(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-17
(54)【発明の名称】治療用結合分子
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20240410BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240410BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240410BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240410BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240410BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240410BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240410BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240410BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240410BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240410BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240410BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240410BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240410BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240410BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240410BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240410BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20240410BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 N
A61P43/00 111
A61P1/04
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 105
A61P29/00
A61P1/16
G01N33/53 D
G01N33/48 M
C12P21/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023556501
(86)(22)【出願日】2022-03-17
(85)【翻訳文提出日】2023-11-10
(86)【国際出願番号】 EP2022057029
(87)【国際公開番号】W WO2022195028
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】508098350
【氏名又は名称】メドイミューン・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MedImmune Limited
【住所又は居所原語表記】1 Francis Crick Avenue, Cambridge Biomedical Campus, Cambridge CB2 0AA, UNITED KINGDOM
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】ニース,ジョスキン アルノー
(72)【発明者】
【氏名】ソム,アルバート ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】カリウク,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】スコフィールド,ダレン ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ライリー,エイダン
(72)【発明者】
【氏名】ハンティントン,キャサリン ユージェニー シャイラン
(72)【発明者】
【氏名】リース,デイビッド ガレス
(72)【発明者】
【氏名】アービング,ロレイン
(72)【発明者】
【氏名】ロビンソン,マシュー
【テーマコード(参考)】
2G045
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CB01
2G045DA36
2G045FA37
4B064AG27
4B064CA02
4B064CA05
4B064CA06
4B064CA08
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA57X
4B065AA57Y
4B065AA72X
4B065AA72Y
4B065AA83X
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4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB36
4C085CC23
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、ケモカイン受容体CCR9に結合する抗体などの結合分子に関する。より具体的には、本発明は、炎症性腸疾患(IBD)などのCCR9に媒介される疾患又は病態の治療、及び本発明の結合分子を使用するCCR9の検出のための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CCR9に結合し且つCDR HCDR1、HCDR2及びHCDR3のセットを有する重鎖可変(VH)領域並びにCDR LCDR1、LCDR2及びLCDR3のセットを有する軽鎖可変(VL)領域を含み、
(a)前記VH領域アミノ酸配列が、配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2及び配列番号3のHCDR3を含み、且つ前記VL領域アミノ酸配列が、配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2及び配列番号6のLCDR3を含むか;
(b)前記VH領域アミノ酸配列が、配列番号7のHCDR1、配列番号8のHCDR2及び配列番号9のHCDR3を含み、且つ前記VL領域アミノ酸配列が、配列番号10のLCDR1、配列番号11のLCDR2及び配列番号12のLCDR3を含むか;若しくは
(c)前記VH領域アミノ酸配列が、配列番号13のHCDR1、配列番号14のHCDR2及び配列番号15のHCDR3を含み、且つ前記VL領域アミノ酸配列が、配列番号16のLCDR1、配列番号17のLCDR2及び配列番号18のLCDR3を含むか;
又は前記HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3のいずれか1つ以上が、前記配列と比較して1、2又は3個のアミノ酸置換を含む、結合分子。
【請求項2】
前記VH領域アミノ酸配列が、配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2及び配列番号3のHCDR3を含み、且つ前記VL領域配列が、配列番号5のLCDR2及び配列番号6のLCDR3、並びに
(a)配列番号4;
(b)配列番号19;
(c)配列番号20;
(d)配列番号21;及び
(e)配列番号22
から選択されるアミノ酸配列を有するLCDR1を含む、請求項1に記載の結合分子。
【請求項3】
(i)前記VH領域アミノ酸配列が、配列番号51、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%又は99%の配列同一性を有する配列を含み且つ;前記VL領域アミノ酸配列が、配列番号52、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%又は99%の配列同一性を有する配列を含むか;
(ii)前記VH領域アミノ酸配列が、配列番号51、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%又は99%の配列同一性を有する配列を含み且つ;前記VL領域アミノ酸配列が、配列番号53、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%又は99%の配列同一性を有する配列を含むか;
(iii)前記VH領域アミノ酸配列が、配列番号51、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%又は99%の配列同一性を有する配列を含み且つ;前記VL領域アミノ酸配列が、配列番号54、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%又は99%の配列同一性を有する配列を含むか;
(iv)前記VH領域アミノ酸配列が、配列番号51、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%又は99%の配列同一性を有する配列を含み;且つ前記VL領域アミノ酸配列が、配列番号55、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%又は99%の配列同一性を有する配列を含むか;又は
(v)前記VH領域アミノ酸配列が、配列番号56、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%又は99%の配列同一性を有する配列を含み且つ;前記VL領域アミノ酸配列が、配列番号57、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%又は99%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1(a)又は請求項2に記載の結合分子。
【請求項4】
(i)前記結合分子が、請求項1(b)において定義されるとおりのVH領域及びVL領域を含み、前記VH領域アミノ酸配列が、配列番号58、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%又は99%の配列同一性を有する配列を含み;且つ前記VL領域アミノ酸配列が、配列番号59、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%又は99%の配列同一性を有する配列を含むか;又は
(ii)前記結合分子が、請求項1(c)において定義されるとおりのVH領域及びVL領域を含み、前記VH領域アミノ酸配列が、配列番号60、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%又は99%の配列同一性を有する配列を含み;且つ前記VL領域アミノ酸配列が、配列番号61、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%又は99%の配列同一性を有する配列を含む、請求項1に記載の結合分子。
【請求項5】
前記結合分子が、CCL25のCCR9への結合を阻害する、請求項1~3のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項6】
前記結合分子が、抗CCR9抗体、又はその抗原結合断片である、請求項1~5のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項7】
前記抗CCR9抗体又はその抗原結合断片が、ヒト化、キメラ、又は完全にヒトのものである、請求項6に記載の結合分子。
【請求項8】
(a)IgG免疫グロブリン若しくはその断片;又は
(b)IgG1免疫グロブリン若しくはその断片
である、請求項6又は7に記載の結合分子。
【請求項9】
前記結合分子が、1種以上のFc受容体に結合する能力を保持する免疫グロブリンFcドメイン、又はその断片を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項10】
前記免疫グロブリンFcドメイン又はその断片が、
(a)IgG Fcドメイン又はその断片であり;
(b)ヒトIgG Fcドメイン又はその断片であり;
(c)ヒトIgG1 Fcドメイン又はその断片であり;
(d)対応する野生型Fcドメインと比較して改変され、前記改変が、1種以上のFcγ受容体に対する親和性の増大をもたらし;
(e)対応する野生型Fcドメインと比較して改変され、前記改変が、抗体依存性細胞傷害応答の増強をもたらし;且つ/又は
(f)アミノ酸位置297で非フコシル化N結合グリカンを含む、
請求項9に記載の結合分子。
【請求項11】
前記結合分子が、
(a)非フコシル化されるか;
(b)アミノ酸位置297で非フコシル化されるか;又は
(c)前記結合分子の複数のコピーを含む組成物中に存在し、前記組成物中の前記結合分子の前記コピーの少なくとも50%、75%、80%、90%、95%、98%、99%又は100%が、非フコシル化される、
請求項1~10のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項12】
前記結合分子が、
(a)ヒトCCR9に結合し;
(b)ヒトCCR9A及びヒトCCR9Bに結合し;
(c)カニクイザルCCR9に結合し;且つ/又は
(e)CCR5、CCR8、CXCR1又はCXCR2に結合しない、
請求項1~11のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項13】
前記結合分子が、
(a)それが結合するCCR9発現細胞に対する抗体依存性細胞傷害を媒介することができ;
(b)それが結合するCCR9発現リンパ球に対する抗体依存性細胞傷害を媒介することができ;
(c)FcγRによって結合されてもよく;
(d)FcγIIIaによって結合されてもよく;
(e)免疫エフェクター細胞をCCR9発現細胞に架橋することができ;
(f)免疫エフェクター細胞をCCR9発現細胞に架橋することができ且つ前記エフェクター細胞によって抗体依存性細胞傷害を活性化することができ;
(g)CCL25に誘導されるCCR9受容体内部移行を阻害することができ;
(h)CCR9発現T細胞の腸へのCCL25に媒介される遊走を阻害することができ、
(i)免疫エフェクター細胞をCCR9発現細胞に架橋することができ且つ前記エフェクター細胞によって抗体依存性細胞傷害を活性化することができ、それにより前記CCR9発現細胞の溶解を引き起こすことができ;且つ/又は
(j)CCR9発現細胞及び免疫エフェクター細胞を含む細胞の集団においてCCR9発現細胞を枯渇させることができる、
請求項1~12のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項14】
前記結合分子が、約0.1nM、任意選択により、0.09nMの親和性(K
D)でヒトCCR9に結合することができる、請求項1~13のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項15】
CCR9に結合する結合分子であって、前記結合分子が、CCR9への結合に関して請求項1~14のいずれか一項に記載の結合分子と競合する、結合分子。
【請求項16】
前記結合分子が、
(a)非フコシル化されるか;
(b)アミノ酸位置297で非フコシル化されるか;又は
(c)前記結合分子の複数のコピーを含む組成物中に存在し、前記組成物中の前記結合分子の前記コピーの少なくとも50%、75%、80%、90%、95%、98%、99%又は100%が、非フコシル化される、
請求項15に記載の結合分子。
【請求項17】
前記免疫グロブリンFcドメイン又は断片が、
(a)IgG Fcドメイン又はその断片であり;
(b)ヒトIgG Fcドメイン又はその断片であり;
(c)ヒトIgG1 Fcドメイン又はその断片であり;
(d)対応する野生型Fcドメインと比較して改変され、前記改変が、1種以上のFcγ受容体に対する親和性の増大をもたらし;
(e)対応する野生型Fcドメインと比較して改変され、前記改変が、抗体依存性細胞傷害応答の増強をもたらし;且つ/又は
(f)アミノ酸位置297で非フコシル化N結合グリカンを含む、
請求項15に記載の結合分子。
【請求項18】
CCR9に結合する結合分子であって、前記結合分子が、CCR9への結合に関して請求項1~14のいずれか一項に記載の結合分子と競合しない、結合分子。
【請求項19】
活性成分として抗CCR9抗体を含む治療剤であって、前記抗CCR9抗体が、ヒトCCR9への結合に関してCCL25と競合する、治療剤。
【請求項20】
前記抗CCR9抗体が、CCL25に媒介されるCCR9の内部移行を阻害する、請求項19に記載の治療剤。
【請求項21】
前記抗CCR9抗体が、ヒトCCR9A及びCCR9Bへの結合に関してCCL25と競合する、請求項19又は20の治療剤。
【請求項22】
前記抗CCR9抗体が、CCR9におけるエピトープに特異的に結合し、前記エピトープが、配列番号80を含む配列内に配置される、請求項19~21のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項23】
前記抗CCR9抗体が、
(a)非フコシル化されるか;
(b)アミノ酸位置297で非フコシル化されるか;又は
(c)前記結合分子の複数のコピーを含む組成物中に存在し、前記組成物中の前記結合分子の前記コピーの少なくとも50%、75%、80%、90%、95%、98%、99%又は100%が、非フコシル化される、
請求項19~21のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項24】
前記免疫グロブリンFcドメイン又は断片が、
(a)IgG Fcドメイン又はその断片であり;
(b)ヒトIgG Fcドメイン又はその断片であり;
(c)ヒトIgG1 Fcドメイン又はその断片であり;
(d)対応する野生型Fcドメインと比較して改変され、前記改変が、1種以上のFcγ受容体に対する親和性の増大をもたらし;
(e)対応する野生型Fcドメインと比較して改変され、前記改変が、抗体依存性細胞傷害応答の増強をもたらし;且つ/又は
(f)アミノ酸位置297で非フコシル化N結合グリカンを含む、
請求項19~21のいずれか一項に記載の治療剤。
【請求項25】
請求項1~14のいずれか一項に記載の結合分子と接触されている試料中においてCCR9+細胞の存在量を決定するための請求項18に記載の結合分子の使用。
【請求項26】
請求項1~17のいずれか一項に記載の結合分子によってCCR9発現細胞の枯渇を評価する方法であって、
(i)前記結合分子を細胞の集団であって、CCR9発現細胞及び免疫エフェクター細胞を含む細胞の集団と前記エフェクター細胞により抗体依存性細胞傷害を可能にするのに好適な条件下で接触させること;
(ii)前記細胞の集団を、CCR9に結合し且つCCR9への結合に関して工程(i)の前記結合分子と競合しない結合分子と接触させること;
(iii)(ii)の前記結合分子により結合される前記細胞の集団におけるCCR9発現細胞を検出すること;
(iv)工程(iii)において検出されるCCR9発現細胞の量を、工程(i)において使用される元の細胞集団におけるCCR9発現細胞の量と比較し、それにより工程(i)において枯渇されたCCR9発現細胞の量を決定することを含む方法。
【請求項27】
CCR9への結合に関して請求項1~17のいずれか一項に記載の結合分子と競合しない前記結合分子が、配列番号44のHCDR1、配列番号45のHCDR2及び配列番号46のHCDR3を含むVH領域アミノ酸配列、並びに配列番号47のLCDR1、配列番号45のLCDR2及び配列番号48のLCDR3を含むVL領域アミノ酸配列を含む、請求項18に記載の結合分子、請求項24に記載の使用又は請求項25に記載の方法。
【請求項28】
請求項1~17又は18のいずれか一項に記載の結合分子をコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項29】
(a)プロモーターと作動可能に結合された請求項27に記載のポリヌクレオチド;又は
(b)請求項1~3のいずれか一項において定義されるとおりのVH領域をコードするポリヌクレオチド、及び請求項1~3のいずれか一項において定義されるとおりのVL領域をコードするポリヌクレオチドを含み、前記ポリヌクレオチドが、1つ以上のプロモーターと作動可能に結合される、ベクター。
【請求項30】
請求項27に記載のポリヌクレオチド又は請求項28に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項31】
宿主細胞において請求項27に記載のポリヌクレオチド又は請求項28に記載のベクターを発現させることを含む、請求項1~17又は18のいずれか一項に記載の結合分子を生成する方法。
【請求項32】
請求項1~17のいずれか一項に記載の結合分子、及び薬学的に許容される担体又は希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項33】
医薬としての使用のための請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項34】
対象において疾患又は病態を治療する方法であって、前記対象に有効量の請求項1~17のいずれか一項に記載の結合分子、請求項19~23のいずれか一項に記載の治療剤又は請求項32に記載の組成物を投与することを含む方法。
【請求項35】
対象において疾患又は病態を治療する方法であって、前記対象に有効量のCCR9に結合する結合分子を投与することを含み、
(a)前記結合分子が、それが結合するCCR9発現細胞に対する抗体依存性細胞傷害を媒介することができ;
(b)CCR9への前記結合分子の結合が、CCR9の内部移行を誘導せず、且つ/又は
(c)前記結合分子が、CCR9、任意選択によりヒトCCR9、任意選択によりヒトCCR9A及びCCR9Bに結合するCC25と競合する、方法。
【請求項36】
前記疾患が、CCR9に媒介される疾患であるか、又は前記疾患が、CCR9発現細胞によって媒介される、請求項34又は35に記載の方法。
【請求項37】
前記疾患が、炎症性腸疾患である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記疾患が、クローン病、回腸/回腸結腸のクローン病、及び潰瘍性大腸炎からなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記疾患が、T細胞急性リンパ芽球性白血病、前立腺癌、乳癌、黒色腫、固形腫瘍由来の循環細胞、肝線維症及び急性肝炎からなる群から選択される、請求項33、34又は35に記載の方法。
【請求項40】
試料においてCCR9ポリペプチドの存在を検出するための方法であって、
(a)試料を請求項1~17又は18のいずれか一項に記載の結合分子と接触させて、結合分子-抗原複合体をもたらすこと;
(b)前記結合分子-抗原複合体の存在又は非存在を検出すること;
(c)前記結合分子-抗原複合体の存在が、CCR9ポリペプチドの存在を確認すること
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケモカイン受容体CCR9に結合する抗体などの結合分子に関する。より具体的には、本発明は、炎症性腸疾患(IBD)などのCCR9に媒介される疾患又は病態の治療、及び本発明の結合分子を使用するCCR9の検出のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IBDは、小腸炎及び上皮損傷によって病理学的に特徴付けられる胃腸管の慢性障害の一群である。IBDの2つの型であるクローン病及び潰瘍性大腸炎は、著しい病的状態と関連付けられ、個体の生活の質及びそれらの活動する能力に大きい影響を及ぼす可能性がある[1]。これらの病的状態は、IBDのための改善された療法の必要性を浮き彫りにしている。
【0003】
IBDのための治療的介入は、症候性の応答及び介入のその後の耐容能に対処するために適応させられる。既存の療法としては、アミノサリチル酸、コルチコステロイド及び抗体が挙げられる。しかしながら、これらの治療にもかかわらず、外科的介入が、生存期間にクローン病患者の最大3分の2において必要とされることが推定される[2]。クローン病の臨床管理は、ステロイド、免疫抑制剤(チオプリン及びメトトレキセート)、及び/又はアミノサリチル酸で始まるステップアップ・アプローチを歴史的に採用してきたが、後者の有効性に関する証拠は非常に限定的である[3]。患者の大部分において長続きする寛解を達成するライセンス化された療法はない。
【0004】
標的化抗CCR9抗体は、癌の治療のための機構として提案されている。卵巣癌、前立腺癌、乳癌及び黒色腫における異常なCCR9発現は、インビトロでのCCL25に応答した侵襲性と相関する。CCL25結合は、細胞の生存及びアポトーシスに対する抵抗性を高める。非特許文献1[4]及び特許文献1は、マウス抗CCR9抗体91R(マウス抗ヒトCCR9 IgG2b)及び92R(マウス抗ヒトCCR9 IgG2a)を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2015075269A1号パンフレット
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Somovilla-Crespo et al.2018
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、そのような障害を治療するか又は予防するための改善された医薬の必要性が存在する。本発明は、上記の問題の1つ以上を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ケモカイン受容体、CCR9が、炎症性サイトカインIFN-γ、IL-4及びIL-17を共発現するIBDを有する患者の結腸及び回腸において高度に発現されることを見出した。本発明者らは、CCR9発現細胞に結合し、CCR9とその天然のリガンドCCL25の間の相互作用を阻害し、CCL25に媒介されるCCR9内部移行を妨げる結合分子を首尾よく作製した。有利に、結合分子は、例えば、結合するCCR9発現細胞に対する抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介することによって、結合するCCR9発現細胞の死滅を誘導することができる。CCL25のCCR9への結合を阻害し、結合するCCR9発現細胞の死亡を誘導する結合分子の開発は、IBDを有する対象のために特に有利である。
【0009】
したがって、本発明は、CCR9に結合する結合分子に関する。本発明の結合分子は、好ましくは、CCR9に対するCCL25の結合を阻害する。本発明の結合分子は、好ましくは、結合するCCR9発現細胞の死滅を誘導することができる。例えば、結合分子は、結合する細胞に対してADCC応答を媒介することができる可能性がある。本発明の結合分子は、好ましくは、結合するCCR9発現細胞の遊走を妨げるか又は阻害することができる。例えば、結合分子は、CCL25に応答するCCR9発現細胞の遊走を妨げる可能性があるか、又は結合分子は、対象の末梢から腸へのCCR9発現細胞の遊走を妨げることができる可能性がある。
【0010】
