(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-16
(54)【発明の名称】免疫応答を改善する、単球由来細胞におけるエキソンスキッピングの補正
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20240409BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240409BHJP
C12N 5/078 20100101ALI20240409BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240409BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240409BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240409BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240409BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240409BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240409BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240409BHJP
A61K 35/15 20150101ALI20240409BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240409BHJP
A61K 31/711 20060101ALI20240409BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20240409BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20240409BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240409BHJP
A61K 31/52 20060101ALI20240409BHJP
A61K 31/353 20060101ALI20240409BHJP
A61K 31/352 20060101ALI20240409BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20240409BHJP
A61K 31/58 20060101ALI20240409BHJP
A61K 31/4245 20060101ALI20240409BHJP
A61K 31/7036 20060101ALI20240409BHJP
A61K 31/436 20060101ALI20240409BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20240409BHJP
C07K 16/18 20060101ALN20240409BHJP
【FI】
C12N15/09 110
C12N5/10
C12N5/078
A61P31/00
A61P35/00
A61P9/00
A61P37/02
A61P37/06
A61P13/12
A61P1/16
A61K35/15
A61K45/00
A61K31/711
A61K31/7105
A61K31/713
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K31/52
A61K31/353
A61K31/352
A61K31/7048
A61K31/58
A61K31/4245
A61K31/7036
A61K31/436
C12N15/113 Z ZNA
C07K16/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568572
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(85)【翻訳文提出日】2023-12-27
(86)【国際出願番号】 US2022028094
(87)【国際公開番号】W WO2022236070
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523419657
【氏名又は名称】シェリング ディー. クリストファー
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シェリング ディー. クリストファー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
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4H045AA10
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4H045CA40
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4H045EA22
(57)【要約】
本開示は、概して、単球、単球由来細胞、例えば、マクロファージ及び樹状細胞、又はそれらの前駆細胞において6-ピルボイルテトラヒドロプテリンシンターゼ(PTS)遺伝子のエキソン3スキッピングを阻害する組成物及び方法に関する。阻害は、ゲノム配列をゲノム編集して或る特定のスプライシング因子認識部位を除去することにより、又は細胞特異的エキソンスキッピングの一因であるスプライシング因子の発現若しくは活性を阻害することにより達成することができる。PTS遺伝子におけるエキソンスキッピングが減少した単球及び単球由来細胞は、より強力な免疫応答を生成することができ、したがって、感染症及び癌等の疾患の予防及び治療に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞において、6-ピルボイルテトラヒドロプテリンシンターゼ(PTS)mRNAのエキソン3のスキッピングを阻害若しくは補正する、又は前記エキソン3の認識を促進する方法であって、プレmRNAの前記PTSのゲノム配列を編集すること、又は前記細胞を、エキソンスキッピングを阻害する若しくはエキソン認識若しくはインクルージョンを促進する作用剤と接触させること、を含む、方法。
【請求項2】
免疫系を調節する必要がある哺乳類対象において免疫系を調節する方法であって、前記哺乳類対象において単球、マクロファージ、樹状細胞、又はそれらの前駆細胞の6-ピルボイルテトラヒドロプテリンシンターゼ(PTS)ゲノム配列又はプレmRNAを編集することを含み、前記編集は、スプライシング中の前記PTS mRNAのエキソン3のスキッピングを阻害することである、方法。
【請求項3】
前記編集は、スプライシング因子の認識部位を改変することである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記認識部位は、イントロン2又はイントロン3内に位置する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記スプライシング因子は、SRSF1、SRSF2、SRSF3、SRSF4、SRSF5、SRSF6、SRSF7、SRSF8、SRSF9、SRSF10、SRSF11、及びSRSF12からなる群より選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記認識部位は、表3から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記スプライシング因子は、SRSF3である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記認識部位は、CTCTTCCであり、配列番号1のヌクレオチド2895~2901に相当する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記スプライシング因子は、SRSF1である、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記認識部位は、TGGTGGC(配列番号1の2833~2839)、TGATGCT(配列番号1の3541~3547)、TGGTGGA(配列番号1の3927~3933)、TGGTGCT(配列番号1の4105~4111)、及びTGAAGGC(配列番号1の4143~4149)からなる群より選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記編集は、前記認識部位の前記ヌクレオチドのうち少なくとも1つ、2つ、3つ、又は4つの付加、欠失、及び/又は置換を含む、請求項3~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記編集された認識部位は、個々のスプライシング因子により結合されることができない、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記編集は、前記細胞に、前記認識部位を標的とする編集系を導入することを含む、請求項3~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記編集系は、CRISPR/Cas(クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート/CRISPR関連タンパク質)系、CRISPR/Cas系とシトシンデアミナーゼとを含む遺伝子エディター、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、又は転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)に基づく遺伝子編集系から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記哺乳類対象は、感染症若しくは病態、若しくは癌に罹患しているか、又は感染症若しくは病態、癌、循環器疾患、脳血管疾患、自己免疫疾患、腎疾患、移植関連病態、若しくは肝障害を発症するリスクがある、請求項2~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
免疫系を調節する必要がある哺乳類対象において免疫系を調節する方法であって、前記哺乳類対象に、哺乳類単球、マクロファージ、樹状細胞、又はそれらの前駆細胞を投与することを含み、細胞において6-ピルボイルテトラヒドロプテリンシンターゼ(PTS)ゲノム配列は、スプライシング中の前記PTS mRNAのエキソン3のスキッピングを阻害するように、又はエキソン3の認識を促進するように編集されている、方法。
【請求項17】
前記単球、マクロファージ、樹状細胞、又はそれらの前駆細胞は、前記哺乳類対象から回収されたものであって、in vitro又はex vivoで編集されている、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記単球又はマクロファージは、投与前に脱分化している、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記編集は、スプライシング因子の認識部位を改変する、請求項16~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記スプライシング因子は、SRSF1、SRSF2、SRSF3、SRSF4、SRSF5、SRSF6、SRSF7、SRSF8、SRSF9、SRSF10、SRSF11、及びSRSF12からなる群より選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記認識部位は、CTCTTCCであり、配列番号1のヌクレオチド2895~2901に相当する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
免疫系を調節する必要がある哺乳類対象において免疫系を調節する方法であって、前記対象に、前記対象の単球、マクロファージ、樹状細胞、又はそれらの前駆細胞の6-ピルボイルテトラヒドロプテリンシンターゼ(PTS)プレmRNAにおけるエキソン3スキッピングを阻害する又はエキソン3認識を促進する作用剤を投与することを含む、方法。
