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特表2024-516959無線充電用磁気シールド構造およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-18
(54)【発明の名称】無線充電用磁気シールド構造およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20240411BHJP
【FI】
H05K9/00 W
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563313
(86)(22)【出願日】2022-07-01
(85)【翻訳文提出日】2023-10-16
(86)【国際出願番号】 CN2022103400
(87)【国際公開番号】W WO2023005604
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】202110842347.0
(32)【優先日】2021-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517366220
【氏名又は名称】横店集団東磁股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼立▲東▼
(72)【発明者】
【氏名】付▲亜▼奇
(72)【発明者】
【氏名】唐子舜
(72)【発明者】
【氏名】石▲楓▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼▲愛▼国
【テーマコード(参考)】
5E321
【Fターム(参考)】
5E321AA11
5E321AA50
5E321BB31
5E321BB53
5E321BB60
5E321GG01
5E321GG05
5E321GH03
(57)【要約】
【課題】本発明は、無線充電用磁気シールド構造およびその製造方法を開示し、無線充電の技術分野に属する。
【手段】前記磁気シールド構造は、複数のナノ結晶ユニットおよび熱伝導ユニットを含む。前記熱伝導ユニットは、前記ナノ結晶ユニット同士に設けられ、各ナノ結晶ユニットの連結、および熱伝導に用いられる。前記ナノ結晶ユニットは、複数層のナノ結晶材料を含む。該出願は、渦流損失が小さく、放熱が良く、絶縁性能が良く、柔軟性が良く、信頼性が高く、体積が小さく、重量が軽く、大電力無線充電に適用される磁気シールド構造およびその製造方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のナノ結晶ユニットおよび熱伝導ユニットを含む無線充電用磁気シールド構造であって、
前記熱伝導ユニットは、前記ナノ結晶ユニット同士に設けられ、各々のナノ結晶ユニットの連結、および熱伝導に用いられ、
前記ナノ結晶ユニットは、複数層のナノ結晶材料を含む、
無線充電用磁気シールド構造。
【請求項2】
前記熱伝導ユニットの材料は、熱伝導ポッティング剤およびエポキシ樹脂を含む、
請求項1に記載の無線充電用磁気シールド構造。
【請求項3】
前記熱伝導ポッティング剤は、シリカゲル材料を採用し、
前記エポキシ樹脂は、ポリアミド樹脂で変性されたものを採用する、
請求項2に記載の無線充電用磁気シールド構造。
【請求項4】
前記熱伝導ポッティング剤と前記エポキシ樹脂の質量比が、1:1~5:1である、
請求項3に記載の無線充電用磁気シールド構造。
【請求項5】
複数層の前記ナノ結晶材料同士は、接着剤層によって接着されている、
請求項1に記載の無線充電用磁気シールド構造。
【請求項6】
前記ナノ結晶ユニットは、方形であり、
複数の前記ナノ結晶ユニットは、行列分布となっており、
形成した前記磁気シールド構造は、方形である、
請求項1に記載の無線充電用磁気シールド構造。
【請求項7】
前記ナノ結晶ユニットは、辺長が5~15mmであり、厚さが1~10mmである、
請求項6に記載の無線充電用磁気シールド構造。
【請求項8】
前記ナノ結晶ユニットは、各層の前記ナノ結晶材料の厚さが14~20ミクロンであり、隣り合う前記ナノ結晶ユニット同士の距離が0.1~0.5mmである、
請求項1に記載の無線充電用磁気シールド構造。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の無線充電用磁気シールド構造に用いられる製造方法であって、
ナノ結晶ストリップに対して、順に、両面フィルム貼付、およびスプリット処理を行った後、複数層のナノ結晶ストリップを接着剤層を介して粘着し積層して、予期した厚さhに達するステップ(1)と、
ステップ(1)で製造した複数層のナノ結晶ストリップと接着剤層の複合材料を、複数の頂面が正方形となる直方体のナノ結晶ユニットに裁断するステップ(2)と、
隣り合うナノ結晶ユニット同士の距離をbとするように、ステップ(2)で製造した複数のナノ結晶ユニットを金型または平板上に配列し固定するステップ(3)と、
比率に応じて、熱伝導ポッティング剤とエポキシ樹脂を混合し撹拌して、熱伝導ユニットを形成するためのコロイドを得るステップ(4)と、
