(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-17
(54)【発明の名称】多媒体用回転ユニオン
(51)【国際特許分類】
F16J 15/34 20060101AFI20240410BHJP
F16L 27/087 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
F16J15/34 C
F16J15/34 K
F16L27/087
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568614
(86)(22)【出願日】2022-04-26
(85)【翻訳文提出日】2023-12-20
(86)【国際出願番号】 EP2022061118
(87)【国際公開番号】W WO2022233652
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】102021111688.0
(32)【優先日】2021-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102021111690.2
(32)【優先日】2021-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102021131994.3
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102021131995.1
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523416287
【氏名又は名称】デュブリン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Deublin GmbH
【住所又は居所原語表記】Florenz-Allee 1, 55129 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】グリム, エーベルハルト
【テーマコード(参考)】
3H104
3J041
【Fターム(参考)】
3H104JA04
3H104JB04
3H104JC08
3H104JC10
3H104JD09
3H104LE02
3H104LF10
3H104MA09
3J041AA01
3J041AA06
3J041BA03
3J041BA20
3J041BD06
3J041DA05
3J041DA16
(57)【要約】
本発明は、異なる粘性を有する異なる流体媒体を静止機械部分から回転機械部分に移送するための、多媒体用回転ユニオン(10)であって、
流体媒体が加圧された状態で導入可能な媒体主チャネル(20)を有する、前記静止機械部分内への組み込みのための静止ハウジング部(12)と、
前記静止ハウジング部(12)の前記媒体主チャネル(20)と流体連通するロータ流体チャネル(17)を有する、前記回転機械部分との接続のためのロータ(16)と、
前記静止ハウジング部(12)と前記ロータ(16)との間のメカニカルシール(30)であって、前記メカニカルシール(30)は、前記ロータ(16)と共に回転するロータ摺動リング(38)及びステータ摺動リング(36)を含み、前記ステータ摺動リング(36)又は前記ロータ摺動リング(38)は、軸方向に移動可能な摺動リングキャリア(34)に固定されており、それにより、軸方向に移動可能な摺動リング構成(32)が形成され、前記回転ユニオン(10)内の前記媒体圧力は、閉める向きに前記メカニカルシール(30)に作用する第1の軸方向の力成分(K1)を、前記軸方向に移動可能な摺動リング構成(32)に及ぼす、メカニカルシール(30)と、
前記回転ユニオン(10)内の前記媒体圧力が所定の圧力閾値(pS)を超えた時に、前記回転ユニオン(10)内の前記媒体圧力によってアクティブ化され、アクティブ化された状態において、前記メカニカルシール(30)の閉鎖力に影響を及ぼす付加的な第2の軸方向の力成分(K2)を、前記摺動リング構成(32)に及ぼす、前記軸方向に移動可能な摺動リング構成(32)に作用するクランピング装置(100)と、
を含むものに関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体媒体を静止機械部分から回転機械部分(18)内へ移送するための、特に圧縮性の媒体にも、異なる粘性を有する非圧縮性の媒体にも適した回転ユニオン(10)であって、
流体媒体が加圧された状態で導入可能な媒体主チャネル(20)を有する、前記静止機械部分内への組み込みのための静止ハウジング部(12)と、
前記静止ハウジング部(12)の前記媒体主チャネル(20)と流体連通するロータ流体チャネル(17)を有する、前記回転機械部分との接続のためのロータ(16)と、
前記静止ハウジング部(12)と前記ロータ(16)との間のメカニカルシール(30)であって、前記メカニカルシール(30)は、前記ロータ(16)と共に回転するロータ摺動リング(38)及びステータ摺動リング(36)を含み、前記ステータ摺動リング(36)又は前記ロータ摺動リング(38)は、軸方向に移動可能な摺動リングキャリア(34)に固定されており、それにより、軸方向に移動可能な摺動リング構成(32)が形成され、前記回転ユニオン(10)内の前記媒体圧力は、閉める向きに前記メカニカルシール(30)に作用する第1の軸方向の力成分(K1)を、前記軸方向に移動可能な摺動リング構成(32)に及ぼす、メカニカルシール(30)と、
前記回転ユニオン(10)内の前記媒体圧力が所定の圧力閾値(pS)を超えた時に、前記回転ユニオン(10)内の前記媒体圧力によってアクティブ化され、アクティブ化された状態において、前記メカニカルシール(30)の閉鎖力に影響を及ぼす付加的な第2の軸方向の力成分(K2)を、前記摺動リング構成(32)に及ぼす、前記軸方向に移動可能な摺動リング構成(32)に作用するクランピング装置(100)と、
を含む回転ユニオン(10)。
【請求項2】
前記メカニカルシール(30)は、荷重比B = F
H / Fを定義し、ここで、F
Hは前記摺動リング構成(32)のうち前記媒体圧力によって液圧又は空気圧が付加された面積であり、Fは前記ステータ摺動リング(36)と前記ロータ摺動リング(38)との間の接触面積であり、前記第1の軸方向の力成分(K1)は、前記荷重比(B)に基づき、前記回転ユニオン(10)内の前記媒体圧力に比例して増大し、
前記クランピング装置(100)は、前記媒体圧力が前記圧力閾値(p
S)を超え、前記クランピング装置(100)がアクティブ化された時、前記荷重比(B)に基づく前記第1の軸方向の力成分(K1)に加えて付加的に前記第2の軸方向の力成分(K2)を前記摺動リング構成(32)に加える、
請求項1に記載の回転ユニオン(10)。
【請求項3】
前記媒体圧力が所定の前記圧力閾値(p
S)を超えた時、前記摺動リング構成(32)に対する前記クランピング装置(100)の前記付加的な第2の軸方向の力成分(K2)は、圧力に直依存しないか又は前記媒体圧力に依存する、請求項1又は2に記載の回転ユニオン(10)。
【請求項4】
前記クランピング装置(100)は、前記静止ハウジング部(12)内に存在する前記媒体圧力によって荷重を負荷される、1つ又は複数のバネ(106)を備える、請求項1に記載の回転ユニオン(10)。
【請求項5】
バネによる荷重負荷の所定の閾値を超えた時、前記クランピング装置(100)はアクティブ化され、前記第2の軸方向の力成分(K2)を前記摺動リング構成(32)に及ぼす、請求項4に記載の回転ユニオン(10)。
【請求項6】
前記摺動リングキャリア(34)は、前記クランピング装置100)の前記付加的な第2の軸方向の力成分(K2)を前記摺動リング構成(32)に伝達するために、前記クランピング装置(100)が係合する外側のフランジ(46)を備える、請求項1に記載の回転ユニオン(10)。
【請求項7】
前記クランピング装置(100)は力分配リング(122)を備え、前記力分配リング(122)は、前記クランピング装置(100)によって加えられた前記付加的な第2の軸方向の力成分(K2)を、環状に前記摺動リングキャリア(34)に分配する、請求項1に記載の回転ユニオン(10)。
【請求項8】
前記クランピング装置(100)は、1つ又は複数のバネ付勢されたピストン(102)を備え、前記ピストン(102)は、前記媒体圧力によって前記バネ力に抗して荷重を負荷され、前記回転ユニオン(10)内の前記媒体圧力が前記圧力閾値(p
S)を超えた時にのみ、前記クランピング装置(100)の付加的な前記第2の軸方向の力成分(K2)を前記摺動リング構成(32)に及ぼす、請求項1に記載の回転ユニオン(10)。
【請求項9】
前記静止ハウジング部(12)は、1つ又は複数の軸方向のボア(104)を有し、前記ボア(104)内で、前記バネ付勢されたピストン(102)が、軸方向に移動可能に支持されている、請求項8に記載の回転ユニオン(10)。
【請求項10】
前記バネ付勢されたピストン(102)は、それぞれ関連する前記ボア(104)内で、シールリング(114)によってシールされている、請求項9に記載の回転ユニオン(10)。
【請求項11】
前記媒体主チャネル(20)からの前記媒体圧力は、前記ピストン(102)を、加圧された状態で、それぞれの前記軸方向のボア(104)内で、バネ付勢に抗して前記メカニカルシール(30)の方向に変位させるために、前記ピストン(102)の後方の端面(112)に印加される、請求項9に記載の回転ユニオン(10)。
【請求項12】
前記クランピング装置(100)は、少なくとも2個又は3個の、好ましくは2~6個の、好ましくは2個、3個又は4個の、バネ付勢されたピストン(102)を備え、前記ピストン(102)は、前記静止ハウジング部(12)内で前記摺動リングキャリア(34)を取り囲んで、特に均一に配置されている、請求項8~11のいずれか1項に記載の回転ユニオン(10)。
