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特表2024-517009トルクおよび角度センシングデバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-18
(54)【発明の名称】トルクおよび角度センシングデバイス
(51)【国際特許分類】
   G01L 3/04 20060101AFI20240411BHJP
【FI】
G01L3/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568319
(86)(22)【出願日】2022-03-25
(85)【翻訳文提出日】2023-12-08
(86)【国際出願番号】 US2022022051
(87)【国際公開番号】W WO2022235349
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】17/314,540
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505441524
【氏名又は名称】ボーンズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カザーイ,ジェイ ジャムシード
(72)【発明者】
【氏名】デピュー,グレゴリー エス.
(57)【要約】
本開示の態様は、トルクおよび角度センシングデバイスに関する。センサおよび処理回路がデバイスに統合されている。センサは、第1の角度および/または速度を示す第1の信号を生成する。デバイスは、第2のリファレンスの角度および/または速度を示す第2の基準信号を受信する入力接点を有する。処理回路は、少なくとも第1の信号と第2の信号とに基づいてトルクの示度を生成する。いくつかの実施形態では、処理回路は、リファレンスの情報を事前にプログラムする、および/または学習する、記憶することができ、リファレンスの情報と内部的に生成された第1の信号とに基づいてトルクの示度を生成することができる。デバイスの出力接点は、トルクの示度を提供することができる。関連するシステムおよび方法も開示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトに加わるトルクを測定する方法であって、
第1のセンサを用いて、前記シャフトに接続された第1のリファレンスに関連付けられた角度および/または速度を示す第1の信号を生成することと、
第2のセンサから、前記シャフトに接続された第2のリファレンスに関連付けられた角度および/または速度を示す第2の信号を受信することと、
処理回路を用いて、少なくとも前記第1の信号と前記第2の信号に基づいて、前記シャフトに加わるトルクの示度を決定することであって、前記第1のセンサと前記処理回路はデバイス内に統合されており、前記第2のセンサは前記デバイスの外部にある、こと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記デバイスをマスターユニットとしてプログラムすることであって、前記デバイスはスレーブユニットとしてもプログラム可能であることをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2のセンサと第2の処理回路が第2のデバイス内に統合されており、
前記方法は、前記処理回路によって、前記トルクの前記示度と前記第2の処理回路によって生成される前記シャフトに加わるトルクの第2の示度とを比較することをさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記デバイスは、マスターユニットとして構成され、前記第2のセンサはスレーブユニットに含まれることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記トルクの前記示度を決定することは、前記第1の信号と前記第2の信号との間の位相差を検出することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記トルクの前記示度を決定することは、前記デバイスのメモリに記憶されている較正情報にアクセスすることを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のリファレンスは第1のトーンホイールであり、前記第2のリファレンスは第2のトーンホイールであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記デバイスの温度センサを用いて、前記デバイスに関連付けられた温度の示度を検出することと、
前記温度の前記示度に基づいて温度補償を適用することであって、前記トルクの前記示度は前記適用することに基づく、ことと、
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記シャフトは、車両内または機械内に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
トルクおよび角度センサデバイスであって、
外部デバイスからの第2のリファレンスの角度/速度を示す第2の信号を受信する入力接点と、
トルクの示度を提供する出力接点と、
第1の角度/速度を示す第1の信号を生成するセンサと、
少なくとも前記第1の信号と前記第2の信号に基づいて、前記トルクの前記示度を生成する処理回路であって、前記センサおよび前記処理回路は、前記トルクおよび角度センサ
デバイス内に統合されている、処理回路と、
を有することを特徴とするトルクおよび角度センサデバイス。
【請求項11】
前記処理回路は、第1のモードでマスターユニットとして機能して第2のモードでスレーブユニットとしてするようにプログラム可能であることを特徴とする請求項10に記載のトルクおよび角度センサデバイス。
【請求項12】
前記処理回路は、前記トルクの前記示度の生成を、前記処理回路によって決定されたトルクの第1の示度と前記外部デバイスによって生成されたトルクの第2の示度との比較に基づいて行うことを特徴とする請求項10に記載のトルクおよび角度センサデバイス。
【請求項13】
前記センサは可変リラクタンスセンサであることを特徴とする請求項10に記載のトルクおよび角度センサデバイス。
【請求項14】
前記センサは磁気センサであることを特徴とする請求項10に記載のトルクおよび角度センサデバイス。
【請求項15】
前記センサは誘導センサであることを特徴とする請求項10に記載のトルクおよび角度センサデバイス。
【請求項16】
前記センサは光学センサであることを特徴とする請求項10に記載のトルクおよび角度センサデバイス。
【請求項17】
前記第1の信号は、シャフトに接続された第1のトーンホイールまたはマグネットホイールに関連付けられており、前記第2の信号は、前記シャフトに接続された第2のトーンホイールまたはマグネットホイールに関連付けられており、前記トルクの前記示度は前記シャフトに加わるトルクを表すことを特徴とする請求項10に記載のトルクおよび角度センサデバイス。
【請求項18】
前記処理回路と前記センサは、共に前記トルクおよび角度センサデバイスの筐体内に設けられていることを特徴とする請求項10に記載のトルクおよび角度センサデバイス。
【請求項19】
シャフトに加わるトルクを測定するシステムであって、
第1のセンサと処理回路を有するトルクおよび角度センシングデバイスであって、前記第1のセンサは前記シャフトに接続された第1のリファレンスに関連付けられた角度および/または速度を示す第1の信号を生成し、前記処理回路は少なくとも前記第1の信号と前記シャフトに接続された第2のリファレンスに関連付けられた角度および/または速度を示す第2の信号とに基づいて前記シャフトに加わるトルクの示度を決定する、トルクおよび角度センシングデバイスと、
前記トルクおよび角度センシングデバイスの外部にあり、前記第2の信号を生成する第2のセンサと、
を有することを特徴とするシステム。
【請求項20】
前記第2のセンサは、第2のトルクおよび角度センシングデバイス内にあり、前記第2のトルクおよび角度センシングデバイスはスレーブユニットとしてプログラムされていることを特徴とする請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記第2のセンサは、第2のトルクおよび角度センシングデバイス内にあり、前記第2のトルクおよび角度センシングデバイスは、前記シャフトに加わるトルクの第2の示度を生成し、前記トルクおよび角度センシングデバイスは、前記トルクの前記示度を前記トル
クの前記第2の示度とを比較することを特徴とする請求項19に記載のシステム。
【請求項22】
前記第2のセンサはスタンドアロンセンサであることを特徴とする請求項19に記載のシステム。
【請求項23】
シャフトに加わるトルクを測定するトルクおよび角度センシングデバイスであって、
前記シャフトに接続された第1のリファレンスに関連付けられた角度および/または速度を示す第1の信号を生成するセンサと、
少なくとも前記センサからの前記第1の信号と前記トルクおよび角度センシングデバイスのメモリに記憶された第2のリファレンスの情報とに基づいて、前記シャフトに加わるトルクの示度を決定する処理回路であって、前記センサと前記処理回路は、前記トルクおよび角度センシングデバイス内に統合されている、処理回路と、
を有することを特徴とするトルクおよび角度センシングデバイス。
【請求項24】
前記第2のリファレンスの情報は事前にプログラムされていることを特徴とする請求項23に記載のトルクおよび角度センシングデバイス。
【請求項25】