ステップ(4)で製造した熱伝導ユニットのコロイドを、ステップ(3)における各々のナノ結晶ユニット同士の隙間に充填し、磁気シールド構造半製品を形成するステップ(5)と、
ステップ(5)で製造した磁気シールド構造半製品を硬化処理して、磁気シールド構造完成品を得るステップ(6)と、を含む、
製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の実施例は、無線充電の技術分野に関し、たとえば、無線充電用磁気シールド構造およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電動自動車産業の急速な発展に伴い、自動車の無線充電は、ますます注目されている。有線充電技術と比べ、無線充電は、より一層スマートで、安全で、便利である。コンシューマ電子製品(たとえば、携帯電話)の無線充電に対して、電気自動車の無線充電は、システムの電力がより高く、一般的に6kW以上であり、そのシステムの複雑度、技術難度もより高い。磁性材料は、大電力無線充電システムの重要な構成部分であり、主に磁気伝導及び磁気シールドの役割を果たしている。性能に優れた磁性材料は、充電システムの結合係数を大幅に向上させ、さらに充電効率を向上させながら、電磁場の漏れを効果的にシールドすることができ、外界環境に対する干渉または傷害を回避することができる。
【0003】
現在、大電力無線充電システムの受付端に用いられる磁性材料は、主に軟質磁性フェライト材料であり、高い透磁率及び抵抗率を有し、良好な磁気隔絶作用、および低い渦流損失を備える。しかし、フェライト材料は、飽和磁化強度が低く(一般的に0.5T未満であり)、材質が脆く、破砕しやすいなどの明らかな欠陥も存在し、飽和磁化強度が低いことに起因して材料の体積および重量が大きくなり、素子の小型化に不利である。それと同時に、製造プロセスにより限定されるので、フェライト磁気プレートのサイズが通常限りある。その為、大電力無線充電受付端用磁気プレートは、複数のフェライト磁気プレートにより接合してなり、フェライト自身の脆性と相まって、自動車が走行過程で粉々に砕けやすいので、システムの信頼性が極めて大きく低下されてしまう。
【0004】
軟質磁性フェライト材料と比べ、ナノ結晶材料は、より高い飽和磁化強度を有し、その値がフェライト材料の2倍以上である。それと同時に、スプリット(split)、ビスコース(viscose)などの形態でフレキシブルな磁気シートを製造し、破砕しやすい欠陥を回避することができる。しかしながら、ナノ結晶材料は抵抗率が低いなどの欠陥もあることに起因して、材料が高周波数で使用されると、明らかな渦流が発生して損失が大きくなっている。特に、大電力の無線充電システムに対しては、強い渦流効果および高い損失により、大量の熱エネルギーが発生して直ちに散逸することができず、最終に、システムの充電効率および安全性が低下することが引き起こされている。ナノ結晶材料に対してスプリット、およびフィルム貼付処理を行うことにより、ある程度でナノ結晶材料の使用頻度を向上させ、渦流損失を低下させることができるが、大電力無線充電システムに対しては、渦流損失および発熱問題が依然として深刻となっている。それは、主に、スプリットされた後、ナノ結晶の表面に幾つかの微小なクラックが形成されているからである。即ち、ナノ結晶ストリップの表面に複数のサイズおよび形状が均一ではないみじん切りユニット(サブミクロンオーダー)が形成され、みじん切りユニットの角において明らかな磁場集積現象が発生し、作業過程で損失が大きく、発熱が過酷である。それと同時に、フィルム貼付処理された後、接着剤層における高分子材料が効果的に微小なクラックに進入できず、絶縁効果が大幅に低下されてしまう。また、フィルム貼付処理に用いられる接着剤の熱伝導性能が良くないので、渦流損失による熱量が効果的、快速に散逸することができない。
【0005】
従って、従来技術は、まだ改良および発展する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以下は、本明細書において詳しく説明する主旨についての概説である。本概説は、特許請求の範囲を限定するためのものではない。
本願の実施例は、渦流損失が小さく、放熱が良く、絶縁性能が良く、柔軟性が良く、信頼性が高く、体積が小さく、重量が軽い無線充電用磁気シールド構造およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
複数のナノ結晶ユニットおよび熱伝導ユニットを含む無線充電用磁気シールド構造であって、
前記熱伝導ユニットは、前記ナノ結晶ユニット同士に設けられ、各々のナノ結晶ユニットの連結、および熱伝導に用いられ、
前記ナノ結晶ユニットは、複数層のナノ結晶材料を含む。
【0008】
上述した無線充電用磁気シールド構造の好適な態様として、
前記熱伝導ユニットの材料は、熱伝導ポッティング剤およびエポキシ樹脂を含む。
【0009】
上述した無線充電用磁気シールド構造の好適な態様として、
前記熱伝導ポッティング剤は、シリカゲル材料を採用し、
前記エポキシ樹脂は、ポリアミド樹脂で変性されたものを採用する。
【0010】
上述した無線充電用磁気シールド構造の好適な態様として、
