(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-17
(54)【発明の名称】電力変換器デバイスおよびそれを備えるシステム
(51)【国際特許分類】
H02M 7/12 20060101AFI20240410BHJP
【FI】
H02M7/12 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023569747
(86)(22)【出願日】2022-05-05
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 EP2022062158
(87)【国際公開番号】W WO2022238231
(87)【国際公開日】2022-11-17
(32)【優先日】2021-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520404964
【氏名又は名称】エピノバテック、アクチボラグ
【氏名又は名称原語表記】EPINOVATECH AB
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100227330
【氏名又は名称】向井 翼
(72)【発明者】
【氏名】マルティン、オルソン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス、ノレリウス
【テーマコード(参考)】
5H006
【Fターム(参考)】
5H006CA02
5H006CA13
5H006CB01
5H006HA05
5H006HA08
(57)【要約】
本発明は、電力変換器デバイス(1)であって、第1のドライバ(102)、および対(103、104)で配置され、前記対は、並列に接続される少なくとも4つのGaN HEMTデバイス(101)を備える第1の回路基板(100)と、第2のドライバ(202)、および対(203、204)で配置され、前記対は、並列に接続される少なくとも4つのMOSFETデバイス(201)を備える第2の回路基板(200)とを備え、電力変換器デバイスは、2つの回路基板間に少なくとも2つの電気接続(20)を備え、第1の回路基板は、第1の平面内に延び、第2の回路基板は、第2の平面内に延び、第1および第2の回路基板は、2つの平面が並列に延び、2つの回路基板間の電気接続が前記第1および第2の平面に実質的に垂直な方向に延びるように上下に配置され、前記少なくとも4つのGaN HEMTデバイス(101)は、前記第1のドライバ(102)に等距離で電気的に接続される、電力変換器デバイス(1)に関する。本発明はさらに、そのような電力変換器デバイスを備えるシステム(2、3)、およびその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換器デバイス(1)であって、
第1のドライバ(102)、および
対(103、104)で配置された少なくとも4つのGaN HEMTデバイス(101)であって、各対(103、104)は、GaN HEMTデバイス(101)のハーフブリッジ(a half bridge)であり、前記対は、並列に接続される少なくとも4つのGaN HEMTデバイス(101)
を備える第1の回路基板(100)と、
第2のドライバ(202)、および
対(203、204)で配置された少なくとも4つのMOSFETデバイス(201)であって、各対(203、204)は、MOSFETデバイス(201)のハーフブリッジであり、前記対は、並列に接続される少なくとも4つのMOSFETデバイス(201)
を備える第2の回路基板(200)と
を備え、
前記電力変換器デバイス(1)は、前記第1の回路基板(100)と前記第2の回路基板(200)との間に少なくとも2つの基板間電気接続(20)を備え、前記第1の回路基板(100)上の前記GaN HEMTデバイス(101)の対(103、104)のソース端子出力は、前記少なくとも2つの基板間電気接続(20)を介して前記第2の回路基板(200)上の前記MOSFETデバイス(201)の対(203、204)のソース端子出力に電気的に接続され、前記第1の回路基板(100)上の前記GaN HEMTデバイス(101)の対(103、104)のドレイン端子出力は、前記少なくとも2つの基板間電気接続(20)を介して前記第2の回路基板(200)上の前記MOSFETデバイス(201)の対(203、204)のドレイン端子出力に電気的に接続され、
前記第1の回路基板は、第1の平面(X1-Y1)内に延び、前記第2の回路基板は、第2の平面(X2-Y2)内に延び、前記第1および第2の回路基板は、前記2つの平面が並列に延び、前記2つの回路基板間の前記基板間電気接続(20)が前記第1および第2の平面に実質的に垂直な方向(Z)に延びるように上下に配置され、
前記少なくとも4つのGaN HEMTデバイス(101)は、前記第1のドライバ(102)に等距離で電気的に接続される、
電力変換器デバイス(1)。
【請求項2】
