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特表2024-516950ラクトバチルス・ロイテリ及びその使用、組成物、医薬品及び食品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-18
(54)【発明の名称】ラクトバチルス・ロイテリ及びその使用、組成物、医薬品及び食品
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20240411BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20240411BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240411BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240411BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240411BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240411BHJP
   A61K 31/733 20060101ALI20240411BHJP
   A61K 31/702 20060101ALI20240411BHJP
   A61K 31/718 20060101ALI20240411BHJP
   A61K 36/28 20060101ALI20240411BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20240411BHJP
   A61K 31/197 20060101ALI20240411BHJP
   A61K 31/714 20060101ALI20240411BHJP
   A61K 31/716 20060101ALI20240411BHJP
   A61K 31/731 20060101ALI20240411BHJP
   A61K 36/05 20060101ALI20240411BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240411BHJP
   A61K 31/015 20060101ALI20240411BHJP
   A61K 31/4415 20060101ALI20240411BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240411BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20240411BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240411BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20240411BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20240411BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20240411BHJP
【FI】
C12N1/20 A
A61K35/747
A61P37/08
A61P25/00
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K31/733
A61K31/702
A61K31/718
A61K36/28
A61K31/198
A61K31/197
A61K31/714
A61K31/716
A61K31/731
A61K36/05
A61P1/00
A61K31/015
A61K31/4415
A61K47/22
A61K47/06
A61K47/10
A61K47/46
A61K47/20
A23L33/135
C12N1/20 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563259
(86)(22)【出願日】2022-04-13
(85)【翻訳文提出日】2023-10-31
(86)【国際出願番号】 CN2022086583
(87)【国際公開番号】W WO2022218335
(87)【国際公開日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】202110412519.0
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523307745
【氏名又は名称】中科微智(北京)生物科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】WISBIOM (BEIJING) BIOTECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】3rd Floor, Room 304, Building 1, Tiandi Linfeng, No. 1 Yongtaizhuang North Road, Haidian District, Beijing 100080, China
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100130443
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 真治
(72)【発明者】
【氏名】段云峰
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼▲いぇ▼
(72)【発明者】
【氏名】梁▲樺▼
(72)【発明者】
【氏名】崔雷
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼智
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
4C076
4C084
4C086
4C087
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB07
4B018LB08
4B018LB10
4B018MD08
4B018MD10
4B018MD20
4B018MD23
4B018MD25
4B018MD90
4B018ME07
4B018ME14
4B018MF02
4B065AA30X
4B065AC20
4B065BA22
4B065CA42
4B065CA44
4C076BB01
4C076CC07
4C076CC16
4C076DD34S
4C076DD37S
4C076DD56S
4C076DD59S
4C076EE57S
4C076FF70
4C084AA19
4C084MA52
4C084NA14
4C084ZA02
4C084ZA66
4C084ZB13
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC18
4C086DA39
4C086EA01
4C086EA20
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA66
4C086ZB13
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC56
4C087BC74
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZA66
4C087ZB13
4C087ZC75
4C088AB26
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZA02
4C088ZA66
4C088ZB13
4C088ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206BA04
4C206FA45
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZA02
4C206ZA66
4C206ZB13
