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特表2024-516865電極に添加剤を含み、電気特性が向上した電池
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-17
(54)【発明の名称】電極に添加剤を含み、電気特性が向上した電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/134 20100101AFI20240410BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240410BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240410BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20240410BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20240410BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20240410BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240410BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20240410BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20240410BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20240410BHJP
   H01M 50/429 20210101ALI20240410BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20240410BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M4/62 Z
H01M10/052
H01M10/0566
H01M10/0569
H01M10/0568
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/131
H01M50/417
H01M50/429
H01M4/587
H01M4/36 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568378
(86)(22)【出願日】2022-05-04
(85)【翻訳文提出日】2023-12-08
(86)【国際出願番号】 EP2022062052
(87)【国際公開番号】W WO2022233976
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】2106351.6
(32)【優先日】2021-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510179537
【氏名又は名称】ウニヴァーシテテット イ オスロ
【住所又は居所原語表記】P.O. Box 1072,Blindern,0316 Oslo Norway
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】トリパティ, アロク マニ
(72)【発明者】
【氏名】フィエルヴォーグ, ヘルマー
【テーマコード(参考)】
5H021
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H021EE04
5H021EE11
5H029AJ05
5H029AK03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL18
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM05
5H029DJ08
5H029EJ03
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ19
5H050AA07
5H050BA16
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB29
5H050DA09
5H050DA11
5H050EA11
5H050EA23
5H050FA17
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA19
(57)【要約】
本発明は、リチウムイオン電池のアノードとして使用するのに適した、SEI安定化添加剤を有するシリコン材料および前記アノードの製造方法に関する。添加剤は、エネルギー密度、充電保持容量、貯蔵容量および充電/放電速度に関する安定性などのリチウムイオン電池におけるシリコンアノードの特性を改善することができる。電池は携帯電話や電気自動車などの電化製品に適している。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セルであって、
ハウジングと、
負極、正極、及び前記負極と前記正極との間に配置されたセパレータを含む電池コアと、
前記負極と前記正極との間に機能的に配置され、少なくとも1種のリチウム塩と非水性溶媒を含む電解質とを備え、
前記負極は、
シリコン粒子と、
ポリマーバインダーと、
炭素質材料と、
式(I)の化合物及び任意にホウ酸からなる添加剤と、を含み、
【化1】

式中、
はH、NH、OH、又は=Oを示し、
が=Oを示す場合、Rは、存在しないか、又はHを示し、
はH、NH、OH、又は=Oを示し、
が=Oを示す場合、Rは、存在しないか、又はHを示し、
前記式(I)の化合物は、任意にホウ酸と共に存在してもよく、ただし、ホウ酸が存在する場合、RもRもOH又は=Oを示さない、電池セル。
【請求項2】
前記負極は(固形物の重量%として)、
40重量%~80重量%のシリコン粒子と、
5重量%~25重量%のポリマーバインダーと、
0重量%~25重量%の炭素質材料と、
5重量%~25重量%の、式(I)の化合物及び任意にホウ酸からなる添加剤と、
を含む、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記負極は(固形物の重量%として)、
50重量%~70重量%のシリコン粒子と、
10重量%~20重量%のポリマーバインダーと、
5重量%~15重量%の炭素質材料と、
10重量%~20重量%の、式(I)の化合物及び任意にホウ酸からなる添加剤と、
を含む、請求項1~2のいずれか一項に記載の電池セル。
【請求項4】
及びRが両方ともにHを示す場合に、ホウ酸が存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の電池セル。
【請求項5】
はH又はNHを示す、請求項1~4のいずれか一項に記載の電池セル。
【請求項6】
前記添加剤は、
メラミン、
1:2の比率のメラミンとホウ酸、
二ホウ酸メラミン、
4,6-ジアミノ-2-ヒドロキシ-1,3,5-トリアジン、及び
4-アミノ-2-ヒドロキシ-1,3,5-トリアジンから選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の電池セル。
【請求項7】
前記シリコン粒子は結晶シリコンを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の電池セル。
【請求項8】
前記シリコン粒子は元素シリコンを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の電池セル。
【請求項9】
前記ポリマーバインダーは、カルボキシメチルセルロース、特にカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の電池セル。
【請求項10】
前記炭素質材料は黒鉛を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の電池セル。
【請求項11】
前記電解質は、
ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、及びフルオロエチレンカーボネート;
ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、及びフルオロエチレンカーボネート;
エチルメチルカーボネート、エチレンカーボネート、及びフルオロエチレンカーボネート;
並びにジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、及びフルオロエチレンカーボネートから選択される非水溶媒混合物を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の電池セル。
【請求項12】
前記リチウム塩は、LiClO、LiAlCl、LiI、LiBr、LiSCN、LiBF、LiB(C、LiAsF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(FSO、LiPF、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の電池セル。
【請求項13】
前記リチウム塩はLJPFを含む、請求項12に記載の電池セル。
【請求項14】
前記カソードはコバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウム、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物、又はリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の電池セル。
【請求項15】
前記セパレータはセルロース又はポリオレフィンを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の電池セル。
【請求項16】
前記電池セルは100サイクル後の充電容量が少なくとも1500mAh/gである、請求項1~15のいずれか一項に記載の電池セル。
【請求項17】
前記電池セルは100サイクル後の充電容量が少なくとも2150mAh/gである、請求項1~16のいずれか一項に記載の電池セル。
【請求項18】
前記負極は(固形物の重量%として)、
40重量%~80重量%のシリコン粒子と、
5重量%~25重量%のポリマーバインダーと、
0重量%~25重量%の炭素質材料と、
7重量%~25重量%の、式(I)の化合物及び任意にホウ酸からなる添加剤と、
を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の電池セル。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載の電池セルを含む電子デバイス。
【請求項20】
前記デバイスは携帯電話のような携帯型電子機器である、請求項19に記載の電子デバイス。
【請求項21】
前記デバイスは電気自動車である、請求項19に記載のデバイス。
【請求項22】
シリコン粒子と、
ポリマーバインダーと、
任意に炭素質材料と、
式(I)の化合物及び任意にホウ酸からなる添加剤と、を含む組成物であって、
【化2】

式中、
はH、NH、OH、又は=Oを示し、
が=Oを示す場合、Rは、存在しないか、又はHを示し、
はH、NH、OH、又は=Oを示し、
が=Oを示す場合、Rは、存在しないか、又はHを示し、
式(I)の化合物は、任意にホウ酸と共に存在してもよく、ただし、ホウ酸が存在する場合、RもRもOH又は=Oを示さない、組成物。
【請求項23】
シリコン粒子と、
ポリマーバインダーと、
任意に炭素質材料と、
式(I)の化合物及び任意にホウ酸からなる添加剤と、を含む組成物を備える電極であって、
【化3】

式中、
はH、NH、OH、又は=Oを示し、
が=Oを示す場合、Rは、存在しないか、又はHを示し、
はH、NH、OH、又は=Oを示し、
が=Oを示す場合、Rは、存在しないか、又はHを示し、
式(I)の化合物は、任意にホウ酸と共に存在してもよく、ただし、ホウ酸が存在する場合、RもRもOH又は=Oを示さない、電極。
【請求項24】
リチウムイオン電池におけるシリコン電極のSEI安定性を改善するための、任意にホウ酸と共に存在する式(I)の化合物の使用であって、
【化4】

