IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イートン,マイケル,ピー.の特許一覧

特表2024-516728持続可能な廃水処理のためのシステム、方法、及び化合物、ならびにその共製品
<>
  • 特表-持続可能な廃水処理のためのシステム、方法、及び化合物、ならびにその共製品 図1
  • 特表-持続可能な廃水処理のためのシステム、方法、及び化合物、ならびにその共製品 図2
  • 特表-持続可能な廃水処理のためのシステム、方法、及び化合物、ならびにその共製品 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-16
(54)【発明の名称】持続可能な廃水処理のためのシステム、方法、及び化合物、ならびにその共製品
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/01 20060101AFI20240409BHJP
   C02F 1/28 20230101ALI20240409BHJP
   C02F 1/56 20230101ALI20240409BHJP
   C02F 103/32 20060101ALN20240409BHJP
【FI】
B01D21/01 108
C02F1/28 D
C02F1/56 C
C02F1/56 E
C02F103:32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568443
(86)(22)【出願日】2022-05-03
(85)【翻訳文提出日】2023-12-25
(86)【国際出願番号】 US2022027445
(87)【国際公開番号】W WO2022235650
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】63/184,464
(32)【優先日】2021-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523416634
【氏名又は名称】イートン,マイケル,ピー.
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】イートン,マイケル,ピー.
【テーマコード(参考)】
4D015
4D624
【Fターム(参考)】
4D015BA01
4D015BA03
4D015BA08
4D015BA24
4D015BB08
4D015BB12
4D015CA03
4D015CA04
4D015CA06
4D015DA32
4D015DB32
4D015DC04
4D015EA12
4D015EA16
4D015FA22
4D015FA25
4D624AA04
4D624AB07
4D624BA02
4D624BB01
4D624BC04
4D624DA06
4D624DB21
(57)【要約】
連続バッチ反応装置の廃水処理システム(10)及び方法、この方法を実施するための材料の組み合わせ、ならびにそこから導出する化学肥料の共製品。酸を備えたpH下降剤は、廃水のpHを下げる。キチンまたはキトサンを含んだ第1の化合物は、濾過媒体、凝固剤、凝集剤を備え、第2の化合物は、吸着剤及びpH上昇剤を備える。廃水は、第1の化合物及び第2の化合物の各々を導入した後に、混合及び通気され、凝集は、処理水及びスラッジ副産物をもたらす。スラッジ副産物は脱水され、さらに処理されて有用な化学肥料の共製品をもたらし得る。第1の化合物内で、珪藻土は濾過媒体として働き、ベントナイト粘土は、凝固及び濾過媒体として作用する。第2の化合物内で、活性炭、酸化カルシウム(CaO)、及び苛性ソーダ(NaOH)は、吸着、殺菌、及び廃水のpHを上げる働きをする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃水を処理するための方法であって、前記方法は、
pH下降剤を廃水に導入して、廃水のpHを下げるステップと、
第1の化合物を廃水に導入するステップであって、前記第1の化合物は、濾過媒体、凝固剤、及び凝集剤を備え、前記第1の化合物は、凝固剤及び凝集剤として働くキチンまたはキトサンを含んだ、導入するステップと、
第1の混合及び通気時間の間、廃水を、中に導入された前記第1の化合物と混合及び通気させるステップと、
第2の化合物を廃水に導入するステップであって、前記第2の化合物は、吸着剤及びpH上昇剤を備える、導入するステップと、
第2の混合及び通気時間の間、廃水を、中に導入された前記第2の化合物と混合及び通気させるステップと、
処理水及びスラッジ副産物をもたらすよう、廃水を少なくとも部分的に分離するのを可能にするために十分な凝集期間を提供するステップと、を含むこと、
それによって、廃水内の望ましくない内容物が減少され、前記スラッジ副産物がもたらされること、
を特徴とする、方法。
【請求項2】
前記スラッジ副産物を脱水するステップをさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スラッジ副産物を脱水する前記ステップは、スラッジ脱水機(22)で実施されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記スラッジ脱水機(22)は、プレート及びフレームフィルタプレス、ベルトフィルタプレス、遠心分離機、積層スラッジシステム、及びネジプレス、から成るグループから選択されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
スラッジを脱水する前記ステップは、オープンベッド乾燥器(26)及び温室蒸発乾燥器(28)から成るグループから選択された、強化された蒸発システムを用いて実施されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
pH下降剤を導入する前記ステップは、酸を廃水に適用することを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記酸は、硫酸(HSO)または塩酸(HCl)から構成されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の化合物は、珪藻土を濾過媒体としてさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の化合物は、ベントナイト粘土を凝固剤及び濾過媒体としてさらに備えることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記珪藻土は、CAS登録番号91053-39-3によるもの、前記ベントナイト粘土は、CAS登録番号1302-78-9によるもの、及び前記キチンまたはキトサンは、CAS登録番号9012-76-4によるもの、とすることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