(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-16
(54)【発明の名称】親水性モノマー、疎水性モノマー、及び架橋剤を使用した、3D印刷用ハイドロゲル物体のサイズの制御
(51)【国際特許分類】
A61L 27/16 20060101AFI20240409BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
A61L27/16
A61L27/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568430
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 US2022028039
(87)【国際公開番号】W WO2022236030
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516346377
【氏名又は名称】ラング バイオテクノロジー ピービーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】アマン カウル
(72)【発明者】
【氏名】イザベル アリアス
(72)【発明者】
【氏名】バーバラ シアー
(72)【発明者】
【氏名】ルイス アルバレズ
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AB11
4C081BC02
4C081CA081
4C081CA101
4C081CA181
4C081CB041
4C081DA12
4C081EA02
(57)【要約】
本開示は、印刷可能な組成物であって、印刷可能な組成物の重量を基準に、約1重量パーセント(重量%)~約40重量%の1つ又は複数の親水性モノマー;疎水性モノマー、短鎖架橋剤、及びそれらの組み合わせから選択される膨潤制御剤;約0.01重量%~約2重量%の光開始剤;並びに0重量%~約75重量%のプロトン性溶媒を含むビヒクルを含む組成物を提供する。さらに本開示は、印刷可能な組成物の関する使用及び製造の方法を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷可能な組成物であって、
前記印刷可能な組成物の重量を基準に、
約1重量パーセント(重量%)~約40重量%の1つ又は複数の親水性モノマー;
疎水性モノマー、短鎖架橋剤、及びそれらの組み合わせから選択される膨潤制御剤;
約0.01重量%~約2重量%の光開始剤;並びに
0重量%~約75重量%のプロトン性溶媒を含むビヒクル、
を含み、
但し、
前記膨潤制御剤が疎水性モノマーである場合、前記印刷可能な組成物が、約20:1~約1:20の、前記親水性モノマーの前記疎水性モノマーに対する重量比を有し;且つ
前記膨潤制御剤が短鎖架橋剤である場合、前記印刷可能な組成物が、約0.01重量%~約5重量%の前記短鎖架橋剤を含む
ことを条件とする
印刷可能な組成物。
【請求項2】
前記親水性モノマーが、ヒドロキシC
1-2アルキル(メタ)アクリレート、ポリ(アルキレンオキシド)アルキルエーテル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシC
1-2アルキル(メタ)アクリルアミド、又はそれらの混合物の1つ又は複数を含む、請求項1に記載の印刷可能な組成物。
【請求項3】
前記親水性モノマーが、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレート(PEGMEA)、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、ポリ(プロピレングリコール)メチルエーテルアクリレート、ポリ(プロピレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)、又はそれらの混合物の1つ又は複数を含む、請求項1又は2に記載の印刷可能な組成物。
【請求項4】
前記1つ又は複数の親水性モノマーが、PEGMA、HEA、及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1~3の何れか一項に記載の印刷可能な組成物。
【請求項5】
前記印刷可能な組成物が、約5重量%~約35重量%の前記1つ又は複数の親水性モノマーを含む、請求項1~4の何れか一項に記載の印刷可能な組成物。
【請求項6】
前記印刷可能な組成物が、約5重量%~約25重量%の前記1つ又は複数の親水性モノマーを含む、請求項1~5の何れか一項に記載の印刷可能な組成物。
【請求項7】
前記疎水性モノマーが、ヒドロキシルC
3-6アルキル(メタ)アクリレート、又はそれらの混合物の1つ又は複数を含む、請求項1~6の何れか一項に記載の印刷可能な組成物。
【請求項8】
前記疎水性モノマーが、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)、ヒドロキシブチルメタクリレート、又はそれらの混合物の1つ又は複数を含む、請求項1~7の何れか一項に記載の印刷可能な組成物。
【請求項9】
親水性モノマーの疎水性モノマーに対する前記重量比が、約15:1~約1:15である、請求項1~8の何れか一項に記載の印刷可能な組成物。
【請求項10】
親水性モノマーの疎水性モノマーに対する前記重量比が、約10:1~約1:10である、請求項1~9の何れか一項に記載の印刷可能な組成物。
【請求項11】
親水性モノマーの疎水性モノマーに対する前記重量比が、約5:1~約1:5である、請求項1~10の何れか一項に記載の印刷可能な組成物。
【請求項12】
前記親水性モノマーの前記疎水性モノマーに対する前記重量比が、約1:1~約1:3である、請求項1~11の何れか一項に記載の印刷可能な組成物。