【請求項13】
前記バネ付勢されたピストン(102)は、前記クランピング装置(100)の前記付加的な第2の軸方向の力成分(K2)を、直接的に前記外側のフランジ(46)に又は直接的に前記力分配リング(122)に伝達するために、軸方向に前記摺動リングキャリア(34)の前記外側のフランジ(46)に又は軸方向に前記力分配リング(122)に接触する、請求項8~11のいずれか1項に記載の回転ユニオン(10)。
【請求項14】
前記静止ハウジング部(12)は、前記バネ付勢されたピストン(102)のための停止部(136)を備え、前記停止部(136)は、前記クランピング装置(100)がアクティブ化された時、前記バネ付勢されたピストン(102)の前記ストロークを制限し、
前記バネ付勢されたピストン(102)は、それぞれ閉鎖力アクティブ化バネ(132)を備え、前記閉鎖力アクティブ化バネ(132)は、前記クランピング装置(100)の前記アクティブ化された状態において、媒体圧力に依存しない一定のバネ力を前記摺動リング構成(32)に及ぼし、その結果、前記クランピング装置(100)によって生成された前記付加的な第2の軸方向の力成分(K2)は、前記クランピング装置がアクティブ化された時及びアクティブ化されている限り、媒体圧力に依存しない、
請求項8~11のいずれか1項に記載の回転ユニオン(10)。
【請求項15】
前記圧力閾値(p
S)は、圧縮空気動作のための前記回転ユニオン(10)の前記最大許容動作圧力以上である、及び/又は、前記圧力閾値(p
S)は5 barより大きく、好ましくは10 bar以上である、請求項1に記載の回転ユニオン(10)。
【請求項16】
前記回転ユニオン(10)は、全ての所望の媒体を、それぞれ媒体に固有の所望の媒体圧力で、前記媒体主チャネル(20)内へ導入するために、媒体加圧ラインの接続のための接続ポート(22)を含み、前記回転ユニオン(10)は、圧縮性の媒体、特に圧縮空気、及び、非圧縮性の媒体、特に切削油又は作動油が、同一の接続ポート(22)を介して、加圧された状態で、同一の媒体主チャネル(20)内へ導入され得るように調整されている、請求項1に記載の回転ユニオン(10)。
【請求項17】
前記接続ポート(22)は、軸方向の又は径方向の接続ポートである、請求項16に記載の回転ユニオン(10)。
【請求項18】
前記メカニカルシール(30)の前記荷重比(B)は、約0.40~0.65の範囲の、好ましくは約0.45~0.60の範囲の、好ましくは約0.47~0.60の範囲の、好ましくは約0.50~約0.57の範囲の値を有する、請求項1に記載の回転ユニオン(10)。
【請求項19】
前記摺動リングキャリア(34)は、二次シール(60)によって前記静止ハウジング部(12)内でシールされ、軸方向に移動可能に支持されており、特に、前記二次シール(60)は、U字形断面を有するエラストマーリング(64)を含む、請求項1に記載の回転ユニオン(10)。
【請求項20】
特に請求項1に記載の多媒体用回転ユニオン(10)を動作させるための方法であって、
外部の加圧ガス源(402)が、外部の加圧ガス供給ライン(408)及び外部の分配器(410)を介して、前記回転ユニオン(10)の接続ポート(22)に接続され、
液体媒体、特に6 mm2/s以上の粘性を有する切削油若しくは作動油、又は、冷却潤滑剤を有する外部の媒体リザーバ(412)が、外部の液体媒体加圧供給ライン(418)及び前記分配器(410)を介して、前記回転ユニオン(10)の同一の接続ポート(22)に接続され、
加圧ガス動作状態で、第1の時間間隔において、前記加圧ガス供給ライン(408)及び前記接続ポート(22)を介して、前記液体媒体よりも低い圧力、特に10 bar以下の圧力を有する加圧ガスが、前記媒体主チャネル(20)内へ導入され、前記クランピング装置(100)はアクティブ化されておらず、前記クランピング装置(100)は前記加圧ガス及び前記メカニカルシール(30)に対する閉鎖力と共に回転し、前記閉鎖力は、圧力に依存する第1の軸方向の力成分によって定義され、前記加圧ガスは、後に再びスイッチオフされ、
液体媒体動作状態で、第2の時間間隔において、前記液体媒体加圧供給ライン(418)及び同一の接続ポート(22)を介して、前記液体媒体、特に6 mm2/s以上の粘性を有する前記切削油若しくは作動油、又は、前記冷却潤滑剤が、前記加圧ガスよりも高い圧力、特に10 barより大きな圧力で、前記媒体主チャネル(20)内へ導入され、前記クランピング装置(100)は前記液体圧力によってアクティブ化され、前記回転ユニオン(10)は前記液体媒体及び前記メカニカルシール(30)に対する付加的な閉鎖力と共に回転し、前記付加的な閉鎖力は、前記第1の軸方向の力成分(K1)と、圧力に依存する又は圧力に依存しない付加的な第2の軸方向の力成分(K2)とから構成され、圧力に依存する前記第1の軸方向の力成分(K1)は、前記荷重比(B)によって、前記圧力に依存する又は圧力に依存しない付加的な第2の軸方向の力成分(K2)は、前記液体媒体の前記媒体圧力により液圧的にアクティブ化されたクランピング装置(100)によってもたらされ、前記液体媒体は、後に再びスイッチオフされる、方法。
【請求項21】
ドライランニング動作状態で、第3の時間間隔において、前記回転ユニオン(10)は、媒体なしでドライランニングで回転し、前記クランピング装置(100)はアクティブ化されておらず、前記メカニカルシール(30)は、前記二次シールによって開かれた状態で維持される、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、静止機械部分から回転機械部分へ異なる粘性を有する種々の流体媒体を移送するための多媒体用回転ユニオン、及び、特には、特に非常に異なる粘性を有する種々の媒体、例えば一方では圧縮性の媒体、他方ではより粘性の高い非圧縮性の媒体が、選択的に、回転ユニオン内へ加圧された状態で導入され得る、多媒体用回転ユニオンに関する。
【背景技術】
【0002】
回転ユニオンは、典型的には、流体媒体を、例えば工作機械の回転スピンドルのような回転機械部分内へ送り込むために使用される。このために、回転ユニオンは、静止部材と回転部材との間にシールを含む。このシールは、軸方向のメカニカルシールとして形成され得る。典型的には、軸方向のメカニカルシールにおいては、2つの摺動リング又は摺動シールリングが互いに摺動し、摺動リングのうちの一方が他方に対して、回転軸に対して同軸に回転し、摺動リングは、流体媒体によって加圧された内部空間を外側領域の大気圧に対してシールするために、対向し互いに隣接する環状の端面によって互いにシールする。回転ユニオンによって移送されるべき流体媒体の種類は種々であり得る。特に、例えば圧縮空気などの気体のような圧縮性の媒体、並びに、例えば冷却潤滑剤(KSS)、及び、例えば切削油又は作動油などの油のような液体媒体を含み得る。冷却潤滑剤(KSS)は、大抵の場合、実質的に油-水エマルジョンから成り、典型的には、純水の粘性よりもはるかには高くない粘性、したがって比較的低い粘性を有する。それに反して、切削油及び作動油は、60 mm2/s(cSt)まで又はそれより大きい可能性のある、著しく高い粘性を有する。同様に公知の方法は、いわゆる少量潤滑又は最少量潤滑(MMS/MQL)である。これは、典型的には、オイル-ガス混合物の形態の、すなわち実質的に圧縮性の媒体でもある、エアロゾルを使用する。
【0003】
多数の回転ユニオンが存在し、これらは、大抵の場合、前述した流体媒体のうちの1つ又は特定のいくつかに対して、及び/又は、許容される動作パラメータの特定の範囲に対して、多かれ少なかれ最適化されている。異なる特性又は粘性を有する種々の流体媒体と共に動作され得る回転ユニオンも知られているが、これらは、所望の程度には汎用性又は信頼性がないことが示されている。例えば、これらは、特定の条件下で、及び/又は、多くの媒体で、例えば高い回転数などの状況下で過熱する可能性があり、これは、回転ユニオンの破壊にまでつながる可能性がある。とりわけ、汎用性があると誤解された多くの回転ユニオンは、例えばドライランニング中又は圧縮空気により、高い回転数において、安定性に関する重大な問題を有する可能性のあることが示されている。ドライランニングとは、典型的には、媒体による加圧のない回転ユニオンの回転動作を指す。
【0004】
更に、従来の回転ユニオンは、部分的に、圧縮空気動作において、例えば100標準リットル/分以上の比較的高い漏れ率を有する可能性があり、これも望ましくない可能性がある。
【0005】
デュブリン社の特許文献1及び特許文献2には、メカニカルシールの荷重比(バランス比と称されることもある)が特別に予め選択された区間内にあり、広い圧力及び回転数範囲において2つの摺動リングの間の適切な接触圧力を保証する技術が記載されている。デュブリンの技術は、専門家の間ではAutoSense(登録商標)としても知られている。
【0006】
全体として、市場で入手可能な従来の回転ユニオンの多くは、例えば動作パラメータの使用範囲、使用可能な流体媒体に関する多様性、安定性、ユーザにとっての簡便性、汎用性等のような、回転ユニオンに対する部分的に対立する要件の全体に関して、異なる態様で多かれ少なかれ制限されている。
【0007】
共に2021年5月5日に出願され公開されていない同一出願人の特許文献3及び特許文献4(これらは、参照により本明細書に組み込まれる。)から、粘性の異なる媒体のための2つの異なる荷重比を有し、荷重比は異なる媒体入口チャネルを介して制御される多媒体用回転ユニオンが知られている。しかしながら、多くの用途において、このために必要とされる複数の媒体接続は、あまり望ましくない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第1744502号明細書
【特許文献2】欧州特許第2497978号明細書
【特許文献3】DE 10 2021 111 688
【特許文献4】DE 10 2021 111 670
