(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-17
(54)【発明の名称】電気機械用のコイルモジュール
(51)【国際特許分類】
H02K 3/24 20060101AFI20240410BHJP
H02K 3/04 20060101ALI20240410BHJP
H02K 9/19 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
H02K3/24
H02K3/04 D
H02K9/19 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023566535
(86)(22)【出願日】2022-04-27
(85)【翻訳文提出日】2023-12-15
(86)【国際出願番号】 EP2022061234
(87)【国際公開番号】W WO2022229272
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523406369
【氏名又は名称】ヴァイオニック・テヒノロギーズ・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】VAIONIC TECHNOLOGIES GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【氏名又は名称】笹沼 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100225026
【氏名又は名称】古後 亜紀
(74)【代理人】
【識別番号】100230248
【氏名又は名称】杉本 圭二
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク・ヤニク
(72)【発明者】
【氏名】ベルテルマン・イェルク
(72)【発明者】
【氏名】フランツ・ゲオルク
【テーマコード(参考)】
5H603
5H609
【Fターム(参考)】
5H603AA13
5H603BB09
5H603BB14
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB05
5H603CC14
5H603CC19
5H603CD28
5H603FA11
5H609BB03
5H609PP02
5H609PP09
5H609QQ05
5H609QQ13
5H609RR27
5H609RR36
5H609RR43
(57)【要約】
【課題】空間要件が少ない薄形の構造を実現することが可能な、電気機械用のコイルモジュールを提供する。
【解決手段】電気機械用のコイルモジュール18は、電気絶縁材料からなる第1および第2のコイルキャリア15,15a,15b、第1および第2のコイルキャリア15,15a,15bに埋設された導電性材料からなる少なくとも1つの巻線部13、ならびに第1および第2のセラミックス境界部56,56a,56bを有する、第1および第2のコイルディスク6,6a,6bを備える。第1および第2のコイルディスク6,6a,6bは、これら第1および第2のコイルディスク6,6a,6b間に冷媒用の略環状の冷却流路23が形成されるように構成されて互いに取り付けられている。第1および第2のセラミックス境界部56,56a,56bは、それぞれ、略環状の冷却流路23の内壁を少なくとも部分的に形成している。
【選択図】
図13C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械用のコイルモジュール(18)であって、
電気絶縁材料からなる第1のコイルキャリア(15,15a)、前記第1のコイルキャリア(15,15a)に埋設された、導電性材料からなる少なくとも1つの巻線部(13)、および第1のセラミックス境界部(56,56a)を有する、第1のコイルディスク(6,6a)と、
電気絶縁材料からなる第2のコイルキャリア(15,15b)、前記第2のコイルキャリア(15,15b)に埋設された、導電性材料からなる少なくとも1つの巻線部(13)、および第2のセラミックス境界部(56,56b)を有する、第2のコイルディスク(6,6b)と、
を備え、
前記第1のコイルディスク(6,6a)および前記第2のコイルディスク(6b)は、これら第1のコイルディスク(6,6a)と第2のコイルディスク(6b)との間に冷媒用の略環状の冷却流路(23)が形成されるように構成されて互いに取り付けられており、
前記第1のセラミックス境界部(56,56a)および前記第2のセラミックス境界部(56,56b)が、それぞれ、前記略環状の冷却流路(23)の内壁を少なくとも部分的に形成している、コイルモジュール(18)。
【請求項2】
請求項1に記載のコイルモジュール(18)において、前記第1および/または第2のセラミックス境界部(56,56a,56b)が、アルミニウムベース及び/又はシリコンベースのセラミックスからなり、好ましくは、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、炭化ケイ素および窒化ケイ素からなる群から選択された材料からなる、コイルモジュール(18)。
【請求項3】
請求項1または2に記載のコイルモジュール(18)において、前記第1のセラミックス境界部(56,56a)が、前記略環状の冷却流路(23)の径方向領域全体で該略環状の冷却流路の内壁を形成しており、かつ/あるいは
前記第2のセラミックス境界部(56,56b)が、前記略環状の冷却流路(23)の径方向領域全体で該略環状の冷却流路の内壁を形成している、コイルモジュール(18)。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のコイルモジュール(18)において、前記第1のセラミックス境界部(56,56a)が、前記第1のコイルキャリア(15,15a)上に配置された第1のセラミックスディスクを含み、かつ/あるいは、前記第2のセラミックス境界部(56,56b)が、前記第2のコイルキャリア(15,15b)上に配置された第2のセラミックスディスクを含み、
好ましくは、前記第1のセラミックスディスク(56,56a)および/または前記第2のセラミックスディスク(56,56b)は、厚みが0.1mm~1mm、好ましくは0.2mm~0.8mm、さらに好ましくは0.35mm~0.7mmである、コイルモジュール(18)。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載のコイルモジュール(18)において、前記第1のセラミックス境界部(56,56a)が、前記第1のコイルキャリア(15,15a)に適用された第1のセラミックスコーティングを含み、かつ/あるいは、前記第2のセラミックス境界部(56,56b)が、前記第2のコイルキャリア(15,15b)に適用された第2のセラミックスコーティングを含み、
好ましくは、前記第1のセラミックコーティングおよび/または前記第2のセラミックコーティングは、厚みが1μm~100μm、好ましくは1μm~50μm、さらに好ましくは1μm~30μmである、コイルモジュール(18)。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のコイルモジュール(18)において、前記第1のコイルキャリア(15,15a)および/または前記第2のコイルキャリア(15,15b)が、略環状の凹部を有し、
前記第1のセラミックス境界部(56,56a)および/または前記第2のセラミックス境界部(56,56b)が、前記第1のコイルキャリア及び/又は第2のコイルキャリアの前記略環状の凹部(22)内に配置された略環状のセラミックスディスクの形態で設けられている、コイルモジュール(18)。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のコイルモジュール(18)において、さらに、
前記略環状の冷却流路(23)内に設けられて前記第1のセラミックス境界部(56,56a)及び前記第2のセラミックス境界部(56,56b)の双方に接続されて、好ましくは一体的に形成された、少なくとも1つの接続要素(63,64)、
を備え、
好ましくは、前記少なくとも1つの接続要素(63,64)が、
アルミニウムベース及び/又はシリコンベースのセラミックスを含み、好ましくは、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、炭化ケイ素および窒化ケイ素からなる群から選択された材料からなり、かつ/あるいは、
好ましくは、前記第1のセラミックス境界部及び/又は前記第2のセラミックス境界部に接着されているか、あるいは、前記第1のセラミックス境界部及び/又は前記第2のセラミックス境界部に一体的に形成されており、かつ/あるいは、
ストラット、好ましくは、前記第1および/または第2のコイルディスク(6,6a,6b)と直交して配置されたストラットを含み、かつ/あるいは、
前記第1および/または第2のコイルディスク(6,6a,6b)と平行に延びるリブを含む、コイルモジュール(18)。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のコイルモジュール(18)において、さらに、
径方向内側のセラミックス境界部(57)および径方向外側のセラミックス境界部、
を備え、
好ましくは、前記径方向内側のセラミックス境界部(57)が、鍔形状および/またはリング形状であり、径方向にみて前記第1のセラミックス境界部(56,56a)及び前記第2のセラミックス境界部(56,56b)の内側に隣接配置されており、
好ましくは、前記径方向外側のセラミックス境界部(58)が、鍔形状および/またはリング形状であり、径方向にみて前記第1のセラミックス境界部(56,56a)及び前記第2のセラミックス境界部(56,56b)の外側に隣接配置されている、コイルモジュール(18)。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のコイルモジュール(18)において、前記第1のコイルディスク(6,6a)および/または前記第2のコイルディスク(6,6b)が、冷媒を前記略環状の冷却流路(23)内に導入する流入開口部(43,54)を有し、かつ/あるいは、
前記第1のコイルディスク(6,6a)および/または前記第2のコイルディスク(6,6b)が、冷媒を前記略環状の冷却流路(23)外に導出する流出開口部(45,55)を有する、コイルモジュール(18)。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のコイルモジュール(18)において、前記第1のコイルキャリア(15,15a)に、導電性材料からなる複数の各巻線部(13)が埋設されており、該巻線部(13)は、それぞれ、前記第1のコイルキャリア(15,15a)の中心部(14)周りの周方向で該第1のコイルキャリア(15,15a)に埋設されており、
前記第2のコイルキャリア(15,15b)に、導電性材料からなる複数の各巻線部(13)が埋設されており、該巻線部 (13)は、それぞれ、前記第2のコイルキャリア(15,15b)の中心部(14)周りの周方向で該第2のコイルキャリア(15,15b)に埋設されており、
前記巻線部(13)は、それぞれ、前記中心部(14)から径方向に延びる2つの能動領域(16)、ならびに径方向外側および内側の縁部で接線方向に延びる2つの受動領域(17b)を有し、
前記コイルディスク(6,6a,6b)の平面視で、別々の巻線部(13)の前記能動領域(16)同士は互いに重なっていないのに対し、任意の前記巻線部(13)の各受動領域(17a,17b)は、直接隣合う2つの巻線部(13)の対応する受動領域(17a,17b)に部分的に重なっており、前記各巻線部(13)の断面の軸方向の厚みは、前記受動領域(17a,17b)よりも前記能動領域(16)のほうが厚くなっている、コイルモジュール(18)。
【請求項11】
請求項10に記載のコイルモジュール(18)において、前記第1のコイルディスク(6,6a)及び前記第2のコイルディスク(6,6b)の前記複数の各巻線部(13)同士の隣合う能動領域(16)は、これら隣合う能動領域(16)間に隙間が位置するようにして接線方向に互いに離間しており、
前記第1のセラミックス境界部(56,56a)及び前記第2のセラミックス境界部(56,56b)は、それぞれ、前記隣合う能動領域(16)間に位置した前記隙間内に延出する突起(65)を有する、コイルモジュール(18)。
【請求項12】
請求項10または11に記載のコイルモジュール(18)において、前記冷却流路(23)が、径方向に延びる前記能動領域(16)の領域に少なくとも位置しており、好ましくは、径方向外側の前記受動領域(17b)の領域にも位置している、コイルモジュール(18)。
【請求項13】
請求項10から12のいずれか一項に記載のコイルモジュール(18)において、前記巻線部が、互いに電気的に絶縁された線径0.1mm以下の複数の素線同士の細い撚線で構成されている、コイルモジュール(18)。
【請求項14】
軸受構造(1,3)と、
前記軸受構造(1,3)で案内されるシャフト(2)と、
を備え、前記シャフト(2)に沿って同軸状に、複数の永久磁石(5)からなる少なくとも1つの磁石モジュール(4)および請求項1から13のいずれか一項に記載の少なくとも1つのコイルモジュール(18)が配置されている、電気機械。
【請求項15】
請求項14に記載の電気機械を備える車両(150)または工作機械(154)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械および/または電気機器および/または車両および/または工作機械用のコイルモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な設計の電気機械が先行技術から知られている。DE 10 2017 204 072 A1(特許文献1)には、永久磁石で発生した磁場領域内に入る導電性材料の密度が確実に高くなるような、電気モータ用のミアンダ型巻線部の一種が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第102017204072号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
平角線が使用されているが、これは電磁気特性的にそのような構造にとって不利であり、非効率性に繋がる。また、多相設計も困難である。
【0005】
このため、本発明の根底を成す課題は、このような短所を解消することが出来るとともに空間要件が少ない薄形の構造を実現することが可能な、電気機械用のコイルモジュールを提案することである。本発明の根底を成すさらなる課題は、電気機械の冷却を高い信頼性で且つ/或いは効果的に且つ/或いは省スペースで且つ/或いは軽量に行い、かつ/あるいは、同電気機械を長寿命化させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の文脈において「電気機械」とは、電気エネルギーを機械的な仕事に変換する装置や、機械的な仕事を電気エネルギーに変換する装置のことを指すものと理解されたい。具体的に、「電気機械」という用語は、電力機器、電動機、電気モータ、発電機または電気発生機のことを意味するものと理解されたい。
【0007】
本発明では、上記の課題の1つ以上又は全てが、後述するコイルモジュールおよび/または電気機械および/または車両、あるいは、工作機械によって解決される。
【0008】
電気機械用のコイルモジュールは、少なくとも1つのコイルディスクを備える。各コイルディスクは、電気絶縁材料からなるコイルキャリア、および導電性材料(典型的には、巻線の形態)からなる複数の各巻線部を有する。前記巻線部は、前記コイルキャリアに埋設されており、例えば、モールド成形されている。これらの巻線部は、前記少なくとも1つのコイルディスクの中心部周りの周方向で該少なくとも1つのコイルディスクに設けられている。前記巻線部は、それぞれ、前記中心部から径方向に延びる2つの能動領域、ならびに径方向外側および内側の縁部で接線方向に延びる2つの受動領域を有する。前記少なくとも1つのコイルディスクの平面視で、別々の巻線部の前記能動領域同士は互いに重なっていないのに対し、任意の前記巻線部の各受動領域は、直接隣合う2つの巻線部の対応する受動領域にそれぞれ部分的に重なっている。前記各巻線部の断面の軸方向の厚みは、該各巻線部の前記受動領域よりも前記能動領域のほうが厚くなっている。
【0009】
本明細書では複数の各巻線部という表現をしているが、複数の各電気巻線部(例えば、同相の各巻線部)同士は相互に接続されている場合もある。
【0010】
「能動領域」とは、巻線部のうちの、前記電気機械のトルクに寄与するのに適していて且つ/或いは前記電気機械において隣接した少なくとも1つの磁石モジュールの磁場内に位置することになる領域のことであると理解されたい。よって、巻線部の「受動領域」とは、前記電気機械のトルクに寄与するのに適しておらず、かつ/あるいは、前記電気機械において隣接した磁石モジュールの磁場内に位置しない領域のことである。
【0011】
本明細書の文脈において「各巻線部の軸方向の…厚み」や巻線部の「軸方向の厚み」という表現は、軸方向で測定された、巻線部の厚みのことであると理解されたい。同様に、巻線部の「接線方向又は径方向の幅」という表現は、接線方向又は径方向で測定された、巻線部の幅のことであると理解されたい。つまり、「軸方向」、「接線方向」、「径方向」などの特定事項は、それぞれの値(例えば、厚み、幅等)の測定方向のことを指している。
【0012】
