(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-16
(54)【発明の名称】EGFRvIII結合タンパク質
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20240409BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240409BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240409BHJP
C12N 15/85 20060101ALI20240409BHJP
C12N 15/861 20060101ALI20240409BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20240409BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20240409BHJP
C12N 15/87 20060101ALI20240409BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240409BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240409BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240409BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240409BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20240409BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20240409BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240409BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240409BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240409BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240409BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20240409BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240409BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240409BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240409BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240409BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20240409BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240409BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240409BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/85 Z
C12N15/861 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/867 Z
C12N15/87 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N5/0783
C12P21/02 C
C12P21/08
C12Q1/02
C07K19/00
C07K16/28
C07K14/705
A61P35/00
A61K39/395 T
A61K48/00
A61K31/7088
A61K35/761
A61K35/76
A61K35/17
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508815
(86)(22)【出願日】2022-04-26
(85)【翻訳文提出日】2023-12-06
(86)【国際出願番号】 AU2022050379
(87)【国際公開番号】W WO2022226584
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(32)【優先日】2021-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】514120690
【氏名又は名称】ザ ウォルター アンド イライザ ホール インスティテュート オブ メディカル リサーチ
(71)【出願人】
【識別番号】523403760
【氏名又は名称】マイリオ セラピューティクス プロプライエタリー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】ジェンキンス ミスティ
(72)【発明者】
【氏名】アボット レベッカ
(72)【発明者】
【氏名】クロス ライアン
(72)【発明者】
【氏名】グレイシー フィオナ マーガレット
(72)【発明者】
【氏名】ウッド レベッカ エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】キーフェル ベンジャミン ロス
(72)【発明者】
【氏名】ビースリー マシュー デイビッド
【テーマコード(参考)】
4B063
4B064
4B065
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
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4B063QQ08
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4C084AA13
4C084NA14
4C084ZB26
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4C086AA01
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4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA24
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、概して、ヒト上皮成長因子受容体変異体III(EGFRvIII)に結合するタンパク質に関する。本発明は、EGFRvIII結合タンパク質を含むキメラ抗原受容体(CAR)、CARをコードする核酸およびベクター、ならびにCARを含む細胞にも関する。本発明は、がんなどの疾患を処置および診断する方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む抗体への上皮成長因子受容体変異体III(EGFRvIII)の結合を競合的に阻害する、EGFRvIIIに結合する抗原結合ドメインを含むヒトEGFRvIII結合タンパク質:
それぞれSEQ ID NO:13、14、および15に記載される配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む重鎖可変領域(V
H);ならびに
それぞれSEQ ID NO:16、17、および18に記載される配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む軽鎖可変領域(V
L);または
それぞれSEQ ID NO:19、20、および21に記載される配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む重鎖可変領域(V
H);ならびに
それぞれSEQ ID NO:22、23、および24に記載される配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む軽鎖可変領域(V
L)。
【請求項2】
以下を含む抗体へのEGFRvIIIの結合を競合的に阻害する、請求項1記載のEGFRvIII結合タンパク質:
SEQ ID NO:3に記載されるアミノ酸配列を含むV
HおよびSEQ ID NO:4に記載されるアミノ酸配列を含むV
L;または
SEQ ID NO:5に記載されるアミノ酸配列を含むV
HおよびSEQ ID NO:6に記載されるアミノ酸配列を含むV
L。
【請求項3】
少なくとも約1nMの親和性でヒトEGFRvIIIに結合する、請求項1または2記載のEGFRvIII結合タンパク質。
【請求項4】
以下を含む、請求項1~3のいずれか一項記載のEGFRvIII結合タンパク質:
それぞれSEQ ID NO:7、8、および9に記載される配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む重鎖可変領域(V
H);ならびに/もしくは
それぞれSEQ ID NO:10、11、および12に記載される配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む軽鎖可変領域(V
L);または
それぞれSEQ ID NO:13、14、および15に記載される配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む重鎖可変領域(V
H);ならびに/もしくは
それぞれSEQ ID NO:16、17、および18に記載される配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む軽鎖可変領域(V
L)。
【請求項5】
以下を含む、請求項1~4のいずれか一項記載のEGFRvIII結合タンパク質:
SEQ ID NO:13に対して2つ以下のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含むCDR1、SEQ ID NO:14に対して4つ以下のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含むCDR2、およびSEQ ID NO:15に対して3つ以下のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含むCDR3を含むV
H、ならびに/もしくは
SEQ ID NO:16に対して3つ以下のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含むCDR1、SEQ ID NO:17に対して2つ以下のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含むCDR2、およびSEQ ID NO:18に対して3つ以下のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含むCDR3を含むV
L;または
SEQ ID NO:19に対して2つ以下のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含むCDR1、SEQ ID NO:20に対して4つ以下のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含むCDR2、およびSEQ ID NO:21に対して3つ以下のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含むCDR3を含むV
H、ならびに/もしくは
SEQ ID NO:22に対して3つ以下のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含むCDR1、SEQ ID NO:23に対して2つ以下のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含むCDR2、およびSEQ ID NO:24に対して3つ以下のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含むCDR3を含むV
L。
【請求項6】
以下を含む、請求項1~5のいずれか一項記載のEGFRvIII結合タンパク質:
それぞれSEQ ID NO:13、14、および15に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むV
H;ならびに/もしくは
それぞれSEQ ID NO:16、17、および18に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むV
L;または
それぞれSEQ ID NO:19、20、および21に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むV
H;ならびに/もしくは
それぞれSEQ ID NO:22、23、および24に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むV
L。
【請求項7】
以下を含む、請求項1~6のいずれか一項記載のEGFRvIII結合タンパク質:
SEQ ID NO:3に記載される配列と少なくとも約70%同一の、少なくとも約80%同一の、少なくとも約90%同一の、もしくは少なくとも約95%同一のアミノ酸配列を含むV
H、および/または
SEQ ID NO:4に記載される配列と少なくとも約70%同一の、少なくとも約80%同一の、少なくとも約90%同一の、もしくは少なくとも約95%同一のアミノ酸配列を含むV
L;あるいは
SEQ ID NO:5 に記載される配列と少なくとも約70%同一の、少なくとも約80%同一の、少なくとも約90%同一の、もしくは少なくとも約95%同一のアミノ酸配列を含むV
H、および/または
SEQ ID NO:6に記載される配列と少なくとも約70%同一の、少なくとも約80%同一の、少なくとも約90%同一の、もしくは少なくとも約95%同一のアミノ酸配列を含むV
L。
【請求項8】
以下を含む、請求項1~7のいずれか一項記載のEGFRvIII結合タンパク質:
SEQ ID NO:3に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(V
H)および/もしくはSEQ ID NO:4に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(V
L);または
SEQ ID NO:5に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(V
H)および/もしくはSEQ ID NO:6に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(V
L)。
【請求項9】
V
HおよびV
Lを含み、
該V
HとV
Lが結合して、抗原結合部位を含むFvを形成する、
請求項1~8のいずれか一項記載のEGFRvIII結合タンパク質。
【請求項10】
前記V
Hおよび前記V
Lが単一ポリペプチド鎖中にある、請求項9記載のEGFRvIII結合タンパク質。
【請求項11】
以下を含む、請求項10記載のEGFRvIII結合タンパク質:
単鎖Fvフラグメント(scFv);
二量体scFv(di-scFv);あるいは
抗体の定常領域、フラグメント結晶可能(Fc)領域、または重鎖定常ドメイン(C
H)2および/もしくはC
H3に連結している(i)および/または(ii)の少なくとも1つ。
【請求項12】
二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)である、請求項1~11のいずれか一項記載のEGFRvIII結合タンパク質。
【請求項13】
前記V
LおよびV
Hが別個のポリペプチド鎖中に存在する、請求項9記載のEGFRvIII結合タンパク質。
【請求項14】
以下を含む、請求項13記載のEGFRvIII結合タンパク質:
ダイアボディ;
トリアボディ;
テトラボディ;
Fab;
F(ab’)
2;
Fv;あるいは
抗体の定常領域、Fc領域、またはC
H2および/もしくはC
H3に連結している(i)~(vi)の少なくとも1つ。
【請求項15】
Fc領域を含む、請求項1~14のいずれか一項記載のEGFRvIII結合タンパク質。
【請求項16】
抗体である、請求項15記載のEGFRvIII結合タンパク質。
【請求項17】
別の化合物にコンジュゲートしている、請求項1~16のいずれか一項記載のEGFRvIII結合タンパク質。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項記載のタンパク質および薬学的に許容される担体を含む、組成物。
【請求項19】
請求項1~17のいずれか一項記載の抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む、キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項20】
前記細胞内ドメインが一次シグナル伝達ドメインおよび共刺激ドメインを含む、請求項19記載のCAR。
【請求項21】
前記一次シグナル伝達ドメインが、CD3ゼータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、共通FcRガンマ(FCER1G)、FcRベータ(FcイプシロンRib)、CD79a、CD79b、FcガンマRIIa、DAP10、またはDAP12の一次シグナル伝達ドメインを含む、請求項20記載のCAR。
【請求項22】
前記一次シグナル伝達ドメインがCD3ゼータの一次シグナル伝達ドメインである、請求項21記載のCAR。
【請求項23】
前記共刺激ドメインが、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD27、CD30、CD40、CD134、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83と特異的に結合するリガンド、CDS、ICAM-1、GITR、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRFl)、CD160、CD19、CD4、CD8アルファ、CD8ベータ、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rアルファ、ITGA4、VLAl、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Lyl08)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、NKp44、NKp30、NKp46、NKG2D、またはTNFR2の共刺激ドメインを含む、請求項20~22のいずれか一項記載のCAR。
【請求項24】
前記共刺激ドメインがCD28の共刺激ドメインである、請求項23記載のCAR。
【請求項25】
前記膜貫通ドメインが、CD28、CD3イプシロン、CD3ゼータ、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、KIRDS2、OX40、CD2、CD27、LFA-1(CD11a、CD18)、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、GITR、CD40、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、CD160、CD19、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Ra、ITGA1、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGBl、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、DNAMl(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRT AM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGLl、CDIOO(SEMA4D)、SLAMF6(NTB-A、Lyl08)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、PAG/Cbp、NKp44、NKp30、NKp46、NKG2D、NKG2C、もしくはTNFR2の膜貫通ドメイン、またはT細胞受容体のアルファ、ベータ、もしくはゼータ鎖を含む、請求項19~24のいずれか一項記載のCAR。
【請求項26】
前記膜貫通ドメインがCD28の膜貫通ドメインである、請求項25記載のCAR。
【請求項27】
前記抗原結合ドメインがヒンジ領域によって前記膜貫通ドメインに結合している、請求項19~26のいずれか一項記載のCAR。
【請求項28】
前記ヒンジ領域が、CD8のヒンジ、IgGのヒンジ、IgDのヒンジ、CD28のヒンジ、KIR2DS2のヒンジ、またはグリシン-セリンリンカーを含む、請求項27記載のCAR。
【請求項29】
SEQ ID NO:25またはSEQ ID NO:26に記載される配列と少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%同一の、または100%同一のアミノ酸配列を含む、請求項19~28のいずれか一項記載のCAR。
【請求項30】
請求項1~17のいずれか一項記載の結合タンパク質または請求項19~29のいずれか一項記載のCARをコードする、核酸。
【請求項31】
ヒト細胞での発現のためにコドン最適化されているヌクレオチド配列を含む、請求項30記載の核酸。
【請求項32】
SEQ ID NO:29、30、31、32、33、または34で提供される配列のいずれか1つまたは複数と少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%同一の、または100%同一のヌクレオチド配列を含む、請求項30または31記載の核酸。
【請求項33】
請求項30~32のいずれか一項記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項34】
DNAベクター、RNAベクター、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスもしくはアデノ随伴ウイルスベクター、またはレトロウイルスベクターである、請求項33記載のベクター。
【請求項35】
請求項1~17のいずれか一項記載の結合タンパク質、請求項19~29のいずれか一項記載のCAR、請求項30~32のいずれか一項記載の核酸、または請求項33もしくは34記載のベクターを含む、細胞。
【請求項36】
免疫エフェクター細胞である、請求項35記載の細胞。
【請求項37】
前記免疫エフェクター細胞がT細胞またはNK細胞である、請求項36記載の細胞。
【請求項38】
前記免疫エフェクター細胞がCD8+ T細胞である、請求項37記載の細胞。
【請求項39】
ヒト細胞である、請求項34~38のいずれか一項記載の細胞。
【請求項40】
請求項30~32のいずれか一項記載の核酸、請求項33もしくは34記載のベクター、または請求項35~39のいずれか一項記載の細胞、および薬学的に許容される担体を含む、組成物。
【請求項41】
CARが発現するような条件下で、請求項30~32のいずれか一項記載の核酸または請求項33もしくは34記載のベクターを細胞に導入する工程を含む、CAR発現細胞を作製する方法。
【請求項42】
EGFRvIIIの発現に関連するがんを有する対象を処置する方法であって、請求項1~17のいずれか一項記載の結合タンパク質、請求項18もしくは40記載の組成物、または請求項34~38のいずれか一項記載の細胞を該対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項43】
EGFRvIIIの発現に関連する前記がんが、グリオーマ、髄芽腫、乳がん、卵巣がん、結腸がん、肺がん、または前立腺がんである、請求項42記載の方法。
【請求項44】
EGFRvIIIの発現に関連するがんの処置における使用のための、請求項1~17のいずれか一項記載のEGFRvIII結合タンパク質、請求項18もしくは40記載の組成物、または請求項35~39のいずれか一項記載の細胞。
【請求項45】
EGFRvIIIの発現に関連するがんの処置のための医薬の製造における、請求項1~17のいずれか一項記載のEGFRvIII結合タンパク質、請求項18もしくは40記載の組成物、または請求項35~39のいずれか一項記載の細胞の使用。
【請求項46】
EGFRの過剰発現に関連するがんを有する対象を処置する方法であって、請求項1~17のいずれか一項記載の結合タンパク質、請求項18もしくは40記載の組成物、または請求項35~39のいずれか一項記載の細胞を該対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項47】
EGFRの過剰発現に関連する前記がんが、グリオーマ、膵臓がん、結腸直腸がん、肺がん、乳がん、胃がん、腎臓がん、子宮頸がん、卵巣がん、腺がん、膀胱がん、または頭頸部がんである、請求項46記載の方法。
【請求項48】
EGFRの過剰発現に関連するがんの処置における使用のための、請求項1~17のいずれか一項記載のEGFRvIII結合タンパク質、請求項18もしくは40記載の組成物、または請求項35~39のいずれか一項記載の細胞。
【請求項49】
EGFRの過剰発現に関連するがんの処置のための医薬の製造における、請求項1~17のいずれか一項記載のEGFRvIII結合タンパク質、請求項18もしくは40記載の組成物、または請求項35~39のいずれか一項記載の細胞の使用。
【請求項50】
EGFRvIIIを発現する細胞を検出する方法であって、請求項1~17のいずれか一項記載の結合タンパク質を該細胞を含む試料と接触させ、該結合タンパク質とEGFRvIIIの間の結合を検出する工程を含む、方法。
【請求項51】
以下の工程を含む、EGFRvIIIの発現に関連するがんを有すると対象を診断する方法:
(a)細胞を含む試料を該対象から得る工程;
(b)該試料を請求項1~17のいずれか一項記載の結合タンパク質と接触させ、該結合タンパク質とEGFRvIIIの間の結合を検出することによって、該細胞がEGFRvIIIを発現するかどうかを決定する工程;および
(c)工程(b)で結合が検出された場合に、EGFRvIIIの発現に関連する該がんを有すると該対象を診断する工程。
【請求項52】
EGFRを過剰発現する細胞を検出する方法であって、請求項1~17のいずれか一項記載の結合タンパク質を該細胞を含む試料と接触させ、該結合タンパク質とEGFRの間の結合を検出する工程を含む、方法。
【請求項53】
以下の工程を含む、EGFRの過剰発現に関連するがんを有すると対象を診断する方法:
(a)細胞を含む試料を該対象から得る工程;
(b)該試料を請求項1~17のいずれか一項記載の結合タンパク質と接触させ、該結合タンパク質とEGFRの間の結合を検出することによって、該細胞がEGFRを過剰発現するかどうかを決定する工程;および
(c)工程(b)で結合が検出された場合に、EGFRの過剰発現に関連する該がんを有すると該対象を診断する工程。
【請求項54】
請求項19~29のいずれか一項記載のCARを含む免疫エフェクター細胞を活性化する方法であって、該免疫エフェクター細胞をEGFRvIIIと接触させる工程を含む、方法。
【請求項55】
前記免疫エフェクター細胞を前記対象に投与する工程をさらに含む、請求項54記載の方法。
【請求項56】
前記免疫エフェクター細胞をインビトロでEGFRvIIIと接触させる、請求項54記載の方法。
【請求項57】
個々にまたは集団的に、本明細書に開示されるかまたは本出願の明細書に示される、前記工程、特色、整数、組成物、および/または化合物、ならびに前記工程または特色の2つ以上の任意のおよびすべての組み合わせ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年に4月26日出願されたAU2021901227および2021年4月26日に出願されたAU2021901226の優先権を主張し、これらのそれぞれの全内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、概して、ヒト上皮成長因子受容体変異体III(EGFRvIII)に結合するタンパク質に関する。本発明は、EGFRvIII結合タンパク質を含むキメラ抗原受容体(CAR)、CARをコードする核酸およびベクター、ならびにCARを含む細胞にも関する。本発明は、がんなどの疾患を処置および診断する方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
EGFRvIIIは、ヒト腫瘍で観察される、EGFRの最も一般的な突然変異型変異体であり、新たに診断される多形膠芽腫(GBM)の症例の約30%で検出され得る。GBMは最も侵攻性かつ悪性の成人脳腫瘍であり、5年予想生存率は5%である。手術、化学療法、および放射線療法の現在の処置では、ここ数十年にわたって生存が改善されていない。
【0004】
EGFRvIII突然変異は、ネズミ科の動物の線維芽細胞内に、ならびに乳がん細胞、卵巣がん細胞、結腸がん細胞、肺がん細胞、および前立腺がん細胞内に存在することも示されている。
【0005】
EGFRvIII中に存在する突然変異は、エクソン2から7までの801塩基対のインフレーム欠失であり、これにより、コドンが分割され、接合部にグリシン残基が作り出され、その結果、腫瘍特異的かつ免疫原性のネオエピトープが生じ、このタンパク質が構成的活性型になる。この突然変異は、放射線および化学療法に対する抵抗性も与え、この突然変異を有する患者の予後転帰をさらに悪くする。
【0006】
したがって、がん療法で使用することができる新しいEGFRvIII結合分子が必要である。
