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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-18
(54)【発明の名称】アキシャル-ラジアル軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 17/10 20060101AFI20240411BHJP
【FI】
F16C17/10 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023562647
(86)(22)【出願日】2022-04-12
(85)【翻訳文提出日】2023-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2022059753
(87)【国際公開番号】W WO2022218980
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】202021101947.6
(32)【優先日】2021-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102021125527.9
(32)【優先日】2021-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507336499
【氏名又は名称】イグス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクター ハフトゥング
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ シェルツァー
(72)【発明者】
【氏名】デービッド シュゼポカト
【テーマコード(参考)】
3J011
【Fターム(参考)】
3J011AA11
3J011BA13
3J011DA01
3J011KA02
3J011KA03
3J011LA04
3J011MA12
3J011SB02
3J011SB04
3J011SC01
(57)【要約】
軸受け軸周りに相互に対して回転可能であり、第2の軸受リングは第1の軸受リングの少なくとも部分を収容するために略U字形状の断面を形成する、第1及び第2の軸受リングと、ポリマー材料で作製され、第1及び第2の軸受リングを軸方向及び半径方向に切り離すために第1及び第2の軸受リング間に配置された摺動要素であって、軸方向摺動面を備える軸方向領域及び半径摺動面を備える半径領域を有する略L字形状の断面を各々が有する摺動要素と、を備えるアキシャル-ラジアル摺動軸受1に関する。2つの軸受リングの少なくとも一方は、そこに収容され、力をかけられて偏向可能な戻り止め要素8のための収容部7を有し、軸受リングの他方は、相互に対して軸受リングの指定相対回転位置において解除可能なロック動作を与えるように、偏向可能な戻り止め要素8の少なくとも部分を収容するための戻り止め要素に関連する戻り止め凹部9を有する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アキシャル-ラジアル摺動軸受(1)であって、
第1の軸受リング(2)と、
第2の軸受リング(4)であって、前記第1及び第2の軸受リングは軸受け軸(A)周りに相互に対して回転可能に配置され、前記第1の軸受リング(2)を少なくとも部分的に収容するように略U字形状の断面を形成する第2の軸受リング(4)と、
前記第1及び第2の軸受リングを軸方向及び半径方向に切り離すために前記第1の軸受リングと第2の軸受リングの間に配置されたポリマー材料で作製された摺動要素(6)であって、軸方向摺動面を持つ軸方向領域及び半径摺動面を持つ半径領域を有する略L字形状の断面を各々が有する摺動要素(6)と、
を備え、
2つの前記軸受リング(2、4)の指定相対回転位置において解除可能なロック動作を与えるために、前記2つの軸受リングの少なくとも一方が、力をかけられて偏向可能な戻り止め要素(8)であってそこに収容される戻り止め要素(8)のための収容部(7)を有し、前記2つの軸受リングの他方が、前記偏向可能な戻り止め要素(8)を少なくとも部分的に収容するための、前記戻り止め要素に関連する少なくとも1つの戻り止め凹部(9)を備える、アキシャル-ラジアル摺動軸受(1)。
【請求項2】
前記戻り止め要素(8)及びそれに関連する前記少なくとも1つの戻り止め凹部(9)は、前記一方及び他方の軸受リングのそれぞれ相互に向き合う半径方向面(21b、45)に配置され、
前記一方の軸受リングの前記収容部(7)に配置された前記戻り止め要素(8)は、半径方向に力を受けて偏向可能である、請求項1に記載のアキシャル-ラジアル摺動軸受(1)。
【請求項3】
前記戻り止め要素(8)は、前記少なくとも1つの戻り止め凹部(9)に対する前記戻り止め要素(8)の戻り止め位置において、少なくとも部分的に相補的な設計の前記戻り止め凹部の戻り止め面に対応する球状又は筒状の戻り止め面を少なくとも部分的に有する、請求項1又は2に記載のアキシャル-ラジアル摺動軸受(1)。
【請求項4】
前記第2の軸受リング(4)は、軸方向フランジ(42)によって接続された軸方向に離隔された2つのリング部分(41a、b)を有し、前記第1の軸受リング(2)が、少なくとも部分的に、前記第2の軸受リング(4)の前記軸方向に離隔された2つのリング部分(41a、b)の間に配置された、請求項1、2又は3に記載のアキシャル-ラジアル摺動軸受(1)。
【請求項5】
前記戻り止め要素(8)は、一体以上で形成され、軸方向範囲の方が小さい前記軸受リングの軸方向寸法の半分を超えて延在しする、請求項1から4のいずれか一項に記載のアキシャル-ラジアル摺動軸受(1)。
【請求項6】
力の付与を前記戻り止め要素(8)に与えるためにバネ(80)が設けられ、該バネ(80)は、前記2つの軸受リングの一方の穴(22)、特に径穴内に配置され、前記戻り止め要素(8)とネジ(81)などの半径方向制止要素との間に締め付けられる、請求項1から5のいずれか一項に記載のアキシャル-ラジアル摺動軸受(1)。
【請求項7】
前記2つの軸受リングの他方は、前記2つの軸受リング(2、4)の相互に対する回転時に前記戻り止め要素(8)を連続的に受容するための、周方向に離隔された複数の戻り止め凹部(9)を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のアキシャル-ラジアル摺動軸受(1)。
【請求項8】
前記2つの軸受リングの一方における前記戻り止め要素(8)のための前記収容部(7)は、戻り止め位置の外部で前記2つの軸受リング(2、4)の相互に対する相対動作位置において前記戻り止め要素を実質的に完全に収容するために設計されている、請求項1から7のいずれか一項に記載のアキシャル-ラジアル摺動軸受(1)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの戻り止め凹部(9)が前記第2の軸受リング(4)に配置され、前記戻り止め要素の前記収容部(7)が前記第1の軸受リング(2)に配置された、請求項1から8のいずれか一項に記載のアキシャル-ラジアル摺動軸受(1)。
【請求項10】
作動デバイス(90)が前記2つの軸受リングの一方に配置され、前記作動デバイスは、当該軸受リング(2´)に関して移動可能であり、前記戻り止め要素(8´)に動作可能に接続された作動部分(92)を有する、請求項1、2、4、7、8及び9のいずれか一項に記載のアキシャル-ラジアル摺動軸受(1´)。
【請求項11】
前記作動デバイス(90)は、前記戻り止め要素(8´)及び前記少なくとも1つの戻り止め凹部(9´)のロックを解除するための力を前記戻り止め要素が受けるために、前記作動部分(92)を介して前記戻り止め要素(8´)に反作用力をかけるように配置及び設計されている、請求項10に記載のアキシャル-ラジアル摺動軸受(1´)。
【請求項12】
前記作動デバイスの前記作動部分(92)が、前記2つの軸受リングの一方に対して半径方向に偏向可能に配置された、請求項10又は11に記載のアキシャル-ラジアル摺動軸受(1´)。
【請求項13】
前記戻り止め要素(8´)と前記作動部分(92)とは、前記作動デバイス(90)の力伝達要素又は部分を介して動作可能に接続されている、請求項10、11又は12のいずれか一項に記載のアキシャル-ラジアル摺動軸受(1´)。
【請求項14】
前記作動デバイス(90)は、前記少なくとも1つの戻り止め凹部(9´)内での前記戻り止め要素(8´)のロックが解除される動作位置をロックするために配置及び設計されている、請求項10から13のいずれか一項に記載のアキシャル-ラジアル摺動軸受(1´)。
