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特表2024-516864無線信号からのモバイルデバイスの位置の決定
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-17
(54)【発明の名称】無線信号からのモバイルデバイスの位置の決定
(51)【国際特許分類】
   G01S 5/02 20100101AFI20240410BHJP
   G01S 5/26 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
G01S5/02 A
G01S5/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568375
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(85)【翻訳文提出日】2023-12-21
(86)【国際出願番号】 GB2022051162
(87)【国際公開番号】W WO2022234294
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】2106546.1
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2115190.7
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508170852
【氏名又は名称】ソニター テクノロジーズ アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブーイユ, ウィルフレッド エドウィン
(72)【発明者】
【氏名】エヴァルト, ハンス マグヌス
【テーマコード(参考)】
5J062
5J083
【Fターム(参考)】
5J062AA08
5J062CC12
5J062CC14
5J062CC18
5J083AB14
5J083AD03
5J083AD07
5J083AD17
(57)【要約】
デバイスのネットワーク(3、4)の1つまたは複数のモバイルデバイス(3)のセットのそれぞれの各位置を決定する方法。本方法は、デバイスのネットワーク(3、4)のデバイスのそれぞれのペア(3、4)間の距離を表す値のセットを含むデータを受信することであって、距離を表す値が、デバイス(3、4)間で送信された無線信号から決定される、受信することを含む。距離を表す値は、連立線形方程式の係数のセットを決定するために処理され、連立線形方程式は、2次元平面または3次元空間における1つまたは複数のモバイルデバイス(3)のセットのそれぞれの位置を表す2次元座標または3次元座標を決定するために解かれる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスのネットワークの1つまたは複数のモバイルデバイスのセットのそれぞれの各位置を決定する方法であって、
前記デバイス間で送信された無線信号から決定された、前記デバイスのネットワークのデバイスのそれぞれのペア間の距離を表す値のセットを含むデータを受信することと、
前記距離を表す値を処理して、連立線形方程式についての係数のセットを決定することと、
前記連立線形方程式を解いて、2次元平面または3次元空間における前記1つまたは複数のモバイルデバイスのセットのそれぞれの前記位置を表す2次元座標または3次元座標を決定することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記無線信号が、電波信号または超音波信号を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ネットワークのデバイスのそれぞれのペア間の距離を表す値のセットを含む前記データが、前記デバイス間で送信された前記無線信号の受信信号強度、到来角測定値、往復時間測定値、到来時間測定値、または到来時間差測定値のうちの1つまたは複数に基づいて決定される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記係数のそれぞれが、前記値のセットの前記値のうちの1つまたは複数のそれぞれの線形結合である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記デバイスのネットワークが、既知の位置の1つまたは複数のデバイスを含み、前記方法が、前記1つまたは複数のモバイルデバイスのセットのそれぞれの各位置を表す前記2次元座標または3次元座標を決定するために、既知の位置の1つまたは複数のデバイスのそれぞれの2次元座標または3次元座標を使用することを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記2次元平面または3次元空間が物理的環境に対応し、前記方法が、前記2次元座標または3次元座標を使用して、前記物理的環境内の前記1つまたは複数のモバイルデバイスのセットのそれぞれの各2次元位置または3次元位置を決定することを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記連立線形方程式を解くために、特異値分解、ガウス消去、または下位-上位分解を使用することを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記係数のセットを、前記ネットワークの各デバイスについての行および列を含む正方行列を表すデータとして記憶することを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記連立線形方程式を解くことが、逆行列を計算することを含み、前記2次元座標が、前記逆行列とベクトルとの積から決定される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
包含条件を満たさない1つまたは複数の係数を減衰させることをさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記連立線形方程式を解いて、2次元平面内の前記1つまたは複数のモバイルデバイスのセットのそれぞれの前記位置を表す2次元座標を決定することを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記1つまたは複数のデバイスのセットのそれぞれについての前記2次元座標が、前記連立線形方程式において複素数値または変数によって表される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記係数のセットを決定することが、前記ネットワークのデバイスについて、前記2次元平面内の前記デバイスの位置を囲む三角形を形成する位置を有する前記ネットワークの3つのさらなるデバイスの1つまたは複数のセットを識別することを含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記係数のセットを、距離を表す前記値のセットから決定される、前記デバイスと前記3つのさらなるデバイスとの間の距離に少なくとも部分的に基づいて決定することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記係数のセットを決定することが、前記デバイスのローカル座標系を決定することと、前記ローカル座標系における前記3つのさらなるデバイスの位置を表す係数を決定することと、を含む、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記係数のセットを決定することが、二辺測量プロセスを実行することを含む、請求項13から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記係数のセットを決定することが、前記連立線形方程式から、前記デバイスと、前記デバイスについての幾何学的フィルタを満たす3つのデバイスのセットの一部ではない任意のさらなるデバイスとの間の距離を除外することを含み、前記幾何学的フィルタが、前記デバイスを囲むかまたは前記デバイスに近接する三角形を形成する3つのさらなるデバイスのセットのみを通過させる、請求項13から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記係数のセットのうちの1つまたは複数の係数が、前記3つのさらなるデバイスの1つまたは複数のセットによって形成された前記それぞれの三角形の解析から決定された分散に基づいて重み付けされる、請求項13から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記三角形の前記解析が、3つのさらなるデバイスのセットによって形成された三角形の面積と、前記デバイスによって形成された前記3つの三角形の面積と前記3つのさらなるデバイスのうちの2つのそれぞれのサブセットとの合計を比較することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記連立線形方程式を解いて、3次元空間内の前記1つまたは複数のモバイルデバイスのセットのそれぞれの前記位置を表す3次元座標を決定することを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記係数のセットを決定することが、前記ネットワークのデバイスについて、前記3次元空間内の前記デバイスの位置を囲む四面体を形成する位置を有する前記ネットワークの4つのさらなるデバイスのうちの1つまたは複数のセットを識別することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記係数のセットを、距離を表す前記値のセットから決定される、前記デバイスと前記4つのさらなるデバイスとの間の距離に少なくとも部分的に基づいて決定することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記係数のセットを決定することが、前記デバイスのローカル座標系を決定することと、前記ローカル座標系における前記4つのさらなるデバイスの位置を表す係数を決定することと、を含む、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記係数のセットを決定することが、3次元三辺測量プロセスを実行することを含む、請求項21から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記係数のセットを決定することが、前記連立線形方程式から