前記第2のリファレンスの情報は、外部センサを用いずに前記トルクおよび角度センシングデバイスによって生成されることを特徴とする請求項23に記載のトルクおよび角度センシングデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2021年5月7日出願の米国特許出願第17/314,540号に基づく優先権を主張し、その開示全体は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の実施形態は、センサを使用してトルクを測定することに関する。
【背景技術】
【0003】
シャフトに加えられるトルクを測定することは、様々な用途において有用である。いくつかの例示的な用途として、車両内が挙げられる。例えば、シャフトに加えられるトルクを測定することは、ホイール速度センシングに有用であり、これは、アンチロックブレーキシステム(ABS)、電子安定性システム(ESS)、ステアリングアングルセンサ(SAS)、アドバンストドライブアシスタンスシステム(ADAS)などの動的ブレーキ制御システムの重要な入力となる。
【0004】
特定のトルク測定システムは、用途に強く依存するものであり、同様の用途において異なる構成で使用する場合に充分な汎用性が得られない。既存のトルク測定システムは比較的高価であり、様々な複雑さが伴う。したがって、改善されたトルク測定システムが望まれている。
【発明の概要】
【0005】
本願の請求項に記載される技術は、それぞれいくつかの側面を有し、1つの側面が単独でその望ましい技術属性に関わるわけではない。本願の特許請求の範囲を限定することなく、本開示のいくつかの顕著な特徴について以下に簡潔に説明する。
【0006】
本開示の一態様は、シャフトに加わるトルクを測定する方法である。この方法は、第1のセンサを用いて、前記シャフトに接続された第1のリファレンスに関連付けられた角度および/または速度を示す第1の信号を生成することと、第2のセンサから、前記シャフトに接続された第2のリファレンスに関連付けられた角度および/または速度を示す第2の信号を受信することと、処理回路を用いて、少なくとも前記第1の信号と前記第2の信号に基づいて、前記シャフトに加わるトルクの示度を決定することであって、前記第1のセンサと前記処理回路はデバイス内に統合されており、前記第2のセンサは前記デバイスの外部にある、こと、を含む。
【0007】
この方法は、前記デバイスをマスターユニットとしてプログラムすることであって、前記デバイスはスレーブユニットとしてもプログラム可能である、ことをさらに含むことができる。前記デバイスは、マスターユニットとして構成され、前記第2のセンサはスレーブユニットに含まれることもできる。
【0008】
前記第2のセンサと第2の処理回路が第2のデバイス内に統合されることもできる。この方法は、前記処理回路によって、前記トルクの前記示度と前記第2の処理回路によって生成される前記シャフトに加わるトルクの第2の示度とを比較することをさらに含むこともできる。
【0009】
前記トルクの前記示度を決定することは、前記第1の信号と前記第2の信号との間の位相差を検出することを含むことができる。前記トルクの前記示度を決定することは、前記
デバイスのメモリに記憶されている較正情報にアクセスすることを含むことができる。
【0010】
前記第1のリファレンスは第1のトーンホイールとすることができる。前記第2のリファレンスは第2のトーンホイールとすることができる。前記シャフトは、車両内に配置することができる。前記シャフトは、機械内に配置することができる。
【0011】
この方法は、前記デバイスの温度センサを使用して、前記デバイスに関連付けられた温度の示度を検出することと、前記温度の前記示度に基づいて温度補償を適用することであって、前記トルクの前記示度は前記適用することに基づく、ことをさらに含むことができる。
【0012】
本開示の別の態様は、トルクおよび角度センサデバイスであって、入力接点と、出力接点と、第1のセンサと、処理回路とを有する。前記入力接点は、外部デバイスからの第2のリファレンスの角度/速度を示す第2の信号を受信する。前記出力接点は、トルクの示度を提供する。前記第1のセンサは、第1の角度/速度を示す第1の信号を生成する。前記処理回路は、少なくとも前記第1の信号と前記第2の信号に基づいて、前記トルクの前記示度を生成する。前記センサおよび前記処理回路は、前記トルクおよび角度センサデバイス内に統合されている。
【0013】
前記処理回路は、第1のモードでマスターユニットとして機能して第2のモードでスレーブユニットとしてするようにプログラム可能である。前記処理回路は、前記トルクの前記示度の生成を、前記処理回路によって決定されたトルクの第1の示度と前記外部デバイスによって生成されたトルクの第2の示度との比較に基づいて行うことができる。
【0014】
前記センサは可変リラクタンスセンサとすることができる。前記センサは磁気センサとすることができる。前記センサは誘導センサとすることができる。前記センサは光学センサとすることができる。
【0015】
前記第1の信号は、シャフトに接続された第1のトーンホイールまたはマグネットホイールに関連付けることができる。前記第2の信号は、前記シャフトに接続された第2のトーンホイールまたはマグネットホイールに関連付けることができる。前記トルクの前記示度は前記シャフトに加わるトルクを表すことができる。
【0016】
前記処理回路と前記センサは、共に前記トルクおよび角度センサデバイスの筐体内に設けることができる。
【0017】
本開示の別の態様は、シャフトに加わるトルクを測定するシステムである。このシステムは、トルクおよび角度センシングデバイスと、前記トルクおよび角度センシングデバイスの外部にある第2のセンサとを有する。前記トルクおよび角度センシングデバイスは、第1のセンサと処理回路を有する。前記第1のセンサは、前記シャフトに接続された第1のリファレンスに関連付けられた角度および/または速度を示す第1の信号を生成する。前記処理回路は、少なくとも前記第1の信号と前記シャフトに接続された第2のリファレンスに関連付けられた角度および/または速度を示す第2の信号とに基づいて前記シャフトに加わるトルクの示度を決定する。前記第2のセンサは、前記第2の信号を生成する。
【0018】
前記第2のセンサは、第2のトルクおよび角度センシングデバイス内にあってよい。前記第2のトルクおよび角度センシングデバイスはスレーブユニットとしてプログラムすることができる。
【0019】
前記第2のセンサは、第2のトルクおよび角度センシングデバイス内にあってよく、前
記第2のトルクおよび角度センシングデバイスは、前記シャフトに加わるトルクの第2の示度を生成することができる。前記トルクおよび角度センシングデバイスは、前記トルクの前記示度を前記トルクの前記第2の示度とを比較することができる。
【0020】
前記第2のセンサはスタンドアロンセンサとすることができる。
【0021】
本開示の別の態様は、シャフトに加わるトルクを測定する方法である。この方法は、デバイス内で処理回路と統合されたセンサを用いて、前記シャフトに接続された第1のリファレンスに関連付けられた角度および/または速度を示す第1の信号を生成することを含む。この方法は、前記処理回路を用いて、少なくとも前記第1の信号と第2の信号とに基づいて、前記シャフトに加わるトルクの示度を決定することも含む。
【0022】
この方法は、デバイスの外部にある第2のセンサから前記第2の信号を受信することを含むことができる。あるいは、前記第2の信号は、外部センサを用いずに前記デバイスによって生成することができる。この方法は、事前プログラム情報を受信することと、前記事前プログラム情報をメモリに記憶することであって、前記第2の信号が前記事前プログラム情報を示す、ことを含むことができる。
【0023】
本開示の別の態様は、シャフトに加わるトルクを測定するトルクおよび角度センシングデバイスである。このトルクおよび角度センシングデバイスは、センサと処理回路を有する。前記センサは、前記シャフトに接続された第1のリファレンスに関連付けられた角度および/または速度を示す第1の信号を生成する。前記処理回路は、少なくとも前記センサからの前記第1の信号と前記トルクおよび角度センシングデバイスのメモリに記憶された第2のリファレンスの情報とに基づいて、前記シャフトに加わるトルクの示度を決定する。前記センサと前記処理回路は、前記トルクおよび角度センシングデバイス内に統合されている。
【0024】
前記第2のリファレンスの情報は事前にプログラムすることができる。前記第2のリファレンスの情報は、外部センサを用いずに前記トルクおよび角度センシングデバイスによって生成することができる。
【0025】
これらおよび他の実施形態は、図面を参照して以下でより詳細に説明される。本開示を要約する目的で、本開示の革新技術のいくつかの態様、利点、および新規の特徴について、本明細書で説明する。このような利点の必ずしもすべてが、任意の特定の実施形態に従って達成されるわけではないことを理解されたい。したがって、本開示の革新技術は、本明細書で開示または示唆される他の利点を必ずしも達成することなく、本明細書で開示される1つの利点または一連の利点を達成または最適化する方式で具現化または実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本開示の実施形態は、非限定的な例として、添付の図面を参照して説明される。
【0027】
図1図1は、一実施形態によるトルクおよび角度測定センサ(TAMS;Torque and Angle Measuring Sensor)デバイスの概略ブロック図である。
図2A図2Aは、一実施形態による可変リラクタンスセンサを有する例示的なTAMSデバイスを示す。
図2B図2Bは、一実施形態による可変リラクタンスセンサを有する例示的なTAMSデバイスを示す。
図2C図2Cは、可変リラクタンスセンサに近接して回転するトーンホイールを有する図2Aおよび図2BのTAMSデバイスを示す。
図3A図3Aは、TAMSデバイスのトーンホイールと可変リラクタンスセンサとの間の4つの異なる固定動作ギャップの各々に対する試験データから生成された曲線を示すグラフである。