前記2つの回路基板(100、200)間の前記基板間電気接続(20)は、前記2つの回路基板間の機械的支持体(mechanical supports)として提供される、請求項1に記載の電力変換器デバイス(1)。
【請求項3】
前記2つの回路基板(100、200)間の前記基板間電気接続(20)は、ねじ接続によって提供される、請求項1または2に記載の電力変換器デバイス(1)。
【請求項4】
前記2つの回路基板(100、200)間の前記少なくとも2つの基板間電気接続(20)は、前記GaN HEMTデバイス(101)の対(103、104)と前記MOSFETデバイス(201)の対(203、204)との間に等距離電気接続を提供する、請求項1から3のいずれか一項に記載の電力変換器デバイス(1)。
【請求項5】
前記各対(103、104)のGaN HEMTデバイス(101)は、モノリシックに(monolithically)集積される、請求項1から4のいずれか一項に記載の電力変換器デバイス(1)。
【請求項6】
前記第1の回路基板(100)は、前記GaN HEMTデバイス(101)用に構成されたデカップリングコンデンサ(106)を備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の電力変換器デバイス(1)。
【請求項7】
前記デカップリングコンデンサ(106)は、前記GaN HEMTデバイス(101)の対(103、104)の各々と対称的に並列接続される、請求項6に記載の電力変換器デバイス(1)。
【請求項8】
前記第1のドライバ(102)は、前記GaN HEMTデバイス(101)を駆動するように構成され、前記第1のドライバは、複数のピン(pin)を有し、各GaN HEMTデバイス(101)は、前記複数のピンのうちの1つと直接接続する、請求項1から7のいずれか一項に記載の電力変換器デバイス(1)。
【請求項9】
各GaN HEMTデバイス(101)は、前記複数のピンのうちの1つの上に直接配置される、請求項8に記載の電力変換器デバイス(1)。
【請求項10】
前記MOSFETデバイス(201)は、前記第2のドライバ(202)に等距離で電気的に接続される、請求項1から9のいずれか一項に記載の電力変換器デバイス(1)。
【請求項11】
前記少なくとも4つのGaN HEMTデバイス(101)の共通ノードと電源(10)との間に電気的に接続された少なくとも1つのインダクタ(105)をさらに備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の電力変換器デバイス(1)。
【請求項12】
前記インダクタ(105)は、前記GaN HEMTデバイス(101)の対(103、104)に等距離で電気的に接続される、請求項11に記載の電力変換器デバイス(1)。
【請求項13】
前記2つの電力変換器デバイス(1a、1b)は、並列に電気的に接続され、前記第1および前記第2のドライバ(102、202)の各々は、同じデジタルクロックに同期されるように構成される、請求項1から12のいずれか一項に記載の2つの電力変換器デバイス(1)を備える、システム(2)。
【請求項14】
請求項1から12のいずれか一項に記載の3つまたは6つの電力変換器デバイス(1a~f)を備え、前記電力変換器デバイスは、三相主供給源(three-phase main supply)(12)の三相用に構成される、請求項13に記載のシステム(3)。
【請求項15】
電気自動車を充電するための、請求項1から14のいずれか一項に記載の電力変換器デバイス(1)またはシステム(2、3)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換器デバイスに関し、特に、GaN HEMTデバイスを備える電力変換器デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンMOSFETは、ノーマリーオフデバイスであり、すなわちそれらが伝導する特定の正の閾値電圧にある。窒化ガリウム(GaN)高電子移動度トランジスタ(HEMT)デバイスは、典型的にはノーマリーオンであるが、ノーマリーオフにすることができる。GaN HEMTデバイスの優れた性質は、低い伝導損失を生じさせるシリコンMOSFETよりも低い値を有するそれらの低いオン抵抗、Rds(オン)である。GaN HEMTデバイスは、典型的には、負の閾値電圧を有し、すなわちゲート電圧が0でノーマリーオンである。トランジスタがオン状態であり、電力がオンにされると、短絡が発生する可能性がある。GaN HEMTデバイスは、シリコンよりも低いスイッチング損失および低い伝導損失を有するが、それらのノーマリーオン挙動のために(特にエンハンスメントモードGaN HEMTにしない限り)、パワーエレクトロニクス用途において短絡する傾向がある。このような短絡は、パワーエレクトロニクスにおいては壊滅的であるが、例えば低電圧でのRF用途における問題は少ない。
【0003】
