(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-16
(54)【発明の名称】ブレンドガソリン組成物
(51)【国際特許分類】
C10L 1/223 20060101AFI20240409BHJP
【FI】
C10L1/223
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023568432
(86)(22)【出願日】2021-08-12
(85)【翻訳文提出日】2023-12-01
(86)【国際出願番号】 US2021045749
(87)【国際公開番号】W WO2022235285
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523416575
【氏名又は名称】バーガー、 ジョン
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】バーガー、 ジョン
(57)【要約】
87のAKIを有するブレンドガソリン組成物を開示する。前記ブレンドガソリン組成物の配合は、二酸化炭素放出減少を導く。前記ブレンドガソリン組成物は、減少した濃度のオレフィンおよび非アミン芳香族を含有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約0.1体積%~約5体積%の範囲の濃度の芳香族アミンと;
約20%までの濃度のエタノールと;
約15%までの濃度の非アミン芳香族炭化水素と;
約8%までの濃度のオレフィンと;
約90%までの濃度のパラフィンと
を含む、ブレンドガソリン組成物。
【請求項2】
前記ブレンドガソリン組成物1ポンドが、内燃機関エンジンで燃焼された際、BTUあたり0.00004ポンド以下の炭素を生じる、請求項1に記載のブレンドガソリン組成物。
【請求項3】
前記ブレンドガソリン組成物が、少なくとも87のアンチノック指数値を有する、請求項1に記載のブレンドガソリン組成物。
【請求項4】
前記オレフィン濃度が約5.00%以下である、請求項1に記載のブレンドガソリン組成物。
【請求項5】
前記オレフィン濃度が約3.00%以下である、請求項1に記載のブレンドガソリン組成物。
【請求項6】
前記オレフィン濃度が約1.00%以下である、請求項1に記載のブレンドガソリン組成物。
【請求項7】
前記オレフィン濃度が0.00%である、請求項1に記載のブレンドガソリン組成物。
【請求項8】
前記芳香族濃度が約10%以下である、請求項1に記載のブレンドガソリン組成物。
【請求項9】
前記芳香族濃度が約5%以下である、請求項1に記載のブレンドガソリン組成物。
【請求項10】
前記芳香族濃度が約1%未満である、請求項1に記載のブレンドガソリン組成物。
【請求項11】
前記エタノールが、約10%~約20%の間の濃度で存在する、請求項1に記載のブレンドガソリン組成物。
【請求項12】
前記エタノールが、約10%~約15%の間の濃度で存在する、請求項1に記載のブレンドガソリン組成物。
【請求項13】
前記ブレンドガソリン組成物が:
約70%~約90%のパラフィンと;
約0%~約8%のオレフィンと;
約0%~約10%のナフテンと;
約0%~約15%の芳香族と
を含む、パラフィン、オレフィン、ナフテンおよび芳香族体積配分を有する、請求項1に記載のブレンドガソリン組成物。
【請求項14】
前記ブレンドガソリン組成物が:
約0体積%~約10体積%の4炭素原子を有する炭化水素と;
約25体積%~約40体積%の5炭素原子を有する炭化水素および6炭素原子を有する炭化水素と;
約30体積%~約50体積%の7炭素原子を有する炭化水素および8炭素原子を有する炭化水素と;
約3体積%~約30体積%の9炭素原子を有する炭化水素および10炭素原子を有する炭化水素と;
約0体積%~約25体積%の11炭素原子を有する炭化水素および12炭素原子を有する炭化水素と;
約0体積%~約5体積%の少なくとも13炭素原子を有する炭化水素と
を含む、炭素鎖長配分の炭化水素を有する、請求項1に記載のブレンドガソリン組成物。
【請求項15】
前記芳香族アミンが、m-トルイジン、p-トルイジン、o-トルイジンおよびアニリン、ならびに同定される化合物の混合物からなる群より選択される、請求項1に記載のブレンドガソリン組成物。
【請求項16】
前記芳香族アミンがm-トルイジンであり、前記m-トルイジンが、前記ブレンドガソリン組成物の約4体積%の量で存在する、請求項15に記載のブレンドガソリン組成物。
【請求項17】
