(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-18
(54)【発明の名称】細胞接着性の3D印刷されたオブジェクトを生成するための官能化および非官能化ECM、ECM断片、ペプチドおよび生理活性成分の使用
(51)【国際特許分類】
A61L 27/36 20060101AFI20240411BHJP
A61L 27/24 20060101ALI20240411BHJP
A61L 27/22 20060101ALI20240411BHJP
A61L 27/16 20060101ALI20240411BHJP
【FI】
A61L27/36 130
A61L27/24
A61L27/22
A61L27/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567873
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(85)【翻訳文提出日】2023-12-28
(86)【国際出願番号】 US2022028080
(87)【国際公開番号】W WO2022236061
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516346377
【氏名又は名称】ラング バイオテクノロジー ピービーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】コウル,アマン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルナンデス,ビクター
(72)【発明者】
【氏名】シアー,バーバラ
(72)【発明者】
【氏名】アリアス,イザベル
(72)【発明者】
【氏名】アルバレス,ルイス
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AB31
4C081BA12
4C081BA13
4C081BA16
4C081CA08
4C081CD11
4C081CD12
4C081CD15
4C081CD17
4C081DA01
4C081DA12
(57)【要約】
この開示の実施形態は、バイオインクおよびバイオインク組成物に関する。これらのバイオインクは、ヒドロゲルへと3D印刷され得る。印刷されたヒドロゲルは、初代細胞および人工多能性幹細胞の付着、増殖および拡散を支持することができる。バイオインク中の化合物は、化学合成手段等により、化学的官能性を組み込まれるように修飾され得る。化学的官能性の組み込みは、バイオインク中の構成成分としての修飾された材料の組み込みを可能とし得る。修飾は、所望の構成成分の化学的共役を可能とし得る。所望の構成成分は、細胞の付着および増殖を補助するその細胞相互作用特性を維持し得る。そのような組み込みは、細胞接着を妨げることなく、バイオプリンティングされたオブジェクトの機械的特性の調整を可能とし得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋された(メタ)アクリル化細胞外マトリックス(ECM)材料および非(メタ)アクリル化ECM材料を含む、組成物。
【請求項2】
(メタ)アクリル化ECM材料と非(メタ)アクリル化ECM材料との比が、約5:1~約1:5である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル化ECM材料が、約5~約95パーセントの(メタ)アクリル化の程度を有する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ECM材料が、コラーゲン、ゼラチン、エラスチンおよびフィブロネクチンから選択される、請求項1または3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記ECM材料がI型コラーゲンである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記(メタ)アクリル化ECM材料が、モノまたはジ(メタ)アクリル化ECMまたはECM様材料を含む、請求項1または5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記ECMまたはECM様材料が、RGD、KQAGDV、YIGSR、REDV、IKVAV、RNIAEIIKDI、KHIFSDDSSE、VPGIG、FHRRIKA、KRSR、APGL、VRN、AAAAAAAAA、GGLGPAGGK、GVPGI、LPETG(G)n、およびIEGRから選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記ECMまたはECM様材料がプロテアーゼに感受性の配列である、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記プロテアーゼが、Arg-Cプロテイナーゼ、Asp-Nエンドペプチダーゼ、BNPS-スカトール、カスパーゼ1~10、キモトリプシン高特異性([FYW]へのC末端、Pの前ではない)、キモトリプシン低特異性([FYWML]へのC末端、Pの前ではない)、クロストリパイン(クロストリジオペプチダーゼB)、CNBr、エンテロキナーゼ、第Xa因子、ギ酸、グルタミルエンドペプチダーゼ、グランザイムB、ヒドロキシルアミン、ヨードソ安息香酸、LysC、好中球エラスターゼ、NTCB(2-ニトロ-5-チオシアノ安息香酸)、ペプシン、プロリンエンドペプチダーゼ、プロテイナーゼK、ブドウ球菌(Staphylococcal)ペプチダーゼI、サーモリシン、トロンビンおよびトリプシンから選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が、重合化ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(ヒドロキシエチル)(メタクリレート)、ポリN-ヒドロキシルアクリルアミド、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレートをさらに含む、請求項1から9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレートモノマーが、約400~約20,000の重量平均分子量(M
w)を有する、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレートモノマーが、約2000~約4000のM
wを有する、請求項10または11に記載の組成物。
【請求項13】
前記重合化ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレートモノマーが、前記組成物の約5~約50wt.%の量で存在する、請求項10から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が、初代細胞および/または人工多能性幹細胞の付着、増殖および拡散を支持する、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が、成形されたかまたは3D印刷されたヒドロゲル物品である、請求項1から14のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物が、成形されたかまたは3Dヒドロゲル印刷された、光架橋された物品である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記物品が、臓器の三次元物品であり、前記臓器が哺乳動物の臓器である、請求項15または16に記載の成形されたかまたは3D印刷されたヒドロゲル物品。
【請求項18】
三次元物品を作製する方法であって、
印刷可能な組成物の層を表面に堆積させて堆積層を得るステップ、
前記堆積層に照射するステップ、ならびに
前記堆積層が三次元物品を形成するまで前記堆積するステップおよび照射するステップを繰り返すステップ
を含み、
前記印刷可能な組成物が、(メタ)アクリル化細胞外マトリックス(ECM)材料、非(メタ)アクリル化ECM材料および光開始剤を含む、方法。
【請求項19】
前記ECM材料が、コラーゲン、ゼラチン、エラスチンおよびフィブロネクチンから選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記印刷可能な組成物が、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレートモノマーをさらに含む、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記印刷可能な組成物が、モノまたはジ(メタ)アクリル化ECMまたはECM様材料をさらに含む、請求項18から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ECMまたはECM様材料が、RGD、KQAGDV、YIGSR、REDV、IKVAV、RNIAEIIKDI、KHIFSDDSSE、VPGIG、FHRRIKA、KRSR、APGL、VRN、AAAAAAAAA、GGLGPAGGK、GVPGI、LPETG(G)n、およびIEGRから選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ECMまたはECM様材料がプロテアーゼに感受性の配列である、請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
前記プロテアーゼが、Arg-Cプロテイナーゼ、Asp-Nエンドペプチダーゼ、BNPS-スカトール、カスパーゼ1~10、キモトリプシン高特異性([FYW]へのC末端、Pの前ではない)、キモトリプシン低特異性([FYWML]へのC末端、Pの前ではない)、クロストリパイン(クロストリジオペプチダーゼB)、CNBr、エンテロキナーゼ、第Xa因子、ギ酸、グルタミルエンドペプチダーゼ、グランザイムB、ヒドロキシルアミン、ヨードソ安息香酸、LysC、好中球エラスターゼ、NTCB(2-ニトロ-5-チオシアノ安息香酸)、ペプシン、プロリンエンドペプチダーゼ、プロテイナーゼK、ブドウ球菌(Staphylococcal)ペプチダーゼI、サーモリシン、トロンビンおよびトリプシンから選択される、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
(メタ)アクリル化ECM材料と非(メタ)アクリル化ECM材料との比が、約5:1~約1:5である、請求項18から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記(メタ)アクリル化ECM材料が、約5~約95パーセントの(メタ)アクリル化の程度を有する、請求項18から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記光開始剤が、フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィン酸リチウム(LAP)、フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィン酸ナトリウム(NAP)トリメチルベンゾイルベースの光開始剤、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(TPOナノ粒子)イルガキュアクラスの光開始剤、ルテニウム、およびリボフラビン、またはそれらの混合物を含む、請求項18から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記印刷可能な組成物が、ポリマー、UV386A染料、天然の細胞外マトリックス、光開始剤、ペプチド、アミノ酸、成長因子、変性細胞外マトリックス、細胞外マトリックス断片またはそれらの混合物を含む1つまたは複数の添加剤をさらに含む、請求項18から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記印刷可能な組成物が、300nm~420nmの間の吸光度スペクトルを有し、細胞毒性でなく、分子構造中にベンザイン環の組成を有する任意のUV染料を含む、請求項18から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