前記熱伝導ポッティング剤と前記エポキシ樹脂の質量比が、1:1~5:1である。
【0011】
上述した無線充電用磁気シールド構造の好適な態様として、
複数層の前記ナノ結晶材料同士は、接着剤層によって接着されている。
【0012】
上述した無線充電用磁気シールド構造の好適な態様として、
前記ナノ結晶ユニットは、方形であり、
複数の前記ナノ結晶ユニットは、行列分布となっており、
形成した前記磁気シールド構造は、方形である。
【0013】
上述した無線充電用磁気シールド構造の好適な態様として、
前記ナノ結晶ユニットは、辺長が5~15mmであり、厚さが1~10mmである。
【0014】
上述した無線充電用磁気シールド構造の好適な態様として、
前記ナノ結晶ユニットは、各層の前記ナノ結晶材料の厚さが14~20ミクロンであり、隣り合う前記ナノ結晶ユニット同士の距離が0.1~0.5mmである。
【0015】
上述した無線充電用磁気シールド構造に用いられる製造方法は、
ナノ結晶ストリップに対して、順に、両面フィルム貼付、およびスプリット処理を行った後、複数層のナノ結晶ストリップを接着剤層を介して粘着し積層して、予期した厚さhに達するステップ(1)と、
ステップ(1)で製造した複数層のナノ結晶ストリップと接着剤層の複合材料を、複数の頂面が正方形となる直方体のナノ結晶ユニットに裁断するステップ(2)と、
隣り合うナノ結晶ユニット同士の距離をbとするように、ステップ(2)で製造した複数のナノ結晶ユニットを金型または平板上に配列し固定するステップ(3)と、
比率に応じて、熱伝導ポッティング剤とエポキシ樹脂を混合し撹拌して、熱伝導ユニットを形成するためのコロイドを得るステップ(4)と、
ステップ(4)で製造した熱伝導ユニットのコロイドを、ステップ(3)における各々のナノ結晶ユニット同士の隙間に充填し、磁気シールド構造半製品を形成するステップ(5)と、
ステップ(5)で製造した磁気シールド構造半製品を硬化処理して、磁気シールド構造完成品を得るステップ(6)と、を含む。
【発明の効果】
【0016】
本願の有益な効果は、以下の通りである。磁気シールド構造は、複数のナノ結晶ユニットからなる。ナノ結晶ユニット同士に熱伝導ユニットが設けられている。熱伝導ユニットの材料は、熱伝導ポッティング剤およびエポキシ樹脂を混合してなる。熱伝導ユニットは、ナノ結晶ユニットを連結する一方、熱伝導および放熱の役割を果たすことで、本願に係る磁気シールド構造は、よい放熱性能を有し、大電力無線充電に適用される。本願に係る複数のナノ結晶ユニットからなる磁気シールド構造は、ナノ結晶ストリップのみを磁気シールド材料として用いたものと比べ、充電効率がより高く、放熱がより小さいとともに、信頼性がより高い。ナノ結晶ユニットを熱伝導材料に埋め込むと、ナノ結晶ユニットは、長いナノ結晶ストリップのサイズよりも小さいことで、渦流損失を大幅に低下させながら、熱伝導材料の導入により、磁気シールド構造の熱伝導特性を増加させ、渦流損失による熱量が快速に散逸することができる。
【0017】
図面および詳細な説明を閲読し理解した後、他の態様を分かることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図面は、本明細書の技術案をさらに理解するためのものであり、明細書の一部を構成し、本願の実施例とともに本明細書の技術案を解釈するために用いられ、本明細書の技術案を限定するためのものではない。
【0019】
図1】本願の実施例における無線充電用磁気シールド構造の正面視構造模式図である。
図2】本願の実施例における無線充電用磁気シールド構造の斜視構造模式図である。
図3】本願における実施例1および比較例1~3の試験結果の比較図である。
図4】本願における実施例2および比較例4~5の試験結果の比較図である。
図5】本願における実施例3および比較例6~7の試験結果の比較図である。
図6】本願における実施例4および比較例8~9の試験結果の比較図である。
図7】本願における実施例5および比較例10~13の試験結果の比較図である。
図8】本願における実施例6および比較例14~15の試験結果の比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面及び実施例を参照しながら、本願について更に詳細的に説明する。本明細書に記載される具体的な実施例は、本願を解釈するためのものに過ぎず、本願を限定するものではないことを理解すべきである。なお、説明を容易にするために、図面において本願に関連する一部だけであり、すべての構造ではないことを示している。
【0021】
本実施例の説明において、用語「上」、「下」、「左」、「右」などの方位や位置関係は、図面に示す方位や位置関係に基づくものであり、説明を容易にし、操作を簡略化するためのものにすぎず、言及した装置又は素子は、特定の方位を有し、特定の方位から構成し操作しなければならないことを指示又は暗示するものではないと理解すべきである。したがって、本願を限定するものではないと理解すべきである。
【0022】
以下、図面に結び付けて具体的な実施形態によって本願の技術案をさらに説明する。
【0023】
