IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オイスター ポイント ファーマ インコーポレイテッドの特許一覧

特表2024-516875神経栄養因子をコードするAAVビリオン及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-17
(54)【発明の名称】神経栄養因子をコードするAAVビリオン及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/18 20060101AFI20240410BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240410BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240410BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240410BHJP
   A61P 27/04 20060101ALI20240410BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240410BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240410BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20240410BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240410BHJP
   C07K 14/48 20060101ALI20240410BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20240410BHJP
   C12N 15/35 20060101ALN20240410BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20240410BHJP
【FI】
A61K38/18
A61K48/00
A61K35/76
A61P27/02
A61P27/04
A61P31/12
A61P43/00 105
C12N15/864 100Z
C12N15/12
C07K14/48
C12Q1/02
C12N15/35 ZNA
C12N15/11 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568597
(86)(22)【出願日】2022-05-04
(85)【翻訳文提出日】2024-01-09
(86)【国際出願番号】 US2022027647
(87)【国際公開番号】W WO2022235780
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】63/185,889
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517139152
【氏名又は名称】オイスター ポイント ファーマ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナウ,ジェフリー アラン
(72)【発明者】
【氏名】カールソン,エリック シー.
【テーマコード(参考)】
4B063
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA20
4B063QQ08
4B063QR32
4B063QR59
4B063QS24
4B063QS38
4B063QS40
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084CA18
4C084DB59
4C084MA58
4C084MA66
4C084NA13
4C084ZA331
4C084ZA332
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA17
4C087MA58
4C087MA66
4C087NA13
4C087ZA33
4C087ZB21
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA21
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
提供されるのは、組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオン、眼疾患を治療する方法、医薬組成物、及び他の組成物及び方法であり、前記rAAVビリオンは、神経成長因子(NGF)又はグリア由来神経栄養因子(GDNF)など、神経栄養因子をコードするポリヌクレオチドを含む。治療の方法は涙腺への投与を含みうる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それを必要とする対象における眼疾患を治療する方法であって、
前記方法は、前記対象の少なくとも1つの眼又は前記対象の前記眼の少なくとも1つの涙腺に、組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンを投与することを含み、
前記rAAVビリオンが、AAVカプシド及びプロモーターに動作可能に連結された神経栄養因子をコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含む、
方法。
【請求項2】
前記rAAVビリオンが、前記対象の涙腺に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記涙腺が、前記対象の主涙腺又はウォルフリング腺若しくはクラウス腺のいずれか1つである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記涙腺が主涙腺である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記涙腺内の細胞が、前記rAAVビリオンで形質導入される、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記涙腺内の前記形質導入細胞が、有効量の前記神経栄養因子を、前記対象の涙液層及び任意選択で眼表面に発現する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記神経栄養因子が神経成長因子(NGF)タンパク質である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記NGFタンパク質をコードする前記ポリヌクレオチドが、配列番号2と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記NGFタンパク質が、配列番号1と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記NGFタンパク質が配列番号1を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記NGFタンパク質をコードする前記ポリヌクレオチドが、配列番号2を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記神経栄養因子がグリア由来神経栄養因子(GDNF)タンパク質である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記GDNFタンパク質をコードする前記ポリヌクレオチドが、配列番号4と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記GDNFタンパク質が、配列番号3と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記GDNFタンパク質が配列番号3を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記GDNFタンパク質をコードする前記ポリヌクレオチドが、配列番号4を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記AAVカプシドが、AAV2 VP1(配列番号6)、AAV2 VP3(配列番号8)、AAV5(配列番号10)、AAV8(配列番号12)、又はAAV9(配列番号14)と少なくとも95%、98%、又は100%の同一性を共有する、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記プロモーターがCAGプロモーター(配列番号5)である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記眼疾患が、前記眼表面の化学熱傷、角膜創傷、角膜潰瘍、遷延性上皮欠損、ドライアイ疾患、神経栄養性角膜炎、三叉神経及び/若しくは前記眼の単純ヘルペスウイルス感染症、三叉神経及び/若しくは前記眼の水痘帯状疱疹ウイルス感染症、又は角膜神経の糖尿病合併症である、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記眼疾患の1つ又は複数の症状が、前記rAAVビリオンの投与前の前記眼疾患の前記症状と比較して軽減される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記眼疾患の1つ又は複数の症状が、未治療対照の対象における前記眼疾患の前記症状と比較して軽減される、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記眼疾患の1つ又は複数の症状が、対側眼の前記眼疾患の前記症状と比較して軽減される、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
AAVカプシド及び発現カセットを含む、組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンであって、
前記発現カセットが、プロモーターに動作可能に連結された神経栄養因子をコードするポリヌクレオチドを含む、
組み換えrAAVビリオン。
【請求項24】
前記神経栄養因子が神経成長因子(NGF)タンパク質である、請求項23に記載のrAAVビリオン。
【請求項25】
前記NGFタンパク質をコードする前記ポリヌクレオチドが、配列番号2又は配列番号17と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含む、請求項24に記載のrAAVビリオン。
【請求項26】
前記NGFタンパク質が、配列番号1と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含む、請求項24に記載のrAAVビリオン。
【請求項27】
前記NGFタンパク質が配列番号1を含む、請求項24に記載のrAAVビリオン。
【請求項28】
前記NGFタンパク質をコードする前記ポリヌクレオチドが、配列番号2又は配列番号17である、請求項24に記載のrAAVビリオン。
【請求項29】
前記神経栄養因子がグリア由来神経栄養因子(GDNF)タンパク質である、請求項23に記載のrAAVビリオン。
【請求項30】
前記GDNFタンパク質をコードする前記ポリヌクレオチドが、配列番号4又は配列番号18と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含む、請求項29に記載のrAAVビリオン。
【請求項31】
前記GDNFタンパク質が、配列番号3と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含む、請求項29に記載のrAAVビリオン。
【請求項32】
前記GDNFタンパク質が配列番号3を含む、請求項29に記載のrAAVビリオン。
【請求項33】
前記GDNFタンパク質をコードする前記ポリヌクレオチドが、配列番号4又は配列番号18である、請求項29に記載のrAAVビリオン。
【請求項34】
前記AAVカプシドが、AAV2 VP1(配列番号6)、AAV2 VP3(配列番号8)、AAV5(配列番号10)、AAV8(配列番号12)、又はAAV9(配列番号14)と少なくとも95%、98%、又は100%の同一性を共有するVP3を含む、請求項23~33のいずれか一項に記載のrAAVビリオン。
【請求項35】
前記プロモーターが、CAGプロモーター(配列番号5)又はCMVプロモーター(配列番号16)である、請求項23~34のいずれか一項に記載のrAAVビリオン。
【請求項36】
前記発現カセットが、配列番号23と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を共有する配列を含む、請求項23に記載のrAAVビリオン。
【請求項37】
前記発現カセットが、配列番号24と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を共有する配列を含む、請求項23に記載のrAAVビリオン。
【請求項38】
前記発現カセットが、配列番号25と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を共有する配列を含む、請求項23に記載のrAAVビリオン。
【請求項39】
配列番号25のポリヌクレオチドを含む発現カセットを含む、組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオン。
【請求項40】
前記rAAVがAAVカプシドを含む、請求項39に記載のrAAV。
【請求項41】
前記AAVカプシドが、AAV2 VP1(配列番号6)、AAV2 VP3(配列番号8)、AAV5(配列番号10)、AAV8(配列番号12)、又はAAV9(配列番号14)と少なくとも95%、98%、又は100%の同一性を共有する、請求項40に記載のrAAV。
【請求項42】
rAAVビリオンを含む組成物であって、前記rAAVビリオンが、
(a)AAVカプシド、及び
(b)発現カセット、を含み、前記発現カセットが、配列番号2又は配列番号17と少なくとも95%の同一性を共有するポリヌクレオチドを含み、前記ポリヌクレオチドがプロモーターに連結された、
組成物。
【請求項43】
rAAVビリオンを含む組成物であって、前記rAAVビリオンが、
(a)AAVカプシド、及び
(b)発現カセット、を含み、前記発現カセットが、配列番号4又は配列番号18と少なくとも95%の同一性を共有するポリヌクレオチドを含み、前記ポリヌクレオチドがプロモーターに連結された、
組成物。
【請求項44】
rAAVビリオンを含む組成物であって、前記rAAVビリオンが、
(a)AAV2、AAV5、AAV8、又はAAV9カプシド、及び
(b)発現カセット、を含み、前記発現カセットが、配列番号2又は配列番号17と少なくとも95%の同一性を共有するポリヌクレオチドを含み、前記ポリヌクレオチドがプロモーターに連結された、
組成物。
【請求項45】
rAAVビリオンを含む組成物であって、前記rAAVビリオンが、
(a)AAV2、AAV5、AAV8、又はAAV9カプシド、及び
(b)発現カセット、を含み、前記発現カセットが、配列番号4又は配列番号18と少なくとも95%の同一性を共有するポリヌクレオチドを含み、前記ポリヌクレオチドがプロモーターに連結された、
組成物。
【請求項46】
前記AAVカプシドが、AAV2 VP1(配列番号6)、AAV2 VP3(配列番号8)、AAV5(配列番号10)、AAV8(配列番号12)、又はAAV9(配列番号14)と少なくとも95%、98%、又は100%の同一性を共有する、請求項42~45のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項47】
前記AAVカプシドがAAV2である、請求項42~45のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項48】
前記AAVカプシドがAAV5である、請求項42~45のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項49】
前記AAVカプシドがAAV9である、請求項42~45のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項50】
rAAVビリオンを含む組成物であって、前記rAAVビリオンが、
(a)AAV2カプシド、及び
(b)発現カセット、を含み、前記発現カセットが、配列番号25と少なくとも95%の同一性を共有するポリヌクレオチドを含む、
組成物。
【請求項51】
rAAVビリオンを含む組成物であって、前記rAAVビリオンが、
(a)AAV5カプシド、及び
(b)発現カセット、を含み、前記発現カセットが、配列番号25と少なくとも95%の同一性を共有するポリヌクレオチドを含む、
組成物。
【請求項52】
rAAVビリオンを含む組成物であって、前記rAAVビリオンが、
(a)AAV9カプシド、及び
(b)発現カセット、を含み、前記発現カセットが、配列番号25と少なくとも95%の同一性を共有するポリヌクレオチドを含む、
組成物。
【請求項53】
請求項23~41のいずれか一項に記載のrAAVビリオン、又は請求項42~52のいずれか一項に記載の組成物、及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項54】
前記rAAVビリオン1ミリリットルあたり約1×10~約1×1014ゲノムコピーを含む、請求項53に記載の医薬組成物。
【請求項55】
前記rAAVビリオン1ミリリットルあたり約1×1012~約6.2×1012ゲノムコピーを含む、請求項53に記載の医薬組成物。
【請求項56】
前記涙腺への投与向けに製剤化される、請求項53~55のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項57】
前記眼表面への投与向けに製剤化される、請求項53~55のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項58】
眼の疾患、障害、又は病態の治療に使用するために、又は使用するのに適合可能に製剤化された、請求項53~57のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項59】
それを必要とする対象における眼疾患を治療する方法であって、有効量の請求項53~58のいずれか一項に記載の医薬組成物を、前記対象の前記眼又は前記対象の眼分泌腺に投与することを含む、方法。
【請求項60】
前記rAAVビリオンが前記対象の涙腺に投与される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記涙腺内の細胞が前記rAAVビリオンで形質導入される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記涙腺内の前記形質導入細胞が、有効量の前記神経栄養因子を、前記対象の涙液層及び任意選択で前記眼表面に発現する、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記眼疾患が神経栄養性角膜炎である、請求項59~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記眼疾患の1つ又は複数の症状が、前記rAAVビリオンの投与前の前記眼疾患の前記症状と比較して軽減される、請求項59~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記眼疾患の1つ又は複数の症状が、未治療対照の対象における前記眼疾患の前記症状と比較して軽減される、請求項59~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記眼疾患の1つ又は複数の症状が、対側眼の前記眼疾患の前記症状と比較して軽減される、請求項59~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
請求項1~22のいずれか一項に記載の方法に使用するための、請求項23~41のいずれか一項に記載のrAAVビリオン、請求項42~52のいずれか一項に記載の組成物、又は請求項53~58のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項68】
請求項1~22のいずれか一項に記載の方法に使用するための医薬品の製造における、請求項23~41のいずれか一項に記載のrAAVビリオン又は請求項42~52のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項69】
請求項23~41のいずれか一項に記載のrAAVビリオン、請求項42~52のいずれか一項に記載の組成物、又は請求項53~58のいずれか一項に記載の医薬組成物、及
び請求項1~22のいずれか一項に記載の方法に使用するための説明書を含む、キット。
【請求項70】
それを必要とする対象における眼疾患を治療する方法に使用するための組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンであって、
前記方法は、前記対象の少なくとも1つの眼又は前記対象の前記眼の少なくとも1つの涙腺に、組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンを投与することを含み、
前記rAAVビリオンが、AAVカプシド及びプロモーターに動作可能に連結された神経栄養因子をコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含む、
rAAVビリオン。
【請求項71】
前記rAAVビリオンが前記対象の涙腺に投与される、請求項70に記載の使用のためのrAAVビリオン。
【請求項72】
前記涙腺内の細胞が前記rAAVビリオンで形質導入される、請求項71に記載の使用のためのrAAVビリオン。
【請求項73】
前記神経栄養因子が神経成長因子(NGF)タンパク質である、請求項70~72のいずれか一項に記載の使用のためのrAAVビリオン。
【請求項74】
前記神経栄養因子がグリア由来神経栄養因子(GDNF)タンパク質である、請求項70~72のいずれか一項に記載の使用のためのrAAVビリオン。
【請求項75】
前記眼疾患が、前記眼表面の化学熱傷、角膜創傷、遷延性上皮欠損、ドライアイ疾患、神経栄養性角膜炎、三叉神経及び/若しくは前記眼の単純ヘルペスウイルス感染症、三叉神経及び/若しくは前記眼の水痘帯状疱疹ウイルス感染症、又は角膜神経の糖尿病合併症である、請求項70~74のいずれか一項に記載の使用のためのrAAVビリオン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互関連出願
本出願は、2021年5月7日に出願された米国仮特許出願第63/185,889号の利益を主張する。その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表の参照
本出願は、EFS-Webを介してASCIIフォーマットで電子的に提出された配列表を含み、その配列表は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。前記のASCIIコピーは、2022年4月29日に作成され、OYST_015_03 WO_SeqList_ST 25という名前を付けられ、サイズは72,019バイトである。
【背景技術】
【0003】
神経栄養性角膜症;化学熱傷;角膜創傷;遷延性上皮欠損;ドライアイ疾患;三叉神経及び/又は眼の単純ヘルペスウイルス感染症;三叉神経及び/又は眼の水痘帯状疱疹ウイルス感染症;並びに角膜神経の糖尿病合併症など、眼表面に影響を及ぼす眼疾患の医学的治療が知られている。くわえて、緑内障、老眼、近視、及び他の前房障害の医学的な治療も知られている。これらの医学的治療には、局所点眼剤、経口医薬品などが含まれる。
【0004】
利用可能な治療があるにもかかわらず、これらの眼疾患は眼科医にとって依然として課題であり、治療戦略は疾患の重症度に重点がおかれる。それほど重症でない場合の治療としては、バンデージコンタクトレンズ(bandage contact lenses)及び潤滑(lubricating)点眼剤を挙げることができる。より重症の症例の場合、羊膜移植、血清涙液中の特定濃度の血液誘導体、瞼板縫合、及び局所適用された自己血清点眼剤が広く使用されている(非特許文献1)。新たに出てきた治療戦略は自己血清点眼剤の有効性からきている。自家血清点眼液は、患者の血液から採取した血清を生理食塩水で希釈して調製する(非特許文献2)。調製は個人ベースで行われ、NGFやグリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)などの神経栄養因子を含む成長因子が存在するので、眼疾患を治療するのに有効であると考えられている。
【0005】
眼表面の治療のための神経栄養因子の送達は、現在、自己血清点眼剤又は精製組み換え神経栄養因子を含有する点眼剤を反復して適用することに依存している。患者間の血清組成の違い、点眼剤の調製中の異物混入の可能性、及び神経栄養因子の分解を最小限に抑えるために必要な特別な保存条件に起因して、自己血清点眼剤は様々でありうる。同様に、組み換え神経栄養因子を含有する点眼剤は、活性がある神経栄養因子をもたらす発現及び精製条件を必要とし、安定性が限られ、特別な保存条件を要する。さらに、NGFなどの組み換えヒト神経栄養因子は、治療効果を得るために、患者は1日6回、2時間間隔で8週間にわたって投与を受けなければならない。したがって、一部の患者にとって困難(challenging)又は不可能でありうる反復局所適用を必要とせずに、神経栄養因子を眼表面に送達する方法が必要である。
【0006】
眼表面の障害の医学的治療の向上が望まれることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第10,308,957号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Di Zazzo et al. Ocul Surf. 17(4):619-623 (2019)
【非特許文献2】Bradley et al. Clin Exp Ophthalmol.36(8):717-20 (2008)
【非特許文献3】Petrs-Silva et al., Mol Ther.19:293-301 (2011)
【非特許文献4】Rodriques et al., Pharm Res. 36:29 (2019)
【非特許文献5】Lebherz et al. J Gene Med.; 10(4): 375-382 (2008)
【非特許文献6】Rocha et al., Invest Ophthalmol Vis Sci. 52:9567-9572 (2011)
【非特許文献7】Obata Cornea.; 25(10 Suppl 1):S82-9 (2006)
【非特許文献8】Conrady et al., J Ophthalmol. Article ID 7542929 (2016)
【非特許文献9】Micera et al., Exp Eye Res. 83:747-57 (2006)
【非特許文献10】Qi et al., Br J Ophthalmol. 92:1269-74 (2008)
【非特許文献11】Sacchetti et al.Clin Ophthalmol.; 8: 571-579 (2014)
【非特許文献12】Eslani et al. J Ophthalmol.; 2014:196827 (2014)
【非特許文献13】Wipperman et al. Am Fam Physician.; 87(2):114-120 (2013)
【非特許文献14】Zeev et al. Clin Ophthalmol.; 8: 581-590 (2014)
【非特許文献15】Azher et al. Clin Ophthalmol. 11: 185-191 (2017)
【非特許文献16】Shaikh et al. Am Fam Physician. 66(9):1723-1730 (2002)
【非特許文献17】Ljubimov et al. Vision Res.; 139: 138-152 (2017)
【非特許文献18】Conrady et al. J Ophthalmol.; 2016: 7542929 (2016)
【非特許文献19】Pan et al. Optom Vis Sci.; 95:27-31 (2018)
【非特許文献20】Bonini et al.125:1332-1343 (2018)
【非特許文献21】Gautier et al., AAV2/9-mediated gene transfer into murine lacrimal gland leads to a long-term targeted tear film modification; bioRxiv, 2022
【発明の概要】
【0009】
本開示は、全体として、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを使用した眼における神経栄養因子の発現に関する。例えば、本開示は、神経成長因子(NGF)又はグリア由来神経栄養因子(GDNF)を発現するためのベクター、及びそれらの医学的使用を提供する。
【0010】
1つの態様では、本開示は、それを必要とする対象における眼疾患を治療する方法であって、対象の眼又は対象の眼の涙腺に、rAAVビリオンを投与することを含み、rAAVビリオンが、AAVカプシド及びプロモーターに動作可能に連結された神経栄養因子をコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、対象の少なくとも1つの眼及び/又は涙腺に投与され、対象の少なくとも1つの眼及び/又は涙腺の細胞に形質導入する。少なくとも1つの眼及び/又は涙腺内の形質導入細胞は、神経栄養因子を発現する。少なくとも1つの眼及び/又は涙腺の形質導入細胞によって発現された神経栄養因子は、神経栄養因子を対象の涙液層及び/又は眼表面に発現する。発現される神経栄養因子は、例えば、ヒト神経成長因子(NGF)タンパク質又はグリア由来神経栄養因子(GDNF)タンパク質でありうる。遺伝子産物の発現は、対象の眼疾患に関連する症状の軽減をもたらす。
【0011】
いくつかの実施形態では、本開示は、それを必要とする対象における眼疾患を治療する方法であって、組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンを投与することを含み、rAAVビリオンが、AAVカプシド及びプロモーターに動作可能に連結された神経栄養因子をコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含み、rAAVビリオンが、対象の少なくとも1つの眼又は対象の眼の少なくとも1つの涙腺に投与され、それにより、それを必要とする対象における眼疾患を治療する方法を提供する。
【0012】
いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、対象の少なくとも1つの涙腺に投与さ
れる。いくつかの実施形態では、涙腺は主涙腺である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの涙腺は、対象の主涙腺又はウォルフリング腺若しくはクラウス腺のいずれか1つである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの涙腺内の細胞はrAAVビリオンで形質導入される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの涙腺内の形質導入細胞は、対象の涙液層及び任意選択で眼表面に、治療有効量の神経栄養因子を発現する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの涙腺内の形質導入細胞は、対象の涙液層及び任意選択で眼表面に、有効量の神経栄養因子を発現する。
【0013】