印刷された足場が、前記足場が置かれた緩衝液にモノマーを溶出するときに細胞毒性でない、請求項18から28のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記印刷可能な組成物が、プロトン性溶媒をさらに含む、請求項18から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記プロトン性溶媒が、水、ポリエチレングリコール、グリコールジアクリレート誘導体またはそれらの混合物を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記三次元物品が、臓器または臓器の一部を複製する、請求項18から30のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体の内容が参照により本明細書に組み込まれている、2021年5月6日に出願された米国仮出願第63/185,293号の優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
背景
ヒドロゲルを含む組成物は、生体適合性構造に使用されるオブジェクトを形成するために使用され得る。これらのオブジェクトは、三次元(3D)印刷(プリンティング(printing))技術を使用して形成され得る。細胞は、合成臓器(synthetic organ)などの実用的な用途のために付着され得る。
【発明の概要】
【0003】
要旨
この開示の実施形態は、バイオインクおよびバイオインク組成物に関する。これらのバイオインクは、ヒドロゲルへと3D印刷され得る。印刷されたヒドロゲルは、初代細胞(primary cell)および人工多能性幹細胞の付着(attachment)、増殖(proliferation)および拡散(spreading)を支持することができる。バイオインク中の化合物は、化学合成手段等により、化学的官能性を組み込まれるように修飾され得る。化学的官能性の組み込みは、バイオインク中の構成成分としての修飾された材料の組み込みを可能とし得る。修飾は、所望の構成成分の化学的共役(chemical conjugation)を可能とし得る。所望の構成成分は、細胞の付着および増殖を補助するその細胞相互作用特性を維持し得る。そのような組み込みは、細胞接着を妨げることなく、バイオプリンティングされたオブジェクトの機械的特性の調整を可能とし得る。
【0004】
本明細書では、例えば、本明細書において開示されている材料を使用した、鋳造、フラッド硬化(flood curing)、光硬化、光重合(photopylmerization)、交互積層印刷(layer by layer printing)またはオブジェクトの押出により形成されたオブジェクトが開示される。オブジェクトは、臓器組織の代替物(organ tissue replacement)であってもよい。オブジェクトは、商品価値のある他のオブジェクトであってもよい。この開示の実施形態は、3D印刷されたオブジェクトおよびそれらを形成する方法に関する。
【0005】
この開示の実施形態は、細胞付着および結果として生じたフレームワークとの相互作用を改善するために細胞外マトリックス(ECM)を修飾するシステムおよび方法に関する。本明細書では、結果として生じたフレームワークならびに細胞の付着および相互作用の方法、ならびにそれで製造されたオブジェクトが開示される。本明細書で示すように、I型コラーゲン、ゼラチン、エラスチンおよびフィブロネクチンなどの細胞外マトリックス(ECM)は、メタクリレート基などの基で官能化されて光架橋性ヒドロゲル中への組み込みを可能とし得る。細胞外マトリックスの組み込みは、細胞の付着およびヒドロゲル内の相互作用を可能とし、ヒドロゲルを生体適合性とし得る。
【0006】
この開示の実施形態は、架橋された(メタ)アクリル化細胞外マトリックス(ECM)材料および非(メタ)アクリル化ECM材料を含む組成物に関する。組成物は、約5:1~約1:5(例えば、約5:1、約4:1、約3:1、約2:1、約1:1、約1:2、約1:3、約1:4または約1:5)の、(メタ)アクリル化ECM材料と非(メタ)アクリル化ECM材料との比を有し得る。(メタ)アクリル化ECM材料は、約5~約95パーセント(例えば、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%または約95%)の(メタ)アクリル化の程度を有し得る。ECM材料は、コラーゲン、ゼラチン、エラスチンおよびフィブロネクチンから選択することができる。ECM材料はI型コラーゲンであってもよい。(メタ)アクリル化ECM材料は、モノまたはジ(メタ)アクリル化ECMまたはECM様材料を含み得る。
【0007】
ECMまたはECM様材料は、RGD、KQAGDV、YIGSR、REDV、IKVAV、RNIAEIIKDI、KHIFSDDSSE、VPGIG、FHRRIKA、KRSR、APGL、VRN、AAAAAAAAA、GGLGPAGGK、GVPGI、LPETG(G)n、およびIEGRから選択することができる。ECMまたはECM様材料は、プロテアーゼに感受性の配列であり得る。プロテアーゼは、Arg-Cプロテイナーゼ、Asp-Nエンドペプチダーゼ、BNPS-スカトール、カスパーゼ1~10、キモトリプシン高特異性([FYW]へのC末端、Pの前ではない)、キモトリプシン低特異性([FYWML]へのC末端、Pの前ではない)、クロストリパイン(クロストリジオペプチダーゼB)、CNBr、エンテロキナーゼ、第Xa因子、ギ酸、グルタミルエンドペプチダーゼ、グランザイムB、ヒドロキシルアミン、ヨードソ安息香酸、LysC、好中球エラスターゼ、NTCB(2-ニトロ-5-チオシアノ安息香酸)、ペプシン、プロリンエンドペプチダーゼ、プロテイナーゼK、ブドウ球菌(Staphylococcal)ペプチダーゼI、サーモリシン、トロンビンおよびトリプシンから選択することができる。
【0008】
組成物は、ポリマー材料をさらに含んでもよい。ポリマー材料は親水性であってもよい。ポリマー材料は、アクリルアミド、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、2-ヒドロキシルエチルメタクリレート、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート(hydroxyehtyle methacrylate))、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラ(エチレングリコール)ジメタクリレート(dimethacrylte)、N、N’-メチレンビアクリルアミド、またはアミン末端官能化4アームポリ(エチレングリコール)の1つまたは複数を含み得る。ポリマー材料は、重合化ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(ヒドロキシエチル)(メタクリレート)、ポリN-ヒドロキシルアクリルアミド3-ヒドロキシプロピルアクリレートまたはヒドロキシブチルアクリレートであってもよい。ポリマー材料は、約400~約20,000の重量平均分子量(weight average molecular weight)(Mw)を有するポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレートモノマーであってもよい。ポリマー材料は、約2000~約4000のMwを有するポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレートモノマーであってもよい。ポリマー材料は、上述の組成物のいずれかの混合物であってもよい。ポリマー材料は、組成物の約5~約50wt.%(例えば、約5wt.%、約10wt.%、約15wt.%、約20wt.%、約25wt.%、約30wt.%、約35wt.%、約40wt.%、約45wt.%または約50wt.%)の量で存在し得る。一部の実施形態では、ポリマー材料は、組成物の約5~約50wt.%(例えば、約5wt.%、約10wt.%、約15wt.%、約20wt.%、約25wt.%、約30wt.%、約35wt.%、約40wt.%、約45wt.%または約50wt.%)の量で存在する、重合化ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレートモノマーであり得る。
【0009】
組成物は、初代細胞および/または人工多能性幹細胞の付着、増殖および拡散を支持することができる。組成物は、成形されたかまたは3D印刷されたヒドロゲル物品であってもよい。組成物は、成形されたかまたは3Dヒドロゲル印刷された、光架橋された物品であってもよい。成形されたかまたは3D印刷されたヒドロゲル物品は、臓器または臓器の一部の三次元物品であってもよい。臓器は、成人のヒトなどの哺乳動物の臓器であってもよい。
【0010】
この開示の実施形態は、三次元物品を作製する方法であって、印刷可能な組成物の層を表面に堆積(deposite)させて堆積層(deposited layer)を得るステップ、堆積層に照射するステップ、ならびに堆積層が三次元物品を形成するまで堆積するステップおよび照射するステップを繰り返すステップを含む、方法に関し得る。印刷可能な組成物は、例えば、(メタ)アクリル化細胞外マトリックス(ECM)材料、非(メタ)アクリル化(non-(meth)acryalted)ECM材料、または(メタ)アクリル化ECMおよび非(メタ)アクリル化ECMの混合物、ならびにまた光開始剤を含み得る。ECM材料は、コラーゲン、ゼラチン、エラスチンおよびフィブロネクチンの1つまたは複数を含み得る。
【0011】
印刷可能な組成物は、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレートモノマーも含み得る。印刷可能な組成物は、モノまたはジ(メタ)アクリル化ECMまたはECM様材料を含み得る。ECMまたはECM様材料は、RGD、PHSRN(GGGERCG)GGRGDSPY、GCREKKRKRLQVQLSIRT、GCREKKTLQPVYEYMVGV、GCREISAFLGIPFAEPPMGPRRFLPPEPKKP、GCRDGPQGWGQDRCG、GCRDVPMSMRGGDRCG、GFOGER、KQAGDV、YIGSR、REDV、IKVAV、RNIAEIIKDI、KHIFSDDSSE、VPGIG、FHRRIKA、KRSR、APGL、VRN、AAAAAAAAA、GGLGPAGGK、GVPGI、LPETG(G)n、およびIEGRを含み得る。ECMまたはECM様材料は、プロテアーゼに感受性の配列を含むことができる。一部の実施形態では、プロテアーゼは、Arg-Cプロテイナーゼ、Asp-Nエンドペプチダーゼ、BNPS-スカトール、カスパーゼ1~10、キモトリプシン高特異性([FYW]へのC末端、Pの前ではない)、キモトリプシン低特異性([FYWML]へのC末端、Pの前ではない)、クロストリパイン(クロストリジオペプチダーゼB)、CNBr、エンテロキナーゼ、第Xa因子、ギ酸、グルタミルエンドペプチダーゼ、グランザイムB、ヒドロキシルアミン、ヨードソ安息香酸、LysC、好中球エラスターゼ、NTCB(2-ニトロ-5-チオシアノ安息香酸)、ペプシン、プロリンエンドペプチダーゼ、プロテイナーゼK、ブドウ球菌(Staphylococcal)ペプチダーゼI、サーモリシン、トロンビンおよびトリプシンから選択することができる。