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、ラクトバチルス・ロイテリ及びその使用、組成物、医薬品及び食品に関する。当該ラクトバチルス・ロイテリは、受託番号がCGMCC No.21577であり、腸内菌叢の乱れを改善し、腸管の損傷を低減し、腸管の透過性を改善し、免疫系の回復を促進し、自閉症、多動症、チック症、うつ病等の神経系関連の疾患アレルギー反応を治療又は予防する効果を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)であって、
前記ラクトバチルス・ロイテリは、受託番号がCGMCC No.21577である、
ラクトバチルス・ロイテリ。
【請求項2】
アレルギー反応を予防又は治療する製品の製造における請求項1に記載のラクトバチルス・ロイテリの使用。
【請求項3】
前記製品は、神経系発達障害及び/又は気分障害に伴うアレルギー性疾患の予防又は治療に用いられるものである、
ことを特徴とする請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記神経系発達障害は、自閉症スペクトラム障害又はチック症である、
ことを特徴とする請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記気分障害は、多動症を含む、
ことを特徴とする請求項3に記載の使用。
【請求項6】
請求項1に記載のラクトバチルス・ロイテリ及び/又は前記ラクトバチルス・ロイテリの発酵生成物を含む、組成物。
【請求項7】
他のプロバイオティクスをさらに含む、
ことを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記他のプロバイオティクスは、ラクトバチルス、ビフィドバクテリウム、ストレプトコッカス・サーモフィラス、ラクトコッカス、プロピオニバクテリウム、ロイコノストック、ブドウ球菌、バシルス、ペディオコッカス、大腸菌、プレボテーラ、フィーカリバクテリウム、ブラウティア、バクテロイデス、ファーミキューテス及び酵母菌から選ばれる少なくとも1種である、
ことを特徴とする請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記ラクトバチルスは、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・クリスパタス、ラクトバチルス・ブルガリクス、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・ジョンソンニー、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・サリバリウス、ラクトバチルス・サケイ、ラクトバチルス・ヘルベティカスから選ばれる少なくとも1種であり、及び/又は、
前記ビフィドバクテリウムは、ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・インファンティス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・アニマリス、ビフィドバクテリウム・ラクティスから選ばれる少なくとも1種であり、及び/又は、
前記ラクトコッカスは、ラクトコッカス・ラクチス亜種ラクチス、ラクトコッカス・ラクチス亜種クレモリス、ラクトコッカス・ラクチス亜種ジアセチラクティスから選ばれる少なくとも1種であり、及び/又は、
前記プロピオニバクテリウムは、プロピオニバクテリウム・フロイデンライシイ亜種シャーマニイ及びプロピオニバクテリウム・アシジプロピオン酸から選ばれる少なくとも1種であり、及び/又は、
前記ロイコノストックは、ロイコノストック・メセンステロイド亜種メセンステロイドであり、及び/又は、
前記ペディオコッカスは、ペディオコッカス・アシディラクティシ、ディオコッカス・ペントサセウスから選ばれる少なくとも1種であり、及び/又は、
前記ブドウ球菌は、スタフィロコッカス・プルベレリー、スタフィロコッカス・カルノサス、スタフィロコッカス・キシロサスから選ばれる少なくとも1種であり、及び/又は、
前記バシルスは、バチルス・コアギュランスであり、及び/又は、
前記酵母菌は、クルイベロマイセス・マルキシアヌス、サッカロマイセス・セレビシエ、カンジダ・ウチリス、クルイベロマイセス・ラクチス、サッカロミセス・カールスベルゲンシスから選ばれる少なくとも1種である、
ことを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記ラクトバチルス・ロイテリが、生菌及び/又は不活化菌体である、
ことを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物は、プレバイオティクスをさらに含む、
ことを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項12】
前記プレバイオティクスは、イヌリン、アーティチョークからの抽出物、チコリの根からの抽出物、菊芋の根からの抽出物、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、スタキオース、マンノースオリゴ糖、アラビノースオリゴ糖、難消化性デキストリン、レジスタントスターチから選ばれる少なくとも1種である、
ことを特徴とする請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物は、GABA、トリプトファン、リコピン、β-カロテン、ビタミンB6、ビタミンB12、コエンザイムQ10、タウリン、ペクチン、β-グルカン、フコース、カラギーナン、グアーガム、柑橘繊維、リンゴ繊維、クロレラ、アルファルファ粉、青汁粉及び食物繊維のうちの少なくとも1種をさらに含む、
ことを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物は、抗酸化剤をさらに含み、
前記抗酸化剤は、トコフェロール、カロテノイド、アスコルビン酸/ビタミンC、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、ポリフェノール、グルタチオン及びスーパーオキシドジスムターゼから選ばれる少なくとも1種である、
ことを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1に記載のラクトバチルス・ロイテリ、又は請求項6乃至14のいずれか一項に記載の組成物と、
薬学的に許容可能な助剤と、
を含む、医薬品。
【請求項16】
請求項1に記載のラクトバチルス・ロイテリ、又は請求項6乃至14のいずれか一項に記載の組成物を含む、食品。
【請求項17】
前記食品が発酵乳であり、
前記発酵乳の製造方法が、
ミルクソースを水と混合して均質化した後、滅菌して、プレミックスを得る工程と、
プレミックスに活性化された前記ラクトバチルス・ロイテリの菌種を添加して発酵させて、発酵処理の生成物を製造する工程と、
前記発酵処理の生成物を冷却し、再び前記ラクトバチルス・ロイテリと混合して、前記ラクトバチルス・ロイテリを含有する発酵乳を得る工程と、
を含む、ことを特徴とする請求項16に記載の食品。
【請求項18】
請求項1に記載のラクトバチルス・ロイテリの製造方法であって、
高密度で発酵させて前記ラクトバチルス・ロイテリを製造し、
前記製造方法は、
前記ラクトバチルス・ロイテリを活性化する工程と、
活性化された前記ラクトバチルス・ロイテリを発酵槽に接種して、発酵し培養させる工程と、を含む、
ラクトバチルス・ロイテリの製造方法。
【請求項19】
腸内菌叢の乱れを予防又は治療する製品の製造における、請求項1に記載のラクトバチルス・ロイテリの使用、又は、
リーキーガットを予防又は治療する製品の製造における、請求項1に記載のラクトバチルス・ロイテリの使用。
【請求項20】
リーキーガット及び/又はアレルギー反応を予防又は治療するための方法であって、
請求項6乃至14のいずれか一項に記載の組成物、又は前記組成物を原料として製造された製品を服用することを含み、
前記組成物中のプロバイオティクスの数量に基づいて、服用量が3.0×10CFU/kg体重/日~1.2×1011CFU/kg体重/日である、