【請求項23】
前記作用剤は、SRSF1、SRSF2、SRSF3、SRSF4、SRSF5、SRSF6、SRSF7、SRSF8、SRSF9、SRSF10、SRSF11、及びSRSF12からなる群より選択されるスプライシング因子の生物活性を阻害する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記スプライシング因子は、SRSF3である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記作用剤は、前記スプライシング因子の発現を阻害する、アンチセンスオリゴヌクレオチド若しくはRNA、siRNA、又はshRNAである、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
前記作用剤は、前記スプライシング因子に対して特異性を有する抗体である、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項27】
前記作用剤は、キネチン、エピガロカテキンガレート(EGCG)、ゲニステイン、ダイゼイン、強心配糖体、及び異常スプライシング整流剤(RECTAS)からなる群より選択される小分子作用剤である、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記強心配糖体は、ジゴキシン、ジギトニン、ジギトキシン、ジゴキシゲニン、ジギトキシゲニン、アセチルジギトキシン、ブファリン、ウアバゲニン、及びウアバインからなる群より選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記作用剤は、前記PTS プレmRNAにおいてエキソン3を認識するU1snRNAである、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
免疫系を調節する必要がある哺乳類対象において免疫系を調節する方法であって、単球、マクロファージ、樹状細胞、又はそれらの前駆細胞を産生する又は循環させる前記対象の組織に、ナンセンス抑制剤を投与することを含む、方法。
【請求項31】
前記ナンセンス抑制剤は、終止コドンリードスルー薬、抑制因子tRNA、終止コドンプソイドウリジン化剤、及びナンセンス介在型mRNA崩壊(NMD)阻害剤からなる群より選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ナンセンス抑制剤は、アタルレン、アミノグリコシド、ゲンタマイシン、アミカシン、ネガマイシン、スピラマイシン、ジョサマイシン、タイロシン、及びアンレキサノクスからなる群より選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記組織は、骨髄である、請求項30~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記投与は、前記単球、マクロファージ、樹状細胞、又はそれらの前駆細胞を標的とする、請求項22~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記対象は、感染症若しくは病態、若しくは癌に罹患しているか、又は感染症若しくは病態、若しくは癌を発症するリスクがある、請求項22~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記対象は、健康な個体と比べた場合に免疫活性が上昇している、請求項2~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記免疫活性の上昇は、血清、尿、脳脊髄液、滑液、唾液、腹水、胆汁、膵液、及び胃液からなる群より選択される試料由来のバイオマーカーで測定される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記バイオマーカーは、ネオプテリン、一酸化窒素、C反応性タンパク質、インターフェロン-ガンマ、インターフェロン-アルファ、インターフェロン-ベータ、及びプロカルシトニンからなる群より選択される、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項39】
前記バイオマーカーは、ネオプテリンを含み、前記対象は、血清ネオプテリン濃度が10nmol/L、20nmol/L、30nmol/L、50nmol/L、100nmol/L、又は200nmol/L超である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記バイオマーカーは、一酸化窒素を含み、前記対象は、血清一酸化窒素濃度が、0.1μmol/L、0.2μmol/L、0.5μmol/L、1μmol/L、2μmol/L、3μmol/L、4μmol/L、5μmol/L、10μmol/L、15μmol/L、20μmol/L、30μmol/L、40μmol/L、50μmol/L、60μmol/L、70μmol/L、80μmol/L、90μmol/L、又は100μmol/L未満である、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
バイオマーカー、好ましくはネオプテリン、一酸化窒素、C反応性タンパク質、インターフェロン-ガンマ、インターフェロン-アルファ、インターフェロン-ベータ、及びプロカルシトニンからなる群より選択されるバイオマーカーで、前記調節をモニタリングすることを更に含む、請求項2~40のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2021年5月7日付で出願された米国仮出願第63/185,980号及び2022年4月21日付で出願された米国仮出願第63/333,339号に対する、米国特許法第119条(e)項に基づく利益を主張するものであり、それぞれの内容の全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
【0002】
配列表
本出願は配列表を含み、該配列表は、EFS-Webを介してASCIIフォーマットで提出され、引用することすることによりその全体が本明細書の一部をなす。2022年5月3日に作成された上記ASCIIコピーは、334203.txtという名称であり、10310バイトのサイズである。
【背景技術】
【0003】
免疫系は、疾患から宿主を守る宿主防御系である。免疫系は、ウイルス、細菌、及び寄生虫等、病原体として知られる多種多様な媒介物を検出することができ、それらを生物自身の健康組織と区別することができる。病原体は、進化及び順応することにより、免疫系による検出及び中和を回避することがある。一方で、ヒトをはじめとする有顎脊椎動物は、洗練された機構を発達させることで、そのような変化に順応してきた。
【0004】
免疫系の障害は、自己免疫疾患、炎症性疾患、及び癌をもたらす可能性がある。免疫不全は、免疫系の活性が正常より低くなったときに起こり、その結果、感染症が再発及び生命に関わるようになる。ヒトでは、免疫不全は、重症複合型免疫不全等の遺伝病、HIV/AIDS等の後天的病態、又は免疫抑制剤投薬治療の使用いずれかの結果であり得る。したがって、免疫系の賦活は、免疫不全の寛解及び感染症の治療に有用となる可能性がある。
【0005】
癌免疫療法は、免疫系を人工的に刺激し、免疫系本来の癌と戦う能力を改善して、癌を治療するものである。癌細胞は、腫瘍抗原を有していることが多く、腫瘍抗原は、こうした抗原を認識することができる抗体により検出可能である。腫瘍抗原は、タンパク質であるか炭水化物等の他の巨大分子であることが多い。癌細胞は、いったん検出されると、抗体依存性細胞傷害(ADCC)等の機構により殺傷することができる。
【発明の概要】
【0006】
様々な実施の形態において、本開示は、ヒト単球、単球由来細胞(例えば、マクロファージ及び樹状細胞)、又はそれらの前駆細胞において、6-ピルボイルテトラヒドロプテリンシンターゼ(PTS)遺伝子のエキソン3スキッピングを阻害する及び/又は補正する、組成物及び方法を記載する。阻害は、PTSのゲノム配列を編集して或る特定のスプライシング因子認識部位を改変若しくは除去することで、又は細胞型特異的エキソンスキッピングの一因であるスプライシング因子の発現若しくは活性を阻害することで達成可能である。ヒト単球及び単球由来細胞は、一般に、PTS遺伝子の正常タンパク質産物(PTPSタンパク質)として検出可能なものを何も有さない。というのも、これらの細胞における転写物の大半は、エキソン3をスキップする細胞型特異的代替スプライシングのため、不活性タンパク質を産生するからである。したがって、これらの細胞においてPTPSタンパク質活性を回復させることは、ヒト対象の免疫系を強化し、疾患、例えば、感染症、癌、循環器疾患、脳血管疾患、自己免疫疾患、及び肝障害の予防及び治療に役立つ可能性がある。
【0007】
本開示の1つの実施の形態は、免疫系を改変する必要があるヒト対象において免疫系を改変する方法であって、ヒト対象において単球、マクロファージ、樹状細胞、又はそれらの前駆細胞の6-ピルボイルテトラヒドロプテリンシンターゼ(PTS)ゲノム配列又はプレmRNAを編集することを含み、編集は、スプライシング中のPTS mRNAのエキソン3のスキッピングを阻害することである、方法を提供する。
【0008】
いくつかの実施の形態において、編集は、スプライシング因子の認識部位を改変することである。いくつかの実施の形態において、認識部位は、イントロン2又はイントロン3内に位置する。いくつかの実施の形態において、認識部位は、イントロン2内に位置する。いくつかの実施の形態において、スプライシング因子は、SRSF1、SRSF2、SRSF3、SRSF4、SRSF5、SRSF6、SRSF7、SRSF8、SRSF9、SRSF10、SRSF11、及びSRSF12からなる群より選択される。いくつかの実施の形態において、認識部位は、表3から選択される。
【0009】
いくつかの実施の形態において、スプライシング因子は、SRSF3である。いくつかの実施の形態において、認識部位は、CTCTTCCであり、配列番号1のヌクレオチド2895~2901に相当する。
【0010】
いくつかの実施の形態において、スプライシング因子は、SRSF1である。いくつかの実施の形態において、認識部位は、TGGTGGC(配列番号1の2833~2839)、TGATGCT(配列番号1の3541~3547)、TGGTGGA(配列番号1の3927~3933)、TGGTGCT(配列番号1の4105~4111)、及びTGAAGGC(配列番号1の4143~4149)からなる群より選択される。
【0011】
いくつかの実施の形態において、編集は、認識部位のヌクレオチドのうち少なくとも1つ、2つ、3つ、又は4つの付加、欠失、及び/又は置換を含む。いくつかの実施の形態において、編集された認識部位は、個々のスプライシング因子により結合されることができない。
【0012】
いくつかの実施の形態において、編集は、細胞に、認識部位を標的とする編集系を導入することを含む。いくつかの実施の形態において、編集系は、CRISPR/Cas(クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート/CRISPR関連タンパク質)系、CRISPR/Cas系とシトシンデアミナーゼとを含む遺伝子エディター、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、又は転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)に基づく遺伝子編集系から選択される。
【0013】
いくつかの実施の形態において、ヒト対象は、感染症若しくは病態、若しくは癌に罹患しているか、又は感染症若しくは病態、癌、循環器疾患、脳血管疾患、自己免疫疾患、若しくは肝障害を発症するリスクがある。
【0014】
また、1つの実施の形態において、免疫系を調節又は改変する必要があるヒト対象において免疫系を調節又は改変する方法であって、ヒト対象に、ヒト単球、マクロファージ、樹状細胞、又はそれらの前駆細胞を投与することを含み、細胞において6-ピルボイルテトラヒドロプテリンシンターゼ(PTS)ゲノム配列は、スプライシング中のPTS mRNAのエキソン3のスキッピングを阻害するように編集されている、方法が提供される。
【0015】
