(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-18
(54)【発明の名称】多嚢胞性卵巣症候群の管理のための組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/12 20060101AFI20240411BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20240411BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20240411BHJP
A61P 5/28 20060101ALI20240411BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20240411BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240411BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240411BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20240411BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240411BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240411BHJP
A61P 5/16 20060101ALI20240411BHJP
A61P 5/22 20060101ALI20240411BHJP
A61P 5/30 20060101ALI20240411BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240411BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20240411BHJP
A61K 9/00 20060101ALI20240411BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240411BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240411BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240411BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20240411BHJP
A23G 3/34 20060101ALI20240411BHJP
A23L 29/281 20160101ALI20240411BHJP
【FI】
A61K31/12
A61P15/00
A61P3/04
A61P5/28
A61P39/06
A61P29/00
A61P1/00
A61P3/06
A61P9/00
A61P3/10
A61P5/16
A61P5/22
A61P5/30
A61K9/10
A61K9/107
A61K9/00
A61K9/14
A61K9/20
A61K9/48
A23L33/10
A23G3/34 101
A23L29/281
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566805
(86)(22)【出願日】2022-04-29
(85)【翻訳文提出日】2023-12-25
(86)【国際出願番号】 US2022026891
(87)【国際公開番号】W WO2022232482
(87)【国際公開日】2022-11-03
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501394435
【氏名又は名称】サミ-サビンサ グループ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】マジード ムハンメド
(72)【発明者】
【氏名】ナガブシャナム カリアナム
(72)【発明者】
【氏名】バニ サラン
(72)【発明者】
【氏名】パンデー アンジャリ
【テーマコード(参考)】
4B014
4B018
4B041
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
本発明は、ビスデメトキシクルクミンを含む組成物、及び多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と、ホルモンバランスの乱れ、肥満、甲状腺機能低下症、アンドロゲン過剰症、酸化ストレス、炎症、腸内ディスバイオシス、高コレステロール血症、心血管合併症、高血糖、及びインスリン抵抗性を含むその関連状態とを管理するための方法を開示する。本発明は、PCOSの治療的管理に使用するための、20~80%w/wのビスデメトキシクルクミン、10~35%w/wのデメトキシクルクミン、及び10~50%w/xwのクルクミンを含むクルクミノイド組成物の可能性も開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における多嚢胞性卵巣症候群及びその関連状態の管理に使用するための、ビスデメトキシクルクミンを含む組成物。
【請求項2】
関連状態が、ホルモンバランスの乱れ、肥満、甲状腺機能低下症、アンドロゲン過剰症、酸化ストレス、炎症、腸内ディスバイオシス、高コレステロール血症、心血管合併症、高血糖、及びインスリン抵抗性からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
多嚢胞性卵巣症候群に関連するホルモンバランスの乱れが、黄体ホルモンの血清レベルを低下させること、並びに17-βエストラジオール、プロゲステロン、及び卵胞刺激ホルモンのレベルを上昇させることにより軽減される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
多嚢胞性卵巣症候群に関連する肥満が、体重、卵巣質量を減少させること、及び血清アディポネクチンの発現を上昇させることにより管理される、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
多嚢胞性卵巣症候群に関連する甲状腺機能低下症が、甲状腺刺激ホルモンのレベルを低下させること、並びにT3及びT4の血清レベルを上昇させることにより管理される、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
多嚢胞性卵巣症候群に関連するアンドロゲン過剰症が、血清テストステロンの発現を低下させることにより管理される、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
多嚢胞性卵巣症候群に関連する高血糖及びインスリン抵抗性が、血清オメンチン-1のレベルを上昇させることにより管理される、請求項2に記載の組成物。
【請求項8】
多嚢胞性卵巣症候群に関連する腸内ディスバイオシスが、血清中のグレリンレベルを上昇させることにより管理される、請求項2に記載の組成物。
【請求項9】
