(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-17
(54)【発明の名称】安定なAIGS膜
(51)【国際特許分類】
C09K 11/62 20060101AFI20240410BHJP
C09K 11/08 20060101ALI20240410BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
C09K11/62 ZNM
C09K11/08 G
G02B5/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560604
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(85)【翻訳文提出日】2023-11-29
(86)【国際出願番号】 US2022022565
(87)【国際公開番号】W WO2022212517
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505082822
【氏名又は名称】ナノシス・インク.
【住所又は居所原語表記】233 S.Hillview Drive Milpitas,CA 95035 U.S.A
(74)【代理人】
【識別番号】100116713
【氏名又は名称】酒井 正己
(74)【代理人】
【識別番号】100179844
【氏名又は名称】須田 芳國
(72)【発明者】
【氏名】グオ,ウェンツァオ
(72)【発明者】
【氏名】タンジララ,ラビスバーシュ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,チュンミン
(72)【発明者】
【氏名】ホッツ,チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】バロン,アラン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,ウンヒ
【テーマコード(参考)】
2H148
4H001
【Fターム(参考)】
2H148AA00
2H148AA01
2H148AA05
2H148AA09
4H001CA02
4H001CC04
4H001CC05
4H001CC08
4H001CC13
4H001XA16
4H001XA31
4H001XA47
4H001XA49
(57)【要約】
Ag、In、Ga、及びS(AIGS)ナノ構造と、1種若しくは複数種の金属アルコキシド、1種若しくは複数種の金属アルコキシド加水分解生成物、1種若しくは複数種の金属ハロゲン化物、1種若しくは複数種の金属ハロゲン化物加水分解生成物、1種若しくは複数種の有機金属化合物、又は1種若しくは複数種の有機金属加水分解生成物、又はそれらの組合せと、ナノ構造に結合する少なくとも1種の配位子と、を含む安定な膜が開示される。いくつかの実施形態ではAIGSナノ構造は32%より高い光子変換効率と480~545nmのピーク発光波長を有する。いくつかの実施形態ではナノ構造は24~38nmのFWHMを有する発光スペクトルを有する。いくつかの実施形態ではナノ構造は黄色光及び空気貯蔵件下で24時間後に少なくとも30%の光子変換効率(PCE)を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ag、In、Ga、及びS(AIGS)ナノ構造と、
1種若しくは複数種の金属アルコキシド、1種若しくは複数種の金属アルコキシド加水分解生成物、1種若しくは複数種の金属ハロゲン化物、1種若しくは複数種の金属ハロゲン化物加水分解生成物、1種若しくは複数種の有機金属化合物、又は1種若しくは複数種の有機金属加水分解生成物、又はそれらの組合せと、
少なくとも1種の配位子と
を含む膜であって、
前記膜が、約450nmの波長を有する青色光源を使用して励起された場合、480~545nmのピーク発光波長において32%より高い光子変換効率(PCE)を示し、且つ
前記膜のPCEが、黄色光及び空気貯蔵件下で24時間後に少なくとも30%である、膜。
【請求項2】
前記ナノ構造が、40nm未満の半値全幅(FWHM)を有する発光スペクトルを有する、請求項1に記載の膜。
【請求項3】
前記ナノ構造が24~38nmのFWHMを有する発光スペクトルを有する、請求項1に記載の膜。
【請求項4】
前記ナノ構造が27~32nmのFWHMを有する発光スペクトルを有する、請求項1に記載の膜。
【請求項5】
前記ナノ構造が29~38nmのFWHMを有する発光スペクトルを有する、請求項1に記載の膜。
【請求項6】
前記ナノ構造が80~99.9%の量子収率(QY)を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の膜。
【請求項7】
前記ナノ構造が85~95%のQYを有する、請求項6に記載の膜。
【請求項8】
前記ナノ構造が約86~94%のQYを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の膜。
【請求項9】
前記ナノ構造が0.8以上のOD
450/質量(mL・mg
-1・cm
-1)を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の膜。
【請求項10】
前記ナノ構造が、包含的範囲0.8~2.5のOD
450/質量(mL・mg
-1・cm
-1)を有する、請求項9に記載の膜。
【請求項11】
前記ナノ構造が、包含的範囲0.87~1.9のOD
450/質量(mL・mg
-1・cm
-1)を有する、請求項10に記載の膜。
【請求項12】
透過型電子顕微鏡(TEM)による前記ナノ構造の平均直径が10nm未満である、請求項1~11のいずれか一項に記載の膜。
【請求項13】
前記平均直径が約5nmである、請求項12に記載の膜。
【請求項14】
前記発光の少なくとも約80%がバンド端発光である、請求項1~13のいずれか一項に記載の膜。
【請求項15】
前記発光の少なくとも約90%がバンド端発光である、請求項1~13のいずれか一項に記載の膜。
【請求項16】
前記発光の92~98%がバンド端発光である、請求項15に記載の膜。
【請求項17】
前記発光の93~96%がバンド端発光である、請求項15に記載の膜。
【請求項18】
前記少なくとも1種の配位子がポリアミノ配位子である、請求項1~17のいずれか一項に記載の膜。
【請求項19】
前記少なくとも1種のポリアミノ配位子が、ポリアミノアルカン、ポリアミノシクロアルカン、ポリアミノ複素環化合物、ポリアミノ官能基化シリコーン、又はポリアミノ置換エチレングリコールである、請求項18に記載の膜。
【請求項20】
前記ポリアミノ配位子が、2個又は3個のアミノ基によって置換されたC
2~
20アルカン又はC
2~
20シクロアルカンであり、任意選択的に炭素基の代わりに1個又は2個のアミノ基を含む、請求項18に記載の膜。
【請求項21】
前記ポリアミノ配位子が、1,3-シクロヘキサンビス(メチルアミン)、2,2-ジメチル-1,3-プロパルンジアミン、又はトリス(2-アミノエチル)アミンである、請求項20に記載の膜。
【請求項22】
前記少なくとも1種の配位子が、式Iの化合物であって、
【化1】
式中、xは1~100であり、yは0~100であり、且つR
2はC
1~
20アルキルである化合物である、請求項1~17のいずれか一項に記載の膜。
【請求項23】
x=19、y=3、及びR
2=-CH
3である、請求項22に記載の膜。
【請求項24】
前記少なくとも1種の配位子が、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン);(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン;DL-α-リポ酸;3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオール;6-メルカプト-1-ヘキサノール;メトキシポリエチレングリコールアミン(m.w.約500);ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルチオール(m.w.約800);ジエチルフェニルホスホナイト;ジベンジルN,N-ジイソプロピルホスホルアミダイト;ジ-tert-ブチルN,N-ジイソプロピルホスホルアミダイト;トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩;ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルチオール(m.w.約2000);メトキシポリエチレングリコールアミン(m.w.約750);アクリルアミド;又はポリエチレンイミンである、請求項1~17のいずれか一項に記載の膜。
【請求項25】
前記少なくとも1種の配位子が、アミノポリアルキレンオキシド(m.w.約1000)及びメトキシポリエチレングリコールアミン(m.w.約500);アミノポリアルキレンオキシド(m.w.約1000)及び6-メルカプト-1-ヘキサノール;アミノポリアルキレンオキシド(m.w.約1000)及び(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン;並びに6-メルカプト-1-ヘキサノール及びメトキシポリエチレングリコールアミン(m.w.約500)の組合せである、請求項1~17のいずれか一項に記載の膜。
【請求項26】
前記少なくとも1種の配位子が、式IIを有し、
【化2】
式中、R
3及びR
4は、独立して、C
3~
6第二級又は第三級アルキル基であり、R
5は、水素又は任意選択的に置換されたC
1~
6アルキル基である、請求項1~17のいずれか一項に記載の膜。
【請求項27】
R
3及びR
4が、イソプロピル、2-ブチル、2-ペンチル、3-ペンチル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、t-ブチル、2-メチル-2-ペンチル、又は3-メチル-3-ペンチルである、請求項26に記載の膜。
【請求項28】
R
5の前記C
1~
6アルキル基上の任意選択的な置換基が、ニトロ、ハロアルコキシ、アリールオキシ、アルアルキルオキシ、アルキルチオ、スルホンアミド、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、ウレイド、グアニジノ、カルバメート、カルボキシ、アルコキシカルボニル、カルボキシアルキル、又は-C(=O)R
7(式中、R
7は、1個若しくは複数の他のアルコキシ基によってさらに置換されていてもよいアルコキシ基である)である、請求項26に記載の膜。
【請求項29】
R
7が、次式:
CH
p(CH
2-O-)
4-p
(式中、pは0~3である)を有する、請求項28に記載の膜。
【請求項30】
R
7が、
【化3】
である、請求項28に記載の膜。
【請求項31】
R
7が、
【化4】
であり、且つ式IIが、
【化5】
である、請求項30に記載の膜。
【請求項32】
前記少なくとも1種の配位子が、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]である、請求項26に記載の膜。
【請求項33】
前記少なくとも1種の配位子が、2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジイルビス(2-メチルプロパン-2,1-ジイル)ビス[3-[3-(tert-ブチル)-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル]プロパノエート]である、請求項26に記載の膜。
【請求項34】
ハロゲン化ガリウムをさらに含む、請求項26~33のいずれか一項に記載の膜。
【請求項35】
前記ハロゲン化ガリウムが三塩化ガリウムである、請求項34に記載の膜。
【請求項36】
少なくとも1種の有機樹脂をさらに含む、請求項1~35のいずれか一項に記載の膜。
【請求項37】
前記少なくとも1種の有機樹脂が硬化されている、請求項36に記載の膜。
【請求項38】
前記膜が5~15μmの厚さである、請求項1~37のいずれか一項に記載の膜。
【請求項39】
前記少なくとも1種の金属アルコキシドが金属C
1~
10アルコキシドであり、前記金属が、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ガリウム、又はバリウムである、請求項1~38のいずれか一項に記載の膜。
【請求項40】
前記1種若しくは複数種の金属アルコキシド、1種若しくは複数種の金属アルコキシド加水分解生成物、1種若しくは複数種の金属ハロゲン化物、1種若しくは複数種の金属ハロゲン化物加水分解生成物、1種若しくは複数種の有機金属化合物、又は1種若しくは複数種の有機金属加水分解生成物、又はそれらの組合せが、ジルコニウム(IV)テトラメトキシド、ジルコニウム(IV)テトラエトキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-n-プロポキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-イソプロポキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-n-ブトキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-イソブトキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-n-ペントキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-イソペントキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-n-ヘキソキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-イソヘキソキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-n-ヘプトキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-イソヘプトキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-n-オクトキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-n-イソオクトキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-n-ノノキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-n-イソノノキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-n-デシロキシド、又はジルコニウム(IV)テトラ-n-イソデシロキシドである、請求項1~39のいずれか一項に記載の膜。
【請求項41】
前記1種若しくは複数種の金属アルコキシド、1種若しくは複数種の金属アルコキシド加水分解生成物、1種若しくは複数種の金属ハロゲン化物、1種若しくは複数種の金属ハロゲン化物加水分解生成物、1種若しくは複数種の有機金属化合物、又は1種若しくは複数種の有機金属加水分解生成物、又はそれらの組合せが、ジルコニウム(IV)テトラ-n-プロポキシドである、請求項1~40のいずれか一項に記載の膜。
【請求項42】
前記1種若しくは複数種の金属アルコキシド、1種若しくは複数種の金属アルコキシド加水分解生成物、1種若しくは複数種の金属ハロゲン化物、1種若しくは複数種の金属ハロゲン化物加水分解生成物、1種若しくは複数種の有機金属化合物、又は1種若しくは複数種の有機金属加水分解生成物、又はそれらの組合せが、ジルコニウム(IV)テトラn-プロポキシドであり、且つ前記膜が、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]又は2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジイルビス(2-メチルプロパン-2,1-ジイル)ビス[3-[3-(tert-ブチル)-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル]プロパノエート]をさらに含む、請求項1に記載の膜。
【請求項43】
前記膜が三塩化ガリウムをさらに含む、請求項42に記載の膜。
【請求項44】
前記1種若しくは複数種の金属アルコキシド、1種若しくは複数種の金属アルコキシド加水分解生成物、1種若しくは複数種の金属ハロゲン化物、1種若しくは複数種の金属ハロゲン化物加水分解生成物、1種若しくは複数種の有機金属化合物、又は1種若しくは複数種の有機金属加水分解生成物、又はそれらの組合せが、前記組成物中に0.03~約3重量%の量で存在する、請求項1~43のいずれか一項に記載の膜。
【請求項45】
少なくとも1種の散乱媒体をさらに含む、請求項1~44のいずれか一項に記載の膜。
【請求項46】
前記散乱媒体がTiO
2粒子を含む、請求項45に記載の膜。
【請求項47】
(a)AIGSナノ構造、1種若しくは複数種の金属アルコキシド、1種若しくは複数種の金属アルコキシド加水分解生成物、1種若しくは複数種の金属ハロゲン化物、1種若しくは複数種の金属ハロゲン化物加水分解生成物、1種若しくは複数種の有機金属化合物、又は1種若しくは複数種の有機金属加水分解生成物、又はそれらの組合せ、及び少なくとも1種の配位子を提供することと、
(b)少なくとも1種の有機樹脂を(a)のAIGSナノ構造と混和することと、
(c)第1のバリア層上に、前記混和されたAIGSナノ構造、前記少なくとも1種の配位子、及び前記少なくとも1種の有機樹脂を含む第1の膜を調製することと、
(d)前記膜を硬化させることと、
(e)前記第1のバリア層と第2のバリア層との間に前記第1の膜を封入することと
を含む、請求項29~46のいずれか一項に記載の膜を調製する方法であって、前記封入された膜が、約450nmの波長を有する青色光源を使用して励起された場合、480~545nmのピーク発光波長において32%より高いPCEを示す、方法。
【請求項48】
前記封入された膜が空気中で青色LED光源に曝露される前に実施される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
不活性雰囲気下で実施される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
(a)のAIGSナノ構造、1種若しくは複数種の金属アルコキシド、1種若しくは複数種の金属アルコキシド加水分解生成物、1種若しくは複数種の金属ハロゲン化物、1種若しくは複数種の金属ハロゲン化物加水分解生成物、1種若しくは複数種の有機金属化合物、又は1種若しくは複数種の有機金属加水分解生成物、又はそれらの組合せ、及び配位子の混合物中での少なくとも1種の酸素反応性材料の添加、(b)の混和物中での少なくとも1種の酸素反応性材料の添加、及び/又は(c)で調製した前記第1の膜上での少なくとも1種の酸素反応性材料を含む第2の膜の形成、並びに/或いは(c)で調製した前記第1の膜上での酸素及び/又は水を一時的に遮断する犠牲バリア層の形成、並びに前記膜のPCEの測定と、それに続く前記犠牲バリア層の除去をさらに含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記2層のバリア層が酸素及び/又は水を排除する、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
請求項1~51のいずれか一項に記載の膜を含むデバイス。
【請求項53】
(a)第1の導電層と、
(b)第2の導電層と、
(c)前記第1の導電層と前記第2の導電層との間の請求項1~46のいずれか一項に記載の膜と
を含む、ナノ構造成形物品。
【請求項54】
バックプレーンと、
前記バックプレーン上に配置されたディスプレイパネルと、
前記ディスプレイパネル上に配置された請求項1~46のいずれか一項に記載の膜と
を含む、ナノ構造カラーコンバーター。
【請求項55】
膜が、パターン化されたAIGSナノ構造を含む、請求項54に記載のナノ構造カラーコンバーター。
【請求項56】
前記バックプレーンが、LED、LCD、OLED、又はマイクロLEDを含む、請求項54に記載のナノ構造カラーコンバーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノテクノロジーの分野に関する。より詳細には、本発明は、約450nmの波長を有する青色光源を使用して励起された場合、及び黄色光及び空気貯蔵条件に曝露された後、480~545nmのピーク発光波長において30%を超える高い高光子変換効率(PCE)を有し、薄く、重金属を含まず、安定なAg-In-Ga-S色変換膜を提供する。
【背景技術】
【0002】
色の効率的な変換は、照明及びディスプレイ用途において重要である。ディスプレイ用途では、約450nmの波長を有する青色光源がバックライトとして最も一般的に使用され、多くの用途では、カドミウム及び鉛などの重金属を含まない材料が必要とされる。
【0003】
効率の向上によって、無駄な電力の削減、並びに発光の増加がもたらされる。色変換薄膜は、放出された光子の数を光源の光子数で割ったものとして定義される光子変換効率(PCE)によって特徴付けられる。ディスプレイに使用される緑色重金属フリーQD色変換薄膜は、一般的に、励起される青色光で吸収が制限されるため、性能が低下する。青色吸収は、使用される材料系によって本質的に制限されることが多く、その結果、十分な450nmの光を吸収するためにはるかに厚い膜が必要となる。
【0004】
QDインクの堆積によって形成される薄膜は、通常UV照射によって硬化される。多くの場合、これに続いて空気の存在下180℃で最大1時間の熱処理が行われる。こうした処理工程を通じての不安定性のため、吸収不良と光変換不良とが合わさりこれらの膜の光子変換効率は低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高いバンド端発光(BE)、狭い半値全幅(FWHM)、高い量子収率(QY)、及び低減された赤色シフトを有し、且つ約450nmの励起波長を使用して、480~545nmの間のピーク発光波長において高い(黄色光及び空気貯蔵条件に曝露される前で32%を超えた)光子変換効率(PCE)を有する膜の生成に有用である、AIGSナノ構造に対する当該技術分野におけるニーズが依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、約450nmの波長を有する青色光源を使用して励起された場合、及び黄色光条件での空気への中間曝露の後、480~545nmのピーク発光波長において30%を超える高光子変換効率(PCE)を有する、薄く、重金属を含まず、安定なAIGSナノ構造色変換膜を提供する。これは、1種若しくは複数種の金属アルコキシド、1種若しくは複数種の金属アルコキシド加水分解生成物、1種若しくは複数種の金属ハロゲン化物、1種若しくは複数種の金属ハロゲン化物加水分解生成物、1種若しくは複数種の有機金属化合物、又は1種若しくは複数種の有機金属加水分解生成物、又はそれらの組合せ、及び1種若しくは複数種の配位子を含有するインク配合物中でAIGSナノ構造を使用することによって達成される。いくつかの実施形態においては、インクの取り扱いのすべて、それに続く膜の堆積、処理及び測定は、青色光又は紫外光に曝露する前に無酸素環境下で行われる。いくつかの実施形態において、AIGSナノ構造は28~38nmのFWHMを有する。他の実施形態において、AIGSナノ構造は32nm未満のFWHMを有する。いくつかの実施形態において、ナノ構造インクの取り扱い、インクの堆積、膜の処理及び測定の全てを無酸素環境で行うとともに、少なくとも1種のポリアミノ配位子をAIGSナノ構造に添加し膜層を作製することによって、狭いFWHMが達成される。
【0007】
QDインクの堆積によって形成される薄膜は、通常UV照射によって硬化される。多くの場合、これに続いて空気の存在下180℃で最大1時間までの熱処理が行われる。こうした処理工程を通じての不安定性のため、吸収不良と光変換不良とが合わさり、その光子変換効率は低下することが見いだされている。
【0008】
本明細書中、1種若しくは複数種の金属アルコキシド、1種若しくは複数種の金属アルコキシド加水分解生成物、1種若しくは複数種の金属ハロゲン化物、1種若しくは複数種の金属ハロゲン化物加水分解生成物、1種若しくは複数種の有機金属化合物、又は1種若しくは複数種の有機金属加水分解生成物、又はそれらの組合せ、及び少なくとも1種の配位子を含むインク配合物中にAIGSナノ構造を含む膜であって、黄色光及び空気貯蔵条件に24時間曝露された後に30%を超える(>)PCEを達成する膜が開示される。いくつかの実施形態において、AIGSナノ構造及び少なくとも1種の配位子を含み、且つ約450nmの波長を有する青色光源を使用して励起された場合、480~545nmのピーク発光波長において32%より高いPCEを示す膜が提供される。いくつかの実施形態において、AIGSナノ構造、1種若しくは複数種の金属アルコキシド、1種若しくは複数種の金属アルコキシド加水分解生成物、1種若しくは複数種の金属ハロゲン化物、1種若しくは複数種の金属ハロゲン化物加水分解生成物、1種若しくは複数種の有機金属化合物、又は1種若しくは複数種の有機金属加水分解生成物、又はそれらの組合せ、及び少なくとも1種の配位子を含む膜は、空気中、黄色光及び空気貯蔵条件に曝露された後、30~39%のPCEを示す。いくつかの実施形態において、AIGSナノ構造、1種若しくは複数種の金属アルコキシド、1種若しくは複数種の金属アルコキシド加水分解生成物、1種若しくは複数種の金属ハロゲン化物、1種若しくは複数種の金属ハロゲン化物加水分解生成物、1種若しくは複数種の有機金属化合物、又は1種若しくは複数種の有機金属加水分解生成物、又はそれらの組合せ、及び少なくとも1種の配位子を含む膜は、空気中、黄色光条件に曝露された後、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、又は約39%のPCEを示す。
【0009】
いくつかの実施形態において、膜は薄い(5~15μm)色変換膜である。
【0010】
これらの膜は、調製されると、良好な(>95%)青色吸収を有するが、中程度の発光特性を有する。しかしながら、酸素及び/又は光の非存在下で処理し、及び/又はUV若しくは青色光に曝露する前に封入すると、これらの膜の発光特性は著しく改善される。
【0011】
(a)AIGSナノ構造、1種若しくは複数種の金属アルコキシド、1種若しくは複数種の金属アルコキシド加水分解生成物、1種若しくは複数種の金属ハロゲン化物、1種若しくは複数種の金属ハロゲン化物加水分解生成物、1種若しくは複数種の有機金属化合物、又は1種若しくは複数種の有機金属加水分解生成物、又はそれらの組合せ、及び少なくとも1種の配位子を提供することと、
(b)少なくとも1種の有機樹脂を(a)のAIGSナノ構造と混和することと、
(c)第1のバリア層上に、混和されたAIGSナノ構造、少なくとも1種の配位子、及び少なくとも1種の有機樹脂を含む第1の膜を調製することと、
(d)UV照射及び/又は焼成により膜を硬化させることと、