GaNデバイスは、典型的には約100Hzの作動周波数を有するシリコンMOSFETと比較して、パワーエレクトロニクス用途のために1MHzなどのはるかに高い作動周波数で駆動されることができる。しかし、約66Hzを超える周波数は、電磁両立性(EMC)の問題を引き起こす第二次高調波を導入する。これは大きなLCフィルタでフィルタリングされてもよいが、GaNはより小さな受動構成要素でシステムサイズを減少させる可能性があるため、そのようなフィルタはかさばり、GaNを使用する目的を無効にするので非実用的である。
【0004】
加えて、GaN HEMTのスイッチング時間はシリコンMOSFETよりもはるかに速く、電磁放射を引き起こす。速いスイッチング時間、ならびに低い入力および出力静電容量が望ましい。シリコンMOSFETと比較して、GaN HEMTデバイスは、異なる逆電流特性(すなわち、ID対VGSグラフにおける第3象限伝導)を有する。GaN HEMTがオフ状態にある間、典型的なハーフブリッジ(a half bridge)構成ではハーフブリッジの別のGaN HEMTがオン状態にある間に逆電流を伝導することができることが必要である。逆電流伝導は、典型的には、シリコンMOSFETのボディダイオードによって処理されることができる。
【0005】
さらに、GaN HEMTデバイスは、典型的には、炭化ケイ素の電圧よりも低い電圧、すなわち1200V未満に制限される。したがって、炭化ケイ素MOSFETは、高電力および高電圧用途のためのトランジスタの好ましい選択肢であった。しかし、AC-DC変換の場合、GaNは炭化ケイ素よりも約30%エネルギー効率が高いため、高パワーエレクトロニクスにおけるGaNの適用に関心が寄せられている。
【0006】
GaNトランジスタデバイスは、カスコードデバイスまたはエンハンスメントモードHEMTデバイスとしてパワーエレクトロニクスに使用され得る。カスコードは、HEMTを駆動するシリコンMOSFETと集積されたHEMTからなる。HEMTデバイスはノーマリーオンであり、集積MOSFETは、あたかもノーマリーオフであるがノーマリーオンであるかのように挙動するようにHEMTを制御する。
【0007】
これまでのところ、GaNデバイスの適用は、それらが高電力用途のための有望性を示しているにもかかわらず、中電力、約4kWに制限されている。より高い電力に達するために、並列GaNデバイスが必要とされる可能性がある。しかし、多くのトランジスタを並列化すると、トランジスタラダー(transistor ladder)の上で電圧降下が生じる可能性がある。この電圧降下は、単一のデバイスをより多く加熱させるのに十分な大きさであるため、オン抵抗が増加し、1つまたは複数のデバイスが燃焼してエレクトロニクスの故障を引き起こす可能性がある。GaN HEMTデバイスの非常に速いスイッチング時間のために、任意の2つのGaN HEMTデバイスは異なる量の電流を受け取る可能性があり、これはデバイスの故障につながる場合がある。これは、各個々のトランジスタが他のトランジスタと同一ではないためである。
【0008】
カスコードGaNデバイスに対する1つの解決策は、カスコードデバイスのスイッチング速度を減速させる作動周波数においてインダクタとして挙動し、GaNデバイスが並列に動作するときに適切な電流共有を確実にするフェライトの使用である。
【0009】
エンハンスメントモード(eモード)GaN HEMTデバイスを使用すると、デバイスは代わりにノーマリーオフとして動作する。ノーマリーオフ動作は、HEMT構造の製造中にpGaNゲートコンタクトによって構成されてもよい。eモードGaN HEMTデバイスは非常に速くスイッチングしているが、eモードGaN HEMTデバイス間の不適切な電流共有は、デバイスを燃焼させる可能性がある。eモードGaN HEMTデバイスを減速させることは、シリコンおよび炭化ケイ素MOSFETと比較してGaNを使用する目的を無効にする。
【0010】
まず、並列GaNデバイスを使用することに対する代替策は、使用され得るより大きなGaNデバイスである。しかし、そのようなデバイスの入力電流の分布は、ソースコンタクト(source contact)のためのデバイスの可能な限り多くのコンタクト領域(contact area)を使用することに敏感になる。
【0011】
その結果、既存のデバイスに関するこれらの欠点を克服する解決策が必要とされている。
【0012】
米国特許出願公開第2005/189566号明細書は、2つの回路基板と、駆動回路セクションと、整流動作を実施するダイオードとを備えるスイッチング電力供給モジュールを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/189566号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、本デバイスに関する上述の欠点を軽減する改善された解決策を提供することである。さらに、高いスイッチング周波数を可能にする高パワーエレクトロニクスに適した信頼性の高い電力変換器デバイスを提供することが目的である。
【0015】