前記受動領域同士が部分的に重なっていることで、前記受動領域における導電性材料(好ましくは、銅等)の量は、一般的に、前記能動領域における量の2倍になる。前記コイルディスクや少なくとも1つのコイルディスクで構成されたコイルモジュールの軸方向の厚みが分厚くなるのを防ぐために、断面の軸方向の厚みは前記受動領域よりも前記能動領域のほうが厚くなっている。これにより、確実に薄形の構造となる。ここで、「電気絶縁性材料」とは、25℃の温度で10-8S/m未満の導電率の材料であると理解されたい。ここで、「導電性材料」とは、25℃の温度で導電率が106S/mを超えるあらゆる材料のことであると理解されたい。本明細書において「径方向」とは、一般的な慣例に従って、中心部から縁部への直線方向のことであると理解されたい。また、「接線方向」とは、径方向に対して直角の方向のことであると理解されたい。本明細書の文脈において「受動領域」とは、巻線部のうちの、径方向に延びずに同巻線部の2つの能動領域同士を繋げる領域のことであると理解されたい。ただし、受動領域は、厳密に接線方向に延びていなくてもよい。例えば、受動領域は、能動領域に隣接して例えば断面等も変化する径方向に延びる短い領域を含んでいる場合も好ましい。周方向に並べられた各巻線部について能動領域と受動領域との間で断面を変化させることにより、磁石ディスク間の空隙部の軸方向距離を変化させることができる。これにより、銅充填率を相対的に高めることが可能となる。また、受動領域の厚みが薄くなることで、巻線部の3相配置構成にも対応し易い。本明細書の文脈において「平面図/平面視」とは、少なくとも1つのコイルディスクの法線ベクトルに沿った図/視点のことであると理解されたい。一方、同じく「側面図/側面視」とは、平面図/平面視を90°傾けた状態のことであると理解されたい。ここで「法線ベクトル」とは、少なくとも1つのコイルディスクのうちの、長さ及び幅が厚みよりも大きくなっている一面を起点としたベクトルのことであると理解されたい。よって、電気機械では、法線ベクトルが回転軸心と平行になる。コイルとも呼ばれる巻線部は、コアレス巻線部、すなわち、金属コア抜き型巻線部の形態であるのが好ましい。本明細書の文脈において「コイルキャリア」という用語は、具体的には、巻線部(すなわち、コイル)の担持体のことであると理解されたい。コイルキャリアは、巻線部同士を機械的に接合しているものが一般的であり、エポキシ樹脂や他種の耐熱性プラスチックからなるのが好ましい。本明細書の文脈において「コイルディスク」という用語は、コイル(すなわち、巻線部)がコイルキャリアで固定されてなる、対応する環状体のことであると理解されたい。一方、「コイルモジュール」という用語は、少なくとも1つのコイルディスク、典型的には2つ以上のコイルディスクを完全に内蔵してなる一単位体のことを指している。
【0013】
例えば、前記複数の各巻線部は、前記コイルキャリアの材料(好ましくは、エポキシ樹脂)内にモールド成形されて前記コイルディスクを構成しているものであり得る。
【0014】
前記各巻線部において、前記能動領域の厚みに対する前記受動領域の厚みの比は、1未満とされ得る。好ましくは、同比は0.3以上1未満である。外側の受動領域については、設置空間に余裕があることを利用して、前記コイルディスクを見た際に前記能動領域と一様な相対厚み(=1)となるように同比を丁度0.5にするのが極めて好ましい。
【0015】
一般的に、能動領域から受動領域への遷移部では、前記各巻線部の断面積の形状が変化する。好ましくは、この断面領域の面積は変わらないまま充填率が最大化している。これは、例えばプレス成形等によって実施が可能である。形状が変わることで、磁力線が通過する材料部分を増やすことができるので、駆動がより高効率化する。形状を変えることで、磁石の間隔はそのままで前記電気機械内に導電性材料の設置空間を作り出すことができ、それに応じて性能や効率が向上する。
【0016】
別々の巻線部(典型的には、全ての巻線部)の能動領域は、その全体が、側面視で同一平面上に位置し、かつ/あるいは、該同一平面と交わり得る。
【0017】
この平面は、前記コイルディスク又は前記電気機械の軸方向と直交する平面であり得る。また、前記能動領域の厚みが変化する場合(例えば、該能動領域が末広がる実施形態等)がある点を踏まえると、前記能動領域の上面及び/又は下面は前記平面と平行でなくてもよい。好ましくは、前記能動領域は、前記平面と交わるように構成されている。例えば、本明細書で説明するウェブ等が構築されている1つ以上の能動領域については、それに含まれないものとしてもよい。
【0018】
つまり、別々の巻線部の能動領域同士が、前記コイルディスクの前記法線ベクトルに沿った方向の側面視で、例えば、どの能動領域も他の能動領域から突出しないように全て同じ高さに位置し得る。例えば、本明細書で説明するウェブ等が構築されている1つ以上の能動領域については、それに含まれないものとしてもよい。
【0019】
同一平面上の配置構成とすることにより、全ての能動領域が、任意の磁石モジュールの磁場内に等しく配置されることになる。変形例として、ほぼ全ての別々の巻線部の能動領域(好ましくは、1つ以外の全ての巻線部の能動領域)が、前記コイルディスクの法線ベクトルに沿った方向の側面視で全て同じ高さに位置しているのも好ましく、例えば、少数の能動領域(好ましくは、1つの能動領域)だけが他の能動領域から突出することになる。この領域には、例えば、本明細書で説明するウェブ等が設けられ得る。
【0020】
好ましくは、前記各巻線部の前記能動領域の軸方向の厚みが、径方向外側の方向に減少する。また、前記各巻線部の前記能動領域の接線方向の幅が、径方向外側の方向に増加する。
【0021】
言い換えれば、各能動領域は、外方に末広がりとなる。
【0022】
このように能動領域が末広がる構成により、前記コイルディスクの軸方向の厚みを変えずに、前記各巻線部に使用する導電性材料を増やすことができる。これにより、前記電気機械の出力および/または効率度が高くなる。
【0023】
しかしながら、末広がる構成は、前記巻線部の能動領域全体に存在していなくてもよい。例えば、受動領域側の各能動領域は、この末広がる構成から除外された遷移部を有していてもよい。
【0024】
好ましくは、前記能動領域の断面積は、径方向に沿って一定である。
【0025】
一般的には、前記巻線部は、互いに電気的に絶縁された線径0.1mm以下の複数の素線同士の細い撚線で構成されている。絶縁被膜を具備した撚線を複数設けることにより、巻線からなる巻線部の柔軟性を製造時に十分確保するとともに、十分に高い導電率を実現することができる。
【0026】
好ましくは、巻線部の数は、3相動作を可能にするように3の整数倍に相当する。つまり、相異なる相の合計3つの列が前記巻線部によって構成される。極めて好ましい一様式において、全相の巻線部の能動領域は、その全体が、側面視で同一平面上に位置しているのに対し、各相の受動領域同士は、2つの平面上に分布している。一般的には、2つの相の受動領域同士がいずれも同一平面上にあるのに対し、3番目の相の受動領域は別の平面に変位している。一般的には、前記2つの平面は、互いに別々の平面(すなわち、互いにズレた平面)であるが、互いに平行とされる。
【0027】
どの巻線部も同一の構造、すなわち、具体的には、同一の寸法及び形状とされ得る。変形例として、使用する1つ以上の巻線部の形状や厚みが他の巻線部と異なっていてもよい。
【0028】
前記コイルディスクは、任意の前記巻線部において、内側の受動領域と外側の受動領域とで軸方向の厚みが異なるように構成されていてもよい。ここで、「内側の受動領域」とは、「外側の受動領域」よりも前記コイルディスクや前記コイルモジュールの中心部からの距離が近い位置の受動領域のことをいう。一般的に、任意の前記巻線部において、前記外側の受動領域の厚みは、前記能動領域の厚みに対する該領域の厚みの比が0.5以下となるように選択される。内側の受動領域については、前記能動領域の厚みに対する該内側の受動領域の厚みの比が1未満になるように設定され得る。これにより、冷却面を前記能動領域から前記外側の受動領域にかけてさらに広げることが可能となる。
【0029】
本発明は、さらに、軸受構造と、該軸受構造で案内されるシャフトと、を備え、該シャフトに沿って同軸状に、複数の永久磁石からなる少なくとも1つの磁石モジュールおよび本明細書の範囲内で開示する少なくとも1つのコイルモジュールが配置されている、電気機械に関する。
【0030】
電動機、電気モータ、発電機、電気発生機などの前記電気機械は、軸受構造と、該軸受構造で案内されるシャフトと、を備える。該シャフトに沿って同軸状に、複数の永久磁石からなる少なくとも1つの磁石モジュール、および前述した性質の少なくとも1つのコイルモジュールが配置されている。前記磁石モジュールは前記シャフトに取り付けられ、前記コイルモジュールはハウジングに連結される。前記巻線部の充填密度が高いことで、前記電気機械の動作時の効率や出力密度が極めて有利なものになる。
【0031】
前記少なくとも1つのコイルモジュールは、液体が浸透するのを防止しつつ冷却流路を形成できるようにするために、少なくとも、前記磁石モジュールに面する側が電気絶縁材料からなる膜体で覆われ得る。該膜体は、接着剤による接合以外に、物質-物質同士の接合としての溶接接合や、例えば輪状体を介した螺合のような摩擦嵌め接合などといった他種の接合法で適用されることも可能である。
【0032】
前記少なくとも1つのコイルモジュールは、前記電気機械、特に、前記能動領域を効率的に冷却するために、相互連結された少なくとも2つのコイルディスクおよび該2つのコイルディスク間の空間で形成された冷却流路を有し得る。これに代えて又はこれに加えて、該冷却流路は、前記コイルディスク又はコイルモジュールと前記膜体とによって形成且つ境界付けされていてもよい。
【0033】
本発明は、さらに、本明細書の範囲内で開示する電気機械を備える車両、工作機械またはツールに関する。
【0034】
本発明の根底を成す1つ以上又は全ての課題は、以降に開示するコイルモジュールおよび/または電気機械および/または車両および/または工作機械の発明によって解決される。
【0035】
以降で説明するコイルモジュールは先述のコイルモジュールとの関連で開示した構成を一部備えることから、先述の技術的効果、利点および説明は、後述の対応する構成にも当てはまる。なお、具体的に述べると、後述のコイルモジュールは、先にコイルモジュールとの関連で説明した任意の構成を備え得るのが好ましい。
【0036】
前記コイルモジュールは、導電性材料からなる少なくとも1つの巻線部を有する第1のコイルディスクと、導電性材料からなる少なくとも1つの巻線部を有する第2のコイルディスクと、を備える。前記第1のコイルディスクおよび/または前記第2のコイルディスクは、略環状の凹部を有する。前記第1のコイルディスクおよび前記第2のコイルディスクは、さらに、これら第1のコイルディスクと第2のコイルディスクとの間に冷媒用の略環状の冷却流路が前記略環状の凹部によって形成されるように互いに取り付けられている。
【0037】
前記コイルモジュール、前記第1のコイルディスク、前記第2のコイルディスク、ならびに前記第1および第2のコイルディスクの前記巻線部は、これまでに開示したような構成とされ得る。
【0038】
「略環状の凹部」とは、前記コイルディスクの略全周にわたって延びる凹部のことを意味するものと理解されたい。「略」という用語は、例えば、前記略環状の凹部を断絶させる後で詳述する1つ(又は複数)のウェブが、該凹部に含まれていることを意味する。前記略環状の凹部は、前記コイルディスクの中心部周りに延びるものであり得て、前記コイルディスクの該中心部にはないものであり得る。「コイルディスクの中心部」とは、前記コイルディスク上の、前記シャフトや電気機械の回転軸心が通過する点のことであると理解されたい。
【0039】
前記略環状の凹部の径方向外側および/または径方向内側の縁部は、前記コイルディスクの平面視(すなわち、長さ方向及び幅方向と直交する視点)で円状であり得る。ここで、前記凹部の「径方向外側の縁部」および「径方向内側の縁部」とは、それぞれ、前記コイルディスクの略平坦な表面から前記略環状の凹部への遷移部のことを指す。しかしながら、外側および/または内側の縁部の形状は、完全な円形状から逸脱していてもよい。例えば、前記外側および/または内側の縁部は、波状の形状であってもよい。また、前記外側および/または内側の縁部は、多角形状であってもよい。
【0040】
前記凹部の断面は、2つの両側の側面および底面を有する長方形状の断面とされ得る。変形例として、前記凹部の断面は、両側の側面間の距離が底面に向かうにつれて減少する台形状の断面であってもよい。そのほか、前記凹部の断面は、円弧状または曲線状の断面であってもよい。
【0041】
言い換えれば、前記環状の凹部は、前記コイルディスクにおける略環状の窪みのことであると理解されたい。前記コイルディスクの厚みは、前記環状の凹部外の領域よりも前記略環状の凹部の領域のほうが薄くなり得る。
【0042】
好ましくは、前記コイルディスクは、前記少なくとも1つの巻線部を前記電気絶縁材料(例えば、エポキシ樹脂等)中に成形することによって製作される。この目的のために、前記巻線部が金型内に入れられた後、該金型に前記電気絶縁材料が充填され得る。その後、プレス成形処理によって前記略環状の凹部が形成され得る。例えば、略環状の成形型やパンチ等が用いられる。
【0043】
前記少なくとも1つの巻線部が入れられる前記金型は、前記巻線部同士の能動領域間の間隙を空けた状態に維持する凸部を有し得る。これにより、前記コイルディスクは、各巻線部の能動領域が配された略環状の領域における該能動領域間に間隙を有することになる。このような間隙を有するコイルディスクは、前記電気機械を空冷させるのに極めて適したものになり得る。ただし、例えば、冷媒(例えば、水-グリコール混合液等)を用いた別の冷却形式も好適である。
【0044】
本明細書で説明する末広がりの構成の能動領域の場合、好ましくは、前記金型内の前記凸部が省略され得る。これにより、成形後は、能動領域間の距離を極めて狭めることができて能動領域間に隙間が残らない。
【0045】
しかしながら、前記略環状の凹部は、別の方法で形成することも可能である。例えば、前記電気絶縁材料が入れられる前記金型自体で前記凹部を形成するようにしてもよい。これにより、後続のプレス成形処理が不要になる。そのほか、前記略環状の凹部は、例えばフライス加工等によって形成されることも可能である。
【0046】
このような略環状の凹部は、前記第1および/または第2のコイルディスクのうちの一方に設けられ得る。好ましくは、前記第1および第2のコイルディスクのそれぞれに略環状の凹部が設けられる。
【0047】
既述したように、本明細書の文脈において「ディスク」とは、その長さ及び幅(すなわち、直径)が厚みよりも遥かに大きい(例えば、10倍大きい)物体のことであると理解されたい。前記ディスクの「側面」とは、該物体のうちの、その長さ及び幅が広がる平面と平行な側面、すなわち、前記電気機械の軸方向と直交する側面のことであると理解されたい。前記略環状の凹部は、前記コイルディスクのうちの、そのような側面の一つに設けられる。しかしながら、前記コイルディスクは、2つあるそのような側面のそれぞれに略環状の凹部を有していてもよい。
【0048】
前記第1のコイルディスクおよび第2のコイルディスクは、該第1のコイルディスクの前記2つの側面のうちの一方が該第2のコイルディスクの前記2つの側面のうちの一方に接するようにして互いに取り付けられ得る。ただし、それらの間に密封層が設けられる構成を排除しない。例えば、前記第1のコイルディスクおよび前記第2のコイルディスクは互いに接着されると同時に、その接着剤によって例えば前記冷却流路を外部から密封するようにしてもよい。
【0049】
以降、前記第1のコイルディスク及び第2のコイルディスクの側面のうち、他方のコイルディスクに接する側面のことを、それぞれ「内側面」と称する。これに対応して、前記第1および第2のコイルディスクの側面のうち、外側を向いて他方のコイルディスクに接しない側面のことを、「外側面」と称する。つまり、前記略環状の凹部は、前記第1のコイルディスクの内側面および/または前記第2のコイルディスクの内側面に設けられているものと理解されたい。
【0050】
前記第1および第2のコイルディスクが凹部をそれぞれ有している場合、好ましくは、これら第1および第2のコイルディスクの凹部の形状は同一であり、好ましくは、互いに完全に対向するように且つ/或いは正確に重なり合うように設けられている。しかしながら、前記第1のコイルディスクの凹部の形状が前記第2のコイルディスクの凹部の形状と異なっていることも、かつ/あるいは、前記コイルモジュールの組立後の状態で互いにズレていることも可能である。
【0051】
「略環状の冷却流路」とは、前記第1または第2のコイルディスクの凹部の壁と前記第2のコイルディスクの内側面とによって境界付けられてなる、前記第1および第2のコイルディスクによって画成された空間のことを意味し得る。好ましくは、前記略環状の冷却流路は、前記第1のコイルディスクと前記第2のコイルディスクとに設けられた2つの凹部によって画定されている。しかしながら、前記略環状の冷却流路は、完全に閉じ込められている必要はない。つまり、前記略環状の冷却流路は、例えば、冷媒が該冷却流路に流入し得て且つ/或いは該冷却流路から流出し得るための流入開口部及び/又は流出開口部を具備し得る。
【0052】
この冷却流路は、冷媒を前記巻線部に極めて近接させることができるという利点を有する。これにより、前記電気機械を極めて効果的に冷却させることが可能となる。同時に、この冷却構造によれば冷媒を導くために部品を追加しなくてよいので、省スペース・軽量化を図れる。しかも、この冷却構造は非常に堅牢で故障も起こり難い。
【0053】
前記冷媒は、好ましくは水系冷媒であり、より好ましくは水-グリコール混合液である。しかしながら、トランスオイルも冷媒として使用可能である。ただし、本明細書に記載のコイルモジュールは空冷式とされてもよい。
【0054】
好ましくは、前記第1のコイルディスクおよび/または前記第2のコイルディスクは、冷媒を前記略環状の冷却流路内に案内するように、流入開口部を前記凹部の部分に有する。これに代えて又はこれに加えて、前記第1のコイルディスクおよび/または前記第2のコイルディスクは、冷媒を前記略環状の冷却流路外に導くように、流出開口部を前記凹部の部分に有する。
【0055】