前記エタノールが少なくとも130のブレンドオクタン価を有する、請求項1に記載のブレンドガソリン組成物。
【請求項18】
前記エタノールが少なくとも135のブレンドオクタン価を有する、請求項1に記載のブレンドガソリン組成物。
【請求項19】
前記芳香族アミンがm-トルイジンであり、m-トルイジンが少なくとも300のブレンドオクタン価を有する、請求項15に記載のブレンドガソリン組成物。
【請求項20】
前記芳香族アミンがm-トルイジンであり、m-トルイジンが少なくとも500のブレンドオクタン価を有する、請求項15に記載のブレンドガソリン組成物。
【請求項21】
約0.1体積%~約5体積%の範囲の濃度の芳香族アミンと;
約20%までの濃度のエタノールと;
約5%までの濃度の非アミン芳香族炭化水素と;
約4%までの濃度のオレフィンと;
約86%までの濃度のパラフィンと
を含む、ブレンドガソリン組成物。
【請求項22】
前記ブレンドガソリン組成物が、オレフィンを実質的に含まない、請求項21に記載のブレンドガソリン組成物。
【請求項23】
前記ブレンドガソリン組成物が、非アミン芳香族化合物を実質的に含まない、請求項21に記載のブレンドガソリン組成物。
【請求項24】
前記ブレンドガソリン組成物が:
約70%~約90%のパラフィンと;
約0%~約8%のオレフィンと;
約0%~約10%のナフテンと;
約0%~約15%の芳香族と
を含む、パラフィン、オレフィン、ナフテンおよび芳香族体積配分を有する、請求項21に記載のブレンドガソリン組成物。
【請求項25】
前記ブレンドガソリン組成物が:
約0体積%~約10体積%の4炭素原子を有する炭化水素と;
約25体積%~約40体積%の5炭素原子を有する炭化水素および6炭素原子を有する炭化水素と;
約30体積%~約50体積%の7炭素原子を有する炭化水素および8炭素原子を有する炭化水素と;
約3体積%~約30体積%の9炭素原子を有する炭化水素および10炭素原子を有する炭化水素と;
約0体積%~約25体積%の11炭素原子を有する炭化水素および12炭素原子を有する炭化水素と;
約0体積%~約5体積%の少なくとも13炭素原子を有する炭化水素と
を含む、炭素鎖長配分の炭化水素を有する、請求項21に記載のブレンドガソリン組成物。
【請求項26】
前記芳香族アミンが、m-トルイジン、p-トルイジン、o-トルイジンおよびアニリン、ならびに同定される化合物の混合物からなる群より選択される、請求項21に記載のブレンドガソリン組成物。
【請求項27】
前記芳香族アミンがm-トルイジンであり、前記m-トルイジンが、前記ブレンドガソリン組成物の約4体積%の量で存在する、請求項22に記載のブレンドガソリン組成物。
【請求項28】
前記ブレンドガソリン組成物1ポンドが、内燃機関エンジンで燃焼された際、BTUあたり0.00004ポンド以下の炭素を生じる、請求項21に記載のブレンドガソリン組成物。
【請求項29】
前記エタノールが少なくとも130のブレンドオクタン価を有する、請求項21に記載のブレンドガソリン組成物。
【請求項30】
前記エタノールが少なくとも135のブレンドオクタン価を有する、請求項21に記載のブレンドガソリン組成物。
【請求項31】
前記芳香族アミンがm-トルイジンであり、m-トルイジンが少なくとも300のブレンドオクタン価を有する、請求項26に記載のブレンドガソリン組成物。
【請求項32】
前記芳香族アミンがm-トルイジンであり、前記m-トルイジンが少なくとも500のブレンドオクタン価を有する、請求項26に記載のブレンドガソリン組成物。
【請求項33】
約0.1体積%~約5体積%の範囲の濃度の、m-トルイジン、p-トルイジン、o-トルイジンおよびアニリン、ならびに同定される化合物の混合物からなる群より選択される芳香族アミンと;
約20%までの濃度のエタノールと;
約86%までの濃度のパラフィンと
を含み
非アミン芳香族化合物を実質的に含まない
ブレンドガソリン組成物。
【請求項34】
前記ブレンドガソリン組成物が、オレフィンを実質的に含まない、請求項33に記載のブレンドガソリン組成物。
【請求項35】
前記ブレンドガソリン組成物が:
約70%~約90%のパラフィンと;
約0%~約8%のオレフィンと;
約0%~約10%のナフテンと;
約0%~約15%の芳香族と
を含む、パラフィン、オレフィン、ナフテンおよび芳香族体積配分を有する、請求項33に記載のブレンドガソリン組成物。
【請求項36】
前記ブレンドガソリン組成物が:
約0体積%~約10体積%の4炭素原子を有する炭化水素と;
約25体積%~約40体積%の5炭素原子を有する炭化水素および6炭素原子を有する炭化水素と;