【0012】
(メタ)アクリル化ECM材料と非(メタ)アクリル化ECM材料との比は、約5:1~約1:5(例えば、約5:1、約4:1、約3:1、約2:1、約1:1、約1:2、約1:3、約1:4または約1:5)であってもよい。(メタ)アクリル化ECM材料は、約5~約95パーセント(例えば、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%または約95%)の(メタ)アクリル化の程度を有し得る。光開始剤は、フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィン酸リチウム(LAP)、フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィン酸ナトリウム(NAP)トリメチルベンゾイルベースの光開始剤、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(TPOナノ粒子)イルガキュアクラスの光開始剤、ルテニウム、およびリボフラビン、またはそれらの混合物を含み得る。
【0013】
この開示の実施形態は、1つまたは複数の添加剤が、ポリマー、光活性染料、天然の細胞外マトリックス、光開始剤、ペプチド、アミノ酸、成長因子、変性細胞外マトリックス、細胞外マトリックス断片またはそれらの混合物を含む、印刷可能な組成物を含み得る。光活性染料は、300nm~420nmの間の吸光度スペクトルを有するUV染料であってもよい。光活性染料は、300nm~400nmの波長範囲を有し得る。光活性染料は非細胞毒性であり得る。光活性染料は、分子構造中にベンザイン環を含み得る。光活性染料は、キノロンイエロー、UV染料またはそれらと類似の分子構造を有する染料であってもよい。光活性染料はUV 386A染料であってもよい。
【0014】
実施形態には、印刷された足場(scafford)も含む。印刷された足場は、足場が置かれた緩衝液にモノマーを溶出(leaching out)するときに非細胞毒性であり得る。実施形態は、上述の足場を印刷するのに使用される組成物を含み得る。実施形態は、形成された三次元物品を含み得る。三次元物品は、臓器または臓器の一部を複製(replicate)してもよい。
【0015】
実施形態は、プロトン性溶媒を含む印刷可能な組成物も含む。プロトン性溶媒は、水、ポリエチレングリコール、グリコールジアクリレート誘導体またはそれらの混合物を含み得る。
【0016】
この開示の実施形態は、開示される方法により形成される、官能化および非官能化細胞外マトリックス、マトリックス断片、ペプチドおよび生理活性成分(bioactive component)の使用にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、メタクリレート化コラーゲンを形成するための、コラーゲンとメタクリレート無水物との間の反応の概略図を示す。
【
図2】
図2Aは、異なる表面、(i)ガラス(対照)、(ii)50%DOFのコラーゲンを含有するバイオインク、(iii)90%DOFを含有するバイオインク、ならびに(iv)0%DOFのコラーゲンおよび90%DOFのコラーゲン(1:2の比)を含有するバイオインク上で7日間培養した肺線維芽細胞の細胞の拡散、密度、および細胞カバー率(cell coverage)の%の画像を示し、
図2Bはそのグラフを示す。追加の説明は実施例1に提供する。
【
図3】
図3Aは、異なる表面、(i)ガラス(対照)、(ii)9%のPEGDAハイブリッドおよび9%のPEGDA上で1日間培養した肺動脈内皮細胞の細胞の拡散、密度、および細胞カバー率の%の画像を示し、
図3Bはそのグラフを示す。アスタリスク(
*)はp値0.05未満を示す。追加の説明は実施例2に提供する。
【
図4】
図4は、7日間の経過にわたる、PEGDA MW 3400、95%DOFのコラーゲンおよび0%DOFのコラーゲン(2:1の比)で構成される3D印刷されたディスク上の、肺平滑筋細胞培養物の付着、増殖および拡散を示す図である。追加の説明は実施例3に提供する。
【
図5-1】
図5A~5Cは、異なるバイオインクを使用して作製され、および官能化と非官能化コラーゲンとの異なる比を有する、異なる3D印刷されたオブジェクトへの細胞接着を示す図である。追加の説明は実施例4に提供する。
【
図5-2】
図5A~5Cは、異なるバイオインクを使用して作製され、および官能化と非官能化コラーゲンとの異なる比を有する、異なる3D印刷されたオブジェクトへの細胞接着を示す図である。追加の説明は実施例4に提供する。
【
図6】
図6は、7日の期間にわたる、官能化および非官能化コラーゲン支持体を含有するバイオインクで作製された3D印刷されたオブジェクトへの肺線維芽細胞の細胞の付着および増殖を示す図である。追加の説明は実施例5に提供する。
【
図7-1】
図7A~7Bは、細胞接着特性に対するHEAA含有量の効果を示す図である。追加の説明は実施例6に提供する。
【
図7-2】
図7A~7Bは、細胞接着特性に対するHEAA含有量の効果を示す図である。追加の説明は実施例6に提供する。
【
図8-1】
図8A~8Eは、細胞の接着および増殖に対するCollMA DOFの効果を示す図である(>90%、約50%(~50%)、ハイブリッド(50%の非MA、50%のHM))。追加の説明は実施例7に提供する。
【
図8-2】
図8A~8Eは、細胞の接着および増殖に対するCollMA DOFの効果を示す図である(>90%、約50%、ハイブリッド(50%の非MA、50%のHM))。追加の説明は実施例7に提供する。
【
図8-3】
図8A~8Eは、細胞の接着および増殖に対するCollMA DOFの効果を示す図である(>90%、約50%、ハイブリッド(50%の非MA、50%のHM))。追加の説明は実施例7に提供する。
【
図8-4】
図8A~8Eは、細胞の接着および増殖に対するCollMA DOFの効果を示す図である(>90%、約50%、ハイブリッド(50%の非MA、50%のHM))。追加の説明は実施例7に提供する。
【
図8-5】
図8A~8Eは、細胞の接着および増殖に対するCollMA DOFの効果を示す図である(>90%、約50%、ハイブリッド(50%の非MA、50%のHM))。追加の説明は実施例7に提供する。
【
図9】
図9は、PAEC細胞の細胞密度、細胞の拡散、および細胞カバー率の比較を示す図である。追加の説明は実施例8に提供する。
【
図10-1】
図10A~10Dは、官能化の程度が異なる5%のPEGDAの3D印刷された基材上の、細胞拡散、細胞密度および細胞カバー率の差を示す図である。追加の説明は実施例10に提供する。
【
図10-2】
図10A~10Dは、官能化の程度が異なる5%のPEGDAの3D印刷された基材上の、細胞拡散、細胞密度および細胞カバー率の差を示す図である。追加の説明は実施例10に提供する。
【
図10-3】
図10A~10Dは、官能化の程度が異なる5%のPEGDAの3D印刷された基材上の、細胞拡散、細胞密度および細胞カバー率の差を示す図である。追加の説明は実施例10に提供する。
【
図10-4】
図10A~10Dは、官能化の程度が異なる5%のPEGDAの3D印刷された基材上の、細胞拡散、細胞密度および細胞カバー率の差を示す図である。追加の説明は実施例10に提供する。
【
図11-1】
図11A~11Dは、異なる3D印刷されたディスク上に「挿入された」細胞の細胞カバー率、細胞拡散および細胞密度の特徴を示す図である。(
図11A)プラットフォーム上の3D印刷されたディスクの画像、(
図11B)AC42 1mmディスク、AC42 3mmディスク、溶出対照およびガラス対照の領域カバー率のパーセント、細胞拡散および細胞密度の1日目の分析、(
図11C)AC42 1mmディスク、AC42 3mmディスク、溶出対照およびガラス対照の領域カバー率のパーセント、細胞拡散および細胞密度の4日目の分析、(
図11D)AC42 1mmディスク、AC42 3mmディスク、溶出対照およびガラス対照の領域カバー率のパーセント、細胞拡散および細胞密度の7日目の分析。
【
図11-2】
図11A~11Dは、異なる3D印刷されたディスク上に「挿入された」細胞の細胞カバー率、細胞拡散および細胞密度の特徴を示す図である。(
図11A)プラットフォーム上の3D印刷されたディスクの画像、(
図11B)AC42 1mmディスク、AC42 3mmディスク、溶出対照およびガラス対照の領域カバー率のパーセント、細胞拡散および細胞密度の1日目の分析、(
図11C)AC42 1mmディスク、AC42 3mmディスク、溶出対照およびガラス対照の領域カバー率のパーセント、細胞拡散および細胞密度の4日目の分析、(
図11D)AC42 1mmディスク、AC42 3mmディスク、溶出対照およびガラス対照の領域カバー率のパーセント、細胞拡散および細胞密度の7日目の分析。
【
図12-1】
図12A~12Bは、異なる3D印刷されたディスク上の細胞の細胞カバー率、細胞拡散および細胞密度の特徴を示す図である。(A)LFN、PAECまたはSAEC種(シード(seed))を播種したAC42 1mmディスク、3mmディスク、溶出対照およびガラス対照の領域カバー率のパーセント、細胞拡散の比較および細胞密度の比較。(B)LFN、PAECまたはSAEC種を播種したAC42 1mmディスクおよび3mmディスクの領域カバー率のパーセント、細胞拡散の比較および細胞密度の比較。
【
図12-2】
図12A~12Bは、異なる3D印刷されたディスク上の細胞の細胞カバー率、細胞拡散および細胞密度の特徴を示す図である。(A)LFN、PAECまたはSAEC種を播種したAC42 1mmディスク、3mmディスク、溶出対照およびガラス対照の領域カバー率のパーセント、細胞拡散の比較および細胞密度の比較。(B)LFN、PAECまたはSAEC種を播種したAC42 1mmディスクおよび3mmディスクの領域カバー率のパーセント、細胞拡散の比較および細胞密度の比較。
【
図13】
図13は、本開示のバイオインクに組み込むことができる生物学的に活性なペプチドのある特定の実施形態を示す図である。
【
図14-1】
図14A~14Cは、異なる3D印刷されたディスク上の細胞の細胞カバー率、細胞拡散および細胞密度の特徴を示す図である。追加の詳細は実施例13中にある。
【
図14-2】
図14A~14Cは、異なる3D印刷されたディスク上の細胞の細胞カバー率、細胞拡散および細胞密度の特徴を示す図である。追加の詳細は実施例13中にある。
【
図15-1】
図15A~15Bは、ペプチドがバイオインクの生理活性(bioactivity)を強化して細胞付着を促進する実施形態を示す図である。追加の詳細は実施例14中に開示される。
【
図15-2】
図15A~15Bは、ペプチドがバイオインクの生理活性を強化して細胞付着を促進する実施形態を示す図である。追加の詳細は実施例14中に開示される。
【
図16】
図16A~16Bは、ペプチドがバイオインクの生理活性を強化して細胞付着を促進する実施形態を示す図である。追加の詳細は実施例14中に開示される。
【
図17】
図17A~17Bは、ペプチドがバイオインクの生理活性を強化して細胞付着を促進する実施形態を示す図である。追加の詳細は実施例14中に開示される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
詳細な説明
本明細書で使用される場合、「3D印刷(3Dプリンティング(3D printing))」は、三次元オブジェクトを、そのオブジェクトのデジタルモデルを使用して作製するのに使用される任意の技術を指す。代表的な3D印刷技術には、選択的レーザー焼結(SLS)法、熱溶解積層(FDM)法、3Dインクジェット印刷法、デジタルライトプロセッシング(DLP)法および光造形法が挙げられる。
