(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-17
(54)【発明の名称】アルファ-1062投与に関する自己保存性組成物及び多回使用型ディスペンサー
(51)【国際特許分類】
A61K 31/55 20060101AFI20240410BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240410BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240410BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20240410BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240410BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240410BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240410BHJP
【FI】
A61K31/55
A61P31/00
A61K9/08
A61K9/107
A61K9/10
A61P31/04
A61P25/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570185
(86)(22)【出願日】2021-05-14
(85)【翻訳文提出日】2024-01-11
(86)【国際出願番号】 CA2021050666
(87)【国際公開番号】W WO2022236396
(87)【国際公開日】2022-11-17
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523265641
【氏名又は名称】アルファ コグニション インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100182730
【氏名又は名称】大島 浩明
(72)【発明者】
【氏名】フレッド ディー.サンシリオ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA17
4C076AA22
4C076BB22
4C076BB25
4C076CC01
4C076CC32
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA21
4C086MA22
4C086MA57
4C086MA59
4C086NA05
4C086NA13
4C086ZA01
4C086ZB32
4C086ZB35
(57)【要約】
本発明は、化合物アルファ-1062又はその塩を含有する、自己保存性抗-微生物医薬組成物に関し、ここでこの組成物は、追加の抗微生物性保存剤を本質的に欠いている。本発明は好ましくは、液体の形状のそのような組成物に関する。本発明は更に、アルファ-1062又はその塩を含有する液体の形状の医薬組成物の経粘膜投与のために構成された多回使用型ディスペンサーに関する。本発明は更に、対象における神経系疾患の治療において使用するためのアルファ-1062又はその塩であって、ここで該対象は、加えて微生物感染症に罹患しているものか、或いは微生物感染症の治療において使用するためのアルファ-1062又はその塩に関する。本発明は更に、微生物をアルファ-1062又はその塩と接触させることを含む、微生物を死滅させる方法、又は消毒する、例えば医薬組成物を消毒する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物アルファ-1062又はその塩を含有する、自己保存性抗-微生物医薬組成物であって、ここでこの組成物が、本質的に追加の抗微生物性保存剤を欠いている、自己保存性医薬組成物。
【請求項2】
前記組成物が、液体の形状である、請求項1記載の自己保存性医薬組成物。
【請求項3】
前記組成物が、液剤、エマルション、又は懸濁剤である、請求項2記載の自己保存性医薬組成物。
【請求項4】
前記化合物アルファ-1062又はその塩が、1~200mg/mLの濃度で存在する、請求項1~3のいずれか一項記載の自己保存性医薬組成物。
【請求項5】
前記化合物アルファ-1062又はその塩が、5~100mg/mLの濃度で存在する、請求項4記載の自己保存性医薬組成物。
【請求項6】
前記化合物アルファ-1062が、グルコン酸塩として、50~100mg/mLの濃度で存在する、請求項5記載の自己保存性医薬組成物。
【請求項7】
前記アルファ-1062グルコン酸塩が、70~90mg/mLの濃度で存在する、請求項6記載の自己保存性医薬組成物。
【請求項8】
前記化合物アルファ-1062が、米国薬局方第51章保存剤試験(USP51)に従い、大腸菌(エシェリキア・コリ)、緑膿菌(シュードモナス・アエルギノーサ)、黄色ブドウ球菌(スタフィロコッカス・アウレウス)、カンジダ・アルビカンス及び/又はアスペルギルス・ブラジリエンスの1×10
4~1×10
6コロニー形成単位/mL(CFU/mL)を、14日間の治療のうちに<100CFU/mLまで減少するのに十分な濃度で存在する、請求項1~7のいずれか一項記載の自己保存性医薬組成物。
【請求項9】
前記化合物アルファ-1062が、米国薬局方第51章保存剤試験(USP51)に従い、大腸菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、カンジダ・アルビカンス及び/又はアスペルギルス・ブラジリエンスの1×10
4~1×10
6コロニー形成単位/mL(CFU/mL)を、14日間の治療内で<10CFU/mLまで減少するのに十分な濃度で存在する、請求項1~8のいずれか一項記載の自己保存性医薬組成物。
【請求項10】
液体の形状の医薬組成物を経粘膜投与するために構成された多回使用型ディスペンサーであって、ここでこの液体が、請求項1~9のいずれか一項記載の自己保存性抗-微生物組成物を含有する、多回使用型ディスペンサー。
【請求項11】
前記ディスペンサーが、鼻腔内投与のために構成される、請求項10記載の多回使用型ディスペンサー。
【請求項12】
前記ディスペンサーが、口腔内投与のために構成される、請求項10記載の多回使用型ディスペンサー。
【請求項13】
前記ディスペンサーが、10~300μLの複数回の個別の投与事象のために構成され、且つ該ディスペンサーが、1~100mLの液体組成物の総容積を含む、請求項10~12のいずれか一項記載の多回使用型ディスペンサー。
【請求項14】
前記ディスペンサーが、20~200μLの複数回の個別の投与事象のために構成され、且つ該ディスペンサーが、2~50mLの液体組成物の総容積を含む、請求項13記載の多回使用型ディスペンサー。
【請求項15】
対象における神経系疾患の治療における使用のための、請求項10~14のいずれか一項記載の多回使用型ディスペンサーであって、ここで該治療が、同じディスペンサーから対象へ、請求項1~9のいずれか一項記載の自己保存性抗-微生物組成物の反復投与量を投与することを含む、多回使用型ディスペンサー。
【請求項16】
対象における神経系疾患の治療における使用のための化合物アルファ-1062又はその塩であって、ここで該対象が、加えて微生物感染症に罹患している、化合物アルファ-1062又はその塩。
【請求項17】
対象における微生物感染症の治療における使用のための、化合物アルファ-1062又はその塩。
【請求項18】
前記微生物感染症が、対象の鼻腔、口腔、副鼻腔及び/又は鼻涙管に存在する、請求項16又は17記載の使用のための化合物アルファ-1062又はその塩。
【請求項19】
前記微生物を、化合物アルファ-1062又はその塩を含有する組成物の有効量と接触させることを含む、微生物を死滅させる方法。
【請求項20】
前記微生物が、細菌、酵母又は真菌である、請求項1~19のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
前記微生物が、ヒト病原体である、請求項19又は20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
前記微生物が、大腸菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、カンジダ・アルビカンス及び/又はアスペルギルス・ブラジリエンスである、請求項19~21のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明
本発明は、医療及び/又は抗-微生物の方法に加え、医薬品のための組成物、製剤及び分配装置の分野にある。
【0002】
本発明は、化合物アルファ-1062又はその塩を含有する、自己保存性抗-微生物医薬組成物に関し、ここでこの組成物は、追加の抗微生物性保存剤を本質的に欠いている。本発明は好ましくは、液体の形状のそのような組成物に関する。別の局面において、本発明は更に、アルファ-1062又はその塩を含有する液体の形状の医薬組成物の経粘膜投与のために構成された多回使用型ディスペンサーに関する。
【0003】
別の局面において、本発明は、対象における神経系疾患の治療において使用するためのアルファ-1062又はその塩であって、ここで該対象は加えて微生物感染症に罹患しているものか、或いは微生物感染症の治療において使用するためのアルファ-1062又はその塩に関する。別の局面において、本発明は、微生物をアルファ-1062又はその塩と接触させることを含む、微生物を死滅させる方法、又は消毒する、例えば医薬組成物を消毒する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
アルツハイマー病(AD)は、高齢者における認知症の最も一般的な形である。これは、注意力、意味記憶、抽象的思考及び他の認識機能の障害を伴う、進行性の記憶障害により特徴付けられる。疾患修飾の可能性を有するいくつかの実験的治療が、現在研究中であり、その最も卓越したものは、細胞外ベータアミロイドオリゴマー及びプラーク、並びに細胞内タウタンパク質などのタンパク質の異常な蓄積を標的化する抗体に関わる。しかしベータ-アミロイドを標的化する抗体療法の最近の第III相臨床試験は、十分な治療効果を示すことに失敗している。
【0005】
別のADの早期マーカーは、その疾患過程における、コリン作動性ニューロンの喪失の増加及びニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)の減少した密度である。従ってコリン作動性の増強は、コリン作動性伝達の増強を介して認知機能を改善するための対症療法と考えられる。この目的のために認可された薬物は、タクリン、ドネペジル、リバスチグミン及びガランタミンであり、すなわち酵素アセチルコリンエステラーゼ(AChE)の、並びに様々な程度で、正常に代謝しそれによりコリン作動性伝達物質アセチルコリン(ACh)を失活するブチリルコリンエステラーゼ(BuChE)の阻害剤である。これらの薬物の作用から生じる脳内のコリン作動性機能の増強は、認知を増強し、且つADにおける様々な行動局面を改善する。
【0006】
ガランタミンは、フェナントレン化学物質クラスに属する、第3級アミドであり、これは天然にいくつかの球根植物に生じる。AChEの阻害に加え、ガランタミンはまた、nAChRの非競合的アロステリック調節によっても、コリン作動性活性を増強する。これは、2000年に、ADのための薬物として紹介され、現在70余国で承認されている。その適応症は、一般に「軽度から中等度のアルツハイマー型認知症」である。現在これは、米国においてはRazadyne(登録商標)として、それ以外ではReminyl(登録商標)として、販売されている。
【0007】
他のコリンエステラーゼ阻害剤同様、ガランタミンは、悪心、吐気及び下痢を含む、臨床的に有意なレベルの胃腸管(GI)副作用を有する。患者に便宜を図るために、コリンエステラーゼ阻害剤が、低(有効でない)投与量で最初に投与されることが多く、その後許容し得るレベルのGI副作用を患者が経験するように調節され、このことは、恐らく、全てではなくとも、ほとんどの患者が、最も治療効果のあるレベルで、治療を達成することがないようにする。
【0008】
アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の親油性を増強し、且つ粘膜組織を通るそれらの通過を改善するために、疎水性側鎖が、基本的アルカロイド構造に附属されている。
【0009】
ガランタミン誘導体及びプロドラッグは、EP1940817、WO2009/127218及びUS2009/0253654に説明されている。
【0010】
ガランタミンプロドラッグであるアルファ-1062は、ガランタミンの安息香酸エステルである((4aS,6R,8aS)-5,6,9,10,11,12-ヘキサヒドロ-3-メトキシ-11-メチル-4aH-[1]ベンゾフロ[3a,3,2-ef][2]ベンザゼピン-6-オールベンゾエート)。これは、ガランタミンの疎水性を増強するために開発された。アルファ-1062は、それがカルボキシエステラーゼにより切断され、ガランタミンの放出を生じるまで、本質的に薬理活性を示さない。
【0011】