いくつかの実施の形態において、単球、マクロファージ、樹状細胞、又はそれらの前駆細胞は、ヒト対象から回収されたものであって、in vitro又はex vivoで編集されている。いくつかの実施の形態において、単球又はマクロファージは、投与前に脱分化している。
【0016】
いくつかの実施の形態において、編集は、スプライシング因子の認識部位を改変する。いくつかの実施の形態において、スプライシング因子は、SRSF1、SRSF2、SRSF3、SRSF4、SRSF5、SRSF6、SRSF7、SRSF8、SRSF9、SRSF10、SRSF11、及びSRSF12からなる群より選択される。いくつかの実施の形態において、認識部位は、CTCTTCCであり、配列番号1のヌクレオチド2895~2901に相当する。
【0017】
また、1つの実施の形態において、免疫系を改変する必要があるヒト対象において免疫系を改変する方法であって、対象に、対象の単球、マクロファージ、樹状細胞、又はそれらの前駆細胞の6-ピルボイルテトラヒドロプテリンシンターゼ(PTS)プレmRNAにおけるエキソン3スキッピングを阻害する又はエキソン3認識/インクルージョンを促進する作用剤を投与することを含む、方法も提供される。
【0018】
いくつかの実施の形態において、作用剤は、SRSF1、SRSF2、SRSF3、SRSF4、SRSF5、SRSF6、SRSF7、SRSF8、SRSF9、SRSF10、SRSF11、及びSRSF12からなる群より選択されるスプライシング因子の生物活性を阻害する。いくつかの実施の形態において、スプライシング因子は、SRSF3である。いくつかの実施の形態において、作用剤は、スプライシング因子の発現を阻害する、アンチセンスオリゴヌクレオチド若しくはRNA、siRNA、又はshRNAである。いくつかの実施の形態において、作用剤は、スプライシング因子に対して特異性を有する抗体である。
【0019】
いくつかの実施の形態において、作用剤は、キネチン、エピガロカテキンガレート(EGCG)、ゲニステイン、ダイゼイン、強心配糖体、及び異常スプライシング整流剤(RECTAS)からなる群より選択される小分子作用剤である。いくつかの実施の形態において、強心配糖体は、ジゴキシン、ジギトニン、ジギトキシン、ジゴキシゲニン、ジギトキシゲニン、アセチルジギトキシン、ブファリン、ウアバゲニン、及びウアバインからなる群より選択される。
【0020】
いくつかの実施の形態において、エキソン3の認識又はインクルージョンを促進する作用剤は、PTSプレmRNAのエキソン3を認識するU1snRNAである。
【0021】
また、1つの実施の形態において、免疫系を改変する必要がある哺乳類対象において免疫系を改変する方法であって、単球、マクロファージ、樹状細胞、又はそれらの前駆細胞を産生する又は循環させる対象の組織に、ナンセンス抑制剤を投与することを含む、方法が提供される。
【0022】
いくつかの実施の形態において、ナンセンス抑制剤は、終止コドンリードスルー薬、抑制因子tRNA、終止コドンプソイドウリジン化剤、及びナンセンス介在型mRNA崩壊(NMD)阻害剤からなる群より選択される。いくつかの実施の形態において、ナンセンス抑制剤は、アタルレン、アミノグリコシド、ゲンタマイシン、アミカシン、ネガマイシン、スピラマイシン、ジョサマイシン、タイロシン、及びアンレキサノクスからなる群より選択される。
【0023】
いくつかの実施の形態において、組織は、骨髄である。
【0024】
いくつかの実施の形態において、投与は、単球、マクロファージ、樹状細胞、又はそれらの前駆細胞を標的とする。いくつかの実施の形態において、対象は、感染症若しくは病態、若しくは癌に罹患しているか、又は感染症若しくは病態、若しくは癌を発症するリスクがある。
【0025】
いくつかの実施の形態において、対象は、健康な個体と比べた場合に免疫活性が上昇している。いくつかの実施の形態において、免疫活性の上昇は、血清、尿、脳脊髄液、滑液、唾液、腹水、胆汁、膵液、及び胃液からなる群より選択される試料由来のバイオマーカーで測定される。いくつかの実施の形態において、バイオマーカーは、ネオプテリン、C反応性タンパク質、インターフェロン-ガンマ、インターフェロン-アルファ、インターフェロン-ベータ、及びプロカルシトニンからなる群より選択される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下の説明は、本技術の例示的な実施形態を記載する。しかし、当然ながら、そのような説明は、本開示の範囲を限定することを意図するのではなく、例示的な実施形態の説明として提供するものである。
【0027】
PTPS欠損単球の活性化
PTPS(6-ピルボイルテトラヒドロプテリンシンターゼ、EC4.2.3.12)は、GTPから6-ピルボイルテトラヒドロプテリンへの生合成を触媒する酵素であり、この酵素は、芳香族アミノ酸モノオキシゲナーゼ及び一酸化窒素(NO)シンターゼの合成における補因子として使用される。PTPSは、三量体が二量化して形成された同一のサブユニットで構成された六量体である。12本鎖の反平行βバレルが、二量化した三量体により形成され、PTPS内に細孔を形成する。PTPSの酵素活性部位は、六量体の各サブユニットにおいて3つの単量体が一緒になる場所に位置する。PTPSは、複数の酵素系の補因子であるテトラヒドロビオプテリン(BH4)の合成経路における中間体、すなわち前駆体であり、そのような酵素系として、芳香族アミノ酸モノオキシゲナーゼ(例えば、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、チロシンヒドロキシラーゼ、トリプトファンヒドロキシラーゼ)、一酸化窒素シンターゼ(例えば、誘導型一酸化窒素シンターゼ、内皮一酸化窒素シンターゼ、ニューロン一酸化窒素シンターゼ)、及びエーテル脂質オキシダーゼが挙げられる。
【0028】
PTPSタンパク質は、ヒトではPTS遺伝子がコードする。PTS遺伝子の変異は、遺伝性筋緊張異常疾患の原因であると示唆されてきた。そのような変異は4種見つかっており、そのうち2種は、ホモ接合型変異のR25Q及びI114Vであり、2種は、ヘテロ接合型変異のR16C及びK120stopである。
【0029】
PTPS活性を失うことは、テトラヒドロビオプテリン欠乏症の共通原因である。テトラヒドロビオプテリン欠乏症は、高フェニルアラニン血症並びにドーパミン及びセロトニン等の神経伝達物質の作製不能を招く。PTPS欠乏症は、重篤な精神発達遅滞、運動能発達の遅れ、及び癲癇発作を招くことも示されてきた。低レベルでのテトラヒドロビオプテリン産生は、テトラヒドロビオプテリンのほぼ完全な欠乏とは対照的に、症状の周期的変動を引き起こす場合がある。
【0030】
PTPSの機能不全と免疫不全又は感染症との間の関係は、確立されてこなかった。しかしながら、様々な細胞におけるPTPSの生化学的役割及びPTPSが動物からヒトへとどのように進化したかを分析することで、本発明者は、ヒト単球及び単球由来細胞(例えば、マクロファージ及び樹状細胞)においてPTPSを活性化することで免疫応答を賦活することが可能であり、このことが、感染症及び癌の予防及び治療に役立つ可能性があることを特定した。
【0031】
肝臓及び中枢神経系等の他の組織とは異なり、ヒト単球及び単球由来細胞は、検出可能なPTPS活性をほとんど持たない。単球及び単球由来細胞におけるPTS遺伝子の転写レベルは正常である。配列分析及び機構研究に基づき、本発明者は、ヒト単球及び単球由来細胞におけるPTPS活性の低下は、転写後の機構によるものではなく、エキソン3スキッピングによるものであると想定している。エキソン3がスキップされると、未成熟終止コドンを持つ短縮型転写物がもたらされる。同様な差示的発現パターンは、チンパンジー等の高等霊長類でも観察される。そのようなエキソンスキッピングは、他の多くのヒト細胞型又はラット等の低級動物の単球及び単球由来細胞では起こらないか、又は少なくとも普遍的ではない。
【0032】
ヒト単球及び単球由来細胞におけるPTPS活性の低下は、進化上有利な可能性があるが、ヒトの免疫系の弱化の一因であることが想定される。したがって、少なくともより強い免疫系が望ましいヒト対象、例えば、感染症又は癌に罹患している又はそれらを発症するリスクのある対象において、単球又は単球由来細胞のPTPSを再活性化することは、有利である可能性がある。したがって、本開示の1つの実施形態に従って、ヒト単球及び単球由来細胞においてPTPSの活性を改変する又は上昇させる組成物及び方法が提供される。
【0033】
遺伝子編集
実施例1で実証されるとおり、PTS遺伝子のイントロン2及びイントロン3は、セリン/アルギニンリッチスプライシング因子1(SRSF1)及びセリン/アルギニンリッチスプライシング因子3(SRSF3)(それぞれ、以前はSFRS1及びSFRS3として知られる)等のスプライシング因子の潜在的結合部位を多数内包している。こうしたスプライシング因子結合部位は、ヒト単球及び単球由来細胞においてPTPS不活性化を招くエキソン3スキッピングに関与していることが想定される。したがって、これらの結合部位の1つ以上を改変することでそれぞれのスプライシング因子の結合が阻害されれば、エキソン3スキッピングが減少して、それにより活性PTPSタンパク質のより多い産生を招くことが可能である。
【0034】
したがって、いくつかの実施形態において、本開示は、免疫系の改変又は強化を必要としているヒト対象において免疫系を改変又は強化する方法を提供する。本方法は、ヒト対象の単球、マクロファージ、樹状細胞、又はそれらの前駆細胞において、6-ピルボイルテトラヒドロプテリンシンターゼ(PTS)ゲノム配列又はプレmRNAを編集することを含むことができる。いくつかの実施形態において、この編集は、スプライシング中のPTS mRNAにおけるエキソン3のスキッピングを阻害する。いくつかの実施形態において、この編集は、スプライシング因子の認識部位を改変する。いくつかの実施形態において、認識部位は、遺伝子のイントロン2又はイントロン3内に位置する。
【0035】
スプライシング因子は、エキソンが結合して一緒になることができるように、メッセンジャーRNA鎖からイントロンを除去するのに関与するタンパク質である。スプライシング因子は、スプライセオソームとして知られる複合体の一部である場合がある。スプライシング反応は、スプライセオソームにより行われ、スプライソソームは、5つの小核リボ核タンパク質複合体、すなわちsnRNPと、50~100もの多数に上る非snRNPタンパク質とからなる。スプライソソームの組立には、SRタンパク質も必要であり、SRタンパク質とは、1つ又は2つのRNA認識モチーフとそれに続くアルギニン/セリンリッチドメインを有する配列特異的スプライシング因子のファミリーである。スプライシング因子の限定ではなく例として、セリン/アルギニンリッチスプライシング因子1(SRSF1)、SRSF2、SRSF3、SRSF4、SRSF5、SRSF6、SRSF7、SRSF8、SRSF9、SRSF10、SRSF11、及びSRSF12が挙げられる。
【0036】
1つの実施形態において、PTS配列の認識部位のうち少なくとも1つが変異する。変異は、宿主細胞のゲノム配列内に生じさせることも可能であれば、エキストラコピーとして宿主細胞に導入することも可能である。いくつかの実施形態において、導入される配列は、変異ゲノム配列である。いくつかの実施形態において、導入される配列は、野生型cDNA配列又は生物学的等価物である。
【0037】
変異は、特に制限なく、ゲノムレベル又はプレmRNAレベルで生じさせることができる。いくつかの実施形態において、認識部位は、SRSF1、SRSF2、SRSF3、SRSF4、SRSF5、SRSF6、SRSF7、SRSF8、SRSF9、SRSF10、SRSF11、及び/又はSRSF12のいずれかにより認識される。
【0038】
いくつかの実施形態において、認識部位は、SRSF3により認識される。いくつかの実施形態において、認識部位は、配列CTCTTCC(配列番号1のヌクレオチド2895~2901)を有し、この配列は、エキソン3の5’側のイントロン2に位置する。変異体は、置換、欠失、付加、又はそれらの組み合わせを1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又は7つ含むことができる。いくつかの実施形態において、ヌクレオチドのうち1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又は7つが欠失される。いくつかの実施形態において、追加ヌクレオチドが1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つ挿入される。いくつかの実施形態において、ヌクレオチドのうち1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又は7つが置換され、好ましくは、コンセンサス配列(CUCKUCY)にならないヌクレオチドで置換される。