例えば、前記流入開口部および/または流出開口部は、前記凹部の径方向外側の側面に設けられ得る。好ましくは、前記流入開口部が前記第1のコイルディスクの凹部の側面に設けられて前記流出開口部が2つ目の凹部の側面に設けられ、その逆も然りである。前記第1のコイルディスクの前記流入開口部から入口流路が延び得て、前記第2のコイルディスクの前記流出開口部から出口流路が延び得る。これら入口流路および出口流路は、それぞれ、前記流入開口部、前記流出開口部から径方向外側に各自延びるものであり得る。前記入口流路は前記第1のコイルディスクの凹所として構成されたものであり得て、前記出口流路は前記第2のコイルディスクの凹所として構成されたものであり得る。前記入口流路のうちの、前記流入開口部とは反対側の端部には、前記冷媒を前記入口流路内に導くように前記第1のコイルディスク及び第2のコイルディスクに設けられた、流入孔及び/又は流入貫通孔が存在し得る。前記出口流路のうちの、前記流出開口部とは反対側の端部には、前記冷媒を前記出口流路外に導くように前記第1のコイルディスク及び第2のコイルディスクに設けられた、流出孔及び/又は流出貫通孔が存在し得る。
【0056】
好ましくは、前記入口流路および/または前記出口流路は、所定の巻線部のうちの、これと直接隣合う巻線部における外側の受動領域を覆わないか又は部分的にしか覆っていない外側の受動領域に延在する。これにより、前記入口流路および/または出口流路は、巻線部の厚みが最大限に薄くなっている領域に配置される。これにより、省スペースの配置構成が可能となる。
【0057】
変形例として、前記流入開口部および流出開口部ならびに前記入口流路および出口流路は、2つのコイルディスクの一方のみに設けられてもよいし、両方のコイルディスクに設けられてもよい。
【0058】
前記電気機械がコイルスペーサを介して複数のコイルモジュールを互いに連結してなる場合、該コイルスペーサも流入孔および流出孔を有し得る。組立後の状態にて、各コイルモジュールの流入孔とその間に配置された前記コイルスペーサの流入孔が重なり合う。同じく、組立後の状態にて、各コイルモジュールの流出孔とその間に配置されたコイルスペーサの流出孔とが重なり合う。言い換えれば、全ての前記流入孔および流出孔が同一直線上に並び得る。
【0059】
例えば、軸方向でみて前記電気機械の一端側に位置するコイルディスク又はコイルスペーサについては、前記流入孔および流出孔が省略されてもよい。前記電気機械の他端側に位置するコイルディスク又はコイルスペーサでは、その流入孔および流出孔を通して個々のコイルモジュールに前記冷媒が供給され得る。これにより、冷媒の流れを基準として平行に各コイルモジュールが連結されることになり得る。
【0060】
前記流入開口部とコイルディスクの中心部とを結ぶ第1の接続線と前記流出開口部とコイルディスクの中心部とを結ぶ第2の接続線は、そのコイルディスクの平面視で、好ましくは30°未満の角度、より好ましくは20°未満の角度、なおいっそう好ましくは10°未満の角度を挟み得る。具体的に言えば、これらの開口部同士を可能な限り近傍に配置して、対応する同角度を最大限小さくするのが好ましい。これにより、コイルディスクの中心部の周囲の最大限全体に前記冷媒が確実に流れるようになるので、全ての巻線部を確実に冷却することが可能となる。
【0061】
好ましくは、前記第1のコイルディスクおよび/または前記第2のコイルディスクは、前記流入開口部-前記流出開口部間の前記凹部内に、前記略環状の冷却流路をこれら流入開口部と流出開口部との間で仕切るように構成されたウェブを有する。該ウェブは、前記凹部内の前記流入開口部-前記流出開口部の最短接続部に配置されてコイルディスクのほぼ全周に前記冷媒が流れるようにさせるものであるという点を理解されたい。
【0062】
前記ウェブは、前記凹部における断絶部であると解釈できる。すなわち、前記ウェブは、前記凹部の径方向内側の縁部から該凹部の径方向外側の縁部にかけて延設されていると理解されたい。例えば、前記ウェブは、前記凹部の内側の縁部から該凹部の外側の縁部にかけて径方向に延設されたものであり得る。変形例として、前記ウェブは、径方向に対して角度を成すものであってもよい。このとき、前記ウェブの上面は、前記凹部の前記底面よりも上側に位置し得て、好ましくは前記コイルディスクの残りの内側面と同じ平面上に位置している。このとき、前記ウェブは、前記冷媒の遮断を効果的に行いつつも出来る限り幅狭に構成されているのが好ましい。
【0063】
また、好ましくは、前記流入開口部とコイルディスクの中心部とを結ぶ前記第1の接続線と前記流出開口部とコイルディスクの中心部とを結ぶ前記第2の接続線は、30°未満の角度を挟んでいる。前記流入開口部-流出開口部間の前記ウェブにより、前記冷媒は、これら流入開口部と流出開口部との間の「短い経路」を辿ることができなくなり、前記冷却流路のうちの残りの遥かに大きい円弧状部分に流れざるを得なくなる。
【0064】
前記ウェブは、前記冷却流路内において前記冷媒の遮断部を形成する。これにより、前記ウェブによって前記冷媒を前記第1および第2のコイルディスクにおける全対象領域に流れる。これにより、前記第1および第2のコイルディスクの全対象領域が確実に冷却される。
【0065】
好ましくは、前記第1のコイルディスクおよび第2のコイルディスクが、それぞれ、凹部およびウェブを有する。前記コイルモジュールの組立後の状態では、前記第1のコイルディスクのウェブと前記第2のコイルディスクのウェブが互いに重なり合う。ただし、それらの間に接着剤および/または密封層が設けられる構成を排除しておらず、その接着剤が同時にシールを成すことも可能である。
【0066】
好ましくは、前記第1のコイルディスクおよび前記第2のコイルディスクは、それぞれ、電気絶縁性材料からなる少なくとも1つのコイルキャリア、および導電性材料からなる複数の各巻線部、を含む。該複数の各巻線部は、前記少なくとも1つのコイルディスクの中心部周りの周方向で該少なくともの1つのコイルディスクに設けられている。前記巻線部は、それぞれ、前記中心部から径方向に延びる2つの能動領域、ならびに径方向外側および内側の縁部で接線方向に延びる2つの受動領域を有する。また、前記コイルディスクの平面視で、別々の巻線部の前記能動領域同士は互いに重なっていないのに対し、任意の前記巻線部の各受動領域は、直接隣合う2つの巻線部の対応する受動領域にそれぞれ部分的に重なっている。また、前記各巻線部の断面の軸方向の厚みは、前記受動領域よりも前記能動領域のほうが厚くなっている。
【0067】
上記の構成についてのさらなる技術的効果および/または利点および/または説明は、本明細書の別の箇所で既に開示したとおりであり、本明細書で説明する各構成にも同じく当てはまる。
【0068】
好ましくは、前記凹部は、少なくとも、径方向に延びる前記能動領域の領域に位置している。好ましくは、前記凹部は、径方向外側の前記受動領域の領域にも位置している。
【0069】
任意の前記巻線部の受動領域は、直接隣合う巻線部の対応する受動領域に部分的に重なっているのに対し、別々の巻線部の能動領域同士は互いに重なっていないので、前記第1および/または第2のコイルディスクの前記能動領域に前記凹部用の空間を用意することができる。前記凹部を前記冷却流路とすれば、該空間を冷却用に利用することになり、空間の消費が増えずに済む。それと同時に、前述したこの種の巻線部により、小さいスペースに多くの導電性材料を使用できるという利点が奏される。
【0070】
しかしながら、前記凹部は、前記受動領域、好ましくは前記径方向外側の受動領域に、少なくとも部分的に設けられてもよい。例えば、前記径方向外側の受動領域の径方向の幅は、前記径方向内側の受動領域の径方向の幅よりも大きくされ得る。これにより、前記径方向外側の受動領域の軸方向の厚みを薄く形成することができる。また、各巻線部の受動領域の全体を、直接隣合う巻線部の受動領域によって覆われないようにすることも可能である。これにより、例えば、前記受動領域にも前記凹部用の空間を設けることが可能となる。
【0071】
好ましくは、前記第1および/または第2のコイルディスクの前記各巻線部の前記能動領域の軸方向の厚みは、径方向外側の方向に減少する。また、前記第1および/または第2のコイルディスクの前記各巻線部の前記能動領域の接線方向の幅は、径方向外側の方向に増加する。
【0072】
この構造は、前記能動領域が「末広がる」構成とも称される。
【0073】
ここで、「軸方向の厚み」は前記能動領域の全長に沿って外側に行くにつれて減少していなくてもよく、「接線方向の幅」は前記能動領域の全長に沿って外側に行くにつれて増加していなくてもよい。しかしながら、前記能動領域は、その長さの70%以上、好ましくは90%以上に沿って末広がるものであるのが好ましい。
【0074】
上記の構成についてのさらなる技術的効果および/または利点および/または説明は、本明細書の別の箇所で既に開示したとおりであり、本明細書で説明する各構成にも同じく当てはまる。
【0075】
末広がる構成の別の利点は、任意の巻線部の能動領域とこれに直接隣合う巻線部の能動領域との間の距離又は間隙を小さくできるという点である。
【0076】
得られる利点としては、前記凹部が前記巻線部の前記能動領域に位置している場合に、該凹部の前記底面がそのコイルディスク自体で密閉されるというものがある。このことは、前記巻線部の前記能動領域間に間隙が存在せず、追加の密閉が不要になるということを意味する。つまり、そのコイルディスクは自己完結的であるだけでなく自己密閉的でもある。
【0077】
これにより、例えば、既述した膜体を省略して、前記コイルモジュール全体の軸方向の厚みを薄くすることができる。これにより、前記電気機械の前記磁石モジュールを前記巻線部に近付けて、前記電気機械の性能および/または効率を上げることが可能となる。
【0078】
また、このことは、前記コイルディスクおよび/またはコイルモジュールおよび/または前記電気機械を製造するのに必要な方法工程が少なくて済むということも意味する。さらに、前記巻線部の前記能動領域間の間隙を空けた状態に維持する必要がないため、前記コイルディスクを形成するためのツールを簡略化することが可能となる。これにより、総合的に、前記電気機械の製造コストを削減することができる。
【0079】
好ましくは、任意の巻線部の前記能動領域とこれに直接隣合う巻線部の前記能動領域との間の距離は、数マイクロメートルである。
【0080】
好ましくは、前記凹部の軸方向の深さは、径方向外方に増加する。
【0081】
前記凹部の軸方向の深さは、軸方向で測定された該凹部の深さ、例えば、該凹部の最下点(例えば、前記底面等)とコイルディスクの内側面が形成する平面との差のことであると理解されたい。
【0082】
前記凹部の軸方向の深さが径方向外方に増加するという構成は、前記凹部のうちの径方向内側の略環状の領域の深さが、該凹部のうちのそれよりもさらに外側に位置する略環状の領域の深さよりも浅いことを意味するものと理解されたい。
【0083】
前記深さは、内側から外側へと連続的に(すなわち、途切れなく)又は段階的に(すなわち、断続的に)増加し得る。また、前記深さは、内側から外側へと直線的に増加するものであってもよいし非直線的に増加するものであってもよい。
【0084】
前記凹部のこのような幾何形状は、「V冷却」幾何形状とも称される。
【0085】
好ましくは、前記各巻線部において、前記能動領域の厚みに対する前記受動領域の厚みの比は、1未満である。
【0086】
上記の構成についての技術的効果および/または利点および/または説明は、本明細書の別の箇所で既に開示したとおりであり、本明細書で説明する各構成にも同じく当てはまる。
【0087】
好ましくは、前記各巻線部において、前記能動領域の厚みに対する前記受動領域の厚みの比は、0.3以上1未満である。
【0088】
上記の構成についての技術的効果および/または利点および/または説明は、本明細書の別の箇所で既に開示したとおりであり、本明細書で説明する各構成にも同じく当てはまる。
【0089】
好ましくは、直接隣合う2つの巻線部の、重なり合う受動領域の領域の軸方向の厚みの合計は、これら直接隣合う2つの各巻線部の、前記能動領域の軸方向の厚みよりも大きい。例えば、直接隣合う2つの巻線部の、重なり合う内側の受動領域の領域の軸方向の厚みの合計および重なり合う外側の受動領域の領域の軸方向の厚みの合計は、これら直接隣合う2つの各巻線部の、前記能動領域の軸方向の厚みよりも大きい。変形例では、直接隣合う2つの巻線部の、重なり合う前記内側の受動領域の領域の軸方向の厚みの合計が、これら直接隣合う2つの各巻線部の、前記能動領域の軸方向の厚みよりも大きくされ得るのに対し、直接隣合う2つの巻線部の、重なり合う外側の受動領域の領域の軸方向の厚みの合計が、これら直接隣合う2つの各巻線部の、前記能動領域の軸方向の厚みよりも小さくされ得る。
【0090】
厚みを円滑に変化させるために、巻線部のうちの短い区間の厚みを、それぞれ、上記の厚みとは異なる別の厚みにしてもよい。
【0091】
このことは、直接隣合う全て又はほぼ全ての巻線部同士に適用され得る。つまり、本明細書で説明するウェブの領域に1つ以上の能動領域が位置する場合があり、その場合、該能動領域の厚みは他の能動領域の厚みよりも厚く設定され得る。
【0092】
「直接隣合う2つの巻線部の、重なり合う受動領域の部分(領域)の軸方向の厚みの合計」とは、これら直接隣合う巻線部の受動領域同士が重なり合う部分で測定された、各巻線部の各受動領域の軸方向のそれぞれの厚みを合計したものであると理解されたい。
【0093】
このことは、前記径方向内側の受動領域、径方向外側の受動領域の両方に適用され得る。変形例として、直接隣合う2つの巻線部の、前記径方向内側の受動領域の軸方向の厚みの合計のみが、これら直接隣合う2つの各巻線部の、前記能動領域の軸方向の厚みよりも厚く設定されてもよい。
【0094】
これにより、好適なことに、前記能動領域、さらには、任意で、前記外側の受動領域が総合的に占める軸方向の空間が、前記受動領域が占める軸方向の空間よりも少なくなる。その結果、前記コイルディスクの前記凹部用の空間が、前記能動領域、さらには、任意で、前記外側の受動領域の部分に確保される。
【0095】
好ましくは、直接隣合う2つの各巻線部の、前記能動領域の軸方向の厚みの最大値に対する、これら直接隣合う2つの巻線部の、重なり合う受動領域の軸方向の厚みの合計の比は、1を超える。
【0096】
このことは、直接隣合う全ての巻線部に適用され得る。
【0097】
好ましくは、能動領域から受動領域への遷移部では、前記各巻線部の断面領域の形状が変化する。
【0098】
上記の構成についての技術的効果および/または利点および/または説明は、本明細書の別の箇所で既に開示したとおりであり、本明細書で説明する各構成にも同じく当てはまる。
【0099】
好ましくは、別々の巻線部の能動領域は、その全体が、側面視で同一平面上に位置している。
【0100】
上記の構成についての技術的効果および/または利点および/または説明は、本明細書の別の箇所で既に開示したとおりであり、本明細書で説明する各構成にも同じく当てはまる。
【0101】
好ましくは、前記巻線部は、互いに電気的に絶縁された線径0.1mm以下の複数の素線同士の細い撚線で構成されている。
【0102】
上記の構成についての技術的効果および/または利点および/または説明は、本明細書の別の箇所で既に開示したとおりであり、本明細書で説明する各構成にも同じく当てはまる。
【0103】
好ましくは、前記巻線部の数は、3相動作を可能にするように3の整数倍に相当する。
【0104】
上記の構成についての技術的効果および/または利点および/または説明は、本明細書の別の箇所で既に開示したとおりであり、本明細書で説明する各構成にも同じく当てはまる。
【0105】
好ましくは、任意の前記巻線部において、内側の受動領域と外側の受動領域とで軸方向の厚みが異なる。
【0106】
上記の構成についての技術的効果および/または利点および/または説明は、本明細書の別の箇所で既に開示したとおりであり、本明細書で説明する各構成にも同じく当てはまる。
【0107】
好ましくは、任意の前記巻線部において、外側の受動領域の厚みは、前記能動領域の厚みに対する該領域の厚みの比が0.5以下となるように選択されている。
【0108】
上記の構成についての技術的効果および/または利点および/または説明は、本明細書の別の箇所で既に開示したとおりであり、本明細書で説明する各構成にも同じく当てはまる。
【0109】
本発明は、さらに、軸受構造と、該軸受構造で案内されるシャフトと、を備え、該シャフトに沿って同軸状に、複数の永久磁石からなる少なくとも1つの磁石モジュールおよび本明細書の範囲内で開示する少なくとも1つのコイルモジュールが配置されている、電気機械に関する。
【0110】
好ましくは、前記電気機械は、少なくとも1つのコイルモジュール、好ましくは1つ以上ないし6つ以下のコイルモジュール、極めて好ましくは1つ以上ないし3つ以下のコイルモジュール、を備える。好ましくは、前記電気機械は、磁石モジュールの数がコイルモジュールの数よりも1つ多い。
【0111】
上記の構成についての技術的効果および/または利点および/または説明は、本明細書の別の箇所で既に開示したとおりであり、本明細書で説明する各構成にも同じく当てはまる。
【0112】
本発明は、さらに、本明細書で開示する電気機械を備える車両または工作機械に関する。
【0113】
上記の構成についての技術的効果および/または利点および/または説明は、本明細書の別の箇所で既に開示したとおりであり、本明細書で説明する各構成にも同じく当てはまる。
【0114】
本発明の根底を成す1つ以上又は全ての課題は、以降に開示するコイルモジュールおよび/または以降に開示する電気機械および/または以降に開示する車両、あるいは、工作機械の発明によって解決される。
【0115】
以降で説明するコイルモジュールは先述のコイルモジュールとの関連で開示した構成を一部備えることから、先述の技術的効果、利点および説明は、後述の対応する構成にも当てはまる。なお、具体的に述べると、後述のコイルモジュールは、先にコイルモジュールとの関連で説明した任意の構成を備えて得るのが好ましい。
【0116】
