(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-17
(54)【発明の名称】炎症性関節疾患の治療のためのメロキシカムのヒドロキシビスホスホン酸誘導体
(51)【国際特許分類】
A61K 31/5415 20060101AFI20240410BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240410BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240410BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20240410BHJP
【FI】
A61K31/5415
A61P29/00
A61P19/02
A61K47/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566934
(86)(22)【出願日】2022-04-29
(85)【翻訳文提出日】2023-12-05
(86)【国際出願番号】 FR2022050830
(87)【国際公開番号】W WO2022229576
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523408868
【氏名又は名称】アトゥランテラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】エゴロヴ,マキシム
(72)【発明者】
【氏名】カグノル,セバスチアン
(72)【発明者】
【氏名】ル ボ,ロナン
(72)【発明者】
【氏名】グジョン,ジャン-イヴ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076BB01
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB31
4C076CC04
4C076CC09
4C076DD63
4C076EE59
4C076FF31
4C076FF68
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA38
4C086GA13
4C086GA14
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZA96
4C086ZB11
(57)【要約】
本発明は、炎症性関節疾患を治療する分野に関する。より詳細には、本発明は、メロキシカムの新規水溶性ヒドロキシビスホスホン酸誘導体、特に炎症性関節疾患の治療のための医薬としてのそれらの使用、それらを含有する薬学的組成物、及びそれらの合成方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のメロキシカムのヒドロキシビスホスホン酸誘導体又はその薬学的に許容される塩であって、
【化1】
式中、R1ラジカル及びR2ラジカルのうちの1つ及び1つのみがH基を表すか、又は存在せず、
- R2が存在しない場合、Xが、以下のR1-A基、R1-B基及びR1-C基から選択され、
【化2】
- R1=Hである場合、Xが、以下のR2-D基、R2-E基、R2-F基、R2-G基及びR2-H基から選択される、メロキシカムのヒドロキシビスホスホン酸誘導体又はその薬学的に許容される塩。
【化3】
【請求項2】
R1=Hであり、前記化合物が、その互変異性形態であってもよく、一般式(II)によって表されており、
【化4】
- 式中、R2が、以下のR2-D基、R2-E基、R2-F基、R2-G基及びR2-H基から選択される、請求項1に記載のメロキシカムのヒドロキシビスホスホン酸誘導体。
【化5】
【請求項3】
薬物として使用するための、請求項1又は2に記載のメロキシカムのヒドロキシビスホスホン酸誘導体。
【請求項4】
炎症性関節疾患の治療における請求項3に記載の使用のための、請求項3に記載のメロキシカムのヒドロキシビスホスホン酸誘導体。
【請求項5】
化合物C又はEから選択される、請求項4に記載の使用のための、請求項4に記載のメロキシカムのヒドロキシビスホスホン酸誘導体。
【請求項6】
請求項1~3に記載のメロキシカムのヒドロキシビスホスホン酸誘導体を合成するための方法であって、
・メロキシカムを、上記で定義した基R
1-A、R
1-B及びR
1-C、R
2-D、R
2-E、R
2-F、R
2-G及びR
2-Hから選択されるリンカーXにカップリングするステップと、
・前記HBP誘導体を、メロキシカムに対してリンカーの反対端にカップリングするステップと、を含む、方法。
【請求項7】
前記リンカーXが、関節レベルでメロキシカムの放出を可能にする切断可能なプロドラッグを取得するように、基R
1-A、R
1-B、R
1-C、R
2-E、R
2-G及びR
2-Hから選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか一項に記載のメロキシカムのヒドロキシビスホスホン酸誘導体又はその薬学的に許容される塩と、少なくとも1種の賦形剤と、を含む、薬学的組成物。
【請求項9】
前記ヒドロキシビスホスホン酸誘導体が、化合物C又はEから選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記ヒドロキシビスホスホン酸誘導体が、ナトリウム塩又はメグルミン塩の形態である、請求項8又は9に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、炎症性関節疾患を標的とする治療の分野に関する。より具体的には、本発明は、メロキシカムの新規水溶性ヒドロキシビスホスホン酸誘導体、特に炎症性関節疾患の治療のための薬物としてのその使用、それを含有する薬学的組成物、及びその合成のための方法に関する。
【0002】
骨組織は、ヒドロキシアパタイト結晶の形態のリン酸カルシウムからなるミネラル画分と、細胞外マトリックス及び特殊化細胞を含有する有機画分とで構成される結合組織である。骨組織は、「骨リモデリング」と呼ばれるプロセスによって絶えずリモデリングされている。これは、新しい有機マトリックスを合成し、その石灰化を誘導する骨芽細胞の活性に起因する付着相(Owen et al.,Curr.Opin.Nephrol.Hypertens.1998,7,363)、及び有機マトリックスを吸収し、ミネラルを溶解する破骨細胞によって確保される分解相(Roodman et al.,Endocr.Rev.1996,17,308)を特徴とする。この生理学的プロセスは、リン酸カルシウムホメオスタシス及び骨量を維持すること(Manologas et al.,Endocriv.Rev.2000,21,115)及び機械的制約に適合させることを可能にする。炎症に関連するこの平衡の乱れは、骨凝縮又は溶骨性病理の出現をもたらし得る。ヒトでは、動物と同様に、この骨障害は慢性疼痛(腰痛)を引き起こし、患者の骨格を弱めて骨折を引き起こす。次いで、病理は、患者の一時的又は永久的な固定に向かって進展し得る。これらの障害の治療には、抗炎症分子の長期投与が必要である。
