(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-17
(54)【発明の名称】向上したタンパク質精製
(51)【国際特許分類】
C07K 14/405 20060101AFI20240410BHJP
C07K 1/16 20060101ALI20240410BHJP
C07K 17/10 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
C07K14/405 ZNA
C07K1/16
C07K17/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570029
(86)(22)【出願日】2022-05-09
(85)【翻訳文提出日】2024-01-10
(86)【国際出願番号】 EP2022062467
(87)【国際公開番号】W WO2022238319
(87)【国際公開日】2022-11-17
(32)【優先日】2021-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516105833
【氏名又は名称】サイティバ・バイオプロセス・アールアンドディ・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【氏名又は名称】田中 研二
(72)【発明者】
【氏名】ペーテル・ルンドバック
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン・フレドリク・オーマン
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA10
4H045EA60
(57)【要約】
本発明は、主にクロマトグラフィーの分野におけるタンパク質精製に関する。より詳細には、本発明は、C-インテインタグ及びN-インテインリガンドを含むスプリットインテインシステムを使用した親和性クロマトグラフィーに関し、ここで、N-インテインリガンドは任意の組換え標的タンパク質の大規模精製に好適な増加した溶解性を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然のスプリットインテインの少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、野生型ノストック・プンクチフォルメ(Npu)に由来するN-インテインタンパク質バリアント又はそれと少なくとも95%の相同性を有する配列であって、最初の触媒システインから測定したときN-インテインタンパク質バリアント配列は少なくとも24位及び/又は25位に変異を含み、置換アミノ酸は天然のN-インテインタンパク質配列又は共通N-インテイン配列と比較して水性緩衝液への増加した溶解性を提供する、N-インテインタンパク質バリアント又はそれと少なくとも95%の相同性を有する配列。
【請求項2】
増加した溶解性を提供する置換アミノ酸が正に荷電していないアミノ酸である、請求項1に記載のN-インテインタンパク質バリアント。
【請求項3】
増加した溶解性を提供する置換アミノ酸がK24Eである、請求項1又は2に記載のN-インテインタンパク質バリアント。
【請求項4】
増加した溶解性を提供する置換アミノ酸がR25Nである、請求項1、2又は3に記載のN-インテインタンパク質バリアント。
【請求項5】
ノストック・プンクチフォルメ(Npu)の野生型N-インテインドメインのN-インテインタンパク質バリアントであって、野生型Npu N-インテインドメインは以下の配列:
CLSYETEILTVEYGLLPIGKIVEKRIECTVYSVDNNGNIYTQPVAQWHDRGEQEVFEYCLEDGSLIRATKDHKFMTVDGQMLPIDEIFERELDLMRV(配列番号1)を含み、タンパク質バリアントは、水性緩衝液への溶解性を増加させるために、配列番号1の24位にKからE及び配列番号1の25位にRからNのアミノ酸置換を含み、任意選択で、1つ又は複数のCは非システイン残基、好ましくはS又はAに変異している、N-インテインタンパク質バリアント。
【請求項6】
水性緩衝液への溶解性が、N又は正に荷電していないアミノ酸が好ましい25位のRの単一点変異の場合、少なくとも10~40%の可溶性N-インテイン;E又は正に荷電していないアミノ酸が好ましい24位のKの単一点変異の場合、少なくとも46~52%の可溶性N-インテイン;並びにK24E及びR25N又は正に荷電していないアミノ酸が好ましい24及び25位の変異の場合、少なくとも76~88%の可溶性N-インテインである、請求項1から5のいずれか一項に記載のN-インテインタンパク質バリアント。
【請求項7】
膜、繊維、粒子、ビーズ又はチップ等の固相に結合されている、請求項1から6のいずれか一項に記載のN-インテインタンパク質バリアント。
【請求項8】
固相が天然又は合成起源のクロマトグラフィー樹脂である、請求項7に記載のN-インテインタンパク質バリアント。
【請求項9】
固相が天然又は合成樹脂等のクロマトグラフィー樹脂、好ましくはアガロース等の多糖である、請求項7又は8に記載のN-インテインタンパク質バリアント。
【請求項10】
固相が包埋された磁気粒子を伴う形で提供される、請求項9に記載のN-インテインタンパク質バリアント。
【請求項11】
固相が非拡散制限樹脂/繊維材料である、請求項9に記載のN-インテインタンパク質バリアント。
【請求項12】
N-インテインが、C末端に1つ又は複数のLysを含むLysテールを介して固相にカップリングされている、請求項1から11のいずれか一項に記載のN-インテインタンパク質バリアント。
【請求項13】
N-インテインがC末端のCysテールを介して固相にカップリングされている、請求項1から11のいずれか一項に記載のN-インテインタンパク質バリアント。
【請求項14】
1mlの固相、好ましくはクロマトグラフィー樹脂(1mlの膨張したゲル)当たり0.2~2μモル/mlのN-インテインがカップリングされている、請求項1から13のいずれか一項に記載のN-インテインタンパク質バリアント。
【請求項15】
固相に結合している請求項1から14のいずれか一項に記載のN-インテインタンパク質バリアント、及びPOI(目的のタンパク質)と同時発現されるC-インテイン配列を含むスプリットインテインシステムであって、C-インテインはPOI上のタグとして作用し、発現したC-インテインは前記N-インテインタンパク質バリアントに結合する、スプリットインテインシステム。
【請求項16】
C-インテイン配列が天然のスプリットインテインC-インテイン配列又はその工学操作されたバリアントである、請求項15に記載のスプリットインテインシステム。
【請求項17】
POIが天然若しくは天然に近いN末端配列を必要とするタンパク質、例えば治療的タンパク質候補、バイオ医薬品、抗体断片、抗体模倣体、酵素、組換えタンパク質又はペプチド、例えば増殖因子、サイトカイン、ケモカイン、ホルモン、抗原(ウイルス、細菌、酵母、哺乳動物)生産、ワクチン生産、細胞表面受容体、融合タンパク質である、請求項15又は16に記載のスプリットインテインシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にクロマトグラフィーの分野におけるタンパク質精製に関する。より詳細には、本発明は、C-インテインタグ及びN-インテインリガンドを含むスプリットインテインシステムを使用した親和性クロマトグラフィーに関し、ここで、N-インテインリガンドは、高い溶解性を有し、大規模タンパク質精製に好適な高い程度で固相に固定化することができる。
【背景技術】
【0002】
インテインは、酵素配列を中断し、それら自身の切り出し及び2つの隣接ポリペプチドのライゲーションを触媒して活性タンパク質を生成する、インフレーム挿入物として発現されるタンパク質エレメントである。遺伝子的に、インテインは、2つの隣接エクステイン配列を中断する無傷のインテインとしてか、又は各エクステイン及びインテインの一部が2つの異なる遺伝子によってコードされるスプリットインテインとしての、2つの異なる様式でコードされる。それらには生物工学及びタンパク質精製ツールとして大きな将来性があるが、天然に見出される急速動態特性を有するスプリットインテインはインテイン-エクステイン接合部での特異的アミノ酸に依存し、天然タンパク質配列の親和性精製及び回収のためにインテインへ融合させることができるタンパク質を厳しく制限する。特に、ノストック・プンクチフォルメ(Nostoc punctiforme)からの典型的なスプリットインテインDNAEは、タンパク質精製への適用のために好適な動態特性を示す。しかし、その活性は、C-エクステインの+2位のフェニルアラニンに依存する。この依存性は、その一般的な適用性を厳しく制限し、損なう。
【0003】