一態様では、本発明は、CCR9に結合し、CDR HCDR1、HCDR2及びHCDR3のセットを有する重鎖可変(VH)領域並びにCDR LCDR1、LCDR2及びLCDR3のセットを有する軽鎖可変(VL)領域を含む結合分子を提供し、(a)VH領域アミノ酸配列は、配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2及び配列番号3のHCDR3を含み、且つVL領域アミノ酸配列は、配列番号4のLCDR1(RSSQSLVHX1NX2NTYLH、X1及びX2は任意のアミノ酸である)、配列番号5のLCDR2及び配列番号6のLCDR3を含むか、(b)VH領域アミノ酸配列は、配列番号7のHCDR1、配列番号8のHCDR2及び配列番号9のHCDR3を含み、且つVL領域アミノ酸配列は、配列番号10のLCDR1、配列番号11のLCDR2及び配列番号12のLCDR3を含むか;又は(c)VH領域アミノ酸配列は、配列番号13のHCDR1、配列番号14のHCDR2及び配列番号15のHCDR3を含み、且つVL領域アミノ酸配列は、配列番号16のLCDR1、配列番号17のLCDR2及び配列番号18のLCDR3を含むか、又は前記HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3のいずれか1つ以上は、前記配列と比較して1、2又は3個のアミノ酸置換を含む。
【0011】
本発明の結合分子は、配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2及び配列番号3のHCDR3を含むVH領域アミノ酸配列、並びに配列番号5のLCDR2及び配列番号6のLCDR3、並びに配列番号4、配列番号19(RSSQSLVHX1NX2NTYLH、配列番号19のX1は、P又はSであり且つ配列番号19のX2は、R、T又はGである)、配列番号20、配列番号21、及び配列番号22から選択されるアミノ酸配列を有するLCDR1を含むVL領域アミノ酸配列を含み得る。
【0012】
本発明の結合分子は、好ましくは、1種以上のFc受容体に結合する能力を保持する免疫グロブリンFcドメイン、又はその断片を含む。例えば、結合分子は、ヒトIgG1 Fcドメイン又はその断片を含み得る。本発明の結合分子は、好ましくは、非フコシル化される。例えば、結合分子は、アミノ酸位置297で非フコシル化され得る。本発明の結合分子は、前記結合分子の複数のコピーを含む組成物中に存在してもよく、組成物中の結合分子のコピーの少なくとも50%、75%、90%、95%、98%、99%又は100%は、非フコシル化される。
【0013】
別の態様では、本発明は、CCR9に結合する結合分子を提供し、結合分子は、CCR9への結合に関して本発明の別の結合分子と競合せず、例えば、CCR9への結合に関して上記のとおりの結合分子と競合せず、例えば、CCR9への結合に関して療法における使用のための本明細書に記載されるとおりの結合分子と競合しない。この態様の結合分子は、本発明の結合分子と接触されている試料中のCCR9+細胞の存在量を決定するために使用され得る。
【0014】
同様に、本発明は、本発明の結合分子によるCCR9発現細胞の枯渇を評価する方法であって、(i)前記結合分子を、エフェクター細胞による抗体依存性細胞傷害を可能にするのに好適な条件下で細胞の集団(細胞の集団は、CCR9発現細胞及び免疫エフェクター細胞を含む)と接触させること;(ii)前記細胞の集団を、CCR9に結合し、且つCCR9への結合に関して工程(i)の結合分子と競合しない結合分子と接触させること;(iii)(ii)の結合分子によって結合される細胞の集団においてCCR9発現細胞を検出すること;(iv)工程(iii)において検出されるCCR9発現細胞の量を、工程(i)において使用される元の細胞集団におけるCCR9発現細胞の量と比較し、それにより工程(i)において枯渇されたCCR9発現細胞の量を決定することを含む方法を提供する。
【0015】
本発明はまた、本発明のいずれかの結合分子をコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。また、プロモーターと作動可能に結合された本発明のポリヌクレオチドを含むベクターも提供される。また、本発明の結合分子のVH領域をコードするポリヌクレオチド、及び本発明の結合分子のVL領域をコードするポリヌクレオチドを含むベクターも提供され、前記ポリヌクレオチドは、1つ以上のプロモーターと作動可能に結合される。
【0016】
本発明は、本発明のポリヌクレオチド又は本発明のベクターを含む宿主細胞を提供する。また、本発明の結合分子を生成する方法であって、宿主細胞において本発明のポリヌクレオチド又は本発明のベクターを発現することを含む方法も提供される。
【0017】
本発明は、本発明の結合分子、及び薬学的に許容される担体又は希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
【0018】
本発明はまた、療法における使用のための本発明の結合分子など、医療において本発明の結合分子を使用することに関する。本発明は、有効量の本発明の結合分子、又は本発明の組成物を対象に投与することを含む方法によって、対象においてCCR9に媒介される疾患又は病態を治療することに関する。本発明はまた、CCR9に結合する有効量の結合分子を対象に投与することを含む方法によって、対象においてCCR9に媒介される疾患又は病態を治療することに関し、前記結合分子は、(i)CCR9に対するCCL25の結合を阻害することができ、且つ(ii)それが結合するCCR9発現細胞に対して抗体依存性細胞傷害を媒介することができる。
【0019】
本明細書に記載されるとおりの結合分子はまた、CCR9を検出するために使用され得る。例えば、本発明は、試料中のCCR9ポリペプチドの存在を検出するための方法であって、(a)試料を、本発明のいずれかの結合分子又は本明細書に記載されるとおりの結合分子などのCCR9に結合する結合分子と接触させて、結合分子-抗原複合体をもたらすこと;(b)前記結合分子-抗原複合体の存在又は非存在を検出すること;(c)結合分子-抗原複合体の存在がCCR9ポリペプチドの存在を確認することを含む方法を提供する。
【0020】
本発明は、改善された抗CCR9抗体及び炎症性腸疾患の治療におけるその使用に関する。本発明は、特に、C-Cモチーフケモカイン受容体9(CCR9)に特異的に結合するヒト化非フコシル化モノクローナル抗体に関する。そのFc受容体の機能性を介して、CCR9受容体に対する抗体の結合は、CCR9発現細胞集団の枯渇をもたらすADCC応答を惹起する。本発明の抗体は、ヒト化され、CDR最適化される。抗体は、効力の消失を伴わずに非フコシル化される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】様々な細胞型におけるCCR9発現。
図1A:カニクイザル及びヒト細胞血液、腸間膜リンパ節(カニクイザルのみ)、結腸、回腸、及び胸腺由来のCD4+細胞におけるCCR9の発現;
図1B:健康な患者及びIBD患者の回腸(左)及び結腸(右)におけるB細胞中のCCR9の発現;
図1C:健康な患者又はIBD患者の結腸又は回腸由来のTエフェクター細胞及びTregにおけるCCR9の発現。
【
図2】CD4+T細胞における炎症性サイトカインとCCR9の結合。
図2A: CCR9
-及びCCR9
+細胞におけるIFN-γ、IL-4、及びIL-17発現;
図2B:CD4+CCD9-細胞とCD4+CCR9+細胞の間での
図2Aにおいて評価されたサイトカインの発現レベルの倍率変化。
【
図3】9種の抗CCR9抗体の可変領域のアライメントされたアミノ酸配列
図3A:VH領域;
図3B:VL領域。CDR(HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2及びLCDR3)の位置は、下線で示される。フレームワーク(FW)領域の位置もまた示される。
【
図4】アライメントされた抗体AB1020243のVH及びVL領域、当該抗体のヒト化形態(AB1020243-fgl)、並びに抗体の2つのCDR最適化形態(243LO0326及び243LO0331)
【
図5】CCR9を発現するか又は発現しない細胞に対する抗CCR9抗体の結合
図5A:Molt 4細胞株に対する結合;
図5B:Molt 4及びジャーカット細胞株に対する結合
【
図6】HEK細胞におけるCCR9の異なる形態に対するAB1020243の結合対照として、結合は、CCR9でトランスフェクトされていないHEK細胞(親HEK)において評価され、続いて結合はまた、ヒトCCR9Aを過剰発現するHEK細胞(Hu A HEK)、ヒトCCR9Bを過剰発現するHEK細胞(Hu B HEK)、カニクイザルCCR9を過剰発現するHEK細胞(Cyno HEK)、マウスCCR9を過剰発現するHEK細胞(マウスHEK)及びラットCCR9を過剰発現するHEK細胞(ラットHEK)においても評価された。
【
図7】CCR9Aを発現するHEK細胞(上)又はMolt 4細胞(下)とプレインキュベートされた非フコシル化抗CCR9抗体によるNK細胞の活性化。
【
図8】CCR9+CD4+PBMCの数に対する抗CCR9抗体による治療の効果。
【
図9】キメラ抗体AB1020243及びそのヒト化バージョンの様々なリガンドへの結合の比較。
図9A:ヒトCCR9B;
図9B:カニクイザルCCR9;
図9B:CXCR1;
図9D:CXCR2;
図9E:CCR5;
図9F:CCR8;
図9G:CCR9でトランスフェクトされていないHEK細胞。
【
図10】AB1020243抗体とそのヒト化バージョンの比較
図10A:Molt 4細胞株への結合後のNK細胞活性化;
図10B:ヒト化及びキメラAB1020243 afuc抗体の動力学的特性。
【
図11】CCR9への結合に関してCCL25と競合する抗CCR9抗体の能力。
【
図13】経時的な細胞表面で結合された抗体AB1020243又は抗体243LO0326の量経時的な細胞表面で結合された抗体AB1020243又は抗体243LO0326の量(
図13A)並びに経時的な細胞表面でのCCR9受容体レベルに対する抗体又はCCL25治療の効果(
図13B)。
【
図14】Molt 4細胞を死滅させる際の抗CCR9抗体の効果
図14A:PBMC及びジャーカット細胞(
図14B);並びにヒト又はカニクイザルPBMC(
図14C)。
【
図15】効力に対するフコシル化の影響
図15B:ADCCに対する非フコシル化の効果。
図15A:フコシル化添加試験における非フコシル化種に対するフコシル化種のADCC活性。RP:相対的な効力。
【
図16】CCR9+T細胞の標的化されたインビボでの枯渇
図16A:カニクイザルの血液中のCCR9+メモリーCD4+T細胞の数に対する243LO0326の静脈内注射の効果。
図16B:高用量及び低用量の243LO0326は、2日以内にカニクイザルの末梢血液中のCDR4+CCR9+細胞を減少させる。
図16C:高用量及び低用量の243LO0326は、FACSによって15日目に測定されるとおり、カニクイザルの回腸中のCDR4+CCR9+細胞を減少させる。
図16D:高用量及び低用量の243LO0326は、IHCによって15日目に測定されるとおり、カニクイザルの腸粘膜中のCDR4+CCR9+細胞を減少させる。
【
図18】IBD患者から採取されたヒト腸外植片におけるIBDマーカーに対する243LO0326の効果。
図18A:CCR9レベル;
図18B:IL-6レベル;
図18C:GM-CSFレベル;
図18D:IL-22レベル。
【
図19】CCR9内部移行の遮断243LO0326は、CCL25に誘導されるCCR9の内部移行を阻害した。
【発明を実施するための形態】
【0022】
別段定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的用語及び科学的用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同様の意味を有する。Singleton,et al.,DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY,20 ED.,John Wiley and Sons,New York(1994)、及びHale & Marham,THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY,Harper Perennial,NY(1991)は、本開示で使用される用語の多くの一般的な辞書を当業者に提供する。
【0023】
本開示は、本明細書中で開示される例示的な方法及び材料によって限定されず、本明細書中に記載のものと類似又は同等の任意の方法及び材料を、本開示の実施形態の実施又は試験において使用することができる。数値範囲は、その範囲を定義する数を含む。別段示されない限り、それぞれ任意の核酸配列は、5’から3’方向に左から右に記述され;アミノ酸配列は、アミノからカルボキシ方向に左から右に記述される。
【0024】
本明細書中で提供される見出しは、本開示の種々の態様又は実施形態を限定するものではない。
【0025】
本明細書中では、アミノ酸は、アミノ酸の名称、3文字の略称、又は1文字の略称を用いて言及される。「タンパク質」という用語は、本明細書で使用される場合、タンパク質、ポリペプチド、及びペプチドを含む。本明細書で使用される場合、「アミノ酸配列」という用語は、「ポリペプチド」及び/又は「タンパク質」という用語と同義である。場合によっては、「アミノ酸配列」という用語は、「ペプチド」という用語と同義である。場合によっては、「アミノ酸配列」という用語は、「酵素」という用語と同義である。「タンパク質」及び「ポリペプチド」という用語は、本明細書中で互換的に使用される。本開示及び特許請求の範囲において、アミノ酸残基に関する従来の1文字及び3文字のコードが使用され得る。IUPACIUB Joint Commission on Biochemical Nomenclature(JCBN)に準拠して定義されるようなアミノ酸に対する3文字コード。遺伝暗号の縮重に起因して、ポリペプチドは2つ以上のヌクレオチド配列によりコードされ得ることも理解されたい。
【0026】
用語の他の定義は、本明細書全体を通じて現れ得る。例示的な実施形態をより詳細に説明する前に、本開示は、説明される特定の実施形態に限定されず、したがって変動し得ることを理解されたい。本開示の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ規定されることから、本明細書中で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図していないこともまた理解されたい。
【0027】
値の範囲が与えられる場合、文脈上別途明確に示されない限り、その範囲の上限値と下限値との間の、下限値の10分の1の単位までの各介在値もまた、具体的に開示されると理解される。記載された範囲内の記載されたいずれかの値又は介在値と、その記載された範囲内の記載された他のいずれかの値又は介在値との間の、より小さな範囲のそれぞれは、本開示内に包含される。これらのより小さな範囲の上限値及び下限値は、独立してその範囲に含まれても又は除外されてもよく、また、記載された範囲におけるいずれかの具体的に除外された限界値に従って、より小さな範囲にいずれかの限界値が含まれるか、どちらも含まれないか、又は両方とも含まれるそれぞれの範囲もまた、本開示内に包含される。記載された範囲が一方又は両方の限界値を含む場合、含まれる限界値の一方又は両方を除外する範囲もまた、本開示に含まれる。
【0028】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、文脈上別途明確に示されない限り、単数形「a」、「an」、及び「the」は複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「薬剤(an agent)」への言及は、複数のそのような薬剤を含み、「薬剤(the agent)」への言及は、1つ以上の薬剤及び当業者に知られるその均等物などへの言及を含む。
【0029】
「約」は、一般的に、測定法の性質又は精度を考慮すれば、測定される数量について許容される程度の誤差を意味してもよい。誤差の例示的な程度は、与えられた値又は値の範囲の20パーセント(%)以内、典型的には10%以内、より典型的には5%以内である。好ましくは、「約」という用語は、本明細書では、使用されている数の数値の±(±)5%、好ましくは±4%、±3%、±2%、±1%、±0.5%、±0.1%として理解されるものとする。
【0030】
1つ以上の特徴を「含む」として本明細書に記載される実施形態はまた、そのような特徴「からなる」及び/又はそのような特徴「から本質的になる」対応する実施形態の開示とみなされ得る。
【0031】
用語「薬学的に許容される」は、本明細書で使用する場合、動物、より特定するとヒトにおける使用について、連邦政府若しくは州政府の規制当局によって認可されているか、又は米国薬局方、欧州薬局方若しくは他の一般に認められている薬局方に列記されていることを意味する。
【0032】
濃度、量、容量、パーセンテージ、及び他の数値は、範囲形式で本明細書において示されてもよい。そのような範囲形式は、単に便宜上及び簡潔さのために使用され、範囲の限界として明示的に列挙される数値を含むだけでなく、あたかもそれぞれの数値及び部分範囲が明示的に列挙されているかのように、その範囲内に包含される個々の数値又は部分範囲を全て含むと柔軟に解釈されるべきであることも理解されるべきである。
【0033】
用語「エピトープ」は、本発明の結合分子に結合可能な(例えばそれにより結合されている)標的タンパク質領域(例えば、ポリペプチド)を指す。
【0034】
「結合親和性」は一般に、分子(例えば抗体)の単一の結合部位と、その結合パートナー(例えば抗原)間の、非共有結合性の相互作用の全体の強度を指す。特に断りのない限り、本明細書の用法では、「結合親和性」は、結合対構成員(例えば抗体及び抗原)間の1:1の相互作用を反映する、固有結合親和性を指す。分子Xの、そのパートナーYに対する親和性は、一般に、解離定数(KD)によって表され得る。親和性は、本明細書中に記載されるものを含む、当技術分野で知られる一般的な方法によって測定され得る。低親和性抗体は一般に、抗原に緩徐に結合し、容易に解離する傾向がある一方で、高親和性抗体は一般に、より迅速に抗原に結合し、結合状態をより長く維持する傾向がある。結合親和性を測定する種々の方法は当技術分野で知られており、本発明の目的のためにそのいずれかが使用され得る。
【0035】
結合分子の力価は、IC50値として表され得る。IC50は、結合分子の阻害濃度中央値である。機能アッセイでは、IC50は、生物学的反応をその最大値の50%低下させる濃度である。IC50は、当技術分野で知られるいくつもの手段によって計算され得る。
【0036】
結合分子の力価は、EC50値として表され得る。機能アッセイにおいて、EC50は、ベースラインと指定曝露時間後の最大値との間の反応中央値を誘導する濃度である。EC50は、当技術分野で知られるいくつもの手段によって計算され得る。
【0037】
5.1 結合分子
本発明は、CCR9に結合する結合分子に関する。ケモカイン受容体9、CCR9(CDw199及びGPR-9-6としても知られる)は、ベータケモカイン受容体ファミリーのメンバーである。CCR9は、N末端細胞外ドメイン(Nt)、7個の膜貫通ドメイン、3個の細胞内ドメイン、3個の細胞外ドメイン及び細胞内C末端ドメイン(Ct)に対応する15個のドメインに構築される。ヒトにおいて、CCR9は、2種類のアイソフォームであるCCR9A及びCCR9Bにおいて存在する。アイソフォームAは、追加の12個のN末端アミノ酸を有し、アイソフォームBと比較してリガンドCCL25に対してより高い親和性を有する。アイソフォームA及びBは、10:1の比で共発現されると報告されている。以前に記載された抗CCR9抗体91R及び92RはアイソフォームCCR9Aのみに結合し、CCR9Bに結合しない[4]。
【0038】
理論に束縛されるものではないが、CCR9陰性CD4 Tリンパ球と比較して腸においてより高い割合のCCR9陽性CD4 Tリンパ球が炎症性サイトカインIFN-γ、IL-4及びIL-17を共発現するという本発明者らの観察は、CCR9がIBDの病理発生に寄与するCD4 Tリンパ球を同定することができることを示唆する。
【0039】
CCR9のRNA、DNA及びアミノ酸配列は当業者に知られており、多くのデータベース、例えば、National Center for Biotechnology Information(NCBI)及びUniProtのデータベースで見出され得る。UniProtで見出されるこれらの配列の例は、ヒトCCR9Aに関してP51686-1及びヒトCCR9Bに関してP51686-2;カニクイザルCCR9に関してQ0H741;マウスCCR9に関してQ9WUT7;及びラットCCR9に関してQ8CH33にある。
【0040】
いくつかの実施形態では、本発明の結合分子は、ヒトCCR9に結合する。いくつかの実施形態では、結合分子は、ヒトCCR9A及び/又はヒトCCR9Bに結合する。いくつかの実施形態では、結合分子は、ヒトCCR9Aに結合し、且つヒトCCR9Bに結合する。
【0041】
いくつかの実施形態では、結合分子は、非ヒト霊長類などの非ヒト哺乳動物種由来のCCR9に結合する。いくつかの実施形態では、結合分子は、カニクイザルCCR9に結合する。いくつかの実施形態では、結合分子は、ヒト及びカニクイザルCCR9に結合し、例えば、ヒトCCR9A及びヒトCCR9B並びにカニクイザルCCR9に結合する。
【0042】
いくつかの実施形態では、結合分子は、マウス及び/又はラットCCR9に結合しない。いくつかの実施形態では、結合分子は、ヒト及びカニクイザルCCR9、例えば、ヒトCCR9A及びヒトCCR9B並びにカニクイザルCCR9に結合するが、マウス又はラットCCR9に結合しない。
【0043】
いくつかの実施形態では、結合分子は、CCR9に選択的に(また本明細書で特異的にと互換的に参照される)結合する。選択的結合によって、結合分子のCDRはともにCCR9に結合し、いずれの他の分子に対しても著しい交差反応性を有しないことが理解されるであろう。特に、CCR9に選択的に結合する結合分子は、いずれの他のサイトカイン受容体に対しても著しい交差反応性を有しない場合がある。CCR9に選択的に結合する結合分子は、CCR5、CCR8、CXCR1及びCXCR2のいずれか1つ、いずれか2つ、いずれか3つ又は4つ全てに対して著しい交差反応性を有しない場合がある。例えば、いくつかの実施形態では、結合分子は、CCR5、CCR8、CXCR1又はCXCR2に結合しない。
【0044】
いくつかの実施形態では、ヒトCCR9A及び/又はヒトCCR9BなどのヒトCCR9に選択的に結合する結合分子は、マウス及び/又はラットCCR9などの別の種に由来するCCR9と著しい交差反応性を有しない場合がある。いくつかの実施形態では、ヒトCCR9に選択的に結合する結合分子は、カニクイザルCCR9などの密接に関係するCCR9分子と交差反応性を有する場合があるが、マウス及び/又はラットCCR9などのより遠縁のCCR9と著しい交差反応性を有しない場合がある。
【0045】
交差反応性は、任意の好適な方法によって評価され得る。例えば、結合は、目的の受容体を発現する過剰発現細胞株への結合分子の結合をアッセイすることによって測定され得る。結合はまた、ラジオイムノアッセイ(RIA)、BIACORE(登録商標)(分析物として組み換えCCR9及びリガンドとして結合分子、又はその逆を使用する)、KINEXA(登録商標)、ForteBio Octetシステム、又は当技術分野で知られる他の結合アッセイによって測定され得る。非限定的な例として、結合分子のCCR9以外の分子との交差反応性は、結合分子がCCR9に結合する強度の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%又は100%で他の分子に結合する場合、著しいとみなされ得る。CCR9に選択的に結合する結合分子は、それがCCR9に結合する強度の90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%又は20%未満でCCR5、CCR8、CXCR1、及びCXCR2のいずれか1つ、2つ、3つ又は4つ全てなどの異なるサイトカイン受容体などの別の分子に結合する場合がある。好ましくは、結合分子は、それがCCR9に結合する強度の20%未満、15%未満、10%未満又は5%未満、2%未満又は1%未満で他の分子に結合する。本明細書で使用する場合、CCR9は、好ましくは、ヒトCCR9A及び/又はヒトCCR9BなどのヒトCCR9などの天然に存在するCCR9である。
【0046】
いくつかの実施形態では、結合分子は、CCR9を発現する細胞に結合する。結合分子は、細胞の細胞膜中に存在するCCR9受容体に結合し得る。細胞は、CCR9を天然に発現する細胞であり得るか、又は細胞は、CCR9の発現を可能にする条件下でCCR9をコードする核酸を導入することなどによって、CCR9を発現するように操作され得る。細胞は、操作された細胞株が操作されていない細胞に対応するものより高いレベルのCCR9を発現するように、CCR9を過剰発現するように操作され得る。細胞は、ヒトCCR9A又はヒトCCR9Bを発現し得る。
【0047】
細胞は、ヒトCCR9A及び/又はヒトCCR9BなどのCCR9を発現するように操作されているHEK細胞株であり得る。
【0048】
Molt 4細胞株は、高レベルでCCR9を天然に発現する急性リンパ芽球性白血病由来のヒトTリンパ球細胞株である。Molt 4細胞株は、ATCC、CRL-1582から得ることができる。いくつかの実施形態では、結合分子は、Molt 4細胞に結合する。いくつかの実施形態では、結合分子は、前記Molt 4細胞の表面上のCCR9又は前記Molt 4細胞の細胞膜中に存在するCCR9に結合することによってMolt 4細胞に結合する。
【0049】
いくつかの実施形態では、結合分子は、ジャーカット細胞などのCCR9を発現しない細胞に結合しない。ジャーカット細胞株は、Jurkat、クローンE6.1としてATCCから得ることができる。いくつかの実施形態では、結合分子は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦5nM、≦1nM、≦0.5nM、≦0.1nM、又は≦10pMの解離定数(KD)でCCR9(例えば、ヒトCCR9)に結合する。いくつかの実施形態では、結合分子は、約0.01nMと約0.45nMの間、約0.025nMと約0.25nMの間、又は約0.05nMと約0.1nMの間のKDでCCR9(例えば、Molt 4細胞上に存在するCCR9)に結合する。いくつかの実施形態では、結合分子は、約0.09nMのKDでCCR9(例えば、Molt 4細胞上に存在するCCR9)に結合する。
【0050】
いくつかの実施形態では、結合分子は、約2nMと約5nMの間、約2.5nMと約4nMの間、又は約3nMと約3.5nMの間のKDでCCR9(例えば、Molt 4細胞上に存在するCCR9)に結合する。いくつかの実施形態では、結合分子は、約3.4nMのKDでCCR9(例えば、Molt 4細胞上に存在するCCR9)に結合する。
【0051】
KD測定(結合親和性)は、当技術分野で知られるいずれかの好適なアッセイによって実行され得る。適切なアッセイは、Ligand Tracerシステム、KinExAシステム(例えば、KinExA 3100、KinExA 3200又はKinExA 4000)(Sapidyne Instruments、Idaho)、又はForteBio Octet systemを介して実施可能な親和性アッセイを含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、結合分子は、CCR9アンタゴニストである。例えば、結合分子は、CCR9の正常な機能を妨げ得るか又は阻害し得る。例えば、結合分子は、細胞上に存在するCCR9を弱めることによってCCR9発現細胞の遊走を妨げ得るか又は阻害し得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、結合分子は、CCR9に対するリガンドの結合を阻害する。例えば、いくつかの実施形態では、結合分子は、CCR9に結合し、CCR9分子に対するリガンドの結合を遮断するか又は阻害する。これは、本明細書に記載されるものを含む当技術分野で知られる一般的な方法によって評価され得る。
【0054】