【0003】
非ステロイド性抗炎症薬(non-steroid anti-inflammatory drug、NSAID)は、関節炎及び変形性関節症などの慢性関節病態を含む、炎症状態及び疼痛状態の標準治療である。より良好な効能のために、定期的かつ頻繁な投与がしばしば必要である。しかしながら、長期投与において、これらの生成物は深刻な腎臓及び胃腸への影響を引き起こす可能性があり、これは真の問題である。
【0004】
副作用を制限するために、NSAIDをビスホスホン酸分子と組み合わせることが提案されている。ビスホスホン酸分子は、骨のヒドロキシアパタイト(hydroxyapatite、HA)に対する親和性で知られており、標的分子として使用することができ、NSAIDの全身作用を制限することを可能にする。さらに、これらの標的分子は、骨レベルで切断されて有効成分を放出することができる。骨に近接したこのin-situ放出は、それまで活性が阻害されていた分子の活性化を伴い得る。この2回の活性化はまた、長期の全身性副作用を制限するために興味深い。
【0005】
炎症性関節病理は、骨表面を解放することによる溶骨性障害及び骨隆起を誘導することによる骨凝縮損傷の両方を引き起こす。これらの2つのタイプの骨修飾はビスホスホン酸分子にとって魅力的であり、これにより、正常な骨と比較して病的な関節を標的とする選択性を増加させることが可能になる。ビスホスホネート(bisphosphonate、BP)の種類のうちの1つは、骨に対する親和性が高いことが知られているヒドロキシビスホスホネート(hydroxybisphosphonate、HBP)である。
【0006】
散発的な研究は、抗炎症分子とビスホスホネート(BP)とのコンジュゲーション試験を報告している。このアプローチの目的は、骨組織中の抗炎症有効成分を標的とするための分子としてBPを使用し、NSAIDの全身分散を制限することである。加えて、有効成分の局所的切断は、標的化された作用を可能にする。例として、第1の研究は、ビスホスホン酸誘導体へのコルチゾンのコンジュゲーションを報告しているが(Guervenou et al.,Phosphorus Sulfur and Silicon,1994,88,1-13)、有効成分の放出能は確認されておらず、抗炎症効果は実証されていない。第2の研究は、NSAIDであるジクロフェナクのビスホスホン酸誘導体の使用を提示し、結果は、骨部位におけるジクロフェナクの濃縮、次いで有効成分の放出を示し、NSAIDの通常の胃腸副作用の消失を伴う有効用量の減少を可能にする(H.Hirabayashi et al.,Journal of Controlled Release 70,2001,183-191、H.Hirabayashi et al.,Pharmaceutical Research,18(5),2001,646-651)。この研究は、BP分子による局在化された標的化戦略の利益を確認するが、ジクロフェナクの選択は、メロキシカムなどの他のNSAIDよりも高い胃腸毒性のリスクのために、依然として議論の余地がある(C Hawkey et al.,British Journal of Rheumatology,1998,37,937-945)。さらに、この研究において、使用されたBPベクターは、HBP誘導体よりも骨に対して低い親和性を有する。
【0007】
最後に、最近発表された研究は、別のNSAIDであるイブプロフェンのHBP誘導体の使用を記載している。しかしながら、イブプロフェンをin situで放出する能力及び抗炎症効力については言及されていない(Aoun et al.,Synthesis 2019,51,A-K)。
【0008】
これらのいくつかの研究とは別に、ビスホスホン酸ベクターによる抗炎症性分子のベクター化のドメインは、実際に調査されておらず、変形性関節症及び変形性関節症の治療におけるこれらの分子の有効性に関するデータが欠けている。
【0009】
メロキシカムは、獣医学において一般的に使用されるNSAIDである。それはまた、変形性関節症、関節リウマチ及び強直性脊椎炎の急性発作を軽減するためにヒト(Mobic)において使用されるが、現在の製剤では、それが引き起こす全身性副作用のために、治療は短期間であり、可能な限り低用量でなければならない。
【0010】
並行して、抗がん及び抗菌分子のビスホスホン酸誘導体へのコンジュゲーションは、コンジュゲートの合成及びその生物学的活性の両方の観点から、より広く研究されている(Farrell et al.,Bone Reports 9,2018,47-60、Xing et al.,Bone 138,2020,115492)。
【0011】
今日まで、有効であり、長期間副作用のない関節疾患の抗炎症治療の必要性は満たされていない。
【0012】
〔発明の開示〕
本発明の主題である抗炎症分子は、骨組織を標的とするヒドロキシビスホスホン酸ベクター(HBP)による、非ステロイド性抗炎症生成物(NSAID)、メロキシカム(meloxicam、MLX)-COX-2の優先的阻害剤-のベクター化からなる。これらの二官能性分子は、関節炎症の治療のために提案されており、3つの部分からなる:(i)骨を標的とし、そこに有効成分をもたらすHBPベクター、(ii)有効成分、メロキシカム(MLX)、及び(iii)HBP及びMLX部分を一緒に接続し、MLXの放出を確実にすることができるリンカー。
【0013】
したがって、本発明は、以下に定義される式(I)のメロキシカムの新規ヒドロキシビスホスホン酸誘導体、又はその薬学的に許容される塩に関する。
【0014】
本発明はまた、式(I)のメロキシカムのヒドロキシビスホスホン酸誘導体の、薬物としての使用、及びより具体的には炎症性関節疾患の治療のための使用に関する。
【0015】
本発明はまた、式(I)のメロキシカムのヒドロキシビスホスホン酸誘導体、又はその薬学的に許容される塩を合成するための方法に関する。
【0016】
最後に、本発明は、式(I)のヒドロキシビスホスホン酸誘導体又はその薬学的に許容される塩と、少なくとも1種の賦形剤と、を含む薬学的組成物に関する。
【0017】
〔発明の利点〕
