層204から離れて延在してもよい。更に、カソードプレリチオ化層206によって浸透されないカソード活物質層204の残りの部分(例えば、複数の空孔205bを含む)は、最大範囲213まで軸214に沿ってカソードプレリチオ化層206から離れて延在してもよい。いくつかの例では、最大範囲213は、最大範囲210よりも大きくてもよい。
【0070】
カソード活物質層204及びカソードプレリチオ化層206の各々がコーティング及びカレンダー成形された後、軸214に沿ったそれぞれの厚さが決定されてもよい。カソード活物質層204は、カソード集電体202と接する(例えば、カソード集電体202の第1の側面203aと接する)カソード活物質層204の下部表面又は範囲207aと、カソードプレリチオ化層206のバルクと接するカソード活物質層204の上部表面又は範囲207b(例えば、複数の充填された細孔205aを充填しないカソードプレリチオ化層206の残りの部分)との間に延在する全厚212を有してもよい(本明細書で使用される場合、第1及び第2の電極層の対は、第1の電極層及び第2の電極層が互いに物理的に接触し、それらの間に介在する成分を有していないときに、互いに「接する」と説明されてもよい)。例えば、カソード活物質層204の全厚212は、50μm超、かつ500μm未満であってもよい。更に、カソードプレリチオ化層206は、カソード活物質層204に浸透するカソードプレリチオ化層206の下部表面又は範囲208aと、カソード活物質層204から離れて延在するカソードプレリチオ化層206の上部表面又は範囲208bとの間に延在する全厚209を有してもよい。例えば、カソードプレリチオ化層206の全厚209は、0μm超、かつ200μm未満であってもよい。別の例として、カソードプレリチオ化層206の全厚209は、0μm超、かつ50μm未満であってもよい。別の例として、カソードプレリチオ化層206の全厚209は、0μm超、かつ20μm未満であってもよい。別の例として、カソードプレリチオ化層206の全厚209は、1μm超、かつ10μm未満であってもよい。別の例として、カソードプレリチオ化層206の全厚209は、約10μmであってもよい。いくつかの例では、カソードプレリチオ化層206の全厚209は、カソード活物質層204の全厚212未満であってもよい。
【0071】
示されるように、カソードプレリチオ化層206の全厚209は、最大範囲210と最大浸透深さ211との合計に等しくてもよい。例示的な実施形態では、最大範囲210及び最大浸透深さ211は、独立して、カソードプレリチオ化層206の全厚209に等しい最大範囲210と最大浸透深さ211との合計によって制約又は制限されるように、0μm超、かつ200μm未満であってもよい。例えば、カソードプレリチオ化層206の全厚209が10μmであるとき、最大範囲210が5μmであってもよく、かつ最大浸透深さ211が5μmであってもよいか、又は最大範囲210が6μmであってもよく、かつ最大浸透深さ211が4μmであってもよい(ただし、そのような例では、最大範囲210及び最大浸透深さ211の両方が合計で、10μm超であってはならない)。他の例では、最大範囲210及び最大浸透深さ211は、独立して、0μm超、かつ50μm未満であってもよい。他の例では、最大範囲210及び最大浸透深さ211は、独立して、0μm超、かつ20μm未満であってもよい。他の例では、最大範囲210及び最大浸透深さ211は、独立して、1μm超、かつ10μm未満であってもよい。他の例では、最大範囲210及び最大浸透深さ211は、独立して、約10μmであってもよい。
【0072】
同様に、カソード活物質層204の全厚212は、最大浸透深さ211及び最大範囲213の合計に等しくてもよい。したがって、いくつかの例では、最大範囲213は、カソード活物質層204の全厚212によって制約又は制限されるように、50μm超、かつ500μm未満であってもよい。
【0073】
複数の細孔は、いくつかの形状及びサイズに適合してもよい。例として、複数の細孔は、複数の細孔の中でそれらの任意の組み合わせで、独立して、円形(例えば、球形)、楕円形(例えば、回転楕円体)、又は不規則などの、定義された形状を有してもよい。別の例として、複数の細孔の平均(例えば、D50)サイズは、直径が1μm~10μmであってもよい。したがって、いくつかの例では、複数の細孔は、カソードプレリチオ化試薬、カソード触媒、第2の結合剤、及び導電性添加剤の各々の粒子よりも平均サイズが大きくてもよい。更に、いくつかの例では、複数の細孔の対は、1μm~10μmの平均距離によって分離されてもよい。他の例では、複数の細孔のうちの少なくともいくつかは、互いに接続されてもよく、又は互いに重複してもよい。一例では、複数の細孔は、独立して、定義された形状(例えば、実質的に円形、楕円形、又は不規則な形状)を有してもよく、複数の細孔は、約3μmのD50サイズを有してもよく、複数の細孔の各々は、約5μmの平均距離だけ複数の細孔の互いから分離されてもよい。
【0074】
いくつかの例では、カソードプレリチオ化層206は、カソードプレリチオ化層206のバルクと下部範囲208aとの間に挟まれた複数の細孔の各々に浸透してもよく、したがって、最大浸透深さ211まで複数の細孔全体に均等に分布してもよい。しかしながら、他の例では、示されるように、複数の空孔205bの少なくともいくつかは、カソードプレリチオ化層206のバルクとより低い範囲208aとの間に残る。したがって、そのような例では、カソードプレリチオ化層206は、カソードプレリチオ化層206のバルクと下部領域208aとの間に挟まれた複数の細孔の間に均等に分布しない場合がある。
【0075】
コーティングされたカソード構造201では、カソードプレリチオ化層206を形成するスラリーは、100s
-1の剪断速度で10~5000cPの粘度を有してもよく、カソード活物質層204は、30%超の多孔率を有してもよい。他の例では、カソードプレリチオ化層206は、100s
-1の剪断速度で100~5000cPの粘度を有してもよい。他の例では、カソード活物質層204の多孔率は、40%超であってもよい。他の例では、カソード活物質層204の多孔率は、スラリーがコーティングされたカソード構造201の製造プロセス中にカソード活物質層204の複数の細孔に部分的に浸透してもよいように、30%~50%であってもよい。しかしながら、
図2B及び
図2Cを参照して以下に詳細に議論されるように、カソードプレリチオ化層206を形成するスラリーの粘度及びカソード活物質層204の多孔率が調整されると、カソードプレリチオ化層206の少なくとも多くともカソード活物質層204の複数の細孔に浸透してもよい。
【0076】
例として、ここで
図2Bを参照すると、リチウムイオンバッテリに使用するための例示的なコーティングされたカソード構造221を例示する概略断面220が示される。形成時に、コーティングされたカソード構造221は、コーティングされたカソード構造221がリチウムイオンバッテリに電力を提供してもよいように、リチウムイオンバッテリ内に位置付けられてもよい。いくつかの例では、リチウムイオンバッテリは、リチウムイオンバッテリパック内の複数のリチウムイオンバッテリセルのうちの1つであってもよく、複数のリチウムイオンバッテリセルの各々は、互いに実質的に同様の構成を有してもよい。一例では、コーティングされたカソード構造221及びリチウムイオンバッテリパックは、それぞれ、
図1のプレリチオ化されたカソード116及びリチウムイオンバッテリパック132であってもよい。
【0077】
コーティングされたカソード構造221の構造的特徴は、以下に議論されることを除いて、