、前記デバイスと、前記デバイスについての幾何学的フィルタを満たす4つのデバイスのセットの一部ではない任意のさらなるデバイスとの間の距離を除外することを含み、前記幾何学的フィルタが、前記デバイスを囲むかまたは前記デバイスに近接する四面体を形成する4つのさらなるデバイスのセットのみを通過させる、請求項21から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記係数のセットのうちの1つまたは複数の係数が、前記4つのさらなるデバイスの1つまたは複数のセットによって形成された前記それぞれの四面体の解析から決定された分散に基づいて重み付けされる、請求項21から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記四面体の前記解析が、4つのさらなるデバイスのセットによって形成された四面体の体積と、前記デバイスによって形成された前記4つの四面体の体積と前記4つのさらなるデバイスのうちの3つのそれぞれのサブセットとの合計を比較することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記デバイスのネットワークの単一のモバイルデバイスの前記位置を決定することを含む、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記デバイスのネットワークの複数のモバイルデバイスの前記位置を決定することを含む、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
デバイスのネットワークの1つまたは複数のモバイルデバイスのセットのそれぞれの各位置を決定するためのコンピュータソフトウェアであって、前記コンピュータソフトウェアが、処理システムによって実行されると、前記処理システムに、請求項1から29のいずれか一項に記載の方法を実行させる命令を含む、コンピュータソフトウェア。
【請求項31】
処理システムとメモリとを備える位置特定システムであって、前記メモリが、前記処理システムによって実行されると、前記処理システムに、請求項1から29のいずれか一項に記載の方法を実行させる命令を含むソフトウェアを記憶する、位置特定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイスのネットワークのモバイルデバイスの位置を決定するための方法、ソフトウェア、および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デバイスのペア間の距離を推定するために、デバイス間で音響信号または電波信号を送信することによって、デバイス(1つまたは複数の静止デバイスも含み得る)のネットワークのRFIDタグまたは携帯電話などのモバイルデバイスの位置を決定することが知られている。位置は、三辺測量またはパターンマッチングなどの技術を使用して推定され得る。しかしながら、これを効率的且つ確実に行うことは容易ではない。
本発明は、モバイルデバイスの位置を効率的且つ確実に決定するための新規な手法を提供しようとするものである。
【発明の概要】
【0003】
第1の態様から、本発明は、デバイスのネットワークの1つまたは複数のモバイルデバイスのセットのそれぞれの各位置を決定する方法であって、
デバイス間で送信された無線信号から決定された、デバイスのネットワークのデバイスのそれぞれのペア間の距離を表す値のセットを含むデータを受信することと、
距離を表す値を処理して、連立線形方程式についての係数のセットを決定することと、
連立線形方程式を解いて、2次元平面または3次元空間における1つまたは複数のモバイルデバイスのセットのそれぞれの位置を表す2次元座標または3次元座標を決定することと、を含む、方法を提供する。
【0004】
第2の態様から、本発明は、デバイスのネットワークの1つまたは複数のモバイルデバイスのセットのそれぞれの各位置を決定するためのコンピュータソフトウェアであって、処理システムによって実行されると、処理システムに、
デバイス間で送信された無線信号から決定された、デバイスのネットワークのデバイスのそれぞれのペア間の距離を表す値のセットを含むデータを受信させ、
距離を表す値を処理して、連立線形方程式の係数のセットを決定させ、
連立線形方程式を解いて、2次元平面または3次元空間における1つまたは複数のモバイルデバイスのセットのそれぞれの位置を表す2次元座標または3次元座標を決定させる、命令を含む、コンピュータソフトウェアを提供する。
【0005】
第3の態様から、本発明は、処理システムとメモリとを備える位置特定システムであって、メモリが、処理システムによって実行されると、処理システムに、
デバイス間で送信された無線信号から決定された、ネットワークのデバイスのそれぞれのペア間の距離を表す値のセットを含むデータを受信させ、
距離を表す値を処理して、連立線形方程式の係数のセットを決定させ、
連立線形方程式を解いて、2次元平面または3次元空間における1つまたは複数のモバイルデバイスのセットのそれぞれの位置を表す2次元座標または3次元座標を決定させる、命令を含むソフトウェアを記憶する、位置特定システムを提供する。
【0006】
処理システムは、いくつかの実施形態では、1つまたは複数のモバイルデバイスに加えて1つまたは複数の静止デバイスを含み得るデバイスのネットワークをさらに備え得る。
【0007】
したがって、本発明の実施形態によれば、線形システムを解くことによって1つまたは複数のモバイルデバイスについての2次元(2D)座標または3次元(3D)座標が決定されることができることが分かる。この手法は、平面内または3次元空間内の座標と見なされる1つまたは複数のデバイスの位置が、ネットワーク内の他のデバイスの位置の線形結合の一貫したセットによって表されることができ、デバイス位置間の線形関係をもたらすという洞察に基づいている。この線形性は、個々のまたは複数のデバイスの位置を効率的且つ一貫して決定するために線形システムが解かれることを可能にする。また、有利には、位置も未知である他のデバイスの有効無線範囲内にのみあるデバイスであっても、すなわち、既知位置の静止ビーコンまたはモバイルデバイスなどのモバイルデバイスから固定位置または既知位置のデバイスに利用可能な直接距離測定値がない場合であっても、モバイルデバイスの位置を正確に決定することを可能にすることができる。
【0008】
いくつかの実施形態では、座標は、2次元平面(例えば、環境の平面図に対応する)内の1つまたは複数のモバイルデバイスのそれぞれの各位置を表す2次元座標(例えば、x,y)であってもよいことが理解されよう。しかしながら、いくつかの実施形態では、座標は、3次元空間(例えば、高さ情報を含む)内の1つまたは複数のモバイルデバイスのそれぞれの位置を表す3次元座標(例えば、x,y,z)であってもよい。
【0009】
いくつかの実施形態では、無線信号は、Bluetooth Low Energy(商標)、WiFi(商標)またはNFC信号などの電波信号であってもよい。いくつかの実施形態では、無線信号は、超音波信号などの音響信号であってもよい。電波信号と音響信号との組み合わせが使用されて、距離を表すデータを決定し得る。いくつかの実施形態では、モバイルデバイスのうちの1つまたは複数は、無線信号を送受信するように構成されたスマートフォンまたは電子タグであってもよい。デバイスのネットワークは、無線メッシュネットワークとして通信するように構成され得る。
【0010】
いくつかの実施形態では、ネットワークのデバイスのペア間の距離を表すデータは、デバイス間で送信される無線信号の信号強度測定値に基づいて決定され得る。データは、無線信号の受信信号強度インジケータ(RSSI)、到来角(AoA)測定値、ラウンドトリップ時間(RTT)測定値、到来時間(ToA)測定値、または到来時間差(TDoA)測定値のうちの1つまたは複数に基づいて決定され得る。
【0011】
RSSI、AoA、RTT、ToA、および/またはTDoA測定値は、例えば位置決定プロセスの精度または品質を向上させるために、距離を表すデータを決定する一部として、任意の適切な方法で(例えば、フィルタリング、平均化、またはその他によって)処理され得る。
処理システムは、ネットワークの前記デバイス(すなわち、その位置が連立線形方程式に含まれるデバイス)とは異なるネットワークサーバを備え得る。しかしながら、他の実施形態では、処理システムは、1つまたは複数のデバイス、例えばモバイルデバイスのうちの1つのプロセッサを備え得る。
【0012】
いくつかの実施形態では、位置特定システム(すなわち、測位システム)は、1つまたは複数のデバイスを備え得る。それは、ネットワークの前記デバイスの全てを備え得る。(しかしながら、これらのデバイスは、いくつかの実施形態では、連立線形方程式に含まれない他のデバイス、例えば、距離データまたは不十分な距離データが受信されないデバイスを備える、より大きなネットワークの一部であってもよいことが理解されよう。)それは、リアルタイム位置特定システム(RTLS)であってもよい。
【0013】
処理システムは、例えば、ネットワークの1つまたは複数のデバイスから距離データを受信してもよく、または、例えば、ネットワークの1つまたは複数のデバイスから受信したRSSI値などの測定データを処理することによって、距離データの一部または全てを生成するように構成されてもよい。データを受信することは、処理システム内のデータにアクセスすること、例えば、処理システムのメモリからデータを読み取ることを含み得る。
【0014】
デバイスのペア間の距離を表す値は、ノイズの多いデータまたは近似データであり得る。係数を決定するために値を処理することは、値のセット内のノイズのレベルに基づいて値をスケーリングすることを含み得る。
【0015】
連立線形方程式は、少なくとも部分的に、前記係数のセットによって決定され得る。係数のセットは、デバイスのネットワークのデバイスの各ペアについてのそれぞれの係数(ゼロまたは非ゼロ値であり得る)を含み得る。各係数は、ネットワークのデバイスの各ペア間の距離を表す前記値のセットのうちの1つまたは複数に依存し、および/またはそれを使用して計算され得る。いくつかの好ましい実施形態では、係数のそれぞれは、値のセットの値のうちの1つまたは複数のそれぞれの線形結合である。これは、連立線形方程式が自己整合性を保ち、解が見つけられることができることを保証することができる。
【0016】
