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特表2024-516902敗血症の治療におけるニタゾキサニド
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-17
(54)【発明の名称】敗血症の治療におけるニタゾキサニド
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/426 20060101AFI20240410BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240410BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240410BHJP
   A61P 39/00 20060101ALI20240410BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240410BHJP
   A61K 31/407 20060101ALI20240410BHJP
   A61K 31/7056 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
A61K31/426
A61P31/04
A61P43/00 111
A61P39/00
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K31/407
A61K31/7056
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023569992
(86)(22)【出願日】2022-05-10
(85)【翻訳文提出日】2024-01-10
(86)【国際出願番号】 EP2022062714
(87)【国際公開番号】W WO2022238452
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】21305616.1
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506236163
【氏名又は名称】ジェンフィット
【氏名又は名称原語表記】GENFIT
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴァネッサ・ルグリー
(72)【発明者】
【氏名】レミ・ハンフ
(72)【発明者】
【氏名】シモン・デベッカー
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA35
4C084MA52
4C084NA14
4C084ZB35
4C084ZC02
4C084ZC20
4C084ZC41
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC82
4C086CC08
4C086EA11
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZB35
4C086ZC02
4C086ZC20
4C086ZC41
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、敗血症の治療のための、必要とする対象での方法における使用のための、ニタゾキサニド、チゾキサニド及びチゾキサニドグルクロニドから選択される化合物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要とする対象における敗血症の治療のための方法における使用のための、ニタゾキサニド(NTZ)、チゾキサニド(TZ)及びTZグルクロニド(TZG)から選択される化合物。
【請求項2】
前記敗血症は細菌感染によって引き起こされる、請求項1に記載の使用のための化合物。
【請求項3】
敗血症から敗血症性ショックに移行する過程で起こるサイトカイン誘導アポトーシスを阻害することにより、重要臓器を保護するために使用される、請求項1又は2に記載の使用のための化合物。
【請求項4】
カスパーゼ活性を阻害することにより、サイトカイン誘導細胞死から保護するために使用される、請求項1又は2に記載の使用のための化合物。
【請求項5】
前記対象は、多臓器不全を伴う敗血症に罹患している、又はその危険性がある、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項6】
前記対象は、敗血症性ショックに罹患している、又はその危険性がある、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項7】
敗血症の進行を遅らせる、又は停止するために使用するための、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項8】
前記化合物は、前記方法において単一の活性剤として使用するためのものである、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項9】