本発明は、炎症を起こした骨領域におけるNSAIDの効果的な標的化のための革新的なアプローチによって、炎症性関節疾患の治療において新しい展望を開く。このアプローチは、HBP誘導体によるNSAID(ここではメロキシカム)のベクター化からなる。
【0018】
関節領域へのMLXの標的化のおかげで、全身性副作用を誘発することなく、MLXの局所濃度を増加させることができる。抗炎症効果が改善される。したがって、この戦略は、MLXの治療域を広げ、メロキシカムの進行性放出によって投与後により強くかつより持続する炎症起源の疼痛の軽減を提供するという利点を有する。治療はまた、全身毒性がより低いために、反復投与による長期的な治療を想定することもできる。加えて、メロキシカム単独では、疼痛を軽減するために毎日の投与が必要であるのに対して、進行性放出は、少なくとも2週間の抗炎症効果から利益を得ることを可能にする。したがって、炎症の治療(副作用の低減及び効能の増加)は、経時的に間隔をあけた投与を提案することによって著しく改善され、その有害作用は著しく減弱される。
【0019】
ベクター化戦略は、リンカーの選択によって想定される治療アプローチに応じて適合させることができる。
【0020】
本発明の有利な実施形態では、MLXは、切断可能なリンカーによってHBPベクターに接続される。次いで、HBP-MLX分子は、MLXの切断及び放出によって病理学的部位で活性分子に変換されるプロドラッグの形態である。
【0021】
別の実施形態では、HBP-MLX分子は切断可能ではない。これは、MLXのより低い効能をもたらすが、経口投与の可能性を開く。実際、この場合、分子は胃の非常に酸性の媒体中で安定でなければならない。
【0022】
本発明におけるメロキシカムと会合したヒドロキシビスホスホン酸ベクター(HBPベクター)は、特許(国際公開第2016/079327号)に記載されており、それを使用して、そのケトン基とイミン結合を形成することによって抗がん分子ドキソルビシンをベクター化した。ここで、メロキシカム(MLX)は、リンカーによってHBPベクターに連結されており、このリンカーは、一方の側で切断可能な結合を介してMLXと、他方の側で安定なイミン結合を介してベクターとの間に架橋を形成する。この戦略は、合成を容易にし、最終ステップ中にベクター(HBPベクター)を添加することを可能にする。遊離HBP誘導体は、非常に極性であり、親水性であり、キレート化し、通常の有機溶媒にほとんど不溶性であり、水が最良の溶媒である。このため、最良の戦略は、合成の最後にこの基を導入することであり、これにより、本発明において選択されるイミン戦略が可能になる。特許国際公開第2012/130911号及び国際公開第2016/079327号は、他のベクターを使用する同等のアプローチを例示し、このアプローチは、仏国特許出願第2926081号に記載されているように、直線型合成経路によって、より複雑であるか又は不可能でさえある複雑な多官能性分子をベクター化することを可能にする。したがって、ここで提案される合成方法は、直線型方法よりも普遍的であり、経済的であり、環境に優しく、置換可能である。
【0023】
最後に、HBP部分は最終分子に良好な水溶性を与えるが、MLXは非常に難溶性である。したがって、ベクター化は、有効成分の生物学的利用能の改善に関与する。
【0024】
〔発明を実施するための形態〕
本発明の第1の主題は、一般式(I)のメロキシカムのヒドロキシビスホスホン酸誘導体又はその薬学的に許容される塩に関し、
【0025】
【化1】
式中、R1ラジカル及びR2ラジカルのうちの1つ及び1つのみがH(水素)基を表すか、又は存在せず、
- R2が存在しない場合、Xが、以下のR1-A基、R1-B基及びR1-C基から選択され、
【0026】
【化2】
- R1=Hである場合、Xが、以下のR2-D基、R2-E基、R2-F基、R2-G基及びR2-H基から選択される。
【0027】
【0028】
本発明の特定の実施形態では、上記のヒドロキシビスホスホン酸誘導体は、それらの互変異性形態であり得、一般式(II)によって表され、
【0029】
【化4】
式中、R2は、上記の基R2-D、R2-E、R2-F、R2-G及びR2-Hから選択される。
【0030】
対応する分子は、化合物の提示順に、A(18A166)、B(19A143)、C(19A115)、D(18A135)、E(18A184)、F(18A182)、G(19A4)及びH(19A22)である。これらの分子を以下に示す。
【0031】
これらの化合物の薬学的に許容される塩は、有機塩基又は無機塩基との組み合わせによって得られる。本発明の好ましい実施形態では、これらは、ナトリウム塩又はメグルミン塩である。
【0032】
本発明の第2の主題は、上記のメロキシカムのメロキシカム誘導体の、薬物としての使用に関する。
【0033】
この薬物は、獣医学及びヒト医学において使用することができる。関節領域でのその標的化された作用に起因して、この生成物の投与の速度は、メロキシカムの段階的な放出(2週間の最小期間)によって効果が延長された注射に対してのみ低減され得る。これは、全身的副作用を制限することにより、長期にわたって、又は反復して投与することができる。
【0034】
骨指向性を有するHBPベクター及び抗炎症特性を有するMLX、本発明によるメロキシカムのヒドロキシビスホスホン酸誘導体は、炎症性関節疾患の治療において有利に使用することができる。これは、変形性関節症及び関節炎などの慢性炎症関節疾患に関連する疼痛を治療するのに特に好適である。本発明の好ましい実施形態では、メロキシカムのヒドロキシビスホスホン酸誘導体は、獣医学分野において、特にイヌ及びネコにおいて使用される。それにもかかわらず、この治療は、炎症性関節疾患に罹患している動物に好適である。
【0035】
好ましい実施形態では、リンカーXは、関節レベルでのMLXの切断を可能にする。次いで、式(I)の分子は、MLXの切断によって活性化されるプロドラッグの形態である。この配置において、Xは、基R1-A、R1-B及びR1-C、R2-E、及びR2-Gから選択される。対照的に、R2-D及びR2-F基を組み込む分子は、切断可能ではないが、基R2-Hを組み込む分子は、理論的にインビボで切断可能である。
【0036】
完全に好ましい実施形態では、HBP-MLX分子は、化合物C(19A115)又は化合物E(18A184)である。
【0037】
本発明の第3の主題は、上記で定義した式(I)のメロキシカムのヒドロキシビスホスホン酸誘導体を合成するための方法に関し、
- メロキシカムを、上記で定義した基R1-A、R1-B及びR1-C、R2-D、R2-E、R2-F、R2-G及びR2-Hから選択されるリンカーXにカップリングするステップと、