本発明に係る電気機械用のコイルモジュールは、電気絶縁材料からなる第1のコイルキャリア、前記第1のコイルキャリアに埋設された、導電性材料からなる少なくとも1つの巻線部、および第1のセラミックス境界部を有する、第1のコイルディスクを備える。同コイルモジュールは、さらに、電気絶縁材料からなる第2のコイルキャリア、前記第2のコイルキャリアに埋設された、導電性材料からなる少なくとも1つの巻線部、および第2のセラミックス境界部を有する、第2のコイルディスクを備える。前記第1のコイルディスクおよび前記第2のコイルディスクは、これら第1のコイルディスクと第2のコイルディスクとの間に冷媒用の略環状の冷却流路が形成されるように構成されて互いに取り付けられている。前記第1のセラミックス境界部および前記第2のセラミックス境界部は、それぞれ、前記略環状の冷却流路の内壁を少なくとも部分的に形成している。好ましくは、該冷却流路の軸方向の延在範囲が1mm~2mmである。
【0117】
前記コイルモジュール、前記第1のコイルディスク、前記第2のコイルディスク、ならびに前記第1および第2のコイルディスクの前記巻線部は、これまでに開示したような構成とされ得る。
【0118】
前記第1のコイルディスクおよび前記第2のコイルディスク、特に、前記第1のコイルキャリアおよび前記第2のコイルキャリアは、互いに組み付けられて且つ/或いは突き合わされた際に略環状の冷却流路をそれらの間に形成するように構成されている。すなわち、該冷却流路は、冷媒を運搬することで前記第1のコイルディスク及び/又は第2のコイルディスクから熱を効果的に取り除くように調整且つ/或いは構成された、前記第1のコイルディスクと前記第2のコイルディスクとの間の空間であり得る。
【0119】
例えば、前記第1および/または第2のコイルキャリアが略環状の凹部を有しており、前記第1および第2のコイルディスクが組付後の状態では、該略環状の凹部が前記冷却流路を形成する。例えば、前記第1および第2のコイルキャリアは、該第1および第2のコイルディスクの組付後の状態にて互いに突き合わせ状態となる、起伏した且つ/或いは肉厚の径方向内側部をそれぞれ有し得る。前記第1および第2コイルキャリアの径方向外側部同士が該第1および第2のコイルディスクの組付後の状態で互いに離間していることで、前記略環状の冷却流路が形成され得る。該冷却流路は、径方向にみて外側が、さらなる境界部、例えば、本明細書で説明する径方向外側のセラミックス境界部および/またはコイルキャリアリングによって境界付けされ得る。
【0120】
「第1のセラミックス境界部」とは、前記略環状の冷却流路の内壁を少なくとも部分的に形成し且つ/或いは裏打ちする、前記第1のコイルディスクのセラミックス材料の構造体のことであると理解されたい。「第2のセラミックス境界部」とは、前記略環状の冷却流路の内壁を少なくとも部分的に形成し且つ/或いは裏打ちする、前記第2のコイルディスクのセラミックス材料の構造体のことであると理解されたい。言い換えれば、前記第1のセラミックス境界部は前記略環状の冷却流路の内部を前記第1のコイルキャリアから区切るものであり得て、前記第2のセラミックス境界部は前記略環状の冷却流路の内部を前記第2のコイルキャリアから区切るものであり得る。
【0121】
前記セラミックス境界部は、様々な方法で設けられ得る。例えば、前記セラミックス境界部は、前記第1および第2のコイルキャリアのコイルディスク間に各自配置されたセラミックス材料のディスクの形態で設けられ得る。また、前記セラミックス境界部は、前記コイルキャリア上のセラミックスコーティングの形態で設けられてもよい。また、これらを組み合わせること、すなわち、前記セラミックス境界部の一部をセラミックスディスクの形態で、かつ、一部を前記コイルキャリア上のセラミックスコーティングの形態で設けることも可能である。
【0122】
前記第1および第2のセラミックス境界部は、これら第1のコイルディスクと第2のコイルディスクとを組み付けて前記略環状の冷却流路の内壁を形成する際に互いに接合(例えば、接着等)される、2つの別個の構造体であり得る。また、前記第1および第2のセラミックス境界部は、互いに一体品(一つの部品)として且つ/或いは一体的に形成されたものであってもよい。
【0123】
このようなセラミックス境界部は、幾つかの点で有利である。まず、前記セラミックス境界部に含まれるセラミックスは蒸気気密性または実質上の蒸気気密性を示す。そのため、前記セラミックス境界部は、水を吸収せず、かつ/あるいは、前記冷却流路からの水が前記コイルキャリアの前記絶縁材料中に蓄積するのを防ぐ。セラミックスは、全体的に高い耐溶剤性および/または耐薬品性を示す。また、前記セラミックス境界部のセラミックスは、前記コイルキャリアの素材よりも熱伝導率が大幅に高い。例えば、セラミックスの熱伝導率はプラスチックの熱伝導率の約100倍にもなる。そのため、前記セラミックス境界部は、前記冷却流路内の前記冷媒による放熱性を向上させることができる。しかも、セラミックスは電気絶縁性を有する。
【0124】
したがって、前記第1および第2のセラミックス境界部により、前記冷却流路内の前記冷媒が前記第1および第2のコイルキャリアに接触して該第1および第2のコイルキャリアの材料中に蓄積することを防止することができる。前記冷媒のこのような蓄積は、例えば、前記冷媒が水を含有するものである場合に前記コイルキャリアの材料が絶縁効果を失う原因となり得る。しかし、動作時の前記コイルには電圧が加わるため、前記巻線部とその外囲物との間には常に十分な電気絶縁性が確保されていなければならない。直冷中は前記冷媒が該外囲物と巻線部の双方に接触するため、ここにも絶縁性を確保しなければならない。したがって、前記セラミックス境界部を設けることにより、前記コイルキャリアの絶縁効果を長期間にわたって確実に維持しながら、水を含有した冷媒を使用することが可能となる。水は熱容量が大きく、熱伝導率も優れているため、水を含有する冷媒は有利である。そのため、前記電気機械のコイルディスクの冷却を向上させると同時に、該電気機械の寿命を延ばすことが可能となる。同時に、前記コイルディスクの放熱性も向上する。
【0125】
また、前記セラミックス境界部により、前記コイルキャリアの前記電気絶縁材料の厚みを薄くできるとともに、前記電気機械の冷却能力と効率性が向上するという利点がある。
【0126】
しかも、前記セラミックス境界部のセラミックスは、機械的に極めて強固な材料である。したがって、前記セラミックス境界部は、前記コイルディスクの機械強度および/または安定性の付与または向上も可能である。前記コイルディスクが機械強度を有することで、前記冷媒の内圧や前記コイルモジュールに働く電磁力によって該コイルディスクが軸方向に膨張してロータが前記コイルモジュールに擦れる(schleifen)ようなことを防げる。これにより、前記セラミックス境界部によって前記コイルディスクの機械強度を確保できるだけでなく、熱伝導性と耐熱性を重要視して前記コイルキャリアの材料を選択することが可能となる。
【0127】
好ましくは、前記第1および/または第2のセラミックス境界部は、アルミニウムベース及び/又はシリコンベースのセラミックスからなり、好ましくは、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、炭化ケイ素および窒化ケイ素からなる群から選択された材料からなる。
【0128】
上記のセラミックス材料は、特性の面で、セラミックス境界部として使用するのに適している。なかでも、酸化アルミニウムは広く使用されていて簡単に入手できるため、極めて好適である。
【0129】
ただし、セラミックス境界部には別のセラミックス材料が使用されてもよい。
【0130】
好ましくは、前記第1のセラミックス境界部が、前記略環状の冷却流路の径方向領域全体にわたって該略環状の冷却流路の内壁を形成しており、かつ/あるいは、前記第2のセラミックス境界部が、前記略環状の冷却流路の径方向領域全体にわたって該略環状の冷却流路の内壁を形成している。
【0131】
すなわち、前記第1および第2のセラミックス境界部は、前記略環状の冷却流路の径方向領域全体にわたって該略環状の冷却流路の内壁を形成したものであり得る。このようにして、前記冷却流路の径方向領域全体にわたって素材が前記冷媒から保護される。
【0132】
好ましくは、前記第1のセラミックス境界部は、前記第1のコイルキャリア上に配置された第1のセラミックスディスクからなる。好ましくは、前記第2のセラミックス境界部は、前記第2のコイルキャリア上に配置された第2のセラミックスディスクからなる。
【0133】
このようなセラミックスディスクは、例えば、板状のセラミックス原材料から切り出されたものや打ち抜かれたものであり得る。
【0134】
前記セラミックスディスクは、前記コイルディスクの製造時に、前記巻線部の埋設(例えば、成形等)後の前記コイルキャリア上に配置されて該コイルキャリアに接着され得る。変形例として、前記セラミックスディスクは、前記コイルキャリアを作製するための前記巻線部の成形時にツール内に入れられて該巻線部と一緒に成形されてもよい。
【0135】
これにより、前記コイルモジュールの製造方法を簡単かつ効率の良いものとすることができる。
【0136】
好ましくは、前記第1のセラミックスディスクおよび/または前記第2のセラミックスディスクは、厚みが0.1mm~1mm、好ましくは0.2mm~0.8mm、より好ましくは0.35mm~0.7mmである。
【0137】
このような厚みにより、前記冷媒との境界付けおよび前記コイルディスクの強度を確保しつつ、前記コイルディスクに加わる軸方向の膨張を前記セラミック境界部によって最小限に抑えることができる。
【0138】
好ましくは、前記第1のセラミックスディスクおよび第2のセラミックスディスクは、一体品として且つ/或いは一体的に形成されたセラミックス製の冷却流路の一部となっている。
【0139】
つまり、前記セラミックス製の冷却流路は、前記第1のセラミックスディスク及び前記第2のセラミックスディスクを構成する一体品として且つ/或いは一体的に形成された、三次元中空体であり得る。すなわち、前記セラミック製の冷却流路は環状の管体の形状であり、該冷却流路が前記中空体及び/又は該環状の管体の中空空間によって形成され得る。また、前記セラミック製の冷却流路が複数のセグメントに分割されていて、該複数のセグメントが前記第1のセラミックスディスクのディスクセグメント及び前記第2のセラミックスディスクのディスクセグメントをそれぞれ構成していてもよい。これらのセグメントは、それぞれ、湾曲した管体の形態であり得る。
【0140】
好ましくは、前記第1のセラミックスディスクが2つ以上、好ましくは2つ、3つまたは4つのセラミックスディスクセグメントからなり、かつ/あるいは、前記第2のセラミックスディスクが2つ以上、好ましくは偶数、より好ましくは4つのセラミックスディスクセグメントからなる。これらのセラミックスディスクは、各コイルキャリアにおいて互いに隣接配置され得る。
【0141】
前記セラミックスディスクを複数のセラミックスディスクセグメントの形態で設けることにより、特に、前記セラミックスディスクの大きさがある程度になった場合に、該セラミックスディスクの製造が簡単になり得る
【0142】
好ましくは、前記セラミックス境界部は、前記セラミックスディスクセグメント同士の接合部を密封するように該セラミックスディスクセグメント上に配置された、少なくとも1つのセラミックスシール部材を具備している。
【0143】
すなわち、前記セラミックスディスクセグメントは、該セラミックスディスクセグメント間に1つ以上の突合せ接合部が形成されるようにして前記コイルキャリア上に配置され得る。好ましくは、これらの突合せ接合部の密封は、セラミックスシール部材を前記セラミックスディスクセグメント上の各突合せ接合部の領域に配置することによって行われる。前記セラミックスシール部材の形状は、帯状であり得る。前記セラミックスシール部材は、接着剤によって前記セラミックスディスクに取り付けられ得る。好ましくは、セラミックスシール部材は、前記セラミックスディスクセグメント間の各突合せ接合部に配置されている。
【0144】
前記セラミックスシール部材により、前記セラミックスディスクセグメント間の突合せ接合部の領域でもセラミックスによる緊密な密封性を確保することができる。
【0145】
好ましくは、前記第1のセラミックス境界部は、前記第1のコイルキャリアに適用された第1のセラミックスコーティングからなる。好ましくは、前記第2のセラミックス境界部は、前記第2のコイルキャリアに適用された第2のセラミックスコーティングからなる。
【0146】
これにより、セラミックス境界部を極めて薄くすることができる。なかでも、これにより、前記コイルモジュールの設置空間が縮小し、前記電気機械の効率度が向上する。さらに、コーティングは、高い熱伝導率を示し得る。このようなコーティングは直接適用することができるので、前記コイルキャリアと境界部との間に接着剤層を追加で設ける必要もなく、設置空間をさらに縮小させることが可能となる。結果として、接着剤の熱抵抗もなくせる。
【0147】
前記コーティングは、蒸着、好ましくは物理気相成長法(PVD)によって適用され得る。前記コーティングは、化学気相成長法(CVD)、電気めっき法、またはゾル-ゲル法でも適用が可能である。
【0148】
好ましくは、前記第1のセラミックスコーティングおよび/または前記第2のセラミックスコーティングは、厚みが1μm~100μm、好ましくは1μm~50μm、より好ましくは1μm~30μmである。
【0149】
好ましくは、前記第1のコイルキャリアおよび/または前記第2のコイルキャリアは、略環状の凹部を有する。また、本発明では、前記第1のセラミックス境界部および/または前記第2のセラミックス境界部が、前記第1のコイルキャリア、前記第2のコイルキャリアの前記略環状の凹部内に配置された略環状のセラミックスディスクの形態でそれぞれ設けられる。
【0150】
上記の構成についての技術的効果および/または利点および/または説明は、本明細書の別の箇所で既に開示したとおりであり、本明細書で説明する各構成にも同じく当てはまる。
【0151】
前記第1のコイルキャリアおよび/または前記第2のコイルキャリアの前記略環状の凹部は、例えば、該第1および/または第2のコイルキャリアの径方向内側の領域を該第1および/または第2のコイルキャリアの径方向外側の領域よりもそれぞれ起伏させることによって、かつ/あるいは、そのコイルキャリアの軸方向の厚みを該径方向外側の領域よりも該径方向内側の領域のほうが厚くなるようにすることによって設けられ得る。例えば、本明細書で開示する巻線部の前記内側の受動領域は前記コイルキャリアの前記径方向内側の領域に位置する一方で、該巻線部の前記能動領域および外側の受動領域は該コイルキャリアの前記径方向外側の領域に位置し得る。前記略環状のセラミックスディスクは、前記コイルキャリアの前記径方向内側の領域と略合致した径方向内側の凹入部を有し得る。前記環状のセラミックスディスクの外径は、前記コイルキャリアの直径と略一致し得る。
【0152】
好ましくは、前記コイルモジュールは、前記略環状の冷却流路内に設けられて前記第1のセラミックス境界部及び前記第2のセラミックス境界部の双方に接着されて、好ましくは一体的に形成された、少なくとも1つの接続要素を備える。
【0153】
すなわち、前記少なくとも1つの接続要素は、前記第1のセラミックス境界部と前記第2のセラミックス境界部とを互いに接続するものであり得る。これにより、前記セラミックス境界部によって前記コイルディスク又はコイルモジュールに付与される強度をさらに向上させることができる。同時に、前記接続要素は、前記冷却流路の冷却面を増やすことで前記コイルディスクからの放熱性を向上させることができる。また、前記接続要素は、前記冷媒の乱流を発生させるように前記冷却流路内に配置及び/又は構成されていてもよく、これにより、放熱性を追加で向上させることが可能である。
【0154】
例えば、前記接続要素は、前記セラミックス境界部と一体的に且つ/或いは一体品として形成され得る。しかしながら、前記接続要素を、例えば、前記セラミックス境界部に接合される別体の構成要素とすることも可能である。
【0155】
好ましくは、前記少なくとも1つの接続要素は、アルミニウムベース及び/又はシリコンベースのセラミックスからなり、好ましくは、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、炭化ケイ素および窒化ケイ素からなる群の材料からなる。好ましくは、前記少なくとも1つの接続要素は、前記第1のセラミックス境界部及び/又は前記第2のセラミックス境界部に接着されているか、あるいは、前記第1のセラミックス境界部及び/又は前記第2のセラミックス境界部に一体的に形成されている。
【0156】
好ましくは、前記少なくとも1つの接続要素は、ストラット、好ましくは、前記第1および/または第2のコイルディスクと直交して配置されたストラットからなる。好ましくは、前記少なくとも1つの接続要素は、前記第1および/または第2のコイルディスクと平行に延びるリブからなる。
【0157】
このような接続要素により、前記コイルモジュールの安定性および冷却性能を同時に向上させることができる。
【0158】
好ましくは、前記コイルモジュールは、径方向内側のセラミックス境界部を備える。さらに好ましくは、該径方向内側のセラミックス境界部が、鍔形状および/またはリング形状であり、径方向にみて前記第1のセラミックス境界部及び前記第2のセラミックス境界部の内側に隣接内側に配置されている。
【0159】
前記径方向内側のセラミックス境界部により、前記コイルキャリアのうちの前記冷却流路に接した径方向内側の領域が前記冷媒に接触して該冷媒を吸収するのを防ぐことができる。
【0160】
前記径方向内側のセラミックス境界部は、例えば、前記第1および/または第2のセラミックス境界部に接着された別体の構成要素として設けられ得る。変形例として、前記径方向内側のセラミックス境界部は、前記第1および/または第2のセラミックス境界部と一体的に且つ/或いは一体品として形成された部品として構成されてもよい。
【0161】
好ましくは、前記コイルモジュールは、径方向外側のセラミックス境界部を備える。好ましくは、該径方向外側のセラミックス境界部は、鍔形状および/またはリング形状であり、径方向にみて前記第1のセラミックス境界部及び前記第2のセラミックス境界部の外側に隣接配置されている。
【0162】
