(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-19
(54)【発明の名称】ジルコニアモノマー分散液、その調製方法、光学フイルムおよびディスプレイ
(51)【国際特許分類】
C01G 25/02 20060101AFI20240412BHJP
B01J 13/00 20060101ALI20240412BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
C01G25/02
B01J13/00
G09F9/00 313
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524450
(86)(22)【出願日】2022-09-16
(85)【翻訳文提出日】2023-04-20
(86)【国際出願番号】 CN2022119288
(87)【国際公開番号】W WO2023173712
(87)【国際公開日】2023-09-21
(31)【優先権主張番号】202210271565.8
(32)【優先日】2022-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519094927
【氏名又は名称】山東国瓷功能材料股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANDONG SINOCERA FUNCTIONAL MATERIAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宋錫濱
(72)【発明者】
【氏名】馬海洋
(72)【発明者】
【氏名】呂玉興
(72)【発明者】
【氏名】艾遼東
(72)【発明者】
【氏名】奚洪亮
(72)【発明者】
【氏名】張艷
【テーマコード(参考)】
4G048
4G065
5G435
【Fターム(参考)】
4G048AA02
4G048AB02
4G048AC08
4G048AD04
4G048AE05
4G065AA06
4G065AB13Y
4G065AB38Y
4G065BA07
4G065BB06
4G065CA01
4G065DA09
4G065EA03
5G435AA03
5G435AA17
5G435HH02
5G435HH20
(57)【要約】
本開示は、ジルコニアモノマー分散液、その調製方法、光学フイルムおよびディスプレイを提供し、ジルコニアの技術分野に属する。該ジルコニアモノマー分散液は、主にジルコニアナノ粒子、モノマー樹脂、安定剤および屈折率調整剤などの原材料により調製されたものであり、ジルコニアナノ粒子を無機分散粒子として使用すれば、微粒子の光に対する散乱を低減することができ、したがって系の透過率を高めることができる。安定剤の添加によれば、ジルコニアモノマー分散液の分散性および均一性を高めることができ、また、屈折率調整剤の添加によれば、系全体における各原材料の屈折率がより整合しており、したがって系の透過率を高めることができる。本開示は、上記のジルコニアモノマー分散液の調製方法をさらに提供する。該調製方法は、プロセスが簡単で、全分散過程において中間相の関与が不要で、プロセスのステップが大幅に減少し、コストを抑えることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジルコニアモノマー分散液であって、
原材料としてジルコニアナノ粒子と、モノマー樹脂と、安定剤と、屈折率調整剤とを含み、
前記ジルコニアモノマー分散液に対する前記ジルコニアナノ粒子の質量分率が50~75%であり、
前記安定剤の質量が前記ジルコニアナノ粒子の質量の1~10%であり、
前記屈折率調整剤の質量が前記ジルコニアナノ粒子の質量の1~10%であり、
前記モノマー樹脂は、フェノキシベンジルアクリレート、4-ビフェニルメチルアクリレート、ベンジルアクリレートおよびo-フェニルフェノキシエチルアクリレートの任意の1種または少なくとも2種の組み合わせを含む
ことを特徴とするジルコニアモノマー分散液。
【請求項2】
前記ジルコニアナノ粒子の平均粒径は、1~20nmである
ことを特徴とする請求項1に記載のジルコニアモノマー分散液。
【請求項3】
前記安定剤の構造は、R-X
nであり、
