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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-18
(54)【発明の名称】RAF阻害薬による癌の処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/5377 20060101AFI20240411BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240411BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240411BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240411BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240411BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240411BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240411BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20240411BHJP
   A61K 33/24 20190101ALI20240411BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20240411BHJP
   A61K 31/513 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
A61K31/5377
A61P35/00
A61P35/02
A61P35/04
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K39/395 T
A61K31/519
A61K33/24
A61K31/282
A61K31/513
A61K39/395 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565207
(86)(22)【出願日】2022-04-22
(85)【翻訳文提出日】2023-11-30
(86)【国際出願番号】 US2022025875
(87)【国際公開番号】W WO2022226261
(87)【国際公開日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】63/178,922
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BRIJ
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】522162945
【氏名又は名称】キネート バイオファーマ インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フラノヴィッチ,アレクサンドラ
(72)【発明者】
【氏名】マーティン,エリック
(72)【発明者】
【氏名】ミラー,ニコル エル.ジー.
(72)【発明者】
【氏名】マーフィー,エリック
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ,リチャード トーマス
(72)【発明者】
【氏名】コバヤシ,ケン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC22
4C085CC23
4C085DD61
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086BC73
4C086CB09
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA12
4C086GA16
4C086HA12
4C086HA28
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206JB16
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA05
4C206ZB26
4C206ZB27
4C206ZC75
(57)【要約】
癌の処置のための組成物および方法が本明細書に提供される。本組成物は、RAF阻害薬を含む。いくつかの実施形態は、RAF阻害薬を少なくとも1つの腫瘍治療薬とともに用いる併用療法を含む。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌の処置を必要とする患者の前記癌を処置する方法であって、(S)-N-(3-(2-(((R)-1-ヒドロキシプロパン-2-イル)アミノ)-6-モルホリノピリジン-4-イル)-4-メチルフェニル)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン-1-カルボキサミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を前記患者に投与する工程を含む方法。
【請求項2】
癌の処置を必要とする患者の前記癌を処置する方法であって、(S)-N-(3-(2-(((R)-1-ヒドロキシプロパン-2-イル)アミノ)-6-モルホリノピリジン-4-イル)-4-メチルフェニル)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン-1-カルボキサミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物を前記患者に投与する工程を含む方法。
【請求項3】
前記癌は、発がん性BRAF変化を有すると特徴づけられる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記発がん性BRAF変化は、クラスIのBRAF変異である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記発がん性BRAF変化は、クラスIIのBRAF変異である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記発がん性BRAF変化は、クラスIIIのBRAF変異である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記発がん性BRAF変化は、BRAF V600変異である、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記BRAF V600変異は、V600EまたはV600K変異である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記癌は、野生型BRAFを有すると特徴づけられる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
前記癌は、固形腫瘍である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記癌は、黒色腫、膵臓癌、膵臓腺癌、卵巣癌、大腸癌、神経膠腫、ランゲルハンス細胞組織球症、白血病、有毛細胞白血病、甲状腺癌、未分化甲状腺癌、甲状腺乳頭癌、濾胞性甲状腺癌、または甲状腺髄様癌から選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記癌は、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、前立腺癌、胃癌、および食道癌から選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記癌は、NRAS変異黒色腫である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記癌は、胆管癌である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記癌は、転移性である、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
外科的切除に続く補助薬化学療法である、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記患者は、過去の治療後に再発している、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記患者は、過去の治療に対する獲得耐性を有する、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記患者は、治療に対する抵抗性を示す、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
癌の処置を必要とする患者の前記癌を処置する方法であって、
(a)(S)-N-(3-(2-(((R)-1-ヒドロキシプロパン-2-イル)アミノ)-6-モルホリノピリジン-4-イル)-4-メチルフェニル)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン-1-カルボキサミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を含む、医薬組成物と、
(b)MEK阻害薬、免疫チェックポイント阻害薬、CDK阻害薬、EGFRキナーゼ阻害薬、EGFR抗体、EGFR PROTAC治療薬、FGFR阻害薬、SOS1阻害薬、SHP2阻害薬、KRAS阻害薬、タキサン、トポイソメラーゼ阻害薬、ERK阻害薬、白金系化学療法薬、フォリン酸、5-フルオロウラシル、または抗VEGF治療薬から選択される、少なくとも1つの腫瘍治療薬と
を前記患者に投与する工程を含む方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つの腫瘍治療薬は、MEK阻害薬である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記MEK阻害薬は、ビニメチニブ、トラメチニブ、コビメチニブ、セルメチニブ、ピマセルチブ、またはミルダメチニブから選択される、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1つの腫瘍治療薬は、免疫チェックポイント阻害薬である、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記免疫チェックポイント阻害薬は、CTLA-4阻害薬、PD-1阻害薬、またはPD-L1阻害薬である、請求項20または23に記載の方法。
【請求項25】
前記CTLA-4阻害薬は、イピリムマブである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記PD-1阻害薬は、スパルタリズマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、またはセミプリマブである、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記PD-L1阻害薬は、アテゾリズマブ、アベルマブ、またはデュルバルマブである、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記少なくとも1つの腫瘍治療薬は、CDK阻害薬である、請求項20に記載の方法。
【請求項29】
前記CDK阻害薬は、CDK4/6阻害薬である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記CDK4/6阻害薬は、パルボシクリブ、アベマシクリブ、またはリボシクリブである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記少なくとも1つの腫瘍治療薬は、EGFRキナーゼ阻害薬または抗体である、請求項20に記載の方法。
【請求項32】
前記EGFRキナーゼ阻害薬は、ナザルチ二ブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、ブリグチニブ、イコチニブ、ネラチニブ、オシメルチニブ 、ダコミチニブ、またはラパチニブである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記EGFR抗体は、セツキシマブ、パニツムマブ、ザルツムマブ、ニモツズマブ、またはマツズマブである、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記少なくとも1つの腫瘍治療薬は、SHP2阻害薬である、請求項20に記載の方法。
【請求項35】
前記少なくとも1つの腫瘍治療薬は、SOS1阻害薬である、請求項20に記載の方法。
【請求項36】
前記少なくとも1つの腫瘍治療薬は、FGFR阻害薬である、請求項20に記載の方法。
【請求項37】
前記少なくとも1つの腫瘍治療薬は、KRAS阻害薬である、請求項20に記載の方法。
【請求項38】
前記KRAS阻害薬は、ソトラシブ、アダグラシブ、またはBI-1701963である、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記少なくとも1つの腫瘍治療薬は、タキサンである、請求項20に記載の方法。
【請求項40】
前記少なくとも1つの腫瘍治療薬は、トポイソメラーゼ阻害薬である、請求項20に記載の方法。
【請求項41】
前記トポイソメラーゼ阻害薬は、イリノテカン、トポテカン、またはベロテカンである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記少なくとも1つの腫瘍治療薬は、ERK阻害薬である、請求項20に記載の方法。
【請求項43】
前記少なくとも1つの腫瘍治療薬は、白金系化学療法薬である、請求項20に記載の方法。
【請求項44】
前記白金系化学療法薬は、オキサリプラチン、シスプラチン、またはカルボプラチンである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記少なくとも1つの腫瘍治療薬は、フォリン酸である、請求項20に記載の方法。
【請求項46】
前記少なくとも1つの腫瘍治療薬は、5-フルオロウラシルである、請求項20に記載の方法。
【請求項47】
前記少なくとも1つの腫瘍治療薬は、フォリン酸およびフォリン酸を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