WO2014/016430は、アルファ-1062の、鼻腔内、口腔内又は舌下モードを介した、経粘膜投与、加えて、アルファ-1062の様々な製剤、並びに例えば、乳酸塩、グルコン酸塩、マレイン酸塩及びサッカリン酸塩を含む塩を開示している。WO2014/016430に説明されたアルファ-1062グルコン酸塩は、10重量/容量%(w/v)を上回る水へ溶解度を示し、その結果鼻腔内又は他の液体、好ましくは液剤の医薬製剤に適している。
【0012】
最初の経鼻スプレーポンプは、およそ50年前に開発され、それまでのスポイト(dropper)及びピペット工程に段階的に置き換えられた。経鼻スプレーポンプは、例えば鼻の充血除去剤などの局所的に作用する薬物の投与のため、又は例えば抗片頭痛の投薬治療もしくはホルモンなどの、全身循環に到達する必要のある物質の非侵襲的投与のための、経鼻調製品として、食塩水を用い、鼻粘膜を湿らせるために、現在広く使用されている(Marx及びBirkhoff、”Multi-Dose Container for Nasal and Ophthalmic Drugs: A Preservative Free Future?”、Drug Development - A Case Study Based Insight into Modern Strategies、編集Chris Rundfeldt、2011)。
【0013】
多くの疾患適用に関して、マルチドース型装置は、規制機関が必要とする活性物質の投与における安全性及び正確さを提供するための、経費効率がよく且つ簡便な手段である。しかし現在まで、通常液剤、エマルション又は懸濁剤として経粘膜投与されるほとんどの投薬治療は、多回使用型ディスペンサー又はマルチドース型ディスペンサーのための、長期貯蔵期間及び適切な使用時の安定性を支援するために、保存剤を含有する。
【0014】
経鼻投与の利点にもかかわらず、経鼻スプレー中の保存剤の使用は、物議を醸している。報告は、経鼻スプレー内の保存剤は、患者にとって有害事象のリスクを増大し得ることを示唆している。例えば報告では、鼻の充血除去剤において通常使用される塩化ベンザルコニウム(BAC)は、鼻粘膜の絨毛毒性(損なわれた絨毛活性)を、その結果鼻の刺激を引き起こし得ることを示唆した(Graf、“Adverse effects of benzalkonium chloride on the nasal mucosa: allergic rhinitis and rhinitis medicamentosa”、Clin Ther. 1999 Oct;21(10):1749-55、並びにRiechelmannら、“Nasal toxicity of benzalkonium chloride”、Am J Rhinol. 2004;18(5):291-9)。BACと経鼻スプレーを利用する別の治験において、様々な有害作用が観察された。これらの副作用は、増大した粘膜膨潤及び鼻の過反応、IV型過敏症、粘膜絨毛クリアランスの減少、及び鼻粘膜形成異常を含み得る。
【0015】
更なる複雑化として、患者の投薬治療の順守は、神経系疾患を伴う対象における重大な挑戦を表している。認知機能の障害及び認知症は、特に薬物コンプライアンス及び順守行動を実質的に損なうことがある。投薬治療の順守は、恐らく高齢又は認知症の患者にとって、投薬治療の頻度及び回数を低下し、並びに送達様式の簡単さを改善することにより改善されるであろう(Arltら、Adherence to Medication in Patients with Dementia、Drugs Aging 2008; 25 (12): 1033-1047)。
【0016】
貼付剤製剤が、患者コンプライアンスを改善することを目的として、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の送達のために提唱されてきたが(Winbladら、Caregiver preference for rivastigmine patch relative to Capsules for treatment of probable Alzheimer’s disease、Int J Geriatr Psychiatry 2007; 22: 485-91)、経粘膜的経路による、好ましくは鼻、舌下又は口腔内の経路を介しての、並びに増強された生物学的利用能に関連した、アルファ-1062の送達は、局所投与の選択肢よりも好ましいように見える。
【0017】
従って保存剤は、鼻の刺激を引き起こし、且つコンプライアンスは、刺激が低下された場合に、改善され得る。貼付剤はまた、通常患者により剥がされ、このことは認知障害の患者における治療コンプライアンスに対する更なるハードルを示している。
【0018】
アルファ-1062を製剤化することに関する最近の開発にもかかわらず、特に認知に困難のある対象において、少ない副作用及び良好な患者コンプライアンスを示す神経系疾患の治療のための投薬治療を投与するため、効率的で、使用が簡単な手段を提供するという更なる改善が、必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
発明の概要
先行技術の観点から、本発明の基礎となる技術的問題点は、低い副作用及び良好な患者コンプライアンスを示す単純で且つ使用が容易な形状で、神経系疾患を治療するための投薬治療、好ましくはアルファ-1062もしくはその塩を、製剤化及び/又は調製するための、改善もしくは代替された手段の提供であった。
【0020】
本発明の別の目的は、改善された貯蔵特性を持つ、少ない副作用及び良好な患者コンプライアンスを伴う、簡便且つ使用が容易な、神経系疾患の投薬治療のための改善もしくは代替された製剤もしくは投与量を開発することであった。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この問題点は、独立クレームの特徴により解決される。本発明の好ましい実施態様は、従属クレームにより提供される。
【0022】
従って本発明は、組成物が本質的に追加の抗微生物性保存剤を欠いている、化合物アルファ-1062又はその塩を含有する、自己保存性抗-微生物医薬組成物に関する。
【0023】
一実施態様において、本組成物は、液体の形状である。
【0024】
従って本発明はまた、組成物が本質的に追加の抗微生物性保存剤を欠いている、アルファ-1062又はその塩を含有する、液体の形状の自己保存性抗-微生物医薬組成物にも関する。
【0025】
従って本発明はまた、組成物が本質的に追加の抗微生物性保存剤を欠いている、アルファ-1062又はその塩を含有する、液体の形状の自己保存性抗-微生物医薬組成物にも関する。
【0026】
従って本発明はまた、組成物が本質的に追加の抗微生物性保存剤を欠いている、アルファ-1062又はその塩を含有する、エマルション又は懸濁液の形状の自己保存性抗-微生物医薬組成物にも関する。
【0027】
様々な液体組成物とは、液剤に加え、例えばエマルション、懸濁剤及び同類のものが意図される。一実施態様において、この液体組成物は、対象への複数回の投与事象(投与量)のための十分な量又は容積の組成物を含有する。
【0028】
以下に詳述するように、本発明は、アルファ-1062の抗-微生物特性の驚くべき同定を基にしている。本薬剤が抗-微生物特性を有する以前の先行技術において、適応症は明白ではなかった。先の緒言において長々と説明したように、アルファ-1062は、ガランタミンのプロモータードラッグとして作用することにより、認識機能障害に対する効果を示すことが知られている。USP51試験に従い明らかにされるように、ガランタミン又はそのプロドラッグアルファ-1062は、病原性の細菌、酵母及び真菌のCFU/mLを能動的に低下する特性を示すことの当該技術分野における示唆は明白ではない。
【0029】
従って本発明はまた、医薬組成物中の保存剤としての、アルファ-1062又はその塩の使用にも関する。従って本発明はまた、組成物が液剤の形状であり、並びに対象への反復投与量が可能であるのに十分な量で存在する、アルファ-1062又はその塩を含有する組成物にも関する。従って本発明はまた、それを必要とする対象へのマルチドース型投与のために構成された液剤中にアルファ-1062又はその塩を含有する組成物にも関する。
【0030】
アルファ-1062の抗微生物特性の驚くべき知見は、アルファ-1062を製剤化するための様々な選択肢、並びに非限定的に、本質的に追加の保存剤フリーのアルファ-1062液剤のマルチドース型及び/又は多回使用型ディスペンサーを含む、これまで可能であるとは考えられなかった分子の様々な新規適用を可能にしている。
【0031】
公知の物質(アルファ-1062)のこの新規特性(抗-微生物作用)の同定は、新たな臨床の展望を開き、且つこの物質の製剤化又は投与のいずれかを考慮する際の、新たな臨床状況を作出する。新たな患者集団が、この新規特性の発見のために可能であり、並びにこの驚くべき特性を基に、新規投薬計画及び製剤の選択肢が現在利用されてよい。
【0032】
追加の保存剤を伴わない多回使用型ディスペンサーの形状などにおける、自己保存性アルファ-1062組成物、好ましくは液体としての、又はより好ましくはエマルションもしくは液剤としての提供は、副作用、例えば追加の保存剤を含有する液剤の経鼻投与により引き起こされる副作用の減少を可能にする。いずれか所定の製剤の貯蔵特性は、現在改善され、すなわちより長期の貯蔵期間が、抗-微生物特性の発見のために明白となっている。
【0033】
一部の実施態様において、減少した副作用が達成され得る。そのような減少した副作用は、非限定的に、増大した粘膜膨潤及び鼻の過反応、IV型過敏症、粘膜絨毛クリアランスの減少、及び鼻粘膜形成異常などの、鼻の刺激にも関する。
【0034】
一実施態様において、アルファ-1062液剤は、更なる保存剤を含有しない。一実施態様において、本発明の組成物は、塩化ベンザルコニウム(BAC)を含有しない。
【0035】
一部の実施態様において、本発明の組成物は、ベンザルコニウム(好ましくは塩化ベンザルコニウム)、ベンジルアルコール、チメロサール(メチオレート)、エデト酸ニナトリウム、リン酸一ナトリウム、ポビドン(providone)、リン酸二水素ナトリウム、eta二ナトリウム(disodium eta)、一塩基性リン酸カリウム、ヨウ素、フェニルカルビノール及びアルミノケイ酸ナトリウムからなるリストから選択された追加の保存剤(複数可)の、1又は複数を含有せず、好ましくはいずれも含有しない。
【0036】
更に、追加の保存剤を伴わない多回使用型ディスペンサーの形状などの、自己保存性アルファ-1062液剤の提供は、当該技術分野において説明されるような、シングルユース型又はシングルドース型の鼻腔内投与と比べ、良好な患者コンプライアンスを可能にする。多回使用を可能にするが、保存剤を伴わない、簡単な経鼻スプレーディスペンサーの提供は、患者にとっての簡便さ及び少ない副作用の選択肢である。第一に、少ない鼻の刺激は、鼻の不快感が減少するので、増強された患者コンプライアンスにつながるはずである。第二に、多回使用のために、単独のディスペンサーを長い時間維持することは、高齢対象にとって投与をより簡便なものにする。対照的に、シングルドース型ディスペンサーの毎日の使用は、追加の経費及び複雑さに関連し、(恐らく老年又は認知症の)患者に、シングルドース型ディスペンサーを連続して開封し、使用し且つ廃棄することを要求し、これは複雑さ及び送達の負担につながる。
【0037】
一実施態様において、本自己保存性組成物は、抗-微生物作用を有するのに十分な量のアルファ-1062を含有する。
【0038】
一実施態様において、本自己保存性医薬組成物は、化合物アルファ-1062又はその塩が、1~200mg/mL、好ましくは5~100mg/mLの濃度で存在することを特徴とする。
【0039】
一部の実施態様において、化合物アルファ-1062は、1~500mg/mL、好ましくは1~400mg/mL、より好ましくは1~300mg/mL、好ましくは1~200mg/mL、好ましくは5~100mg/mLの濃度で存在する。
【0040】
一部の実施態様において、アルファ-1062は、約5mg/mL、又は10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、もしくは約150mg/mLで存在する。先に言及したいずれか所定の値で構築された範囲もまた、意図される。
【0041】
一部の実施態様において、アルファ-1062は、塩として、好ましくは乳酸塩、グルコン酸塩、マレイン酸塩又はサッカリン酸塩として存在する。アルファ-1062塩の生成は、当該技術分野において、例えばWO2014/016430において説明され、且つ過度の負担なく実行され得る。
【0042】
一部の実施態様において、この塩は、アルファ-1062に従う化学物質の、化学量論的及び/又は非-化学量論的ま塩及び/又は水和物を含み、これによりこの塩は、以下のように説明されることが好ましい:
アルファ-1062・n HX・m H2O、
(式中、n及びm=0~5、並びにn及びmは、同じ又は異なることができ、並びにHXは、好ましくは乳酸、グルコン酸、マレイン酸又はサッカリン酸から選択された酸である)。
【0043】
一部の実施態様において、他の酸が、アルファ-1062塩の形成に利用されてよい。