デバイスのネットワークは、既知の位置を有する1つまたは複数のデバイスを備えてもよく、すなわち、連立線形方程式が解かれる前に2次元座標または3次元座標が決定または受信される。既知の位置の1つまたは複数のデバイスは、モバイルデバイスおよび/または固定デバイスを備えてもよい。既知の位置は、正確であってもよく、推定値であってもよい。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のモバイルデバイスの位置は、GPS測定などの他の測位手段を使用して決定されてもよく、または決定されていてもよい。いくつかの実施形態では、デバイスのネットワークは、モバイルデバイスと無線信号を交換するように構成された静止ビーコンなどの固定位置を有するデバイスの1つまたは複数を備える。いくつかの実施形態では、デバイスのネットワークは、それぞれが、例えば全地球航法衛星システム(GNSS)を使用して、モバイルデバイスと前記デバイスのネットワークの他のデバイスとの間で送信される無線信号を使用しない測位方法を使用して(「既知の」位置として使用され得る)モバイルデバイスの位置を決定するように構成された1つまたは複数のモバイルデバイスを備える。既知の位置のデバイスは、絶対位置基準を提供するために使用され得え、未知の位置を有する1つまたは複数のモバイルデバイス(すなわち、連立線形方程式を解くことによって決定される位置を有するデバイス)のセットのそれぞれの各位置を決定するために使用され得る。特に、既知の位置の1つまたは複数のデバイスのそれぞれの2次元座標または3次元座標が使用されて、例えば、連立線形方程式の係数のセットを決定するために使用され、および/または連立線形方程式を解くために使用される1つまたは複数のモバイルデバイスのセットのそれぞれの位置を表す2次元座標または3次元座標を決定し得る。
【0017】
いくつかの実施形態では、本方法は、デバイスのネットワークの単一のモバイルデバイスの位置を決定することを含む。単一のモバイルデバイスは、いくつかの実施形態では、(すなわち、固定位置を有する他のデバイスを有する)デバイスのネットワークの唯一のモバイルデバイスであり得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、本方法は、デバイスのネットワークの複数のモバイルデバイスの位置を決定することを含む。デバイスのネットワークは、モバイルデバイスのみを備えてもよく、または1つもしくは複数のモバイルデバイスのセットに加えて1つもしくは複数の固定デバイスを備えてもよい。
【0018】
2次元座標が決定される実施形態では、2次元平面は、デバイスのネットワークが位置する物理的環境に対応し得る。それは水平面であり得る。2次元平面は、建物の部屋またはフロアなどの屋内環境であり得る現実世界の2次元ビューまたは現実世界の領域に対応し得る。本方法は、例えば、建物の室内またはフロア上の1つまたは複数のモバイルデバイスのセットのそれぞれの位置が決定され得るように、決定された2D座標を使用して環境内の1つまたは複数のそれぞれの2次元位置または3次元位置を識別することを含み得る。
【0019】
3次元座標が決定される実施形態では、3次元空間は、デバイスのネットワークが位置する物理的環境に対応し得る。3次元空間は、建物の部屋またはフロアまたは建物全体などの屋内環境であり得る、現実世界における3次元体積に対応し得る。本方法は、例えば、部屋または建物内の1つまたは複数のモバイルデバイスのセットのそれぞれの位置が決定され得るように、決定された3D座標を使用して環境内のそれぞれの位置を識別することを含み得る。
【0020】
2Dもしくは3D座標、または座標に対応する位置のうちの1つまたは複数は、例えばネットワークを介してデータとして出力されてもよく、またはデバイスのネットワークが位置する環境の地図もしくは設計図上などの表示画面上に視覚的にレンダリングされてもよい。位置特定システムは、決定された座標のうちの1つまたは複数を表すデータを表示するための表示画面を備え得る。
【0021】
連立線形方程式は、未知の位置のデバイスの座標に対応する複数の変数を含み得る。それは、既知の位置のそれぞれのデバイスの座標に対応する1つまたは複数の定数項をさらに含んでもよい(ただし、これは全ての実施形態または状況において必須ではない)。
【0022】
2次元座標が決定されるいくつかの実施形態では、2次元座標は、複素平面内の複素値として表されてもよい。各デバイスの2次元座標は、複素数値または複素変数によって連立線形方程式において表されてもよい。これは、例えば複素固有値を見つけることによって、連立線形方程式を解くために効率的なアルゴリズムが使用されることを可能にし得る。
【0023】
連立線形方程式は、同次または非同次であり得る。例えば、既知の位置のデバイスが存在しない場合は同次であり、1つまたは複数のデバイスの座標が既知である場合は非同次であり得る。
【0024】
連立線形方程式は、任意の適切な方法で解かれ得る。いくつかの実施形態では、連立線形方程式を解くことは、特異値分解を実行すること、またはガウス消去を実行すること、または下位-上位(LU)分解を実行することを含む。
【0025】
係数のセットは、正方行列を表すデータとして記憶され得る。正方行列は、デバイスのネットワークの各デバイスのそれぞれの行およびそれぞれの列を含み得る。
【0026】
いくつかの実施形態では、連立線形方程式を解くことは、逆行列を計算することを含み得る。そのような実施形態では、2次元座標または3次元座標は、逆行列とベクトルとの積から決定され得る。そのような実施形態では、ベクトルは、ネットワークの1つまたは複数のデバイスの既知の位置に対応する1つまたは複数の座標を含み得る。
【0027】
係数のセットは、線形システムを解く前にフィルタリングされてもよい。それは、包含条件を満たさないデバイスの1つまたは複数のペアについて、係数を減衰させる(例えば、ゼロに低減または設定する)ことによってフィルタリングされ得る。包含条件は、(任意に、他の要因に依存することに加えて)デバイスの数またはモバイルデバイスの数に依存し得る非ゼロ係数の最大数を指定または決定し得る。これは、デバイスのペア間の低品質の距離データが除去されることを可能にし、それにより、決定されたモバイルデバイス位置の精度を向上させ得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの係数はゼロに設定される。連立線形方程式における非ゼロ項の数を低減することによって、例えば、系の行列表現のスパース性を高めることによって、連立線形方程式が解かれることができる効率が向上され得る。
【0028】
2次元座標が決定されるいくつかの実施形態では、係数のセットを決定することは、少なくとも1つまたは各デバイスについて、ネットワークの3つのさらなるデバイスの1つまたは複数のセットを識別することを含み得る。それは、好ましくは、2次元平面内で、前記デバイスを囲むそれぞれの三角形を形成する3つのさらなるデバイスの1つまたは複数のセットを識別することを含む。それは、係数のセットを決定するときに、距離値から決定された前記デバイスと3つのさらなるデバイスとの間の距離を使用することを含み得る。係数を決定することは、(例えば、2次元の円の交点に関する)二辺測量プロセスを実行することを含み得る。それは、前記デバイスについて決定されたローカル座標系を決定することと、前記ローカル座標系における3つのさらなるデバイスの位置を表す係数を決定することと、を含み得る。
【0029】
係数のセットを決定することは、連立線形方程式から、前記デバイスと、前記デバイスの幾何学的フィルタを満たす3つのデバイスのセットの一部ではない任意のさらなるデバイスとの間の距離を除外することを含み得る。
【0030】
2次元座標が決定されるいくつかの実施形態では、デバイスの幾何学的フィルタは、デバイスを囲むかまたはデバイスに近接する三角形を形成する3つのさらなるデバイスのセットのみを通過し得て、例えば、前記デバイスとデバイスを囲まない三角形上の点との間の距離は、閾値距離内にある。閾値距離は、三角形のデバイスのペア間の決定された距離の不確実性に基づいて決定され得る。線形システムの係数を決定することは、ヘロンの法則に基づいて幾何学的フィルタを適用することを含み得る。
【0031】
2次元座標が決定されるいくつかの実施形態では、線形システムにおいて三角形を形成するデバイスの位置と関連付けられる係数は、2D平面内の三角形の解析から決定される分散によって重み付けされてもよい。そのような分散は、相対デバイス位置の不確実性の尺度を提供し得る。いくつかの実施形態では、3つのさらなるデバイスによって形成された三角形の面積と、前記デバイスによって形成された3つの三角形の面積と3つのさらなるデバイスのうちの2つの各サブセットとの合計の比較に基づいて、3つのさらなるデバイスによって囲まれたデバイスについて分散が決定される。いくつかの実施形態では、デバイスを囲む三角形を形成する3つのデバイスの1つまたは複数のセットは、そのような分散に基づいて除外されてもよい。いくつかの実施形態では、3つのさらなるデバイスの複数のセットは、分散によってソートされてもよい。いくつかの実施形態では、係数を決定するときに、分散によってランク付けされたデバイスのセットの閾値数(例えば、上の4つ)までのデバイスのセットの距離値のみが考慮され得る。いくつかの実施形態では、各デバイスについて、前記デバイスを囲む三角形を形成する3つのデバイスのセットを識別するとき、デバイスは、他のデバイスの最大閾値数(例えば、最大6)のみを含むように制限されてもよい。デバイスは、既知の位置および/またはより低い分散を有する優先デバイスによって選択され得る。
【0032】
3次元座標が決定されるいくつかの実施形態では、係数のセットを決定することは、少なくとも1つまたは各デバイスについて、ネットワークの4つのさらなるデバイスの1つまたは複数のセットを識別することを含み得る。それは、好ましくは、3次元空間内で、前記デバイスを囲むそれぞれの四面体を形成する4つのさらなるデバイスの1つまたは複数のセットを識別することを含む。それは、係数のセットを決定するときに、距離値から決定された前記デバイスと4つのさらなるデバイスとの間の距離を使用することを含み得る。係数のセットを決定することは、4つのさらなるデバイスのそのようなセットのそれぞれにおいて行われる(例えば、3次元における球の交点に関する)三辺測量プロセスを実行することを含み得る。三辺測量プロセスは、いくつかの実施形態では、(例えば、さらなるデバイスのうちの別の2つに対するさらなるデバイスのうちの1つの2D位置を決定するために)2次元二辺測量演算を含み得る。それは、前記デバイスについて決定されたローカル座標系を決定することと、前記ローカル座標系における4つのさらなるデバイスの位置を表す係数を決定することと、を含み得る。
【0033】