前記径方向外側のセラミックス境界部により、径方向にみて、冷却流路が外部に追いやられるのを防ぐことができる。また、前記径方向外側のセラミックス境界部により、前記冷媒が径方向外側に漏れて前記コイルキャリアの近隣領域と接触し且つ/或いは該近隣領域に吸収されるのを防止することができる。
【0163】
前記径方向外側のセラミックス境界部は、例えば、前記第1および/または第2のセラミックス境界部に接着された別体の構成要素として設けられ得る。変形例として、前記径方向外側のセラミックス境界部は、前記第1および/または第2のセラミックス境界部と一体的に且つ/或いは一体品として形成された部品として構成されてもよい。
【0164】
好ましくは、前記第1のコイルディスクおよび/または第2のコイルディスクは、冷媒を前記略環状の冷却流路内に導入する流入開口部を有する。好ましくは、前記第1のコイルディスクおよび/または前記第2のコイルディスクは、冷媒を前記略環状の冷却流路外に導出する流出開口部を有する。
【0165】
前記流入開口部および/または流出開口部は、前記第1および/または第2のコイルディスクのうちの、径方向にみて前記コイルキャリアの外側に位置した部分に設けられ得る。例えば、各コイルディスクは、前記コイルキャリアの径方向外側に且つ/或いは周囲に配置されたコイルキャリアリングを具備し得る。前記流入開口部および/または流出開口部は、該コイルキャリアリングに設けられ得る。前記流入開口部および/または流出開口部は、軸方向に沿った穴部の形態で設けられ得る。前記流入開口部は、前記冷媒が前記冷却流路に流入し該冷却流路内を流れて前記流出開口部から流出するのを可能にする。好ましくは、前記流入開口部と前記流出開口部は、前記コイルモジュールの軸線を基準として180°ズレている。
【0166】
このようにして前記冷媒を案内する形態は、冷却機能および前記コイルモジュールの製造の両方の観点から有利であることが判明している。
【0167】
好ましくは、前記第1のコイルキャリアに、導電性材料からなる複数の各巻線部が埋設されており、該巻線部は、それぞれ、前記第1のコイルキャリアの中心部周りの周方向で該第1のコイルキャリアに埋設されている。また、前記第2のコイルキャリアには、導電性材料の複数の各巻線部が埋設されており、該巻線部は、それぞれ、前記第2のコイルキャリアの中心部周りの周方向で該第2のコイルキャリアに埋設されている。前記巻線部は、それぞれ、前記中心部から径方向に延びる2つの能動領域、および径方向外側および内側の縁部で接線方向に延びる2つの受動領域を有する。
【0168】
好ましくは、前記コイルディスクの平面視で、別々の巻線部の前記能動領域同士は互いに重なっていないのに対し、任意の前記巻線部の各受動領域は、直接隣合う2つの巻線部の対応する受動領域に部分的に重なっており、前記各巻線部の断面の軸方向の厚みは、前記受動領域よりも前記能動領域のほうが厚くなっている。
【0169】
上記の構成についての技術的効果および/または利点および/または説明は、本明細書の別の箇所で既に開示したとおりであり、本明細書で説明する各構成にも同じく当てはまる。
【0170】
好ましくは、前記第1のコイルディスク及び前記第2のコイルディスクの前記複数の各巻線部同士の隣合う能動領域は、これら隣合う能動領域間に隙間が位置するようにして接線方向に互いに離間しており、前記第1のセラミックス境界部及び前記第2のセラミックス境界部は、それぞれ、前記隣合う能動領域間に位置した前記隙間内に延出する突起を有する。
【0171】
すなわち、前記第1のコイルキャリア及び前記第2のコイルキャリアがそれぞれ前記複数の各巻線部同士の隣合う能動領域間に隙間を有するように、これら複数の各巻線部同士の隣合う能動領域が離間し得る。前記第1および第2のセラミックス境界部の突起は、これらの隙間内へと軸方向に延出し得る。
【0172】
好ましくは、前記隙間および前記突起は、扇形の形態、すなわち、「パイの一切れ」の形態とされ得る。
【0173】
前記突起は、前記セラミックス境界部の一部であってもよいし、前記隙間に別体として挿入されて任意で前記セラミックス境界部に接合されるものであってもよい。前記突起は、前記セラミックス境界部と同じセラミックス材料を含有するか又は該材料で構成されたものであってもよいが、別の材料を含有したり別の材料で構成されたりしていてもよい。
【0174】
ほかにも、このような突起は、前記コイルディスクの安定性をさらに高め、かつ/あるいは、前記コイルディスクを追加で強化することができる。その結果、前記冷却流路内の前記冷媒の内圧による荷重をより良好に吸収することが可能となる。また、前記セラミックス境界部の前記突起と前記コイルキャリアの前記隙間との間を形状嵌合部とし、これによってトルクを吸収することも可能である。例えば、ロータとステータ(すなわち、前記コイルモジュール)の巻線部との間には、電磁相互作用によってトルクが発生する。しかし、このトルクは、ロータでは回転を引き起こすものの、ステータでは分散させる必要がある。上記の「パイの一切れ(Kuchenstucke)」の構成とすることにより、前記コイルキャリアと前記セラミックス境界部との間の形状嵌合によって前記コイルキャリアから前記セラミックス境界部へとトルクを逃がすことが可能になる。その後、前記セラミックス境界部から、前記コイルモジュールのハウジングや前記電気機械にトルクをそれぞれ移動させることができる。このようにして、前記巻線部、特に、前記巻線部の前記能動領域の変形を防ぐことが可能となる。また、前記突起により、前記巻線部からの放熱性を向上させることもできる。これにより、冷却性能を大幅に向上させることが可能となる。
【0175】
好ましくは、前記冷却流路は、径方向に延びる前記能動領域の部分に少なくとも位置しており、好ましくは、径方向外側の前記受動領域の部分にも位置している。
【0176】
すなわち、前記冷却流路は、前記第1および第2のコイルディスクのうちの、前記巻線部の少なくとも前記能動領域が位置した径方向部分に延在し得る。前記巻線部の前記能動領域で熱の大部分が発生することから、それによって放熱性の向上を図ることができる。好ましくは、前記冷却流路は、少なくとも、前記第1および第2のコイルディスクのうちの、前記巻線部の前記能動領域の全体が位置した径方向領域の全体に延在している。
【0177】
好ましくは、前記第1および/または第2のコイルディスクの前記各巻線部の前記能動領域の軸方向の厚みは、径方向外側の方向に減少する。好ましくは、前記第1および/または第2のコイルディスクの前記各巻線部の前記能動領域の接線方向の幅は、径方向外側の方向に増加する。
【0178】
上記の構成についての技術的効果および/または利点および/または説明は、本明細書の別の箇所で既に開示したとおりであり、本明細書で説明する各構成にも同じく当てはまる。
【0179】
好ましくは、前記能動領域の領域において、前記凹部の軸方向の深さが径方向外側の方向に増加する。
【0180】
上記の構成についての技術的効果および/または利点および/または説明は、本明細書の別の箇所で既に開示したとおりであり、本明細書で説明する各構成にも同じく当てはまる。
【0181】
好ましくは、前記各巻線部において、前記能動領域の厚みに対する前記受動領域の厚みの比は、1未満である。好ましくは、前記各巻線部において、前記能動領域の厚みに対する前記受動領域の厚みの比は、0.3以上1未満である。
【0182】
上記の構成についての技術的効果および/または利点および/または説明は、本明細書の別の箇所で既に開示したとおりであり、本明細書で説明する各構成にも同じく当てはまる。
【0183】
好ましくは、能動領域から受動領域への遷移時に、前記各巻線部の断面の形状が変化する。
【0184】
上記の構成についての技術的効果および/または利点および/または説明は、本明細書の別の箇所で既に開示したとおりであり、本明細書で説明する各構成にも同じく当てはまる。
【0185】
好ましくは、前記第1のコイルディスクの別々の巻線部の能動領域は、その全体が、側面視で同一平面上に位置している。好ましくは、前記第2のコイルディスクの別々の巻線部の能動領域は、その全体が、側面視で同一平面上に位置している。
【0186】
上記の構成についての技術的効果および/または利点および/または説明は、本明細書の別の箇所で既に開示したとおりであり、本明細書で説明する各構成にも同じく当てはまる。
【0187】
好ましくは、前記巻線部は、互いに電気的に絶縁された線径0.1mm以下の複数の素線同士の細い撚線で構成されている、
【0188】
上記の構成についての技術的効果および/または利点および/または説明は、本明細書の別の箇所で既に開示したとおりであり、本明細書で説明する各構成にも同じく当てはまる。
【0189】
好ましくは、前記第1のコイルディスク及び/又は前記第2のコイルディスクの前記巻線部の数は、それぞれ、3相動作を可能にするように3の整数倍に相当する。
【0190】
上記の構成についての技術的効果および/または利点および/または説明は、本明細書の別の箇所で既に開示したとおりであり、本明細書で説明する各構成にも同じく当てはまる。
【0191】
好ましくは、任意の前記巻線部において、内側の受動領域と外側の受動領域とで軸方向の厚みが異なる。好ましくは、任意の前記巻線部において、前記外側の受動領域の厚みは、前記能動領域の厚みに対する該領域の厚みの比が0.5以下となるように選択されている。
【0192】
上記の構成についての技術的効果および/または利点および/または説明は、本明細書の別の箇所で既に開示したとおりであり、本明細書で説明する各構成にも同じく当てはまる。
【0193】
本発明は、さらに、軸受構造と、該軸受構造で案内されるシャフトと、を備え、該シャフトに沿って同軸状に、複数の永久磁石からなる少なくとも1つの磁石モジュールおよび本明細書の範囲内で開示する少なくとも1つのコイルモジュールが配置されている、電気機械に関する。
【0194】
上記の構成についての技術的効果および/または利点および/または説明は、本明細書の別の箇所で既に開示したとおりであり、本明細書で説明する各構成にも同じく当てはまる。
【0195】
本発明は、さらに、本明細書の範囲内で開示する電気機械を備える車両または工作機械に関する。
【0196】
下記の数字付きの各項目で、本発明の好ましいさらなる実施形態を開示する:
【0197】
[項目1]
導電性材料からなる複数の各巻線部(13)を含んで電気絶縁材料からなる少なくとも1つのコイルキャリア(15)を有し、前記巻線部が、前記少なくとも1つのコイルキャリア(6)の中心部(14)周りの周方向で該少なくとも1つのコイルキャリア(6)に設けられている、少なくとも1つのコイルディスク(6)、
を備え、
前記巻線部(13)は、それぞれ、前記中心部(14)から径方向に延びる2つの能動領域(16)、ならびに径方向外側および内側の縁部で接線方向に延びる2つの受動領域(17a,17b)を有し、
前記コイルディスク(6)の平面視で、別々の巻線部(13)の前記能動領域(16)同士は互いに重なっていないのに対し、任意の前記巻線部(13)の各受動領域(17a,17b)は、直接隣合う2つの巻線部(13)の対応する受動領域(17a,17b)に部分的に重なっている、電気機械用のコイルモジュール(18)において、
前記各巻線部(13)の断面の軸方向の厚みは、前記受動領域(17a,17b)よりも前記能動領域(16)のほうが厚くなっていることを特徴とする、コイルモジュール(18)。
【0198】
[項目2]
項目1に記載のコイルモジュール(18)において、前記各巻線部(13)において、前記能動領域(16)の厚みに対する前記受動領域(17a,17b)の厚みの比が、1未満であることを特徴とする、コイルモジュール(18)。
【0199】
[項目3]
項目1または2に記載のコイルモジュール(18)において、前記各巻線部(13)において、前記能動領域(16)の厚みに対する前記受動領域(17a,17b)の厚みの比が、0.3以上1未満であることを特徴とする、コイルモジュール(18)。
【0200】
[項目4]
項目1から3のいずれか一項目に記載のコイルモジュールにおいて、能動領域(16)から受動領域(17a,17b)への遷移部では、前記各巻線部(13)の断面の形状が変化することを特徴とする、コイルモジュール。
【0201】
[項目5]
項目1から4のいずれか一項目に記載のコイルモジュール(18)において、別々の巻線部(13)の能動領域(16)は、その全体が、側面視でいずれも同一平面上に位置していることを特徴とする、コイルモジュール(18)。
【0202】
[項目6]
項目1から5のいずれか一項目に記載のコイルモジュール(18)において、前記各巻線部(13)の前記能動領域(16)の軸方向の厚みが径方向外側の方向に減少し、前記各巻線部(13)の前記能動領域(16)の接線方向の幅が径方向外側の方向に増加することを特徴とする、コイルモジュール(18)。
【0203】
[項目7]
項目1から6のいずれか一項目に記載のコイルモジュール(18)において、前記巻線部が、互いに電気的に絶縁された線径0.1mm以下の複数の素線同士の細い撚線で構成されていることを特徴とする、コイルモジュール(18)。
【0204】
[項目8]
項目1から7のいずれか一項目に記載のコイルモジュール(18)において、前記巻線部(13)の数は、3相動作を可能にするように3の整数倍に相当することを特徴とする、コイルモジュール(18)。
【0205】
[項目9]
項目1から8のいずれか一項目に記載のコイルモジュール(18)において、任意の前記巻線部(13)において、内側の受動領域(17a)と外側の受動領域(17b)とで軸方向の厚みが異なることを特徴とする、コイルモジュール(18)。
【0206】
[項目10]
項目9に記載のコイルモジュールにおいて、任意の前記巻線部(13)において、前記外側の受動領域(17)の厚みは、前記能動領域(16)の厚みに対する該領域の厚みの比が0.5以下となるように選択されていることを特徴とする、コイルモジュール。
【0207】
[項目11]
軸受構造(1,3)と、
前記軸受構造(1,3)で案内されるシャフト(2)と、
を備え、前記シャフト(2)に沿って同軸状に、複数の永久磁石(5)からなる少なくとも1つの磁石モジュール(4)および項目1から10のいずれか一項目に記載の少なくとも1つのコイルモジュール(18)が配置されている、電気機械。
【0208】
[項目12]
項目11に記載の電気機械において、前記少なくとも1つのコイルモジュール(18)は、少なくとも、前記磁石モジュール(4)に面する側が電気絶縁材料からなる膜体で覆われていることを特徴とする、電気機械。
【0209】
[項目13]
項目11または12に記載の電気機械において、前記少なくとも1つのコイルモジュール(18)が、相互連結された少なくとも2つのコイルディスク(6)、および該2つのコイルディスク間の空間で形成された冷却流路を有することを特徴とする、電気機械。
【0210】
[項目14]
項目11から13のいずれか一項目に記載の電気機械を備える車両または工作機械。
【0211】
[項目15]
電気機械用のコイルモジュール(18)であって、特には、前述のいずれか一項目に記載のコイルモジュールにおいて、
導電性材料からなる少なくとも1つの巻線部(13)を有する第1のコイルディスク(6)と、
導電性材料からなる少なくとも1つの巻線部(13)を有する第2のコイルディスク(6)と、
を備え、前記第1のコイルディスク(6)および/または前記第2のコイルディスク(6)は、略環状の凹部(22)を有し、前記第1のコイルディスク(6)および前記第2のコイルディスク(6)は、これら第1のコイルディスク(6)と第2のコイルディスク(6)との間に冷媒用の略環状の冷却流路(23)が前記略環状の凹部(22)によって形成されるように互いに取り付けられている、コイルモジュール(18)。
【0212】
[項目16]
項目15に記載のコイルモジュール(18)において、前記第1のコイルディスク(6)および/または前記第2のコイルディスク(6)が、冷媒を前記略環状の冷却流路(23)内に案内するように、流入開口部(43)を前記凹部(22)の部分に有し、かつ/あるいは、
前記第1のコイルディスク(6)および/または前記第2のコイルディスク(6)が、冷媒を前記略環状の冷却流路(23)外に導くように、流出開口部(45)を前記凹部(22)の部分に有する、コイルモジュール(18)。
【0213】
[項目17]
項目16に記載のコイルモジュール(18)において、前記第1のコイルディスク(6)および/または前記第2のコイルディスク(6)が、前記流入開口部(43)-前記流出開口部(45)間の前記凹部(22)内に、前記略環状の冷却流路(23)をこれら流入開口部(43)と流出開口部(45)との間で仕切るように構成されたウェブ(38a,38b)を有する、コイルモジュール(18)。
【0214】
[項目18]
項目15から17のいずれか一項目に記載のコイルモジュール(18)において、前記第1のコイルディスク(6)および前記第2のコイルディスク(6)が、それぞれ、
電気絶縁材料からなる少なくとも1つのコイルキャリア(15)、および
導電性材料からなり、前記少なくとも1つのコイルディスク(6)の中心部(14)周りの周方向で該少なくとも1つのコイルディスク(6)に設けられている複数の各巻線部(13)、
を含み、
前記巻線部(13)は、それぞれ、前記中心部(14)から径方向に延びる2つの能動領域(16)、ならびに径方向外側および内側の縁部で接線方向に延びる2つの受動領域(17b)を有し、
前記コイルディスク(6)の平面視で、別々の巻線部(13)の前記能動領域(16)同士は互いに重なっていないのに対し、任意の前記巻線部(13)の各受動領域(17a,17b)は、直接隣合う2つの巻線部(13)の対応する受動領域(17a,17b)にそれぞれ部分的に重なっており、
前記各巻線部(13)の断面の軸方向の厚みは、前記受動領域(17a,17b)よりも前記能動領域(16)のほうが厚くなっていることを特徴とする、コイルモジュール(18)。
【0215】
[項目19]
項目18に記載のコイルモジュールにおいて、前記凹部(22)が、少なくとも、径方向に延びる前記能動領域(16)の領域に位置しており、好ましくは、径方向外側の前記受動領域(17b)の領域にも位置している、コイルモジュール。