【0044】
本発明に従う医薬として許容し得る酸付加塩の調製に有用な酸は、無機酸及び有機酸を含み、例えばスルファミン酸、アミドスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸、2-エチルコハク酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、3-ヒドロキシナフトエ酸、酢酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、カルボン酸、エチレンジアミン四酢酸、カンファースルホン酸、クエン酸、ドデシルスルホン酸、エタンスルホン酸、エテンスルホン酸、エチレンジアミン四酢酸、フマル酸、グルビオン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヘキシルレゾルシノール、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、(重)炭酸、酒石酸、ヨウ化水素酸、乳酸、ラクトビオン酸、レブリン酸、ラウリル硫酸、リポ酸、リンゴ酸、マレイン酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、ナフタレンスルホン酸、硝酸、シュウ酸、パモ酸、パントテン酸、過塩素酸、リン酸、ポリガラクツロン酸、ペクチン酸、プロピオン酸、サリチル酸、コハク酸又は硫酸、p-トルエンスルホン酸であり、ここで塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸及び過塩素酸、並びに酒石酸、クエン酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸及びシュウ酸である。
【0045】
一実施態様において、アルファ-1062塩は、水への溶解度少なくとも10%、好ましくは>20%、又はより好ましくは>30重量/容量%(w/v)を有する。この高い溶解度は、より高濃度の化合物が、より少ない容積で投与されることを可能にし、これにより例えば経粘膜投与を介した投与が更に増強される。
【0046】
好ましい経粘膜投与は、要因の組合せに起因した、送達の有益な様式を表す。アルファ-1062塩の増強された溶解度は、より高濃度のアルファ-1062が投与されることを可能にし、これにより切断後のより多い量の活性物質(ガランタミン)が、脳において活性を示すことができる。アルファ-1062のプロドラッグ特性は、アルファ-1062塩の経粘膜的適用により、活用され且つ増強される。
【0047】
一実施態様において、本発明の自己保存性医薬組成物は、好ましくは濃度50~100mg/mL、より好ましくは70~90mg/mLで、又は代わりに本明細書に開示された濃度で、グルコン酸塩として存在する化合物アルファ-1062を有する。当業者は、通常の実践に従いこの活性物質の濃度を変動することを知っている。
【0048】
一実施態様において、本発明の自己保存性医薬組成物は、米国薬局方第51章保存剤試験(USP51)に従い、大腸菌(エシェリキア・コリ)、緑膿菌(シュードモナス・アエルギノーサ)、黄色ブドウ球菌(スタフィロコッカス・アウレウス)、カンジダ・アルビカンス及び/又はアスペルギルス・ブラジリエンスの1×104~1×106コロニー形成単位/mL(CFU/mL)を、14日間の治療内で<100CFU/mLまで、好ましくは<10CFU/mLまで低下するのに十分な濃度で存在することが、特徴付けられる。
【0049】
下記実施例から誘導され得るように、様々な病原性微生物に対するこの抗-微生物活性は、82mg/mLのアルファ-1062グルコネート溶液を使用し示されている。しかし当業者は、USP51試験を基に、本質的に同じか、増強されるか又は減少されるが、依然実践的に有用な抗-微生物特性を伴う組成物を発見するために、塩の陰イオン(塩形成に使用される酸によって決まる)及びアルファ-1062又はその塩の濃度の両方を調節することが可能である。
【0050】
一部の実施態様において、本液体組成物は、延長された期間にわたり、安定しており、すなわち十分な薬物又はプロ-ドラッグ安定性及び低い微生物負荷を示す。一部の実施態様において、この延長された期間は、約1週間、又は1、2、3、4、5、6、7、8週間、又はそれよりも長い。一部の実施態様において、本組成物は、約1ヶ月、又は2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、もしくは12ヶ月安定している。この期間に、本組成物は、本発明の多回使用型装置を介して投与されるか、又は貯蔵されてよい。場合によっては、本組成物の貯蔵は、約1、2、3、4又は5年間可能である(好ましくは対象により使用されない)。
【0051】
一部の実施態様において、本液体組成物は、そこで液体が対象へ効果的に送達され得る医薬品投与の任意の様式で構成される。例えば、経鼻、口腔内もしくは舌下などの経粘膜投与形態、又は経口もしくは鼻腔への投与を利用する他の様式が、想定される。例えば、非経口、静脈内、髄腔内、皮内、皮下及び/又は筋肉内などの注射が、考慮される。
【0052】
一部の実施態様において、本液体製剤は、前記投与様式のいずれか1又は複数のために構成される。当業者(a skilled)は、特定の投与様式のための組成物を構成するのに利用される技術的手段を知っている。例えば、注射のために構成された組成物は、経口送達のために調製された組成物とは異なる様式で、製剤化されるか、包装されるか、又は調製されてよい。
【0053】
本発明の更なる局面は、アルファ-1062又はその塩を伴う本明細書記載の自己保存性抗-微生物液剤を含む、液体の形状の医薬組成物の経粘膜投与のために構成された多回使用型ディスペンサーに関する。
【0054】
この局面において、多回使用型ディスペンサーの非限定的文脈において、従って本発明は、多回使用型の経粘膜的送達装置の特性、特徴及び利点を、アルファ-1062又はその塩の抗-微生物特性と組み合わせている。
【0055】
多回使用型ディスペンサーは、当業者に公知であり、且つ本化合物の反復投与量又は反復適用に適した任意の装置の形状で売られてよい。別の言い方をすると、多回使用型装置は、複数回の投与事象の間に開封又は補給を必要とせず、並びに典型的には、延長された期間にわたり、十分なAPI安定性及び低い微生物負荷を伴い、安定していることが、好ましい。一部の実施態様において、このディスペンサーは、任意の所定の液体製剤、好ましくは液剤の投与に適しているが、エマルション及び懸濁剤、及び同類のものが意図される。
【0056】
液体製剤は、当業者に公知であり、且つ小児又は老人の患者集団において一般的である。液体製剤は、典型的には、放出、生物学的利用能、及び味覚/刺激の必要要件に合致する化合物の安定した、溶解した又は懸濁した形を必要とする。即時放出及び持続放出の両方の液体製品が、意図される。液体製剤戦略は、典型的には、溶解された又は懸濁された又は乳化された状態での活性のある薬物又はプロ-ドラッグの直接混入を含む。代わりの状態は、懸濁された薬物-イオン交換樹脂複合体の形状での活性のある薬物又はプロ-ドラッグの混入、又は溶解されたもしくは懸濁された薬物-シクロデキストリン封入体の形状、又は乳化された状態での薬物又はプロ-ドラッグの混入を含む。
【0057】
経粘膜投与のために構成されたディスペンサーも、経粘膜投与経路として、当該技術分野において公知であり、これは好ましくは、経口、経鼻、経膣、及び経尿道の様式に関する。経粘膜的な膜は、比較的透過性であり、豊富な血流を有し、その結果薬物の全身循環への迅速な取込みを可能にし、初回通過代謝を回避する。経口経粘膜的送達は、好ましくは、口腔内及び舌下の経路に関する。この薬物送達の経路は、他の薬物送達アプローチに勝る数多くの恩恵を供し、且つ初回通過代謝、厳しい胃環境、及び腸内に存在する微生物集団への曝露に起因した可能性のある腸での代謝のような、体の天然の“防御機構”のいくつかを迂回することを可能にする。例として、いくつかのアプローチが、スプレー、ポンプ及びゲルを使用することによる、経鼻経路を介した薬物送達のように使用される一方で、粘膜付着性の、迅速に溶解する錠剤及び固形舐剤の製剤は、経口粘膜経路に適し、同じく膣又は尿道の経路も、粘膜付着性坐薬、インサイチュゲル及び泡の製剤を使用することにより研究される。
【0058】
一実施態様において、本化合物の治療的有効量は、好適な定量式多回使用型投薬装置(dose device)又はディスペンサー、例えば多回使用型アトマイザー、多回使用型スプレーヤー、多回使用型ポンプスプレー、多回使用型点滴器、多回使用型絞り出しチューブもしくはボトル、多回使用型定量投薬装置又は多回使用型経鼻スプレーヤーもしくは吸入器を使用し、投与される。
【0059】
一実施態様において、本化合物の治療的有効量は、多回使用型ディスペンサーから好ましくは液剤もしくはエマルションの形状で、ある量の化合物を分配することにより、及び/又は本化合物を含む多回使用型ディスペンサーから、予め選択された容量の液体組成物、好ましくは液剤もしくはエマルションを、舌の下側に噴霧することにより、舌の下側(舌下)に投与される。
【0060】
一実施態様において、本化合物の治療的有効量は、多回使用型ディスペンサーからの好ましくは液剤もしくはエマルションとして、頬と歯茎の間の口の内側の口腔内前庭へ投与される。
【0061】
一実施態様において、本多回使用型ディスペンサーは、鼻腔内投与のために構成される。一実施態様において、本多回使用型ディスペンサーは、口腔への投与のために構成される。
【0062】
一実施態様において、本明細書記載の多回使用型ディスペンサーは、対象における神経系疾患の治療において使用するため(又は対応する治療の方法において使用するため)であり、ここでこの治療は、本明細書記載の自己保存性抗-微生物組成物の反復投与量を、同じディスペンサーから対象へ投与することを含む。
【0063】
本発明の好ましいディスペンサーは、先に言及した多回使用型装置のいずれかに関する。一部の実施態様において、例えば、Nemera社(La Verpilliere、France)又はAptar Pharma社(Illinois、USA)から入手可能なディスペンサーが、好ましい。
【0064】
例えば、Nemera社は、Advancia(登録商標)経鼻スプレーディスペンサーを提供し、これは優れた投与量不変性及び最上の保持、目詰まり防止アクチュエーターを伴い、製剤と接触する金属がなく、並びに衛生的な作動防止の(anti-actuation)はめ込み式オーバーキャップを伴う、高性能のポンプである。
【0065】
更なる例として、Aptar Pharma社の経鼻ポンプ技術は、薬物製造業者が、経鼻スプレー製剤へ保存剤を添加する必要性を省く。最新式保存剤フリー(APF)システムは、チップ-密封及びフィルター技術を使用し、製剤が汚染されることを防ぐ。バネ-荷重されたチップ密封機構が、通気チャネル内のフィルター膜と共に利用される。
【0066】
Nemera社及びAptar社の技術は、とりわけ、それにより製剤の酸化を防ぐ金属-フリー液体路、保存剤-フリーシステム、並びにその結果純粋な機械的障壁を利用する抗-微生物ディスペンサーなど数多くの恩恵を供する。
【0067】
一部の実施態様において、この多回使用型ディスペンサーは、細菌が貯蔵庫又はポンプ装置に侵入するのを防ぐ、膜(好ましくはシリコーンの)を利用する。一部の実施態様において、多回使用型ディスペンサーは、金属-フリー液体路を利用し、これにより製剤の酸化を防ぐ。一部の実施態様において、多回使用型ディスペンサーは、バネで加重されたチップ密封機構を利用し、これにより噴霧事象の間に微生物が装置に侵入することを防ぐ。
【0068】
保存剤を使用する代わりに、最新式スプレーディスペンサー技術は、細菌が薬物製剤へ侵入し且つ汚染することを防ぐことにより、経鼻スプレーを無菌状態に維持する代替法を示す。そのようなディスペンサーもまた、本発明において使用されてよく、これにより更に多回使用型ディスペンサー内の微生物負荷量を減少する。本明細書記載の、並びに例えばNemera社又はAptar社から当業者が入手可能であるような、アルファ-1062又はその塩の抗-微生物特性の「保存剤-フリー」ディスペンサー技術との組合せにおいて、これはアルファ-1062又はその塩を含有する液体組成物の予想外に良好な保存可能期間(貯蔵中又は使用時のいずれか)に繋がっている。
【0069】
経鼻スプレーは、外部環境もしくは患者に由来するか、又は空気由来の細菌の汚染により、それらの薬物送達開口部を介して、汚染され得る。従って一部の実施態様において、この装置へ侵入する空気を介した汚染を防ぐために、その中に細菌の容器への侵入を止めるフィルターシステムが存在する経鼻スプレーが、利用されてよい。空中浮遊の細菌は典型的には、およそ0.3μmであり、従って適切なサイズのフィルターが選択されてよい。
【0070】
更に最新の研究は、例え細孔サイズがその細菌のサイズよりも十分に小さい場合であっても、フィルター膜を通る細菌の移動が、濾過操作時に起こることを明らかにした。従って一部の実施態様において、戻る(returning)空気を濾過するために、シリコーン膜を利用する装置が、利用される。
【0071】