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、高親和性でEGFRvIIIに結合する結合タンパク質を特定した。これらの結合タンパク質は、単独で(例えば、単離された抗体もしくはそのフラグメントとして)または例えばCAR-T細胞療法のためのキメラ抗原受容体(CAR)コンストラクト内の両方で使用することができる。
【0008】
したがって、一局面では、本発明は、少なくとも約1nMの親和性でヒト上皮成長因子受容体変異体III(EGFRvIII)に結合する抗原結合部位を含む結合タンパク質を提供する。いくつかの態様では、結合タンパク質は、少なくとも約0.75nM、少なくとも約0.5nM、少なくとも約0.25nM、少なくとも約0.1nM、少なくとも約0.075nM、少なくとも約0.05nM、少なくとも約0.025nM、または少なくとも約0.01nMの親和性で、EGFRvIIIに結合する。
【0009】
いくつかの態様では、親和性は、結合タンパク質が固定化され、可溶性EGFRvIIIが結合タンパク質と接触させられるアッセイで決定される。一態様では、可溶性EGFRvIIIはEGFRvIIIの細胞外ドメイン(例えば、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインが除去されているEGFRvIIIコンストラクト)である。
【0010】
一態様では、EGFRvIIIに対する結合タンパク質の親和性は、野生型上皮成長因子受容体(EGFR)に対するその親和性よりも、少なくとも20倍、少なくとも100倍、または少なくとも1000倍強い。一態様では、結合タンパク質が固定化され、可溶性EGFRが結合タンパク質と接触させられるアッセイで、結合タンパク質はEGFRに検出可能な程度に結合しない。一態様では、EGFRvIIIに対する結合タンパク質の親和性は、野生型上皮成長因子受容体(EGFR)に対するその親和性よりも、少なくとも20倍、少なくとも40倍、少なくとも60倍、少なくとも80倍、少なくとも100倍、少なくとも200倍、少なくとも300倍、少なくとも400倍、少なくとも500倍、少なくとも600倍、少なくとも800倍、少なくとも1000倍、少なくとも5000倍、または少なくとも10000倍強い。好都合なことに、そのような態様では、結合タンパク質は、非がん性細胞で発現するEGFRに対する親和性がより低い結果として、腫瘍特異性がより高い。
【0011】
本発明者らは、いくつかの態様では、結合タンパク質は、がん細胞の表面で過剰発現した場合のEGFRにも結合することができることを発見した。したがって、いくつかの態様では、結合タンパク質は、EGFRを過剰発現するがん細胞上のEGFRに結合する。いくつかの態様では、結合タンパク質は、EGFR遺伝子の増幅によりEGFRを過剰発現するがん細胞上のEGFRに結合する。一態様では、結合タンパク質は、異常EGFRまたは過剰発現EGFRを発現する細胞(例えば、がん細胞)上に露出しているが、野生型細胞上に露出していないエピトープに結合する。一態様では、結合タンパク質は、がん細胞上に存在するが、野生型細胞では検出不可能であるEGFRに結合する。好都合なことに、これらの態様では、結合タンパク質は、(例えば、遺伝子増幅の結果として)EGFRを過剰発現するがんおよびEGFRvIII変異体を発現するがんに対する療法で使用することができ、それによって、これらの結合タンパク質について、潜在的な治療適応症が拡大される。
【0012】
いくつかの態様では、結合タンパク質は膠芽腫細胞または上皮細胞上のEGFRに結合する。一態様では、がん細胞が過剰発現するEGFRに対する結合タンパク質の親和性は、野生型細胞が発現するEGFRに対する親和性よりも、少なくとも20倍、少なくとも100倍、もしくは少なくとも1000倍強く、または結合タンパク質は、野生型細胞が発現するEGFRに検出可能な程度に結合しない。親和性は、U87、U251またはA431などの細胞株を用いて前もって形成されたアッセイによって評価することができる。
【0013】
いくつかの態様では、結合タンパク質は、SEQ ID NO:3に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)およびSEQ ID NO:4に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含むタンパク質が結合するものと同じ、EGFRvIII中のエピトープに結合する。
【0014】
本発明の一局面では、以下を含む抗体へのEGFRvIIIの結合を競合的に阻害する、EGFRvIIIに結合する抗原結合ドメインを含むヒト上皮成長因子受容体変異体III(EGFRvIII)結合タンパク質が提供される:
それぞれSEQ ID NO:13、14、および15に記載される配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む重鎖可変領域(VH);ならびに
それぞれSEQ ID NO:16、17、および18に記載される配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む軽鎖可変領域(VL);または
それぞれSEQ ID NO:19、20、および21に記載される配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む重鎖可変領域(VH);ならびに
それぞれSEQ ID NO:22、23、および24に記載される配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)。
【0015】
一態様では、結合タンパク質は、以下を含む抗体へのEGFRvIIIの結合を競合的に阻害する:
SEQ ID NO:3に記載されるアミノ酸配列を含むVHおよびSEQ ID NO:4に記載されるアミノ酸配列を含むVL;または
SEQ ID NO:5に記載されるアミノ酸配列を含むVHおよびSEQ ID NO:6に記載されるアミノ酸配列を含むVL。
【0016】
一態様では、EGFRvIII結合タンパク質は、少なくとも約1nMの親和性でヒトEGFRvIIIに結合する。
【0017】
一態様では、結合タンパク質は以下を含む:
それぞれSEQ ID NO:7、8、および9に記載される配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む重鎖可変領域(VH);ならびに/もしくは
それぞれSEQ ID NO:10、11、および12に記載される配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む軽鎖可変領域(VL);または
それぞれSEQ ID NO:13、14、および15に記載される配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む重鎖可変領域(VH);ならびに/もしくは
それぞれSEQ ID NO:16、17、および18に記載される配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)。
【0018】
一態様では、結合タンパク質は以下を含む:
SEQ ID NO:13に対して2つ以下のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含むCDR1、SEQ ID NO:14に対して4つ以下のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含むCDR2、およびSEQ ID NO:15に対して3つ以下のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含むCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに/もしくは
SEQ ID NO:16に対して3つ以下のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含むCDR1、SEQ ID NO:17に対して2つ以下のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含むCDR2、およびSEQ ID NO:18に対して3つ以下のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含むCDR3を含む軽鎖可変領域(VL);または
SEQ ID NO:19に対して2つ以下のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含むCDR1、SEQ ID NO:20に対して4つ以下のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含むCDR2、およびSEQ ID NO:21に対して3つ以下のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含むCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに/もしくは
SEQ ID NO:22に対して3つ以下のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含むCDR1、SEQ ID NO:23に対して2つ以下のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含むCDR2、およびSEQ ID NO:24に対して3つ以下のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含むCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)。
【0019】
一態様では、上で言及したCDR配列は、記載されるSEQ ID NOに対して4つ以下、3つ以下、2つ以下、または1つ以下のアミノ酸置換を有する。
【0020】
一態様では、結合タンパク質は以下を含む:
それぞれSEQ ID NO:13、14、および15に記載される配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む重鎖可変領域(VH);ならびに/もしくは
それぞれSEQ ID NO:16、17、および18に記載される配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む軽鎖可変領域(VL);または
それぞれSEQ ID NO:19、20、および21に記載される配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む重鎖可変領域(VH);ならびに/もしくは
それぞれSEQ ID NO:22、23、および24に記載される配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)。
【0021】
一態様では、結合タンパク質は以下を含む:
それぞれSEQ ID NO:19、20、および21に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVH、ならびに
それぞれSEQ ID NO:19、20、および21に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVL。
【0022】
一態様では、結合タンパク質は以下を含む:
SEQ ID NO:3に記載される配列と少なくとも約70%同一の、少なくとも約80%同一の、少なくとも約90%同一の、もしくは少なくとも約95%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および/または
SEQ ID NO:4に記載される配列と少なくとも約70%同一の、少なくとも約80%同一の、少なくとも約90%同一の、または少なくとも約95%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL);あるいは
SEQ ID NO:5に記載される配列と少なくとも約70%同一の、少なくとも約80%同一の、少なくとも約90%同一の、もしくは少なくとも約95%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および/または
SEQ ID NO:6に記載される配列と少なくとも約70%同一の、少なくとも約80%同一の、少なくとも約90%同一の、または少なくとも約95%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)。
【0023】
一態様では、結合タンパク質は以下を含む:
SEQ ID NO:3に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)および/もしくはSEQ ID NO:4に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL);または
SEQ ID NO:5に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)および/もしくはSEQ ID NO:6に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)。
【0024】
一態様では、結合タンパク質は、SEQ ID NO:3に記載されるアミノ酸配列を含むVHおよびSEQ ID NO:4に記載されるアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0025】
一態様では、結合タンパク質は、SEQ ID NO:5に記載されるアミノ酸配列を含むVHおよびSEQ ID NO:6に記載されるアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0026】
いくつかの態様では、結合タンパク質は以下を含む:
(i)SEQ ID NO:41に対して2つ以下のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含むCDR1、SEQ ID NO:42に対して4つ以下のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含むCDR2、およびSEQ ID NO:43に対して3つ以下のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含むCDR3を含むVH、ならびに/または
(ii)SEQ ID NO:44に対して3つ以下のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含むCDR1、SEQ ID NO:45に対して2つ以下のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含むCDR2、およびSEQ ID NO:46に対して3つ以下のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含むCDR3を含むVL。一態様では、上で言及したCDR配列は、記載されるSEQ ID NOに対して4つ以下、3つ以下、2つ以下、または1つ以下のアミノ酸置換を有する。
【0027】
いくつかの態様では、結合タンパク質は以下を含む:
(i)それぞれSEQ ID NO:41、42、および43に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVH、ならびに/または
(ii)それぞれSEQ ID NO:44、45、および46に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVL。
【0028】
いくつかの態様では、結合タンパク質は以下を含む:
(i)それぞれSEQ ID NO:41、42、および43に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVH、ならびに
(ii)それぞれSEQ ID NO:44、45、および46に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVL。
【0029】
いくつかの態様では、結合タンパク質は以下を含む:
(i)SEQ ID NO:47に対して2つ以下のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含むCDR1、SEQ ID NO:48に対して4つ以下のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含むCDR2、およびSEQ ID NO:49に対して3つ以下のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含むCDR3を含むVH、ならびに/または
(ii)SEQ ID NO:50に対して3つ以下のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含むCDR1、SEQ ID NO:51に対して2つ以下のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含むCDR2、およびSEQ ID NO:52に対して3つ以下のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含むCDR3を含むVL。
【0030】
一態様では、上で言及したCDR配列は、記載されるSEQ ID NOに対して4つ以下、3つ以下、2つ以下、または1つ以下のアミノ酸置換を有する。
【0031】
一態様では、上で言及したCDR配列は、記載されるSEQ ID NOに対して4つ以下、3つ以下、2つ以下、または1つ以下のアミノ酸置換を有する。
【0032】
いくつかの態様では、結合タンパク質は以下を含む:
(i)それぞれSEQ ID NO:47、48、および49に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVH、ならびに/または
(ii)それぞれSEQ ID NO:50、51、および52に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVL。
【0033】
いくつかの態様では、結合タンパク質は以下を含む:
(i)それぞれSEQ ID NO:47、48、および49に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVH、ならびに
(ii)それぞれSEQ ID NO:50、51、および52に記載されるアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3を含むVL。
【0034】
いくつかの態様では、結合タンパク質はVHおよびVLを含み、VHとVLが結合して、抗原結合部位を含むFvを形成する。
【0035】
いくつかの態様では、VHおよびVLは単一ポリペプチド鎖中にある。
【0036】
いくつかの態様では、結合タンパク質は以下を含む:
(i)単鎖Fvフラグメント(scFv);
(ii)二量体scFv(di-scFv);あるいは
(iii)抗体の定常領域、フラグメント結晶可能(Fc)領域、または重鎖定常ドメイン(CH)2および/もしくはCH3に連結している(i)および/または(ii)の少なくとも1つ。
【0037】
いくつかの態様では、結合タンパク質はscFvを含む。
【0038】
いくつかの態様では、結合タンパク質は、SEQ ID NO:27に記載される配列と少なくとも約70%同一の、少なくとも約80%同一の、少なくとも約90%同一の、または少なくとも約95%同一のアミノ酸配列を含む。
【0039】
いくつかの態様では、結合タンパク質は、SEQ ID NO:27に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0040】
いくつかの態様では、結合タンパク質は二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)である。
【0041】
いくつかの態様では、VLおよびVHは別個のポリペプチド鎖中に存在する。
【0042】
いくつかの態様では、結合タンパク質は以下を含む:
(i)ダイアボディ;
(ii)トリアボディ;
(iii)テトラボディ;
(iv)Fab;
(v)F(ab’)2;
(vi)Fv;あるいは
(vii)抗体の定常領域、Fc領域、またはCH2および/もしくはCH3に連結している(i)~(vi)の少なくとも1つ。
【0043】
いくつかの態様では、結合タンパク質はFc領域を含む。一態様では、結合タンパク質は抗体である。
【0044】
いくつかの態様では、結合タンパク質は別の化合物にコンジュゲートしている。いくつかの態様では、結合タンパク質は半減期延長部分にコンジュゲートしている。いくつかの態様では、結合タンパク質はポリマー(例えば、PEG)にコンジュゲートしている。いくつかの態様では、結合タンパク質は細胞傷害性作用物質にコンジュゲートしている。
【0045】
いくつかの態様では、結合タンパク質は、キメラである、脱免疫化されている、ヒト化されている、ヒトのものである、または霊長類化されている。いくつかの態様では、結合タンパク質はヒトタンパク質である。
【0046】
別の局面では、本発明は、本発明の結合タンパク質および薬学的に許容される担体を含む組成物を提供する。
【0047】
別の局面では、本発明は、本発明の結合タンパク質を含む細胞を提供する。
【0048】
好都合なことに、本発明者らは、本発明の結合タンパク質をキメラ抗原受容体(CAR)に組み込みこんで、EGFRvIII発現細胞をターゲティングするためのCAR発現細胞を生成することができることを発見した。したがって、別の局面では、本発明は、本発明の抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含むCARを提供する。
【0049】
いくつかの態様では、細胞内ドメインは、一次シグナル伝達ドメインおよび共刺激ドメインを含む。一態様では、細胞内ドメインは2つ以上の共刺激ドメインを含む。代替の態様では、CARは共刺激ドメインを含まない。
【0050】
いくつかの態様では、一次シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、共通FcRガンマ(FCER1G)、FcRベータ(FcイプシロンRib)、CD79a、CD79b、FcガンマRIIa、DAP10、またはDAP12の一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0051】
いくつかの態様では、一次シグナル伝達ドメインはCD3ゼータの一次シグナル伝達ドメインである。いくつかの態様では、一次シグナル伝達ドメインは、SEQ ID NO:35に記載される配列と少なくとも約70%同一の、少なくとも約80%同一の、少なくとも約90%同一の、少なくとも約95%、または約100%同一のアミノ酸配列を含む。
【0052】
いくつかの態様では、共刺激ドメインは、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD27、CD30、CD40、CD134、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83と特異的に結合するリガンド、CDS、ICAM-1、GITR、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRFl)、CD160、CD19、CD4、CD8アルファ、CD8ベータ、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rアルファ、ITGA4、VLAl、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Lyl08)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、NKp44、NKp30、NKp46、NKG2D、またはTNFR2の共刺激ドメインを含む。
【0053】
いくつかの態様では、共刺激ドメインはCD28の共刺激ドメインである。
【0054】
いくつかの態様では、共刺激ドメインは、SEQ ID NO:36に記載される配列と少なくとも約70%同一の、少なくとも約80%同一の、少なくとも約90%同一の、少なくとも約95%、または約100%同一のアミノ酸配列を含む。
【0055】
いくつかの態様では、膜貫通ドメインは、CD28、CD3イプシロン、CD3ゼータ、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、KIRDS2、OX40、CD2、CD27、LFA-1(CD11a、CD18)、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、GITR、CD40、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、CD160、CD19、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Ra、ITGA1、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGBl、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、DNAMl(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRT AM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGLl、CDIOO(SEMA4D)、SLAMF6(NTB-A、Lyl08)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、PAG/Cbp、NKp44、NKp30、NKp46、NKG2D、NKG2C、もしくはTNFR2の膜貫通ドメイン、またはT細胞受容体のアルファ、ベータ、もしくはゼータ鎖を含む。
【0056】
いくつかの態様では、膜貫通ドメインはCD28の膜貫通ドメインである。他の態様では、膜貫通ドメインは、SEQ ID NO:37に記載される配列と少なくとも約70%同一の、少なくとも約80%同一の、少なくとも約90%同一の、少なくとも約95%の、または約100%同一のアミノ酸配列を含む。
【0057】
いくつかの態様では、抗原結合ドメインは、ヒンジ領域によって膜貫通ドメインに結合している。いくつかの態様では、ヒンジ領域は、CD8のヒンジ、IgGのヒンジ、IgDのヒンジ、CD28のヒンジ、KIR2DS2のヒンジ、またはグリシン-セリンリンカーを含む。
【0058】
いくつかの態様では、ヒンジ領域はCD8アルファのヒンジ領域を含む。いくつかの態様では、ヒンジ領域は、SEQ ID NO:38と少なくとも70%または少なくとも80%または少なくとも90%、少なくとも95%または約100%同一のアミノ酸配列を含む。
【0059】
いくつかの態様では、CARはリーダー配列をさらに含む。いくつかの態様では、リーダー配列はヒトリーダー配列である。いくつかの態様では、リーダー配列はN末端リーダー配列である。いくつかの態様では、リーダー配列はIgGカッパリーダー配列、IgG2重鎖リーダー配列、IL2リーダー配列、またはIgK VIIIリーダー配列である。いくつかの態様では、リーダー配列はSEQ ID NO:39と少なくとも70%または少なくとも80%または少なくとも90%、少なくとも95%、または約100%同一のアミノ酸配列を含む。他の適切なリーダー配列は、当業者に公知であろう。いくつかの態様では、リーダー配列は、細胞で発現する場合、細胞内プロセシングおよび細胞膜へのCARの局在化の間にCARから切断される。
【0060】
いくつかの態様では、CARは1つより多い抗原結合ドメインを含む。したがって、いくつかの態様では、CARは2つ以上の抗原結合ドメインを含む多重特異性CARであり、抗原結合ドメインのうちの1つは、本発明の結合タンパク質を含む。2つ以上の抗原結合ドメインは、同じまたは異なる標的に結合することができる。
【0061】
一態様では、CARは、SEQ ID NO:25またはSEQ ID NO:26に記載される配列と少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%同一のアミノ酸配列を含む。
【0062】
一態様では、CARはSEQ ID NO:25またはSEQ ID NO:26に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0063】
別の局面では、本発明は、本発明の結合タンパク質または本発明のCARをコードする核酸を提供する。
【0064】
一態様では、核酸は、ヒト細胞での発現のためにコドン最適化されているヌクレオチド配列を含む。
【0065】
一態様では、核酸は、SEQ ID NO:29、30、31、32、33、または34で提供される配列のいずれか1つまたは複数と少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%同一のヌクレオチド配列を含む。
【0066】
一態様では、核酸は、SEQ ID NO:29、30、31、32、33、または34に提供されるヌクレオチド配列のいずれか1つまたは複数を含む。
【0067】
一態様では、核酸は、以下を含む
i)SEQ ID NO:29と少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%同一のヌクレオチド配列、および
ii)SEQ ID NO:30と少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%同一のヌクレオチド配列。
【0068】
一態様では、核酸は、SEQ ID NO:31と少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%同一のヌクレオチド配列を含む。
【0069】
一態様では、核酸は、SEQ ID NO:33と少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%同一のヌクレオチド配列を含む。
【0070】
