(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-17
(54)【発明の名称】空気の存在下での水素の燃焼によって窒素(N2)及び水素(H2)を含むガスを生成するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
C01B 3/02 20060101AFI20240410BHJP
F23D 14/22 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
C01B3/02 Z
F23D14/22 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558567
(86)(22)【出願日】2022-03-25
(85)【翻訳文提出日】2023-10-30
(86)【国際出願番号】 CA2022050444
(87)【国際公開番号】W WO2022198328
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CA
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513138072
【氏名又は名称】ハイドロ-ケベック
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ラブレック、レイナルド
(72)【発明者】
【氏名】ヴィエノー、ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ラロック、ジェルマン
(72)【発明者】
【氏名】シェカリ、アリ
【テーマコード(参考)】
3K019
4G140
【Fターム(参考)】
3K019AA06
3K019BA04
3K019BB01
3K019BD01
3K019CA03
4G140BA03
4G140BB01
(57)【要約】
本技術は、反応器の長さLの反応チャンバ内で窒素(N2)及び水素(H2)を含むガスを生成するための方法及びシステムに関する。方法は、空気の注入と、水素の反応器への注入と、注入された水素の一部と空気由来の酸素とを、空気由来の酸素に対してモル超化学量論的過剰の水素の存在下で反応チャンバ内で燃焼させることとを含む。燃焼は、空気の注入から生じる速度v1を有する空気流によって生成され、水素の注入から生じる、v1より大きい速度v2を有する水素流によって取り囲まれた火炎によって維持される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器の長さLの反応チャンバ内で窒素(N
2)及び水素(H
2)を含むガスを生成するための方法であって、空気を注入することと、水素を前記反応器内に注入することと、前記注入された水素の一部を、前記空気由来の酸素に対して過剰化学量論的モル過剰の水素の存在下で前記反応チャンバ内で前記空気由来の酸素と燃焼させることであって、
前記燃焼が、前記空気の注入から生じる速度v
1を有する空気流によって生成され、前記水素の注入から生じる速度v
2であって、v
1より大きい、速度v
2を有する水素流によって取り囲まれた火炎によって支持される、燃焼させることとを含む、方法。
【請求項2】
前記速度v
1が約1m/s~約200m/sである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記速度v
1が約5m/s~約150m/sである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記速度v
1が約10m/s~約100m/sである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記速度v
2が約2m/s~約220m/sである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記速度v
2が約10m/s~約200m/sである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記速度v
2が約15m/s~約175m/sである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
空気がモル流量F
1で注入され、水素がモル流量F
2で注入され、比F
1/F
2が約1.2~約3.5の間に含まれる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記比F
2/F
1が約2~約3.5の間に含まれる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記比F
2/F
1が約2.8~約3.5の間に含まれる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記反応チャンバの前記長さLが、前記反応チャンバの容積が前記反応チャンバ内の空気及び水素の最小滞留時間を可能にするようなものである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記滞留時間が0.001~1秒である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記滞留時間が0.01~0.1秒である、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記反応チャンバが、前記燃焼中に約500℃~約1500℃の間の平均温度Tに維持される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記反応チャンバが、空気流及び水素流が前記反応チャンバ内で混合する第1の領域において、約600℃~約1500℃の間に含まれる温度T
1に維持される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記反応チャンバが、前記反応チャンバの出口付近の第2の領域において、約500℃~約1500℃の間に含まれる温度T
2に維持される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記温度T
2が約500℃~約1200℃の間に含まれる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記温度が、前記火炎によって発生した熱を前記反応チャンバの外側に放散することによって前記反応チャンバ内で少なくとも部分的に維持される、請求項14~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記温度が、伝熱流体による前記火炎によって発生した熱の回収によって前記反応チャンバ内で少なくとも部分的に維持される、請求項14~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記伝熱流体が液体、油又は気体である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記伝熱流体が過熱蒸気を発生させるのに適した品質の水である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記発生した蒸気が、前記方法若しくは別の方法において必要とされる熱を少なくとも部分的に生成するために、又は電気を発生させるために再利用される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記熱の放散が空気の存在下で対流によって行われる、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記反応チャンバ内の圧力が少なくとも1atmである、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記反応チャンバ内の圧力が1atm~約10atmである、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
水素が水電解反応~生じる、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
生成された窒素(N
2)及び水素(H
2)を含む前記ガスを乾燥させることと、水を回収することとを更に含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
乾燥が冷却凝縮を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
アンモニアの合成のための、請求項1~28のいずれか一項に定義される方法によって生成された窒素(N
2)及び水素(H
2)を含むガスの使用。
【請求項30】
窒素(N
2)及び水素(H
2)を含むガスを生成するための少なくとも1つの反応器であって、
壁と、距離Lだけ隔てられた第1の端部及び第2の端部とを含む反応チャンバであって、前記ガスが、注入された水素の一部を、空気由来の酸素と、空気由来の酸素に対して過剰化学量論的モル過剰の水素の存在下で燃焼させることによって生成される、反応チャンバと、
前記チャンバの前記第1の端部において速度v
1の空気流を前記反応チャンバに供給するための少なくとも1つの第1の手段と、
前記チャンバの前記第1の端部において、v
1よりも大きい速度v
2の水素流を前記反応チャンバに供給するための少なくとも1つの第2の手段と
を含み、
前記空気流を供給する前記第1の手段及び前記水素流を供給する前記第2の手段が、前記燃焼中に前記空気流が前記水素流によって取り囲まれるように配置される、反応器を備えるシステム。
【請求項31】
前記速度v
1が約1m/s~約200m/sである、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記速度v
1が約5m/s~約150m/sである、請求項30又は31に記載のシステム。
【請求項33】
前記速度v
1が約20m/s~約100m/sである、請求項30~32のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項34】
前記速度v
2が約2m/s~約220m/sである、請求項30~33のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項35】
前記速度v
2が約10m/s~約200m/sである、請求項30~34のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項36】
前記速度v
2が約30m/s~約175m/sである、請求項30~35のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項37】
空気がモル流量F
1で供給され、水素がモル流量F
2で供給され、比F
2/F
1が約1.2~約3.5の間に含まれる、請求項30~36のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項38】
前記比F
2/F
1が約2~約3.5の間に含まれる、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記比F
2/F
1が約2.8~約3.5の間に含まれる、請求項37又は38に記載のシステム。
【請求項40】
前記反応チャンバの前記長さLが、前記反応チャンバの容積が前記反応チャンバ内の空気及び水素の最小滞留時間を可能にするようなものである、請求項30~39のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項41】
前記滞留時間が0.001~1秒である、請求項40に記載のシステム。
【請求項42】
前記滞留時間が0.01~0.1秒である、請求項40又は41に記載のシステム。
【請求項43】
前記燃焼中に前記反応チャンバを約500℃~約1500℃の間に含まれる平均温度Tに維持するように設計される、請求項30~42のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項44】
前記ガス流が混合する前記反応チャンバの第1の領域において約600℃~約1500℃の間に含まれる温度T
1を維持するように設計される、請求項30~43のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項45】
前記反応チャンバの出口付近の第2の領域において約500℃~約1500℃の間に含まれる温度T
2を維持するように設計される、請求項30~44のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項46】
前記温度T
2が、約500℃~約1200℃の間に含まれる、請求項45に記載のシステム。
【請求項47】
前記反応チャンバの前記壁が、前記燃焼によって発生した熱を前記反応チャンバの外側に放散させることによって前記反応チャンバ内の温度を少なくとも部分的に維持することを可能にする非断熱材料を含む、請求項43~46のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項48】
前記非断熱材料が金属材料である、請求項47に記載のシステム。
【請求項49】
前記放散された熱を回収するために伝熱流体を循環させる装置を更に備える、請求項47又は48に記載のシステム。
【請求項50】
前記伝熱流体が液体、油又は気体である、請求項49に記載のシステム。
【請求項51】
前記伝熱流体が、過熱蒸気を発生させるのに適した品質の水である、請求項49に記載のシステム。
【請求項52】
前記発生した蒸気が、前記方法若しくは別の方法において必要とされる熱を少なくとも部分的に生成するために、又は電気を発生させるために再利用される、請求項51に記載のシステム。
【請求項53】
前記熱の放散が空気の存在下で対流によって行われる、請求項47に記載のシステム。