Rは、アルキル基、スルホン酸基、リン酸基、アミド基、カルボキシ基、水酸基、芳香環および置換芳香環から選択される任意の1種または少なくとも2種の組み合わせであり、
Xは、ポリエーテル鎖、アクリル酸エステル鎖、ポリエステル鎖およびアルキル鎖から選択される任意の1種または少なくとも2種の組み合わせであり、
nは、1~3の整数である
ことを特徴とする請求項1に記載のジルコニアモノマー分散液。
【請求項4】
前記安定剤は、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、リン酸トリス(2-エチルヘキシル)、ステアリン酸アマイドおよび2-ヒドロキシ-1-メチルエチル=アクリラートの任意の1種または少なくとも2種の組み合わせを含む
ことを特徴とする請求項3に記載のジルコニアモノマー分散液。
【請求項5】
前記屈折率調整剤の構造は、A-B
mであり、
Aは、置換もしくは無置換のアクリロイルオキシ基、メチレン基、アルコキシル基、炭素-炭素二重結合、ケイ素炭素基またはアルキル基から選択される任意の1種または少なくとも2種の組み合わせであり、
Bは、水酸基、カルボニル基、エステル基、シリルオキシ基、アルコキシル基、カルボキシ基、置換もしくは無置換の芳香環から選択される任意の1種または少なくとも2種の組み合わせであり、
mは、1~3の整数である
ことを特徴とする請求項1に記載のジルコニアモノマー分散液。
【請求項6】
前記屈折率調整剤は、エチレングリコールエチルエーテル、4-(4-アクリロイルオキシブトキシ)安息香酸および3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリ(2-メトキシエトキシ)シランの任意の1種または少なくとも2種の組み合わせを含む
ことを特徴とする請求項5に記載のジルコニアモノマー分散液。
【請求項7】
前記ジルコニアナノ粒子とモノマー樹脂とを混合して一次分散を行い、そして前記安定剤および屈折率調整剤と混合して二次分散を行い、ジルコニアモノマー分散液を得るステップを含む
ことを特徴とする、ジルコニアモノマー分散液の調製方法。
【請求項8】
前記一次分散の時間は、30~90minである
ことを特徴とする、請求項7に記載のジルコニアモノマー分散液の調製方法。
【請求項9】
前記二次分散の時間は、30~60minである
ことを特徴とする、請求項7に記載のジルコニアモノマー分散液の調製方法。
【請求項10】
前記一次分散および二次分散は、いずれも分散設備で行われる
ことを特徴とする、請求項7に記載のジルコニアモノマー分散液の調製方法。
【請求項11】
請求項1~6のいずれか1項に記載のジルコニアモノマー分散液を使用して調製される
ことを特徴とする光学フイルム。
【請求項12】
請求項11に記載の光学フイルムを備える
ことを特徴とするディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ジルコニアの技術分野に属し、特に、ジルコニアモノマー分散液、その調製方法、光学フイルムおよびディスプレイに関する。
【0002】
関係出願の相互参照
本出願は、2022年03月18日に中国専利局に提出された、出願番号が202210271565.8であり、名称が「ジルコニアモノマー分散液、その調製方法、光学フイルムおよびディスプレイ」である中国出願に基づいて優先権を主張し、その内容のすべては本出願に参照として取り込まれる。
【背景技術】
【0003】
近来、ジルコニア粒子分散体と透明樹脂または薄膜との結合により得たモノマージルコニア分散液は、光学分野においてよく使用されている。例えば、ジルコニアモノマー分散液を利用して調製された輝度向上フイルムなどの光学フイルムは、LCD表示装置に使用し、ディスプレイの輝度およびくっきりさを高めることができる。
【0004】
上記の使用において、ジルコニアの一次粒径およびモノマー樹脂におけるジルコニアの二次凝集によるものの粒径が可視光線の波長(380~800nm)に近いとき、ジルコニア粒子による散乱の影響で、モノマー樹脂や膜が白濁するので、所望の透明性が得られない。したがって、ジルコニア粒子が微粒子の形式で樹脂に分散した透明性の高いジルコニア分散液の開発が期待されている。
【0005】