【請求項15】
前記作動部分(92)は、所定の距離閾値を超える前記2つの軸受リング(2´、4´)の一方に対する半径方向への強制ガイド動作が前記戻り止め要素(8´)のロック位置から開始する前記ロックを解除するように配置され、前記距離閾値を超えた後の半径方向周りの回転が前記作動部分(92)と前記2つの軸受リング(2´)の前記一方との間の半径方向積極的ロックをかけるように配置されている、請求項14に記載のアキシャル-ラジアル摺動軸受(1´)。
【請求項16】
膜ヒンジ(65)の態様で薄化する材料が、摺動要素(6)の半径摺動面を軸方向摺動面に約90°屈曲させるためにそれぞれの前記摺動要素(6)の前記半径摺動面と軸方向摺動面の間に設けられた、請求項1から15のいずれか一項に記載のアキシャル-ラジアル摺動軸受(1)。
【請求項17】
摺動要素(6)は、その軸方向摺動面の領域において、実質的に隙間なくかつ周方向に相互に連続的に配置された複数の第1のセクタ(60)を備え、一方、前記摺動要素(6)は、その半径摺動面の領域において、周方向に各々から離隔されかつ周方向に相互に連続的に配置された複数の第2のセクタ(64)を備える、請求項1から16のいずれか一項に記載のアキシャル-ラジアル摺動軸受(1)。
【請求項18】
少なくとも2つの摺動要素(6)が構成され、該少なくとも2つの摺動要素は、設置位置において、それらの軸方向摺動面に対して軸方向に概ね前記第1の軸受リング(2)の軸方向寸法だけオフセットされ、特に、相互に対して周方向に概ね前記第1のセクタ(60)の周方向寸法の半分だけオフセットされている、請求項1から17のいずれか一項に記載のアキシャル-ラジアル摺動軸受(1)。
【請求項19】
前記作動デバイスは、前記少なくとも1つの戻り止め凹部内の前記戻り止め要素の係合を非手動的に調整及び/又は解除するために制御可能なアクチュエータを有する、請求項1から18のいずれか一項に記載のアキシャル-ラジアル摺動軸受(1)。
【請求項20】
前記作動部分は、作動要素に結合するためのボルトネジ又は雌ネジなどの機械的結合デバイスを有する、請求項1から19のいずれか一項に記載のアキシャル-ラジアル摺動軸受(1)。
【請求項21】
前記アキシャル-ラジアル摺動軸受(1)のロック状態及び/又は非ロック状態を検出するための監視デバイスをさらに備える請求項1から20のいずれか一項に記載のアキシャル-ラジアル摺動軸受(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アキシャル-ラジアル摺動軸受、特に旋回リング軸受に関する。その旋回リング軸受は、第1の軸受リング及び第2の軸受リングを備え、これらの軸受リングは軸受け軸周りに相互に対して回転可能に配置され、第2の軸受リングは少なくとも部分的に第1の軸受リングを収容するために略U字形状の断面を形成する。その旋回リング軸受は、上記第1の軸受リングと第2の軸受リングの間に配置され、上記軸受リングを軸方向及び半径方向に切り離すポリマー性材料の摺動要素をさらに備え、上記摺動要素の各々は、軸方向摺動面(axial sliding surfaces)を備える軸方向領域(axial region)及び半径摺動面(radial sliding surfaces)を備える半径領域(radial region)を有する略L字形状の断面を有する。
【背景技術】
【0002】
上記のアキシャル-ラジアル摺動軸受は、軸方向及び半径方向の双方の力を支持するように設計され、例えば、回転割出台、分割装置、CNC回転軸の設計、及び旋回スクリーンの取付けなどに使用される。摩擦学的に適したポリマーが、摺動要素を製造するためのポリマー材料として使用可能であり、そのポリマー材料は、通常は潤滑剤なしで適用可能である。
【0003】
一般的なアキシャル-ラジアル摺動軸受は、例えば、特許文献1に記載されている。そのような従来の摺動軸受の利点は、特に、相互に対する軸受リングの低い摩擦、保守なしでの運用、低コストの製造、強健な設計及び高い摩耗耐性に見られる。半径方向及び軸方向の荷重に加えて、軸受点にかかる傾斜モーメント荷重も、小さな構造サイズにもかかわらず確実に吸収可能であるので、これらの従来のアキシャル-ラジアル摺動軸受は、接続構造体を設計すること及び軸受を設置することに伴う労力及び結果としてコストを大幅に低減する。これらの多くの利点は、多様な分野において上記のポリマー旋回リング軸受(PRT)の広範な使用をもたらしてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国実用新案第202013101374号明細書
【発明の概要】
【0005】
上記の摺動軸受の複数のアプリケーションでは、課題は、2つの軸受リングの相互に対する回転運動を行う際に、例えば、組立て台上で使用される際に、2つの軸受リングの相互に対する所定の相対回転位置を高い繰返し精度で近づけて固定することになり得る。
【0006】
したがって、本発明は、従来のアキシャル-ラジアル摺動軸受から開始して大きな追加の設計労力を要することなく、かつこの追加の機能が摺動軸受に関する設置スペースの増加を要して達成されるのではなく、摺動軸受の2つの軸受リングの相互に対する相対回転位置が高い信頼性及び高い再現性で近づけられるような態様で、従来のアキシャル-ラジアル摺動軸受をさらに発展させる問題に基づいている。
【0007】
本発明は、この問題を、請求項1の特徴を備えるアキシャル-ラジアル摺動軸受によって既に解決している。本発明に係るアキシャル-ラジアル摺動軸受は、第1の軸受リング及び第2の軸受リングを有し、これらの軸受リングは軸受け軸周りに相互に対して回転可能に配置され、第2の軸受リングは、第1の軸受リングを少なくとも部分的に収容するために略U字形状の断面を形成する。アキシャル-ラジアル摺動軸受は、摩擦学的目的のために使用可能なポリマー材料の摺動要素をさらに備え、その摺動要素は、軸受リングを軸方向及び半径方向に切り離すため、すなわち、軸受リング間の摩擦を低減するため、すなわち、軸受リングの摩擦を相互に対して軸方向及び半径方向に低減するために、第1の軸受リングと第2の軸受リングの間に配置され、摺動要素の各々は軸方向摺動面を備える軸方向領域及び半径摺動面を備える半径領域を有する略L字形状の断面を有する。本発明に係るアキシャル-ラジアル摺動軸受は、2つの軸受リングの少なくとも一方が、偏向可能な戻り止め要素のための収容部(seat)を有し、戻り止め要素は収容部に収容されて力を受けることができ、2つの軸受リングの他方は、2つの軸受リングの相互に対する指定回転位置において解除可能なロック動作を与えるように偏向可能な戻り止め要素を少なくとも部分的に収容するための、戻り止め要素に関連付けられた少なくとも1つの戻り止め凹部を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るアキシャル-ラジアル摺動軸受は、以下の態様で、2つの軸受リングの相互に対する相対配置を設計する基本的着想に基づいている。その態様では、2つの軸受リングの相互の少なくとも2つの動作状態又は動作位置が規定可能であり、すなわち、2つの軸受リングが軸受け軸周りに相互に対して自由に回転可能に配置される第1の動作状態又は動作位置、並びに第1及び第2の軸受リングの相互に対する所定の相対回転位置により、2つの軸受リングの相互に対する相対動作が阻止される少なくとも第2の動作状態又は動作位置が規定可能であり、ただしこの場合、この阻止動作は所定の解除用トルク又は解除力を付与することによって再度解除又は除去可能となる。本発明によると、この2つの軸受リングの相互に対する動作の阻止動作は、2つの軸受リングの相互に対する解除可能なロック動作によって与えられる。2つの軸受リングの一方に、他方の軸受リングにおける関連する戻り止め凹部と協働する力作動戻り止め要素を設けて2つの軸受リングの相互に対する相対回転を解除可能に阻止することによって、所望の機能が、軸受の体積全体を増加させてしまうような空間的構造設計を要することなく、提供可能となる。2つの軸受リングの相互に対する上述のロック動作は、2つの軸受リングの間の少なくとも1つの所定の相対回転位置の調整後に発生し、その位置では、力の付与の結果として戻り止め要素が少なくとも1つの戻り止め凹部内に移動され、結果として関連する戻り止め凹部と係合する。
【0009】