図3B図3Bは、3つの異なる固定回転速度の各々について、様々なエアギャップ距離におけるTAMSデバイスの可変リラクタンスセンサ出力電圧をプロットするグラフである。
図4A図4Aは、TAMSデバイスの可変リラクタンスセンサと外部可変リラクタンスセンサとの間の位相差をプロットするグラフである。
図4B図4Bは、TAMSデバイスの可変リラクタンスセンサと外部可変リラクタンスセンサとの間の位相差をプロットするグラフである。
図4C図4Cは、図4Aの信号のデジタル化されたバージョンのグラフである。
図4D図4Dは、図4Bの信号のデジタル化されたバージョンのグラフである。
図4E図4Eは、図4Cに対応する差動位相信号を示すグラフである。
図4F図4Fは、図4Dに対応する差動位相信号を示すグラフである。
図5図5は、電子信号処理モジュールのアナログ出力として提供される補償されていないトルク信号および線形基準曲線のプロットである。
図6A図6Aは、一実施形態によるアクティブセンサを有する例示的なTAMSデバイスを示す。
図6B図6Bは、一実施形態によるアクティブセンサを有する例示的なTAMSデバイスを示す。
図7図7は、一実施形態による、2つのTAMSデバイスを有する例示的なトルク測定システムを示す。
図8図8は、一実施形態によるマスタTAMSデバイスおよびスレーブTAMSデバイスを有する例示的なトルク測定システムの概略図である。
図9図9は、一実施形態による、2つのマスタTAMSデバイスを有する例示的なトルク測定システムの概略図である。
図10図10は、一実施形態による、TAMSデバイスおよびスタンドアロンセンサを有する例示的なトルク測定システムの概略図である。
図11A図11Aは、一実施形態によるシャフトに加えられるトルクを測定する方法のフロー図である。
図11B図11Bは、別の実施形態によるシャフトに加えられるトルクを測定する方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下の特定の実施形態の詳細な説明は、特定の実施形態の様々な説明を提示する。しかしながら、本明細書で説明される技術は、例えば、請求項によって定義および網羅されるように、多数の異なる方法で具現化することができる。この説明では、図面を参照するが、同様の参照番号および/または記号は、同一または機能的に類似の要素を示すことができる。図面に示される要素は、必ずしも縮尺通りに描かれていないことが理解される。さらに、いくつかの実施形態は、図面に示されるよりも多くの要素および/または図面に示される要素のサブセットを含み得ることが理解される。さらに、いくつかの実施形態は、2つ以上の図面からの特徴の任意の好適な組み合わせを組み込むことができる。
【0029】
本開示は、トルクおよび角度測定センサ(TAMS)デバイスを示す。このTAMSデバイスは、回転シャフトまたは非回転シャフトなどのシャフトに加えられるトルクを計算することができる。TAMSデバイスは、単一の小型ユニット内に内蔵される速度/角度センサおよび処理回路を含むことができる。処理回路は、例えば、マイクロコントローラを含む。また、TAMSデバイスは、温度センサを含むことができる。温度センサは、トルク計算における温度補償に使用することができる。TAMSデバイスは、アナログおよび/またはデジタル電子インターフェースを含むことができる。
【0030】
トルク測定システムは、シャフトと、2つのトーンホイールギアまたは多極磁石ホイールなどの2つのリファレンス(reference)と、TAMSデバイスと、TAMSデバイス
の外部のセンサとを含むことができる。TAMSデバイスの外部のセンサは、場合によってはスタンドアロンの速度/角度センサであってよい。TAMSデバイスの外部のセンサは、いくつかの他の事例では、第2のTAMSデバイス内に含まれてもよい。第2のTAMSデバイスは、スレーブユニットまたはマスタユニットであり得る。
【0031】
場合によっては、トルク測定システムは、シャフトと、1つのトーンホイールギアまたは多極磁石ホイールなどの1つのリファレンスと、TAMSデバイスとを含むことができる。TAMSデバイスは、リファレンスの回転から第1の信号を動的に生成することができる。TAMSデバイスは、2次情報について学習、記憶、または事前にプログラムすることができる。例えば、いくつかの例では、2次情報は、異なる方向速度で負荷のないリファレンスホイールから学習することができる。2次情報は、基準信号、TAMSデバイスの処理回路の機能から決定され得る基準信号を表すデータセットなどであり得る。2次情報は、TAMSデバイスのメモリに格納することができる。TAMSデバイスは、少なくともTAMSデバイスのセンサによって生成された第1の信号および第2の情報に基づいて、シャフトに印加されるトルクの示度を決定することができる。センサは、本明細書に開示される任意の好適なセンサである。本明細書に開示されるTAMSデバイスは、(
1)統合されたセンサからの信号およびTAMSデバイスのメモリに記憶された2次情報
に基づいてトルクを計算すること、および/または(2)統合されたセンサからの信号および外部センサからの入力信号に基づいてトルクを計算することが可能である。
【0032】
本明細書に開示される実施形態は、診断機能およびプログラマビリティ機能を有する高性能な(例えば、線形性、精度、分解能、または再現性のうちの1つ以上に関する性能)優れたトルク/回転角度測定システムを提供し、システムを種々の異なる用途および構成のために多目的に利用することができる。
【0033】
分散型速度センシングデバイスおよび電子制御ユニットを使用するトーンホイールトルク測定システムの設計は、用途に依存することがあり、同じ用途においてシステムを異なる構成で使用する場合に充分な汎用性が得られない可能性がある。分散型トルク測定システムは、アセンブリ、配線、調整、較正、および/または保守の複雑さという欠点を有し得る。したがって、そのような分散型トルク測定システムは、比較的高価であり得る。
【0034】
本明細書に開示される統合トルクセンシングシステムは、異なる構成を伴う用途において柔軟性を提供しつつ、上記の複雑さを解決することができる。本開示では、統合された速度/角度センサを有するTAMSデバイスを提示する。TAMSデバイスは、マスタユニットまたはスレーブユニットとして機能するようにプログラム可能である。TAMSデバイスは、シャフトに加えられるトルクまたは回転角度を計算することができる。TAMSデバイスは、様々な他の外部電気速度/角度センサと共に動作するようにプログラムすることができる。また、TAMSデバイスは、システムの機能的冗長性および/または妥当性を生み出すために、1つまたは複数の他の同様のTAMSデバイスを含むトルク測定システムに含まれ得る。TAMSデバイス間のデータ伝送は、アナログおよび/またはデジタルフォーマットを伴う有線および/または無線通信を含む、種々の方法で実現すうことができる。
【0035】
どのセンシング技術が使用されるかにかかわらず、センシングデバイス出力の精度、ヒステリシス、再現性、線形性などのうちの1つまたは複数は、設計の重要なパラメータであり、磁気技術においてさらに重要であり得る。より正確なトルクおよび/または角度の測定のために、ほとんどのセンシング用途は、較正における低い非線形性ならびにシステ
ムにおける低い機械的および磁気的ヒステリシス/誤差を伴う。望ましくないシステム変動やノイズ、例えば、部品アセンブリの不正確さ、システム材料特性の変動、センシング要素の変動、磁気ヒステリシス、歯の表面形状および寸法などのトーンホイールの物理的特徴および機械的特徴の変動などによる3次元機械的運動、のうちの1つまたは複数が生じる場合に測定誤差を最小限に抑えることが課題となり続けている。一般に、低公差機械システム設計に加えて、磁気センサの精度は、センサ構造および周囲部品の磁気材料特性、磁石の種類および磁化、物理的寸法、望ましくない磁気および機械的ノイズ、磁気センシング素子の種類および技術、エアギャップおよび較正を含む測定システム構成、のうちの1つまたは複数を含む、磁気回路の設計に使用される技術によって定義することができる。トルクおよび/または角度の計算の精度において重要な役割を果たし得る、種々のパラメータがある。したがって、高信頼性のTAMSデバイスは、高速マルチアルゴリズム処理、パラメータ較正、および/またはデータ記憶のための、低オフセットおよび低温ドリフト電子機器およびプログラマブルユニットの利用を促進することを伴い得る。
【0036】
本明細書に開示される実施形態は、センシング回路(例えば、磁気センシング回路)内の誤差の原因を低減、最小化、または排除すること、所望のエアギャップのための調節可能な機械的なマウント、所望の較正および/またはアルゴリズムのプログラム可能性および構成可能性を伴う複数の用途のためのロバスト設計、機能的な冗長性および妥当性、ならびに診断能力(例えば、自己安全性および/または健康チェック)を低減、最小化、または排除することによって、高性能なトルクおよび角度測定デバイスを提供することができる。
【0037】
TAMSデバイスは、基準のシャフトに加えられたトルクおよびねじれ角を測定するように設計された、統合されたプログラム可能なトルクおよび角度センサである。このような基準のシャフトは、1つまたは2つのトーンホイールまたは磁石ホイールに接続される。TAMSデバイスは、トルクセンシングデバイスとしてトルクおよび他の必要な機能(速度、回転方向、および角度)を動的に計算するようにプログラム可能なマイクロコントローラベースの能動的または受動的な速度/角度センサであり得る。TAMSデバイス内の内蔵センサは、角度および/または速度をセンシングするために好適な任意のセンサである。例えば、内蔵センサは、可変リラクタンス(VR;Variable Reluctance)センサ