前記化合物は、前記方法において抗菌薬と組み合わせて使用するためのものである、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項10】
前記抗菌薬は、抗生物質である、請求項9に記載の使用のための化合物。
【請求項11】
前記抗菌薬は、カルバペネム系抗生物質である、請求項9又は10に記載の使用のための化合物。
【請求項12】
前記抗菌薬は、エルタペネムである、請求項9又は10に記載の使用のための化合物。
【請求項13】
前記化合物は、NTZである、請求項1から12のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、敗血症の治療又は予防における使用のためのニタゾキサニド、チゾキサニド又はチゾキサニドグルクロニドに関する。
【背景技術】
【0002】
敗血症は、臓器機能障害を引き起こす感染に対する調節不全の免疫反応である。これは、多くの場合細菌感染である感染に対する宿主の複雑で調節不全な反応の結果として発症する。この調節不全に陥った宿主反応は、炎症の亢進だけでなく、免疫抑制によっても特徴づけられる。感染に対するこの不適切な反応の影響は細胞機能障害を引き起こし、最終的には臓器不全に至る。敗血症における単一臓器の機能障害はまれで、通常は複数の臓器が罹患する。敗血症患者の死亡率は罹患した臓器の数と相関する。
【0003】
敗血症患者の多くは循環不全に陥り、その結果、細胞の酸素代謝が異常になる。細胞の酸素代謝異常は血中乳酸値の上昇として現れ、典型的には1リットル当たり>2mEqの値に上昇する。十分な緊急輸液療法にもかかわらず、最低平均動脈圧を維持するために昇圧剤を必要とし、かつ血中乳酸値が上昇した患者は、臨床的に敗血症性ショックを有すると診断される。
【0004】
感染に対する全身の炎症反応である敗血症は、全身性炎症反応症候群を定義する基準のうち2つ以上が発現する。重症敗血症は、臓器機能障害及び敗血症性ショック(十分な緊急輸液療法にもかかわらず低血圧)を合併した状態である。そのスペクトルの終点は多臓器機能不全症候群であり、それは急性疾患患者における臓器機能の変化及び介入なしには維持できない恒常性の存在として定義される。
【0005】
敗血症とその結果引き起こされる多臓器不全は、多くの集中治療室における最も一般的な死因である。米国では毎年75万例の重症敗血症が発生し、死亡率が高いと推定されている。敗血症は現在、アメリカで12番目に多い死因である。実のところ、敗血症は「感染による全身性炎症反応症候群」と定義され、敗血症が制御不能な炎症カスケードの結果であるという概念を反映している。
【0006】
現在では、広範なアポトーシス死が免疫細胞の枯渇をもたらし、患者の感染症根絶能力を損なう可能性があることを示唆するエビデンスが増えている。
【0007】
アポトーシスは、ATP依存性の死プログラムの実行を意味し、多くの場合、デスレセプターのライゲーションによって開始され、カスパーゼ-9の活性化とそれに続くエフェクターカスパーゼの活性化を含む、カスパーゼ活性化カスケードを導く。いったん活性化されると、カスパーゼ-9はカスパーゼ-3及びカスパーゼ-7を直接切断し活性化する。
【0008】
カスパーゼ遺伝子ファミリーは、そのプロドメインの構造及び機能に基づいて分類された15種の哺乳類性メンバーからなる。カスパーゼファミリーはその役割から2つの機能的サブグループに分けられる。炎症性カスパーゼ(カスパーゼ-1、-4、-5、-11、-12、-13、及び-14)はサイトカインの成熟及び炎症反応に関与する。アポトーシスに関与するカスパーゼは更に、アポトーシス開始因子カスパーゼ(カスパーゼ-2、-8、-9、-10、及び-15)及びエフェクターカスパーゼ(カスパーゼ-3、6、7)の2つの機能的サブグループに分けられる。
【0009】
エフェクターカスパーゼは、DNA断片化、細胞収縮、及び膜剥離を含む、アポトーシスの分解段階の特質の開始を担っている。
【0010】
更に、重症敗血症と診断された時点での血清カスパーゼ3レベルと敗血症患者の死亡率との間には関連がある。そのとき、血清カスパーゼ3レベルは、予後バイオマーカーとして使用できると思われる。カスパーゼ3活性の上昇は、敗血症の動物モデルにおける様々な身体部位で認められている。更に、敗血症患者のリンパ球では健常対照よりも、また敗血症患者の脾臓では非敗血症患者よりも高いカスパーゼ3活性が認められている。
【0011】
現在の敗血症の治療は、感染症の迅速なコントロール、血行動態の安定化、及び臓器機能の回復を確実にすることが可能な場合の臓器支持を行うことにより、臓器機能障害の進展を制限することを目的としている。しかし、敗血症及び敗血症性ショックの治療は、依然として実質的なアンメット・メディカル・ニーズである。
【0012】