- HBP誘導体を、メロキシカムに対してリンカーの反対端にカップリングするステップと、を含む。
【0038】
この方法では、メロキシカムのリンカーへのカップリングは、潜在的かつ優先的に切断可能な結合を介して行われるが、リンカーのHBPへのカップリングは、安定なイミン-C=N-型の切断耐性結合を介して行われる。
【0039】
得られた化合物は、クロマトグラフィー又は沈殿によって精製することができる。精製方法は、各分子についての各アプローチの有効性に応じて、及びその形態に従って、当業者によって選択される。特に、例えば、化合物E(18A184)は、クロマトグラフィー精製によってナトリウム塩の形態で、並びに沈殿によってナトリウム塩及びメグルミン塩の形態で得ることができることに留意されたい。塩基当量数は、遊離ヒドロキシビスホスホン酸に対応する0から、分子C(19A115)の4、さらには5まで可変であり得る。好ましい実施形態では、それは2~3当量の塩基である。
【0040】
本発明による分子を合成するための戦略は、最初にメロキシカムからメロキシカム-リンカーを合成し、次いで、以下の最終生成物を得るためにベクターとカップリングさせることからなる。
メロキシカム+リンカー→メロキシカム-リンカー-[+HBPベクター]→化合物A、B、C、D、E、F、G又はH。
【0041】
化合物A、B、C、D、E、F、G及びHは、以下に示すとおりである。
【0042】
【0043】
及び以下の化合物の互変異性体。
【0044】
【0045】
【0046】
本発明の第4の目的は、上記で定義したメロキシカムのヒドロキシビスホスホン酸誘導体又はその薬学的に許容される塩と、少なくとも1種の賦形剤と、を含む薬学的組成物に関する。塩は、ナトリウム塩などの無機塩基を用いて得られるもの、及びメグルミン塩などの有機塩基を用いて得られるもののいずれかから選択することができる。
【0047】
そのような組成物のヒドロキシビスホスホン酸誘導体は、化合物A、B、C、D、E、F、G及びHから優先的に選択される。
【0048】
完全に好ましい実施形態では、組成物は、遊離酸又はナトリウム塩若しくはメグルミン塩などの塩の形態の化合物C(19A115)又は化合物E(18A184)を含む。
【0049】
この組成物は、特に皮下、静脈内、経口、筋肉内又は経皮経路による投与を可能にするように製剤化することができ、好ましくは注射溶液の形態又はパッチの形態であり、ヒト及び動物を対象とする。投薬量は、個体(体重、年齢など)及び疾患に従って適合される。
【0050】
本発明による化合物は、0.01mg~100mg/日の用量で使用することができ、1日1回の単回用量で与えられるか、又は数回用量、例えば2回の等価用量で投与される。1日当たり投与される用量は、有利には5mg~100mgであり、さらに有利には10mg~200mgである。これらの範囲を超える用量を使用することが必要であり得、当業者は、この必要性を評価する方法を知っている。
【0051】
本発明は、説明のために提供され、本発明の範囲を限定するとは決して考えられない以下の実施例を読むことにより、より良く理解されるであろう。
【0052】
〔図面の簡単な説明〕
〔
図1〕化合物Aの合成:化合物1及びメロキシカムからの中間体化合物2の調製
〔
図2〕化合物Aの合成:化合物2及びHBPベクターからの化合物Aの調製
〔
図3〕化合物Bの合成:メロキシカムを含む中間体化合物5の調製
〔
図4〕化合物Bの合成:化合物5及びHBPベクターからの化合物Bの調製
〔
図5〕化合物Cの合成:化合物6からの中間体化合物7の調製
〔
図6〕化合物Cの合成:化合物7及びメロキシカムからの中間体化合物9の調製
〔
図7〕化合物Cの合成:化合物9及びHBPベクターからの化合物Cの調製
〔
図8〕化合物Cの合成:中間体化合物11の調製
〔
図9〕化合物Dの合成:化合物11からの中間体化合物12の調製
〔
図10〕化合物Dの合成:化合物12及びメロキシカムからの中間体化合物13の調製
〔
図11〕化合物Dの合成:化合物13及びHBPベクターからの化合物Dの調製
〔
図12〕化合物Eの合成:中間体化合物16の調製
〔
図13〕化合物Eの合成:化合物16及びメロキシカムからの中間体化合物17の調製
〔
図14〕化合物Eの合成:化合物17及びHBPベクターからの化合物Eの調製
〔
図15〕化合物Fの合成:化合物18及び19からの中間体化合物20の調製
〔
図16〕化合物Fの合成:化合物20及びメロキシカムからの中間体化合物21の調製
〔
図17〕化合物Fの合成:化合物21及びHBPベクターからの化合物Fの調製
〔
図18〕化合物Gの合成:化合物15及び22からの中間体化合物23の調製
〔
図19〕化合物Gの合成:化合物23及びメロキシカムからの中間体化合物24の調製
〔
図20〕化合物Gの合成:化合物24及びHBPベクターからの化合物Gの調製
〔
図21〕化合物Hの合成:化合物11からの中間体化合物25の調製
〔
図22〕化合物Hの合成:化合物25及びメロキシカムからの中間体化合物26の調製
〔
図23〕化合物Hの合成:化合物26及びHBPベクターからの化合物Hの調製
〔
図24〕HBP-メロキシカム分子のヒドロキシアパタイト分子への固定能のインビトロ評価
〔
図25〕切断可能なHBP-メロキシカム分子によるメロキシカムを放出する能力の評価
〔
図26〕軟骨細胞に対するHBP-メロキシカム分子の抗COX2活性のELISAによる分析
〔
図27〕ラットにおける投与後の胃、十二指腸及び腎臓に対するHBP-メロキシカムの毒性評価
〔
図28〕関節炎によって引き起こされる膝の腫張に対するHBP-メロキシカム化合物の治療効果。
〔
図29〕関節炎によって引き起こされる跛行に対するHBP-メロキシカム化合物の治療効果。
【0053】
〔実施例〕
HBPベクターは、文献国際公開第2016/079327号に記載されている方法に従って合成される。
【0054】
実施例1:化合物A(18A166)の合成
化合物Aの合成を
図1及び
図2に示す。
【0055】
化合物1(1.088g、4.98mmol、1.17当量)を、ジクロロメタンDCM(6mL)中のメロキシカム溶液(1.5g、4.27mmol、1当量)及びトリエタノールアミン(triethanolamine、TEA)(0.75mL、5.4mmol、1.26当量)に添加した。反応混合物を室温で2時間撹拌した。形成された固体を遠心分離し、DCM(2×7mL)で洗浄し、真空下、室温で乾燥させた。化合物2が得られ(淡黄色固体、1.867g、3.5mmol、収率82%、UPLC-MS:100%)、1H NMR、MS及びUVスペクトルによって特徴付けられた(