【請求項54】
前記反応チャンバ内の圧力が少なくとも1atmである、請求項30~53のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項55】
前記反応チャンバ内の圧力が1atm~約10atmである、請求項30~54のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項56】
前記空気流を供給するための前記第1の手段が外径及び外壁を有する管を含み、前記空気が第1の端部から第2の端部に前記管を通って流れる、請求項30~55のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項57】
前記空気流が前記反応チャンバに入る前記管の前記第2の端部が、前記反応チャンバの前記第1の端部のレベルに位置する、請求項56に記載のシステム。
【請求項58】
前記水素流を供給するための前記第2の手段が、前記空気流を供給するための前記管の前記外径によって画定され、前記管の前記外壁から前記反応チャンバの前記内壁まで垂直に延在する空間を含む、請求項56又は57に記載のシステム。
【請求項59】
前記反応チャンバが円筒形状であり、前記水素流を供給するための前記第2の手段が、前記空気流を供給するための前記管の前記外径によって区切られ、前記管の前記外壁から前記反応チャンバの前記内壁まで垂直に延在する環状空間を含む、請求項56又は57に記載のシステム。
【請求項60】
前記空気流を供給するための前記第1の手段が、外径及び外壁を有する第1の管を含み、前記空気が、前記第1の管の第1の端部から前記第1の管の第2の端部まで前記第1の管を通って流れ、
前記水素流を供給するための前記第2の手段が、内径及び内壁を有する第2の管を含み、前記水素が、前記第2の管の第1の端部から前記第2の管の第2の端部まで前記第2の管を通って流れる、請求項30~55のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項61】
空気が前記反応チャンバに入る前記第1の管の前記第2の端部と、水素が前記反応チャンバに入る前記第2の管の前記第2の端部とが、両方とも前記反応チャンバの前記第1の端部に位置する、請求項60に記載のシステム。
【請求項62】
前記水素流が、前記第1の管の前記外径によって区切られ、前記第1の管の前記外壁から前記第2の管の前記内壁まで垂直に延在する空間を通って前記反応チャンバに供給される、請求項60又は61に記載のシステム。
【請求項63】
前記反応チャンバが円筒形状であり、前記水素流が、前記第1の管の前記外径によって区切られ、前記第1の管の前記外壁から前記第2の管の前記内壁まで垂直に延在する環状空間を通って前記反応チャンバに供給される、請求項60又は61に記載のシステム。
【請求項64】
前記水素が水電解反応から生じる、請求項30~63のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項65】
(N
2)及び水素(H
2)を含む生成ガスを乾燥させ、水を回収するための装置を更に備える、請求項30~64のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項66】
乾燥させ、水を回収するための前記装置が冷却凝縮ユニットを備える、請求項65に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、空気の存在下で水素を燃焼させることによって窒素(N2)及び水素(H2)を含むガスを生成するための方法及びシステムに関する。より具体的には、本方法及びシステムは、アンモニアを生成するために使用することができるN2及びH2をベースとした合成ガスを生成することを可能にすることができる。
【背景技術】
【0002】
アンモニアは、広範囲の化学製品の生成の中心となる塩基生成物である。更に、燃料又はエネルギーベクトルとしてのその潜在的使用が現在検討されている。アンモニアは、以下の反応に基づく周知のハーバー-ボッシュ法によって生成することができる。
(1) N2+3H2→2NH3
この反応を実施するために、H2/N2モル比3の窒素及び水素が必要である。反応に必要な窒素と水素の混合物は、いわゆる合成ガスを構成する。
【0003】
合成ガスを発生させるのに必要な水素は、種々の方法で生成することができる。持続可能な開発に関連して、この水素は、再生可能な電力供給(例えば、水力、風力、太陽光)を有する水電解システムによって生成することができる。
【0004】
一方、合成ガスを構成するのに必要な窒素は、約79%の窒素及び21%の酸素を含有する空気から生じる。空気から窒素を生成するために、様々なアプローチが既に使用されている。とりわけ、窒素は、低温物理学、膜分離又は物理的吸着(圧力スイング吸着又は「PSA」)によって生成することができる。
【0005】
窒素を生成するための代替的なアプローチは、空気由来の酸素を水素の存在下で反応させて、以下の反応に従ってこの酸素を水蒸気に変換することにある。
(2) 1/2 O2+H2→H2O
十分な量の水素を燃焼させて、空気中の酸素を完全に水蒸気に変換することができる。次いで、この水蒸気を、例えば凝縮によって分離して、窒素を回収することができる。
【0006】
アンモニア生成を意図した合成ガスを生成するために、アンモニア合成に必要な水素と、アンモニア合成に必要な窒素を生成するために使用される空気中の酸素を水蒸気に変換するために燃焼させる必要がある量の水素との両方を生成することができる電解システムを使用することができる。
【0007】
しかしながら、空気の存在下での水素の燃焼は、アンモニア合成に使用される触媒(一般に鉄系)と相互作用し得る酸化分子である窒素酸化物(NOx)の形成をもたらす。したがって、アンモニアを生成するために使用される合成ガスは、有意な量のNOxを含有してはならない。
【0008】
特に興味深いのは、例えば、空気の存在下での水素の燃焼によるアンモニア合成に有用な、水素及び窒素をベースとしたガスの生成方法である。NOx形成を制限することを可能にしながら、単純な設計の反応器内で実施することができる、空気の存在下で水素を単純に燃焼させることによって水素及び窒素をベースとしたガスを生成する方法が魅力的である。以下、このような方法について説明する。
【発明の概要】
【0009】
第1の態様によれば、本技術は、反応器の長さLの反応チャンバ内で窒素(N2)及び水素(H2)を含むガスを生成するための方法であって、空気を注入することと、水素を反応器内に注入することと、注入された水素の一部を、空気由来の酸素に対して過剰化学量論的モル過剰の水素の存在下で反応チャンバ内で空気由来の酸素と燃焼させることであって、
燃焼が、空気の注入から生じる速度v1を有する空気流によって生成され、水素の注入から生じる速度v2であって、v1より大きい、速度v2を有する水素流によって取り囲まれた火炎によって支持される、燃焼させることとを含む、方法に関する。
【0010】
一実施形態によれば、方法は、速度v1が約1m/s~約200m/sであるようなものである。別の実施形態によれば、速度v1は、約5m/s~約150m/sであり得る。速度v1はまた、約10m/s~約100m/sであってもよい。
【0011】
別の実施形態によれば、方法は、速度v2が約2m/s~約220m/sであるようなものである。別の実施形態によれば、速度v2は、約10m/s~約200m/sであり得る。速度v2はまた、約15m/s~約175m/sであってもよい。
【0012】
別の実施形態によれば、方法は、空気がモル流量F1で注入され、水素がモル流量F2で注入され、比F1/F2が約1.2~約3.5の間に含まれるようなものである。別の実施形態によれば、比F2/F1は、約2~約3.5の間に含まれ得る。比F2/F1はまた、約2.8~約3.5の間に含まれ得る。
【0013】
別の実施形態によれば、方法は、反応チャンバの長さLが、反応チャンバの容積が反応チャンバ内部での空気及び水素の最小滞留時間を可能にするようなものである。別の実施形態によれば、滞留時間は、0.001~1秒であり得る。滞留時間はまた、0.01~0.1秒であってもよい。
【0014】
別の実施形態によれば、方法は、反応チャンバが燃焼中に約500℃~約1500℃の間に含まれる平均温度Tに維持されるようなものである。
【0015】
別の実施形態によれば、方法は、反応チャンバが、空気流及び水素流が反応チャンバ内で混合する第1の領域において、約600℃~約1500℃の間に含まれる温度T1に維持されるようなものである。
【0016】
別の実施形態によれば、方法は、反応チャンバが、反応チャンバの出口付近の第2の領域において、約500℃~約1500℃の間に含まれる温度T2に維持されるようなものである。温度T2はまた、約500℃~約1200℃の間に含まれ得る。
【0017】
別の実施形態によれば、方法は、火炎によって発生した熱を反応チャンバの外側に放散させることによって、温度が反応チャンバ内で少なくとも部分的に維持されるようなものである。
【0018】
別の実施形態によれば、方法は、温度が、伝熱流体による火炎によって発生した熱の回収によって反応チャンバ内で少なくとも部分的に維持されるようなものである。伝熱流体は、液体、油又は気体であり得る。伝熱流体はまた、過熱蒸気を発生させるのに適した品質の水であってもよい。一実施形態によれば、発生した蒸気は、方法若しくは別の方法において必要とされる熱を少なくとも部分的に生成するために、又は電気を発生させるために再利用することができる。一実施形態によれば、熱の放散は、空気の存在下で対流によって行うことができる。
【0019】
別の実施形態によれば、方法は、反応チャンバ内の圧力が少なくとも1atmであるようなものである。別の実施形態によれば、反応チャンバ内の圧力は、1atm~約10atmであり得る。
【0020】
別の実施形態によれば、方法は、水素が水電解反応から生じるようなものである。
【0021】
別の実施形態によれば、方法は、生成された窒素(N2)及び水素(H2)を含むガスを乾燥させることと、水を回収することとを更に含む。一実施形態によれば、乾燥は冷却凝縮を含むことができる。
【0022】
別の態様によれば、本技術は、アンモニアの合成のための、本明細書で定義される方法によって生成される窒素(N2)及び水素(H2)を含むガスの使用に関する。
【0023】
別の態様によれば、本技術は、窒素(N2)及び水素(H2)を含むガスを生成するための少なくとも1つの反応器であって、
壁と、距離Lだけ隔てられた第1の端部及び第2の端部とを含む反応チャンバであって、ガスが、注入された水素の一部を、空気由来の酸素と、空気由来の酸素に対して過剰化学量論的モル過剰の水素の存在下で燃焼させることによって生成される、反応チャンバと、
チャンバの第1の端部において速度v1の空気流を反応チャンバに供給するための少なくとも1つの第1の手段と、
チャンバの第1の端部において、v1よりも大きい速度v2の水素流を反応チャンバに供給するための少なくとも1つの第2の手段と
を含み、
空気流を供給する第1の手段及び水素流を供給する第2の手段が、燃焼中に空気流が水素流によって取り囲まれるように配置される、反応器を備えるシステムに関する。
【0024】
一実施形態によれば、システムは、速度v1が約1m/s~約200m/sであるようなものである。別の実施形態によれば、速度v1は、約5m/s~約150m/sであり得る。速度v1はまた、約20m/s~約100m/sであってもよい。
【0025】
別の実施形態によれば、システムは、速度v2が約2m/s~約220m/sであるようなものである。別の実施形態によれば、速度v2は、約10m/s~約200m/sである。速度v2はまた、約30m/s~約175m/sであってもよい。
【0026】
別の実施形態によれば、システムは、空気がモル流量F1で供給され、水素がモル流量F2で供給され、比F2/F1が約1.2~約3.5の間に含まれるようなものである。別の実施形態によれば、比F2/F1は、約2~約3.5の間に含まれ得る。比F2/F1はまた、約2.8~約3.5の間に含まれ得る。
【0027】
別の実施形態によれば、システムは、反応チャンバの長さLが、反応チャンバの容積が反応チャンバ内部での空気及び水素の最小滞留時間を可能にするようなものである。別の実施形態によれば、滞留時間は0.001~1秒である。滞留時間はまた、0.01~0.1秒であってもよい。
【0028】
別の実施形態によれば、システムは、燃焼中に反応チャンバを約500℃~約1500℃の間に含まれる平均温度Tに維持するように設計される。
【0029】
別の実施形態によれば、システムは、ガス流が混合する反応チャンバの第1の領域において約600℃~約1500℃の間に含まれる温度T1を維持するように設計される。
【0030】
別の実施形態によれば、システムは、反応チャンバの出口付近の第2の領域において約500℃~約1500℃の間に含まれる温度T2を維持するように設計される。別の実施形態によれば、温度T2は、約500℃~約1200℃の間に含まれる。
【0031】
別の実施形態によれば、システムは、反応チャンバの壁が、燃焼によって発生した熱を反応チャンバの外側に放散させることによって反応チャンバ内の温度を少なくとも部分的に維持することを可能にする非断熱材料を含むようなものである。別の実施形態によれば、非断熱材料は金属材料である。
【0032】
別の実施形態によれば、システムは、放散された熱を回収するために伝熱流体を循環させる装置を更に備える。別の実施形態によれば、伝熱流体は、液体、油又は気体である。別の実施形態によれば、伝熱流体は、過熱蒸気を発生させるのに適した品質の水である。別の実施形態によれば、発生した蒸気は、方法若しくは別の方法において必要とされる熱を少なくとも部分的に生成するために、又は電気を発生させるために再利用される。別の実施形態によれば、熱の放散は、空気の存在下で対流によって行われる。
【0033】