図2Aのコーティングされたカソード構造201と実質的に同様であるか、又は同じと考えられてもよい。コーティングされたカソード構造221は、カソード集電体222の最小寸法に平行な軸234に対して第2の側面223bと反対側の第1の側面223aを有するカソード集電体222と、側面223a、223bの一方又は両方に配設されたカソード活物質層224と、カソード活物質層224がカソード集電体222とカソードプレリチオ化層226との間に挟まれるように、軸234に対してカソード集電体222と反対側のカソード活物質層224上に配設されたカソードプレリチオ化層226と、を含んでもよい。更に、カソード活物質層224及びカソードプレリチオ化層226は、別個のスラリーベースのコーティングとして形成されてもよく、カソード活物質層224は、複数の細孔を含み、複数の細孔は、複数の充填された細孔225a(カソードプレリチオ化層226によって浸透された)及び複数の空孔225bを含む。したがって、容易に明らかであるべきであるように、コーティングされたカソード構造221の成分は、
図2Aのコーティングされたカソード構造201の成分に同様に番号付けされてもよい(例えば、カソード集電体222、カソード活物質層224、カソードプレリチオ化層226などは、以下で議論されることを除いて、それぞれ、カソード集電体202、カソード活物質層204、カソードプレリチオ化層206などと実質的に同様であるか、又は同じであってもよい)。
【0078】
カソードプレリチオ化層226の浸透部分は、カソード活物質層224に最大浸透深さ231まで(例えば、カソード活物質層224の上部表面又は範囲227bからカソードプレリチオ化層226の下部表面又は範囲228aまで)浸透してもよく、カソードプレリチオ化層226の残りの部分は、軸234に沿ってカソード活物質層224から離れて最大範囲230まで(例えば、カソード活物質層224の上部表面又は範囲227bからカソードプレリチオ化層226の上部表面又は範囲228bまで)延在してもよい。したがって、カソードプレリチオ化層226は、最大範囲230と最大浸透深さ231との合計に等しい全厚229を有してもよい。更に、カソードプレリチオ化層226によって浸透されていないカソード活物質層224の一部分は、軸234に沿ってカソードプレリチオ化層226から離れて最大範囲233まで(例えば、カソードプレリチオ化層226の下部表面又は範囲228aからカソード活物質層224の下部表面又は範囲227aまで)延在してもよい。したがって、カソード活物質層224は、最大浸透深さ231と最大範囲233との合計に等しい全厚232を有してもよい。
【0079】
しかしながら、カソード活物質層224は、
図2Aのカソード活物質層204よりも低い多孔率を有してもよい。例えば、カソード活物質層224の多孔率は、30%未満であってもよい(追加的又は代替的に、複数の細孔のD50サイズが1μm未満であってもよく、及び/又は複数の細孔の対の間の平均距離が5μm超であってもよい)。更に、カソードプレリチオ化層226は、
図2Aのカソードプレリチオ化層206を形成するスラリーよりも高い粘度を有するスラリーから形成されてもよい。例えば、カソードプレリチオ化層226の粘度は、100s
-1の剪断速度で5000cP超であってもよい。したがって、カソードプレリチオ化層226の形成中に、スラリーは、より低い粘度を有するスラリー(
図2Aのカソードプレリチオ化層206を形成するスラリーなど)及びより高い多孔率を有するカソード活物質層(
図2Aのカソード活物質層204など)よりも小さい範囲でカソード活物質層224の複数の細孔に浸透してもよい。したがって、最大浸透深さ231は、
図2Aの最大浸透深さ211未満であってもよく、最大範囲230は、
図2Aの最大範囲210超であってもよく、最大範囲233は、
図2Aの最大範囲213超であってもよい。
【0080】
別の例として、ここで
図2Cを参照すると、リチウムイオンバッテリに使用するための例示的なコーティングされたカソード構造241を例示する概略断面240が示される。形成時に、コーティングされたカソード構造241は、コーティングされたカソード構造241がリチウムイオンバッテリに電力を提供してもよいように、リチウムイオンバッテリ内に位置付けられてもよい。いくつかの例では、リチウムイオンバッテリは、リチウムイオンバッテリパック内の複数のリチウムイオンバッテリセルのうちの1つであってもよく、複数のリチウムイオンバッテリセルの各々は、互いに実質的に同様の構成を有してもよい。一例では、コーティングされたカソード構造241及びリチウムイオンバッテリパックは、それぞれ、
図1のプレリチオ化されたカソード116及びリチウムイオンバッテリパック132であってもよい。
【0081】
コーティングされたカソード構造241の構造的特徴は、以下に議論されることを除いて、
図2Aのコーティングされたカソード構造201と実質的に同様であるか、又は同じと考えられてもよい。コーティングされたカソード構造241は、カソード集電体242の最小寸法に平行な軸254に対して第2の側面243bと反対側の第1の側面243aを有するカソード集電体242と、側面243a、243bの一方又は両方に配設されたカソード活物質層244と、カソード活物質層244がカソード集電体242とカソードプレリチオ化層246との間に挟まれるように、軸254に対してカソード集電体242と反対側のカソード活物質層244上に配設されたカソードプレリチオ化層246と、を含んでもよい。更に、カソード活物質層244及びカソードプレリチオ化層246は、別個のスラリーベースのコーティングとして形成されてもよく、カソード活物質層244は、複数の細孔を含み、複数の細孔は、複数の充填された細孔245a(カソードプレリチオ化層246によって浸透された)及び複数の空孔245bを含む。したがって、容易に明らかであるべきであるように、コーティングされたカソード構造241の成分は、
図2Aのコーティングされたカソード構造201の成分に同様に番号付けされてもよい(例えば、カソード集電体242、カソード活物質層244、カソードプレリチオ化層246などは、以下で議論されることを除いて、それぞれ、カソード集電体202、カソード活物質層204、カソードプレリチオ化層206などと実質的に同様であるか、又は同じであってもよい)。
【0082】
カソードプレリチオ化層246の浸透部分は、カソード活物質層244に最大浸透深さ251まで(例えば、カソード活物質層244の上部表面又は範囲247bからカソードプレリチオ化層246の下部表面又は範囲248aまで)浸透してもよく、カソードプレリチオ化層246の残りの部分は、軸254に沿ってカソード活物質層244から離れて最大範囲250まで(例えば、カソード活物質層244の上部表面又は範囲247bからカソードプレリチオ化層246の上部表面又は範囲248bまで)延在してもよい。したがって、カソードプレリチオ化層246は、最大範囲250と最大浸透深さ251との合計に等しい全厚249を有してもよい。更に、カソードプレリチオ化層246によって浸透されていないカソード活物質層244の一部分は、軸254に沿ってカソードプレリチオ化層246から離れて最大範囲253まで(例えば、カソードプレリチオ化層246の下部表面又は範囲248aからカソード活物質層244の下部表面又は範囲247aまで)延在してもよい。したがって、カソード活物質層244は、最大浸透深さ251と最大範囲253との合計に等しい全厚252を有してもよい。
【0083】
しかしながら、カソード活物質層244は、
図2Aのカソード活物質層204よりも高い多孔率を有してもよい。例えば、カソード活物質層244の多孔率は、40%超であってもよい(追加的又は代替的に、複数の細孔のD50サイズが5μm超であってもよく、及び/又は複数の細孔の対の間の平均距離が1μm未満であってもよい)。更に、カソードプレリチオ化層246は、