【0039】
いくつかの実施形態において、SRSF3認識部位は、TCAAC(配列番号1の2505~2509)、ACAAC(配列番号1の2569~2573)、TCTTC(配列番号1の2896~2900)、ACTAC(配列番号1の3102~3106)、TCTAC(配列番号1の3508~3512)、TCTAC(配列番号1の3508~3512)、TCTAC(配列番号1の3514~3518)、及びTCTAC(配列番号1の4026~4030)からなる群より選択される。変異体は、置換、欠失、付加、又はそれらの組み合わせを1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つ含むことができる。いくつかの実施形態において、ヌクレオチドのうち1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つが欠失される。いくつかの実施形態において、追加ヌクレオチドが1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つ挿入される。いくつかの実施形態において、ヌクレオチドのうち1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つが置換され、好ましくは、コンセンサス配列(WCWWC)にならないヌクレオチドで置換される。
【0040】
いくつかの実施形態において、スプライシング因子認識部位は、SRSF1により認識される。いくつかの実施形態において、スプライシング因子認識部位は、TGGTGGC(配列番号1の2833~2839)、TGATGCT(配列番号1の3541~3547)、TGGTGGA(配列番号1の3927~3933)、TGGTGCT(配列番号1の4105~4111)、又はTGAAGGC(配列番号1の4143~4149)から選択される配列を有する。変異体は、置換、欠失、付加、又はそれらの組み合わせを1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又は7つ含むことができる。いくつかの実施形態において、ヌクレオチドのうち1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又は7つが欠失される。いくつかの実施形態において、追加ヌクレオチドが1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つ挿入される。いくつかの実施形態において、ヌクレオチドのうち1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又は7つが置換され、好ましくは、コンセンサス配列(UGRWGVH)にならないヌクレオチドで置換される。
【0041】
いくつかの実施形態において、スプライシング因子認識部位は、表3から選択されるいずれか1つである。変異体は、置換、欠失、付加、又はそれらの組み合わせを1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又は7つ含むことができる。いくつかの実施形態において、ヌクレオチドのうち1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又は7つが欠失される。いくつかの実施形態において、追加ヌクレオチドが1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つ挿入される。いくつかの実施形態において、ヌクレオチドのうち1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又は7つが置換され、好ましくは、コンセンサス配列にならないヌクレオチドで置換される。
【0042】
変異は、ゲノム編集系を標的細胞に導入することにより、in situで生じさせることができる。あるいは、変異した配列を、ウイルスベクター等の適切なベクターを用いて標的細胞に導入することができる。各手順を行う方法は、当該技術分野で既知である。
【0043】
ゲノム編集は、生きている生物のゲノムにおいて、改変ヌクレアーゼを用いてDNAを挿入する、欠失する、又は置き換える、遺伝子操作の一種である。近年開発されたゲノム編集技術は、CRISPR/Cas(クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート/CRISPR関連タンパク質)系を用いる。ガイドRNA(gRNA)により指示されて、Casヌクレアーゼは、様々な細胞(細胞株及び生きている生物由来細胞の両方)中の標的ゲノム部位でDNA二本鎖切断(DSB)を生成することができる。次いで、こうしたDSBは、内在性DNA修復系により修復される。内在性DNA修復系は、所望のゲノム編集を行うのに利用することが可能である。
【0044】
一般に、2つの主なDNA修復経路である非相同末端結合(NHEJ)及び相同組換え修復(HDR)が、DSBにより活性化される可能性がある。NHEJは、DSB周辺のゲノムDNA領域にランダム挿入/欠失(インデル)を導入し、それによりオープンリーディングフレーム(ORF)シフト及び最終的に遺伝子不活性化を招くことができる。対照的に、HDRが誘発された場合、標的部位のゲノムDNA配列が、相同組換え機構を通じて外来性ドナーDNAテンプレートの配列に置き換えられる可能性があり、これにより遺伝子変異の補正をもたらすことができる。
【0045】
CRISPR/Cas系にAPOBEC(アポリポタンパク質B mRNA編集酵素、触媒ポリペプチド様)シトシンデアミナーゼファミリーを組み込んだベースエディター(BE)が後に開発され、これによりCRISPR/Cas9介在遺伝子補正の効率が大きく向上した。Cas9ニッカーゼ(nCas9)との融合を通じて、ラットAPOBEC1(rA1)のシトシン(C)脱アミノ化活性を、ゲノムの標的塩基に意図的に指向させ、これら塩基でのCからチミン(T)への置換を触媒させることができる。
【0046】
いくつかの実施形態において、Cas9ニッカーゼは、ガイド配列(複数の場合もある)、例えば、2つのガイド配列と組み合わせて使用され、ガイド配列は、DNA標的のセンス鎖及びアンチセンス鎖のそれぞれを標的とする。この組み合わせにより、両方の鎖がニックされ、NHEJの誘導に使用されることが可能になる。候補ガイド配列がCRISPR複合体の標的配列への配列特異的結合を指示する能力は、任意の適切なアッセイにより評価することができる。例えば、試験しようとするガイド配列も含めてCRISPR複合体を形成するのに十分なCRISPR系の構成要素を、CRISPR配列の構成要素をコードするベクターで形質移入すること等により、相当する標的配列を有する宿主細胞に提供することができ、続いて標的配列内の優先的切断を評価する。同様に、標的ポリヌクレオチド配列の切断は、標的配列、試験しようとするガイド配列も含むCRISPR複合体の構成要素、及び試験ガイド配列とは異なる対照ガイド配列を用意し、試験ガイド配列反応と対照ガイド配列反応とで標的配列での結合又は切断率を比較することにより、試験管中で評価することができる。いくつかの実施形態において、ガイド配列は、ガイド配列内の二次構造の程度を低下させるように選択される。二次構造は、任意の適切なポリヌクレオチド折畳みアルゴリズムにより特定することができる。
【0047】
少数だが他のクラスのヌクレアーゼもまた、ゲノム編集に有用なDSBを生成することができる。そのようなヌクレアーゼとして、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、及び転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)が挙げられる。
【0048】
メガヌクレアーゼは、エンドヌクレアーゼファミリーの中で、大型DNA配列(14塩基対~40塩基対)を認識及び切断する能力を特徴とする酵素である。メガヌクレアーゼは、微生物種で見つかるが、特定のDNA配列に対する天然のメガヌクレアーゼを見つけることは困難である。しかしながら、数万のタンパク質単位を含む巨大バンクが作成されてきている。これらの単位を組み合わせて、標的部位を認識するキメラメガヌクレアーゼを得ることができる。
【0049】
メガヌクレアーゼとは異なり、ZFN及びTALENは、ジンクフィンガー及び転写アクチベーター様エフェクター(TALE)等の特定DNA配列認識ペプチドに連結した非特異的DNA切断触媒ドメインを利用する。この第一段階は、DNA認識部位及び切断部位が互いに別々であるエンドヌクレアーゼを見つけることであったが、そのような状況は、制限酵素の中では最も一般的というのではない。いったんこの酵素が見つかってしまえば、その酵素の切断部分を分離することができる。この部分は認識能力を持たないことから、非常に非特異的であると思われる。次いで、この部分を、高い特異性をもたらすことが可能な配列認識ペプチドに結合させることができる。ジンクフィンガーモチーフは、複数の転写因子に生じる。転写因子では、これはタンパク質DNA相互作用部位に位置することが最も多く、モチーフを安定化する。各フィンガーのC末端部分は、DNA配列の特異的認識の一因となっている。
【0050】
転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)は、33又は34アミノ酸リピートのアレイを特色とする特異的DNA結合タンパク質である。TALENは、ヌクレアーゼのDNA切断ドメインをTALEドメインに融合させることにより設計された人工制限酵素であり、唯一のDNA配列を特異的に認識するように調整することができる。このような融合タンパク質は、遺伝子編集用途にとって容易に標的指向可能な「DNAハサミ」として機能する。DNA結合ドメインは、任意の所望DNA配列に結合するように設計することができ、病原性キサントモナス属種の植物が排出するDNA結合タンパク質であるTALエフェクターに由来する。TALエフェクターは、繰り返しドメインからなり、各ドメインは、高度に熟慮された34アミノ酸の配列を含有していて、標的部位内の単一DNAヌクレオチドを認識する。ヌクレアーゼは、標的部位で二本鎖切断を作出することができ、この二本鎖切断は、エラープローン非相同末端結合(NHEJ)により修復可能であり、その結果、小さな挿入又は欠失が導入されて遺伝子が破壊される。こうしたTALENを、DNAヌクレアーゼであるFokI由来の触媒ドメインに融合させて、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)を生成させることができる。得られるTALEN構築物は、特異性と活性とを兼ね備え、予め選択した部位でのみDNA配列に結合しこれを切断する改変配列特異的ヌクレアーゼを効率的に生成する。
【0051】
ゲノム編集は、例えば、ゲノム編集系(例えば、CRISPR/Cas及びガイドRNA)を関心対象に投与することにより、in vivoで起こすことができる。投与は、全身投与が可能であるが、好ましくは、単球若しくは単球由来細胞、又は単球若しくは単球由来細胞へと分化することができる骨髄細胞若しくは他の前駆細胞を標的することが可能である。あるいは、いくつかの実施形態において、単球、単球由来細胞、又はそれらの前駆細胞は、in vitro又はex vivoで細胞中にてゲノム編集を完了させた後に、対象に導入することができる。
【0052】
単球は、造血幹細胞、具体的には骨髄の顆粒球/マクロファージ始原体から分化し、循環単球として末梢に進入する。様々な微小環境の合図が、単球の運命を決定し、これによりマクロファージ及び樹状細胞への分化を招くことができる。単球は、単にマクロファージ及び樹状細胞前駆体であるだけではなく、免疫エフェクター細胞でもある。炎症状態下、循環単球は、感染又は損傷の部位に動員され、一旦そこに着くと、分化することができる。
【0053】