式中、
はH、NH、OH、又は=Oを示し、
が=Oを示す場合、Rは、存在しないか、又はHを示し、
はH、NH、OH、又は=Oを示し、
が=Oを示す場合、Rは、存在しないか、又はHを示し、
式(I)の化合物は、任意にホウ酸と共に存在してもよく、ただし、ホウ酸が存在する場合、RもRもOH又は=Oを示さない、使用。
【請求項25】
リチウムイオン電池におけるシリコン電極のSEIの継続的な成長及び/又は厚さ増加を防止するための、任意にホウ酸と共に存在する式(I)の化合物の使用であって、
【化5】

式中、
はH、NH、OH、又は=Oを示し、
が=Oを示す場合、Rは、存在しないか、又はHを示し、
はH、NH、OH、又は=Oを示し、
が=Oを示す場合、Rは、存在しないか、又はHを示し、
式(I)の化合物は、任意にホウ酸と共に存在してもよく、ただし、ホウ酸が存在する場合、RもRもOH又は=Oを示さない、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池のアノードとして使用するための、安定化添加物を有するシリコン材料、及び当該アノードを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二次リチウムイオン(Li-ion)電池は、特に携帯電子製品、例えば携帯電話や電子車両など、電子製品で広く使用されている。同様に、Li-ion電池は陸上、海上、及び航空輸送においても重要な役割を果たしている。Li-ion電池はその高エネルギー密度のためにこれらの用途に適しているが、しばしばサイクル性能が最適でない。通常、Li-ion電池のエネルギー密度は繰り返しの充放電サイクルで低下し、それによりバッテリーの寿命が減少し、商業的な実用性が低下する。
【0003】
Li-ion電池が充電されると、カソード(正極)からLiイオンが電解質を介して流れ、アノード(負極)に挿入される。放電時には、Liイオンは逆の方向に、アノードからカソードに流れる。Liイオンを電極に挿入し、それを損傷させずに繰り返し放出することが、電池の性能と寿命に不可欠である。
【0004】
Li-ion電池のアノード材料として一般的に選ばれるものは、その優れた電子特性、低コスト、軽量性から、グラファイトである。しかし、炭素ベースの電池は長時間使用又は高電圧で使用した場合に火災のリスクがある。
【0005】
米国特許出願公開第2020/058926(A1)号によれば、電池セルのカソード(正極)に非常に少量(2重量%)のメラミンベースの添加剤を添加することが記載されており、これには、例えば炭素ベースのアノードも含まれている。メラミンベースの添加剤は、難燃性の特性を持つため、カソードの安全性を向上させると主張されている。安全性を向上させる別のアプローチは、アノードのための適切な代替材料を見つけることによって、バッテリー内の炭素の量を減らすことが含まれるかもしれない。
【0006】
シリコン(Si)はそのような代替材料として知られており(再充電式リチウム電池の挿入電極材料、M.Winter、J.0.Besenhard、M.E.Spahr、及びP.Novak、Adv.Mater。1998、10、No.10)。シリコンはまた、Li-ion二次電池の活性アノード材料として使用した場合、グラファイトに比べてLi挿入の理論容量が大幅に(約10倍)高い。シリコンとリチウムの電気化学セル内での反応により、Li-Si合金が生成され、それはシリコン原子1つあたり4.4リチウムを収容できる理論容量4,200mAh/gを持つ。これは最大容量のグラファイトの約1桁高い。
【0007】
更に、シリコンは不燃性であり、したがって炭素ベースのアノードに比べて安全な代替材料である。しかし、シリコンは比較的電子的性質が劣り、通常はアノードの物理的性質を改善するための加工が必要とされる。そのため、シリコンアノードは通常、依然として大量の炭素を含み、アノードの準備中に炭素成分を熱分解する硬化工程を通ることが一般的である(例:米国特許第10,427,982号及び中国特許第111048764(A)号を参照)。
【0008】
サイクル回数とともに容量が低下することは、シリコンアノードを持つLi-ion電池にとっての課題である。劣化の一因はアノード材料の膨張である。Li挿入時、シリコンはイオンを収容するために膨張し、体積が約300%増加することがある。膨張と収縮の複数のサイクルの後、電池の運転は電極の構造的劣化により失敗する可能性がある。小さなシリコン粒子から作られたアノードは、体積変化に耐えるのがより容易であることが知られており、アノードは通常、結晶シリコンの粒子から作られている。国際公開第2007/083155号によれば、体積変化に耐えるためには、次のシリコン粒子の寸法が最も有益であることが示されている:約0.08~0.5μmの小さな寸法、約20~300μmの大きな寸法、及び全体のアスペクト比が約100:1である。体積変化の影響を更に軽減するための一般的な方法には、i)粒子を安定させるためにポリマーバインダーを添加する、ii)シリコン材料にグラファイト化された炭素コーティングを追加する、及びiii)バッテリー運用のための電位ウィンドウを制限することが含まれる。
【0009】
シリコンアノードを持つ電池の性能低下の別の具体的な問題は、固体電解質界面(SEI)の劣化と持続的な成長である。最初から5サイクルまでのバッテリー運用中に、SEIがアノードで形成される。SEIは電極上の遮断層であり、電解質と新しい電極表面との反応によって形成される。SEIの形成に伴う最初の数サイクルでは、SEIの形成に伴う容量の損失が不可避である。一旦SEIが完全に形成されると、システムは電解質の分解と更なる容量の損失から保護されるはずである。
【0010】
SEIは半固体の構造であり、充放電サイクル中にシリコンアノードが膨張及び収縮するにつれて割れやすい。そのため、SEIは電池の使用中にも引き続き成長し、割れ目の間の「新鮮な」アノード材料との電解質の更なる反応により、更なる容量の損失が生じることがある。SEIの構造的不安定性は、不完全な放電や高電圧への感度など、他の問題も引き起こす可能性がある。SEIの安定化は、サイクリング中の容量損失を緩和し、動作のための潜在的な範囲を拡大し、深放電を容易にすることにより、バッテリーの性能を向上させる可能性があるため、重要である。
【0011】
更に、SEI形成中に失われる容量を制限することも重要であり、これはバッテリーの初期及び最大容量を減少させるためである。
【0012】
ジアリルカーボネート電解質添加剤を使用してシリコンアノードのSEIを安定化しようとする試みは、米国特許出願第2012/0129054号に記載されている。この添加剤は、非水性溶媒と電解質中のLiイオンとの反応を促進し、安定したSEIを形成することができると主張されている。これにより、Li-Si合金が非水性溶媒との副反応を防ぐことができ、バッテリーの寿命が延びる可能性がある。
【0013】
異なるアプローチは、中国特許第111048764(A)号に記載されており、シリコン-炭素複合体が提案されている。アノードの合成中、有機添加剤がシリコン粒子と混合され、添加剤を炭素化し、グラファイト化炭素のコーティング層を形成する。この複合材料は、SEIフィルムの安定性を向上させ、動作中のアノードの体積変化を緩和し、サイクリング性能を向上させると主張されている。
【発明の概要】
【0014】
本発明の目的は、Liイオンバッテリーのシリコンアノードを使用した場合に、操作サイクルの増加とともに発生する充電記憶の減少に対処することである。
【0015】
本発明は、バッテリー性能を向上させる添加剤を記載する。具体的には、ホウ酸及び/又はトリアジンベースの化合物からなる添加剤が、アノードの製造中に組み込まれ、SEIの特性を向上させる。その結果、本発明のバッテリーは、添加剤を使用しないバッテリーよりも高い放電密度を持ち、サイクル回数に伴う容量損失が低い。更に、本発明のアノード中の炭素量が減少し、高炭素含有バッテリーの安全性に対処している。
【0016】
本開示は、以下を含む組成物を提供する:
シリコン粒子と、
ポリマーバインダーと、
任意に炭素質材料と、
ホウ酸及び/又は式(I)の化合物からなる添加剤
【0017】
【化1】