【請求項13】
前記印刷可能な組成物が、約3:1~約1:3の重量比で存在するHPA及びHEAを含む、請求項1~12の何れか一項に記載の印刷可能な組成物。
【請求項14】
前記印刷可能な組成物が、約3:1~約1:3の重量比で存在するHBA及びHEAを含む、請求項1~13の何れか一項に記載の印刷可能な組成物。
【請求項15】
前記短鎖架橋剤が、約400~約20,000の重量平均分子量(M
w)を有するポリ(アルキレンオキシド)ジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、N,N’-メチレンビス(アシルアミド)、(ポリ)乳酸ジ(メタ)アクリレート、(ポリ)グリコール酸ジ(メタ)アクリレート、(ポリ)乳酸コグリコリドジ(メタ)アクリレート、(ポリ)カプロラクトンジ(メタ)アクリレート、(ポリ)ジオキサノンジ(メタ)アクリレート、(ポリ)フマル酸ジ(メタ)アクリレート、(カボキシ)(メチル)セルロースジ(メタ)アクリレート、ヒアルロン酸ジ(メタ)アクリレート、ヘパラン硫酸ジ(メタ)アクリレート、デキストランジ(メタ)アクリレート、アルギン酸ジ(メタ)アクリレート、ペクチンジ(メタ)アクリレート、若しくはコラーゲンジ(メタ)アクリレート又はそれらの混合物を含む、請求項1~14の何れか一項に記載の印刷可能な組成物。
【請求項16】
前記ポリ(アルキレンオキシド)ジ(メタ)アクリレートが、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレートを含む、請求項15に記載の印刷可能な組成物。
【請求項17】
前記印刷可能な組成物が、約0.5重量%~約3重量%の前記短鎖架橋剤を含む、請求項1~16の何れか一項に記載の印刷可能な組成物。
【請求項18】
前記光開始剤が、リチウムフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィネート(LAP)、トリメチルベンゾイルをベースとする光開始剤、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(TPOナノ粒子)イルガキュア類の光開始剤、ルテニウム、及びリボフラビン、又はそれらの混合物を含む、請求項1~17の何れか一項に記載の印刷可能な組成物。
【請求項19】
前記印刷可能な組成物が、ポリマーを含む添加剤、UV色素、天然細胞外マトリックス、光開始剤、ペプチド、アミノ酸、成長因子、変性細胞外マトリックス、細胞外マトリックス断片又はそれらの混合物の1つ又は複数をさらに含む、請求項1~18の何れか一項に記載の印刷可能な組成物。
【請求項20】
前記プロトン性溶媒が、水、ポリエチレングリコール、グリコールジアクリレート誘導体又はそれらの混合物を含む、請求項1~19の何れか一項に記載の印刷可能な組成物。
【請求項21】
3次元物品を調製する方法であって、請求項1~20の何れか一項に記載の印刷可能な組成物を印刷して前記3次元物品を作製することを含む方法。
【請求項22】
前記印刷が臓器の3次元物品を作製し、前記臓器が哺乳動物の臓器である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記印刷が、インクジェット印刷、押し出し印刷、又は交互積層印刷を含む、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
前記3次元物品が、前記3次元物品の非水和重量に対して、重量で約300%未満の膨潤百分率を有する、請求項21~23の何れか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記3次元物品が、前記3次元物品の非水和重量に対して、重量で約1%から約300%未満の膨潤百分率を有する、請求項21~24の何れか一項に記載の方法。
【請求項26】
請求項21~25の何れか一項に記載の前記方法に従って製造される3次元物品。
【請求項27】
3次元物品を製造する方法であって、
印刷可能な組成物の層を面に堆積させて、堆積層を得ること;
前記堆積層に照射すること;並びに
前記堆積層が前記3次元物品を形成するまで、前記堆積及び照射ステップを繰り返すこと;
を含み、
前記印刷可能な組成物が、前記印刷可能な組成物の重量を基準に、
約1重量パーセント(重量%)~約40重量%の1つ又は複数の親水性モノマー;
疎水性モノマー、短鎖架橋剤、及びそれらの組み合わせから選択される膨潤制御剤;
約0.01重量%~約2重量%の光開始剤;並びに
0重量%~約75重量%のプロトン性溶媒を含むビヒクル
を含み、
但し、前記膨潤制御剤が疎水性モノマーである場合、前記印刷可能な組成物が、約20:1~約1:20の、前記親水性モノマーの前記疎水性モノマーに対する重量比を有し;且つ
前記膨潤制御剤が短鎖架橋剤である場合、前記印刷可能な組成物が約0.01重量%~約5重量%の前記短鎖架橋剤を含む
ことを条件とする
方法。
【請求項28】
前記印刷可能な組成物が、請求項1~20の何れか一項に記載の印刷可能な組成物である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記堆積層が、約365nm~約405nmの波長で照射される、請求項27又は2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年5月6日に出願された米国仮出願第63/185,300号の優先権を主張し、その全内容を参照により本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