【0216】
[項目20]
項目19に記載のコイルモジュール(18)において、前記第1および/または前記第2のコイルディスク(6)の前記各巻線部(13)の前記能動領域(16)の軸方向の厚みが径方向外側の方向に減少し、
前記第1および/または前記第2のコイルディスク(6)の前記各巻線部(13)の前記能動領域(16)の接線方向の幅が径方向外側の方向に増加する、コイルモジュール(18)。
【0217】
[項目21]
項目20に記載のコイルモジュール(18)において、前記能動領域(16)において、前記凹部の軸方向の深さ(34,34a,34b)が径方向外方に増加する、コイルモジュール(18)。
【0218】
[項目22]
項目18から21のいずれか一項目に記載のコイルモジュール(18)において、前記各巻線部(13)において、前記能動領域(16)の厚みに対する前記受動領域(17a,17b)の厚みの比が、1未満である、コイルモジュール(18)。
【0219】
[項目23]
項目18から22のいずれか一項目に記載のコイルモジュール(18)において、前記各巻線部(13)において、前記能動領域(16)の厚みに対する前記受動領域(17a,17b)の厚みの比が、0.3以上1未満である、コイルモジュール(18)。
【0220】
[項目24]
項目18から23のいずれか一項目に記載のコイルモジュール(18)において、能動領域(16)から受動領域(17a,17b)への遷移部では、前記各巻線部(13)の断面積の形状が変化する、コイルモジュール(18)。
【0221】
[項目25]
項目18から24のいずれか一項目に記載のコイルモジュール(18)において、別々の巻線部(13)の前記能動領域(16)は、側面視でいずれも同一平面上に位置していることを特徴とする、コイルモジュール(18)。
【0222】
[項目26]
項目18から25のいずれか一項目に記載のコイルモジュール(18)において、前記巻線部が、互いに電気的に絶縁された線径0.1mm以下の複数の素線同士の細い撚線で構成されていることを特徴とする、コイルモジュール(18)。
【0223】
[項目27]
項目18から26のいずれか一項目に記載のコイルモジュール(18)において、前記巻線部(13)の数は、3相動作を可能にするように3の整数倍に相当することを特徴とする、コイルモジュール(18)。
【0224】
[項目28]
項目18から27のいずれか一項目に記載のコイルモジュール(18)において、任意の前記巻線部(13)において、内側の受動領域(17a)と外側の受動領域(17b)とで軸方向の厚みが異なることを特徴とする、コイルモジュール(18)。
【0225】
[項目29]
項目28に記載のコイルモジュールにおいて、任意の前記巻線部(13)において、前記外側の受動領域(17b)の厚みは、前記能動領域(16)の厚みに対する該領域の厚みの比が0.5以下となるように選択されていることを特徴とする、コイルモジュール。
【0226】
[項目30]
軸受構造(1,3)と、
前記軸受構造(1,3)で案内されるシャフト(2)と、
を備え、前記シャフト(2)に沿って同軸状に、複数の永久磁石(5)からなる少なくとも1つの磁石モジュール(4)および項目15から29のいずれか一項目に記載の少なくとも1つのコイルモジュール(18)が配置されている、電気機械。
【0227】
[項目31]
項目30に記載の電気機械を備える車両(150)または工作機械(154)。
【0228】
下記の数字付きの各態様で、本発明の好ましいさらなる実施形態を開示する:
【0229】
[態様1]
電気機械用のコイルモジュール(18)であって、特には、前述のいずれか一項目に記載のコイルモジュールにおいて、
電気絶縁材料からなる第1のコイルキャリア(15,15a)、前記第1のコイルキャリア(15,15a)に埋設された、導電性材料からなる少なくとも1つの巻線部(13)、および第1のセラミックス境界部(56,56a)を有する、第1のコイルディスク(6,6a)と、
電気絶縁材料からなる第2のコイルキャリア(15,15b)、前記第2のコイルキャリア(15,15b)に埋設された、導電性材料からなる少なくとも1つの巻線部(13)、および第2のセラミックス境界部(56,56b)を有する、第2のコイルディスク(6,6b)と、
を備え、
前記第1のコイルディスク(6,6a)および前記第2のコイルディスク(6,6b)は、これら第1のコイルディスク(6,6a)と第2のコイルディスク(6b)との間に冷媒用の略環状の冷却流路(23)が形成されるように構成されて互いに取り付けられており、
前記第1のセラミックス境界部(56,56a)および前記第2のセラミックス境界部(56,56b)が、それぞれ、前記略環状の冷却流路(23)の内壁を少なくとも部分的に形成している、コイルモジュール(18)。
【0230】
[態様2]
態様1に記載のコイルモジュール(18)において、前記第1および/または第2のセラミックス境界部(56,56a,56b)が、アルミニウムベース及び/又はシリコンベースのセラミックスからなり、好ましくは、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、炭化ケイ素および窒化ケイ素からなる群から選択された材料からなる、コイルモジュール(18)。
【0231】
[態様3]
態様1または2に記載のコイルモジュール(18)において、前記第1のセラミックス境界部(56,56a)が、前記略環状の冷却流路(23)の径方向領域全体で該略環状の冷却流路の内壁を形成しており、かつ/あるいは
前記第2のセラミックス境界部(56,56b)が、前記略環状の冷却流路(23)の径方向領域全体で該略環状の冷却流路の内壁を形成している、コイルモジュール(18)。
【0232】
[態様4]
態様1から3のいずれか一態様に記載のコイルモジュール(18)において、前記第1のセラミックス境界部(56,56a)が、前記第1のコイルキャリア(15,15a)上に配置された第1のセラミックスディスクからなり、かつ/あるいは、
前記第2のセラミックス境界部(56,56b)が、前記第2のコイルキャリア(15,15b)上に配置された第2のセラミックスディスクからなる、コイルモジュール(18)。
【0233】
[態様5]
態様4に記載のコイルモジュール(18)において、前記第1のセラミックスディスク(56,56a)および/または前記第2のセラミックスディスク(56,56b)は、厚みが0.1mm~1mm、好ましくは0.2mm~0.8mm、さらに好ましくは0.35mm~0.7mmである、コイルモジュール(18)。
【0234】
[態様6]
態様4または5に記載のコイルモジュール(18)において、前記第1のセラミックスディスクおよび第2のセラミックスディスクが、一体品として形成されたセラミックス製の冷却流路の一部となっている、コイルモジュール(18)。
【0235】
[態様7]
態様4から6のいずれか一態様に記載のコイルモジュール(18)において、前記第1のセラミックスディスク(56,56a)が、2つ以上、好ましくは偶数、より好ましくは4つのセラミックスディスクセグメントからなり、かつ/あるいは、
前記第2のセラミックスディスク(56,56b)が、2つ以上、好ましくは偶数、より好ましくは4つのセラミックスディスクセグメントからなる、コイルモジュール(18)。
【0236】
[態様8]
態様7に記載のコイルモジュール(18)において、前記セラミックス境界部は、前記セラミックスディスクセグメント間の接合部を密封するように、該セラミックスディスクセグメント上に配置された少なくとも1つのセラミックスシール部材を具備している、コイルモジュール(18)。
【0237】
[態様9]
態様1から3のいずれか一態様に記載のコイルモジュール(18)において、前記第1のセラミックス境界部(56,56a)が、前記第1のコイルキャリア(15,15a)に適用されたセラミックスコーティングからなり、かつ/あるいは、前記第2のセラミックス境界部(56,56b)が、前記第2のコイルキャリア(15,15b)に適用されたセラミックスコーティングからなる、コイルモジュール(18)。
【0238】
[態様10]
態様9に記載のコイルモジュール(18)において、前記第1のセラミックスコーティングおよび/または前記第2のセラミックスコーティングは、厚みが1μm~100μm、好ましくは1μm~50μm、さらに好ましくは1μm~30μmである、コイルモジュール(18)。
【0239】
[態様11]
態様1から10のいずれか一態様に記載のコイルモジュール(18)において、前記第1のコイルキャリア(15,15a)および/または前記第2のコイルキャリア(15,15b)が、略環状の凹部(22)を有し、
前記第1のセラミックス境界部(56,56a)および/または前記第2のセラミックス境界部(56,56b)が、前記第1のコイルキャリア及び/又は第2のコイルキャリアの前記略環状の凹部(22)内に配置された略環状のセラミックスディスクの形態で設けられている、コイルモジュール(18)。
【0240】
[態様12]
態様1から11のいずれか一態様に記載のコイルモジュール(18)において、さらに、
前記略環状の冷却流路(23)内に設けられて前記第1のセラミックス境界部(56,56a)及び前記第2のセラミックス境界部(56,56b)の双方に接続されて、好ましくは一体的に形成された、少なくとも1つの接続要素(63,64)、
を備える、コイルモジュール(18)。
【0241】
[態様13]
態様12に記載のコイルモジュール(18)において、好ましくは、前記少なくとも1つの接続要素(63,64)が、アルミニウムベース及び/又はシリコンベースのセラミックスからなり、好ましくは、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、炭化ケイ素および窒化ケイ素からなる群から選択された材料からなり、かつ/あるいは、
前記少なくとも1つの接続要素(63,64)が、前記第1のセラミックス境界部及び/又は前記第2のセラミックス境界部に接着されているか、あるいは、前記第1のセラミックス境界部及び/又は前記第2のセラミックス境界部に一体的に形成されている、コイルモジュール(18)。
【0242】
[態様14]
態様12または13に記載のコイルモジュールにおいて、前記少なくとも1つの接続要素(63,64)は、ストラット、好ましくは、前記第1および/または第2のコイルディスク(6,6a,6b)と直交して配置されたストラットからなり、かつ/あるいは、
前記少なくとも1つの接続要素(63,64)が、前記第1および/または第2のコイルディスク(6,6a,6b)と平行に延びるリブからなる、コイルモジュール。
【0243】
[態様15]
態様1から14のいずれか一態様に記載のコイルモジュール(18)において、さらに、
径方向内側のセラミックス境界部(57)、
を備え、
好ましくは、前記径方向内側のセラミックス境界部(57)が、鍔形状および/またはリング形状であり、径方向にみて前記第1のセラミックス境界部(56,56a)及び前記第2のセラミックス境界部(56,56b)の内側に隣接配置されている、コイルモジュール(18)。
【0244】
[態様16]
態様1から15のいずれか一態様に記載のコイルモジュール(18)において、さらに、
径方向外側のセラミックス境界部(58)、
を備え、
好ましくは、前記径方向外側のセラミックス境界部(58)が、鍔形状および/またはリング形状であり、径方向にみて前記第1のセラミックス境界部(56,56a)及び前記第2のセラミックス境界部(56,56b)の外側に隣接配置されている、コイルモジュール(18)。
【0245】
[態様17]
態様1から16のいずれか一態様に記載のコイルモジュール(18)において、前記第1のコイルディスク(6,6a)および/または前記第2のコイルディスク(6,6b)が、冷媒を前記略環状の冷却流路(23)内に導入する流入開口部(43,54)を有し、かつ/あるいは、
前記第1のコイルディスク(6,6a)および/または前記第2のコイルディスク(6,6b)が、冷媒を前記略環状の冷却流路(23)外に導出する流出開口部(45,55)を有する、コイルモジュール(18)。
【0246】
[態様18]
請求項1から17のいずれか一項に記載のコイルモジュール(18)において、前記第1のコイルキャリア(15,15a)に、導電性材料からなる複数の各巻線部(13)が埋設されており、該巻線部(13)は、それぞれ、前記第1のコイルキャリア(15,15a)の中心部(14)周りの周方向で該第1のコイルキャリア(15,15a)に埋設されており、
前記第2のコイルキャリア(15,15b)に、導電性材料の複数の各巻線部(13)が埋設されており、該巻線部 (13)は、それぞれ、前記第2のコイルキャリア(15,15b)の中心部(14)周りの周方向で該第2のコイルキャリア(15,15b)に埋設されており、
前記巻線部(13)は、それぞれ、前記中心部(14)から径方向に延びる2つの能動領域(16)、ならびに径方向外側および内側の縁部で接線方向に延びる2つの受動領域(17b)を有し、
前記コイルディスク(6,6a,6b)の平面視で、別々の巻線部(13)の前記能動領域(16)同士は互いに重なっていないのに対し、任意の前記巻線部(13)の各受動領域(17a,17b)は、直接隣合う2つの巻線部(13)の対応する受動領域(17a,17b)に部分的に重なっており、前記各巻線部(13)の断面の軸方向の厚みは、前記受動領域(17a,17b)よりも前記能動領域(16)のほうが厚くなっている、コイルモジュール(18)。
【0247】
[態様19]
態様18に記載のコイルモジュール(18)において、前記第1のコイルディスク(6,6a)及び前記第2のコイルディスク(6,6b)の前記複数の各巻線部(13)同士の隣合う能動領域(16)は、これら隣合う能動領域(16)間に隙間が位置するようにして接線方向に互いに離間しており、
前記第1のセラミックス境界部(56,56a)及び前記第2のセラミックス境界部(56,56b)は、それぞれ、前記隣合う能動領域(16)間に位置した前記隙間内に延出する突起(65)を有する、コイルモジュール(18)。
【0248】
[態様20]
態様18または19に記載のコイルモジュール(18)において、前記冷却流路(23)が、径方向に延びる前記能動領域(16)の領域に少なくとも位置しており、好ましくは、径方向外側の前記受動領域(17b)の領域にも位置している、コイルモジュール(18)。
【0249】
[態様21]
態様20に記載のコイルモジュール(18)において、前記第1および/または前記第2のコイルディスク(6)の前記各巻線部(13)の前記能動領域(16)の軸方向の厚みが、径方向外側の方向に減少し、
前記第1および/または前記第2のコイルディスク(16)の前記各巻線部(13)の前記能動領域(16)の接線方向の幅が、径方向外側の方向に増加する、コイルモジュール(18)。
【0250】
[態様22]
態様21に記載のコイルモジュール(18)において、前記能動領域(16)において、前記凹部(22)の軸方向の深さ(34,34a,34b)が、径方向外側の方向に増加する、コイルモジュール(18)。
【0251】
[態様23]
態様18から22のいずれか一態様に記載のコイルモジュール(18)において、前記各巻線部(13)において、前記能動領域(16)の厚みに対する前記受動領域(17a,17b)の厚みの比が、1未満であり、
好ましくは、前記各巻線部(13)において、前記能動領域(16)の厚みに対する前記受動領域(17a,17b)の厚みの比が、0.3以上1未満である、コイルモジュール(18)。
【0252】
[態様24]
態様18から23のいずれか一態様に記載のコイルモジュール(18)において、能動領域(16)から受動領域(17a,17b)への遷移部では、前記各巻線部(13)の断面積の形状が変化する、コイルモジュール(18)。
【0253】
[態様25]
態様18から24のいずれか一態様に記載のコイルモジュール(18)において、前記第1のコイルディスク(15)の別々の巻線部(13)の前記能動領域(16)が、側面視でいずれも同一平面上に位置しており、かつ/あるいは、
前記第2のコイルディスク(15)の別々の巻線部(13)の前記能動領域(16)が、側面視でいずれも同一平面上に位置している、コイルモジュール(18)。
【0254】
[態様26]
態様18から25のいずれか一態様に記載のコイルモジュール(18)において、前記巻線部が、互いに電気的に絶縁された線径0.1mm以下の複数の素線同士の細い撚線で構成されている、コイルモジュール(18)。
【0255】
[態様27]
態様18から26のいずれか一態様に記載のコイルモジュール(18)において、前記第1のコイルディスク(15)及び/又は前記第2のコイルディスク(15)の前記巻線部(13)の数は、それぞれ、3相動作を可能にするように3の整数倍に相当する、コイルモジュール(18)。
【0256】
[態様28]
態様18から27のいずれか一態様に記載のコイルモジュール(18)において、任意の前記巻線部(13)において、内側の受動領域(17a)と外側の受動領域(17b)とで軸方向の厚みが異なり、
好ましくは、任意の前記巻線部(13)において、前記外側の受動領域(17b)の厚みは、前記能動領域(16)の厚みに対する該領域の厚みの比が0.5以下となるように選択されている、コイルモジュール(18)。
【0257】
[態様29]
軸受構造(1,3)と、
前記軸受構造(1,3)で案内されるシャフト(2)と、
を備え、前記シャフト(2)に沿って同軸状に、複数の永久磁石(5)からなる少なくとも1つの磁石モジュール(4)および態様1から28のいずれか一態様に記載の少なくとも1つのコイルモジュール(18)が配置されている、電気機械。
【0258】
[態様30]
態様29に記載の電気機械を備える車両(150)または工作機械(154)。
【0259】
以下では、本発明の例示的な実施形態を、下記の図面に図示するとともに下記の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0260】
【
図8C】コイルディスクのさらなる他の断面図である。
【