式中、
はH、NH、OH、又は=Oを示し、
が=Oを示す場合、Rは、存在しないか、又はHを示し、
はH、NH、OH、又は=Oを示し、
が=Oを示す場合、Rは、存在しないか、又はHを示し、
式(I)の化合物は、任意にホウ酸と共に存在してもよく、ただし、ホウ酸が存在する場合、RもRもOH又は=Oを示さない。
【0018】
また、本開示は、本開示の組成物から形成された電極を提供する。
【0019】
また、本開示は、以下を含む組成物を含む電極を提供する:
シリコン粒子と、
ポリマーバインダーと、
任意に炭素質材料と、
ホウ酸及び/又は化合物からなる添加剤とを含む。ただし、ホウ酸が存在する場合、RもRもOH又は=Oを示さない。
【0020】
更に、本開示は、以下を含む電池セルを提供する:
ハウジングと、
負極(即ちアノード)、正極(即ちカソード)、及びカソードとアノードとの間に配置されたセパレータを含む電池コアであって、
負極が本開示の電極を含む、電池コアと、負極と正極との間に機能的に配置された電解質であって、少なくとも1つのリチウム塩及び3つの非水溶媒を含む、電解質。
【0021】
本開示は様々な修正や代替形式に対応しているが、具体例を示し、詳細に説明する。ただし、特定の実施例を超えて、他の実施例も可能である。付属の請求項の趣旨及び範囲内に含まれる、すべての修正、同等物、及び代替実施例も含まれる。
【0022】
上記の記述は、現在又は将来の請求項の組の範囲内のすべての例示的な実施形態又はすべての実装を表すことを意図するものではない。図面及び以下の詳細な説明はまた、様々な例示的な実施形態を例示している。様々な実施形態は、以下の詳細な説明を考慮することによって、より完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
ここで、1つ以上の実施形態を、以下を備える添付の図面のみを参照して、例としてのみ説明する。
図1a】は結晶シリコンのX線回折パターンである。
図1b】は非晶質シリコンのX線回折パターンである。
図2】添加物を含む電池と含まない電池の電池容量対サイクル数の比較である。
図3a】添加物を含む電池と含まない電池のクーロン効率対サイクル数を示す。
図3b】添加物を含む電池と含まない電池のクーロン効率対サイクル数を示す。
図3c】添加物を含む電池と含まない電池のクーロン効率対サイクル数を示す。
図3d】添加物を含む電池と含まない電池のクーロン効率対サイクル数を示す。
図3e】添加物を含む電池と含まない電池のクーロン効率対サイクル数を示す。
図4a】半セル内での充電と放電中の添加物を含む電極と含まない電極のイン・シチュ電気化学インピーダンススペクトルを示す。
図4b】半セル内での充電と放電中の添加物を含む電極と含まない電極のイン・シチュ電気化学インピーダンススペクトルを示す。
図4c】半セル内での充電と放電中の添加物を含む電極と含まない電極のイン・シチュ電気化学インピーダンススペクトルを示す。
図4d】半セル内での充電と放電中の添加物を含む電極と含まない電極のイン・シチュ電気化学インピーダンススペクトルを示す。
図4e】半セル内での充電と放電中の添加物を含む電極と含まない電極のイン・シチュ電気化学インピーダンススペクトルを示す。
図4f】半セル内での充電と放電中の添加物を含む電極と含まない電極のイン・シチュ電気化学インピーダンススペクトルを示す。
図4g】半セル内での充電と放電中の添加物を含む電極と含まない電極のイン・シチュ電気化学インピーダンススペクトルを示す。
図4h】半セル内での充電と放電中の添加物を含む電極と含まない電極のイン・シチュ電気化学インピーダンススペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示は、リチウムイオンバッテリーのアノードとして使用される特定の用途に見合った組成物に関連する。組成物内の各成分は以下で詳細に説明される。
【0025】
シリコン粒子
本開示の組成物は、シリコン粒子を含む。シリコン粒子は、組成物が電極に形成されたときにリチウムイオンの電荷受け入れ体として機能する。その結果、組成物内のシリコンの量は通常比較的高い。
【0026】
通常、組成物には40重量%~80重量%のシリコン粒子が含まれる。好ましくは、組成物には45重量%~75重量%のシリコン粒子が含まれ、更に好ましくは50重量%~70重量%のシリコン粒子が含まれ、更に好ましくは55重量%~65重量%のシリコン粒子が含まれ、更に好ましくは57~63重量%のシリコン粒子が含まれる。
【0027】
シリコン粒子の重量%は、分散媒体を除く固形物の重量%を表す。
【0028】
シリコン粒子は、主成分としてシリコンを含む無機粒子を含むことがある。例えば、合計シリコン粒子の35%以上、好ましくは50%以上、更に好ましくは70%以上を占めることがある。
【0029】
適切なシリコン粒子には、元素シリコン粒子及び/又はリチウムシリサイド(LiSiなど)粒子が含まれる。
【0030】
シリコン粒子は、追加又は代替として、一般的にxが2以下であるSiOを含むことができる。一部の実施形態では、一部のSiO粒子について、xが約1であることがある。例えば、xは約0.9~約1.1、又は約0.99~約1.01であることがある。SiO粒子の体内には、SiO及び/又はSiドメインが存在することがある。一部の実施形態では、シリコン粒子は「単一相」とみなすことができ、追加の導電性炭素(例:黒鉛)を含まない。
【0031】
好ましくは、シリコン粒子は結晶シリコンである。適切な種類の結晶シリコンには、単結晶シリコン、多結晶シリコン、微結晶シリコン、及びナノ結晶シリコンが含まれる。
【0032】
結晶シリコンは、X線回折によって特徴づけることができる。したがって、結晶シリコンは、図1aに示されるような明確な回折ピーク(2θ角度)を示し、非晶質シリコンは図1bに示されるような広がった2θ角度の散乱を示す。
【0033】
好ましくは、シリコン粒子は元素シリコンである。このような粒子は、酸素及び/又は水素原子を含む表面層を有することがある。
【0034】
好ましくは、シリコン粒子は結晶性元素シリコンである。
【0035】
好ましくは、シリコン粒子はナノ粒子である。
【0036】
シリコン粒子の平均(平均値)粒子直径は、約1μm未満、通常は500nm未満、好ましくは300nm未満であることがある。例えば、いくつかの実施形態では、シリコン粒子の平均(平均)粒子直径は約1nm~約1μm、又は約2nm~約500nm、又は約5nm~約300nmであることがある。
【0037】
シリコン粒子の平均(平均)粒子サイズは、走査電子顕微鏡(SEM)によって決定できる。平均(平均)粒子サイズは、SEM画像内のランダムに選択された10個以上の粒子の直径を測定して画像平均を決定し、このプロセスを7つのランダムSEM画像で画像平均を取得するために繰り返し、この方法で得られた最も高い及び最も低い画像平均を無視して、残りの5つの画像平均の平均(平均)粒子サイズを計算することによって計算できる。粒子が完全に球状でない場合、最大の粒子直径を測定する必要がある。シリコン粒子が凝集した場合、粒子径は凝集構造内で個々の粒子に見えるものの直径として取られる。
【0038】
ポリマーバインダー
ポリマーバインダーの役割は、組成物が電極として形成される際に、電流集電体の上に機械的強度を提供することである。その主要な役割はしたがって構造的であり、水性媒体に可溶な範囲の適切なポリマーバインダーを使用できるが、これらが組成物の電気特性に干渉しないか、有害でないことが求められる。
【0039】
通常、組成物にはポリマーバインダーの質量比が5重量%~25重量%含まれる。好ましくは、組成物には5重量%~20重量%のポリマーバインダーが含まれ、特に10重量%~20重量%のポリマーバインダーが含まれ、更に好ましくは約15重量%のポリマーバインダーが含まれる。
【0040】
ポリマーバインダーの重量%は、分散媒を除いた組成物の重量パーセントを表しており、つまり固形物の重量%を指す。
【0041】
適切なポリマーバインダーは、ポリエチレンオキサイド(PEO)、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、カルボキシメチル基を含むセルロースエーテル、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、スチレン-ブタジエンゴムカルボキシメチルセルロース(SBR-CMC)、ポリアクリル酸(PAA)、Li-PAA、Na-PAA、Na-アルギン酸塩、架橋ポリアクリル酸-ポリエチレンイミン、ポリイミド、ポリビニルアルコール(PVA)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、又はポリアクリロニトリル(PAN)から選択できる。
【0042】
好ましいポリマーバインダーは、カルボキシメチル基を含むセルロースエーテル、PVA、又はNa-アルギン酸塩から選択されることがあり、特にカルボキシメチル基を含むセルロースエーテルが特に好ましい。
【0043】
カルボキシメチル基を含むセルロースエーテルには、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)、アルキルカルボキシメチルセルロース(メチルカルボキシメチルセルロースなど)、ヒドロキシアルキルカルボキシメチルセルロース(ヒドロキシエチルカルボキシメチルセルロース又はヒドロキシプロピルカルボキシメチルセルロースなど)が含まれる。これらのカルボキシメチル基を含むセルロースエーテルは単独で使用するか、組み合わせて使用できる。
【0044】
ポリマーバインダーとして特に好ましいのは、カルボキシメチルセルロースである。
【0045】
CMCは、適切な水溶性と水中での粘度を表現できる平均エーテル化度(カルボキシメチル基の平均エーテル化度)を有しており、これにより組成物のコーティング特性(コーティング可能性)が向上する。平均エーテル化度は、約0.1~3の幅広い範囲から選択でき、好ましくは約0.2~2、更に好ましくは約0.5~1.2である。
【0046】
「平均置換度」という用語は、セルロースを構成するブドウ糖単位の2位、3位、及び6位のヒドロキシル基に関する置換度(カルボキシメチル基の置換度、特に塩を形成する可能性のあるカルボキシメチル基の置換度)の平均を意味し、平均置換度の最大値は3である。
【0047】
カルボキシメチル基を含むセルロースエーテル(特にCMC)は、塩を形成することがある。塩には、アルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩など)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩など)、四級アンモニウム塩、アミン塩、置換アミン塩、又はこれらの二重塩などが含まれる。
【0048】
塩(CMC塩)には、ナトリウム塩などのアルカリ金属塩、四級アンモニウム塩、特にナトリウム塩などのアルカリ金属塩が含まれることが好ましい。
【0049】
ポリマーバインダーは通常水性媒体に分散可能である。
【0050】
炭素質材料
オプションの炭素質材料の役割は、シリコン粒子間の電子伝導性を向上させることである。
【0051】
通常、組成物は0重量%~25重量%の炭素質材料を含む。好ましくは、組成物は5重量%~20重量%の炭素質材料を含み、更に好ましくは5重量%~15重量%の炭素質材料を含む。
【0052】
炭素質材料の重量%は、分散媒を除く固形物の重量%を表し、つまり、固体重量%である。
【0053】
炭素質材料(又は炭素)は、例えば、黒鉛、メソカーボン微粒子(MCMB)、ピッチベースの炭素、及びコークス粉末などが含まれることができる。これらの炭素質材料は単独で使用されるか、組み合わせて使用することができる。これらの炭素質材料の中で、優れた充放電特性を持つグラファイトが好ましいとされ、特に高度配向性熱分解黒鉛(HOPG)が更に好ましい。
【0054】
添加剤
リチウム電池の典型的なシリコンベースの電極材料は、シリコン粒子、ポリマーバインダー、及び炭素質材料のブレンドである。驚くべきことに、シリコンの電気特性は、化合物の式(I)及び/又はホウ酸からなる添加物の使用によって、著しく改善することができることがわかった。この添加物の存在は、固体電解質界面を安定化し、数百回の充放電サイクルの後でもエネルギー密度と容量の保持が向上する。
【0055】
具体的には、本開示の組成物はホウ酸及び/又は式(I)の化合物からなる添加物を含む:
【0056】
【化2】

