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特表2024-516969代謝性疾患の治療のためのラクトイルアミノ酸
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-18
(54)【発明の名称】代謝性疾患の治療のためのラクトイルアミノ酸
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/198 20060101AFI20240411BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240411BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240411BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
A61K31/198
A61P3/00
A61P3/04
A61P3/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564664
(86)(22)【出願日】2022-05-02
(85)【翻訳文提出日】2023-12-19
(86)【国際出願番号】 US2022027261
(87)【国際公開番号】W WO2022235557
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】63/183,868
(32)【優先日】2021-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517293845
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティス オブ ザ リーランド スタンフォード ジュニア ユニヴァーシティー
(71)【出願人】
【識別番号】391058060
【氏名又は名称】ベイラー カレッジ オブ メディスン
【氏名又は名称原語表記】BAYLOR COLLEGE OF MEDICINE
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・ロング
(72)【発明者】
【氏名】ベロニカ・リー
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・バニク
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・シュイ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・ホー
【テーマコード(参考)】
4C206
【Fターム(参考)】
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA04
4C206GA37
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA70
4C206ZC21
4C206ZC35
(57)【要約】
対象における代謝障害を治療する方法が提供される。この方法の態様には、有効量のN-ラクトイルアミノ酸を対象に投与することが含まれる。代謝障害を治療するのに有効な量のN-ラクトイルアミノ酸を含む医薬製剤も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における代謝障害を治療する方法であって、有効量のN-ラクトイルアミノ酸を対象に投与することを含む方法。
【請求項2】
N-ラクトイルアミノ酸がN-ラクトイルフェニルアラニンである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記有効量は、投与されたときに身体活動後に観察される血漿濃度に匹敵するN-ラクトイルアミノ酸の血漿濃度を生じるN-ラクトイルアミノ酸の量を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記代謝障害が肥満である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記代謝障害が肥満関連代謝障害である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記代謝障害が糖尿病である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、治療前の前記対象による食物摂取と比較して、前記対象による食物摂取を減少させる、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が、治療前の前記対象の体重と比較して、前記対象の体重を減少させる、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
治療前の対象におけるグルコース恒常性及び/又はグルコースクリアランスと比較して、対象におけるグルコース恒常性を改善する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、治療前の前記対象における脂肪組織量と比較して脂肪組織量を減少させる、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が、前記代謝障害を治療するための1つ又は複数の治療法と組み合わせて、前記N-ラクトイルアミノ酸を投与することを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記1つ又は複数の治療法が、代謝障害を治療するための活性薬剤を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記1つ又は複数の治療法が低カロリー食を含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記1つ又は複数の治療法が外科的介入を含む、請求項11~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
以下を含む医薬製剤:
代謝障害を治療するのに有効な量のN-ラクトイルアミノ酸;及び
賦形剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
35U.S.C.§119(e)に準拠して、本出願は、2021年5月4日に提出された米国仮特許出願第63/183,868号の出願日に対する優先権を主張し、この出願の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
代謝障害とは一般に、体の代謝、つまり体がタンパク質、炭水化物、脂肪をエネルギーに変換する化学プロセスを妨げる欠陥を特徴とする幅広い障害を指す。代謝障害には、グルコース代謝の変化に起因する障害が含まれ得る。代謝障害の例としては、肥満、メタボリックシンドローム、耐糖能異常、脂質異常症などが挙げられる。代謝障害は、臓器の病気や機能不全によって生じることもある。糖尿病は、膵臓の罹患及び/又は機能不全に起因する代謝障害の一例である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
肥満は、一般的に除脂肪体重に対する過剰な体脂肪として定義され、罹患率と死亡率の増加に重大な寄与をしている。肥満は、エネルギー消費の制限及び/又は運動不足と組み合わされた過剰な食物摂取によって最も一般的に引き起こされ、多くの場合、さまざまな糖代謝障害を伴う。肥満は、糖尿病、高血圧、アテローム性動脈硬化、冠動脈疾患、痛風、リウマチ、関節炎などのさまざまな病気を発症する可能性を高める。肥満は多くの場合、心理的及び医学的疾患と関連しており、後者には関節の問題、冠状動脈疾患などの血管疾患、高血圧、脳卒中、及び末梢血管疾患の増加が含まれる。肥満は、インスリン抵抗性やII型糖尿病(インスリン非依存性糖尿病(NIDDM))、高脂血症、内皮機能不全などの代謝異常も引き起こす。
【課題を解決するための手段】
【0004】
対象における代謝障害を治療する方法が提供される。この方法の態様には、有効量のN-ラクトイルアミノ酸を対象に投与することが含まれる。代謝障害を治療するのに有効な量のN-ラクトイルアミノ酸を含む医薬製剤も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1A~Dは、マウスのトレッドミルランニングを1回行った後、血漿中でLac-Pheが強力に誘導されることを示す。(A)マウスでトレッドミルを実行するための速度と傾斜プロトコルの概略図。(B)ランニング後のマウスと座りっぱなしのマウスにおける非ターゲットメタボロミクスによって検出されたすべての血漿ピークのT-stat値。(C)運動後(赤色のトレース)又は座りっぱなし(青色のトレース)の血漿中のm/z=236.0928質量の抽出イオンクロマトグラム。(D)真正Lac-Phe標準(上)及び内因性m/z=236.0928質量(下)のタンデムMSフラグメンテーション(左)及び構造割り当て(右)。B及びCについて、N=5/グループ。
図2図2A~Iは、Lac-Pheが食物摂取及び肥満を抑制し、グルコース恒常性を改善することを示す。(A-B)ビヒクル(青)又はLac-Phe(赤、50mg/kg、腹腔内[IP])のいずれかを注射した後の22週の雄DIOマウスの累積摂食量(A)及び歩行活動(B)。(C-D)ビヒクル(青)又はLac-Phe(赤、50mg/kg/日、腹腔内[IP])で毎日処置した22週の雄DIOマウスの累積食物摂取量(C)及び体重の変化(D)。(E)ビヒクル又はLac-Pheで処置したマウスの耐糖能試験(1g/kgグルコース)。GTTは、6時間の絶食後の10日目に最後のLac-Phe投与の1日後に実行された。(F~G)10日間のビヒクル又はLac-Phe処置後のマウスの組織重量(F)及び脂肪組織の代表的な画像(G)。(H)ビヒクル(黒)、Lac-Phe(赤、50mg/kg/日、IP)で5日間処置した後の15週齢雄DIOマウスの1日の平均摂食量(左)と体重の変化(右))又はビヒクルで処置したペア給餌マウス(青)。(I)ビヒクル(黒)、乳酸塩(青、50mg/kg/日、IP)、フェニルアラニン(灰色、50mg/kg/日、IP)、又はLac-Phe(赤色、50mg/kg/日、IP)で7日間処置した後の13週齢雄DIOマウスの1日あたりの平均食物摂取量(左)と体重の変化(右)。(A~B)について、N=6/グループ;(C~H)について、N=8~10/グループ;(I)について、N=5/グループ。データは平均値±SEMとして示される。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
図3図3A~Hは、インビトロでのCNDP2依存性及び乳酸依存性の生合成及びマクロファージからのLac-Pheの分泌を示す。(A)RAW264.7細胞の馴化培地及び細胞溶解物中のLac-Pheレベル。(B)WT又はCNDP2-KO RAW264.7細胞からの細胞溶解物の抗CNDP2又は抗ベータチューブリンのウェスタンブロッティング。(C)WT及びCNDP2-KO RAW264.7細胞の馴化培地及び細胞溶解物中のLac-Pheレベル。(D)WT又はCNDP2-KOマウスから単離された初代腹膜マクロファージからの細胞溶解物の抗CNDP2又は抗ベータチューブリンのウェスタンブロッティング。(E)馴化培地及びWT及びCNDP2KO初代腹膜マクロファージの溶解物中のLac-Pheレベル。(F、G)乳酸塩(25mM)で処置した後の馴化培地及びWTRAW264.7(F)及びWT腹腔マクロファージ(G)の溶解物中のLac-Pheレベル。(H)インビトロでのLac-Phe合成の概略図。(A)、(C)、及び(E~G)について、n=3-5/グループ。データは平均値±SEMとして示される。**p<0.01。
図4図4A~Fは、Lac-Phe生合成の遺伝的除去が食物摂取量の増加及び肥満をもたらすことを示す。(A)WTマウスの組織溶解物の抗CNDP2ウェスタンブロッティング。(B)座りっぱなし及び運動した条件下での雄のWT(青)及びCNDP2KO(赤)マウスの血漿中のLac-Pheの相対存在量。(C-F)WT(青)及びCNDP2-KO(赤)マウスの、マウスに高脂肪食(脂肪から60%kcal)を与え、トレッドミルを週5日走らせて運動させる肥満誘発食/運動訓練計画(方法を参照)における、1日の累積食物摂取量(C)、体重(D)、組織重量(E)、及び脂肪組織(F)の代表的な画像。組織重量と画像は41日目に撮影された。(B)について、N=6/グループ。(C~F)について、N=8-9/グループ。データは平均値±SEMとして表される。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
図5図5A~Jは、Lac-Pheが培養中のAgRP+及びPOMC+ニューロンに直接作用することを示す。(A)ビヒクル(左)又はLac-Phe(50μM、右)で処置した後のAgRP+ニューロンの代表的な活動電位発火トレース。(B、C)AgRP+ニューロンの活動電位発火頻度(B)及び過分極(C)に対するLac-Pheの指定濃度の影響。(D)阻害剤カクテル(テトロドトキシン:1μM、ビククリン:50μM、DNQX:20μM、及びD-AP5:50μM)の存在下でLac-Phe(50μM)で処置した後のAgRP+ニューロンの代表的な電気生理学的記録。(E)さまざまな濃度のLac-Phe単独又は阻害剤カクテルの存在下で処置した後のAgRP+ニューロンの応答率。(F)ビヒクル(左)又はLac-Phe(50μM、右)で処置した後のPOMC+ニューロンの代表的な活動電位発火トレース。(G、H)POMC+ニューロンの活動電位発火頻度(G)及び過分極(H)に対するLac-Pheの指定濃度の影響。(I)阻害剤カクテルの存在下でLac-Phe(50μM)で処置した後のPOMC+ニューロンの代表的な電気生理学記録。(J)様々な濃度のLac-Phe単独又は阻害剤カクテルの存在下で処置した後のPOMC+ニューロンの応答率。(A~J)について、N=8~15ニューロン/グループ。データは平均値±SEMとして示される。**p<0.01、***p<0.001。
図6図6A~Fは、ヒトの運動後のLac-Pheの強力かつ持続的な上昇を示す。(A)ヒトの急激なトレッドミル運動研究デザインの概略図、N=36。(B)急激なトレッドミルの実行に応じた血漿からの、運動によって調節された代謝産物(濃い青)、脂質(灰色)、又はタンパク質(水色)の誤検出率。Lac-Pheの化学式と一致する化学式を持つ、以前に割り当てられていない代謝物は赤色で示されている。(C)運動後又は座っぱなしの後のヒトの血中Lac-Phe及び乳酸の時間経過。(D)ヒトのクロスオーバー急激運動研究デザインの概略図、N=8。(E)スプリント(赤)、レジスタンス(青)、持久力(水色)トライアル後の運動前後のLac-Pheレベルの時間経過。(F)3つの運動様式にわたる運動前後の血漿Lac-Phe及び乳酸レベルの相関関係。データは平均値±SEMとして示される。**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
図7図7A~Bは、陽性代謝産物コントロール及びm/z=236ピークの同定を示す。(A)運動状態と座りっぱなしの状態における、示された代謝物の倍率変化。N=5/グループ、データは平均±SEMとして示される。**p<0.01、***p<0.001。(B)内因性m/z=236.0928質量と真正LacPhe標準物質の共溶出。
図8図8A~Cは、Lac-Pheで急性処置された肥満マウスの追加の代謝パラメーターを示す。(A~C)ビヒクル又はLac-Pheを単回注射(50mg/kg、IP)した後の22週齢DIOマウスの12時間の酸素消費量VO2(A)、二酸化炭素生成VCO2(B)、及び呼吸交換比RER(C)。N=6/グループ、データは平均値±SEMとして示される。
図9図9A~Cは、インビトロでのLac-Phe産生の特徴付けを示す。(A)一晩インキュベートした後の細胞株のパネルからの馴化培地中のLac-Pheレベル。(B)一晩インキュベートした後のRAW264.7細胞の細胞溶解物又は馴化培地中の示された代謝産物の存在率。(C)CNDP2触媒によるLac-Phe生合成反応の図。(A、B)について、データは平均値±SEMとして示される。*p<0.05。
図10図10A~Dは、脳スライスにおけるセロトニン及びSF1ニューロンに対するLac-Pheの効果を示す。(A、B)5-HT+ニューロンのLac-Phe(50μM)処置の代表的な活動電位発火トレース(A)及び応答率(B)。(C、D)SF1+ニューロンのLac-Phe(50μM)処置の代表的な活動電位発火トレース(C)及び応答率(D)。(C~D)について、N=14~15ニューロン/グループ。
図11図11A~Dは、ヒトにおける血漿Lac-Pheレベルのさらなる特徴を示す。(A、B)真正Lac-Phe標準(青)とヒト血漿(赤)由来の内因性m/z=236.0928質量のタンデムMSフラグメンテーション(A)と共溶出(B)。(C)ヒトの急激なトレッドミル運動研究からの、トレッドミルランニングの急激1回の前後の血中Lac-Phe(赤)、乳酸塩(青)、及びフェニルアラニン(水色)レベルの時間経過(コホート1、N=36)。(D)ヒトクロスオーバー急激運動研究(コホート2、N=8)からの、スプリント(赤)、レジスタンス(青)、及び持久力(水色)運動の前後の乳酸値の時間経過。(C~D)について、データは平均値±SEMとして示される。**p<0.01、***p<0.001。