図1)。
【0056】
5% TFA/DMSO(15mL)中の化合物2(1.5g、2.81mmol、1当量)及びHBPベクター(70%質量、1g、2.95mmol、1.05当量)の溶液を、室温で16時間撹拌した。次いで、NaHCO3水溶液(0.5M、46mL)を添加し、続いて350mLの水を添加した。得られたコロイド溶液をC18カラム(4×40g)に導入し、3% EtOHから50% EtOHまでの勾配で溶出した。画分(HPLC>90%)をまとめた。EtOHを真空下で蒸発させ、得られた溶液を凍結乾燥させた。化合物A(18A166)が得られ(淡黄色固体、1.11g、1.39mmol、収率50%)、HPLC:95%であり、1H NMR、31P NMR、MS及びUVスペクトルによって特徴付けられた(
図2)。
【0057】
実施例2:化合物B(19A143)の合成
原理は、化合物Aと同じである。
【0058】
【0059】
メロキシカム(1当量、686mg、1.95mmol)をアルゴン下でDCM(3mL)及びEt3N(1.3当量、350μL、2.54mmol)中で可溶化し、黄色溶液を形成した。次いで、3-アセチルベンゼンスルホニルクロリド(4)(1.17当量、500mg、2.29mmol)を添加し、反応混合物を室温で15分間撹拌した。反応混合物をシリカゲルを用いて真空下で蒸発させ、カラム(シリカゲル)に導入し、9/1~5/5のcHex/EtOAc勾配で溶出した。画分を真空下で蒸発させた(TLC:4/6 cHex/EtOAc)。化合物5が得られ(黄色固体、530mg、79% UPLC-MS、収率40%)。UPLC-MS:60~80%であり、1H NMR、MS及びUVスペクトルによって特徴付けられた(
図3)。
【0060】
化合物5(1当量、530mg、0.785mmol)を、1% TFA/DMSO(4mL)中のHBPベクター溶液(1.25当量、314mg、0.994mmol)に添加した。反応混合物をアルゴン下、室温で4時間撹拌し、続いてHPLCクロマトグラフィーに供した。中性pH(沈殿)に達するまで0.5M NaHCO3を反応混合物に添加し、続いてMeOHを添加した。固体を濾過し、MeOHで洗浄し、真空下、室温で乾燥させた。得られた黄色固体をMilliQ水中で可溶化し、3% EtOHから30% EtOHの勾配を用いてC18カラム上で精製した。>90%のHPLC画分をまとめ、凍結乾燥させた。化合物C(19A143)が得られ(淡黄色固体、226mg、収率36%)、HPLC:95%であり、1H NMR、31P NMR、MS及びUVスペクトルによって特徴付けられた(
図4)。
【0061】
実施例3:化合物C(19A115)の合成
原理は、化合物Aと同じである。
【0062】
【0063】
DCM(10mL)中のTEA(5.7mL、41mmol、1当量)の溶液を、DCM(100mL)中の化合物6(5g、41mmol、1当量)及びPOCl3(38mL、408mmol、9.96当量)の溶液に0℃で8分間滴下添加すると、沈殿物の形成が起こる。反応混合物を0℃で1時間撹拌し、次いで真空下で濃縮した。エーテル(50mL)を添加し、固体を濾過し、得られた溶液を真空下で5時間濃縮した。粗化合物7が得られ(粘性のあるオレンジ色の油、8.5g、35.6mmol、収率87%)、1H NMR、31P NMR、MS及びUVスペクトルによって特徴付けられた(
図5)。
【0064】
化合物7(1.5g、6.28mmol、2.21当量)を、DCM(8mL)中のメロキシカム溶液(1g、2.85mmol、1当量)及びTEA(1mL、7.19mmol、2.53当量)に室温で添加した。反応混合物を室温で45分間撹拌し、次いでペンタン/0.5M HCl混合物に添加し、振盪し、濾過し、固体を0.5M HClで洗浄し、真空下で乾燥させた。化合物9が得られ(黄色固体1.84g、純度81%、純粋な複合体について収率92%)、1H NMR、31P NMR、MS及びUVスペクトルによって特徴付けられた(
図6)。
【0065】
化合物9(2.84g、4.97mmol、1当量)を、5% TFA/DMSO(8mL)中のHBPベクター(1.8g、5.47mmol、1.1当量)の溶液に添加し、得られた粘性溶液を撹拌し、室温で20分間ボルテックスし、次いで反応混合物をリン酸緩衝液中で可溶化してコロイド溶液を形成し、これをC18カラムに導入し、3% EtOHから20% EtOHの勾配で溶出した。>90%のHPLC画分をまとめ、凍結乾燥させた。化合物C(19A115)が得られ(淡黄色固体、1.205g、収率34%)、HPLC:98%であり、1H NMR、31P NMR、MS及びUVスペクトルによって特徴付けられた(
図7)。
【0066】
実施例4:化合物D(18A135)の合成
原理は、化合物Aと同じである。
【0067】
【0068】
1,4-フタルアルデヒド10(4当量、10g、74.6mmol)を、DCM(25mL)及びMeOH(25mL)中40℃で可溶化し、黄色溶液を形成した。得られた溶液を冷水浴中で冷却し、NaBH4(1当量、0.705g、18.6mmol)を5分間添加し、不透明な黄色溶液を得た。反応は即時であった。TLC対照、DCM:100%。シリカゲル(20g)を添加し、溶媒を真空下で完全に蒸発させ、混合物を100% DCMから10% MeOH/DCMの勾配を用いてシリカゲルカラムで溶出した。純粋な画分を真空下で濃縮した。生成物11が黄色油として5.3g得られ、これは結晶化し(52%、UPLC-MS:100%)、1H NMR、MS及びUVスペクトルによって特徴付けられる(
図8)。
【0069】
4-(ヒドロキシメチル)ベンズアルデヒド11(1当量、1.0g、7.34mmol)をトルエン(7mL)中で可溶化した。次いで、H2O中48重量%のHBr(3.3当量、4.0g、2.7mL、24.24mmol)を添加し、反応混合物を3時間還流した。反応をUPLC-MSによってモニターした。反応が完了した。クロロホルム(60mL)を添加し、得られた溶液を、酸が完全に中和されるまでNaHCO3水溶液で抽出した。有機相を無水Na2SO4で乾燥させ、減圧下で濃縮した。化合物12のベージュ色の結晶が1.69g得られ(収率100%、UPLC-MS:97%)、1H NMR、MS及びUVスペクトルによって特徴付けられた。(
図9)
【0070】