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、種々の媒体、特に、一方では例えば圧縮空気のような圧縮性の媒体に、他方では例えば切削油又は作動油のようなより高い粘性を有する非圧縮性の媒体に適した、多媒体用回転ユニオンを提供するという課題を有している。
【0010】
当該課題の別の態様は、異なる媒体、粘性及び圧力での動作時に低い漏れ率を示し、高い回転数においても長寿命かつ低摩耗で作動する、多媒体用回転ユニオンを提供することである。
【0011】
当該課題の別の態様は、i)切削油又は作動油、ii)冷却潤滑剤(KSS)、iii)圧縮空気、iv)少量潤滑又は最少量潤滑のためのエアロゾル媒体、でも、v)媒体のない非加圧の状態、すなわちドライランニング中にも、それぞれ高い回転数下で長寿命かつ低摩耗で作動する、多媒体用回転ユニオンを提供することである。
【0012】
当該課題の別の態様は、ユーザにとっての使用中の大きな汎用性(「one-for-all」)及び簡便性が互いに調和され、従来の回転ユニオンのユーザに後方互換性を可能にする、多媒体用回転ユニオンを提供することである。
【0013】
当該課題の別の態様は、前述した欠点を有さないか又はより僅かにしか有さない、回転ユニオンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の課題は、独立請求項の主題によって解決される。本発明の有利な発展形態は、下位請求項において定義されている。
【0015】
本発明の一態様によれば、圧縮性及び非圧縮性の媒体の両方、並びに、異なる、特に高い粘性を有する媒体を含む種々の流体媒体を、同一の回転ユニオン内で静止機械部分から回転機械部分へ移送するための、多媒体用回転ユニオンが提供される。回転ユニオンは、静止機械部分内へ組み込むための静止ハウジング部と、回転機械部分に接続するためのロータとを含む。静止ハウジング部は、軸方向の又は中央の内部ステータ流体チャネルの形態の中央の作業空間を有する、特に(同軸の)軸方向の媒体主チャネルを取り囲む。例えば中空シャフトの形態のロータは、同様に特に軸方向の又は中央のロータ流体チャネルを有し、静止ハウジング部及びロータの流体チャネルは、ロータが静止ハウジング部に対して、必要に応じて高い回転数で回転し得るよう、恒久的に、すなわち回転中にも、互いに流体連通し、それぞれの加圧された媒体は、ロータ流体チャネルから接続された回転機械部分内へ導入されるよう、回転中、静止ハウジング部の媒体主チャネルから回転するロータのロータ流体チャネル内へ流れる。静止ハウジング部は、一体に又は複数の部品から成るものとして形成され得る。
【0016】
回転ユニオンは、静止ハウジング部とロータとの間の軸方向のメカニカルシールを含み、当該メカニカルシールは、回転中、ロータと静止ハウジング部との間の流体連通部をシールする。メカニカルシールは、このために、ロータと共に回転する摺動リング又は摺動シールリング、いわゆるロータ摺動リング、及び、回転しない摺動リング又は摺動シールリング、いわゆるステータ摺動リングを含み、2つの摺動リングは、それらの対向し相対的に回転する環状のシール面で、回転ユニオンの静止領域と回転領域との間の移行部をシールする。メカニカルシールが、例えば非加圧のドライランニング又は圧縮空気動作において制御された態様で開くことができるように、2つの摺動リングのうちの少なくとも1つは、僅かに軸方向に移動可能に支持されている。このために、この摺動リングは、軸方向に移動可能に支持された摺動リングキャリアに固定されており、その結果、摺動リングキャリア及び関連する摺動リングは、軸方向に移動可能な摺動リング構成を形成し、メカニカルシールは、摺動リング構成、すなわち摺動リングが固定された摺動リングキャリアの軸方向の移動によって、開閉し得る。構造的な観点からは、大抵の場合、ステータ摺動リングを軸方向に移動可能に支持することが、より容易である。この場合、軸方向に移動可能な摺動リングキャリアは、それに固定されたステータ摺動リングと共に、軸方向に移動可能なステータ摺動リング構成を形成する。ステータ摺動リング構成は、2つの摺動リングの互いに隣接するシール面の間の正確なシールを保証するために、摺動リングキャリアによって、軸方向に変位可能に、静止ハウジング部のステータ流体チャネル内に支持されており、好ましくは幾らかのバックラッシュを補償し得る。そのように軸方向に変位可能な、場合によっては僅かに傾斜可能な(ステータ)摺動リングは、専門家の間では、浮動(ステータ)摺動リングとも呼ばれる。
【0017】
換言すれば、浮動ステータ摺動リングの場合、メカニカルシールは、ステータ摺動リングを有し、静止ハウジング部内で軸方向に移動可能ではあるが回転はしない摺動リング構成と、ロータと共に回転する相補的なロータ摺動リングと、を含む。ロータ摺動リングは、例えば、静止ハウジング部に対向するロータの端面に固定されることができ、例えば、プレス及び/又は接着又は他の方法で固定されることができる。
【0018】
しかしながら、浮動摺動リング及びこれに相補的な摺動リングから成る構成を逆にすること、すなわち、ロータ摺動リングを、これを浮動摺動リングとして形成するために、軸方向に移動可能に支持することは、排除されるべきではない。メカニカルシールは、両方の場合において、Pop-Off(登録商標)機能を有するように形成され得る。摺動リングキャリア及び摺動リングから成る摺動リング構成は、必要に応じて一体に形成され得る。
【0019】
媒体主チャネルが媒体圧力によって加圧されると、媒体は、一方では、メカニカルシールを通ってロータの流体チャネル内へ流れる。同時に、軸方向に移動可能な摺動リング構成が、媒体圧力によって加圧され、これは、第1の軸方向の力成分を軸方向に移動可能な摺動リング構成に及ぼし、当該第1の軸方向の力成分は、閉じる向きにメカニカルシールに作用する。この閉じる向きの第1の軸方向の力成分は、荷重比、すなわちメカニカルシールの幾何学的な面積比に依存し、存在する媒体圧力に比例して増加する。
【0020】
メカニカルシールに対する軸方向の閉鎖力に更に付加的に影響を及ぼすことができるように、本発明による回転ユニオンは、軸方向に移動可能な摺動リング構成に作用する、軸方向に移動可能なクランピング装置を、静止ハウジング部の内部に備え、当該クランピング装置は、アクティブ化されていない状態及びアクティブ化された状態を定義する。クランピング装置は、媒体主チャネル内の媒体圧力が圧力切り替え値としての所定の圧力閾値を超えた時に、媒体主チャネル内に存在する媒体圧力によってアクティブ化される。したがって、クランピング装置は、液圧的にアクティブ化される、すなわち液圧的にスイッチオンされる。媒体圧力が再び圧力閾値を下回ると、クランピング装置は再び非アクティブ化され、すなわち液圧的にスイッチオフされる。
【0021】
換言すれば、クランピング装置は、回転ユニオン内の媒体圧力が所定の圧力閾値を超えることに応答して、アクティブ化されていない状態からアクティブ化された状態に切り替わる。回転ユニオン内の媒体圧力が所定の圧力閾値を下回ったことに応答して、クランピング装置は、アクティブ化された状態から、再びアクティブ化されていない状態に戻るように切り替わる。
【0022】
アクティブ化された状態では、クランピング装置は、媒体圧力に比例する第1の軸方向の力成分に加えて、軸方向に移動可能な摺動リング構成に作用し、したがってメカニカルシールの閉鎖力に寄与し、特にステータ摺動リングとロータ摺動リングとの間のメカニカルシールの閉鎖力を強化する、付加的な第2の軸方向の力成分を生成する。換言すれば、クランピング装置のアクティブ化されていない状態では、第2の軸方向の力成分は作用せず、その結果、メカニカルシールの閉鎖力は、第1の軸方向の力成分によってのみ引き起こされ、クランピング装置のアクティブ化された状態では、第1及び第2の軸方向の力成分は、合計して総閉鎖力になり、これは、特に、荷重比によって定義される第1の軸方向の力成分よりも大きい。
【0023】
クランピング装置がアクティブ化されていない場合、メカニカルシールは、好ましくはバランス型のメカニカルシールとして作動し、当該バランス型のメカニカルシールにおいては、荷重比は、メカニカルシールが、少なくとも主として、場合によっては専ら、液圧によって又は空気圧によってバランスされるように荷重比が選択されている。特定の範囲の荷重比を有する対応する回転ユニオンには、出願人によって名称AutoSense(登録商標)を与えられる。本回転ユニオンの特徴は、メクランピング装置がアクティブ化されない限り、カニカルシールが、圧力閾値未満でバランス型のメカニカルシールとして作動し、圧力閾値を超えることにより、クランピング装置がアクティブ化されるか又は液圧的にスイッチオンされ、それにより、閉鎖力の増幅がもたらされる。
【0024】
好ましくは、クランピング装置は、例えばクランピング装置が摺動リング構成に対して軸方向に押し付けられることによって、摺動リング構成に付加的な第2の軸方向の力成分を印加するために、摺動リング構成に対して軸方向に移動可能に、静止ハウジング部内で支持されている。
【0025】
浮動摺動リングを有するメカニカルシールは、荷重比B = FH / Fを定義し、ここで、FHは、媒体圧力によって液圧的に又は空気圧的に荷重を負荷される摺動リング構成の面積であり、Fは、ステータ摺動リングとロータ摺動リングとの間の接触面積である。摺動リング構成に対する第1の軸方向の力成分は、クランピング装置がアクティブ化されているか否かにかかわらず、すなわちアクティブ化された又はアクティブ化されていないクランピング装置において同様に、メカニカルシールの荷重比に基づいており、回転ユニオン内の媒体圧力に比例して増大する。ここで、クランピング装置によって生成された、メカニカルシールに対する第2の軸方向の力成分が、荷重比に基づく第1の軸方向の力成分に加えられ、その結果、媒体圧力が圧力閾値を超え、クランピング装置がアクティブ化された場合に、かつ損場合にのみ、第1及び第2の軸方向の力成分の合計として形成される全閉鎖力が、メカニカルシールに作用する。特に、媒体圧力が圧力閾値を下回ったままである場合、及びそうである限り、付加的な第2の軸方向の力成分は有効ではない。