多嚢胞性卵巣症候群に関連する高コレステロール血症、心血管合併症が、血清中のパラオキソナーゼ-1レベルを上昇させることにより管理される、請求項2に記載の組成物。
【請求項10】
多嚢胞性卵巣症候群に関連する酸化ストレスが、血清マロンジアルデヒドレベルを低下させることにより低減される、請求項2に記載の組成物。
【請求項11】
多嚢胞性卵巣症候群に関連する炎症が、終末糖化産物受容体(RAGE)の発現を低下させることにより低減される、請求項2に記載の組成物。
【請求項12】
対象が、哺乳動物のメスである、請求項2に記載の組成物。
【請求項13】
ビスデメトキシクルクミンが、安定化剤、バイオアベイラビリティエンハンサー及び抗酸化剤、薬学的又は栄養補助的又は薬用化粧品的に許容される賦形剤、エンハンサーとともに製剤化され、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、グミ剤、散剤、懸濁剤、乳剤、チュアブル剤、キャンディー剤、又は食料品の形態で経口投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
対象における多嚢胞性卵巣症候群及びその関連状態の管理に使用するための、20~80%w/wのビスデメトキシクルクミン、10~35%w/wのデメトキシクルクミン、及び10~50%w/wのクルクミンを含む組成物。
【請求項15】
30~50%w/wのビスデメトキシクルクミン、10~25%w/wのデメトキシクルクミン、及び30~50%w/wのクルクミンを含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
組成物中の総クルクミノイドが、20~95%w/wの範囲である、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
関連状態が、ホルモンバランスの乱れ、肥満、甲状腺機能低下症、アンドロゲン過剰症、酸化ストレス、炎症、腸内ディスバイオシス、高コレステロール血症、心血管合併症、高血糖、及びインスリン抵抗性からなる群から選択される、請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
多嚢胞性卵巣症候群に関連するホルモンバランスの乱れが、黄体ホルモンの血清レベルを低下させること、並びに17-βエストラジオール、プロゲステロン、及び卵胞刺激ホルモンのレベルを上昇させることにより軽減される、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
多嚢胞性卵巣症候群に関連する肥満が、体重、卵巣質量を減少させること、及び血清アディポネクチンの発現を上昇させることにより管理される、請求項17に記載の組成物。
【請求項20】
多嚢胞性卵巣症候群に関連する甲状腺機能低下症が、甲状腺刺激ホルモンのレベルを低下させること、並びにT3及びT4の血清レベルを上昇させることにより管理される、請求項17に記載の組成物。
【請求項21】
多嚢胞性卵巣症候群に関連するアンドロゲン過剰症が、血清テストステロンの発現を低下させることにより管理される、請求項17に記載の組成物。
【請求項22】
多嚢胞性卵巣症候群に関連する高血糖及びインスリン抵抗性が、血清オメンチン-1のレベルを上昇させることにより管理される、請求項17に記載の組成物。
【請求項23】
多嚢胞性卵巣症候群に関連する腸内ディスバイオシスが、血清中のグレリンレベルを上昇させることにより管理される、請求項17に記載の組成物。
【請求項24】
多嚢胞性卵巣症候群に関連する高コレステロール血症、心血管合併症が、血清中のパラオキソナーゼ-1レベルを上昇させることにより管理される、請求項17に記載の組成物。
【請求項25】
多嚢胞性卵巣症候群に関連する酸化ストレスが、血清マロンジアルデヒドレベルを低下させることにより低減される、請求項17に記載の組成物。
【請求項26】
多嚢胞性卵巣症候群に関連する炎症が、終末糖化産物(AGE)の発現を低下させることにより低減される、請求項17に記載の組成物。
【請求項27】
対象が、哺乳動物のメスである、請求項14に記載の組成物。
【請求項28】
安定化剤、バイオアベイラビリティエンハンサー及び抗酸化剤、薬学的又は栄養補助的又は薬用化粧品的に許容される賦形剤、エンハンサーとともに製剤化され、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、グミ剤、散剤、懸濁剤、乳剤、チュアブル剤、キャンディー剤、又は食料品の形態で経口投与される、請求項14に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その内容が参照により本明細書に組み込まれる2021年4月30日に出願された米国仮出願第63182166号のPCT出願である。
本発明は、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)を管理するための組成物及び方法に関する。詳細には、本発明は、PCOSの治療的管理のためのビスデメトキシクルクミンに富む組成物の可能性に関する。より詳細には、本発明は、PCOSの治療的管理に使用するための、20~80%w/wのビスデメトキシクルクミン、10~35%w/wのデメトキシクルクミン、及び10~50%w/wのクルクミンを含むクルクミノイド組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、生殖年齢の女性の6~18%が罹患するホルモン性疾患であり、生殖、内分泌、及び代謝の変化を含み得るいくつかの徴候、症状、及びさまざまな表現型を引き起こす(Rocha et al. Recent advances in the understanding and management of polycystic ovary syndrome, F1000 Faculty Rev, 2019,8, 565)。通常、PCOSは、症例の60~80%に存在するアンドロゲン過剰症と、不妊症、流産、妊娠合併症の健康リスクの上昇を特徴とする。PCOSは、肥満、2型糖尿病、及び心血管疾患のリスクを上昇させる代謝異常も引き起こす。肥満患者の症例では、(a)非肥満PCOSの女性と比較して、インスリン抵抗性及び高インスリン血症が重要な役割を果たしている、(b)正常体重のPCOSに苦しむ女性と比較してホルモン環境が異なり、肥満PCOS女性を治療するには体重減少が最良のアプローチであって、アンドロゲン過剰症を改善し、排卵に有利に働き、女性の25%で受精率を向上させる(Gambineri et al. Obesity and the polycystic ovary syndrome, Int. Journal of Obesity 2002, 26, 883-896)。心血管疾患のマーカーであるC反応性タンパク質(CRP)レベル、及び炎症性サイトカインは、対照と比較してPCOS患者で顕著に高いことが研究によって示されている(Zeev Blumenfeld, The Possible Practical Implication of High CRP Levels in PCOS, Clin Med Insights Reprod Health 2019, 13, 1-5)。治療に関して、メトホルミン、GLP-1Rアゴニスト、リラグルチドなどの多くの薬剤介入と組み合わせて、生活習慣の改善が攻撃の第一線を形成し、PCOS女性の顕著な体重減少を示し、耐糖能障害、2型糖尿病の発症リスクを低下させる。