結合分子は、CCR9の競合的阻害剤であり得る。例えば、結合分子は、CCR9への結合に関してCCR9のリガンドと競合し得る。競合的結合は、本明細書に記載されるものを含む当技術分野で知られる一般的な方法によって評価され得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、CCR9のリガンドは、CCL25である。CCL25(TECKとしても知られる)は、CCケモカインファミリーに属するサイトカインである。CCL25のRNA、DNA及びアミノ酸配列は当業者に知られており、多くのデータベース、例えば、National Center for Biotechnology Information(NCBI)及びUniProtのデータベースで見出され得る。UniProtで見出されるこれらの配列の例は、ヒトCCL25に関してO15444;マウスCCL25に関してO35903;ラットCCL25に関してQ32PX4並びにカニクイザルCCL25に関してA0A2K5TSD9及びA0A2K5TSC0にある。
【0056】
いくつかの実施形態では、結合分子は、CCL25のCCR9への結合を遮断するか又は阻害する。例えば、CCL25は、本発明の結合分子の存在下でCCR9に対する低減した結合を有し得る。いくつかの実施形態では、結合分子は、細胞の表面又は膜上に存在するCCR9に結合することができ、且つ細胞上のCCR9に対するCCL25の結合を阻害することができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、結合分子は、それが結合するCCR9発現細胞の遊走を妨げることができるか又は阻害することができる。例えば、本発明の結合分子によって結合される細胞は、本発明の結合分子によって結合されない細胞より低い効率で刺激に応答して遊走し得る。いくつかの実施形態では、結合分子は、CCL25に応答するCCR9発現細胞の遊走を妨げるか又は阻害する。いくつかの実施形態では、結合分子は、対象の末梢から腸へのCCR9発現細胞の遊走を妨げることができるか又は阻害することができる。
【0058】
いくつかの実施形態では、本発明の結合分子は、それが結合するCCR9発現細胞の死滅を誘導することができる。例えば、いくつかの実施形態では、結合分子は、それが結合するCCR9発現細胞に対する抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介することができる。いくつかの実施形態では、結合分子は、それが結合するCCR9発現リンパ球に対する抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介することができる。本明細書で使用する場合、「抗体依存性細胞傷害を媒介する」又は「ADCCを媒介する」は、結合分子がADCCを誘導することができることを意味する。
【0059】
ADCCは、細胞に媒介される免疫防御の機構であり、それにより免疫エフェクター細胞を活性化して、膜表面抗原が結合分子によって結合された標的細胞を溶解させる。そのような免疫エフェクター細胞の例としては、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、マクロファージ、好中球及び好酸球が挙げられる。したがって、いくつかの実施形態では、結合分子は、そのような免疫エフェクター細胞の活性化を誘導することができる。例えば、本発明の結合分子は、結合分子がCCR9発現細胞に結合するとき、そのような免疫エフェクター細胞の活性化を誘導することができる可能性がある。
【0060】
いくつかの実施形態では、本発明の結合分子は、CCR9発現細胞及び免疫エフェクター細胞を含む細胞の集団においてCCR9発現細胞を枯渇させることができる。
【0061】
結合するCCR9発現細胞の死を誘導するか、その細胞を枯渇させるか、又はその細胞に対するADCCを媒介する結合分子の能力は、本明細書に記載される方法のいずれかを使用して決定することができる。例えば、本発明の結合分子は、PBMCとインキュベートされ、インキュベーション期間の最後に残存するCD4+CCR9+細胞のパーセンテージが、非競合CCR9結合分子を使用して決定され得る。結合分子の濃度の変化は、結合分子の濃度依存的死滅作用を計算するために使用され得る。これから、結合分子のEC50が計算され得る。本明細書で使用する場合、EC50は、CD4+CCR9+細胞に対する本発明の結合分子の結合後のPBMCによるCD4+CCR9+細胞の死滅に基づいて計算され得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、本発明の結合分子のEC50(例えば、本明細書に記載されるとおりに測定される)は、100nM未満、例えば、50nM未満、25nM未満、10nM未満、又は5nM未満である。EC50は、3nM未満、2nM未満、1nM未満、500pM未満、又は250pM未満であり得る。EC50は、約2pM~約200pM、例えば、約3.5pM~約200pMであり得る。いくつかの実施形態では、EC50は、約1pM~約5nM、例えば、約4pM~約3nMである。いくつかの実施形態では、EC50は、約2nM~約3nM、例えば、約2.5nM~約3nM、例えば、約2.6nMである。いくつかの実施形態では、EC50は、約0.25nM~約2.5nM、例えば、約0.5nM~約1nM、例えば、約0.5nMである。いくつかの実施形態では、EC50は、約50pM~約250pM、例えば、約150pM~約250pM、例えば、約200pMである。いくつかの実施形態では、EC50は、約3.5pM~約50pM、例えば、約3.5pM~約25pMである。いくつかの実施形態では、EC50は、約3.5pM~約5pM、又は約4pM~約10pMである。いくつかの実施形態では、EC50は、約6pM~約60pM、例えば、約25pM~約60pM、好ましくは、約25pM~約35pM、例えば、約30pMである。
【0063】
いくつかの実施形態では、結合分子がヒトCCR9に結合するときのEC50は、約3.5pM~約10pM、例えば、約4pM~約5pMである。いくつかの実施形態では、結合分子がカニクイザルCCR9に結合するときのEC50は、約6pM~約60pM、例えば、約25pM~約60pM、好ましくは、約25pM~約35pM、例えば、約30pMである。
【0064】
ADCCを惹起するために、結合分子は、免疫エフェクター細胞をCCR9発現細胞に架橋することができる。したがって、いくつかの実施形態では、本発明の結合分子は、免疫エフェクター細胞をCCR9発現細胞に架橋することができる。例えば、結合分子は、免疫エフェクター細胞上のFc受容体に結合することによって免疫エフェクター細胞をCCR9発現細胞に架橋することができる可能性がある。IgG(ガンマ受容体)、IgE(エータ受容体)、IgA(アルファ受容体)及びIgM(ミュー受容体)を含む、異なる抗体クラスに特異的ないくつかのFc受容体が存在する。したがって、いくつかの実施形態では、結合分子は、Fc受容体に結合することができる。いくつかの実施形態では、結合分子は、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIa、及びFcγRIIIbから選択される受容体などのFcγRに結合することができる。いくつかの実施形態では、結合分子は、FcγRIIIaに結合することができる。いくつかの実施形態では、結合分子は、免疫エフェクター細胞上に存在するFc受容体に結合することができる。
【0065】
結合分子は、結合分子中に存在するFcドメインを介して免疫エフェクター細胞上のFc受容体によって結合され得る。したがって、いくつかの実施形態では、本発明の結合分子は、上で定義されるとおりのFc受容体などのFc受容体に結合することができる領域を含む。いくつかの実施形態では、結合分子は、免疫グロブリンFcドメイン、又は上で定義されるとおりの1種以上のFc受容体などの1種以上のFc受容体に結合する能力を保持するその断片を含む。本明細書で使用する場合、用語「Fcドメイン」は、抗体のヒンジ領域中で始まり抗体のC末端で終わる単一の免疫グロブリン重鎖の一部を指す。したがって、完全なFcドメインは、ヒンジ(例えば、上部、中間、及び/又は下部ヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、及びCH3ドメインの少なくとも一部を含み得る。いくつかの実施形態では、結合分子は、Fcドメインのホモ二量体を含む。いくつかの実施形態では、結合分子は、CCR9に結合する領域を含み、そのような免疫グロブリンFcドメイン又はその断片をさらに含む。いくつかの実施形態では、結合分子は、CCR9に結合する抗原結合領域及び上で定義されるとおりの1種以上のFc受容体に結合するFc結合領域を含む免疫グロブリン分子又はその断片である。
【0066】
いくつかの実施形態では、Fc結合領域、免疫グロブリンFcドメイン、又はその断片は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のFcドメイン又はその断片などのIgG Fcドメイン又はその断片である。いくつかの実施形態では、Fc結合領域、免疫グロブリンFcドメイン又はその断片は、IgG1 Fcドメイン又はその断片である。いくつかの実施形態では、Fc結合領域、免疫グロブリンFcドメイン又はその断片は、ヒトIgG1のFcドメイン又はその断片などのヒト免疫グロブリンFcドメイン又はその断片である。いくつかの実施形態では、結合分子は、配列番号78に記載されるアミノ酸配列を有する免疫グロブリンFcドメインを含む。例えば、いくつかの実施形態では、Fcドメインは、配列番号78のアミノ酸111~330を含む。
【0067】
免疫エフェクター細胞上のFc受容体に対する本発明の結合分子の結合は、結合分子の抗原結合部分が結合される細胞と免疫エフェクター細胞を架橋することができる。したがって、いくつかの実施形態では、本発明の結合分子は、免疫エフェクター細胞活性化を誘導することができる。いくつかの実施形態では、結合分子による免疫エフェクター細胞のCCR9発現細胞への架橋は、エフェクター細胞によってADCCを活性化する。
【0068】
免疫エフェクター細胞活性化は、インビトロでのADCCバイオアッセイなどによって本明細書に記載される方法によって評価され得る。簡潔に述べると、免疫エフェクター細胞は、エフェクター機能の代理として作用するルシフェラーゼレポーターなどのレポーターを発現するように改変され得る。そのようなレポーターを含む免疫エフェクター細胞は、結合分子とプレインキュベートされた標的細胞に加えられる。エフェクター細胞及び標的細胞のインキュベーションの後、レポーター機能(例えば、発光)が定量化される。したがって、そのような方法は、免疫エフェクター細胞を活性化することができる結合分子を同定するために使用され得る。例えば、アッセイが結合分子の免疫エフェクター細胞を活性化する有効性を評価するためのものである場合、標的細胞は、CCR9を発現することが知られる細胞であり得る。そのような方法は、CCR9を発現する標的細胞を同定するために使用され得る。例えば、アッセイが、標的細胞がCCR9を発現するかどうかを評価するためのものである場合、結合分子は、本発明の結合分子などのCCR9に結合することが知られる結合分子であり得る。
【0069】
いくつかの実施形態では、本発明の結合分子は、CCR9Aを発現するHEK細胞株を使用して決定されるとおりの≦3nM、≦2nM、≦1nM又は≦0.5nMなど、≦5nMのNK細胞活性化効力を有する。いくつかの実施形態では、本発明の結合分子は、Molt 4細胞株を使用して決定されるとおり0.8nMのNK細胞活性化効力を有する。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞による抗体依存性細胞傷害の活性化は、CCR9発現細胞の溶解を引き起こす。
【0070】
結合するCCR9発現細胞に対するADCCを媒介することができるとみなされることになる結合分子に関して、結合分子は、Molt 4細胞株を使用して決定されるとおりの{≦20nM、CCR9Aを発現するHEK細胞株を使用して決定されるとおりの≦30nM及び/又は≦3nMのPBMC死滅EC50のNK細胞活性化効力などの免疫エフェクター細胞活性化効力を有するべきである。
【0071】
いくつかの実施形態では、本発明の結合分子は、結合分子の生物学的プロファイルにも影響を及ぼす変化したエフェクター機能を提供する。例えば、免疫グロブリン分子の定常領域ドメインのグリコシル化プロファイルの改変は、改変された結合分子のFc受容体結合を増大させることができる。他の場合、本発明と一致する定常領域修飾は、補体結合を緩和し得る。定常領域のさらに他の修飾を使用して、抗原特異性又は抗体可動性の向上による局在化の増進を可能にするジスルフィド結合又はオリゴ糖部分を除去することができる。同様に、本発明による定常領域に対する修飾は、十分に当業者の範囲内にあるよく知られた生化学的又は分子工学的手法を使用して容易に作製することができる。
【0072】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明の結合分子は、免疫エフェクター細胞と相互作用する結合分子の能力を増大させる、例えば、結合分子によって結合されるCCR9発現細胞と免疫エフェクター細胞を架橋する結合分子の能力を増大させるか、又はADCCを誘導する結合分子の能力を増大させる増強されたエフェクター機能を有し得る。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される結合分子の免疫グロブリンFcドメインは、対応する野生型Fcドメインと比較して改変され、前記改変は、1種以上のFc受容体、好ましくは、1種以上のFcγ受容体に対する親和性の増大をもたらす。いくつかの実施形態では、免疫グロブリンFcドメインは、対応する野生型Fcドメインと比較して改変され、前記改変は、抗体依存性細胞傷害応答の増強をもたらす。
【0073】
フコシル残基の量が減少した非フコシル化/低フコシル化結合分子又はバイセクティングGlcNac構造が増加した結合分子などのグリコシル化の改変型を有する結合分子が作製され得る。このような改変されたグリコシル化プロファイルは、結合分子のADCC能を増大させることが実証されている。これらの改変は、本明細書の実施例の節に記載されるものなど、当技術分野における任意の既知の手段によって達成され得る。
【0074】
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書で提供される結合分子は、非フコシル化され得る。結合分子は、フコースを含まなくてもよい。結合分子は、コアフコース糖単位を欠く少なくとも1つのN結合グリカンを含み得る。
【0075】
いくつかの実施形態では、結合分子は、位置N297としても本明細書で参照されるEU位置297で非フコシル化される(Edelman et al.,1969,Proc Natl Acad Sci USA 63(1):78-85)。すなわち、位置N297のN結合グリカンは、存在しなくてもよいし、フコースを欠いてもよいし、コアフコース糖単位を欠いてもよい。アミノ酸位置N297のN結合グリカンは、配列番号78における位置N180に対応する。いくつかの実施形態では、結合分子は、配列番号78を含み、配列番号78のN180は非フコシル化される。いくつかの実施形態では、結合分子は、配列番号78のアミノ酸111~330を含むFcドメインを含み、配列番号78のN180は非フコシル化される。
【0076】
本明細書に記載されるとおり、結合分子は、hIgG1 Fcドメイン又はその断片などのFcドメイン又はその断片を含み得る。いくつかの実施形態では、結合分子は、非フコシル化hIgG1 Fcドメイン又はその断片などの非フコシル化Fcドメイン又はその断片を含む。本明細書に記載されるとおりのFcドメイン又はFcドメイン断片のいずれかは、非フコシル化形態で存在し得る。Fcドメイン又は断片は、フコースを含まなくてもよい。Fcドメイン又は断片の少なくとも1つのN結合グリカンは、コアフコース糖単位を欠いてもよい。Fcドメイン又は断片は、EU位置297で非フコシル化され得る。いくつかの実施形態では、結合分子は、配列番号78のアミノ酸111~330を含む非フコシル化Fcドメインを含む。例えば、結合分子は、配列番号78のアミノ酸111~330を含む非フコシル化Fcドメインを含んでもよく、配列番号78のN180は、非フコシル化される。いくつかの実施形態では、結合分子は、非フコシル化Fcドメイン及び非フコシル化がないFcドメインを含む。例えば、結合分子は、配列番号78のアミノ酸111~330を含む非フコシル化Fcドメイン(配列番号78のN180は、非フコシル化される)、及び配列番号78のアミノ酸111~330を含む非フコシル化がないFcドメインを含み得る。いくつかの実施形態では、結合分子は、完全に非フコシル化される。例えば、結合分子のN結合グリカンの全てが、非フコシル化されてもよい。いくつかの実施形態では、結合分子のFcドメインは、完全に非フコシル化される。例えば、FcドメインのN結合グリカンの全てが、非フコシル化されてもよい。
【0077】
いくつかの実施形態では、結合分子は、前記結合分子の複数のコピーを含む組成物中で存在し、組成物中の結合分子のコピーの少なくとも50%、75%、90%、95%、98%、99%又は100%が、非フコシル化され、例えば、本明細書に記載されるとおりフコースを欠き、少なくとも1つのN結合グリカンにおいてコアフコース糖単位を欠くか、又はEU位置297で非フコシル化される。そのような組成物において、結合分子は、本明細書で開示されるとおりのアミノ酸配列を有するが、組成物中の結合分子のコピーは、それらのグリコシル化パターンにおいて変動してもよく、例えば、いくつかのコピーは、フコースを含んでもよく、いくつかのコピーは、フコースを欠いてもよく、例えば、本明細書に記載されるとおり、少なくとも1つのN結合グリカン中のコアフコース糖単位を欠くか、又はEU位置297で非フコシル化される。
【0078】
本明細書で開示される実施形態のいずれかにおいて、CCR9発現細胞は、腸常在細胞である。本明細書で開示される実施形態のいずれかにおいて、CCR9発現細胞は、末梢血液細胞である。本明細書で開示される実施形態のいずれかにおいて、CCR9発現細胞は、CD4、CD8、CD20、CD19、CD69及び/又はCD103を発現する。本明細書で開示される実施形態のいずれかにおいて、CCR9発現細胞は、GM-CSF、IL-22、TNFα、IL-6、IFNγ、IL-4及び/又はIL-17を発現する。例えば、CCR9発現細胞は、IFNγ、IL-4及び/又はIL-17を発現し得る。本明細書で開示される実施形態のいずれかにおいて、CCR9発現細胞は、リンパ球、例えば、腸常在リンパ球又は末梢血液リンパ球である。いくつかの実施形態では、リンパ球は、CD4+Tリンパ球などのTリンパ球である。いくつかの実施形態では、リンパ球は、Bリンパ球である。
【0079】
本明細書で開示される実施形態のいずれかにおいて、免疫エフェクター細胞は、NK細胞、マクロファージ、好中球、好酸球又はその組み合わせである。本明細書で開示される実施形態のいずれかにおいて、免疫エフェクター細胞は、NK細胞である。
【0080】
本発明の結合分子は、上で詳述される機能的特徴のいずれか1つ以上を有し得る。加えて又は代わりに、それは、下で詳述される構造的(例えば、配列)特徴のいずれか1つ以上を有し得る。
【0081】
図3及び
図4は、例示される本発明の結合分子から選択される配列を示す。
図3及び
図4に示される結合分子は、抗体であり、抗体は、これらの図において示されるとおりの可変重ドメイン(VH)及び可変軽ドメイン(VL)領域配列を含む。本発明の結合分子は、
図3又は
図4に示されるいずれかの抗体のVH及びVLを含み得る。本発明の結合分子は、
図4に示されるいずれかの抗体のVH及びVLを含み得る。
【0082】
表3は、例示的な本発明の結合分子のためのVH及びVL領域のアミノ酸配列を提供し、表4は、例示的な本発明の結合分子のためのCDR配列を提供する。本発明の結合分子は、表3に示されるいずれかの結合分子のVH及びVLを含み得る。本発明の結合分子は、表4に示されるいずれかの結合分子の6個のCDR(HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3)のセットを含み得る。
【0083】
本発明の結合分子は、
図3又は
図4に示されるとおりのいずれかの抗体のCDR配列を含み得る。例えば、結合分子は、
図3又は
図4に示される抗体のいずれか1つに関して示されるとおりのHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列の6個全てを含み得る。本発明の結合分子は、
図4に示されるとおりのいずれかの抗体のCDR配列を含み得る。例えば、結合分子は、
図4に示される抗体のいずれか1つに関して示されるとおりのHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列の6個全てを含み得る。本発明の結合分子は、表4に示されるとおりの6個のCDRのセットを含み得る。例えば、結合分子は、表4に示される抗体のいずれか1つに関して示されるとおりのHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列の6個全てを含み得る。
【0084】
本発明の結合分子は、CDR HCDR1、HCDR2及びHCDR3のセットを有する重鎖可変(VH)領域並びにCDR LCDR1、LCDR2及びLCDR3のセットを有する軽鎖可変(VL)領域を含み得る。したがって、結合分子は、
図3又は
図4に示される抗体のいずれか1つに関して示されるとおりのHCDR1、HCDR2、HCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに
図3又は
図4に示される同じ抗体に関して示されるとおりのLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含み得る。結合分子は、
図4に示される抗体のいずれか1つに関して示されるとおりのHCDR1、HCDR2、HCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに
図4に示される同じ抗体に関して示されるとおりのLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含み得る。結合分子は、表4に示される抗体のいずれか1つに関して示されるとおりのHCDR1、HCDR2、HCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに表4に示される同じ抗体に関して示されるとおりのLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含み得る。
【0085】
例えば、いくつかの実施形態では、結合分子は、
a)配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2、配列番号3のHCDR3、配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2及び配列番号6のLCDR3(配列番号4のX1及びX2は、任意のアミノ酸である);
b)配列番号7のHCDR1、配列番号8のHCDR2、配列番号9のHCDR3、配列番号10のLCDR1、配列番号11のLCDR2及び配列番号12のLCDR3;又は
c)配列番号13のHCDR1、配列番号14のHCDR2、配列番号15のHCDR3、配列番号16のLCDR1、配列番号17のLCDR2及び配列番号18のLCDR3
を含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、結合分子は、
a)配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2及び配列番号3のHCDR3を含むVH領域、並びに配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2及び配列番号6のLCDR3(配列番号4のX1及びX2は、任意のアミノ酸である)を含むVL領域;
b)配列番号7のHCDR1、配列番号8のHCDR2及び配列番号9のHCDR3を含むVH領域、並びに配列番号10のLCDR1、配列番号11のLCDR2及び配列番号12のLCDR3を含むVL領域;又は
c)配列番号13のHCDR1、配列番号14のHCDR2及び配列番号15のHCDR3を含むVH領域、並びに配列番号16のLCDR1、配列番号17のLCDR2及び配列番号18のLCDR3を含むVL領域
を含む。
【0087】
結合分子は、配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2、配列番号3のHCDR3、配列番号5のLCDR2、配列番号6のLCDR3並びに(a)配列番号4;(b)配列番号19;(c)配列番号20;(d)配列番号21;及び(e)配列番号22(配列番号4のX1及びX2は、任意のアミノ酸であり、配列番号19のX1は、P又はSであり、配列番号19のX2は、R、T又はGである)から選択されるアミノ酸配列を有するLCDR1を含み得る。したがって、いくつかの実施形態では、結合分子は、
a)配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2、配列番号3のHCDR3、配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2、及び配列番号6のLCDR3(配列番号4のX1及びX2は、任意のアミノ酸である);
b)配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2、配列番号3のHCDR3、配列番号19のLCDR1、配列番号5のLCDR2、及び配列番号6のLCDR3(配列番号19のX1は、P又はSであり、配列番号19のX2は、R、T又はGである);
c)配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2、配列番号3のHCDR3、配列番号20のLCDR1、配列番号5のLCDR2、及び配列番号6のLCDR3;
d)配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2、配列番号3のHCDR3、配列番号21のLCDR1、配列番号5のLCDR2、及び配列番号6のLCDR3;又は
e)配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2、配列番号3のHCDR3、配列番号22のLCDR1、配列番号5のLCDR2、及び配列番号6のLCDR3
を含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、結合分子は、
a)配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2及び配列番号3のHCDR3を含むVH領域、並びに配列番号4のLCDR1、配列番号5のLCDR2及び配列番号6のLCDR3(配列番号4のX1及びX2は、任意のアミノ酸である)を含むVL領域;
b)配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2、及び配列番号3のHCDR3を含むVH領域、並びに配列番号19のLCDR1、配列番号5のLCDR2、及び配列番号6のLCDR3(配列番号19のX1は、P又はSであり、配列番号19のX2は、R、T又はGである)を含むVL領域;
c)配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2、及び配列番号3のHCDR3を含むVH領域、並びに配列番号20のLCDR1、配列番号5のLCDR2、及び配列番号6のLCDR3を含むVL領域;
d)配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2、及び配列番号3のHCDR3を含むVH領域、並びに配列番号21のLCDR1、配列番号5のLCDR2、及び配列番号6のLCDR3を含むVL領域;又は
e)配列番号1のHCDR1、配列番号2のHCDR2、及び配列番号3のHCDR3を含むVH領域、並びに配列番号22のLCDR1、配列番号5のLCDR2、及び配列番号6のLCDR3を含むVL領域
を含む。
【0089】