【0026】
換言すれば、圧力閾値を超えると、クランピング装置は、第1の軸方向の力成分に対して不釣り合いに大きく閉鎖力を増幅するブースターのような、付加的な第2の軸方向の力成分をスイッチオンする。したがって、クランピング装置は、圧力閾値を超えたときにスイッチオンされる、閉鎖力増幅装置を形成する。その場合、閉鎖力増幅装置のスイッチオンは、特に媒体圧力によって液圧的に行われる。
【0027】
それにより、圧力閾値未満、すなわち例えば比較的低い圧力、例えば10 bar以下での圧縮空気動作において、メカニカルシールは、荷重比Bによって平衡を保って動作されることができ、荷重比Bは、制御された所望の空気漏れを伴う、メカニカルシールの制御された(僅かな)開放を可能にし、したがって、回転下での圧縮空気動作に適している。媒体主チャネルが、例えば切削油又は作動油のような、より粘性の高い非圧縮性の媒体によって、より高い圧力、特に10 barより高い圧力によって加圧されるとき、クランピング装置はスイッチオンされ、それにより、閉鎖力の増幅がもたらされ、これは、より粘性の高い切削油又は作動油に適しており、過剰な漏れを回避する。
【0028】
切削油は、例えば6 mm2/s~18 mm2/sの範囲の粘性を有することができ、作動油は、32 mm2/s~6 mm2/s(40℃)の範囲、場合によっては60 mm2/s(40℃)までの範囲の粘性を有することができる。しかしながら、回転ユニオンは、アクティブ化されたクランピング装置によって、例えば1 mm2/s~3 mm2/sの範囲の粘性を有する粘性の低い液体媒体、例えば冷却潤滑剤(KSS)でも動作され得る。
【0029】
それにより、回転ユニオンは、摺動リングが過度に加熱されることなく、圧縮性の媒体及び非圧縮性の媒体の両方と共に、それぞれ例えば24,000 min-1以上の高い回転数で、動作され得る。それにもかかわらず、回転ユニオンは、一方では、圧縮空気動作において、許容可能な低い空気漏れ率を有することができ、他方では、より粘性の高い非圧縮性の又は液体の媒体と共に、実質的に漏れのない状態で作動することができる。
【0030】
有利には、圧縮空気動作中、摺動リングの2つのシール面の間に小さな間隙が形成され(メカニカルシールの制御された解放)、その結果、摩耗が生じず、所望の、制御された、僅かな空気漏れが生じる。対照的に、例えば切削油又は作動油のような高い粘性を有する液体媒体では、2つの摺動リングは、増幅された閉鎖力で互いに押し付けられ、すなわち、メカニカルシールが閉じられ、その結果、間隙の拡大が回避される。
【0031】
したがって、回転ユニオンは、好ましくは、以下のように少なくとも2つの動作状態を定義する:
【0032】
1.圧力閾値を下回る媒体圧力によって加圧される場合、回転ユニオンは、圧縮性の媒体と共に動作するための加圧ガス動作状態を定義する。加圧ガス動作状態では、メカニカルシールは、制御された漏れを可能にするために、最小限に開かれている。圧縮性の媒体のための加圧ガス動作状態では、クランピング装置はアクティブ化されていない。したがって、荷重比に基づく第1の軸方向の力成分のみが作用する。
【0033】
2.圧力閾値を上回る媒体圧力によって加圧される場合、回転ユニオンは、高い媒体圧力下にある圧縮性の媒体のための液体媒体動作状態を定義する。液体媒体動作状態では、メカニカルシールは閉じられ、クランピング装置はアクティブ化されている。したがって、液体媒体動作状態では、荷重比Bに基づく第1の軸方向の力成分、及び付加的に、アクティブ化されたクランピング装置によって引き起こされる第2の軸方向の力成分が、メカニカルシールに対する共通の閉鎖力として、加わる。それにより、切削油又は作動油のようなより粘性の高い媒体での動作に対して、高い媒体圧力において、十分なシール性が達成され得る。
【0034】
加圧ガス動作状態と液体媒体動作状態との間の切り替えは、回転ユニオン内に存在する媒体圧力によって液圧的に行われる。
【0035】
有利には、そのようにして、非常に異なる媒体、例えば、一方では圧縮空気のような圧縮性の媒体、及び、他方では例えば切削油又は作動油のような高い粘性の液体媒体による加圧に適しており、しかも、高い回転数において高い安定性を有し、使用される全ての媒体において低い漏れ率を有し、特に液体媒体において実質的に漏れのない、汎用的な多媒体用回転ユニオンが創作され得る。
【0036】
媒体主チャネル内に媒体圧力が存在しない場合、メカニカルシールには閉鎖力は存在しない。任意選択的に、非加圧状態において、二次シールは、浮動摺動リングを引き戻すことができる(いわゆるPop-Off(登録商標)機能)。それにより、ドライランニング中の摺動リングシール面の相互の接触はなく、高い回転数の下で、時間的に無制限のドライランニングも行われ得る。
【0037】
したがって、回転ユニオンは、第3の動作状態、すなわち、ドライランニング動作状態を定義することができる。ドライランニング動作状態は、回転ユニオンの非加圧状態において、メカニカルシールが完全に開かれた状態にある場合に生じる。完全に開かれたドライランニング動作状態では、2つの摺動リングは、十分に大きな間隙を伴って互いに分離されており、その結果、回転ユニオンは、摺動リングにおいて摩耗を生じることなく、ドライランニングにおいて媒体なしで回転することができる。
【0038】
媒体圧力が所定の圧力閾値を超えたときにクランプ装置が摺動リング構成に及ぼす付加的な第2の軸方向の力成分は、それ自体、圧力に依存しないか、又は、(圧力閾値を超える圧力範囲において)媒体圧力に依存し、例えば媒体圧力に比例し得る。したがって、第2の軸方向の力成分は、0 barから圧力閾値までの圧力範囲において常にゼロであり得、圧力閾値において例えば不連続的に増加し、及び/又は、圧力閾値を上回って比例的に増加する。
【0039】
クランピング装置は、媒体主チャネル内に存在する媒体圧力によって静止ハウジング部に対して荷重を負荷される、1つ又は複数のバネを備え得る。
【0040】
例えば、バネ張力の所定の閾値を超えたとき、クランピング装置はアクティブ化され、そのとき(にのみ)、すなわちバネ張力の閾値を超えたとき、付加的な第2の軸方向の力成分を摺動リング構成に及ぼし得る。
【0041】
例示的な実施形態によれば、摺動リングキャリアは、クランピング装置の付加的な第2の軸方向の力成分を摺動リング構成に伝達するために、クランピング装置が係合する外側の(環状)フランジを備える。
【0042】
更に、クランピング装置は力分配リングを備えることができ、当該力分配リングは、クランピング装置によって加えられた付加的な第2の軸方向の力成分を、環状に均一に、摺動リングキャリア、例えばフランジに分配する。
【0043】
好ましくは、クランピング装置は、静止ハウジング部内に1つ又は複数のバネ付勢されたピストンを備え、当該ピストンは、回転フユニオンの媒体圧力によって作動され、作動状態において、第2の軸方向の力成分を摺動リング構成に及ぼす。換言すれば、少なくとも1つのピストンは、媒体圧力によってバネ力に抗して荷重を負荷され、回転ユニオン内の媒体圧力が圧力閾値を超える場合にのみ、クランピング装置の付加的な第2の軸方向の力成分を摺動リング構成に及ぼす。
【0044】
このために、好ましくは、1つ又は複数の軸方向のボアが、静止ハウジング部内に設けられており、その中に、バネ付勢されたピストンが、それぞれ軸方向に変位可能に支持されており、存在する媒体圧力によって、それぞれのバネに対して荷重を負荷される。
【0045】
好ましくは、バネ付勢されたピストンは、シールリングによって、それぞれ関連する軸方向のボア内でシールされており、その結果、加圧された媒体は、実質的に、バネ付勢されたピストンを通じて漏れ出し得ない。
【0046】
例示的な実施形態によれば、媒体主チャネルからの媒体圧力は、ピストンを、静止ハウジング部内のそれぞれの軸方向のボア内で加圧された状態で、バネ荷重に抗してメカニカルシールの方向に変位させるために、ピストンの後端の(ロータとは反対側の)端面に作用する。
【0047】
好ましくは、クランピング装置は、少なくとも2個又は3個の、好ましくは2~6個の、好ましくは2個、3個又は4個の、バネ付勢されたピストンを備え、当該ピストンは、静止ハウジング部内で摺動リングキャリアを取り囲んで、特に均一に配置されている。例えば、既に2つの径方向に対向するバネ付勢されたピストンによって、摺動リング構成に対する対称的な力の印加が可能になり、摺動リング構成の傾斜が防止され得る。更に、これは、後方互換性に関して、及び、とりわけ回転ユニオンの内部のスペースの理由から、有利であることが証明されている。
【0048】
一実施例によれば、バネ付勢されたピストンは、クランピング装置の付加的な第2の軸方向の力成分を、直接的に外側フランジに、又は、直接的に力分配リングに伝達するために、圧力閾値を超えたとき、摺動リングキャリアの外側フランジに軸方向に、又は、分配リングに軸方向に載置され、これは、静止ハウジング部内部のスペースの環境に関して、経済的であり得る。
【0049】
例えば、静止ハウジング部は、バネ付勢されたピストンのための停止部を備え、当該停止部は、圧力閾値を超えてクランピング装置がアクティブ化されると、バネ付勢されたピストンがそれぞれの関連する停止部に衝突することによって、バネ付勢されたピストンの軸方向のストロークを制限する。更に、バネ付勢されたピストンは、それぞれ閉鎖力アクティブ化バネを備えることができ、当該閉鎖力アクティブ化バネは、クランピング装置のアクティブ化された状態において、媒体圧力に依存しない一定のバネ力を摺動リング構成に及ぼし、その結果、クランピング装置によって摺動リング構成に及ぼされる付加的な第2の軸方向の力成分は、クランピング装置がアクティブ化されている場合、及びその限りにおいて、媒体圧力に依存せず一定である。