【0019】
本明細書で使用される場合、「印刷可能なインク」および「印刷可能な組成物」は、3D印刷技術を使用してオブジェクトを形成するのに使用することができる任意の組成物を指す。「バイオインク」は、1つまたは複数の所望の生体適合性特性を有する材料を形成する、印刷可能なインクである。例えば、バイオインクは所望の細胞のタイプの接着および増殖を促進する1つまたは複数の材料を含有し得る。印刷されたオブジェクトは、初代細胞および人工多能性幹細胞の付着、増殖および拡散を支持することができる。一部の場合では、バイオインクはヒドロゲルへと形成することができる。バイオインク中の化合物は、化学合成手段等により、化学的官能性を組み込まれるように選択または修飾され得る。化学的官能性は、バイオインク中の成分としての修飾された材料の組み込みを可能とし得る。修飾は、所望の構成成分の化学的共役を可能とし得る。所望の構成成分は、その細胞相互作用特性を維持し得る。そのような組み込みは、細胞接着を妨げることなく、印刷されたオブジェクトの機械的特性の調整を可能とし得る。
【0020】
本明細書で使用される場合、「細胞外マトリックス」および「ECM」は、天然および合成のECM、ならびにECMを構成する1つまたは複数の材料を指す。例えば、ECMは、天然に存在するECMまたは合成技術を使用して作製されたECMを指すことができる。ECMは、天然に存在するECM、例えば、コラーゲン(天然または合成)を構成する1つまたは複数の材料も指すことができる。一部の場合では、「ECM材料」は、特定の材料を指すのに使用される。ECMは、3D印刷を含む様々な技術を使用して作製することができる。ECMは、ヒドロゲル材料を使用して作製することができる。
【0021】
本明細書で使用される場合、「細胞外マトリックス」および「ECM」は、天然および合成のECM、ならびにECMを構成する1つまたは複数の材料を指す。例えば、ECMは、天然に存在するECMまたは合成技術を使用して作製されたECMを指すことができる。ECMは、天然に存在するECM、例えば、天然または合成のいずれかのコラーゲンを構成する1つまたは複数の材料も指すことができる。一部の場合では、「ECM材料」は、特定の材料を指すのに使用される。ECMは、3D印刷を含む様々な技術を使用して作製することができる。ECMは、ヒドロゲル材料を使用して作製することができる。I型コラーゲン、ゼラチン、エラスチンおよびフィブロネクチンなどのECMマトリックス材料は、メタクリレート基で官能化されて光架橋性ヒドロゲル中への組み込みが可能となり得る。ECM材料の、3D印刷された材料などの他の材料およびオブジェクトへの組み込みは、生体適合性を増大し、材料およびオブジェクト内の細胞の付着および相互作用を可能とし得る。材料が細胞付着を可能とする程度は、ECM材料の量、材料上または材料内の結合部位の利用可能性、材料の表面荷電、材料の極性、ならびに材料の機械的特性に応じて変動し得る。
【0022】
本出願は、以下の文書の各々を、それらの全体を参照により組み込む。(a)米国仮出願第63/185,300号明細書、2021年5月6日出願、題名「CONTROLLING THE SIZE OF 3D PRINTING HYDROGEL OBJECTS USING HDROPHILIC MONOMERS, HYDROPHOBIC MONOMERS, AND CROSSLINKERS」、ならびに同じ題名で2022年5月6日に出願された米国非仮出願および/またはPCT出願、(b)米国仮出願第63/185,302号明細書、2021年5月6日出願、題名「MODIFIED 3D-PRINTED OBJECTS AND THEIR USES」、ならびに同じ題名で2022年5月6日に出願された米国非仮出願および/またはPCT出願、(c)米国仮出願第63/185,305号明細書、2021年5月6日出願、題名「PHOTOCURABLE REINFORCEMENT OF 3D PRINTED HYDROGEL OBJECTS」、ならびに同じ題名で2022年5月6日に出願された米国非仮出願および/またはPCT出願、(d)米国仮出願第63/185,299号明細書、2021年5月6日出願、題名「ADDITIVE MANUFACTURING OF HYDROGEL TUBES FOR BIOMEDICAL APPLICATIONS」、ならびに同じ題名で2022年5月6日に出願された米国非仮出願および/またはPCT出願、(e)米国仮出願第63/185,298号明細書、2021年5月6日出願、題名「MICROPHYSIOLOGICAL 3-D PRINTING AND ITS APPLICATIONS」、ならびに同じ題名で2022年5月6日に出願された米国非仮出願および/またはPCT出願。
【0023】
ECMは、アミン基上のリジン残基を、例えば、メタクリレート無水物(MAA)と置換することにより、メタクリレート基で官能化され得る。ECMの(メタ)アクリル化の程度は、AAまたはMAAで修飾された利用可能なアミン基のパーセンテージにより定義することができる。(メタ)アクリル化の程度がより高いと、相関してAAまたはMAAで修飾されたアミン基がより多くなり、結果として遊離アミン基は少なくなる。
【0024】
官能化の程度は、官能化の特定の程度またはタイプを達成するために変動させてもよい。官能化および非官能化成分のハイブリッド形態を使用してもよい。一部の実施形態では、コラーゲンは、修飾されて(メタ)アクリル化コラーゲンを形成し得る。ハイブリッドの組合せを使用してもよく、この場合、メタクリル化および非メタクリル化コラーゲンの両方を含有するヒドロゲルを指すことができる。(メタ)アクリル化および非(メタ)アクリル化コラーゲンを含有するポリ(エチレングリコール)ジアクリレートで作製された3D印刷されたオブジェクトは、例えば、線維芽細胞、内皮細胞、および平滑筋を含む肺由来細胞の、付着、拡散および/または増殖を支持し得る。
【0025】
コラーゲンの代わりに、またはコラーゲンに加えて、様々な生体材料が使用され得る。これらの生体材料は、IV型コラーゲン、フィブロネクチン、ゼラチン、III型コラーゲン、短いペプチド(例えばRGD)、ECMタンパク質の断片、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン(glycosamoinoglycans)、ヒアルロン酸または任意の種(species)からの任意の他のECMを含み得る。これらのECMについての利用可能な結合部位は、異なる化学基による官能化または修飾を介して変化させることができる。これらの化学基は、アミン基または細胞が親和力を有する他の基に結合し得る。
【0026】
ECM組成物は、鋳造、押出または3D印刷用途における使用、例えば組成物を形成するためのバイオインクの使用のために、製剤化(処方(formulate))され得る。一部の実施形態では、これらの組成物は、ヒドロゲルを含む3D印刷された材料への細胞の接着、増殖、拡散および遊走を増大する。これらの3D印刷された材料は、生物学、生物医学、医療機器および/またはヘルスケア用途のために使用され得る。これらの印刷された材料は、診断機器のために使用され得る。これらの印刷されたヒドロゲルは、生体成分の表面への結合部位の緊密な制御を要する表面を必要とする用途に有用であり得る。
【0027】
この開示のある特定の実施形態は、架橋された(メタ)アクリル化および非(メタ)アクリル化ECM材料を含む組成物に関する。組成物は、約5:1~約1:5(例えば、約5:1、約4:1、約3:1、約2:1、約1:1、約1:2、約1:3、約1:4または約1:5)の、(メタ)アクリル化ECM材料と非(メタ)アクリル化ECM材料との比を有し得る。(メタ)アクリル化ECM材料は、約5~約95パーセント(例えば、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%または約95%)の(メタ)アクリル化の程度を有し得る。ECM材料は、コラーゲン、ゼラチン、エラスチンおよびフィブロネクチンから選択することができる。ECM材料はI型コラーゲンであってもよい。(メタ)アクリル化ECM材料は、モノまたはジ(メタ)アクリル化ECMまたはECM様材料を含み得る。
【0028】
ECMは、1つまたは複数のペプチドを含むことができる。適切なペプチドの非限定的な例には、RGD、PHSRN(GGGERCG)GGRGDSPY、GCREKKRKRLQVQLSIRT、GCREKKTLQPVYEYMVGV、GCREISAFLGIPFAEPPMGPRRFLPPEPKKP、GCRDGPQGWGQDRCG、GCRDVPMSMRGGDRCG、GFOGER、KQAGDV、YIGSR、REDV、IKVAV、RNIAEIIKDI、KHIFSDDSSE、VPGIG、FHRRIKA、KRSR、APGL、VRN、AAAAAAAAA、GGLGPAGGK、GVPGI、LPETG(G)n、およびIEGRが挙げられる。適切なペプチドには、インテグリン結合、シンデカン結合、ECM沈着および/またはMMP依存性リモデリングを含む、ネイティブなECMの特性を模倣するペプチド材料も挙げられる。ペプチドは、約0.5mM~約5mM(例えば、約0.5mM、約1mM、約1.5mM、約2mM、約2.5mM、約3mM、約3.5mM、約4mM、約4.5mMまたは約5mM)の量で印刷可能な組成物中に存在し得る。一部の場合では、ECM材料は、約0.5mMのペプチド~約10mMのペプチドを含有することができる。他の場合では、ECM材料は、約5mMのペプチド~約20mMのペプチドを含有することができる。他の場合では、ECM材料は、約10mMのペプチド~約100mMのペプチドを含有することができる。ECMまたはECM様材料は、プロテアーゼに感受性のアミノ酸配列であり得る。プロテアーゼは、Arg-Cプロテイナーゼ、Asp-Nエンドペプチダーゼ、BNPS-スカトール、カスパーゼ1~10、キモトリプシン高特異性([FYW]へのC末端、Pの前ではない)、キモトリプシン低特異性([FYWML]へのC末端、Pの前ではない)、クロストリパイン(クロストリジオペプチダーゼB)、CNBr、エンテロキナーゼ、第Xa因子、ギ酸、グルタミルエンドペプチダーゼ、グランザイムB、ヒドロキシルアミン、ヨードソ安息香酸、LysC、好中球エラスターゼ、NTCB(2-ニトロ-5-チオシアノ安息香酸)、ペプシン、プロリンエンドペプチダーゼ、プロテイナーゼK、ブドウ球菌(Staphylococcal)ペプチダーゼI、サーモリシン、トロンビンおよびトリプシンから選択することができる。
【0029】
組成物は、ポリマー材料をさらに含んでもよい。ポリマー材料は親水性であってもよい。ポリマー材料には、アクリルアミド、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、2-ヒドロキシルエチルメタクリレート、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラ(エチレングリコール)ジメタクリレート、N、N’-メチレンビアクリルアミド、またはアミン末端官能化4アームポリ(エチレングリコール)であり得る。ポリマー材料は、重合化ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(ヒドロキシエチル)(メタクリレート)、ポリN-ヒドロキシルアクリルアミド3-ヒドロキシプロピルアクリレートまたはヒドロキシブチルアクリレートであってもよい。ポリマー材料は、約400~約20,000の重量平均分子量(Mw)を有するポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレートモノマーであってもよい。ポリマー材料は、約2000~約4000のMwを有するポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレートモノマーであってもよい。ポリマー材料は、上述の組成物のいずれかの混合物であってもよい。ポリマー材料は、組成物の約5~50wt.%(例えば、約5wt.%、約10wt.%、約15wt.%、約20wt.%、約25wt.%、約30wt.%、約35wt.%、約40wt.%、約45wt.%または約50wt.%)の量で存在し得る。一部の実施形態では、ポリマー材料は、組成物の約5~約50wt.%(例えば、約5wt.%、約10wt.%、約15wt.%、約20wt.%、約25wt.%、約30wt.%、約35wt.%、約40wt.%、約45wt.%または約50wt.%)の量で存在する、重合化ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレートモノマーであり得る。
