(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-17
(54)【発明の名称】回転ユニオン
(51)【国際特許分類】
F16J 15/34 20060101AFI20240410BHJP
F16L 27/08 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
F16J15/34 C
F16J15/34 K
F16L27/08 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568615
(86)(22)【出願日】2022-04-26
(85)【翻訳文提出日】2023-12-20
(86)【国際出願番号】 EP2022061116
(87)【国際公開番号】W WO2022233650
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】102021111690.2
(32)【優先日】2021-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102021111688.0
(32)【優先日】2021-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102021131994.3
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102021131995.1
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523416287
【氏名又は名称】デュブリン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Deublin GmbH
【住所又は居所原語表記】Florenz-Allee 1, 55129 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】グリム, エーベルハルト
(72)【発明者】
【氏名】スキパス, マーセル
(72)【発明者】
【氏名】ブツス, クリストフ
【テーマコード(参考)】
3H104
3J041
【Fターム(参考)】
3H104JA04
3H104JB02
3H104JB04
3H104JC10
3H104JD09
3H104LE02
3H104LF10
3H104LG02
3J041AA01
3J041AA06
3J041BA03
3J041BA20
3J041BD06
3J041DA05
3J041DA16
(57)【要約】
本発明は、流体媒体を静止機械部分から回転機械部分に移送するための回転ユニオン(10)であって、
前記静止機械部分内への組み込みのための静止ハウジング部(12)であって、作業空間(19)と、流体媒体を前記静止ハウジング部(12)内へ導入するための、前記作業空間(19)内に開口する少なくとも1つの媒体入口チャネル(22、24、26)と、を備える静止ハウジング部(12)と、
前記静止ハウジング部(12)の前記作業空間(19)との流体連通を確立するための流体チャネル(17)を有する、前記回転機械部分との接続のためのロータ(16)と、
前記静止ハウジング部(12)と前記ロータ(16)との間のメカニカルシール(50)であって、前記ロータ(16)と共に回転するロータ摺動リング(58)と、ステータ摺動リング(56)を有し、軸方向に移動可能な摺動リング構成(52)と、を含む前記メカニカルシール(50)と、
液体媒体によって媒体圧力が印加された時に前記静止ハウジング部(12)の壁(112b)に対して軸方向に押し付けられ、その際に弾性的に変形する、エラストマー戻り変形要素(71)であって、圧力が解放された時に弾性的に戻り変形し、弾性的な戻り変形を通じて前記壁(112b)から離れ、その際に、前記メカニカルシール(50)を開放するために前記摺動リング構成(52)を前記ロータ(16)から引き離す、エラストマー戻り変形要素(71)と、
を含む回転ユニオン(10)に関する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体媒体を静止機械部分から回転機械部分に移送するための回転ユニオン(10)であって、
前記静止機械部分内への組み込みのための静止ハウジング部(12)であって、作業空間(19)と、流体媒体を前記静止ハウジング部(12)内へ導入するための、前記作業空間(19)内に開口する少なくとも1つの媒体入口チャネル(22、24、26)と、を備える静止ハウジング部(12)と、
前記静止ハウジング部(12)の前記作業空間(19)との流体連通を確立するための流体チャネル(17)を有する、前記回転機械部分との接続のためのロータ(16)と、
前記静止ハウジング部(12)と前記ロータ(16)との間のメカニカルシール(50)であって、前記ロータ(16)と共に回転するロータ摺動リング(58)と、ステータ摺動リング(56)を有し、軸方向に移動可能な摺動リング構成(52)と、を含む前記メカニカルシール(50)と、
液体媒体によって媒体圧力が印加された時に前記静止ハウジング部(12)の壁(112b)に対して軸方向に押し付けられ、その際に弾性的に変形する、エラストマー戻り変形要素(71)であって、圧力が解放された時に弾性的に戻り変形し、弾性的な戻り変形を通じて前記壁(112b)から離れ、その際に、前記メカニカルシール(50)を開放するために前記摺動リング構成(52)を前記ロータ(16)から引き離す、エラストマー戻り変形要素(71)と、
を含む回転ユニオン(10)。
【請求項2】
前記軸方向に移動可能な摺動リング構成(52)を前記静止ハウジング部(12)内においてシールする二次シール(78)を含み、前記エラストマー戻り変形要素(71)は、前記二次シール(78)の第1の二次シールリングを形成する、請求項1に記載の回転ユニオン(10)。
【請求項3】
前記静止ハウジング部(12)内を制御チャネル(86)が延び、前記制御チャネル(86)は、前記軸方向に移動可能な摺動リング構成(52)をその外径(D1,D1’)において流体媒体によって加圧するために、前記軸方向に移動可能な摺動リング構成(52)の外径(D1,D1’)に開口し、前記二次シール(78)は第2の二次シールリング(74)を含み、前記第1及び第2の二次シールリング(72、74)は、前記制御チャネル(86)を軸方向の両側でシールするために、前記制御チャネル(86)の軸方向において対向する側に配置されている、請求項2に記載の回転ユニオン(10)。
【請求項4】
前記第2の二次シールリング(74)はU字形の断面を有するエラストマーリングとして形成されている、及び/又は、前記第1及び第2の二次シールリング(72,74)は異なる内径を有する、請求項3に記載の回転ユニオン(10)。
【請求項5】
前記エラストマー戻り変形要素(71)は、前記制御チャネル(86)と前記ステータ摺動リング(56)との間に配置されており、前記制御チャネル(86)をロータ側においてシールする、請求項3又は4に記載の回転ユニオン(10)。
【請求項6】
前記エラストマー戻り変形要素(71)は、前記軸方向に移動可能な摺動リング構成(52)の外径(D1,D1’)上でプレストレスされている、請求項1に記載の回転ユニオン(10)。
【請求項7】
前記エラストマー戻り変形要素(71)は、その外径において、前記静止ハウジング部に対して軸方向に変位可能である、請求項1に記載の回転ユニオン(10)。
【請求項8】
前記静止ハウジング部(12)は、前記エラストマー戻り変形要素(71)が収容される、前記エラストマー戻り変形要素(71)のための軸方向オーバーサイズを有する円周溝(112)を備え、前記エラストマー戻り変形要素(71)は、前記溝(112)内において、軸方向の可動性のための軸方向の遊びを有する、請求項1に記載の回転ユニオン(10)。
【請求項9】
前記円周溝(112)は、径方向外周を取り巻く溝底部(112a)を有し、前記エラストマー戻り変形要素(71)は、前記溝底部(112a)に対して軸方向に変位可能である、請求項8に記載の回転ユニオン(10)。
【請求項10】
前記軸方向に移動可能な摺動リング構成(52)は摺動リングキャリア(53)を含み、前記摺動リングキャリア(53)は、前記エラストマー戻り変形要素(71)によって軸方向に移動可能に前記静止ハウジング部(12)内に支持されていると共に、前記ステータ摺動リング(56)のロータ側の端面に固定されており、前記エラストマー戻り変形要素(71)は、前記摺動リングキャリア(53)の外径(D1,D1’)上でプレストレスされている、請求項1に記載の回転ユニオン(10)。
【請求項11】
前記摺動リングキャリア(53)の全周にわたって媒体圧力を印加するために、制御チャネル(86)と、前記摺動リングキャリア(53)の周りを巡る制御チャネル溝(78)が含まれており、前記制御チャネル溝(78)は、前記エラストマー戻り変形要素(71)のための溝(112)と流体連通しており、前記制御チャネル(86)が媒体によって加圧されるとき、前記エラストマー戻り変形要素(71)はロータから離れる方向を向くその軸方向端面(72c)に媒体圧力を受け、その結果、前記媒体圧力は、前記ロータ(16)の方向において、前記エラストマー戻り変形要素(71)の前記ロータ(16)から離れる方向を向く軸方向端面(72c)に、軸方向力をもたらす、請求項10に記載の回転ユニオン(10)。
【請求項12】
以下の条件のうちの少なくとも1つ、複数又は全てが満たされる、請求項1に記載の回転ユニオン(10)。
・前記エラストマー戻り変形要素(71)の前記ロータ(16)に対向する軸方向端面(72b)は凹状に成形されている。
・媒体による加圧下において、前記エラストマー戻り変形要素(71)の前記ロータ(16)に対向する軸方向端面(72b)は、少なくとも2つのシールリップ(73b)で環状に前記静止ハウジング部(12)の前記壁(112b)に密接する。
・圧力が解放された時、前記エラストマー戻り変形要素(71)は、前記少なくとも2つのシールリップ(73b)の弾性的な戻り変形によって前記静止ハウジング部(12)の前記壁(112b)から離れる。
・前記エラストマー戻り変形要素(71)の前記ロータ(16)から離れる方向を向く軸方向端面(72c)は凹状に成形されている。
・前記エラストマー戻り変形要素(71)の内周’72d)は凹状に成形されている。
・前記エラストマー戻り変形要素(71)は、少なくとも2つのシールリップ(73b)で環状に、前記軸方向に移動可能な摺動リング構成(52)にプレストレスされた状態で密接する。
【請求項13】
媒体による加圧下において、前記軸方向に移動可能な摺動リング構成(52)は、前記メカニカルシール(50)に液体媒体に対して必要とされるシール性を付与するために、前記ステータ摺動リング(56)で、回転する前記ロータ摺動リング(58)に対して押し付けられ、その際、前記エラストマー戻り変形要素(71)の断面は弾性変形し、非加圧状態において、前記断面の前記弾性変形によって生じた復元力は、少なくとも、前記軸方向に移動可能な摺動リング構成(52)が、前記ステータ摺動リング(56)で、前記ロータ摺動リング(58)から離れることに寄与し、その結果、前記回転ユニオン(10)の摩擦のないドライランニングを可能にするために、前記ステータ摺動リング(56)と前記ロータ摺動リング(58)との間に空隙(76)が生じる、請求項1に記載の回転ユニオン(10)。