メロキシカム(1.1当量、0.50g、1.42mmol)をアルゴン下、DMF(20mL)中で可溶化した。次いで、NaH(2.3当量、0.13g、3.25mmol)を添加し、反応混合物を室温で5~10分間撹拌した。反応混合物を氷浴で冷却し、4-(ブロモメチル)ベンズアルデヒド12(1当量、0.255g、1.2mmol)を添加した。反応をNH4Cl(水溶液)で5~10分間阻害(クエンチ)すると、沈殿物が形成された。反応混合物をEtOAcで抽出した後、有機相をNaCl(飽和)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥させ、減圧下で濃縮し、次のステップで使用した。生成物13を、1H NMR、MS及びUVスペクトルによって特徴付けた(
図10)。
【0071】
HBPベクター(1当量、0.35g、1.11mmol)を、数滴のTFAを含むDMSO(20mL)中で可溶化した。この無色混合物に、前のステップの粗生成物13(1当量、1.20g、1.11mmol)を添加した。得られた黄色溶液を室温で1時間撹拌した。0.5M NaHCO3水溶液(30mL)、続いてMeOHを添加し、固体を濾過し、MeOHで洗浄し、真空下で乾燥させた。得られた黄色固体(500mg)をMilliQ水中で可溶化し、20mL/分のC18勾配(3%→25% EtOH)で精製し、HPLC画分>90%(HPLC、360nmでのUV)を真空下で濃縮し、凍結乾燥させた。化合物D(18A135)が150mg得られ(黄色固体、収率20%)、1H NMR、31P NMR、MS及びUVスペクトルによって特徴付けられた(
図11)。
【0072】
実施例5:化合物E(18A184)の合成
原理は、化合物Aと同じである。
【0073】
【0074】
化合物15(1.31mL、12.73mmol、1.21当量)を、水(22mL)及びDCM(22mL)の混合物中の化合物14(1.58g、10.52mmol、1当量)、硫酸水素テトラブチルアンモニウム(0.353g、1.04mmol、0.1当量)及びNaHCO3(3.53g、42mmol、4当量)の溶液に、激しく撹拌しながら室温で添加した。3時間後、DCM/0.5M NaHCO3、続いて水で抽出し、有機相を無水Na2SO4で乾燥させた。化合物16が得られ(+4℃で固化して無色固体を形成する透明油、2.12g、10.67mmol、収率100%)、これをさらに精製することなく次のステップで使用した。生成物をUPLC並びに1H NMR、MS及びUVスペクトルによって特徴付けた(
図12)。
【0075】
化合物16(2.12g、10.67mmol、1.25当量)を、DCM(12mL)中のメロキシカム溶液(3g、8.54mmol、1当量)及びTEA(2.4mL、17.27mmol、2当量)に添加した。反応混合物を室温で3日間撹拌した。DCM/MeOH/H2O溶液で抽出した後、有機相を無水Na2SO4で乾燥させ、真空下で濃縮した。化合物17が得られ(黄色固体、4.44g、8.65mmol、収率100%、UPLC-MS:100%)、1H NMR、MS及びUVスペクトルによって特徴付けられた。(
図13)
【0076】
DMSO(15mL)中の化合物17(1.66g、3.23mmol、1当量)、HBPベクター(78%、1.11g、3.66mmol、1.13当量)及びTFA(0.1mL、1.35mmol、0.42当量)の溶液を、室温で20分間撹拌した。次いで、0.5M NaHCO3の水溶液を添加し、続いて水を添加した。得られたコロイド溶液をC18カラムに導入し、3% EtOHから50% EtOHの勾配で溶出した。HPLC画分>90%を一緒にまとめ、EtOHを真空下で蒸発させ、得られた溶液を凍結乾燥させた。化合物E(18A184)が得られ(黄色固体、0.78g、1mmol、収率31%)、HPLC:98%であり、1H NMR、31P NMR、MS及びUVスペクトルによって特徴付けられた。(
図14)
【0077】
実施例6:化合物F(18A182)の合成
原理は、化合物Aと同じである。
【0078】
【0079】
エチレングリコール(15mL)中の3-ヒドロキシベンズアルデヒド(化合物18)(1当量、2.0g、16.38mmol)、1,3-ジブロモプロパン(化合物19)(4当量、6.6mL、65.51mmol)及びK2CO3(1.3当量、2.9g、21.29mmol)の溶液を、80℃で5時間撹拌した。反応をUPLC-MSによってモニターした。反応混合物を、水及びエーテル抽出物で希釈した。有機相をNa2SO4で乾燥させ、真空下、40℃で濃縮した。得られた無色油(UPLC-MS 69%)をシリカゲルカラム上で精製し、100% cHex勾配→6% EtOAc/cHex、CCM:cHex/EtOAc=9/1で溶出した。溶媒を、減圧下で蒸発させた。化合物20が1g得られ(収率26%)、1H NMR、MS及びUVスペクトルによって特徴付けられた(
図15)。
【0080】
メロキシカム(1当量、0.5g、1.42mmol)をアルゴン下、DMF(25mL)中で可溶化した。次いで、NaH(4.4当量、0.15g、6.25mmol)及びNaI(1当量、0.21g、1.42mmol)を添加した。反応混合物を室温で5~10分間撹拌した。化合物20(2当量、0.7g、2.88mmol)を添加し、1時間後、NH4Cl(飽和)溶液を添加した。EtOAcで抽出した後、有機相をNaCl(飽和)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、真空下、40℃で濃縮した。化合物21が1.65g得られ(収率65%)、MS及びUVスペクトルによって特徴付けられた(
図16)。
【0081】
BPベクター(1当量、0.45g、1.42mmol)を、数滴のTFAを含むDMSO(10mL)中で可溶化した。得られた無色溶液に、化合物21(1当量、1.65g、1.42mmol)を添加し、黄色溶液を室温で1時間撹拌した。0.5M NaHCO3(20mL)、続いてMeOHを添加し、固体を濾過し、MeOHで洗浄し、真空下で乾燥させた。得られた黄色固体(1g)をMilliQ水中で可溶化し、3% EtOHから25% EtOHの勾配を用いてC18カラム上で精製し、HPLC画分>90%を真空下で濃縮し、凍結乾燥させた。化合物F(18A182)が350mg得られ(黄色固体、収率30%)、HPLC:95%であり、1H NMR、31P NMR、MS及びUVスペクトルによって特徴付けられた(
図17)。
【0082】
実施例7:化合物G(19A4)の合成
原理は、化合物Gと同じである。
【0083】
【0084】
化合物15(1.81mL、17.58mmol、1当量)を、水(50mL)とDCM(50mL)との混合物中の化合物22(2.92mL、28.42mmol、1.62当量)、硫酸水素テトラブチルアンモニウム(0.78g、2.3mmol、0.13当量)及びNaHCO3(7.84g、93mmol、5.3当量)の溶液に、室温で激しく撹拌しながら添加した。3時間後、DCM/0.5M NaHCO