リーキーガット及び/又はアレルギー反応を予防又は治療するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物の技術分野に関し、具体的には、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)及びその使用、組成物、医薬品及び食品に関する。
【背景技術】
【0002】
アレルギー反応とは、既に免疫を持つ生体が再び同じ抗原刺激を受けた際に生じる組織損傷や機能障害の反応を指す。世界中、過敏な人々は絶えず増加している。特定の集団において、小児食物アレルギーの発症率は高くて、10%に達する。
【0003】
微生物との早期接触が人体の免疫健康に積極的な影響を及ぼすという考えは、少なくとも1989年に遡ることができ、その時、ロンドン衛生と熱帯医学学院の疫学者デイヴィッド・ストラカン(David Strachan)は、より小さく、より清潔な家庭で成長された子供がアレルギー症になりやすいという「衛生仮説」を提出していた。次の数十年において、衛生仮説は、既に微生物群を中心とするモデルに発展しており、このモデルにおいて、家庭や環境からの微生物との早期接触が喘息、花粉症、湿疹等の炎症性疾患及び食物アレルギーのリスクの低減に重要な役割を果たしている。現在、「衛生仮説」は、「早期環境が微菌叢に影響を与えて免疫機能不全をもたらす」という理論に進化されている。生命の早期に、腸内菌叢が失調する場合、例えば、多様性が低く、大腸菌/バクテロイデスの比が高すぎる場合、アレルギーに大きな影響を与える。腸内菌叢の代謝生成物は、菌叢と宿主との間の重要な媒体であり、免疫系と相互作用することによってアレルゲンへの炎症応答を抑制し、又は腸管の透過性を低下させることによってアレルゲンが腸管障壁を通過することを抑制し、免疫寛容を促進する。
【0004】
腸内菌叢の乱れによるアレルギーは、腸管透過性を高めることによって発生する可能性がある。研究により、食物アレルギーの乳児は、リーキーガットを生じ、血液中の抗原及びアレルゲンの腸管からの移行の増加として現れることを見出した。消化管の内部は、通常、免疫監視を受けないが、腸管障壁の透過性が増加すると、食物由来のタンパク質が体内に滲出し、アレルギー反応を引き起こす。小児食物アレルギーを引き起こす食品、例えば、ピーナッツや牛乳における消化できないタンパク質は、損傷された腸管障壁を完全に損傷なく透過して、免疫反応を引き起こす可能性が高い。研究により、抗生物質でマウスの腸内菌叢を処理した後にピーナッツを投与すると、これらのマウスの血液から完全なピーナッツタンパク質を発見することができることを見出した。
【0005】
ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)は、腸管内に存在する乳酸菌であり、プロバイオティクスとして使用され、腸粘膜に対して強い付着能力を有し、優れた耐酸性、耐胆汁酸塩及び広域抗菌の特性を有し、グラム陽性菌、グラム陰性菌、酵母、真菌及び病原虫等の成長を広く抑制することができる。
【発明の概要】
【0006】
本願の研究によれば、健康な女性の乳汁から分離されたラクトバチルス・ロイテリ(受託番号CGMCC No.21577)は、腸内菌叢の乱れを改善し、腸管の損傷を低減し、腸管の透過性を改善し、免疫系の回復を促進し、アレルギー反応を治療又は予防する効果を有することを見出した。
【0007】
本願は、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)を提供し、前記ラクトバチルス・ロイテリは、その受託番号がCGMCC No.21577である。
【0008】
また、本願は、アレルギー反応を予防又は治療する製品の製造における上記ラクトバチルス・ロイテリの使用を提供する。
【0009】
また、本願は、上記ラクトバチルス・ロイテリ及び/又は上記ラクトバチルス・ロイテリの発酵生成物を含む組成物を提供する。
【0010】
また、本願は、医薬品をさらに提供し、前記医薬品を製造する原料は、上記ラクトバチルス・ロイテリ又は上記組成物と、薬学的に許容可能な助剤と、を含む。
【0011】
また、本願は、食品を提供し、前記食品を製造するための原料は、上記ラクトバチルス・ロイテリ又は上記組成物を含む。
【0012】
また、本願は、上記ラクトバチルス・ロイテリの製造方法を提供し、高密度で発酵させて前記ラクトバチルス・ロイテリを製造し、
前記製造方法は、
前記ラクトバチルス・ロイテリを活性化する工程と、
活性化された前記ラクトバチルス・ロイテリを発酵槽に接種して、発酵し培養させる工程と、を含む。
【0013】
また、本願は、腸内菌叢の乱れを予防又は治療するための製品の製造における上記ラクトバチルス・ロイテリの使用、又は、リーキーガットを予防又は治療する製品の製造における上記ラクトバチルス・ロイテリの使用を提供する。
【0014】
また、本願は、リーキーガット及び/又はアレルギー反応を予防又は治療するための方法を提供し、前記方法は、上記組成物、又は上記組成物を原料として製造された製品を服用することを含み、前記組成物中のプロバイオティクスの数量に基づいて、服用量が3.0×10CFU/kg体重/日~1.2×1011CFU/kg体重/日である。
【0015】
本願の1つ又は複数の実施例の詳細は、下記の図面及び説明において提出される。本願のその他の特徴、目的及び利点は、明細書、図面及び特許請求の範囲から明らかになる。
【0016】
本願に開示される発明の実施例及び/又は例をより良く説明するために、1つ又は複数の図面を参照することができる。図面の詳細又は例示は、開示された発明、現在説明されている実施例及び/又は例、並びにこれまでに理解されているこれらの発明の最も好ましい実施形態のいずれかの範囲に対する限定とみなされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1におけるラクトバチルス・ロイテリLR99の顕微鏡による観察図である。
図2】実施例3におけるプロバイオティクス又はプラセボの服用後のリーキーガットの改善状況である。
図3】実施例4におけるプロバイオティクス又はプラセボの服用後のCD4+T細胞の改善状況である。
図4】実施例4におけるプロバイオティクス又はプラセボの服用後の腸内菌叢の門レベルでの組成である。
図5】実施例4におけるプロバイオティクス又はプラセボの服用後の腸内菌叢の属レベルでのヒートマップである。
図6】実施例4におけるプロバイオティクス又はプラセボの服用後の腸内菌叢のシャノン(Shannon)指数の変化である。
図7】実施例4におけるプロバイオティクス又はプラセボの服用後の腸内菌叢の代表的なプロバイオティクス種組成の比較である。
図8】実施例4におけるプロバイオティクス又はプラセボの服用後の腸内菌叢の代表的なプロバイオティクス種組成の比較である。
図9】実施例4におけるプロバイオティクス又はプラセボの服用後の腸内菌叢の代表的なプロバイオティクス種組成の比較である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本願に係るラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)は、菌株名がLR99であり、中国微生物菌種保存管理委員会普通微生物センターに保存され、住所が北京市朝陽区北辰西路1号院3号、中国科学院微生物研究所であり、受託番号がCGMCC No.21577であり、当該菌株が2020年12月31日に寄託センターで受領して登録され、且つ保存センターで2020年12月31日に生存菌株として検出された。
【0019】
以下、本発明を理解しやすくするために、本発明をより全面的に説明するが、本発明は多くの異なる形態で実現されてもよく、本明細書に記載された実施例に限定されない。逆に、これらの実施例を提供する目的は、本発明の開示内容をより徹底的にすることである。
【0020】
特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術及び科学用語は、当業者によって通常理解される意味と同じである。本明細書に使用される用語は、具体的な実施例を説明するためのものであり、本発明を限定することを意図するものではない。
【0021】
