(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-17
(54)【発明の名称】螺旋状要素を有する陰圧創傷療法デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 27/00 20060101AFI20240410BHJP
A61M 1/00 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
A61M27/00
A61M1/00 160
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568318
(86)(22)【出願日】2022-05-02
(85)【翻訳文提出日】2023-12-20
(86)【国際出願番号】 IB2022054042
(87)【国際公開番号】W WO2022234434
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512080321
【氏名又は名称】エシコン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Ethicon, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】チチョッキ・フランク
(72)【発明者】
【氏名】スロス・スコット
(72)【発明者】
【氏名】キリオン・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】モータス・ジャレッド
(72)【発明者】
【氏名】コーン・ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ・トゥーシャー
(72)【発明者】
【氏名】ジャシント・ガブリエル
【テーマコード(参考)】
4C077
4C267
【Fターム(参考)】
4C077AA15
4C077DD19
4C267AA39
4C267BB02
4C267BB06
4C267BB19
4C267BB40
4C267CC06
4C267GG02
4C267GG16
4C267GG43
4C267JJ08
(57)【要約】
デバイスは、陰圧創傷療法(NPWT)で使用するために構成されている。デバイスは、管近位端及び管遠位端を有する管と、コイル近位端からコイル遠位端まで延在する複数の巻線を有するコイルと、を含む。コイル遠位端は、コイル内から、コイルを通って、コイルを取り囲む組織に、陰圧を印加することを可能にする様式で、管近位端に結合される。コイルは、複数の巻線のうちの隣接する巻線間に空間を含み、空間が、所定の寸法を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰圧創傷療法(NPWT)で使用するために構成されたデバイスであって、
管近位端及び管遠位端を有する管と、
コイル近位端からコイル遠位端まで延在する複数の巻線を有するコイルであって、前記コイル遠位端が、前記コイル内から、前記コイルを通って、前記コイルを取り囲む組織に、陰圧を印加することを可能にする様式で、前記管近位端に結合され、前記コイルが、前記複数の巻線のうちの隣接する巻線間に空間を含み、前記空間が、所定の寸法を有する、コイルと、を備える、デバイス。
【請求項2】
前記コイルを前記管から取り外すことができるように、前記コイルが、前記管に分離可能に結合された螺旋状コイルである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記管近位端が、その中への材料の導入を阻止するために密封されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記管遠位端に結合された縫合針を更に備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記管近位端が、前記コイル遠位端に圧入されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記コイルと前記管との間の接続が、前記デバイスを組織内の所望の位置に配置した後、少なくとも事前定義された解放量の力が前記コイルと前記管との間に加えられたとき、前記管を前記コイルから引き離すことを可能にするように構成されている、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記コイルが、生体吸収性材料で形成