トポイソメラーゼ阻害薬もしくは白金系化学療法薬、またはこれらの組合せの投与をさらに含む、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記少なくとも1つの腫瘍治療薬は、抗VEGF治療薬である、請求項20に記載の方法。
【請求項50】
前記抗VEGF治療薬は、ベバシズマブまたはアフリベルセプトである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記癌は、発がん性BRAF変化を有すると特徴づけられる、請求項20から50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記発がん性BRAF変化は、クラスIのBRAF変異である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記発がん性BRAF変化は、クラスIIのBRAF変異である、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記発がん性BRAF変化は、クラスIIIのBRAF変異である、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
前記発がん性BRAF変化は、BRAF V600変異である、請求項51に記載の方法。
【請求項56】
前記BRAF V600変異は、V600EまたはV600K変異である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記癌は、野生型BRAFを有すると特徴づけられる、請求項20から50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記癌は、固形腫瘍である、請求項20から57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記癌は、黒色腫、膵臓癌、膵臓腺癌、卵巣癌、大腸癌、神経膠腫、ランゲルハンス細胞組織球症、白血病、有毛細胞白血病、甲状腺癌、未分化甲状腺癌、甲状腺乳頭癌、濾胞性甲状腺癌、または甲状腺髄様癌から選択される、請求項20から58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記癌は、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、前立腺癌、胃癌、および食道癌から選択される、請求項20から58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記癌は、胆管癌である、請求項20から58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記癌は、NRAS変異黒色腫である、請求項20から58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記癌は、転移性である、請求項20から62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
外科的切除に続く補助薬化学療法である、請求項20から62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記患者は、過去の治療後に再発している、請求項20から64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記患者は、過去の治療に対する獲得耐性を有する、請求項20から64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記患者は、治療に対する抵抗性を示す、請求項20から64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記(S)-N-(3-(2-(((R)-1-ヒドロキシプロパン-2-イル)アミノ)-6-モルホリノピリジン-4-イル)-4-メチルフェニル)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン-1-カルボキサミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、経口投与される、請求項1から67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記経口投与は、1日おきに、1日1回、1日2回、または1日3回行われる、請求項1から68のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年4月23日出願の米国特許出願第63/178,922号の利益を主張し、該出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
RAFキナーゼは、MEKをリン酸化および活性化することによってRas-RAF-MEK-ERKマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)経路(MAPK/ERK経路としても知られる)において機能し、最終的に、転写プログラムのMAPK依存性活性化は、細胞増殖および生存を促進する。MAPK活性の調節解除は、腫瘍において頻繁に起こる。したがって、RAFキナーゼ活性を標的とする療法は、癌および異常なMAPK/ERK経路シグナル伝達を特徴とする他の障害の処置における使用に望ましい。
【発明の概要】
【0003】
一実施形態は、癌の処置を必要とする患者の癌を処置する方法であって、(S)-N-(3-(2-(((R)-1-ヒドロキシプロパン-2-イル)アミノ)-6-モルホリノピリジン-4-イル)-4-メチルフェニル)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン-1-カルボキサミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を患者に投与する工程を含む方法を提供する。
【0004】
一実施形態は、癌の処置を必要とする患者の癌を処置する方法であって、(S)-N-(3-(2-(((R)-1-ヒドロキシプロパン-2-イル)アミノ)-6-モルホリノピリジン-4-イル)-4-メチルフェニル)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン-1-カルボキサミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物を患者に投与する工程を含む方法を提供する。
【0005】
一実施形態は、癌の処置を必要とする患者の癌を処置する方法であって、
(a)(S)-N-(3-(2-(((R)-1-ヒドロキシプロパン-2-イル)アミノ)-6-モルホリノピリジン-4-イル)-4-メチルフェニル)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン-1-カルボキサミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を含む、医薬組成物と、
(b)MEK阻害薬、免疫チェックポイント阻害薬、CDK阻害薬、EGFRキナーゼ阻害薬、EGFR抗体、EGFR PROTAC治療薬、FGFR阻害薬、SOS1阻害薬、SHP2阻害薬、KRAS阻害薬、タキサン、トポイソメラーゼ阻害薬、ERK阻害薬、白金系化学療法薬、フォリン酸、5-フルオロウラシル、または抗VEGF治療薬から選択される、少なくとも1つの腫瘍治療薬と
を患者に投与する工程を含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1A図1A図1Cは、化合物1での処置後の、A-375(クラスIのBRAF変異黒色腫)異種移植腫瘍容積(図1A)、マウス体重(図1B)、およびベースラインに対する試験終了時の異種移植腫瘍容積の変化率(図1C)を図示する。
図1B図1A図1Cは、化合物1での処置後の、A-375(クラスIのBRAF変異黒色腫)異種移植腫瘍容積(図1A)、マウス体重(図1B)、およびベースラインに対する試験終了時の異種移植腫瘍容積の変化率(図1C)を図示する。
図1C図1A図1Cは、化合物1での処置後の、A-375(クラスIのBRAF変異黒色腫)異種移植腫瘍容積(図1A)、マウス体重(図1B)、およびベースラインに対する試験終了時の異種移植腫瘍容積の変化率(図1C)を図示する。
図2A図2A図2Dは、化合物1による処置中のBxPC-3(クラスIIのBRAF変異PDAC)およびWM3629(クラスIIのIBRAF変異黒色腫)異種移植腫瘍容積(図2A図2C)ならびにマウス体重(図2B図2D)を図示する。
図2B図2A図2Dは、化合物1による処置中のBxPC-3(クラスIIのBRAF変異PDAC)およびWM3629(クラスIIのIBRAF変異黒色腫)異種移植腫瘍容積(図2A図2C)ならびにマウス体重(図2B図2D)を図示する。
図2C図2A図2Dは、化合物1による処置中のBxPC-3(クラスIIのBRAF変異PDAC)およびWM3629(クラスIIのIBRAF変異黒色腫)異種移植腫瘍容積(図2A図2C)ならびにマウス体重(図2B図2D)を図示する。
図2D図2A図2Dは、化合物1による処置中のBxPC-3(クラスIIのBRAF変異PDAC)およびWM3629(クラスIIのIBRAF変異黒色腫)異種移植腫瘍容積(図2A図2C)ならびにマウス体重(図2B図2D)を図示する。
図3A図3Aおよび図3Bは、図3Aおよび図3Bにそれぞれ示される個々のBxPC-3腫瘍およびWM3629腫瘍異種移植応答(tumor xenograft response)のウォーターフォールプロットを図示する。
図3B図3Aおよび図3Bは、図3Aおよび図3Bにそれぞれ示される個々のBxPC-3腫瘍およびWM3629腫瘍異種移植応答(tumor xenograft response)のウォーターフォールプロットを図示する。
図4A図4A図4Cは、実施例3Cに記載の化合物1とビニメチニブとの併用療法に対するWM3629腫瘍異種移植応答を図示する。
図4B図4A図4Cは、実施例3Cに記載の化合物1とビニメチニブとの併用療法に対するWM3629腫瘍異種移植応答を図示する。
図4C図4A図4Cは、実施例3Cに記載の化合物1とビニメチニブとの併用療法に対するWM3629腫瘍異種移植応答を図示する。
図5図5は、実施例4に記載のNRAS変異黒色腫におけるビニメチニブと組み合わせた化合物1の細胞活性を図示する。
図6図6は、実施例5に記載のヒトSK-MEL-2(NRAS Q61R変異体)黒色腫異種移植モデルにおけるビニメチニブと組み合わせた化合物1の抗腫瘍活性を図示する。
図7図7は、実施例5に記載のヒトSK-MEL-2(NRAS Q61R変異体)黒色腫異種移植モデルにおけるビニメチニブと組み合わせた化合物1の抗腫瘍活性を図示する。
図8A図8A図8Cは、実施例6に記載のWM3629黒色腫異種移植モデルにおけるビニメチニブと組み合わせた化合物1の抗腫瘍活性を図示する。
図8B図8A図8Cは、実施例6に記載のWM3629黒色腫異種移植モデルにおけるビニメチニブと組み合わせた化合物1の抗腫瘍活性を図示する。
図8C図8A図8Cは、実施例6に記載のWM3629黒色腫異種移植モデルにおけるビニメチニブと組み合わせた化合物1の抗腫瘍活性を図示する。
図9A図9A図9Cは、実施例7に記載のNSCLC異種移植モデルにおける化合物1の抗腫瘍活性を図示する。
図9B図9A図9Cは、実施例7に記載のNSCLC異種移植モデルにおける化合物1の抗腫瘍活性を図示する。
図9C図9A図9Cは、実施例7に記載のNSCLC異種移植モデルにおける化合物1の抗腫瘍活性を図示する。
【0007】
(参照による援用)
本明細書において言及されるすべての刊行物、特許、および特許出願は、本明細書において特定される特定の目的のために参照により本明細書に援用される。
【0008】
(発明の詳細な説明)
特定の用語
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを表していない限り、複数の対象物を含む。したがって、例えば、「薬剤」への言及は、複数のそのような薬剤を含み、「細胞」への言及は、1つまたは複数の細胞(または複数の細胞)への言及および当業者に公知のその等価物などを含む。分子量などの物理的特性、または化学式などの化学的特性についての範囲が本明細書で使用される場合、範囲およびその中の特定の実施形態のあらゆる組合せおよび部分的な組合せが含まれることが意図される。数または数値範囲に言及する場合、「約」という用語は、言及される数または数値範囲が、実験的変動性内(または統計的実験誤差内)の近似値であることを意味し、したがって、数または数値範囲は、場合によっては、記載される数または数値範囲の1%~15%の間で変動するであろう。用語「含む(comprising)」(および「含む(comprise)」または「含む(comprises)」もしくは「有する(having)」もしくは「含む(including)」などの関連する用語)は、他の特定の実施形態において、例えば、本明細書に記載の任意の組成物、組成物、方法、またはプロセスなどの実施形態において、記載される特徴から「からなる」または「から本質的になる」ことを除外することを意図しない。
【0009】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、特に明記しない限り、以下の用語は、以下に示される意味を有する。
【0010】
「薬学的に許容可能な塩」は、酸付加塩および塩基付加塩の両方を含む。本明細書に記載の複素環式RAF阻害薬の薬学的に許容可能な塩は、任意のおよびすべての薬学的に好適な塩形態を包含することが意図される。本明細書に記載の化合物の好ましい薬学的に許容可能な塩は、薬学的に許容可能な酸付加塩および薬学的に許容可能な塩基付加塩である。
【0011】