インテインは、組換えタンパク質精製のための自己切断タンパク質としての適用を含む、バイオテクノロジーにおけるいくつかの重要な機能を達成するように工学操作されている。スプリットインテインは親和性リガンド及び自己切断特性を同時に提供することができるので、この点に関して特に有望である。タンパク質精製では、精製の対象である標的タンパク質をいずれかのエクステインで置換することができる。今日まで、DNAEファミリーのスプリットインテインがC末端切断タンパク質精製アプローチで最も大きな将来性を示している。
【0004】
WO2014/004336は、支持体に結合させることができるスプリットインテインのN断片及びスプリットインテインのC断片に融合されるタンパク質を記載する。固体支持体は、粒子、ビーズ、樹脂又はスライドであってよい。
【0005】
WO2014/110393は、スプリットインテインのN断片及び精製タグと接触させるスプリットインテインC断片に融合される目的のタンパク質を記載する。N断片は精製タグを介して固体相に結合することができ、親和性精製の方法が議論される。
【0006】
米国特許仮出願第10 066027号は、タンパク質精製システム及びこのシステムを使用する方法を記載する。固定化することができるN末端インテインセグメント、及び自己切断する特性を有し、目的のタンパク質に結合することができるC末端のインテインセグメントを含むスプリットインテインが開示される。N末端のインテインセグメントは、それを外因性の状態により感受性にする感受性増強モチーフが提供される。
【0007】
米国特許仮出願第10 308 679号は、N-インテインポリペプチド及びN-インテイン可溶化パートナーを含む融合タンパク質、並びにそのような融合タンパク質を含む親和性マトリックスを記載する。
【0008】
WO 2018/091424は、アミノ末端基(N末端)、親和性リガンドとしてのスプリットインテイン断片を含む親和性クロマトグラフィー樹脂の生成方法であって、以下の工程を含む方法を記載する: a)細菌細胞、好ましくは大腸菌(E.coli)の封入体の中での不溶性タンパク質としてのN末端スプリットインテイン断片タンパク質の発現、b)前記封入体を採取すること; c)前記封入体を可溶化して発現されるタンパク質を放出させること; d)前記タンパク質を固体支持体の上に結合させること; e)前記タンパク質をリフォールディングさせること; f)前記タンパク質を固体支持体から放出させること;及びg)クロマトグラフィー樹脂の上に前記タンパク質をリガンドとして固定化して親和性クロマトグラフィー樹脂を形成すること。この手順は、2~10mg/ml樹脂のリガンド密度の固定化を可能にする。
【0009】
上記の通り、スプリットインテインは、複合的親和性タグ及びタグ切断機構を使用したタンパク質精製のために使用されている。しかし、そのようなシステムの有用性はいくつかの因子によって制限される。第1に、タグなしのタンパク質の切断を実行し、精製を達成するために、目的の生成物のスプライス接合部でのアミノ酸要件、すなわちC-エクステインの+2位におけるPheの必要性がある。N末端に無関係なアミノ酸のない組換えタンパク質の生成が非常に望ましい。第2に、タンパク質を放出する切断は十分に速く、許容される収量を提供しなければならない。第3に、固体支持体へのその結合のためにスプリットインテインのN-又はC-断片の溶解性要件がある。第4に、タグなしのタンパク質の大規模精製に好適である利用可能なスプリットインテインシステムは、これまでのところ存在しない。
【0010】
溶解性を向上させる方法の1つは、溶解性融合タグをスプリットインテインに結合することによるものである(米国特許仮出願第10 308 679号)。タンパク質発現及び精製のための方法の開発は一般的に、精製のためのプロトコールを標準化し、検出を簡略化し、標的タンパク質の溶解性を増加させる可能性をもたらす融合タグの使用によって容易になる。しかし、融合タグはタンパク質の機能及び構造と干渉し得る。したがって、融合タグを除去した後で使用することが好都合である。標的タンパク質と比べて大きい融合タグは、その融合タグに対してさらなるエネルギーが使用されるため、これらの融合タンパク質を発現する宿主細胞に対して代謝負荷の増加ももたらす。
【0011】
高度に不溶性のスプリットインテインを生成する効率を高める異なるアプローチは、タンパク質を変性化学試薬で可溶化し、続いてリフォールディングプロセスを行って(米国出願第16/348,534号)、生理活性タンパク質を取り戻すことによるものである。タンパク質リフォールディングのために使用される様々な方法の技術的側面をその利点及び限界とともに理解するための試みがなされているが、通常、そのような方法における効率及び収率は、予測が非常に困難であり、タンパク質ごとに経験的研究によって決定しなければならない。リフォールディング方法に共通の課題は、変性化学物質がリフォールディングの間に除去又は希釈されているときのタンパク質凝集体の形成である。これらの凝集体は、このプロセスの収率を低下させ、生成プロセスにおけるその後の精製工程の間の複雑性を高める。更に、変性化学物質は通常、環境に対して負荷となり、適切に取り扱う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】WO2014/004336
【特許文献2】WO2014/110393
【特許文献3】米国特許仮出願第10 066027号
【特許文献4】米国特許仮出願第10 308 679号
【特許文献5】WO 2018/091424
【特許文献6】米国出願第16/348,534号
【特許文献7】WO2021/099607 A1
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Proteins-Structure and Molecular Properties 2版、T. E. Creighton、W.H. Freeman及びCompany、New York (1993)
【非特許文献2】Posttranslational Covalent Modification of Proteins、B. C. Johnson編、Academic Press、New York、1~12頁 (1983)
【非特許文献3】Merck Index(第14版)、Physicians' Desk Reference(第64版)
【非特許文献4】The Pharmacological Basis of Therapeutics(第1版)
【非特許文献5】Myers等(1988) CABIOS 4:11~17
【非特許文献6】Altschul等Nucl. Acids Res. 25:3389~3402
【非特許文献7】Wilbur及びLipman algorithm。(1983) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:726
【非特許文献8】Needleman等(1970) J. Mol. Biol. 48:444~453
【非特許文献9】Smith等(1983) Advances App. Math. 2:482~489
【非特許文献10】Smith等(1981) Nuc. Acids Res. 11:2205~2220
【非特許文献11】Feng等(1987) J. Molec. Evol. 25:351~360
【非特許文献12】Higgins等(1989) CABIOS 5:151~153
【非特許文献13】Thompson等(1994) Nuc. Acids Res. 22:4673~480
【非特許文献14】Devereux等(1984) 12:387~395
【非特許文献15】Sambrook、「Molecular Cloning, A Laboratory Manual」第2版、CSH Press社、Cold Spring Harbor、1989
【非特許文献16】「Nucleic Acid Hybridization, A Practical Approach」、Hames及びHiggins編、IRL Press社、Oxford、1985
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は先行技術の欠点を克服し、溶解性融合タグを必要とせずに可溶性であり、環境に優しい生成プロセスにおいて工業規模で生産することができる、その後の親和性精製プロセスにおける使用のためのN-インテインポリペプチドを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
特に、本発明は、タンパク質精製への適用に好適な動態特性を示すノストック・プンクチフォルメ(Nostoc punctiforme)からの原型のスプリットインテインDnaEの溶解性を増加させる方法を提供する。しかし、方法は、ノストック・プンクチフォルメからのDnaEスプリットインテインに限定されず、他の種からの相同スプリットインテインにも適用可能である。溶解性は、ポリペプチド鎖における1つ又は好ましくは2つのアミノ酸の置換後に、大腸菌(E. coli)で発現される可溶性N-インテインの割合がこれらのアミノ酸置換が存在しない場合の可溶性N-インテインの割合と比べて高いタンパク質を指す。
【0016】