【請求項14】
前記エラストマー戻り変形要素(71)は、クワッドリング(72)として形成されている、請求項1に記載の回転ユニオン(10)。
【請求項15】
流体媒体を静止機械部分から回転機械部分に移送するための、特に請求項1に記載の多媒体用回転ユニオン(10)であって、
前記静止機械部分内への組み込みのための静止ハウジング部(12)であって、作業空間(19)と、流体媒体を前記静止ハウジング部(12)内へ導入するための、前記作業空間(19)内に開口する少なくとも1つの媒体入口チャネル(22、24、26)と、を備える静止ハウジング部(12)と、
前記静止ハウジング部(12)の作業空間(19)との流体連通を確立するための流体チャネル(17)を有する、前記回転機械部分との接続のためのロータ(16)と、
前記静止ハウジング部(12)と前記ロータ(16)との間のメカニカルシール(50)であって、前記ロータ(16)と共に回転するロータ摺動リング(58)と、ステータ摺動リング(56)と、を含むメカニカルシール(50)と、
クワッドリング(72)を含む二次シールリング(78)と、
を含む回転ユニオン(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には、静止機械部分から回転機械部分へ流体媒体を移送するための回転ユニオンに、及び、特には、軸方向のメカニカルシールのいわゆる浮動摺動リングを有するステータ摺動リング構成が、二次シールによって、軸方向に変位可能に静止ハウジング部内に支持されシールされた回転ユニオンに、関する。
【背景技術】
【0002】
回転ユニオンは、典型的には、流体媒体を、例えば工作機械の回転スピンドルのような回転機械部分内へ送り込むために使用される。このために、回転ユニオンは、静止部材と回転部材との間にシールを含む。このシールは、軸方向のメカニカルシールとして形成され得る。典型的には、軸方向のメカニカルシールにおいては、2つの摺動リング又は摺動シールリングが互いに摺動し、摺動リングのうちの一方が他方に対して、回転軸に対して同軸に回転し、摺動リングは、流体媒体によって加圧された内部空間を外側領域の大気圧に対してシールするために、対向し互いに隣接する環状の端面によって互いにシールする。回転ユニオンによって移送されるべき流体媒体の種類は種々であり得る。特に、例えば圧縮空気などの気体のような圧縮性の媒体、並びに、例えば冷却潤滑剤(KSS)、及び、例えば切削油又は作動油などの油のような液体媒体を含み得る。冷却潤滑剤は、大抵の場合、実質的に油-水エマルジョンから成り、典型的には、純水の粘性よりもはるかには高くない粘性、したがって比較的低い粘性を有する。それに反して、切削油及び作動油は、60 mm2/s(cSt)まで又はそれより大きい可能性のある、著しく高い粘性を有する。同様に公知の方法は、いわゆる少量潤滑又は最少量潤滑(MMS/MQS)である。これは、典型的には、オイル-ガス混合物の形態の、すなわち実質的に圧縮性の媒体でもある、エアロゾルを使用する。
【0003】
多数の回転ユニオンが存在し、これらは、大抵の場合、前述した流体媒体のうちの1つ又は特定のいくつかに対して、及び/又は、許容される動作パラメータの特定の範囲に対して、多かれ少なかれ最適化されている。異なる特性又は粘性を有する種々の流体媒体と共に動作され得る回転ユニオンも知られているが、これらは、所望の程度には汎用性又は信頼性がないことが示されている。例えば、これらは、特定の条件下で、及び/又は、多くの媒体で、例えば高い回転数などの状況下で過熱する可能性があり、これは、回転ユニオンの破壊にまでつながる可能性がある。とりわけ、汎用性があると誤解された多くの回転ユニオンは、例えばドライランニング中又は圧縮空気により、高い回転数において、安定性に関する重大な問題を有する可能性のあることが示されている。ドライランニングとは、典型的には、媒体による加圧のない回転ユニオンの回転動作を指す。
【0004】
更に、従来の回転ユニオンは、部分的に、圧縮空気動作において、例えば100標準リットル/分以上の比較的高い漏れ率を有する可能性があり、これも望ましくない可能性がある。
【0005】
更に、多くの公知の従来の回転ユニオンにおいて、圧力及び/又は媒体が変化する際の、又は、メカニカルシールが開閉する際の応答挙動には、更なる改善の余地がある。
【0006】
多くの回転ユニオンにおいて更に不利なのは、特に回転ユニオンが交互に異なる媒体によって加圧されることが想定される場合に、ユーザにとっての大きな設置労力であり得る。部分的には、このために、ユーザの側からの複雑な外部流体接続が必要である。
【0007】
更に、そのような流体接続においては、回転ユニオンの多くの領域に残留圧力が残る可能性があり、これは、場合によっては完全には解消されず、例えばドライランニングにおいて、摺動リングの摩擦に至るまでの望ましくない動作条件をもたらす可能性がある。
【0008】
多くの回転ユニオンの別の欠点は、少量潤滑又は最少量潤滑のエアロゾルが、回転ユニオンの多くの部位で、望ましくない態様で分離する可能性があることである。更に、少量潤滑又は最少量潤滑のエアロゾルは、場合によっては十分に排気され又は空にされ得ず、時間の経過と共に、エアロゾルの分離された液体部分が、回転ユニオン内に蓄積する可能性がある。
【0009】
多くの回転ユニオンは、互いに対する摺動リングの接触圧力に影響を及ぼすために、メカニカルシールのための開放/閉鎖バネ要素を使用する。これも、特定の動作条件下で不利であることが判明し得る。例えば、バネ力は実質的に一定であり、媒体圧力と相関しない。更に、バネ要素は、付加的な、コストを生じる、故障の起こりやすい部材である。
【0010】
デュブリン社の特許文献1及び特許文献2には、メカニカルシールの荷重比が特別に予め選択された区間内にあり、広い圧力及び回転数範囲において2つの摺動リング間の適切な接触圧力を保証する技術が記載されている。 デュブリンの技術は、専門家の間ではAutoSense(登録商標)としても知られている。
【0011】
全体として、市場で入手可能な従来の回転ユニオンの多くは、例えば動作パラメータの使用範囲、使用可能な流体媒体に関する多様性、安定性、ユーザにとっての簡便性、汎用性等のような、回転ユニオンに対する部分的に対立する要件の全体に関して、異なる態様で多かれ少なかれ制限されている。換言すれば、公知の従来の回転ユニオンは、特定の適用領域には好適であるかもしれないが、特にその汎用性、安定性及び使い易さに関して、異なる観点で更に改善され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許第1744502号明細書
【特許文献2】欧州特許第2497978号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、メカニカルシールの迅速かつ確実な開閉を可能にする回転ユニオンを提供することを課題とする。
【0014】
当該課題の別の態様は、軸方向に移動可能な摺動リング構成又はいわゆる浮動摺動リングを有する回転ユニオンを提供することであり、当該回転ユニオンは、一方では加圧された媒体と共に、他方ではドライランニングにおいて、高い回転数での動作においても、長寿命かつ低摩耗で動作し、特に非加圧状態において、摺動リング同士の迅速かつ確実な解放(改善されたPop-Off(登録商標)機能)が保証される。
【0015】
当該課題の別の態様は、前述した欠点を有さないか又はより僅かにしか有さない、回転ユニオンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の課題は、独立請求項の主題によって解決される。本発明の有利な発展形態は、下位請求項において定義されている。
【0017】
本発明の一態様によれば、圧縮性及び非圧縮性の媒体の両方、並びに、異なる粘性を有する媒体を含む種々の流体媒体を、同一の回転ユニオン内で静止機械部分から回転機械部分へ移送するための、多媒体用回転ユニオンが提供される。回転ユニオンは、静止機械部分内へ組み込むための静止ハウジング部と、回転機械部分に接続するためのロータとを含む。静止ハウジング部は、作業空間又は軸方向の若しくは中央の内部流体チャネルを、例えば中空シャフトの形態のロータは、同様に特に軸方向の若しくは中央の流体チャネルを、それぞれ備え、当該流体チャネルは、静止ハウジング部とロータとの間の連続的な流体連通を確立するために、回転中も互いに流体連通する。静止ハウジング部は、一体に又は複数の部品から成るものとして形成され得る。
【0018】
回転ユニオンは、静止ハウジング部とロータとの間の軸方向のメカニカルシールを更に含み、当該メカニカルシールは、回転中、ロータと静止ハウジング部との間の流体連通部をシールする。メカニカルシールは、このために、ロータと共に回転する摺動リング又は摺動シールリング、いわゆるロータ摺動リング、及び、回転しない摺動リング又は摺動シールリング、いわゆるステータ摺動リングを含む。メカニカルシールが、非加圧のドライランニング又は圧縮空気動作において制御された態様で開くことができるように、2つの摺動リングのうちの少なくとも1つは、僅かに軸方向に移動可能に支持されている。このために、この摺動リングは、軸方向に移動可能に支持された摺動リングキャリアに固定されており、メカニカルシールは、摺動リングキャリアが、それに固定された摺動リングと共に軸方向に移動することにより、開閉し得る。構造的な観点からは、大抵の場合、ステータ摺動リングを軸方向に移動可能に支持することが、より容易である。この場合、軸方向に移動可能な摺動リングキャリアは、それに固定されたステータ摺動リングと共に、軸方向に移動可能なステータ摺動リング構成を形成する。ステータ摺動リング構成は、2つの摺動リングの互いに隣接するシール面の間の正確なシールを保証するために、摺動リングキャリアによって、軸方向に変位可能に、好ましくは幾らかのバックラッシュを有する状態で、静止ハウジング部の内部流体チャネル内に支持されている。そのように軸方向に変位可能な、場合によっては僅かに傾斜可能なステータ摺動リングは、専門家の間では、浮動(ステータ)摺動リングとも呼ばれる。
【0019】
換言すれば、浮動ステータ摺動リングの場合、メカニカルシールは、ステータ摺動リングを有し、静止ハウジング部内で軸方向に移動可能ではあるが回転はしない摺動リング構成と、ロータと共に回転する相補的なロータ摺動リングと、を含む。ロータ摺動リングは、例えば、静止ハウジング部に対向するロータの端面に固定されることができ、例えば、プレス及び/又は接着又は他の方法で固定されることができる。
【0020】
しかしながら、浮動摺動リング及びこれに相補的な摺動リングから成る構成を逆にすること、すなわち、ロータ摺動リングを、これを浮動摺動リングとして形成するために、軸方向に移動可能に支持することは、排除されるべきではない。メカニカルシールは、両方の場合において、AutoSense(登録商標)及びPop-Off(登録商標)機能を有するように形成され得る。
【0021】