「薬学的に許容可能な酸付加塩」とは、遊離塩基の生物学的有効性および特性を保持し、生物学的にまたはその他の点で望ましくなく、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ヨウ化水素酸、フッ化水素酸、亜リン酸などの無機酸を用いて形成される塩を指す。有機酸、例えば、脂肪族モノ-およびジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、アルカンジオン酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族スルホン酸などと形成される塩も含まれ、例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などが挙げられる。したがって、例示的な塩として、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、硝酸塩、リン酸塩、モノ水素リン酸塩、ジ水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、カプリル酸塩、イソブチレート、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、フタル酸塩、ベンゼンスルホネート、トルエンスルホネート、フェニル酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩などが挙げられる。アルギン酸塩、グルコン酸塩、およびガラクツロネート(例えば、Berge S.M.et al.,“Pharmaceutical Salts,”Journal of Pharmaceutical Science,66:1-19(1997)を参照されたい)などのアミノ酸の塩も企図される。塩基性化合物の酸付加塩は、いくつかの実施形態では、当業者が精通している方法および技術に従って、遊離塩基形態を充分な量の所望の酸と接触させて塩を生成することによって調製される。
【0012】
「薬学的に許容可能な塩基付加塩」とは、遊離酸の生物学的有効性および特性を保持し、生物学的にまたはその他の点で望ましくないものではない塩を指す。これらの塩は、無機塩基または有機塩基の遊離酸への添加から調製される。薬学的に許容可能な塩基付加塩は、いくつかの実施形態では、アルカリ金属およびアルカリ土類金属または有機アミンなどの金属またはアミンと形成される。無機塩基に由来する塩として、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウム塩などが挙げられるが、これらに限定されない。有機塩基に由来する塩として、第一級アミン、第二級アミンおよび第三級アミンの塩、天然に存在する置換アミンを含む置換アミン、環状アミンおよび塩基性イオン交換樹脂、例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、N,N-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、エチレンジアニリン、N-メチルグルカミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、ポリアミン樹脂などが挙げられるが、これらに限定されない。上記Berge et al.を参照のこと。
【0013】
「薬学的に許容可能な溶媒和物」は、溶媒付加形態である物質の組成物を指す。いくつかの実施形態では、溶媒和物は、化学量論量または非化学量論量のいずれかの溶媒を含有し、水、エタノールなどの薬学的に許容可能な溶媒を用いて作製するプロセス中に形成される。水和物は、溶媒が水であるときに形成されるか、またはアルコラートは、溶媒がアルコールであるときに形成される。本明細書に記載の化合物の溶媒和物は、本明細書に記載のプロセス中に都合よく調製または形成される。本明細書に提供される化合物は、任意選択で、非溶媒和形態および溶媒和形態のいずれかで存在する。
【0014】
用語「対象」または「患者」は、哺乳動物を包含する。哺乳動物の例として、ヒト、チンパンジーなどの非ヒト霊長類、ならびに他の類人猿およびサル種、家畜、例えば、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、家畜、例えば、ウサギ、イヌおよびネコ、ラット、マウスおよびモルモットなどのげっ歯類を含む実験動物などの哺乳動物網の任意のメンバーが挙げられるが、これらに限定されない。一態様では、哺乳動物はヒトである。
【0015】
本明細書で使用される場合、「処置」または「処置する」または「緩和する」または「改善する」は、互換的に使用される。これらの用語は、治療的利益および/または予防的利益を含むがこれらに限定されない有益なまたは所望の結果を得るためのアプローチを指す。「治療的利益」とは、処置される基礎疾患の根絶または改善を意味する。また、治療的利益は、患者が依然として基礎疾患に罹患しているにもかかわらず、患者において改善が観察されるように、基礎疾患に関連する生理学的症状の1つまたは複数の根絶または改善によって達成される。予防的利益のために、組成物は、いくつかの実施形態では、特定の疾患を発症するリスクがある患者に、またはたとえこの疾患の診断がなされていないとしても、疾患の生理学的症状の1つまたは複数を報告する患者に投与される。本明細書で使用される「処置する」という用語は、別段の指示がない限り、そのような用語が適用される障害もしくは疾患、またはそのような障害もしくは疾患の1つもしくは複数の症状を逆転させる、緩和する、進行を阻害する、または予防することを意味する。いくつかの実施形態では、「処置する」という用語は、その用語が適用される疾患または障害の進行を遅らせるまたは遅延させることを含む。さらに、いくつかの実施形態において、「処置する」という用語は、その用語が適用される疾患または障害から生じる合併症の1つまたは複数に適用される。本明細書で使用される「処置」という用語は、別段の指示がない限り、上で定義される「処置」として処置する行為を指す。
【0016】
本明細書で使用される「腫瘍」または「癌」という用語は、別段の指定がない限り、新生物細胞増殖を指し、前癌性および癌性の細胞および組織を含む。腫瘍は通常、病変または塊として存在する。本明細書で使用される場合、腫瘍を「処置する」とは、疾患の1つまたは複数の症状、例えば、腫瘍自体、腫瘍の血管新生、または疾患の特徴である他のパラメータが、低減、改善、阻害、寛解状態に置かれる、または寛解状態に維持されることを意味する。腫瘍の「処置」はまた、腫瘍の1つまたは複数の特徴が、処置によって除去、低減または予防され得ることを意味する。そのような特徴の非限定的な例として、基底膜および近位細胞外マトリックスの制御されない分解、新しい機能性毛細血管への内皮細胞の移動、分裂、および組織化、ならびにそのような機能性毛細血管の存続が挙げられる。
【0017】
用語「抵抗性」または「治療に対する抵抗性を示す」は、患者が治療に全く応答しなかったことを示す。
【0018】
用語「再発した」または「治療後に再発した」は、患者が、過去の治療に最初に応答した後、獲得抵抗性および/または不耐性により進行性疾患を有することを示す。
【0019】
用語「治療に対する耐性」または「治療に対する獲得耐性」は、患者が、過去の治療に最初に応答した後、治療に対する臨床的または分子的耐性に起因して進行性疾患を有することを示す。獲得耐性は、治療の分子標的における、または排出ポンプなどの生理学的機能の発達における耐性変異の出現に起因し得る。
【0020】
本明細書で使用される「治療有効量」という語句は、研究者、獣医師、医師またはその他が求めている、組織、系、動物またはヒトの生物学的または医学的応答を誘発する薬物または医薬品の量を指す。
【0021】
本発明の他の態様、利点、および特徴は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0022】
RAFファミリーキナーゼ
RAFファミリーキナーゼ(ARAF、BRAF、およびRAF1)は、受容体チロシンキナーゼ(RTK)の下流で作用して、MAPKシグナル伝達経路の調節を介して重要な細胞機能を調節する。正常細胞において、RTKの外部リガンド刺激は、RAFダイマー形成、プロトマートランス活性化、および最終的には細胞増殖および生存を駆動する転写プログラムのMAPK依存性活性化を促進するRAS GTPアーゼを活性化する(Zaman et al 2019)。RTK-RAS-RAF-MAPK経路の変異活性化は、ヒト癌において頻繁に観察され、治療介入のための確立された標的を表す(Roberts&Der 2007,Imperial et al 2017)。
【0023】
発がん性BRAF変化は、すべてのヒト癌の約4~8%で生じ、それらの独特の構造的およびシグナル伝達特性に基づいて3つのクラスに機能的に分類することができる(Davies,2002;Owsley,2020)。クラスIのBRAF V600変異は、RAS動員およびRAF二量体化/プロトマートランス活性化とは無関係にシグナル伝達する活性BRAF単量体をもたらす(Yaeger&Corcoran,2019)。クラスIIのBRAF変異は、RAS非依存性BRAF二量体化およびプロトマートランス活性化をもたらす。クラスIIIのBRAF変異は、BRAFキナーゼ活性を損なうが、RASとのその会合を促進する。この場合、増幅されたMAPKシグナル伝達は、上流のRAS活性化および野生型RAF(ARAFまたはRAF1)とのヘテロ二量体化に依存したままである。他のMAPK経路変化と稀に同時に生じる構成的に活性なクラスIおよびIIのBRAF変異とは対照的に、クラスIIIのBRAF変化は、RTK調節不全、RAS変異、またはNF1機能喪失を介して、異常なRAS活性化と関連してしばしば観察される(Yeager&Corcoran,2019)。
【0024】
第1世代BRAF阻害薬(例えば、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ)は、クラスIの変異を標的とし、単剤治療としてBRAF V600変異駆動転移性黒色腫(~50%の奏効率、5~6ヶ月の無増悪生存期間中央値)、ならびに併用療法レジメンの一部として他の癌型(Chapman,2011、Hauschild,2012、Subbiah,2020)を有する患者に有意な臨床的利益を付与した。しかし、現在承認されているBRAF阻害薬は、かなりの割合のBRAF変異(例えば、NSCLCにおいて65%および黒色腫患者において21%、Owsley,2021)を占めるクラスIIおよびIIIのBRAF変異を有する患者において有効であることが証明されていない。すべてのクラスのBRAF変異において有効であるように設計されたRAF阻害薬が望ましいが、クラスIIおよびIIIのBRAF変化腫瘍は、現在のFDA承認治療に対する耐性を示し、満たされていない臨床的必要性を有する患者集団を表す。
【0025】
複素環式RAF阻害薬
本明細書に記載の複素環式RAF阻害薬は、以下の構造、および化学名(S)-N-(3-(2-(((R)-1-ヒドロキシプロパン-2-イル)アミノ)-6-モルホリノピリジン-4-イル)-4-メチルフェニル)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン-1-カルボキサミドを有する化合物1を指す。
【0026】
【化1】
【0027】
化合物1は可逆性小分子RAF阻害薬である。本開示を通して、複素環式RAF阻害薬、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物に言及する場合、化合物1、およびその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物に言及する。
【0028】
癌および処置方法
一実施形態では、本明細書に開示される化合物1またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物と酵素を接触させる工程を含む、RAF酵素を阻害する方法を提供する。特定の態様では、本明細書には、癌の処置を必要とする個体の癌を処置する方法が開示され、該方法は、有効量の本明細書に記載の複素環式RAF阻害薬を個体に投与する工程を含む。特定の態様では、癌の処置に使用するための、本明細書に記載の複素環式RAF阻害薬が本明細書に開示される。特定の態様では、癌を処置するための医薬の調製における使用のための、本明細書に記載の複素環式RAF阻害薬が本明細書に開示される。
【0029】
一実施形態は、癌の処置を必要とする患者の癌を処置する方法であって、(S)-N-(3-(2-(((R)-1-ヒドロキシプロパン-2-イル)アミノ)-6-モルホリノピリジン-4-イル)-4-メチルフェニル)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン-1-カルボキサミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を患者に投与する工程を含む方法を提供する。別の実施形態は、癌が発がん性BRAF変化を有すると特徴づけられる方法を提供する。別の実施形態は、発がん性BRAF変化がクラスIのBRAF変異である方法を提供する。別の実施形態は、発がん性BRAF変化がクラスIIのBRAF変異である方法を提供する。別の実施形態は、発がん性BRAF変化がクラスIIIのBRAF変異である方法を提供する。別の実施形態は、発がん性BRAF変化がBRAF V600変異である方法を提供する。別の実施形態は、BRAF V600変異がV600EまたはV600K変異である方法を提供する。別の実施形態は、癌が野生型BRAFを有すると特徴づけられる方法を提供する。別の実施形態は、癌が固形腫瘍である方法を提供する。別の実施形態は、癌がNRAS変異腫瘍である方法を提供する。別の実施形態は、癌が、黒色腫、膵臓癌、膵臓腺癌、卵巣癌、大腸癌、神経膠腫、ランゲルハンス細胞組織球症、白血病、有毛細胞白血病、甲状腺癌、未分化甲状腺癌、甲状腺乳頭癌、濾胞性甲状腺癌、または甲状腺髄様癌から選択される方法を提供する。別の実施形態は、癌が、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、前立腺癌、胃癌、および食道癌から選択される方法を提供する。別の実施形態は、癌が黒色腫である方法を提供する。別の実施形態は、癌がNRAS変異黒色腫である方法を提供する。別の実施形態は、癌が膵臓癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が膵臓腺癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が卵巣癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が大腸癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が神経膠腫である方法を提供する。別の実施形態は、癌がランゲルハンス細胞組織球症である方法を提供する。別の実施形態は、癌が白血病である方法を提供する。別の実施形態は、癌が有毛細胞白血病である方法を提供する。