【0030】
印刷可能な組成物
この開示の実施形態は、三次元物品を作製する方法であって、印刷可能な組成物の層を表面に堆積させて堆積層を得るステップ、堆積層に照射するステップ、ならびに堆積層が三次元物品を形成するまで堆積するステップおよび照射するステップを繰り返すステップを含む、方法に関し得る。印刷可能な組成物は、(メタ)アクリル化細胞外マトリックス(ECM)材料、非(メタ)アクリル化ECM材料、および光開始剤を含むことができる。ECM材料は、コラーゲン、ゼラチン、エラスチンおよびフィブロネクチンを含むことができる。
【0031】
印刷可能な組成物は、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレートモノマーを含むことができる。印刷可能な組成物は、モノまたはジ(メタ)アクリル化ECMまたはECM様材料を含み得る。ECMまたはECM様材料は、RGD、PHSRN(GGGERCG)GGRGDSPY、GCREKKRKRLQVQLSIRT、GCREKKTLQPVYEYMVGV、GCREISAFLGIPFAEPPMGPRRFLPPEPKKP、GCRDGPQGWGQDRCG、GCRDVPMSMRGGDRCG、GFOGER KQAGDV、YIGSR、REDV、IKVAV、RNIAEIIKDI、KHIFSDDSSE、VPGIG、FHRRIKA、KRSR、APGL、VRN、AAAAAAAAA、GGLGPAGGK、GVPGI、LPETG(G)n、およびIEGRの1つまたは複数を含み得る。適切なペプチドには、インテグリン結合、シンデカン結合、ECM沈着および/またはMMP依存性リモデリングを含む、ネイティブなECMの特性を模倣するペプチド材料も挙げられる。ペプチドは、約0.5mM~約5mM(例えば、約0.5mM、約1mM、約1.5mM、約2mM、約2.5mM、約3mM、約3.5mM、約4mM、約4.5mMまたは約5mM)の量で印刷可能な組成物中に存在し得る。ECMまたはECM様材料は、プロテアーゼに感受性の配列を含むことができる。プロテアーゼは、Arg-Cプロテイナーゼ、Asp-Nエンドペプチダーゼ、BNPS-スカトール、カスパーゼ1~10、キモトリプシン高特異性([FYW]へのC末端、Pの前ではない)、キモトリプシン低特異性([FYWML]へのC末端、Pの前ではない)、クロストリパイン(クロストリジオペプチダーゼB)、CNBr、エンテロキナーゼ、第Xa因子、ギ酸、グルタミルエンドペプチダーゼ、グランザイムB、ヒドロキシルアミン、ヨードソ安息香酸、LysC、好中球エラスターゼ、NTCB(2-ニトロ-5-チオシアノ安息香酸)、ペプシン、プロリンエンドペプチダーゼ、プロテイナーゼK、ブドウ球菌(Staphylococcal)ペプチダーゼI、サーモリシン、トロンビンおよびトリプシンから選択することができる。
【0032】
(メタ)アクリル化ECM材料と非(メタ)アクリル化ECM材料との比は、約5:1~約1:5(例えば、約5:1、約4:1、約3:1、約2:1、約1:1、約1:2、約1:3、約1:4または約1:5)であってもよい。(メタ)アクリル化ECM材料は、約5~約95パーセント(例えば、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%または約95%)の(メタ)アクリル化の程度を有し得る。光開始剤は、フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィン酸リチウム(LAP)、フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィン酸ナトリウム(NAP)トリメチルベンゾイルベースの光開始剤、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(TPOナノ粒子)イルガキュアクラスの光開始剤、ルテニウム、およびリボフラビン、またはそれらの混合物を含み得る。
【0033】
この開示の実施形態は、1つまたは複数の添加剤が、ポリマー、光活性染料、天然の細胞外マトリックス、光開始剤、ペプチド、アミノ酸、成長因子、変性細胞外マトリックス、細胞外マトリックス断片またはそれらの混合物を含む、印刷可能な組成物を含み得る。光活性染料は、300nm~420nmの間の吸光度スペクトルを有するUV染料であってもよい。光活性染料は、300nm~400nmの波長範囲を有し得る。光活性染料は非細胞毒性であり得る。光活性染料は、分子構造中にベンザイン環を含み得る。光活性染料は、キノロンイエロー、UV染料またはそれらと類似の分子構造を有する染料であってもよい。光活性染料はUV 386A染料であってもよい。
【0034】
本明細書において記載されている印刷可能な組成物は、3D印刷を使用して足場を作製するのに使用することができる。印刷された足場は、例えば、適切な緩衝液中に置かれたときに非細胞毒性となる適切に製剤化されたバイオインクを使用して、製剤化され得る。足場を形成するために選択されたバイオインクは、結果として生じる足場の所望の生体適合性に応じて選択することができる。例えば、足場は、肺由来細胞などの選択された細胞タイプの接着、成長および増殖を支持し得る。
【0035】
印刷可能な組成物は、プロトン性溶媒を含むことができる。プロトン性溶媒は、水、ポリエチレングリコール、グリコールジアクリレート誘導体またはそれらの混合物を含むことができる。一部の場合では、印刷可能な組成物は、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)またはPBS(リン酸緩衝生理食塩水)の緩衝液を含有することができる。ポリエチレングリコールジアクリレートは、1wt.%前後~20wt.%前後に変動し得る。ポリエチレングリコールジアクリレートの非限定的な例には、ポリエチレン(olyehylene)ジアクリレート3400(PEGDA3400)、ポリエチレンジアクリレート6000(PEGDA6000)、ポリエチレンジアクリレート575(PEGDA575)およびそれらの混合物が挙げられる。印刷可能な組成物は、約1wt.%~約20wt.%のHPAまたはHBAを含有することができる。印刷可能な材料は、約0.5wt.%~約3wt.%のN-ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)も含有することができる。印刷可能な材料は、約0.5wt.%~約10wt.%の(メタ)アクリル化ECM材料および/または非(メタ)アクリル化ECM材料を含有することもできる。さらに、印刷可能な材料は、約0.5wt.%~約3wt.%のPEG-アクリレートCGRGDS、例えば、PEG3400アクリレートCGRGDSを含有することもできる。印刷可能な材料は、約0.5%~約5%の光開始剤および約0.1%~約5%の光吸収剤染料を含有することができる。
【0036】
組成物は、初代細胞および/または人工多能性幹細胞の付着、増殖および拡散を支持することができる。組成物は、成形されたかまたは3D印刷されたヒドロゲル物品であってもよい。組成物は、成形されたかまたは3Dヒドロゲル印刷された、光架橋された物品であってもよい。成形されたかまたは3D印刷されたヒドロゲル物品は、臓器の三次元物品であってもよい。臓器は、哺乳動物の臓器であってもよい。
【0037】
本明細書において記載されている印刷可能な組成物は、臓器または臓器の一部を模倣または複製する三次元オブジェクトへと形成することができる。例えば、本明細書において記載されている印刷可能な組成物は、例えば、3D印刷技術を使用して、肺の構成(アーキテクチャ(architecture))を模倣または複製する構造へと形成することができる。印刷可能な組成物は、細胞の接着および成長のための足場を形成するのに使用することができ、結果として、肺のガス交換機能を行うことができる構造などの、臓器の1つまたは複数の所望の特性を有する構造が生じる。これらのオブジェクトは、ヒドロゲルを含むことができる。臓器または臓器の一部は、好ましい一実施形態では、ヒト肺であることができる。3Dオブジェクトの形状は特に限定されず、管の形状であってもよく、または臓器もしくは臓器の断片と実質的に同じ形状、サイズであってもよく、および/または同じ相対寸法を有する。
【0038】
一部の実施形態では、印刷可能な組成物から形成されたオブジェクトは、臓器もしくは臓器の断片と実質的に同じ形状、サイズであり、および/または同じ相対寸法を有する。ある特定の実施形態では、臓器または臓器の断片は、血管、気管、気管支、食道、尿管、腎尿細管、胆管、腎管、胆管、肝管、神経導管(nerve conduit)、CSFシャント、肺、腎臓、心臓、肝臓、脾臓、脳、胆嚢、胃、膵臓、膀胱、リンパ管、骨格骨、軟骨、皮膚、腸、筋肉、喉頭、または咽頭を含む。追加の実施形態では、血管の形状は、肺動脈、腎動脈、冠動脈、末梢動脈、肺静脈または腎静脈を含む。ある特定の実施形態において、構造は血液透析用グラフトを含む。他の実施形態は、構造が実質的に肺葉、肺、肺の気道樹(気道ツリー(airway tree))、肺血管系またはそれらの組合せの形状である場合を含む。一部の実施形態では、強化は、外圧が構造に加わるときに、構造を通る空気流または血液(もしくは流体)流を維持することを含む。
【0039】
この開示の実施形態は、開示される方法により形成される、官能化および非官能化細胞外マトリックス、マトリックス断片、ペプチドおよび生理活性成分の使用に関する。
【0040】
3D組成物
この開示の実施形態は、三次元物品を作製する方法であって、印刷可能な組成物の層を表面に堆積させて堆積層を得るステップ、堆積層に照射するステップ、ならびに堆積層が三次元物品を形成するまで堆積するステップおよび照射するステップを繰り返すステップを含む、方法に関し得る。印刷可能な組成物は、ヒドロゲル材料、修飾または未修飾の細胞外マトリックス(ECM)材料および光開始剤を含み得る。
【0041】