いくつかの実施形態では、神経栄養因子は神経成長因子(NGF)タンパク質である。いくつかの実施形態では、NGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、(配列番号2)と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含む。いくつかの実施形態では、NGFタンパク質は、(配列番号1)と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含む。いくつかの実施形態では、NGFタンパク質は配列番号1を含む。いくつかの実施形態では、NGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号2を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、神経栄養因子はグリア由来神経栄養因子(GDNF)タンパク質である。いくつかの実施形態では、GDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、(配列番号4)と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含む。いくつかの実施形態では、GDNFタンパク質は、(配列番号3)と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含む。いくつかの実施形態では、GDNFタンパク質は配列番号3を含む。いくつかの実施形態では、GDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号4を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、AAVカプシドは、AAV2 VP1、AAV2 VP3、AAV5、AAV8、又はAAV9のカプシドと少なくとも95%、98%、又は100%の同一性を共有するカプシドを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、プロモーターは、CMVエンハンサー、ニワトリβ-アクチン(CAG)プロモーター(配列番号5)である。
【0017】
いくつかの実施形態では、眼疾患は、眼表面の化学熱傷、角膜創傷、遷延性上皮欠損、ドライアイ疾患、神経栄養性角膜炎、三叉神経及び/又は眼の単純ヘルペスウイルス感染症、三叉神経及び/又は眼の水痘帯状疱疹ウイルス感染症、並びに角膜神経の糖尿病合併症である。
【0018】
いくつかの実施形態では、眼疾患は、眼表面の化学熱傷、角膜創傷、角膜潰瘍、遷延性上皮欠損、ドライアイ疾患、神経栄養性角膜炎、三叉神経及び/又は眼の単純ヘルペスウイルス感染症、三叉神経及び/又は眼の水痘帯状疱疹ウイルス感染症、並びに角膜神経の糖尿病合併症である。
【0019】
いくつかの実施形態では、眼疾患は、Mackieの分類に基づいて定義される臨床徴候を特徴とする。
【0020】
いくつかの実施形態では、眼疾患の1つ又は複数の症状は、rAAVビリオンの投与前の眼疾患の症状と比較して軽減される。いくつかの実施形態では、眼疾患の1つ又は複数の症状は、未治療対照の対象における眼疾患の症状と比較して軽減される。いくつかの実施形態では、眼疾患の1つ又は複数の症状は、対側眼における眼疾患の症状と比較して軽減される。
【0021】
別の態様では、本開示は、AAVカプシド及びプロモーターに動作可能に連結された神
経栄養因子をコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含むrAAVビリオンを提供する。
【0022】
いくつかの実施形態では、神経栄養因子は神経成長因子(NGF)タンパク質である。いくつかの実施形態では、NGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、(配列番号2)と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含む。いくつかの実施形態では、NGFタンパク質は、(配列番号1)と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含む。いくつかの実施形態では、NGFタンパク質は配列番号1を含む。いくつかの実施形態では、NGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号2を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、神経栄養因子は、グリア由来神経栄養因子(GDNF)タンパク質である。いくつかの実施形態では、GDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、(配列番号4)と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含む。いくつかの実施形態では、GDNFタンパク質は、(配列番号3)と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含む。いくつかの実施形態では、GDNFタンパク質は配列番号3を含む。いくつかの実施形態では、GDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号4を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、AAVカプシドは、AAV2 VP1、AAV2 VP3、AAV5、AAV8、又はAAV9のカプシドと少なくとも95%、98%、又は100%の同一性を共有するカプシドを含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、プロモーターはCAGプロモーター(配列番号5)である。
【0026】
1つの態様では、本開示は、本明細書に開示のrAAVビリオン及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物に関する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、rAAVビリオン1ミリリットルあたり約1×10~約1×1014ゲノムコピーを含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、rAAVビリオン1ミリリットルあたり約1×10~約1×1014ゲノムコピーを含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、rAAVビリオン1ミリリットルあたり約1×1012~約6.2×1012ゲノムコピーを含む。
【0027】
1つの態様では、本開示は、それを必要とする対象における眼疾患を治療する方法、治療有効量の本明細書に開示の医薬組成物を、対象の眼又は対象の眼分泌腺に投与することを含む方法に関する。1つの態様では、本開示は、それを必要とする対象における眼疾患を治療する方法、有効量の本明細書に開示の医薬組成物を、対象の眼又は対象の眼分泌腺に投与することを含む方法に関する。
【0028】
いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、対象の少なくとも1つの眼及び/又は涙腺に投与される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの眼及び/又は涙腺内の細胞は、rAAVビリオンで形質導入される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの眼及び/又は涙腺内の形質導入細胞は、対象の眼分泌腺対象の涙液層及び任意選択で眼表面に、治療有効量の神経栄養因子を発現する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの眼及び/又は涙腺内の形質導入細胞は、対象の眼分泌腺対象の涙液層及び任意選択で眼表面に、有効量の神経栄養因子を発現する。
【0029】
いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、腺が適切な量の標的(タンパク質、ペプチド、酵素など)を涙液層に分泌するのを確実にするように、対象の少なくとも1つの眼及び/又は涙腺に反復して投与することができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの眼及び/又は涙腺内の細胞は、rAAVビリオンで形質導入される。いくつかの
実施形態では、少なくとも1つの眼及び/又は涙腺内の形質導入細胞は、治療有効量の神経栄養因子を、対象の涙液層及び任意選択で眼表面に発現する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの眼及び/又は涙腺内の形質導入細胞は、有効量の神経栄養因子を、対象の涙液層及び任意選択で眼表面に発現する。
【0030】
いくつかの実施形態では、眼疾患は神経栄養性角膜炎である。いくつかの実施形態では、眼疾患の1つ又は複数の症状は、rAAVビリオンの投与前の眼疾患の症状と比較して軽減される。いくつかの実施形態では、眼疾患の1つ又は複数の症状は、未治療対照の対象における眼疾患の症状と比較して軽減される。いくつかの実施形態では、眼疾患の1つ又は複数の症状は、対側眼における眼疾患の症状と比較して軽減される。
【0031】
さらに提供されるのは、眼疾患の治療用医薬品の調製に使用するための、本明細書に記載のrAAVビリオン及び医薬組成物である。
【0032】
いくつかの態様では、本開示は、それを必要とする対象における眼疾患を治療する方法であって、対象の少なくとも1つの眼又は対象の眼の少なくとも1つの涙腺に、組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンを投与することを含み、rAAVビリオンが、AAVカプシド及びプロモーターに動作可能に連結された神経栄養因子をコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含む方法を提供する。
【0033】
本明細書に記載の実施形態では、rAAVビリオンは対象の涙腺に投与される。いくつかの実施形態では、涙腺は、対象の主涙腺又はウォルフリング腺若しくはクラウス腺のいずれか1つである。いくつかの実施形態では、涙腺は主涙腺である。
【0034】
本明細書に記載の実施形態では、涙腺内の細胞はrAAVビリオンで形質導入される。いくつかの実施形態では、涙腺内の形質導入細胞は、有効量の神経栄養因子を、対象の涙液層及び任意選択で眼表面に発現する。いくつかの実施形態では、神経栄養因子は神経成長因子(NGF)タンパク質である。いくつかの実施形態では、NGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号2と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含む。いくつかの実施形態では、NGFタンパク質は、配列番号1と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含む。いくつかの実施形態では、NGFタンパク質は配列番号1を含む。いくつかの実施形態では、NGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号2を含む。
【0035】
本明細書に記載の実施形態では、神経栄養因子はグリア由来神経栄養因子(GDNF)タンパク質である。いくつかの実施形態では、GDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号4と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含む。いくつかの実施形態では、GDNFタンパク質は、配列番号3と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含む。いくつかの実施形態では、GDNFタンパク質は配列番号3を含む。いくつかの実施形態では、GDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号4を含む。
【0036】
本明細書に記載の実施形態では、AAVカプシドは、AAV2 VP1(配列番号6)、AAV2 VP3(配列番号8)、AAV5(配列番号10)、AAV8(配列番号12)、又はAAV9(配列番号14)と少なくとも95%、98%、又は100%の同一性を共有する。
【0037】
本明細書に記載の実施形態では、プロモーターはCAGプロモーター(配列番号5)である。
【0038】
本明細書に記載の実施形態では、眼疾患は、眼表面の化学熱傷、角膜創傷、角膜潰瘍、遷延性上皮欠損、ドライアイ疾患、神経栄養性角膜炎、三叉神経及び/若しくは眼の単純ヘルペスウイルス感染症、三叉神経及び/若しくは眼の水痘帯状疱疹ウイルス感染症、又は角膜神経の糖尿病合併症である。
【0039】
本明細書に記載の実施形態では、眼疾患の1つ又は複数の症状は、rAAVビリオンの投与前の眼疾患の症状と比較して軽減される。いくつかの実施形態では、眼疾患の1つ又は複数の症状は、未治療対照の対象における眼疾患の症状と比較して軽減される。いくつかの実施形態では、眼疾患の1つ又は複数の症状は、対側眼における眼疾患の症状と比較して軽減される。
【0040】
いくつかの実施形態では、本開示は、組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンであって、AAVカプシド及び発現カセットを含み、発現カセットが、プロモーターに動作可能に連結された神経栄養因子をコードするポリヌクレオチドを含む組み換えrAAVビリオンを提供する。
【0041】
本明細書に記載の実施形態では、神経栄養因子は神経成長因子(NGF)タンパク質である。いくつかの実施形態では、NGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号2又は配列番号17と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含む。いくつかの実施形態では、NGFタンパク質は、配列番号1と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含む。いくつかの実施形態では、NGFタンパク質は配列番号1を含む。いくつかの実施形態では、NGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号2又は配列番号17である。
【0042】
本明細書に記載の実施形態では、神経栄養因子はグリア由来神経栄養因子(GDNF)タンパク質である。いくつかの実施形態では、GDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号4又は配列番号18と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含む。いくつかの実施形態では、GDNFタンパク質は、配列番号3と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含む。いくつかの実施形態では、GDNFタンパク質は配列番号3を含む。いくつかの実施形態では、GDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号4又は配列番号18である。
【0043】
本明細書に記載の実施形態では、AAVカプシドは、AAV2 VP1(配列番号6)、AAV2 VP3(配列番号8)、AAV5(配列番号10)、AAV8(配列番号12)、又はAAV9(配列番号14)と少なくとも95%、98%、又は100%の同一性を共有するVP3を含む。
【0044】
本明細書に記載の実施形態では、プロモーターは、CAGプロモーター(配列番号5)又はCMVプロモーター(配列番号16)である。
【0045】
本明細書に記載の実施形態では、発現カセットは、配列番号23と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を共有する配列を含む。
【0046】
本明細書に記載の実施形態では、発現カセットは、配列番号24と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を共有する配列を含む。
【0047】
本明細書に記載の実施形態では、発現カセットは、配列番号25と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を共有する配列を含む
【0048】
いくつかの実施形態では、本開示は、配列番号25のポリヌクレオチドを含む発現カセットを含む組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンを提供する。
【0049】
本明細書に記載の実施形態では、rAAVはAAVカプシドを含む。
【0050】
本明細書に記載の実施形態では、AAVカプシドは、AAV2 VP1(配列番号6)、AAV2 VP3(配列番号8)、AAV5(配列番号10)、AAV8(配列番号12)、又はAAV9(配列番号14)と少なくとも95%、98%、又は100%の同一性を共有する。
【0051】
いくつかの実施形態では、本開示は、rAAVビリオンを含む組成物であって、rAAVビリオンが、
(a)AAVカプシド、及び
(b)発現カセット、を含み、発現カセットが、配列番号2又は配列番号17と少なくとも95%の同一性を共有するポリヌクレオチドを含み、ポリヌクレオチドがプロモーターに連結された、
組成物を提供する。
【0052】
いくつかの実施形態では、本開示は、rAAVビリオンを含む組成物であって、rAAVビリオンが、
(a)AAVカプシド、及び
(b)発現カセット、を含み、発現カセットが、配列番号4又は配列番号18と少なくとも95%の同一性を共有するポリヌクレオチドを含み、ポリヌクレオチドがプロモーターに連結された、
組成物を提供する。
【0053】
いくつかの実施形態では、本開示は、rAAVビリオンを含む組成物であって、rAAVビリオンが、
(a)AAV2、AAV5、AAV8、又はAAV9カプシド、及び
(b)発現カセット、を含み、発現カセットが、配列番号2又は配列番号17と少なくとも95%の同一性を共有するポリヌクレオチドを含み、ポリヌクレオチドがプロモーターに連結された、
組成物を提供する。
【0054】
いくつかの実施形態では、本開示は、rAAVビリオンを含む組成物であって、rAAVビリオンが、
(a)AAV2、AAV5、AAV8、又はAAV9カプシド、及び
(b)発現カセット、を含み、発現カセットが、配列番号4又は配列番号18と少なくとも95%の同一性を共有するポリヌクレオチドを含み、ポリヌクレオチドがプロモーターに連結された、
組成物を提供する。
【0055】
本明細書に記載の実施形態では、AAVカプシドは、AAV2 VP1(配列番号6)、AAV2 VP3(配列番号8)、AAV5(配列番号10)、AAV8(配列番号12)、又はAAV9(配列番号14)と少なくとも95%、98%、又は100%の同一性を共有する。いくつかの実施形態では、AAVカプシドはAAV2である。いくつかの実施形態では、AAVカプシドはAAV5である。いくつかの実施形態では、AAVカプシドはAAV9である。
【0056】
いくつかの実施形態では、本開示は、rAAVビリオンを含む組成物であって、rAAVビリオンが、
(a)AAV2カプシド、及び
(b)発現カセット、を含み、発現カセットが、配列番号25と少なくとも95%の同一性を共有するポリヌクレオチドを含む、
組成物を提供する。
【0057】
いくつかの実施形態では、本開示は、rAAVビリオンを含む組成物であって、rAAVビリオンが、
(a)AAV5カプシド、及び
(b)発現カセット、を含み、発現カセットが、配列番号25と少なくとも95%の同一性を共有するポリヌクレオチドを含む、
組成物を提供する。
【0058】
いくつかの実施形態では、本開示は、rAAVビリオンを含む組成物であって、rAAVビリオンが、
(a)AAV9カプシド、及び
(b)発現カセット、を含み、発現カセットが、配列番号25と少なくとも95%の同一性を共有するポリヌクレオチドを含む、
組成物を提供する。
【0059】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載のrAAVビリオン又は組成物、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0060】
本明細書に記載の実施形態では、組成物は、rAAVビリオン1ミリリットルあたり約1×10~約1×1014ゲノムコピーを含む。
【0061】
本明細書に記載の実施形態では、組成物は、rAAVビリオン1ミリリットルあたり約1×1012~約6.2×1012ゲノムコピーを含む。
【0062】
本明細書に記載の実施形態では、組成物は、涙腺への投与向けに製剤化される。いくつかの実施形態では、組成物は、眼表面への投与向けに製剤化される。
【0063】
本明細書に記載の実施形態では、組成物は、眼の疾患、障害、又は病態の治療に使用するために、又は使用するのに適合可能に製剤化される。
【0064】
いくつかの実施形態では、本開示は、それを必要とする対象における眼疾患を治療する方法であって、有効量の本明細書に記載の医薬組成物を、対象の眼又は対象の眼分泌腺に投与することを含む方法を提供する。
【0065】
本明細書に記載の実施形態では、rAAVビリオンは対象の涙腺に投与される。いくつかの実施形態では、涙腺内の細胞はrAAVビリオンで形質導入される。いくつかの実施形態では、涙腺内の形質導入細胞は、有効量の神経栄養因子を、対象の涙液層及び任意選択で眼表面に発現する。
【0066】
本明細書に記載の実施形態では、眼疾患は神経栄養性角膜炎である。
【0067】
本明細書に記載の実施形態では、眼疾患の1つ又は複数の症状は、rAAVビリオンの投与前の眼疾患の症状と比較して軽減される。いくつかの実施形態では、眼疾患の1つ又
は複数の症状は、未治療対照の対象における眼疾患の症状と比較して軽減される。
【0068】
本明細書に記載の実施形態では、眼疾患の1つ又は複数の症状は、対側眼における眼疾患の症状と比較して軽減される。
【0069】
いくつかの実施形態では、本開示は、前述の又は関連する態様のいずれか1つの方法に使用するための前述の又は関連する態様のいずれか1つのrAAVビリオン、組成物、又は医薬組成物の使用を提供する。
【0070】
いくつかの実施形態では、本開示は、前述の又は関連する態様のいずれか1つの方法に使用するための医薬品(medicament)の製造における前述の又は関連する態様のいずれかのrAAV又は組成物の使用を提供する。
【0071】
いくつかの実施形態では、本開示は、前述の又は関連する態様のいずれかのrAAVビリオン、組成物、又は医薬組成物、及び前述の又は関連する態様のいずれか1つの方法に使用するための説明書(instructions)を含むキットを提供する。
【0072】
いくつかの実施形態では、本開示は、それを必要とする対象における眼疾患を治療する方法に使用するための組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンであって、方法が組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンを、対象の少なくとも1つの眼又は対象の眼の少なくとも1つの涙腺に投与することを含み、AAVカプシド及びプロモーターに動作可能に連結された神経栄養因子をコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含むrAAVビリオンを提供する。
【0073】
本明細書に記載の実施形態では、rAAVビリオンは対象の涙腺に投与される。
【0074】
本明細書に記載の実施形態では、涙腺内の細胞はrAAVビリオンで形質導入される。
【0075】
本明細書に記載の実施形態では、神経栄養因子は神経成長因子(NGF)タンパク質である。いくつかの実施形態では、神経栄養因子はグリア由来神経栄養因子(GDNF)タンパク質である。
【0076】
本明細書に記載の実施形態では、眼疾患は、眼表面の化学熱傷、角膜創傷、遷延性上皮欠損、ドライアイ疾患、神経栄養性角膜炎、三叉神経及び/若しくは眼の単純ヘルペスウイルス感染症、三叉神経及び/若しくは眼の水痘帯状疱疹ウイルス感染症、又は角膜神経の糖尿病合併症である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
図1A図1Aは、逆位末端反復(ITR)、CAGプロモーター、及びグリア由来神経栄養因子(GDNF)導入遺伝子ポリヌクレオチドエレメントをもつ本発明のrAAV発現カセットを含有する例示的なプラスミドを示す。
図1B図1Bは、逆位末端反復(ITR)、CAGプロモーター、及び神経成長因子(NGF)導入遺伝子ポリヌクレオチドエレメントをもつ本発明のrAAV発現カセットを含有する例示的なプラスミドを示す。
図1C図1Cは、逆位末端反復(ITR)、CAGプロモーター、及び強化型緑色蛍光タンパク質(eGFP)導入遺伝子ポリヌクレオチドエレメントをもつ本発明のrAAV発現カセットを含有する例示的なプラスミドを示す。
図2A図2Aは、ヒト対象の涙腺へのウイルスベクターの送達の一例を示す。
図2B図2Bは、ヒト対象の涙腺へのウイルスベクターの送達の一例を示す。
図3図3は、対象が症状の重症度を記録するアイドライネス検査で使用されるビジュアルアナログスケールの一例を示す。
図4図4は、NEI/Industry Workshopのスケールに基づく角膜表面の亀裂(division)の採点評価図(grading diagram)である。
図5図5は、神経栄養性角膜炎のMackie分類を示す。
図6A図6Aは、抗eGFP抗体で染色した涙腺組織の画像である。eGFP導入遺伝子をもつ発現カセットが入ったrAAVビリオンを涙腺内注射で涙腺に投与した。涙腺組織を抗eGFP抗体で染色し、eGFP発現を評価した。黒い矢印は、eGFPの発現を示す染色を指し示す。
図6B図6Bは、抗eGFP抗体で染色した涙腺組織の画像である。eGFP導入遺伝子をもつ発現カセットが入ったrAAVビリオンを涙腺内注射で涙腺に投与した。涙腺組織を抗eGFP抗体で染色し、eGFP発現を評価した。黒い矢印は、eGFPの発現を示す染色を指し示す。
図6C図6Cは、抗eGFP抗体で染色した涙腺組織の画像である。eGFP導入遺伝子をもつ発現カセットが入ったrAAVビリオンを涙腺内注射で涙腺に投与した。涙腺組織を抗eGFP抗体で染色し、eGFP発現を評価した。黒い矢印は、eGFPの発現を示す染色を指し示す。
図6D図6Dは、抗eGFP抗体で染色した涙腺組織の画像である。eGFP導入遺伝子をもつ発現カセットが入ったrAAVビリオンを涙腺内注射で涙腺に投与した。涙腺組織を抗eGFP抗体で染色し、eGFP発現を評価した。黒い矢印は、eGFPの発現を示す染色を指し示す。
図6E図6Eは、抗eGFP抗体で染色した涙腺組織の画像である。eGFP導入遺伝子をもつ発現カセットが入ったrAAVビリオンを涙腺内注射で涙腺に投与した。涙腺組織を抗eGFP抗体で染色し、eGFP発現を評価した。黒い矢印は、eGFPの発現を示す染色を指し示す。
図6F図6Fは、抗eGFP抗体で染色した涙腺組織の画像である。eGFP導入遺伝子をもつ発現カセットが入ったrAAVビリオンを涙腺内注射で涙腺に投与した。涙腺組織を抗eGFP抗体で染色し、eGFP発現を評価した。黒い矢印は、eGFPの発現を示す染色を指し示す。
図6G図6Gは、抗eGFP抗体で染色した涙腺組織の画像である。eGFP導入遺伝子をもつ発現カセットが入ったrAAVビリオンを涙腺内注射で涙腺に投与した。涙腺組織を抗eGFP抗体で染色し、eGFP発現を評価した。黒い矢印は、eGFPの発現を示す染色を指し示す。
図6H図6Hは、抗eGFP抗体で染色した涙腺組織の画像である。eGFP導入遺伝子をもつ発現カセットが入ったrAAVビリオンを涙腺内注射で涙腺に投与した。涙腺組織を抗eGFP抗体で染色し、eGFP発現を評価した。黒い矢印は、eGFPの発現を示す染色を指し示す。
図6I図6Iは、抗eGFP抗体で染色した涙腺組織の画像である。eGFP導入遺伝子をもつ発現カセットが入ったrAAVビリオンを涙腺内注射で涙腺に投与した。涙腺組織を抗eGFP抗体で染色し、eGFP発現を評価した。黒い矢印は、eGFPの発現を示す染色を指し示す。
図6J図6Jは、抗eGFP抗体で染色した涙腺組織の画像である。eGFP導入遺伝子をもつ発現カセットが入ったrAAVビリオンを涙腺内注射で涙腺に投与した。涙腺組織を抗eGFP抗体で染色し、eGFP発現を評価した。黒い矢印は、eGFPの発現を示す染色を指し示す。
図6K図6Kは、抗eGFP抗体で染色した涙腺組織の画像である。eGFP導入遺伝子をもつ発現カセットが入ったrAAVビリオンを涙腺内注射で涙腺に投与した。涙腺組織を抗eGFP抗体で染色し、eGFP発現を評価した。黒い矢印は、eGFPの発現を示す染色を指し示す。
図7A図7Aは、抗hNGF抗体で染色した涙腺組織の画像である。hNGF導入遺伝子をもつ発現カセットを送達するように遺伝子改変したrAAVビリオン(AAV9血清型)を涙腺内注射で涙腺に投与した。涙腺組織を抗hNGF抗体で染色し、hNGF発現を評価した。黒い矢印は、hNGFの発現を示す染色を指し示す。
図7B図7Bは、抗hNGF抗体で染色した涙腺組織の画像である。hNGF導入遺伝子をもつ発現カセットを送達するように遺伝子改変したrAAVビリオン(AAV9血清型)を涙腺内注射で涙腺に投与した。涙腺組織を抗hNGF抗体で染色し、hNGF発現を評価した。黒い矢印は、hNGFの発現を示す染色を指し示す。
図7C図7Cは、抗hNGF抗体で染色した涙腺組織の画像である。hNGF導入遺伝子をもつ発現カセットを送達するように遺伝子改変したrAAVビリオン(AAV9血清型)を涙腺内注射で涙腺に投与した。涙腺組織を抗hNGF抗体で染色し、hNGF発現を評価した。黒い矢印は、hNGFの発現を示す染色を指し示す。
図7D図7Dは、抗hNGF抗体で染色した涙腺組織の画像である。hNGF導入遺伝子をもつ発現カセットを送達するように遺伝子改変したrAAVビリオン(AAV9血清型)を涙腺内注射で涙腺に投与した。涙腺組織を抗hNGF抗体で染色し、hNGF発現を評価した。黒い矢印は、hNGFの発現を示す染色を指し示す。
図7E図7Eは、抗hNGF抗体で染色した涙腺組織の画像である。hNGF導入遺伝子をもつ発現カセットを送達するように遺伝子改変したrAAVビリオン(AAV9血清型)を涙腺内注射で涙腺に投与した。涙腺組織を抗hNGF抗体で染色し、hNGF発現を評価した。黒い矢印は、hNGFの発現を示す染色を指し示す。
図8図8は、AAV.hNGFを投与された動物の涙液層中のhNGFの濃度を示すプロットである。タンパク質濃度は、AAV2.hNGF、AAV5.hNGF、AAV9.hNGF、又は対照(AAVの注射なし)を涙腺内投与した後、図に示す日数の後に、シルマー試験ストリップを使用しダッチベルテッドラビット(Dutch-belted rabbits)から涙液層を採取して測定した。
図9図9は、AAVプラスミドのITR間のエレメントを示す概略図である。このプラスミドは、CMVプロモーターの制御下でN末端に分泌シグナルを連結したEGFP(「secEGFP」)をコードする。ウッドチャック肝炎ウイルスの翻訳後調節エレメント(WPRE)は、導入遺伝子の発現を増加させる役割を果たし、ウシ成長ホルモンのポリアデニル化(pA)シグナルに近接している。
図10図10は、AAV-secEGFP(AAV2又はAAV9血清型)の注射を受け、103日目に採取され、パラフィンで固定されたブタ涙腺の画像を示す。抗GFP抗体及びDAPI(核)対比染色を用いて、5μM切片のIHCを行った。画像は、共焦点顕微鏡を使用して倍率100×で撮影した。陰性対照動物は注射を受けなかった。
図11図11は、AAV9-secEGFPの注射を受け、103日目に採取され、パラフィンで固定されたブタ涙腺の画像を示す。抗GFP抗体及びDAPI(核)対比染色を用いて、5μM切片のIHCを行った。涙腺腺房細胞にくわえて、延性(ductile)上皮細胞もAAV9で形質導されるようである(白い矢印)。
図12図12は、AAVの注射を受け、103日目に採取され、パラフィンで固定されたブタ涙腺の画像を示す。5μMのパラフィン切片の100×でのH&E染色において、炎症性浸潤、マクロ又はミクロの異常は認められない。
図13A図13Aは、ブタの涙液層中のhNFGβの濃度(pg/mL)を示すプロットである。ヒト神経成長因子をコードするアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)(AAV-hNGFβ)による形質導入の後、7、14、21、28、及び35日目にブタ(n=4)の左眼から涙を採取した。AAV2-hNGFβは、形質導入の7日後に、MSDアッセイの標準曲線範囲内で検出可能なレベルのhNGFβを有した。
図13B図13Bは、ブタの涙液層中のhNFGβの濃度(pg/mL)を示すプロットである。ヒト神経成長因子をコードするアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)(AAV-hNGFβ)による形質導入の後、7、14、21、28、及び35日目にブタ(n=4)の左眼から涙を採取した。AAV5-hNGFβは、形質導入の7日後に、MSDアッセイの標準曲線範囲内で検出可能なレベルのhNGFβを有した。
図13C図13Cは、ブタの涙液層中のhNFGβの濃度(pg/mL)を示すプロットである。ヒト神経成長因子をコードするアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)(AAV-hNGFβ)による形質導入の後、7、14、21、28、及び35日目にブタ(n=4)の左眼から涙を採取した。AAV9-hNGFβは、形質導入の7日後に、MSDアッセイの上限の定量レベルを超えるhNGFβの涙液レベルを有した。
図14図14は、逆位末端反復(ITR)をもつ配列番号25のrAAV発現カセット、CAGプロモーター、及び神経成長因子(NGF)導入遺伝子ポリヌクレオチドエレメントを含有する例示的なプラスミドを示す。
【発明を実施するための形態】
【0078】
概要