本発明は、列挙されたCDR配列(参照結合分子)、及びその機能的バリアントを有する本明細書で定義される結合分子を包含する。機能的バリアントは、参照結合分子と同じ標的抗原に結合し、好ましくは、参照結合分子と同じ抗原交差反応性プロファイルを示す。例えば、機能的バリアントは、参照結合分子と同じ天然に存在するCCR9の形態に結合する場合があり、例えば、以下のリストからの分子の同じサブセットに結合する:ヒトCCR9A、ヒトCCR9B、カニクイザルCCR9、ラットCCR9及びマウスCCR9。機能的バリアントは、参照結合分子と比較した場合、標的抗原に関して異なる親和性を有する場合があるが、実質的に同じ親和性が好ましい。
【0090】
いくつかの実施形態では、参照結合分子の機能的バリアントは、対応する参照CDR配列と比較した場合、1つ以上のCDRでの配列多様性を示す。したがって、機能的結合分子バリアントは、CDRの機能的バリアントを含み得る。用語「機能的バリアント」がCDR配列の文脈において使用される場合、これは、CDRが、対応する参照CDR配列と比較した場合、1、2又は3個のアミノ酸の相違を有し、残りの5個のCDR(又はそのバリアント)と組み合わされる場合、バリアント結合分子が、参照結合分子と同じ標的抗原に結合し、好ましくは、参照結合分子と同じ抗原交差反応性プロファイルを示すことを可能にすることを意味する。
【0091】
いくつかの実施形態では、結合分子は、対応する参照CDR配列と比較した場合、1、2又は3個のアミノ酸の相違を有する軽鎖CDR1;対応する参照CDR配列と比較した場合、1、2又は3個のアミノ酸の相違を有する軽鎖CDR2;対応する参照CDR配列と比較した場合、1、2又は3個のアミノ酸の相違を有する軽鎖CDR3;対応する参照CDR配列と比較した場合、1、2又は3個のアミノ酸の相違を有する重鎖CDR1;対応する参照CDR配列と比較した場合、1、2又は3個のアミノ酸の相違を有する重鎖CDR2;及び対応する参照CDR配列と比較した場合、1、2又は3個のアミノ酸の相違を有する重鎖CDR3を含み;結合分子は、参照結合分子と同じ標的抗原に結合し、好ましくは、参照結合分子と同じ抗原交差反応性を示す。
【0092】
いくつかの実施形態では、結合分子は、対応する参照CDR配列と比較した場合、最大2個のアミノ酸の相違を有する軽鎖CDR1;対応する参照CDR配列と比較した場合、最大2個のアミノ酸の相違を有する軽鎖CDR2;対応する参照CDR配列と比較した場合、最大2個のアミノ酸の相違を有する軽鎖CDR3;対応する参照CDR配列と比較した場合、最大2個のアミノ酸の相違を有する重鎖CDR1;対応する参照CDR配列と比較した場合、最大2個のアミノ酸の相違を有する重鎖CDR2;及び対応する参照CDR配列と比較した場合、最大2個のアミノ酸の相違を有する重鎖CDR3を含み;結合分子は、参照結合分子と同じ標的抗原に結合し、好ましくは、参照結合分子と同じ抗原交差反応性プロファイルを示す。いくつかの実施形態では、結合分子は、対応する参照CDR配列と比較した場合、最大2個のアミノ酸の相違を有する軽鎖CDR1を含む。
【0093】
結合分子は、対応する参照CDR配列と比較した場合、最大1個のアミノ酸の相違を有する軽鎖CDR1;対応する参照CDR配列と比較した場合、最大1個のアミノ酸の相違を有する軽鎖CDR2;対応する参照CDR配列と比較した場合、最大1個のアミノ酸の相違を有する軽鎖CDR3;対応する参照CDR配列と比較した場合、最大1個のアミノ酸の相違を有する重鎖CDR1;対応する参照CDR配列と比較した場合、最大1個のアミノ酸の相違を有する重鎖CDR2;及び対応する参照CDR配列と比較した場合、最大1個のアミノ酸の相違を有する重鎖CDR3を含んでもよく;結合分子は、参照結合分子と同じ標的抗原に結合し、好ましくは、参照結合分子と同じ抗原交差反応性プロファイルを示す。
【0094】
いくつかの実施形態では、バリアント結合分子は、対応する参照結合分子と比較した場合、そのCDRにおいて合計で最大5、4又は3個のアミノ酸の相違を有する場合があるが、CDR当たり最大3、最大2又は最大1個のアミノ酸の相違が存在するものとする。好ましくは、バリアント結合分子は、対応する参照結合分子と比較した場合、そのCDRにおいて合計で最大2個(好ましくは、最大1個)のアミノ酸の相違を有する場合があるが、CDR当たり最大2個のアミノ酸の相違が存在するものとする。より好ましくは、バリアント結合分子は、対応する参照結合分子と比較した場合、そのCDRにおいて合計で最大2個(より好ましくは、最大1個)のアミノ酸の相違を有する場合があるが、CDR当たり最大1個のアミノ酸の相違が存在するものとする。
【0095】
例えば、そのような結合分子は、参照結合分子(
図3又は
図4又は表3に示される抗体のいずれか1つなど)のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列の6個全てを含んでもよく、前記HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列のいずれか1つ以上は、参照結合分子のそれぞれのCDR配列と比較して、1、2又は3個のアミノ酸変化を含む。結合分子は、参照結合分子(
図3又は
図4に示される抗体のいずれか1つなど)のHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列の6個全てを含んでもよいが、前記CDR配列のいずれか1つにおいて1、2又は3個のアミノ酸変化、例えば、置換を有することを除く。結合分子は、前記軽鎖CDRのいずれか1つ以上及び/又は前記重鎖CDRのいずれか1つ以上において、1、2又は3個のアミノ酸変化、例えば、置換を含んでもよい。結合分子は、HCDR1、HCDR2、LCDR1、LCDR2及びLCDR3のいずれか1つ以上において、1、2又は3個のアミノ酸変化、例えば、置換を含んでもよい。結合分子は、LCDR1において、1、2又は3個のアミノ酸変化、例えば、置換を含んでもよい。
【0096】
前述は、
図3若しくは
図4、若しくは表4に示される抗体のいずれか、又は本明細書に記載される結合分子のいずれかに適用することができ、アミノ酸の相違は、そのCDR配列と比較して定義され、バリアント結合分子は、前記結合分子と同じ標的抗原に結合し、好ましくは、同じ抗原交差反応性を示す。したがって、本明細書の実施形態のいずれかにおける参照結合分子は、
図3若しくは
図4に示される抗体又は表3の結合分子又は
図3若しくは
図4若しくは表4に示される抗体のいずれかの6個のCDRのセットを有する抗体のいずれかのVH及びVL配列を有する抗体であり得る。
【0097】
アミノ酸の相違は、アミノ酸置換、挿入又は欠失であり得る。いくつかの実施形態では、アミノ酸の相違は、本明細書に記載されるとおりの保存的アミノ酸置換である。
【0098】
いくつかの実施形態では、結合分子は、
図3若しくは
図4、若しくは表4で示されるか若しくは上で示されるとおりの抗体、又はそのいずれかの機能的バリアントのいずれか1つによって示されるとおりのHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列の6個全てを含む。例えば、そのような結合分子は、
図3若しくは
図4若しくは表4に示されるか又は上で示されるとおりの抗体のいずれか1つに関して示されるとおりのHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列の6個全てを含んでもよく、前記HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列のいずれか1つ以上は、
図3又は
図4又は表4又は上で列挙されるとおりのそれぞれの配列と比較して、1、2又は3個のアミノ酸変化、例えば、置換を含む。結合分子は、
図3若しくは
図4に示される抗体又は表3若しくは上で示されるとおりの結合分子のいずれか1つ以上に関して示されるとおりのHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列の6個全てを含んでもよいが、前記CDR配列のいずれか1つにおいて1、2又は3個のアミノ酸変化、例えば、置換を有することを除く。結合分子は、前記軽鎖CDRのいずれか1つ以上及び/又は前記重鎖CDRのいずれか1つ以上において、1、2又は3個のアミノ酸変化、例えば、置換を含んでもよい。結合分子は、HCDR1、HCDR2、LCDR1、LCDR2及びLCDR3のいずれか1つ以上において、1、2又は3個のアミノ酸変化、例えば、置換を含んでもよい。結合分子は、LCDR1において、1、2又は3個のアミノ酸変化、例えば、置換を含んでもよい。
【0099】
本発明の結合分子は、
図3若しくは
図4に示されるとおりのいずれかの抗体又は表3の結合分子の重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み得る。
【0100】
例えば、いくつかの実施形態では、結合分子は、
a)配列番号51を含むVH領域アミノ酸配列及び配列番号52を含むVL領域アミノ酸配列;
b)配列番号51を含むVH領域アミノ酸配列及び配列番号53を含むVL領域アミノ酸配列;
c)配列番号51を含むVH領域アミノ酸配列及び配列番号54を含むVL領域アミノ酸配列;
d)配列番号51を含むVH領域アミノ酸配列及び配列番号55(DVVMTQTPLSLPVSLGDQASISCRSSQSLVHX1NX2NTYLHWYLQKPGQSPKLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDLGVFFCSQSTHVPWTFGGGTKLEIK、(a)X1及びX2はそれぞれ、任意のアミノ酸であるか(配列番号76);又は(b)X1は、P又はSであり且つX2は、R、T又はGである(配列番号77))を含むVL領域アミノ酸配列;又は
e)配列番号56を含むVH領域アミノ酸配列及び配列番号57を含むVL領域アミノ酸配列
を含む。
【0101】
いくつかの実施形態では、結合分子は、
a)配列番号58を含むVH領域アミノ酸配列及び配列番号59を含むVL領域アミノ酸配列;又は
b)配列番号60を含むVH領域アミノ酸配列及び配列番号61を含むVL領域アミノ酸配列
を含む。
【0102】
本発明は、列挙されるVH及びVL領域配列を含む本明細書に記載されるとおりの結合分子(参照結合分子)、並びにその機能的バリアントを包含する。機能的バリアントは、参照結合分子と同じ標的抗原に結合し、好ましくは、参照結合分子と同じ抗原交差反応性を示す。機能的バリアントは、参照結合分子と比較されるとき、標的抗原に対して異なる親和性を有してもよいが、実質的に同じ親和性が好ましい。
【0103】
結合分子のVH領域配列は、参照結合分子の対応するVH領域配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有し得る。結合分子のVL領域配列は、参照結合分子の対応するVL領域配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有し得る。
【0104】
いくつかの実施形態では、そのような結合分子のCDRは、参照結合分子のCDRと同一であり、それらのCDRの外部にある全ての相違、例えば、結合分子と参照結合分子の間の相違は、VH及び/又はVL配列のフレームワーク領域中にある。
【0105】
いくつかの実施形態では、そのような結合分子のCDRは、上記のとおりの機能的バリアントである。いくつかの実施形態では、そのような結合分子は、対応する参照結合分子のVH及び/又はVL配列と比較して、1つ以上のCDRにおけるアミノ酸の相違及び1つ以上のフレームワーク領域におけるアミノ酸の相違を含む。
【0106】
いくつかの実施形態では、結合分子は、参照結合分子と同じフレームワーク配列を有する。別の実施形態では、結合分子は、最大2個、好ましくは、最大1個のアミノ酸の相違(対応する参照フレームワーク配列と比較した場合)を有するフレームワーク領域を含む。したがって、各フレームワーク領域は、(対応する参照フレームワーク配列と比較した場合)最大2個、好ましくは、最大1個のアミノ酸の相違を有し得る。
【0107】
いくつかの実施形態では、結合分子は、対応する参照結合分子と比較した場合、そのフレームワーク領域において合計で最大で5、4又は3個のアミノ酸の相違を有する場合があるが、フレームワーク領域当たり最大2個(好ましくは、最大1個)のアミノ酸の相違が存在するものとする。そのような結合分子は、対応する参照結合分子と比較した場合、そのフレームワーク領域において合計で最大2個(より好ましくは、最大1個)のアミノ酸の相違を有する場合があるが、フレームワーク領域当たり最大2個のアミノ酸の相違が存在するものとする。そのような結合分子は、対応する参照結合分子と比較した場合、そのフレームワーク領域において合計で最大2個(より好ましくは、最大1個)のアミノ酸の相違を有する場合があるが、フレームワーク領域当たり最大1個のアミノ酸の相違が存在するものとする。
【0108】
したがって、結合分子は、本明細書に記載されるとおりのVH領域及びVL領域を含む場合があり、VH領域は、本明細書の参照結合分子のVH領域と比較した場合、最大14個のアミノ酸の相違(各CDRにおいて最大2個のアミノ酸の相違及び各フレームワーク領域において最大2個のアミノ酸の相違)を有し;且つVL領域は、本明細書の参照結合分子のVL領域と比較した場合、最大14個のアミノ酸の相違(各CDRにおいて最大2個のアミノ酸の相違及び各フレームワーク領域において最大2個のアミノ酸の相違)を有し;バリアント結合分子は、参照結合分子と同じ標的抗原に結合し、好ましくは、参照結合分子と同じ抗原交差反応性を示す。
【0109】
前記バリアントVH又はVL領域は、参照VH又はVL領域の「機能的均等物」として参照され得る。
【0110】
いくつかの実施形態では、結合分子は、本明細書に記載されるとおりのVH領域及びVL領域を含む場合があり、VH領域は、本明細書の参照結合分子のVH領域と比較した場合、最大7個のアミノ酸の相違(例えば、各CDRにおいて最大1個のアミノ酸の相違及び各フレームワーク領域において最大1個のアミノ酸の相違)を有し;且つVL領域は、本明細書の参照結合分子のVL領域と比較した場合、最大7個のアミノ酸の相違(例えば、各CDRにおいて最大1個のアミノ酸の相違及び各フレームワーク領域において最大1個のアミノ酸の相違)を有し;バリアント結合分子は、参照結合分子と同じ標的抗原に結合し、好ましくは、参照結合分子と同じ抗原交差反応性を示す。
【0111】
いくつかの実施形態では、結合分子は、
a)配列番号51のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有する配列を含むVH領域;及び
b)配列番号55のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有する配列((i)配列番号55のX1及びX2はそれぞれ、任意のアミノ酸であるか(配列番号76);又は(ii)配列番号55のX1は、P又はSであり且つ配列番号55のX2は、R、T又はGである(配列番号77))を含むVL領域を含む。
【0112】
例えば、いくつかの実施形態では、結合分子は、
a)配列番号51のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有する配列を含むVH領域;及び
b)配列番号76のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有する配列を含むVL領域を含む。
【0113】
例えば、いくつかの実施形態では、結合分子は、
a)配列番号51のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有する配列を含むVH領域;及び
b)配列番号77のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有する配列を含むVL領域を含む。
c)いくつかの実施形態では、結合分子は、
d)配列番号51のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有する配列を含むVH領域;及び
e)配列番号52のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有する配列を含むVL領域を含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、結合分子は、
a)配列番号51のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有する配列を含むVH領域;及び
b)配列番号53のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有する配列を含むVL領域を含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、結合分子は、
a)配列番号51のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有する配列を含むVH領域;及び
b)配列番号54のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有する配列を含むVL領域を含む。
【0116】
いくつかの実施形態では、結合分子は、
a)配列番号56のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有する配列を含むVH領域;及び
b)配列番号57のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有する配列を含むVL領域を含む。
【0117】
いくつかの実施形態では、結合分子は、
a)配列番号58のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有する配列を含むVH領域;及び
b)配列番号59のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有する配列を含むVL領域を含む。
【0118】
いくつかの実施形態では、結合分子は、
a)配列番号60のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有する配列を含むVH領域;及び
b)配列番号61のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有する配列を含むVL領域を含む。
【0119】
いくつかの実施形態では、結合分子は、
a)配列番号51、56、58、60、又はその機能的バリアントの参照アミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%若しくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVH領域;及び
b)配列番号52、53、54、55、57、59、61、又はその機能的バリアントの参照アミノ酸配列と少なくとも70%、75%、80%、90%、95%若しくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列((i)配列番号55のX1及びX2はそれぞれ、任意のアミノ酸であるか(配列番号76);又は(ii)配列番号55のX1は、P又はSであり且つ配列番号55のX2は、R、T又はGである(配列番号77))を含むVL領域を含む。
【0120】
前述は、
図3若しくは
図4に示される抗体若しくは表3の結合分子のいずれか、又は本明細書に記載される結合分子のいずれかに適用することができ、アミノ酸の相違は、そのVH及び/又はVL配列と比較して定義され、結合分子は、前記結合分子と同じ標的抗原に結合し、好ましくは、同じ抗原交差反応性を示す。したがって、本明細書の実施形態のいずれかにおける参照結合分子は、
図3若しくは
図4に示される抗体又は表3の結合分子のいずれかのVH及びVL配列を有する抗体であり得る。
【0121】
アミノ酸の相違は、アミノ酸置換、挿入又は欠失であり得る。いくつかの実施形態では、アミノ酸の相違は、本明細書に記載されるとおりの保存的アミノ酸置換である。
【0122】
本発明の結合分子は、単離された形態で提供され得る。
【0123】
いくつかの実施形態では、本発明の結合分子は、免疫グロブリン分子である。いくつかの実施形態では、結合分子は、抗体、又はその抗原結合断片である。
【0124】
特に、抗体は、少なくとも1つ又は2つの重(H)鎖可変領域(本明細書でVHと略記される)、及び少なくとも1つ又は2つの軽(L)鎖可変領域(本明細書でVLと略記される)を含むタンパク質である。VH領域及びVL領域は、「相補性決定領域」(「CDR」)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分化することができ、「フレームワーク領域」(FW)と呼ばれる、より保存されている領域が点在している。フレームワーク領域及びCDRの範囲は、厳密に定義されている(Kabat,E.A.,et al.Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242,1991、及びChothia,C.et al,J.MoI.Biol.196:901-917,1987を参照のこと)。好ましくは、各VH及びVL領域は、3つのCDR及び4つのFWで構成されており、以下の順序でアミノ末端からカルボキシ末端に配置される:FW1、CDR1、FW2、CDR2、FW3、CDR3、FW4。
【0125】
抗体の重鎖又は軽鎖はさらに、重鎖又は軽鎖定常領域の全て又は一部を含み得る。いくつかの実施形態では、結合分子は、配列番号78の重鎖定常領域の全て又は一部及び配列番号79の軽鎖定常領域の全て又は一部を含む。いくつかの実施形態では、結合分子は、表7に示されるとおりの重鎖定常領域及び軽鎖定常領域を含む。結合分子は、断片などの表7に示されるとおりの重鎖定常領域及び/又は軽鎖定常領域の機能的断片を含んでもよく、結合分子は、本明細書に記載されるとおりの1種以上のFc受容体に結合する能力を保持する。いくつかの実施形態では、結合分子は、表7に示されるとおりの重鎖定常領域及び軽鎖定常領域を含んでもよく、さらに本明細書で開示されるVH領域及びVL領域、例えば、
図3若しくは
図4に示される抗体又は表1の結合分子のいずれかのVH及びVL配列を含んでもよい。いくつかの実施形態では、結合分子は、2つの重免疫グロブリン鎖及び2つの軽免疫グロブリン鎖の四量体である抗体であり、重及び軽免疫グロブリン鎖は、例えば、ジスルフィド結合によって相互接続される。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2及びCH3を含む。いくつかの実施形態では、結合分子は、配列番号78の重鎖定常領域を有する。軽鎖定常領域は、1つのドメインであるCLから構成される。いくつかの実施形態では、結合分子は、配列番号79の軽鎖定常領域を有する。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。
【0126】
「Kabat付番方式」は一般に、可変領域内の残基(概ね、軽鎖の残基1~107及び重鎖の残基1~113)を指す際に使用される(例えば、Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。
【0127】
Kabatにあるようなアミノ酸位置の付番は、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)における抗体編集物の重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインに使用される付番方式を指す。この付番方式を使用する場合、実際の線状アミノ酸配列は、可変ドメインのFW又はCDRの短縮、又はそれへの挿入に対応するより少ないか又は追加のアミノ酸を含有し得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入(Kabatによる残基52a)及び重鎖FW残基82の後に挿入された残基(例えば、Kabatによる残基82a、82b及び82cなど)を含んでもよい。
【0128】
残基のKabat付番は、所与の抗体について、相同性領域において抗体の配列を「標準」Kabat付番配列とアライメントすることにより決定され得る。Chothiaは、代わりに、構造ループの位置を指す(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987))。Kabat付番規則を用いて付番した場合のChothia CDR-H1ループの末端は、当該ループの長さに応じてH32~H34の間で変化する(これは、Kabat付番スキームがH35A及びH35Bで挿入を置くためであり、35Aも35Bも存在しない場合、当該ループは32で終わり、35Aのみが存在する場合、当該ループは33で終わり、35A及び35Bの両方が存在する場合、当該ループは34で終わるからである)。AbM超可変領域は、Kabat CDRとChothia構造ループとの間で妥協案を示し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって用いられる。以下の表に、各系における抗体の可変領域を含むアミノ酸の位置を列挙する。
【0129】
【0130】
ImMunoGeneTics(IMGT)もまた、CDRを含む免疫グロブリン可変領域の付番方式を提供する。例えば、Lefranc,M.P.et al.,Dev.Comp.Immunol.27:55-77(2003)を参照されたい。IMGT付番方式は、5,000を超える配列のアライメント、構造データ及び超可変ループの特徴付けに基づいており、全ての種に対する可変領域及びCDR領域の容易な比較を可能にする。IMGT付番スキームに従えば、HCDR1は位置26~35であり、HCDR2は位置51~57であり、HCDR3は位置93~102であり、LCDR1は位置27~32であり、LCDR2は位置50~52であり、LCDR3は位置89~97である。
【0131】
用語「抗体」は、IgA、IgG、IgE、IgD、IgM型(並びにその亜型)のインタクトな免疫グロブリンを含み、免疫グロブリンの軽鎖は、カッパ型又はラムダ型のものであり得る。本発明の結合分子は、完全長抗体であってもよいし、それを含んでもよいし、その抗原結合断片であってもよいし、それを含んでもよい。抗原結合断片という用語は、本明細書で使用する場合、CCR9に結合する抗体の一部、例えば、1つ以上の免疫グロブリン鎖が全長ではないが、CCR9に結合する分子を指す。いくつかの実施形態では、抗原結合断片は、Fv断片、Fab断片、F(ab’)2断片、Fab’断片、dsFv断片、scFv断片、sc(Fv)2断片、dAb断片、一本鎖抗体、又はその組み合わせから選択される1つ以上である。例えば、いくつかの実施形態では、抗原結合断片は、Fab断片である。いくつかの実施形態では、結合分子は、Fabドメインを含む。
【0132】
本発明の抗体又はその抗原結合断片は、任意の抗体形式を有し得る。いくつかの実施形態では、抗体は、上記の「従来の」形式を有する。或いは、抗体は、いくつかの実施形態において、Fab断片であり得る。本発明による抗体又は抗原結合断片はまた、Fab’、Fv、scFv、Fd、V NARドメイン、IgNAR、イントラボディ、IgG CH2、ミニボディ、単一ドメイン抗体、Fcab、scFv-Fc、F(ab’)2、ジ-scFv、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE(登録商標))、F(ab’)3、テトラボディ、トリアボディ、ダイアボディ、DVD-Ig、(scFv)2、又はmAb2であり得る。
【0133】
いくつかの実施形態では、結合分子は、モノクローナル抗体(mAb)である。いくつかの実施形態では、結合分子は、ポリクローナル抗体である。
【0134】
「モノクローナル抗体」(mAb)は、単一の抗原決定基又はエピトープの高度に特異的な認識及び結合に関与する均一な抗体集団を指す。これは、様々な抗原決定基に対して向けられる様々な抗体を典型的に含むポリクローナル抗体と対照的である。用語「モノクローナル抗体」は、インタクトなモノクローナル抗体及び完全長モノクローナル抗体の両方並びに抗体断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv)、一本鎖(scFv)変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、並びに抗原認識部位を含む任意の他の改変免疫グロブリン分子を包含する。さらに、「モノクローナル抗体」は、ハイブリドーマ、ファージ選択、組み換え発現、及びトランスジェニック動物を含むがこれらに限定されないいくつかの方法で作製されるような抗体を指す。