式中、
はH、NH、OH、又は=Oを示し、
が=Oを示す場合、Rは、存在しないか、又はHを示し、
はH、NH、OH、又は=Oを示し、
が=Oを示す場合、Rは、存在しないか、又はHを示し、
式(I)の化合物は、任意にホウ酸と共に存在してもよく、ただし、ホウ酸が存在する場合、RもRもOH又は=Oを示さない。
【0057】
一部の実施形態では、本開示の組成物はホウ酸からなる添加物を含む。
【0058】
好ましくは、本開示の組成物は、任意にホウ酸が存在する場合、R又はRがOH又は=Oを示さない限り、式(I)の化合物からなる添加物を含む。
【0059】
優先的な化合物の場合、式(I)において、ホウ酸は、RとRがともにHを示す場合に存在する。
【0060】
優先的な化合物の場合、式(I)において、
はH又はNHを示す。
【0061】
優先的な化合物の場合、式(I)において、
はNHを示す。
【0062】
優先的な化合物の場合、式(I)において、
がNHを示し、
がNHを示し、
ホウ酸は任意に存在する。
【0063】
優先的な化合物の場合、式(I)において、
がNHを示し、
がNHを示し、
ホウ酸は1つ又は2つの等価量として任意に存在する。
【0064】
優先的な化合物の場合、式(I)において、
がNHを示し、及び
はNHを示す。
【0065】
優先的な化合物の場合、式(I)において、
がOHを示し、
はNHを示す。
【0066】
優先的な化合物の場合、式(I)において、
は=O、
はHであり、
はHである。
【0067】
好ましい添加剤は、以下から選択される:
2-アミノ-1,3,5-トリアジンとホウ酸の組み合わせ、好ましくは1:1又は1:2の比率
【0068】
【化3】