一実施態様において、本ディスペンサーは、5~1000μL、好ましくは5~500μL、より好ましくは10~300μL、より好ましくは20~200μLの複数の個別の噴霧事象のために構成される。
【0072】
一実施態様において、本ディスペンサーは、約5μL、又は10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、120、140、160、180、200、250、300、350、400、450もしくは500μL容積の複数の個別の噴霧事象のために構成される。先に言及したいずれか所定の値から構築された範囲も、意図される。
【0073】
一実施態様において、本ディスペンサーは、1~500mL、好ましくは1~100mL、より好ましくは2~50mL、例えば、約5、10又は15mLなどの、組成物の総容積を含む。
【0074】
一実施態様において、本ディスペンサーは、約1mL、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、18、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、220、240、260、280、300、350、400、450、又は500mLの容積を含む。先に言及したいずれか所定の値から構築された範囲も、意図される。
【0075】
一部の実施態様において、本ディスペンサーは、反復投与量の投与のために十分な量の組成物を含まなければならない。一部の実施態様において、ディスペンサーは、少なくとも2回、又は少なくとももしくは約3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90もしくは約100回の個別の投与量、又はより多い投与量のために十分な組成物の容積を含む。先に言及したいずれか所定の値から構築された範囲も、意図される。
【0076】
一実施態様において、本ディスペンサーは、20~200μLの複数の個別の噴霧事象のために構成され、並びにここで該ディスペンサーは、液剤の総容積2~50mLを含む。
【0077】
一実施態様において、本多回使用型ディスペンサーは、アルファ-1062又はその塩が、好ましくは数日間にわたり、1日1~3回、1~100mgの投与量で投与されるように、構成される。
【0078】
一実施態様において、本多回使用型ディスペンサーは、アルファ-1062又はその塩が、好ましくは複数日にわたり、1日2回、2~40mgの投与量で投与されるように、構成される。
【0079】
一実施態様において、本多回使用型ディスペンサーは、アルファ-1062又はその塩が、複数日にわたり、好ましくは1日1~3回、より好ましくは1日2回、更により好ましくは1日1回、0.1~200mg、1~100mg、好ましくは2~40mgの用量で投与されるように、構成される。
【0080】
一実施態様において、アルファ-1062又はその塩は、複数日にわたり、1日1~3回、複数の経鼻噴霧事象の各回で、20~100μLの量で、2~40重量/容量%(w/v)液剤として、鼻腔内投与される。
【0081】
一実施態様において、本多回使用型ディスペンサーは、アルファ-1062又はその塩が、好ましくは複数日にわたり、1日1~3回、複数の投与事象の各回で、約50μLの量で、約10重量/容量%(w/v)液剤として、好ましくは鼻腔内に投与されるように、構成される。
【0082】
一実施態様において、本多回使用型ディスペンサーは、アルファ-1062又はその塩が、好ましくは複数日にわたり、好ましくは複数(鼻腔内もしくは経口(舌下/口腔内))の投与事象で、例えば1日1~3回、例えば20~100μLの量により、好ましくは2~40重量/容量%(w/v)液剤として、鼻腔内、口腔内もしくは舌下投与により、投与されるように、構成される。
【0083】
一実施態様において、治療される脳疾患は、アルツハイマー病又はパーキンソン病であり、並びにアルファ-1062のグルコン酸塩が、好ましくは複数日にわたり、1日2回で、好ましくは単回の投与事象において、1~3回、20~100μL、例えば約50μLの量で、約10重量/容量%(w/v)液剤として、鼻腔内、口腔内又は舌下に投与される。
【0084】
一実施態様において、本明細書記載の投薬計画は、本明細書記載のように多回使用型ディスペンサーを使用し、利用される。このディスペンサーに関して明らかにされた特色は、この投薬計画に関して明らかにされたと考えられ、及び逆もまた当てはまる。
【0085】
一部の実施態様において、好ましくは前述の投薬計画において、利用されるアルファ-1062又はその塩の濃度は、好ましくは液剤又はエマルションとして、約1%、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、又は50wt%、又はそれよりも多い。約10wt%、好ましくは10%の液剤又はエマルションの投与を明らかにしている投薬計画は、代わりに先に言及した濃度のいずれか、又はそれに類似した値で利用されてよい。先に言及したいずれか所定の値から構築された濃度範囲もまた、意図される。
【0086】
一実施態様において、本組成物は、固形形状である。固形形状の組成物は、錠剤、丸剤、舐剤、カプセル剤、フィルム、又はアルファ-1062投与のための他の固形の組成物の1又は複数であってよい。これらの実施態様において、抗-微生物特性は、貯蔵時、すなわち投与前に望ましくない微生物を含まないよう組成物を維持することにより、或いは例えばこの固形形状組成物が感染症を治療するためもしくは別の状況において微生物を死滅させるために投与もしくは使用される場合に、投与後のその分子の抗-微生物特性を利用するかのいずれかで、恩恵があり得る。
【0087】
本発明の更なる局面は、神経系疾患の治療において使用するための化合物アルファ-1062又はその塩に関し、ここで該対象は、追加的に微生物感染症に罹患している。
【0088】
従って本発明はまた、対象において神経系疾患を治療する方法にも関し、ここで該対象は、追加的に微生物感染症に罹患し、ここで該方法は、アルファ-1062又はその塩を、それを必要とする対象へ投与することを含む。
【0089】
一実施態様において、本発明は、対象における認識機能障害に関連した脳疾患の治療において使用するための、化合物アルファ-1062又はその塩に関し、ここで該対象は、追加的に微生物感染症に罹患している。
【0090】
実施例において示すように、アルファ-1062は、様々な病原性微生物に対し強力な抗-微生物作用を示す。従ってこの化合物は、対象における認識機能障害の治療に理想的に適しているように見え、ここで該対象は、追加的に微生物感染症に罹患している。一部の実施態様において、この微生物感染症は、該神経系疾患に関連している。一部の実施態様において、この感染症は、神経学的状態に関係していない。
【0091】
一実施態様において、治療される神経系疾患は、アルツハイマー病及び/又はパーキンソン病、認知症、統合失調症、てんかん、脳卒中、ポリオウイルス感染症、神経炎、ミオパシー、低酸素症後の脳内の酸素及び栄養素欠乏症、無酸素症、仮死、心停止、慢性疲労症候群、様々な型の中毒、麻酔、特に神経遮断薬を使用する麻酔、脊髄障害、炎症、特に中枢の炎症障害、術後せん妄及び/又は亜症候性術後せん妄、神経因性疼痛、アルコール及び薬物の耽溺、中毒性のアルコール及びニコチン切望、並びに/又は放射線治療の作用から選択される。
【0092】
一実施態様において、治療される疾患は、コリン作動性欠損に関連している。プロドラッグアルファ-1062は、切断時に脳内でガランタミンを放出し、これによりその活性物質はガランタミンである。ガランタミンは、ブチリルコリンエステラーゼよりもむしろ、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)の選択的阻害剤である。AChEの阻害に加え、ガランタミンは、ニコチン性アセチルコリン受容体とアロステリックに相互作用し、これらの受容体でアゴニスト作用を強化する。
【0093】
一部の実施態様において、従って本発明は、病的なアセチルコリンエステラーゼ作用に関連した病態、又はAChEの阻害により恩恵をける疾患の治療において利用されてよい。一部の実施態様において、従って本発明は、ニコチン性アセチルコリン受容体の病的なレベル又は活性に関連した病態、例えば、ガランタミンにより引き起こされるような、ニコチン性アセチルコリン受容体の強化から恩恵を受ける疾患の治療において利用されてよい。当業者は、これらの範疇に収まる疾患を熟知しているか、又は一般的知識もしくは慣習的技術を使用しこれらを決定することができる。
【0094】
従って本発明の更なる局面は、対象における微生物感染症の治療において使用するための化合物アルファ-1062又はその塩に関する。一部の実施態様において、この微生物感染症は、対象における病原性微生物感染症である。
【0095】
従って本発明はまた、対象において、(病原性)微生物感染症を治療する方法にも関し、ここで該方法は、アルファ-1062又はその塩を、それを必要とする対象へ投与することを含む。
【0096】
一実施態様において、この微生物感染症は、鼻腔、口腔、副鼻腔及び/又は鼻涙管に存在する。
【0097】
一実施態様において、口内感染症は、例えば、口内感染症及び認知障害を伴う対象において、治療されることがある。口内感染症はまた、経口感染症としても公知であり、且つ口腔内又はその周囲に生じる感染症群である。これらは、歯科感染症、歯科膿瘍、及びルードビッヒ狭心症を含む。口内感染症は典型的には、隣接構造に広がる大臼歯及び小臼歯の根元の虫歯から生じる。
【0098】
一実施態様において、歯肉炎が、治療されることがある。歯肉炎の最も一般的な原因は、歯間及び周りの細菌プラークの蓄積である。プラークは、免疫応答を引き起こし、これは次に最終的に歯肉、又は歯茎、組織の破壊に繋がり得る。これはまた最終的に歯の喪失を含む、更なる合併症に繋がることがある。例えば歯垢-誘導した歯肉疾患などの、歯肉疾患には2つの主なカテゴリーがある:これが、プラーク、全身因子、投薬治療、又は栄養不良から、或いは非-プラークが誘導した歯肉病巣から引き起こされ得るもの:これが、特定の細菌、ウイルス、又は真菌により引き起こされ得るもの。
【0099】
本明細書に説明される、好ましい投与様式に従い、本化合物は、様々な粘膜表面に接触するようになり、このことはすなわち病原体により、望ましくない感染症を供することがある。従って本化合物の抗-微生物活性は、対象への投与時に、有益な作用を提供する。
【0100】
本発明の更なる局面は、有効量のアルファ-1062又はその塩を含有する組成物、好ましくは液体組成物、より好ましくは液剤を、微生物へ投与することを含む、微生物を死滅させる方法に関する。
【0101】
一実施態様において、本方法は、インビトロ又はエクスビボにおける方法である。一実施態様において、本方法は、死滅されるべき微生物を有する対象を治療する方法を含む。
【0102】
一実施態様において、この微生物は、細菌、酵母又は真菌である。一実施態様において、死滅されるべき微生物は、ヒト病原体である。
【0103】
一実施態様において、この微生物は、大腸菌、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、カンジダ・アルビカンス及び/又はアスペルギルス・ブラジリエンスの1又は複数である。
【0104】
本明細書に提供されるデータに従い、アルファ-1062は、グラム陽性菌及びグラム陰性菌の両方、病原性酵母及び真菌に対する抗-微生物活性を示し、これにより、広範なスペクトルの抗-微生物作用を示す。先行技術において、アルファ-1062が、このような広範且つ有効な抗-微生物活性を示し得ることの示唆は存在しない。従ってアルファ-1062のこの特性は、実践上の実用性を伴う驚くべき且つ予想外の知見を表す。
【0105】
一部の実施態様において、本発明は、抗-微生物剤としてのアルファ-1062又はその塩の使用に関する。本質的に、任意の抗-微生物適用が、意図される。一部の実施態様において、アルファ-1062又はその塩及び/もしくは神経系疾患を治療するための1又は複数の他の活性物質を含有する医薬組成物は、アルファ-1062又はその塩を抗-微生物作用を有するのに十分な量含有する。他の実施態様において、アルファ-1062又はその塩は、表面、繊維製品又は他の物体を、治療(消毒)するために使用されてよい。
【0106】
従って本発明の更なる局面は、この液体を、化合物アルファ-1062又はその塩と接触させることを含む、液体の形状、好ましくは液剤の医薬組成物を消毒する方法に関する。
【0107】
一実施態様において、本明細書記載の医薬組成物は、1又は複数の医薬として許容し得る賦形剤を、好ましくは追加の保存剤は存在せずに、追加的に含有する。
【0108】
本発明の更なる態様は、本発明の抗-微生物医薬組成物の調製における使用に適した、本明細書記載のアルファ-1062又はその塩の調製に関する。従って更なる本発明の局面はまた、医薬組成物の調製に有用なアルファ-1062又はその塩の調製を含む、キット、又は部品キット(kit-of-parts)にも関する。一部の実施態様において、そのようなキットは、患者へ投与するためのアルファ-1062又はその塩の液剤を調製するための、1又は複数の追加の液体又は溶媒、例えば水を含んでよい。
【0109】