【0003】
薬物療法の中で、メトホルミン及びクエン酸クロミフェン(CC)は、広く使用されている。メトホルミンはPCOSの女性のインスリン抵抗性を改善し、循環アンドロゲンを減少させることが示されている。しかし、治療レジメンは、臨床診療で標準化されておらず、最も重要なことは、アンドロゲンを減少させ月経を改善する能力は、投与量に依存しないということであり、さらなる精査を示唆している。また、メトホルミンの前治療は、CCに対する排卵反応を改善し、これらの薬物の組合せは、個々よりも、出産率を改善するように思われる(Renato, Contemporary approaches to the management of polycystic ovary syndrome, Therapeutic Advances in Endocrinology and Metabolism, 2018, 9(4) 123-134)。天然物及びその抽出物による治療に関して、米国特許出願公開第2021/0015883号は、糖尿病患者、前糖尿病状態、真性糖尿病、インスリン抵抗性糖尿病、及び多嚢胞性卵巣障害におけるインスリン抵抗性及び血糖値を低下させるための、クルクマリングス(curcuma lings)抽出物、ツルメロン油、フィランサス・エンブリカ(Phylanthus emblica)果汁粉末を含む生薬製剤を対象としている。Shimaらは、クルクミンが、TNF-α、血清IL-6、及びCRPの発現レベルの抑制効果を有し、それにより抗炎症効果及び抗酸化効果を通じてPCOSに効果があることを示している。同じグループによる別の研究では、クルクミンは、インスリン感受性及び肝壊死の減少を通じて肝臓の炎症を減少させることにより、PCOSによる炎症に対する保護効果を示した。Jamilianらは、クルクミンが体重、血糖管理、血清脂質に有益な効果があることを示している。Abuelezzらは、バイオアベイラビリティを改善する手段として、ナノクルクミンの役割を研究し、酸化マーカー、グルコース指数、及びTNF-αレベルを顕著に改善し、インスリン抵抗性を軽減した(Abuelezz et al. Nanocurcumin alleviates insulin resistance and pancreatic deficits in polycystic ovary syndrome rats: Insights on PI3K/AkT/mTOR and TNF-α modulations, 2020, Life Sci. 256(1), 118003)。
【0004】
しかし、市販のクルクミンは、3種のクルクミノイド、72~77%のクルクミン、14~18%のジメトキシクルクミン、及び3~5%のビスデメトキシクルクミンを含む。クルクミンの割合が大きいと、疎水性となり、それによりバイオアベイラビリティ及び吸収に影響を及ぼす(Pushpakumari, K.N et al. Enhancing the Absorption of Curcuminoids from Formulated Turmeric Extracts, 2015; 6(6) 2468-2476)。クルクミン、ビスデメトキシクルクミン、及びデメトキシクルクミンの生物学的特性は、異なる疾患状態において変化し、最近では、特定の疾患状態の管理において、ビスデメトキシクルクミン及びデメトキシクルクミンは、同様の、クルクミンよりも優れた効能のために多くの注目を集めている。(Majeed et al., Reductive Metabolites of Curcuminoids, Nutriscience Publishers LLC, 2019)。
現在、医師は、臨床症状などに基づいて適切な治療手段を選択しなければならない。安全で副作用が少なく、その上有効な治療法には、まだ空白の満たされていないニーズがある。関連状態すべて、すなわちPCOSに関連する糖尿病、インスリン抵抗性、肥満、ホルモン変化、甲状腺機能低下症、腸内微生物の多様性の変化、酸化ストレス、及び炎症を管理するのに有用な組成物を見出すという、満たされていない産業上のニーズが存在する。本発明は、PCOS及びその関連状態の管理のための、ビスデメトキシクルクミンに富む組成物、具体的には20~80%w/wのビスデメトキシクルクミン、10~35%w/wのデメトキシクルクミン、及び10~50%w/wのクルクミンを含む組成物を開示することにより、上述の問題を解決する。
【0005】
本発明の主な目的は、活性剤としてビスデメトキシクルクミンを含む組成物を使用した、哺乳動物における多嚢胞性卵巣症候群及びその関連状態を管理するための組成物及び方法を開示することである。
本発明の別の目的は、哺乳動物における多嚢胞性卵巣症候群を管理するための組成物及び方法を開示することであり、ここで組成物は、20~80%w/wのビスデメトキシクルクミン、10~35%w/wのデメトキシクルクミン、及び10~50%w/wのクルクミンを含む。
本発明は、上述の目的を果たし、さらに関連する利点を提供する。
【発明の概要】
【0006】
最も好ましい実施形態では、本発明は、哺乳動物における多嚢胞性卵巣症候群及びその関連状態の管理のための方法であって、a)多嚢胞性卵巣症候群のメスの哺乳動物対象を同定するステップ及びb)多嚢胞性卵巣症候群の徴候及び症状を軽減するために、有効量のビスデメトキシクルクミンを前記対象に投与するステップを含む方法を開示する。
別の最も好ましい実施形態では、本発明は、対象における多嚢胞性卵巣症候群及びその関連状態の管理に使用するための、ビスデメトキシクルクミンを含む組成物の可能性を開示する。
別の最も好ましい実施形態では、本発明は、対象における多嚢胞性卵巣症候群及びその関連状態の管理のための方法であって、a)多嚢胞性卵巣症候群のメスの哺乳動物対象を同定するステップ及びb)多嚢胞性卵巣症候群の徴候及び症状を軽減するために、20~80%w/wのビスデメトキシクルクミン、10~35%w/wのデメトキシクルクミン、及び10~50%w/wのクルクミンを含む有効量の組成物を前記対象に投与するステップを含む方法を開示する。
【0007】
別の最も好ましい実施形態では、本発明は、対象における多嚢胞性卵巣症候群及びその関連状態の管理に使用するための、20~80%w/wのビスデメトキシクルクミン、10~35%w/wのデメトキシクルクミン、及び10~50%w/wのクルクミンを含む組成物を開示する。関連する態様では、組成物は、30~50%w/wのビスデメトキシクルクミン、10~25%w/wのデメトキシクルクミン、及び30~50%w/wのクルクミンを含む。
本発明の他の特徴及び利点は、例として本発明の原理を説明する以下のより詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】正常、PCOD対照、BDMC(25及び50mg/kg)、及びAC3複合体(100及び200mg/kg)に関する血清中テストステロンレベルの程度(measure)を示す図である。
*p<0.01。
【
図2】正常、PCOD対照、BDMC(25及び50mg/kg)、及びAC3複合体(100及び200mg/kg)の血清中アディポネクチンレベルの程度を示す図である。