【0050】
圧力閾値は、好ましくは、圧縮空気動作のための回転ユニオンの最大許容動作圧力よりも大きい。それにより、圧縮空気動作のための全許容圧力範囲においてクランピング装置がアクティブ化されないこと、及び、回転ユニオンが、荷重比を伴い、付加的な第2の力成分を伴わずに、圧縮空気動作において回転することが保障され得るため、空隙が形成され、制御された空気漏れが生じ得る(AutoSense(登録商標))。このために、圧力閾値は、例えば、5 barより大きく、好ましくは10 bar以上、好ましくは5 bar~100 bar、好ましくは10 bar~50 bar、好ましくは10 bar~30 barであり得る。換言すれば、圧力閾値は、好ましくは、少なくとも、圧縮空気動作において閉鎖力増幅装置がアクティブ化されない程度に、すなわちスイッチオフされたままである程度に、高く選択されている。
【0051】
回転ユニオンはまた、所望の媒体を、媒体固有の所望の媒体圧力で媒体主チャネル内へ導入するために、媒体加圧供給ラインの接続のための接続ポートを備える。好ましくは、回転ユニオンは、単一ポート回転ユニオンであり、すなわち、媒体加圧ラインの接続のための単一の接続ポート、及び、(交互に)全ての所望の種々の媒体が通過する単一の媒体主チャネルのみを備える。したがって、回転ユニオンは、圧縮性の媒体、特に圧縮空気、及び、非圧縮性の媒体、特に切削油又は作動油の両方が、同一の接続ポートを介して加圧された状態で同一の媒体主チャネル内へ導入され得るように調整されている。その場合、全ての媒体は、(同時にではなく)交互に同一の接続ポートを介して導入され、単一の媒体主チャネルにおける現在存在する媒体の圧力閾値を上回る圧力上昇は、クランピング装置の液圧的なスイッチオンを引き起こし、及び/又は、単一の媒体主チャネルにおける現在存在する媒体の圧力閾値を下回る圧力降下は、クランピング装置のスイッチオフを引き起こす。
【0052】
したがって、有利には、回転ユニオンには、全ての所望の媒体を関連する媒体特有の所望の媒体圧力で媒体主チャネル内へ導入するために、媒体加圧供給ラインを接続するための単一の接続ポートがあればよく、それにもかかわらず、回転ユニオンは、圧縮性の媒体、特に圧縮空気、並びに、非圧縮性の媒体、特に切削油又は作動油の両方を、同一の接続ポートを介して、加圧された状態で同一の媒体主チャネル内へ導入され得るために適しており、メカニカルシールの閉鎖力は、有利には、全ての媒体圧力において適切な範囲内にある(すなわち、比較的低い媒体圧力を有する圧縮空気動作又はMMS/MQLにおける制御された空気漏れ、及び、比較的高い媒体圧力を有する切削油、作動油又はKSSと共に動作する場合のメカニカルシールの確実な閉鎖)。
【0053】
接続ポートは、好ましくは、(同軸の)軸方向の接続ポートである。しかしながら、特別な顧客要求に関して、径方向の接続ポート及び/又は複数の接続ポートを使用することは、これらは回転ユニオンの多媒体適合性のために必要ではないものの、基本的には排除されるべきではない。
【0054】
好ましくは、媒体主チャネルは、特に接続ポートからメカニカルシールまで、(同軸の)軸方向に延びる。好ましくは、媒体主チャネルは、接続ポートからメカニカルシールまで持続的に開いており、すなわち、同軸の媒体主チャネル自体は、好ましくは、接続ポートから媒体主チャネルを通ってロータ流体チャネル内への媒体の貫流を妨害する可能性のある弁を含まない。それにより、とりわけ、例えば回転ユニオンが最少量潤滑(MMS/MQL)で動作される場合に、媒体主チャネルにおける望ましくない分離が回避され得る。
【0055】
ユーザは、現在所望の媒体及びそれぞれの媒体圧力を、回転ユニオンの外部の媒体分配ネットワークで設定する。このために、回転ユニオンの外部には、特に異なる粘性を有する異なる媒体、特に少なくとも例えば圧縮空気のような圧縮性の媒体、及び、少なくとも例えば切削油、作動油若しくはKSSのような非圧縮性の媒体の両方のための、少なくとも2つの媒体源、2つの媒体供給ライン、分配器、及び、媒体供給ライン内の外部の弁が、含まれている。特に、一方では圧縮空気のための、及び、他方では切削油、作動油若しくはKSSのための媒体供給ラインは、外部の弁によって回転ユニオンの外部からそれぞれ所望の媒体を選択し、これを、所望の媒体圧力で単一の接続ポートを介して好ましくは単一の媒体主チャネル内へ導入するために、回転ユニオンの外部において分配器を介して相互接続されている。すなわち、全ての許可された媒体が、回転ユニオンの外部で交互にスイッチオン及びオフされ、好ましくは同一の接続ポートを介して交互に、すなわち時間的に相前後して、回転ユニオン内へ導入される。
【0056】
好ましくは、メカニカルシールの荷重比は、約0.40~0.65の範囲、好ましくは約0.45~0.60の範囲、好ましくは約0.47~0.60の範囲、好ましくは約0.50~約0.57の範囲である。これは、圧縮空気動作中、メカニカルシールの制御された開放を可能にし、したがって過度に大きくない制御された空気漏れを可能にする。
【0057】
摺動リングキャリアは、好ましくは、エラストマー二次シールによって、静止ハウジング部内で軸方向に変位可能に支持され、シールされている。二次シールは、例えば、摺動リングキャリアの外径上に配置され、例えばU字形の断面を有するエラストマーリングを含み得る。メカニカルシールが加圧された状態で閉じる時、二次シールは軸方向に荷重を負荷され、非加圧状態になると、メカニカルシールをドライランニングのために十分に広く開くために、ステータ摺動リングを有する摺動リングキャリアを、ロータ摺動リングから引き離し得る(いわゆるPop-Off(登録商標)機能)。したがって、ドライランニング中のメカニカルシールの開放は、例えばエラストマーリングの復元成形によって支援され得る。これは、高い回転数における、実質的に無制限の摩耗のないドライランニングに寄与し得る。
【0058】
好ましくは、メカニカルシールの2つの摺動リングのうちの少なくとも1つ、特に両方の摺動リングは、炭化ケイ素摺動リング(SiC)として形成されている。
【0059】
回転ユニオンは、例えば、以下のように接続され動作される。
【0060】
ユーザは、外部の加圧ガス源を、外部の加圧ガス供給ライン及び外部の分配器、例えば多方弁を介して、回転ユニオンの接続ポートに、並びに、例えば油、特に 6 mm2/s以上の粘性を有する切削油若しくは作動油、又は、KSSのような非圧縮性の媒体を有する外部の媒体リザーバを、外部の液体媒体加圧供給ラインを介して、及び、外部の分配器を介して、回転ユニオンの同一の接続ポートに、接続する。
【0061】
動作中、第1の時間間隔において、加圧ガス供給ライン及び接続ポートを介して、例えば油よりも低い圧力を有する圧縮空気のような加圧ガス、又は、特に10 bar以下の圧力を有する冷却潤滑剤が、媒体主チャネル内へ導入され、クランピング装置はアクティブ化されておらず、回転ユニオンは、加圧ガスと共に、及び、メカニカルシールの荷重比によって定義された当該メカニカルシールに対する閉鎖力を伴って回転し、制御されたガス漏れが生じ、加圧ガスは、後に再びスイッチオフされる。
【0062】
第2の後続の時間間隔において、液体媒体加圧供給ライン、外部の分配器及び同一の接続ポートを介して、非圧縮性の液体媒体、特に6 mm2/s以上の粘性を有する切削油若しくは作動油、又は、冷却潤滑剤が、加圧ガスよりも高い圧力、特に10 barよりも大きい圧力で、媒体主チャネル内へ導入され、クランピング装置は、液体媒体のより高い圧力によってアクティブ化され、すなわち液圧的にスイッチオンされ、回転ユニオンは、液体媒体と共に、及び、メカニカルシールに加えられた閉鎖力を伴って回転し、加えられた閉鎖力は、第1の軸方向の力成分及び付加的な第2の軸方向の力成分から構成され、第1の軸方向の力成分は、荷重比を通じて液体圧力により生成され、付加的な第2の軸方向の力成分は、アクティブ化されたクランピング装置によって生成される。後に、非圧縮性の液体媒体は、再びスイッチオフされ、それにより、クランピング装置は、再び非アクティブ化される。
【0063】
したがって、回転ユニオンは、同一の接続ポート及び同一の媒体主チャネルを介して相前後して、それぞれ適した圧力を有する圧縮性及び非圧縮性の媒体を含む異なる媒体と共に、動作されることができ、媒体圧力の圧力閾値を超える上昇に応答して、閉鎖力を増幅するために、クランピング装置がスイッチオンされる。
【0064】
続いて、第3の時間間隔において、回転ユニオンは、媒体なしでドライランニングで回転することができ、クランピング装置はアクティブ化されず、メカニカルシールは、特に二次シールによって、例えばUカップリングによって、開かれた状態に維持される。
【0065】
摺動リングキャリアのうちメカニカルシールから離れた後端は、好ましくは、特にロータ、メカニカルシール及び/又は摺動リングキャリアと同軸に延びる、作業空間又は媒体主チャネル内に開口する。ロータは、好ましくは、単一の中央のロータ流体チャネルのみを備える。更に、好ましくは、回転ユニオンは、単一の軸方向のメカニカルシールのみを備える。
【0066】
以下において、本発明が、実施例に基づき、図面を参照して、より詳細に説明されるが、同一の及び類似の要素は、部分的に同じ参照番号を与えられ、種々の実施例の特徴は、互いに組み合わせられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1】本発明の実施形態による回転ユニオンの縦断面を、メカニカルシールが開放された状態で示す。
【
図2】
図1と同様であるが、圧縮空気動作のための状態にあるメカニカルシール及びアクティブ化されていないクランピング装置と共に示す。
【
図3】
図1と同様であるが、非圧縮性の媒体と共に動作するために閉鎖されたメカニカルシール及び稼働しているクランピング装置と共に示す。
【
図4】
図1の摺動リング構成及びクランピング装置の部分拡大図である。