三次元(3D)ヒドロゲル構造は特に限定されず、例えば1つまたは複数の異なる重合化モノマーで作製された複合構造であることができる。本発明において使用され得るヒドロゲル材料は当業者に公知であり得、それを作製する方法も同様である。例えば、Calo et al., European Polymer Journal Volume 65, April 2015, Pages 252-267に記載されているヒドロゲルが使用され得る。一部の実施形態では、ヒドロゲル構造は、重合化(メタ)アクリレートおよび/または(メタ)アクリルアミドヒドロゲルを含む。一部の実施形態では、構造は、重合化ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、重合化ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリルアミド、重合化ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート/(メタクリルアミド)、ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸の塩、ポリメタクリル酸の塩、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリビニルアルコール、ポリ無水物、例えば、ポリ(メタクリル酸)無水物、ポリ(アクリル酸)無水物、ポリセバシン酸無水物、コラーゲン、ポリ(ヒアルロン酸)、ヒアルロン酸含有ポリマーおよびコポリマー、ポリペプチド、デキストラン、デキストラン硫酸、キトサン、キチン、アガロースゲル、フィブリンゲル、ダイズ由来のヒドロゲル、アルギネート系ヒドロゲル、ポリ(アルギン酸ナトリウム)、ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィン酸リチウム(LAP)、フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィン酸ナトリウム(NAP)ならびにそれらの組合せを含むポリマーを含む。一部の実施形態では、ヒドロゲルポリマーのMwは、約400Da、500Da、600Da、700Da、800Da、900Da、1000Da、1100Da、1200Da、1300Da、1400Da、1500Da、1600Da、1700Da、1800Da、1900Da、2000Da、2100Da、2200Da、2300Da、2400Da、2500Da、2600Da、2700Da、2800Da、2900Da、3000Da、3100Da、3200Da、3300Da、3400Da、3500Da、3600Da、3700Da、3800Da、3900Da、4000Da、4100Da、4200Da、4300Da、4400Da、4500Da、4600Da、4700Da、4800Da、4900Da、5000Da、5100Da、5200Da、5300Da、5400Da、5500Da、5600Da、5700Da、5800Da、5900Da、6000Da、6100Da、6200Da、6300Da、6400Da、6500Da、7000Da、7500Da、8000Da、8500Da、9000Da、9500Da、10000Da、15000Da、または20000Daである。一部の実施形態では、ヒドロゲルポリマーはNAPを主成分として含み、かつ、本明細書において記載されている、すなわち、PEGDAで官能化された1つまたは複数のペプチドおよび/またはコラーゲンをさらに含む。
【0042】
一部の実施形態では、ヒドロゲルは架橋ポリマーを含む。一部の実施形態では、ポリマーは、ポリマー中の架橋可能な部分のパーセンテージに対して、約0%~約10%、約10%~約20%、約20%~約30%、約30%~約40%、約40%~約50%、約50%~約60%、約60%~約70%、約70%~約80%、約80%~約90%または約90%~約100%架橋されている。架橋部分は、例えば、(メタ)アクリレート基を含み得る。
【0043】
この開示の実施形態は、開示される方法により形成される、官能化および非官能化細胞外マトリックス、マトリックス断片、ペプチドおよび生理活性成分の使用に関する。一部の場合では、これらの細胞外マトリックスは、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、および/またはフィブロネクチンを含む材料から形成され得る。一部の場合では、この化合物、例えばコラーゲンは、メタクリレート無水物と反応して、
図1に示すようなメタクリル化コラーゲンなどのメタクリル化化合物を形成し得る。
【0044】
本明細書において開示されているように、ヒドロゲル中のコラーゲン官能化の程度(degree of functionalized)(DOF)は、例えば(メタ)アクリル化コラーゲンと非(メタ)アクリル化コラーゲンとの比において変動し得る。一部の場合では、コラーゲンはハイブリッドであるか、または官能化および非官能化成分の両方を含有し得る。例えば、ハイブリッドは、(メタ)アクリル化および非(メタ)アクリル化コラーゲンの両方を含有するヒドロゲルを指し得る。(メタ)アクリル化および非(メタ)アクリル化コラーゲンを含有するポリ(エチレングリコール)ジアクリレートで作製された3D印刷されたオブジェクトは、肺由来の線維芽細胞、内皮細胞および平滑筋の、付着、拡散および/または増殖を支持し得る。
【0045】
本明細書において開示されているように、コラーゲンの代わりに、代替の生体材料が使用され得る。これらの生体材料は、IV型コラーゲン、フィブロネクチン、ゼラチン、III型コラーゲン、短いペプチド(例えばRGD)、ECMタンパク質の断片、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン(glycosamoinoglycans)、ヒアルロン酸または任意の種からの任意の他の細胞外マトリックスを含み得る。
【0046】
印刷可能な組成物は、細胞の付着および/または機械的特性を強化するために修飾され得る。これらの印刷可能な組成物またはインクは、アクリレート反応性と直交する固有の機械的特性または反応性(unique mechanical properties or reactivity orthogonal to acrylate reactivity)を有し得る。インクまたは印刷可能な組成物の成分は、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレートモノマーを含み得る。印刷可能な組成物は、モノまたはジ(メタ)アクリル化ECMまたはECM様材料を含み得る。ECMまたはECM様材料は、RGD、PHSRN(GGGERCG)GGRGDSPY、GCREKKRKRLQVQLSIRT、GCREKKTLQPVYEYMVGV、GCREISAFLGIPFAEPPMGPRRFLPPEPKKP、GCRDGPQGWGQDRCG、GCRDVPMSMRGGDRCG、GFOGER、KQAGDV、YIGSR、REDV、IKVAV、RNIAEIIKDI、KHIFSDDSSE、VPGIG、FHRRIKA、KRSR、APGL、VRN、AAAAAAAAA、GGLGPAGGK、GVPGI、LPETG(G)n、およびIEGRの1つまたは複数を含み得る。適切なペプチドには、インテグリン結合、シンデカン結合、ECM沈着および/またはMMP依存性リモデリングを含む、ネイティブなECMの特性を模倣するペプチド材料も挙げられる。ペプチドは、約0.5mM~約5mM(例えば、約0.5mM、約1mM、約1.5mM、約2mM、約2.5mM、約3mM、約3.5mM、約4mM、約4.5mMまたは約5mM)の量で印刷可能な組成物中に存在し得る。あるいは、または加えて、3D印刷されたオブジェクトは、1つまたは複数のペプチドでさらに表面を修飾され得る。表面の修飾は、未反応の部分を1つまたは複数のペプチドを含む溶液に接触させることにより、3D印刷されたオブジェクト中の未反応の(メタ)アクリレート部分を1つまたは複数のペプチドと反応させることによって、達成され得る。この開示は、ペプチドについて上で説明したのと同様な、本明細書において開示されている他のECMまたはECM様材料を用いた表面修飾を含むことを理解されたい。ECMまたはECM様材料は、プロテアーゼに感受性の配列を含むことができる。プロテアーゼは、Arg-Cプロテイナーゼ、Asp-Nエンドペプチダーゼ、BNPS-スカトール、カスパーゼ1~10、キモトリプシン高特異性([FYW]へのC末端、Pの前ではない)、キモトリプシン低特異性([FYWML]へのC末端、Pの前ではない)、クロストリパイン(クロストリジオペプチダーゼB)、CNBr、エンテロキナーゼ、第Xa因子、ギ酸、グルタミルエンドペプチダーゼ、グランザイムB、ヒドロキシルアミン、ヨードソ安息香酸、LysC、好中球エラスターゼ、NTCB(2-ニトロ-5-チオシアノ安息香酸)、ペプシン、プロリンエンドペプチダーゼ、プロテイナーゼK、ブドウ球菌(Staphylococcal)ペプチダーゼI、サーモリシン、トロンビンおよびトリプシンから選択することができる。
【0047】
細胞外マトリックスについての利用可能な結合部位は、異なる化学基による官能化または修飾を介して変化させることができる。これらの化学基は、アミン基または細胞が親和力を有する他の基に結合し得る。以下は、ECMまたはECM/ECM様の印刷可能な組成物またはインクを作製するのに使用することができる生理活性成分R1を有する、モノおよびジ(メタ)アクリレートの例である。
【0048】
【化1】
Rは水素またはメチル基であり得る。R
1は以下のいずれかであり得る:
RGD フィブロネクチン、ビトロネクチン細胞接着
PHSRNKRGD フィブロネクチン細胞接着
GCREKKRKRLQVQLSIRT ラミニン細胞接着
GCREKKTLQPVYEYMVGV フィブロネクチンに親和力を有するペプチド
GCREISAFLGIPFAEPPMGPRRFLPPEPKKP Col IVに親和力を有するペプチド、および
LMNGCRDGPQGWGQDRCG 細胞分解性ペプチド
GCRDVPMSMRGGDRCG 細胞分解性ペプチド
KQAGDV 平滑筋細胞接着
YIGSR ラミニンB1細胞接着
REDV フィブロネクチン内皮細胞接着
IKVAV ラミニン神経突起伸張
RNIAEIIKDI ラミニンB2神経突起伸張
KHIFSDDSSE 神経細胞接着分子の星状細胞の接着
VPGIG エラスチンは人工ECMの弾性率を強化する
FHRRIKA ヘパリン結合ドメインは造骨細胞の石灰化を改善する
KRSR ヘパリン結合ドメインの造骨細胞の接着
APGL コラゲナーゼ媒介性分解
VRN プラスミン媒介性分解
AAAAAAAAA エラスターゼ媒介性分解
GGLGPAGGK プロテアーゼ感受性ペプチド
GVPGI 機械的安定性に関連するエラスチン
LPETG(G)
n ソルターゼ媒介性ライゲーション
IEGR プロテアーゼ感受性
ECM成分またはECM成分のプロテアーゼ消化物
単糖類、オリゴ糖類、多糖類(ヒアルロン酸、ヘパラン、アグリカン、コンドロイチン、シアル酸)
酸化還元(レドックス)反応性
スルフヒドリル(-SH)
ジスルフィド(S-S)
R
1は以下のプロテアーゼに感受性の以下の配列のいずれかであることもでき、[P4…P2’]はプロテアーゼ切断部位配列の指定について一般的に受け入れられている命名法である。
【0049】
【0050】
【0051】
修飾ECM材料と未修飾ECM材料との比は、用途に基づき最適化され得る。例えば、修飾ECM材料と未修飾ECM材料との比は、材料特性および所望の細胞付着などのパラメーターに基づき最適化され得る。一部の実施形態では、修飾ECM材料と未修飾ECM材料との比は、約5:1~約1:5(例えば、約5:1、約4:1、約3:1、約2:1、約1:1、約1:2、約1:3、約1:4または約1:5)であってもよい。修飾ECM材料は、約5~約95パーセント(例えば、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%または約95%)の修飾の程度を有し得る。一部の場合では、修飾はECMの(メタ)アクリル化であってもよい。これらの実施形態では、(メタ)アクリル化ECM材料と非(メタ)アクリル化ECM材料との比は、約5:1~約1:5(例えば、約5:1、約4:1、約3:1、約2:1、約1:1、約1:2、約1:3、約1:4または約1:5)であってもよい。(メタ)アクリル化ECM材料は、約5~約95パーセント(例えば、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%または約95%)の(メタ)アクリル化の程度を有し得る。
【0052】
