IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シグマ−アルドリッチ・カンパニー・リミテッド・ライアビリティ・カンパニーの特許一覧

特表2024-516994化学的に連結可能な核ターゲッティングタグ
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-18
(54)【発明の名称】化学的に連結可能な核ターゲッティングタグ
(51)【国際特許分類】
   C07F 5/02 20060101AFI20240411BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20240411BHJP
   C07K 1/13 20060101ALN20240411BHJP
【FI】
C07F5/02 C CSP
A61K47/54
C07K1/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567889
(86)(22)【出願日】2022-05-04
(85)【翻訳文提出日】2023-12-27
(86)【国際出願番号】 US2022072102
(87)【国際公開番号】W WO2022236278
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】63/183,894
(32)【優先日】2021-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】311016949
【氏名又は名称】シグマ-アルドリッチ・カンパニー・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Sigma-Aldrich Co. LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】クリック,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ウィルク,ケリン
(72)【発明者】
【氏名】ゴガレ,アシュウィン
(72)【発明者】
【氏名】シン,ラビンドラ ビクラム
【テーマコード(参考)】
4C076
4H045
4H048
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076DD62
4C076EE59
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA51
4H045EA20
4H045FA10
4H048AA01
4H048AA03
4H048AB20
4H048VA22
4H048VA32
4H048VA75
4H048VA77
(57)【要約】
フェニルボロネートターゲッティング部分、リンカー、ターゲッティング部分を目的分子に連結するのに適した化学的に連結可能な末端基および所望によりリンカーと化学的に連結可能な末端基との間のスペーサーを有する核ターゲッティングタグ。目的分子、例えば、薬物、プローブ、染料、ペプチド、タンパク質、薬物候補、または天然産物に共有結合した核ターゲッティングタグを含む化合物もまた提供される。核ターゲッティングタグを使用して、目的分子を、細胞の核に導入する方法もまた提供される。核ターゲッティングタグを製造するための方法もまた提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェニルボロネートターゲッティング部分、
リンカーおよび
化学的に連結可能な末端基
を含む、核ターゲッティングタグ。
【請求項2】
フェニルボロネートターゲッティング部分がフェニルボロン酸基およびフェニルボロン酸ピナコールエステル基から選択される、請求項1に記載の核ターゲッティングタグ。
【請求項3】
リンカーがカルバメート、エーテル、C~C20アルキレニルおよび-[-O-CHCH-]-(式中、nは1~12である)からなる群から選択される、請求項1または2に記載の核ターゲッティングタグ。
【請求項4】
スペーサーをさらに含み、スペーサーが、C~C20アルキレニルおよび-[-O-CHCH-]-(式中、nは1~12である)からなる群から選択される、請求項1から3のいずれかに記載の核ターゲッティングタグ。
【請求項5】
化学的に連結可能な末端基がハロ、アミノ、カルボキシル、C~C10アルキニル、ヒドロキシル、C~C10アルコキシ、アジド、スルフィネート、チオール、フルオロスルフェートおよびボロン酸からなる群から選択される、請求項1から4のいずれかに記載の核ターゲッティングタグ。
【請求項6】
化学的に連結可能な末端基に共有結合した分子をさらに含む、請求項1から5のいずれかに記載の核ターゲッティングタグ。
【請求項7】
分子が薬物、プローブ、染料、ペプチド、タンパク質、薬物候補および天然産物からなる群から選択される、請求項6に記載の核ターゲッティングタグ。
【請求項8】
式I
【化1】
(式中、
Xはボロン酸またはボロン酸エステルであり、
Lはリンカーであり、
Sはスペーサーであり、sは0~10であり、
Yは化学的に連結可能な末端基である)
の化合物。
【請求項9】
Xがボロン酸基およびボロン酸ピナコールエステル基から選択される、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
Lが、カルバメート、エーテル、C~C20アルキレニルおよび-[-O-CHCH-]-(式中、nは1~12である)からなる群から選択される、請求項8または9に記載の化合物。
【請求項11】
Sが、C~C20アルキレニルおよび-[-O-CHCH-]-(式中、nは1~12である)からなる群から選択され、
sが1~10である、請求項8から10のいずれかに記載の化合物。
【請求項12】
Yが、ハロ、アミノ、カルボキシル、C~C10アルキニル、ヒドロキシル、C~C10アルコキシ、アジド、スルフィネート、チオール、フルオロスルフェートおよびボロン酸からなる群から選択される、請求項8から11のいずれかに記載の化合物。
【請求項13】
化学的に連結可能な末端基にコンジュゲートした分子をさらに含む、請求項8から12のいずれかに記載の化合物。
【請求項14】
分子が、薬物、プローブ、染料、ペプチド、タンパク質、薬物候補および天然産物からなる群から選択される、請求項13に記載の核ターゲッティングタグ。
【請求項15】
式II
【化2】
(式中、
Xはボロン酸またはボロン酸エステルであり、
Sはスペーサーであり、sは0~10であり、
Yは化学的に連結可能な末端基である)
の化合物。
【請求項16】
Xがボロン酸基およびボロン酸ピナコールエステル基から選択される、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