【
図5】
図2の摺動リング構成及びクランピング装置の部分拡大図である。
【
図6】
図3の摺動リング構成及びクランピング装置の部分拡大図である。
【
図5】本発明の更なる実施形態による回転ユニオンの縦断面を、メカニカルシールが開放された状態で示す。
【
図8】
図7と同様であるが、圧縮空気動作のための状態にあるメカニカルシール及びアクティブ化されていないクランピング装置と共に示す。
【
図9】
図7と同様であるが、非圧縮性の媒体と共に動作するために閉鎖されたメカニカルシール及びアクティブ化されたクランピング装置と共に示す。
【
図10】
図7の摺動リング構成及びクランピング装置の部分拡大図である。
【
図11】
図8の摺動リング構成及びクランピング装置の部分拡大図である。
【
図12】
図9の摺動リング構成及びクランピング装置の部分拡大図である。
【
図13】本発明の更なる実施形態による回転ユニオンの縦断面を、メカニカルシールが開放された状態で示す。
【
図14】
図13と同様であるが、圧縮空気動作のための状態にあるメカニカルシール及びアクティブ化されていないクランピング装置と共に示す。
【
図15】
図13と同様であるが、非圧縮性の媒体と共に動作するために閉鎖されたメカニカルシール及びアクティブ化されたクランピング装置と共に示す。
【
図16】
図13の摺動リング構成及びクランピング装置の部分拡大図である。
【
図17】
図14の摺動リング構成及びクランピング装置の部分拡大図である。
【
図18】
図15の摺動リング構成及びクランピング装置の部分拡大図である。
【
図19】荷重比Bの算出のための、浮動摺動リングを有する摺動リング構成の直径比の概略図である。
【
図20】外部の媒体分配ネットワークの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
図1~18を参照すると、ユニオン10は、後部に、本例では複数の部品から形成された静止ハウジング部12を備える。機械スピンドル18との接続のための、中空シャフトの形態の本例におけるロータ16は、例えばボール軸受14のような主転がり軸受によって、回転可能に静止ハウジング部12内に支持されている。回転ユニオン10は、所望の流体媒体を、回転ユニオン10の静止ハウジング部12内へ加圧下で、同一の接続ポート22を介して回転ユニオン10の回転軸Xに対して同軸に延びる同一の媒体主チャネル20内へ導入するために、特に、静止ハウジング部12内に単一の媒体主チャネル20と、例えば、適切なホース又はパイプシステムとの接続のための単一のねじ込み継手24を有する単一の接続ポート22と、を備える。その場合、媒体主チャネル20は、適切な媒体の群からの現在所望の媒体によって、交互にかつ同時にではなく、加圧される。その場合、適切な媒体の群は、圧縮性の媒体と非圧縮性の媒体の両方を含む。適切な媒体の群は、特に、一方では圧縮性の媒体として圧縮空気、少量潤滑又は最少量潤滑(MMS/MQL)、他方では非圧縮性の媒体として冷却潤滑剤(KSS)、切削油及び/又は作動油を含み得る。その場合、回転ユニオンは、特に、少なくとも、一方において圧縮空気と共に、他方において例えば切削油又は作動油のような油と共に、動作可能である。
【0069】
静止ハウジング部12及びロータ16は、軸方向のメカニカルシール30によってシールされている。メカニカルシール30は、軸方向に変位可能な摺動リングキャリア34と、摺動リングキャリア34に固定された摺動リング36とを備える、摺動リング構成32を含む。ステータの摺動リング36、又は短縮してステータ摺動リング36は、そのロータ側の軸方向の環状のシール面36aで、ロータ16の相補的な摺動リング38の軸方向の後部の環状のシール面38aに対して、シールする。ロータ16の摺動リング38、又は略してロータ摺動リング38は、ロータ16のステータ側の端面16aに固定されており、これらの例では、環状溝42内に押し込まれ、及び/又は、接着されているが、他の固定技術も可能である。
【0070】
ステータ摺動リング36の摺動リングキャリア34は、例えば中空ピストン44として形成されており、特に、回転はしないが軸方向に移動可能に、静止ハウジング部12内に支持されている。摺動リングキャリア34は、静止ハウジング部12内の対応するロータ側の凹部48内に回転しないように収容された、ロータ側のフランジ46を備える。回り止めは、例えば静止ハウジング部12内の2つの軸方向ピンを介して実現することができ、当該ピンは、摺動リングキャリアフランジ46の対向する溝内において形状接続を生成する(明確にするために図には示されていない)。ステータ摺動リング36は、前側において、摺動リングキャリア34若しくは中空ピストン44のロータ側の端部34aに固定、例えば圧入又は接着されているが、他の固定技術も可能である。本例では、ステータ摺動リング36は、例示的に、摺動リングキャリア34の、より正確にはフランジ46の凹部52内に、恒久的に固定されている。
【0071】
メカニカルシール30の閉鎖は、本例においては、中空ピストン44の軸方向ボア47内の内側絞り45によって改善され得る。
【0072】
好ましくは、静止ハウジング部12は、モジュール構造により既存のハウジング形状への容易な適応性が可能であるように、多部品のユニオンハウジングとして形成されている。本例では、静止ハウジング部12は3つの部分から成り、内部でロータ16がボールベアリング14によって支持されたロータハウジング12aと、内部で摺動リング構成32が軸方向に変位可能に支持され、内部にクランピング装置100が配置された中間ハウジング部12bと、内部で媒体主チャネル20が軸方向に延び、接続ポート22内へ軸方向に導入される後方ハウジング部12cと、を含む。しかしながら、他のハウジング形態も可能である。
【0073】
摺動リング36、38は、好ましくは両者とも炭化ケイ素か(SiC)ら成り、SiC-SiCメカニカルシール30がしばしば参照される。SiC-SiCメカニカルシール30は、耐用年数が長く、液体の良好な潤滑媒体と共に動作するとき、優れたシール特性を有する。しかしながら、多くの従来の回転ユニオンは、圧縮空気での動作の際、又は、炭化ケイ素シールでのドライランニング時に、安定性の問題を有する。SiC摺動リングは、例えば潤滑剤なしで動作し互いに十分に分離されていない場合、過熱する可能性があり、これは、回転ユニオンの完全な故障につながり得る。これは、本発明によって回避され得る。しかしながら、例えば炭素黒鉛(CG)のような摺動リング36、38用の他の材料も、すなわち例えばCG-SiCメカニカルシール、あるいは、炭化タングステン(TC)も、考慮に入れられ得る。
【0074】
この例ではステータの摺動リング構成32、又は短縮してステータ摺動リング構成32又は中空ピストン44は、二次シールリング60によって、軸方向に変位可能に静止ハウジング部12内に支持されている。二次シール60は、これらの例では、エラストマーリングシールの形態の二次シールリング64を含む。エラストマーリングシール64は、本例においては、高圧側で開口し、媒体主チャネル20と流体連通する溝66を有する、U字形断面を有する。したがって、このリングシール64は、Uカップリングと呼ばれることもある。
【0075】
エラストマーリングシール64による摺動リングキャリア34又は中空ピストン44の支持は、軸方向のメカニカルシール30を閉鎖し再び開放することができるように、摺動リング構成32又はステータ摺動リング36に、限定された軸方向の可動性を可能にする。典型的には、メカニカルシール30は、例えばKSS、切削油若しくは作動油のような液体潤滑剤成分を含む加圧された流体媒体と共に動作する際に閉じられ、その結果、高々、最小限の、場合によっては滴状の漏れ(いわゆる発汗)が生じるにすぎない。このような媒体は、メカニカルシール30が閉じられた際、2つの炭化ケイ素摺動面36a、38a間の十分な潤滑をもたらす。しかしながら、ドライランニング中又は圧縮空気動作中、閉鎖状態では、2つの炭化ケイ素摺動リング36、38が互いに摩擦し合い、過度に加熱する可能性がある。これを防止するために、メカニカルシール30は、非加圧状態において又は圧縮空気動作中、摺動リングキャリア34又は中空ピストン44がステータ摺動リング36と共に、すなわち摺動リング構成32が、ロータ摺動リング38から離れ、そこから僅かに軸方向に、すなわち本図では右方へ移動する。
【0076】
したがって、エラストマー二次シール60は、摺動リング構成32のための二重の機能、すなわち一方では軸方向に変位可能な軸受としての、他方では静止側からの流体媒体による加圧に対する静止ハウジング部12内のシールとしての機能を果たす。
【0077】
摺動リング構成32は、エラストマーシールリング64による支持に起因して、場合によっては僅かな傾斜可能性を有し、その結果、一次シールとしてのメカニカルシール30の2つの摺動リング36、38のシール面36a、38aは、加圧された状態で互いに対して完全に平坦になり、相応して良好なシール効果が生成され得る。そのような軸方向に変位可能に支持された、場合によっては僅かに傾斜可能なステータ摺動リング36は、専門家の世界では、浮動摺動リングとも呼ばれる。
【0078】
図19を参照すると、浮動摺動リングの荷重比Bは、2つの摺動リング36、38の間の接触面Fに対する液圧又は空気圧が負荷される面F
Hの面積比F
H/Fによって、定義される。したがって、荷重比Bは、以下のように、直径D1、D2及びD3に基づいて幾何学的に計算することができる:
【数1】
【0079】
ここで、D1は、圧力負荷された摺動リングキャリアの外径又は有効径であり、D2は、メカニカルシールの接触面の外径であり、D3は、メカニカルシールの接触面の内径である。
【0080】
媒体圧力が存在しない場合、ステータ摺動リング構成32は、二次シール60によって(図において右方へ)引き戻され、それにより、摺動リング構成30は完全に開かれ、その結果、メカニカルシール30は、媒体のないドライランニング中、2つの摺動リング36、38の間に十分な距離を有する状態で、回転することができる。したがって、メカニカルシール30のこの完全に開かれた状態(