3次元座標が決定されるいくつかの実施形態では、係数のセットを決定することは、連立線形方程式から、前記デバイスと、前記デバイスの幾何学的フィルタを満たす4つのデバイスのセットの一部ではない任意のさらなるデバイスとの間の距離を除外することを含み得る。いくつかのそのような実施形態では、デバイスの幾何学的フィルタは、デバイスを囲むかまたはデバイスに近接する四面体を形成する4つのさらなるデバイスのセットのみを通過し得て、例えば、前記デバイスとデバイスを囲まない四面体上の点との間の距離は、閾値距離内にある。閾値距離は、四面体のデバイスのペア間の決定された距離の不確実性に基づいて決定され得る。
【0034】
3次元座標が決定されるいくつかの実施形態では、線形システムにおいて四面体を形成するデバイスの位置と関連付けられる係数は、3次元空間内の四面体の解析から決定される分散によって重み付けされてもよい。そのような分散は、相対デバイス位置の不確実性の尺度を提供し得る。いくつかの実施形態では、4つのさらなるデバイスによって形成された四面体の体積と、前記デバイスによって形成された3つの四面体の体積と4つのさらなるデバイスのうちの3つのそれぞれのサブセットとの合計の比較に基づいて、4つのさらなるデバイスによって囲まれたデバイスについて分散が決定される。いくつかの実施形態では、デバイスを囲む四面体を形成する4つのデバイスの1つまたは複数のセットは、そのような分散に基づいて除外されてもよい。いくつかの実施形態では、4つのさらなるデバイスの複数のセットは、分散によってソートされてもよい。
【0035】
いくつかのそのような実施形態では、係数を決定するときに、分散によってランク付けされたデバイスのセットの閾値数(例えば、上の4つ)までのデバイスのセットの距離値のみが考慮され得る。いくつかの実施形態では、各デバイスについて、前記デバイスを囲む四面体を形成する4つのデバイスのセットを識別するとき、デバイスは、他のデバイスの最大閾値数(例えば、最大6)のみを含むように制限されてもよい。デバイスは、既知の位置および/またはより低い分散を有する優先デバイスによって選択され得る。
【0036】
より一般的には、いくつかの実施形態では、1つまたは複数のモバイルデバイスのセットの各モバイルデバイスについて、連立線形方程式内のモバイルデバイスの位置に関連する非ゼロ係数の数は、ネットワーク内のモバイルデバイスの数に関係なく、6以下の非ゼロ係数を含む所定の最大閾値数によって制限され得る。これは、システムをより効率的に解決することができ、低品質のデータが除外される場合に精度を向上させ得る。
【0037】
2次元座標が決定されるいくつかの実施形態では、本方法は、それにもかかわらず、3次元の1つまたは複数のモバイルデバイスのセットのそれぞれの位置を決定するために使用され得る。(例えば、高さまたは高度に対応する)第3の座標を決定することは、例えば、(次いで、全てにフロアの既知の高さに対応する共通の高さ値が割り当てられ得る)建物の同じフロアにあるように全てのデバイスを制限する信号強度条件を使用して、より大きなデバイスグループから1つまたは複数のモバイルデバイスのセットを選択することによって、異なる機構によって行われ得る。いくつかの実施形態では、それは、3次元の1つまたは複数のモバイルデバイスのセットのそれぞれの各位置を表す3次元座標を決定するために、係数のセットによって決定されるさらなる連立線形方程式を解くことを含み得る。
【0038】
処理システムは、1つまたは複数のプロセッサを備え得る。それは、単一の処理デバイス、例えばモバイルデバイスと同じ環境に配置されたワークステーション、または処理デバイスのネットワーク、例えばインターネットを介してアクセスされる分散クラウドサーバを備え得る。それは、データおよび前記ソフトウェアを記憶するためのメモリを備え得る。それは、1つまたは複数の有線または無線ネットワークインターフェースを備え得る。それは、ディスプレイおよび/または他の入出力周辺機器を備え得る。
【0039】
本明細書に記載された任意の態様または実施形態の特徴は、適切な場合はいつでも、本明細書に記載された任意の他の態様または実施形態に適用され得る。異なる実施形態または実施形態のセットを参照する場合、これらは必ずしも別個ではなく、重複してもよいことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
次に、添付の図面を参照して、本発明の特定の好ましい実施形態を単なる例として説明する。
図1】本発明を具現化するピアツーピア測位システムの概略図である。
図2】ピアツーピア測位システムにおいて使用するための静止送信機ユニット、モバイルデバイス、およびサーバの概略図である。
図3】2次元平面内のモバイルデバイスの位置を推定するためにサーバによって実行される動作のフローチャートである。
図4】ピアツーピア測位システムによって決定された2次元平面におけるデバイスの構成の概略図である。
図5】ローカル座標系におけるピアツーピア測位システムのデバイス間の相対距離を決定するプロセスを示す概略図である。
図6】ピアツーピア測位システムの他のデバイスの重み付けされた位置の観点でピアツーピア測位システムのデバイスの位置を決定するプロセスを示す概略図である。
図7】ピアツーピア測位システムの特定のデバイスの位置を決定するために使用するようにデバイスのサブセットを選択するプロセスを示す概略図である。
図8】デバイスの位置を推定するためにサーバによって解かれる連立線形方程式の簡略化された例である。
図9】3次元空間内のモバイルデバイスの位置を推定するためにサーバによって実行される動作のフローチャートである。
図10】ピアツーピア測位システムによって決定された3次元空間におけるデバイスの構成の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、買い物客のうちの1人または複数人によって携行されるスマートフォンまたは電子タグなどのモバイルデバイスの位置を決定することによって、ショッピングモール内の買い物客の位置を決定するために、例えばショッピングモールにおいて使用され得るピアツーピア測位(すなわち、位置決定)システムの要素を示している。もちろん、これは環境の一例にすぎず、測位システムは、倉庫、病院、家庭、車両、または他の多くの屋内もしくは屋外環境においても使用されることができる。
【0042】
図1は、ピアツーピア測位システム100が動作している単一階層環境1(例えば、部屋、または建物のフロア)の上面図を示している。人、壁、ドア、家具などの他の詳細は、簡単にするために省略されている。システム100は、スマートフォンまたはモバイルタグなどの複数のモバイルデバイス3、および静止ビーコン4と通信するように構成されたネットワークサーバ2を提供する。静止ビーコン4は、例えば壁または天井に固定された固定位置において環境1の全体に分散される。モバイルデバイス3は、例えば人によって携行されたり、モバイル機器に固定されたりして、環境1の全体を移動し得る。
【0043】
モバイルデバイス3は、Bluetooth Low Energy(商標)、WiFi(商標)もしくは超音波信号、または異なる信号タイプの組み合わせなどの無線信号を、互いに、静止ビーコン4に対して、および/または静止ビーコンから送受信するように構成される。モバイルデバイス3および静止ビーコン4(まとめて「デバイス」)は、サーバ2と通信するようにさらに構成され、これは、直接通信であってもよく、または任意の適切なトポロジを有する、例えば無線メッシュネットワークとして動作する他のデバイスを介してもよい。
【0044】
これらの構成要素は、協働して、モバイルデバイス3の位置を、単一階層環境1内の2次元(x,y)座標または3次元(x,y,z)座標として推定するように構成されたピアツーピア測位システム100を提供する。サーバ2は、モバイルデバイス3および静止ビーコン4によって交換された無線信号に関連してサーバ2において受信されたデータに基づいて、以下に説明するように、モバイルデバイス3の位置を決定するように構成される。この実施形態では、サーバ2は、デバイス3、4と同じ環境1内に示されているが、他の実施形態では、サーバ2は、遠隔に、例えばインターネットサーバファームに配置され、ネットワークゲートウェイまたは基地局を介してデバイス3、4のうちの1つまたは複数と通信することができる。
【0045】
図1に示されている実施形態は複数のモバイルデバイス3を示しているが、十分な数の静止ビーコン4がモバイルデバイス3の近傍に位置することを条件として、ピアツーピア測位システムはまた、または代替として、モバイルデバイス3とシステムの任意の他のモバイルデバイスとの間の信号送信を必要とせずに、単一のモバイルデバイス3の位置を決定するために使用されてもよいことが理解されよう。したがって、本明細書で使用される「ピアツーピア」という用語は、互いに類似しなくてもよいデバイス間、例えばモバイルデバイス3と1つまたは複数の静止ビーコン4との間の「デバイスツーデバイス」測位を包含するものとして理解されるべきである。
【0046】
図2は、モバイルデバイス3の代表的なモバイルデバイス230、静止ビーコン4の代表的なビーコン240、およびサーバ2をより詳細に示している。
【0047】
モバイルデバイス230は、プロセッサおよび1つまたは複数の無線モジュールを備えるコントローラ231と、モバイルデバイス230に電力を供給するためのバッテリ233と、コントローラ231のためのデータおよびソフトウェア10を記憶するためのメモリ232とを有する。モバイルデバイス230はまた、モバイルデバイス230と、ピアツーピア測位システム100の他のモバイルデバイス3およびビーコン4との間で電波信号を送受信するためのアンテナ234を含む。
【0048】
ビーコン240は、プロセッサおよび1つまたは複数の無線モジュールを備えるコントローラ241と、ビーコン240に電力を供給するためのバッテリ243と、コントローラ241のためのデータおよびソフトウェアを記憶するためのメモリ242とを有する。ビーコン240はまた、ビーコン240と、ピアツーピア測位システムの他のビーコン4およびモバイルデバイス3との間で電波信号を送受信するためのアンテナ244を含む。ビーコン240はまた、例えば有線イーサネットまたは光ファイバ接続を介してビーコン240をサーバ2に接続するための有線インターフェースを有し得る。
【0049】