SがC~C20アルキレニルおよび-[-O-CHCH-]-(式中、nは1~12である)からなる群から選択され、
sが1~10である、
請求項15または16に記載の化合物。
【請求項18】
Yがハロ、アミノ、カルボキシル、C~C10アルキニル、ヒドロキシル、C~C10アルコキシ、アジド、スルフィネート、チオール、フルオロスルフェートおよびボロン酸からなる群から選択される、請求項15から17のいずれかに記載の化合物。
【請求項19】
化学的に連結可能な末端基にコンジュゲートした分子をさらに含む、請求項15から18のいずれかに記載の化合物。
【請求項20】
分子が薬物、プローブ、染料、ペプチド、タンパク質、薬物候補および天然産物からなる群から選択される、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
式III
【化3】
(式中、
Xはボロン酸またはボロン酸エステルであり、
Sはスペーサーであり、sは0~10であり、
Yは化学的に連結可能な末端基である)
の化合物。
【請求項22】
Xがボロン酸基およびボロン酸ピナコールエステル基から選択される、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
SがC~C20アルキレニルおよび-[-O-CHCH-]-(式中、nは1~12である)からなる群から選択され、
sが1~10である、
請求項21または22に記載の化合物。
【請求項24】
Yがハロ、アミノ、カルボキシル、C~C10アルキニル、ヒドロキシル、C~C10アルコキシ、アジド、スルフィネート、チオール、フルオロスルフェートおよびボロン酸からなる群から選択される、請求項21から23のいずれかに記載の化合物。
【請求項25】
化学的に連結可能な末端基にコンジュゲートした分子をさらに含む、請求項21から24のいずれかに記載の化合物。
【請求項26】
分子が薬物、プローブ、染料、ペプチド、タンパク質、薬物候補および天然産物からなる群から選択される、請求項25に記載の化合物。
【請求項27】
(4-((((2-アミノエチル)カルバモイル)オキシ)メチル)フェニル)ボロン酸塩酸塩、(4-((((2-ブロモエチル)カルバモイル)オキシ)メチル)フェニル)ボロン酸、4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンジル(ブロモエチル)カルバメート、4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンジル(2-アミノエチル)カルバメートおよび2-((4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンジル)オキシ)エタン-1-アミンからなる群から選択される、化合物。
【請求項28】
細胞内の核に分子を送達する方法であって、請求項6もしくは7に記載の核ターゲッティングタグまたは請求項13、14、19、20、25もしくは26のいずれかに記載の化合物を、細胞と接触させることを含む、方法。
【請求項29】
対象において、分子を細胞核に送達する方法であって、請求項6もしくは7に記載の核ターゲッティングタグまたは請求項13、14、19、20、25もしくは26に記載の化合物を、このような治療を必要とする対象に投与する過程を含む、方法。
【請求項30】
対象がヒト対象または獣医学的対象である、請求項29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全内容がその全体において本明細書に組み込まれている、2021年5月4日に出願した米国仮特許出願第63/183,894号の優先権の利益を主張する。
【0002】
目的分子、例えば、薬物、プローブ、染料、ペプチド、タンパク質などを、細胞の核に送達することは、多種多様な研究分野にわたり研究者らの重大な関心を集めている。例えば、核へのターゲッティングリサーチプローブは、細胞器官に特異的な分子機構のさらなる解明を可能にする。治療剤の核ターゲッティングは、オフターゲットの副作用を減少させながら、治療効果を増加させるために所望されている。
【背景技術】
【0003】
従来の方法は、目的分子を核に輸送するための短いペプチドまたはタンパク質の使用を含む。しかし、このようなペプチドまたはタンパク質の使用に伴ういくつかの問題、例えば、不安定さ、短い貯蔵寿命、一部の目的分子との不適合性、一部の目的分子との連結の難しさおよび製造における難しさを含む問題が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
新規の核ターゲッティングタグが必要とされている。このような核ターゲッティングタグは、より高い安定性および貯蔵寿命を有し、無数の目的分子に簡単に連結することができ、対費用効果の高い方式で製造することができるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
フェニルボロネートターゲッティング部分、該フェニルボロネートターゲッティング部分のフェニル基に結合しているリンカーおよび化学的に連結可能な末端基を有する核ターゲッティングタグが提供される。リンカーは、カルバメート、エーテル、アルキレニル基およびPEG基から選択される。ある特定の実施形態では、フェニルボロネートターゲッティング部分は、フェニルボロン酸基であり、他の実施形態では、フェニルボロネートターゲッティング部分はフェニルボロン酸ピナコールエステル基である。
【0006】
一部の実施形態では、核ターゲッティングタグはまた、リンカーと化学的に連結可能な末端基との間にスペーサーを含む。好ましいスペーサーは、アルキレニルスペーサーおよびPEGスペーサーを含む。
【0007】
化学的に連結可能な末端基は、ハロ、アミノ、カルボキシル、C~C10アルキニル、ヒドロキシル、C~C10アルコキシ、アジド、スルフィネート、チオール、フルオロスルフェートおよびボロン酸から選択されてもよい。
【0008】
一部の実施形態では、核ターゲッティングタグはまた、化学的に連結可能な末端基に共有結合した分子を含んでもよい。適切な分子は、薬物、プローブ、染料、ペプチド、タンパク質、薬物候補および天然産物を含むが、これらに限定されない。
【0009】
一実施形態では、式I:
【化1】
(式中、Xはボロン酸またはボロン酸エステルであり、Lはリンカーであり、Sはスペーサーであり、sは0~10であり、Yは化学的に連結可能な末端基である)の化合物が提供される。
【0010】
好ましい実施形態では、Xはボロン酸基およびボロン酸ピナコールエステル基から選択され、Lはカルバメート、エーテル、C~C20アルキレニル基および-[-O-CHCH-]-(式中、nは1~12である)から選択され、Sは、C~C20アルキレニル基および-[-O-CHCH-]-(式中、nは1~12である)から選択され、sは0~10であり、Yは、ハロ、アミノ、カルボキシル、C~C10アルキニル、ヒドロキシル、C~C10アルコキシ、アジド、スルフィネート、チオール、フルオロスルフェートおよびボロン酸から選択される。