図1、4、7、10、13、16)では、媒体のないドライランニングのために、摺動リング36、38の間に十分に大きな間隙39が存在する。
【0081】
媒体主チャネル20が圧縮空気によって加圧される場合、これは、例えば10 barの許容最大圧力を有する低い媒体圧力で起こり、その結果、圧力閾値pSを超えることはなく、クランピング装置又は閉鎖力増幅装置100はアクティブ化されない。それにより、メカニカルシール30においては、荷重比Bによって生成される、閉じる向きの第1の軸方向の力成分K1のみが摺動リング構成32に作用し、当該荷重比Bは、本実施例では約0.5~0.57である。比較的小さな荷重比Bにより、制御された空気漏れを許容する小さなシール間隙40が形成され、これは、シール面における摩耗を防止する。媒体主チャネル20が最少量潤滑(MMS/MQL)によって加圧される場合、これは、好ましくは、同様に、圧力閾値pS未満の媒体圧力で行われる。それにより、MMS/MQLを、実質的に漏れのない状態でロータ16の流体チャネル17内へ流すために、同様に、MMS/MQLにとって十分な第1の軸方向の力成分のみが有効になる。
【0082】
図2、5、8、11、14、17は、圧縮空気動作時のメカニカルシールの動作状態を示しており、圧縮空気動作時のシール間隙40は、図に示すことができないほど小さい。
【0083】
クランピング装置100は、静止ハウジング部12内に、詳細には本例では摺動リングキャリア34のフランジ46の後方に、組み込まれている。クランピング装置100は、本例では、静止ハウジング部12内の関連するボア104内に軸方向に変位可能に配置された、2つの径方向に対向する加圧ピストン102を含む。加圧ピストン102は、それぞれ圧縮バネ106によって、媒体圧力が所定の圧力閾値を超えない限り、媒体圧力に抗して、本例では右方へ、アクティブ化されていない状態に保持される。したがって、加圧ピストン102は、開く圧縮バネ106と共に、静止ハウジング部12内に収容されている。
【0084】
媒体主チャネル20は、媒体主チャネル20が加圧されると、媒体圧力が、後方の圧力チャンバ108を介して、加圧ピストン102のそれぞれのロータとは反対側の後方の端面112に作用し、加圧ピストン102を、メカニカルシール30の閉鎖方向に、バネ106に抗して締め付けるよう、後方の圧力チャンバ108と流体連通している。加圧ピストン102は、それぞれ、関連するボア104内のシール114によってシールされており、その結果、圧力チャンバ108内に存在する媒体圧力が、圧力に比例する軸方向の力成分を、バネ106のバネ張力に抗して、加圧ピストン102に及ぼす。ここで、バネ106のバネ張力は、加圧ピストン102がアクティブ化されてされないように、すなわち、媒体圧力が所定の圧力閾値pSを下回る限り、摺動リング構成32に如何なる力も及ぼされないように、選択されている。
【0085】
したがって、加圧ピストン102の面積比及びバネ106のバネ力は、加圧ピストン102が、
図2、5、8、11、14、17に示されているように、圧力閾値p
S未満において、ステータ摺動リング構成32に力を及ぼさず、したがって、クランピング装置100がアクティブ化されていない状態にあるように、選択されている。クランピング装置100のこのアクティブ化されていない状態では、メカニカルシール30の閉鎖力は、専らメカニカルシール30の荷重比に応じた、すなわち面積比F
H / Fに基づく媒体圧力によって、閉じる向きの第1の軸方向の力成分K1として、メカニカルシール30に作用する。
【0086】
図3、6、9、12、15、18を参照すると、回転ユニオンには、同一の接続ポート22及び同一の媒体主チャネル20を介して、著しく高い媒体圧力、例えば140 bar、210 barまでの、又は場合によってはそれより高い媒体圧力が、例えば切削油、作動油若しくは冷却潤滑剤のような非圧縮性の液体媒体によって、印加され得る。非圧縮性の媒体の媒体圧力が、この例では約10 barの圧力閾値p
Sを上回ると、バネ106のバネ力に抗して媒体圧力によって加圧ピストン102に作用する力は、圧縮ダイとしての加圧ピストン102が、摺動リングキャリア34のフランジ46に対して押し付けられ、これに、第1に軸方向の力成分K1に加えて、閉じる向きの第2の軸方向の力成分K2を印加するように、バネ106のバネ力の閾値を超える。それにより、メカニカルシール30に対する全閉鎖力は、荷重比Bにより引き起こされる閉鎖力を超えて、増幅される。
【0087】
媒体圧力が、特にKSS又は切削油/作動油の適用の場合に、所定の圧力閾値pSを超える場合、クランピング装置100がアクティブ化され、付加的な閉じる向きの第2の軸方向の力成分K2をメカニカルシール30に及ぼす。圧力閾値pSは、本例においては、圧縮空気の最大許容圧力と同一又はこれより幾分大きく、すなわちpS ? 10 barであるように選択される。
【0088】
したがって、クランピング装置100は、媒体主チャネル20内の媒体圧力が圧力閾値pSを超えたことに応答してアクティブ化され、圧力閾値pS未満ではアクティブ化されない、閉鎖力増幅装置として作用する。クランピング装置100又は閉鎖力増幅装置の制御は、本実施例では、例えば10 barの圧力閾値pSを上回る媒体圧力が印加されるバネ付勢された加圧ピストン102を介して行われる。
【0089】
媒体がスイッチオフされた後、摺動リング36、38は、Pop-Off(登録商標)機能によって再び分離され得る。
【0090】
図1~6に示された実施例では、加圧ピストン102のロータ側の端面116は、摺動リングキャリア34に直接的に、又はより正確には摺動リングキャリア34のフランジ46に直接的に、第2の軸方向の力成分K2を印加する。その場合、クランピング装置100によって引き起こされる第2の軸方向の力成分K2は、荷重比Bによって引き起こされる第1の軸方向力の成分と同様に、存在する媒体圧力に比例する。
【0091】
図7~12にされた実施例を参照すると、クランピング装置100は、更に、加圧ピストン102が第2の軸方向の力成分K2を及ぼす力分配リング122を備え得る。その場合、加圧ピストン102の端面116は、圧力閾値p
Sを超えると、力分配リング122に第2の軸方向の力成分K2を印加するために、力分配リング122の外側の環状領域124に接触する。
【0092】
力分配リング122は、クランピング装置100がアクティブ化された時にフランジ46と接触する、メカニカルシール30と対向する環状の力分配環状突起126を有する。したがって、力分配リング122は、加圧ピストン102によって加えられた第2の軸方向の力成分を、摺動リングキャリア34又はそのフランジ46に伝達する。これにより、第2の軸方向の力成分は、望ましくない傾斜モーメントを発生させることなく、回転軸Xを中心として全周にわたって、摺動リングキャリア34又は浮動摺動リング38に均一に伝達され得る。加えて、環状突起126を介した摺動リングキャリア34への力の導入は、加圧ピストン102の径方向位置と比較して、径方向内向きに移動され得る。これにより、摺動リングキャリア34の変形が低減又は防止され得る。
【0093】
その場合、力分配リング122は、静止ハウジング部12内で軸方向に移動可能に、特に摺動リングキャリア34に対して軸方向に移動可能に、かつ、加圧ピストン102に対して軸方向に移動可能に、支持されている。力分配リング122は、摺動リングキャリア34を、例えば環状に同軸に取り囲む。
【0094】
圧縮空気動作のための作動状態(
図8及び11)では、特に、力分配リング122の摺動リング構成32との接触はない。圧縮性の媒体によって圧力閾値 p
Sを上回る圧力が印加された、
図9及び12に示された作動状態では、加圧ピストン102は、媒体圧力によって引き起こされた力で、力分配リング122を介して摺動リング構成32を押す。その場合、これにより生成された第2の軸方向の力成分K2も、媒体圧力に比例して挙動する。
【0095】
図13~18に示された実施例を参照すると、加圧ピストン102はそれぞれ、メカニカルシール30に対向する加圧ピストン102の端面に配置された、閉鎖力アクティブ化バネ132を備え得る。例えば、比較的小さな閉鎖力アクティブ化バネ132が、加圧ピストン102の端面側のボア134内に埋め込まれている。
【0096】
媒体圧力が圧力閾値pSを下回ったままである限り、クランピング装置100は稼働せず、閉鎖力アクティブ化バネ132は、摺動リングキャリア34のフランジ46にいかなる力も及ぼさない。媒体主チャネル20及び圧力チャンバ108内の媒体圧力が圧力閾値pSを十分に超えた場合、加圧ピストン102は、バネ106のバネ力に抗して軸方向にメカニカルシール30の方向に移動し、閉鎖力アクティブ化バネは、摺動リングキャリア34を介して、本例ではフランジ46を介して、浮動シールリング36に、第2の軸方向の力成分を及ぼす。加圧ピストン102は、この実施例では、圧力閾値pSが十分に超過されたときに停止部136にぶつかり、第2の軸方向の力成分K2は、専ら閉鎖力アクティブ化バネ132によって、摺動リングキャリア34に加えられる。それにより、第2の軸方向の力成分K2は、媒体主チャネル20内の媒体圧力が更に上昇した場合にも、更に増大することはない。圧力閾値 pSが十分に超過されるとすぐに、第2の軸方向の力成分は、閉鎖力アクティブ化バネ132の一定のバネ張力によって引き起こされる圧力にかかわらず、一定のままである。したがって、媒体主チャネル20及び圧力チャンバ108内の媒体圧力が、圧力閾値pSよりも著しく大きな圧力で加圧ピストン102に作用する場合、閉鎖力アクティブ化バネ132は、圧力に依存しない一定の第2の軸方向の力成分K2を、摺動リング構成32に及ぼす。
【0097】
図1~12の実施例の場合のように、加圧ピストン102は、開放圧縮バネ106によって静止ハウジング部12内に収容されている。しかしながら、