NTZ(ニタゾキサニド、[2-[(5-ニトロ-1,3-チアゾール-2-イル)カルバモイル]フェニル]エタノエート)は、1975年に初めて記載され、嫌気性原虫、蠕虫、並びに嫌気性細菌及び好気性細菌の両方を含む広範囲の微生物に対して高い効果があることが示された。NTZは、原虫寄生虫であるクリプトスポリジウム・パルバム(Crystosporidium parvum)及びランブル鞭毛虫(Giardia intestinalis)による下痢の治療薬として米国で認可されている。
【0013】
NTZはまた、抗ウイルス活性を付与することができ、重要な代謝及び死促進シグナル伝達経路を阻害することにより、広範な抗がん作用を有することも示された。
【0014】
本明細書において、驚くべきことに、NTZが、敗血症の治療のために、必要とする対象に使用できることが示される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Shrum B、Anantha RV、Xu SXら、A robust scoring system to evaluate sepsis severity in an animal model. BMC Res Notes 2014;7:233
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、NTZが敗血症の前臨床モデルにおいて生存率を改善するという驚くべき観察に由来する。本発明者らはまた、NTZの活性代謝物であるチゾキサニド(TZ)が、カスパーゼ活性を阻害することにより、サイトカイン誘導細胞死から肝細胞を直接保護することを明らかにした。
【課題を解決するための手段】
【0017】
従って、本発明は、敗血症の治療方法における使用のための、NTZ、TZ、TZグルクロニド(TZG)又はその薬学的に許容される塩に関する。
【0018】
本発明は、より詳細には、敗血症の治療のための、必要とする対象での方法における使用のための、NTZ、TZ及びTZGから選択される化合物に関する。特定の実施形態において、前記化合物はNTZである。
【0019】
特定の実施形態では、前記敗血症は細菌感染によって引き起こされる。
【0020】
別の特定の実施形態では、本化合物は、敗血症の際に生じるサイトカイン誘導アポトーシスを阻害することにより、重要臓器を保護するために使用される。更に別の実施形態では、化合物は、カスパーゼ活性を阻害することにより、サイトカイン誘導細胞死から保護するために使用される。
【0021】
特定の実施形態において、前記対象は、多臓器不全を伴う敗血症に罹患している、又はその危険性がある。別の実施形態では、前記対象は、敗血症性ショックに罹患している、又はその危険性がある。
【0022】
別の実施形態では、本化合物は敗血症の進行を遅らせる、又は停止するために使用される。
【0023】
更に別の実施形態において、前記化合物は、前記方法において単一の活性剤として使用するためのものである。或いは、別の実施形態において、前記化合物は、前記方法において抗菌薬、例えば抗生物質と組み合わせて使用するためのものである。特定の実施形態において、前記抗菌薬は、カルバペネム系抗生物質、例えばエルタペネムである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】NTZ処理はCLP手術後の生存率を改善するNTZで処理したマウス又は無処理のマウス(ビヒクル)におけるCLP手術後の生存曲線。対数順位マンテル-コックス検定を用いたNTZ群及びビヒクル群の生存曲線の比較についてP=0.07。
図2】TZはHepG2におけるTNFαによって誘導されるカスパーゼ3/7活性を阻害するANOVAと多重比較のためのフィッシャーのLSD検定を用いた、TNFα又はスタウロスポリンと未処理との比較(A)、及びTZとビヒクルとの比較(B)について、それぞれp<0.05、p<0.01、p<0.001で******。スチューデントT検定を用いたp<0.001で###。
図3】TZ前処理はHepG2細胞においてスタウロスポリンによって誘導されるカスパーゼ3/7活性を阻害するA.HepG2細胞におけるカスパーゼ3/7活性に対するスタウロスポリンの効果(n=24)。統計的有意性の評価にはスチューデントのt検定を用いた。***p<0.001。B.HepG2細胞におけるスタウロスポリン誘導アポトーシスに対するTZ前処理の効果(n=8~24)。細胞をスタウロスポリンの添加前にTZで16時間前処理した。統計的有意性の評価には、多重検定のためのダネット検定を用いた一元配置分散分析を用いた(TZ処理細胞と未処理細胞の比較)。***p<0.001。
図4】スタウロスポリンと併用したTZ及びNTZ処理は、HepG2細胞におけるカスパーゼ3/7活性を阻害するA.HepG2細胞におけるスタウロスポリン誘導アポトーシスに対するTZの効果(n=6)。カスパーゼ3/7活性測定前にTZ及びスタウロスポリンを同時に添加した。B.HepG2細胞におけるスタウロスポリン誘導アポトーシスに対するNTZの効果(n=6)。カスパーゼ3/7活性測定前にNTZ及びスタウロスポリンを同時に添加した。A及びBについて、統計的有意性(TZ又はNTZ処理細胞を未処理細胞と比較)を評価するために、多重検定のためのダネット検定による一元配置分散分析を用いた。**p<0.01、***p<0.001。