本発明に係る摺動軸受又はその構成要素の軸方向面又は半径方向面としての面の指定は、軸受の軸方向又は半径方向に略垂直な面を意味する。摺動要素の形状に関してL字形状は、それぞれの摺動要素が、相互に対して約90°でされ得る軸方向及び半径摺動面を有する設計を意味し得る。この場合、軸受の半径方向における軸方向摺動面の延長部寸法は、軸受の軸方向における半径摺動面の延長部寸法よりも大きくなり得る。ただし、用語「L字形状」摺動要素は、軸受の半径方向における軸方向摺動面の延長部寸法が軸受の軸方向における半径摺動面の延長部寸法以下である実施形態も包含する。
【0010】
本発明の更なる展開及び本発明に係る追加の特徴が、概略説明、図面、図面の説明及び従属請求項に記載される。
【0011】
有利には、両軸受リング上に設けられた相補的な戻り止め手段が、2つの軸受リングの対向面上に配置され、それにより、戻り止め手段が2つの軸受リングの相互に対する相対回転運動を解放可能に阻止するために構成されることが規定され得る。
【0012】
本発明によると、協働して相互に補完するように構成された戻り止め要素及び戻り止め凹部は、2つの軸受リングの相互に向き合う境界面に配置され得る。有利な実施形態では、戻り止め要素及び少なくとも1つの戻り止め凹部が一方及び他方の軸受リングのそれぞれ相互に向き合う半径方向面に配置されることが規定され得る。一方の軸受リングの収容部に配置された戻り止め要素が、2つの軸受リングの相互に対する所定の相対回転位置を設定する際に相互に対する2つの軸受リングのロック動作を半径方向に与えるために、半径方向に力を受けることで作用されて偏向可能となるように配置されることが規定され得る。ただし、戻り止め要素及び少なくとも1つの戻り止め凹部が一方及び他方の軸受リングの相互に向き合う軸方向面にそれぞれ配置されること、並びに一方の軸受リングの収容部に配置された戻り止め要素が軸方向に力を受けることで作用されて偏向可能となることを規定することも可能である。さらに、戻り止め要素及び少なくとも1つの関連する戻り止め凹部が一方及び他方の軸受リングのそれぞれの相互に向き合う半径方向面に配置され、同時に、更なる戻り止め要素及びそれに関連する少なくとも1つの戻り止め凹部が一方及び他方の軸受リングのそれぞれの相互に向き合う軸方向面に配置され、それにより、2つの軸受リングの相互に対するロック動作が、相互に向き合う軸方向面及び相互に向き合う半径方向面の双方において行われ得ることも可能である。
【0013】
軸受リングの一方において力をかけられて偏向可能な戻り止め要素を受容するための収容領域が、所望のロック動作を与えるために摺動要素なく設計されることを規定するのが有利となり得る。軸方向面上の2つの軸受リングの一方における戻り止め要素の収容部の領域において、L字形状摺動要素のいずれも又はその部分も設けられないが、ロック動作時に戻り止め要素の半径方向の偏向が当該摺動要素によって阻害されないような態様で軸方向面に単独で延在し又は軸方向面を単独で与える少なくとも1つの他の摺動要素が設けられることが規定され得る。特に、摺動要素も又は摺動要素の部分も、2つの軸受リングのうちの一方の軸受リングの半径方向面上の戻り止め要素の収容部の領域に配置されないことが規定され得る。
【0014】
本発明に係る軸受の設計は、以下のようになり得る。軸受リングの一方に対して、他方の軸受リングが静止して保持された状態で所定のトルクを付与することによって、2つの軸受リングの相互に対する係合を解除するための解除用トルクが生成可能となり、この所定のトルクはロック動作が解除可能となるトルク閾値を表す。この目的のため、戻り止め要素は、対応する戻り止め曲面を用いて設計可能である。戻り止め要素が、少なくとも部分的に、球状又は筒状の戻り止め面を有し、その戻り止め面が、戻り止め要素の戻り止め姿勢又は戻り止め位置において、当該戻り止め凹部の相補的な戻り止め面に関連する少なくとも1つの戻り止め凹部に対応することを規定することが有利である。これに関して、戻り止め面という用語は、戻り止め要素又は関連する戻り止め凹部の接触面を意味する。戻り止め面、すなわち、接触面の上述の湾曲設計によって、ロックの所望の解除可能性が、簡素な態様で与えられることになる。戻り止め要素の戻り止め面及びその戻り止め要素に関連する戻り止め凹部の戻り止め面の対応する設計によって、解除用トルクが2つの軸受リングの相互に対する回転方向に応じて異なる態様で設定されることが規定されてもよく、これは特定のアプリケーションにおいて有利となり得る。
【0015】
略U字形状の断面を有する第2の軸受リングの設計について、第2の軸受リングは、レセプタクルを形成するための軸方向フランジによって接続された軸方向に離隔された2つのリング部分を有し、第1の軸受リングは第2の軸受リングのそれら軸方向に離隔された2つのリング部分の間に少なくとも部分的に配置されることが規定され得る。実施形態に応じて、軸方向フランジは、軸方向に離隔して概ね同軸に配列された2つのリング部分の内側に半径方向に又は外側に半径方向に配置され得る。アプリケーションに応じて、第2の軸受リングの軸方向フランジが軸方向に離隔された2つのリング部分の内側に半径方向に配置される実施形態は、特に有利であり、それにより、第2の軸受リングによって部分的に受容される第1の軸受リングの外半径方向面が露出され、機能的な面、例えば、歯車の機能的な面を備え得る。
【0016】
本発明によると、戻り止め要素は、一体以上で形成され得る。特に、これは、ピン要素として、例えば、筒状のピン要素として一体形成され得る。この場合、他方の軸受リングにおける関連する戻り止め凹部に対応する戻り止め要素の長さは、所定の解除用トルクを規定するように設定可能であり、その所定の解除用トルクにおいて、本発明に係るアキシャル-ラジアル摺動軸受の2つの軸受リングの間の設定戻り止め位置が解放され得る。戻り止め要素が筒状のピン要素として形成され得るような実施形態では、関連する戻り止め凹部はピン要素の筒状体積部の部分的体積部に対応していてもよく、その部分的体積部は筒状の戻り止め要素の寸法に実質的に等しい軸受の軸方向の延長部の寸法を有し得る。
【0017】
戻り止め要素の長手範囲(軸方向範囲)は最小軸方向範囲を有する軸受リングの軸方向範囲の半分よりも大きいことが規定され得る。特に有用な実施形態では、戻り止め要素の軸方向範囲は第2の軸受リングの径フランジの軸方向範囲に対応し、それにより、2つの軸受リングのロック動作が径フランジの軸範囲全体にわたって与えられ得ることが規定され得る。この目的のため、関連する戻り止め凹部の軸方向延長部は戻り止め要素の軸方向寸法に対応し、それにより、戻り止め要素と戻り止め凹部の間の上述のロック効果が、2つの軸受リング間の所定の相対回転位置の設定後に、その延長部全体にわたって発揮され、その相対回転位置において、力をかけられた戻り止め要素が関連の戻り止め凹部に係合することが規定され得る。
【0018】
力の付与を戻り止め要素に与えるために、例えば、特にネジ要素の形態の締付け要素が設けられてもよく、その締付け要素は戻り止め要素、特に、弾性変形可能な戻り止め要素を押圧し、2つの軸受リングの相互に対する所定の相対回転位置が存在する場合に、ロックのために戻り止め要素が関連する戻り止め凹部内に突入する弾性反力を生成する。
【0019】
他の実施形態では、特に渦巻バネの形態のバネデバイスが設けられてもよく、そのバネデバイスは、一方の軸受リングの穴、例えば、径穴に配置可能であり、戻り止め要素とネジなどの半径方向制止要素との間に締め付けられる。好ましくは、渦巻バネの長手軸が戻り止め要素の長手軸に略垂直にされることが規定され得る。
【0020】
特に、2つの軸受リングの相互に対する複数の相対回転位置、及びそれにより組立て台を設計する際の複数の組立て位置を与えるために、2つの軸受リングの他方が、2つの軸受リングが相互に対して回転される際に戻り止め要素を連続的に受容するための周方向に離隔された複数の戻り止め凹部を有することが有利に規定され得る。
【0021】
本発明に係るアキシャル-ラジアル摺動軸受の最も摩耗のない動作を可能とするために、2つの軸受リングの一方における戻り止め要素のための収容部が、戻り止め位置の外側で2つの軸受リングの相互に対する相対動作姿勢又は動作位置において実質的に完全に戻り止め要素を受容するように設計されることが有利に規定され得る。さらに、この構成は、可能な限り遊びのない2つの軸受リングの相互に対する配置を与えることができる。
【0022】
