(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-18
(54)【発明の名称】溶射による加熱部材の製造方法及び加熱部材
(51)【国際特許分類】
H05B 3/20 20060101AFI20240411BHJP
C23C 4/11 20160101ALI20240411BHJP
C23C 4/18 20060101ALI20240411BHJP
B32B 15/092 20060101ALI20240411BHJP
B32B 15/04 20060101ALI20240411BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
H05B3/20 339
C23C4/11
C23C4/18
B32B15/092
B32B15/04 B
B32B9/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548592
(86)(22)【出願日】2022-02-24
(85)【翻訳文提出日】2023-08-17
(86)【国際出願番号】 EP2022054651
(87)【国際公開番号】W WO2022180162
(87)【国際公開日】2022-09-01
(32)【優先日】2021-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515135572
【氏名又は名称】エリコン メテコ アクチェンゲゼルシャフト、ヴォーレン
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バース、アレキサンダー
(72)【発明者】
【氏名】エロネン、ヴィッレ
【テーマコード(参考)】
3K034
4F100
4K031
【Fターム(参考)】
3K034AA02
3K034AA06
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3K034JA01
4F100AA19B
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4K031DA01
4K031DA03
4K031DA04
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4K031FA09
(57)【要約】
加熱部材及び加熱部材を製造する方法。加熱部材は、基材の上に適用されたコーティング系と;コーティング系の上に連続層又は閉じた層の少なくとも1つとして適用されたシーラントとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に適用されたコーティング系と;
前記コーティング系の上に連続層又は閉じた層の少なくとも1つとして適用されたシーラントと
を含む、加熱部材。
【請求項2】
前記コーティング系が、
前記基材の上に形成された加熱器要素と;
前記基材と加熱器要素との間に形成された絶縁層と
を含む、請求項1に記載の加熱部材。
【請求項3】
前記コーティング系が、外部電源への接点を形成するために前記加熱器要素の上に適用された導電性層をさらに含む、請求項2に記載の加熱部材。
【請求項4】
前記シーラントが前記コーティング系に浸透して前記絶縁層の絶縁特性を改善する、請求項2に記載の加熱部材。
【請求項5】
前記コーティング系が、前記基材の上に形成されたボンド層を含み、絶縁層が前記ボンド層の上に形成される、請求項2に記載の加熱部材。
【請求項6】
前記絶縁層の厚さが50~300μmである、請求項1に記載の加熱部材。
【請求項7】
前記コーティング系の上の前記シーラントの厚さが0.05~5.0mmである、請求項1に記載の加熱部材。
【請求項8】
前記コーティング系が1層のみの絶縁層を含む、請求項1に記載の加熱部材。
【請求項9】
コーティング系を基材に適用するステップと;
連続層又は閉じた層の少なくとも1つとしてシーラントを前記コーティング系の上に適用するステップと
を含む、加熱部材を製造する方法。
【請求項10】
前記コーティング系が、
前記基材の上に形成された加熱器要素と;
前記基材と加熱器要素との間に形成された絶縁層と