**p<0.001
【
図3】正常、PCOD対照、BDMC(25及び50mg/kg)、及びAC3複合体(100及び200mg/kg)の血清中オメンチン-1レベルの程度を示す図である。
*p<0.01
**p<0.001
【
図4】正常、PCOD対照、BDMC(25及び50mg/kg)、及びAC3複合体(100及び200mg/kg)の血清中パラオキソナーゼ-1レベルの程度を示す図である。
*p<0.01
**p<0.001。
【
図5】正常、PCOD対照、BDMC(25及び50mg/kg)、及びAC3複合体(100及び200mg/kg)の血清中グレリンレベルの程度を示す図である。
*p<0.01
**p<0.001。
【
図6】正常、PCOD対照、BDMC(25及び50mg/kg)、及びAC3複合体(100及び200mg/kg)の血清中マロンジアルデヒドレベルの程度を示す図である
*p<0.01。
【
図7】正常、PCOD対照、BDMC(25及び50mg/kg)、及びAC3複合体(100及び200mg/kg)の血清中終末糖化産物(AGE)レベルの程度を示す図である
*p<0.01。
【発明を実施するための形態】
【0009】
略語の定義
明確にするために、20~80%w/wのビスデメトキシクルクミン、10~35%w/wのデメトキシクルクミン、及び10~50%w/wのクルクミンを含む組成物におけるパーセンテージは、総クルクミノイド含有量に基づくと記載される。
以下の用語は、本明細書において代わりに使用することができる。
多嚢胞性卵巣症候群-PCOS
ビスデメトキシクルクミン-BDMS
AC3複合体-20~80%w/wのビスデメトキシクルクミン、10~35%w/wのデメトキシクルクミン、及び10~50%w/wのクルクミンを含む組成物
黄体ホルモン-LH
卵胞刺激ホルモン-FSH
甲状腺刺激ホルモン-TSH
ゴナドトロピン放出ホルモン-GnRH
終末糖化産物受容体-RAGE
パラオキソナーゼ-1-PON1
マロンジアルデヒド-MDA
終末糖化産物-AGE
【0010】
最も好ましい実施形態では、本発明は、対象における多嚢胞性卵巣症候群及びその関連状態の管理のための方法であって、a)多嚢胞性卵巣症候群のメスの哺乳動物対象を同定するステップ及びb)多嚢胞性卵巣症候群の徴候及び症状を軽減するために、有効量のビスデメトキシクルクミンを前記対象に投与するステップであって、ビスデメトキシクルクミンは、安定化剤、バイオアベイラビリティエンハンサー、抗酸化剤、薬学的又は栄養補助的又は薬用化粧品的に許容される賦形剤、エンハンサーとともに製剤化され、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、グミ剤、散剤、懸濁剤、乳剤、チュアブル剤、キャンディー剤、又は食料品の形態で経口投与される、投与するステップを含む方法を開示する。関連する態様では、関連状態は、ホルモンバランスの乱れ、肥満、甲状腺機能低下症、アンドロゲン過剰症、酸化ストレス、炎症、腸内ディスバイオシス(gut dysbiosis)、高コレステロール血症及び心血管合併症、高血糖及びインスリン抵抗性からなる群から選択される。別の関連する態様では、多嚢胞性卵巣症候群の徴候及び症状は、生理不順、多嚢胞性卵巣、過剰な体毛、体重増加、にきび又は脂性肌、男性型脱毛症又は薄毛、不妊症、皮膚の色素沈着及びスキンタグからなる群から選択される。別の関連する態様では、多嚢胞性卵巣症候群に関連するホルモンバランスの乱れは、黄体ホルモンの血清レベルを低下させること、並びに17-βエストラジオール、プロゲステロン、及び卵胞刺激ホルモンのレベルを上昇させることにより軽減される。さらに別の関連する態様では、多嚢胞性卵巣症候群に関連する肥満は、体重、卵巣質量を減少させること、及び血清アディポネクチンの発現を上昇させることにより管理される。さらに別の関連する態様では、多嚢胞性卵巣症候群に関連する甲状腺機能低下症は、甲状腺刺激ホルモンのレベルを低下させること、並びにT3及びT4の血清レベルを上昇させることにより管理される。さらに別の関連する態様では、多嚢胞性卵巣症候群に関連するアンドロゲン過剰症は、血清テストステロンの発現を低下させることにより管理される。さらに別の関連する態様では、多嚢胞性卵巣症候群に関連する高血糖及びインスリン抵抗性は、血清オメンチン-1のレベルを上昇させることにより管理される。さらに別の関連する態様では、多嚢胞性卵巣症候群に関連する腸内ディスバイオシスは、血清中のグレリンレベルを上昇させることにより管理される。さらに別の関連する態様では、多嚢胞性卵巣症候群に関連する高コレステロール血症及び心血管合併症は、血清中のパラオキソナーゼ-1レベルを上昇させることにより管理される。さらに別の関連する態様では、多嚢胞性卵巣症候群に関連する酸化ストレスは、血清マロンジアルデヒドレベルを低下させることにより低減される。さらに別の関連する態様では、多嚢胞性卵巣症候群に関連する炎症は、終末糖化産物(AGE)のレベルを低下させることにより低減される。別の関連する態様では、ビスデメトキシクルクミンの有効量は、25~50mg/kg体重である。好ましい態様では、対象は、哺乳動物のメスである。
【0011】
別の最も好ましい実施形態では、本発明は、対象における多嚢胞性卵巣症候群及びその関連状態の管理に使用するための、ビスデメトキシクルクミンを含む組成物の可能性であって、ビスデメトキシクルクミンは、安定化剤、バイオアベイラビリティエンハンサー、抗酸化剤、薬学的又は栄養補助的又は薬用化粧品的に許容される賦形剤、エンハンサーとともに製剤化され、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、グミ剤、散剤、懸濁剤、乳剤、チュアブル剤、キャンディー剤、又は食料品の形態で経口投与される、組成物の可能性を開示する。関連する態様では、関連状態は、ホルモンバランスの乱れ、肥満、甲状腺機能低下症、アンドロゲン過剰症、酸化ストレス、炎症、腸内ディスバイオシス、高コレステロール血症及び心血管合併症、高血糖及びインスリン抵抗性からなる群から選択される。別の関連する態様では、多嚢胞性卵巣症候群の徴候及び症状は、生理不順、多嚢胞性卵巣、過剰な体毛、体重増加、にきび又は脂性肌、男性型脱毛症又は薄毛、不妊症、皮膚の色素沈着及びスキンタグからなる群から選択される。別の関連する態様では、多嚢胞性卵巣症候群に関連するホルモンバランスの乱れは、黄体ホルモンの血清レベルを低下させること、並びに17-βエストラジオール、プロゲステロン、及び卵胞刺激ホルモンのレベルを上昇させることにより軽減される。さらに別の関連する態様では、多嚢胞性卵巣症候群に関連する肥満は、体重、卵巣質量を減少させること、及び血清アディポネクチンの発現を上昇させることにより管理される。さらに別の関連する態様では、多嚢胞性卵巣症候群に関連する甲状腺機能低下症は、甲状腺刺激ホルモンのレベルを低下させること、並びにT3及びT4の血清レベルを上昇させることにより管理される。さらに別の関連する態様では、多嚢胞性卵巣症候群に関連するアンドロゲン過剰症は、血清テストステロンの発現を低下させることにより管理される。さらに別の関連する態様では、多嚢胞性卵巣症候群に関連する高血糖及びインスリン抵抗性は、血清オメンチン-1のレベルを上昇させることにより管理される。さらに別の関連する態様では、多嚢胞性卵巣症候群に関連する腸内ディスバイオシスは、血清中のグレリンレベルを上昇させることにより管理される。さらに別の関連する態様では、多嚢胞性卵巣症候群に関連する高コレステロール血症及び心血管合併症は、血清中のパラオキソナーゼ-1レベルを上昇させることにより管理される。さらに別の関連する態様では、多嚢胞性卵巣症候群に関連する酸化ストレスは、血清マロンジアルデヒドレベルを低下させることにより低減される。さらに別の関連する態様では、多嚢胞性卵巣症候群に関連する炎症は、終末糖化産物(AGE)のレベルを低下させることにより低減される。別の関連する態様では、ビスデメトキシクルクミンの有効量は、25~50mg/kg体重である。好ましい態様では、対象は、哺乳動物のメスである。
