(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-17
(54)【発明の名称】高性能な灌注及び吸引システム並びに方法
(51)【国際特許分類】
A61B 18/26 20060101AFI20240410BHJP
【FI】
A61B18/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568089
(86)(22)【出願日】2022-05-04
(85)【翻訳文提出日】2023-12-27
(86)【国際出願番号】 US2022027625
(87)【国際公開番号】W WO2022235762
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501012517
【氏名又は名称】アイピージー フォトニクス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】イリヤ・ヤロスラフスキー
(72)【発明者】
【氏名】セルゲイ・ピリペツキー
(72)【発明者】
【氏名】ドミトリ・ボウトウソフ
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・アルトゥシュラー
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ・トレクサー
(72)【発明者】
【氏名】アイザック・オストロフスキー
(72)【発明者】
【氏名】アナスタシヤ・コヴァレンコ
(72)【発明者】
【氏名】フェリックス・スツカリン
【テーマコード(参考)】
4C026
【Fターム(参考)】
4C026BB10
4C026DD03
4C026DD08
4C026DD10
(57)【要約】
腎臓の内部と流体連通する遠位端を有するカテーテルシャフトと、シャフトを通って延在する灌注チャネル及び吸引チャネルと、灌注チャネル及び吸引チャネルと流体結合したバイパスチャネルと、バイパスチャネルを介して灌注チャネルと吸引チャネルとの間の流体連通のレベルを制御するように構成されたバイパス弁と、吸引ポンプと、吸引チャネル上に配置され、吸引チャネル内に流体のパルス状の流れを提供するように構成された少なくとも1つの弁と、腎臓の内部と流体連通する圧力センサと、少なくとも1つの圧力測定値を受信し、測定圧力値を閾値と比較し、比較に基づいて、バイパス弁、吸引ポンプ、及び少なくとも1つの弁のうちの少なくとも1つに制御コマンドを送信するように構成されたコントローラとを備える、灌注及び吸引システム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端及び遠位端を有するカテーテルシャフトであって、前記遠位端が腎臓の内部と流体連通している、カテーテルシャフトと、
前記シャフトを通って前記近位端から前記遠位端まで延在する灌注チャネルと、
前記シャフトを通って前記近位端から前記遠位端まで延在する吸引チャネルと、
前記灌注チャネル及び前記吸引チャネルと流体結合されたバイパスチャネルと、
前記バイパスチャネルを介して前記灌注チャネルと前記吸引チャネルとの間の流体連通のレベルを制御するように構成されたバイパス弁と、
前記吸引チャネルと流体連通し、前記吸引チャネルの遠位端から近位端に向かって流体を圧送するように構成された吸引ポンプと、
前記吸引チャネル上に配置され、前記吸引チャネル内に流体のパルス状の流れを提供するように構成された少なくとも1つの弁と、
前記腎臓の内部と流体連通する圧力センサと、
前記圧力センサ、前記バイパス弁、少なくとも1つの前記弁、及び前記吸引ポンプと連通するコントローラと、
を備え、
前記コントローラが、
前記圧力センサから少なくとも1つの測定圧力値を受信し、
前記測定圧力値を所定の圧力閾値と比較し、
前記比較に基づいて、前記バイパス弁、少なくとも1つの前記弁、及び前記吸引ポンプのうちの少なくとも1つに制御コマンドを送信する
ように構成される、灌注及び吸引システム。
【請求項2】
前記コントローラは、単位時間当たりの測定圧力値を計算し、単位時間当たりの前記測定圧力値が所定の第1の閾値を満たすかまたは超えるかを判定し、それに応じて、前記吸引チャネル内の流体の流量が増加するように前記吸引ポンプに制御コマンドを送信するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
所定の前記第1の閾値の基準として使用される前記測定圧力値が、50cmH
2Oである、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記コントローラは、単位時間当たりの前記測定圧力値が所定の第2の閾値を満たすかまたは超えるかを判定し、それに応じて、前記バイパスチャネルが開かれ、前記灌注チャネルが前記吸引チャネルに流体結合され、灌注流体が前記吸引チャネルの前記遠位端に向けられるように、制御コマンドを前記バイパス弁に送信するように構成される、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
所定の前記第2の閾値の基準として使用される前記測定圧力値が、60cmH
2Oである、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記コントローラは、反復サイクルにおいて、所定の持続時間τ1にわたって少なくとも1つの前記弁を閉じ、所定の持続時間τ2にわたって少なくとも1つの前記弁を閉じる
ように制御コマンドを送信することによって前記流体の前記パルス状の流れを実現するように構成され、
τ1及びτ2は所定の期間tだけ離れており、各サイクルは期間Tに属する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
少なくとも1つの前記弁が、前記バイパスチャネルと前記吸引ポンプとの間の前記吸引チャネル上に配置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
少なくとも1つの前記弁は、第1の弁及び第2の弁を含み、前記第2の弁は、前記バイパスチャネルと前記吸引チャネルの前記遠位端との間の前記吸引チャネル上に配置される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記コントローラは、反復サイクルにおいて、所定の持続時間τ1にわたって前記第1の弁を閉じ、所定の持続時間τ2にわたって前記第2の弁を閉じる
ように制御コマンドを送信することによって前記流体の前記パルス状の流れを実現するように構成され、
τ1及びτ2は所定の期間tだけ離れており、各サイクルは期間Tに属する、
請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記バイパス弁が、3方向ソレノイド式ピンチ弁として構成され、少なくとも1つの前記弁が、2方向ソレノイド式ピンチ弁として構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記圧力センサは、前記カテーテルシャフトの外面に近接している、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
レーザ放射線を放出するように構成されたレーザ源と、
前記レーザ源に結合され、前記吸引チャネルの前記遠位端に近接して前記レーザ放射線を伝送するように構成された光ファイバであって、前記光ファイバが前記カテーテルシャフトの前記近位端から前記遠位端まで延在する、光ファイバと
をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
吸引チャネルの遠位端から近位端へのパルス状の流体流を提供するステップであって、前記吸引チャネルの前記遠位端は腎臓の内部と流体連通している、ステップと、
前記腎臓の前記内部の圧力値を測定するステップと、
前記測定圧力値が第1の圧力閾値未満であるかどうかを判定するステップと、
前記測定圧力値が前記第1の圧力閾値を満たすかまたは超える場合に、前記パルス状の流体流の速度を増加させるステップと
を含む、吸引及び灌注システムを操作する方法。
【請求項14】
灌注チャネルの近位端から遠位端への流体流を提供するステップであって、前記灌注チャネルの前記遠位端は前記腎臓の前記内部と流体連通している、ステップと、
前記測定圧力値が第2の圧力閾値未満であるかどうかを判定するステップと、
前記測定圧力値が前記第2の圧力閾値を満たすかまたは超える場合に、前記灌注チャネルから前記吸引チャネル内に流体流を導くステップと
をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記灌注チャネルから前記吸引チャネルへの前記流体流は、バイパスチャネルを通って導かれる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記吸引チャネルの前記近位端と前記バイパスチャネルとの間の前記吸引チャネル上に配置された弁を閉じるステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記パルス状の流体流が、前記吸引チャネル上に配置された少なくとも1つの弁によって実現される、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記パルス状の流体流が、反復サイクルにおいて、所定の持続時間τ1にわたって少なくとも1つの前記弁を閉じ、所定の持続時間τ2にわたって少なくとも1つの前記弁を閉じることによって実現され、τ1及びτ2は所定の期間tだけ離れており、各サイクルは期間Tに属する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つの前記弁は、第1の弁及び第2の弁を含み、前記パルス状の流体流は、反復サイクルにおいて、所定の持続時間τ1にわたって前記第1の弁を閉じ、所定の持続時間τ2にわたって前記第2の弁を閉じることによって実現され、τ1及びτ2は所定の期間tだけ離れており、各サイクルは期間Tに属する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
τ1及びτ2は、20ms~500msの範囲内であり、前記期間Tは、0.5s~3.0sの範囲内である、請求項18または19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、2021年5月4日に出願された「高性能な灌注及び吸引システム並びに方法」と題する米国仮特許出願第63/183,675号に、米国特許法第119条に基づく優先権の利益を主張し、その全体は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
この技術分野は、一般に、レーザ砕石術に関し、より具体的には、腎臓内の圧力制御に重点を置いた尿管鏡を使用した腎臓結石のレーザアシストによる除去に関する。
【背景技術】
【0003】
腎臓結石疾患は、世界人口の12%に影響を及ぼしていると推定される有病率の高い疾患である。ほとんどの患者は自然に結石を排出することができるが、症状は、医療介入が必要となるような十分重篤なものになる場合がある。極端な疼痛、吐き気、嘔吐、感染症、尿流の閉塞、及び腎機能の喪失が続いて起こり得る。レーザ砕石術は、腎臓結石を治療する方法である。光ファイバによって導かれた光エネルギーは、結石をより微細な部分に破壊し、自然に排出することができるようにするために使用される。軟性尿管鏡を用いた腎臓結石治療への従来のアプローチには、尿管鏡のシャフトとアクセスシースまたは自然の尿路との間の空間を通る強制的な流体灌注及び自然吸引を用いた装置が含まれる。より最近のアプローチには、結石アブレーションから生じる結石の断片及び塵埃を吸引するために、尿管鏡内に吸引チャネルも備えて構成された装置が含まれる(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2017/0215965号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レーザ砕石術の問題の1つは、結石のターゲティングである。光ファイバが結石に接触していない場合、アブレーション速度は遅くなり、処置時間が長くなる。さらに、レーザパルスが意図しないターゲットに誤って向けられ、付随的な損傷を引き起こす可能性がある。別の問題は、処置中の腎臓及び尿管鏡内の圧力並びに体液の平衡の維持である。結石の断片を除去するために真空を適用すると、腎臓内の体液含有量及び圧力が変化し、適切に管理されない場合、患者または尿管鏡に意図しない損傷を引き起こす可能性がある。さらに、レーザ砕石術の処置中に、尿管鏡の吸引チャネル内に真空が生成される。このチャネルの遠位端は、しばしば、結石及びそれらの断片によって詰まる可能性がある。ひどい詰まりによって、手術中に尿管鏡の取り外し、洗浄、及び再挿入を繰り返すことを必要とする場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
態様及び実施形態は、灌注及び吸引システムにおける流体流を制御するための方法及びシステムに関する。
【0007】
例示的な実施形態によれば、近位端及び遠位端を有するカテーテルシャフトであって、遠位端が腎臓の内部と流体連通しているカテーテルシャフトと、シャフトを通って近位端から遠位端まで延在する灌注チャネルと、シャフトを通って近位端から遠位端まで延在ずる吸引チャネルと、灌注チャネル及び吸引チャネルと流体結合したバイパスチャネルと、バイパスチャネルを介して灌注チャネルと吸引チャネルとの間の流体連通のレベルを制御するように構成されたバイパス弁と、吸引チャネルに流体連通し、吸引チャネルの遠位端から近位端に向かって流体を圧送するように構成された吸引ポンプと、吸引チャネル上に配置され、吸引チャネル内に流体のパルス状の流れを提供するように構成された少なくとも1つの弁と、腎臓の内部と流体連通する圧力センサと、圧力センサ、バイパス弁、少なくとも1つの弁、及び吸引ポンプに連通するコントローラであって、圧力センサから少なくとも1つの圧力測定値を受信し、測定圧力値を所定の圧力閾値と比較し、比較に基づいて、バイパス弁、少なくとも1つの弁、及び吸引ポンプのうちの少なくとも1つに制御コマンドを送信するように構成される、コントローラとを備える、灌注及び吸引システムが提供される。
【0008】
一実施例では、コントローラは、単位時間当たりの測定圧力値を計算し、単位時間当たりの測定圧力値が所定の第1の閾値を満たすかまたは超えるかを判定し、それに応じて、吸引チャネル内の流体の流量が増加するように吸引ポンプに制御コマンドを送信するように構成される。一実施例では、所定の第1の閾値の基準として使用される測定圧力値は、50cmH2Oである。
【0009】
一実施例では、コントローラは、単位時間当たりの測定圧力値が所定の第2の閾値を満たすかまたは超えるかを判定し、それに応じて、バイパスチャネルが開かれ、灌注チャネルが吸引チャネルに流体結合され、灌注流体が吸引チャネルの遠位端に導かれるように、制御コマンドをバイパス弁に送信するように構成される。一実施例では、所定の第2の閾値の基準として使用される測定圧力値は、60cmH2Oである。
【0010】
一実施例では、コントローラは、反復サイクルにおいて、所定の持続時間τ1にわたって少なくとも1つの弁を閉じ、所定の持続時間τ2にわたって少なくとも1つの弁を閉じるように制御コマンドを送信することによって流体のパルス状の流れを実現するように構成され、τ1及びτ2は所定の期間tだけ離れており、各サイクルは期間Tに属する。一実施例では、少なくとも1つの弁は、バイパスチャネルと吸引ポンプとの間の吸引チャネル上に配置される。
【0011】
一実施例では、少なくとも1つの弁は、第1の弁及び第2の弁を含み、第2の弁は、バイパスチャネルと吸引チャネルの遠位端との間の吸引チャネル上に配置される。さらなる実施例では、コントローラは、反復サイクルにおいて、所定の持続時間τ1にわたって第1の弁を閉じ、所定の持続時間τ2にわたって第2の弁を閉じるように制御コマンドを送信することによって流体のパルス状の流れを実現するように構成され、τ1及びτ2は所定の期間tだけ離れており、各サイクルは期間Tに属する。
【0012】
一実施例では、バイパス弁は、3方向ソレノイド式ピンチ弁として構成され、少なくとも1つの弁は、2方向ソレノイド式ピンチ弁として構成される。
【0013】
一実施例では、圧力センサは、カテーテルシャフトの外面に近接している。
【0014】
一実施例では、システムは、レーザ放射線を放出するように構成されたレーザ源と、レーザ源に結合され、吸引チャネルの遠位端に近接してレーザ放射線を伝送するように構成された光ファイバであって、カテーテルシャフトの近位端から遠位端まで延在する光ファイバとをさらに備える。
【0015】
別の例示的な実施形態によれば、吸引及び灌注システムを動作させる方法が提供され、この方法は、吸引チャネルの遠位端から近位端へのパルス状の流体流を提供するステップであって、吸引チャネルの遠位端は腎臓の内部と流体連通している、ステップと、腎臓の内部の圧力値を測定するステップと、測定圧力値が第1の圧力閾値未満であるかどうかを判定するステップと、測定圧力値が第1の圧力閾値を満たすかまたは超える場合に、パルス状の流体流の速度を増加させるステップとを含む。
【0016】