本発明は、添付の独立請求項によって定義され、実施形態は、添付の従属請求項、以下の説明、および図面に記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の態様によれば、電力変換器デバイスであって、第1のドライバ、および対で配置された少なくとも4つのGaN HEMTデバイスであって、各対は、GaN HEMTデバイスのハーフブリッジであり、前記対は、並列に接続される少なくとも4つのGaN HEMTデバイスを備える第1の回路基板と、第2のドライバ、および対で配置された少なくとも4つのMOSFETデバイスであって、各対は、MOSFETデバイスのハーフブリッジであり、前記対は、並列に接続される少なくとも4つのMOSFETデバイスを備える第2の回路基板とを備え、電力変換器デバイスは、第1の回路基板と第2の回路基板との間に少なくとも2つの基板間電気接続を備え、第1の回路基板上のGaN HEMTデバイスの対のソース端子出力は、少なくとも2つの基板間電気接続を介して第2の回路基板上のMOSFETデバイスの対のソース端子出力に電気的に接続され、第1の回路基板上のGaN HEMTデバイスの対のドレイン端子出力は、少なくとも2つの基板間電気接続を介して第2の回路基板上のMOSFETデバイスの対のドレイン端子出力に電気的に接続され、第1の回路基板は、第1の平面内に延び、第2の回路基板は、第2の平面内に延び、第1および第2の回路基板は、2つの平面が並列に延び、2つの回路基板間の基板間電気接続が前記第1および第2の平面に実質的に垂直な方向に延びるように上下に配置され、前記少なくとも4つのGaN HEMTデバイスは、前記第1のドライバに等距離で電気的に接続される、電力変換器デバイスが提供される。
【0017】
本発明者は、複数のGaNデバイスを使用して、いくつかのGaNデバイスが単一のデバイスとして挙動するより高い電力変換を達成することが有利であることを認識した。さらに、2つの回路基板が互いに上下に縦に配置され、かつGaN HEMTデバイスと第1のドライバとの間の等距離接続を有する対称的に構築された電力変換器デバイスを提供することによって、高い動作周波数におけるGaN HEMTデバイス間の動作の差による故障を回避する際の信頼性が改善される。
【0018】
さらに、GaN HEMTデバイスがドライバと等しい距離を共有するという本発明における利点は、MOSFETデバイスの回路基板への基板間電気接続と組み合わせて、GaN HEMTデバイス間の電流共有における遅延および分散が回避され、単一の電力変換器デバイスとして挙動する2つの回路基板を提供するという点であり得る。
【0019】
対の2つのGaN HEMTデバイスは、GaN HEMTデバイスのハーフブリッジとして配置されてもよい。電力変換器デバイスは、AC電源などの電源に結合されてもよい。第1の回路基板は、電源の線間電圧出力に結合されてもよい。第2の回路基板は、電源の中性線出力に結合されてもよい。
【0020】
第1および第2の回路基板は、個々のプリント回路基板であってもよい。
【0021】
GaN HEMTデバイスと第1のドライバとの間の等距離電気接続とは、各GaN HEMTの端子から第1のドライバ上のそれぞれの接続点までの距離が等しくてもよいことを意味し得る。等しいとは、±1%の許容範囲内であることを意味し得る。
【0022】
第1の回路基板は、第1のX-Y平面内に画定された第1の平面内に延びてもよい。第2の回路基板は、第2のX-Y平面内に画定された第2の平面内に延びてもよい。第1および第2の平面は、並列に配置される。さらに、2つの平面は、Z方向に離間されてもよい。Z方向は、第1および第2のX-Y平面に対して共通であってもよい。2つの回路基板間の少なくとも2つの基板間電気接続は、2つの回路基板を電気的に接続するために前記Z方向に延びることが可能である。
【0023】
中性線上のMOSFETと線間電圧上のGaN HEMTデバイスとの長距離接続は、それらの上部スイッチング速度でGaN HEMTデバイスを駆動することを妨げる可能性がある。これは、本発明による電力変換器デバイスにより軽減され得る。
【0024】
一実施形態では、2つの回路基板間の基板間電気接続は、回路基板間の機械的支持体(mechanical supports)として提供されてもよい。機械的支持体は、回路基板がそれぞれ延びる平面に実質的に垂直に延びてもよい。機械的支持体は、一方の回路基板が他方の回路基板の上方に配置されるための支持体と、2つの回路基板間の電気接続の両方として機能してもよい。機械的支持体は、それぞれの回路基板の縁部部分に配置されてもよい。機械的支持体は、回路基板の円周に沿って対称的に配置されてもよい。2つの回路基板は、サイズが実質的に等しくてもよい。機械的支持体の長さは、2つの回路基板間の距離を設定することが可能である。機械的支持体の長さは、2つの回路基板が互いにどの程度近くに配置され得るかという物理的制限に応じて、可能な限り短く選択されてもよい。2つの回路基板の各々における機械的支持体は、対のGaN HEMTまたはMOSFETデバイスへの電気接続が位置する点に配置されてもよく、それによって機械的支持体を介して電気接続を提供する。一実施形態では、2つの回路基板間に配置された2、4、6、8、10、12、14、16、18、または20個の機械的支持体があってもよい。好ましくは、回路基板の円周に沿って対称的に分布される偶数の機械的支持体が提供されてもよい。一実施形態では、2つの回路基板間の電気接続を提供する少なくとも2つの機械的支持体に加えて、2つの支持体間の電気接続を提供せず、2つの回路基板間の物理的支持体としてのみ機能する1つ、2つ、またはそれ以上の機械的支持体があってもよい。すべての提供された機械的支持体のうち、少なくとも2つ、例えば2つ、4つ、または8つの機械的支持体は、回路基板間の電気接続を提供することが可能である。すべての機械的支持体は、回路基板の円周に沿って互いに対称的に分布されてもよい。