いくつかのモノマー分散液が調製された実績があったが、その多くは透過率が劣る問題があるため、表示分野に使用するときに効果の発揮に影響を与える。例えば、特許CN106268394Bにはジルコニア微粒子またはその分散液の調製方法が開示され、ジルコニア水分散液の含有量が20%重量以上である場合、400nmの波長のときの透過率が35%以上であり、800nmの波長のときの透過率が95%以上であり、25℃の温度のときの粘度が20mPa・s以下である。しかしながら、該特許にはジルコニアモノマー分散液の透過率に関する内容がなかった。ジルコニアモノマー分散液は、有機-無機複合系であり、各成分が互いに影響しあい、影響因子が複雑で、特に、系における各成分の屈折率と、系におけるジルコニア粒子の安定性と、系の透過率との調和を取ることが困難であり、ある指標だけをひたすら図ると必ず他の指標の低下を招く。このため、プロセスが簡単で、系における各指標の調和が取れ、実用に足る、光透過率が比較的高いモノマー分散液を開発することはとても重要である。
【0006】
これに鑑みて、本開示を考案した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、従来技術に存在する少なくとも1つの技術的問題を改善できる、ジルコニアモノマー分散液、その調製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を実現するため、本開示は、下記の技術案を採用する。
【0009】
本開示は、ジルコニアモノマー分散液を提供する。該ジルコニアモノマー分散液は、原材料としてジルコニアナノ粒子と、モノマー樹脂と、安定剤と、屈折率調整剤とを含み、前記ジルコニアモノマー分散液に対する前記ジルコニアナノ粒子の質量分率が50~75%であり、前記安定剤の質量が前記ジルコニアナノ粒子の質量の1~10%であり、前記屈折率調整剤の質量が前記ジルコニアナノ粒子の質量の1~10%であり、前記モノマー樹脂は、フェノキシベンジルアクリレート、4-ビフェニルメチルアクリレート、ベンジルアクリレートおよびo-フェニルフェノキシエチルアクリレートの任意の1種または少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0010】
任意で、前記ジルコニアナノ粒子の平均粒径は、1~20nmである。
【0011】
任意で、前記安定剤の構造は、R-Xnであり、Rは、アルキル基、スルホン酸基、リン酸基、アミド基、カルボキシ基、水酸基、芳香環および置換芳香環から選択される任意の1種または少なくとも2種の組み合わせであり、Xは、ポリエーテル鎖、アクリル酸エステル鎖、ポリエステル鎖およびアルキル鎖から選択される任意の1種または少なくとも2種の組み合わせであり、nは、1~3の整数である。
【0012】
任意で、前記安定剤は、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、リン酸トリス(2-エチルヘキシル)、ステアリン酸アマイドおよび2-ヒドロキシ-1-メチルエチル=アクリラートの任意の1種または少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0013】
任意で、前記屈折率調整剤の構造は、A-Bmであり、Aは、置換もしくは無置換のアクリロイルオキシ基、メチレン基、アルコキシル基、炭素-炭素二重結合、ケイ素炭素基またはアルキル基から選択される任意の1種または少なくとも2種の組み合わせであり、Bは、水酸基、カルボニル基、エステル基、シリルオキシ基、アルコキシル基、カルボキシ基、置換もしくは無置換の芳香環から選択される任意の1種または少なくとも2種の組み合わせであり、mは、1~3の整数である。
【0014】
任意で、前記屈折率調整剤は、エチレングリコールエチルエーテル、4-(4-アクリロイルオキシブトキシ)安息香酸および3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリ(2-メトキシエトキシ)シラン(の任意の1種または少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0015】
本開示は、ジルコニアモノマー分散液の調製方法をさらに提供する。該調製方法は、前記ジルコニアナノ粒子とモノマー樹脂とを混合して一次分散を行い、そして前記安定剤および屈折率調整剤と混合して二次分散を行い、ジルコニアモノマー分散液を得るステップを含む。