一実施例では、この方法は、灌注チャネルの近位端から遠位端への流体流を提供するステップであって、灌注チャネルの遠位端は腎臓の内部と流体連通している、ステップと、測定圧力値が第2の圧力閾値未満であるかどうかを判定するステップと、測定圧力値が第2の圧力閾値を満たすかまたは超える場合に、灌注チャネルから吸引チャネル内に流体流を導くステップとをさらに含む。一実施例では、灌注チャネルから吸引チャネルへの流体流は、バイパスチャネルを通って導かれる。別の実施例では、この方法は、吸引チャネルの近位端とバイパスチャネルとの間の吸引チャネル上に配置された弁を閉じるステップをさらに含む。
【0017】
一実施例では、パルス状の流体流は、吸引チャネルに配置された少なくとも1つの弁によって実現される。一実施例では、パルス状の流体流は、反復サイクルにおいて、所定の持続時間τ1にわたって少なくとも1つの弁を閉じ、所定の持続時間τ2にわたって少なくとも1つの弁を閉じることによって実現され、τ1及びτ2は所定の期間tだけ離れており、各サイクルは期間Tに属する。別の実施例では、少なくとも1つの弁は第1の弁及び第2の弁を含み、パルス状の流体流は、反復サイクルにおいて、所定の持続時間τ1にわたって第1の弁を閉じ、所定の持続時間τ2にわたって第2の弁を閉じることによって実現され、τ1及びτ2は所定の期間tだけ離れており、各サイクルは期間Tに属する。一実施例では、τ1及びτ2は、20ms~500msの範囲内であり、期間Tは、0.5s~3.0sの範囲内である。
【0018】
これらの例示的な態様及び実施形態のさらに他の態様、実施形態、及び利点は、以下で詳細に説明される。さらに、前述の情報及び以下の詳細な説明の両方は、様々な態様及び実施形態の単なる例示的な例であり、特許請求される態様及び実施形態の性質及び特徴を理解するための概要または枠組みを提供することを意図していることを理解されたい。本明細書に開示された実施形態は、他の実施形態と組み合わせることができ、「一実施形態」、「一実施例」、「いくつかの実施形態」、「いくつかの実施例」、「代替の実施形態」、「様々な実施形態」、「一実施形態」、「少なくとも1つの実施形態」、「この実施形態及び他の実施形態」、「特定の実施形態」などへの言及は、必ずしも相互に排他的ではなく、記載された特定の特徴、構造、または特性が少なくとも1つの実施形態に含まれ得ることを示すことを意図している。本明細書におけるそのような用語の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すとは限らない。
【0019】
少なくとも1つの実施形態の様々な態様は、添付の図面を参照して以下に説明されるが、これらの図は縮尺通りに描かれることを意図していない。図面は、様々な態様及び実施形態の例示及びさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成するが、特定の実施形態の限界の定義として意図されるものではない。図面は、明細書の残りの部分と共に、記載及び特許請求される態様及び実施形態の原理及び動作を説明するのに役立つ。図面では、様々な図に示されている同一またはほぼ同一の各構成要素は、同様の符号で表されている。明確にするために、すべての構成要素がすべての図で符号付けされているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1A】本発明の態様による灌注及び吸引システムの一実施例の概略図である。
【
図1B】本発明の態様による灌注及び吸引システムの別の実施例の概略図である。
【
図2】
図1Bの灌注及び吸引システムのブロック図である。
【
図3】本発明の態様による尿管鏡の一実施例の遠位端の斜視図である。
【
図4A】本発明の態様によるパルス状の流れの一実施例の概略図である。
【
図4B】本発明の態様によるパルス状の流れの他の実施例の概略図である。
【
図5】
図1Bのシステムの機能の態様を示す時間グラフである。
【
図6】本発明の態様による灌注及び吸引システムのさらに別の実施例の概略図である。
【
図7】本発明の態様による実験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
上述のように、レーザ砕石術に関連する問題には、結石のターゲティング、腎臓内の圧力及び流体の平衡の維持、並びに結石の破片による詰まりが含まれる。本明細書に開示される解決策は、灌注、吸引、及びレーザ放射線の動作パラメータの監視並びにリアルタイム制御を介してレーザ及び流体ポンプシステムの機能を同期させるシステム及び方法を実施することによって、これらの問題を克服し、臨床処置の安全かつ効果的な結果を保証することを目指す。
【0022】
様々な態様によれば、高性能な灌注及び/または吸引の流れは、吸引の効率を高め、詰まりを防ぐために実現される。本明細書で使用される場合、灌注及び/または吸引の流れに関する「高性能な(smart)」という用語は、コントローラとの双方向通信(すなわち、信号を送信または受信する)を維持する能力を指す。レーザ治療中、灌注チャネルの出口からの灌注流体の流れと組み合わせた吸引チャネル内の負圧により、アブレーションプロセスの結果である吸引チャネル内の小さな石粒及び塵埃の流れが生成される。腎臓の圧力を安全な範囲に保つために、これらの流入及び流出のバランスをとることが重要である。本明細書に記載の実施形態によれば、吸引チャネルがアブレーション粒子で詰まらないように、かつ、流体の流れのために開いたままであるように、いくつかの機能を実施することができる。
・治療領域(腎臓)での液圧監視
・吸引流の連続パルス化
・圧力監視の結果として生じる吸引チャネル内の負圧の変化
・詰まりを除去するための吸引チャネルへの灌注流の切り替え
【0023】
詰まりの検出及び腎臓の圧力制御
様々な実施形態によれば、開示された灌注及び吸引システムは、流量(flow)センサ(流体量(fluid rate)または流量(flow rate)センサとも呼ばれる)及び圧力センサなどの1以上のセンサと、少なくとも1つの弁と、流体ポンプと、コントローラとして、または制御システムの一部として機能する処理コンピュータとを備える。
【0024】
一実施形態による灌注及び吸引システムの非限定的な一実施例は、
図1Aの100aで全体的に示されている。システム100aは、近位端113及び遠位端114を有するカテーテルシャフト112(
図2及び
図3参照)であって、遠位端114が腎臓の内部と流体連通している、カテーテルシャフト112と、灌注チャネル102と、吸引チャネル104と、バイパスチャネル108と、バイパス弁132と、吸引チャネル(例えば、弁138)上に配置された少なくとも1つの弁と、吸引ポンプ115と、1以上の圧力センサ156、158と、コントローラ190とを備える。
【0025】
灌注チャネル102及び吸引チャネル104は、シャフト112を通って近位端113から遠位端114まで延在する。灌注チャネル102及び吸引チャネル104の両方の遠位端は、腎臓の内部と流体連通している。吸引/灌注システム100aは、(ファイバ、吸引及び灌注用)「3チャネル」尿管鏡とも呼ばれる尿管鏡105内で使用される。流体は、灌注チャネル102を通って(例えば、腎臓に)送り込まれ、吸引チャネル104を通って腎臓から送り出される。「近位端」という用語は、チャネルに関して使用される場合、対応するポンプに取り付けられた端部を指し、一方、「遠位端」という用語は、遠位端が砕石術の処置のための位置にあるとき、それが腎臓の内部容積内にあるように、尿管鏡内に露出している端部(例えば、遠位端は
図3に示されている)を指す。
【0026】
以下により詳細に説明するように、バイパスチャネル108は、灌注チャネル102及び吸引チャネル104と流体結合され、バイパス弁132は、バイパスチャネル108を介した灌注チャネル102と吸引チャネル104との間の流体連通のレベルを制御するように構成される。吸引ポンプ115は、吸引チャネル104と流体連通し、吸引チャネル104の遠位端から近位端に向かって流体を圧送するように構成される。この実施形態では、吸引チャネル104上に配置された少なくとも1つの弁は、バイパスチャネル108と吸引ポンプ115との間に配置された弁138を含む。
【0027】
圧力センサ156及び158は、腎臓の内部と流体連通しており、それぞれ圧力を測定するように構成されている。いくつかの実施形態では、カテーテル112は、圧力センサ158を備えて構成される。
図3は、圧力センサ158の2つの可能な位置を示し、それぞれの位置は、カテーテルシャフト112の遠位端114またはその近くに配置される。いくつかの実施形態では、
図3に示すように、圧力センサ158は、カテーテルシャフト112の外面に近接していてもよい。例えば、
図3に示す実施例におけるカテーテルシャフト112の外面は、圧力センサ158を収容する小さな凹部を有する。別の実施例によれば、
図3に示すように、圧力センサ158は、尿管鏡105のカメラ165に近接して、例えばカメラ165の上方の表面に配置される。
【0028】