【0025】
一実施形態では、2つの回路基板間の基板間電気接続は、ねじ接続によって提供されてもよい。そのようなねじ接続は、例えば、ねじによって回路基板に取り付けられる上述のような機械的接続であってもよい。
【0026】
一実施形態では、2つの回路基板間の少なくとも2つの基板間電気接続は、GaN HEMTデバイスの対とMOSFETデバイスの対との間に等距離電気接続を提供してもよい。電力変換器デバイスの対称性および性能をさらに改善するために、2つの回路基板間の基板間電気接続は、GaN HEMTデバイスの2つの対からMOSFETデバイスの2つの対への電気接続として提供されてもよく、それにより接続の長さは、GaN HEMTデバイスおよびMOSFETデバイスの各対について等しい。したがって、GaN HEMTデバイスの第1の対からMOSFETデバイスの第1の対までの接続距離は、GaN HEMTデバイスの第2の対からMOSFETデバイスの第2の対までの接続距離に等しくてもよい。同じことが、GaN HEMTデバイスの第1の対からMOSFETデバイスの第2の対、およびGaN HEMTデバイスの第2の対からMOSFETデバイスの第1の対にも適用し得る。
【0027】
一実施形態では、GaN HEMTデバイスの対のいずれかにおける2つのGaN HEMTデバイスは、直列に配置されてもよい。同じことが、第2の回路基板におけるMOSFETデバイスの対のMOSFETデバイスにも適用し得る。回路基板間の基板間電気接続は、それぞれ直列に配置されたGaN HEMTデバイスの対の各端部から、それぞれ直列に配置されたMOSFETデバイスの対の各端部まで提供されてもよい。そのような実施形態では、2つの回路基板間に少なくとも4つの基板間電気接続があってもよい。一実施形態では、すべてのそのような4つの基板間電気接続は、GaN HEMTデバイスの対の端部から対応するMOSFETデバイスの対の端部まで等距離にあってもよい。
【0028】
一実施形態では、各対のGaN HEMTデバイスは、モノリシック(monolithically)に集積されてもよい。2つのGaN HEMTデバイスのハーフブリッジのモノリシック集積の利点は、寄生インダクタンスおよび寄生静電容量が効率的に低減され得ることであり得る。ハーフブリッジは、パワーエレクトロニクスにおけるトランジスタの共通構成である。したがって、2つのGaN HEMTデバイスは、多数のパワーエレクトロニクス用途に適用されるハーフブリッジとしてモノリシックに集積されることが好ましい場合がある。
【0029】
一実施形態では、第1の回路基板は、GaN HEMTデバイス用に構成された1つまたは複数のデカップリングコンデンサを備える。デカップリングコンデンサは、GaN HEMTデバイスの2つの対と並列に接続されてもよい。一実施形態では、デカップリングコンデンサは、GaN HEMTデバイスの2つの対の各々と対称的に、並列に配置されてもよい。デカップリングコンデンサの静電容量は、10~50pFであってもよい。GaN HEMTデバイスの第2の対における二次側GaN HEMTデバイスがスイッチングしているとき、それらは不安定なDC+電圧を引き起こす可能性があり、これは好ましくない。デカップリングコンデンサは、DC+電圧を安定させることが可能であり、したがってより薄い電気接続の使用を可能にし、それらがドライバによってスイッチングされるときにGaN HEMTデバイス間の適切な電流共有を確実にする。厚い電気接続は非実用的であり、またより高価であり得る。
【0030】
一実施形態では、第1のドライバは、GaN HEMTデバイスを駆動するように構成されてもよく、第1のドライバは、複数のピン(pin)を有してもよく、各GaN HEMTデバイスは、前記複数のピンのうちの1つと直接電気的に接続する。ドライバは、Infineon 1EDF5673Fなどのシングルチャネルガルバニック絶縁型ゲートドライバ(single-channel galvanically isolated gate driver)ICであってもよい。1つのさらなる実施形態では、各GaN HEMTデバイスは、複数のピンのうちの1つの上に直接配置される。第1のドライバのピンのうちの1つの上に直接各GaN HEMTデバイスを配置することによって、電力変換器デバイスの信頼性は、GaN HEMTデバイスの非同期動作による故障のリスクを最小限に抑えることによってさらに改善され得る。
【0031】
