(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-17
(54)【発明の名称】測定セルの温度を制御するためのデバイス及びデバイスを動作させるための方法
(51)【国際特許分類】
G01N 25/00 20060101AFI20240410BHJP
G01N 25/02 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
G01N25/00 M
G01N25/02 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565184
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(85)【翻訳文提出日】2023-12-18
(86)【国際出願番号】 DE2022100350
(87)【国際公開番号】W WO2022237937
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】102021112581.2
(32)【優先日】2021-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523398695
【氏名又は名称】スリーピー インストルメンツ ゲーエムベーハー ウント コー.カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】エシュリッヒ,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】クランク,ディートマール
(72)【発明者】
【氏名】ザイドラー,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】グラフ,マティアス
【テーマコード(参考)】
2G040
【Fターム(参考)】
2G040AB11
2G040BA02
2G040BA23
2G040CA01
2G040DA02
2G040DA12
2G040EA07
2G040EA08
2G040EC09
2G040FA01
(57)【要約】
本発明は、冷媒及び測定装置を受けるための断熱容器を有する測定セル、特に、ガス収着測定セルの温度を制御するためのデバイスに関する。測定装置は、測定セルを受けるための受入開口を有する温度制御要素を有し、温度制御要素の温度を制御するための冷却デバイスも有し、温度制御要素及び冷却デバイスは、長手方向軸の方向に整列され、熱を交換している間、互いに対して置かれる。冷却デバイスは、温度制御要素を容器の壁に固定するため及び測定装置と冷媒との間の熱交換のための締結要素を有して形成される。長手方向軸の方向において、温度制御要素と冷却デバイスとの間に配置されるのは、温度制御要素及び測定セルを冷却するための熱電冷却要素である。本発明は、測定セルの温度を制御するためのデバイスを動作させるための方法にも関する。
【選択図】
図2a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒及び測定装置を受けるための断熱容器(4)を有する測定セル(30)、特にガス収着測定セルの前記温度を制御するためのデバイス(1a、1b)であって、
前記測定装置は、前記測定セル(30)を受けるための受入開口(9)を有する温度制御要素(8)を有するとともに、前記温度制御要素(8)の温度を制御するための冷却デバイスをも有し、
前記温度制御要素(8)及び前記冷却デバイスは、長手方向軸(L)の前記方向に整列されるとともに、熱を交換している間、互いに対して置かれるように配置され、
前記冷却デバイスは、前記温度制御要素(8)を前記容器(4)の壁に固定するため及び前記測定装置と前記冷媒との間の前記熱交換のための締結要素(15a、15b)を有する、デバイス(1a、1b)において、
前記温度制御要素(8)及び前記測定セル(30)を冷却するための熱電冷却要素(13)は、前記長手方向軸(L)の前記方向において、前記温度制御要素(8)と前記冷却デバイスとの間に配置されることを特徴とする、デバイス(1a、1b)。
【請求項2】
前記熱電冷却要素(13)は、上側が前記長手方向軸(L)の前記方向に整列された状態で前記温度制御要素(8)の下側に対して置かれるように配置されるディスクの前記形状を有することを特徴とする、請求項1に記載のデバイス(1a、1b)。
【請求項3】
前記熱電冷却要素(13)は、ペルチェ素子として設計されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のデバイス(1a、1b)。
【請求項4】
少なくとも1つの温度センサ(19)は、前記温度制御要素(8)及び前記測定セル(30)並びに調整デバイス(33)の前記温度を特定するように設計され、
前記温度センサ(19)は、前記調整デバイス(33)に接続されることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載のデバイス(1a、1b)。
【請求項5】
前記熱電冷却要素(13)は、前記調整デバイス(33)に電気的に接続され、
前記調整デバイス(33)は、前記温度センサ(19)から受信された信号により、前記熱電冷却要素(13)を制御し、かつ、前記温度制御要素(8)の前記温度の指定された目標値を一定に保つように構成されることを特徴とする、請求項4に記載のデバイス(1a、1b)。
【請求項6】
前記冷却デバイスは、ヒートシンク(10)、熱交換要素(12)及び少なくとも1つのばね要素(14-1、14-2)を有することを特徴とする、請求項1~5の何れか一項に記載のデバイス(1a、1b)。
【請求項7】
前記ヒートシンク(10)及び前記締結要素(15a、15b)は、互いに直接接触して強固に接続されるように設計されるか、又は、一体的に設計されることを特徴とする、請求項6に記載のデバイス(1a、1b)。
【請求項8】
前記冷却デバイスは、前記長手方向軸(L)の前記方向において、前記ヒートシンク(10)と前記温度制御要素(8)との間に配置される熱分流要素(11)を有し、
前記ヒートシンク(10)及び前記分流要素(11)並びに前記分流要素(11)及び前記温度制御要素(8)は、それぞれ互いに強固に接続されることを特徴とする、請求項6又は7に記載のデバイス(1a、1b)。
【請求項9】
前記熱電冷却要素(13)は、前記長手方向軸(L)の前記方向において、前記温度制御要素(8)と前記熱交換要素(12)との間に配置されることを特徴とする、請求項6~8の何れか一項に記載のデバイス(1a、1b)。
【請求項10】