記キチンまたはキトサンは、前記第1の化合物の概ね5~10重量%から構成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の化合物は、珪藻土及びベントナイト粘土をさらに備えることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の化合物は、活性炭を備えることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の化合物は、酸化カルシウム(CaO)をさらに備えることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の化合物は、苛性ソーダ(NaOH)をさらに備えることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の化合物は、二酸化ケイ素をさらに備えることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記活性炭は、前記第2の化合物の概ね40~50重量%から構成され、前記酸化カルシウム及び苛性ソーダは各々、前記第2の化合物の概ね20~25重量%から構成されることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記第2の化合物は、廃水のpHバランスをpHスケールの概ね7~10まで上げるために十分な量及び組成で導入されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
廃水のpHを測定するステップと、廃水の体積を判断するステップと、測定された廃水のpH及び廃水の体積に基づいて、廃水に導入されるpH下降剤の量を計算するステップとを含み、これら全てを、pH下降剤を廃水に導入する前記ステップの前に行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の混合及び通気時間は、1~12時間であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記第2の混合及び通気時間は、1~12時間であることを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
凝集期間を提供する前記ステップは、沈殿タンク(18)で実施されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記スラッジ副産物を処理して化学肥料の共製品を生成することを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記スラッジ副産物を処理して化学肥料の共製品を生成することは、前記スラッジ副産物を脱水するステップを含むことを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記スラッジ副産物を処理して化学肥料の共製品を生成することは、固形状の窒素を前記スラッジ副産物に導入して調製するステップを含むことを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記スラッジ副産物を処理して化学肥料の共製品を生成することは、前記スラッジ副産物を小球状にするステップを含むことを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
請求項1でもたらされたスラッジ副産物から生成された、化学肥料の共製品。
【請求項28】
前記スラッジ副産物を脱水するステップをさらに含んだ方法によって生成されることを特徴とする、請求項27に記載の化学肥料の共製品。
【請求項29】
固形状の窒素を前記スラッジ副産物に導入して調製するステップをさらに含んだ方法によって生成されることを特徴とする、請求項28に記載の化学肥料の共製品。
【請求項30】
前記スラッジ副産物を小球状するステップをさらに含んだ方法によって生成されることを特徴とする、請求項29に記載の化学肥料の共製品。
【請求項31】
廃水を処理して、処理水及びスラッジ副産物をもたらすための、連続バッチ反応装置の廃水処理システム(10)であって、前記排水処理システム(10)は、
汚物集合タンク(12)と、
廃水のpHを下げるための、pH下降剤と、
第1の反応タンク(14)と、
濾過媒体、凝固剤、及び凝集剤を備え、凝固剤及び凝集剤として働くキチンまたはキトサンを含んだ、第1の化合物と、
吸着剤及びpH上昇剤を備えた、第2の化合物と、
沈殿タンク(18)と、
を備えることを特徴とする、廃水処理システム(10)。
【請求項32】
前記スラッジ副産物を脱水するために、スラッジ脱水機(22)をさらに備えることを特徴とする、請求項31に記載の廃水処理システム(10)。
【請求項33】
前記スラッジ脱水機(22)は、プレート及びフレームフィルタプレス、ベルトフィルタプレス、遠心分離機、積層スラッジシステム、及びネジプレス、から成るグループから選択されることを特徴とする、請求項32に記載の廃水処理システム(10)。
【請求項34】
前記スラッジ副産物を脱水するための、強化された蒸発システムをさらに備え、前記強化された蒸発システムは、オープンベッド乾燥器(26)及び温室蒸発乾燥器(28)から成るグループから選択されることを特徴とする、請求項31に記載の廃水処理システム(10)。
【請求項35】
前記pH下降剤は、酸を備えることを特徴とする、請求項31に記載の廃水処理システム(10)。
【請求項36】
前記第1の化合物は、珪藻土を濾過媒体としてさらに備えることを特徴とする、請求項31に記載の廃水処理システム(10)。
【請求項37】
前記第1の化合物は、ベントナイト粘土を凝固剤及び濾過媒体としてさらに備えることを特徴とする、請求項36に記載の廃水処理システム(10)。
【請求項38】
前記第2の化合物は、活性炭を備えることを特徴とする、請求項31に記載の廃水処理システム(10)。
【請求項39】
前記第2の化合物は、酸化カルシウム(CaO)及び苛性ソーダ(NaOH)をさらに備えることを特徴とする、請求項38に記載の廃水処理システム(10)。
【請求項40】
第2の反応タンク(16)をさらに備えることを特徴とする、請求項31に記載の廃水処理システム(10)。
【請求項41】
廃水を処理するための材料の組み合わせであって、前記材料の組み合わせは、
濾過媒体、凝固剤、及び凝集剤を備え、凝固剤及び凝集剤として働くキチンまたはキトサンを含んだ、第1の化合物と、
吸着剤及びpH上昇剤を備えた、第2の化合物と、
を備えることを特徴とする、材料の組み合わせ。
【請求項42】
廃水のpHを下げるためのpH下降剤をさらに備えることを特徴とする、請求項41に記載の材料の組み合わせ。
【請求項43】
前記第1の化合物は、珪藻土を濾過媒体としてさらに備えることを特徴とする、請求項41に記載の材料の組み合わせ。