本発明の一つの実施形態は、健常女性の乳汁から分離して得られる、ラクトバチルス・ロイテリLR99を提供する。2020年に12月31日に中国微生物菌種保存管理委員会普通微生物センター(CGMCCと略称され、住所が、北京市朝陽区北辰西路1号院3号、中国科学院微生物研究所であり、郵便番号が100101である)に受託されており、分類はラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)と命名され、受託番号はCGMCC No.21577である。
【0022】
検証によれば、上記ラクトバチルス・ロイテリは、内皮CD4+T細胞を再プログラミングして免疫調節T細胞に達することができ、免疫調節作用を発揮し、Treg細胞の増加を促進し、Th2反応を低下させるので、アレルギー反応の介入、緩和又は予防に有利であり、免疫系の回復を促進することができる。また、上記ラクトバチルス・ロイテリは、トリプトファンを代謝する能力も有し、そのトリプトファンの代謝生成物は、腸管の障壁機能を改善し、腸管障壁の透過性の増加を抑制し、腸管の損傷を低減し、リーキーガットを予防又は緩和することができ、アレルギー反応をさらに予防又は緩和することもできる。また、上記ラクトバチルス・ロイテリは、腸内菌叢の多様性を向上させ、腸管のプロバイオティクス(例えばラクトバチルス、ビフィドバクテリウム及びアッカーマンモネラ等)の数量を向上させ、腸内菌叢の乱れを改善することもできる。
【0023】
これに基づいて、本発明の一実施形態は、アレルギー性反応を予防又は治療する製品の製造における上記ラクトバチルス・ロイテリの使用を提供する。選択可能に、製品は、神経系発達障害及び/又は気分障害に伴うアレルギー性疾患の予防又は治療に用いられるものである。具体的には、神経系発達障害は自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder、ASD)又はチック症であり、気分障害は、多動症、うつ病等を含む。アレルギー性疾患は新生児から高齢者の各年齢層まで発生する可能性があり、常に明らかな遺伝傾向を有する。アレルギー性疾患では、即時型アレルギー反応が一般的であり、その主なタイプは皮膚アレルギー反応、呼吸器アレルギー反応、消化管アレルギー反応及びアレルギー性ショック等がある。
【0024】
本発明の一実施形態は、上記ラクトバチルス・ロイテリの上記機能に基づいて、リーキーガットを予防又は治療する製品の製造における上記ラクトバチルス・ロイテリの使用をさらに提供する。
【0025】
本発明の一実施形態は、上記ラクトバチルス・ロイテリの上記機能に基づいて、腸内菌叢の乱れを予防又は治療する製品の製造における上記ラクトバチルス・ロイテリの使用をさらに提供する。
【0026】
本発明の一実施形態は、上記ラクトバチルス・ロイテリの製造方法をさらに提供し、高密度で発酵させて上記ラクトバチルス・ロイテリを製造する。具体的には、当該製造方法は、工程S1~S3を含む。
【0027】
工程S1において、上記ラクトバチルス・ロイテリを活性化する。
【0028】
具体的には、菌株の活性を向上させるために、ラクトバチルス・ロイテリに対して活性化培養を3回行い、3回の活性化培養の温度は37℃であり、時間は16h~18hである。
【0029】
工程S2において、活性化された上記ラクトバチルス・ロイテリを発酵槽に接種して、発酵し培養させる。
【0030】
改良されたMRS培地を殺菌処理した後、37℃に降温し、2.5%~3.5%(v/v)の接種量で発酵槽に接種して発酵させ、1時間毎に発酵液のpH及びOD値を検出し、pH及びOD値が相対的に緩やかになるまで発酵された場合、菌株が対数終期に達して安定期に入ることを表し、発酵を完了する。その後、発酵液を降温させ、低温で遠心分離させ、菌体を収集して、リン酸塩緩衝液(PBS)で洗浄して、ラクトバチルス・ロイテリの菌体を製造する。
【0031】
工程S3において、工程S2で製造された菌体を凍結乾燥させて、凍結乾燥粉末に製造する。
【0032】
具体的には、工程S2で得られた菌体を凍結乾燥保護剤と混合してから乳化し、その後、真空で凍結乾燥させて、凍結乾燥粉末に製造する。選択可能に、凍結乾燥保護剤は、脱脂粉乳、トレハロース、フラクトオリゴ糖、ラクトース、グルコース、スクロース、L-アスコルビン酸ナトリウム、L-リンゴ酸、L-乳酸から選ばれる少なくとも1種である。もちろん、他の実施例において、凍結乾燥保護剤は、上記に限定されず、凍結乾燥の過程において菌体の活性を維持できる他の物質であってもよい。選択可能に、凍結乾燥保護剤に対する菌体の体積比は、1:(2~10)である。
【0033】
なお、いくつかの実施例において、工程S3を省略することができる。このとき、製造されたのは、クトバチルス・ロイテリの菌体である。
【0034】
上記ラクトバチルス・ロイテリの製造方法は、高密度で発酵させて上記ラクトバチルス・ロイテリを製造し、収量が高い。
【0035】
また、本発明の一実施形態は、上記ラクトバチルス・ロイテリの上記機能に基づいて、上記ラクトバチルス・ロイテリ及び/又は上記ラクトバチルス・ロイテリの発酵生成物を含む組成物をさらに提供する。
【0036】
具体的には、上記ラクトバチルス・ロイテリの発酵生成物とは、上記ラクトバチルス・ロイテリの培養生成物を指し、菌体内の代謝生成物、及び菌体外に分泌される代謝生成物のうちの少なくとも1種を含む。使用時には、上記ラクトバチルス・ロイテリの培養後の培養液又は当該培養液の凍結乾燥処理を行って得られた凍結乾燥粉末を使用する。又は、上記ラクトバチルス・ロイテリの培養後に溶解した溶解液又は当該溶解液の精製、凍結乾燥処理を行って得られた凍結乾燥粉末を使用する。
【0037】
いくつかの実施例において、上記組成物は、上記ラクトバチルス・ロイテリと、菌剤を製造するために必要な助剤と、を含む。上記組成物の活性成分は、上記ラクトバチルス・ロイテリを含む。一つの選択可能な具体例において、上記組成物は、上記ラクトバチルス・ロイテリ及び凍結乾燥保護剤を含む。凍結乾燥保護剤は、前述したとおりであり、ここでは説明を省略する。
【0038】
いくつかの実施例において、上記組成物は、他のプロバイオティクスをさらに含む。プロバイオティクスは、上記組成物の活性成分ともなる。すなわち、上記組成物は、活性成分を含み、当該活性成分は、上記ラクトバチルス・ロイテリと他のプロバイオティクスとを含む。選択可能に、他のプロバイオティクスは、ラクトバチルス(Lactobacillus)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)、ラクトコッカス(Lactococcus)、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)、ロイコノストック(Leuconostoc)、ブドウ球菌(Staphylococcus)、バシルス(Bacillus)、ペディオコッカス(Pediococcus)、大腸菌(Escherichia.coli)(例えば、Nissle1917)、プレボテーラ(Prevotella)、フィーカリバクテリウム(Faecalibacterium)、ブラウティア(Blautia)、バクテロイデス(Bacteroidetes)、ファーミキューテス(Firmicutes)及び酵母菌から選ばれる少なくとも1種である。
【0039】
一つの選択可能な具体例において、ラクトバチルスは、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・クリスパタス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ(Lactobacillus delbrueckii subsp. Lactis)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・ジョンソンニー(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバチルス・サケイ(Lactobacillus sakei)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)から選ばれる少なくとも1種である。
【0040】
一つの選択可能な具体例において、ビフィドバクテリウムは、ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス(Bifidobacterium adolescentic)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobaterium animalis)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobaterium lactis)から選ばれる少なくとも1種である。