図2Aのカソードプレリチオ化層206を形成するスラリーよりも低い粘度を有するスラリーから形成されてもよい。例えば、カソードプレリチオ化層246の粘度は、100s
-1の剪断速度で10cP未満であってもよい。したがって、カソードプレリチオ化層246の形成中に、スラリーは、より高い粘度を有するスラリー(
図2Aのカソードプレリチオ化層206を形成するスラリーなど)及びより低い多孔率を有するカソード活物質層(
図2Aのカソード活物質層204など)よりも大きい範囲でカソード活物質層244の複数の細孔に浸透してもよい。したがって、最大浸透深さ251は、
図2Aの最大浸透深さ211超であってもよく、最大範囲250は、
図2Aの最大範囲210未満であってもよく、最大範囲253は、
図2Aの最大範囲213未満であってもよい。
【0084】
ここで
図2Dを参照すると、リチウムイオンバッテリに使用するための例示的なコーティングされたカソード構造261を例示する概略断面260が示される。形成時に、コーティングされたカソード構造261は、コーティングされたカソード構造261がリチウムイオンバッテリに電力を提供してもよいように、リチウムイオンバッテリ内に位置付けられてもよい。いくつかの例では、リチウムイオンバッテリは、リチウムイオンバッテリパック内の複数のリチウムイオンバッテリセルのうちの1つであってもよく、複数のリチウムイオンバッテリセルの各々は、互いに実質的に同様の構成を有してもよい。一例では、コーティングされたカソード構造261及びリチウムイオンバッテリパックは、それぞれ、
図1のプレリチオ化されたカソード116及びリチウムイオンバッテリパック132であってもよい。
【0085】
コーティングされたカソード構造261の構造的特徴は、以下に議論されることを除いて、
図2Aのコーティングされたカソード構造201と実質的に同様であるか、又は同じと考えられてもよい。コーティングされたカソード構造261は、カソード集電体262の最小寸法に平行な軸234に対して第2の側面263bと反対側の第1の側面263aを有するカソード集電体262を含んでもよい。コーティングされたカソード構造261は、カソード活物質層264及びカソードプレリチオ化層266を更に含んでもよい。カソード活物質層264及びカソードプレリチオ化層266は、別個のスラリーベースのコーティングとして形成されてもよく、カソード活物質層264は、複数の細孔を含み、複数の細孔は、複数の充填された細孔265a(カソードプレリチオ化層266によって浸透された)及び複数の空孔265bを含む。したがって、容易に明らかであるべきであるように、コーティングされたカソード構造261の成分は、
図2Aのコーティングされたカソード構造201の成分に同様に番号付けされてもよい(例えば、カソード集電体262、カソード活物質層264、カソードプレリチオ化層266などは、以下で議論されることを除いて、それぞれ、カソード集電体202、カソード活物質層204、カソードプレリチオ化層206などと実質的に同様であるか、又は同じであってもよい)。
【0086】
しかしながら、及び
図2Aのコーティングされたカソード構造201(並びに、それぞれ、
図2B及び
図2Cのコーティングされたカソード構造221及び241)とは対照的に、コーティングされたカソード構造261では、カソード集電体262は、側面263a、263bのうちの1つに配設又はコーティングされたカソードプレリチオ化層266を有してもよく、カソードプレリチオ化層266は、カソード集電体262と面共有接触している。したがって、カソード活物質層264は、軸274に対してカソード集電体262と反対側のカソードプレリチオ化層266上に配設又はコーティングされてもよい(例えば、カソードプレリチオ化層266がカソード集電体262とカソード活物質層264との間に挟まれるように、カソードプレリチオ化層266がコーティングされているカソード集電体262の側面263a及び/又は263bの反対側に)。例えば、カソードプレリチオ化層266は、コーティングされたカソード構造261が、軸274に沿って順番にカソード集電体262、カソードプレリチオ化層266、及びカソード活物質層264を含んでもよいように、カソード集電体262の第1の側面263a上にコーティングされてもよい。他の例では、カソード集電体262の側面263a、263bの各々は、その上にそれぞれ配設されたカソードプレリチオ化層266を含んでもよく、カソードプレリチオ化層266の一方又は両方は、カソード集電体262の反対側でその上にそれぞれ配設されたカソード活物質層264を含む(例えば、コーティングされたカソード構造261は、軸274に沿って順番に、カソード活物質層264、カソードプレリチオ化層266、カソード集電体262、別のカソードプレリチオ化層266、及び別のカソード活物質層264を含んでもよい)。
【0087】
カソードプレリチオ化層266の浸透部分は、カソード活物質層264に最大浸透深さ271まで(例えば、カソード活物質層264の下部表面又は範囲267aからカソードプレリチオ化層266の上部表面又は範囲268bまで)浸透してもよく、カソードプレリチオ化層266の残りの部分は、軸274に沿ってカソード活物質層264から離れて最大範囲270まで(例えば、カソード活物質層264の下部表面又は範囲267aからカソードプレリチオ化層266の下部表面又は範囲268aまで)延在してもよい。したがって、カソードプレリチオ化層266は、最大範囲270と最大浸透深さ271との合計に等しい全厚269を有してもよい。更に、カソードプレリチオ化層266によって浸透されていないカソード活物質層264の一部分は、軸274に沿ってカソードプレリチオ化層266から離れて最大範囲273まで(例えば、カソードプレリチオ化層266の上部表面又は範囲268bからカソード活物質層264の上部表面又は範囲267bまで)延在してもよい。したがって、カソード活物質層264は、最大浸透深さ271と最大範囲273との合計に等しい全厚272を有してもよい。
【0088】
図2A~
図2Dを参照して上記で詳細に説明されたコーティングされたカソード構造201、221、241、及び261の態様は、相互に排他的ではなく、そのような態様は、所与の用途に従って追加、除去、置換、又は組み合わせられることが理解されるであろう。例えば、コーティングされたカソード構造は、異なるコーティング構成(例えば、カソード活物質及びカソードプレリチオ化層の最大浸透深さ、最大範囲、全厚、及び/又は相対的な層順序は、カソード集電体のコーティングされた側面間で異なる場合がある)でその両側面にコーティングされたカソード集電体を含んでもよい。
【0089】
ここで
図3Aを参照すると、リチウムイオンバッテリのプレリチオ化されたカソードに含められるカソード活物質層306上に配設されたカソードプレリチオ化層302を図示するSEM画像300が示される。いくつかの例では、リチウムイオンバッテリは、リチウムイオンバッテリパック内の複数のリチウムイオンバッテリセルのうちの1つであってもよく、複数のリチウムイオンバッテリセルの各々は、互いに実質的に同様の構成を有してもよい。したがって、一例では、リチウムイオンバッテリパックは、
図1のリチウムイオンバッテリパック132であってもよい。SEM画像300及びその中に図示される特徴の寸法を近似するための基準スケール310が提供される。例えば、SEM画像300の最大寸法は、1mm未満である。
【0090】