【請求項44】
前記第1の化合物は、ベントナイト粘土を凝固剤及び濾過媒体としてさらに備えることを特徴とする、請求項43に記載の材料の組み合わせ。
【請求項45】
前記キチンまたはキトサンは、前記第1の化合物の概ね5~10重量%から構成されることを特徴とする、請求項41に記載の材料の組み合わせ。
【請求項46】
前記第2の化合物は、活性炭を備えることを特徴とする、請求項41に記載の材料の組み合わせ。
【請求項47】
前記第2の化合物は、酸化カルシウム(CaO)をさらに備えることを特徴とする、請求項46に記載の材料の組み合わせ。
【請求項48】
前記第2の化合物は、苛性ソーダ(NaOH)をさらに備えることを特徴とする、請求項47に記載の材料の組み合わせ。
【請求項49】
前記活性炭は、前記第2の化合物の概ね40~50重量%から構成され、前記酸化カルシウム及び苛性ソーダは各々、前記第2の化合物の概ね20~25重量%から構成されることを特徴とする、請求項48に記載の材料の組み合わせ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年5月5日に出願された、「Systems,Methods, and Compounds for Waste Water Treatment」と題する、米国仮特許出願第63/184,464号明細書の優先権及び利益を主張する。その全体は本明細書に参照として組み組まれる。
【0002】
本発明は全体的に廃水処理に関する。より詳細には、本明細書で開示するのは、廃水処理のための持続可能なシステム、方法、及び化合物であり、それらは、処理水及び脱水スラッジをもたらす働きをし、その中の望ましくない内容物は減少または排除され、化学肥料の共製品としての利用の可能性を有する。
【背景技術】
【0003】
廃水は、浮遊物質及び溶解物質を含んだ使用済みの水、と定義することができる。廃水内の物質は、天然薬品、合成薬品、し尿、食品廃棄物、オイル、石鹸、または商業的もしくは住居的原因から導出された他の材料、を含み得る。その結果、一般的に廃水は、細菌などの病原菌、寄生虫、有機及び無機粒子、原虫及び昆虫などの動物、巨大固相、気体、乳剤、毒、ならびに薬品、を保持する。
【0004】
多くの廃水処理システムが、先行技術で開示されている。このようなシステムは、例えば小さい住居用及び商業用の下水処理システムから、大きい地方自治施設及び産業施設までの範囲に及ぶ、商業的動作及び地方自治体からの廃水を処理する。方法及び構造が多様である一方で、廃水処理システムは、浮遊固形物、生化学的酸素要求量、窒素化合物、亜リン酸、大腸菌及び他の細菌、ならびに他の毒及び薬品、の廃水を処理して、望ましくない放出を最小に抑える、という共通の目的を有する。このようなシステムは、廃水の汚染を、本質的に許容かつ取り扱うことができるレベルまで軽減させること、または特定の水質規準及び標準を満たすこと、を探求する。廃水処理方法は、一般的に1つまたは複数の、物理的処理、化学的処理、もしくは生物学的処理を含む。
【0005】
物理的な廃水処理方法は、沈殿、ふるい分け、通気、濾過、浮揚及びすくい取り、脱気、ならびに等化、を含む。このような方法は有益な効果を有する。しかし、それらの方法は廃水内の望ましくない成分を処理できない。さらにそれらの方法は、処理施設においてかなりの投資を要することが多い。
【0006】
化学的廃水処理として、例として、塩素処理、オゾン処理、中和、凝固、凝集、吸着、イオン交換、及び沈殿、が挙げられる。これらの処理方法は、例えば化学的酸素要求量、金属、浮遊固形物、アンモニア、及び他の毒性汚染物、を除去するよう努める。
【0007】
凝集において、一般に凝集剤と呼ばれる化学添加剤は、浮遊固形物が、フロックと呼ばれる凝集体を形成するために利用される。都市の廃水処理のために通常使用される凝集剤として、アルミニウム及びカルシウムの炭酸塩、ならびに合成ポリマーが挙げられる。このようなシステム及び方法において、潜在的に危険かつ不快な薬品が、結果として廃水の中に導入される。それらが汚染物を破壊する目的を有する一方で、このような薬品は、処理水及び環境において、不注意による環境汚染、及び他の有害な影響の危険を伴いながら、廃水内の有益な成分まで破壊する付随の影響を有する場合がある。
【0008】
廃水処理における塩素処理は、処理された廃水を殺菌する働きをする。塩素処理は、廃水内の病原性及び非病原性の微生物を駆除するために有用である。しかし、塩素処理は、処理水に不快な味及び匂いを残すことが多い。さらに、塩素化合物、無機クロラミン、及び他の殺菌薬品は、植物相、動物相、及び環境全般に害を与える場合がある。
【0009】
他の廃水システム及び方法は、固形分及び汚染物質の除去を促すために、生物学的処理を利用する。このような生物学処理は、廃水の中に、通常は水の中の汚染物質に対する親和性を有する微生物を導入することを含む。単に廃水から固形分をゆっくりと移し、次に恐らくは危険な化学的処理を適用するのではなく、微生物は、処理中及び処理システムからの排出前に、廃水に対して作用することを可能にする。
【0010】
有利には、このような生物学的処理システム及び方法における微生物は、微生物を導入しないよりも汚染物質の除去が速い。しかし、微生物が作用するには、かなりの時間を要する。なぜなら微生物は増殖してから汚染物質に供給しなければならないからである。そのため廃水を、汚物集合タンク、濾過器、固定膜、または他の媒体の中に、かなりの時間の間保持しなければならない。さらに、微生物による廃水内の汚染物質の摂取が完了した際に、微生物は単純に死んで、それら自体が廃棄固形分となる。これらの固形分は、処理タンク、または後で除去するために、ユニットの底部に沈降するか、またはそれらは残留して利用可能な表面積または体積を遮断し、不活性箇所をもたらす。
【0011】
このような好気性及び嫌気性の微生物処理は、危険な薬品を避ける可能性を含んだ、大きな利点を有する。しかしそれらは、十分に効果的ではないことが多く、排水の汚染物質を満足のいくように低くするよう、微生物を汚染物質に十分供給するために、適切な滞留時間を必要とする。さらに、大容量の廃水を処理するために、大規模な処理施設が必要となる。実際、微生物に頼った廃水処理段階は、廃水を生物学的に処理するために必要な大量の細菌コロニーを維持する複雑性のため、非常に問題がある。それらは、コストのかかる複雑な装備及び施設を必要とし、それに対応した機械の故障及びシステムの停止の増加をもたらすことが多い。さらに、廃水の汚染物質を毒性の少ない形態に変換するよう意図された細菌コロニーは、メタン、一酸化窒素、及び二酸化炭素など、温室効果ガスの副産物を生成することが多い。回収及び利用されない場合、このようなガスは、有害な環境効果を有する場合がある。さらに、このようなシステムの有効性及びフローは、経時的に悪影響を及ぼされる場合がある。なぜなら、タンクの底部に降下しない、役目を終えた微生物が、システムを阻害するからである。
【0012】