図5】NTZの前処理の有無によるCLP誘発敗血症後の生存率の改善A.研究の概要-白四角は無処理(対照マウス)、黒三角はNTZの1日2回処理を示す。B.対照マウス、3日間の前処理でNTZを投与したマウス、CLP手術当日からNTZを投与したマウスの生存曲線。生存曲線はゲーハン-ブレスロ-ウィルコクソンを用いて群間で比較した。**p<0.01、***p<0.001。
図6】前処理の有無にかかわらずNTZはCLP誘発敗血症の7日後の生存率を改善するビヒクル、NTZの3日前処理又はNTZ処理で処理したマウスの試験終了時の生存率。
図7】NTZはCLP誘発敗血症マウスの福祉スコアを改善するビヒクル、NTZの3日間前処理又はNTZ処理で処理したマウスにおけるCLP手術後4日間の動物福祉を評価するために考慮した6つの個別パラメータの推移。重症度は0(徴候なし)から3(より重症)で評価した。
図8】敗血症誘発後のNTZ投与は生存率の改善に有効であるA.研究の概要。白四角は無処理(対照マウス)、三角はNTZによるマウスの処理(1つの三角=1日1回すなわちQD、2つの三角=1日2回すなわちBID)を示す。B.対照マウス、CLPの1時間前及び3.5時間後にNTZ BIDを投与したマウス、並びにCLP手術3.5時間後にのみNTZを投与したマウスの生存曲線。生存曲線はゲーハン-ブレスロ-ウィルコクソンを用いて群間で比較した。**p<0.01、***p<0.001。C.対照マウス、CLPの1時間前及び3.5時間後にNTZ BIDを投与したマウス、並びにCLP手術3.5時間後にのみNTZを投与したマウスの試験終了時の生存率。
図9】敗血症誘発後のNTZ投与は福祉スコアの改善に効率的である対照マウス、CLPの1時間前及び3.5時間後にNTZ BIDを投与したマウス、並びにCLP手術3.5時間後にのみNTZを投与したマウスにおける、敗血症誘発後4日間の動物福祉を評価するための6つの個別パラメータの推移。重症度を0(徴候なし)から3(最も重症)で評価した。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、敗血症の治療又は予防における使用のためのNTZ又はTZ(G)に関する。
【0026】
本明細書で用いられる「対象」又は「患者」という用語は、哺乳動物、好ましくはヒトを指す。
【0027】
前述したように、本明細書で用いる「敗血症」という用語は、感染に対する劇症的な全身炎症反応を指し、正式には、感染の全身症状とともに感染が存在することと定義される。本明細書で用いる「敗血症」という用語は、重症度を問わず敗血症、並びに多臓器不全を伴う敗血症及び敗血症性ショック等のその合併症を包含する。
【0028】
本発明の特定の実施形態では、対象は敗血症又はその合併症に罹患しているか、又は罹患する危険性がある。
【0029】
別の特定の実施形態では、対象は、1つ又は複数の微生物種によって引き起こされる敗血症に罹患している。特に、対象は、細菌、真菌又はウイルス感染によって引き起こされる敗血症に罹患し得る。更に別の実施形態では、前記敗血症は細菌感染によって引き起こされる。
【0030】
特定の実施形態では、治療又は予防方法は、単一の活性成分としてNTZ、TZ又はTZGを投与することからなる。
【0031】
本明細書で使用される「治療」という用語は、治療的手段及び予防的(prophylactic)又は予防的(preventative)手段の両方に関するものであり、その目的は、望ましくない生理学的変化又は障害を予防又は減速(軽減)することである。有益又は所望の臨床的結果には、症状の緩和、病的状態の安定化(特に悪化させない)、疾患の進行の減速又は停止、病的状態の改善又は軽減が含まれるが、これらに限定されない。特に、本発明の目的のために、治療は、敗血症の進行を遅らせ、さらなる合併症のリスクを減少させることに向けられる。また、治療を受けなかった場合に予想される生存期間と比較して、生存期間を延長することも含まれ得る。特定の実施形態において、NTZ、TZ(G)又はその薬学的に許容される塩は、敗血症に関連する死亡率を減少させるために使用される。NTZ、TZ(G)又はその薬学的に許容される塩はまた、敗血症の進行を遅らせる、又は停止するために使用され得る。特に、NTZ、TZ(G)又はその薬学的に許容される塩は、敗血症の進行を予防するために、特に、敗血症に罹患している対象において敗血症が敗血症性ショックに進行するのを予防するために使用される。別の実施形態において、NTZ、TZ(G)又はその薬学的に許容される塩は、敗血症に罹患している対象において、臓器不全、特に多臓器不全を予防するために使用される。
【0032】
本発明の文脈において、NTZ、TZ(G)、又はその薬学的に許容される塩は、治療上有効な量で対象に投与される。特定の実施形態において、NTZ若しくはTZ、又はその薬学的に許容される塩が投与される。さらなる実施形態において、対象は、NTZ又はその薬学的に許容される塩、特にNTZを投与される。
【0033】