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記空間の前記所定の寸法が、2μm~80μmである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記空間の前記所定の寸法が、40μm~60μmである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記コイルが、抗微生物薬を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記抗微生物薬が、ポリマー内にあるか、又は前記ポリマーの表面上のコーティングとして形成されている、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記コイルの断面が、円形、正方形、又は三角形のうちの1つである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
前記コイルが三角形の断面を有するとき、前記コイルの頂角及び高さが、前記コイルの径方向最外点において前記コイルの隣接する巻き間の所望の距離を達成するように選択されている、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記コイルが、コイルルーメンを中心にして巻き付けられた第1の中空管で形成され、前記第1の中空管が、前記第1の中空管内の第1の管ルーメンから前記コイルルーメンに開口する複数の第1の開口部を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
前記コイルが、前記コイルルーメンの周りに二重螺旋で巻き付くように前記第1の中空管と絡み合った第2の中空管を含み、前記第2の中空管が、前記第2の中空管内の第2の管ルーメンから前記コイルルーメンに開口する複数の第2の開口部を含む、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記コイルの遠位部分を包み込むカラーを更に含み、前記コイルルーメン並びに前記第1の中空管及び前記第2の中空管の開口する遠位端が、前記カラーに加えられた吸引力が前記コイルルーメン並びに前記第1の開口部及び前記第2の開口部に加えられるように、前記コイルの遠位開口部に対して開口している、請求項15に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
本開示は、2021年5月7日に出願された米国特許仮出願第63/186,016号及び2022年3月4日に出願された米国特許仮出願第63/316,453号に対する優先権を主張するものであり、これらの出願の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本開示が関係する技術分野は、陰圧創傷療法(Negative Pressure Wound Therapy、NPWT)、具体的には、改善された創傷治癒及び創傷合併症の予防のための組織の接近(approximation)に使用されるデバイスである。
【背景技術】
【0003】
手術部位に適用される局所NPWTシステムに関連する問題のうちの1つは、これらのシステムが、多くの場合、デッドスペースを排除しないか、又は皮膚表面下にある組織の接近を支援しないことである。
【0004】
別の問題は、局所NPWTが、多くの場合、適切に機能するために皮膚に正確に密封されなければならないドレッシングの使用を必要とすることである。
【0005】
別の問題は、従来のドレッシングが、大きく、非吸収性であり、除去するのが困難であり、かつ痛みを伴うことである。
【0006】
局所NPWTシステムに伴う別の問題は、手術部位の表面を清潔かつ衛生的に保つために、療法の過程にわたってドレッシングを複数回交換する必要があり得ることである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、手術部位における組織の真空補助接近のための生体吸収性デバイスに関する。このデバイスは、陰圧と併せて使用されるとき、手術創傷内の軟質な組織深部の密接な接近を促進することができる。
【0008】
本開示はまた、陰圧創傷療法(NPWT)で使用するために構成されているデバイスに関する。デバイスは、管近位端及び管遠位端を有する管と、コイル近位端からコイル遠位端まで延在する複数の巻線を有するコイルと、を含む。コイル遠位端は、コイル内から、コイルを通って、コイルを取り囲む組織に、陰圧を印加することを可能にする様式で、管近位端に結合される。コイルは、複数の巻線のうちの隣接する巻線間に空間を含み、空間が、所定の寸法を有する。