約30体積%~約50体積%の7炭素原子を有する炭化水素および8炭素原子を有する炭化水素と;
約3体積%~約30体積%の9炭素原子を有する炭化水素および10炭素原子を有する炭化水素と;
約0体積%~約25体積%の11炭素原子を有する炭化水素および12炭素原子を有する炭化水素と;
約0体積%~約5体積%の少なくとも13炭素原子を有する炭化水素と
を含む、炭素鎖長配分の炭化水素を有する、請求項33に記載のブレンドガソリン組成物。
【請求項37】
前記芳香族アミンがm-トルイジンであり、前記m-トルイジンが、前記ブレンドガソリン組成物の約4体積%の量で存在する、請求項33に記載のブレンドガソリン組成物。
【請求項38】
前記ブレンドガソリン組成物1ポンドが、内燃機関エンジンで燃焼された際、BTUあたり0.00004ポンド以下の炭素を生じる、請求項33に記載のブレンドガソリン組成物。
【請求項39】
前記エタノールが少なくとも130のブレンドオクタン価を有する、請求項33のブレンドガソリン組成物。
【請求項40】
前記エタノールが少なくとも135のブレンドオクタン価を有する、請求項33に記載のブレンドガソリン組成物。
【請求項41】
前記芳香族アミンがm-トルイジンであり、m-トルイジンが少なくとも300のブレンドオクタン価を有する、請求項33に記載のブレンドガソリン組成物。
【請求項42】
前記芳香族アミンがm-トルイジンであり、前記m-トルイジンが少なくとも500のブレンドオクタン価を有する、請求項33に記載のブレンドガソリン組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロスリファレンス
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2021年5月7日出願の米国非仮出願第17/314,579号の恩典を請求する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素放出を減少させるように設計されている市販の自動車用ガソリンの配合が、世界中で非常に望まれている。レギュラーおよびプレミアム等級ガソリンのために必要なオクタンレベルを提供するため、現在市販の自動車用ガソリン配合には、製造された芳香族炭化水素が含まれる。芳香族炭化水素は、ナフサ中に見られる水素リッチパラフィンおよびナフテン系分子から、接触改質(catalytic reforming)プロセスによって製造される。接触改質プロセスは、著しく高いアンチノック指数(AKI)値(R+M/2)を有する、一般に「リフォーメート」と称される産物を生じる。接触改質装置(catalytic reformer)の使用は、4つの基本的な点で、二酸化炭素放出の一因となる。第一に、パラフィンおよびナフテン系分子から水素を除去し、芳香族を産生することによって、燃料の炭素強度(carbon intensity)を上昇させる。第二に、芳香族がより低いエネルギー含量を有するため、燃料ポンドあたりのエネルギー含量を低下させ;したがって放出される同じエネルギーに対して、燃焼される燃料の量を増加させる。第三に、副産物である水素リッチ燃料ガスが、クラッキング反応によってプロセス中で産生される。これが望ましくない収量損失を生じ、望ましい量のリフォーメートを生じるために必要なナフサの原料体積を上昇させ、続いて石油燃料使用量を増加させる。第四に、改質プロセスは高温を必要とし、これは次に、二酸化炭素放出を増加させる。
【0003】
したがって、製造プロセス中の二酸化炭素放出を低下させ、燃焼に際してより低い二酸化炭素放出を提供するプロセスによって調製されるブレンドガソリン組成物(blended gasoline composition)の提供は、環境を有意に改善するであろう。
【発明の概要】
【0004】
本明細書に開示するのは、炭素放出を減少させるように配合されたブレンドガソリン組成物である。このブレンドガソリン組成物は:
約0.1体積%~約5体積%の範囲の濃度の、m-トルイジン、p-トルイジン、o-トルイジンおよびアニリン、ならびに同定される化合物の混合物からなる群より選択される芳香族アミンと;
約20%までの濃度のエタノールと;
約15%までの濃度の非アミン芳香族炭化水素(non-amine aromatic hydrocarbons)と;
約8%までの濃度のオレフィンと;
約86%までの濃度のパラフィンと
を含む。
【0005】
やはり本明細書に開示されるのは、炭素放出を減少させるよう配合されたブレンドガソリン組成物である。このブレンドガソリン組成物は:
約0.1体積%~約5体積%の範囲の濃度の、m-トルイジン、p-トルイジン、o-トルイジンおよびアニリン、ならびに同定される化合物の混合物からなる群より選択される芳香族アミンと;
約20%までの濃度のエタノールと;
約86%までの濃度のパラフィンと
を含む。開示されるブレンドガソリン組成物は、芳香族化合物を実質的に含まない。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本開示は、これらの詳細な説明を参照することによって、より容易に理解されうる。さらに、本明細書記載の多様な実施形態の完全な理解を提供するため、多くの特定の詳細が示される。しかし、一般の当業者には、本明細書記載の実施形態が、これらの特定の詳細なしに実施されうることを理解するであろう。本説明は、本明細書記載の実施形態の範囲を限定するとは見なされないものとする。また、本明細書に使用される表現や専門用語は、説明の目的のためのものであり、そのように示される場合を除いて、限定と見なされてはならないことが理解されるものとする。
【0007】
本開示全体で、用語「約(about)」、「およそ(approximate)」、およびその変形は、値が、その値を決定するために使用されるデバイス、系、方法に生得的な変動または誤差、あるいは研究対象間に存在する変動を含むことを示すように用いられる。本明細書に別に言及しない限り、すべての配合は、体積に基づくパーセントとして提供される。
【0008】
以下の開示は、道路車両(road vehicles)およびオフロード車両における使用に適したブレンドガソリン組成物を提供する。開示されるブレンドガソリン組成物は、道路送車両およびオフロード車両における使用に意図されるガソリンの現在のすべてのバージョンに適合する。さらに、開示されるブレンドガソリン組成物は、現在の燃料流通系に重大な変更を伴わずに流通させることができる。以下により詳細に記載されるであろうように、開示されるブレンドガソリン組成物は、現在入手可能なガソリンのバージョンよりも有意により低い二酸化炭素放出を生じる。さらなる利点として、開示されるブレンドガソリン組成物は、現在用いられているガソリン組成物に比較した際、パラフィン含量がより高いため、現在のガソリン組成物と等しいかまたはそれより優れたエネルギー値を有する。
【0009】
開示されるブレンドガソリン組成物は、ブレンドガソリン組成物の配合から芳香族化合物を実質的に除去することによって、二酸化炭素放出の減少を達成する。ブレンドガソリン組成物内の芳香族組成物のターゲット最大濃度は、芳香族アミンを含まず、15体積%未満である。より典型的には、ブレンドガソリン組成物は、芳香族アミンを含まず、10%未満の芳香族含量を有するであろう。さらにより典型的には、ブレンドガソリン組成物は、芳香族アミンを含まず、5%未満の芳香族含量を有するであろう。好ましくは、ブレンドガソリン組成物は、芳香族アミンを含まず、0%の芳香族含量を有するであろう。
【0010】
開示されるブレンドガソリン組成物はまた、組成物中、アルケンとしても知られるオレフィンの量を限定することによって、放出を減少させる。典型的には、ブレンドガソリン組成物は、10体積%未満のオレフィンを有するであろう。より典型的には、ブレンドガソリン組成物は、8%未満のオレフィン含量を有するであろう。より一般的には、ブレンドガソリン組成物は、5%未満のオレフィン含量を有するであろう。好ましくは、ブレンドガソリン組成物は、0%のオレフィン含量を有するであろう。
【0011】
開示されるブレンドガソリン組成物には、大部分の製油所によって一般的に産生されるように、炭化水素のベース燃料ブレンドが含まれる。ベース燃料ブレンドは、製油所設備、例えば水素添加分解装置、異性化装置、アルキル化装置、水素化脱硫装置、ならびに任意選択で流動接触分解装置および任意選択で改質装置によって一般的に産生されるような鎖長を有する炭化水素を含有する。したがって、アルキレート、リフォーメート、FCCUガソリン、イソメレートおよびナフサとして産業で一般に知られる製品が、ベース燃料ブレンド中に含まれうる。こうした装置は、典型的には、約4炭素原子~約12炭素原子の長さの鎖を有する炭化水素(C4~C12)を産生する。より典型的には、ベース燃料ブレンドは、5炭素原子~12炭素原子(C5~C12)を有するであろう。こうした炭化水素には、限定されるわけではないが、パラフィン、オレフィン、ナフテンおよび芳香族炭化水素が含まれる。上に論じるように、オレフィンおよび芳香族構成要素は、好ましくは、限定された濃度であるかまたは除去される。典型的には、ベース燃料ブレンドは、総ブレンドガソリン組成物の約70体積%~約90体積%を構成するであろう。