本開示の実施形態は、印刷可能な組成物であって、印刷可能な組成物の重量を基準に、約1重量パーセント(重量%)~約40重量%の1つ又は複数の親水性モノマー;疎水性モノマー、短鎖架橋剤、及びそれらの組み合わせから選択される膨潤制御剤;約0.01重量%~約2重量%の光開始剤;並びに0重量%~約75重量%のプロトン性溶媒を含むビヒクルを含み、但し、膨潤制御剤が疎水性モノマーである場合、印刷可能な組成物が、約20:1~約1:20の、親水性モノマーの疎水性モノマーに対する重量比を有し;且つ膨潤制御剤が短鎖架橋剤である場合、印刷可能な組成物が、約0.01重量%~約5重量%の短鎖架橋剤を含むことを条件とする印刷可能な組成物に関する。いくつかの実施形態では、親水性モノマーは、ヒドロキシC1-2アルキル(メタ)アクリレート、ポリ(アルキレンオキシド)アルキルエーテル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシC1-2アルキル(メタ)アクリルアミド、又はそれらの混合物の1つ又は複数を含む。いくつかの実施形態では、親水性モノマーは、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレート(PEGMEA)、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、ポリ(プロピレングリコール)メチルエーテルアクリレート、ポリ(プロピレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)、又はそれらの混合物の1つ又は複数を含む。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の親水性モノマーは、PEGMA、HEA、及びそれらの混合物からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、印刷可能な組成物は、約5重量%~約35重量%の1つ又は複数の親水性モノマーを含む。いくつかの実施形態では、印刷可能な組成物は、約5重量%~約25重量%の1つ又は複数の親水性モノマーを含む。いくつかの実施形態では、疎水性モノマーは、ヒドロキシルC3-6アルキル(メタ)アクリレート、又はそれらの混合物の1つ又は複数を含む。いくつかの実施形態では、疎水性モノマーは、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA3-ヒドロキシプロピルアクリレート及び/若しくは2-ヒドロキシプロピルアクリレート)、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)、ヒドロキシブチルメタクリレート、又はそれらの混合物の1つ又は複数を含む。いくつかの実施形態では、親水性モノマーの疎水性モノマーに対する重量比は、約15:1~約1:15である。いくつかの実施形態では、親水性モノマーの疎水性モノマーに対する重量比は、約10:1~約1:10である。いくつかの実施形態では、親水性モノマーの疎水性モノマーに対する重量比は、約5:1~約1:5である。いくつかの実施形態では、親水性モノマーの疎水性モノマーに対する重量比は、約1:1~約1:3である。いくつかの実施形態では、印刷可能な組成物は、約3:1~約1:3の重量比で存在するHPA及びHEAを含む。いくつかの実施形態では、印刷可能な組成物は、約3:1~約1:3の重量比で存在するHBA及びHEAを含む。いくつかの実施形態では、短鎖架橋剤は、約400~約20,000の重量平均分子量(Mw)を有するポリ(アルキレンオキシド)ジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、N,N’-メチレンビス(アシルアミド)、(ポリ)乳酸ジ(メタ)アクリレート、(ポリ)グリコール酸ジ(メタ)アクリレート、(ポリ)乳酸コグリコリドジ(メタ)アクリレート、(ポリ)カプロラクトンジ(メタ)アクリレート、(ポリ)ジオキサノンジ(メタ)アクリレート、(ポリ)フマル酸ジ(メタ)アクリレート、(カボキシ)(メチル)セルロースジ(メタ)アクリレート、ヒアルロン酸ジ(メタ)アクリレート、ヘパラン硫酸ジ(メタ)アクリレート、デキストランジ(メタ)アクリレート、アルギン酸ジ(メタ)アクリレート、ペクチンジ(メタ)アクリレート、若しくはコラーゲンジ(メタ)アクリレート又はそれらの混合物を含む。いくつかの実施形態では、ポリ(アルキレンオキシド)ジ(メタ)アクリレートは、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレートを含む。いくつかの実施形態では、印刷可能な組成物は、約0.5重量%~約3重量%の短鎖架橋剤を含む。いくつかの実施形態では、光開始剤は、リチウムフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィネート(LAP)、トリメチルベンゾイルをベースとする光開始剤、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(TPOナノ粒子)イルガキュア類の光開始剤、ルテニウム、及びリボフラビン、又はそれらの混合物を含む。いくつかの実施形態では、印刷可能な組成物はさらに、ポリマーを含む添加剤、UV色素、天然細胞外マトリックス、光開始剤、ペプチド、アミノ酸、成長因子、変性細胞外マトリックス、細胞外マトリックス断片又はそれらの混合物の1つ又は複数を含む。いくつかの実施形態では、プロトン性溶媒は、水、ポリエチレングリコール、グリコールジアクリレート誘導体又はそれらの混合物を含む。
【発明の概要】
【0003】