前記少なくとも1つのばね要素(14-1、14-2)は、前記熱電冷却要素(13)が、前記少なくとも1つのばね要素(14-1、14-2)の前記ばね力に起因して、前記温度制御要素(8)に対して押し当てられるように配置されるように配置されることを特徴とする、請求項6~9の何れか一項に記載のデバイス(1a、1b)。
【請求項11】
前記少なくとも1つのばね要素(14-1、14-2)は、円板ばねとして設計され、前記長手方向軸(L)の前記方向において、前記ヒートシンク(10)と前記熱交換要素(12)との間に配置されることを特徴とする、請求項6~10の何れか一項に記載のデバイス(1a、1b)。
【請求項12】
前記ヒートシンク(10)は、前記半径方向に外側面から突出するカラーを有し、前記長手方向軸(L)の前記方向に整列された軸を有する円筒の前記形態で設計され、
前記熱交換要素(12)は、前記長手方向軸(L)の前記方向に整列された軸を有する中空円筒の前記形態で設計され、
前記ヒートシンク(10)の前記外側面及び前記熱交換要素(12)の前記内側面は、互いに対応するように設計されるとともに、前記表面全体にわたって互いに対して置かれるように配置され、
前記熱交換要素(12)は、前記ヒートシンク(10)に対して前記長手方向軸(L)の前記方向に可動である、
ことを特徴とする、請求項6~11の何れか一項に記載のデバイス(1a、1b)。
【請求項13】
前記熱交換要素(12)は、前記温度制御要素(8)に向かって整列された端面において、前記半径方向に内側面から突出するカラーを有することを特徴とする、請求項12に記載のデバイス(1a、1b)。
【請求項14】
前記少なくとも1つのばね要素(14-1)は、
前記ヒートシンク(10)の前記カラーの上側であって、前記冷却要素(13)の前記方向を向き、前記カラーは前記半径方向に前記外側面から突出する、上側と、
前記ヒートシンク(10)の前記カラーの反対側における前記熱交換要素(12)の端面と、
の間に配置されることを特徴とする、請求項12又は13に記載のデバイス(1a、1b)。
【請求項15】
前記少なくとも1つのばね要素(14-2)は、前記冷却要素(13)の前記方向を向く前記ヒートシンク(10)の前記上側と、前記半径方向に前記熱交換要素(12)の前記内側面から突出する前記カラーと、の間に配置されることを特徴とする、請求項12又は13に記載のデバイス(1a、1b)。
【請求項16】
前記締結要素(15a、15b)の部分領域(15a-1、15b-1)は、前記冷媒と直接接触するように配置されることを特徴とする、請求項1~15の何れか一項に記載のデバイス(1a、1b)。
【請求項17】
前記温度制御要素(8)、前記熱電冷却要素(13)、前記熱交換要素(12)及び前記締結要素(15a、15b)の部分領域は、前記長手方向軸(L)と同軸に整列されるとともに、それぞれ外側面上で断熱要素(17a、17b)によって全周的に囲まれることを特徴とする、請求項6~16の何れか一項に記載のデバイス(1a、1b)。
【請求項18】
前記断熱要素(17a、17b)は、前記長手方向軸(L)の前記方向に下方に整列された端面及び外側面上で層要素(18)によって全周的に囲まれることを特徴とする、請求項17に記載のデバイス(1a、1b)。
【請求項19】
前記締結要素(15a、15b)は、棒形であるように、及び、一体的に又は複数片で設計されることを特徴とする、請求項1~18の何れか一項に記載のデバイス(1a、1b)。
【請求項20】
前記締結要素(15b)は、前記長手方向軸(L)と同軸に配置される放熱要素(20)、スタンド要素(21)及びジャケット要素(22)から形成され、
前記放熱要素(20)及び前記スタンド要素(21)は、前記長手方向軸(L)の前記方向において互いに面する端面で互いに対して置かれるように配置されることを特徴とする、請求項19に記載のデバイス(1b)。
【請求項21】
前記締結要素(15b)の前記第1の部分領域(15b-1)及び前記スタンド要素(21)をそれぞれ前記側面において及び前記長手方向軸(L)の前記方向に全周的に囲む前記ジャケット要素(22)は、少なくとも部分領域が前記冷媒内にある状態で配置され、かつ、前記冷媒を前記締結要素(15b)の前記第1の部分領域(15b-1)に輸送するために多孔質材料で作られることを特徴とする、請求項19又は20に記載のデバイス(1b)。
【請求項22】
前記ジャケット要素(22)は、中空円筒形状を有するとともに、外側面上で層要素(23)によって全周的に囲まれることを特徴とする、請求項20又は21に記載のデバイス(1b)。
【請求項23】
請求項1~22の何れか一項に記載の測定セル(30)の前記温度を制御するためのデバイス(1a、1b)を動作させ、かつ、分析を実施するための時間間隔において、前記測定セル(30)の前記温度を、指定された目標値で一定に保つための方法であって、
温度制御要素(8)を介した熱交換のために前記測定セル(30)と熱伝導接触する冷却デバイスの締結要素(15a、15b)を冷媒に浸すステップと、
前記温度制御要素(8)の前記温度を特定するとともに、前記温度を前記指定された温度目標値と比較するステップと、
前記温度制御要素(8)を冷却するとともに、前記温度制御要素(8)の前記指定された目標温度を前記時間間隔中に一定に保つために、前記温度制御要素(8)に熱的に結合された熱電冷却要素(13)によって前記温度を調整するステップと、
を含む、方法。
【請求項24】
前記熱電冷却要素(13)は、少なくとも1つのばね要素(14-1、14-2)で前記温度制御要素(8)に対して押し当てられ、異なる熱膨張は補償されることを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記測定セル(30)の前記温度が制御及び調整され得る前記温度範囲は、前記温度制御要素(8)と前記締結要素(15a、15b)との間に配置された前記冷却デバイスの分流要素(11)の前記材料及び前記寸法によって設定されることを特徴とする、請求項23又は24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次冷媒を使用する、異なる温度での材料特性評価のための吸着分析のための測定セル、特にガス収着測定セルの温度の目標を定めた制御のためのデバイスに関する。デバイスは、冷媒及び測定装置を受けるための、断熱容器内に配置された断熱された容器を有して形成される。測定装置は、測定セルを受けるための受入開口を有する温度制御要素を有し、温度制御要素の温度を制御するための冷却デバイスも有する。本発明は、このデバイスを動作させるための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
