(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-16
(54)【発明の名称】インテリジェント薬剤送達システム
(51)【国際特許分類】
A61M 5/142 20060101AFI20240409BHJP
A61M 5/168 20060101ALI20240409BHJP
A61M 5/172 20060101ALI20240409BHJP
【FI】
A61M5/142 530
A61M5/168 500
A61M5/168 540
A61M5/168 550
A61M5/172
A61M5/142 520
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568482
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 US2022028042
(87)【国際公開番号】W WO2022236033
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】519397541
【氏名又は名称】チェイス,アーノルド
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェイス,アーノルド
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD11
4C066EE11
4C066HH01
4C066KK19
4C066QQ14
4C066QQ27
4C066QQ41
4C066QQ51
4C066QQ61
4C066QQ76
4C066QQ77
4C066QQ78
4C066QQ82
4C066QQ92
(57)【要約】
1つまたは複数の薬剤の自動インテリジェント送達を増強するためのコントローラおよび関連する多軸センサシステムが提供される。コントローラおよび関連する多軸センサシステムは、特定の身体的ライフスタイルイベントの検出および判定に基づいている。特定の一例として、ポンプ増強システムは、6軸加速度センサと、ジャイロピッチセンサと、コントローラと、を含む。コントローラは6軸加速度センサからの動作データおよびジャイロピッチセンサからの方向データを受信するように構成される。コントローラ動作データおよび方向データに基づいて、ユーザへの薬剤の送達速度を変化させるためのポンプ指示信号を提供する。このシステムおよび方法は、パーキンソン病を患っているユーザを治療するのに特に適している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インテリジェント薬剤送達システムであって、
装置本体と、
前記装置本体内または前記装置本体上に配置され、検出された多軸動作と加速度に基づいて多軸動作データを出力するように構成された加速度センサと、
前記装置本体内または前記装置本体上に配置され、検出された方向に基づいて方向データを出力するように構成されたジャイロピッチセンサと、
前記加速度センサおよび前記ジャイロピッチセンサと通信するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、前記多軸動作データおよび/または前記方向データに基づいて、前記装置本体の位置運動、前記装置本体の運動速度、前記装置本体の滞留時間、および/または前記装置本体の運動の多軸活動リズムを決定するように構成され、
前記コントローラは、決定された前記装置本体の多軸運動、前記装置本体の多軸速度および加速度、前記装置本体の滞留時間、ならびに/または前記装置本体の運動の多軸活動リズムに基づいてポンプ指示信号を生成するように構成され、前記ポンプ指示信号は、薬理学的材料の送達速度を変化または一時停止させる指示を含む、
インテリジェント薬剤送達システム。
【請求項2】
前記薬理学的材料は、パーキンソン病の症状を1つまたは複数治療するように構成される、請求項1に記載のインテリジェント薬剤送達システム。
【請求項3】
メモリをさらに備え、前記コントローラは、前記コントローラが受信した前記多軸動作データおよび前記方向データを前記メモリに記憶するように構成される、請求項1に記載のインテリジェント薬剤送達システム。
【請求項4】
前記コントローラは、前記装置本体の位置および/または多軸位置運動の記録を、記録された動作データとして前記メモリに継続的に記憶する、請求項3に記載のインテリジェント薬剤送達システム。
【請求項5】
前記記録された動作データは、関連するメタデータと関連付けられる、請求項4に記載のインテリジェント薬剤送達システム。
【請求項6】
前記メタデータは、前記薬理学的材料のブランドおよび/またはタイプに関する情報を含む、請求項5に記載のインテリジェント薬剤送達システム。
【請求項7】
前記メタデータは、前記薬理学的材料の強度に関する情報を含む、請求項6に記載のインテリジェント薬剤送達システム。
【請求項8】
前記データは、ユーザのライフスタイル活動レベルの状態、またはユーザが覚醒しているか睡眠中かの表示または判定を決定するために分析される、請求項5に記載のインテリジェント薬剤送達システム。
【請求項9】
前記記録された動作データは、複数のメタデータ情報にリンクしている、請求項4に記載のインテリジェント薬剤送達システム。
【請求項10】
前記記録された動作データおよび関連するメタデータは、臨床医の遠隔コンピュータによって遠隔操作でアクセスされるように構成される、請求項4に記載のインテリジェント薬剤送達システム。
【請求項11】
前記ポンプ指示信号は、臨床医の遠隔コンピュータによって変化されるように構成される、請求項9に記載のインテリジェント薬剤送達システム。
【請求項12】
前記コントローラは、前記送達速度および前記送達速度の変化の記録を、薬剤送達データとして前記メモリに継続的に記憶する、請求項4に記載のインテリジェント薬剤送達システム。
【請求項13】
前記記録された動作データおよび薬剤送達データは、臨床医の遠隔コンピュータによって遠隔操作でアクセスされるように構成される、請求項4に記載のインテリジェント薬剤送達システム。
【請求項14】
前記ポンプ指示信号は、前記臨床医の遠隔コンピュータによって変化されるように構成される、請求項13に記載のインテリジェント薬剤送達システム。
【請求項15】
前記コントローラは、前記薬理学的材料の送達速度を所定の時間減少させるポンプ指示信号を生成するように構成され、前記コントローラは、前記所定の時間の間の前記装置本体の速度、前記装置本体の滞留時間、ならびに/または前記装置本体の運動の多軸活動リズムの頻度および/または強度について、前記所定の時間以前に記録された運動と比較して、多軸変化があるかどうかを判定するように構成されており、前記変化が所定の閾値を上回る場合、前記コントローラは、前記薬理学的材料の送達速度を減少前の送達速度に戻すための新しいポンプ指示信号を生成するように構成される、請求項1に記載のインテリジェント薬剤送達システム。
【請求項16】
前記コントローラは、選択された時間帯の即座の薬理学的循環レベルを計算し、計算された前記レベルと以前の時間帯とを比較するように構成され、前記ポンプ指示信号は、さらにその比較に基づいている、請求項1に記載のインテリジェント薬剤送達システム。
【請求項17】
前記加速度センサは、最小で6軸加速度センサである、請求項1に記載のインテリジェント薬剤送達システム。
【請求項18】
インテリジェント薬剤送達システムであって、
第1の多軸装置本体および第2の多軸装置本体と、
前記第1の装置本体内または前記第1の装置本体上に配置され、検出された多軸動作に基づいて第1の多軸動作データを出力するように構成された第1の多軸加速度センサ、および前記第2の装置本体内または前記第2の装置本体上に配置され、検出された多軸動作に基づいて第2の多軸動作データを出力するように構成された第2の多軸加速度センサと、
前記第1の装置本体内または前記第1の装置本体上に配置され、検出された多軸方向に基づいて第1の多軸方向データを出力するように構成された第1の多軸ジャイロピッチセンサ、および前記第2の装置本体内または前記第2の装置本体上に配置され、検出された多軸方向に基づいて第2の多軸方向データを出力するように構成された第2の多軸ジャイロピッチセンサと、
前記第1の多軸加速度センサ、前記第2の多軸加速度センサ、前記第1の多軸ジャイロピッチセンサ、および前記第2の多軸ジャイロピッチセンサと通信するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、前記第1の多軸装置本体および前記第2の多軸装置本体の多軸位置、前記第1の多軸装置本体および前記第2の多軸装置本体の速度、前記第1の多軸装置本体および前記第2の多軸装置本体の滞留時間、ならびに/または前記第1の多軸装置本体および前記第2の多軸装置本体の多軸運動の活動リズムを決定するように構成され、
前記コントローラは、前記第1の多軸動作データ、前記第1の多軸方向データ、前記第2の多軸動作データ、および/または前記第2の多軸方向データに基づいてポンプ指示信号を生成するように構成され、前記ポンプ指示信号は、薬理学的材料の送達速度を変化または一時停止させる指示を含む、
インテリジェント薬剤送達システム。
【請求項19】
前記第1の多軸装置本体および前記第2の多軸装置本体は、ユーザの手首にそれぞれ装着されるように構成される、請求項18に記載のインテリジェント薬剤送達システム。
【請求項20】
ユーザの体に装着されるように構成された多軸身体センサをさらに備える、請求項19に記載のインテリジェント薬剤送達システム。
【請求項21】
パーキンソン病患者に薬剤をインテリジェントに送達する方法であって、
パーキンソン病を患っているユーザが装着する装置本体内または装置本体上に配置された1つまたは複数の多軸センサによって生成された多軸動作データおよび/または多軸方向データを、コントローラが監視するステップと、
前記多軸動作データおよび/または前記多軸方向データに基づいて、前記装置本体の多軸位置、前記装置本体の多軸速度および加速度、前記装置本体の滞留時間、ならびに/または前記装置本体の運動の多軸活動リズムを、前記コントローラが決定するステップと、
前記多軸動作データおよび/または前記多軸方向データに基づいて前記コントローラがポンプ指示信号を生成するステップであって、前記ポンプ指示信号は、注入ポンプの薬理学的材料の送達速度を変化または一時停止させる指示を含む、ステップと、
を含み、
前記薬理学的材料は、パーキンソン病の症状を1つまたは複数治療するように構成される、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2019年10月4日に出願された米国特許出願第16/593,020号の一部継続出願であり、その全文が参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般に、ライフスタイルイベントの検出に基づくコントローラおよび関連するセンサシステムに関し、より詳細には、特定のライフスタイルイベントの検出および判定に基づいて薬剤の自動送達を増強するためのコントローラおよび関連するセンサシステム(PAS:Pump Augmentation System)に関する。一態様において、コントローラおよび関連するセンサシステムは、インスリンポンプの動作に関し、より詳細には、ライフスタイルイベントの検出に基づいてユーザへのインスリンポンプによるインスリン送達を補助するためのインスリンポンプ増強システム(IPAS:Insulin Pump Augmentation System)に関する。別の態様において、コントローラおよび関連するセンサシステムは、患者の動作情報を収集し、クローズドループ投与量判定を効果的に行うために患者の動作フィードバック情報を持続的薬剤注入ポンプに提供するためのインテリジェント薬剤送達システム(IDDS:Intelligent Drug Delivery System)に関する。
【背景技術】
【0003】
「クローズドループ型」のアプローチを用いた継続的なグルコース監視を導入および統合したインスリンポンプを介した糖尿病管理の技術的進歩にもかかわらず、従来のインスリンポンプシステムの能力では、個人の生理学的行動、ライフスタイルおよび運動の変化について検出および補完を依然として十分に行うことができない。これらの状況はすべて、血糖値の予期せぬ上昇および/または下降をもたらすことが多く、この場合、血糖値が所望の、または目標とする、または許容されるグルコース範囲から外れるようなことが起きやすい。
【0004】
例えば、日常生活において個人が単に目を覚ますだけでも、血糖値を上昇させるホルモンが分泌される。糖尿病でない人の場合、血糖値は有機的に調整されるため、このような状況は気付かれない。しかしながら、糖尿病患者では、このような状況を認識して補完する生理学的機構が存在しない(または限定的である)。現在、糖尿病の治療は、変化した血糖値を正常範囲に戻すための「事後対処的」な補正手段に頼るのが一般的である。