などのパッシブセンサ、または磁気ホール効果センサ、磁気AMR(Anisotropic Magneto-Resistive;異方性磁気抵抗)センサ、磁気GMR(Giant Magneto-Resistive;巨大磁気抵抗)センサ、磁気TMR(Tunnel Magneto-Resistive;トンネル磁気抵抗)センサ、誘導センシングシステム、光学センサなどのアクティブセンサ、または任意の他の適切なセンサとすることができる。誘導センシングシステムは、センシング要素としてプリント回路基板(PCB;Printed Curcuit Board)上に構築された多巻き一次(送信機)およ
び2次(受信機)コイルに接続する集積回路(IC;Integrated Circuit)を含む。TAMSデバイスは、トルクおよび角度測定システムにおけるマスターユニットまたはスレーブユニットとして機能するようにプログラムすることができる。TAMSは、マスタユニットとして、内蔵センサおよび外部の角度/速度センサの両方からのトーンホイール角度および物理的歯プロファイル情報を監視および読み取ることができる。外部センサは、独立型センサ、または第2のTAMSデバイスに含まれるセンサであり得る。TAMSデバイスは、シャフトに関連付けられた2つのトーンホイールまたは磁石ホイールなどの2つのリファレンスの間の機械的ねじり角度差を決定し、シャフトに加えられるトルクを計算することができる。
【0038】
また、いくつかの実施形態では、TAMSデバイスは、センサ機能に影響を及ぼす温度を測定するための内部温度センサを含むことができる。TAMSデバイスは、トルクおよび/または角度を決定するための温度補償アルゴリズムを適用することができる。
【0039】
次に、TAMSデバイスの機能について説明する。TAMSデバイスは、内部マスタおよび/または外部スレーブセンサから受信される、回転シャフトの角速度(方向角速度)および角度位置、ならびにトーンホイールの歯プロファイル情報または磁石ホイールの磁場プロファイル(速度/角度信号を示す)を動的に検出、監視、読み取り、処理、分析、および捕捉することができる。マスタセンサは、内蔵速度センサであり得る。マスタセンサは、アクティブセンサまたはパッシブセンサであり得る。スレーブセンサは、スタンドアロンの外部速度センサまたは2次的なTAMSデバイスの速度センサであり得る。スレーブセンサは、アクティブセンサまたはパッシブセンサであり得る。TAMSデバイスは、マスタセンサからの信号とスレーブセンサからの信号との間の位相差を測定することができる。
【0040】
TAMSデバイスは、シャフトに接続されたトーンホイールの回転方向を検出することができる。TAMSデバイスは、設計ごとにゼロRPM(Rotation Per Minute;1分あ
たりの回転数)から超高RPMまで回転シャフトに加えられるトルクの方向を検出することができる。
【0041】
TAMSデバイスは、回転シャフトのトルクおよび/または角度値を計算するためのすべての関連する機能および/またはアルゴリズムおよびパラメータを読み取って捕捉することができる。TAMSデバイスは、異なるトルク計算方法(例えば、ゼロ交差に基づく位相測定、高速フーリエ変換(FFT)、または他の方法)のためにプログラムすることができる。TAMSデバイスは、較正パラメータを記憶することができ、シャフトに加えられるトルクを計算するための1つまたは複数のアルゴリズムでプログラムすることができる。TAMSデバイスは、トーンホイールおよび/または他のリファレンスの機械的なサイズおよび/または形状の特徴を読み取って捕捉し、そのような情報を機能計算、妥当性、および(電気)機械的診断に適用することができる。
【0042】
TAMSデバイスは、内蔵センサおよび外部センサから受信される2つの独立した信号の測定された差動位相(differential phase)に基づいて、トーンホイール/磁石ホイール等の2つのリファレンスを接続するシャフトに印加されるトルクを計算することができる。
【0043】
2次的なTAMSデバイスを含むシステムでは、第1のTAMSデバイスは、第2のTAMSデバイスから受信された、計算されたトルク情報を捕捉および比較することができる。これは、トルクおよび/または角度の測定における機能的冗長性および妥当性チェックを提供することができる。
【0044】
TAMSデバイスは、トーンホイール速度および回転方向データ、印加トルクおよび印加トルクの方向を取り込むことができる。次いで、TAMSデバイスは、任意の好適なインターフェース(例えば、コントローラエリアネットワーク(CAN;Controller Area Network)、ローカル相互接続ネットワーク(LIN;Local Interconnect Network)、
シリアル周辺インターフェース(SPI;Serial Peripheral Network)、パルス幅変調
(PWM;Pulse Width Modulation)、集積回路間(I2C;Inter-Integrate Circuit
)、またはユニバーサル非同期受信機/送信機(UART;Universal Asynchronous Reciever/Transmitter)インターフェース)および/または比較的高分解能のアナログフォ
ーマットを介して、情報をデジタル的に伝送することができる。TAMSデバイスは、内蔵の受動的または能動的な速度/角度センサからゼロ交差情報を検出および出力することができる。
【0045】
TAMSデバイスは、センサ機能に影響を及ぼす温度を測定および/または報告することができる。TAMSデバイスは、シャフトに加えられるトルクを決定する際に温度補償
を適用することができる。
【0046】
TAMSデバイスの入力/出力(I/O)は、電磁適合性(EMC;Electromagnetic Compatibility)、電磁干渉(EMI;Electromagnetic Interference)、および/また
は静電放電(ESD;Electrostatic Discharge)過渡信号などの過渡信号の影響を低減
、最小化、および/または排除するために、電子フィルタリング構成要素によって保護することができる。TAMSデバイスのI/Oインターフェースは、所望に応じて入力信号および/または出力信号を調整するように設計することができる。
【0047】
本明細書に開示されるTAMSデバイスは、任意の好適なシャフトトルクセンシングシステムに適用することができる。そのような技術的解決策は、産業機械および機器、ロボット、自動車、航空宇宙、電気自動車(EV;Electric Vehicle)、自律型車両(AV;Autonomou Vehicle)、ならびに医療機器などの機能的な冗長性および妥当性が望ましい
産業を含む、任意の好適な産業において適用することができる。
【0048】
図1は、一実施形態に係るTAMSデバイス10の概略ブロック図である。図に示すように、TAMSデバイス10は、センサ12と、処理回路14と、I/Oインターフェース15、16、17と、電圧レギュレータおよび温度センサ18とを有数。センサ12、処理回路14、電圧レギュレータおよび温度センサ18は、TAMSデバイス10のハウジング内に設けることができる。
【0049】
センサ12は、TAMSデバイス10内に統合される。センサ12は、処理回路14と同じパッケージに含まれる。センサ12は、回転シャフトに関連する角度および/または方向速度の情報を含む信号を検出および生成することができる。センサ12は、多くの用途において、特にゼロに近い速度測定が望まれる場合は、アクティブセンサであり得る。センサ12は、特定の用途ではパッシブセンサとすることができる。処理回路14は、センサ12の出力信号に基づいて、回転軸の角度位置および/または角速度ならびにその方向を決定することができる。角度変化率は、角速度(ω=dθ/dt)を示すことができる。同様に、角速度は、角度「θ」および時間Tによる変化「Δθ」を示すことができる。したがって、センサ12によって生成される信号は、時間に依存し、回転シャフトの角度位置および角速度の両方を示すことができる。センサ12によって生成される信号は、回転シャフトの角度位置または角速度のうちの少なくとも1つを示す。
【0050】
用途に応じて、処理回路14は、より強力でより高速な計算のためにより複雑なアルゴリズムを実行するデジタル信号処理能力を有する単純なマイクロコントローラまたは強力なマイクロコントローラを備えることができる。例えば、処理回路は、特定の要件を伴う任意の用途を満たすようにカスタム設計されたマイクロプロセッサベースの電子信号処理モジュール(ESPM;Electronic Signal Processing Module)であってよい。処理回
路14は、プログラム可能であり得る。処理回路14は、インターフェース16において内部で受信されたセンサ12の出力信号と、第1のI/Oインターフェース15のI/O接点において受信されたTAMSデバイス10の外部のセンサの出力とに基づいてトルクを計算することができる。I/O接点は、ピン、パッド、バンプ、または入力信号を受信するための任意の他の好適な接点であり得る。処理回路14は、角度および/またはトルクを計算するための1つまたは複数のパラメータを記憶するメモリを含むことができる。
【0051】
処理回路14は、インターフェース16のみで受信されたセンサ12の出力信号と、メモリにあらかじめプログラムされたおよび/または学習およびキャプチャされた1つまたは複数の基準信号とに基づいてトルクを計算することができる。異なる条件における基準信号は、インターフェース15のI/O接点を介して記憶するために処理回路14に提供され得る。この場合、TAMS10は、トルクを計算するためのスタンドアロンデバイス
として機能する。
【0052】