ネットワークサーバ2は、プロセッサ227と、データおよびソフトウェアを記憶するためのメモリ222とを備える。それは、静止しており、外部から給電されてもよい。それは、ピアツーピア測位システムのモバイルデバイス3およびビーコン4のうちの1つまたは複数との直接無線通信のためのアンテナ224を備え得るか、またはビーコン4のうちの1つまたは複数への有線ネットワーク接続を有し得るか、またはその両方であり得る。ネットワークサーバ2は、単一の物理デバイスであってもよく、または分散(例えば、クラウド)サーバシステムであってもよい。それは、モバイルデバイス3および静止ビーコン4と同じ建物内にあっても同じ敷地上にあってもよく、またはこれらの構成要素から離れていてもよく、例えば、インターネットを介してアクセスされる遠隔データセンタ内にあってもよい。
【0050】
図2に示すデバイスは、それぞれのアンテナを備えるが、代わりに、音響トランスデューサ(すなわち、スピーカおよびマイクロフォン)を使用して、超音波信号などの電波信号以外の無線信号を送受信してもよい。
【0051】
使用時、ピアツーピア測位システム100の各モバイルデバイス3は、システム100の他のモバイルデバイス3およびビーコン4からの無線信号をリッスンし、そのアンテナ234を使用して、規則的または不規則な間隔で無線メッセージを送信するように構成される。そのような通信が使用されて、受信信号強度インジケータおよび/または飛行時間測定値などの従来の技術を使用して、互いの有効通信範囲内にあるデバイス3、4のペア間のデバイス間距離を推定することができる。例えば、モバイルデバイス3から1つまたは複数の他のデバイス3、4までの距離推定値は、デバイス3によって受信されたBLE告知メッセージの1つまたは複数の受信信号強度インジケータ(RSSI)に基づいて決定され得る。他の例では、それらは、Bluetooth到来角(AoA)、WiFi RSSもしくはラウンドトリップ時間(RTT)、超広帯域(UWB)RTT、超音波到来時間(ToA)、超音波到来時間差(TDoA)測定、または任意の他の適切な方法で決定されることができる。そのような測定値は、これらのデバイス間距離推定値(例えば、フィルタリングされた、平均化された、調整された、組み合わされたなど)を決定するために、任意の適切な方法で処理され得る。
【0052】
モバイルデバイス3と静止ビーコン4との間のデバイス間距離が決定され、デバイス間距離データとしてモバイルデバイスのメモリ232および/または静止ビーコンのメモリ242に記憶される。デバイス間距離データは、サーバ2に送信され、サーバのメモリ222に保存され、プロセッサ227によって処理されてモバイルデバイス3の位置を決定する。デバイス間距離データは、デバイス3、4のうちの1つまたは複数によって収集され、間隔をおいてサーバ2に送信されてもよく、またはモバイルデバイス3および/または静止ビーコン4の間で相互作用が記録されるたびに送信されてもよい。したがって、モバイルデバイス3および/または静止ビーコン4間のデバイス間距離値のデータベースが構築され、サーバ2のメモリ222に記憶され、新たなデバイス間距離測定値が記録されると動的に更新される。
【0053】
静止ビーコン4の位置は固定されているため、それらの絶対位置は、所定の原点および向きに対する(x,y)または(x,y,z)座標としてサーバ2に知られることができ、したがって、位置決定プロセスを使用して決定される必要はない。この情報は、デバイス間距離の送信中にサーバ2に送信されてもよく、システムのセットアップ時にデータベースに記憶されてもよい。特定のモバイルデバイス3の絶対位置は、例えばデバイス3によって取得されたGPS測定値に基づいて知られてもよい。例えば、図1に示す屋内環境の外部に最初に位置するモバイルデバイス3を考慮すると、モバイルデバイス3の位置は、GPS測定値に基づいて知られ得る。モバイルデバイス3が、図1に示されている屋内環境に入り、GPS信号が喪失されると、ピアツーピア測位システム100の一部として動作を開始し、GPS信号が喪失される前の最後の位置をサーバ2へ送信し得る。これは、モバイルデバイス3の絶対位置基準として機能し得る、すなわち、「既知の」位置を提供する。同様に、モバイルデバイス3の位置が他のソースから既知である場合、その既知の位置は、例えばデバイス間距離の送信中にサーバ2に送信され得る。既知の位置は、未知の位置のモバイルデバイス3の絶対位置が決定されることができる基準位置として機能する。したがって、いくつかの実施形態では、ピアツーピア測位システム100は、1つまたは複数のモバイルデバイス3の既知の位置のみに基づいて、すなわち、固定位置の静止ビーコン4の提供を必ずしも必要とせずに、未知の位置のデバイスの位置を決定することが可能であり得る。
【0054】
デバイス間距離のデータベースが確立されると、ピアツーピア測位システム100は、以下に記載されるように、システム100のモバイルデバイス3の一部または全ての位置のコンスタレーションを2次元または3次元で決定するために、距離値を処理することができる。本明細書に記載の手法は、他のモバイルデバイス3について計算された位置推定値に少なくとも部分的に基づいて、モバイルデバイス3の位置を間接的に決定することを可能にする。したがって、静止ビーコン4の無線範囲内にないモバイルデバイス3であっても、正確に測位されることができる。
【0055】
2次元平面内のシステム100のモバイルデバイス3の一部または全ての位置を推定するためにサーバ2によって実行される動作のフローチャートを示す、第1のセットの実施形態にかかる位置決定プロセスの概要が図3に示されている。
【0056】
ステップ301において、サーバ2は、位置が未知の全てのモバイルデバイスを識別する。
【0057】
次いで、サーバ2は、未知の位置のこれらのデバイスのそれぞれについてループされたステップのセットを順に実行する。
【0058】
ステップ303において、サーバ2は、デバイス間距離値から、デバイスiと他のデバイスjとの間に最近の距離データ(すなわち、15秒などの閾値期間内に記録されたデータ)がある3つの他のデバイスj(モバイルデバイス3または静止ビーコン4であり得る)の全ての組み合わせを決定する。
【0059】
ステップ305において、モバイルデバイスiの位置を決定するために後続のステップにおいて使用される、3つのデバイスjの組み合わせの縮小サブセットが決定される。このサブセットは、モバイルデバイスiが、(x,y)平面内で、デバイスjの組み合わせによって形成される三角形内に、または三角形に十分に近接して配置されるべきであるという条件に基づいて選択される。この決定は、以下に説明するように、ヘロンの公式に基づく基準を使用して行われる。
【0060】
ステップ307において、デバイス間距離データから、組み合わせのサブセットに含まれるモバイルデバイスiおよび周囲のデバイスjのそれぞれのローカル座標系における相対位置を決定するために、サーバ2によって二辺測量プロセスが使用される。
【0061】
ステップ309において、モバイルデバイスiの位置ziは、デバイスjの位置zjの線形加重和の形式で、すなわち、実数値係数wijに対してzi=wijzjの形式で決定され、(x,y)位置は、複素平面内の点として複素数値ziおよびzjによって表される。
【0062】
これらのステップ303から309は、未知の位置の各デバイスiについて繰り返される。
【0063】
次に、ステップ311において、連立線形方程式を表すデータ(例えば、係数の行列)が生成され、システム100内の全てのデバイス3、4の位置が、関連する他のデバイスの位置のそれぞれの加重和によって表現される。行列は、そのスパース性を増加させるために任意にフィルタリングされてもよい。
【0064】
ステップ313において、既知のデバイス位置の数だけ行列のサイズを縮小するために、既知の位置を有するデバイス3、4に関する行列の項が乗算される。
【0065】
ステップ315において、(例えば、残りの行列を反転させることによって)連立線形方程式が解かれ、2次元平面内の以前に未知の位置のモバイルデバイス3の位置を含むベクトルを決定する。
【0066】
サーバ2によって位置決定プロセスが実行されるプロセスを概説してきたが、ここで、図3図7を参照して、この第1のセットの実施形態にかかるプロセスのステップをより詳細に説明する。
【0067】
最初のステップ301では、領域または環境内に配置される全てのデバイス(すなわち、モバイルデバイス3およびビーコン4)が識別される。これは、フロアまたは建物の部屋に位置する全てのデバイスであり得るか、ピアツーピア測位システム100の全てのデバイスであり得る。部屋内の、または建物のフロアに限定されたデバイスの選択は、デバイス間で送信される信号の減衰のレベルに基づいて行われ得る。ISM帯域の高周波信号(2、4、5GHz)は、壁およびフロアを横切るときに非常に高い減衰を経験し、したがって、共通の部屋またはフロアのデバイスが容易にグループ化されることができる。したがって、本2次元測位プロセスが開始される前に、高さの3次元(例えば、デバイスがどの階にあるか)が決定され得て、水平面内の2次元(x,y)座標も、必要に応じて3次元(x,y,z)においてデバイスの位置を解決するのに十分であり得る。あるいは、後述するように、第2のセットの実施形態は、無線信号から3次元のデバイス位置を直接決定することができる変形プロセスを使用する。
【0068】
選択された全てのデバイスのデバイス間距離グラフは、選択されたデバイスのデバイス間距離、および各デバイスの位置が既知であるか未知であるかの指示を含む、サーバ2のデータベースに記憶されたデータによって既に決定されている。上述したように、既知のデバイス位置は、静止ビーコン4の位置と、絶対位置が他の手段、例えばGPS測定から既知である任意のモバイルデバイス3の位置とを含む。これらの位置は、緯度および経度によって、または環境1の所定のローカル座標系に対して、または任意の他の適切な方法で決定され得る。次に、距離デバイス間グラフを使用して、以下で説明するように、選択されたデバイスの相対位置が決定される。
【0069】
後述するように、この第1のセットの実施形態にかかる測位方法は、デバイスが2D平面上に位置すると考えられる場合(これは、デバイスが全て建物の同じフロアにあることが知られている場合など、多くの場合において合理的な仮定である)、各デバイスの位置は、それを囲むデバイスの2D位置の線形結合として表現されることができるという事実を利用する。結果として得られる連立線形方程式は、複数のデバイスの推定値を同時に決定するために、同時に解かれることができる。
【0070】
周囲のデバイスは、全てモバイルデバイスであってもよく、全て固定ビーコンであってもよく、モバイルデバイスと固定デバイスとの任意の組み合わせであってもよい。
ステップ303において、未知の位置ziを有する所与のモバイルデバイスiについて、サーバ2は、3つの他のデバイスjの全ての組み合わせを決定する。これは、デカルト積リストを使用するなど、全てのC(N,3)(すなわち、「Nは3を選択する」)集合を見つけるための従来の方法を使用して達成され得る。