【0005】
糖尿病患者は、血糖値の上昇を治療する必要がある一方で、「クローズドループ型」のインスリンポンプによる治療を用いても常に逆の問題にも直面している。働いたり、歩いたり、運動したりといった通常の身体活動によって、糖尿病患者の血糖値が危険なレベルまで下降することが頻繁に起きる。さらに問題を複雑にしているのは、特定の状況下で、血糖値が上昇している期間中に同じような身体活動を行うと、血糖値がさらに危険なレベルまで上昇する可能性が実際にあることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
基本的に、インスリンの連続的な(あるいは基礎的な)送達速度を得るために、インスリンポンプが1日の時間ベースの厳格な送達プロセスに従っているという事実と、異常なグルコース値に反応できるのは、偏位が生じた後、あるいは生じている最中であるという事実から、全体的な制御の問題が生じている。
【0007】
最良の状態では、従来のインスリンポンプまたはクローズドループ型のインスリンポンプは、それ自体が真の血糖値の遅延尺度である間質液グルコース値の変化に間接的に反応することに本質的に制限されている。現在の治療法は、インスリン送達速度を事前対応的に動的且つ自動的に増減させる能力がない。そのため、このような治療法は、単にライフスタイルまたは生理学的活動の結果として生じる影響に対応するだけである。
【0008】
患者の状態に関連する経験的な臨床測定によって導かれる多くの臨床治療とは異なり、パーキンソン病には、疾患の進行および/または治療の真の有効性のいずれかを経験的に判断するための所定の臨床検査がない。その結果、パーキンソン病の臨床医は、患者の状態を評価して薬の投与量の調整が必要かどうかを判定し、異常な運動症状を最小限に抑えるか抑制するために、状態の変化に関する患者の主観的な自己評価および/または患者の臨床用スナップショット中に行われた観察のいずれかに依存せざるを得ない。残念なことに、このような投与量調整に基づく方法は、通常、実際に必要とされる量を超える投与量となり、それ自体が二次的な合併症を引き起こす。
【0009】
パーキンソン病に関連する薬剤を送達するために従来の注入ポンプを使用することは、投与漏れの防止および/または不注意による重複投与の防止など、患者に限られた利点を提供できる可能性があるが、通常、患者が睡眠中に薬剤の投与量を送達するために使用することはできない。従来の注入ポンプを使用した場合でも、正しい/最適な投与量が決定されたかどうかについては、特に、患者が自己観察を行うことができず、通常、臨床環境で観察することができない睡眠期間中に、臨床的に大きな不確実性が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様によれば、ライフスタイルイベントの検出に基づくコントローラが提供されてもよく、より詳細には、特定のライフスタイルイベントの検出および判定に基づいて薬剤の自動送達を増強するためのコントローラが提供されてもよい。
【0011】
例えば、一実施形態において、インスリンポンプ増強システムは、本体と、加速度センサと、ジャイロピッチセンサと、コントローラと、を含んでもよい。加速度センサは、本体上に配置されてもよく、検出された動作に基づいて動作データを出力するように構成されてもよい。ジャイロピッチセンサは、本体上に配置されてもよく、検出された方向に基づいて方向データを出力するように構成されてもよい。コントローラは、加速度センサおよびジャイロピッチセンサと通信していてもよい。さらに、コントローラは、動作データおよび/または方向データを受信するように構成されてもよい。コントローラは、動作データおよび/または方向データに基づいてポンプ指示信号を生成するように構成されてもよい。ポンプ指示信号は、インスリンポンプのインスリン送達速度を変化させる信号を含んでもよい。
【0012】
インスリンポンプのインスリン送達速度を変化させる信号は、インスリンの流れを増減させる信号、インスリンの流れを開始させる信号、インスリンの流れを停止させる信号、またはインスリンのボーラス投与量を送達させる信号であってもよい。
【0013】
別の実施形態によれば、コントローラは、時間加重に基づいて動作データおよび/または方向データを分析するように構成されてもよい。さらに、コントローラは、パターンマッチングアルゴリズム(data pattern matching algorithm)を利用して、ユーザのライフスタイルイベントの発生の判定結果を提供するように構成されてもよい。パターンマッチングアルゴリズムは、ユーザが以前に入力したパターンデータを利用してもよい。ポンプ指示信号は、全体的または部分的に、判定されたライフスタイルイベントに基づいていてもよい。
【0014】
また、コントローラは、ユーザの血中インスリン濃度を示す血中インスリン濃度データを受信するように構成されてもよい。ポンプ指示信号は、全体的または部分的に、血中インスリン濃度データに基づいていてもよい。
【0015】
コントローラは、ユーザの血糖値を示す血糖値データを受信するように構成されてもよい。ポンプ指示信号は、全体的または部分的に、血糖値データに基づいていてもよい。
【0016】
コントローラは、血中インスリン濃度データおよび血糖値データを分析するように構成されてもよい。ポンプ指示信号は、全体的または部分的に、血中インスリン濃度データおよび血糖値データの分析結果に基づいていてもよい。
【0017】
別の態様によれば、コントローラは、判定されたライフスタイルイベントに関する血中インスリン濃度データおよび血糖値データを分析するように構成されてもよい。ポンプ指示信号は、全体的または部分的に、判定されたライフスタイルイベントに関する血中インスリン濃度データおよび血糖値データの分析結果に基づいていてもよい。
【0018】
さらなる実施形態によれば、コントローラは、時間加重に基づいて動作データおよび/または方向データを分析するように構成されてもよい。コントローラは、パターンマッチングアルゴリズムを利用して、動作データと、ポンプ増強システムに記憶された1つまたは複数の所定の動作データパターンとを比較するように構成されてもよい。さらに、コントローラは、ユーザが摂取している食品タイプ、ユーザが摂取している食品の量およびユーザが摂取した結果としての糖質負荷のうちの少なくとも1つを判定するように構成されてもよい。コントローラは、判定された食品タイプ、判定された食品の量および判定された糖質負荷のうちの少なくとも1つに基づいてインスリンの目標量を決定するように構成されてもよい。ポンプ指示信号は、全体的または部分的に、決定されたインスリンの目標量に基づいていてもよい。
【0019】
別の実施形態によれば、コントローラは、メモリを含んでもよく、ユーザのライフスタイルイベント中にコントローラが受信した動作データおよび方向データをメモリに記憶するように構成されてもよい。さらに、動作データおよび方向データは、複数のタイプのライフスタイルイベントのうちの特定のタイプのライフスタイルイベントに関連付けられてもよい。
【0020】
一実施形態によれば、インスリンポンプ増強システムは、ユーザに取り付けられる内部インスリンポンプまたは外部インスリンポンプの中に組み込まれてそこに動作可能に接続されてもよい。
【0021】
一実施形態によれば、インスリンポンプ増強システムの本体は、ユーザが装着するように構成されたスタンドアロン型のウェアラブル装置であってもよい。ウェアラブル装置は、ユーザの手首など、ユーザの四肢の1つに装着されるように構成されてもよく、ユーザが装着する内部インスリンポンプまたは外部インスリンポンプに動作可能に接続される。
【0022】
別の実施形態によれば、インスリンポンプ増強システムは、音声を検出し、検出された音声に基づいて音声データを出力するように構成されたマイクロフォンを含んでもよい。コントローラは、音声データを受信するように構成されてもよい。ポンプ指示信号は、全体的または部分的に、コントローラが受信した音声データに基づいていてもよい。
【0023】
さらに別の実施形態によれば、コントローラは、メモリを含んでいてもよく、食品の摂取中にコントローラが受信した、以前に記憶された特定の音声データをメモリに記憶するように構成されてもよい。また、コントローラは、ユーザが以前に摂取した食品の特定の食品タイプを定義して一致させてコントローラが受信した音声データと一致させるために、ユーザからの識別入力を受信するように構成されてもよい。コントローラは、入力が示す特定の食品タイプに関連付けて音声データを記憶するように構成されてもよい。さらに、コントローラは、記憶された音声データに基づいて特定の食品タイプを判定するように構成されてもよい。
【0024】
コントローラは、以前に特定の食品タイプを摂取中にコントローラが受信した動作データおよび方向データをメモリに記憶するように構成されてもよい。メモリにおいて、動作データおよび方向データは、複数の食品タイプのうちの特定の食品タイプに関連付けられてもよい。
【0025】
コントローラは、記憶された動作データおよび方向データ、またはその他の身体的摂取特性に基づいて、特定の食品タイプの身体的摂取特性をもつユーザからの選択結果を受信するように構成されてもよい。
【0026】
一実施形態によれば、コントローラは、動作データ、方向データおよび音声データのうちの少なくとも1つに基づいて、メモリに記憶された複数の食品タイプの中から特定の食品タイプを選択するように構成されてもよい。さらに、コントローラは、特定の食品タイプの選択結果に基づいてポンプ指示信号を生成するように構成されてもよい。
【0027】
コントローラは、ユーザが摂取したカロリーの量を推定するように、および特定の期間中にユーザが摂取したカロリーの合計を代表する連続カロリーカウントを維持するように構成されてもよい。さらに、コントローラは、ユーザが摂取したカロリーの合計が所定のカロリー閾値以上であるときに、信号を生成するように構成されてもよい。
【0028】
コントローラは、ユーザが摂取した糖質の量を推定するように、および特定の期間中にユーザが摂取した糖質の合計を代表する連続糖質カウントを維持するように構成されてもよい。さらに、コントローラは、ユーザが摂取した糖質の合計が所定の糖質閾値以上であるときに、信号を生成するように構成されてもよい。
【0029】
別の実施形態によれば、インスリンポンプ増強システムは、音または振動を発するように構成されたインジケータ発生装置を含んでもよい。コントローラは、インジケータ発生装置に動作可能に接続されてもよく、音または振動に対してユーザが無反応であるとコントローラが判定したときに、音レベルおよび/または振動レベルを増加させるように、ならびに音および/または振動の持続時間を増加させるように構成されてもよい。
【0030】
コントローラは、通信装置に動作可能に接続されてもよく、増大した一連のアラームまたは振動に対してユーザが無反応であるとコントローラが判定したときに、通信装置を起動させるように構成されてもよい。任意選択で、通信装置が起動されたときに、緊急電話をかけるか、ユーザに関連するリアルタイムの医療情報および/または位置情報を含むメッセージが送信されてもよい。
【0031】
別の態様によれば、ポンプ増強システムは、本体と、少なくとも1つの6軸加速度センサと、ジャイロピッチセンサと、コントローラと、を含んでもよい。6軸加速度センサは、本体内または本体上に配置されてもよく、検出された動作に基づいて動作データを出力するように構成されてもよい。ジャイロピッチセンサは、本体内または本体上に配置されてもよく、検出された方向に基づいて方向データを出力するように構成されてもよい。コントローラは、6軸加速度センサおよびジャイロピッチセンサに動作可能に接続されてもよく、動作データおよび/または方向データを受信するように構成されてもよい。コントローラは、動作データおよび/または方向データに基づいてポンプ指示信号を生成するように構成されてもよい。ここで、ポンプ指示信号は、ポンプの材料送達速度を変化させる信号を含んでもよい。
【0032】
別の態様によれば、ポンプシステムを増強する方法は、動作データおよび/または方向データを監視するステップと、動作データおよび/または方向データに基づいてポンプ指示信号を生成するステップと、を含む。ポンプ指示信号は、ポンプの材料送達速度を変化させる信号を含んでもよい。ポンプシステムは、装置本体と、検出された動作に基づいて動作データを出力するように構成された、装置本体内または装置本体上に配置された加速度センサと、検出された方向に基づいて方向データを出力するように構成された、本体内または本体上に配置されたジャイロピッチセンサと、加速度センサおよびジャイロピッチセンサに接続されたコントローラと、を含んでもよい。ここで、コントローラは、動作データおよび/または方向データを受信するように構成される。コントローラは、ポンプ指示信号の生成を実施してもよい。