カソードプレリチオ化層302を形成するために使用されるスラリーは、最適ではない処理パラメータ、工程、又は工程順序で処理されてもよく、100s-1の剪断速度で5000cP超の比較的高い粘度、したがって、カソードプレリチオ化層302によるカソード活物質層306の不適切又は不完全なコーティングを結果的にもたらす。例えば、最適ではない処理パラメータは、スラリーの流し込み、乾燥、及びカレンダー成形中に、不適切若しくは別様に望ましくないスラリー配合物及び/又は不適切若しくは望ましくない湿潤ギャップを含んでもよい。示されるように、カソードプレリチオ化層302を形成するスラリーの最適ではない処理に起因して、カソードプレリチオ化層302は、カソード活物質層306との十分な層間接着を達成しない場合があり、その後、リチウムイオンバッテリの動作環境でカソード活物質層306から層間剥離する場合がある。したがって、更に示されるように、カソード活物質層306に含められるカソード活物質の一次及び二次粒子308は、リチウムイオンバッテリに含められる電解質に曝露されてもよく、広範なひび割れ304は、カソードプレリチオ化層302の形成中又はその後の層間剥離中に結果的に生じる場合があり、これは、充電/放電サイクルが継続するにつれて更なる層間剥離につながる場合がある。
【0091】
リチウムイオンバッテリの電気化学的性能は、十分に接着されたカソードプレリチオ化層(
図3Bを参照して以下に詳細に説明されるものなど)を含むリチウムイオンバッテリと比較して、そのような層間剥離によって著しく損なわれる場合がある。例えば、リチウムイオンバッテリのFCCは、333.8±14.1mAh/gであってもよく、リチウムイオンバッテリのFDCは、178.7±16.8mAh/gであってもよく(203mAh/gの期待されるFDCと比較して)、その結果、リチウムイオンバッテリのFCEは、53.8±6.9%であってもよい。更に、FCC、FDC、及びFCEの各々の比較的大きい分散によって示されるように、セル間の変動は、そのような層間剥離が生じるときに、それに応じて大きくなってもよい(例えば、あまり均一ではなくなる)。
【0092】
ここで
図3Bを参照すると、リチウムイオンバッテリのプレリチオ化されたカソードに含められるカソード活物質層(カソードプレリチオ化層352によって実質的に完全に覆われ、したがって、SEM画像350には見えない)上に配設されたカソードプレリチオ化層352を図示するSEM画像350が示されている。いくつかの例では、リチウムイオンバッテリは、リチウムイオンバッテリパック内の複数のリチウムイオンバッテリセルのうちの1つであってもよく、複数のリチウムイオンバッテリセルの各々は、互いに実質的に同様の構成を有してもよい。したがって、一例では、リチウムイオンバッテリパックは、
図1のリチウムイオンバッテリパック132であってもよい。SEM画像350及びその中に図示される特徴の寸法を近似するための基準スケール360が提供される。例えば、SEM画像350の最大寸法は、1mm未満である。
【0093】
カソードプレリチオ化層352を形成するために使用されるスラリーは、最適な処理パラメータ、工程、又は工程順序で処理されてもよく、100s
-1の剪断速度で10cP超、かつ5000cP未満の粘度を結果的にもたらし、したがって、カソードプレリチオ化層352によるカソード活物質層の実質的に完全なコーティングを結果的にもたらす。例えば、最適な処理パラメータは、スラリーの流し込み、乾燥、及びカレンダー成形中の所望のスラリー配合物及び/又は所望の湿潤ギャップを含んでもよい。示されるように、カソードプレリチオ化層352を形成するスラリーの最適な処理に起因して、カソードプレリチオ化層352は、カソード活物質層との十分な層間接着を達成してもよい。したがって、更に示されるように、ひび割れ354は、カソードプレリチオ化層352の形成中、又はリチウムイオンバッテリの後続の動作中に結果的に生る場合があるが、ひび割れ354は、不十分に接着されたカソードプレリチオ化層(
図3Aのカソードプレリチオ化層302など)よりも広範囲でない場合があり、カソードプレリチオ化層352は、実質的に全体的に平滑であってもよい。
【0094】
リチウムイオンバッテリの電気化学的性能は、不十分に接着されたカソードプレリチオ化層を含むリチウムイオンバッテリと比較して更に改善されてもよい(
図3Aを参照して上記に詳細に説明されるものなど)。例えば、リチウムイオンバッテリのFCCは、280.8±2.5mAh/gであってもよく、リチウムイオンバッテリのFDCは、227.4±2.1mAh/gであってもよく(228mAh/gの期待されるFDCと比較して)、その結果、リチウムイオンバッテリのFCEは、81.0±1.0%であってもよい。更に、FCC、FDC、及びFCEの各々の比較的小さい分散によって示されるように、セル間の変動は、カソードプレリチオ化層352が十分に接着されるときに、それに応じて小さくなる場合がある(例えば、より均一になる)。このようにして、
図3A及び
図3BのSEM画像を比較することから容易に明らかになるように、リチウムイオンバッテリに使用するためのプレリチオ化されたカソードを形成する際に十分な層間接着を達成する際のスラリー処理パラメータ、工程、及び工程順序の賢明な選択は、リチウムイオンバッテリの電気化学的性能に有意に影響してもよい。
【0095】
ここで
図4を参照すると、スラリーベースのカソードプレリチオ化層を含むプレリチオ化されたカソードを形成するための方法400のフローチャートが図示されている。一例では、カソードプレリチオ化層を形成するためのスラリーは、ナノスケールカソードプレリチオ化試薬の全体にわたる均一な分散、及び100s
-1の剪断速度で10~5000cPの粘度を得るように処理されてもよい。(低粘度)スラリーは、実用的なバッテリ動作電圧ウィンドウのための十分な層間接着を達成し、それによって、比較的低い界面インピーダンスを維持し、カソードプレリチオ化層の層間剥離を実質的に回避するように、高多孔率のカソード活物質層上に流し込まれる。更に、カソードプレリチオ化層の全厚を制限することによって、それを通るインピーダンスは、それに応じて制限されてもよい(カソードプレリチオ化層の層間剥離を更に制限することに加えて)。このようにして、プレリチオ化されたカソードは、比較的高い構造的完全性を有してもよく、リチウムイオンバッテリに電力を提供するように構成されたとき、リチウムイオンバッテリの全体的な電気化学的性能が改善されてもよいように(例えば、比較的低い構造的完全性を有するプレリチオ化されたカソード、又はその中のカソード活物質からデインターカレーションされたLi
+イオンを越えて追加のLi
+イオンをアノードに提供することができないカソードに対して)、リチウムイオンバッテリに含められるアノードのプレリチオ化中に十分なLi
+イオン在庫を提供してもよい。
【0096】
方法400は、
図1~
図2Dを参照して上記で詳細に説明された成分に関連して説明されてもよいことが理解されるであろう。例えば、プレリチオ化されたカソードは、
図1のプレリチオ化されたカソード116、又は
図2A~
図2Dのコーティングされたカソード構造201、221、241、若しくは261のうちのいずれか1つであってもよい。更に、本明細書に説明される実施形態は、プレリチオ化されたカソードの形成を対象とするが、本明細書に説明される実施形態のうちの少なくともいくつかは、アノードの形成に適合されてもよいことが理解されるであろう。例えば、方法400は、プレリチオ化されたアノードを形成するためのスラリーの製造に容易に適合又は変更されてもよい。
【0097】