いくつかの実施形態では、圧力センサ156は、別個の挿入装置を介して腎臓内に配置される。この例では、圧力センサ156は、カテーテルシャフト112の外部に配置され(カテーテルシャフト112に取り付けられていないか、あるいは一体化されていない)、本明細書では「外部」圧力センサとも呼ばれる。例えば、小型圧力センサは、針及び/もしくはカテーテル、または任意の他のアクセスシースを介して腎臓に挿入することができ、したがって尿管鏡の外部(すなわち、カテーテルシャフト、吸引チャネル、及び灌注チャネルの外部)にある。いくつかの実施形態によれば、圧力センサ156は、19ミリメートル(mm)未満の少なくとも1つの寸法(例えば、直径または長さ)を有し、さらなる実施形態では、15mm未満の少なくとも1つの寸法を有し、さらに別の実施形態では、11mm未満の少なくとも1つの寸法を有する。特定の実施形態によれば、圧力センサ156は、0.5mm未満の直径を有し、一実施形態では、0.3mm未満の直径を有する。特定の実施形態では、圧力センサ156は6mm未満の長さを有し、一実施形態では5mm未満の長さを有する。圧力センサ156は、カテーテルシャフト112の遠位端に近接し、腎臓内の圧力の生体内監視を提供するように腎臓内に配置することができる。
【0029】
1以上の実施形態によれば、吸引チャネル104上に配置された少なくとも1つの弁は、吸引チャネル104内に流体のパルス状の流れを提供するように構成される。
図1のシステム100aでは、弁138は、吸引チャネル104内に流体のパルス状の流れを提供するように構成される。弁138は、2方向ソレノイド式ピンチ弁などのピンチ弁として構成される。これらのタイプの弁が通電されていないとき、プランジャが開き、流体が入口ポート及び出口ポートを介して弁を通って流れることが可能になる。プランジャが通電されると、プランジャが閉じ、吸引チューブを圧縮し、流体の流れを完全に遮断する。同時に、吸引チューブの圧縮の結果、少量の液体が吸引ラインに沿って押し戻される。いくつかの実施形態では、コントローラ190は、吸引ポンプ115及び弁138の少なくとも一方に1以上の制御コマンドを送信することによって、吸引チャネル内に流体のパルス状の流れを実現するように構成される。コントローラ190は、開閉するように弁138に制御コマンドを送信するように構成される。吸引ポンプ115はまた、コントローラ190によって制御されて、吸引チャネル104の遠位端から近位端に流体を圧送し、それによって弁138を通して流体を「引き寄せる」ことができる。弁138は、吸引チャネル内の液体に沿って背圧の短いパルスを送ることによって吸引流体の流れを遮断し、それによって粒子の混合が促進され、詰まりのリスクが軽減される。さらに、吸引チャネルは、最小限の伸張特性、すなわち高い弾性記憶を提供する材料から構成される。一実施形態によれば、吸引チャネルは、PEBAX(登録商標)などの熱可塑性エラストマから構成される。
【0030】
パルス状の流体流の非限定的な一実施例の概略図が
図4Aに示されている。コントローラ190は、所定の持続時間τ1にわたって弁138を閉じ、所定の持続時間τ2にわたって弁138を閉じるように制御コマンドを送信し、τ1及びτ2は、反復サイクルにおいて所定の期間tだけ離れており、各サイクルは、期間Tに属する。期間Tは、τ1の始まりから、連続するτ1の始まりまでの持続時間である。結果として生じる流体内のパルス状の流れも
図4Aに示されている。
図4Aに示すこの例では、τ1及びτ2は互いに等しいが、いくつかの実施形態では、τ1及びτ2は互いに異なることを理解されたい。
【0031】
別の実施形態による灌注及び吸引システムの別の非限定的な実施例は、
図1Bの100bで全体的に示されている。システム100bは、
図1Aのシステム100aとほぼ同一であるが、この例では、吸引チャネル104内のパルス状の流体流は、2つの弁を使用して実現される。したがって、吸引チャネル104の少なくとも1つの弁は、第1の弁138及び第2の弁136を含み、第2の弁136は、バイパスチャネル108と吸引チャネル104の遠位端との間の吸引チャネル104上に配置される。パルス状の流体流の非限定的な一実施例の概略図を
図4Aに示し、他の実施例を
図4Bに示す。
図4A及び
図4Bを参照すると、この構成では、コントローラ190は、所定の持続時間τ1にわたって第1の弁138を閉じ、所定の持続時間τ2にわたって第2の弁136を閉じるように制御コマンドを送信し、τ1及びτ2は、反復サイクルにおいて所定の期間tだけ離れており、各サイクルは期間Tに属する。前述のように、期間Tは、τ1の始まりから、連続するτ1の始まりまでの持続期間である。
図4Aでは、τ1はτ2に等しく(すなわち、同じ)、これは
図4Bの実施例Dに示されている構成でもある。さらに、τ1とτ2との間の間隔(すなわち、所定の期間t)は、τ1の終わりとτ2の始まりとの間の持続時間であるが、他の実施形態では、所定の期間tは、
図4Bの実施例A~実施例Cを参照して以下に記載されるように、τ1の始まりとτ2の始まりとの間の持続時間として定義されてもよい。
【0032】
他の実施形態によれば、τ1及びτ2は、
図4BのA、B、及びCに示されるように、互いに等しくない。上述したように、これらの実施例では、τ1とτ2との間の間隔を意味する所定の期間tは、τ1の始まりとτ2の始まりとの間の持続時間として定義される。流体(水)中のパルスの複合効果は、
図4A及び
図4Bのすべての実施例に示されている。
【0033】
いくつかの実施形態では、τ1及びτ2はそれぞれ、20ミリ秒~500ミリ秒(ms)の範囲内の持続時間である。いくつかの実施形態によれば、τ1及びτ2は、1つのサイクルまたは期間から次のサイクルまたは期間まで異なる持続時間を有してもよい。特定の実施形態では、所定の期間tは、1ms~500msの範囲内である。いくつかの実施形態では、所定の期間tは、1ms~200msの範囲内である。いくつかの実施形態によれば、期間Tは、0.5秒~3.0秒(s)の範囲内である。
【0034】
吸引チャネル104内の少なくとも1つの弁を使用して実現されるパルス状の流れは、いくつかの利点を提供する。1つには、パルス状の流れは、吸引チャネル104の詰まりを防ぐことができる。さらに、吸引流体の流れをパルス化することにより、レーザアブレーション速度をさらに向上あるいは増加させることができる。例えば、吸引チャネル104内の圧力が一定またはほぼ一定の値に維持されると、レーザ・アブレーション・クレータが成長している状況が発生する可能性があるが、光ファイバの先端から結石の表面(すなわち、クレータの底部)までの距離が増加し続けるため、アブレーションの効率は低下する。最終的には、これによって、レーザは発射し続けるが、それ以上の結石の破壊は起こらないという行き詰まりの状況につながる可能性がある。パルス状の吸引流体の流れにより、結石が吸引チャネル104からわずかに離れて位置を変えることが可能になり、これにより、結石上の異なる位置にレーザを発射することが可能になる(レーザ放射は、一連のレーザパルスによって実施することができる)。さらに、結石は、このパルス状の流体流によって生成される圧力パルスによって吸引チャネル104の口に向かって引っ張られる。
【0035】
図1A及び
図1Bに示すように、システム100a及び100bはまた、灌注チャネル102内の流量を測定するように構成された流量センサ140と、灌注チャネル102内の圧力を測定するように構成された圧力センサ150と、灌注流体源160と流体連通する灌注ポンプ110とを備え得る。システム100a及び100bはまた、光ファイバ106にレーザエネルギーを供給するレーザ源107を備える。光ファイバ106の遠位端から出射されるレーザエネルギーは、腎臓結石物質を切除するように機能する。
【0036】
少なくとも1つの実施形態によれば、灌注流体の流れは、コントローラ190が制御信号または制御コマンドを灌注ポンプ110に送信することによって、システム100内で開始され、灌注ポンプ110は、灌注源160から灌注チャネル102の遠位端に灌注流体を圧送するように構成される。灌注チャネル102内の灌注流体の流体流量は、流量センサ140によって測定することができ、灌注流体の流量は、可変速ポンプとして構成された灌注ポンプ110によって調整することができる。いくつかの実施形態では、灌注流体の流体流量は、60mL/min~120mL/minの範囲内である。一実施形態では、灌注流体の流体流量は80mL/minである。
【0037】
腎臓内の圧力センサ156及び158のうちの少なくとも1つによって取得された圧力測定値は、システム100a及び100bを制御する際に、コントローラ190のフィードバックの少なくとも1つとして使用される。少なくとも1つの実施形態によれば、コントローラ190は、圧力センサ156及び/または158から少なくとも1つの圧力測定値を受信し、測定圧力値を所定の圧力閾値と比較し、比較に基づいて、制御コマンドを送信するか、あるいは、バイパス弁132、少なくとも1つの弁(136及び/または138)、及び吸引ポンプ115のうちの少なくとも1つを制御するように構成される。以下でさらに説明するように、コントローラ190はまた、システム100内の他のセンサ(例えば、灌注チャネル102内の圧力センサ150、灌注チャネル102内の流量センサ140)、吸引チャネル104内の流量センサ144)からの入力を受信する能力を有し、システム100の他の構成要素(例えば、灌注ポンプ140、レーザ107)を制御する。