別の実施形態は、癌が甲状腺癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が未分化甲状腺癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が甲状腺乳頭癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が濾胞性甲状腺癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が甲状腺髄様癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が小細胞肺癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が非小細胞肺癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌がNRAS変異非小細胞肺癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌がNRAS変異肺癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が前立腺癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が胃癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が胆管癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が食道癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が転移性である方法を提供する。別の実施形態は、外科的切除に続く補助薬化学療法である方法を提供する。別の実施形態は、患者が過去の治療後に再発している方法を提供する。別の実施形態は、患者が過去の治療に対する獲得耐性を有する方法を提供する。別の実施形態は、患者が治療に対する抵抗性を示す方法を提供する。別の実施形態は、(S)-N-(3-(2-(((R)-1-ヒドロキシプロパン-2-イル)アミノ)-6-モルホリノピリジン-4-イル)-4-メチルフェニル)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン-1-カルボキサミド、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物が経口投与される方法を提供する。別の実施形態は、経口投与が、1日おきに、1日1回、1日2回、または1日3回行われる方法を提供する。
【0030】
一実施形態は、癌の処置を必要とする患者の癌を処置する方法であって、(S)-N-(3-(2-(((R)-1-ヒドロキシプロパン-2-イル)アミノ)-6-モルホリノピリジン-4-イル)-4-メチルフェニル)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン-1-カルボキサミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物を患者に投与する工程を含む方法を提供する。別の実施形態は、癌が発がん性BRAF変化を有すると特徴づけられる方法を提供する。別の実施形態は、発がん性BRAF変化がクラスIのBRAF変異である方法を提供する。別の実施形態は、発がん性BRAF変化がクラスIIのBRAF変異である方法を提供する。別の実施形態は、発がん性BRAF変化がクラスIIIのBRAF変異である方法を提供する。別の実施形態は、発がん性BRAF変化がBRAF V600変異である方法を提供する。別の実施形態は、BRAF V600変異がV600EまたはV600K変異である方法を提供する。別の実施形態は、癌が野生型BRAFを有すると特徴づけられる方法を提供する。別の実施形態は、癌が固形腫瘍である方法を提供する。別の実施形態は、癌がNRAS変異腫瘍である方法を提供する。別の実施形態は、癌が、黒色腫、膵臓癌、膵臓腺癌、卵巣癌、大腸癌、神経膠腫、ランゲルハンス細胞組織球症、白血病、有毛細胞白血病、甲状腺癌、未分化甲状腺癌、甲状腺乳頭癌、濾胞性甲状腺癌、または甲状腺髄様癌から選択される方法を提供する。別の実施形態は、癌が、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、前立腺癌、胃癌、および食道癌から選択される方法を提供する。別の実施形態は、癌が黒色腫から選択される方法を提供する。別の実施形態は、癌がNRAS変異黒色腫である方法を提供する。別の実施形態は、癌が膵臓癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が膵臓腺癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が卵巣癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が大腸癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が神経膠腫である方法を提供する。別の実施形態は、癌がランゲルハンス細胞組織球症である方法を提供する。別の実施形態は、癌が白血病である方法を提供する。別の実施形態は、癌が有毛細胞白血病である方法を提供する。別の実施形態は、癌が甲状腺癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が未分化甲状腺癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が甲状腺乳頭癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が濾胞性甲状腺癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が甲状腺髄様癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が小細胞肺癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が非小細胞肺癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌がNRAS変異非小細胞肺癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌がNRAS変異肺癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が前立腺癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が胃癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が胆管癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が食道癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が転移性である方法を提供する。別の実施形態は、外科的切除に続く補助薬化学療法である方法を提供する。別の実施形態は、患者が過去の治療後に再発している方法を提供する。別の実施形態は、患者が過去の治療に対する獲得耐性を有する方法を提供する。別の実施形態は、患者が治療に対する抵抗性を示す方法を提供する。別の実施形態は、(S)-N-(3-(2-(((R)-1-ヒドロキシプロパン-2-イル)アミノ)-6-モルホリノピリジン-4-イル)-4-メチルフェニル)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン-1-カルボキサミド、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物が経口投与される方法を提供する。別の実施形態は、経口投与が、1日おきに、1日1回、1日2回、または1日3回行われる方法を提供する。
【0031】
一実施形態は、癌の処置を必要とする患者の癌を処置する方法であって、
(a)(S)-N-(3-(2-(((R)-1-ヒドロキシプロパン-2-イル)アミノ)-6-モルホリノピリジン-4-イル)-4-メチルフェニル)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン-1-カルボキサミド、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を含む、医薬組成物と、
(b)MEK阻害薬、免疫チェックポイント阻害薬、CDK阻害薬、EGFRキナーゼ阻害薬、EGFR抗体、EGFR PROTAC治療薬、FGFR阻害薬、SOS1阻害薬、SHP2阻害薬、KRAS阻害薬、タキサン、トポイソメラーゼ阻害薬、ERK阻害薬、白金系化学療法薬、フォリン酸、5-フルオロウラシル、または抗VEGF治療薬から選択される、少なくとも1つの腫瘍治療薬と
を患者に投与する工程を含む方法を提供する。別の実施形態は、少なくとも1つの腫瘍治療薬がMEK阻害薬である方法を提供する。別の実施形態は、MEK阻害薬が、ビニメチニブ、トラメチニブ、コビメチニブ、セルメチニブ、ピマセルチブ、またはミルダメチニブから選択される方法を提供する。別の実施形態は、少なくとも1つの腫瘍治療薬が免疫チェックポイント阻害薬である方法を提供する。別の実施形態は、免疫チェックポイント阻害薬が、CTLA-4阻害薬、PD-1阻害薬、またはPD-L1阻害薬である方法を提供する。別の実施形態は、CTLA-4阻害薬がイピリムマブである方法を提供する。別の実施形態は、PD-1阻害薬が、スパルタリズマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、またはセミプリマブである方法を提供する。別の実施形態は、PD-L1阻害薬が、アテゾリズマブ、アベルマブ、またはデュルバルマブである方法を提供する。別の実施形態は、少なくとも1つの腫瘍治療薬がCDK阻害薬である方法を提供する。別の実施形態は、CDK阻害薬がCDK4/6阻害薬である方法を提供する。別の実施形態は、CDK4/6阻害薬が、パルボシクリブ、アベマシクリブ、またはリボシクリブである方法を提供する。別の実施形態は、少なくとも1つの腫瘍治療薬がEGFRキナーゼ阻害薬または抗体である方法を提供する。別の実施形態は、EGFRキナーゼ阻害薬が、ナザルチ二ブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、ブリグチニブ、イコチニブ、ネラチニブ、オシメルチニブ 、ダコミチニブ、またはラパチニブである方法を提供する。別の実施形態は、EGFR抗体が、セツキシマブ、パニツムマブ、ザルツムマブ、ニモツズマブ、またはマツズマブである方法を提供する。別の実施形態は、少なくとも1つの腫瘍治療薬がSHP2阻害薬である方法を提供する。別の実施形態は、少なくとも1つの腫瘍治療薬がSOS1阻害薬である方法を提供する。別の実施形態は、少なくとも1つの腫瘍治療薬がFGFR阻害薬である方法を提供する。別の実施形態は、少なくとも1つの腫瘍治療薬がKRAS阻害薬である方法を提供する。別の実施形態は、KRAS阻害薬が、ソトラシブ、アダグラシブ、またはBI-1701963である方法を提供する。別の実施形態は、少なくとも1つの腫瘍治療薬がタキサンである方法を提供する。別の実施形態は、少なくとも1つの腫瘍治療薬がトポイソメラーゼ阻害薬である方法を提供する。別の実施形態は、トポイソメラーゼ阻害薬が、イリノテカン、トポテカン、またはベロテカンである方法を提供する。別の実施形態は、少なくとも1つの腫瘍治療薬がERK阻害薬である方法を提供する。別の実施形態は、少なくとも1つの腫瘍治療薬が白金系化学療法薬である方法を提供する。別の実施形態は、白金系化学療法薬が、オキサリプラチン、シスプラチン、またはカルボプラチンである方法を提供する。別の実施形態は、少なくとも1つの腫瘍治療薬がフォリン酸である方法を提供する。別の実施形態は、少なくとも1つの腫瘍治療薬が5-フルオロウラシルである方法を提供する。別の実施形態は、少なくとも1つの腫瘍治療薬が、フォリン酸およびフォリン酸を含む方法を提供する。別の実施形態は、トポイソメラーゼ阻害薬もしくは白金系化学療法薬、またはこれらの組合せの投与をさらに含む方法を提供する。別の実施形態は、少なくとも1つの腫瘍治療薬が抗VEGF治療薬である方法を提供する。別の実施形態は、抗VEGF治療薬が、ベバシズマブまたはアフリベルセプトである方法を提供する。別の実施形態は、癌が発がん性BRAF変化を有すると特徴づけられる方法を提供する。別の実施形態は、発がん性BRAF変化がクラスIのBRAF変異である方法を提供する。別の実施形態は、発がん性BRAF変化がクラスIIのBRAF変異である方法を提供する。別の実施形態は、発がん性BRAF変化がクラスIIIのBRAF変異である方法を提供する。別の実施形態は、発がん性BRAF変化がBRAF V600変異である方法を提供する。別の実施形態は、BRAF V600変異がV600EまたはV600K変異である方法を提供する。別の実施形態は、癌が野生型BRAFを有すると特徴づけられる方法を提供する。別の実施形態は、癌が固形腫瘍である方法を提供する。別の実施形態は、癌がNRAS変異腫瘍である方法を提供する。別の実施形態は、癌が、黒色腫、膵臓癌、膵臓腺癌、卵巣癌、大腸癌、神経膠腫、ランゲルハンス細胞組織球症、白血病、有毛細胞白血病、甲状腺癌、未分化甲状腺癌、甲状腺乳頭癌、濾胞性甲状腺癌、または甲状腺髄様癌から選択される方法を提供する。別の実施形態は、癌が、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、前立腺癌、胃癌、および食道癌から選択される方法を提供する。別の実施形態は、癌が黒色腫から選択される方法を提供する。別の実施形態は、癌がNRAS変異腫瘍である方法を提供する。別の実施形態は、癌が膵臓癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が膵臓腺癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が卵巣癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が大腸癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が神経膠腫である方法を提供する。別の実施形態は、癌がランゲルハンス細胞組織球症である方法を提供する。別の実施形態は、癌が白血病である方法を提供する。別の実施形態は、癌が有毛細胞白血病である方法を提供する。