【0016】
任意で、前記一次分散の時間は、30~90minである。
【0017】
好ましくは、前記二次分散の時間は、30~60minである。
【0018】
好ましくは、前記一次分散および二次分散は、いずれも分散設備で行われる。
【0019】
本開示は、光学フイルムをさらに提供する。該光学フイルムは、上記のジルコニアモノマー分散液により調製される。
【0020】
従来技術に比べて、本開示は、下記の有益な効果を有する。
【0021】
(1)本開示は、ジルコニアモノマー分散液を提供する。該ジルコニアモノマー分散液は、主にジルコニアナノ粒子、モノマー樹脂、安定剤および屈折率調整剤などの原材料により調製されたものであり、ジルコニアナノ粒子を無機分散粒子として使用すれば、微粒子の光に対する散乱を低減することができ、したがって系の透過率を高めることができる。安定剤の添加によれば、ジルコニアモノマー分散液の分散性および均一性を高めることができ、また、屈折率調整剤の添加によれば、系全体における各原材料の屈折率がより整合しており、したがって系の透過率を高めることができる。
【0022】
(2)本開示は、ジルコニアモノマー分散液の調製方法を提供する。該調製方法は、まずジルコニアナノ粒子とモノマー樹脂とを混合して一次分散を行い、そして安定剤および屈折率調整剤と混合して二次分散を行い、ジルコニアモノマー分散液を得る。該調製方法は、プロセスが簡単で、全分散過程において中間相の関与が不要で、プロセスのステップが大幅に減少し、コストを抑えることができる。
【0023】
(3)本開示は、光学フイルムをさらに提供する。該光学フィルムは、上記のジルコニアモノマー分散液により調製される。上記のジルコニアモノマー分散液のメリットにより、調製される光学フイルムは、光学性能が良好である。
【0024】
(4)本開示は、ディスプレイをさらに提供する。該ディスプレイは、上記の光学フイルムを備える。上記の光学フイルムのメリットにより、ディスプレイは、輝度もくっきりさも良好である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、実施形態および実施例を参照しながら、本開示の技術案を詳細に説明する。当業者であれば分かるように、説明する実施形態および実施例は、本開示を説明するためのものにすぎず、本開示の範囲を限定するものではない。具体的な条件を明記しないことについて、従来の条件またはメーカーの勧めの条件で行うことが可能である。使用する試剤または器械の、製造メーカーが明記されていないものについて、市販の従来品を使用することが可能である。
【0026】
本開示の第1の局面において、ジルコニアモノマー分散液を提供する。該ジルコニアモノマー分散液は、原材料としてジルコニアナノ粒子と、モノマー樹脂と、安定剤と、屈折率調整剤とを含み、ジルコニアモノマー分散液に対するジルコニアナノ粒子の質量分率が50~75%であり、安定剤の質量がジルコニアナノ粒子の質量の1~10%であり、屈折率調整剤の質量がジルコニアナノ粒子の質量の1~10%であり、モノマー樹脂は、フェノキシベンジルアクリレート(PBA)、4-ビフェニルメチルアクリレート(BPMA)、ベンジルアクリレート(BZA)およびo-フェニルフェノキシエチルアクリレート(OPPEA)の任意の1種または少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0027】
本開示において、ジルコニアナノ粒子は、入手方法が限定されなく、市販のものを採用してもよく、当分野常用の調製方法で調製されたものを採用してもよい。
【0028】
特定種類のモノマー樹脂によれば、ジルコニアナノ粒子に対する分散能力が優れ、中間相の関与が不要で、ジルコニアナノ粒子と整合する屈折率を有する。
【0029】
該ジルコニアモノマー分散液は、ジルコニアナノ粒子を無機分散粒子として使用する。一方、ジルコニアナノ粒子は、粒径が比較的小さく、微粒子の光に対する散乱を低減し、系の透過率を高めることができ、他方、ジルコニアナノ粒子の屈折率が本開示に係る特定種類のモノマー樹脂の屈折率とよく整合できるため、系の光に対する散乱を大幅に低減することができ、これによって系の透過率を高めることができる。
【0030】