3で抽出し、有機相をNa2SO4で乾燥させ、真空下で濃縮した。化合物23が無色油として得られ(2.68g、16.28mmol、収率93%)、さらに精製することなく次のステップで使用され、1H NMRスペクトル(
図18)によって特徴付けられた。
【0085】
化合物23(2.3g、14mmol、1.4当量)を、DCM(14mL)中のメロキシカム溶液(3.5g、10mmol、1当量)及びTEA(2.8mL、20.14mmol、2当量)に添加した。反応混合物を室温で48時間撹拌し、シリカゲルを有するカラムに導入し、cHex→EA勾配、CCM:DCM/EA=3/1で溶出した。溶媒を、減圧下で蒸発させた。化合物24が得られ(黄色固体、1.782g、3.716mmol、収率37%、UPLC-MS:85%)、1H NMR、MS及びUVスペクトルによって特徴付けられた(
図19)。
【0086】
化合物24(1.66g、3.46mmol、1当量)を、DMSO(15mL)中のHBPベクター溶液(1.11g、3.65mmol、1.06当量)及びTFA(0.1mL、1.35mmol、0.39当量)に添加し、室温で24時間撹拌した。次いで、0.5M NaHCO3水溶液を添加し、続いて水を添加した。得られたコロイド溶液をC18カラムに導入し、3% EtOHから50% EtOHの勾配で溶出した。HPLC画分>90%を一緒にまとめ、EtOHを真空下で蒸発させ、得られた溶液(約100mL)を凍結乾燥させた。化合物G(19A4)が得られ(黄色固体、0.82g、1.1mmol、収率32%)、HPLC:95%であり、1H NMR、31P NMR、MS及びUVスペクトルによって特徴付けられた(
図20)。
【0087】
実施例8:化合物H(19A22)の合成
原理は、化合物Aと同じである。
【0088】
【0089】
化合物11(4.08mL、30mmol、1当量)、パラホルムアルデヒド(0.9g、30mmol、1当量)及びTMSCl(1.5mL、117mmol、3.92当量)の混合物を室温で50分間撹拌し、真空下、室温で50分間濃縮した。得られた粗生成物25(褐色油、5.53g、約100%)を、次のステップで直ちに使用した(
図21)。
【0090】
化合物25(5.53g、30mmol、1.63当量)を、DCM(30mL)中のメロキシカム溶液(6.45g、18.36mmol、1当量)及びTEA(6mL、43.17mmol、2.35当量)に添加した。反応混合物を室温で150分間撹拌し、次いでシリカゲルを有するカラムに導入し、cHex勾配→cHex/EtOAc=2/3、CCM:DCM/EtOAc=3/1で溶出した。化合物26が得られ(黄色固体、1.73g、3.46mmol、収率19%、UPLC-MS:81%)、1H NMR、MS及びUVスペクトルによって特徴付けられた(
図22)。
【0091】
化合物26(1.727g、3.46mmol、1当量)を、DMSO(15mL)中のHBPベクター(1.27g、4.18mmol、1.21当量)及びTFA(0.1mL、1.35mmol、0.39当量)の溶液に添加し、得られた混合物を室温で20分間撹拌し、次いでNaHCO3溶液に注ぎ、5分間超音波処理した。コロイドとして得られた濁った溶液をC18カラムに導入し、3% EtOHから50% EtOHの勾配で溶出した。HPLC>90%のEtOHを真空下で蒸発させ、水溶液を凍結乾燥させた。化合物H(19A22)が1.314g得られ(黄色固体、収率50%)、HPLC:94~95%であり、1H NMR、31P NMR、MS及びUVスペクトルによって特徴付けられた(
図23)。
【0092】
実施例9:HBP-メロキシカム分子のヒドロキシアパタイトへの固定能の評価
分子A、B、C、D、E、F、G及びHの溶液を、ヒドロキシアパタイト(10mgのHAを含む1mMで1mL)の存在下に置き、室温で30分間撹拌した後、HPLCによって付着の程度を推定した。試験は三回行った。
【0093】
得られた分子は、
図24に示されるように、ヒドロキシアパタイト(HA)に迅速に結合する。
【0094】
実施例10:切断可能なHBP-メロキシカム分子によるメロキシカムを放出する能力の評価
得られた分子は、溶液中でのメロキシカムの放出について異なる能力を有する。37℃のラット血清中又はpH7.4、5及び3の3種の緩衝液中の化合物を、HPLCによって分析した。48時間で放出されたMLXの量を
図25に示す。
【0095】
実施例11:HBP-メロキシカム分子の抗炎症活性のインビトロ評価
得られた分子を、ラット初代関節軟骨細胞に対するCOX2炎症促進性酵素の活性を阻害する能力について試験した。軟骨細胞を1μg/mLの濃度のLPSで24時間刺激することによって、COX2活性を誘導した。LPS刺激の間、軟骨細胞を、25mM HEPES及び0.5% BSAを含む無血清DMEM培地中で培養した。分子18A135、18A166、18A182、18A184、19A4、19A22、19A115、19A143又はメロキシカムを、0.1μM、0.5μM、1μM、5μM又は10μMの濃度でLPSと同時に24時間添加した。
【0096】
HBP-メロキシカム分子を滅菌水中で可溶化し、メロキシカムを10% DMSOを含むPBS中で可溶化した(細胞と接触させて最終的に0.1% DMSO)。COX2活性をELISA分析によって測定した。結果を
図26に示す。
【0097】
切断可能な分子18A166、18A184、19A4、19A115及び19A143は、メロキシカムに類似したCOX2に対する阻害活性を示す。切断不可能な分子は、切断可能な分子及びメロキシカムよりも低いCOX2阻害活性を示すが、存在する。
【0098】
実施例12:ラットにおける最大耐容量及び毒性の評価
これらの試験は、2つの異なる研究を通して行われた。分子18A135、18A166、18A182、18A184、19A22、19A115及び19A143を5%グルコース中で可溶化し、次いで、少なくとも16週齢の雄及び雌のSprague Dawley系統を有するラットに単回静脈内注射(尾静脈、5分間注入、10mL/kgの体積)によって投与した。HBP-メロキシカム分子は、用量30、45、67.5及び101.25μmol/kgで投与した。分子の急性毒性を、7日間の重量による進化を追跡することによって決定した。動物が7日間連続して体重減少しなかった場合、又は、治療の日のその体重の90%未満への体重減少が3日間なかった場合、用量は耐容可能であるとみなした。