一般に、戻り止め要素の収容部の配置は第2の軸受リング又は第1の軸受リングに設けられればよく、対応する態様で、関連する少なくとも1つの戻り止め凹部の配置は第2の軸受リング又は第1の軸受リングに設けられればよい。軸方向に離隔された2つのリング部分を接続するために第2の軸受リングの軸方向フランジが半径方向内向きに設けられるような実施形態では、少なくとも1つの戻り止め凹部は、第2の軸受リング、特に第2の軸受リングの軸方向フランジ、及び第1の軸受リングの戻り止め要素の収容部に有利に配置され得る。この実施形態は、戻り止め要素に力を付与するための要素が半径方向外側からアクセス可能となることで軸受の可能な保守が容易化できるという、特に有利な効果を有する。
【0023】
本発明に係る摺動軸受の設計において、2つの軸受リングを相互から係合解除するために、2つの軸受リングは、所定のトルクを軸受リングの一方に付与することによっては分離されないが、戻り止め要素を少なくとも1つの戻り止め凹部から係合解除可能とする対応の作動デバイスを設けて作動させることによって分離されることが規定され得る。この関連において、作動デバイスは、2つの軸受リングの一方に対して配置され得る。それは、当該軸受リングに対して可動でありかつ戻り止め要素と動作可能に接続している作動部分を有してもよい。特に、作動部分は戻り止め要素に連動配置され、この連動は1:1の比の作動部分及び戻り止め要素の直線移動に対する結合の態様で実現され得るが、その必要はないことが規定され得る。その代わりに、連動は、移動の減少又は伝達、任意選択的に作動部分と戻り止め要素との間の方向の変化にも供し、それによって確立され得る。
【0024】
有利なことに、高いトルクが軸受リングの一方に付与される場合であっても、少なくとも1つの関連する戻り止め凹部との戻り止め要素の係合によるロック動作が、作動デバイスの作動なく非破壊的には解除可能でないような第1の軸受リングと第2の軸受リングの間の形態閉塞を与えることが規定され得る。ロック状態の戻り止め要素が所定の半径方向範囲にわたって少なくとも1つの関連する戻り止め凹部に係合し、戻り止め要素及び戻り止め凹部における相互に関連する戻り止め面が以下の態様で設計されることが有利に規定され、その態様では、軸受リングの一方にトルクが付与される際に、力成分が全く又はわずかしか戻り止め要素に対して生成されず、その力成分が力の付与に抗して戻り止め凹部から戻り止め要素を押し出す。例えば、一実施形態では、戻り止め要素が戻り止め凹部との係合の領域における平坦境界面を有する状態で、少なくとも1つの戻り止め凹部が平坦面によって形成されることが規定され得る。一実施形態では、戻り止め要素は筒状の形状であり、筒体軸は、特に、戻り止め要素の収容部が配置される軸受リングの一方に対して半径方向にされ得ることも規定され得る。
【0025】
上述したような作動デバイスを有する本発明に係るアキシャル-ラジアル摺動軸受の実施形態においても、略U字形状の断面を有する第2の軸受リングを設計することについて、レセプタクルを設計するために、第2の軸受リングは軸方向フランジによって接続された軸方向に離隔した2つのリング部分を有し、そのレセプタクルでは、第2の軸受リングの軸方向に離隔したこれら2つのリング部分の間に第1の軸受リングが少なくとも部分的に配置されることが規定され得る。有利なことに、第2の軸受リングの軸方向フランジは軸方向に離隔された2つのリング部分の半径方向内向きに配置され、それにより、第2の軸受リングによって部分的に受容された第1の軸受リングの外半径方向面が露出され、特に作動デバイスが配置可能な機能面を有してもよく、それが作動デバイスの作動部分のアクセス性を高めることが規定され得る。
【0026】
一般に、作動デバイスの「作動部分」という用語は、特に、戻り止め要素及び関連の戻り止め凹部のロックを解除するために、ユーザによって手動で係合され又は作動デバイスの制御可能なアクチュエータによって係合される部分を指し、作動部分は、この目的のために、2つの軸受リングの一方に対して半径方向に偏向可能となるように配置可能である。
【0027】
特に有用な実施形態では、動作可能に接続され、特に連動された戻り止め要素と作動部分との間に、力伝達要素、例えば、ボーデンケーブル又はロッド形状要素などの牽引及び/又は押圧手段が配置されることが規定され得る。例えば、上記の力伝達要素を用いることによって、作動デバイスの作動は、本発明に係るアキシャル-ラジアル摺動軸受から遠隔で局部的に行われ得る。特に簡素に設計された実施形態では、戻り止め要素及び作動部分が一体的に、特に、場合によってはその間に位置するロッド部分などの力伝達要素と一体として製造されることも規定され得る。
【0028】
例えば、一体構成要素は、一端に作動部分を、他端に戻り止め要素を設けるロッド形状要素として形成され得る。これに関して、本出願では、「要素」という用語は、広義に理解されるべきであるとともに、構成要素の部分を示す場合もある。また、複数のそのような要素又は部分は、単一の構成要素として一体形成されてもよい。
【0029】
上記作動デバイスを備える本発明に係るアキシャル-ラジアル摺動軸受の実施形態では、戻り止め要素に力を付与するために、戻り止め要素は、2つの軸受リングの相互に対する所定の回転位置を設定した後に戻り止め要素が少なくとも1つの戻り止め凹部に係合するような態様でバネ載荷配置されてもよい。特に、作動デバイスは、例えば、渦巻バネの形態のバネデバイスを有してもよく、バネデバイスは戻り止め要素に対して直接又は間接的に作用し、軸受リングの一方に対して固定された部分に対して支持され、それにより、戻り止め要素は2つの軸受リングの相互に対する所定の回転位置が存在する場合にロックのための関連する戻り止め凹部に突入する。作動部分と戻り止め要素の間の動作可能な接続に起因して、戻り止め要素のこのバネ弾性予荷重は、作動部分及び/又は中間の力伝達要素において対応するバネデバイスの係合によって実施されてもよい。
【0030】
戻り止め要素を作動するための作動デバイスを有する本発明に係るアキシャル-ラジアル摺動軸受の実施形態の設計においても、組立て台を提供するために、2つの軸受リングの相互に対する複数の相対回転位置及び結果として複数の組立て位置が、2つの軸受リングの相互に対する回転時に戻り止め要素を連続的に受容するための周方向に離隔された複数の戻り止め凹部を有する2つの軸受リングの他方によって与えられることが有利に規定され得る。
【0031】
2つの軸受リングのロックを解除した後に、軸受リングの相互に対するその後の回転を防止するために、特に、更なる組立て位置を設定するために、戻り止め要素は、作動部分における力の付与に対して戻り止め要素にかかる作動力の除去後に、他方の軸受リングの半径方向面に擦れる。作動デバイスは、少なくとも1つの戻り止め凹部における戻り止め要素のロックが解除される動作位置をロックするために配置及び設計されること、すなわち、少なくとも1つの関連する戻り止め凹部における戻り止め要素の係合が戻り止め凹部からの戻り止め要素の引抜きによって除去されることが有利に規定され得る。このロック動作は、戻り止め要素に動作可能に接続された作動部分の及び/又はそれらの間に配置された力伝達要素若しくは部分の、例えば、戻り止め要素の締付け動作によって、強制ロックの態様で行われ得る。他の実施形態では、作動デバイスが動作位置の積極的ロックのために配置及び設計されることも規定され得る。例えば、作動部分、戻り止め要素及び/又はそれらの間に配置された力伝達要素若しくは部分が、2つの軸受リングの一方に対する半径方向への所定の距離閾値を超える強制ガイド動作が戻り止め要素の戻り止め位置からのロックを解除するように配置され、閾値距離を超えた後の半径方向周りの回転が作動部分、戻り止め要素及び/又はそれらの間に配置された力伝達要素若しくは部分と軸受リングの他方との間の半径方向積極的ロックをかけるように配置されることが規定され得る。
【0032】
特に有利な実施形態では、作動デバイスは、特に、手動の作動が不要となり得るような態様で、特に作動力又は作動トルクを与えるように構成された制御可能な設計のアクチュエータを有し、それが本発明に係る摺動軸受の取扱いを容易化することが規定され得る。そのようなアクチュエータは、電気式、空圧式又は油圧式アクチュエータであり得る。そのようなアクチュエータは、当該分野において調整ユニットともいわれる。
【0033】
なお、摺動軸受の作動デバイスが制御可能な調整ユニットを備えるような実施形態では、特に調整ユニットが自己ロック設計のものであるような実施形態では、収容部に収容された戻り止め要素は必ずしも力作動的態様で配置される必要はない。これに関して、そのような摺動軸受は、ロック動作位置及び/又はロック解除動作位置において、戻り止め要素が力をかけられないこと、すなわち、力なしで配置されることを除いて、上述した摺動軸受の1つのように設計されてもよく、この場合、この動作位置は調整ユニットによって保持又は固定可能となる。
【0034】