【0071】
ステップ305において、これらは、位置ziを囲む、またはほぼ囲む(すなわち、に近い)三角形を形成する位置zjを有する組み合わせのみを見つけるためにフィルタリングされる。これは、ヘロンの法則に基づいて幾何学的フィルタを適用することによって行われる。このように識別された3つのデバイスjの例示的な組み合わせが図4に示されている。
【0072】
図4は、位置zi(2D平面内の座標(x,y)によって表される)に位置するモバイルデバイスiが、位置zj1、zj2、zj3(2D平面における座標(x1,y1)、(x2,y2)、(x3,y3)によって表される)にそれぞれ位置する3つのモバイルデバイスj1、j2、j3に囲まれて示されている。無線測距によって決定され、サーバ2のメモリ222に記憶された4つのモバイルデバイスのそれぞれの間の6対のデバイス間距離は、図4に距離a~fとして示されている。
【0073】
これらのデバイス間距離a~fは、デバイス位置によって形成される三角形のそれぞれの面積を考慮することによって、x-y平面内のデバイスj1、j2、j3の位置zjによって定義される三角形内にモバイルデバイスiがあるか、またはその近くにモバイルデバイスiがあるかを決定するために使用される。エッジa-b-cを有する図4に示すデバイスj1、j2、j3によって形成される最大三角形の面積、およびエッジa-d-e、d-c-f、およびe-f-bをそれぞれ有する3つの内側三角形の面積は、長さp、q、およびrの辺を有する三角形の面積Aが以下に等しいことを述べる、ヘロンの法則を使用して計算されることができる:
【数1】
ここで、sは三角形の半周長であり、以下によって与えられる:
【数2】
【0074】
上記の式を用いて、サーバ2は、内側三角形a-d-e、d-c-f、およびe-f-bの面積の和(図4においてA1、A2、A3として示されている)を外側三角形a-b-cの面積Aと比較することによって、全ての可能な組み合わせの3つのデバイスj1、j2、j3がモバイルデバイスiを囲んでいるかどうかを決定する。デバイスiが三角形内に含まれている場合、これら2つの値は等しいか、または測定誤差を考慮するとほぼ等しい。
【0075】
ピアツーピア測位システム100におけるRSSI測定を使用して決定されたデバイス間距離は、いくつかの関連する誤差を有するため、面積の緩和された比較は、以下にしたがって行われる:
【数3】
ここで、area_factorは、予想されるRSSI誤差などのピアツーピア測位システムの特性に基づいて選択され、典型的には、範囲1≦area_factor≦3内である。
【0076】
この幾何学的条件を3つのデバイスの各組み合わせの距離データに適用することにより、モバイルデバイスiを効果的に囲む全ての組み合わせが決定されることができる。
【0077】
上記の条件を満たすデバイスの各組み合わせについて、相対デバイス位置の不確実性の尺度は、内側三角形面積の分散
【数4】
を平均面積
【数5】
と比較することによって決定され得る。この比較の結果は、例えば閾値を超えるなど、不確実性が高い三角形を形成するデバイスの組み合わせを除外することによって、後の計算において使用される3つのデバイスの組み合わせの縮小されたサブセットを決定するために使用され得る。全てではないが一部の実施形態では、それは、線形加重和における係数wijの計算に影響を及ぼすためにサーバ2によって使用されてもよい。
【0078】
完全なデバイス間距離セットが利用可能である(すなわち、関与する4つのデバイス間の6つの既知のデバイス間距離を有する)モバイルデバイスiを囲む3つのデバイスj1、j2、j3の全ての可能な組み合わせを決定した後、サーバ2は、ステップ307において、ローカル座標系におけるデバイスiおよびj1、j2、j3の相対位置を決定する。
【0079】
デバイスiの位置は、一連の二辺測量を実行することによって、すなわち、デバイスのうちの1つ、例えば図4のj2の位置が(0,0)に等しく、デバイスのうちの別のデバイス、例えば図4のj3の位置が(b,0)に等しい任意の参照フレームを選択することによって、デバイスj1、j2、j3によって定義されたローカル参照フレーム内で決定され、最終デバイス、例えばj1の位置は、このローカル座標系において、二辺測量を使用して(すなわち、平面内の円の交点に基づいて)既知の距離a、b、cから計算されることができる。さらなる二辺測量は、モバイルデバイスiの位置を同様に決定することを可能にする。
【0080】
任意の座標(x1,y1)、(x2,y2)、(x3,y3)の三角形について、(x1,y1)と(x2,y2)との間の距離r1、および(x1,y1)と(x3,y3)との間の距離r2では、(x1,y1)の位置は、以下によって与えられる。
【数6】
ここで、
【数7】
【0081】
図5は、これを図4の外側の三角形に適用して、デバイスj1の位置を(x1,y1)=(l,h)として表現する例を示し、ここで、r1は、j2とj3との間の測定された距離(図4からの「a」に等しい)であり、r2は、j1とj3との間の距離(図4からの「c」に等しい)であり、Dは、j2とj3との間の距離(図4の「b」に等しい)である。
【0082】
デバイスj1、j2、j3の位置がローカル座標系で決定されると、3つの内側三角形のそれぞれについて二辺測量プロセスが繰り返されて、ローカル座標系内のデバイスj1、j2、j3によって形成された三角形内に位置するモバイルデバイスiの位置のそれぞれの推定値を決定する。
【0083】
2つの解決策(+h,-h)が可能であるため、連続する二辺測量は複雑さの増加につながる可能性があるが、後続の二辺測量を評価するときにデバイスの一貫した順序が維持されることを保証することによって、正のhの解決策が一貫して選択されることができる。3つの二辺測量結果は、エッジa、b、cによって定義された元のローカル参照フレームと位置合わせするために、それぞれのベースライン辺の向きを使用して回転される。
【0084】
各部分三角形について得られた3つの二辺測量位置推定値は、典型的には、測定ノイズのために異なる。これは、平均位置に対する第2のノルムを計算することによって、モバイルデバイスiの位置(pos_variance)推定値の分散を評価する良好な方法を提供する。いくつかの実施形態では、この真の位置分散が使用されて、係数を係数1/pos_varianceによって重み付けし得る。
【0085】
三角形a-b-cによって定義されたローカル座標系におけるモバイルデバイスiについての位置推定値ziを決定すると、その位置ziは、係数wijによってデバイスj1、j2、j3の位置zjにマッピングし直されることができる。モバイルデバイスiの位置ziは、ベクトル表記のデバイス位置j1、j2、j3に関して表現されることができる。この背後にある理論は、図6を参照して示される。
【0086】
図6は、デバイスj1、j2、j3から形成される三角形を示し、その中にモバイルデバイスiが位置する。モバイルデバイスiの位置Pは、デバイスj1、j2、j3の位置P1、P2およびP3(それぞれzj1、zj2およびzj3と等価である)を基準とした2次元ベクトルとして表現されることができる。サーバ2は、いくつかの実施形態では、これらの位置を複素平面内で複素数として表すことによってこれらの位置に対して計算を実行するように構成され得る。
【0087】
具体的には、モバイルデバイスiの位置Pは、v0からモバイルデバイスiの位置Pまでのベクトルvに関して、以下のように書かれることができる:
【数8】
ここで、v1およびv2は、v0から三角形の他の2つの頂点までのベクトルであり、αおよびβは定数である。
【0088】
αおよびβについて解くと、以下を与える:
【数9】
ここで、det(uv)は、以下によって与えられる列ベクトルuおよびvによって形成される行列の行列式である:
【数10】
【0089】
αおよびβを計算し、v1=P1-P2、v2=P3-P2として頂点位置P1、P2およびP3に関してベクトルv1およびv2を書くことにより、モバイルデバイスiの位置Pは、以下のように決定されることができる。
【数11】
【0090】
γ=1-(α+β)とすると、各デバイスj1、j2、j3の実数値係数wijは、定数α、βおよびγに関してサーバ2によって計算されることができ、したがって、モバイルデバイスiの位置は、周囲のデバイスj1、j2、j3の位置に関して表現されることができる。
【0091】
上記のα、βの計算はまた、モバイルデバイスiの位置がデバイスjによって形成される三角形の内側にあることをチェックするための別の手段を提供し、これは、α、β>0およびα+β<1の場合にのみ当てはまる。いくつかの実施形態では、この関係が満たされない場合、結果は破棄される。
【0092】
上記の計算にしたがって、α、βおよびγは、各三角形のノード位置の正規化された重みである。これらは、係数が1/pos_varianceの係数によってさらに重み付けされるように、上述したように、特定の三角形について求められた位置分散を使用してさらに重み付けされることができる。したがって、係数は、デバイスの測位の不正確さを説明することができる。位置分散を決定するために使用される距離データの最新性(すなわち、鮮度)に基づいて、係数のさらなる重み付けが適用され得る。これは、位置分散に、閾値時間(例えば15秒)まで時間とともに直線的に減少する事前係数を乗算することによって達成され得て、その後、事前係数はゼロに低減される。
【0093】
任意に、係数の重み付けをさらに変更することによって、測位誤差の追加の原因が考慮に入れられてもよい。例えば、1つまたは複数のデバイスの位置が、例えばGPS測定から「既知」である場合、その「既知の」位置は、位置測定の不正確さに起因して依然として関連する誤差を有し得る。この場合、例えば、位置測定の不正確さに基づく分散項を位置分散pos_varianceに追加することによって、デバイスの位置の不確実性が考慮に入れられ得る。デバイスiの分散に対するデバイスjのうちの1つまたは複数からの位置分散の影響を推定するために、各三角形の偏導関数の方法を使用して分散が伝播され得て、その結果、以下である:
【数12】
ここで、Fは、ziとzjとの間の関数関係である。
【0094】
上記のプロセスは、サーバ2が、モバイルデバイスiの位置ziを、それぞれ係数wijによって重み付けされた、それを囲むデバイスjの位置zjの一貫した線形結合として決定することを可能にする。
【0095】
出願人は、上述したプロセスを使用して係数を決定することによって、ピアツーピア測位システムのデバイスの位置を互いに関連付ける、自己矛盾のない連立線形方程式が確立されることができることを認識している。