(e)第1のバリア層と第2のバリア層との間に第1の膜を封入することと、
を含む、AIGS膜を調製する方法であって、封入された膜が、約450nmの波長を有する青色光源を使用して励起された場合、及び黄色光及び空気貯蔵条件に曝露された後、480~545nmのピーク発光波長において30%より高い光子変換効率(PCE)を示す方法が提供される。
【0012】
また、
(f)(a)のAIGSナノ構造及び配位子の混合物中での少なくとも1種の酸素反応性材料の添加、(b)の混和物中での少なくとも1種の酸素反応性材料の添加、及び/又は(c)で調製した第1の膜上での少なくとも1種の酸素反応性材料を含む第2の膜の形成、並びに/或いは
(g)(c)で調製した第1の膜上での酸素及び/又は水を一時的に遮断する犠牲バリア層の形成、並びに膜のPCEの測定と、それに続く犠牲バリア層の除去
をさらに含む方法が提供される。
【0013】
また、
(a)熱処理及び/又は測定の前に膜を封入すること、
(b)熱処理若しくは光曝露間の配合物の一部としての酸素反応性材料の使用、並びに/或いは
(c)犠牲バリア層の使用による酸素の一時的遮断
を含む方法が提供される。
【0014】
いくつかの実施形態において、ナノ構造は、40nm未満のFWHMの発光スペクトルを有する。いくつかの実施形態において、ナノ構造は、24~38nmのFWHMの発光スペクトルを有する。いくつかの実施形態において、ナノ構造は、27~32nmのFWHMの発光スペクトルを有する。いくつかの実施形態において、ナノ構造は、29~31nmのFWHMの発光スペクトルを有する。
【0015】
いくつかの実施形態において、ナノ構造は、80~99.9%のQYを有する。いくつかの実施形態において、ナノ構造は、85~95%のQYを有する。いくつかの実施形態において、ナノ構造は、約86~94%のQYを有する。いくつかの実施形態において、ナノ構造は、0.8以上のOD450/質量(mL・mg-1・cm-1)を有する。ODは、光学密度である。いくつかの実施形態において、ナノ構造は、包含的範囲0.8~2.5のOD450/質量(mL・mg-1・cm-1)を有する。いくつかの実施形態において、ナノ構造は、包含的範囲0.87~1.9のOD450/質量(mL・mg-1・cm-1)を有する。いくつかの実施形態において、透過型電子顕微鏡(TEM)によるナノ構造の平均直径は10nm未満である。いくつかの実施形態において、平均直径は約5nmである。
【0016】
いくつかの実施形態において、発光の少なくとも約80%はバンド端発光である。いくつかの実施形態において、発光の少なくとも約90%はバンド端発光である。いくつかの実施形態において、発光の92~98%はバンド端発光である。いくつかの実施形態において、発光の93~96%はバンド端発光である。
【0017】
いくつかの実施形態において、少なくとも1種の配位子は、アミノ配位子、ポリアミノ配位子、メルカプト基を含む配位子、又はシラン基を含む配位子である。ポリアミノ配位子の使用によって、32nm未満のFWHMを有するAIGS含有膜が導かれることが意外にも見いだされた。
【0018】
いくつかの実施形態において、少なくとも1種のポリアミノ配位子は、ポリアミノアルカン、ポリアミノシクロアルカン、ポリアミノ複素環化合物、ポリアミノ官能基化シリコーン、又はポリアミノ置換エチレングリコールである。いくつかの実施形態において、ポリアミノ配位子は、2個又は3個のアミノ基によって置換されたC2~20アルカン又はC2~20シクロアルカンであり、任意選択的に炭素基の代わりに1個又は2個のアミノ基を含む。いくつかの実施形態において、ポリアミノ配位子は、1,3-シクロヘキサンビス(メチルアミン)、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、又はトリス(2-アミノエチル)アミンである。
【0019】
いくつかの実施形態において、配位子は、下記式の化合物である。
【化1】
式中、
xは1~100であり、
yは0~100であり、且つ
R
2はC
1~20アルキルである。
【0020】
いくつかの実施形態において、x=19、y=3、及びR2=-CH3である。
【0021】
いくつかの実施形態において、配位子は、式IIの化合物である。
【化2】
式中、R
3及びR
4は、独立して、C
3~6第二級又は第三級アルキル基であり、R
5は、水素又は任意選択的に置換されたC
1~6アルキル基である。
【0022】
いくつかの実施形態において、R3及びR4は、イソプロピル、2-ブチル、2-ペンチル、3-ペンチル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、t-ブチル、2-メチル-2-ペンチル、又は3-メチル-3-ペンチルである。
【0023】
いくつかの実施形態において、R5のC1~6アルキル基上の任意選択的な置換基は、ニトロ、ハロアルコキシ、アリールオキシ、アルアルキルオキシ、アルキルチオ、スルホンアミド、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、ウレイド、グアニジノ、カルバメート、カルボキシ、アルコキシカルボニル、カルボキシアルキル、又はC(=O)R7(式中、R7は、1個若しくは複数の他のアルコキシ基によってさらに置換されていてもよいアルコキシ基である)である。
【0024】
いくつかの実施形態において、R7は、次式:
CHp(CH2-O-)4-p
(式中、pは0~3である)を有する。
【0025】
いくつかの実施形態において、R
7は、
【化3】
である。
【0026】
いくつかの実施形態において、R
7は、
【化4】
であり、且つ式IIは、
【化5】
である。
【0027】
いくつかの実施形態において、少なくとも1種の配位子は、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]又は2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジイルビス(2-メチルプロパン-2,1-ジイル)ビス[3-[3-(tert-ブチル)-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル]プロパノエート]である。
【0028】
いくつかの実施形態において、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン);(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン;DL-α-リポ酸;3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオール;6-メルカプト-1-ヘキサノール;メトキシポリエチレングリコールアミン(m.w.約500);ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルチオール(m.w.約800);ジエチルフェニルホスホナイト;ジベンジルN,N-ジイソプロピルホスホルアミダイト;ジ-tert-ブチルN,N-ジイソプロピルホスホルアミダイト;トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩;ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルチオール(m.w.約2000);メトキシポリエチレングリコールアミン(m.w.約750);アクリルアミド;又はポリエチレンイミンである。ポリマーのm.w.は、質量分析によって得られる。
【0029】
いくつかの実施形態において、少なくとも1種の配位子は、アミノポリアルキレンオキシド(m.w.約1000)及びメトキシポリエチレングリコールアミン(m.w.約500);アミノ-ポリアルキレンオキシド(m.w.約1000)及び6-メルカプト-1-ヘキサノール;アミノポリアルキレンオキシド(m.w.約1000)及び(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン;並びに6-メルカプト-1-ヘキサノール及びメトキシポリエチレングリコールアミン(m.w.約500)の組合せである。
【0030】
いくつかの実施形態において、1種若しくは複数種の金属アルコキシドは、金属C1~10アルコキシドである。いくつかの実施形態において、金属は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ガリウム又はバリウムである。
【0031】
いくつかの実施形態において、少なくとも1種若しくは複数種の金属アルコキシドは、ジルコニウム(IV)テトラメトキシド、ジルコニウム(IV)テトラエトキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-n-プロポキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-イソプロポキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-n-ブトキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-イソブトキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-n-ペントキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-イソペントキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-n-ヘキソキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-イソヘキソキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-n-ヘプトキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-イソヘプトキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-n-オクトキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-n-イソオクトキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-n-ノノキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-n-イソノノキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-n-デシロキシド、又はジルコニウム(IV)テトラ-n-イソデシロキシドである。
【0032】
いくつかの実施形態において、少なくとも1種若しくは複数種の金属アルコキシドは、ジルコニウム(IV)テトラ-n-プロポキシドである。
【0033】
いくつかの実施形態において、1種若しくは複数種の金属アルコキシド、1種若しくは複数種の金属アルコキシド加水分解生成物、1種若しくは複数種の金属ハロゲン化物、1種若しくは複数種の金属ハロゲン化物加水分解生成物、1種若しくは複数種の有機金属化合物、又は1種若しくは複数種の有機金属加水分解生成物、又はそれらの組合せは、ジルコニウム(IV)テトラn-プロポキシドであり、且つ膜は、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]又は2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジイルビス(2-メチルプロパン-2,1-ジイル)ビス[3-[3-(tert-ブチル)-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル]プロパノエート]をさらに含む。
【0034】
また、
(a)黄色光及び空気貯蔵条件に曝露された後、30%より高いPCEを示すAIGSナノ構造と、
(b)少なくとも1種の有機樹脂と
を含むナノ構造組成物も提供される。
【0035】
いくつかの実施形態において、少なくとも1種の有機樹脂は硬化される。
【0036】
また、
(a)AIGSナノ構造、1種若しくは複数種の金属アルコキシド、1種若しくは複数種の金属アルコキシド加水分解生成物、1種若しくは複数種の金属ハロゲン化物、1種若しくは複数種の金属ハロゲン化物加水分解生成物、1種若しくは複数種の有機金属化合物、又は1種若しくは複数種の有機金属加水分解生成物、又はそれらの組合せ、及び少なくとも1種の配位子を提供することと、
(b)少なくとも1種の有機樹脂を(a)のナノ構造と混和することと、
(c)第1のバリア層上に、混和されたAIGSナノ構造、少なくとも1種の配位子、及び少なくとも1種の有機樹脂を含む第1の膜を調製することと、
(d)UV照射及び/又は焼成により膜を硬化させることと、並びに
(e)第1のバリア層と第2のバリア層との間に第1の膜を封入することと
を含む、本明細書に記載のナノ構造組成物を調製する方法であって、封入された膜が、約450nmの波長を有する青色光源を使用して励起された場合、及び空気中で黄色光に曝露された後、480~545nmのピーク発光波長において30%より高い光子変換効率(PCE)を示す方法が提供される。
【0037】
いくつかの実施形態において、この方法は、封入された膜が空気中でAIGSナノ構造の発光スペクトルに曝露される前に実施される。いくつかの実施形態において、この方法は、不活性雰囲気下で実施される。
【0038】
いくつかの実施形態において、この方法は、
(f)(a)のAIGSナノ構造、1種若しくは複数種の金属アルコキシド、1種若しくは複数種の金属アルコキシド加水分解生成物、1種若しくは複数種の金属ハロゲン化物、1種若しくは複数種の金属ハロゲン化物加水分解生成物、1種若しくは複数種の有機金属化合物、又は1種若しくは複数種の有機金属加水分解生成物、又はそれらの組合せ、及び配位子の混合物中での少なくとも1種の酸素反応性材料の添加、
(g)(b)の混和物中での少なくとも1種の酸素反応性材料の添加、及び/又は
(h)(c)で調製した第1の膜上での少なくとも1種の酸素反応性材料を含む第2の膜の形成、並びに/或いは
(i)(c)で調製した第1の膜上での酸素及び/又は水を一時的に遮断する犠牲バリア層の形成、並びに膜のPCEの測定と、それに続く犠牲バリア層の除去
をさらに含む。
【0039】
いくつかの実施形態において、2層のバリア層は酸素及び/又は水を排除する。
【0040】
いくつかの実施形態において、発光の92~98%はバンド端発光である。いくつかの実施形態において、発光の93~96%はバンド端発光である。
【0041】
また、
(a)AIGSナノ構造、1種若しくは複数種の金属アルコキシド、1種若しくは複数種の金属アルコキシド加水分解生成物、1種若しくは複数種の金属ハロゲン化物、1種若しくは複数種の金属ハロゲン化物加水分解生成物、1種若しくは複数種の有機金属化合物、又は1種若しくは複数種の有機金属加水分解生成物、又はそれらの組合せ、及び少なくとも1種の配位子を含む溶媒を提供することと、
(b)(a)で得られた組成物を少なくとも1種の第2の配位子と混和することと
を含む、組成物の調製方法も提供される。
【0042】
いくつかの実施形態において、(a)の溶媒は有機樹脂を含む。いくつかの実施形態において、この方法は、組成物をインクジェット印刷することを含む。
【0043】
いくつかの実施形態において、この方法は、(b)において得られた組成物を含む膜を調製することをさらに含む。いくつかの実施形態において、この方法は、膜を硬化することをさらに含む。いくつかの実施形態において、膜は、加熱によって硬化される。いくつかの実施形態において、膜は、電磁放射線への曝露によって硬化される。
【0044】
また、上記の膜を含むデバイスも提供される。
【0045】
また、
(a)第1の導電層と、
(b)第2の導電層と、
(c)第1の導電層と第2の導電層との間のAIGSナノ構造層を含む膜と
を含むナノ構造成形物品であって、ナノ構造層が、黄色光及び空気貯蔵条件に曝露された後、30%より高いPCEを有するAIGSナノ構造を含むナノ構造成形物品も提供される。
【0046】
また
バックプレーンと、
バックプレーン上に配置されたディスプレイパネルと、
黄色光及び空気貯蔵条件に曝露された後、30%より高いPCEを有するAIGSナノ構造を含み、ディスプレイパネル上に配置されたAIGSナノ構造層を含む膜と
を含むカラーコンバーターも提供される。
【0047】
いくつかの実施形態において、ナノ構造層は、パターン化されたナノ構造層を含む。いくつかの実施形態において、バックプレーンは、LED、LCD、OLED、又はマイクロLEDを含む。
【0048】
本発明のさらなる特徴及び利点、並びに本発明の様々な実施形態の構造及び動作を、添付図面を参照して以下に詳細に説明する。本発明は、本明細書に記載された特定の実施形態に限定されないことに留意されたい。そのような実施形態は、本明細書において、例示のみを目的として提示される。本明細書に含まれる教示に基づけば、追加の実施形態は関連技術の当業者には明らかであろう。
【0049】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、本実施形態を説明するものであり、本明細書の説明とともに、本実施形態の原理を説明し、さらに関連技術の当業者による本実施形態の製造および使用に資する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】ポリアミノ配位子を含まず、伸長シワを示した第1及び第3の膜の写真である(左から右の順)。ポリアミノ配位子を含む第2及び第4の膜は、シワを示さなかった。
【
図2】イオン交換処理前(
図2A)、1回のイオン交換処理後(
図2B)、及び2回のイオン交換処理後(
図2C)のAIGSナノ構造を示すTEM画像である。
【
図4】様々な配位子の混合物によって示されるQY%を示す散布グラフである。
【
図5】改善されたQY%を提供する配位子の組合せ(良好な組合せ)及び低減されたQY%を提供する組合せ(悪い組合せ)を示す散布グラフである。
【
図6】配位子交換前(NG)、配位子交換後(LE)、及び30分間の熱試験後の様々な配位子の組合せのQY%を示すグラフである。
【
図7】様々な配位子比における様々な配位子の組合せのQY%を示すグラフである。
【
図8】通常のPCE測定後及び封入後のPCE測定後のAIGS膜のPCEを示す2つの散布グラフである。
【
図9】180℃で焼成したAIGS膜のPCEを示す2つの散布グラフであり、PCE測定前の封入がない場合(左グラフ)及び封入がある場合(右グラフ)である。
【
図10】補助配位子交換後のAIGSインク配合物の薄膜のEQE%対青色光吸光度を示す折れ線グラフである。
【
図11】暗所に保持された場合の様々な補助配位子を含有するAIGSインク配合物の薄膜の経時的なEQE%を示す折れ線グラフである。
【
図12】黄色光条件に曝露された場合の様々な補助配位子を含有するAIGSインク配合物の薄膜の経時的なEQE%を示す折れ線グラフである。
【
図13】黄色光条件に曝露された場合の様々な補助配位子及び添加剤を含有するAIGSインク配合物の薄膜の経時的なEQE%を示す折れ線グラフである。
【
図14】補助配位子-1;補助配位子-1及びジルコニウムプロポキシド(S2);補助配位子-1、S2及びGaCl
3(S3);並びにS2及びS3を含有するAIGSインク配合物の薄膜のEQE%対青色光吸光度を示す線グラフである。
【
図15】窒素下で焼成した後の補助配位子-1;補助配位子-1及びS2;補助配位子-1、S2及びS3;並びにS2及びS3を含有するAIGS膜のEQEを示す棒グラフである。
【
図16】黄色光条件に曝露された場合の補助配位子-1;補助配位子-1及びS2;補助配位子-1、S2及びS3;並びにS2及びS3を含有する硬化AIGS膜の経時的なEQE%を示す折れ線グラフである。
【
図17】1%のS3、3%のS3、及び6%のS3を含有するAIGS膜のEQE%対青色光吸光度を示す折れ線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明の特徴及び利点は、同様の参照文字が全体を通して対応する要素を識別する図面と併せて考慮すると、以下に記載する詳細な説明からより明らかになるであろう。図面中、同様の参照番号は、一般に、同一、機能的に類似、及び/又は構造的に類似の要素を示す。ある要素が最初に現れる図面は、対応する参照番号の左端の数字によって示される。他に指示がない限り、本開示を通じて提供される図面は、実寸大の図面として解釈されるべきではない。
【0052】
定義
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が関連する通常の技術者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。以下の定義は、当該分野における定義を補足しかつ本出願に関するものであり、関連又は無関連事例、例えば、一般に所有されている任意の特許又は出願に帰属するものではない。本明細書に記載されたものと類似又は同等の任意の方法及び材料を、本発明の試験のための実施に使用することができるが、好ましい材料及び方法は本明細書に記載される。したがって、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のみのためのものであり、限定を意図するものではない。
【0053】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上明らかにそうでないことが指示されない限り、複数の参照語を含む。したがって、例えば、「a nanostructure」という言及には、複数のそのようなナノ構造などが含まれる。
【0054】
本明細書で使用される「約」という用語は、所与の量の値がその値の±10%で変動することを示す。例えば、「約100nm」は、90nmから110nmまでのサイズの範囲に包含される。
【0055】
「ナノ構造」は、約500nm未満の寸法を有する少なくとも1つの領域又は特徴的な寸法を有する構造である。いくつかの実施形態において、ナノ構造は、約200nm未満、約100nm未満、約50nm未満、約20nm未満、又は約10nm未満の寸法を有する。典型的には、領域又は特徴的な寸法は、構造の最小軸に沿ったものとなる。このような構造の例としては、ナノワイヤ、ナノロッド、ナノチューブ、分岐ナノ構造、ナノテトラポッド、トリポッド、バイポッド、ナノクリスタル、ナノドット、量子ドット、ナノ粒子などが挙げられる。ナノ構造は、例えば、実質的に結晶性、実質的に単結晶性、多結晶性、非晶質、又はそれらの組合せであることが可能である。いくつかの実施形態において、ナノ構造の3次元の各々は、約500nm未満、約200nm未満、約100nm未満、約50nm未満、約20nm未満、又は約10nm未満の寸法を有する。
【0056】
ナノ構造に関して使用される場合、「ヘテロ構造」という用語は、少なくとも2つの異なる及び/又は区別可能な材料タイプによって特徴付けられるナノ構造を意味する。典型的には、ナノ構造の1つの領域は第1の材料タイプを含み、ナノ構造の第2の領域は第2の材料タイプを含む。特定の実施形態において、ナノ構造は、第1の材料のコアと、第2の(又は第3などの)材料の少なくとも1種のシェルとを含み、異なる材料タイプは、例えば、ナノワイヤの長軸、分岐ナノワイヤのアームの長軸、又はナノ結晶の中心に対して放射状に分布している。シェルは、シェルとみなされるために、又はナノ構造に関してはヘテロ構造とみなされるために、隣接する材料を完全に被覆することができるが、そうである必要はない。例えば、1種の材料のコアが第2の材料の小さな島によって被覆されていることを特徴とするナノ結晶は、ヘテロ構造である。他の実施形態において、異なる材料タイプは、ナノ構造内の異なる位置に、例えば、ナノワイヤの主(長)軸に沿って、又は分岐ナノワイヤのアームの長軸に沿って分布する。ヘテロ構造内の異なる領域は、全く異なる材料を含むことができるか、又は異なる領域は、異なるドーパント又は同じドーパントの異なる濃度を有するベース材料(例えば、シリコン)を含むことができる。
【0057】
本明細書で使用される場合、ナノ構造の「直径」は、ナノ構造の第1の軸に垂直な断面の直径を指し、ここで第1の軸は、第2の軸及び第3の軸(第2の軸及び第3の軸は、その長さが互いに最もほぼ等しい2つの軸である)に対して最大の長さの差を有する。第1の軸が必ずしもナノ構造の最長軸である必要はなく、例えば、ディスク形状のナノ構造では、断面はディスクの短い縦軸に垂直な実質的に円形の断面である。断面が円形でない場合、直径はその断面の長軸及び短軸の平均である。ナノワイヤなどの細長いナノ構造又は高アスペクト比のナノ構造の場合、直径はナノワイヤの最長軸に垂直な断面を横切って測定される。球状ナノ構造の場合、直径は球の中心を通る一辺から他辺までで測定される。
【0058】
ナノ構造に関して使用される場合、「結晶性」又は「実質的に結晶性」という用語は、ナノ構造が、典型的に、構造の1つ又は複数の寸法にわたって長距離秩序を示すという事実を指す。単結晶の秩序は結晶の境界を超えることができないため、「長距離秩序」という用語は特定のナノ構造の絶対的なサイズに依存することが当業者には理解されるであろう。この場合、「長距離秩序化」とは、ナノ構造の少なくとも大部分の寸法にわたる実質的な秩序化を意味する。いくつかの場合、ナノ構造は酸化物又は他の被覆を有することが可能であり、或いはコア及び少なくとも1種のシェルから構成されることも可能である。そのような場合、酸化物、シェル、又は他の被覆は、そのような秩序を示すことができるが、そのような秩序を示す必要はない(例えば、非晶質、多結晶、又は他のものであることができる)ことが理解されよう。このような場合、「結晶性」、「実質的に結晶性」、「実質的に単結晶性」、又は「単結晶性」という語句は、(被覆層又はシェルを除く)ナノ構造の中心コアを指す。本明細書で使用される場合、「結晶性」又は「実質的に結晶性」という用語は、構造が実質的な長距離秩序(例えば、ナノ構造又はそのコアの少なくとも1つの軸の長さの少なくとも約80%にわたる秩序)を示す限り、様々な欠陥、積層欠陥、原子置換などを含む構造も包含することが意図される。加えて、コアとナノ構造の外部との間の界面、コアと隣接するシェルとの間の界面、又はシェルと第2の隣接するシェルとの間の界面は、非結晶領域を含み得、非晶質であってもよいことが理解されよう。これは、本明細書で定義されるように、ナノ構造が結晶性又は実質的に結晶性であることを妨げるものではない。
【0059】
ナノ構造に関して使用される場合、「単結晶」という用語は、ナノ構造が実質的に結晶性であり、実質的に単結晶を含むことを示す。コアと1種又は複数種のシェルとを含むナノ構造ヘテロ構造に関して使用される場合、「単結晶」は、コアが実質的に結晶性であり、実質的に単結晶を含むことを示す。
【0060】