組成物は光開始剤を含んでもよい。光開始剤は特に限定されない。光開始剤は光活性染料であってもよい。光活性染料は、100~420nmの間の吸光度スペクトルを有するUV染料であってもよい。UV染料は、300nm~420nmの間の吸光度スペクトルを有し得る。光活性染料は、300nm~400nmの波長範囲を有し得る。光活性染料は非細胞毒性であり得る。光活性染料は、分子構造中にベンザイン環を含み得る。光活性染料は、キノロンイエロー、UV染料またはそれらと類似の分子構造を有する染料であってもよい。光活性染料はUV 386A染料であってもよい。
【0053】
光開始剤は、例えば、ベンゾフェノン、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(BAPO)、2-ヒドロキシ-2-メチル-l-フェニル-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ(hydroxethoxy))-2-メチルプロピオフェノン、2,2’-アゾビス[2-メチル-n-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸リチウム(LAP)、およびエチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィン酸、フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィン酸ナトリウム(NAP)、トリメチルベンゾイルベースの光開始剤、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(TPOナノ粒子)イルガキュアクラスの光開始剤、ルテニウム、およびリボフラビン、またはそれらの混合物を含み得る。
【0054】
方法
ある特定の実施形態では、ヒドロゲル足場、オブジェクト、および/または作製方法が開示される。オブジェクトは3D印刷によって形成され得る。上に列挙される組成物および材料は、3D印刷されたオブジェクトを形成するために3Dプリンタ中のインクとして使用され得る。
【0055】
当業者は当該技術分野において公知の印刷法を理解し、非限定的な例には、選択的レーザー焼結(SLS)法、熱溶解積層(FDM)法、3Dインクジェット印刷法、デジタルライトプロセッシング(DLP)法および光造形法が挙げられる。熱溶解積層(FDM)法では、インクは、CADファイルによって画定されたツールパスに沿って押出ヘッドにより堆積される。材料は25μm厚さの微細な層に堆積され、部品は下から上へと、1層ずつ作られる。熱溶解積層法をベースとする一部の3Dプリンタは、一方が建築材料(building material)であり、他方が柱(pillar)などの支持材料である2つの異なる材料を押し出すことができる、デュアルプリントノズルヘッドを備える。支持材料は水で洗浄することができる。
【0056】
3Dインクジェット印刷は、速度、低コスト、高精度および使い易さのために有効に最適化され、工学的設計の概念段階から初期段階の機能試験に至るまで、可視化に適したものとなる。インクジェット印刷法において、複雑な3D物品は、射出とそれに続くUV/Vis光によりインク組成物から生成される。インクジェット印刷プロセスにおいて、光硬化性インクは、ビルディングプラットフォーム上に、いくつかのノズルを通して、CADファイルにより画定されるパターンで射出され得る。
【0057】
3D印刷技術のうちの効率的な技術は、デジタルライトプロセッシング(DLP)法または光造形法(SLA)である。DLPまたはSLA法を使用する3Dプリンタ中、インク材料はバット上に重ねられるかまたはシート上に広げられ、インクの所定の領域または表面が、デジタルマイクロミラーデバイスまたは回転鏡により制御された紫外-可視(UV/Vis)光に曝露される。DLP法では、追加の層は繰り返しまたは連続的に置かれ、各層は所望の3D物品が形成されるまで硬化される。SLA法は、インクが放射線ビームの線により固化する点で、DLP法とは異なる。3D印刷の他の方法は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、3D Printing Techniques and Processes by Michael Degnan, Dec 2017, Cavendish Square Publishing, LLCにおいて見出され得る。
【0058】
一部の実施形態では、3D印刷されたオブジェクトが形成されると、細胞はその上に堆積される。
【実施例】
【0059】
以下の実施例は、当業者に例示し説明を提供するために、本開示の一部の実施形態の特定の態様を記載する。実施例は、この開示の一部の実施形態を理解および実践するのに有用な特定の方法を提供するのみであるため、実施例は、この開示を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0060】
印刷
実施例において使用されるすべての試料は、3Dインクジェット印刷法またはデジタルライトプロセッシング(DLP)法を使用して調製し、バイオインクの成分を混合し、次いで3Dオブジェクトを、例えば、Labfab反転デジタルライトプロジェクション(DLP)3D印刷システムを使用して印刷した。
【0061】
バイオインクの成分は、利用可能である場合には商業的供給源から調達した。生物学的に活性なペプチドをマイケル型反応を行うことにより合成して、ペプチドを1つまたは複数の(メタ)アクリレートモノマーまたはポリマーに連結した。
【0062】
細胞接着調査
以下の細胞接着試験を、以下のプロトコールの少なくとも一部に従って行った。最初に3D印刷されたディスクを得、完全にメタクリル化していないコラーゲンで作製されている場合には、ディスクを、滅菌された1MのNaHCO3を用いる架橋処理に供した。ディスクを少なくとも30分、DPBS++で2回洗浄した。次いで、ディスクを5×Anti-Anti溶液(DPBS--中に希釈した100×抗生物質抗真菌剤)に終夜入れた。次いで、5×Anti-antiを、各々少なくとも30分間、2回のPBS洗浄液に入れ替えた。光学96ウェルプレートを使用して、3つのウェルを各々200uLの洗浄液で充填した。SpectraMax i3x(または等価物)を使用して、これらの3つのウェルから洗浄液の平均の384nmの吸光度が得られた。384nmの吸光度は0.1未満であり、微量の染料/PIが許容可能なレベルにあることを示した。
【0063】
次いで、ディスクを500uLのLFN GM(肺線維芽細胞成長培地)を有するウェルに移し、所定の数の細胞を溶液に添加する。所定の時間後、10%ホルマリン+0.1%のTritonX100を、対照には300uL/ウェル、3Dディスクを含有するウェルには500uL/ウェル添加し、室温で15分間インキュベートした。次いで定着薬を廃棄物容器へと吸引し、試料をDPBS--で洗浄した(3×5分間の洗浄)。次いでディスクを、1:20,000のSytoxOrangeおよび3:400のPhalloidin 488を含有する溶液で染色した。最終のDPBS洗浄の後、ディスクを細胞接着について評価した。
【0064】
実施例1
肺線維芽細胞を、ガラス(対照)、50%DOFのコラーゲンを含有するバイオインク、90%DOFのコラーゲンを含有するバイオインク、ならびに0%DOFのコラーゲンおよび90%DOFのコラーゲン(1:2の比)を含有するバイオインク上で7日間培養した。
【0065】
バイオインクを上記の手順により製剤化した(処方した)。次に、官能化の程度が異なるコラーゲンを含むバイオインクを、ディスクへと3D印刷した。上記の手順に従って、肺線維芽細胞を各試料上に堆積させた。線維芽細胞を、ガラス(対照)、50%DOFのコラーゲンを含有するバイオインクからの印刷されたディスク、90%DOFを含有するバイオインクからの印刷されたディスク、ならびに0%DOFのコラーゲンおよび90%DOFのコラーゲン(1:2の比)のハイブリッドを含有するハイブリッドバイオインク製剤からの印刷されたディスク上で7日間培養した。画像を、
図2(A)に示すように撮影した。細胞の拡散、密度および細胞カバー率の%のグラフを、
図2(B)の細胞の拡散、密度および細胞カバー率の%のグラフに示すように、各試料についてプロットした。
【0066】
実施例2
肺動脈内皮細胞を、ガラス、9%のPEGDAハイブリッドからの印刷されたディスク、9%のPEGDAからの印刷されたディスク上で1日間培養した。
【0067】
バイオインクを上記の手順により製剤化した。PEGDAおよびPEGDAハイブリッドを含むバイオインクを、ディスクへと3D印刷した。上記の手順に従って、肺動脈内皮細胞を各試料上に堆積させた。次いで、肺動脈内皮細胞を、ガラス(対照)、PEGDAおよびPEGDAハイブリッドディスク上で1日間培養した。画像を、
図3(A)に示すように撮影した。細胞の拡散、密度および細胞カバー率の%のグラフを、
図3(B)の細胞の拡散、密度および細胞カバー率の%のグラフに示すように、各試料についてプロットした。
【0068】
実施例3
PEGDA MW3400を含む3D印刷されたディスク、95%DOFのコラーゲンおよび0%DOFのコラーゲン(2:1比)を含む3D印刷されたディスク上での付着および増殖に対する肺平滑筋細胞の能力を調査した。
【0069】
バイオインクを上記の方法により製剤化した。バイオインクを3D印刷して、PEGDA MW 3400を含むディスク、95%DOFのコラーゲンおよび0%DOFのコラーゲン(2:1比)を含む3D印刷されたディスクを形成した。肺平滑細胞(Lung smooth cells)を、上記の方法に従ってディスク上に堆積させた。細胞を7日間の経過にわたり、ディスクにわたり付着、増殖および拡散させた。2、5および7日目のディスクの画像を、
図4に示すように撮影した。
【0070】
実施例4
官能化と非官能化コラーゲンとの異なる比を有するバイオインクから作製された3D印刷されたオブジェクトへの細胞接着特性の数。バイオインクC201、C202およびC203を、以下の表2中の構成成分(component)を含めて形成した。これらのバイオインクを、上記の方法に従って3D印刷した。
【0071】
【0072】
印刷後、上記の方法に従って各オブジェクト上に細胞を堆積させた。細胞接着を各試料C201、C202、C203で測定して、
図5A上にプロットした。
図5Bは試料の画像を示す。
【0073】
グラフ5Cに示すように、試料C201はC202およびC203に対して顕著により大きい細胞接着を示した。
【0074】
実施例5
官能化および非官能化コラーゲンを含有する3D印刷されたバイオインクを調べて、肺線維芽細胞の付着および増殖への支持(support)を日毎に評価した。
【0075】
30 DOFのハイブリッドコラーゲン(0 DOF(非メタクリル化コラーゲン)と90 DOF(メタクリル化(Methaycrylated)コラーゲン)との混合物)を含むハイブリッドバイオインクを、固体(0.5~2wt.%)としてのLAPをPEGDA 3400(5~14wt.%)およびHPA(8~17wt.%)を含む水溶液に添加することにより形成し、結果として生じた溶液を透明(clear)になるまでスピード混合(speed mix)した。染料(0.12%)を添加し、溶液がpH2~3の間であることを確認した。次に、30 DOFのハイブリッドコラーゲン(40~55wt.%)を添加し、溶液を均質になるまで撹拌した。官能化の程度は30%であった。バイオインクを3D印刷した。肺細胞を、上記の方法に従って試料上に堆積させた。細胞の付着および増殖の量を、1、4および7日目に画像化し、
図6に示した。
【0076】
実施例6
細胞接着特性に対するHEAA(%)成分の効果を調べた。