本開示は、それを必要とする対象における眼疾患を治療する方法を提供する。健康な対象では、神経栄養因子は角膜に対して維持と修復を行う。角膜上皮細胞は、可溶性神経栄養因子NGF及びGDNFを眼表面に放出し、それぞれTrkA及びGFRα-1受容体の活性化を通して角膜細胞の生存及び治癒を促進する。NGF及びGDNFは、涙液層に構成的に存在し、角膜への刺激又は損傷に対する応答の間に多量に増加する。
【0079】
本明細書に開示のように、AAVをベースとする眼への導入遺伝子の送達は、眼の障害を治療する方法を提供する。rAAVビリオンは、導入遺伝子の送達に関して明確な利点がある。rAAVビリオンで送達された導入遺伝子は、形質導入細胞のゲノムに組み込まれる可能性が高く、導入遺伝子産物の長期発現が可能になる。くわえて、rAAVビリオンは、アデノウイルスなどの他のウイルス送達ベクターほど免疫原性が高くない。後眼部の細胞を形質導入するための網膜下及び硝子体内注射を用いたAAVベース送達ベクターが報告され、生体内での有効性が示されている(特許文献1;非特許文献3;非特許文献4)。
【0080】
AAVをベースとする眼への導入遺伝子の送達に使用されるAAV血清型としては、導入遺伝子を送達するのに使用されるAAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、及びAAV9が挙げられる(非特許文献5)。AAVをベースとする涙腺への導入遺伝子の送達に使用されるAAV血清型としては、AAV2、AAV4、AAV5、AAV5w8、AAV x5、AAV9、AAV12、及びBAAVが挙げられる(非特許文献6)。
【0081】
涙腺への注射(すなわち、涙腺内送達、涙腺内注射、又は涙腺内投与)による、ウイルスベクターに基づいた、タンパク質産物をコードする導入遺伝子の送達は、眼の疾患及び症状を治療するのに有利でありうる。涙腺で産生され、対象の涙液に分泌されるタンパク質は、翻訳後修飾(PTM)(タンパク質の生合成に続く、共有結合的で一般に酵素的なタンパク質の修飾)により改善される可能性があり、これによって、タンパク質は、mRNAをポリペプチド鎖に翻訳するリボソームによって合成され、次いで、PTMを受けて成熟タンパク質産物を形成することができる。PTMは、大腸菌(escherichia coli)などの細菌で作られることが多い組み換えヒトタンパク質の局所送達では通常は存在しないような細胞シグナル伝達における重要な特性を付与しうる。くわえて、補因子(cofactor)、シャペロン、酵素、又は他のタンパク質を含有しうる天然の涙液層成分とともに分泌された場合、涙液を介した投与は、局所的に投与されたタンパク質だけでは達成できなかった生物活性(biologic activity)を付与しうる。
【0082】
1つの態様では、rAAVビリオンは、神経栄養因子の発現のために提供される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの眼及び/又は涙腺の細胞は、本開示のrAAVビリオンで形質導入される。涙腺は、健康な眼表面の促進及び正常な視覚機能の維持を担う
涙液の主要な供給源である。主涙腺は眼瞼葉及び眼窩葉を含み、上眼瞼挙筋の腱膜の外側縁で互いに連続している。小葉には多くの腺房管及び小葉内管があり、結膜の円蓋に開口する導管を形成する。主涙腺は、腺房細胞、管細胞、及び/又は筋上皮細胞で構成される(非特許文献7)。主涙腺は、対象の眼の眼表面に涙液層の水層を分泌する。本明細書において使用される場合、「涙腺」という用語は、対象の主涙腺並びにウォルフリング腺及びクラウス腺を意味する。付属腺は、ウォルフリング腺及びクラウス腺として知られ、眼瞼に位置する。上眼瞼には、約2~5つのウォルフリング腺及び約40のクラウス腺がある。下眼瞼には、約6~8つのクラウス腺がある。涙液機能単位(lacrimal functional unit)の具体的な位置及び解剖学的構造はよく知られている(非特許文献8)。
【0083】
発現カセット
本開示のrAAVビリオンは発現カセットを含むことができる。本明細書において使用される場合、「発現カセット」という用語は、目的のタンパク質又は導入遺伝子、例えば神経栄養因子をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド配列を含む、逆位末端反復と隣接したポリヌクレオチドを意味する。発現カセットは、他のポリヌクレオチド配列、例えば、プロモーター、調節エレメント(例えば、1つ又は複数のプロモーター又はエンハンサー)、翻訳開始配列、コード配列、及び終結配列をさらに含むことができる(図1A~1C及び図14)。調節エレメントは、導入遺伝子に動作可能に連結され、発現を促進することができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、本開示の発現カセットは神経栄養因子をコードするポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、発現カセットは、少なくとも1つの眼及び/又は涙腺における神経栄養因子の発現の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、神経栄養因子の発現は、未治療対象、又は治療対象の対側眼における神経栄養因子の発現と比較して5%、10%、15%、20%、又は25%増加しうる。本明細書において使用される場合、「対象」はいずれの哺乳動物も意味し、例えばマウス、ウサギ、ブタ、イヌ、非ヒト霊長類(NHP)及びヒトが挙げられる。いくつかの実施形態では、対象はヒト又はNHPである。さらに、「個体」又は「患者」は、「対象」と互換的に使用することができる。いくつかの実施形態では、神経栄養因子の発現は、未治療対象、又は治療対象の対側眼における神経栄養因子の発現と比較して1倍、2倍、3倍、4倍、又は5倍増加しうる。いくつかの実施形態では、神経栄養因子の発現は、未治療対象、又は治療対象の対側眼における神経栄養因子の発現と比較して5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%増加しうる。いくつかの実施形態では、神経栄養因子の発現は、未治療対象、又は治療対象の対側眼における神経栄養因子の発現と比較して1倍、2倍、3倍、4倍、又は5倍、6倍、7倍、8倍、又は9倍増加しうる。いくつかの実施形態では、治療された眼では、神経栄養因子は任意の検出可能なレベルで発現することができるのに対して、未治療対象、又は治療対象の対側眼では、神経栄養因子は発現しない可能性がある、又は検出不可能なレベルで発現する可能性がある。別の言い方をすると、rAAVビリオンが投与される眼又は涙腺は、内在性(すなわち、ネイティブ)神経栄養因子の発現のみを有する眼若しくは涙腺、又は内在性(すなわち、ネイティブ)神経栄養因子の発現の分泌が低い、若しくは損なわれている眼に比べて、より多量に神経栄養因子を発現しうる。
【0085】
いくつかの実施形態では、神経栄養因子は、神経成長因子(NGF)タンパク質又はその機能性バリアントである。本明細書において使用される場合、「NGF」、「NGFβ」、又は「神経成長因子β」は、ホモ二量体化して神経成長刺激活性を発揮するタンパク質をコードする遺伝子である神経成長因子を意味する。NGFはまた、ニューロンの調節及び分化にも関与している。本明細書において使用される場合、「NGFタンパク質」と
いう用語は、任意の種に由来するNGFタンパク質を意味する。「機能性バリアント」という用語は、配列置換、挿入、欠失、及び/又はN末端若しくはC末端の短縮を有するバリアントを意味し、機能性バリアントは参照タンパク質、例えばネイティブNGFタンパク質の1つ又は複数の機能を保持する。NGFは、主に神経細胞の成長、維持、増殖及び生存に関与する26kDaのポリペプチドである。角膜において、NGFはその受容体trkANGFR及びp75NTRに結合し、角膜と結膜の両方の治癒に関連するシグナル伝達経路を誘発する(非特許文献9)。いくつかの実施形態では、NGFタンパク質は配列番号1を含む。いくつかの実施形態では、NGFタンパク質は、配列番号1と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一な配列を含む。いくつかの実施形態では、NGFタンパク質は、配列番号1と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の同一性をもつ配列を共有する。いくつかの実施形態では、NGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号2を含む。いくつかの実施形態では、NGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号2と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一な配列を含む。いくつかの実施形態では、NGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号2と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の同一性を共有する配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、NGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドはコドンが最適化される。いくつかの実施形態では、NGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号17を含む。いくつかの実施形態では、NGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号17と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一な配列を含む。いくつかの実施形態では、NGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号17と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の同一性を共有する配列によってコードされる。
【0086】
>コドン最適化NGF
atgagcatgctgttttacaccctgatcaccgccttcctgatcggcatccaggccgagccccacagcgagagcaacgtgcccgctggacacacaatccctcaggcccactggacaaaactgcagcatagcctggatacagccctgagaagggccagaagcgcccctgccgccgccatcgccgctagagtggccggccagacaagaaatatcaccgtggacccccggctgttcaagaaaagaagactgcggtctcctagagtgctcttttcaacacagcctcctcgggaagccgctgatacccaggacctggacttcgaggtgggaggcgccgctcctttcaatagaacccacagatccaagagaagctctagccaccctatcttccaccggggcgagttcagcgtgtgcgacagcgtttctgtgtgggtgggagataagaccaccgcaaccgatatcaagggcaaggaagtgatggtgctgggcgaagtgaacatcaacaacagcgtctttaagcagtacttcttcgagacaaagtgccgggacccaaaccccgtggacagcggctgcagaggcattgactccaagcactggaactcctactgcaccacaacacacaccttcgtgaaggccctgaccatggacggcaaacaagctgcctggcggttcatcagaatcgacaccgcctgtgtctgtgtgctgagcagaaaggccgtgcgccgggcctag(配列番号17)
【0087】
いくつかの実施形態では、NGFタンパク質はヒトNGFタンパク質である。
【0088】
いくつかの実施形態では、神経栄養因子はグリア由来神経栄養因子(GDNF)タンパク質である。本明細書において使用される場合、「GDNFタンパク質」という用語は、任意の種に由来するGDNFタンパク質を意味する。「機能性バリアント」という用語は、配列置換、挿入、欠失、及び/又はN末端若しくはC末端の短縮を有するバリアントを意味し、機能性バリアントは参照タンパク質、例えばネイティブGDNFタンパク質の1つ又は複数の機能を保持する。GDNFは21kDaのタンパク質であり、その受容体GFRα-1に作用するGDNFによって多種多様な神経系の成長、維持、及び分化を助け
る(非特許文献10)。いくつかの実施形態では、GDNFタンパク質は配列番号3を含む。いくつかの実施形態では、GDNFタンパク質は、配列番号3と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一な配列を含む。いくつかの実施形態では、GDNFタンパク質は、配列番号3と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の同一性をもつ配列を共有する。いくつかの実施形態では、GDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号4を含む。いくつかの実施形態では、GDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号4と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一な配列を含む。いくつかの実施形態では、GDNFタンパク質は、配列番号4と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%同一な配列を共有する配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、GDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号18を含む。いくつかの実施形態では、GDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号18と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一な配列を含む。いくつかの実施形態では、GDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドはコドンが最適化される。いくつかの実施形態では、GDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号18と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の同一性を共有する配列によってコードされる。
【0089】
>コドン最適化GDNF
atgaactgtgggacgttgtggccgtgtgcctggtcctcctgcacaccgcctccgcctttccactgcctgctggaaagcggcctcctgaggcccctgctgaagatagaagcctgggcagaagaagagcccccttcgccctgagctctgatagcaacatgcctgaggactaccccgaccagttcgacgacgtgatggactttatccaggccaccatcaagagactgaaacggagccctgacaagcagatggccgtgctgcctagacgggaaagaaatagacaggccgcagctgccaaccccgagaacagcagaggcaaaggccggagaggccagaggggaaaaaacagaggatgtgtgctgaccgccatccatctgaacgtgacagatctgggcctgggctatgagaccaaggaagagctgatcttcagatactgcagcggcagctgcgacgccgccgagacaacctacgacaagatcctgaagaacctgtcccggaatcggcggctggtgtctgacaaggtgggccaagcttgctgcagaccaattgccttcgacgatgatctgtctttcctggatgacaacctggtgtaccacatcctgagaaagcacagcgccaagcgctgcggctgtatctag(配
列番号18)
【0090】
いくつかの実施形態では、GDNFはヒトGDNFである。
【0091】
【表1】
【0092】
いくつかの実施形態では、本開示の発現カセットはプロモーターを含む。本明細書において使用される「プロモーター」という用語は、RNAポリメラーゼの結合を導き、それによりRNA合成を促進するDNA配列、すなわち転写を導くのに十分な最小限の配列を意味する。プロモーターは、導入遺伝子、例えば神経栄養因子に動作可能に連結することができる。導入遺伝子の転写は、それが動作可能に連結されたプロモーターによって開始及び調節することができる。例えば、導入遺伝子に動作可能に連結されたプロモーターを含む発現カセットは、プロモーターでRNA合成が開始された場合に導入遺伝子を発現することになる。プロモーター及び対応するタンパク質又はポリペプチドの発現はユビキタ
スであり、つまり広範囲の細胞、組織及び種で強く活性を示すこともあれば、細胞型特異的、組織特異的、若しくは種特異的であることもある。プロモーターは「構成的」、つまり常に活性であることもあれば、「誘導性」、つまり生物的又は非生物的因子の存在又は不在によって活性化又は不活性化されうることもある。また、本発明の核酸コンストラクト又はベクターには、プロモーター配列と連続することもあり連続しないこともあるエンハンサー配列が含まれる。エンハンサー配列は、プロモーター依存性遺伝子発現に影響を及ぼし、ネイティブ遺伝子の5’領域に位置することもあり、3’領域に位置することもある。
【0093】
プロモーター領域が、少なくとも1つの眼及び/又は涙腺におけるNGF又はGNDFタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列の発現を促進する限り、任意の好適なプロモーター領域又はそのなかのプロモーター配列を、対象となるポリヌクレオチドカセットに使用することができる。いくつかの実施形態では、プロモーターは、哺乳動物の眼及び/又は涙腺における遺伝子の発現を促進する。いくつかの実施形態では、発現カセットは細胞型特異的プロモーターを含む。プロモーターは、眼の細胞及び/又は涙腺の細胞における転写を特異的に促進しうる。
【0094】
いくつかの実施形態では、プロモーターはCAGプロモーターである。いくつかの実施形態では、プロモーターは配列番号5を含む。いくつかの実施形態では、プロモーターは、配列番号5と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一な配列を含む。いくつかの実施形態では、プロモーターは、CAGプロモーター配列(配列番号5)と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を共有する。
【0095】
>CAGプロモーター
ataacttacggtaaatggcccgcctggctgaccgcccaacgacccccgcccattgacgtcaataatgacgtatgttcccatagtaacgccaatagggactttccattgacgtcaatgggtggagtatttacggtaaactgcccacttggcagtacatcaagtgtatcatatgccaagtacgccccctattgacgtcaatgacggtaaatggcccgcctggcattatgcccagtacatgaccttatgggactttcctacttggcagtacatctactcgaggccacgttctgcttcactctccccatctcccccccctccccacccccaattttgtatttatttattttttaattattttgtgcagcgatgggggcggggggggggggggggcgcgcgccaggcggggcggggcggggcgaggggcggggcggggcgaggcggagaggtgcggcggcagccaatcagagcggcgcgctccgaaagtttccttttatggcgaggcggcggcggcggcggccctataaaaagcgaagcgcgcggcgggcgggagcgggatcagccaccgcggtggcggcctagagtcgacgaggaactgaaaaaccagaaagttaactg(配列番号5)
【0096】
いくつかの実施形態では、プロモーターはCMVプロモーターである。いくつかの実施形態では、プロモーターは配列番号16を含む。いくつかの実施形態では、プロモーターは、配列番号16と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一な配列を含む。いくつかの実施形態では、プロモーターは、CMVプロモーター配列(配列番号16)と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を共有する。
【0097】
>CMVプロモーター
ctagttattaatagtaatcaattacggggtcattagttcatagcccatatatggagttccgcgttacataacttacggtaaatggcccgcctggctgaccgcccaacgacccccgcccattgacgtcaataatgacgtatgttcccatagtaacgccaatagggactttccattgacgtcaatgggtggactatttacggtaaactgcccacttggcagtacatcaagtgtatcatatgccaagtacgccccctattgacgtcaatgacggtaaatggcccgcctggcattatgcccagtacatgaccttatgggactttcctacttggcagtacatctacgtattagtcatcgctattaccatggtgatgcggttttggcagtacatcaatgggcgtggatagcggtttgactcacggggatttccaagtctccaccccattgacgtcaatgggagtttgttttggcaccaaaatcaacgggactttccaaaatgtcgtaacaactccgccccattgacgcaaatgggcggtaggcgtgtacggtgggaggtctatataagcagagctctctggctaactagagaacccactgcttactggcttatcgaaat(配列番号16)
【0098】
いくつかの実施形態では、発現カセットは、ポリアデニル化配列に動作可能に連結されたヌクレオチド配列を含む。好適なポリアデニル化配列としては、ウシ成長ホルモンポリAシグナル(bGHポリA)及びショートポリAシグナルを挙げられる。いくつかの実施形態では、ポリアデニル化配列は配列番号21を含む。任意選択で、本開示のrAAVベクターはウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)を含む。いくつかの実施形態では、rAAVベクターは配列番号22を含むWPREを含む。
【0099】
>bGHポリA配列
cgactgtgccttctagttgccagccatctgttgtttgcccctcccccgtgccttccttgaccctggaaggtgccactcccactgtcctttcctaataaaatgaggaaattgcatcgcattgtctgagtaggtgtcattctattctggggggtggggtggggcaggacagcaagggggaggattgggaagacaatagcaggcatgctggggatgcggtgggctctatgg(配列番号21)
【0100】
>WPRE配列
tcctgttaatcaacctctggattacaaaatttgtgaaagattgactgatattcttaactatgttgctccttttacgctgtgtggatatgctgctttaatgcctctgtatcatgctattgcttcccgtacggctttcgttttctcctccttgtataaatcctggttgctgtctctttatgaggagttgtggcccgttgtccgtcaacgtggcgtggtgtgctctgtgtttgctgacgcaacccccactggctggggcattgccaccacctgtcaactcctttctgggactttcgctttccccctccctatcgccacggcagaactcatcgccgcctgccttgcccgctgctggacaggggctaggttgctgggcactgataattccgtggtgttgtcggggaagctgacgtc(配列番号22)
【0101】
いくつかの実施形態では、発現カセットは配列番号23を含む。いくつかの実施形態では、発現カセットは、配列番号23と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一な配列を含む。いくつかの実施形態では、発現カセットは、配列番号23と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を共有する配列を含む。
【0102】
>GDNFをコードする配列を含む発現カセット
gcgcgctcgctcgctcactgaggccgcccgggcaaagcccgggcgtcgggcgacctttggtcgcccggcctcagtgagcgagcgagcgcgcagagagggagtggccaactccatcactaggggttccttgtagttaatgattaacggatctttacaaattcaagccaggtgatttcaacaaattttgctgacgatttaggcgcactatcccctaaactacaaattagaaaatagcgttccttgacactagtctagttattaatagtaatcaattacggggtcattagttcatagcccatatatggagttccgcgttacataacttacggtaaatggcccgcctggctgaccgcccaacgacccccgcccattgacgtcaataatgacgtatgttcccatagtaacgccaatagggactttccattgacgtcaatgggtggactatttacggtaaactgcccacttggcagtacatcaagtgtatcatatgccaagtacgccccctattgacgtcaatgacggtaaatggcccgcctggcattatgcccagtacatgaccttatgggactttcctacttggcagtacatctacgtattagtcatcgctattaccatggtgatgcggttttggcagtacatcaatgggcgtggatagcggtttgactcacggggatttccaagtctccaccccattgacgtcaatgggagtttgttttggcaccaaaatcaacgggactttccaaaatgtcgtaacaactccgccccattgacgcaaatgggcggtaggcgtgtacggtgggaggtctatataagcagagctctctggctaactagagaacccactgcttactggcttatcgaaataagctttctcaggggagatctcgtttagtgaaccgtcagatcctcactctcttccgcatcgctgtctgcgagggccagctgttgggctcgcggttgaggacaaactcttcgcggtctttccagtactcttggatcggaaacccgtcggcctccgaacggtactccgccaccgagggacctgagcgagtccgcatcgaccggatcggaaaacctctcgagaaaggcgtctaaccagtcacagtcgcaaggtaggctgagcaccgtggcgggcggcagcgggtggcggtcggggttgtttctggcggaggtgctgctgatgatgtaattaaagtaggcggtcttgagacggcggatggtcgaggtgaggtgtggcaggcttgagatccagctgttggggtgagtactccctctcaaaagcgggcattacttctgcgctaagattgtcagtttccaaaaacgaggaggatttgatattcacctggcccgatctggccatacacttgagtgacaatgacatccactttgcctttctctccacaggtgtccactcccaggtccaagtttaaacgccgccgccatgaagctgtgggacgttgtggccgtgtgcctggtcctcctgcacaccgcctccgcctttccactgcctgctggaaagcggcctcctgaggcccctgctgaagatagaagcctgggcagaagaagagcccccttcgccctgagctctgatagcaacatgcctgaggactaccccgaccagttcgacgacgtgatggactttatccaggccaccatcaagagactgaaacggagccctga
caagcagatggccgtgctgcctagacgggaaagaaatagacaggccgcagctgccaaccccgagaacagcagaggcaaaggccggagaggccagaggggaaaaaacagaggatgtgtgctgaccgccatccatctgaacgtgacagatctgggcctgggctatgagaccaaggaagagctgatcttcagatactgcagcggcagctgcgacgccgccgagacaacctacgacaagatcctgaagaacctgtcccggaatcggcggctggtgtctgacaaggtgggccaagcttgctgcagaccaattgccttcgacgatgatctgtctttcctggatgacaacctggtgtaccacatcctgagaaagcacagcgccaagcgctgcggctgtatctagtcctgttaatcaacctctggattacaaaatttgtgaaagattgactgatattcttaactatgttgctccttttacgctgtgtggatatgctgctttaatgcctctgtatcatgctattgcttcccgtacggctttcgttttctcctccttgtataaatcctggttgctgtctctttatgaggagttgtggcccgttgtccgtcaacgtggcgtggtgtgctctgtgtttgctgacgcaacccccactggctggggcattgccaccacctgtcaactcctttctgggactttcgctttccccctccctatcgccacggcagaactcatcgccgcctgccttgcccgctgctggacaggggctaggttgctgggcactgataattccgtggtgttgtcggggaagctgacgtccgactgtgccttctagttgccagccatctgttgtttgcccctcccccgtgccttccttgaccctggaaggtgccactcccactgtcctttcctaataaaatgaggaaattgcatcgcattgtctgagtaggtgtcattctattctggggggtggggtggggcaggacagcaagggggaggattgggaagacaatagcaggcatgctggggatgcggtgggctctatggagcgctggctagaattacctaccggcctccaccataccttcgatattcgcgcccactctcccattaatccgcacaagtggatgtgatgcgattgcccgctaagatagttaatcattaactacaaggaacccctagtgatggagttggccactccctctctgcgcgctcgctcgctcactgaggccgggcgaccaaaggtcgcccgacgcccgggctttgcccgggcggcctcagtgagcgagcgagcgcgc(配列番号23)
【0103】
いくつかの実施形態では、発現カセットは配列番号24を含む。いくつかの実施形態では、発現カセットは、配列番号24と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一な配列を含む。いくつかの実施形態では、発現カセットは、配列番号24と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を共有する配列を含む。
【0104】
>NGFをコードする配列を含む発現カセット