【0011】
一部の実施形態では、式Iの化合物は、化学的に連結可能な末端基にコンジュゲートした分子をさらに含む。このような分子は、薬物、プローブ、染料、ペプチド、タンパク質、薬物候補および天然産物を含み得る。
【0012】
第2の実施形態では、式II
【化2】
(式中、Xはボロン酸またはボロン酸エステルであり、Sはスペーサーであり、sは0~10であり、Yは化学的に連結可能な末端基である)の化合物が提供される。好ましい実施形態では、Xはボロン酸基およびボロン酸ピナコールエステル基から選択され、SはC~C20アルキレニルおよび-[-O-CHCH-]-(式中、nは1~12である)から選択され、sは0~10であり、Yは、ハロ、アミノ、カルボキシル、C~C10アルキニル、ヒドロキシル、C~C10アルコキシ、アジド、スルフィネート、チオール、フルオロスルフェートおよびボロン酸から選択される。
【0013】
一部の好ましい実施形態では、式IIの化合物もまた、化学的に連結可能な末端基にコンジュゲートした分子を含む。このような実施形態では、分子は、薬物、プローブ、染料、ペプチド、タンパク質、薬物候補および天然産物からなる群から選択される。
【0014】
式III
【化3】
(式中、Xはボロン酸またはボロン酸エステルであり、Sはスペーサーであり、sは0~10であり、Yは化学的に連結可能な末端基である)の化合物もまた提供される。好ましい実施形態では、Xはボロン酸基およびボロン酸ピナコールエステル基から選択され、SはC~C20アルキレニルおよび-[-O-CHCH-]-(式中、nは1~12である)から選択され、sは0~10であり、Yは、ハロ、アミノ、カルボキシル、C~C10アルキニル、ヒドロキシル、C~C10アルコキシ、アジド、スルフィネート、チオール、フルオロスルフェートおよびボロン酸から選択される。
【0015】
一部の好ましい実施形態では、式IIの化合物はまた、化学的に連結可能な末端基にコンジュゲートした分子も含む。このような実施形態では、分子は、薬物、プローブ、染料、ペプチド、タンパク質、薬物候補および天然産物からなる群から選択される。
【0016】
核ターゲッティングタグに結合している目的分子を含む式IまたはIIの核ターゲッティングタグと細胞を接触させることにより、細胞内の核へ分子を送達する方法がさらに提供される。
【0017】
本明細書に記載されている核ターゲッティングタグを製造する方法がさらに提供される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
多くの種々の目的分子、実際に多くの種々のクラスの目的分子のターゲッティング部分へのコンジュゲーションを可能にし、目的分子を細胞核に取り込むことを可能にする、コンジュゲーション部分に連結したフェニルボロネート核ターゲッティング部分を含み、よって多くの種々の機能を提供することができる化合物が提供される。
【0019】
一部の実施形態では、フェニルボロネートターゲッティング部分はリンカーおよび所望によりスペーサーを介して、小分子、すなわち、薬物、プローブ、または染料にコンジュゲートすることができる一方、他の実施形態では、これはペプチドまたはタンパク質と共に使用することもできる。
【0020】
生成したタグ含有化合物は、他の細胞区画よりも核を優先してターゲットとし、核内での富化を可能にする。核へのターゲッティングリサーチプローブは細胞器官に特異的な分子機構のさらなる解明を可能にし得る一方、治療剤の核ターゲッティングはオフターゲットの副作用を減少させながら、治療効果を増加させることができる。本明細書に提供されている化合物は、主に短いアミノ酸ペプチドまたはタンパク質である現在の核ターゲッティングタグより高い安定性およびより長い貯蔵寿命という利点を有する。加えて、これらの核ターゲッティングタグはより小さく、各目的分子により簡単に連結し、製造コストが安い。
【0021】
核ターゲッティングタグは、一方の末端にフェニルボロネートターゲッティング部分を含み、他方の末端には、リンカーおよび所望によりスペーサーにより結び付けられた、化学的に連結可能な末端基を含む。
【0022】
ある特定の実施形態では、フェニルボロネートターゲッティング部分はボロン酸基であり、他の実施形態では、フェニルボロネートターゲッティング部分はフェニルボロン酸ピナコールエステル、すなわち、4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(diozaborolan)2-イル基である。他のアリールボロネートターゲッティング部分も当業者により想定することができる。
【0023】
リンカーは、カルバメート、エーテル、アルキレニル基およびポリエチレングリコール(PEG)から選択される。本明細書で使用される場合、アルキレニルという用語は、直鎖または分枝アルキル基の二価のアナログを指す。リンカーがアルキレニル基である実施形態では、リンカーはC~C20アルキレニルであってよい。一部の実施形態では、リンカーはC~C10アルキレニルであってよい。一部の実施形態では、アルキレニルリンカーは直鎖アルキルであり、他の実施形態ではアルキレニルリンカーは分枝アルキレニルであってよい。リンカーがPEGである実施形態では、リンカーは1~12のPEG単位を含むことができる。好ましい実施形態では、リンカーはボロネート基に対してパラ位にある。
【0024】
一部の実施形態では、核ターゲッティングタグはまた、リンカーと化学的に連結可能な末端基との間にスペーサーを含む。スペーサーは、例えば、フェニルボロネートターゲッティング部分と目的分子との間に分離を提供するために使用することができ、これによって目的分子が核内でそのターゲットと相互作用することを可能にする。一部の実施形態では、スペーサーは、ジスルフィド基、光解離性基、または一度核の内側に入れば、目的分子の放出を可能にする他の基を組み込むことができる。好ましいスペーサーは、C~C20アルキレニルおよび-[-O-CHCH-]-(式中、nは1~12である)を含むが、ただし、同等のものか、または追加の機能性を導入するための、他のスペーサーも想定することができる。
【0025】
化学的に連結可能な末端基は、目的分子のコンジュゲーションまたは化学結合を可能にする多くの異なる末端基から選択することができる。一部の好ましい化学的に連結可能な末端基は、ハロ、アミノ、カルボキシル、C~C10アルキニル、ヒドロキシル、C~C10アルコキシ、アジド、スルフィネート、チオール、フルオロスルフェートおよびボロン酸を含むが、これらに限定されない。
【0026】
一部の実施形態では、核ターゲッティングタグはまた、化学的に連結可能な末端基に共有結合した分子を含んでもよい。適切な分子は、薬物、プローブ、染料、ペプチド、タンパク質、薬物候補および天然産物を含むが、これらに限定されない。