【0033】
別の態様によれば、インテリジェント薬剤送達システム(IDDS)およびその方法は、患者が呈するあらゆる身体症状を継続的に監視し、患者が睡眠中であっても様々な投与量の効果を継続的に分析することができるので、主観的な観察を行うことができない1日の大部分、例えば1日のうちの1/3の間、経時的な薬剤の客観的分析を独自に提供する。
【0034】
本発明によるIDDSは、患者がIDDSの感知装置を手首および/または体の別の部分に装着することで、患者の症状を定量的に測定および評価する方法を独自に提供する。感知装置は、臨床医または医師が経口薬または点滴薬のその後の投与量決定の基礎となる経験的データを瞬時に、および/またはアーカイブして医師に提供するために、スタンドアロン型で使用されてもよい。感知装置は、クローズドループ型のシステムを形成するために、持続的な医療用注入ポンプに動作可能に接続され得る。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本発明の上記目的およびその他の目的、特徴、ならびに利点は、添付の図面を参照して記載した本発明の実施形態およびそれらの特徴の説明からより明確になるであろう。
【
図1】本発明の実施形態による、ポンプ増強システム(PAS)のための例示的なポンプ(例えば、IPAS対応インスリンポンプまたはIDDS対応薬剤送達ポンプ)を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態による、例示的なPAS対応手首装着型装置(例えば、IPAS対応手首装着型装置またはIDDS対応手首装着型装置)を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態による、
図1のIPASの動作に関する例示的なフロー図である。
【
図4】本発明の実施形態による、
図1のIPASの動作に関する例示的なフロー図である。
【
図5】本発明の実施形態による、
図1のIPASの動作に関する例示的なフロー図である。
【
図6】本発明の実施形態による、
図1のIPASの動作に関する例示的なフロー図である。
【
図7】本発明の実施形態による、
図1および
図2のIDDSの動作に関する例示的なフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の様々な実施形態を詳細に説明する前に、本発明が本明細書に記載する特定の実施形態に限定されるものではないことに留意されたい。また、本明細書に記載する方法および装置は、対応する用途にあわせて適切に適合および修正されてもよく、本明細書に記載する装置、システムおよび方法は、他の適切な用途に用いられてもよく、このような追加および修正は、本発明の範囲から逸脱しないことに留意されたい。
【0037】
簡素化のために様々な特徴を異なる図に示しているが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な特徴を組み合わせることができることは、当業者にとって明らかであろう。
【0038】
以下に記載するポンプ増強システム(PAS)の特定の特徴および要素は、糖尿病を治療するためのインスリンポンプ増強システム(IPAS)および/またはパーキンソン病などの疾患を治療するためのインテリジェント薬剤送達システム(IDDS)に適用可能である。IPASは、インスリンを送達するように構成されており、IDDSは、パーキンソン病の患者を治療するための抗振戦薬またはその他の薬剤を送達するように構成されてもよい。
【0039】
本発明の特定の態様によれば、ポンプ増強システム(PAS)またはインスリンポンプ増強システム(IPAS)に関連するコントローラは、ポンプまたはインスリンポンプと共に使用するために、改善されたポンプ動作またはインスリンポンプ動作の制御スキーム、装置、およびシステムを提供する。
【0040】
例えば、本発明は、インスリンポンプ増強システム(IPAS)を提供する。これは、ユーザがリアルタイムで受けている様々な生理学的行動および/またはライフスタイル活動をクローズドループ型のインスリンポンプに理解させる。これにより、これらの活動を動的且つ予防的に自動補完して、糖尿病患者(または他の個人)の血糖値を「望ましい」目標範囲内に良好に保つことができる。手動注入プロセスであれインスリンポンプを介してであれ、体内へのインスリンの機械的注入は、「正常な」(非糖尿病性の)有機溶液が提供するものと比較して、糖尿病患者のグルコース値に同じ即時血糖反応をもたらさない点で、上記の予防性は非常に重要であるといえる。
【0041】
血糖値の変化とその変化が間質液の測定値に反映されるタイミングにはタイムラグがある。そのため、既存の「事後対処的」なインスリン送達反応および外部のライフスタイル要因に対する補正方法は、典型的には望ましくない「範囲外」の状況をもたらす。一般に、インスリンポンプは、固定された所定の時間スケジュールに基づいて以前に設定された異なる基礎インスリン注入(送達)速度を提供することができるが、これらの速度は、インスリンポンプユーザの変化するスケジュールに対応した典型的な変動を考慮することができない。
【0042】
例えば、糖尿病患者が「暁現象」の結果として覚醒時に経験するグルコース値の上昇について、現在の技術でできる最善のことは、以前に設定された特定の時間枠の間に基礎インスリン送達の増加が可能になるように、静的にプログラムされることである。しかしながら、この方法における明らかな問題は、予想されるインスリン送達量の増加に対応する厳格な時間スケジュールに個人が正確に従わない限り、この時間的に増加したインスリン送達レベルは、実際のグルコース値のインスリン要求量と一致せず、異常に低いまたは異常に高い血糖値をもたらす可能性があることである。
【0043】
日常的に起きる多数の「現実世界」の変化を考慮すると、ホルモン分泌がいつ生じるかを予測できるように、正確な就寝時間と正確な起床時間の両方を一貫して達成して、一貫した睡眠時間を維持することはほとんど不可能である。現在設計されているインスリンポンプは、睡眠パターンの変化(平日の睡眠スケジュールと週末または休暇中の睡眠スケジュールとの間の変動など)を認識する能力を有しないので、「暁現象」の血糖変化に対する適切な応答を妨げる現在の治療法特有のタイミングの問題がある。
【0044】
同様に、従来のインスリンポンプは、緊急事態(緊急避難中に多数の階段を駆け下りなければならないような状況など)であろうと趣味(予定になかったテニスまたはその他のスポーツ活動の自発的な追加ラウンドなど)であろうと、自発的な身体活動に予防的に反応する方法がなく、そのため、クローズドループ型のインスリンポンプでさえ、制御を維持するために、事後対処的なインスリン送達を反応的に減少または一時停止させようとする。
【0045】
「従来型」の(PAS非対応またはIPAS非対応の)「スマートウォッチ」または同様の装置が総歩数または他の身体活動に関する報告を生成するか、その情報を保存できる場合、これらの装置は、消費カロリーおよび距離などの事前情報を表示するだけであり、インスリンポンプを制御または修正するためにこれらの情報に基づいて自動的に応答する動作を行うように構成されていない。対照的に、本発明の一態様によれば、コントローラ(例えばIPASに統合されたコントローラ)は、感知したデータを使用して、インスリンポンプのインスリン送達速度を自動的に判定し、有益な変化(例えばインスリン送達速度の増加および/または減少)を提供する。この新規に使用されるインスリンポンプ増強システム(IPAS)は、1つまたは複数の6軸加速度センサ/ジャイロピッチセンサ(または他の多軸加速度計)が組み込まれている場合があり、人工知能ソフトウエアプログラムを介してそのデータ出力をリアルタイムで処理および分析することができるクローズドループ型のインスリンポンプに生理学的および/または身体的状況を認識させ、インスリン送達レベルを体の実際のインスリン必要量とより良好に一致させる機能を初めて実現した。また、IPASは、インスリンポンプユーザが、運動前および/または運動中にポンプのインスリン送達を一時停止することを忘れた場合、ならびに/または計画したまたは摂取した糖質の負荷についてボーラス投与を忘れた場合など、よくある厄介な状況にも理想的に対応する。上述した状況は両方とも潜在的に深刻な血糖値上昇の発生をもたらす場合があるが、これは、本発明の実施形態によるIPASの使用によって回避することができる。
【0046】
本発明の目的のために、「ライフスタイル」という用語は、人の現在の睡眠状態(例えば人が覚醒しているか睡眠中かの判定)、人の現在の運動状態または身体的動作状態(または移動状態)、人の現在の食品摂取状態(食べている、噛んでいる、飲んでいるなど)、および人が現在摂取している特定の食品ならびに摂取した食品の総量のリアルタイム識別などのイベントを含んでいる。IPASがインスリンポンプに提供する「ライフスタイル」状況の認識増強機能によって、クローズドループ型のインスリンポンプは、ユーザのグルコース値を変化させる可能性のある身体運動活動を監視および自動的に補正し、摂取した食品の範囲について「リアルタイム」で監視、識別およびインスリン補完し、個人の睡眠/覚醒状態を監視して、睡眠終了時のホルモン分泌によるユーザの血糖値の変化を補完する能力を実現することができる。
【0047】
特定の態様によれば、コントローラは、インスリンポンプ増強システム(IPAS)に関連する。IPASは、異なる物理的実施形態で構成することができ、これには、以下の3つの例示的な実施形態が含まれる。
(1)第1の実施形態では、IPAS対応インスリンポンプの本体にIPAS要素が完全に統合されている。ポンプに統合されたIPASセンサからのデータは、IPAS内の関連する人工知能サブシステムによって処理され、結果として得られたガイダンスは、インスリンポンプの送達システム(またはインスリンポンプの送達システムのコントローラ)に作用するように提供される。
(2)第2の実施形態は、物理的に分離している第2の6軸加速度センサおよびジャイロピッチセンサ、ならびにマイクロフォンを第1の実施形態の構成とあわせて使用することでさらに増強される。マイクロフォンは、インスリンポンプユーザの腕または手首(好ましくは利き腕またはその手首)上に配置された、IPAS対応スマートウォッチまたは独自のIPAS対応ウェアラブル装置である手首装着型装置内に統合されている。これらの追加のセンサからのデータ出力は、(例えば無線通信手段を介して)IPAS搭載型インスリンポンプに送信される。ここで、追加されたデータストリームは、ポンプに統合されたセンサからのデータと組み合わされ、その後、両方のデータストリームは、インスリンポンプ内の人工知能サブシステムによって処理される。
(3)第3の実施形態は、IPAS非対応のクローズドループ型のインスリンポンプと使用するための構成である。この構成において、IPAS感知要素およびIPASデータ処理機能のすべてが、インスリンポンプユーザの手首または腕(例えば利き腕またはその手首)に装着される「スマートウォッチ」またはその他のIPASウェアラブル装置の本体に物理的に統合されている。一体型の6軸加速度センサおよびジャイロピッチセンサ、ならびにマイクロフォンが入力装置として使用される。本実施形態において、IPAS対応の腕装着型装置自体が、補充インスリンおよび/または送達変化指示を計算し、指示を実行するために、これらの指示を「従来型」のインスリンポンプ、すなわちIPAS非対応インスリンポンプに無線で送信する。また、インスリンポンプは、血糖値および血中インスリンなどの「リアルタイム」パラメータをIPAS装置に送信する。
【0048】
新たに発見されたライフスタイル認識機能がインスリンポンプに伝達する第1の実施例では、増強されたポンプは、ユーザの睡眠状態または覚醒状態を動的に判定し、覚醒時における体内からのホルモンの推定分泌量に対応するインスリン送達速度を補完的且つ予防的に調整することができる。この新しいライフスタイル認識機能を用いて、インスリンによるグルコース下降作用をより良好なタイミングで発生させて、インスリンポンプユーザの身体的な覚醒状態をIPASが感知したときに、起床時のホルモン分泌による血糖上昇作用と、対応するインスリン分泌とを一致させることができる。
【0049】