本明細書記載の自己保存性組成物、多回使用型ディスペンサー、及び様々な方法に関して説明された本発明の実施態様及び特色は、本開示の各及び全ての他の局面に関して明らかにされていると考えられ、その結果これらの方法、又はディスペンサーを特徴付ける特色は、この組成物を特徴付けるために利用されてよく、並びにその逆もまた当てはまる。本発明の様々な局面は、アルファ-1062の抗-微生物作用という一般的で驚くべき知見からの恩恵により一体化され、これから恩恵を受け、これを基にし、及び/又はこれにより結びつけられる。
【発明を実施するための形態】
【0110】
発明の詳細な説明
本発明は、化合物アルファ-1062又はその塩を含有する、液体の形状の自己保存性抗-微生物医薬組成物に関し、ここでこの組成物には本質的に、追加の抗微生物性保存剤が存在しない。本発明は更に、アルファ-1062又はその塩を含有する液体の形状の医薬組成物の経粘膜投与のために構成される多回使用型ディスペンサーに加え、抗-微生物剤としてアルファ-1062を使用する様々な方法に関する。一部の実施態様において、本組成物は、追加の抗微生物性保存剤が存在しない。
【0111】
本発明の好ましい分子は、GLN-1062又はMemogain(登録商標)としても先に公知の、アルファ-1062である。本発明の実施例において、及び本発明の一つの好ましい実施態様において利用される形状は、アルファ-1062のグルコン酸塩(アルファ-1062グルコネート)である。完全性のために、化合物アルファ-1062は、ガランタミンプロ-ドラッグであり、これは、切断前はコリンエステラーゼ阻害剤又はニコチン性モジュレーターとしての活性を示さないか又は無視できる。エステラーゼ切断時に、ガランタミンが放出される。
【0112】
しかし一部の実施態様においてアルファ-1062が本発明の好ましい化合物であるので、用語「活性物質」又は「活性医薬成分」(API)は、アルファ-1062について使用されることがある。他の実施態様において、化合物ガランタミンもまた活性物質又は関連薬物分子と考えられてよい。
【0113】
アルファ-1062の化学名(IUPAC)は、(4aS,6R,8aS)-5,6,9,10,11,12-ヘキサヒドロ-3-メトキシ-11-メチル-4aH-[1]ベンゾフロ[3a,3,2-ef][2]ベンザゼピン-6-オールベンゾエートである。
【0114】
遊離塩基の分子式:C24H25NO4;グルコン酸の分子式:C6H12O7;遊離塩基の分子量:391.47g/mol;アルファ-1062グルコネートの分子量:587.61g/mol;変換係数:1mg塩基=1.501mg塩。
【0115】
アルファ-1062の化学構造は、以下である:
【化1】
【0116】
アルファ-1062グルコネートの化学構造は、以下である:
【化2】
【0117】
他の実施態様において、ガランタミンは、その抗-微生物活性に関して、アルファ-1062の代替品として意図される。従って本発明は、アルファ-1062の文脈において、本明細書に開示された各実施態様は、アルファ-1062について認められる抗-微生物活性を示す可能性があるガランタミンについても意図されるという、追加の局面に関する。
【0118】
ガランタミンは、式C
17H
21NO
3、分子質量287.359g/mol、及び下記構造を有する:
【化3】
【0119】
本明細書で使用される用語「自己保存性」は、追加の抗微生物性保存剤の存在を必要としない、化合物、すなわちアルファ-1062又はその塩、或いはそのような物質を含有する組成物の抗-微生物特性の説明である。
【0120】
好ましい実施態様において、自己保存性液体組成物は、その組成物中の生存微生物の非存在を維持し、少ないもしくは無視できる数、又は比較的遅い成長を有するか、或いは組成物中の生存微生物の数を減少する。一部の実施態様において、特性「自己保存性」は、組成物中の経時的な微生物の拡大(細胞増殖又は分裂)の速度は、関連化合物(アルファ-1062)の非存在下よりもより少ないことを指摘している。従って本明細書において使用される「自己保存性」液体組成物は、そのような「自己保存性」特性を伴わない組成物と比べ、より少ない数の生存微生物を示すであろう。
【0121】
例えば自己保存性液体組成物は、この組成物の初回使用から、最大約1週間、好ましくは2、3、4、5、6、7又は最大約8週間までに及ぶ、延長された期間にわたり、微生物汚染に起因した重大なリスクのない患者により利用されてよい。好ましい実施態様において、本発明の組成物は、「自己保存性」であり、且つ少なくとも14日間、又は少なくとも28日間にわたり、組成物中の生存微生物の数の増加を示さないか又は無視できる。一部の実施態様において、本発明の組成物は、「自己保存性」であり、且つ初回使用後、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は最大12ヶ月間にわたり、組成物中の生存微生物の数の増加を示さないか又は無視できる。一部の実施態様において、本発明の組成物は、「自己保存性」であり、且つ製造及び/又は包装後1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は最大12ヶ月間にわたり、組成物中の生存微生物の数の増加を示さないか又は無視できる。
【0122】
一部の実施態様において、「自己保存性」組成物は、追加の抗-微生物保存剤を含有せず、並びに延長された期間、好ましくは少なくとも14日間、又は少なくとも28日間にわたり、組成物中の生存微生物の数の増加を示さないか又は無視できる。
【0123】
本明細書において使用される用語「抗-微生物性」は、生存微生物の数を減少するか、又は少なくとも14日間、もしくは少なくとも28日間にわたり組成物中の生存微生物の数の増加を示さないか又は無視できる、化合物又は組成物の特性を説明している。一部の実施態様において、用語「抗-微生物性」は、USP51試験における保存剤に関して設定された指針に従い規定される。従ってこの用語は、微生物の種類及び試験期間によって左右され得る。
【0124】
本明細書において使用される用語「抗微生物性保存剤」は、医薬組成物中の微生物の生存度を低下するために使用される任意の化合物に関する。そのような物質の例は、非限定的に、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、チメロサール(メチオレート)、エデト酸ニナトリウム、リン酸一ナトリウム、ポビドン、リン酸二水素ナトリウム、eta二ナトリウム、一塩基性リン酸カリウム、ヨウ素、フェニルカルビノール及びアルミノケイ酸ナトリウムである。典型的には、この保存剤は、例えばヒト対象に対し、追加の薬理学的作用を示さないが、そのような保存剤の副作用は、記録される(前記参照)。
【0125】
抗微生物性保存剤は典型的には、微生物学的成長から又は製造プロセス時もしくはその後に不注意に導入された微生物からそれらを保護するために、非滅菌剤形に添加される物質である。マルチドース型ディスペンサーに包装された滅菌商品の場合、抗微生物性保存剤は、個々の投与量を繰り返し取り出す際に導入され得る微生物の成長を阻害するために通常添加される。典型的には、有用な抗微生物剤は、毒性物質である。患者の最大防御のために、最終の包装された製品中で有効であることが示される保存剤の濃度は、ヒトにとって毒性であり得るレベルよりも低くなければならない。
【0126】
添加された抗微生物性保存剤の濃度は、通常最低に維持されるか、或いはアルファ-1062又はそれらの塩による場合のように、特に製剤の活性成分が固有の抗微生物活性を有する場合、完全に回避される。抗微生物有効性は、その製品において固有であるかどうか、又は抗微生物性保存剤の添加のために生じるかどうかにかかわらず、反復投与量の局所及び経口の剤形について、並びに眼内、眼の(optic)、鼻の、潅注用及び透析用の液体などの他の剤形について、通常明らかにされるべきである。本明細書に説明されたように、物質アルファ-1062は、分子内で固有の、抗-微生物保存剤特性を示し、その結果本発明の組成物中での追加の保存剤の利用をほとんど又は全く必要としない。
【0127】
大腸菌は、グラム陰性で、通性嫌気性の、桿状体の、エシェリキア属のコリ型細菌であり、恒温生物(内温動物)の下部腸管に通常認められる。ほとんどの大腸菌株は、無害であるが、一部の血清型は、宿主において食中毒を引き起こし、且つ場合によっては食品汚染の原因となり得る。無害株は、腸管の正常な微生物叢の一部であるが、毒性株は、胃腸炎、尿路感染症、新生児髄膜炎、出血性大腸炎、及びクローン病を引き起こし得る。共通の徴候及び症状は、重度の腹部痙攣、下痢、出血性大腸炎、吐気、及び時には発熱を含む。稀な症例において、毒性株はまた、溶血性尿毒症症候群、腹膜炎、乳腺炎、敗血症、及びグラム陰性菌肺炎の進行を伴わない、腸管壊死(組織死)及び穿孔の原因でもある。小児は、溶血性尿毒症症候群などの、重度疾患をより発症しやすいが;しかし全ての年齢の健常個体は、大腸菌に感染した結果として生じ得る重大な帰結のリスクがある。本発明に従い、アルファ-1062及びそれらの塩は、大腸菌に対する抗-微生物作用を示し、その結果本発明は、非限定的に、液体製剤中の大腸菌の数の減少もしくは制限及び/又は望ましくない大腸菌の感染症の治療を包含する。
【0128】
緑膿菌は、植物及びヒトを含む動物において疾患を引き起こし得る、一般的な被包性、グラム陰性の、桿菌である。かなり医学的に重要な種である緑膿菌は、典型的には、その偏在性、その本質的に進歩した抗生物質耐性機序、並びに院内感染症のような、例えば人工呼吸器関連肺炎及び様々な敗血症候群などの、重篤な疾病とのその関連が認識された、多剤耐性病原体である。この生物は、日和見性であると考えられ;重篤な感染症は、最も注目されるのは嚢胞性線維症及び外傷性熱傷である疾患又は病態が存在する時期に発生することが多い。これは一般に、ホットタブ毛包炎のように、免疫無防備状態に影響するが、免疫適格でも感染し得る。緑膿菌感染症の治療は、その天然の抗生物質耐性のために、困難であり得る。本発明に従い、アルファ-1062及びそれらの塩は、緑膿菌に対し、抗-微生物作用を示し、その結果本発明は、非限定的に、液体製剤中の緑膿菌の数の減少もしくは制限及び/又は望ましくない緑膿菌の感染症の治療を包含する。
【0129】
黄色ブドウ球菌は、ファーミキューテス門の一員である、グラム陽性の、球状の細菌であり、これは、上気道又は皮膚上において頻繁に認められる、体内の微生物叢の通常の一員である。黄色ブドウ球菌は、通常は問題ないが、これはまた日和見病原体となり、膿瘍を含む皮膚感染症、静脈洞炎などの呼吸器感染症、及び食中毒の一般的原因である。病原性株は、強力なタンパク質毒素などの毒性因子を生成することにより、感染症を促進することが多い。メチシリン-耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)などの黄色ブドウ球菌の抗生物質耐性株の出現は、臨床医薬において重大な問題である。本発明に従い、アルファ-1062及びそれらの塩は、黄色ブドウ球菌に対する抗-微生物作用を示し、その結果本発明は、非限定的に、液体製剤中の黄色ブドウ球菌の数の減少もしくは制限及び/又は望ましくない黄色ブドウ球菌の感染症の治療を包含する。
【0130】
カンジダ・アルビカンスは、ヒト腸管内菌叢の一般的一員である、日和見病原性酵母である。これは、健常成人の40~60%の胃腸管及び口内において検出されるが、これは免疫無防備状態の個体において病原性となり始めることができる。これは、ヒト感染症カンジダ症を引き起こすカンジダ属のいくつかの種の一つであり、これは真菌の過成長を生じる。C.アルビカンスは、(永久に)埋植された医療機器上、又はヒト組織上のいずれかに形成された、バイオフィルムから単離される最も一般的な真菌種である。死亡率40%が、C.アルビカンスによる全身性カンジダ症の患者について報告されており、並びにある推計によると、院内感染した侵襲性カンジダ症は、米国において毎年2,800~11,200名の死亡を引き起こしている。本発明に従い、アルファ-1062及びそれらの塩は、C.アルビカンスに対する抗-微生物作用を示し、その結果本発明は、非限定的に、液体製剤中のC.アルビカンスの数の減少もしくは制限及び/又は望ましくないC.アルビカンスの感染症の治療を包含する。
【0131】
アスペルギルス・ニジェールとしても公知の、アスペルギルス・ブラジリエンスは、真菌であり、且つアスペルギルス属の最も一般的種の一つである。これは、例えばブドウ、アプリコット、タマネギ、及びピーナツなどの、特定の果実及び野菜上に「黒カビ」と称される疾患を引き起こし、且つこれは食品の一般的汚染物質である。これは、土壌中に遍在しており、且つ室内環境から一般に報告される。A.ブラジリエンスの一部の株は、オクラトキシンと称される強力なマイコトキシンを生成することが報告されている。アスペルギルス症は、A.ブラジリエンスにより引き起こされる感染症である。ほとんどの人は、病気にならずに毎日アスペルギルス胞子中で呼吸している。しかし、弱まった免疫系又は肺疾患を伴う人は、アスペルギルスのために健康上の問題を顕在化する比較的高いリスクがある。アスペルギルスにより引き起こされる健康上の問題の種類は、アレルギー反応、肺感染症、及び他の臓器の感染症を含む。本発明に従い、アルファ-1062及びそれらの塩は、A.ブラジリエンスに対する抗-微生物作用を示し、その結果本発明は、非限定的に、液体製剤中のA.ブラジリエンスの数の減少もしくは制限及び/又は望ましくないA.ブラジリエンスの感染症の治療を包含する。