図12図12A~Eは、マウス運動血漿メタボロームのさらなる特徴付けを示す。(A)非ターゲットメタボロミクス分析で検出された、身体活動に伴って増加することが知られている代謝物の倍率変化。基礎状態と運動状態はそれぞれ青と赤で示される。(B)真正Lac-Phe標準物質(青)とマウス運動血漿からの内因性m/z=236.0928質量(赤)の共溶出。(C)座りっぱなし(青)及び運動(赤)条件下でのマウス血漿中のLac-Pheの絶対定量。(D)基礎条件(青)及び運動条件(赤)におけるマウスの血漿中の20個のN-ラクトイルアミノ酸結合体の総イオン数。(E)基礎条件下、運動直後、運動後30分及び120分後のマウスの血漿中のLac-Pheの時間経過。(A、C~E)について、研究はグループあたりN=3~5で実行され、データは平均値±SEMとして示される。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
図13図13A~Jは、Lac-Pheが培養中のAgRP+及びPOMC+ニューロンに直接作用することを示し、図5(上記)と同様の情報を含む。(A)阻害剤カクテルの存在下でビヒクル(左)又はLac-Phe(50μM、中央)又はLac-Phe(50μM)で処置した後のAgRP+ニューロンの代表的な活動電位発火トレース(テトロドトキシン:1μM、ビククリン:50μM、DNQX:20μM、及びD-AP5:50μM、右)。(B)Lac-Phe単独(左、n=12ニューロン)又は阻害剤カクテルの存在下(右、n=9ニューロン)で処置した後のAgRP+ニューロンの応答率。(C)Lac-Phe処置前後のAgRP+ニューロンの発火頻度の定量化。(D~E)Lac-Phe単独処置(D)又は阻害剤カクテルの存在下(E)の前後のAgRP+ニューロンの静止膜電位の定量化。(F-J)POMC+ニューロンに対するLac-Pheの効果。(F)ビヒクル(左)、Lac-Phe(50μM、中央)、又は阻害剤カクテル(50μM、右)の存在下でのLac-Pheで処置した後のPOMC+ニューロンの代表的な活動電位発火トレース。(G)Lac-Phe単独(左、n=16ニューロン)又は阻害剤カクテルの存在下(右、n=15ニューロン)で処置した後のPOMC+ニューロンの応答率。(H)Lac-Phe処置前後のPOMC+ニューロンの発火頻度の定量化。(I~J)Lac-Phe単独処置(I)又は阻害剤カクテルの存在下(J)の前後のPOMC+ニューロンの静止膜電位の定量化。(A~J)について、N=8~15ニューロン/グループ。データは平均として示される。**p<0.01、***p<0.001。
図14図14A~Eは、ヒトの運動がLac-Pheの持続的な上昇と、BMI及び脂肪量との負の相関を誘導することを示す。(A)ヒトの急激なトレッドミル運動研究デザインの概略図、N=36。(B)急激なトレッドミルの実行に応じた血漿からの、運動によって調節された代謝産物(濃い青)、脂質(灰色)、又はタンパク質(水色)の誤検出率。Lac-Pheの化学式と一致する化学式を持つ、以前に割り当てられていない代謝物は赤色で示されている。(C)運動前後の対象の血漿中のLac-Phe(赤)、乳酸塩(青)、及びフェニルアラニン(水色)の経時変化。(D)運動後30分の循環Lac-Pheレベルと人口動態及び生理学的マーカーとの関連。(E)運動後30分の循環Lac-PheレベルとBMI(左)及び推定脂肪量(右)との関連。
図15図15は、Lac-Pheがヒトにも存在し、運動及び食物摂取に伴う循環レベルの変化を示す。(上)運動と食事の摂取がいつ行われたか、またいつ血液が採取されたかを示す研究デザインの概略図、N=36。(下)被験者の運動前後(左)、及び食物摂取後を含む実験全体(右)におけるLac-Phe(赤)、乳酸(青)、フェニルアラニン(緑)の時間経過。
図16図16は、運動誘発性Lac-Pheのピークが肥満指数及び脂肪量と負の相関があることを示している。運動後30分の循環Lac-Pheレベルと、BMI(左)、推定脂肪量(中央)、及び脂肪量パーセント(右)との関連性。
図17図17は、食餌誘導性肥満マウスへのLac-Pheの投与が食欲及び体重を抑制し、グルコース恒常性を改善することを示す。(上)ビヒクル(青)又はLac-Phe(赤、50mg/kg/日、IP)で9日間処置した後の18週雄DIOマウスの体重(左)及び体重の変化(右)。(下)ビヒクル又はLac-Pheで処置したマウスの耐糖能試験(1g/kgグルコース、左)。GTTは6時間の絶食後に実施された。ビヒクル(青)又はLac-Phe(赤、50mg/kg、腹腔内、IP)のいずれかを注射した後のマウスの累積食物摂取量(右)。N=10/グループ。データは平均値±SEMとして示される。*p<0.05、**p<0.01。
図18図18は、Lac-Pheの抗肥満効果が無傷のアミド複合体を必要とすることを示す。ビヒクル(黒)、乳酸塩(青、50mg/kg/日、IP)、フェニルアラニン(緑、50mg/kg/日、IP)、又はLac-Phe(赤色、50mg/kg/日、IP)で7日間処置した後の13週の雄DIOマウスの体重の変化。N=5/グループ。データは平均値±SEMとして示される。*p<0.05。
図19図19A~Cは、Lac-Pheが乳酸及びCNDP2依存的にマクロファージから分泌される代謝産物であることを示す。(A)一晩インキュベートした後の細胞株のパネルからの馴化培地中のLac-Pheレベル。(B)RAW264.7細胞の馴化培地及び細胞溶解物中のLac-Pheレベル。(C)WT又はCNDP2-KORAW264.7細胞からの細胞溶解物の抗CNDP2又は抗ベータチューブリンウェスタンブロッティング(左)。WT及びCNDP2-KORAW264.7細胞の馴化培地及び細胞溶解物中のLac-Pheレベル(中央)。乳酸塩(25mM)で処置した後の馴化培地及びWTRAW264.7細胞の溶解物中のLac-Pheレベル。(A~C)について、N=3~5/グループ。データは平均値±SEMとして示される。*p<0.05、**p<0.01。
図20図20C~Fは、Lac-Pheを持たないマウスが食物摂取量の増加及び肥満を示すことを示す。(C-F)マウスに高脂肪食(脂肪から60%kcal)を与え、トレッドミルを週5日走らせて運動させる肥満誘発食/運動訓練計画(方法を参照)における、WT(青)及びCNDP2-KO(赤)マウスの体重、(C)累積摂食量(D)、画像(E)、及び組織重量(F)。(C~F)について、N=8-9/グループ。データは平均値±SEMとして示される。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
図21図21は、CNDP2-KOマウスが血中のLac-Pheレベルを消失させたことを示す。座りっぱなし及び運動した条件下での雄のWT(青)及びCNDP2KO(赤)マウスの血漿中のLac-Pheの相対量。N=6/グループのデータは平均±SEMとして示される。*p<0.05、***p<0.001。
図22図22A~Bは、ビヒクル(紫)、Lac-Phe(青)、Lac-Leu(グレー)、Lac-Ile(水色)、Lac-Val(緑)、又はLac-Met(ティール)のいずれかの注射後の14週DIOマウスの体重(a)及び毎日の食物摂取量(b)の変化を示す。処置は、50mg/kg/日、IP、n=4で行われた。
【発明を実施するための形態】
【0006】
対象における代謝障害を治療する方法が提供される。この方法の態様には、有効量のN-ラクトイルアミノ酸を対象に投与することが含まれる。代謝障害を治療するのに有効な量のN-ラクトイルアミノ酸を含む医薬製剤も提供される。
【0007】
本発明をより詳細に説明する前に、本発明は記載された特定の実施形態に限定されるものではなく、当然のことながら変更することができることを理解されたい。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で使用される用語は特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図したものではないことも理解されたい。
【0008】
値の範囲が指定されている場合、文脈が明確に別段の指示をしない限り、下限の単位の10分の1までの各中間の値、その範囲の上限及び下限と、その範囲内の他の記載された値又は介在する値との間の値は、本発明の範囲内に包含されると理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、独立してより小さい範囲に含まれてもよく、また、記載された範囲内で特に除外される制限を条件として、本発明の範囲内に包含される。記載された範囲が限界の一方又は両方を含む場合、それらの含まれる限界の一方又は両方を除く範囲も本発明に含まれる。
【0009】
特定の範囲は、本明細書では、数値の前に「約」という用語を付けて示される。「約」という用語は、本明細書では、その用語が先行する正確な数値、及びその用語が先行する数値に近い又はほぼ数値を文字通りサポートするために使用される。ある数字が具体的に列挙された数字に近い、又はほぼ近いかどうかを判断する際、その近い又は近似する未列挙の数字は、それが提示される文脈において、具体的に列挙された数字と実質的に同等の数字であり得る。
【0010】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似又は同等の任意の方法及び材料も本発明の実施又は試験に使用することができるが、代表的な例示的な方法及び材料をここで説明する。
【0011】
本明細書で引用されるすべての刊行物及び特許は、あたかも個々の刊行物又は特許が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示され、参照により本明細書に組み込まれるかのように、刊行物が引用されている方法及び/又は材料を開示及び説明するために参照により本明細書に組み込まれる。いかなる刊行物の引用も、出願日より前の開示に対するものであり、本発明が先願発明のおかげでそのような刊行物に先行する権利がないことを認めるものとして解釈されるべきではない。さらに、提供された刊行日は実際の発行日と異なる場合があり、個別に確認する必要がある場合がある。
【0012】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、文脈上明らかに別段の指示がない限り、単数形「a」、「an」、及び「the」は複数の指示対象を含むことに留意されたい。さらに、特許請求の範囲は任意の要素を除外するように記載される可能性があることに留意されたい。したがって、この記述は、請求項の要素の記載又は「否定的な」限定の使用に関連して、「単独で」、「のみ」などの排他的な用語を使用するための先行根拠として機能することを目的としている。
【0013】
この開示を読めば当業者には明らかなように、本明細書に記載され図示される個々の実施形態のそれぞれは、本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離することができる、又はこれらの特徴と組み合わせることができる個別の構成要素及び特徴を有する。列挙された任意の方法は、列挙されたイベントの順序で、又は論理的に可能な他の順序で実行することができる。
【0014】
この装置及び方法は、文法的流れを目的として、機能的な説明を含めて説明されているか、又は以下より説明するが、特許請求の範囲は、35USC§112に基づいて明示的に定式化されていない限り、「手段」又は「ステップ」の限定の構成によっていかなる意味でも必然的に限定されるものとして解釈されるべきではないことが明確に理解されるべきであり、司法上の均等論に基づいて請求項によって提供される定義の意味及び均等物の全範囲が与えられるものとし、請求項が35USC§112に基づいて明示的に定式化されている場合には、35USC§112に基づいて完全な法定均等物が与えられるものとする。
【0015】
本発明の様々な態様をさらに説明する際に、まず方法をより詳細に検討し、続いて方法の実施形態で使用される医薬製剤を検討する。
【0016】
方法
上で要約したように、対象における代謝障害を治療する方法が提供される。本方法は、有効量のN-ラクトイルアミノ酸を対象に投与することを含み得る。本明細書で使用される場合、用語「治療する」、「治療」、「治療中」、又は「改善」は、治療的処置を指し、その目的は、疾患又は障害、例えば肥満に関連する症状の進行又は重症度を逆転、軽減、改善、阻害、減速又は停止させることである。「治療」という用語には、状態、疾患、又は障害の少なくとも1つの副作用又は症状を軽減又は軽減することが含まれる。一般に、1つ又は複数の症状又は臨床マーカーが軽減された場合、治療は「効果的」である。あるいは、病気の進行が減少又は停止した場合、治療は「有効」であると言える。すなわち、「治療」には、症状又はマーカーの改善だけでなく、治療がない場合に予想されるものと比較して症状の進行又は悪化を停止する、又は少なくとも遅らせることも含まれる。有益な又は望ましい臨床結果には、検出可能か検出不可能かにかかわらず、以下が含まれるが、これらに限定されない:1つ又は複数の症状の緩和、疾患の程度の軽減、疾患状態の安定化(すなわち、悪化していない)、疾患進行の遅延又は減速、疾患状態の改善又は緩和、寛解(部分的又は全体的)、及び/又は死亡率の減少。疾患の「治療」という用語には、疾患の症状又は副作用を軽減することも含まれる。代謝障害の少なくとも1つの症状が、軽減、終了、遅延、又は予防されると予想され、又は実際にされる場合、代謝障害は「治療」され得る。代謝障害の再発又は進行が軽減、遅延、遅延、又は予防される場合も、代謝障害は「治療」され得る。
【0017】
任意の適切なN-ラクトイル-アミノ酸又はN-ラクトイル-アミノ酸の組み合わせが、本発明の方法において投与され得る。本明細書で従来の意味で使用される場合、「N-ラクトイルアミノ酸」又は「lac-アミノ酸」は、例えばプロテアーゼサイトゾル非特異的ジペプチダーゼ2(CNDP2)の作用によって乳酸塩とアミノ酸から形成される化合物、例えば代謝産物を指す。N-ラクトイルアミノ酸は、体内で生成されるものであっても、合成的に生成されるものであってもよい。投与されるN-ラクトイルアミノ酸中のアミノ酸は、例えば、フェニルアラニン、イソロイシン、バリン、グリシン、メチオニン、グルタミン酸、トリプトファン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン、セリン、プロリン、スレオニン、システイン、リジン、アルギニン、チロシン、アスパラギン酸、ロイシンなどを含む、任意の適切なアミノ酸であり得る。場合によっては、本方法で投与されるN-ラクトイルアミノ酸は、身体活動中又は身体活動後に体内に存在する(例えば、検出可能な)ものである。場合によっては、本方法で投与されるN-ラクトイル-アミノ酸は、身体活動の最中又は後、体内、例えば血漿中でN-ラクトイル-アミノ酸のレベルが上昇又は低下するものである。場合によっては、本方法は、本明細書に記載の任意のN-ラクトイルアミノ酸の類似体を投与することを含む。場合によっては、N-ラクトイル-アミノ酸は、N-ラクトイル-フェニルアラニン(例えば、Lac-Phe)である。場合によっては、N-ラクトイル-アミノ酸は、N-ラクトイル-ロイシン(例えば、Lac-Leu)である。場合によっては、N-ラクトイル-アミノ酸は、N-ラクトイル-イソロイシン(例えば、Lac-Ile)である。場合によっては、N-ラクトイル-アミノ酸はN-ラクトイル-バリン(例えば、Lac-Val)である。場合によっては、例えば、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、又は10以上のN-ラクトイルアミノ酸を含む複数のN-ラクトイルアミノ酸が投与される。場合によっては、N-ラクトイル-アミノ酸はN-ラクトイル-メチオニン(例えば、Lac-Met)ではない。
【0018】
任意の適切な量のN-ラクトイルアミノ酸を投与することができる。場合によっては、代謝性疾患又は関連状態を治療するのに有効な量、例えば有効量が投与される。場合によっては、代謝性疾患又は関連症状を治療するのに有効な複数のN-ラクトイルアミノ酸中の各N-ラクトイルアミノ酸の量が投与される。例えば、複数のN-ラクトイルアミノ酸が投与される場合、各N-ラクトイルアミノ酸の有効量が投与され得る。場合によっては、有効量には、投与された場合に、身体活動中又は身体活動後に対象において観察される血漿濃度に匹敵する(例えば同等の)N-ラクトイルアミノ酸の血漿濃度を生じるN-ラクトイルアミノ酸の量が含まれる。例えば、有効量は、身体活動中又は身体活動後の対象の体内、例えば血漿中に存在するN-ラクトイルアミノ酸の量と等価であり得る。場合によっては、有効量には、投与された場合に、身体活動の後の回復中又は回復期間後に(例えば、1分~4時間、1分~3時間、1分~2時間、1分~1時間、1分~5時間、1分~30分まで、又は1分~15分までの範囲を含む、身体活動後の1分~5時間の期間)、対象において観察される血漿濃度に匹敵する(例えば同等の)N-ラクトイルアミノ酸の血漿濃度を生じるN-ラクトイルアミノ酸の量が含まれる。例えば、有効量は、身体活動後の回復期間中又は回復期間後に体内、例えば血漿中に存在する量と等価であり得る。身体活動には、一定期間にわたる任意の量の身体活動が含まれる。場合によっては、身体活動には、例えば、1分~1時間、又は1分~30分を含む、1分~2時間の範囲の時間にわたって行われる身体活動の量が含まれる。身体活動には、例えば、心拍数を安静時心拍数よりも上昇させる任意の活動、身体運動、運動、体力を維持又は達成するために行われる任意の活動などが含まれ得る。場合によっては、有効量には、N-ラクトイルアミノ酸の単回単位用量が含まれる。場合によっては、有効量には、例えば、2回以上の用量、3回以上の用量、4回以上の用量などを含む、N-ラクトイルアミノ酸の1回以上の単位用量が含まれる。場合によっては、単回用量が投与される。場合によっては、複数回、例えば2回以上、3回以上等が投与される。有効量は、例えば、1mg/kg~400mg/kg、1mg/kg~300mg/kg、1mg/kg~200mg/kg、1mg/kg~100mg/kgを含む、1mg/kg~500mg/kgの範囲であり得る。