【0027】
薬物および薬物候補の例は、小分子薬物、ペプチド薬物、天然産物、タンパク質治療剤、抗体、抗体様結合剤および抗体断片、例えば、単鎖抗原結合断片を含む特定の薬物は、レビマスタット、フルコナゾール、タノマスタットおよび類似の薬物を含み得るが、これらに限定されない。特定のペプチド薬物は、ジコノチド、エンフュービルタイド、オクトレオチド、ランレオチドおよびパシレオチドを含み得るが、これらに限定されない。薬物候補は、臨床試験に選択された、または臨床試験を受けている任意の小分子またはペプチドを含み得る。
【0028】
本明細書に記載されている核ターゲッティングタグとの使用に適したペプチドとして、2以上のアミノ酸、置換アミノ酸、アミノ酸誘導体、または置換アミノ酸誘導体を有する任意のペプチドを挙げることができ、これらのアミノ酸は、標準的、非標準的および化学的に合成されたアミノ酸を含み、L異性体およびD異性体を含み、一体となってアミド結合で連結している。置換アミノ酸は、通常側鎖に1以上の置換基を含むアミノ酸である。アミノ酸誘導体は、α-アミノ基またはアシル基が化学的に修飾されたアミノ酸である。本明細書に記載されている核ターゲッティングタグとの使用のための例示的なアミノ酸はアザチロシンである。
【0029】
本明細書に記載されている核ターゲッティングタグとの使用に適したタンパク質は、抗体、合成タンパク質およびタンパク質断片を含む天然タンパク質を含むが、これらに限定されない。一部の例示的なタンパク質は、ゲムツズマブおよびブレンツキシマブを含むが、これらに限定されない。
【0030】
本明細書に記載されている核ターゲッティングタグとの使用に適したプローブの例として、相補DNA配列、ヒストン、核移行タンパク質および核位置タンパク質と結合する一本鎖DNAまたはRNAが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
本明細書に記載されている核ターゲッティングタグとの使用に適した染料の例は、ヘプタメチン、シアニンおよびフルオレセインを含むが、これらに限定されない。
【0032】
本明細書に記載されている核ターゲッティングタグとの使用に適した天然産物の例は、アントラマイシンおよびマイタンシノイドを含むが、これらに限定されない。
【0033】
一実施形態では、式I:
【化4】
(式中、Xはボロン酸またはボロン酸エステルであり、Lはリンカーであり、Sはスペーサーであり、Yは化学的に連結可能な末端基である)の化合物が提供される。
【0034】
好ましい実施形態では、Xは、ボロン酸基およびボロン酸ピナコールエステル、すなわち、4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン2-イルの基から選択される。
【0035】
リンカーLは、カルバメート基、エーテル、C~C20アルキレニル基、または-[-O-CHCH-]-(式中、nは1~12である)であってよい。好ましい一実施形態では、リンカーLはカルバメート基である。別の好ましい実施形態では、リンカーLはエーテルである。
【0036】
スペーサーSは、所望によるスペーサー単位である。スペーサーSの使用および特定のスペーサーの選択は、目的分子、その機能および連結分子の、そのターゲットに対する相互作用の維持に依存する。スペーサー単位は、本明細書に提供されている核局在化タグへのさらなる調整可能性を提供し、分子と核のターゲットの両方に応じて、局在化に対して最適な構造を提供するよう変化させることができる。
【0037】
一部の実施形態では、スペーサーSが存在するとき、スペーサーSはC~C20アルキレニル基、好ましくはC~C18アルキレニル基から選択され、sは1~10である。スペーサーSがアルキレニルであるとき、直鎖または分枝であってよい。一部の実施形態では、スペーサーSがアルキレニルであるとき、1以上の置換基を含むことができる。一部の実施形態では、スペーサーSがアルキレニルであるとき、1以上の不飽和結合を含むことができる。他の実施形態ではスペーサーSが存在するとき、スペーサーSは式-[-O-CHCH-]-のPEG(式中、nは1~12であり、好ましくは4~12である)であり、sは1~10であってよい。さらなる他の実施形態では、スペーサーSは、複数のアルキレニル単位、PEG単位またはアルキレニル単位とPEG単位との組合せでできていてもよい。このような実施形態では、sは2~10であってよい。
【0038】
化学的に連結可能な末端基Yは目的分子にコンジュゲートする、またはこれと共有結合を形成するのに好都合な方式が得られるように選択される。様々な実施形態では、化学的に連結可能な末端基はハロ、例えば、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード;第1級アミン、第2級アミンおよびアミノ酸を含むアミノ;有機酸およびアミノ酸を含むカルボキシル;C~C10アルキニル、例えば、メチニル、エチニル、プロピニル、ブチニルなど;ヒドロキシル;C~C10アルコキシ、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなどを含むもの;アジド、スルフィネート、チオ、フルオロスルフェートおよびボロン酸であってよい。
【0039】
一部の実施形態では、式Iの化合物は、化学的に連結可能な末端基にコンジュゲートした分子をさらに含む。このような分子は、薬物、プローブ、染料、ペプチド、タンパク質、薬物候補および天然産物を含んでもよく、それぞれ上記に概説されている通りである。
【0040】
第2の実施形態では、式II
【化5】
(式中、Xはボロン酸またはボロン酸エステルであり、Sは所望によるスペーサーであり、sは0~10であり、Yは化学的に連結可能な末端基である)の化合物が提供される。好ましい実施形態では、Xは、ボロン酸基およびボロン酸ピナコールエステル、すなわち、4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン2-イルの基から選択される。
【0041】
スペーサーSが存在するとき、スペーサーは好ましくはアルキレニルスペーサーおよびPEGスペーサーから選択される。Sがアルキレニルスペーサーであるとき、好ましくはC~C20アルキレニル基である。Sが式-[-O-CHCH-]-のPEGスペーサーであるとき、nは好ましくは1~12である。一部の実施形態では、スペーサーSは、複数のアルキレニル単位、PEG単位またはアルキレニル単位とPEG単位の組合せからできていてもよい。このような実施形態では、sは2~10であってよい。
【0042】