本発明は、天然のスプリットインテイン又はインテイン/スプリットインテインに由来する共通配列のN-インテインタンパク質バリアントであって、増加した溶解性に関する1つ又は複数の変異を有する、N-インテインタンパク質バリアントを提供する。
【0017】
第1の態様では、本発明は、天然のスプリットインテインの少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、天然のノストック・プンクチフォルメ(Npu)に由来するN-インテインバリアントであって、最初の触媒システインから測定したときN-インテインタンパク質バリアント配列は少なくとも24位及び/又は25位に変異を含み、置換アミノ酸は天然のN-インテインタンパク質配列又は共通N-インテイン配列と比較して水性緩衝液への増加した溶解性を提供する、N-インテインバリアント又はそれと少なくとも95%の相同性を有する配列に関する。本発明はまた、リムノラフィス・ロブスタ(Limnoraphis robusta)からのN-インテイン等の、24位に天然に存在するEを有するインテインを包含する。
【0018】
好ましくは、増加した溶解性を提供する置換アミノ酸は正に荷電していないアミノ酸である。好ましい実施形態では、増加した溶解性を提供する置換アミノ酸はK24Eである。別の実施形態では、増加した溶解性を提供する置換アミノ酸はR25Nである。最も好ましい実施形態では、N-インテインはこれらの変異の両方を含む。
【0019】
本発明は、ノストック・プンクチフォルメ(Npu)の野生型N-インテインドメインのN-インテインタンパク質バリアントであって、野生型Npu N-インテインドメインは以下の配列:
CLSYETEILTVEYGLLPIGKIVEKRIECTVYSVDNNGNIYTQPVAQWHDRGEQEVFEYCLEDGSLIRATKDHKFMTVDGQMLPIDEIFERELDLMRV(配列番号1)(実施例における構築物A52)を含み、タンパク質バリアントは、水性緩衝液への溶解性を増加させて封入体の形成を最小限にするために、24位にKからE及び25位にRからNのアミノ酸置換を含み(実施例における構築物B97)、任意選択で、1つ又は複数のC(Cys)は非システイン残基、好ましくはS(Ser)又はA(Ala)に変異している、N-インテインタンパク質バリアントに関する。本発明によって包含されるさらなる構築物は、以下の実施例のセクションに記載される。
【0020】
上に記載したN-インテインタンパク質バリアントは、N又は正に荷電していないアミノ酸が好ましい25位のRの単一点変異の場合、少なくとも10~40%の可溶性N-インテイン;E又は正に荷電していないアミノ酸が好ましい24位のKの単一点変異の場合、少なくとも46~52%の可溶性N-インテイン;並びにK24E及びR25N又は正に荷電していないアミノ酸が好ましい24及び25位の変異の場合、少なくとも76~88%の可溶性N-インテインという水性緩衝液への溶解性を有する。
【0021】
N-インテインバリアントは、膜、繊維、粒子、ビーズ又はチップ等の固相、例えば天然又は合成起源のクロマトグラフィー樹脂にカップリングさせることができる。
【0022】
固相は、任意選択で、包埋された磁気粒子を伴う形で提供することができる。代替的な実施形態では、固相は非拡散制限樹脂/繊維材料である。本発明により、1mlの固相、好ましくはクロマトグラフィー樹脂(1mlの膨張したゲル)当たり0.2~2μモル/mlのN-インテインがカップリングされている。
【0023】
第2の態様では、本発明は、上に記載したN-インテイン、及びPOI(目的のタンパク質)と同時発現されるC-インテイン配列を含むスプリットインテインシステムに関する。C-インテインは、固相に結合しているN-インテインに結合させるための、POI上のタグとして作用する。結合後、POIは、組み合わされたN-インテイン及びC-インテインから切断され、タグなしPOIを送達する。C-インテインバリアントはスプリットインテインC-インテイン配列又はその工学操作されたバリアントである。好ましいC-インテイン配列はWO2021/099607 A1で言及されている。
【0024】
POIは、任意の組換えタンパク質:天然若しくは天然に近いN末端配列を必要とするタンパク質、例えば治療的タンパク質候補、バイオ医薬品、抗体断片、抗体模倣体、酵素、組換えタンパク質又はペプチド、例えば増殖因子、サイトカイン、ケモカイン、ホルモン、抗原(ウイルス、細菌、酵母、哺乳動物)生産、ワクチン生産、細胞表面受容体、融合タンパク質であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】異なる技術を使用した抽出後の異なる構築物からの上清のSDS-PAGE分析を示す図である。
【
図2】SDS-PAGE分析の濃度測定評価後に決定された、異なる構築物の溶解性(Solubility)を示すグラフである。各構築物の3つの異なる細胞培養からの抽出物を分析した。棒は全細胞溶解物(SDS)と比較した平均溶解性を示し、エラーバーは標準偏差を示す。
【
図3】Biacore CFCA分析によって決定された、異なる抽出物からの上清中のN-インテイン濃度を示すグラフである。各構築物の3つの異なる細胞培養からの抽出物を分析した。棒は平均濃度を示し、エラーバーは標準偏差を示す。
【
図4】SDS及び加熱によって可溶化されたN-インテインの総量に対する%として比較した、異なる抽出方法を使用した異なる構築物の抽出物からの上清中のN-インテインの割合を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
定義
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、内容が別途明らかに指図しない限り、単数形「a」、「an」及び「the」は複数形を含む。したがって、例えば「官能基」、「アルキル」又は「残基」への言及は、2つ以上のそのような官能基、アルキル又は残基等の混合物を含む。
【0027】
本明細書で、範囲は、「およその」1つの特定の値から及び/又は「およその」別の特定の値までと表すことができる。そのような範囲が表される場合、さらなる態様は1つの特定の値から及び/又は他の特定の値までを含む。同様に、先行詞「約」の使用によって値が近似値で表される場合、特定の値がさらなる態様を形成することが理解される。範囲の各々のエンドポイントは、他のエンドポイントに対して、及び他のエンドポイントから独立して有意であることが更に理解される。本明細書で開示されるいくつかの値があり、各値は本明細書でその値自体に加えて「およその」その特定の値としても開示されることも理解される。
【0028】
それとは反対に具体的に明記されていなければ、成分の質量%(質量%)はその成分が含まれる製剤又は組成物の総質量に基づく。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「任意選択の」又は「任意選択で」は、その後に記載される事象又は状況が起きても起きなくてもよいこと、並びにその記載が前記事象又は状況が起きる例及び起きない例を含むことを意味する。
【0030】
本明細書で使用される「接触させる」という用語は、2つの生物学的実体を、その化合物が標的の活性に直接的に、すなわち標的自体と相互作用させることによって、又は間接的に、すなわち標的の活性が依存する別の分子、補因子、因子若しくはタンパク質と相互作用させることによって影響を及ぼすことができるように一緒にすることを指す。「接触させる」は、共有結合で又は他の方法で結合するように、ペプチド等の2つの生物学的実体の相互作用を促進することを意味することもできる。
【0031】
用語「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質」は本明細書で互換的に使用され、タンパク質及びその断片を含む。ポリペプチドは本明細書でアミノ酸残基配列として開示される。それらの配列は、左から右にアミノからカルボキシ末端の方向で書かれる。標準の命名法により、アミノ酸残基配列は以下の通りに示すように3文字又は1文字表記によって命名される:アラニン(Ala、A)、アルギニン(Arg、R)、アスパラギン(Asn、N)、アスパラギン酸(Asp、D)、システイン(Cys、C)、グルタミン(Gln、Q)、グルタミン酸(Glu、E)、グリシン(Gly、G)、ヒスチジン(His、H)、イソロイシン(Ile、I)、ロイシン(Leu、L)、リシン(Lys、K)、メチオニン(Met、M)、フェニルアラニン(Phe、F)、プロリン(Pro、P)、セリン(Ser、S)、トレオニン(Thr、T)、トリプトファン(Trp、W)、チロシン(Tyr、Y)及びバリン(Val、V)。ペプチドは、任意のオリゴペプチド、ポリペプチド、遺伝子産物、発現生成物又はタンパク質を含む。ペプチドは連続したアミノ酸で構成され、天然に存在するか合成の分子を包含する。
【0032】