固体表面は、従来、ガス吸着を使用して特徴評価されてきた。関連する分析は、通常、10-8バール未満から使用されるプローブ分子の飽和蒸気圧までの圧力で真空装置において実施される。最大の可能な測定範囲は、飽和蒸気圧が真空装置の最大の可能な圧力に対応する測定温度で達成される。真空装置の最大の可能な圧力は、通常、大気圧である。これは、測定温度が、使用されるプローブ分子の沸点であることをもたらす。
【0003】
他の気体と比べたその事実上の不活性及びその単純で費用効率的な利用可能性により、窒素は、測定セルを77K、すなわち-196℃の測定温度まで冷却するための極低温液体として、固体表面を特性評価するためのガス収着測定の標準的な冷媒及び標準的なプローブ分子となっている。しかしながら、このような分析のための窒素の絶対的な適合性に疑問を呈し、最終的に「国際純正・応用化学連合」、略してIUPAC、ドイツ語では「Internationale Union fuer reine und angewandte Chemie」による希ガスアルゴンの使用に関する2015年の一般的な推奨に至った知見もある。
【0004】
一方では、窒素を上回るアルゴンの利点は、単一原子希ガスが四重極モーメントを有さず、固体表面と、略言すると吸着質とも呼ばれる吸着されたプローブ分子と、の間の望ましくない相互作用を減少させるという事実にある。他方では、窒素での分析と同様に、あらゆる場所で商業的に利用可能であるわけではなく、窒素よりも著しく費用がかかる液体アルゴンを使用して、測定セルを約87K、すなわち-186℃の測定温度に冷却する必要がある。結果として、アルゴンでの固体表面の分析は、あまり広まっていない。
【0005】
米国特許出願公開第2017 0370817 A1号は、デバイスであって、それにより、77Kの温度の液体窒素を充填されたデュワー容器に配置された測定セル保持器が、目標を定めた加熱によって87Kまで加熱され、調整され得るデバイスを開示している。熱伝導性係数及び幾何学的形状に関して特定の材料を慎重に選択することにより、定義された温度範囲が得られる。
【0006】
測定セルの温度を制御し、温度を調整するためのそのようなデバイスの設計は、実質的に熱流量の補償に基づく。
図1は、測定点Mと、ヒートシンクKと、を有する測定セルの温度を制御するためのデバイスの制御容積Bを概略的に示す。
【0007】
使用される断熱体の不完全性の結果として、熱流断熱冷気(ドイツ語:Waermestrom Isolation kaltから)を略した熱QiKは、デバイスの外壁、具体的にはハウジングを通して、次いで冷却のための液体、特に液体窒素中に移動される。液体窒素レベルは、この点において高い。さらに、液体窒素充填レベルが低いとき、熱流断熱暖気(ドイツ語:Waermestrom Isolation warmから)を略した熱Qiwは、充填レベルラインより上に位置する気相から制御容積Bに流入する。両方の熱の量は、温度及びレベルに依存し、さらなる検討にとって無視できる程度である。
【0008】
さらに、熱Qaは、その設計に起因してハウジングと比べて断熱が不十分であるデバイスの上側を通して流れる。上側は、デバイスの測定チャンバ及び測定点Mへのアクセスを確実にし、これは、断熱に影響を及ぼす。さらに、熱QKは、ヒートシンクKから、導入される熱に従って蒸発する液体窒素中に移動される。ヒートシンクKの冷却は、したがって、液体窒素の蒸発のエンタルピーによって保証される。液体窒素が蒸発する際、レベルは、液体窒素が完全に蒸発するまで低下する。
【0009】
デバイスは、以下の式が満たされる場合、測定点Mで一定の温度を有する。
QK=Qa+QH
【0010】
デバイス、特に測定点Mでのデバイスにおける一定の温度を確実にするために、ヒートシンクKによって放散される熱QKと、外側からデバイス内に入る熱と、の間の流量の差がちょうど均衡するように、ちょうど同じ量の熱QHがデバイスに導入される。デバイスに流入する熱は、制御回路を使用して調整される。
【0011】
先行技術から既知のそのようなデバイスでは、熱流量の釣り合わせ、したがって必要とされる一定の温度は、測定点M、特に測定セル保持器とヒートシンクKとの間の領域における目標を定めた加熱、特に目標を定めた熱の供給を通して達成される。ここで、熱QHは、測定セル保持器又は測定点Mの温度を制御し、ヒートシンクKによって放散された熱を補償するのに役立つ。測定点Mの指定された温度を維持することは、したがって、液体窒素の蒸発、したがって利用可能な測定時間を犠牲にして調整され、これは、特に細孔吸着剤の場合、収着等温線が完全に測定され得ないことの原因となり得る。
【0012】
デバイス全体が特定の温度のために設計される必要がある。例えば、材料選択又は形状に起因して冷却パワーが低すぎる場合、必要な極低温が達成されない。しかしながら、より高い温度での分析のために、より大きい熱QHが求められるが、これは、より多くの量の液体窒素の蒸発によって補償される。結果として、デバイスの設計温度を超える温度では、利用可能な測定時間が著しく減少し、これは、したがって、特定の分析のためにもはや十分でない。
【0013】
図示のデバイス及びそれで実装された原理に加えて、特定の温度で収着分析又は収着試験を実施するための他の方法もある。これらは、とりわけ、分析を可能にするためのデバイスと併せた極低温液体での直接冷却としての、いわゆる低温保持装置及びクライオクーラー、すなわち圧縮冷凍機の使用を含む。
【0014】
例えば、国際公開第2020 157646 A1号は、冷却剤を充填された容器において収着分析を実施するためのサンプル容器構成を示している。この構成は、分析されるサンプル及び芯を受けるためのサンプル受入領域を有する容器内に吊り下げられたサンプル容器を有する。サンプル受入領域を囲む芯は、サンプル受入領域から容器の底部に向かって延在し、冷却液体をサンプル受入領域上に引く。
【0015】
先行技術から既知の極低温液体における分析では、極低温液体の温度は、その純度及び飽和蒸気圧を介した空気圧に依存し、これは、数時間続く測定期間にわたって数十分の一ケルビンの気候に依存した変化の原因となり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、広い温度範囲におけるガス収着分析のために測定セルの温度を制御するためのデバイスを提供することである。分析のための使用可能期間は、温度範囲全体にわたって最大であるべきである。デバイスは、構築及び製造が単純であるべきであり、製造及び稼働のコストは、特に分析のために最小限であるべきである。安定的な温度で実施することも可能であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的は、測定セルの温度を制御するための、特にガス収着測定セルの温度を極低温に制御するための本発明によるデバイスによって達成される。デバイスは、冷媒及び測定装置を受けるための、特に断熱容器内に配置された断熱された容器を有して形成される。測定装置は、測定セルを受けるための受入開口を有する温度制御要素を有し、温度制御要素の温度を制御するための冷却デバイスも有する。温度制御要素及び冷却デバイスは、長手方向軸の方向に整列され、互いに対して置かれて熱を交換する。ここで、冷却デバイスは、容器の壁に固定するための、及び、測定装置と冷媒との間の熱交換のための、締結要素を有する。