本願の実施例は、無線充電用磁気シールド構造を提供する。図1は、本願における無線充電用磁気シールド構造の正面視構造模式図である。図1に示すように、磁気シールド構造全体は、複数のナノ結晶ユニット1および熱伝導ユニット2を含む。熱伝導ユニットは、ナノ結晶ユニット同士に設けられている。熱伝導ユニットは、各ナノ結晶ユニットを連結するために用いられる一方、熱伝導および放熱を可能となることで、本願に係る磁気シールド構造が良好な放熱性能を有し、特に大電力無線充電に適用される。ナノ結晶ユニットは、複数層のナノ結晶材料を含む。複数層のナノ結晶材料は、順に積層してナノ結晶ユニットを形成する。ナノ結晶材料は、主に磁性を提供するために用いられ、磁気隔絶、シールドの役割を果たす。複数層のナノ結晶材料同士は、接着剤層によって接着されている。接着剤層は、ナノ結晶材料を接着する役割、および絶縁の役割を果たす。図2は、本願における無線充電用磁気シールド構造の斜視構造模式図である。図2に示すように、ナノ結晶ユニットには複数層のナノ結晶材料が含まれるとは、磁気シールド構造の厚さh方向において、ナノ結晶材料が積層されて一定の厚さhがあるナノ結晶ユニットを形成することを意味する。隣り合うナノ結晶材料層同士は、接着剤層によって接着されている。
【0024】
本願の一実施例において、ナノ結晶合金系および成分に対して限定されないが、良好な軟質磁性を備える必要があるので、Fe-Si-Nb-B-Cu系が好ましい。ナノ結晶材料は、動作周波数100kHzで、その実部透磁率が600~15000の範囲にある。1層のナノ結晶材料の厚さが14~20ミクロンであり、接着剤層の厚さが5~12ミクロンであり、5~8ミクロンであることが好ましい。図1および図2に結び付けて、図1に示すように、ナノ結晶ユニットは、正面が正方形である。複数のナノ結晶ユニットは、行列分布となり、形成した磁気シールド構造の正面も方形である。図2を参照すると、ナノ結晶ユニットは、一定の厚さhを有するため、ナノ結晶ユニット全体は、正面が正方形の直方体形状となる。ナノ結晶ユニットの正面の辺長aのサイズが5~15mmである。辺長aのサイズが大き過ぎると、渦流損失を大幅に向上させて、システムの発熱が過酷となり、辺長aのサイズが小さすぎると、ナノ結晶ユニットが熱伝導ユニットにより分散するように隔離されることを引き起す。即ち、エアギャップを増加させて、磁気シールド構造全体の透磁率が明らかに低下し、さらにシステムの結合係数および無線充電効率に影響を与える。それと同時に、大量のエアギャップの導入により、ある程度で渦流損失を低減させるが、ヒステリシス損失を増加させる。ナノ結晶ユニットの厚さhである磁気シールド構造の厚さhは、1~10mmであり、2~5mmであることが好ましい。
【0025】
熱伝導ユニットは、熱伝導ポッティング剤およびエポキシ樹脂を混合してなる。熱伝導ポッティング剤は、主に熱伝導、絶縁の役割を果たす。エポキシ樹脂は主に接着の役割を果たし、ナノ結晶ユニットの接着強度を向上させることができる。硬化された熱伝導ポッティング剤は、良好な熱伝導係数、接着性および柔軟性を備える。熱伝導ポッティング剤は、シリカゲル材料であることが好ましい。エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂、および変性されたエポキシ樹脂を含む。エポキシ樹脂は、良好な接着性を備えながら、硬化後に一定の柔軟性を備えることを要求するので、ポリアミド樹脂で変性されたエポキシ樹脂であることが好ましい。熱伝導ポッティング剤とエポキシ樹脂の質量比は、(1:1)~(5:1)である。熱伝導ユニットは、ナノ結晶ユニット同士に分布する。本願では、図2に示すように、隣り合うナノ結晶ユニット1同士の距離bである熱伝導ユニットの幅bのサイズは、0.1~0.5mmであり、0.1~0.3mmであることが好ましい。bの値が大き過ぎると、ナノ結晶ユニット同士の距離を増加させることで、磁気シールド構造全体における磁性相の比率を低下させることができる。本願では、熱伝導ユニットは、優れた柔軟性および接着性を有するので、ナノ結晶材料が作業過程において脱落または破砕することを回避し、システムの信頼性を大幅に向上させる。
【0026】
従来のフェライト磁気シールド構造と比べ、本願に係るナノ結晶に基づく磁気シールド構造は、重量がより軽く、体積がより小さく、信頼性がより高く、充電効率もやや高い。本願に係る磁気シールド構造に基づく大電力無線充電システムは、ナノ結晶ストリップのみを磁気シールド材料として用いるシステムよりも、効率が高く、発熱が少なく、信頼性が高い。ナノ結晶ユニットを熱伝導材料に埋め込むと、ナノ結晶ユニットは、長いナノ結晶ストリップのサイズよりも小さく、渦流損失を大幅に低下させながら、熱伝導材料の導入により、磁気シールド構造の熱伝導特性を増加させ、渦流損失による熱量が快速に散逸することができる。
【0027】
本願の実施例は、以下のステップを含む、上記磁気シールド構造を製造するための製造方法をさらに提供する。
【0028】
(1)焼戻し処理されたナノ結晶ストリップに対して、両面フィルム貼付およびスプリット処理を行った後、複数層のナノ結晶ストリップを接着剤層を介して粘着し積層して、予期した厚さhに達する。
【0029】