別の実施形態によれば、システムは、反応チャンバ内の圧力が少なくとも1atmであるようなものである。別の実施形態によれば、反応チャンバ内の圧力は、1atm~約10atmである。
【0034】
別の実施形態によれば、システムは、空気流を供給するための第1の手段が外径及び外壁を有する管を含み、空気が第1の端部から第2の端部に管を通って流れるようなものである。
【0035】
別の実施形態によれば、システムは、空気流が反応チャンバに入る管の第2の端部が、反応チャンバの第1の端部のレベルに位置するようなものである。
【0036】
別の実施形態によれば、システムは、水素流を供給するための第2の手段が、空気流を供給するための管の外径によって画定され、管の外壁から反応チャンバの内壁まで垂直に延在する空間を含むようなものである。
【0037】
別の実施形態によれば、システムは、反応チャンバが円筒形状であり、水素流を供給するための第2の手段が、空気流を供給するための管の外径によって区切られ、管の外壁から反応チャンバの内壁まで垂直に延在する環状空間を含むようなものである。
【0038】
別の実施形態によれば、システムは、
空気流を供給するための第1の手段が、外径及び外壁を有する第1の管を含み、空気が、第1の管の第1の端部から第1の管の第2の端部まで第1の管を通って流れ、
水素流を供給するための第2の手段が、内径及び内壁を有する第2の管を含み、水素が、第2の管の第1の端部から第2の管の第2の端部まで第2の管を通って流れるようなものである。
【0039】
別の実施形態によれば、システムは、空気が反応チャンバに入る第1の管の第2の端部と、水素が反応チャンバに入る第2の管の第2の端部とが、両方とも反応チャンバの第1の端部に位置するようなものである。
【0040】
別の実施形態によれば、システムは、水素流が、第1の管の外径によって区切られ、第1の管の外壁から第2の管の内壁まで垂直に延在する空間を通って反応チャンバに供給されるようなものである。
【0041】
別の実施形態によれば、システムは、反応チャンバが円筒形状であり、水素流が、第1の管の外径によって区切られ、第1の管の外壁から第2の管の内壁まで垂直に延在する環状空間を通って反応チャンバに供給されるようなものである。
【0042】
別の実施形態によれば、システムは、水素が水電解反応から生じるようなものである。
【0043】
別の実施形態によれば、システムは、(N2)及び水素(H2)を含む生成ガスを乾燥させ、水を回収するための装置を更に備える。別の実施形態によれば、乾燥させ、水を回収するための装置は、冷却凝縮ユニットを含む。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】一実施形態による方法を実施するために使用することができる反応器の概略垂直断面図を示す。
【
図2】別の実施形態による方法を実施するために使用することができる反応器の概略垂直断面図を示す。
【
図3】別の実施形態による方法を実施するために使用することができる
図1によるいくつかの反応器を備えるシステムの概略垂直断面図である。
【
図4】別の実施形態による方法を実施するために使用することができる
図2によるいくつかの反応器を備えるシステムの概略垂直断面図である。
【
図5】更に別の実施形態による方法を実施するために使用することができる反応器の概略垂直断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語及び表現は、本技術の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。それにもかかわらず、使用される特定の用語及び表現の定義が以下に提供される。
【0046】
本明細書で使用される「約」という用語は、およそ、その付近、及びその前後を意味する。「約」という用語が数値に関連して使用される場合、それは、例えば、公称値と比較して10%の変動によって数値を上下に修飾する。この用語はまた、例えば、測定装置の実験誤差又は値の丸めを考慮に入れることができる。
【0047】
値の間隔が本出願において言及される場合、間隔の下限及び上限は、別段の指示がない限り、常に定義に含まれる。したがって、値の範囲が「X~Yの間」又は「約X~約Yの間」として示される場合、値X及びYは定義に含まれる。
【0048】
本明細書において、「合成ガス」という用語は、少なくとも水素(H2)及び窒素(N2)を含むガス混合物を特定するために使用される。いくつかの実施形態では、合成ガスは水蒸気(H2O)を含んでもよい。
【0049】
「流れ」という用語は、反応チャンバ内で合成ガス生成反応を実施することに関与する様々なガス流を説明するために使用される。以下でより詳細に説明するように、反応は、水素(H2)と、酸素(O2)及び窒素(N2)を含む流れを含み、これらは反応して合成ガスを形成する。
【0050】
したがって、本明細書は、反応器の反応チャンバ内で窒素(N2)及び水素(H2)を含むガスを生成するための革新的な方法及びシステムを提示する。この方法は、反応器に空気を注入し、水素を注入することと、注入された水素の一部を反応チャンバ内の空気由来の酸素と燃焼させることとを含む。反応は、空気中の酸素に対して過剰化学量論的モル過剰の水素の存在下で起こる。反応チャンバ内の燃焼は、空気の注入から生じる速度v1を有する空気流によって生成され、水素の注入から生じる速度v2を有する水素流によって取り囲まれた火炎によって支持され、速度v2は速度v1よりも大きい。
【0051】
したがって、ガスを形成するための反応は、空気中の酸素に対して過剰化学量論的モル過剰の水素の存在下で行われる。「過剰化学量論的モル過剰の水素」によって、反応器に注入される水素(H2)の量は、一方では、注入された全ての酸素を消費して式(2)に従って空気由来の酸素との燃焼反応を可能にするのに十分でなければならず、他方では、注入された水素の一部が燃焼されず、生成された合成ガス中に見出され得ることを確実にするのに十分でなければならないことが理解される。したがって、酸素に対する過剰化学量論的モル過剰の水素は、H2のO2に対するモル比が必然的に2より大きく、好ましくは少なくとも5.8であることを意味する。いくつかの実施形態によれば、H2のO2に対するモル比は最大で16.7である。
【0052】
したがって、過剰化学量論的に過剰な水素の存在下での水素の燃焼は、反応チャンバ内で水素流によって取り囲まれた空気流によって生成される火炎によって達成される。燃焼は、電気アーク、白熱ワイヤ、スパークプラグ又は任意の他の既知のエネルギー源などの点火装置を使用して開始することができる。したがって、反応チャンバ内では、空気流、したがって火炎は、水素流によって形成される一種のエンベロープ内に囲まれる。空気流の周りの水素のこのエンベロープは、i)反応チャンバに入る空気流と水素流の速度の差、水素流の速度v2が空気流の速度v1より大きいこと、及びii)ガス、すなわち空気及び水素の反応チャンバへの入口の幾何形状のおかげで形成することができる。
【0053】
次に、図面を参照して、方法及びそれを実施することができるシステムのいくつかの特定の実施形態のより詳細な説明を提供する。
【0054】
図1は、特定の実施形態において水素及び窒素をベースとした合成ガスを生成するために使用することができる反応器の一般的な動作原理を示す。反応器は、壁を備える長さLの少なくとも1つの反応チャンバと、空気を供給するための少なくとも1つの第1の手段と、水素を供給するための少なくとも1つの第2の手段とを含むことができる。反応チャンバに空気流及び水素流を供給するための第1及び第2の手段は、チャンバの第1の端部に位置し、第1の端部は、
図1では反応チャンバの底部にある。更に、水素流及び空気流を供給するための手段は、燃焼中に空気流が水素流によって取り囲まれることを可能にするように、すなわち、水素流が空気流の周りにエンベロープを形成することを可能にするように配置される。このようにして、空気流及び水素流を供給するための手段の配置は、反応チャンバ内に中心空気流と周囲の水素流とを提供する。
【0055】
いくつかの実施形態によれば、空気流を供給するための第1の手段は、外径及び外壁を有する管を含むことができ、空気は、第1の端部から第2の端部まで管を通って流れる。一実施形態によれば、空気流が反応チャンバに入る管の第2の端部は、ほぼ反応チャンバの第1の端部のレベルに位置することができる。別の実施形態では、空気流が反応チャンバに入る管の第2の端部は、チャンバの第1の端部から始まる反応チャンバの高さの最初の3分の1内に位置することができる。水素流を供給するための第2の手段は、空気流を供給するための管の外径によって画定され、管の外壁から反応チャンバの内壁まで垂直に延在する空間を含むことができる。
【0056】
別の可能な構成によれば、反応チャンバは円筒形状であってもよく、水素流を供給するための第2の手段は、空気流を供給するための管の外径によって区切られ、管の外壁から反応チャンバの内壁まで垂直に延在する環状空間を含むことができる。
【0057】
一実施形態では、反応器自体は、
図1により詳細に示されるような配置を形成する2つの同心管からなることができる。
図1に示される管配置において、外管は、反応チャンバの壁を形成するとともに、水素流が供給される環状空間を画定する。内管は、空気を注入するために使用され、内管の外壁から外管の内壁まで延在する空間は、水素流を供給するための環状空間を形成する。
【0058】
更なる実施形態では、反応器自体は、
図2により詳細に示されるような配置を形成する3つの管からなることができる。この実施形態によれば、反応器は、空気注入のための第1の管、H
2注入のための第2の管、及び最後に、反応チャンバ壁を画定する第3の管を含むことができる。
図2に示される配置において、水素は、空気注入管の外径及び水素注入管の内径によって画定される環状空間に注入される。
図2に示すように、水素注入管の上端は、反応チャンバ壁を画定する管の下端で終端する。また、
図2に示されるように、空気注入管及び水素注入管の上端は、実質的に整列され得、空気流及び水素流は、同じレベルで反応チャンバに入る。
【0059】
一実施形態によれば、本技術による窒素及び水素をベースとした合成ガスを生成するためのシステムは、例えば、
図3及び4に示されるように、並列の複数の反応器を備えることができる。したがって、システムは、
図1に示されるタイプ又は
図2に示されるタイプであり得る各反応器が空気流及び水素流を受容する、多数の反応器を含有する筐体を備えることができる。一方では空気、他方では水素が、各ガスのための共通の入口によってシステムに供給され得る。次いで、各ガスを各反応器に供給する。次いで、各反応器で生成された合成ガスを集め、共通の出口を介してシステムから排出することができる。
【0060】
更なる実施形態では、本技術による、窒素及び水素をベースとした合成ガスを生成するためのシステムは、単一の反応チャンバ内で、過剰化学量論的過剰の存在下で、空気由来の酸素による水素の複数の燃焼反応を生成するように設計される、
図5に示されるような反応器を備えることができる。したがって、反応器は、空気の主流及び水素の主流を受け入れるように配置することができ、主流の各々は、いくつかの二次流に分離する。反応チャンバに入る二次空気流と水素流の各組合せについて、二次空気流の速度v
1は、二次水素流の速度v
2よりも低い。したがって、反応チャンバ内で、各二次空気流は、関連する二次水素流によって形成される一種のエンベロープとなる。二次空気流と水素流との各組合せによって生成される火炎も、関連する二次水素空気流によって包囲される。二次空気流と水素流との各組合せに対して生成された合成ガスは、反応器出口で包括的合成ガス流として回収することができる。
【0061】
一実施形態によれば、合成ガスを生成するための反応器は、反応器の反応チャンバ内の温度がNOx生成を制限するために特定のレベルに維持されるように設計される。したがって、いくつかの実施形態によれば、システムは、燃焼中に反応チャンバを約500℃~約1500℃の間の平均温度Tに維持するように設計される。燃焼中の反応チャンバ内の平均温度Tは、例えば、約500℃、600℃、700℃、800℃、900℃、1000℃、1100℃、1200℃、1300℃、1400℃若しくは1500℃に維持することができ、又はこれらの温度の間に含まれる任意の値とすることができる。更に、いくつかの実施形態では、反応チャンバの端部の領域の温度を制御して、そこで特定の温度を維持することが可能である。例えば、システムは、ガス流が混合する反応チャンバへの入口付近の領域において、約600℃~約1500℃の間の温度T1を維持するように設計することができる。したがって、温度T1は、約600℃、700℃、800℃、900℃、1000℃、1100℃、1200℃、1300℃、1400℃若しくは1500℃、又はこれらの温度の間に含まれる任意の値に維持することができる。他の実施形態では、システムは、反応チャンバ出口付近の領域の温度T2を約500℃~約1500℃の間に維持するように設計することができる。場合によっては、反応チャンバ出口付近の領域における温度T2は、約500℃~約1200℃の間に含まれるように制御することができる。したがって、温度T2は、約500℃、600℃、700℃、800℃、900℃、1000℃、1100℃、1200℃、1300℃、1400℃若しくは1500℃又はこれらの温度の間に含まれる任意の値に維持することができる。温度制御は、いくつかの異なる方法で実行することができ、その詳細を以下に示す。また、上述した反応チャンバの温度は、温度測定が行われる正確な位置に応じて変化し得ることに留意されたい。更に、上述の温度値は、1500℃を超える温度に達し得る反応自体の最高温度とは異なり得ることに留意されたい。実際、水素-酸素火炎のレベルでの温度は、2000℃を超える値に達することさえあり得る。
【0062】
いくつかの実施形態によれば、反応チャンバ内の特定の温度を制御及び維持することに加えて、燃焼を促進するために圧力を制御することが可能である。実施形態によれば、反応チャンバ内の圧力は、少なくとも1atmであるように制御される。反応チャンバ内の圧力は、例えば、約1atm~10atmの間で変化し得る。したがって、圧力は、1atm、2atm、3atm、4atm、5atm、6atm、7atm、8atm、9atm、10atm、又はこれらの値の間の任意の圧力であり得る。