【0135】
いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、マウス抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、完全ヒト抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組み換え抗体、多重特異性抗体、又はそれらの組み合わせから選択される1つ以上である。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、ヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、抗ヒト抗体応答、例えば、マウス抗ヒト抗体応答を誘導しない。
【0136】
本発明の抗体及びその抗原結合断片は、組み換えによる手段によって任意の種から導き出され得る。例えば、抗体又は抗原結合断片は、マウス、ラット、ヤギ、ウマ、ブタ、ウシ、ニワトリ、ウサギ、ラクダ、ロバ、ヒト、又はそのキメラバージョンであり得る。ヒトへの投与における使用のために、非ヒト由来抗体又は抗原結合断片は、ヒト患者への投与時に抗原性が低くなるように遺伝的に又は構造的に改変され得る。
【0137】
ヒト又はヒト化抗体、特に、組み換えヒト又はヒト化抗体が特に好ましい。用語「ヒト化抗体」は、最小限の非ヒト(例えばマウス)配列を含有するように操作された、非ヒト(例えばマウス)免疫グロブリンに由来する抗体を指す。典型的には、ヒト化抗体は、相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(例えば、マウス、ラット、ウサギ又はハムスター)のCDR由来の残基に置き換えられているヒト免疫グロブリンである(Jones et al.,1986,Nature,321:522-525;Riechmann et al.,1988,Nature,332:323-327;Verhoeyen et al.,1988,Science,239:1534-1536)。一部の例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域残基は、所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種由来の抗体中の対応する残基で置き換えられる。
【0138】
ヒト化抗体は、抗体特異性、親和性、及び/又は能力を洗練させ、最適化するために、Fvフレームワーク領域中及び/又は置き換えられた非ヒト残基中のいずれかのさらなる残基の置換によってさらに改変され得る。一般に、ヒト化抗体は、非ヒト免疫グロブリンに対応するCDR領域の全て又は実質的に全てを含有する可変ドメインの少なくとも1つ、典型的には2つ又は3つを実質的に全て含むことになるが、一方でFR領域の全て又は実質的に全ては、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体はまた、典型的にヒト免疫グロブリンのものである、免疫グロブリン定常領域又はドメイン(Fc)の少なくとも一部を含み得る。ヒト化抗体を作製するために使用される方法の例は、米国特許第5,225,539号明細書又は同第5,639,641号明細書に記載されている。
【0139】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、ヒト抗体である。用語「ヒト抗体」は、ヒトにおいて産生される抗体又は当技術分野において知られるいずれかの技術を使用して作製される、ヒトにおいて産生される抗体に対応するアミノ酸配列を有する抗体を意味する。ヒト抗体のこの定義には、インタクトな又は完全長の抗体、その断片、及び/又は少なくとも1つのヒト重鎖及び/又は軽鎖ポリペプチドを含む抗体、例えば、マウス軽鎖及びヒト重鎖ポリペプチドを含む抗体などが含まれる。
【0140】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、キメラ抗体である。用語「キメラ抗体」は、免疫グロブリン分子のアミノ酸配列が2種以上の種に由来する抗体を指す。典型的には、軽鎖及び重鎖両方の可変領域は、哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギなど)の一種に由来する、所望される特異性、親和性、及び能力を有する抗体の可変領域に対応する一方、定常領域は、別の種における免疫反応を誘発することを回避するために、その種(通常ヒト)に由来する抗体中の配列に相同である。
【0141】
IgA、IgG、IgD、IgE及びIgMとして分類される重鎖定常領域の5つの主要なクラスが存在し、各々がアイソタイプによって指定される特徴的なエフェクター機能を有する。例えば、IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4として知られる4つのサブクラスに分けられる。Ig分子は、複数のクラスの細胞受容体と相互作用する。例えば、IgG分子は、抗体のIgGクラスに特異的なFcγ受容体(FcγR)の3つのクラス、すなわち、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIと相互作用する。FcγR受容体へのIgGの結合のために重要な配列は、CH2及びCH3ドメインに位置すると報告されている。本発明の抗体又はその抗原結合断片は、任意のアイソタイプ、すなわち、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgM、並びに四本鎖免疫グロブリン(Ig)構造の合成多量体であり得る。好ましい実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、IgGアイソタイプである。抗体又は抗原結合断片は、任意のIgGサブクラス、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4アイソタイプであり得る。好ましい実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、IgG1又はIgG2アイソタイプのものである。
【0142】
いくつかの実施形態では、抗体は、IgGアイソタイプの重鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、IgGアイソタイプのものである重鎖定常領域の一部を含む。いくつかの実施形態では、IgG定常領域又はその一部は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4定常領域である。好ましくは、IgG定常領域又はその一部は、IgG1又はIgG2定常領域である。抗体分子はまた、他の形式、例えば、YTEを有するIgG1(Dall‘Acqua et al.(2002)J.Immunology,169:5171-5180;Dall’Acqua et al.(2006)J Biol.Chem.281(33):23514-24)及び/又はFc領域におけるTM変異(Oganesyan et al.(2008)Acta Cryst D64:700-4)を有してもよい。
【0143】
本発明の抗体又はその抗原結合断片は、ラムダ軽鎖又はカッパ軽鎖を含み得る。操作された抗体及びその抗原結合断片は、改変がVH領域及び/又はVL領域内のフレームワーク残基になされているものを含む。そのような改変は、例えば、抗体の免疫原性を低減し且つ/又は抗体産生及び精製を改善するように抗体の特性を改善し得る。
【0144】
本発明の結合分子としては、本明細書で開示される結合分子のインタクトな形態及び改変された形態の両方を含む。例えば、本発明の結合分子は、1つ以上の他の分子実態、例えば、医薬品、検出薬剤、及び/又は別の分子(例えば、ストレプトアビジンコア領域又はポリヒスチジンタグ)と本明細書で開示される結合分子の会合を媒介することができるタンパク質若しくはペプチドに機能的に連結され得る(例えば、化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合性の会合、又はその他)。検出薬剤の非限定的な例としては、酵素、例えば、アルカリホスファターゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(「G6PDH」)、アルファ-D-ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコースアミラーゼ、炭酸脱水酵素、アセチルコリンステラーゼ、リゾチーム、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ及びペルオキシダーゼ、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ;色素;蛍光標識又は蛍光剤、例えば、フルオレセイン及びその誘導体、フルオロクロム、ローダミン化合物及び誘導体、GFP(GFPは「緑色蛍光タンパク質」を表す)、ダンシル、ウンベリフェロン、フィコエリスリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o-フタルデヒド、及びフルオレスカミン;フルオロフォア、例えば、ランタニドクリプテート及びキレート、例えば、ユーロピウムなど(Perkin Elmer及びCis Biointernational);化学発光標識又は化学発光剤、例えば、イソルミノール、ルミノール及びジオキセタン;生物発光標識、例えば、ルシフェラーゼ及びルシフェリン;増感剤;補酵素;酵素基質;臭素77、炭素14、コバルト57、フッ素8、ガリウム67、ガリウム68、水素3(トリチウム)、インジウム111、インジウム113m、ヨウ素123m、ヨウ素125、ヨウ素126、ヨウ素131、ヨウ素133、水銀107、水銀203、リン32、レニウム99m、レニウム101、レニウム105、ルテニウム95、ルテニウム97、ルテニウム103、ルテニウム105、スカンジウム47、セレニウム75、硫黄35、テクネチウム99、テクネチウム99m、テルル121m、テルル122m、テルル125m、ツリウム165、ツリウム167、ツリウム168及びイットリウム199を含むが、これらに限定されない放射性標識;粒子、例えば、ラテックス又は炭素粒子、金属ゾル、結晶子、リポソーム、色素、触媒若しくは他の検出可能な基でさらに標識され得る細胞など;分子、例えば、ビオチン、ジゴキシゲニン又は5-ブロモデオキシウリジン;毒素部分、例えば、シュードモナス(Pseudomonas)外毒素(PE又はその細胞傷害性断片若しくは変異体)、ジプテリア(Diptheria)毒素又はその細胞傷害性断片若しくは変異体、ボツリヌス毒素A、B、C、D、E若しくはF、リシン若しくはその細胞傷害性断片、例えば、リシンA、アブリン若しくはその細胞傷害性断片、サポリン若しくはその細胞傷害性断片、ヤマゴボウ(pokeweed)抗ウイルス毒素若しくはその細胞傷害性断片、及びブリオジン1若しくはその細胞傷害性断片の群から選択される毒素部分が挙げられる。
【0145】
本発明の結合分子はまた、共有結合が結合分子のその標的(例えば、エピトープ)への結合を妨げないか、又はそうでなければ結合分子の生物活性を損なわないように、(例えば、結合分子への結合のいずれかの種類の共有結合によって)改変されている誘導体を含む。好適な誘導体は、フコシル化、グリコシル化、アセチル化、PEG化、リン酸化、及びアミド化を含むがこれらに限定されない方法によって生成され得る。
【0146】
さらなる実施形態は、例えば、細胞傷害性小分子を伴う多重特異性結合分子(二重特異性、三重特異性など)及び他のコンジュゲートである。本発明の抗体を含む本発明の結合分子は、当業者に知られる従来の手法を使用して得ることができ、従来の結合試験(例示的な方法)によって確認されるそれらの有用性は、実施例3及び4に記載される。例として、簡便な結合アッセイは、抗原を発現する細胞を抗体とともにインキュベートするものである。抗体がフルオロフォアでタグ付けされる場合、抗原への抗体の結合は、FACS分析により検出され得る。
【0147】
本発明の抗体は、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、サル又はウマを含む様々な動物において産生され得る。抗体は、個々の莢膜多糖、又は複数の莢膜多糖による免疫後に産生され得る。これらの動物から単離された血液は、ポリクローナル抗体(同じ抗原に結合する複数の抗体)を含有する。抗原はまた、卵黄中でポリクローナル抗体の産生のためにニワトリにも注射され得る。抗原の単一エピトープに特異的なモノクローナル抗体を得るために、抗体分泌リンパ球を動物から単離し、それらを癌細胞株と融合させることによって不死化させる。融合細胞はハイブリドーマと呼ばれ、培養物中で連続的に増殖し、抗体を分泌する。単一のハイブリドーマ細胞は、希釈クローニングによって単離され、全てが同じ抗体を産生する細胞クローンを生成させ、これらの抗体はモノクローナル抗体と呼ばれる。モノクローナル抗体を生成するための方法は、当業者に知られる従来の手法である(例えば、Making and Using Antibodies:A Practical Handbook.GC Howard.CRC Books.2006.ISBN 0849335280を参照のこと)。ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体は、プロテインA/G又は抗原アフィニティークロマトグラフィーを使用して精製されることが多い。
【0148】
本発明の抗体又はその抗原結合断片は、モノクローナル抗CCR9抗体として調製されてもよく、これは、ハイブリドーマ法、例えば、Kohler and Milstein,Nature 256:495(1975)によって記載される方法などを使用して調製され得る。ハイブリドーマ法を使用して、マウス、ハムスター又は他の適切な宿主動物が上記のとおり免疫され、免疫抗原に特異的に結合する抗体のリンパ球による産生が誘発される。リンパ球はまた、インビトロで免疫され得る。免疫後、リンパ球を単離し、例えばポリエチレングリコールを使用して好適な骨髄腫細胞株と融合させてハイブリドーマ細胞を形成し、続いて未融合のリンパ球及び骨髄腫細胞から選択除去し得る。次に、免疫沈降、免疫ブロット法によるか、又はインビトロ結合アッセイ(例えばラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA))によって決定される場合に選択された抗原に対して特異的に向けられるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを、標準的な方法を使用するインビトロ培養(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press,1986)又は動物の腹水腫瘍としてインビボで増殖させることができる。次に、モノクローナル抗体は、既知の方法を使用して培地又は腹水から精製され得る。
【0149】
或いは、結合分子(例えば、モノクローナル抗体)はまた、米国特許第4,816,567号明細書に記載されるとおりの組み換えDNA法を使用して作製され得る。モノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチドは、この抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子を特異的に増幅するオリゴヌクレオチドプライマーを使用したRT-PCRなどにより、成熟B細胞又はハイブリドーマ細胞から単離し、従来の手順を使用してそれらの配列を決定する。次に、重鎖及び軽鎖をコードする単離されたポリヌクレオチドを好適な発現ベクター中にクローニングし、これを、通常であれば免疫グロブリンタンパク質を産生しないE.コリ(E.coli)細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は骨髄腫細胞などの宿主細胞にトランスフェクトすると、モノクローナル抗体が宿主細胞により産生される。また、所望の種の組み換えモノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、McCafferty et al.,Nature 348:552-554(1990);Clackson et al.,Nature 352:624-628(1991);及びMarks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1991)に記載されるとおりの所望の種のCDRを発現するファージディスプレイライブラリーから単離され得る。
【0150】
本発明の結合分子をコードするポリヌクレオチドはさらに、代替的な結合分子を生成する組み換えDNA技術を使用して、いくつかの異なる様式で改変され得る。いくつかの実施形態では、例えばマウスモノクローナル抗体の軽鎖及び重鎖の定常ドメインが、(1)例えばヒト抗体のそれらの領域に置換されてキメラ抗体が作製され得るか、又は(2)非免疫グロブリンポリペプチドに置換されて融合抗体が作製され得る。いくつかの実施形態では、定常領域が短縮されるか又は除去されて、モノクローナル抗体の所望の抗体断片が作製される。可変領域の部位特異的変異誘発又は高密度変異誘発を使用して、モノクローナル抗体の特異性、親和性などを最適化することができる。
【0151】
いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、ヒト抗体又はその抗原結合断片である。ヒト抗体は、当技術分野で知られる様々な技術を使用して、直接的に調製され得る。インビトロで免疫されたか、又は標的抗原に対する抗体を産生する免疫された個体から単離された、不死化ヒトBリンパ球が作製され得る。例えば、Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985);Boemer et al.,J.Immunol.147(1):86-95(1991);米国特許第5,750,373号明細書を参照されたい。
【0152】
いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、ファージライブラリーから選択することができ、そのファージライブラリーは、例えば、Vaughan et al.,Nat.Biotech.14:309-314(1996);Sheets et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95:6157-6162(1998);Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.227:381(1991);及びMarks et al.,J.Mol.Biol.222:581(1991)に記載されるとおりのヒト抗体を発現する。抗体ファージライブラリーの作製及び使用のための技術は、それぞれが参照によりその全体が組み込まれる、米国特許第5,969,108号明細書、同第6,172,197号明細書、同第5,885,793号明細書、同第6,521,404号明細書;同第6,544,731号明細書;同第6,555,313号明細書;同第6,582,915号明細書;同第6,593,081号明細書;同第6,300,064号明細書;同第6,653,068号明細書;同第6,706,484号明細書;及び同第7,264,963号明細書;並びにRothe et al.,J.Molec.Biol.376:1182-1200(2008)にも記載されている。
【0153】
親和性成熟戦略及び鎖シャッフリング戦略が、当技術分野において知られており、高親和性ヒト抗体又はその抗原結合断片を作製するために利用され得る。Marks et al.,BioTechnology 10:779-783(1992)(参照によりその全体が組み込まれる)を参照されたい。
【0154】
いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片(例えば、モノクローナル抗体)は、ヒト化抗体であり得る。非ヒト又はヒト抗体を操作するか、ヒト化するか、又はリサーフェシングするための方法も使用されてもよく、これらは当技術分野でよく知られている。ヒト化抗体、リサーフェシング抗体、又は同様に操作された抗体は、非ヒト、例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類又は他の哺乳動物であるが限定されない供給源由来の1つ以上のアミノ酸残基を有し得る。これらの非ヒトアミノ酸残基は、多くの場合「移入」残基と呼ばれる残基によって置換されており、これらの残基は通常、既知のヒト配列の「移入」可変ドメイン、定常ドメイン、又は他のドメインから取得される。このような移入された配列を使用して、免疫原性を低減することができるか、又は結合性、親和性、on速度、off速度、結合活性、特異性、半減期若しくは当技術分野で知られるとおりの任意の他の好適な特性を低減させるか、増強するか、若しくは改変することができる。好適には、CDR残基は、CCR9結合への影響に直接的に且つ最も実質的に関与し得る。したがって、非ヒト又はヒトCDR配列の一部又は全てを維持することが好ましい一方で、可変領域及び定常領域の非ヒト配列はヒト又は他のアミノ酸に置き換えることができる。
【0155】
抗体はまた、任意選択により、ヒト化されるか、リサーフェシングされるか、操作されるか、又はヒト抗体が操作されて、抗原CCR9に対する高い親和性及び他の有利な生物学的特性が保持され得る。この目標を達成するために、任意選択により、ヒト化(又はヒト)又は操作された抗CCR9抗体及びリサーフェシング抗体を、親配列、操作された配列、及びヒト化配列の三次元モデルを使用した親配列及び様々な概念的ヒト化産物及び操作された産物の分析プロセスによって調製することができる。三次元免疫グロブリンモデルが一般的に利用可能であり、当業者によく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の予想される三次元立体配座構造を図示して表示するコンピュータープログラムが利用可能である。これらの表示を調べることにより、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の見込まれる役割の分析、すなわち、候補免疫グロブリンがCCR9などのその抗原に結合する能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、FW残基をコンセンサス配列及び移入配列から選択して組み合わせることができ、これにより所望の抗体特性、例えば標的抗原に対する親和性の増加が実現される。
【0156】
本発明の抗CCR9抗体又はその抗原結合断片のヒト化、リサーフェシング又は操作は、任意の既知の方法、例えば、限定されるものではないが、Jones et al.,Nature 321:522(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323(1988);Verhoeyen et al.,Science 239:1534(1988);Sims et al.,J.Immunol.151:2296(1993);Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901(1987);Carter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:4285(1992);Presta et al.,J.Immunol.151:2623(1993);米国特許第 5,639,641号明細書、同第5,723,323号明細書;同第5,976,862号明細書;同第5,824,514号明細書;同第5,817,483号明細書;同第5,814,476号明細書;同第5,763,192号明細書;同第5,723,323号明細書;同第5,766,886号明細書;同第5,714,352号明細書;同第6,204,023号明細書;同第6,180,370号明細書;同第5,693,762号明細書;同第5,530,101号明細書;同第5,585,089号明細書;同第5,225,539号明細書;同第4,816,567号明細書、同第7,557,189号明細書;同第7,538,195号明細書;及び同第7,342,110号明細書;国際出願第PCT/US98/16280号明細書;同第PCT/US96/18978号明細書;同第PCT/US91/09630号明細書;同第PCT/US91/05939号明細書;同第PCT/US94/01234号明細書;同第PCT/GB89/01334号明細書;同第PCT/GB91/01134号明細書;同第PCT/GB92/01755号明細書;国際公開第90/14443号パンフレット;国際公開第90/14424号パンフレット;国際公開第90/14430号パンフレット及び欧州特許第229246号明細書(各々が全体としてそこで引用される参考文献を含んで参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるものなどを使用して実施され得る。
【0157】
抗CCR9ヒト化抗体及びその抗原結合断片はまた、免疫時に内因性免疫グロブリンを産生することなくヒト抗体の完全レパートリーを産生する能力を有するヒト免疫グロブリン遺伝子座を含有するトランスジェニックマウスにおいても作製することができる。この手法は、米国特許第5,545,807号明細書;同第5,545,806号明細書;同第5,569,825号明細書;同第5,625,126号明細書;同第5,633,425号明細書;及び同第5,661,016号明細書に記載されている。
【0158】
いくつかの実施形態では、抗体(例えば、抗CCR9抗体)の断片(例えば、抗体断片)が提供される。様々な手法が、抗体断片の生成のために知られている。従来、これらの断片は、例えば、Morimoto et al.,J.Biochem.Biophys.Meth.24:107-117(1993)及びBrennan et al.,Science 229:81(1985)によって記載されるとおり、インタクトな抗体のタンパク質分解消化を介して得られる。いくつかの実施形態では、抗CCR9抗体断片は、組み換えにより生成される。Fab、Fv、及びscFv抗体断片は全て、E.コリ(E.coli)又は他の宿主細胞中で発現させ、そこから分泌させることができ、これにより、これらの断片の大量生成が可能になる。そのような抗CCR9抗体断片はまた、上で論じられた抗体ファージライブラリーから単離することもできる。抗CCR9抗体断片はまた、米国特許第5,641,870号明細書に記載されるとおりの線状抗体であり得る。抗体断片を作製するための他の技術は、当業者にとって明らかであろう。
【0159】
本発明によれば、技術は、CCR9に特異的な一本鎖抗体の生成のために適合させることができる。例えば、米国特許第4,946,778号明細書を参照されたい。加えて、方法は、CCR9に対して所望の特異性を有するモノクローナルFab断片、又はその誘導体、断片、類似体若しくは相同体の迅速且つ有効な同定を可能にするFab発現ライブラリーの構築のために適合させることができる。例えば、Huse et al.,Science 246:1275-1281(1989)を参照されたい。抗体断片は、抗体分子のペプシン消化によって生成されるF(ab’)2断片;F(ab’)2断片のジスルフィド架橋の還元によって生成されるFab断片;抗体分子をパパイン及び還元剤で処理することによって生成されるFab断片;又はFv断片を含むが、これらに限定されない当技術分野で知られる手法によって生成され得る。
【0160】