【0096】
デバイスの2D座標が複素平面内の複素数と見なされ、M個全てのデバイス(既知および未知の位置のものを含む)の集合の列ベクトルとして表される場合、システムは、2D行列式として表現されることができ、行列要素は、以下であるように、係数wijに対応する。
【数13】
【0097】
対角項が、
【数14】
であるように設定される場合、
これは
【数15】
と等価である。
これは、以下のように行列形式で表現されることができる。
【数16】
【0098】
サーバ2が、ピアツーピア測位システム100の一部を形成するデバイスのペアのために、十分に多くの非ゼロ係数を決定することができる場合、全てのデバイスzjの位置は、線形システムを解くための従来の技術によって同時に計算されることができる。サーバ2は、任意の適切な方法によって連立線形方程式を解くように構成されてもよい。
【0099】
いくつかのデバイス3、4の位置が既知である場合、既知のデバイス位置の数だけ行列のサイズを縮小するために、線形システムを解く前に、既知の位置zkを有する任意のデバイスに関する行列の項がサーバ2によって乗算され得る。
【0100】
例えば、未知の位置のN個のモバイルデバイスと既知の位置のk個のデバイス(例えば、既知の位置を有する静止ビーコンおよび/またはモバイルデバイス)とを含むシステムでは、行列式は、以下のように表され得る。
【数17】
【0101】
デバイス位置zN+1からzN+kは既知であるため、これらは、以下のように分離されることができる。
【数18】
【0102】
既知の位置zN+1およびzN+kならびに既知の位置のデバイスに関連する計算された係数は、一定のベクトルbとして表現されることができ、非同次行列方程式を導く。
【数19】
ここで、bの値は、
【数20】
にしたがって計算される。
ただし、j=[1,N]である。
【0103】
サーバ2は、デバイスz1からzNの未知の位置を決定するために、特異値分解、ガウス消去、または下位-上位(LU)分解などの従来の技術を使用して、未知の位置z1からzNについて、この非同次行列方程式の解を見つけることができる。
【0104】
図8は、実数値の重み係数の行列wij、未知のデバイス位置のベクトルzj(ここで、各zjは、xj+i.yjとしてのデバイスのデカルト座標から形成される複素数である)、およびk個の既知のデバイスの位置zkから-sum(wikzk)としてサーバ2によって計算されたベクトルbiを示す、そのような連立線形方程式の簡略化された例を提供する。
【0105】
サーバ2は、行列wijを埋めるために可能な限り多くの三角形を組み合わせ得る。しかしながら、高いデバイス数の場合、行列wijをスパースに保つことが有利であり、それにより、(例えば、行列反転を実行するために)線形システムを解くための計算集約的でない方法が使用されてもよい。したがって、少なくともいくつかの実施形態では、サーバ2が、いくつかの係数をゼロに設定する(またはそれらを減衰させる)ことによって行列をフィルタリングすることが有益であり得る。それは、4つの三角形など、各デバイスiの係数を決定するために使用される三角形の最大数を課すことによって行い得る。それは、追加的または代替的に、最小4などの最小数の非ゼロ行列要素(係数wij)を課してもよく、すなわち、各行について最小値に達するまで三角形を追加し続けてもよい。それは、追加的または代替的に、各行において許容される最大6個などの非ゼロ行列要素の最大数を課してもよい。行ごとに許容される非ゼロ要素の最小数および最大数の両方を適用することにより、デバイス位置を効果的に決定することができるのに十分な数のデバイスカウントを確保しながら、計算効率が最適化されることができる。
【0106】
そのようなフィルタリングの例は、4つの静止ビーコン(図7に三角形として示されている)および3つの他のモバイルデバイス(図7において空円として示されている)を含む7つの他のデバイスjによって囲まれたピアツーピア測位システム100のモバイルデバイスiを示す、図7を参照して説明されることができる。図7では、3つの三角形701~703が、モバイルデバイスiに関する連立線形方程式の係数を決定するために使用されるようにサーバ2によって選択されている。図7はまた、誤差マージンのために、モバイルデバイスiが実際に三角形701のすぐ外側にある場合であっても、いくつかの状況において、ヘロン基準がどのように三角形701が使用されることを可能にし得るかを示している。
【0107】
使用されるべき三角形のサブセットを選択するとき、以下の2つのクラスの三角形が設定されることができる:既知の位置のビーコン4またはデバイス3によって画定される少なくとも1つの頂点を有するそれらの三角形の第1のクラス、およびこれを有しない三角形の第2のクラス。
【0108】
したがって、三角形は、ビーコン4のみから、またはモバイルデバイス3のみから、またはビーコン4とモバイルデバイス3との任意の組み合わせによって形成され得る。
【0109】
好ましくは、使用されるべき三角形の縮小されたサブセット(例えば、4つの三角形に限定する)を選択するとき、サーバ2は、第1のクラスから三角形を選択することを好む。同じクラスのデバイスの場合、位置分散が最も低い順に三角形を選択するように構成されてもよい。これは、典型的には、最小の辺を有する周囲の三角形に有利である。
【0110】
ノードの有効な周囲の三角形を有しない、または外挿をサポートするための近傍の三角形を有しないデバイス3、4は、係数行列wijから除去され、上述した方法によって決定されたそれらの位置を有しない。しかしながら、モバイルデバイスiが他のデバイスの三角形に囲まれていない場合、サーバ2は、外挿のプロセスによってそれを含むことができる場合がある。それは、最も近い三角形からの三辺測量結果を使用して、デバイス位置の線形システムにモバイルデバイスを追加しようと試み得る。係数wijは、点が三角形の内側にある場合と同じ方法で構築されることができるが、補間ではなく外挿されることができる。
【0111】
外挿を使用するときに生じる複雑さの1つは、ノードが三角形の内側にあるときとは対照的に、近くの三角形からの3つの二辺測量のそれぞれが2つの有効な位置をもたらし、合計23=8の異なる組み合わせをもたらすことである。真の推定位置を選択するために、各組み合わせについての位置誤差が計算され、関連する誤差が最小の位置が選択され得る。
図3から図8に関連して説明した方法は、例えばショッピングモールの特定のフロア(階)内の顧客の位置を決定するのに有用であり得るように、2次元でのデバイス位置の決定に十分であるが、本発明者らはまた、本明細書に開示される無線信号が使用されて、3次元でのデバイス位置を直接決定することもできることを認識している。したがって、ここで、図9および図10を参照して、直接3D測位を実行する第2のセットの実施形態について説明する。
【0112】
上述した2次元の場合と同様に、3次元におけるデバイス位置の決定は、モバイルデバイス3と静止ビーコン4とのペア間のデバイス間距離の決定と、サーバ2を使用したこれら距離のその後の処理とに基づいて、図1に示されたピアツーピア測位システム100を使用して達成されることができる。3次元の場合、デバイス間距離は、(例えば、RSSI測定値を使用して)上記と同等の方法で決定され、デバイス間距離データの形態でデータベース内のサーバ2のメモリ222に保存される。静止ビーコンの位置は、所定の原点および向きに対する3次元(x,y,z)座標としてサーバに知られ得る。
【0113】
ピアツーピア測位システム100は、デバイス間距離データを処理して、以下に記載されるように、3次元空間におけるシステム100のモバイルデバイス3のいくつかまたは全ての位置のコンスタレーションを決定することができる。次いで、各デバイスの位置は、それを囲むデバイスの3D位置の線形結合として表現されることができ、結果として得られる連立線形方程式は、複数のデバイスの推定値を同時に決定するために同時に解かれることができる。
【0114】
3次元位置決定プロセスの概要が図9に示されており、これは、3次元空間内のシステム100のモバイルデバイス3の一部または全ての位置を推定するためにサーバ2によって実行される動作のフローチャートを示している。このプロセスは、図10をさらに参照して以下に説明される。
【0115】
最初のステップ901では、領域または環境内に配置される全てのデバイス(すなわち、モバイルデバイス3およびビーコン4)が識別され、図3のステップ301に関連して説明したものと同等の方法で、選択された全てのデバイス(未知の位置を有するデバイスおよび例えばGPS測定値から位置が既知であるデバイスを含む)のデバイス間距離グラフが生成される。
【0116】
ステップ903において、未知の位置qiを有する所与のモバイルデバイスiについて、サーバ2は、モバイルデバイスiと他のデバイスjとの間に最近の距離データ(すなわち、15秒などの閾値期間内に記録されたデータ)がある(モバイルデバイス3または静止ビーコン4であり得る)4つの他のデバイスjの全ての組み合わせを決定する。2Dの場合に関して上述したように、これは、デカルト積リストを使用するなど、全てのC(N,4)(すなわち、「Nは4を選択する」)集合を見つけるための従来の方法を使用して達成され得る。
【0117】
これらは、ステップ905において、3D空間内の位置qiを囲む、またはほぼ囲む四面体を形成する位置qjを有する4つのデバイスjの組み合わせの縮小サブセットを生成するためにフィルタリングされる。これは、概念的には2Dの場合の周囲の三角形の決定と同様であるが、三角形の代わりに四面体の使用に依存する。この決定は、図10に関連して以下に説明するように、原則としてヘロンの法則と同様の式に基づく基準を使用して行われる。
【0118】
図10は、(座標(x1,y1,z1)、(x2,y2,z2)、(x3,y3,z3)、(x4,y4,z4)によって表される)位置qj1、qj2、qj3、およびqj4にそれぞれ位置する4つのモバイルデバイスj1、j2、j3、j4によって囲まれた(座標(x0,y0,z0)によって表される)位置qiにあるモバイルデバイスiを示している。モバイルデバイスj1~j4は、3D空間においてモバイルデバイスiを囲む四面体の角点に位置する。モバイルデバイスj1~j4のそれぞれの間のデバイス間距離は、a1-f1として図10に示されており、一方、モバイルデバイスiと周囲のデバイスj1~j4との間の距離は、α1、β1、δ1およびγ1として示されている。
【0119】