摺動リングキャリアのうちメカニカルシールから離れた後端は、好ましくは、特にロータ、メカニカルシール及び/又は摺動リングキャリアと同軸に延びる、作業空間又は内部流体チャネル内に開口する。作業空間、中空の摺動リングキャリア及びロータ流体チャネルは、共に、回転ユニオンの特に直線状の中央の全体流体チャネルを形成し、当該チャネルは、静止ハウジング部及びロータを通って軸方向に延びる。したがって、全体流体チャネルは、静止チャネル部及びこれと同軸の回転チャネル部によって形成され、これらのチャネル部は、軸方向のメカニカルシールによって互いにシールされている。回転ユニオンは、好ましくは単一の中央の全体流体チャネルのみを備え、その中に媒体入口チャネルが開口する。更に、好ましくは、回転ユニオンは、中央の全体流体チャネル内に単一の軸方向のメカニカルシールのみを備える。
【0022】
静止ハウジング部は、流体媒体を静止ハウジング部内へ導入するための、例えばパイプ又はホース接続のための第1又は第2の接続ポートを有する、少なくとも第1及び第2の媒体入口チャネルを備え、第1及び第2の媒体入口チャネルは、ステータの内部流体チャネル内に開口する。2つの別々の媒体入口チャネルによって、異なる流体媒体が、交互に、一方の又は他方の媒体入口チャネルのいずれかへ、加圧下で、回転ユニオン内へ、導入され得る。
【0023】
ここで、メカニカルシールは、第1の媒体入口チャネルが媒体によって加圧されるとき、第1の荷重比を、第2の媒体入口チャネルが媒体によって加圧されるとき、第1の荷重比とは異なる第2の荷重比を、それぞれ有する。したがって、異なる媒体入口チャネルには、異なる荷重比が割り当てられている。特に、第2の荷重比は第1の荷重比よりも大きい。
【0024】
回転ユニオンは、有利には、非常に様々な媒体、特に、一方では圧縮性の媒体(ガス、圧縮空気、エアロゾル、少量潤滑は最少量潤滑(MMS/MQS))、他方では非圧縮性の媒体(例えば冷却潤滑剤(KSS)、切削油及び/又は作動油のような液体)と共に、動作され得る。したがって、回転ユニオンは、多媒体用と称され得る。回転ユニオンが、KSSのような低い粘性の液体媒体に加えて、切削油又は作動油のような高い粘性の媒体でも確実に作動することが、特に有利である。加えて、本回転ユニオンは、優れたドライランニング特性、すなわち加圧媒体なしの動作、及び、低摩耗かつ高安定性の動作を有する。更に、圧縮空気動作中の漏れ率は、許容可能な低レベルに保たれ得る。したがって、本回転ユニオンは、全媒体用とさえ称され得る。
【0025】
特に、軸方向のメカニカルシールは、液体媒体による加圧下では実質的に漏れのない状態でシールし、圧縮空気動作において、メカニカルシールは、制御された態様で開き、すなわち、開くことにより、ステータ摺動リングとロータ摺動リングとの間に制御された空隙が生じ、その結果、圧縮空気動作において、摺動リング間に、制御された空気漏れ又は空気クッションが生じ得る。それぞれ有効な荷重比、すなわち異なる媒体入口チャネルにおける異なる荷重比によって、一方では気体媒体によって加圧されたときに第1の媒体入口チャネルにおいて比較的低い所定のガス漏れが、他方では液体媒体によって加圧されたときに第2の媒体入口チャネルにおいて実質的に漏れの無い状態が、それぞれ互いに独立して調整され又は最適化され得る。
【0026】
回転ユニオンは、低い粘性を有する媒体と共に、又は第1のより低い荷重比を有する第1の媒体入口チャネルを介して圧縮性の媒体と共に、あるいは、第2のより高い荷重比を有する第2の媒体入口チャネルを介してより高い粘性を有する媒体と共に、動作されることができ、その場合、全ての媒体で、満足のいくシール効果及び低い摩耗を有する。換言すれば、メカニカルシールは、第1の媒体入口チャネルが加圧されているとき、又は、非加圧状態において、第1の、特により低い荷重比を有し、第2の媒体入口チャネルが特に液体媒体によって加圧されているとき、第2の、特により高い荷重比に切り替わる。
【0027】
異なる荷重比間の切り替えは、第1又は第2の媒体入口チャネルのいずれかを選択的に加圧するか、あるいは、非加圧状態にすることによって、自動的に、液圧により又は空気圧により行われる。
【0028】
多媒体用回転ユニオンは、第1の媒体入口チャネルを介して、例えば圧縮性の媒体、例えば気体媒体、例えば圧縮空気と共に、あるいは、第2の媒体入口チャネルを介して、例えばより高い粘性の液体媒体、例えば6 mm2/s ~ 18 mm2/sの範囲の粘性を有する切削油、あるいは、例えば32 mm2/s ~ 46 mm2/s (40℃)の範囲の、場合によっては60 mm2/s (40℃)までの粘性を有する作動油と共に、それぞれ高い回転数、例えば24,000 min-1で、摺動リングが過熱することなく、また、許容され得る低い漏れ率で又は実質的に漏れなしで、動作され得る。しかしながら、第1の媒体入口チャネルは、場合によっては、例えば1 mm2/s ~ 3 mm2/sの範囲の粘性を有する低い粘性の液体媒体、例えば冷却潤滑剤(KSS)と共にも動作され得る。好ましくは、2つの異なる荷重比は、第1の荷重比が圧縮性の媒体及び/又は低い粘性を有する液体媒体に適し、第2の荷重比が高い粘性を有する液体媒体に適しているように選択され、又は、直径比によって設定される。
【0029】
したがって、回転ユニオンは、特に、液圧によって又は空気圧によって制御される荷重比切り替え装置を備え、当該装置によって、メカニカルシール又はより正確には軸方向に移動可能な(ステータ)摺動リング構成を、第1の荷重比と第2の荷重比との間で、液圧によって又は空気圧によって切り替え可能である。第1の荷重比から第2の荷重比への又はその逆の切り替えは、好ましくは、第2の媒体入口チャネルを加圧すること又は非加圧状態にすることによって行われる。換言すれば、媒体圧力がないとき又は第1の媒体入口チャネルが、好ましくはより低い粘性を有する媒体によって加圧されたとき、より低い第1の荷重比が存在し、第2の媒体入口チャネルが、好ましくはより高い粘性を有する液体媒体によって加圧されたとき、回転ユニオンはより高い第2の荷重比に切り替わる。
【0030】
好ましくは、軸方向のシール力は、実質的に媒体圧力(液圧/空気圧)によって生じる。このようなメカニカルシールは、バランス型メカニカルシールとも呼ばれる。換言すれば、メカニカルシールは、専ら液圧によって又は空気圧によってバランスされるように荷重比が選択された、バランス型のメカニカルシールである。したがって、これらのメカニカルシールにおいて、軸方向のシール力は、実質的に幾何学的な荷重比を通じて設定される。特定の範囲の荷重比を有する対応する回転ユニオンには、出願人によって名称AutoSense(登録商標)も与えられる。そのようなメカニカルシールは、特に、開放バネなしで及び/又は閉鎖バネなしで作動することができるが、付加的な場合によっては僅かな開放力又は閉鎖力を生成する特定のバネ要素は、基本的には排除されるべきではない。
【0031】
有利には、そのようにして、非常に異なる媒体、例えば、一方では圧縮空気のような圧縮性の媒体、及び、他方では例えば切削油又は作動油のような高い粘性の液体媒体による加圧に適しており、しかも、高い回転数において高い安定性を有し、使用される全ての媒体において低い漏れ率を有し、特に液体媒体において実質的に漏れのない、汎用的な多媒体用回転ユニオンが創作され得る。
【0032】
一実施形態によれば、第1の荷重比と第2の荷重比との間の切り替えは、メカニカルシールが、第2の媒体入口チャネルが非加圧状態のときに第1の荷重比を有し、第2の媒体入口チャネルが特に液体媒体によって加圧されるときに第2の荷重比を有するように、第2の媒体入口チャネルにおいて液圧によって行われ、メカニカルシールは、特に第2の媒体入口チャネルが非加圧状態のとき、及び、第1の媒体入口チャネル内への流体媒体の加圧された状態での導入の際にも、第1の荷重比を有する。
【0033】
好ましくは、摺動リングキャリアは、中空ピストンの形態で形成されている。ステータのいわゆる浮動摺動リングは、媒体に応じて可変の接触圧力又は可変のギャップサイズで、回転するロータ摺動リングに対して摺動しつつシールするために、好ましくは、軸方向に移動可能に静止ハウジング部内に支持された中空ピストンのロータ側の端面に固定されている。第1の荷重比から第2の荷重比への切り替えは、第2の媒体入口チャネルを介して導入された媒体による中空ピストンの外径の加圧を通じて液圧によって行われる。このために、中空ピストンは、特に、異なる荷重比に対応する、より小さな第1の外径又は有効径及びより大きな第2の外径又は有効径を有する。したがって、摺動リングキャリアは、例えば、少なくとも2つの異なる有効径を有する段付きピストンとして形成されているが、2つの有効径の間の連続的な移行も可能である。これは、相応して浮動ロータ摺動リングにも当てはまる。
【0034】
好ましくは、静止ハウジング部は、荷重比を変更すべく、又は、第1の荷重比から第2の荷重比に切り替えるべく、媒体圧力をその外径に加えるために、第2の媒体入口チャネルから分岐して中空ピストンに通じる、内部制御チャネルを含む。
【0035】
一実施形態によれば、第1及び第2の媒体入口チャネルは、特に静止ハウジング部内で一体化された弁によって分離されている。特に、第2の媒体入口チャネルは、一体化された逆止弁を備え、制御チャネルは、逆止弁の前で第2の媒体入口チャネルから分岐し、中空ピストンの外径に通じる。それにより、例えば、上流の機械側のバルブがゼロ位置に移動し、媒体タンクを通気することにより、媒体がスイッチオフされた後に、制御チャネル内に残留圧力が残ることが回避され得る。
【0036】
好ましくは、少なくとも1つの他の媒体入口チャネル、特に第1の媒体入口チャネルは、中空ピストンの第2の外径に通じる制御チャネルを有さず、その結果、第2の媒体入口チャネル及び制御チャネルが加圧されるとき、そのような制御チャネルのない媒体入口チャネル、特に第1の媒体入口チャネルが加圧されるときとは異なる、特により大きな荷重比が生じる。
【0037】
したがって、軸方向に移動可能なステータ摺動リング構成の中空ピストンは、好ましくは、第1の荷重比から第2の荷重比への切り替えを生じさせるべく、中空ピストンの第2の有効径に、第2の媒体入口チャネル内へ加圧された状態で導入される液体媒体によって、(同一の)液圧を加えるために、静止ハウジング部内の第2の媒体入口チャネルから分岐し、中空ピストンの特により大きな第2の有効径に通じる内部制御チャネルを介して、加圧される。
【0038】
したがって、中空ピストンは、好ましくは、例えば段付きピストンの形態で、第1の有効径又は外径を有する第1の軸方向領域と、第2の有効径又は外径を有する第2の軸方向領域とを有し、第1の有効径は第1の荷重比に対応し、第2の有効径は、第1の荷重比とは異なる第2の荷重比に対応し、制御チャネルは第2の軸方向領域に通じ、第2の荷重比は、中空ピストンの第2の有効径が、制御チャネルを介して、特に液体の媒体によって加圧されることにより生じる。
【0039】
更なる実施形態によれば、静止ハウジング部は、1つ以上の更なる媒体入口チャネル、例えば、流体媒体を導入するための第3の媒体入口チャネルを含むことができる。第3の媒体入口チャネルも内部流体チャネル内に開口し、その結果、加圧された状態の異なる粘性を有する流体媒体は、交互に、第1、第2又は第3の媒体入口チャネルのいずれかを介して回転ユニオン内へ導入されることができ、媒体は、媒体入口チャネルに応じて、圧縮性又は非圧縮性であり得る。好ましくは、媒体入口チャネルのうちの少なくとも1つ、特に第3の媒体入口チャネルは、軸方向に延び、内部流体チャネル内に軸方向に開口する。これは、少量潤滑又は最少量潤滑に有利である。これは、特にエアロゾルの形態で存在し、チャネルを可能な限り直線的に導くことにより、有利には望ましくない分離が回避され得る。2つの媒体入口チャネルの場合にも、2つのうちの1つ、特により小さな荷重比を有する第1の媒体入口チャネルは、軸方向に延び得ることが分かる。