スプリット処理の目的は、ナノ結晶ストリップをみじん切り処理し、さらにナノ結晶ストリップの高周波特性を向上させながら、スプリット形態およびその強度に基づき、ナノ結晶ストリップの実部透磁率を調節することができるためである。スプリット形態は、限定されず、ダブルロール圧着が好ましい。
【0030】
(2)ステップ(1)で製造した複数層のナノ結晶ストリップと接着剤層の複合材料を複数の頂面が正方形となる直方体のナノ結晶ユニット、つまり複数のa×a×hの直方体に裁断することにより、ナノ結晶ユニットを得る。裁断形態は、限定されず、ワイヤ切断、レーザ切断、ダイ切断などを含むがそれに限定されない。
【0031】
(3)ステップ(2)で製造した複数のナノ結晶ユニットを金型または/および平板において排列し固定して、隣り合うナノ結晶ユニット同士の距離をbとするように確保する。
【0032】
(4)比率に応じて熱伝導ポッティング剤とエポキシ樹脂を混合し撹拌して、均一に混合した、熱伝導ユニットを形成するためのコロイドを得る。
【0033】
(5)ステップ(4)で製造した熱伝導ユニットコロイドをステップ(3)における各ナノ結晶ユニット同士の隙間に充填し、磁気シールド構造半製品を形成する。熱伝導ユニットのコロイドが完全にナノ結晶ユニット同士の隙間に進入するとともに、ナノ結晶ユニットの断面と良好に接着しながら、コロイドに明らかなバブルがないことを要求する。充填形態は、限定されず、注入、ディスペンス、含浸などを含むがそれに限定されず、圧力付きの含浸形態、即ち一定の圧力を加えた場合に含浸することが好ましい。
【0034】
(6)ステップ(5)で製造した磁気シールド構造半製品を硬化処理して、磁気シールド構造完成品を得る。硬化条件は、限定されず、常温または低温硬化が好ましい。硬化温度が80℃を超えず、最終に大電力無線充電用の磁気シールド構造を得る。
【0035】
[実施例1]
磁気シールド構造は、主にナノ結晶ユニットおよび熱伝導ユニット(熱伝導接着剤)を含む。
【0036】
ナノ結晶ユニットは、120層のナノ結晶材料および119層の接着剤層により複合された。ナノ結晶材料の成分は、Fe73.5Si13.5NbCuである。ナノ結晶材料は、動作周波数100kHzの動作モードで実部透磁率が10354である。ナノ結晶材料の平均厚さが19ミクロンであり、接着剤層の厚さが6ミクロンである。ナノ結晶ユニットは、形状が直方体であり、そのうち、表面形状が正方形であり、辺長aのサイズが10mmである。
【0037】
熱伝導ユニットは、熱伝導ポッティング剤およびエポキシ樹脂からなる混合物である。熱伝導ポッティング剤は、2成分のシリカゲル材料である。エポキシ樹脂は、ポリアミド樹脂で変性されたエポキシ樹脂である。熱伝導ポッティング剤とエポキシ樹脂の質量比は、2:1である。隣り合うナノ結晶ユニット同士の距離であるbのサイズは、0.2mmである。
【0038】
ナノ結晶ユニットおよび熱伝導ユニットからなる磁気シールド構造は、厚さ方向におけるサイズhが3mmであり、磁気シールド構造の長さ×幅×厚さが420mm×420mm×3mmである。
【0039】
試験:
【0040】
まず、後続の計算のために、ナノ結晶ストリップの透磁率に対して試験を行った。ナノ結晶ストリップは、上記ステップ(1)におけるナノ結晶ストリップである。ナノ結晶ストリップを、外径18.8mm、内径9.9mmの円形ループに打ち抜き加工して、透磁率試験を行った。試験機器は、徳E4990Aであり、試験周波数が100kHzである。
【0041】
本願に係る磁気シールド構造に対して無線充電効率および温度上昇の試験を行った。磁気シールド構造を大電力無線充電システムに置き、無線充電システムが30min動作した後の充電効率を測定した。温度測定装置で磁気シールド構造の表面温度を測定し、充電前、および30min動作した後の磁気シールド構造の表面の最高温度を記録し、充電前後の温度上昇を算出し、無線充電システムのパワーが11kWである。天びんで磁気シールド構造の重量を量り、磁気シールド構造に対して初期の信頼性試験を行った。信頼性は、耐衝撃特性、ナノ結晶ユニット同士の接着特性などを含む。
【0042】
[比較例1]
実施例1の比較例としては、無線充電磁気シールド構造は、16個の方形のフェライトにより接合された。フェライトの材質は、マンガン・亜鉛・フェライトであり、型番がPC95である。各方形フェライトのサイズは、105mm×105mm×3mmである。方形フェライトは、直接的にエポキシ樹脂で接着して連結された。
【0043】
[比較例2]
実施例1の比較例としては、無線充電磁気シールド構造16個の方形のフェライトにより接合された。フェライトの材質は、マンガン・亜鉛・フェライトであり、型番がPC95である。各方形フェライトのサイズは、105mm×105mm×5mmである。方形フェライトは、直接的にエポキシ樹脂で接着して連結された。
【0044】
[比較例3]
実施例1の比較例としては、無線充電磁気シールド構造は、実施例1におけるステップ(1)で得た7本のナノ結晶ストリップによりタイル張り接合され、即ちステップ(2)における裁断および後続の設計と加工が行われていない。複数層のナノ結晶ストリップのサイズは、60mm×420mm×3mmである。ナノ結晶ストリップ同士は、実施例1における熱伝導ユニットのコロイドにより接着された。