一態様では、核酸は、SEQ ID NO:34と少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%同一のヌクレオチド配列を含む。
【0071】
別の局面では、本発明は、本発明の核酸を含むベクターを提供する。一態様では、ベクターは、DNAベクター、RNAベクター、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスもしくはアデノ随伴ウイルスベクター、またはレトロウイルスベクターである。いくつかの態様では、本発明の核酸は、ベクター中でプロモーターに機能的に連結されている。
【0072】
別の局面では、本発明は、本発明の結合タンパク質、本発明のCAR、本発明の核酸、または本発明のベクターを含む細胞を提供する。同様の局面では、本発明は、本発明の結合タンパク質またはCARを発現する細胞を提供する。
【0073】
いくつかの態様では、細胞は免疫エフェクター細胞である。いくつかの態様では、免疫エフェクター細胞はT細胞またはNK細胞である。いくつかの態様では、免疫エフェクター細胞はCD8+T細胞である。いくつかの態様では、免疫エフェクター細胞はCD4+T細胞である。いくつかの態様では、細胞は哺乳動物細胞である。いくつかの態様では、細胞はヒト細胞である。
【0074】
一態様では、本明細書に記載される細胞は、第2の(またはそれ以上の)CAR、例えば、例えば同じ標的(すなわち、EGFRvIII)または異なる標的に対して異なる抗原結合ドメインを含む第2のCARをさらに含むことができる。一態様では、第2のCARは、第1のCARの標的と同じがん細胞型で発現している標的に結合する抗原結合ドメインを含む。
【0075】
一態様では、細胞内の第2のCARは阻害性CARであり、阻害性CARは、阻害性分子の抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む。一態様では、阻害性CARは、疾患細胞ではなく正常細胞、例えば、第1のCARの標的も発現する正常細胞で見出される標的に結合する抗原結合ドメインを含む。阻害性分子は、以下の1つまたは複数から選択され得る:PD1、PD-L1、CTLA-4、TIM-3、LAG-3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4、TGFベータ、CEACAM-1、CEACAM-3、およびCEACAM-5。一態様では、第2のCARは、PD1の細胞外ドメインまたはそのフラグメントを含む。
【0076】
別の局面では、本発明は、本発明の核酸、本発明のベクター、または本発明の細胞、および薬学的に許容される担体を含む組成物を提供する。
【0077】
別の局面では、本発明は、CAR発現細胞を作製する方法であって、CARが発現するような条件下で、本発明の核酸または本発明のベクターを細胞に導入する工程を含む方法を提供する。
【0078】
ある場合には、細胞に核酸またはベクターを導入する前に調節性T細胞の量を減らすかまたは調節性T細胞を除去することが有利であり得る。したがって、いくつかの態様では、CAR発現細胞を作製する方法は、以下の工程を含む:
a)調節性T細胞を含む細胞の集団を提供する工程;および
b)集団から調節性T細胞を除去し、それによって、T調節性枯渇細胞(T regulatory-depleted cells)の集団を提供する工程;および
c)CARが発現するようにT調節性枯渇細胞の集団に核酸または本発明のベクターを導入する工程。好都合なことに、そのような方法は、免疫エフェクター細胞、例えば、CD4+T細胞およびCD8+T細胞であるCAR発現細胞の集団を生成するのに使用することができる。
【0079】
いくつかの態様では、調節性T細胞は、抗CD25抗体または抗GITR抗体を使用して、細胞の集団から除去される。
【0080】
ある特定の態様では、方法は、CARをコードする核酸分子を導入した後に細胞の集団を拡大増殖する工程をさらに含む。
【0081】
いくつかの態様では、細胞の集団は、CD3/TCR複合体関連シグナルを刺激する作用物質および/または細胞の表面上の共刺激分子を刺激するリガンドの存在下で細胞を培養することによって拡大増殖される。作用物質は、抗CD3抗体もしくはそのフラグメント、および/または抗CD28抗体もしくはそのフラグメントとコンジュゲートしたビーズであってもよい。
【0082】
いくつかの態様では、細胞の集団は、フローサイトメトリーによって測定した場合に、14日の拡大増殖期間にわたって少なくとも200倍、250倍、300倍、または350倍細胞を増加させる、1種または複数種のインターロイキンを含む適切な培地中で拡大増殖される。
【0083】
他の態様では、細胞の集団は、IL-15および/またはIL-7の存在下で拡大増殖される。
【0084】
ある特定の態様では、方法は、細胞を拡大増殖した後に細胞の集団を凍結保存する工程をさらに含む。
【0085】
別の局面では、本発明は、EGFRvIIIの発現に関連するがんを有する対象を処置する方法であって、本発明の結合タンパク質、本発明の組成物、または本発明の細胞を対象に投与する工程を含む方法を提供する。
【0086】
関連した局面では、本発明は、EGFRvIIIの発現に関連するがんの処置における使用のための、本発明の結合タンパク質、本発明の組成物、または本発明の細胞を提供する。
【0087】
別の関連した局面では、本発明は、EGFRvIIIの発現に関連するがんの処置のための医薬の製造における、本発明の結合タンパク質、本発明の組成物、または本発明の細胞の使用を提供する。
【0088】
いくつかの態様では、本発明の細胞の集団が投与される。いくつかの態様では、対象に投与される細胞は同種異系細胞または自己細胞である。いくつかの態様では、細胞は、機能的T細胞受容体(TCR)もしくは機能的ヒト白血球抗原(HLA)の発現を欠くか、またはこれらは低発現である。この文脈でのフレーズ「低発現」は、細胞シグナル伝達に影響を及ぼすのに不十分である発現量、例えば、その抗原の存在下で細胞を活性化するのに不十分であるTCRの発現量を指す。好都合なことに、そのような細胞は、CARによって認識される抗原に対して特異的である。
【0089】
いくつかの態様では、処置は、細胞の有効性を高める作用物質を投与する工程を含む。いくつかの態様では、作用物質は以下の1つまたは複数から選択される:
a)プロテインホスファターゼ阻害剤;
b)キナーゼ阻害剤;
c)サイトカイン;
d)免疫阻害性分子の阻害剤;または
e)調節性T細胞のレベルまたは活性を低下させる作用物質。
【0090】
いくつかの態様では、EGFRvIIIの発現に関連するがんは、肺がん、乳がん、結腸直腸がん、前立腺がん、卵巣がん、皮膚がん、黒色腫、胃がん、膵臓がん、肝臓がん、脳がん、膠芽腫、神経芽細胞腫、血液がん、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性新生物、副甲状腺がん、腎臓がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺(savilary gland)がん、肉腫、T細胞リンパ腫、咽頭がん、胸腺腫、胸腺癌腫、ウィルムス腫瘍、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、メルケル細胞がん、食道がん、膀胱がん、胆管がん、骨がん、ユーイング肉腫、骨肉腫、悪性線維性組織球腫、または多発性骨髄腫である。
【0091】
いくつかの態様では、EGFRvIIIの発現に関連するがんは、グリオーマ、髄芽腫、乳がん、卵巣がん、結腸がん、肺がん、または前立腺がんである。いくつかの態様では、がんは、膠芽腫;乳がん、卵巣がん、肺がん;頭頸部扁平上皮がん;髄芽腫、結腸直腸がん、前立腺がん、または膀胱がんである。
【0092】
いくつかの態様では、EGFRvIIIの発現に関連するがんは、膠芽腫(多形膠芽腫、GBMとしても公知である)である。
【0093】
いくつかの態様では、対象は哺乳動物である。いくつかの態様では、対象はヒトである。他の態様では、対象は非ヒト哺乳動物である。
【0094】
本明細書に記載されるように、本発明者らは、いくつかの態様では、本発明の結合タンパク質または細胞が、例えば遺伝子増幅によりEGFRを過剰発現するがん細胞に対しても有効であることを発見した。したがって、別の局面では、本発明は、EGFRの過剰発現に関連するがんを有する対象を処置する方法であって、本発明の結合タンパク質、本発明の組成物、または本発明の細胞を対象に投与する工程を含む方法を提供する。
【0095】
関連した局面では、本発明は、EGFRの過剰発現に関連するがんの処置における使用のための、本発明の結合タンパク質、本発明の組成物、または本発明の細胞を提供する。
【0096】
別の関連した局面では、本発明は、EGFRの過剰発現に関連するがんの処置のための医薬の製造における、本発明の結合タンパク質、本発明の組成物、または本発明の細胞の使用を提供する。
【0097】
いくつかの態様では、EGFRの過剰発現に関連するがんは、肺がん、乳がん、結腸直腸がん、前立腺がん、卵巣がん、皮膚がん、黒色腫、胃がん、膵臓がん、肝臓がん、脳がん、膠芽腫、神経芽細胞腫、血液がん、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性新生物、副甲状腺がん、腎臓がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、肉腫、T細胞リンパ腫、咽頭がん、胸腺腫、胸腺癌腫、ウィルムス腫瘍、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、メルケル細胞がん、食道がん、膀胱がん、胆管がん、骨がん、ユーイング肉腫、骨肉腫、悪性線維性組織球腫、または多発性骨髄腫である。
【0098】
いくつかの態様では、EGFRの過剰発現に関連するがんは、グリオーマ、膵臓がん、結腸直腸がん、肺がん、乳がん、胃がん、腎臓がん、子宮頸がん、卵巣がん、腺がん、膀胱がん、または頭頸部がんである。
【0099】
いくつかの態様では、EGFRの過剰発現に関連するがんは膠芽腫である。
【0100】
別の局面では、本発明は、EGFRvIIIを発現する細胞を検出する方法であって、本発明の結合タンパク質を細胞を含む試料と接触させ、結合タンパク質とEGFRvIIIの間の結合を検出する工程を含む方法を提供する。
【0101】
関連した局面では、本発明は、以下の工程を含む、EGFRvIIIの発現に関連するがんを有すると対象を診断する方法を提供する
a)細胞を含む試料を対象から得る工程;
b)試料を本発明の結合タンパク質と接触させ、結合タンパク質とEGFRvIIIの間の結合を検出することによって、細胞がEGFRvIIIを発現するかどうかを決定する工程;および
c)工程b)で結合が検出された場合に、EGFRvIIIの発現に関連するがんを有すると対象を診断する工程。
【0102】
別の局面では、本発明は、EGFRを過剰発現する細胞を検出する方法であって、本発明の結合タンパク質を細胞を含む試料と接触させ、結合タンパク質とEGFRの間の結合を検出する工程を含む方法を提供する。
【0103】
関連した局面では、本発明は、以下の工程を含む、EGFRの過剰発現に関連するがんを有すると対象を診断する方法を提供する
a)細胞を含む試料を対象から得る工程;
b)本発明の結合タンパク質と試料を接触させ、結合タンパク質とEGFRの間の結合を検出することによって、細胞がEGFRを過剰発現するかどうかを決定する工程;および
c)工程b)で結合が検出された場合に、EGFRの過剰発現に関連するがんを有すると対象を診断する工程。
【0104】
別の局面では、本発明は、本発明のCARを含む免疫エフェクター細胞を活性化する方法であって、免疫エフェクター細胞をEGFRvIIIと接触させる工程を含む方法を提供する。
【0105】
いくつかの態様では、免疫エフェクター細胞は、対象においてEGFRvIIIと接触させる。いくつかの態様では、方法は、免疫エフェクター細胞を対象に投与する工程をさらに含む。いくつかの態様では、免疫エフェクター細胞は、インビトロでEGFRvIIIと接触させる。
【0106】
本明細書における任意の態様は、特に記載のない限り、任意の他の態様に準用すると解釈されたい。例えば、当業者が理解すると考えられるように、上で概要が述べられた結合タンパク質の例は、本発明のCAR、核酸、ベクター、および方法に等しく適用される。
【0107】
本発明は、例示のみの目的が意図される本明細書に記載される特定の態様によって、範囲が制限されるものではない。機能的に同等の生成物、組成物、および方法は、本明細書に記載されるように、明らかに本発明の範囲内である。
【0108】
本明細書全体を通して、特に記載のない限り、または文脈上別段必要でない限り、単一の工程、物質の組成物、一群の工程、または一群の物質の組成物への言及は、これらの工程、物質の組成物、一群の工程、または一群の物質の組成物の1つおよび複数(すなわち、1つまたは複数)を包含すると解釈されたい。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【
図1】
図1-最初の抗EGFRvIII scFvクローンのスクリーニング。ディスプレイライブラリーを使用して特定された13個の高親和性抗EGFRvIII scFvクローンを、野生型EGFRと比較して、EGFRvIIIに対する特異性について評価した。ビオチン化scFvをストレプトアビジンDynabeadsに最初に結合させ、次いで、これを洗浄し、遊離ビオチンでブロッキングしてから、ATTO488(y軸の蛍光。蛍光の増大が結合の増大を示す)で標識した可溶性EGFRvIIIまたはEGFRに結合させた。無関係のビオチン化scFvを陰性対照(「1」および「2」と表示されたバー)として使用した。バー3~28は、13個の異なる抗EGFRvIII scFvクローンに対応し、奇数はEGFRvIIIへの結合に対応し、偶数はWT EGFRの結合に対応する。WT EGFRと比較して、EGFRvIIIに対して最高の特異性を示した2つのscFvは、GCT01(バー3および4)ならびにGCT02(バー13および14)であった。
【
図2】
図2-GCT01およびGCT02の特異性および親和性を決定するための表面プラスモン共鳴データの分析。EGFRタンパク質(上部)およびEGFRvIIIタンパク質(下部)に対するGFP、GCT01 scFv、およびGCT02 scFvの応答単位を示す表面プラスモン共鳴(SPR)データ。
【
図3】
図3-細胞の表面で発現しているEGFRvIIIへの結合の分析。ヒト細胞株のパネルの表面で発現しているEGFRvIIIまたはEGFRタンパク質への組換えGCT01およびGCT02の結合を示すフローサイトメトリー。
【
図4】
図4-一次T細胞の表面におけるGCT01およびGCT02の形質導入効率。形質導入された一次T細胞を、形質導入から24時間後にフローサイトメトリーによって分析して、導入遺伝子コンストラクトの発現(mCherry、X軸)を決定し、抗MYCで標識することによって分析して、細胞表面発現(Y軸)を決定した。GCT01およびGCT02 CARの発現を示す代表的なフローサイトメトリープロットを示す。
【
図5】
図5-GCT01およびGCT02は、EGFRvIII発現腫瘍細胞をインビトロで死滅させる。10:1のエフェクター:標的の比でCr標識標的細胞と24時間培養した場合の、GCT01またはGCT02 CARのいずれかを発現する形質導入後8日目の一次マウスCD8+T細胞のクロム放出アッセイ。4時間後に測定した、「**」で印を付けた細胞株を除いて、24時間後に細胞傷害性を測定した。平均+/-SDを示す。データは3連で測定した。3実験の代表である。
【
図6】
図6-GCT01 CAR T細胞は、インビボの皮下肺がん腫瘍の急速かつ完全な排除を誘導する。 10e6個(1CD4:1CD8)のGCT01 CAR T細胞またはPBS-/-のIV養子移植で埋め込み後7日目に処置した皮下HCC827肺がん腫瘍の腫瘍成長曲線。デジタルキャリパーを使用して、腫瘍サイズを週3回測定する。群あたりN=5匹のNSGマウス。データは4実験を代表する。
【
図7】
図7-GCT01およびGCT02 CART細胞は頭蓋内グリオーマ腫瘍の腫瘍退縮を誘導する。(A)毎週の生物発光イメージングによって測定した場合の、1CD4:1CD8 CAR T細胞を投与したNSGマウスにおける頭蓋内U87WT.EGFRvIII ns GFP_Luc腫瘍の腫瘍成長曲線。腫瘍サイズは放射輝度で測定する。群あたりN=5匹のマウス。各線は一匹のマウスを表す。(B)毎週のIVISイメージングによって、GCT01およびGCT02 CAR T細胞の注入で処置したマウスにおいて、腫瘍量の低減が示される。週はCAR T細胞注入後を示す。データは2つの実験を代表する。
【発明を実施するための形態】
【0110】
配列表の説明
SEQ ID NO:1-ヒト野生型EGFRアミノ酸配列
SEQ ID NO:2-ヒトEGFRvIIIアミノ酸配列
SEQ ID NO:3-GCT01 VHアミノ酸配列
SEQ ID NO:4-GCT01 VLアミノ酸配列
SEQ ID NO:5-GCT02 VHアミノ酸配列
SEQ ID NO:6-GCT02 VLアミノ酸配列
SEQ ID NO:7-GCT01およびGCT02に基づくHCDR1コンセンサスアミノ酸配列
SEQ ID NO:8-GCT01およびGCT02に基づくHCDR2コンセンサスアミノ酸配列
SEQ ID NO:9-GCT01およびGCT02に基づくHCDR3コンセンサスアミノ酸配列
SEQ ID NO:10-GCT01およびGCT02に基づくLCDR1コンセンサスアミノ酸配列
SEQ ID NO:11-GCT01およびGCT02に基づくLCDR2コンセンサスアミノ酸配列
SEQ ID NO:12-GCT01およびGCT02に基づくLCDR3コンセンサスアミノ酸配列
SEQ ID NO:13-GCT01 HCDR1アミノ酸配列
SEQ ID NO:14-GCT01 HCDR2アミノ酸配列
SEQ ID NO:15-GCT01 HCDR3アミノ酸配列
SEQ ID NO:16-GCT01 LCDR1アミノ酸配列
SEQ ID NO:17-GCT01 LCDR2アミノ酸配列
SEQ ID NO:18-GCT01 LCDR3アミノ酸配列
SEQ ID NO:19-GCT02 HCDR1アミノ酸配列
SEQ ID NO:20-GCT02 HCDR2アミノ酸配列
SEQ ID NO:21-GCT02 HCDR3アミノ酸配列
SEQ ID NO:22-GCT02 LCDR1アミノ酸配列
SEQ ID NO:23-GCT02 LCDR2アミノ酸配列
SEQ ID NO:24-GCT02 LCDR3アミノ酸配列
SEQ ID NO:25-GCT01 CARアミノ酸配列
SEQ ID NO:26-GCT02 CARアミノ酸配列
SEQ ID NO:27-GCT01の完全なscFvアミノ酸配列
SEQ ID NO:28-GCT02の完全なscFvアミノ酸配列
SEQ ID NO:29-GCT01 VH DNA配列
SEQ ID NO:30-GCT01 VL DNA配列
SEQ ID NO:31-GCT02 VH DNA配列
SEQ ID NO:32-GCT02 VL DNA配列
SEQ ID NO:33-GCT01の完全なscFv DNA配列
SEQ ID NO:34-GCT02の完全なscFv DNA配列
SEQ ID NO:35-CD3ゼータ一次シグナル伝達ドメインアミノ酸配列
SEQ ID NO:36-CD28共刺激ドメインアミノ酸配列
SEQ ID NO:37-CD28膜貫通ドメインアミノ酸配列
SEQ ID NO:38-CD8アルファのヒンジ領域アミノ酸配列
SEQ ID NO:39-例示的なCAR N末端リーダーアミノ酸配列
SEQ ID NO:40-非シグナル伝達EGFRvIIIタンパク質
SEQ ID NO:41-代替GCT01 HCDR1アミノ酸配列
SEQ ID NO:42-代替GCT01 HCDR2アミノ酸配列
SEQ ID NO:43-代替GCT01 HCDR3アミノ酸配列
SEQ ID NO:44-代替GCT01 LCDR1アミノ酸配列
SEQ ID NO:45-代替GCT01 LCDR2アミノ酸配列
SEQ ID NO:46-代替GCT01 LCDR3アミノ酸配列
SEQ ID NO:47-代替GCT02 HCDR1アミノ酸配列
SEQ ID NO:48-代替GCT02 HCDR2アミノ酸配列
SEQ ID NO:49-代替GCT02 HCDR3アミノ酸配列
SEQ ID NO:50-代替GCT02 LCDR1アミノ酸配列
SEQ ID NO:51-代替GCT02 LCDR2アミノ酸配列
SEQ ID NO:52-代替GCT02 LCDR3アミノ酸配列
【0111】
発明の詳細な説明
一般的な技法および定義
特に定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本技術分野(例えば、免疫学、分子生物学、CAR-Tの設計および療法、がん療法、薬理学、タンパク質化学、ならびに生化学)における当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有すると解釈されたい。
【0112】
別段指示がない限り、本発明で利用される技法は、標準的な手順であり、当業者に周知である。そのような技法は、J. Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning, John Wiley and Sons (1984)、J. Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbour Laboratory Press (1989)、T.A. Brown (editor), Essential Molecular Biology: A Practical Approach, Volumes 1 and 2, IRL Press (1991)、D.M. Glover and B.D. Hames (editors), DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes 1-4, IRL Press (1995 and 1996)、およびF.M. Ausubel et al., (editors), Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience(1988、現在までのすべての更新を含む)、Ed Harlow and David Lane (editors) Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbour Laboratory, (1988)、およびJ.E. Coligan et al., (editors) Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons(現在までのすべての更新を含む)などの出典の文献の全体を通して記載および説明されている。
【0113】
本明細書において使用される場合、約という用語は、そうでないと記載されない限り、指定された値の+/-10%、より好ましくは+/-5%を指す。
【0114】
本明細書全体を通して、単語「含む(comprise)」または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などの変形は、記載される要素、整数、もしくは工程、または一群の要素、整数、もしくは工程の包含を含意するが、任意の他の要素、整数、もしくは工程、または一群の要素、整数、もしくは工程の排除は含意しないと理解されるであろう。
【0115】
本出願で使用される場合、用語「または」は、排他的な「または」ではなく包括的な「または」を意味することが意図される。すなわち、特に明記しない限り、または文脈から明らかでない限り、「XはAまたはBを用いる」は、自然な包括的順列のいずれも意味することが意図される。すなわち、XはAを用いる;XはBを用いる;またはXはAとBの両方を用いる場合、「XはAまたはBを用いる」は、前述の例のいずれの下でも満たされる。さらに、AおよびBの少なくとも1つおよび/または同様のものは、一般に、AまたはB、あるいはAとBの両方を意味する。さらに、本出願および添付の特許請求の範囲で使用される場合、冠詞「1つ(a)」および「1つ(an)」は、一般に、単数形を対象にすることが特に明記しない限り、または文脈から明らかでない限り、「1つまたは複数」を意味すると解釈され得る。
【0116】
用語「タンパク質」は、単一ポリペプチド鎖、すなわち、ペプチド結合によって連結された一連の連続的アミノ酸、または共有結合的もしくは非共有結合的に互いに連結した一連のポリペプチド鎖(すなわち、ポリペプチド複合体)を含むと解釈されたい。例えば、一連のポリペプチド鎖は、例えば、適切な化学リンカーまたはジスルフィド結合を使用して、共有結合され得る。非共有結合の例としては、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス力、および疎水性相互作用が挙げられる。いくつかの態様では、タンパク質は単離されたタンパク質である。
【0117】
他の態様では、タンパク質は結合タンパク質であり得る。典型的には、本明細書において使用される場合、「結合タンパク質」は、例えばEGFRvIIIへの結合に有用な抗原結合部位を含むタンパク質であることを理解されたい。
【0118】
用語「単離されたタンパク質」または「単離された結合タンパク質」は、その起源または由来源が理由で、その天然状態でそれに付随する天然に関連する成分と関連しない;同じ供給源からの他のタンパク質を実質的に含んでいない、タンパク質である。タンパク質は、当技術分野において公知であるタンパク質精製技法を使用して、天然に関連する成分を実質的に含んでいない状態にすることができ、または単離によって実質的に精製することができる。
【0119】
本明細書において使用される場合、用語「結合する」は、結合タンパク質またはその抗原結合部位と抗原との相互作用に関連して、相互作用が抗原上の特定の構造(例えば、抗原決定基またはエピトープ)の存在に依存することを意味する。例えば、抗体は、タンパク質全体に対してではなく、特定のタンパク質構造を認識し、これに結合する。抗体がエピトープ「A」に結合する場合、標識された「A」および結合タンパク質を含む反応における、エピトープ「A」を含む分子(または、遊離した非標識の「A」)の存在は、抗体に結合した標識された「A」の量を低減させると考えられる。
【0120】
本明細書において使用される場合、用語「特異的に結合する(specifically binds)」または「特異的に結合する(binds specifically)」は、本開示の結合タンパク質が、別の抗原または細胞と反応または結合するよりも、長い持続時間で、および/または大きな親和性で、頻繁に、急速に、特定の抗原もしくは特定の抗原を発現する細胞と反応または結合することを意味すると解釈されたい。例えば、結合タンパク質は、他の補体成分に、または多反応性自然抗体によって(すなわち、ヒトにおいて天然に見られる様々な抗原と結合することが公知である、天然に存在する抗体によって)一般に認識される抗原に結合するよりも、著しく大きな親和性(例えば、20倍または40倍または60倍または80倍~100倍または150倍または200倍)でEGFRvIIIに結合する。必ずしもそうとは限らないが、一般に、結合への言及は特異的結合を意味し、各用語は、他の用語に対して明示的な支持を提供すると理解されたい。
【0121】
本明細書において使用される場合、用語「検出可能な程度に結合しない」は、結合タンパク質、例えば抗体が、バックグラウンドを10%または8%または6%または5%未満上回るレベルで候補抗原に結合することを意味すると理解されたい。バックグラウンドは、結合タンパク質の非存在下でおよび/もしくは陰性対照結合タンパク質(例えば、アイソタイプ対照抗体)の存在下で検出される結合シグナルのレベル、ならびに/または陰性対照抗原の存在下で検出される結合のレベルであり得る。結合のレベルは、結合タンパク質が固定化され、抗原と接触させられるかまたはその逆のバイオセンサー分析(例えば、Biacore)を使用して、検出される。
【0122】
明確化の目的のために、および本明細書において例示された主題に基づいて当業者に明らかであるように、本明細書における「親和性」への言及は、例えば解離定数(KD)を使用して定量化することができる結合のレベルへの言及である。一般に、本明細書に記載される結合タンパク質の親和性のレベルへの言及は、特定の抗原に対するタンパク質のKDへの言及である。したがって、本明細書において言及される場合、少なくとも15nMのEGFRvIIIに対する親和性を有する、少なくとも15nM(15nM以上)のKDを有する、すなわち、解離定数の数値が15nMまたはそれ以下(例えば、10nMまたは100pM)である結合タンパク質である。この関連で、より高い親和性への言及は、より低い数値を有するKDへの言及であり、逆もまた同じである。
【0123】
本明細書において使用される場合、用語「エピトープ」(同義語「抗原決定基」)は、本開示の結合タンパク質が結合するEGFRvIIIの領域を意味すると理解されたい。この用語は、結合タンパク質が接触する特定の残基または構造に必ずしも限定されるとは限らない。例えば、この用語は、結合タンパク質が接触するアミノ酸にまたがる領域および/またはこの領域の外側の5~10個もしくは2~5個もしくは1~3個のアミノ酸を含む。いくつかの態様では、エピトープは、EGFRvIIIが折り畳まれると互いの近くに位置する一連の非連続的アミノ酸、すなわち、「立体構造エピトープ」を含む。当業者は、用語「エピトープ」はペプチドにもポリペプチドにも限定されないことも認識するであろう。例えば、用語「エピトープ」は、分子の化学的に活性な表面基(surface groupings)、例えば、糖側鎖、ホスホリル側鎖、またはスルホニル側鎖を含み、ある特定の例では、特定の三次元構造特性および/または特定の荷電特性を有し得る。
【0124】