【0019】
場合によっては、本方法は、対象において身体活動に関連する結果を誘導するのに有効な量(例えば、被験者に身体活動に関連した結果を経験させるのに効果的)のN-ラクトイルアミノ酸を投与することを含む。「身体活動に関連した結果」とは、身体活動によって対象に誘発されるものと同等の結果、変化、又は効果(例えば、生物学的、物理的、及び/又は化学的)を意味する(例えば、大きさと寿命が同等)。対象となる身体活動に関連した結果には、とりわけ、以下が含まれるが、これらに限定されない:体重減少、代謝障害及び関連症状の予防又は治療、グルコース恒常性の改善、思考又は認知の改善、気分の改善、気分障害(例、不安やうつ病)の重症度の軽減、神経変性疾患(認知症など)の予防又は進行の遅延、睡眠の改善、癌のリスクの低下など。例えば、本方法は、身体活動によって誘導されるものと同等の、対象の体重減少を誘導するのに有効な量のN-ラクトイルアミノ酸を投与することを含み得る。別の例では、方法は、身体活動によって誘発されるものと同等の、対象におけるグルコース恒常性の改善を誘発するのに有効な量のN-ラクトイルアミノ酸を投与することを含み得る。別の例では、本方法は、身体活動によって誘発されるものと同等の、対象の気分改善を誘発するのに有効な量のN-ラクトイルアミノ酸を投与することを含み得る。さらに別の例では、本方法は、身体活動によって誘発されるものと同等の、対象における気分障害の重症度の軽減を誘発するのに有効な量のN-ラクトイルアミノ酸を投与することを含み得る。さらに別の例では、方法は、身体活動によって誘発されるものと同等の、対象における神経変性障害の重症度の軽減(例:障害の発症の予防又は障害の進行の遅延)を誘発するのに有効な量のN-ラクトイルアミノ酸を投与することを含み得る。いくつかの実施形態では、方法は、神経系障害及び/又は関連症状を治療するのに有効な量のN-ラクトイル-アミノ酸を投与することを含む。神経系障害には、例えば、気分障害又は精神障害(例えば、不安、うつ病、双極性障害、季節性感情障害など)、又は神経変性疾患(例えば、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病など)が含まれ得る。有効量は、本明細書に記載される量のいずれであってもよい。
【0020】
場合によっては、N-ラクトイル-アミノ酸は、投与スケジュールに従って投与され得る。場合によっては、有効量が対象に1回投与される。場合によっては、有効量が1日1回対象に投与される。場合によっては、有効量が1日に複数回対象に投与される。場合によっては、有効量は、1日~60日の範囲の期間、例えば、1日~10日、1日~7日、1日~5日、又は1日~3日にわたって、1日1回投与される。場合によっては、有効量は、1日~14日までの期間、例えば1日~10日、1日~7日、1日~5日、又は1日~3日にわたって、1日1回~5回、例えば、1日1回~3回、1日2回~5回、1日3回~5回投与される。
【0021】
特定の実施形態では、本方法は、代謝障害及び/又は関連する状態、例えば肥満を治療するため、N-ラクトイル-アミノ酸、例えば、N-ラクトイル-フェニルアラニン、又はN-ラクトイル-アミノ酸の組み合わせを、1つ又は複数の治療法と組み合わせて投与することを含む。場合によっては、本方法は、代謝障害を治療するために、活性薬剤(又は1つ又は複数の活性薬剤の組み合わせ)と組み合わせてN-ラクトイルアミノ酸を投与することを含む。場合によっては、本方法は、肥満を治療するための活性薬剤と組み合わせてN-ラクトイルアミノ酸を投与することを含む。対象となる活性薬剤としては、オルリスタット、ロルカセリン、フェンテルミン-トピラメート、ナルトレキソン-ブプロピオン、リラグルチド、フェンテルミン、ベンズフェタミン、ジエチルプロピオン、フェンジメトラジンなどが挙げられるが、これらに限定されない。場合によっては、代謝障害(例えば、肥満)を治療するためにN-ラクトイルアミノ酸と組み合わせて使用され得る治療法には、以下の治療法のいずれか1つ又はそれらの組み合わせが含まれる:身体活動、食事計画(例えば、低脂肪食、低カロリー食、間欠的絶食など)、減量装置の使用、及び外科的介入(例えば、肥満手術)。減量装置には、例えば、電気刺激システム(例えば、胃と脳の間の神経活動を遮断する装置)、胃バルーンシステム(例えば、胃内に配置される1つ又は複数のバルーン)、及び/又は胃排出システム(例えば、食後に胃から食物を排出するためのポンプ及びチューブ)を含み得る。
【0022】
場合によっては、1つ又は複数の治療法には小分子薬剤が含まれる。対象となる天然又は合成の小分子化合物には、有機分子、例えば分子量が50ダルトンを超え約2,500ダルトン未満である小有機化合物などの多数の化学クラスが含まれる。候補薬剤は、タンパク質との構造的相互作用、特に水素結合のための官能基を含み、典型的には少なくともアミン、カルボニル、ヒドロキシル又はカルボキシル基、好ましくは少なくとも2つの化学官能基を含む。候補薬剤には、上記の官能基の1つ又は複数で置換された環状炭素若しくは複素環構造、及び/又は芳香族若しくは多環芳香族構造が含まれ得る。候補薬剤は、ペプチド、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、構造類似体、又はそれらの組み合わせを含む生体分子の間でも見出される。このような分子は、とりわけ、スクリーニングプロトコルを使用することによって同定され得る。
【0023】
場合によっては、1つ又は複数の治療法には、タンパク質又はその断片、あるいはタンパク質複合体が含まれる。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の治療法には、抗体結合剤又はその誘導体が含まれる。本明細書で使用される「抗体結合剤」という用語には、目的の分析物に結合するのに十分なポリクローナル又はモノクローナル抗体又はフラグメントが含まれる。抗体断片は、例えば、単量体Fab断片、単量体Fab’断片、又は二量体F(ab)’2断片であり得る。「抗体結合剤」という用語の範囲内には、抗体工学によって生成される分子、例えば単鎖抗体分子(scFv)や、重鎖抗体の定常領域を置換することによってモノクローナル抗体から生成されるヒト化抗体又はキメラ抗体、キメラ抗体を生成するためのキメラ抗体又は両方の定常領域の置換のための軽鎖、及びヒト化抗体を産生する可変領域のフレームワーク部分も含まれる。場合によっては、1つ又は複数の治療法には、酵素又は酵素複合体が含まれる。場合によっては、1つ又は複数の治療法には、リン酸化酵素、例えばキナーゼが含まれる。場合によっては、1つ又は複数の治療法には、ガイドRNAと、核酸の標的切断に使用されるCRISPRエフェクタータンパク質、例えばCas9とを含む複合体が含まれる。
【0024】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数の治療法には核酸が含まれる。核酸には、DNA分子又はRNA分子が含まれ得る。特定の実施形態では、核酸は、例えば遺伝子の発現を減少又は下方制御することによって、遺伝子又はタンパク質の活性を調節、例えば阻害又は減少させる。核酸は一本鎖であっても二本鎖であってもよく、修飾された若しくは未修飾のヌクレオチド若しくは非ヌクレオチド、又はそれらの様々な混合物及び組み合わせを含み得る。場合によっては、1つ又は複数の治療法には、RNAスプライシングによる細胞内遺伝子サイレンシング分子、及び遺伝子機能を阻害するのに有用なアンチセンスオリゴヌクレオチド効果又はRNA干渉(RNAi)効果を提供する分子が含まれる。場合によっては、遺伝子サイレンシング分子(例えば、アンチセンスRNA、短い一時的RNA(stRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、短ヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、小さな非コードRNA(tncRNA)、snRNA、snoRNA、及びその他のRNAi様低分子RNA構築物など)を使用して、タンパク質をコードする遺伝子だけでなく、タンパク質をコードしない遺伝子も標的にすることができる。場合によっては、核酸にはアプタマー(例えば、シュピーゲルマー)が含まれる。場合によっては、核酸にはアンチセンス化合物が含まれる。場合によっては、核酸には、低分子干渉RNA(siRNA)を含む二本鎖RNA、ロックド核酸(LNA)阻害剤、ペプチド核酸(PNA)阻害剤などのRNA干渉(RNAi)に利用され得る分子が含まれる。
【0025】
N-ラクトイル-アミノ酸は、任意の適切な手段によって投与され得る。本明細書で使用する場合、「投与する」という用語には、インビボ投与及びエクスビボでの組織への直接投与が含まれる。一般に、投与は、例えば、経口、頬側、非経口(例えば、静脈内、動脈内、皮下)、腹腔内(すなわち、体腔内)、局所、例えば、吸入又は通気(すなわち、口又は鼻を通して)又は直腸全身性(すなわち、体全体に影響を与える)である。組成物は、所望に応じて、従来の非毒性の薬学的に許容される担体、アジュバント、及びビヒクルを含む投与単位製剤で投与され得る。「局所的に」という用語には、注射、挿入、移植、局所適用、又は非経口適用が含まれ得る。
【0026】
いくつかの実施形態では、N-ラクトイルアミノ酸は、医薬製剤中で、又は薬学的に許容される組成物として投与され、ここで、1つ又は複数のN-ラクトイルアミノ酸は、1つ又は複数の担体、増粘剤、希釈剤、緩衝剤、保存剤、界面活性剤、賦形剤などと混合され得る。医薬組成物はまた、1つ又は複数のN-ラクトイルアミノ酸に加えて、抗菌剤、抗炎症剤、麻酔薬などの1つ又は複数の追加の活性成分を含んでもよい。場合によっては、N-ラクトイル-アミノ酸組成物には、例えば、N-ラクトイル-アミノ酸の誘導体又は類似体が含まれる。「誘導体」には、薬学的に許容される塩及び化学修飾された薬剤が含まれる。「類似体」とは、構造的には類似しているが、組成がわずかに異なる化合物を指す(ある原子を特定の官能基の存在下で別の元素の原子に置き換えたり、あるいはある官能基を別の官能基に置き換えたりする場合など)。したがって、類似体は、参照化合物と機能及び外観が類似又は同等であるが、構造又は起源が異なる化合物であり得る。医薬組成物は、医薬組成物を投与するために一般的に使用される任意の経路によって投与され得る。例えば、投与は、局所(眼、経膣、直腸、鼻腔内を含む)、経口、吸入、又は非経口、例えば点滴静注又は皮下、腹腔内若しくは筋肉内注射によって行うことができる。N-ラクトイルアミノ酸を含む医薬組成物は、任意の適切な温度で保存することができる。場合によっては、N-ラクトイルアミノ酸組成物は、1℃~30℃、2℃~27℃、又は5℃~25℃の範囲の温度で保存される。N-ラクトイル-アミノ酸組成物は、以下に詳細に説明するように、任意の適切な容器に保存することができる。
【0027】
本方法によって治療される代謝障害は様々であり得る。「代謝障害」、「代謝病状」、「代謝疾患」、「代謝疾患関連状態」、又は「代謝障害関連病状」とは、代謝の異常に関連する障害又は状態を意味する。場合によっては、「代謝障害」は、例えば、インスリン抵抗性などの、グルコース調節又は血糖制御の障害又は変化に関連する、又はそれによって悪化する任意の障害を指す。このような障害には、糖尿病、高血糖、肥満などが含まれるが、これらに限定されない。本明細書に記載の方法に従って治療できる代謝障害及び代謝障害に関連する状態としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:過体重、肥満、過食症、糖尿病(1型糖尿病及び2型糖尿病を含む)、2型糖尿病、耐糖能異常、インスリン抵抗性、高インスリン血症、脂質異常症、高血圧、メタボリックシンドローム。本発明の方法によって治療される障害はまた、限定されないが、以下のような肥満及びメタボリックシンドローム関連障害であり得る:髄膜腫、腺癌、多発性骨髄腫、腎臓癌、子宮内膜癌、卵巣癌、結腸直腸癌、膵臓癌、胃癌、胆嚢癌、肝臓癌、乳癌、甲状腺癌、及びその他の肥満関連癌。変形性関節症、脳卒中胆嚢疾患、慢性腎臓病、冠動脈疾患が含まれる。臨床的うつ病や不安症、双極性障害、パニック障害、広場恐怖症などの精神障害が含まれる。本明細書に記載の方法に従って治療できる代謝障害は、個別に又は任意の組み合わせで実施形態に含めることができる。
【0028】
場合によっては、代謝障害又は代謝障害に関連する状態は肥満である。「肥満」という用語は、過剰な体脂肪を特徴とする状態を指す。肥満の運用上の定義は、身長当たりの体重を二乗メートル(kg/m2)で計算されるボディマス指数(BMI)に基づく場合がある。肥満とは、それ以外は健康な対象のBMIが30kg/m2以上である状態、又は少なくとも1つの併存疾患を有する対象のBMIが27kg/m2以上である状態を指す。「肥満対象」は、BMIが30kg/m2以上である、それ以外は健康な対象、又はBMIが27kg/m2以上である少なくとも1つの併存疾患を有する対象である。「肥満のリスクのある対象」とは、BMIが25kg/m2以上30kg/m2未満の他の点では健康な対象、又はBMIが25kg/m2以上27kg/m2未満の少なくとも1つの併存疾患を有する対象である。アジア系の人では、肥満に関連するリスクはより低いBMIで発生し得る。日本を含むアジア及びアジア太平洋諸国では、「肥満」とは病気のことを指し、ここで、減量が必要な、又は減量によって改善される少なくとも1つの肥満誘発性又は肥満関連の併存疾患を有する対象は、25kg/m2以上のBMIを有する。これらの国における「肥満対象」とは、減量が必要な、又は減量によって改善されるのであろう少なくとも1つの肥満誘発性又は肥満関連の併存疾患を有し、BMIが25kg/m2以上の対象を指す。これらの国では、「肥満のリスクがある対象」とは、BMIが23kg/m2を超え25kg/m2未満の人である。
【0029】
場合によっては、代謝障害は肥満関連の代謝障害である。「肥満関連障害」という用語は、肥満に関連する、肥満によって引き起こされる、又は肥満から生じる障害を包含する。肥満関連障害の例としては、以下のものが挙げられる:過食と過食症、糖尿病、高血圧、血漿インスリン濃度の上昇とインスリン抵抗性、脂質異常症、高脂血症、乳房、前立腺、子宮内膜がん及び結腸がん、心臓病、心血管障害、異常な心拍リズム及び不整脈、心筋梗塞、うっ血性心不全、冠状動脈性心疾患、狭心症、脳梗塞、脳血栓症、一過性脳虚血発作。他の例としては、代謝活動の低下や、総除脂肪量に対する安静時エネルギー消費の割合の減少を示す病的状態が挙げられる。肥満関連障害のさらなる例としては、以下のものが挙げられる:メタボリックシンドローム、症候群Xとも呼ばれる、インスリン抵抗性症候群、II型糖尿病、空腹時血糖値の異常、耐糖能異常、血管系の全身性炎症などの炎症、アテローム性動脈硬化症、高コレステロール血症、高尿酸血症、及び左心室肥大などの肥満の二次的結果。肥満関連の代謝障害には、例えば、高血圧、変形性関節症、II型糖尿病、血圧上昇、脳卒中、及び心臓病がさらに含まれ得る。肥満関連障害には、脂肪変性や、肥満やメタボリックシンドロームに関連する肝硬変の増加原因である非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)など、肥満に関連する肝臓異常も含まれる。実際、NAFLDは単純な脂肪症として現れることもあれば、炎症及び脂肪性肝炎(NASH)に進行する可能性があり、20年後には20%の肝硬変のリスクがある。「脂質異常症」は冠状動脈性心疾患(CHD)の主要な危険因子である。血漿中高密度リポタンパク質(HDL)コレステロール値が低く、低密度(LDL)コレステロール値が正常又は上昇している場合は、ヒトのアテローム性動脈硬化症及びそれに関連する冠状動脈疾患を発症する重要な危険因子である。脂質異常症は肥満と関連していることがよくある。さらなる肥満関連障害は、例えば米国特許第8394969号に記載されており、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0030】
場合によっては、代謝障害は糖尿病である。「糖尿病」とは、インスリン分泌若しくは作用、又はその両方の欠陥に起因する高血糖(グルコース)レベルを特徴とする一群の代謝性疾患を指す。糖尿病は、疾患の種類に応じて、インスリン依存性糖尿病(IDDM;I型糖尿病)とインスリン非依存性糖尿病(NIDDM;II型糖尿病)に分類される。「2型糖尿病」とは、糖尿病の2つの主要なタイプのうちの1つを指し、このタイプでは、少なくとも病気の初期段階では、膵臓のベータ細胞がインスリンを生成するが、体の細胞がインスリンの作用に耐性があるため、体はインスリンを効果的に利用できない。病気の後期には、ベータ細胞がインスリンの産生を停止することがある。2型糖尿病は、インスリン抵抗性糖尿病、インスリン非依存性糖尿病、成人発症糖尿病としても知られている。「I型糖尿病」は、自己免疫媒介による膵臓β細胞の破壊とその結果としてのインスリン産生の喪失により生じ、高血糖を引き起こす状態を指す。I型糖尿病患者は、生存を確実にするためにインスリン補充療法を必要とする。「糖尿病性障害」という用語は、糖尿病による合併症を指すことがある。例えば、糖尿病患者では、血管障害を主因として、網膜症、腎症、神経障害などの合併症が発生する。