「治療上有効な量」とは、所望の治療結果を得るのに有効な薬物の量を指す。治療上有効な薬物の量は、個体の病状、年齢、性別、体重、個体における所望の反応を誘発する薬物の能力等の要因によって変化し得る。治療上有効な量とは、薬剤の毒性又は有害作用に治療上有益な作用が勝る量でもある。薬物の有効投薬量及び投薬量レジメンは、治療される疾患又は状態に依存し、当業者によって決定され得る。当業の医師は、必要な医薬組成物の有効量を容易に決定し、処方し得る。例えば、医師は、所望の治療効果を達成するために必要なレベルよりも低いレベルで、医薬組成物に採用される用量の薬物を開始し、所望の効果が達成されるまで投薬量を徐々に増加させることができると思われる。一般に、本発明の組成物の適切な用量は、特定の投薬量レジメンに従って治療効果をもたらすのに有効な最低用量である化合物の量である。このような有効量は一般に、上記の要因に依存する。
【0034】
NTZ、TZ(G)又はその薬学的に許容される塩は、医薬用途に適合し、当業者に周知の1種又は数種の薬学的に許容される賦形剤又はビヒクル(例えば、生理食塩水、生理溶液、等張液等)を更に含む医薬組成物においてに製剤化され得る。
【0035】
これらの組成物はまた、分散剤、可溶化剤、安定化剤、保存剤等から選択される1種又は数種の薬剤又はビヒクルを更に含むことができる。これらの製剤(液体及び/又は注射剤及び/又は固体)に有用な薬剤又はビヒクルは、特にメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリソルベート80、マンニトール、ゼラチン、ラクトース、植物油、アカシア、リポソーム等である。
【0036】
これらの組成物は、注射用懸濁剤、シロップ剤、ゲル剤、油剤、軟膏剤、丸薬、錠剤、坐剤、粉末剤、ゲルキャップ剤、カプセル剤、エアゾール剤等の形態で製剤化され得、最終的には、長期放出及び/又は徐放性を保証するガレヌス剤形又は装置によって製剤化され得る。この種の製剤には、セルロース、炭酸塩又はデンプン等の薬剤を有利に使用することができる。
【0037】
NTZ又はTZ(G)は、薬学的に許容される塩、特に医薬用途に適合する酸塩又は塩基塩の形態とすることができる。NTZ及びTZ(G)の塩としては、薬学的に許容される酸付加塩、薬学的に許容される塩基付加塩、薬学的に許容される金属塩、アンモニウム塩及びアルキル化アンモニウム塩が挙げられる。これらの塩は、化合物の最終精製段階で得られるか、又は先に精製した化合物に塩を組み込むことによって得ることができる。
【0038】
NTZ、TZ(G)又はその薬学的に許容される塩は、様々な経路及び様々な形態で投与することができる。例えば、化合物は、全身的な方法、経口、非経口、吸入、鼻噴霧、鼻腔内注入、又は注射、例えば静脈内、筋肉内経路、皮下経路、経皮経路、局所経路、動脈内経路等によって投与することができる。もちろん、投与経路は、当業者に周知の手順に従って、薬物の形態に適合され得る。
【0039】
特定の実施形態では、化合物は錠剤として製剤化される。別の特定の実施形態では、化合物は経口投与される。
【0040】
投与に対する頻度及び/又は用量は、患者の機能、病態、投与形態等において、当業者によって適合され得る。典型的には、NTZ又はTZ(G)は、0.01mg/日から4000mg/日の間、例えば50mg/日から2000mg/日の間、例えば100mg/日から2000mg/日の間;特に100mg/日から1000mg/日の間に含まれる用量で投与され得る。特定の実施形態において、NTZ、TZ(G)又はその薬学的に許容される塩は、約1000mg/日、特に1000mg/日の用量で投与される。特定の実施形態において、NTZ、TZ(G)又はその薬学的に許容される塩は、約1000mg/日、特に1000mg/日の用量で、特に錠剤として経口投与される。投与は、必要に応じて、毎日、又は1日に数回行われ得る。一実施形態において、化合物は、少なくとも1日1回、例えば1日1回、1日2回、又は1日3回投与される。特定の実施形態では、化合物は1日1回又は2回投与される。特に、経口投与は、1日1回、食事中、例えば朝食中、昼食中又は夕食中に、約1000mgの用量、特に1000mgの用量の化合物を含む錠剤を服用することによって行われ得る。別の実施態様において、錠剤は、例えば、1回の食事中に、約400mg、約500mg又は約600mgの用量、特に500mgの用量で化合物を含む第1の錠剤を投与し、同じ日の別の食事中に、約500mgの用量、特に500mgの用量で化合物を含む第2の錠剤を投与することによって、1日2回経口投与される。
【0041】
別の特定の実施形態では、NTZ又はTZ(G)の投与は、別の活性成分、好ましくは抗生物質、抗真菌剤又は抗ウイルス剤等の抗菌薬と組み合わせて行われる。もちろん、最も適切な抗菌薬は、当該技術分野で周知のように、感染の原因となる生物又はウイルスに応じて選択されるであろう。特定の実施形態では、敗血症は細菌感染によって引き起こされ、抗菌薬は抗生物質である。細菌感染の治療に有用な抗生物質は当技術分野で周知である。例示的な抗生物質類としては、これらに限定されないが、ベータ-ラクタム抗生物質(ペニシリン等)、テトラサイクリン、セファロスポリン、キノロン、リンコマイシン、マクロライド、スルホンアミド、グリコペプチド、アミノグリコシド及びカルバペネム等が挙げられる。特定の実施形態では、NTZ又はTZ(G)は、カルバペネム系の抗生物質、例えばエルタペネムと組み合わせることができる。