【0132】
本明細書に提供されるデータに従い、アルファ-1062は、グラム陽性菌及びグラム陰性菌の両方、病原性酵母及び真菌に対する抗-微生物活性を示し、これにより、広範なスペクトルの抗-微生物作用を示している。
【0133】
本発明の一部の実施態様において、グラム陽性菌は、アルファ-1062又はそれらの塩により、死滅又は成長が阻害され得る。
【0134】
本来の細菌門において、グラム陽性生物は、現時点で使用される最大グループの名称である、ファーミキューテス門を構成する。これは多くの周知の属、例えばスタフィロコッカス、ストレプトコッカス、エンテロコッカス(これは球菌である)及びバシラス、コリネバクテリウム、ノカルジア、クロストリジウム、アクチノバクテリア、及びリステリア(これは桿状であり、簡略に雨傘状(obconical)により記憶され得る)を含む。死滅又は成長阻害されるべきグラム陽性菌は、メチシリン-感受性及びメチシリン-耐性ブドウ球菌(黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、S.ヘモリチカス、S.ホミニス、S.サプロフィティカス、及びコアグラーゼ-陰性ブドウ球菌を含む)、グリコペプチド中度感受性黄色ブドウ球菌(GISA)、バンコマイシン-耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)、ペニシリン-感受性及びペニシリン-耐性連鎖球菌(肺炎連鎖球菌、化膿性連鎖球菌、B群溶連菌、S.アビウム、ウシ連鎖球菌、S.ラクチス、S.サンギス及びC群連鎖球菌、G群連鎖球菌及び緑色連鎖球菌を含む)、腸球菌(エンテロコッカス・フェーカリス及びE.フェシウムなどの、バンコマイシン-感受性及びバンコマイシン-耐性菌を含む)、クロストリジウム・ディフィシル、C.クロストリジフォルメ、C.イノコウム、C.パーフリンジェンス、C.ラモーサム、リステリア・モノサイトゲネス、コリネバクテリウム・ジェイケイウム、ビフィドバクテリウム菌種、ユーバクテリウム・アエロファシアン、E.レンタム、ラクチノバシラス・アシドフィルス、L.カゼイ、L.プランタルム、ラクトコッカス菌種、リューコノストック菌種、ペディオコッカス、ペプトストレプトコッカス・アナエロビウス、P.アサカロリチカス、P.マグナス、P.ミクロス、P.プレボティ、P.プロダクタス、プロピオニバクテリウム・アクネス、アクチノミセス菌種、モラクセラ菌種(M.カタラーリスを含む)から選択されるが、これらに限定されるものではない。
【0135】
本発明の一部の実施態様において、グラム陰性菌は、アルファ-1062又はそれらの塩により、死滅又は成長阻害され得る。
【0136】
グラム陰性菌は、リポ多糖体からなる保護的外膜を保持する。この外膜は、通常であれば内膜又は細胞壁(ペプチドグリカン)を損傷するであろう抗生物質、色素、及び界面活性剤から、グラム陰性菌を保護する。外膜は、これらの細菌に、リゾチーム及びペニシリンに対する耐性を提供する。EDTAを伴うリゾチーム、並びに抗生物質、例えばアンピシリン、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、及びナリジクス酸などの、代りの抗微生物剤が、一部の病原性グラム陰性微生物の保護的外膜を破壊するために開発されているが、グラム陰性微生物は、抗生物質などの抗微生物剤の存在に対する免疫を発達させ且つより多くなるようにしている。
【0137】
死滅又は成長阻害されるべきグラム陰性菌は、エシェリキア菌種(例えば大腸菌);サルモネラ菌種(例えばサルモネラ・ティフィムリウム);シュードモナス菌種(例えば緑膿菌);バークホリデリア菌種;ナイセリア菌種(例えば、髄膜炎菌、淋菌);ヘモフィルス菌種(インフルエンザ菌);シゲラ菌種、バクテリシデス菌種;カンピロバクター菌種;ブルセラ菌種;ビブリオ菌種;エルシニア菌種;ヘリコバクター菌種;カリマトバクテリウム菌種;レジオネラ菌種;レプトスピラ菌種;ボレリア菌種、ボルデテラ菌種;クレブシエラ菌種(例えば、K 13655154.2 31ニューモニアエ);トレポネーマ菌種;フランシセラ菌種;モラクセラ菌種;ステノトロフォモナス菌種;ブデロビブリオ菌種;アシネトバクター菌種;スピロへーター;プロテウス菌種(例えば、プロテウス・ミコビリス);エンテロバクター;セラチア菌種(例えば、S.プリムシカ、S.リクエファシエンス、S.ルビダエ、及びS.オドリフェラエ);ガルドネレラ菌種、及びこれらの任意の組合せから決定されるが、これらに限定されるものではない。これらの生物の多くは、ヒトなどの哺乳動物を含む、動物及び/又は植物に対し病原性であること、並びに腸炎、腐敗症、敗血症、髄膜炎、腸熱、肺炎、喉頭蓋炎、蜂巣炎、下痢及び性感染症などの、疾患及び障害を引き起こし得ることがわかっている。例えばグラム陰性球菌は、3種の微生物を含み、これは、性感染症(例えば淋菌)、髄膜炎(例えば髄膜炎菌)、及び呼吸器症候群(例えばモラクセラ・カタラリス)を引き起こす。一部のグラム陰性桿菌は、呼吸器の問題(例えば、インフルエンザ菌、クレブシエラ・ニューモニアエ、レジオネラ・ニューモフィラ、緑膿菌)、尿路の問題(例えば、大腸菌、プロテウス・ミラビリス、エンテロバクター・クロアカ、セラチア・マルセセンス)、並びに胃腸管の問題(例えば、ヘリコバクター・ピロリ、サルモネラ・エンテリティデス、サルモネラ・ティフィ)を引き起こし得る。院内感染症に関連したグラム陰性菌はまた、病院施設の集中治療室において、菌血症、続発性髄膜炎、敗血症及び人工呼吸器関連肺炎を引き起こす、アシネトバクター・バウマンニを含むが、これらに限定されるものではない。
【0138】
本発明の一部の実施態様において、病原性真菌は、アルファ-1062又はそれらの塩により、死滅又は成長阻害され得る。
【0139】
病原性真菌は、ヒト又は他の生物において疾患を引き起こす真菌である。カンジダ菌種は、免疫無防備状態の宿主(例えば移植患者、AIDS罹患者、癌患者)において、日和見感染症を引き起こすことが最も良く知られている重要なヒト病原体である。感染症は、治療が困難であり、且つ非常に重篤であり得て:全身感染症の30~40%は、結果的に死亡する。アスペルギルスは、別の可能性のある真菌病原体である。アスペルギルスは、3種の主な様式で疾患を引き起こし得る:マイコトキシン生成を通じて;アレルギー反応の誘導を通じて;及び、局所又は全身の感染症を通じてである。
【0140】
死滅又は成長阻害されるべき病原性真菌は、アスペルギルス・ブラジリエンス、アスペルギルス・フミガーツス、アスペルギルス・フラバス、アスペルギルス・クラバタス、クリプトコッカス・ネオフォルマンス、クリプトコッカス・ラウレンツ、クリプトコッカス・アルビダス、クリプトコッカス・ガッティ、ヒストプラスマ・カプスラーツム、ニューモシスティス・ジロベシ、ニューモシスティス・カリニ、スタキボトリス・チャートルム、コニディオボルス菌種、コニディオボルス・コロナトゥス、コニディオボルス・インコングラス、バシジオボラス・ラナルム、B.デルマチジス(有性世代、アジェロミセス・デルマチジス)、H.カプスラツム(有性世代、アジェロミセス・カプスラツム)、パラコクシジオイデス・ブラジリエンシス、パラコクシジオイデス・ルッツィー、ラカジア・ロボイ、コクシジオイデス・イミチス、コクシジオイデス・ポサダシ及び関連した真菌、ベシジオマイセト・イースト、クリプトコッカス・ガッティ、C.ネオフォルマンス、カンジダ菌種、C.アルビカンス、カンジダ・グラブラータ、カンジダ・パラプシローシス、カンジダ・トロピカリス、カンジダ・ルシタニエ、カンジダ・クルセイ、アスペルギルスの非フミンガツス菌種、フザリウム・ソラナム、フザリウム・オキスポラム、及び他のフザリウム菌種、並びにそれらの有性世代ネクトリア菌種、シュードアレシェリア・ボイジイ、及びそのスケドスポリウム無性世代、クラドフィアロフォラ・バンチアナ、ラミクロリジウム菌種、及びダクチラリア・ガルロパバ、エクソフィアラ・ジーンセルメイ、エクソフィアラ・デルマチジス、カーブラリア菌種、ビポラリス、又はアルテルナリア菌種、P.ジロベシ、クリプトコッカス菌種、マラセチア・ファーファー、トリコスポロン・アサヒ、リゾーブス菌種、リゾーブス・オリザエから選択されてよいが、これらに限定されるものではない。
【0141】
本明細書において使用される用語「多回使用型ディスペンサー」、又は「マルチドース型」ディスペンサーは、好ましくはディスペンサーの開封又は補給を必要としない、複数回の、個別の投与動作での投与が可能である投与のための装置又は手段に関する。
【0142】
多回使用型ディスペンサーの例は、非限定的に、Nemera社又はAptar社から入手可能なもの、或いは他の製造業者からの類似の装置を含む。本発明の好ましいディスペンサーは、本明細書に言及された前述の多回使用型装置のいずれかに関する。
【0143】
Advancia(Nemera)技術に従い、ディスペンサーへの空気の取込みは、シリコーン膜を備えた通気システムを介して行われる。この技術は、空気が、透過性膜として作用するシリコーンを通って拡散することを可能にする、均質な材料の連続障壁を有する。結果的に、この連続障壁は、その薬物の微生物完全性を確かなものにする。この通気システムは、シリコーンポリマーから製造された非常に細かい膜を用い、空気の取込みを濾過する。このシリコーン膜は、固形で、非多孔性の材料である。この膜は、均質であり、且ついかなる孔も含まない。この膜の分子間距離は、ナノメーターの桁であり-このシリコーン膜構造のために、膜を通る空気の通過を可能にするが、細菌を含むあらゆる液体もしくは固形の粒子の通過は完全に防ぐ。シリコーン膜の機能は、膨らんだ風船と比較することができる。風船は、連続した、防水材料であるが、気体は風船の壁を通って、内圧と外圧が平衡に到達するまで、ゆっくり通過する。更に、Advancia(登録商標)PFは、システム上部にクロージングチップと称される、特許権を有する、目詰まり防止アクチュエーターを持っている。この機構は、汚染物がアクチュエーター開口部を通って侵入することができないことを保証し、従って結晶化及び目詰まりの問題からの保護をもたらし、並びに良好なプライミングの保持(good prime retention)を請け合うために、蒸発を回避する。
【0144】
SP270+及びSP370+などの、Nemera社の追加の技術も意図され、これらは、ねじ式、はめ込み式及び圧着式の様々な首の最終形で、様々なアクチュエーターで、50μl~200μlの、広範な投与容積での、非常に良好な投与量の一貫性を可能にし、並びに液剤及び懸濁剤に適している。SP27及びSP37などの、規制を受けない市場のためのNemera社の代替技術が、意図される。或いは液体に関してCV20、粘稠製品に関してValve 6668、又は粉末に関してValve 6685などの、中性の噴射剤(窒素)又は液化ガスにより加圧された送達を利用する、Nemera社の液剤などの、経鼻及び経真皮送達のための連続バルブが、利用されてよい。
【0145】
例えばUS9238532において、追加のNemera社の分配装置が、開示されており、これは容器に搭載する液体を分配するためのチップを明らかにしている。バルブは、互いに対し移動する少なくとも2個の要素を含み、各移動式要素は、他方の移動式要素に対する保有ゾーンを備える。移動式要素の一つは、ブロック障壁を形成するその保有ゾーンの一部の上に又は極めて近接して抗-微生物材料を保有し、並びにその内側と接触するその分配チップの全ての表面は、抗-微生物材料を含まない。更なる例として、US9345616は、貯蔵庫の内容物の無菌性は信頼できることを保証する空気取込み口を備える、液体ディスペンサー装置を開示している。空気を取込み且つ大気中の微生物をブロックする機能は、エアフィルターによってではなく、特定の材料の気体拡散特性を使用することにより、実行される。従ってフィルター以外の種類の部材、すなわち非孔質ポリマー材料で作製された部材が使用される。そのような部材は、定義により多孔質であるフィルターよりもより信頼できる様式で、汚染されない空気を通過させる利点を示す。他の技術は、US20150043958、US8827124、US8986266、及びUS20140231536A1に開示されている。全ての引用された特許文献は、それらの全体が引用により本明細書中に組み込まれている。
【0146】
更なる例として、Nemera社は、最新式保存剤フリー経鼻ポンプ、古典的技術プラットフォーム、CPS技術プラットフォーム、並びにVP3、VP6及びVP7技術などの、様々な経鼻投与技術を提供する。
【0147】
更なる例として、Aptar社の経鼻噴霧技術は、優れた噴霧性能を提供し、液剤、懸濁剤、及びゲルを含む粘稠な薬物製剤に適し、ガンマ線-照射滅菌に適し、且つ45μl~1,000μlの広範な投与容積を可能にし、並びに広範なクローザー、アクチュエーター及び付属品を供する。
【0148】