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記コーティング系が、外部電源への接点を形成するために前記加熱器要素の上に適用された導電性層をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記シーラントが前記コーティング系に浸透して前記絶縁層の絶縁特性を改善する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも前記絶縁層が溶射により形成される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記シーラントが前記コーティング系に浸透して前記絶縁層の誘電特性を改善する、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記コーティング系が、前記基材の上に形成されたボンド層を含み、絶縁層が前記ボンド層の上に形成される、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記絶縁層の厚さが50~300μmである、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
シーラントが前記コーティング系の上に0.05~5.0mmの厚さで適用される、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
前記コーティング系が、溶射により適用された複数の層を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項19】
溶射により適用された前記複数の層が加熱器要素及び絶縁層を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記絶縁層が前記基材の上に噴霧され、前記加熱器要素が前記絶縁層の上に噴霧される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
溶射により適用された前記複数の層が、前記基材の上に溶射されたボンド層をさらに含み、前記絶縁層が前記ボンド層の上に溶射される、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記コーティング系が1層のみの絶縁層を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項23】
基材に適用されたコーティング系と;
前記コーティング系の上に適用されたシーラントと
を含む加熱部材であって、
前記シーラントが前記コーティング系に浸透して前記絶縁層の絶縁特性を改善し、
前記コーティング系の上の前記シーラントの厚さが0.1~1.0mmであり、
前記コーティング系が1層のみの絶縁層を含む、
加熱部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は2021年2月25日出願の米国仮特許出願第63/153631号の利益及び優先権を主張し、その開示は参照により本明細書にその全体が明示的に組み込まれる。
【0002】
本発明は、加熱部材を形成する、溶射により製造されるコーティング系の製造方法を対象とする。
【背景技術】
【0003】
電熱器は、電気自動車における電池及び客室暖房の温度管理において10~45℃の最適操作温度を維持することが必要とされる。求められる加熱電力は2~8kWと比較的高く、溶射により製造される加熱器を省スペース化及び軽量化するための要件は非常に適切な技術である。そのような電熱器のコーティング系は、例えばMichelsらによる論文「High Heat Flux Resistance Heaters from VPS and HVOF Thermal Spraying」、Experimental Heat Transfer、11:4巻、341~359頁、DOI:10.1080/08916159808946570(1998);Scheitzらによる論文、「Thermisch gespritzte keramische Schichtheizelemente、Thermally sprayed multilayer ceramic heating elements」、Thermal Spray Bulletin、88~92頁(2011年);及び欧州特許第2815626号(並びに米国の対応する文献である米国特許出願第10112457号及び米国特許出願公開第2015/0014424号)、並びに欧州特許第2815627号(並びに米国の対応する文献である米国特許出願第10625571号及び米国特許出願公開第2015/0014293号)に記載されており、その開示は明示的に参照により本明細書にその全体が組み込まれる。
【0004】
図1はコーティング系により製造される既知の電熱器を示す。