さらなる実施形態は、3次元物品を作製するための実施形態のいずれか1つに従って印刷可能な組成物を印刷することを含む3次元物品を調製する方法を含む。いくつかの実施形態では、印刷は臓器の3次元物品を作製し、臓器は哺乳動物の臓器である。いくつかの実施形態では、印刷は、インクジェット印刷、押し出し印刷、又は交互積層印刷を含む。いくつかの実施形態では、3次元物品は、3次元物品の非水和重量に対して、重量で約300%未満の膨潤百分率を有する。いくつかの実施形態では、3次元物品は、3次元物品の非水和重量に対して、重量で約1%から約300%未満の膨潤百分率を有する。さらなる実施形態は、これらの実施形態に従って製造された3次元物品を含む。
【0004】
さらなる実施形態は、3次元物品を製造する方法であって、印刷可能な組成物の層を面に堆積させて、堆積層を得ること;堆積層に照射すること;並びに堆積層が3次元物品を形成するまで、堆積及び照射ステップを繰り返すことを含み、印刷可能な組成物が、印刷可能な組成物の重量を基準に、約1重量パーセント(重量%)~約40重量%の1つ又は複数の親水性モノマー;疎水性モノマー、短鎖架橋剤、及びそれらの組み合わせから選択される膨潤制御剤;約0.01重量%~約2重量%の光開始剤;並びに0重量%~約75重量%のプロトン性溶媒を含むビヒクルを含み、但し、膨潤制御剤が疎水性モノマーである場合、印刷可能な組成物が、約20:1~約1:20の、親水性モノマーの疎水性モノマーに対する重量比を有し;且つ膨潤制御剤が短鎖架橋剤である場合、印刷可能な組成物が約0.01重量%~約5重量%の短鎖架橋剤を含むことを条件とする方法を含む。いくつかの実施形態では、印刷可能な組成物は、実施形態のいずれか1つによる印刷可能な組成物である。いくつかの実施形態では、堆積層は365nm~約405nmの波長で照射される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】
図1は、HPA-PEGMEAブラシコポリマーの実施形態を示す。
【
図2A】
図2Aは、特定の30~45%PEGMEAハイドロゲルの膨潤を示す。
図2Bは、特定の25~35%PEGMEAハイドロゲルの膨潤を示す。
【
図2B】
図2Aは、特定の30~45%PEGMEAハイドロゲルの膨潤を示す。
図2Bは、特定の25~35%PEGMEAハイドロゲルの膨潤を示す。
【
図3】
図3は、疎水性モノマーであるポリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレート(PEGMEA)と疎水性モノマーである2-ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)の様々な重量パーセント比(1:0、2:1、1:1、1:0)を有する特定の実施形態の膨潤値を示す。
【
図4】
図4は、異なるHPA:PEGMEA重量パーセント比を有するさらなる実施形態についての膨潤データを示す。
【
図5】
図5は、様々なモノマーが異なった膨潤をもたらした10PEGMEAの特定の実施形態を示す。
【
図6】
図6は、特定の実施形態における[HPA/HEA]含量に対する膨潤を示す。
【
図7】
図7は、特定の実施形態における[HBA/HEA]含量に対する膨潤を示す。
【
図8】
図8は、N,N’-メチレンビスアクリルアミドを含む、又は含まない25~35PEGMEA製剤の特定の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本開示は、親水性モノマー(複数可)、疎水性モノマー(複数可)、短鎖架橋剤(複数可)、光開始剤、溶媒及び/又はそれらの組み合わせを含む印刷可能な組成物を含む。これらの組成物はハイドロゲルでありうる。親水性モノマー及び/又は疎水性モノマーの量を変えるなど、ハイドロゲルの含量を操作することによって、生理環境を含む水性環境に曝されたとき、得られるハイドロゲルの形状を制御することができる。本開示はまた、印刷可能な組成物を印刷することを含む3次元物品を調製する方法、及びそれらの方法に従って製造される3次元物品を含む。
【0007】
本明細書において使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、その内容がそうでないことを明確に示さない限り、複数形の指示対象を含む。例えば、「1つの細胞(a cell)」への言及は、2つ以上の細胞の組み合わせを包含するなどである。
【0008】
本明細書において使用される場合、「重量パーセント」(「重量%」とも表される)は、組成物の全質量に対する1つ又は複数の成分の割合を意味する。したがって、10グラムの化合物Aを含む100グラムの質量をもつ組成物は、化合物Aに対して10%の重量パーセントを有する。本明細書において使用される場合、重量パーセントは質量パーセントと同義に用いられる。
【0009】
本明細書において使用される場合、「物体(object)」及び「物品(article)」という用語は、交換可能に使用することができ、本発明の組成物を含む品物(items)を意味する。
【0010】
本明細書において使用される場合、「含む(comprising)」又は「含む(comprise)」という用語は、組成物及び方法が、記載された要素を含むが、他を除外しないことを意味することを意図する。組成物及び方法を定義するために使用される場合、「本質的にから成る」とは、記述された目的のための組み合わせに対してなんらかの本質的な意義がある他の要素を除外することを意味するものとする。したがって、本明細書に定義の要素から本質的になる組成物は、クレームされた発明の基本的且つ新規な特性に実質的に(materially)影響を及ぼさない他の材料又はステップを排除しないことになる。「からなる」とは、他の成分の微量要素及び実質的な(substantial)方法ステップを除くことを意味するものとする。これらの移行句の各々によって定義される実施形態は、本発明の範囲内にある。実施形態がこれらの用語の1つ(例えば、「含む」によって定義される場合、本開示は代替実施形態も包含することが理解されるべきである。これらの実施形態のいくつかは、前記実施形態について「本質的にからなる」及び「からなる」を含みうる。