化学的に連結可能な末端基Yは、上に記載されているような目的分子にコンジュゲートする、またはこれと共有結合を形成するのに好都合な方式が得られるように選択される。様々な実施形態では、化学的に連結可能な末端基は、ハロ、例えば、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード;アミノ、例えば、第一級アミン、第2級アミンおよびアミノ酸を含むもの;カルボキシル、例えば、有機酸およびアミノ酸を含むもの;C~C10アルキニル、例えば、メチニル、エチニル、プロピニル、ブチニルなど;ヒドロキシル;C~C10アルコキシ、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなどを含むもの;アジド、スルフィネート、チオ、フルオロスルフェートおよびボロン酸であってよい。
【0043】
一部の好ましい実施形態では、式IIの化合物はまた化学的に連結可能な末端基にコンジュゲートした分子も含む。このような実施形態では、分子は、薬物、プローブ、染料、ペプチド、タンパク質、薬物候補および天然産物からなる群から選択される。
【0044】
一部の好ましい実施形態では、本明細書に提供されている核ターゲッティングタグは、(4-((((2-アミノエチル)カルバモイル)オキシ)メチル)フェニル)ボロン酸塩酸塩、(4-((((2-ブロモエチル)カルバモイル)オキシ)メチル)フェニル)ボロン酸、4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンジル(ブロモエチル)カルバメート、4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンジル(2-アミノエチル)カルバメートおよび2-((4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンジル)オキシ)エタン-1-アミンであってよい。
【0045】
核ターゲッティングタグに結合している目的分子を含む式IまたはIIの核ターゲッティングタグを、細胞と接触させることにより、細胞内の核に分子を送達する方法がさらに提供される。
【0046】
対象において、目的分子を細胞核に送達する方法であって、化学的に連結可能な末端基に結合している目的分子を含む、本明細書に記載されている核ターゲッティングタグを、このような治療を必要とする対象に投与する過程を含む方法もまた含まれる。様々な実施形態では、対象はヒト対象または獣医学的対象であってよい。
【0047】
本開示は、以下の条項に記載の以下の実施形態をさらに提供する。
【0048】
{1}核ターゲッティングタグを製造するための第1の方法であって、
a. ピナコールボロネートフェニルアルコールをカルボニルジイミダゾールと反応させて、ボロネートカルボニルジイミダゾール中間体を形成する工程および
b. 工程(a)のボロネートカルボニルジイミダゾール中間体をエチレンジアミン反応させて、核ターゲッティングタグを形成する工程
を含む方法。
【0049】
{2}工程(a)がアセトニトリル中で行われる、条項{1}に記載の方法。
【0050】
{3}工程(a)が高温、好ましくは50℃で行われる、条項{1}または{2}のいずれかに記載の方法。
【0051】
{4}工程(b)がテトラヒドロフラン(THF)中で行われる、条項{1}から{3}のいずれかに記載の方法。
【0052】
{5}以下の工程をさらに含む、条項{1}から{4}のいずれかに記載の方法
c. 核ターゲッティングタグを精製する工程。
【0053】
{6}核ターゲッティングタグを製造するための方法であって、
a. ピナコールボロネートフェニルアルコール(1)をカルボニルジイミダゾール(2)と反応させて、ボロネートカルボニルジイミダゾール中間体(3)を形成する工程、
【化6】
および
b.ボロネートカルボニルジイミダゾール中間体(3)をエチレンジアミンと反応させて、核ターゲッティングタグ(4)を形成する工程
【化7】
を含む、方法。
【0054】
{7}核ターゲッティングタグを製造するための第2の方法であって、
a. ピナコールボロネートフェニルアルコールをカルボニルジイミダゾールと反応させて、ボロネートカルボニルジイミダゾール中間体を形成する工程および
b. 工程(a)のボロネートカルボニルジイミダゾール中間体をブロモアルキルアミンヒドロブロミドと反応させて、核ターゲッティングタグを形成する工程
を含む、方法。
【0055】
{8}工程(a)がアセトニトリル中で行われる、条項{7}に記載の方法。
【0056】
{9}工程(a)が高温、好ましくは50℃で行われる、条項{7}または{8}のいずれかに記載の方法。
【0057】
{10}工程(b)がジメチルホルムアミド(DMF)中で行われる、条項{7}から{9}のいずれかに記載の方法。
【0058】
{11}以下の工程をさらに含む、条項{7}から{10}のいずれかに記載の方法
c.核ターゲッティングタグを精製する工程。
【0059】
{12}核ターゲッティングタグを製造するための方法であって、
a. ピナコールボロネートフェニルアルコール(1)をカルボニルジイミダゾール(2)と反応させて、ボロネートカルボニルジイミダゾール中間体(3)を形成する工程、
【化8】
および
b.ボロネートカルボニルジイミダゾール中間体(3)をエチレンジアミンと反応させて、核ターゲッティングタグ(5)を形成する工程
【化9】
を含む、方法。
【0060】
{13}核タグを製造するための第3の方法であって、
a. ピナコールボロネートフェニルアルコールをカルボニルジイミダゾールと反応させて、ボロネートカルボニルジイミダゾール中間体を形成する工程、
b. 工程(a)のボロネートカルボニルジイミダゾール中間体をアミン保護されたエチレンジアミンと反応させて、アミン保護されたピナコリルボロン酸エステル中間体を形成する工程、
c. 工程(b)のアミン保護されたピナコリルボロン酸エステル中間体をジエタノールアミンと反応させてアミン保護されたピナコリルボレートDEA複合体を形成する工程、
d. 工程(c)のアミン保護されたピナコリルボレートDEA複合体をジエチルエーテルと反応させて、核ターゲッティングタグを形成する工程および
e. 所望によりアミンを脱保護する工程
を含む、方法。
【0061】
{14}工程(a)がアセトニトリル中で行われる、条項{13}に記載の方法。
【0062】
{15}工程(a)が高温、好ましくは50℃で行われる、条項{13}または{14}のいずれかに記載の方法。
【0063】
{16}工程(b)がTHF中で行われる、条項{13}から{15}のいずれかに記載の方法。
【0064】
{17}工程(c)がイソプロピルアルコールの存在下で行われる、条項{13}から{16}のいずれかに記載の方法。
【0065】
{18}工程(c)がジエチルエーテル中で行われる、条項{13}から{17}のいずれかに記載の方法。
【0066】
{19}工程(d)がイソプロピルアルコールの存在下で行われる、条項{13}から{18}のいずれかに記載の方法。