調整ユニットは、スラストチューブを、特に電動シリンダ、空圧シリンダ又は油圧シリンダとして、直線的に伸展又は格納させるように設計可能である。好ましくは、そのような調整ユニットが、作動デバイスの作動部分に対して出力側に連動され、特に作動部分の直線運動のためにそれに接続されること、又は作動部分が調整ユニットの一体部品であることが規定され得る。特にモータ及びこのモータによって駆動される主軸を含むリニアアクチュエータを備え得る電気式シリンダの使用は、小型構造に基づいていてもよく、本発明に係るアキシャル-ラジアル摺動軸受を設計するための本発明に係る第1及び第2の軸受リングの構成への簡略な統合を可能とする。
【0035】
有利なことに、アクチュエータ又は調整ユニットが、軸受リングの相互に対する少なくとも2つの動作位置、すなわち、戻り止め要素に割り当てられた戻り止め凹部に戻り止め要素が係合することによって2つの軸受リングが相互に対してロックされたロック動作位置、及びいずれの割り当てられた戻り止め凹部にも戻り止め要素が係合しないことによって2つの軸受リングが相互に対してロック解除して配置された解除動作位置を設定するために設計されることが規定され得る。そのようなアクチュエータ又は作動ユニットは、例えば、特にロック動作のために又は2つの軸受リングの相互に対するロックを解除するために、ユーザが制御信号、特に電気制御信号をアクチュエータ又は作動ユニットに送信させ、それにより、アクチュエータ又は作動ユニットのその動作位置を変化させることによって制御可能に構成され得る。
【0036】
特に有用な実施形態では、本発明に係るアキシャル-ラジアル摺動軸受が、ユーザによって選択されたアクチュエータを本発明に係るアキシャル-ラジアル摺動軸受の作動デバイスに接続するように準備されることが規定され得る。この目的のため、例えば、作動デバイスの作動部分が作動ユニットへの結合のためのボルトネジ又は雌ネジなどの機械的結合デバイスを有し、その作動ユニットは、相補的な設計の結合デバイス、すなわち、この場合には雌ネジ又はボルトネジによって出力側に構成可能であり、かつ作動デバイスの結合デバイスに結合可能であることが規定され得る。
【0037】
2つの軸受リングの相互に対するロック、又は関連する戻り止め凹部への戻り止め要素のロックを調整若しくは解除することは、摺動軸受の動作の過程において相互に関連する戻り止め面の摩耗をもたらすことになるので、所定の構成要素の保守又は交換が所定の動作期間後に必要となる。この目的のため、本発明に係るアキシャル-ラジアル摺動軸受は、アキシャル-ラジアル摺動軸受のロック状態及び/又は非ロック状態を検出するための監視デバイスを有していてもよい。この監視デバイスは、特に、作動デバイスに、又はアクチュエータ若しくは調整ユニットに統合されてもよい。監視デバイスは、例えば、特に作動部分に連動され得る電気接点を備えていてもよく、例えば、その接点の投入が2つの要素の相互に対する確実なロックを示すような態様で構成及び配置され得る。例えば、電気接点は固定部分及び作動部分に連動される部分を備えていてもよく、この接点の2つの部分は、電気接点が構成されるまで作動部分の動作によって相互に向かって可動となるように配置される。
【0038】
一実施形態では、監視デバイスは、運用中にロック状態/非ロック状態の回数を特定して、例えば、そこから摩耗の指標を導出するための計数手段を含むことが規定されてもよい。さらに、監視デバイスは、ロック状態/非ロック状態の特定された回数を記憶するためのメモリデバイスを備え、それは、例えば、摩耗状態を推定するため及び/又は保守間隔を決定するために外部制御デバイスによって読出し可能とされることが規定され得る。
【0039】
有利なことに、摺動要素は、射出成形品として形成可能である。本発明に係るアキシャル-ラジアル摺動軸受の半径摺動面及び軸方向摺動面の双方が単一の摺動要素によって設けられるように、膜ヒンジの態様で薄化する材料が、半径摺動面を軸方向摺動面に約90°屈曲させるために半径摺動面と軸方向摺動面の間に設けられてもよい。
【0040】
特に本発明に係る摺動軸受の組立てを容易化するために、単一の摺動要素が、その軸方向摺動面の領域に、実質的に隙間なく配置されて設置位置において、すなわち、軸受の組立て状態において周方向に相互に連続する複数の第1のセクタを備え、その場合、これらのセクタが、例えば、台形状に形成され得ることが有利に規定され得る。さらに、摺動要素が、その半径摺動面の領域に、周方向に離隔されかつ周方向に連続する複数のセクタを備え、それにより、それぞれの摺動要素は、第1のセクタが第1及び第2の軸受リングの相互に対向する軸方向境界面の間に配置され、第2のセクタが第1及び第2の軸受リングの相互に対向する径境界面の間に配置されるように円状に配置可能となることが規定され得る。少なくとも2つの上記摺動要素が含まれ、それらがそれらの軸方向摺動面に対して軸方向に第1の軸受リングの概ね軸方向寸法だけオフセットされ、かつ相互に対して周方向に第1のセクタの周方向寸法の約半分だけオフセットされるように配置されることを規定することが特に有利となり得る。このように、摺動要素の第1のセクタ間の半径方向に延在する境界面及び摺動要素の第2のセクタ間の半径方向に延在する境界面が周方向で相互に重ならないが、相互からオフセットして配置されることが達成可能となり、これにより、本発明に係るアキシャル-ラジアル摺動軸受の耐荷重を増加させることができる。
【0041】
以下に、添付図面を参照して、変形例とともに実施形態を説明することによって、本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1は、本発明によって設計されたアキシャル-ラジアル摺動軸受の斜視図である。
図2図2は、図1に示す本発明に係る摺動軸受の縦断面を示す。
図3図3は、図1の本発明に係る軸受を、第2の軸受リングを部分的に除去した上面図で示す。
図4図4は、図1の本発明に係る摺動軸受の第2の軸受リングを単一の斜視図で示す。
図5図5は、図1の本発明に係る摺動軸受の第1の軸受リングを単一の斜視図で示す。
図6図6は、斜視図における図1の本発明に係る摺動軸受の摺動要素の部分図である。
図7図7は、本発明によって設計された第2の実施形態のアキシャル-ラジアル摺動軸受の斜視図である。
図8図8は、図7に示すアキシャル-ラジアル摺動軸受の断面図を示して作動要素を説明する。
図9図9は、作動要素の構成要素の分解図を示す。
図10図10は、本発明によって設計された第3の実施形態のアキシャル-ラジアル摺動軸受の斜視分解図である。
図11図11は、本発明によって設計された第4の実施形態のアキシャル-ラジアル摺動軸受の斜視分解図である。
図12図12は、本発明によって設計された第5の実施形態のアキシャル-ラジアル摺動軸受の斜視分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1に、本発明に係るアキシャル-ラジアル摺動軸受1を斜視図で示す。軸受1は、第1の、すなわち、内側の軸受リング2を有し、軸受リング2は、第2の、すなわち、外側の軸受リング4と同軸に配置され、その軸方向範囲全体にわたって及びその半径方向範囲の一部にわたって軸受リング4によって受容される。この目的のため、第2の軸受リング4は、摺動軸受の長手軸を包含する部分において略U字形状である。両軸受リング2、4は、アルミニウム又はスチールなどの同じ又は異なる金属材料から形成可能である。ただし、軸受リングの少なくとも一方又はそれらの両方を、特に少なくとも部分的に、プラスチック材料から形成することも可能である。
【0044】
図示する実施形態では、第1の軸受リング2は低い全高を有する中空筒体の態様で一体形成され、一方で、第2の軸受リング4は2つのリング部分41a、bからなり、リング部分41a、bは軸方向に離隔され、軸方向フランジ42によって接続されてU字形状の断面を有する上述のリングを形成する。L字形状摺動要素6が、相互に向き合う軸方向面及び半径方向面において軸受リング間の摩擦を切り離し又は除去するために2つの軸受リング2、4の相互に向き合う半径方向面及び軸方向面の間に設けられる。摺動要素6の厚みを含む第1の摺動リングの軸方向高さの寸法は、2つの軸受リング2、4が実質的に遊びなしで又は摺動軸受の軸A周りの小さな隙間寸法で相互に回転可能となるように配置されるような態様で第2の軸受リング又はそのレセプタクルのリング部分41a、bの軸方向間隔に適合される。アプリケーションに応じて、本発明に係るアキシャル-ラジアル摺動軸受は、第1の軸受リング又は第2の軸受リングが静止した態様で配置され、一方、当該静止した軸受リングに対してそれぞれ他方の軸受リングが回転可能となるような態様で使用可能である。