本発明の実施形態によれば、IPASに関連するコントローラは、個人の身体的な向きに基づいて個人が睡眠状態または非睡眠状態であることを判定してもよい。例えば、個人が長時間にわたって動作が減少した状態とともに睡眠に特徴的な姿勢を身体的に維持しているかどうかにかかわらず、IPASは、6軸加速度センサおよびジャイロピッチセンサを介して、個人の身体的位置および長期間にわたる動作の欠如を認識し、そのデータと、その個人の睡眠状態を示す記憶されたテンプレートとを照合することができる。その一方で、IPASに関連するコントローラが、検出された多軸の動作によって、個人が限られた動作または長時間の睡眠時間の姿勢から直立した姿勢に変わったことを検出したときに、IPASによる非睡眠状態(または覚醒状態または朝の目覚め)の姿勢を判定することもできる。IPASの人工知能サブシステムは、例えば、時間加重に基づく動作分析(短時間覚醒が朝の目覚めと誤って解釈されることを防ぐため)と、検出された動作の範囲および速度の観察とを含むアルゴリズムを介して判定を行って、実際の覚醒状態から様々な睡眠段階における個人の典型的な一過性の動きおよび姿勢の変化をフィルタリングすることができる。
【0050】
ユーザの睡眠状態を検出するIPASに関連するコントローラ特有の能力のより、IPASは、予めプログラムされた、時間に基づく基礎投与速度を早めるまたは遅らせる能力を有することができ、また、固定された/以前に設定された基礎投与速度を、睡眠時またはタイムゾーンをまたぐ移動時など、実際に観察された状態に補正して合わせることができる。同様に、本発明の実施形態によるIPASは、現在の基礎投与速度を一時的に歪めて、即座のまたは予測される近い将来の体のインスリン要求量とより良好に合わせることができる。
【0051】
また、IPASによる睡眠/覚醒判定は、重要なユーザ状態判定と応答を提供することをできる。ユーザが睡眠中であると推定される間にIPAS搭載型インスリンポンプに関連するコントローラが異常に低い(または過度に高い)血糖測定値を感知した場合、低血糖値を示している睡眠中の人を起こすことは特に難しいため、通常の日中のパラメータを超えて警告アラームの音量レベルおよびそのアラームの持続時間を増加させることができる。一部の実施形態において、増大したアラームシーケンスの完了後にIPAS搭載型インスリンポンプが覚醒状態を感知できない場合、IPASに関連するコントローラは、ユーザが意識を失った(または無反応である)ことを推定し、近くのモバイル装置に医療支援を求める緊急電話をかける命令を自動的に送るように構成されている。同時に、IPASに関連するコントローラは、インスリンポンプにインスリン送達を自動的に一時停止させることができる。極端に低い血糖値を示す無反応の個人の場合、IPASは、インスリン送達を自動的に一時停止し、且つ/またはGlucagonなどのグルコース上昇薬の注入を行うように構成されてもよい。過度に高い血糖値の場合、IPASは、ケトン状態を回避または補正するために、インスリンの適切なボーラス投与を自動的に行うように構成されてもよい。例えば、IPASに関連するコントローラは、Bluetooth無線通信などを介して近くのモバイル装置に命令を送ることができる。意識がない個人が会話をすることができなくても、デジタル化された音声メッセージで、緊急電話対応オペレータに医療緊急事態の性質を伝え、GPSを通してユーザの位置を中継するか、その情報がE911(緊急通報ダイヤル)システムを介して利用できない場合はモバイル装置の他の位置情報技術を通してユーザの位置を中継することができる。任意選択で、IPASは、ファーストレスポンダによるよりタイムリーな状況認識と活動のために、観察された血糖値を緊急電話対応オペレータに送信することができる。
【0052】
第2の実施例において、IPAS非対応インスリンポンプは、そのユーザの「刻々と変化する」ライフスタイル活動に関して完全に無知であり、そのため、以前に設定された送達設定から予防的に逸脱する能力を有しない。糖尿病患者の運動時の血糖値に応じた血糖値の下降または上昇のように、身体活動が糖尿病患者の血糖値に影響を与えることはよく知られている。統合された多軸加速度センサおよびピッチ感知センサ(または別個の補助的な多軸加速度センサおよびジャイロピッチセンサ)を使用することで、インスリンポンプは、ユーザの運動/身体活動を継続的に(または半継続的に)把握することができ、従来のインスリンポンプ装置のように血糖値の変化を反応的に補正するのではなく、ユーザのインスリン送達速度を適宜動的に且つ予防的に調整することができる。
【0053】
本発明の実施形態によれば、IPASは、ユーザの「範囲内」のグルコース測定値の改善を達成することができる。これにより、運動または身体活動の変化を即座に(またはほぼ即座に)検出して、運動開始後、即座に(またはほぼ即座に)ユーザの基礎インスリン投与速度を同時に変化させることができる。ユーザの現在の血糖値を分析すると同時に、(インスリンポンプによって提供された、現在の)血中インスリン濃度を判定し、必要に応じてポンプで適切なインスリン調整を行うために、人工知能(A.I.)ロジックを用いてもよい。運動時の瞬間的な血中インスリン濃度が適切であると判断され、検出された血糖値が「正常な」範囲内(または所定の範囲内)にある場合、IPASに関連するコントローラは、インスリンポンプに作用して、感知した値および運動の持続時間に対応して基礎インスリン投与速度を停止または低下させるように構成されてもよい。運動開始時に、検出された血糖値が正常値を大きく上回っている(または所定の閾値を上回っている)および/または血中インスリン濃度が低い(または所定の閾値を下回る)場合、IPASに関連するコントローラは、運動によって引き起こされる血糖値のさらなる上昇を防止するように運動を補完するために、インスリンポンプに、ボーラス投与速度および/またはその基礎投与速度を増加させるように構成されてもよい。
【0054】
運動またはその他の激しい活動(テニスなど)の判定は、A.I.動作アルゴリズムを介して行われてもよい。A.I.動作アルゴリズムは、いくつの活動軸が所定の動作閾値レベルを上回る動作を報告しているか、それを報告している軸の偏位範囲、および(ランニングまたはその他の特定の活動を検出するための)活動リズムの繰り返しパターンに基づいて判定を行ってもよい。アルゴリズムは、例えば、個人が車に乗っているとき(上下運動の繰り返し)の上下の垂直方向の「跳ねる」動きと、ランニングを連想することができるなど垂直方向の動作とを混同しないように、「誤った」運動報告の状況をフィルタリングするように設計されてもよい。動作アルゴリズムでは、垂直方向の動作(および他の動作の可能性)はあるものの、運動から予想される偏位距離には制限があり、前方への動きと他の軸の測定値が欠落しており、非常に異なるリズムパターンが見られることが示される。
【0055】
インスリンポンプ増強システム(IPAS)は、本明細書に記載のライフスタイルの例に限定されるものではない。従来のインスリンポンプは、ライフスタイルを認識するための直接的な手段を有さず、この欠陥により、ポンプは、ユーザの食品摂取をまったく認識することができない。摂取した糖質負荷を感知する「リアルタイム」な方法がなければ、従来のクローズドループ型ポンプは、摂取されている食品を認識せず、単に、ユーザの血糖値が目標範囲または速度に向けて、またはそれを超えて上昇していることを感知したときに、間接的且つ反応的に補正アクションを開始するのみである。インスリンポンプユーザが食品の摂取前に手動でインスリンをボーラス投与する場合でさえ、その後どのくらいの糖質が消費されるか、または消費されないかについては推測することしかできない。
【0056】
本発明を使用することで、IPAS搭載型インスリンポンプでは、食品摂取を示すリアルタイム情報が同時に提供されるだけでなく、多くの場合、正確な食品タイプ、消費された食品の実際の量、結果として計算された摂取した糖質負荷、食品のグリセミックインデックス、およびその摂取に対するインスリンの補完的ボーラス投与量と分泌タイミングも推定されてポンプに提供され得る。これにより、インスリンポンプは、IPAS非搭載型ポンプが不完全且つ「事後対処的」に食品摂取を反応的に補完する必要があるのとは対照的に、摂取される食品タイプと同様に、元の量に補充インスリン投与量を即座に(またはほぼ即座に)且つ同時に予防的に対応させることができる。
【0057】
例えば、ポップコーンを食べている人の場合、IPASセンサを装着した利き手(または非利き手)は、固定された「供給容器」から食品を取ってポップコーンを口に運ぶ間、明確なパターンで繰り返し動く。この活動中における1つまたは複数の6軸加速度センサおよび/または1つまたは複数のジャイロスコープによるピッチ/ヨー/ロールセンサからのデータを分析することで、(例えばA.I.アルゴリズムが組み込まれている)コントローラが、特徴的な繰り返しパターンに基づいて検出した腕と手の動きを記録することができる。これは、摂取している特定の食品を表すテンプレートとして正確に保存され得る。コントローラ/A.I.システムは、その動きの繰り返される多軸位置、速度および活動リズムを分析してもよく、手首装着型装置がユーザの口に最も近い位置にあると判定されたときに、手首装着型マイクロフォンからデジタル音声ファイルを生成してもよい。音声ファイルは、例えば、ポップコーンを食べている人とポテトチップスを食べている人の特徴的な咀嚼音とそれらの咀嚼音の持続時間を区別することで、A.I.アルゴリズムをさらに補助することができる。
【0058】
口やその近くに手を置いている「滞留」時間、ならびに口から離れるまでの手および手首の角度が付けられた連続した動きの回数および種類を判定および分析することにより、摂取した食品をさらに定量的に判定し、補足的な単純計算を用いてその動きサイクルごとの瞬間的な糖質摂取量を計算し、インスリンの「ボーラス投与」を補完的に判定することができる。特定された食品のグリセミックインデックスによって調整されたインスリンを摂取の付近で(且つ適切な補完レベルで)注入することで、インスリンと糖質負荷に対して優れた予防的な一致を行うことができる。
【0059】
食品のタイプは非常に多彩である。本発明の実施形態によるIPASに関連するコントローラは、個人が食べている様々な食品を「記録」すること、および記録された食品のデータをラベリングすることで、インスリンポンプに必要な送達値とインスリンの必要性およびタイミングに正確に合わせるために糖質値、グリセミックインデックスおよびカロリーなどを容易に一致させて参照して、食品を摂取したときにその食品によって引き起こされる血中のグルコース値の上昇を補完することができる。
【0060】
様々な食品を食べるときに一般的に行われる身体的動作および活動リズムは、特定の食品に対して非常に特徴的な場合がある。その例として、トウモロコシを食べること、リンゴを食べること(一口ごとに特徴的な「スナップバック」動作を伴う)、アイスクリームコーンを舐めること、およびバナナの皮を剥いて食べることなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。各食品に関連する食事中の固有の物理的な動きおよび/または食事中の音に基づいて、一連の特殊な食品テンプレートが生成および/またはIPASに関連するコントローラに予め記憶されてもよい。また、ユーザが、例えば手首装着型装置のボタンを押下し、特定の食品の名称を発話してIPASに食品タイプを手動で入力すると、食品テンプレートに基づく自動認識が困難な食品について、糖質およびカロリー情報が呼び出され(または特定され)、IPASは、摂取量を監視して糖質負荷およびインスリンのボーラス投与を解決(または判定)することができる。肉類などの低糖質食品については、IPASは、(ユーザが摂取のための準備をする場合)摂取前に肉を切る固有の動作を認識してもよい。
【0061】
飲料を実際に摂取したときの音、およびボトルまたは容器が実際に発する(または発さない)音の特性が、その飲料(およびその糖質含有量)を特定する上で特に重要な場合がある。例えば、使い捨ての水用ペットボトルは、炭酸の圧力を扱う必要がないため、一般的に「ソーダ」用ボトルよりもはるかに薄いプラスチック材料から構成されており、そのため、取り扱ったときおよび摂取されたときに、特徴的な独特の「プラスチックが曲がる/ひび割れるような」音が生じる。IPASは、水用ペットボトル固有のこの音を使用して、ゼロカロリー/ゼロ糖質が摂取されていると判定する。その一方で、炭酸飲料の場合、異なるタイプのボトルが使用されて、異なる摂取音/炭酸音が生じる。炭酸飲料が「ダイエット製品」なのか通常製品(糖質の含有量が大きく異なる)なのかの判定について、IPASのアルゴリズムは、摂取時におけるユーザの血糖値を分析するだけで論理的に区別することができる。IPASのユーザが糖尿病患者であると推定されるため、摂取時のユーザのグルコース値が低くない限り(その場合、「通常」のソーダなどを摂取することが望ましい)、飲料は常に「ダイエット製品」であると想定される。
【0062】
すべての食品は、摂取したときに、口に対する位置と回転、明確な噛み砕きパターンおよび音、液体を吸う音、咀嚼音、手を元の位置に戻す回転および位置などの固有の組み合わせを有する。