図1の左側は、酸化物セラミックの絶縁層の上にある導電性加熱回路14の上面図を示す。右側には、典型的なコーティング系の断面が示され、これは最下部の基材11、ボンドコート12、第1の絶縁層13、導電性加熱回路14の一部、上部絶縁層15を含む。パターン形成された導電性加熱回路14は外部電源に接続されている。
【0005】
図1の典型的なコーティング系の断面図が
図2の概略図により明確に示され、ここで先行技術の電熱器1の断面表示は5層から成り、
図1と
図2の共通の要素は同じ参照番号で示され、電熱器1は
a)基材11への接着性を改善するための、15~50μmの厚さを有する金属ボンドコート12、NiCr;
b)加熱要素14を基材11から電気的に分離するための、400~600μmの厚さを有する電気絶縁性セラミック材料13、例えばAl
2O
3;
c)金属層、例えばNiCrを含む、加熱要素14、特に蛇行タイプの配置で適用された、パターン形成された金属層。加熱要素14の導電性の蛇行経路の幅、長さ、及び厚さは、350~850Vの指定の電圧において2~8kWの必要な総電力を得るのに適した電気抵抗を生じさせるように設計されている;
d)加熱要素14を周囲環境から電気的に分離するための、150~350μmの厚さを有する電気絶縁性セラミック材料15、例えばAl
2O
3;
e)加熱要素14が例えばはんだ付けにより外部電源(図示せず)に接続されるのを可能にするのに十分な150~300μmの厚さでゾーンにパターン形成された、導電性層16、例えば銅系合金
を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第2815626号
【特許文献2】米国特許出願第10112457号
【特許文献3】米国特許出願公開第2015/0014424号
【特許文献4】欧州特許第2815627号
【特許文献5】米国特許出願第10625571号
【特許文献6】特許出願公開第2015/0014293号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Michelsら、「High Heat Flux Resistance Heaters from VPS and HVOF Thermal Spraying」、Experimental Heat Transfer、11:4巻、341~359頁、DOI:10.1080/08916159808946570(1998)
【非特許文献2】Scheitzら、「Thermisch gespritzte keramische Schichtheizelemente、Thermally sprayed multilayer ceramic heating elements」、Thermal Spray Bulletin、88~92頁(2011年)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施例は、既知の電気加熱要素が製造される熱プロセスに関して単純化された溶射プロセスにより、加熱部材、例えば電気加熱要素を製造する方法を対象とする。
【0009】
実施例において、この方法は溶射コーティングの1つ、例えばセラミックの上部絶縁層を置き換える/除去し、封止手順を行うことにより既知の技術を単純化して、基材及び環境に対する改善された電気絶縁性を有する加熱部材を製造する。単純化された溶射プロセスと封止手順のこの組み合わせは、高性能の加熱要素を効率的に可能にする。
【0010】
実施例は、基材に適用されたコーティング系と;コーティング系の上に連続層又は閉じた層の少なくとも1つとして適用されたシーラントとを含む、加熱部材を対象とする。
【0011】
実施例によれば、コーティング系は、基材の上に形成された加熱器要素と;基材と加熱器要素との間に形成された絶縁層とを含んでもよい。さらに、コーティング系は、外部電源との接点を形成するように加熱器要素の上に適用された導電性層をさらに含んでもよい。シーラントはコーティング系に浸透して絶縁層の絶縁特性を改善することができる。場合により、コーティング系は基材の上に形成されたボンド層を含んでもよく、絶縁層はボンド層の上に形成される。
【0012】
他の実施例によれば、絶縁層の厚さは50~300μmであってもよい。
【0013】
他の実施例において、コーティング系の上のシーラントの厚さは0.05~5.0mmであってもよい。
【0014】
さらに他の実施例において、コーティング系は1層のみの絶縁層を含んでもよい。
【0015】