【0045】
実施例1、比較例1~3の試験結果を図3に示した。試験結果から分かるように、磁気シールド構造の厚さが同一である場合、本願に係る特殊な設計は、充電効率、軽量化および信頼性の点でいずれも優勢があり、フェライト磁性体の厚さが5mmに増加した際に、効率が本願に相当するが、軽量化および信頼性の点で相違がより明らかになった。本願に係る磁気シールド構造は、30min充電した後に、温度がやや上昇したが、システム全体の安全性に対する影響が大きくなかった。タイル張り接合されたナノ結晶ストリップにより構成された磁気シールド構造と比べ、本願は、充電効率および温度上昇の点で明らかな優勢を備えた。
【0046】
[実施例2]
磁気シールド構造は、主にナノ結晶ユニットおよび熱伝導ユニットを含む。
【0047】
ナノ結晶ユニットは、120層のナノ結晶材料および119層の接着剤層により複合された。ナノ結晶材料の成分は、Fe73.5Si13.5NbCuである。ナノ結晶材料は、動作周波数100kHzの動作モードで実部透磁率が1634である。ナノ結晶材料の平均厚さが20ミクロンであり、接着剤層の厚さが5ミクロンである。ナノ結晶ユニットは、形状が直方体であり、そのうち、表面形状が正方形であり、辺長aのサイズが14mmである。
【0048】
熱伝導ユニットは、熱伝導ポッティング剤およびエポキシ樹脂からなる混合物である。熱伝導ポッティング剤は、2成分のシリカゲル材料である。エポキシ樹脂は、ポリアミド樹脂で変性されたエポキシ樹脂である。熱伝導ポッティング剤とエポキシ樹脂の質量比は、4.5:1である。隣り合うナノ結晶ユニット同士の距離であるbのサイズは、0.3mmである。
【0049】
ナノ結晶ユニットおよび熱伝導ユニットからなる磁気シールド構造は、厚さ方向におけるサイズhが3mmである。
【0050】
試験:
まず、後続の計算のために、ナノ結晶ストリップの透磁率に対して試験を行った。ナノ結晶ストリップは、上記ステップ(1)におけるナノ結晶ストリップである。ナノ結晶ストリップを、外径18.8mm、内径9.9mmの円形ループに打ち抜き加工して、透磁率試験を行った。試験機器は、徳E4990Aであり、試験周波数が100kHzである。
【0051】
本願に係る磁気シールド構造に対して無線充電効率および温度上昇の試験を行った。磁気シールド構造を大電力無線充電システムに置き、無線充電システムが30min動作した後の充電効率を測定した。温度測定装置で磁気シールド構造の表面温度を測定し、充電前、および30min動作した後の磁気シールド構造の表面の最高温度を記録し、充電前後の温度上昇を算出し、無線充電システムのパワーが11kWである。天びんで磁気シールド構造の重量を量り、磁気シールド構造に対して初期の信頼性試験を行った。信頼性は、耐衝撃特性、ナノ結晶ユニット同士の接着特性などを含む。
【0052】
[比較例4]
実施例2の比較例としては、ナノ結晶材料の実部透磁率が567である以外、実施例2と同様である。
【0053】
[比較例5]
実施例2の比較例としては、ナノ結晶材料の実部透磁率が16450である以外、実施例2と同様である。
【0054】
実施例2、比較例4、比較例5の試験結果を図4に示した。試験結果から分かるように、ナノ結晶材料の透磁率が所定範囲を超えた後、充電システム全体の効率が低下した。
【0055】
[実施例3]
磁気シールド構造は、主に、ナノ結晶ユニットと、熱伝導ユニットと、を含む。
【0056】
ナノ結晶ユニットは、120層のナノ結晶材料および119層の接着剤層により複合された。ナノ結晶材料の成分は、Fe73.5Si13.5NbCuである。ナノ結晶材料は、動作周波数100kHzの動作モードで実部透磁率が2153である。ナノ結晶材料の平均厚さが19ミクロンであり、接着剤層の厚さが6ミクロンである。ナノ結晶ユニットは、形状が直方体であり、そのうち、表面形状が正方形であり、辺長aのサイズが12mm。
【0057】
熱伝導ユニットは、熱伝導ポッティング剤およびエポキシ樹脂からなる混合物である。熱伝導ポッティング剤は、2成分のシリカゲル材料である。エポキシ樹脂は、ポリアミド樹脂で変性されたエポキシ樹脂である。熱伝導ポッティング剤とエポキシ樹脂の質量比は、1.5:1。隣り合うナノ結晶ユニット同士の距離であるbのサイズは、0.2mmである。
【0058】
ナノ結晶ユニットおよび熱伝導ユニットからなる磁気シールド構造は、厚さ方向におけるサイズhが3mmである。
【0059】
試験:
まず、後続の計算のために、ナノ結晶ストリップの透磁率に対して試験を行った。ナノ結晶ストリップは、上記ステップ(1)におけるナノ結晶ストリップである。ナノ結晶を、外径18.8mm、内径9.9mmの円形ループに打ち抜き加工して、透磁率試験に使用した。試験機器は、徳E4990Aであり、試験周波数が100kHzである。
【0060】
本願に係る磁気シールド構造に対して無線充電効率および温度上昇の試験を行った。磁気シールド構造を大電力無線充電システムに置き、無線充電システムが30min動作した後の充電効率を測定した。温度測定装置で磁気シールド構造の表面温度を測定し、充電前、および30min動作した後の磁気シールド構造の表面の最高温度を記録し、充電前後の温度上昇を算出し、無線充電システムのパワーが11kWである。天びんで磁気シールド構造の重量を量り、磁気シールド構造に対して初期の信頼性試験を行った。信頼性は、耐衝撃特性、ナノ結晶ユニット同士の接着特性などを含む。