【0045】
図2は、図1のアキシャル-ラジアル摺動軸受を断面図で示し、その断面の平面は軸受け軸Aを含む。図から分かるように、記載する実施形態では、第2の軸受リング4は、リング44が取り付けられる自由端にリング部分41b及び軸方向フランジ42を設けるL字形状リング43によって形成され、それにより、L字形状リング43又はリング44の半径方向面45及び2つの軸方向面40a、bが第1の軸受リング2のためのレセプタクルを形成する。図から分かるように、2つの軸受リングが可能な限り少ない摩擦で相互に対して回転することを可能とするために、第1の軸受リングの軸方向面20a、bは第2の軸受リングの軸方向面40a、bに向き、対応する態様で、第2の軸受リングの半径方向面45及び第1の軸受リングの半径方向面21bは相互に向き合い、摺動要素6はそれらの間に、指示された軸方向面及び半径方向面に対して2つの軸受リングの対応するセクタ部分を平行にして配置される。
【0046】
図3は、本発明によって設計されたアキシャル-ラジアル摺動軸受1を正面平面図で示し、L字形状リング43に螺合されて第2の軸受リング4を形成するリング44は除去されている。これに関して、図3は、複数の摺動要素セクタ60が第2の軸受リング4との第1の軸受リング2の軸方向重なり領域に配置されて軸方向摺動面を与える第1の軸受リング2の軸方向面20aの正面図を示す。それぞれの曲率を調整するために、周方向及び半径方向に延在する摺動要素セクタ60は、スロット61が隣接セクタ間に位置するように台形状に形成される。摺動要素セクタ60は、戻り止め要素8のための収容部7が第1の軸受リング2に配置された角部分を除いて、軸方向面20aの半径方向内側部分を完全に覆う。記載する実施形態では、相互に対して回転可能に配置された2つの軸受リングのロックは、2つの軸受リング2、4のそれぞれ相互に向き合う半径方向面上で行われる。この場合、戻り止め要素は、ここでは戻り止め要素の直径に適合された略矩形の凹部にバネ荷重下で配置された筒状のピンとして設計される。これに関して、この凹部は戻り止め要素8のための収容部7として作用し、収容部内の戻り止め要素の相対位置は2つの軸受リング2、4の相互に対するそれぞれの相対回転状態に応じる。図示するように、収容部は実質的に立方体形状又は凹部を有し、底部、すなわち、径境界部分は、特に戻り止め要素8の曲率に適合して湾曲され得る。
【0047】
記載する実施形態では、戻り止め要素8は、ここでは渦巻バネの形態のバネ要素80によって半径方向に力を受け、バネ要素は締結要素、例えば、半径方向に配置されたネジ81上に支持される(図1参照)。図示する相対回転位置では、力の付与に起因して戻り止め要素8がそれに関連する戻り止め凹部9に押し込まれ、それにより、軸受リングの相互に対する自由回転可能性が阻害されるので、図3に示す2つの軸受リング2、4の相対回転位置は2つの軸受リングの相互に対するロック動作をもたらす。軸方向フランジ42の半径方向面45は、周方向に90°離隔されて戻り止め要素8の筒形状に適合された4個の戻り止め凹部9を有し、それにより、完全回転時に、記載されるように画定された4個の戻り止め位置が規定の態様で近づけられることが分かる。
【0048】
図示するように、軸方向面20aにおける戻り止め要素8のための収容部7の領域では、台形形態の対応する軸方向摺動面部分を与えるために、上述の摺動要素の1つの摺動要素セクタは設けられないが、その代わりに2つの追加の摺動要素5が設けられる。追加の摺動要素5は、この場合ではロッド形状であり、その各々は、それらの正面が第1の軸受リング内のそれらの関連する軸方向に延在する穴から外部にある状態で延在し、摺動要素6の摺動要素セクタ60と面一となる。
【0049】
図4は、第2の軸受リングを、半径方向面45及び戻り止め凹部9の1つの斜視図で示す。戻り止め凹部9は、記載する実施形態では、2つのリング部分41a、bの間に軸方向間隔全体にわたって延在し、したがって戻り止め要素8の軸方向長さに適合される。本発明に係るアキシャル-ラジアル摺動軸受の記載する実施形態において設けられる4個の戻り止め位置は、2つの軸受リング2、4の相互に対する4個の相対回転位置に対応し、所定の閾値以上のトルクを付与することによって分割可能となる。その分割は、ここでは対称的に、すなわち、戻り止め要素及び関連する単数又は複数の戻り止め凹部の戻り止め面の対称設計によって回転方向とは独立して設定される。
【0050】
図5は、本発明に係るアキシャル-ラジアル摺動軸受1の第1の軸受リング2の斜視図を単一の図で示す。第2の軸受リングの半径方向面45に向く半径方向内側の半径方向面21bがあり、その半径方向面21bには、戻り止め要素8に適合された凹部として収容部7が形成されることが分かる。外半径方向面21aから開始する径穴22は、組立て状態において、実質的に軸方向中心で収容部を貫通し、バネ要素80及び支持ネジ81を受容する。図4に示すように、収容部は、第1の軸受リング2の厚み全体にわたって軸方向に延在する。
【0051】
図6は、本発明に係るアキシャル-ラジアル摺動軸受1の設計のための摺動要素6を切取り図で単一の表示で示す。記載する実施形態では、2列の同一に構成された摺動要素6が用いられ、この場合、単一の摺動要素が軸方向摺動要素セクタ60及び径摺動要素セクタ64を与える。記載する実施形態では、軸方向摺動要素セクタは台形の形状であり、両セクタ60、64は相互に対して約90°の角度で配置されて略L字形状摺動要素を形成する。この目的のため、各摺動要素6は、この領域の材料を薄化することによって形成可能な膜ヒンジ65を有する。この場合、この実施形態では、摺動要素6の第1列は第1の軸受リング2の半径方向内側部分の領域に周方向に連続的に配置され、それにより、軸方向面20aは軸方向摺動要素セクタ60によって占有されることになり、内半径方向面21bは摺動要素6の径摺動要素セクタ64によって占有されることになる(図5参照)。この摺動要素の第1列に加えて、摺動要素セクタ60を有する摺動要素6の更なる列は、図5における下部に位置する第1の軸受リング2の軸方向面20bに同様に配置され、対応する径摺動要素セクタ64は同様に、アキシャル-ラジアル摺動軸受の全ての構成要素の組立て状態において軸受リング2、4の軸方向及び半径方向の切離しのために第1の軸受リング2の内半径方向面21bに当接する。
【0052】
図6から分かるように、配置は、摺動要素セクタ64の半径方向の寸法の2倍が第1の軸受リング2の厚さに実質的に等しくなるように、2列の摺動要素の径摺動要素セクタ64が端部同士で当接するようなものであり得る。図から分かるように、摺動要素の摺動要素セクタ64は、以下のような態様で形成される。その態様では、両列の摺動要素の、膜ヒンジ65の領域における摺動要素の周方向範囲の半分だけのオフセットによって、摺動要素セクタ64は相互に係合し、それにより、内側軸受リング2の内半径方向面21が摺動要素セクタ64によって実質的に完全に覆われ、かつ、この実施形態では、第1の軸受リング2の軸方向の厚さは設置位置における摺動要素セクタ64の軸方向の軸方向範囲に実質的に対応する。
【0053】
不図示の更なる実施形態では、図6に示す周方向2列の摺動要素の全ての摺動要素が特に膜ヒンジ65の範囲において相互に接続されることが規定され得る。そのような摺動要素のリンクチェーンは、例えば、射出成形工程によって簡素な態様で生産可能でもある。
【0054】
当業者には、それぞれのアプリケーションに応じて又は発生する動作の力に応じて摺動要素セクタ60、64の他の幾何学設計も可能であることが分かるはずである。
【0055】
以下に、図7~9を参照して、本発明に係る第2の実施形態のアキシャル-ラジアル摺動軸受1´を説明する。図7は、第1及び第2の軸受リング並びにその間に配置された摺動要素の設計及び相対配置に関して、及び戻り止め要素及びそれに関連する少なくとも1つの戻り止め凹部の基本的設計及び配置などの更なる詳細に関して、図1~6を参照して記載した実施形態と同一に設計された摺動軸受1´を斜視図で示す。この理由のために、以下では、これらの2つの実施形態の差異のみを、図面を参照して記載する。
【0056】