メラミン
【0069】
【化4】

メラミンとホウ酸の組み合わせ、好ましくは1:2の比率
【0070】
【化5】

二ホウ酸メラミン
【0071】
【化6】

4,6-ジアミノ-2-ヒドロキシ-1,3,5-トリアジン
【0072】
【化7】

並びに、
4-アミノ-2-ヒドロキシ-1,3,5-トリアジン
【0073】
【化8】
【0074】
特に好ましい添加剤は、以下から選択される:
メラミン、
メラミンとホウ酸の組み合わせ、好ましくは1:2の比率
二ホウ酸メラミン
4,6-ジアミノ-2-ヒドロキシ-1,3,5-トリアジン、
及び4-アミノ-2-ヒドロキシ-1,3,5-トリアジン。
【0075】
化合物(I)の割合(例:メラミン)とホウ酸の割合は、化学計量比として表される。
【0076】
通常、組成物は添加剤(すなわち、ホウ酸及び/又は化合物(I))の質量分率が5重量%~25重量%である。好ましくは、組成物は添加剤(すなわち、ホウ酸及び/又は化合物(I))の質量分率が7重量%~25重量%であり、更に好ましくは、組成物は添加剤(ホウ酸及び/又は化合物(I))の質量分率が10重量%~20重量%である。
【0077】
添加剤(ホウ酸及び/又は化合物(I))の重量%は、分散媒体を除く組成物の重量パーセントを表している。つまり、固形物の重量%である。
【0078】
したがって、組成物は好ましくは(固形物の重量%として):
40重量%~80重量%のシリコン粒子と、
5重量%~25重量%のポリマーバインダーと、
0重量%~25重量%の炭素質材料と、
5重量%~25重量%のホウ酸及び/又は化合物(I)からなる添加剤を含む。
【0079】
好ましくは、組成物は(固形物の重量%として):
45重量%~75重量%のシリコン粒子と、
5重量%~20重量%のポリマーバインダーと、
5重量%~20重量%の炭素質材料と、
7重量%~25重量%のホウ酸及び/又は化合物(I)からなる添加剤を含む。
【0080】
より好ましくは、組成物は(固形物の重量%として)次のようになる:
50重量%~70重量%のシリコン粒子と、
10重量%~20重量%のポリマーバインダーと、
5重量%~15重量%の炭素質材料と、
10重量%~20重量%のホウ酸及び/又は化合物(I)からなる添加剤を含む。
【0081】
電極
本開示の組成物は、分散又はスラリーの形態であることができ、それから電極に形成することができる。
【0082】
したがって、本開示はまた、本開示の組成物を含む電極に関連する。
【0083】
具体的には、本開示の電極は(上記で指定された好ましい量であることが望ましい)
シリコン粒子と、
ポリマーバインダーと、
任意に炭素質材料と、
ホウ酸及び/又は化合物からなる添加剤を含む。ただし、ホウ酸が存在する場合、RもRもOH又は=Oを示さない。
【0084】
本開示の組成物から電極を形成するための一例の方法は、次の手順を含む:
組成物を分散溶媒に分散し、
分散された組成物を電極に形成し、
分散溶媒を除去する。
【0085】
分散を形成するために使用される分散溶媒は、ポリマーバインダーと互換性があり、化合物の形式(I)(存在する場合)を分散/溶解でき、比較的容易に除去できる必要があります。
【0086】
好ましくは、本開示の電極は、形式(I)の化合物の重合を回避する方法を使用して形成される。言い換えると、本開示の電極には、できるだけ非重合化された形態で、化合物の式(I)を含むことが好ましいである。
【0087】
分散溶媒は、ポリマーバインダーと互換性がある場合、バインダーが他の成分と徹底的に混合し、ネットワークを形成することができる場合に、互換性がある。これにより、溶媒を除去する際にポリマーバインダーが電極に機械的な強度を提供することができる。
【0088】
化合物の式(I)が分子レベルで分散又は溶解されている場合、シリコン粒子をコーティングし、効率的なSEI(固体電解質界面)を形成することができる可能性が高くなる。
【0089】
分散溶媒は通常、乾燥によって除去され、必要に応じて加熱によっても除去される。加熱によって化合物の式(I)(存在する場合)及び/又はポリマーバインダーが分解しないようにする必要がある。したがって、分散溶媒は比較的高い蒸気圧、及び/又は低い沸点を持っているべきである。
【0090】
適切な分散溶媒は、プロチック又はアプロチックであり、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、エチルアセテートなどが含まれる。
【0091】
特に好ましい分散溶媒は水である。
【0092】
水は非毒性であり、化合物の式(I)を溶解し、ここで開示された好ましいポリマーバインダー、特にカルボキシメチルセルロース塩と互換性がある。
【0093】
本開示の組成物から電極を形成するための好ましい方法は次の通りである:
組成物を水に分散させること、例えば少なくとも2時間かけてかき混ぜることを好ましいである、3~8時間行う。
分散された組成物を電極に形成し、
溶媒を除去するために、例えば60℃~95℃の温度で、好ましくは75℃~85℃の温度で加熱すること。
【0094】
分散工程は通常室温で行われる(すなわち、加熱なしで行われる)。
【0095】
分散した組成物を電極に形成する工程は、組成物をキャスティングすることを含む。ただし、任意の適切なプロセスを使用することができる。
【0096】
形成工程で使用されるプロセスは、分散した組成物の粘度に依存する場合があり、粘度が十分に高い場合、分散した組成物はペースト状になる可能性があり、その場合、それを電極の形状に押し込むことができる。
【0097】
その他の形成工程も可能であり、スピンコーティング、キャスティング、スプレッドなどがある。
【0098】
通常、形成工程は、電極を回路の残り部分に接続する導電性材料である電流集電体に組成物を適用することを含む。適切な材料は、銅やアルミニウムなどの金属であり、好ましくは銅である。
【0099】
粘性のあるペースト内の成分を完全に分散させることは難しい場合がある。したがって、電極を形成する前に、分散組成物から溶媒を除去して粘度を増加させる任意の工程を含むことがある。これにより、成分の完全な分散が可能となり、電極形成に適した粘度も確保できる。
【0100】
本開示の電極は、通常のシリコンベースの電極と比較して、炭素質材料の含有量が少ないである。これにより、商業的な適用時に電極の燃焼のリスクが低減される。
【0101】
電池
本開示の組成物から形成された電極は、リチウムイオン電池のアノードとして特に使用される。
【0102】
したがって、本開示はまた、本開示の電極を含むリチウムイオン電池に関連する。
【0103】
好ましくは、本開示は、以下を含む電池セルに関連する:
ハウジングと、
負極(即ちアノード)、正極(即ちカソード)、及び負極と正極との間に配置されたセパレータを含む電池コアと、
負極が本開示の電極を含む、及び
負極と正極との間に機能的に配置され、少なくとも1種のリチウム塩と非水性溶媒を含む電解質とを備える。
【0104】
ハウジングとは、電池コアと互換性のある任意の適切な材料から作成されている可能性がある。適切な材料にはアルミニウムが含まれる。
【0105】
セパレータは通常、イナートなポリマーからなるミクロポーラスなポリマーメンブレンである。適切なポリマー材料にはポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、又はそれらの混合物)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、セルロース、ナイロンが選択される。セパレータはまた、ミクロポーラスなセラミック材料、例えばミクロポーラスなアルミニウム酸化物又はリチウム化ゼオライト型酸化物である場合もある。
【0106】
好ましくは、セパレータはセルロース又はポリオレフィンからなっている。
【0107】
カソードは、熟練の技術者に知られている適切な電気伝導材料から形成され、箔又は格子の形状で形成することができる。
【0108】
適切な材料には、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウム、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物、又はリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物などの金属酸化物が含まれる。これらの金属酸化物は、リチウムを挿入・脱挿可能にする能力を持っており、電池セルの充電中にリリースされ、電池セルの放電中に取り込まれる。
【0109】
電解質は、アノードとカソードとの間でリチウムイオンを伝導し、例えば電池セルの充電又は放電中に伝導する。電解質は、1つ又は複数の溶媒、及び1つ又は複数のリチウム塩が1つ又は複数の溶媒に溶解されたものからなる。
【0110】