gcgcgctcgctcgctcactgaggccgcccgggcaaagcccgggcgtcgggcgacctttggtcgcccggcctcagtgagcgagcgagcgcgcagagagggagtggccaactccatcactaggggttccttgtagttaatgattaacggatctttacaaattcaagccaggtgatttcaacaaattttgctgacgatttaggcgcactatcccctaaactacaaattagaaaatagcgttccttgacactagtctagttattaatagtaatcaattacggggtcattagttcatagcccatatatggagttccgcgttacataacttacggtaaatggcccgcctggctgaccgcccaacgacccccgcccattgacgtcaataatgacgtatgttcccatagtaacgccaatagggactttccattgacgtcaatgggtggactatttacggtaaactgcccacttggcagtacatcaagtgtatcatatgccaagtacgccccctattgacgtcaatgacggtaaatggcccgcctggcattatgcccagtacatgaccttatgggactttcctacttggcagtacatctacgtattagtcatcgctattaccatggtgatgcggttttggcagtacatcaatgggcgtggatagcggtttgactcacggggatttccaagtctccaccccattgacgtcaatgggagtttgttttggcaccaaaatcaacgggactttccaaaatgtcgtaacaactccgccccattgacgcaaatgggcggtaggcgtgtacggtgggaggtctatataagcagagctctctggctaactagagaacccactgcttactggcttatcgaaataagctttctcaggggagatctcgtttagtgaaccgtcagatcctcactctcttccgcatcgctgtctgcgagggccagctgttgggctcgcggttgaggacaaactcttcgcggtctttccagtactcttggatcggaaacccgtcggcctccgaacggtactccgccaccgagggacctgagcgagtccgcatcgaccggatcggaaaacctctcgagaaaggcgtctaaccagtcacagtcgcaaggtaggctgagcaccgtggcgggcggcagcgggtggcggtcggggttgtttctggcggaggtgctgctgatgatgtaattaaagtaggcggtcttgagacggcggatggtcgaggtgaggtgtggcaggcttgagatccagctgttggggtgagtactccctctcaaaagcgggcattacttctgcgctaagattgtcagtttccaaaaacgaggaggatttgatattcacctggcccgatctggccatacacttgagtgacaatgacatccactttgcctttctctccacaggtgtccactcccaggtccaagtttaaacgccgccgccatgagcatgctgttttacaccctgatcaccgccttcctgatcggcatccaggccgagccccacagcgagagcaacgtgcccgctggacacacaatccctcaggcccactggacaaaactgcagcatagcctggatacagccctgagaagggccagaagcgcccctgccgccgccatcgccgctagagtggccggccagacaagaaatatcaccgtggacccccggctgttcaagaaaagaagactgcggtctcctagagtgctcttttcaacacagcctcctcgggaagccgctgatacccaggacctggacttcgaggtgggaggcgccgctcctttcaatagaacccacagatccaagagaagctctagccaccctatcttccaccggggcgagttcagcgtgtgcgacagcgtttctgtgtgggtgggagataagaccaccgcaaccgatatcaagggcaaggaagtgatggtgctgggcgaagtgaacatcaacaacagcgtctttaagcagtacttcttcgagacaaagtgccgggacccaaaccccgtggaca
gcggctgcagaggcattgactccaagcactggaactcctactgcaccacaacacacaccttcgtgaaggccctgaccatggacggcaaacaagctgcctggcggttcatcagaatcgacaccgcctgtgtctgtgtgctgagcagaaaggccgtgcgccgggcctagtcctgttaatcaacctctggattacaaaatttgtgaaagattgactgatattcttaactatgttgctccttttacgctgtgtggatatgctgctttaatgcctctgtatcatgctattgcttcccgtacggctttcgttttctcctccttgtataaatcctggttgctgtctctttatgaggagttgtggcccgttgtccgtcaacgtggcgtggtgtgctctgtgtttgctgacgcaacccccactggctggggcattgccaccacctgtcaactcctttctgggactttcgctttccccctccctatcgccacggcagaactcatcgccgcctgccttgcccgctgctggacaggggctaggttgctgggcactgataattccgtggtgttgtcggggaagctgacgtccgactgtgccttctagttgccagccatctgttgtttgcccctcccccgtgccttccttgaccctggaaggtgccactcccactgtcctttcctaataaaatgaggaaattgcatcgcattgtctgagtaggtgtcattctattctggggggtggggtggggcaggacagcaagggggaggattgggaagacaatagcaggcatgctggggatgcggtgggctctatggagcgctggctagaattacctaccggcctccaccataccttcgatattcgcgcccactctcccattaatccgcacaagtggatgtgatgcgattgcccgctaagatagttaatcattaactacaaggaacccctagtgatggagttggccactccctctctgcgcgctcgctcgctcactgaggccgggcgaccaaaggtcgcccgacgcccgggctttgcccgggcggcctcagtgagcgagcgagcgcgc(配列番号24)
【0105】
いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは配列番号25のヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、図14のプラスミドで示された発現カセットを含む。いくつかの実施形態では、発現カセットは、配列番号25と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一な配列を含む。いくつかの実施形態では、発現カセットは、配列番号25と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を共有する配列を含む。
【0106】
【表2】
【0107】
【表3】
【0108】
【表4】
【0109】
組み換えAAVビリオン
本発明のいくつかの態様では、対象となる発現カセットは、例えば、眼の障害を治療するために、神経栄養因子を対象の少なくとも1つの眼及び/又は涙腺に送達するために使用される。したがって、本発明のいくつかの実施形態では、対象の少なくとも1つの眼及び/又は涙腺おける神経栄養因子の発現を提供する組成物は、遺伝子送達ベクターであり、その遺伝子送達ベクターは本開示のポリヌクレオチドカセットを含む。
【0110】
いくつかの実施形態では、遺伝子送達ベクターはrAAVビリオンである。そのような実施形態では、対象となる発現カセットはAAV逆位末端反復配列を含む。いくつかの実施形態では、発現カセットは、は、機能性AAV逆末端反復(ITR)配列と5’末端及び3’末端で隣接している。「機能性AAV ITR配列」は、ITR配列がAAVビリオンのレスキュー、複製及びパッケージングのために意図されたように機能することを意味する。したがって、本開示の遺伝子送達ベクターに使用するためのAAV ITRは、野生型ヌクレオチド配列を有する必要はなく、ヌクレオチドの挿入、欠失若しくは置換によって改変されることもあり、又はAAV ITRは、いくつかのAAV血清型、例えばAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10のいずれかに由来することもある。いくつかの実施形態では、AAV ITRはAAV1に由来する。いくつかの実施形態では、AAV ITRはAAV2に由来する。いくつかの実施形態では、AAV ITRはAAV3に由来する。いくつかの実施形態では、AAV ITRはAAV4に由来する。いくつかの実施形態では、AAV ITRはAAV5に由来する。いくつかの実施形態では、AAV ITRはAAV6に由来する。いくつかの実施形態では、AAV ITRはAAV7に由来する。いくつかの実施形態では、AAV ITRはAAV9に由来する。いくつかの実施形態では、AAV ITRはAAV1に由来する。いくつかの実施形態では、AAV ITRはAAV10に由来する。ある特定のrAAVビリオンは、野生型のREP及びCAP遺伝子の全部又は一部が欠失しているが、機能的な隣接ITR配列は保持している。いくつかの実施形態では、5’ITRは配列番号19を含む。いくつかの実施形態では、5’ITRは、配列番号19と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100
%同一な配列を含む。いくつかの実施形態では、5’ITRは、配列番号19と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性をもつ配列を共有する。
【0111】
>例示的な5’ITR配列
gcgcgctcgctcgctcactgaggccgcccgggcaaagcccgggcgtcgggcgacctttggtcgcccggcctcagtgagcgagcgagcgcgcagagagggagtggccaactccatcactaggggttccttgtagttaatgattaac(配列番号19
【0112】
いくつかの実施形態では、5’ITRは配列番号20を含む。いくつかの実施形態では、5’ITRは、配列番号20と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一な配列を含む。いくつかの実施形態では、5’ITRは、配列番号20と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性をもつ配列を共有する。
【0113】
>例示的な3’ITR配列
gttaatcattaactacaaggaacccctagtgatggagttggccactccctctctgcgcgctcgctcgctcactgaggccgggcgaccaaaggtcgcccgacgcccgggctttgcccgggcggcctcagtgagcgagcgagcgcgc(配列番号20
【0114】
そのような実施形態では、rAAVビリオンは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10などを含むがこれらに限定されない、当該技術分野で公知の、又は将来的に発見されるアデノ随伴ウイルス血清型に由来するAAVカプシドを含む。例えば、AAVカプシドは、野生型(又は「ネイティブ」)カプシドであることができる。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、AAV1由来のAAVカプシドを含む。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、AAV2由来のAAVカプシドを含む。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、AAV3由来のAAVカプシドを含む。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、AAV4由来のAAVカプシドを含む。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、AAV5由来のAAVカプシドを含む。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、AAV6由来のAAVカプシドを含む。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、AAV7由来のAAVカプシドを含む。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、AAV8由来のAAVカプシドを含む。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、AAV9由来のAAVカプシドを含む。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、AAV10由来のAAVカプシドを含む。特に興味深いAAVカプシドとしては、AAV2、AAV5、AAV8、及びAAV9が挙げられる(表3)。
【0115】
しかし、ITRと同様に、カプシドは野生型ヌクレオチド配列を有する必要はなく、むしろ、カプシドが眼及び/又は涙腺の細胞に形質導入できる限り、VP1、VP2又はVP3配列におけるヌクレオチドの挿入、欠失又は置換によって変えることができる。別の言い方をすれば、AAVカプシドはバリアントAAVカプシドであることができる。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、あるAAVのカプシド(cap)遺伝子と、異なるAAVのrep遺伝子及びITRを使用することによって作成された「偽型の」AAVであり、例えば、AAV2のrepと、AAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、又はAAV9のcapを、AAV2に基づくベクターを含有するプラスミドと一緒に使用することによって作成された偽型AAV2がある。例えば、rAAVビリオンは、rAAV2/1、rAAV2/3、rAAV2/4、rAAV2/5、rAAV2/6、rAAV2/7、rAAV2/8、rAAV2/9などであることができる。いくつかの実施形態では、rAAVはrAAV2/1である。いくつかの実施形態では、rAAVはrAAV2/3である。いくつかの実施形態では、rAAVは
rAAV2/4である。いくつかの実施形態では、rAAVはrAAV2/5である。いくつかの実施形態では、rAAVはrAAV2/6である。いくつかの実施形態では、rAAVはrAAV2/7である。いくつかの実施形態では、rAAVはrAAV2/8である。いくつかの実施形態では、rAAVはrAAV2/9である。
【0116】
いくつかの実施態様では、rAAVビリオンは独立してそのゲノムをさらに複製し、パッケージすることができないという点で、rAAVは複製欠損である。例えば、眼及び/又は涙腺がrAAVビリオンで形質導入されたとき、遺伝子は形質導入された眼及び/又は涙腺で発現するが、形質導入された眼及び/又は涙腺はAAV rep及びcap遺伝子並びにアクセサリー機能遺伝子(accessory function gene)を欠いているという事実により、rAAVは複製することができない。
【0117】
本発明に記載の発現カセットを封入する本開示のrAAVビリオンは、ヘルパーフリー作製を用いて作製することができる。rAAVは複製欠損ウイルスであり、通常、感染性rAAVビリオンをパッケージングするためには、宿主細胞内にアデノウイルスなどの生きたヘルパーウイルス由来の構成要素が必要である。rAAVヘルパーフリー作製システムは、生きたヘルパーウイルスを使用せずに感染性rAAVビリオンの作製を可能にする。ヘルパーフリーシステムでは、宿主パッケージング細胞株は3つのプラスミドでトランスフェクションされる。第1のプラスミドは、rAAVビリオンのパッケージングに必要なアデノウイルス遺伝子産物(すなわち、E2A、E4、及びVA RNA遺伝子)を含有する。第2のプラスミドは、必要なAAV遺伝子(すなわち、REP及びCAP遺伝子)を含有する。第3のプラスミドは、目的のタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列及びITRと隣接したプロモーターを含有する。宿主パッケージング細胞株は、例えば、AAV-293宿主細胞であることができる。好適な宿主細胞は、プラスミドによって供給されない、感染性rAAVビリオンをパッケージングするのに必要な追加の構成要素を含有する。いくつかの実施形態では、CAP遺伝子は、例えば、本明細書に記載のAAVカプシドタンパク質をコードすることができる。いくつかの実施形態では、プロモーターは本明細書に記載のプロモーター配列である。いくつかの実施形態では、プロモーター配列はCAG配列である。いくつかの実施形態では、目的のタンパク質は神経栄養因子である。いくつかの実施形態では、神経栄養因子はNGFである。いくつかの実施形態では、神経栄養因子はGDNFである。
【0118】
眼及び/又は涙腺に感染することが示されているAAV血清型としては、AAV2、AAV5、AAV5w8、及びAAV9が挙げられる(Rocha et al.、前出(supra))。いくつかの実施形態では、眼及び/又は涙腺に感染させるために使用されるAAV血清型はAAV2である。いくつかの実施形態では、AAVカプシドタンパク質は配列番号6を含む。いくつかの実施形態では、AAVカプシドタンパク質は、配列番号6と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一な配列を含む。いくつかの実施形態では、AAVカプシドタンパク質は、AAV2 VP1タンパク質(配列番号6)と少なくとも95%、98%、又は100%の同一性を共有する。いくつかの実施形態では、AAV2 VP1タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号7を含む。いくつかの実施形態では、AAV2 VP1タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号7と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一な配列を含む。いくつかの実施形態では、AAV2 VP1タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号7と少なくとも95%、98%、又は100%の同一性を共有する。いくつかの実施形態では、AAVカプシドタンパク質は配列番号8を含む。いくつかの実施形態では、AAVカプシドタンパク質は、配列番号8と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一な配列を含む。いくつかの実施形態では、AAVカプシドタンパク質は、AAV2 VP3タンパク質(配列番号8)と少なくとも95%、98%、又は100%の同一性を共有する。
いくつかの実施形態では、AAV2 VP3タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号9を含む。いくつかの実施形態では、AAVカプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号9と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一な配列を含む。いくつかの実施形態では、AAV2 VP3タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号9と少なくとも95%、98%、又は100%の同一性を共有する。いくつかの実施形態では、眼及び/又は涙腺に感染させるために使用されるAAV血清型はAAV5である。いくつかの実施形態では、AAVカプシドタンパク質は配列番号10を含む。いくつかの実施形態では、AAVカプシドタンパク質は、配列番号10と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一な配列を含む。いくつかの実施形態では、AAVカプシドタンパク質は、AAV5カプシドタンパク質(配列番号10)と少なくとも95%、98%、又は100%の同一性を共有する。いくつかの実施形態では、AAV5カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号11を含む。いくつかの実施形態では、AAVカプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号11と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一な配列を含む。いくつかの実施形態では、AAV5カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号11と少なくとも95%、98%、又は100%の同一性を共有する。いくつかの実施形態では、眼及び/又は涙腺に感染させるために使用されるAAV血清型はAAV8である。いくつかの実施形態では、カプシドタンパク質は配列番号12を含む。いくつかの実施形態では、AAVカプシドタンパク質は、配列番号12と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一な配列を含む。いくつかの実施形態では、AAVカプシドタンパク質は、AAV8カプシドタンパク質(配列番号12)と少なくとも95%、98%、又は100%の同一性を共有する。いくつかの実施形態では、AAV8カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号13を含む。いくつかの実施形態では、AAVカプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号13と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一な配列を含む。いくつかの実施形態では、AAV8カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号13と少なくとも95%、98%、又は100%の同一性を共有する。いくつかの実施形態では、眼及び/又は涙腺に感染させるために使用されるAAV血清型はAAV9である。いくつかの実施形態では、AAVカプシドタンパク質は配列番号14を含む。いくつかの実施形態では、AAVカプシドタンパク質は、配列番号14と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一な配列を含む。いくつかの実施形態では、AAVカプシドタンパク質は、AAV9カプシドタンパク質(配列番号14)と少なくとも95%、98%、又は100%の同一性を共有する。いくつかの実施形態では、AAV9カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号15を含む。いくつかの実施形態では、AAVカプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号15と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一な配列を含む。いくつかの実施形態では、AAV9カプシドタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号15と少なくとも95%、98%、又は100%の同一性を共有する。
【0119】
【表5】
【0120】
【表6】
【0121】
【表7】
【0122】
【表8】
【0123】
【表9】
【0124】
【表10】
【0125】
【表11】
【0126】
例示的なrAAV
いくつかの実施形態では、rAAVはAAVカプシドを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のrAAVは、神経栄養因子をコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含む。いくつかの実施形態では、rAAVは、プロモーターに動作可能に連結された神経栄養因子をコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含む。いくつかの実施形態では、rAAVは、AAVカプシド及びプロモーターに動作可能に連結された神経栄養因子をコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含む。いくつかの実施形態では、rAAVは、AAVカプシド及びCAGプロモーターに動作可能に連結された神経栄養因子をコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含む。
【0127】
いくつかの実施形態では、rAAVは、AAVカプシド及びプロモーターに動作可能に連結されたNGFをコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含む。いくつかの実施形態では、rAAVは、AAVカプシド、及び配列番号2と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を共有する配列を含むNGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、そのポリヌクレオチドがプロモーターに動作可能に連結された発現カセットを含む。いくつかの実施形態では、rAAVは、AAVカプシド、及び配列番号17と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも8
9%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を共有する配列を含むNGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、そのポリヌクレオチドがプロモーターに動作可能に連結された発現カセットを含む。いくつかの実施形態では、rAAVは、AAVカプシド、及び配列番号1と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を共有するアミノ酸配列を含むNGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、そのポリヌクレオチドがプロモーターに動作可能に連結された発現カセットを含む。いくつかの実施形態では、rAAVは、AAVカプシド、及びCAGプロモーターに動作可能に連結されたNGFをコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含む。
【0128】
いくつかの実施形態では、rAAVは、AAVカプシド、及びプロモーターに動作可能に連結されたGDNFをコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含む。いくつかの実施形態では、rAAVは、AAVカプシド、及び配列番号4と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を共有する配列を含むGDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、そのポリヌクレオチドがプロモーターに動作可能に連結された発現カセットを含む。いくつかの実施形態では、rAAVは、AAVカプシド、及び配列番号18と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を共有する配列を含むGDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、そのポリヌクレオチドがプロモーターに動作可能に連結された発現カセットを含む。いくつかの実施形態では、rAAVは、AAVカプシド、及び配列番号3と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を共有するアミノ酸配列を含むGDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、そのポリヌクレオチドがプロモーターに動作可能に連結された発現カセットを含む。いくつかの実施形態では、rAAVは、AAVカプシド、及びCAGプロモーターに動作可能に連結されたGDNFをコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含む。
【0129】
いくつかの実施形態では、rAAVは、AAV2カプシド及びプロモーターに動作可能に連結されたNGFをコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含む。いくつかの実施形態では、rAAVは、AAV2カプシド、及び配列番号2と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を共有する配列を含むNGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、そのポリヌクレオチドがプロモーターに動作可能に連結された発現カセットを含む。いくつかの実施形態では、rAAVは、AAV2カプシド、及び配列番号17と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少な
くとも98%、又は少なくとも99%の同一性を共有する配列を含むNGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、そのポリヌクレオチドがプロモーターに動作可能に連結された発現カセットを含む。いくつかの実施形態では、rAAVは、AAV2カプシド、及び配列番号1と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を共有するアミノ酸配列を含むNGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、そのポリヌクレオチドがプロモーターに動作可能に連結された発現カセットを含む。
【0130】
いくつかの実施形態では、rAAVは、AAV2カプシド、及びプロモーターに動作可能に連結されたGDNFをコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含む。いくつかの実施形態では、rAAVは、AAV2カプシド、及び配列番号4と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を共有する配列を含むGDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、そのポリヌクレオチドがプロモーターに動作可能に連結された発現カセットを含む。いくつかの実施形態では、rAAVは、AAV2カプシド、及び配列番号18と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を共有する配列を含むGDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、そのポリヌクレオチドがプロモーターに動作可能に連結された発現カセットを含む。いくつかの実施形態では、rAAVは、AAV2カプシド、及び配列番号3と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を共有するアミノ酸配列を含むGDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、そのポリヌクレオチドがプロモーターに動作可能に連結された発現カセットを含む。
【0131】
いくつかの実施形態では、rAAVは、AAV5カプシド及びプロモーターに動作可能に連結されたNGFをコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含む。いくつかの実施形態では、rAAVは、AAV5カプシド、及び配列番号2と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を共有する配列を含むNGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、そのポリヌクレオチドがプロモーターに動作可能に連結された発現カセットを含む。いくつかの実施形態では、rAAVは、AAV5カプシド、及び配列番号17と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を共有する配列を含むNGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、そのポリヌクレオチドがプロモーターに動作可能に連結された発現カセットを含む。いくつかの実施形態では、rAAVは、AAV5カプシド、及び配列番号1と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少な
くとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を共有するアミノ酸配列を含むNGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、そのポリヌクレオチドがプロモーターに動作可能に連結された発現カセットを含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、rAAVは、AAV5カプシド、及びプロモーターに動作可能に連結されたGDNFをコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含む。いくつかの実施形態では、rAAVは、AAV5カプシド、及び配列番号4と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を共有する配列を含むGDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、そのポリヌクレオチドがプロモーターに動作可能に連結された発現カセットを含む。いくつかの実施形態では、rAAVは、AAV5カプシド、及び配列番号18と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を共有する配列を含むGDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、そのポリヌクレオチドがプロモーターに動作可能に連結された発現カセットを含む。いくつかの実施形態では、rAAVは、AAV5カプシド、及び配列番号3と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を共有するアミノ酸配列を含むGDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、そのポリヌクレオチドがプロモーターに動作可能に連結された発現カセットを含む。
【0133】
いくつかの実施形態では、rAAVは、AAV9カプシド及びプロモーターに動作可能に連結されたNGFをコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含む。いくつかの実施形態では、rAAVは、AAV9カプシド、及び配列番号2と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を共有する配列を含むNGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、そのポリヌクレオチドがプロモーターに動作可能に連結された発現カセットを含む。いくつかの実施形態では、rAAVは、AAV9カプシド、及び配列番号17と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を共有する配列を含むNGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、そのポリヌクレオチドがプロモーターに動作可能に連結された発現カセットを含む。いくつかの実施形態では、rAAVは、AAV9カプシド、及び配列番号1と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を共有するアミノ酸配列を含むNGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、そのポリヌクレオチドがプロモーターに動作可能に連結された発現カセットを含む。
【0134】
いくつかの実施形態では、rAAVは、AAV9カプシド、及びプロモーターに動作可能に連結されたGDNFをコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含む。いく
つかの実施形態では、rAAVは、AAV9カプシド、及び配列番号4と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を共有する配列を含むGDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、そのポリヌクレオチドがプロモーターに動作可能に連結された発現カセットを含む。いくつかの実施形態では、rAAVは、AAV9カプシド、及び配列番号18と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を共有する配列を含むGDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、そのポリヌクレオチドがプロモーターに動作可能に連結された発現カセットを含む。いくつかの実施形態では、rAAVは、AAV9カプシド、及び配列番号3と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の同一性を共有するアミノ酸配列を含むGDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、そのポリヌクレオチドがプロモーターに動作可能に連結された発現カセットを含む。
【0135】
いくつかの実施形態では、rAAVは、AAVカプシド、及び配列番号23を含むポリヌクレオチド配列を含む発現カセットを含む。
【0136】
いくつかの実施形態では、rAAVは、AAVカプシド、及び配列番号24を含むポリヌクレオチド配列を含む発現カセットを含む。
【0137】
いくつかの実施形態では、rAAVは、AAVカプシド、及び配列番号25を含むポリヌクレオチド配列を含む発現カセットを含む。
【0138】
使用の方法
本明細書に記載の方法及び組成物は、眼疾患を治療し、眼疾患の関連症状を軽減することができる。本明細書において、「治療(treatment)」、「治療する(treating)」などの用語は、一般に、所望の薬理学的効果及び/又は生理学的効果を得ることを意味する。その効果は、疾患若しくはその症状を完全に若しくは部分的に防ぐ、例えば対象において疾患若しくはその症状が発生する可能性を減らすという点では予防的であるうる、かつ/又は疾患及び/若しくは疾患に起因する副作用の部分的若しくは完全な治癒という点では治療的でありうる。本明細書において使用される「治療」は、哺乳動物における疾患のいずれの治療も包含とし、次を含む:(a)疾患の進行を抑制すること;(b)疾患の1つ又は複数の症状を緩和、軽減する、又はその増加を軽減すること;(c)疾患の1つ又は複数の徴候を緩和、軽減、又はその増加を軽減すること;(d)疾患の退行をもたらすこと。治療薬は、疾患又は傷害の発症前、発症中又は発症後に投与することができる。治療が患者の望ましくない臨床症状を安定化又は軽減する進行中の疾患の治療は、特に関心が高い。そのような治療は、患部組織の機能が完全に失われる前に行われることが望ましい。対象となる療法は、望ましくは疾患の症候期の間、場合によっては疾患の症候期後に投与されることになる。
【0139】
本明細書において使用される場合、「投与する(administer)」、「投与する(administering)」、「投与(administration)」などは、薬理学的に有用である(例えば、対象の疾患、障害、又は病態を治療する)方法で対象に物質(例えば、rAAVビリオン)を与えることを意味する。
【0140】
本開示の方法及び組成物は、眼疾患をもつ対象の眼表面を補助(support)、維持、及び/又は修復することができる。眼疾患は、例えば、神経栄養性角膜炎、眼表面の化学熱傷、角膜創傷、遷延性上皮欠損、ドライアイ疾患、三叉神経及び/又は眼の単純ヘルペスウイルス感染症、三叉神経及び/又は眼の水痘帯状疱疹ウイルス感染症、並びに角膜神経の糖尿病合併症でありうる。いくつかの実施形態では、眼疾患は、神経栄養性角膜炎、眼表面の化学熱傷、角膜創傷、角膜潰瘍、遷延性上皮欠損、ドライアイ疾患、三叉神経及び/又は眼の単純ヘルペスウイルス感染症、三叉神経及び/又は眼の水痘帯状疱疹ウイルス感染症、又は角膜神経の糖尿病合併症である。いくつかの実施形態では、眼疾患は神経栄養性角膜炎である。いくつかの実施形態では、眼疾患は眼表面の化学熱傷である。いくつかの実施形態では、眼疾患は角膜創傷である。いくつかの実施形態では、眼疾患は角膜潰瘍である。いくつかの実施形態では、眼疾患は遷延性上皮欠損である。いくつかの実施形態では、眼疾患はドライアイ疾患である。いくつかの実施形態では、眼疾患は、三叉神経及び/又は眼の単純ヘルペスウイルス感染症である。いくつかの実施形態では、眼疾患は、三叉神経及び/又は眼の水痘帯状疱疹ウイルス感染症である。いくつかの実施形態では、眼疾患は角膜神経の糖尿病合併症である。
【0141】
神経栄養性角膜炎、又は神経栄養性角膜症は、角膜の上皮角膜症、潰瘍形成、及び穿孔を呈する。神経栄養性角膜炎は、角膜神経支配の障害に起因する角膜上皮の変性疾患である。症状としては、角膜知覚の低下又は完全な消失が挙げられる。神経栄養性角膜炎は、本明細書に記載の眼の検査、下眼瞼結膜のローズベンガル染色の組み合わせの観察、涙液粘度、涙液破壊時間、フルオレセイン染色、非治癒角膜欠損の観察、デスメ膜内の腫脹及び浮腫状実質、角膜潰瘍、角膜穿孔、並びに角膜実質融解のうちの1つ又は複数を用いて、診断及び病期分類される(非特許文献11)。
【0142】
いくつかの実施形態では、本開示は、眼表面の化学熱傷をもつ対象の眼表面を維持及び/又は修復する方法を提供する。眼表面の化学熱傷は、典型的に、突然に発症する激痛、導涙性流涙(epiphoria)、及び眼瞼痙攣として現れる。眼表面の化学熱傷は眼科精密検査によって診断することができる。傷害の急性の眼周囲徴候としては、眼窩周囲の浮腫と紅斑、脱上皮化した(deepithelialized)皮膚、並びに睫毛及び眉の脱毛が挙げられる。その他の徴候としては、角結膜上皮欠損、化学反応、結膜炎症、角膜縁虚血、角膜混濁、無菌性潰瘍、浮腫、及び時折の穿孔が挙げられる。高眼圧も症状の一つであり、線維柱帯の損傷及び/又は炎症の結果として生じうる(非特許文献12)。
【0143】
いくつかの実施形態では、本開示は、角膜創傷をもつ対象の眼表面を維持及び/又は修復する方法を提供する。角膜創傷は典型的に、眼の疼痛、流涙、光過敏(sensitivity to light)、及び異物感という症状を呈する。診断は、眼科検査、視力低下評価、角膜浸潤又は潰瘍の同定、前房蓄膿又は前房出血の同定、穿通性眼損傷の所見、瞳孔不整の同定、及び眼内容物の拡張のうちの1つ又は複数を用いて行われる。診断は、眼科検査、視力低下評価、角膜浸潤又は潰瘍の同定、前房蓄膿又は前房出血の同定、穿通性眼損傷の所見、いずれかの眼構造内の異物の有無、瞳孔不整の同定、及び眼内容物の拡張のうちの1つ又は複数を用いて行われる。さらに、フルオレセイン染色を用いて、なんらかの角膜擦過傷を同定するのに役立てることができる(非特許文献13)。
【0144】
いくつかの実施形態では、本開示は、角膜潰瘍をもつ対象の眼表面を維持及び/又は修復する方法を提供する。角膜潰瘍は、眼表面に損傷を負った後、通常の2週間以内に角膜上皮が治癒しない場合に起こる。診断は、本明細書に記載の眼科検査を用いて行われる。
【0145】
遷延性上皮欠損は、眼表面に損傷を負った後、通常の2週間以内に角膜上皮が治癒しな
い場合に起こる。診断は、本明細書に記載の眼科検査を用いて行われる。
【0146】
いくつかの実施形態では、本開示は、ドライアイ疾患をもつ対象の眼表面を維持及び/又は修復する方法を提供する。ドライアイ疾患は、霧視、眼刺激、ゴロゴロ感又は異物感、灼熱感、流涙、羞明、刺すような痛み(stinging)、又は間欠的な鋭い痛みを呈する。ドライアイ疾患は、本明細書に記載されているような眼の検査、涙液産生を評価するためのシルマー試験又は涙液機能指数分析(function index analysis)、角膜上皮欠損を同定するためのフルオレセイン染色、ローズベンガル染色、リサミングリーン染色、涙液破壊時間、実用視力検査(functional visual acuity test)、及び涙液メニスカス評価のうちの1つ又は複数を用いて診断することができる(非特許文献14)。
【0147】
いくつかの実施形態では、本開示は、単純ヘルペスウイルス感染症をもつ対象の眼表面を維持及び/又は修復する方法を提供する。三叉神経及び/又は眼の単純ヘルペスウイルス感染症は、単純ヘルペス角膜炎としても知られ、充血、眼脂、涙目、炎症、刺激、疼痛、羞明、及び/又は点状病変を形成する粗い粒状斑点(coarse granular
spots)を含む症状を呈する。診断は、本明細書に記載の眼科検査、細隙灯検査、リサミングリーン染色、ローズベンガル染色、PCR、免疫蛍光抗体アッセイ、及びELISAアッセイのうちの1つ又は複数を用いて行われる(非特許文献15)。
【0148】
いくつかの実施形態では、本開示は、水痘帯状疱疹ウイルス感染症をもつ対象の眼表面を維持及び/又は修復する方法を提供する。三叉神経の水痘帯状疱疹ウイルス感染症(眼部帯状疱疹とも)は、様々な程度の視力低下、疼痛、及び光過敏を伴う角膜合併症を呈する。診断には、細隙灯検査、ローズベンガル染色、及びフルオレセイン染色を用いた、点状上皮角膜炎、樹状突起斑の増加(elevated dendritic plaques)、粒状浸潤、又は他の異常の同定が含まれる(非特許文献16)。
【0149】
いくつかの実施形態では、本開示は、角膜神経の糖尿病合併症をもつ対象の眼表面を維持及び/又は修復する方法を提供する。角膜神経の糖尿病合併症は、角膜厚の増加、上皮欠損、上皮脆弱性及び再発性びらん、潰瘍、浮腫、表在性点状角膜炎、創傷修復の遅延及び不全、内皮変化、低涙液分泌、ドライアイ症候群、なあ日に角膜知覚の低下などの角膜変化を呈する(非特許文献17)。
【0150】
本明細書において、「対象」という用語は、類人猿及びヒトを含む、ヒト及びヒト以外の霊長類;哺乳類のスポーツ動物(sport animals)(例えば、ウマ);哺乳類の農場動物(例えば、ヒツジ、ヤギなど);哺乳類のペット(イヌ、ネコなど);並びにげっ歯類(例えば、マウス、ラットなど)を含むが、これらに限定されない哺乳動物を意味する。
【0151】
対象は、例えば、本明細書に記載の症状又は眼の障害のいずれかを有しうる。
【0152】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法により、結果として、眼疾患の1つ又は複数の症状は、rAAVビリオンの投与前の眼疾患の症状と比較して軽減される。本明細書において使用される場合、「症状」には、本明細書に記載のものを含め、所与の眼疾患に関連する診断基準又は症状の任意のものが含まれる。いくつかの実施形態では、症状は、本開示の組成物及びrAAVの投与後に軽減されうる。いくつかの実施形態では、眼疾患の1つ又は複数の症状は、未治療対照の対象における眼疾患の症状と比較して軽減される。いくつかの実施形態では、眼疾患の1つ又は複数の症状は、対側眼における眼疾患の症状と比較して軽減される。「対側眼」とは、本開示による組成物で治療された眼とは反対側にある対象の眼を意味する。対象が、両側性疾患に罹患している限り、又はモデル
動物の場合には両眼の治療に至る実験プロトコールに供されている限り、対側眼は治療の対照として使用することができる。
【0153】
いくつかの実施形態では、ヒトNGFの発現は、未治療対象、又は治療対象の対側眼におけるヒトNGFの発現と比較して5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%増加する。いくつかの実施形態では、ヒトNGFの発現は、未治療対象、又は治療対象の対側眼におけるヒトNGFの発現と比較して1倍、2倍、3倍、4倍、又は5倍、6倍、7倍、8倍、又は9倍増加しうる。
【0154】
いくつかの実施形態では、ヒトNGFの発現は、未治療対象、又は治療対象の対側眼におけるヒトNGFの発現と比較して約1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、1週間、2週間、3週間、4週間、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、又は1年間増加する。
【0155】
本明細書において使用される場合、「約(approximately)」又は「約(about)」は、1つ又は複数の対象となる値(values of interest)に適用されるとき、記載の参照値に類似した値を意味する。ある特定の実施形態では、「約」は、特に記載がない限り、又は文脈から明らかな場合を除き、記載の参照値のいずれかの方向(より大きい又はより小さい)の25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%又はより小さい範囲内に収まる値の範囲を意味する(そのような数が可能な値の100%を超えることになる場合を除く)。
【0156】
いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載のヒトNGFをコードするヌクレオチドを含むrAAVを投与され、その対象においてヒトNGFの発現は、未治療対象、又は治療対象の対側眼におけるヒトNGFの発現と比較して増加する。
【0157】
いくつかの実施形態では、本開示は、眼の疾患又は障害をもつ対象を治療する方法であって、その対象に、ヒトNGFタンパク質をコードするヌクレオチドを含むrAAVを投与することを含み、その対象においてヒトNGFの発現が、未治療対象、又は治療対象の対側眼におけるヒトNGFの発現と比較して増加する方法を提供する。
【0158】
いくつかの実施形態では、ヒトGDNFの発現は、未治療対象、又は治療対象の対側眼におけるヒトGDNFの発現と比較して5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%増加する。いくつかの実施形態では、ヒトGDNFの発現は、未治療対象、又は治療対象の対側眼におけるヒトGDNFの発現と比較して1倍、2倍、3倍、4倍、又は5倍、6倍、7倍、8倍、又は9倍増加しうる。
【0159】
いくつかの実施形態では、ヒトGDNFの発現は、未治療対象、又は治療対象の対側眼におけるヒトGDNFの発現と比較して約1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、1週間、2週間、3週間、4週間、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、又は1年間増加する。
【0160】
いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に記載のヒトGDNFをコードするヌクレオチドを含むrAAVを投与され、その対象においてヒトGDNFの発現は、未治療対象、又は治療対象の対側眼におけるヒトGDNFの発現と比較して増加する。
【0161】
いくつかの実施形態では、本開示は、眼の疾患又は障害をもつ対象を治療する方法であ
って、その対象にヒトGDNFタンパク質をコードするヌクレオチドを含むrAAVを投与することを含み、その対象においてヒトGDNFの発現が、未治療対象、又は治療対象の対側眼におけるヒトGDNFの発現と比較して増加する方法を提供する。
【0162】
いくつかの実施形態では、本開示は、それを必要とする対象における眼疾患を治療する方法に使用するためのrAAVビリオンであって、その方法は、対象の少なくとも1つの眼又は対象の眼の少なくとも1つの涙腺に、組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンを投与することを含み、AAVカプシド及びプロモーターに動作可能に連結された神経栄養因子をコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含むrAAVビリオンを提供する。いくつかの実施形態では、使用のためのrAAVビリオンは、対象の涙腺に投与される。いくつかの実施形態では、使用のためのrAAVビリオンは、NGFタンパク質をコードする発現カセットを含む。いくつかの実施形態では、使用のためのrAAVビリオンは、GDNFタンパク質をコードする発現カセットを含む。
【0163】
いくつかの実施形態では、本開示は、眼の疾患、障害、又は病態をもつ対象の治療に使用するための、又は使用するのに適合可能なrAAVビリオンを提供する。いくつかの実施形態では、使用するための、又は使用するのに適合可能なrAAVビリオンは、AAVカプシド及びプロモーターに動作可能に連結された神経栄養因子をコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含む。
【0164】
いくつかの実施形態では、本開示は、それを必要とする対象における眼疾患を治療する方法に使用するためのrAAVビリオンであって、その方法が、本明細書に記載の組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンを、対象の少なくとも1つの眼又は対象の目・眼の少なくとも1つの涙腺に投与することを含むrAAVビリオンを提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、それを必要とする対象における眼疾患を治療する方法に使用するためのrAAVビリオンであって、その方法が、配列番号25の核酸配列を含む発現カセットを含む組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンを、対象の少なくとも1つの眼又は対象の目・眼の少なくとも1つの涙腺に投与することを含むrAAVビリオンを提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、それを必要とする対象における眼疾患を治療する方法に使用するためのrAAVビリオンであって、その方法が、配列番号24の核酸配列を含む発現カセットを含む組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンを、対象の少なくとも1つの眼又は対象の目・眼の少なくとも1つの涙腺に投与することを含むrAAVビリオンを提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、それを必要とする対象における眼疾患を治療する方法に使用するためのrAAVビリオンであって、その方法が、配列番号23の核酸配列を含む発現カセットを含む組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンを、対象の少なくとも1つの眼又は対象の目・眼の少なくとも1つの涙腺に投与することを含むrAAVビリオンを提供する。
【0165】
投与のモード
いくつかの態様では、本開示は、対象の眼又は対象の眼の涙腺に、rAAVビリオンを投与することを含む方法であって、rAAVビリオンが、AAVカプシド及びプロモーターに動作可能に連結された神経栄養因子をコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含む方法を提供する。
【0166】
上述のように、涙液機能単位は、主涙腺及び副涙腺、眼表面、並びに相互に接続している神経支配から構成される。各眼では、主涙腺は、前頭骨の涙腺窩内の眼窩において上側頭部に位置する。付属腺は、ウォルフリング腺及びクラウス腺として知られ、眼瞼に位置する。上眼瞼には、約2~5つのウォルフリング腺及び約40個のクラウス腺がある。下眼瞼には、約6~8つのクラウス腺がある。涙液機能単位の具体的な位置及び解剖学的構造はよく知られている(非特許文献18)。まとめると、涙腺は、涙管を通して眼表面に
涙液層を分泌する。涙腺はまた、トランスフォーミング増殖因子-βやレチノールなど、トランスフォーミング増殖因子-βやレチノールなど、角膜再生及び透明性促進に必要なタンパク質及び産物を発現し、涙液層に分泌する(非特許文献18;非特許文献19)。
【0167】
ウイルスベクターの涙腺への投与は、眼表面への局所投与、涙腺への直接注射、及び/又は涙腺への局所投与によって達成することができる。いくつかの実施形態では、rAAVは局所投与によって涙腺に投与される。いくつかの実施形態では、rAAVは直接注射によって涙腺に投与される。涙腺は、手術又は眼瞼のマニピュレーション(manipulation)によってアクセスされる場合がある。眼瞼をマニピュレーションすることにより(例えば、ウイルスベクターを含む医薬組成物で組織を洗浄することによって)、投与のための組織へのアクセスが局所的に得られる。涙腺への直接注射は、涙腺の上の皮膚を貫通することによって(図2A)、又は眼瞼をマニピュレーションして涙腺にアクセスすることによって(図2B)行うことができる。いくつかの実施形態では、rAAVは、図2Aに示されるように、直接注射によって涙腺に投与される。いくつかの実施形態では、rAAVは、図2Bに示されるように、眼瞼をマニピュレーションすることによって涙腺に投与される。
【0168】
いくつかの実施形態では、眼及び/又は涙腺内の細胞は、rAAVビリオンで形質導入される。眼及び/又は涙腺内の細胞は、限定されないが、腺房細胞、導管細胞、及び/又は筋上皮細胞である。いくつかの実施形態では、腺房細胞、導管細胞、及び筋上皮細胞は、rAAVビリオンで形質導入される。いくつかの実施形態では、腺房細胞はrAAVビリオンで形質導入される。いくつかの実施形態では、導管細胞はrAAVビリオンで形質導入される。いくつかの実施形態では、筋上皮細胞はrAAVビリオンで形質導入される。いくつかの実施形態では、眼及び/又は涙腺内の形質導入細胞は、治療有効量の神経栄養因子を、対象の涙液層及び任意選択で眼表面に発現する。いくつかの実施形態では、眼及び/又は涙腺内の形質導入細胞は、有効量の神経栄養因子を、対象の涙液層及び任意選択で眼表面に発現する。本明細書において使用される場合、「有効量」は、本明細書に記載の眼疾患の症状及び/又は徴候を軽減するのに十分な、本明細書に記載のrAAV、治療、又は組成物の量又は投与量を意味する。本明細書において使用される「量」という用語は、絶対量(例えば、タンパク質若しくはrAAV粒子の絶対量)又は濃度(例えば、溶液中のタンパク質の濃度)を意味し、所与の例で言及される量が絶対量、濃度、又はその両方を意味するかどうかは、本明細書に示された文脈に基づいて当業者には明らかであろう。
【0169】
導入遺伝子を涙液層に発現させるためのrAAVビリオンの眼及び/又は涙腺への送達は、生体内で実証されている。1つの例では、マウスの主涙腺は、血清型AAV2、AAV4、AAV5、AAV5w8、AAV x5、AAV9、AAV12、及びウシAAV(BAAV)をもつ、ルシフェラーゼ導入遺伝子をコードするrAAVビリオンによる直接注射を受けた。AAV9、AAV5w8、AAV5、及びAAV2はそれぞれ、涙腺の涙管細胞及び腺房細胞を形質導入することができる(非特許文献6)。
【0170】
いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは対象の涙腺に投与される。いくつかの実施形態では、涙腺は主涙腺である。いくつかの実施形態では、涙腺は、対象のウォルフリング腺又はクラウス腺のいずれか1つである。
【0171】
本開示の組成物及びrAAVビリオンは、任意の好適な方法によって対象の涙腺に投与することができる。例えば、対象となる組成物は、直接注射によって主涙腺又は副涙腺に投与することができる。
【0172】
ヒト対象における涙腺へのアクセスは、例えば、上眼瞼を手動で持ち上げて(elev
ating)涙腺の眼瞼葉(palpebral lobe)を露出させ、例えば30G針を付けた注射器を使用して治療薬を送達することによって達成することができる。
【0173】
本開示のウイルスベクターは一般に、医薬組成物として対象に送達される。医薬組成物は、薬学的に許容可能な溶媒(例えば水など)及び1つ又は複数の賦形剤を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、ほぼ中性のpH(pH5、6、7、8、又は9)のバッファーを含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、リン酸緩衝生理食塩水(例えば、pHが約7のPBS)を含む。医薬組成物は、薬学的に許容される塩を含むことができる。塩の濃度は、医薬組成物が標的組織に対して等張又はほぼ等張になるように選択することができる。
【0174】
様々な実施形態では、本開示の医薬組成物は、約1×10ゲノムコピー/ミリリットル(GC/mL)、約5×10GC/mL、約1×10GC/mL、約5×10GC/mL、約1×1010GC/mL、約5×1010GC/mL、約1×1011GC/mL、約5×1011GC/mL、約1×1012GC/mL、約5×1012GC/mL、約5×1013GC/mL、又は約1×1014GC/mLのウイルスベクター(例えばrAAVビリオン)を含む。様々な実施形態では、本開示の医薬組成物は、約1×10ゲノムコピー/ミリリットル(GC/mL)、約5×10GC/mL~約1×10GC/mL、約1×10GC/mL~約5×10GC/mL、約5×10GC/mL~約1×1010GC/mL、約1×1010GC/mL~約5×1010GC/mL、約5×1010GC/mL~約1×1011GC/mL、約1×1011GC/mL~約5×1011GC/mL、約5×1011GC/mL~約1×1012GC/mL、約1×1012GC/mL~約5×1012GC/mL、約5×1012GC/mL~約5×1013GC/mL、又は約5×1013GC/mL~約1×1014GC/mLのウイルスベクター(例えばrAAVビリオン)を含む。様々なさらなる実施形態では、本開示の医薬組成物は、約5×10GC/mL~約5×10GC/mL、約5×10GC/mL~約5×1010GC/mL、約5×1010GC/mL~約5×1011GC/mL、約5×1011GC/mL~約5×1012GC/mL、又は約5×1012GC/mL~約1×1014GC/mLのウイルスベクター(例えばrAAVビリオン)を含む。一層(yet)さらなる実施形態では、本開示の医薬組成物は、約5×10GC/mL~約5×1010GC/mL、約5×1010GC/mL~約5×1012GC/mL、又は約5×1012GC/mL~約1×1014GC/mLのウイルスベクター(例えばrAAVビリオン)を含む。
【0175】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、約1×1012GC/mL~約6.2×1012GC/mLのウイルスベクター(例えば、rAAVビリオン)を含む。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、約1×1012GC/mL又は約6.2×1012GC/mLのウイルスベクター(例えば、rAAVビリオン)を含む。
【0176】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、総量が約10μL、約20μL、約30μL、約40μL、約50μL、約60μL、約70μL、約80μL、約90μL、約100μL、110μL、約120μL、約130μL、約140μL、約150μL、約160μL、約170μL、約180μL、約190μL、又は約200μLで投与される。いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、総量が約10μL~約20μL、約20μL~約30μL、約30μL~約40μL、約40μL~約50μL、約50μL~約60μL、約60μL~約70μL、約70μL~約80μL、約80μL~約90μL、約90μL~約100μL、約100μL~110μL、110μL~約120μL、約120μL~約130μL、約130μL~約140μL、約140μL~約150μL、約150μL~約160μL、約160μL~約170μL、約170μL~約180μL、約180μL~約190μL、又は約190μL~約200μLで
投与される。
【0177】
ミリリットルあたりのゲノムコピーは、ウイルスのポリヌクレオチドゲノムの濃度が既知の参照試料を用いて作成した標準曲線を使用して、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(quantitative polymerase change reaction)(qPCR)によって求めることができる。AAVの場合、使用される参照試料は、rAAVビリオンの作製に使用されたトランスファープラスミドであることが多いが、他の参照試料も使用することができる。
【0178】
代替えとして、又は追加として、ウイルスベクターの濃度は、細胞株でベクターの力価を測定することによって決定することができる。ウイルス力価は、典型的に、単位体積あたりのウイルス粒子(vp)で表される(vp/mLなど)。様々な実施形態では、本開示の医薬組成物は、約1×10ウイルス粒子/ミリリットル(vp/mL)、約5×10vp/mL、約1×10vp/mL、約5×10vp/mL、約1×1010vp/mL、約5×1010vp/mL、約1×1011vp/mL、約5×1011vp/mL、約1×1012vp/mL、約5×1012vp/mL、約5×1013vp/mL、又は約1×1014vp/mLのウイルスベクター(例えば、rAAVビリオン)を含む。様々なさらなる実施形態では、本開示の医薬組成物は、約1×10ウイルス粒子/ミリリットル(vp/mL)~約5×10vp/mL、約5×10vp/mL~約1×10vp/mL、約1×10vp/mL~約5×10vp/mL、約5×10vp/mL~約1×1010vp/mL、約1×1010vp/mL~約5×1010vp/mL、約5×1010vp/mL~約1×1011vp/mL、約1×1011vp/mL~約5×1011vp/mL、約5×1011vp/mL~約1×1012vp/mL、約1×1012vp/mL~約5×1012vp/mL、約5×1012vp/mL~約5×1013vp/mL、又は約5×1013vp/mL~約1×1014vp/mLのウイルスベクター(例えば、rAAVビリオン)を含む。