【0041】
一つの選択可能な具体例において、ラクトコッカスは、ラクトコッカス・ラクチス亜種ラクチス(Lactococcus Lactis subsp. Lactis)、ラクトコッカス・ラクチス亜種クレモリス(Lactococcus Lactis subsp. Cremoris)、ラクトコッカス・ラクチス亜種ジアセチラクティス(Lactococcus Lactis subsp. Diacetylactis)から選ばれる少なくとも1種である。
【0042】
一つの選択可能な具体的な例において、プロピオニバクテリウムは、プロピオニバクテリウム・フロイデンライシイ亜種シャーマニイ(Propionibacterium freudenreichii subsp.Shermanii)及びプロピオニバクテリウム・アシジプロピオン酸(Propionibacterium acidipropionici)から選ばれる少なくとも1種である。ロイコノストックは、ロイコノストック・メセンステロイド亜種メセンステロイド(Leuconostoc mesenteroides subsp. Mesenteroides)である。ペディオコッカスは、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)、ディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)から選ばれる少なくとも1種である。ブドウ球菌は、スタフィロコッカス・プルベレリー(Staphylococcus vitulinus)、スタフィロコッカス・キシロサス(Staphylococcus xylosus)、スタフィロコッカス・カルノサス(Staphylococcus carnosus)から選ばれる少なくとも1種である。バシルスは、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)である。酵母菌は、クルイベロマイセス・マルキシアヌス(Kluyveromyces marxianus)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、カンジダ・ウチリス(Cadida atilis)、クルイベロマイセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、サッカロミセス・カールスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)から選ばれる少なくとも1種である。なお、本実施形態における他のプロバイオティクスは、前述したものに限定されず、他のLR99以外のプロバイオティクスであってもよい。
【0043】
いくつかの実施例において、上記組成物は、プレバイオティクスをさらに含む。プレバイオティクスによれば、上記ラクトバチルス・ロイテリの定植及び繁殖を促進するとともに、腸管における他のプロバイオティクスの成長を促進する。選択可能に、プレバイオティクスは、イヌリン、アーティチョークからの抽出物、チコリの根からの抽出物、菊芋の根からの抽出物、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、スタキオース、マンノースオリゴ糖、アラビノースオリゴ糖、難消化性デキストリン、レジスタントスターチから選ばれる少なくとも1種である。もちろん、他の実施例において、上記組成物におけるプレバイオティクスは、前述したものに限定されず、プロバイオティクスの成長及び繁殖を促進できる他の物質であってもよい。
【0044】
いくつかの実施例において、上記組成物は、栄養物質をさらに含み、前記栄養物質は、GABA、トリプトファン、リコピン、β-カロテン、ビタミンB6、ビタミンB12、コエンザイムQ10、タウリン、ペクチン、β-グルカン、フコース、カラギーナン、グアーガム、柑橘繊維、リンゴ繊維、クロレラ、アルファルファ粉、青汁粉及び食物繊維から選ばれる少なくとも1種である。
【0045】
いくつかの実施例において、上記組成物は、抗酸化剤をさらに含む。抗酸化剤は、トコフェロール、カロテノイド、アスコルビン酸/ビタミンC、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、ポリフェノール、グルタチオン及びスーパーオキシドジスムターゼから選ばれる少なくとも1種である。
【0046】
いくつかの実施例において、上記組成物において、上記ラクトバチルス・ロイテリの質量百分率は、1~30%である。さらに、上記ラクトバチルス・ロイテリの質量百分率は、1%~20%である。選択可能に、上記組成物において、上記ラクトバチルス・ロイテリの生菌含有量は、1.2×10CFU/g~1.6×1012CFU/gである。さらに、上記ラクトバチルス・ロイテリの生菌含有量は、3.0×1010CFU/g~2.0×1011CFU/gである。
【0047】
いくつかの実施例において、上記組成物中のラクトバチルス・ロイテリは、生菌である。いくつかの他の実施例において、上記組成物中のラクトバチルス・ロイテリは、ラクトバチルス・ロイテリの不活化菌体である。いくつかの他の実施例において、上記組成物中のラクトバチルス・ロイテリは、ラクトバチルス・ロイテリの生菌とラクトバチルス・ロイテリの不活化菌体との混合物である。
【0048】
前記組成物の剤型は、特に制限されず、例えば、粉剤、錠剤、タブレット又はカプセル剤等であってもよい。
【0049】
いくつかの実施例において、重量部に基づいて、上記組成物は、ラクトバチルス・ロイテリの凍結乾燥粉末 10部~30部、フラクトオリゴ糖 15部~25部、ソルビトール又はマルチトール 40部~65部、及びステアリン酸マグネシウム 5部~10部を含み、ここで、上記組成物において、ラクトバチルス・ロイテリの含有量は、1.2×10CFU/g~1.5×1010CFU/gである。
【0050】
いくつかの実施例において、重量部に基づいて、上記組成物は、0.5部~30部のラクトバチルス・ロイテリLR99の凍結乾燥菌粉と、1部~20部の他のプロバイオティクスと、20部~80部のプレバイオティクスと、2部~10部の栄養物質と、0.1部~10部の抗酸化剤と、を含む。他のプロバイオティクス、プレバイオティクス、栄養物質及び抗酸化剤は、前述したとおりであり、ここでは説明を省略する。さらに、上記組成物は、1部~10部のラクトバチルス・ロイテリLR99の凍結乾燥菌粉と、1部~10部の他のプロバイオティクスと、30部~80部のプレバイオティクスと、2部~5部の栄養物質と、0.5部~10部の抗酸化剤と、を含む。選択可能に、上記組成物において、ラクトバチルス・ロイテリの含有量は、1.8×10CFU/g~6.5×1011CFU/gであり、他のプロバイオティクスのモノ菌の含有量は、1×10CFU/g~6×10CFU/gである。さらに、ラクトバチルス・ロイテリの含有量は、2.5×10CFU/g~1×1011CFU/gである。
【0051】
上記組成物は、上記ラクトバチルス・ロイテリ及び/又は上記ラクトバチルス・ロイテリの発酵生成物を含み、腸内菌叢の多様性を向上させ、腸管のプロバイオティクス(例えば、ラクトバチルス、ビフィドバクテリウム及びアッカーマンモネラ等)の数量を向上させ、腸内菌叢の乱れを改善し、腸管の損傷を減少させ、リーキーガット及びアレルギー反応を予防又は緩和し、免疫系の回復を促進することができる。
【0052】
上記組成物は、食品、医薬品、栄養補助食品又は動物飼料を製造するための原料とすることができる。例えば、発酵乳、チーズ、乳性飲料、固形飲料、粉乳、錠菓、ゲルソフトキャンディ、発酵野菜ジュース、発酵豆製品等の食品を製造するための原料とすることができる。使用時には、通常のプロセスで直接混合するか、又は発酵を経た後に最終製品を製造する。なお、いくつかの実施形態において、上記組成物は、直接食品又は医薬品とすることができる。選択可能に、食品において、上記ラクトバチルス・ロイテリがヒトに使用される助言の服用量は、1.0×10CFU/kg体重/日~1.0×1010CFU/kg体重/日である。さらに、上記ラクトバチルス・ロイテリがヒトに使用される助言の服用量は、1.0×10CFU/kg体重/日~1.0×10CFU/kg体重/日である。