【0018】
本発明の概念によると、温度制御要素及び測定セルを冷却するための熱電冷却要素は、デバイスの長手方向軸の方向において、温度制御要素と冷却デバイスとの間に配置される。
【0019】
熱電冷却要素の設計は、冷媒のいずれの部分もデバイスの追加的な加熱、特に温度制御要素の追加的な加熱によって消費されないという利点を有する。極低温液体、例えば液体窒素及び沸点が123.15K未満である流体のみならず、沸点が230K未満の冷却液体も好ましくは冷媒として使用され得る。
【0020】
冷媒及び測定装置を受けるための断熱容器は、好ましくは、多層壁、特に二重壁の容器として設計される。この場合、壁間の空間は、高真空断熱される。
【0021】
受入開口及び測定セルを有する温度制御要素は、好ましくは、それぞれ長手方向軸を中心として回転対称であるように設計される。
【0022】
本発明の改良形態によると、熱電冷却要素は、ディスク、例えば円形ディスクの形状を有する。有利には、ペルチェ素子として設計された熱電冷却要素は、上側が長手方向軸の方向に整列された状態で温度制御要素の下側に対して好ましくは平らに置かれる。
【0023】
本発明の好ましい構成によると、デバイスは、温度制御要素及び測定セル並びに調整デバイスの温度を特定するための少なくとも1つの温度センサを有して形成される。温度センサは、調整デバイスに特に電気的に接続される。
【0024】
本発明の利点は、熱電冷却要素が調整デバイスに電気的に接続される点である。ここで、調整デバイスは、それが、温度センサから受信された信号を使用して熱電冷却要素を制御し、かつ、温度制御要素の温度の指定された目標値を一定に保つように構成される。
【0025】
本発明の有利な構成によると、冷却デバイスは、デバイスの長手方向軸を中心として回転対称に設計され得るヒートシンク、熱交換要素、及び、少なくとも1つのばね要素を有する。
【0026】
ヒートシンク及び締結要素は、好ましくは、互いに直接接触するとともに強固に接続され、特に、一緒にねじで取り付けられるか、又は、一体的に設計される。一体設計は、1つの部片又は1つの部品から作られるか、又は、形成されたコンポーネントを意味すると理解される。
【0027】
ヒートシンク又は締結要素は、有利には、高熱伝導率、特に100W/(m・K)を超える熱伝導率の材料、特に銅で作られる。
【0028】
本発明の改良形態によると、冷却デバイスは、デバイスの長手方向軸の方向において、ヒートシンクと温度制御要素との間に配置される熱分流要素を有する。ここで、一方ではヒートシンク及び分流要素並びに他方では分流要素及び温度制御要素は、それぞれ互いに強固に接続され、特に一緒にねじで取り付けられる。分流要素は、熱伝導率が40W/(m・K)未満の材料、特にステンレス鋼で形成され得る。
【0029】
熱電冷却要素は、デバイスの長手方向軸の方向において、温度制御要素と熱交換要素との間に配置され得る。さらに、熱電冷却要素は、熱電冷却要素がデバイスの長手方向軸を中心として中央に配置されるように、好ましくは分流要素を全周的に囲む。
【0030】
本発明の好ましい構成によると、デバイス、特に冷却デバイスの少なくとも1つのばね要素は、熱電冷却要素が、少なくとも1つのばね要素のばね力に起因して、温度制御要素に対して押し当てられるように配置されるように配置される。少なくとも1つのばね要素は、好ましくは、円板ばねとして設計され、デバイスの長手方向軸の方向において、ヒートシンクと熱交換要素との間に配置される。
【0031】
ヒートシンクは、有利には、デバイスの長手方向軸の方向に整列された軸及び半径方向に外側面から突出するカラーを有する円筒、特に円柱形状を有する。カラーは、特に、締結要素の方を向くヒートシンクの下側に側面を中心として全周的に配置される。
【0032】
熱交換要素は、好ましくは、デバイスの長手方向軸の方向に整列された軸を有する中空円筒、特に中空円柱の形態で設計される。ここで、ヒートシンクの外側面及び熱交換要素の内側面は、ヒートシンク及び熱交換要素が側面の表面全体にわたって互いに対して置かれるように寸法及び形状に関して互いに対応する。熱交換要素は、ヒートシンクに対してデバイスの長手方向軸の方向に可動、特に変位可能である。
【0033】
好ましくは銅で作られた熱交換要素は、有利には、温度制御要素に向かって整列された端面において、半径方向に内側面から突出するカラーを有する。
【0034】
本発明の第1の代替構成によると、少なくとも1つのばね要素は、冷却要素の方向を向くヒートシンクのカラーの上側であって、カラーは半径方向に外側面から突出する、カラーの上側と、ヒートシンクのカラーの反対側における熱交換要素の端面と、の間に配置される。
【0035】
本発明の第2の代替構成によると、少なくとも1つのばね要素は、冷却要素の方向を向くヒートシンクの上側と、半径方向に熱交換要素の内側面から突出するカラーと、の間に配置される。
【0036】
2つのばね要素を有するデバイスの設計において、第1のばね要素は、半径方向に外側面から突出するとともに冷却要素の方向を向くヒートシンクのカラーの上側と、ヒートシンクのカラーの反対側における熱交換要素の端面と、の間に配置され得る一方、第2のばね要素は、冷却要素の方向を向くヒートシンクの上側と、半径方向に熱交換要素の内側面から突出するカラーと、の間に配置され得る。
【0037】
本発明の改良形態によると、締結要素の第1の部分領域は、冷媒と直接接触するように配置される。
【0038】
温度制御要素、熱電冷却要素、熱交換要素及び締結要素の第2の部分領域は、有利には、デバイスの長手方向軸と同軸に整列され、それぞれ外側面上で断熱要素によって全周的に囲まれる。ここで、断熱要素は、長手方向軸の方向に下方に整列された端面及び外側面上で層要素によって全周的に囲まれ得る。
【0039】
本発明のさらなる利点は、締結要素が棒形、特に丸棒形であるように設計され、一体的に又は複数片で設計される点である。
【0040】
複数片の締結要素は、好ましくは、デバイスの長手方向軸と同軸に配置される放熱要素、スタンド要素及びジャケット要素を有する。放熱要素及びスタンド要素は、長手方向軸の方向において互いに面する端面で互いに対して置かれ得る。
【0041】
放熱要素は、好ましくは、熱伝導率が200W/(m・K)を超える材料、特に銅で作られる。
【0042】