リポソームは、単球/貪食細胞標的療法に一般的に使用される送達系であり、低い免疫原性、生体適合性、細胞特異性、及び薬物保護等の利点を提供する。非経口投与されたリポソームは、単核食細胞系(MPS)により自然に除去される。リポソーム薬物送達系は、これらの細胞の生理的役割を利用して、特異的標的指向及び向上した送達効率を提供する。
【0054】
リポソームを単球及び単球由来細胞に対して標的指向させることは、脂質組成を変更して大きさ及び電荷等の物理化学的特性を制御すること、並びに表面リガンドを包含することにより達成可能であり、表面リガンドには、タンパク質、ペプチド、抗体、多糖類、糖脂質、糖タンパク質、及びレクチンが含まれる。そのようなリガンドの限定ではなく例として、アニオン性脂質、ムラミルトリペプチド(MTP)、Arg-Gly-Asp(RGD)、VACM-1特異的抗体、CC52特異的抗体、CC531特異的抗体、CD11c/DEC-205特異的抗体、Mann-C4-Chol等のレクチン、マレイル化ウシ血清アルブミン(MBSA)、O-ステロリ(steroly)アミロペクチン(O-SAP)、フィブロネクチン、及びガラクトシルが挙げられる。
【0055】
単球、マクロファージ、樹状細胞、又はそれらの前駆細胞は、対象の体外で編集し、次いで対象に導入することもできる。そのような単球、マクロファージ、樹状細胞、又はそれらの前駆細胞は、ドナー対象から、又は標的対象自身から得ることができる。いくつかの実施形態において、編集する前に、単離細胞を、単球、マクロファージ、樹状細胞、又はそれらの前駆体に濃縮することができる。いくつかの実施形態において、細胞集団は、単球、マクロファージ、樹状細胞、又はそれらの前駆体を80%超、なおもより好ましくは90%超含む。
【0056】
いくつかの実施形態において、単離前駆細胞は、ヒト対象の必要に応じて、単球又は単球由来細胞へと分化させることができる。いくつかの実施形態において、単離された細胞(例えば、単球)は、単球へと分化することができる前駆細胞へと脱分化させることができる。
【0057】
単球は、骨髄の始原細胞に由来する造血細胞系譜である。傾倒した骨髄始原細胞は分化して血中単球を形成し、この血中単球が、血液を循環して組織に進入し、常在マクロファージになる。したがって、始原細胞は、骨髄前駆細胞であることも、骨髄の別の種の始原細胞であることも可能である。
【0058】
いくつかの実施形態において、細胞は、例えば、インターフェロンガンマ(INF-γ)で活性化させて、細胞毒性を向上させることができる。単球からマクロファージへの成熟及びインターフェロンガンマを用いた活性化は、INF-γと接触させることにより行うことができる。あるいは、活性化は、INF-γを発現する組換えDNAで形質転換することにより行うことができる。
【0059】
編集された単球、単球由来細胞、又はそれらの前駆体は、次いで、対象に導入される。いくつかの実施形態において、細胞は、全身送達され、全身送達としては、例えば、血液、骨髄、又は標的組織への注入等があるが、特に限定されない。そのうえ、細胞は、単独で使用することも、他の医薬組成物と組み合わせて使用することもできる。
【0060】
エキソンスキッピング阻害剤
ヒト細胞のPTS遺伝子におけるエキソン3スキッピング(又は他の哺乳類細胞、特に霊長類細胞の相当するエキソンのスキッピング)の阻害は、個々のスプライシング因子、例えば、SRSF1、SRSF2、SRSF3、SRSF4、SRSF5、SRSF6、SRSF7、SRSF8、SRSF9、SRSF10、SRSF11、及びSRSF12のうちのいずれかの生物活性を阻害する作用剤を用いることによっても達成又は支援することが可能である。したがって、1つの実施形態において、免疫系の改変又は強化を必要とする哺乳類対象において免疫系を改変又は強化する方法が提供される。いくつかの実施形態において、本方法は、対象に、6-ピルボイルテトラヒドロプテリンシンターゼ(PTS)プレmRNAにおけるエキソン3スキッピングを阻害する作用剤を投与することを伴う。
【0061】
スプライシング因子のそれぞれは、エキソン3スキッピングにおいて役割を果たしている可能性があることが想定される。好適な実施形態において、作用剤は、SRSF3を標的とする。SRSF3は、実施例1で示すとおり、PTS遺伝子のイントロン2に認識部位を有する。いくつかの実施形態において、作用剤は、SRSF1又はSRSF9を標的とする。
【0062】
スプライシング因子の生物活性を阻害すること、すなわち生物活性を低下させることは、スプライシング因子の発現を減少させる、及び/又はスプライシング因子タンパク質の機能を妨害することにより達成することができる。
【0063】
タンパク質の発現を減少させる方法として、特に制限なく、アンチセンス又はRNAi技術の利用が挙げられる。「RNA干渉」(RNAi)は、低分子干渉RNA(siRNA)が介在する、遺伝子発現(タンパク質合成)の配列特異的又は遺伝子特異的な抑制を指す。
【0064】
「低分子干渉RNA」(siRNA)は、一般に、約10ヌクレオチド長~約30ヌクレオチド長の、RNA干渉(RNAi)に介在することができる二本鎖RNA分子を指す。siRNAという用語は、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)を含む。shRNAは、ステムループ構造を形成する一本鎖RNAを含み、このステムは、二本鎖siRNAを構成する相補性センス鎖及びアンチセンス鎖からなり、このループは様々な大きさのリンカーである。shRNAのステム構造は、一般に、約10ヌクレオチド長~約30ヌクレオチド長である。
【0065】
いくつかの実施形態において、スプライシング因子の生物活性を阻害する作用剤は、抗体である。本明細書において使用される場合、「抗体」又は「抗原結合ポリペプチド」は、抗原を特異的に認識し、これに結合するポリペプチド又はポリペプチド複合体を指す。抗体は、全抗体及びその任意の抗原結合断片又は一本鎖であることが可能である。すなわち、「抗体」という用語は、抗原に結合する生物活性を有する免疫グロブリン分子部分を少なくとも含む分子を含有する、任意のタンパク質又はペプチドを含む。
【0066】
本開示の抗体、又はそれらの抗原結合ポリペプチド、バリアント、若しくは誘導体として、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、多重特異的抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、霊長類化抗体、又はキメラ抗体、単鎖抗体、エピトープ結合断片、例えば、Fab、Fab’、及びF(ab’)2、Fd、Fv、一本鎖Fv(scFv)、単鎖抗体、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、VK若しくはVHドメインいずれかを含む断片、Fab発現ライブラリーにより生成した断片、及び抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本明細書において開示されるLIGHT抗体に対する抗Id抗体を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。本開示の免疫グロブリン又は抗体分子は、免疫グロブリン分子の任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)、又はサブクラスのものが可能である。
【0067】
本明細書において開示される抗体は、任意の動物起源であることが可能であり、そのような動物として、鳥類及び哺乳類が挙げられる。好ましくは、抗体は、ヒト抗体、マウス抗体、ロバ抗体、ウサギ抗体、ヤギ抗体、モルモット抗体、ラクダ抗体、ラマ抗体、ウマ抗体、又はトリ抗体である。抗体は、動物起源を有し、次いでヒト化されたものであることも可能である。
【0068】
いくつかの実施形態において、抗体は、SRSF1、SRSF2、SRSF3、SRSF4、SRSF5、SRSF6、SRSF7、SRSF8、SRSF9、SRSF10、SRSF11、又はSRSF12等のスプライシング因子に対して特異性を有する。抗体は、スプライシング因子の2種以上を標的とする二重特異性又は多重特異性とはなり得ない。1つの実施形態において、抗体は、SRSF3に対して特異性を有するモノクローナル抗体である。
【0069】
スプライシング因子に対する小分子阻害剤もまた、使用可能である。作用剤は、任意の他の手段により一般に異常スプライシングを減少させる又は正常スプライシングを促進する分子であることも可能である。作用剤の限定ではなく例として、キネチン、エピガロカテキンガレート(EGCG)、ゲニステイン、ダイゼイン、強心配糖体(例えば、ジゴキシン)、及び異常スプライシング整流剤(rectifier of aberrant splicing)(RECTAS)が挙げられる。
【0070】
キネチン(6-フルフリルアミノプリン)は、サイトカイニン、すなわち植物成長因子として知られるN6置換アデニン誘導体のファミリーに属し、このファミリーには、ゼアチン、ベンジルアデニン、及び2iPも含まれる。キネチンは、ヒトmRNAスプライシング欠陥を救助し、正常mRNAの産生を増加させることができることが示されており(例えば、Slaugenhaupt et al., Human Mol. Genet. 2004, 13(4):429-36を参照)、これはスプライシング因子活性の阻害による可能性が高い。
【0071】
ゲニステイン(5,7-ジヒドロキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)クロメン-4-オン)は、血管新生阻害剤及び植物エストロゲンとして使用されてきたイソフラボンである。ダイゼイン(7-ヒドロキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)-4H-クロメン-4-オン)は、大豆及び他のマメ科植物で見つかった構造的に別の天然に生じるイソフラボンである。ゲニステイン及びダイゼイン並びに他のイソフラボンは、植物中で二次代謝のフェニルプロパノイド経路を通じて産生され、単一キャリア及び病原性攻撃に対する防御反応として使用される。ヒトでは、最近の研究から、ダイゼインが、閉経期の緩和、骨粗鬆症、血中コレステロール、及び一部のホルモン関連癌のリスク低減、及び心疾患に有用である可能性が示されてきている。
【0072】
エピガロカテキンガレート(EGCG)は、エピガロカテキン-3-ガレートとも称し、これは、エピガロカテキンと没食子酸のエステルであって、カテキンの1種である。抗酸化剤活性を持つポリフェノールであるEGCGは、お茶中に最も豊富に存在するカテキンである。
【0073】
ゲニステイン及びダイゼインは、任意選択でEGCGと合わせて、欠陥スプライシングの救済に潜在的活性を有することが示されている(例えば、Anderson, et al., Mol Nutr Food Res. 2012 56(4):570-579を参照)。
【0074】
強心配糖体は、キツネノテブクロ植物等の複数の植物に共通する二次代謝産物である有機化合物のクラスであり、細胞ナトリウムカリウムATPアーゼポンプに作用することにより、心臓の拍出力を増大させ、その収縮率を上昇させる。強心配糖体の一般構造は、糖(グリコシド)及びR基が結合したステロイド分子からなる。ステロイド核は、5つの縮合環からなり、それらに、他の官能基、例えば、メチル基、ヒドロキシル基、及びアルデヒド基が結合して、分子全体の生物活性に影響を及ぼすことができる。限定ではなく例として、ジゴキシン、ジギトニン、ジギトキシン、ジゴキシゲニン、ジギトキシゲニン、アセチルジギトキシン、ブファリン、ウアバゲニン、及びウアバインが挙げられる。
【0075】
研究者らは、ジゴキシン、ジギトニン、ジギトキシン、ジゴキシゲニン、ジギトキシゲニン、アセチルジギトキシン、ブファリン、ウアバゲニン、及びウアバインを含む、強心配糖体が、SRSF3を阻害することにより、エキソンスキップされた転写物の産生を阻止することができたことを示している(Liu et al., FEBSJ. 2013 280(15):3632-46)。
【0076】
「異常スプライシング整流剤」又は「RECTAS」という名前は、薬物スクリーニングから同定された、エキソン認識を促進し、したがって異常スプライシングを減少させることができる化合物を指す(Yoshida et al., Proc Natl Acad Sci USA. 2015;112(9):2764-2769を参照)。RECTASは、化学名が2-クロロ-N-(フラン-2-イルメチル)-7H-プリン-6-アミンである。