適切な非水性溶媒には、環状炭酸塩(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート)、フルオロ環状炭酸塩(フルオロエチレンカーボネート(FEC))、非環状炭酸塩(ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート)、脂肪族カルボン酸エステル(メチルホルム酸エステル、メチルアセテート、メチルプロピオネート)、γ-ラクトン(γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン)、鎖状エーテル(1,3-ジメトキシプロパン、1,2-ジメトキシエタン(DME)、1-2-ジエトキシエタン、エトキシメトキシエタン)、環状エーテル(テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン)などが含まれる。
【0111】
好ましくは、非水性溶媒はジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、又はそれらの混合物から選択される。
【0112】
好ましい非水性溶媒の混合物には、
ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、及びフルオロエチレンカーボネート;
ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、及びフルオロエチレンカーボネート;
エチルメチルカーボネート、エチレンカーボネート、及びフルオロエチレンカーボネート;
並びにジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、及びフルオロエチレンカーボネートを含む。
【0113】
通常、フルオロエチレンカーボネートは比較的少量で添加され、例えば全体の溶媒の5~15重量%、好ましくは約10重量%である。
【0114】
特に好ましい非水性溶媒の混合物には、以下が含まれる。
ジメチルカーボネート:エチレンカーボネート(1:1質量比)及び5~15重量%のフルオロエチレンカーボネート;
ジエチルカーボネート:エチレンカーボネート(1:1質量比)及びフルオロエチレンカーボネート;
エチルメチルカーボネート:エチレンカーボネート(1:1質量比)及び5~15重量%のフルオロエチレンカーボネート;及び
ジメチルカーボネート:ジエチルカーボネート:エチレンカーボネート(1:1:1質量比)及び5~15重量%のフルオロエチレンカーボネート。
【0115】
非制限的なリチウム塩のリストは、有機溶媒中に溶解して非水液体電解液を形成するために使用されるもので、LiClO、LiAlCl、LiI、LiBr、LiSCN、LiBF、LiB(C、LiAsF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(FSO、LiPFなどが含まれる。
【0116】
好ましくは、リチウム塩はLiPFから選択される。
【0117】
通常、リチウム塩の濃度は0.2~4Mの範囲であり、好ましくは0.5~2M、例えば約1Mである。
【0118】
電池セルは一般的に、リチウムイオンをアノードとカソードとの間で可逆的に通過させることによって動作する。充電時にはリチウムイオンはカソードからアノードに移動し、放電時にはアノードからカソードに移動する。放電の初めには、アノードにはインターカレーション/合金化されたリチウムイオンの高濃度が含まれており、こうした状況下でアノードとカソードとの間に閉じられた外部回路を確立することで、インターカレーション/合金化されたリチウムイオンがアノードから抽出される。抽出されたリチウム原子は、電極-電解質界面でインターカレーション/合金化ホストからリチウムイオンと電子に分割される。リチウムイオンはイオン伝導性電解質の微細孔を通ってアノードからカソードに運ばれ、同時に電子は電池セルが接続された外部回路を通ってアノードからカソードに伝送され、全体の電気化学セルをバランスさせる。この外部回路を通る電子の流れは、インターカレーション/合金化されたリチウムの負極での作業可能なレベルを下回るか、電力の必要がなくなるまで、負荷装置に供給することができる。
【0119】
使用中、電池セルは最初の数サイクルで容量が適度に減少する。しかし、これはすべてのリチウムイオンバッテリーに非常に典型的であり、リチウムイオンがシリコン構造にインターカレーションされることによるものと考えられている。これにより、SEIが形成される際にシリコンフレームワークの大幅な拡張と再配置が引き起こされる。
【0120】
驚くべきことに、本開示の電池セルは、SEIの形成中に容量損失が減少することを示している。更に、SEIの形成後、本開示に従って添加剤のないシリコン電極に基づくリチウムイオンバッテリーと比較して、充放電効率が非常に高く、容量損失が大幅に減少する。本開示に従う添加剤を含まない電池セルは、最初の5つの充放電サイクル中に形成されるSEIが、安定していることを示している。
【0121】
したがって、本開示の電池セルは改善された循環性能、改善されたエネルギー密度、充放電の拡張ウィンドウによる改善された容量保持、及びシリコン電極表面での安定なインターフェースを示す。理論に拘束されないが、これらの利点は本開示に従う添加剤によってシリコン電極のSEIを安定化させることによると考えられている。安定した固体電解質界面(SEI)は、電解液の分解と不可逆なリチウム損失を更に最小限に抑える。これにより、電池のクーロン効率が向上する。SEIの安定化は、付加剤の電子豊富な性質と孤立電子対の存在によるものである可能性があり、これらが組み合わさって電子の漏れ量を電解液中に軽減する。
【0122】
通常、本開示の電池セル(又はリチウムイオン電池)は、100サイクル後の充電容量が少なくとも1000mAh/g、好ましくは少なくとも1500mAh/g、更に好ましくは少なくとも1750mAh/g、更に好ましくは少なくとも2000mAh/g、更に好ましくは少なくとも2150mAh/g、更に好ましくは少なくとも2250mAh/g、更に好ましくは少なくとも2350mAh/g、更に好ましくは少なくとも2400mAh/g以上である。
【0123】
通常、本開示の電池セル(又はリチウムイオン電池)は、C/10で充電する際にもこの充電容量を保持することができ、好ましくはC/5で充電する際にも保持することができる。
【0124】
本発明の開示は、電子機器に適したリチウムイオン電池に関するものである。適した電子機器は、取り外し可能なバッテリーを備えた携帯電子機器(携帯電話やリモコンなど)又は永久バッテリーを備えた携帯電子機器(自転車、スクーター、自動車などの電動車両)である可能性がある。
【0125】
したがって、本開示は、本開示の電池セルを含む電子機器に関する。好ましくは、電子機器は自転車、スクーター、ボート、トラック、又は自動車じみた電動車両であるか、ドリル、鋸、ドライバー、マルチツール、草刈り機、芝刈り機、ヘッジトリマー、又はサンダーなどの電動工具、電気シェーバー、歯ブラシ、掃除機などの家庭用機器、ラップトップ、タブレット、携帯電話などの携帯コンピュータなどが挙げられる。
【0126】
ホウ酸及び/又は式(I)の化合物の使用は、リチウムイオン電池で使用される場合、シリコン粒子の特性を向上させる。
【0127】
したがって、本開示は、ホウ酸及び/又は式(I)の化合物の使用に関するもので、リチウムイオン電池のシリコン電極のエネルギー密度を増加させるためのものである。
【0128】
本開示はまた、ホウ酸及び/又は式(I)の化合物の使用に関して、リチウムイオン電池のシリコン電極の充電保持容量を増加させるためのものである。
【0129】
本開示はまた、ホウ酸及び/又は式(I)の化合物の使用に関して、リチウムイオン電池のシリコン電極の貯蔵容量を増加させるためのものである。
【0130】
本開示はまた、ホウ酸及び/又は式(I)の化合物の使用に関して、リチウムイオン電池のシリコン電極の充電/放電速度に対する安定性を増加させるためのものである。
【0131】
本開示はまた、ホウ酸及び/又は式(I)の化合物の使用に関して、シリコンアノードの放電速度を増加させるためのものである。
【0132】
本開示はまた、ホウ酸及び/又は式(I)の化合物の使用に関して、リチウムイオン電池のシリコン電極のSEI(固体電解質界面)の安定性を向上させるためのものである。例えば、継続的なSEIの形成の防止又はサイクル数に応じたSEIの厚さの増加の防止のために。
【0133】
図2は、シリコンアノードに添加物を含むLiイオン電池と添加物を含まないLiイオン電池のサイクル数に対する電池容量の改善を示している。
【0134】
本明細書における明らかに先に公表された文献のリスト又は議論は、文献が最新技術の一部であるか、又は常識であることを認めるものと必ずしも解釈されるべきではない。
【0135】
本発明の特定の態様、特徴、又はパラメータに関する選好、選択肢、及び実施形態は、文脈が別のことを示していない限り、本発明のすべての他の態様、特徴、及びパラメータのすべての選好、選択肢、及び実施形態と組み合わせて開示されたものとみなすべきである。これは特に、乾燥組成物及びそのすべての特徴の説明に当てはまり、これらの特徴は、ここで説明された方法によって得られる最終的な乾燥組成物の一部である可能性が高い。本発明の実施形態及び特徴は、以下のアイテムにも概説されている。
【0136】
アイテム
A1.以下を含む組成物:
シリコン粒子と、
ポリマーバインダーと、
任意に炭素質材料と、
ホウ酸及び/又は式(I)の化合物からなる添加剤
【0137】
【化9】