【0061】
[比較例6]
実施例3の比較例としては、ナノ結晶ユニット1における接着剤層の厚さが3ミクロンであり、ナノ結晶材料が136層であり、接着剤層が135層である以外、実施例3と同様である。
【0062】
[比較例7]
実施例3の比較例としては、ナノ結晶ユニットにおける接着剤層の厚さが14ミクロンであり、ナノ結晶材料が92層であり、接着剤層が91層である以外、実施例3と同様である。
【0063】
実施例3、比較例6、比較例7の試験結果を図5に示した。試験結果から分かるように、接着剤層の厚さが薄すぎると、ナノ結晶材料の層同士の接着性が悪くなり、信頼性が低下した。接着剤層の厚さが厚すぎると、磁性材料の磁気隔絶、シールド作用が低下し、システム全体の結合係数に影響を与えて、無線充電システムの充電効率が低下した。
【0064】
[実施例4]
磁気シールド構造は、主にナノ結晶ユニットおよび熱伝導ユニットを含む。
【0065】
ナノ結晶ユニットは、120層のナノ結晶材料および119層の接着剤層により複合された。ナノ結晶材料の成分は、Fe73.5Si13.5NbCuである。ナノ結晶材料は、動作周波数100kHzの動作モードで実部透磁率が3146であり、ナノ結晶材料の平均厚さが20ミクロンであり、接着剤層の厚さが5ミクロンである。ナノ結晶ユニットは、形状が直方体であり、そのうち、表面形状が正方形であり、辺長aのサイズが11mmである。
【0066】
熱伝導ユニットは、熱伝導ポッティング剤およびエポキシ樹脂からなる混合物である。熱伝導ポッティング剤は、2成分のシリカゲル材料である。エポキシ樹脂は、ポリアミド樹脂で変性されたエポキシ樹脂である。熱伝導ポッティング剤とエポキシ樹脂の質量比は、2:1である。隣り合うナノ結晶ユニット1同士の距離であるbのサイズは、0.1mmである。
ナノ結晶ユニットおよび熱伝導ユニットからなる磁気シールド構造は、厚さ方向におけるサイズhが3mmである。
【0067】
試験:
まず、後続の計算のために、ナノ結晶ストリップの透磁率に対して試験を行った。ナノ結晶ストリップは、上記ステップ(1)におけるナノ結晶ストリップである。ナノ結晶を、外径18.8mm、内径9.9mmの円形ループに打ち抜き加工して、透磁率試験に使用した。試験機器は、徳E4990Aであり、試験周波数が100kHzである。
【0068】
本願に係る磁気シールド構造に対して無線充電効率および温度上昇の試験を行った。磁気シールド構造を大電力無線充電システムに置き、無線充電システムが30min動作した後の充電効率を測定した。温度測定装置で磁気シールド構造の表面温度を測定し、充電前、および30min動作した後の磁気シールド構造の表面の最高温度を記録し、充電前後の温度上昇を算出し、無線充電システムのパワーが11kWである。天びんで磁気シールド構造の重量を量り、磁気シールド構造に対して初期の信頼性試験を行った。信頼性は、耐衝撃特性、ナノ結晶ユニット同士の接着特性などを含む。
【0069】
[比較例8]
実施例4の比較例としては、ナノ結晶ユニットにおける辺長aが4mmである以外、実施例4と同様である。
【0070】
[比較例9]
実施例4の比較例としては、ナノ結晶ユニットにおける辺長aが16mmである以外、実施例4と同様である。
【0071】
実施例4、比較例8、比較例9の試験結果を図6に示す。試験結果から分かるように、aの値が所定範囲を超えると、システムの充電効率が明らかに低下し、aの値が大き過ぎると、大き過ぎる渦流損失が発生し、温度上昇が明らかになった。
【0072】
[実施例5]
磁気シールド構造は、主にナノ結晶ユニットおよび熱伝導ユニットを含む。
【0073】
ナノ結晶ユニットは、120層のナノ結晶材料および119層の接着剤層により複合された。ナノ結晶材料の成分は、Fe73.5Si13.5NbCuである。ナノ結晶材料は、動作周波数100kHzの動作モードで実部透磁率が14371である。ナノ結晶材料の平均厚さが20ミクロンであり、接着剤層の厚さが5ミクロンである。ナノ結晶ユニットは、形状が直方体であり、そのうち、表面形状が正方形であり、辺長aのサイズが6mmである。
【0074】
熱伝導ユニットは、熱伝導ポッティング剤およびエポキシ樹脂からなる混合物である。熱伝導ポッティング剤は、2成分のシリカゲル材料である。エポキシ樹脂は、ポリアミド樹脂で変性されたエポキシ樹脂である。熱伝導ポッティング剤とエポキシ樹脂の質量比は、3:1である。隣り合うナノ結晶ユニット1同士の距離であるbのサイズは、0.2mmである。
【0075】
ナノ結晶ユニットおよび熱伝導ユニットからなる磁気シールド構造は、厚さ方向におけるサイズhが3mm。
【0076】
試験:
まず、後続の計算のために、ナノ結晶ストリップの透磁率に対して試験を行った。ナノ結晶ストリップは、上記ステップ(1)におけるナノ結晶ストリップである。ナノ結晶を、外径18.8mm、内径9.9mmの円形ループに打ち抜き加工して、透磁率試験に使用した。試験機器は、徳E4990Aであり、試験周波数が100kHzである。