改変された結合分子(例えば、本明細書で提供されるとおりの抗体又はその抗原結合断片)は、結合分子とCCR9との会合をもたらす任意の型の結合領域を含み得る。この点に関して、結合領域は、所望の抗原に対する体液性応答を開始し、免疫グロブリンを産生するように誘導され得るいずれかの種類の哺乳動物のものを含み得るか、又はそれに由来し得る可変領域であり得る。そのため、抗CCR9抗体又はその抗原結合断片の可変領域は、例えば、ヒト、マウス、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル、マカクなど)又はオオカミ(lupine)起源のものであり得る。いくつかの実施形態では、改変抗体又はその抗原結合断片の可変領域及び定常領域の両方がヒトである。いくつかの実施形態では、適合抗体(通常、非ヒト供給源に由来する)の可変領域は、分子の結合特性が向上するように又は免疫原性が低減するように操作され得るか、又は特異的に調整され得る。これに関して、本発明において有用な可変領域は、移入されたアミノ酸配列を含めることによってヒト化され得るか、又は他の形で改変され得る。
【0161】
いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片の重鎖及び軽鎖の両方の可変ドメインは、1つ以上のCDRの少なくとも部分的な置換によって、及び/又は部分的なフレームワーク領域の置換及び配列変更によって改変される。CDRは、フレームワーク領域が由来する抗体と同じクラス又はさらには同じサブクラスの抗体に由来し得るが、異なるクラスの抗体に、またある特定の実施形態では異なる種の抗体に、CDRが由来することが想定される。ある可変ドメインの抗原結合能を別の可変ドメインに移すために、全てのCDRをドナー可変領域の完全なCDRに置き換える必要はない。むしろ、抗原結合部位の活性の維持に必要な残基を移しさえすれば十分である。米国特許第5,585,089号明細書、同第5,693,761号明細書、及び同第5,693,762号明細書に記載される説明を考慮すれば、免疫原性が低減した機能的抗体を得るために通例の実験を実施することは、十分に当業者の能力の範囲内にある。
【0162】
可変領域の改変にもかかわらず、当業者は、本発明の改変された抗体又はその抗原結合断片が、天然の又は改変されていない定常領域を含むほぼ同じ免疫原性の抗体と比較した場合に、ADCCを誘導する能力の向上を含むエフェクター機能の増大などの所望の生化学的特徴がもたらされるように定常領域ドメインの1つ以上の少なくとも一部分が欠失されているか、又は別途改変されている抗体(例えば、完全長抗体又はその抗原結合断片)を含み得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、改変された抗体の定常領域は、ヒト定常領域を含むことになる。本発明と適合する定常領域に対する改変は、1つ以上のドメインにおける1つ以上のアミノ酸の付加、欠失又は置換を含む。すなわち、本明細書で開示される改変された抗体は、3つの重鎖定常ドメイン(CH1、CH2、若しくはCH3)のうちの1つ以上及び/又は軽鎖定常ドメイン(CL)に対する変更又は改変を含み得る。いくつかの実施形態では、1つ以上のドメインが部分的に又は完全に欠失している改変された定常領域が企図される。いくつかの実施形態では、改変された抗体は、CH2ドメイン全体が取り除かれたドメイン欠失コンストラクト又はバリアント(△CH2コンストラクト)を含むことになる。いくつかの実施形態では、除かれた定常領域ドメインは、通常はその欠けた定常領域によって付与されるある程度の分子可動性をもたらす、短いアミノ酸スペーサー(例えば、10残基)によって置き換えられ得る。
【0163】
様々な配列アライメント方法のいずれかを使用して、同一性パーセントを決定することができ、これらとしては、包括的方法、局所的方法及び、例えば、セグメントアプローチ法などの複合型の方法が挙げられるがこれらに限定されない。同一性パーセントを決定するためのプロトコルは、当業者の範囲内の通例の手順である。包括的方法は、分子の始まりから終わりまで配列をアライメントし、個々の残基対のスコアを合計することにより、及びギャップペナルティを付与することにより、最良のアライメントを決定する。非限定的な方法としては、例えば、CLUSTAL W(例えば、Julie D.Thompson et al.,CLUSTAL W:Improving the Sensitivity of Progressive Multiple Sequence Alignment Through Sequence Weighting,Position-Specific Gap Penalties and Weight Matrix Choice,22(22) Nucleic Acids Research 4673-4680(1994)を参照のこと);及び反復改良法(例えば、Osamu Gotoh,Significant Improvement in Accuracy of Multiple Protein.Sequence Alignments by Iterative Refinement as Assessed by Reference to Structural Alignments,264(4)J.MoI.Biol.823-838(1996)を参照のこと)が挙げられる。局所的方法は、入力配列の全てによって共有される1つ以上の保存されたモチーフを同定することにより配列をアライメントする。非限定的な方法としては、例えば、Match-box(例えばEric Depiereux and Ernest Feytmans,Match-Box:A Fundamentally New Algorithm for the Simultaneous Alignment of Several Protein Sequences,8(5)CABIOS 501-509(1992)を参照のこと);ギブスサンプリング(例えばC.E.Lawrence et al.,Detecting Subtle Sequence Signals:A Gibbs Sampling Strategy for Multiple Alignment,262(5131)Science 208-214(1993)を参照のこと);Align-M(例えばIvo Van WaIIe et al.,Align-M-A New Algorithm for Multiple Alignment of Highly Divergent Sequences,20(9)Bioinformatics:1428-1435(2004)を参照のこと)が挙げられる。
【0164】
したがって、配列同一性パーセントは、従来の方法によって決定される。例えば、Altschul et al.,Bull.Math.Bio.48:603-16,1986及びHenikoff and Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915-19,1992を参照されたい。簡潔に述べると、10のギャップオープニングペナルティ、1のギャップ伸長ペナルティ、及び以下に示されるとおりのHenikoff and Henikoff(同上)の「blosum62」スコアリングマトリクスを使用して、アライメントスコアを最適化するように2つのアミノ酸配列をアライメントする(アミノ酸は標準的な1文字コードによって示される)。
【0165】
2つ以上の核酸配列又はアミノ酸配列間の「配列同一性パーセント」は、配列によって共有される同一位置の数の関数である。したがって、同一性%は、同一ヌクレオチド/アミノ酸の数をヌクレオチド/アミノ酸の総数で割り、100を掛けたものとして算出され得る。配列同一性パーセントの算出はまた、2つ以上の配列のアライメントを最適化するために導入する必要があるギャップ数、及び各ギャップの長さを考慮に入れ得る。2つ以上の配列間での配列比較及び同一性パーセントの決定は、当業者によく知られているBLASTなどの特定の数学的アルゴリズムを使用して実施され得る。
【0166】
本発明はさらに、本発明の結合分子(例えば、マウス、キメラ、ヒト化若しくはヒト抗体、又はその抗原結合断片などの抗体)と実質的に相同なバリアント及び均等物を包含する。これらは、例えば、保存的置換変異、すなわち、1つ以上のアミノ酸の、同様のアミノ酸による置換を含有し得る。例えば、保存的置換は、アミノ酸を同じ一般クラス内の別のアミノ酸で置換すること、例えば、ある酸性アミノ酸を別の酸性アミノ酸で置換すること、ある塩基性アミノ酸を別の塩基性アミノ酸で置換すること、又はある中性アミノ酸を別の中性アミノ酸によって置換することなどを指す。保存的アミノ酸置換によって意図されるものは、当技術分野でよく知られている。
【0167】
実質的に相同なポリペプチドは、1つ以上のアミノ酸置換、欠失又は付加を有することを特徴とする。これらの変化は好ましくは重要ではない性質のもの、すなわち、保存的アミノ酸置換(以下を参照)及びポリペプチドのフォールディング又は活性に著しく影響しない他の置換;小さな欠失、典型的には、1~約30アミノ酸のもの;並びにアミノ末端又はカルボキシル末端の小さな伸長、例えば、アミノ末端メチオニン残基、最大約20~25残基の小さなリンカーペプチド又はアフィニティータグである。
【0168】
【0169】
20個の標準アミノ酸に加えて、非標準アミノ酸(例えば、4-ヒドロキシプロリン、6-N-メチルリジン、2-アミノイソ酪酸、イソバリン及びα-メチルセリン)が、本発明の結合分子のアミノ酸残基と置換され得る。限られた数の非保存的アミノ酸、遺伝暗号によってコードされないアミノ酸、及び非天然アミノ酸が、ポリペプチドアミノ酸残基と置換され得る。本発明の結合分子はまた、天然に存在しないアミノ酸残基を含み得る。
【0170】
天然に存在しないアミノ酸としては、トランス-3-メチルプロリン、2,4-メタノ-プロリン、シス-4-ヒドロキシプロリン、トランス-4-ヒドロキシ-プロリン、N-メチルグリシン、アロ-スレオニン、メチル-スレオニン、ヒドロキシ-エチルシステイン、ヒドロキシエチルホモ-システイン、ニトロ-グルタミン、ホモグルタミン、ピペコリン酸、tert-ロイシン、ノルバリン、2-アザフェニルアラニン、3-アザフェニル-アラニン、4-アザフェニル-アラニン及び4-フルオロフェニルアラニンが挙げられるが、これらに限定されない。天然に存在しないアミノ酸残基をタンパク質に組み込むためのいくつかの方法が当技術分野で知られている。例えば、化学的にアミノアシル化されたサプレッサーtRNAを使用して、ナンセンス変異が抑制されるインビトロの系が使用され得る。アミノ酸を合成し、tRNAをアミノアシル化するための方法は、当技術分野で知られている。ナンセンス変異を含有するプラスミドの転写及び翻訳は、E.コリ(E.coli)S30抽出物及び市販の酵素及び他の試薬を含む無細胞系で行われる。タンパク質は、クロマトグラフィーにより精製される。例えば、Robertson et al.,J.Am.Chem.Soc.113:2722,1991;Ellman et al.,Methods Enzymol.202:301,1991;Chung et al.,Science 259:806-9,1993;及びChung et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:10145-9,1993)を参照されたい。第2の方法において、翻訳は、変異させられたmRNA及び化学的にアミノアシル化されたサプレッサーtRNAのマイクロインジェクションによりアフリカツメガエル卵細胞において行われる(Turcatti et al.,J.Biol.Chem.271:19991-8,1996)。第3の方法内で、置き換えられることになる天然アミノ酸(例えば、フェニルアラニン)の非存在下で、及び所望の天然に存在しないアミノ酸(例えば2-アザフェニルアラニン、3-アザフェニルアラニン、4-アザフェニルアラニン又は4-フルオロフェニルアラニン)の存在下で、E.コリ(E.coli)細胞を培養する。天然に存在しないアミノ酸は、その天然の対応物の代わりにポリペプチドに組み込まれる。Koide et al.,Biochem.33:7470-6,1994を参照されたい。インビトロでの化学修飾により、天然に存在するアミノ酸残基は、天然に存在しない種に変換され得る。化学修飾は、一連の置換をさらに拡大するために部位特異的変異誘発と組み合わせられ得る(Wynn and Richards,Protein Sci.2:395-403,1993)。
【0171】
限られた数の非保存的アミノ酸、遺伝暗号によってコードされないアミノ酸、天然に存在しないアミノ酸、及び非天然アミノ酸が、本発明の結合分子のアミノ酸残基と置換され得る。
【0172】
本発明の結合分子中の必須アミノ酸は、当技術分野で知られる手順、例えば、部位特異的変異誘発又はアラニンスキャニング変異誘発(Cunningham and Wells,Science 244:1081-5,1989)などに従って同定され得る。生物学的相互作用の部位はまた、推定接触部位のアミノ酸の変異と併せた、核磁気共鳴、結晶学、電子回折又は光親和性標識などの技術によって決定されるような構造の物理的分析によっても決定され得る。例えば、de Vos et al.,Science 255:306-12,1992;Smith et al.,J.Mol.Biol.224:899-904,1992;Wlodaver et al.,FEBS Lett.309:59-64,1992を参照されたい。必須アミノ酸の同一性はまた、本発明の結合分子の関連成分(例えば、トランスロケーション成分又はプロテアーゼ成分)との相同性の分析から推測され得る。
【0173】
複数のアミノ酸置換は、Reidhaar-Olson及びSauer(Science 241:53-7,1988)又はBowie及びSauer(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:2152-6,1989)により開示されるものなど、変異誘発及びスクリーニングの既知の方法を使用して、作製され、試験され得る。簡潔に述べると、これらの著者らは、ポリペプチド中の2箇所以上の位置を同時にランダム化し、機能的ポリペプチドを選択し、続いて変異誘発されたポリペプチドの配列を決定して、各位置における許容可能な置換の範囲を決定する方法について開示する。使用され得る他の方法としては、ファージディスプレイ(例えば、Lowman et al.,Biochem.30:10832-7,1991;Ladner et al.,米国特許第5,223,409号明細書;Huse,WIPO公開国際公開第92/06204号パンフレット)及び領域特異的変異誘発(Derbyshire et al.,Gene 46:145,1986;Ner et al.,DNA 7:127,1988)が挙げられる。
【0174】
5.2 組成物
また、本明細書では、本発明の結合分子を含む組成物が提供される。組成物は、本明細書に記載されるとおりのいずれかの結合分子を含み得る。組成物は、本明細書に記載されるとおりの2種以上の結合分子を含み得る。
【0175】
別の態様では、CCR9に結合する結合分子を含む組成物が提供され、前記結合分子は、(i)CCL25のCCR9への結合を阻害することができ、且つ(ii)それが結合するCCR9発現細胞に対する抗体依存性細胞傷害を媒介することができる。
【0176】
本明細書に記載されるとおりの組成物は、本発明の結合分子を含み、且つ少なくとも1種の薬学的に許容される担体又は希釈剤をさらに含む組成物などの医薬組成物であり得る。用語「医薬組成物」は、活性成分の生物活性を有効にし、且つその組成物が投与される対象にとって許容されない毒性の追加の構成成分を含有しない製剤を指す。そのような組成物は無菌であってもよく、生理食塩水などの薬学的に許容される単体を含んでもよい。好適な医薬組成物は、緩衝液(例えば、酢酸塩、リン酸塩又はクエン酸塩緩衝液)、界面活性剤(例えば、ポリソルベート)、安定化剤(例えば、ヒトアルブミン)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール)、及びバイオアベイラビリティを促進する吸収促進剤の1つ以上、並びに/又は他の従来の可溶化剤又は分散剤を含み得る。
【0177】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される無毒性の無菌担体、例えば、生理食塩水、無毒性緩衝液、保存剤などを含み得る。本明細書で開示される治療方法における使用のための好適な製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,22nd ed.,Ed.Lloyd V.Allen,Jr.(2012)に記載される。
【0178】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、カプセル剤、錠剤、水性懸濁液、溶液、鼻腔エアロゾル、又はそれらの組み合わせから選択される1種以上の製剤内に含まれ得る。
【0179】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、2種以上の本発明の結合分子を含む。例えば、医薬組成物は、抗体、抗原結合断片、又はその組み合わせから選択される2種以上を含み得る。
【0180】
結合分子の「薬学的に有効な量」という用語は、標的への有効な結合を達成するために及び利益を得るのに、例えば、疾患又は病態の症状を寛解させるか又は物質若しくは細胞を検出するのに十分な量を意味する。
【0181】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、緩衝液(例えば、酢酸、リン酸又はクエン酸緩衝液)、界面活性剤(例えば、ポリソルベート)、任意選択により安定化剤(例えば、ヒトアルブミン)などを含み得る。
【0182】
好適には、本発明の結合分子は、結合分子が、CCR9を標的化する際に治療剤又は診断試薬として有用であるように、十分な親和性を有してCCR9分子に結合する。
【0183】
5.3 治療方法
本発明はまた、治療方法において本発明の結合分子及び組成物を使用することに関する。本発明は、そのような治療方法における使用のための本発明の結合分子、例えば、療法によってヒト又は動物の身体を治療する方法における使用のための本発明の結合分子を提供する。治療方法及び使用が、本発明の結合分子に対する参照とともに本明細書で記載される場合、結合分子が、本明細書に記載されるとおりの医薬組成物などの医薬組成物などの組成物中に存在する同じ方法及び使用も包含される。
【0184】
したがって、本発明は、CCR9に媒介される疾患又は病態を治療する方法における使用のための上で定義される結合分子及び上で定義される医薬組成物を包含する。
【0185】
一態様では、CCR9に媒介される疾患又は病態を治療する際の使用のための本発明の結合分子が提供される。また、CCR9に媒介される疾患又は病態を治療する際の使用のための本発明の組成物、例えば、本発明の医薬組成物が提供される。CCR9に媒介される疾患又は病態の治療のための医薬の製造における本発明の結合分子の使用がさらに提供される。
【0186】
別の態様では、対象においてCCR9に媒介される疾患又は病態を治療する方法であって、対象に有効量の本発明の結合分子を投与することを含む方法が提供される。
【0187】
一態様では、対象においてCCR9に媒介される疾患又は病態を治療する際の使用のための結合分子が提供され、前記結合分子は、(i)CCL25のCCR9への結合を阻害することができ、且つ(ii)それが結合するCCR9発現細胞に対する抗体依存性細胞傷害を媒介することができる。
【0188】
一態様では、対象においてCCR9に媒介される疾患又は病態を治療する方法であって、対象に有効量のCCR9に結合する結合分子を投与することを含む方法が提供され、前記結合分子は、(i)CCR9に対するCCL25の結合を阻害することができ、且つ(ii)それが結合するCCR9発現細胞に対して抗体依存性細胞傷害を媒介することができる。
【0189】
治療の態様のいずれかのいくつかの実施形態では、治療されるCCR9に媒介される疾患又は病態は、炎症性腸疾患である。
【0190】
いくつかの実施形態では、結合分子、対象において、例えば、対象の腸においてCCR9発現細胞を枯渇させることができる。理論に束縛されることなく、これは、CCR9発現細胞の対象の末梢から腸への遊走を妨げる結合分子の能力及び/又は結合するCCR9発現細胞の死滅を誘導する結合分子の能力に起因し得る。
【0191】
したがって、一態様では、必要とする対象においてCCR9発現細胞を枯渇させる方法であって、対象に有効量の本発明の結合分子を投与することを含む方法が提供される。
【0192】
いくつかの実施形態では、CCR9ポリペプチドは、CCR9ポリペプチド配列、又はその断片内に含まれる。
【0193】
「CCR9ポリペプチド」は、CCR9の全長ポリペプチド配列を含み得るか、又は本発明の結合分子に結合し得る(例えば、それにより結合され得る)エピトープを含むCCR9の全長ポリペプチド配列の任意の長さのCCR9の断片(例えば、CCR9の全長ポリペプチド配列の5%、15%、25%、35%、45%、55%、65%、75%、85%又は95%のポリペプチド配列を含む)を含み得る。
【0194】
結合分子は、CCR9エピトープを検出するための方法、及び診断の関連する方法において有利に使用され得る。
【0195】
用語「治療する」又は「治療すること」は、本明細書で使用する場合、診断された病的状態又は障害を治癒し、それを減速させ、その症状を軽減し、且つ/又はその進行を止める療法的手段を包含する。したがって、治療が必要なものは、既に障害を有するものを含む。好ましくは、用語「治療する」又は「治療すること」は、本明細書で使用する場合、矯正治療を意味する。用語「治療する」又は「治療すること」は、炎症性腸疾患を治療すること、並びにその症状及びそれと関連する疾患/障害を治療することを包含する。いくつかの実施形態では、用語「治療する」又は「治療すること」は、腸における炎症、腹痛、下痢、血便などのIBDの症状を指す。いくつかの実施形態では、対象は、患者が、例えば、CCR9に媒介される疾患又は障害(例えば、炎症性腸疾患)と関連する症状の全体的、部分的、又は一過的な軽減又は消失を示す場合、本明細書で提供される方法に従って、CCR9に媒介される疾患又は障害(例えば、炎症性腸疾患)に関して順調に「治療されている」。「治療する」又は「治療」はまた、予防的治療、例えば、IBDの発症を予防することなどの疾患の発症を予防することを含む。
【0196】
「予防する」とは、標的とする病的状態又は障害の発生を予防し且つ/又は遅らせる予防的又は防御的手段を指す。したがって、予防が必要なものは、障害を起こす傾向があるか又は障害を起こし易いものを含む。いくつかの実施形態では、患者が、一過的に又は永久に、本発明の方法に供されたことがない患者よりも、例えば、疾患若しくは障害と関連する症状の発症が少ないか若しくはその重症度が低い症状を発症するか、又は疾患若しくは障害に関連する症状が遅れて発症する場合、疾患又は障害(好ましく、炎症性腸疾患)は、本明細書で提供される方法に従って順調に予防されている。
【0197】
用語「対象」、「個体」及び「患者」は、本明細書では哺乳動物対象を指すために互換的に使用される。いくつかの実施形態では、「対象」は、ヒト、飼育動物、家畜、競技動物、及び動物園動物、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ウシなどである。いくつかの実施形態では、対象は、カニクイザル(Macaca fascicularis)である。好ましい実施形態では、対象は、ヒトである。本発明の方法において、対象は、以前に炎症性腸疾患と診断されていなくてもよい。或いは、対象は、炎症性腸疾患を有すると以前に診断されたことがあってもよい。対象はまた、疾患リスク因子を示す対象、又は炎症性腸疾患に対して無症候性である対象であってもよい。対象はまた、炎症性腸疾患に罹患している対象、又はそれを発症するリスクのある対象であってもよい。したがって、いくつかの実施形態では、本発明の方法は、対象において炎症性腸疾患の存在を確認するために使用され得る。例えば、対象は、代替的な手段により以前に炎症性腸疾患を有すると診断されたことがあってもよい。いくつかの実施形態では、対象は、以前に炎症性腸疾患療法を施されたことがある。
【0198】
いくつかの実施形態では、本発明の治療の方法は、経口、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、直腸又は膣、吸入、局所、又はこれらの組み合わせから選択される1つ以上の投与工程を含む。
【0199】
いくつかの実施形態では、結合分子は、有害な細胞集団の部位に直接的に送達される(例えば、それにより治療剤への疾患組織の曝露を増加させる)。いくつかの実施形態では、投与は、例えば、吸入又は鼻腔内投与による、気道への直接的なものである。
【0200】
いくつかの実施形態では、炎症性腸疾患は、回腸又は回腸結腸のクローン病などのクローン病である。いくつかの実施形態では、炎症性腸疾患は、潰瘍性大腸炎である。
【0201】
5.4 検出方法
さらなる態様では、CCR9ポリペプチドの存在又は非存在を検出するための方法が提供される。本発明の結合分子がそのような方法において使用され得る。
【0202】
いくつかの実施形態では、CCR9ポリペプチドの存在又は非存在を検出する方法は、
a)試料を本発明の結合分子と接触させて、結合分子-抗原複合体をもたらすこと;
b)前記結合分子-抗原複合体の存在又は非存在を検出すること;
c)結合分子-抗原複合体の存在が、CCR9ポリペプチドの存在を確認すること
を含む。
【0203】
いくつかの実施形態では、上の工程(i)~(iii)のいずれかは、エクスビボ又はインビトロで実施される。いくつかの実施形態では、上の工程(i)~(iii)の全ては、エクスビボ又はインビトロで実施される。いくつかの実施形態では、上の工程(i)~(iii)のいずれかは、インビボで実施される。
【0204】
結合分子は、本明細書に記載されるいずれかの結合分子、例えば、
図3若しくは
図4若しくは表4におけるいずれかの抗体に関して示されるとおりの6個のCDRのセットを含む結合分子、又は
図3若しくは
図4におけるいずれかの抗体若しくは表3の結合分子に関して示されるとおりのVH及びVLを含む結合分子であり得る。
【0205】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される検出方法は、インビトロで実行される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される検出方法は、エクスビボで実行される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される検出方法は、対象から以前に得られた試料などの、対象由来の試料に対して実行される。検出方法は、対象から試料を得る工程を含んでもよいし、含まなくてもよい。好適には、「試料」は、対象(例えば、生検)、細胞株、組織培養、又はCCR9を発現する可能性がある細胞の他の供給源から得られる試料である。いくつかの実施形態では、試料は、対象からの生検である。前記生検は、炎症性腸疾患に罹患している対象の腸、又は炎症性腸疾患に罹患するリスクのある対象の腸に由来するものであり得る。試料は、対象から単離された試料であり得る。
【0206】
本発明は、CCR9ポリペプチド(例えば、CCR9ポリペプチドエピトープ)を検出するための本発明の結合分子の対応する使用を包含する。
【0207】
いくつかの実施形態では、結合分子-抗原複合体の存在は、炎症性腸疾患の存在を示し、結合分子-抗原複合体の非存在は、炎症性腸疾患の非存在を示す。
【0208】
いくつかの実施形態では、炎症性疾患は、CCR9ポリペプチド(例えば、CCR9ポリペプチドエピトープ)を発現する細胞を含む炎症性疾患である。
【0209】
したがって、本発明は、炎症性腸疾患を有する対象を診断する方法における本発明の結合分子の使用を包含し、好ましくは、前記炎症性腸疾患は、CCR9発現細胞を含む。
【0210】
いくつかの実施形態では、検出の方法又は診断の方法は、対象由来の試料においてCCR9の発現レベルを測定すること、及び参照CCR9レベルと測定されたCCR9発現レベルを比較することを含んでもよく、参照CCR9レベルと比較した測定されたCCR9発現レベルの増大は、炎症性腸疾患の存在を示す。いくつかの実施形態では、前記参照CCR9レベルは、同じ組織型のものなどの同じ型の非IBD(例えば、正常)試料におけるCCR9の発現レベルである。