図7の摺動軸受1´は作動デバイス90の一部として作動要素91を有し、この作動要素は、記載する実施形態では、戻り止め要素又は戻り止め部分8´に対して動作可能に、ここでは連動して接続される作動部分92を備え(図8参照)、本発明に係る図7のアキシャル-ラジアル摺動軸受1´が、軸に垂直な断面図において、断面でない作動要素92とともに示される。この断面図は、第2の軸受リング4´の軸方向フランジ42´に配置された戻り止め凹部9´も示し、これは、この実施形態では、図1~6を参照して記載した実施形態の戻り止め凹部9と同一の設計のものであり得る。この場合、戻り止め凹部9´は、軸方向フランジ42´の軸方向範囲全体にわたって延在する。不図示の実施形態では、これらの戻り止め凹部9´は筒状の形状であってもよく、これに関しては、軸方向フランジ42´の軸方向範囲全体にわたっては延在せず、それにより、この実施形態では、凹部は軸方向に閉じた設計となり得る。図8に示すように、作動要素91は、作動部分92に加えて戻り止め要素8´を有してもよく、それは、ここでは作動部分92と一体に配置され、この実施形態では、ロックがかけられた後に第1及び第2の軸受リング(2´、4´)間の周方向の遊びを回避するために、その周方向範囲は関連する戻り止め凹部9´の周方向範囲に適合されたピン状筒体として設計され得る。戻り止め要素8´に関連する収容部7´は実質的に第1の軸受リング2´内の半径方向通路として形成され、その通路には作動要素91の締結スリーブ95が配置されることが分かる(作動デバイス90の分解図である図9参照)。締結スリーブ95に加えて、作動デバイス90は作動要素91を有し、作動要素91はここでは長細い設計のものであり、第1の端部に戻り止め要素8´を有し、対向端部に作動部分92を有し、作動要素の両端部分は接続部分93によって相互に堅く接続されている。
【0057】
組立て状態において、作動要素91は、締結スリーブ95を貫通して延在し、作動要素91及び結果としてその戻り止め要素又は戻り止め部分8´が2つの軸受リングに対して半径方向内向きの力を受けるような態様でバネ(不図示)によって締結スリーブ95に対して支持される。それにより、作動要素91の戻り止め要素8´が戻り止め凹部9´の1つに半径方向に対向して位置するような2つの軸受リングの相互に対する所定の回転位置では、作動要素91は、その戻り止め要素又は戻り止め要素部分8´とともに、それぞれの戻り止め凹部9´に係合することになる。
【0058】
戻り止めの解除、すなわち、それぞれの戻り止め凹部9´との作動要素91の戻り止め部分の係合解除は、作動部分92を半径方向外向きに引くことによって行われる。2つの軸受リングの相互に対する更なる組立て位置又は更なる相対位置を設定する際に作動要素91が永続的に外向きに引かれなければならないことを回避するため、作動デバイス90は、ロックが戻り止め要素と戻り止め凹部の1つとの間に存在する動作位置をロックするための機能を有する。この目的のため、記載する実施形態では、締結スリーブ95は軸受リングに半径方向に延在するガイドスロット96を有し、そのガイドスロット96は、締結スリーブ95に対して作動要素91の半径方向強制案内動作のために、作動部分92の領域において半径方向突出部と協働する。その突出部は、図9では隠されている。このような動作位置では、ガイドスロット96によってガイドされる作動要素91及び/又は突出部がガイドスロット96から係合解除し、作動要素91は静止締結スリーブ95に対して回転するために配置され、それにより、作動要素91に配置されたガイドピンは締結スリーブ95の正面壁部97に半径方向に積極的にロックされることになり、それにより作動デバイス90がロックされる。このロックは、作動要素を初期位置に戻すことによって解除可能であり、その初期位置では、半径方向の積極的ロックは解除され、ガイドピンはガイドスロット96と再度係合し、それにより、バネ力荷重に反作用する力が作動部分92を介してこの系に導入されない限り、作動要素は戻り止め要素8´に対して、及びバネ力荷重の結果として作動要素に対して、半径方向内向きに押圧される。
【0059】
以下の図10~13は、様々なアキシャル-ラジアル摺動軸受1´を示す。それらは、第1の軸受リング2´、第2の軸受リング4´及び摺動要素6並びに収容部7´の設計及び配置に関しては図7及び8の実施形態と相違しないが、作動デバイス100、110、120の設計に関してのみ相違し、それらを以下に記載する。
【0060】
図10の実施形態では、作動デバイス100は、戻り止め要素8´に向くその正面端部にネジ切りスリーブ102として設計されたロッド形状ハウジング101を備え、そのスリーブを介して作動デバイス100が第1の軸受リング2´のネジ穴22´に螺合され得る。この実施形態では、戻り止め要素8´は、ボーデンケーブル105として設計された引抜き手段を介して、特に手動で作動可能な作動部分(不図示)に接続される。例えば、2つの軸受リングを備える実際の摺動軸受から遠隔に配置された作動レバーなどの作動デバイスの作動部分が設けられてもよく、作動デバイスを介して、第1の軸受リング2´と第2の軸受リング4´の間の戻り止め位置を解放するために引張力がボーデンケーブル105に付与可能となる。この目的のため、ボーデンケーブル105は戻り止め要素8´に連動され、例えば、戻り止め要素8´に直接、又は少なくとも1つの更なる構成要素を介在させて固定される。
【0061】
図11に示すように本発明によって設計されたアキシャル-ラジアル摺動軸受の実施形態では、作動デバイス110は、そのハウジングにおいて、戻り止め要素8´を向くネジ切りスリーブ102を有し、それにより、デバイス110は第1の軸受リング2´の関連するネジ穴22´に螺合可能となる。一方で戻り止め要素8´は、作動デバイス110のハウジングに対して半径方向に可動に配置され、記載する実施形態では、戻り止め要素とは逆を向く作動デバイス110のハウジングの正面から突出する結合ボルト112に堅く接続される。これに関して、記載する実施形態では、設置位置における戻り止め要素8´とともに結合ボルト112は、作動デバイス110のハウジングに対して又は第1の軸受リングに対して半径方向に可動となるように配置される。本発明によって設計されたアキシャル-ラジアル摺動軸受のこの実施形態は、調整ユニットは雌ネジの形態で相補的な結合部品を有するため、単に螺合するだけでネジ切り結合ボルト112に結合可能な、図11に不図示のユーザ固有の調整ユニットへの接続に特に適する。
【0062】
図12の実施形態では、作動デバイス120は調整ユニット122を有し、調整ユニット122は電気的に作動可能であり、摺動軸受のそれぞれロック状態及び/又はロック解除状態を示すために、接触面が調整ユニットに出力側で連動される電気的な監視接点を監視デバイスとして備える。記載する実施形態では、調整ユニットは電気式シリンダの形態であり、電気式シリンダは、戻り止め要素8´が摺動可能に配置されるハウジングを有し、ハウジングは、作動デバイス120又は調整ユニット122が第1の軸受リングの関連するネジ穴22´に螺合可能となるネジ切りスリーブ102を備える。記載する実施形態では、調整ユニット122には、再充電可能なバッテリなどの統合されたエネルギー源が設けられ、それにより、調整ユニットは外部エネルギー源を必要としない。調整ユニットを制御するために及び/又は検出された動作状態を上述の監視接点を介して送信するために、作動デバイス120は、調整ユニット122に加えて、調整ユニット122に電気的及び機械的に結合された送受信機モジュール124を備え、特に、外部制御デバイスと無線通信する。例えば、調整ユニットを制御するための制御信号は、送受信機モジュール124を介して調整ユニットに送信可能であり、かつ/又は2つの軸受リング2´、4´間のロック及び/若しくは非ロックの検出された動作状態若しくは動作状態の検出された変化の回数が外部制御デバイスに通信可能である。
【符号の説明】
【0063】
1、1´ アキシャル-ラジアル軸受
2、2´ 第1の軸受リング
4、4´ 第2の軸受リング
5 摺動要素
6 摺動要素
7、7´ 収容部
8、8´ 戻り止め要素
9、9´ 戻り止め凹部
20a、b 軸方向面
21a 外半径方向面
21b 内半径方向面
22,22´ 穴
40a、b 軸方向面
41a、b リング部分
42、42´ 軸方向フランジ
43 L字形状リング
44、44´ リング
45 半径方向面
46 締結ネジ
60 軸方向面の摺動要素セクタ;第1のセクタ
61 スロット
64 軸方向面の摺動要素セクタ;第2のセクタ
65 膜ヒンジ
80 バネ要素、バネ
81 支持ネジ
90 作動デバイス
91 作動要素
92 作動部分
93 接続部分、力伝達部分
95 締結スリーブ
96 ガイドスロット
97 正面壁部
100、110、120 作動デバイス
101 ハウジング
102 ネジ切りスリーブ
105 ボーデンケーブル
112 結合ボルト
122 監視接点が統合された調整ユニット
124 送受信機モジュール