更に、本明細書で使用される場合、用語「ペプチド」は、ペプチド結合又は改変ペプチド結合、例えばペプチドアイソスター等によって互いに連結されるアミノ酸を指し、20個の遺伝子によってコードされるアミノ酸以外の改変されたアミノ酸を含有することができる。ペプチドは翻訳後プロセシング等の天然のプロセスによって、又は当技術分野で周知である化学的改変技術によって改変することができる。改変は、ペプチド主鎖、アミノ酸側鎖及びアミノ又はカルボキシル末端を含むペプチドのどこでも起こることができる。所与のポリペプチドのいくつかの部位で、同じ種類の改変が同じか又は様々な程度で存在することができる。更に、所与のペプチドは多くの種類の改変を有することができる。改変には、限定されずに、異なるドメイン又はモチーフの連結、アセチル化、アシル化、ADPリボシル化、アミド化、共有結合性架橋又は環化、フラビンの共有結合性結合、ヘム部分の共有結合性結合、ヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体の共有結合性結合、脂質又は脂質誘導体の共有結合性結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合性結合、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、システイン又はピログルタミン酸の形成、ホルミル化、ガンマ-カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、PEG化、タンパク分解性プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレン化、硫酸化及びアルギニル化等のタンパク質へのアミノ酸の転移RNA媒介付加が含まれる。(Proteins-Structure and Molecular Properties 2版、T. E. Creighton、W.H. Freeman及びCompany、New York (1993); Posttranslational Covalent Modification of Proteins、B. C. Johnson編、Academic Press、New York、1~12頁(1983)を参照)。
【0033】
本明細書で使用される場合、「バリアント」は、元の配列のそれと同じであるか又は実質的に類似している生物学的活性を保持する分子を指す。バリアントは同じか異なる種に由来することができるか、又は天然若しくは前の分子に基づく合成配列であってよい。更に、本明細書で使用される場合、「バリアント」は、親分子(例えば、本明細書に開示されるタンパク質又はペプチド)の構造から得られる構造を有し、その構造又は配列が本明細書に開示されるそれらに十分に類似しているので、その類似性に基づき、親分子と比較して同じか類似した活性及び有用性を示すと当業者が予想するだろう分子を指す。例えば、所与のペプチド中の特異的アミノ酸を置換することは、親と類似した活性を有するバリアントペプチドを与えることができる。
【0034】
本発明との関連で、バリアントタンパク質中の置換は[元のアミノ酸/配列中の位置/置換アミノ酸]と示される。
【0035】
本明細書で使用される場合、用語「目的のタンパク質(POI)」は、任意の合成の又は天然に存在するタンパク質又はペプチドを含む。したがって、本用語は、薬物、ワクチン及びタンパク質、ペプチド等の分子を含むバイオ医薬品と伝統的にみなされる化合物を包含する。治療剤の例は周知の参考文献、例えばMerck Index(第14版)、Physicians' Desk Reference(第64版)及びThe Pharmacological Basis of Therapeutics(第1版)に記載され、それらには、限定されずに、医薬;疾患若しくは病気の処置、予防、診断、治癒若しくは軽減のために使用される物質;体の構造若しくは機能に影響を及ぼす物質、又は、生理的環境に置かれた後に生物学的に活性若しくはより活性になるプロドラッグが含まれる。
【0036】
本明細書で使用される場合、「単離されたペプチド」又は「精製されたペプチド」は、そのペプチドが通常は天然に関連している物質、又は、そのペプチドが、発現宿主細胞溶解物、増殖培地成分、緩衝液成分、細胞培養上清若しくは合成in vitro翻訳系の成分を限定されずに含む人工的発現若しくは生成系において関連している物質を実質的に含有していないペプチド(又は、その断片)を意味するものである。本明細書で開示されるペプチド又はその断片は、例えば、天然の供与源(例えば、哺乳動物細胞)からの抽出によって、ペプチドをコードする組換え核酸の発現(例えば、細胞中又は無細胞翻訳系の中)によって、又はペプチドの化学合成によって得ることができる。更に、ペプチド断片はこれらの方法のいずれかによって、又は完全長タンパク質及び/若しくはペプチドを切断することによって得ることができる。
【0037】
本明細書で使用される単語「又は」は、特定のリストの任意の1メンバーを意味し、そのリストのメンバーの任意の組合せも含む。
【0038】
本明細書で使用される語句「核酸」は、ワトソン-クリック型の塩基対合によって相補的核酸へのハイブリダイゼーションが可能である、DNA又はRNA又はDNA-RNAハイブリッドの、一本鎖又は二本鎖の、センス又はアンチセンスの、天然に存在するか又は合成のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを指す。本発明の核酸は、ヌクレオチド類似体(例えば、BrdU)及び非ホスホジエステルヌクレオシド間連結(例えば、ペプチド核酸(PNA)又はチオジエステル連結)を含むこともできる。特に、核酸はDNA、RNA、cDNA、gDNA、ssDNA、dsDNA又はその任意の組合せを限定されずに含むことができる。
【0039】
本明細書で使用される場合、「エクステイン」は、インテインの切り出しの後にスプライシング若しくは切断することができる、インテインの一部でないインテイン改変タンパク質の一部を指す。
【0040】
「インテイン」は、タンパク質中のインフレーム介在配列を指す。インテインは翻訳後のタンパク質スプライシングプロセスによってそれ自身のタンパク質からの切り出しを触媒し、遊離インテイン及び成熟タンパク質を与えることができる。インテインは、インテインN末端又はインテインC末端、又はインテイン-エクステイン末端の両方でインテイン-エクステイン結合の切断を触媒することもできる。本明細書で使用される場合、「インテイン」はミニインテイン、改変された又は変異したインテイン及びスプリットインテインを包含する。
【0041】
本明細書で使用される場合、用語「スプリットインテイン」は、N末端インテインセグメントとC末端インテインセグメントの間に1つ又は複数のペプチド結合切断が存在し、そのためN末端及びC末端のインテインセグメントが、スプライシング又は切断反応のために機能的であるインテインに非共有結合的に再結合又は再構成させることができる別々の分子になるような任意のインテインを指す。本明細書に開示される系及び方法で使用するためのスプリットインテインを誘導するために、任意の触媒活性インテイン又はその断片を使用することができる。例えば、一態様では、スプリットインテインは、真核生物のインテインに由来することができる。別の態様では、スプリットインテインは、細菌のインテインに由来することができる。別の態様では、スプリットインテインは、古細菌のインテインに由来することができる。好ましくは、このように導かれたスプリットインテインは、スプライシング反応を触媒するために必須であるアミノ酸配列だけを有する。
【0042】
本明細書で使用される場合、「N末端インテインセグメント」又は「N-インテイン」は、対応するC末端インテインセグメントと組み合わせたとき、スプライシング及び/又は切断反応のために機能的であるN末端アミノ酸配列を含む任意のインテイン配列を指す。したがって、N末端インテインセグメントは、スプライシングが起こるときにスプライシングアウトされる配列も含む。N末端インテインセグメントは、天然に存在する(天然の)インテイン配列のN末端部分の改変形である配列を含むことができる。親和性精製されるか又は共有結合で固定化される能力等のさらなる機能を提供するために、非インテイン残基をインテインセグメントに遺伝子的に融合させることもできる。
【0043】
本明細書で使用される場合、「C末端インテインセグメント」又は「C-インテイン」は、対応するN末端インテインセグメントと組み合わせたとき、スプライシング又は切断反応のために機能的であるC末端アミノ酸配列を含む任意のインテイン配列を指す。一態様では、C末端インテインセグメントは、スプライシングが起こるときにスプライシングアウトされる配列を含む。別の態様では、C末端のインテインセグメントは、そのC末端に融合されているペプチド配列から切断される。C末端インテインのC末端から切断される配列は、本明細書では「目的のタンパク質POI」と呼ばれ、それは更に詳細に下で議論される。C末端インテインセグメントは、天然に存在する(天然の)インテイン配列のC末端部分の改変形である配列を含むことができる。例えば、C末端のインテインセグメントは、さらなる及び/又は変異した残基の組入れがC末端のインテインセグメントをスプライシング又は切断のために非機能的にしない限り、そのようなさらなるアミノ酸残基及び/又は変異した残基を含むことができる。