「ナノ結晶」は、実質的に単結晶であるナノ構造である。したがって、ナノ結晶は、約500nm未満の寸法を有する少なくとも1つの領域又は特徴的な寸法を有する構造である。いくつかの実施形態において、ナノ結晶は、約200nm未満、約100nm未満、約50nm未満、約20nm未満、又は約10nm未満の寸法を有する。「ナノ結晶」という用語は、様々な欠陥、積層欠陥、原子置換などを含む実質的に単結晶のナノ構造、並びにそのような欠陥、欠陥、置換を含まない実質的に単結晶のナノ構造を包含することを意図している。コアと1種又は複数種のシェルとを含むナノ結晶ヘテロ構造の場合、ナノ結晶のコアは典型的に実質的に単結晶であるが、シェルはそうである必要はない。いくつかの実施形態において、ナノ結晶の3次元の各々は、約500nm未満、約200nm未満、約100nm未満、約50nm未満、約20nm未満、又は約10nm未満の寸法を有する。
【0061】
「量子ドット」(又は「ドット」)という用語は、量子閉じ込め又は励起子閉じ込めを示すナノ結晶を指す。量子ドットは、材料特性において実質的に均質であることが可能であり、又は特定の実施形態においては不均質であることが可能であり、例えば、コア及び少なくとも1種のシェルを含む。量子ドットの光学特性は、それらの粒子サイズ、化学組成、及び/又は表面組成によって影響を受ける可能性があり、当該技術分野で利用可能な適切な光学試験によって測定することができる。ナノ結晶サイズを、例えば、約1nm~約15nmの範囲で調整が可能なことから、全光学スペクトル領域における光放出が可能となり、演色性の大きな多様性が与えられる。
【0062】
「無酸素配位子」という用語は、本明細書で使用される金属イオンに配位するか、又は金属イオンと反応することができる酸素原子を含有しない配位分子を意味する。
【0063】
「配位子」とは、例えば、ナノ構造の表面との共有結合、イオン結合、ファンデルワールス結合、又は他の分子相互作用を通じて、ナノ構造の1つ又は複数の面と(弱く、又は強くのいずれかで)相互作用することができる分子である。
【0064】
「フォトルミネッセンス量子収率」(QY)は、例えば、ナノ構造又はナノ構造の集団によって吸収される光子に対する放出される光子の比である。当該技術分野で知られているように、量子収率は、通常は積分球内での試料の照射時の光子数の絶対変化、又は量子収率値が既知である十分に特性化された標準試料を用いた比較法によって決定される。
【0065】
「ピーク発光波長」(PWL)とは、光源の放射性発光スペクトルが最大に達する波長である。
【0066】
本明細書で使用される場合、「半値全幅(full width at half-maximum)」(FWHM)という用語は、ナノ構造のサイズ分布の尺度である。ナノ構造の発光スペクトルは、一般にガウス曲線の形状を有する。ガウス曲線の幅はFWHMとして定義され、粒子のサイズ分布の目安となる。FWHMが小さいほど、狭いナノ構造のナノ結晶サイズ分布に対応する。FWHMは、最大発光波長にも依存する。
【0067】
バンド端発光は、欠陥発光と比較して、吸収オンセットエネルギーからのオフセットが小さく、より高いエネルギー(より低い波長)に中心がある。さらに、バンド端発光は、欠陥発光と比較して波長分布が狭い。バンド端発光及び欠陥発光の両方が、正規(ほぼガウス)の波長分布に従う。
【0068】
光学密度(OD)は、溶質又はナノ粒子の濃度を定量化するために一般的に使用される方法である。Beer-Lambertの法則に従い、特定の試料の吸光度(absorbance)(「消光(extinction)」とも呼ばれる)は、特定の波長の光を吸収する溶質の濃度に比例する。
【0069】
光学密度とは、標準的な分光計を使用して測定された、材料の1センチメートルあたりの光減衰のことで、通常、1センチメートルの光路長によって指定される。ナノ構造溶液は、それが濃度に正比例し、目的の波長においてナノ構造溶液中で起こっている光吸収の量を表すのにより便利な方法であるため、質量又はモル濃度の代わりに光学密度によって測定されることが多い。100のODを有するナノ構造溶液は、1のODを有する生成物よりも100倍濃縮されている(1mLあたり100倍多くの粒子を有する)。
【0070】
光学密度は、蛍光ナノ構造を励起するために選択された波長など、関心のある任意の波長で測定することができる。光学密度は、光が特定の波長でナノ構造溶液を通過する際に失われる強度の尺度であり、次式:
OD=log10
*(IOUT/IIN)
を使用して計算される。ここで
IOUT=セルに入射する放射線の強度であり、且つ
IIN=セルを透過する放射線の強度である。
【0071】
ナノ構造溶液の光学密度は、UV-VIS分光計を使用して測定することができる。したがって、UV-VIS分光計を使用することにより、試料中に存在するナノ構造の量を決定するために光学密度を計算することが可能である。
【0072】
「黄色光及び空気貯蔵条件」とは、青色遮断フィルターによって被覆された白色LEDライトを使用して空気中で照射された膜を意味することを意図しており、黄色貯蔵条件の照度及び色座標は、Konica-Minolta CL-200Aクロマメーターによって、140ルクス、CIEx=0.52、CIEy=0.45として測定される。
【0073】
他に明確な指示がない限り、本明細書に記載されている範囲は包含的なものである。
【0074】
本明細書中、様々な追加の用語が定義されるか、又は他の方法で特徴付けられる。
【0075】
AIGSナノ構造
Ag、In、Ga、及びS(AIGS)を含むナノ構造であって、480~545nmの間のピーク発光波長(PWL)を有するナノ構造が提供される。いくつかの実施形態において、発光の少なくとも約80%はバンド端発光である。バンド端発光の割合は、ナノ構造発光スペクトルのガウスピーク(典型的には2つ以上)をフィッティングし、ナノ構造バンドギャップにエネルギーが近いピークの面積(これはバンド端発光を表す)を全てのピーク面積の合計(バンド端+欠陥発光)と比較することによって計算される。
【0076】
一実施形態において、ナノ構造は、40nm未満のFWHM発光スペクトルを有する。別の実施形態において、ナノ構造は36~38nmのFWHMを有する。いくつかの実施形態において、ナノ構造は、27~32nmのFWHMの発光スペクトルを有する。いくつかの実施形態において、ナノ構造は、29~31nmのFWHMを有する発光スペクトルを有する。
【0077】
別の実施形態において、ナノ構造は、約80%~99.9%のQYを有する。別の実施形態において、ナノ構造は85~95%のQYを有する。別の実施形態において、ナノ構造は約86%~約94%のQYを有する。いくつかの実施形態において、発光の少なくとも80%はバンド端発光である。他の実施形態において、発光の少なくとも90%はバンド端発光である。他の実施形態において、発光の少なくとも95%はバンド端発光である。いくつかの実施形態において、発光の92~98%はバンド端発光である。いくつかの実施形態において、発光の93~96%はバンド端発光である。
【0078】
AIGSナノ構造は、高い青色光吸収を提供する。青色光吸収効率の予測値として、質量当たりの450nmにおける光学密度(OD450/質量)は、1cmの経路長のキュベット中のナノ構造溶液の光学密度を測定し、真空下(<200mTorr)で全ての揮発性物質を除去した後の同じ溶液の1mL当たりの乾燥質量(mg/mL)で割ることによって計算される。一実施形態において、本明細書で提供されるナノ構造は、少なくとも0.8のOD450/質量(mL・mg-1・cm-1)を有する。別の実施形態において、ナノ構造は、0.8~2.5のOD450/質量(mL・mg-1・cm-1)を有する。別の実施形態において、ナノ構造は、0.87~1.9のOD450/質量(mL・mg-1・cm-1)を有する。
【0079】
一実施形態において、ナノ構造は、インジウムに対するガリウムのイオン交換がAIGSナノ構造を通して起こるように、ガリウムイオンで処理されている。別の実施形態において、ナノ構造は、コアにAg、In、Ga、及びSを有し、ガリウムイオン及びSによるイオン交換によって処理されている。別の実施形態において、ナノ構造は、コアにAg、In、Ga、及びSを有し、銀イオン、ガリウムイオン及びSによるイオン交換によって処理されている。いくつかの実施形態において、イオン交換処理は、ナノ構造を通してガリウム、銀及び/又は硫黄の勾配につながる。
【0080】
一実施形態において、ナノ構造の平均直径は、TEMで測定した場合、10nm未満である。別の実施形態において、平均直径は約5nmである。
【0081】
GaX3(X=F、Cl、又はBr)前駆体及び無酸素配位子を使用して調製されたAIGSナノ構造
AIGSの調製に関する文献中の報告では、酸素含有配位子を除外することは試みられていない。ガリウムによるAIGSの被覆では、Ga前駆体を安定化させるために酸素含有配位子がしばしば使用される。一般に、アセチル酢酸ガリウム(III)は空気中で容易に取り扱える前駆体として使用されるが、塩化Ga(III)は湿気に弱いため取り扱いに注意が必要である。例えば、Kameyama et al.,ACS Appl.Matera.Interfaces 10:42844-42855(2018)では、アセチル酢酸ガリウム(III)がコア及びコア/シェル構造の前駆体として使用された。ガリウムは酸素、酸素含有配位子に対して高い親和性を有するため、無酸素条件下で調製されていないガリウム前駆体を用いると、Ga及びS前駆体を使用して有意なガリウム含有量を含むナノ構造を製造する際に、酸化ガリウムなどの望ましくない副反応が生じ得る。これらの副反応は、ナノ構造の欠陥を導き、低い量子収率が生じ得る。
【0082】
いくつかの実施形態において、AIGSナノ構造は、AIGSコアの調製において、前駆体として無酸素GaX3(X=F、Cl、又はBr)を使用して調製される。いくつかの実施形態において、AIGSナノ構造は、Ga富化AIGSナノ構造の調製において、前駆体としてGaX3(X=F、Cl、又はBr)及び無酸素配位子を使用して調製される。いくつかの実施形態において、AIGSナノ構造は、AIGSコアの調製において、前駆体としてGaX3(X=F、Cl、又はBr)、及び無酸素配位子を使用して調製される。いくつかの実施形態において、AIGSナノ構造は、AIGSコアの調製及びAIGSコアのイオン交換処理において、前駆体としてGaX3(X=F、Cl、又はBr)及び無酸素配位子を使用して調製される。
【0083】
Ag、In、Ga、及びSを含むナノ構造であって、480~545nmの間のピーク発光波長(PWL)を有し、GaX3(X=F、Cl、又はBr)前駆体及び無酸素配位子を使用して調製されたナノ構造が提供される。
【0084】
いくつかの実施形態において、GaX3(X=F、Cl、又はBr)前駆体及び無酸素配位子を使用して調製されたナノ構造は、35nm以下のFWHM発光スペクトルを示す。いくつかの実施形態において、GaX3(X=F、Cl、又はBr)前駆体及び無酸素配位子を使用して調製されたナノ構造は、30~38nmのFWHMを示す。いくつかの実施形態において、GaX3(X=F、Cl、又はBr)前駆体及び無酸素配位子を使用して調製されたナノ構造は、少なくとも75%のQYを有する。いくつかの実施形態において、GaX3(X=F、Cl、又はBr)前駆体及び無酸素配位子を使用して調製されたナノ構造は、75~90%のQYを有する。いくつかの実施形態において、GaX3(X=F、Cl、又はBr)前駆体及び無酸素配位子を使用して調製されたナノ構造は、約80%のQYを有する。
【0085】
本明細書で調製されるAIGSナノ構造は、高い青色光吸収を提供する。いくつかの実施形態において、ナノ構造は、少なくとも0.8のOD450/質量(mL・mg-1・cm-1)を有する。いくつかの実施形態において、ナノ構造は、0.8~2.5のOD450/質量(mL・mg-1・cm-1)を有する。別の実施形態において、ナノ構造は、0.87~1.9のOD450/質量(mL・mg-1・cm-1)を有する。
【0086】
いくつかの実施形態において、ナノ構造は、インジウムに対するガリウムのイオン交換がAIGSナノ構造を通して起こるように、ガリウムイオンで処理されている。いくつかの実施形態において、ナノ構造は、ナノ構造の表面と中心との間にガリウムの勾配を有する状態でコアの中にAg、In、Ga及びSを含む。いくつかの実施形態において、ナノ構造は、AIGSによって処理されたAIGSコアであり、コアの中にGaX3(X=F、Cl、又はBr)前駆体及び無酸素配位子を使用して調製される。いくつかの実施形態において、ナノ構造は、GaX3(X=F、Cl、又はBr)前駆体及び無酸素配位子を使用して調製されるAIGSナノ構造である。いくつかの実施形態において、AIGSナノ構造は、予め形成されたIn-Ga試薬をAg2Sナノ構造と反応させてAIGSナノ構造が得られ、次いで、無酸素Ga塩と反応させてガリウムとイオン交換することにより、AIGSナノ構造を形成することにより調製される。
【0087】
AIGSナノ構造の製造方法
AIGSナノ構造の製造方法であって、
(a)AIGSコア、硫黄源、及び配位子を含む混合物を調製することと、
(b)(a)で得られた混合物を、180~300℃の温度で、カルボン酸ガリウム及び配位子の混合物に添加し、ナノ構造の表面から中心へとガリウムの勾配を有するイオン交換ナノ構造を得ることと、
(c)ナノ構造を単離することと
を含む方法が提供される。
【0088】
いくつかの実施形態において、ナノ構造は480~545nmのPWLを有し、発光の少なくとも約60%はバンド端発光である。
【0089】
また、AIGSナノ構造の製造方法であって、
(a)Ga(アセチルアセトネート)3、InCl3、及び配位子を、任意選択的に溶媒中でIn-Ga試薬を得るために十分な温度で反応させることと、
(b)In-Ga試薬をAg2Sナノ構造と、AIGSナノ構造を製造するために十分な温度で反応させることと、
(c)AIGSナノ構造を無酸素Ga塩と、配位子を含む溶媒中、ナノ構造の表面から中心へとガリウムの勾配を有するイオン交換ナノ構造を得るために十分な温度で反応させることと
を含む方法も提供する。
【0090】
いくつかの実施形態において、ナノ構造は480~545nmのPWLを有し、発光の少なくとも約60%はバンド端発光である。
【0091】
いくつかの実施形態において、配位子はアルキルアミンである。いくつかの実施形態において、アルキルアミン配位子はオレイルアミンである。いくつかの実施形態において、配位子は過剰量で使用され、溶媒として作用し、引用された溶媒は反応に存在しない。いくつかの実施形態において、溶媒は反応中に存在する。いくつかの実施形態において、溶媒は高沸点溶媒である。いくつかの実施形態において、溶媒は、オクタデセン、スクワラン、ジベンジルエーテル又はキシレンである。いくつかの実施形態において、(a)において十分な温度は100~280℃であり、(b)において十分な温度は150~260℃であり、そして(c)において十分な温度は170~280℃である。いくつかの実施形態において、(a)において十分な温度は約210℃であり、(b)において十分な温度は約210℃であり、(c)において十分な温度は約240℃である。
【0092】
いくつかの実施形態において、発光の少なくとも80%はバンド端発光である。他の実施形態において、発光の少なくとも90%はバンド端発光である。他の実施形態において、発光の少なくとも95%はバンド端発光である。いくつかの実施形態において、発光の92~98%はバンド端発光である。いくつかの実施形態において、発光の93~96%はバンド端発光である。
【0093】
配位子の例は、米国特許第7,572,395号明細書、同第8,143,703号明細書、同第8,425,803号明細書、同第8,563,133号明細書、同第8,916,064号明細書、同第9,005,480号明細書、同第9,139,770号明細書、及び同第9,169,435号明細書、並びに米国特許出願公開第2008/0118755号明細書に開示されている。一実施形態において、配位子はアルキルアミンである。いくつかの実施形態において、配位子は、ドデシルアミン、オレイルアミン、ヘキサデシルアミン、ジオクチルアミン、及びオクタデシルアミンからなる群から選択されるアルキルアミンである。
【0094】
いくつかの実施形態において、(a)の硫黄源は、トリオクチルホスフィンスルフィド、元素硫黄、オクタンチオール、ドデカンチオール、オクタデカンチオール、トリブチルホスフィンスルフィド、シクロヘキシルイソチオシアネート、α-トルエンチオール、エチレントリチオカーボネート、アリルメルカプタン、ビス(トリメチルシリル)スルフィド、トリオクチルホスフィンスルフィド、又はそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態において、(a)の硫黄源はS8に由来する。
【0095】
一実施形態において、硫黄源はS8に由来する。
【0096】
一実施形態において、(a)及び(b)における温度は約270℃である。
【0097】
一実施形態において、(b)の混合物は、溶媒をさらに含む。いくつかの実施形態において、溶媒は、トリオクチルホスフィン、ジベンジルエーテル、又はスクワランである。
【0098】
いくつかの実施形態において、カルボン酸ガリウムは、C2~24カルボン酸ガリウムである。C2~24カルボキシレートの例としては、アセテート、プロピオネート、ブタノエート、ペンタノエート、ヘキサノエート、ヘプタノエート、オクタノエート、ノナノエート、デカノエート、ウンデカノエート、トリデカノエート、テトラデカノエート、ペンタデカノエート、ヘキサデカノエート、オクタデカノエート(オレエート)、ノナデカノエート、及びイコサノエートが挙げられる。一実施形態において、カルボン酸ガリウムはオレイン酸ガリウムである。
【0099】
いくつかの実施形態において、AIGSコアに対するカルボン酸ガリウムの比率は、1mgのAIGSあたり0.008~0.2mmolのカルボン酸ガリウムである。一実施形態において、AIGSコアに対するカルボン酸ガリウムの比率は、1mgのAIGSあたり約0.04mmolのカルボン酸ガリウムである。
【0100】
さらなる実施形態において、AIGSナノ構造は、例えば沈殿によって単離される。いくつかの実施形態において、AIGSナノ構造は、AIGSナノ構造用の非溶媒の添加によって沈殿される。いくつかの実施形態において、非溶媒は、トルエン/エタノール混合物である。沈殿したナノ構造は、遠心分離し、ナノ構造用の非溶媒で洗浄することにより、さらに単離することができる。
【0101】
また、ナノ構造の製造方法であって、
(a)溶媒中でAIGSコアとハロゲン化ガリウムとを含む混合物を調製し、ナノ構造の表面から中心へとガリウムの勾配を有するイオン交換されたナノ構造を得るために十分な時間、混合物を保持することと、
(b)ナノ構造を単離することと
を含む方法が提供される。
【0102】
いくつかの実施形態において、ナノ構造は480~545nmのPWLを有し、発光の少なくとも約60%はバンド端発光である。
【0103】
いくつかの実施形態において、発光の少なくとも80%はバンド端発光である。他の実施形態において、発光の少なくとも90%はバンド端発光である。他の実施形態において、発光の少なくとも95%はバンド端発光である。
【0104】
いくつかの実施形態において、ハロゲン化ガリウムは、塩化ガリウム、臭化ガリウム又はヨウ化ガリウムである。一実施形態において、ハロゲン化ガリウムはヨウ化ガリウムである。
【0105】
いくつかの実施形態において、溶媒はトリオクチルホスフィンを含む。いくつかの実施形態において、溶媒はトルエンを含む。
【0106】
いくつかの実施形態において、(a)における十分な時間は0.1~200時間である。いくつかの実施形態において、(a)において十分な時間は約20時間である。
【0107】
いくつかの実施形態において、混合物は20~100℃に保持される。一実施形態において、混合物は、約室温(20℃~25℃)で保持される。
【0108】
いくつかの実施形態において、AIGSコアに対するハロゲン化ガリウムのモル比は、約0.1~約30である。
【0109】
さらなる実施形態において、AIGSナノ構造は、例えば沈殿によって単離される。いくつかの実施形態において、AIGSナノ構造は、AIGSナノ構造用の非溶媒の添加によって沈殿される。いくつかの実施形態において、非溶媒は、トルエン/エタノール混合物である。沈殿したナノ構造は、遠心分離、及び/又はナノ構造用の非溶媒での洗浄によって、さらに単離することができる。
【0110】
また、ナノ構造の製造方法であって、
(a)AIGSナノ構造、硫黄源、及び配位子を含む混合物を調製することと、
(b)(a)で得られた混合物を、180~300℃の温度で、GaX3(X=F、Cl、又はBr)及び無酸素配位子の混合物に添加し、ナノ構造の表面から中心へとガリウムの勾配を有するイオン交換ナノ構造を得ることと、
(c)ナノ構造を単離することと
を含む方法も提供される。
【0111】
いくつかの実施形態において、ナノ構造は480~545nmのPWLを有する。
【0112】
いくつかの実施形態において、(a)の調製は無酸素条件下で行われる。いくつかの実施形態において、(a)の調製はグローブボックス中で行われる。
【0113】
いくつかの実施形態において、(b)の添加は無酸素条件下である。いくつかの実施形態において、(b)の添加はグローブボックス中で行われる。
【0114】
いくつかの実施形態において、発光の少なくとも80%はバンド端発光である。他の実施形態において、発光の少なくとも90%はバンド端発光である。他の実施形態において、発光の少なくとも95%はバンド端発光である。
【0115】
配位子の例は、米国特許第7,572,395号明細書、同第8,143,703号明細書、同第8,425,803号明細書、同第8,563,133号明細書、同第8,916,064号明細書、同第9,005,480号明細書、同第9,139,770号明細書、及び同第9,169,435号明細書、並びに米国特許出願公開第2008/0118755号明細書に開示されている。いくつかの実施形態において、(a)の配位子は、無酸素配位子である。いくつかの実施形態において、(b)の配位子は、無酸素配位子である。いくつかの実施形態において、(a)及び(b)の配位子は、アルキルアミンである。いくつかの実施形態において、配位子は、ドデシルアミン、オレイルアミン、ヘキサデシルアミン、ジオクチルアミン、及びオクタデシルアミンからなる群から選択されるアルキルアミンである。いくつかの実施形態において、(a)の配位子はオレイルアミンである。いくつかの実施形態において、(b)の配位子はオレイルアミンである。いくつかの実施形態において、(a)及び(b)の配位子はオレイルアミンである。
【0116】
一実施形態において、硫黄源はS8に由来する。
【0117】
一実施形態において、(a)及び(b)における温度は約270℃である。
【0118】
一実施形態において、(b)の混合物は、溶媒をさらに含む。いくつかの実施形態において、溶媒は、トリオクチルホスフィン、ジベンジルエーテル、又はスクワランである。
【0119】
いくつかの実施形態において、GaX3は、塩化ガリウム、フッ化ガリウム、又はヨウ化ガリウムである。いくつかの実施形態において、GaX3は塩化ガリウムである。いくつかの実施形態において、GaX3は塩化Ga(III)である。
【0120】
いくつかの実施形態において、AIGSコアに対するGaX3の比率は、1mgのAIGSあたり0.008~0.2mmolのGaX3である。いくつかの実施形態において、AIGSコアに対するGaX3のモル比は、約0.1~約30である。いくつかの実施形態において、AIGSコアに対するGaX3の比率は、1mgのAIGSあたり約0.04mmolのGaX3である。
【0121】
いくつかの実施形態において、AIGSナノ構造は、例えば沈殿によって単離される。いくつかの実施形態において、AIGSナノ構造は、AIGSナノ構造用の非溶媒の添加によって沈殿される。いくつかの実施形態において、非溶媒は、トルエン/エタノール混合物である。沈殿したナノ構造は、遠心分離、及び/又はナノ構造用の非溶媒での洗浄によって、さらに単離され得る。
【0122】
いくつかの実施形態において、(a)の混合物は20℃~100℃に保持される。いくつかの実施形態において、(a)の混合物は、約室温(20℃~25℃)で保持される。
【0123】
いくつかの実施形態において、(b)の混合物は200℃~300℃で0.1時間~200時間保持される。いくつかの実施形態において、(b)の混合物は、200℃~300℃で約20時間保持される。
【0124】
ドープAIGSナノ構造
いくつかの実施形態において、AIGSナノ構造はドープされる。いくつかの実施形態において、ナノ結晶コアのドーパントは、1種又は複数種の遷移金属を含む金属から構成される。いくつかの実施形態において、ドーパントは、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、及びそれらの組合せからなる群から選択される遷移金属である。いくつかの実施形態において、ドーパントは非金属を含む。いくつかの実施形態において、ドーパントは、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdSe、CdS、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、CuInS2、CuInSe2、AlN、AlP、AlAs、GaN、GaP、又はGaAsである。
【0125】
いくつかの実施形態において、コアは、非溶媒からの沈殿によって精製される。いくつかの実施形態において、AIGSナノ構造は、コア溶液から沈殿物を除去するために濾過される。
【0126】
ナノ構造組成物
いくつかの実施形態において、本開示は、
(a)少なくとも1種のAIGSナノ構造と、
(b)少なくとも1種の有機樹脂と
を含むナノ構造組成物が提供される。
【0127】
いくつかの実施形態において、ナノ構造は480~545nmのPWLを有する。
【0128】
いくつかの実施形態において、ナノ構造発光の少なくとも80%はバンド端発光である。他の実施形態において、発光の少なくとも90%はバンド端発光である。他の実施形態において、発光の少なくとも95%はバンド端発光である。いくつかの実施形態において、発光の92~98%はバンド端発光である。いくつかの実施形態において、発光の93~96%はバンド端発光である。
【0129】
いくつかの実施形態において、ナノ構造組成物は、ナノ構造の少なくとも1種の第2の集団をさらに含む。480~545nmのPWLを有するナノ構造は、緑色光を放出する。スペクトルの緑色、黄色、オレンジ色、及び/又は赤色領域で発光するナノ構造のさらなる集団を追加してもよい。これらのナノ構造は、545nmより大きいPWLを有する。いくつかの実施形態において、ナノ構造は、550~750nmの間のPWLを有する。ナノ構造のサイズは、発光波長を決定する。ナノ構造の少なくとも1種の第2の集団は、BN、BP、BAs、BSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、及びInSbからなる群から選択されるIII-V族ナノ結晶を含み得る。いくつかの実施形態において、ナノ構造の第2の集団のコアは、InPナノ結晶である。
【0130】
有機樹脂
いくつかの実施形態において、有機樹脂は熱硬化性樹脂又は紫外線(UV)硬化性樹脂である。いくつかの実施形態において、有機樹脂は、ロール・ツー・ロール処理を容易にする方法によって硬化される。
【0131】