式中、
はH、NH、OH、又は=Oを示し、
が=Oを示す場合、Rは、存在しないか、又はHを示し、
はH、NH、OH、又は=Oを示し、
が=Oを示す場合、Rは、存在しないか、又はHを示し、
式(I)の化合物は、任意にホウ酸と共に存在してもよく、ただし、ホウ酸が存在する場合、RもRもOH又は=Oを示さない。
【0138】
A2.組成物が式(I)の化合物を含み、ホウ酸と一緒に存在してもよく、ただし、ホウ酸が存在する場合、RもRもOH又は=Oを示さない、アイテムA1に記載の組成物。
【0139】
A3.化合物の式(I)からなる添加剤を含む組成物であり、任意の場合、ホウ酸と一緒に存在することができるものである、ただし、ホウ酸が存在する場合、R又はRがOH又は=Oを示さないことを提供する、アイテムA1に記載の組成物。
【0140】
A4.R及びRがHを示す場合、ホウ酸が存在する、アイテムA1~A3のいずれかの組成物。
【0141】
A5.RがH又はNHを示す、アイテムA1~A4のいずれかの組成物。
【0142】
A6.式(I)の化合物が、
メラミン、
好ましくは1:2の比率のメラミンとホウ酸、
二ホウ酸メラミン、
4,6-ジアミノ-2-ヒドロキシ-1,3,5-トリアジン、
及び4-アミノ-2-ヒドロキシ-1,3,5-トリアジンから選択される、アイテムA1~A5のいずれかの組成物。
【0143】
A7.ケイ素粒子が結晶性ケイ素を含む、アイテムA1~A6のいずれかの組成物。
【0144】
A8.ケイ素粒子が元素ケイ素を含む、アイテムA1~A7のいずれかの組成物。
【0145】
A9.ポリマーバインダーがカルボキシメチルセルロース、特にカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩を含む、アイテムA1~A8のいずれかの組成物。
【0146】
A10.炭素質材料が黒鉛を含む、アイテムA1~A9のいずれかの組成物。
【0147】
A11.添加剤がホウ酸からなる、アイテムA1又はA7~A10のいずれかの組成物。
【0148】
A12.
40重量%~80重量%のシリコン粒子と、
5重量%~25重量%のポリマーバインダーと、
0重量%~25重量%の炭素質材料と、
5重量%~25重量%のホウ酸及び/又は化合物(I)からなる添加剤を含む、アイテムA1~A11のいずれかの組成物。
【0149】
A13.
40重量%~80重量%のシリコン粒子と、
5重量%~25重量%のポリマーバインダーと、
0重量%~25重量%の炭素質材料と、
7重量%~25重量%のホウ酸及び/又は化合物(I)からなる添加剤を含む、アイテムA1~A12のいずれかの組成物。
【0150】
B1.アイテムA1~A13のいずれかの組成物を含む電極。
【0151】
C1.アイテムB1の電極を含むリチウムイオンバッテリー。
【0152】
D1.電池セルであって、
ハウジングと、
負極、正極、及び負極と正極との間に配置されたセパレータを含む電池コアであって、
負極がアイテムB1の電極を含む、電池コアと、
負極と正極との間に機能的に配置され、少なくとも1種のリチウム塩と非水性溶媒を含む電解質とを備える、電池セル。
【0153】
D2.電解質が
以下から選択される非水性溶媒の混合物を含む、アイテムD1の電池セル:
ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、及びフルオロエチレンカーボネート;
ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、及びフルオロエチレンカーボネート;
エチルメチルカーボネート、エチレンカーボネート、及びフルオロエチレンカーボネート;
並びにジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、及びフルオロエチレンカーボネート;並びに
LiPFを含むリチウム塩。
【0154】
D3.リチウムイオン電池又は電池セルは100サイクル後の充電容量が少なくとも1000mAh/g、好ましくは少なくとも1500mAh/g、更に好ましくは少なくとも1750mAh/g、更に好ましくは少なくとも2000mAh/g、更に好ましくは少なくとも2150mAh/g、更に好ましくは少なくとも2250mAh/g、更に好ましくは少なくとも2350mAh/g、更に好ましくは少なくとも2400mAh/gである、アイテムC1又はアイテムD1又はアイテムD2のリチウムイオン電池。
【0155】
E1.リチウムイオン電池のシリコン電極のエネルギー密度、充電保持容量、及び/又は貯蔵容量を増加させるための、ホウ酸及び/又は式(I)の化合物の使用であって、
【0156】
【化10】

式中、
はH、NH、OH、又は=Oを示し、
が=Oを示す場合、Rは、存在しないか、又はHを示し、
はH、NH、OH、又は=Oを示し、
が=Oを示す場合、Rは、存在しないか、又はHを示し、
式(I)の化合物は、任意にホウ酸と共に存在してもよく、ただし、ホウ酸が存在する場合、RもRもOH又は=Oを示さない、使用。
【0157】
E2.リチウムイオン電池内のケイ素電極のSEI安定性を向上させるための、ホウ酸及び/又は式(I)の化合物の使用であって、
【0158】
【化11】