先行技術に関する廃水処理方法のさらなる課題は、一般的にスラッジと呼ばれる、結果として生じる副産物である。戻し活性スラッジと呼ばれる、スラッジ副産物の一部は、通気タンクに再循環されて、通気処理を持続させ得る。しかし、廃水処理のオペレータは、一般的に廃活性スラッジと呼ばれる余剰スラッジを、通常は脱水及び廃棄しなければならない。廃活性スラッジを廃棄するための装備、材料、労力、及び環境コストは、埋め立て、焼却、または他の方法、のいずれを介するにせよ、埋め立ての容認コスト及び焼却の経費が、近年顕著に増加していることを伴って、かなりのものとなる場合がある。さらに、このような方法は、常に有用な物理的特性または化学的特性を伴う生成物を生成するとは限らない。廃水スラッジを、有益な再利用のために処理及び調節できる一方で、このような有益な使用の選択肢を開発することは、同様にかなりのコストを必然的に伴う。
【0013】
前述を考慮して、廃水内の有害成分を、有効かつ効果的な方法で軽減または排除し、その一方で、それらから導出され得る危険な薬品及び潜在的な環境汚染の事態を回避し、理想的には有用な特性を伴う固体副産物を生成する、廃水処理プロセス及びこのようなプロセスを実施するためのシステムの、従来技術に対する明確な要望が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前述を認識して、本発明は、有効かつ効果的な方法で廃水内の危険成分を軽減または排除する、廃水処理プロセス、廃水処理化合物、及びこのようなプロセス及び化合物を満足させるためのシステム、を作り出す基本目的を伴い記載する。
【0015】
本発明の別の目的は、危険な薬品の必要性を回避することで、そこから生じる環境汚染の危険を排除する、廃水処理のためのシステム、方法、及び化合物を提供することである。
【0016】
本発明の実施形態における、さらに特別な目的は、総浮遊固形物(TSS)、グリース及びオイルなどの強粘液、ペルフルオロアルキル及びポリフルオロアルキル物質(PFAS)、ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)、ダイオキシン及び他の調製された化合物などの揮発性有機化合物(VOCS)、硝酸塩、リン酸塩、化学的酸素要求量(COD)、生物学的酸素要求量(BOD)、アンモニア、ならびに糞便、を含んだ、廃水内の望ましくない物質及び質を低減させるために効果的な、廃水処理方法を提供することである。
【0017】
本発明の実施形態における別の目的は、資源回収及び保全プログラムを介した有益な再使用選択肢が、特に望ましいという認識に基づいて、有用な物理的及び化学的特性を伴う固体副産物をもたらすことができる、廃水処理方法を提供することである。
【0018】
本発明の特定の実施において、1つの目的は、合成ポリマー及び他の不要な物質を含まないか、実質的に含まない、スラッジ副産物をもたらし、それによって化学肥料として適用することを可能にする、廃水処理方法を提供することである。
【0019】
本発明の、これら、ならびに他の目的及び利点は、本明細書及び図面を精査する者だけではなく、実際に本明細書で開示する廃水処理方法、化合物、及びシステムの実施形態を経験する機会を有する者にも、明確になるであろう。しかし、前述の目標の各々を、本発明の単一の実施形態において達成することが可能で、実際に好ましい場合であっても、全ての実施形態が、各々及び全ての考えられる利点及び機能を達成することを求めず、または必要としないことを理解されたい。それに関わらず、全てのこのような実施形態は、本発明の範囲内にあると考えるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前述の目的の1つまたは複数を前進させるために、本発明の1つの実施形態を、廃水を処理するための方法として特徴付けることができる。本廃水処理方法は、pH下降剤を廃水に導入して、廃水のpHを最初の反応のために最適なレベルに調節することから、開始し得る。次に、第1の化合物が廃水に導入される。この第1の化合物は、濾過媒体、凝固剤、及び凝集剤を備える。第1の化合物は、例えばキチンまたはキトサンを含み得る。それらは、有機化合物を化学結合することを実証された能力を伴う、自然に発生する材料である。キチン及びキトサンは、このように凝固剤及び凝集剤として働く。中に第1の化合物が導入された廃水は、次に第1の混合及び通気時間の間、混合及び通気される。次に第2の化合物が廃水に導入される。この第2の化合物は、吸着剤及びpH上昇剤を備える。中に第2の化合物が導入された廃水は、次に第2の混合及び通気時間の間、混合及び通気される。次に、処理水、及びこの処理水の抽出前にスラッジ副産物をもたらすよう、廃水を少なくとも部分的に分離するのを可能にするために十分な、凝集期間が提供される。この凝集期間には、例えば沈殿タンクにおける廃水の処理が提供される場合がある。廃水内の望ましくない内容物は、このように低減され、潜在的に有用な特性を有するスラッジ副産物がもたらされる。
【0021】
本方法の実施は、スラッジ脱水プロセスの動作または機械による、スラッジ副産物の脱水を含む場合がある。非限定の例によると、スラッジ脱水機は、プレート及びフレームフィルタプレス、ベルトフィルタプレス、遠心分離機、積層スラッジシステム、及びネジプレス、から成るグループから選択することができる。脱水は、オープンベッド乾燥器及び温室蒸発乾燥器、から成るグループから選択された強化蒸発システムを用いて、代替または追加として実現することができる。
【0022】
本発明の実施形態によると、pH下降剤を導入するステップは、酸を廃水に適用することを含むことができる。この酸は、例えば硫酸(HSO)から成る場合がある。
【0023】
第1の化合物が、珪藻土を濾過媒体として、ならびにベントナイト粘土を凝固剤及び濾過媒体として、さらに含むことができることが、さらに開示される。珪藻土は、例えばCAS登録番号91053-39-3によるもの、その一方でベントナイトはCAS登録番号1302-78-9によるもの、とすることができる。キチンまたはキトサンは、CAS登録番号9012-76-4によるものとすることができる。第1の化合物の、特定のバージョンにおいて、キチンまたはキトサンは、化合物の概ね5~10重量%で構成され、珪藻土及びベントナイトは同じ割合で、第1の化合物の概ね45~47.5重量%で提供される。
【0024】
さらに本発明の実施形態によると、第2の化合物は、活性炭、酸化カルシウム(CaO)、苛性ソーダ(NaOH)、及び可能性として二酸化ケイ素、を含むことができる。第2の化合物の実施形態は、活性炭が第2の化合物の概ね40~50重量%、ならびに酸化カルシウム及び苛性ソーダが各々、第2の化合物の概ね20~25重量%で構成されるよう、本明細書で開示される。本方法の実施において、廃水のpHバランスを、pHスケールで概ね7~10まで上げるために十分な量及び組成で、第2の化合物を導入することができる。