402では、方法400は、カソードプレリチオ化試薬を含む均質な混合物を形成することを含む。いくつかの例では、カソードプレリチオ化試薬は、均質な混合物における包含の前に粉砕されてもよい(しかしながら、以下に説明されるように、408における均質な混合物の粉砕は、カソードプレリチオ化試薬を更に粉砕してもよい)。404では、方法400は、均質な混合物を形成することを含み、これは、カソードプレリチオ化試薬を非水溶媒中に均一に分散させることを含んでもよい。いくつかの例では、カソードプレリチオ化試薬は、Li3N、Li2O、Li2O2、Li2S、Li2CO3、Li2C2O4、Li5FeO4、Li2S/Mナノ複合材料、LiF/Mナノ複合材料、Li2O/Mナノ複合材料、又は上記の化合物の任意の組み合わせから選択されてもよく、Mは、1つ以上の金属であり、非水溶媒は、DMF、NMP、DMAc、DMSO、MeCN、THF、トルエン、又は上記の化合物の任意の組み合わせから選択されてもよい。いくつかの例では、カソードプレリチオ化試薬は、コア物質として、その上に表面不純物層が形成された状態で形成されてもよい。1つのそのような例では、コア物質は、Li2O2、Li2O、及びLi2Sのうちの1つ以上を含んでもよく、表面不純物層は、LiOH及びLi2CO3のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0098】
更に、406では、1つ以上の添加剤は、非水溶媒中に均一に分散されてもよく、1つ以上の添加剤は、カソード触媒(例えば、カソードプレリチオ化試薬の分解を触媒するための)、結合剤(例えば、均質な混合物の様々な成分を互いに結合するための)、及び導電性炭素添加剤(例えば、リチウムイオンバッテリの電子伝導率を改善するための)のうちの1つ以上を含む。いくつかの例では、カソード触媒は、1つ以上の非リチウム化金属酸化物若しくは非リチウム化金属ホスファートから構成される不活性カソード触媒、及び/又は1つ以上のリチウム金属酸化物若しくはリチウム金属ホスファートから構成される活性カソード触媒から選択されてもよい。追加的又は代替的な例では、結合剤は、PAN、PEG、PVDF、PTFE、PHFP、PMMA、PAA、ポリ(4-ビニルピリジン)、ポリビニルピロリドン、CMC誘導体、上記の化合物の任意のコポリマー、又は上記の化合物の任意の組み合わせから選択されてもよい。追加的又は代替的な例では、導電性炭素添加剤は、カーボンブラック、カーボン繊維、カーボンナノ粒子、CNT、酸化グラフェン、グラフェン、又は上記の化合物の任意の組み合わせから選択されてもよい。
【0099】
図4に示されるように、406は、破線で図示され、均質な混合物中の1つ以上の添加剤の包含が任意選択であることを示す。例として、カソードプレリチオ化試薬は、カソード触媒なしで分解するように選択されてもよい。別の例として、最終的に形成されたカソードプレリチオ化層は、浸透のみを介して多孔質カソード活物質層に接着してもよいため、結合剤は、省略されてもよい(以下で議論されるように)。
【0100】
カソードプレリチオ化試薬及び任意選択的に1つ以上の添加剤を非水溶媒中で十分な持続時間(例えば、24時間)混合することによって、均一な分散が実現され、均質な混合物が形成される。更に、最終的に形成されたスラリーの所望の粘度が実現されるように、均質な混合物の全体的な組成物及び固形分が選択されてもよい。一例として、均質な混合物の全体的な組成物は、1つ以上のカソードプレリチオ化試薬、1つ以上のカソード触媒、導電性炭素添加剤、及び結合剤を含んでもよく、均質な混合物の固形分は、100s-1の剪断速度で10~5000cPの所望の粘度を達成するように10~70%であってもよい。
【0101】
408では、方法400は、均質な混合物を粉砕してスラリーを形成することを含む。いくつかの例では、均質な混合物は、カソードプレリチオ化試薬及びその中の任意の他の粒子が300nm以下のD50サイズを有する粒子に縮小されるように、十分な持続時間(例えば、24時間)粉砕されてもよい。このようにしてカソードプレリチオ化試薬をナノスケール寸法に縮小することによって、カソードプレリチオ化試薬が均一に分散されることと組み合わせて、最終的に形成されたプレリチオ化されたカソードのより優れた構造安定性(例えば、結合剤とのスラリー内及びプレリチオ化されたカソードの他の場所の様々な成分の増加した物理的接触を介して)は、カソード触媒が均質な混合物に含められる(例えば、カソード触媒とのカソードプレリチオ化試薬の増加した接触を介して)例で、より優れたプレリチオ化活性を達成することに加えて、実現される。
【0102】
410では、方法400は、スラリーをカソード基板上に流し込んで、スラリーコーティングされたカソード基板を形成することを含む。いくつかの例では、カソード基板は、カソード集電体上に配設された多孔質カソード活物質層を含んでもよい。一例では、多孔質カソード活物質層は、410でカソード基板上にスラリーを流し込む前に、カソード集電体上に追加の別個のスラリーを流し込むことによって形成されてもよい。
【0103】
いくつかの例では、多孔質カソード活物質層の多孔率は、30%超又は40%超(例えば、30%~50%)であってもよく、多孔質カソード活物質層の細孔は、直径が1μm~10μmの平均サイズを有してもよい。このようにして、多孔質カソード活物質層の多孔率は、多孔質カソード活物質層内へのスラリーの少なくとも部分的な浸透を可能にし、それによって、最終的に形成されたカソードプレリチオ化層と多孔質カソード活物質層との間の十分な層間接着を達成するように調整されてもよい。例として、多孔質カソード活物質層の多孔率は、その形成中にスラリーの粘度が増加するにつれて増加してもよく、多孔質カソード活物質層の多孔率は、その形成中にスラリーの粘度が低下するにつれて低下してもよい。別の例として、多孔質カソード活物質の多孔率は、その形成中にスラリーの粒子のD50サイズが増加するにつれて増加してもよく、多孔質カソード活物質の多孔率は、その形成中にスラリーの粒子のD50サイズが低下するにつれて低下してもよい。いくつかの例では、多孔質カソード活物質層は、その上にスラリーが流し込まれる前に湿っていてもよい(例えば、完全に乾燥していなくてもよい)。そのような例では、多孔質カソード活物質層の多孔率は、スラリーコーティングされたカソード基板が412で乾燥されるときに増加してもよい(以下で議論されるように)。他の例では、多孔質カソード活物質層は、スラリーがその上に流し込まれる前に実質的に乾燥していてもよい。
【0104】
412では、方法400は、スラリーコーティングされたカソード基板を乾燥させることを含む。いくつかの例では、スラリーコーティングされたカソード基板は、20~300℃の温度で乾燥されてもよい(例えば、非水溶媒が実質的に蒸発するまで)。多孔質カソード活物質層が、412でスラリーコーティングされた基板の乾燥の前に湿っているか、又は部分的に乾燥される例では、多孔質カソード活物質層は、スラリーと同時に乾燥されてもよく、最終的に形成されたカソードプレリチオ化層と多孔質カソード活物質層との間の層間接着が更に改善されてもよい。追加的又は代替的な例では、多孔質カソード活物質層は、その上におけるスラリーの流し込みの前に、同様の温度(例えば、20~300℃)で少なくとも部分的に乾燥されてもよい。
【0105】
414では、方法400は、乾燥したスラリーコーティングされたカソード基板をカレンダー成形することを含む。したがって、リチウムイオンバッテリ用のプレリチオ化されたカソードが形成されてもよく、プレリチオ化されたカソードは、構造的に安定であり、かつリチウムイオンバッテリの初期充電前又はその間に分解して、過剰なLi+イオンをリチウムイオンバッテリのアノードに放出する、カソードプレリチオ化層を含む。
【0106】
ここで
図5A~