【0063】
一部の実施形態において、IPASに関連するコントローラは、予め記憶された食品テンプレートに基づいて食品タイプを直接特定するのではなく、摂取中のユーザによって個々の食品テンプレートが記録および保存され、次いで、ユーザが異なる食品の各々を手動で特定および登録するマッチングプロセスを使用してもよい。それ以降の食品の特定は、リアルタイムのアクティブな食品摂取と、保存されたテンプレートのデジタル動作パターンおよび音パターンとをIPASがリアルタイムで自動的に比較することで達成されてもよい。一致した場合、糖質レベル、グリセミックインデックス、カロリー情報およびその他の情報が、インスリン送達量およびその送達量のタイミングを判定するためにインスリン送達システムに提供される。
【0064】
摂取した食品タイプを判定するためにIPASに関連するコントローラが使用するアルゴリズムは、精度を高めるために1つまたは複数の検証方法を組み込んでいてもよい。これらの方法の1つに、ユーザの手が口に近接した位置にあるとIPASの動作分析が判定した期間中にのみ(手首装着型装置が捕捉した)食品の音声マッチングを許可することが挙げられる。このような「音声ゲーティング」を使用することで、IPASは、対象IPASに近接している複数の人が同じタイプまたは異なるタイプの食品を食べているときに誤った分析が行われることを防止することができる。また、音声ゲーティングは、手を挙げて口に近づいていることをシステムが検出しないときは、常に、手首のマイクロフォンがミュートされているため、本質的なプライバシーのレベルを提供する。したがって、IPASは、IPASユーザの口の近接した位置にIPASがないと判定された場合にはマイクロフォンからの音声データを記録せず、IPASが音声データを記録している場合には記録された音声データを無視することができる。
【0065】
一部の実施形態において、IPASに関連するコントローラは、覚醒、ランニング、または他の活動を即座に認識するために、多数の「汎用」動作テンプレートを元から含むように構成される。IPASは、ユーザ独自にカスタマイズされたテンプレートをユーザが生成して「汎用」テンプレートを置き換えることで、イベント認識と精度の両方をさらに高めることができ、且つ記憶されているテンプレートの範囲を補完することができるように構成される。また、覚醒、ランニング、またはその他の活動を認識するために、汎用動作テンプレートを、カスタマイズされたテンプレートで置き換えることができ、またはカスタマイズされたテンプレートに加えて使用することができる。
【0066】
本発明の実施形態によるIPASに関連するコントローラの別の利点は、低血糖の発症中に示される。一部の状況において、個人は、典型的には、低血糖症の即時の症状を治療するために糖質の摂取を過剰に行う。一部の実施形態において、IPASは、血糖値、血中インスリンの量および摂取している糖質の量を監視するように構成される。IPASに関連するコントローラは、その後高血糖症をもたらす糖質の過剰摂取を防止するために、ユーザに「オーバーシュート」保護警告を提供するように構成されてもよい。IPASは、瞬間グルコース値と血中インスリンの量の両方に対して摂取量を比較することで、瞬間糖質摂取量を監視してユーザの血糖値を正常化するために必要な糖質の適正量を計算(または判定)し、過剰補完の時点で警告音を発することができる。
【0067】
一部の実施形態において、コントローラは、ポンプ増強システム(PAS)に関連していてもよい。また、PASは、例えばパーキンソン病を治療するための薬剤など、他の注入可能な薬剤の送達のために使用されてもよいが、これに限定されるものではない。この使用例において、注入された薬剤の送達時間および量を、例えばPASが検出する可能性がある振戦レベルの増加によって判定されるような、即座の必要性と一致させることができる。
【0068】
本発明の目的のために、本明細書に記載の主な用途は、インスリンポンプの増強のためであるが、僅かなソフトウエアの修正で、同じまたは類似のハードウェア構成が他の目的に使用されてもよい。コントローラのさらなる実施形態において、自動食品摂取感知は、摂取ではなく「燃焼」されたカロリーのみを報告する現在の装置とは対照的に、「摂取」カロリーを監視するために使用されてもよい。一部の実施形態において、カロリー摂取を監視するように構成されたコントローラは、任意選択で、目標カロリー摂取量が特定の時間までに達成された場合または達成できなかった場合に、触覚または視覚アラーム、またはその他のガイダンス通知を提供するように構成されてもよい。
【0069】
本発明は、「ライフスタイル」活動を感知および判定するためのシステムに関連するコントローラを提供する。
【0070】
本発明によれば、薬物送達ポンプユーザの「ライフスタイル」活動を感知および決定するためのポンプ増強システム(PAS)10が提供される。
図1および
図2を参照すると、PAS10は、具体的には、インスリンポンプ増強システム(IPAS)として、またはインテリジェント薬剤送達システム(IDDS)として実現され得る。
【0071】
特定の実施形態によれば、インスリンポンプのユーザの「ライフスタイル」活動を感知および判定するためのインスリンポンプ増強システム(IPAS)が提供される。
図1に示すように、本発明の実施形態によるインスリンポンプ増強システム10は、ポンプ本体12を有するインスリンポンプ100などの薬剤送達ポンプに組み込まれ、および/またはそれと動作可能に通信する。IPAS10は、コントローラ14と、加速度センサ16と、ジャイロピッチセンサ18と、インジケータ発生装置20と、送信機22と、を含む。加速度センサは、多軸加速度センサであってもよく、例えば6軸加速度センサであってもよい。
【0072】
コントローラ14は、6軸加速度センサ16、ジャイロピッチセンサ18、インジケータ発生装置20および送信機22に動作可能に接続される。コントローラ14は、6軸加速度センサ16、ジャイロピッチセンサ18、インジケータ発生装置20および送信機22に物理的に接続されるように示されているが、コントローラ14は、無線通信方法および無線通信接続を介してこれらの要素に「接続」されてもよい。
【0073】
6軸加速度センサ16は、動作(または運動)を検出し、動作データ(または動作データ)を出力するように構成される。コントローラ14は、6軸加速度センサ16からの動作データを受信および/または記録または記憶するように構成される。ジャイロピッチセンサ18は、方向を検出し、方向データを出力するように構成される。コントローラ14は、ジャイロピッチセンサ18から方向データを受信および/または記録するように構成される。インジケータ発生装置20は、様々な音レベルにおいて1つまたは複数の音(例えばアラーム音)を発するように、および/または1つまたは複数の視覚インジケータ(例えば点滅する光)を表示するように構成される。コントローラ14は、インジケータ発生装置20に動作可能に接続される。送信機22は、1つまたは複数の通信装置と通信するように構成される。
【0074】
コントローラ14は、インスリンポンプ100と通信して、インスリンポンプ100の様々なデータを受信するように構成される。例えば、コントローラ14は、インスリンポンプ100のユーザの血中インスリン濃度データ、インスリンポンプ100のユーザの報告された血糖値データ、および/またはインスリンポンプ100の現在のまたは予定されたインスリン送達速度データを受信してもよいが、これらに限定されるものではない。コントローラ14は、ホストインスリンポンプ100に動作可能に接続される。また、コントローラ14は、送信機22に動作可能に接続される。動作データ、方向データ、音声データ、血中インスリン濃度データ、報告された血糖値データ、および/または現在または予定されたインスリン送達速度データに基づいて、1つまたは複数の所定の基準が満たされる場合、コントローラ14は、送信機22に自動緊急電話またはメッセージを起動させる。
【0075】
図2に示すように、IPAS10は、ウェアラブル装置24にさらに組み込まれ、および/またはウェアラブル装置24と動作可能に通信する。本実施形態において、ウェアラブル装置24は、手首装着型装置である。IPAS10は、ウェアラブル装置24内に配置された6軸加速度センサ25およびジャイロピッチセンサ26を含む。IPAS10は、マイクロフォン28をさらに含む。マイクロフォン28は、音声を検出し、音声データを出力するように構成される。コントローラ14は、マイクロフォン28から音声データを受信するように構成され、且つ/またはウェアラブル装置24は、動作データ、方向データおよび/または音声データをコントローラ14に分配するように構成された追加のコントローラを含む。なお、ウェアラブル装置24の他の位置にマイクロフォン28が配置されてもよく、且つ/または追加のマイクロフォンが設けられてもよいことに留意されたい。
【0076】
一部の実施形態において、コントローラ14は、ウェアラブル装置24内またはウェアラブル装置24上に配置される。
図1に示すように、一部の実施形態において、コントローラ14は、インスリンポンプ100内またはインスリンポンプ100上に配置され、第2のコントローラは、ウェアラブル装置24内またはウェアラブル装置24上に配置される。第2のコントローラは、第1のコントローラ14および/またはインスリンポンプ100の専用のコントローラと通信するように構成される。
【0077】
図3を参照すると、フロー
図30は、本発明の実施形態による
図1のIPAS10の例示的な動作方法を示す。ブロック32では、コントローラ14は、1つまたは複数の6軸加速度センサ16および25から受信した動作データ、および1つまたは複数のジャイロピッチセンサ18および26から受信した方向データについて監視を行う。ブロック34では、コントローラ14は、動作データおよび/または方向データが変化したかどうかを判定する。動作データおよび/または方向データに変化がないとコントローラ14が判定した場合、コントローラ14は、ブロック32に戻って監視を行う。動作データおよび/または方向データに変化があったとコントローラ14が判定した場合、コントローラ14は、ブロック36へ進む。ここで、コントローラ14は、動作データおよび方向データの変化を分析する。コントローラ14は、ブロック38へ進む。ここで、コントローラ14は、IPAS10に記憶されたプロファイルテンプレートとの類似性について、時間加重され得る動作データおよび方向データを比較する。動作データおよび/または方向データが、記憶されたプロファイルテンプレートと類似していないとコントローラ14が判定した場合、コントローラ14は、ブロック32に戻って監視を行う。動作データおよび/または方向データが、記憶されたテンプレートと類似しているとコントローラ14が判定した場合、コントローラ14は、検出された動作および方向が食品の摂取に関連していると判定し、識別されたプロファイルテンプレート方法へ進む。
【0078】
図4を参照すると、フロー
図39は、本発明の実施形態によるブロック38(
図3)において、動作データおよび/または方向データが食品摂取プロファイルと類似していると判定されたときの、
図1のIPAS10の動作の例示的なプロファイルテンプレート方法を示す。コントローラ14は、ブロック40へ進む。ここで、コントローラ14は、任意選択で、マイクロフォン28(
図2)から音声入力42を受信する。コントローラ14は、1つまたは複数の記憶された食品摂取テンプレートとの類似性について、食品の摂取と同時であると判定された期間に対応する動作データ、方向データおよび/または音声データを比較する。データが、記憶された食品摂取テンプレートと類似しているとコントローラ14が判定した場合、コントローラは、ブロック48へ進む。これは、以下でより詳細に説明する。データが、記憶された食品摂取テンプレートと類似していないとコントローラ14が判定した場合、コントローラは、ブロック44へ進み、摂取されている食品のタイプについてのユーザ入力を要求する。ユーザ入力を受信しない場合、コントローラ14は、ブロック32に戻って監視を行う。ユーザ入力を受信した場合、コントローラ14は、ブロック46へ進み、提供された入力の新しい食品摂取テンプレートに対応するものとして、動作データ、方向データおよび/または音声データを記憶する。この新しい食品摂取テンプレートは、ブロック40で将来の食品摂取テンプレートの比較のために(例えばコントローラに関連するメモリに)記憶される。次いで、コントローラ14は、ブロック48へ進む。
【0079】