図8D】コイルディスクのさらなる他の断面図である。
【
図14A】セラミックス境界部がない状態のコイルディスクを示す図である。
【
図14B】セラミックス境界部が有る状態のコイルディスクを示す図である。
【
図15A】接続要素を具備したセラミックス境界部を示す図である。
【
図15B】接続要素を具備したセラミックス境界部を示す他の図である。
【
図16】突起を有するセラミック境界部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0261】
図1は、電気モータの分解図である。第1の軸受シールド1は、第2の軸受シールド3と共同で、モータシャフト2の軸受構造を構成している。軸受シールド1,3の中央にはモータシャフト2が案内されており、第1の軸受シールド1の領域には軸受キャップ7と固定軸受8が設けられ、第2の軸受シールド3の領域には遊動軸受12が設けられている。図示の実施形態では、軸受シールド1,3、軸受キャップ7、コイルスペーサ10および磁石スペーサ9がポリアミドからなり、モータシャフト2がステンレス鋼から構成され、固定軸受8および遊動軸受12が鋼から構成された深溝玉軸受となっている。
【0262】
第1の軸受シールド1と第2の軸受シールド3との間には、軸方向に重ねて配置された2つのコイルディスク6からなるコイルモジュール18と、磁石ディスク又は磁石モジュール4とが配置されている様子が確認でき、両者の間には、コイルスペーサ10及び磁石スペーサ9により、互いに所定の空間的間隔が保たれている。コイルモジュール18は、ディスク状であり、すなわち、その長さ及び幅は、(
図1の軸方向で測定される)厚みよりも大幅に大きい。「大幅に大きい」という表現は、厚みが長さ及び幅のそれぞれの10%以下であることを意味していると理解されたい。一般的に、その長さと幅は同等である。図示の実施形態では、コイルモジュール18が、モータシャフト2上方に配設されているとともに、ロータとして機能する2つの磁石ディスク又は磁石モジュール4に近接したステータとして機能する。該ステータは、2つの磁石ディスク4の間に位置している。さらに、
図1に示す実施形態では、磁石ディスク4と第2の軸受シールド3との間に鉄製のリターンヨーク(Eisenruckschluss)11が設けられている。しかしながら、さらなる実施形態では、この鉄製のリターンヨーク11が省略されてもよいし、あるいは、別のものに置き換えられてもよい。
【0263】
磁石ディスク4は、着磁可能でなくて好ましくは非導電性でもある材料、例えば、アルミニウムからなるとともに、軸受シールド1,3の軸受8,12に挿設されたモータシャフト2に取り付けられている。モータシャフト2には、さらに、コイルモジュール18を配置するための空隙部を磁石ディスク4間に形成する磁石スペーサ9が取り付けられている。磁石ディスク4には、永久磁石5が、放射状かつ周方向で交互の向きに、すなわち、前記ステータの方向(すなわち、軸方向)にN極とS極が常に交互に向くようにして配置されている。このとき、永久磁石5の数は常に偶数となる。好ましくは、永久磁石5の数は、各相の巻線部の数の丁度2倍となる。
【0264】
図1に示す実施形態では、2つのコイルディスク6からなるコイルモジュール18が1つ設けられ得る。しかしながら、このようなコイルディスク6を3つ以上互いに連結してコイルモジュール18とすることも可能である。動作時には、各コイルディスク6間に生じる空間に冷却媒体が通され得る。前記モータの最も単純な(但し、それでも効率良く動作可能な)構造は、1つのコイルディスク6を備える単一のコイルモジュール18と、2つの磁石ディスク4とによって構成される構造であるが、コイルモジュール18と磁石ディスク4の数を適宜増やすことも想定され得る。好ましくは、磁石ディスク4の数が、コイルモジュール18の数よりも1つ多い。設置されるコイルモジュール18及び磁石ディスク4の数が可変であるという構成により、特に、対応するシャフトと軸受の設計と相まって、それに応じたモジュール型設計の利点が奏される。コイルモジュール18、磁石ディスク4という2種類のモジュールを組み合わせるという点に加えて、それぞれのモジュールに変更を施すことで、モータの設計にさらなる自由自在性がもたらされる。コイルモジュール18と磁石ディスク4は、別々に調整が可能である。例えば、永久磁石5のみ調整が必要で、それ以外の構造は変えずに維持するという場合がある。
【0265】
図2は、巻線部13が設けられているとともにコイルディスク6を構成するコイルキャリア15を、平面視で、すなわち、コイルモジュール18の長さと幅の両方に直交する法線方向に沿って描いた図である。以降の図で、本図の構成/構成要素と同じものが登場する場合には、本図と同じ参照符号で示す。コイルキャリア15は、電気絶縁材料からなるとともに、平面視で丸形状であり、すなわち、長さと幅が完全に合致している。複数の各巻線部13が、コイルキャリア15の中心部14周りの周方向で該コイルキャリア15に放射状に設けられている。各巻線部13は、直接隣合う巻線部13から電気的に絶縁されている。コイルキャリア15の中心部14は、前記電気機械の回転軸心と交差している。
図2に示す実施形態では、これらの巻線部13が3相巻となっている。各巻線部は、数ターンの撚線からなる。つまり、各巻線部13は、その3個後の巻線部13に対し、ある集団単位内での設計が同一のものになっている。しかも、これらの巻線部13は、深さの向きおよび配置構成に関しても同じように設けられている。つまり、第1相は、
図1で最上層として確認できる巻線部13で構成されており、第2相は、上から見て半分隠れた巻線部13によって構成されており、第3相は、上から見て完全に隠れた巻線部13によって構成されている。
【0266】
巻線部13は、それぞれ、コイルディスク6の中心部14から径方向に延びて前記モータのトルクに寄与する2つの能動領域16、ならびに径方向外側の縁部および内側の縁部で略接線方向に延びる2つの受動領域17a,17b(すなわち、径方向内側の受動領域17aおよび径方向外側の受動領域17b)を有する。このようにして外側の受動領域17bよりも中心部14側に設けられた内側の受動領域17aは、外側の受動領域17bよりも長さが短くなっている。平面視、すなわち、モータシャフト2に沿った視点で、別々の巻線部13の能動領域16同士は互いに重なっていないのに対し、任意の巻線部13の内側および外側の受動領域17a,17bは、それぞれ、直接隣合う2つの巻線部13の対応する受動領域17a,17bに各自部分的に覆っている。
【0267】
円K1,K2は、能動領域16の径方向内側の境界、径方向外側の境界を表している。つまり、能動領域16は、内側の円K1から外側の円K2にかけて延びている。前記巻線部のうちの、前記円K1,K2外に位置する領域は、受動領域17a,17bに充てられている。
【0268】
図2に示す実施形態では、3相の各相が、個々のティース、すなわち、個々の巻線部13で構成されている。各巻線部13は、数回巻かれたものであるが、1ターンだけで設けられていてもよい。特殊なのは、スポーク状の能動領域16の別々の相同士が、同一平面上で隣合っているという点である。
図2では、これらの能動領域16が、巻線部13上の2本の円線で指し示されている、つまり、能動領域16同士は形状も寸法も同一である一方、受動領域17aと受動領域17bとでは形状も寸法も異なる。
【0269】
受動領域17a,17bは、常時隣合う2つのティース同士で重複部を構成している。このことは、各位相の平面が変位する必要があるということを意味する。断面を変化させずに直接重なり合った場合、コイルディスク6の軸方向の厚みは受動領域17a,17bの領域で2倍になる。結果として、永久磁石5同士の軸方向間隔が、巻線部13の断面の変化、すなわち、巻線部13の厚み-対-幅の比または高さ-対-幅の比の変化に左右されて増加することになり得る。図示の実施形態では、各巻線部13において、受動領域17a、17bの厚みに対する能動領域16の厚みの比は、丁度2である。簡単に言って、能動領域16同士で軸方向の厚み又は高さが1に正規化される(なお、図示の実施形態では、どの能動領域16も厚みが同一である)として、受動領域17a,17bの厚みが0.75である(なお、図示の実施形態では、どの受動領域17a,17bもその厚みが同一である)と仮定した場合、受動領域17a,17bの厚みは上記の正規化された厚みよりも薄くなる。しかし、受動領域17a,17b同士は重ね合わせて並べて配置されるため、これら受動領域17a,17bの厚みが合わさって側面視で1.5にもなる。このような配置構成は、例えば、
図2の右側の断面図に描いている。受動領域17a,17bは、個別にみればそれぞれ厚み又は高さが能動領域16よりも低いが、重複部による巻線部13の重合せ配置によって見かけ上厚くなる。これにより、永久磁石5を能動領域16に近付けることのできる両者間の設置空間に余裕が生まれる。
図2の下側には、外側の受動領域17bの軌道を概略的に描いている。3番目の巻線部は、いずれも、受動領域17bの平面が変位するという点は明白であろう。図示の実施形態では、巻線部13の数が、3相動作を可能にするように3の整数倍に相当する。つまり、巻線部13同士で、相異なる相の合計3つの列が形成されており、巻線部13同士の能動領域16は、その全体が、側面視で同一平面上に存在していると同時に、受動領域17a,17bは2つの平面上に分布している。2つの相はそれぞれ同一平面上に存在しているが、第3の相は別の平面に変位している。
【0270】
例えば、2つの相同士を、軸方向ではなく、断面の適宜変化によって径方向に重複(すなわち、並置)させるようにしてもよい。その結果、コイルディスク6は径方向に拡張する。受動領域17a,17bの径方向の高さ又は厚みを2倍にすることで、2つの相による軸方向の2倍化が解消される結果、コイルディスク6の全体が同一平面上に位置することになる。以上により、結果として、巻線部13の断面の変化を調整することが可能(つまり、コイルモジュール18の軸方向の高さを調整することが可能)な、コア抜き型アキシャル磁束電気モータ用の3相巻コア抜き型コイルモジュール18が得られる。
【0271】
つまり、
図2に示す実施形態では、円状に配置されて直列に電気接続された8つの巻線部13が一つのコイルを構成する。3相の電流に対応して、このようなコイルが3組、コイルディスク6やコイルモジュール18のコイルキャリア15と組み合わされる。
【0272】
さらなる実施形態では、材料を介した係合(stoffschlussig)又は摩擦力を介した係合(kraftschlussig)で2つ以上のコイルディスク6を互いに接合又は連結することによってコイルモジュール18を得ることも可能である。能動領域16間の空間の大きさは、巻線部13により構成されるコイル構造の断面を変化させることによって調節が可能である。
【0273】
図2には明示していないが、コイルキャリア15は、該コイルキャリア15を2つ重ねたときに冷却流路が形成されるように構成されている。さらに、コイルキャリア15には、本明細書の範囲内で開示するセラミックス境界部が設けられている。
【0274】
図3は、コイルディスク6の断面の適宜変化を示す概略側面図である。
図3の左側には、受動領域17a,17bの厚みが能動領域16の厚みの半分しかない比=1:1の巻線部13を概略的に描いている。同じコイルディスク6内で、受動領域17a同士、受動領域17b同士のみが常時部分的に重なり合って(全体は重ならない)、能動領域16同士は決して重ならない。
図3の左側の図では、肉厚な能動領域16同士が同一平面上で互いに並んで配置されるのに対し、受動領域17a,17bは断面変化によってその半分しか厚みがなく平面も別平面に分かれているので、能動領域16と受動領域17a,17bとの総合的な比は1:1となっており、すなわち、受動領域17a,17bの厚みの合計が断面視で能動領域16の厚みと完全に等しくなっている。
【0275】
また、
図3の中央の図には、比=1:1.5の場合のコイルディスク6の断面を描いている。重複部の結果として、断面視において、受動領域17同士の厚みの合計は能動領域16の厚みの丁度1.5倍になっている。この重ね合わせの配置により、設置空間が側面視で少なく済んでいる。「1:1.5」の文字の下に描かれた2つの実施形態は、平面の変位の点で相違している。つまり、第1の実施形態(左側)では能動領域16の右側に1つの空間が生じているのに対し、第2の実施形態(右側)では能動領域16の両側に2つの空間が生じている。このようにして構成された空間内に磁石構造体の磁石が入り込むことで、能動領域16と永久磁石5との間の軸方向の間隔又は空隙を(完全になくすことできないが)小さくすることができる。これにより、利用可能な設置空間が効率良く活用される。変形例として、生じた前記空間を冷却に利用することも可能である。
【0276】
最後に、
図3の右側の図には、比=1:0.7のものを描いている。同図の3つの実施形態では、受動領域17a,17bの断面及び平面の適宜変化による空間の各形態を表している。このような空間は、冷却にも利用が可能である。本記載の実施形態では、直径2mm未満(図示の実施形態では、1.2mm)の銅又はアルミニウムからなる可撓性の撚線が巻線部13に使用されるのが好ましい。該撚線は、互いに電気的に絶縁された直径0.2mm未満(図示の実施形態では、一般的に0.05mm)の複数の各素線で構成されている。
【0277】
コイルモジュール18を形成するコイルディスク6のウェブとして構成される能動領域16間に生じる空間は、冷却媒体を流すのに利用することが可能である。このとき、コイルディスク6は、液密性のために、磁石ディスク4に面する側が非導電性材料からなる流体密な膜で覆われる。これにより、複数のコイルディスク6で構成されたコイルモジュール18が外部から密封される。前記空間の形状は、長方形状、三角形状または台形状であり得て、かつ、それぞれ形状が複雑化していてもよい。
【0278】
図4の左側に示す図は、
図2に対応する任意の巻線部13を描いた平面図である。
図4の右側に示す該巻線部13の断面図から明らかなように、受動領域17a,17bよりも能動領域16のほうが厚みは大きい。
【0279】
図2と同じく、円K1,K2は能動領域16の範囲を表している。
【0280】
図5は、
図2に対応するコイルモジュール18の平面図であり、2つのコイルディスク6が軸方向に重ねて配置されている。各コイルディスク6は、コイルキャリア15に付設されたコイルキャリアリング20に埋め込まれており、巻線部13からの電気接点19がコイルキャリアリング20外に引き出されている。本実施形態では、コイルキャリアリング20がガラス繊維-エポキシ樹脂布帛からなる。
【0281】
図6は、コイルモジュール18の断面図である。組み合わされた2つのコイルディスク6は、該2つのコイルディスク6の能動領域16間に空間21が形成されるようにして配置されており、本明細書の文脈で説明する冷却流路を形成している。前記コイルディスクは膜体によって流体密に密封されているので、この空間21に冷却媒体を導入することが可能となる。
【0282】
図7は、電気機械用のコイルモジュールのコイルディスク6の内側面を示したものであり、これに基づき、冷却幾何形状についての詳細な説明を述べる。コイルディスク5は、電気絶縁材料からなるコイルキャリア15、および導電性材料からなる少なくとも1つの巻線部13を有する。該少なくとも1つの巻線部13は、少なくとも1つのコイルディスク6の中心部14周りの周方向で該コイルディスク6上に又は該コイルディスク6内に設けられている。
【0283】
有利には、巻線部13は、本明細書の文脈で詳細に説明したものであり、能動領域16および受動領域17a,17bを有し、別々の巻線部13の能動領域16同士が互いに重なっていないのに対し、任意の巻線部13の各受動領域17a,17bは、直接隣合う2つの巻線部13の対応する受動領域17a,17bにそれぞれ部分的に重なっており、各巻線部13の断面の軸方向の厚みは、受動領域17よりも能動領域16のほうが厚くなっている。しかしながら、巻線部13は、別の種類の巻線部であってもよい。例えば、少なくとも1つの巻線部13は、中心部14周りに蛇行状(ミアンダ型)に配置された少なくとも1つの巻線部の形態で構成されてもよい。
【0284】
コイルディスク6は、さらに、略環状の凹部22を有する。凹部22は、コイルディスク6の内側、すなわち、前記コイルモジュールのうち、他方のコイルディスクに面する側に位置しており、2つのコイルディスク内部で凹部22が挟まれることによって前記冷却流路が形成される。凹部22は、外縁24および内縁26を有し、外縁24及び内縁26を起点としてコイルディスク6の残りの表面に対して凹入している。つまり、凹部22を除けば、コイルディスク6の内側面は略同一平面上に位置しており、縁部24,26は、それぞれ、コイルディスク6の平坦な内側面から凹部22への遷移部を成している。本実施形態では凹部22が完全な環状で描かれているものの、本発明では、厳密な環状である必要はない。凹部22は、ほぼ、中心部14周りに延びており、中心部14自体には位置していない。しかしながら、凹部22は、本明細書の他の箇所で詳述するような、該凹部22を断絶する複数のウェブを具備していてもよい。また、凹部22の内縁26および/または外縁24も厳密に環状である必要はなく、例えば、多角形状や不規則な形状とされてもよい。
【0285】
凹部22の内縁26は、巻線部13のうちの、能動領域16から内側の受動領域17aへの遷移部の部分に位置している。凹部22の外縁24は、巻線部13のうちの、外側の受動領域17bの径方向最外側の部分に位置している。凹部22のこのような配置構成は、空間の制限から径方向内側の受動領域17aのほうが径方向外側の受動領域17bよりも厚みが厚くなっている点だけでなく、直接隣合う巻線部13で径方向内側の受動領域17a同士が能動領域16とは違ってそれぞれ重なり合って該内側の受動領域17a同士の軸方向の厚みの合計が能動領域16の厚みよりも厚くなっている点からも有利であり得る。こうして、能動領域16の領域、さらには、任意で、外側の受動領域17bの領域に、凹部22用の空間が用意される。変形例として、凹部22の外縁24は、能動領域16と径方向外側の受動領域17bとの間の遷移部に位置していてもよい。