【0012】
別の最も好ましい実施形態では、本発明は、対象における多嚢胞性卵巣症候群及びその関連状態の管理のための方法であって、a)多嚢胞性卵巣症候群のメスの哺乳動物対象を同定するステップ及びb)多嚢胞性卵巣症候群の徴候及び症状を軽減するために、20~80%w/wのビスデメトキシクルクミン、10~35%w/wのデメトキシクルクミン、及び10~50%w/wのクルクミンを含む有効量の組成物を前記対象に投与するステップを含む方法を開示する。関連する態様では、組成物は、30~50%w/wのビスデメトキシクルクミン、10~25%w/wのデメトキシクルクミン、及び30~50%w/wのクルクミンを含む。さらに別の関連する態様では、組成物中の総クルクミノイドは、20~95%w/wの範囲である。関連する態様では、関連状態は、ホルモンバランスの乱れ、肥満、甲状腺機能低下症、アンドロゲン過剰症、酸化ストレス、炎症、腸内ディスバイオシス、高コレステロール血症及び心血管合併症、高血糖及びインスリン抵抗性からなる群から選択される。別の関連する態様では、多嚢胞性卵巣症候群の徴候及び症状は、生理不順、多嚢胞性卵巣、過剰な体毛、体重増加、にきび又は脂性肌、男性型脱毛症又は薄毛、不妊症、皮膚の色素沈着及びスキンタグからなる群から選択される。別の関連する態様では、多嚢胞性卵巣症候群に関連するホルモンバランスの乱れは、黄体ホルモンの血清レベルを低下させること、並びに17-βエストラジオール、プロゲステロン、及び卵胞刺激ホルモンのレベルを上昇させることにより軽減される。さらに別の関連する態様では、多嚢胞性卵巣症候群に関連する肥満は、体重、卵巣質量を減少させること、及び血清アディポネクチンの発現を上昇させることにより管理される。さらに別の関連する態様では、多嚢胞性卵巣症候群に関連する甲状腺機能低下症は、甲状腺刺激ホルモンのレベルを低下させること、並びにT3及びT4の血清レベルを上昇させることにより管理される。さらに別の関連する態様では、多嚢胞性卵巣症候群に関連するアンドロゲン過剰症は、血清テストステロンの発現を低下させることにより管理される。さらに別の関連する態様では、多嚢胞性卵巣症候群に関連する高血糖及びインスリン抵抗性は、血清オメンチン-1のレベルを上昇させることにより管理される。さらに別の関連する態様では、多嚢胞性卵巣症候群に関連する腸内ディスバイオシスは、血清中のグレリンレベルを上昇させることにより管理される。さらに別の関連する態様では、多嚢胞性卵巣症候群に関連する高コレステロール血症及び心血管合併症は、血清中のパラオキソナーゼ-1レベルを上昇させることにより管理される。さらに別の関連する態様では、多嚢胞性卵巣症候群に関連する酸化ストレスは、血清マロンジアルデヒドレベルを低下させることにより低減される。さらに別の関連する態様では、多嚢胞性卵巣症候群に関連する炎症は、終末糖化産物(AGE)のレベルを低下させることにより低減される。別の関連する態様では、組成物の有効量は、100~200mg/kg体重である。好ましい態様では、対象は、哺乳動物のメスである。別の関連する態様では、組成物は、安定化剤、バイオアベイラビリティエンハンサー、抗酸化剤、薬学的又は栄養補助的又は薬用化粧品的に許容される賦形剤、エンハンサーとともに製剤化され、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、グミ剤、散剤、懸濁剤、乳剤、チュアブル剤、キャンディー剤、又は食料品の形態で経口投与される。
【0013】
別の最も好ましい実施形態では、本発明は、対象における多嚢胞性卵巣症候群及びその関連状態の管理に使用するための、20~80%w/wのビスデメトキシクルクミン、10~35%w/wのデメトキシクルクミン、及び10~50%w/wのクルクミンを含む組成物を開示する。関連する態様では、組成物は、30~50%w/wのビスデメトキシクルクミン、10~25%w/wのデメトキシクルクミン、及び30~50%w/wのクルクミンを含む。さらに別の関連する態様では、組成物中の総クルクミノイドは、20~95%w/wの範囲である。関連する態様では、関連状態は、ホルモンバランスの乱れ、肥満、甲状腺機能低下症、アンドロゲン過剰症、酸化ストレス、炎症、腸内ディスバイオシス、高コレステロール血症及び心血管合併症、高血糖及びインスリン抵抗性からなる群から選択される。別の関連する態様では、多嚢胞性卵巣症候群の徴候及び症状は、生理不順、多嚢胞性卵巣、過剰な体毛、体重増加、にきび又は脂性肌、男性型脱毛症又は薄毛、不妊症、皮膚の色素沈着及びスキンタグからなる群から選択される。別の関連する態様では、多嚢胞性卵巣症候群に関連するホルモンバランスの乱れは、黄体ホルモンの血清レベルを低下させること、並びに17-βエストラジオール、プロゲステロン、及び卵胞刺激ホルモンのレベルを上昇させることにより軽減される。さらに別の関連する態様では、多嚢胞性卵巣症候群に関連する肥満は、体重、卵巣質量を減少させること、及び血清アディポネクチンの発現を上昇させることにより管理される。さらに別の関連する態様では、多嚢胞性卵巣症候群に関連する甲状腺機能低下症は、甲状腺刺激ホルモンのレベルを低下させること、並びにT3及びT4の血清レベルを上昇させることにより管理される。さらに別の関連する態様では、多嚢胞性卵巣症候群に関連するアンドロゲン過剰症は、血清テストステロンの発現を低下させることにより管理される。さらに別の関連する態様では、多嚢胞性卵巣症候群に関連する高血糖及びインスリン抵抗性は、血清オメンチン-1のレベルを上昇させることにより管理される。さらに別の関連する態様では、多嚢胞性卵巣症候群に関連する腸内ディスバイオシスは、血清中のグレリンレベルを上昇させることにより管理される。さらに別の関連する態様では、多嚢胞性卵巣症候群に関連する高コレステロール血症及び心血管合併症は、血清中のパラオキソナーゼ-1レベルを上昇させることにより管理される。さらに別の関連する態様では、多嚢胞性卵巣症候群に関連する酸化ストレスは、血清マロンジアルデヒドレベルを低下させることにより低減される。さらに別の関連する態様では、多嚢胞性卵巣症候群に関連する炎症は、終末糖化産物(AGE)のレベルを低下させることにより低減される。別の関連する態様では、組成物の有効量は、100~200mg/kg体重である。好ましい態様では、対象は、哺乳動物のメスである。別の関連する態様では、組成物は、安定化剤、バイオアベイラビリティエンハンサー、抗酸化剤、薬学的又は栄養補助的又は薬用化粧品的に許容される賦形剤、エンハンサーとともに製剤化され、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、グミ剤、散剤、懸濁剤、乳剤、チュアブル剤、キャンディー剤、又は食料品の形態で経口投与される。