【0012】
1つの適切なベース燃料ブレンドは、再生可能ディーゼルおよびジェット燃料製造プラントから得られうる。こうしたベース燃料ブレンドは、約50~約60の間、典型的には55のアンチノック指数(AKI = RON+MON/2)(式中、RONはリサーチオクタン価であり、MONはモーターオクタン価である)を有すると特徴づけられるであろう。さらに、芳香族アミンが添加されたら、CBOB、RBOBおよびCARBOBベース燃料ブレンドで使用するには、以下のブレンド戦略が好適である。ベース燃料ブレンドは、130℃~180℃の範囲の沸点を有するであろう。これらのベースブレンド材料は当業者に知られる。CBOBは、含酸素ブレンドの従来ブレンドストックを表す。RBOBは、含酸素ブレンドの改質ブレンドストックを表す。CARBOBは、含酸素ブレンドのカリフォルニア改質ブレンドストックを表す。
【0013】
最後に、ベース燃料ブレンド中のオレフィンおよび芳香族含量を除去するかまたは実質的に減少させることによって、ベース燃料ブレンドは、現在のベース燃料とは異なるPONA配分を有するであろう。当業者に知られるように、パラフィン、オレフィン、ナフテンおよび芳香族の比は、燃料PONAとして知られる。典型的なベース燃料は、以下のようなPONAを有する:
パラフィン:25~50体積%;
オレフィン:0~10体積%;
ナフテン:5~10体積%;
芳香族:20~35体積%。
しかし、本発明のブレンドガソリン組成物で用いられるベース燃料ブレンドは、以下のような明確に異なるPONA配分を有する:
パラフィン:70~90体積%;
オレフィン:0~8体積%;
ナフテン:0~10体積%;
芳香族:0~15体積%。
さらに、現在のガソリン組成物は、しばしば、望ましい最終AKI値を達成するために、ベース燃料にエタノールを加える。現在の燃料は、最終ブレンド中に0~10体積%のエタノールを使用する。対照的に、本発明のブレンドガソリン組成物は、最終ブレンド中に約10体積%~約20体積%のエタノールを利用する。
【0014】
したがって、最終ブレンドのエタノール比率を増加させることによって、ブレンドガソリン組成物は、大気内への再生不能炭素の放出をさらに減少させる。さらに、PONA材料のうち、パラフィンはポンドあたり最高のエネルギー含量を有する。したがって、ブレンドガソリン組成物中のパラフィンを最大にすると、現在入手可能なガソリンと同じエネルギー放出を生じるために必要な燃料の量を減少させる効果がある。さらに、芳香族およびオレフィン含量の除去、ならびにパラフィン含量の増加は、ブレンドガソリン組成物の水素対炭素比を好適に上昇させる一方、パラフィンおよびエタノールのオクタンブレンド相乗効果も利用する。さらに、ベース燃料中の芳香族およびオレフィンの減少は、エタノールに対して芳香族およびオレフィンが有するオクタン抑制要因を減少させる。同様に、ベース燃料中の芳香族を減少させると、芳香族およびパラフィンの間に示される負のオクタンブレンド要因が減少する。大気性二酸化炭素の放出に関するデータを以下の表4に提供する。表4の焦点は、大気への二酸化炭素の放出の減少に関する。
【0015】
道路使用およびオフロード使用のために必要なオクタン価を有するブレンドガソリン組成物を提供するため、ブレンドガソリン組成物にはまた、約10体積%~約20体積%の間のエタノールも含まれる。典型的には、ブレンドガソリン組成物は、約10体積%~15体積%の間のエタノールを含有する。さらに、ブレンドガソリン組成物は、芳香族アミンの形のオクタンブースターを含有する。適切な芳香族アミンには、限定されるわけではないが:アニリン、m-トルイジン、o-トルイジン、p-トルイジンおよびその混合物が含まれる。典型的には、ブレンドガソリン組成物は、5体積%までのオクタンブースターを含有する。より一般的には、ブレンドガソリン組成物は、4体積%までのオクタンブースターを含有する。典型的には、ブレンドガソリン組成物は、約3体積%のオクタンブースターを含有する。より典型的には、ブレンドガソリン組成物は、約2体積%のオクタンブースターを含有する。大部分の例では、オクタンブースターは、約1体積%~約4体積%の濃度のm-トルイジンである。
【0016】