【0053】
本発明の一実施形態は、食品をさらに提供し、当該食品を製造するための原料は、上述のラクトバチルス・ロイテリ又は上記組成物と、食品添加物と、を含む。選択可能に、食品添加剤は、調味料、甘味剤、増粘剤、安定剤、界面活性剤、潤滑剤、酸性中和剤、分散剤、緩衝液又は緩衝剤、脱苦剤、pH安定剤、防腐剤、脱糖剤及び着色剤から選ばれる少なくとも1種である。一つの具体例において、食品添加物は、ラクチトール、ソルビトール、マルチトール、アスパルテーム、ステビア、ラカンカ、スクラロース、キシリトール、バニラ、チョコレート、果実香料、人工エッセンスから選ばれる少なくとも1種である。
【0054】
一つの実施例において、上記食品は、発酵乳である。当該発酵乳の製造方法は、下記の工程を含む。
【0055】
工程aにおいて、ミルクソースを水と混合して均質化した後、滅菌して、プレミックスを得る。
【0056】
具体的には、ミルクソースは、生乳、脱脂粉乳及び全脂粉乳の少なくとも1種を含む。滅菌の条件は、120℃~122℃の条件で250s~350s行われることであり、もちろん、滅菌後にプレミックスの温度が40℃~45℃となるように冷却する必要がある。
【0057】
工程bにおいて、プレミックスに活性化されたラクトバチルス・ロイテリの菌種を添加して発酵させて、発酵処理の生成物を製造する。
【0058】
具体的には、発酵温度は、40℃~45℃であり、発酵時間は、8h~12hである。
【0059】
工程cにおいて、工程bの発酵処理の生成物を冷却し、再びラクトバチルス・ロイテリと混合して、高含有量のラクトバチルス・ロイテリの発酵乳を得る。
【0060】
上記発酵乳の製造方法により得られる発酵乳において、上記ラクトバチルス・ロイテリの含有量及び活性が高く、栄養価が高く、疾患の症状の治療又は予防に更に使用することができる。
【0061】
本発明の一実施形態は、上記ラクトバチルス・ロイテリ又は上記組成物の機能に基づいて、医薬品をさらに提供し、当該医薬品を製造する原料は、上記ラクトバチルス・ロイテリ又は上記組成物と、薬学的に許容可能な助剤と、を含む。
【0062】
本発明の一実施形態は、上記ラクトバチルス・ロイテリ又は上記組成物の機能に基づいて、リーキーガット及び/又はアレルギー反応を予防又は治療するための方法を提供し、当該方法は、上記組成物又は上記組成物を原料として製造された製品を服用することを含み、組成物中のプロバイオティクスの数量に基づいて、服用量が3.0×10CFU/kg体重/日~1.2×1011CFU/kg体重/日である。さらに、組成物中のプロバイオティクスの数量に基づいて、服用量が1.0×10CFU/kg体重/日~6.0×1010CFU/kg体重/日である。
【0063】
<具体的な実施例>
以下、具体的な実施例を参照して詳細に説明する。下記の実施例は、例えば、特記しない限り、不可避不純物以外の他の成分を含まない。実施例において、試薬及び機器は、特に断らない限り、本分野における通常の選択である。実施例において具体的な条件を明記しない実験方法は、通常の条件、例えば文献、本に記載された条件又はメーカーによって推奨された方法に従って実現される。
【0064】
実施例1
健常女性の乳汁から嫌気培養を用いて1株の菌株を分離し、16S rRNA全長の配列決定及び質量分析を経て検定した結果、当該菌株は新しい菌株であって、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)に属し、ラクトバチルス・ロイテリLR99(「LR99」又は「LR-99」と略称する)と命名される。当該菌株は、2020年12月31日に中国微生物菌種保存管理委員会普通微生物センター(CGMCCと略称され、住所が、北京市朝陽区北辰西路1号院3号、中国科学院微生物研究所であり、郵便番号が100101である)に受託されている。分類は、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)と命名され、受託番号は、CGMCC No.21577である。
【0065】
1.ラクトバチルス・ロイテリLR99の分類学的特徴:
(1)顕微鏡下でラクトバチルス・ロイテリLR99を観察し、その結果は、図1に示される。
【0066】
(2)理化学的な試験結果は、表1及び2に示される。
【0067】
【表1】
【0068】
表1から分かるように、ラクトバチルス・ロイテリLR99は、グラム陽性菌であり、芽胞を形成せず、運動性がなく、接触酵素が陰性であり、酸化酵素が陰性であり、嫌気性であり、培養に適切な温度が37℃である。
【0069】
【表2】
【0070】
表2において、「+」は、代謝が可能であることを表し、「-」は、代謝が不可能であることを表す。
【0071】
表2から分かるように、ラクトバチルス・ロイテリLR99は、リボース、キシロース、マルトース、乳糖、ラフィノース、イヌリン、スターチ、マンノース、メリビオース、ガラクトース、スクロース、L-アラビノース及びサリシンを代謝することはできるが、トレハロース、メレジトース、フルクトース、セロビオース、グルコン酸ナトリウム、マンニトール及びソルビトールを代謝することはできない。
【0072】
2.人工胃液、腸液に対するラクトバチルス・ロイテリLR99の耐性:
人工胃液、腸液に対するラクトバチルス・ロイテリLR99の耐性を試験するとともに、現在の実験室で保存された、市販のプロバイオティクスの製品から分離された極めて優れた耐酸性を有する、胃腸管により生存可能なラクトバチルス・ロイテリDSM17938を比較とする。
【0073】
人工胃酸(pH=3)及び人工腸液(pH=8)におけるラクトバチルス・ロイテリDSM17938及びラクトバチルス・ロイテリLR99の生存率の検出結果を表3に示す。
【0074】

【表3】
【0075】
表3から分かるように、ラクトバチルス・ロイテリDSM17938は、人工胃液で1h処理した場合に生菌の生存率が71.2%であり、1.5h処理した場合に生菌の生存率が33.1%であるが、ラクトバチルス・ロイテリLR99は、1h処理した場合に生菌の生存率が93.1%であり、1.5h処理した場合に生菌の生存率69.7%であり、これは、ラクトバチルス・ロイテリLR99がより優れた耐胃酸能力を有し、大部分が胃を通って腸管に達して作用したことを示している。
【0076】
表3から分かるように、ラクトバチルス・ロイテリDSM17938は、人工腸液(pH=8)で1時間処理した場合に生菌の生存率が25.8%であり、2時間処理した後の生存率が18.5%であるが、ラクトバチルス・ロイテリLR99は、人工腸液で1時間処理した場合に生菌の生存率が48.8%であり、2h処理した後の生存率が37.8%であった。
【0077】
上記結果から明らかなように、人工胃液及び腸液で消化された後、ラクトバチルス・ロイテリLR99は、依然として良好な生存を有し、ラクトバチルス・ロイテリLR99は、商品化の菌株に対して良好な耐消化液能力を有し、腸管内で順調に生存して増殖することができる。
【0078】
3.ラクトバチルス・ロイテリLR99の毒性試験及び安全性検出:
(1)ラクトバチルス・ロイテリLR99をMRS液体培地に接種し、37℃で48時間嫌気培養し、カウントすると、培養液におけるラクトバチルス・ロイテリLR99の生菌数は、3.2×10CFU/mLであり、その後、培養物原液を経口でマウス(健康なBALB/C雄マウスであって、6~8週齢であり、体重が16~18gであり、室温(25±2℃)、相対湿度(55±2)%、12h/12hの光照射を維持し、食事と水を自由に摂取した)に20.0mL/kg体重の割合で3日間連続的に胃内投与し、その後7日間観察した。同時にMRS液体培地を20.0mL/kg体重の量でマウスに胃内投与して、対照群とした。
【0079】
結果から分かるように、ラクトバチルス・ロイテリLR99の培養物原液は、対照群に比べて、2群の被験マウスの毒性反応又は死亡が観察されず、マウスの体重増加も統計学的な差はなかった(p>0.05)。
【0080】
(2)SN/T 1944-2007「動物及びその製品における細菌の耐薬性の測定」方法により、ラクトバチルス・ロイテリLR99の抗生物質感受性能を評価した。
【0081】