【0179】
本明細書に開示の方法又は組成物のいずれかによる治療前、治療中、及び治療後の対象の眼疾患を評価するために、様々な検査が利用可能である。本明細書に開示の実施形態のいくつかでは、対象に対する有効な治療は1つ又は複数の検査によって示され、例えば、a)ビジュアルアナログスケールでのアイドライネススコア(Eye Dryness score)検査、b)シルマー試験、c)角膜フルオレセイン染色検査、及びd)眼表面疾患指数(Ocular Surface Disease Index )検査であることができる。眼疾患の徴候及び症状を評価するための検査は、対象の検査スコアを得るために、標準化された条件又は再現可能な条件下で施行することができる。条件には、対象に悪い影響を与える(adversely challenge)ように人為的に作られた環境、又は環境(温度、湿度、気流)がモニターされ、注意深く制御されている環境に対象を曝露することが含まれる。
【0180】
次の項では、ビジュアルアナログスケールでのアイドライネススコア検査、シルマー試験、角膜染色検査、及び眼表面疾患指数検査についてさらなる詳細を示す。
【0181】
アイドライネススコア検査
ビジュアルアナログスケールでのアイドライネススコア検査を使用して、対象の眼疾患、流涙レベル、又は眼の不快感を評価することができる。この検査は、ビジュアルアナログスケールを使用するものであり、100mmの水平線を含み、一方の終点0が「不快感なし」、もう一方の終点100が「最大不快感」と表示される。図3はビジュアルアナログスケールの一例を示している(実際の縮尺では示されていない)。対象は、不快感の程度を示す横線の上に縦に印を付けることによって、眼の乾燥による眼の症状を評価するよう求められる。次いで、対象の反応が100mmスケールのどこにあるかを特定すること
によってアイドライネススコアが算出される。
【0182】
mm単位で測定されるアイドライネススコアを使用して、眼の症状の重症度及び対象に対する特定の治療の有効性を評価することができる。この検査は、5分ごとという頻度で対象に施行でき、検査管理者(test administrator)が対象の症状の経時的変化を注意深く観察できるという利点がある。不快感の程度が相対的低いことを示す低い数値と比較して、高い数値は眼の症状に対する不快感が大きいことを示す。アイドライネススコアの減少は、治療が、眼疾患の治療、涙液産生の増加、又は眼の不快感の改善に有効である証拠となる。経時的なアイドライネススコアの減少は、眼の症状の軽減又は緩和の証拠であり、一般に対象の病態の改善を示す。
【0183】
本明細書に開示の実施形態のいくつかでは、有効な治療は、対象のアイドライネススコアの統計的に有意な減少によって示され、対象のアイドライネススコアの統計的に有意な減少は、rAAVビリオンの初回投与、又は任意選択で1回若しくは複数回の後続の投与、及び涙液産生を増加させる治療の初回投与、又は任意選択で1回若しくは複数回の後続の投与を対象に施した後に決定され、対象のアイドライネススコアは、a)rAAVビリオンの初回投与、及び涙液産生を増加させる治療の初回投与を施す前の対象のアイドライネススコア;b)対照を投与された対象のアイドライネススコア;c)対照薬化合物を投与された対象のアイドライネススコア;又はd)対側眼のアイドライネススコアと比較される。
【0184】
本明細書において使用される場合、「統計的に有意」という用語は、2つ以上の群間で観察された差を評価するために、研究デザイン及び生成されたデータ型(data type)に基づいて当業者によって選択される解析の方法を意味し、解析は、差がランダムでないか、又は厳密に偶然に起因するかを決定する。
【0185】
本明細書に開示の実施形態のいくつかでは、対象のアイドライネススコアは、rAAVビリオンの初回投与、及び涙液産生を増加させる治療の初回投与を行う前の対象のアイドライネススコアと比較される。
【0186】
本明細書に開示の実施形態のいくつかでは、対象のアイドライネススコアは、対照を投与された対象のアイドライネススコアと比較される。
【0187】
本明細書に開示の実施形態のいくつかでは、対象のアイドライネススコアは、対照薬化合物を投与された対象のアイドライネススコアと比較される。
【0188】
本明細書に開示の実施形態のいくつかでは、対象のアイドライネススコアは、対側眼のアイドライネススコアと比較される。
【0189】
いくつかの実施形態では、対象のアイドライネススコアの統計的に有意な減少は、対照と比較して本明細書に記載のrAAVビリオンを投与された対象において認められる。本明細書に記載の実施形態のいくつかでは、対象のアイドライネススコアの統計的に有意な減少は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、50%、75%、80%、90%、95%、100%、125%、150%、200%、250%、300%、又は350%である。いくつかの実施形態では、対象のアイドライネススコアの統計的に有意な減少は、対照と比較して本明細書に記載のrAAVビリオンを投与された対象において認められ、対象のアイドライネススコアの統計的に有意な減少は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、50%、75%、80%、90%、95%、100%、125%、150%、200%、250%、300%、又は350%である。
【0190】
本明細書に記載の実施形態のいくつかでは、対象のアイドライネススコアの統計的に有意な減少は、少なくとも3mm、少なくとも5mm、少なくとも10mm、少なくとも15mm、少なくとも20mm、少なくとも25mm、少なくとも30mm、少なくとも35mm、少なくとも40mm、少なくとも45mm、又は少なくとも50mmである。いくつかの実施形態では、対象のアイドライネススコアの統計的に有意な減少は、対照と比較して本明細書に記載のrAAVビリオンを投与された対象において認められ、対象のアイドライネススコアの統計的に有意な減少は、少なくとも3mm、少なくとも5mm、少なくとも10mm、少なくとも15mm、少なくとも20mm、少なくとも25mm、少なくとも30mm、少なくとも35mm、少なくとも40mm、少なくとも45mm、又は少なくとも50mmである。
【0191】
本明細書に記載の実施形態のいくつかでは、対象のアイドライネススコアの統計的に有意な減少は、3mm~10mm、3mm~20mm、3mm~25mm、3mm~30mm、3mm~35mm、3mm~40mm、3mm~45mm、3mm~50mm、5mm~10mm、5mm~20mm、5mm~25mm、5mm~30mm、5mm~35mm、5mm~40mm、5mm~45mm、5mm~50mm、10mm~15mm、10mm~20mm、10mm~25mm、10mm~30mm、10mm~35mm、10mm~40mm、10mm~45mm、10mm~50mm、15mm~20mm、20mm~30mm、25mm~35mm、30mm~40mm、30mm~45mm、又は30mm~50mmである。
【0192】
本明細書に記載の実施形態のいくつかでは、対象のアイドライネススコアの統計的に有意な減少は、0.05以下、0.01以下、0.005以下、又は0.001以下のp値を特徴とする。本明細書に記載の実施形態のいくつかでは、対象のアイドライネススコアの統計的に有意な減少は、0.05以下のp値を特徴とする。本明細書に記載の実施形態のいくつかでは、対象のアイドライネススコアの統計的に有意な減少は、0.01以下のp値を特徴とする。
【0193】
本明細書に記載の実施形態のいくつかでは、対象のアイドライネススコアの統計的に有意な減少は、開示の方法又は組成物のいずれかによる治療の後、1日以内、2日以内、3日以内、4日以内、1週間以内、2週間以内、3週間以内、4週間以内、1か月以内、2か月以内、3か月以内、4か月以内、5か月以内又は6か月以内である。
【0194】
いくつかの実施形態では、対象のアイドライネススコアの減少は、本明細書に開示の方法又は組成物のいずれかによる治療の後、約1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、1週間、2週間、3週間、4週間、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、9か月、又は1年間持続する。
【0195】
本明細書に記載の実施形態のいくつかでは、対象のアイドライネススコアの統計的に有意な減少は、rAAVビリオンの初回投与を施した後に決定された対象のアイドライネススコアに基づく。
【0196】
本明細書に記載の実施形態のいくつかでは、統計的に有意な減少は、本明細書に開示の方法又は組成物のいずれかによる治療の後に決定された対象のアイドライネススコアに基づく。
【0197】
シルマースコア試験
眼疾患は、涙液量及び涙液産生に影響を及ぼしうる。シルマー試験を用いて、涙液産生を評価し、対象におけるドライアイ疾患の重症度、涙液不足、又は眼の不快感を評価することができる。この試験では、各眼で産生される涙の量を測定する。この試験は典型的に
は、まず対象の1つ又は両方の眼に麻酔薬を入れることを含む。これらの点眼剤は、試験ストリップに反応して眼が潤む(watering)のを防ぐ。次いで、1つ又は両方の下眼瞼の内側に濾紙を入れ、その人(the person)は目を閉じる。5分後、試験管理者は濾紙を取り除き、涙が濾紙上をどの程度移動したかを評価する。シルマー試験は1つ又は両方の眼に対して施行することができる。
【0198】
一般的に、紙の水分の量が少ないほど、その人が出した涙の量は少ない。健康な眼では、典型的には、各紙ストリップに10ミリメートル超の水分が含まれる。シルマースコアが10ミリメートル未満の水分は、本明細書に記載の眼疾患、異常に低い流涙、又は眼の不快感を含む1つ又は複数の状態を示唆しうる。
【0199】
シルマー試験を使用して、対象における特定の治療の有効性を評価することができ、対象の症状の重症度の変化を一定期間にわたってモニターするために複数回施行される場合がある。本明細書に記載の眼疾患、不十分な流涙、又は眼の不快感治療を受けている対象におけるシルマースコアの経時的な増加は、涙液量又は涙液産生の増加の証拠であり、一般に対象の病態の改善を示す。シルマースコアの経時的な増加は、治療が本明細書に記載の眼疾患の治療、涙液産生の増加、又は眼の不快感の改善に有効であることの証拠である。
【0200】
本明細書に開示の実施形態のいくつかでは、有効な治療は対象のシルマースコアの統計的に有意な増加によって示され、対象のシルマースコアの統計的に有意な増加は、本明細書に開示の方法又は組成物のいずれかによる治療後に判定され、対象のシルマースコアは、a)rAAVビリオンの初回投与、及び涙液産生を増加させる治療の初回投与を施す前の対象のシルマースコア;b)対照を投与された対象のシルマースコア;c)対照薬化合物を投与された対象のシルマースコア;又はd)対側眼と比較される。
【0201】
本明細書に開示の実施形態のいくつかでは、対象のシルマースコアは、本明細書に記載の医薬組成物の投与前の対象のシルマースコアと比較される。本明細書に開示の実施形態のいくつかでは、対象のシルマースコアは、対照を投与された対象のシルマースコアと比較される。本明細書に開示の実施形態のいくつかでは、対象のシルマースコアは、対照薬化合物を投与された対象のシルマースコアと比較される。本明細書に開示の実施形態のいくつかでは、対象のシルマースコアは、対側眼と比較される。
【0202】
いくつかの実施形態では、対象のシルマースコアの統計的に有意な増加は、対照と比較して本明細書に記載のrAAVビリオンを投与された対象において認められる。
【0203】
本明細書に記載の実施形態のいくつかでは、対象のシルマースコアの統計的に有意な増加は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、50%、75%、80%、90%、95%、100%、125%、150%、200%、250%、300%、又は350%である。本明細書に記載の実施形態のいくつかでは、対象のシルマースコアの増加は、少なくとも100%、200%、又は300%である。いくつかの実施形態では、対象のシルマースコアの統計的に有意な増加は、対照と比較して本明細書に記載のrAAVビリオンを投与された対象において認められ、その対象のシルマースコアの統計的に有意な増加は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、50%、75%、80%、90%、95%、100%、125%、150%、200%、250%、300%、又は350%である。
【0204】
本明細書に記載の実施形態のいくつかでは、対象のシルマースコアの統計的に有意な増加は、少なくとも3mm、少なくとも5mm、少なくとも10mm、少なくとも15mm、少なくとも20mm、少なくとも25mm、少なくとも30mm、少なくとも35mm
、少なくとも40mm、少なくとも45mm、又は少なくとも50mmである。
【0205】
本明細書に記載の実施形態のいくつかでは、対象のシルマースコアの統計的に有意な増加は、3mm~5mm、3mm~10mm、3mm~15mm、3mm~20mm、3mm~25mm、3mm~30mm、5mm~10mm、5mm~15mm、5mm~20mm、5mm~25mm、5mm~30mm、10mm~15mm、10mm~20mm、10mm~25mm、10mm~30mm、15mm~20mm、15mm~25mm、15mm~30mm、20mm~25mm、又は20mm~30mmである。
【0206】
いくつかの実施形態では、対象のシルマースコアの統計的に有意な増加は、対照と比較して本明細書に記載のrAAVビリオンを投与された対象において認められ、その対象のシルマースコアの統計的に有意な増加は、少なくとも3mm、少なくとも5mm、少なくとも10mm、少なくとも15mm、少なくとも20mm、少なくとも25mm、少なくとも30mm、少なくとも35mm、少なくとも40mm、少なくとも45mm、又は少なくとも50mmである。
【0207】
本明細書に記載の実施形態のいくつかでは、対象のシルマースコアの統計的に有意な増加は、0.05以下、0.01以下、0.005以下、又は0.001以下のp値を特徴とする。
【0208】
本明細書に記載の実施形態のいくつかでは、対象のシルマースコアの統計的に有意な増加は、本明細書に開示の方法又は組成物による治療の後、1日以内、2日以内、3日以内、4日以内、1週間以内、2週間以内、3週間以内、4週間以内、1か月以内、2か月以内、3か月以内、4か月以内、5か月以内又は6か月以内である。本明細書に記載の実施形態のいくつかでは、対象のシルマースコアの統計的に有意な増加は、本明細書に開示の方法又は組成物による治療の後、短い時間で(acutely)測定した場合、1分以内、2分以内、5分以内であり、又は長期にわたって(chronically)測定した場合、1日以内、2日以内、3日以内、4日以内、1週間以内、2週間以内、3週間以内、4週間以内、1か月以内、2か月以内、3か月以内、4か月以内、5か月以内又は6か月以内である。
【0209】
いくつかの実施形態では、対象のシルマースコアの増加は、本明細書に開示の方法又は組成物のいずれかによる治療の後、1分間、2分間、3分間又は少なくとも1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、1週間、2週間、3週間、4週間、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、9か月、又は1年間持続する。
【0210】
本明細書に記載の実施形態のいくつかでは、対象のシルマースコアの統計的に有意な増加は、本明細書に開示の方法又は組成物による治療後に決定された対象のシルマースコアに基づく。
【0211】
本明細書に記載の実施形態のいくつかでは、統計的に有意な増加は、本明細書に開示の方法又は組成物のいずれかによる治療の後に決定された対象のシルマースコアに基づく。
【0212】
角膜染色検査
角膜表面の変化は、不十分な涙液流及び過度の乾燥、並びに本明細書に記載の眼疾患及び眼の不快感と関連する。角膜表面の変化には、表面上皮細胞を保護するムチンコーティングの破壊、及び/又は上皮細胞壁の損傷が含まれうる。
【0213】
フルオレセイン染色、リサミングリーン染色、及びローズベンガル染色を含む角膜染色検査は、角膜表面の健康状態を判定するための診断検査であり、角膜表面の損傷領域を示
すことができる。正常な角膜表面は涙液層に注入(instilled)された水溶性色素を取り込まない。しかし、損傷した上皮細胞は、水溶性色素を表面細胞に拡散させてしまう。損傷した上皮細胞を染色する色素は、角膜表面で可視化され、角膜表面の損傷を示すことができる。
【0214】
角膜染色検査を行うには、染色色素は1つ又は両方の眼に適用される。色素は浸透し、表面細胞間の領域を染色する。この検査を用いて、壊死(Devitalized)細胞及び壊死表面組織の繊維(フィラメント)を可視化することができる。次いで、検査管理者は、観察された損傷の重症度を評価するために開発された角膜表面採点システムを用いる。この採点システムは、時間をかけた眼疾患の治療に有用である。図4は、採点システムで使用されるNEI/Industry Workshop Scaleを示す。他の同等の標準化採点システムを用いることもできる。検査管理者は角膜表面の損傷部位を評価採点し、角膜表面の損傷の重症度を反映した角膜スコアを算出する。
【0215】
検査管理者は、角膜スコアを用いて対象における特定の治療の有効性を評価することができる。この検査を複数回実施して、一定期間にわたる対象の眼表面の重症度の変化をモニターすることができる。一般に、角膜表面の損傷が低いレベルであることを示す低い数値と比較して、高い数値は角膜表面の損傷が大きいことを示す。経時的な角膜スコアの減少は、角膜表面の損傷が減少した証拠である。角膜スコアの減少は、一般的に対象の病態の改善を示す。経時的な角膜スコアの減少はまた、ドライアイ疾患の治療、涙液産生の増加、又は眼の不快感の改善に治療が有効であることの証拠でもある。
【0216】
本明細書に開示の実施形態のいくつかでは、有効な治療は対象の角膜スコアの統計的に有意な減少によって示され、対象の角膜スコアの統計的に有意な減少は、本明細書に記載の組成物の初回投与、又は任意選択で1つ又は複数の後続の投与を対象に施した後に判定され、対象の角膜スコアは、a)rAAVビリオンの初回投与、及び涙液産生を増加させる治療の初回投与を施す前の対象の角膜スコア;b)対照を投与された対象の角膜スコア;c)対照薬化合物を投与された対象の角膜スコア;又はd)対側眼と比較される。
【0217】
本明細書に開示の実施形態のいくつかでは、対象の角膜スコアは、本明細書に記載の方法に従った医薬組成物の投与の前の対象の角膜スコアと比較される。本明細書に開示の実施形態のいくつかでは、対象の角膜スコアは、対照を投与された対象の角膜スコアと比較される。本明細書に開示の実施形態のいくつかでは、対象の角膜スコアは、対照薬化合物を投与された対象の角膜スコアと比較される。本明細書に開示の実施形態のいくつかでは、対象の角膜スコアは、対側眼と比較される。
【0218】
本明細書に開示の実施形態のいくつかでは、対象の角膜スコアを使用して、0.5mm未満のフルオレセイン染色又はフルオレセイン染色なし(ゼロ)として定義される角膜治癒の定義(a definition of corneal healing)を測定することができる(非特許文献20)。
【0219】
いくつかの実施形態では、対象の角膜治癒スコアの統計的に有意な減少は、対照と比較して本明細書に記載のrAAVビリオンを投与された対象において認められる。
【0220】
本明細書に記載の実施形態のいくつかでは、対象の角膜治癒スコアの統計的に有意な減少は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、50%、75%、80%、90%、95%、100%、125%、150%、200%、250%、300%、又は350%である。
【0221】
いくつかの実施形態では、対象の角膜治癒スコアの統計的に有意な減少は、対照と比較
して本明細書に記載のrAAVビリオンを投与された対象において認められ、対象の角膜治癒スコアの統計的に有意な減少は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、50%、75%、80%、90%、95%、100%、125%、150%、200%、250%、300%、又は350%である。
【0222】
本明細書に記載の実施形態のいくつかでは、対象の角膜スコアの統計的に有意な減少は、0.05以下、0.01以下、0.005以下、又は0.001以下のp値を特徴とする。
【0223】
本明細書に記載の実施形態のいくつかでは、対象の角膜スコアの統計的に有意な減少は、本明細書に開示の方法又は組成物による治療の後、1日以内、2日以内、3日以内、4日以内、1週間以内、2週間以内、3週間以内、4週間以内、1か月以内、2か月以内、3か月以内、4か月以内、5か月以内又は6か月以内である。
【0224】
いくつかの実施形態では、対象の角膜スコアの減少は、本明細書に開示の方法又は組成物のいずれかによる治療の後、少なくとも1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、1週間、2週間、3週間、4週間、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、9か月、又は1年間持続する。
【0225】
本明細書に記載の実施形態のいくつかでは、統計的に有意な減少は、rAAVビリオンの1回又は複数回の後続の投与、及び任意選択で、涙液産生を増加させる治療の初回又は1回若しくは複数回の後続の投与を施した後に決定された対象の角膜スコアに基づく。
【0226】
眼表面疾患指数検査
眼疾患及び関連する症状の治療を受けた対象は、質問票を通して、状態の診断及び症状の重症度の判定に使用される重要な情報を提供することができる。適切にデザインされた質問票は、再現性を検証することができ、反応の良い回答(responsive answers)を引き出す適切な質問で構成されるべきである。質問票の一例として、眼表面疾患指数(OSDI)があり、眼疾患をもつ対象に対する12問の質問調査であり、症状の頻度を直接評価するための信頼できる有効な手段であることが示されている。評価対象となる眼症状には、灼熱感/刺痛、かゆみ、異物感、眼の不快感、眼の乾燥、羞明、及び疼痛が含まれるが、これらに限定されない。ほとんどの人は質問票に慣れており、医療提供者(health provider)が情報を収集するための効率的な方法であることを理解している。また、不注意にも(inadvertently)回答者に影響を与えるような口頭の又は視覚的な手がかりがないので、質問票はバイアスを減らす。検査管理者は、対象から回答を集め、質問に対する対象の回答に基づいてOSDIを算出する。
【0227】
OSDIスコアを用いて、眼症状の重症度及び対象の特定の治療の有効性を評価することができる。数値が高いほど、眼疾患の重症度が高いことを示す。経時的なOSDIスコアの減少は、眼症状の軽減又は緩和の証拠であり、一般的に対象の病態の改善を示す。OSDIスコアの減少はまた、治療が、眼疾患の治療及び症状の軽減に有効であることの証拠でもある。
【0228】
本明細書に開示の実施形態のいくつかでは、有効な治療は対象のOSDIスコアの統計的に有意な減少によって示され、対象の角膜スコアの統計的に有意な減少は、rAAVビリオンの初回投与、又は任意選択で1つ又は複数の後続の投与、及び涙液産生を増加させる治療の初回投与、又は任意選択で1つ又は複数の後続の投与を対象に施した後に判定され、対象のOSDIスコアは、a)rAAVビリオンの初回投与、及び涙液産生を増加させる治療の初回投与を施す前の対象のOSDIスコア;b)対照を投与された対象のOS
DIスコア;c)対照薬化合物を投与された対象のOSDIスコア;又はd)対側眼と比較される。
【0229】
本明細書に開示の実施形態のいくつかでは、対象のOSDIスコアは、本明細書に記載の開示方法に従った治療の前の対象のOSDIスコアと比較される。本明細書に開示の実施形態のいくつかでは、対象のOSDIスコアは、対照を投与された対象のOSDIスコアと比較される。本明細書に開示の実施形態のいくつかでは、対象のOSDIスコアは、対照薬化合物を投与された対象のOSDIスコアと比較される。本明細書に開示の実施形態のいくつかでは、対象のOSDIスコアは、対側眼のOSDIスコアと比較される。
【0230】
いくつかの実施形態では、対象のOSDIスコアの統計的に有意な減少は、対照と比較して本明細書に記載のrAAVビリオンを投与された対象において認められる。
【0231】
本明細書に記載の実施形態のいくつかでは、対象のOSDIスコアの統計的に有意な減少は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、50%、75%、80%、90%、95%、100%、125%、150%、200%、250%、300%、又は350%である。いくつかの実施形態では、対象のOSDIスコアの統計的に有意な減少は、対照と比較して本明細書に記載のrAAVビリオンを投与された対象において認められ、対象のOSDIスコアのその統計的に有意な減少は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、50%、75%、80%、90%、95%、100%、125%、150%、200%、250%、300%、又は350%である。
【0232】
本明細書に記載の実施形態のいくつかでは、対象のOSDIスコアの統計的に有意な減少は、0.05以下、0.01以下、0.005以下、又は0.001以下のp値を特徴とする。
【0233】
本明細書に記載の実施形態のいくつかでは、対象のOSDIスコアの統計的に有意な減少は、本明細書に開示の方法又は組成物による治療の後、1日以内、2日以内、3日以内、4日以内、1週間以内、2週間以内、3週間以内、4週間以内、1か月以内、2か月以内、3か月以内、4か月以内、5か月以内又は6か月以内である。
【0234】
いくつかの実施形態では、対象のOSDIスコアの減少は、本明細書に開示の方法又は組成物のいずれかによる治療の後、少なくとも1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、1週間、2週間、3週間、4週間、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、9か月、又は1年間持続する。
【0235】
本明細書に記載の実施形態のいくつかでは、対象のOSDIスコアの統計的に有意な減少は、rAAVビリオンの初回投与を施した後に決定された対象のOSDIスコアに基づく。
【0236】
本明細書に記載の実施形態のいくつかでは、統計的に有意な減少は、本明細書に開示の方法又は組成物による治療の後に決定された対象のOSDIスコアに基づく。
【0237】
長期にわたる有効な治療の維持
本開示は、対象のスコアの統計的に有意な改善が維持される期間にわたる有効な治療を提供することができる。本開示において使用され、対象のスコア(EDS、シルマー、角膜染色検査、又はOSDI)の統計的に有意な改善の維持に関連する「維持された」という用語は、統計的に有意な改善が時間の経過とともに一定の閾値未満に減少しないことを意味する。統計的に有意な改善は、後の時点で対象のスコアが変化したとしても維持することできる。開示の方法による治療後の改善は、追加投与なしで維持することができる、
又は1回若しくは複数回の後続の投与後に維持することができる。
【0238】
例えば、角膜染色検査スコアが0.5mm又は0mmであれば、角膜治癒と定義でき、治療の開始の30日後又は60日後の有意な改善を表す(非特許文献20)。
【0239】
例えば、アイドライネススコアが「10%以内に維持されている」とは、対象のアイドライネススコアの減少が特定の時間の間に10%を超えて減少しないことを意味する。対象のアイドライネススコアのさらなる改善も、統計的に有意な改善の維持とみなされることになる(例えば、アイドライネススコアが特定の時間の間にさらに15%改善した場合、これは「10%以内に維持されている」とみなされることになる)。
【0240】
別の例では、本明細書に記載の方法による治療の30日後に対象のアイドライネススコアに統計的に有意な減少(改善)があり、後の時点で対象のスコアが同じ又はより小さい(対象にとって有益であることを示す)、統計的に有意な改善は維持されているという。あるいは、後の時点で、対象のアイドライネススコアが、本明細書に記載の方法による治療の30日後のアイドライネススコアよりも大きい場合、対象は依然として治療効果を得ている可能性があり、後に決定されたスコアは、初回投与の施行前又は治療前のベースラインスコアと比較して依然として統計的に有意な改善である可能性がある。
【0241】
別の例では、本明細書に記載の方法による治療の60日後に対象のアイドライネススコアに統計的に有意な減少(改善)があり、後の時点で対象のスコアが同じ又はより小さい(対象にとって有益であることを示す)、統計的に有意な改善は維持されているという。あるいは、後の時点で、対象のアイドライネススコアが、本明細書に記載の方法による治療の60日後のアイドライネススコアよりも大きい場合、対象は依然として治療効果を得ている可能性があり、後に決定されたスコアは、本明細書に記載の方法による治療の前と比較して、依然として統計的に有意な改善である可能性がある。
【0242】
何をもって改善とするかは、測定されるスコアによって異なることに注意されたい。例えば、アイドライネススコア、角膜スコア、及びOSDIスコアの改善は、スコアの数値の減少である。シルマー試験では、改善は典型的に、シルマースコアの数値の増加である。
【0243】
本明細書に記載の実施形態のいくつかでは、対象のスコア(例えば、EDS、シルマー、角膜染色検査、又はOSDI)の統計的に有意な改善の維持とは、統計的に有意な改善が、10%、20%、30%、40%、50%、又は60%を超えて減少しないことを意味する。
【0244】
本明細書に記載の実施形態のいくつかでは、対象のスコアの統計的に有意な改善(例えば、EDS、シルマー、角膜、又はOSDI)は、少なくとも1週間、少なくとも1か月、少なくとも3か月、少なくとも6か月、少なくとも9か月、又は少なくとも12か月維持される。本明細書に記載の実施形態のいくつかでは、対象のスコアの統計的に有意な改善は、本明細書に記載の方法に従った治療後少なくとも30日間維持され、その統計的に有意な改善は30%を超えて減少しない。いくつかの実施形態では、対象のスコアの統計的に有意な改善は、rAAVビリオンの初回投与、及び任意選択で、涙液産生を増加させる治療の初回投与の施行から少なくとも1か月間維持され、その統計的に有意な改善は30%を超えて減少しない。
【0245】
本明細書に記載の実施形態のいくつかでは、対象のスコアの統計的に有意な改善(例えば、EDS、シルマー、角膜、又はOSDI)は、本明細書に記載の方法に従った治療後少なくとも1週間、少なくとも1か月、少なくとも3か月、少なくとも6か月、少なくと
も9か月、又は少なくとも12か月維持され、その統計的に有意な改善は、本明細書に記載の方法に従った治療後60日以内の対象のスコアと比較して10%、20%、30%、40%、50%、又は60%を超えて減少しない。
【0246】
本明細書に記載の実施形態のいくつかでは、対象のスコアの統計的に有意な改善(例えば、EDS、シルマー、角膜染色検査、又はOSDI)は、本明細書に記載の方法に従った治療後少なくとも1週間、少なくとも1か月、少なくとも3か月、少なくとも6か月、少なくとも9か月、又は少なくとも12か月維持され、その統計的に有意な改善は、本明細書に記載の方法に従った治療後60日以内の対象の対応するアイドライネススコア、角膜スコア、又はOSDIスコアと比較して20%を超えて減少しない。
【0247】
投与のタイミング及び投与の方法
対象に施行される投与のスケジュールは、各投与の有効性の継続期間、rAAVビリオンの形質導入効率、及び身体に対する投与の影響を含む様々な考慮事項に依存する。例えば、患者の病態が改善されない場合には医療提供者の裁量で、対象の眼疾患の症状を改善する、又はそうでなければ制御若しくは制限するために、本明細書に記載の眼疾患を治療する方法は、投与量を調整する、又は繰り返し投与することができる。例えば、1つ若しくは複数の投与の施行間の期間が延長される、又は対象が1つ又は複数の投与を施される日数の間の期間が延長される。非限定的な例として、1回又は複数回の投与の施行は、眼疾患の症状を測定した後に1回又は複数回の投与の施行に変更される。
【0248】
本明細書において使用される場合、「投与量」は、本開示の医薬組成物の投与量、又は眼疾患における症状を軽減する治療の投与量を意味することができる。
【0249】