TAMS10は、信号を受信および/または出力するのに適したI/Oインターフェース15、16、17を有する。I/Oインターフェース15、16、17のうちの1つまたは複数は、デジタル信号を処理するように構成することができる。この代わりにあるいはこれに加えて、I/Oインターフェース15、16、17のうちの1つ以上は、アナログ信号を処理するように設けられてよい。
【0053】
第1のI/Oインターフェース15は、TAMSデバイス10の外部から信号を受信し、受信された信号を処理回路14および/または電圧レギュレータおよび温度センサ18に提供することができる。第1のI/Oインターフェース15は、受信された信号を処理することができる。第1のI/Oインターフェース15は、TAMSデバイス10のための共通接地信号GNDを受信することができる。第1のI/Oインターフェース15は、TAMSデバイス10のための電源電圧VDDを受け取ることができる。第1のI/Oインターフェース15は、基準信号を提供するために、2次的なTAMSデバイスのセンサ、テスタ、シミュレータデバイス、またはプログラマ等の外部センサまたはデバイスから、測定されたトーンホイール情報および状態を示す、1つ以上の基準信号Ref Signal_In1、Ref Signal_In2を受信することができる。1つまたは複数の基準信号Ref Signal_In1
、Ref Signal_In2は、第2のトーンホイールまたは磁石ホイールなどのリファレンスに関連付けられた角度および/または速度の示度を提供することができる。
【0054】
第2のI/Oインターフェース16は、センサ12からの出力信号を処理回路14に提供することができる。第2のI/Oインターフェース16は、センサ12からの出力信号を処理することができる。そのような処理は、フィルタリング、信号増幅などの1つまたは複数を含むことができる。
【0055】
第3のI/Oインターフェース17は、処理回路14から信号を受信し、受信した信号をTAMSデバイス10の外部に出力することができる。第3のI/Oインターフェース17は、計算されたトルク/角度情報および/または測定システム診断を示す1つまたは複数のTAMS出力信号TAMS Signal_Out1、TAMS Signal_Out2を外部電子制御モジュール(ECU;Electronic Control Module)に出力することができる。第3のI/Oインタ
ーフェース17は、センサ12からの出力信号に基づいて、測定されたトーンホイール/マグネットホイールの情報および状態を示す1つまたは複数の基準信号Ref Signal_Out1
、Ref Signal_Out2を出力することができる。1つまたは複数の基準信号Ref Signal_Out1、Ref Signal_Out2は、トーンホイール/マグネットホイールなどのリファレンスに関連
付けられた角度および/または速度の示度を提供することができる。また、これらの信号は、TAMSデバイス10が行うトルクを計算するために、別の外部TAMSデバイスによって使用することもできる。
【0056】
電圧レギュレータおよび温度センサ18は、調整された電圧を処理回路14に供給する電圧レギュレータを備える。第1のI/Oインターフェース15で受信された電源電圧VDDに基づいて、電圧レギュレータは、より正確かつ反復可能なTAMS性能のために、所定のレベルで処理回路14全体ならびにインターフェース15、16、17に通電するように、所定の電力(電圧および電流)を生成することを保証する。電圧レギュレータおよび温度センサ18は、温度センサを備える。処理回路14は、温度センサの出力に基づいて温度補償を実行するように構成することができる。これにより、TAMSの測定および計算機能の精度が向上する。
【0057】
TAMSデバイス10は、様々な用途に使用することができる。車輪速度センシングは、アンチロックブレーキシステム(ABS)、電子安定性システム(ESS;Electronic
Stability System)、ステアリング角度センシング(SAS;Steering Angle Sensing
)システム、およびアドバンスト駆動支援システム(ADAS;Advanced Driving Assistance System)などの動的ブレーキ制御システムに対する重要な入力である。用途は、例えば、図2Cに示すように、トーンホイールを有するシャフトに加えられる速度およびトルクを検出および測定することを含む。
【0058】
車輪速度およびトルク測定用途のためのTAMSデバイス10のセンサ12の例は、可変リラクタンスを使用するパッシブセンサおよび固体集積回路を使用するアクティブセンサを含む。磁気速度センサは、TAMSデバイス10に組み込まれたパッシブセンサおよびアクティブセンサの例である。磁気速度センサは、磁気速度センサの近くの磁気ターゲットの移動によって引き起こされる磁場の変化に応答する。
【0059】
例示的なTAMSデバイスは、集積可変リラクタンス(VR;Variable Reluctance)
センサを含む。VRセンサは、近くで回転するトーンホイールなどの強磁性または他の高透磁率磁気ターゲットのサイズ、速度、および近接度に比例するアナログ交流(AC)信号を生成する比較的小さい電磁発生器を含むことができる。VRセンサは、外部電源なしで動作することができ、したがって、パッシブセンサとして分類することができる。TAMSデバイスは、トルクおよび角度測定用途のための統合VRセンサを含むことができる。
【0060】
図2Aおよび図2Bは、一実施形態に係る統合VRセンサ22を備える例示的なTAMSデバイス20を示す。図2Aは、TAMSデバイス20の主要構造のモデルを示す。図2Bは、TAMSデバイス20の内部構成要素を示す。図2Aに示すように、TAMSデバイス20は、VRセンサ22と、電子信号処理モジュール(ESPM)24と、I/Oコネクタ26とを含む。VRセンサ22およびESPM24は、いずれもTAMSデバイス20の筐体内に設けられている。図2Bは、VRセンサ22が、磁石32と、ワイヤのコイル33と、磁極片34とを有することを示す。さらに図2Bにおいて、ESPM24は、プリント回路基板(PCB)35と、処理回路36と、PCB35上に配置された温度センサ37とを含む。処理回路36は、例えばマイクロコントローラを有してもよい。I/Oコネクタ26は、図2Bに示すように、I/Oコネクタ接点38を有してもよい。I/Oコネクタ接点38は、I/Oコネクタピンとすることができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、TAMSデバイス20は、事前にプログラムされるか、あるいはあらかじめ決められた第2のリファレンスの情報を記憶することができる。この2次的なリファレンスの情報は、TAMSデバイス20のI/Oインターフェースにおいて受信された信号から事前にプログラムすることができる。2次的なリファレンスの情報は、外部センサなしでTAMSデバイス20によって生成することができる。例えば、いくつかの例では、2次的なリファレンスの情報は、異なる方向速度で負荷のない基準車輪から決定することができる。2次的なリファレンスの情報は、TAMSデバイス20のメモリに記憶および/またはプログラムすることができる。2次的なリファレンスの情報は、基準値を表すことができる。2次的なリファレンスの情報は、基準値を計算するためにTAMSデバイス20の処理回路によって実行される関数のための1つまたは複数の入力値を含むことができる。例えば、基準値を決定するために処理回路によって実行される図3Aおよび/または図3Bの曲線と同様の関数に値を入力することができる。2次的なリファレンスの情報を用いて、TAMSデバイス20は、単独で、少なくとも2次的な情報とVRセンサ22の出力とに基づいて、シャフトに印加されるトルクの示度を決定することができる。TAMSデバイス20は、(1)内部センサからの信号およびメモリに記憶された2次的な情報、および/または(2)内部センサからの信号および外部センサからの信号に基づいてトルクを計算するようにプログラムすることができる。ある実施形態では、TAMSデバイス20は、(1)内部センサからの信号およびメモリに記憶された2次的
な情報、ならびに(2)内部センサからの信号および外部センサからの信号に基づいて、計算されたトルクを比較することができる。
【0062】
図2Cは、VRセンサ22に近接して回転するトーンホイール39を有するTAMSデバイス20を示す。図2Cにトーンホイール39の一部を示す。トーンホイール39は、強磁性のトーンホイールである。例示的な強磁性トーンホイールは、鉄、ニッケルコバルト、およびそれらの合金などの遷移金属を含むことができる。したがって、トーンホイール39は、特定の磁気特性(例えば、500~800の典型的な透過度を有する炭素鋼1008または炭素鋼1010)を有する金属ターゲットとすることができる。図に示すように、トーンホイール39はギアを有する。VRセンサ22は、トーンホイール39の回転に基づいて速度および/または角度を検出することができる。
【0063】
回転トーンホイール39(例えば、図2Cに示すもの)と連動して動作するVRセンサ出力電圧の数学モデルは、式(1)~式(6)によって表すことができる。これらの式は、ファラデーの法則およびレンツの法則から導出することができる。試験データから、式(1)~式(6)に基づく数学的モデルが正確であることがわかる。
【数1】

【数2】

【数3】

【数4】

【数5】

【数6】
【0064】
式(1)および式(2)に示されるように、VRセンサ22によって生成される動的出力電気信号電圧V(t,θa,RPM,x)は、時間(t)、ターゲットの回転速度(RPM)、センサ22とトーンホイール歯との間のギャップ(x)に正比例し得る。そして、トーンホイール39に連結されたシャフトに加えられるトルクによる角度(θa)または位相変化(Δφa)である。式(6)のパラメータC1およびC2ならびに式(2)のKは定数である。
【0065】
VRセンサ電気信号出力の電気周波数は、機械回転速度(RPM)およびトーンホイー