熱硬化性樹脂は、樹脂を注入可能にする不可逆的な分子架橋プロセスを経る硬化を必要とする。いくつかの実施形態において、熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビニル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アリル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド-イミド樹脂、フェノールアミン縮合重合樹脂、尿素メラミン縮合重合樹脂、又はそれらの組合せである。
【0132】
いくつかの実施形態において、熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂である。エポキシ樹脂は、広範囲の化学薬品によって揮発性物質又は副生成物を発生させることなく容易に硬化する。また、エポキシ樹脂はほとんどの基材に適合し、表面を容易に湿潤する傾向がある。Boyle,M.A.et al,“EpoxyResins”,Composites,Vol.21,ASMHandbook,pages 78~89(2001年)を参照のこと。
【0133】
いくつかの実施形態において、有機樹脂はシリコーン熱硬化性樹脂である。いくつかの実施形態において、シリコーン熱硬化性樹脂は、OE6630A又はOE6630B(DowCorningCorporation,Auburn,MI)である。
【0134】
いくつかの実施形態において、熱開始剤が使用される。いくつかの実施形態において、熱開始剤は、AIBN[2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)]又は過酸化ベンゾイルである。
【0135】
UV硬化性樹脂は、特定の波長の光に曝されると硬化し、速やかに硬くなるポリマーである。いくつかの実施形態において、UV硬化性樹脂は、官能基として、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、スチリル基、又はビニル基などのラジカル重合性基;エポキシ基、チオエポキシ基、ビニルオキシ基、又はオキセタニル基などのカチオン重合性基を有する樹脂である。いくつかの実施形態において、UV硬化性樹脂は、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、又はポリチオールポリエン樹脂である。
【0136】
いくつかの実施形態において、UV硬化性樹脂は、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、ウレタンアクリレート、アリルオキシ化シクロヘキシルジアクリレート、ビス(アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシルイソシアヌレート、ビス(アクリロイルオキシネオペンチルグリコール)アジペート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、ジシクロペンタニルジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、グリセロールメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、リン酸ジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラブロモビスフェノールAジアクリレート、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリグリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、リン酸トリアクリレート、リン酸ジアクリレート、アクリル酸プロパルギルエステル、ビニル末端ポリジメチルシロキサン、ビニル末端ジフェニルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、ビニル末端ポリフェニルメチルシロキサン、ビニル末端トリフルオロメチルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、ビニル末端ジエチルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、ビニルメチルシロキサン、モノメタクリロイルオキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン、モノビニル末端ポリジメチルシロキサン、モノアリル-モノトリメチルシロキシ末端ポリエチレンオキシド、及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0137】
いくつかの実施形態において、UV硬化性樹脂は、UV硬化条件下でイソシアネート、エポキシ、又は不飽和化合物と架橋することができるメルカプト官能性化合物である。いくつかの実施形態において、ポリチオールは、ペンタエリスリトールテトラ(3-メルカプト-プロピオネート)(PETMP);トリメチロール-プロパントリ(3-メルカプト-プロピオネート)(TMPMP);グリコールジ(3-メルカプト-プロピオネート)(GDMP);トリス[25-(3-メルカプト-プロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート(TEMPIC);ジ-ペンタエリスリトールヘキサ(3-メルカプト-プロピオネート)(Di-PETMP);エトキシ化トリメチロールプロパントリ(3-メルカプト-プロピオネート)(ETTMP1300及びETTMP700);ポリカプロラクトンテトラ(3-メルカプト-プロピオネート)(PCL4MP1350);ペンタエリスリトールテトラメルカプトアセテート(PETMA);トリメチロール-プロパントリメルカプトアセテート(TMPMA);又はグリコールジメルカプトアセテート(GDMA)である。これらの化合物は、BrunoBock(Marschacht,Germany)からTHIOCURE(登録商標)の商品名で販売されている。
【0138】
いくつかの実施形態において、UV硬化性樹脂はポリチオールである。いくつかの実施形態において、UV硬化性樹脂は、エチレングリコールビス(チオグリコレート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)(PETMP)、及びそれらの組合せからなる群から選択されるポリチオールである。いくつかの実施形態において、UV硬化性樹脂はPETMPである。
【0139】
いくつかの実施形態において、UV硬化性樹脂は、ポリチオールと1,3,5-トリアリル-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン(TTT)とを含むチオール-エン配合物である。いくつかの実施形態において、UV硬化性樹脂は、PETMP及びTTTを含むチオール-エン配合物である。
【0140】
いくつかの実施形態において、UV硬化性樹脂は、光重合開始剤をさらに含む。光開始剤は、光への露光中に感光材料の架橋及び/又は硬化反応を開始させる。いくつかの実施形態において、光重合開始剤は、アセトフェノン系、ベンゾイン系、又はチオキサテノン系である。
【0141】
いくつかの実施形態において、光重合開始剤は、ビニルアクリレート系の樹脂である。いくつかの実施形態において、光重合開始剤は、MINS-311RM(MinutaTechnologyCo.,Ltd,Korea)である。
【0142】
いくつかの実施形態において、光重合開始剤は、IRGACURE(登録商標)127、IRGACURE(登録商標)184、IRGACURE(登録商標)184D、IRGACURE(登録商標)2022、IRGACURE(登録商標)2100、IRGACURE(登録商標)250、IRGACURE(登録商標)270、IRGACURE(登録商標)2959、IRGACURE(登録商標)369、IRGACURE(登録商標)369 EG、IRGACURE(登録商標)379、IRGACURE(登録商標)500、IRGACURE(登録商標)651、IRGACURE(登録商標)754、IRGACURE(登録商標)784、IRGACURE(登録商標)819、IRGACURE(登録商標)819Dw、IRGACURE(登録商標)907、IRGACURE(登録商標)907 FF、IRGACURE(登録商標)Oxe01、IRGACURE(登録商標)TPO-L、IRGACURE(登録商標)1173、IRGACURE(登録商標)1173D、IRGACURE(登録商標)4265、IRGACURE(登録商標)BP、又はIRGACURE(登録商標)MBF(BASF Corporation,Wyandotte,MI)である。いくつかの実施形態において、光開始剤は、TPO(2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキシド)又はMBF(メチルベンゾイルホルメート)である。
【0143】
いくつかの実施形態において、ナノ構造組成物中の少なくとも1種の有機樹脂の重量パーセントは、約5%~約99%、約5%~約95%、約5%~約90%、約5%~約80%、約5%~約70%、約5%~約60%、約5%~約50%、約5%~約40%、約5%~約30%、約5%~約20%、約5%~約10%、約10%~約99%、約10%~約95%、約10%~約90%、約10%~約80%、約10%~約70%、約10%~約60%、約10%~約50%、約10%~約40%、約10%~約30%、約10%~約20%、約20%~約99%、約20%~約95%、約20%~約90%、約20%~約80%、約20%~約70%、約20%~約60%、約20%~約50%、約20%~約40%、約20%~約30%、約30%~約99%、約30%~約95%、約30%~約90%、約30%~約80%、約30%~約70%、約30%~約60%、約30%~約50%、約30%~約40%、約40%~約99%、約40%~約95%、約40%~約90%、約40%~約80%、約40%~約70%、約40%~約60%、約40%~約50%、約50%~約99%、約50%~約95%、約50%~約90%、約50%~約80%、約50%~約70%、約50%~約60%、約60%~約99%、約60%~約95%、約60%~約90%、約60%~約80%、約60%~約70%、約70%~約99%、約70%~約95%、約70%~約90%、約70%~約80%、約80%~約99%、約80%~約95%、約80%~約90%、約90%~約99%、約90%~約95%、又は約95%~約99%である。
【0144】
AIGSナノ構造組成物の調製方法
本開示は、
(a)少なくとも1種のAIGSナノ構造を提供することと、
(b)少なくとも1種の有機樹脂を(a)の組成物と混和することと
を含む、ナノ構造組成物を調製する方法を提供する。
【0145】
いくつかの実施形態において、ナノ構造は480~545nmのPWLを有し、発光の少なくとも約80%はバンド端発光である。いくつかの実施形態において、発光の少なくとも80%はバンド端発光である。他の実施形態において、発光の少なくとも90%はバンド端発光である。他の実施形態において、発光の少なくとも95%はバンド端発光である。いくつかの実施形態において、発光の92~98%はバンド端発光である。いくつかの実施形態において、発光の93~96%はバンド端発光である。
【0146】
本開示は、
(a)ナノ構造がGaX3(X=F、Cl、又はBr)前駆体及び無酸素配位子を使用して調製されたAIGSナノ構造の少なくとも1つの集団、1種若しくは複数種の金属アルコキシド、1種若しくは複数種の金属アルコキシド加水分解生成物、1種若しくは複数種の金属ハロゲン化物、1種若しくは複数種の金属ハロゲン化物加水分解生成物、1種若しくは複数種の有機金属化合物、又は1種若しくは複数種の有機金属加水分解生成物、又はそれらの組合せを提供することと、
(b)少なくとも1種の有機樹脂を(a)の組成物と混和することと
を含む、ナノ構造組成物を調製する方法も提供する。
【0147】
いくつかの実施形態において、ナノ構造は480~545nmのPWLを有し、発光の少なくとも約60%はバンド端発光である。
【0148】
本開示は、
(a)ナノ構造が480~545nmのPWLを有し、発光の少なくとも約80%がバンド端発光であり、ナノ構造が80~99%のQYを示すAIGSナノ構造の少なくとも1種の集団を提供することと、
(b)少なくとも1種の有機樹脂を(a)の組成物と混和することと
を含む、ナノ構造組成物を調製する方法も提供する。
【0149】
いくつかの実施形態において、ナノ構造の少なくとも1種の集団は、約100rpm~約10,000rpm、約100rpm~約5,000rpm、約100rpm~約3,000rpm、約100rpm~約1,000rpm、約100rpm~約500rpm、約500rpm~約10,000rpm、約500rpm~約5,000rpm、約500rpm~約3,000rpm、約500rpm~約1,000rpm、約1,000rpm~約10,000rpm、約1,000rpm~約5,000rpm、約1,000rpm~約3,000rpm、約3,000rpm~約10,000rpm、約3,000rpm~約10,000rpm、又は約5,000rpm~約10,000rpmの撹拌速度で少なくとも1種の有機樹脂と混和される。
【0150】
いくつかの実施形態において、ナノ構造の少なくとも1種の集団は、約10分~約24時間、約10分~約20時間、約10分~約15時間、約10分~約10時間、約10分~約5時間、約10分~約1時間、約10分~約30分、約30分~約24時間、約30分~約20時間、約30分~約15時間、約30分~約10時間、約30分~約5時間、約30分~約1時間、約1時間~約24時間、約1時間~約20時間、約1時間~約15時間、約1時間~約10時間、約1時間~約5時間、約5時間~約24時間、約5時間~約20時間、約5時間~約15時間、約5時間~約10時間、約10時間~約24時間、約10時間~約20時間、約10時間~約15時間、約15時間~約24時間、約15時間~約20時間、又は約20時間~約24時間の時間、少なくとも1種の有機樹脂と混和される。
【0151】
いくつかの実施形態において、ナノ構造の少なくとも1種の集団は、約-5℃~約100℃、約-5℃~約75℃、約-5℃~約50℃、約-5℃~約23℃、約23℃~約100℃、約23℃~約75℃、約23℃~約50℃、約50℃~約100℃、約50℃~約75℃、又は約75℃~約100℃の温度で少なくとも1種の有機樹脂と混和される。いくつかの実施形態において、少なくとも1種の有機樹脂は、約23℃~約50℃の温度でナノ構造の少なくとも1種の集団と混和される。
【0152】
いくつかの実施形態において、2種以上の有機樹脂が使用される場合、有機樹脂は、一緒に添加され、混合される。いくつかの実施形態において、第1の有機樹脂は、約100rpm~約10,000rpm、約100rpm~約5,000rpm、約100rpm~約3,000rpm、約100rpm~約1,000rpm、約100rpm~約500rpm、約500rpm~約10,000rpm、約500rpm~約5,000rpm、約500rpm~約3,000rpm、約500rpm~約1,000rpm、約1,000rpm~約10,000rpm、約1,000rpm~約5,000rpm、約1,000rpm~約3,000rpm、約3,000rpm~約10,000rpm、約3,000rpm~約10,000rpm、又は約5,000rpm~約10,000rpmの撹拌速度で第2の有機樹脂と混合される。
【0153】
いくつかの実施形態において、第1の有機樹脂は、約10分~約24時間、約10分~約20時間、約10分~約15時間、約10分~約10時間、約10分~約5時間、約10分~約1時間、約10分~約30分、約30分~約24時間、約30分~約20時間、約30分~約15時間、約30分~約10時間、約30分~約5時間、約30分~約1時間、約1時間~約24時間、約1時間~約20時間、約1時間~約15時間、約1時間~約10時間、約1時間~約5時間、約5時間~約24時間、約5時間~約20時間、約5時間~約15時間、約5時間~約10時間、約10時間~約24時間、約10時間~約20時間、約10時間~約15時間、約15時間~約24時間、約15時間~約20時間、又は約20時間~約24時間の時間、第2の有機樹脂と混合される。
【0154】
AIGSナノ構造の特性
いくつかの実施形態において、AIGSナノ構造は、高いフォトルミネッセンス量子収率を示す。いくつかの実施形態において、ナノ構造は、約50%~約99%、約50%~約95%、約50%~約90%、約50%~約85%、約50%~約80%、約50%~約70%、約50%~約60%、60%~約99%、約60%~約95%、約60%~約90%、約60%~約85%、約60%~約80%、約60%~約70%、約70%~約99%、約70%~約95%、約70%~約90%、約70%~約85%、約70%~約80%、約80%~約99%、約80%~約95%、約80%~約90%、約80%~約85%、約85%~約99%、約85%~約95%、約80%~約85%、約85%~約99%、約85%~約90%、約90%~約99%、約90%~約95%、又は約95%~約99%のフォトルミネッセンス量子収率を示す。いくつかの実施形態において、ナノ構造は、約82%~約96%、約85%~約96%及び約93%~約94%のフォトルミネッセンス量子収率を示す。
【0155】
ナノ構造のフォトルミネッセンススペクトルは、スペクトルの広い所望の部分をカバーすることができる。いくつかの実施形態において、ナノ構造のフォトルミネッセンススペクトルは、300nm~750nm、300nm~650nm、300nm~550nm、300nm~450nm、450nm~750nm、450nm~650nm、450nm~550nm、450nm~750nm、450nm~650nm、450nm~550nm、550nm~750nm、550nm~650nm、又は650nm~750nmの発光極大を有する。いくつかの実施形態において、ナノ構造のフォトルミネッセンススペクトルは、450nm~550nmの発光極大を有する。
【0156】
ナノ構造のサイズ分布を比較的狭くすることができる。いくつかの実施形態において、ナノ構造の集団のフォトルミネッセンススペクトルは、10nm~60nm、10nm~40nm、10nm~30nm、10nm~20nm、20nm~60nm、20nm~40nm、20nm~30nm、25nm~60nm、25nm~40nm、25nm~30nm、30nm~60nm、30nm~40nm、又は40nm~60nmの半値全幅を有することができる。いくつかの実施形態において、ナノ構造の集団のフォトルミネッセンススペクトルは、24nm~50nm、24~28nm、27~32nm又は29~38nmの半値全幅を有することができる。
【0157】
いくつかの実施形態において、ナノ構造は、約400nm~約650nm、約400nm~約600nm、約400nm~約550nm、約400nm~約500nm、約400nm~約450nm、約450nm~約650nm、約450nm~約600nm、約450nm~約550nm、約450nm~約500nm、約500nm~約650nm、約500nm~約600nm、約500nm~約550nm、約550nm~約650nm、約550nm~約600nm、又は約600nm~約650nmのピーク発光波長(PWL)を有する光を放出する。いくつかの実施形態において、ナノ構造は、約500nm~約550nmのPWLを有する光を放出する。
【0158】
青色光吸収効率の予測値として、質量当たりの450nmにおける光学密度(OD450/質量)は、1cmの経路長キュベット中のナノ構造溶液の光学密度を測定し、真空下(<200mTorr)で全ての揮発性物質を除去した後の同一溶液の1mL当たりの乾燥質量で割ることによって計算することができる。いくつかの実施形態において、ナノ構造は、約0.28/mg~約0.5/mg、約0.28/mg~約0.4/mg、約0.28/mg~約0.35/mg、約0.28/mg~約0.32/mg、約0.32/mg~約0.5/mg、約0.32/mg~約0.4/mg、約0.32/mg~約0.35/mg、約0.35/mg~約0.5/mg、約0.35/mg~約0.4/mg、又は約0.4/mg~約0.5/mgの質量当たりの450nmにおける光学密度(OD450/質量)を有する。
【0159】
膜
本発明のナノ構造は、任意の適切な方法を用いてポリマーマトリックスに埋め込むことができる。本明細書で使用される場合、「埋め込まれた」という用語は、ナノ構造がマトリックスの成分の大部分を構成するポリマーで囲まれているか、又は包まれていることを示すために使用される。いくつかの実施形態において、少なくとも1種のナノ構造集団は、マトリックス全体に適宜均一に分布している。いくつかの実施形態において、少なくとも1種のナノ構造集団は、用途特異的分布に従って分布される。いくつかの実施形態において、ナノ構造はポリマー中に混合され、材料の表面に塗布される。
【0160】
いくつかの実施形態において、本開示は、
(a)AIGSナノ構造の少なくとも1種の集団、1種若しくは複数種の金属アルコキシド、1種若しくは複数種の金属アルコキシド加水分解生成物、1種若しくは複数種の金属ハロゲン化物、1種若しくは複数種の金属ハロゲン化物加水分解生成物、1種若しくは複数種の有機金属化合物、又は1種若しくは複数種の有機金属加水分解生成物、又はそれらの組合せ、及びナノ構造に結合した少なくとも1種の配位子を含む組成物と、
(b)少なくとも1種の有機樹脂と
を含むナノ構造膜層が提供される。
【0161】
いくつかの実施形態において、配位子の一部はナノ構造に結合している。他の実施形態において、ナノ構造表面は配位子で飽和している。
【0162】
いくつかの実施形態において、ナノ構造は480~545nmのPWLを有する。
【0163】
本開示は、
(a)AIGSナノ構造の少なくとも1種の集団、及び1種若しくは複数種の金属アルコキシド、1種若しくは複数種の金属アルコキシド加水分解生成物、1種若しくは複数種の金属ハロゲン化物、1種若しくは複数種の金属ハロゲン化物加水分解生成物、1種若しくは複数種の有機金属化合物、又は1種若しくは複数種の有機金属加水分解生成物、又はそれらの組合せを提供することと、
(b)少なくとも1種の有機樹脂を(a)の組成物と混和することと
を含む、ナノ構造膜層を調製する方法も提供する。
【0164】
いくつかの実施形態において、ナノ構造は480~545nmのPWLを有する。
【0165】
いくつかの実施形態において、発光の少なくとも80%はバンド端発光である。他の実施形態において、発光の少なくとも90%はバンド端発光である。他の実施形態において、発光の少なくとも95%はバンド端発光である。いくつかの実施形態において、発光の92~98%はバンド端発光である。いくつかの実施形態において、発光の93~96%はバンド端発光である。
【0166】
配位子及び添加剤
いくつかの実施形態において、ナノ構造組成物は、下記式Iを有するアミノ配位子をさらに含む。
【化6】
式中、
xは1~100であり、
yは0~100であり、且つ
R
2はC
1~20アルキルである)を有するアミノ配位子をさらに含む。
【0167】
いくつかの実施形態において、xは、1~100、1~50、1~20、1~10、1~5、5~100、5~50、5~20、5~10、10~100、10~50、10~20、20~100、20~50、又は50~100である。いくつかの実施形態において、xは10~50である。いくつかの実施形態において、xは10~20である。いくつかの実施形態において、xは1である。いくつかの実施形態において、xは19である。いくつかの実施形態において、xは6である。いくつかの実施形態において、xは10である。
【0168】
いくつかの実施形態において、R2は、C1~20アルキルである。いくつかの実施形態において、R2は、C1~10アルキルである。いくつかの実施形態において、R2は、C1~5アルキルである。いくつかの実施形態において、R2は、-CH2CH3である。
【0169】
いくつかの実施形態において、式Iの化合物は、Huntsman Petrochemical Corporationから市販されているアミン末端ポリマーである。いくつかの実施形態において、式(VI)のアミン末端化ポリマーは、x=1、y=9、及びR2=-CH3を有し、JEFFAMINE M-600(Huntsman Petrochemical Corporation,Texas)である。JEFFAMINE M-600は、約600の分子量を有する。いくつかの実施形態において、式(III)のアミン末端ポリマーは、x=19、y=3、及びR2=-CH3を有し、JEFFAMINE M-1000(Huntsman Petrochemical Corporation,Texas)である。JEFFAMINE M-1000は、約1,000の分子量を有する。いくつかの実施形態において、式(III)のアミン末端ポリマーは、x=6、y=29、及びR2=-CH3を有し、JEFFAMINE M-2005(Huntsman Petrochemical Corporation,Texas)である。JEFFAMINE M-2005は、約2,000の分子量を有する。いくつかの実施形態において、式(III)のアミン末端ポリマーは、x=31、y=10、及びR2=-CH3を有し、JEFFAMINE M-2070(Huntsman Petrochemical Corporation,Texas)である。JEFFAMINE M-2070は、約2,000の分子量を有する。別の実施形態において、配位子は、PEG550-アミン及びPEG350-アミンなどのCreativePEGWorksから入手可能なポリエチレングリコールアミンである。
【0170】
いくつかの実施形態において、配位子は、下記式IIを有する立体障害フェノールである。
【化7】
式中、R
3及びR
4は、C3~6第二級又は第三級アルキル基であり、R
5は、水素又は任意選択的に置換されたC1~6アルキル基である。いくつかの実施形態において、R3及びR4は、イソプロピル、2-ブチル、2-ペンチル、3-ペンチル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、t-ブチル、2-メチル-2-ペンチル、又は3-メチル-3-ペンチルである。いくつかの実施形態において、R
5は、式IIの3-又は4-位にある。
【0171】
R5のC1~6アルキル基上の任意選択的な置換基としては、ニトロ、ハロアルコキシ、アリールオキシ、アルアルキルオキシ、アルキルチオ、スルホンアミド、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、ウレイド、グアニジノ、カルバメート、カルボキシ、アルコキシカルボニル、カルボキシアルキル、又はC(=O)R7(式中、R7は、1個若しくは複数の他のアルコキシ基によってさらに置換されていてもよいアルコキシ基である)が挙げられる。
【0172】
いくつかの実施形態において、R
7は、次式:
CH
p(CH
2-O-)
4-p
(式中、pは0~3であり、酸素原子は式IIのカルボニルに結合している)を有する。いくつかの実施形態において、R
7は、
【化8】
である。
【0173】
いくつかの実施形態において、R
7は、
【化9】
であり、且つ式IIは、
【化10】
であり、式中、R
7の酸素原子は、
*で示される位置で式IIのカルボニルに結合している。
【0174】