【0009】
加えて、本開示は、管の遠位端に結合された針と、管の近位端に結合されたコイルと、を備えた管を有するデバイスを、手術部位に配置するための方法に関する。本方法は、創傷の内部から深部組織を通り、かつ皮膚を通って出るように針を駆動させることと、針を管から切り離すことと、流体コネクタを使用してデバイスを真空源に接続することと、真空圧力をデバイスに約50mm Hg~約130mm Hgで印加することと、療法の終了時に、管をコイルから除去して、コイルを創傷に残すことと、を含む。
【0010】
更に、本開示は、生体内の組織を接近させるための方法に関する。本方法は、管近位端及び管遠位端を有する管と、コイル近位端からコイル遠位端まで延在する複数の巻線を有するコイルと、を含むデバイスを、手術切開部に配置するステップであって、コイル遠位端が、管近位端に結合される、配置するステップと、陰圧がコイルを通ってコイルを取り囲む組織に印加されて切開部の隣接する組織を組織と一緒に引き寄せるように、コイルのルーメンに陰圧を印加するステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本特許又は出願書類は、カラーで作成した少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を有する、本特許の複製は、要請があれば、必要な手数料を支払うことにより、米国特許商標庁によって提供されるであろう。
【
図1】本開示の実施形態による、陰圧創傷療法(NPWT)デバイスの側面図を示す。
【
図2a】
図1のNPWTデバイスの管とコイルとの間の接合部の拡大側面図を示す。
【
図2b】
図2aに示される管とコイルとの間の接合部の断面図を示す。
【
図3】
図1のNPWTデバイスのコイルの断面図を示す。
【
図4a】本開示の実施形態による、陰圧創傷療法(NPWT)デバイスの上面図を示す。
【
図4b】
図4aのNPWTデバイスのコイルの拡大図を示す。
【
図4c】
図4aのNPWTデバイスの隣接するコイル間の間隙の顕微鏡図を示す。
【
図5】コイルが円形断面を有する実施形態によるコイルの断面図を示す。
【
図6】コイルが正方形断面を有する実施形態によるコイルの断面図を示す。
【
図7】コイルが第1の三角形断面を有する実施形態によるコイルの断面図を示す。
【
図8】コイルが第2の三角形断面を有する実施形態によるコイルの断面図を示す。
【
図9】更なる実施形態によるデバイスの側面図を示す。
【
図11】
図9のデバイスのコイルの一部分の部分断面図を示す。
【
図12】
図9のデバイスのコイルの一部分の断面側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本開示の実施形態による陰圧創傷療法(NPWT)デバイス100の側面図である。連続した無孔管120に取り付けられ、それと流体連通している少なくとも1つの螺旋状構成要素又はコイル110で構成された、デバイス100。次いで、連続した無孔管120は、好ましくは、縫合針130に取り付けられて、手術部位におけるデバイスの容易かつ効果的な留置を促進する。コイル110及び管120は、好ましくは、縫合糸製造の分野において一般的に使用される生体吸収性ポリエステルのファミリーから生成される。手術部位内に任意の組織レベルで設置するための外科医の選好に適応するように、多種多様な針130、又は様々なサイズ、曲率、及び針先設計が、管120に取り付けられ得る。加えて、コイル110の近位端は、好ましくは、コイル110のルーメンを詰まらせる場合がある流体又は他の細片のコイル110への導入を阻止するために、コイル110の近位端を密封するプラグ115を含む。
【0013】
手術、病変、及び/又は創傷は、多くの場合、組織の層を分離するか、又は閉鎖することが望ましい組織内にデッドスペース(例えば、切除又は他の開口領域を介して生じる空隙)を生じさせる場合がある。当業者によって理解されるように、身体は、一般に、治癒に有害な影響を及ぼし得る(例えば、細菌の拡散を可能にするなど)流体を発生させることによって、組織内のそのようなデッドスペースに反応する。したがって、デッドスペースを取り囲む組織を引き合わせることによってデッドスペースを排除することにより、治癒が促進され、上述の漿液の有害な影響が最小限になる。局所的に適用される閉鎖切開部NPWTドレッシングなどの従来の処置は、表面切開部の縁部を一緒に引き寄せるのに効果的であったが、組織のより深部にあるデッドスペースを排除するのには実質的に効果的ではなかった。