【0063】
先に述べたように、空気流と水素流は反応チャンバ内で異なる速度を有していなければならず、水素流の速度は空気流の速度よりも大きい。いくつかの実施形態では、速度v1で反応チャンバ内に中心流を形成するように、空気が反応器に注入される。この速度v1は、反応チャンバ内の温度T1及び圧力に補正された供給空気の体積流量から計算され、この流量は、空気流注入管に垂直な表面積で除算される。いくつかの実施形態によれば、速度v1は、約1m/s~約200m/sであり得る。例えば、速度v1は、約5m/s~約150m/s、又は約10m/s~約100m/sであってもよい。したがって、中心空気流の速度v1は、1m/s、5m/s、10m/s、20m/s、30m/s、40m/s、50m/s、60m/s、70m/s、80m/s、90m/s、100m/s、110m/s、120m/s、130m/s、140m/s、150m/s、160m/s、170m/s、180m/s、190m/s、200m/s、又はこれらの値の間の任意の速度であり得る。
【0064】
いくつかの実施形態によれば、速度v2は、約2m/s~約220m/sであり得る。例えば、速度v2は、約10m/s~約200m/s、又は約15m/s~約175m/sであり得る。したがって、水素流の速度v2は、空気流の速度v1よりも大きい限り、2m/s、5m/s、10m/s、20m/s、30m/s、40m/s、50m/s、60m/s、70m/s、80m/s、90m/s、100m/s、110m/s、120m/s、130m/s、140m/s、150m/s、160m/s、170m/s、180m/s、190m/s、200m/s、210m/s、220m/s又はこれらの値の間の任意の速度であり得る。
【0065】
図1に示し、先に説明したように、一実施形態によれば、水素は、空気を供給するための管の外壁と反応器の内壁との間に形成された空間において反応器に供給することができ、この空間は、例えば、反応器壁が円筒形である場合、環状である。このようにして、反応チャンバに注入される水素は、速度v
2が空気流の速度(v
1)よりも大きくなければならない水素流を構成する。反応チャンバに入る水素流の速度v
2は、反応器内の温度T
1及び圧力に対して補正された注入水素の体積流量から計算され、この流量は、注入水素が循環する空間の流れに垂直な表面積で除算され、この空間は好ましくは上記で説明したように環状である。
【0066】
図2に示し、先に説明したように、別の実施形態によれば、水素は、空気を供給するための管の外壁と水素を供給するための管の内壁との間に形成された空間に注入することによって反応器に供給され、この空間は、例えば、水素を供給するための管の壁が円筒形の形状である場合、環状である。このようにして、反応チャンバに注入される水素は、速度v
2が空気流の速度(v
1)よりも大きくなければならない水素流を構成する。反応チャンバに入る水素流の速度v
2は、反応器内の温度T
1及び圧力に対して補正された注入水素の体積流量から計算され、この流量は、注入水素が循環する空間の流れに垂直な表面積で除算され、この空間は好ましくは上記で説明したように環状である。
【0067】
空気及び水素は、水素と空気由来の酸素との間の燃焼反応を支持するために、特定のモル流量で反応器に供給されるが、過剰化学量論的過剰量の水素を有する。いくつかの実施形態によれば、空気はモル流量F1で反応器に供給され、水素はモル流量F2で供給され、比F2/F1は約1.2~約3.5の間である。別の実施形態によれば、水素の空気に対するモル流量比F2/F1は、約2~約3であってもよく、又は約2.8~約3.5であってもよい。したがって、F2/F1比は、約1.2若しくは1.5若しくは2若しくは2.5若しくは3若しくは3.5又はこれらの値の間の任意の比であり得る。いくつかの実施形態によれば、F2/F1比は、約3、より具体的には約2.8とすることができ、これは、注入された空気中に含まれる酸素のH2Oへの完全な変換を可能にしながら、反応(2)に従ってアンモニアを製造するのに必要なH2及びN2の割合を含む合成ガスを生成するための理論モル比に対応する。
【0068】
先に示したように、合成ガスが生成される反応器の反応チャンバは、水素流と空気流とが反応チャンバ内で混合する領域(例えば、チャンバの下端)と、反応チャンバの他端の反応チャンバ出口に近い領域(例えば、チャンバの上端)との間の距離に実質的に対応する長さLを有することができる。反応チャンバの長さLは、反応チャンバの容積が、反応チャンバ内部での空気及び水素の最小滞留時間を可能にするようなものであり得る。
【0069】
一実施形態によれば、長さLは、反応チャンバ内のガスの滞留時間tが0.001~1秒であるような長さである。別の実施形態によれば、滞留時間は0.01~0.1秒である。
【0070】
滞留時間は以下のように定義される。
(3) t=V/((Q2+Q1)*(T+273)/298/P)*K
式中、Vは反応チャンバの容積であり、Q2は供給されるH2の標準体積流量(25℃、1atm)であり、Q1は供給される空気の標準体積流量(25℃、1atm)であり、Tは反応チャンバ内の平均温度(℃)であり、最後に、Pは反応器内の圧力(atm)である。最後に、Kは単位定数である。空気流及び水素流の各々について、モル流量と標準体積流量との間の関係は、空気及び水素それぞれについて、以下の式によって定義される。
(4) Q1=F1*R*(T+273)/P
及び(5) Q2=F2*R*(T+273)/P
式中、Rは気体定数である。
【0071】
したがって、反応チャンバ内の滞留時間tは、0.001~1秒であり得る。別の実施形態では、滞留時間tは0.01~0.1秒であり得る。したがって、滞留時間tは、0.001若しくは0.002若しくは0.005若しくは0.01若しくは0.015若しくは0.02若しくは0.03若しくは0.04若しくは0.05若しくは0.06若しくは0.07若しくは0.08若しくは0.09若しくは0.1若しくは0.2若しくは0.3若しくは0.4若しくは0.5若しくは0.6若しくは0.7若しくは0.8若しくは0.9若しくは1秒、又はこれらの値の間に含まれる任意の時間であってもよい。
【0072】
いくつかの実施形態によれば、これらの値に限定されないが、反応チャンバの長さLは、約0.10m~3mの間に含まれ得る。長さLは、所望の変換効率を維持するためのシステム容量に達するように決定され得る。
【0073】
上述したように、反応チャンバ内の温度は、燃焼及び合成ガスの生成中に最低温度と最高温度との間の特定の値に維持することができる。反応チャンバ内で特定の温度を維持することによって、NOx生成を制限することができる。一定の値に留まるように温度を制御する1つの方法は、壁が非断熱材料で作られた反応チャンバ内で燃焼を行うことである。このようにして、反応チャンバ内の空気由来の酸素による水素の燃焼によって放出される熱は、少なくとも部分的に、非絶縁性壁材料を通して反応チャンバの外側に放散され得る(
図1参照)。そのような非断熱性の材料は、例えば、金属合金などの金属材料であり得る。また、材料は耐食性であることが好ましい。例えば、Inconel(登録商標)などの金属又は別の同等の材料を使用して、反応チャンバの壁を形成することができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、燃焼によって反応チャンバ壁を通して放出された熱は、空気の存在下で対流によって放散され得る。このようにして、燃焼中に空気を反応器の周りに連続的に循環させて、反応チャンバ内の特定の温度を維持することができる。他の実施形態では、反応チャンバの壁を通して放散される熱は、伝熱流体が循環する装置によって回収することができる。伝熱流体が液体、油又は気体である熱交換装置を使用することができる。そのような装置は、例えば、反応器を取り囲み、伝熱流体が循環するジャケットを含むことができる。一実施形態では、反応チャンバの壁を通して放散される熱を使用して、チャンバを取り囲む装置内を循環する水を加熱し、蒸気を発生させることができる。反応器によって放出された熱を回収することは、熱交換装置内を循環する適切な品質の水を用いて過熱蒸気を発生させるために特に重要であり得る。更に、いくつかの実施形態では、このようにして発生した蒸気は、方法において、別の方法において必要とされる熱を少なくとも部分的に生成するために、又は電気を発生させるために再利用することができる。例えば、生成された過熱蒸気は、発電に使用される蒸気タービンに動力を供給するために使用することができる。
【0075】
したがって、上述のシステムによって生成され、反応器を出る合成ガスは、窒素(N2)及び水素(H2)、並びに特定の水蒸気含有量を含む。したがって、反応器の出口におけるガスは湿潤原料ガスであり、これを次に乾燥して乾燥ガスを回収することができる。原料ガスは、公知の水蒸気分離手段により乾燥することができる。いくつかの実施形態では、原料ガス乾燥及び水回収装置は、冷却凝縮ユニットを含んでもよい。必要に応じて、例えば吸着乾燥媒体などの他の水蒸気分離手段を使用することも可能である。次に、原料合成ガスの乾燥中に回収された水は、以下に説明するように、例えば反応器に供給される水素を生成するために、方法において再使用することができる。
【0076】
持続可能な開発に関連して、合成ガスを生成するために使用される水素が、再生可能な供給源(水力、風力又は太陽)からの電気によって動力を供給される水電解システムによって生成されることが提案される。特定の実施形態では、水電解システムは、上述のように反応器によって放出された熱を回収することによって得られる過熱蒸気から少なくとも部分的に発生した電気を使用することができる。更に、水の電気分解によって水素を得るために使用される水は、少なくとも部分的に、上で詳述したように、反応器を出る合成ガスの乾燥中に回収された水に由来し得る。あるいは、合成ガスの乾燥中に回収された水は、上で説明したように、反応器によって放出された熱を回収するための装置内の伝熱流体として、少なくとも部分的に使用することができる。
【0077】
窒素及び水素を含む本技術によって得られる合成ガスは、これらの2つのガスが必要とされる様々な工業方法において使用することができる。そのような工業方法は、好ましくはアンモニアの生成を含むが、アンモニア合成に必要とされるものとは異なるモル比を有するH2/N2混合物を使用する他の工業方法もまた、本技術によって生成される合成ガスを使用することができる。
【0078】
アンモニア生成における使用が意図される合成ガスを得るために、注入される水素のモル流量の注入される空気のモル流量に対する比は、好ましくは2.8~3.5の間、より具体的には約3、より具体的には約2.8であり得る。したがって、注入される水素のモル流量の注入される空気のモル流量に対する比2.8を使用する場合、本技術を使用して、反応器出口において以下のモル組成を有する合成ガスを得ることが期待される。
・N2:22.0%
・H2:66.3%
・H2O:11.7%
・NOx:微量。
【0079】
アンモニア生成に直接使用できる合成ガスを生成するために、2.8~3.5のH2/空気モル比を使用して反応器に供給することが好ましいが、水素が空気由来の酸素と比較して過剰化学量論的に過剰に注入される限り、2.8未満のH2/空気比を使用することも絶対的に可能であることに留意されたい。したがって、直接アンモニア合成に必要なH2/N2モル比よりも低いH2/N2モル比を有する合成ガスが得られるが、H2/N2比を調整するために必要な量の水素(例えば電解水素)を添加することで十分である。
【0080】
本明細書に記載の技術は、いくつかの利点を有する。本発明は、水素及び窒素をベースとした合成ガス、特にアンモニアを合成するために使用することができる合成ガスを生成するための、実施が容易で比較的安価な方法を提供する。したがって、本技術による合成ガスの生成は、「グリーン」アンモニアを生成するための方法、すなわち、温室効果ガス(GHG)排出がない、又は実質的にないライフサイクルを有するアンモニア生成につながる。
【実施例】
【0081】
図2に示すような配置を画定するように、小規模反応器を構築した。この反応器は、Inconel 600(商標)管から構成された。各管について、以下の寸法を有する。
・空気注入管: O.D.=6.39mm、 I.D.=4.12mm
・H
2注入管: O.D.=12.7mm、 I.D.=8.75mm
・外側管: O.D.=19.05mm、 I.D.=13.71mm
I.D.=内径及びO.D.=外径。
【0082】
外側管は、長さL=347mmを有する反応器の反応チャンバの壁を画定する。外管の内径及びこの長さLに基づいて、これは51.29cm3に等しい内部容積Vとなる。
【0083】
ノズルから32.37mmの垂直距離に位置する第1の熱電対により、近接温度レベル、すなわち、T1を測定することが可能となる。ノズルから約340mmの垂直距離で反応器出口付近に位置する第2の熱電対により、温度レベルT2を測定することが可能とする。NO含有量は、専用分析器を使用して直接かつ連続的に測定される。反応器を出て分析器に循環するガスの一部は、約28℃の温度である。NOは、窒素酸化物の代表と考えられる。
【0084】
空気及びH2流量(それぞれQ1及びQ2)を変化させて、一連の試験を行った。以下の表は、9つの試験について得られた主な結果を示す。これらの試験では、Q2/Q1比を常に3.50に等しく維持しながら、流量Q1及びQ2を変化させる。これは、H2/N2モル比が3.90に等しい、N2及びH2をベースとした合成ガスを生成する。
【0085】
空気流速v1は、空気注入管の内径によって画定される垂直面と、温度T1で補正された空気の体積流量と、反応チャンバ内の圧力とから計算される。H2流速(v2)は、水素注入管の内径及び空気注入管の外径によって区切られる環状空間の表面積と、温度T1に補正されたH2-の体積流量及び反応チャンバ内の圧力とから計算される。