【0044】
共通配列は、整列した、関連した配列を表すDNA、RNA又はタンパク質の配列である。関連した配列の共通配列は異なる方法で規定することができるが、通常は各位置で最も共通するヌクレオチド又はアミノ酸残基によって規定される。
【0045】
本明細書で使用される場合、用語「スプライシング」又は「スプライシングする」は、ポリペプチドの中央部分を切り出して2つ以上のより小さいポリペプチド分子を形成することを意味する。一部の場合には、スプライシングは、より小さいポリペプチドの2つ以上を融合させて新規のポリペプチドを形成する工程も含む。スプライシングは、スプリットインテインの作用を通して2つの別々の遺伝子産物の上でコードされる2つのポリペプチドを連結することを指すこともできる。
【0046】
本明細書で使用される場合、用語「切断」又は「切断する」は、単一のポリペプチドを分割して2つ以上のより小さいポリペプチド分子を形成することを意味する。一部の場合には、切断は外因性のエンドペプチダーゼの添加によって媒介され、それは「タンパク分解性切断」としばしば呼ばれる。他の場合には、切断することは切断されるペプチド配列の一方又は両方の内因性活性によって媒介されてもよく、それは「自己切断」としばしば呼ばれる。切断は、本明細書に記載されるスプリットインテイン系の作用の場合のように、非タンパク分解性の第3のペプチドの添加によって誘導される、2つのポリペプチドの自己切断を指すこともできる。
【0047】
用語「融合した」は、共有結合していることを意味する。例えば、その2つのペプチドが(例えば、ペプチド結合を介して)互いに共有結合している場合、第1のペプチドは第2のペプチドに融合している。
【0048】
本明細書で使用される場合、「単離された」又は「実質的に純粋な」物質は、天然にそれに付随する成分から分離されたものである。一般的に、ポリペプチドは、それが他のタンパク質及びそれが天然に関連している天然に存在する有機分子を少なくとも50質量%(例えば、60%、70%、80%、90%、95%及び99%)含有しないとき、実質的に純粋である。
【0049】
本明細書では、「結合」又は「結合する」は、1つの分子が試料中の別の分子を認識して付着するが、試料中の他の分子を実質的に認識せず、付着もしないことを意味する。1つの分子は、それが他の分子に対して約105~106リットル/モルより大きい結合親和性を有する場合、別の分子に「特異的に結合する」。
【0050】
本明細書で言及する核酸、ヌクレオチド配列、タンパク質又はアミノ酸配列は、単離すること、精製すること、化学的に合成すること又は組換えDNA技術によって生成することができる。これらの方法の全ては、当技術分野で周知である。
【0051】
本明細書で使用される場合、「改変されたインテイン」又は「変異したインテイン」におけるような用語「改変された」又は「変異した」は、天然の又は天然に存在する構造と比較したときの、インテイン等の言及されている核酸又はアミノ酸配列中の1つ又は複数の改変を指す。そのような改変は、置換、付加又は欠失であってよい。改変は、インテイン等の言及されている構造の1つ若しくは複数のアミノ酸残基又は1つ若しくは複数のヌクレオチドにおけるものであってよい。
【0052】
本明細書で使用される場合、用語「改変されたペプチド」、「改変されたタンパク質」又は「改変された目的のタンパク質」又は「改変された標的タンパク質」は、改変されたタンパク質を指す。
【0053】
本明細書で使用される場合、「作動可能に連結された」は、構成中の2つ以上の生体分子の、その生体分子の正常な機能を発揮させることができるようなお互いへの結合を指す。ヌクレオチド配列に関して、「作動可能に連結された」は、構成中の2つ以上の核酸配列の酵素的ライゲーション又はその他による、その配列の正常な機能を発揮させることができるようなお互いへの結合を指す。例えば、先行配列又は分泌リーダーをコードするヌクレオチド配列は、ポリペプチドの分泌に関与する前タンパク質としてそれが発現される場合はそのポリペプチドのヌクレオチド配列に作動可能に連結され;それがコード配列の転写に影響を及ぼす場合はプロモーター又はエンハンサーがそのコード配列に作動可能に連結され;それがコード配列の翻訳を促進するように置かれる場合はリボソーム結合部位がそのコード配列に作動可能に連結される。
【0054】
「配列相同性」は、核酸又はタンパク質配列が共通の進化起源を有するのでそれらが類似している状況を指すことができる。「配列相同性」は、配列が非常に類似していることを示すことができる。配列類似性は観察可能である;相同性は、観察に基づくことができる。「非常に類似している」は、少なくとも70%の同一性、相同性又は類似性;少なくとも75%の同一性、相同性又は類似性;少なくとも80%の同一性、相同性又は類似性;少なくとも85%の同一性、相同性又は類似性;少なくとも90%の同一性、相同性又は類似性;例えば少なくとも93%又は少なくとも95%、又は少なくとも97%の同一性、相同性又は類似性でさえも意味することができる。ヌクレオチド配列の類似性又は相同性又は同一性は、Myers等(1988) CABIOS 4:11~17の「Align」プログラムを使用して決定することができ、及びNCBIで入手可能である。更に、又は代わりに、アミノ酸配列の類似性又は同一性又は相同性は、BlastPプログラム(Altschul等Nucl. Acids Res. 25:3389~3402)を使用して決定することができ、及びNCBIで入手可能である。代わりに、又は更に、例えばヌクレオチド配列に関して用語「類似性」又は「同一性」又は「相同性」は、2つの配列の間の相同性の定量的尺度を示すものである。
【0055】
代わりに、又は更に、配列に関する「類似性」は、同一のヌクレオチドを有する位置の数を2つの配列の短い方のヌクレオチドの数によって割り算したものを指し、ここで、2つの配列のアラインメントは、Wilbur及びLipman algorithm。(1983) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:726によって決定することができる。例えば、20ヌクレオチドのウィンドウサイズ、4ヌクレオチドのワードレンス及び4のギャップペナルティを使用して、市販プログラム(例えば、Intelligenetics(商標) Suite、Intelligenetics社、CA)を使用してアラインメントを含む配列データのコンピュータを利用した分析及び解釈を都合よく実行することができる。RNA配列が類似しているか又はDNA配列と一定程度の配列同一性を有すると言われる場合、DNA配列中のチミジン(T)はRNA配列中のウラシル(U)と同等であるとみなされる。以下の参考文献は、2つのタンパク質のアミノ酸残基の相対的な同一性又は相同性又は類似性を比較するためのアルゴリズムも提供し、上述のものに関して更に、又は代わりに、これらの参考文献は相同性又は同一性又は類似性のパーセントを決定するために使用することができる。Needleman等(1970) J. Mol. Biol. 48:444~453; Smith等(1983) Advances App. Math. 2:482~489; Smith等(1981) Nuc. Acids Res. 11:2205~2220; Feng等(1987) J. Molec. Evol. 25:351~360; Higgins等(1989) CABIOS 5:151~153; Thompson等(1994) Nuc. Acids Res. 22:4673~480;及びDevereux等(1984) 12:387~395。「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、当技術分野で周知の用語である;例えば、Sambrook、「Molecular Cloning, A Laboratory Manual」第2版、CSH Press社、Cold Spring Harbor、1989;「Nucleic Acid Hybridization, A Practical Approach」、Hames及びHiggins編、IRL Press社、Oxford、1985を参照する;配列比較がある
図2及び本明細書中のその記載も参照する。
【0056】
用語「緩衝液」又は「緩衝溶液」は、その共役酸塩基範囲の作用によってpHの変化に耐える溶液を指す。
【0057】
用語「ローディングバッファー」又は「平衡緩衝液」は、カラムの上へタンパク質調製物をロードするためにタンパク質調製物と混合される、塩又は複数の塩を含有する緩衝液を指す。投入の前にカラムを平衡させるために、及びタンパク質をロードした後にカラムを洗浄するためにも、この緩衝液が使用される。
【0058】