最終ガソリン組成物の調製において、製油所は、いくつかの供給流をともにブレンドしてもよい。当業者に知られるように、真のオクタン価は線形にはブレンドしない。したがって、2つの構成要素の50:50混合物を単純にブレンドして、各成分のオクタン価の体積平均に等しいオクタン価が常に得られると期待することはできない。いくつかのオクタンブースターは、現在のベース燃料ブレンドと合わせた際、一般的に知られる価を有するが、ブースターのオクタン価は、選択されるベース燃料ブレンドの組成に応じて多様でありうる。典型的には、生じるブレンドの最終オクタン価は、従来の実験室試験法によって決定されるであろう。
【0017】
例えば、97体積%の高パラフィン性ナフサおよび3体積%のm-トルイジンのブレンドをオクタン試験に供した。ナフサは、55の実験室測定RONオクタン価を有した。m-トルイジンを含むナフサのブレンドは、RON 73.3の実験室測定オクタン価を有した。以下の式を用いて、オクタンブースターの計算オクタンブレンド価を決定することができる:
[(%燃料A)(燃料Aのオクタン)]+[(%燃料B)(燃料Bのオクタン)]=混合物のオクタン
したがって、m-トルイジンのオクタンブレンド価を決定するため:
(0.97ナフサ)(55)+(0.03 m-トルイジン)(X)=73.3実験室試験オクタン価
Xに関して解くと、665がm-トルイジンのブレンドオクタン価である。m-トルイジンに関するこのブレンドオクタン価はユニークであり、250より大きいブレンドオクタン価を有する他のオクタンブースターは知られていないため、以前は当業者に未知であった。芳香族アミンのブレンドオクタン価は、ベースガソリンの組成に影響を受ける。例えば、ガソリン中のオレフィンおよび非アミン芳香族は、開示されるブレンドガソリン組成物において、m-トルイジンのブレンドオクタン価を300程度に低く抑制するであろう。
【0018】
別の例として、大部分の例において、エタノール成分が芳香族アミンの添加後に添加されるであろう。97体積%のナフサおよび3体積%のm-トルイジンの前述の例を用いると、この燃料はRON 73.3のオクタン価を有した。この例では、15体積%のエタノールを73.3のRONを有する燃料に添加して、オクタン価を84.4の実験室試験RONに増加させた。したがって、上記式を適用して:
(0.85ナフサ/m-トルイジン)(73.3)+(0.15エタノール)(X)=84.4実験室試験オクタン価
Xに関して解くと、147.3がこのブレンド燃料中のエタノールに関するブレンドオクタン価である。対照的に、パイプラインが要するのは、ガソリン生産者がその現在のガソリンCBOB、RBOBおよびCARBOBにおいて、わずか115のエタノールオクタンブレンド価を使用することである。したがって、開示される配合は、エタノールのオクタンブレンド価の有意な増加を達成する。芳香族アミンと同様、オレフィンおよび非アミン芳香族の存在は、開示されるブレンドガソリン組成物において、エタノールのブレンドオクタン価を130程度に低く抑制するであろう。
【0019】
開示されるブレンドガソリン組成物の製造において、ブレンドの順序は、ベース燃料の最初の配合に続き、芳香族アミンの添加である可能性が高いであろう。芳香族アミンは、製油所で添加されて、CBOB、RBOBおよびCARBOBベースブレンドを生成する可能性が高いであろう。続いて、配分系において、適切な時点でエタノールを添加し、最終的に所望のAKI値を達成するであろう。
【0020】
明確にするため、ブレンドガソリン組成物は、以下の構成要素を有することができる:
0.1体積%~5体積%の範囲の濃度の、m-トルイジン、p-トルイジン、o-トルイジンおよびアニリン、ならびに同定される化合物の混合物からなる群より選択される芳香族アミンと;
20%までの濃度のエタノールと;
15%までの濃度の他の芳香族炭化水素と;
8%までの濃度のオレフィンと;
CROB、RBOBまたはCARBOB材料が上に定義されるような芳香族およびオレフィンに関する明細を満たすという条件で、90%までの濃度のCBOB、RBOBおよびCARBOB型製油所製品。
【0021】
望ましい配合は、芳香族およびオレフィン含量を実質的に低下させるかまたは除去し、以下の構成要素を有するブレンドガソリン組成物を提供するであろう:
0.1体積%~5%の範囲の濃度の、m-トルイジン、p-トルイジン、o-トルイジンおよびアニリン、ならびに同定される化合物の混合物からなる群より選択される芳香族アミンと;
10%~20%の間の濃度のエタノールと;
0%~10%の間の濃度の他の芳香族炭化水素と;
0%~5%の間の濃度のオレフィンと;