一実施形態では、MOSFETデバイスは、第2のドライバに等距離で電気的に接続されてもよい。したがって、第1の回路基板について上述したように、第2の回路基板のMOSFETデバイスは、GaN HEMTデバイスと同じ理由で、第2のドライバに対して等しい距離で配置されてもよい。
【0032】
一実施形態では、電力変換器デバイスは、GaN HEMTデバイスの各対の2つのGaN HEMTデバイス間に電気的に接続されたインダクタをさらに備えてもよい。インダクタは、電力をGaN HEMTデバイスの対の両方に直接供給するように構成されてもよい。インダクタは、AC電源と第1の回路基板との間に配置されてもよい。
【0033】
一実施形態では、インダクタは、GaN HEMTデバイスの対に等距離で電気的に接続されてもよい。それによって、インダクタは、GaN HEMTデバイスの2つの対の各々に対して等しい接続距離で配置され得る。それによって、GaN HEMTデバイスの2つの対に供給される電力が可能な限り等しく供給され、故障を引き起こす可能性があるGaN HEMTデバイスの動作におけるあらゆる差を防止することが確実にされ得る。
【0034】
本発明の第2の態様によれば、上記の実施形態のいずれかによる2つの電力変換器デバイスを備えるシステムが提供され、2つの電力変換器デバイスは、並列に電気的に接続される。さらに、2つの電力変換器デバイスの第1および第2のドライバの各々は、同じデジタルクロックに同期されるように構成されてもよい。一実施形態では、システムは、各ドライバに接続されたデジタルクロックを備えてもよい。
【0035】
一実施形態では、システムは、上記の実施形態のいずれかによる3つまたは6つの電力変換器デバイスを備えてもよい。電力変換器デバイスは、三相主供給源(three-phase main supply)の三相用に配置および構成されてもよい。
【0036】
本発明の第3の態様によれば、電気自動車を充電するための、上記の実施形態のいずれかによる電力変換器デバイスまたはシステムの使用が提供される。本発明の電力変換器またはシステムの信頼性および機能性は、電気自動車の充電に適し得る。既知の充電器と比較してそのような充電器の性能は、高速動作GaN HEMTデバイスの信頼性の高い動作のために改善され得る。
【0037】
本発明は、包含された図面を参照して以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】電力変換器デバイスの回路のブロック図である。
【
図3】電力変換器デバイスの2つの回路基板の概略上面図である。
【
図4】電力変換器デバイスの2つの回路基板の概略上面図である。
【
図6】三相電力変換のためのシステムの回路のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明は、本発明の好ましい実施形態が示されている付随する図面を参照して、以下でより十分に説明される。しかし、本発明は、多くの異なる形態で具体化されてもよく、本明細書に記載の実施形態に制限されると解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全であり、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。図面において、同様の番号は、同様の要素を指す。
【0040】
図1は、第1の回路基板100および第2の回路基板200を備える電力変換器デバイス1のブロック図を示している。電力変換器デバイス1は、AC電源10に接続される。第1の回路基板100は、電源10の線間電圧出力Lに接続され、第2の回路基板200は、電源10の中性線出力Nに接続される。
【0041】
第1の回路基板100は、第1のドライバ102と、GaN HEMTデバイス101の第1の対103と、GaN HEMTデバイス101の第2の対104とを備える。第1の対103および第2の対104は、並列に接続される。各対103、104は、2つのGaN HEMTデバイス101を備える。各対103、104における2つのGaN HEMTデバイス101は、直列に接続される。GaN HEMTデバイス101の各対103、104は、インダクタ105を介して電源10の線間電圧出力Lに結合される。インダクタ105は、直列に接続された2つのGaN HEMTデバイス101間のGaN HEMTデバイス101の対103、104に接続される。
【0042】
各GaN HEMTデバイス101は、第1のドライバ102に接続される。各GaN HEMTデバイス101は、そのゲート端子が第1のドライバ102に接続される。4つのGaN HEMTデバイス101は、第1のドライバ102に等距離で接続される。GaN HEMTデバイス101の各対103、104内において、2つのGaN HEMTデバイスの一方のソース端子は、2つのGaN HEMTデバイスの他方のドレイン端子に接続される。それによって、各対103、104からの出力端子は、一方のソース端子、一方のドレイン端子、および2つのゲート端子である。
【0043】