実施例は加熱部材を製造する方法を対象とする。この方法は、コーティング系を基材に適用するステップと;連続層又は閉じた層の少なくとも1つとしてシーラントをコーティング系の上に適用するステップとを含む。
【0016】
実施例によれば、コーティング系は、基材の上に形成された加熱器要素と;基材と加熱器要素との間に形成された絶縁層とを含んでもよい。コーティング系は、外部電源への接点を形成するために加熱器要素の上に適用された導電性層をさらに含んでもよい。さらに、シーラントは、コーティング系に浸透して絶縁層の絶縁特性を改善することができる。さらに、少なくとも絶縁層は溶射により形成され得る。シーラントはコーティング系に浸透して絶縁層の誘電特性を改善することができる。場合により、コーティング系は、基材の上に形成されたボンド層を含んでもよく、絶縁層はボンド層の上に形成される。
【0017】
実施例において、絶縁層の厚さは50~300μmである。
【0018】
他の実施例において、シーラントはコーティング系の上に0.05~5.0mmの厚さまで適用される。
【0019】
さらに他の実施例において、コーティング系は溶射により適用された複数の層を含んでもよい。溶射により適用された複数の層は、加熱器要素及び絶縁層を含んでもよい。絶縁層は基材の上に噴霧されてもよく、加熱器要素は絶縁層の上に噴霧されてもよい。場合により、ボンド層も基材の上に溶射されてもよく、絶縁層はボンド層の上に噴霧されてもよい。
【0020】
なおさらに他の実施例によれば、コーティング系は1層のみの絶縁層を含んでもよい。
【0021】
実施例は、基材に適用されたコーティング系とコーティング系の上に適用されたシーラントとを含む加熱部材を対象とする。シーラントはコーティング系に浸透して絶縁層の絶縁特性を改善し、コーティング系の上のシーラントの厚さは0.05~5.0mmであり、コーティング系は1層のみの絶縁層を含む。
【0022】
本発明の他の例示的な実施例及び利点は、本開示及び添付の図面を吟味することにより確認することができる。
【0023】
本発明は、記載される複数の図面を参照して本発明の例示的な実施例の非限定的な実例によって、下記の詳細な説明においてさらに説明され、ここではいくつかの図面にわたって同様の参照番号は類似する部品を表す。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】加熱要素を形成する既知のコーティング系を示す図である。
【
図2】加熱要素の既知のコーティング系の断面を概略的に示す図である。
【
図3】加熱要素の実施例によるコーティング系の断面を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書に示される詳細は、例としてのもの及び本発明の実施例の例示的な議論のみを目的とするものであり、本発明の原理及び概念的態様の最も有用で容易に理解される説明と考えられるものを提供する過程で提示される。これに関して、本発明の基本的な理解に必要である以上に詳細に本発明の構造上の詳細を示す試みはなされず、図面と共に取り入れられる説明は、本発明のいくつかの形態が実際にどのように実施することができるのかを当業者に明らかにする。
【0026】
図3は、基材21上に加熱部材を形成するためのコーティング系2の例示的な実施例を示す。
図2に図示される先行技術の部材とは対照的に、この例示的な実施例では、既知の加熱要素の絶縁層14はコーティング系から除外され、完成した加熱部材を被覆するのにシーラント27が使用される。したがって、
図3に図示される例示的な実施例において、コーティング系2は、任意選択の金属ボンドコート22、例えば、NiCr、純粋なNi、CrN(10~50%wt.のCr含量を有する)、Ni
5Al(3~20%wt.のAl含量を有する)、純粋なAl、ステンレス鋼、又はインコネル合金により形成され、例えば、大気プラズマ溶射(APS)、アークワイヤー溶射(EAW)、燃焼溶射(CS)、低温溶射(CGS)プロセス、又はOerlikon Metco社のF4MB-XL、SINPLEXPRO、若しくはTRIPLEXPRO-210などの溶射ガンによる同様のプロセスにより、10~50μmの厚さ、好ましくは20~30μmの厚さまで溶射されて、好ましくは鋼、ステンレス鋼、又はアルミニウム系合金でできている金属基材21への加熱部材の接着性を改善する。電気絶縁性セラミック材料23、例えばAl
2O
3、ZrO