安定剤の添加によれば、ジルコニアナノ粒子の凝集が発生しにくく安定性が比較的よく、これによって系が比較的高い透過率を有する。
【0031】
屈折率調整剤によれば、ジルコニアナノ粒子とモノマー樹脂との屈折率の整合度合いがより高くなり、これによって系全体が比較的高い透過率を有する。
【0032】
ジルコニアモノマー分散液における各原材料の使用量が限定される。
【0033】
ジルコニアナノ粒子の質量分率は、代表的で非限定的に、50%、52%、54%、56%、58%、60%、62%、64%、65%、66%、68%、70%、72%、74%または75%である。
【0034】
モノマー樹脂は、主にジルコニアナノ粒子を分散させるためのものであり、その使用量が、ジルコニアモノマー分散液におけるジルコニアナノ粒子の質量分率が50~75%であるように確保できればよい。
【0035】
安定剤および屈折率調整剤の添加量は、ジルコニアナノ粒子の質量に対する量で計算される。
【0036】
ジルコニアナノ粒子に対する安定剤の質量分率は、代表的で非限定的に、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%または10%である。ジルコニアナノ粒子に対する安定剤の質量分率が低すぎる(1%よりも低い)と、系を安定にし系の透過率を高めることができなく、ジルコニアナノ粒子に対する安定剤の質量分率が高すぎる(10%よりも高い)と、系全体の各成分の屈折率の整合度合いに影響を与え、所望の効果を得ることができなく、コストの増を招いてしまう。
【0037】
ジルコニアナノ粒子に対する屈折率調整剤の質量分率は、代表的で非限定的に、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%または10%である。ジルコニアナノ粒子に対する屈折率調整剤の質量分率が低すぎる(1%よりも低い)と、系の屈折率の整合度合いを調整する役割を果たすことができなく、ジルコニアナノ粒子に対する屈折率調整剤の質量分率が高すぎる(10%よりも高い)と、所望の効果を得ることができないことがあり、コストの増を招いてしまう。
【0038】
本開示に係るジルコニアモノマー分散液は、主にジルコニアナノ粒子、モノマー樹脂、安定剤および屈折率調整剤などの原材料により調製されたものである。ジルコニアナノ粒子を無機分散粒子として使用すれば、微粒子の光に対する散乱を低減することができ、したがって系の透過率を高めることができる。安定剤の添加によれば、ジルコニアモノマー分散液の分散性および均一性を高めることができ、また、屈折率調整剤の添加によれば、系全体における各原材料の屈折率がより整合しており、したがって系の透過率を高めることができる。上記の各原材料の協働効果により、該ジルコニアモノマー分散液は、安定性および透過率が比較的高い。
【0039】
本開示の選択可能な一実施形態として、ジルコニアナノ粒子の平均粒径は、1~20nmである。ジルコニアナノ粒子の粒径は、代表的で非限定的に、例えば1nm、2nm、4nm、5nm、6nm、8nm、10nm、12nm、14nm、15nm、16nm、18nmまたは20nmである。
【0040】
特定のジルコニアナノ粒子の平均粒径によれば、系の屈折率を高めることに寄与できる。
【0041】
本開示の選択可能な一実施形態として、安定剤の構造は、R-Xnであり、Rが、アンカー基であり、ジルコニアナノ粒子とアンカー効果を生じることができ、Xが、溶媒和基であり、モノマー樹脂と溶媒和効果を生じることができる。
【0042】
Rは、アルキル基、スルホン酸基、リン酸基、アミド基、カルボキシ基、水酸基、芳香環および置換芳香環から選択される任意の1種または少なくとも2種の組み合わせである。
【0043】
Xは、ポリエーテル鎖、アクリル酸エステル鎖、ポリエステル鎖およびアルキル鎖から選択される任意の1種または少なくとも2種の組み合わせである。
【0044】
nは、1~3の整数であり、例えば、1、2または3である。
【0045】
本開示の選択可能な一実施形態として、安定剤は、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、リン酸トリス(2-エチルヘキシル)(CAS番号:78-42-2)、ステアリン酸アマイドまたは2-ヒドロキシ-1-メチルエチル=アクリラートの任意の1種または少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0046】