評価結果から分かるように、ラクトバチルス・ロイテリLR99は、アンピシリン(Ampicillin)、ペニシリンG(PencillinG)、エリスロマイシン(Erythromycin)、クロラムフェニコール(Chloramphenicol)、クリンダマイシン(Clindamycin)、バンコマイシン(Vancomycin)及びテトラサイクリン(Tetracycine)等に敏感である。欧州食品安全機関(European Food Safety Authority)の食用細菌の耐薬性の評価規範における要求に適合している。ラクトバチルス・ロイテリLR99は、外来抗生物質耐性遺伝子を含まず、安全に食用することができる。
【0082】
実施例2
本実施例は、ラクトバチルス・ロイテリLR99の高密度での発酵及び凍結乾燥菌粉の製造過程を説明するためのものである。
【0083】
(1)改良されたMRS培地においてラクトバチルス・ロイテリLR99を嫌気培養して、発酵用菌種を得た。
【0084】
(2)菌株の活性を向上させるために、ラクトバチルス・ロイテリLR99の菌株に対して活性化培養を3回行い、3回の活性化培養は、温度が37℃であり、時間が16h~18hであり、菌株の活性化が完了した後、ラクトバチルス・ロイテリLR99の菌株の成長曲線を検出した結果を表4に示す。
【0085】

【表4】
【0086】
ラクトバチルス・ロイテリLR99の成長曲線の検出結果から分かるように、ラクトバチルス・ロイテリLR99は、対数終期に成長した時点、即ち発酵収穫点に達した。ラクトバチルス・ロイテリLR99の種子を対数終期まで培養して収穫した。収穫した種子は、4℃の冷蔵庫に冷蔵された。
【0087】
(3)発酵槽の上缶:改良されたMRS培地を殺菌処理した後、37℃に迅速に降温し、3%接種量で発酵槽に接種して発酵させ、1時間毎に発酵液のpH及びOD値を検出し、pH及びOD値が相対的に緩やかになるまで発酵された場合、菌株が対数終期に達して安定期に入ることを表し、この時、発酵を完了して、直ちに降温し、発酵液を低温で遠心分離させ、菌体を収集して、リン酸塩緩衝液(PBS)で洗浄した後、凍結乾燥保護剤(脱脂粉乳)を添加して乳化させ、完了した後、真空凍結乾燥を行って、菌粉を取得し、製造された凍結乾燥の菌粉を-20℃以下に放置して保存した。ここで、検出によると、発酵液中の生菌数は、2.75×10CFU/mLであり、乳化液中の生菌数は、4.7×1010CFU/mLであり、凍結乾燥粉末中の生菌数は、1.55×1011CFU/gであった。
【0088】
実施例3
本実施例は、リーキーガットの改善に対するラクトバチルス・ロイテリLR99の影響を説明するためのものである。
【0089】
乳酸は、D型とL型があり、正常な人体は、L-乳酸のみであり、D-乳酸は、細菌が発酵した代謝生成物であり、腸内の多種の細菌によって生成されることができ、食物から摂取された後、正常な場合には血液に吸収されず、且つ、哺乳動物はそれを急速に分解する酵素システムを有さない。腸粘膜の透過性が増加すると、腸管中の細菌によって生成された大量のD-乳酸は、損傷された粘膜によって血液中に取り込まれ、血中のD-乳酸のレベルを上昇させる。血中のD-乳酸のレベルを監視することにより、腸粘膜の損傷の程度及び透過性の変化を適時に反映することができる。腸管感染、エンドトキシン血症、全身性炎症反応、繰り返す発熱、嘔吐等の補助評価に用いることができる。
【0090】
リポ多糖(LPS)は、細菌エンドトキシンとも呼ばれ、グラム陰性菌の細胞壁上の成分であり、LPSは動物にとって一つの毒性物質である。LPSの構造は、糖脂質ドメイン-脂質A、糖残基短鎖-コアオリゴ糖、高変化の多糖ドメイン-O抗原のような3つの部分に分けることができる。LPSの構造は、TLR4に対するアゴニスト/アンタゴニスト作用を決定する。体内において、LPSは、TLR4/MD-2受容体の複合体と結合し、Myd88依存性又はTRIF依存性経路によって異なるシグナル経路を活性化させ、異なる部位の腸管上皮細胞のTLRの発現量が異なり、LPSによる炎症反応を防止し、病原菌に対抗することができる。
【0091】
LPSは、様々な疾患の発症、例えば、IBD及び小腸結腸炎等の腸管疾患、さらにパーキンソン及びアルツハイマー病等に関与する。LPSは、血液に入るだけでなく、脳内に入って一生留まることができ、アルツハイマー病を引き起こす可能性がある。
【0092】
血液中のLPSレベルは、腸透過性を反映することができ、正常な腸管障壁は、LPSの進入を許容せず、血液中の比較的高いレベルのLPSは、腸管細菌又はLPSが血液に移動することを示し、腸透過性の増加を意味し、リーキーガット症状が現れる確率が増加される。血液中のLPSの含有量程度は、炎症反応及びストレス状態を示すこともでき、過剰なLPSは、人体の免疫系異常を引き起こして、慢性又は急性炎症反応を引き起こし、発熱、痛み等の急性炎症等を引き起こす可能性があり、腸管感染、エンドトキシン血症、全身性炎症反応、繰り返す発熱、嘔吐、精神疾患、ストレス反応等の補助評価に用いることができる。
【0093】
腸管の透過性の増加をもたらすいかなるストレス反応は、心理的及び生理学的作用を含み、潜在的に細菌の変位を引き起こす可能性がある。細菌変位とは、腸内生菌が腸管から上皮粘膜を通って生体に入ることを指す。細菌は、腸間膜リンパ節を介してリンパ系に入って、全身で循環することができる。細菌は、血液循環に入って菌血症を引き起こし、また、組織中に位置してもよい。細菌変位は、小腸細菌の過剰成長、腸管の損傷、ひいてはショックをもたらすことができる。
【0094】
マウスの血清中のD-乳酸及びLPSの含有量により、腸管に対するラクトバチルス・ロイテリLR99の透過性を評価した。
【0095】
6週齢のC57BL/6Jマウス12匹を、ケージあたり3匹のマウスに割り当てて飼育し、自由に食事及び飲水させた。マウスの成長環境の条件は、環境温度(23±2)℃、相対湿度(50±10)%、光照射モード(12h暗黒/12h光照射)である。マウスが環境に1週間適応した後、ランダムに対照群とプロバイオティクス群に割り当てた。プロバイオティクス群のマウスにプロバイオティクス製剤(プロバイオティクス製剤は実施例2で製造されたラクトバチルス・ロイテリLR99の凍結乾燥粉末及びマルトデキストリンからなる)を胃内投与し、胃内投与量は、100億CFU/匹/日であり、対照群のマウスに等量のプラセボ(マルトデキストリン)を胃内投与した。
【0096】
2週目からプラセボ又はプロバイオティクスを投与しながら、各群にノイズと夜間照明の複合ストレス刺激を行った。
【0097】
各群のマウスを胃内投与して6週間飼育した後、尾の末梢静脈から血液を採集した。血液 3000gを15分間遠心分離した。腸管障壁機能分析システム(JY-DLT、北京中生金域診断技術株式会社)を用いて、取扱説明書に従って、血清中のD-乳酸及びLPSの含有量を検出した。次に、各群のマウスの血清中のD-乳酸及びLPSの含有量をSPSS統計ソフトで処理して得られたデータを、平均値±標準偏差で表し、独立したサンプルの検定を用いて群間の比較を行い、P<0.05は、統計的意味を有すると考えられ、結果は図2に示される。
【0098】
図2から分かるように、プロバイオティクス群は、対照群に比べて、LPS及びD-乳酸のレベルが有意に低下した(P<0.05)。これは、ストレス刺激により腸透過性が増加され、プロバイオティクスが、腸透過性を低下させ、エンドトキシン血症、全身性炎症反応等のリスクを減少させることができることを表明する。
【0099】
実施例4
本実施例は、免疫系に対するラクトバチルス・ロイテリLR99の促進作用を説明するためのものである。
【0100】
動物モデル及び人体の研究において、プロバイオティクスは、CD4+T細胞の分化に影響を与えて、アレルギー性疾患を調節する。プロバイオティクスは、Th2サイトカイン(IL-4、IL-5、IL-13等)を減少させ、IgEを減少させ、IL-10を増加させ、Treg分化を促進させる等の手段により、喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、食物アレルギー及び蕁麻疹等のアレルギー性疾患を抑制することができる。研究により、特定の腸内菌叢は、トリプトファンをインドール-3-エタノール、インドール-3-ピルビン酸又はインドール-3-アセトアルデヒドに代謝でき、腸管の障壁機能を改善できることを見出した。体内において、トリプトファンの代謝生成物は、腸管障壁の透過性の増加を抑制することができる。