【0014】
加えて、当業者によって理解されるように、組織を一緒に引き寄せるとき、組織の小領域上の応力集中を排除するために、組織に加えられる力を可能な限り均一かつ広い表面積にわたって拡散させることが一般に望ましい。当業者であれば、そのような応力集中の排除又は最小化により、そのような応力集中が存在した場合にもたらされ得る血液灌流も低減し得ることが理解されるであろう。これは、特に、軟質であり(例えば、脂肪組織)、そのような集中した力を加える縫合などの組織接近技法に不十分に反応し得る組織に役立つ。本実施形態は、広い領域にわたって真空圧力を印加して、デッドスペースに見出され得るもの(例えば、空気、流体など)をデッドスペースから除去し、デッドスペースを取り囲む組織を一緒に引き寄せる。
【0015】
これらのデバイスは、様々な組織によって取り囲まれた広範囲の環境において、かつ異なる流体及び/又は気体の存在下で動作するように設計されているため、デバイスの構造は、デッドスペースの内容物を排出しながら、陰圧が組織に印加されるチャネルの開口を維持することを目的としている。当業者によって理解されるように、陰圧は、ユーザがこの処置を終了することを望むまで印加され続けるため、処置される領域内で発生した流体は、配置されたデバイスを介して身体から引き出され続ける場合がある。しかしながら、周囲組織を一緒に引き寄せて互いに接触させることなく流体を除去するドレーンをデッドスペース内に配置する状況と比較して、組織の対向する部分を一緒に引き寄せることによってデッドスペースが排除される程度まで、流体の発生が実質的に低減されるであろう。
【0016】
図2aは、
図1のデバイス100の管120とコイル110との間の接合部の拡大側面図である。
図2bは、
図2aに示される管120とコイル110との間の接合部の断面図である。管120は、コイル110のルーメン112内に少なくとも部分的に配設される。いくつかの実施形態では、管120は、熱処理、溶剤結合、又は生体吸収性接着剤の使用を介して、コイル110に結合され得る。いくつかの実施形態では、管120は、代替的に、コイル110に圧入される。そのような実施形態では、管120の外径は、コイル110の内径よりもわずかに大きい。圧入の深さ及びコイル110の設計は、療法の終了時に、コイル110からデバイス100を分離するのに必要な力を調節するように調節され得る。生体吸収性フィラメントの短い断片をコイル110の端部に圧入して、反対側の端部を密封することができる。接着剤又は熱密封方法も使用され得る。
【0017】
図3は、
図1のデバイス100のコイル110の断面図である。コイル110を含むフィラメントループ116間の間隙114は、血餅、細胞、又は細胞集団、及び他の創傷デトリタスが、コイル110と真空源(図示せず)との間に位置する細い管(図示せず)を詰まらせることを阻止するように調整することができる。いくつかの実施形態では、間隙114は、単一の赤血球の濾過が可能となる2um未満であり得、単一の赤血球は、所望に応じて組織への真空圧力の印加を抑制するデバイスルーメン内での凝固を回避するのに役立ち得る。いくつかの実施形態では、間隙114は、代替的に、創傷細片を濾過し、同時にチューブ120及びコイル110のルーメン112の詰まりを阻止するために、約2μm~80μmであり得る。
【0018】
図4aは、本開示の実施形態によるデバイス100の上面図である。
図4bは、
図4aのデバイス100のコイル110の拡大図である。
図4cは、
図4aのデバイス100のコイル110の隣接するループ116間の間隙114の顕微鏡図である。いくつかの実施形態では、デバイス100は、サイズ2(すなわち、約0.024インチ)の生体吸収性ポリエステル(例えば、Ethicon,Inc.のポリジオキサノン)繊維から生成されたループ116に取り付けられる、0.021インチ内径及び0.032インチ外径を有する生体吸収性ポリエステル(例えば、Ethicon,Inc.のMONOCRYL)チューブから生成され得る。
【0019】
図5~
図8に示され、かつ以下により詳細に記載されるように、様々な実施形態によるコイル110は、周囲組織への陰圧の印加、及び様々なタイプの周囲組織がコイル110と相互作用する程度に関して、異なる特性につながる異なる断面形状を有し得る。いくつかの実施形態では、コイル110の長さは、約3.5インチであり得、管120の長さは、約14インチであり得る。しかしながら、様々な外科的必要性及び切開部サイズに対処するために、幅広いサイズ及び長さが可能であることに留意されたい。PDSコイル及びMONOCRYL管の代わりに、デバイス(例えば、コイル又は微小管)は、代替的に、例えば、PGA、PGA/PLA、他の生体吸収性ポリエステル、腸線、コラーゲン、PVA、酸素再生セルロースなどの他の生体適合性材料及び生体吸収性材料で作製され得ることにも留意されたい。