ブロック48では、コントローラ14は、ユーザが摂取している食品を示すものとして識別された特定の食品タイプを判定する。コントローラ14は、ブロック50へ進む。ここで、コントローラ14は、(例えばインスリンポンプ100に問い合わせることで)ユーザの報告された血糖値を確認する。報告された血糖値が所定の閾値(例えば100mg/dl)以上である場合、コントローラ14は、ブロック52でポンプ指示信号を生成し、インスリンポンプ100に、コントローラ14が判定した、摂取した(または消費した)糖質負荷の量に基づいてユーザへのインスリンをボーラス投与させる。これにより、インスリンポンプ100の現在のまたは予定されたインスリン送達速度を変化させることができる。報告された血糖値が所定の閾値(例えば100mg/dl)未満である場合、コントローラ14は、ブロック54で、(例えばインスリンポンプ100に問い合わせることで)ユーザの血中インスリン濃度を確認する。血中インスリン濃度が所定の閾値を下回る場合、コントローラ14は、ブロック56で、ポンプ指示信号を生成して、コントローラ14が判定した、摂取した(または消費した)糖質負荷の量に基づいてユーザへのインスリンをボーラス投与させる。血中インスリン濃度が所定の閾値を上回る場合、コントローラ14は、ブロック58で、ポンプ指示信号を生成しないか、または現在のまたは予定されたインスリン送達速度からインスリン送達速度を減少させるポンプ指示信号を生成する。次いで、コントローラ14は、ブロック32に戻って監視を行う。
【0080】
有利には、ブロック44および46でユーザからの入力を要求および受信するように構成されたコントローラ14によって、コントローラ14は、ユーザ特有の身体的特性および/または癖について繰り返し学習することができる。記憶されたパターンは、ユーザに対して個別化されている。これにより、コントローラ14は、食品テンプレート(または他のテンプレート)をより正確に特定することができる。コントローラ14は、ユーザが入力した任意の数のテンプレートを記憶するように構成されてもよい。これにより、コントローラ14は、ユーザ特有の実質的に無限のパターンを記憶する能力を有することができる。ユーザ特有のパターンを記憶する能力によって、有利には、コントローラ14は、食品テンプレート(または他のテンプレート)に対応するユーザの傾向(または以前に入力したパターンデータ)を「学習」することができる。例えば、一旦記憶された特定のテンプレートとしてコントローラ14が識別することができる身体的ライフスタイルイベントにユーザが参加しているときに、ユーザは、1つまたは複数の固有の動作、方向または音を起こす傾向がある。このため、ユーザが、例えば特定の身体的手段でポテトチップスを食べるなど、そのライフスタイルイベントに再び参加するとき、コントローラ14は、本明細書に記載するようにライフスタイルイベントを特定し、それに応じてポンプ指示信号を生成するように構成される。
【0081】
図5を参照すると、フロー
図60は、本発明の実施形態によるブロック38(
図3)において、動作および/または方向データが運動プロファイルと類似していると判定されたときの、
図1のIPAS10の動作の例示的な方法を示す。ブロック62では、コントローラ14は、特定の運動プロファイルとの類似性について、動作データおよび/または方向データを比較する。ブロック64では、動作データおよび/または方向データが特定の運動プロファイルに対応していないとコントローラ14が判定した場合、コントローラ14は、ブロック32に戻って監視を行う。データが特定の運動プロファイルに対応しているとコントローラ14が判定した場合、コントローラ14は、ブロック66へ進む。ここで、コントローラ14は、報告された血糖値について確認を行う。報告された血糖値が第1の閾値を下回る場合、コントローラ14は、ブロック68へ進み、インスリンポンプ100にインスリン送達を一時停止させるか、インスリン送達を減少させるよう指示するポンプ指示信号を生成する。報告された血糖値が第1の閾値を上回り、且つ第2の閾値(例えば250mg/dl)を下回る場合、コントローラ14は、ブロック70へ進み、ユーザの血中インスリン濃度を確認する。血中インスリン濃度が第1のインスリン閾値を下回る場合、コントローラ14は、ブロック72へ進み、既存のインスリン送達速度を維持する(または少なくともインスリン送達速度を大きく変化させない)。血中インスリン濃度が第2のインスリン閾値を上回る場合、コントローラは、ブロック74へ進み、基礎インスリン投与速度を減少させる。ブロック66に説明を戻すと、血糖値が第3の閾値を上回る場合、コントローラ14は、ブロック76へ進み、特定の運動プロファイルに対応するインスリン送達速度および/またはインスリンのボーラス投与量の上昇を判定し、判定結果に対応するインスリン速度またはボーラス投与をインスリンポンプ100に送達させるためのポンプ指示信号を生成する。
【0082】
図4に関連して上述した方法と同様に、コントローラ14は、記録された運動プロファイルに対応するものとして記憶される運動テンプレートを入力するようユーザに要求するように構成されてもよい。一部の実施形態において、コントローラ14は、運動または食品テンプレートを入力するようユーザに要求する必要がない。ユーザは、コントローラ14に要求されなくとも、対応するテンプレートを入力することができる。入力したテンプレートは、IPAS10からの記録されたデータと共に記憶される。一部の実施形態において、テンプレートとして記憶された記録されたデータは、ユーザがテンプレートを入力する前の、所定の時間の間に記録されたデータに対応する。所定の時間の例として、1分、2分または3分が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一部の実施形態において、ユーザは、入力したテンプレートにどの記録されたデータを関連付けるかを選択することができる。例えば、ユーザは、テンプレートを入力するまでの時間を選択することができるか、同じ日のそれよりも早い時間に発生した、記録されたデータの期間を選択することができる。例えば、ユーザが午後1時から午後2時までテニスをした場合、その後、テニスをしていない同じ日の午後6時に、ユーザは、テニスをした時間を選択して、それをテニスの運動プロファイルまたはテンプレートとして記憶するこができる。
【0083】
図6を参照すると、フロー
図78は、本発明の実施形態によるブロック38(
図3)において、動作および/または方向データが睡眠プロファイルに類似していると判定されたときの、
図1のIPAS10の動作の例示的な方法を示す。ブロック80では、コントローラ14は、睡眠状態が検出されたと判定する。コントローラ14は、ブロック82へ進む。ここで、コントローラ14は、睡眠から覚醒への移行の判定について、動作データおよび/または方向データの監視を継続する。これは、データの時間加重評価に基づいてもよい。睡眠から覚醒への移行が検出されない場合、コントローラは、ブロック80に戻り、データが睡眠プロファイルと類似しているかどうかを確認し、睡眠状態にある場合、ブロック82に戻り、睡眠から覚醒への移行が発生したかどうかを判定する。(例えばユーザが動いているか歩いていることを示す動作データ、またはIPAS10の向きか変化したことを示す方向データによって)睡眠から覚醒への移行が発生したとコントローラ14が判定した場合、コントローラ14は、ブロック84へ進み、ユーザの報告された血糖値について確認を行う。報告された血糖値が第1の閾値を下回る場合、コントローラ14は、ブロック86へ進む。ここで、コントローラ14は、本明細書に記載するように覚醒状態への移行に関連するホルモン分泌を補完するためのインスリンのボーラス投与が必要ないと判定する。報告された血糖値が第2の閾値を上回る場合、コントローラ14は、ブロック88へ進む。ここで、コントローラ14は、ユーザのホルモン分泌を補完するためのインスリン送達速度および/またはインスリンのボーラス投与量の増加を決定し、次いで、コントローラ14は、インスリンポンプ100に適切なインスリンを適切な送達速度で放出させるポンプ指示信号を生成する。次いで、コントローラ14は、ブロック32に戻って監視を行う。
【0084】
一部の実施形態において、IPAS10は、全体的にインスリンポンプ100内またはインスリンポンプ100上に配置される(例えば
図1)。一部の実施形態において、IPAS10は、インスリンポンプ100内またはインスリンポンプ100上、およびウェアラブル装置24内またはウェアラブル装置24上に配置される(例えば
図1および
図2)。また、本明細書に記載するように、ウェアラブル装置24内のIPAS10の要素は、インスリンポンプ100内のIPAS10の要素と通信および動作するように構成される。一部の実施形態において、IPAS10は、全体的にウェアラブル装置24内またはウェアラブル装置24上に配置され(例えば
図2)、IPAS非搭載型インスリンポンプ(すなわち、それ自体がIPAS機能を有さない)と通信および動作するように構成される。ここでは、インスリンポンプがIPAS搭載型インスリンポンプと同様に動作するように、ウェアラブル装置24のIPAS10がIPAS非搭載型インスリンポンプの機能の少なくとも一部の制御を補完するかオーバーライドする。一部の実施形態において、ユーザは、IPAS10の要素を含む1つまたは複数のウェアラブル装置を装着することができ、例えばユーザの各手首にウェアラブル装置を装着することができるが、これに限定されるものではない。
【0085】
有利には、IPAS対応ポンプは、IPAS非対応ポンプよりも多くの利点を提供するように構成される。例えば、インスリンポンプにユーザの睡眠状態のリアルタイム状況を提供しなければ、従来のインスリンポンプは、内容に関係なく不要なアラームを発生させる可能性がある。一例として、一部のインスリンポンプは、そのリザーバ内のインスリンの残量を追跡し、様々なインスリンの残量レベルで、ポンプが状況を示すアラームを発生させることができる。その結果、インスリンポンプのユーザは、状況がまだ危機的でないにもかかわらず、リザーバを交換するなどの特定の行動をとるために起こされることが多く、このような行動を夜中の寝起き直後に行うのは危険であるといえる。一部の実施形態において、IPAS対応インスリンポンプは、ユーザが睡眠中であるかどうかを判定し、アラームが時間的または状況的に重大ではなく単に助言的であると判定された場合、IPAS対応インスリンポンプは、ユーザが目を覚ますまで、および/またはアラームの状態が時間的に重大になるまで、アラームおよび/または通知を遅らせることができる。
【0086】
上述したPASおよびIPAS10の特徴および要素は、パーキンソン病などの疾患を治療するためのインテリジェント薬剤送達システム(IDDS)10に適用可能であるので、ここでは詳細な説明は繰り返さない。インスリンを送達する代わりに、IDDS(またはPAS)は、パーキンソン病の患者を治療するための抗振戦薬またはその他の薬の送達速度を変化させるように構成されてもよい。
【0087】
パーキンソン病では、グルコース値、血中酸素濃度レベル、血圧測定値、EKG(心電図)測定値、および体温など、他の疾患のように定量的に測定可能な因子はない。パーキンソン病は、薬の送達速度を変化させるための直接的且つ継続的に測定可能な普遍的な基準値がないという点で異なる。臨床医は通常、患者の視覚的観察に基づいて疾患の進行を判断し、主観的な投与量を変化させる。
【0088】
IDDS装置10が収集した動作データおよび/または方向データは、コントローラ14によって分析され、身体的運動症状の微妙な変化の有無さえも判定する。IDDS装置10の高分解能を有する微小電気機械センサ(MEMS)、例えば3軸ジャイロスコープと3軸加速度センサを含む6軸動作追跡装置により、振戦症状を含む患者の動作を微細な分解能で検出することができる。このような分解能は、従来の3つの直交座標軸の測定に加えて、正確なピッチ、ロール、およびヨーの運動検出能力を提供する。したがって、本発明によるIDDS装置10は、例えば、X/Y/Z軸位置を有する安静(または固定)位置にある手首/手の動作を監視するように構成されるが、その際、指がリズミカルに活動しており、装置10のセンサによって検出される。これは、検出可能な強度および持続時間の振戦インシデントを示しており、記録されてローカルまたはリモートストレージに記憶され得る。また、より高度な、またはより高い分解能を有するセンサを使用した実施形態を使用してもよい。
【0089】
身体装着型または薬剤ポンプ内蔵型センサを使用することで、装置10は、正常な直立姿勢と、体が横になっている安静姿勢/睡眠姿勢とを区別するように構成されてもよい。
【0090】