【0040】
好ましくは、第1、第2及び/又は第3の媒体入口チャネルは、摺動リングキャリアの後方で作業空間内に開口する。
【0041】
好ましくは、第3の媒体入口チャネルが媒体で、特に少量潤滑又は最少量潤滑のエアロゾルによって加圧されるときでさえ、制御チャネルは加圧されず、その結果、第3の媒体入口チャネルが加圧されるとき、特により小さな第1の荷重比が存在する。
【0042】
したがって、以下の特徴のうちの1つ、いくつか又は全てが満たされ得る:
・媒体入口チャネルのうちの少なくとも1つ、例えば第1又は第2の媒体入口チャネルは、径方向に延び、軸方向内部流体チャネル内に径方向に開口する。
・媒体入口チャネルのうちの少なくとも2つ、例えば第1及び第2の媒体入口チャネルは、径方向に延び、軸方向内部流体チャネル内に軸方向に開口する。
・媒体入口チャネルのうちの1つ、例えば第1又は第3の媒体入口チャネルは、軸方向に延び、軸方向内部流体チャネル内に軸方向に開口する。
【0043】
更に、以下の特徴のうちの1つ、いくつか又は全てが満たされ得る:
・媒体入口チャネルのうちの少なくとも1つ、例えば第1又は第2の媒体入口チャネルは、一体化された逆止弁を有する。
・径方向の媒体入口チャネルのうちの少なくとも1つ、例えば第1又は第2の媒体入口チャネルは、一体化された逆止弁を有する。
・径方向の媒体入口チャネルのうちの少なくとも2つ、例えば第1及び第2の媒体入口チャネルは、それぞれ一体化された逆止弁を有する。
・軸方向の媒体入口チャネル、例えば第1又は第3の媒体入口チャネルは、一体化された(逆止)弁を有さない。軸方向の媒体入口チャネル内に逆止弁がない場合、少量潤滑又は最少量潤滑において、有利には、エアロゾルの望ましくない分離が回避され得る。
【0044】
更に、以下の特徴のうちの少なくとも1つ、いくつか又は全てが満たされ得る:
・媒体入口チャネルのうちの少なくとも1つ、好ましくは第2の媒体入口チャネルは、より高い粘性を有する切削油又は作動油により加圧されたときに、メカニカルシールの特により大きな第2の荷重比を生じさせるように調整されており、第2の荷重比は切削油又は作動油に適している。
・媒体入口チャネルのうちの少なくとも他の1つは、加圧されたときにメカニカルシールの第1の荷重比を生じさせるように調整されており、特により小さな第1の荷重比は、例えば圧縮空気のような気体媒体に適している。
・媒体入口チャネルのうちの少なくとも1つは、冷却潤滑剤(KSS)により加圧されたときに、第1の又は第2の荷重比を生じさせるように調整されており、第1の又は第2の荷重比は、冷却潤滑剤(KSS)に適している。
・媒体入口チャネルのうちの1つ、好ましくは、軸方向媒体入口チャネルは、少量潤滑又は最少量潤滑のエアロゾルにより加圧されたときに、メカニカルシールの第1の荷重比を生じさせるように調整されており、第1の荷重比は、少量潤滑又は最少量潤滑のエアロゾルに適している。
【0045】
好ましくは、メカニカルシールの第1の荷重比(非加圧状態又は第1の媒体入口チャネルが加圧されているとき)は、0.45~0.6の範囲の、好ましくは0.47~0.57の範囲の、好ましくは0.49~0.55の範囲の、好ましくは0.52±0.02の値を有する。
【0046】
更に好ましくは、メカニカルシールの第2の荷重比(第2の媒体入口チャネルが加圧されているとき)は、0.6より大きな、好ましくは0.62~1の範囲の、好ましくは0.65~0.7の範囲の、好ましくは0.66±0.02の値を有する。
【0047】
好ましくは、第1の媒体入口チャネルが流体媒体、特に例えば圧縮空気のような気体媒体によって加圧されるとき、第1の荷重比が、第2の媒体入口チャネルが液体媒体、特に切削油又は作動油により加圧されるとき、第2の荷重比が、及び/又は、第3の軸方向媒体入口チャネルが流体媒体、特に少量潤滑又は最少量潤滑のエアロゾルにより加圧されるとき、第1の荷重比が、それぞれ存在する。これにより、有利には、特に汎用的な回転ユニオンを創作することができ、それは、ほぼ全ての重要な異なる媒体に適しており、媒体の各々に対して、高い回転数及びより低い漏れ率で、長寿命で信頼性の高い動作を、又は、液体媒体において実質的に漏れのない動作を、可能にする。
【0048】
好ましくは、第2の媒体入口チャネルは、径方向に延び、内部流体チャネル内に径方向に開口し、媒体入口チャネルの別のもの、例えば、第1又は第3の媒体入口チャネルは、軸方向に延び、内部流体チャネル内に軸方向に開口する。更に、好ましくは、径方向の第2の媒体入口チャネルが加圧されるときの荷重比と、軸方向の媒体入口チャネルが加圧されるときの荷重比とは異なる。特に、径方向の第2の媒体入口チャネルが加圧されるときの荷重比は、軸方向の媒体入口チャネルが加圧されるときの荷重比より大きい。
【0049】
有利には、本回転ユニオンのために、炭化ケイ素摺動リングを、摺動リングのうちの少なくとも1つ、好ましくは両方の摺動リングのために使用することができ(SiC-SiCメカニカルシール)、これらは、回転数、媒体、粘性、媒体圧力、温度などの広い許容可能な動作パラメータにおいて、高い安定性を有する状態で使用され得る。
【0050】
一実施形態によれば、制御チャネルは、中空ピストンの外径に通じ、中空ピストンは、二次シールによって静止ハウジング部内でシールされている。好ましくは、二次シールは、制御チャネルの軸方向の反対側に配置された第1及び第2の二次シールリングを含む。特に、第1の二次シールリングは、エラストマークワッドリングとして、及び/又は、第2の二次シールリングは、U字形断面を有するエラストマーリング、いわゆるUカップリングとして、それぞれ形成されている。特に、制御チャネルのうちロータに面する側でのクワッドリングの使用は、例えば非加圧状態のドライランニングにおける摺動リング間の望ましくない摩擦を回避すべく、例えば非加圧状態において、少なくとも軸方向に移動可能に支持された摺動リング構成上のクワッドリングの変形により生成される弾性復元力の協働により、2つの摺動リングを互いに分離するために有利であることが証明されている。しかしながら、エラストマーUカップリングも、軸方向移動に寄与し得る。上述した二次シールにより、更に、有利には、短い切り替え時間が達成され得る。
【0051】
なお、クワッドリングのこれらの利点は、前述した多媒体用回転ユニオンに限定されず、クワッドリングは、特に1つの荷重比のみ及び/又は1つの媒体入口チャネルのみを有する、多くの伝統的な回転ユニオンにおいても使用され得る。
【0052】
好ましくは、クワッドリングは、軸方向に移動可能な摺動リングキャリア又は中空ピストンの外径上でプレストレスされ、及び/又は、その外径において静止ハウジング部に対して軸方向に変位可能である。それにより、クワッドリングは、軸方向のメカニカルシールが開閉されるとき、静止ハウジング部内のステータ摺動リング構成と共に軸方向に比較的容易に移動することができ、ステータ摺動リング構成に軸方向の力を及ぼすことができる。これは、クワッドリングに作用する液圧力、及び、異なる媒体接続状態間のステータ摺動リング構成の軸方向移動に関して、有利であり得る。
【0053】
好ましくは、クワッドリングは、静止ハウジング部内において、軸方向のオーバーサイズを有する円周溝内に収容されている。それにより、クワッドリングは、溝内で軸方向の遊びを有し、溝内で軸方向に移動することができる。加圧された状態において、媒体圧力が、ロータの方向にクワッドリングに軸方向に作用する。それにより、クワッドリングが媒体圧力を受けると、クワッドリングが溝のロータ側の径方向環状壁に押し付けられ、クワッドリングの変形につながる可能性がある。例えば非加圧状態において、クワッドリングが媒体圧力から解放されると、ステータ摺動リング構成はロータから離れるように移動し、2つの摺動リングのシール面は互いに分離し、シール面間に隙間が生じる可能性がある。クワッドリングは、その後、好ましくは、ロータ側の径方向環状壁との接触を失う。これは、媒体圧力による回転ユニオンの加圧又は媒体圧力からの解放の際、ステータ摺動リング構成の軸方向移動にとって有利であり、軸方向メカニカルシールの確実かつ迅速な閉鎖及び開放、すなわち2つの摺動リングの軸方向シール面の接触及び分離に寄与し得る。
【0054】
本発明の主題は、更に、異なる粘性を有する種々の流体媒体を静止機械部分から回転機械部分に移送するための、多媒体用又は全媒体用回転ユニオンであって、
静止機械部分内への組み込みのための、作業空間又は軸方向の若しくは中央の流体チャネルを有する、静止ハウジング部と、
回転機械部分との接続のための、静止ハウジング部の作業空間又は内部流体チャネルとの接続を確立するための軸方向の若しくは中央の流体チャネルを有する、中空シャフトの形態のロータと、
静止ハウジングの流体接続部を回転するロータに対してシールするための、静止ハウジング部ロータとの間の軸方向のメカニカルシールと、
を含み、
メカニカルシールは、静止ハウジング部と対向する端面に、ロータと共に回転するロータ摺動リングを、静止ハウジング部内に、(いわゆる浮動)ステータ摺動リングを有する、軸方向に移動可能な回転しないステータ摺動リング構成を、それぞれ含むか、又はその逆であり、
静止ハウジング部は、流体媒体を静止ハウジング部内へ導入するための第1及び第2の接続ポートを有する、少なくとも1つの第1及び第2の媒体入口チャネルを含み、第1及び第2の媒体入口チャネルは内部流体チャネル内に開口し、第1又は第2の媒体入口チャネルを介して、異なる粘性を有する異なる流体媒体が、選択的に交互に、特に、圧縮性の媒体が一方の媒体入口チャネル内へ、例えば切削油又は作動油のような高い粘性を有する非圧縮性の媒体が他方の媒体入口チャネル内へ、それぞれ、加圧状態で回転ユニオン内へ導入されることができ、
液圧又は空気圧により制御される荷重比切り替え装置が含まれており、当該装置によって、軸方向に移動可能な(ステータ)摺動リング構成が、それぞれの媒体圧力(液圧又は空気圧)により、第1及び第2の荷重比の間で切り替えられるものである。
【0055】
本発明の更なる態様によれば、静止機械部分から回転機械部分に流体媒体を移送するための回転ユニオンが提供され、当該回転ユニオンは、静止機械部分内への組み込みのための静止ハウジング部と、回転機械部分に接続するためのロータと、を含む。回転ユニオンは、更に、静止ハウジング部内に、作業空間又は内部の軸方向の又は中央の流体チャネルを、ロータ内に、静止ハウジング部の作業空間又は内部流体チャネルとの流体接続を確立するための、軸方向の又は中央の流体チャネルを、それぞれ備える。ロータは、特に中空シャフトの形態で形成されている。
【0056】
回転ユニオンは、更に、静止ハウジング部の流体接続部を回転するロータに対してシールするために、静止ハウジング部とロータとの間に軸方向のメカニカルシールを備え、メカニカルシールは、静止ハウジング部に対向するロータの端面に、ロータと共に回転するロータ摺動リングを、及び、ステータ摺動リングを、それぞれ備える。既に前述したように、ステータ摺動リング又はロータ摺動リングのいずれかは、軸方向に移動可能に支持された摺動リングキャリアに固定されることができ、したがって、軸方向に移動可能な(浮動)摺動リングとして形成され得る。