【0014】
さらに別の関連する実施形態では、バイオアベイラビリティエンハンサーは、ピペリン、ケルセチン、ニンニク抽出物、ショウガ抽出物、及びナリンギンからなる群から選択されるが、これらに限定されない。
別の関連する態様では、1種又は複数の抗酸化剤及び抗炎症剤は、ビタミンA、D、E、K、C、B複合体、ロスマリン酸、アルファリポ酸、エラグ酸、グリチルリチン酸、没食子酸エピガロカテキン、植物性ポリフェノール、グラブリジン、モリンガ油、オレアノール酸、オレウロペイン、カルノシン酸、ウロカニン酸、フィトエン、リポイド酸(lipoid acid)、リポアミド、フェリチン、デスフェラール、ビリルビン(billirubin)、ビリベルジン(billiverdin)、メラニン、ユビキノン、ユビキノール、パルミチン酸アスコルビル、リン酸アスコルビルMg、酢酸アスコルビル、トコフェロール及びビタミンEアセテートなどの誘導体、尿酸、α-グルコシルルチン、カタラーゼ(calalase)及びスーパーオキシドジスムターゼ、グルタチオン、セレン化合物、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、メタ重亜硫酸ナトリウム(SMB)、没食子酸プロピル(PG)、並びにアミノ酸システインからなる群から選択されるが、これらに限定されない。
最も好ましい実施形態を示す具体的な説明に役立つ実例が、本明細書に以下に含まれる。
【実施例】
【0015】
(実施例1)
組成物
ビスデメトキシクルクミンは、クルクマ・ロンガ(Curcuma longa)から単離され得、化学的に合成され得る。本発明で使用されるビスデメトキシクルクミンの試料を、Sami-Sabinsa Group limited、Bangalore、Indiaから入手した。20~80%w/wのビスデメトキシクルクミン、10~35%w/wのデメトキシクルクミン、及び10~50%w/wのクルクミンを含む組成物を、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第17644990号に開示された手順のとおりに選択された種類のクルクマ・ロンガから単離した。
【0016】
(実施例2)
PCOS及び関連状態の管理
本発明では、20~80%w/wのビスデメトキシクルクミン、10~35%w/wのデメトキシクルクミン、及び10~50%w/wのクルクミン(AC3複合体)を含む組成物、好ましくは20~50%w/wのビスデメトキシクルクミン、10~25%w/wのデメトキシクルクミン、及び30~50%w/wのクルクミン、又は20~50%w/wのビスデメトキシクルクミン、10~25%w/wのデメトキシクルクミン、及び25~50%w/wのクルクミンの範囲の組成物の可能性を、PCOSの管理におけるその可能性について試験した。試験した範囲は単なる例示であり、結果は、前述の組成物の範囲への適用であることに留意されたい。
【0017】
動物及び実験計画:動物を、標準的な空調管理された実験室条件下で飼育した。温度を最高24℃及び最低23℃、相対湿度を最高63%及び最低48%に維持し、12hの明及び12hの暗周期とした。実験室の最高温度及び最低温度、並びに相対湿度を、1日1回記録した。メスの未交尾のウィスターラット(150~200g)を、膣細胞診を用いて4日間の卵巣周期について毎日確認した。0.5%CMC(2mg/kg)に溶解したアロマターゼ阻害剤、レトロゾール(1mg/kg)の21日間の経口投与によりPCOSを誘発した。実験中、膣スミア中の白血球細胞、上皮細胞、及び角化細胞の相対的な割合の分析により発情周期を監視した。
レトロゾール投与に続いて、22日目から36日目まで試験試料を動物に投与した。処置プロトコル後、すべての群の動物(表1)を一晩絶食させ、ジエチルエーテル/ハロタンで麻酔した。網膜眼窩穿刺(retino-orbital puncture)により血液を採取し、それから血清を遠心分離により分離した後、市販のELISAキットを使用してホルモン及び他の生化学的パラメーターを推定した。
【0018】
【0019】
有効量を選択するために分析したパラメーター:
動物の血清ホルモンレベル、体重、及び卵巣質量を評価して有効量を確定した。
PCOSは、さまざまなホルモンの正常放出及び機能に影響を及ぼす内分泌疾患である。通常、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)は、下垂体からのLH及びFSHの正常放出を担っている。女性では、LHは月経周期を制御し、男性では、テストステロンの放出を担っている。一方、FSHは、月経周期の制御を助け、卵巣内の卵子の成長を刺激する。PCOSでは、脳が正常周期でGnRHを産生せず、LHレベルの上昇及びFSHレベルの低下を引き起こす。LHの増加により卵巣はより多くのテストステロンを産生し、それは女性において男性様の特徴の出現を促進する。FSHの不足により、卵巣は卵子を作ることができず、不妊症につながる(Leo et al., Genetic, hormonal and metabolic aspects of PCOS: an update, Reproductive Biology and Endocrinology (2016) 14:38, DOI 10.1186/s12958-016-0173-x)。
【0020】
本研究では、レトロゾール、1mg/kgを経口で投与したところ、LHのレベルは上昇し、FSHレベルは低下した。女性の二次性徴の発達及び月経周期の調節を担う17-βエストラジオールのレベルも顕著に低下した。プロゲステロンレベルも低下し、正常な月経周期の障害を示している。BDMCは25mg/kgで、AC3複合体は100mg/kgで、PCOSにおいてホルモン障害を改善するのに有効であった(表2)。
【表2】
【0021】
肥満は、PCOSに関連するよくみられる特徴の1つである。ホルモンバランスの乱れにより、インスリン抵抗性が生じ、それにより血液中にグルコースが蓄積する(高血糖)。インスリン抵抗性は男性ホルモンの放出も誘発し、体重増加、特に腹部の脂肪の沈着を引き起こす(Sam et al., Obesity and Polycystic Ovary Syndrome, Obes Manag. 2007 April ; 3(2): 69-73. doi:10.1089/obe.2007.0019)。
【0022】
本研究では、レトロゾール、1mg/kg、経口は、体重(表3)及び卵巣質量(表4)を顕著に増加させた。
【表3】
【0023】
【0024】
BDMCは25mg/kgで、AC3複合体は100mg/kgで、PCOSにおいて体重及び卵巣質量を減少させるのに有効であった。
上記の結果に基づき、以下の群についてさらに分析を行った。
BDMC 25mg/kg経口
BDMC 50mg/kg経口
AC3 100mg/kg経口
AC3 200mg/kg経口
以下の分子標的を評価した。
1.甲状腺機能分析
2.アンドロゲンプロファイルへの効果
3.血清アディポネクチンレベルへの効果