特に締結要素の第1の部分領域及びスタンド要素をそれぞれ側面において及びデバイスの長手方向軸の方向に、特に長さ全体又は高さにわたって全周的に囲むジャケット要素は、少なくとも部分的に冷媒内に配置され、冷媒を締結要素の第1の部分領域に輸送するために多孔質材料で作られる。
【0043】
好ましくは中空円筒形、特に中空円柱形状を有するジャケット要素は、外側面上で層要素によって全周的に囲まれ得る。
【0044】
目的は、測定セルの温度を制御するためのデバイスを動作させ、特にガス収着測定セルの温度を極低温に制御し、分析、特に材料特性評価のための吸着分析を実施するための時間間隔において、測定セルの温度を、指定された目標値で一定に保つための本発明による方法によっても達成される。方法は、
温度制御要素を介した熱交換のために測定セルと熱伝導接触する冷却デバイスの締結要素を冷媒に浸すステップと、
温度制御要素の温度を特定するとともに、温度を指定された温度目標値と比較するステップと、
温度制御要素を冷却するとともに、温度制御要素の指定された目標温度を時間間隔中に一定に保つために、温度制御要素に熱的に結合された熱電冷却要素によって温度を調整するステップと、
を含む。
【0045】
デバイス及び特に温度制御要素又は測定セル内に入る熱は、熱電冷却要素を通して冷媒中に放散される。
【0046】
本発明の改良形態によると、熱電冷却要素は、最適な熱交換を確実にするために、少なくとも1つのばね要素で温度制御要素に対して押し当てられる。異なる熱膨張も補償され得る。
【0047】
温度範囲、特に測定セルの温度が制御及び調整され得る温度範囲の位置及び大きさは、温度制御要素と締結要素との間に配置された冷却デバイスの分流要素の材料及び寸法によって設定される。
【0048】
本発明によるデバイス及び本発明による方法は、様々なさらなる利点を有する:
幅広い温度範囲、例えば70K~325Kの範囲又は-203℃~+52℃の範囲における温度での分析、特にガス収着調査を可能にすること、
特に環境からの熱流量を補償することにより、専ら冷却パワーを特に変化させることにより、したがって追加的な加熱パワーの導入で加熱パワーを特に変化させることによる代わりにデバイスから熱を放散させることにより、測定セルの温度を調整すること、
それにより、結果として単位時間当たりに極低温流体の最小限の部分のみが蒸発するような、特に極低温液体内への最小限の熱流量、最大の使用可能期間及び測定時間、使用可能期間の設定目標温度への最低限の依存、約77Kでの液体窒素の場合における極低温液体の蒸発温度に近い極めて低温の可能性、及び、より低いコスト及び資源の保全をもたらす、冷媒の最小限の消費。
【0049】
先行技術から既知であり、例えばプローブ分子としてのアルゴン及び極低温液体としての液体アルゴンで極低温液体で直接実施される分析と比較して、測定温度は、空気圧及び飽和蒸気圧を介した極低温液体の純度に依存せず、積極的に調整され、これは、極めて安定的な測定温度での分析を保証する。
【0050】
本発明のさらなる詳細、特徴及び利点は、関連する図面を参照する以下の説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図2a】断熱容器内に配置された測定装置及び一体的な締結要素を有する、測定セルの温度を制御するための本発明によるデバイスの第1の実施形態を示す。
【
図2b】温度制御要素内に配置された測定セルの詳細な図における
図2aによる第1の実施形態である。
【
図3】断熱容器内に配置された測定装置及び複数片の締結要素を有する、測定セルの温度を制御するための本発明によるデバイスの第2の実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図2a及び2bは、断熱容器2内に配置された測定装置及び一体的な締結要素15aを有する、測定セル30、具体的にはガス収着測定セルの温度を制御するための本発明によるデバイス1aの第1の実施形態を示す。
図2bは、
図2aによる第1の実施形態、特に温度制御要素8内に配置された測定セル30の詳細な図を示す。
【0053】
断熱容器2は、容積を上側で閉鎖するためのカバー要素3で容積を囲む外壁を有する。上側及び下側という用語は、それぞれ長手方向軸Lも整列されている、デバイス1aの垂直配向を指す。断熱容器2によって囲まれる容積は、底部によって下側で限定される。
【0054】
デュワー容器とも呼ばれる多層壁、特に二重壁の容器4が断熱容器2内に配置される。容器4の壁は、容器4によって囲まれる空洞5の断熱のための真空容積を囲む。結果として、真空断熱空洞5は、極低温液体6、例えば液体アルゴン又は好ましくは液体窒素を受ける役割を果たし、及び約3000cm3の充填容積を有し得る。
【0055】
空洞5は、極低温液体6で部分的に充填される。同様に、真空断熱空洞5内に配置された測定装置は、極低温液体6内で部分的に固定され、液体6によって囲まれ、及び容器4の底部から、容器4の上側に形成された開口まで長手方向軸Lに沿って軸方向に延在する。開口は、測定装置を受ける役割を果たすとともに断熱容器2を閉鎖する役割も果たすカバー要素3で閉鎖される。
【0056】
カバー要素3は、測定セル30を通過するための貫通開口7を有して形成され、断熱及び測定装置を、凝結に起因する凍結及び周囲の空気から凝結する湿気の凍結から保護するために役立つ。カバー要素3は、熱伝導率が1W/(m・K)未満の材料、特にPTFEで作られる。
【0057】
測定装置は、測定セル30を受けるための受入開口9を有する温度制御要素8と、冷却デバイスと、を有する。断面が円形の受入開口9は、温度制御要素8が、本質的に閉鎖された底部を有する中空円筒又は中空円柱形状を有するように、円筒形、具体的には円柱形温度制御要素8の上側から垂直方向に下方に延在する。測定セル30は、温度制御要素8の底部で平らになっている。
【0058】
さらに、温度制御要素8の受入開口9の内径は、測定セル30の側面も温度制御要素8に対して平らになっているように、測定セル30の外径及び測定セル30を受入開口9に挿入するための少量の隙間に対応する。受入開口9と測定セル30とを有する温度制御要素8は、長手方向軸Lを中心として回転対称となるように設計される。
【0059】
受入開口9及び測定セル30の形状は、温度制御要素8と測定セル30との間に最大熱交換のための最大接触面があるように互いに対応する。ガス収着器具32に接続された測定セル30は、検査されるサンプル31及び測定ガスを受ける。
【0060】
温度制御要素8は、高熱伝導率の、特に熱伝導率が100W/(m・K)を超える材料、好ましくは銅で作られる。
【0061】