安定剤の構造におけるRおよびX基の種類、安定剤の種類に対して具体的に限定することにより、安定剤が、ジルコニア粒子およびモノマー樹脂とよりよく作用して、系の透過率を高めることができる。
【0047】
本開示の選択可能な一実施形態として、屈折率調整剤の構造は、A-Bmである。
【0048】
Aは、置換もしくは無置換のアクリロイルオキシ基、アルコキシル基、炭素-炭素二重結合、アルキル基およびシリルオキシ基から選択される任意の1種または少なくとも2種の組み合わせである。
【0049】
Bは、水酸基、カルボニル基、エステル基、ケイ素炭素基、カルボキシ基、置換もしくは無置換の芳香環から選択される任意の1種または少なくとも2種の組み合わせである。
【0050】
mは、1~3の整数であり、例えば、1、2または3である。
【0051】
本開示の選択可能な一実施形態として、屈折率調整剤は、エチレングリコールエチルエーテル、4-(4-アクリロイルオキシブトキシ)安息香酸および3-(メタクリロイルオキシ)プロピルトリ(2-メトキシエトキシ)シラン(CAS番号:57069-48-4)の任意の1種または少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0052】
屈折率調整剤の構造におけるA基およびB基の種類、屈折率調整剤の種類に対して具体的に限定することにより、屈折率調整剤が、有機無機系全体に適しており、これによって、系の屈折率をよりよく調整することができ、系の光散乱を抑え、系の透過率を高めることができる。
【0053】
本開示の第2の局面において、ジルコニアモノマー分散液の調製方法をさらに提供する。該調製方法は、ジルコニアナノ粒子とモノマー樹脂とを混合して一次分散を行い、そして安定剤および屈折率調整剤と混合して二次分散を行い、ジルコニアモノマー分散液を得るステップを含む。
【0054】
該調製方法は、まずジルコニアナノ粒子とモノマー樹脂とを混合して一次分散を行い、そして安定剤および屈折率調整剤と混合して二次分散を行う。該調製方法は、プロセスが簡単で、全分散過程において中間相の関与が不要で、プロセスのステップが大幅に減少し、コストを抑えることができる。
【0055】
本開示の選択可能な一実施形態として、一次分散の時間は、30~90minである。一次分散の時間は、代表的で非限定的に、30min、40min、50min、60min、70min、80minまたは90minである。
【0056】
本開示の選択可能な一実施形態として、二次分散の時間は、30~60minである。二次分散の時間は、代表的で非限定的に、30min、40min、50minまたは60minである。
【0057】
本開示の選択可能な一実施形態として、一次分散および二次分散は、いずれも分散設備で行われる。
【0058】
ここの分散設備は、材料を比較的小さい液滴の形態で相応の媒体に分散させることができる当分野の任意の設備または技術的手段であり得、機械撹拌、磁気撹拌、超音波、ホモジナイザー、コロイドミルなどを含むが、これらに限定されない。
【0059】
本開示の第3の局面において、光学フイルムをさらに提供する。該光学フイルムは、上記のジルコニアモノマー分散液を使用して調製される。
【0060】
上記のジルコニアモノマー分散液のメリットにより、調製される光学フイルムは、光学性能が良好である。
【0061】
本開示の第4の局面において、ディスプレイをさらに提供する。該ディスプレイは、上記の光学フイルムを備える。
【0062】
上記の光学フイルムのメリットにより、ディスプレイは、輝度およびくっきりさが良好である。
【0063】
以下、実施例および比較例を参照しながら、本開示による技術案をさらに説明する。
【実施例】
【0064】
実施例1
本実施例は、ジルコニアモノマー分散液を提供した。該ジルコニアモノマー分散液は、原材料としてジルコニアナノ粒子と、モノマー樹脂と、安定剤と、屈折率調整剤とを含んだ。
【0065】