いくつかの実施形態において、式IIの化合物は、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]又は2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジイルビス(2-メチルプロパン-2,1-ジイル)ビス[3-[3-(tert-ブチル)-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル]プロパノエート]である。
【0175】
式IIを有する配位子は、ナノ構造に結合し、インク及び膜などのナノ構造組成物中で酸化防止剤としても作用する。加えて、配位子は立体障害であるため、ナノ構造表面の自由体積が減少し、それにより周囲の酸素による酸化が低減又は防止され、空気安定性が向上する。
【0176】
いくつかの実施形態において、ナノ構造膜層は色変換層である。
【0177】
ナノ構造組成物は、限定されないが、塗装、スプレーコーティング、溶媒スプレー、ウェットコーティング、接着剤コーティング、スピンコーティング、テープコーティング、ロールコーティング、フローコーティング、インクジェット蒸気噴射、ドロップキャスト、ブレードコーティング、ミストデポジション、又はそれらの組合せを含む、当該技術分野で公知の任意の適切な方法によって堆積させることができる。いくつかの実施形態において、ナノ構造組成物は、堆積後に硬化される。適切な硬化方法には、UV硬化などの光硬化、及び熱硬化が含まれる。従来のラミネート膜処理法、テープコーティング法、及び/又はロール・ツー・ロール製造法を、本発明のナノ構造膜の形成に採用することができる。ナノ構造組成物を、基材の所望の層上に直接コーティングすることができる。或いは、ナノ構造組成物を、独立した要素として固体層に形成し、その後に基材に適用することも可能である。いくつかの実施形態において、ナノ構造組成物を、1つ又は複数のバリア層上に堆積させることができる。
【0178】
金属アルコキシド
金属アルコキシドは一般式M(OR)xを有し、式中、Rは直鎖、分岐鎖、又は環状アルキルであり、典型的には1~10個の炭素原子を含み、xは金属の原子価である。いくつかの実施形態において、金属アルコキシドとしては、金属メトキシド、金属エトキシド、金属n-プロポキシド、金属イソプロポキシド、金属n-ブトキシド、金属イソブトキシド、金属n-ペントキシド、金属イソペントキシド、金属n-ヘキソキシド、金属イソヘキソキシド、金属n-ヘプトキシド、金属イソヘプトキシド、金属n-オクトキシド、金属n-イソオクトキシド、金属n-ノノキシド、金属n-イソノノキシド、金属n-デシロキシド、及び金属n-イソデシロキシドが含まれる。
【0179】
いくつかの実施形態において、金属アルコキシドの金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ルテチウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、ツリウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、レニウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ニッケル、白金、銅、亜鉛、カドミウム、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、ヒ素、アンチモン及びビスマスの1種又は複数種が挙げられる。いくつかの実施形態において、金属としては、アルミニウム、アンチモン、ヒ素、バリウム、ビスマス、ホウ素、セリウム、ガドリニウム、ガリウム、ゲルマニウム、ハフニウム、インジウム、鉄、ランタン、リチウム、マグネシウム、モリブデン、ネオジム、リン、ケイ素、ナトリウム、ストロンチウム、タンタル、タリウム、スズ、チタン、タングステン、バナジウム、イットリウム、亜鉛、及びジルコニウムの1種又は複数種が挙げられる。
【0180】
いくつかの実施形態において、金属アルコキシドとしては、チタン、ジルコニウム、及びハフニウムを含む4族金属の1種又は複数種が挙げられる。
【0181】
いくつかの実施形態において、金属アルコキシドは、ジルコニウム(IV)テトラメトキシド、ジルコニウム(IV)テトラエトキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-n-プロポキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-イソプロポキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-n-ブトキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-イソブトキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-n-ペントキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-イソペントキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-n-ヘキソキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-イソヘキソキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-n-ヘプトキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-イソヘプトキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-n-オクトキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-n-イソオクトキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-n-ノノキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-n-イソノノキシド、ジルコニウム(IV)テトラ-n-デシロキシド、及びジルコニウム(IV)テトラ-n-イソデシロキシドを含む少なくとも1種のジルコニウムアルコキシドである。
【0182】
いくつかの実施形態において、金属アルコキシドは、AIGSナノ構造の周囲にゾル-ゲルを形成することができ、したがって酸素バリアを形成し、AIGSナノ構造の安定化を提供する。Brinker and Scherer,(1990)Sol-Gel Science:The Physics and Chemistry of Sol-Gel Processing.Academic Pressを参照のこと。
【0183】
いくつかの実施形態において、金属アルコキシドは、AIGS膜組成物中に少なくとも0.005重量%(50ppm)で存在する。いくつかの実施形態において、金属酸化物は、AIGS膜組成物中に約0.03~約3重量%の量で存在する。いくつかの実施形態において、金属酸化物は、膜組成物中に約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、約2.6、約2.7、約2.8、約2.9又は約3重量%の量で存在する。
【0184】
金属アルコキシド加水分解生成物
金属アルコキシド加水分解生成物は、一般式M(OH)x(OR)y(式中、Rは直鎖、分岐鎖、又は環状アルキルであり、典型的には1~10個の炭素原子を含み、x+yは金属の原子価に等しい)を有する。金属アルコキシドの加水分解生成物としては、ジルコニウム(IV)モノヒドロキシドトリメトキシド、ジルコニウム(IV)ジヒドロキシドジメトキシド、ジルコニウム(IV)トリヒドロキシドモノメトキシド、ジルコニウム(IV)テトラヒドロキシド、ジルコニウム(IV)モノヒドロキシドトリエトキシド、ジルコニウム(IV)ジヒドロキシドジエトキシド、ジルコニウム(IV)トリヒドロキシドモノエトキシド、ジルコニウム(IV)モノヒドロキシドトリ-n-プロポキシド、ジルコニウム(IV)ジヒドロキシドジ-n-プロポキシド、ジルコニウム(IV)トリヒドロキシドモノ-n-プロポキシド、ジルコニウム(IV)モノヒドロキシドトリイソプロポキシド、ジルコニウム(IV)ジヒドロキシドジイソプロポキシド、ジルコニウム(IV)トリヒドロキシドモノイソプロポキシド、ジルコニウム(IV)モノヒドロキシドトリ-n-ブトキシド、ジルコニウム(IV)ジヒドロキシドジ-n-ブトキシド、ジルコニウム(IV)トリヒドロキシドモノ-n-ブトキシド、ジルコニウム(IV)モノヒドロキシドトリイソブトキシド、ジルコニウム(IV)ジヒドロキシドジイソブトキシド、ジルコニウム(IV)トリヒドロキシドモノイソブトキシド、ジルコニウム(IV)モノヒドロキシドトリ-n-ペントキシド、ジルコニウム(IV)ジヒドロキシドジ-n-ペントキシド、ジルコニウム(IV)トリヒドロキシドモノ-n-ペントキシド、ジルコニウム(IV)モノヒドロキシドトリイソペントキシド、ジルコニウム(IV)ジヒドロキシドジイソペントキシド、ジルコニウム(IV)トリヒドロキシドモノイソペントキシド、ジルコニウム(IV)モノヒドロキシドトリ-n-ヘキソキシド、ジルコニウム(IV)ジヒドロキシドジ-n-ヘキソキシド、ジルコニウム(IV)トリヒドロキシドモノ-n-ヘキソキシド、ジルコニウム(IV)モノヒドロキシドトリイソヘキソキシド、ジルコニウム(IV)ジヒドロキシドジイソヘキソキシド、ジルコニウム(IV)トリヒドロキシドモノイソヘキソキシド、ジルコニウム(IV)モノヒドロキシドトリ-n-ヘプトキシド、ジルコニウム(IV)ジヒドロキシドジ-n-ヘプトキシド、ジルコニウム(IV)トリヒドロキシドモノ-n-ヘプトキシド、ジルコニウム(IV)モノヒドロキシドトリイソヘプトキシド、ジルコニウム(IV)ジヒドロキシドジイソヘプトキシド、ジルコニウム(IV)トリヒドロキシドモノイソヘプトキシド、ジルコニウム(IV)モノヒドロキシドトリ-n-オクトキシド、ジルコニウム(IV)ジヒドロキシドジ-n-オクトキシド、ジルコニウム(IV)トリヒドロキシドモノ-n-オクトキシド、ジルコニウム(IV)モノヒドロキシドトリ-n-イソオクトキシド、ジルコニウム(IV)ジヒドロキシドジ-n-イソオクトキシド、ジルコニウム(IV)トリヒドロキシドモノ-n-イソオクトキシド、ジルコニウム(IV)モノヒドロキシドトリ-n-ノノキシド、ジルコニウム(IV)ジヒドロキシドジ-n-ノノキシド、ジルコニウム(IV)トリヒドロキシドモノ-n-ノノキシド、ジルコニウム(IV)モノヒドロキシドトリ-n-イソノノキシド、ジルコニウム(IV)ジヒドロキシドジ-n-イソノノキシド、ジルコニウム(IV)トリヒドロキシドモノ-n-イソノノキシド、ジルコニウム(IV)モノヒドロキシドトリ-n-デシロキシド、ジルコニウム(IV)ジヒドロキシドジ-n-デシロキシド、ジルコニウム(IV)トリヒドロキシドモノ-n-デシロキシド、ジルコニウム(IV)モノヒドロキシドトリ-n-イソデシロキシド、ジルコニウム(IV)ジヒドロキシドジ-n-イソデシロキシド、ジルコニウム(IV)トリヒドロキシドモノ-n-イソデシロキシド、チタン(IV)モノヒドロキシドトリメトキシド、チタン(IV)ジヒドロキシドジメトキシド、チタン(IV)トリヒドロキシドモノメトキシド、チタン(IV)テトラヒドロキシド、チタン(IV)モノヒドロキシドトリエトキシド、チタン(IV)ジヒドロキシドジエトキシド、チタン(IV)トリヒドロキシドモノエトキシド、チタン(IV)モノヒドロキシドトリ-n-プロポキシド、チタン(IV)ジヒドロキシドジ-n-プロポキシド、チタン(IV)トリヒドロキシドモノ-n-プロポキシド、チタン(IV)モノヒドロキシドトリイソプロポキシド、チタン(IV)ジヒドロキシドジイソプロポキシド、チタン(IV)トリヒドロキシドモノイソプロポキシド、チタン(IV)モノヒドロキシドトリ-n-ブトキシド、チタン(IV)ジヒドロキシドジ-n-ブトキシド、チタン(IV)トリヒドロキシドモノ-n-ブトキシド、チタン(IV)モノヒドロキシドトリイソブトキシド、チタン(IV)ジヒドロキシドジイソブトキシド、チタン(IV)トリヒドロキシドモノイソブトキシド、チタン(IV)モノヒドロキシドトリ-n-ペントキシド、チタン(IV)ジヒドロキシドジ-n-ペントキシド、チタン(IV)トリヒドロキシドモノ-n-ペントキシド、チタン(IV)モノヒドロキシドトリイソペントキシド、チタン(IV)ジヒドロキシドジイソペントキシド、チタン(IV)トリヒドロキシドモノイソペントキシド、チタン(IV)モノヒドロキシドトリ-n-ヘキソキシド、チタン(IV)ジヒドロキシドジ-n-ヘキソキシド、チタン(IV)トリヒドロキシドモノ-n-ヘキソキシド、チタン(IV)モノヒドロキシドトリイソヘキソキシド、チタン(IV)ジヒドロキシドジイソヘキソキシド、チタン(IV)トリヒドロキシドモノイソヘキソキシド、チタン(IV)モノヒドロキシドトリ-n-ヘプトキシド、チタン(IV)ジヒドロキシドジ-n-ヘプトキシド、チタン(IV)トリヒドロキシドモノ-n-ヘプトキシド、チタン(IV)モノヒドロキシドトリイソヘプトキシド、チタン(IV)ジヒドロキシドジイソヘプトキシド、チタン(IV)トリヒドロキシドモノイソヘプトキシド、チタン(IV)モノヒドロキシドトリ-n-オクトキシド、チタン(IV)ジヒドロキシドジ-n-オクトキシド、チタン(IV)トリヒドロキシドモノ-n-オクトキシド、チタン(IV)モノヒドロキシドトリ-n-イソオクトキシド、チタン(IV)ジヒドロキシドジ-n-イソオクトキシド、チタン(IV)トリヒドロキシドモノ-n-イソオクトキシド、チタン(IV)モノヒドロキシドトリ-n-ノノキシド、チタン(IV)ジヒドロキシドジ-n-ノノキシド、チタン(IV)トリヒドロキシドモノ-n-ノノキシド、チタン(IV)モノヒドロキシドトリ-n-イソノノキシド、チタン(IV)ジヒドロキシドジ-n-イソノノキシド、チタン(IV)トリヒドロキシドモノ-n-イソノノキシド、チタン(IV)モノヒドロキシドトリ-n-デシロキシド、チタン(IV)ジヒドロキシドジ-n-デシロキシド、チタン(IV)トリヒドロキシドモノ-n-デシロキシド、チタン(IV)モノヒドロキシドトリ-n-イソデシロキシド、チタン(IV)ジヒドロキシドジ-n-イソデシロキシド、チタン(IV)トリヒドロキシドモノ-n-イソデシロキシド、ハフニウム(IV)モノヒドロキシドトリメトキシド、ハフニウム(IV)ジヒドロキシドジメトキシド、ハフニウム(IV)トリヒドロキシドモノメトキシド、ハフニウム(IV)テトラヒドロキシド、ハフニウム(IV)モノヒドロキシドトリエトキシド、ハフニウム(IV)ジヒドロキシドジエトキシド、ハフニウム(IV)トリヒドロキシドモノエトキシド、ハフニウム(IV)モノヒドロキシドトリ-n-プロポキシド、ハフニウム(IV)ジヒドロキシドジ-n-プロポキシド、ハフニウム(IV)トリヒドロキシドモノ-n-プロポキシド、ハフニウム(IV)モノヒドロキシドトリイソプロポキシド、ハフニウム(IV)ジヒドロキシドジイソプロポキシド、ハフニウム(IV)トリヒドロキシドモノイソプロポキシド、ハフニウム(IV)モノヒドロキシドトリ-n-ブトキシド、ハフニウム(IV)ジヒドロキシドジ-n-ブトキシド、ハフニウム(IV)トリヒドロキシドモノ-n-ブトキシド、ハフニウム(IV)モノヒドロキシドトリイソブトキシド、ハフニウム(IV)ジヒドロキシドジイソブトキシド、ハフニウム(IV)トリヒドロキシドモノイソブトキシド、ハフニウム(IV)モノヒドロキシドトリ-n-ペントキシド、ハフニウム(IV)ジヒドロキシドジ-n-ペントキシド、ハフニウム(IV)トリヒドロキシドモノ-n-ペントキシド、ハフニウム(IV)モノヒドロキシドトリイソペントキシド、ハフニウム(IV)ジヒドロキシドジイソペントキシド、ハフニウム(IV)トリヒドロキシドモノイソペントキシド、ハフニウム(IV)モノヒドロキシドトリ-n-ヘキソキシド、ハフニウム(IV)ジヒドロキシドジ-n-ヘキソキシド、ハフニウム(IV)トリヒドロキシドモノ-n-ヘキソキシド、ハフニウム(IV)モノヒドロキシドトリイソヘキソキシド、ハフニウム(IV)ジヒドロキシドジイソヘキソキシド、ハフニウム(IV)トリヒドロキシドモノイソヘキソキシド、ハフニウム(IV)モノヒドロキシドトリ-n-ヘプトキシド、ハフニウム(IV)ジヒドロキシドジ-n-ヘプトキシド、ハフニウム(IV)トリヒドロキシドモノ-n-ヘプトキシド、ハフニウム(IV)モノヒドロキシドトリイソヘプトキシド、ハフニウム(IV)ジヒドロキシドジイソヘプトキシド、ハフニウム(IV)トリヒドロキシドモノイソヘプトキシド、ハフニウム(IV)モノヒドロキシドトリ-n-オクトキシド、ハフニウム(IV)ジヒドロキシドジ-n-オクトキシド、ハフニウム(IV)トリヒドロキシドモノ-n-オクトキシド、ハフニウム(IV)モノヒドロキシドトリ-n-イソオクトキシド、ハフニウム(IV)ジヒドロキシドジ-n-イソオクトキシド、ハフニウム(IV)トリヒドロキシドモノ-n-イソオクトキシド、ハフニウム(IV)モノヒドロキシドトリ-n-ノノキシド、ハフニウム(IV)ジヒドロキシドジ-n-ノノキシド、ハフニウム(IV)トリヒドロキシドモノ-n-ノノキシド、ハフニウム(IV)モノヒドロキシドトリ-n-イソノノキシド、ハフニウム(IV)ジヒドロキシドジ-n-イソノノキシド、ハフニウム(IV)トリヒドロキシドモノ-n-イソノノキシド、ハフニウム(IV)モノヒドロキシドトリ-n-デシロキシド、ハフニウム(IV)ジヒドロキシドジ-n-デシロキシド、ハフニウム(IV)トリヒドロキシドモノ-n-デシロキシド、ハフニウム(IV)モノヒドロキシドトリ-n-イソデシロキシド、ハフニウム(IV)ジヒドロキシドジ-n-イソデシロキシド、及びハフニウム(IV)トリヒドロキシドモノ-n-イソデシロキシドが挙げられる。
【0185】
いくつかの実施形態において、金属アルコキシド加水分解生成物は、AIGS膜組成物中に少なくとも0.005重量%(50ppm)で存在する。いくつかの実施形態において、金属酸化物加水分解生成物は、AIGS膜組成物中に約0.03~約3重量%の量で存在する。いくつかの実施形態において、金属酸化物加水分解生成物は、膜組成物中に約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、約2.6、約2.7、約2.8、約2.9又は約3重量%の量で存在する。
【0186】
金属ハロゲン化物
金属ハロゲン化物は、一般式MXy(式中、yは金属の原子価である)を有する。金属ハロゲン化物としては、ジルコニウム(IV)テトラフルオリド、ジルコニウム(IV)テトラクロリド、ジルコニウム(IV)テトラブロミド、ジルコニウム(IV)テトラヨージド、チタン(IV)テトラフルオリド、チタン(IV)テトラクロリド、チタン(IV)テトラブロミド、チタン(IV)テトラヨージド、ハフニウム(IV)テトラフルオリド、ハフニウム(IV)テトラクロリド、ハフニウム(IV)テトラブロミド、ハフニウム(IV)テトラヨージド、ガリウム(III)トリフルオリド、ガリウム(III)トリクロリド、ガリウム(III)トリブロミド、及びガリウム(III)トリヨージドが挙げられる。
【0187】
いくつかの実施形態において、金属ハロゲン化物は、AIGS膜組成物中に少なくとも0.005重量%(50ppm)で存在する。いくつかの実施形態において、金属ハロゲン化物は、AIGS膜組成物中に約0.03~約3重量%の量で存在する。いくつかの実施形態において、金属ハロゲン化物は、膜組成物中に約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、約2.6、約2.7、約2.8、約2.9又は約3重量%の量で存在する。
【0188】
金属ハロゲン化物加水分解生成物
金属ハロゲン化物加水分解生成物は、一般式MXy(OH)x(式中、x+yは金属の原子価に等しい)を有する。金属ハロゲン化物加水分解生成物としては、ジルコニウム(IV)モノヒドロキシドトリクロリド、ジルコニウム(IV)ジヒドロキシドジフルオリド、ジルコニウム(IV)トリヒドロキシドモノフルオリド、ジルコニウム(IV)テトラヒドロキシド、チタン(IV)モノヒドロキシドトリフルオリド、チタン(IV)ジヒドロキシドジフルオリド、チタン(IV)トリヒドロキシドモノフルオリド、チタン(IV)テトラヒドロキシド、チタン(IV)モノヒドロキシドトリフルオリド、チタン(IV)ジヒドロキシドジフルオリド、チタン(IV)トリヒドロキシドモノフルオリド、チタン(IV)テトラヒドロキシド、ハフニウム(IV)モノヒドロキシドトリフルオリド、ハフニウム(IV)ジヒドロキシドジフルオリド、ハフニウム(IV)トリヒドロキシドモノフルオリド、ハフニウム(IV)テトラヒドロキシド、ジルコニウム(IV)モノヒドロキシドトリクロリド、ジルコニウム(IV)ジヒドロキシドジクロリド、ジルコニウム(IV)トリヒドロキシドモノクロリド、ジルコニウム(IV)テトラヒドロキシド、チタン(IV)モノヒドロキシドトリクロリド、チタン(IV)ジヒドロキシドジクロリド、チタン(IV)トリヒドロキシドモノクロリド、チタン(IV)テトラヒドロキシド、チタン(IV)モノヒドロキシドトリクロリド、チタン(IV)ジヒドロキシドジクロリド、チタン(IV)トリヒドロキシドモノクロリド、チタン(IV)テトラヒドロキシド、ハフニウム(IV)モノヒドロキシドトリクロリド、ハフニウム(IV)ジヒドロキシドジクロリド、ハフニウム(IV)トリヒドロキシドモノクロリド、ハフニウム(IV)テトラヒドロキシド、ジルコニウム(IV)モノヒドロキシドトリブロミド、ジルコニウム(IV)ジヒドロキシドジブロミド、ジルコニウム(IV)トリヒドロキシドモノブロミド、ジルコニウム(IV)テトラヒドロキシド、チタン(IV)モノヒドロキシドトリブロミド、チタン(IV)ジヒドロキシドジブロミド、チタン(IV)トリヒドロキシドモノブロミド、チタン(IV)テトラヒドロキシド、チタン(IV)モノヒドロキシドトリブロミド、チタン(IV)ジヒドロキシドジブロミド、チタン(IV)トリヒドロキシドモノブロミド、チタン(IV)テトラヒドロキシド、ハフニウム(IV)モノヒドロキシドトリブロミド、ハフニウム(IV)ジヒドロキシドジブロミド、ハフニウム(IV)トリヒドロキシドモノブロミド、ハフニウム(IV)テトラヒドロキシド、ジルコニウム(IV)モノヒドロキシドトリヨージド、ジルコニウム(IV)ジヒドロキシドジヨージド、ジルコニウム(IV)トリヒドロキシドモノヨージド、ジルコニウム(IV)テトラヒドロキシド、チタン(IV)モノヒドロキシドトリヨージド、チタン(IV)ジヒドロキシドジヨージド、チタン(IV)トリヒドロキシドモノヨージド、チタン(IV)テトラヒドロキシド、チタン(IV)モノヒドロキシドトリヨージド、チタン(IV)ジヒドロキシドジヨージド、チタン(IV)トリヒドロキシドモノヨージド、チタン(IV)テトラヒドロキシド、ハフニウム(IV)モノヒドロキシドトリヨージド、ハフニウム(IV)ジヒドロキシドジヨージド、ハフニウム(IV)トリヒドロキシドモノヨージド、及びハフニウム(IV)テトラヒドロキシドが挙げられる。
【0189】
いくつかの実施形態において、金属ハロゲン化物加水分解生成物は、AIGS膜組成物中に少なくとも0.005重量%(50ppm)で存在する。いくつかの実施形態において、金属酸化物は、AIGS膜組成物中に約0.03~約3重量%の量で存在する。いくつかの実施形態において、金属ハロゲン化物加水分解生成物は、膜組成物中に約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、約2.6、約2.7、約2.8、約2.9又は約3重量%の量で存在する。
【0190】
有機金属化合物
有機金属化合物は金属-炭素結合を含み、式RxM(式中、Rは直鎖、分岐鎖、又は環状アルキルであり、典型的には1~10個の炭素原子を含み、xは金属の原子価である)を有し得る。有機金属化合物としては、テトラメチルジルコニウム、テトラエチルジルコニウム、テトラ-n-プロピルジルコニウム、テトライソプロピルジルコニウム、テトラ-n-ブチルジルコニウム、テトライソブチルジルコニウム、テトラ-n-ペンチルジルコニウム、テトライソペンチルジルコニウム、テトラ-n-ヘキシルジルコニウム、テトライソヘキシルジルコニウム、テトラ-n-ヘプチルジルコニウム、テトライソヘプチルジルコニウム、テトラ-n-オクチルジルコニウム、テトラ-n-イソオクチルジルコニウム、テトラ-n-ノニルジルコニウム、テトラ-n-イソノニルジルコニウム、テトラ-n-デシルジルコニウム、テトラ-n-イソデシルジルコニウム、テトラメチルチタン、テトラエチルチタン、テトラ-n-プロピルチタン、テトライソプロピルチタン、テトラ-n-ブチルチタン、テトライソブチルチタン、テトラ-n-ペンチルチタン、テトライソペンチルチタン、テトラ-n-ヘキシルチタン、テトライソヘキシルチタン、テトラ-n-ヘプチルチタン、テトライソヘプチルチタン、テトラ-n-オクチルチタン、テトラ-n-イソオクチルチタン、テトラ-n-ノニルチタン、テトラ-n-イソノニルチタン、テトラ-n-デシルチタン、テトラ-n-イソデシルチタン、テトラメチルハフニウム、テトラエチルハフニウム、テトラ-n-プロピルハフニウム、テトライソプロピルハフニウム、テトラ-n-ブチルハフニウム、テトライソブチルハフニウム、テトラ-n-ペンチルハフニウム、テトライソペンチルハフニウム、テトラ-n-ヘキシルハフニウム、テトライソヘキシルハフニウム、テトラ-n-ヘプチルハフニウム、テトライソヘプチルハフニウム、テトラ-n-オクチルハフニウム、テトラ-n-イソオクチルハフニウム、テトラ-n-ノニルハフニウム、テトラ-n-イソノニルハフニウム、テトラ-n-デシルハフニウム、及びテトラ-n-イソデシルハフニウムが挙げられる。
【0191】
いくつかの実施形態において、有機金属化合物は、AIGS膜組成物中に少なくとも0.005重量%(50ppm)で存在する。いくつかの実施形態において、有機金属化合物は、AIGS膜組成物中に約0.03~約3重量%の量で存在する。いくつかの実施形態において、有機金属化合物は、膜組成物中に約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、約2.6、約2.7、約2.8、約2.9又は約3重量%の量で存在する。
【0192】
有機金属加水分解化合物