【0077】
本願に係る磁気シールド構造に対して無線充電効率および温度上昇の試験を行った。磁気シールド構造を大電力無線充電システムに置き、無線充電システムが30min動作した後の充電効率を測定した。温度測定装置で磁気シールド構造の表面温度を測定し、充電前、および30min動作した後の磁気シールド構造の表面の最高温度を記録し、充電前後の温度上昇を算出し、無線充電システムのパワーが11kWである。天びんで磁気シールド構造の重量を量り、磁気シールド構造に対して初期の信頼性試験を行った。信頼性は、耐衝撃特性、ナノ結晶ユニット同士の接着特性などを含む。
【0078】
[比較例10]
実施例5の比較例としては、熱伝導ユニットにおいて熱伝導ポッティング剤のみが用いられ、エポキシ樹脂がない以外、実施例5と同様である。
【0079】
[比較例11]
実施例5の比較例としては、熱伝導ユニットにおいてエポキシ樹脂のみが用いられ、熱伝導ポッティング剤がない以外、実施例5と同様である。
【0080】
[比較例12]
実施例5の比較例としては、熱伝導ユニットにおいて熱伝導ポッティング剤とエポキシ樹脂の質量比が0.8:1である以外、実施例5と同様である。
【0081】
[比較例13]
実施例5の比較例としては、熱伝導ユニットにおいて、熱伝導ポッティング剤とエポキシ樹脂の質量比が6:1である以外、実施例5と同様である。
【0082】
実施例5、比較例10~13の試験結果を図7に示した。試験結果から分かるように、熱伝導ユニットにエポキシ樹脂が添加されていないか、またはその含有量が低い場合、コロイドの接着性が悪く、信頼性が低い。熱伝導ユニットに熱伝導ポッティング剤が添加されていないか、またはその含有量が低い場合、熱伝導ユニットの放熱特性が悪く、さらに充電効率に影響を与えた。
【0083】
[実施例6]
磁気シールド構造は、主にナノ結晶ユニットおよび熱伝導ユニットを含む。
【0084】
ナノ結晶ユニットは、120層のナノ結晶材料および119層の接着剤層により複合された。ナノ結晶材料の成分は、Fe73.5Si13.5NbCuである。ナノ結晶材料は、動作周波数100kHzの動作モードで、実部透磁率が5314である。ナノ結晶材料の平均厚さが20ミクロンであり、接着剤層の厚さが5ミクロンである。ナノ結晶ユニットは、形状が直方体であり、そのうち、表面形状が正方形であり、辺長aのサイズが10mmである。
【0085】
熱伝導ユニットは、熱伝導ポッティング剤およびエポキシ樹脂からなる混合物である。熱伝導ポッティング剤は、2成分のシリカゲル材料である。エポキシ樹脂は、ポリアミド樹脂で変性されたエポキシ樹脂である。熱伝導ポッティング剤とエポキシ樹脂の質量比は、4.5:1である。隣り合うナノ結晶ユニット同士の距離であるbのサイズは、0.3mmである。
【0086】
ナノ結晶ユニットおよび熱伝導ユニットからなる磁気シールド構造は、厚さ方向におけるサイズhが3mmである。
【0087】
試験:
まず、後続の計算のために、ナノ結晶ストリップの透磁率に対して試験を行った。ナノ結晶ストリップは、上記ステップ(1)におけるナノ結晶ストリップである。ナノ結晶を、外径18.8mm、内径9.9mmの円形ループに打ち抜き加工して、透磁率試験に使用した。試験機器は、徳E4990Aであり、試験周波数が100kHzである。
【0088】
本願に係る磁気シールド構造に対して無線充電効率および温度上昇の試験を行った。磁気シールド構造を大電力無線充電システムに置き、無線充電システムが30min動作した後の充電効率を測定した。温度測定装置で磁気シールド構造の表面温度を測定し、充電前、および30min動作した後の磁気シールド構造の表面の最高温度を記録し、充電前後の温度上昇を算出し、無線充電システムのパワーが11kWである。天びんで磁気シールド構造の重量を量り、磁気シールド構造に対して初期の信頼性試験を行った。信頼性は、耐衝撃特性、ナノ結晶ユニット同士の接着特性などを含む。
【0089】
[比較例14]
実施例6の比較例としては、隣り合うナノ結晶ユニット同士の距離が0.08mmである以外、実施例6と同様である。
【0090】
[比較例15]
実施例6の比較例としては、隣り合うナノ結晶ユニット同士の距離が0.6mmである以外、実施例6と同様である。
【0091】
実施例6、比較例14、比較例15の試験結果を図8に示した。試験結果から分かるように、bが小さすぎると、熱伝導コロイドが完全にナノ結晶同士の隙間に充填されることができず、システム信頼性が悪くなり、bの値が大き過ぎると、磁気シールド構造全体の磁気隔絶、シールド作用が大幅に低下し、充電システムの結合係数が低減し、更に充電効率が悪化した。
【0092】
勿論、本願の上記実施例は、本願を明確に説明するために例示的なものにすぎず、本願の実施形態を限定するものではない。当業者であれば、本願の保護範囲から逸脱しない前提で、様々な明らかな変化、再調整及び置換を行うことができる。ここでは、すべての実施形態を列挙する必要も方法もない。本願の精神及び原則内で行われるあらゆる修正、等価の置換及び改良などは、本願の特許請求の範囲内に含まれるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】