【0067】
{20}工程(d)がアセトニトリル中で行われる、条項{13}から{19}のいずれかに記載の方法。
【0068】
{21}核ターゲッティングタグを精製する工程をさらに含む、条項{13}から{20}のいずれかに記載の方法。
【0069】
{22}核タグを製造するための方法であって、
a. ピナコールボロネートフェニルアルコール(1)をカルボニルジイミダゾール(2)と反応させて、ボロネートカルボニルジイミダゾール中間体(3)を形成する工程、
【化10】
b. ボロネートカルボニルジイミダゾール中間体(3)を保護されたエチレンジアミンと反応させて、アミン保護されたピナコリルジエタノールアミン中間体(6)を形成する工程、
【化11】
c. アミン保護されたピナコリルボロン酸エステル中間体(6)をジエタノールアミンと反応させて、アミン保護されたピナコリルボレートDEA複合体(7)を形成する工程、
【化12】
および
d. アミン保護されたピナコリルボレートDEA複合体(7)をジエチルエーテルと反応させ、アミンを脱保護して、核ターゲッティングタグ(8)を形成する工程
【化13】
を含む、方法。
【0070】
{23}核ターゲッティングタグを製造する第4の方法であって、
a. ピナコールボロネートフェニルアルコールをカルボニルジイミダゾールと反応させて、ボロネートカルボニルジイミダゾール中間体を形成する工程、
b. 工程(a)のボロネートカルボニルジイミダゾール中間体をブロモアルキルアミンヒドロブロミドと反応させて、ブロモ-ピナコリルボロン酸エステル中間体を形成する工程、
c. 工程(b)のブロモ-ピナコリルボロン酸エステル中間体をジエタノールアミンと反応させて、ブロモ-ピナコリルボレートDEA複合体を形成する工程、
d. 工程(c)のブロモ-ピナコリルボレートDEA複合体をジエチルエーテルと反応させて、核ターゲッティングタグを形成する工程
を含む、方法。
【0071】
{24}工程(a)がアセトニトリル中で行われる、条項{23}に記載の方法。
【0072】
{25}工程(a)が高温、好ましくは50℃で行われる、条項{23}または{24}のいずれかに記載の方法。
【0073】
{26}工程(b)がDMF中で行われる、条項{23}から{25}のいずれかに記載の方法。
【0074】
{27}工程(b)がジエチルエーテルの存在下で行われる、条項{23}から{26}のいずれかに記載の方法。
【0075】
{28}工程(c)がイソプロピルアルコールの存在下で行われる、条項{23}から{27}のいずれかに記載の方法。
【0076】
{29}工程(c)がジエチルエーテル中で行われる、条項{23}から{28}のいずれかに記載の方法。
【0077】
{30}工程(d)がジエチルエーテル中で行われる、条項{23}から{29}のいずれかに記載の方法。
【0078】
{31}工程(d)が、酸の存在下、好ましくは塩酸の存在下で行われる、条項{23}から{30}のいずれかに記載の方法。
【0079】
{32}以下の工程をさらに含む、条項{23}から{31}のいずれかに記載の方法
e. 核ターゲッティングタグを精製する工程。
【0080】
{33}核ターゲッティングタグを製造する方法であって、
a. ピナコールボロネートフェニルアルコール(1)をカルボニルジイミダゾール(2)と反応させて、ボロネートカルボニルジイミダゾール中間体(3)を形成する工程、
【化14】
b. ボロネートカルボニルジイミダゾール中間体(3)をブロモアルキルアミンヒドロブロミドと反応させて、ブロモ-ピナコリルボロン酸エステル中間体(9)を形成する工程、
【化15】
c. ブロモ-ピナコリルボロン酸エステル中間体(9)をジエタノールアミンと反応させて、ブロモ-ピナコリルボレートDEA複合体(10)を形成する工程、
【化16】
d. ブロモ-ピナコリルボレートDEA複合体(10)をジエチルエーテルと反応させて、核ターゲッティングタグ(11)を形成する工程
【化17】
を含む、方法。
【0081】
{34}核ターゲッティングタグを製造する第5の方法であって、
a. N-(2-ヒドロキシエチル)フタルイミドを4-ブロモベンジルブロミドと反応させて、2-(2(4-ブロモベンジル)オキシエチルイソインドリン-1,3-ジオン中間体を形成する工程、
b. 工程(a)の2-(2(4-ブロモベンジル)オキシエチルイソインドリン-1,3-ジオン中間体をビス-ボロン酸ピナコールと反応させて、2-(2-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキソボロネート-2-イル)ベンジル)オキシ)エチル)イソインドリン-1,3-ジオン中間体を形成する工程、
c. 工程(c)の2-(2-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキソボロネート-2-イル)ベンジル)オキシ)エチル)イソインドリン-1,3-ジオン中間体をヒドラジン水和物と反応させて、核ターゲッティングタグを形成する工程
を含む、方法。
【0082】
{35}工程(a)がDMF中で行われる、条項{34}に記載の方法。
【0083】
{36}工程(a)が水素化ナトリウムの存在下で行われる、条項{34}または{35}のいずれかに記載の方法。
【0084】
{37}DMFおよび水素化ナトリウムが合わせられ、好ましくは0℃~5℃に冷却されてから、N-(2-ヒドロキシエチル)フタルイミドが添加される、条項{36}に記載の方法。
【0085】
{38}DMFおよびNaH中のN-(2-ヒドロキシエチル)フタルイミドが好ましくは40℃に加熱されてから、4-ブロモベンジルブロミドが添加される、条項{37}に記載の方法。
【0086】
{39}工程(a)の反応が、高温、好ましくは70℃で行われる、条項{38}に記載の方法。
【0087】
{40}工程bが触媒の存在下で行われる、条項{34}から{39}のいずれかに記載の方法。
【0088】
{41}触媒がパラジウム触媒である、条項{40}に記載の方法。
【0089】
{42}触媒がPdCl(dppf)である、条項{41}に記載の方法。
【0090】
{43}工程(b)がジクロロメタン中で行われる、条項{34}から{42}のいずれかに記載の方法。
【0091】
{44}工程(b)が酢酸カリウムの存在下で行われる、条項{34}から{43}のいずれかに記載の方法。
【0092】
{45}工程(b)が高温、好ましくは85℃で行われる、条項{34}から{44}のいずれかに記載の方法。
【0093】
{46}工程(c)がエタノール中で行われる、条項{34}から{45}のいずれかに記載の方法。
【0094】
{47}以下の工程をさらに含む、条項{34}から{46}のいずれかに記載の方法
d.核ターゲッティングタグを精製する工程。
【0095】
{48}核ターゲッティングタグを製造すること方法であって、