【0031】
治療によりさまざまな結果が生じる可能性がある。特定の実施形態では、肥満及び肥満関連障害の治療は、肥満対象の体重を減少又は維持するために、本明細書に記載のN-ラクトイル-アミノ酸又はN-ラクトイル-アミノ酸の組み合わせを投与することを指す。治療の1つの成果は、本明細書に記載の化合物又は組み合わせの投与直前に、肥満対象の体重を対象の体重と比較して減少させることであってもよい。治療の別の成果は、食事、運動、又は薬物療法の結果として以前に減少した体重の回復を防ぐこと、及び禁煙による体重増加を防ぐことであり得る。治療の別の成果は、肥満関連疾患の発生及び/又は重症度の軽減であり得る。治療のさらに別の成果は、過体重又は肥満の対象における糖尿病の発症リスクを減少させることであり得る。この治療により、対象者の食事又はカロリー摂取量が減少する可能性があり、総食物摂取量の減少、又は炭水化物や脂肪などの食事の特定の成分の摂取量の減少;及び/又は栄養素の吸収の阻害;及び/又は代謝率の低下の抑制を含む。この治療により、必要な患者の体重が減少する可能性がある。治療は、代謝率の低下の抑制ではなく、又は代謝率の低下の抑制に加えて、代謝率の増加などの代謝率の変化をもたらすこともある;及び/又は通常は体重減少から生じる代謝抵抗を最小限に抑える。
【0032】
場合によっては、本方法は、対象における脂肪症又は肥満関連障害の発症を防止する。脂肪症及び肥満関連障害の予防とは、肥満の危険性がある対象の体重を減少又は維持するために、N-ラクトイルアミノ酸又はN-ラクトイルアミノ酸の組み合わせを投与することを指す。予防の1つの成果は、本発明の化合物又は組み合わせを投与する直前の対象の体重と比較して、肥満のリスクがある対象の体重を減少させることである可能性がある。予防のもう 1 つの成果は、食事、運動、又は薬物療法の結果として以前に減少した体重の回復を防ぐことである可能性がある。予防の別の成果は、肥満の危険性がある対象において肥満の発症前に治療が施された場合、肥満の発生を防止することである可能性がある。予防の別の成果は、肥満のリスクがある対象において肥満の発症前に治療が施された場合、肥満関連障害の発生及び/又は重症度を軽減することである可能性がある。さらに、すでに肥満の被験者に治療を開始した場合、そのような治療は、に限定されないが、以下のような肥満関連疾患の発生、進行、又は重篤化を予防する可能性がある:動脈硬化、2型糖尿病、多嚢胞性卵巣疾患、心血管疾患、変形性関節症、皮膚疾患、高血圧、インスリン抵抗性、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、胆石症。
【0033】
特定の実施形態では、本方法は、例えば治療中及び/又は治療後の対象の食物摂取を減少させる。「食物摂取量」とは、対象によって消費される食物の量を意味する。場合によっては、食物摂取量は、一定期間にわたるkcal、例えばkcal/日で測定される。場合によっては、食物摂取量は、1日~14日間の範囲の期間、例えば、1日~10日、1日~7日、1日~5日、又は1日~3日にわたる累積食物摂取量である。いくつかの例では、食物摂取量は、例えば、1日~14日までの範囲の期間、例えば、1日~10日、1日~7日、1日~5日、又は1日~3日にわたる、平均的な1日の食物摂取量である。場合によっては、本方法は、コントロールと比較して(例えば、関係して)対象による食物摂取を減少させる。場合によっては、本方法は、治療前の対象の食物摂取と比較して、対象による食物摂取を減少させる。場合によっては、累積食物摂取量が10%~90%(例えば、10%~80%、10%~70%、10%~60%、10%~50%、10%~40%、10%~30%、又は10%~20%を含む)減少する。場合によっては、1日の平均食物摂摂取量が(例えば、10%~80%、10%~70%、10%~60%、10%~50%、10%~40%、10%~30%、又は10%~20%を含む)減少する。
【0034】
特定の実施形態では、本方法は、例えば治療中及び/又は治療後に対象の体重を減少させる。場合によっては、本方法は、コントロールと比較して(例えば、関係して)対象の体重を減少させる。場合によっては、本方法は、治療前の対象の体重と比較して、対象の体重を減少させる。場合によっては、本方法は、例えば1日~14日までの範囲の期間(例えば、1日~10日、1日~7日、1日~5日、又は1日~3日を含む)にわたって対象の平均体重を減少させる。場合によっては、本方法は、コントロールと比較して対象の平均体重を減少させる。場合によっては、本方法は、治療前の対象の平均体重と比較して、対象の平均体重を減少させる。場合によっては、体重が1%~50%(例えば、1%~40%、1%~30%、1%~20%、又は1%~10%を含む)減少する。いくつかの例では、平均体重が1%~50%(例えば、1%~40%、1%~30%、1%~20%、又は1%~10%を含む)減少する。
【0035】
特定の実施形態では、本方法は、例えば治療中及び/又は治療後の対象におけるグルコース調節を改善する。例えば、本方法は体のグルコースを調節する能力を改善し得る。本明細書で使用される「グルコース調節」又は「グルコース代謝の調節」という用語は、細胞、組織、器官、器官系、又は生物全体が、グルコース代謝の特定のプロセスを変更(例えば、増加又は減少)することによってグルコース恒常性を維持するプロセスを指す。グルコース代謝又はグルコース代謝プロセスには、グルコースの合成、処理、輸送、取り込み、利用、又は貯蔵が含まれるプロセスが含まれ、糖新生及び解糖が含まれる。グルコースの代謝と調節の具体的な側面には、以下のものが含まれる:細胞膜を通過するグルコースの移動及び細胞によるグルコースの保持又は分泌を促進するグルコース輸送体又は酵素の発現;例えば解糖酵素及び糖新生酵素を含む、グルコースの利用又は形成に関与する酵素の発現及び/又は活性の変化;体液又は培養液(例えば、間質液(すなわち細胞外液)及び細胞内液、血液、尿などを含む)内のグルコース分布の変化。
【0036】
いくつかの実施形態では、本方法は、例えば治療中及び/又は治療後に、対象におけるグルコース恒常性を改善する。「グルコース恒常性」という用語は、生物における正常なグルコースレベル、例えば正常な血糖レベルの維持を指す。場合によっては、本方法は、コントロールと比較して(例えば、関係して)対象におけるグルコース恒常性を改善する。場合によっては、本方法は、治療前の対象におけるグルコース恒常性と比較して、対象におけるグルコース恒常性を改善する。場合によっては、本方法は、コントロールと比較して、対象における、例えば循環からのグルコースクリアランスを改善する。場合によっては、本方法は、治療前の対象におけるグルコースクリアランスと比較して、対象におけるグルコースクリアランスを改善する。グルコースクリアランスの改善には、グルコースクリアランスの増加が含まれ得る。グルコースクリアランスの増加により、血糖値が低下し得る。場合によっては、グルコースクリアランスが1%~50%(例えば、1%~40%、1%~30%、1%~20%、又は1%~10%を含む)改善される。
【0037】
いくつかの実施形態では、本方法は、対象における脂肪組織量(例えば、脂肪組織又は脂肪の量)を減少させる。「脂肪組織」という用語は、例えば脂肪を貯蔵する結合組織を含む脂肪を指す。脂肪組織は、例えば、脂肪由来幹細胞(ASC)及び内皮前駆細胞及び前駆細胞を含む、複数の再生細胞タイプを含む。対象となる脂肪組織の種類には、白色脂肪組織及び褐色脂肪組織が含まれるが、これらに限定されない。場合によっては、本方法は、コントロールと比較して脂肪組織量を減少させる。いくつかの例では、本方法は、治療前の対象における脂肪組織量と比較して、対象における脂肪組織量を減少させる。場合によっては、本方法により脂肪組織が1%~50%(例えば、1%~40%、1%~30%、1%~20%、又は1%~10%を含む)減少する。場合によっては、本方法により脂肪組織が1%~50%(例えば、10%~40%、10%~30%、10%~20%、20%~50%、30%~50%、又は40%~50%を含む)減少する。場合によっては、本方法はコントロールと比較して白色脂肪の量を減少させる。場合によっては、本方法は、治療前の対象における白色脂肪の量と比較して、対象における白色脂肪の量を減少させる。場合によっては、本方法により白色脂肪が1%~50%(例えば、1%~40%、1%~30%、1%~20%、又は1%~10%を含む)減少する。場合によっては、本方法により白色脂肪が1%~50%(例えば、10%~40%、10%~30%、10%~20%、20%~50%、30%~50%、又は40%~50%を含む)減少する。場合によっては、本方法は、コントロールと比較して褐色脂肪の量を減少させる。場合によっては、本方法は、治療前の対象における褐色脂肪の量と比較して、対象における褐色脂肪の量を減少させる。場合によっては、本方法により褐色脂肪が1%~50%(例えば、1%~40%、1%~30%、1%~20%、又は1%~10%を含む)減少する。場合によっては、本方法により褐色脂肪が1%~50%(例えば、10%~40%、10%~30%、10%~20%、20%~50%、30%~50%、又は40%~50%を含む)減少する。場合によっては、本方法は、コントロールと比較して、より小さい精巣上体脂肪の量を減少させる。いくつかの例では、本方法は、治療前の対象におけるより小さい精巣上体脂肪の量と比較して、対象におけるより小さい精巣上体脂肪の量を減少させる。場合によっては、本方法により小さな精巣上体の脂肪が1%~50%(例えば、1%~40%、1%~30%、1%~20%、又は1%~10%を含む)減少する。場合によっては、本方法により小さな精巣上体脂肪が1%~50%(例えば、10%~40%、10%~30%、又は10%~20%を含む)減少する。場合によっては、本方法は、コントロールと比較して皮下鼠径脂肪の量を減少させる。いくつかの例では、本方法は、治療前の対象における皮下の鼠径脂肪の量と比較して、対象における皮下の鼠径脂肪の量を減少させる。場合によっては、本方法により皮下鼠径脂肪が1%~50%(例えば、1%~40%、1%~30%、1%~20%、又は1%~10%を含む)減少する。場合によっては、本方法により皮下鼠径脂肪が1%~50%(例えば、10%~40%、10%~30%、10%~20%、20%~50%、30%~50%、又は40%~50%を含む)減少する。
【0038】
本明細書で従来の意味で使用される「コントロール」は、任意の適切なコントロールであり得る。いくつかの実施形態では、コントロールには、有効量のN-ラクトイル-アミノ酸が投与されていない対象、例えば代謝障害を有する対象が含まれる。コントロールは、治療対象と同じ代謝障害及び/又は関連症状を有する対象であってもよい。いくつかの実施形態では、コントロールには、有効量のN-ラコチルアミノ酸が投与されない対象が含まれ、ここで、対象が、有効量が投与される対象と一致する代謝障害、又は代謝障害及び/又は関連状態の組み合わせを有する。場合によっては、コントロールの対象は、治療対象と共通の特徴(例えば、年齢、性別、身長、体重、人種、食事など)を有する。場合によっては、本明細書に記載される対象の結果(例えば、対象による食物摂取、対象の体重、対象のグルコース恒常性、対象の脂肪組織量などに関連する)は、治療前の対象と比較して測定される。
【0039】
方法の実施形態は、任意の適切な対象に対して実践することができる。本発明の対象は、「哺乳動物」又は「哺乳動物」であってもよく、これらの用語は、哺乳綱(肉食動物(例えば、イヌ及びネコ)、げっ歯目(例えば、マウスモルモット及びラット)、及び霊長類(例えば、ヒト、チンパンジー、及びサル)を含む)に属する生物を記述するために広く使用される。場合によっては、被験者はヒトである。この方法は、性別及びあらゆる発達段階(すなわち、新生児、乳児、青少年、青年、成人)のヒト対象に適用することができ、特定の実施形態では、ヒト対象は、少年、青年、又は成人である。
【0040】
医薬品製剤
上に要約したように、医薬製剤又は医薬組成物が提供される。医薬製剤は、N-ラクトイルアミノ酸(又はN-ラクトイルアミノ酸の組み合わせ)又はその薬学的に許容される塩、及び1つ又は複数の薬学的に許容される担体又は賦形剤を含み得る。場合によっては、医薬製剤には、代謝性疾患を治療するのに有効な量のN-ラクトイルアミノ酸;及び賦形剤が含まれる。N-ラクトイルアミノ酸は、本明細書に記載の任意の適切なN-ラクトイルアミノ酸又はN-ラクトイルアミノ酸の組み合わせであり得る。場合によっては、N-ラクトイル-アミノ酸はN-ラクトイル-フェニルアラニンである。N-ラクトイル-アミノ酸の量、例えば有効量は、本明細書に記載される実施形態のいずれかに従って任意の適切な量であり得る。医薬製剤は、本明細書に記載の任意の治療法(例えば、代謝障害を治療するための治療法)と組み合わせて投与することができる。
【0041】
医薬製剤は、任意の適切な手段による投与のために製剤化され得る。特定の実施形態では、組成物は、経口、皮内、筋肉内、非経口、静脈内、動脈内、頭蓋内、皮下、眼窩内、脳室内、脊髄内、腹腔内、又は鼻腔内に投与するために製剤される。医薬製剤又は組成物は、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、ドライシロップ剤、カプセル剤、液体組成物などを含む様々な剤形に製剤化することができる。場合によっては、医薬製剤はカプセル又は錠剤である。場合によっては、医薬製剤は非経口製剤である。場合によっては、医薬製剤は腹腔内製剤である。
【0042】
製薬分野で通常使用される添加剤及び希釈剤を任意に医薬製剤に添加することができる。これらには、増粘剤、造粒剤、分散剤、香味料、甘味料、着色料、及びpH安定剤を含む安定化剤、その他の賦形剤、抗酸化剤(例えば、トコフェロール、BHA、BHT、TBHQ、酢酸トコフェロール、パルミチン酸アスコルビル、没食子酸アスコルビン酸プロピルなど)、防腐剤(例えば、パラベン)などが含まれる。例示的な防腐剤には、ベンジルアルコール、エチルアルコール、塩化ベンザルコニウム、フェノール、クロロブタノールなどが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの有用な抗酸化剤は、製剤に酸素又は過酸化物阻害剤を提供し、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、アスコルビン酸パルミテート、α-トコフェロールなどが挙げられるが、これらに限定されない。レシチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ステアリン酸アルミニウムなどの増粘剤は、製剤の質感を改善する可能性がある。
【0043】
N-ラクトイルアミノ酸製剤又はN-ラクトイルアミノ酸医薬組成物を保持するための容器は、任意の適切な量のN-ラクトイルアミノ酸製剤又は組成物を保持するように構成され得る。場合によっては、容器のサイズは、容器内に保持されるN-ラクトイル-アミノ酸組成物の体積に依存し得る。特定の実施形態では、容器は、0.1mg~1000mgの範囲(例えば0.1mg~900mg、例えば0.1mg~800mg、例えば0.1mg~700mg、例えば0.1mg~600mg、例えば0.1mg~500mg、例えば0.1mg~400mg、又は0.1mg~300mg、又は0.1mg~200mg、又は0.1mg~100mg、0.1mg~90mg、又は0.1mg~80mg、又は0.1mg~70mg、又は0.1mg~60mg、又は0.1mg~50mg、又は0.1mg~40mg、又は0.1mg~30mg、又は0.1mg~25mg、又は0.1mg~20mg、又は0.1mg~15mg、又は0.1mg~10mg、又は0.1mg~5mg、又は0.1mg~1mg、又は0.1mg~0.5mg)の量のN-ラクトイルアミノ酸組成物を保持するように構成され得る。特定の実施形態では、容器は、0.1g~10g、又は0.1g~5g、又は0.1g~1g、又は0.1g~0.5gの範囲の量のN-ラクトイルアミノ酸組成物を保持するように構成される。特定の例では、容器は、0.1ml~200mlの範囲の容積(例えば、液体N-ラクトイルアミノ酸組成物の容積)を保持するように構成される。例えば、容器は、0.1ml~1000mlの範囲(例えば、0.1ml~900ml、又は0.1ml~800ml、又は0.1ml~700ml、又は0.1ml~600ml、又は0.1ml~500ml、又は0.1ml~400ml、又は0.1ml~300ml、又は0.1mlから200ml、又は0.1ml~100ml、又は0.1ml~50ml、又は0.1ml~25ml、又は0.1ml~10ml、又は0.1ml~5ml、又は0.1ml~1ml、又は0.1ml~0.5ml)の容積(例えば、液体の容積)を保持するように構成され得る。特定の例では、容器は、0.1ml~200mlの範囲の容積(例えば、液体N-ラクトイルアミノ酸組成物の容積)を保持するように構成される。
【0044】
容器の形状も異り得る。特定の場合には、容器は、アッセイ及び/又はアッセイを実施するために使用される方法若しくは他の装置に適合する形状に構成され得る。例えば、容器は、アッセイを実施するために使用される典型的な実験室装置の形状、又はアッセイを実施するために使用される他の装置と互換性のある形状で構成され得る。場合によっては、容器は液体容器である。いくつかの実施形態では、液体容器はバイアル又は試験管である。場合によっては、液体容器はバイアルである。場合によっては、液体容器は試験管である。場合によっては、容器はブリスターパックである。