【0211】
「結合分子-抗原複合体」は、その対応する結合分子に結合される抗原、例えば、本発明の結合分子に結合されるCCR9を含む複合体(例えば、高分子複合体)を意味する。用語「結合分子-抗原複合体」は、用語「結合されたCCR9-結合分子複合体」及び「CCR9に結合される結合分子」と同義的に使用され得る。
【0212】
結合分子-抗原複合体は、当業者に知られる任意の手段によって検出され得る。いくつかの実施形態では、結合分子は、検出可能な標識により標識される。前記標識は、エピ蛍光標識であり得る。
【0213】
いくつかの実施形態では、結合分子-抗原複合体は、結合分子及び/又は結合分子複合体に結合する二次(例えば、検出)抗体によって検出される。
【0214】
好適には、前記二次抗体は、検出を助けるためのタグ/標識などの検出手段を含む。前記検出手段は、好ましくは二次抗体にコンジュゲートされる。好適な標識の例は、放射性標識又は蛍光又は呈色分子、酵素性マーカー又は発色性マーカー、例えば抗原への検出抗体の結合時の可視的な色の変化を提供する色素などの検出可能な標識を含む。一例として、標識は、フルオレセイン-イソチイオシアネート(FITC)、R-フィコエリスリン、Alexa 532、CY3又はジゴキシゲニンであり得る。標識はレポーター分子であってもよく、これは、その蛍光シグナルを検出することによるなど直接的に、又は写真又はX線フィルムへの標識の曝露により検出される。或いは、標識は、直接検出可能ではないが、例えば二相系で検出され得る。間接的な標識検出の例は、標識への抗体の結合である。
【0215】
いくつかの実施形態では、前記二次抗体は、蛍光タグを含み、結合分子-抗原複合体は、結合分子-抗原-二次抗体複合体から放射される蛍光により検出される。「結合分子-抗原-二次抗体複合体」は、結合分子に結合されている抗原(例えば、CCR9)を含む複合体を意味し、前記複合体はさらに、前記結合分子及び/又は結合分子-抗原複合体に結合する二次抗体によって結合されている。
【0216】
好適には、結合分子-抗原複合体は、検出標識から放射されるシグナル(例えば、蛍光)が、結合分子(例えば、CCR9に結合する結合分子)を含まない対照において検出されるシグナルより大きいときに検出される。前記対照は、或いは、CCR9を含み得るが、試料は前記対照に適用されない。
【0217】
別の態様では、CCR9に結合する第2の結合分子が提供され、前記第2の結合分子は、CCR9への結合に関して第1の結合分子と競合しない。
【0218】
第1の結合分子は、CCR9に結合する本明細書で開示されるとおりのいずれかの結合分子であり得る。好適な第1の結合分子は、
図4に示されるとおりの結合分子であり得る。好適な第1の結合分子は、表3に示されるいずれかの結合分子のVH及びVLを含むか、又は表4に示されるいずれかの結合分子の6個のCDR(HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3)のセットを含む結合分子であり得る。好適な第1の結合分子は、
a)
図4に示されるとおりの抗体のCDR HCDR1、HCDR2及びHCDR3のセットを有する重鎖可変(VH)領域及びCDR LCDR1、LCDR2及びLCDR3のセットを有する軽鎖可変(VL)領域を含むか;
b)
図4に示される抗体の重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含むか;
c)配列番号51の重鎖可変(VH)領域配列及び配列番号55の軽鎖可変(VL)領域配列((i)配列番号55のX
1及びX
2はそれぞれ、任意のアミノ酸であるか(配列番号76);又は(ii)配列番号55のX
1は、P又はSであり且つ配列番号55のX
2は、R、T又はGである(配列番号77))を含むか;又は
d)配列番号51の重鎖可変(VH)領域配列及び配列番号52、53若しくは54の軽鎖可変(VL)領域配列を含むか:又は
e)配列番号56の重鎖可変(VH)領域配列及び配列番号57の軽鎖可変(VL)領域配列を含む結合分子であり得る。
【0219】
有利には、本発明は、第1の結合分子と接触されている試料中のCCR9発現細胞の存在量を決定するための第2の結合分子(結合に関して第1の結合分子と競合しない)の使用を包含する。
【0220】
したがって、第1の結合分子によるCCR9発現細胞の枯渇を評価する方法であって、
a)前記第1の結合分子を細胞の集団(細胞の集団は、CCR9発現細胞及び免疫エフェクター細胞を含む)とエフェクター細胞により抗体依存性細胞傷害を可能にするのに好適な条件下で接触させること;
b)前記細胞の集団を、CCR9に結合し且つCCR9への結合に関して工程(i)の第1の結合分子と競合しない第2の結合分子と接触させること;
c)(ii)の第2の結合分子により結合される細胞の集団におけるCCR9発現細胞を検出すること;
d)工程(iii)において検出されるCCR9発現細胞の量を、工程(i)において使用される元の細胞集団におけるCCR9発現細胞の量と比較し、それにより工程(i)において枯渇されたCCR9発現細胞の量を決定することを含む方法が提供される。
【0221】
いくつかの実施形態では、第2の結合分子は、表6に示されるVH及びVL配列、又は表6に示される6個のCDRのセットを含む。例えば、第1の結合分子は、表3に示されるいずれかの結合分子のVH及びVLを含んでもよいし、表4に示されるいずれかの結合分子の6個のCDRのセットを含んでもよく、第2の結合分子は、表6に示されるVH及びVL配列、又は表6に示される6個のCDRのセットを含んでもよい。
【0222】
いくつかの実施形態では、第2の結合分子は、CCR9に結合し且つ
a)配列番号44のHCDR1、又はその機能的バリアント;
b)配列番号45のHCDR2、又はその機能的バリアント;
c)配列番号46のHCDR3、又はその機能的バリアント;
d)配列番号47のLCDR1、又はその機能的バリアント;
配列番号5のLCDR2、又はその機能的バリアント;及び
e)配列番号48のLCDR3、又はその機能的バリアント(機能的バリアントは、本明細書で定義されるとおりである)を含む本明細書に記載されるとおりの結合分子である。
【0223】
いくつかの実施形態では、第2の結合分子は、CCR9に結合し且つCDR HCDR1、HCDR2及びHCDR3のセットを有する重鎖可変(VH)領域並びにCDR LCDR1、LCDR2及びLCDR3のセットを有する軽鎖可変(VL)領域を含む結合分子であり、VH領域アミノ酸配列は、配列番号44のHCDR1、配列番号45のHCDR2及び配列番号46のHCDR3を含み、且つVL領域アミノ酸配列は、配列番号47のLCDR1、配列番号5のLCDR2及び配列番号48のLCDR3を含む。
【0224】
いくつかの実施形態では、第2の結合分子は、CCR9に結合し且つ
a)配列番号72のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有する配列を含むVH領域;及び
b)配列番号73のアミノ酸配列、又はそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有する配列を含むVL領域を含む結合分子である。
【0225】
5.5 ポリヌクレオチド、ベクター及び宿主細胞
別の態様では、本発明の結合分子をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドが提供される。
【0226】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、単離されたポリヌクレオチドである。
【0227】
いくつかの実施形態では、結合分子が、2種以上のポリペプチド鎖を含む場合(例えば、結合分子が、免疫グロブリン分子又は少なくとも1つの重鎖及び少なくとも1つの軽鎖を含むその断片である場合)、ポリヌクレオチドは、結合分子のポリペプチド鎖の1つ、いくつか、又は全てをコードする。例えば、ポリヌクレオチドは、結合分子の重鎖ポリペプチド及び軽鎖ポリペプチドをコードし得る。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、結合分子のVH領域をコードする。いくつかの実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、結合分子のVL領域をコードする。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、結合分子のVH領域及びVL領域をコードする。
【0228】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドはさらに、リーダー配列(例えば、細胞からのポリペプチドの輸送を制御するために分泌配列として機能する)をコードする。
【0229】
上記のポリヌクレオチドのバリアントは、本発明により包含される。ポリヌクレオチドバリアントは、コード領域、非コード領域、又は両方に変更を含有し得る。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドバリアントは、サイレント置換、付加、又は欠失を生じさせるが、コードされるポリペプチドの特性又は活性を変化させない変更を含む。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドバリアントは、遺伝暗号の縮重によるサイレント置換によって作製される。様々な理由で、例えば、特定の宿主に対するコドン発現を最適化する(ヒトmRNA中のコドンを、E.コリ(E.coli)などの細菌宿主により優先されるものに変化させる)ために、ポリヌクレオチドバリアントが作製され得る。
【0230】
別の態様では、プロモーターと作動可能に結合された本発明のポリヌクレオチドを含むか;又は本発明の結合分子及び本発明の結合分子のVH領域をコードするポリヌクレオチド及び本発明の結合分子のVL領域をコードするポリヌクレオチド(前記ポリヌクレオチドは、1つ以上のプロモーターと作動可能に結合される)を含むベクターが提供される。本明細書で使用する場合、用語「プロモーター」は、ポリヌクレオチド配列の転写を駆動することによってポリヌクレオチド配列の発現を調節する任意の核酸配列を意味する。本明細書で使用する場合、用語「作動可能に結合される」及び「作動可能に連結される」は、プロモーターが、それが転写開始及び/又は当該配列の発現を制御するために調節するポリヌクレオチド配列に対して妥当な機能的位置及び/又は方向にあることを意味する。いくつかの実施形態では、VH領域及びVL領域をコードする核酸配列は、同じプロモーターと作動可能に結合される。いくつかの実施形態では、VH領域及びVL領域をコードする核酸配列はそれぞれ、別々のプロモーターと作動可能に結合される。いくつかの実施形態では、別々のプロモーターは、同じ型のプロモーターである。いくつかの実施形態では、別々のプロモーターは、異なる型のプロモーターである。
【0231】
ベクターの例としては、ウイルスベクター、ネイキッドDNA又はRNA発現ベクター、プラスミド、コスミド又はファージベクター、カチオン性縮合剤に会合したDNA又はRNA発現ベクター、リポソームに封入されたDNA又はRNA発現ベクター、及びプロデューサー細胞などの特定の真核細胞が挙げられる。ベクターに構築されると、本発明のポリヌクレオチドは、所望の宿主におけるポリペプチドの発現に適切なプロモーターに作動可能に連結され得る。
【0232】
ベクターは、ポリヌクレオチドの発現を制御する追加の核酸配列を含み得る。例えば、ベクターは、エンハンサー及びリプレッサー配列の1つ以上を含み得る。本明細書で使用する場合、用語「エンハンサー」は、ポリヌクレオチドの転写活性化を増大させる1つ以上のタンパク質に結合する核酸配列を意味する。本明細書で使用する場合、用語「リプレッサー」は、ポリヌクレオチドの転写活性化を低減する1つ以上のタンパク質に結合する核酸配列を意味する。
【0233】
本明細書で提供される別の態様は、本発明のポリヌクレオチド若しくは本明細書で開示されるとおりのポリヌクレオチドを含む宿主細胞、又は本発明のベクター若しくは本明細書で開示されるとおりのベクターを含む宿主細胞であり、宿主細胞は、ポリヌクレオチド又はベクターによってコードされるポリペプチドを生成することができる。
【0234】
本明細書で提供される別の態様は、本発明の結合分子を生成する方法であって、宿主細胞において本発明のポリヌクレオチド又はベクターを発現することを含む方法である。例えば、いくつかの実施形態では、方法は、宿主細胞中に存在するポリヌクレオチド又はベクターによってコードされる本発明の結合分子を生成するのに好適な条件下で宿主細胞を培養することを含む。
【0235】
本発明の結合分子の発現のための好適な宿主細胞としては、原核生物、酵母、昆虫、又はより高等な真核生物細胞(好ましくはポリヌクレオチドが適切なプロモーターの制御下にある)が挙げられる。原核生物としては、グラム陰性又はグラム陽性生物、例えば、E.コリ(E.coli)又は桿菌が挙げられる。より高等な真核細胞としては、本明細書中に記載の哺乳動物起源の樹立細胞系が挙げられる。無細胞翻訳系も使用され得る。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、結合分子のFc領域をフコシル化しない細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、GDP-D-ラムノースを生成するフコース経路を転用する酵素を発現する細胞である。
【0236】
5.6 非フコシル化
抗体エフェクター機能は、改変されたグリコシル化パターンを有する抗体の生成を介して改変され得る。例えば、フコシル残基の量が減少した非フコシル化/低フコシル化抗体、又はバイセクティングGlcNac構造が増加した抗体などの、変更された型のグリコシル化を有する抗体が作製され得る。このようなグリコシル化パターンの改変は、抗体のADCC能を増大させることが実証されている。このような炭水化物修飾は、例えば改変されたグリコシル化機構を有する宿主細胞において抗体を発現させることによって達成され得る。グリコシル化機構が改変された細胞は、当技術分野で記載されており、本発明の組み換え抗体を発現し、それによりグリコシル化が改変された抗体を産生する宿主細胞として使用され得る。例えば、欧州特許第1,176,195号明細書は、機能的に破壊されたフコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子を有する細胞株について記載しており、このような細胞株内で発現した抗体は低フコシル化を示す。PCT公開国際公開第03/035835号パンフレットは、フコースをAsn(297)に連結した糖に結合する能力が低下したバリアントCHO細胞株、Lec13細胞を記載し、それらはまた、その宿主細胞内で発現される抗体の低フコシル化をもたらす([5]も参照のこと)。PCT公開国際公開第99/54342号パンフレットは、操作された細胞株内で発現される抗体が、抗体のADCC活性の増大をもたらすバイセクティングGlcNac構造の増加を示すように、糖タンパク質を修飾するグリコシルトランスフェラーゼ(例えば、ベータ(1,4)-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII))を発現するように操作された細胞株を記載する([6]も参照のこと)。国際公開第2011/035884A1号パンフレットは、それらの糖部分上でフコースを欠く分子を生成するためのプロセスを記載する。国際公開第2011/035884A1号パンフレットは、特に、分子を生成するための細胞を記載し、細胞は、基質としてGDP-6-デオキシ-D-リキソ-4-ヘキスロースを使用する少なくとも1つの酵素を含み、酵素は、基質をGDP-D-ラムノース、GDP-D-ペロサミン、GDP-デオキシ-D-タロース、GDP-6-デオキシ-ダルトロース、又はGDP-4-ケト-3,6-ジデオキシ-D-マンノースに変換する
【0237】
5.7 キット及びさらなるアッセイ
一態様では、本発明の結合分子を含むキットが提供される。本発明の方法での前記キットの使用がさらに包含される。
【0238】
いくつかの実施形態では、キットはさらに、単離された(例えば、精製された)抗原又は抗原を発現する細胞を含む。例えば、キットはさらに、単離された(例えば、精製された)CCR9、又はCCR9を発現する細胞を含み得る。いくつかの実施形態では、キットは、1つ以上の容器を含む。いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載されるとおりの検出アッセイを実施するのに必要及び/又は十分な構成成分の全てを含み、それには、全ての対照、アッセイを実施するための指示書、及び結果の分析及び提示のための任意の必要なソフトウェアが含まれる。
【0239】
本発明の結合分子は、当技術分野で知られる任意の方法による免疫特異的結合に関するアッセイにおいて使用され得る。使用され得るイムノアッセイとしては、限定はされないが、ウエスタンブロット、RIA、ELISA、ELISPOT、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降反応、ゲル内拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集反応アッセイ、補体結合アッセイ、イムノラジオメトリックアッセイ、蛍光イムノアッセイ、及びプロテインAイムノアッセイなどの技術を使用する競合及び非競合アッセイ系が挙げられる。
【0240】
本発明の結合分子は、例えば、CCR9又はその保存されたバリアント若しくはペプチド断片のインサイチュ検出のために、免疫蛍光法、免疫電子顕微鏡法、又は非免疫学的アッセイの場合のように、組織学的に利用され得る。インサイチュ検出は、患者から組織標本を切除し、それに標識された本発明の結合分子をアプライすることにより(例えば、標識された本発明の結合分子を生体試料上に重ね合わせることによりアプライされる)達成され得る。そのような手順の使用により、CCR9、又は保存されたバリアント若しくはペプチド断片の存在だけでなく、被験組織におけるその分布も決定することが可能である。本発明を使用して、当業者は、そのようなインサイチュ検出を実現するために多種多様な組織学的方法(染色手順など)のいずれかが改変され得ることを容易に理解するであろう。
【0241】
【0242】
【0243】
【0244】
【実施例】
【0245】
5.8 実施例1-様々な細胞及び組織におけるCCR9発現
細胞は、ヒトにおける様々な組織及びカニクイザルから単離された。CCR9を発現した所与の組織及び/又は所与の細胞型由来の細胞の比率は、フローサイトメトリーを使用して決定された。
【0246】
図1Aに示されるとおり、CCR9及びCD4の両方を発現する細胞は、ヒト及びカニクイザル組織の両方の結腸、回腸及び胸腺において見出され、カニクイザル組織における腸間膜リンパ節中でも見出された。対照的に、CCR9+CD4+細胞は、血液中において低レベルでしか存在しなかった。CCR9 mRNAが、カニクイザル回腸のCD3+細胞と共発現されたことも見出された(データは示さず)。
【0247】
CCR9発現は、ヒト組織において評価された。CCR9発現細胞の最大の比率は、胸腺のCD4+細胞において見出され(CCR9を発現する細胞の76%)、高いレベルは、IBD患者の回腸のCD4+T細胞(CCR9を発現する細胞の47%)及びCD8+T細胞(CCR9を発現する細胞の37%)においても見られた。一部のCCR9発現は、CD4+T細胞(CCR9を発現する細胞の9%)又はCD8+T細胞(CCR9を発現する細胞の12%)であったIBD患者の結腸の細胞においても見られ、IBD患者の血液中のCD4+及びCD8+T細胞におけるCCR9発現細胞はごく少数であった(<5%)。CCR9発現は、血液中のB細胞の28%において見られ、結腸及び回腸中のB細胞においてより低いレベルであった(それぞれ11%及び16%)。非常に少数の単球、樹状細胞(DC)及び形質細胞様の樹状細胞(pDC)のみが、CCR9を発現した(<5%)。
【0248】
図1Bは、健康な患者及びIBD患者の回腸(左のチャート)及び結腸(右のチャート)におけるCCR9を発現するB細胞のパーセンテージを示す。各B細胞型(ナイーブB細胞、メモリーB細胞、血漿細胞)に関して、健康な対象からの結果は左に提供され、IBD患者に関する結果は右に提供される。IBDにおいてCCR9を発現するB細胞の数の減少があり、メモリーB細胞において最大の減少が観察されたことが見出された。これは、IBDにおいて受容体内部移行を駆動する高いCCR9リガンド発現に起因する可能性があると仮定される。
【0249】
図1Cは、CCR9を発現する健康な対象又はIBD患者の結腸又は回腸由来のTエフェクター細胞及びTregのパーセンテージを示す。示される各組織型に関して、CCR9を発現するTエフェクター細胞の%は左に示され、CCR9を発現するTregの%は右に示される。健康な患者とIBD患者の間で組織型におけるTエフェクター/Treg比に明白な相違はないことが見出された。
【0250】
5.9 実施例2-CCR9と炎症性サイトカイン発現の関連
炎症性サイトカインIFN-γ、IL-4、及びIL-17の共発現は、フローサイトメトリーを使用してヒトCD4+CCR9+及びCD4+CCR9-細胞において評価された。細胞は、ヒト結腸又は回腸から単離され、サイトカイン産生を刺激するためにPMA/イオノマイシン及びブレフェルジンA(タンパク質輸送阻害剤)で4時間処理された。CD4+T細胞は、CD45+、CD3+及びCD8-であった単一の生存細胞に基づいてゲーティングすることによって同定された。CD4+CCR9+細胞は、CD4+CCR9-細胞より高いレベルの炎症性サイトカインを発現することが見出された(
図2A)。CD4+CCR9-細胞とCD4+CCR9+細胞の間のレベルの相違は、IL-17の発現に関して最大であったが(2倍~6倍の増加範囲)、相違の平均値は、IL-4及びIFN-γの両方に関しておよそ2~3倍のままであった(
図2B)。
【0251】
5.10 実施例3-抗CCR9抗体の作製
抗CCR9抗体は、ヒトCCR9及びマウスCCR9過剰発現HEK細胞株をCD1マウスに交互に免疫した後、ハイブリドーマ技術を使用して作製された。3つの群のマウスが使用された。群1に関して、マウスは、hCCR9を過剰発現するCHO及びHEKで交互に免疫された;群2のマウスは、hCCR9を過剰発現するHEK細胞及びmCCR9を過剰発現するHEK細胞で交互に免疫された;群3のマウスは、mCCR9を過剰発現するHEK細胞で免疫された。組み換え細胞株は、PBS中で希釈された1e7細胞/100μLで投与され、等体積のフロイント完全アジュバントで乳化し、部位毎に100μLで2つの部位にてマウスに注射された。その後の3回の注射のために、細胞をフロイント不完全アジュバントで乳化し、上記のとおりに注射が実施された。最終の追加免疫は、PBS中の200μLの細胞を腹腔内注射することによって24日目に実行された。
【0252】
尾静脈出血が、免疫前、初回免疫後の13日目、及び2回目の免疫後の20日目にマウスから得られた。ヒトCCR9、マウスCCR9並びに親HEK及びCHO細胞に対するIgG力価は、血清ELISAによって決定された。最も高い抗原特異的力価を有する動物が、ハイブリドーマ作製に進められた。
【0253】
5.10.1 hCCR9及びmCCR9に対するマウス免疫応答の評価
hCCR9及びmCCR9に対する個々のマウスの血清IgG力価は、ELISAによって決定された。親HEK及びCHO細胞とともに、上記のhCCR9及びmCCR9 HEK及びCHO細胞株が、40,000細胞/ウェルで96ウェルポリ-D-リジンマイクロタイタープレート上に塗布され、CO2インキュベーター中において37℃で一晩培養された。一晩のインキュベーションの後、上清を除去し、細胞を、ホルムアルデヒド/PBSの3.7%溶液中において室温で5分間固定した。その後のすべてのインキュベーションは室温で実施した。ホルムアルデヒド溶液の除去の後、ウェルを、3% marvel/PBSブロッキング緩衝液の添加によりブロッキングした。1時間後、ブロッキング緩衝液を除去し、ウェルをPBSで再び洗浄し、血清試料を希釈系列(50μL/ウェルで1:200希釈から開始)で添加した。1時間インキュベートした後、ウェルを0.05%(v/v)Tween 20を添加したPBSで3回洗浄した。次に、Dlfiaアッセイ緩衝液中の1:500のユーロピウム標識抗マウスIgG(Perkin Elmer)を、ウェル当たり50μLでウェルに加えた。さらに1時間のインキュベーション及び上のとおりの5回の洗浄の後、Enhancement溶液(Perkin Elmer)を、ウェル当たり50ulでウェルに加え、プレートをオービタルシェーカー上において室温で10分間インキュベートした。次に、プレートを、PerkinElmer EnVision 2103多標識プレートリーダーを使用して読み取った。
【0254】
hCCR9、mCCR9、並びに親HEK及びCHO細胞に関する血清滴定曲線をプロットし、それぞれの曲線下面積(AUC)を計算した。
【0255】
5.10.2 モノクローナルマウスIgG単離
最終の追加免疫の4日後、リンパ節を無菌的に採取し、細胞を機械的破壊によって単離し、計数した。これらの細胞をSP2/0骨髄腫細胞と混合し、電気融合装置を用いて融合した。得られた融合物をメチルセルロースに基づく半固形培地と混合し、OmniTrayプレートに蒔いた。半固形培地は、CloneMatrix及び20%FCS、10%BM Condimed H1、1mMピルビン酸ナトリウム及びOPI培地添加物、2%ヒポキサンチンアザセリン及びFITC結合型ヤギ抗マウスgGが添加されたDMEMを含んだ。半固形培地中の細胞は、5% CO2インキュベーター中において37℃で13日間培養した。このインキュベーション期間中、クローンコロニーが単一の前駆ハイブリドーマ細胞から形成される。これらのコロニーは、半固形培地中に存在するFITC結合型抗IgGによりコロニー近傍で捕捉されるIgGを分泌する。結果的に生じる免疫複合体の形成は、ClonePix FLコロニーピッカー(Molecular Devices)によって可視化されるとき、蛍光「ハロー」として細胞周囲で認めることができる。次に、これらのハローを伴うコロニーを96ウェルマイクロタイタープレートに採取する。
【0256】
培養の3~5日後、採取されたコロニーの上清を収集し、CCR9結合に関して選別した。
【0257】
5.10.3 DNAシークエンシング及びマウスIgGの精製
メッセンジャーRNA(mRNA)をハイブリドーマ細胞から磁気オリゴ(dT)粒子を用いて抽出し、cDNAに逆転写した。全てのマウスIgGサブクラスに特異的なポリ-C及び定常領域VH又はVLプライマーを使用して、PCR増幅を実施した。
【0258】
5.10.4 マウスIgG精製
細胞は、24ウェルプレート内で増殖し、HyperZero及びグルタミンを添加した無血清HL-1培地中で過増殖した。10日後、上清を96ウェルマスターブロックに移し、全てのサブクラス(IgG1、IgG2a、IgG2b及びIgG3)のマウスIgGを、Perkin Elmer Minitrackを使用してProPlusレジン(Phynexus)上で過増殖した細胞培養上清から精製した。捕捉されたマウスIgGを、75μLの100mM HEPES、140mM NaCl pH3.0で溶出させ、続いて等体積の200mM HEPES pH8.0で中和した。精製したIgGを、UV-Star 384ウェルプレート内で280nmでの吸光度読み取りを用いて定量化した。
【0259】
5.10.5 マウスIgGの再フォーマット