【0042】
NTZ、又はTZ(G)、及び抗菌薬は、同一又は別個の医薬組成物として対象に投与することができる。特定の実施態様において、本発明は、NTZ又はTZ(G)、抗菌薬及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を提供する。この医薬組成物は、敗血症の治療又は予防のために、本発明の方法において使用され得る。別の実施態様において、本発明は、
NTZ又はTZ(G)及び薬学的に許容される賦形剤を含む第1の医薬組成物;並びに
抗菌薬を含む第2の医薬組成物
が、敗血症の治療又は予防のために対象に両方投与される方法を提供する。
【0043】
第1及び第2の医薬組成物は、同時に、別々に、又は逐次的に使用され得る(すなわち、第1の医薬組成物は、第2の医薬組成物の前又は後に投与され得る)。このように、本発明はまた、
敗血症の治療又は予防における同時、別々、又は逐次的な使用のための、
NTZ又はTZ(G)及び薬学的に許容される賦形剤を含む第1の医薬組成物;並びに
抗菌薬を含む第2の医薬組成物;
含むキットオブパーツを提供する。
【0044】
以下の実施例は本発明を説明するためのものであり、その範囲を限定するものであってはならない。
【実施例
【0045】
(実施例1)
NTZは敗血症の前臨床モデルの生存率を改善する
盲腸結紮穿刺(CLP)によって誘発される多菌性敗血症は、免疫抑制に続く全身炎症反応の調節異常を特徴とする。マウスのCLPモデルは、ヒトの敗血症の進行及び特徴を模倣しており、したがって、ある薬物が敗血症から敗血症性ショックへの移行の治療又は予防に効率的かどうかを判断するのにも有用である。
【0046】
本研究の目的は、C57BL6J(BL6)雄マウスのCLPモデルにおけるNTZの有効性を検討することである。試験化合物の有効性は、試験期間中の動物の生存率に基づいて評価した。
【0047】
動物の取り扱いは、ストレスを最小限に抑えるために慎重に行った。実験はすべて、実験動物を用いた実験についての仏国農業省のガイドラインを遵守して行った(法令87-848)。本研究は、動物健康規則(動物の保護に関して、2010年9月22日の理事会指令No.2010/63/UE及び2013年2月1日の仏国法令No.2013-118)を遵守して実施した。
【0048】
盲腸結紮及び穿刺手術
受取時9週齢、体重23~25gのC57BL6J雄マウス(供給元Janvier社、フランス)に250μLのキシラジン/ケタミン溶液(ケタミンは6.75mg/kg(Imalgene、Boehringer社、ドイツ)、キシラジンは2.5mg/kg(Rompund 2%、Bayer社、ドイツ))で腹腔内経路により麻酔した。腹部正中線を1~1.5cm切開し、盲腸を見つけ、遠位極及び盲腸基部の間の半分の距離を4-0絹縫合糸(マイルドグレード)で緊密に結紮した。中程度の結紮後、盲腸を腸間膜方向から腸腰筋方向へ21ゲージの針で1回貫通穿刺した。少量の便を押し出して、傷口が閉鎖していることを確認した。その後、盲腸を腹腔内のその元の位置に戻し、縫合糸及び創傷クリップで閉鎖した。マウスの体重の推移及び死亡率について7日目まで追跡した。
【0049】
処理スキーム
NTZ(Interchim社、フランス)を50mg/kg BIDで強制経口により投与した。NTZ処理はCLPの3日前に開始した。手術当日は、CLPの1時間前にNTZを1回(50mg/kg)投与し、動物が麻酔から回復した時点で2回目(50mg/kg)を投与した。その後、試験終了まで毎日BID処理を続けた(n=15)。NTZビヒクル(カルボキシメチルセルロース(#C4888、Sigma-Aldrich社、ドイツ)をBID投与したマウスを対照とした(n=10)。
【0050】
エルタペネム10mg/kg(ORB134782/PO8952、lnterchim社/Biorbyt社)を薬理学的参照対照として用い、0日目の手術1時間前に腹腔内経路により投与し、CLP手術後は毎日続けた(n=10)。
【0051】
結果
CLPによって、ビヒクルのみを投与したマウス群では手術3日後に100%の死亡率が誘発された(図1)。一方、NTZで処理したマウスの47%は手術3日後も生存しており、マウスの33%は介入7日後でさえも生存していた。注目すべきことに、NTZは薬理学的参照であるエルタペネムよりも生存率を向上させ、エルタペネムでは試験終了時には10%のマウスしか生存していなかった。
【0052】
結論として、NTZはマウスのCLP誘発多菌性敗血症の生存率に有益な効果を有する。
【0053】
(実施例2)
NTZはサイトカイン誘導アポトーシスから肝細胞を保護する
敗血症から敗血症性ショックに移行する過程で生じる制御不能なサイトカインストームは、肝臓のような重要臓器の機能を危うくし得る、様々な組織での細胞死を誘発する。