【0057】
本発明のこの態様によれば、静止ハウジング部は、流体の、例えば圧縮性の、非圧縮性の、特に液体の、気体の又はエアロゾルの媒体を静止ハウジング部内へ導入するための接続ポートを有する少なくとも1つの媒体入口チャネルを備え、媒体入口チャネルは、作業空間内に又は内部流体チャネル内に開口する。
【0058】
回転ユニオンは、更に、好ましくは、液体媒体によって加圧されたときに、媒体圧力によって静止ハウジング部の横方向に延びる壁に対して軸方向に押し付けられ、その際、弾性的に変形される、弾性戻り変形要素を含む。圧力が解放されるか又は非加圧状態になると、弾性戻り変形要素は戻り変形し、弾性的な戻り変形により、横方向に延びる壁から離れ、その際、メカニカルシールを開くために、摺動シール構成をロータから引き離す。したがって、壁は、弾性戻り変形要素のための軸方向ストッパを形成する。弾性戻り変形素は、特に、エラストマー材料から成るか又はエラストマーリングとして形成されている。エラストマーリングは、好ましくは近似的に長方形又は正方形の断面を有する丸いコードリングとして形成されており、好ましくは丸みを帯びた角を有し、丸みを帯びた角はリップシールを形成する。
【0059】
好ましくは二次シールが含まれており、それにより、摺動リングキャリアが、例えば静止ハウジング部内に、軸方向に変位可能に支持されシールされている。本発明のこの態様によれば、エラストマー戻り変形要素は、好ましくは、摺動リングキャリア及び関連する摺動リングから成る、軸方向に移動可能な摺動リング構成の二次シールの二次シールリングを形成する。エラストマー戻り変形要素又は第1の二次シールリングは、好ましくは、Xリングと呼ばれることもあるエラストマークワッドリングとして形成されている。したがって、二次シールは、メカニカルシールを開閉するために、すなわち2つの摺動リングの軸方向シール面を接触させ再び分離させるために、ステータ摺動リング構成の軸方向変位を可能にし、その結果、特に、安全な非加圧ドライランニングのために、シール面間に空隙が生じる。
【0060】
二次シールは、好ましくは、第2の二次シールリングを含む。
【0061】
好ましくは、特に荷重比を変更すべく、軸方向に移動可能なステータ摺動リング構成をその外径で流体媒体によって加圧するために、静止ハウジング部内を、軸方向に移動可能なステータ摺動リング構成の外径に開口する制御チャネルが延びる。第1及び第2の二次シールリングは、好ましくは、2つの軸方向に互いに隔てられた位置でステータ摺動リング構成を軸方向に変位可能に支持し、制御チャネルを軸方向の両側でシールするために、制御チャネルの軸方向の両側に配置されている。
【0062】
第2の二次シールリングは、好ましくは、エラストマーリングとして、特にU字形断面を有する、いわゆるUカップリングとして形成され得る。
【0063】
一実施形態によれば、エラストマー戻り変形要素又はクワッドリング及び第2の二次シールリング(U字形断面を有するエラストマーリング)は、異なる内径を有し、軸方向に移動可能な摺動リングキャリアを、異なる外径を有する位置でシールする。
【0064】
特に、エラストマー戻り変形要素又はクワッドリングは、制御チャネルと、いわゆる浮動ステータ摺動リングとの間に配置されており、制御チャネルをロータ側でシールする。
【0065】
好ましくは、エラストマー戻り変形要素又はクワッドリングは、軸方向に移動可能な摺動リングキャリアの外径上でプレストレスされている。これは、ステータ摺動リング構成の可動性、及び、ドライランニングへの移行中のメカニカルシールの開放の信頼性に関して、有利であることが証明されている。
【0066】
これは、エラストマー戻り変形要素又はクワッドリングが、静止ハウジング部に対してその外径において軸方向に変位可能である場合に、同様に有利に寄与し得る。
【0067】
好ましくは、静止ハウジング部は、エラストマー戻り変形要素又はクワッドリングのための、軸方向オーバーサイズで作られた円周方向溝を備え、その中に、エラストマー戻り変形要素又はクワッドリングが収容されている。エラストマー戻り変形要素又はクワッドリングは、溝内において軸方向の遊びを有し、その結果、溝に対して軸方向に移動することができ、これは同様に、ステータ摺動リング構成の軸方向移動に有利に寄与し得る。エラストマー戻り変形要素又はクワッドリングの摺動リングキャリア上におけるプレストレスにより、エラストマー戻り変形要素又はクワッドリング及び摺動リングキャリアは、溝の軸方向オーバーサイズ内で、ユニットとして軸方向に共に移動する。
【0068】
円周溝は、好ましくは、径方向外側の円周溝底部を有し、エラストマー戻り変形要素又はクワッドリングは、溝底部に対して軸方向に変位可能である。
【0069】
一実施形態によれば、軸方向に移動可能なステータ摺動リング構成の摺動リングキャリアは、二次シールによって静止ハウジング部内に軸方向に移動可能に支持された中空ピストンとして形成されており、(いわゆる浮動)ステータ摺動リングは、中空ピストンのロータ側の端面に固定され、例えば接着され、収縮され、プレスされ又はねじ止めされている。エラストマー戻り変形要素又はクワッドリングは、好ましくは、小さな予圧で中空ピストンの外径上にプレストレスされている。
【0070】
好ましくは、中空ピストンは、異なる有効径又は外径を有する2つの軸方向領域を有し、媒体は、制御チャネルを介して、2つの有効径のうちの大きい方に媒体圧力を加える。更に、制御チャネルは、好ましくは、中空ピストンの周囲全体に媒体圧力を加えるために、中空ピストンの周囲を延びる制御チャネル溝を含む。円周方向制御チャネル溝は、エラストマー戻り変形要素又はクワッドリングの溝に流体的に接続されており、その結果、制御チャネルが特に液体媒体で加圧されるとき、エラストマー戻り変形要素又はクワッドリングは、ロータから離れる方向を向くその軸方向端面に媒体圧力を受け、その結果、媒体圧力は、ロータの方向において、エラストマー戻り変形要素又はクワッドリングのロータから離れる方向を向く軸方向端面に、軸方向力をもたらす。媒体圧力によって引き起こされるこの軸方向力によって、エラストマー戻り変形要素又はクワッドリングは、溝のロータ側の環状壁に対して押し付けられ得る。その場合、エラストマー戻り変形要素又はクワッドリング、特にエラストマー戻り変形要素又はクワッドリングのロータとは反対側の湾曲した軸方向端面は、弾性的に変形することができ、媒体圧力が失われると、復元力が、メカニカルシールを再び開くために、ロータから離れる軸方向移動に寄与し得る。
【0071】
少なくとも、エラストマー戻り変形要素の、ロータとは反対側の軸方向端面及び/又はロータに面する軸方向端面が、弛緩状態において凹状に成形されていると、有利であり得る。それにより、媒体圧力は、エラストマー戻り変形要素に良好に作用することができ、エラストマー戻り変形要素は、溝のロータ側の径方向環状壁に適合して変形する。
【0072】
好ましくは、媒体によって加圧されると、エラストマー戻り変形要素のロータに面する軸方向端面は、静止ハウジング部のロータ側の壁に、少なくとも2つのシールリップを有する環状で密接し、及び/又は、圧力が解放されると、エラストマー戻り変形要素は、少なくとも2つのシールリップの弾性的な戻り変形により、静止ハウジング部のロータ側の壁から再び離れる。
【0073】
好ましくは、エラストマー戻り変形要素の内周は凹状に成形されており、その結果、エラストマー戻り変形要素が中空ピストンの外周上においてプレストレスされたとき、エラストマー戻り変形要素は、少なくとも2つの軸方向位置において、環状に、二重リップシールの様式で、中空ピストンにプレストレスされた状態で密接する。実用的には、エラストマー戻り変形要素は、断面において4つの面で凹状に成形されており、及び/又は、丸みを帯びた角を有する。それにより、エラストマー戻り変形要素と中空ピストンとの間の良好な固着が達成され、信頼性の高いPop-Off(登録商標)機能が保証され得る。
【0074】
要約すると、メカニカルシールに、特に液体媒体に対する必要なシール性を与えるために、特に液体媒体による加圧下において、(いわゆる浮動)ステータ摺動リングを有する軸方向に移動可能なステータ摺動リング構成は、ロータ摺動リングに対して押し付けられることができ、エラストマー戻り変形要素又はクワッドリングは、その環状断面が弾性的に変形する。非加圧状態において、環状断面の弾性的な変形によって引き起こされる復元力は、軸方向に移動可能なステータ摺動リング構成がステータ摺動リングと共にロータ摺動リングから離れることに少なくとも寄与し、その結果、例えば回転ユニオンの摩擦のないドライランニングを可能にするために、ステータ摺動リングとロータ摺動リングとの間に空隙が生じ得る。それにより、メカニカルシールのPop-Off(登録商標)特性が改善され得る。
【0075】
好ましくは、エラストマー戻り変形要素又はエラストマークワッドリングの材料は、例えばViton(登録商標)のようなフルオロエラストマーを含む。
【0076】
換言すれば、回転ユニオンは、特に二次シールの二次シールリングとして、クワッドリングを含み、当該クワッドリングにより、摺動リング構成は、静止ハウジング部内で軸方向に移動可能に支持され、シールされている。クワッドリングは、液体媒体によって加圧されると、媒体圧力により、静止ハウジング部のロータ側の壁に対して軸方向に押し付けられ、その際、弾性的に変形する。圧力が解放されると、クワッドリングは戻り変形し、弾性的な戻り変形により壁から離れる。その場合、戻り変形するクワッドリングは、摺動リング構成をロータから引き離し、メカニカルシールが開く。
【0077】
以下において、本発明が、実施例に基づき、図面を参照して、より詳細に説明されるが、同一の及び類似の要素は、部分的に同じ参照番号を与えられ、種々の実施例の特徴は、互いに組み合わせられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【
図1】本発明の実施形態による回転ユニオンの縦断面を、メカニカルシールが閉鎖された状態で示す。
【
図3】
図1の回転ユニオンの縦断面を、メカニカルシールが開放された状態で示す。
【
図8】
図1~4の回転ユニオンのスピンドル側からの軸方向前面図である。
【
図9】
図1~4の回転ユニオンの静止ハウジング部側からの軸方向前面図である。
【
図10】
図1~4の回転ユニオンの斜め前方からの3次元図である。
【
図11】
図1~4の回転ユニオンの斜め後方からの3次元図である。
【
図12】スピンドルにフランジ結合された
図1~11の回転ユニオンの縦断面を、流体媒体による加圧のための流体回路図と共に示す。
【
図13】本発明の別の実施形態による回転ユニオンの斜め前方からの3次元図である。
【
図14】
図13の回転ユニオンの斜め後方からの3次元図である。
【
図15】少量潤滑又は最少量潤滑のためのランスを有する、
図13~14の回転ユニオンの縦断面を示す。
【
図16】
図15の回転ユニオンの静止ハウジング部側からの前面図である。
【
図17】本発明の実施形態による回転ユニオンの縦断面を、液体媒体による加圧下でメカニカルシールが閉鎖された状態で示す。