用語「洗浄緩衝液」は、本明細書において(例えば)目的のタンパク質(例えば、C末端のインテイン断片にカップリングされたもの)をロードした後に、及び目的のタンパク質の溶出の前にカラムの上に流される緩衝液を指すために使用される。洗浄緩衝液は所望のタンパク質の溶出が実質的になしで1つ又は複数の混入物を除去する役目をすることができる。
【0059】
用語「溶出緩衝液」は、カラムから所望のタンパク質を溶出させるために使用される緩衝液を指す。本明細書で使用される場合、用語「溶液」は、水を含む緩衝されたか又は緩衝されていない溶液を指す。
【0060】
用語「洗浄」は、クロマトグラフィー樹脂等の固体支持体を通して、又はその上に適当な緩衝液を流すことを意味する。
【0061】
固体支持体から分子(例えば、所望のタンパク質又は混入物)を「溶出させる」という用語は、そのような材料から分子を取り出すことを意味する。
【0062】
用語「混入物」又は「不純物」は、精製されるタンパク質の試料中に存在する、精製されるタンパク質以外の任意の外来の又は好ましくない分子、特にDNA、RNA又はタンパク質等の生物学的高分子を指す。混入物には、例えば、精製されるタンパク質を発現及び/又は分泌する細胞からの他のタンパク質が含まれる。
【0063】
タンパク質精製との関連で使用される用語「分離する」又は「単離する」は、第2のタンパク質の分子の少なくとも大半又は他の混入物又は不純物の混合物を含む混合物のその部分から所望のタンパク質の分子の少なくとも大半が取り出されるような、所望のタンパク質及び第2のタンパク質又は他の混入物若しくは不純物の混合物を含む混合物中の第2のタンパク質又は他の混入物又は不純物の混合物からの所望のタンパク質の分離を指す。
【0064】
所望のタンパク質及び1つ又は複数の混入物を含む組成物又は溶液から所望のタンパク質を「精製する」又は「精製すること」という用語は、組成物又は溶液から少なくとも1つの混入物を除去する(完全に又は部分的に)ことによって組成物又は溶液中の所望のタンパク質の純度を増加させることを意味する。
【0065】
N-インテインタンパク質バリアント
本発明は、幅広いアミノ酸耐性で切断して最終生成物としてタグなしの目的のタンパク質(POI)を生成する、本発明によるスプリットインテイン系を使用した単一工程の親和性クロマトグラフィー及び親和性タグ切断機構に関する。インテインの2つの半分は親和性リガンド(N-インテイン)及び親和性タグ(C-インテイン)であり、それらは速やかに結合する。クロマトグラフィー樹脂の上に1つの半分(N-インテイン)を固定化することは、溶液からのPOIにカップリングした他の半分(C-インテイン)の捕捉を可能にする。Zn2+イオンの存在下で切断反応は阻害され、不純物が洗浄される間に安定複合体の形成を可能にする。不純物が排除された後、キレーター又は還元剤が加えられると切断反応が進行し、POIの収集を可能にするが、その間インテインタグはクロマトグラフィー樹脂に連結されている同族のインテインに非共有結合的に結合したままである。
【0066】
好ましくは、本発明は、天然のスプリットインテイン又は天然のインテイン及びスプリットインテインに由来する共通配列のN-インテインタンパク質バリアント配列であって、N-インテインバリアントは、24及び/又は25位に変異を有することにより、増加した溶解性を提供するように天然配列又は共通配列と比較して改変されている、N-インテインタンパク質バリアント配列を提供する。これらの位置は、番号が1である最初の触媒性システインから開始する天然のスプリットインテインによる従来のクラスタルアラインメントにより計算される。
【0067】
天然のインテインは、当技術分野で公知である。インテインのリストは、下のTable 1(表1)に見出される。全てのインテインはスプリットインテインにすることが可能であるが、一部のインテインはスプリット形で天然に存在する。表に見出されるインテインの全てはスプリットインテインとして存在するか、又は天然配列と比較して増加した溶解性が達成されるように24及び/若しくは25位で本発明により改変されたスプリットインテインにすることが可能である。
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
開示される組成物の又は開示される方法で使用することができるスプリットインテインは、改変されたか又は変異したインテインであってよい。改変されたインテインは、N末端インテインセグメント、C末端インテインセグメント又は両方への改変を含むことができる。改変は、スプリットインテインのいずれかの部分のN末端、C末端にさらなるアミノ酸を含むことができるか、又はスプリットインテインのいずれかの部分の中にあることができる。Table 2(表2)は、アミノ酸、それらの略記号、極性及び電荷のリストを示す。
【0101】
【0102】
本発明のN-インテインは固相、例えば膜、繊維、粒子、ビーズ又はチップにカップリングさせることができる。固相は、天然又は合成起源のクロマトグラフィー樹脂、例えば天然又は合成樹脂、好ましくはアガロース等の多糖であってよい。クロマトグラフィー樹脂等の固相は、包埋された磁気粒子を伴う形で提供することができる。別の実施形態では、固相は、非拡散制限樹脂/繊維材料である。
【0103】
この場合には、固相はエレクトロスパンポリマーナノファイバー等の1つ又は複数のポリマーナノファイバー基質から形成することができる。本発明で使用するためのポリマーナノファイバーは、10nm~1000nmの平均直径を一般的に有する。ポリマーナノファイバーの長さは、特に制限されない。ポリマーナノファイバーは、好適にはモノフィラメントナノファイバーであってよく、例えば環状、楕円体又は事実上環状/楕円体の断面を有することができる。一般的に、1つ又は複数のポリマーナノファイバーは1つ又は複数の不織布のシートの形で提供され、各々は1つ又は複数のポリマーナノファイバーを含んでいる。1つ又は複数のポリマーナノファイバーを含む不織布のシートは、前記1つ又は複数のポリマーナノファイバーのマットであり、各々のナノファイバーは本質的にランダムに配向している、すなわち、それはナノファイバー又は複数のナノファイバーが特定のパターンを採用するようには製作されていない。不織布のシートは、1~40g/m2の面積密度を一般的に有する。不織布のシートは、5~120μmの厚さを一般的に有する。ポリマーは、クロマトグラフィー方法のクロマトグラフィー媒体、すなわち吸着剤として好適なポリマーであるべきである。好適なポリマーには、ポリアミド、例えばナイロン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリスルホン、例えばポリエーテルスルホン(PES)、ポリカプロラクトン、コラーゲン、キトサン、酸化ポリエチレン、アガロース、酢酸アガロース、セルロース、酢酸セルロース及びその組合せが含まれる。
【0104】
本発明によるN-インテインは固体支持体の上に非常に高い程度で固定化することができ、樹脂1ml(腫脹したゲル)あたり0.2~2μモル/ml N-インテインがカップリングされる。
【0105】
本発明によるN-インテインは、C末端に1つ又は複数のLys、例えば少なくとも2つを含むLysテールを介して固相にカップリングすることができる。或いは、N-インテインはC末端の上のCysテールを介して固相にカップリングされる。
【0106】
C-インテインタンパク質バリアント
好ましくは、本発明は、スプリットインテインC-インテイン配列又はその工学操作されたバリアントを含むC-インテインも提供する。
【0107】
N-インテイン及びC-インテインの選択は、同じ野生型スプリットインテイン(例えば、両方ともNpuから)又はN-若しくはC-インテインのバリアントからのものであってよく、或いは、N-断片の異なるC-断片への親和性(例えば、Ssp C-断片又はそのバリアントとNpu N-断片又はそのバリアント)が、開示された方法で使用するための十分な結合親和性をなお維持することが発見されたので、異なる野生型スプリットインテイン若しくはコンセンサススプリットインテイン配列から選択することができることが理解される。
【0108】
スプリットインテインシステム
好ましくは、本発明は前記のようにN-インテイン及びC-インテインを含む、目的のタンパク質(POI)の親和性精製のためのスプリットインテインシステムを提供する。
【0109】
好ましくは、N-インテインは固相に結合し、C-インテインはPOIと同時に発現され、POIの親和性精製のためのタグとして使用される。その逆、すなわちC-インテインを固相に結合させてN-インテインをタグとして使用することも可能であるが、前者が好ましい。
【0110】
一実施形態では、C-インテイン及びさらなるタグは、POIと同時発現される。さらなるタグは、任意の従来のクロマトグラフィータグ、例えばIEXタグ又は親和性タグであってよい。
【0111】
目的のタンパク質(POI)を精製する方法