【0038】
処置中、腎臓内の初期目標圧力値(例えば、所定の圧力閾値の一実施例である40cmH2O)は、初期動作モードにおいて吸引ポンプ115と吸引チャネル104内の流体の流れとを制御するために、コントローラ190(制御システムとも呼ばれる)によって基準として使用される。吸引ポンプ115はまた、可変速ポンプとして構成され、腎臓内の圧力が初期目標圧力値になるように調整することができる。例えば、腎臓内の初期圧力が低すぎる場合、コントローラ190は、腎臓から除去される流体が少なくなるように吸引ポンプ115を減速させることができ、腎臓内の初期圧力が高すぎる場合、コントローラ190は、腎臓からより多くの流体を除去するために吸引ポンプ115を加速させることができる。いくつかの実施形態によれば、吸引チャネル104内の流体流量は、60mL/min~150mL/minの範囲内である。腎臓の内圧は、処置がさらに進むにつれて変化し、センサ156及び/または158によって測定されるこの腎臓内圧は、システム100内の他の構成要素を制御する際にコントローラ190によって使用される。
【0039】
図2は、
図1Bの灌注及び吸引システムのブロック図であり、
図5は、
図1Bのシステムの機能の態様を示す時間グラフである。しかしながら、
図5に示す機能は、
図1Aのシステム100aにも適用されることを理解されたい。
【0040】
通常運転モードの間は、
図5のグラフの左側に示すように、バイパス弁132のチャネル「A」は開いており、バイパス弁132のチャネル「B」(すなわち、バイパスチャネル108)は閉じている。一実施形態によれば、バイパス弁132は、3方向ソレノイド式ピンチ弁として構成される。灌注流体は、灌注ポンプ110によって、バイパス弁132のチャネルAを通って灌注チャネル102を通り、それが灌注チャネル102の遠位端を出て腎臓に入るまで灌注チャネルに沿って圧送される。前述したように、吸引チャネル104は、少なくとも1つの弁136及び/または138を介してパルス状の流体流を提供するように構成され、
図5では、弁136及び138の両方を含むが、パルス状の流体流は、
図1aに示すように、1つの弁で実現されてもよいことを理解されたい。
図5の下部の左側は、「咳」レジーム(regime)に似たパルス状の吸引流の累積効果を示し、吸引チャネル104内の流体に沿って背圧の短いパルスが生成される。レーザが発射して腎臓結石物質を切除すると、アブレーション生成物の粒子が吸引チャネル104の遠位端付近に生成される。前述のように、吸引チャネル104内のパルス状の流れにより、これらの粒子の混合が促進され、吸引チャネル104内の詰まりのリスクが軽減される。
【0041】
コントローラ190は、腎臓内の液圧を監視及び制御するために使用することができる。コントローラ190は、圧力センサ156及び/または158から圧力測定値を受信し、このデータを分析する。いくつかの実施形態では、コントローラ190は、測定圧力値を所定の圧力閾値と比較し、比較に基づいて、制御コマンドをバイパス弁132、少なくとも1つの弁136、138、及び吸引ポンプ115のうちの少なくとも1つに送信する。
【0042】
少なくとも1つの実施形態によれば、コントローラ190は、単位時間当たりの測定圧力値を計算し、単位時間当たりの測定圧力値が1つもしくは複数の閾値を満たすかまたは超えるかを判定するように構成される。それに応じて、コントローラ190は、バイパス弁132、少なくとも1つの弁136、138、及び/または吸引ポンプ115などのシステム100内の1以上の構成要素に制御コマンドを送信する。追加の態様によれば、コントローラ190はまた、灌注チャネル内の圧力センサ150及び/もしくは灌注チャネル内の流体流量センサ140、並びに/または吸引チャネル内の流体流量センサ144などの他のセンサからの入力を受信し、レーザ源107などのシステム100内の構成要素に制御コマンドを送信することができる。
【0043】
特定の実施形態によれば、システム100の初期または一次詰まり検出動作モードは、コントローラ190によって実施することができる。流体が腎臓から効果的に除去されておらず、灌注チャネル102からの灌注流体が依然として腎臓に入っているので、吸引チャネル104の詰まりは、腎臓内の圧力の上昇を引き起こすことになる。一実施形態によれば、初期または一次詰まり検出動作モードは、コントローラ190が単位時間当たりの測定圧力値を計算し、単位時間当たりの測定圧力値が所定の第1の閾値を満たすかまたは超えると判定したときに開始することができる。それに応じて、コントローラ190は、吸引チャネル104内の流体の流量が増加するように、吸引ポンプ115に制御コマンドを送信する。一方法によれば、コントローラ190は、測定圧力値が第1の圧力閾値未満であるかどうかを判定し、測定圧力値が第1の圧力閾値を満たすかまたは超えると、パルス状の流体流の速度を増加させる。例えば、圧力センサ156及び/または158からの測定圧力値が、所定の期間(例えば、2秒)にわたって目標値(例えば、40cmH2O)を所定の割合または割合の範囲(例えば、25%)上回る場合、吸引チャネル104内の流体流量は、コントローラ190を介して吸引ポンプ115によって増加させることができる。例えば、測定圧力値は、実施される一次詰まり検出動作モードについて、0.2s~10sの範囲内の期間にわたって、目標値を5%~100%上回る範囲内であり得る。別の例では、測定圧力値は、実施される一次詰まり検出動作モードについて、1~5sの範囲内の期間にわたって、目標値を20%~30%上回る範囲内であり得る。いくつかの実施形態によれば、圧力監視は連続的に実行される。いくつかの実施形態では、吸引流体の流量は、100mL/minから最大150mL/minまで増加させることができる。特定の実施形態によれば、吸引チャネル内の負圧が50%増加するように、吸引流体の流量が増加される。いくつかの実施形態では、吸引流体の流量は、吸引チャネル内の負圧が5%~100%の範囲内で増加するように増加される。特定の実施形態では、吸引流体の流量は、吸引チャネル内の負圧が25~75%の範囲内で増加するように増加される。一実施形態によれば、所定の第1の閾値または第1の圧力閾値の基準として使用される測定圧力値は、50cmH2O(40cmH2Oの目標を25%上回る)である。本明細書では、40cmH2Oの目標圧力値が一実施例として使用されているが、他の目標圧力値も本開示の範囲内であることを理解されたい。
【0044】
一次詰まり検出モードの一実施例が
図5の中間領域に示されており、これは「深呼吸」レジームに似ており、吸引チャネル104内の負圧が、ある期間、例えば
図5の2つの矢印の間の期間にわたって増加する。吸引チャネル104のこの追加的な「吸い込む」動作は、人間が深呼吸するのに似ている。
【0045】
特定の実施形態によれば、システム100の二次詰まり検出動作モードもコントローラ190によって実施することができる。この場合、コントローラ190は、単位時間当たりの測定圧力値が所定の第2の閾値を満たすかまたは超えるかを判定するように構成される。このモードは、一次詰まり検出動作モードの間の反応(すなわち、吸引チャネル内の流体流量の増加)が腎臓圧力を許容レベルまで低下させることができないときに、トリガされ得る。少なくとも1つの実施形態では、腎臓内の圧力が所定の期間(例えば、5秒)内に許容可能なレベル(例えば、40cmH2O)まで低下した場合、コントローラ190は、吸引ポンプ115の速度を減速して初期レベルまで戻すことができる。いくつかの実施形態によれば、この所定の期間は、2秒~30秒の範囲内である。しかしながら、圧力が所定の期間内に低下しない場合、コントローラ190は、以下に説明するように、二次詰まり検出動作モードを実施することができる。
【0046】