4.インスリン抵抗性
5.血清パラオキソナーゼ1活性への効果
6.腸内微生物叢の効果
7.酸化ストレス及び炎症性マーカー
【0025】
甲状腺機能分析
甲状腺機能低下症は、PCOSの人では一般の人よりも多くみられる。2013年のインドでの研究では、PCOSの女性の22.5%が甲状腺機能低下症を有したのに対し、PCOSではない女性では8.75%であった(Sinha et al., Thyroid disorders in polycystic ovarian syndrome subjects: A tertiary hospital based cross-sectional study from Eastern India, Indian J Endocrinol Metab. 2013 Mar;17(2):304-9. doi: 10.4103/2230-8210.109714)。甲状腺機能低下症は、PCOSと同様に卵巣に影響を及ぼし、卵巣の肥大及び嚢胞の形成を引き起こすことが公知である。甲状腺機能低下症は、インスリン抵抗性の増加、生理不順、毛髪異常成長、及び男性型脱毛症を含むPCOSの症状を悪化させる可能性がある。また、排卵及び卵子の正常な発育にも影響を及ぼす可能性がある(Singla et al., Thyroid disorders and polycystic ovary syndrome: An emerging relationship Indian J Endocrinol Metab. 2015;19(1):25-29. doi:10.4103/2230-8210.146860)。
PCOSでは、原発性甲状腺機能低下症において甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)が増加すると、プロラクチン(PRL)及び甲状腺刺激ホルモン(TSH)が増加する。プロラクチンは、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体ホルモン(LH)の比の変化の結果として排卵を阻害することにより多嚢胞性卵巣形態に寄与する(Singla et al., Thyroid disorders and polycystic ovary syndrome: An emerging relationship Indian J Endocrinol Metab. 2015;19(1):25-29. doi:10.4103/2230-8210.146860)。
【0026】
本調査では、PCOSではT3及びT4のレベルは顕著に低下し、TSHレベルは上昇した(表5)。
【表5】
TSHレベルの上昇並びにT3及びT4レベルの低下(甲状腺機能低下症)は、一般的にPCOSに関連し、PCOSの女性において甲状腺機能低下症を検査し、治す必要がある(Trummer et al., Impact of elevated thyroid-stimulating hormone levels in polycystic ovary syndrome, Gynecological Endocrinology, 2015; 31:10, 819-823, DOI: 10.3109/09513590.2015.1062864)。ビスデメトキシクルクミンは25及び50mg/kg体重の両方で、AC3複合体は100及び200mg/kg体重で、甲状腺ホルモンのレベルの不均衡を改善し、甲状腺機能低下症を治すのに有効であった。
【0027】
アンドロゲンプロファイルへの効果
アンドロゲン過剰症は、PCOSの女性を決定づける特徴である。これは、正常な卵巣機能又は副腎機能の崩壊が過剰なアンドロゲンを産生させることにより引き起こされる。PCOSにおけるアンドロゲン過剰の最初の影響は、卵胞形成障害である。アンドロゲンは、LHのレベルが高いためPCOSの女性において増加する可能性があるが、PCOSで通常見られるインスリンレベルが高いためでもある(Paris et al., The Mechanism of Androgen Actions in PCOS Etiology, Med. Sci. 2019, 7, 89; doi:10.3390/medsci7090089)。
今回の調査では、PCOSのマウスにおけるテストステロンレベルは、顕著に上昇し、BDMC及びAC3複合体のいずれの投与によっても低下した(
図1)。
【0028】
血清アディポネクチンレベルへの効果
肥満は、一般にPCOSに関連する特徴の1つである。肥満の発症には多くの要因がある。PCOSの女性におけるアディポネクチン、インスリン抵抗性及び感受性、メタボリックシンドローム、並びにBMIの関係は、アディポネクチンが疾患リスクの潜在的マーカーとして機能することを示唆している(Glintborg, D et al.(2006). Evaluation of metabolic risk markers in polycystic ovary syndrome (PCOS). Adiponectin, ghrelin, leptin and body composition in hirsute PCOS patients and controls, European Journal of Endocrinology, 155(2), 337-345)。肥満のPCOS患者は、一般に、肥満の対照よりも低いアディポネクチンレベルを示し、これは本研究でも報告されている(
図2)。BDMCとAC3複合体の両方は、アディポネクチンレベルの上昇を低減させるのに有効であり、したがって、PCOSの女性における肥満の管理に有効な分子/組成物であった。
【0029】
インスリン抵抗性
PCOSにおけるホルモン変化により、PCOSの女性においてインスリン抵抗性が生じる。インスリン感受性の調節に関与する多くのアディポカインがあり、PCOSの発病に重要な役割を果たすことも示唆されている。オメンチン-1は、内臓脂肪組織により本質的に分泌されるアディポカインであり、その循環レベルは、インスリン抵抗性、慢性炎症状態、肥満、糖尿病、及び心血管疾患(CVDs)などの多くの疾患状態と相関し、それらはPCOSの発症の危険因子である(Tang et al.., Circulating omentin-1 levels in women with polycystic ovary syndrome: a meta-analysis, Gynecological Endocrinology, 2017;33: 3,244-249,DOI: 10.1080/09513590.2016.1254180)。PCOSにおけるオメンチン-1レベルの抑制は、インスリン抵抗性の増加を示す。本研究では、オメンチン-1の循環レベルはPCOSにおいて低く、BDMC及びAC3複合体の投与により上昇した(
図3)。
オメンチン-1レベルの正常化は、インスリン抵抗性の減少を示し、それはPCOSに関連する糖尿病及び高血糖を管理するのに有効な方法の1つである。
【0030】
血清パラオキソナーゼ1への効果