【0086】
反応器内の滞留時間tは、平均温度(T1+T2)/2を考慮し、反応器内の圧力レベルP(1atm)を考慮して、反応チャンバの容積を体積流量Q1+Q2の合計(25℃(298K)及び1atmにおける標準流量である)で割ることによって、以下の式に従って計算される。
t=V/(Q1+Q2)*1000/60*((T1+T2)/2+273)/298/P
【0087】
【0088】
表に示すように、各試験で得られたガスのNO含有量は、有意に変化しなかった。統計分析により、信頼区間+/-0.61ppm(95%の確率に対するスチューデント比に基づく)で平均値10.54ppmが得られる。入力の流量(Q1及びQ2)を増加させると、滞留時間が0.095から0.041秒に変化するが、流出ガスのNO含有量に有意な影響を及ぼさない。
【0089】
本技術の特定の実施形態について上に説明したが、本技術はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。本技術の範囲から逸脱することなく、上述の実施形態のどれか一方に対していくつかの修正を行うことができる。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器の長さLの反応チャンバ内で窒素(N
2)及び水素(H
2)を含むガスを生成するための方法であって、空気を注入することと、水素を前記反応器内に注入することと、前記注入された水素の一部を、前記空気由来の酸素に対して過剰化学量論的モル過剰の水素の存在下で前記反応チャンバ内で前記空気由来の酸素と燃焼させることであって、
前記燃焼が、前記空気の注入から生じる速度v
1を有する空気流によって生成され、前記水素の注入から生じる速度v
2であって、v
1より大きい、速度v
2を有する水素流によって取り囲まれた火炎によって支持される、燃焼させることとを含む、方法。
【請求項2】
前記速度v
1が約1m/s~約200m/sである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記速度v
1が約5m/s~約150m/sである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記速度v
1が約10m/s~約100m/sである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記速度v
2が約2m/s~約220m/sである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記速度v
2が約10m/s~約200m/sである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記速度v
2が約15m/s~約175m/sである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
空気がモル流量F
1で注入され、水素がモル流量F
2で注入され、比F
2/F
1が約1.2~約3.5の間に含まれる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記比F
2/F
1が約2~約3.5の間に含まれる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記比F
2/F
1が約2.8~約3.5の間に含まれる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記反応チャンバの前記長さLが、前記反応チャンバの容積が前記反応チャンバ内の空気及び水素の最小滞留時間を可能にするようなものである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記滞留時間が0.001~1秒である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記滞留時間が0.01~0.1秒である、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記反応チャンバが、前記燃焼中に約500℃~約1500℃の間の平均温度Tに維持される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記反応チャンバが、空気流及び水素流が前記反応チャンバ内で混合する第1の領域において、約600℃~約1500℃の間に含まれる温度T
1に維持される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記反応チャンバが、前記反応チャンバの出口付近の第2の領域において、約500℃~約1500℃の間に含まれる温度T
2に維持される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記温度T
2が約500℃~約1200℃の間に含まれる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記温度が、前記火炎によって発生した熱を前記反応チャンバの外側に放散することによって前記反応チャンバ内で少なくとも部分的に維持される、請求項14~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記温度が、伝熱流体による前記火炎によって発生した熱の回収によって前記反応チャンバ内で少なくとも部分的に維持される、請求項14~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記伝熱流体が液体、油又は気体である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記伝熱流体が過熱蒸気を発生させるのに適した品質の水である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記発生した蒸気が、前記方法若しくは別の方法において必要とされる熱を少なくとも部分的に生成するために、又は電気を発生させるために再利用される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記熱の放散が空気の存在下で対流によって行われる、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記反応チャンバ内の圧力が少なくとも1atmである、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記反応チャンバ内の圧力が1atm~約10atmである、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
水素が水電解反応~生じる、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
生成された窒素(N
2)及び水素(H
2)を含む前記ガスを乾燥させることと、水を回収することとを更に含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
乾燥が冷却凝縮を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
アンモニアの合成のための、請求項1~28のいずれか一項に定義される方法によって生成された窒素(N
2)及び水素(H
2)を含むガスの使用。
【請求項30】
窒素(N
2)及び水素(H
2)を含むガスを生成するための少なくとも1つの反応器であって、
壁と、距離Lだけ隔てられた第1の端部及び第2の端部とを含む反応チャンバであって、前記ガスが、注入された水素の一部を、空気由来の酸素と、空気由来の酸素に対して過剰化学量論的モル過剰の水素の存在下で燃焼させることによって生成される、反応チャンバと、
前記チャンバの前記第1の端部において速度v
1の空気流を前記反応チャンバに供給するための少なくとも1つの第1の手段と、
前記チャンバの前記第1の端部において、v
1よりも大きい速度v
2の水素流を前記反応チャンバに供給するための少なくとも1つの第2の手段と
を含み、
前記空気流を供給する前記第1の手段及び前記水素流を供給する前記第2の手段が、前記燃焼中に前記空気流が前記水素流によって取り囲まれるように配置される、反応器を備えるシステム。
【請求項31】
前記速度v
1が約1m/s~約200m/sである、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記速度v
1が約5m/s~約150m/sである、請求項30又は31に記載のシステム。
【請求項33】
前記速度v
1が約20m/s~約100m/sである、請求項30~32のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項34】
前記速度v
2が約2m/s~約220m/sである、請求項30~33のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項35】
前記速度v
2が約10m/s~約200m/sである、請求項30~34のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項36】
前記速度v
2が約30m/s~約175m/sである、請求項30~35のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項37】
空気がモル流量F
1で供給され、水素がモル流量F
2で供給され、比F
2/F
1が約1.2~約3.5の間に含まれる、請求項30~36のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項38】
前記比F
2/F
1が約2~約3.5の間に含まれる、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記比F
2/F
1が約2.8~約3.5の間に含まれる、請求項37又は38に記載のシステム。
【請求項40】
前記反応チャンバの前記長さLが、前記反応チャンバの容積が前記反応チャンバ内の空気及び水素の最小滞留時間を可能にするようなものである、請求項30~39のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項41】
前記滞留時間が0.001~1秒である、請求項40に記載のシステム。
【請求項42】
前記滞留時間が0.01~0.1秒である、請求項40又は41に記載のシステム。
【請求項43】
前記燃焼中に前記反応チャンバを約500℃~約1500℃の間に含まれる平均温度Tに維持するように設計される、請求項30~42のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項44】
前記ガス流が混合する前記反応チャンバの第1の領域において約600℃~約1500℃の間に含まれる温度T
1を維持するように設計される、請求項30~43のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項45】
前記反応チャンバの出口付近の第2の領域において約500℃~約1500℃の間に含まれる温度T
2を維持するように設計される、請求項30~44のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項46】
前記温度T
2が、約500℃~約1200℃の間に含まれる、請求項45に記載のシステム。
【請求項47】
前記反応チャンバの前記壁が、前記燃焼によって発生した熱を前記反応チャンバの外側に放散させることによって前記反応チャンバ内の温度を少なくとも部分的に維持することを可能にする非断熱材料を含む、請求項43~46のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項48】
前記非断熱材料が金属材料である、請求項47に記載のシステム。
【請求項49】
前記放散された熱を回収するために伝熱流体を循環させる装置を更に備える、請求項47又は48に記載のシステム。
【請求項50】
前記伝熱流体が液体、油又は気体である、請求項49に記載のシステム。
【請求項51】
前記伝熱流体が、過熱蒸気を発生させるのに適した品質の水である、請求項49に記載のシステム。
【請求項52】
前記発生した蒸気が、前記方法若しくは別の方法において必要とされる熱を少なくとも部分的に生成するために、又は電気を発生させるために再利用される、請求項51に記載のシステム。
【請求項53】
前記熱の放散が空気の存在下で対流によって行われる、請求項47に記載のシステム。
【請求項54】
前記反応チャンバ内の圧力が少なくとも1atmである、請求項30~53のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項55】
前記反応チャンバ内の圧力が1atm~約10atmである、請求項30~54のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項56】
前記空気流を供給するための前記第1の手段が外径及び外壁を有する管を含み、前記空気が第1の端部から第2の端部に前記管を通って流れる、請求項30~55のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項57】
前記空気流が前記反応チャンバに入る前記管の前記第2の端部が、前記反応チャンバの前記第1の端部のレベルに位置する、請求項56に記載のシステム。
【請求項58】
前記水素流を供給するための前記第2の手段が、前記空気流を供給するための前記管の前記外径によって画定され、前記管の前記外壁から前記反応チャンバの前記内壁まで垂直に延在する空間を含む、請求項56又は57に記載のシステム。
【請求項59】