本発明は本発明によるスプリットインテインシステムを使用して目的のタンパク質(POI)を精製する方法であって、6~8等の中性pH、及び二価カチオン(自発的切断を損なう)の存在下でのC-インテイン及びN-インテインの結合;二価カチオンの存在下での前記固相の洗浄; C-インテインとPOIの間の自発的切断を可能にするキレーターの追加;タグなしPOIの収集を含む方法に関する。
【0112】
このプロトコールは、Znに非感受性のタンパク質に好適である。利点は、樹脂及び大きな試料量の添加で長い接触時間が可能なことである。試料投入は長い時間、例えば最高1.5時間行うことができる。
【0113】
本発明により、POIの30%を超える収率、好ましくは50%、最も好ましくは80%を超える収率が4時間未満の切断で達成される。
【0114】
N-インテインが固相に固定化されるとき、本発明は高いリガンド密度を可能にする。好ましくは、N-インテインは、クロマトグラフィー樹脂、例えばアガロース又はタンパク質精製のための任意の他の好適な樹脂に結合される。本発明により、静置した1mlの樹脂当たり0.2~2μモル/ml C-インテイン結合POIの静的結合能力を達成することが可能である。
【0115】
親和性タグ
本発明は目的のタンパク質(POI)の精製のための方法であって、POIを本発明によるC-インテイン及びさらなるタグと同時発現させる工程;前記さらなるタグを固相上のその結合パートナーに結合させる工程; POI及びC-インテインを切断する工程;前記C-インテインを中性pHで固相に結合しているN-インテインに結合させる工程、及び結合している前記C-インテイン及びN-インテインを前記POIから切断する工程;並びに0.5M NaOH等のアルカリ性条件下の前記固相を再生する工程を含む方法にも関する。このツインタグの目的:増加する純度(二重親和性精製を可能にする)、溶解性、検出性。
【0116】
親和性タグは、タンパク質の挙動を変更するタンパク質コード配列とインフレームでクローニングされるペプチド又はタンパク質配列であってよい。親和性タグは、細胞からタンパク質を精製する方法で使用することができるタンパク質のN末端又はC末端に付加することができる。親和性タグを含むペプチドを発現する細胞は、上清/細胞培地においてシグナル配列で発現させることができる。親和性タグを含むペプチドを発現する細胞は、ペレットにすることも、溶解することもでき、細胞溶解物は、親和性タグにリガンドを提示するカラム、樹脂又は他の固体支持体に塗布することができる。親和性タグ及び任意の融合ペプチドは固体支持体に結合され、それは未結合の(混入)タンパク質を排除するために緩衝液で数回洗浄することもできる。目的のタンパク質は、親和性タグに結合している場合、親和性タグをリガンドから解離させて、精製されたタンパク質をもたらす緩衝液によって、固体支持体から溶出させることができるか、又は、可溶性プロテアーゼを使用して、結合している親和性タグから切断することができる。本明細書に開示されるように、親和性タグは、活性インテイン複合体中のC-インテインセグメントの自己切断機構によって切断される。
【0117】
親和性の例には、限定されずに、融合標的タンパク質の精製を容易にするために固定化麦芽糖に結合することができる麦芽糖結合性タンパク質;固定化キチンに結合することができるキチン結合性タンパク質;固定化グルタチオンに結合することができるグルタチオンS転移酵素;固定化キレート化金属に結合することができるポリヒスチジン;固定化抗FLAG抗体に結合することができるFLAGオクタペプチドが含まれる。
【0118】
親和性タグは、選択的沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、沈殿可能なリガンドへの結合、透析(標的タンパク質のサイズ及び/又は電荷を変更することによって)及び他の高度に選択的な分離方法を限定されずに含む、様々な方法によって開示された改変されたペプチドを使用して目的のタンパク質の精製を容易にするために使用することもできる。
【0119】
一部の態様では、リガンドに実際には結合しないが、代わりに選択的に沈殿するか又は固定化された対応する結合性ドメインのためのリガンドとして作用する親和性タグを使用することができる。これらの場合には、タグはより一般的に精製タグと呼ばれる。例えば、ELPタグは特異的な塩及び温度条件下で選択的に沈殿し、遠心分離による融合ペプチドの精製を可能にする。別の例は抗体Fcドメインであり、それは固定化されたプロテインA又はプロテインG結合性ドメインのためのリガンドの役目をする。
【0120】
目的のタンパク質
全てのプロトコールのための標的タンパク質は以下の通りである:任意の組換えタンパク質、特に天然若しくは天然に近いN末端配列を必要とするタンパク質、例えば治療的タンパク質候補、バイオ医薬品、抗体断片、抗体模倣体、タンパク質骨格、酵素、組換えタンパク質又はペプチド、例えば増殖因子、サイトカイン、ケモカイン、ホルモン、抗原(ウイルス、細菌、酵母、哺乳動物)生産、ワクチン生産、細胞表面受容体、融合タンパク質。
【0121】
本発明は、以下で一部の非限定的実施例及び添付図に関連してより詳細に記載される。
【0122】
実験の部
本発明は、一部の非限定的実施例及び添付図に関連してより詳細に記載される。
【0123】
本発明では、以下の5つの構築物を評価した。
【0124】
【0125】
構築物の培養及び発現:
出発培養を振盪フラスコにおいて100mLのLB+neoに1:100に希釈し(5つの構築物全てについて3連で行った)、OD600が0.6~1になるまで37℃でインキュベートした。標的ODに達したら、フラスコを冷却したインキュベーター(22度)に移し、誘導のために0.5mM IPTGを一晩(正確には18時間)添加した。誘導した培養物を50mLファルコンチューブにおいて5000g(+7度)で逐次ペレット化し、ペレットを秤量した。
【0126】
溶解性試験
秤量したペレット(およそ0.8グラム)を20容量の1×PBSに再懸濁した。構築物のそれぞれについて、
1. 20μLをSDS-PAGE(全細胞溶解物/WCL)のために貯蔵した
2. 5mLを50mLファルコンチューブに添加し、
a. 5000g(6度)で20分間遠心分離し、
b.ペレットを5mLの8M尿素に再懸濁し、
c.室温で約1時間エンドツーエンドによってインキュベートし、
d. 20000g、6度で20分間遠心分離し、
e. 20μLの上清をSDS-PAGE(尿素)のために貯蔵し、
f.残りの上清をBiacore CFCA分析のために使用した
3. 10mLを50mLファルコンチューブに添加し、
a.氷上で1分間、30%の振幅においてオンタイム(2秒オン/4秒オフのパルス)で音波処理し、
b. 20000g、6度で20分間遠心分離し、
c. 20μLの上清をSDS-PAGE(音波処理)のために貯蔵し、
d.残りの上清をBiacore CFCA分析のために使用した
4. 500μLを1.5mLチューブに添加し、
a. 5000g、6度で20分間遠心分離し、
b.ペレットを500μLの1%NP40緩衝液に再懸濁し、
c.室温にて1200rpmで振盪(Mathilda block)しながら40分間インキュベートし、
d. 12000g、6度で20分間遠心分離し、
e.およそ250μLの上清を貯蔵し、
f. 20μLの上清をSDS-PAGE(NP40)のために貯蔵し、
g.残りの上清をBiacore CFCA分析のために使用した。
【0127】
20μLの試料に40μLのSDS-PAGE緩衝液を添加し、95度で5分間煮沸させた後、試料を15%ゲルにロードした。
【0128】
溶解性をSDS-PAGE分析試料によって評価し、
抽出方法濃度測定シグナル/全細胞溶解物(WCL)濃度測定シグナル×100%
に従って計算した。
【0129】
図1は、異なる抽出技術を使用した後の代表的な上清のSDS-PAGE分析を示す。20μLの上清を40μLの2×Laemmli試料緩衝液と混合し、摂氏95度で5分間煮沸させた後、15%均一SDS-PAGEゲル上にロードした。ゲルを600Vで1時間50分電気泳動し、クーマシーによっておよそ2時間染色した。徹底的な脱染色後、Amersham AI600イメージャを使用してゲルを撮像した。
【0130】
図2は、SDS-PAGE分析の濃度測定評価後に決定された溶解性を示す。各構築物の3つの異なる細胞培養からの抽出物を分析し、リガンドバンド濃度を、ImageQuant TLソフトウェアを使用して測定した。溶解性を、以下の式:
濃度測定(抽出方法X)/濃度測定(WCL)×100%=溶解性%
に基づいて計算した。
【0131】
棒は全細胞溶解物と比較した異なる抽出方法の平均溶解性を示し、エラーバーは標準偏差を示す。全ての構築物は、分析した音波処理試料について、A52よりも有意に良好な溶解性を示した。A53、B97及びB82は、A52試料と比較して有意に高い溶解性を示した。統計的有意性は、A52を対照試料として使用して、ダネットの事後検定を伴う一元配置分散分析によって決定した。*p値<0.05、**p値<0.01、***p値<0.001、****p値<0.0001。
【0132】
【0133】
尿素抽出方法は、分析した構築物にかかわらず、WCLと比較して有意差を示さなかった。
【0134】