2、MgO、又は混合物は、基材21上又は任意選択の金属ボンドコート22上に、例えばAPS、懸濁液プラズマ溶射(SPS)、高速酸素燃料(HVOF)、爆裂溶射、燃焼粉末溶射(火炎溶射)、又は同様のプロセスにより、150~350μm、好ましくは250~300μmの厚さまで溶射されて、加熱要素24を基材21/ボンド層22から電気的に分離する。加熱要素24は、例えばAPS、EAW、CS、又はCGSにより形成され、導電性材料層、例えば、NiCr、純粋なNi、CrN(10~50%wt.のCr含量を有する)、Ni
5Al(3~20%wt.のAl含量を有する)、純粋なAl、高クロム鋼、インコネル合金、又はTiB
2若しくはTiO
2のような導電性セラミックを含み、特に、好ましくは蛇行タイプの配置で適用された、パターン形成された導電性層である。加熱要素13の導電性の蛇行経路の幅、長さ、及び厚さは、350~850Vの指定の電圧において2~8kWの必要な総電力を得るのに適した電気抵抗を生じさせるように設計されている。非限定的な実例として、2~8kWの電力を供給すると理解することができる、電気自動車の電池において、加熱要素13は2~10mmの幅、500~1500mの長さ、及び20~30μmの厚さで適切に寸法決めすることができる。
【0027】
導電性層26、例えば銅系合金は、例えば、APS、EAW、CP、CW、CS、HVOF、又は他のプロセスにより、加熱要素24が例えばはんだ付けにより外部電源(図示せず)に接続されるのを可能にするのに十分な120~200μm、好ましくは150~165μmの厚さで、ゾーンにパターン形成される。しかし、既知の技術において加熱要素の上に適用される絶縁層、すなわち、
図2のセラミックの上部絶縁層15の代わりに、シーラント層27がコーティング系2の導電性層26及び加熱要素24の上に適用される。シーラントは、ブラッシング、噴霧、又は分注により液体状で適用される。このシーラントは、例えば、溶媒含量が低いエポキシ様シーラント、例えばOerlikon Metco社のMETCOSEAL ERS、若しくはDICHTOL HM-RTなど、又はポリマー系シーラントであってもよい。電気絶縁性セラミック材料23の上に0超(>0)~5.0mm、好ましくは0.01~1.0mm、特に0.05~0.15mmの層厚さが得られるまで、シーラントのタイプに応じてシーラントがコーティング系2に浸透する、侵入する、及び/又はコーティング系2を包むように、シーラントが適用される。しかし、シーラント層27が導電性層26を囲み、導電性層26の少なくとも上側部分がシーラント層27よりも高くなるように、層厚さは導電性層26及び加熱要素24の厚さの合計よりも薄い。さらに、非限定的な実例として、シーラント層27は、加熱要素24の厚さよりも少なくとも50μm厚い、好ましくは加熱要素24の厚さよりも100μm厚い厚さで適用されてもよい。シーラント層27は、シーラントの特定の要件にしたがって硬化させることができる。しかし、外部電源が導電性層26を介して加熱器要素24の接点にアクセスするために、開口部をシーラントに設けることができる。
【0028】
図3の加熱部材の例示的な実施例は、3層又は4層のみを利用し、ボンド層は任意選択であり、層の少なくとも1つ、好ましくはすべての層が溶射コーティング層であり、さらに絶縁層23の改善された封止に起因して、絶縁層23の改善された絶縁特性をもたらす。さらに、例示的な実施例は、シーラント層27のシーラントはコーティング系全体に浸透し、破壊電圧を増加させリーク電流を減少させることにより絶縁層23の電気絶縁特性を改善するので、既知の技術における上側絶縁層15、すなわち加熱要素14より上側を回避することができる。さらに、シーラント層27のシーラントの使用によりもたらされるこれらの改善された特性は、コーティング系において、絶縁層23の厚さを既知の技術におけるような500μmから、50~350μm、好ましくは150~300μmまで薄くすることを可能にする。さらに、シーラント層27のシーラントは、コーティング系2に侵入すること又はコーティング系2に含有されることが可能ではないシーラントが電気絶縁性であるコーティング系2の上に連続フィルムを形成することになるような量で適用することができる。シーラント層27は、加熱要素24よりも少なくとも50μm厚い、好ましくは100μm厚い厚さまで、絶縁層23の上(及び加熱要素24の上)に適用することができる。このように、シーラント層27の厚さは、好ましくは導電性層26及び加熱要素24の厚さの合計よりも薄く、シーラント層27の表面よりも高い導電性層26の島を形成する。さらに、シーラント層27の厚さは、例えば0超(>0)~5.0mmであってもよく、好ましくは0.01~1.0mm、より好ましくは0.05~0.15mmである。
【0029】
「実施例1」