更なる例として、Aptar社のCPS技術は、経鼻経路のために保存された又は保存されない薬物製剤のマルチドース型送達のためにデザインされた高度に汎用性のあるスプレーポンプである。CPSは、鼻腔内ワクチン接種を含む、広範な他の適用のために使用されることができる。様々な恩恵は、広範な投与容積:50μl~140μl、定期的に使用されない場合であっても再度のプライミング(re-priming)が不要であり、照射により滅菌することができる。CPSシステムは、高粘度及び高揮発性の製剤の結晶化を最小化するために、目詰まり防止チップ密封技術を使用し、CPSフィルター技術は、容器への汚染された空気の侵入を回避すること、完全にバリデートされ試験された微生物学的完全性、ポンプ構成要素内の抗-微生物添加剤の非含有、及び金属-フリー流路の構成要素を証明した。
【0149】
例えば、Aptar社からのUS9095864は、特に経鼻型の、流体ディスペンサーユニット及びスプレー装置を開示し、且つ好ましくはそのディスペンサー開口部を封鎖するためのクローザー部材を組み込んでいるスプレーに適用する。その明細書に開示された装置の機構は、ポンプが使用されない場合に、ディスペンサー開口部を完全に封鎖することに関し、ここでこのクローザー部材は、その閉鎖した位置へのポンプのバネの戻りにより弾性的にもたらされることにより、ディスペンサー開口部と直接協働し始めることができ、これにより2つの作動間の装置の内側へのあらゆる病原菌又は細菌の侵入を防止し、これにより分配されるべき組成物を汚染するリスクを有意に最小化する。US20090294347は、培地を収容する培地貯蔵庫を有し、培地貯蔵庫から培地を分配するための分配開口部を有し、並びに培地貯蔵庫へ開口し、且つそこに挿入された微生物学的活性のあるフィルター配列を有する、均圧化チャネルを有する、液体培地のための分配装置を開示している。全ての引用された特許文献は、それらの全体が引用により本明細書中に組み込まれている。
【0150】
本明細書に使用される用語「経粘膜投与」は、粘膜への薬物、プロ-ドラッグ又は活性物質のいずれかの投与を指す。経粘膜投与手段は、当該技術分野において公知であり、且つ好ましくは経口、経鼻、経膣、及び経尿道の様式に関する。経粘膜的な膜は、比較的透過性であり、豊富な血流を有し、従って薬物の全身循環への迅速な取込みが可能であり、初回通過代謝を回避する。経口の経粘膜的送達は好ましくは、口腔内及び舌下の経路に関する。膣又は尿道の経路は、粘膜付着性の坐剤、インサイチュゲル及び泡製剤を用いて、利用され得る。
【0151】
一部の実施態様において、本発明の組成物、製剤、分配装置及び/又は医薬品は、神経系疾患の治療において使用されてよい。
【0152】
一部の実施態様において、本発明の組成物、製剤、分配装置及び/又は医薬品は、認識機能障害に関連した脳疾患の治療において使用されてよい。
【0153】
一部の実施態様において、本発明の組成物、製剤、分配装置及び/又は医薬品は、コリン作動性欠損に関連した、神経変性の、精神病理学的又は神経系の疾患の治療において使用されてよい。
【0154】
一部の実施態様において、本発明の組成物、製剤、分配装置及び/又は医薬品は、ニコチン性受容体及び/又はコリン作動性受容体の増感剤による治療に対し感受性がある病態の治療において使用されてよい。
【0155】
当該技術分野において公知のように、4種の現在利用可能な薬物(ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン、メマンチン)のうちの3種は、コリン作動性エンハンサー(ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン)であり、これらは全て、コリンエステラーゼ(ChE)と称されるアセチルコリン-分解酵素のファミリーを阻害する。ChEの阻害は、アセチルコリン(ACh)のシナプス濃度を上昇し、これによりAChのムスカリン性(mAChR)及びニコチン性(nAChR)アセチルコリン受容体の作用を増強及び延長する。ガランタミン(従ってアルファ-1062)はまた、ChE阻害剤の作用に加え、コリン作動性受容体をアロステリックに刺激する(増感する)ことによっても作用する。ニコチン性受容体のアロステリックな増感は、ACh又はコリン(Ch)によるそれらの活性化を増強し、これにより伝達物質又は受容体の濃度における疾患-関連した欠乏を補正する(Maelicke A及びAlbuquerque E X、(1996) Drug Discovery Today 1, 53-59;Maelicke A及びAlbuquerque E X、(2000) Eur J Pharmacol 393, 165-170)。
【0156】
コリン作動性欠損に関連した疾患の例は、アルツハイマー病、パーキンソン病、認知症の他の型、統合失調症、てんかん、脳卒中、ポリオウイルス感染症、神経炎、低酸素症後の脳内の酸素及び栄養素欠乏症、無酸素症、仮死、心停止、慢性疲労症候群、様々な型の中毒、麻酔、脊髄障害、中枢神経系の炎症、術後せん妄及び/又は亜症候性術後せん妄、神経因性疼痛、アルコール及び薬物の耽溺の結果、中毒性のアルコール及びニコチン切望、並びに放射線治療の結果である。
【0157】
本明細書に使用される用語「神経系疾患」又は障害は、神経系の任意の障害に関する。脳、脊髄又は他の神経の構造的、生化学的又は電気的異常は、幅広い症状を生じ得る。症状の例は、麻痺、筋力低下、協調運動不全、感覚消失、発作、精神錯乱、疼痛、認識能力の制限及び変更された意識レベルを含む。多くの認識された神経障害が存在し、その一部はかなり一般的であるが、多くは稀である。これらは、神経学的試験により評価され、並びに神経学及び臨床神経精神医学の専門家の範囲内で、研究及び治療され得る。
【0158】
アルツハイマー病(AD)はまた、アルツハイマーと簡単に称され、時間と共に次第に増悪する慢性の神経変性疾患である。これは、認知症症例の60~70%を占める原因である。最も一般的な初期症状は、最近の事象の想起の困難さである。この疾患の進行と共に、症状は、言語の問題、見当識障害(容易な道迷いを含む)、気分変動、意欲喪失、セルフケア管理の喪失、及び問題行動を含む。
【0159】
パーキンソン病(PD)、又は簡単にパーキンソンは、主に運動系に影響を及ぼす、中枢神経系の長期の変性疾患である。この疾患が増悪するにつれて、非運動症状がより一般的になる。この疾患の早期に最も明らかな症状は、振戦、硬直、動作の緩慢、及び歩行困難である。思考及び行動の問題も生じることがある。認知症は、この疾患の進行した段階では一般的になる。主な運動症状は、集合的に「パーキンソニズム」又は「パーキンソン症候群」と称される。
【0160】
本明細書において使用される用語「液体」は、その容器の形状に順応するが、圧力とは無関係に(ほぼ)一定の容積を維持する、ほぼ非圧縮性流体を伴う組成物を含む、その一般的意味を指す。
【0161】
本明細書において使用される「液体の形状の医薬組成物」は、対象、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒト対象への投与に適している、1又は複数の医薬としての活性物質を含有する液体である。液体剤形は、典型的には、薬物成分及び非薬物成分(賦形剤)の混合物に関与した医薬製品である。液体剤形は、以下のように調製される:a)活性のある原薬を、水性又は非水性溶媒(例えば水、グリセリン、エーテル、アルコール)中に溶解することによるか、又はb)この薬物を、適当な媒体中に懸濁することによるか、又はc)この原薬を、懸濁剤、エマルション、シロップ剤、又はエリキシル剤などの、油相又は水相へ、混入することによる。アルファ-1062の塩について明らかであるように、本明細書記載の液剤は、良好な水への溶解度により特徴付けられる。
【0162】
エマルションはまた、当該技術分野において明らかにされたように、経粘膜投与のために製造及び利用される。エマルションは、通常は非混和性である(混合されないか又は配合されない)2種以上の液体の混合物である。エマルションは、コロイドと称される物質の2相システムのより一般的クラスの一部である。コロイド及びエマルションは時には互換的に使用されるが、エマルションは、分散相及び連続相の両方が、液体である場合に使用されなければならない。エマルションにおいて、液体(分散相)は、他方(連続相)の中に分散される。
【0163】
エマルションの例は、ほとんどはそれらの水中油の比、他の添加剤及びそれらの意図された投与経路に応じて決まる、クリーム、軟膏、リニメント(香油)、ペースト、フィルム、又は液体を含む。多くは、局所用剤形であり、並びに皮膚の表面、経真皮的、経粘膜的、眼内、経直腸又は経膣的に使用されてよい。高度に液体のエマルションはまた、経口、鼻腔内的に使用されるか、又は場合によっては注射されてよい。
【0164】
自己乳化型マイクロエマルション薬物送達システム(SMEDDS)は、機械的手段よりもむしろ化学的手段により達成されたマイクロエマルションを使用する薬物送達システムである。これは、特別な混合及び操作によるよりもむしろ、この薬物製剤の固有の特性による。これは、多くのアニス-香味リカー中のアネトールにより発揮されるよく知られているウーゾ効果を利用する。マイクロエマルションは、薬物送達における使用に関して重大な可能性を有する。他のエマルションは、混合、音波処理、ボルテックス又はホモジナイズなどの、機械的手段により作製される。SMEDDとして市販された最初の薬物は、シクロスポリンであって、これは従来の液剤と比べ、著しく改善された生物学的利用能を有した。SMEDDSは、以下の数多くの利点を供する:自然発生的形成、製造の容易さ、熱力学的安定性、及び生体活性材料の改善された可溶化。改善された溶解度は、より迅速な放出速度及びより大きい生物学的利用能に寄与する。口から摂取される多くの薬物に関して、より迅速な放出速度は、消費者による薬物の受容を改善する。より大きい生物学的利用能は、より少ない薬物の必要性が使用されることを意味し;これは、経費を少なくし、並びに口から摂取される薬物の胃刺激及び毒性を低下する。経口使用に関して、SMEDDSは、液剤として製剤化されてよく、経粘膜投与に適用可能である。
【0165】
互換的に使用される用語「有効量」又は「治療的有効量」は、患者へ投与される場合に、感知できる生物学的反応を誘発するのに十分である、化合物(例えばアルファ-1062)の量又は分量を意味するように規定される。正確な治療的投与量は、患者の年齢及び状態、治療される状態の性質に応じて決まり、並びに担当医の最終的裁量であることは理解されるであろう。この場合の投与量の選択は、抗-微生物作用に関する有効量に加え、神経系疾患の治療における治療効果の両方に関係する。両方の量は、熟練者により評価され且つ決定され得る(Amy)。
【0166】
本医薬組成物は、1又は複数の医薬として許容し得る担体、又は賦形剤を含んでよい。用語「賦形剤」は、医薬製品の、希釈剤、崩壊剤、担体、及び同類のものなどの、薬理学的に活性のない成分を意味する。医薬組成物の調製において有用である賦形剤は概して、安全で、無毒であり、並びにヒト医薬用途に加え、獣医学に関して許容され得る。賦形剤の言及は、1種の賦形剤及び2種以上の賦形剤の両方を含む。これらの賦形剤は、一部の実施態様においては「wt%」又は「重量百分率」に従い、本明細書において説明される。
【0167】
本明細書において使用される「投与する」又は「投与」は、認識機能障害に関連した脳疾患の予防又は治療を目的とした、本発明の薬物もしくは物質又はその医薬組成物の、生物への送達を指す。好適な投与経路は、経口、経直腸、経粘膜的もしくは小腸への投与、又は筋肉内、皮下、髄内、髄腔内、直接脳室へ、静脈内、硝子体内、腹腔内、鼻腔内、舌下、口腔内もしくは眼球内の注射を含むが、これらに限定されるものではない。好ましい投与経路は、経粘膜である。
【0168】
本発明の医薬組成物は、例えば従来の混合、溶解、造粒、粉末化、乳化、カプセル化、封入、溶解又は凍結乾燥のプロセスを用い、当該技術分野において周知のプロセスにより製造されてよい。本発明に従い使用するための医薬組成物は、薬学的に使用され得る調製品にAPIを処理することを促進する、賦形剤及び補助剤を含む、1又は複数の生理的に許容し得る担体を使用する、従来の様式で製剤化されてよい。適切な製剤は、選択された投与経路によって決まる。
【0169】
注射又は経粘膜投与に関して、API又はその医薬組成物は、水溶液、好ましくは生理的に相溶性のある緩衝液、例えばハンクス液、リンゲル液、もしくは生理食塩緩衝液などの中に製剤化されてよい。経粘膜投与に関して、透過されるべき障壁に適した浸透剤が、その製剤中で使用される。そのような浸透剤は一般に、当該技術分野において公知である。
【0170】
経口投与に関して、本発明のAPI又はその医薬組成物は、APIを、当該技術分野において周知の医薬として許容し得る担体と組み合わせることにより、製剤化されることができる。そのような担体は、患者による経口摂取のために、錠剤、丸剤、舐剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー、懸濁剤、溶液及び同類のものとして製剤化されるべき結晶形などの本発明の物質であることができる。経口使用のための医薬調製品は、錠剤又は糖衣錠コアを得るために、固形賦形剤を用い、任意に得られる混合物を粉砕し、並びに望ましい場合には他の好適な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を処理し、作製することができる。有用な賦形剤は、特に充填剤、例えば乳糖、ショ糖、マンニトール、又はソルビトールを含む糖類など、セルロース調製品、例えばメイズデンプン、コムギデンプン、コメデンプン及びジャガイモデンプンなど、並びに他の材料、例えばゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び/又はポリビニル-ピロリドン(PVP)などである。望ましいならば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、又はアルギン酸などの、崩壊剤が、添加されてよい。アルギン酸ナトリウムなどの塩も、使用されてよい。