ルギアのあらかじめ設計された歯数(Nt)によって決定することができる。
【0066】
トーンホイールの機械的ギアピッチ(θp)は、設計当たりのトーンホイール上の歯の数(θp=360°/Nt)によって決定することができる。したがって、機械的ギアピッチ(および/またはギア歯の数)は、VRセンサ信号出力の電気周波数ならびに計算された角度および/またはトルク測定の分解能の両方に影響を及ぼし得る。
【0067】
VRセンサ出力電圧Vppのピーク間振幅(RPM,x)は、式(3)に示すように、固定動作エアギャップ(x)における機械的ギア回転速度(RPM)の線形関数とすることができる。
【0068】
試験データから生成された図3Aに示す曲線は、0.5mm(ミリメートル)~3mm
の範囲のトーンホイールとVRセンサとの間のいくつかの固定動作ギャップ(x)におけるVpp(x,RPM)の線形性を示す。
【0069】
式(3)~式(6)に示すように、VRセンサ出力電圧Vpp(RPM,x)のピーク間振幅は、エアギャップが固定RPMで変化すると指数関数的に減衰する非線形関数C(x)に比例し得る。
【0070】
図3Bは、いくつかの固定RPMにおいてエアギャップが0.5mm~3mmの間で変
化すると指数関数的に減衰するVRセンサ出力電圧Vpp(x,RPM)をプロットしたものである。
【0071】
また、式(3)~式(6)は、VRセンサ出力電圧の振幅が、ワイヤのコイルの巻数(Nc)、コイルの断面積(Ac)、およびトーンホイール歯の数(Nt)等の特定の物理的設計パラメータによって事前に決定することができることを示す。トーンホイールギアが回転すると、VRセンサとギア歯との間の物理的ギャップxも変化し、磁束B(x)の大きさをギャップに対して変化させることができる。ピーク間磁束密度変化Bpp(x)は、式(6)で与えられる非線形減衰指数関数で精度よく近似することができる。
【0072】
内蔵VRセンサおよび外部VRセンサの両方によって生成される動的出力電圧V(t,θa,RPM,x)は、TAMSデバイス20のESPM24(図2A図2C)に供給することができる。ESPM24は、I/Oインターフェースおよび/またはマイクロコントローラにおいて、これらの信号をさらに処理することができる。
【0073】
図4Aおよび図4Bは、TAMSデバイスのVRセンサと外部VRセンサとの間の位相差をプロットしたグラフである。これらの差は、TAMSデバイスのESPMにおいて検出することができる。図4Aにおいて、初期位相差Δφa0は45°である。また、トーンホイール付きシャフトにトルクが加わる。図4Bに示すように、位相差は、調整された位相差Δφa1が55°となるように変化する。シャフトに加わるトルクは、ESPMにおいて計算および/または測定された2つのVRセンサからの2つの出力信号間の差動位相差(Δφa1-Δφa0)に比例し得る。図4Aおよび図4Bに示される2つのアナログ信号A、Bは、デジタル化され(またはゼロ交差を介して脈動する)、次いで、マイクロコントローラ単独で、または別の回路とによって、差分化される(A-B)。
【0074】
図4Cおよび図4Dは、図4Aおよび図4Bの信号のデジタル化されたバージョンのグラフである。以下に説明するように、これらのグラフは、代替的に、アクティブセンサの出力を表すことができる。2つのVRセンサからの信号のゼロ交差は、TAMSデバイスのESPMによって検出することができる。この代わりにあるいはこれに加えて、2つのVR信号の波形と関連付けられる任意の他の好適な点を検出することができる。
【0075】
TAMSデバイスのVRセンサおよび外部VRセンサ(第2のTAMSデバイスであってもよいしそうでなくてもよい)からのデジタル化VR信号の差動位相信号を生成することができる。図4Eおよび図4Fは、それぞれ図4Cおよび図4Dに対応する差動位相信号を示すグラフである。差動位相信号は、2つのVRセンサからのVR出力信号のゼロ交差間の持続時間を表す。トーンホイールを用いてシャフトにトルクを印加することに応答する差動位相信号に関連する持続時間変化は、印加されたトルクに正比例(ここで、シャフトのねじり剛性係数は、その形状、寸法、および材料に関連する)することができる。持続時間は、TAMSデバイスのVRセンサおよび外部VRセンサからのVR信号の基準点(例えば、ゼロ交差)間の差を表すことができる。持続時間の変化は、図4Eおよび図4Fのパルス間のパルス長の差を表すことができる。持続時間変化は、TAMSデバイスのESPMによって計算することができる。ESPMは、持続時間変化をトルク値に変換することができる。
【0076】
シャフトおよびトーンホイール材料の物理的特性は、温度変化によって変化する。この温度効果が無視できないいくつかの例では、ESPMは、温度センサからの温度の示度およびESPMのメモリに記憶された較正データに基づいてトルク値を補償することができる。そして、ESPMは、TAMSデバイスから測定されたトルク値と温度値の両方を出力することができる。トルクおよび/または温度値の表示は、特定の用途においてデジタルおよび/またはアナログ信号であり得る。
【0077】
図5は、ESPMのアナログ出力として提供される補償されていないトルク信号および線形基準曲線をプロットしたものである。図5の補償されていないトルク信号は、二乗平均平方根(RMS)電圧である。補償されていないトルク信号は、TAMSデバイスのVRセンサの出力信号と外部VR信号の出力信号との間の差動位相(Δφa1-Δφa0)の関数としてRMS電圧を表す。
【0078】
センサ動作温度変化は、VRセンサ構造の物理的パラメータ、エアギャップ、および/またはESPM構成要素の機能動作に影響を及ぼし、TAMSデバイスの内部VRセンサおよび外部VRセンサの出力電圧V(t,θa,RPM,x)の変化を生じさせる。温度変化は、磁場強度(例えば、パラメータK、KB、C1、C2)の変化を生じさせ、最終
的に、TAMS出力電圧の利得および位相を変化させることができる。温度変化は、図5に示すように、TAMSデバイスの線形出力電圧の傾きおよびオフセット値に影響を及ぼし得る。TAMSデバイス出力電圧は、温度変化によるオフセットおよび傾きの変化に対して補償することができる。TAMSデバイスは、所望の範囲の温度動作(例えば、約-40℃~150℃)に対して動作するように較正することができる。補償されたトルク信号は、図5に示す線形基準曲線と同様であり得る。
【0079】
いくつかの実施形態では、TAMSデバイスは、アクティブ速度センサを含む。アクティブ速度センサは、外部電源から電力を受け取って機能する。アクティブセンサの一例として、バックバイアスホール効果速度センサが挙げられる。ホール効果センサは、速度に正比例する周波数を有するデジタル出力信号を提供することができる。特定のVRセンサの出力信号とは異なり、アクティブセンサ出力信号の振幅は、磁気ターゲット(例えば、ギア付きトーンホイール)の速度と共には変化しない場合がある。次に、2つのアクティブセンサのないトルク測定システムの例について説明する。
【0080】
図6Aおよび図6Bは、一実施形態による集積アクティブセンサ62を有する例示的なTAMSデバイス60を示す。図6Aは、TAMSデバイス60の主要構造のモデルを示す。図6Bは、TAMSデバイス60内のアクティブセンサ62を示す。アクティブセンサ62は、TAMSデバイス60内のバックバイアスホール効果センサである。図6A
示されるように、TAMSデバイス60は、アクティブセンサ62と、ESPM64と、I/Oコネクタ26とを含む。アクティブセンサ62およびESPM64は、いずれもTAMSデバイス26のハウジング内に設けられる。ESPM64は、図2AのESPM24の任意の構成要素を適宜有することができる。ESPM64は、アクティブセンサ62およびTAMSデバイス60の外部のセンサの出力に基づいてトルクの示度を算出するように構成される。
【0081】
アクティブセンサ62の出力信号は、既知の高値と既知の低値との間で切り替えることができる。用いる技術(例えば、磁気センサ、誘導センサ、光学センサ)にかかわらず、アクティブ速度センサアセンブリの出力信号は、実質的に同じであり得る。図4Cおよび図4Dに示すグラフは、TAMSデバイス60に組み込まれたアクティブセンサ62と、45°および55°の位相差における外部アクティブセンサの出力信号(AおよびB)を表すことができる。これらの信号は、TAMSデバイス60のESPM64によって処理され、図4Eおよび4Fに示される差動位相(Δφa1-Δφa0)信号を生成することができる。シャフトに加えられるトルクは、2つのアクティブセンサ出力信号AとBとの間の差動位相に比例(シャフトのねじり剛性係数は、その形状、寸法、および材料に関連する)することができる。このプロセスは、マイクロコントローラのみ、または別の回路と連携するマイクロコントローラなど、任意の適切な処理回路において実行することができる。
【0082】
いくつかの実施形態では、トルク測定システムは、アクティブセンサおよびパッシブセンサを有することができる。例えば、トルク測定システムは、VRセンサおよび磁気ホール効果センサを有することができる。シャフトに加えられるトルクは、これらのセンサによって提供される出力信号から決定することができる。センサの一方の出力を処理して、他方のセンサと同様のフォーマットの信号を生成することができる。例えば、VRセンサは、図4Aに示す出力信号を生成することができる。この出力信号を処理することで、図4Cに示す信号を生成することができる。ホール効果センサは、図4Cに示す出力信号を生成することができる。次いで、シャフトに加えられるトルクは、例えば上記のように、図4Cに示す2つの信号に基づいて決定することができる。
【0083】