【
図20】
図18と同様であるが、非加圧状態でメカニカルシールが開放されている。
【
図22】軸方向のメカニカルシールにおける荷重比を説明するための、摺動リング構成の抜粋縦断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0079】
図1~4を参照すると、ユニオン10は、後部に、本例では複数の部品から形成された静止ハウジング部12を備える。この例では中空シャフトの形態の、機械スピンドル15(
図12参照)に接続するためのロータ16は、例えばボールベアリング14のような転がり軸受によって、ハウジング部12内に回転可能に支持されている。回転ユニオン10は、この例では、異なる特性を有する第1及び第2の径方向媒体入口チャネル22、24と、第3の軸方向媒体入口チャネル26と、を備える。媒体入口チャネル22、24、26の各々は、所望の流体媒体を加圧下で回転ユニオン10の静止ハウジング部12内へ導入するために、適切なホース又はパイプシステムとの接続のための、例えばクイックカップリングを有する接続ポート32、34、36を、それぞれ有する。その場合、媒体入口チャネル22、24、26は、好ましくは、媒体によって交互に加圧され、同時には加圧されない。2つの径方向媒体入口チャネル22、24は、それらを互いに遮断し、第3の媒体入口チャネル26の加圧に抗するために、逆止弁42、44を、それぞれ備える。
【0080】
2つの径方向媒体入口チャネル22、24及び軸方向媒体入口チャネル26は、流体接続ノード28において、静止ハウジング部12内の作業空間19内に開口する。作業空間19は、この例では、回転軸Xに対して同軸の内部流体チャネル20を含み、その結果、種々の流体媒体が、交互に、3つの接続ポート32、34、36又は媒体入口チャネル22、24、26の各々を介して、静止ハウジング部12の内部流体チャネル20内へ加圧された状態で導入され得る。
【0081】
軸方向媒体入口チャネル26は、少量潤滑又は最少量潤滑に特に適している。この媒体入口チャネル26は、流体媒体にとって著しい方向変化を伴うことなく専ら軸方向に延び、それにより、少量潤滑又は最少量潤滑に使用されるエアロゾルの望ましくない分離が、ほぼ回避され得る。更に、軸方向媒体供給部には分岐部がなく、逆止弁は使用されず、これは同様に、エアロゾルの望ましくない分離の回避に寄与する。しかしながら、軸方向媒体入口チャネルは、例えば圧縮空気動作にも、又は場合によっては冷却潤滑剤(KSS)にも、適したものであり得る。
【0082】
2つの径方向媒体入口チャネル22、24は、それぞれ、一体化された逆止弁42、44を備え、その結果、ユーザが、これらの媒体供給部に、更なる外部逆止弁を設ける必要はない。径方向の第1の媒体入口チャネル22は、特に圧縮空気動作のために形成され得るが、冷却潤滑剤(KSS)による加圧にも適したものであり得る。径方向の第2の媒体入口チャネル24は、特に、例えば切削油又は作動油のような高い粘性を有する媒体による加圧のために設計されているが、例えば冷却潤滑剤(KSS)のような低い粘性を有する液体媒体にも適したものであり得る。
【0083】
静止ハウジング部12及びロータ16は、軸方向のメカニカルシール50によってシールされている。メカニカルシール50は、軸方向に変位可能な摺動リングキャリア53と、摺動リングキャリア53に固定された摺動リング56とを備える、摺動リング構成52を含む。ステータの摺動リング56、又は短縮してステータ摺動リング56は、そのロータ側の軸方向の環状のシール面56aで、ロータ16の相補的な摺動リング58の軸方向の後部の環状のシール面58aに対して、シールする。ロータ16の摺動リング58、又は略してロータ摺動リング58は、ロータ16のステータ側の端面16aに固定されており、この例では、環状溝62内に押し込まれ、及び/又は、接着されている。
【0084】
ステータ摺動リング56の摺動リングキャリア53は、例えば中空ピストン54として形成されており、この例では、例えば平坦部66(
図5参照)によって回転はしないが軸方向には移動できるように静止ハウジング部12内に配置された、例えば静止ハウジング部12内の対応するロータ側の凹部68内に回転しないように収容された、ロータ側のフランジ64を備える。しかしながら、摺動リング構成52又は中空ピストン54は、ピン、溝若しくは他の手段によって回転しないように固定することもできる。ステータ摺動リング56は、前側において、摺動リングキャリア53若しくは中空ピストン54のロータ側の端部53aに固定、例えば圧入又は接着されているが、他の固定技術も可能である。本例では、ステータ摺動リング56は、例示的に、摺動リングキャリア53の、より正確にはフランジ64の凹部70内に、恒久的に固定されている。
【0085】
摺動リング56、58は、好ましくは両者とも炭化ケイ素から成り、SiC-SiCメカニカルシール50がしばしば参照される。SiC-SiCメカニカルシール50は、耐用年数が長く、液体の良好な潤滑媒体と共に動作するとき、優れたシール特性を有する。しかしながら、多くの従来の回転ユニオンは、圧縮空気での動作の際、又は、炭化ケイ素シールでのドライランニング時に、安定性の問題を有する。SiC摺動リングは、例えば潤滑剤なしで動作し互いに十分に分離されていない場合、過熱する可能性があり、これは、回転ユニオンの完全な故障につながり得る。しかしながら、例えば炭素黒鉛(CG)のような摺動リング56、58用の他の材料も、すなわち例えばCG-SiCメカニカルシールも、考慮に入れられ得る。
【0086】
再び
図1-4を参照すると、ステータの摺動リング構成52、又は短縮してステータ摺動リング構成52は、あるいは、中空ピストン54は、静止ハウジング部12内において、軸方向に変位可能に、より厳密には二次シール78によって、支持されている。二次シール78は、この例では、2つのエラストマーリングシールの形態の第1及び第2の二次シールリング72、74を含む。ロータ側の第1のエラストマーリングシール72は、本例では、例えばViton(登録商標)のようなフルオロエラストマーから成る、エラストマークワッドリング72として形成されている。ステータ側の又は後側のエラストマー第2リングシール74は、本例では、後側で又は高圧側で開放された溝75を有する、U字形の断面を有する。
【0087】
2つのエラストマーリングシール72、74による中空ピストン54の支持は、軸方向のメカニカルシール50を閉じ(
図1、2)、再び開く(
図3、4)ことを可能とするために、ステータ摺動リング構成52又はステータ摺動リング56に、限定的な軸方向の移動性を可能にする。典型的には、メカニカルシール50は、例えばKSS、切削油若しくは作動油のような液体潤滑剤成分を含む加圧された流体媒体と共に動作する際に閉じられ、その結果、高々、最小限の、場合によっては滴状の漏れ(発汗)が生じるにすぎない。このような媒体は、メカニカルシール50が閉じられた際、2つの炭化ケイ素摺動面56a、58a間の十分な潤滑をもたらす。ドライランニング中又は圧縮空気動作中、閉鎖状態では、2つの炭化ケイ素摺動リング56、58が互いに摩擦し合い、過度に加熱する可能性がある。したがって、メカニカルシール50は、非加圧状態において又は圧縮空気動作中、中空ピストン54がステータ摺動リング56と共に、すなわちステータ摺動リング構成52が、ロータ摺動リング58から離れ、そこから僅かに軸方向に、すなわち本図では右方へ移動し、その結果、摺動リング56、58の間にシール間隙76が生じる(
図4、20参照)ことにより、開かれる。
【0088】
2つのエラストマーリングシール72、74は、共に、回転ユニオン10の静止部分の二次シール78を形成する。したがって、エラストマー二次シール78は、ステータ摺動リング構成52のための二重の機能、すなわち一方では軸方向に変位可能な軸受としての、他方では静止側からの流体媒体の加圧に対するシールとしての機能を果たす。
【0089】
ステータ摺動リング構成52は、エラストマーシールリング72、74による支持に起因して、場合によっては僅かな傾斜可能性を有し、その結果、2つの摺動リング56、58のシール面56a、58aは、加圧された状態で互いに対して完全に平坦になり、相応して良好なシールが生成され得る。そのような軸方向に変位可能に支持された、場合によっては僅かに傾斜可能なステータ摺動リング56は、専門家の世界では、浮動摺動リングとも呼ばれる。
【0090】
図3及び4を参照すると、メカニカルシール50の開放状態において、摺動リング56、58の間にシール間隙76が存在し、当該シール間隙76は、より良好な説明のために、
図3及び4においては誇張して示されている可能性がある。メカニカルシール50の開放状態においては、例えば圧縮空気動作において、本実施例では毎分約15~20標準リットルであり得るある漏れ率が生じるが、これは、多くの従来の回転ユニオンよりも著しく少ない。更に、本回転ユニオン10は、優れたドライランニング特性を有する。これは、ドライランニング中、摺動リング56、58の過度の加熱が回避され得るからである。したがって、回転ユニオンは、ドライランニングにおいて非加圧状態で、しかしながら圧縮空気によっても、広範囲にわたり無制限に高い回転数で駆動され得る。
【0091】
図22を参照すると、浮動摺動リングの荷重比Bは、2つの摺動リング56、58の間の接触面Fに対する液圧又は空気圧が負荷される面F
Hの面積比F
H/Fによって、定義される。したがって、荷重比Bは、以下のように、直径D1、D2及びD3に基づいて幾何学的に計算することができる:
【数1】
【0092】
ここで、D1は、圧力負荷された摺動リングキャリアの外径又は有効径であり、D2は、メカニカルシールの接触面の外径であり、D3は、メカニカルシールの接触面の内径である。
【0093】
再び
図1~4を参照すると、中空ピストン54は、段付きピストンとして形成されており、したがって、第1の外径D1を有するステータ側の第1の軸方向領域82と、より大きな第2の外径D1’(D1’>D1)を有するロータ側の第2の軸方向領域84とを有する。
【0094】
制御チャネル86は、内部で相互接続されており、静止ハウジング部12内で第2の媒体入口チャネル24から分岐する。特に、制御チャネル86は、逆止弁44の前又は逆止弁44の高圧側で、径方向の第2の媒体入口チャネル24から分岐する。したがって、制御チャネル86は、静止ハウジング部12内で、例えば穿孔として一体化されており、回転ユニオン10の内部で、媒体入口チャネル24から分岐する。それにより、内部の制御チャネル86は、特に液体媒体が第2の媒体入口チャネル24で遮断されるとすぐに、確実に非加圧で切り替えられる。
【0095】
制御チャネル86は、静止ハウジング部12の内部で、本例では、先ずロータ側の方向に軸方向に、続いて中空ピストン54の方向に径方向内向きに、延びる。最終的に、制御チャネル86は、中空ピストン54の外周面に開口し、当該制御チャネル86を介して、中空ピストン54のより大きな第2の外径D1’が、第2の媒体入口チャネル24に導入された媒体によって、同様に加圧されるように、配置されている。このために、制御チャネル86と、中空ピストン54の外径D1’を有する第2の軸方向領域84との間に、流体接続が存在する。したがって、接続ポート34を介した媒体入口チャネル24への流体媒体の加圧導入は、内部流体チャネル20及びロータ流体チャネル17への流体媒体の加圧導入をもたらすだけでなく、中空ピストン54の外径D1’を有する第2の軸方向領域84も自動的に加圧する。それにより、荷重比に関連して、中空ピストン54のより大きな外径又は有効径D1’が活性化される。したがって、摺動リングキャリア53又は段付きピストン54は、制御チャネル86と共に、メカニカルシール50の荷重比のための液圧又は空気圧により制御される切り替え装置88を形成する。