図5Cを参照すると、プロット500、520、及び540がそれぞれ示され、カソードプレリチオ化スラリーの粘度、多孔質カソード活物質層の多孔率、及びカソードプレリチオ化スラリーから多孔質カソード活物質層に形成されたカソードプレリチオ化層の浸透深さ(例えば、カソードプレリチオ化スラリーの流し込み、乾燥、及びカレンダー成形の後)の間の対関係を図示する。いくつかの例では、カソードプレリチオ化層及び多孔質カソード活物質層の各々は、リチウムイオンバッテリのプレリチオ化されたカソードに含まれてもよい。特定の例では、リチウムイオンバッテリは、リチウムイオンバッテリパック内の複数のリチウムイオンバッテリセルのうちの1つであってもよく、複数のリチウムイオンバッテリセルの各々は、互いに実質的に同様の構成を有してもよい。したがって、一例では、リチウムイオンバッテリパックは、
図1のリチウムイオンバッテリパック132であってもよい。
【0107】
ここで
図5Aを参照すると、プロット500では、横軸は、カソードプレリチオ化スラリーの粘度を表し、縦軸は、多孔質カソード活物質層内へのカソードプレリチオ化層の浸透深さを表す。負の傾斜曲線502によって示されるように、カソードプレリチオ化スラリーの粘度が減少するにつれて、多孔質カソード活物質層内へのカソードプレリチオ化層の浸透深さが増加する。それに応じて、カソードプレリチオ化スラリーの粘度が増加するにつれて、多孔質カソード活物質層内へのカソードプレリチオ化層の浸透深さが減少する。このようにして、多孔質カソード活物質層内へのカソードプレリチオ化層の浸透深さ(多孔質カソード活物質層の固定された多孔率に対して)は、カソードプレリチオ化層の形成に使用されるカソードプレリチオ化スラリーの粘度を調整することによって調節されてもよい。
【0108】
ここで
図5Bを参照すると、プロット520では、横軸は、多孔質カソード活物質層の多孔率を表し、縦軸は、多孔質カソード活物質層内へのカソードプレリチオ化層の浸透深さを表す。正の傾斜曲線522によって示されるように、多孔質カソード活物質層の多孔率が減少するにつれて、多孔質カソード活物質層内へのカソードプレリチオ化層の浸透深さが減少する。それに応じて、多孔質カソード活物質層の多孔率が増加するにつれて、多孔質カソード活物質層内へのカソードプレリチオ化層の浸透深さが増加する。このようにして、多孔質カソード活物質層内へのカソードプレリチオ化層の浸透深さ(カソードプレリチオ化層の形成に使用されるカソードプレリチオ化スラリーの固定された粘度に対して)は、多孔質カソード活物質層の多孔率を調整することによって調節されてもよい。
【0109】
したがって、多孔質カソード活物質層内へのカソードプレリチオ化層の所望の浸透深さを達成するために、カソードプレリチオ化層の形成に使用されるカソードプレリチオ化スラリーの粘度及び多孔質カソード活物質層の多孔率が並行して調整されてもよい。例えば、粘度値は、固定された浸透深さ値の各多孔率値に対して存在してもよい(及びその逆も同様である)。ここで
図5Cを参照すると、プロット540は、そのような関係を例示する。横軸は、多孔質カソード活物質層の多孔率を表し、縦軸は、多孔質カソード活物質層内へのカソードプレリチオ化層の固定された浸透深さを達成するために利用されるカソードプレリチオ化スラリーの粘度を表す。正の傾斜曲線542によって示されるように、多孔質カソード活物質層の多孔率が減少するにつれて、固定された浸透深さを達成するために利用されるカソードプレリチオ化スラリーの粘度が減少する。それに応じて、多孔質カソード活物質層の多孔率が増加するにつれて、固定された浸透深さを達成するために利用されるカソードプレリチオ化スラリーの粘度が増加する。このようにして、多孔質カソード活物質層内へのカソードプレリチオ化層の所与の浸透深さに対して、多孔質カソード活物質層及びカソードプレリチオ化スラリーについて、それぞれ、一組の多孔率及び粘度値が決定されてもよい。
【0110】
ここで
図6を参照すると、プレリチオ化されたカソードを含む第1の例示的なリチウムイオンバッテリと、プレリチオ化試薬なしのカソードを含む第2の例示的なリチウムイオンバッテリとの100サイクルにわたる容量保持を図示するプロット600が示される。いくつかの例では、第1の例示的なリチウムイオンバッテリは、リチウムイオンバッテリパック内の複数のリチウムイオンバッテリセルのうちの1つであってもよく、複数のリチウムイオンバッテリセルの各々は、互いに実質的に同様の構成を有してもよい。したがって、一例では、リチウムイオンバッテリパックは、
図1のリチウムイオンバッテリパック132であってもよい。そのような例では、第2の例示的なリチウムイオンバッテリは、カソードの形成中にプレリチオ化試薬が含められていない(例えば、カソードプレリチオ化層が形成されていない)ことを除いて、実質的に同様の様式で構築され、同様にリチウムイオンバッテリパックに含まれてもよい。
【0111】
プロット600に示されるように、横軸は、完了したサイクルの数を表し、縦軸は、正規化された容量保持値を表す。第1及び第2の例示的なリチウムイオンバッテリパックのサイクルは、実質的に同等の条件下、例えば、45℃、2.8V~4.3V、及びC/3のCレートで行われる。曲線602は、第2の例示的なリチウムイオンバッテリの容量保持を示し、曲線604は、第1の例示的なリチウムイオンバッテリの容量保持を示し、第1の例示的なリチウムイオンバッテリの容量保持は、第2の例示的なリチウムイオンバッテリの容量保持よりも延長されたサイクルにわたってより良好に維持されている。例えば、曲線604は、第1の例示的なリチウムイオンバッテリパックの容量保持が120バッテリサイクルにわたって90%を上回ったままであることを示すが、それに対して、曲線602は、第2の例示的なリチウムイオンバッテリ容量保持が60サイクルで90%未満に低下し、120バッテリサイクルの終了時に実質的に80%であることを示す。このようにして、リチウムイオンバッテリに別個のスラリーを使用してコーティングされたカソードプレリチオ化及びカソード活物質層を有するプレリチオ化されたカソードを含むことによって、そのようなカソードプレリチオ化層(又はどんなプレリチオ化試薬でも)なしのリチウムイオンバッテリと比較して、改善されたサイクル性能が実現される。
【0112】
ここで
図7を参照すると、リチウムイオンバッテリのプレリチオ化されたカソードを含む基板702上に配設された多孔質カソード活物質層704の断面を図示するSEM画像700が示される。いくつかの例では、リチウムイオンバッテリは、リチウムイオンバッテリパック内の複数のリチウムイオンバッテリセルのうちの1つであってもよく、複数のリチウムイオンバッテリセルの各々は、互いに実質的に同様の構成を有してもよい。したがって、一例では、リチウムイオンバッテリパックは、
図1のリチウムイオンバッテリパック132であってもよい。更に、そのような例では、基板702は、導電性基板であってもよい。SEM画像700及びその中に図示される特徴の寸法を近似するための基準スケール710が提供される。例えば、SEM画像の最大寸法は、100μm未満である。
【0113】
SEM画像700には、様々な形状及びサイズの範囲を有する複数の細孔706が示されている。複数の細孔706は、実質的に円形(例えば、球形)、楕円形(例えば、回転楕円体)、及び不規則な形状、約1μm~約25μmの最大寸法、及び約1μm~約10μmの間の平均サイズを有することが示されている。更に、隣接する細孔706の最も近い隣接する対の間の最小距離は、約1μm~約15μmであるように示され、細孔706の最も近い隣接する対の間の平均距離は、約1μm~約10μmであるように示される。
【0114】