【0171】
本発明の組成物はまた、例えばボーラス注射又は連続注入などの非経口的投与のために製剤化されてもよい。注射のための製剤は、添加された保存剤と共に、例えばアンプル中又はマルチドース型容器中など、単位剤形中で提示されてよい。本組成物は、油性もしくは水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、又はエマルションの形状をとることができ、並びに懸濁化剤、安定化剤、及び/又は分散剤などの、製剤材料を含んでよい。
【0172】
非経口的投与のための医薬組成物は、APIの水溶性型の水性溶液を含む。加えて、本発明の薬物もしくはプロ-ドラッグ又はそれらの医薬組成物の懸濁剤が、親油性ビヒクル中に調製されてよい。好適な親油性ビヒクルは、ゴマ油などの脂肪油、オレイン酸エチル及びトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、又はリポソームなどの材料を含む。水性注射用懸濁剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、又はデキストランなどの、懸濁剤の粘度を上昇する物質を含んでよい。任意にこの懸濁剤はまた、高度に濃縮された溶液の調製を可能にするために、好適な安定剤及び/又は本発明の結晶もしくはその医薬組成物の溶解度を上昇する物質を含んでもよい。
【0173】
一部の実施態様において、活性成分を含有する組成物は、散剤の形状であってよい。例えばこの散剤は、使用前に、好適なビヒクル、例えば滅菌パイロジェンフリー水などにより、構成されるように調製されてよい。
【0174】
一部の実施態様において、この散剤製剤は、対象への投与のためである。例えば微粉子化された散剤製剤などの、散剤製剤は、鼻腔内に、又は他の方法を介し、例えば対象への、好ましくは対象の粘膜表面への、散剤製剤の噴霧もしくはそれ以外の塗布による、経粘膜投与を介し、投与されてよい。
【0175】
本明細書記載のアルファ-1062の抗微生物特性は、液剤、懸濁剤及びエマルションなどの液体製剤のみではなく、固形又は粉末製剤にとっても恩恵がある。経粘膜投与に適した粉末製剤もまた、アルファ-1062の抗微生物特性及び追加の抗微生物性保存剤の非存在から恩恵があり、これはアルファ-1062がそれ自身抗微生物剤であるという知見により可能になる。同様に、固形組成物もまた、アルファ-1062の抗微生物特性及び追加の抗微生物性保存剤の非存在から恩恵があり、これはいずれか所定のアルファ-1062組成物に関する、減少した微生物汚染及びより長い貯蔵時間に繋がる可能性がある。
【0176】
本発明に従う好ましい投与様式は、すなわち粘膜を通る又は超える、経粘膜投与である。本発明の投与の経粘膜経路は、好ましくは鼻腔内、口腔内及び/又は舌下である。経鼻又は鼻腔内投与は、鼻腔への任意の形状の塗布に関連している。鼻腔は、よく血管が発達した薄い粘膜により被覆されている。従って薬物分子は、初回通過で肝臓及び小腸代謝されずに、単独の上皮細胞層を超えて、迅速に移動されることができる。
【0177】
従って鼻腔内投与は、消化管及び/又は肝臓での多大な分解に繋がる、例えば錠剤及びカプセル剤の経口投与の代替として使用される。口腔内投与は、好ましくは頬の内側、歯の表面、又は頬の横の歯茎での吸収に関連する、口腔内粘膜を超えた吸収に繋がる塗布の任意の形に関する。舌下投与は、舌の下側への投与を指し、これにより化学物質は、舌の下側の粘膜と接触し、これを通って拡散する。
【0178】
本組成物は、望ましいならば、活性成分を含有する剤形を含んでよい、例えばFDA承認したキットなどの、パック又はディスペンサー装置内で提供される。パック又はディスペンサー装置は、投与説明書が添付されてよい。パック又はディスペンサーはまた、医薬品の製造、使用又は販売を規制する政府機関により規定された形式で、容器に関連した注意書きが添えられてよく、この注意書きは、組成物の形状の又はヒトもしくは獣医学的投与の当該機関による承認を反映している。そのような注意書きは、例えば、処方薬に関して米食品医薬品局(FDA)により承認されたラベル又は承認された製品能書であってよい。
【0179】
医薬担体と適合性があるよう製剤化された本発明の化合物を含有する組成物はまた、調製され、適当な容器中に配置され、指定された状態の治療に関してラベル付けされてよい。
【0180】
好適な状態は、認識機能障害に関連した脳疾患、好ましくは本明細書記載のもの、特にAD及びPDである。
【実施例】
【0181】
実施例
本発明は、本明細書記載の実施例により明らかにされる。これらの実施例は、本発明の可能性のある好ましい、非限定的実施態様の詳細な説明に関する技術的支援を提供する。
【0182】
本発明は、アルファ-1062は、標準アッセイにおいて抗-微生物作用を示すという、驚くべき知見を基にしている。
【0183】
USP51アッセイ:
アルファ-1062の抗-微生物特性を評価するために、USP(米薬局方)第51章保存剤チャレンジ試験(USP51)が用いられた。USP51は、保存剤効果を正確に測定するために使用される一般的方法である。保存剤チャレンジスクリーンと同じく、これは、化粧品、パーソナルケア製品、及び薬物製品における保存剤の作用を評価するために使用される。保存剤は、典型的には、汚染微生物の成長を阻害し且つ数を減少することにより、製品の安全性を維持することを補助するために、水性製剤製品に添加される抗微生物成分である。
【0184】
本発明の状況において、アルファ-1062(グルコン酸塩の形状)は、保存剤の代わりに(として)評価された。追加の保存剤は、アルファ-1062グルコネート調製品には添加されず、むしろこの物質それ自身(アルファ-1062)の抗-微生物作用が評価された。従ってアルファ-1062は、このアッセイ及び以下に説明される実験において、抗-微生物剤である。
【0185】
USP51チャレンジ試験は、チャレンジ試験のための5種の微生物(3種の細菌及び2種の真菌)を使用した。各微生物は、公知の病原性微生物の株であり、これらは、広範な微生物生理を示す。
【0186】
USP51に基づき試験する目的について、簡潔な項目は、4つのカテゴリーに分けられる(表1参照)。これらの製品に関する抗微生物有効性の判定基準は、投与経路の機能である。
【表1】
【0187】
本分析に関して、本発明の好ましい実施態様、すなわち経粘膜的に(すなわち、鼻腔内の粘膜に)塗布される、局所的経鼻製品に関連している製品カテゴリー2が、(以下に記載したように)適用された。しかし、この分析から得られた結果は、本発明の代替の実施態様に関連するカテゴリー1、3及び4について関連性を保持する。
【0188】
試験生物:
以下の微生物の培養物を、USP51の標準指針に従い適用した:
カンジダ・アルビカンス(ATCC番号10231)、
アスペルギルス・ブラジリエンス(ATCC番号16404)、
大腸菌(ATCC番号8739)、
緑膿菌(ATCC番号9027)、及び
黄色ブドウ球菌(ATCC番号6538)。
【0189】
本試験で使用される生存微生物は、当初のATCC培養物から取りだし5回を超えないよう継代した。本試験の目的のために、1継代は、確立された培養物から新鮮な培地への生物の移植と規定した。全ての移植を、カウントした。シード-ロット技術により維持された生物の場合、凍結、解凍及び新鮮な培地中の再生の各サイクルを、1回の移植としてみなした。
【0190】
ATCCから受け取った培養物は、標準の指示に従い蘇生した。ブロス中で成長した場合、これらの細胞は、遠心分離によりペレット化し、新鮮な維持ブロスの容積の1/20中に再浮遊させ、並びに等容量の20%(水中v/v)滅菌グリセロールに添加した。寒天上で成長された細胞は、その表面から、10%グリセロールブロスへとこすり取った。浮遊液の少量のアリコートを、滅菌バイアル中に分配し、これを液体窒素中又は機械式フリーザーの中で貯蔵した。新鮮なシード-ストックバイアルが必要とされる場合、これを取りだし、一連の作業培養物を接種するために使用した。次にこれらの作業培養物を、必要に応じて(例えば、細菌及び酵母の場合各日に)使用し、接種培養を開始した。本試験において使用した全ての培地は、成長促進のために管理された。
【0191】
試験前に、好適な容積の固形寒天培地の表面に、各特定された微生物の最新に再生したストック培養物から接種した。接種培養物の培養条件を、下記表2に説明し、ここで好適な培地は、大豆-カゼイン消化培地又はサブローデキストロース寒天培地であった。
【0192】
細菌及びC.アルビカンス培養物を収穫するために、滅菌食塩水TSを使用し、表面の成長物(surface growth)を洗浄し、これを好適なベッセルに収集した。十分な滅菌食塩水TSを、微生物カウント約1×108コロニー形成単位(CFU)/mLを得るように、添加した。A.ブラジリエンスの細胞を収穫するために、0.05%ポリソルベート80を含有する滅菌食塩水TSを使用し、且つ約1×108CFU/mLを得るために、十分な滅菌食塩水TSを添加した。
【0193】
或いはストック培養生物を、好適な液体培地(すなわち、大豆-カゼイン消化ブロス又はサブローデキストロースブロス)において成長させ、これらの細胞を遠心分離により収穫し、次に滅菌食塩水TSで洗浄し、及びその中に再浮遊させ、微生物カウント約1×108CFU/mLを得た。
【0194】
各浮遊液中のCFU/mLの数値は、下記表2に列挙した、培地及び微生物回収インキュベーション時間の条件を用いて決定し、初期CFU/mLの推定値を確認した。この値は、この試験において使用した接種材料のサイズを較正するために役だった。
【0195】
手順
この試験は、それに十分な容量の生成物が移植されている、適切なサイズの5個の滅菌した、キャップ付き細菌学的容器において実行した。各容器には、調製し且つ標準化した接種材料の1種を接種し、並びに状況に応じて混合した。使用した浮遊液接種材料の容量は、その生成物の容量の0.5%~1.0%であった。この生成物に添加した被験微生物の濃度は、カテゴリー2製品に関する標準指針に従い、接種後の被験調製品の最終濃度が、生成物の1×105~1×106CFU/mLであるようにした。
【0196】
各被験調製品中の生存微生物の初期濃度を、プレート-カウント法により決定される、各標準化された接種材料中の微生物の濃度を基に推定した。
【0197】
接種された容器は、22.5±2.5℃でインキュベーションし、並びに各容器を、表3に特定したように、適切な間隔で試料採取した。培養物の外観において観察された何らかの変化、を、これらの間隔で記録した。プレート-カウント手法を使用することにより、各被験調製品中に存在するCFUの数を、該当する間隔で決定した。
【0198】
特定の抗微生物剤の失活剤(中和剤)を、プレートカウント中又はプレーティングのために調製した好適な希釈物中に混入した。これらの条件は、表2に列挙した、培地及び微生物回収インキュベーション時間の条件を基にしたその試料に関するバリデーション試験において決定した。本試験の開始時に存在するCFU/mLの算出された濃度を使用し、各微生物に関するCFU/mLの濃度のlog
10値の変化を、該当する試験間隔で計算し、この変化を、対数削減に関して表した。
【表2】
【0199】
抗微生物有効性に関する判定基準
表3において特定した判定基準が合致する場合には、抗微生物有効性に関する必要要件が合致している。増加なしは、予め測定した値よりも高く、0.5log
10単位以下として規定される。
【表3】
【0200】
抗微生物有効性の報告
本アッセイにおいて利用した抗-微生物剤は、水を溶媒とする溶液として、濃度82mg/mLである、アルファ-1062のグルコン酸塩であった。
【0201】
この分析のデータを、下記表4に提供している:
【表4】
【0202】
提供されたデータから認められるように、アルファ-1062のグルコン酸塩は、USP51において試験した5種の生物全てに対し、強力な抗-微生物作用を示した。
【0203】
カテゴリー2に関するUSP判定基準を、抗-微生物作用の存在を決定するために利用した。細菌に関して、抗微生物作用は、最初のカウントからの少なくとも2.0対数削減が、14日目に明らかであり、且つ28日目に14日目のカウントからの増加なしが明らかである場合に、明らかである。酵母及びカビに関して、抗微生物作用は、14及び28日目に最初に計算したカウントからの増加なしが決定される場合に、明らかである。
【0204】
従って先のデータに関して、細菌及び真菌に対する作用は、カテゴリー2製品に関する抗-微生物作用を明らかにするための必要要件を超えている。
【国際調査報告】