用語「競合的に阻害する」は、本開示の結合タンパク質(または、その抗原結合部位)が、列挙される抗体または結合タンパク質のEGFRvIIIへの結合を低減させるかまた妨げることを意味すると理解されたい。これは、同じまたは重複するエピトープに結合する結合タンパク質(または、抗原結合部位)および抗体が理由であり得る。結合タンパク質は抗体の結合を完全に阻害する必要はなく、むしろ、統計学的に有意な量だけ、例えば、少なくとも約10%または20%または30%または40%または50%または60%または70%または80%または90%または95%だけ結合を低減させることのみを必要することは、前述から明らかである。好ましくは、結合タンパク質は、少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約70%、さらにより好ましくは少なくとも約75%、さらにより好ましくは少なくとも約80%または85%、さらにより好ましくは少なくとも約90%だけ抗体の結合を低減させる。結合の競合的阻害を決定するための方法は当技術分野において公知であり、および/または本明細書に記載されている。例えば、抗体は、結合タンパク質の存在または非存在下のいずれかでEGFRvIIIに曝露される。結合タンパク質の存在下で、結合タンパク質の非存在下よりも少ない抗体が結合する場合、結合タンパク質は、抗体の結合を競合的に阻害すると考えられる。一態様では、競合的阻害は立体障害が理由ではない。
【0125】
「に由来する」は、本用語が本明細書において使用される場合、第1の分子と第2の分子の間の関連性を示す。これは、一般に、第1の分子と第2の分子の間の構造的類似性を指し、第2の分子に由来する第1の分子に対するプロセスまたは供給源の制限を暗示もしないし、含みもしない。例えば、CD3ゼータ分子に由来する細胞内シグナル伝達ドメインの場合は、細胞内シグナル伝達ドメインは、必要とされる機能、すなわち、適切な条件下でシグナルを発生させる能力を有するように、十分なCD3ゼータ構造を保持する。これは、細胞内シグナル伝達ドメインを生成する特定プロセスに対する制限を暗示もしないし、含みもせず、例えば、これは、細胞内シグナル伝達ドメインを提供するために、CD3ゼータ配列から開始し、不必要な配列を欠失させるか、または突然変異を課して、細胞内シグナル伝達ドメインに到達しなければならないということを意味しない。本発明の組成物および方法は、指定される配列、またはそれと実質的に同一であるかもしくは類似した配列、例えば、指定される配列と少なくとも85%、90%、もしくは95%同一またはそれ以上同一である配列を有する、ポリペプチドおよび核酸を包含する。
【0126】
本明細書において使用される場合、用語「対象」はいかなる動物であってもよい。一態様では、動物は脊椎動物である。例えば、動物は、哺乳動物、トリ、脊索動物、両生類、または爬虫類であってもよい。例示的な対象としては、限定されないが、ヒト、霊長類、家畜(例えば、ヒツジ、ウシ、ニワトリ、ウマ、ロバ、ブタ)、伴侶動物(例えば、イヌ、ネコ)、実験用試験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット、ハムスター)、捕獲野生動物(例えば、キツネ、シカ)が挙げられる。一態様では、哺乳動物はヒトである。
【0127】
本明細書において使用される場合、用語「処置する」または「処置」は、医療専門家による対象の直接的処置(例えば、治療剤を対象に投与することによる)、あるいは(i)主張される方法に従って自己処置する(例えば、薬物を自己投与する)ように対象に指図する、または(ii)主張される方法に従って対象を処置するように第三者に指図する、任意の形態の指示を与えることによって、少なくとも1人の当事者(例えば、医師、看護師、薬剤師、もしくは医薬品販売員)によってもたらされる間接的処置の両方を指す。例えば、その進行を予防するかまたは遅らせるために、疾患の十分に初期で治療薬を投与することによる、処置される疾患の予防または低減も、用語「処置する」または「処置」の意味内に包含される。
【0128】
本明細書において使用される場合、用語「同時投与」または「組み合わせて投与される」などは、選択された治療剤の単一対象への投与を包含することが意味され、同じもしくは異なる投与経路によって、または同じもしくは異なる時に剤が投与される治療レジメンを含むことが意図される。
【0129】
EGFRおよびEGFRvIII
上皮成長因子受容体(ヒトのEGFR;ErbB-1;HER1)は、細胞外タンパク質リガンドの上皮成長因子ファミリー(EGFファミリー)のメンバーに対する受容体である、膜貫通タンパク質である。野生型ヒトEGFRのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:1に提供される。
【0130】
EGFRは、受容体のErbBファミリー、すなわち、4種の密接に関連している受容体型チロシンキナーゼ:EGFR(ErbB-1)、HER2/neu(ErbB-2)、Her3(ErbB-3)、およびHer4(ErbB-4)からなるサブファミリーのメンバーである。EGFRの発現または活性に影響を及ぼす突然変異、増幅、または誤制御は、多くの異なるタイプのがんをもたらす。
【0131】
本明細書において使用される場合、用語「EGFRvIII」(de2-7EGFRおよびΔEGFRとしても公知である)は、通常発現するEGFRと共通の特性と対立するものとして、EGFRvIIIに特異的な任意の特性を示す、EGFRクラスIII変異体と称されるEFGFRの突然変異形態またはその生物学的に活性なフラグメントを指す。ヒトEGFRvIIIのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:2に提供される。EGFRvIIIは、成熟したEGFRのアミノ酸残基6~273を欠き、アミノ酸残基5と274の間の位置6に新しいグリシン残基を含む。
【0132】
異常なEGFR(EGFRvIIIと対立するもの)の発現も、多くの場合遺伝子増幅が理由で、がんに関連し、多くの上皮性腫瘍で観察されている。理論に拘束されることを望むものではないが、過剰発現EGFR、例えば、がん細胞によって産生されたものは、野生型細胞が発現するEGFR中には存在しない露出したエピトープを有することが理解されよう。したがって、同じ遺伝子にコードされるにもかかわらず、EGFRタンパク質のユニークなコンフォメーション形態は、腫瘍形成性細胞、過剰増殖細胞、または異常細胞で見出すことができるが、正常細胞または野生型細胞では検出不可能であるかまたは移行性である。EGFRを過剰発現する市販の細胞株としては、U87、A431、およびU251細胞が挙げられる。好都合なことに、いくつかの態様では、本発明の結合タンパク質は、EGFRvIIIおよびがん細胞上に存在するが野生型細胞上に存在しないEGFRに結合する。
【0133】
抗体
一態様では、本明細書に記載される結合タンパク質は抗体またはそのフラグメントである。
【0134】
当業者は、「抗体」は、一般に、複数のポリペプチド鎖、例えば、VLを含むポリペプチドおよびVHを含むポリペプチドで構成されている可変領域を含むタンパク質であると考えられることを認識するであろう。抗体は、一般に定常ドメインも含み、その一部は定常領域中に配置されてもよく、これは、重鎖の場合には、定常フラグメントまたはフラグメント結晶可能(Fc)領域を含む。VHおよびVLは相互作用して、1つまたは少数の密接に関連した抗原に特異的に結合することができる抗原結合部位を含むFvを形成する。一般に、哺乳動物の軽鎖はκ軽鎖またはλ軽鎖のいずれかであり、哺乳動物の重鎖はα、δ、ε、γ、またはμである。抗体は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2)、またはサブクラスのものであってもよい。用語「抗体」は、ヒト化抗体、霊長類化抗体、ヒト抗体、およびキメラ抗体も包含する。
【0135】
用語「全長抗体」、「インタクト抗体」、または「全抗体」は互換的に使用されて、抗体の抗原結合フラグメントとは対照的に、その実質的にインタクトな形態の抗体を指す。特に、全抗体は、Fc領域を含む重鎖および軽鎖を有する抗体を含む。定常ドメインは、野生型配列の定常ドメイン(例えば、ヒト野生型配列の定常ドメイン)であってもよいし、またはそのアミノ酸配列変異体であってもよい。
【0136】
本明細書において使用される場合、「可変領域」は、抗原に特異的に結合することができ、相補性決定領域(CDR);すなわち、CDRl、CDR2、およびCDR3、ならびにフレームワーク領域(FR)のアミノ酸配列を含む、本明細書に定義される抗体の軽鎖および/または重鎖の部分を指す。例示的な可変領域は、3つのCDRとともに、3つまたは4つのFR(例えば、FR1、FR2、FR3、および任意でFR4)を含む。IgNARに由来するタンパク質の場合には、タンパク質はCDR2を欠く可能性がある。VHは重鎖の可変領域を指す。VLは軽鎖の可変領域を指す。
【0137】
本明細書において使用される場合、用語「相補性決定領域」(同義語CDR;すなわち、CDRl、CDR2、およびCDR3)は、その存在が抗原結合に必要である、抗体可変領域のアミノ酸残基を指す。各可変領域は、典型的には、CDRl、CDR2、およびCDR3として特定される3つのCDR領域を有する。CDRおよびFRに割り当てられるアミノ酸の位置は、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest, National Institutes of Health, Bethesda, Md., 1987 and 1991、あるいは本開示の実施における他の番号付けシステム、例えば、Chothia and Lesk(Chothia et al., 1987)および/もしくはAl-Lazikani(Al-Lazikani et al., 1997)の標準番号付けシステム;Lefranc et al. (2003)に記載されているIMGT番号付けシステム;またはHonnegher and Plukthun (2001)に記載されているAHO番号付けシステムに従って、定義され得る。例えば、Kabatの番号付けシステムによれば、VHのフレームワーク領域(FR)およびCDRは以下のように位置付けされる:残基1~30(FRl)、31~35(CDR1)、36~49(FR2)、50~65(CDR2)、66~94(FR3)、95~102(CDR3)、および103~113(FR4)。Kabatの番号付けシステムによれば、VLのFRおよびCDRは以下のように位置付けされる:残基1~23(FRl)、24~34(CDR1)、35~49(FR2)、50~56(CDR2)、57~88(FR3)、89~97(CDR3)、および98~107(FR4)。本開示は、Kabatの番号付けシステムによって定義されたFRおよびCDRに限定されるのではなくて、上述したものを含めて、すべての番号付けシステムを含む。一態様では、本明細書におけるCDR(または、FR)への言及は、Kabatの番号付けシステムによるこれらの領域に関する。
【0138】
「フレームワーク領域」(FR)は、CDR残基以外のこれらの可変領域残基である。
【0139】
本明細書において使用される場合、用語「Fv」は、複数のポリペプチドから構成されるか、または単一のポリペプチドから構成されるかに関わらず、VLとVHが結合し、抗原結合部位を有する複合体を形成する、すなわち、抗原に特異的に結合することができる、任意の結合タンパク質を意味すると解釈されたい。抗原結合部位を形成するVHおよびVLは、単一ポリペプチド鎖中に存在してもよいし、または異なるポリペプチド鎖中に存在してもよい。さらに、本開示のFv(および、本開示の任意の結合タンパク質)は、同じ抗原に結合してもよいし、または同じ抗原に結合しなくてもよい、複数の抗原結合部位有し得る。本用語は、抗体に直接由来するフラグメント、および組換え手段を使用して生成された、そのようなフラグメントに対応する結合タンパク質を包含することを理解されたい。いくつかの態様では、VHは重鎖定常ドメイン(CH)1に連結されておらず、および/またはVLは軽鎖定常ドメイン(CL)に連結されていない。例示的なFv含有ポリペプチドまたは結合タンパク質としては、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)フラグメント、scFv、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、もしくは高次複合体、またはその定常領域またはドメイン、例えば、CH2もしくはCH3ドメインに連結した前述のもののいずれか、例えば、ミニボディが挙げられる。「Fabフラグメント」は免疫グロブリンの一価抗原結合フラグメントからなり、酵素パパインで全抗体を消化して、インタクトな軽鎖および重鎖の一部からなるフラグメントをもたらすことによって生成することができ、または組換え手段を使用して生成することができる。抗体の「Fab’フラグメント」は、ペプシンで全抗体を処理し、続いて還元して、インタクトな軽鎖ならびにVHおよび単一定常ドメインを含む重鎖の一部からなる分子をもたらすことによって、得ることができる。このように処理した抗体あたり2つのFab’フラグメントが得られる。Fab’フラグメントは、組換え手段によって生成することもできる。抗体の「F(ab')2フラグメント」は、2つのジスルフィド結合によって結合している2つのFab’フラグメントの二量体からなり、引き続く還元は行わずに酵素ペプシンで全抗体分子を処理することによって、得られる。「Fab2」フラグメントは、例えばロイシンジッパーまたはCH3ドメインを使用して連結された2つのFabフラグメントを含む組換えフラグメントである。「単鎖Fv」または「scFv」は、適切な可動性ポリペプチドリンカーによって軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域が共有結合している、抗体の可変領域フラグメント(Fv)を含む組換え分子である。
【0140】
本明細書において使用される場合、用語「抗原結合ドメイン」は、抗原に特異的に結合することができる抗体領域、すなわち、VHもしくはVLまたはVHとVLの両方を含むFvを意味すると解釈されたい。抗原結合ドメインは、完全抗体の状況である必要はなく、例えば、これは、分離している(例えば、ドメイン抗体)かまたは別の形態で(例えば、scFv)あり得る。典型的には、本明細書において使用される場合、抗原結合ドメインは、抗原に結合することができるかまたは特異的に結合することができる抗原結合部位を含むことができる。
【0141】
本明細書において使用される場合、用語「抗原結合部位」は、抗原に結合することができるかまたは特異的に結合することができる結合タンパク質によって形成される構造を意味すると解釈されたい。抗原結合部位は、一連の連続的アミノ酸である必要も、さらに単一ポリペプチド鎖中のアミノ酸である必要もない。例えば、2つの異なるポリペプチド鎖から生成されるFvでは、抗原結合部位は、抗原と相互作用し、かつ必ずではないが一般に各可変領域中のCDRの1つまたは複数に存在する、VLおよびVHの一連のアミノ酸で構成されている。いくつかの態様では、抗原結合部位は1つまたは複数のCDRを含む。いくつかの態様では、抗原結合部位は3つのCDRを含む。いくつかの態様では、抗原結合部位は6つのCDRを含む。いくつかの態様では、抗原結合部位はVHまたはVLまたはFvを含む。
【0142】
抗体を生成するための方法は当技術分野において公知であり、および/またはHarlow and Lane (editors) Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, (1988)に記載されている。一般に、そのような方法では、EGFRvIIIもしくはそのある領域(例えば、細胞外ドメイン)、またはその免疫原性フラグメントもしくはエピトープ、またはこれらを発現および提示する細胞(すなわち、免疫原)は、任意の適切なまたは望ましい担体、アジュバント、または薬学的に許容される賦形剤とともに製剤化されてもよく、非ヒト動物、例えば、マウス、ニワトリ、ラット、ウサギ、モルモット、イヌ、ウマ、ウシ、ヤギ、またはブタに投与される。免疫原は、鼻腔内に、筋肉内に、皮下に、静脈内に、皮内に、腹腔内に、または他の公知の経路によって、投与することができる。
【0143】
ポリクローナル抗体の生成は、免疫化された動物の免疫化後の様々な時点で血液をサンプリングすることによってモニターすることができる。望ましい抗体力価を達成することが必要な場合は、1回または複数回のさらなる免疫化を行うことができる。追加免疫および力価測定のプロセスは、適切な力価が達成されるまで繰り返される。望ましいレベルの免疫原性が得られたら、免疫化された動物から採血し、血清を単離し、保存し、および/または該動物を使用してモノクローナル抗体(mab)を産生する。
【0144】
モノクローナル抗体は、本発明によって企図される抗体の1つの例示的な形態である。用語「モノクローナル抗体」または「mAb」は、同じ抗原に、例えば、抗原内の同じエピトープに結合することができる均一な抗体集団を指す。この用語は、抗体の供給源または抗体を作製する様式に関して限定されることを意図するものではない。
【0145】
mAbの生成のために、例えば、US4196265で例示された手順など、いくつかの公知の技法のうちのいずれか1つを使用することができる。
【0146】
例えば、抗体産生細胞を刺激するのに十分な条件下で、適切な動物を免疫原で免疫化する。ウサギ、マウス、およびラットなどのげっ歯類は例示的な動物である。ヒト抗体を発現し、かつ例えばネズミ科の動物の抗体を発現しないように遺伝子操作されたマウスも、(例えば、WO2002/066630に記載されるように)本発明の抗体を生成するために使用することもできる。
【0147】
免疫化に続いて、mAb生成プロトコールで使用するために、抗体を産生する可能性がある体細胞、特にBリンパ球(B細胞)を選択する。これらの細胞は、脾臓、扁桃腺、もしくはリンパ節の生検から、または末梢血試料から得ることができる。次いで、免疫化された動物由来のB細胞を、一般に、免疫原で免疫化された動物と同じ種に由来する不死骨髄腫細胞の細胞と融合する。
【0148】
組織培養培地中でヌクレオチドのデノボ合成を遮断する作用物質を含む選択培地中で培養することによって、ハイブリッドが増幅する。例示的な作用物質は、アミノプテリン、メトトレキサート、およびアザセリンである。
【0149】
例えば、フローサイトメトリーおよび/または免疫組織化学的検査および/またはイムノアッセイ(例えば、ラジオイムノアッセイ、酵素イムノアッセイ、細胞傷害性アッセイ、プラークアッセイ、ドットイムノアッセイなど)による、抗体の特異性および/または力価についての機能的選択に、増幅したハイブリドーマを供する。代替的に、MAbを分泌する細胞株を生成するために、ABL-MYC技術(NeoClone、Madison WI 53713、USA)が使用される。
【0150】
抗体はまた、例えば、US6300064および/またはUS5885793に記載されるように、ディスプレイライブラリー、例えば、ファージディスプレイライブラリーをスクリーニングすることによって、生成または単離することができる。
【0151】
別の例では、ファージディスプレイライブラリーをスクリーニングし、またはEGFRvIIIもしくはそのフラグメントで動物を免疫化し、特定された結合タンパク質および/または抗体をスクリーニングして、EGFRvIIIおよび/またはそのフラグメントと交差反応性であるものを特定する。
【0152】
さらなる例では、(実施例2に記載されるように)EGFRvIIIまたはそのフラグメントをGCT01またはGCT02と接触させる。次いで、ファージディスプレイライブラリーをEGFRvIIIまたはそのフラグメントと接触させ、結合についてGCT01またはGCT02と競合するタンパク質を発現するファージを選択する。
【0153】
さらに別の例では、例えば、ヒトEGFRvIII由来の関心対象のエピトープが対応するマウス配列で置換されたマウスEGFRvIIIを含むキメラタンパク質。次いで、このキメラタンパク質を使用して、マウス(これは、マウスタンパク質に対して免疫応答を誘導する可能性が低い)を免疫化する、および/またはファージディスプレイライブラリーをスクリーニングする。次いで、得られた抗体/タンパク質をスクリーニングして、(特に、関心対象のエピトープで)ヒトEGFRvIIIに結合するが、マウスEGFRvIIIには結合しないものを特定する。
【0154】
本発明の抗体は合成抗体であってもよい。例えば、抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、または脱免疫化抗体である。
【0155】
キメラタンパク質
一態様では、本明細書に記載される結合タンパク質はキメラタンパク質(例えば、キメラ抗体)である。用語「キメラタンパク質」は、タンパク質の一部(例えば、抗体の重鎖および/または軽鎖)が、特定の種(例えば、マウスなどのネズミ科の動物)に由来するかまたは特定のタンパク質クラスもしくはサブクラスに属するタンパク質中の対応する配列と同一であるかまたは相同であるが、タンパク質の残部が、タンパク質中の別の種(例えば、ヒトなどの霊長類)に由来するかまたは別のタンパク質クラスもしくはサブクラスに属する対応する配列と同一であるかまたは相同である、結合タンパク質を指す。例えば、キメラ抗体は、主としてヒトドメインを有する抗体を生成するために、非ヒト、例えば、げっ歯類またはウサギの可変領域およびヒト定常領域を利用することができる。キメラ抗体を生成するための方法は、例えば、US4816567およびUS5807715に記載されている。
【0156】
ヒト化タンパク質およびヒトタンパク質
本発明の結合タンパク質または抗体は、ヒト化されていてもよいし、またはヒトのものでもよい。
【0157】
用語「ヒト化タンパク質」または「ヒト化結合タンパク質」は、非ヒト種のタンパク質に由来する抗原結合部位または可変領域ならびにヒトタンパク質の構造および/または配列に基づく残りのタンパク質構造を有する、キメラタンパク質のサブクラスを指すことを理解されたい。例えば、ヒト化抗体では、抗原結合部位は、一般に、ヒト抗体の可変領域中の適切なFRに移植された、非ヒト抗体由来の相補性決定領域(CDR)およびヒト抗体由来の残りの領域を含む。抗原結合部位は、野生型(すなわち、非ヒト抗体のものと同一)であってもよいし、または1つまたは複数のアミノ酸置換によって修飾されていてもよい。ある場合には、ヒト抗体のFR残基は、対応する非ヒト残基に置き換えられる。
【0158】
非ヒトタンパク質またはその一部(例えば、可変領域)をヒト化するための方法は、当技術分野において公知である。ヒト化は、US5225539またはUS5585089の方法に従って行うことができる。タンパク質をヒト化するための他の方法は除外されない。
【0159】
本明細書において使用される場合、用語「ヒトタンパク質」または「ヒト結合タンパク質」は、ヒトで、例えば、ヒト生殖系列細胞または体細胞で見出される配列に対応するアミノ酸配列を有するタンパク質を指す。「ヒト」タンパク質は、ヒト配列にコードされないアミノ酸残基、例えば、インビトロでのランダム突然変異または部位特異的突然変異によって導入された突然変異(特に、保存的置換を含む突然変異、またはタンパク質の少数の残基における、例えば、タンパク質の1、2、3、4、5、もしくは6個の残基における、例えば、抗体のCDRの1つもしくは複数を構成する1、2、3、4、5、もしくは6個の残基における突然変異)を含むことができる。これらの「ヒトタンパク質」は、実際にヒトによって産生される必要はなく、むしろ、組換え手段を使用して生成することができ、および/またはヒトタンパク質をコードする核酸を含むトランスジェニック動物(例えば、マウス)から単離することができる。ヒト抗体は、例えば、(US5885793に記載されるように)ファージディスプレイライブラリーを含めて、当技術分野において公知である様々な技法を使用して生成することができる。
【0160】
選択されたエピトープを認識するヒト抗体は、「ガイド選択」と称される技法を使用して生成することもできる。このアプローチでは(例えば、US5565332に記載されるように)同じエピトープを認識する完全ヒト抗体の選択をガイドするために、選択された非ヒトモノクローナル抗体、例えば、マウス抗体が使用される。
【0161】
例示的なヒトタンパク質は本明細書に記載され、GCT01およびGCT02を含む。これらのヒトタンパク質は、非ヒトタンパク質と比較して、ヒトにおける免疫原性の低減という利点を提供する。
【0162】
他の抗原結合部位含有結合タンパク質
単一ドメイン抗体
いくつかの態様では、本発明の結合タンパク質は、単一ドメイン抗体(用語「ドメイン抗体」または「dAb」と互換的に使用される)であるか、またはこれを含む。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変領域のすべてまたは一部を含む単一ポリペプチド鎖である。ある特定の例では、単一ドメイン抗体はヒト単一ドメイン抗体である(例えば、US6248516を参照されたい)。
【0163】
ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ
いくつかの態様では、本発明の結合タンパク質は、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、またはより高次のタンパク質複合体、例えば、WO98/044001および/またはWO94/007921に記載されているものであるか、またはこれらを含む。
【0164】
例えば、ダイアボディは、2つの結合したポリペプチド鎖を含むタンパク質であり、各ポリペプチド鎖は構造VL-X-VHまたはVH-X-VLを含み、式中、VLは抗体の軽鎖可変領域であり、VHは抗体の重鎖可変領域であり、Xは、単一ポリペプチド鎖中でVHおよびVLが結合する(もしくは、Fvを形成する)のを可能にするには不十分な残基を含むリンカーであるか、または存在せず、一方のポリペプチド鎖のVHが他方のポリペプチド鎖のVLに結合して、抗原結合部位を形成する、すなわち、1つまたは複数の抗原に特異的に結合することができるFv分子を形成する。VLおよびVHは各ポリペプチド鎖において同じであってもよいし、またはVLおよびVHは、二重特異性ダイアボディ(すなわち、異なる特異性を有する2つのFvを含む)を形成するように、各ポリペプチド鎖において異なっていてもよい。
【0165】
単鎖Fv(scFv)
当業者は、scFvが、VHおよびVL領域を単一ポリペプチド鎖中に、ならびにscFvが抗原結合のために(すなわち、単一ポリペプチド鎖のVHおよびVLが互いに結合してFvを形成するために)望ましい構造を形成することを可能にするポリペプチドリンカーをVHおよびVLの間に含むことを認識するであろう。例えば、リンカーは12個を超えるアミノ酸残基を含み、(Gly4Ser)3は、scFvにとってより好ましいリンカーのうちの1つである。
【0166】
本発明は、ジスルフィド安定化Fv(または、diFvもしくはdsFv)も企図し、これは、単一システイン残基がVHのFRおよびVLのFR中に導入され、システイン残基がジスルフィド結合によって連結されて、安定なFvがもたらされる。
【0167】
代替的に、またはさらに、本発明は、二量体scFv、すなわち、非共有結合または共有結合によって、例えば、(例えば、FosまたはJunに由来する)ロイシンジッパードメインによって連結された2つのscFv分子を含むタンパク質を包含する。代替的に、2つのscFvは、例えば、US20060263367に記載されるように、両方のscFvが抗原を形成し、抗原に結合することを可能にするのに十分な長さのペプチドリンカーによって連結される。
【0168】
重鎖抗体
重鎖抗体は、重鎖を含むが軽鎖を含まない点に限って言えば、多くの他の形態の抗体と構造的に異なる。したがって、これらの抗体は、「重鎖のみの抗体」とも称される。重鎖抗体は、例えば、ラクダ科動物および軟骨魚類(IgNARとも呼ばれる)で見出される。
【0169】
天然に存在する重鎖抗体に存在する可変領域は、従来の4本鎖抗体に存在する重鎖可変領域(「VHドメイン」と称される)および従来の4本鎖抗体に存在する軽鎖可変領域(「VLドメイン」と称される)と区別するために、一般に、ラクダ科動物抗体において「VHHドメイン」、IgNARにおいてV-NARと称される。
【0170】
ラクダ科動物由来の重鎖抗体およびその可変領域ならびにそれらの生成および/または単離および/または使用のための方法の概説は、特に以下の参考文献、WO94/04678、WO97/49805、およびWO97/49805に見出される。
【0171】
軟骨魚類由来の重鎖抗体およびその可変領域ならびにそれらの生成および/または単離および/または使用のための方法の概説は、特に、WO2005/118629に見出される。
【0172】
BiTE(二重特異性T細胞エンゲージャー)
当技術分野において公知であるように、BiTEは、一般に、2つの抗原結合部位を有し、そのうちの1つが免疫エフェクター細胞抗原(例えば、CD3)に結合し、そのうちのもう1つが標的細胞の表面に存在している抗原、例えば、EGFRvIIIに結合する単一ポリペプチド鎖分子を指す。BiTEおよびその生成方法は、WO05/061547、Baeuerle et al. (2008)、およびBargou et al. (2008)に記載されている。
【0173】
両方の標的が結合すると、BiTE分子は、細胞傷害性T細胞と腫瘍細胞の間を架橋し、これにより、T細胞が腫瘍細胞を認識し、有毒な分子を注入することによって腫瘍細胞と戦うことが可能になる。異なるタイプのがんを標的にする異なるBiTE抗体コンストラクトを作製するために、該分子の腫瘍結合アームを変化させることができる。BiTEは、典型的には、高等真核細胞株によって分泌される組換えグリコシル化タンパク質として生成される。したがって、本発明の別の態様では、本発明のタンパク質はBiTEである。
【0174】
他の抗原結合タンパク質
本発明は、抗原結合部位、例えば:
(i)US5731168に記載されるような「鍵と鍵穴」二重特異性タンパク質;
(ii)例えばUS4676980に記載されるようなヘテロコンジュゲートタンパク質;
(iii)例えばUS4676980に記載されるような、化学架橋剤を使用して生成されるヘテロコンジュゲートタンパク質;および
(iv)Fab3(例えば、EP19930302894に記載される)
を含む他の結合タンパク質も含む。
【0175】
脱免疫化された抗体およびタンパク質