円柱形温度制御要素8は、長手方向軸Lの方向に42mmの伸長及び実質的に27mmの外径を有し得る。底部の領域において、温度制御要素8の内径は、長手方向軸Lの方向における約2mmの伸長とともに30mmであり得る。受入開口9は、28mm~30mmの範囲、特に28.5mmの深さ、16mm~18mmの範囲、特に16.2mmの内径で設計される。
【0062】
さらに、温度制御要素8は、底部において、測定セル30との接触面の反対側の下側に、雌ねじとしてメートル細目ねじMF5を有する、特に3mmの深さの開口の形態の、冷却デバイスのための締結具を有する。
【0063】
冷却デバイスは、ヒートシンク10、分流器とも呼ばれる熱分流要素11及びスリーブ形熱交換要素12から形成される。分流要素11は、とりわけ、熱電冷却要素13を中心に置いて固定するのに役立つ。さらに、冷却デバイスは、ばね要素14-1、14-2及び棒形、特に丸棒形の締結要素15aを有する。
【0064】
高熱伝導率の、特に熱伝導率が100W/(m・K)を超える材料、好ましくは銅で作られたヒートシンク10は、熱分流要素11を介して温度制御要素8に強固に接続される。長手方向軸Lを中心として回転対称に設計された分流要素11は、例えば、温度制御要素8の底部において雌ねじが設けられた開口内にねじで取り付けられる。
【0065】
分流要素11は、温度制御要素8とヒートシンク10との間に機械的に安定的な接続を確立し、かつ、ヒートシンク10よりも熱伝導率が低い、特に40W/(m・K)未満の材料、例えばステンレス鋼で作られる。測定装置が動作及び調整され得る位置及び温度範囲の大きさは、分流要素11の材料及び寸法、特に直径及び長さによって決定される。同様に、長手方向軸Lを中心として回転対称となるように設計されるヒートシンク10は、同様に分流要素11内、例えば雌ねじが設けられた開口内にねじで取り付けられ得る。分流要素11は、9mmの外径とともに、10mmの、高さとも呼ばれる長手方向軸Lの方向における伸長を有し得る。ヒートシンク10を向く下側において、分流要素11は、ヒートシンク10への接続のための雌ねじとしてメートル細目ねじMF5を有して形成され得、温度制御要素8を向く上側において、これは、雄ねじとしてメートル細目ねじMF5を有して形成され得る。分流要素11は、温度制御要素8の底部に形成された開口内にねじで取り付けられ得る。
【0066】
ヒートシンク10は、18mmの外径とともに、22mmの、長手方向軸Lの方向における伸長又は高さを有し得る。例えば、高さが3mm及び外径が25mmのカラーは、締結要素15aを向く下側に形成される。下側に対して先端側に整列されたヒートシンク10の上側において、メートル細目ねじMF5が分流要素11への接続のための雄ねじとして提供され得る。
【0067】
温度制御要素8と熱交換要素12との間に円形、特に環状の熱電冷却要素13も提供される。ペルチェ素子として設計された熱電冷却要素13は、分流要素11を全周的に囲む。この場合、冷却要素13の内径は、分流要素11の外径より大きい。冷却要素13は、長手方向軸Lの方向における伸長並びに結果として30mmの外径及び10mmの内径とともに4mmの高さを有し得る。
【0068】
冷却要素13は、スリーブ形熱交換要素12によって温度制御要素8の下側に押圧される。接触圧力は、円板ばねとして特別に設計され、ヒートシンク10と熱交換要素12との間に配置されたばね要素14-1、14-2を介して生じる。
【0069】
ここで、第1のばね要素14-1は、冷却要素13の方向を向くヒートシンク10のカラーの上側と、ヒートシンク10のカラーの反対側における熱交換要素12の端面と、の間に配置される。第1のばね要素14-1は、15mm~25mmの範囲、特に18mm~20mmの範囲、特に18.3mmの内径を有し、及び33Nの平均接触圧力を生じるように構成される。
【0070】
第2のばね要素14-2は、冷却要素13の方向を向くヒートシンク10の上側と、熱交換要素12の内側面から突出するカラーと、の間に配置されるとともに、11mmの内径を有する。第2のばね要素14-2は、18Nの平均接触圧力を生じるように構成される。
【0071】
ばね要素14-1、14-2により、接触圧力が熱交換要素12にかけられ、これは、長手方向軸Lの方向にヒートシンク10に対して可動であり、熱電冷却要素13を、熱交換要素12の方向を向く温度制御要素8の下側に対して平らになるように押圧する。
【0072】
分流要素11を介した温度制御要素8とヒートシンク10との間の熱的結合は、測定装置の大きい温度調整範囲が可能となるように十分に小さくなるように設計される必要があるが、温度制御要素8及びヒートシンク10の温度間の大きすぎる差が回避されるように十分に大きくなるように構成される必要がある。大きい温度差は、熱電冷却要素13に損傷を与え得る。
【0073】
温度制御要素8と冷却デバイスとの間の熱流量は、熱電冷却要素13によって直接制御される。
【0074】
ヒートシンク10の外側又は外側面及び熱交換要素12の内側又は内側面は、熱交換要素12からヒートシンク10への最大熱交換を保証するために、特に最小限の表面粗さ、したがって滑らかな設計で互いに対応し、かつ、互いに同軸になるように整列される。ヒートシンク10と熱交換要素12との間の熱的接触は、サーマルペーストを使用してさらに向上し得る。
【0075】
ヒートシンク10と同じ材料、特に銅で作られた熱交換要素12は、30mmの外径とともに25mmの長手方向軸Lの方向における伸長又は高さを有し得る。熱交換要素12の内径は、大きい中央セクションにおいて18mmであり得る。長手方向軸Lの方向における伸長が約5mmである締結要素15aに向かって整列された下セクションにおいて、熱交換要素12の内径は、26mmであり得る一方、長手方向軸Lの方向における伸長が3mmである冷却要素13に向かって整列された上セクションにおいて、熱交換要素12の内径は、10mmであり得る。
【0076】
ばね要素14-1、14-2によって生じた温度制御要素8での冷却要素13の接触圧力は、デバイス1aの冷却に起因して生じる構成要素の異なる膨張、特に長さの変化にもかかわらず、最大熱交換が依然として保証されることも確実にする。ここで、異なる熱膨張係数を有する異なる材料、例えば冷却要素13の異なる金属製及びセラミック製構成要素に起因して増大する機械的応力は、ばね要素14-1、14-2によって自動的に補償されるか又は釣り合わされる。
【0077】
下側において、ヒートシンク10は、棒形締結要素15aに接続される。長手方向軸Lを中心として回転対称となるように設計された締結要素15aは、例えば、同様にヒートシンク10における雌ねじが設けられた開口内にねじで取り付けられる。締結要素15aの直径は、長さ全体にわたってスリーブ形熱交換要素12の内径より小さく、したがってまた熱交換要素12によって囲まれるヒートシンク10の直径より小さい。
【0078】