【0077】
追加作用剤は、例えば、培養ヒト単球を試験モデルとして用いて、スクリーニングすることにより同定することができる。エキソンスキッピングの補正は、例えば、野生型PTPSタンパク質を標的とする抗体を用いて、試験することができる。
【0078】
アンチセンス技術は、アンチセンスRNA又はアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用を含むものであり、シス調節要素配列に対して容易に使用して、エキソンスキッピングにおけるそれらの影響を阻害することができる。そのようなシス調節要素配列は、例えば、エキソンスプライシングサイレンサー又はイントロンスプライシングサイレンサーであることが可能である。
【0079】
エキソン認識の向上
エキソン認識のプロセスは、カノニカル配列、例えば、スプライシング部位、ポリピリミジントラクト、及びブランチ部位、並びにエキソン及びイントロンシス作用調節要素配列を必要とする場合がある。さらに、エキソンが認識されるかどうかは、スプライシング因子を提供する細胞環境にも依存する。適切な細胞環境を提供しない細胞中では、作用剤を添加して、エキソン認識を向上/救済することができる。
【0080】
非協力的環境において欠陥エキソン又は正常エキソンの認識を促進するのに、エキソン特異的U1(ExSpeU1)が使用されてきた。ExSpeU1は、スキップされたエキソンの5’スプライシング部位の下流のイントロン領域に、相補性により結合するU1 snRNP様粒子である。ExSpeU1は、スプライセオソーム要素を動員することにより、エキソン認識を促進する。ExSpeU1は、コンセンサス5’スプライシング部位、ポリピリミジントラクト、又はエキソン調節要素配列で、エキソンスキッピングを補正するのに使用することができる。ExSpeU1は、血友病B、嚢胞性線維症、ネザートン症候群、及び脊髄性筋萎縮症をはじめとする様々な遺伝的障害の遺伝子においてスプライシングの回復に成功している。ExSpeU1は、非保存イントロン配列で結合するように設計することができるため、ExSpeU1がオフターゲット事象をもたらすことはほとんどない。
【0081】
ExSpeU1は、治療上の関心対象である標的遺伝子の一次転写物上で、標的ヌクレオチド配列にハイブリダイズすることができる部分を有する一本鎖U1 snRNA分子を含むことができる。U1snRNA分子の標的ヌクレオチド配列は、エキソン/イントロンジャンクション部位の下流2塩基対~50塩基対の間に含まれるプレmRNAの領域に位置することができる。
【0082】
snRNAは、U1snRNA分子をコードするポリヌクレオチドにより、標的細胞に導入することができる。好ましくは、ポリヌクレオチドは、プロモーター配列とポリアデニル化信号配列とを含む。プロモーターは、好ましくは、ヒトU1snRNAをコードする遺伝子の内在性プロモーターである。
【0083】
ナンセンス抑制剤及び方法
いくつかの実施形態において、エキソン3(又は哺乳類若しくは霊長類細胞の相当するエキソン)がスキップされる細胞におけるPTSの正常な発現/活性は、ナンセンス抑制療法で回復させることができる。ナンセンス抑制療法は、インフレームの未成熟停止コドン(PTC、ナンセンス変異とも知られる)での翻訳停止を抑制して、欠陥タンパク質機能を回復させることを目的とする。PTSにおけるエキソンスキッピングは、終止/停止コドンの生成を招き、短縮型不活性転写物をもたらす。ナンセンス抑制療法で想定されるのは、これが、大部分のPTPSタンパク質のアミノ酸残基及び機能的ドメインを取り戻すことができるということである。
【0084】
ナンセンス抑制療法の限定ではなく例として、リードスルー薬、抑制因子tRNA、PTCプソイドウリジン化、及びナンセンス介在型mRNA崩壊の阻害が挙げられる。
【0085】
アミノグリコシドは、真核生物リボソームに結合し、PTCで近同族アミノアシル-tRNAの誤取り込みを招くことが示されている抗生物質のクラスである。ナンセンス抑制研究で最も一般的に使用されるアミノグリコシドであるゲンタマイシンは、DMD、CF、腎性尿崩症、血友病、網膜変性症、APC介在型結腸癌、及びムコ多糖症I型-ハーラーの短期研究において、機能性タンパク質を回復させることが示されている。
【0086】
アミノグリコシドの別の例は、アミカシンである。特に、アミカシンを含有する単層、低クリアランスのリポソーム(MiKasome(商標))の静脈内投与は、毒性の低減とともに良好な効力を示した。
【0087】
一部の非アミノグリコシド系抗生物質もまた、哺乳類細胞においてPTCを抑制することができる。真核生物リボソーム小サブユニットに結合するペプチド系抗生物質であるネガマイシンは、結腸癌と関連したAPC遺伝子において、先天性筋ジストロフィーと関連したラミニンα-2遺伝子において、及びDMDと関連したジストロフィン遺伝子において、ナンセンス変異を抑制し、タンパク質機能を回復させる。
【0088】
また、複数のマクロライド系抗生物質、例えば、スピラマイシン、ジョサマイシン、及びタイロシンは、APCナンセンス変異を抑制し、APCタンパク質機能を回復させることができる。また、これらのマクロライド系抗生物質は、APC遺伝子にナンセンス変異を保有するマウスにおいて、腫瘍及び腸ポリープの数及び大きさを低減することができる。
【0089】
アタルレンは、以前はPTC124として知られていたが、これは、哺乳類細胞において、天然の終止コドンでの翻訳停止に影響を及ぼすことなく、PTCでの停止を抑制するオキサジアゾール化合物である。包括的前臨床試験から、PTC124が安全であり、オフターゲット副作用を最小限にしか有さず、抗細菌活性を有さず、かつ経口利用可能であることが示された。
【0090】
高処理薬物スクリーニングから、毛細血管拡張性運動失調症を引き起こすATM遺伝子のナンセンス変異を抑制する他の化合物が同定された(Du, et al. 2009. J. Exp. Med. 206:2285-97、Du, et al. 2013. Mol. Ther. 21:1653-60)。このような薬物には、RT13、RT14、GJ071、及びGJ072、並びにそれらの誘導体が含まれる。これらの薬物は、全長、機能性ATMタンパク質の発現を回復させることができる。
【0091】
ナンセンス介在型mRNA崩壊(NMD)を阻害する化合物も使用可能である。NMDは、PTCを含有するmRNAを分解させる経路である。アンレキサノクスは、NMD阻害剤であり、PTCも抑制する。
【0092】
「ナンセンス抑制因子tRNA」は、tRNA誘導体であって、そのアンチコドンが、終止コドンを認識するように改変されており、したがってアミノ酸を終止コドンで組み込むこと及び翻訳停止を迂回することが可能であるものである。ナンセンス抑制因子tRNAは、例えば、正常AAA(リシン)コドンの代わりにUAGナンセンスコドンを認識するようにtRNALyのアンチコドンを修飾することにより、構築することができる。
【0093】
「プソイドウリジン化」は、リボヌクレオシドウリジンを5’-リボシル異性体プソイドウリジン(Ψ)にする異性化である。H/ACAガイドRNAを使用して、任意のRNA配列との配列相同性を介した部位特異的プソイドウリジン化の可能性を提供することができる。tRNA分子のプソイドウリジン化は、アンチコドンループ構造の変化を通じた代替コドン認識をもたらす。3つのナンセンスコドンは全て、ウリジン(U)を最初の位置に有するため(UAA、UAG、UGA)、終止コドンのウリジンのプソイドウリジン化は、PTC認識の効率を改変することができる。
【0094】
エキソンスキッピング補正の患者の選択
提示のとおり、PTPSタンパク質活性の回復は、免疫系を強化し、感染症及び癌等の疾患の予防及び治療に役立つ可能性がある。そのような回復は、個体、特に感染症又は癌の発症が疑われる個体の任意の段階で行うことができる。同じく、任意の個体にとって免疫活性の改善が必要とされる時点でこれは有用となり得る。
【0095】
いくつかの実施形態において、回復は、例えば、本明細書において開示されるとおりの作用剤の投与を通じて、感染症のリスクがある又は感染した対象に行うことができる。いくつかの実施形態において、回復は、癌を発症するリスクがある又は癌である対象に行うことができる。いくつかの実施形態において、回復は、或る強度の酸化ストレスを有する対象に行うことができる。いくつかの実施形態において、回復は、免疫活性の上昇した対象に行うことができる。
【0096】
個体の免疫活性は、適切なバイオマーカーで測定することができる。バイオマーカーの限定ではなく例として、ネオプテリン、C反応性タンパク質、及びプロカルシトニンが挙げられる。他の例として、インターフェロンガンマ、インターフェロン-アルファ、及びインターフェロン-ベータが挙げられる。例えば、ネオプテリン及び/又はインターフェロンガンマのレベルが上昇している、又はテトラヒドロビオプテリン及び/又は一酸化窒素のレベルが低下している場合、その対象は本開示の治療の恩恵を受けることができることを示す。
【0097】
バイオマーカーの測定に使用可能な試料として、特に制限なく、血清、尿、脳脊髄液、滑液、唾液、腹水、胆汁、膵液、及び胃液が挙げられる。
【0098】
こうしたバイオマーカーの基準レベルも既知である。例えば、健康な個体(小児及び成人の両方)の97%超は、血清中のネオプテリン濃度が10nmol/L未満である。したがって、或る個人の血清ネオプテリン濃度が10nmol/L超である場合、その個人を、本開示の技術を用いたPTPSタンパク質活性の回復に選択することができる。いくつかの実施形態において、血清ネオプテリン濃度が10nmol/L、20nmol/L、30nmol/L、50nmol/L、100nmol/L、又は200nmol/Lより高い場合に、対象は治療に選択される。
【0099】
同様に、尿中のネオプテリンレベルをmolネオプテリン/molクレアチニンで表して、これが、7歳未満の対象において350μmolネオプテリン/molクレアチニンより高い場合、又はそれより年上の患者において250μmolネオプテリン/molクレアチニンより高い場合は、その対象が、PTPSタンパク質活性の回復の恩恵を受けることができることを示唆する。同様に、唾液中ネオプテリン濃度が3.4nmol/L超、滑液中ネオプテリン濃度が9nmol/L超、腹水中ネオプテリン濃度が26.3nmol/L超、又は気管支肺胞洗浄液中ネオプテリン濃度が85.6nmol/L超であることは、免疫活性の上昇を示す。
【0100】
一酸化窒素の基準レベルも、個体ごとに特定することができる。いくつかの実施形態において、一酸化窒素レベル(例えば、血清中又は尿中)が10μmol/L超であることは、治療の必要がないと見なすことができる。したがって、いくつかの実施形態において、或る個人の一酸化窒素濃度が10μmol/L未満である場合、その個人を、本開示の技術を用いたPTPSタンパク質活性の回復に選択することができる。いくつかの実施形態において、一酸化窒素濃度が0.1μmol/L、0.2μmol/L、0.5μmol/L、1μmol/L、2μmol/L、3μmol/L、4μmol/L、5μmol/L、10μmol/L、15μmol/L、20μmol/L、30μmol/L、40μmol/L、50μmol/L、60μmol/L、70μmol/L、80μmol/L、90μmol/L、100μmol/L、150μmol/L、200μmol/L、300μmol/L、又は500μmol/Lより低い場合に、対象は治療に選択される。
【0101】
そのようなバイオマーカーは、PTS遺伝子のエキソンスキッピングの補正/阻害の有効性を測定するのにも使用可能である。例えば、ネオプテリンレベルの低下、インターフェロンガンマレベルの低下、BH4、テトラヒドロビオプテリン、又は一酸化窒素レベルいずれかの上昇は、エキソンスキッピングの補正が有効であることの指標となり得る。いくつかの実施形態において、有効性は、標的細胞に存在する、スキップされたエキソンを持つ成熟PTS mRNAを検出することにより、直接測定することも可能である。
【0102】
治療組成物及び方法
ゲノム編集系、in vitro若しくはex vivoで処置された細胞、アンチセンス又はRNAi分子、抗体、又は小分子作用剤は、医薬組成物として調製して、それらを必要としている哺乳類、特に霊長類及びヒト対象に使用することができる。医薬組成物は、薬学上許容されるキャリアを更に含むことができる。
【0103】