【0286】
前記電気機械の設計を可能な限り最適化するのであれば、凹部22を上記のように配置するのが有利であり得る。しかしながら、例えば、空間要件および/または性能および/または効率度に関して妥協を行い、凹部22を別の配置構成とすることも可能である。
【0287】
【0288】
図面には明示していないが、コイルディスク6は、コイルキャリア15の素材が冷媒(特には、水系冷媒)を吸収しないように該コイルキャリア15を凹部22で形成された冷媒流路から隔てる、本特許の明細書の文脈で述べるようなセラミックス境界部を有している。
【0289】
図8Aには、長方形状の断面の凹部22が描かれている。凹部22は、外側の側面30、底面28および内側の側面32を有し、内側及び外側の側面30,32は底面28にそれぞれ直交しており、底面28は前記コイルディスクの内側面と平行である。よって、凹部22は、径方向に沿った深さ34が内側から外側へと、すなわち、内縁26から外縁24にかけて一定となっている。
【0290】
図8Bには、台形状の断面の凹部22が描かれている。
図8Aに示す断面とは異なり、側壁30,32は底面28と直交せずに底面28側に傾いているので、凹部22の深さは側壁30,32の領域にて底面28側へと常に増加している。底面28の領域では、
図8Aとの関連で説明したものと同じく一定の高さに戻り得る。
【0291】
図8Cには、内側から外側へと、すなわち、内縁26から外縁24にかけて径方向で深さ34a,34bが増加する凹部22が描かれている。つまり、底面28は、少なくとも一部が、前記コイルディスクの内側面と平行でない。例えば、底面28の一部(例えば、底面28の径方向外側の部分等)が前記コイルディスクの内側面と平行にされ得る一方で、底面28の他の部分(例えば、底面28の径方向内側の部分等)が傾けられて凹部22の深さ34a,34bが径方向内側から径方向外側にかけて増加し得る。さらに、内側の側面32および外側の側面30が、それぞれ、前記コイルディスクの内側面と直交し得るか又は該内側面に対して傾いたものとされ得る。本例では、外側の側面30が前記コイルディスクの内側面と直交しているのに対し、内側の側面32が該内側面に対して傾いている。
【0292】
凹部22は、上記の底面28のうち、前記コイルディスクの内側面と平行な部分が、前記巻線部の径方向外側の受動領域17bのうちの、断面の変化を伴う径方向に延びる領域を含む部分に位置するようにして、前記コイルディスクに設けられてもよい。底面28のうちの傾いた部分は、その巻線部のうちの末広がりを伴う能動領域の部分に位置している。内側の側面32は、その巻線部の前記内側の受動領域のうちの、断面の変化を伴う領域に位置している。
【0293】
図8Cに示す凹部22のこのような断面は、特に、前記巻線部の前記能動領域が本特許の明細書で説明するような「末広がる」構成である場合に与えられ得る。凹部のこのような形状は、「V冷却」幾何形状とも呼べる。
【0294】
図8Dには、前記コイルディスクの内側面から内側の側面32、底部28及び外側の側面30への切り替えが常時且つ/或いは連続的に起こる凹部22の断面が描かれている。このような常時且つ/或いは連続的な切替りは、
図8A~
図8Cに示す断面でも可能である。
【0295】
図8A~
図8Dに描かれた凹部は、本明細書の一部として開示するセラミックス境界部からなるものであってもよい。
【0296】
また、凹部22は、
図8A~
図8Dに描かれた断面同士を組み合わせて得られた断面形状を有していてもよい。
【0297】
図9A及び
図9Bは、本特許の明細書の文脈で開示する「末広がる」構成をより詳しく説明するための巻線部13の平面図である。該巻線部は、径方向に延びる2つの能動領域16、ならびに、2つの能動領域16同士を各自接続する、接線方向に延びる内側の受動領域17aおよび接線方向に延びる外側の受動領域17bを有する。本特許の明細書の文脈で開示するように、巻線部13のうち、能動領域16の領域の軸方向の厚みは、受動領域17a,17bの軸方向の厚みよりも厚くなっている。受動領域17a,17bは、各巻線部13の断面変化が起こる短い径方向領域35,36を能動領域16に接して含んでおり、該径方向領域35,36は、それぞれ、平面の変位を伴う場合もある。このような遷移領域は、能動領域16にも設けられ得る。
【0298】
能動領域16は、末広がる幾何形状となっている。つまり、巻線部13の接線方向の幅は、能動領域16において径方向内側から外側にかけて増加しており、すなわち、巻線部13の接線方向の幅は、能動領域16のうち、内側の断面変化部35に接した径方向最内側の点にて最小値38となっているとともに、外側の断面変化部36に接した径方向最外側の点にて最大値40となっている。断面変化部35,36での前記巻線部の幅は、これらの値の範囲内および/または範囲外であり得る。能動領域16での前記巻線部の軸方向の厚みは、径方向内側から外側にかけて減少し、すなわち、内側の断面変化部35に接した径方向最内側の点にて最大値42となっているとともに、外側の断面変化部36に接した径方向最外側の点にて最小値44となっている。断面変化部35,36での前記巻線部の厚みは、これらの値の範囲内および/または範囲外であり得る。能動領域16での巻線部13の断面領域は、径方向に沿って略一定に維持される。
【0299】
能動領域16で末広がる巻線部のこのような形態は、
図8Cに描かれた凹部、すなわち、「V冷却」幾何形状と併用されるのが有利であり得る。この様子は、例えば
図10で描かれている。
【0300】
図10は、コイルモジュール18の断面図である。同コイルモジュールは、
図9A及び
図9Bに示す末広がりの幾何形状の巻線部13をそれぞれ有する第1および第2のコイルディスク6を備える。第1および第2のコイルディスク6は、それぞれ、巻線部13の内側の断面変化部35から該巻線部の外側の受動領域17bまで各自延びる略環状の凹部22を有している。断面変化部35,36間で、凹部22の深さは径方向内側から径方向外側にかけて連続的に増加している。これにより、該凹部がいわゆる「V冷却」幾何形状となっている。
【0301】
本例において、第1および第2のコイルディスク6は、コイルモジュール18が組み立てられた際に互いに完全に向かい合う凹部22をそれぞれ有している。これにより、冷却流路23が閉じ込められて形成される。
【0302】
図11A及び
図11Bは、それぞれ、コイルモジュールへと組み立てられるように意図された第1のコイルディスク6aの内側面、第2のコイルディスク6bの内側面を示す平面図である。これらの図では、分かり易くするために、前記巻線部を図示していない。第1のコイルディスク6aおよび第2のコイルディスク6bは、それぞれ、略環状の凹部22a,22bを有する。さらに、凹部22aにはウェブ38aが、凹部にはウェブ38bが形成されており、それぞれの上部は、コイルディスク6a,6bの内側面の残りと同一平面上に位置している(すなわち、凹部22a,22bから離れている)。
【0303】
第1のコイルディスク6aは、さらに、流入孔40a、入口流路44および流出孔42aを有する。入口流路44は、凹部22aの側面に流入開口部43を形成している。第2のコイルディスク6bは、流入孔40b、流出孔42bおよび出口流路46を有する。出口流路46は、凹部22bの側面に流出開口部45を形成している。
【0304】
このような配置構成により、前記コイルモジュールの組立後の状態では、前記冷媒が矢印で表示するように流入孔40a,40b、入口流路44および流入開口部43を通って凹部22a,22bにより形成された前記冷媒流路内を流れたのち流出開口部45から出口46および流出孔42a,42bへと流れることが可能となる。
【0305】
一般的に、前記電気機械は、上記のようなコイルモジュールがコイルスペーサを介して互いに複数連結されてなる。該コイルスペーサ同士は、流入孔同士および流出孔同士が対応し合っており、組立時には全ての流入孔が一直線に並ぶとともに全ての流出孔が一直線に並ぶことになる。このとき、前記電気機械の軸方向の一方の端部に位置するコイルモジュールやコイルスペーサについては、前記流入孔および流出孔が省略されてもよい。前記電気機械の軸方向の反対側の端部に位置するコイルモジュールやスペーサの前記流入孔と流出孔を介して、前記冷媒を供給・排出することが可能とされる。
【0306】
図12A、
図12B及び
図12Cに、本明細書で開示する能動領域の「末広がり」および「V冷却」を説明するためのコイルモジュールを示す。
【0307】
図12Aは、コイルモジュール18の斜視図である。同コイルモジュールは、第1のコイルディスク6aおよび第2のコイルディスク6bを備える。第1のコイルディスク6aおよび第2のコイルディスク6bは、それぞれの内側面が互いに対向するようにして互いに取り付けられている。これにより、それぞれの内側面に設けられた2つの凹部22a,22b同士が互いに対峙するか又は互いに重なり合うことになり、コイルディスク6a,6b間に冷却流路23が形成される。
【0308】
第1のコイルディスク6aおよび第2のコイルディスク6bは、それぞれ、複数の巻線部13を有する。各コイルディスク6a,6bのこれらの巻線部13は、設計が異なっていてもよい。第1のグループ13aの巻線部は第1の平面上に位置しており、能動領域16aと受動領域の両方が該第1の平面上に位置している。第2のグループ13bの巻線部は、能動領域16bが前記第1の平面上に位置しているのに対し、接線方向の領域が前記第1の平面からズレた第2の平面に位置上に位置するように配置されている。平面の変位は、能動領域16bへの遷移部で起こる。第3のグループ13cの巻線部は、接線方向の領域が前記第1の平面と前記第2の平面の両方の平面上に位置するようにして配置されており、該接線方向の領域において平面の変位が生じている。そのほか、接線方向の領域のうちの前記第2の平面上に位置している部分と前記第1の平面上に位置している能動領域16cとの間でも、平面の変位が生じているる。これにより、各コイルディスク6a,6bの能動領域16a,16b,16cは、その全体が第1の平面上に位置している。
【0309】
図12Bは、コイルモジュール18の平面図である。前記巻線部は、本明細書で開示するように、能動領域16および受動領域17a,17bを有する。巻線部13の能動領域16が本明細書で説明する末広がりの形状となっている点は一目瞭然である。
【0310】
ほかにも、
図12Aに示した巻線部13a,13b,13cが図示されている。隣合う能動領域16a,16b,16同士が実質上隣接しており、好適なことに、隙間が存在していないという点が明確に見て取れる。
【0311】
図12Cは、一部の巻線部を省略したコイルモジュール18の斜視図であり、第1のコイルディスク6aと第2のコイルディスク6bとの間の流路23をはっきりと確認できる。つまり、第1のコイルディスク6aの巻線部13dと該第2のコイルディスクの巻線部13eとの間には、径方向内側から径方向外側にかけて軸方向の高さ(あるいは、軸方向の厚み)が増加する空間が形成されている。
【0312】
図13Aは、本発明の一実施形態におけるコイルモジュール18の斜視図である。同コイルモジュールは、第1のコイルディスク6aおよび第2のコイルディスク6bを備える。第1のコイルディスク6aは、第1のコイルキャリア15a、および第1のコイルキャリア15aを径方向外側で囲繞する第1のコイルキャリアリング20aを有する。同様に、第2のコイルディスク6bは、第2のコイルキャリア15b、および該第2のコイルキャリアを外径方向外側で囲繞する第2のコイルキャリアリング20bを有する。第1および第2のコイルキャリア15a,15bには、それぞれ、本明細書の文脈で開示するように、巻線部13が埋設されている。巻線部13は、ほぼ、径方向に延びる能動領域16、ならびに、ほぼ、接線方向に延びる内側の受動領域17a及び外側の受動領域17bを有する。巻線部13は、接点19に電気的に接続されている。
【0313】
【0314】
図13Cは、
図13Bに示す切断平面A-Aに沿った断面図である。
図13Cに示すように、第1および第2のコイルディスク6a,6bは、それらの間に略環状の冷却流路23が形成されるように構成されている。本実施形態において、冷却流路23は、コイルディスク6a,6bおよびコイルキャリア15a,15bのうちの、巻線部13の能動領域16および外側の受動領域17bが位置する径方向部分に延在している。
【0315】
コイルモジュール18は、さらに、第1および第2のセラミックス境界部56a,56bならびに径方向内側のセラミックス境界部57および径方向外側のセラミックス境界部58を備える。これらは、冷却流路23を取り囲んで冷却流路23を第1のコイルキャリア15a及び第2のコイルキャリア15bから区切っている。
【0316】
図13Dは、
図13Bに示す切断平面B-Bに沿った断面図である。
図13Dには、流入開口部54および流出開口部55も描かれている。同図には、さらに、第1および第2のセラミックス境界部56a,56bが、それぞれ、流入開口部54および流出開口部55に各自対応する開口部62および開口部61を有している様子も描かれている。このようにして、冷媒は、流入開口部54から冷却流路23に流入し、該冷却流路23内を流れて、流出開口部55から流出することができる。さらに、シール56a,56b,57,58により、前記冷媒はコイルキャリア15a,15bの素材に確実に接触しないようになっている。
【0317】
図14Aは、例えば
図13A~
図13Cに描かれたコイルモジュール18に搭載されるようなコイルディスク6を示す。コイルディスク6は、本明細書の文脈で開示する巻線部を具備したコイルキャリア15、およびコイルキャリアリング20を有する。
【0318】
コイルキャリア15は、径方向内側の領域50および径方向外側の領域51を有する。径方向内側の領域50は、径方向外側の領域51に対して起伏している。言い換えれば、径方向内側の領域50の軸方向の厚みは、径方向外側の領域51よりも厚くなっている。径方向内側の領域50には、前記巻線部のうち、径方向内側の受動領域が位置している。径方向外側の領域51には、前記巻線部のうち、前記能動領域および径方向外側の領域が位置している。コイルキャリアリング20も、コイルキャリア15の径方向外側の領域51に対して起伏しており、コイルキャリア15の径方向内側の領域50と略同じ高さになっている。前記第1のコイルディスクと前記第2のコイルディスクとの組付後の状態では、第1のコイルキャリア15の径方向内側の領域50と該第2のコイルキャリアの径方向内側の領域50とが互いに重なり合う。
【0319】
これにより、鏡面対称的な構造を有する2つのコイルディスク6同士が合わさった際に、これら2つのコイルディスク間の、コイルキャリアリング20とコイルキャリア15の径方向内側の領域50との間の領域に、冷却流路が形成される。
【0320】
コイルキャリアリング20は、さらに、流入開口部54および流出開口部55を有する。コイルキャリアリング20は、流入開口部54の周囲に、コイルキャリア15の径方向外側の領域51と略同じ高さで該径方向外側の領域51と合わさる凹入領域52を有する。コイルキャリアリング20は、流出開口部55の周囲に、コイルキャリア15の径方向外側の領域51と略同じ高さで該径方向外側の領域51と合わさる凹入領域53を有する。
【0321】
図14Aのコイルディスク6は、セラミックス境界部なしで描かれている。
【0322】
図14Bは、
図14Aで描いたコイルディスク6を、セラミックス境界部56付きで示した図である。セラミックス境界部56は、実質的に、径方向外側の領域51と前記コイルキャリアリングの凹入領域52,53とに配置された環状のディスクの形態である。言い換えれば、略環状のセラミックスディスク56は、コイルキャリアリング20の凹入領域52,53に対応する2つの突部59,60を有する。
【0323】
図14Bには、さらに、コイルディスク6が、環状のセラミックスディスク56の径方向内側の縁部を取り囲む径方向内側の境界部57を具備している様子も描かれている。コイルディスク6は、さらに、環状のセラミックスディスク56の径方向外側の縁部を取り囲む径方向外側の境界部58を具備している。
【0324】
環状のセラミックスディスク56は、さらに、流入開口部54及び流出開口部55に対応する2つの開口部61,62を有する。
【0325】
以上のようにして、前記冷却流路は、コイルキャリア15やコイルキャリアリング20の囲繞素材から完全に区切られる。
【0326】
例えば、コイルディスク6は第1のコイルディスクであり、セラミックス境界部56は第1のコイルディスクである。本明細書の一部として開示するコイルモジュールは、さらに、コイルディスク6に対して鏡面対称的なコイルディスクに略相当する第2のコイルディスク、および第2のセラミックス境界部を備える。
【0327】
図15Aに、第1または第2のセラミックス境界部56を示す。セラミックス境界部56は、該セラミックス境界部56と直交する方向に向いた複数の接続要素53を具備する。2つのセラミックス境界部56を備えたコイルモジュールでは、接続要素53が前記第1および第2のセラミックス境界部を接続する。
【0328】
図15Bに、案内構造又は案内リブの形態に構成された接続要素64を具備する第1または第2のセラミックス境界部56を示す。このような接続要素64は、2つのセラミックス境界部56を備えた前記コイルモジュールにて、それら第1および第2のセラミックス境界部56同士を接続する。
【0329】
図16に、セラミックス境界部56を示す。セラミックス境界部56は、「パイの一切れ」、すなわち、扇形の形態の、複数の突起65を有する。突起65は、前記コイルキャリアにおいて前記巻線部同士の隣合う2つの能動領域間に形成された対応する隙間内に突出するように構成されている。
【0330】
図17に、本明細書に開示する電気機械152を備える車両150を示す。
【0331】
図18に、本明細書の文脈で開示する電気機械156を備える工作機械154を示す。
【0332】
実施例にのみ開示した各実施形態の構成は併用されてもよいし、別々に請求項に記載されてもよい。
【国際調査報告】