【0025】
廃水にpH下降剤を導入するステップを容易にするために、本方法は、廃水のpHを測定するステップと、廃水の体積を判断するステップと、測定された廃水のpH及び廃水の体積に基づいて、廃水に導入されるpH下降剤の量を計算するステップと、をさらに含むことができる。これらのステップは、廃水にpH下降剤を導入するステップの前に実施することができる。
【0026】
本発明の実施形態によると、第1の混合及び通気時間は、1~12時間とすることができる。類似の方法で、第2の混合及び通気期間は、同様に1~12時間とすることができる。
【0027】
本発明の実施形態を、代替として、本明細書で開示される方法によってもたらされるスラッジ副産物から生成される化学肥料の共製品として、特徴付けることができる。この目的のため、スラッジ副産物をさらに処理して、化学肥料の共製品を生成することができる。例えばスラッジ副産物を脱水する、さらなる処理を含むことができる。この、さらなる処理として、固体窒素をスラッジ副産物に導入して調製すること、及び最終的に、整粒機などを用いてスラッジ副産物を小球状にすること、を追加として含むことができる。
【0028】
さらに、本発明の実施形態を、廃水を処理するための、連続バッチ反応装置の廃水処理システムとして、特徴付けることができる。このシステムは、例えば汚物集合タンクと、汚物集合タンク内の廃水のpHを下げるためのpH下降剤と、第1の反応タンクと、濾過媒体、凝固剤、及び凝集剤を備え、凝固材及び凝集剤として働くキチンまたはキトサンを含んだ、第1の化合物と、第2の反応タンクと、吸着材及びpH上昇剤を備えた第2の化合物と、沈殿タンクと、を備えることができる。特定の実施において、本システムは、プレート及びフレームフィルタプレス、ベルトフィルタプレス、遠心分離機、積層スラッジシステム、及びネジプレス、から成るグループから選択される機械などの、スラッジ脱水機をさらに含むことができる。追加または代替として、強化蒸発システムを、スラッジ副産物を脱水するために利用することができる。この強化蒸発システムは、例えばオープンベッド乾燥器及び温室蒸発乾燥器、から成るグループから選択することができる。
【0029】
本発明の実施を、代替として、廃水の処理のための、第1の化合物及び第2の化合物を備えた材料の組み合わせとして特徴付けることができる。第1の化合物は、濾過媒体、凝固剤及び凝集剤を備え、凝固剤及び凝集剤として働くキチンまたはキトサンを含み、第2の化合物は、吸着剤及びpH上昇剤を備える。特定の実施形態において、材料の組み合わせは、廃水のpHを下げるため、酸などのpH下降剤をさらに含むことができる。
【0030】
材料の組み合わせにおける第1の化合物の実施形態は、珪藻土を濾過媒体として、ならびにベントナイト粘土を凝固剤及び濾過媒体として、備えることができる。キチンまたはキトサンは、第1の化合物の概ね5~10重量%で提供することができる。第2の化合物の実施形態は、活性炭、酸化カルシウム(CaO)、及び苛性ソーダ(NaOH)を含むことができる。例えば、活性炭は第2の化合物の概ね40~50重量%、ならびに酸化カルシウム及び苛性ソーダは各々、第2の化合物の概ね20~25重量%で構成することができる。
【0031】
前述の説明は、より詳細な以下の説明の、より良好な解釈を可能にし、かつ当技術分野に対する本発明者の貢献の、より良好な理解を浸透させるために、本発明のさらに重要な目的及び特定の特徴について広く概要を延べたものであることを、理解されたい。任意の特定の実施形態またはその態様を詳細に説明する前に、本発明のコンセプトの、以下の構造の詳細及び例示は、本発明の多くの考えられる表示の例に過ぎないことを、明確にしなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明による廃水処理システムの概略図である
図2】本発明に準じた代替の廃水処理システムの概略図である。
図3】本明細書で開示される別の廃水処理システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
当業者が完全に理解すること、及び適切なケースにおいて本発明を実施できることを保証するために、本明細書で明らかにされる廃水処理方法、システム、及び化合物の、特定の好ましい実施形態を以下で説明し、添付の図面に示す。しかし、廃水処理システム、化合物、及び方法は、様々な別の実施形態の対象であり、各々は本発明の範囲内にあることを理解されたい。
【0034】
廃水処理のための、開示される方法の1つの実施において、1つもしくは複数の容器もしくは他の保持領域の中に受け入れることによってか、水塊としての元々の存在によってか、または他の方法によってか、のいずれかで、処理される廃水の体積が提供される。処理される廃水の体積は、フローメータを使用した測定によって、既知の容積を有する容器の中に受け入れることによってか、数学的計算によってか、他の方法か、またはそれらの組み合わせによってか、のいずれかで、計算することができる。必要な場合及び必要に応じて、廃水の元々のpHを測定して記録することができる。
【0035】
受け入れられた廃水の体積、または処理のための所定の位置における廃水の体積と、廃水の元々のpHとが既知であるとき、廃水処理プロセスは、処理されていない廃水のpHを下げることで進める。このpHは、非限定例として、pHスケールの概ね2~3ポイントまで下げられ得る。本発明に従った、pHを下げるための1つの方法は、硫酸(HSO)、塩酸(HCl)、またはpHスケールにおける所定量だけ廃水のpHを減少させるのに効果的な他の酸、などの酸を備えたpH降下剤を追加することによるものである。体積または測定された量、タイプ、及び追加または代替として、廃水に追加されるpH下降剤の他の特性は、計算され得るか、または、処理される廃水の体積及び当初のpH、ならびに廃水の他の特性など、複数の要因に依存して別の方法で判断され得る。
【0036】
pHを下げると、廃水処理のための本方法による化合物を廃水に導入する準備が整う。本発明の1つの実施において、例えば2つの化合物の内、第1の化合物が導入される。導入される第1の化合物の、体積、質量、または他の測定量、組成、及び追加もしくは代替として他の特性は、処理される廃水の体積、及び可能性として測定、予想、または推測された廃水の特性を含んだ、1つまたは複数の要因に基づいて計算され得る。第1の化合物が導入されると、次に廃水は、所定の第1の混合及び通気時間の間、混合及び通気される。本発明の特定の実施における、第1の混合及び通気時間は、1~12時間の範囲である。廃水が混合及び通気されると、第2の化合物が廃水の中に導入され、廃水は再び所定の第2の混合及び通気時間の間、混合及び通気される。導入される第2の化合物の、体積、質量、または他の測定量、組成、及び追加もしくは代替として他の特性は、処理される廃水の体積、及び可能性として測定、予想、または推測された廃水の特性を含んだ、1つまたは複数の要因に基づいて計算され得る。本発明の特定の実施における、第2の混合及び通気時間は、1~12時間の範囲である。