本明細書に開示されるTAMSデバイスは、内部センサおよび外部センサの両方から受信された情報を監視および処理するように構成される、プログラム可能なESPMを有することができる。また、本明細書に開示されるTAMSデバイスは、異なる条件(例えば、エアギャップ、速度、温度など)で基準信号を学習および記憶し、メモリ内の基準信号と比較して内部センサから受信された情報を監視および処理するように構成される、プログラム可能なESPMを有することができる。ESPMは、処理回路の一例である。ESPMは、関連する温度情報の有無にかかわらず、シャフトに印加されるトルクの示度を決定して出力する。ESPMは、診断ステータスを出力することもできる。ESPMは、トルクの示度および/または診断状態を、TAMSデバイスの外部にある電子制御モジュール(ECU)に提供することができる。この情報は、アナログおよび/またはデジタル形式で提供することができる。特定の適用例では、ESPM(例えば、図2AのESPM24または図6AのESPM64)は、速度および/または角度を示す信号を処理し、関連する温度情報を伴う/伴わないトルクの示度を生成するマイクロコントローラを有する。いくつかの適用例では、ESPM(例えば、図2AのESPM24または図6AのESPM64)はまた、機能的冗長性のための追加の回路を有する。この追加の回路は、TAMSデバイスの内部センサからの出力信号とTAMSデバイスの外部のセンサの出力との間の位相差を生成するように構成されたXOR論理ゲートなどの位相差回路を有することができる。ESPMは、1つ以上の増幅器、1つ以上のトランジスタ、1つ以上の論理ゲート、1つ以上の状態要素(例えば、フリップフロップまたはラッチ)、1つ以上の抵抗器、1つ以上のコンデンサ、1つ以上のダイオードなど、またはそれらの任意の好適な組み
合わせ、ならびにマイクロコントローラを有することができる。TAMSデバイスI/Oは、順方向および逆方向過電圧、電磁適合性/干渉(EMC/EMI)、および静電放電(ESD)に対して保護することができる。
【0084】
次に、シャフトに加えられるトルクを測定するためのトルク測定システムについて説明する。このトルク測定システムでは、TAMSデバイスを別のTAMSデバイスまたは他のセンサとともに使用して、シャフトに加えられるトルクを測定することができる。ある実施形態では、トルク測定システムは、マスタユニットとして構成される1つのTAMSデバイスと、スレーブユニットとして構成される別のTAMSデバイスとを有する。いくつかの他の実施形態によれば、トルク測定システムは、マスタユニットとして構成された2つのTAMSデバイスを有する。いくつかの実施形態では、トルク測定システムは、マスタユニットとして構成される1つのTAMSデバイスと、独立型速度センサとを有する。
【0085】
図7は、一実施形態における、2つのTAMSデバイス72、74を有する例示的なトルク測定システム70を示す。第1のTAMSデバイス72は、シャフト76に接続された第1のトーンホイール75に近接している。第1のTAMSデバイス72のセンサは、第1のトーンホイール75の回転に関連する角度および速度を検出するように構成される。第2のTAMSデバイス74は、シャフト76に接続された第2のトーンホイール77に近接している。第2のTAMSデバイス74のセンサは、第2のトーンホイール77の回転に関連する角度および速度を検出するように構成される。TAMSデバイス72、74のそれぞれのセンサによって生成される信号間の位相差は、シャフト76に印加されるトルクに応じて変化し得る。トルクがシャフト76に加えられると、トーンホイール75、77は、互いに対して反対方向に回転することができる。第1のTAMSデバイス72は、TAMSデバイス10、TAMSデバイス20、またはTAMSデバイス60など、本明細書で開示されるTAMSデバイスの構成要素の任意の組合せを適宜有することができる。同様に、第2のTAMSデバイス74は、TAMSデバイス10、TAMSデバイス20、またはTAMSデバイス60など、本明細書で開示されるTAMSデバイスの構成要素の任意の組合せを適宜有することができる。第1のTAMSデバイス72は、マスターユニットとしてプログラムすることができ、第2のTAMSデバイス74は、スレーブユニットとしてプログラムすることができる。この代わりに、TAMSデバイス72、74は、いずれもマスタユニットとしてプログラムすることもできる。マスターユニットは、マスターユニットの内部センサの出力信号および外部センサからの出力に基づいてトルクを計算することができる。スレーブユニットは、シャフトに加えられるトルクを計算するためにマスターユニットによって使用されるシャフトに接続されたリファレンスに関連する角度および/または速度を示す信号を出力することができる。
【0086】
図8は、一実施形態によるマスタTAMSデバイスおよびスレーブTAMSデバイスを有する例示的なトルク測定システム80の概略図を示す。トルク測定システム80では、第1のTAMSデバイス10Aがマスタユニットとしてプログラムされ、第2のTAMSデバイス10Bがスレーブユニットとしてプログラムされる。図8のTAMSデバイス10A、10Bは、回路および較正に関して実質的に同じ装置であり得るが、異なるモードにプログラムすることができる。TAMSデバイス10A、10Bは、本明細書に開示されるTAMSデバイスの任意の好適な原理および利点に従って実装することができる。
【0087】
スレーブユニットとして、第2のTAMSデバイス10Bは、第1のトーンホイール75に関連する角度/速度および/または温度を示す情報を検出し、第1のTAMSデバイス10Aに送信することができる。また、第2のTAMSデバイス10Bは、第1のトーンホイール75に関連する角度/速度情報(表面(例えば、歯車の歯)プロファイルを示す)および/または関連する温度、ならびに/あるいはエラー/診断情報を検出して第1
のTAMSデバイス10Aに送信することができる。
【0088】
トルク測定システム80において、第2のTAMSデバイス10Bの基準信号出力は、第1のTAMSデバイス10Aの基準信号入力に電気的に接続される。第2のTAMSデバイス10Bによって生成される1つまたは複数の出力基準信号Ref Signal_Out1、Ref Signal_Out2は、第1のTAMSデバイス10Aの接点(たとえば、ピン)によって受信される。様々な適用例において、第1のTAMSデバイス10Aは、ワイヤによって第2のTAMSデバイス10Bの接点に電気的に接続された少なくとも1つの接点を有することができる。1つまたは複数の基準信号は、他のいくつかの適用例では、TAMSデバイス間で無線により通信することができる。このような適用例では、TAMSデバイスは、TAMSデバイスの接点(たとえば、パッド)に接続されたアンテナを有することができる。
【0089】
マスタユニットとして、第1のTAMSデバイス10Aは、第1のTAMSデバイス10Aの内部センサの出力および第2のTAMSデバイス10Bからの情報に基づいて、シャフト76に印加されるトルクを計算することができる。第1のTAMSデバイス10Aは、TAMSデバイス10A、10Bのセンサの出力と関連付けられる差動位相差を検出
し、トルクを計算し(このように構成される場合は、測定された温度に基づいて補償する)、マスタユニットとして構成されるとき、第2のTAMSデバイス10Bから受信した情報を検証することができる。第1のTAMSデバイス10Aは、シャフト76に印加される計算されたトルク、および/または関連する温度、および/またはエラー/診断情報を示す1つまたは複数のTAMS出力信号TAMS Signal_Out1、TAMS Signal_Out2を出力することができる。1つまたは複数のTAMS出力信号TAMS Signal_Out1、TAMS Signal_Out2は、トルク測定システム80の外部のECUまたは他の回路に提供することができる。
【0090】
図9は、一実施形態による、2つのマスタTAMSデバイスを有する例示的なトルク測定システム90の概略図を示す。トルク測定システム90は、2つの異なるTAMSデバイスによってトルクを計算することができるシステムの一例である。トルク測定システム90では、第1のTAMSデバイス10Cが第1のマスタユニットとしてプログラムされ、第2のTAMSデバイス10Dが第2のマスタユニットとしてプログラムされる。図9のTAMSデバイス10C、10Dは、それぞれ差動位相差を検出し、シャフト76に印加されるトルクを計算し、互いから受信された情報を検証するようにプログラムすることができる。したがって、TAMSデバイス10C、10Dは、いずれもシャフト76に加えられるトルクを計算することができる。トルク測定システム90は、関連する温度情報、および診断/システム健康情報を有するトルク計算の機能的冗長性、動的検証、および妥当性を提供する。トルク測定システム90は、安全性および誤差補償のための仕様を有する特定の用途において有利である。TAMSデバイス10C、10Dは、回路および較正に関して実質的に同一の装置であり得る。TAMSデバイス10C、10Dは、いずれもマスタモードにプログラムすることができる。TAMSデバイス1C、10Dは、本明細書で開示されるTAMSデバイスの任意の好適な原理および利点に従って実装することができる。
【0091】
第2のTAMSデバイス10Dは、第1のTAMSデバイス10Cに1つまたは複数の基準信号を提供することができる。第1のTAMSデバイス10Cは、第2のTAMSデバイス10Dから受信された角度/速度の示度と、第1のTAMSデバイス10Cの内部センサによって生成された角度/速度の示度とに基づいてトルクを計算することができ、角度/速度の示度は、シャフト76に関連付けられた異なるリファレンス(例えば、トーンホイール75、77)に関連付けられる。第2のTAMSデバイス10Dは、第2のTAMSデバイス10Dによって計算されたトルクを示す1つまたは複数のTAMS信号を第1のTAMSデバイス10Cに提供することができる。第1のTAMSデバイス10C