第1のドライバ102は、GaN HEMTデバイス101を駆動するように構成され、GaN HEMTデバイス101は、第1のドライバ102のピンに電気的に接続される。好ましい実施形態では、第1のドライバに等距離で接続されたGaN HEMTデバイス101は、GaN HEMTデバイス101が第1のドライバのピン上に直接配置されるか、または第1のドライバ102のピンに実質的に当接するように提供される。これは、第1のドライバ102に近いGaN HEMTデバイス101の等しい近接性がGaN HEMTデバイス101の等しい電流共有を確実にするため、有利である。
【0044】
第2の回路基板200は、第2のドライバ202と、MOSFETデバイス201の第1の対203と、MOSFETデバイス201の第2の対204とを備える。第1の対203および第2の対204は、並列に接続される。各対203、204は、2つのMOSFETデバイス201を備える。各対203、204における2つのMOSFETデバイス201は、直列に接続される。MOSFETデバイス201の各対203、204は、電源10の中性線出力Nに結合される。
【0045】
各MOSFETデバイス201は、第2のドライバ202に接続される。各MOSFETデバイス201は、そのゲート端子が第2のドライバ202に接続される。4つのMOSFETデバイス201は、第2のドライバ202に等距離で接続される。MOSFETデバイス201の各対203、204内において、2つのMOSFETデバイスの一方のソース端子は、2つのMOSFETデバイスの他方のドレイン端子に接続される。それによって、各対203、204からの出力端子は、一方のソース端子、一方のドレイン端子、および2つのゲート端子である。
【0046】
GaN HEMTデバイス101は、電源10からの線間電圧に対して並列な対103、104で配置され、低速スイッチング(シリコン)MOSFETデバイス201は、電源10からの中性線上に配置される。GaN HEMTデバイス101のソースおよびドレインは、それらを第2の回路基板200上のMOSFETデバイス201のソースおよびドレインに電気的に接続するために、第1および第2の回路基板100、200間に交互のDC+およびDC-接続で配置されることが好ましい。
【0047】
これは、第1および第2の回路基板100、200間の基板間電気接続20によって提供される。GaN HEMTデバイス101の2つの対103、104のソース端子出力は、2つの回路基板100、200間の基板間電気接続20を介して第2の回路基板200上のMOSFETデバイス201の2つの対203、204のソース端子出力に電気的に接続される。同様に、GaN HEMTデバイス101の2つの対103、104のドレイン端子出力は、2つの回路基板100、200間の基板間電気接続20を介して第2の回路基板200上のMOSFETデバイス201の2つの対203、204のドレイン端子出力に電気的に接続される。
【0048】
第1の回路基板100上のGaN HEMTデバイス101の2つの対103、104と並列に、デカップリングコンデンサ106が配置される。第2の回路基板200上のMOSFETデバイス101の2つの対203、204と並列に、デカップリングコンデンサ206が配置される。
【0049】
図2は、第2の回路基板200の上に配置された第1の回路基板100を概略的に示しており、2つの回路基板100、200間の機械的接続としても提供された4つの基板間電気接続20を有する。第1の回路基板100は、第1の平面X1-Y1内に延びる。第2の回路基板200は、第2の平面X2-Y2内に延びる。基板間電気接続20は、少なくとも部分的に、第1の平面X1-Y1と第2の平面X2-Y2との間をZ方向に延びる。Z方向は、両方の平面X1-Y1、X2-Y2に垂直である。このような配置により、構成要素間の電気接続に関して、2つの回路基板100、200間で対称性が達成され得る。
【0050】
図3は、本発明の一実施形態による第1および第2の回路基板100、200のレイアウト例を示している。第1の回路基板100上において、GaN HEMTデバイス101は、各GaN HEMTデバイス101のゲート端子と第1のドライバ102のピンとの間に第1の内部の第1の基板電気接続(first intra first board electrical connection)111を有して配置される。これらの4つの第1の内部の第1の基板電気接続111は、等距離にある。したがって、それらは、4つのGaN HEMTデバイス101のゲート端子と第1のドライバ102との間に等しい距離を提供する。さらに、各GaN HEMTデバイス101は、2つの回路基板100、200間の基板間電気接続20への第2の内部の第1の基板電気接続(second intra first board electrical connection)112を有する。各GaN HEMTデバイス101と基板間電気接続20との間の第2の内部の第1の基板電気接続112は、等距離にある。したがって、第2の内部の第1の基板電気接続112は、すべてのGaN HEMTデバイス101に対して、回路基板100、200間の基板間電気接続20まで等しい距離を提供する。
【0051】