このようにして、リチウムイオンバッテリのカソード用のスラリーベースのプレリチオ化層が提供される。一例では、プレリチオ化層内に含められるプレリチオ化試薬は、スラリー製造中に他のスラリー成分との増加した親和性を呈する。このようにして、プレリチオ化試薬のナノスケール寸法及びプレリチオ化層を形成するために使用されるスラリー全体にわたるその均一な分散の相乗的な組み合わせは、他の均一に分散されたスラリー成分(例えば、カソード触媒、結合剤、導電性炭素添加剤など)とのプレリチオ化試薬の接触を増加させ、スラリー処理を容易にし、全体的なスラリー品質を改善し、それによって、最終的に形成されたプレリチオ化層の構造安定性を改善し、最終的に形成されたプレリチオ化層を含むリチウムイオンバッテリの初期充電サイクル中のプレリチオ化活性を増加させることができる。
【0115】
更に、スラリーは、最終的に形成されたプレリチオ化層がカソードの多孔質カソード活物質層に少なくとも部分的に浸透してもよく、それによって、層間剥離及び界面インピーダンスの問題を低減するように、調整されてもよい。例えば、スラリーの固形分及び組成物は、その比較的低い粘度を実現するために賢明に選択されてもよい。次いで、スラリーがカソード活物質層上に流し込まれるとき、スラリーの粘度、プレリチオ化試薬のナノスケール寸法、及びカソード活物質層の多孔率は、カソード活物質層内へのスラリーの浸透を誘導することによって層間接着を相乗的に増加させることができる(スラリーにおける結合剤の包含を不要にするほどである)。加えて、最終的に形成されたプレリチオ化層の厚さを制限することによって、それを通るインピーダンスは、それに応じて制限される場合がある(最終的に形成されたプレリチオ化層の層間剥離を更に制限することに加えて)。したがって、スラリー製造及びその後の層形成中に複数の相互依存パラメータを慎重に調整することを介して形成される別個のプレリチオ化層を提供することによって、リチウムイオンバッテリにおける電気化学的性能が増加する。
【0116】
本開示はまた、カソードプレリチオ化層を形成するためのスラリーに対するサポートを提供し、スラリーは、溶媒中のナノスケールカソードプレリチオ化試薬の均一な分散体を含み、スラリーは、100s-1の剪断速度で最大5000cPの粘度を有する。システムの第1の例では、スラリーが、100~5000cPの粘度を有する。システムの第2の例では、任意選択的に、第1の例を含み、スラリーが、10~100cPの粘度を有する。システムの第3の例では、任意選択的に、第1及び第2の例の一方又は両方を含み、スラリーが、10~70%の固形分を有する。システムの第4の例では、任意選択的に、第1~第3の例のうちの1つ以上又は各々を含み、ナノスケールカソードプレリチオ化試薬が、Li3N、Li2O、Li2O2、Li2S、Li5FeO4、Li2CO3、Li2C2O4、Li2S/Mナノ複合材料、LiF/Mナノ複合材料、及びLi2O/Mナノ複合材料のうちの1つ以上から構成され、Mが、1つ以上の金属である。システムの第5の例では、任意選択的に、第1~第4の例のうちの1つ以上又は各々を含み、均一な分散体が、ナノスケールカソードプレリチオ化試薬の分解を触媒するカソード触媒を更に含み、カソード触媒が、1つ以上の非リチウム化金属酸化物若しくは非リチウム化金属ホスファートから構成される不活性カソード触媒、及び/又は1つ以上のリチウム金属酸化物若しくはリチウム金属ホスファートから構成される活性カソード触媒を含む。システムの第6の例では、任意選択的に、第1~第5の例のうちの1つ以上又は各々を含み、カソード触媒が、スラリーの50重量%以下で含められ、追加のカソード活物質が、含められていない。システムの第7の例では、任意選択的に、第1~第6の例のうちの1つ以上又は各々を含み、カソード触媒が、含められていない。システムの第8の例では、任意選択的に、第1~第7の例のうちの1つ以上又は各々を含み、均一な分散体が、結合剤を更に含み、結合剤が、PAN、PEG、PVDF、PTFE、PHFP、PMMA、PAA、ポリ(4-ビニルピリジン)、ポリビニルピロリドン、CMC誘導体、又はそれらのコポリマーのうちの1つ以上から構成されている。システムの第9の例では、任意選択的に、第1~第8の例のうちの1つ以上又は各々を含み、結合剤が、含められていない。システムの第10の例では、任意選択的に、第1~第9の例のうちの1つ以上又は各々を含み、均一な分散体が、導電性炭素添加剤を更に含み、導電性炭素添加剤が、カーボンブラック、カーボン繊維、カーボンナノ粒子、CNT、酸化グラフェン、及びグラフェンのうちの1つ以上から構成されており、溶媒が、DMF、NMP、DMAc、DMSO、MeCN、THF、及びトルエンのうちの1つ以上から構成されている。
【0117】
本開示はまた、リチウムイオンバッテリに対するサポートを提供し、リチウムイオンバッテリは、正極、負極、及び正極と負極との間に挟まれたセパレータを備え、正極は、正極集電体及び多孔質正極活物質層を含む正極基板であって、多孔質正極活物質層が、正極集電体の第2の側面の反対側の正極集電体の第1の側面にコーティングされており、正極集電体の第2の側面が、セパレータに面する、正極基板と、正極集電体の反対側の多孔質正極活物質層上にコーティングされたプレリチオ化層であって、プレリチオ化層が、プレリチオ化試薬と1つ以上の添加剤との均一な分散体から構成されている、プレリチオ化層と、を備え、多孔質正極活物質層及びプレリチオ化層が、別個のスラリーベースのコーティングとして形成され、多孔質正極活物質層の多孔率が、40%超である。システムの第1の例では、1つ以上の添加剤が、プレリチオ化の間のプレリチオ化試薬の分解を触媒する触媒、結合剤、及び導電性炭素添加剤のうちの1つ以上を含む。システムの第2の例では、任意選択的に、第1の例を含み、プレリチオ化層が、最大200μmの全厚を有し、プレリチオ化層が、最大範囲まで多孔質正極活物質層の上に延在し、かつ/又は最大浸透深さまで多孔質正極活物質層内に浸透し、最大範囲及び最大浸透深さの合計が、全厚に等しい。
【0118】
本開示はまた、方法に対するサポートを提供し、方法は、均質な混合物を粉砕して、カソードプレリチオ化スラリーを形成することであって、均質な混合物が、カソードプレリチオ化試薬を含む、形成することと、カソードプレリチオ化スラリーを、カソード集電体上にコーティングされた多孔質カソード活物質層上に流し込んで、スラリーコーティングされたカソード基板を形成することと、スラリーコーティングされたカソード基板を乾燥させることと、乾燥したスラリーコーティングされたカソード基板をカレンダー成形することと、を含み、カソードプレリチオ化スラリーが、100s-1の剪断速度で最大5000cPの粘度を有し、多孔質カソード活物質層が、カソードプレリチオ化スラリーを流し込む前に、追加の別個のスラリーをカソード集電体上に流し込むことによって形成される。方法の第1の例では、カソードプレリチオ化試薬が、粒子形態にあり、均質な混合物を粉砕することが、カソードプレリチオ化試薬を300nm以下のD50サイズに粉砕することを含む。方法の第2の例では、任意選択的に、第1の例を含み、多孔質カソード活物質層は、カソードプレリチオ化スラリーがその上に流し込まれる前に乾燥している。方法の第3の例では、任意選択的に、第1及び第2の例の一方又は両方を含み、多孔質カソード活物質層は、カソードプレリチオ化スラリーがその上に流し込まれる前に湿っており、スラリーコーティングされたカソード基板が乾燥されるとき、多孔質カソード活物質層の多孔率が増加する。方法の第4の例では、任意選択的に、第1~第3の例のうちの1つ以上又は各々を含み、スラリーコーティングされたカソード基板が、20~300℃の温度で乾燥される。方法の第5の例では、任意選択的に、第1~第4の例のうちの1つ以上又は各々を含み、均質な混合物が、カソードプレリチオ化試薬とともに非水溶媒中に均一に分散された1つ以上の添加剤を更に含み、1つ以上の添加剤が、カソード触媒、結合剤、及び導電性炭素添加剤のうちの1つ以上を含む。