パラオキソナーゼ-1(PON1)は、肝臓で合成されるエステラーゼ及びラクトナーゼであり、高密度リポタンパク質に関連する循環において見られる。血清PON1は、HDL-コレステロールに存在し、HDLの抗酸化活性を担っている。酸化ストレスはインスリンの作用を損なう可能性があるため、PCOSにおいて、血清パラオキソナーゼ活性の低下はインスリン抵抗性に寄与する。PON1遺伝子の多型と組み合わせて、PON1のレベルが低下すると、酸化ストレスの増加とともに、インスリン抵抗性、コレステロール上昇、心血管合併症の発症の危険因子が増加する(Dursun et al., Decreased serum paraoxonase 1 (PON1) activity: an additional risk factor for atherosclerotic heart disease in patients with PCOS?, Human Reproduction, Volume 21, Issue 1, January 2006, Pages 104-108, https://doi.org/10.1093/humrep/dei284)。今回の研究では、PCOSではPON1レベルが顕著に低いことが観察され、BDMC(25及び50mg/kg体重)及びAC3複合体(100及び200mg/kg体重)の投与は、PON1の循環レベルを上昇させた(
図4)。したがって、BDMCとAC3複合体の両方が、PCOSから生じるインスリン抵抗性、高コレステロール血症、及び心血管合併症を管理するのに有効である。
【0031】
腸内微生物叢への効果
腸内微生物叢は、生理機能、代謝、栄養、免疫機能に影響を与えることにより主要な役割を果たし、後者と宿主の間の微妙な均衡が、さまざまな疾患の発症を防ぐ。PCOSでは、マイクロバイオームの一般的な構成が変化しており、バクテロイデス門及びファーミキューテス門などのいくつかの細菌種の均衡が崩れている。この変化は、短鎖脂肪酸の産生を変化させ、代謝、腸バリアの完全性、及び免疫に悪影響を及ぼす可能性がある(Giampaolino, et al. Microbiome and PCOS: State-of-Art and Future Aspects. Int. J. Mol. Sci. 2021, 22, 2048)。バクテロイデス属に関して、Liuら(Dysbiosis of Gut Microbiota Associated with Clinical Parameters in Polycystic Ovary Syndrome. Front. Microbiol. 2017, 8, 324)は、PCOSの女性においてエシェリキア属及びシゲラ属の特異的な増加を観察し、グレリンと負に相関するバクテロイデス属種(Bacteroides species)の増加のために、PCOSの女性におけるグレリン及びペプチドYYのレベルは、健康な女性のそれと比較して低いことを報告している。したがって、低いレベルのグレリンは、バクテロイデス属種の増加及び腸内ディスバイオシスを示す。本発明(では、PCOS群においてグレリンレベルが低く、BDMC/AC3複合体の投与により顕著に上昇する(
図5)ことも観察され、BDMCとAC3複合体の両方がPCOSにおける腸内ディスバイオシスを管理するのに有効であることが示された。
【0032】
酸化ストレス及び炎症性マーカー
調査により、酸化ストレスはPCOSの患者において顕著に増加することが明らかとなった。酸化ストレスは、肥満、インスリン抵抗性、アンドロゲン過剰症、及び慢性炎症に顕著に相関しており、がん発病に極めて重要な役割を果たしている。
活性酸素種(ROS)は、DNA鎖切断、点変異、異常なDNA架橋、及びDNA-タンパク質架橋など、DNAを攻撃することにより遺伝子変化を引き起こし、PCOS患者における婦人科がんのリスク上昇の主要な根本的誘因の1つとなっている。現在採用されている循環マーカーは、ホモシステイン、マロンジアルデヒド(MDA)、非対称性ジメチルアルギニン(AMDA)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、グルタチオン(GSH)及びパラオキソナーゼ-1(PON1)を主に含む。マロンジアルデヒドレベルは、細胞膜の脂質過酸化の度合いを示す。今回の研究は、PCOS群ではMDAレベルは顕著に上昇し、それはBDMC及びAC3複合体の投与により低下することも示した(
図6)。
【0033】
PCOSの女性では、終末糖化産物(AGE)循環レベル及び終末糖化産物受容体(RAGE)と呼ばれるその炎症促進性受容体の卵巣組織における発現が上昇していることが報告されている。食事性AGEは、内因性AGEと同様の細胞活性化能及び細胞酸化能を有するため、炎症性シグナルを誘発し、酸化ストレス及び炎症を促進する。組織における食事性AGEの蓄積は、活性酸素種の産生を介して細胞損傷をさらに促進する。本研究では、PCOS群では循環AGEが顕著に上昇し、それはBDMC及びAC3複合体の投与により低下した(
図7)。
全体として、BDMC(25及び50mg/kg体重)とAC3複合体(100及び200mg/kg体重)の両方は、ヒトの投与量、BDMC-200mg/日及びAC3複合体-800mg/日に相当するが、PCOSと、ホルモンバランスの乱れ、肥満、甲状腺機能低下症、アンドロゲン過剰症、酸化ストレス、炎症、腸内ディスバイオシス、高コレステロール血症及び心血管合併症、高血糖及びインスリン抵抗性を含むその関連状態とを管理するのに有効であった。
【0034】
(実施例3)
BDMCを含む製剤
組成物は、薬学的/栄養補助的に許容される賦形剤、アジュバント、希釈剤、安定化剤、分散性ガム、バイオアベイラビリティエンハンサー、又は担体とともに製剤化され、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、グミ剤、散剤、懸濁剤、乳剤、チュアブル剤、キャンディー剤、又は食料品の形態で経口投与される。
関連する態様では、バイオアベイラビリティエンハンサーは、ピペリン(BioPerine(登録商標))、ケルセチン、ニンニク抽出物、ショウガ抽出物、及びナリンギンの群から選択される。別の関連する態様では、安定化剤は、ロスマリン酸、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、メタ重亜硫酸ナトリウム、没食子酸プロピル、システイン、アスコルビン酸、及びトコフェロールからなる群から選択される。さらに別の関連する態様では、分散性ガムは、寒天、アルギネート、カラギーナン、アラビアガム、グアーガム、ローカストビーンガム、コンニャクガム、キサンタンガム、及びペクチンからなる群から選択される。
【0035】
表6~17は、ビスデメトキシクルクミンを含む栄養補助的製剤の説明に役立つ実例を示している。
【表6】
【表7】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
上記の製剤は説明に役立つ実例にすぎず、前記目的を意図した上記の活性成分を含むあらゆる製剤が同等であるとみなされる。
本発明の他の修正及び変形が、前述の開示及び教示から当業者には明らかであろう。このように、本発明の特定の実施形態のみを本明細書で具体的に説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、それに対して多数の修正を加えることができることは明らかであり、添付の特許請求の範囲と併せてのみ解釈されるべきである。
【国際調査報告】