【0037】
第1及び第2の化合物、ならびに廃水が、第1の及び第2の混合及び通気時間を通して、混合及び通気されると、廃水は、凝集期間を通して沈殿タンクの中で凝固するよう保持される。本発明の特定の実施において、沈殿タンクを円錐形または先細のタンクとすることができる。凝集が生じるとき、廃水内の不要な物質は、吸収及び/または吸着を通して互いに結合して、沈殿タンクの底部に沈殿する傾向がある。処理水及びスラッジ副産物の分量は、このように作り出される。
【0038】
このように処理されると、廃水は次に抽出されるか、上澄みを移されるか、または別の方法でスラッジ副産物から分離される。処理された廃水が抽出された場合、例えばスラッジ副産物は、沈殿タンクの中に残されることになる。スラッジは次に、沈殿タンク内の所定の場所か、1つまたは複数の脱水箇所か、または他の箇所で脱水される。例えばスラッジは、非限定で、スラッジ脱水機を使用することによって、沈殿タンクから取り除いて脱水することができる。スラッジの脱水は、非限定の例として、プレート及びフレームフィルタプレス、ベルトフィルタプレス、遠心分離機、積層スラッジシステム、及びネジプレス、または他の効果的なスラッジ脱水機、を備えたスラッジ脱水機によって実施され得る。追加または代替として、強化蒸発システムを、スラッジ副産物を脱水するために利用することができる。この強化蒸発システムは、オープンベッド乾燥器及び温室蒸発乾燥器、から成るグループから選択することができる。
【0039】
本発明の特定の表示によると、2つの化合物の内第1の化合物は、濾過媒体及び1つまたは複数の凝固剤及び凝集剤の混合物を備える。より詳細には、第1の化合物の表示は、珪藻土を濾過媒体として、ベントナイト粘土を凝固剤及び濾過媒体として、ならびにキトサンまたはキチンを凝固剤及び凝集剤として、組み込む。特許請求の範囲に明示的に含まれるもの以外、いかなる制限も本発明に課すことなく、珪藻土をCAS登録番号91053-39-3によるもの、ベントナイトをCAS登録番号1302-78-9によるもの、及びキトサンまたはキチンをCAS登録番号9012-76-4によるもの、とすることができる。
【0040】
珪藻土は、自然の濾過補助材として、廃水処理方法及び化合物内で働く。主にシリカで形成された珪藻土は、濾過能力を向上させ、浮遊固形物、セミコロイド、及び油性液体を除去するために役立つ。ベントナイト粘土は、凝固剤及び濾過補助として働き、広範な汚染物質を吸収して、浮遊固形物、有機化合物、及び毒物をカプセル化する。廃水処理方法及び化合物内で利用されるキチンは、凝固剤及び凝集剤として働く。キチンは効果的に有機化合物を凝固させ、有害な重金属を化学結合するためのキレートポリマーとして作用し、一般的に産業廃水に存在する染料、ならびに少濃度のフェノール及びポリ塩化ビフェニル(PCBs)のための吸着媒体として機能する。
【0041】
本方法及び化合物の特定の実施において、キトサンは、第1の化合部の概ね5~10重量%で構成され、第1の化合物の残りは、珪藻土及びベントナイト粘土の間で概ね等しく分けられる。このような実施形態の結果、珪藻土及びベントナイト粘土の各々は、第1の化合部の概ね45~47.5重量%で構成される。廃水に加えられる第1の化合物の量は、処理される廃水の体積、及び当初のpH、ならびに他の廃水の特性、を含んだ複数の要因に依存し得る。
【0042】
好ましい実施形態において、キトサンは粉末形態で提供される。キトサンは、アセチル基を除去することによって生成されるキチンの派生物の分子である。キチンは、甲殻類の殻に自然に生じ、そこから導出される。甲殻類の外骨格は、一般的にキチン(20~30重量%)、タンパク質(20~40重量%)、ミネラル(30~60重量%)、ならびに微量の色素及び脂質、から構成される。キチン及びキトサンは、必然的に無毒、生体分解性、かつ生体親和性である。大量のキチンが、利用されなければ、例えば海老、ロブスター、及び蟹の殻の残骸として廃棄されることを考慮すると、本明細書で開示されるような廃水処理方法及び化合物におけるキトサンの利用は、有効かつ環境的に持続可能である。
【0043】
本発明の実施において、第2の化合物は、活性炭、酸化カルシウム(CaO)、苛性ソーダ(NaOH)、及び可能性として二酸化ケイ素(SiO)、の混合物から構成され得る。代替的に活性チャコールと呼ばれる活性炭は、自然の有機化合物、異臭味原因化合物、及び合成有機薬品、を吸着するために働く。それは、汚染物質が吸着し得る、高い間隙率及び大きい表面積に基づいた吸着剤として、効果的であることが判明している。酸化カルシウムは、pH上昇剤及び殺菌剤として働く。酸化カルシウムは、水の味、匂い、及び色も改善する。苛性ソーダも、pH上昇剤として働く。二酸化ケイ素が含まれた場合、消泡剤及び担持剤として働く。
【0044】
特許請求の範囲で明確に提供され得る以外、この場合も本発明を限定することなく、活性炭、チャコールまたは強化チャコールは、CAS登録番号64365-11-3または7440-44-0によるもの、酸化カルシウムは、CAS登録番号73018-51-6によるもの、苛性ソーダはCAS登録番号1310-73-2によるもの、及び二酸化ケイ素はCAS登録番号7631-86-9によるもの、とし得る。特定の例において、このチャコールは、混合物の概ね40~50重量%、酸化カルシウム及び苛性ソーダは、各々混合物の概ね20~25重量%、及びシリコンは残りの概ね5~10重量%、で構成される。第2の化合物は塩基であり、とりわけ処理前の廃水のpH、ならびに廃水及び第2の化合物の相対体積に依存して、pHスケールの7~10までの範囲など、廃水のpHバランスを上昇させるために働く。
【0045】
本発明による廃水処理システムが、図1に示される。ここで、廃水処理システムは、全体的に10で表わされる。本明細書で開示されるように、廃水は、当初汚物集合タンク12に保持することができ、そこで廃水のpHバランスは、pH下降剤を加えることで下げられる。この廃水は次に、第1の反応タンク14に移され、そこで第1の化合物が導入される。次に廃水及び第1の化合物は、例えば1~12時間の範囲の、予め決められた第1の混合及び通気時間とすることができる時間の間、第1の反応タンク14内で混合及び通気される。この時間の後、廃水は第2の反応タンク16に進められる。次に第2の化合物が導入される。廃水及び第2の化合物は、例えば1~12時間の範囲における所定の時間の間とすることができる、第2の混合及び通気時間の間、第2の反応タンク16内で混合及び通気される。上記で言及したように、第2の化合物は塩基を備え、pHスケールの7~10までの範囲など、廃水のpHバランスを上げる傾向がある。このpHの上昇は、とりわけ、そのとき第2の化合物を用いて処理される廃水のpHレベル、ならびに廃水及び第2の化合物の相対体積に依存することになる。上述の、本発明による廃水のpHの下降及び上昇は、凝集を促進させることが判明している。