いくつかの態様では、本発明の結合タンパク質は脱免疫化された抗体またはタンパク質である。脱免疫化された抗体およびタンパク質は、1つまたは複数のエピトープ、例えば、B細胞エピトープまたはT細胞エピトープが除去されて(すなわち、突然変異を受けて)、それによって、哺乳動物が抗体またはタンパク質に対して免疫応答を起こすであろう可能性が低減する。脱免疫化された抗体およびタンパク質を生成するための方法は当技術分野において公知であり、例えば、WO00/34317、WO2004/108158、およびWO2004/064724に記載されている。
【0176】
適切な突然変異を導入し、得られたタンパク質を発現させ、これをアッセイするための方法は、本明細書における説明に基づいて、当業者には明らかであろう。
【0177】
定常領域
本発明は、抗体の定常領域を含む、本明細書に記載される結合タンパク質も包含する。これには、全長抗体だけでなく、Fcと融合した、抗体の抗原結合フラグメントも含まれる。
【0178】
本発明の結合タンパク質を生成するために有用な定常領域の配列は、いくつかの異なる供給源から得ることができる。いくつかの態様では、タンパク質の定常領域またはその一部はヒト抗体に由来する。定常領域またはその一部は、IgM、IgG、IgD、IgA、およびIgEを含めた任意の抗体クラス、ならびにIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含めた任意の抗体アイソタイプに由来してもよい。一態様では、定常領域はヒトアイソタイプIgG4または安定化されたIgG4定常領域である。
【0179】
一態様では、定常領域のFc領域は、例えば、ネイティブまたは野生型のヒトIgG1またはIgG3Fc領域と比較して、エフェクター機能を誘導する能力が低減している。一態様では、エフェクター機能は抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)および/または抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)および/または補体依存性細胞傷害(CDC)である。Fc領域含有タンパク質のエフェクター機能のレベルを評価するための方法は当技術分野において公知であり、および/または本明細書に記載されている。
【0180】
一態様では、Fc領域はIgG4 Fc領域(すなわち、IgG4定常領域に由来する)、例えばヒトIgG4 Fc領域である。適切なIgG4 Fc領域の配列は、当業者に明らかであり、および/または公的に利用可能なデータベースから入手可能である(例えば、国立バイオテクノロジー情報センターから入手可能である)。
【0181】
一態様では、定常領域は安定化されたIgG4定常領域である。用語「安定化されたIgG4定常領域」は、Fabアーム交換もしくはFabアーム交換を受ける傾向、または半抗体の形成もしくはする半抗体を形成する傾向を低減させるように修飾されたIgG4定常領域を意味すると理解される。
【0182】
タンパク質に対する突然変異
本発明は、本明細書に記載される結合タンパク質の突然変異形態も包含する。例えば、本発明の文脈において、その機能を阻害することも有意に低減させることもなく、本発明の結合タンパク質のCDR内で、および可変領域含有タンパク質のFR内で、置換を行うことができる。この関連で、アミノ酸置換を本発明の結合タンパク質に導入することができ、望ましい活性、例えば、抗原結合の保持/改善、免疫原性の低下、またはADCCもしくはCDCの改善について生成物を スクリーニングすることができる。
【0183】
例えば、そのような突然変異結合タンパク質は、本明細書に記載される配列と比較して、1つまたは複数の保存的アミノ酸置換を含む。いくつかの態様では、結合タンパク質は、30個以下または20個以下または10個以下、例えば、9または8または7または6または5または4または3または2個の保存的アミノ酸置換を含む。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、同様の側鎖および/またはハイドロパシシティ(hydropathicity)および/または親水性を有するアミノ酸残基と置き換えられるものである。
【0184】
一態様では、突然変異結合タンパク質は、天然に存在するタンパク質と比較した場合、1つもしくは2つもしくは3つもしくは4つもしくは5つもしくは6つのみまたはそれ以下の保存的アミノ酸変化を有する。保存的アミノ酸変化の詳細を以下に提供する。例えば本明細書の本開示から当業者が認識すると考えられるように、そのような軽微な変化は、結合タンパク質の活性を変化させないことが当然予測され得る。
【0185】
いくつかの態様では、結合タンパク質は、本明細書に提供されるCDRのアミノ酸配列のいずれか1つまたは複数に対して、CDR-L1中に3つ以下、2つ以下、もしくは1つ以下のアミノ酸置換を、CDR-L2中に2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸置換を、CDR-L3中に3つ以下、2つ以下、もしくは1つ以下のアミノ酸置換を、CDR-H1中に2つ以下もしくは1つ以下のアミノ酸置換を、CDR-H2中に4つ以下、3つ以下、2つ以下、もしくは1つ以下のアミノ酸置換を、および/またはCDR-H3中に3つ以下、2つ以下、もしくは1つ以下のアミノ酸置換を有する。いくつかの態様では、各CDRは、1つ、2つ、3つ、または4つ以下のアミノ酸置換を含む。いくつかの態様では、アミノ酸置換は保存的置換である。いくつかの態様では、結合タンパク質は、フレームワーク領域中にアミノ酸置換を含む。当業者が認めると考えられるように、例えば、変結合親和性(例えば、親和性成熟)を変化させる、タンパク質の分解もしくは酸化に対する感受性を低減させる、または結合タンパク質の他の物理化学的もしくは機能的特性を与えるかもしくは改変するために、ルーチンの部位特異的変異誘発またはランダム変異誘発技法を行って、本明細書に提供されるCDRまたはフレームワーク配列のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を変化させることができる。
【0186】
保存的アミノ酸置換の例を以下の表1に提供する。
【0187】
【0188】
本発明は、本発明の結合タンパク質中の、例えば、CDR、例えばCDR3中の非保存的アミノ酸変化(例えば、置換)も企図する。一態様では、結合タンパク質は、例えば、CDR3中に、例えばCDR3中に6または5または4または3または2または1個未満の非保存的アミノ酸置換を含む。
【0189】
例えば、結合親和性を改善するために、ルーチンの技法を使用して、CDR中にアミノ酸置換を導入することができる。そのような置換は、CDRの「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟過程中に高頻度で突然変異を受けるコドンにコードされる残基(例えば、Chowdhury, 2008を参照されたい)、および/またはEGFRvIIIと接触する残基で行うことができ、得られた変異体VHおよび/またはVLは、結合親和性について試験される。親和性成熟、エラープローンPCR、鎖シャフティング、またはオリゴヌクレオチド指定変異誘発は、一般に使用される技法である。
【0190】
ある特定の例では、置換、挿入、または欠失が、そのような変化が、結合タンパク質がEGFRvIIIに結合する能力を実質的に低減させない限り、1つまたは複数のCDR内で生じ得る。いくつかの態様では、アミノ酸置換を含む結合タンパク質は、置換がない結合タンパク質と同様の親和性でEGFRvIIIに結合する。そのような置換は、例えば、CDR中の抗原接触残基の外側にあってもよい。いくつかの態様では、アミノ酸置換を含む結合タンパク質は、置換がない結合タンパク質よりも高い親和性でEGFRvIIIに結合する。いくつかの態様では、アミノ酸置換を含む結合タンパク質は、置換がない結合タンパク質よりも低い親和性でEGFRvIIIに結合する。ある特定の例では、各CDRは、変化していないか、または1つ、2つ、3つ、もしくは4つ以下のアミノ酸置換を含むかのいずれかである。いくつかの態様では、置換は保存的置換である。
【0191】
突然変異誘発の標的にされる抗体の残基または領域の特定のための有用な方法は、Cunningham (1989)によって記載されるように、「アラニンスキャニング突然変異誘発」と呼ばれる。この方法では、一残基または一群の標的残基(例えば、Arg、Asp、His、Lys、およびGluなどの荷電残基)が特定され、アラニンなどの中性アミノ酸に置き換えられて、抗体と抗原の相互作用が影響を及ぼされるかどうかが決定される。最初の置換に対して機能的感受性を示すアミノ酸位置にさらなる置換を導入することができる。代替的に、またはさらに、抗原抗体複合体の結晶構造を使用して、抗体と抗原の間の接触点を特定することができる。そのような接触残基および隣接残基が、置換の候補として、標的にされるかまたは排除され得る。変異体をスクリーニングして、変異体が望ましい特性を含むかどうかを決定することができる。
【0192】
本発明は、本明細書に記載される配列と比較して、1つまたは複数の挿入または欠失も企図する。いくつかの態様では、結合タンパク質は、10個以下、例えば、9または8または7または6または5または4または3または2個の挿入および/または欠失を含む。
【0193】
コンジュゲート
いくつかの態様では、本発明の結合タンパク質は別の化合物にコンジュゲートされる。コンジュゲートは、半減期を延ばすかまたは他の生物学的活性を与えるのに役に立ち得る。結合タンパク質のコンジュゲーションのための方法は当業者に明らかであり、および/または本明細書に記載されている。例えば、結合タンパク質と本明細書に記載される別の化合物/部分の間の直接的コンジュゲーション、または(例えば、結合タンパク質と他の化合物/部分の間のリンカーによる)間接的結合を含めて、コンジュゲーション(すなわち、結合)のすべての形態および方法が本発明によって企図される。一態様では、コンジュゲートは、(例えば、アミン結合またはジスルフィド結合による)化学的コンジュゲーションによって、または遺伝子融合によって、形成される。
【0194】
一態様では、本開示は、本発明の結合タンパク質および他の化合物を含む融合タンパク質を提供する。例えば、他の化合物は、タンパク質のN末端、タンパク質のC末端、またはそれらの任意の組み合わせに位置付けされ得る。
【0195】
一態様では、結合タンパク質は、リンカーを介して他の化合物にコンジュゲートしている。例えば、リンカーはペプチドリンカーであり得る。
【0196】
一態様では、リンカーは可動性リンカーである。「可動性」リンカーは、溶液中で固定された構造(2次または3次構造)を有さないアミノ酸配列である。したがって、そのような可動性リンカーは、様々なコンフォメーションを自由にとることができる。本発明での使用に適する可動性リンカーは、当技術分野において公知である。本発明で使用するための可動性リンカーの例は、リンカー配列
または(Gly4Ser)3である。可動性リンカーはWO1999045132にも開示されている。
【0197】
リンカーは、結合領域とその標的の相互作用を実質的に妨害しない任意のアミノ酸配列を含むことができる。可動性リンカー配列にとって好ましいアミノ酸残基としては、限定されないが、グリシン、アラニン、セリン、スレオニン、プロリン、リジン、アルギニン、グルタミン、およびグルタミン酸が挙げられる。
【0198】
結合領域間のリンカー配列は、好ましくは、5個以上のアミノ酸残基を含む。本発明による可動性リンカー配列は、5個以上の残基、好ましくは、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20または25または30個またはそれ以上の残基からなる。本発明の一態様では、可動性リンカー配列は、5、7、10、13または16または30個の残基からなる。
【0199】
本発明の結合タンパク質にコンジュゲートすることができる例示的な化合物は、ヒト血清アルブミンまたは機能的そのフラグメント、免疫グロブリンFc領域または機能的そのフラグメント、アファミン、アルファ-フェトプロテイン、ビタミンD結合タンパク質、アルブミンに結合する抗体フラグメント、およびポリマーからなる群より選択することができる。他の例示的な化合物は含む。
【0200】
細胞傷害性作用物質
一態様では、結合タンパク質は細胞傷害性作用物質にコンジュゲートしている。細胞傷害性作用物質としては、細胞の成長、生存能、または増殖に有害な任意の作用物質が挙げられる。本発明の本局面に従って結合タンパク質にコンジュゲートすることができる適切な細胞傷害性作用物質および化学療法作用物質の例としては、例えば、1-(2クロロエチル)-1,2-ジメタンスルホニルヒドラジド、1,8-ジヒドロキシ-ビシクロ[7.3.1]トリデカ-4,9-ジエン-2,6-ジイン-13-オン、1-デヒドロテストステロン、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、9-アミノカンプトテシン、アクチノマイシンD、アマニチン、アミノプテリン、アングイジン、アントラサイクリン、アントラマイシン(AMC)、オーリスタチン、ブレオマイシン、ブスルファン、酪酸、カリケアマイシン、カンプトテシン、カルミノマイシン、カルムスチン、セマドチン、シスプラチン、コルヒチン、コンブレタスタチン、シクロホスファミド、シタラビン、サイトカラシンB、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デカルバジン、ジアセトキシペンチルドキソルビシン、ジブロモマンニトール、ジヒドロキシアントラシンジオン(dihydroxy anthracin dione)、ジソラゾール、ドラスタチン、ドキソルビシン、デュオカルマイシン、エキノマイシン、エリュテロビン、エメチン、エポチロン、エスペラミシン、エストラムスチン、エチジウムブロマイド、エトポシド、フルオロウラシル、ゲルダナマイシン、グラミシジンD、グルココルチコイド、イリノテカン、レプトマイシン、ロイロシン、リドカイン、ロムスチン(CCNU)、マイタンシノイド、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトプテリン、メトトレキサート、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、N8-アセチルスペルミジン、ポドフィロトキシン、プロカイン、プロプラノロール、プテリジン、ピューロマイシン、ピロロベンゾジアゼピン(PDB)、リゾキシン、ストレプトゾトシン、タリソマイシン(tallysomycins)、タキソール、テノポシド(tenoposide)、テトラカイン、チオエパ(thioepa)クロラムブシル、トメイマイシン、トポテカン、チューブリシン(tubulysin)、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、および前述のいずれかの誘導体が挙げられる。ある特定の態様によれば、結合タンパク質にコンジュゲートされる細胞傷害性作用物質は、DM1もしくはDM4などのマイタンシノイド、トメイマイシン誘導体、またはドラスタチン誘導体である。例えば、タンパク質毒素、例えばリシン、C.ディフィシル(C. difficile)毒素、シュードモナス(pseudomonas)外毒素、リシン、ジフテリア毒素、ボツリヌス毒素、ブリオジン(bryodin)、サポリン、ヨウシュヤマゴボウ毒素(すなわち、フィトラッカトキシンおよびフィトラッキゲニン)などを含めて、当技術分野において公知である他の細胞傷害性作用物質も本発明の範囲内で企図される。
【0201】
結合タンパク質の産生
一態様では、任意の例による、本明細書に記載される結合タンパク質は、当技術分野において公知である方法を使用して、例えば、結合タンパク質を産生するのに十分な条件下でハイブリドーマを培養することによって、産生される。
【0202】
組換発現
別の例では、任意の例による、本明細書に記載される結合タンパク質は、組換え体である。
【0203】
組換え結合タンパク質の場合には、組換え結合タンパク質をコードする核酸を発現コンストラクトまたはベクターにクローニングし、次いで、宿主細胞、例えば、大腸菌(E. coli)細胞、酵母細胞、昆虫細胞、または哺乳動物細胞、例えば、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児由来腎臓(HEK)細胞、または骨髄腫細胞にこれをトランスフェクトし、これらの細胞は、さもなければ結合タンパク質を産生しない。結合タンパク質を発現させるための例示的な細胞は、CHO細胞、骨髄腫細胞、またはHEK細胞である。これらの目的を達成するための分子クローニング技法は当技術分野において公知であり、例えば、Ausubel et al., (editors), Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience(1988、現在までのすべての更新を含む)またはSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)に記載されている。多種多様のクローニングおよびインビトロ増幅方法が組換え核酸の構築に適する。組換え抗体を生成する方法も当技術分野において公知であり、例えば、US4816567またはUS5530101を参照されたい。
【0204】
単離に続いて、さらなるクローニング(DNAの増幅)のため、または無細胞系もしくは細胞における発現のために、発現コンストラクトまたは発現ベクターのプロモーターに機能的に連結して、核酸を挿入する。
【0205】
単離核酸またはこれを含む発現コンストラクトを発現用の細胞に導入するための手段は、当業者に公知である。所与の細胞について使用される技法は、公知の成功した技法に依存する。組換えDNAを細胞に導入するための手段としては、数ある中でも、マイクロインジェクション、DEAE-デキストランを介したトランスフェクション、例えばリポフェクタミン(Gibco、MD、USA)および/またはcellfectin(Gibco、MD、USA)を使用することによる、リポソームを介したトランスフェクション、PEG媒介性DNA取り込み、エレクトロポレーション、および例えばDNAコーティングタングステンまたは金粒子(Agracetus Inc.、WI、USA)を使用することによるマイクロパーティクルボンバードメントが挙げられる。
【0206】
タンパク質の単離
結合タンパク質を単離するための方法は当技術分野において公知であり、および/または本明細書に記載されている。例えば、結合タンパク質が培養培地に分泌される場合、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えば、AmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニットを使用して、そのような発現系由来の上清を最初に濃縮することができる。タンパク質分解を阻害するために、PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤を前述の工程のいずれかに含めることができ、偶発的な汚染菌の成長を防止するために、抗生物質を含めることができる。代替的に、またはさらに、例えば、連続遠心分離によって、結合タンパク質を発現する細胞から上清を濾過および/または分離することができる。
【0207】
例えば、イオン交換、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、アフィニティークロマトグラフィー(例えば、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーもしくはプロテインGクロマトグラフィー)、または前述の任意の組み合わせを使用して、調製した結合タンパク質を細胞から精製することができる。これらの方法は当技術分野において公知である。当業者はまた、精製または検出を容易にするために、タグ、例えば、ポリヒスチジンタグ、例えばヘキサヒスチジンタグ、またはインフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)タグ、またはシミアンウイルス5(V5)タグ、またはFLAGタグ、またはグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)タグを含むように結合タンパク質を修飾することができることを認識するであろう。次いで、当技術分野において公知である方法、例えば、親和性精製を使用して、得られた結合タンパク質を精製する。
【0208】
結合タンパク質の活性のアッセイ
EGFRおよびその突然変異への結合
結合タンパク質への結合を評価するための方法は、例えば、Scopes(In: Protein purification: principles and practice, Third Edition, Springer Verlag, 1994)に記載されるように、当技術分野において公知である。そのような方法は、一般に、結合タンパク質を標識し、それを固定化された抗原と接触させる工程、またはその逆を含む。洗浄して非特異的結合タンパク質を除去した後、標識の量、その結果として、結合タンパク質の量を検出する。当然ながら、結合タンパク質を固定化し、抗原を標識してもよい。パニングタイプアッセイを使用することもできる。代替的に、またはさらに、表面プラスモン共鳴アッセイを使用することができる。したがって、一態様では、本明細書に記載される結合タンパク質の親和性はバイオセンサーを使用して決定される。
【0209】
任意で、EGFRvIIIに対する結合タンパク質の解離定数(Kd)が決定される。EGFRvIII結合タンパク質に対する「Kd」または「KD」または「Kd値」は、一態様では、放射標識または蛍光標識されたEGFRvIII結合アッセイによって測定される。このアッセイは、一連の漸増量の非標識EGFRvIIIの存在下で、最小濃度の標識されたEGFRvIIIで結合タンパク質を平衡化する。洗浄して未結合EGFRvIIIを除去した後、標識の量を決定し、これは、結合タンパク質のKdを示す。
【0210】
別の例によれば、Kdは、表面プラスモン共鳴アッセイを使用することによって、例えば、固定化された本発明のタンパク質またはその逆を用いるBIAcore表面プラスモン共鳴(BIAcore, Inc.、Piscataway、NJ)を使用して、測定される。したがって、一態様では、結合タンパク質の親和性は、結合タンパク質が固定化され、固定化された結合タンパク質とEGFRvIIIが接触させられるアッセイにおいて、バイオセンサー(例えば、表面プラスモン共鳴による)を使用して、決定される。
【0211】
エピトープマッピング
別の例では、本明細書に記載される結合タンパク質が結合するエピトープがマッピングされる。エピトープマッピング方法は、当業者に明らかである。例えば、関心対象のエピトープを含むEGFRvIII配列またはその領域にまたがる一連の重複ペプチド、例えば、10~15アミノ酸を含むペプチドを生成する。次いで、結合タンパク質を各ペプチドと接触させ、結合タンパク質が結合するペプチドを決定する。これによって、結合タンパク質が結合するエピトープを含むペプチドの決定が可能になる。結合タンパク質が複数の非連続的ペプチドに結合する場合、結合タンパク質は立体構造エピトープに結合する可能性がある。
【0212】
代替的に、またはさらに、本明細書において例示されるように、EGFRvIII内のアミノ酸残基が、例えばアラニンスキャニング突然変異誘発によって突然変異を受け、タンパク質結合を低減させるかまたは妨げる突然変異が決定される。結合タンパク質の結合を低減させるかまたは妨げる任意の突然変異が、結合タンパク質が結合するエピトープ内に存在する可能性がある。
【0213】
さらなる方法は、EGFRvIIIまたはその領域を本発明の固定化された結合タンパク質に結合させ、得られた複合体をプロテアーゼで消化する工程を含む。次いで、固定化されたタンパク質に結合したままのペプチドを単離し、例えば、質量分析を使用して分析して、その配列を決定する。
【0214】
さらなる方法は、EGFRvIIIまたはその領域中の水素を重陽子に変換し、得られたタンパク質を本発明の固定化された結合タンパク質に結合させる工程を含む。次いで、重陽子を水素に再変換し、EGFRvIIIまたはその領域を単離し、酵素で消化し、例えば、質量分析を使用して分析して、本明細書に記載される結合タンパク質の結合によって、水素への変換から保護されていたと考えられる、重陽子を含むそれらの領域を特定する。
【0215】
競合的結合の決定
本明細書に記載される結合タンパク質、例えば、GCT01またはGCT02の結合をタンパク質が競合的に阻害するかどうかを決定するためのアッセイは、当業者に明らかである。例えば、結合タンパク質を検出可能な標識、例えば、蛍光標識または放射標識にコンジュゲートすることができる。次いで、標識された結合タンパク質および試験タンパク質を混合し、EGFRvIIIもしくはその領域またはこれらを発現する細胞と接触させる。次いで、標識された結合タンパク質のレベルを決定し、標識された結合タンパク質を試験タンパク質の非存在下でEGFRvIII、領域、または細胞と接触させる場合に決定されるレベルと比較する。試験タンパク質の非存在下と比較して、標識された結合タンパク質のレベルが試験タンパク質の存在下で低減する場合、試験タンパク質は、標識された結合タンパク質の結合を競合的に阻害すると考えられる。
【0216】
任意で、試験タンパク質は、標識された結合タンパク質と異なる標識にコンジュゲートされる。この代替標識によって、EGFRvIIIもしくはその領域または細胞への試験タンパク質の結合のレベルの検出が可能になる。
【0217】
別の例では、EGFRvIII、領域、または細胞を試験タンパク質と接触させる前に、結合タンパク質が、EGFRvIIIもしくはその領域またはこれらを発現する細胞に結合することが可能になる。試験タンパク質の非存在下と比較して、試験タンパク質の存在下で結合した結合タンパク質の量の低減は、試験タンパク質がEGFRvIIIへの結合を競合的に阻害することを示す。標識された結合タンパク質を使用し、最初に非標識タンパク質をEGFRvIIIに結合させて、相互的アッセイを行うこともできる。この場合、非標識タンパク質の非存在下と比較して、非標識タンパク質の存在下でEGFRvIIIに結合した標識された結合タンパク質の量の低減は、標識された結合タンパク質がEGFRvIIIへの非標識タンパク質の結合を競合的に阻害することを示す。
【0218】
配列同一性の決定
2つ以上のポリペプチドまたはヌクレオチド配列における同一性パーセントは、ポリペプチドまたはヌクレオチド配列の所与の領域内で同じであるアミノ酸またはヌクレオチドのパーセンテージを指す。例えば、2つの配列は、以下の配列比較アルゴリズムのうちの1つを使用して、またはマニュアルアライメンおよび目視検査によって測定した場合に、比較ウィンドウまたは指定された領域にわたって最大一致について比較し、整列させた時に、配列中のある領域にわたって、または指定される場合、全配列にわたって、例えば、60%の同一性、任意で、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有し得る。任意で、同一性は、少なくとも約20個のアミノ酸の長さの領域、すなわち、30、40、50、75、100、125、150、175、200個またはそれ以上のアミノ酸の長さの領域にわたって存在する。
【0219】
比較のための配列のアライメントの方法は当技術分野において周知である。比較のための配列の最適なアライメントは、例えば、Smith and Waterman (1970)の局所相同性アルゴリズムによって、Needleman and Wunsch (1970)の相同性アライメントアルゴリズムによって、Pearson and Lipman, (1988)の類似性検索法によって、コンピュータによるこれらのアルゴリズムの実行(例えば、Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer GroupのGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)によって、またはマニュアルアライメントおよび目視検査によって行うことができる(例えば、Brent et al., 2003を参照されたい)。
【0220】
配列同一性および配列類似性パーセントを決定するのに適したアルゴリズムの2つの例はBLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、これらは、それぞれAltschul et al. (1977);およびAltschul et al. (1990)に記載されている。
【0221】
2つのアミノ酸またはヌクレオチド配列の間の同一性パーセントは、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているMeyers and Miller (1988)のアルゴリズムを使用して、PAM120重み付け残基表(weight residue table)、12のギャップ長ペナルティ、および4のギャップペナルティーを使用して決定することもできる。さらに、2つのアミノ酸またはヌクレオチド配列の間の同一性パーセントは、GCGソフトウェアパッケージ(www.gcg.comで入手可能)中のGAPプログラムに組み込まれているNeedleman and Wunsch (1970)アルゴリズムを使用して、Blossom 62行列またはPAM250行列のいずれか、ならびに16、14、12、10、8、6、または4のギャップ重み付け(gap weight)および1、2、3、4、5、または6の長さ重み付け(length weight)を使用して決定することができる。
【0222】
組成物
いくつかの態様では、本明細書に記載される結合タンパク質は、経口的に、非経口的に、吸入噴霧、吸着、吸収により、局所的に、経直腸的に、経鼻的に、頬内に、経膣的に、脳室内に(intraventricularly)、従来の無毒の薬学的に許容される担体を含む投薬製剤中の埋め込み型リザーバーを介して、または任意の他の都合のよい剤形によって投与することができる。本明細書において使用される場合、用語「非経口」は、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、髄腔内、脳室内(intraventricular)、胸骨内、および頭蓋内の注射または注入技法を含む。
【0223】