【0020】
いくつかの実施形態では、デバイス100を配置する方法は、Blakeドレーンの埋め込みに使用される方法に類似している。配置位置は、典型的には、多層閉鎖を必要とする手術創傷における縫合線間であろう。いくつかの実施形態では、デバイス100を配置する方法は、創傷の内部から深部組織を通り、かつ皮膚を通って出るように針130を駆動させることと、針130を管120から切り離すことと、流体コネクタ(例えば、Toughy-Borst又は他の同様のコネクタ)を使用してデバイス100を真空源に接続することと、配置したデバイス100に真空圧力を約50mm Hg~約130mm Hgで印加することと、療法の終了時に、管120をコイル110から取り外して、生体吸収する創傷部位にコイル110を残すことと、を含む。いくつかの実施形態では、本方法は、追加的に、偶発的な抜去を阻止するために、接着細片及び/又は透明接着バッチで適所にデバイス100を固定することを含み得る。
【0021】
いくつかの実施形態では、真空圧力は、連続的に印加される。いくつかの実施形態では、真空圧力は、代替的に、所望の圧力範囲内で循環される。療法の終了時におけるコイル110からの管120の取り外しは、コイル110から管120を取り外すために適度な力を管120に加えることを通して実行され得る。コイル110は、生体吸収するために残ったままである。代替として、当業者によって理解されるように、デバイス100は、皮膚表面で管120を切断することによって患者から分離され、次いで包帯を適用してもよい。加えて、当業者によって理解されるように、開示される実施形態のコイル110のループ116は、本質的に強力であり、コイル110を圧潰することなく、組織への著しくより高い真空圧力レベル(例えば、>>130mm Hg)の送達を可能にし、コイル110は、大きく拡張された「開口面積」を達成する(すなわち、コイル110を取り囲む全ての組織が、真空圧力に曝露される)。
【0022】
本明細書に開示されるデバイス100は、はるかにより細い寸法で真空補助組織接近を可能にするように構成され、従来のシリコーンベースのBlakeドレーンよりも広い面積の組織に対して異なる様式で動作する。デバイス100の設計及び材料の両方は、細い寸法を可能にするように構成される。一実施形態では、コイル110は、細長い渦巻き状又は螺旋状のセクションであり得、管120は、細長い渦巻き状又は螺旋状のセクションから分離可能である連続した無孔微小管であり得る。更に、連続した壁要素は、生体吸収性ポリエステル(例えば、Ethicon,Inc.のMONOCRYL及び/若しくはポリジオキサノン、又はPGA/PLAブレンド)から、適正な延伸比及びアニールサイクルで加工されて最適なレベルの結晶化度を発現させたとき、今日この分野で使用されている従来のシリコーンベースのデバイスよりもかなり強力であり、したがって、偶発的な破損をはるかに受けにくい。言い換えると、従来のドレーンが本明細書に記載されるデバイス100のスケールで作製された場合、これらの従来のドレーンは、除去中に容易に破損し、創傷部位における非吸収性材料の閉じ込めをもたらす場合があり、これにより、除去するための侵襲的再手術が必要となる。
【0023】
従来のドレッシング/デバイスと比較したときの、本明細書に記載されるデバイス100の追加の利益としては、1)デバイスの直径が縮小されると、結果的に皮膚と交わる表面積が減少するため、感染のリスクが軽減されること、及び2)直径が大きいデバイスの取り外しは患者にとって痛みを伴う場合があるが、直径がより細いデバイスは、典型的には、取り外し中のより少ない痛みに関連し、患者にとって全体的に良好な体験をもたらす。更に、これらの実施形態のコイル110が創傷閉鎖中に縫合糸によって捕捉されたとしても、コイル110は単に体内に吸収されるだけであるため、これが処置に影響を及ぼすことはないであろう。対照的に、従来のシリコーンドレーンでは同じ状況に対して再手術が必要となるであろう。加えて、これらの実施形態のコイル110の可撓性は、著しい運動及び/又は応力を受ける領域(例えば、関節周りにあるであろう)に対する創傷において、それらを有益にする。