【0011】
本明細書で使用する場合、「膨潤百分率(swelling percentage)」又は「膨潤率(percent swelling)」とは、別段の指定がない限り、水中でのインキュベーション前後における物体の質量の変化率(percent change)を意味する。したがって、正のパーセンテージは物体のサイズが大きくなったことを示し、負のパーセンテージは物体のサイズが小さくなったことを示す。
【0012】
本明細書において使用される場合、「実質的に(substantially)」及び「おおよそ(about)」という用語は、小さなばらつきを説明し、考慮するために使用される。事象又は状況とともに使用される場合、この用語は、事象又は状況が正確に発生する場合も、事象又は状況が近似的に発生する場合も意味することができる。数値とともに使用される場合、この用語は、±5%以下や、±4%以下、±3%以下、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.1%以下、±0.05%以下など、その数値の±10%以下のばらつきの範囲を意味しうる。第1の数値を第2の数値と「実質的に」又は「おおよそ」同じと言う場合、この用語は、第1の数値が第2の数値の、±5%以下、±4%以下、±3%以下、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.1%以下、又は±0.05%以下など、±10%以下のばらつきの範囲内にあることを意味しうる。
【0013】
さらに、量、比率及び他の数値は、本明細書において時として範囲形式で示される。そのような範囲形式は、便宜及び簡潔さのために使用されると理解されるべきであり、範囲の限界として明示的に指定された数値を含み、また、各数値及びサブ範囲(sub-range)が明示的に指定されているのと同様に、その範囲内に包含されるすべての個々の数値又はサブ範囲を含むと柔軟に理解されるべきである。例えば、約1~約200の範囲の比は、約1及び約200の明示的に示された限界を含むが、約2、約3及び約4などの個々の比、並びに約10~約50、約20~約100などのサブ範囲も含むと理解されるべきである。
【0014】
いくつかの実施形態では、変化率は、物体又は物品の一定期間の水中でのインキュベーションにわたるものである。いくつかの実施形態では、その期間は、約5秒~約30秒、約30秒~約1分、約1分~約10分、約10分~約30分、約30分~約1時間、約1時間~約3時間、約3時間~約12時間、約12時間~約24時間、約24時間~約1週間(w)、約1週間~約4週間、約1か月~約6か月、約6か月超、及びいずれか2つの値の間の任意の範囲から選択される。
【0015】
いくつかの実施形態では、物体、物品又は組成物は、約5秒~約30秒、約30秒~約1分、約1分~約10分、約10分~約30分、約30分~約1時間、約1時間~約3時間、約3時間~約12時間、約12時間~約24時間、約24時間~約1週間(w)、約1週間~約4週間、約1か月~約6か月、約6か月超、及びいずれか2つの値の間の任意の範囲から選択される期間にわたって質量の定常状態を達成する。
【0016】
本明細書において使用される場合、「質量の定常状態」は、組成物又は物品の質量が、水中でインキュベートされた状態であっても依然として一定である状態を含む。
【0017】
本出願は、以下の参考文献のそれぞれを参照によりその全体を援用する:(a)2021年5月6日に出願された、「USE OF FUNCTIONALIZED AND NON-FUNCTIONALIZED ECMS, ECM FRAGMENTS, PEPTIDES AND BIOACTIVE COMPONENTS TO CREATE CELL ADHESIVE 3D PRINTED OBJECTS」と題する米国仮出願第63/185,293号並びに2022年5月6日に出願された同名称の米国非仮出願及び/又はPCT出願;(b)2021年5月6日に出願された、「MODIFIED 3D-PRINTED OBJECTS AND THEIR USES」と題する米国仮出願第63/185,302号並びに2022年5月6日に出願された同名称の米国非仮出願及び/又はPCT出願;(c)2021年5月6日に出願された、「PHOTOCURABLE REINFORCEMENT OF 3D PRINTED HYDROGEL OBJECTS」と題する米国仮出願第63/185,305号並びに2022年5月6日に出願された同名称の米国非仮出願及び/又はPCT出願;(d)2021年5月6日に出願された、「ADDITIVE MANUFACTURING OF HYDROGEL TUBES FOR BIOMEDICAL APPLICATIONS」と題する米国仮出願第63/185,299号並びに2022年5月6日に出願された同名称の米国非仮出願及び/又はPCT出願;(e)2021年5月6日に出願された、「MICROPHYSIOLOGICAL 3-D PRINTING AND ITS APPLICATIONS」と題する米国仮出願第63/185,298号並びに2022年5月6日に出願された同名称の米国非仮出願及び/又はPCT出願。
【0018】
組成物
本開示のある特定の実施形態は、親水性モノマー(複数可)及び/若しくはポリマー、疎水性モノマー(複数可)及び/若しくはポリマー、短鎖架橋剤(複数可)、光開始剤、溶媒並びに/又はそれらの組み合わせに関する。いくつかの実施形態では、これらの組成物は印刷可能であり、例えば、3Dプリンターで使用することができる。
【0019】