前記反応チャンバが円筒形状であり、前記水素流を供給するための前記第2の手段が、前記空気流を供給するための前記管の前記外径によって区切られ、前記管の前記外壁から前記反応チャンバの前記内壁まで垂直に延在する環状空間を含む、請求項56又は57に記載のシステム。
【請求項60】
前記空気流を供給するための前記第1の手段が、外径及び外壁を有する第1の管を含み、前記空気が、前記第1の管の第1の端部から前記第1の管の第2の端部まで前記第1の管を通って流れ、
前記水素流を供給するための前記第2の手段が、内径及び内壁を有する第2の管を含み、前記水素が、前記第2の管の第1の端部から前記第2の管の第2の端部まで前記第2の管を通って流れる、請求項30~55のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項61】
空気が前記反応チャンバに入る前記第1の管の前記第2の端部と、水素が前記反応チャンバに入る前記第2の管の前記第2の端部とが、両方とも前記反応チャンバの前記第1の端部に位置する、請求項60に記載のシステム。
【請求項62】
前記水素流が、前記第1の管の前記外径によって区切られ、前記第1の管の前記外壁から前記第2の管の前記内壁まで垂直に延在する空間を通って前記反応チャンバに供給される、請求項60又は61に記載のシステム。
【請求項63】
前記反応チャンバが円筒形状であり、前記水素流が、前記第1の管の前記外径によって区切られ、前記第1の管の前記外壁から前記第2の管の前記内壁まで垂直に延在する環状空間を通って前記反応チャンバに供給される、請求項60又は61に記載のシステム。
【請求項64】
前記水素が水電解反応から生じる、請求項30~63のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項65】
(N
2)及び水素(H
2)を含む生成ガスを乾燥させ、水を回収するための装置を更に備える、請求項30~64のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項66】
乾燥させ、水を回収するための前記装置が冷却凝縮ユニットを備える、請求項65に記載のシステム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、空気の存在下で水素を燃焼させることによって窒素(N2)及び水素(H2)を含むガスを生成するための方法及びシステムに関する。より具体的には、本方法及びシステムは、アンモニアを生成するために使用することができるN2及びH2をベースとした合成ガスを生成することを可能にすることができる。
【背景技術】
【0002】
アンモニアは、広範囲の化学製品の生成の中心となる塩基生成物である。更に、燃料又はエネルギーベクトルとしてのその潜在的使用が現在検討されている。アンモニアは、以下の反応に基づく周知のハーバー-ボッシュ法によって生成することができる。
(1) N2+3H2→2NH3
この反応を実施するために、H2/N2モル比3の窒素及び水素が必要である。反応に必要な窒素と水素の混合物は、いわゆる合成ガスを構成する。
【0003】
合成ガスを発生させるのに必要な水素は、種々の方法で生成することができる。持続可能な開発に関連して、この水素は、再生可能な電力供給(例えば、水力、風力、太陽光)を有する水電解システムによって生成することができる。
【0004】
一方、合成ガスを構成するのに必要な窒素は、約79%の窒素及び21%の酸素を含有する空気から生じる。空気から窒素を生成するために、様々なアプローチが既に使用されている。とりわけ、窒素は、低温物理学、膜分離又は物理的吸着(圧力スイング吸着又は「PSA」)によって生成することができる。
【0005】
窒素を生成するための代替的なアプローチは、空気由来の酸素を水素の存在下で反応させて、以下の反応に従ってこの酸素を水蒸気に変換することにある。
(2) 1/2 O2+H2→H2O
十分な量の水素を燃焼させて、空気中の酸素を完全に水蒸気に変換することができる。次いで、この水蒸気を、例えば凝縮によって分離して、窒素を回収することができる。
【0006】
アンモニア生成を意図した合成ガスを生成するために、アンモニア合成に必要な水素と、アンモニア合成に必要な窒素を生成するために使用される空気中の酸素を水蒸気に変換するために燃焼させる必要がある量の水素との両方を生成することができる電解システムを使用することができる。
【0007】
しかしながら、空気の存在下での水素の燃焼は、アンモニア合成に使用される触媒(一般に鉄系)と相互作用し得る酸化分子である窒素酸化物(NOx)の形成をもたらす。したがって、アンモニアを生成するために使用される合成ガスは、有意な量のNOxを含有してはならない。
【0008】
特に興味深いのは、例えば、空気の存在下での水素の燃焼によるアンモニア合成に有用な、水素及び窒素をベースとしたガスの生成方法である。NOx形成を制限することを可能にしながら、単純な設計の反応器内で実施することができる、空気の存在下で水素を単純に燃焼させることによって水素及び窒素をベースとしたガスを生成する方法が魅力的である。以下、このような方法について説明する。
【発明の概要】
【0009】
第1の態様によれば、本技術は、反応器の長さLの反応チャンバ内で窒素(N2)及び水素(H2)を含むガスを生成するための方法であって、空気を注入することと、水素を反応器内に注入することと、注入された水素の一部を、空気由来の酸素に対して過剰化学量論的モル過剰の水素の存在下で反応チャンバ内で空気由来の酸素と燃焼させることであって、
燃焼が、空気の注入から生じる速度v1を有する空気流によって生成され、水素の注入から生じる速度v2であって、v1より大きい、速度v2を有する水素流によって取り囲まれた火炎によって支持される、燃焼させることとを含む、方法に関する。
【0010】
一実施形態によれば、方法は、速度v1が約1m/s~約200m/sであるようなものである。別の実施形態によれば、速度v1は、約5m/s~約150m/sであり得る。速度v1はまた、約10m/s~約100m/sであってもよい。
【0011】
別の実施形態によれば、方法は、速度v2が約2m/s~約220m/sであるようなものである。別の実施形態によれば、速度v2は、約10m/s~約200m/sであり得る。速度v2はまた、約15m/s~約175m/sであってもよい。
【0012】
別の実施形態によれば、方法は、空気がモル流量F1で注入され、水素がモル流量F2で注入され、比F2/F1が約1.2~約3.5の間に含まれるようなものである。別の実施形態によれば、比F2/F1は、約2~約3.5の間に含まれ得る。比F2/F1はまた、約2.8~約3.5の間に含まれ得る。
【0013】
別の実施形態によれば、方法は、反応チャンバの長さLが、反応チャンバの容積が反応チャンバ内部での空気及び水素の最小滞留時間を可能にするようなものである。別の実施形態によれば、滞留時間は、0.001~1秒であり得る。滞留時間はまた、0.01~0.1秒であってもよい。
【0014】
別の実施形態によれば、方法は、反応チャンバが燃焼中に約500℃~約1500℃の間に含まれる平均温度Tに維持されるようなものである。
【0015】
別の実施形態によれば、方法は、反応チャンバが、空気流及び水素流が反応チャンバ内で混合する第1の領域において、約600℃~約1500℃の間に含まれる温度T1に維持されるようなものである。
【0016】
別の実施形態によれば、方法は、反応チャンバが、反応チャンバの出口付近の第2の領域において、約500℃~約1500℃の間に含まれる温度T2に維持されるようなものである。温度T2はまた、約500℃~約1200℃の間に含まれ得る。
【0017】
別の実施形態によれば、方法は、火炎によって発生した熱を反応チャンバの外側に放散させることによって、温度が反応チャンバ内で少なくとも部分的に維持されるようなものである。
【0018】
別の実施形態によれば、方法は、温度が、伝熱流体による火炎によって発生した熱の回収によって反応チャンバ内で少なくとも部分的に維持されるようなものである。伝熱流体は、液体、油又は気体であり得る。伝熱流体はまた、過熱蒸気を発生させるのに適した品質の水であってもよい。一実施形態によれば、発生した蒸気は、方法若しくは別の方法において必要とされる熱を少なくとも部分的に生成するために、又は電気を発生させるために再利用することができる。一実施形態によれば、熱の放散は、空気の存在下で対流によって行うことができる。
【0019】
別の実施形態によれば、方法は、反応チャンバ内の圧力が少なくとも1atmであるようなものである。別の実施形態によれば、反応チャンバ内の圧力は、1atm~約10atmであり得る。
【0020】
別の実施形態によれば、方法は、水素が水電解反応から生じるようなものである。
【0021】
別の実施形態によれば、方法は、生成された窒素(N2)及び水素(H2)を含むガスを乾燥させることと、水を回収することとを更に含む。一実施形態によれば、乾燥は冷却凝縮を含むことができる。
【0022】
別の態様によれば、本技術は、アンモニアの合成のための、本明細書で定義される方法によって生成される窒素(N2)及び水素(H2)を含むガスの使用に関する。
【0023】
別の態様によれば、本技術は、窒素(N2)及び水素(H2)を含むガスを生成するための少なくとも1つの反応器であって、
壁と、距離Lだけ隔てられた第1の端部及び第2の端部とを含む反応チャンバであって、ガスが、注入された水素の一部を、空気由来の酸素と、空気由来の酸素に対して過剰化学量論的モル過剰の水素の存在下で燃焼させることによって生成される、反応チャンバと、
チャンバの第1の端部において速度v1の空気流を反応チャンバに供給するための少なくとも1つの第1の手段と、
チャンバの第1の端部において、v1よりも大きい速度v2の水素流を反応チャンバに供給するための少なくとも1つの第2の手段と
を含み、
空気流を供給する第1の手段及び水素流を供給する第2の手段が、燃焼中に空気流が水素流によって取り囲まれるように配置される、反応器を備えるシステムに関する。
【0024】
一実施形態によれば、システムは、速度v1が約1m/s~約200m/sであるようなものである。別の実施形態によれば、速度v1は、約5m/s~約150m/sであり得る。速度v1はまた、約20m/s~約100m/sであってもよい。
【0025】
別の実施形態によれば、システムは、速度v2が約2m/s~約220m/sであるようなものである。別の実施形態によれば、速度v2は、約10m/s~約200m/sである。速度v2はまた、約30m/s~約175m/sであってもよい。
【0026】
別の実施形態によれば、システムは、空気がモル流量F1で供給され、水素がモル流量F2で供給され、比F2/F1が約1.2~約3.5の間に含まれるようなものである。別の実施形態によれば、比F2/F1は、約2~約3.5の間に含まれ得る。比F2/F1はまた、約2.8~約3.5の間に含まれ得る。
【0027】
別の実施形態によれば、システムは、反応チャンバの長さLが、反応チャンバの容積が反応チャンバ内部での空気及び水素の最小滞留時間を可能にするようなものである。別の実施形態によれば、滞留時間は0.001~1秒である。滞留時間はまた、0.01~0.1秒であってもよい。
【0028】
別の実施形態によれば、システムは、燃焼中に反応チャンバを約500℃~約1500℃の間に含まれる平均温度Tに維持するように設計される。
【0029】
別の実施形態によれば、システムは、ガス流が混合する反応チャンバの第1の領域において約600℃~約1500℃の間に含まれる温度T1を維持するように設計される。
【0030】
別の実施形態によれば、システムは、反応チャンバの出口付近の第2の領域において約500℃~約1500℃の間に含まれる温度T2を維持するように設計される。別の実施形態によれば、温度T2は、約500℃~約1200℃の間に含まれる。
【0031】
別の実施形態によれば、システムは、反応チャンバの壁が、燃焼によって発生した熱を反応チャンバの外側に放散させることによって反応チャンバ内の温度を少なくとも部分的に維持することを可能にする非断熱材料を含むようなものである。別の実施形態によれば、非断熱材料は金属材料である。
【0032】
別の実施形態によれば、システムは、放散された熱を回収するために伝熱流体を循環させる装置を更に備える。別の実施形態によれば、伝熱流体は、液体、油又は気体である。別の実施形態によれば、伝熱流体は、過熱蒸気を発生させるのに適した品質の水である。別の実施形態によれば、発生した蒸気は、方法若しくは別の方法において必要とされる熱を少なくとも部分的に生成するために、又は電気を発生させるために再利用される。別の実施形態によれば、熱の放散は、空気の存在下で対流によって行われる。
【0033】
別の実施形態によれば、システムは、反応チャンバ内の圧力が少なくとも1atmであるようなものである。別の実施形態によれば、反応チャンバ内の圧力は、1atm~約10atmである。
【0034】
別の実施形態によれば、システムは、空気流を供給するための第1の手段が外径及び外壁を有する管を含み、空気が第1の端部から第2の端部に管を通って流れるようなものである。
【0035】
別の実施形態によれば、システムは、空気流が反応チャンバに入る管の第2の端部が、反応チャンバの第1の端部のレベルに位置するようなものである。
【0036】
別の実施形態によれば、システムは、水素流を供給するための第2の手段が、空気流を供給するための管の外径によって画定され、管の外壁から反応チャンバの内壁まで垂直に延在する空間を含むようなものである。
【0037】
別の実施形態によれば、システムは、反応チャンバが円筒形状であり、水素流を供給するための第2の手段が、空気流を供給するための管の外径によって区切られ、管の外壁から反応チャンバの内壁まで垂直に延在する環状空間を含むようなものである。
【0038】
別の実施形態によれば、システムは、
空気流を供給するための第1の手段が、外径及び外壁を有する第1の管を含み、空気が、第1の管の第1の端部から第1の管の第2の端部まで第1の管を通って流れ、