有機金属加水分解生成物は、式RxM(OH)y(式中、Rは直鎖、分岐鎖、又は環状アルキルであり、典型的には1~10個の炭素原子を含み、x+yは金属の原子価に等しい)を有し得る。有機金属加水分解生成物としては、トリメチルジルコニウムモノヒドロキシド、トリエチルジルコニウムモノヒドロキシド、トリ-n-プロピルジルコニウムモノヒドロキシド、トリイソプロピルジルコニウムモノヒドロキシド、トリ-n-ブチルジルコニウムモノヒドロキシド、トリイソブチルジルコニウムモノヒドロキシド、トリ-n-ペンチルジルコニウムモノヒドロキシド、トリイソペンチルジルコニウムモノヒドロキシド、トリ-n-ヘキシルジルコニウムモノヒドロキシド、トリイソヘキシルジルコニウムモノヒドロキシド、トリ-n-ヘプチルジルコニウムモノヒドロキシド、トリイソヘプチルジルコニウムモノヒドロキシド、トリ-n-オクチルジルコニウムモノヒドロキシド、トリ-n-イソオクチルジルコニウムモノヒドロキシド、トリ-n-ノニルジルコニウムモノヒドロキシド、トリ-n-イソノニルジルコニウムモノヒドロキシド、トリ-n-デシルジルコニウムモノヒドロキシド、トリ-n-イソデシルジルコニウムモノヒドロキシド、トリメチルチタンモノヒドロキシド、トリエチルチタンモノヒドロキシド、トリ-n-プロピルチタンモノヒドロキシド、トリイソプロピルチタンモノヒドロキシド、トリ-n-ブチルチタンモノヒドロキシド、トリイソブチルチタンモノヒドロキシド、トリ-n-ペンチルチタンモノヒドロキシド、トリイソペンチルチタンモノヒドロキシド、トリ-n-ヘキシルチタンモノヒドロキシド、トリイソヘキシルチタンモノヒドロキシド、トリ-n-ヘプチルチタンモノヒドロキシド、トリイソヘプチルチタンモノヒドロキシド、トリ-n-オクチルチタンモノヒドロキシド、トリ-n-イソオクチルチタンモノヒドロキシド、トリ-n-ノニルチタンモノヒドロキシド、トリ-n-イソノニルチタンモノヒドロキシド、トリ-n-デシルチタンモノヒドロキシド、トリ-n-イソデシルチタンモノヒドロキシド、トリメチルハフニウムモノヒドロキシド、トリエチルハフニウムモノヒドロキシド、トリ-n-プロピルハフニウムモノヒドロキシド、トリイソプロピルハフニウムモノヒドロキシド、トリ-n-ブチルハフニウムモノヒドロキシド、トリイソブチルハフニウムモノヒドロキシド、トリ-n-ペンチルハフニウムモノヒドロキシド、トリイソペンチルハフニウムモノヒドロキシド、トリ-n-ヘキシルハフニウムモノヒドロキシド、トリイソヘキシルハフニウムモノヒドロキシド、トリ-n-ヘプチルハフニウムモノヒドロキシド、トリイソヘプチルハフニウムモノヒドロキシド、トリ-n-オクチルハフニウムモノヒドロキシド、トリ-n-イソオクチルハフニウムモノヒドロキシド、トリ-n-ノニルハフニウムモノヒドロキシド、トリ-n-イソノニルハフニウムモノヒドロキシド、トリ-n-デシルハフニウムモノヒドロキシド、トリ-n-イソデシルハフニウムモノヒドロキシド、ジメチルジルコニウムジヒドロキシド、ジエチルジルコニウムジヒドロキシド、ジ-n-プロピルジルコニウムジヒドロキシド、ジイソプロピルジルコニウムジヒドロキシド、ジ-n-ブチルジルコニウムジヒドロキシド、ジイソブチルジルコニウムジヒドロキシド、ジ-n-ペンチルジルコニウムジヒドロキシド、ジイソペンチルジルコニウムジヒドロキシド、ジ-n-ヘキシルジルコニウムジヒドロキシド、ジイソヘキシルジルコニウムジヒドロキシド、ジ-n-ヘプチルジルコニウムジヒドロキシド、ジイソヘプチルジルコニウムジヒドロキシド、ジ-n-オクチルジルコニウムジヒドロキシド、ジ-n-イソオクチルジルコニウムジヒドロキシド、ジ-n-ノニルジルコニウムジヒドロキシド、ジ-n-イソノニルジルコニウムジヒドロキシド、ジ-n-デシルジルコニウムジヒドロキシド、ジ-n-イソデシルジルコニウムジヒドロキシド、ジメチルチタンジヒドロキシド、ジエチルチタンジヒドロキシド、ジ-n-プロピルチタンジヒドロキシド、ジイソプロピルチタンジヒドロキシド、ジ-n-ブチルチタンジヒドロキシド、ジイソブチルチタンジヒドロキシド、ジ-n-ペンチルチタンジヒドロキシド、ジイソペンチルチタンジヒドロキシド、ジ-n-ヘキシルチタンジヒドロキシド、ジイソヘキシルチタンジヒドロキシド、ジ-n-ヘプチルチタンジヒドロキシド、ジイソヘプチルチタンジヒドロキシド、ジ-n-オクチルチタンジヒドロキシド、ジ-n-イソオクチルチタンジヒドロキシド、ジ-n-ノニルチタンジヒドロキシド、ジ-n-イソノニルチタンジヒドロキシド、ジ-n-デシルチタンジヒドロキシド、ジ-n-イソデシルチタンジヒドロキシド、ジメチルハフニウムジヒドロキシド、ジエチルハフニウムジヒドロキシド、ジ-n-プロピルハフニウムジヒドロキシド、ジイソプロピルハフニウムジヒドロキシド、ジ-n-ブチルハフニウムジヒドロキシド、ジイソブチルハフニウムジヒドロキシド、ジ-n-ペンチルハフニウムジヒドロキシド、ジイソペンチルハフニウムジヒドロキシド、ジ-n-ヘキシルハフニウムジヒドロキシド、ジイソヘキシルハフニウムジヒドロキシド、ジ-n-ヘプチルハフニウムジヒドロキシド、ジイソヘプチルハフニウムジヒドロキシド、ジ-n-オクチルハフニウムジヒドロキシド、ジ-n-イソオクチルハフニウムジヒドロキシド、ジ-n-ノニルハフニウムジヒドロキシド、ジ-n-イソノニルハフニウムジヒドロキシド、ジ-n-デシルハフニウムジヒドロキシド、ジ-n-イソデシルハフニウムジヒドロキシド、モノメチルジルコニウムトリヒドロキシド、モノエチルジルコニウムトリヒドロキシド、モノ-n-プロピルジルコニウムトリヒドロキシド、モノイソプロピルジルコニウムトリヒドロキシド、モノ-n-ブチルジルコニウムトリヒドロキシド、モノイソブチルジルコニウムトリヒドロキシド、モノ-n-ペンチルジルコニウムトリヒドロキシド、モノイソペンチルジルコニウムトリヒドロキシド、モノ-n-ヘキシルジルコニウムトリヒドロキシド、モノイソヘキシルジルコニウムトリヒドロキシド、モノ-n-ヘプチルジルコニウムトリヒドロキシド、モノイソヘプチルジルコニウムトリヒドロキシド、モノ-n-オクチルジルコニウムトリヒドロキシド、モノ-n-イソオクチルジルコニウムトリヒドロキシド、モノ-n-ノニルジルコニウムトリヒドロキシド、モノ-n-イソノニルジルコニウムトリヒドロキシド、モノ-n-デシルジルコニウムトリヒドロキシド、モノ-n-イソデシルジルコニウムトリヒドロキシド、モノメチルチタントリヒドロキシド、モノエチルチタントリヒドロキシド、モノ-n-プロピルチタントリヒドロキシド、モノイソプロピルチタントリヒドロキシド、モノ-n-ブチルチタントリヒドロキシド、モノイソブチルチタントリヒドロキシド、モノ-n-ペンチルチタントリヒドロキシド、モノイソペンチルチタントリヒドロキシド、モノ-n-ヘキシルチタントリヒドロキシド、モノイソヘキシルチタントリヒドロキシド、モノ-n-ヘプチルチタントリヒドロキシド、モノイソヘプチルチタントリヒドロキシド、モノ-n-オクチルチタントリヒドロキシド、モノ-n-イソオクチルチタントリヒドロキシド、モノ-n-ノニルチタントリヒドロキシド、モノ-n-イソノニルチタントリヒドロキシド、モノ-n-デシルチタントリヒドロキシド、モノ-n-イソデシルチタントリヒドロキシド、モノメチルハフニウムトリヒドロキシド、モノエチルハフニウムトリヒドロキシド、モノ-n-プロピルハフニウムトリヒドロキシド、モノイソプロピルハフニウムトリヒドロキシド、モノ-n-ブチルハフニウムトリヒドロキシド、モノイソブチルハフニウムトリヒドロキシド、モノ-n-ペンチルハフニウムトリヒドロキシド、モノイソペンチルハフニウムトリヒドロキシド、モノ-n-ヘキシルハフニウムトリヒドロキシド、モノイソヘキシルハフニウムトリヒドロキシド、モノ-n-ヘプチルハフニウムトリヒドロキシド、モノイソヘプチルハフニウムトリヒドロキシド、モノ-n-オクチルハフニウムトリヒドロキシド、モノ-n-イソオクチルハフニウムトリヒドロキシド、モノ-n-ノニルハフニウムトリヒドロキシド、モノ-n-イソノニルハフニウムトリヒドロキシド、モノ-n-デシルハフニウムトリヒドロキシド、モノ-n-イソデシルハフニウムトリヒドロキシド、ジルコニウムテトラヒドロキシド、チタンテトラヒドロキシド、及びハフニウムテトラヒドロキシドが挙げられる。
【0193】
いくつかの実施形態において、有機金属加水分解化合物は、AIGS膜組成物中に少なくとも0.005重量%(50ppm)で存在する。いくつかの実施形態において、有機金属加水分解化合物は、AIGS膜組成物中に約0.03~約3重量%の量で存在する。いくつかの実施形態において、有機金属加水分解化合物は、膜組成物中に約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、約2.6、約2.7、約2.8、約2.9又は約3重量%の量で存在する。
【0194】
加水分解化合物の製造方法
加水分解化合物の製造方法は、化合物を水分、酸性溶液又は塩基性溶液と接触させることにより実行され得る。一実施形態において、10μlの1N NaOH水溶液を、4mlのエタノール中の1gのジルコニウムプロポキシドに添加する。反応混合物を室温で30分間撹拌した後、10μlの1N塩酸水溶液を添加して反応混合物を中和する。得られた粘稠な液体は、真空で揮発物を除去した後、加水分解生成物として使用される。
【0195】
スピンコーティング
いくつかの実施形態において、ナノ構造組成物は、スピンコーティングを使用して基板上に堆積される。スピンコーティングでは、典型的に、少量の材料が、真空によって固定されたスピナーと呼ばれる機械に装填された基板の中心に堆積される。スピナーを通して基板に高速回転をかけると、向心力が生じ、材料が基板の中心から端まで広がる。材料の大半はスピン除去されるが、一定量は基板上に残り、回転が続くと表面上に材料の薄い膜が形成される。膜の最終的な厚さは、スピン速度、加速度及びスピン時間などのスピン工程に選択されたパラメーターに加えて、堆積材料及び基板の性質によって決定される。典型的な膜では、10~60秒のスピン時間で、1500~6000rpmのスピン速度が使用される。いくつかの実施形態において、膜は非常に低い速度、例えば1000rpm未満で堆積される。いくつかの実施形態において、膜は約300、約400、約500、約600、約700、約800又は約900rpmでキャストされる。
【0196】
ミスト堆積
いくつかの実施形態において、ナノ構造組成物は、ミスト堆積を使用して基板上に堆積される。ミスト堆積は室温及び大気圧で行われ、プロセス条件を変えることによって膜厚を正確に制御することができる。ミスト堆積の際、液体源材料は非常に微細なミストへと変化し、窒素ガスによって堆積チャンバーに運ばれる。その後、ミストはフィールドスクリーンとウエハホルダーとの間の高電圧ポテンシャルによってウエハ表面に引き寄せられる。液滴がウエハ表面で合体すると、ウエハはチャンバーから取り出され、溶媒を蒸発させるために熱硬化される。液体前駆体は、溶媒と、堆積させる材料との混合物である。これは加圧窒素ガスによって噴霧器へと運ばれる。Price,S.C.,et al.,“Formation of Ultra-Thin Quantum Dot Films by Mist Deposition”,ESC Transactions 11:89-94(2007)。
【0197】
スプレーコーティング
いくつかの実施形態において、ナノ構造組成物は、スプレーコーティングを使用して基板上に堆積される。スプレーコーティングの典型的な装置は、スプレーノズル、噴霧器、前駆体溶液、及びキャリアガスから構成される。スプレー堆積プロセスでは、前駆体溶液をキャリアガス又は霧化(例えば、超音波、エアブラスト又は静電)によって微小サイズの液滴に粉砕する。噴霧器から出た液滴は、必要に応じて制御及び調整されるキャリアガスの助けにより、ノズルを介して基板表面で加速される。スプレーノズルと基板との間の相対運動は、基板上での完全被覆の目的のための設計によって画定される。
【0198】
いくつかの実施形態において、ナノ構造組成物の適用は、溶媒をさらに含む。いくつかの実施形態において、ナノ構造組成物の適用のための溶媒は、水、有機溶媒、無機溶媒、ハロゲン化有機溶媒、又はそれらの混合物である。例示的な溶媒としては、限定されないが、水、D2O、アセトン、エタノール、ジオキサン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、イソプロパノール、アニソール、γ-ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリジノン、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、トルエン、ジメチルスルホキシド、シクロペンタノン、テトラメチレンスルホキシド、キシレン、ε-カプロラクトン、テトラヒドロフラン、テトラクロロエチレン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0199】
インクジェット印刷
ナノ構造のインクジェット印刷に適した溶媒は、当業者に知られている。いくつかの実施形態において、有機溶媒は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2018/0230321号明細書に記載される置換芳香族又はヘテロ芳香族溶媒である。
【0200】
いくつかの実施形態において、インクジェット印刷配合物として使用されるナノ構造組成物中で使用される有機溶媒は、その沸点、粘度、及び表面張力によって定義される。インクジェット印刷配合物用に適切な有機溶媒の特性を表1に示す。
【0201】
【0202】
いくつかの実施形態において、有機溶媒は、1気圧において約150℃~約350℃の沸点を有する。いくつかの実施形態において、有機溶媒は、1気圧において約150℃~約350℃、約150℃~約300℃、約150℃~約250℃、約150℃~約200℃、約200℃~約350℃、約200℃~約300℃、約200℃~約250℃、約250℃~約350℃、約250℃~約300℃、又は約300℃~約350℃の沸点を有する。
【0203】
いくつかの実施形態において、有機溶媒は、約1mPa・s~約15mPa・sの粘度を有する。いくつかの実施形態において、有機溶媒は、約1mPa・s~約15mPa・s、約1mPa・s~約10mPa・s、約1mPa・s~約8mPa・s、約1mPa・s~約6mPa・s、約1mPa・s~約4mPa・s、約1mPa・s~約2mPa・s、約2mPa・s~約15mPa・s、約2mPa・s~約10mPa・s、約2mPa・s~約8mPa・s、約2mPa・s~約6mPa・s、約2mPa・s~約4mPa・s、約4mPa・s~約15mPa・s、約4mPa・s~約10mPa・s、約4mPa・s~約8mPa・s、約4mPa・s~約6mPa・s、約6mPa・s~約15mPa・s、約6mPa・s~約10mPa・s、約6mPa・s~約8mPa・s、約8mPa・s~約15mPa・s、約8mPa・s~約10mPa・s、又は約10mPa・s~約15mPa・sの粘度を有する。
【0204】
いくつかの実施形態において、有機溶媒は、約20ダイン/cm~約50ダイン/cmの表面張力を有する。いくつかの実施形態において、有機溶媒は、約20ダイン/cm~約50ダイン/cm、約20ダイン/cm~約40ダイン/cm、約20ダイン/cm~約35ダイン/cm、約20ダイン/cm~約30ダイン/cm、約20ダイン/cm~約25ダイン/cm、約25ダイン/cm~約50ダイン/cm、約25ダイン/cm~約40ダイン/cm、約25ダイン/cm~約35ダイン/cm、約25ダイン/cm~約30ダイン/cm、約30ダイン/cm~約50ダイン/cm、約30ダイン/cm~約40ダイン/cm、約30ダイン/cm~約35ダイン/cm、約35ダイン/cm~約50ダイン/cm、約35ダイン/cm~約40ダイン/cm、又は約40ダイン/cm~約50ダイン/cmの表面張力を有する。
【0205】
いくつかの実施形態において、ナノ構造組成物中に使用される有機溶媒は、アルキルナフタレン、アルコキシナフタレン、アルキルベンゼン、アリール、アルキル置換ベンゼン、シクロアルキルベンゼン、C9~C20アルカン、ジアリールエーテル、アルキルベンゾエート、アリールベンゾエート、又はアルコキシ置換ベンゼンである。
【0206】
いくつかの実施形態において、ナノ構造組成物中に使用される有機溶媒は、1-テトラロン、3-フェノキシトルエン、アセトフェノン、1-メトキシナフタレン、n-オクチルベンゼン、n-ノニルベンゼン、4-メチルアニソール、n-デシルベンゼン、p-ジイソプロピルベンゼン、ペンチルベンゼン、テトラリン、シクロヘキシルベンゼン、クロロナフタレン、1,4-ジメチルナフタレン、3-イソプロピルビフェニル、p-メチルクメン、ジペンチルベンゼン、o-ジエチルベンゼン、m-ジエチルベンゼン、p-ジエチルベンゼン、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、1,2,3,5-テトラメチルベンゼン、1,2,4,5-テトラメチルベンゼン、ブチルベンゼン、ドデシルベンゼン、1-メチルナフタレン、1、2,4-トリクロロベンゼン、ジフェニルエーテル、ジフェニルメタン、4-イソプロピルビフェニル、ベンジルベンゾエート、1,2-ビ(3,4-ジメチルフェニル)エタン、2-イソプロピルナフタレン、ジベンジルエーテル、又はこれらの組合せである。いくつかの実施形態において、ナノ構造組成物中に使用される有機溶媒は、1-メチルナフタレン、n-オクチルベンゼン、1-メトキシナフタレン、3-フェノキシトルエン、シクロヘキシルベンゼン、4-メチルアニソール、n-デシルベンゼン、又はそれらの組合せである。
【0207】
いくつかの実施形態において、有機溶媒は、無水有機溶媒である。いくつかの実施形態において、有機溶媒は実質的に無水有機溶媒である。
【0208】
いくつかの実施形態において、有機溶媒は、上に提示したリストから選択される不揮発性モノマー又はモノマーの組合せである。
【0209】
いくつかの実施形態において、ナノ構造組成物中の有機溶媒の重量%は、約70%~約99%である。いくつかの実施形態において、ナノ構造組成物中の有機溶媒の重量%は、約70%~約99%、約70%~約98%、約70%~約95%、約70%~約90%、約70%~約85%、約70%~約80%、約70%~約75%、約75%~約99%、約75%~約98%、約75%~約95%、約75%~約90%、約75%~約85%、約75%~約80%、約80%~約99%、約80%~約98%、約80%~約95%、約80%~約90%、約80%~約85%、約85%~約99%、約85%~約98%、約85%~約95%、約85%~約90%、約90%~約99%、約90%~約98%、約90%~約95%、約95%~約99%、約95%~約98%、又は約98%~約99%である。いくつかの実施形態において、ナノ構造組成物中の有機溶媒の重量%は、約95%~約99%である。
【0210】
膜硬化
いくつかの実施形態において、組成物は熱硬化されて、ナノ構造層を形成する。いくつかの実施形態において、組成物は、UV光を使用して硬化される。いくつかの実施形態において、ナノ構造組成物は、ナノ構造膜のバリア層上に直接コーティングされ、その後、追加のバリア層がナノ構造層上に堆積されてナノ構造膜が形成される。バリア膜の下には、強度、安定性及びコーティング均一性を高め、材料の不均一性、気泡の形成、バリア層材料又は他の材料のシワ又は折れ曲がりを防止するために、支持基板を採用することができる。さらに、1つ又は複数のバリア層をナノ構造層の上に堆積させて、上部バリア層と下部バリア層との間の材料を密封することもできる。適宜、バリア層をラミネート膜として堆積させ、任意選択的に密封又はさらなる処理を行い、その後、ナノ構造膜を特定の照明デバイスに組み込むことができる。ナノ構造組成物堆積プロセスは、当業者には理解されるように、追加的又は様々な構成要素を含むことができる。このような実施形態は、(例えば、量子膜白色点を調整するために)輝度及び色などのナノ構造発光特性、並びにナノ構造膜厚及び他の特性のインラインプロセス調整を可能にする。さらに、これらの実施形態は、製造中のナノ構造膜特性の定期的な試験、及び正確なナノ構造膜特性を達成するための任意の所望のトグリングを可能にする。このような試験及び調整はまた、ナノ構造膜を形成する際に使用される混合物のそれぞれの量を電子的に変更するためにコンピュータプログラムを採用することができるので、処理ラインの機械的構成を変更することなく達成することができる。
【0211】
ナノ構造に無酸素環境を提供する前に、AIGSナノ結晶を青色光又はUV光に曝露せずに膜を処理する場合、高いPCEを有するナノ構造膜が得られることが発見された。無酸素環境は、以下によって提供することができる:
(a)熱処理及び/又はPCE測定用の青色光への曝露の前に、膜を酸素バリアによって封入すること、
(b)熱処理又は光曝露間の配合物の一部としての酸素反応性材料の使用、並びに/或いは
(c)犠牲バリア層の使用による酸素の一時的遮断。
【0212】
いくつかの実施形態において、PCEの改善は、AIGS層上に酸素バリアを形成することができる任意の方法によって達成可能である。これらのAIGS-CC層を含むデバイスの大量生産では、堆積プロセスを使用して封入が実行され得る。この場合の典型的なプロセスフローは、AIGS層のインクジェット印刷、次いでUV照射による硬化、揮発物を除去するための180℃での焼成、有機平坦化層の堆積、次いで無機バリア層の堆積を含む。無機層の堆積に使用される技術としては、原子層堆積法(ALD)、分子層堆積法(MLD)、化学気相成長法(CVD)(プラズマ増強の有無は問わない)、パルス気相成長法(PVD)、スパッタリング、金属蒸着などが挙げられる。他の潜在的な封入方法としては、溶液処理又は印刷された有機層、UV又は熱硬化性接着剤、バリア膜を用いたラミネートなどが挙げられる。
【0213】
いくつかの実施形態において、膜は不活性雰囲気中で封入される。いくつかの実施形態において、膜は窒素又はアルゴン雰囲気中で封入される。
【0214】
酸素反応性材料には、AIGSナノ構造よりも酸素に対する反応性が高い任意の材料が含まれる。酸素反応性材料の例としては、限定されないが、ホスフィン、ホスファイト、有機金属前駆体、窒化チタン、及び窒化タンタルが挙げられる。いくつかの実施形態において、ホスフィンは、C1~20トリアルキルホスフィンのいずれか1種であってよい。一実施形態において、ホスフィンはトリオクチルホスフィンである。いくつかの実施形態において、ホスファイトは、トリアルキルホスファイト、アルキルアリールホスファイト又はトリアリールホスファイトであってよい。いくつかの実施形態において、有機金属前駆体は、トリアルキルアルミニウム、トリアルキルガリウム、トリアルキルインジウム、ジアルキル亜鉛などであってよい。
【0215】
犠牲バリア層の例には、溶媒に溶解して洗い流すことができるポリマー層が含まれる。このようなポリマーの例としては、限定されないが、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレングリコールが挙げられる。犠牲バリア層の他の例としては、ケイ酸リチウム、フッ化リチウムなどの無機化合物又は塩が挙げられる。犠牲層を洗い流すために使用できる溶媒の例としては、水、及びアルコール(例えば、エタノール、メタノール)、ハロカーボン(例えば、塩化メチレン及び塩化エチレン)、芳香族炭化水素(例えば、トルエン、キシレン)、脂肪族炭化水素(例えば、ヘキサン、オクタン、オクタデセン)、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどのC4~20エイテル、及び酢酸エチルなどのC2~20エステルなどの有機溶媒が挙げられる。
【0216】
ナノ構造膜の特徴及び実施形態
いくつかの実施形態において、本発明のナノ構造膜は、ディスプレイデバイスを形成するために使用される。本明細書で使用される場合、ディスプレイデバイスとは、照明ディスプレイを有するあらゆるシステムを指す。このようなデバイスとしては、限定されないが、液晶ディスプレイ(LCD)、テレビ、コンピューター、携帯電話、スマートフォン、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、ゲームデバイス、電子読書デバイス、デジタルカメラ、拡張現実/仮想現実(AR/VR)メガネ、光投影システム、ヘッドアップディスプレイなどを包含するデバイスが挙げられる。
【0217】
いくつかの実施形態において、ナノ構造膜はナノ構造色変換層の一部である。
【0218】
いくつかの実施形態において、ディスプレイデバイスはナノ構造カラーコンバーターを含む。いくつかの実施形態において、ディスプレイデバイスは、バックプレーンと、バックプレーン上に配置されたディスプレイパネルと、ナノ構造層とを含む。いくつかの実施形態において、ナノ構造層はディスプレイパネル上に配置される。いくつかの実施形態において、ナノ構造層は、パターン化されたナノ構造層を含む。
【0219】
いくつかの実施形態において、バックプレーンは、青色LED、LCD、OLED、又はマイクロLEDを含む。
【0220】
いくつかの実施形態において、ナノ構造層は光源素子上に配置される。いくつかの実施形態において、ナノ構造層は、パターン化されたナノ構造層を含む。パターン化されたナノ構造層は、当該技術分野において既知の任意の方法によって調製され得る。一実施形態において、パターン化されたナノ構造層は、ナノ構造の溶液のインクジェット印刷によって調製される。溶液に適した溶媒としては、限定されないが、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(DPMA)、ポリグリシジルメタクリレート(PGMA)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(EDGAC)、及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)が挙げられる。また、揮発性溶剤は急速乾燥を可能にするため、インクジェット印刷にも使用され得る。揮発性溶剤としては、エタノール、メタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、及びテトラヒドロフランが挙げられる。或いは、AIGSナノ構造がインクモノマー中に分散している「無溶媒」インクをインクジェット印刷に使用してもよい。
【0221】
いくつかの実施形態において、ナノ構造層は、約1μm~約25μmの厚さを有する。いくつかの実施形態において、ナノ構造層は、約5μm~約25μmの厚さを有する。いくつかの実施形態において、ナノ構造層は、約10μm~約12μmの厚さを有する。
【0222】
いくつかの実施形態において、ナノ構造ディスプレイデバイスは、少なくとも32%のPCEを示す。いくつかの実施形態において、ナノ構造成形物品は32~40%のPCEを示す。いくつかの実施形態において、ナノ構造成形物品は、33~40%、34~40%、35~40%、36~40%、37~40%、38~40%、39~40%、33~39%、34~39%、35~39%、36~39%、37~39%、38~39%、33~38%、34~38%、35~38%、36~38%、37~38%、33~37%、34~37%、35~37%、36~37%、33~36%、34~36%、35~36%、33~35%、又は34~35%のPCEを示す。
【0223】
いくつかの実施形態において、ナノ構造層を含む光学膜は、実質的にカドミウムを含まない。本明細書で使用する場合、「実質的にカドミウムを含まない」という用語は、ナノ構造組成物が100重量ppm未満のカドミウムを含むことを意図している。RoHS準拠の定義では、未加工の均質な前駆体材料中に0.01重量%(100ppm)を超えるカドミウムが存在するべきではないことが要求される。カドミウム濃度は、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)分析によって、10億分の1(ppb)レベルで測定することができる。いくつかの実施形態において、「実質的にカドミウムを含まない」光学膜は、10~90ppmのカドミウムを含む。他の実施形態において、実質的にカドミウムを含まない光学膜は、約50ppm未満、約20ppm未満、約10ppm未満、又は約1ppm未満のカドミウムを含む。
【0224】
ナノ構造成形物品
いくつかの実施形態において、本開示は、
(a)第1のバリア層、
(b)第2のバリア層、及び
(c)第1のバリア層と第2のバリア層との間のナノ構造層と