第2の回路基板200上において、MOSFETデバイス201は、各MOSFETデバイス201のゲート端子と第2のドライバ202のピンとの間に第1の内部の第2の基板電気接続(first intra second board electrical connection)211を有して配置される。これらの4つの第1の内部の第2の基板電気接続211は、等距離にある。したがって、それらは、4つのMOSFETデバイス101のゲート端子と第2のドライバ202との間に等しい距離を提供する。さらに、各MOSFETデバイス201は、2つの回路基板100、200間の基板間電気接続20への第2の内部の第2の基板電気接続(second intra second board electrical connection)212を有する。各MOSFETデバイス201と基板間電気接続20との間の第2の内部の第2の基板電気接続212は、等距離にある。したがって、第2の内部の第2の基板電気接続212は、すべてのMOSFETデバイス201に対して、回路基板100、200間の基板間電気接続20まで等しい距離を提供する。
【0052】
図4は、本発明の一実施形態による第1および第2の回路基板100、200の別のレイアウト例を示している。第1の回路基板100において、GaN HEMTデバイス101は、第1のドライバ102のピン上に直接配置される。それによって、GaN HEMTデバイス101と第1のドライバ102との間の第1の内部の第1の基板電気接続は、効果的に等距離にされると同時に、構成要素間の接続安定性をさらに改善するために短縮される。さらに、各対103、104の2つのGaN HEMTデバイス101は、一体的に形成される。それらは、モノリシックに集積されてもよい。それによって、対103、104の2つのGaN HEMTデバイス101は、第1のドライバ102のそれぞれのピン上に直接互いに一体的に形成される。各GaN HEMTデバイス101間の第2の内部の第1の基板電気接続112および回路基板100、200間の基板間電気接続20は、等距離のままである。
【0053】
第2の回路基板200において、MOSFETデバイス201は、第2のドライバ202のピン上に直接配置される。それによって、MOSFETデバイス201と第2のドライバ202との間の第1の内部の第2の基板電気接続は、効果的に等距離にされると同時に、構成要素間の接続安定性をさらに改善するために短縮される。さらに、各対203、204の2つのMOSFETデバイス201は、一体的に形成される。それらは、モノリシックに集積されてもよい。それによって、対203、204の2つのMOSFETデバイス201は、第2のドライバ202のそれぞれのピン上に直接互いに一体的に形成される。各MOSFETデバイス201間の第2の内部の第2の基板電気接続212および回路基板100、200間の基板間電気接続20は、等距離のままである。
【0054】
図5は、本発明の一実施形態によるシステム2を示しており、システムは、並列に接続された2つの電力変換器デバイス1a、1bを備える。システム2は、線間電圧出力Lおよび中性線出力Nを提供する電源10を備える。線間電圧出力Lは、電力変換器デバイス1a、1bの各々の第1の回路基板100a、100bに供給される。中性線出力Nは、電力変換器デバイス1a、1bの各々の第2の回路基板200a、200bに供給される。
【0055】
システム2の各電力変換器デバイス1a~bは、MOSFETデバイス201を有する第2の回路基板200a~bの上または下にGaN HEMTデバイス101を有する第1の回路基板100a~bを有し、かつ各GaN HEMTデバイス101とそれぞれの第1のドライバ102との間の等距離電気接続を有するように配置され得る。
【0056】
図6は、本発明の一実施形態によるシステム3を示しており、システム3は、6つの電力変換器デバイス1a~fを備える三相AC-DC変換器として提供される。システム3は、三相AC入力を提供する電源12を有する。第1の相は、並列に配置されている2つの電力変換器デバイス1a、1bに供給される。第2の相は、並列に配置されている2つの電力変換器デバイス1c、1dに供給される。第3の相は、並列に配置された2つの電力変換器デバイス1e、1fに供給される。システムは、充電ステーションの高電力高速充電器または電気自動車用の車載充電器のAC-DC変換器として使用されてもよい。
【0057】
システム3の各電力変換器デバイス1a~fは、MOSFETデバイス201を有する第2の回路基板200の上または下にGaN HEMTデバイス101を有する第1の回路基板100を有し、かつ各GaN HEMTデバイス101とそれぞれの第1のドライバ102との間の等距離電気接続を有するように配置され得る。
【0058】
図面および明細書では、本発明の好ましい実施形態および例が開示されており、特定の用語が用いられているが、それらは一般的かつ説明的な意味でのみ使用され、制限の目的では使用されず、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲に記載される。
【国際調査報告】