【0119】
別の表現では、リチウムイオンバッテリ用のカソードであって、カソードが、カソード集電体と、30%~50%の多孔率を有するカソード活物質層と、ナノスケールカソードプレリチオ化試薬の均一な分散体を含むカソードプレリチオ化層と、を備える、カソード。カソードの第1の例では、カソードプレリチオ化層は、カソードプレリチオ化層が、カソード活物質層の細孔に少なくとも部分的に浸透するように、100s-1の剪断速度で10~5000cPの粘度を有するカソードプレリチオ化スラリーを乾燥させることによって形成される。カソードの第2の例は、任意選択的に、第1の例を含み、カソード活物質層が、カソード集電体とカソードプレリチオ化層との間に挟まれることを更に含む。カソードの第3の例は、任意選択的に、第1及び第2の例のうちの1つ以上を含み、カソードプレリチオ化層が、カソード集電体とカソード活物質層との間に挟まれることを更に含む。カソードの第4の例は、任意選択的に、第1~第3の例のうちの1つ以上を含み、均一な分散体が、カソード触媒、結合剤、及び導電性炭素添加剤のうちの1つ以上を更に含む。カソードの第5の例は、任意選択的に、第1~第4の例のうちの1つ以上を含み、カソードプレリチオ化層及びカソード活物質層の各々が、カソード活物質を含むことを更に含む。
【0120】
以下の特許請求の範囲は、特に、新規かつ非自明とみなされる特定の組み合わせ及びサブ組み合わせを指摘する。これらの特許請求の範囲は、「1つの」要素又は「第1の」要素又はその均等物を指す場合がある。そのような特許請求の範囲は、1つ以上のそのような要素の組み込みを含むものと理解されるべきであり、2つ以上のそのような要素を必要ともせず、排除もしない。開示された特徴、機能、要素、及び/又は特性の他の組み合わせ及びサブ組み合わせは、本特許請求の範囲の修正を通じて、又は本出願若しくは関連出願における新しい特許請求の範囲の提示を通じて特許請求されてもよい。そのような特許請求の範囲はまた、元の特許請求の範囲に対する範囲においてより広いか、より狭いか、等しいか、又は異なるかにかかわらず、本開示の主題に含められるとみなされる。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソードプレリチオ化層を形成するためのスラリーであって
、
溶媒中のナノスケールカソードプレリチオ化試薬の均一な分散体を含み
、
100s
-1の剪断速度で最大5000cPの粘度を有する、
スラリー。
【請求項2】
100~5000cPの粘度
又は10~100cPの粘度を有し
、
10~70%の固形分を有する、
請求項1に記載のスラリー。
【請求項3】
前記ナノスケールカソードプレリチオ化試薬
は、Li
3N、Li
2O、Li
2O
2、Li
2S、Li
5FeO
4、Li
2CO
3、Li
2C
2O
4、Li
2S/Mナノ複合材料、LiF/Mナノ複合材料、及びLi
2O/Mナノ複合材料のうちの1つ以上から構成され、M
は、1つ以上の金属である、
請求項
1に記載のスラリー。
【請求項4】
前記均一な分散体
は、前記ナノスケールカソードプレリチオ化試薬の分解を触媒するカソード触媒を更に含み、
前記カソード触媒
は、1つ以上の非リチウム化金属酸化物若しくは非リチウム化金属ホスファートから構成される不活性カソード触媒、及び/又は1つ以上のリチウム金属酸化物若しくはリチウム金属ホスファートから構成される活性カソード触媒を含む、
請求項
1に記載のスラリー。
【請求項5】
前記カソード触媒
を前記スラリーの50重量%以下で含
み、
追加のカソード活物質
を含
まない、
請求項4に記載のスラリー。
【請求項6】
カソード触媒
を含
まない、
かつ/又は結合剤を含まない、
請求項
1に記載のスラリー。
【請求項7】
前記均一な分散体
は、PAN、PEG、PVDF、PTFE、PHFP、PMMA、PAA、ポリ(4-ビニルピリジン)、ポリビニルピロリドン、CMC誘導体、又はそれらのコポリマーのうちの1つ以上から構成され
る結合剤を更に含み、
前記均一な分散体は、カーボンブラック、カーボン繊維、カーボンナノ粒子、CNT、酸化グラフェン、及びグラフェンのうちの1つ以上から構成される導電性炭素添加剤を更に含み、
前記溶媒は、DMF、NMP、DMAc、DMSO、MeCN、THF、及びトルエンのうちの1つ以上から構成されている、
請求項
1に記載のスラリー。
【請求項8】
前記スラリーが、正極、負極、及び前記正極と負極との間に挟まれたセパレータを備え
るリチウムイオンバッテリ内に組み込まれ、
前記正極は、
正極集電体及び多孔質正極活物質層を含む正極基板であって、前記多孔質正極活物質層が、前記正極集電体の第2の側面の反対側の前記正極集電体の第1の側面にコーティングされており、前記正極集電体の前記第2の側面が、前記セパレータに面する、正極基板と、
前記正極集電体の反対側の前記多孔質正極活物質層上にコーティングされたプレリチオ化層であって、前記プレリチオ化層がプレリチオ化試薬と1つ以上の添加剤との均一な分散体から構成されている、プレリチオ化層と、を備え、
前記プレリチオ化層が、前記スラリーに基づくコーティングとして形成され、前記多孔質正極活物質層が、別個のスラリー
に基づくコーティングとして形成され、
前記多孔質正極活物質層の多孔率が、40%超である
、
請求項1に記載のスラリー。
【請求項9】
前記プレリチオ化層
は、最大200μmの全厚を有し、
前記プレリチオ化層
は、最大範囲まで前記多孔質正極活物質層の上に延在し、かつ/又は最大浸透深さまで前記多孔質正極活物質層内に浸透し、
前記最大範囲及び前記最大浸透深さの合計
は、前記全厚に等しい
、
請求項8に記載のスラリー。
【請求項10】
カソードプレリチオ化
試薬を
含む均質な混合物
を粉砕してカソードプレリチオ化
スラリーを形成し、
前記カソードプレリチオ化スラリーを、カソード集電体上にコーティングされた多孔質カソード活物質層上に流し込んで、スラリーコーティングされたカソード基板を形成
し、
前記スラリーコーティングされたカソード基板を乾燥
し、
乾燥した
前記スラリーコーティングされたカソード基板をカレンダー成形
し、
前記カソードプレリチオ化スラリー
は、100s
-1の剪断速度で最大5000cPの粘度を有し、
前記多孔質カソード活物質層
は、前記カソードプレリチオ化スラリーを流し込む前に、追加の別個のスラリーを前記カソード集電体上に流し込むことによって形成される、
方法。
【請求項11】
前記カソードプレリチオ化試薬
は、粒子形態にあり、
前記均質な混合物
の粉砕
は、前記カソードプレリチオ化試薬を300nm以下のD50サイズに粉砕することを含む、
請求項1
0に記載の方法。
【請求項12】
前記多孔質カソード活物質層は、前記カソードプレリチオ化スラリーがその上に流し込まれる前に乾燥している、
請求項1
0に記載の方法。
【請求項13】
前記多孔質カソード活物質層は、前記カソードプレリチオ化スラリーがその上に流し込まれる前
は湿っており、
前記スラリーコーティングされたカソード基板
を乾燥
するとき、前記多孔質カソード活物質層の多孔率が増加する、
請求項1
0に記載の方法。
【請求項14】
前記スラリーコーティングされたカソード基板
は、20~300℃の温度で乾燥される、
請求項1
0に記載の方法。
【請求項15】
前記均質な混合物
は、前記カソードプレリチオ化試薬とともに非水溶媒中に均一に分散された1つ以上の添加剤を更に含み、
1つ以上の
前記添加剤
は、カソード触媒、結合剤、及び導電性炭素添加剤のうちの1つ以上を含む、
請求項1
0に記載の方法。
【国際調査報告】