マウスハイブリドーマIgGクローンは、以下の改変を有するPersic et al 1997[7]によって基本的に記載されるとおり、各ハイブリドーマに関してマウスVH及びVLドメイン並びに適切なマウスIgG定常ドメインを発現するコンストラクトを生成するように分子的に再フォーマットされた。CHO一過性細胞との使用を容易にし、且つエピソーム複製を可能にするため、発現ベクターにOriP断片を含めた。マウス重鎖定常ドメイン及び調節エレメントを含有する適切なベクターにVHドメインをクローニングして、哺乳類細胞において全IgG1重鎖を発現させた。同様に、適切なマウス軽鎖(ラムダ又はカッパ)定常ドメイン及び調節エレメントの発現のためのベクターにVLドメインをクローニングして、哺乳類細胞において全IgG軽鎖を発現させた。IgGを得るために、哺乳動物懸濁CHO細胞を、重鎖及び軽鎖IgGベクターで一過的にトランスフェクトした。IgGを発現させて、培地に分泌させた。回収物を濾過した後に精製し、続いてプロテインAクロマトグラフィーを用いてIgGを精製した。培養上清を、適切なサイズのCeramic Protein A(Pall 20078-036)のカラム上にロードし、50mM Tris-HCl pH8.0、250mM NaClで洗浄した。結合されたIgGを、0.1Mクエン酸ナトリウム(pH3.0)を使用してカラムから溶出させ、Tris-HCl(pH9.0)の添加によって中和した。溶出された材料を、Nap10カラム(GE Lifescienses、17-0854-02)を使用して、PBSに緩衝液交換した後、IgGのアミノ酸配列に基づく吸光係数を使用して、IgGの濃度を分光測光法により決定した[8]。精製されたIgGを、SDS-PAGEを使用して純度について分析した。精製されたIgGを、HEK細胞上でのヒトCCR9への結合に関して選別した。
【0260】
図3は、この選別において同定された9個の固有のヒットに関する可変重鎖(
図3A)及び可変軽鎖(
図3B)配列のアミノ酸配列を示す。例えば、AB1020243のためのcDNAを、クローンZY10OI-A02から調製し、VH及びVLドメインに関する配列を決定した。FW=フレームワーク領域。CDRの位置は、Kabatの割り当てによって指定されるとおりに下線が引かれる(Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。ヒト化AB1020243(AB1020243-fgl)のVH及びVL配列は、
図4に示され、それらは、元のキメラ配列とアライメントされる。
【0261】
AB1020243の効力及び有効性をさらに向上させるために、H及びL CDRの特異的なスキャニングによる変異誘発が実施された。CDRは、低多重度の偏ったヌクレオチド(NNC)コドン混合物を有する哺乳動物発現ベクターの部位特異的変異誘発によって変異され、代替のアミノ酸(aa)の存在量を最大化するために設計された一方で、ライブラリーから望ましくないアミノ酸(Met、Trp)を除去した。566種のCDRバリアントが生成され、ヒト化AB1020243のCDR最適化バージョンが作製された。スクリーニングライブラリーを、24ウェルディーププレートからCHO細胞中において発現させた後、バリアントのプロテインA精製を行った。改善されたバリアントの同定の後、CDR内及びCDR間の組み換えを、部位特異的変異誘発によって実施して、有利なバリアントをa-fuc huIgG1としての最終的なリード抗体候補に合わせた。CDR最適化抗体AB243LO0331及びAB243LO0326のVH及びVL配列は、
図4に示され、それらは、AB1020243由来の親配列、及びAB1020243のヒト化形態とアライメントされる。改変されているLCDR1残基は、太字で下線が引かれた文字で示される。
【0262】
5.11 実施例4-CCR9結合及び効力の評価
5.11.1 細胞結合
CCR9発現細胞に対する抗体の結合は、ヒトCCR9Aを過剰発現するHEK細胞を使用するか、又はMolt4細胞を使用して評価された。Molt4細胞株は、ヒトT細胞から得られ、CCR9を発現することが知られる[9]。試験抗体を、1%ウシ胎仔血清が補充されたPBS中において10μg/mLの濃度まで希釈した。抗体を、96ウェルプレート上で8点にわたって3倍滴定を使用して単一の点として滴定し、細胞を4℃で20分間染色した。細胞を洗浄し、無菌PBS+1% FBS血清中において2.5μg/mlの二次ヤギ抗マウス又はヒトIgG PEにより4℃で20分間染色した。
【0263】
図5Aは、少なくともAB1020243、AB1020229、及びAB1020011がMolt4細胞に結合したことを示す。Molt4細胞に対する結合は、ヒトCCR9を発現しないジャーカット細胞に対する結合と比較された。
図5Bに示されるとおり、Molt4細胞に対する結合は、
図5Aに見られるものと同様であったが、ジャーカット細胞に対する著しい結合は検出されなかった。
【0264】
抗体AB1020243(ハイブリドーマmIgG)もまた、異なる形態のCCR9に対する結合に関して試験された。簡潔に述べると、試験抗体を、ハンクス平衡塩溶液(Sigma HB264)と0.1%ウシ血清アルブミン(Sigma A9576)を含有するアッセイ緩衝液中において60ug/mLの濃度に希釈した。抗体は、試験抗体の最終体積がウェル当たり10uLであるように、384黒色透明底の非結合マイクロプレート(Corning(登録商標)NBS(商標)3655)上で24点にわたって単倍滴定を使用して二つ組で滴定された。二次検出抗体Alexa Fluor 647標識ヒトIgG(H+L)(Jackson Immuno-Research;209-665-082)を、製造業者の指示書に従って調製し、上記のとおりのアッセイ緩衝液中で1:1000に希釈した。二次検出抗体を、ウェル当たり10uLの体積でMutidropディスペンサー(Thermo Scientific)を使用して試験抗体を含有するアッセイプレートに分注した。
【0265】
トランスフェクトされたHEK CCR9過剰発現細胞株又はトランスフェクトされていない親対照細胞を、ml当たり1×10
6細胞の濃度でアッセイ緩衝液中において懸濁させ、10uLの細胞を、Mutidropディスペンサー(Thermo Scientific)を使用して試験抗体及び二次抗体を含有するアッセイプレートに分注した。アッセイプレートを4℃で一晩インキュベートし、488nmの励起及びFL4チャンネル(667~685nm)を使用する発光を使用して、mirrorball(登録商標)(レーザースキャニング蛍光サイトメーター;TTP-Labtech)上で読み取った。データを、Windows用のGraphPad Prismバージョン8.0.0(GraphPad Software、San Diego、California USA)においてプロットし、蛍光(FL4)カウントに対してLog(mg/mL抗体)として表した。
図6に示されるとおり、それは、CCR9(CCR9A及びCCR9B)のヒト形態及びカニクイザルCCR9の両方に対してAB1020243の良好な結合を示した。それは、マウス又はラットCCR9に対してはほとんど又は全く結合を示さなかった。
【0266】
5.11.2 インビトロADCCバイオアッセイ
抗体の効力及びエフェクター機能は、以下のとおりのNK細胞活性化アッセイを使用して評価された: 全ての効力アッセイを、5:1のエフェクター(NK-92 MI CD16a NFAT細胞)と標的(Molt4;HEK CCR9過剰発現細胞又はジャーカット細胞)比で実行した。エフェクターNK-92細胞株は、FcγRIIIa受容体(CD16)を天然に発現しない。Fcドメインへの結合が増大した高親和性(ha)CD16 V158 FcγRIIIa受容体を過剰発現するNK-92の改変形態を使用した(Boissel et al Proceedings of the 107th Annual Meeting of the American Association for Cancer Research;2016 Apr 16-20;New Orleans,LA.Philadelphia(PA):AACR;Cancer Res 2016;76(14 Suppl):Abstract 2302)。この受容体は、標的細胞に結合される抗体を介してNK細胞を標的細胞に架橋させる。使用されるNK-92細胞もまた、NFATルシフェラーゼレポーターを発現し、これがエフェクター機能のための代理として使用され得る。NK細胞に対する標的結合抗体の結合は、NFAT転写因子の活性化を誘導し、ルシフェラーゼレポーター遺伝子を駆動する。発光シグナルは、ADCC活性に比例する。
【0267】
標的細胞及びエフェクター細胞の両方が、10% Ultra Low IgG FBS(Gibco(商標);16250-078)とともに改良型RPMI(Gibco(商標);12633)を含有するアッセイ培地中で調製された。標的細胞を、mL当たり8×105細胞の濃度で再懸濁させ、エフェクター細胞を、mL当たり8×106細胞の濃度で再懸濁させた。試験抗体を、60μg/mLの濃度に希釈し、二つ組の4倍滴定を、384ウェルポリプロピレンマイクロプレート(Greiner Bio-one International;781280)上で12点にわたって実施した。
【0268】
標的細胞を、ウェル当たり12.5μLの体積でMutidropディスペンサー(Thermo Scientific)を使用して384ウェル白色透明底組織培養処理プレート(Corning(登録商標)3560)中に分注した。次に、試験抗体(ウェル当たり6.25μL)を、Bravo自動リキッドハンドリングプラットフォーム(Agilent)を使用して標的細胞含有プレートに加えた。標的細胞及び抗体を、O2/CO2インキュベーター中において37℃で30分間プレインキュベートした。次に、エフェクター細胞を、ウェル当たり6.25μLの体積でMutidropディスペンサー(Thermo Scientific)を使用して加えた。標的細胞、エフェクター細胞及び抗体を含有するアッセイプレートを、O2/CO2インキュベーター中において37℃でさらに5時間インキュベートした。
【0269】
インキュベーション期間の最後に、ルシフェラーゼ検出試薬を、製造業者の指示書(Steady-Glo(登録商標)Luciferase Assay System;Promega E2520)に従って調製し、25μLを、手動でのピペッティングを使用して各ウェルに分注した。アッセイプレートをホイルで覆い、プレート振盪機上で室温にて20分間溶解を起こさせた。アッセイプレートを、超高感度発光モードを使用して、EnVision(登録商標)2105マルチモードプレートリーダー(Perkin Elmer)上で読み取った。データを、反応ロジスティック方程式に対して4パラメーターlog(アゴニスト)を使用してWindows用のGraphPad Prismバージョン8.0.0(GraphPad Software、San Diego、California USA)において分析した。データは、反応(毎秒のカウント)に対するLog(モル濃度)抗体濃度として表された。
【0270】
図7は、MOLT4/HEK細胞に結合されるときの(非フコシル化)抗体によるNK細胞活性化を示す。抗体の非フコシル化形態は、二重発現カセットから生成され、それにより重鎖IgG発現が、CHO細胞においてRMD酵素と共発現されて、非フコシル化タンパク質を生成した。ヒトCCR9Aを発現するHEK細胞に結合されるときのAB1020243 afuc抗体の効力は、0.5nMとして測定された。Molt4細胞に結合されるときのヒト化AB1020243 afuc抗体の効力は、0.8nMとして測定された。
【0271】
5.11.3 PBMC死滅アッセイ
抗体を、8点にわたって10μg/mLの開始濃度で段階的に滴定(10倍)した。抗体を、u底96ウェルプレート中の1×10
6ヒト末梢血単核球(PBMC)に加え、一晩インキュベートした。翌日、残存するCCR9発現CD4 T細胞のパーセンテージを、非競合CCR9抗体を使用してフローサイトメトリーによって測定した。非競合抗体のVH/VL及びCDR配列は、表5及び表6に示される。
図8に示されるとおり、抗体AB1020243、AB1020229及びAB1020011の全てが、CCR9+PBMCの死滅を示した。AB1020243 afucに関するEC50(n=4)は、2.6nMとして測定された。
【0272】
【0273】
【0274】
【0275】
5.12 実施例5-ヒト化AB1020243の特性
ヒト化AB1020243を、実施例3の場合のように生成した。本明細書の上記の全ての実験において、ヒト化AB1020243は、二重発現カセットから生成された非フコシル化形態にあり、それによって重鎖IgG発現が、CHO細胞においてGDP-6-デオキシ-D-リキソ-4-ヘキスロースレダクターゼ(RMD)と共発現されて、非フコシル化タンパク質を生成した。
【0276】
5.12.1 ヒト化AB1020243のCCR9交差反応性
親AB1020243抗体(キメラ)の結合が、実施例4に記載される方法に基づいてヒト化バージョンのものと比較された。
【0277】
図9に示されるとおり、ヒト化抗体(「ヒト」)は、カニクイザルCCR9及びヒトCCR9Bを発現するHEK細胞に対して親AB1020243(「キメラ」)と同様の結合を保持した(
図9A及び
図9B)。CCR9を発現しない親HEK JI細胞株に対しては著しい結合は見られなかった(
図9G)。より高い濃度でさえ、ヒト化AB1020243は、CXCR1(
図9C)、CXCR2(
図9D)、CCR5(
図9E)又はCCR8(
図9F)に対して著しいオフターゲット結合を示さなかった。
【0278】
5.12.2 ヒト化AB1020243は高い効力を保持する
AB1020243のヒト化は、驚くべきことに、NK細胞活性化アッセイにおいて効力の著しい変化をもたらさなかった(
図10)。AB1020243 afucのキメラ及びヒト化形態は、MOLT4細胞を使用して上記のNK-92細胞株の同程度の活性化をもたらした。これは、効力の大きい低減がヒト化後に観察されたベンチマークの非フコシル化マウス抗CCR9 IgG1抗体(3C3、ATCC HB-12653)と対照的である。同様に、ヒト化は、カニクイザルCCR9Aを過剰発現するHEK細胞に結合されるAB1020243 afucの効力を変化させなかった。
【0279】
AB1020243 afuc抗体の動力学的特性は、ヒト化によって著しく変化しないことも見出された。CCR9+生存細胞の測定は、Ligand Tracer技術を使用して、蛍光標識された抗体を使用してなされた。簡潔に述べると、細胞に対する親和性は、室温(約22℃)で633nmの蛍光検出器を使用してLigandTracer機器(Ridgeview Instruments)上で測定された。ヒトIgG1形式におけるIgGは、IgGのCH2領域上の操作されたシステイン残基に対してDyLight 650マレイミドフルオロフォアで特異的に標識された。標識されたIgGを、CHO K1親(対照)及びCCR9発現CHO K1細胞の予め付着された別々のスポットを有する環状Nunclon Dプレートに加えた。IgG結合及び解離蛍光プロファイルが、その機器上で測定され、続いてTraceDrawerソフトウェア(Ridgeview Instruments)内の二価(1:2)型フィットモデルで分析された。AB1020243 afucのoff速度(k
d)は、3.85×10
-5s
-1として測定され、これはヒト化後も同様のままであり、4.3×10
-5s
1として測定された。これは、ヒト化時に効力の低減が観察されないことと一致する(
図10B)。
【0280】
5.12.3 CCL25と競合する能力
ヒト化AB1020243は、HTRF IP-One Gqアッセイ(Cis-Bio;62IPAPEB)においてCCL25と競合するその能力に関して試験された。IP-Oneアッセイは、テルビウムクリプテート標識抗IP1 Mab及びd2-標識IP1を使用する競合イムノアッセイである。IP1は、IPカスケードの下流の代謝産物であり、Gq受容体の活性化後に細胞中に蓄積し、LiClの存在下で安定である。LiClを、細胞刺激緩衝液に加え、受容体活性化時にIP1の蓄積を引き起こす。
【0281】
試験抗体を、IP-one緩衝液(クレブス・リンゲル溶液+LiCl)中に緩衝液交換し、384ウェルポリプロピレンマイクロプレート(Greiner Bio-one International;781280)上で16点にわたってoneとone希釈系列を使用してIP-one緩衝液中の純粋なものから段階希釈し(三つ組)、3.5mLの各抗体を、Bravo自動リキッドハンドリングプラットフォーム(Agilent)を使用して白色384底浅プレート(Costar;4513)に加えた。MOLT 4細胞を収集し、IP-Oneアッセイ緩衝液中において5.4×106細胞/mLに再懸濁させ、7.5μLの細胞を、最終細胞濃度が40,000細胞/ウェルになるようにMutidropディスペンサー(Thermo Scientific)を使用して抗体含有プレートに分注した。抗体を、細胞と30分間プレインキュベートした。組み換えヒトCCL25/TECKタンパク質(R&D Systems;9046-TK)を、製造業者の指示書に従って200nMに再構成し、3.5uLを、最終アッセイ濃度が50nMになるようにMutidropディスペンサー(Thermo Scientific)を使用して抗体及び細胞含有プレートに分注した。アッセイプレートを、37℃で90分間インキュベートした後、キットとともに提供される試薬を使用してIP-One HTRFプロトコルに従って処理した。
図11は、ヒト化AB1020243及びCDR最適化抗体234LO0331及び243LO0326が、親キメラAB1020243抗体と同様のCCL25と競合する能力を保持することを示す。したがって、本発明の抗体は、例えば、CCR9+MOLT-4細胞のCCL25に誘導される遊走を阻害せず、且つMOLT-4細胞への結合に関してCCL25と部分的にさえ競合しない前に記載されたマウスCCR9抗体92R及び91Rと対照をなす[4]。
【0282】
5.13 実施例6-CDR最適化抗体の特性
実施例3に記載されるとおり、ヒト化AB1020243のCDR最適化形態が生成された。本明細書に記載される全ての実験において、CDR最適化抗体は、非フコシル化形態であった。CDR最適化抗体をフォーマットして、LCDR1におけるAsn脱アミド化のリスクを低減した。
【0283】
5.13.1 CCR9結合
CDR最適化AB1020243は、実施例4に記載される方法に基づいて、CCR9の様々な形態及び様々な細胞型に結合するその能力に関して試験された。
図12に示されるとおり、243LO0326及び親抗体AB1020243は、ヒトアイソタイプCCR9A及びCCR9Bの両方、並びにカニクイザルCCR9Aに対して同様の結合を示した。243LO0326及び243LO0331の両方は、高濃度でさえマウス又はラットCCR9に対して著しい結合を示さなかった(データは示さず)。243LO0326及び親抗体AB1020243もまた、CCR5、CCR8、CXCR1又はCXCR2に対するいずれのオフターゲット受容体結合も示さなかった。
【0284】
5.13.2 親和性
図13Aに示されるとおり、243LO0326は、長時間にわたって膜に結合したままであり、大部分の抗体は、37℃で5時間後に細胞表面上に残存した。それに対して、細胞表面に結合された親抗体AB1020243の量は、最初の1時間で著しく減少した。親和性(K
D)は、243LO0326に関して0.09nM及びAB1020243に関して3.4nMとしてLigand Tracerを使用して測定された。簡潔に述べると、細胞に対する親和性は、室温(約22℃)で633nmの蛍光検出器を使用してLigandTracer機器(Ridgeview Instruments)上で測定された。ヒトIgG1形式におけるIgGは、IgGのCH2領域上の操作されたシステイン残基に対してDyLight 650マレイミドフルオロフォアで特異的に標識された。標識されたIgGを、CHO K1親(対照)及びCCR9発現CHO K1細胞の予め付着された別々のスポットを有する環状Nunclon Dプレートに加えた。IgG結合及び解離蛍光プロファイルが、その機器上で測定され、続いてTraceDrawerソフトウェア(Ridgeview Instruments)内の二価(1:2)型フィットモデルで分析された。
【0285】
図13Bに示されるとおり、抗体処理を伴う膜上で、CCR9受容体レベルにおけるごくわずかな低減が見られた。比較のために、CCL25処理は、膜上のCCR9受容体の大幅な減少を誘導した。抗CCR9抗体は、CCL25に誘導される内部移行を妨げることができることがさらに示された(
図19)。
【0286】
5.13.3 効力
CDR最適化AB1020243は、実施例4に記載されるとおりにNK細胞活性化及びPBMC死滅を誘導するその能力に関して試験された。
図14Aは、NK細胞活性化アッセイにおける抗体の効果を示す。243LO0326は、親抗体AB1020243より強力であることが見出された。
図14Bは、243LO0326及び親抗体AB1020243によるPBMCの死滅を示す。243LO0326は、向上した効力を示し、AB1020243に関する200pMのEC50と比較して、4pMのEC50を有した。
図14Cは、243LO0346が、同様のヒト及びカニクイザルCD4+CCR9+PBMCの両方の死滅を誘導する能力を有し、ヒトPBMCを使用して4~5pMで測定されるEC50及びカニクイザルPBMCを使用して30pMのEC50を有した。
【0287】
5.13.4 非フコシル化
抗CCR9抗体の非フコシル化は、ADCC NK細胞活性化アッセイに示されるとおり、細胞死滅を増強する(
図15A)。抗体(243LO0326)の効力に対するフコシル化のレベルの影響は、インビトロADCCバイオアッセイを使用してフコシル化添加試験において評価された(第5.11.2節を参照のこと)。抗体のADCC効力は、最大約10%のフコシル化に関して、100%の非フコシル化分子と比較して保持された。許容される効力は、最大50%のフコシル化に関して保持された(
図15B)。
【0288】
【0289】
5.14 実施例7-インビトロ及びインビボ効果
5.14.1 カニクイザルにおけるCCR9+細胞の抗体枯渇
サルは、アイソタイプ対照抗体及び10mg/kgの243LO0326の単回投与により静脈内注射された。CCR9+メモリーCD4+T細胞のパーセンテージは、様々な時点の血液中で評価された。
図16Aは、15日目の血液中に存在するCCR9+細胞の減少があり、10mg/kgの243LO0326が、この時点でCCR9+細胞を完全に消失させたことを示す。特に、高用量及び低用量(10mg/kg)で、243LO0326は、末梢血液(
図16B)、回腸(
図16C)及び粘膜(
図16D)においてCCR9+T細胞を枯渇させた。CCR9+T細胞の枯渇は、組織及び細胞特異的であった(
図17)。243LO0326は、CCR9+腸リンパ球を選択的に枯渇させ、腸外の集団を比較的残し、胸腺T細胞に影響を及ぼさなかった。
【0290】
5.14.2 腸外植片モデル
腸粘膜層の6mmパンチ生検は、Vadstrup et al[10]に記載されるとおり、健康なヒト対象及び炎症性腸疾患を有するヒト対象から採取された。外植片組織を、243LO0326の存在下又は非存在下で12~84時間培養した。CCR9+細胞のパーセンテージは、炎症の重要なメディエーター:IL-6、GM-CSF及びIL-22とともに評価された。
図18は、抗体による治療が、試験された外植片の各々においてCCR9+CD4+細胞を枯渇させ(
図18A)、炎症性メディエーターを減少させた(
図18B~
図18D)ことを示す。健康な対象の1名に由来する外植片組織もまた、高レベルのIL-6、GM-CSF及びIL-22を示し、これは抗CCR9治療時に減少させられた。
【0291】
5.15 実施例7-抗CCR9抗体は、CCL25に誘導されるCCR9内部移行を遮断する
IHCデータは、驚くべきことに、炎症したクローン回腸におけるCCR9の量的に低い発現があることを示唆する。エクスビボ、CCR9は、CCL25による活性化後に内部移行し、炎症したクローン回腸においてより高いレベルで発現される。これは、炎症した腸において、病原性のT細胞上のCCR9が、CCL25による活性化後に内部移行されることを示唆する。それにもかかわらず、クローン回腸においてCCR9を発現する細胞は、炎症促進性及び常在性のメモリー表現型を示す。
【0292】
CCR9の内部移行を検出アッセイにおいて、CDR最適化非フコシル化抗体243LO0326は、2nMの濃度でCCL25に誘導される内部移行を妨げることができた(
図19)。CCL25に誘導される内部移行は、FACSによって評価された。有利に、CCL25に誘導される内部移行の遮断によって、受容体の再利用を妨げる。したがって、本発明の抗体は、ADCCを有利に誘導し、CRR9受容体のCCL25リガンドを遮断し、CCR9発現T細胞に対するCCL25に誘導されるCCR9受容体再利用を妨げる。
【0293】
5.16 結論
まとめると、これらのデータは、抗CCR9治療が、IBDを有する患者のための実行可能な治療選択肢であることを示す。炎症性サイトカインを発現するCRR9+T細胞は、炎症性腸疾患を有する患者の腸及び血液において発現される(
図1及び
図2)。上記の抗CCR9抗体は、CCR9発現T細胞上のヒトCCR9に結合する(
図5及び
図6)。これらの抗体の非フコシル化バージョンは、NK細胞を活性化して、ADCCを促進して(
図7及び
図15)、標的化された細胞死滅を引き起こす(
図8)。抗体クローンのうちの1つのヒト化は、驚くべきことに、キメラ親抗体と比較してヒトCCR9に対する抗体の親和性を低減せず(
図9)、NK細胞を活性化する能力を維持し(
図10A)、CCL25と競合する能力を保持した(
図11)。
【0294】
ヒト化抗体のうちの1つのさらなるCDR最適化が実施された。これらのCDR最適化非フコシル化抗体(243LO0326及び243LO0331)は、親抗体と比較して長期間膜結合CCR9に結合し、0.09~3.4nMの親和性(K
D)を有した(
図13)。CDR最適化抗体はさらに、NK細胞活性化及びPBMC死滅を誘導することができた。243LO0326は、AB1020243より強力であった(
図14)。243LO0326はさらに、CCL25に誘導されるCCR9内部移行を阻害することができる(
図19)。243LO0326治療はまた、血液中のCCR9 T細胞を減少させる(
図16)。IBD患者由来の腸外植片組織の243LO0326治療は、CCR9+CD4+細胞を枯渇させ(
図16A)、炎症性メディエーターを減少させる(
図16B及び
図16D)。したがって、243LO0326は、高度に強力であり、CCR9に特異的である。細胞枯渇はADCCを介して生じるが;NK細胞などのADCCエフェクター細胞の非存在下で、243LO0326はまた、CCR9とそのリガンドCCL25の間で結合を遮断する。
【0295】
本明細書で開示されるCCR9抗体が、hCCR9、CCR9A及びCCRBの両方のアイソフォームに結合することができ、CCR9に対する結合に関してCCL25と競合することができることから、エピトープは、CCR9Bの細胞外N末端内、すなわち、CCR9Aのアミノ酸位置13~48に対応するCCR9Bのアミノ酸位置1~36:MADDYGSESTSSMEDYVNFNFTDFYCEKNNVRQFAS(配列番号80)に配置されると予想される(表9、表10、
図20)。
【0296】
【0297】
【0298】
本明細書で開示されるCCR9標的化抗体は、CCR9に対するCCL25の結合を遮断し、且つCCR9+T細胞を枯渇させることができる。腸の炎症性自己免疫疾患において、本明細書で開示される抗体は、血液及び腸組織中でCCR9+病原性T細胞を枯渇させ、且つCCR9に対するCCL25の結合を遮断すると予想され、病原性T細胞は、完全には枯渇されない。この二重の作用機序は、持続的な治療効果をもたらすと予想される。CCR9+腸向性エフェクターメモリーT細胞の特異的な枯渇は、永続的な寛解を誘導し、それを維持し、疾患修飾をもたらすことになる。
【0299】
参考文献
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[2]M.Gajendran et al.,Dis Mon 64,20(2018).
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[4]B.Somovilla-Crespo et al.,Frontiers in Immunology 9,(2018).
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【配列表】
【国際調査報告】