パーキンソン病患者の各々は、疾患の各段階を通じて、個々に異なる身体的および/または活動リズムの振戦特性を有している。したがって、振戦インシデントを記録および記憶する能力により、所定の閾値、例えば、振戦の持続時間の10%の増加または振戦運動の力の25%の増加を超えて振戦の持続時間および/または強度の変化、増加または減少のいずれかがあるかどうかを判定するための動作の比較が可能になる。一部の実施形態において、装置10が患者の各手首に装着される(および/または、装置10が患者の1つまたは複数の足首に装着される)。一部の実施形態において、装置10は、胴体などの一般的な体の部位に装着される。
【0091】
パーキンソン病の患者を治療するためなど、患者とともに動作するクローズドループ型IDDSは、少なくとも1つの身体装着型(例えば、手首および/または一般的な体の部位)の動作および方向センサを利用して、従来の非インテリジェント持続的融合ポンプによって使用される従来の注入速度設定(例えば、固定された投与量送達または特定の時間帯での送達注入速度設定)を動作可能に補足するか、または完全に置き換えるように構成される。
【0092】
当業者であれば、本明細書で使用される「継続的」という用語は、文字通りノンストップの薬剤送達を意味するのではなく、投与間隔および各投与の持続時間が投与量変数である、送達投与量の継続的な繰り返しを意味すると理解されるであろう。同様に、このようなノンストップ観察は、データ収集間にある程度の長さの時間を有するデータサンプリングと比較して、有意に多くのデータ利点を提供しない可能性があるため、文字通り毎秒患者の観察を行うことは有利でない可能性がある。
【0093】
有利には、IDDSによって、提示されたパーキンソン病の症状強度レベルのリアルタイムの観察に基づいて、薬剤注入流量の動的タイミングおよび送達速度の調整設定を注入ポンプが提供することができる。本発明によるIDDSは、観察された患者の動作フィードバックに応答して、注入ポンプの基礎投薬速度を継続的に監視、分析、および調整するように構成されてもよい。観察には、1つまたは複数の6軸動作センサによって検出された振戦、ジストニア、ジスキネジア、歩行、および/または凍りつきを監視することが含まれてもよい。
【0094】
パーキンソン病患者の各々は、症状の各段階を通じて、個々に異なる身体的および/または活動リズム振戦特性を有する可能性があるので、本発明によるIDDSの有利な特徴は、定期的な記録と、それに続く、以前の個別化パターンと現在のパターンとの間の定期的なマッチングおよび分析を行い、パターンからの逸脱が何らかの指標(例えば、強度、持続時間、運動のタイプなど)において変化したかどうかを判定することを含む。一部の実施形態において、IDDSは、単一の手首装着型センサを介して機能するものであってもよい。これは、通常、最大またはより頻繁な異常症状を呈する身体側に装着される。一部の実施形態において、IDDSは、2つのセンサ(1つは患者の手首に、もう1つはより多くのデータ収集点のために体に装着され、注入ポンプのコントローラと通信して、1つまたは両方のセンサコントローラからのデータに基づいて薬理学的送達速度の変化に関する決定を行う)を介して機能するものであってもよい。一部の実施形態において、IDDSは、手首装着型センサと、さらに多くのデータ収集点のための追加の身体装着型センサ、例えば、ユーザの腰または胴の周りに装着するセンサ(ベルトを構成するセンサまたはベルトに取り付けるセンサなど)を介して機能することができる。センサの数および位置の様々な組み合わせが使用されてもよい。一部の実施形態において、IDDSの薬剤注入ポンプユニットは、位置情報を提供するため、および/または他のセンサからのデータを補足するために、統合されたジャイロスコープおよび/または方向位置センサを有してもよい。
【0095】
コントローラ14は、「ベース」または出発点の運動レベルに起因する身体運動を分析するように構成されてもよく、このベースレベルの判定から、薬理学的送達速度が、コントローラ14のセンサ入力チャネルを介して1つまたは複数の装着型センサから得られる動作データを用いてコントローラ14によって最初に確立/記憶される。このデータを分析することで、コントローラ14は、個別化されたベースライン薬理学的送達速度を生成するように構成される。薬理学的送達速度(または他の速度変化、例えば絶対量速度変化)にパーセント速度変化を適用し、1つまたは複数の装着型センサによって検出された感知された偏位位置変化に基づいて送達量を増加または減少させるベースライン偏差比が選択される。感知された位置データは、通常、関連する位置データ入力チャネルからの「ノイズ」をよりよくフィルタリングするために、ユーザが安静姿勢にある間に記録および記憶されてもよい。コントローラ14は、その後の比較のために、データ入力チャンネルのサブセットを分析してもよい。それにもかかわらず、システムは、全体的な身体運動の内容を均等化し、不必要なデータの「ノイズ」または影響を防止するために、すべての入力チャネル(および関連しない運動)を監視し続ける。
【0096】
記録/分析比較間隔期間は、有効または有用な診断比較期間を反映するように臨床医が選択してもよい。しかしながら、コントローラ14は、全体的な身体運動の内容が以前の記録時と同じであると判定されるまで、記録/分析を遅延させるように構成されてもよい。この遅延により、体の位置動作の外部データが、収集されたデータを誤って歪めることを防止することができる。
【0097】
一部の実施形態において、IDDSは、特定のデータ入力チャンネルにおいて、手指装着型センサと非手指装着型センサー(または基準センサ)との間に運動デルタが存在するかどうかを判定するように構成される。1つまたは複数の非手首装着型6軸センサ(例えば、ポンプ自体に内蔵されているもの)を手首装着型センサと比較するために利用することで、(手首装着型センサにとって)有用な「外部」位置情報を提供し、自動車で移動中に人が上下に跳ねるなど、体の外部運動の「ノイズ」を無効化またはフィルタリングするために使用される。手首装着型センサと非手首装着型センサの両方から同じデータ入力チャネルが同じまたは類似のデータを検出した場合、システムまたはコントローラ14は、そのデータが体自体によって作成されたものではなく、すなわち振戦に起因するものではないと判定することができる。「チェック」センサも位置データを供給することなく、手首装着型センサだけが特定の動作データを感知していた場合、感知された身体運動が、ユーザに加えられた外部運動とは別個のものであるかどうかを判定する方法はない。したがって、この場合、検出された運動は常に、ユーザによって生成された有機的な運動とみなされる。
【0098】
不規則な異常な身体運動(記録される)に加えて、最も一般的なパーキンソン病の症状の1つは、一定の振戦である。一定の振戦は、パーキンソン病の各個人に典型的なリズミカルな運動であり、個人特有の活動リズムを有することがある。個人特有の活動リズムは、運動の繰り返し検出によって、またはユーザまたは臨床医によるIDDS内の手動較正および識別によって、コントローラ14によって特定される場合がある。IDDSは、その存在を記録するように構成される。この活動リズムの運動を含む運動の偏位限界の即座の比較を経験的に基準記録と一致させることで、パーキンソン病の進行の信頼できる尺度を確立することができる。また、記録され且つ記憶された活動リズムの例は、外来データの「ノイズ」を回避するために、既知の反復率を含まない通常のライフスタイルの動作データから所望の活動リズムの運動情報をフィルタリングする役割を果たす。
【0099】
臨床医に対する運動の変化のタイムリーな報告は、投与レベルまたは薬剤のブランドもしくはタイプの必要な変更を示す可能性があるので、実質的に重要である。本発明によるIDDSの実施形態に対する有利な態様は、発信データ報告機能を含むことである。すなわち、IDDSは、有線または無線通信手段を通じて臨床医コンピュータシステムと通信するように構成される。例えば、IDDSは、ユーザの携帯電話と無線接続し、携帯電話からセルラーネットワークまたはインターネットネットワークを通じて臨床医コンピュータシステムにメッセージを送信させるように構成されてもよい。これにより、過度な(すなわち「範囲外」の)異常が継続していることを感知した場合、IDDSのコントローラ14は、自動的に臨床医に連絡することができる。一部の実施形態において、臨床医コンピュータシステムに対するメッセージは、検出された過剰な変化の報告を臨床医に伝達するだけでよい。しかしながら、一部の実施形態において、IDDSは、臨床医が報告セッション中または報告セッション後に即座に投与量を変化できるように、遠隔操作で調整できる追加の能力を有する。IDDSの通信機能は、Wi-Fi、セルラー、または一般的に使用されている他の通信方法またはプロトコルの使用を含んでもよい。
【0100】
また、本発明によるIDDSは、検出された症状の変化に応答して、投与量を自律的に変化(増減)させる能力を有してもよい。この変化は、例えば、患者が、即座のまたは平均化された異常な偏位増加の以前に設定されたレベルを超えたことに基づいて、または異常な偏位減少の以前に設定されたレベルを超えたことに基づいて、または時間帯の内容などに基づいて、コントローラ14によって分析される。自動的な投与量送達の変化の範囲は、各ユーザに対して臨床医によって判定されるそのような自律的な限界を有する予め設定された投与量(変化)の「カラー(collar)」抑制によって制限される。
【0101】
有利には、IDDSは、連続的に(または所望の間隔で)関連データを記録し、そのデータと以前のデータ記録との間で定期的な比較を行い、および/または生理学的に有意なデータ変化の検出時に処理を行うように構成されてもよい。この比較は、個々の連続記録比較、またはタイムリーな記録グループ間の平均化および比較を含んでもよい。
【0102】
本発明による実施形態において、後の分析およびアクションのためのデータ測定値の生成および記憶は、「単純な」または「生の」動作データの記録を超える。例えば、IDDSは、リンクされた「メタデータ」、すなわち、主データにサブコンテキストをもたらす他の値のコンテキスト内で主動作データ値をリンクするデータを使用してもよい。これにより、例えば、過去の「生の」動作データを、時間/日付スタンプ、記録時の薬理学的送達速度、記録時の推定循環薬レベル、薬剤タイプ、薬剤強度、記録時の体の活動レベル、および記録時の睡眠/覚醒状態などの追加情報に直接リンクさせることができる。これにより、関連する身体的動作データは、より有意義で豊富なコンテキストを提供することができる。このようなメタデータにより、患者ごとに広範なレポート、図表、および詳細な分析が自動的に生成され、各ユーザ/患者ごとに個別化されたレベルで、投与量の有効性などに関するはるかに有用な動的画像が作成される。
【0103】
一部の実施形態において、IDDSは、ユーザ/患者の記録分析から、事前の自動投与補正アクションの結果に関連して学習する人工知能(AI)を含む。本システムの動作センサおよび方向センサは、異常な身体運動を監視することに加え、人が睡眠中であるか、運動中であるかなどを判定するライフスタイル入力センサとしても機能する。個人は1日の大半を直立姿勢で過ごすので、IDDSのコントローラ14は、体が横になっているか、安静/睡眠姿勢であるかを判定するために、これが通常のライフスタイル姿勢であると仮定して区別する。
【0104】
その名が示すように、IDDSは、インテリジェント薬剤送達システムであり、様々なライフスタイルの状況に応じて、いつ、どのような投与量の変化が必要かを学習することができる。IDDSは、注入された薬剤の特定のレベルの変化に対する患者の過去の反応(または反応の欠如)の分析に基づいて、どの投与量の変化が症状の緩和と副作用の発生との間の最も望ましいバランスをもたらしたか、また、このバランスが起こるために望ましい変化を達成するために必要な最小注入速度はどの程度であったかを、患者の臨床医に報告することができる。
【0105】
特定のライフスタイルイベントの変化の判定は、自動薬理学的送達調整アルゴリズムを偏らせる。これにより、例えば、IDDSがユーザの睡眠からの覚醒を検出した場合に計画外の薬剤の投与速度を上昇させたり、IDDSがユーザの入眠を検出した場合に薬剤の基礎投与速度を低下させたりするなどの適切な救済措置が可能になる。また、ライフスタイルの検出は、例えば、薬の治療作用による身体症状の軽減と、自然な睡眠麻痺に特有の異常な動きの軽減を伴うユーザの睡眠とを人工知能が混同しないようにするためにも重要な役割を果たす。一般的に人は習慣の生き物であり、毎日ほぼ同じ時間に就寝するが、スケジュールを変更し、投与量の変化を動的に要求する外部要因や状況は数多く存在する。IDDSは、リアルタイムの感知とライフスタイルイベントの判定に反応することで、IDDSがインテリジェント且つ動的に即座の投与速度変化をベースとして、従来の/非インテリジェントな持続的注入ポンプの投与速度スケジュールの時間帯の制限を克服する。選択された定期的な記録時間に到達し、データが偏るような短期的なライフスタイルイベント(例えば、運動)が発生した場合、システムは、自動的に「後で再試行」モードに入り、例えば、所定の時間(例えば15分、またはコントローラの人工知能によって適切であると判定される時間枠、または事前に設定された時間選択量から選択される任意の時間枠)、非定型的な記録または分析を遅延させ、防止する。