a. 4-ブロモベンジルブロミド(12)をN-(2-ヒドロキシエチル)フタルイミド(13)と反応させて、2-(2(4-ブロモベンジル)オキシエチルイソインドリン-1,3-ジオン中間体(14)を形成する工程、
【化18】
b. 2-(2(4-ブロモベンジル)オキシエチルイソインドリン-1,3-ジオン中間体(14)をビス-ボロン酸ピナコールと、触媒の存在下で反応させて、2-(2-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキソボロネート-2-イル)ベンジル)オキシ)エチル)イソインドリン-1,3-ジオン中間体(15)を形成する工程、
【化19】
c. 2-(2-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキソボロネート-2-イル)ベンジル)オキシ)エチル)イソインドリン-1,3-ジオン中間体(15)をヒドラジン水和物と反応させて、核ターゲッティングタグ(16)を形成する工程
を含む、方法。
【実施例
【0096】
実施例1. 4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンジル(2-アミノエチル)カルバメートの合成
【化20】
500mL四つ口丸底フラスコを火炎乾燥し、冷却器、サーモポケット、セプタムおよび磁気撹拌棒を装着した。システム全体を窒素ガスで真空排気した。ボロネートアルコール(20g、85mmol)カルボニルジイミダゾール(18g、111mmol)および200mlのアセトニトリルをフラスコに投入し、反応物質量を50℃でおよそ2時間撹拌した。TLCで示されている通り反応が完了した後、反応物の塊を冷却し、減圧下40℃でアセトニトリルを留去した。50mLのn-ヘキサンを反応容器に投入し、30分間撹拌した。反応物の塊を濾過して、白色の固体を得た。材料を真空下、40℃で2時間乾燥させて、26gの白色の生成物を得た。
【0097】
500mL四つ口丸底フラスコを火炎乾燥させ、窒素バブラー、セプタムおよび温度計を装着した。250mlのTHF中20mlのボロネートCDI(10g、30mmol)をフラスコに投入した。エチレンジアミン(20ml、300mmol)をフラスコに加え、反応混合物を室温で24時間撹拌した。TLCで示されている通り反応が完了した後、溶媒を蒸発させ、25mLのジクロロメタンおよび10mlの水を残渣に加えた。反応物を5分間撹拌した。混合物を2つの層に分離した。有機層を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機層を減圧下で濃縮して、3gの表題化合物を生成した。
【0098】
実施例2. 4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンジル(2-ブロモエチル)カルバメートの合成
【化21】
1L三つ口丸底フラスコに還流冷却器、窒素バブラーおよび温度計を装着した。乾燥アセトニトリル(200mL)中カルボニルジイミダゾール(18g、111mmol)をフラスコに加えた。ピナコールボロネートフェニルアルコール(20g、85mmol)を反応フラスコに窒素雰囲気下で加えた。生成した混合物を50℃に加熱し、いかなる出発材料も存在しないことをTLC分析が示すまで、およそ2時間反応させた。反応の完了後、反応混合物を室温に冷却し、減圧下で濃縮すると、黄色がかった残渣が生成した。ペンタンまたはヘキサンを使用して、粗残渣を粉砕して、25gのカルバメートを白色の固体として生成した。
【0099】
500mL四つ口丸底フラスコを火炎乾燥し、冷却器、サーモポケット、セプタムおよび磁気撹拌棒を装着した。システムをNガスで15分間真空排気した。ボロネートCDI(12g、36.5mmol)、2-ブロモエチルアミンヒドロブロミド(19g、92mmol)および120mL(10.0vol)乾燥DMFを反応フラスコに投入した。反応物の塊を10分間撹拌して、均質な透明な溶液を生成し、次いでトリエチルアミン(15g、146mmol)をシリンジで反応フラスコに投入した。生成した不均一な混合物を、TLCで示されている通り反応が完了するまで撹拌した。完了後、360mLジエチルエーテルを反応物の塊に投入し、10分間撹拌した。反応物塊を濾過し、濾液を氷水、ブラインで抽出し、無水硫酸ナトリウムで脱水した。有機層を減圧下で濃縮して、粗生成物を生成し、これをシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、5.3gの固体表題生成物を生成した。
【0100】
実施例3. 4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンジル(2-ブロモエチル)カルバメート塩酸塩の合成
【化22】
1L三つ口丸底フラスコに、還流冷却器、窒素バブラーおよび温度計を装着し、乾燥アセトニトリル(200mL)中カルボニルジイミダゾール(18g、111mmol)を加えた。ピナコールボロネートフェニルアルコール(20g、85mmol)を反応混合物に窒素雰囲気下で加えた。生成した混合物を50℃に加熱し、出発材料がないことをTLC分析が示すまで、およそ2時間反応させた。反応の完了後、反応混合物を室温に冷却し、減圧下で濃縮すると、黄色がかった残渣が生成した。ペンタンまたはヘキサンを使用して、粗残渣を粉砕して、25gのカルバメートを白色の固体として生成した。
【0101】
窒素バブラー、温度計およびストッパーを装着した1L三つ口丸底フラスコ内で、イミダゾールカルバメート(20g、61mmol)の300mL乾燥THF中溶液に、N-Boc-エチレンジアミン(18g、74mmol)を加えた。反応混合物を窒素下、室温でおよそ20時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、18gの生成物を無色の低融点固体として得た。
【0102】
窒素バブラー、温度計およびセプタムを装着した1L三つ口丸底フラスコを火炎乾燥し、窒素ガスで15分間真空排気した。N-bocピナコリルボロン酸エステル(16g、38mmol)、ジエタノールアミン(5g、45mmol)、32mlのIPAおよび480mlのジエチルエーテルを窒素雰囲気下でフラスコに投入した。生成した混合物を室温でおよそ72時間撹拌した。反応の完了後、反応混合物を濾過し、生成物をジエチルエーテルで洗浄した。最後に、生成物を真空下、45度で乾燥させて、14gの白色の固体を得た。
【0103】