別の実施形態は、癌が甲状腺癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が未分化甲状腺癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が甲状腺乳頭癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が濾胞性甲状腺癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が甲状腺髄様癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が小細胞肺癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が非小細胞肺癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌がNRAS変異非小細胞肺癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌がNRAS変異肺癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が前立腺癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が胃癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が胆管癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が食道癌である方法を提供する。別の実施形態は、癌が転移性である方法を提供する。別の実施形態は、外科的切除に続く補助薬化学療法である方法を提供する。別の実施形態は、患者が過去の治療後に再発している方法を提供する。別の実施形態は、患者が過去の治療に対する獲得耐性を有する方法を提供する。別の実施形態は、患者が治療に対する抵抗性を示す方法を提供する。別の実施形態は、(S)-N-(3-(2-(((R)-1-ヒドロキシプロパン-2-イル)アミノ)-6-モルホリノピリジン-4-イル)-4-メチルフェニル)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン-1-カルボキサミド、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物が経口投与される方法を提供する。別の実施形態は、経口投与が、1日おきに、1日1回、1日2回、または1日3回行われる方法を提供する。
【0032】
特定の実施形態では、本明細書に記載の複素環式RAF阻害薬は、純粋な化学物質として投与される。他の実施形態では、本明細書に記載の複素環式RAF阻害薬は、選択された投与経路および標準的な薬務に基づいて選択される薬学的に適切または許容可能な担体(本明細書では、薬学的に適切もしくは許容可能な賦形剤、生理学的に適切もしくは許容可能な賦形剤、または生理学的に適切もしくは許容可能な担体とも称される)と組み合わされる。
【0033】
本明細書には、1つまたは複数の薬学的に許容可能な担体とともに、本明細書に記載の複素環式RAF阻害薬、またはその立体異性体、薬学的に許容可能な塩、水和物、もしくは溶媒和物を含む医薬組成物が提供される。担体(または賦形剤)は、担体が組成物の他の成分と適合性であり、組成物のレシピエント(すなわち、対象または患者)に有害でない場合に許容可能であり、または適切である。
【0034】
一実施形態は、本明細書に記載の複素環式RAF阻害薬、またはその立体異性体、薬学的に許容可能な塩、水和物、もしくは溶媒和物と、薬学的に許容可能な担体とを混合する工程を含む、医薬組成物を調製する方法を提供する。
【0035】
本明細書では、医薬組成物が経口投与される方法が提供される。好適な経口剤形として、例えば、錠剤、丸剤、サシェ剤、または硬質もしくは軟質ゼラチン、メチルセルロース、または消化管に容易に溶解する別の好適な材料のカプセル剤が挙げられる。いくつかの実施形態では、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなどを含む好適な非毒性固体担体が使用される。(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(Gennaro,21st Ed.Mack Pub.Co.,Easton,PA(2005)を参照)。
【0036】
本明細書には、医薬組成物が注射によって投与される方法が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の複素環式RAF阻害薬、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、注射による投与用に製剤化される。いくつかの例では、注射製剤は水性製剤である。いくつかの例では、注射製剤は非水性製剤である。いくつかの例では、注射製剤は、ゴマ油などの油系製剤である。
【0037】
本明細書に記載の複素環式RAF阻害薬、またはその立体異性体、薬学的に許容可能な塩、水和物もしくは溶媒和物を含む組成物の用量は、対象または患者(例えば、ヒト)の状態に応じて異なる。いくつかの実施形態では、そのような要因は、全身の健康状態、年齢、および他の要因を含む。医薬組成物は、処置(または予防)される疾患に適切な様式で投与される。適切な用量ならびに適切な投与の持続時間および頻度は、患者の状態、患者の疾患の種類および重症度、活性成分の特定の形態、ならびに投与方法などの因子によって決定される。概して、適切な用量および処置レジメンは、治療的および/または予防的利益(例えば、改善された臨床転帰、例えば、より頻繁な完全寛解もしくは部分寛解、またはより長い無病生存および/もしくは全生存、または症状の重症度の軽減)を提供するのに充分な量で組成物を提供する。最適な用量は、患者の体重、体重、または血液量による。
【発明を実施するための形態】
【0038】
これらの実施例は、例示のみを目的として提供され、本明細書に提供される特許請求の範囲を限定するものではない。
【0039】
実施例1。化合物1のRAF阻害活性
方法
化合物1によるBRAFおよびRAPT(CRAF)キナーゼの阻害を、表1に示すように、それぞれBRAFおよびCRAFについての17および18の独立した実験においてADP-Gloアッセイによって測定した。アッセイにおいて、ATPは、基質の存在下で試験キナーゼによってADPに変換される。次いで、アッセイ試薬は、残りのADPをATPに変換し、相対的キナーゼ活性に比例するルシフェラーゼ反応および発光読み出しをもたらす。化合物1をDMSOで希釈し、両方のアッセイについて10点、3倍用量曲線で使用した。1μMの高用量および0.05nMの低用量を試験した。6nMのBRAF(CarnaBio、カタログ番号09-122)または3nMのRAF1(CarnaBio、カタログ番号09-125)および30nMのMEK1基質(ミリポア、カタログ番号14-420)の最終濃度を、ADP-Glo試薬(プロメガ、カタログ番号V9102)の40分間の添加の前に、3μMのATP、10mMのMgCl、0.003%のBrij-35、2mMのDTT、0.05%のBSA、1mMのEGTA、および50mMのHEPESとともに室温で90分間インキュベートした。発光をEnvisionプレートリーダー(パーキンエルマー)で読み取り、残存活性パーセントを使用して、Dotmatics Knowledge Solutions Studies曲線フィッティングソフトウェア(Dotmatics,Bishops Stortford,UK,CM23)を使用して4パラメーターフィッティングモデルでIC50を計算した。






【0040】
【表1】
【0041】
Reaction Biology社(ペンシルベニア州、マルバーン)のキナーゼスクリーニングサービスは、ATPからキナーゼ基質への放射性33P標識リン酸の移動を使用して、そのキナーゼホットスポットアッセイを介してキナーゼ活性に対する試験化合物の効果を測定する(Anastas siadis T et al 2011)。反応は、ARAF、BRAF、BRAF-V600E、およびRAF1(CRAF)について、それぞれ、15μM、20μM、20μM、および10μMのKm ATPで実施した。適切な基質を、20mMのHEPES(pH7.5)、10mMのMgCl2、1mMのEGTA、0.01%のBrij35、0.02mg/mlのBSA、0.1mMのNa3V04、2mMのDTT、1%のDMSOを含有する反応緩衝液で希釈した。溶液にキナーゼを組み込んだ後、化合物1を、室温で20分間の前インキュベーションの間、3μMの最高用量および0.152μMの低用量から開始する10点、3倍用量曲線で添加した。33P-ATPを反応混合物に添加して反応を開始し、室温で2時間インキュベートした。キナーゼ活性は、P81フィルター結合法によって検出した。IC50値は、Dotmatics Knowledge Solutions Studies曲線フィッティングソフトウェア(Dotmatics,Bishops Stortford,UK,CM23)を使用する4パラメーターフィッティングモデルを使用して計算し、表2に提供する。
【0042】
【表2】
【0043】
化合物1を、Cama Biosciencess社(日本、神戸)による299キナーゼのCama Biosciences Kinase Panelにおいて、マイクロ流体環境におけるキャピラリー電気泳動の基本原理を組み合わせる移動度シフトアッセイである、Caliper LabChip3000アッセイ(Caliper Life Science社、マサチューセッツ州、ホプキントン)を用いて、ヒトキノームに対して1μMのATP(入手可能な場合)で試験した(Perrin et al 2010)。4x基質/ATP/金属溶液をキット緩衝液(20mMのHEPES、0.01%のTriton X-100、5mMのDTT、pH7.5)で調製し、2xキナーゼ溶液をアッセイ緩衝液(20mMのHEPES、0.01%のTriton X-100、1mMのDTT、pH7.5)で調製した。5μLの4x化合物溶液、5mLの4x基質/ATP/金属溶液、および10mLの2xキナーゼ溶液を混合し、ポリプロピレン384ウェルマイクロプレートのウェルにおいて室温で1または5時間インキュベートした。(*;キナーゼに依存する)。70mLの終結緩衝液(QuickScout Screening Assist MSA、Carna Biosciences社)をウェルに添加した。反応混合物をLabChip(商標)システム(パーキンエルマー)に適用し、生成物および基質ペプチドピークを分離し、定量した。キナーゼ反応は、生成物(P)および基質(S)ペプチドのピーク高さから計算した生成物比(P/(P+S))によって評価した。1μMの化合物1によって>10%阻害されたRAFファミリー外のキナーゼを表3に列挙する。










































【0044】
【表3】
【0045】
結論
化合物1の生化学的効力およびキナーゼ選択性を、生化学的アッセイのスイートを用いて決定した。急速に加速した線維肉腫(RAF)キナーゼに対する化合物1の阻害効力を、アデノシンジホスフェート(ADP)-Gloスクリーニングアッセイならびに放射測定キナーゼアッセイの両方においてプロファイルした。化合物1は、IC50値<5nMで、RAF1、BRAF、ARAFキナーゼの強力な阻害薬であることが実証された。非RAFキノーム選択性を、移動度シフトアッセイによって測定されるようにキナーゼパネルにおいて評価し、DDR1およびDDR2のみが1μMで≧40%阻害されることを明らかにした。まとめると、化合物1は、キノームの残りの部分に対して最小限の活性を有する強力な選択的RAF阻害薬である。
【0046】
実施例2。化合物1は、細胞培養における細胞増殖を阻害する
化合物1は、クラスIのBRAF変異に加えて、クラスIIおよびIIIのBRAF変異を標的とするように設計されたRAFキナーゼの選択的かつ強力な阻害薬である。ここで、本発明者らは、BRAF変異状態の4つのカテゴリー、クラスI(A-375)、クラスII(BxPC-3、OV-90、NCI-H2405)、クラスIII(WM3629およびCAL12-T)、および野生型(MIA PaCa-2、CHL、NCI-H358)を表す複数の細胞モデルにわたる化合物1のインビトロ薬力学的バイオマーカー活性を評価した。
【0047】
方法
A-375、BxPC-3、OV-90、NCI-H2405、CAL-12T、MIA PaCa-2、NCI-H358、およびCHL-1細胞を384ウェルプレート中の24μL増殖培地中に8000細胞/ウェルで播種し、37℃で5%のCOで一晩接着させた。WM3629細胞を384ウェルプレート中の24μL増殖培地中に1500細胞/ウェルで播種し、37℃で5%のCOで一晩接着させた。翌日、化合物を、384ウェルプレートにおいて10点、3倍希釈曲線に連続希釈した。化合物1を、最終濃度範囲が0.1%DMSO中0.508nM~10μMになるように細胞プレートに移し、0.1%DMSOを陰性対照として使用した。細胞を化合物1と共に37℃において5%のCOで1時間インキュベートした。細胞を、1Xプロテアーゼ/ホスファターゼ阻害薬カクテルを加えたHTRFキットを備えた8μLの4X溶解緩衝液の添加によって溶解した。20μLの溶解物をHTRFプレートに移し、各2.5μLの抗ERK1/2-ユウロピウム/テルビウムクリプテートおよび抗ホスホERK1/2抗体溶液を製造業者の指示に従って移した。HTRFプレートを室温で一晩インキュベートした後、665nm/620nm(ドナー/アクセプター)でHTRFモードにおいて読み取った。4パラメータ分析法を利用した用量反応回帰曲線フィッティングを用いてEC50値を計算した。
【0048】
化合物1は、表4Aに示されるように、処置の1時間後にpERKバイオマーカーの薬力学的調節によって決定されるように、BRAF変異体モデルおよび野生型モデルにわたって様々な細胞活性を示した。クラスIIIのBRAF変化を有する腫瘍細胞、モデルWM3629およびCAL-12Tにおいて、化合物1は、それぞれ8.8および18.4nMの平均EC50値を有した。クラスIIのBRAF変異体モデル、BxPC-3、OV-90、およびNCI-H2405、化合物1は、それぞれ50.7、26.0、および10.1nMの平均EC50値を実証した。クラスIのBRAF変異を有する細胞A-375は、応答性が最も低い変異体クラスであり、67.7nMの平均EC50を有した。3つの野生型モデル、MIA PaCa-2、CHL-1、およびNCI-H358において、化合物1は、それぞれ685、580、および351nMの平均EC50値を有した。さらなる細胞活性を表4Bに提供する。




