Biacore CFCA分析
様々なタンパク質抽出物の可溶性N-インテインの割合に関する決定を、FLAGエピトープ(DYKDDDDK)を構築物のC末端における検出タグとして使用するSPR結合分析によって更に分析した。較正不要濃度分析(CFCA)をBiacore T200装置において、マウスモノクローナル抗FLAG M2抗体を使用して行った。アミンカップリングキットを使用して、センサーチップCM5シリーズSに抗FLAG抗体を固定化した。10mM酢酸ナトリウムpH4.0を固定化緩衝液として、HBS-EP+ pH7.4を泳動用緩衝液として、及びグリシン-HCl pH2.5を再生緩衝液として使用した。固定化レベルは約8000~10000RUであった。上に記載した異なる抽出法からの上清試料をHBS-EP+泳動用緩衝液に150~5000倍に希釈した後、CFCA法によって分析した。異なるタンパク質構築物の分子量は13.5~13.6kDaの範囲であり、これを使用して20℃における拡散係数を計算した(1.13389E-10m2/s)。CFCAのための既定のBiacore法を、最終的な方法を設定するための出発点として使用した。試料濃度を、Biacore T200評価ソフトウェアを使用することによって決定した。
【0135】
図3は、Biacore CFCA分析によって決定された、異なる抽出物からの上清中のN-インテイン濃度を示すグラフである。各構築物の3つの異なる細胞培養からの抽出物を分析した。棒は平均濃度を示し、エラーバーは標準偏差を示す。
【0136】
異なる抽出方法を使用した抽出及び清澄化後の上清中のN-インテイン濃度を、可溶性N-インテインの割合の計算のために使用する。NP40界面活性剤緩衝液は、可溶性タンパク質の細胞からの穏やかな放出を引き起こす。超音波処理は、可溶性タンパク質を放出する激しい細胞破壊を引き起こす機械的抽出技術である。高濃度の尿素は、可溶性タンパク質及び細胞由来の封入体に見出される不溶性タンパク質の両方の放出を引き起こす変性抽出方法である。SDS試料緩衝液中での細胞ペレットの煮沸は、可溶性N-インテイン及び不溶性N-インテインの両方の完全な可溶化を引き起こし、発現したN-インテインの総量の参照として使用する。非変性抽出方法(NP40及び音波処理)を用いた抽出後の上清中の、変性方法(尿素及びSDS)と比較して高いN-インテイン濃度は高い溶解性を示す。CFCA分析は、A53及びB97構築物が高い溶解性を有する一方、A52が非常に乏しい溶解性を有することを示す、
図4。
【0137】
統計解析は、改変された構築物B82、B83及びB97が、穏やかな非変性抽出方法を使用した場合、改変されていないA52構築物と比較して有意に可溶性であることを示す。
【0138】
SPR結合分析によって評価した溶解性は、
抽出方法N-インテイン濃度/SDS抽出N-インテイン濃度×100%
に従って計算する。
【0139】
結果
ドデシル硫酸ナトリウムSDSは、イオン性及び疎水性相互作用を介してタンパク質に結合し、その二次及び三次構造を変更することによってタンパク質を可溶化するイオン性界面活性剤である。SDSは、タンパク質の分離、特徴付け、及び定量のためにポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)において慣例的に使用される。SDSは、これらの実施例の実験では、SDS-PAGEゲルの濃度測定分析及びBiacore較正不要濃度分析CFCAによるその後の分離、検出及び定量化のために、異なる抽出物における、可溶性及び不溶性の両方のタンパク質の総量の定量のために使用される汎用タンパク質可溶化試薬として使用した。SDS可溶化試料抽出物における異なる構築物の濃度は、異なる方法を使用した抽出物の遠心清澄後の上清において得られる異なるタンパク質構築物の濃度との比較のために100%に正規化される。
【0140】
可溶性タンパク質のみを抽出するための穏やかな方法は、非イオン性界面活性剤NP40の使用である。1%(w/v)のNP40を、150mM塩化ナトリウムを含有するpH7.5のトリス-HCl緩衝液に添加し、採取した細菌細胞ペレットを再懸濁することとその後の1時間混合することにのみ使用する。インキュベーション後、細胞懸濁液を遠心分離によって清澄化して、不溶性物質を除去する。
【0141】
超音波処理又は音波処理は、プローブからの機械的エネルギーを使用して、可溶性細胞成分の放出のために細胞を崩壊させる、タンパク質の抽出方法である。細胞は、細胞成分の放出の間のpHを制御するために、非変性緩衝液、例えばpH7.4のリン酸緩衝生理食塩水PBSに再懸濁される。音波処理は、音波処理パラメータに対する完全な制御を可能にする、非常に効率的且つ信頼性の高い細胞崩壊のためのツールである。これは、物質の放出に対する高い選択性及び生成物の純度を保証する。音波処理後、溶解物を上清によって清澄化し、不溶性ペレットを除去する。
【0142】
尿素等のカオトロピック塩は、可溶性タンパク質及び不溶性タンパク質の両方の細胞からの放出のために使用することができる。尿素は、一部の一般的に使用されている分析方法と干渉する可能性がより高いSDS界面活性剤と対照的に、広い範囲の分析方法と適合性である。尿素は、最大の変性条件を保証するために8Mで一般的に使用され、水に溶解することができる。細胞を尿素溶液に再懸濁し、続いて1時間混合する。次いで、抽出物を遠心分離によって清澄化して、不溶性ペレットを除去する。
【0143】
SDSは、加熱された場合、タンパク質を変性させ、全てのタンパク質に強力な負電荷を付与する。SDSは、アミノ酸2つ当たりSDS分子1つの割合でタンパク質に強力に結合する。これにより、SDS抽出は可溶性及び不溶性の両方の総タンパク質の量を評価するための非常に効率的な方法となる。一般的に、pH6.7~7.5の間の緩衝溶液中2%(w/v)のSDS濃度を等容量の細胞採取物由来の細胞懸濁液に添加し、続いて95℃で5分間混合及び加熱する。次いで、試料を室温まで冷却した後、遠心分離及び分析を行う。
【0144】
図3は、異なる方法の使用による、細胞採取物におけるタンパク質の抽出後の上清中の異なるN-インテイン構築物の濃度を示す。細胞の量及び抽出容量は、実際の濃度を直接比較することができるように、抽出前に正規化した。各棒は、3つの異なる細胞培養からの細胞の抽出に由来するある特定の構築物の平均濃度を示す。エラーバーは標準偏差を示す。
図3に見られるように、タンパク質構築物の濃度は、SDS及び尿素を使用した抽出後の上清において最も高い。異なる構築物の濃度間の相対的な差は、異なる細胞培養からの発現の程度の差異を反映している。構築物A52及びB97は、SDS抽出物における濃度に基づくと、最も高い合計でのN-インテイン発現を有し、それぞれ871及び803μg/mlであった。尿素抽出物からのN-インテイン濃度は全体として、SDS抽出物と比較して低いが、概ね同じパターンに従う。可溶性タンパク質のみが見出される音波処理及びNP40抽出物からのN-インテイン濃度では、興味深い知見が見られる。置換変異K24E及びR25Nのいずれも含まない構築物であるA52は、他の構築物と比較して最も低いN-インテイン濃度を有し、NP40抽出物では27.5μg/ml、音波処理試料では37.9μg/mlである。K24E及びR25N置換を含む構築物B97は、比較的高い可溶性N-インテイン濃度を有し、NP40抽出物では180.3μg/ml、及び音波処理抽出物では662.3μg/mlである。この差は、それぞれの各構築物及び抽出方法のN-インテイン濃度をそれぞれの各構築物のSDS抽出後のN-インテイン濃度と比較する
図4ではより明白となる。SDSの棒は、全てが1の比を示し100%に等しいため、省略している。24及び25位に変異を有しない構築物A52は、NP40及び音波処理からの抽出物それぞれにおいて、SDS抽出物と比較してわずか3及び4%のN-インテインを有する。構築物B83における単一の置換R25Nは、SDS抽出物に対するより高い割合をもたらし、NP40及び音波処理抽出物について、それぞれ11%及び25%である。構築物B82における単一の置換K24Eは、SDS抽出物に対するより高い割合をもたらし、NP40及び音波処理抽出物について、それぞれ19%及び49%である。24及び25位に2つのアミノ酸置換K24E及びR25Nを有する構築物B97は、SDS抽出物に対するより高い割合をもたらし、NP40及び音波処理抽出物について、それぞれ22%及び82%である。
【0145】
要約すると、上記実験において本発明により達成された溶解性範囲は以下の通りである:
N又は正に荷電していないアミノ酸が好ましい25位のRの単一点変異の場合、少なくとも10~40%の可溶性N-インテイン。E又は正に荷電していないアミノ酸が好ましい24位のKの単一点変異の場合、少なくとも46~52%の可溶性N-インテイン。K24E及びR25N又は正に荷電していないアミノ酸が好ましい24及び25位の変異の場合、少なくとも76~88%の可溶性N-インテイン。これらの値は音波処理試料に関するBiacore CFCAデータに基づく。
【配列表】
【国際調査報告】