タンパク質を対象への投与に適した形態(例えば、薬学的組成物)に調製するための方法は当技術分野において公知であり、該方法としては、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences (18th ed., Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1990)およびU.S. Pharmacopeia: National Formulary (Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1984)に記載されるような方法が挙げられる。
【0224】
本開示の薬学的組成物は、非経口投与、例えば、静脈内投与、あるいは体腔または器官もしくは関節の内腔中への投与に特に有用である。投与のための組成物は、薬学的に許容される担体、例えば、水性担体中に溶解したタンパク質の溶液を一般に含むと考えられる。様々な水性担体、例えば、緩衝食塩水などを使用することができる。組成物は、生理的条件に近づけるために必要とされるような薬学的に許容される補助物質、例えば、pH調整および緩衝剤、毒性調整剤など、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどを含むことができる。これらの製剤中の本発明のタンパク質の濃度は広く変動する可能性があり、選択された特定の投与様式および患者の要求に従って、主として流体体積、粘性、体重などに基づいて選択されると考えられる。例示的な担体としては、水、食塩水、リンゲル溶液、デキストロース溶液、および5%ヒト血清アルブミンが挙げられる。混合油およびオレイン酸エチルなどの非水性ビヒクルも使用することができる。リポソームを担体として使用することもできる。ビヒクルは、等張性および化学的安定性を増強する少量の添加剤、例えば、緩衝剤および防腐剤を含むことができる。
【0225】
製剤化されると、本発明のタンパク質は投薬製剤に適合する方法で、および治療的/予防的に有効であるような量で、投与されると考えられる。製剤は様々な剤形、例えば、上記の注射用溶液剤のタイプで容易に投与されるが、他の薬学的に許容される形態、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、または経口投与のための他の固形物、坐剤、ペッサリー、点鼻液または鼻内噴霧剤、エアロゾル剤、吸入剤、リポソーム形態なども企図される。薬学的に「徐放性」のカプセル剤または組成物を使用することもできる。徐放性製剤は、一般に、長期間にわたって一定の薬物レベルを与えるように設計され、本発明の化合物を送達するために使用することができる。
【0226】
WO2002/080967は、例えば喘息の処置のための抗体を含むエアロゾル化組成物を投与するための組成物および方法を記載しており、これも本発明のタンパク質の投与に適している。
【0227】
キメラ抗原受容体(CAR)
用語「キメラ抗原受容体」または代替的に「CAR」は、免疫エフェクター細胞中にある場合に、標的細胞、例えばがん細胞に対する特異性、および細胞内シグナルの発生を細胞にもたらす、ポリペプチドまたは一連のポリペプチドを指す。本明細書に記載されるCARは、本発明の結合タンパク質を含む細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメイン(本明細書において「細胞質シグナル伝達ドメイン」または「細胞内シグナル伝達ドメイン」とも称される)を少なくとも含む。
【0228】
いくつかの態様では、CARドメインは同じポリペプチド鎖中にある(例えば、キメラ融合タンパク質を含む)。いくつかの態様では、ドメインは互いに隣接している。いくつかの態様では、ドメインは互いに隣接しておらず、例えば、スプリットCARのように、異なるポリペプチド鎖中にある。いくつかの態様では、異なるポリペプチド鎖は、二量体化分子が存在する際に、ポリペプチドを互いに結合させることができ、例えば、抗原結合ドメインを細胞内シグナル伝達ドメインに結合させることができる二量体化スイッチを含む。
【0229】
いくつかの態様では、CARはリーダー配列をさらに含む。本明細書において使用される場合、用語「リーダー配列」は、CAR配列に融合している場合に、CARを発現する細胞の細胞膜へのCARの局在化を助けるアミノ酸配列を指す。いくつかの態様では、リーダー配列はN末端リーダー配列である。いくつかの態様では、リーダー配列は、SEQ ID NO:39と少なくとも70%または少なくとも80%または少なくとも90%または少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、リーダー配列は、細胞で発現する場合、細胞内プロセシングおよび細胞膜へのCARの局在化の間にCARから切断される。
【0230】
抗原結合ドメイン
本明細書に記載されるように、本発明のCARは、さもなければ「抗原結合ドメイン」と称される標的特異的結合要素を含む。抗原結合ドメインは、限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、ならびにそれらの機能的フラグメント、例えば、限定されないが、単一ドメイン抗体、例えば、重鎖可変ドメイン(VH)、軽鎖可変ドメイン(VL)、およびラクダ科動物由来のナノボディの可変ドメイン(VHH)、ならびに抗原結合ドメイン、例えば、組換えフィブロネクチンドメインとして機能することが当技術分野において公知である代替スキャフォールド、T細胞受容体(TCR)、またはそのフラグメント、例えば、単鎖TCRなどを含めて、EGFRvIIIに結合する任意のドメインであり得る。ある場合には、抗原結合ドメインが、CARが最終的に使用されるものと同じ種に由来することが有利である。例えば、ヒトで使用するために、CARの抗原結合ドメインが、抗体または抗体フラグメントの抗原結合ドメインについてヒトまたはヒト化残基を含むことが有利であり得る。
【0231】
いくつかの態様では、抗原結合ドメインは、単一ドメイン抗原結合(SDAB)分子を含み、これは、相補性決定領域が単一ドメインポリペプチドの一部である分子を含む。例としては、限定されないが、重鎖可変ドメイン、天然に軽鎖がない結合分子、従来の4本鎖抗体に由来する単一ドメイン、操作されたドメイン、および抗体に由来するもの以外の単一ドメインスキャフォールが挙げられる。SDAB分子は、当技術分野のいかなるものでもよいし、または将来のいかなる単一ドメイン分子でもよい。SDAB分子は、限定されないが、マウス、ヒト、ラクダ、ラマ、ヤツメウナギ、魚類、サメ、ヤギ、ウサギ、およびウシを含めて、任意の種に由来し得る。この用語は、ラクダ科(Camelidae)およびサメ以外の種由来の天然に存在する単一ドメイン抗体分子も含む。一態様では、SDAB分子は、例えば、サメの血清で見出される新規抗原受容体(NAR)として公知である免疫グロブリンアイソタイプに由来するものなど、魚類で見出される免疫グロブリンの可変領域に由来し得る。NAR(「IgNAR」)の可変領域に由来する単一ドメイン分子を生成する方法は、WO03/014161およびStreltsov (2005)に記載されている。
【0232】
一態様では、SDAB分子は、軽鎖がない重鎖として公知である、天然に存在する単一ドメイン抗原結合分子である。そのような単一ドメイン分子は、例えば、WO9404678およびHamers-Casterman et al. (1993)に開示されている。明確にするために、天然に軽鎖がない重鎖分子に由来するこの可変ドメインは、4本鎖免疫グロブリンの従来のVHと区別するために、VHHまたはナノボディとして本明細書において公知である。そのようなVHH分子は、ラクダ科の種、例えば、ラクダ、ラマ、ヒトコブラクダ、アルパカ、およびグアナコに由来し得る。ラクダ科以外の他の種も天然に軽鎖がない重鎖分子を産生する可能性があり;そのようなVHHは本発明の範囲内である。SDAB分子は、組換え、CDR移植、ヒト化、ラクダ化、脱免疫化されてもよく、および/またはインビトロ生成されてもよい(例えば、ファージディスプレイによって選択されてもよい)。
【0233】
一態様では、抗原結合ドメインは、抗体または抗体フラグメントの特定の機能的な特色または特性を特徴とする。例えば、一態様では、抗原結合ドメインを含む、本発明のCAR組成物の部分は、本明細書に記載される腫瘍抗原に特異的に結合する。
【0234】
一態様では、抗原結合ドメインは抗体フラグメント、例えば、単鎖可変フラグメント(scFv)である。一態様では、抗原結合ドメインは、Fv、Fab、(Fab')2、または二機能性(例えば、二重特異性)ハイブリッド抗体(例えば、Lanzavecchia et al., 1987)である。一態様では、本発明の抗体およびそのフラグメントは、野生型の親和性または増強した親和性で、その標的に結合する。ある場合には、scFvは、当技術分野において公知である方法に従って調製することができる(例えば、Bird et al., 1988およびHuston et al., 1988を参照されたい)。ScFv分子は、可動性ポリペプチドリンカーを使用してVH領域とVL領域を一緒に連結することによって生成することができる。scFv分子は、長さおよび/またはアミノ酸組成が最適化されたリンカー(例えば、Ser-Glyリンカー)を含む。リンカーの長さは、どのようにscFvの可変領域が折り畳まれ、相互作用するかに大きく影響を及ぼす可能性がある。実際に、短いポリペプチドリンカー(例えば、5~10アミノ酸)が用いられる場合、鎖内フォールディングが妨げられる。鎖間フォールディングも、2つの可変領域を一緒にして、機能的エピトープ結合部位を形成するのに必要とされる。リンカーの配向およびサイズの例について、Hollinger et al. 1993、US2005/0100543、US2005/0175606、US2007/0014794、WO2006/020258およびWO2007/024715を参照されたい。
【0235】
scFvは、そのVL領域とVH領域の間に、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50個またはそれ以上のアミノ酸残基のリンカーを含むことができる。リンカー配列は、任意の天然に存在するアミノ酸を含むことができる。いくつかの態様では、リンカー配列はアミノ酸のグリシンおよびセリンを含む。別の態様では、リンカー配列は、(Gly4Ser)nなどの一連のグリシンとセリンの繰り返しを含み、式中、nは1以上の正の整数である。一態様では、リンカーは(Gly4Ser)4または(Gly4Ser)3であり得る。リンカーの長さの変動は、活性を保持または増強し、活性研究において優れた有効性をもたらし得る。
【0236】
別の態様では、抗原結合ドメインはT細胞受容体(「TCR」)またはそのフラグメント、例えば、単鎖TCR(scTCR)である。そのようなTCRを作製するための方法は当技術分野において公知である(例えば、Willemsen et al., 2000;Zhang et al., 2004;Aggen et al., 2012を参照されたい)。例えば、リンカー(例えば、可動性ペプチド)によって連結された、T細胞クローン由来のVaおよびνβ遺伝子を含むscTCRを操作することができる。このアプローチは、それ自体は細胞内にあるが、そのような抗原のフラグメント(ペプチド)が、MHCによってがん細胞の表面に提示されるがん関連標的に対して非常に有用である。
【0237】
他のタイプの適切な抗原結合ドメインは、本発明の結合タンパク質との関連で、本明細書において論じられる。
【0238】
膜貫通ドメイン
膜貫通ドメインに関して、様々な態様では、CARは、CARを細胞膜中に位置付けするために、CARの細胞外ドメインに結合している膜貫通ドメインを含むように設計することができる。膜貫通ドメインは、膜貫通領域に隣接する1つまたは複数のさらなるアミノ酸、例えば、膜貫通が由来したタンパク質の細胞外領域と結合する1つもしくは複数のアミノ酸(例えば、細胞外領域の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個から15個までのアミノ酸)および/または膜貫通タンパク質が由来するタンパク質の細胞内領域と結合する1つもしくは複数のさらなるアミノ酸(例えば、細胞内領域の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個から15までのアミノ酸)を含むことができる。一態様では、膜貫通ドメインは、CARの他のドメインのうちの1つと結合するものであり、例えば、一態様では、膜貫通ドメインは、一次シグナル伝達ドメイン、共刺激ドメイン、またはヒンジ領域が由来する同じタンパク質由来であり得る。別の態様では、膜貫通ドメインは、CARの任意の他のドメインが由来する同じタンパク質に由来しない。ある場合には、膜貫通ドメインは、そのようなドメインが同じまたは異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインに結合するのを回避するように、例えば、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小化するように、選択され得るかまたはアミノ酸置換によって修飾され得る。一態様では、膜貫通ドメインは、CAR発現細胞の細胞表面上の別のCARとホモ二量体化することができる。異なる態様では、膜貫通ドメインのアミノ酸配列は、同じCAR発現細胞中に存在するネイティブの結合パートナーの結合ドメインとの相互作用を最小化するように、修飾または置換され得る。
【0239】
膜貫通ドメインは、天然供給源または組換え供給源のいずれかに由来し得る。供給源が天然である場合、ドメインは、任意の膜結合または膜貫通タンパク質に由来し得る。一態様では、膜貫通ドメインは、CARがその標的に結合した場合はいつでも細胞内ドメインにシグナルを伝達することができる。本発明における特定の用途の膜貫通ドメインとしては、例えば、T細胞受容体のアルファ、ベータ、もしくはゼータ鎖、TNFR2、CD28、CD27、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154の膜貫通領域を少なくとも挙げることができる。いくつかの態様では、膜貫通ドメインとしては、例えば、KIRDS2、OX40、CD2、CD27、LFA-1(CD11a、CD18)、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、GITR、CD40、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD160、CD19、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Ra、ITGA1、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、SLAMF6(NTB-A、Lyl08)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、PAG/Cbp、NKG2D、NKG2Cの膜貫通領域、またはこれらの機能的変異体を少なくとも挙げることができる。
【0240】
ある場合には、膜貫通ドメインは、ヒンジ、例えば、ヒトタンパク質由来のヒンジを介して、CARの細胞外領域、例えば、CARの抗原結合ドメインに結合され得る。本明細書において使用される場合、用語「ヒンジ領域」は、膜貫通ドメインと抗原結合ドメインの間に位置付けされる任意の適切なアミノ酸配列を指す。適切なヒンジ配列は当技術分野において公知である。例えば、一態様では、ヒンジは、ヒトIg(免疫グロブリン)のヒンジ(例えば、IgG4のヒンジ、IgDのヒンジ)、GSリンカー(例えば、本明細書に記載されるGSリンカー)、KIR2DS2のヒンジ、またはCD8アルファのヒンジであり得る。一態様では、ヒンジまたはスペーサーはIgG4のヒンジを含む。一態様では、ヒンジ領域はIgDのヒンジを含む。別の態様では、ヒンジはCD8アルファのヒンジ領域を含む。
【0241】
一態様では、膜貫通ドメインは組換えであってもよく、この場合、これは、ロイシンおよびバリンなどの疎水性残基を主として含むと考えられる。一態様では、フェニルアラニン、トリプトファン、およびバリンのトリプレットを組換え膜貫通ドメインの各末端に見出すことができる。
【0242】
任意で、2から10アミノ酸の長さの間の短いオリゴまたはポリペプチドリンカーが、CARの膜貫通ドメインと細胞質領域の間に連結を形成することができる。グリシン-セリンダブレットは、特に適したリンカーを提供する。例えば、一態様では、リンカーはGGGGSGGGGSのアミノ酸配列を含む。一態様では、ヒンジまたはスペーサーはKIR2DS2のヒンジを含む。
【0243】
細胞内ドメイン
CARの細胞内ドメインは、一般に、CARが導入されている免疫細胞の正常なエフェクター機能の少なくとも1つの活性化に関与する。用語「エフェクター機能」は、細胞の特殊化した機能を指す。T細胞のエフェクター機能は、例えば、細胞溶解活性またはヘルパー活性、例えば、サイトカインの分泌であり得る。したがって、用語「細胞内ドメイン」は、エフェクター機能シグナルを伝達し、特殊化した機能を実施するように細胞に指示する、CARの部分を指す。通常、細胞内ドメイン全体を用いることができるが、多くの場合で、鎖全体を使用する必要はない。細胞内ドメインのトランケート部分が使用されるという範囲内で、エフェクター機能シグナルを伝達する限り、そのようなトランケート部分をインタクトな鎖の代わりに使用することができる。したがって、細胞内ドメインという用語は、エフェクター機能シグナルを伝達するのに十分である、細胞内ドメインの任意のトランケート部分を含むことが意味される。
【0244】
本発明のCARで使用するための細胞内ドメインの例としては、抗原受容体結合後にシグナル伝達を開始するように協力して作用するT細胞受容体(TCR)および共受容体の細胞質配列、ならびにこれらの配列の任意の誘導体または変異体、および同じ機能的性能を有する任意の組換え配列が挙げられる。
【0245】
TCRのみによって生成されるシグナルはT細胞の完全活性化には不十分であること、ならびに二次および/または共刺激シグナルも必要とされることが公知である。したがって、T細胞活性化は、2つの別々のクラスの細胞質シグナル伝達配列:TCRを通じて抗原依存的一次活性化を開始するもの(本明細書において「一次シグナル伝達ドメイン」と称される)および二次または共刺激シグナルをもたらすように抗原非依存的に作用するもの(本明細書において「共刺激ドメイン」と称される)によって媒介されると言うことができる。
【0246】
本明細書において使用される場合、フレーズ「一次シグナル伝達ドメイン」は、CARを発現する細胞において抗原依存的一次活性化シグナル伝達を誘導または阻害することができる、CARの細胞内ドメイン中に存在するドメインを指す。例えば、TCR/CD3複合体とペプチドが負荷されたMHC分子との結合などによって開始され、T細胞応答、例えば、増殖、活性化、分化などの媒介につながるものなどの一次活性化シグナル伝達。この関連で、一次シグナル伝達ドメインは、刺激的方法かまたは阻害性的方法のいずれかで、TCR複合体の一次活性化を調節する。刺激性的様式で作用する一次シグナル伝達ドメインは、免疫受容活性化チロシンモチーフまたはITAMとして公知であるシグナル伝達モチーフを含むことができる。
【0247】
本発明において特に有用なITAM含有一次シグナル伝達ドメインの例としては、CD3ゼータ、共通FcRガンマ(FCERIG)、FcガンマRIIa、FcRベータ(FcイプシロンRib)、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD79a、CD79b、DAP10、およびDAP12のもの、またはこれらの機能的変異体が挙げられる。一態様では、本発明のCARは、細胞内シグナル伝達ドメイン、例えば、CD3ゼータの一次シグナル伝達ドメインまたはその機能的変異体を含む。一態様では、本発明のCARは、CD3ゼータの一次シグナル伝達ドメイン(例えば、SEQ ID NO:35)を含む。
【0248】
一態様では、一次シグナル伝達ドメインは、修飾されたITAMドメイン、例えば、ネイティブのITAMドメインと比較して活性が変化した(例えば、増大または低下した)、突然変異を受けたITAMドメインを含む。一態様では、一次シグナル伝達ドメインは、修飾されたITAMを含む一次シグナル伝達ドメイン、例えば、最適化および/またはトランケートされたITAMを含む一次シグナル伝達ドメインを含む。一態様では、一次シグナル伝達ドメインは、1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上のITAMモチーフを含む。
【0249】
CARの細胞内ドメインは、一次シグナル伝達ドメインを単独で含むことができ、または一これは、本発明のCARにおいて有用な任意の他の望ましい細胞内シグナル伝達ドメインと組み合わせることができる。例えば、いくつかの態様では、CARの細胞内ドメインは、一次シグナル伝達ドメインおよび共刺激ドメインを含む。
【0250】
「共刺激ドメイン」は、共刺激分子の細胞内ドメインに由来し、抗原結合の際にCARを発現する細胞で共刺激シグナルをもたらすことができる、CARの部分を指す。共刺激分子は、抗原に対するリンパ球の効率的な応答に必要とされる、抗原受容体またはそのリガンド以外の細胞表面分子である。そのような分子の例としては、TNFR2、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、およびCD83と特異的に結合するリガンドなどが挙げられる。例えば、CD27の共刺激は、インビトロでヒトCAR-T細胞の拡大増殖、エフェクター機能、および生存を増強すること、ならびにインビボでヒトT細胞の持続性および抗腫瘍活性を増すことが示されている(Song et al., 2012)。そのような共刺激分子のさらなる例としては、CDS、ICAM-1、GITR、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD160、CD19、CD4、CD8アルファ、CD8ベータ、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rアルファ、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGBl、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、NKG2D、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Lyl08)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、およびCD19aが挙げられる。
【0251】
本発明のCARの細胞質部分の一次シグナル伝達ドメインおよび共刺激ドメインをランダムなまたは特定の順序で互いに連結することができる。任意で、例えば、2から10アミノ酸(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10アミノ酸)の長さの短いオリゴまたはポリペプチドリンカーは、細胞内シグナル伝達配列間に連結を形成することができる。一態様では、グリシン-セリンダブレットを適切なリンカーとして使用することができる。一態様では、単一アミノ酸、例えば、アラニン、グリシンを適切なリンカーとして使用することができる。
【0252】
一態様では、細胞内ドメインは、2つ以上、例えば、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上の共刺激ドメインを含むように設計される。一態様では、2つ以上、例えば、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上の共刺激ドメインは、リンカー分子、例えば、本明細書に記載されるリンカー分子によって分離される。一態様では、細胞内ドメインは、2つの共刺激ドメインを含む。いくつかの態様では、リンカー分子はグリシン残基である。いくつかの態様では、リンカーはアラニン残基である。
【0253】
一態様では、細胞内ドメインは、CD3ゼータのシグナル伝達ドメインおよびCD28のシグナル伝達ドメインを含むように設計される。一態様では、細胞内ドメインは、CD3ゼータのシグナル伝達ドメイン、CD28のシグナル伝達ドメイン、および4-1BBのシグナル伝達ドメイン、またはこれらの機能的変異体を含むように設計される。一態様では、細胞内ドメインは、CD3ゼータのシグナル伝達ドメイン、CD28のシグナル伝達ドメイン、およびCD27のシグナル伝達ドメインを含むように設計される。
【0254】
多重特異性CAR
いくつかの態様では、CARは多重特異性(例えば、二重特異性または三重特異性)CARである。例えば、限定されないが、US5731168;WO09/089004;WO06/106905およびWO2010/129304;WO07/110205;WO08/119353、WO2011/131746、およびWO2013/060867;US5273743;US5534254;US5582996;US5591828;US5635602;US5637481;US5837242;US5837821;US5844094;US5864019およびUS5869620に記載されるものを含めて、二重特異性またはヘテロ二量体結合分子を作製するためのプロトコールは当技術分野において公知である。
【0255】
二重特異性抗体分子の各抗体または抗体フラグメント(例えば、scFv)内で、VHはVLの上流であってもよいし、または下流であってもよい。いくつかの態様では、上流の抗体または抗体フラグメント(例えば、scFv)は、そのVH(VHi)がそのVL(VLi)の上流で配置され、下流の抗体または抗体フラグメント(例えば、scFv)は、そのVL(VL2)がそのVH(V3/4)の上流で配置され、その結果、全体的な二重特異性抗体分子は配置VH1-VL1-VL2-VH2を有する。他の態様では、上流の抗体または抗体フラグメント(例えば、scFv)は、そのVL(VLi)がそのVH(VHi)の上流で配置され、下流の抗体または抗体フラグメント(例えば、scFv)は、そのVH(VH2)がそのVL(VL2)の上流で配置され、その結果、全体的な二重特異性抗体分子は配置VL1-VH1-VH2-VL2を有する。任意で、リンカーは、2つの抗体または抗体フラグメント(例えば、scFv)の間に、例えば、コンストラクがVH1-VL1-VL2-VH2として配置される場合、VL1とVL2の間に、またはコンストラクがVL1-VH1-VH2-VL2として配置される場合、VH2とVH2の間に配置される。リンカーは本明細書に記載されるリンカーであり得る。一般に、2つのscFvの間のリンカーは、2つのscFvのドメインの間の誤対合を回避するのに十分な長さであるべきである。任意で、リンカーは、第1のscFvのVLとVHの間に配置される。任意で、リンカーは、第2のscFvのVLとVHの間に配置される。複数のリンカーを有するコンストラクトでは、任意の2つ以上のリンカーは、同じであってもよいし、または異なっていてもよい。したがって、いくつかの態様では、二重特異性CARは、本明細書に記載されるような配置で、VL、VH、および任意で、1つまたは複数のリンカーを含む。
【0256】
調節可能なCAR
調節可能なCAR(RCAR)は、その活性を制御することができるCARであり、CAR療法の安全性および有効性を最適化するために望ましい。CAR活性を調節することができる多くの方法がある。例えば、二量体化ドメインに融合したカスパーゼを使用する誘導性アポトーシス(例えば、Di et al., 2011を参照されたい)を本発明のCAR療法の安全スイッチとして使用することができる。
【0257】
複数の態様では、RCARは「マルチスイッチ」を含むことができる。マルチスイッチは、ヘテロ二量体化スイッチドメインまたはホモ二量体化スイッチドメインを含むことができる。
【0258】
一態様は、抗原結合メンバーがCAR細胞の表面に係留されていないRCARを提供する。これによって、細胞内シグナル伝達メンバーを有する細胞が、抗原結合メンバーをコードする配列で細胞を形質転換することなく、1つまたは複数の抗原結合ドメインと都合よく対になることが可能になる。
【0259】
一態様は、増殖の切り換えを可能にする配置を有するRCARを提供する。この態様では、RCARは、1)以下を含む細胞内シグナル伝達メンバー:任意で、膜貫通ドメインまたは膜係留ドメイン;例えば、41BB、CD28、CD27、ICOS、およびOX40より選択される1つまたは複数の共刺激性シグナル伝達ドメイン、ならびにスイッチドメイン;ならびに2)以下を含む抗原結合メンバー:抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および一次シグナル伝達ドメイン、例えば、CD3ゼータドメインを含み、抗原結合メンバーはスイッチドメインを含まないか、または細胞内シグナル伝達メンバー上のスイッチドメインと二量体化するスイッチドメインを含まない。一態様では、抗原結合メンバーは共刺激性シグナル伝達ドメインを含まない。一態様では、細胞内シグナル伝達メンバーはホモ二量体化スイッチ由来のスイッチドメインを含む。一態様では、細胞内シグナル伝達メンバーはヘテロ二量体化スイッチの第1のスイッチドメインを含み、RCARは、第2の細胞内シグナル伝達メンバーを含むヘテロ二量体化スイッチの第2のスイッチドメインを含む。そのような態様では、第2の細胞内シグナル伝達メンバーは、細胞内シグナル伝達メンバーと同じ細胞内シグナル伝達ドメインを含む。一態様では、二量体化スイッチは細胞内にある。一態様では、二量体化スイッチは細胞外にある。
【0260】
本明細書に記載れるRCAR配置のいずれかにおいて、第1および第2のスイッチドメインは、本明細書に記載されるFKBP-FRBベースのスイッチを含む。
【0261】
スプリットCAR
いくつかの態様では、本発明のCARはスプリットCARである。スプリットCARアプローチは、公報WO2014/055442およびWO2014/055657により詳細に記載されている。
【0262】
CARの有効性の決定