一実施形態によれば、コントローラ190が、単位時間当たりの測定圧力値が所定の第2の閾値を満たすかまたは超えると判定したことに対応して、コントローラ190は、制御コマンドをバイパス弁132に送信し、それにより、バイパスチャネル108が開かれ、灌注チャネル102が吸引チャネル104に流体結合され、灌注流体が吸引チャネル104の遠位端に導かれる。一方法によれば、コントローラ190は、測定圧力値が第2の圧力閾値未満であるかどうかを判定し、測定圧力値が第2の圧力閾値を満たすかまたは超えると、灌注チャネル102から吸引チャネル104内に流体流を導く。さらに、コントローラ190は、弁138が閉じて、吸引チャネル104の遠位端から近位端に向かう流体の流れを停止するように、弁138に制御コマンドを送信することができる。これにより、灌注流体は、吸引ポンプ115を介して、他の方向に灌注流体を送り出す反作用の力なしに、吸引チャネル104の遠位端に流れることができる。いくつかの実施形態では、コントローラ190は、ポンピングを停止(例えば、電源オフ)するために、吸引ポンプ115に制御コマンドを送信することができる。一実施例によれば、測定圧力値が、所定の期間(例えば、2秒)にわたって、目標値(例えば、40cmH2O)を所定の割合または割合の範囲(例えば、50%)上回る場合、灌注チャネル102からの流体の流れはコントローラ190を介して(バイパス弁132を介して)吸引チャネルに導かれてもよい。例えば、測定圧力値は、実施される二次詰まり検出動作モードについて、0.2~10sの範囲内の期間にわたって、目標値を5~100%上回る範囲内であり得る。別の実施例では、測定圧力値は、実施される二次詰まり検出動作モードについて、1~5sの範囲内の期間にわたって、目標値を30%~70%上回る範囲内であり得る。一実施形態によれば、所定の第2の閾値の基準として使用される測定圧力値は、60cmH2O(40cmH2Oの目標を50%上回る)である。
【0047】
二次詰まり検出動作モードは、
図5のグラフの右側に示されている。この二次詰まり検出動作モードの間、弁138は閉じられてもよく、灌注流体が吸引チャネル108内にバイパスされると、吸引チャネル104内の流体のパルス状の流れが遮断される。さらに、このモードの間、コントローラ190は、灌注流体が灌注チャネル102の遠位端に導かれないようにバイパス弁132のチャネルAを閉じ(すなわち、灌注流体の流れが遮断または終了され)、これにより腎臓内の圧力がさらに増加する。弁138及びバイパス弁132のチャネルAは、所定の期間τ
s(本明細書では切替期間またはバイパス持続時間とも呼ばれる)の間、閉じられる。さらに、バイパスチャネル108(バイパス弁132のチャネルB)は、所定の期間τ
sの間、開かれる。いくつかの実施形態では、所定の期間τ
sは、0.5s~3.0sの範囲内である。他の実施形態では、所定の期間τ
sは1秒である。いくつかの実施形態では、τ
sは、2ミリリットル(ml)などの所定の流体量に基づく。特定の実施形態によれば、所定の流体量は、0.5ml~10mlの範囲内であってもよい。他の実施形態によれば、背圧パルスは、測定圧力値に基づいて(弁136及び138を介して)吸引チャネル104内で実施されてもよい。例えば、測定圧力値または測定された圧力の速度/変化に応じて、背圧パルスは、弁136及び/または138を使用して吸引チャネル104内で実施されてもよい。これらの背圧パルスは、吸引チャネル104の詰まりを除去するように機能することができる。
【0048】
図5の下側の右側は、「くしゃみ」レジームに似た、中断されて方向転換された灌注流体の流れの効果を示しており、吸引チャネル104内の流体圧力は、人間の「くしゃみ」が典型的には人間の「咳」よりも長い(及び、より勢いがある)のと同じように、「咳レジーム」よりも長期間増加する。所定の期間τ
sが終了すると、バイパス弁132のチャネルAが開かれ、バイパス弁132のバイパスチャネル108(チャネルB)が閉じられる。いくつかの実施形態では、弁138も開かれる。この構成は、
図5の一番右に示されており(灌注流体の流れが灌注チャネル102に戻されることを示している)、測定された腎臓圧力が許容可能なレベルである場合、パルス状の吸引流も戻され得る。
図5に示すように、二次詰まり検出動作モードが実施された後、腎臓内の圧力レベルは低下する。しかしながら、二次詰まり検出動作モードを実施した後に腎臓内の圧力レベルが許容可能なレベルまで低下しない場合、腎臓圧力が許容可能なレベルまで低下するまで、このモードを何度も繰り返すことができる。反復回数は、腎臓に害を及ぼさないように制限されてもよい。場合によっては、二次詰まり検出動作モード(すなわち、所定の期間にわたるバイパスチャネル108の実施)を最大5回連続して繰り返すことができる。
【0049】
図5に例示される制御スキームは、腎臓圧力の突然のまたは急激な増加及び減少の回避または防止による特定の態様を特徴とする。腎臓は、所定の最大値(例えば、250cmH
2O)までのより長期間にわたる圧力の増加に耐えることができるが、より短いまたは急速な時間(例えば、30秒未満)でこの閾値に達する場合、腎臓が損傷を受ける可能性がある。
図5に概説されている制御スキームは、圧力の突然の増加(及び減少)を回避することによって腎臓のこの能力を獲得することを意図している。特定の実施形態によれば、開示された制御スキームは、腎臓が30秒未満で(40cmH
2Oから)250cmH
2Oに達すること(これは腎臓に有害であろう)を防止する。
【0050】
一実施形態による灌注及び吸引システムの別の非限定的な実施例は、
図6に全体的に200で示されている。システム200は、
図1Aのシステム100a及び
図1Bのシステム100bと同じ構成要素の多くを有するが、この構成では、弁136及び138は超音波トランスデューサ216に置き換えられ、バイパスチャネル208と組み合わせたバイパス弁232はわずかに異なる構成となっている。バイパスチャネル208は、依然として灌注チャネル102を吸引チャネル104と流体結合するように構成されているが、この例では、第1の弁232のチャネル「A」は、灌注チャネル102の代わりに吸引チャネル104と流体連通している。通常の動作モードの間、流体が吸引チャネル104の遠位端から近位端に流れるように、チャネルAは開いており、チャネルBは閉じている。超音波トランスデューサ216は、吸引チャネル104を機械的に振動させるように構成される。振動は、システム100a及び100bのピンチ弁138及び136と同様に、吸引チャネル内に背圧を生成するように(すなわち、コントローラ190を介して)構成することができる。
図6に示すように、一実施形態によれば、超音波トランスデューサ216は、吸引チャネル104の遠位端とバイパスチャネル208との間に配置される。
【0051】
図3は、少なくとも1つの実施形態による尿管鏡105の一実施例の遠位端の斜視図である。レーザ源107は、レーザ放射線を放出するように構成され、光ファイバ106は、レーザ源107に結合され、
図3に示される吸引チャネル104の遠位端に近接してレーザ放射線を伝送するように構成される。光ファイバ106は、カテーテルシャフト112の近位端113から遠位端114まで延在している(例えば、
図2を参照)。特定の実施形態では、システム100は、撮像システムの1以上の構成要素を備えることができる。例えば、尿管鏡105は、
図3に示すように、カテーテルシャフト112の遠位端に配置されたカメラ165を備えることができる。さらに、少なくとも1つの出口146が灌注チャネル104の遠位端に画定される。一実施形態では、少なくとも1つの出口146は、カテーテルシャフト112の中心軸111(例えば、
図2を参照)に対して0度~170度の範囲内の角度で灌注流を導くように構成される。いくつかの実施形態では、流れ角度は、10度~90度の範囲内である。
【0052】
カメラ165に加えて、いくつかの実施形態では、腎臓内の治療領域の視覚化を提供する目的で、超音波を使用することができる。例えば、超音波を腎臓付近の患者の皮膚に適用することができ、その結果得られた画像を医師が使用するために画面に表示することができる。場合によっては、超音波画像を制御源として使用することができる。例えば、ベースライン画像は、処置の前に撮影することができ、腎臓内の圧力を制御する際に、処置全体を通した比較源として使用することができる。
【0053】
1以上の実施形態によれば、システム100a及び100bは、1以上の温度センサを備えてもよい。温度センサ170a及び170bは、それぞれ
図1A及び
図1Bのシステム100a及び100bに示されている。いくつかの実施形態では、温度センサ170a及び170bの少なくとも1つは、圧力センサ156と同様に、腎臓の内部、すなわち、尿管鏡の外部の治療領域の近傍に配置される。他の実施形態では、カテーテルシャフトは、例えばカテーテルシャフトの遠位端に1以上の温度センサを備えて構成されてもよい。少なくとも1つの態様によれば、温度測定値は、温度センサによって取得され、温度が高くなりすぎて腎臓に害を及ぼさないようにするために、コントローラ190によって使用される。理解されるように、レーザによって生成された熱は、腎臓内の流体温度を上昇させることができる。場合によっては、コントローラ190は、システム100の1以上の構成要素、例えば、吸引ポンプ115及び/もしくは灌注ポンプ110、並びに/またはレーザ源107の速度を制御して、腎臓内の温度が許容範囲内、例えば、20℃~45℃の範囲内に維持されることを確実にすることができる。