【0096】
第1の媒体入口チャネル22又は軸方向媒体入口チャネル26が流体媒体によって加圧される場合、メカニカルシール50は、したがって、中空ピストン54の第1の軸方向領域82におけるより小さな外径D1によって決定される、より小さな荷重比Bを有する。その代わりに、媒体入口チャネル24が流体媒体によって加圧されると、これは、制御チャネル86を介して中空ピストン54のロータ側の第2の軸方向領域84におけるより大きな外径D1’を活性化し、その結果、第2の異なる、厳密には、本例ではより大きな荷重比B’が生じ、これは以下のように計算される:
【数2】
【0097】
制御チャネルのない媒体入口チャネル22、26のうちの1つが流体媒体によって加圧されるか、又は、制御チャネル86を有する媒体入口チャネル24が流体媒体によって加圧されるかに応じて、メカニカルシールは、したがって、異なる荷重比、すなわち、ある時はBを、ある時はB’を、有する。換言すれば、各媒体入口チャネルに特定の荷重比が割り当てられているか、又は、種々の媒体入口チャネルに異なる荷重比が割り当てられている。したがって、対応するポート又は媒体入口チャネルを選択することによって、メカニカルシールの荷重比を選択し、液圧又は空気圧により自動的に調整し、あるいは、メカニカルシール50を異なる荷重比BとB’との間で切り替えることができる。
【0098】
その場合、媒体入口チャネル22、26に割り当てられた第1の荷重比Bは、より低い粘性を有する流体媒体に対して選択され、圧縮空気、少量潤滑又は最少量潤滑及び場合によっては冷却潤滑剤(KSS)に特に適しており、本例では約0.52±0.02である。このようにして、更に、圧縮空気の漏れ率が低く保たれ得る。しかしながら、第1の荷重比Bは、いくぶんより広く、0.45~0.6の範囲、好ましくは0.47~0.57の範囲、好ましくは0.49~0.55の範囲であり得る。
【0099】
第2の媒体入口チャネル24に割り当てられ、第2の接続ポート34を介して第2の媒体入口チャネル24が加圧される際に自動的に存在する、より大きな第2の荷重比B’は、より大きな外径D1’によって定義され、本例では約0.66±0.02である。第2の荷重比B’は、例えば約6 mm2/s~18 mm2/s以上の粘性を有する切削油、及び、32 mm2/s以上の範囲の粘性を有する作動油のような、より高い粘性を有する流体媒体に対して選択されるが、1 mm2/s~3 mm2/sの範囲の粘性を有する冷却潤滑剤にも、適し得る。したがって、第1の荷重比と固定的に結び付けられた媒体入口チャネル22及び26は、圧縮性の媒体、特に圧縮空気のような気体媒体、例えば少量潤滑又は最少量潤滑のようなエアロゾル媒体、並びに、数mm2/sまでの冷却潤滑剤のようなより低い粘性の液体媒体に適しており、他方、固定的に結び付けられた第2の荷重比B’を有する第2の媒体入口チャネル24は、数 mm2/s~60 mm2/sの粘性を有する液体媒体に特に適している。しかしながら、第2の荷重比B’は、いくぶんより広く、すなわち0.6より大きく、好ましくは0.62~1の範囲、好ましくは0.65~0.7の範囲であり得る。
【0100】
既に前述したように、特定の媒体入口チャネル22、24、26と特定の荷重条件B、B’との間には、それぞれ固定的な関係があり、これは、ユーザによる接続を著しく簡易化する。ユーザは、例えば圧縮空気を第1の接続ポート32に、作動油又はKSSを第2の接続ポート34に、及び/又は、少量潤滑又は最少量潤滑を軸方向の第3の接続ポート36に接続し、例えば
図12に見られるように、外部の逆止弁及び更なる弁を有する外部の配管分配を大幅に省略することができ、そこでは、例示的に、第1の媒体入口チャネル22が冷却潤滑剤供給ユニット122に接続され、第2の媒体入口チャネル24が作動油供給ユニット124に接続されている。特に、種々の荷重比B、B’の対応する媒体入口チャネルへの固定的な割り当てと組み合わせて、種々の媒体入口チャネルによる種々の流体媒体の局所的な分離は、ユーザによる切り替えを簡略化し得る。とりわけ、ユーザは、外部の制御管を種々の媒体と相互接続する必要がない。
【0101】
他方、回転ユニオン10は、異なる流体媒体に対して異なる荷重比を有し、その結果、流体媒体における、特に実質的に漏れのない低い漏れ率、高い安定性、並びに、非常に異なる媒体への曝露及びドライランニングにもかかわらず少ない摩耗が、保証される。したがって、回転ユニオン10は、当然に、多媒体用回転ユニオン、そればかりか全媒体用回転ユニオン又は汎用回転ユニオンと称され得る。
【0102】
特に液体媒体及び気体媒体のための媒体入口チャネル22、24は、内部の逆止弁42、44によって互いに対してロックされている。2つの内部の逆止弁42、44による内部ロックを通じて、複雑な外部の相互接続及び更なる外部の逆止弁が、大幅に回避され得る。回転ユニオン10は、必要な場所で、媒体入口チャネル22、24ごとに単一の逆止弁42、44で十分である。径方向の媒体入口チャネル22、24内の一体化された逆止弁42、44は、ユーザのための単純化に更に寄与する。
【0103】
更に、制御チャネル86は、第2の媒体入口チャネル24が除荷された際に、自動的に完全に解除され、その結果、第2の荷重比B’から第1の荷重比Bへの及びその逆の、確実で、迅速かつ正確な切り替えが保証される。更に、媒体入口チャネルからのオーバーフローが回避され得る。更に有利な方法では、軸方向ポート36を介した少量潤滑又は最少量潤滑を使用する場合、外部供給ラインには、外部逆止弁も外部ボール弁も必要とされない。
【0104】
異なる媒体入口チャネル22、24、26の、それぞれの媒体に適合された異なる荷重比B、B’により、冷却潤滑剤又は切削油若しくは作動油と接続された場合には、メカニカルシール50の高いシール性が達成されることができ、圧縮空気動作の場合には、15~20標準リットル/分の範囲の比較的低い空気漏れ率、並びに、良好なドライランニング特性及び高い安定性が、調和されることができる。更に、冷却潤滑剤で動作する場合、特に90 barを超える高い圧力を達成することができ、漏れ率は依然として許容範囲内に留まるか、あるいは、メカニカルリングシールは実質的に漏れがない。実施例は、140 barまでの液体媒体KSS又は切削油、10 barまでの圧縮空気及び10 barまでのMQLで動作され得る。
【0105】
冷却潤滑剤又は切削油若しくは作動油の僅かな残りの漏れを排出するための漏れポート91は、種々の角度で設けられており、回転ユニオン10の取り付け姿勢に応じて使用され得る。メカニカルシール50の外側の漏洩空間94からの漏洩液体を排出するために、所望の漏洩ポート91に漏洩接続カップリング92が接続され得る。
【0106】
好ましくは、静止ハウジング部12は、モジュール構造により既存のハウジング形状への容易な適応性が可能であるように、多部品のユニオンハウジングとして形成されている。本例では、静止ハウジング部12は、内部でロータ16がボールベアリング14によって支持されたロータハウジング12aと、内部でステータ摺動リング構成52が軸方向に変位可能に支持され、制御チャネル86の一部が延びる中間ハウジング部12bと、内部で媒体入口チャネル22、24、26が延びる後方ハウジング部12Cと、から成る。本例では、一体化された逆止弁42、44を有する径方向媒体入口チャネル22、24は、径方向外側から静止ハウジング部12内に、より正確には後方ハウジング部12c内に、例えばねじ込みにより嵌め込まれている。
【0107】
図13~14を参照すると、よりスリムな静止ハウジング部12を有する回転ユニオン10の幾分小さな実施形態が示されており、これは、例えば工作機械内への組み込みにも適している。
【0108】
図15~16を参照すると、ユニオン10には、少量又潤滑は最少量潤滑のためのエアロゾル混合のための内部混合装置も備えられ得る。このために、ランス102が軸方向接続ポート36に挿入され、例えばネジ止めされる。ランス102は、軸方向媒体入口チャネル26を通り、内側流体チャネル20を通ってロータ16の流体チャネル17内へ同軸に延び、本例では、ロータ16を越えて機械スピンドル15内まで突出する(
図12参照)。少量又潤滑は最少量潤滑のためのエアロゾルは、この例示的なランス102では、ランス出口開口104で混合され、潤滑剤は軸方向ポート36を介して、圧縮空気は第1のポート32を介して、それぞれ供給される。
【0109】
図17~21を参照すると、ステータ摺動リング構成52の二次シール78は、好ましくはViton(登録商標)から成るロータ側のクワッドリング72と、ステータ側のエラストマーシールリング74とを含む。エラストマーシールリング74は、作動空間19に開口する溝75を有するU字形の断面を有し、その結果、溝75は、動作中は洗われ得ない。U字形シールリング74は、Uカップリング74とも呼ばれる。
【0110】
図17~19を参照すると、クワッドリング72は、外径D1’を有する中空ピストン54のロータ側軸方向領域84に対してプレストレスされている。その場合、クワッドリング72は、静止ハウジング部12、特に中間ハウジング部12b内の、中空ピストン54の周りを延びる溝112内に収容されている。クワッドリング72は、中空ピストン54の軸方向変位の際、軸方向のオーバーサイズを有する状態で製造された溝112内において静止ハウジング部12に対して移動することができるように、溝底部112aに対して十分な遊びを有する。クワッドリング又はXリング72は、リップシール、特にマルチリップシールを形成する。
【0111】
図17~19に示された加圧状態において、クワッドリング72は、液圧によって溝112のロータ側の環状壁112bに押し付けられ、その際、断面において四辺の凹状の造形を伴って弾性的に変形する。特に、ロータ側の凹状の端面72bは、壁112bにおいて変形する。その場合、液圧は、クワッドリング72のロータとは反対側の凹状の端面72cに良好に作用し、これを中空ピストン54と共にロータの方向に移動させ、クワッドリング72を弾性変形させながらリング壁112bに押し付けることができる。したがって、第2の媒体入口チャネル24及び制御チャネル86の加圧の際、例えば切削油又は作動油での動作の際に適切なシール効果を達成するために、2つの摺動リング56、58により高い荷重比B’が印加されるだけでなく、クワッドリング72もまた、媒体圧力による側壁112bへの押し付けによって、その断面において弾性的に変形する。このために、制御チャネル86は、接続チャネル114を介してクワッドリング溝112に流体連通しており、その結果、制御チャネル86内に存在する液圧は、ロータの方向に作用する軸方向の力をクワッドリング72に及ぼすことができる。接続チャネル114は、本例では、クワッドリング72に全周にわたって一様に液圧を印加するために、中空ピストン54の周りの円周環状溝として形成されている。更に、本例では、制御チャネル86は、軸方向に接続チャネル114と流体連通する環状溝の形態で、中空ピストン54の周りを延びる制御チャネル溝87内に開口する。