【0045】
上述したように、容器の実施形態は、N-ラクトイルアミノ酸組成物と適合することができる。容器に適した材料の例には、ガラス及びプラスチックが含まれるが、これらに限定されない。例えば、容器は、ケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸ナトリウムガラス(例えば、PYREX(商標))、溶融石英ガラス、溶融石英ガラスなどのようなガラスで構成され得るが、これらに限定されない。容器に適した材料の他の例としては、限定されないが、以下のプラスチックが挙げられる:ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロエーテル(PFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等。
【0046】
いくつかの実施形態では、容器は密封されてもよい。すなわち、容器は、容器の内容物が容器から出るのを実質的に防止するシールを含んでもよい。容器のシールは、他の物質が容器に入るのを実質的に防止することもできる。例えば、シールは、液体が容器に出入りするのを実質的に防止する水密シールであってもよく、あるいはガスが容器に出入りするのを実質的に防止する気密シールであってもよい。場合によっては、シールは、所望の場合、例えば、容器の内容物の一部を除去したい場合、容器の内容物が周囲環境にさらされるように、取り外し可能な又は破壊可能なシールである。場合によっては、シールは、容器内にサンプルを保持するためのバリア(例えば、水密及び/又は気密シール)を提供するために弾性材料で作られる。特定の種類のシールには、容器の種類に応じて、ポリマーフィルムなどのフィルム、キャップなどが含まれるが、これらに限定されない。シールに適した材料としては、例えば、限定されないが、以下のようなゴム又はポリマーシールが挙げられる:シリコーンゴム、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレン-プロピレンコポリマー、ポリクロロプレン、ポリアクリレート、ポリブタジエン、ポリウレタン、スチレンブタジエンなど、及びそれらの組み合わせ。例えば、特定の実施形態では、シールは、針、注射器、又はカニューレによって穿孔可能な隔壁である。シールはまた、容器内のサンプルへの便利なアクセス、及び容器の開口部を覆う保護バリアを提供することもできる。場合によっては、シールは、容器の開口部に適用できるねじ付きキャップ又はスナップ式キャップ、又は他の適切なシール要素などの取り外し可能なシールである。例えば、サンプルを容器に加える前又は後に、ネジ付きキャップを開口部にねじ込むことができる。
【0047】
利用
本発明の方法及び製剤は、代謝障害及び代謝障害に関連する1つ又は複数の症状に関連する用途、例えば臨床用途に使用できる。いくつかの実施形態では、方法及び製剤は、代謝障害、及び例えば肥満、肥満関連障害、糖尿病などを含む代謝障害に関連する1つ又は複数の状態を治療することが望ましい用途に使用される。場合によっては、本方法及び製剤は、代謝障害及び代謝障害に関連する1つ又は複数の状態の発症又は発生を予防することが望ましい用途に使用される。特定の実施形態では、方法及び製剤は、対象の体重減少が望ましい用途に使用される。特定の実施形態では、方法及び製剤は、対象におけるグルコース恒常性の改善が望ましい用途に使用される。特定の実施形態では、方法及び製剤は、対象において身体活動に関連した結果を誘導することが望ましい用途に使用される。特定の実施形態では、方法及び製剤は、神経系障害を治療することが望ましい用途に使用される。本方法及び製剤は、本明細書に記載の障害及び関連症状のいずれかに対する他の療法及び治療と組み合わせて使用することもできる。
【0048】
以下の例は、例示として提供されるものであり、限定として提供されるものではない。
【実施例
【0049】
以下の実施例は、当業者に本発明の作り方及び使用方法の完全な開示及び説明を提供するために提示される。また、これらは、発明者らが発明とみなしているものの範囲を限定することを意図したものではなく、また、以下の実験が実施された実験のすべて又は唯一であることを表明することも意図したものではない。使用される数値(量、温度など)の正確性を確保するために努力が払われているが、一部の実験誤差や偏差は考慮する必要がある。他に示さない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏度であり、圧力は大気圧又は大気圧付近である。
【0050】
分子生化学及び細胞生化学の一般的な方法は、分子クローニングなどの標準的な教科書に記載されている:A Laboratory Manual, 3rd Ed. (Sambrook et al., HaRBor Laboratory Press 2001);Short Protocols in Molecular Biology, 4th Ed. (Ausubel et al. eds., John Wiley & Sons 1999);Protein Methods (Bollag et al., John Wiley & Sons 1996);Nonviral Vectors for Gene Therapy (Wagner et al. eds., Academic Press 1999);Viral Vectors (Kaplift & Loewy eds., Academic Press 1995); Immunology Methods Manual (I. Lefkovits ed., Academic Press 1997);及びCell and Tissue Culture: Laboratory Procedures in Biotechnology (Doyle & Griffiths, John Wiley & Sons 1998)。これらの開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。本開示で言及される、又は本開示に関連する方法のための試薬、クローニングベクター、細胞、及びキットは、BioRad、Agilent Technologies、Thermo Fisher Scientific、Sigma-Aldrich、New England Biolabs(NEB)、Takara Bio USA,Inc.などの商業ベンダー、及びAddgene,Inc.、American Type Culture Collection(ATCC)などのリポジトリから入手可能である。
【0051】
例1:食物摂取と肥満を抑制する乳酸由来の運動誘発性代謝物
材料及び方法
細胞株の培養。すべての細胞株はATCCから入手し、37℃、5%CO2で増殖させた。RAW264.7、HEK293T、HEK293A、C2C12、F442A、3T3-L1、Caco2、及びSW48は、10%ウシ胎児血清(FBS)及びペニシリン/ストレプトマイシン(ペニシリン/ストレプトマイシン)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で増殖させた。AML-12細胞は、10%FBS及びインスリン-トランスフェリン-セレンを補充したペニシリン/ストレプトマイシンを含むDMEM中で増殖させた。T84細胞は、5%FBS及びペン/連鎖球菌を含むダルベッコ改変イーグル培地/栄養混合物F-12(DMEM/F-12)で増殖させた。
【0052】
動物全般の情報。動物実験は、スタンフォード大学実験動物管理管理パネル(APLAC)によって承認された手順に従って実行された。マウスは22℃、相対湿度約50%で12時間の明暗サイクルで維持され、標準的な照射齧歯類の固形飼料を与えられた。示されている場合、高脂肪食(D12492、Research Diets、60%のkcalは脂肪由来)を使用した。C57BL/6J(ストック番号000664)及びC57BL/6JDIOマウス(ストック番号380050)は、JacksonLaboratoryから購入した。C57BL/6NCrl(ストック番号027)マウスはCharles River Laboratoryから購入した。全身CNDP2ノックアウトマウス(カタログ番号、C57BL/6NCrl-Cndp2em1(IMPC)Mbp/Mmucd、RRID:MMRRC_043492-UCD)は、NCRR-NIHが資金提供する系統リポジトリであるMutantMouseRegionalResourceCenterから入手した。Lac-Phe、乳酸塩、及びフェニルアラニンを含む化合物をマウスにインビボ注射するために、化合物を18:1:1(体積比)の生理食塩水/Kolliphor EL(Sigma Aldrich)/DMSOに溶解した。化合物を、示された用量で5μl/体重gで腹腔内注射によりマウスに毎日投与した。すべての注射実験では、体重が安定するまで3~5日間、マウスにビヒクルを模擬注射した。耐糖能試験では、マウスを6時間絶食させ、その後10μl/g体重のグルコースを注射した。ビヒクル及びLac-Pheで処置した肥満マウスのgTTには1g/kgの用量を使用した。
【0053】
化学薬品。L-フェニルアルニン(AAA-1323814)はFisher Scientificから購入し、L-乳酸ナトリウム(L7022)はSigmaから購入した。非市販のLac-Pheの合成については以下に説明する。
【0054】
Lac-Phe(N-ラクトイルフェニルアラニン)の合成。L-乳酸ナトリウム(1.2当量)をジクロロメタン(0.2M)に溶解し、アルゴン下0℃で3-[ビス(ジメチルアミノ)メチリウミル]-3H-ベンゾトリアゾール-1-オキシドヘキサフルオロリン酸(HBTU、1.2当量)で処置した。15分後、ジクロロメタン(0.2M)中のフェニルアラニンメチルエステル塩酸塩(1.0当量)及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(3.0当量)を混合物に加えた。反応物をアルゴン下、周囲温度で16時間撹拌した。溶媒の3分の1を除去し、ジクロロメタン溶液を5%HCl、5%NaHCO3、及び飽和NaCl溶液で洗浄した。有機層を乾燥させ(MgSO4)、濾過し、濃縮した。得られた粗生成物を酢酸エチル/ヘキサンで溶出するカラムクロマトグラフィーにより精製して、N-フェニルアラニンメチルエステルを得た。上記エステル(1.0当量)をTHF(0.5M)に溶解し、水(0.5M)中の水酸化リチウム一水和物(2.0当量)で処置した。溶液を周囲温度で2時間撹拌し、溶媒を除去した。得られた残渣をジクロロメタンに溶解し、5%HClでpH3まで酸性化した。得られた混合物を酢酸エチルで3回抽出し、合わせた有機層を飽和NaCl溶液で洗浄した。有機層を乾燥させ(MgSO4)、濾過し、濃縮した。得られた粗生成物を酢酸エチル/ヘキサンで再結晶して精製し、N-ラクトイルフェニルアラニンを白色粉末として得た。1H-NMR(400MHz,D2O)δ7.3-7.2(m,5H),4.13[dd,1H],4.10[q,1H],3.21[dd,1H],2.98[dd,1H],1.10[d,3H].LC/MS(m/z):236.093[M-H]-
【0055】
マウスランニングプロトコル。マウスのランニング研究には、6レーンのColumbus Instruments動物トレッドミル(製品1055-SRM-D65)を使用した。トレッドミルを実行する前に、マウスを5分間トレッドミルに慣れさせた。疲弊までの急激の運動研究では、トレッドミルランニングを7.5m/分の速度、4°の傾斜で開始した。3分ごとに、速度と傾斜はそれぞれ2.5m/分と2°増加した。40m/分の速度及び30°の傾斜に達したら、マウスが疲労に達するまで両方のパラメーターを一定に保った。
疲弊は、マウスがトレッドミルの後ろのショッカー上に5秒以上留まったときと定義された。WTマウスとCNDP2-KOマウスを用いた慢性ランニング実験では、高脂肪食(60%kcalは脂肪由来)を与えながらマウスを月曜から金曜まで週5日運動させ、残りの週2日は休ませた。トレッドミルランニングは一定の5°の傾斜で実行され、6m/分の速度で開始された。速度は5分ごとに2m/minずつ増加し、最大速度は30m/minになった。上述したように疲労に達した時点でマウスを停止し、2つのグループのマウス間でランニング時間を正規化した。
【0056】
LC-MS分析用の血漿サンプルの調製。血漿をマウスから顎下採血によりリチウムヘパリンチューブ(BD、365985)に採取し、直ちに氷上に移した。血液を4℃、5000rpmで5分間遠心分離し、血漿の上層を等分して-80℃で凍結した。LC-MS分析のために血漿から極性代謝産物を抽出するために、アセトニトリル/メタノールの2:1混合物150μlを50μlの血漿に添加した。混合物を4℃、15,000rpmで10分間遠心分離し、上清をLC-MSバイアルに移した。
【0057】
LC-MSによる代謝物の非標的測定。非標的メタボロミクス測定は、Agilent6520四重極飛行時間型(Q-TOF)LC/MSで実行された。質量分析は、ネガティブモードのエレクトロスプレーイオン化(ESI)を使用して実行された。デュアルESIソースパラメータは次のように設定された。ガス温度は250℃、乾燥ガス流量は12l/min、ネブライザー圧力は20psiに設定された。キャピラリー電圧は3500Vに設定され、フラグメンター電圧は100Vに設定された。極性代謝産物の分離は、順相クロマトグラフィーを使用して、Luna5μmNH2100ÅLCカラム(Phenomenex00B4378-E0)で実施した。移動相は次のとおりである:バッファーA、0.2%水酸化アンモニウム及び10mM酢酸アンモニウムを含む95:5水/アセトニトリル。緩衝液B、アセトニトリル。LC勾配は、0~2分間0.2ml/分の流速で100%Bで開始した。次いで、流速0.7ml/分で2~20分間、勾配を50%A/50%Bまで直線的に増加させた。20~25分間、流速0.7ml/分で勾配を50%A/50%Bに維持した。
【0058】
Lac-AAの標的測定。ターゲットを絞った測定は、Agilent6470トリプル四重極(QQQ)LC/MSで実行された。質量分析は、ネガティブモードのエレクトロスプレーイオン化(ESI)を使用して実行された。AJSESI源パラメーターは次のように設定された。ガス温度は250℃、ガス流量は12l/min、ネブライザー圧力は25psiに設定された。シースガス温度は300℃に設定され、シースガス流量は12l/minに設定された。キャピラリー電圧は3500Vに設定された。極性代謝産物の分離は、非ターゲットメタボロミクスセクションで前述したように実行された。示された代謝物について、リストされた滞留時間、フラグメンター電圧、衝突エネルギー、セル加速器電圧、極性を使用して多重反応モニタリング(MRM)を実行した。
【0059】
【表1】
【0060】
細胞株の分化。C2C12細胞を12ウェルに播種し、80~90%コンフルエントになるまで増殖させた。細胞を、2%ウマ血清及びペニシリン/連鎖球菌を含むDMEM中でインキュベートした。培地を4~5日間2日ごとに交換した。F442A細胞を12ウェルに播種し、60~70%コンフルエントになるまで増殖させた。5μg/mlのインスリン及び1μMのロシグリタゾンを完全培地に添加することによって細胞を分化させた。培地を7~8日間2日ごとに交換した。3T3-L1細胞を12ウェルに播種し、80~90%コンフルエントになるまで増殖させた。5μg/mlのインスリン、5μMのデキサメタゾン、250μMのイソブチルメチルキサンチン、及び1μMのロシグリタゾンを含むカクテルを2日間添加することによって分化を開始した。誘導後、残りの4~6日間、細胞を5μg/mlのインスリン及び1μMのロシグリタゾン中で維持した。
【0061】
CNDP2-KORAW264.7細胞の生成。Zhang研究室が開発したplentiCRISPRv2システムを使用して、CNDP2-KORAW264.7細胞株を生成した。使用したsgRNAは5’-CAGTGAATGAGATCCGTCA-3’(配列番号01)であった。Zhang labのプロトコルに従って、sgRNA及び逆相補配列のオリゴヌクレオチドが合成され、plentiCRISPRv2ベクターにクローニングされた(順方向オリゴ、5’-CACCGCAGTGAAATGAGATCCGTCA-3’(配列番号02);リバースオリゴ、5’-AAACTGACGGATCTCATTTCACTG C-3’(配列番号03))。レンチウイルス粒子は、クローン化したplentiCRISPRv2プラスミドとウイルスパッキングpsPAX2プラスミド及びウイルスエンベロープpMD2.Gプラスミドの共トランスフェクションにポリフェクトを使用してHEK293T細胞株で生成した。親のplentiCRISPRv2プラスミドをコントロールとして使用した。24時間後にレンチウイルス上清を回収し、0.45μMフィルターを通して濾過した。次いで、上清をポリブレンと1対1の比率で混合し、ポリブレンの最終濃度を8μg/mlとした。この混合物を、6ウェルプレート中の40~50%コンフルエンスでRAW264.7細胞に添加した。形質導入された細胞を10cmプレートに移し、続いて5μg/mlのピューロマイシンで3~6日間選択した。
【0062】