本明細書に記載されるCARが一旦構築されれば、様々なアッセイを使用して、適切なインビトロおよび動物モデルにおいて、分子の活性、例えば、限定されないが、抗原刺激後にT細胞を拡大増殖させる能力、再刺激の非存在下でT細胞の拡大増殖を持続する能力、および抗がん活性を評価することができる。本発明のCARの効果を評価するためのアッセイは、以下でさらに詳細に記載される。
【0263】
一次T細胞におけるCAR発現のウエスタンブロット分析を使用して、単量体および二量体の存在を検出することができる(例えば、Milone et al., 2009を参照されたい)。非常に手短に述べると、CARを発現するT細胞(CD4+T細胞とCD8+T細胞の1:1混合物)を10日間より長くインビトロで拡大増殖し、続いて、溶解し、還元条件下でSDS-PAGEを行う。全長TCR-ζ細胞質ドメインおよび内在性TCR-ζ鎖を含むCARを、TCR-ζ鎖に対する抗体を使用するウエスタンブロッティングで検出する。共有結合性の二量体形成の評価を可能にするために、同じT細胞サブセットを非還元条件下のSDS-PAGE分析に使用する。
【0264】
抗原刺激後のCAR-T細胞のインビトロ拡大増殖をフローサイトメトリーによって測定することができる。例えば、CD4+T細胞とCD8+T細胞の混合物をaCD3/aCD28 aAPCで刺激し、続いて、分析されるプロモーターの制御下でGFPを発現するレンチウイルスベクターで形質導入する。例示的なプロモーターとしては、CMV IE遺伝子、EF-la、ユビキチンC、またはホスホグリセロキナーゼ(PGK)のプロモーターが挙げられる。CD4+および/またはCD8+T細胞のサブセットの培養6日目にフローサイトメトリーによってGFP蛍光を評価する(例えば、Milone et al., 2009を参照されたい)。代替的に、0日目に、CD4+T細胞とCD8+T細胞の混合物をaCD3/aCD28コーティング磁気ビーズで刺激し、1日目に、2Aリボソームスキッピング配列を使用してeGFPとともにCARを発現するバイシストロニックなレンチウイルスベクターを使用して、CARを形質導入する。洗浄後に、抗原を発現する細胞、例えば、K562細胞(抗原を発現するK562)、野生型K562細胞(K562野生型)、または抗CD3および抗CD28抗体の存在下でhCD32および4-1BBLを発現するK562細胞(K562-BBL-3/28)のいずれかで培養物を再刺激する。外来性IL-2を100IU/mlで培養物に隔日で添加する。ビーズベースの計数を使用して、フローサイトメトリーによって、GFP発現T細胞を数える。再刺激の非存在下での持続的CAR-T細胞拡大増殖も測定することができる(例えば、Milone et al., 2009を参照されたい)。手短に述べると、0日目に、aCD3/aCD28コーティング磁気ビーズで刺激し、1日目に、示されるCARを形質導入した後に、Coulter Multisizer III粒子カウンター、Nexcelom Cellometer Vision、またはMillipore Scepterを使用して、平均T細胞体積(fl)を培養8日目に測定する。
【0265】
動物モデルを使用して、CARの活性を測定することもできる。例えば、異種移植モデルである。免疫不全マウスで一次ヒトプレB ALLを処置するための特異的CAR-T細胞を使用することができる(例えば、Milone et al., 2009を参照されたい)。非常に手短に述べると、ALLの確立後、処置群に関してマウスをランダム化する。異なる数のCAR操作T細胞をB-ALL担持NOD-SCIDマウスに1:1の比で共注射する。T細胞の注射後の様々な時間で、マウスの脾臓DNA中の特異的CARベクターのコピー数を評価する。白血病について1週間間隔で動物を評価する。CAR-T細胞またはモック形質導入T細胞に対する抗原ペプチドが注射されるマウスにおいて、末梢血の芽細胞数を測定する。ログランク検定を使用して、これらの群についての生存曲線を比較する。さらに、NOD-SCIDマウスにおけるT細胞注射から4週後の末梢血のCD4+T細胞およびCD8+T細胞の絶対数も分析することができる。マウスに白血病細胞注射し、3週後に、eGFPに連結したCARをコードするバイシストロニックなレンチウイルスベクターによってCARを発現するように操作されたT細胞を注射する。注射より前にモック形質導入細胞と混合することによって、T細胞を45~50%の投入GFP+T細胞に正規化し、フローサイトメトリーによって確認する。白血病について1週間間隔で動物を評価する。ログランク検定を使用して、CAR-T細胞群についての生存曲線を比較する。
【0266】
細胞増殖およびサイトカイン産生の評価は以前に記載されている(例えば、Milone et al., 2009)。手短に述べると、CAR媒介性増殖の評価は、マイクロタイタープレート中で、洗浄したT細胞を抗原(例えば、K19)またはCD32およびCD137(KT32-BBL)を発現するK562細胞と混合して、2:1の最終的なT細胞:K562の比とすることによって行う。使用前に、K562細胞にガンマ線を照射する。抗CD3(クローンOKT3)および抗CD28(クローン9.3)モノクローナル抗体をKT32-BBL細胞を含む培養物に添加して、T細胞増殖を刺激するための陽性対照として扱い、これは、これらのシグナルが、エクスビボで長期のCD8+T細胞拡大増殖を支持するからである。製造者によって記載されるように、CountBright(商標)蛍光ビーズ(Invitrogen、Carlsbad、CA)およびフローサイトメトリーを使用して、T細胞を培養物中で数える。eGFP-2Aが連結されたCAR発現レンチウイルスベクターで操作されているT細胞を使用したGFP発現によって、CAR-T細胞を特定する。GFPを発現しないCAR+T細胞については、ビオチン化タンパク質および二次アビジン-PEコンジュゲートでCAR+T細胞を検出する。T細胞上のCD4+およびCD8+発現も特異的モノクローナル抗体(BD Biosciences)で同時に検出する。製造者の指示書に従って、ヒトTH1/TH2サイトカインサイトメトリービーズアレイキット(BD Biosciences、San Diego、CA)を使用して、再刺激から24時間後に収集した上清に対してサイトカインの測定(例えば、IFNガンマ)を行う。FACScaliburフローサイトメーターを使用して蛍光を評価し、製造者の指示書に従ってデータを分析する。
【0267】
イメージング技術を使用して、腫瘍担持動物モデルにおけるCARの特異的な輸送および増殖を評価することができる。そのようなアッセイは、例えば、Barrett et al., (2011)に記載されている。
【0268】
代替的に、Nalm-6異種移植モデルにおけるCAR-T細胞の単回注射の治療効果および特異性を以下のように測定することができる:ホタルルシフェラーゼを安定して発現するように形質導入されたNalm-6をNSGマウスに注射し、続いて7日後に、本発明のCARを用いてエレクトロポレーションされたT細胞の単回尾静脈注射を行う。注射後の様々な時点で動物をイメージングする。例えば、5日目(処置2日前)および8日目(CAR+PBL後24時間)での代表的なマウスにおけるホタルルシフェラーゼ陽性の白血病の光子密度ヒートマップを作成することができる。
【0269】
本明細書に記載されるCARを評価するために、本明細書の実施例セクションに記載されているもの、および当技術分野において公知であるものを含めて、他のアッセイを使用することもできる。
【0270】
核酸およびベクター
本発明は、本発明の結合タンパク質またはCARをコードする核酸コンストラクトが挿入されているベクターも提供する。結合タンパク質またはCARをコードする天然または合成の核酸の発現は、典型的には、結合タンパク質またはCARポリペプチドまたはそれらの一部をコードする核酸をプロモーターに機能的に連結し、本コンストラクトを発現ベクターに組み込むことによって、達成される。ベクターは、真核生物における複製および組込みに適し得る。典型的なクローニングベクターは、転写および翻訳のターミネーター、開始配列、ならびに望ましい核酸配列の発現の調節に有用なプロモーターを含む。本発明の発現コンストラクトは、標準的な遺伝子送達プロトコールを使用して、核酸免疫化および遺伝子療法のために使用することもできる。遺伝子送達のための方法は当技術分野において公知である。例えば、US5399346、US5580859、およびUS5589466を参照されたい。別の態様では、本発明は、遺伝子療法ベクターを提供する。
【0271】
いくつかのタイプのベクターに核酸をクローニングすることができる。例えば、限定されないが、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルス、およびコスミドを含めたベクターに核酸をクローニングすることができる。
【0272】
一態様では、本発明の望ましいタンパク質またはCARをコードする核酸を含むベクターはアデノウイルスベクター(A5/35)である。別の態様では、タンパク質またはCARをコードする核酸の発現は、トランスポゾン、例えば、スリーピングビューティー(sleeping beauty)、クリスパー(crisper)、CAS9、およびジンクフィンガーヌクレアーゼを使用して達成することができる(例えば、June et al., 2009を参照されたい)。
【0273】
さらに、ウイルスベクターの形態で発現ベクターを細胞に供給することができる。ウイルスベクター技術は当技術分野において周知であり、例えば、Sambrook Molecular Cloning: A Laboratory Manual, volumes 1-4, Cold Spring Harbor Pressならびに他のウイルス学および分子生物学マニュアルに記載されている。当技術分野において公知である技法を使用して、選択された遺伝子をベクター挿入し、レトロウイルス粒子中にパッケージングすることができる。次いで、組換えウイルスを単離し、インビボまたはエクスビボのいずれかで対象の細胞に送達することができる。いくつかのレトロウイルス系が当技術分野において公知である。いくつかの態様では、アデノウイルスベクターが使用される。いくつかのアデノウイルスベクターが当技術分野において公知である。一態様では、レンチウイルスベクターが使用される。さらなるプロモーター要素、例えばエンハンサーは、転写開始の頻度を調節する。典型的には、これらは、開始部位の30~110bp上流の領域に位置するが、いくつかのプロモーターは、開始部位の下流に機能的要素を含むことも示されている。プロモーター要素間の間隔は、しばしば柔軟であるため、要素が互いに対して逆になるかまたは移動される場合に、プロモーターの機能は保存される。チミジンキナーゼ(tk)プロモーターでは、プロモーター要素間の間隔は、活性が低下し始める前の50bpまで離して延ばすことができる。
【0274】
結合タンパク質またはCARを発現する細胞の作製方法
結合タンパク質またはCARをコードするベクターまたは核酸を細胞に導入することによって該タンパク質またはCARを発現する細胞を作製する方法も本明細書において提供される。細胞において遺伝子を導入し、発現させる方法は当技術分野において公知である。発現ベクターに関して、当技術分野の任意の方法によって、宿主細胞、例えば、哺乳動物細胞、細菌細胞、酵母細胞、または昆虫細胞中に該ベクターを容易に導入することができる。例えば、物理的、化学的、または生物学的手段によって、発現ベクターを宿主細胞中に移行させることができる。
【0275】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための物理的方法としては、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、パーティクルボンバードメント、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどが挙げられる。ベクターおよび/または外来性核酸を含む細胞を生成するための方法は当技術分野において周知である(例えば、Sambrook Molecular Cloning: A Laboratory Manual, volumes 1-4, Cold Spring Harbor Pressを参照されたい)。宿主細胞中へのポリヌクレオチドの導入のための好ましい方法は、リン酸カルシウムトランスフェクションである。
【0276】
宿主細胞中に関心対象のポリヌクレオチドを導入するための生物学的方法としては、DNAベクターおよびRNAベクターの使用が挙げられる。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、哺乳動物、例えば、ヒト細胞に遺伝子を挿入するために最も広く使用されている方法になった。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルスなどに由来し得る。例えば、US5350674およびUS5585362を参照されたい。
【0277】
宿主細胞にポリヌクレオチドを導入するための化学的手段としては、コロイド分散系、例えば、巨大分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、および脂質ベースの系、例えば、水中油形乳剤、ミセル、混合ミセル、およびリポソームが挙げられる。インビトロおよびインビボで送達ビヒクルとして使用するための例示的なコロイド系は、リポソーム(例えば、人工膜小胞)である。標的指向型ナノ粒子または他の適切なサブミクロンサイズの送達系を用いたポリヌクレオチドの送達などの、核酸の最新式標的指向型送達の他の方法が利用可能である。
【0278】
例示的な非ウイルス送達ビヒクルはリポソームである。宿主細胞中への核酸の導入(インビトロ、エクスビボ、またはインビボ)のために、脂質製剤の使用が企図される。別の態様では、核酸を脂質と結合させることができる。脂質と結合した核酸をリポソームの水性の内部にカプセル化すること、リポソームの脂質二重層中に散在させること、リポソームとオリゴヌクレオチドの両方に結合する連結分子を介してリポソームに結合させること、リポソーム中に封入すること、リポソームと複合体化すること、脂質を含む溶液中に分散させること、脂質と混合すること、脂質と組み合わせること、脂質中に懸濁液として含むこと、ミセルとともに含むかもしくはミセルと複合体化すること、またはさもなければ、脂質と結合させることができる。
【0279】
外来性核酸を宿主細胞に導入するために、またはさもなければ本発明の阻害剤に細胞を曝露するために使用される方法にかかわらず、宿主細胞中の組換えDNA配列の存在を確認するために、様々なアッセイを行うことができる。そのようなアッセイとしては、例えば、当業者に周知である「分子生物学的」アッセイ、例えば、サザンおよびノーザンブロッティング、RT-PCRおよびPCR;例えば、免疫学的手段(ELISAおよびウエスタンブロット)によって、または本発明の範囲内に入る作用物質を特定するための本明細書に記載されるアッセイによって、特定のペプチドの有無を検出するなどの「生化学的」アッセイが挙げられる。
【0280】
一般に、周知の方法を使用して、T細胞などの免疫エフェクター細胞を活性化および拡大増殖することができる。
【0281】
一般に、免疫エフェクター細胞、例えば、調節性T細胞枯渇細胞の集団は、CD3/TCR複合体関連シグナルを刺激する作用物質およびT細胞の表面上の共刺激分子を刺激するリガンドが結合した表面と接触させることによって、拡大増殖させることができる。特に、本明細書に記載されるように、例えば、表面上に固定化された抗CD3抗体もしくはその抗原結合フラグメントまたは抗CD2抗体と接触させることによって、あるいはカルシウムイオノフォアとともにプロテインキナーゼC活性化因子(例えば、ブリオスタチン)と接触させることによって、T細胞集団を刺激することができる。T細胞の表面上のアクセサリー分子の共刺激については、アクセサリー分子に結合するリガンドが使用される。例えば、T細胞の増殖を刺激するのに適切である条件下で、T細胞の集団を抗CD3抗体および抗CD28抗体と接触させることができる。CD4+T細胞またはCD8+T細胞のいずれかの増殖を刺激するために、抗CD3抗体および抗CD28抗体を使用することができる。抗CD28抗体の例としては、9.3、B-T3、XR-CD28(Diaclone、Besancon、France)が挙げられ、これらは、当技術分野において一般に公知である他の方法と同様に使用することができる(Berg et al., 1998; Haanen et al., 1999; Garland et al., 1999)。
【0282】
免疫エフェクター細胞の培養に適切である条件としては、血清(例えば、ウシ胎仔またはヒト血清)、インターロイキン-2(IL-2)、インスリン、IFN-γ、IL-4、IL-7、GM-CSF、IL-10、IL-12、IL-15、TGF、およびTNF-a、または当業者に公知である、細胞の増殖のための任意の他の添加剤を含めて、増殖および生存能に必要である因子を含み得る、適切な培地(例えば、最小必須培地またはRPMI培地1640またはX-vivo 15(Lonza))が挙げられる。
【0283】
CARまたは結合タンパク質を含む細胞
別の局面では、本発明は、本発明の結合タンパク質、CAR、核酸、またはベクターを含む細胞を提供する。適切な細胞型は本明細書に記載される。いくつかの態様では、細胞は免疫エフェクター細胞である。本明細書において使用される場合、フレーズ「免疫エフェクター細胞」は、抗原の認識の際に、免疫応答に影響を及ぼすかまたは免疫応答を誘導することができる免疫細胞を指す。いくつかの態様では、免疫エフェクター細胞はT細胞またはNK細胞である。いくつかの態様では、免疫エフェクター細胞はCD8+T細胞である。いくつかの態様では、細胞は哺乳動物細胞である。いくつかの態様では、細胞はヒト細胞である。
【0284】
一態様では、本明細書に記載される細胞は、第2の(またはそれ以上の)CAR、例えば、例えば同じ標的(例えば、上記の標的)または異なる標的に対して異なる抗原結合ドメインを含む第2のCARをさらに含むことができる。一態様では、第2のCARは、第1のCARの標的と同じがん細胞型で発現している標的に結合する抗原結合ドメインを含む。
【0285】
別の態様では、本明細書に記載される結合タンパク質またはCARを含む細胞は、別の作用物質、例えば、CAR発現細胞の活性を増強する作用物質をさらに発現することができる。例えば、一態様では、作用物質は、阻害性分子を阻害する作用物質であり得る。いくつかの態様では、阻害性分子、例えばPDlは、CAR発現細胞が免疫エフェクター応答を開始する能力を低下させることができる。阻害性分子の例としては、PDl、PD-Ll、CTLA4、TIM3、CEACAM(例えば、CEACAM-1、CEACAM-3、および/またはCEACAM-5)、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4、ならびにTGFベータが挙げられる。一態様では、阻害性分子を阻害する作用物質は、例えば、本明細書に記載される分子であり、例えば、正のシグナルを細胞に与える第2のポリペプチド、例えば、本明細書に記載される細胞内シグナル伝達ドメインと結合する第1のポリペプチド、例えば、阻害性分子を含む作用物質である。一態様では、作用物質は、例えば、阻害性分子、例えば、PDl、PD-L1、CTLA4、TIM3、CEACAM(例えば、CEACAM-1、CEACAM-3、および/もしくはCEACAM-5)、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4、もしくはTGFベータ、またはこれらのいずれかのフラグメント(例えば、これらのいずれかの細胞外ドメインの少なくとも一部)の第1のポリペプチド、ならびに本明細書に記載される細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、共刺激ドメイン(例えば、例えば本明細書に記載される41BB、CD27、もしくはCD28、またはこれらの機能的変異体を含む)、および/あるいは一次シグナル伝達ドメイン(例えば、本明細書に記載されるCD3ゼータシグナル伝達ドメインまもしくはこれらの機能的変異体)である第2のポリペプチドを含む。一態様では、作用物質は、PD1またはそのフラグメント(例えば、PD1の細胞外ドメインの少なくとも一部またはこれらの機能的変異体)の第1のポリペプチド、ならびに本明細書に記載される細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、本明細書に記載されるCD28シグナル伝達ドメインおよび/もしくは本明細書に記載されるCD3ゼータシグナル伝達ドメインまたはこれらの機能的変異体)の第2のポリペプチドを含む。PD1は、CD28、CTLA-4、ICOS、およびBTLAも含む受容体のCD28ファミリーの阻害性メンバーである。PD-1は、活性化されたB細胞、T細胞、および骨髄系細胞で発現している(Agata et al., 1996)。PDlに対する2つのリガンド、すなわち、PD-L1およびPD-L2は、PDlへの結合の際にT細胞活性化をダウンレギュレートすることが示されている(Freeman et al., 2000;Latchman et al., 2001;Carter et al., 2002)。PD-L1はヒトのがんに大量に存在する(Dong et al., 2003;Blank et al., 2005;Konishi et al., 2004)。免疫抑制は、PDlとPD-L1の局所的相互作用を阻害することによって逆転させることができる。
【0286】
一態様では、作用物質は、膜貫通ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメイン、例えば、41BBおよびCD3ゼータに融合した阻害性分子、例えば、プログラム死1(PD1)の細胞外ドメイン(ECD)を含む(本明細書において、PDl CARとも称される)。一態様では、PDl CARは、本明細書に記載されるXCARと組み合わせて使用される場合に、T細胞の持続性を改善する。一態様では、CARはPDlの細胞外ドメインを含むPDl CARである。
【0287】
別の態様では、本発明は、CAR発現細胞、例えば、CAR-T細胞の集団を提供する。いくつかの態様では、CAR発現細胞の集団は、異なるCARを発現する細胞の混合物を含む。例えば、一態様では、CAR-T細胞の集団は、抗原結合ドメインを有するCARを発現する第1の細胞および異なる抗原結合ドメイン、例えば、異なる標的に対する抗原結合ドメイン、例えば、第1の細胞が発現するCARの抗原結合ドメインが結合する標的と異なる標的に対する抗原結合ドメインを有するCARを発現する第2の細胞を含むことができる。別の例として、CAR発現細胞の集団は、第1の標的に対する抗原結合ドメインを含むCARを発現する第1の細胞および第2の標的に対する抗原結合ドメインを含むCARを発現する第2の細胞を含むことができる。一態様では、CAR発現細胞の集団は、例えば、一次シグナル伝達ドメインを含むCARを発現する第1の細胞および二次シグナル伝達ドメインを含むCARを発現する第2の細胞を含む。
【0288】
本明細書に記載される態様では、免疫エフェクター細胞は、同種異系免疫エフェクター細胞、例えば、T細胞またはNK細胞であり得る。例えば、該細胞は、同種異系T細胞、例えば、機能的T細胞受容体(TCR)ならびに/またはヒト白血球抗原(HLA)、例えば、HLAクラスIおよび/もしくはHLAクラスIIの発現を欠く同種異系T細胞であり得る。
【0289】
機能的TCRを欠くT細胞は、例えば、その表面上でいかなる機能的TCRも発現しないように操作することができ、機能的TCRを含む1つもしくは複数のサブユニットを発現しないように操作することができ、またはその表面上で極めて少ない機能的TCRしか生成しないように操作することができる。代替的に、T細胞は、例えば、TCRのサブユニットの1つまたは複数の突然変異を受けたまたはトランケートされた形態の発現によって、実質的に損なわれたTCRを発現し得る。用語「実質的に損なわれたTCR」は、このTCRが宿主において有害な免疫反応を惹起しないであろうことを意味する。
【0290】
本明細書に記載されるT細胞は、例えば、その表面上で機能的HLAを発現しないように操作することができる。例えば、本明細書に記載されるT細胞は、細胞表面発現HLA、例えば、HLAクラス1および/またはHLAクラスIIがダウンレギュレートされるように操作することができる。いくつかの態様では、T細胞は、機能的TCRおよび機能的HLA、例えば、HLAクラスIおよび/またはHLAクラスIIを欠いてもよい。
【0291】
機能的TCRおよび/またはHLAの発現を欠く改変T細胞は、TCRまたはHLAの1つまたは複数のサブユニットのノックアウトまたはノックダウンを含めて、任意の適切な手段によって、得ることができる。例えば、T細胞は、siRNA、shRNA、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(clustered regularly interspaced short palindromic repeats)(CRISPR)転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはジンクフィンガーエンドヌクレアーゼ(ZFN)を使用して、TCRおよび/またはHLAのノックダウンを含むことができる。
【0292】
処置の方法
処置される状態
本発明の結合タンパク質、組成物、およびCARは、特に、EGFRvIIIの発現もしくは活性と関係があるか、またはEGFRvIIIの発現もしくは活性によって媒介されるか、あるいはEGFRvIIIとEGFRリガンドの間の相互作用を遮断すること、またはさもなければEGFRvIII活性および/もしくはシグナル伝達を阻害すること、および/もしくは受容体の内部移行を促進すること、および/もしくは細胞表面受容体の数を減少させることによって治療可能な、任意の疾患または障害の処置、予防、および/または回復に有用である。例えば、本発明の結合タンパク質、組成物、およびCARは、EGFRvIIIを発現するおよび/またはリガンド媒介性シグナル伝達に応答する腫瘍の処置に有用である。本発明の結合タンパク質、組成物、およびCARは、脳および髄膜、中咽頭、肺および気管支樹、消化管、男性および女性の生殖器系、筋肉、骨、皮膚および付属器、結合組織、脾臓、免疫系、造血細胞および骨髄、肝臓および尿路、ならびに眼などの特殊感覚器官に生じる原発性および/または転移性の腫瘍を処置するために使用することもできる。ある特定の態様では、本発明の結合タンパク質、組成物、およびCARは、以下のがんの1つまたは複数を処置するために使用される:腎細胞がん、膵臓がん、頭頸部がん、前立腺がん、悪性グリオーマ、骨肉腫、結腸直腸がん、胃がん(例えば、MET増幅をともなう胃がん)、悪性中皮腫、多発性骨髄腫、卵巣がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、滑膜肉腫、甲状腺がん、乳がん、または黒色腫。
【0293】
本明細書に記載される処置の方法において、結合タンパク質、組成物、またはCARは、単独療法(すなわち、治療剤のみ)として、または1つもしくは複数さらなる治療剤(その例は、本明細書の他の個所で記載される)と組み合わせて、投与することができる。
【0294】
一態様では、本発明の結合タンパク質は、好ましくはEGFRがミスフォールドされているがんにおいて、過剰発現EGFRと関連するがんを処置するのにも有用である。この場合、結合タンパク質は、グリオーマ、膵臓がん、結腸直腸がん、肺がん、乳がん、胃がん、腎臓がん、子宮頸がん、卵巣がん、腺がん、膀胱がん、または頭頸部がんを処置するのに有用である。
【0295】
投与量および投与のタイミング
本発明の結合タンパク質、組成物、および細胞の適切な投与量は、処置される状態および/または処置される対象によって変動するであろう。これは、熟練の医師が適切な投与量を決定する能力の範囲内である。
【0296】
いくつかの態様では、本発明の方法は、予防的または治療的有効量の本明細書に記載される結合タンパク質、組成物、または細胞を投与する工程を含む。
【0297】
用語「治療的有効量」は、処置を必要としている対象に投与される場合に、対象の予後および/もしくは状態を改善する、ならびに/または本明細書に記載される臨床状態の1つもしくは複数の症状を、その状態の臨床的診断もしくは臨床的特性として観察され、許容されるものよりも低いレベルまで低減させるかもしくは阻害する量である。
【0298】
本明細書において使用される場合、用語「予防的有効量」は、臨床状態の1つまたは複数の検出可能な症状の発症を予防するまたは阻害するまたは遅延させるのに十分な、結合タンパク質、組成物、または細胞の量を意味すると解釈されたい。当業者は、そのような量は、例えば、投与される特異的結合タンパク質、および/または特定の対象、および/または状態のタイプもしくは重症度もしくはレベル、および/または状態に対する素因(遺伝性もしくは他のもの)によって変動するであろうことを認識するであろう。
【0299】
本発明の方法による結合タンパク質、組成物、または細胞の投与は、例えば、レシピエントの生理状態、投与の目的が治療的であるか予防的であるか、および当業者に公知である他の因子に応じて、連続的または断続的であり得る。投与は、あらかじめ選択された期間にわたって本質的に連続的であってもよく、または例えば、状態の発生の間か後のいずれかに、一連の間隔を空けた投与であってもよい。
【0300】
当業者に明らかであるように、対象におけるがんの症状の「低減」は、同様にがんを罹患しているが、本明細書に記載される方法による処置を受けていない別の対象との比較によるであろう。これは、2対象の並列比較を必ずしも必要としない。もしろ、集団データが信頼できる。例えば、本明細書に記載される方法による処置を受けていない、がんを罹患している対象の集団(任意で、処置される対象と、例えば、年齢、体重、人種が類似している対象の集団)が評価され、平均値が、本明細書に記載される方法で処置された対象または対象の集団の結果と比較される。
【0301】
CAR発現細胞