CROB、RBOBまたはCARBOB材料が上に定義されるような芳香族およびオレフィンに関する明細を満たすという条件で、86%までの濃度のCBOB、RBOBおよびCARBOB型製油所製品。
【0022】
特に望ましい配合は、芳香族およびオレフィン含量を除去し、以下の構成要素を有するブレンドガソリン組成物を提供するであろう:
0.1体積%~5体積%の範囲の濃度の、m-トルイジン、p-トルイジン、o-トルイジンおよびアニリン、ならびに同定される化合物の混合物からなる群より選択される芳香族アミンと;
10%~20%の間の濃度のエタノールと;
CROB、RBOBまたはCARBOB材料が上に定義されるような芳香族およびオレフィンに関する明細を満たすという条件で、86%までの濃度のCBOB、RBOBおよびCARBOB型製油所製品。
【0023】
大部分の例で、ブレンドガソリン組成物は、2%~4%のm-トルイジンおよび10%~15%の間の濃度のエタノールを含有する一方、他の芳香族化合物を含まず、オレフィンを含まないであろう。以下の表1は、開示されるブレンドガソリン組成物の非アミン芳香族含量に対して、一般的に入手可能な冬用ガソリン配合物の非アミン芳香族含量を比較する。表1はまた、開示されるブレンドガソリン組成物を同じ冬用ガソリン配合物と50:50混合で合わせた際の非アミン芳香族含量の減少を示す。したがって、表1はまた、開示されるブレンドガソリン組成物が、現在入手可能なガソリンと混和性であり、消費者が使用する最終ガソリン組成物として、流通用に、現在入手可能な冬用または夏用ガソリンの対応する混合物を、開示されるブレンドガソリン組成物とブレンド可能であることもまた示す。
【表1】
【0024】
以下の表2に反映されるように、ブレンドガソリン組成物は、少なくとも87のAKIを有すると特徴づけられる。87のAKIは、ブレンドガソリン組成物には最小限である一方、ベース燃料ブレンド、オクタンブースターおよびエタノール含量の操作により、20%エタノール、5% m-トルイジンおよび75% CBOBをブレンドした際、約100までのより高いAKI値が提供されうる。さらに、表2は、ブレンドガソリン組成物が、冬用および夏用ブレンドに関するAPI比重およびRVP値を満たしうることを反映する。
【表2】
【表3】
【0025】
開示されるブレンドガソリン組成物のさらなる特性は、この組成物が現在のガソリンストックと安全にブレンドされうることである。
【0026】
以下に提供する表4は、入手可能なガソリンの現在の冬用および夏用ガソリンブレンドの代わりに、ブレンドガソリン組成物の使用によって提供される環境改善を示す。この表は、1500億ガロンの年間ガソリン消費(2019)に基づくデータを提供する。米国では、ガソリンは、典型的には冬用および夏用ガソリンで販売される。表4は、想定される冬用および夏用ガソリンを合わせた総計を、パラフィン性ナフサを用いて調製される開示されるブレンドガソリン組成物に比較する。再生可能燃料、例えばエタノールおよび再生可能ナフサは、カーボンニュートラルと見なされる。再生可能ナフサは、再生可能ディーゼルおよび/または再生可能ジェット燃料の製造からの廃棄物として得られる。特に、再生可能燃料の調製に用いられるバイオマス(例えばトウモロコシおよびサトウキビ)は、成長するにつれて、CO2を吸収する。バイオマス成長中のCO2の捕捉は、再生可能燃料が燃焼される際のCO2を相殺しうる。
【0027】
表4~5の計算は、エタノールの使用に由来する再生可能炭素を差し引いた後、現在入手可能な夏用/冬用ガソリンの代わりに、ブレンドガソリン組成物を用いることによって提供される、予期されるCO
2減少を反映する。この計算のため、燃料ブレンド中に残存する非エタノール炭化水素は、化石燃料、すなわち再生不能炭化水素に由来すると見なされる。以下の表7は、表4~6の試験結果で用いられるブレンドガソリン組成物の配合を反映する。以下の表8は、開示されるブレンドガソリン組成物における使用に適したナフサの炭化水素配分の一例を提供する。もちろん、炭化水素の同じ配分を有する再生可能ナフサもまた、開示されるブレンドガソリン組成物における使用に適している。この開示の目的のため、ナフサには、表8に記載されるように、C4~C12の炭素鎖を有するパラフィンおよびナフテンの両方ならびに微量のC13およびより高次のものが含まれる。上に論じるように、再生可能ナフサは、再生可能ディーゼルおよび再生可能ジェット燃料/ケロシンの製造の副産物である。したがって、再生可能ナフサを用いる際、生じるブレンドガソリン組成物は、上に論じる理由のため、ほぼ正味ゼロの炭素放出寄与を有しうる。