本明細書に記載の実施形態のいくつかでは、rAAVビリオンの投与量は、発現カセットをもつrAAVビリオンの投与量である。そのような場合、遺伝子産物の適切な用量(例えば有効量)の送達は、一定期間にわたって治療有効量の遺伝子産物の発現を可能にする適切な量/力価のウイルスベクターを標的部位に投与することによって達成される。そのような場合、遺伝子産物の適切な用量(例えば有効量)の送達は、一定期間にわたって有効量の遺伝子産物の発現を可能にする適切な量/力価のウイルスベクターを標的部位に投与することによって達成される。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターはrAAVビリオンである。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは涙腺に投与される。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターの投与は、一定期間(例えば、約1日、約2日、約4日、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約1か月、約2か月、約3か月、約4か月、約5か月、約6か月、約9か月、約12か月、又はより長く)、遺伝子産物の安定な産生をもたらす。いくつかの実施形態では、rAAVの投与は、約1週間の遺伝子産物の安定した産生をもたらす。いくつかの実施形態では、rAAVの投与は、約2週間の遺伝子産物の安定した産生をもたらす。いくつかの実施形態では、rAAVの投与は、約3週間の遺伝子産物の安定した産生をもたらす。いくつかの実施形態では、rAAVの投与は、約4週間の遺伝子産物の安定した産生をもたらす。いくつかの実施形態では、rAAVの投与は、約1か月の遺伝子産物の安定した産生をもたらす。いくつかの実施形態では、rAAVの投与は、約2か月の遺伝子産物の安定した産生をもたらす。いくつかの実施形態では、rAAVの投与は、約3か月の遺伝子産物の安定した産生をもたらす。いくつかの実施形態では、rAAVの投与は、約4か月の遺伝子産物の安定した産生をもたらす。いくつかの実施形態では、rAAVの投与は、約5か月の遺伝子産物の安定した産生をもたらす。いくつかの実施形態では、rAAVの投与は、約6か月の遺伝子産物の安定した産生をもたらす。いくつかの実施形態では、rAAVの投与は、約9か月の遺伝子産物の安定した産生をもたらす。いくつかの実施形態では、rAAVの投与は、約12か月の遺伝子産物の安定した産生をもたらす。
【0250】
いくつかの実施形態では、rAAVは反復投与で投与される。いくつかの実施形態では、rAAVは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回、又はより多い投与で投与される。いくつかの実施形態では、rAAVは2回の投与で投与される。いくつかの実施形態では、rAAVは3回の投与で投与される。いくつかの実施形態では、rAAVは4回の投与で投与される。いくつかの実施形態では、rAAVは5回の投与で投与される。いくつかの実施形態では、rAAVは6回の投与で投与される。いくつかの実施形態では、rAAVは7回の投与で投与される。いくつかの実施形態では、rAAVは8回の投与で投与される。いくつかの実施形態では、rAAVは9回の投与で投与される。いくつかの実施形態では、rAAVは10回の投与で投与される。
【0251】
いくつかの実施形態では、本方法は、rAAVを投与することによって有効量の遺伝子産物を送達することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、rAAVの初回投与及び1回又は複数回の後続の投与を送達することを含む。1回又は複数回の後続の投与は、初回投与の後一定期間後に施行される。いくつかの実施形態では、この初回投与と次の後続の投与との間の期間は、少なくとも1日、少なくとも3日、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも1か月、少なくとも2か月、少なくとも4か月、少なくとも6か月、少なくとも9か月、少なくとも12か月である、又はより長い。いくつかの実施形態では、この初回投与と次の後続の投与との間の期間は、1~7日、1~4週間、2~6週間、4~8週間、1~3か月、2~4か月、3~6か月、4~12か月、6~24か月である。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の後続の投与間の期間は、少なくとも1日、少なくとも3日、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも1か月、少なくとも2か月、少なくとも4か月、少なくとも6か月、少なくとも9か月、少なくとも12か月である、又はより長い。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の後続の投与間の期間は、1~7日、1~4週間、2~6週間、4~8週間、1~3か月、2~4か月、3~6か月、4~12か月、6~24か月である。
【0252】
いくつかの実施形態では、投与は同じ濃度のrAAVである。いくつかの実施形態では、投与は異なる濃度のrAAVである。
【0253】
いくつかの実施形態では、反復投与は、同じ眼又は涙腺に投与される。いくつかの実施形態では、反復投与は、少なくとも1つの眼又は涙腺に投与される。
【0254】
医薬組成物及びキット
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載のrAAVビリオンを含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載のrAAVビリオン、及び薬学的に許容される担体、送達剤(delivery agent)、又は賦形剤を含む。
【0255】
いくつかの実施形態では、本開示は、眼の疾患、障害、又は病態を治療するための医薬品の製造における本明細書に記載のrAAVビリオン又は医薬組成物の使用を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、眼の疾患、障害、又は病態に使用するための、又は使用するのに適合可能な本明細書のrAAVビリオン又は医薬組成物の使用に関する。
【0256】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体はリン酸緩衝生理食塩水を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、その意図される投与経路(例えば、涙腺内)に適合するように製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、涙腺への投与向けに製剤化される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、眼表面への投与向けに製剤化される。
【0257】
眼及び/又は涙腺の細胞を効果的に形質導入するのに適した任意の濃度のウイルス粒子を、インビトロ又は生体内で眼及び/又は涙腺の細胞と接触させるために調製することができる。例えば、ウイルス粒子は、10ベクターゲノム/ml又はより大きい濃度、例えば、5×10ベクターゲノム/mL;10ベクターゲノム/mL;5×10ベクターゲノム/mL、1010ベクターゲノム/mL、5×1010ベクターゲノム/mL;1011ベクターゲノム/mL;5×1011ベクターゲノム/mL;1012ベクターゲノム/mL;5×1012ベクターゲノム/mL;1013ベクターゲノム/mL;1.5×1013ベクターゲノム/mL;3×1013ベクターゲノム/mL;5×1013ベクターゲノム/mL;7.5×1013ベクターゲノム/mL;9×1013ベクターゲノム/mL;1×1014ベクターゲノム/mL、5×1014ベクターゲノム/mL又はより大きい濃度、但し典型的には1×1015ベクターゲノム/mL以下の濃度で製剤化することができる。同様に、所望の効果を付与する、又は疾患を治療するために眼及び/又は涙腺の細胞に適切な形質導入をもたらすのに適した任意の総数のウイルス粒子を、哺乳類又は霊長類の眼に投与することができる。様々な実施形態では、1つの眼につき、少なくとも10;5×10;10;5×10;10;5×10、1010、5×1010;1011;5×1011;1012;5×1012;1013;1.5×1013;3×1013;5×1013;7.5×1013;9×1013、1×1014ウイルス粒子、又は5×1014以上のウイルス粒子、但し典型的には1×1015以下のウイルス粒子が注射される。様々な実施形態では、1つの眼につき、少なくとも10;5×10;10;5×10、1010、5×1010;1011;5×1011;1012;5×1012;1013;1.5×1013;3×1013;5×1013;7.5×1013;9×1013、1×1014ウイルス粒子、又は5×1014以上のウイルス粒子、但し典型的には1×1015以下のウイルス粒子が注射される。哺乳類又は霊長類の眼へのベクターの投与は、任意の好適な回数行うことができる。1つの1実施形態では、本方法は単回の投与を含み、他の実施形態では、担当医(attending clinician)によって適切と判断された場合、複数回の投与が時間をかけて行われる。
【0258】
対象となるウイルスベクターは、限定されないが、1×10ベクターゲノム以上、例えば、1×10、1×1010、1×1011、1×1012、又は1×1013ベクターゲノム以上、ある特定の例では、1×1014ベクターゲノム、通常は4×1015を超えないベクターゲノムを含む任意の好適な単位投与量に製剤化することができる。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、限定されないが、1×10、1×10、1×10、1×1010、1×1011、1×1012、又は1×1013ベクターゲノム以上を含む任意の好適な単位投与量に製剤化することができる。場合によっては、単位投与量は、多くとも約5×1015ベクターゲノム、例えば、1×1014ベクターゲノム以下、例えば1×1013、1×1012、1×1011、1×1010、又は1×10ベクターゲノム以下、ある特定の例では、1×10ベクターゲノム以下、典型的には1×10ベクターゲノムより多い。場合によっては、単位投与量は、多くとも約5×1015ベクターゲノム、例えば、1×1014ベクターゲノム以下、例えば1×1013、1×1012、1×1011、1×1010、1×10、1×10、又は1×10ベクターゲノム以下である。場合によっては、単位投与量は1×1010~1×1011ベクターゲノムである。場合によっては、単位投与量は1×1010~3×1012ベクターゲノムである。場合によっては、単位投与量は1×10~3×1013ベクターゲノムである。場合によっては、単位投与量は1×10~3×1014ベクターゲノムである。
【0259】
場合によっては、医薬組成物の単位投与量は、感染多重度(MOI)を用いて測定することができる。MOIとは、核酸が送達されうる細胞に対するベクター又はウイルスゲノムの比(倍数)を意味する。場合によっては、MOIは1×10でありうる。場合によ
っては、MOIは1×10~1×10でありうる。場合によっては、MOIは1×10~1×10でありうる。場合によっては、本開示の組み換えウイルスのMOIは、少なくとも約1×10、1×10、1×10、1×10、1×10、1×10、1×10、1×10、1×10、1×1010、1×1011、1×1012、1×1013、1×1014、1×1015、1×1016、1×1017、及び1×1018である。場合によっては、本開示の組み換えウイルスのMOIは、1×10~3×1014である。場合によっては、本開示の組み換えウイルスのMOIは、多くとも約1×10、1×10、1×10、1×10、1×10、1×10、1×10、1×10、1×10、1×1010、1×1011、1×1012、1×1013、1×1014、1×1015、1×1016、1×1017、及び1×1018である。
【0260】
いくつかの実施形態では、医薬組成物の量は、約1×10~約1×1015の組み換えウイルス、約1×10~約1×1014の組み換えウイルス、約1×1010~約1×1013の組み換えウイルス、又は約1×1011~約3×1012の組み換えウイルスを含む。
【0261】
対象となるrAAV組成物を調製する際には、rAAVビリオンを産生するための任意の宿主細胞を使うことができ、例えば、哺乳類細胞(例えば293細胞)、昆虫細胞(例えばSF9細胞)、微生物及び酵母が挙げられる。宿主細胞はまた、AAV rep及びcap遺伝子が宿主細胞内で安定的に維持されるパッケージング細胞、又はrAAVビリオンゲノムが安定的に維持され、パッケージングされるプロデューサー細胞(producer cell)であることができる。例示的なパッケージング細胞及びプロデューサー細胞は、SF-9、293、A549又はHeLa細胞に由来する。rAAVビリオンは、当該技術分野で公知の標準的な技術を用いて精製及び製剤化される。
【0262】
いくつかの実施形態では、本開示は、医薬品の製造における本明細書に記載のrAAVビリオンの使用を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載の方法に使用するための医薬品の製造における本明細書に記載のrAAVビリオンの使用を提供する。
【0263】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書のrAAV、及び使用のための説明書を含むキットを提供する。いくつかの実施形態では、キットには、本明細書のrAAV、キットを使用するための説明書を含む添付文書(package insert)が含まれる。いくつかの実施形態では、キットは、それを必要とする対象における本明細書に記載の疾患、障害、又は病態を治療する、又はその進行を遅らせるための、明細書のrAAV、及び薬学的に許容される担体、又はrAAVを含む医薬組成物並びに説明書を含む。
【0264】
例示的な実施形態
本開示は以下の実施形態に関する。この項を通して、実施形態という用語は「E」と略され、その後に序数が続く。例えば、EI-1は実施形態I-1にあたる。
【0265】
実施形態I-1. それを必要とする対象における眼疾患を治療する方法であって、対象の少なくとも1つの眼又は対象の眼の少なくとも1つの涙腺に、組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンを投与することを含み、rAAVビリオンがAAVカプシド及びプロモーターに動作可能に連結された神経栄養因子をコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含む方法。
【0266】
実施形態I-2. rAAVビリオンが対象の涙腺に投与される、実施形態I-1の方法。
【0267】
実施形態I-3. 涙腺が、対象の主涙腺又はウォルフリング腺若しくはクラウス腺のいずれか1つである実施形態I-2の方法。
【0268】
実施形態I-4. 涙腺が主涙腺である実施形態I-2の方法。
【0269】
実施形態I-5. 涙腺内の細胞がrAAVビリオンで形質導入される、実施形態I-2~I-4のいずれか1つの方法。
【0270】
実施形態I-6. 涙腺内の形質導入細胞が、有効量の神経栄養因子を、対象の涙液層及び任意選択で眼表面に発現する、実施形態I-5の方法。
【0271】
実施形態I-7. 神経栄養因子が神経成長因子(NGF)タンパク質である、実施形態I-1~I-6のいずれか1つの方法。
【0272】
実施形態I-8. NGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドが、配列番号2と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含む、実施形態I-7の方法。
【0273】
実施形態I-9. NGFタンパク質が、配列番号1と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含む、実施形態I-7の方法。
【0274】
実施形態I-10. NGFタンパク質が配列番号1を含む、実施形態I-7の方法。
【0275】
実施形態I-11. NGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドが、配列番号2を含む、実施形態I-7の方法。
【0276】
実施形態I-12. 神経栄養因子がグリア由来神経栄養因子(GDNF)タンパク質である、実施形態I-1~I-6のいずれか1つの方法。
【0277】
実施形態I-13. GDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドが、配列番号4と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含む、実施形態I-12の方法。
【0278】
実施形態I-14. GDNFタンパク質が、配列番号3と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含む、実施形態I-12の方法。
【0279】
実施形態I-15. GDNFタンパク質が配列番号3を含む、実施形態I-12の方法。
【0280】
実施形態I-16. GDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドが、配列番号4を含む、実施形態I-12の方法。
【0281】
実施形態I-17. AAVカプシドが、AAV2 VP1(配列番号6)、AAV2
VP3(配列番号8)、AAV5(配列番号10)、AAV8(配列番号12)、又はAAV9(配列番号14)と少なくとも95%、98%、又は100%の同一性を共有する、実施形態I-1~I-16のいずれか1つの方法。
【0282】
実施形態I-18. プロモーターがCAGプロモーター(配列番号5)である、実施形態I-1~I-17のいずれか1つの方法。
【0283】
実施形態I-19. 眼疾患が、眼表面の化学熱傷、角膜創傷、角膜潰瘍、遷延性上皮
欠損、ドライアイ疾患、神経栄養性角膜炎、三叉神経及び/又は眼の単純ヘルペスウイルス感染症、三叉神経及び/又は眼の水痘帯状疱疹ウイルス感染症、並びに角膜神経の糖尿病合併症である、実施形態I-1~I-18のいずれか1つの方法。
【0284】
実施形態I-20. 眼疾患の1つ又は複数の症状が、rAAVビリオンの投与前の眼疾患の症状と比較して軽減される、実施形態I-1~I-19のいずれか1つの方法。
【0285】
実施形態I-21. 眼疾患の1つ又は複数の症状が、未治療対照の対象における眼疾患の症状と比較して軽減される、実施形態I-1~I-20のいずれか1つの方法。
【0286】
実施形態I-22. 眼疾患の1つ又は複数の症状が、対側眼の眼疾患の症状と比較して軽減される、実施形態I-1~I-21のいずれか1つの方法。
【0287】
実施形態I-23. 組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンであって、AAVカプシド及び発現カセットを含み、発現カセットが、プロモーターに動作可能に連結された神経栄養因子をコードするポリヌクレオチドを含む組み換えrAAVビリオン。
【0288】
実施形態I-24. 神経栄養因子が神経成長因子(NGF)タンパク質である、実施形態I-23のrAAVビリオン。
【0289】
実施形態I-25. NGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドが、配列番号2又は配列番号17と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含む、実施形態I-24のrAAVビリオン。
【0290】
実施形態I-26. NGFタンパク質が、配列番号1と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含む、実施形態I-24のrAAVビリオン。
【0291】
実施形態I-27. NGFタンパク質が配列番号1を含む、実施形態I-24のrAAVビリオン。
【0292】
実施形態I-28. NGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドが、配列番号2又は配列番号17である、実施形態I-24のrAAVビリオン。
【0293】
実施形態I-29. 神経栄養因子がグリア由来神経栄養因子(GDNF)タンパク質である、実施形態I-23のrAAVビリオン。
【0294】
実施形態I-30. GDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドが、配列番号4又は配列番号18と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含む、実施形態I-29のrAAVビリオン。
【0295】
実施形態I-31. GDNFタンパク質が、配列番号3と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含む、実施形態I-29のrAAVビリオン。
【0296】
実施形態I-32. GDNFタンパク質が配列番号3を含む、実施形態I-29のrAAVビリオン。
【0297】
実施形態I-33. GDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドが、配列番号4又は配列番号18である、実施形態I-29のrAAVビリオン。
【0298】
実施形態I-34. AAVカプシドが、AAV2 VP1(配列番号6)、AAV2
VP3(配列番号8)、AAV5(配列番号10)、AAV8(配列番号12)、又はAAV9(配列番号14)と少なくとも95%、98%、又は100%の同一性を共有するVP3を含む、実施形態I-23~I-33のいずれか1つのrAAVビリオン。
【0299】
実施形態I-35. プロモーターが、CAGプロモーター(配列番号5)又はCMVプロモーター(配列番号16)である、実施形態I-23~I-34のいずれか1つのrAAVビリオン。
【0300】
実施形態I-36. 発現カセットが、配列番号23と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を共有する配列を含む、実施形態I-23のrAAVビリオン。
【0301】
実施形態I-37. 発現カセットが、配列番号24と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を共有する配列を含む、実施形態I-23のrAAVビリオン。
【0302】
実施形態I-38. 発現カセットが、配列番号25と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を共有する配列を含む、実施形態I-23のrAAVビリオン。
【0303】
実施形態I-39. 配列番号25のポリヌクレオチドを含む発現カセットを含む組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオン。
【0304】
実施形態I-40. rAAVがAAVカプシドを含む、実施形態I-39のrAAV。
【0305】
実施形態I-41. AAVカプシドが、AAV2 VP1(配列番号6)、AAV2
VP3(配列番号8)、AAV5(配列番号10)、AAV8(配列番号12)、又はAAV9(配列番号14)と少なくとも95%、98%、又は100%の同一性を共有する、実施形態I-40のrAAV。
【0306】
実施形態I-42. rAAVビリオンを含む組成物であって、rAAVビリオンが以下を含む組成物。
(a)AAVカプシド、及び
(b)発現カセット(発現カセットは、配列番号2又は配列番号17と少なくとも95%の同一性を共有するポリヌクレオチドを含み、ポリヌクレオチドがプロモーターに連結される)
【0307】
実施形態I-43. rAAVビリオンを含む組成物であって、rAAVビリオンが以下を含む組成物。
(a)AAVカプシド、及び
(b)発現カセット(発現カセットは、配列番号4又は配列番号18と少なくとも95%の同一性を共有するポリヌクレオチドを含み、ポリヌクレオチドがプロモーターに連結される)
【0308】
実施形態I-44. rAAVビリオンを含む組成物であって、rAAVビリオンが以下を含む組成物。
(a)AAV2、AAV5、AAV8、又はAAV9カプシド、及び
(b)発現カセット(発現カセットは、配列番号2又は配列番号17と少なくとも95%の同一性を共有するポリヌクレオチドを含み、ポリヌクレオチドがプロモーターに
連結される)
【0309】
実施形態I-45. rAAVビリオンを含む組成物であって、rAAVビリオンが以下を含む組成物。
(a)AAV2、AAV5、AAV8、又はAAV9カプシド、及び
(b)発現カセット(発現カセットは、配列番号4又は配列番号18と少なくとも95%の同一性を共有するポリヌクレオチドを含み、ポリヌクレオチドがプロモーターに連結される)
【0310】
実施形態I-46. AAVカプシドが、AAV2 VP1(配列番号6)、AAV2
VP3(配列番号8)、AAV5(配列番号10)、AAV8(配列番号12)、又はAAV9(配列番号14)と少なくとも95%、98%、又は100%の同一性を共有する、実施形態I-42~I-45のいずれか1つの組成物。
【0311】
実施形態I-47. AAVカプシドがAAV2である、実施形態I-42~I-45のいずれか1つの組成物。
【0312】
実施形態I-48. AAVカプシドがAAV5である、実施形態I-42~I-45のいずれか1つの組成物。
【0313】
実施形態I-49. AAVカプシドがAAV9である、実施形態I-42~I-45のいずれか1つの組成物。
【0314】
実施形態I-50. rAAVビリオンを含む組成物であって、rAAVビリオンが以下を含む組成物。
(a)AAV2カプシド、及び
(b)発現カセット(発現カセットは、配列番号25と少なくとも95%の同一性を共有するポリヌクレオチドを含む)
【0315】
実施形態I-51. rAAVビリオンを含む組成物であって、rAAVビリオンが以下を含む組成物。
(a)AAV5カプシド、及び
(b)発現カセット(発現カセットは、配列番号25と少なくとも95%の同一性を共有するポリヌクレオチドを含む)
【0316】
実施形態I-52. rAAVビリオンを含む組成物であって、rAAVビリオンが以下を含む組成物。
(a)AAV9カプシド、及び
(b)発現カセット(発現カセットは、配列番号25と少なくとも95%の同一性を共有するポリヌクレオチドを含む)
【0317】
実施形態I-53. 実施形態I-23~I-41のいずれか1つのrAAVビリオン、又は実施形態I-42~I-52のいずれか1つの組成物、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【0318】
実施形態I-54. rAAVビリオン1ミリリットルあたり約1×10~約1×1014ゲノムコピーを含む、実施形態I-53の医薬組成物。
【0319】
実施形態I-55. rAAVビリオン1ミリリットルあたり約1×1012~約6.2×1012ゲノムコピーを含む、実施形態I-53の医薬組成物。
【0320】
実施形態I-56. 涙腺への投与向けに製剤化される、実施形態I-53~I-55のいずれか1つの医薬組成物。
【0321】
実施形態I-57. 眼表面への投与向けに製剤化される、実施形態I-53~I-55のいずれか1つの医薬組成物。
【0322】
実施形態I-58. 眼の疾患、障害、又は病態の治療に使用するために、又は使用に適合可能に製剤化される実施形態I-53~I-57のいずれか1つの医薬組成物。
【0323】
実施形態I-59. それを必要とする対象における眼疾患を治療する方法であって、有効量の実施形態I-53~I-58のいずれか1つの医薬組成物を、対象の眼又は対象の眼分泌腺に投与することを含む方法。
【0324】
実施形態I-60. rAAVビリオンが対象の涙腺に投与される、実施形態I-59の方法。
【0325】
実施形態I-61. 涙腺内の細胞がrAAVビリオンで形質導入される、実施形態I-60の方法。
【0326】
実施形態I-62. 涙腺内の形質導入細胞が、有効量の神経栄養因子を、対象の涙液層及び任意選択で眼表面に発現する、実施形態I-61の方法。
【0327】
実施形態I-63. 眼疾患が神経栄養性角膜炎である、実施形態I-59~I-62のいずれか1つの方法。
【0328】
実施形態I-64. 眼疾患の1つ又は複数の症状が、rAAVビリオンの投与前の眼疾患の症状と比較して軽減される、実施形態I-59~I-63のいずれか1つの方法。
【0329】
実施形態I-65. 眼疾患の1つ又は複数の症状が、未治療対照の対象における眼疾患の症状と比較して軽減される、実施形態I-59~I-64のいずれか1つの方法。
【0330】
実施形態I-66. 眼疾患の1つ又は複数の症状が、対側眼の眼疾患の症状と比較して軽減される、実施形態I-59~I-65のいずれか1つの方法。
【0331】
実施形態I-67. 実施形態I-1~I-22のいずれか1つの方法に使用するための、実施形態I-23~I-41のいずれか1つのrAAVビリオン、実施形態I-42~I-52のいずれか1つの組成物、又は実施形態I-53~I-58のいずれか1つの医薬組成物。
【0332】
実施形態I-68. 実施形態I-1~I-22のいずれか1つの方法に使用するための医薬品の製造における、実施形態I-23~I-41のいずれか1つのrAAVビリオン又は実施形態I-42~I-52のいずれか1つの組成物の使用。
【0333】
実施形態I-69. 実施形態I-1~I-22のいずれか1つの方法に使用ための、実施形態I-23~I-41のいずれか1つのrAAVビリオン、実施形態I-42~I-52のいずれか1つの組成物、又は実施形態I-53~I-58のいずれか1つの医薬組成物、及び説明書を含むキット。
【0334】
実施形態I-70. それを必要とする対象における眼疾患を治療する方法に使用する
ための組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンであって、その方法が、対象の少なくとも1つの眼又は対象の眼の少なくとも1つの涙腺に、組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンを投与することを含み、AAVカプシド及びプロモーターに動作可能に連結された神経栄養因子をコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含むrAAV。
【0335】
実施形態I-71. rAAVビリオンが対象の涙腺に投与される、実施形態I-70の使用のためのrAAVビリオン。
【0336】
実施形態I-72. 涙腺内の細胞がrAAVビリオンで形質導入される、実施形態I-71の使用のためのrAAVビリオン。
【0337】
実施形態I-73. 神経栄養因子が神経成長因子(NGF)タンパク質である、実施形態I-70~I-72のいずれか1つの使用のためのrAAVビリオン。
【0338】
実施形態I-74. 神経栄養因子がグリア由来神経栄養因子(GDNF)タンパク質である、実施形態I-70~I-72のいずれか1つの使用のためのrAAVビリオン。
【0339】
実施形態I-75. 眼疾患が、眼表面の化学熱傷、角膜創傷、遷延性上皮欠損、ドライアイ疾患、神経栄養性角膜炎、三叉神経及び/又は眼の単純ヘルペスウイルス感染症、三叉神経及び/又は眼の水痘帯状疱疹ウイルス感染症、及び角膜神経の糖尿病合併症から選択される、実施形態I-70~I-74のいずれか1つの使用のためのrAAVビリオン。
【0340】
本開示のいくつかの実施形態は、以下の実施形態IIに関する。
【0341】
実施形態II-1. それを必要とする対象における眼疾患を治療する方法であって、対象の少なくとも1つの眼又は対象の眼の少なくとも1つの涙腺に、組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオンを投与することを含み、rAAVビリオンがAAVカプシド及びプロモーターに動作可能に連結された神経栄養因子をコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含む方法。
【0342】
実施形態II-2. rAAVビリオンが対象の涙腺に投与される、実施形態II-1の方法。
【0343】
実施形態II-3. 涙腺が主涙腺である、実施形態II-2の方法。
【0344】
実施形態II-4. 涙腺が、対象の主涙腺又はウォルフリング腺若しくはクラウス腺のいずれか1つである、実施形態II-2の方法。
【0345】
実施形態II-5. 涙腺内の細胞がrAAVビリオンで形質導入される、実施形態II-2~II-4のいずれか1つの方法。
【0346】
実施形態II-6. 涙腺内の形質導入細胞が、治療有効量の神経栄養因子を、対象の涙液層及び任意選択で眼表面に発現する、実施形態II-5の方法。
【0347】
実施形態II-7. 神経栄養因子が神経成長因子(NGF)タンパク質である、実施形態II-1~II-6のいずれか1つの方法。
【0348】
実施形態II-8. NGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドが、配列番号2
と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含む、実施形態II-7の方法。
【0349】
実施形態II-9. NGFタンパク質が、配列番号1と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含む、実施形態II-7の方法。
【0350】