A 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2023-12-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アキシャル-ラジアル摺動軸受(1)であって、
第1の軸受リング(2)と、
記第1の軸受リング(2)を少なくとも部分的に収容するように略U字形状の断面を形成する第2の軸受リング(4)と、
前記第1の軸受リング及び前記第2の軸受リングを軸方向及び半径方向に切り離すために前記第1の軸受リングと前記第2の軸受リングの間に配置され、ポリマー材料で作製され、軸方向摺動面を持つ軸方向領域及び半径方向摺動面を持つ半径方向領域を有する略L字形状の断面を各々が有する摺動要素(6)と、
を備え、
前記第1の軸受リング及び前記第2の軸受リングは、軸受け軸(A)周りに相互に対して回転可能に配置され、
前記2つの軸受リング(2、4)の相互に対する指定相対回転位置において解除可能なロック動作を与えるために、前記2つの軸受リングの少なくとも一方が、力をかけられて偏向可能な戻り止め要素(8)であってそこに収容されるその戻り止め要素(8)のための収容部(7)を有し、前記2つの軸受リングの他方が、偏向可能な前記戻り止め要素(8)を少なくとも部分的に収容するための、前記戻り止め要素に関連する少なくとも1つの戻り止め凹部(9)を有し
i)前記アキシャル-ラジアル摺動軸受(1)は、前記2つの軸受リング(2、4)の一方に対して、前記2つの軸受リング(2、4)の他方が静止して保持された状態で所定のトルクを付与することによって、前記2つの軸受リング(2、4)の相互に対するロックを解除するための解除用トルクが生成可能となるような態様で構成され、前記所定のトルクは前記ロックが解除可能となるトルク閾値を表し、かつ/又は
ii)前記第1の軸受リング(2)は、その軸方向範囲全体にわたって及びその径方向範囲の一部にわたって前記第2の軸受リング(4)によって収容され、前記戻り止め要素(8)及び前記戻り止め凹部(9)は、前記2つの軸受リング(2、4)の相互に向き合う境界面に配置される、
キシャル-ラジアル摺動軸受(1)。
【請求項2】
前記戻り止め要素(8)及びそれに関連する前記少なくとも1つの戻り止め凹部(9)は、前記一方の軸受リング及び前記他方の軸受リングのそれぞれ相互に向き合う半径方向面(21b、45)に配置され、
前記一方の軸受リングの前記収容部(7)に配置された前記戻り止め要素(8)は、半径方向に力を受けて偏向可能である、
請求項1に記載のアキシャル-ラジアル摺動軸受(1)。
【請求項3】
前記戻り止め要素(8)は、前記少なくとも1つの戻り止め凹部(9)に対する前記戻り止め要素(8)の戻り止め位置において、少なくとも部分的に相補的な設計の前記戻り止め凹部の戻り止め面に対応する球状又は筒状の戻り止め面を少なくとも部分的に有する、
請求項1に記載のアキシャル-ラジアル摺動軸受(1)。
【請求項4】
前記第2の軸受リング(4)は、軸方向フランジ(42)によって接続された前記軸方向に離隔された2つのリング部分(41a、41b)を有し、
前記第1の軸受リング(2)が、少なくとも部分的に、前記第2の軸受リング(4)の前記軸方向に離隔された前記2つのリング部分(41a、41b)の間に配置された、
請求項1に記載のアキシャル-ラジアル摺動軸受(1)。
【請求項5】
前記戻り止め要素(8)は、一体以上で形成され、軸方向範囲の方が小さい前記軸受リングの軸方向寸法の半分を超えて延在しする、
請求項1に記載のアキシャル-ラジアル摺動軸受(1)。
【請求項6】
力の付与を前記戻り止め要素(8)に与えるためにバネ(80)が設けられ、
該バネ(80)は、前記2つの軸受リングの一方の穴(22)、特に径穴内に配置され、前記戻り止め要素(8)とネジ(81)などの半径方向制止要素との間に締め付けられる、
請求項1に記載のアキシャル-ラジアル摺動軸受(1)。
【請求項7】
前記2つの軸受リングの他方は、前記2つの軸受リング(2、4)の相互に対する回転時に前記戻り止め要素(8)を連続的に受容するための、周方向に離隔された複数の前記戻り止め凹部(9)を有する、
請求項1に記載のアキシャル-ラジアル摺動軸受(1)。
【請求項8】
前記2つの軸受リングの一方における前記戻り止め要素(8)のための前記収容部(7)は、戻り止め位置の外部で前記2つの軸受リング(2、4)の相互に対する相対動作位置において前記戻り止め要素を実質的に完全に収容するために設計されている、
請求項1に記載のアキシャル-ラジアル摺動軸受(1)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの戻り止め凹部(9)が前記第2の軸受リング(4)に配置され、 前記戻り止め要素の前記収容部(7)が前記第1の軸受リング(2)に配置された、
請求項1に記載のアキシャル-ラジアル摺動軸受(1)。
【請求項10】
作動デバイス(90)が前記2つの軸受リングの一方に配置され、
前記作動デバイスは、当該軸受リング(2´)に関して移動可能であり、前記戻り止め要素(8´)に動作可能に接続された作動部分(92)を有する、
請求項1に記載のアキシャル-ラジアル摺動軸受(1´)。
【請求項11】
前記作動デバイス(90)は、前記戻り止め要素(8´)及び前記少なくとも1つの戻り止め凹部(9´)のロックを解除するための力を前記戻り止め要素が受けるために、前記作動部分(92)を介して前記戻り止め要素(8´)に反作用力をかけるように配置及び設計されている、
請求項10に記載のアキシャル-ラジアル摺動軸受(1´)。
【請求項12】
前記作動デバイスの前記作動部分(92)が、前記2つの軸受リングの一方に対して半径方向に偏向可能に配置された、
請求項10に記載のアキシャル-ラジアル摺動軸受(1´)。
【請求項13】
前記戻り止め要素(8´)と前記作動部分(92)とは、前記作動デバイス(90)の力伝達要素又は部分を介して動作可能に接続されている、
請求項10に記載のアキシャル-ラジアル摺動軸受(1´)。
【請求項14】
前記作動デバイス(90)は、前記少なくとも1つの戻り止め凹部(9´)内での前記戻り止め要素(8´)のロックが解除される動作位置をロックするために配置及び設計されている、
請求項10に記載のアキシャル-ラジアル摺動軸受(1´)。
【請求項15】
前記作動部分(92)は、所定の距離閾値を超える前記2つの軸受リング(2´、4´)の一方に対する半径方向への強制ガイド動作が前記戻り止め要素(8´)のロック位置から開始する前記ロックを解除するように配置され、前記距離閾値を超えた後の半径方向周りの回転が前記作動部分(92)と前記2つの軸受リング(2´)の前記一方との間の半径方向積極的ロックをかけるように配置されている、
請求項14に記載のアキシャル-ラジアル摺動軸受(1´)。
【請求項16】
膜ヒンジ(65)の態様で薄化する材料が、前記摺動要素(6)の半径摺動面を軸方向摺動面に約90°屈曲させるためにそれぞれの前記摺動要素(6)の前記半径摺動面と軸方向摺動面の間に設けられた、
請求項1に記載のアキシャル-ラジアル摺動軸受(1)。
【請求項17】
摺動要素(6)は、その軸方向摺動面の領域において、実質的に隙間なくかつ周方向に相互に連続的に配置された複数の第1のセクタ(60)を備え、
一方、前記摺動要素(6)は、その半径摺動面の領域において、周方向に各々から離隔されかつ周方向に相互に連続的に配置された複数の第2のセクタ(64)を備える、
請求項1に記載のアキシャル-ラジアル摺動軸受(1)。
【請求項18】
少なくとも2つの摺動要素(6)が構成され、
該少なくとも2つの摺動要素は、設置位置において、それらの軸方向摺動面に対して前記軸方向に概ね前記第1の軸受リング(2)の軸方向寸法だけオフセットされ、特に、相互に対して周方向に概ね前記第1のセクタ(60)の周方向寸法の半分だけオフセットされている、
請求項17に記載のアキシャル-ラジアル摺動軸受(1)。
【請求項19】
前記作動デバイスは、前記少なくとも1つの戻り止め凹部内の前記戻り止め要素の係合を非手動的に調整及び/又は解除するために制御可能なアクチュエータを有する、
請求項10に記載のアキシャル-ラジアル摺動軸受(1)。
【請求項20】
前記作動部分は、作動要素に結合するためのボルトネジ又は雌ネジなどの機械的結合デバイスを有する、
請求項10に記載のアキシャル-ラジアル摺動軸受(1)。
【請求項21】
前記アキシャル-ラジアル摺動軸受(1)のロック状態及び/又は非ロック状態を検出するための監視デバイスをさらに備える、
請求項1に記載のアキシャル-ラジアル摺動軸受(1)。
【国際調査報告】