【0099】
第2の研究におけるメロキシカムの毒性の制御において、雄ラット及び雌ラットを、28日間、1mg/kg~2.85μmol/kgの用量(すなわち、79.8μmol/kgの累積用量)で経口メロキシカムにより毎日治療した。
【0100】
各分子の最大耐量(maximum tolerated dose、MTD)の値を以下の表1に示す。
【0101】
【0102】
分子18A135及び18A166は、最も高いMTD値(67.5μmol/kg)を有するが、他の分子は、45μmol/kgのMTDを有する。
【0103】
それらのMTD用量を受けた動物(3匹の雄及び3匹の雌)を投与の4週間後に屠殺した。メロキシカムの毒性に特徴的な器官(胃、十二指腸、腎臓)を採取し、ホルムアルデヒド中で固定し、組織学的検査において調製し、獣医学病理学者によって分析して、これらの器官に対する全体的な毒性を評価した(第1の研究において0~12.5のスケール、第2の研究において0~13.5のスケール)。
【0104】
各試験に対応する組織学的分析を
図27に提示する。メジアン値は、水平バーによって表される。
【0105】
MTD用量のHBP-メロキシカム分子は、毎日投与されたメロキシカムと同一の毒性値(分子18A166)又はより低い毒性(分子18A135、18A182、18A184、19A4、19A115及び19A143)を有する。
【0106】
実施例13:ラットの単関節炎モデルにおけるHBP-メロキシカム分子の抗炎症効力の評価。
500μgのmBSAを含有するCFAエマルジョンの皮下注射による2回の予備感作後(誘導の2週間前及び3週間前)に、100μgのmBSAの関節内注射(膝)によってラット(雄、Sprague Dawley系統、14週齢)において単関節炎を誘導した。群間の均質性を得るために、腫張の強度に応じて、誘導後24時間のD2に分配を行った。動物を分配した後、30μmol/kgの同一用量で単回静脈内注射(尾静脈、5分間注入、10mL/kgの体積)によって分子18A184及び19A115により治療を施した。HBP-メロキシカム分子を5%グルコース中で可溶化した。対照において、病的動物(mBSA)は、5%グルコースの単回注射(尾静脈、5分間注入、10mL/kgの体積)を受けた。
【0107】
標準治療において、動物は、0.2mg/kg~0.57μmol/kgのNOEL用量、すなわち15.96μmol/kgの累積用量で28日間、メロキシカムの経口投与を毎日受けた。
【0108】
関節炎の進展は、病的な膝の腫張及び動物の跛行を測定することによってモニターした。
【0109】
図28は、D2に治療を施した後の腫脹の進展を示す。
【0110】
分子18A184及び19A115は、関節炎の急性期(第1週)において、毎日投与されるメロキシカムよりも良好な有効性を示す。
【0111】
分子18A184は、分子19A115と比較して延長された有効性を示す。
【0112】
図29は、D1に関節炎を誘導してから、及びD2に治療を施した後の跛行の進展を示す。
【0113】
分子18A184及び19A115は、関節炎の急性期(第1週)において、毎日投与されるメロキシカムよりも良好な有効性を示す。
【0114】
この効能は、より早期に検出可能である:メロキシカム治療の9日後に対して治療19A115の24時間後又は治療18A184の48時間後の跛行の終了。
【0115】
分子18A184は、分子19A115と比較して延長された有効性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【
図1】化合物Aの合成:化合物1及びメロキシカムからの中間体化合物2の調製
【
図2】化合物Aの合成:化合物2及びHBPベクターからの化合物Aの調製
【
図3】化合物Bの合成:メロキシカムを含む中間体化合物5の調製
【
図4】化合物Bの合成:化合物5及びHBPベクターからの化合物Bの調製
【
図5】化合物Cの合成:化合物6からの中間体化合物7の調製
【
図6】化合物Cの合成:化合物7及びメロキシカムからの中間体化合物9の調製
【
図7】化合物Cの合成:化合物9及びHBPベクターからの化合物Cの調製
【
図9】化合物Dの合成:化合物11からの中間体化合物12の調製
【
図10】化合物Dの合成:化合物12及びメロキシカムからの中間体化合物13の調製
【
図11】化合物Dの合成:化合物13及びHBPベクターからの化合物Dの調製
【
図13】化合物Eの合成:化合物16及びメロキシカムからの中間体化合物17の調製
【
図14】化合物Eの合成:化合物17及びHBPベクターからの化合物Eの調製
【
図15】化合物Fの合成:化合物18及び19からの中間体化合物20の調製
【
図16】化合物Fの合成:化合物20及びメロキシカムからの中間体化合物21の調製
【
図17】化合物Fの合成:化合物21及びHBPベクターからの化合物Fの調製
【
図18】化合物Gの合成:化合物15及び22からの中間体化合物23の調製
【
図19】化合物Gの合成:化合物23及びメロキシカムからの中間体化合物24の調製
【
図20】化合物Gの合成:化合物24及びHBPベクターからの化合物Gの調製
【
図21】化合物Hの合成:化合物11からの中間体化合物25の調製
【
図22】化合物Hの合成:化合物25及びメロキシカムからの中間体化合物26の調製
【
図23】化合物Hの合成:化合物26及びHBPベクターからの化合物Hの調製
【
図24】HBP-メロキシカム分子のヒドロキシアパタイト分子への固定能のインビトロ評価
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図25】切断可能なHBP-メロキシカム分子によるメロキシカムを放出する能力の評価
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図26】軟骨細胞に対するHBP-メロキシカム分子の抗COX2活性のELISAによる分析
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図27】ラットにおける投与後の胃、十二指腸及び腎臓に対するHBP-メロキシカムの毒性評価
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図28】関節炎によって引き起こされる膝の腫張に対するHBP-メロキシカム化合物の治療効果。
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図29】関節炎によって引き起こされる跛行に対するHBP-メロキシカム化合物の治療効果。
【国際調査報告】