コーティング系2は、絶縁層23、加熱器要素24、及び導電性層26、並びに任意選択によりボンドコート22を、溶射プロセスにより、例えばAPS又は他の適切な溶射プロセスにより適用することにより形成される。加熱要素24を電源に接続しようとする領域に、シーラント層27の適用後にもなおそれらがアクセス可能であるようにして、コンタクトパッドをマスキングするようにカバーが配置される。2成分エポキシ様シーラント、例えばOerlikon Metco社のMETCOSEAL ERS又はDICHTOL HM-RTを、0.1~1mmの閉じた液体フィルムがコーティング系2の上に形成されるような量で適用することができる。先行技術におけるような入り込むべき上部絶縁層15がないので、シーラント層27からのより多くのシーラントが絶縁層23に到達し、それにより誘電特性を改善して加熱層24及び基材21を分離する。分離測定において、シーラント層27のシーラントを適用した後、絶縁層23、例えばAl2O3の放電抵抗は約5kV/mmから50kV/mmまで増加させることができることが示された。この放電抵抗の増加を考慮して、加熱要素24を基材21に短絡させるリスクを増加させることなく、絶縁層23の厚さを約50μmの最小厚さまで50%削減することができる。
【0030】
コーティング系2の上の過剰のシーラントは硬く緻密な樹脂様のオーバーレイを形成し、湿度に対して不透過性である電気絶縁層を形成する。この過剰のシーラントコーティングは、コーティング系2が既知の技術における加熱要素の上の絶縁層を省くことを可能にするものである。樹脂様のオーバーレイは最高で300℃までの温度に耐えることができ、これは水冷式ヒーターで加熱部材を使用するのに十分である。溶射絶縁材は多孔性及び細いクラックのネットワークという問題があるので、樹脂様コーティングはまた溶射絶縁コーティングよりも良好な破壊電圧の値も実現する。さらに、このエポキシ型シーラントの適用は高機能な装置を必要とせず、APS層とは異なり、材料の損失がない。
【0031】
熱硬化処理の間にコーティング系2に振動を与えてシーラント中の封入される気泡を回避することによりさらなる有益性を実現することができ、これにより加熱要素の上の他の部材に対する望ましくない放電のリスクを負うピンホールを回避することができる。
【0032】
シーラントの高度の浸透さえも真空含浸により実現できる。コーティング系全体及びコンタクトパッドのマスキングを有する部材を、真空容器内でシーラント液より上に入れる。低圧又は真空に近い条件で、部材を樹脂中に入れ、次いで圧力を大気圧に戻す。表面上の過剰のシーラントの量は、シーラントの除去を加えることにより別の加工ステップに適合させなければならない。
【0033】
「実施例2」
コーティング系2の絶縁層23、加熱器要素24、及び導電性層26、並びに任意選択によるボンドコート22は、実施例1で記載されるように適用及びマスキングすることができる。過剰のシーラントがコーティング系2の表面全体にわたって連続的なオーバーレイを形成するように、1成分ポリマー系シーラントを実施例1に記載されるものと同様に適用することができる。この過剰のシーラント層の厚さは0.1~1mmの範囲内である。このシーラントは6時間の乾燥時間とそれに続く熱処理を必要とする。このシーラントはコーティング系2に浸透する能力が低下しているが、このシーラント層は非常に高い電気絶縁特性を有し、それにより近くの部材への放電及び短絡を有効に回避する。形成されたオーバーレイは弾性のあるままであり、多数の液体化学物質に対して耐性があり、分解前で最高500℃まで安定である。
【0034】
「実施例3」
コーティング系2の絶縁層23、加熱器要素24、及び導電性層26、並びに任意選択によるボンドコート22は、実施例1に記載されるように適用及びマスキングすることができる。実施例1及び2で述べられるシーラントの1つは、過剰のシーラントが最大で0.01~0.1mmの非常に薄い膜を形成するような量でコーティング系2の表面全体に適用することができる。例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、エポキシ、ガラス、セラミックファイバー(アスベストの代替)、窒化ホウ素、酸化アルミニウムから作られる、350℃の温度に耐えることができるプラスチックの薄いシートを、過剰のシーラントフィルムの上にカバーとして置く。過剰のシーラントは、接着剤カバーを円滑にコーティング系2に接着させる接着剤として作用し、コーティング系2を電気的に絶縁し、コーティング系2を吸湿及び機械的損傷から保護することになる。
【0035】