いくつかの実施形態は、約1重量パーセント(重量%)~約40重量%の1つ又は複数の親水性モノマー;疎水性モノマー、短鎖架橋剤、及びそれらの組み合わせから選択される膨潤制御剤を含む印刷可能な組成物を含む。組成物は、印刷可能な組成物の重量を基準に、約0.01重量%~約2重量%の光開始剤及び/又は0重量%~約75重量%のプロトン性溶媒を含むビヒクルを含むことができる。
【0020】
本開示の親水性モノマーは、意図された目的に適する限り、特に限定されない。いくつかの実施形態では、親水性モノマーは、アクリレート又はメタクリレート部分及び(メタ)アクリレートに結合した親水性側鎖を含む。いくつかの実施形態では、親水性モノマーは水溶性であり、例えば、モノマー又はホモポリマーは水溶性である。親水性モノマーの好ましい実施形態は、ヒドロキシC
1-2アルキル(メタ)アクリレート、ポリ(アルキレンオキシド)アルキルエーテル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシC
1-2アルキル(メタ)アクリルアミド、及びそれらの混合物の1つ又は複数を含む。さらなる実施形態では、親水性モノマーは、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレート(PEGMEA)、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、ポリ(プロピレングリコール)メチルエーテルアクリレート、ポリ(プロピレングリコール)メチルエーテルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)、親水性アクリレート、親水性ビニル、親水性非イオン性、親水性イオン性、グラフト親水性、疎水性アクリレート、疎水性ビニル、疎水性非イオン性、疎水性イオン性、グラフト疎水性、又はそれらの混合物の1つ又は複数を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、ペプチド、切断可能ペプチドモノマー、ジチオールモノマー、チオール-アクリレート、ジアクリレート、及びPEG-ジアクリレートを含むことができる。特定の実施形態では、1つ又は複数の親水性モノマーは、PEGMA、HEA、及びそれらの混合物からなる群より選択される。特定の実施形態では、1つ又は複数の親水性モノマーは、PEGMA及び第2の親水性モノマーを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、約10、15、20、25、又は30重量%のPEGMA及び任意選択で第2の親水性モノマーを含む。いくつかの実施形態では、第2の親水性モノマーは、PEGMAと比べて、親水性がより低く、且つ/又はより短い側鎖を有する。いくつかの実施形態では、PEGMAは次のモノマーを含む:
【化1】
ここで、aは2~20の整数(例えば、2、3、4、8、20など)である。整数aは、単一の値が混在していることがあり、以下がその例である:
【化2】
図1は、HPA-PEGMEAブラシコポリマーの実施形態を示す。
【0021】
いくつかの実施形態では、膨潤制御剤が疎水性モノマーである場合、印刷可能な組成物は、約100:1~約1:100の、親水性モノマーの疎水性モノマーに対する重量比を有する。例えば、ある特定の実施形態は、約100:1、約90:1、約80:1、約70:1、約60:1、約50:1、約40:1、約30:1、約20:1、約10:1、約1:1、約1:10、約1:20、約1:30、約1:40、約1:50、約1:60、約1:70、約1:80、約1:90、若しくは約1:100、又はいずれか2つの値間の任意の範囲の親水性モノマーの疎水性モノマーに対する重量比を含む。例えば、いくつかの実施形態では、親水性モノマーの疎水性モノマーに対する重量比は、約20:1~約1:20、約15:1~約1:15、約10:1~約1:10、約5:1~約1:5、約3:1~約1:3、約1:1~約1:3である。親水性モノマー(又はポリマー)の疎水性モノマー(又はポリマー)に対するこれらの重量比としては、例えば、HPAとHEA(若しくはPEGMA)又はHBAとHEA(若しくはPEGMA)が挙げられる。いくつかの実施形態では、疎水性モノマー及び親水性モノマーは、モノマーについて開示されているのと同じ比率で、そのモノマーの代わりに、又はそのモノマーに加えて使用することができる。ポリマーがモノマーと組み合わせて使用される場合、開示の比率は疎水性と親水性のそれぞれの合計(親水性モノマー+親水性ポリマー:疎水性モノマー+疎水性ポリマー)である。
【0022】
本開示の疎水性モノマーは、意図される目的に適している限り、特に限定されない。いくつかの実施形態では、疎水性モノマーは、アクリレート又はメタクリレート部分及び(メタ)アクリレートに結合した疎水性側鎖を含む。いくつかの実施形態では、疎水性モノマーは水溶性ではなく、例えば、モノマー又はホモポリマーは水溶性ではない。いくつかの実施形態では、疎水性モノマーは、組成物中の他のモノマーに対して相対的に疎水性である。疎水性モノマーの非限定的な例としては、ヒドロキシルC3-10 アルキル(メタ)アクリレート、又はその混合物(例えば、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)、ヒドロキシブチルメタクリレート、親水性アクリレート、親水性ビニル、親水性非イオン性、親水性イオン性、グラフト親水性、疎水性アクリレート、疎水性ビニル、疎水性非イオン性、疎水性イオン性、グラフト疎水性、又はそれらの混合物)の1つ又は複数が挙げられる。いくつかの実施形態では、C3-10アルキル(メタ)アクリレートは、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10アルキル(メタ)アクリレートである。