腹膜マクロファージの一次単離。マウスに2mlの3%チオグリコール酸醸造培地(Fisher、B11716)を注射し、マクロファージの誘発を3日間進行させた。マクロファージを単離するために、マウスをCO2で安楽死させ、腹部の皮膚を剥がして腹膜壁を露出させた。器官を穿刺しないように注意しながら、氷冷したカルシウム及びマグネシウムを含まないDPBS10mlを腹腔に注射した。マウスを優しくマッサージし、同じ注射器と針を使用して腹膜から液体を吸引した。液体を氷上の50mlファルコンチューブに分注した。次に細胞を4℃、400×gで10分間遠心分離した。上清を廃棄し、細胞を10%FBS及びペニシリン/連鎖球菌を含む冷DMEM/F-12に再懸濁した。細胞をインキュベーター内で少なくとも2時間接着させた後、温PBSで3回洗浄して非接着細胞を除去した。新鮮な培地を細胞に添加し、単離後1~2日以内に実験を実施した。
【0063】
インビトロLac-Phe産生アッセイ。細胞を12ウェルプレートに70~80%コンフルエンスで播種した。翌日、細胞をPBSで2回洗浄し、0.5mlの無血清培地中でインキュベートした。一晩インキュベートした後、400μlの培地を除去し、20μlの1M塩酸塩を加えて培地を酸性化し、Lac-Pheをプロトン化した。400μlの酢酸エチルを各サンプルに加え、30秒間ボルテックスしてLac-Pheを有機層に抽出した。上層からの300μlを新しいエッペンドルフチューブに移し、窒素流下で乾燥させた。残渣をアセトニトリル/水の80:20混合物100μlに再懸濁した。細胞を氷上に置いて溶解物を採取した。150μlのPBSを各ウェルに加え、細胞をこすり取ってエッペンドルフチューブに入れた。このステップを再度繰り返して、すべての細胞が確実に収集されたことを確認した。次に細胞を4℃、2,000×gで10分間遠心分離し、上清を除去して細胞ペレットを得た。アセトニトリル/メタノール/水混合物の2:1:1混合物100μlを使用して細胞を溶解し、大きなタンパク質を沈殿させた。混合物を4℃、15,000rpmで10分間遠心分離し、上清をLC-MSバイアルに移した。
【0064】
ウェスタンブロット分析。細胞を収集し、1:100のHALTプロテアーゼ阻害剤を含むRIPA緩衝液中で超音波処理により溶解した。細胞溶解物を4℃、13,000rpmで10分間遠心分離して、残留細胞破片を除去した。上清のタンパク質濃度は、Pierce BCAタンパク質アッセイキットを使用して標準化し、10mMDTTを含む4xNuPAGE LDSサンプルバッファーと組み合わせた。次に、サンプルを95℃で10分間煮沸した。調製したサンプルをNuPAGE412%Bis-Trisゲル上で泳動し、その後ニトロセルロース膜に転写した。ブロットは、Odysseyブロッキングバッファー中で室温で30分間ブロックされた。一次抗体(ウサギ抗CNDP2及びウサギ抗ベータチューブリン)を1:1000の比率でOdysseyブロッキングバッファーに添加した。ブロットを、示された一次抗体中で4℃で振盪しながら一晩インキュベートした。翌日、ブロットをPBS-Tで10分間ずつ3回洗浄した後、二次抗体で室温で1時間染色した。使用した二次抗体は、ブロッキング緩衝液で1:10,000の比率に希釈したヤギ抗ウサギ抗体であった。二次抗体染色後、Odyssey CLx Imaging Systemで画像化する前に、ブロットをPBS-Tで3回洗浄した。
【0065】
CNDP2KO動物の育成。CNDP2KO動物及び野生型動物は、ヘテロ接合交配によって育成された。ジェノタイピングは以下のように実施した:同腹子から尾の切り取りを取得し、100μlの50mMNaOH中で95℃で30分間煮沸してゲノムDNAを抽出した。21μlの0.5MTris(pH7.2)を加えて溶液を中和した。PCR反応は、CNDP2WT対立遺伝子(順方向:5’-CAGATGGCTCGGAGATACCAC-3’(配列番号:04)、逆方向:5’-TTCCCGCTCCACCAAGGTGAAG-3’(配列番号:05))又はCNDP2KO対立遺伝子(順方向:5’-GCTCTGTAAGGGAAAGAGATGACCC-3’(配列番号:06)、逆方向:5’-AATAGGACATACCCAGTTCTGTGAGG-3’(配列番号:07))のいずれかのプライマーを使用して実行された。PCR反応にはPromega GoTaqマスターミックスを使用した。各25μl反応は、12.5μlのプロメガマスターミックス(M7122)、2.5μlのフォワード及びリバースプライマーの10μM混合物、2μlのゲノムDNA、及び8μlの超純水から構成されていた。BioRad C1000 Touch Thermo Cycleのサーモサイクリングプログラムは、最初は95℃で30秒間開始され、続いて98℃で30秒、58℃で30秒、72℃で45秒のサイクルを繰り返し、続いて72℃で5分間、最後に4℃に保持した。WTプライマーのPCR反応は30サイクルで構成され、KOプライマーのPCR反応は48サイクルで構成された。サンプルは、0.2mg/mlのEtBrを含む2%アガロースゲル上で泳動された。WT対立遺伝子は160塩基対のサイズのPCR産物を生成すると予想されるが、KO対立遺伝子は440塩基対のサイズのPCR産物を生成すると予想される。
【0066】
スライス電気生理学研究。同定された神経集団からの電気生理学的記録には、いくつかの遺伝的マウス系統が使用された。これらには以下が含まれる:視床下部弓状核(ARH)のAgRPニューロンからの記録用のAgRP-IRES-Cre/Rosa26-LSL-tdTOMATOマウス;POMC-CreER/Rosa26-LSL-tdTOMATOマウス(8~12週目に200mg/kgタモキシフェン導入)を使用して、ARHのPOMCニューロンからの記録を行った;SF1-Cre/Rosa26-LSL-tdTOMATOマウスは、視床下部腹内側(VMH)のSF1ニューロンからの記録に使用された;TPH2-CreER/Rosa26-LSL-tdTOMATOマウス(8~12週目に200mg/kgタモキシフェン導入)を、背側縫線核(DRN)の5-HTニューロンからの記録に使用した。マウス(雄及び雌、8~16週齢)をイソフルランで麻酔し、改良された氷冷ショ糖ベースの切断溶液(pH7.4;10mのMNaCl、25mMのNaHCO3、195mMのスクロース、5mMのグルコース、2.5mMのKCl、1.25mMのNaH2PO4、2mMのピルビン酸ナトリウム、0.5mMのCaCl2、及び7mMMgCl2を含み、95%O2と5%CO2で継続的に泡立てる)で経心臓的に灌流した。次にマウスの首を切り落とし、脳全体を取り出してすぐに切断液に浸した。冠状スライス(220μm)を、MicromHM650Vビブラトーム(ThermoScientific)を用いて切断した。目的の領域(ARH、VMH、又はDRN)を含む脳スライスを対応するマウスごとに収集し、この脳領域全体のレベルで記録を作成した。スライスは32℃で約30分間回収され、記録前に酸素化(95%O2及び5%CO2)人工脳脊髄液(ACSF、pH7.4;126mMのNaCl、2.5mMのKCl、2.4mMのCaCl2、1.2mMのNaH2PO4、1.2mMのMgCl2、11.1mMのグルコース、及び21.4mMのNaHCO3を含む)中でさらに1時間室温に維持された。
【0067】
スライスを32℃の記録チャンバーに移し、酸素化ACSFを流速1.8~2.0ml/minで連続的に灌流した。スライスは記録前に少なくとも5分間平衡化させた。ARH、VMH、又はDRNのtdTOMATO標識ニューロンを、可動ステージ(MP-285、Sutter Instrument)を装備した正立顕微鏡(EclipseFN-1、Nikon)で落射蛍光及び赤外微分干渉コントラスト(IR-DIC)イメージングを使用して視覚化した。抵抗が3~5MΩωのパッチピペットに、128mMのグルコン酸カリウム、10mMのKCl、10mMのHEPES、0.1mMのEGTA、2mMのMgCl2、0.05mMのGTP(ナトリウム塩)、及び0.05mMのATP(マグネシウム塩)を含む細胞内溶液(pH7.3)を満たした。記録はMultiClamp700Bアンプ(Axon Instruments)を使用して行われ、Digidata1440Aを使用してサンプリングされ、pClamp10.3ソフトウェア(Axon Instruments)でオフラインで分析された。記録中に直列抵抗が監視されたが、その値は通常10MΩ未満であり、補正されなかった。液間電位を監視して補正した。実験中に直列抵抗の変化が20%を超える場合、又は活動電位のオーバーシュートがない場合、データは除外された。電流は増幅され、1kHzでフィルタリングされ、10kHzでデジタル化された。電流クランプを使用して、ベースライン及びLac-Pheのパフ送達後(図に示すさまざまな濃度で5秒)の神経発火頻度と静止膜電位(RM)をテストした。記録された各ニューロンが同量のLac-Pheを確実に受け取るようにするために、スライスの表面に位置するニューロンを記録するように選択し、パフピペットは常に記録されたニューロンから水平方向に100μm、垂直方向に100μmの距離に置いた。パフ強度は、再現可能な圧力パルスシステム(PicospritzerIII、Parker)を使用して同じレベルに維持された。いくつかの実験では、1μMのテトロドトキシン(TTX、Tocris)、50μMのビククリン(Tocris)、20μMのDNQX(Tocris)、及び50μMのD-AP5(Tocris)を含むACSF溶液を使用して、シナプス前入力の大部分をブロックした。各ニューロンはベースラインで少なくとも1分間記録され、安定したベースラインを持つニューロンのみがLac-Phe治療のテストに使用された。RMと発火頻度の値は、ベースラインと、POMC、SF1、及び5-HTニューロンにおけるLac-Pheパフ後の静止膜電位の最大変化点を含む1分間の範囲で平均された。AgRPニューロンの場合、RMと発火頻度の値は、図に示されている各時点で40秒間で平均された。膜電位の変化が少なくとも2mVである場合、ニューロンは脱分極又は過分極していると見なされ、2mV間の値は「未反応」と定義された。
【0068】
ヒトの運動研究-急激トレッドミルランニングの1回の運動。この研究はスタンフォード大学のスナイダー研究室によって実施され、実験モデルと被験者の詳細については参考文献に詳しく記載されている。簡単に説明すると、36人の健康な研究参加者が登録され、スタンフォード大学治験審査委員会(IRB23602)によって承認された運動研究に参加することに同意した。参加者は一晩(10~12時間)絶食して試験施設に到着し、ランプトレッドミルで症状を限定した心肺運動(CPX)試験を受けた。プロトコルは各参加者のフィットネスレベルに合わせて個別化され、参加者は最大運動能力に達するまで運動することが奨励され、8~12分間継続された。血液は、運動前と運動後2分、15分、30分、及び1時間に上前腕から静脈内採取された。血漿は分離され、非標的メタボロミクスプラットフォームで分析された。
【0069】
ヒトの持久力トレーニング、スプリントトレーニング、レジスタンストレーニングの研究デザイン及び方法。8人の健康な若い男性が研究に採用された。参加者は26.5±3.7歳、標準体重(BMI23.5±2.1kg/m2)、非喫煙者で定期的な身体活動(週1セッション以下)に参加しておらず、フィットネスレベルは42.6±4.2ml/分/kgであった。実験実施に参加する前に、被験者には参加の潜在的なリスクに関する情報が書面及び口頭で与えられた。ヘルシンキII宣言に従って、すべての被験者から、通知された内容が得られた。この研究はデンマークの地域倫理委員会によって承認された(ジャーナル番号:H-18051389)。被験者は一晩絶食(10時間絶食)した後、朝(午前8時)に試験施設に到着した。体組成は二重エネルギーX線吸光光度計(Lunar DPX-IQ DEXAScanner、Lunar Corporation、ウィスコンシン州、米国)によって測定された。最大酸素摂取量(VO2ピーク)は、トレーニング状態を評価するために、Monark Ergomedic893E自転車(Monark、スウェーデン)の増分ランプテストで測定された。テストは、100Wで5分間、150Wで5分間、その後疲弊まで1分あたり25Wずつ増加していった。呼気は、オンラインガス分析装置(CareFusion、MasterScreen-CPX、ドイツ)を使用してテスト中に収集された。各試験の前に、被験者は少なくとも48時間は激しい身体活動を控えるよう求められた。各試験の前日に、標準化された食事(炭水化物60E%、脂肪25E%、タンパク質15E%)を加重部分に分けて与えた。エネルギー要件の計算は、WHOの公式(「人間のエネルギー要件:FAO/WHO/国連大学合同専門家協議報告書」、2005年)及び毎日の身体活動レベル(PAL)に基づいて行われた。実験当日の朝、被験者は余分な身体活動を避けるため、絶食状態で午前8時に車又は公共交通機関で到着した。ベンフロンカテーテル(BDVenflon(商標)ProSafety、ヘルシンボリ、スウェーデン)を肘前静脈に挿入し、安静時、運動直後(0)、運動からの回復中(15、60、120、180分)に採血した。遠心分離後、血漿をピペットで分注し(200μl)、さらなる分析まで-80℃で保存した。すべての被験者は、実行された運動方法によってのみ異なる3つの同一の実験試験を受けた:1)持久力運動トライアル(END)、2)スプリント運動トライアル(SPT)、及び3)レジスタンス運動トライアル(RES)。試験はランダムな順序で実行され、各試験は少なくとも10日間の間隔をあけられた。持久力運動トライアル(END)。ENDトライアルは、55%VO2ピークでの90分間の連続サイクリングで構成された。負荷は予備テスト中に確立されたが、推定負荷が55%VO2ピークを確実に導き出し、運動中のVO2の潜在的なドリフトを考慮して、VO2測定は試験中に実施及び評価された。負荷が不足又は過剰な場合は、調整が実施された。スプリント運動トライアル(SPT)。SPTトライアルは、50Wでの5分間のウォームアップと、それに続くエルゴメーターバイクでの30秒間の全力疾走を3回行うこと(Wingateテスト)で構成されていた。各Wingateテストには、5Wでの4分間のアクティブリカバリーが挟まれた。レジスタンスエクササイズトライアル(RES)。RES試験は、両側膝伸展運動に基づいていた。試験は、10RM負荷の50%に相当する負荷で10回を3セット行うウォームアップによって開始された。各ウォームアップセットの間に2分間の休憩が挟まれた。ウォームアップに続いて、10-RMに相当する負荷で10回の繰り返しを6セット実行し、各セットに2分間の休憩を挟んだ。
【0070】
統計。特に指定しない限り、すべてのデータは平均±SEMとして表された。スチューデントのt検定を一対比較に使用した。特に指定のない限り、統計的有意性はP<0.05として設定された。
【0071】
結果
定期的な身体活動は、肥満を軽減し、肥満に関連する代謝性疾患から身を守る強力な介入である(1~4)。逆に、運動不足は肥満や2型糖尿病を発症するリスクを高める(5、6)。これらの心臓代謝上の利点の大きさは、メトホルミンなどの第一選択の薬物療法と同等、場合によってはそれ以上である(7~9)。運動による心臓代謝の利点の原因となるメカニズムは完全には理解されていないが、活動に関連したエネルギー消費の増加自体を超えて広がる可能性がある。
【0072】
身体活動による代謝上の利点の根底にある内分泌メカニズムの1つは、運動によって誘導される循環シグナル伝達分子の生成である。これらの分泌因子は、組織クロストークを媒介し、身体活動の代謝上の利点の分子トランスデューサーとして機能すると提案されている(10)。これまでの研究では、候補アプローチを使用して、運動トレーニング後の脂肪組織と筋肉組織の有益なリモデリングを仲介するいくつかの生理活性循環代謝産物が同定されている(11~14)。しかし、新規代謝産物を体系的に同定するための非標的戦略はさらに限定的であった。
【0073】
血漿の非標的メタボロミクスを使用して、ここでは、これまで知られていなかった機能の代謝産物であるLac-Phe(N-ラクトイルフェニルアラニン)が、マウスとヒトの両方で身体活動後に最も強力に誘導される循環代謝産物の1つとして同定された。Lac-Pheは、末梢マクロファージや上皮細胞を含むCNDP2+細胞で産生される。機能獲得及び機能喪失の研究により、Lac-Pheが食物摂取を直接抑制することによって脂肪症及び肥満を抑制することが証明されている。最後に、人間の短距離走、持久力、レジスタンス運動はすべて、血漿中のLac-Pheレベルの劇的な持続的な上昇につながる。したがって、Lac-Pheは、身体活動の抗肥満効果を媒介する運動誘導性シグナル伝達代謝産物であると結論付けられる。
【0074】
急激トレッドミルを実行すると、マウスの循環Lac-Pheが大幅に増加する