丸棒形締結要素15aは、長さ183mm、外径10mmで設計され得、銅で作られ得る。ヒートシンク10と整列された締結要素15aの上端には、ヒートシンク10にねじ留めするためにメートル雄ねじM8が提供され得る一方、上端の先端側の締結要素15aの下端にメートル雌ねじM3が提供され得る。
【0079】
熱伝導性要素として機能する締結要素15aの第1の部分領域15a-1は、冷媒として極低温液体6と直接接触する。第1の部分領域15a-1は、第1の部分領域15a-1が8.8cm2の側面を有するように、長手方向軸Lの方向における28mmの伸長にわたって冷媒と同一平面にあり得る。
【0080】
締結要素15aは、垂直に下向きに整列された端面に支持要素16を有する。支持要素16は、一方では締結要素15aを容器4の空洞5内の端面に固定するため、他方では容器4への損傷を回避するために、プラスチック、例えばPTFEで作られた脚部の形態で設計される。円形ディスクの形状を有する支持要素16は、32mmの外径及び5mmの厚さを有して設計され得る。支持要素16の湾曲した下側は、この場合、支持面の容器4の曲率に対応する。支持要素16には、接続のために締結要素15aの下端に提供されたメートル雌ねじM3に対応する雄ねじが設けられ得る。
【0081】
測定装置での分析のための温度範囲は、放熱棒としての締結要素15aの設計によっても特定される。この場合、熱伝導、したがって分析のための温度範囲は、3つのパラメータを使用して決定される。第1のパラメータは、材料、したがって締結要素15aが作られる材料の熱伝導率である。第2のパラメータは、直径、したがって熱流量を決定する棒形締結要素15aの断面積である一方、第3のパラメータは、長手方向軸Lの方向における棒形締結要素15aの長さである。材料の高熱伝導率、大きい断面積、すなわち大きい直径及び棒形締結要素15aの短い長さは、それぞれ高い熱伝導をもたらし、その結果、例えば77Kに近い極めて低温での測定セル30での分析が可能となり得る。熱伝導率が低く、断面積が小さい、すなわち直径が小さく、長さの長い材料からの締結要素15aの形成は、低い熱伝導をもたらし、その結果、測定セル30を使用してより高い温度、例えば約195Kで分析が実施され得、これは、例えば、二酸化炭素、略してCO2だけでなく、他のプローブ分子での他のガス収着実験も可能にする。
【0082】
長手方向軸Lに沿って長手方向軸Lと同軸に整列されている温度制御要素8、熱電冷却要素13、熱交換要素12及び締結要素15aは、それぞれ熱伝導率が1W/(m・K)未満の断熱要素17a、特に断熱発泡体で外側面上において全周的に被覆される。断熱要素17aは、内側面において温度制御要素8、熱電冷却要素13、熱交換要素12及び締結要素15aの外側面に接触した状態で置かれる。熱伝導性が1W/(m・K)の独泡ポリウレタンが断熱要素17aとして使用され得る。
【0083】
断熱要素17aは、それ自体、同様に外側面上で層要素18によって全周的に囲まれる。断熱要素17aを外部摩耗及び極低温液体6の浸透から保護する層要素18は、少なくとも断熱要素17aの下向きの端面も覆う。層要素18は、好ましくは、5mmの好ましい壁厚さを有するPTFEで作られる。層要素18の中空円柱形領域の外径は、55mmであり得る一方、長手方向軸Lに沿った伸長及び層要素18の結果としての高さは、230mmであり得る。層要素18に加えて、断熱要素17aの発泡体の独立気泡は、極低温液体6、特に液体窒素が断熱要素17aに入り込むことも防ぐ。
【0084】
締結要素15aの第1の部分領域15a-1は、外側面での極低温液体6との直接接触を保証するために断熱要素17aによって囲まれない。締結要素15aの第2の部分領域15a-2は、しかしながら、断熱要素17aによって包まれ、その結果、第2の部分領域15a-2は、極低温液体6と接触しない。締結要素15aの第1の部分領域15a-1及び第2の部分領域15a-2は、長手方向軸Lに垂直に整列されている断熱要素17aの下向きの端面の平面で互いに隣接する。
【0085】
温度制御要素8の壁の温度を特定するための温度センサ19は、温度制御要素8の外側面又は温度制御要素8の壁内に配置され、それにより温度制御要素8及び測定セル30に含まれるサンプル31の温度が特定され得る。例えば、従来のPt1000プラチナ測定用抵抗器が温度センサ19として使用され得る。温度センサ19は、温度制御要素8に形成された開口、例えば30mmの長さ及び3mm~4mmの範囲、特に3.1mmの直径を有する穴に挿入される。
【0086】
熱電冷却要素13は、ペルチェ素子として設計され、温度センサ19は、それぞれ調整デバイス33に接続される。例えば、PID調整器として設計された調整デバイス33では、冷却要素13の冷却パワーは、目標温度が温度センサ19で設定されるような方法において、温度センサ19で特定された温度の目標値によって特定される際に変化する。
【0087】
温度センサ19及び熱電冷却要素13の電気接続部は、それぞれ電気接続部、特に電力ラインを介して容器4から外側に導出され、調整デバイス33に接続される。可能な限り最も正確な温度測定のために、温度センサ19のラインは、外側面に沿って温度制御要素8の周りで数回、例えば2回又は3回巻かれる。温度センサ19のラインは、温度センサ19のラインに沿った入熱を最小化し、及び温度センサ19の測定先端での温度制御要素8の実際の温度を特定するために、少なくとも温度制御要素8の温度の近くまで冷却される。
【0088】
調整の機能を確実にするために温度制御要素8が極低温液体6と接触しないように、温度制御要素8は、常に極低温液体6の充填レベルラインより上に配置される必要がある。例えば、極低温液体6を上から温度制御要素8に入れることによる極低温液体6との温度制御要素8の直接接触は、温度制御要素8の制御されない冷却の原因となる。締結要素15aは、したがって、温度制御要素8を極低温液体6の充填レベルラインより上で及び断熱容器2の上領域において固定するために、長手方向軸Lに沿った特定の最小の伸長、特に長さで設計される必要がある。同時に、締結要素15aの第1の部分領域15a-1の接触面は、必要とされる熱を、目標を定めた方法で極低温液体6に伝達するために、極低温液体6の充填レベルラインより下に配置されることが確実にされる必要がある。
【0089】
図3は、測定装置が断熱容器2内に配置された測定セル30の温度を制御するための本発明によるデバイス1bの第2の実施形態を示す。
【0090】