いくつかの実施形態では、アルキル(メタ)アクリレートは任意選択で、例えばアリール基又は炭化水素基などの疎水性部分で置換される。いくつかの実施形態では、組成物は、ペプチドモノマー、切断可能ペプチドモノマー、ジチオールモノマー、チオール-アクリレート、ジアクリレート、PEG-ジアクリレート、及びそれらの組み合わせを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、膨潤制御剤が短鎖架橋剤である場合、印刷可能な組成物は約0.01重量%~約10重量%の短鎖架橋剤を含む。好ましい実施形態は、印刷可能な組成物が、約0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5、5.5、6.、6.5、7.、7.5、8、8.5、9、9.5、又は10重量%の短鎖架橋剤、又はいずれか2つの値間の任意の範囲を含む場合を含む。例えば、いくつかの実施形態では、印刷可能な組成物は約0.01重量%~約5重量%の短鎖架橋剤を含む。
【0024】
短鎖架橋剤としては、例えば、約400~約20,000の重量平均分子量(Mw)を有するポリ(アルキレンオキシド)ジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、N,N’-メチレンビス(アシルアミド)、(ポリ)乳酸ジ(メタ)アクリレート、(ポリ)グリコール酸ジ(メタ)アクリレート、(ポリ)乳酸コグリコリドジ(メタ)アクリレート、(ポリ)カプロラクトンジ(メタ)アクリレート、(ポリ)ジオキサノンジ(メタ)アクリレート、(ポリ)フマル酸ジ(メタ)アクリレート、(カボキシ)(メチル)セルロースジ(メタ)アクリレート、ヒアルロン酸ジ(メタ)アクリレート、ヘパラン硫酸ジ(メタ)アクリレート、デキストランジ(メタ)アクリレート、アルギン酸ジ(メタ)アクリレート、ペクチンジ(メタ)アクリレート、若しくはコラーゲンジ(メタ)アクリレート又はそれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、ポリ(アルキレンオキシド)ジ(メタ)アクリレートは、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレートを含む。
【0025】
光開始剤は特に限定されない。いくつかの実施形態では、光開始剤は、0~60秒の開始時間(onset times)を可能にするようなものである。いくつかの実施形態では、光開始剤は、リチウムフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィネート(LAP)、トリメチルベンゾイルをベースとする光開始剤、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(TPOナノ粒子)イルガキュア類の光開始剤、ルテニウム、及びリボフラビン、又はそれらの混合物を含む。
【0026】
印刷可能な組成物は、ポリマーを含む添加剤、UV色素、天然細胞外マトリックス、ペプチド、アミノ酸、成長因子、変性細胞外マトリックス、細胞外マトリックス断片又はそれらの混合物の1つ又は複数をさらに含むことができる。溶媒は、3D印刷が可能で、且つ/又は重合が可能である限り、特に限定されない。いくつかの実施形態では、溶媒はプロトン性溶媒、例えば、水、ポリエチレングリコール、グリコールジアクリレート誘導体又はそれらの混合物を含むプロトン性溶媒である。
【0027】
いくつかの実施形態では、印刷可能な組成物は、0超えから約60秒まで(例えば、約1、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、60秒)の開始時間を可能にする。いくつかの実施形態では、印刷可能な組成物は、3Dプリンターにおいて、100、50、25、25、1ミクロン以下までの解像度を可能にする。いくつかの実施形態では、印刷可能な組成物は、約10kPa~約1MPaの範囲のグリーン強度を有する印刷組成物をもたらす。
【0028】
方法
本開示のある特定の実施形態は、本明細書の実施形態による印刷可能な組成物を印刷することを含む3次元物品の調製に関する。いくつかの実施形態では、印刷により、3次元の臓器又は臓器の構成部分を作製がされる。例えば、3次元物体は哺乳動物の臓器、例えば肺、又は哺乳動物の臓器の構成要素、例えば気管支梢であることができる。いくつかの実施形態では、印刷は、インクジェット印刷、押し出し印刷、又は交互積層印刷を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、印刷組成物に照射することをさらに含む。いくつかの実施形態では、組成物は約365nm~約405nmの波長で照射される。
【0029】
本開示のある特定の実施形態は、3次元物品を製造する方法であって、印刷可能な組成物の層を面に堆積させて、堆積層を得ること;その堆積層に照射すること;並びに堆積層が3次元物品を形成するまで、堆積及び照射ステップを繰り返すことを含み、その印刷可能な組成物が本明細書に開示の組成物である方法に関する。いくつかの実施形態では、堆積層は約365nm~約405nmの波長で照射される。
【0030】
いくつかの実施形態では、印刷可能な組成物は、印刷可能な組成物の重量を基準に、約1重量パーセント(重量%)~約40重量%の1つ又は複数の親水性モノマー;疎水性モノマー、短鎖架橋剤、及びそれらの組み合わせから選択される膨潤制御剤;約0.01重量%~約2重量%の光開始剤;並びに0重量%~約75重量%のプロトン性溶媒を含むビヒクルを含み、但し、膨潤制御剤が疎水性モノマーである場合、印刷可能な組成物が、約20:1~約1:20の、親水性モノマーの疎水性モノマーに対する重量比を有し;且つ膨潤制御剤が短鎖架橋剤である場合、印刷可能な組成物が、約0.01重量%~約5重量%の短鎖架橋剤を含むことを条件とする。