運動誘発性循環代謝物を包括的かつ公平な方法で測定するために、アセトニトリル/メタノール抽出血漿の液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS)による非標的メタボロームプロファイリングを、1回の急激なトレッドミルランニングの後のマウスで実施した(図1A)。この運動プロトコルでは、マウスが疲弊に達するまで、トレッドミルの速度と傾斜を3分ごとに増加させた(方法を参照)。重要なのは、非ターゲットメタボロミクスパイプラインでは、検出されたピークの化学構造に関する先験的な知識が必要ないため、運動によって調節される血漿の変化をより広範かつ公平にサンプリングできることである。予想どおり、標的質量分析実験で身体活動によって確実に増加することが以前に検出された代謝物(TCAサイクルの中間体(例、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸)及びヌクレオチド異化の生成物(例、尿酸)を含む)は、座りっぱなしの状態と比較して運動中は2~4倍増加することがメタボロミクスデータセットで判明した(図1B及び図7A)。このメタボロミクス実験で検出された7,752個のピークのうち、最も統計的に有意な変化は、質量電荷比(m/z)236.0928、保持時間約10.5分の未知のピークであった(図1C)。この代謝産物は、コントロールのマウスと比較して>5倍確実に増加した(P<0.001)。親質量236.0928は[C12H14NO4]の分子式と一致したが、そのような分子は既存のデータベース内の明らかな代謝産物とは一致しなかった。
【0075】
この運動誘発性代謝産物の化学的正体を決定するために、タンデム質量分析実験が行われ、m/z=88.040の顕著な娘イオンが観察された。この娘ピークと質量損失(148.0532)は、それぞれ[C3H6NO2]-と[C9H8O2]の分子式と一致した(図1D)。これらの断片化スペクトルから、親代謝産物は暫定的に、乳酸とフェニルアラニンのアミド化結合体であるN-ラクトイル-フェニルアラニンに割り当てられた(「Lac-Phe」、図1D)。化学合成によって生成された真正Lac-Phe標準は、内因性m/z=236.0928ピークと同一のMS/MSスペクトル(図1D)及び保持時間(図7B)を示し、それによって構造の帰属が確認された。Lac-Pheレベルの絶対定量により、循環基礎濃度と運動誘発濃度がそれぞれ0.5±0.4μM及び2.7±0.9μM(平均±SEM)であることが明らかになった。これらのデータは、Lac-Pheがマウスの急激トレッドミルランニング後に最も強力に誘導される血漿代謝産物の1つであることを証明している。
【0076】
Lac-Pheは食物摂取と肥満を抑制する
Lac-Pheは、機能が不明な代謝産物であり、十分に研究されていない。Lac-Pheが代謝恒常性において機能的役割を果たしている可能性があるかどうかを判断するために、代謝チャンバーを使用して食餌誘発性肥満(DIO)マウスへのLac-Pheの急性投与(50mg/kg、腹腔内[IP])の効果を判断した。重要なことに、これらの実験は、ピーク血漿濃度が1回の運動トレーニング後に観察されたものと同等となるようなLac-Pheの用量で行われた(注射後30分の血漿レベル、平均±SEM、3.8μM±1.9μM)。図2Aに示すように、急性Lac-Phe投与は、投与後12時間にわたってビヒクル処置マウスと比較して食物摂取を52%抑制した(平均±SEM、ビヒクル6.4±0.6kcal/マウス、Lac-Phe3.0±1.0kcal/マウス)。重要なことに、歩行活動にはグループ間で差がなかった(図2B)。これは、食物摂取の抑制が単に全体的な動きの減少によるものではないことを示している。急性Lac-Phe治療は、酸素消費量(VO2)、二酸化炭素生成(VCO2)、又は呼吸交換率(RER、図8A-C)を変化させなかった。これらのデータは、マウスへのLac-Pheの急性投与が、エネルギー消費経路を変えることなくエネルギー摂取を特異的に抑制することを示している。
【0077】
Lac-Pheが慢性的に食物摂取量を減らす能力は、体重を減らし、グルコースと脂質の恒常性を改善することが期待される。この仮説を直接検証するために、DIOマウスにLac-Pheを慢性的に投与し(50mg/kg/日、腹腔内[IP]、1日1回投与、方法を参照)、食物摂取量と体重の変化を10日間モニタリングした。予想通り、慢性Lac-Phe処置動物は、コントロールのマウスと比較して累積食物摂取量の減少を示した(平均±SEM、Lac-Phe2.1±0.1g/マウス/日、ビヒクル2.9±0.1g/マウス/日、図2C)。Lac-Phe処置マウスにおける食物摂取量のこの減少は、体重の同時減少と関連していた(平均±SEM、-2.8±1.1g、総体重の-7%の変化に相当、図2D)。10日目に、耐糖能試験を行ったところ、ビヒクルと比較して、Lac-Pheで処置したDIOマウスにおいてグルコースクリアランスの改善が示された(図2E)。Lac-Phe処置マウスの組織を解剖すると、ビヒクル処置マウスと比較して脂肪組織量(より小さな精巣上体脂肪(eWAT、-20%)、皮下鼠径脂肪(iWAT、-41%)、及び褐色脂肪(BAT、-41%)の蓄積を含む)の有意な減少が明らかになった(図2F、G)。採取された他の臓器の重量から推定される総除脂肪体重は影響を受けなかった(図2F)。
【0078】
次に、Lac-Phe処置マウスが摂取したレベルと同じレベルの餌をペア給餌グループに制限するペア給餌実験を実施した(平均±SEM、ペア給餌1.8±0.1g/マウス/日、対照2.5±0.1g/マウス/日、餌の28%削減に相当、図2H)。これらの条件下で、対照のペア給餌マウスは、Lac-Pheで処置したマウスと同じ体重変化を示し(図2H)、脂肪症及び肥満に対するLac-Pheの影響は、食物摂取の抑制によるものであり、活動性や代謝率の変化によるものではないことが確認されている。
【0079】
最後に、食欲抑制効果と抗肥満効果に必要なLac-Pheの構造的特徴を調査した。特に、Lac-Pheは2つの「半分」、乳酸塩とフェニルアラニンで構成されている。上記と同じ実験を行って、Lac-Pheを乳酸塩及びフェニルアラニンと直接比較した(50mg/kg、毎日IP)。Lac-Pheは、対照マウスと比較して、食物摂取量及び体重を再び抑制した(図2I)。対照的に、等用量の乳酸塩又はフェニルアラニンの投与は、食物摂取量及び体重の両方においてビヒクル処置マウスと同一であった(図2I)。これらのデータは、食事誘発性肥満マウスにおいて、一回の身体活動を模倣する用量でのLac-Pheの上昇が、無傷のアミド化複合体を必要とする方法で食物摂取を抑制し、肥満を軽減することを証明している。
【0080】
CNDP2及び乳酸依存性のマクロファージからのLac-Phe分泌
Lac-Pheがどのように生成されるかをより深く理解するために、最初の目的は、インビトロで強力なLac-Phe生合成と分泌を示す細胞株を同定することであった。この目的に向けて、13細胞株のパネルにわたって、馴化培地中の分泌Lac-PheレベルをLC-MS/MSによって測定した。マウスマクロファージ細胞株RAW264.7は、馴化培地中にLac-Pheを強力に分泌することが確認された(図9A)。Lac-PheのほぼすべてがRAW264.7細胞から分泌された。<1%が細胞内で見つかった(図3A)。対照的に、アラキドン酸やオレイン酸などの他の細胞内脂質のレベルは、予想どおり細胞溶解物中で濃縮されていることが判明した(図9B)。調べた他の12細胞株は、ならし培地中で広範囲のLac-Pheレベルを示し、RAW264.7細胞で観察されたレベルよりも約50~90%低かった(図9A)。したがって、これらのデータは、培養細胞からのLac-Pheの強力な分泌を確立し、さらにこのプロセスを研究するためのモデル細胞株としてRAW264.7マクロファージを特定する。
【0081】
以前に、CNDP2と呼ばれるサイトゾル酵素が、乳酸とフェニルアラニンの縮合を触媒して、インビトロでLac-Pheを生成することが示されている(図9C)(15)。しかし、このCNDP2触媒反応の生理学的関連性及び方向性は、より複雑な細胞及び生体環境ではこれまで評価されていなかった。CNDP2-KO RAW264.7細胞はCRISPR/Cas9を用いて生成され、CNDP2タンパク質の損失は抗CNDP2抗体を用いて検証された(図3B)。図3Cに示すように、細胞外Lac-Pheレベルは、対照細胞と比較して、CNDP2-KOにおいて>75%減少した。初代腹膜マクロファージもCNDP2-KOマウス及び対照WTマウスから得た(図3D)。再度、細胞外Lac-Pheレベルは、WT対照マクロファージと比較して初代CNDP2-KOマクロファージにおいて>85%減少した(図3E)。乳酸は運動によって増加し、Lac-Pheの代謝前駆体として機能する可能性があるため、細胞外乳酸が質量作用型メカニズムを通じてLac-Phe産生を刺激できるかどうかをテストした。激しい運動中に到達した濃度(25mM)で馴化培地に乳酸を添加すると、Lac-Pheの細胞外レベルがRAW264.7細胞で+85%(図3F)増加し、初代マクロファージで+200%(図3G)増加した。したがって、これらのデータを総合すると、細胞培養におけるLac-Phe生成の主要な生合成酵素としてCNDP2が確立される。これらのデータはまた、筋肉由来の乳酸が、急激運動中にLac-Phe生成を促進する候補代謝前駆物質であることを特定する(図3H)。
【0082】
Lac-Phe生合成の遺伝子的除去により、運動トレーニングの抗肥満効果に対する耐性が付与される
次に、CNDP2-KOマウスをLac-Pheの遺伝子除去のモデルとして使用した。まず、抗CNDP2抗体を使用して、マウスにおけるCNDP2タンパク質の組織発現を測定した。予想通り、腹膜マクロファージは最も高いCNDP2発現を示した。CNDP2タンパク質の発現は、腎臓と腸でも低レベルで検出された(図4A)。これらのタンパク質レベルのデータは、マクロファージ、腎臓、腸におけるCndp2発現の増加を示す公的に入手可能なマイクロアレイデータ(BioGPS)、そして単球及びマクロファージにおけるCndp2発現の濃縮を示す公的に入手可能な単一細胞データ(TabulaMuris)(17)と一致した(16)。次に、WTマウスとCNDP2-KOマウスの血漿Lac-Pheレベルを、基礎条件とトレッドミルランニング後の条件の両方で測定した。循環Lac-Pheは、WT対照動物と比較して、CNDP2-KOマウスにおいて基礎条件及び運動後条件においてそれぞれ>85%及び>70%劇的に減少した(図4B)。これらのデータは、CNDP2がインビボでのLac-Pheの主要な生合成酵素であることを示している。運動によるLac-Pheの残りの増加は、追加のCNDP2非依存性Lac-Phe生合成経路を反映している可能性がある。
【0083】
次に、WTマウスとCNDP2-KOマウスの食物摂取量と肥満表現型を評価した。Lac-Pheは運動トレーニングによって誘導されるため、WTマウスとCNDP2-KOマウスに、慢性的なトレッドミルランニングレジメンと組み合わせた高脂肪食(脂肪から60%kcal)を与えた(方法を参照)。この実験の開始時の体重は、WTマウスとCNDP2-KOマウスの間で差はなかった(平均±SEM、WT、29.1±0.8g;CNDP2-KO、28.2±0.7g、P>0.05)。しかし、トレーニング/肥満誘発食プロトコルの10日目から、CNDP2-KOマウスは対照マウスと比較して食物摂取量の増加を示し始めた(図4C)。この摂食行動の増加は、実験が終了する40日目まで続いた。この摂食行動と一致して、CNDP2-KOマウスの体重も対照マウスと比較してますます乖離を示し、CNDP2-KOマウスの最終体重はWTマウスと比較して+13%高かった(平均±SEM、WT、32.3±0.9g;CNDP2-KO、36.4±0.6g、図4D)。重要なことに、この実験の合計実行時間はグループ間で同等であった(平均±SEM、WT41±1.2分/日、KO41±1.7分/日)。最後に、組織の解剖により、対照と比較してCNDP2-KOにおける脂肪組織量の増加が明らかになったが、除脂肪体重は同様であった(図4E、F)。これらのデータから、Lac-Pheの除去は運動トレーニング中のエネルギー摂取量の増加と体重増加につながると結論付けられる。
【0084】
Lac-Pheは食欲抑制性AgRP及び食欲抑制性POMCニューロンに直接作用する
脳は食欲と体重の調節において基本的な役割を果たしている。したがって、全細胞パッチクランプスライス電気生理学を使用して、食物摂取を調節することが知られている多くの神経細胞集団に対するLac-Pheの影響を直接測定した。まず、アグーチ関連ペプチド(AgRP)とプロオピオメラノコルチン(POMC)を発現するニューロンに焦点が当てられた。これら2つのニューロン集団は視床下部の弓状核(ARH)に位置しており、それぞれ摂食行動の中枢的な食欲誘発性及び食欲不振誘発性のドライバーとして十分に確立された役割を持っている(18~24)。AgRPニューロンの代表的な電気生理学的記録を図5Aに示す。インビボでの食欲抑制効果と一致して、Lac-Phe(50μM)は、発火頻度の低下と静止膜電位の過分極によって示されるように、食欲誘発性AgRPニューロンを急速に阻害した(図5A)。Lac-Pheの阻害作用は用量反応性であり、循環中の生理学的レベルと同様の1μMという低い濃度でも阻害活性を示した(図5B、C)。さらに、Lac-Pheによって誘発される過分極は、TTX(ナトリウムチャネルブロッカー)、DNQX(AMPAグルタミン酸受容体アンタゴニスト)、D-AP5(NMDAグルタミン酸受容体アンタゴニスト)、及びビククリン(gABAA受容体アンタゴニスト)の存在下でも持続した(図5D)。定量化により、ベースライン又は阻害剤処置条件下で試験したすべての濃度のLac-Pheに反応して、ニューロンの>70%が過分極していることが明らかになった(阻害剤処置の効果についてP>0.05、図5E)。これらの結果は、AgRPニューロンに対するLac-Pheの阻害効果が、回路やシナプス前機構ではなく直接作用によって媒介されることを示している。
【0085】
食欲不振誘発性POMC+ニューロンに対するLac-Pheの効果も調べた。Lac-Pheは、発火頻度の増加と脱分極によって実証されるように、POMCニューロンを急速に活性化することができた(図5F)。特に、POMCニューロンを活性化するLac-Pheの効果は、AgRPニューロンのLac-Phe阻害よりも強力ではなく、少なくとも20μMの濃度を必要とした(図5G、H)。Lac-Pheによって誘発される脱分極は、前述の阻害剤のカクテルの存在下でも持続し、POMCニューロンに対するLac-Pheの刺激効果が直接作用によっても媒介されることを示している(図5I、J)。
【0086】
最後に、これらのスライス電気生理学研究は、摂食の調節に潜在的に関連する他の2つの神経集団におけるLac-Pheの効果を調査するために拡張された(図10A~D)。背側縫線核(DRN)のセロトニン(5-HT)陽性ニューロンの興奮性又は腹内側視床下部核(VMH)のセロイド原性因子1(SF1)陽性ニューロンに対するLac-Pheの影響は観察されず、これは、Lac-Pheが細胞型特異的に作用することを示している。総合すると、Lac-Pheは、脳スライスにおいて食欲抑制性AgRPニューロンを阻害し、食欲不振性POMCニューロンを刺激するように直接作用できると結論付けることができる。
【0087】
ヒトの運動後の循環Lac-Pheの確実かつ持続的な上昇
ヒトにおいて循環Lac-Pheも運動誘発性上昇を示すかどうかを判断するために、2つの独立したヒト運動コホートでLac-Pheレベルを測定した。まず、以前に発表された深く表現型が特定された急性トレッドミルランニング運動コホートからの非標的血漿質量分析データが再分析された(図6A)(25)。これらの人々(N=36)は一晩絶食され、その後トレッドミルランニングによる症状を限定した心肺運動テストを受けた。このコホートは58%が男性で、年齢は40~75歳、平均BMIは28.4±0.9kg/m2(平均±SEM)であった。修正インスリン抑制試験によって測定された定常状態血漿グルコース(SSPG)は、153±67mg/dl(平均±SEM)と測定された。参加者の大多数(86%)は、ピーク運動時に呼吸交換比(RER)>1.05を超えたが、残りの参加者は、年齢調整された最大予測心拍数の>95%の心拍数に達した。このコホートからのすべての血漿サンプルは、事前に詳細なマルチオミクスプロファイリング(プロテオミクス、メタボロミクス、トランスクリプトミクス)を受けていた。
【0088】
注目すべきことに、小分子代謝物として分類された1,807個の検体のうち、脂質又はタンパク質の場合、化学式が一致するLac-Phe(C1214NO4 -)を持つ代謝物に対応するまだ割り当てられていないピークは、データセット全体の中で運動によって最も顕著に誘発される3番目にランクされた(図6B)。タンデム質量分析実験により、特徴的なm/z=88の娘イオン(図11A)及び本物のLac-Phe標準と比較した同一の保持時間(図11B)を有する断片化スペクトルが明らかになった。したがって、これまで割り当てられていなかった、ヒトの運動誘発性代謝産物はLac-Pheであると結論付けられている。この構造的帰属を考慮すると、血漿Lac-Pheレベルは、運動後30分でベースラインの4倍のピークに達し、運動後1時間を超えて持続する、強力かつ持続的な運動誘発性上昇を示したことがわかった(図6C)。比較すると、乳酸値は運動の中止時にピークに達し、1時間までにすぐにベースラインに戻った。血漿フェニルアラニンレベルは、運動介入を通じてほとんど変化しなかった(図11C)。トレッドミル運動を受けなかった個体のコントロールコホートでは、実際、Lac-Pheは同じ時間経過でわずかに減少し、それによってヒトにおける運動依存性のLac-Pheの蓄積が確立された(図6C)。これらのデータから、Lac-Pheは、トレッドミルのランニングの急性発作後にヒト血漿中で最も強力に増加する代謝産物の1つでもあると結論付けられる。
【0089】