本発明は、免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)が本明細書に記載されるCARを発現するように遺伝子改変され、CAR発現細胞が、それらを必要とするレシピエントに注入される、ある種の細胞療法を含む。注入された細胞は、レシピエントにおいて、CARの標的を発現する病的細胞を死滅させることができる。抗体療法と異なって、CAR改変免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)は、インビボで複製し、持続的腫瘍制御につながり得る、長期持続性をもたらすことができる。様々な態様では、患者に投与される免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)またはその後代は、患者へのT細胞またはNK細胞の投与後、少なくとも4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、12か月、13か月、14か月、15か月、16か月、17か月、18か月、19か月、20か月、21か月、22か月、23か月、2年、3年、4年、または5年にわたって患者中に存続する。
【0302】
本発明は、免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)が、キメラ抗原受容体(CAR)を一過的に発現するように、例えばインビトロ転写RNAによって改変され、CAR T細胞またはNK細胞が、それらを必要とするレシピエントに注入される、ある種の細胞療法も含む。注入された細胞は、レシピエントにおいて、腫瘍細胞を死滅させることができる。したがって、様々な態様では、患者に投与される免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)は、患者へのT細胞またはNK細胞の投与後、1か月未満、例えば、3週間、2週間、1週間にわたって存在する。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、CAR改変免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)によって惹起される抗腫瘍免疫応答は、能動もしくは受動免疫応答であり得、または代替的に、直接免疫応答対間接免疫応答によるものであり得る。一態様では、CAR形質導入免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)は、EGFRvIIIを発現するヒトがん細胞に応答して、特異的な炎症誘発性サイトカイン分泌および強力な細胞溶解活性を示す。
【0303】
エクスビボの手順は当技術分野において周知である。手短に述べると、哺乳動物(例えばヒト)から細胞を単離し、これを本明細書に記載されるCARを発現するベクターで遺伝子改変する(すなわち、インビトロで形質導入またはトランスフェクトする)。CAR発現細胞は、治療的利益を提供するために、哺乳動物のレシピエントに投与することができる。哺乳動物のレシピエントはヒトであってもよく、CAR発現細胞はレシピエントに対して自己であってもよい。代替的に、細胞は、レシピエントに対して同種異系、同系、または異種であってもよい。
【0304】
造血幹細胞および造血前駆細胞のエクスビボ拡大増殖のための手順はUS5,199,942に記載されており、本発明の細胞に適用することができる。他の適切な方法は当技術分野において公知であり、したがって、本発は細胞のエクスビボ拡大増殖のいかなる特定の方法にも限定されない。手短に述べると、免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)のエクスビボ培養および拡大増殖は、以下の工程を含む:(1)末梢血採取物または骨髄外植体から哺乳動物由来のCD34+造血幹細胞および造血前駆細胞を収集する工程;および(2)そのような細胞をエクスビボ拡大増殖する工程。US5,199,942に記載されている細胞成長因子に加えて、細胞を培養および拡大増殖するために、flt3-L、IL-1、IL-3、およびc-kitリガンドなどの他の因子を使用することができる。
【0305】
本発明のCAR発現免疫エフェクター細胞(例えば、T細胞、NK細胞)は、本明細書に記載されるように、単独か、あるいは希釈剤および/もしくは他の成分、例えば、IL-2もしくは他のサイトカイン、または細胞集団と組み合わせた薬学的組成物としてかのいずれかで投与することができる。免疫エフェクター細胞は、単独か、あるいは希釈剤および/もしくは他の成分、例えば、IL-2、IL-15もしくは他のサイトカイン、または細胞集団と組み合わせた薬学的組成物としてかのいずれかで投与することができる。手短に述べると、薬学的組成物は、1種または複数種の薬学的または生理学的に許容可能な担体、希釈剤、または賦形剤と組み合わせて、本明細書に記載される免疫エフェクター細胞を含むことができる。そのような組成物は、緩衝液、例えば、中性緩衝食塩水、リン酸緩衝食塩水など;炭水化物、例えば、グルコース、マンノース、ショ糖、またはデキストラン、マンニトール;タンパク質;ポリペプチドまたはアミノ酸、例えばグリシン;抗酸化剤;キレート剤、例えば、EDTAまたはグルタチオン;アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム);および防腐剤を含むことができる。いくつかの態様では、開示される方法で使用するための組成物は静脈内投与のために製剤化される。
【0306】
本明細書に記載される細胞を含む薬学的組成物は、範囲内のすべての整数値を含めて、104~109細胞/kg体重、例えば、105~106細胞/kg体重の投与量で投与することができる。細胞組成物は、これらの投与量で複数回投与することもできる。細胞は、免疫療法で一般に公知である注入技法によって投与することができる(例えば、Rosenberg et al., 1988を参照されたい)。特定の患者に最適な投与量および処置レジームは、疾患の徴候について患者をモニターし、それに応じて処置を調整することによって、医学分野の当業者が容易に決定することができる。
【0307】
併用療法
本発明の結合タンパク質またはCARは、1種または複数種の化学療法作用物質の1種または複数種のさらなる治療活性成分と共製剤化するおよび/または組み合わせて投与することができる。
【0308】
インビトロおよび診断での使用
本発明の結合タンパク質は、例えば、診断目的で、試料中のEGFRvIIIまたはEGFRvIII発現細胞を検出および/または測定するために使用することもできる。代替的に、本発明の結合タンパク質は、好ましくは、EGFRがミスフォールドされている場合に、例えば、診断目的で、試料中のEGFRまたはEGFR発現細胞を検出および/または測定するために使用することもできる。例えば、本発明の結合タンパク質は、EGFRvIIIの発現を特徴とする状態または疾患を診断するために使用することができる。EGFRvIIIまたはEGFRについての例示的な診断アッセイは、例えば、患者から得られた試料を本発明の結合タンパク質と接触させる工程を含むことができ、この場合、結合タンパク質は、検出可能な標識またはレポーター分子で標識されている。代替的に、本発明の非標識の結合タンパク質を、それ自体検出可能な程度に標識されている二次タンパク質と組み合わせて、診断用途で使用することができる。検出可能な標識またはレポーター分子は、放射性同位体、例えば、3H、14C、32S、または125I;蛍光または化学発光部、例えば、フルオレセインイソチオシアネートもしくはローダミン;あるいは酵素、例えば、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、またはルシフェラーゼであり得る。試料中のEGFRvIIIを検出または測定するのに使用することができる特定の例示的アッセイとしては、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、および蛍光活性化セルソーティング(FACS)が挙げられる。
【0309】
本発明によるEGFRvIIIまたはEGFR診断アッセイで使用することができる試料としては、正常状態または病的状態下で検出可能な量のEGFRvIIIもしくはEGFRタンパク質またはそれらのフラグメントを含む、患者から入手可能な任意の組織また体液試料が挙げられる。一般に、健康な患者(例えば、EGFRvIIIの発現と関係がある疾患または状態に苦しんでいない患者)から得られた特定の試料におけるEGFRvIIIまたはEGFRのレベルを測定して、EGFRvIIIまたはEGFRのベースラインまたは基準レベルを最初に確立する。次いで、EGFRvIIIまたはEGFRのこのベースラインレベルを、EGFRvIIIまたはEGFRと関連する疾患または状態を有する疑いがある個体から得られた試料で測定されたEGFRvIIIまたはEGFRのレベルと比較することができる。
【実施例】
【0310】
実施例1-材料および方法
抗EGFRvIII scFvの生成
細胞外ドメインからなり膜貫通ドメインも内部ドメインも含まない組換え可溶性EGFRvIIIタンパク質(カタログ番号EGI-H52H4)および野生型EGFR(カタログ番号EGR-H5222)は、ACRO Biosystemsから購入した。製造者の指示書に従って、組換えEGFRvIIIを化学フルオロフォアDyLight 405 NHSエステル(ThermoFisher、カタログ番号46400)およびATTO 488 NHSエステル(ATTO-TEC、カタログ番号AD 488-31)で標識した。組換えEGFRをDyLight 405 NHSエステルで標識した。
【0311】
Affinity BiosciencesのRetained Display(ReD)タンパク質ディスプレイプラットフォーム(WO2011075761A1およびWO2013000023A1)ならびにRUBYライブラリー(WO2013023251A1)を使用して、野生型EGFRタンパク質と比較してEGFRvIII形態を選択的に標的にするであろうヒト生殖系列スキャフォールドを有するscFv抗体をスクリーニングした。Dynabeads(ThermoFisher、カタログ番号65002)に結合したEGFRvIIIタンパク質を使用した、RUBYバクテリオファージライブラリーの2ラウンドのパニングに続いて、パニングのアウトプットをReDの細胞ディスプレイモダリティに切り換え、特許WO2013000023A1に記載されるように処理した。カプシドに結合したscFvを提示する界面活性剤透過化細胞をEGFRvIII-ATTO488で標識し、標的に結合したクローンをFACSによって選択した。FACSのアウトプットを溶解し、バクテリオファージを感染させ、LB寒天プレートでクローンを回収した。FACSの第2ラウンド用のDy405および第3ラウンド用のATTO488で標識したEGFRvIIIを使用して、FACSの第2および第3ラウンドを同様な方法で行った。次いで、2ラウンドのカウンタースクリーニングFACSを行い、最初に、Dy405で標識されたEGFRvIIIおよびATTO488で標識されたEGFRを使用して、Dy405標識されたEGFRvIIIに選択的に結合するクローンをゲート(gate)した。第2のFACSカウンタースクリーンは、色素標識を逆転させ、ATTO488標識された標的に結合するクローンを選択した。第2のカウンタースクリーンのアウトプットクローンを配列決定し、ユニークなscFvを、精製および特徴づけを支援するためのHis6およびAviTag融合物としてscFvタンパク質を産生する発現ベクターにクローニングした。
【0312】
EGFRvIIIスクリーンのアウトプットのシークエンシングによって、野生型EGFR細胞外ドメインと比較してEGFRvIIIに優先的に結合する13クローンを得た。ビオチン化scFvをストレプトアビジンDynabeadsに最初に結合させ、次いで、これを洗浄し、遊離ビオチンでブロッキングしてから、ATTO488で標識した可溶性EGFRvIIIまたはEGFRに結合させるアッセイによって、選択性を実証した。無関係のビオチン化scFvを対照として使用して、結合および蛍光のベースラインを確立した。
図1は、EGFRvIIIまたはEGFRのいずれかへのscFvクローンの相対的結合を示す。GCT01(VH/VL SEQ ID NO:3/4)およびGCT02(VH/VL SEQ ID NO:5/6)と新たに命名した2つのクローン70および205は、EGFR野生型に対して無視できるほどの結合しか示さなかったが、EGFRvIIIアイソフォームに対して強い結合を維持した。GCT01は、そのVH CDR3が10個の他のユニークなクローンと関連しているので、注目に値し、EGFRvIIIにおいて保存された結合エピトープが示唆された。このクレードの10クローンすべてが同じVL生殖系列スキャフォールド(IGLV3-1)を使用していたが、それらのVL CDR3は、弱い配列保存性しか示さず(中央のGlyは、IGLV3-1スキャフォールドを使用したライブラリー構造の特色であった)、これにより、VH CDR3が極めて重要な結合決定基を作ることが示唆された。しかし、本クレードの他のクローンと比較した場合のGCT01配列の微妙な違いによって、このクローンはEGFRに対するEGFRvIIIのより高い識別力を得た。
【0313】
マウスT細胞の生成、精製、および活性化
6~8週齢のC57BL/6マウスのリンパ節を採取し、0.7μmのナイロンフィルターを通して濾過した。細胞をPBSで洗浄し、遠心分離した(1500RPM、5分)。細胞を1×108細胞/mlで再懸濁し、製造者の指示書に従って、EasySep(商標)ポジティブ選択キットを使用して、CD4またはCD8 T細胞をポジティブ選択した。マウスCD3z/CD28 Dynabeads(登録商標)で一次T細胞を活性化し、これを37℃、5%CO2で一晩インキュベートした。
【0314】
標的細胞上でのEGFRvIII発現の検出
GCT01、GCT02 scFvで標的細胞を氷上で30分間標識した。ストレプトアビジン-PEで細胞を30分間標識した。フローサイトメトリーによって試料を分析し、細胞をPE陽性細胞についてゲートした。
【0315】
表面プラスモン共鳴(SPR)
0.05%Tweenを含むPBS(PBS-T)中で、ProteOn XPR36機器(Bio-Rad)を25℃で使用して、SPR実験を行った。ストレプトアビジンを10mM酢酸ナトリウム(pH4.0)に希釈し、アミンカップリングによって、300応答単位(RU)をGLCセンサーチップの3つのフローセルに固定化した。ビオチン化されたGCT01、GCT02、およびGFP scFv鎖(200~400RU)をProteOn GLCストレプトアビジン結合センサーチップの別個のフローセル上で捕捉した。scFvが結合していない、固定化されたストレプトアビジンを含む別個のフローセルを対照チャネルとして扱った。
【0316】
組換えEGFRカタログ番号(Cat)EGR-H5222ロット:R102-616S1-A3およびEGFRvIII(タンパク質カタログ番号EGI-H52H4ロット:2144-65RS1-BGをAcrobiosystemsから得て、PBS中で1ug/ulに再構成してから、PBS-T中に希釈し、示される濃度(流速30μl/分)で試験および対照表面上にインジェクトした。GFPタンパク質をチップ上にインジェクトして、非特異的scFv結合に対する陰性対照として扱った。10mMのグリシンHCl緩衝液(pH3)を使用して、インジェクションの間に、インジェクトされたタンパク質をチップから取り除いた。少なくとも2つの独立したインジェクションの結果を分析した。対照セルからデータを減算した後、ProteOn Managerソフトウェア(バージョン2.1)で相互作用を分析した。1:1ラングミュア結合モデルを使用した動力学的適合(kinetic fit)分析からKD値を得た。
【0317】
EGFRvIII CAR発現細胞の生成
細胞表面発現を確認するために、MYCタグをscFv領域に挿入した。遺伝子ブロックを注文し、Gibsonクローニングを使用してpMSCVプラスミド骨格にサブクローニングし、完全に配列を検証した。
【0318】
CARプラスミドをレトロウイルス外被およびパッケージングプラスミドと組み合わせ、製造者の指示書に従って、FuGENE-6(Promega)を使用して、HEK293T細胞にトランスフェクトした。Retronectin(32ug/mL)を4℃で一晩12ウェルプレートにコーティングし、次いで、洗浄してから、形質導入した。HEK293Tのウイルス上清を濾過し、一次活性化T細胞とともに遠心分離し、>4時間インキュベートしてから、1000Gで1時間遠心分離し、37℃、5%CO2で一晩インキュベートした。6~8週齢のC57BL/6マウスのリンパ節を採取し、CD4+およびCD8+T細胞集団をポジティブ選択してから、CD3ζ/CD28 Dynabeadsで活性化した。上清中のレトロウイルスを24時間で収集し、これを使用して、活性化T細胞に形質導入した。形質導入から24時間後に、フローサイトメトリーによって細胞を分析して、mCherryの発現および細胞表面のMyc標識によって、形質導入効率を評価した。
【0319】
非シグナル伝達EGFRvIII発現細胞株の生成
非シグナル伝達EGFRvIII(SEQ ID NO:40)を含むレンチウイルスをHEK293T細胞を使用して作製し、腫瘍細胞株に形質導入した。腫瘍細胞株を社内の抗EGFRvIII結合剤を使用して染色し、EGFRvIII陽性細胞をFACSで選別し、拡大増殖し、アッセイで使用した。
【0320】
クロム放出アッセイ
1×106個の標的腫瘍細胞を1時間(37℃)クロム(51Cr)で標識してから、洗浄し、10:1のエフェクター細胞対標的細胞の比でCAR-T細胞と共培養した。最小死滅は標的細胞単独で測定され、最大死滅は10%Triton X-100をともなう標的細胞で測定された。標的細胞およびエフェクター細胞を96ウェルプレート(3連)中で37℃、5%CO2で24時間共インキュベートした。Genesys GeneIIシンチレーションカウンターを使用して、ウイルス上清において溶解を測定した。
【0321】
頭蓋内腫瘍担持マウスにおけるCAR-T細胞のインビボ試験
手術の1時間前に、10mg/kgの予防的なBaytril(エンロフロキサシン)抗生物質をマウスに投与した。全身麻酔薬(GA)ケタミン-キシラジン(Ketamine to Xylazine)(20,000mg/Kg(すなわち、マウス20gあたり0.4g(400μl)の組み合わせ)をi.p.投与し、5mg/kgのカルプロフェン鎮痛薬の皮下注射を投与した。一旦マウスが定位フレームに固定されると、注射部位を冠状縫合のブレグマの外側2mmから3mmの深さまでと特定した。決定された標的上で、無菌の刃で頭皮を矢状に切開した。電動バーを使用して、右前頭部の3mmの小さな穿頭孔を作った。World Precision Instruments(商標)により駆動される細いプラスチックチューブを介したHamiltonの10μlマイクロリットルシリンジに取り付けられた26ゲージの針を使用して、105個の腫瘍細胞を定位ガイダンス下で脳に3mmの深さで注射した。Aladdin(商標)のAL-1000電子プログラム可能シリンジポンプを使用して、腫瘍細胞を3分間にわたって5μlで分注した。注射部位は骨ろうで閉じ、頭皮は、断続縫合技法を使用してバイクリル溶解性編組縫合糸で閉じた。マウスに10mg/kgのBaytrilの皮下注射を手術後3日間投与した。
【0322】
IVISシステム(Living Image(登録商標)ソフトウェアを備えたIVIS(登録商標)Lumina IIIシリーズハードウェア(Perkin Elmer))を使用して、腫瘍の成長をモニターした。手短に述べると、27Gのインスリンシリンジを使用して、200μLのPromega D-ルシフェリン(PBS中)をマウスに腹腔内注射した。ルシフェリンが体を循環するのを可能にするおよそ5~10分後、イソフルラン吸入薬(4%から2%で維持される間のレベル)を使用してマウスに麻酔をかけて、このマウスをIVISイメージングシステムに移してイメージングした。
【0323】
腫瘍接種後5~8日目に行った、腫瘍生着のポジティブIVISイメージングに続いて、マウスをランダムに群に割り当て、2e6~10e6個の間のCD4およびCD8 CAR T細胞を静脈内投与した。次いで、IVIS(登録商標)Luminaを使用してマウスを毎週イメージングして、腫瘍細胞の成長をモニターした。
【0324】
実施例2-高親和性抗EGFRvIII scFv
実施例1に記載されるように、Myrio Therapeutics、Victoriaでファージディスプレイスクリーンを使用して、野生型EGFRと比較してEGFRvIIIに特異的に結合する2つの高親和性抗EGFRvIII scFvを生成した。2つの高親和性抗EGFRvIII scFvを「GCT01」および「GCT02」と名付けた。それらのアミノ酸配列を以下に示す。
SEQ ID NO:3-GCT01 VHアミノ酸配列(CDRに下線を引く)
SEQ ID NO:4-GCT01 VLアミノ酸配列(CDRに下線を引く)
SEQ ID NO:5-GCT02 VHアミノ酸配列(CDRに下線を引く)
SEQ ID NO:6-GCT02 VLアミノ酸配列(CDRに下線を引く)
【0325】
実施例3-EGFRvIIIへの結合
EGFRvIIIに対するGCT01およびGCT02の結合特性を決定するために、ProteOn XPR36機器(Bio-Rad)を使用して表面プラスモン共鳴(SPR)実験を行った。ビオチン化されたGCT01、GCT02、およびGFP scFv鎖(200~400RU)を別個のストレプトアビジン結合センサーチップ上で捕捉した。scFvが結合していない、固定化されたストレプトアビジンを含む別個のフローセルを対照チャネルとして扱った。
【0326】
図2は、GCT01 scFvおよびGCT02 scFvが、EGFR野生型タンパク質よりもEGFRvIIIタンパク質に対して特異的であることを示す。表面プラスモン共鳴(SPR)によって決定した場合、GCT01 scFvクローンとGCT02 scFvクローンの両方とも、EGFR(野生型)組換えタンパク質と比較して、組換えEGFRvIIIタンパク質に特異的に結合した。GFPタンパク質を陰性対照として使用した。組換えEGFRおよびEGFRvIII(細胞外ドメインのみ)タンパク質をPBS中で1ug/ulに再構成してから、PBS-T中に希釈し、0.1nMから10nMの間の濃度で試験および対照表面上にインジェクトした。
図2に示すように、GCT01とGCT02の両方ともEGFRvIIIに結合し、野生型EGFRについては、非常に限られた結合しか検出されなかった。1:1ラングミュア結合モデルを使用した動力学的適合分析から解離定数(KD)値を得て、GCT01について4.57×10-11MおよびGCT02について3.27×10-10Mであると計算された。EGFRvIIIに対するGCT01およびGCT02の親和性は、Johnson et al. (2015)において「2173」または「N2173」と呼ばれるヒト化scFv(1.01×10-7M)および「3C10」と呼ばれるネズミ科の動物のscFv(2.58×10-8M)について以前に報告された親和性より数桁大きかった。
【0327】
GCT01およびGCT02が細胞の表面で発現しているEGFRに結合する能力を決定するために、フローサイトメトリーも行った。重要なことに、GCT01 scFvクローンとGCT02 scFvクローンの両方ともU87 EGFRvIII細胞に特異的に結合し、GCT01のみがU87野生型細胞への結合を示した。これにより、GCT01およびGCT02が組換え可溶性EGFRvIIIタンパク質(
図2)にも、標的細胞膜上で発現しているEGFRvIII(
図3)にも特異的に結合することが確認された。
【0328】
興味深いことに、
図3は、GCT01が、HCC827(肺腺がん細胞)、U251(ヒト膠芽腫細胞)で検出され、HCT116(ヒト結腸直腸がん細胞)への低レベルの結合が検出されたように、EGFRvIIIだけでなくミスフォールドしたEGFRにも潜在的な結合を示すことも示す。
【0329】
実施例4-EGFRvIII CARの活性
GCT01 scFvおよびGCT02 scFvの遺伝子をヒト細胞での発現のためにコドン最適化し、CAR T細胞生成のためのレトロウイルスベクターにクローニングした。両方のscFvについてコドン最適化されたヌクレオチド配列をSEQ ID NO:29~34に提供する。
【0330】
CARコンストラクトはそれぞれ、GCT01 scFvまたはGCT02 scFv、CD8のヒンジ、CD28の膜貫通ドメイン、ならびにCD28の共刺激ドメインおよびCD3ゼータの一次シグナル伝達ドメインを含む細胞内ドメインを含んでいた。CARはまた、T細胞膜への局在化のためのN末端リーダー配列およびCARの発現を確認するためのMycタグとともに発現させた。完全なCARのアミノ酸配列をSEQ ID NO:25および26に提供する。
【0331】
実施例1に記載されるようにレトロウイルスベクターを一次T細胞に形質導入し、フローサイトメトリーによって形質導入効率を測定した。
図4は、GCT01およびGCT02キメラ抗原受容体がT細胞の表面で発現していることを示す。scFvの下に位置するMycタグを使用して、フローサイトメトリーによって決定された細胞表面のCAR発現。GCT01(左)は、GCT02(右)よりも、細胞内フルオロフォアmCherry(形質導入効率の代替尺度として使用)と合致した発現を示す。両方のコンストラクトは、非常に高いmCherry発現を示す。これらのデータは、5実験の代表的なものである。
図4は、任意の所与の場合の70%を越える一次T細胞が、GCT01とGCT02の両方についてCAR発現が陽性であることが示されることを示す。
【0332】
GCT01およびGCT02 CAR発現T細胞がEGFRを発現する細胞に対して細胞傷害性活性を有するかどうかを決定するために、クロム放出アッセイを使用した。クロム放出アッセイは、標的細胞からアッセイ上清に放出された放射性クロム(51Cr)の定量化によって、標的細胞死を測定する。
【0333】
様々な細胞株に対するEGFRvIII CAR-T細胞の細胞傷害性を試験し、
図5に結果を示す。mCherry空ベクターのT細胞を陰性対照として使用した。エフェクター対標的の比は10:1であった。細胞傷害性は、24時間の共インキュベーション後に測定したクロム放出によって測定した(
図5において「**」で印を付けた細胞株については、4時間の共インキュベーション後に細胞傷害性を測定した)。非特異的標的細胞死のバックグラウンドレベルは約10%であった。予想通り、EGFRvIIIを発現しない、HEK293T、MC57 WT、またはE0771親細胞株の任意のCART細胞による特異的標的細胞死滅はなかった。細胞傷害性の陽性対照として、高いEGFRvIII細胞表面発現を達成するために、MC57、U87、およびE0771標的細胞に非シグナル伝達EGFRvIIIコンストラクトを形質導入した。これらの細胞株では、GCT01およびGCT02 CAR T細胞は、EGFRvIII特異的な標的細胞死を誘導した。
【0334】
GCT01 CD8+ CART細胞によって誘導される、U87 WT、U251およびHCT116細胞の細胞傷害性もあり、これは、これらの細胞株へのGCT01 scFvクローンの結合と相関した。EGFRのゲノムの増幅は、膠芽腫の40~70%で観察され、細胞表面での過剰発現およびミスフォールディングにつながり得る。EGFRはU87細胞で発現していることが示されており、これは、GCT01が、EGFRvIIIだけでなく、がん細胞上のミスフォールドしたEGFRに結合することを示唆する。
【0335】
実施例5-GCT01およびGCT02 CAR-T細胞は頭蓋内グリオーマ腫瘍の腫瘍退縮を誘導する
ホタルルシフェラーゼで標識されたU87-EGFRvIII腫瘍細胞を免疫無防備状態NSGマウスの頭蓋内で1週間成長させた。次いで、空mCherryで標識されたCAR、GCT01-CAR、またはGCT02-CARのいずれかを発現するCD4 T細胞およびCD8 T細胞の1:1混合物(5×106細胞)を単回i.v.注射で投与した。
【0336】
図7は、GCT01およびGCT02 CAR T細胞が、インビボの膠芽腫脳腫瘍の急速かつ完全な排除を誘導することを示す。データは、3週目で、GCT01-CARおよびGCT02-CAR処置マウスにおいて、ルシフェラーゼ活性がほとんどまたはまったく検出されなかったことを示し、これは、これらの受容体を発現する細胞は、グリオーマのこのモデルにおいて腫瘍退縮を誘導することができることを示す。
【0337】
実施例6-GCT01 CAR-T細胞は肺腺がんのモデルにおいて腫瘍退縮を誘導する
インビボでのGCT01 CAR T細胞の有効性をさらに特徴づけるために、肺腺がんの皮下モデルを使用した。手短に述べると、雌のNSGマウスに2e6個のHCC827細胞を皮下注射し、5~8日後に、2~10e6個のCD4およびCD8 GCT01 CAR T細胞をマウスに静脈内養子移植した。キャリパーを使用して、腫瘍の成長を週3回測定した。GCT01 CAR T細胞で処置したすべての腫瘍担持NSGマウス処置は、養子移植後14日以内に腫瘍を退縮させた(
図6)。
【0338】
広く記載される本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、特定の態様に示すように、本発明に多数の変形および/または改変を施すことができることを、当業者は認めるであろう。したがって、本態様は、すべての点で、例示的であり、限定的ではないとみなされるべきである。
【0339】
本明細書において引用されるすべての刊行物は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。URLまたは他のそのような識別子またはアドレスを参照する場合は、そのような識別子は変わる可能性があり、インターネット上の特定の情報は移り変わる可能性があるが、インターネットを検索することによって同等の情報を見出すことができることが理解されよう。それらへの参照は、そのような情報の有効性および公的な普及を証明するものである。
【0340】
本明細書に含まれている文書、行為、材料、装置、物品などの任意の議論は、単に本発明の文脈を提供することを目的とするものである。これらの事項のいずれかもしくはすべてが、先行技術の基盤の一部を形成することの、または本出願の各請求項の優先日前に存在していたという理由で、本発明に関連する分野における共通の一般的知識であったことの承認として解釈されるべきでない。
【0341】
【配列表】
【国際調査報告】