を含むナノ構造成形物品であって、ナノ構造層が、AIGSナノ構造及び1種若しくは複数種の金属アルコキシド、1種若しくは複数種の金属アルコキシド加水分解生成物、1種若しくは複数種の複数の金属ハロゲン化物、1種若しくは複数種の金属ハロゲン化物加水分解生成物、1種若しくは複数種の有機金属化合物、又は1種若しくは複数種の有機金属加水分解生成物、又はそれらの組合せを含むナノ構造の集団、並びに少なくとも1種の有機樹脂を含む、ナノ構造成形物品を提供する。
【0225】
いくつかの実施形態において、ナノ構造は480~545nmのPWLを有する。
【0226】
いくつかの実施形態において、発光の少なくとも80%はバンド端発光である。他の実施形態において、発光の少なくとも90%はバンド端発光である。他の実施形態において、発光の少なくとも95%はバンド端発光である。いくつかの実施形態において、発光の92~98%はバンド端発光である。いくつかの実施形態において、発光の93~96%はバンド端発光である。いくつかの実施形態において、ナノ構造成形物品は少なくとも32%のPCEを示す。いくつかの実施形態において、ナノ構造成形物品は32~40%のPCEを示す。いくつかの実施形態において、ナノ構造成形物品は、33~40%、34~40%、35~40%、36~40%、37~40%、38~40%、39~40%、33~39%、34~39%、35~39%、36~39%、37~39%、38~39%、33~38%、34~38%、35~38%、36~38%、37~38%、33~37%、34~37%、35~37%、36~37%、33~36%、34~36%、35~36%、33~35%、又は34~35%のPCEを示す。
【0227】
バリア層
いくつかの実施形態において、ナノ構造成形物品は、ナノ構造層の片側又は両側のいずれかに配置された1つ又は複数のバリア層を含む。適切なバリア層は、ナノ構造層及びナノ構造成形物品を高温、酸素、及び水分などの環境条件から保護する。適切なバリア材料としては、疎水性であり、ナノ構造成形物品と化学的及び機械的に適合し、光安定性及び化学的安定性を示し、高温に耐えることができる非黄変透明光学材料が含まれる。いくつかの実施形態において、1つ又は複数のバリア層は、ナノ構造成形物品に指数整合(index-matched)されている。いくつかの実施形態において、ナノ構造成形物品のマトリックス材料及び1つ又は複数の隣接するバリア層は、バリア層を通ってナノ構造成形物品に向かって透過する光の大部分がバリア層からナノ構造層に透過するように、同様の屈折率を有するように指数整合されている。この指数整合により、バリア層とマトリックス材料との界面での光損失が低減される。
【0228】
バリア層は、適切には固体材料であり、硬化した液体、ゲル、又はポリマーであることが可能である。バリア層は、特定の用途に応じて、可撓性又は非可撓性材料を含むことができる。バリア層は一般に平面層であり、特定の照明用途に応じて、任意の適切な形状及び表面積構成を含むことができる。いくつかの実施形態において、1つ又は複数のバリア層は、ラミネート膜処理技術に適合し、それにより、ナノ構造層は、少なくとも第1のバリア層上に配置され、少なくとも第2のバリア層は、ナノ構造層とは反対側でナノ構造層上に配置されて、本発明の一実施形態によるナノ構造成形物品を形成する。適切なバリア材料には、当該技術分野で公知の任意の適切なバリア材料が含まれる。例えば、適切なバリア材料には、ガラス、ポリマー、及び酸化物が含まれる。適切なバリア層材料としては、限定されないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリマー;酸化ケイ素、酸化チタン、又は酸化アルミニウム(例えば、SiO2、Si2O3、TiO2、又はAl2O3)などの酸化物;並びにそれらの適切な組合せが挙げられる。いくつかの実施形態において、ナノ構造成形物品の各バリア層は、異なる材料又は組成物を含む少なくとも2つの層を含み、多層バリアはバリア層におけるピンホール欠陥の整列を排除又は低減し、ナノ構造層への酸素及び水分の浸透に対する効果的なバリアを提供する。ナノ構造層は、任意の適切な材料又は材料の組合せ、及びナノ構造層のいずれか片側又は両側に任意の適切な数のバリア層を含むことができる。バリア層の材料、厚さ及び数は、特定の用途に依存し、適切には、ナノ構造成形物品の厚さを最小にしながら、ナノ構造層のバリア保護及び輝度を最大にするように選択される。いくつかの実施形態において、各バリア層は、ラミネート膜、いくつかの実施形態において、二重ラミネート膜を含み、各バリア層の厚さは、ロール・ツー・ロール又はラミネート製造プロセスにおいて、シワを排除するために十分な厚さである。バリアの数又は厚さは、ナノ構造が重金属又は他の有毒物質を含む実施形態における法的毒性ガイドラインにさらに依存し得、このガイドラインは、より多くの又はより厚いバリア層を必要とし得る。バリアに関する追加的な考慮事項には、コスト、入手可能性、及び機械的強度が含まれる。
【0229】
いくつかの実施形態において、ナノ構造膜は、ナノ構造層の各側に隣接する2つ以上のバリア層、例えば、各側に2つ又は3つの層、又はナノ構造層の各側に2つのバリア層を含む。いくつかの実施形態において、各バリア層は、薄いガラスシート、例えば、約100μm、100μm以下、又は50μm以下の厚さを有するガラスシートを含む。
【0230】
本発明のナノ構造膜の各バリア層は、任意の適切な厚さを有することができ、この厚さは、照明デバイス及び用途の特定の要件及び特性、並びにバリア層及びナノ構造層などの個々の膜構成要素に依存するが、当業者には理解されるであろう。いくつかの実施形態において、各バリア層は、50μm以下、40μm以下、30μm以下、25μm以下、20μm以下、又は15μm以下の厚さを有することができる。特定の実施形態において、バリア層は酸化物コーティングを含み、酸化物コーティングは、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム(例えば、SiO2、Si2O3、TiO2、又はAl2O3)などの材料を含むことができる。酸化物コーティングは、約10μm以下、5μm以下、1μm以下、又は100nm以下の厚さを有することができる。特定の実施形態において、バリアは、約100nm以下、10nm以下、5nm以下、又は3nm以下の厚さの薄い酸化物コーティングを含む。上部及び/又は下部バリアは、酸化物薄膜コーティングからなることが可能であるか、又は酸化物薄膜コーティング及び1つ若しくは複数の追加材料層を含んでもよい。
【0231】
ナノ構造色変換層を有するディスプレイデバイス
いくつかの実施形態において、本発明は、
(a)第1の光を放出するディスプレイパネル、
(b)第1の光をディスプレイパネルに供給するように構成されたバックライトユニット、及び
(c)色変換層を含む少なくとも1つの画素領域を含むカラーフィルター
を含むディスプレイデバイスを提供する。
【0232】
いくつかの実施形態において、カラーフィルターは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10の画素領域から構成される。いくつかの実施形態において、青色光がカラーフィルターに入射すると、赤色光、白色光、緑色光、及び/又は青色光が、画素領域を通してそれぞれ放出され得る。いくつかの実施形態において、カラーフィルターは、米国特許第9,971,076号明細書に記載されており、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれている。
【0233】
いくつかの実施形態において、各画素領域は色変換層を含む。いくつかの実施形態において、色変換層は、入射光を第1の色の光に変換するように構成された本明細書に記載のナノ構造を含む。いくつかの実施形態において、色変換層は、入射光を青色光に変換するように構成された本明細書に記載のナノ構造を含む。
【0234】
いくつかの実施形態において、ディスプレイデバイスは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10の色変換層を含む。いくつかの実施形態において、ディスプレイデバイスは、本明細書に記載のナノ構造を含む1つの色変換層を含む。いくつかの実施形態において、ディスプレイデバイスは、本明細書に記載のナノ構造を含む2つの色変換層を含む。いくつかの実施形態において、ディスプレイデバイスは、本明細書に記載のナノ構造を含む3つの色変換層を含む。いくつかの実施形態において、ディスプレイデバイスは、本明細書に記載のナノ構造を含む4つの色変換層を含む。いくつかの実施形態において、ディスプレイデバイスは、少なくとも1つの赤色色変換層、少なくとも1つの緑色色変換層、及び少なくとも1つの青色色変換層を含む。
【0235】
いくつかの実施形態において、色変換層は、約3μm~約10μm、約3μm~約8μm、約3μm~約6μm、約6μm~約10μm、約6μm~約8μm、又は約8μm~約10μmの間の厚さを有する。いくつかの実施形態において、色変換層は、約3μm~約10μmの厚さを有する。
【0236】
ナノ構造色変換層は、限定されないが、塗装、スプレーコーティング、溶媒スプレー、ウェットコーティング、接着剤コーティング、スピンコーティング、テープコーティング、ロールコーティング、フローコーティング、インクジェット印刷、フォトレジストパターニング、ドロップキャスト、ブレードコーティング、ミストデポジション、又はそれらの組合せを含む、当該技術分野で公知の任意の適切な方法によって堆積させることができる。いくつかの実施形態において、ナノ構造色変換層は、フォトレジストパターニングによって堆積される。いくつかの実施形態において、ナノ構造色変換層は、インクジェット印刷によって堆積される。
【0237】
AIGSナノ構造及び配位子を含む組成物
いくつかの実施形態において、AIGSナノ構造組成物は、1種又は複数種の配位子をさらに含む。配位子には、アミノ配位子、ポリアミノ配位子、メルカプト配位子、ホスフィノ配位子、シラン配位子、並びにアミン基及びシラン基を有するポリエチレングリコールなどのポリマー鎖又はオリゴマー鎖が含まれる。
【0238】
いくつかの実施形態において、アミノ配位子は下記式Iを有する。
【化11】
式中、
xは1~100であり、
yは0~100であり、且つ
R
2はC
1~
20アルキルである。
【0239】
いくつかの実施形態において、ポリアミノ配位子は、ポリアミノアルカン、ポリアミンシクロアルカン、ポリアミノ複素環化合物、ポリアミノ官能基化シリコーン、又はポリアミノ置換エチレングリコールである。いくつかの実施形態において、ポリアミノ配位子は、2個又は3個のアミノ基によって置換されたC2~20アルカン又はC2~20シクロアルカンであり、任意選択的に炭素基の代わりに1個又は2個のアミノ基を含む。いくつかの実施形態において、ポリアミノ-配位子は、エチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,2-ジアミノ-2-メチルプロパン、N-メチル-エチレンジアミン、N-エチル-エチレンジアミン、N-イソプロピル-エチレンジアミン、N-シクロヘキシル-エチレンジアミン、N-シクロヘキシル-エチレンジアミン、N-オクチル-エチレンジアミン、N-デシル-エチレンジアミン、N-ドデシル-エチレンジアミン、N,N-ジメチル-エチレンジアミン、N,N-ジエチル-エチレンジアミン、N,N’-ジエチル-エチレンジアミン、N,N’-ジイソプロピルエチレンジアミン、N,N,N’-トリメチル-エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、N-イソプロピル-ジエチレントリアミン、N-(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン、トリエチレンテトラミン、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N’-ビス(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン、トリス(2-アミノエチル)アミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、2-(2-アミノ-エチルアミノ)エタノール、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N-(ヒドロキシエチル)ジエチレントリアミン、N-(ヒドロキシエチル)トリエチレンテトラミン、ピペラジン、1-(2-アミノエチル)ピペラジン、4-(2-アミノエチル)モルホリン、ポリエチレンイミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,3-ジアミノペンタン、1,5-ジミノペマン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2-メチル-1,5-ジアミノプロパン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,12-ジアミノドデカン、N-メチル-1,3-プロパンジアミン、N-エチル-1,3-プロパンジアミン、N-イソプロピル-1,3-プロパンジアミン,N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N’-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N’-ジエチル-1,3-プロパンジアミン、N,N’-ジイソプロピル-1,3-プロパンジアミン、N,N,N’-トリメチル-1,3-プロパンジアミン、2-ブチル-2-エチル-1,5-ペンタンジアミン、N,N’-ジメチル-1,6-ヘキサンジアミン、3,3’-ジアミノ-N-メチル-ジプロピルアミン、N-(3-アミノプロピル)-1,3-プロパンジアミン、スペルミジン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、N,N’,N’’-トリメチル-ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、4-アミノ-1,8-オクタンジアミン、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,3-プロピエジアミン、スペルミン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,2-ジアミノシクロヘキサン,1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-シクロヘキサンビス(メチルアミン)、1,4-シクロヘキサンビス(メチルアミン)、1,2-ビス(アミノエトキシ)エタン、4,9-ジオキサ-1,12-ドデカンジアミン、4,7,10-トリオキサ-1,13-トリデカンジアミン、1,3-ジアミノ-ヒドロキシ-プロパン、4,4-メチレンジピペリジン、4-(アミノメチル)ピペリジン、3-(4-アミノブチル)ピペリジン、又はポリアリルアミンである。いくつかの実施形態において、ポリアミノ-配位子は、1,3-シクロヘキサンビス(メチルアミン)、2,2-ジメチル-1,3-プロパルンジアミン、又はトリス(2-アミノエチル)アミンである。
【0240】
いくつかの実施形態において、ポリアミノ配位子は、ポリアミノ複素環化合物である。いくつかの実施形態において、ポリアミノ複素環化合物は、2,4-ジアミノ-6-フェニル-1,3,5-トリアジン、6-メチル-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン、2,4-ジアミノ-6-ジエチルアミノ-1,3,5-トリアジン、2-N,4-N,6-N-トリプロピル-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン、2,4-ジアミノピリミジン、2,4,6-トリアミノピリミジン、2,5-ジアミノピリジン、2,4,5,6-テトラアミノピリミジン、ピリジン-2,4,5-トリアミン、1-(3-アミノプロピル)イミダゾール、4-フェニル-1H-イミダゾール-1,2-ジアミン、1H-イミダゾール-2,5-ジアミン、4-フェニル-N(1)-[(E)-フェニルメチリデン]-1H-イミダゾール-1,2-ジアミン、2-フェニル-1H-イミダゾール-4,5-ジアミン、1H-イミダゾール-2,4,5-トリアミン、1H-ピロール-2,5-ジアミン、1,2,4,5-テトラジン-3,6-ジアミン、N,N’-ジシクロヘキシル-1,2,4,5-テトラジン-3,6-ジアミン、N3-プロピル-1H-1,2,4-トリアゾール-3,5-ジアミン、又はN,N’-ビス(2-メトキシベンジル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3,5-ジアミンである。
【0241】
いくつかの実施形態において、ポリアミノ配位子は、ポリアミノ官能化シリコーンである。いくつかの実施形態において、ポリアミノ官能化シリコーンは、
【化12】
の1種である。
【0242】
いくつかの実施形態において、ポリアミノ配位子は、ポリアミノ置換エチレングリコールである。いくつかの実施形態において、ポリアミノ置換エチレングリコールは、2-[3-アミノ-4-[2-[2-アミノ-4-(2-ヒドロキシエチル)フェノキシ]エトキシ]フェニル]エタノール、1,5-ジアミノ-3-オキサペンタン、1,8-ジアミノ-3,6-ジオキサオクタン、ビス[5-クロロ-1H-インドール-2-YL-カルボニル-アミノエチル]-エチレングリコール、アミノ-PEG8-t-Boc-ヒドラジド、又は2-(2-(2-エトキシエトキシ)エトキシ)エタンアミンである。
【0243】
いくつかの実施形態において、メルカプト配位子は、(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオール;6-メルカプト-1-ヘキサノール;メルカプトコハク酸、メルカプトウンデカン酸、メルカプトヘキサン酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプト酢酸、システイン、メチオニン、及びメルカプトポリ(エチレングリコール)である。
【0244】
いくつかの実施形態において、シラン配位子は、アミノアルキルトリアルコキシシラン又はチオアルキルトリアルコキシシランである。いくつかの実施形態において、アミノアルキルトリアルコキシシランは、3-アミノプロピル)トリエトキシシラン又は3-メルカプトプロピル)トリエトキシシランである。
【0245】
いくつかの実施形態において、配位子としては、限定されないが、アミノポリアルキレンオキシド(例えば、m.w.約1000);(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン);(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン;DL-α-リポ酸;3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオール;6-メルカプト-1-ヘキサノール;メトキシポリエチレングリコールアミン(m.w.約500);ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルチオール(m.w.約800);ジエチルフェニルホスホナイト;ジベンジルN,N-ジイソプロピルホスホルアミダイト;ジ-tert-ブチルN,N-ジイソプロピルホスホルアミダイト;トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩;ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルチオール(m.w.約2000);メトキシポリエチレングリコールアミン(m.w.約750);アクリルアミド;及びポリエチレンイミンが挙げられる。
【0246】
配位子の特定の組合せとしては、アミノポリアルキレンオキシド(m.w.約1000)及びメトキシポリエチレングリコールアミン(m.w.約500);アミノ-ポリアルキレンオキシド(m.w.約1000)及び6-メルカプト-1-ヘキサノール;アミノポリアルキレンオキシド(m.w.約1000)及び(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン;並びに6-メルカプト-1-ヘキサノール及びメトキシポリエチレングリコールアミン(m.w.約500)が挙げられ、これらにより優れた分散性及び熱安定性がえられた。実施例9を参照のこと。
【0247】
AIGSナノ構造及びポリアミノ配位子を含む膜は、ポリアミノ配位子を含まないAIGS含有膜と比較して、及びモノアミノ配位子と比較して、より高い膜光変換効率(PCE)を示し、シワが少なく、膜の剥離が少ない。このように、AIGS-ポリアミノ配位子を含む組成物は、ナノ構造色変換層での使用にとりわけ適している。
【0248】
散乱媒体
AIGS膜は、散乱媒体をさらに含んでもよい。使用可能な散乱媒体の例としては、限定されないが、金属又は金属酸化物粒子、気泡、及びガラスビーズ及びポリマービーズ(固体又は中空)が挙げられる。いくつかの実施形態において、散乱媒体は球状を有する。いくつかの実施形態において、散乱媒体としては、限定されないが、TiO2、SiO2、BaTiO3、BaSO4、及びZnO粒子が挙げられる。
【0249】
以下の実施例は、本明細書に記載される生成物及び方法の例示であり、限定するものではない。当該分野で通常遭遇し、本開示の観点から当業者に自明である様々な条件、配合物、及び他のパラメーターの適切な変更及び改良は、本発明の精神及び範囲内にある。
【実施例】
【0250】
実施例1:AIGSコア合成
以下の典型的なAIGSコアの合成を使用して、試料ID1を調製した:オレイルアミン中の0.06M CH3CO2Ag 4mL、エタノール中の0.2M InCl3 1mL、オレイルアミン中の0.95M 硫黄1mL、及びドデカンチオール0.5mLを、脱気したオクタデセン5mL、トリオクチルホスフィンオキシド300mg、及びガリウムアセチルアセトネート170mgを含むフラスコに注入した。混合物を40℃まで5分間加熱した後、温度を210℃まで上げ、100分間保持した。180℃まで冷却した後、5mLのトリオクチルホスフィンを添加した。反応混合物をグローブボックスに移し、5mLのトルエンで希釈した。75mLのエタノールを添加し、遠心分離し、トルエンに再分散させることによって最終的なAIGS生成物を沈殿させた。試料ID2及び3もこの方法を使用して調製した。AIGSコアの光学特性を測定し、表1に要約した。AIGSコアのサイズ及び形態は、透過型電子顕微鏡(TEM)によって評価した。
【0251】
【0252】
実施例2:イオン交換処理を施したAIGSナノ構造
以下の典型的なイオン交換処理を用いて、試料ID4を調製した:オクタデセン中の0.3Mオレイン酸ガリウム溶液2mL及びオレイルアミン12mLをフラスコに導入し、脱気した。混合物を270℃に加熱した。オレイルアミン中の0.95M硫黄溶液1mL及び単離したAIGSコア(15mg/mL)1mLの予備混合溶液を同時に注入した。反応を30分後に停止した。最終生成物をグローブボックスに移し、トルエン/エタノールで洗浄し、遠心分離し、トルエン中に再分散した。試料ID4~8もこの方法を使用して調製した。こうして製造したAIGSナノ構造の光学特性を表2にまとめた。ガリウムイオンとのイオン交換により、ほぼ完全なバンド端発光が得られた。TEMによって平均粒径の増大が観察された。
【0253】
【0254】
実施例3:ハロゲン化ガリウム及びトリオクチルホスフィンのイオン交換処理
トリオクチルホスフィン中のGaI3溶液(0.01~0.25M)をAIGS QDに添加し、室温で20時間保持することにより、AIGSナノ構造との室温イオン交換反応を行った。この処理により、ピーク波長(PWL)は実質的に維持されたまま、表3にあるバンド端発光が著しく増強された。
【0255】
表3にあるように、GaI3添加前後の組成変化を、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP-AES)及びエネルギー分散型X線分光法(EDS)により監視した。GaI3/TOP処理前後のIn及びGaの元素分布の合成画像は、InからGaへの放射状の分布を示し、このことから、イオン交換処理により、ナノ構造の表面付近ではガリウムの量が多く、中心部ではガリウムの量が少ないという勾配が生じたことが示された。
【0256】
【0257】
実施例4:無酸素Ga源を使用したAIGSイオン交換処理
以下の無酸素Ga源を使用したAIGSナノ粒子の典型的な処理を使用して、試料ID14及び15を調製した:8mLの脱気したオレイルアミンに、400μLのトルエンに溶解した400mgのGaCl3を添加し、続いて40mgのAIGSコアを添加し、続いてオレイルアミン中の0.95M硫黄1.7mLを添加した。240℃まで加熱した後、反応を2時間保持し、その後冷却した。最終生成物をグローブボックスに移し、トルエン/エタノールで洗浄し、遠心分離し、トルエン中に再分散した。試料ID15及び16もこの方法を使用して調製した。試料ID11~13は、実施例2の方法を使用して調製した。処理したAIGS材料の光学特性を表4に示す。
【0258】
【0259】
表4に示すように、オレイルアミンを溶媒として用いる場合、Ga(III)アセチルアセトネート又はオレイン酸ガリウムではなく、塩化Ga(III)を用いることにより、処理されたAIGSナノ構造の量子収率を向上させることができる。塩化Ga(III)を用いてイオン交換した最終材料は、出発ナノ構造と同様のサイズ及び同様のトラップ発光に対するバンド端の特性を示した。したがって、量子収率(QY)の増加は、単にトラップ発光成分の増加によるものではない。また、塩化Ga(III)の代わりにヨウ化Ga(III)を使用した場合、AIGSナノ構造は反応混合物中に溶解し、イオン交換は起こらないことが意外なことに見いだされた。
【0260】
試料14のエネルギー分散型X線分光法(EDS)を用いた高分解能TEMでは、ナノ構造はAIGSナノ構造中心から表面に向かってInが低くなるわずかな勾配を含む可能性が高いことが示され、これは、これらの条件での処理は、InがAIGS構造から交換され、Gaと置き換わるが、AgがGSの明確な層を成長するよりも、全構造中に存在するプロセスからもたらされる。これはまた、ひずみが少ないことによるナノ構造の量子収率の向上にも寄与し得る。
【0261】
実施例5:予備形成されたIn-Ga試薬と混合した予備形成されたAg2Sナノ構造の熱間注入によるAIGSコア
Ag2Sナノ構造を製造するために、N2雰囲気下、0.5gのAgI及び2mLのオレイルアミンを20mLのバイアル瓶に添加し、58℃で透明な溶液が得られるまで撹拌する。別の20mLのバイアル瓶中で、DDT5mL及びオレイルアミン中の0.95M硫黄9mLを混合した。DDT+S-OYA混合物をAgI溶液に添加し、58℃で10分間撹拌する。得られたAg2Sナノ粒子は洗浄せずに使用した。
【0262】
In-Ga試薬混合物を製造するために、1.2gのGa(アセチルアセトネート)3、0.35gのInCl3、2.5mLのオレイルアミン及び2.5mLのODEを100mLのフラスコに装入した。N2雰囲気下で210℃まで加熱し、10分間保持した。オレンジ色で粘稠な生成物が得られた。