【0106】
本発明によるIDDSは、長期の履歴センサ記録データを生成し、そこから投与量の「因果関係」記録データがIDDSのポンプコントローラ14自体(または他のメモリ)内に記憶される。IDDSによって、過去の結果を臨床的に分析するため、および分析後のIDDSの投与量変化を医師/臨床医が遠隔操作で行うことができるように、1人または複数の医療専門家がいつでもデータに遠隔操作でアクセスできるようになる。この特徴は、医療用ケアから離れた地域にいる患者にとって特に重要であり、また、多くのパーキンソン病患者が臨床の場に出向くことができない状況を克服するものでもある。臨床評価を受けたとしても、パーキンソン病患者では通常認知機能の低下が進行しており、その結果、患者は自分自身の真の病状を観察したり、臨床医による医学的な質問に適切に応答したりすることが次第にできなくなっていく。IDDSを用いることで、記憶されたデータの中から経験的に関連データのほとんどまたはすべてに完全にアクセスできるようになり、この問題に対処することができる。
【0107】
IDDSは、患者の動きを継続的に監視することで、臨床的に関連性のある動きの逸脱に関する変化を絶対的な基準で認識および分析することができる。これにより、初めてパーキンソン病の進行を任意の時間枠で真に客観的に判定することができる。また、IDDSは、運動や特定の治療などが患者に及ぼす全身的および生理学的影響を絶対的な経験に基づいて監視することができ、どのような治療努力が効果的に働いているかを真に判断することができる。
【0108】
また、IDDSは、臨床医が、実際の因果関係を正確且つ効率的に観察し、各患者に最適な投薬量を判定するために、予防的な投薬範囲変化を行うための新たな機会を独自に提供する。例えば、IDDSは、経験的に最適な投与レベルを確認するために、薬理学的な投与量の自動ブラケット法を行うように構成されてもよい。臨床医が選択可能な所与の期間において、IDDSは、全体的な投与量を、現在のベースラインの上下に選択可能な割合で偏らせる。例えば、IDDSは、平均投与量を選択可能な段階だけ低く偏らせ、その結果、変化された/偏らせた投与期間中に現れた異常な運動症状を分析し、そのデータ結果を以前のベースラインと比較する。症状が概ね同じであれば、システムは、再び段階的な投与量の減少を繰り返し、提示された症状の増加が認められるまでこれを継続し、その後、直近の以前の投与レベルに戻る。この自動ブラケット法は、投与量を増やすことで症状が軽減するかどうかを判定するために、投与方向を逆にすることもできる。前述の例は、1日の投与量全体に関するものであったが、IDDSは、1日の特定の時間帯および/または曜日の自動ブラケット法および分析を行うこともできる。IDDSが記録したメタデータには、注入された薬剤のタイプ/ブランドまたはアナログ情報(例えば、ユーザまたは臨床医が入力したもの)が含まれるので、個々の患者(または患者グループ)について相対的な有効性の比較を行うことは比較的簡単である。これにより、例えば、同じ時間枠内で記録された異常な運動の総数および各薬剤の相対的な投与量によって測定されるように、利用可能な薬剤のうち、どれが最良/最も望ましい結果をもたらすかを経験的に決定することができる。同様に、IDDSは、新しいパーキンソン病治療薬の実証的な実地試験結果を得るための貴重なプラットフォームでもある。
【0109】
有利には、実際の注入ポンプと動作センサはバッテリで動作するように設計されているので、商用電源の停電や移動中であっても、薬剤の注入や振戦の監視を継続することができる。
【0110】
薬剤のリザーバおよび注入セットが交換され、1つまたは複数のシステム構成要素が再充電のためにオフラインにされるなどの時間帯において、注入ポンプおよび/またはコントローラ14は、この活動に注目し、その時間帯に記録されたデータから薬剤送達ログ情報を除外するか、またはメタデータを介してその時間帯からのデータに注釈を付け、その後の記録されたデータの分析を誤って歪めないようにする。
【0111】
身体装着型センサが装着されていない、または装置からのデータが利用できないとき(例えば、センサが電池交換中または再充電中であるなど)、コントローラ14(または注入ポンプコントローラ)は、その動的送達速度の判定方法を中止し、代わりに、最後に知られていた動的注入速度で進行/継続する。センサデータの長期喪失期間中、IDDSは、最近のポンプ活動を通じて生成された、自己生成された過去の時間的コンテキストに基づく注入速度に従って動作してもよい。新しいポンプの場合など、ポンプに十分な作動がない場合、システムは、循環する薬剤の完全な減少が生じないように、典型的には1日のタイムスケジュールに基づいて厳密に変化される、様々な従来の時間帯別非動的投与パターンに従って動作してもよい。IDDSは、通常、システムに組み込まれた一体型のリアルタイムクロックを有するプロセッサまたは機能的に同等のものを含む。
【0112】
一部の実施形態において、IDDSの構成要素の各々は、所与の領域内の複数のセンサが適切なシリアル化された注入ポンプに一意にリンクされることを保証するためにシリアル化される。これにより、身体装着型センサからのデータが誤って別のユーザの近くの注入ポンプに提供されないことが保証される。
【0113】
一部の実施形態において、IDDSの注入ポンプは、活性薬理学的薬剤と、IDDSが一次薬理学的薬剤の注入の前に自動的且つ適切に注入する補助前駆体薬剤(作動薬)との両方の放出を可能にする。
【0114】
一部の実施形態において、IDDSは、薬理学的薬剤の注入タイミングおよび投与レベルに基づいて、任意の所与の時間におけるレボドパ(または他の薬理学的薬剤)の循環レベルを継続的に計算し、その循環レベルをメタデータとして添付する。また、IDDSは、任意の所与の時間枠における薬理学的薬剤のピークおよび最小循環レベルを追跡および記録し、同じ時間枠における振戦、凍りつき発症、ジストニア、歩行異常、および/またはジスキネジアのような感知された異常な運動に対してこれらのレベルを遡及的に分析して、臨床評価をさらに進めることができる。これにより、患者が「運動日記」をつける必要がなくなる。この「運動日記」は、各エピソード(病相)中または任意の所与の時間における医薬品の循環レベルなどの重要な詳細を提供できないという点で、IDDSと比較すると価値が限定的である。
【0115】
一部の実施形態において、IDDSの全体的な目標は、瞬時振戦または他の体の動作異常を最小限に抑えるか抑制する最適化された投薬レベルを提供することである。パーキンソン病制御のコンテキストにおいて、最適化された投薬レベルは、異常な運動制御と一致する最小限のレベルの毎日の薬剤注入を提供することで患者への過投薬を回避させる。動的な投与制御を行わなければ、最適ではない投薬レベル、および過剰な薬剤投与が行われてしまう。その結果、薬理学的レベルが不十分なために異常な運動制御ができなくなる「オフ」期間が生じる。IDDSが提供するような薬理学的レベルの動的制御がなければ、必然的に、薬理学的レベルが必要以上に高くなることが頻繁に生じ、この過剰投与がジスキネジアの発症などのさらなる合併症を引き起こす。
【0116】
身体装着型センサは、センサの向きが特定の身体の向きを示すことを確実にするために、体に接着剤で取り付けられてもよい。
【0117】
また、IDDSは、睡眠などのライフスタイルイベントの検出をさらに補助するために、周囲光センサを含んでもよい。
【0118】
毛布やシーツなどに一体化された無線充電グリッドを使用することで、コントローラおよび/または身体センサの無線充電が可能になる。
【0119】
IDDSのコントローラは、位置および/または加速度データ結果の判定にデジタル信号処理(DSP)を採用してもよい。
【0120】
IDDSは、注入ポンプからコントローラへの投与量送達フィードバックを提供する。
【0121】
図7を参照すると、フロー
図90は、本発明の実施形態による、
図1および
図2に示すIDDSの例示的な動作方法を示す。ブロック92では、コントローラ14は、1つまたは複数の6軸加速度センサ16および25から受信した動作データ、および1つまたは複数のピッチセンサ18および26から受信した方向データについて監視を行う。ブロック94では、コントローラ14は、動作データおよび/または方向データ変化したかどうかを判定する。動作データおよび/または方向データに変化がないとコントローラ14が判定した場合、コントローラ14は、ブロック92に戻って監視を行う。動作データおよび/または方向データに変化があったとコントローラ14が判定した場合、コントローラ14は、ブロック96へ進む。ここで、コントローラ14は、動作データおよび方向データの変化を分析する。コントローラ14は、ブロック98へ進む。ここで、コントローラ14は、時間加重に基づく可能性のある動作データおよび方向データと、異常な運動(または振戦インシデント)に関連するユーザの以前に記録された動作データおよび方向データとを比較するか、またはそのデータと他のベースラインデータとを比較して、異常な運動の強度および/または頻度を判定する。異常な運動の強度および/または頻度が所定の閾値内にある、および/またはユーザの以前のデータ(またはベースラインデータ)から所定の量(またはパーセンテージ)だけ変化していないとコントローラ14が判定した場合、コントローラ14は、現在の薬理学的薬剤の現在の投与量が維持されるべきであると判定して、ブロック100へ進む。ブロック100では、コントローラ14は、ポンプ指示信号を生成して、例えば薬理学的薬剤の現在の送達速度を維持することで、現在の投与量を継続または維持させる。
【0122】
強度および/または頻度が所定の閾値を上回っているとコントローラ14が判定した場合、または強度および/または頻度が以前のデータ(または他のベースラインデータ)から所定の量(またはパーセンテージ)を超えて増加した場合、コントローラ14は、投与量を増加させる必要があると判定して、ブロック102へ進む。ブロック102では、コントローラ14は、ポンプ指示信号を生成して、例えば薬理学的薬剤の現在の送達速度を増加させることで、投与量を増加させる。
【0123】
強度および/または頻度が所定の閾値を下回っているとコントローラ14が判定した場合、または強度および/または頻度が以前のデータ(または他のベースラインデータ)から所定の量(またはパーセンテージ)を超えて減少した場合、コントローラ14は、投与量を減少させてもよい、または投与量ブラケット法を実施する適切な時期であると判定し、ブロック104へ進む。ブロック104では、コントローラ14は、ポンプ指示信号を生成して、例えば薬理学的薬剤の現在の送達速度を減少させることで、投与量を減少させる、および/またはブラケット法を実施させる。
【0124】
ブロック100、102、および104に続いて、コントローラ14は、ブロック92へ進む。ここで、コントローラ14は、動作データおよび方向データの監視を行い、上述したプロセスを繰り返すか、上述した投与量ブラケット法を実施する。
【0125】
本発明によるIDDSの利点は、長期間の記録の記憶、および患者に送達された過去の薬剤投与との関連において観察された異常な身体運動の間の関係に関するデータの分析を提供する能力が挙げられる。これは、患者の即座の投与量要件と注入ポンプの過去の送達された薬剤の速度とを正確に観察し、同時に、疾患のあらゆる傾向を追跡および観察するためのものである。
【0126】
特定の実施形態において、IPAS対応インスリンポンプの動作センサは、「ライフスタイル」イベントの存在に応答してインスリンポンプの送達速度を増強させる、追跡可能な値(例えば血糖値)の直接的な連続測定の補助として機能する一方で、一部の実施形態において、IDDSの動作センサは、薬剤の送達速度を制御する主な手段として機能する。
【0127】
以上、本発明の実施形態を例示および詳述する目的で説明した。上記の説明は、本発明を網羅するものでも開示された形態に限定するものでもない。例示的な応用は、若干のプログラミングおよび/またはハードウェアの変更を伴うパーキンソン病の治療法に焦点をあてているが、IDDSの監視およびクローズドループ型能力は、他の神経学的状態およびその治療にも使用されてもよい。したがって、上述した開示に基づいて、明らかな変形例およびバリエーションが可能である。本明細書に記載の実施形態は、本発明の原理および用途を最もよく説明するために選択され、当業者は、特定の用途に適した様々な実施形態および様々な変形例において本発明を利用することができる。
【国際調査報告】