【0101】
ラクトバチルス・ロイテリLR99がCD4+T細胞の分化に影響を与えてアレルギー性疾患を調節することができるかどうかを検証するために、6週齢のC57BL/6Jマウス18匹を、ケージ毎に3匹のマウスを割り当てて飼育し、自由に食事及び飲水させた。周辺環境に1週間適応した後、3群にランダムに割り当て、各群は6匹のマウスであり、それぞれ毎日、プラセボ(対照群)、ラクトバチルス・ロイテリLR99の凍結乾燥粉末(生存菌数が1×10CFU/匹である)(LR-99群)、及びラクトバチルス・ロイテリLR99の凍結乾燥粉末(生存菌数が1×10CFU/匹である)+L-トリプトファン(質量濃度 0.24%)(L-トリプトファンは、Research Dietsから得られ、LR-99+トリプトファン群とする)を飼育した。
【0102】
4週間飼育した後、マウスを殺して、腸管及び脾臓を取り出した。機械的破壊法により脾臓の単細胞懸濁液を調製してT細胞を分離した。脾臓をコラゲナーゼD 100ng/mL(Invitrogen)で消化してDC分離を行った。フローサイトメトリーでは、BD Biosciencesからの抗CD8(53-6.7)、抗CD4(GK1.5)のような蛍光標識されたモノクローナル抗体を使用した。幼若T細胞に対する分離は、「幼若なCD4+T細胞分離キット」(Miltenyi Biotec)を用いて単細胞懸濁液を濃縮した後に、CD4+細胞を選別した。FACSantoII(BD Biosciences)を用いてサンプルを処理し、FACSAria II(BD Biosciences)を用いて蛍光活性化された細胞の選別を行い、FlowJoソフトウェア(TreeStar)でデータを分析し、結果は図3に示される。
【0103】
図3から分かるように、ラクトバチルス・ロイテリLR99及びラクトバチルス・ロイテリLR99は、トリプトファンと結合された後、いずれもCD4+T細胞の分化を顕著に促進することができる(p<0.05)。また、単独のラクトバチルス・ロイテリLR99は、トリプトファンと結合した後、CD4+T細胞の分化に有意差がなかった(p>0.05)。
【0104】
実施例5
本実施例は、腸管微生物の組成に対するLR99の影響を説明するためのものである。
【0105】
(1)DNAの抽出:実施例4における各群のマウスを殺した後に収集した盲腸内容物を、TIANmap糞便DNAキット(TIANGEN、カタログ番号DP328)を用いて糞便菌叢のDNAを抽出した。抽出されたDNAは、Qubit計を用いて定量的に検出される。1%アガロースゲル電気泳動(電圧100V、40min)を用いて検出した。UVIゲルイメージングシステムは、写真を撮影して記録した。DNA電気泳動には、非特異的バンド、スメアが発生されておらず、DNA断片の純度が良好であり、これは明らかな分解がなかったことを示す。適量のサンプルを遠心管に置き、無菌水を用いてサンプルを1ng/μLに希釈した。DNAは、-20℃の冷蔵庫に貯蔵して予備用とした。
【0106】
(2)細菌16S rRNA遺伝子の増幅:希釈後のゲノムDNAを鋳型として、シークエンス領域の選択に応じて、バーコード(Barcode)付けの特異的プライマーを用いて、V3-V4ユニバーサルプライマーである341F(CCTACGGGNBGCASCAG、SEQ ID No.1)及び805R(GACTACNVGGGTATCTAATCC、SEQ ID No.2)を用いて、細菌16S rRNA遺伝子のV3-V4領域を増幅した。100ngのサンプルから抽出されたDNAを56℃でPCRを行って鎖再生性に用いられ、まず94℃で4分間変性させた後、94℃で30秒間、56℃で30秒間、72℃で1分間で、30サイクル行った。
【0107】
(3)アンプリコン遺伝子シーケンス:イルミナ社TruSeq DNA PCR-Free Library Preparation Kitのライブラリーキットを用いてライブラリーの構築を行い、構築されたライブラリーは、Qubit定量とライブラリー検出を経て合格した後、イルミナ HiSeq2500 PE250シーケンスプラットフォームを用いて菌叢のシーケンスを行った。
【0108】
(4)シーケンスデータの処理及び分析:菌叢のシーケンスのプライマリーデータをQIIME(2019.4)に導入し、DADA2でノイズを低減して、代表的なアンプリコンシーケンスバリアント(ASVs)を取得し、これをシステム発達ツリーに構築した。品質管理された後、フィルタリングされたASVsをナイーブベイズ分類器(Naive bayes classifier、NBC)法とGreengenes(V_13.5)データベースにおける遺伝子シーケンスと比較して種の注釈を行った。Alpha及びBeta多様性分析において、再サンプリングの深さは、十分なシーケンスを保証するために、サンプルごとに10000個のシーケンスである。統計結果は、結果に対する多すぎる種類数の影響を低減するために、偽発見率(false discovery rate、FDR)を算出して補正した。
【0109】
結果から分かるように、門レベルにおいて、対照群、プロバイオティクス群(LR99)及びプロバイオティクス結合トリプトファン群(LR99+TRP)の腸内菌叢に有意差が存在することを示している。対照群のバクテロイデス門は、プロバイオティクス群より低かった(図4)。プロバイオティクス群のalpha多様性指数も対照群よりも高く、シャノン指数の違いは顕著ではなかった(p=0.45064(Mann-Whitney statistic))(図5)。ヒートマップの解析は、属レベルにおいて、3群の菌叢の組成に差があることを示している(図6)。属レベルにおいて、具体的な差異菌が多く、LR99を使用した後、ラクトバチルス(Lactobacillus)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)及びアッカーマンモネラ(Akkermansia)が顕著に増加し、特にラクトバチルスに対して、トリプトファンの添加は、その存在量の増加をより促進できると考えられる(図7図9)。
【0110】
実施例6
本実施例は、ラクトバチルス・ロイテリLR99による、自閉症スペクトラム障害(ASD)に罹患していることが診断された小児アレルギー症状に対する改善を説明するためのものである。
【0111】
子供は、7歳の男児である。ラクトバチルス・ロイテリLR99の凍結乾燥粉末(組成は、ラクトバチルス・ロイテリLR99及び凍結乾燥粉末保護剤)を経口投与し、毎日3回で、毎回600億CFUを服用し、服用周期は30日である。
【0112】
服用前後で、子供の腸管、皮膚症状を記録した。血液を採集してIgE及び慢性食物アレルギーを検出した。30日後、当該小児の下痢、腹膜の症状が改善され、粘液便が改善され、数回の固形便が現れた。排便回数は、1日に2回~3回から、1日~2日に1回に変われ、皮膚の炎症が改善され、引っ掻きが減少された。同時に、親から、子供の苛立ちの回数が減少され、語彙の量が少量増加されたというフィードバックがあった。血液の検出結果は、IgEが、服用前の572.2 IU/mLから368.7 IU/mLに低下したことを表す。慢性食物アレルギーの検出は、鶏卵とミルク指標がやや低下したことを表す。親は、服用を継続することを選択しており、依然として継続的な改善状況を観察及び記録している。
【0113】
前述した実施例の各技術的特徴は、任意の組合せが可能であり、説明を簡潔にするために、上記実施例における各技術的特徴の全ての可能な組合せについて説明していないが、これらの技術的特徴の組合せに矛盾がない限り、本明細書に記載の範囲にあると理解すべきである。
【0114】
以上の実施例は、本発明のいくつかの実施形態を示したものに過ぎない。その説明は具体的かつ詳細であるが、それによって特許請求の範囲を限定するものではないと理解すべきである。なお、当業者にとって、本発明の思想を逸脱することなく、若干の変形及び改良が可能であり、これらはいずれも本発明の保護範囲に属する。したがって、本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲に準じるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
2024516950000001.app
【国際調査報告】