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【表4-4】
【0028】
表4を参照すると、開示されるブレンドガソリン組成物の使用が、大気内への炭素の放出を有意に減少させることが容易に認識されうる。冬用ガソリンに起因する炭素放出を、ブレンドガソリン組成物のものに比較すると、ブレンドガソリン組成物は、年間9.90%、二酸化炭素放出を減少させる。さらに、夏用ガソリンをブレンドガソリン組成物のものに比較すると、ブレンドガソリン組成物は、年間14.56%、二酸化炭素放出を減少させる。さらに、接触改質装置プロセスの使用への依存の減少は、二酸化炭素放出をさらに減少させるであろう。
【0029】
以下の表5は、ブレンドガソリン組成物の使用から生じる炭素およびCO
2減少に関するさらなるデータを提供する。表5のF列に反映されるように、ブレンドガソリン組成物の使用は、単に、燃焼ガソリン組成を変化させることにより、12.75%、CO
2放出を減少させると予期される。表5のI列は、ブレンド組成物の使用によるCO
2放出の節約をさらに示し、接触改質プロセスの使用への依存の減少から生じる、CO
2放出の節約を含む。提供されるデータによれば、米国のCO
2放出の予期される全体の減少は2.68%である。
表5-二酸化炭素放出の減少
【表5】
【0030】
以下の表6は、開示されるブレンドガソリン組成物の使用から生じる製油所操業における有益な減少を反映する概算(estimates)を提供する。既述の製油所での接触改質装置の操業における減少に加え、表6は、ブレンドガソリン組成物の使用がまた、プロセシングされる1日あたりの製油所バレルの全体の減少を導くことを示す。製油所プロセシングの減少は、ベース燃料の必要性が全体に低くなった結果である。さらに、開示されるブレンドガソリン組成物の使用は、以下の表8に記載されるように、ベース燃料の組成を単純化する。
【表6】
【表7】
【表8】
【0031】
表4~5を引き続き参照すると、ガソリンの現在の夏用および冬用ブレンドを自動車が使用した結果、大気内に放出される炭素は、600億モルを超える。この総量には、製油所における接触改質装置操作による炭素放出が含まれる。対照的に、本明細書に開示されるブレンドガソリン組成物は、接触改質装置によって調製される産物、例えば芳香族炭化水素には頼らない。上に論じられるように、芳香族アミンオクタンブースター化合物を例外として、ブレンドガソリン組成物は、最小限の濃度の芳香族化合物しか含有しない。したがって、接触改質装置由来のリフォーメートの使用は除去可能であり、そのため、ブレンドガソリン組成物中の芳香族化合物は、主に、原油中の天然存在芳香族から生じる。より直接的に、表9は、内燃機関エンジンにおけるそれぞれのガソリン組成物の燃焼に際して、BTUあたりの炭素ポンドでの、エネルギー単位あたりの予期される炭素放出を示す。
【表9】
表4に見られるデータを用いて、ブレンドガソリン組成物のエネルギー単位あたりの炭素放出は、ブレンドガソリン組成物を内燃機関エンジン中で燃焼させた際、BTUあたり0.0000364ポンド程度に低い可能性もある。表4、「エネルギー単位あたりの炭素放出(炭素ポンド/BTU)」と題される列を参照されたい。
【0032】
したがって、精製プロセスにおける接触改質の必要性が省かれ、これは大気への二酸化炭素の放出をさらに減少させる。接触改質プロセスは、典型的には、供給に際して、20%の収率損失を生じる。ガソリンの精製および産生において、接触改質プロセスの使用の必要性を最小限にすることによって、製油所原油率は、同じガソリン産生に関して、概算3%減少するであろう。同様に、より少ない原油しかガソリンにプロセシングされる必要がないため、CO2減少は、原油産生、輸送、貯蔵、および精製の全製造チェーンに関して有意であろう。
【0033】
総計で、本明細書開示のブレンドガソリン組成物は、現在入手可能なガソリン配合物よりも、およそ12%少ない二酸化炭素(CO2)放出を提供する。二酸化炭素放出の12%の減少は、二酸化炭素のおよそ1億5500万メトリックトンの減少を提供する。さらなる利点として、ガソリンからの芳香族炭化水素の実質的な減少および/または除去は、既知の発癌性化合物への消費者の曝露を減少させる。
【0034】
本発明の他の実施形態は、当業者には明らかであろう。こうしたものとして、前述の説明は、本発明の一般的な使用および方法を単に可能にし、記載する。したがって、以下の請求項が、本発明の真の範囲を定義する。
【国際調査報告】