【0054】
別の態様によれば、システム100a及び100bはまた、1以上の構成要素が手動で操作あるいは制御され得るように構成されてもよい。例えば、
図2に示すように、バイパス弁132は、システムのオペレータ(例えば、医師)によって手動で操作することができる。吸引チャネル104に配置された手動ポンプ134(例えば、
図1A及び
図1Bを参照)は、ユーザが吸引チャネル104を通して流体を圧送するために使用することができる。
【0055】
アブレーション速度の増加
少なくとも1つの態様によれば、砕石術の処置の間、尿管鏡105は、結石標的に近接するように操作され、吸引/灌注システム100は、結石がレーザ106の近くにあることを検出するように構成される。この能力は、チャネルへの入口が結石によって部分的に塞がれると、吸引チャネル104内の圧力及び流量が変化する(それぞれ増加及び減少する)という前提に基づいている。
【0056】
図3に示されるように、光エネルギーを導く光ファイバ106は、吸引チャネル104内に、吸引チャネルの隣に、あるいは吸引チャネルに近接して配置される。機能的には、これは、光ファイバ106の遠位端103が吸引チャネル104の口(遠位端)に配置されることを意味する。いくつかの実施形態では、光ファイバ106は、それ自体のチャネルを有してもよく、他の実施形態では、光ファイバ106は、吸引チャネル104内にそれ自体の管腔を有してもよく、さらに他の実施形態では、光ファイバ106は、吸引チャネル104内に配置され、吸引チャネル104の長さにわたって延びていてもよい。結石が尿管鏡105の吸引チャネル104をふさぐと、吸引チャネル104を通る流れは減少するが、真空圧力は増加する。一実施形態によれば、
図1A、
図1B、及び
図2に示すような流体流量センサ144などの流体流量センサを使用して、吸引チャネル104内の流体流量を監視することができる。いくつかの実施形態では、流量センサ144は、吸引チャネル104の遠位端に取り付けられるか、あるいは配置される。結石の検出は、吸引チャネル104内の測定された流体流量値に基づいて、流体流量の減少と、腎臓内の圧力の増加とを検出するコントローラ190によって判定することができ、これは圧力センサ156及び圧力センサ158の少なくとも1つからの測定圧力値に基づいて判定することができる。コントローラ190は、センサ144並びにセンサ156及び158の少なくとも1つから圧力及び流量の測定値を受信し、このデータを分析して、単位時間当たりの圧力及び流量の変化が、所定の限界値もしくは目標値を満たすかまたは超えるかを判定する。例えば、一実施例によれば、流量の30%の減少(変化)及び圧力の25%の増加(変化)は、結石の存在を示す。いくつかの実施形態によれば、結石の検出に関連する持続時間は、1秒~10秒の範囲内である。
【0057】
コントローラ190を使用して、レーザ動作を結石の検出に同期させ、結石が光ファイバに近接すると発射することができる。これによって、アブレーション速度を実質的に増加させることが示されている。結石がレーザの近くにあると判定されると、吸引チャネル104内に生成された真空(すなわち、真空圧力)を使用して、結石を吸引チャネル104の遠位端にある光ファイバ106の近くに保持する。場合によっては、結石自体の存在は、それを所定の位置に保持するのに十分な真空圧力を生成するが、少なくとも1つの実施形態によれば、吸引チャネル104内の真空圧力は、結石が所定の位置にしっかりと保持されることを確実にするために(例えば、吸引ポンプ115を介して)さらに増加されてもよい。この真空により、ファイバと結石との間の接触時間を増加させることによってアブレーション速度が増加する。アブレーション速度を増加させることに加えて、追加的な利点は、結石が標的領域内にあるときにのみレーザ放電が起こり、それにより、付随的な損傷の可能性が制限されることである。したがって、レーザ同期に伴う真空アタッチメントは、アブレーション速度を増加させ、望ましくないレーザ放電を最小限に抑える。
【0058】
別の態様によれば、レーザは、パルス状のレーザ放射線を放出するように構成され、パルス状のレーザ放射線は、吸引104チャネルを通る流体流のパルス化と同期することができる。例えば、結石が最適な標的位置(すなわち、吸引チャネル104の口または遠位端)にあると、所定のレーザ・パルス・シーケンス(例えば、1~1000のレーザパルス)が結石に向けられ、続いて、結石が再び最適な標的位置になるまで、吸引チャネル104内の圧力がパルス化される。その後、このサイクルが繰り返される。結石アブレーションの効率もまた、この技術によって向上する。いくつかの実施形態では、流体流のパルシングとレーザパルスとは同期していない。そのような実施形態の非限定的な一実施例によれば、圧力パルスの周波数は、最小0.1Hzであってもよく、レーザパルスの繰り返し率は、約3Hz~3000Hzの範囲内であってもよい。
【0059】
別の態様によれば、吸引チャネル104は、吸引チャネル104内を流れる流体の温度を測定するための温度センサ(図面には明示せず)を含むことができる。この特徴は、組織が過熱しないようにするのに役立つことができる。例えば、吸引チャネル104内の戻り流体の(所定の目標を超える)温度の上昇を検出すると、治療部位での流体交換の速度を増加させるか、またはレーザ源によって放出されるレーザ放射線のパワーを減少させる必要性(コントローラ190からのコマンドによって実施される)が生じる可能性がある。過熱による組織損傷を防止することに加えて、このフィードバック機構はまた、高いアブレーション速度を確保するためにレーザ出力を安全なレベルに保つ。
【0060】
平衡の維持-計算
流体ポンプシステムのパラメータをより正確に定義し、流体の流れと圧力の平衡を維持するために、特定の計算を行うことができ、その概要が以下に説明される。
【0061】
まず、いくつかのモデリング技術を使用して、ポンプなどのシステムの構成要素の1以上のパラメータを定義することができる。ハーゲン・ポアズイユの式により、流量の増加に対する圧力を計算することができる。ハーゲン・ポアズイユの式は、圧力差δP(パスカル)を定義し、これは、内側半径r(m)及び長さL(m)を有するチャネル内の粘度μ(Pa-sec)を有する流体の体積流量Q(m3/sec)を生成するために必要である。
圧力差:δP=8μLQ/πr4
μ=動粘度。0.9%の生理食塩水の場合:μ=1.02*10-3Pa-sec
L=スコープの長さ。L=0.7m
Q=体積流量。Q=70mL/min=1.17mL/sec=1.17*10-6m3/sec
r=吸引チャネルの半径。r=0.6mm=6*10-4m
【0062】
このようにして、吸引のための圧力差を計算することができる。一実施例によれば、尿管/膀胱/尿道を通り、スコープの外側本体の周りを通る平均流量は約30mL/minであり、最大値は100mL/minである。これにより、約70mL/minが吸引チャネルを通過する。
δPasp=8*1.02*10-3*0.7*1.17*10-6/π*1296*10-16=
=1.63*104Pa=16300Pa=164CMの水=2.36psi
【0063】
2.36psiという結果は、腎臓から流体を「吸引」するためにスコープの近位端に加える必要がある圧力である。これは負圧である。腎臓の作動気圧が40CM(ここで、CM=センチメートル水柱(cmH2O))であると仮定すると、スコープの近位端の負圧は次のようになる。
吸引圧Pasp=40 CM-164 CM=-124 CM=-1.8 psi
【0064】
この結果は、-1.8psiを適用することにより、100 mL/minの流量を作り出すことができることを意味する。さらに、腎臓内に正圧が存在した場合、この流量は腎臓内のこの正圧を減少させる。
【0065】
同様に、灌注圧力を計算することができる。一実施例では、灌注流量は100mL/minであり、これは1.67*10-6m3/secである。スコープの長さは0.7mであり、灌注チャネルの半径も0.6mmである。
δPirr=8*1.02*10-3*0.7*1.67*10-6/π*1296*10-16=
=2.32*104 Pa=23200 Pa=233 CM=3.36 psi
【0066】
3.36psiという結果は、1.2mmの直径及び0.7mの長さを有するチャネルを通る100mL/minの流量を有するために必要な圧力差である。腎臓内に約40CMの水圧が依然として必要であると仮定すると、灌注ポンプは約273CMまたは約4psiの圧力を伝達しなければならない。
【0067】
上記の分析は、灌注ポンプが少なくとも4psiの圧力及び少なくとも100mL/minの流量を生成するように構成する必要があり、吸引ポンプが少なくとも1.8psiの負圧及び少なくとも70mL/minの流量を生成するように構成する必要があることを示している。