水素流を供給するための第2の手段が、内径及び内壁を有する第2の管を含み、水素が、第2の管の第1の端部から第2の管の第2の端部まで第2の管を通って流れるようなものである。
【0039】
別の実施形態によれば、システムは、空気が反応チャンバに入る第1の管の第2の端部と、水素が反応チャンバに入る第2の管の第2の端部とが、両方とも反応チャンバの第1の端部に位置するようなものである。
【0040】
別の実施形態によれば、システムは、水素流が、第1の管の外径によって区切られ、第1の管の外壁から第2の管の内壁まで垂直に延在する空間を通って反応チャンバに供給されるようなものである。
【0041】
別の実施形態によれば、システムは、反応チャンバが円筒形状であり、水素流が、第1の管の外径によって区切られ、第1の管の外壁から第2の管の内壁まで垂直に延在する環状空間を通って反応チャンバに供給されるようなものである。
【0042】
別の実施形態によれば、システムは、水素が水電解反応から生じるようなものである。
【0043】
別の実施形態によれば、システムは、(N2)及び水素(H2)を含む生成ガスを乾燥させ、水を回収するための装置を更に備える。別の実施形態によれば、乾燥させ、水を回収するための装置は、冷却凝縮ユニットを含む。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】一実施形態による方法を実施するために使用することができる反応器の概略垂直断面図を示す。
【
図2】別の実施形態による方法を実施するために使用することができる反応器の概略垂直断面図を示す。
【
図3】別の実施形態による方法を実施するために使用することができる
図1によるいくつかの反応器を備えるシステムの概略垂直断面図である。
【
図4】別の実施形態による方法を実施するために使用することができる
図2によるいくつかの反応器を備えるシステムの概略垂直断面図である。
【
図5】更に別の実施形態による方法を実施するために使用することができる反応器の概略垂直断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語及び表現は、本技術の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。それにもかかわらず、使用される特定の用語及び表現の定義が以下に提供される。
【0046】
本明細書で使用される「約」という用語は、およそ、その付近、及びその前後を意味する。「約」という用語が数値に関連して使用される場合、それは、例えば、公称値と比較して10%の変動によって数値を上下に修飾する。この用語はまた、例えば、測定装置の実験誤差又は値の丸めを考慮に入れることができる。
【0047】
値の間隔が本出願において言及される場合、間隔の下限及び上限は、別段の指示がない限り、常に定義に含まれる。したがって、値の範囲が「X~Yの間」又は「約X~約Yの間」として示される場合、値X及びYは定義に含まれる。
【0048】
本明細書において、「合成ガス」という用語は、少なくとも水素(H2)及び窒素(N2)を含むガス混合物を特定するために使用される。いくつかの実施形態では、合成ガスは水蒸気(H2O)を含んでもよい。
【0049】
「流れ」という用語は、反応チャンバ内で合成ガス生成反応を実施することに関与する様々なガス流を説明するために使用される。以下でより詳細に説明するように、反応は、水素(H2)と、酸素(O2)及び窒素(N2)を含む流れを含み、これらは反応して合成ガスを形成する。
【0050】
したがって、本明細書は、反応器の反応チャンバ内で窒素(N2)及び水素(H2)を含むガスを生成するための革新的な方法及びシステムを提示する。この方法は、反応器に空気を注入し、水素を注入することと、注入された水素の一部を反応チャンバ内の空気由来の酸素と燃焼させることとを含む。反応は、空気中の酸素に対して過剰化学量論的モル過剰の水素の存在下で起こる。反応チャンバ内の燃焼は、空気の注入から生じる速度v1を有する空気流によって生成され、水素の注入から生じる速度v2を有する水素流によって取り囲まれた火炎によって支持され、速度v2は速度v1よりも大きい。
【0051】
したがって、ガスを形成するための反応は、空気中の酸素に対して過剰化学量論的モル過剰の水素の存在下で行われる。「過剰化学量論的モル過剰の水素」によって、反応器に注入される水素(H2)の量は、一方では、注入された全ての酸素を消費して式(2)に従って空気由来の酸素との燃焼反応を可能にするのに十分でなければならず、他方では、注入された水素の一部が燃焼されず、生成された合成ガス中に見出され得ることを確実にするのに十分でなければならないことが理解される。したがって、酸素に対する過剰化学量論的モル過剰の水素は、H2のO2に対するモル比が必然的に2より大きく、好ましくは少なくとも5.8であることを意味する。いくつかの実施形態によれば、H2のO2に対するモル比は最大で16.7である。
【0052】
したがって、過剰化学量論的に過剰な水素の存在下での水素の燃焼は、反応チャンバ内で水素流によって取り囲まれた空気流によって生成される火炎によって達成される。燃焼は、電気アーク、白熱ワイヤ、スパークプラグ又は任意の他の既知のエネルギー源などの点火装置を使用して開始することができる。したがって、反応チャンバ内では、空気流、したがって火炎は、水素流によって形成される一種のエンベロープ内に囲まれる。空気流の周りの水素のこのエンベロープは、i)反応チャンバに入る空気流と水素流の速度の差、水素流の速度v2が空気流の速度v1より大きいこと、及びii)ガス、すなわち空気及び水素の反応チャンバへの入口の幾何形状のおかげで形成することができる。
【0053】
次に、図面を参照して、方法及びそれを実施することができるシステムのいくつかの特定の実施形態のより詳細な説明を提供する。
【0054】
図1は、特定の実施形態において水素及び窒素をベースとした合成ガスを生成するために使用することができる反応器の一般的な動作原理を示す。反応器は、壁を備える長さLの少なくとも1つの反応チャンバと、空気を供給するための少なくとも1つの第1の手段と、水素を供給するための少なくとも1つの第2の手段とを含むことができる。反応チャンバに空気流及び水素流を供給するための第1及び第2の手段は、チャンバの第1の端部に位置し、第1の端部は、
図1では反応チャンバの底部にある。更に、水素流及び空気流を供給するための手段は、燃焼中に空気流が水素流によって取り囲まれることを可能にするように、すなわち、水素流が空気流の周りにエンベロープを形成することを可能にするように配置される。このようにして、空気流及び水素流を供給するための手段の配置は、反応チャンバ内に中心空気流と周囲の水素流とを提供する。
【0055】
いくつかの実施形態によれば、空気流を供給するための第1の手段は、外径及び外壁を有する管を含むことができ、空気は、第1の端部から第2の端部まで管を通って流れる。一実施形態によれば、空気流が反応チャンバに入る管の第2の端部は、ほぼ反応チャンバの第1の端部のレベルに位置することができる。別の実施形態では、空気流が反応チャンバに入る管の第2の端部は、チャンバの第1の端部から始まる反応チャンバの高さの最初の3分の1内に位置することができる。水素流を供給するための第2の手段は、空気流を供給するための管の外径によって画定され、管の外壁から反応チャンバの内壁まで垂直に延在する空間を含むことができる。
【0056】
別の可能な構成によれば、反応チャンバは円筒形状であってもよく、水素流を供給するための第2の手段は、空気流を供給するための管の外径によって区切られ、管の外壁から反応チャンバの内壁まで垂直に延在する環状空間を含むことができる。
【0057】
一実施形態では、反応器自体は、
図1により詳細に示されるような配置を形成する2つの同心管からなることができる。
図1に示される管配置において、外管は、反応チャンバの壁を形成するとともに、水素流が供給される環状空間を画定する。内管は、空気を注入するために使用され、内管の外壁から外管の内壁まで延在する空間は、水素流を供給するための環状空間を形成する。
【0058】
更なる実施形態では、反応器自体は、
図2により詳細に示されるような配置を形成する3つの管からなることができる。この実施形態によれば、反応器は、空気注入のための第1の管、H
2注入のための第2の管、及び最後に、反応チャンバ壁を画定する第3の管を含むことができる。
図2に示される配置において、水素は、空気注入管の外径及び水素注入管の内径によって画定される環状空間に注入される。
図2に示すように、水素注入管の上端は、反応チャンバ壁を画定する管の下端で終端する。また、
図2に示されるように、空気注入管及び水素注入管の上端は、実質的に整列され得、空気流及び水素流は、同じレベルで反応チャンバに入る。
【0059】
一実施形態によれば、本技術による窒素及び水素をベースとした合成ガスを生成するためのシステムは、例えば、
図3及び4に示されるように、並列の複数の反応器を備えることができる。したがって、システムは、
図1に示されるタイプ又は
図2に示されるタイプであり得る各反応器が空気流及び水素流を受容する、多数の反応器を含有する筐体を備えることができる。一方では空気、他方では水素が、各ガスのための共通の入口によってシステムに供給され得る。次いで、各ガスを各反応器に供給する。次いで、各反応器で生成された合成ガスを集め、共通の出口を介してシステムから排出することができる。
【0060】
更なる実施形態では、本技術による、窒素及び水素をベースとした合成ガスを生成するためのシステムは、単一の反応チャンバ内で、過剰化学量論的過剰の存在下で、空気由来の酸素による水素の複数の燃焼反応を生成するように設計される、
図5に示されるような反応器を備えることができる。したがって、反応器は、空気の主流及び水素の主流を受け入れるように配置することができ、主流の各々は、いくつかの二次流に分離する。反応チャンバに入る二次空気流と水素流の各組合せについて、二次空気流の速度v
1は、二次水素流の速度v
2よりも低い。したがって、反応チャンバ内で、各二次空気流は、関連する二次水素流によって形成される一種のエンベロープとなる。二次空気流と水素流との各組合せによって生成される火炎も、関連する二次水素空気流によって包囲される。二次空気流と水素流との各組合せに対して生成された合成ガスは、反応器出口で包括的合成ガス流として回収することができる。
【0061】
一実施形態によれば、合成ガスを生成するための反応器は、反応器の反応チャンバ内の温度がNOx生成を制限するために特定のレベルに維持されるように設計される。したがって、いくつかの実施形態によれば、システムは、燃焼中に反応チャンバを約500℃~約1500℃の間の平均温度Tに維持するように設計される。燃焼中の反応チャンバ内の平均温度Tは、例えば、約500℃、600℃、700℃、800℃、900℃、1000℃、1100℃、1200℃、1300℃、1400℃若しくは1500℃に維持することができ、又はこれらの温度の間に含まれる任意の値とすることができる。更に、いくつかの実施形態では、反応チャンバの端部の領域の温度を制御して、そこで特定の温度を維持することが可能である。例えば、システムは、ガス流が混合する反応チャンバへの入口付近の領域において、約600℃~約1500℃の間の温度T1を維持するように設計することができる。したがって、温度T1は、約600℃、700℃、800℃、900℃、1000℃、1100℃、1200℃、1300℃、1400℃若しくは1500℃、又はこれらの温度の間に含まれる任意の値に維持することができる。他の実施形態では、システムは、反応チャンバ出口付近の領域の温度T2を約500℃~約1500℃の間に維持するように設計することができる。場合によっては、反応チャンバ出口付近の領域における温度T2は、約500℃~約1200℃の間に含まれるように制御することができる。したがって、温度T2は、約500℃、600℃、700℃、800℃、900℃、1000℃、1100℃、1200℃、1300℃、1400℃若しくは1500℃又はこれらの温度の間に含まれる任意の値に維持することができる。温度制御は、いくつかの異なる方法で実行することができ、その詳細を以下に示す。また、上述した反応チャンバの温度は、温度測定が行われる正確な位置に応じて変化し得ることに留意されたい。更に、上述の温度値は、1500℃を超える温度に達し得る反応自体の最高温度とは異なり得ることに留意されたい。実際、水素-酸素火炎のレベルでの温度は、2000℃を超える値に達することさえあり得る。
【0062】
いくつかの実施形態によれば、反応チャンバ内の特定の温度を制御及び維持することに加えて、燃焼を促進するために圧力を制御することが可能である。実施形態によれば、反応チャンバ内の圧力は、少なくとも1atmであるように制御される。反応チャンバ内の圧力は、例えば、約1atm~10atmの間で変化し得る。したがって、圧力は、1atm、2atm、3atm、4atm、5atm、6atm、7atm、8atm、9atm、10atm、又はこれらの値の間の任意の圧力であり得る。
【0063】
先に述べたように、空気流と水素流は反応チャンバ内で異なる速度を有していなければならず、水素流の速度は空気流の速度よりも大きい。いくつかの実施形態では、速度v1で反応チャンバ内に中心流を形成するように、空気が反応器に注入される。この速度v1は、反応チャンバ内の温度T1及び圧力に補正された供給空気の体積流量から計算され、この流量は、空気流注入管に垂直な表面積で除算される。いくつかの実施形態によれば、速度v1は、約1m/s~約200m/sであり得る。例えば、速度v1は、約5m/s~約150m/s、又は約10m/s~約100m/sであってもよい。したがって、中心空気流の速度v1は、1m/s、5m/s、10m/s、20m/s、30m/s、40m/s、50m/s、60m/s、70m/s、80m/s、90m/s、100m/s、110m/s、120m/s、130m/s、140m/s、150m/s、160m/s、170m/s、180m/s、190m/s、200m/s、又はこれらの値の間の任意の速度であり得る。