図1~12の実施例とは対照的に、
図13~18に示された実施例における加圧ピストン102のストロークは、停止部136によって制限されており、圧力閾値p
Sをはるかに上回る圧力が印加された場合においても、静止ハウジング部12の内部で、最大でも停止部136まで移動し得るのみである。停止部136に達すると、同時に、閉鎖力アクティブ化バネ132が、一定の力を摺動リング構成32に作用させる。閉鎖力アクティブ化バネ132のバネ力は、例えばバネ当たり5Nである。他の実施例の場合のように、1つ以上の加圧ピストン102、例えば2~6個、好ましくは2~4個の加圧ピストン102が、スペースの観点から可能である。例えば、3つ又は4つの加圧ピストン102が、必要に応じ閉鎖鎖力アクティブ化バネ132と共に、摺動リングキャリア34の周りに環状に配置され得る。
【0098】
図14及び17に示された、例えば圧縮空気動作における圧力閾値p
S未満のアクティブ化されていない状態においては、閉鎖力アクティブ化バネ132とフランジ46との間に接触は生じない。
【0099】
要約すると、回転ユニオン10は、したがって、好ましくは、以下のように少なくとも3つの動作状態を有する:
【0100】
1.非加圧状態において、回転ユニオン10は、メカニカルシール30の完全に開いた状態(ドライランニング動作状態)を定義する。完全に開いたドライランニング動作状態では、2つの摺動リング36、38は、十分に大きな間隙39を伴って互いに分離されており、その結果、回転ユニオン10は、摺動リング36、38において摩耗を生じることなく、ドライランニングにおいて媒体なしで回転することができる。
【0101】
2.圧力閾値p
Sを下回る媒体圧力によって加圧される場合、回転ユニオンは、圧縮性の媒体と共に動作するための動作状態(加圧ガス動作状態)を定義する。この加圧ガス動作状態では、メカニカルシールは、単に制御された(空気)漏れを可能にするために、最小限にしか開いていない。制御された(空気)漏れを可能にするシール間隙40は、対応する
図2、5、8、11、14、17では認識され得ないほど小さい。圧縮性の媒体のための加圧ガス動作状態では、クランピング装置100はアクティブ化されていない。第1の軸方向の力成分K1のみが、メカニカルシール30に作用する。
【0102】
3.圧力閾値p
Sを上回る媒体圧力によって加圧される場合、回転ユニオンは、高い媒体圧力下にある圧縮性の媒体のための動作状態(液体媒体動作状態)を定義する。
図3、6、9、12、15、18に示された液体媒体動作状態では、メカニカルシーは閉じられ、クランピング装置100はアクティブ化されている。したがって、液体媒体動作状態では、荷重比Bに基づく第1の軸方向の力成分、及び付加的に、アクティブ化されたクランピング装置100によって引き起こされる第2の軸方向の力成分が、メカニカルシール30に対する共通の閉鎖力として、加わる。それにより、切削油又は作動油のようなより粘性の高い媒体での動作に対しても、高い媒体圧力において、十分なシール性が達成され得る。冷却潤滑剤と共に動作する場合、クランピング装置100のアクティブ化は、低い粘性に起因しておそらく絶対に必要ではないが、有害でもない。
【0103】
したがって、専ら存在する媒体圧力によってアクティブ化されるクランピング装置100によって、閉鎖力の目標とする増幅を引き起こすことができる。閉鎖力の増幅は、回転ユニオン10の内部の媒体圧力が圧力閾値pSを超え、圧力閾値pSを超えたことに応答してクランピング装置100がアクティブ化されることによって引き起こされ、それにより、メカニカルシール30に対する第2の軸方向の力成分K2がアクティブ化される。
【0104】
加圧ガス動作状態においては、例えば圧縮空気動作において、本実施例では毎分約15~20標準リットルであり得る、メカニカルシールが30のある漏れ率が生じるが、これは、多くの従来の回転ユニオンよりも著しく少ない。更に、本回転ユニオン10は、優れたドライランニング特性を有する。これは、ドライランニング中、摺動リング36、38の過度の加熱が回避され得るからである。したがって、回転ユニオンは、ドライランニング時の非加圧状態においても、特に例えば10 barまでの許容可能な圧力間隔の圧縮空気と共にも、高い回転数で広範囲にわたって無制限に動作され得る。
【0105】
媒体主チャネル20内に圧力が全く存在しない場合、クランピング装置100はアクティブ化されず、二次シール60は、いわゆるPop-Off(登録商標)効果によって浮動摺動リング36を引き戻し、その結果、メカニカルシール面36a、38a間に接触はなく、これらの間に十分に大きな間隙39が存在し、無制限のドライランニングを行うことができる。すなわち、メカニカルシール30が閉じると、Uカップリング64は幾らか変形し得る。非加圧状態において、戻り変形は、メカニカルシール30の開放を支援する。しかしながら、本発明は、他の二次シール60を備えるものとしても構成され得る。
【0106】
要約すると、クランピング装置又は閉鎖力増幅装置100のアクティブ化は、媒体主チャネル20内に存在する媒体圧力のレベルに応じて、制御又はトリガされる。低い圧力では、クランピング装置又は閉鎖力増幅装置はアクティブ化されず、より高い圧力では、クランピング装置又は閉鎖力増幅装置はオンに切り替わり、すなわち液圧的に制御されて自動的にアクティブ化される。それにより、特に、その中に全ての所望の媒体が交互に導かれ得る単一の媒体主チャネルで十分である。
【0107】
クランピング装置又は力増幅装置のアクティブ化及び/又は非アクティブ化は、それぞれ導入された媒体の媒体圧力のレベルによって、すなわち圧力閾値pSを上回る圧力上昇、又は、圧力閾値pSを下回る圧力降下、特に非加圧状態とすることによって、純粋に機械的/物理的に行われる。
【0108】
クランピング装置100がアクティブ化されときの閉鎖力の増幅によって、冷却潤滑剤又は切削油若しくは作動油と接続される場合(液体媒体動作状態)のメカニカルシール30の高いシール性と、例えば圧縮空気と共に加圧ガス動作する場合(加圧ガス動作状態)の比較的低い空気漏れ率並びに良好なドライランニング特性(ドライランニング動作状態)、特にPop-Off(登録商標)機能及び高い安定性が、互いに調和され得る。更に、冷却潤滑剤で動作する場合、例えば特に90 barを超える高い圧力を達成することができ、漏れ率は依然として許容範囲内に留まるか、あるいは、メカニカルリングシール30は実質的に漏れがない。実施例は、例えば、場合によっては例えば140 barまでの又は更に210 bar又はそれ以上の液体媒体KSS又は切削油、10 barまでの圧縮空気及び10 barまでのMQLで動作され得る。
【0109】
空気漏れ、あるいは、冷却潤滑剤又は切削油若しくは作動油の僅かな残存する(切り替え)漏れは、漏洩ポート91を介して排出され得る。メカニカルシール30の外側の漏洩空間94からの漏洩液体又は制御された空気漏れを排出するために、漏洩ポート91に漏洩接続カップリングが接続され得る。
【0110】
図20を参照すると、回転ユニオン10には、
図1~18における実施形態に従って、外部の媒体分配ネットワーク400から所望の流体媒体が供給される。圧縮空気動作のために、圧縮空気源402が、制御弁404及び圧縮空気供給ライン408を介して外部の分配器410に接続されている。切削油、作動油又はKSSでの動作のために、液体媒体としての切削油、作動油又はKSSのための媒体リザーバとしてのタンク412が、モータ416を備えるポンプ、及び、液体媒体加圧供給ライン418を介して、外部の分配器410に接続されている。ポンプ414は、切削油、作動油又はKSSのための所望の媒体圧力P1を生成し、これは例えば210 barまでであり得る。過圧を防止するために、液体圧力は、タンク412内へ戻る圧力リリーフ弁422によって制限される。液体媒体がスイッチオフされると、液体媒体の残留圧力は、媒体主チャネル20を非加圧状態にするするために、戻りライン424及び並列の逆止弁428を有するフィルタ426を介して、再びタンク412内へ解放され得る。
【0111】
外部の分配器410は、本例においては、三方弁(圧縮空気、液体、戻り)として設計されており、それぞれ所望の媒体を選択するための媒体選択分配器を形成する。分配器410からは、全ての媒体を、同一の接続ポート22を介して、同一の媒体主チャネル20内へ、交互に、加圧された状態で導入するために、全ての媒体のための共通の接続ライン430としての加圧ラインが、共通の接続ポート22に通じている。
【0112】
要約すると、例えば圧縮空気又はMMS/MQLのような圧縮性の媒体、及び、冷却潤滑剤(KSS)、切削油又は作動油のような非圧縮性の媒体の両方が、加圧された状態で、1つの同一の媒体主チャネル20内へ順次導入され得る、信頼性のある全媒体用の回転ユニオン10が提供され得る。その場合、全ての異なる媒体での動作に対して、高いレベルの信頼性及び可変性が保証される。
【0113】
前述した実施形態は例示的なものと理解されるべきであり、本発明は、これらに限定されず、特許請求の範囲の保護範囲から逸脱することなく、多くの方法で変更され得ることが、当業者には明らかである。前方又は後方のような空間的な配向に関する用語は、空間内における絶対的なものとして理解されるべきではなく、むしろ、部材の相対的な関係を示すために用いられ、「前方」はロータ側を示し、「後方」はロータの反対側の軸方向ステータ側を示す。更に、明細書、特許請求の範囲、図面等に開示されているか否かにかかわらず、特徴は、単独で本発明の本質的な構成要素を定義し、他の特徴と共に記載されている場合であっても、本明細書によって個々に開示されていると見なされることは、明らかである。不必要な繰り返しを回避するために、実施例のうちの1つに関連して説明された全ての特徴は、他に明示的に説明されない限り、任意の他の実施例に関連して開示されたものと見なされる。
【国際調査報告】