【0031】
いくつかの実施形態では、3次元物品は、その3次元物品の非水和重量に対して、重量で約300%未満の膨潤百分率を有する。いくつかの実施形態では、膨潤百分率は、3次元物品の非水和重量に対して、重量で約300%、250%、200%、175%、150%未満である。いくつかの実施形態では、膨潤百分率は、3次元物品の非水和重量に対して、少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、10%、20%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%である。3次元物品はまた、上記の値の範囲内の膨潤率を有することもでき、例えば、いくつかの実施形態では、3次元物品は、3次元物品の非水和重量に対して、重量で約1%から約300%未満の膨潤百分率を有する。
【0032】
いくつかの実施形態では、本方法はさらに、面の改質、細胞接着を促進するための後続の加工(post processing)、細胞の添加、機械的刺激:拡張、収縮、及び/又は灌流の1つ又は複数のステップを含む。
【0033】
本開示はまた、本開示の方法に従って製造された3次元物品の実施形態も含む。
【実施例】
【0034】
以下の例は、本開示のいくつかの実施形態の特定の態様を説明して、当業者のための説明を例示及び提供する。実施例は、本開示のいくつかの実施形態を理解し実施する上で有用な特定の方法論を提供するにすぎないので、本開示を限定するものと解釈されるべきではない。
【0035】
30~45%PEGMEAハイドロゲル及び25~35%PEGMEAハイドロゲル
以下の組成物の重合を開始させることによってハイドロゲルを形成させた。
【表1】
【0036】
どちらの組成物も、一晩水性バッファーに入れる前と後の重量を測定した。
図2(a)に示されるように、30~45%PEGMEAハイドロゲルは、バッファーに入れると制御不能に膨潤し、形状を保たなかった。重量で>300%の増加を示した。
図2(b)に示されるように、PEGMEA含量を30~45%から25~35%に落とし、1%のPEGDA3.4kを導入することで、試料形状の保持が有意に向上した。
【0037】
モノマー(2-ヒドロキシプロピルアクリレート)による膨潤の制御
25~35%PEGMEAハイドロゲルをベースに、特定の量のPEGMEAを疎水性の2-ヒドロキシプロピルアクリレート(2-HPA)に置き換えたさらなるハイドロゲルを合成した。
【表2】
【0038】
図3に示されるように、膨潤値はそれぞれ以下の通りであった:
25~35PEGMEA=316.7%
2:1PEGMEA/HPA=240.1%
1:1PEGMEA/HPA=205.3%
25~35HPA=-32.4%
【0039】
図4に示されるように、膨潤を調節するために、4:1、2:1、3:1を含む他のHPA:PEGMEA比を調べた。
【表3】
【表4】
【0040】
以下の表に示されるように、ブラシポリマーとモノマーの比を変えることにより、膨潤の結果を効果的に制御することができた。さらに、この制御は再現性があった。
【表5】
【表6】
【0041】
モノマー(HEA C2、HPA C3、HBA C4)による膨潤の制御
HBA及びHEAを含む、HPA以外の他のモノマーを用いてさらなるポリマーを作り、それにより幅広いモノマーで膨潤の制御が得られることが示された。
【表7】
【0042】
図5は、モノマーを含む10PEGMEAが以下の膨潤値をもたらしたことを示す。
2HEA=96.21%
2HBA=79.86%
2HPA=75.89%
【0043】
次に、[HPA/HEA]比及び[HBA/HEA]比が増加するポリマーを、以下の組成物を使用して合成した。
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【0044】
図6は[HPA/HEA]含量に対する膨潤を示し、
図7は[HBA/HEA]含量に対する膨潤を示す。図からわかるように、ポリマー中の疎水性モノマー含量と親水性モノマー含量の比を変えることによって膨潤の制御を達成することができる。
【0045】
短い架橋剤N,N’-メチレンビスアクリルアミド(MBAA)による膨潤の制御
追加の架橋剤を含まない25~35PEGMEA製剤及び様々な量のMBAAを含む25~35PEGMEA製剤を合成した。使用した組成物は以下の通りであった。
【表12】
【表13】
【0046】
図8に示されるように、追加の架橋剤を含まない25~35PEGMEA製剤は316.73%まで膨潤した。0.5%のMBAAを添加すると膨潤は47.6%減少し、さらに1%のMBAAを添加すると膨潤は106.8%減少した。
【0047】
その特定の実施形態を参照して本開示を説明してきたが、添付のクレーム(複数可)によって画定される開示の真の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変更がなされ、均等物が代替されうることが当業者に理解されるべきである。さらに、特定の状況、材料、物質の構成、方法、操作又は複数の操作を、本開示の目的、趣旨及び範囲に適合させるように多くの修正を行うことができる。そのような修正はすべて、本明細書に添付のクレームの範囲内にあることが意図されている。特に、ある特定の方法が、特定の順序で実行される特定の操作に関連して記載されうる一方で、それらの操作は、本開示の教示から逸脱することなく、均等な方法を形成するように組み合わせ、分割、又は再順序付けできることが理解されるであろう。したがって、本明細書において具体的に示されない限り、操作の順序及びグループ化は開示を限定するものではない。
【国際調査報告】