【0024】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるデバイス100に使用される生体吸収性ポリエステルは、例えば、トリクロサンによる蒸気注入/コーティングを使用して、抗微生物特性を呈するように作製することができる。抗微生物コーティングは、MRSAを含む、院内感染に関連する最悪かつ最も一般的な細菌の多くに対して臨床的効果を呈することを示している。提供品であるEthicon,Inc.のPLUSファミリーの一部であるMONOCRYL及びPDS縫合糸は、本開示に記載されるNPWTプロトタイプで使用されるものと同じ材料である。
【0025】
最も重要なことに、本開示に記載されるデバイス100は、皮膚に適用される最先端のNPWT手術部位ドレッシングよりも優れたいくつかの利点を供与することができる。そのようなNPWT手術部位創傷ドレッシングは、一般に、圧縮可能な多孔質吸収材料で構成され、この材料は、接着剤で裏張りされた連続した気密透明ドレッシングによって覆われる。次いで、このドレッシングは、管及び真空ポンプと連通して配置される。そのようなドレッシングに伴う1つの難題は、適切に機能するためにドレッシングが患者の皮膚に対してしっかりと密封されなければならないという事実に関連する。ドレッシングにおける任意のしわ、ピンホール、又はねじれは、ドレッシングを無効にする真空漏れをもたらし得る。
【0026】
従来のNPWTドレッシングに伴う別の問題は、場合によっては、患者がシャワーを浴びることができないことである。従来のNPWTドレッシングに関連するなお別の問題は、特にドレッシングが汚れたり濡れたりした場合に、ドレッシングを定期的に交換する必要があることである。最後に、手術創傷の表面に局所的に適用される従来のNPWTドレッシングは、多くの場合、それらが適用される皮膚レベルで組織の第1の層を越えて真空引きを行うことができない。結果として、優れた組織接近の臨床的利益は、大部分が皮膚レベルに限定され、深部切開部を取り囲む組織は、所望に応じて接近しない。
【0027】
図5~
図8に示されるように、実施形態は、目標及び/又はデバイスが常在する組織のタイプに依存して、異なる結果を達成するために、異なる断面を有するコイルを採用してもよい。例えば、
図5に示される標準的な円形断面を有するコイル150が上記のようなフィルタリング及び組織支持挙動を有する一方で、
図6に示されるような正方形断面を有するコイル160(
図5の円形コイルの間隙サイズgと同じ間隙サイズgを有する)は、強化されたフィルタリング能力を有するであろう。当業者であれば、デバイスのフィルタリング能力が間隙gのサイズに依存する一方で、周囲組織に面するコイル150、160の部分の異なる形状及び間隔は、組織がコイル150、160の隣接する巻き(turn)間の空間に引き込まれる程度に影響を及ぼすことを理解するであろう。
【0028】
例えば、
図7に示されるようなコイル170及び
図8に示されるようなコイル180は、各々、三角形の断面を有し、三角形の高さと頂角αとを組み合わせた間隙gが、組織と接触するコイルの隣接する頂点間の距離dを決定し、これにより、陰圧が印加されたときにコイル170、180の巻きに対して、又はそれらの間に組織が引き寄せられる程度が変化するであろう。したがって、当業者によって理解されるように、組織がより柔軟である場合、頂角α及び/又は高さhを変更して、dを小さくすることによって、距離dを小さくすることが望ましい場合があり、組織がより硬質であるとき、dは周囲組織の陰圧への曝露を強化するために大きくすることができる。
【0029】
当業者によって理解されるように、コイル110の構成は、間隙gへと組織を引っ張って潜在的にデバイスを密封することなく、組織の最大表面積に真空力を加えることを可能にするように選択される。したがって、非常に軟質な組織(例えば、脂肪組織)の場合には、正方形断面を有するコイル160(
図6に示されるような)が望ましい場合がある。組織があまり柔軟でない場合(例えば、線維組織)、三角形の断面を有するコイル170の使用は、増加した距離dが組織のより広い表面積にわたる真空圧力の印加を可能にするため、より望ましい場合がある。
【0030】
逆に、本明細書に記載されるデバイス100は、ドレッシングの使用を必要とせず、手術部位の深部組織をより効果的に接近させるために使用することができる。結果として、本明細書に記載されるNPWTデバイスは、上述のようなある特定の従来のNPWTドレッシングに関連する限定の多くを克服する。本明細書に記載されるような実施形態では、現在のNPWTシステムに対して試験されている。