【0049】
【表4A】































【0050】
【表4B】
【0051】
結論
要約すると、化合物1は、pERKバイオマーカーの調節によって決定されるように、BRAF変異体モデルおよび野生型モデルにわたって様々な細胞活性を示した。クラスIIおよびクラスIIIの変異体モデルは、化合物1で処理した場合に最も強力な細胞応答を示したが、野生型BRAFモデルは最も応答性が低かった。
【0052】
実施例3。異種移植モデルにおける抗増殖活性の判定
方法
【0053】
群および処置を、結果のセクションに示されるように、平均腫瘍容積が200~335mmに達したときに開始した。マウスを、それらの開始腫瘍容積および体重に基づいて、平均値が各処置群について同じになるように、それぞれの群に割り当てた。試験群および群あたりの動物数を表5~7に示す。
【0054】
A.クラスIのBRAF変異体ヒト癌における化合物1の抗腫瘍活性の評価
化合物1の抗腫瘍活性を、クラスIのBRAF V600E変異を有するヒトA-375黒色腫異種移植片モデルにおいて最初に評価した。化合物1(15、30、または60mg/kg、遊離塩基形態)による処置を、腫瘍容積が約200mmに達したときに開始し、3週間毎日1回(QD)継続した。化合物1での処置後の、平均A-375異種移植腫瘍容積(図1A)、マウス体重(図1B)、およびベースラインに対する試験終了時の異種移植腫瘍容積のパーセント変化(図1C)を、用量コホートによって示す。化合物1処置を、腫瘍容積が平均205mmまでに達したときに開始し、示された用量で21日間継続した(n=9匹/群)。平均腫瘍容積および体重をそれぞれプロットする、エラーバーは平均の標準誤差を示す。(TVf-TV0)/TV0x100%の式を用いて腫瘍容積の変化率を計算した。ここで、TVf=最終腫瘍容積(処置終了時)およびTV0=初期腫瘍容積(処置開始時)である。
【0055】
【表5】
【0056】
化合物1処置は、変異体A-375 BRAFクラスIの黒色腫腫瘍を有するマウスにおける最後の投与後24時間にわたって経口投与した場合、11,900~156,000h*ng/mLの全身血漿曝露(AUClast)をもたらした。対照(ビヒクル処置)腫瘍に対する異種移植腫瘍増殖の用量依存的阻害が、化合物1処置で観察された(図1A)。試験した用量のすべてが良好に耐容され、60mg/kgで処置した動物においていくらかの体重減少が観察された(5.6%の平均重量損失、図1B)。60mg/kgコホートの1匹の動物は、処置の過程で>10%の体重減少を有したが、試験終了までに回復した。
【0057】
ベースラインからの腫瘍容積の変化として定義される個々の腫瘍応答のウォーターフォールプロットを図1Cに示す。30mg/kgおよび60mg/kgの1日用量で達成された平均TGIは、それぞれ57%および106%であり(p≦0.0001、図1C)、後者の群の9匹中8匹(89%)が腫瘍退縮を示した。最低試験用量、15mg/kgは、有意なTGIをもたらさなかった。
【0058】
B.クラスII/IIIのBRAF変異体ヒト癌における化合物1の抗腫瘍活性の評価
次に、クラスII/IIIのBRAF変異を示すヒト異種移植片モデルにおいて化合物1の抗腫瘍活性を評価した。BxPC-3膵臓癌およびクラスIIのBRAF挿入欠失(インデル、V487_P492delinsA)およびクラスIIIのBRAF D594G変異をそれぞれ有するWM3629黒色腫細胞株由来異種移植片を、合計3~20mg/kgの化合物1(硫酸塩形態)で毎日2週間処置した。腫瘍体積が240~280mmまでに達したときに処置を開始し、動物に1回(QD、3~20mg/kg)または2回(BID、1.5~10mg/kg)の等価総用量を毎日投与した。化合物1での処置中の平均BxPC-3(クラスIIのBRAF変異体PD AC)およびWM3629(クラスIIIのBRAF変異体黒色腫)異種移植腫瘍体積(図2A図2C)およびマウス体重(図2B図2D)は、用量コホートによって提示される。化合物1処置を、腫瘍体積が平均240~283mmに達したときに開始し、指示された用量および頻度で14日間継続した(n=9匹/群)。平均腫瘍体積および体重をプロットする、エラーバーは平均の標準誤差を示す。



【0059】
【表6】
【0060】
化合物1処置は、変異体BRAFクラスIIのBxPC-3膵臓およびクラスIIIのWM3629黒色腫異種移植片を有するマウスにおける最後の投与後24時間にわたり、それぞれ、BIDまたはQDで経口投与した場合に、4,030~42,100h*ng/mLおよび5,200~53,700h*ng/mLの全身血漿曝露(AUClast)をもたらした。対照(ビヒクル処置)腫瘍に対するBxPC-3およびWM3629異種移植片腫瘍増殖の用量依存性阻害が、化合物1処置で観察された(図2A図2C)。両方のモデルにおいて化合物1の等価の総1日用量の投与であるQDと比較して、より大きなTGIに向かう傾向がBIDで達成された。すべての試験した用量およびスケジュールは、処置中の動物の体重変化によって測定したところ、耐容性が良好であった(図2B図2D)。
【0061】
個々のBxPC-3腫瘍およびWM3629腫瘍異種移植片応答のウォーターフォールプロットを、それぞれ図3Aおよび図3Bに示す。統計学的に有意なBxPC-3腫瘍増殖の減少は、10mg/kgの総化合物1/日までのすべての試験用量で達成された(51~88%阻害、p≦0.0001、図3A)。さらに、20mg/kg QDおよび3~10mg/kg BID処置群において、動物間で腫瘍退縮が観察された(20mg/kg QDおよび10mg/kg BIDでそれぞれ109%および118%のTGI、p≦0.0001)。同様に、TGIは、WM3629モデルにおいてすべての試験用量およびスケジュールで観察された(47~101%阻害、p≦0.04~0.0001)、場合によっては、最高日用量で回帰が観察された(図3B)。BxPC-3モデルと一致して、退縮はまた、BIDを投与した場合、より低い用量(5mg/kg)で1匹の動物において達成された。
【0062】
C.クラスIIIのBRAF変異体ヒト癌におけるMEK阻害と組み合わせた化合物1の抗腫瘍活性の評価
ビニメチニブ-BRAF V600E/K変異を有する進行性黒色腫の処置のためにエンコラフェニブと組み合わせて使用するために承認されたMEK阻害薬と組み合わせた場合の化合物1の抗腫瘍活性を、ヒトWM3629(クラスIIIのBRAF変異体)黒色腫異種移植モデルにおいて評価した。化合物1(15または30mg/kg QD、遊離塩基形態)、ビニメチニブ(10mg/kg QD)、および/または2つの療法の併用による処置を、腫瘍体積が約335mmに達したときに開始し、2週間毎日1回継続した。

















































【0063】
【表7】
【0064】
31,100~123,000hr*ng/mLおよび11,000~26,700hr*ng/mLの範囲の全身血漿曝露(AUClast)を、試験用量で、それぞれ化合物1および/またはビニメチニブ処置で達成した。化合物1単独療法に対する用量依存的応答が観察された(図4A、C)。平均TGIは、15mg/kgおよび30mg/kgでそれぞれ86%および99%であった。単剤としてのビニメチニブ(10mg/kg QD)による処置は、腫瘍増殖の有意な阻害をもたらさなかった。しかし、ビニメチニブへの化合物1の添加は、腫瘍退縮の証拠(それぞれ10/15mg/kgおよび10/30mg/kgのビニメチニブ/化合物1による101%および108%のTGI、p≦0.0001、図4C)と共に腫瘍異種移植片増殖阻害の改善をもたらした。重要なことに、ビニメチニブを加えた化合物1による処置は耐容性が良好であり、最も高い併用療法用量の1匹の動物のみが、単一の処置開始時点で10%の体重減少を示した(図4B)。
【0065】
結論
化合物1は、BRAF変異体ヒト癌の無胸腺ヌードマウス異種移植片モデルにおいて、60mg/kg/日までの用量で良好に耐容され、有効であった。A-375(BRAFクラスIの変異)、BxPC-3(BRAFクラスIIの変異)、またはWM3629(BRAFクラスIIIの変異)異種移植片腫瘍増殖の用量依存性阻害は、毎日の化合物1処置で観察された。よりロバストな腫瘍応答に向かう傾向が、化合物1の1日1回の投与と比較して1日2回で観察されたが、2つの投与レジメンは、同等の全1日用量で同様の腫瘍増殖阻害(TGI)および退縮(101~118%までの平均TGI、p≦0.0001)をもたらした。化合物1はまた、WM3629異種移植片腫瘍退縮をもたらすMEK阻害薬と組み合わせた場合、良好に耐容され、有効であった(101~106%の平均TGI、p≦0.0001)。これらのデータは、化合物1が単剤として強力な抗腫瘍活性を有し、BRAF駆動癌の処置のための他の標的療法と安全に組み合わせることもできることを示している。
【0066】
実施例4。NRAS変異黒色腫におけるビニメチニブと組み合わせた化合物1の細胞活性の評価
目的。急速に加速した線維肉腫(RAF)キナーゼの選択的かつ強力な阻害薬である化合物1の細胞効力および活性を評価するために、マイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼ(MEK)阻害薬であるビニメチニブと組み合わせる。
【0067】
方法。ビニメチニブを加えたRAF阻害薬化合物1のコンビナトリアル活性を、ヒト神経芽細胞腫ラット肉腫ウイルス癌遺伝子ホモログ(NRAS)変異型黒色腫細胞において7日間の増殖アッセイで評価した。SK-MEL-2ヒト黒色腫細胞をAmerican Type Culture Collectionから入手し、DMEM 10%FBS 1%ペニシリン/ストレプトマイシン中で維持した。すべての細胞を、5%の二酸化炭素(CO)を含む37℃の加湿インキュベーター中で維持した。SK-MEL-2細胞を96ウェルプレート(Corning 3904)中の96μL増殖培地中に1,000細胞/ウェルで播種し、5%のCOにおいて37℃で一晩接着させた。翌日、化合物1をジメチルスルホキシド(DMSO)中で連続希釈して、1mMから開始する96ウェルプレート中の9点、3倍希釈曲線にした。ビニメチニブをDMSO中で連続希釈して、500mMから開始する96ウェルプレート中で5点、4倍希釈曲線にした。次いで、2μLの各化合物を196μLの培地に移して、10X作業希釈液を作製した。10μLの作業希釈液を96ウェルプレートの対応するウェルに分注して、総体積を100μLにした。DMSOの0.2%の溶液を陰性対照として用いた。細胞を化合物と共に37℃で5%のCO2を用いて7日間インキュベートした。プレートをインキュベーターから取り出し、室温で15分間平衡化した。次いで、100μLのCellTiter-Glo(CTG)試薬を、検出すべき各ウェルに添加した(培地に対して1:1で)。プレートを室温で30分間保持し、続いてプレートリーダーで読み取った。EC50値は、4パラメータ分析法を利用する用量反応回帰曲線フィッティングを使用して計算した。データの相乗作用分析を実施して、化合物1およびビニメチニブ(Meyer et al.2019,Ianevski et al.2020)の潜在的な相乗的併用利益を評価した。単剤化合物1(DMSO対照を含む)は、164nMの増殖阻害EC50をもたらした。増加する濃度のビニメチニブと組み合わせると、化合物1の効力は増強され、表8および図5に示すように、2、7.8、31.3、125、および500nMのビニメチニブ濃度について、それぞれ、EC50値を108nM、106nM、65nM、39nM、および12nMにシフトした。この細胞試験は、MEK阻害薬であるビニメチニブをヒトNRAS変異黒色腫細胞株における化合物1処置に添加した場合の併用利益を実証する。
【0068】
【表8】
【0069】
SK-MEL-2細胞における化合物1とビニメチニブとの間の潜在的な相乗作用を、複数の利用可能な相乗作用モデルを使用して評価した。併用の多次元相乗作用(MuSyC)モデルは、そのモデルにおける効力(α)および有効性(β)の両方を考慮に入れる。スコア>0は、示されたパラメータにおける2つの薬物間の相乗作用を示す。最も高い単剤(HSA)、Bliss、およびLoewe相乗作用モデルを評価し、最も相乗的な面積スコアを見出すために利用し、スコア>10は、2つの薬物間の相互作用が相乗的である可能性が高いことを示す。7日間の増殖アッセイからの結果を、複数の相乗作用モデルを使用して分析した(表9を参照)。MuSyCモデルは、0.44のベータスコアおよび10.61のアルファスコアをもたらし、SK-MEL-2試験における相乗的な併用有効性および相乗的効力の両方を示した。HSA、Bliss、およびLoeweモデルは、それぞれ21.6、16.2、および11.6に対応する最も相乗的な面積スコアを計算し、表9に示される範囲内の相乗性を示した。まとめると、この細胞試験およびその後の相乗作用分析は、SK-MEL-2ヒトNRAS変異体黒色腫細胞株における化合物1とビニメチニブとの間の相乗的な併用の利益を実証する。












































【0070】
【表9】
【0071】
結果の概要。化合物1は、7日間の増殖アッセイにおける細胞増殖の阻害によって証明されるように、NRAS変異体ヒト黒色腫腫瘍細胞モデルの強力な阻害を実証した。化合物1の増殖阻害効力は、ビニメチニブの用量の増加に伴う最大半量有効濃度(EC50)値の減少によって証明されるように、MEK阻害薬ビニメチニブとの併用によって増強された。
【0072】
実施例5。NRAS変異体ヒト黒色腫におけるMEK阻害と組み合わせた化合物1の抗腫瘍活性の評価
ビニメチニブと組み合わせた場合の化合物1の抗腫瘍活性を、ヒトSK-MEL-2(NRAS Q61R変異体)黒色腫異種移植片モデルにおいて評価した。化合物1(10もしくは30mg/kg BID)、ビニメチニブ(3mg/kg BID)、または2つの療法の組み合わせによる処置を、腫瘍体積がおよそ307mmに達したときに開始し、毎日2回継4週間続した。





















【0073】
【表10】
【0074】