【0054】
本研究は、肝細胞を細胞障害、特にサイトカイン誘導アポトーシスから保護するNTZの有効性を調べることを目的としている。
【0055】
ヒト肝細胞におけるTNFα誘導アポトーシスの評価
サイトカインにより細胞ストレスを受けるヒト肝細胞に対するNTZの影響を評価するため、ヒト肝芽腫由来HepG2細胞株(#85011430、ECACC社、イギリス)を、NTZの活性代謝物であるTZを添加又は無添加で、5%CO2インキュベーターで37℃にて、10%のウシ胎児血清(FBS、#10270、Gibco社)、1%のペニシリン/ストレプトマイシン(#15140、Gibco社)、1%のピルビン酸ナトリウム(#11360、Gibco社)及び1%のMEM非必須アミノ酸(#11140、Gibco社)を添加した高グルコースDMEM培地(#41965、Gibco社、フランス)で培養した。
【0056】
アポトーシスの代用マーカーであるカスパーゼ3/7活性を評価するため、5×104個の細胞を96ウェルプレート(Thermo Fischer社、ドイツ)に播種した。細胞接着(8時間)後、FBS欠乏細胞培養培地中で、0.3~3μMの用量範囲のTZ(Interchim社、フランス)で細胞を16時間前処理した。その後、腫瘍壊死因子α(TNFα)(#C6378、Promocell社、ドイツ)を10又は30ng/mlの用量でウェルに加え、更に24時間培養した。スタウロスポリン(10μM)(#19-123MG、Sigma-Aldrich社、ドイツ)を、アポトーシスを誘導するための参照として使用した。細胞をカスパーゼ活性測定の3時間前にスタウロスポリンとともにインキュベートした。
【0057】
Caspase Glow(商標)3/7アッセイ(#G8093、Promega社、米国)を用いてカスパーゼ3/7活性を測定した。発光をSparkマイクロプレートリーダー(#30086376、Tecan社、米国)を用いて測定した。発光量(RLU)は、カスパーゼ3/7活性と直接相関する。
【0058】
結果
10ng/mlのTNFαで1.5倍、及び30ng/mlで1.7倍のカスパーゼ3/7活性の増加が示すように、TNFα誘導アポトーシスを有するHepG2は、アポトーシス誘導剤であるスタウロスポリンに匹敵する効果量を示した(図2A)。TZで処理すると、10ng/ml TNFαの存在下でカスパーゼ活性が用量反応的に著しく低下し(図2B)、3μM TZの用量で40%の阻害に達した。注目すべきことに、この効果はより高用量のTNFαでも確認された(図2C)。これらの結果は、TZがカスパーゼ活性を阻害することにより、肝細胞を細胞死から直接保護することを示している。
【0059】
(実施例3)
肝細胞のアポトーシスに対するNTZの直接的かつ迅速な作用
本研究は、前処理する、又はしない場合のNTZとその活性代謝物であるTZの、強力なアポトーシス誘導剤であるスタウロスポリン(カスパーゼを活性化するプロテインキナーゼ阻害剤)により誘発される細胞障害から肝細胞を保護する効果を調べることを目的としている。
【0060】
プロトコール
ヒト肝芽腫由来HepG2細胞株を実施例2に記載したように培養した。カスパーゼ3/7活性を、384ウェルプレート(#781080、Greiner社、フランス)に播種した1.5×104個の細胞で評価した。細胞接着(8時間)後、細胞をNTZの活性代謝物であるTZを添加又は無添加で16時間血清飢餓状態にした。その後、0.1~10μMのTZ(#RP253、Interchim社)又は1~6μMのNTZ(#RQ550、Interchim社、フランス)を添加した高用量のスタウロスポリン(30μM、#569397、Sigma-Aldrich社、ドイツ)で細胞を4時間処理した後、細胞を溶解し、カスパーゼ活性を測定した。カスパーゼ3/7活性は前述の方法で測定した。
【0061】
結果
HepG2細胞をスタウロスポリンとインキュベートすると、カスパーゼ3/7活性が11倍増加することで示されるように、アポトーシスが強く誘導された(図3A)。前処理として用いると、TZは、スタウロスポリンによって誘導されたカスパーゼ活性を用量依存的に著しく低下させ、6μM TZの用量で82%の阻害に達した(図3B)。興味深いことに、TZ前処理せずにスタウロスポリンと6μM TZを併用すると、カスパーゼ活性も64%低下した(図4A)。この条件では、NTZはカスパーゼ活性を78%阻害し、同様の効果を示した(図4B)。これらの結果は、NTZとその活性代謝物であるTZはアポトーシスの強力な阻害剤であり、敗血症時に顕著に生じる細胞障害から肝細胞を保護することを示す。
【0062】
(実施例4)
NTZは、NTZの前処理なしのCLPマウスの生存率を改善する
インビトロで観察されたNTZの迅速な効果を前提として、2種の治癒的な設定において、CLPモデルにおける敗血症から保護するNTZの有効性を調べた。
【0063】