「薬学上許容される」という用語は、動物、及び特にヒトでの使用について、連邦政府若しくは州政府の規制当局により認可されている、又は米国薬局方若しくは他の一般的に認められる薬局方に記載されていることを意味する。さらに、「薬学上許容されるキャリア」は、一般に、任意の種類の無毒の固体、半固体、又は液体の、充填剤、希釈剤、カプセル化材料、又は製剤助剤となる。
【0104】
「キャリア」という用語は、治療薬の投与に用いられる、希釈剤、アジュバント、賦形剤、又はビヒクルを指す。そのような薬学的キャリアは、滅菌液、例えば、水及び油が可能であり、油には、石油起源、動物起源、植物起源、又は合成起源のもの、例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱物油、ゴマ油等が含まれる。医薬組成物が静脈内投与される場合、水が好適なキャリアである。生理食塩水並びにブドウ糖水溶液及びグリセロール水溶液もまた、液体キャリアとして、特に注射用液に使用可能である。適切な薬学的賦形剤として、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノール等が挙げられる。組成物は、所望であれば、微量の湿潤剤若しくは乳化剤、又はpH緩衝剤、例えば、酢酸塩、クエン酸塩、若しくはリン酸塩も含有することができる。抗細菌剤、例えば、ベンジルアルコール又はメチルパラベン等、抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸又は重亜硫酸ナトリウム等、キレート化剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸等、及び張力を調整する作用剤、例えば、塩化ナトリウム又はブドウ糖等も、想定される。こうした組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放性製剤等の形態を取ることができる。組成物は、従来の結合剤及びトリグリセリド等のキャリアを用いて、坐剤として配合することができる。経口製剤は、標準的なキャリア、例えば、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等を含むことができる。適切な薬学的キャリアの例は、Remington's Pharmaceutical Sciences by E. W. Martinに記載されており、これは引用することにより本明細書の一部をなす。
【0105】
一実施形態において、組成物は、常用手順に従って、ヒトへの投与に適合した医薬組成物として配合される。典型的には、静脈内投与用組成物は、滅菌等張性水性緩衝剤の溶液である。必要な場合、組成物は、更に可溶化剤とリドカイン等の局所麻酔薬とを含むことで、注射部位での疼痛を緩和することができる。一般に、成分は、別々に又は単位剤形に一緒に混合されて、例えば、気密性の密閉容器に入った乾燥した凍結乾燥粉末又は無水濃縮物として供給され、気密性の密閉容器は、例えば、活性作用剤の量が表示されたアンプル又はサシェである。組成物が点滴により投与されることになる場合、組成物を、医薬グレードの滅菌水又は滅菌生理食塩水の入った点滴ボトルに分注することができる。組成物が注射により投与される場合、投与前に成分を混合することができるように、注射用滅菌水又は生理食塩水のアンプルを用意することができる。
【0106】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、標的細胞への標的指向型送達用に配合される。例えば、作用剤は、リポソームでパッケージ化することができる。リポソームは、単球/貪食細胞標的療法に一般的に使用される送達系であり、低い免疫原性、生体適合性、細胞特異性、及び薬物保護等の利点を提供する。非経口投与されたリポソームは、単核食細胞系(MPS)により自然に除去される。リポソーム薬物送達系は、これらの細胞の生理的役割を利用して、特異的標的指向及び向上した送達効率を提供する。
【0107】
リポソームを単球及び単球由来細胞に対して標的指向させることは、脂質組成を変更して大きさ及び電荷等の物理化学的特性を制御すること、並びに表面リガンドを包含することにより達成可能であり、表面リガンドには、タンパク質、ペプチド、抗体、多糖類、糖脂質、糖タンパク質、及びレクチンが含まれる。そのようなリガンドの限定ではなく例として、アニオン性脂質、ムラミルトリペプチド(MTP)、Arg-Gly-Asp(RGD)、VACM-1特異的抗体、CC52特異的抗体、CC531特異的抗体、CD11c/DEC-205特異的抗体、Mann-C4-Chol等のレクチン、マレイル化ウシ血清アルブミン(MBSA)、O-ステロリアミロペクチン(O-SAP)、フィブロネクチン、及びガラクトシルが挙げられる。
【0108】
本開示の分子、細胞、系、及び組成物は、免疫系の強化を必要としているヒト対象において免疫系を強化し、対象において疾患又は病態を治療するのに有用となり得る。ヒト対象は、或る疾患又は病態に罹患していて、その疾患又は病態の治療が、向上した免疫系の恩恵を受けることができる対象である可能性がある。そのような疾患又は病態を発症するリスクがあるヒト対象もまた、治療の恩恵を受けることができる。
【0109】
本明細書において使用される場合、「治療する」又は「治療」という用語は、治療的処置及び予防的又は阻止的措置の両方を指し、対象は、望ましくない生理的変化又は障害、例えば感染症又は癌の進行を予防する又は遅らせる(低減させる)ことになる。有益な又は所望の臨床結果として、検出可能か否かを問わず、症状の軽減、疾患の範囲の縮小、疾患の状態安定化(すなわち、無増悪)、病勢進行の遅延又は遅滞、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解(部分的又は全体的を問わない)が挙げられるが、これらに限定されない。「治療」は、治療を受けなかった場合に予想される生存期間に比べて延長された生存期間も意味することができる。治療を必要としているものとして、すでに病態若しくは障害を持っているもの以外に、病態若しくは障害になりやすいもの、又は病態若しくは障害を予防すべきであるものが挙げられる。
【0110】
感染症
いくつかの実施形態において、対象は、感染症に罹患しているか、感染するリスクがある。感染症とは、疾患を引き起こす媒介物が生物の身体組織に侵入し、それらが増幅し、宿主組織がそれら生物に対して反応し、それらが毒素を産生することである。感染症は、感染媒介物により引き起こされる可能性があり、感染媒介物とは、例えば、ウイルス、ウイロイド、プリオン、細菌、線虫、例えば、寄生回虫及び蟯虫等、節足動物、例えば、マダニ、コダニ、ノミ、及びシラミ等、真菌、例えば白癬等、並びに他の大寄生虫、例えば、条虫及び他の蠕虫等である。1つの態様において、感染媒介物は、グラム陰性菌等の細菌である。1つの態様において、感染媒介物は、ウイルス、例えば、DNAウイルス、RNAウイルス、及び逆転写ウイルス等である。
【0111】
ウイルスの限定ではなく例として、ヘルペスウイルス、コロナウイルス、インフルエンザウイルス、フィロウイルス、フラビウイルス、アレナウイルス、トガウイルス、ブニヤウイルス、ポックスウイルス、ピコルナウイルス、レトロウイルス、パラミクソウイルス、ハンタウイルス、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、風疹ウイルス、ウイルス性肝炎(全型)ウイルス、ウイルス性髄膜炎ウイルス、ヒトtリンパ球向性ウイルス、クリミア・コンゴ出血熱ウイルス、他のウイルスファミリーが挙げられる。
【0112】
細菌感染と関連した疾患の限定ではなく例として、敗血症/敗血症性ショック、シュードモナス感染症、ブルセラ感染症、連鎖球菌性感染症、マイコバクテリウム感染症、サルモネラ感染症、ボレリア感染症、リステリア感染症、シゲラ感染症、及び細菌性髄膜炎が挙げられる。
【0113】
寄生虫感染と関連した疾患の限定ではなく例として、プラスモジウム感染症、リーシュマニア症、住血吸虫感染症、トリパノソーマ感染症、及びジアルジア感染症が挙げられる。
【0114】
癌
いくつかの実施形態において、対象は、癌であるか、癌を発症するリスクがある。本方法は、概して、ヒト対象の免疫系を強化することができるので、多数の癌種の治療に有用となり得る。いくつかの実施形態において、癌は、膀胱癌、非小細胞肺癌、腎癌、乳癌、尿道癌、結腸直腸癌、頭頚部癌、扁平細胞癌、メルケル細胞癌、胃腸癌、胃癌、食道癌、卵巣癌、腎癌、及び小細胞肺癌から選択される。
【0115】
いくつかの実施形態において、対象は、白血病(急性白血病(例えば、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病(骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性、及び赤白血病を含む))並びに慢性白血病(例えば、慢性骨髄性(顆粒球性)白血病及び慢性リンパ性白血病)を含む)、真性赤血球増加症、リンパ腫(例えば、ホジキン病及び非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、重鎖病、及び固形腫瘍から選択される疾患に罹患しており、固形腫瘍として、肉腫及び細胞種、例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫(endotheliosarcoma)、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫(lymphangioendotheliosarcoma)、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵癌、乳癌、甲状腺癌、子宮内膜癌、黒色腫、前立腺癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性肺癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胚性癌腫、ウィルムス腫瘍、子宮頚癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫瘍、乏突起膠腫、髄膜種、黒色腫、神経芽細胞腫、及び網膜芽細胞腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0116】
いくつかの実施形態において、本方法は、化学療法薬の投与を更に含む。本開示の組成物とともに投与することができる化学療法薬として、抗生物質誘導体(例えば、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、及びダクチノマイシン);抗エストロゲン剤(例えば、タモキシフェン);代謝拮抗剤(例えば、フルオロウラシル、5-FU、メトトレキサート、フロクスウリジン、インターフェロンアルファ-2b、グルタミン酸、プリカマイシン、メルカプトプリン、及び6-チオグアニン);細胞毒性剤(例えば、カルムスチン、BCNU、ロムスチン、CCNU、シトシンアラビノシド、シクロホスファミド、エストラムスチン、ヒドロキシウレア、プロカルバジン、マイトマイシン、ブスルファン、シスプラチン、及びビンクリスチン硫酸塩);ホルモン(例えば、メドロキシプロゲステロン、エストラムスチンリン酸エステルナトリウム、エチニルエストラジオール、エストラジオール、酢酸メゲストロール、メチルテストステロン、二リン酸ジエチルスチルベストロール、クロロトリアニセン、及びテストラクトン);ナイトロジェンマスタード誘導体(例えば、メルファラン、クロラムブシル、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、及びチオテパ);ステロイド及び合剤(例えば、ベタメタゾンリン酸ナトリウム);並びにその他(例えば、ダカルバジン、アスパラギナーゼ、ミトタン、ビンクリスチン硫酸塩、ビンブラスチン硫酸塩、及びエトポシド)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、サイトカインと組み合わせて投与される。本開示の組成物とともに投与することができるサイトカインとして、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、抗CD40、CD40L、及びTNF-αが挙げられるが、これらに限定されない。
【0118】
更なる実施形態において、本開示の組成物は、他の治療レジメン又は予防レジメン、例えば、放射線療法等と組み合わせて投与される。