図7で説明された3D印刷されたディスクを上記の方法に従って得、細胞を上記の方法に従ってディスク上に堆積させた。
【0077】
細胞接着に対するHEAA(%)成分の効果は、
図7においてみることができる。
図7Aはバイオインク中の成分の比を示す。5%、10%および20%のHEAAを含む試料を試験し、細胞接着を
図7Bに示す。
【0078】
実施例7
細胞の接着および増殖に対するCollMA DOFの効果(>90%、約50%、ハイブリッド(50%の非MA、50%のHM))。以下の試料の組成を含む3D印刷バイオインクにより、試料を形成した。
試料1組成物
PEGDA3.4k(3~10wt.%);LAP(0.3~1.0wt.%);UV386A;ColMA(90 DOF)
試料2組成物
PEGDA3.4k(3~10wt.%);LAP(0.3~1.0wt.%);UV386A;ColMA(50 DOF)
試料3組成物
PEGDA3.4k(3~10wt.%);LAP(0.3~1.0wt.%);UV386A;ColMAハイブリッド(0 DOF+90 DOF)
【0079】
レオロジーを測定した。
図8Aのグラフに結果を示す。
【0080】
Labfab反転デジタルライトプロジェクション(DLP)3D印刷システムを使用してバイオインクを3D印刷した。線維芽細胞を堆積させ、上記の手順によりインキュベートした。
図8Eは、日毎の細胞拡散、細胞密度および細胞カバー率のパーセントのグラフを示す。細胞拡散、細胞密度およびカバー率のパーセントを、上記の手順により、1、4および7日目に
図8B~Dに示すように計算した。試料間の細胞拡散、細胞密度および細胞カバー率のパーセントのグラフを
図8Eにグラフ化した。示すように、細胞の拡散は、7日目にはハイブリッドおよび50%DOFインクで改善した。細胞は、7日間の経過にわたり、90%DOFおよびハイブリッドインクと比較して、50%DOFインク上で活性に増殖した。この1つのモデルは、非メタクリル化コラーゲンがハイブリッドゲルから溶出し得るということである。
【0081】
実施例8
PAEC細胞の細胞密度、細胞の拡散および細胞カバー率の比較。
【0082】
PAEC細胞を、10,500/cm
2の量で播種し、1日間培養した。試料をガラススライドと比較した。
図9に示すように、細胞密度、細胞の拡散および細胞カバー率を、試料と対照との間で比較した。
【0083】
実施例9
上記の試料1~3のような成分を有する試料を、5つの異なるバッチのコラーゲンを使用して製造した。これらのバッチの各々について、インク成分を水中で混合し、次いでインクをディスクへと3D印刷することにより試料を形成した。各試料に、5000細胞/cm2(PAEC)を播種した。加えて、ガラス対照にPARCを播種した。細胞拡散、細胞密度、細胞カバー率のパーセントを、1、4および7日目に評価した。
【0084】
実施例10
x%DOFの Col Iを有する5%のPEGDA上のLFN
【0085】
官能化の程度の異なる5%のPEGDAおよびI型コラーゲンの試料を製造した。試料には、ガラス対照、50%の程度のI型コラーゲン官能化、90%のI型コラーゲン官能化、およびハイブリッド試料を含めた。試料を、インク成分を水中で混合し、次いでインクをディスクへと3D印刷することにより形成した。上記に記載されているものと同様の方法で、各試料に細胞を播種した。
【0086】
図10Aに示すように、細胞拡散、細胞密度、細胞カバー率のパーセントおよび画像を、1日目に各試料間で比較した。
図10Bに示すように、細胞拡散、細胞密度、細胞カバー率のパーセントおよび画像を、4日目に各試料間で比較した。
図10Cに示すように、細胞拡散、細胞密度、細胞カバー率のパーセントおよび画像を、7日目に各試料間で比較した。
図10Dに示すように、細胞拡散、細胞密度および細胞カバー率のパーセントを、各試料について日毎にグラフ化した。
【0087】
実施例11
この試験は、AC42(6~12wt.%のHPA;6~12wt.%のPEGDA3.4k、様々なメタクリル化コラーゲン、LAP、UV染料を有するバイオインク)の生体適合性を評価した。バイオインクをLabFabプリンタ上で印刷して、3つの時点の試験(1、4、7日)のための3mmのディスクおよび1mmのディスクを形成した。これらのディスクを、プラットフォームに接着した。細胞を播種する前のディスクの画像を、
図11Aに示す。
【0088】
ディスクを、24ウェルプレート中、1MのNaHCO3中で10分架橋した。架橋に続けて、ディスクをPBS++洗浄のために速度60の振盪プレート上のペトリ皿に移した(2回、少なくとも各10分間)。終夜の5×洗浄のために、ディスクをウェルプレートに移した。
【0089】
LFN細胞を各ディスクに播種した。10Kの細胞を各ウェルに添加して、各試料ディスクに播種した。ウェルあたり20Kの細胞を添加して、対照に播種した。
図11Bに示すように、細胞拡散、細胞密度、細胞カバー率のパーセントおよび画像を、1日目に各試料間で比較した。細胞は1日目には良好に拡散した(非常にコンフルエントとなった)。
図11Cに示すように、細胞拡散、細胞密度、細胞カバー率のパーセントおよび画像を、4日目に各試料間で比較した。細胞は4日目には完全にコンフルエントとなった。
図11Dに示すように、細胞拡散、細胞密度、細胞カバー率のパーセントおよび画像を、7日目に各試料間で比較した。細胞は7日目には互いに重なり合っていた。ディスクは高い細胞付着を有したが、一部は4日目および7日目にはコンフルエントな細胞シートから剥がれ落ち、LFN試験についての細胞密度は低減し得る。
【0090】
実施例12
図12A~12Bは、LFN、PAECまたはSAEC種を播種したAC42 1mmディスク、3mmディスク、溶出対照およびガラス対照の領域カバー率のパーセント、細胞拡散の比較および細胞密度の比較を示す。AC42バイオインクをLabFabプリンタ上で印刷して、3つの時点の試験(1、4、7日)のための3mmのディスクおよび1mmのディスクを形成した。これらのディスクを、プラットフォームに接着した。
図12Aにディスクの画像を示す。
【0091】
ディスクを、24ウェルプレート中、1MのNaHCO3中で10分架橋した。架橋に続けて、ディスクをPBS++洗浄のために速度60の振盪プレート上のペトリ皿に移した(2回、少なくとも各10分間)。終夜の5×洗浄のために、ディスクをウェルプレートに移した。LFN、PAECまたはSAEC細胞を各ディスクに播種した。
【0092】
図12Aは、LFN、PAECまたはSAEC種を播種したAC42 1mmディスク、3mmディスク、溶出対照およびガラス対照の、1日目の領域カバー率のパーセント、細胞の拡散の比較および細胞密度の比較を示す。
図12Bは、LFN、PAECまたはSAEC種を播種したAC42 1mmディスクおよび3mmディスクの、1日目の領域カバー率のパーセント、細胞の拡散の比較および細胞密度の比較を示す。
【0093】
実施例13
2~5wt.%のHPAまたはHBA、1~5wt.%のPEGDA575、3~8wt.%のPEGDA6000、1~6mMのPEG3400アクリレートCGRGDS、LAP、UV386Aおよび水を含むバイオインクから、ディスクを印刷した。
【0094】
PAECおよびSAECカバー率を、1および4日目に調べた。
図14Aは、2~5wt.%のHPA、1~2wt.%のPEGDA575、3~8wt.%のPEGDA6000、1~6mMのPEG
3400アクリレートCGRGDS、LAP、UV386Aを含むディスク上の細胞カバー率を示す。
図14Bは、2~5wt.%のHPA、3~4wt.%のPEGDA575、3~8wt.%のPEGDA6000、1~6mMのPEG
3400アクリレートCGRGDS、LAP、UV386Aを含むディスク上の細胞カバー率を示す。
図14Cは、2~5wt.%のHBA、3~4wt.%のPEGDA575、3~8wt.%のPEGDA6000、1~6mMのPEG
3400アクリレートCGRGDS、LAP、UV386Aを含むディスク上の細胞カバー率を示す。
【0095】
実施例14
以下の成分を有するインクから印刷されたディスクを、PHSRNKRGDS(0.5~1mM)およびAG73(0.3~0.7mM)で、印刷後の未反応のアクリレート基を溶液中のペプチドと反応させることにより、表面修飾した。
【0096】
【0097】
図16A~16Bに示すように、線維芽細胞の成長/付着を、1および4日目に調べた。
図17A~17Bに示すように、SAECの成長/付着を、1および4日目に調べた。
【0098】
本明細書で使用される場合、単数の用語「1つの」(「a」、「an」)および「その」(「the」)は、別途文脈が明確に指示していない限り、複数の指示物を含み得る。したがって、例えば、オブジェクトへの言及は、別途文脈が明確に指示していない限り、複数のオブジェクトを含み得る。
【0099】
本明細書で使用される場合、「実質的に」および「約」という用語は、小さな変動を記載および説明するのに使用される。事象または状況と併せて使用されるとき、用語は、事象または状況が正確に起こった場合、ならびに事象または状況が近似的に発生する場合を指すことができる。数値と併せて使用されるとき、用語は、その数値の±10%未満もしくはそれと等しい、例えば±5%未満もしくはそれと等しいか、±4%未満もしくはそれと等しいか、±3%未満もしくはそれと等しいか、±2%未満もしくはそれと等しいか、±1%未満もしくはそれと等しいか、±0.5%未満もしくはそれと等しいか、±0.1%未満もしくはそれと等しいか、または±0.05%未満もしくはそれと等しい変動の範囲を指すことができる。第1の数値に対して第2の数値と「実質的に」または「ほぼ(about)」同じであると言及するとき、用語は、第1の数値が、第2の数値の±10%未満もしくはそれと等しい、例えば±5%未満もしくはそれと等しいか、±4%未満もしくはそれと等しいか、±3%未満もしくはそれと等しいか、±2%未満もしくはそれと等しいか、±1%未満もしくはそれと等しいか、±0.5%未満もしくはそれと等しいか、±0.1%未満もしくはそれと等しいか、または±0.05%未満もしくはそれと等しい変動の範囲内にあることを指すことができる。
【0100】
加えて、量、比および他の数値は、本明細書において範囲形式で示される場合がある。そのような範囲形式が簡便性および簡潔性のために使用されることが理解されるべきであり、範囲の限界として明示的に指定された数値を含むだけでなく、各数値およびサブ範囲が明示的に指定されているかのようにその範囲内に包含されるすべての個々の数値またはサブ範囲を含むように、柔軟に理解されるべきであることを理解されたい。例えば、約1~約200の範囲内の比は、約1および約200の明示的に列挙されている限界を含むだけでなく、約2、約3および約4などの個々の比、ならびに約10~約50、約20~約100などのサブ範囲も含むように理解されるべきである。
【0101】
本開示をその特定の実施形態を参照して説明したが、これは当業者により、添付の特許請求の範囲により定義されるような本開示の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができ、等価物で代替することができると理解されるべきである。加えて、特定の状況、材料、物質の組成、方法、操作(複数可)を、本開示の目的、趣旨および範囲に適合させるために、多くの修正を行うことができる。そのような全ての修正は、本明細書に添付の特許請求の範囲にあるように意図される。特に、ある特定の方法が特定の順序で行われる特定の操作を参照して説明されるが、これらの操作は、本開示の教示から逸脱することなく、合わせられ、細分され、または並べ替えられて等価の方法を形成してもよいことが理解される。したがって、本明細書において具体的に示されない限り、操作の順序およびグルーピングは本開示の制限にはならない。
【国際調査報告】