人間の運動後のLac-Phe上昇の一般性を判断するために、それぞれ3つの異なる運動試験でテストされた個人で構成される第2の人間の運動コホートにおける血漿Lac-Pheレベルが測定された(持久力、スプリント、レジスタンス、方法、図6Dを参照)。年齢28.0±1.3歳(平均±SEM)及び平均BMI23.5±0.7kg/m2(平均±SEM)の健康な若い男性8名がこの研究に参加した。対象者は運動試験に先立って絶食させられ、運動試験はランダムな順序で少なくとも10日間の間隔をあけて実施された。持久力運動トライアルは、ピークVO2が約60%になる90分間の連続サイクリングで構成された;スプリントエクササイズトライアルは、エルゴメーターバイクでの30秒間のオールアウトスプリント(Wingateテスト)を3回行うことで構成されていた;抵抗運動トライアルは、両側膝伸展(10-RMに相当する負荷で10回を6セット)で構成された。運動前と運動後のいくつかの時点で血漿を採取し、LC-MS/MSによってアセトニトリル/メタノール抽出血漿からLac-Pheを測定した。Lac-Pheは、3つの運動様式すべてにわたって、再び強力かつ持続的な上昇を示した(図6E)。スプリント運動では血漿Lac-Pheの最も劇的な蓄積が見られ(運動後1時間で8倍の上昇にピーク)、次にレジスタンストレーニング、次に持久力トレーニングが続いた。運動様式全体にわたるLac-Phe上昇の大きさは乳酸塩の上昇量と一致したため(スプリント>抵抗>持久力、図11D)、Lac-Pheと乳酸塩レベルとの間の関係を調べた。図6Fに示すように、Lac-Phe及び乳酸の運動前と運動直後の倍率変化は、ほぼ直線的な強い相関関係を示した(ピアソン相関係数r=0.82、P<0.001)。これらのデータは、異なる身体活動様式がヒトの循環Lac-Pheレベルの確実かつ持続的な上昇につながることを証明している。
【0090】
考察
ここで、Lac-Pheと呼ばれる循環乳酸由来代謝産物を介した運動誘発性の抗肥満シグナル伝達分子が同定された。マウスでの薬理学的機能獲得及び遺伝的機能喪失実験、ならびに培養細胞での研究は、Lac-Pheが身体活動の抗肥満効果にとって重要な循環分子であることを示す3つの証拠を提供する:(1)急激な運動中に達成されるレベルまでLac-Pheが上昇すると、食物摂取と肥満を減らすのに十分である;(2)マウスにおけるLac-Phe生合成の遺伝的除去により、運動トレーニングの抗肥満効果に対する耐性が与えられる;及び(3)Lac-Pheは、インビトロで摂食行動を調節するために以前に確立されたニューロンの興奮性を直接調節する。これらの発見をさらに裏付けるものとして、Lac-Pheは、ヒトにおけるさまざまな身体活動様式の後に血漿中で最も強力に誘導される分子変化の1つであることが特定されている。
【0091】
激しい運動は、マウスの食物摂取を急激に抑制することが十分に証明されており、この行動表現型は、それぞれAgRPニューロン及びPOMCニューロンにおける運動後のニューロン活動の抑制及び刺激と相関している(26-28)。グレリンなどの特定の候補分子がこれらの効果に寄与すると提案されているが、これらの食物摂取経路における追加の運動誘発性シグナル伝達分子の役割はまだ十分に理解されていない。データは、Lac-Pheが摂食行動を調節する重要な中枢経路の上流で機能する運動誘発性分子であることを示している。ヒトの場合、食欲と食物摂取に対する運動の影響は、研究コホートや身体活動の種類、期間、強度に応じてより複雑になる(29~31)。これらのヒトのデータは、運動がLac-Phe以外のまだ知られていない追加の食欲調節分子の生成も誘発する可能性があることを示唆していると解釈できる。
【0092】
肥満及び食物摂取の循環調節因子として、Lac-Pheは、他の末梢由来の食欲調節ホルモンと比較して、類似点と重要な相違点の両方を示す。Lac-Pheは、GLP-1、GDF15、CCK、PYY、レプチンなどの他の多くのペプチドホルモンと同様に、摂食行動を阻害する。Lac-PheとGDF15は両方とも、マクロファージ、腸、腎臓などの同様の細胞型及び解剖学的位置から産生及び分泌される(32、33)。ただし、重要な違いもある。例えば、他の末梢由来ペプチドホルモンは主に栄養素によって調節され、身体活動によっては変化したとしてもわずかしか変化しない(34~36)のとは対照的に、Lac-Pheの劇的で強力かつ持続的な運動誘発性上昇は、この分子に特有のものであるようである。さらに、Lac-Pheは代謝産物(分子量約250Da)であるが、他の食欲ホルモンははるかに大きなポリペプチド(例、GLP-1、分子量約3000Da)又はタンパク質(例、GDF15、分子量約15kDa)である。
【0093】
Lac-Pheの生成と制御に関する現在の研究は、身体活動に対する生理学的反応の根底にある細胞機構及び生化学機構についての驚くべき洞察も提供する。まず、筋細胞と筋肉組織は、身体活動の循環分子トランスデューサーの供給源として歴史的に注目されてきた(37~39)。マクロファージ及び他のCNDP2+細胞タイプがLac-Pheを産生及び分泌するということは、さらに多くの細胞タイプが身体活動を感知して反応できることを示唆している(13、40)。これらの他の運動応答性細胞タイプの潜在的な共通点は、筋肉由来の乳酸を直接検出又は取り込む能力である可能性がある。第二に、乳酸がLac-Phe生合成の代謝前駆体として機能するということは、運動中にLac-Pheを確実に上昇させるための回路と生化学的論理の両方を提供する:すなわち、その運動は収縮する筋肉からの乳酸分泌を誘導し、これがCNDP2+細胞型に急速に取り込まれ、アミド化Lac-Pheの形で循環系に再輸出される。乳酸塩の代替代謝誘導体化も、原理的にはさらに追加の未発見の運動誘導性シグナル伝達分子を構成する可能性がある。第三に、乳酸がベースラインレベルに戻った時点でも、Lac-Pheはしっかりとした持続的な上昇を示すという観察は、乳酸の生化学的誘導体化が、乳酸の感知が長期持続する内分泌シグナル伝達と結びついた生体セカンドメッセンジャーシステムとして機能することを示唆している。循環Lac-Pheの持続的な上昇は、Lac-Pheが乳酸とは異なり、一次代謝経路に直接再取り込みして戻すことができないという事実を部分的に反映している可能性がある。
【0094】
最後に、身体活動の利点は代謝の健康自体を超えて広がる。脳では、運動は気分を高め、不安や憂鬱を軽減し、認知症やその他の神経変性疾患から守る(41~43)。Lac-Pheは、ニューロンに対して直接作用を示すため、これらの追加の利点を仲介するための魅力的な候補因子となる。したがって、Lac-Phe経路の薬理学的標的化は、肥満やその他の神経系疾患の治療に有用である可能性がある。
【0095】
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【0096】
添付の特許請求の範囲にかかわらず、本開示は次の条項によっても定義される:
1.対象における代謝障害を治療する方法であって、有効量のN-ラクトイルアミノ酸を対象に投与することを含む方法。
2.N-ラクトイル-アミノ酸がN-ラクトイル-フェニルアラニンである、第1項に記載の方法。
3.有効量が、投与時に身体活動後に観察される血漿濃度に匹敵するN-ラクトイルアミノ酸の血漿濃度を生じるN-ラクトイルアミノ酸の量を含む、第1~2項のいずれかに記載の方法。
4.有効量が1mg/kg~500mg/kgの範囲である、第1~3項のいずれかに記載の方法。
5.有効量が1日から60日の範囲の期間にわたって1日1回投与される、第1~4項のいずれかに記載の方法。
6.代謝障害が肥満である、第1~5項のいずれかに記載の方法。
7.代謝障害が肥満関連代謝障害である、第1~6項のいずれかに記載の方法。
8.代謝障害が糖尿病である、第1~7項のいずれかに記載の方法。
9.治療前の対象による食物摂取と比較して、対象による食物摂取を減少させる、第1~8項のいずれかに記載の方法。
10.累積食物摂取量が10%~90%減少する、第9項に記載の方法。
11.1日の平均食物摂取量が10%~90%減少する、第9~10項のいずれかに記載の方法。
12.治療前の対象の体重と比較して対象の体重を減少させる、第1~11項のいずれかに記載の方法。
13.体重が1%~50%減少する、第12項に記載の方法。
14.治療前の対象におけるグルコース恒常性と比較して、対象におけるグルコース恒常性を改善する、第1~13項のいずれかに記載の方法。
15.治療前の対象におけるグルコースクリアランスと比較して、対象におけるグルコースクリアランスを改善する、第1~14項のいずれかに記載の方法。
16.グルコースクリアランスが1%~50%改善される、第15項に記載の方法。
17.治療前の対象における脂肪組織量と比較して脂肪組織量を減少させる、第1~16項のいずれかに記載の方法。
18.褐色脂肪を30%~50%減少させる、第17項に記載の方法。
19.対象が成人である、第1~18項のいずれかに記載の方法。
20.対象が哺乳動物である、第1~19項のいずれかに記載の方法。
21.対象がヒトである、第1~20項のいずれかに記載の方法。
22.投与が経口投与を含む、第1~21項のいずれかに記載の方法。
23.投与が非経口投与を含む、第1~22項のいずれかに記載の方法。
24.投与が腹腔内投与を含む、第1~23項のいずれかに記載の方法。
25.代謝障害を治療するための1つ又は複数の療法と組み合わせてN-ラクトイルアミノ酸を投与することを含む、第1~24項のいずれかに記載の方法。
26.1つ又は複数の治療法が、代謝障害を治療するための活性薬剤を含む、第25項に記載の方法。
27.1つ又は複数の治療法が身体活動を含む、第25~26項のいずれかに記載の方法。
28.1つ又は複数の治療法が低カロリー食を含む、第25~27項のいずれかに記載の方法。
29.1つ又は複数の治療法が外科的介入を含む、第25~28項のいずれかに記載の方法。
30.1つ又は複数の治療法が減量装置の使用を含む、第25~29項のいずれかに記載の方法。
31.以下を含む医薬製剤:
代謝障害を治療するのに有効な量のN-ラクトイルアミノ酸;及び
賦形剤。
32.N-ラクトイル-アミノ酸がN-ラクトイル-フェニルアラニンである、第31項に記載の医薬製剤。
33.有効量が1mg/kg~500mg/kgの範囲である、第31~32項のいずれかに記載の医薬製剤。
34.医薬製剤がカプセル又は錠剤である、第31~33項のいずれかに記載の医薬製剤。
35.医薬製剤が非経口製剤である、第31~33項のいずれかに記載の医薬製剤。
36.医薬製剤が腹腔内製剤である、第31~33項のいずれかに記載の医薬製剤。
【0097】
前述の実施形態の少なくともいくつかでは、ある実施形態で使用される1つ又は複数の要素は、そのような置換が技術的に実行不可能でない限り、別の実施形態で互換的に使用することができる。当業者であれば、請求される主題の範囲から逸脱することなく、上述の方法及び構造に対して他の様々な省略、追加及び修正を行うことができることが理解されよう。このような修正及び変更はすべて、添付の特許請求の範囲によって定義される主題の範囲内に含まれることが意図されている。
【0098】
一般に、本明細書、特に添付の特許請求の範囲(例えば、添付の特許請求の本文)で使用される用語は、一般に「オープン」用語として意図されていることが当業者には理解される(例:「含む」という用語は「含むがそれに限定されない」と解釈されるべきであり、「有する」という用語は「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、用語「含む」は「含むが限定されない」と解釈されるべきである、など)。さらに、導入された請求項の特定の数の記載が意図されている場合、そのような意図は請求項に明示的に記載され、そのような記載がない場合にはそのような意図は存在しないことが当業者にはさらに理解される。例えば、理解を助けるために、以下の添付の特許請求の範囲には、特許請求の範囲の引用を導入するために「少なくとも1つ」及び「1つ又は複数」という導入語句の使用が含まれる場合がある。しかしながら、このような語句の使用は、不定冠詞「a」又は「an」による請求項の記載の導入が、そのような導入された請求項の記載を含む特定の請求項を、そのような記載を1つだけ含む実施形態に限定することを意味すると解釈されるべきではない(同じ請求項に「1つ又は複数」又は「少なくとも1つ」という導入語句や、「a」又は「an」などの不定冠詞が含まれる場合でも)(例えば、「a」及び/又は「an」は「少なくとも1つ」又は「1つ又は複数」を意味すると解釈されるべきである);請求項の引用を導入するために使用される定冠詞の使用にも同じことが当てはまる。さらに、導入された請求項の記載の特定の番号が明示的に記載されている場合でも、当業者であれば、そのような記載は少なくとも記載された番号を意味すると解釈されるべきであることを認識するであろう(例えば、他の修飾語を伴わない「2つの記載」という単なる記載は、少なくとも2つの記載、又は2つ以上の記載を意味する)。さらに、「A、B、及びCなどの少なくとも1つ」に類似した慣例が使用される場合、一般にそのような構成は、当業者がその慣例を理解するであろうという意味で意図されている(例:「A、B、Cのうち少なくとも1つを含むシステム」には、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとB、AとC、BとC、及び/又はAとBとCなどを含むシステムが含まれるが、これらに限定されない)。「A、B、又はCなどの少なくとも1つ」に類似した慣例が使用される場合、一般にそのような構造は、当業者がその慣例を理解するという意味で意図されている(例:「A、B、Cの少なくとも1つを含むシステム」には、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとB、AとC、BとC、及び/又はAとBとCなどを含むシステムが含まれるが、これらに限定されない)。当業者には、明細書、特許請求の範囲、又は図面のいずれであっても、2つ以上の代替用語を提示する事実上あらゆる選言的な単語及び/又はフレーズは、用語の1つ、用語のいずれか、又は両方の用語を含む可能性を考慮していると理解されるべきである。例えば、「A又はB」という語句は、「A」又は「B」又は「A及びB」の可能性を含むものと理解される。
【0099】
さらに、本開示の特徴又は態様がマーカッシュグループに関して説明される場合、当業者は、それによって本開示がマーカッシュグループの任意の個々のメンバー又はメンバーのサブグループに関しても説明されると認識される。
【0100】
当業者には理解されるように、書面による説明を提供することなど、あらゆる目的のために、本明細書に開示されるすべての範囲は、あらゆる可能なサブ範囲及びそのサブ範囲の組み合わせも包含する。リストされた範囲はどれも十分に説明されており、同じ範囲を少なくとも等しい半分、三分の一、四分の一、五分の一、十分の一などに分割できるものであると容易に認識できる。非限定的な例として、本明細書で議論される各範囲は、下位3分の1、中間の3分の1、及び上位3分の1などに容易に分割することができる。また、当業者には理解されるように、「~まで」、「少なくとも」、「より大きい」、「より小さい」などのすべての言語は、列挙された数値が含まれており、上で説明したように、後でサブ範囲に分割できる範囲を指す。最後に、当業者には理解されるように、範囲には個々のメンバーが含まれる。したがって、例えば、1~3個の物品を含むグループは、1、2、又は3個の物品を含むグループを指す。同様に、1~5個の物品を含むグループとは、1、2、3、4、又は5個の物品を含むグループなどを指す。
【0101】
上記の発明は、理解を明確にするために、例示及び実施例によってある程度詳細に説明されてきたが、本発明の教示を考慮すれば、添付の特許請求の範囲の精神又は範囲から逸脱することなく特定の変更及び修正を加えることができることは当業者には容易に明らかである。
【0102】
したがって、上記は本発明の原理を説明するものにすぎない。当業者であれば、本明細書では明示的に説明又は図示していないが、本発明の原理を具体化し、その精神及び範囲内に含まれる様々な構成を考案できることが理解される。さらに、本明細書に記載されているすべての例及び条件付きの文言は、主に、読者が本発明の原理及び技術を発展させるために発明者によって貢献された概念を理解するのを助けることを目的としており、そのような具体的に列挙された例及び条件に限定されないものとして解釈されるべきである。さらに、本発明の原理、態様、及び実施形態、ならびにその特定の例を列挙する本明細書のすべての記述は、その構造的及び機能的等価物の両方を包含することを意図している。さらに、そのような等価物には、現在知られている等価物と将来開発される等価物、すなわち、構造に関わらず同じ機能を実行する開発される要素の両方が含まれることが意図されている。さらに、本明細書に開示されるものは、そのような開示が特許請求の範囲に明示的に記載されているかどうかに関係なく、公衆に提供されることを意図したものではない。
【0103】
したがって、本発明の範囲は、本明細書に図示し説明した例示的な実施形態に限定されるものではない。むしろ、本発明の範囲及び精神は、添付の特許請求の範囲によって具体化される。特許請求の範囲において、35USC§112(f)又は35USC§112(6)は、「手段」という正確な語句又は「ためのステップ」という正確な語句が、請求項のかかる限定の冒頭に記載されている場合に限り、請求項における限定のために適用されるものとして明示的に定義されている。そのような正確な表現がクレームの限定に使用されていない場合、35USC§112(f)又は35USC§112(6)は適用されない。
図1
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【国際調査報告】