【0119】
循環器疾患及び障害
いくつかの実施形態において、対象は、循環器疾患又は障害を有する。循環器疾患及び障害の限定ではなく例として、冠動脈心疾患、脳血管疾患、末梢動脈疾患、リウマチ性心疾患、先天性心疾患、並びに深部静脈血栓症及び肺塞栓症が挙げられる。他の例として、心臓発作及び脳卒中が挙げられる。対象の免疫機能の改善は、これらの疾患のリスクを低減する又はこれらの疾患を治療するのに役立つ可能性がある。
【0120】
いくつかの実施形態において、対象は、脳血管疾患、例えば、脳卒中(例えば、虚血性脳卒中、出血性卒中、一過性脳虚血発作(TIA))、頚動脈狭窄、脳動脈瘤、血管奇形、もやもや病、静脈性血管腫、及びガレン静脈奇形(VGM)を有する。
【0121】
循環器疾患及び病態の更なる例として、特に制限なく、拡張型心筋症、慢性心筋炎、急性リウマチ熱、大動脈弁閉鎖不全症、僧帽弁閉鎖不全症、粥状動脈硬化症、動脈硬化症、急性冠症候群、慢性冠症候群、冠動脈疾患、急性心筋梗塞、不安定狭心症、非Q波心筋梗塞、鬱血性心不全、左心室機能不全、末梢動脈疾患、重症虚血肢、急性脳卒中、急性脳虚血、虚血性脳卒中、非虚血性心不全、肺動脈性肺高血圧症、及び慢性血栓塞栓性肺高血圧(CTEPH)が挙げられる。
【0122】
自己免疫疾患及び障害
いくつかの実施形態において、対象は、自己免疫疾患又は障害を有する。いくつかの実施形態において、治療対象となる自己免疫疾患又は病態として、アイカルディ・グティエール症候群、円形脱毛症、強直性脊椎炎、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、皮膚筋炎、糖尿病(1型)、セリアック病、自己免疫性若年性突発性関節炎、クローン病、糸球体腎炎、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、血球貪食性リンパ組織球症、突発性血小板減少性紫斑病、重症筋無力症、自己免疫性心筋炎、多発性硬化症、天疱瘡/類天疱瘡、悪性貧血、末梢神経障害、結節性多発性動脈炎、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、若年性関節リウマチを含む関節リウマチ、類肉腫症、強皮症/全身性硬化症、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、自己免疫性甲状腺炎、橋本甲状腺炎、自己免疫性ぶどう膜炎、潰瘍性大腸炎、尋常性白斑、及び多発血管炎性肉芽腫症(ウェゲナー肉芽腫症)のうち1種以上が挙げられる。
【0123】
関節リウマチ(RA)は、主に関節に影響を及ぼす長期の自己免疫障害である。関節リウマチは、典型的には、熱を帯び、膨潤した、痛みを伴う関節をもたらす。疼痛及びこわばりは、安静後に悪化することが多い。最も一般的には、手首及び手が冒され、身体の両側の同じ関節が、典型的には冒される。この疾患は、身体の他の部分にも影響を及ぼす場合がある。関節リウマチの原因は不明であるものの、遺伝的要因及び環境要因の組み合わせが関与すると考えられている。根底にある機構は、身体の免疫系が関節を攻撃することと関係している。このことが、関節包の炎症及び肥厚をもたらす。治療の目的は、疼痛を減少させ、炎症を低下させ、個人の総合的な機能を改善することである。症状に効く鎮痛薬、ステロイド、及びNSAIDが、頻繁に使用される。疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)と呼ばれる一群の薬物、例えば、ヒドロキシクロロキン及びメトトレキサートが、疾患の進行を遅らせる試みで使用される場合がある。
【0124】
変形性関節症(OA)は、関節軟骨及びその下にある骨の破壊から生じる、関節疾患の1種である。最も一般的な症状は、関節痛及びこわばりである。最初、症状は、運動後にのみ生じる可能性があるが、時間とともに、常態になる可能性がある。他の症状として、関節腫脹、運動範囲の減少、及び背中が影響を受けている場合には、腕及び脚の脱力又は痺れを挙げることができる。原因として、過去の関節損傷、関節又は四肢の異常発達、及び遺伝因子が挙げられる。体重過多、片方の脚の長さが異なる、関節ストレスを高レベルでもたらす仕事に着いている場合、リスクはより高くなる。変形性関節症は、関節への機械的ストレス及び低グレードの炎症プロセスにより引き起こされると考えられている。治療として、運動、関節ストレスを軽減する努力、サポーター類、及び鎮痛薬が挙げられる。
【0125】
多発性硬化症(MS)は脳及び脊髄の神経細胞の絶縁カバーが損傷する脱髄疾患である。この損傷は、神経系の各部分が連通する能力を破壊し、物理的、精神的、場合によっては、精神医学的問題を含む様々な兆候及び症状をもたらす。具体的な症状として、複視、片目の失明、筋力低下、感覚に伴う問題、又は協調に伴う問題を挙げることができる。原因は不明であるものの、根底にある機構は、免疫系による破壊又はミエリン産生細胞の不全いずれかによると考えられている。多発性硬化症の治療法として知られるものはない。治療は、発作後の機能を改善し、新たな発作を防ぐことを試みるものである。
【0126】
喘息は、肺の気道の一般的な長期炎症性疾患である。喘息は、不定及び再発性症状、可逆的気流閉塞、及び気管支痙攣を特徴とする。症状として、喘鳴、咳嗽、胸部絞扼感、及び息切れのエピソードが挙げられる。喘息は、遺伝的要因及び環境要因の組み合わせにより引き起こされると考えられている。環境要因として、大気汚染及びアレルゲンへの曝露が挙げられる。喘息は、症状の頻度、1秒量(FEV1)、及び最大呼気流量に従って分類される。喘息は、アトピー性か非アトピー性かでも分類することができ、アトピー性は、1型過敏症反応を発症しやすい傾向を指す。喘息の治療法は存在しない。症状は、トリガー物質、例えば、アレルゲン及び刺激物を回避することにより、並びに吸入コルチコステロイドを使用することにより、予防することができる。喘息症状が制御不能のままである場合、長時間作用性ベータアゴニスト(LABA)又は抗ロイコトリエン作用剤を、吸入コルチコステロイドに加えて使用することができる。急速に悪化する症状の治療は、通常、吸入型短時間作用性ベータ2アゴニスト、例えば、サルブタモール及びコルチコステロイドを月ごとに摂取して用いる。非常に重篤な場合、静脈内コルチコステロイド、硫酸マグネシウム、及び入院が必要になる可能性がある。
【0127】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、長期間の気流不良を特徴とする閉塞性肺疾患の1種である。COPDは、2つの主要病態である肺気腫及び慢性気管支炎を有する可能性がある。肺気腫では、多数の気嚢の間の壁が損傷する。結果として、気嚢は、それらの形状を失い、ぺらぺらになる。この損傷は、気嚢の壁も破壊する可能性があり、小さな気嚢が多数ある代わりに少数の大きな気嚢を招く。これが生じると、肺でのガス交換量が減少する。慢性気管支炎では、気道の被覆層は、常態的に刺激を受けて炎症を起こしたままになり、これが被覆層の腫脹を引き起こす。肥厚粘膜が多数、気道に形成され、呼吸困難にする。COPDの治療法として知られるものはないが、症状を治療することは可能であり、その進行を遅らせることはできる。
【0128】
神経変性疾患及び障害
いくつかの実施形態において、治療される対象は、神経変性疾患又は障害を有する。神経変性疾患又は障害の限定ではなく例として、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、血管性認知症、ハンチントン病、クロイツフェルト・ヤコブ病、ダウン症候群、鬱病、自閉症スペクトル障害、ADHD/ADD、筋萎縮性側索硬化症、視神経脊髄炎スペクトル障害が挙げられる。
【0129】
肝臓、腎臓、及び他の疾患及び病態
いくつかの実施形態において、対象は、肝疾患又は障害を有する。肝疾患又は障害の限定ではなく例として、肝炎、肝硬変、肝臓癌、肝不全、腹水、胆石、血色素症、原発性硬化性胆管炎、及び原発性胆汁性肝硬変が挙げられる。例として、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)及び非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)も挙げられる。
【0130】
いくつかの実施形態において、対象は、腎疾患又は障害を有し、腎疾患又は障害としては、例えば、糖尿病性腎症、ネフローゼ症候群、糸球体腎炎、慢性腎疾患、及び末期腎疾患等であるが、これらに限定されない。
【0131】
いくつかの実施形態において、対象は、移植と関連した病態を有する。1つの例において、対象は、腎臓、心臓、肝臓、又は膵臓で移植片拒絶を起こしている。別の例において、対象は、移植片対宿主病(GVHD)を有する。別の例において、対象は、輸血に関連した拒絶を起こしている。
【0132】
本発明技術で適切に治療することができる更なる疾患及び病態として、特に制限なく、類肉腫症、歯周炎、急性膵炎、子宮内感染症、熱傷、加齢、マクロファージ活性化症候群、股関節骨折、塵肺症、慢性肝不全の急性増悪、全身性炎症反応症候群、肥満、及び真性糖尿病が挙げられる。
【実施例】
【0133】
以下の実施例は、本開示の特定の実施形態を実証するために含まれている。当業者ならわかるはずだが、実施例に開示される技法は、本発明の技法に従っていて本開示の実施において十分に機能し、したがって、その実施のための具体的様式を構成すると見なすことができる。しかしながら、当業者なら、本開示に照らして、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、開示される特定の実施形態に多数の変更を行うことができ、それでもなお同様な又は類似した結果を得ることができることがわかるはずである。
【0134】
実施例1:エキソンスキッピングに影響を及ぼすシス調節配列要素の同定
この実施例は、エキソン3のスキッピングの調節に関連したシス調節配列要素について、ヒト6-ピルボイルテトラヒドロプテリンシンターゼ(PTS)のゲノム配列を検査する。
【0135】
PTSのヒトゲノム配列は、GenBank ID:5805(NG_008743.1:ヌクレオチド5001~12609)に見つけることができる。これを、以下の表1に再現する。
【0136】
【0137】
配列を検査して、スプライシングに関与するタンパク質因子、特にスプライシング因子である、アルギニン/セリンリッチタンパク質、例えば、SRSF1~SRSF12が標的とするシス調節配列要素モチーフを同定した(表2を参照)。
【0138】
【0139】
探索を、ヒト単球及びマクロファージにおいてスキップされるエキソン3周囲の2つのイントロン内に集中させた。最も意味深い知見を、表3にまとめる。
【0140】
【0141】
【0142】
これら同定されたシス調節配列要素のそれぞれが、PTS遺伝子においてエキソン3スキッピングの調節に役割を担っている可能性があることが想定される。特に、イントロン2内の唯一のSRSF3結合部位であるCTCTTCC(配列番号1の2895~2901)が、SRSF3介在型エキソン3スキッピングに重要な役割を担っている可能性がある。
【0143】
特に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。
【0144】
本明細書において解説される本発明は、本明細書において具体的に開示されていなくとも、いずれかの要素(単数又は複数)、制限(単数又は複数)の不在下で適切に実施することができる。すなわち、例えば、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含有する(containing)」等の用語は、広くかつ特に制限なく読まれなければならない。さらに、本明細書において採用される用語及び表現は、制限の用語ではなく、説明の用語として使用されるものであり、そのような用語及び表現を、示され、説明される特長又はその一部分の任意の等価物の排除として使用する意図はなく、むしろ特許請求される本発明の範囲内で様々な変更が可能であることが理解される。
【0145】
本明細書において言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参照文献は、それぞれが個別に引用することにより本明細書の一部をなすのと同程度に、そのまま全体が明白に引用することにより本明細書の一部をなす。矛盾する場合は、定義も含めて本明細書が優先される。
【配列表】
【国際調査報告】