前述の実例は単に説明の目的のために示され、決して本発明を限定するものとして解釈されるべきではないことに注意する。本発明は例示的な実施例に関して記載されているが、本明細書において使用されている語は限定の語よりもむしろ説明及び例証の語であることが理解される。本発明の態様において本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、現在述べられている通りに及び修正されている通りに、添付の特許請求の範囲内で変更を行ってもよい。本発明は特定の手段、材料、及び実施例に関して本明細書に記載されているが、本発明は本明細書で開示される詳細に限定されることを意図しておらず、むしろ本発明は、添付の特許請求の範囲内であるものなどの、あらゆる機能的に等価の構造、方法、及び使用に及ぶ。
【手続補正書】
【提出日】2022-07-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に適用されたコーティング系と;
前記コーティング系の上に連続層又は閉じた層の少なくとも1つとして適用された
エポキシ型シーラント又はポリマー系シーラントと
を含
み、
前記コーティング系が、
前記基材の上に形成され、導電性材料を含む加熱器要素と;
前記基材と加熱器要素との間に形成され、電気絶縁性セラミックを含む絶縁層と
を含む、加熱部材。
【請求項2】
前記コーティング系が、外部電源への接点を形成するために前記加熱器要素の上に適用された導電性層をさらに含む、請求項
1に記載の加熱部材。
【請求項3】
前記シーラントが前記コーティング系に浸透して前記絶縁層の絶縁特性を改善する、請求項
1に記載の加熱部材。
【請求項4】
前記コーティング系が、前記基材の上に形成されたボンド層を含み、絶縁層が前記ボンド層の上に形成される、請求項
1に記載の加熱部材。
【請求項5】
前記絶縁層の厚さが50~300μmである、請求項1に記載の加熱部材。
【請求項6】
前記コーティング系の上の前記シーラントの厚さが0.05~5.0mmである、請求項1に記載の加熱部材。
【請求項7】
前記コーティング系が1層のみの絶縁層を含む、請求項1に記載の加熱部材。
【請求項8】
コーティング系を基材に適用するステップと;
連続層又は閉じた層の少なくとも1つとして
エポキシ型シーラント又はポリマー系シーラントを前記コーティング系の上に適用するステップと
を含
み、
前記コーティング系が、
前記基材の上に形成され、導電性材料を含む加熱器要素と;
前記基材と加熱器要素との間に形成され、電気絶縁性セラミックを含む絶縁層と
を含み、
前記加熱器要素およびセラミックの前記絶縁層は、溶射により適用される、加熱部材を製造する方法。
【請求項9】
前記コーティング系が、外部電源への接点を形成するために前記加熱器要素の上に適用された導電性層をさらに含む、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記シーラントが前記コーティング系に浸透して前記絶縁層の絶縁特性を改善する、請求項
8に記載の方法。
【請求項11】
前記シーラントが前記コーティング系に浸透して前記絶縁層の誘電特性を改善する、請求項
8に記載の方法。
【請求項12】
前記コーティング系が、前記基材の上に形成されたボンド層を含み、絶縁層が前記ボンド層の上に形成される、請求項
8に記載の方法。
【請求項13】
前記絶縁層の厚さが50~300μmである、請求項
8に記載の方法。
【請求項14】
シーラントが前記コーティング系の上に0.05~5.0mmの厚さで適用される、請求項
8に記載の方法。
【請求項15】
前記絶縁層が前記基材の上に噴霧され、前記加熱器要素が前記絶縁層の上に噴霧される、請求項
8に記載の方法。
【請求項16】
ボンド層が溶射により前記基材の上に
適用さ
れ、前記絶縁層が前記ボンド層の上に
適用される、請求項
8に記載の方法。
【請求項17】
前記コーティング系が1層のみの絶縁層を含む、請求項
8に記載の方法。
【請求項18】
基材に適用されたコーティング系と;
前記コーティング系の上に適用された
エポキシ型シーラント又はポリマー系シーラントと
を含む加熱部材であって、
前記シーラントが前記コーティング系に浸透して前記絶縁層の絶縁特性を改善し、
前記コーティング系の上の前記シーラントの厚さが0.1~1.0mmであり、
前記コーティング系が、
前記基材の上に形成され、導電性材料を含む加熱器要素と;
前記基材と加熱器要素との間に形成され、電気絶縁性セラミックを含む1層のみの絶縁層
と
を含む、
加熱部材。
【国際調査報告】