実施形態II-10. NGFタンパク質が配列番号1を含む、実施形態II-7の方法。
【0351】
実施形態II-11. NGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドが、配列番号2を含む、実施形態II-7の方法。
【0352】
実施形態II-12. 神経栄養因子がグリア由来神経栄養因子(GDNF)タンパク質である、実施形態II-1~II-6のいずれか1つの方法。
【0353】
実施形態II-13. GDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドが、配列番号4と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含む、実施形態II-12の方法。
【0354】
実施形態II-14. GDNFタンパク質が、配列番号3と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含む、実施形態II-12の方法。
【0355】
実施形態II-15. GDNFタンパク質が配列番号3を含む、実施形態II-12の方法。
【0356】
実施形態II-16. GDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドが、配列番号4を含む、実施形態II-12の方法。
【0357】
実施形態II-17. AAVカプシドが、AAV2 VP1(配列番号6)、AAV2 VP3(配列番号8)、AAV5(配列番号10)、AAV8(配列番号12)、又はAAV9(配列番号14)と少なくとも95%、98%、又は100%の同一性を共有する、実施形態II-1~II-6のいずれか1つの方法。
【0358】
実施形態II-18. プロモーターがCAGプロモーター(配列番号5)である、実施形態II-1~II-16のいずれか1つの方法。
【0359】
実施形態II-19. 眼疾患が、眼表面の化学熱傷、角膜創傷、角膜潰瘍、遷延性上皮欠損、ドライアイ疾患、神経栄養性角膜炎、三叉神経及び/又は眼の単純ヘルペスウイルス感染症、三叉神経及び/又は眼の水痘帯状疱疹ウイルス感染症、並びに角膜神経の糖尿病合併症である、実施形態II-1~II-18のいずれか1つの方法。
【0360】
実施形態II-20. 眼疾患の1つ又は複数の症状が、rAAVビリオンの投与前の眼疾患の症状と比較して軽減される、実施形態II-1~II-19のいずれか1つの方法。
【0361】
実施形態II-21. 眼疾患の1つ又は複数の症状が、未治療対照の対象における眼疾患の症状と比較して軽減される、実施形態II-1~II-20のいずれか1つの方法。
【0362】
実施形態II-22. 眼疾患の1つ又は複数の症状が、対側眼の眼疾患の症状と比較して軽減される、実施形態II-1~II-21のいずれか1つの方法。
【0363】
実施形態II-23. AAVカプシド及びプロモーターに動作可能に連結された神経栄養因子をコードするポリヌクレオチドを含む発現カセットを含む組み換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオン。
【0364】
実施形態II-24. 神経栄養因子が神経成長因子(NGF)タンパク質である、実施形態II-23のrAAVビリオン。
【0365】
実施形態II-25. NGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドが、配列番号2又は配列番号17と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含む、実施形態II-24のrAAVビリオン。
【0366】
実施形態II-26. NGFタンパク質が、配列番号1と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含む、実施形態II-24のrAAVビリオン。
【0367】
実施形態II-27. NGFタンパク質が配列番号1を含む、実施形態II-24のrAAVビリオン。
【0368】
実施形態II-28. NGFタンパク質をコードするポリヌクレオチドが、配列番号2又は配列番号17である、実施形態II-24のrAAVビリオン。
【0369】
実施形態II-29. 神経栄養因子がグリア由来神経栄養因子(GDNF)タンパク質である、実施形態II-23のrAAVビリオン。
【0370】
実施形態II-30. GDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドが、配列番号4又は配列番号18と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含む、実施形態II-29のrAAVビリオン。
【0371】
実施形態II-31. GDNFタンパク質が、配列番号3と少なくとも95%の同一性を共有する配列を含む、実施形態II-29のrAAVビリオン。
【0372】
実施形態II-32. GDNFタンパク質が配列番号3を含む、実施形態II-29のrAAVビリオン。
【0373】
実施形態II-33. GDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドが、配列番号4又は配列番号19である、実施形態II-29のrAAVビリオン。
【0374】
実施形態II-34. AAVカプシドが、AAV2 VP1(配列番号6)、AAV2 VP3(配列番号8)、AAV5(配列番号10)、AAV8(配列番号12)、又はAAV9(配列番号14)と少なくとも95%、98%、又は100%の同一性を共有するVP3を含む、実施形態II-23~II-33のいずれか1つのrAAVビリオン。
【0375】
実施形態II-35. プロモーターが、CAGプロモーター(配列番号5)又はCMVプロモーター(配列番号16)である、実施形態II-23~II-34のいずれか1つのrAAVビリオン。
【0376】
実施形態II-36. 発現カセットが、配列番号23と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を共有する配列を含む、実施形態II-23のrAAVビリオン。
【0377】
実施形態II-37. 発現カセットが、配列番号24と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の同一性を共有する配列を含む、実施形態II-23のrAAVビリオン。
【0378】
実施形態II-38. 実施形態II-23~II-37のいずれか1つのrAAVビリオン及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【0379】
実施形態II-39. rAAVビリオン1ミリリットルあたり約1×10~約1×1014ゲノムコピーを含む、実施形態II-38の医薬組成物。
【0380】
実施形態II-40. rAAVビリオン1ミリリットルあたり約1×1012~約6.2×1012ゲノムコピーを含む、実施形態II-38の医薬組成物。
【0381】
実施形態II-41. それを必要とする対象における眼疾患を治療する方法であって、治療有効量の実施形態II-38~II-40のいずれか1つの医薬組成物を、対象の眼又は対象の眼分泌腺に投与することを含む方法。
【0382】
実施形態II-42. rAAVビリオンが対象の涙腺に投与される、実施形態II-41の方法。
【0383】
実施形態II-43. 涙腺内の細胞がrAAVビリオンで形質導入される、実施形態II-42の方法。
【0384】
実施形態II-44. 涙腺内の形質導入細胞が、治療有効量の神経栄養因子を、対象の涙液層及び任意選択で眼表面に発現する、実施形態II-43の方法。
【0385】
実施形態II-45. 眼疾患が神経栄養性角膜炎である、実施形態II-41~II-44のいずれか1つの方法。
【0386】
実施形態II-46. 眼疾患の1つ又は複数の症状が、rAAVビリオンの投与前の眼疾患の症状と比較して軽減される、実施形態II-41~II-45のいずれか1つの方法。
【0387】
実施形態II-47. 眼疾患の1つ又は複数の症状が、未治療対照の対象における眼疾患の症状と比較して軽減される、実施形態II-41~II-46のいずれか1つの方法。
【0388】
実施形態II-48. 眼疾患の1つ又は複数の症状が、対側眼の眼疾患の症状と比較して軽減される、実施形態II-41~II-46のいずれか1つの方法。
【0389】
実施形態II-49. 実施形態II-1~II-22のいずれか1つの方法に使用するための、実施形態II-23~II-34のいずれか1つのrAAVビリオン又は実施形態II-35~II-38のいずれか1つの医薬組成物。
【0390】
実施形態II-50. 実施形態II-1~II-22のいずれか1つの方法に使用するための医薬品の製造における実施形態II-23~II-37のいずれか1つのrAAVビリオンの使用。
【0391】
実施形態II-51. 実施形態II-1~II-22のいずれか1つの方法に使用するための、実施形態II-23~II-37のいずれか1つのrAAVビリオン又は実施
形態II-38~II-40のいずれか1つの医薬組成物、及び説明書を含むキット。
【実施例
【0392】
以下の具体的な例は、単に例示的なものとして解釈されるべきであり、いかなる形でも開示の残りの部分を限定するものではない。
【0393】
実施例1:涙腺内注射を介したrAAVによって送達されたGFP導入遺伝子の涙腺における発現
この例は、ダッチベルテッドラビットにrAAVビリオンを涙腺内注射で単回投与した9日間のパイロット試験を示す。涙腺への注射を介して1回投与されるrAAVビリオン実施形態のパネルの有効性及び忍容性が評価される。パネルの各rAAVビリオン組成物を2つの濃度(1×1012GC/mL及び6.2×1012GC/mL)で試験した。rAAVビリオンのパネルは、AAV2、AAV5、AAV8、及びAAV9血清型を有するカプシドタンパク質を含む実施形態を含む。rAAVビリオンによって送達される発現カセットは、CMVプロモーターに動作可能に連結された強化型緑色蛍光タンパク質(eGFP)導入遺伝子をコードする(図1Cに示されている通り)。このアプローチは、涙腺の細胞に導入遺伝子を送達し、細胞内の導入遺伝子の測定可能なCAGプロモーターによる発現をもたらす、カプシドタンパク質血清型AAV2、AAV5、AAV8、及びAAV9の実現可能性を評価した。
【0394】
動物実験は、チャールス・リバー・ラボラトリーズ(CRL)の施設内で、CRLのスタッフ科学者(staff scientific personnel)によって実施された。
【0395】
動物試験システム、ハズバンダリー、及び生存動物(In-life)モニタリング
この研究で使用した動物は、4~5か月齢、体重1.3kg~2.3kgの雄のダッチベルテッドラビットであった。動物を治療開始前に10日間馴化させた。各動物を個別に収容し、通常の環境条件、給餌スケジュール、獣医学的ケアを含む標準的なケア(caregiving)プロトコールを用いて管理した。
【0396】
rAAVビリオン組成物及び製剤
この研究では、CAGプロモーターに動作可能に連結されたeGFP導入遺伝子をコードする発現カセットを含有するrAAVビリオンを含む組成物のパネルを、表4の条件下で涙腺内注射に向けて用意する。各組成物には異なるAAVカプシドタンパク質血清型をもつrAAVビリオンが含まれる。組成物をOC-100a~dと標識し、それぞれは、異なるAAVカプシドタンパク質血清型に対応する。リン酸緩衝生理食塩水溶液で希釈することによって、以下の表4に記載の目標濃度で清潔な手順を用いて、涙腺内注射用の投与製剤を調製した。
【0397】
【表12】
【0398】
rAAV組成物の涙腺内注射
試験1日目に、動物に涙腺内注射によって投与を行った。試験した各組成物の製剤濃度、投与量、投与回数、並びに動物及び涙腺の数についてのまとめを表5に載せる。注射の前に、デクスメデトミジン(0.25mg/kg)の筋肉内注射によって動物に麻酔をかけ、続いて、必要に応じて麻酔を維持するためにマスクを通してイソフルラン/酸素混合物を投与した。投与施行後、それぞれの眼に局所抗生物質を与えた。
【0399】
【表13】
【0400】
生体分析
投与1日目に投与前に採血し、8日目及び9日目にもすべての動物の耳介血管から再度採血した。血漿が遠心分離で分離されるまで、血液試料を氷の上に置いた。血漿試料を250μLのアリコートに分け、その後の分析のために-80℃で凍結した。
【0401】
8日目及び9日目にシルマー涙液試験を行って、動物から眼水分を採取した。ストリップを下眼瞼の内側に約1分間留置した。その後の分析のために、紙を取り出して別のチューブに入れ、-80℃で凍結した。
【0402】
血漿試料及びシルマー試験ストリップを、Syneos分析研究所(analytical laboratories)で検証済みの手順を用いて、eGFP及びeGFP mRNA濃度について分析した。血漿試料の分析では、eGFPタンパク質もeGFP mRNAも検出されず、rAAVの涙管内送達は細胞溶解を誘導しなかったことを示した
。この結果は、涙管投与経路がrAAVの送達に安全に使用できることを示唆する。
【0403】
涙腺組織の免疫組織化学
9日目に採血及び眼水分の採取後、ペントバルビタールナトリウムの静脈注射によって動物を安楽死させた。5つの左眼矢状切片及び左右の涙腺の切片を、チャールス・リバー研究所の標準操作手順に従って免疫組織化学(IHC)用に調整した。涙腺IHC試料をeGFPについて染色し、顕微鏡評価に供した。
【0404】
顕微鏡的評価を行って、rAAV組成物を生体内投与した涙腺組織におけるeGFP発現の効率を判定した。IHC試料中の単離陽性腺房細胞は、GFP発現を示すピンクから赤の細胞質染色を有した(図6A図6K;黒い矢印で示されている例示的な染色)。6.2×1012GC/mL(図6A)でAAV2カプシドタンパク質(OC-100a)を含有するrAAV組成物、1×1012GC/mL(図6B)及び6.2×1012GC/mL(図6C図6H)でAAV5カプシドタンパク質を含有するrAAV組成物の両方、並び6.2×1012GC/mL(図6I~6K)でAAV9カプシドタンパク質を含有するrAAV組成物について、陽性のeGFP発現が認められた。
【0405】
結論
この実施例のこれらの結果は、rAAVビリオンを使用して、直接注入によって発現カセットを涙腺に送達できることを示している。結果はまた、少なくともAAV2、AAV5、又はAAV9血清型をもつカプシドタンパク質を含有するrAAVビリオンを用いて、涙腺内の細胞に発現カセットを送達できることを示している。さらに、これらの結果は、CAGプロモーター配列に動作可能に連結された導入遺伝子を含む発現カセットの送達が、涙腺の細胞における導入遺伝子の発現をもたらすことを示している。
【0406】
実施例2
涙腺内注射を介してrAAVによって送達された涙腺における神経栄養因子の発現
この例は、AAVベクターを涙腺内注射で投与した後、ダッチベルテッドラビットに単回鼻腔内投与として投与したバレニクリンの7日間の単回投与試験を記載する。様々なAAVベクターの忍容性及び有効性を、2つの投与量レベル(100μL注射剤として1×1012GC/mL又は6.2×1012GC/mL)を涙腺内注射で投与し、それに続いてバレニクリン点鼻薬(50μLスプレーとして1.2mg/ml)を対象の各鼻孔に単回投与し、評価する。具体的には、本試験デザインの主要な目的は2点である。
(1)涙腺内注射で投与したヒト神経成長因子(hNGF)又はヒトグリア由来神経栄養因子(hGDNF)のいずれかをコード化する発現カセットを含む血清型2、5、又は9(AAV2、AAV5、AAV9)のアデノ随伴ウイルスベクターを使用して、涙腺の形質導入を評価すること。hNGF及びhGDNFタンパク質は、角膜表面の維持及び健康に関与する好中栄養因子である。
(2)バレニクリン点鼻薬で涙液産生を刺激することによって、眼表面に存在するタンパク質の相対量の増加を評価すること。バレニクリンは以下の化合物である。
【0407】
【化1】
【0408】
本研究では、実験用ウイルスベクター又は対照ベクターをダッチベルテッドラビットの涙腺に投与する。AAVx.hNGF及びAAVx.hGDNF(xは2、5、又は9)ベクターは、それぞれhNGF及びhGDNFタンパク質をコード化する導入遺伝子を含む。hNGF及びhGDNFは、AAVで送達された導入遺伝子の涙液内発現の実現可能性を実証する例示的な治療用タンパク質であり、その涙液層への分泌はバレニクリンなどの涙液誘導剤(tear inducing agent)を用いて増加させることができる。AAVx.nNGF及びAAVx.hGDNFは、6.2×1011GC/mLの投与量で投与される。ビヒクル対照を比較に使用する。
【0409】
7日目に青色光及び適切なフィルターを使用して、細隙灯生体顕微鏡法によって動物を麻酔下で評価する。この評価を細隙灯写真とともに記録する。
【0410】
8日目に、動物に1.2mg/mLのバレニクリンの50μL点鼻薬スプレーを各鼻孔に単回投与した。投与直後又は数分以内に、青色光及び適切なフィルターを使用して細隙灯生体顕微鏡法によって動物を麻酔下で評価する。この評価を細隙灯写真とともに記録する。
【0411】
方法
投与の施行(経路):涙腺内注射、各涙腺に100μL。投与頻度:各涙腺への単回注射。手順:麻酔下、約100μLの参照品1(PBS+0.001%F68)、AAVx.hNGF(6.2×1011GC/mL)、又はAAVx.hNGF(6.2×1011GC/mL)を各涙腺に直接目で見ながら投与する。涙腺注射の手順は以下の通りである:(1)右(OD)上眼瞼の下を垂直切開する;(2)涙腺が見えるまで、上眼窩縁に鈍的切開を延ばす;(3)涙腺に0.1mLの参照品1、AAVx.hNGF(6.2x1012GC/mL)、又はAAVx.hNGF(6.2×1012GC/mL)を、27G×1/2インチの滅菌針を付けた1mL滅菌シリンジを用いて注射する;(4)切開部を縫合糸/シアノアクリレート接着剤で閉じる;そして(5)この手順を左(OS)涙腺に対して繰り返す。遺伝子療法の施行を表6にまとめる。
【0412】
【表14】
【0413】
点鼻薬涙液刺激
投与の施行(経路):鼻腔内スプレー、両鼻孔。投与頻度:1回の単回投与;50μLを各鼻孔に1回スプレー;8日目。手順:バレニクリン溶液1.2mg/mlを充填したアプター(Aptar)製防腐剤不使用の鼻ポンプを使用して、動物に50μLのスプレーを各鼻孔に投与する。終了:8日目。点鼻薬涙液刺激を表7にまとめる。
【0414】
【表15】
【0415】
涙腺組織における導入遺伝子mRNAの定量
涙腺の必要な切片(0.005gから~0.025g)を直ちにRNAlater(登録商標)に入れ(完全に浸漬させる)、室温で保存し、8時間以内に温度を4℃に保つよ
うに設定した冷蔵庫に移し、一晩保存した。翌日、RNAlater(登録商標)を除去し、試料を-80℃に保つように設定した冷凍庫で凍結保存した。RT-qPCRを用いて、試料をhNGF発現について分析した。
【0416】
硬膜腺、視神経、三叉神経、上皮細胞擦過による鼻腔、瞬膜、外眼筋から0.005g~0.01gの試料を右側から採取し、RNAlaterに入れ(完全に浸漬)、室温で保存し、8時間以内に、温度を4℃に維持するよう設定した冷蔵庫に移し、一晩保存することになる。翌日、RNAlater(登録商標)を除去し、vgDNA及びmRNA分析のため、試料を-80℃に保つように設定した冷凍庫で凍結保存することになる。
【0417】
免疫組織化学(IHC)の組織学
形態学的及び免疫組織化学的評価用に、左右の涙腺の適切な切片を採取した。試料を4%パラホルムアルデヒドに包埋し、70%エタノールで固定した。パラフィンブロッキングの後、厚さ5μmの切片を得て、スライドにマウントした。各試料につき1つの切片をH&Eで染色し、免疫組織化学染色も行った。hNGFの染色は抗hNGF抗体を使用して行った。スライドを観察し、顕微鏡で撮影した画像からhNGFタンパク質の発現を評価した。
【0418】
シルマー試験
7、14、21、28、41、及び42日目に、シルマー涙液試験を行って動物から眼の水分を採取した。ストリップを下眼瞼の内側に約1分間入れた。紙を取り出して別個のチューブに入れ、後の分析のために-80℃で凍結した。21、28、及び41日目にバレニクリンを鼻腔内投与した後、シルマー試験ストリップを採取した。ストリップを下眼瞼の内側に約1分間入れた。紙を取り出して別個のチューブに入れ、後の分析のために-80℃で凍結した。シルマー試験ストリップに吸収されたタンパク質含量を、ELISAアッセイでhNGFの濃度について分析した。
【0419】
結果
涙腺組織における導入遺伝子mRNAの定量を表8に示す。
【0420】
【表16】
【0421】
ビヒクル対照動物の組織はすべて、bGH遺伝子発現が陰性であり、動物への投与、試料の採取、RNA抽出、及びRT-qPCR分析からの交差汚染が十分に抑えられていることを示した。注射したすべての涙腺組織で、rAAVベクターに由来するhGDNF mRNAを検出した。第3~6群では、注射した涙腺組織のなかには、トータルRNA1μgあたりssコピー数が1151~585,401のhNGF又はhGDNF mRNAを有するものがあったが、一方で検出可能なベクター由来のmRNAが有しないものもあった。
【0422】
免疫組織化学を用いて、涙腺組織をhNGF発現についてさらに評価した(図7A~7E)。涙液内注射後、動物を安楽死させ、注射した涙腺の切片を免疫組織化学(IHC)用に調製した。涙腺IHC試料をhNGFについて染色し、顕微鏡評価に供した。顕微鏡評価を行って、rAAV組成物を生体内で投与した涙腺組織におけるhNGF発現の効率を決定した。図7A及び図7D~7Eは、AAV9血清型をもつrAAVを注射したウサギの涙腺におけるIHC染色の例示的な例を示す(例示的な染色を黒い矢印で示す)。hNGF染色組織は、hNGF導入遺伝子の強い発現を示す。陰性対照試料と比較することによって結果を確認し(図7B及び図7C)、その対照試料で染色がほとんどみられないので、バックグラウンドによる染色は除外する。これらの結果は、rAAVの涙液内注射を使用して、神経栄養因子導入遺伝子、例えばhNGFを涙腺組織に送達及び発現できることを示している。
【0423】
rAAVの投与後7及び14日目に、シルマー涙液試験を行って動物から眼の水分を採取した。ストリップを下眼瞼の内側に約1分間入れた。紙を取り出して別個のチューブに入れ、後の分析のために-80℃で凍結した。ストリップを下眼瞼の内側に約1分間入れた。紙を取り出して別個のチューブに入れ、後の分析のために-80℃で凍結した。シルマー試験ストリップに吸収されたタンパク質量を、ELISAアッセイでhNGFの濃度について分析した。
【0424】
シルマー試験ストリップを、採取した涙液層中のhNGFの濃度について分析した(図8)。涙液中の正常なNGF濃度は約50pg/mLと予想される。rAAV9.hNGF又はrAAV2.hNGFの涙腺内投与後、hNGF濃度は正常濃度の100倍を超えていた。14日目には、rAAV9.hNGFを投与したウサギのhNGFの濃度は正常
濃度の100倍を超えたままであり、rAAV2.hNGFを投与したウサギのhNGF濃度は低下したが、rAAVなし対照群と比較してはるかに高いままであった。rAAV5.hNGFを投与されたウサギでは、7日目にhNGF濃度の増加が見られ、14日目までに低下して対照レベルに戻った。
【0425】
まとめると、これらの結果が示しているのは、hNGFやhGDNFなどの神経栄養因子が、AAV2、AAV5、及びAAV9血清型を含むrAAVの涙腺内注射を介して送達されたとき、導入遺伝子として発現し、AAV9血清型が最良の結果を示すということである。
【0426】
実施例3:涙腺内注射を介してrAAVによって送達されたEGFP導入遺伝子のブタ涙腺における発現
本研究の目的は、涙腺がブタの目的のタンパク質で涙液層を改変又は濃縮する方法として活用できるかどうかを評価することであった。次に、生体内での研究を行って、eGFPをコードするプラスミドからなるアデノウイルスベクターを送達した後に、EGFPが涙腺の腺房細胞で産生され、涙液層に分泌されるかどうかを調べた。腺房細胞にEGFPをコードするcDNAを得るために、発明人らの(our)アプローチは分泌EGFP(secEGFP)をコードするcDNAを含有したアデノ随伴ウイルス(AAV)を涙腺
に注射することになっている。secEGFP用に2つの異なる血清型(2及び9)の各AAVを作るために、secEGFP発現に必須な要素を逆位末端反復(ITR)間に含有するAAVトランスファープラスミドを作った。ITR間のDNA配列を、作製したAAV(図9)にパッケージした。
【0427】
AAVの11の血清型が同定されており、最もよく特徴がわかっているのはAAV2である。AAVシュードタイピングは、異なる血清型のカプシドとゲノムを混合して形質導入効率を向上させることであり、これらの血清型はスラッシュで示される。例えば、AAV2/5は、血清型5由来のカプシドにパッケージされた血清型2を含有するウイルスを示す。AAV5及びAAV9は、マウスの涙腺にルシフェラーゼレポーター遺伝子を送達できることが報告されている(非特許文献6)。GFP及びマウス神経成長因子(mNGF)によるマウス涙腺形質導入は、偽型AAV2/5及びAAV2/9で観察され、プレプリントサーバサイト(pre-print server site)で最近報告された(非特許文献21)。
【0428】
デザイン分析と方法論
分泌EGFP(血清型2及び9)の研究グレードAAVはSirionで合成され、5×1012のストック濃度で供給された。作製されたAAVは、HEK293T細胞及びELISAを使用してCJソリューションズによってインビトロで検査され、そのAAVが細胞を形質転換するであろうことを確認した。テキサスA&M大学では、8頭の家畜ブタにEGFPの1回の涙腺内注射を行い、右(OD;右眼)腺に低投与量、左(OS;左眼)腺に高投与量を投与した。最初の注射の6週間後に、AAV2及びAAV9高投与量の2回目の注射を行った。本試験では、35日目にEGFP発現を評価した。涙EGFPレベルを確認した後、2回目の注射の8週間後に試験を終了して、涙腺におけるEGFPの有無を評価し、何らかの炎症の可能性又は腺の異常を評価した(表9及び10)。この研究では、3~4週目に点鼻薬投与を施した(表11)。
【0429】
【表17】
【0430】
【表18】
【0431】
【表19】
【0432】
2回目のAAV-secEGFP注射後、82日目にシルマー試験ストリップを介して各眼から涙を採取した。シルマー涙液試験ストリップを下結膜円蓋に入れ、2分間そのままにすることによって涙を採取した。シルマー涙液試験ストリップから涙タンパク質を抽出し、メソスケールディスカバリー(MSD)分析を行って、涙液中のEGFPタンパク質の存在を検出した。
【0433】
103日目に眼組織病理検査のために涙腺を採取し、EGFP免疫組織化学検査(IHC)のために試料をZyagen社に送った。
【0434】
ELISAの結果は、作製したAAV血清型はHEK293T細胞を形質導入でき、インビトロで分泌EGFPを産生したことを示した。涙液試料中のEGFP発現は、AAV形質導入の82日後のMSD分析及びIHCによって、若干>400pg/mLのレベル(some levels >400 pg/mL)のeGFPが確認された(図10)。IHCは、EGFP発現が腺房細胞内にあり、AAV9と比較してAAV2で、より大きな腺房細胞感染性が観察されたことを示した。さらに、AAV9を注射した涙腺で、延性(ductile)上皮細胞の形質導入が観察された(図11)。反復AAV注入後のブタ涙腺のヘマトキシリン及びエオシン染色は、炎症性浸潤、萎縮又は浮腫を何ら示さなかった(図12)。
【0435】
AAV2-secEGFP又はAAV9-secEGFPのいずれかを注射したブタ涙腺は、腺房細胞及び延性上皮細胞においてEGFP導入遺伝子産物を発現した。涙腺に発現したEGFPは涙液層に分泌されることがわかった。さらに、いずれの動物でも、AAV2又はAAV9の反復投与後に、初回注射の間に、低投与量を最初に受けたか、高投与量のAAVを最初に受けたかにかかわらず、安全性シグナル(safety signals)も炎症性浸潤も観察されなかった。この研究の結果は、涙腺の腺房細胞が、涙液層を改変及び/又は濃縮する遺伝子療法アプローチの標的であることを示す。
【0436】
実施例4.形質導入後のブタ涙液におけるヒト神経成長因子βタンパク質の検出
アデノ随伴ウイルス血清型2(n=4)、5(n=4)、及び9(n=4)ベクターを利用し、ヒト神経成長因子(AAV-hNGFβ)をコードするアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)の単回投与(2e11vg/mL)を用いた(涙腺内注射による)涙腺の形質導入の7(7)、14(14)、21(21)、28(28)、及び35(35)日後に12頭のブタ(スース・スクローファ・ドメスティクス(Sus scrofa domesticus))から涙液を採取した。涙液試料の採取は、7、14、21、28、及び35日目に、麻酔をかけた動物の右目(OD)と左目(OS)の両方の下眼瞼の下にそれぞれ約120秒間入れたシルマー涙液試験ストリップを用いて行った。22~27日目に、0.03mgのバレニクリン溶液を1日2回(BID)各鼻孔に投与した。28日目の涙液採取では、0.03mgのバレニクリン溶液を、涙液採取の2分前に点鼻ポンプを介して各鼻孔に投与した。すべての採取日において、シルマー涙液試験ストリップを液体移動ライン(fluid migration line)のすぐ上で切り、試験ストリップの液体飽和部分を直ちに氷上のマイクロ遠心分離器に入れた。ドライアイス上で検査施設(testing facility)に送る前に、採取した試料を-20℃で保存した。
【0437】
左眼のシルマー涙液試験ストリップからタンパク質を抽出し、ヒト神経成長因子タンパク質(hNGFβ)を検出するメソスケールディスカバリーアッセイを各試料に対して行った。ヒトNGFのMSDアッセイの標準曲線の最小値と最大値は、それぞれ0.104~427pg/mLであった。(配列番号25の発現カセットを含む;図14に示される)の導入は、涙液中にhNFGβを生じた(それぞれ図13A~13C)。AAV9-hNGFβ形質導入は、検出のために試料を16~128倍に希釈しなければならないほど高い発現を生じた(表12)。希釈試験から得られたAAV9-hNGFβ形質導入ブタのhNGFβの涙液層レベルの平均計算値は5,612.84pg/mLである。様々なタンパク質をコードするAAVベクターを利用した過去の研究から集めたhNGF MSDデータに基づいて、hNGFβは非形質導入ブタ涙液層で検出されなかったことに留意すべきである。したがって、シルマーストリップ涙液試料の抽出物から検出されたいずれのhNGFβタンパク質も、MSDアッセイの間に容易に同定され、AAV‐hNGFβコンストラクトによる涙腺の形質導入によるものであった。AAV2-hNGFβの21日目に採取した試料(図13A)には、分析から省いた外れ値(グラブス検定で求めたp
<0.05)が含まれる。図13(c)に示されるように、AAV9-hNGFβについては、7~28日目の間に有意な減少は認められなかった。さらに、21日目(点鼻薬なし)、28日目(点鼻薬投与)、及び35日目(点鼻薬なし)に採取した、AAV9-hNGFβを投与した動物の試料間でhNGFタンパク質レベルを比較した。点鼻薬の投与は、AAV投与単独と比較して、点鼻薬を投与した場合に涙液hNGFβタンパク質濃度を増加させた(データは示されていない)。
【0438】
まとめると、このデータは、hNGFβをコードするアデノウイルス随伴ベクターによるブタ涙腺の形質導入が、検出可能な量のhNGFβの発現、分泌、及び涙液層への輸送をもたらしたことを示している。発現は涙腺形質導入の7日以内に検出可能であり、発現レベルの有意なばらつきは、用いたAAV血清型に依存した。AAV9は7日以内に最高レベルの発現を示し、AAV2は最低レベルを示したが、依然としてヒト神経成長因子βタンパク質の検出に用いた分析アッセイの範囲内であった。涙液中のAAV2タンパク質レベルは28日まで着実に増加したが、AAV5は最初の7日の後から減少し、14日目から28日目で定常状態に達し、35日目でさらに減少したようである。AAV9を形質導入した動物では、7日目に涙液層中に有意なレベルのhNGFが検出され、それは35日目まで一定のままであった。
【0439】
【表20】
【0440】
本発明の実施形態が本明細書に示され、説明されているが、当業者であれば、そのような実施形態は例としてのみ提供されていることを理解するであろう。当業者であれば、本発明から逸脱することなく、数多くの変形、変更及び置換が可能であろう。本明細書に記載の本発明の実施形態に対する様々な代替案が、本発明を実行する際に使用されうることが理解されるべきである。以下の特許請求の範囲は、本発明の範囲を画定し、これらの特許請求の範囲内の方法及び構造並びにそれらの均等物は、それにより包含されることが意図されている。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図6I
図6J
図6K
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図14
【配列表】
2024516875000001.app
【国際調査報告】