図10は、4つのさらなるモバイルデバイスj1~j4によって囲まれたモバイルデバイスiを示しているが、周囲のモバイルデバイスj1~j4のいずれかまたは全てが代わりにそれぞれの固定ビーコン4であってもよいことが理解されよう。
【0120】
デバイス間距離は、モバイルデバイスiがデバイスj1~j4の位置qjによって定義される四面体内にあるか、またはそれに近いかを決定するために使用される。これは、4つのデバイスj1~j4のうちの3つおよびモバイルデバイスiによって形成され、それぞれ体積V1~V4を有するサブ四面体の合成体積VTを比較することによって達成される。換言すれば、以下かどうかに関して決定が行われる:
【数21】
【0121】
デバイス位置に関して、これは、以下のように表現されることができる。
【数22】
ここで、V(j1,j2,j3,j4)は、頂点j1、j2、j3、j4を有する四面体の体積である。この式を使用して結合体積VTをサブ四面体の体積と比較すると、四面体の内側の任意の位置について等式が成り立つが、サブ四面体の結合体積は、結合四面体の外側の任意の位置についてVTを超える。したがって、モバイルデバイスiが結合された体積の四面体VT内に含まれる場合、上記の式の2つの辺は等しいか、または測定誤差を考慮するとほぼ等しい。
【0122】
四面体の体積は、その辺の長さを使用して、2次元の場合に関して上述したヘロンの法則と原理的に同様の既存の式を使用して計算されることができる。一般に、頂点pa、pb、pc、pdを有する四面体の場合、四面体の体積Vtetrは、以下にしたがって与えられることができる:
【数23】
【0123】
したがって、デバイスj1~j4とデバイスiとの間のデバイス間距離a1-f1を上記の式に入力することによって、デバイスj1~j4によって形成される四面体の体積VT、およびデバイスiおよびデバイスj1~j4のうちの3つによって形成されるサブ四面体V1~V4のそれぞれの体積がサーバ2によって決定されて比較されることができる。したがって、この方法は、デバイス間距離a1-f1のみに基づいて、デバイスiがデバイスj1~j4によって形成される四面体内に含まれるかどうかの決定を可能にする。
【0124】
4つのデバイスの組み合わせごとにこのように距離データに幾何学的条件を適用することにより、2Dの場合に関して上述したのと同様の方法で、モバイルデバイスiを効果的に囲むデバイスjの全ての組み合わせが決定されることができる。
【0125】
デバイス間距離が関連する誤差を伴うRSSI測定値を使用して決定されるという事実から生じる誤差を説明するために、2Dの場合の面積係数と同様に、体積係数が適用され得る。これは、上記で定義された厳密な等式よりも緩和された比較が体積間で行われることを可能にし得る。したがって、体積係数は、例えば予想されるRSSI誤差のようなピアツーピア測位システムの特性に基づいて選択され得る。2次元の場合と同様に、デバイス位置の不確実性の尺度が決定され得て、特に、サーバ2は、周囲のデバイスの各組み合わせについて、内側のサブ四面体体積の分散を四面体の平均体積と比較することによって、その組み合わせから生じる相対デバイス位置の不確実性の尺度を評価し得る。サーバ2は、これらの不確実性尺度を使用して、(例えば、閾値レベルを超える)不確実性の高い組み合わせを除外したデバイスの組み合わせの低減されたサブセットを決定し得る。
【0126】
(すなわち、関与する5つのデバイス間の10個の既知のデバイス間距離を有する)完全なデバイス間距離セットが利用可能なモバイルデバイスiを囲む4つのデバイスj1、j2、j3、j4の全ての可能な組み合わせを決定すると、サーバ2は、ステップ907において、ローカル座標系におけるモバイルデバイスiとデバイスj1、j2、j3、j4との相対位置を決定する。
図10に示すラベリングシステムを使用して、これを達成するために、デバイスj1、j2、j3、j4のうちの第1のデバイス、例えばj1の位置が原点として選択され、すなわち座標(x1,y1,z1)=(0,0,0)を有する。次いで、デバイスのうちの第2のデバイス、例えばj2の位置qj2は、座標(x2,y2,z2)=(b1,0,0)を有するように、x軸上にあるものとして定義される。デバイスのうちの第3のデバイス、例えばj3の位置qj3は、j3がこのx-y平面内に位置するようにx-y平面を定義するために使用される。この点の座標(x3,y3,z3)は、円ベースの二辺測量を使用して求められ、デバイスの3番目の座標を以下のように定義する。
【数24】
ここで、Φは、a1とb1との間の角度であり、以下によって与えられることができる:
【数25】
【0127】
次いで、デバイスのうちの第4のデバイス、例えばj4の位置は、z方向に正の高さを有するx-y平面の上方にあるものとして定義される。この点の座標は、球ベースの三辺測量を使用して求められ得る。このプロセスでは、ここでは平面z=0にあると定義されているデバイスj1、j2、およびj3のそれぞれの位置が球の中心として設定され、その半径は、それぞれrj1、rj2およびrj3として定義され得る。3つの球について2つの交点(z軸の上に1つおよび下に1つ)は、デバイスの4番目の位置のx、y、z座標に関して球の半径を定義し、x、yおよびzを解くことによって決定されることができる。2つの交点が決定されるが、これらの点のうちの1つは、デバイスのうちの第4のデバイスの位置がx-y平面の上方にあるという要件を満たすように選択される。
【0128】
球のそれぞれの半径は、以下を使用して定義されることができる:
【数26】
これは、サーバ2上のアルゴリズムによって解かれることができ、第4のデバイスj4のx、yおよびz座標(x4,y4,z4)を
【数27】
として取得する。
【0129】
ローカル座標系におけるデバイスj1~j4の位置を定義した後、モバイルデバイスiの位置は、このローカル座標系において計算される。これは、さらなる球ベースの三辺測量プロセスを使用して達成される。具体的には、それぞれが4つの四面体頂点のうちの3つの異なるグループを基礎として使用する、一連の球ベースの三辺測量演算が実行される。このプロセスは、モバイルデバイスiの位置qiの4つの異なる近似値を提供し、そこから平均を取ってモバイルデバイス位置をより正確に決定し得る。
【0130】
4つのデバイスj1~j4の位置qj1-4およびモバイルデバイスiの位置qiが推定されると、頂点解析が実行されてデバイス位置間の関係を見つけ、モバイルデバイスiの位置を他のデバイスj1~j4の位置にマッピングし直すことができる。したがって、モバイルデバイスiの位置qiは、ステップ909において、デバイスj1-4の位置qj1-4の線形加重和の形式で決定される。これは、以下の式を設定することによって達成される:
【数28】
【0131】
この3次元線形方程式は、係数b、cおよびdを決定するために解かれることができる。第4の係数は、以下のように計算されることができる:
a=1-(b+c+d)
点qiと点qj1~qj4との間の重み付き接続を提供し、ここで、wi1=a、wi2=b、wi3=c、wi4=dである。したがって、上記の計算は、サーバ2が、モバイルデバイスiの位置qiを、モバイルデバイスを囲む四面体を形成する4つのデバイスjの位置qjの一貫した線形結合として決定することを可能にし、各デバイスは、上記の係数a~dによって定義される重み係数wijによって重み付けされる。
【0132】
2次元の場合と同様に、位置が未知のデバイスiおよび4つのデバイスjのセットごとにステップ903からステップ909が繰り返され、重み要素wijの行列Wを定義する4つの要素のセットが順次決定されることを可能にする。四面体解析方法を十分に追加すると、連立線形方程式が生成されることができ、システム内の各デバイスiの位置qiは、それを囲むデバイスjの位置qjの一貫した線形結合として表現され、それぞれ係数wijによって重み付けされる。
【0133】
2次元の場合と同様に、この連立線形方程式は、そのスパース性を増加させるために、いくつかの係数をゼロに設定するか、または他の方法でそれらを減衰させることによってフィルタリングされることができる。これは、4つの四面体などの各デバイスiの係数を決定するために使用される最大数の四面体、または各行において許容される最小4などの最小数の非ゼロ行列要素(係数wij)、または最大6などの最大数の非ゼロ行列要素を課すなど、2D実施形態において上述した方法のいずれかまたは全てを適合させることによって行われることができる。
【0134】
上述した2次元の場合、2D位置を複素数として表現することが好都合であるが、これは3次元の場合ほど好都合ではない。代わりに、各次元は別々に処理され、それぞれx、yおよびz次元を表す3つの異なる行列方程式をもたらす。これは、上述した方法が線形方程式のみを使用するので可能であり、その結果、ステップ911において3つの別々の行列方程式
【数29】
が定義されることができる。これらの行列方程式のそれぞれの形式は、2Dの場合に関して上述したものと同様である。
【0135】
例えば、N個のモバイルデバイスを備えるシステムでは、x次元におけるデバイス位置の行列方程式は、以下のように表され得る。
【数30】
【0136】
2次元の場合のように、位置が未知のN個のデバイスおよび位置が既知のK個のデバイス(例えば、既知の位置を有する静止ビーコンおよび/またはモバイルデバイス)があると仮定すると、上記の行列式は、ステップ913における2Dの場合に関連して説明したように非同次行列式に分割および分解されて
【数31】
を得ることができ、ここで、bxは定数ベクトルである。
【0137】
このプロセスは、既知の位置のK個のデバイスを有するシステムにおいて、未知のデバイスの位置1からNについて以下の3つの非同次行列方程式を得るために、y次元およびz次元について同じ方法で適用されることができる。
【数32】
【0138】
これらの3つの行列方程式を
【数33】
について解くことは、未知のデバイスの位置を提供する。したがって、ステップ915において、サーバ2は、例えば行列
【数34】
を反転することによって、または任意の他の適用可能な方法によって、連立線形方程式を解き、3次元における以前に未知であった位置のモバイルデバイス3の位置を含むベクトルを決定する。2次元の場合と同様に、この演算は、有利には、未知の位置を有するシステムの全てのデバイスの位置を決定するために1回だけ実行されなければならない。
【0139】
本発明は、その1つまたは複数の特定の実施形態を説明することによって例示されているが、これらの実施形態に限定されないことが当業者には理解されよう。添付の特許請求の範囲内で、多くの変形および変更が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】