29,900~96,100hr*ng/mLおよび7,500~10,100hr*ng/mLの範囲の全身血漿曝露(AUC0-24)を、試験用量で、それぞれ化合物1および/またはビニメチニブ処置で達成した。単剤療法群および併用療法群の腫瘍増殖阻害が観察された(図6)。平均TGIは、10mg/kgおよび30mg/kgでそれぞれ13%および135%であった。単剤としてのビニメチニブ(3mg/kg BID)による処置は、23%の腫瘍増殖阻害をもたらした。10mg/kgの化合物1のビニメチニブへの添加は、腫瘍退縮の証拠を有する腫瘍異種移植片増殖阻害の改善をもたらした(それぞれ、122%、10/3mg/kgのビニメチニブ/化合物1、図7)。
【0075】
実施例6。NRAS変異体BRAF変異体黒色腫異種移植モデルにおけるビニメチニブと組み合わせた化合物1の抗腫瘍活性の評価
目的。化合物1の耐容性および抗腫瘍活性を評価するための、神経芽細胞腫ラット肉腫ウイルス癌遺伝子ホモログ(NRAS)変異体および急速に加速した線維肉腫キナーゼホモログB(BRAF)変異体ヒト癌細胞株由来異種移植片モデルにおける、線維肉腫(RAF)キナーゼの選択的かつ強力な阻害薬、ならびにマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MEK)阻害薬であるビニメチニブ。
【0076】
方法。胸腺欠損BALB/cヌードマウスの右側腹部に1x107のヒト癌細胞を皮下接種した。化合物1および/またはビニメチニブの毎日(BID)2回の経口(PO)投与を、腫瘍容積(TV)が約300mmに達したときに開始し、2週間継続した。動物を、腫瘍増殖、体重変化、および全身の健康/行動についてモニタリングした。
【0077】
平均TVが約300mmに達した時点で群および処置を開始した。マウスは、平均値が各処置群について同じになるように、それらの開始TVおよび体重に基づいてそれぞれの群に割り当てた。試験群および群あたりの動物数を表11に示す。








【0078】
【表11】
【0079】
マウスの右側腹部に、腫瘍発生のために0.1mLの1:1培地/マトリゲル中の1x10 WM3629細胞を皮下接種した。表12に示す試験デザインに従って、腫瘍を有するマウスに処置を施した。日常的なモニタリングのために、すべての試験動物を、腫瘍増殖だけでなく、行動および外観の任意の異常、例えば、移動度、食物および水の消費、体重、眼の外観、ならびに任意の他の異常な観察についてモニタリングした。あらゆる死亡率および/または異常な臨床徴候を記録した。すべての動物の体重を測定し、試験を通して隔日記録した。腫瘍サイズの測定をノギスで行い、1週目に3回、2週目および3週目に週2回記録した。TV(mm)を、式を使用して推定した。TV=axb/2であり、「a」および「b」はそれぞれ腫瘍の長径および短径である。
【0080】
【数1】
ここで、「TV」および「TV」はそれぞれ最終TV(処置終了時)および開始TV(処置開始時)である。
【0081】
重度の苦痛および/または疼痛の明白な徴候を示す場合、有意な体重減少(体重減少>20%)を示す場合、適切な食物または水に到達することができない場合、そうでなければ継続的な悪化状態であると観察される場合、または腫瘍の大きさが2,500mmを超える場合、動物を安楽死させた。群平均TVが>2,500mmに達したとき、所与の試験群のすべての動物を安楽死させた。
【0082】
結果。ビニメチニブと組み合わせた場合の化合物1の抗腫瘍活性を、ヒトWM3629(NRAS変異体、クラスIIIのBRAF変異体)黒色腫異種移植片モデルにおいて評価した。化合物1(1.5または3mg/kgを毎日2回[BID]])、ビニメチニブ(3mg/kg BID)、および/または2つの療法の併用による処置は、TVが約300mm(すべての群の実際の平均TVが283mm)に達したときに開始され、BIDを2週間継続した。2,530~6,750hr*ng/mLおよび5,400~5,730hr*ng/mLの範囲のAUC0-last値は、それぞれ、試験用量での化合物1および/またはビニメチニブ処置で達成された。化合物1もビニメチニブ曝露も、単独療法として投与した場合と組み合わせて投与した場合とでは実質的に異ならなかった。
【0083】
化合物1単独療法に対する用量依存的応答が観察された(図8Aおよび8C)。平均TGIは、1.5mg/kg BIDおよび3mg/kg BID化合物1でそれぞれ66%および79%であった(表13)。単剤としてのビニメチニブ(3mg/kg BID)による処置は、37%の平均TGIをもたらした(図8Aおよび8C、表13)。化合物1のビニメチニブへの添加は、異種移植片増殖阻害の改善をもたらした、3mg/kgのビニメチニブ/1.5mg/kgの化合物1 BIDによる90%および96%のTGI、およびそれぞれ、3mg/kgのビニメチニブ/3mg/kgの化合物1 BID、図8Aおよび8C、表13。
【0084】
TGIは、すべての処置後にビヒクル処置動物よりも統計的に有意に大きく(ビニメチニブ単独療法についてp=0.0041、他のすべての治療についてp<0.0001、表12)、化合物1とビニメチニブとの併用療法後のTGIは、ビニメチニブ単独療法で見られたものよりも有意に大きかった(併用療法の両方の用量レベルについてp<0.0001)。重要なことに、3mg/kgのビニメチニブ/1.5mg/kgの化合物1 BID用量レベルでは2匹の動物のみで、3mg/kgのビニメチニブ/3mg/kgの化合物1 BID用量レベルでは動物が10%超の体重減少を示し、ビニメチニブを加えた化合物1による処置は耐容性が良好であった(図8Bを参照)。




























【0085】
【表12】
【0086】
結果の概要。低用量化合物1(1.5または3mg/kg BID)は、NRAS変異体およびBRAF変異体黒色腫異種移植モデル、WM3629において14日間BIDで経口投与した場合、単剤療法として、またはMEK阻害薬であるビニメチニブ(3mg/kg BID)と組み合わせた場合、耐容性が良好であり、有効であった。低用量の化合物1の単独療法は、中程度の腫瘍増殖阻害(TGI、平均66~79%)をもたらしたが、化合物1とビニメチニブとの併用は、ビニメチニブ単独(平均TGI、37%)と比較して、有意に増強されたTGI(平均90~96%、p<0.0001)をもたらした。これらのデータは、化合物1が、NRAS変異黒色腫における抗腫瘍の併用利益のためにMEK阻害薬療法と安全かつ効果的に組み合わされ得ることを示す。
【0087】
結論。化合物1とMEK阻害薬であるビニメチニブとの併用療法は、耐容性が良好であり、NRAS変異体、クラスIIIのBRAF変異体黒色腫、WM3629(3/1.5mg/kg BIDおよび3/3mg/kg BIDビニメチニブ/化合物1でそれぞれ90%および96%の平均TGI)の異種移植片モデルにおいて有意な腫瘍阻害をもたらした。化合物1/ビニメチニブ併用療法による腫瘍阻害は、ビニメチニブ単独療法よりも有意に大きかった(p<0.0001)。本試験は、NRAS変異を有するヒト黒色腫モデルにおける化合物1処置へのMEK阻害薬の添加における抗腫瘍の併用利益を実証する。
【0088】
実施例7。BRAF変異NSCLC異種移植モデルにおける化合物1の抗腫瘍活性の評価
【0089】
目的。化合物1の耐容性および抗腫瘍活性を評価するための、RAFキナーゼホモログB(BRAF)変異体ヒト非小細胞肺癌(NSCLC)細胞株由来異種移植片モデルにおける急速に加速した線維肉腫(RAF)キナーゼの選択的かつ強力な阻害薬。
【0090】
方法。胸腺欠損マウスの右側腹部に1x10ヒト癌細胞を皮下接種した。化合物1の毎日2回(BID)経口(PO)投与を、腫瘍体積(TV)が約300mmに達したときに開始し、3週間継続した。動物を、腫瘍増殖、体重変化、および全身の健康/行動についてモニタリングした。
【0091】
平均TVが約300mmに達した時点で群および処置を開始した。マウスは、平均値が各処置群について同じになるように、それらの開始TVおよび体重に基づいてそれぞれの群に割り当てた。試験群および群あたりの動物数を表13に示す。
【0092】
【表13】
【0093】
マウスの右側腹部に、腫瘍発生のために0.1mLの1:1培地/マトリゲル中の1x10NCI-H2405細胞を皮下接種した。表13に示す試験デザインに従って、腫瘍を有するマウスに処置を施した。日常的なモニタリングのために、すべての試験動物を、腫瘍増殖だけでなく、行動および外観の任意の異常、例えば、移動度、食物および水の消費、体重、眼の外観、ならびに任意の他の異常な観察についてモニタリングした。あらゆる死亡率および/または異常な臨床徴候を記録した。すべての動物の体重を測定し、試験を通して隔日記録した。腫瘍サイズの測定をノギスで行い、1週目に3回、2週目および3週目に週2回記録した。TV(mm)を、式、TV=axb/2を使用して推定した、ここで、「a」および「b」はそれぞれ腫瘍の長径および短径である。
TGIは、以下の式を使用して計算した。
【0094】
【数2】
ここで、「TV」および「TV」はそれぞれ最終TV(処置終了時)および開始TV(処置開始時)である。
【0095】
重度の苦痛および/または疼痛の明白な徴候を示す場合、有意な体重減少(体重減少>20%)を示す場合、適切な食物または水に到達することができない場合、そうでなければ継続的な悪化状態であると観察される場合、または腫瘍の大きさが2,500mmを超える場合、動物を安楽死させた。群平均TVが>2,500mmに達したとき、所与の試験群の全ての動物を安楽死させた。血漿および腫瘍組織試料を、薬物動態学的および薬力学的分析のために収集した。
【0096】
結果。化合物1の抗腫瘍活性を、ヒトNCI-H2405(クラスIIのBRAF変異体)NSCLC異種移植片モデルにおいて評価した。化合物1(1.5、3、10、または15mg/kgを毎日2回[BID])による処置は、TVがおよそ300mm(すべての群の実際の平均TVが304mm)に達したときに開始し、3週間BIDを継続した。
【0097】
化合物1処置に対する用量依存的曝露および抗腫瘍応答が観察された。2878~50799hr*ng/mLの範囲のAUC0-24値が試験用量で達成され、対照(ビヒクル処置動物)と比較して腫瘍増殖阻害(TGI)が観察された(図9A図9C)。1.5、3、10、または15mg/kg BIDの用量の増加による平均TGIは、それぞれ42%、58%、85%、および107%であった(表14)。統計的に有意な腫瘍増殖の減少は、1.5、3、10、および15mg/kg BID用量の化合物1(すべての比較についてp<0.0001、表14)で達成された。重要なことに、化合物1による処置は、試験したすべての用量で耐容性が良好であり、試験中に>10%の体重減少を示す群はなかった(図9B)。
【0098】
【表14】
【0099】
結果の概要。化合物1(1.5~15mg/kg BID)は、BRAF変異体NSCLC異種移植片モデル、NCI-112405において21日間経口投与した場合、耐容性が良好であり、有効であった。用量依存性腫瘍増殖阻害(TGI)は、毎日2回(BID)の化合物1処置で観察され、低用量の化合物1(1.5~3.0mg/kg BID)は中程度のTGI(平均42~58%)をもたらし、より高い化合物1用量(10~15mg/kg BID)は強いTGI(平均85~107%)をもたらした。すべての化合物1処置群におけるTGIは、ビヒクル処置動物と統計的に有意に異なっていた(p<0.0001)。これらのデータは、化合物1がBRAF変異体NSCLCにおける強力な抗腫瘍利益のために安全かつ効果的に使用され得ることを示す。
【0100】
実施例8。ヒト臨床試験における化合物1の使用
名称。安全性を調査するためのフェーズ1/1bオープンラベル、マルチセンター試験、
BRAFおよび/またはNRAS変異陽性固形腫瘍を有する参加者における化合物1の忍容性、薬物動態、および抗腫瘍活性
【0101】
試験フェーズ:フェーズ1/1b
【0102】
適応:BRAF変異陽性固形腫瘍および/またはNRAS変異陽性固形腫瘍
【0103】
導入。これは、急速に加速した線維肉腫、ホモログB(BRAF)変異陽性および/または神経芽細胞腫RAS(NRAS)変異陽性腫瘍を有する参加者における、化合物1、汎急速に加速した線維肉腫(RAF)小分子キナーゼ阻害薬の安全性、耐容性、および薬物動態(PK)を評価し、さらなる臨床開発のための化合物1の推奨される第2相用量(RP2D)を決定し、化合物1処置単独およびマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MEK)阻害薬であるビニメチニブとの組み合わせに対する客観的応答を評価するように設計された、2つのパートからなる非盲検多施設用量漸増および用量拡大試験である。
【0104】
試験目的
【0105】
パートA。本試験のパートA用量漸増化合物1単剤療法成分(以下、パートA1と称する)の主な目的は、BRAF変異陽性進行性もしくは転移性固形腫瘍またはNRAS変異を有する黒色腫を有する参加者における用量制限毒性(DLT)を含む化合物1の経口投与の安全性および耐容性を決定することである。また、パートBの用量拡大におけるさらなる臨床調査のための最大耐量(MTD)および/または適切な用量を特定する。第2の目的は、PK特性の特徴付けおよび化合物1のPKに対する食物の効果を含む。パートA用量漸増の主な目的、試験の化合物1+ビニメチニブの併用成分(以下、パートA2と称する)は、BRAFクラスIIもしくはIIIの変異陽性進行性もしくは転移性固形腫瘍またはNRAS変異を有する黒色腫を有する参加者におけるDLTを含む化合物1+ビニメチニブの経口投与の安全性および耐容性を決定するため、ならびにさらなる臨床試験のためのMTDおよび/または適切な用量を同定するためのものである。第2の目的は、組み合わせた化合物1およびビニメチニブのPK特性の特徴付けを含む。
【0106】
パートB。本試験のパートB用量拡大部分の主な目的は、クラスIIまたはクラスIIIのBRAFゲノム変化のいずれかを有する進行性または転移性固形癌を有する参加者における化合物1の抗癌活性の予備的証拠を評価することである。第2の目的は、RP2Dにおける化合物1の安全性、耐容性、およびPKのさらなる評価を含む。
【0107】
試験デザイン
【0108】
パートA(用量漸増)
【0109】
パートAでは、あらゆるBRAFクラスI、クラスIIもしくはクラスIIIの変異および/またはNRAS変異陽性黒色腫を有する固形腫瘍を有する参加者が含まれ、すべてのプロトコル定義適格性要件を満たす。本試験のパートAに登録されたBRAFクラスIの変異を有する腫瘍を有する参加者の数は、継続的にモニタリングされる。
【0110】