【0031】
図9~
図12に示されるように、更なる実施形態によるデバイス200は、以下に記載される相違点を除いて、上述のデバイス100と実質的に同様に構築される。具体的には、デバイス200は、二重螺旋として形成されるコイル210を含み、ここで、第1の中空管210aは、第1の管210a及び第2の管210bが各々、
図11及び
図12において点線によって概略的に輪郭が描かれているコイルルーメン214の周りに螺旋状に巻き付くように、第2の中空管210bと絡み合っている。加えて、管210a及び210bの各々は、密封された近位端(図示せず)から遠位開口部212a(管210aの場合)及び212b(管210bの場合)まで延在する別個の管ルーメン210cを画定する。管210a及び210bの各々は、コイルルーメン214に面する複数の開口部215を含む。図示された実施形態では、管210a及び210bの各々は、コイルルーメン214を中心とした管210a及び210bの各々の各巻きごとに2つの開口部215を含む。これらの開口部215は、コイル210の長さに沿った複数位置で、コイルルーメン214の中への吸引の導入を可能にする。これは、コイルルーメン214自体を介した吸引の導入を阻止する閉塞部が閉塞部よりも吸引源から遠くに位置するコイル210の一部に出現した場合であっても(例えば、吸引がコイル210の遠位端を介して、ルーメン214内の閉塞部よりも近位のコイル210の一部に適用される場合)、コイルルーメン214への吸引の連続適用を可能にするレベルの冗長性を提供する。当業者であれば、開口部215の数及び間隔は、コイルルーメン214に沿った吸引の所望の分布及びレベルを得るために、所望に応じて変動させることができることを理解するであろう。
図9及び
図10に見られるように、コイル210の遠位部分は、カラー211内に受容され、遠位開口部212a及び212bは、カラー211の先細の遠位端211’内に受容される。カラー211の遠位端211’は、管213に適用される吸引が遠位開口部212a及び212b並びにコイルルーメン214に対して開口しているカラー211内の空間に導入されるように、管213の近位端に結合される。したがって、管213に適用される吸引は、カラー211内の空間を介してコイルルーメン214に直接適用され、管210a及び210b内の開口部215を介してコイルルーメン214に適用される。上に示されるように、これにより、ルーメン214内に閉塞部が出現した場合であっても、デバイス200は、その長さの大部分にわたって吸引を適用し続けることが可能になる。実際、開口部215のうちの1つ又は2つ以上が閉塞されたとしても、吸引は、コイルルーメン214を介して、又は閉塞されていない開口部215のうちのいずれかを介して、依然として適用され得る。
【0032】
当業者であれば、デバイス200の開口部215と同様の開口部を有する中空管で形成された単一コイルを含むデバイス100と同様のデバイスを形成して、単一コイル装置と同様の冗長性を提供することができることを理解するであろう。この場合、必要に応じて、カラー211などのカラーが適用され得る。代替的に、吸引は、1つの吸引源を介してコイルルーメン自体に適用され得る一方で、第2の吸引源は、単一のコイル状中空管の開口端に適用される。追加的に、当業者であれば、2つの管210a及び210bが記載及び図示されているが、コイル210は、代替的に、螺旋状に巻き付いた3つ以上の管で形成され得ることも理解するであろう。
【0033】
本開示をその詳細な実施形態について図示及び記載してきたが、当業者であれば、特許請求される発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく本発明の形態及び詳細に様々な変更を行い得る点が理解されるであろう。更に、一実施形態の特徴のいずれも、本開示と矛盾しないか、又は本開示によって明示的に放棄されない任意の様式で、任意の他の実施形態の特徴と組み合わせられ得ることが、当業者によって理解されたい。
【0034】
〔実施の態様〕
(1) 陰圧創傷療法(NPWT)で使用するために構成されたデバイスであって、
管近位端及び管遠位端を有する管と、
コイル近位端からコイル遠位端まで延在する複数の巻線を有するコイルであって、前記コイル遠位端が、前記コイル内から、前記コイルを通って、前記コイルを取り囲む組織に、陰圧を印加することを可能にする様式で、前記管近位端に結合され、前記コイルが、前記複数の巻線のうちの隣接する巻線間に空間を含み、前記空間が、所定の寸法を有する、コイルと、を備える、デバイス。