【0064】
いくつかの実施形態によれば、速度v2は、約2m/s~約220m/sであり得る。例えば、速度v2は、約10m/s~約200m/s、又は約15m/s~約175m/sであり得る。したがって、水素流の速度v2は、空気流の速度v1よりも大きい限り、2m/s、5m/s、10m/s、20m/s、30m/s、40m/s、50m/s、60m/s、70m/s、80m/s、90m/s、100m/s、110m/s、120m/s、130m/s、140m/s、150m/s、160m/s、170m/s、180m/s、190m/s、200m/s、210m/s、220m/s又はこれらの値の間の任意の速度であり得る。
【0065】
図1に示し、先に説明したように、一実施形態によれば、水素は、空気を供給するための管の外壁と反応器の内壁との間に形成された空間において反応器に供給することができ、この空間は、例えば、反応器壁が円筒形である場合、環状である。このようにして、反応チャンバに注入される水素は、速度v
2が空気流の速度(v
1)よりも大きくなければならない水素流を構成する。反応チャンバに入る水素流の速度v
2は、反応器内の温度T
1及び圧力に対して補正された注入水素の体積流量から計算され、この流量は、注入水素が循環する空間の流れに垂直な表面積で除算され、この空間は好ましくは上記で説明したように環状である。
【0066】
図2に示し、先に説明したように、別の実施形態によれば、水素は、空気を供給するための管の外壁と水素を供給するための管の内壁との間に形成された空間に注入することによって反応器に供給され、この空間は、例えば、水素を供給するための管の壁が円筒形の形状である場合、環状である。このようにして、反応チャンバに注入される水素は、速度v
2が空気流の速度(v
1)よりも大きくなければならない水素流を構成する。反応チャンバに入る水素流の速度v
2は、反応器内の温度T
1及び圧力に対して補正された注入水素の体積流量から計算され、この流量は、注入水素が循環する空間の流れに垂直な表面積で除算され、この空間は好ましくは上記で説明したように環状である。
【0067】
空気及び水素は、水素と空気由来の酸素との間の燃焼反応を支持するために、特定のモル流量で反応器に供給されるが、過剰化学量論的過剰量の水素を有する。いくつかの実施形態によれば、空気はモル流量F1で反応器に供給され、水素はモル流量F2で供給され、比F2/F1は約1.2~約3.5の間である。別の実施形態によれば、水素の空気に対するモル流量比F2/F1は、約2~約3であってもよく、又は約2.8~約3.5であってもよい。したがって、F2/F1比は、約1.2若しくは1.5若しくは2若しくは2.5若しくは3若しくは3.5又はこれらの値の間の任意の比であり得る。いくつかの実施形態によれば、F2/F1比は、約3、より具体的には約2.8とすることができ、これは、注入された空気中に含まれる酸素のH2Oへの完全な変換を可能にしながら、反応(2)に従ってアンモニアを製造するのに必要なH2及びN2の割合を含む合成ガスを生成するための理論モル比に対応する。
【0068】
先に示したように、合成ガスが生成される反応器の反応チャンバは、水素流と空気流とが反応チャンバ内で混合する領域(例えば、チャンバの下端)と、反応チャンバの他端の反応チャンバ出口に近い領域(例えば、チャンバの上端)との間の距離に実質的に対応する長さLを有することができる。反応チャンバの長さLは、反応チャンバの容積が、反応チャンバ内部での空気及び水素の最小滞留時間を可能にするようなものであり得る。
【0069】
一実施形態によれば、長さLは、反応チャンバ内のガスの滞留時間tが0.001~1秒であるような長さである。別の実施形態によれば、滞留時間は0.01~0.1秒である。
【0070】
滞留時間は以下のように定義される。
(3) t=V/((Q2+Q1)*(T+273)/298/P)*K
式中、Vは反応チャンバの容積であり、Q2は供給されるH2の標準体積流量(25℃、1atm)であり、Q1は供給される空気の標準体積流量(25℃、1atm)であり、Tは反応チャンバ内の平均温度(℃)であり、最後に、Pは反応器内の圧力(atm)である。最後に、Kは単位定数である。空気流及び水素流の各々について、モル流量と標準体積流量との間の関係は、空気及び水素それぞれについて、以下の式によって定義される。
(4) Q1=F1*R*(T+273)/P
及び(5) Q2=F2*R*(T+273)/P
式中、Rは気体定数である。
【0071】
したがって、反応チャンバ内の滞留時間tは、0.001~1秒であり得る。別の実施形態では、滞留時間tは0.01~0.1秒であり得る。したがって、滞留時間tは、0.001若しくは0.002若しくは0.005若しくは0.01若しくは0.015若しくは0.02若しくは0.03若しくは0.04若しくは0.05若しくは0.06若しくは0.07若しくは0.08若しくは0.09若しくは0.1若しくは0.2若しくは0.3若しくは0.4若しくは0.5若しくは0.6若しくは0.7若しくは0.8若しくは0.9若しくは1秒、又はこれらの値の間に含まれる任意の時間であってもよい。
【0072】
いくつかの実施形態によれば、これらの値に限定されないが、反応チャンバの長さLは、約0.10m~3mの間に含まれ得る。長さLは、所望の変換効率を維持するためのシステム容量に達するように決定され得る。
【0073】
上述したように、反応チャンバ内の温度は、燃焼及び合成ガスの生成中に最低温度と最高温度との間の特定の値に維持することができる。反応チャンバ内で特定の温度を維持することによって、NOx生成を制限することができる。一定の値に留まるように温度を制御する1つの方法は、壁が非断熱材料で作られた反応チャンバ内で燃焼を行うことである。このようにして、反応チャンバ内の空気由来の酸素による水素の燃焼によって放出される熱は、少なくとも部分的に、非絶縁性壁材料を通して反応チャンバの外側に放散され得る(
図1参照)。そのような非断熱性の材料は、例えば、金属合金などの金属材料であり得る。また、材料は耐食性であることが好ましい。例えば、Inconel(登録商標)などの金属又は別の同等の材料を使用して、反応チャンバの壁を形成することができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、燃焼によって反応チャンバ壁を通して放出された熱は、空気の存在下で対流によって放散され得る。このようにして、燃焼中に空気を反応器の周りに連続的に循環させて、反応チャンバ内の特定の温度を維持することができる。他の実施形態では、反応チャンバの壁を通して放散される熱は、伝熱流体が循環する装置によって回収することができる。伝熱流体が液体、油又は気体である熱交換装置を使用することができる。そのような装置は、例えば、反応器を取り囲み、伝熱流体が循環するジャケットを含むことができる。一実施形態では、反応チャンバの壁を通して放散される熱を使用して、チャンバを取り囲む装置内を循環する水を加熱し、蒸気を発生させることができる。反応器によって放出された熱を回収することは、熱交換装置内を循環する適切な品質の水を用いて過熱蒸気を発生させるために特に重要であり得る。更に、いくつかの実施形態では、このようにして発生した蒸気は、方法において、別の方法において必要とされる熱を少なくとも部分的に生成するために、又は電気を発生させるために再利用することができる。例えば、生成された過熱蒸気は、発電に使用される蒸気タービンに動力を供給するために使用することができる。
【0075】
したがって、上述のシステムによって生成され、反応器を出る合成ガスは、窒素(N2)及び水素(H2)、並びに特定の水蒸気含有量を含む。したがって、反応器の出口におけるガスは湿潤原料ガスであり、これを次に乾燥して乾燥ガスを回収することができる。原料ガスは、公知の水蒸気分離手段により乾燥することができる。いくつかの実施形態では、原料ガス乾燥及び水回収装置は、冷却凝縮ユニットを含んでもよい。必要に応じて、例えば吸着乾燥媒体などの他の水蒸気分離手段を使用することも可能である。次に、原料合成ガスの乾燥中に回収された水は、以下に説明するように、例えば反応器に供給される水素を生成するために、方法において再使用することができる。
【0076】
持続可能な開発に関連して、合成ガスを生成するために使用される水素が、再生可能な供給源(水力、風力又は太陽)からの電気によって動力を供給される水電解システムによって生成されることが提案される。特定の実施形態では、水電解システムは、上述のように反応器によって放出された熱を回収することによって得られる過熱蒸気から少なくとも部分的に発生した電気を使用することができる。更に、水の電気分解によって水素を得るために使用される水は、少なくとも部分的に、上で詳述したように、反応器を出る合成ガスの乾燥中に回収された水に由来し得る。あるいは、合成ガスの乾燥中に回収された水は、上で説明したように、反応器によって放出された熱を回収するための装置内の伝熱流体として、少なくとも部分的に使用することができる。
【0077】
窒素及び水素を含む本技術によって得られる合成ガスは、これらの2つのガスが必要とされる様々な工業方法において使用することができる。そのような工業方法は、好ましくはアンモニアの生成を含むが、アンモニア合成に必要とされるものとは異なるモル比を有するH2/N2混合物を使用する他の工業方法もまた、本技術によって生成される合成ガスを使用することができる。
【0078】
アンモニア生成における使用が意図される合成ガスを得るために、注入される水素のモル流量の注入される空気のモル流量に対する比は、好ましくは2.8~3.5の間、より具体的には約3、より具体的には約2.8であり得る。したがって、注入される水素のモル流量の注入される空気のモル流量に対する比2.8を使用する場合、本技術を使用して、反応器出口において以下のモル組成を有する合成ガスを得ることが期待される。
・N2:22.0%
・H2:66.3%
・H2O:11.7%
・NOx:微量。
【0079】
アンモニア生成に直接使用できる合成ガスを生成するために、2.8~3.5のH2/空気モル比を使用して反応器に供給することが好ましいが、水素が空気由来の酸素と比較して過剰化学量論的に過剰に注入される限り、2.8未満のH2/空気比を使用することも絶対的に可能であることに留意されたい。したがって、直接アンモニア合成に必要なH2/N2モル比よりも低いH2/N2モル比を有する合成ガスが得られるが、H2/N2比を調整するために必要な量の水素(例えば電解水素)を添加することで十分である。
【0080】
本明細書に記載の技術は、いくつかの利点を有する。本発明は、水素及び窒素をベースとした合成ガス、特にアンモニアを合成するために使用することができる合成ガスを生成するための、実施が容易で比較的安価な方法を提供する。したがって、本技術による合成ガスの生成は、「グリーン」アンモニアを生成するための方法、すなわち、温室効果ガス(GHG)排出がない、又は実質的にないライフサイクルを有するアンモニア生成につながる。
【実施例】
【0081】
図2に示すような配置を画定するように、小規模反応器を構築した。この反応器は、Inconel 600(商標)管から構成された。各管について、以下の寸法を有する。
・空気注入管: O.D.=6.39mm、 I.D.=4.12mm
・H
2注入管: O.D.=12.7mm、 I.D.=8.75mm
・外側管: O.D.=19.05mm、 I.D.=13.71mm
I.D.=内径及びO.D.=外径。
【0082】
外側管は、長さL=347mmを有する反応器の反応チャンバの壁を画定する。外管の内径及びこの長さLに基づいて、これは51.29cm3に等しい内部容積Vとなる。
【0083】
ノズルから32.37mmの垂直距離に位置する第1の熱電対により、近接温度レベル、すなわち、T1を測定することが可能となる。ノズルから約340mmの垂直距離で反応器出口付近に位置する第2の熱電対により、温度レベルT2を測定することが可能とする。NO含有量は、専用分析器を使用して直接かつ連続的に測定される。反応器を出て分析器に循環するガスの一部は、約28℃の温度である。NOは、窒素酸化物の代表と考えられる。
【0084】
空気及びH2流量(それぞれQ1及びQ2)を変化させて、一連の試験を行った。以下の表は、9つの試験について得られた主な結果を示す。これらの試験では、Q2/Q1比を常に3.50に等しく維持しながら、流量Q1及びQ2を変化させる。これは、H2/N2モル比が3.90に等しい、N2及びH2をベースとした合成ガスを生成する。
【0085】
空気流速v1は、空気注入管の内径によって画定される垂直面と、温度T1で補正された空気の体積流量と、反応チャンバ内の圧力とから計算される。H2流速(v2)は、水素注入管の内径及び空気注入管の外径によって区切られる環状空間の表面積と、温度T1に補正されたH2の体積流量及び反応チャンバ内の圧力とから計算される。
【0086】
反応器内の滞留時間tは、平均温度(T1+T2)/2を考慮し、反応器内の圧力レベルP(1atm)を考慮して、反応チャンバの容積を体積流量Q1+Q2の合計(25℃(298K)及び1atmにおける標準流量である)で割ることによって、以下の式に従って計算される。
t=V/(Q1+Q2)*1000/60*((T1+T2)/2+273)/298/P
【0087】
【0088】
表に示すように、各試験で得られたガスのNO含有量は、有意に変化しなかった。統計分析により、信頼区間+/-0.61ppm(95%の確率に対するスチューデント比に基づく)で平均値10.54ppmが得られる。入力の流量(Q1及びQ2)を増加させると、滞留時間が0.095から0.041秒に変化するが、流出ガスのNO含有量に有意な影響を及ぼさない。
【0089】
本技術の特定の実施形態について上に説明したが、本技術はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。本技術の範囲から逸脱することなく、上述の実施形態のどれか一方に対していくつかの修正を行うことができる。
【国際調査報告】