は、第1のTAMSデバイス10Cによって生成された第1のトルク測定値を第2のTAMSデバイス10Dによって生成された第2のトルク測定値と比較し、トルク測定値を検証することができる。
【0092】
第1のTAMSデバイス10Cは、第2のTAMSデバイス10Dに1つまたは複数の基準信号を提供することができる。第2のTAMSデバイス10Dは、第1のTAMSデバイス10Cから受信された角度/速度の示度と、第2のTAMSデバイス10Dの内部センサによって生成された角度/速度の指示とに基づいてトルクを計算することができ、角度/速度の指示は、シャフト76に関連付けられた異なるリファレンス(例えば、トー
ンホイール75、77)に関連付けられる。図9には示されていないが、第1のTAMS
デバイス10Cは、いくつかの適用例では、1つまたは複数のTAMS信号(角度、速度、トルク、温度、誤差など)を第2のTAMSモード10Dに提供することができる。第2のTAMSデバイス10Dは、第2のTAMSデバイス10Dによって生成された第2のトルク測定値を第1のTAMSデバイス10Cによって生成された第1のトルク測定値と比較し、トルク測定値を検証することができる。
【0093】
図10は、一実施形態における、TAMSデバイスおよび独立型センサを伴う、例示的なトルク測定システム100の概略図を示す。図に示すように、トルク測定システム100は、マスタユニットとしてプログラムされたTAMSデバイス10Eと、外部センサ102とを有する。外部センサ102は、スレーブユニットとみなすことができる。TAMSデバイス10Eは、外部センサ102と協働するようにプログラムすることができる。外部センサ102は、トーンホイール75の角度/速度を示す情報を検出してTAMSデバイス10Eに送信することができる。外部センサ102は、トーンホイール75に関連する表面プロファイル情報(例えば、トーンホイールの歯プロファイルに関する情報)をTAMSデバイス10Eに提供することができる。外部センサ102は、アクティブセンサとすることができる。また、外部センサ102は、パッシブセンサであってもよい。外部パッシブセンサは、電源なしで実装することができる。外部パッシブセンサは、供給電圧を受け取るための接点なしで実装することができる。
【0094】
TAMSデバイス10Eは、外部センサ102からの情報を参照することができる。TAMSデバイス10Eは、外部センサ102から受信された角度/速度の示度と、TAMSデバイス10Eの内部センサによって生成された角度/速度の示度とに基づいてトルクを計算することができ、角度/速度の示度は、シャフト76に関連付けられた異なるリファレンス(例えば、トーンホイール75、77)に関連付けられる。TAMSデバイス10Eは、差動位相差を検出し、シャフト76に印加されるトルクを計算し、互いから受信された情報を検証するようにプログラムすることができる。TAMSデバイス10Eは、計算されたトルクに関連する温度情報を出力するように構成することができる。TAMSデバイス10Eは、診断情報を出力するように構成することもできる。
【0095】
図11Aは、一実施形態によるシャフトに加えられるトルクを測定する方法110のフロー図である。方法110は、本明細書に開示されるTAMSデバイスのいずれかを使用して、この代わりにあるいはこれに加えて、本明細書に開示されるトルクを測定するためのシステムのいずれかを使用して実施することができる。
【0096】
方法110は、ブロック112において、シャフトに接続された第1のリファレンスに関連する角度を示す第1の信号を生成することを含む。第1の信号は、処理回路(例えば、ESPM)を有するデバイスに統合された第1のセンサを用いて生成される。デバイスは、本明細書に開示される任意の好適な原理および利点によるTAMSデバイスであり得る。デバイスはマスターユニットとしてプログラムすることができ、デバイスはスレーブユニットとしてもプログラム可能である。第1のリファレンスは、トーンホイールまたは
磁石ホイールであり得る。
【0097】
ブロック114において、シャフトに接続された第2のリファレンスに関連する角度を示す第2の信号が、デバイスの外部の第2のセンサから受信される。第2のセンサは、第2のデバイスに設けられてもよい。一実施形態では、第2のデバイスは、スレーブユニットとして構成することができる。また、別の実施形態では、第2のデバイスは、マスタユニットとしてプログラムすることができる。
【0098】
ブロック116において、シャフトに加えられたトルクの表示が決定される。デバイスに統合された処理回路は、少なくとも第1の信号および第2の信号に基づいてトルクの示度を決定する。トルクの示度を決定することは、特定の用途において、第1の信号と第2の信号との間の位相差を検出することが含まれてもよい。トルクの示度を決定することは、デバイスのメモリに記憶された較正情報にアクセスすることが含まれてもよい。特定の用途において、処理回路は、このトルクの示度を、第2のセンサを有する第2のデバイスによって生成されたシャフトに加えられたトルクの第2の示度と比較することができる。シャフトは、様々な用途において車両内に設けられてもよい。
【0099】
トルクは、方法110において、TAMSデバイスの外部のセンサから第2のセンサ信号を受信することに基づいて決定される。いくつかの他の用途では、トルクは、TAMSデバイスに記憶された2次的な情報に基づいて判定することができる。TAMSデバイスに記憶される2次的な情報は、事前にプログラムされた、または学習された、または記憶された2次的な基準(例えば、無負荷)信号であり得る。図11Bは、トルクがTAMSデバイスに記憶された2次的な情報に基づいて決定される方法120のフロー図である。方法120は、外部センサからの入力なしにトルクを決定することができる。方法120は、ブロック114がブロック124に置き換えられること以外は、上記の方法110と同様である。本明細書で開示されるTAMSデバイスは、方法110および/または方法120を実行するようにプログラム可能である。
【0100】
ブロック124において、シャフトに接続された第2のリファレンスに関連付けられた角度を示す2次的な情報は、デバイスに統合された第1のセンサによって、異なる条件(角度、速度、温度など)で事前にプログラムされ、学習され、および/または記憶することができる。この場合、第1のセンサは、スタンドアロンで動作して、あらかじめプログラムされた/記憶された2次的なリファレンスの情報に基づいてトルクを測定および計算することができる。2次的な情報は、トルクを計算するための基準値とすることができる。2次的な情報は、トルクを計算するための基準値を決定するために処理回路によって実行される関数に入力される値であってもよい。
【0101】
文脈において特段の限定がない限り、上記の説明および特許請求の範囲を通じて、「備える」、「有する」、「含む」などの語は、排他的または網羅的な意味とは対照的に、包括的な意味で解釈されるべきである。すなわち、例えば「含むがこれに限定されない」という意味で解釈されるべきである。りわけ、「できる」、「あり得る」、「でもよい」、「可能」、「例えば」、「など」といった、本明細書で使用される条件付き言語は、特段の具体的な説明がない限り、または使用される文脈内で異なる解釈として説明されない限り、概して、いくつかの実施形態が含むが、他の実施形態は特定の特徴、要素および/または状態を含まないことが意図される。また、用語「接続される」は、本明細書で一般的に使用される場合、直接接続されるか、または1つ以上の中間要素を介して接続されるかのいずれかであり得る、2つ以上の要素を指す。加えて、用語「本明細書中」、「上記の」、「以下の」、またこれらと同様の意味を示す用語は、本出願において使用される場合、本出願全体を指し、本出願の任意の特定の部分を指すものではないものとする。また、「または」という用語は、その包括的な意味で(排他的な意味でではなく)使用され、例
えば、一連の要素を接続するために使用される場合、「または」という用語は、一連の要素のうちの1つ、いくつか、またはすべてを意味する。文脈が許す場合は、上記の発明を実施するための形態の説明における単数または複数を用いた用語は、複数の場合と単数の場合とをそれぞれ含み得る。
【0102】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例示であり、発明の範囲を限定することを意図するものではない。実際、本明細書で説明されるデバイス、システム、および方法は、種々の他の実施形態で具現化されてもよい。さらに、本開示の技術的思想の範囲から逸脱することなく、本明細書で説明されるデバイス、システム、および方法の実施形態において種々の省略、置換、および変更が行われてもよい。たとえば、ブロックは、所定の構成において示されているが、代替の実施形態において、異なる構成要素および/または回路トポロジを用いて同様の機能を実現することができ、いくつかのブロックは、削除、移動、追加、細分、組合せ、および/または修正することができる。これらのそれぞれのブロックは、様々な異なる方法で実装することができる。上記で理解されるように、本明細書に記載された特定の実施形態は、いくつかの特徴が他の特徴とは別個に使用または実施することができるため、本明細書に記載される特徴および利点のうべてを提供しない形態でも実装されうる。上記の様々な実施形態の要素および/または動作を任意に適切に組み合わせて、別の実施形態を提供することもできる。そのようなあらゆる修正および変形は、本開示の範囲内に含まれると理解できる。さらに、本明細書で説明される1つ以上の実施形態の任意の2つ以上の特徴または方法を組み合わせることで実現される追加の実施形態も、本開示の範囲内に含まれると理解得きる。これらの実施形態やその変形は、本発明の範囲や技術的思想に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
【国際調査報告】