250ml三つ口丸底フラスコを火炎乾燥し、窒素バブラー、温度計およびセプタムを装着し、窒素ガスで15分間真空排気した。このフラスコに、N-boc-ピナコリルボロネートDEA複合体(6.0g、15mmol)、180mLの0.1Mジエチルエーテル、12mLのIPAおよび300mLのアセトニトリルを投入した。反応物を室温で2時間撹拌した。室温で終夜保持した。反応の完了後、有機物を蒸留し、残渣を300mLのジエチルエーテルに溶解した。エーテル層を水で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濃縮した。3.5gの表題化合物を白色の結晶性物質として得た。
【0104】
実施例4. (4-((((2-ブロモエチル)カルバモイル)オキシ)メチル)フェニル)ボロン酸の合成
【化23】
1L三つ口丸底フラスコに還流冷却器、窒素バブラーおよび温度計を装着した。乾燥アセトニトリル(200mL)中カルボニルジイミダゾール(18g、111mmol)を加えた。ピナコールボロネートフェニルアルコール(20g、85mmol)を反応混合物に窒素雰囲気下で加えた。出発材料がないことをTLC分析が示すまで、生成した混合物を50℃におよそ2時間加熱した。反応の完了後、反応混合物を室温に冷却し、減圧下で濃縮して、黄色がかった残渣を生成した。ペンタンまたはヘキサンを用いて、粗残渣を粉砕して、25gのカルバメートを白色の固体として生成した。
【0105】
500mL四つ口丸底フラスコを火炎乾燥し、冷却器、サーモポケット、セプタムおよび磁気撹拌棒を装着した。システムをNガスで15分間真空排気した。ボロネートCDI(12g、36.5mmol)、2-ブロモエチルアミンヒドロブロミド(19g、92mmol)および120mL(10.0容量)の乾燥DMFを反応フラスコに投入した。反応物の塊を10分間撹拌して、均質な透明な溶液を生成した。その後、トリエチルアミン(15g、146mmol)を反応フラスコにシリンジで投入した。反応の完了まで不均一な混合物を撹拌した。TLCで示されている通り反応が完了した後、360mLのジエチルエーテルを反応物の塊に投入し、10分間撹拌した。反応物の塊を濾過し、濾液を氷水、ブラインで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機層を減圧下で濃縮して、粗生成物を生成した。これをシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、5.3gの固体生成物を生成した。
【0106】
1L三つ口丸底フラスコを火炎乾燥し、窒素バブラー、温度計およびセプタムを装着し、窒素ガスで15分間真空排気した。このフラスコに、ブロモ-ピナコリルボロン酸エステル(5.3g、14mmol)、ジエタノールアミン(1.6g、15mmol)、10.6mlのIPAおよび106mlのジエチルエーテルを窒素雰囲気下で投入した。生成した混合物を室温でおよそ72時間撹拌した。反応が完了した後、反応混合物を濾過し、生成物をジエチルエーテルで洗浄した。最後に、生成物を真空下、45℃で乾燥させて、4gの白色の固体を生成した。
【0107】
250mL三つ口丸底フラスコを火炎乾燥し、窒素バブラー、温度計およびセプタムを装着した、窒素ガスで15分間真空排気した。このフラスコに、ブロモ-ピナコリルボロネートDEA複合体(4.0g、11mmol)、123mLのジエチルエーテルおよび123mLの0.1M水性のHClを投入した。反応物を室温で2時間撹拌し、室温で終夜保持した。反応が完了した後、125mLのエーテルを加え、層の分離を可能にした。有機層を分離し、水層をさらにエーテルで抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、NaSOで脱水した。最後に、有機層を濃縮した後、2.7gの表題化合物を白色の結晶性物質として得た。
【0108】
実施例5. 2-((4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンジル)オキシ)エタン-1-アミンの合成
【化24】
1L三つ口丸底フラスコを火炎乾燥し、還流冷却器、窒素バブラー、温度計およびセプタムを装着し、窒素ガスで15分間真空排気した。125mLの乾燥DMFおよびNaH(6.24g、156mmol)を反応フラスコに加え、反応フラスコを0~5℃に冷却した。68mlのDMFに溶解したN-(2-ヒドロキシエチル)フタルイミド(23g、120mmol)を反応混合物にゆっくりと加え、40℃で30分間加熱した。60mlのDMFに溶解した4-ブロモベンジルブロミド(30g、120mmol)を反応混合物にゆっくりと加え、70℃に2時間加熱した。反応が完了した後、反応混合物を室温に冷却し、500mLの水を加えた。生成物を酢酸エチルに抽出し、酢酸エチルの層を減圧下で濃縮して、薄黄色の粗生成物を得た。粗残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、13gの生成物を得た。
【0109】
1L三つ口丸底フラスコを火炎乾燥し、還流冷却器、窒素バブラー、温度計およびセプタムを装着し、窒素ガスで15分間真空排気した。2-(2(4-ブロモベンジル)オキシエチルイソインドリン-1,3-ジオン(13g、36mmol)、ビス-ボロン酸ピナコール(10g、40mmol)、10.6g酢酸カリウムおよびPdCl(dppf)を反応フラスコに投入し、DCM(1.47g、1.8mmol)を窒素雰囲気下で加えた。生成した混合物を、窒素の連続流の下で85℃に20時間加熱した。反応が完了した後、フラスコを室温に冷却し、130mLの水を加えた。生成物を酢酸エチルに抽出した。酢酸エチル層を水およびブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水した。有機層を減圧下で濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを使用して、残渣を精製して、12gの白色の固体生成物を得た。
【0110】
1L四つ口丸底フラスコに還流冷却器、窒素バブラー、温度計およびセプタムを装着し、325mlエタノール中の2-(2-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキソボロネート-2-イル)ベンジル)オキシ)エチル)イソインドリン-1,3-ジオン(6.5g、16mmol)を加え、次いで、窒素ガスを用いて、反応容器を15分間真空排気した。この反応液に、10mLのヒドラジン水和物を室温で加え、反応混合物を12時間還流させた。反応混合物を室温に冷却し、室温で24時間撹拌した。反応が完了した後、セライトパッドを介して反応混合物を濾過し、母液を真空下で濃縮して、残渣を得て、これをジエチルエーテルに溶解した。エーテル層をブラインで洗浄し、真空下で収縮させて、2.6gの表題生成物を白色の固体として得た。
【0111】
本明細書の実施例は例示的目的のためのものであり、特許請求の範囲で定義されている本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【国際調査報告】