デバイス1a、1bの同じ構成要素は、同じ参照符号が振られ、同じサイズで設計される。長手方向軸Lに沿って長手方向軸Lと同軸に整列されているデバイス1a、1bの温度制御要素8、熱交換要素12及び熱電冷却要素13は、同じであり、それぞれ断熱要素17b、特に断熱発泡体で外側面上において全周的に被覆される。この目的のために、断熱要素17bは、それぞれその内側面において温度制御要素8の外側面、熱電冷却要素13、熱交換要素12及び締結要素15bに接触した状態で置かれる。断熱要素17bは、それ自体、同様に断熱要素17bを外部摩耗及び極低温液体6の浸透から保護する第1の層要素18によって外側面で全周的に囲まれる。
【0091】
締結要素15bの第1の部分領域15b-1は、
図2a又は2bからのデバイス1aと同様に、外面での極低温液体6との直接接触を確実にするために、断熱要素17bによって囲まれない。
【0092】
図2a及び2bによるデバイス1aと、
図3によるデバイス1bと、の主な違いは、複数片の締結要素15bの設計にある。
【0093】
異なる材料で作られたいくつかのセグメントを有する熱伝達要素としての棒形、特に丸棒形の締結要素15bの複数片設計は、締結要素15bの直径を変えることなく、締結要素15bのための異なる平均熱伝導性係数を設定することを可能にする。
【0094】
デバイス1bの締結要素15bは、3つの個々の構成要素、すなわち放熱要素20、スタンド要素21及び多孔質ジャケット要素22に分割される。スタンド要素21は、単に測定装置を容器4内に望ましい垂直位置において配置する役割を果たすのみであり、測定装置から極低温液体6に熱を拡散することに関して無視できる。アルミニウムで作られたスタンド要素21は、長手方向軸Lの方向における伸長及び結果として30mmの外径とともに125mmの高さを有し得る。放熱要素20を向く上側において、スタンド要素21は、放熱要素20に接続する、特にねじで留めるためのメートル雄ねじM8を有して形成され得る。
【0095】
棒形、特に丸棒形の放熱要素20は、具体的には熱伝導率が200W/(m・K)を超える高熱伝導率の材料、例えば銅で作られる。好ましくは、20mmを超える、例えば30mmの直径及び100mm未満の長さ、特に55mmの長さを有する放熱要素20は、外側面の第1の部分領域15b-1において極低温液体6と接触する。この場合、デバイス1bの放熱要素20の直径は、長さ全体にわたって熱伝導性である、
図2aからのデバイス1aの締結要素15aの直径より著しく大きく、スリーブ形熱交換要素12の外径に実質的に対応する一方、長手方向軸Lの方向における放熱要素20の長さは、
図2aからのデバイス1aの締結要素15aの長さを著しく下回る。
【0096】
放熱要素20は、ヒートシンク10にねじ留めするためにヒートシンク10と整列されている上端にメートル雄ねじM8を有し得る一方、メートル雌ねじM8は、上端の先端側の放熱要素20の下端に提供され得る。
【0097】
長さ全体にわたって締結要素15bの第1の部分領域15b-1及びスタンド要素21を全周的に囲み、したがって長手方向軸Lの方向に断熱要素17bに隣接する多孔質ジャケット要素22は、冷媒としての極低温液体6を熱伝導性締結要素15bの第1の部分領域15b-1に連続的に搬送する機能を満たす。断熱要素17b及びジャケット要素22は、互いに面する端面で互いに対して置かれる。したがって、ジャケット要素22は、熱交換要素12にも温度制御要素8にも、したがって測定セル30にも接触せず、サンプル31を含む領域を越えて延在もしない。
【0098】
図2aからのデバイス1aの締結要素15aの第1の部分領域15a-1及びジャケット要素22と比較して、デバイス1bの締結要素15bの第1の部分領域15b-1は、極低温液体6に浸されない。
【0099】
少なくとも下領域で極低温液体6内に突出する多孔質ジャケット要素22は、極低温液体6のための芯として機能する。毛細管力を介して、極低温液体6は、充填レベルにかかわらず、ジャケット要素22の孔内の締結要素15bの接触面としての第1の部分領域15b-1に連続的に搬送される。ここで、極低温液体6の充填レベルは、締結要素15bの第1の部分領域15b-1の垂直配置より下であり得る。
【0100】
中空円筒形、特に中空円柱形のジャケット要素22は、40μm未満の孔サイズ、特に20μmの平均孔サイズを有して設計され、長さ全体にわたって外側面で第2の層要素23によって全周的に囲まれる。第2の層要素23は、ジャケット要素22の外側面を介した極低温液体6の交換、特にジャケット要素22からの極低温液体6のジャケット側での漏出を防ぐ。ジャケット要素22の多孔質の下及び上端面のみが極低温液体6の浸透及び漏出のために設計される。これは、ジャケット要素22を通過した極低温液体6が、断熱要素17bによって囲まれるデバイス1bの領域に入り込まないことを確実にする。
【0101】
ジャケット要素22は、プラスチック、具体的には多孔質ポリエチレンで作られる一方、非多孔質ポリエチレンは、好ましくは、第2の層要素23として使用される。ここで、ジャケット要素22の内側面の直径は、放熱要素20及びスタンド要素21の直径、特に30mmに対応し、これらも同様に組立てのための間隙が含まれる。ジャケット要素22は、50mmの外径とともに145mmの長手方向軸Lの方向における伸長又は高さを有し得る。
【0102】
円形ディスクの形状を有する支持要素16は、多孔質ジャケット要素22が滑ることを防ぐために、36mmの外径を有して設計され得る。
【0103】
デバイス1bの第1の層要素18は、長手方向軸Lに沿った伸長及び結果として115mmの高さを有し得、したがって
図2a及び2bによるデバイス1aの層要素18よりも対応してより短くなり得る。この場合、特にカバー要素3からの温度制御要素8の距離を増大させ、したがって熱的分離を向上させ、及びより低い測定温度を得るために、容器4において配置及び接続されたデバイス1bの構成要素をデバイス1aと比べて約10mmだけ短くすることも可能である。
【符号の説明】
【0104】
1a、1b デバイス
2 断熱容器
3 カバー要素
4 容器
5 空洞
6 極低温液体
7 カバー要素3の貫通開口
8 温度制御要素
9 温度制御要素8の受入開口
10 ヒートシンク
11 分流要素
12 熱交換要素
13 熱電冷却要素
14-1 第1のばね要素
14-2 第2のばね要素
15a、15b 締結要素
15a-1、15b-1 締結要素15a、15bの第1の部分領域
15a-2 締結要素15aの第2の部分領域
16 支持要素
17a、17b 断熱要素
18 (第1の)層要素
19 温度センサ
20 締結要素15bの放熱要素
21 締結要素15bのスタンド要素
22 締結要素15bのジャケット要素
23 第2の層要素
30 測定セル
31 サンプル
32 ガス収着器具
33 調整デバイス
L 長手方向軸
M 測定点
B 制御容積
K ヒートシンク
Qa 環境からの熱
Qik デバイス1からの断熱体を通る熱
Qiw デバイス1における断熱体を通る熱
QH 熱
QK 冷却熱
【国際調査報告】