【0046】
中に凝集粒団を伴う廃水は、次に沈殿タンク18に移され、そこで廃水及び凝集粒団は、分離されるか、または処理水及びスラッジ副産物に分離される。処理水は抽出され、処理水の受容器20に提供される。処理水の受容器20は、排水管もしくは他の導管、または追加もしくは代替として、任意の容器、水塊、もしくは水の受け入れが可能な他の箇所、から構成され得る。本発明の特定の実施において、処理水は、廃水処理システム10を通して1回または複数回再循環させることができ、廃水のさらなる浄化処理を可能にする。
【0047】
いずれの場合も、一旦処理水が抽出されると、残されたスラッジ副産物は脱水される。脱水は、例えばスラッジ脱水機22を使用して実施され得る。非限定の例において、スラッジ脱水機22は、プレート及びフレームフィルタプレス、ベルトフィルタプレス、遠心分離機、積層スラッジシステム、及びネジプレス、または他の効果的なスラッジ脱水機22、を備え得る。脱水は、代替または追加として、乾燥床で乾燥させることによって、蒸発を介して乾燥を強化することによって、または任意の他の効果的な方法によって、実現することができる。
【0048】
汚物集合タンク12、反応タンク14及び16、沈殿タンク18、ならびにスラッジ脱水機22は、このように協働して廃水処理システム10を形成する。廃水処理システム10は、代替として、連続バッチ反応装置10と呼ばれ得る。このように示して説明した連続バッチ反応装置10は、廃水処理において実質的な有用性及び有効性を実証することが判明している。
【0049】
本発明に従った、代替の廃水処理システム10が図2に示される。ここで、単一の保持、処理、及び沈殿容器24が、汚物集合タンク12、第1及び第2の反応タンク14及び16、ならびに沈殿タンク18の所定の位置に利用される。処理水の受容器20はここでも含まれ、任意の容器、導管、水塊、もしくは水を受け入れることができる他の箇所、またはこれらの組み合わせ、をやはり備え得る。
【0050】
しかしこの実施形態において、強化された蒸発システムが、スラッジ副産物を脱水及び乾燥させるために提供される。より詳細には、オープンベッド乾燥器26は、スラッジ副産物を受け入れるため、ならびにスラッジ副産物の脱水及び乾燥を可能にするために、提供される。非限定で、本発明によるオープンベッド乾燥器26は、例えば砂の多孔質ベッド、及び追加または代替として砕石、を備え得る。オープンベッド乾燥器26の使用中、スラッジ副産物の12インチ以下の薄い層を、オープンベッド乾燥器26の基体の上に広げることができる。スラッジ内の廃水は、オープンベッド乾燥器26を通して重力によって、例えば排水管または他の水受容器20への排出を可能にできる。さらなる水の除去は、スラッジの表面からの蒸発によって、自然に成される。
【0051】
図2の廃水処理システム10は、温室蒸発乾燥器28の形態である、別の強化された蒸発システムを含む。温室蒸発乾燥器28は、覆われた乾燥環境を提供し、それは太陽エネルギーを利用して、スラッジ副産物からの水の蒸発を促進させる。必要または望ましい場合、太陽エネルギーを、熱ポンプまたは他の熱源などの補足的な熱源によって、温室蒸発乾燥器28内で補うことができる。スラッジ内の廃水はこの場合も、重力によって温室蒸発乾燥器28から、例えば排水管または他の水受容器20への排出を可能にする。さらなる水の除去は、太陽エネルギーを受けることで加速された、スラッジの表面からの蒸発によって自然に成される。
【0052】
このような実施形態において、処理のために提供された廃水は、容器24に保持することができる。次に廃水のpHバランスを、pH下降剤を加え、廃水とpH下降剤とを混合することで下げることができる。容器24内に保持された廃水を用いて、第1の化合物が導入され、廃水と第1の化合物とが、例えば1~12時間の範囲の、予め決められた第1の混合及び通気時間とすることができる時間の間、混合及び通気される。この時間の後、廃水を容器24内に保持して、第2の化合物が導入され、廃水と第2の化合物とは、第2の混合及び通気時間の間、混合及び通気される。この混合及び通気時間は、例えば1~12時間の範囲の、予め決められた時間の間とすることができる。
【0053】
前述のように、第2の化合物は塩基であり、それはとりわけ、そのときに第2の化合物を用いて処理される廃水のpHレベル、及び廃水と第2の化合物との相対体積に依存して、pHスケールの7~10までの範囲など、廃水のpHバランスを上昇させる傾向にある。上記で言及したように、本発明による廃水のpHの下降及び上昇は、凝集を促進させることが判明している。
【0054】
この場合も、容器24の中で、第1及び第2の化合物ならびに廃水が、第1及び第2の混合及び通気時間を通して、混合及び通気される間、廃水は、凝集期間を通して保持される。凝集が生じるとき、廃水内の不要な物質は、吸収及び/または吸着を通して互いに結合して、沈殿タンクの底部に沈殿する傾向があり、それによって処理水及びスラッジ副産物の分量が作り出される。
【0055】
次に処理水は抽出され、処理水の受容器20に提供される。この場合も、処理水の受容器20は、任意の容器、導管、水塊、もしくは水を受け入れることができる他の箇所、またはこれらの組み合わせ、を含み得る。本明細書で上述したように、処理水は、廃水処理システム10を通して1回または複数回再循環させることができ、廃水のさらなる浄化処理を可能にする。
【0056】
一旦処理水が抽出されると、スラッジ副産物は脱水される。例えば、スラッジ副産物を、容器24から除去し、オープンベッド乾燥器26へ移して、重力によって水受容器20まで排水することで脱水するよう、1層または複数層に広げて自然蒸発させることができる。追加または代替として、スラッジ副産物を、重力による排水、及び太陽エネルギーを受けることで強化された蒸発、を介して脱水するために、温室蒸発乾燥器28へ移すことができる。開示するように、廃水処理システム10は、ここでも連続バッチ反応装置10として働く。
【0057】
本発明による別の連続バッチ反応装置の、排水処理システムが、図3でも全体的に10で表わされる。汚物集合タンク12は、受け入れた廃水を初めに保持するために設けられ、汚物集合タンク12にある間にpH下降剤を加えることによって、廃水のpHバランスを下げることができる。次に第1の反応タンク14は廃水を受け入れ、第1の化合物が導入される。次に廃水及び第1の化合物は、例えば1~12時間の範囲の、第1の混合及び通気時間の間、第1の反応タンク14内で混合及び通気される。次に廃水は、第2の反応タンク16に進められ、そこで第2の化合物が導入されて、第2の混合及び通気時間の間、混合及び通気が実施される。第2の混合及び通気時間は、例えば1~12時間の範囲の、予め決められた時間の間とすることができる。
【0058】