式中、
はH、NH、OH、又は=Oを示し、
が=Oを示す場合、Rは、存在しないか、又はHを示し、
はH、NH、OH、又は=Oを示し、
が=Oを示す場合、Rは、存在しないか、又はHを示し、
式(I)の化合物は、任意にホウ酸と共に存在してもよく、ただし、ホウ酸が存在する場合、RもRもOH又は=Oを示さない、使用。
【0159】
E3.リチウムイオン電池内のケイ素電極のSEIの持続的な成長及び/又は厚さ増加を防ぐための、ホウ酸及び/又は式(I)の化合物の使用であって、
【0160】
【化12】

式中、
はH、NH、OH、又は=Oを示し、
が=Oを示す場合、Rは、存在しないか、又はHを示し、
はH、NH、OH、又は=Oを示し、
が=Oを示す場合、Rは、存在しないか、又はHを示し、
式(I)の化合物は、任意にホウ酸と共に存在してもよく、ただし、ホウ酸が存在する場合、RもRもOH又は=Oを示さない、使用。
【0161】
E4.使用が式(I)の化合物のものであり、任意にホウ酸と共に存在し、ただし、ホウ酸が存在する場合、R又はRがOH又は=Oを示さない、アイテムE1~E3のいずれかの使用。
【実施例
【0162】
実施例1
i)シリコン+添加剤アノードを製造する。結晶シリコンナノパーティクル(Sigma Aldrich、製品番号:633097)を60%、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩バインダー(Sigma Aldrich、製品番号:419338)を15%、グラファイト源(Alfa Aesar、「Carbon black,Super P」、製品番号:H30253)を10%、そして添加剤を15%、すべて重量%で100mLの水に分散させる。
ii)分散物を5時間かき混ぜ、スラリーを形成する。
iii)スラリーを銅基板に塗布して膜を作成する。
iv)基板と膜を真空下で80℃に加熱して水を除去し、固体電極を作成する。
【0163】
その後、シリコン+ホウ酸及び/又は添加剤アノードを使用してリチウムカウンター及びリファレンス電極、そしてLP30電解質(Sigma Aldrich、「Lithium hexafluorophosphate solution」、製品番号:746711)を含む電池セルを形成し、フルオロエチレンカーボネート(FEC)電解質添加剤(Sigma Aldrich、「Fluoroethylene carbonate」、製品番号:901686)を10重量%含む。
【0164】
LP30電解質はエチレンカーボネートとジメチルカーボネート(1:1重量比)中の1 M LiPFであり、FECの構造は以下の通りである。
【0165】
【化13】
【0166】
実施例1a
実施例1のアノード及び電池に、添加剤として15重量%の二ホウ酸メラミン(MDB)を使用。
【0167】
図3aは、添加剤なしのシリコンアノードとメラミンジホウ酸塩(MDB)を添加したシリコンアノードのサイクル数に対するクーロン効率の比較を示している。
【0168】
図4a~図4hは、添加剤なしのシリコンアノードとメラミンジホウ酸塩(MDB)添加剤を含むシリコンアノードのin situ電気化学インピーダンススペクトルデータを示している。
【0169】
実施例1b
実施例1のアノード及び電池に、添加剤としてメラミンとホウ酸を1:2の化学量論的比で15重量%使用(MLN+HBO)。
図3bは、添加剤なしのシリコンアノードとメラミンとホウ酸(MLN+HBO)を添加したシリコンアノードのサイクル数に対するクーロン効率の比較を示している。
【0170】
実施例1c
実施例1のアノード及び電池に、添加剤として15重量%のメラミン(MLN)を使用。図3cは、添加剤なしのシリコンアノードとメラミン(MLN)を添加したシリコンアノードのサイクル数に対するクーロン効率の比較を示している。
【0171】
実施例1d
実施例1のアノード及び電池に、添加剤として15重量%の4,6-ジアミノ-2-ヒドロキシ-1,3,5-トリアジン(ARTZ)を使用。
図3dは、添加物を含まないシリコンアノードと4,6-ジアミノ-2-ヒドロキシ-1,3,5-トリアジン(ARTZ)を添加したシリコンアノードとの比較を示している。バッテリーのクーロン効率がサイクル数に対してどのように変化するかを示している。
【0172】
実施例1e
実施例1の電池に、添加物として15重量%の4-アミノ-2-ヒドロキシ-1,3,5-トリアジン(AZCT)を含む。
図3eは、添加物を含まないシリコンアノードと4-アミノ-2-ヒドロキシ-1,3,5-トリアジン(AZCT)を添加したシリコンアノードとの比較を示している。バッテリーのクーロン効率がサイクル数に対してどのように変化するかを示している。
【0173】
図3a~図3eは、添加物を含むバッテリーと添加物を含まないバッテリーの比較を明確に示しており、早いサイクル(1~5)でのセルの安定性に影響を与えるクーロン効率の増加が示されている。添加物を含むバッテリーは、5回未満のサイクルで安定したクーロン効率に達するが、添加物を含まないバッテリーでは、クーロン効率が5~10サイクルの間で安定する。添加物を含まない電極は、最初のサイクルの後にクーロン効率が大幅に低下し、不可逆的な充電容量の損失を引き起こす。
【0174】
表1は、実施例la-leの添加物を含むバッテリーの性能データを、同じ添加物を含まないバッテリーと比較したものである。
【0175】
【表1】
【0176】
図2に示された結果は、長期のサイクル数にわたる容量の保持における重要な改善を明確に示している。100回のサイクル後、添加剤を含むバッテリーは、添加剤を含まないバッテリーよりもはるかに高い放電容量と充電容量を示す。MLB+HBO添加剤を含むバッテリーは、充電容量と放電容量が添加剤を含まないバッテリーよりも約4倍大きく増加している。
【0177】
図4a~図4dは、リチウム化中に形成されたSEIが、添加剤を含む電極においても完全に保たれていることを示している。
【0178】
同様の傾向は、in situ EISのボード図4e~図4fにおいても観察され、中周波領域(2.5-3.5Hz)においてサイクルごとに位相角のシフトが増加し、添加剤を含まない電極では一定である一方、添加剤を含む電極では一定である。これは、充電プロセス中に界面の静電容量部分が一定であることを確認し、また、添加剤を含む電極においてSEIが安定していることを更に示している。逆に、添加剤を含む電極においてはその逆である;連続的なSEIの形成、又はより厚いSEIの形成が、界面の静電容量部分が一定でない理由であると考えられている。
【0179】
周波数対インピーダンスのプロット(図4g~図4h)は、添加剤を含まないシリコン電極の場合、セルのイオン及び質量輸送領域のインピーダンスが連続的に増加し、添加剤を含む電極の初期サイクルにおいては5回以上一定であり、高電流操作(C/5と言える)を可能にし、より良い充電容量を実現している。これは、電極内のシリコン粒子の体積膨張と電解液の分解の影響を、セルの放電の初期3サイクルだけで最小限に抑えることができ、電極の機械的及び電子的処理を処理するための非常に堅牢なSEIの品質を保持できることを示している。
図1a
図1b
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図3e
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
図4f
図4g
図4h
【国際調査報告】