【0263】
AIGSナノ粒子を形成するために、N2下、1.75gのTOPO、23mLのオレイルアミン及び25mLのODEを250mLフラスコに添加した。真空下で脱気した後、この溶媒混合物を40分かけて210℃まで加熱する。40mLのバイアル瓶中、Ag2S及び上記In-Ga試薬混合物を58℃で混合し、シリンジに移す。次に、Ag-In-Ga混合物を210℃の溶媒混合物に注入し、3時間保持する。180℃まで冷却した後、5mLのトリオクチルホスフィンを添加した。反応混合物をグローブボックスに移し、50mLのトルエンで希釈した。150mLのエタノールを添加し、遠心分離し、トルエンに再分散させることによって最終的な生成物を沈殿させた。その後、AIGSナノ構造を実施例4に記載の方法によってイオン交換した。この方法で製造した材料の光学特性を、上述の24倍までのスケールで表5に示す。
【0264】
【0265】
実施例7 繰り返されるガリウムイオン交換は、AIGSナノ構造のフォトルミネッセンス安定性を改善する
7.1 第1のイオン交換プロセス
オレイルアミン(OYA,2.5L)を真空下、40℃で40分間脱気する。AIGSナノ構造(トルエン中25.4g)を添加し、続いてGaCl3(最小トルエン中127g)及びOYAに溶解した硫黄(0.95M、570mL)を添加する。混合物を40分かけて240℃まで加熱し、4時間保持する。冷却後、混合物を1容量のトルエンで希釈する。遠心分離によって副生成物を除去した後、材料を2容量のエタノールで洗浄し、遠心分離によって回収し、トルエン中に再溶解する。第2の洗浄後、ナノ構造をヘプタンに溶解して保存する。
【0266】
7.2 第2のイオン交換プロセス
オレイルアミン(OYA、960mL)を真空下、40℃で20分間脱気する。実施例7.1のようなAIGSイオン交換ナノ構造(ヘプタン中12g)をOYAに添加し、続いてGaCl3(最小量のトルエン中22.5g)を添加し、次にOYAに溶解した硫黄(0.95M、100mL)を添加する。混合物を40分かけて240℃に加熱し、3時間保持する。冷却後、混合物を1容量のトルエンで希釈し、洗浄(1.6容量のエタノールで沈殿させ、遠心分離)し、必要に応じてトルエン又はヘプタン中に再分散させる。インク配合物の配位子交換を行う場合は、さらにエタノール洗浄を行い、QDをヘプタン中に再分散させる。
【0267】
7.3 別の第2のイオン交換プロセス
オレイルアミン(15mL)を真空下、60℃で20分間脱気する。GaCl3(最小量のトルエン中360mg)をOYAに添加し、続いて実施例7.1のようなAIGS(ヘプタン中200mg)を添加し、次にOYAに溶解した硫黄(0.95M、1.6mL)を添加する。混合物を40分かけて240℃まで加熱し、3時間保持する。冷却後、混合物を実施例7.1に記載の方法で洗浄する。
【0268】
7.4 別の第2のイオン交換プロセス
この実施例は、実施例7.3について記載したように実施したが、3倍スケールで実施した。
【0269】
7.5 別の第2のイオン交換プロセス
オレイルアミン(10mL)及びオレイン酸(5mL)を真空下、90℃で20分間脱気する。(Ga(NMe3)3)2(206mg)及びGaCl3(最小量のトルエン中180mg)を添加し、続いて実施例7.1のようなAIGS(ヘプタン中200mg)を添加する。130℃まで加熱した後、TMS2S(ODE中の50%溶液0.65mL)を20分かけて添加し、混合物を2.5時間保持する。冷却後、混合物を実施例7.1に記載の方法で洗浄する。
【0270】
7.6 結果
AIGSナノ構造に、InをGaと交換するイオン交換プロセスを行った。コア成長と比較してこのプロセスに使用される温度が高いため(240℃対210℃)、熟成が進み、平均サイズが未処理のナノ構造よりも大きくなった。このナノ構造は、シェル構造が十分に分化していない。これは断面TEM元素マッピングにおいて観察できる。より高いバンドギャップシェルの欠如は、膜処理中のこれらの材料のフォトルミネッセンスの保持を制限すると予想される。
【0271】
第2のイオン交換プロセス後、平均TEMサイズは増加しなかったが(
図2A~2C)、TEM元素マッピングは、Gaリッチ(より高いバンドギャップ)領域へのより明確な勾配がQDに生じたことを示した。
【0272】
単一イオン交換プロセス及び複数イオン交換プロセスの元素組成を表6に示す。値は、実施例7.1及び7.2の10~20個の試料の平均値である。
【0273】
【0274】
イオン交換したAIGSナノ構造の特性を表7に示す。金属比は、ICPによって決定されたモル比である。
【0275】
【0276】
UV硬化及び180℃焼成後に保持される膜PCEは、表8に示されるように、第2のイオン交換プロセスによって著しく改善される。これは、ナノ構造の外層におけるGa濃度を増加させるプロセスにより、イオン交換によって導入されるより高いバンドギャップ領域への勾配が導かれるためであると考えられる。
【0277】
【0278】
実施例8-AIGSナノ構造及びポリアミノ配位子を含む組成物
略語
- Jeffamine - Jeffamine M-1000
- HDDA - 1-6ヘキサンジオールジアクリレート
- ビスメチルアミン - 1,3シクロヘキサンビスメチルアミン
- PCE - 光子変換効率
【0279】
粗AIGS QD成長溶液をエタノールで洗浄し、ヘプタン中に再分散することによって精製した(溶液1)。溶液1に6-メルカプト-1-ヘキサノールを添加し、50℃で30分間加熱した後、エタノールで洗浄し、ヘプタン中に再分散させた(溶液2)。QD無機固体100mgあたり2μLの6-メルカプト-1-ヘキサノールを添加した。溶液2に、配位子交換段階用にJeffamine及びHDDAを加え、80℃で1時間加熱し、ヘプタンによって沈殿させ、HDDA中に再分散させた(溶液3)。QD無機固体100mgあたり83mgのJeffamineを添加した。QD無機固体100mgあたり0.42gのHDDAを添加した。10重量%のTiO2及び90重量%のモノマーを含むインクジェットインク組成物に、溶液3及びHDDAを添加した。このインクジェット配合物は、10重量%のQD無機質量、4重量%のTiO2、及び残りの86重量%の配位子(結合及び未結合)、HDDA、モノマー、光重合開始剤、及びQD溶液から残ったその他の雑多な有機物の組合せである組成を有していた。このインク配合物は溶液4であった。
【0280】
溶液4にポリアミノ配位子ビスメチルアミン(QD無機固体100mgあたり50mgのビスメチルアミン)を添加し、次いで組成物を膜としてキャストした。
【0281】
膜キャスト
溶液4を2インチ×2インチのガラス基板上にスピンコートした。膜をUVLED硬化ランプで硬化させた。次いで、明るさの尺度である膜の光変換効率(PCE)を試験した。その後、180℃に設定したホットプレートを用いて、ホットプレートより少し高い位置で膜を30分間焼成した。或いは、180℃に設定したホットプレートで10分間、熱い場所の表面に直接接触させて膜を焼成した。
【0282】
次に、膜PCEを試験した。青色448nmLEDの1インチ×1インチのマスクアレイが、膜の励起光源を提供した。積分球を膜の上に置き、蛍光光度計に接続した。
図3A及び3Bを参照のこと。集めたスペクトルを分析し、PCEを求めた。
【0283】
PCEは、試験プラットフォームによって生成された青色光子の数に対する順方向発光の緑色光子の数の比率である。PCE、LRR及び膜の形態は、表9に報告される。予期せぬことに、配位子1,3-シクロヘキサンビス(メチルアミン)、トリス(2-アミノエチル)アミン及び2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミンの存在は、配位子なしの膜と比較して、180℃焼成後のPCEの高い保持、高いLRRをもたらし、及びシワがなかった。
【0284】
【0285】
図1は、膜形態に対するジアミン添加の効果を示す。
図1の膜には、左から右に以下のものが含まれていた:無添加(シワ発生);2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン(ジアミン、シワ発生なし);シクロヘキサンメチルアミン(モノアミン、シワ発生);及びトリス(2-アミノエチル)アミン(トリアミン、シワ発生なし)。左から右に、ジアミンを含まない1番目と及び3番目の膜は、広範なシワを示した。対照的に、2番目及び4番目の膜にはシワが見られなかった。予期せぬことに、AIGS膜にジアミノ配位子を使用すると、膜のシワの大幅な減少がもたらされた。
【0286】
実施例9-AIGSナノ構造に対する追加の配位子の試験
本実験では、AIGSナノ粒子用の追加の配位子を、QYの向上、高い相溶性、及び良好な熱安定性について試験した。さらに、これらの配位子は、AIGSナノ構造を劣化及び酸化から保護することに関して評価された。また、AIGSインク組成物に配合可能な配位子の組合せも試験した。
【0287】
これらの配位子による配位子交換は、酢酸エチル、PGMEA、アセトン、キシレン、1,2-ジクロロベンゼン(ODCB)、酢酸ブチル、及びジエチレングリコールモノエチルエーテル(DGMEE)などの有機溶媒中で行った。
【0288】
AIGSナノ構造を、アミン基及びシラン基を有するポリエチレングリコールなどのポリマー鎖又はオリゴマー鎖、並びにホスフィノ基、メルカプト基、及びそれらの組合せなどの軟質塩基を含む配位子で配位子交換し、共不動態化を行った。
【0289】
図4は、本明細書に記載されるような単一のイオン交換処理を受けた様々な個々の配位子及びAIGSナノ構造の量子収率値を示している。このグラフにおいて、NG:ネイティブAIGS;NG-NL1:アミノポリアルキレンオキシド約m.w.1000;NG-NL2:(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン);NG-NL3:(3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン;NG-NL4:DL-α-リポ酸;NG-NL5:3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオール;NG-NL6:6-メルカプト-1-ヘキサノール;NG-NL7:メトキシポリエチレングリコールアミン500;NG-NL8:ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルチオールMn800;NG-NL9:ジエチルフェニルホスホナイト;NG-NL10:ジベンジルN,N-ジイソプロピルホスホロアミダイト;NG-NL11:ジ-tert-ブチルN,N-ジイソプロピルホスホロアミダイト;NG-NL12:トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩;NG-NL13:ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルチオールMn2000;NG-NL14:メトキシポリエチレングリコールアミン750;NG-NL15:アクリルアミド;及びNG-NL16:ポリエチレンイミン)。
【0290】
図4からわかるように、AIGSナノ構造を3-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン(NL3)、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオール(NL5)、及び6-メルカプト-1-ヘキサノール(NL6)で処理すると、高いQYが得られた(それぞれ73.7%、72.9%、及び76.1%)。したがって、本発明は、改善されたQYを提供する少なくとも1つのメルカプト置換配位子を含むAIGSナノ構造組成物を提供する。メルカプト置換配位子は、AIGSナノ構造の表面を不動態化し、欠陥放出を低減することにより、高いQYが得られると考えられる。アミノ置換配位子もQYを向上させた。
【0291】
この単一配位子試験では、ポリエチレングリコールアミン置換配位子(L1、L7、L8及びL13)、チオール置換配位子(L3、L5及びL6)、並びにシラン配位子(L2)は、ネイティブAIGSナノ構造と比較して良好なQYを示した。また、配位子L1、L7及びL8は、HDDAに分散させた場合、モノマーとの相溶性が向上した。
【0292】
図5は、改善されたQY%(良好な組合せ)及び低下したQY%(不良な組合せ)を与えた様々な2-配位子の組合せのQY%を示すグラフである。表面欠陥は、チオール配位子を添加することで低減できる。L6及びL7の組合せは、他よりも優れた安定性を与えた。しかし、比較的親水性のインク組成物では、メトキシポリエチレングリコールアミン及びポリ(エチレングリコール)メチルエーテルチオールなどの比較的親水性の配位子が良好である。このチオールはまた、表面欠陥を不動態化することによってQYを改善する。
【0293】
配位子交換に適した温度は、室温から120℃である。組成物中の配位子の総量は、AIGSの質量の60%~150%であってもよい。
【0294】
表10は、複数の配位子を用いた配位子交換前後のQY、PWL及びFWHMの相対変化を示す。表10は、L6&L7が、特にアクリレートモノマーと組み合わせた場合に、インク配合に最も効果的な配位子の組合せであったことを示している。L2&L7、L2&L6、及びL2&L3、L6及びL7の組合せにより、優れた分散性及び熱安定性が得られた。
図6を参照のこと。
【0295】
【0296】
さらに、グローブボックス内で180℃まで30分間加熱した場合に良好な熱安定性を示す配位子の組合せを検討した。配位子の組合せL6&L7、L2&L6、及びL2&L3により、単一の配位子L1よりも優れた安定性が得られた。
図6を参照のこと。
【0297】
また、配位子の組合せの比率の違いによるQYへの影響も検討された。配位子の総量を固定したまま、配位子の重量比を変化させた。最良のQYは、L6とL7との比率が7:3で達成された。
図7を参照のこと。L6とL7との組合せは、9:1の比率を除き、ネイティブAIGSナノ構造よりも向上したQYを示した。この混合物は高いQYを示したが、沈殿が生じないため精製が困難であった。L6&L2、L3&L7、及びL5&L7の混合物は、AIGSナノ構造のための良好な配位子混合物である。これらの配位子の組合せは、テトラヒドロフルフリルアクリレート、トリ(プロピレングリコール)ジアクリレート、1,4-ビス(アクリロイルオキシ)ブタン、ジエチレングリコールエチルエーテルアリレート、イソブロニルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、2-(アクリロイルオキシ)エチル水素スクシネート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートなどの様々なモノマーと組み合わせて使用することができる。
【0298】
実施例10-AIGS膜におけるPCEの改善
N2を充填したグローブボックス内で、適切な配位子で被覆したAIGS QDを、1種又は複数種のモノマー、TiO2散乱粒子、及び光重合開始剤を含むインクに混合した。これらのインクをスピンコートして膜をキャストし、UV照射で硬化させた。その後、膜をホットプレート上で180℃で30分間焼成し、残存する揮発性成分を除去した。これらのプロセスは全て不活性雰囲気(N2充填グローブボックス内)で行った。
【0299】
この段階で、青色LED光源上に膜面を上に向けて置くことにより、大気中で膜を測定することができる。分光光度計に接続された積分球をQD膜の上部に配置し(
図3A及び3B参照)、膜の発光スペクトルが捕捉される。この測定をブランクのガラス基板(QDなし)でも繰り返す。QD膜の青色光吸収及び光子変換効率(PCE)は、以下の式を用いて測定される:
青色光吸収=QD膜を透過した青色光子の数/入射した青色光子の数
PCE=順方向発光の緑色光子の数/入射青色光子の数
【0300】
測定中の空気及び湿気の影響を検討するために、焼成したQD膜をN2-グローブボックスから取り出す前に封入した。これは、UV硬化型透明接着剤を数滴QD層に塗布した後、ガラス製のカバースリップを配置し、UV照射によって接着剤を硬化させることによって行われた。こうしてガラス及び接着剤を用いて封止したQD膜を、上記の方法を使用して空気中で測定した。
【0301】
この結果は、空気中で測定する前にQD膜を封入することが、高い光子変換効率(PCE)を達成するために重要であることを示している。表11は、封入がある場合及びない場合に測定された1セットの膜からの結果を示す。比較のため、InP QDを含む典型的なQDCC膜のPCE値も示している。封入されて測定された場合、AIGSナノ構造を含む膜は、はるかに低いQD装填において、InPよりも高いポストベークPCE値を有した。青色光源(約6mW/cm2)上に1時間配置することで、膜を照射することにより、PCEのさらなる向上が達成された。さらに、AIGS QDで作成されたQDCC膜は、InP QDで作成された膜(FWHM36nm)に比べ、はるかに狭い発光(FWHM約30nm)を示した。これは、インク樹脂への良好な分散を可能にするモノ-及びポリ-アミノ配位子の使用と組み合わせて、溶液中のAIGS QDのより低いFWHM(34nm対39nm)ことの結果である。
【0302】
【0303】
図9は、より広範な試料に及ぼす封入及び青色光処理の影響を示す。封入によって達成されたPCE値は、意外にも封入がない場合よりも有意に高かった(32%より高い)。
【0304】
180℃で焼成した膜のFWHM中央値は30.5nmであり、これは封入によってさらに狭まり、30.1nmとなった。この狭まりは、封入によって膜が明るくなった結果の可能性がある。
【0305】
本研究の試料はガラス及び接着剤を使用して封入されたが、PCEにおけるこのような改善は、QD層に酸素バリアを形成することができるいずれの方法でも達成できる。これらのQDCC層を含むデバイスの大量生産では、堆積プロセスを使用して封入を行うことができる。この場合の典型的なプロセスフローは、QD層のインクジェット印刷、次いでUV照射による硬化、揮発物を除去するための180℃での焼成、有機平坦化層の堆積、次いで無機バリア層の堆積を含むであろう。無機層の堆積に使用される技術としては、原子層堆積法(ALD)、分子層堆積法(MLD)、化学気相成長法(CVD)(プラズマ増強の有無は問わない)、パルス気相成長法(PVD)、スパッタリング、金属蒸着などが挙げられる。他の潜在的な封入方法としては、溶液処理又は印刷された有機層、UV又は熱硬化性接着剤、バリア膜を用いたラミネートなどが挙げられる。
【0306】
実施例11 金属アルコキシドを用いた改良AIGS膜
QD-OLED及びQDマイクロLEDなどの新興の先端ディスプレイ技術に応用するためには、24時間の黄色光及び空気貯蔵条件下で光学特性を維持する膜が必要である。ジルコニウムイソプロポキシドを含む膜は、黄色光及び空気貯蔵条件下で少なくとも30%のPCEを維持する一方、ジルコニウムプロポキシドを含まない膜は、PCEが35.8%から14%まで低下することが見いだされた(表12の項目1。)
【0307】
「黄色光及び空気貯蔵条件」は、以下のように確立された。膜は、ガラス基板上にAIGSインクをスピンコートし、次にUV光(405nm)による照射によって硬化させ、180℃のホットプレート上で30分間焼成することによって作製され、全てN2充填グローブボックス中で行われた。インクは以下の成分を含んだ。
【0308】
【0309】
その後、膜を大気中に移し、青色遮断フィルターで覆われた白色LED照明を使用して照射された「イエロー」ルームに貯蔵した。Konica-Minolta CL-200A色度計によって測定した場合、イエロールームの典型的な照度値及び色座標は、140ルクス、CIEx=0.52、CIEy=0.45である。参考までに、青色フィルタリングがない典型的な室内光条件は、照度=620ルクス、CIEx=0.38、CIEy=0.38である。
【0310】
PCEに対する空気曝露の影響を試験するため、膜を周期的な間隔(3時間、1日、3日)で採取し、第2のスライドガラス及びUV硬化性透明接着剤を使用して封入し、PCEプラットフォーム上で測定した。空気中での長期貯蔵の効果をさらに試験するため、封入された膜を180℃で30分間再度焼成し、PCEプラットフォーム上で測定した。
【0311】
【0312】
表13に示すように、AIGS膜の安定性は、AIGSインク中にジルコニウム(IV)プロポキシド又はその加水分解物を添加することによって劇的に改善された。表13に示すように、膜のPCEは、24時間の黄色光貯蔵後に30.1~34.4%に維持されることが可能であり、空気を含まない膜の35.8%のPCEよりわずかに低いのみである。
【0313】
表14は、別の金属アルコキシドを含むインクを使用した膜の結果を示す。ガリウム又はバリウムイソプロポキシドの添加によって、ジルコニウムプロポキシドと同様の膜の空気安定性の改善がもたらされる。
【0314】
【0315】
特定の理論に束縛されることなく、金属アルコキシドはAIGSナノ構造の周囲に安定化シェルを形成すると考えられる。古典的なゾル-ゲルプロセスでは、テトラエチルオルソシリケート(TEOS)が空気中の水分に曝露されると、自然な加水分解及び縮合反応が生じる。その結果、ゾル-ゲル三次元ネットワークが形成され、極端な条件下ではSiO2が形成される。Zr(OPr)4は典型的なゾル-ゲル前駆体である。AIGS/Zrインク配合物が空気中に曝露されると、ゾル-ゲルプロセスが実際に生じた。AIGS/Zr(OPr)4のin-situ FTIRによって、AIGS/Zr試料をFTIRウィンドウ上に5分間長く放置することによって、3400cm-1付近の-OH伸長の強度が著しく増加したのに対し、Zr(OPr)4を含まないAIGS試料ではそのような変化がなかったことが示された。これは、その場で形成された三次元ネットワークが酸素バリアとして機能し、ZrOx(OH)y形成による高い伝導帯が励起子、特に電子を閉じ込めるためと考えられる。これら2つのプロセスの組合せにより、光/空気条件下での活性酸素種(ROS)の形成が効果的に防止されるため、光/空気安定性が劇的に向上する。
【0316】
酸化防止剤及び立体障害配位子として機能するフェノール系添加剤を含ませることにより、膜性能をさらに向上させることができる。表15は、ジルコニウムプロポキシド、及びフェノール系添加剤であるペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]の両方を含む一連の膜からの光学データを示す。
【0317】
【0318】
実施例12 嵩高いフェノール系補助配位子の使用
AIGSナノ構造上の配位子交換を、6-メルカプトヘキサノール及びJeffamine M1000を用いて、80℃で1時間行った。その後、補助配位子を有するモノマー中にAIGSナノ構造を再分散させた。インク配合物は、配位子交換したQDを12%含み、散乱媒体としてTiO2を10%含み、分散剤としてJeffamine M1000を5%含めた。
【0319】
良好な配位子又は補助配位子を選択するには、いくつかの条件が一致しなければならない。第一に、配位子は表面上の配位子を保護しなければならない。第二に、配位子は他のインク成分と相溶性でなければならない。第三に、配位子は酸素を遮断することで空気安定性でなければならない。これらの条件に合致する有望な候補を見つけるために、インク配合物に補助配位子を添加して膜を作製した。
【0320】
図11は、インク配合物中に異なる補助配位子を用いた場合の膜性能を示している。膜のEQEは、補助配位子-1が他のものよりも良好であった。これは、補助配位子-1の嵩高い末端基が、AIGSナノ構造上に立体障害及び緻密な表面不動態化をもたらし、これが酸素の透過及び酸化を防いでいるためであると推測される。
【0321】
【0322】
InPとは異なり、弱く結合したL型配位子と良好に結合できるAIGSナノ構造は、副反応を引き起こし得る活性ラジカル又は活性種が存在する場合、EQEを低下させる可能性がある。これらの副反応は、重合開始剤又はラジカル活性種を介したラジカル生成及び酸素を介した光酸化に起因する。膜の安定性を暗条件下で確認した。暗条件下では、補助配位子-1及び7は対照群インクと比較して非常に安定したEQEを示した(
図11)。補助配位子-2はEQEの低下を引き起こし、安定性が低かった。したがって、補助配位子-1及び7を含む膜が空気に曝露された場合であっても、膜は光に曝露されることなく劣化しなかった。
【0323】
膜性能の変化を確認するために、黄色光条件下で光安定性を測定した。
図12に示すように、補助配位子-1は、参照インク(対照群)よりも24時間後の黄色光に対する安定性が良好であった。また、リンをベースとする補助配位子7は、参照インク(対照群)と比較して同等のEQEを示した。
【0324】
膜の熱安定性も、膜を180℃で焼成した後に測定した。表17に示すように、嵩高いフェノールベースの補助配位子-1及びリンベースの補助配位子-7は、対照群と比較して良好な熱安定性を示した。
【0325】
【0326】
また、インクの製造プロセスを表18に示すように変更した。補助配位子-1を後添加した場合、EQEは参照配位子1,3-シクロヘキサンビス(メチルアミン)の場合よりも良好であった。また、補助配位子-1との配位子交換間にチオールをさらに添加した場合、インク配合物は最も安定したEQE性能を示した。インク及び添加剤の比率が異なるインク配合物を黄色光条件に曝露した時の経時安定性を示す
図13を参照のこと。
【0327】
【0328】
図14に示すように、AIGSナノ構造の追加的なGaCl
3(S3)処理は、EQE性能の向上を示した。無機配位子ジルコニウムプロポキシド(S2)をS3と一緒に添加する場合、さらに性能が向上した。S2などの多価金属ベースの配位子を添加することによって、硫黄の過剰な酸化を補い得る。補助配位子-1、S2及びS3を組み合わせた場合に、焼成膜で最高の性能が得られることを示している
図15も参照のこと。
図16は、補助配位子-1、S2及びS3が組み合わされた場合、黄色光条件に曝露されると、膜が高い耐光性を有することを示している。
【0329】
比較のために、
図17は、1%のS3、3%のS3、及び6%のS3を含有するAIGS膜のEQE%対青色光吸光度を示す折れ線グラフである。
【0330】
以上、様々な実施形態について説明したが、これらは例示として提示したものであり、限定するものではないことを理解されたい。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細における様々な変更を実行することが可能であることは、関連技術の当業者には明らかであろう。したがって、広さ及び範囲は、上述の例示的な実施形態のいずれかによって限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲及びその等価物に従ってのみ定義されるべきである。
【0331】
本明細書中で言及される全ての刊行物、特許及び特許出願は、本発明が関連する当業者のレベルを示すものであり、それぞれの刊行物、特許又は特許出願が、参照により組み込まれることが具体的且つ個別に示されている場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】