次に廃水は、沈殿タンク18へ進められ、そこで廃水は所定の時間の間保持され、凝集粒団を生成するよう凝集を可能にし、かつ処理水及びスラッジ副産物への分離を可能にする。処理水は抽出され、非限定で、容器、導管、水塊、もしくは水を受け入れ可能な他の箇所、またはそれらの組み合わせなど、処理水の受容器20に提供される。一旦処理水が抽出されると、スラッジ副産物は、前述のオープンベッド乾燥器26へ移すことによって、ならびに排水及び自然蒸発のために1層または複数層に広げることによって、脱水される。スラッジ副産物は、追加または代替として、排水及び太陽エネルギーを受けることで強化された蒸発を通して脱水するよう、温室蒸発乾燥器28へ移すことができる。
【0059】
本明細書で開示される化合物を、他の環境において廃水に適用され得ることも企図される。非限定の別の例によると、第1及び第2の化合物、ならびに必要に応じてpH下降剤を、池、湖、貯水池、ラグーン、または他の水塊、の中に導入して、凝集を促進させることを含む、せき止められた低品質の廃水を処理することができる。本発明のこのような実施において、より低いコストしか必要とされ得ない。さらに、この処理方法及び化合物は、例えば1回または周期的な改善など、限定された用途を必要とする状況において適用することができる。
【0060】
本明細書で開示される、連続バッチ反応装置の廃水処理システム10及び方法、ならびに化合物は、農業、化学、オイル及びガス産業、不動産の改善及び開発、自治体の廃水処理、ならびに他の産業を含む、広範囲に渡る複数の産業における用途を有する。開示されるシステム及び方法の実施形態は、ペルフルオロアルキル及びポリフルオロアルキル物質(PFAS)、塩素化有機化合物、ダイオキシン及びフランなどの揮発性有機化合物、規制された金属、ならびにますます問題となり続ける他の自然及び合成成分、を含んだ、多くの汚染物質に対処することができる。開示される廃水処理システム、方法、及び化合物は、総浮遊固形物(TSS)、グリース、オイル、及び他の強粘液、ペルフルオロアルキル及びポリフルオロアルキル物質(PFAS)、窒素、リン酸塩、化学的及び生物学的酸素要求量(COD及びBOD)、アンモニア、糞便、合成及び自然化合物、ならびに他の有害かつ問題のある物質、を含んだ、望ましくない物質を減少されるために効果的である。
【0061】
本発明で開示されるように実施されたとき、廃水処理方法は、処理水と、合成ポリマー及び他の望ましくない物質が含まれないか、またはかなり減少された、脱水されたスラッジ副産物と、をもたらす。多くの例において、特に廃水が農業、下水、または食品製造環境からのものである場合、スラッジ副産物は、1~20重量%など有用なレベルの窒素を含むことになる。したがって、スラッジ副産物は、例えば処理の共製品としての化学肥料を生成するために有用とすることが可能な、物理的及び化学的特性を有する。本発明の実施によると、スラッジ副産物の一部を共製品の生成のために転用することができ、その一方でスラッジ副産物の他の部分は、廃棄されるか、または可能性としてケーキ状、粉末状、または他の形状で水処理システム10に戻して、さらなる処理を促進させる。
【0062】
スラッジ副産物のいくらか、または全てが、化学肥料の共製品を生成するために利用される場合、さらなる処理が、包装、搬送、及び適用を容易にするために実施され得る。必要に応じて、または望ましくは、別の成分または既に含まれている成分の量が加えられ得るか、または可能性として、特定の特徴を満たす化学肥料を生成するために、追加の処理中にスラッジ副産物から取り除かれ得る。さらなる処理は、必要な場合、固形状の窒素肥料材料を、脱水されたスラッジ副産物に追加して調製することを含み得る。本発明の特定の実施において、脱水されたスラッジ副産物を、濃酸、酸化剤、ならびに追加または代替として、他の薬剤及び製品など、別の薬剤と調製することができ、このような混合されたものは、ポンプ使用が可能なペーストに変換することができる。次にこのポンプ使用が可能なペーストは、硬化剤と混合され得る。混合かつ硬化された副産物は、次に整粒機の使用などで小球状にされ得る。
【0063】
本明細書で使用される方向、名称、及び他の約束事は、開示する発明の完全な理解を提供することのみが意図され、限定ではない。他の約束事は、本明細書の教示を限定することなく使用され得る。さらに、本明細書で開示される様々な構成要素は、単に例示に過ぎず、本発明を限定するものではない。例えば、特許請求の範囲で限定される以外、本明細書で説明される構成要素及びステップの各々は、サブコンポーネントまたはサブステップを含み得る。それらは集合的に、開示される構成要素またはステップの構造及び機能を提供する。さらに、1つまたは複数の構成要素またはステップを、一体構造または単一のステップとして組み合わせることができるが、それらはやはり開示される構成要素またはステップに相当する。追加の機能、または本明細書で紹介されたものの強化、を提供する追加の構成要素及びステップが、含まれ得る。例えば、追加の構成要素、ステップ、及び材料と、構成要素、ステップ、または材料の組み合わせと、恐らくは構成要素、ステップ、または材料の省略とは、やはり本明細書の教示範囲内である実施形態を作り出すために使用され得る。
【0064】
本発明またはその実施形態の要素を取り入れるとき、冠詞「a」、「an」、及び「the」は、1つまたは複数の要素が存在することを意味することが意図される。用語「備える(comprising)」、「含む(including)」、及び「有する(having)」は、列挙した要素以外の追加の要素が存在し得るよう、包含的であることが意図される。本明細書で使用されるように、用語「例」または「例示」は、最高の例を指すようには意図されない。むしろ、「例示」は多くの考えられる実施形態の内の1つである、実施形態を指す。
【0065】
開示される廃水処理システム、化合物、方法、及び共製品のための、本発明の特定の詳細及び実施形態を用いて、当業者は、それに対して、本発明の趣旨または範囲を逸脱することなく、多くの変更及び追加を作れることを理解されたい。現在の好ましい実施形態が、本明細書で明らかにされる広範な発明の、単なる例であることを念頭に置くとき、これは特に当てはまる。したがって、本発明の主な特徴を念頭に置くことで、それらの主な特徴を組み込んだ実施形態を作り上げることができ、一方では、好ましい実施形態に含まれた全ての特徴が組み込まれるわけではないことが、明白となろう。
【0066】
したがって、以下の特許請求の範囲は、本発明者にもたらされる保護の範囲を定義するものとする。本発明の趣旨及び範囲から逸脱しない限り、それら特許請求の範囲は、同等の構造を含むものとする。複数の、以下の特許請求項は、特定の要素を、特定の機能を実施するための手段として、時として構造または材料を詳説することなく表わし得るか、または表わすよう解釈され得る。法の要件として、任意のこのような特許請求項は、本明細書で明示的に説明した、対応する構造及び材料だけではなく、法律的に認識できる、それらの同等物も網羅するよう解釈されるものとする。
図1
図2
図3
【国際調査報告】