(2) 前記コイルを前記管から取り外すことができるように、前記コイルが、前記管に分離可能に結合された螺旋状コイルである、実施態様1に記載のデバイス。
(3) 前記管近位端が、その中への材料の導入を阻止するために密封されている、実施態様1に記載のデバイス。
(4) 前記管遠位端に結合された縫合針を更に備える、実施態様1に記載のデバイス。
(5) 前記管近位端が、前記コイル遠位端に圧入されている、実施態様1に記載のデバイス。
【0035】
(6) 前記コイルと前記管との間の接続が、前記デバイスを組織内の所望の位置に配置した後、少なくとも事前定義された解放量の力が前記コイルと前記管との間に加えられたとき、前記管を前記コイルから引き離すことを可能にするように構成されている、実施態様5に記載のデバイス。
(7) 前記コイルが、生体吸収性材料で形成されている、実施態様1に記載のデバイス。
(8) 前記空間の前記所定の寸法が、2μm~80μmである、実施態様1に記載のデバイス。
(9) 前記空間の前記所定の寸法が、40μm~60μmである、実施態様1に記載のデバイス。
(10) 前記コイルが、抗微生物薬を含む、実施態様1に記載のデバイス。
【0036】
(11) 前記抗微生物薬が、ポリマー内にあるか、又は前記ポリマーの表面上のコーティングとして形成されている、実施態様10に記載のデバイス。
(12) 前記コイルの断面が、円形、正方形、又は三角形のうちの1つである、実施態様1に記載のデバイス。
(13) 前記コイルが三角形の断面を有するとき、前記コイルの頂角及び高さが、前記コイルの径方向最外点において前記コイルの隣接する巻き間の所望の距離を達成するように選択されている、実施態様12に記載のデバイス。
(14) 前記コイルが、コイルルーメンを中心にして巻き付けられた第1の中空管で形成され、前記第1の中空管が、前記第1の中空管内の第1の管ルーメンから前記コイルルーメンに開口する複数の第1の開口部を含む、実施態様1に記載のデバイス。
(15) 前記コイルが、前記コイルルーメンの周りに二重螺旋で巻き付くように前記第1の中空管と絡み合った第2の中空管を含み、前記第2の中空管が、前記第2の中空管内の第2の管ルーメンから前記コイルルーメンに開口する複数の第2の開口部を含む、実施態様14に記載のデバイス。
【0037】
(16) 前記コイルの遠位部分を包み込むカラーを更に含み、前記コイルルーメン並びに前記第1の中空管及び前記第2の中空管の開口する遠位端が、前記カラーに加えられた吸引力が前記コイルルーメン並びに前記第1の開口部及び前記第2の開口部に加えられるように、前記コイルの遠位開口部に対して開口している、実施態様15に記載のデバイス。
(17) デバイスを創傷に配置するための方法であって、前記デバイスが、管の遠位端に結合された針と、前記管の近位端に結合されたコイルと、を備えた前記管を有し、前記方法が、
前記創傷の内部から深部組織を通り、かつ皮膚を通って出るように前記針を駆動させることと、
前記針を前記管から切り離すことと、
流体コネクタを使用して前記デバイスを真空源に接続することと、
真空圧力を前記デバイスに約50mm Hg~約130mm Hgで印加することと、
療法の終了時に、前記管を前記コイルから取り外して、前記コイルを前記創傷に残すことと、を含む、方法。
(18) 前記デバイスの偶発的な抜去を阻止するために、前記デバイスを接着細片で適所に固定することを更に含む、実施態様17に記載の方法。
(19) 前記真空圧力が、連続的に印加される、実施態様17に記載の方法。
(20) 前記真空圧力が、所望の圧力範囲内で循環される、実施態様17に記載の方法。
【0038】
(21) 生体内の組織を接近させるための方法であって、
管近位端及び管遠位端を有する管と、コイル近位端からコイル遠位端まで延在する複数の巻線を有するコイルと、を含むデバイスを、組織内に形成されたデッドスペースに配置するステップであって、前記コイル遠位端が、前記管近位端に結合される、配置するステップと、
陰圧が前記コイルを通って前記コイルを取り囲む組織に印加されて前記デッドスペースを取り囲む組織を一緒に引き寄せるように、前記コイルのルーメンに前記陰圧を印加するステップと、を含む、方法。
(22) 前記コイルが、前記コイルの複数の巻きのうちの隣接する巻き間の間隔が赤血球の前記コイルへの進入を阻止するように構成されている、実施態様21に記載の方法。
(23) 前記コイルの前記材料の断面形状及びサイズが、前記デッドスペースを取り囲む組織のタイプの特性に基づいて選択される、実施態様21に記載の方法。
【国際調査報告】