多菌性敗血症を、実施例1に記載したように、C57BL6JマウスのCLP手術によって誘発した。NTZを前述のように調製し、図5Aに示すように、CLPの3日前に開始し(3日間前処理)、又はCLP手術と同じ日に開始して(前処理なし)、100mg/kg/日BIDで経口投与した。C57Bl/6J雄マウス(8週齢、Janvier社、フランス)を7日間の馴化後、24匹ずつ3群に分けた:
- 群1には、手術前3日間とCLP手術後6日間、ビヒクルを投与した。
- 群2には、手術前3日間とCLP手術後6日間、ニタゾキサニド(NTZ)を投与した(前処理)。
- 群3には、手術前3日間にビヒクルを投与し、その後、CLP手術後6日間、NTZを投与した(前処理なし)。
NTZでの処理は1日2回、午前9時と午後5時に行った。CLP手術当日(0日目)は、マウスは麻酔をかけられる1時間前にNTZ又はビヒクルを投与された(群2及び3)。
【0064】
ヒトのエンドポイントを調和させ、また実験を通して動物間で観察されるグレードを正規化するために、マウス敗血症モデルの重症度の福祉スコアリングが発表されている(Shrum B、Anantha RV、Xu SXら、A robust scoring system to evaluate sepsis severity in an animal model. BMC Res Notes 2014;7:233)。動物は個々に観察され、変化が記録され、その強さに応じてスコア化された。観察には、外見、活動性、刺激に対する反応、開眼、呼吸の質、及び体重の推移の変化が含まれた。これらの臨床徴候のそれぞれについて、重症度を0~3のスケールで測定した。重症度の推移を追跡し、各時点での平均スコアを算出してグラフにプロットした。マウスが死亡又は安楽死した場合は、任意に4点とした。
【0065】
結果
NTZ処理(3日間の前処理の有無にかかわらず)は、CLP誘発敗血症後の生存率を大幅に改善した(図5B)。対照群では手術後55時間で死亡率はすでに60%に達していたが、NTZ処理マウスでは前処理の有無にかかわらず、死亡率はそれぞれ25%及び17%にとどまった。試験終了時、NTZ前処理を行ったマウスの45.8%、及びNTZ処理マウスの58.3%が敗血症を克服したのに対し、無処理マウスではわずか12.5%であった(図6)。
【0066】
敗血症の重症度の推移は福祉スコアリングにより評価した。観察されたすべての基準において、NTZ処理マウス(前処理の有無にかかわらず)は対照マウスを下回るスコアを示し、敗血症の全体的な重症度が低く、NTZによる動物福祉の改善が示唆された(図7)。
【0067】
(実施例5)
NTZは治癒的な設定において効率的な強力な敗血症治療薬である
C57BL6JマウスにおいてCLP手術により多菌性敗血症を誘発し、前述のようにNTZを調製し、経口投与した。敗血症に対するNTZの迅速な効果を調べるため、NTZを手術後、すなわち腸内細菌叢から腹膜に細菌が漏出する時期に投与した。図8Aに示すように、C57Bl/6J雄マウス(8週齢、Janvier社、フランス)を20匹ずつ3群に分けた:
- 群1には、手術の1時間前に1回目のビヒクルを投与し、手術後に2回目投与し、CLP手術後6日間、1日2回投与した。
- 群2には、手術の1時間前に1回目のニタゾキサニド(NTZ)を投与し、手術3.5時間後に2回目のNTZを投与し(50mg/kgを2回)、CLP手術後6日間、1日2回投与した。
- 群3には、手術3.5時間後にのみ1回目のNTZ(100mg/kg)を投与し、その後CLP手術後6日間、50mg/kgを1日2回投与した。
【0068】
手術後6日間、NTZによる処理を1日2回、午前9時及び午後5時にマウス1匹当たり100mg/kg/日(p.o.、BID)の用量で行った。対照マウス及び処理マウスの間に逸脱が生じないように、対照マウスに同様にビヒクルを投与した。
【0069】
結果
CLP手術当日から開始したNTZ処理は、手術前及び後(BID、T-1h/T+3.5h)、又は手術後のみ(QD、T+3.5h)のいずれにおいても、生存率に有意な有益効果を示した(図8B)。対照群では手術後55時間で死亡率はすでに55%に達していたが、NTZをBID、T-1h/T+3.5h及びQD、T+3.5hで処理したマウスの死亡率はそれぞれ5%及び15%にしか達しなかった。試験終了時(7日目)には、NTZ BID、T-1h/T+3.5h及びQD、T+3.5hで処理したマウスのそれぞれ80%及び70%が敗血症を克服したのに対し、未処理のマウスではわずか20%であった(図8C)。敗血症の重症度の推移は、前述のように福祉スコアリングによっても評価した。1日1回、T+3.5hのNTZ処理を受けたマウスは、観察されたすべての基準でスコアが改善し、敗血症の全体的な重症度が低く、敗血症誘発後の健康度が大きく改善したことが示唆された(図9)。
【0070】
結論
まとめると、以上の結果から、NTZは非常に迅速かつ強力な化合物であり、細胞死から保護し、敗血症における福祉及び生存率を改善することが示された。
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図8-1】
図8-2】
図9-1】
図9-2】
図9-3】
【国際調査報告】