【0112】
第2の媒体入口チャネル24及び制御チャネル86が非加圧状態になると、クワッドリング72、特に解放状態で凹状のロータ側のクワッドリング端面72bの弾性的応力緩和による変形は、クワッドリング72が、弾性的な戻り変形によりリング壁112bから離れることによって、ロータ16から離れる方向を向く軸方向力成分Fを生成する。中空ピストン54上でクワッドリング72を径方向にプレストレスすることにより、クワッドリング72は、その弾性的な戻り変形により、軸方向力成分Fを、ロータ16から離れるように摺動リングキャリア53又は中空ピストン54に伝達する。その場合、クワッドリング72は、2つのシールリップ73dを有するその凹状の内面72dで、中空ピストンの外径D1’にプレストレスされた状態で着座し、それにより良好な随伴が保証される。したがって、クワッドリング72は、弾性的な戻り変形を通じてクワッドリング72により加えられる力成分Fが中空ピストン54に作用し、したがって、第2の媒体入口チャネル24及び制御チャネル86が非加圧状態になった場合にメカニカルシール50の開口に少なくとも寄与することによって、中空ピストン54を軸方向に随伴する。同時に、クワッドリング72の外周72aは溝底部112aに対して十分にシールし、その結果、制御チャネル86を介して液体媒体によって加圧される場合、クワッドリング72は、ロータ側の環状壁112bに対して媒体圧力によって押し付けられ、その際弾性的に変形される。クワッドリング72が加圧され弾性的に変形されたこの状態において、特にクワッドリング72のロータ側の端面72b及び/又は径方向の内面72dは、二次シール78における望ましくない漏れを回避するために、ロータ側の環状壁112b又は外径D1’に対して十分にシールする。加圧の際、クワッドリング72は、ロータ側において、静止ハウジング部12のロータ側の環状壁112bに対して2つの密封リップ73bでシールし、圧力が解放されると、2つの密封リップ73bは環状壁112bから離れる。そのようなエラストマーリングは、有利には、規定された変形特性を有する。
【0113】
それにより、回転ユニオン10は、とりわけ良好なドライランニング特性を有し、圧縮空気動作において、好ましくは使用されるSiC-SiCメカニカルシール50の2つのシール面56a、58aの間に十分な空隙76が保証され、にもかかわらず、第1の媒体入口チャネル22又は軸方向の媒体入口チャネル26を介した圧縮空気加圧の際のより小さな荷重比Bに起因して、低い空気漏れ率が保証される。
【0114】
メカニカルシールの開放状態が
図20~21に示されているが、空隙76は、説明のために誇張されている可能性がある。クワッドリング72は、開放状態では、ロータから離れる方向を向く溝112の円周環状壁112c上に着座することによって、中空ピストン54又はステータ摺動リング構成52の軸方向移動のためのストッパを見出すことができる。
【0115】
したがって、中空ピストン54上でプレストレスされたクワッドリング72は、中空ピストン54と共に、メカニカルシール50の閉鎖状態と開放状態との間で移動し、クワッドリング72は、軸方向のオーバーサイズを有する状態で製造された環状溝112内で、特に2つの環状壁112bと112cの間で軸方向に移動し、これは、
図18~21において、明確にするために必要に応じて誇張された状態で見ることができる。
【0116】
したがって、この例ではクワッドリング72として形成された第1の二次シールリングは、エラストマー戻り変形要素71を形成し、これは、液体媒体が非加圧状態になる際に信頼性の高いPop-Off(登録商標)機能に寄与する。更に、戻り変形要素71は、特に、一方では第2の媒体入口チャネル24を介した液体媒体による加圧と、他方では第1の又は軸方向の媒体入口チャネル22、26を介した圧縮空気との間での切り替えの際に、迅速な切り替えプロセスに寄与することができる。Uカップリング74は、低い荷重比Bで第1の媒体入口チャネルを介して圧縮空気又はKSSを印加した後にPop-Off(登録商標)機能を提供する。これにより、制御ライン86内に残留圧力を伴うことなく、異なる媒体入口チャネル間で迅速な圧力変化を可能にする。異なる荷重比BとB’との間の切り換えは、それぞれ導入された媒体による加圧によって又は非加圧状態によって、純粋に機械的に/物理的に行われる。
【0117】
戻り変形要素71又は二次シール78により、確実なスイッチングパルス、及び、中空ピストン54又は浮動摺動リング56の比較的抵抗のない軸方向変位が保証され得る。特に、圧縮空気による加圧の際の第1の媒体入口チャネル22と液体媒体による加圧の際の第2の媒体入口チャネル24との間での、迅速な切り替えが保証され得る。
【0118】
要約すると、全媒体用の信頼性の高い回転ユニオン10が提供され得る。特に、第1の媒体入口チャネル22は、気体媒体に、場合によっては冷却潤滑剤(KSS)にも、第2の媒体入口チャネルは、液体媒体に、特に切削油及び作動油、しかし場合によっては冷却潤滑剤(KSS)にも、軸方向の第3の媒体入口チャネル26は、少量潤滑又は最少量潤滑(MMS/MQS)又はオイル・ガス・エアロゾルに、しかし場合によっては圧縮空気又はKKSにも、それぞれ適している。その場合、全ての異なる媒体での動作に対して、高いレベルの信頼性及び可変性が保証される。
【0119】
中空ピストン54に第2の有効直径D1’を追加することにより、第1の有効直径D1と比較して荷重比がBからB’に増大され、その結果、切削油又は作動油のようなより粘性の高い液体媒体に曝された場合においても、シール面56a、58aは閉じたままであるか、又は、十分に低い漏れ率を有するか、又は、実質的に漏れのない状態で動作する(切り替え漏れ又は発汗)。
【0120】
荷重比Bが、特に、一方において第1の媒体入口チャネル22の圧縮空気加圧の際に荷重比B’よりも低いが、他方において多くの他の回転ユニオンよりも高いことにより、信頼性のある圧縮空気動作が、同時に低い空気漏れにおいて保証される。
【0121】
したがって、回転ユニオン10の異なる荷重比を生じさせる異なる媒体入口チャネルは、それぞれ割り当てられた媒体によって切り替えられる。特定の媒体入口チャネルに割り当てられた、それぞれの荷重比又はB’は、ここでも、それぞれ特定の媒体に対して最適化されている。
【0122】
第1の媒体入口チャネル22は、特に圧縮空気用に設計されているが、KSSによる加圧も可能である。第1の媒体入口チャネル22が圧縮空気によって加圧されるとすぐに、当該圧縮空気は、逆止弁42を通って作業空間19内へ又は内部流体チャネル20内へ流れる。この場合、段付きピストン54には、本例では、好ましくは約0.52のより小さい荷重比Bが存在する。より小さな荷重比Bにより、摺動リング56、58の間に間隙76が形成され、その結果、ドライランニング中、2つの炭化ケイ素シールリング56、58の摺動面56a、58aにおける過剰な摩耗が回避され得る。
【0123】
第2の媒体入口チャネル24は、特に、切削油、作動油又は冷却潤滑剤を用いて動作するように形成されている。媒体入口チャネル24が液体媒体で加圧されるとすぐに、液体媒体は、逆止弁44を介して作業空間19又は内部流体チャネル20内へ達し、同時に制御チャネル86内へ達する。制御チャネル86を介して、媒体は段付きピストン54に圧力を加え、それにより、この例では約0.66のより大きな荷重比B1’がもたらされる。したがって、制御チャネル86を介した段付きピストン54の加圧は、荷重比のBからB’への切り替えをもたらし、荷重比B’は、液体媒体、特に切削油、作動油又はKSSに対して最適化されている。逆止弁44は約0.5 barの制御圧力を有し、その結果、制御チャネル86内の圧力が制御圧力を超えるとすぐに、液体媒体は内部流体チャネル20に流入することができる。浮動摺動リング56は、より高い荷重比B’によってロータ摺動リング58に押し付けられ、その結果、メカニカルシール50は閉じたままであり、液体媒体は、実質的に漏れのない状態でロータ16を通って流れることができる。媒体入口チャネル24内の媒体がスイッチオフされた後、2つの摺動リング56、58は、Pop-Off(登録商標)機能によって再び分離され、制御チャネル86は完全に解放され、これは、制御チャネル86の完全なブロック解除とも称され得る。その場合、Pop-Off(登録商標)機能は、本実施例において、例えばクワッドリング72の形態のエラストマー戻り変形要素71によって支持されるが、これは、回転ユニオン10の多媒体適合性にとって有利ではあるが、任意選択的である。
【0124】
実施例は、2つの異なる荷重比B、B’を有する。しかしながら、3つ以上の荷重比を有する回転ユニオンを構築することも可能である。
【0125】
軸方向の媒体入口チャネル26は、少量潤滑又は最少量潤滑(MMS/MQS)に対して最適化されているが、圧縮空気又は冷却潤滑剤(KSS)による動作も可能である。第3の媒体入口チャネル26は、軸方向に直線的に延び、逆止弁を含まないが、これは、エアロゾルの分離がないか又は可能な限り僅かであるために、有利である。第3の軸方向の媒体入口チャネル26が少量潤滑又は最少量潤滑によって加圧される際、浮動摺動リング58は、より低い荷重比Bでロータ摺動リング58に押し付けられ、その結果、メカニカルシール50は閉じたままであり、媒体は、漏れのない状態でロータ16を通って流れることができるが、B’と比較して低い荷重比Bで、である。軸方向の媒体入口チャネル26内の媒体がスイッチオフされた後、メカニカルシール50は再び開き、すなわち、摺動リング56、58は、Pop-Off(登録商標)機能によって分離され、ここでは特にUカップリング74の弾性的な戻り変形によって引き起こされる。
【0126】
なお、一方において多媒体適合性又は荷重比の切り替え、及び、他方においてクワッドリング72の使用は、組み合わせて相乗的な利点を提供するが、本発明のこれらの2つの態様は別々にも実現され得ることに、注意されたい。例えばクワッドリング72は、ただ1つの固定された荷重比(欧州特許第1744502号明細書又は欧州特許第2497978号明細書も参照)及び/又はただ1つの媒体接続ポートを有する従来の回転ユニオンにおいても、エラストマー戻り変形要素71として使用され得る。また、多媒体適合性又は2つ以上の異なる値の間の荷重比の切り替えも、原則として、例えばOリングのような伝統的な二次シーリングによって、実現され得る。
【0127】
前述した実施形態は例示的なものと理解されるべきであり、本発明は、これらに限定されず、特許請求の範囲の保護範囲から逸脱することなく、多くの方法で変更され得ることが、当業者には明らかである。前方又は後方のような空間的な配向に関する用語は、空間内における絶対的なものとして理解されるべきではなく、むしろ、部材の相対的な関係を示すために用いられ、「前方」はロータ側を示し、「後方」はロータの反対側の軸方向ステータ側を示す。更に、明細書、特許請求の範囲、図面等に開示されているか否かにかかわらず、特徴は、それが他の特徴と共に記載されており、実施形態の特徴が互いに組み合わされている場合においても、単独で本発明の本質的な構成要素を定義することは明らかである。
【国際調査報告】