【0068】
制御
コントローラ190は、システム100の動作を制御するために制御プログラムを利用することができる。一般的に言えば、コントローラ190は、データ取得構成要素192(例えば、
図2のデータロガー)、記憶構成要素(図示せず)、及び閲覧構成要素(図示せず)を含む。
【0069】
データ取得構成要素192は、圧力及び/または流量センサなどのセンサのうちの1以上から測定データを、クエリを行って取得し、次いで、測定データは、コントローラ190によって処理される。コントローラ190はまた、制御プログラムによって使用することができるユーザからの入力を受信することができる。次いで、情報は、コントローラ190によって処理され、レーザ源107、弁132、136、138、灌注ポンプ110、及び/または吸引ポンプ115を制御するために使用され得る。
図2の図は、これらの構成要素の制御がデータ取得構成要素192を経由することを示しているが、コントローラ190がこれらの構成要素を直接制御できることを理解されたい。例えば、弁の動作は、コントローラ190によって送信される電圧信号によって制御される。
【0070】
上述したように、コントローラ190は、データ取得構成要素192から受信され、システム100a、100b(またはシステム200)の1以上のセンサによって送信された測定値に基づいて、レーザ源107、弁132、136、138、及びポンプ110、115(並びに超音波トランスデューサ216)のうちの1以上について、予め設定されたもしくは所定の目標値(記憶することができる)または手動で制御された値を利用する制御プログラムでプログラミングされ得る。コントローラ190はまた、データ取得動作、すなわち測定データまたは他の信号データを開始するために、データ取得構成要素192を制御することができることを理解されたい。少なくとも1つの実施形態によれば、圧力センサ及び/または流量センサのうちの1以上は、様々な時間間隔で、または連続的に測定データを取得することができる。
【0071】
コントローラ190によって使用される制御プログラムは、レーザ発射を結石の付着と同期させたり、結石/ファイバの接触を確実に持続させたり、吸引チャネルの詰まりを除去したり、腎臓及びシステム内の平衡を維持したりするなど、1以上の所望の結果を達成するために、多くの異なる制御動作または制御状態を実行するように構成することができる。例えば、圧力及び流れの異常は、チャネル弁を開閉し、流体ポンプの速度を調整することによって調整することができる。
【0072】
前述のように、1以上の(圧力、流体流)センサは、腎臓における目標平衡圧力の維持に役立つように使用することができる。さらに、灌注チャネル102内のセンサ(例えば、圧力センサ150及び/または流量センサ140)は、灌注チャネル102が適切に機能していることを確かめるために使用することもでき、潜在的な損傷を検出するために使用することもできる。例えば、灌注ポンプ110がポンピングしている(すなわち、オンになっている)が、センサが灌注チャネル102内の流体流を検出できない場合、これはシステムエラーを示す。さらに、圧力センサが、高すぎるかまたは低すぎる値を測定する場合、これもシステムエラーも示す。
【0073】
実施例
本明細書に開示されるシステム及び技術の実施形態の機能及び利点は、以下に記載される実施例に基づいてより完全に理解され得る。以下の実施例は、開示された吸引及び灌注システムの様々な態様を例示することを意図しているが、その全範囲を完全に例示することを意図していない。
【0074】
実施例-レーザ出力及び吸引流体流量の実験
尿管鏡の吸引チャネル内の流体流を利用してより高いレーザ出力を達成する能力を試験するために実験を行った。より高いレーザ出力は、アブレーション速度の増加を含むいくつかの利点を提供することができ、処置時間を短縮する可能性がある。吸引チャネル内の流体流を使用して、レーザの近傍の温度を制御することができ、これにより、組織を安全な温度範囲内に維持することができる。
【0075】
実験は、生理食塩水で満たされたシリコーン製の尿路模型を使用して行われ、そのシリコーン製の尿路模型は、ツリウム・ファイバ・レーザによって装着された尿管鏡のシャフトの挿入に役立ち、チューブを使用して灌注及び吸引流を作動させた。レーザは、1ジュール(J)のパルスエネルギーと、500ワット(W)のピーク出力と、9つの異なる平均出力(10、20、30、60、70、80、90、100、120W)の可変パルス繰り返し率とで動作された。吸引流量は、50ml/min~90ml/min(
図7に示すように)の値で試験され、灌注流は、吸引流よりも約10ml/min多い量に設定された。2つの温度センサ(熱電対タイプK)は、3mmの外径を有するシャフトの遠位端の上下約20mm~30mmに配置された。
【0076】
温度測定値は、飽和及び温度安定レベルに達した後に得られたが、これには最大15分かかった。最大温度上昇(デルタ)は23℃として選択され、初期流体温度は20℃、最大許容温度は45℃であった。結果は
図7に示されており、吸引流体の流量を50ml/min~90ml/minに増加させると、2倍のレーザ出力、すなわち60W~120Wまでを安全に使用することができることを示している。対照的に、アクセスシースを介した自然吸引による10ml/minの従来の流量では、安全に使用できる最大レーザ出力は通常20W~25Wである。
【0077】
本発明に従って本明細書に開示される態様は、それらの適用において、以下の説明に記載されるかまたは添付の図面に示される構成要素の構造及び配置の詳細に限定されない。これらの態様は、他の実施形態を想定することができ、様々な方法で実施または実行することができる。特定の実施態様の実施例は、例示のみを目的として本明細書に提供されており、限定することを意図するものではない。特に、任意の1以上の実施形態に関連して説明した動作、構成要素、要素、及び特徴は、任意の他の実施形態における同様の役割から除外されることを意図しない。
【0078】
また、本明細書で使用される表現及び用語は、説明のためのものであり、限定するものと見なされるべきではない。本明細書で単数形で言及されるシステム及び方法の実施例、実施形態、構成要素、要素または動作への任意の言及は、複数を含む実施形態も包含することができ、本明細書で任意の実施形態、構成要素、要素または動作への複数形での任意の言及は、単数形のみを含む実施形態も包含することができる。単数形または複数形での言及は、本開示のシステムまたは方法、それらの構成要素、動作、または要素を限定することを意図するものではない。本明細書における「含む(including)」、「備える(comprising)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「伴う(involving)」及びそれらの変形の使用は、その後に列挙される項目及びその均等物並びに追加の項目を包含することを意味する。「または」への言及は、「または」を使用して記載された任意の用語が、記載された用語の単一、2つ以上、及びすべてのいずれかを示し得るように、包括的であると解釈され得る。さらに、本文書と参照により本明細書に組み込まれる文書との間で用語の使用が矛盾する場合、組み込まれた参照における用語の使用は、本文書の使用を補足するものであり、相容れない不一致については、本文書における用語の使用が支配する。さらに、本明細書では、読者の便宜のためにタイトルまたはサブタイトルを使用してもよく、これは本発明の範囲に影響を及ぼさないものである。
【0079】
少なくとも1つの実施例のいくつかの態様をこのように説明してきたが、当業者には、様々な変更、修正、及び改善が容易に想到されることを理解されたい。例えば、本明細書に開示される実施例は、他の状況でも使用され得る。そのような変更、修正、及び改良は、本開示の一部であることを意図しており、本明細書で説明される実施例の範囲内にあることを意図している。したがって、上記の説明及び図面は単なる例にすぎない。
【符号の説明】
【0080】
100 システム、100a システム、100b システム、102 灌注チャネル、103 遠位端、104 吸引チャネル、105 尿管鏡、106 光ファイバ、107 レーザ源、108 バイパスチャネル、110 灌注ポンプ、111 中心軸、112 カテーテルシャフト、113 近位端、114 遠位端、115 吸引ポンプ、132 バイパス弁、134 手動ポンプ、136 弁、138 弁、140 流量センサ、144 流量センサ、146 出口、150 圧力センサ、156 圧力センサ、158 圧力センサ、160 灌注流体源、165 カメラ、170a 温度センサ、170b 温度センサ、190 コントローラ、192 データ取得構成要素、200 システム、208 バイパスチャネル、216 超音波トランスデューサ、232 バイパス弁
【国際調査報告】