パートA1は、BRAF変異陽性進行性または転移性固形腫瘍および/またはNRAS変異を有する黒色腫を有する参加者における化合物1の安全性、耐容性、PKおよび薬力学(PD)を評価する。この成分は、化合物1のMTDおよび/またはRP2Dを同定するために、加速滴定デザイン(単一の参加者用量レベル)と、それに続く従来の3+3用量漸増スキーマとを組み合わせる。MTDは、参加者の33%未満が28日間のDLT評価期間中にDLTを経験する最大で毎日の経口用量として定義される。化合物1は、28日間の処置サイクルにおいて28日間毎日2回(BID)経口用量として投与される。
【0111】
開始用量、用量レベル1(DL1)は、50mg/日(25mg BIDとして投与される)であり、用量漸増増分は、改変フィボナッチ数列に従う。計画された化合物1の用量レベルをプロトコルに示す。
【0112】
コホートあたり1人の参加者を、生物学的活性の証拠が観察されるまで評価し、その時点でそのコホートを2人の参加者によって拡大する加速用量漸増デザイン原理を用いる。この、そしてすべてのその後の用量レベルコホートは、3+3用量漸増デザインを使用して進行する。上記の考察の目的のために、「生物学的活性の証拠」は、(1)DLTまたは(2)根底にある疾患または外因性原因(AEは調査員によって非臨床的に有意であるとみなされるグレード2の実験室調査は除外する)に明らかに起因しない少なくとも1つのグレード≧2の有害事象(AE)のいずれかとして定義される。
【0113】
DL3から開始して、化合物1の用量は、従来の3+3試験デザインを使用して漸増され、停止規則が満たされるまで、またはMTDもしくは予想される最大薬理活性(PKおよびPDバイオマーカーによって通知される)が達成される用量が達成されるまで継続する。この3+3デザインでは、少なくとも3人の参加者がDL3以降から各用量レベルに登録される。用量レベルの3人の参加者のいずれもDLT期間内にDLTを経験しない場合(すべての用量レベルについて化合物1の第1の用量から28日)、別の3人の参加者を次に高い用量レベルで処置する。その用量レベルの参加者の2人以上がサイクル1においてDLTを発症する場合、所与の用量レベルでさらなる参加者は処置されない。
【0114】
化合物1を特定の用量レベルで受ける最初の2人の参加者について、第1および第2の参加者における化合物1の第1の用量の間には少なくとも24時間の間隔がある。用量漸増は、最高の計画された用量レベルが安全であり、その用量レベル(すなわち、用量レベルはRP2Dであると考えられる)で最低6人のDLT評価可能な参加者で許容可能であると判定されるまで、またはMTDに達するまで継続する。MTDおよび/またはRP2Dを推定するために、最大約26人の参加者が必要とされる。
【0115】
治験責任医師(Investigators)および治験依頼者の代表者(Sponsor representatives)からなる用量検討委員会(Dose Review Committee)(DRC)は、次の用量レベルで登録を開始する前に、すべての利用可能な安全性、PKおよびPDデータを審査する。DRCは、その特定の用量レベルでの参加者が少なくとも1回の全サイクルを完了した後の化合物1単剤療法の各用量レベルの安全性および耐容性を検討する。パートAは、停止規則が満たされるまで、または予想される最大薬理活性(例えば、RP2D)が達成されるMTDもしくは用量まで継続する。DRCはまた、すべての利用可能な安全性データおよびPK/PDデータを評価して、パートBのRP2Dを決定する。
【0116】
処置中に化合物1の単独療法を受けている参加者が疾患の進行を経験する場合、参加者は、併用療法に対する参加者の適格性、化合物1処置の経験、応答の特性、または他の関連する考慮事項に基づいて、化合物1+ビニメチニブの併用を受ける選択肢を与えられ得る。この決定は治験責任医師の裁量によるが、治験依頼者と相談して行われるべきである。
【0117】
パートA2は、単剤療法用量漸増コホートにおいて機構の予備証明(preliminary proof of mechanism)(PPOM)臨床基準が満たされるまで開始されない。適格性は、クラスII/IIIのBRAFおよび/またはNRAS変異腫瘍を有する参加者に限定される。化合物1およびビニメチニブ(45mgの用量のビニメチニブ[PO]BID)を用いて並行漸増を開始する。組み合わせた化合物1の開始用量(併用用量レベル1と指定される)は、DRCの裁量で、PPOM基準が満たされた用量レベルを下回る1用量レベル、または安全と考えられる最高用量レベルを下回る1用量レベルである。用量漸増は、プロトコルに記載される3+3のデザインに従い、ビニメチニブは、クラスII/IIIのBRAFおよびNRAS変異腫瘍を有する参加者において、28日間の処置サイクルにおいて毎日経口用量BIDとして一緒に投与される。
【0118】
各投与コホートの終わりに、DRCは、PPOMの基準が満たされたかどうかを決定すること、および併用用量漸増を開始するべきかどうかを推奨することに関与する。併用用量漸増が開始されると、特定の化合物1用量は、改変フィボナッチデザインに従って増加し、中間用量が実際に選択され得る。
【0119】
治験責任医師の裁量で、および治験依頼者との相談後に、パートA1において、参加者の内用量漸増およびバックフィルを許可する。参加者の内用量漸増は、参加者がプロトコル指定基準をすべて満たす場合にのみ考慮され得る。
【0120】
化合物1のPKに対する食物の効果は、DL3、DL4、およびDL5の参加者におけるパートA1の間の少なくとも6人の参加者において、無作為化クロスオーバーデザインを使用して評価される。
【0121】
パートB(用量拡大)
【0122】
試験の用量拡大に係る部分(パートB)は、MTDおよび/または生物学的に活性な用量(すなわち、RP2D)が化合物1単剤療法群からパートAで決定された時点で開始することができる。パートBは、以下のコホートにおいてパートAから決定されたRP2Dにおける化合物1の抗腫瘍活性を評価する。
・コホート1:切除不能かつ局所的に進行した(American Joint Committee on Cancer[AJCC]ステージIII)または転移性(AJCCステージIV)非小細胞肺癌(NSCLC)にBRAFクラスIIまたはクラスIIIの変異がある参加者
・コホート2:任意のBRAFクラスIIまたはクラスIIIの変異を有する切除不能および局所進行性(AJCCステージIII)または転移性(AJCCステージIV)黒色腫を有する参加者
・コホート3:任意のBRAFクラスIIまたはクラスIIIの変異を有する任意の切除不能かつ局所進行性(AJCCステージIII、または他のステージングシステムと同等のステージ)または転移性(AJCCステージIV)固形腫瘍(NSCLCまたは黒色腫以外)を有する参加者
用量拡張コホートへの参加者の登録は、同時に起こる。
コホート3では、BRAFクラスIIまたはクラスIIIの変異を含む様々な腫瘍型を有する参加者の登録を、この試験の過程でモニタリングする。特定の腫瘍型の登録は、このコホートにおける様々な固形腫瘍の広範な表現を確実にするために制限され得る。
【0123】
試験のエンドポイント
【0124】
一次
【0125】
安全性エンドポイントは以下を含む。
・DLTの発生率
・処置に発現した有害事象および処置に関連するAEを含むAEの発生率
・バイタルサイン、身体検査、心電図、および臨床検査における臨床的に有意な変化
【0126】
有効性(治験責任医師によって評価される)は、以下によって測定される。
・治験責任医師によって評価される、固形腫瘍における応答評価基準(RECIST)v1.1による完全応答を加えた部分応答の割合として定義される客観的応答率
・疾患制御率
・全奏効期間
・安定疾患の持続期間
【0127】
二次
・化合物1および化合物1+ビニメチニブの薬物動態パラメータとして、最大観察血漿濃度(Cmax)、Cmaxに達するまでの時間(tmax)、および血漿濃度-時間曲線下面積(AUC)(摂食状態および絶食状態を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0128】
探索
・化合物1および化合物1+ビニメチニブ曝露/安全性および曝露/有効性の関係
・血漿および尿中の化合物1の潜在的な代謝産物の特徴付け
・無増悪生存、および全生存
・血液および/または腫瘍試料の生化学的および/または遺伝的分析によるバイオマーカーの定量化として、ホスホ細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)、DUSP6リボ核酸(RNA)および増殖マーカーKi-67に対する薬力学的効果が挙げられるが、これらに限定されない。
・循環腫瘍由来(血液)核酸(ctDNA)濃度および変異プロファイルの変化
・血液および/または腫瘍試料の生化学的および/または遺伝的分析による潜在的バイオマーカー
・集団PK分析
【0129】
試料サイズ
約155人の参加者がこの試験に登録される予定である。
【0130】
パートA(用量漸増)
【0131】
パートA1では、41人までの参加者が単剤療法用量漸増フェーズに登録される。約26人の参加者を登録してMTDおよび/またはRP2Dを推定することができ、そこから6人の参加者を化合物1のPKに対する食物の影響について評価する。
【0132】
パートA2については、36人までの参加者が併用用量漸増フェーズに登録される。約24人の参加者が、化合物1+ビニメチニブの併用のMTDを推定するために必要であり得る。
【0133】
約30人の追加の参加者が、パートA1およびA2にわたるバックフィルのために登録され得る。
【0134】
パートB(用量拡大)
【0135】
約75人の参加者がパートBに登録され、これは、NSCLC、黒色腫、および他の固形腫瘍を有する参加者を含む、BRAFクラスIIまたはIIIの変異を有する参加者の3つのコホートを含む。コホート1および2について、Simonの2段階最適設計を計画する。12人の参加者がステージ1に登録される。≧3人の参加者が応答する場合、それはステージ2に進み、コホートに25の総試料サイズについて追加の13人の参加者を登録する。ステージ2の終わりに、25人の参加者のうち≧8人が応答する場合、化合物1はさらなる評価に有望であるとみなされる。各コホート内で、設計は80%のパワーおよび0.1の最大タイプ-1エラー率を有し、応答率が≧40%の代替仮説に対して≦20%であるという帰無仮説を試験する。ステージ1における無益性評価については、応答を確認する必要がない場合がある。応答率を超える追加の考慮事項もまた、DRCおよび治験依頼者の裁量で含まれ得る。
【0136】
主要な組入れおよび除外基準
【0137】
主要な組入れ基準は以下を含む。
【0138】
転移性または進行期悪性腫瘍の組織学的または細胞学的に確認された診断を有する成人参加者(≧18歳)は、この試験に適格である。パートA、用量漸増は、任意の種類の進行性または転移性固形腫瘍を有する参加者を登録する。パートB、用量拡大は、切除不能かつ局所進行性(AJCCステージIII)もしくは転移性(AJCCステージIV)NSCLC、切除不能かつ局所進行性(AJCCステージIII)もしくは転移性(AJCCステージIV)黒色腫、またはNSCLCもしくは黒色腫以外の任意の切除不能かつ局所進行性(AJCCステージIII、または他のステージングシステムと同等のステージ)もしくは転移性(AJCCステージIV)固形腫瘍を有する参加者を登録する。さらに、組入れ基準で特定されるように、BRAFおよび/またはNRASの遺伝子異常が必要である。参加者は、彼らの腫瘍型および疾患の段階に適した、または治験責任医師の意見における、過去の標準的な治療を受けなければならず、適切な標準的な療法に耐性を有する、またはそれから臨床的に意味のある利益を得る可能性が低い。パートA1では、BRAFクラスIの変異によって駆動される特定の癌(NSCLC、黒色腫、結腸直腸癌[CRC]および未分化甲状腺癌)を有する参加者は、承認されたBRAF阻害薬(承認されたMEK阻害薬の有無にかかわらず、認可され、利用可能である場合)を過去に受けているはずである。
【0139】
参加者の腫瘍は、BRAF変異を保有しなければならず、または(米国[US]における)臨床検査改善修正法案(CLIA)認定検査室において、もしくは(他国における)地域の規制要件に従って行われた腫瘍組織もしくはctDNAの過去のゲノム分析によって同定されたNRAS変異を有する黒色腫でなければならない。参加者は、直近5年以内に得られた保管された腫瘍組織標本(ホルマリン固定パラフィン包埋[FFPE]標本)を提供し(入手可能であれば)、医学的に実現可能であれば、必須の処置前腫瘍生検を受ける。組入れ/除外基準の完全なリストがプロトコルに含まれる。主要な除外基準は以下を含む。
【0140】
非脳腫瘍からの既知の活性脳転移を有する参加者は適格ではない。BRAFクラスIの変異によって駆動される他の固形腫瘍(NSCLC以外、黒色腫、CRC、および未分化甲状腺癌)を有するパートAの参加者は、承認されたまたは開発中の小分子BRAF-、MEK-、またはマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)指向型の阻害薬療法による過去の処置を受けていない可能性がある。この基準は、そうする決定がなされ、DRCによって通信されるまで実施されない。パートBでは、任意の承認されたまたは開発中の小分子BRAF-、MEK-またはMAPK-指向型の阻害薬療法での過去の処置は除外される。参加者は、過去の抗腫瘍療法からのいかなる未解決の毒性も有していない可能性がある。参加者は、過去の抗腫瘍療法からのいかなる未解決の毒性も有していない可能性がある。除外的な併用薬、避妊要件、ならびに試験から参加者を除外すると思われる疾患および他の状態は、プロトコルにおいて詳述される。
【0141】
処置期間参加者(Treatment Duration Participants)は、疾患進行の証拠、許容不可能な毒性、試験薬に対する不耐性、癌に対する新規全身療法の開始、同意の撤回、治験責任医師の決定、治験依頼者の決定、または死亡まで、28日サイクルで化合物1または化合物1+ビニメチニブを受ける。
【0142】
統計的考慮記述統計(Statistical Consideration Descriptive statistics)は、必要に応じて用量、用量スケジュールおよび時間によって、選択された人口統計、安全性、PK、有効性およびバイオマーカーデータについて提供される。連続データに関する記述統計は、平均、中央値、標準偏差、および範囲を含むが、分類データは、頻度カウントおよびパーセンテージを使用して要約される。客観的奏効率は、95%の正確な信頼区間で提示される。データの図式要約も提示され得る。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
【国際調査報告】