ジルコニアナノ粒子の平均粒径が10nmであり、ジルコニアモノマー分散液に対するジルコニアナノ粒子の質量分率がそれぞれ50%、60%および75%であるように調製し、モノマー樹脂がフェノキシベンジルアクリレートであり、安定剤がポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルであり、安定剤の添加量がジルコニアナノ粒子の質量の5%であり、屈折率調整剤がエチレングリコールエチルエーテルであり、屈折率調整剤の添加量がジルコニアナノ粒子の質量の5%であった。
【0066】
本実施例によるジルコニアモノマー分散液は、下記のステップを含む調製方法により調製された。
【0067】
ジルコニアナノ粒子を分散設備によりモノマー樹脂に分散させ、30minの分散を続けて、モノマー予備分散液を得た。
【0068】
そして、上記のモノマー予備分散液に安定剤および屈折率調整剤を添加し、30minの分散を続けて、ジルコニアモノマー分散液を得た。
【0069】
実施例2~実施例14
実施例2~実施例14は、それぞれジルコニアモノマー分散液を提供した。これらのジルコニアモノマー分散液の具体的な組成が表1に示されている。
実施例2~実施例14によるジルコニアモノマー分散液の調製方法は、実施例1と同じであった。
【0070】
比較例1~比較例7
比較例1~比較例7は、それぞれジルコニアモノマー分散液を提供した。これらのジルコニアモノマー分散液の具体的な組成が表1に示されている。
比較例1~比較例7によるジルコニアモノマー分散液の調製方法は、実施例1と同じであった。
【0071】
なお、表1に示されている安定剤の添加量が、ジルコニアナノ粒子に対する安定剤の質量パーセントのことで、屈折率調整剤の添加量が、ジルコニアナノ粒子に対する屈折率調整剤の質量パーセントのことで、ジルコニアナノ粒子の質量分率が、ジルコニアモノマー分散液に対するジルコニアナノ粒子の質量分率のことである。
【0072】
そして、各実施例および比較例のそれぞれにより調製されたジルコニアモノマー分散液の650nmの波長での透過率を測定した。紫外可視分光光度計(C-7100、青島藍特恩科教機器会社製)を用いて測定した。具体的な測定結果は、表1に示されている。
【0073】
【0074】
表1に示されているデータから分かるように、比較例1~4に比べて、実施例では安定剤も屈折率調整剤も添加されたため、ジルコニアモノマー分散液の分散効果および屈折率調整の効果がいずれも比較例1~4よりも優れ、したがって、実施例におけるモノマー分散液の透過率が明らかに比較例より高かった。
【0075】
モノマー樹脂とジルコニアナノ粒子との屈折率の整合度合いが比較的高い場合、系の透過率の向上に寄与できる。本開示において、ジルコニアナノ粒子の、モノマー樹脂PBA、BPMA、BZAおよびOPPEAのそれぞれとの屈折率の整合度合いが、比較例7における2-EHAとの屈折率の整合度合いよりも明らかに高いため、実施例1~4で調製されたジルコニア単体分散液の透過率が明らかに比較例7によるものの透過率より高かった。
【0076】
実施例5において安定剤および屈折率調整剤の添加量が、1wt%であり、実施例1における5wt%より低く、実施例5によるものの分散効果および屈折率調整の効果が実施例1に対して劣るため、実施例5によるモノマー分散液の透過率が実施例1によるものより低かった。実施例6において安定剤および屈折率調整剤の添加量が、10wt%であり、実施例1における5wt%より高く、安定剤および屈折率調整剤を高い含有量で添加する場合、系全体の各成分の屈折率の整合度合いに影響を与え、したがって系の透過率に影響を与え、このため、実施例6によるモノマー分散液の透過率が実施例1によるものより低かった。上記から分かるように、安定剤および屈折率調整剤の使用量を適宜の範囲に収めるべきであり、そうしないと、逆効果となるだけでなく、コストの増も招いてしまう。比較例5、6もこの点を示している。
【0077】
具体的な実施例を用いて本開示を説明したが、本開示の精神および範囲を逸脱しない限り、変更や変化を行ってもよい。したがって、特許請求の範囲は、本開示の範囲に属するすべての変更および変化を含む。
【0078】
産業上の利用可能性
本開示に係るジルコニアモノマー分散液は、主にジルコニアナノ粒子、モノマー樹脂、安定剤および屈折率調整剤などの原材料により調製されたものである。ジルコニアナノ粒子を無機分散粒子として使用すれば、微粒子の光に対する散乱を低減することができ、したがって系の透過率を高めることができる。安定剤の添加によれば、ジルコニアモノマー分散液の分散性および均一性を高めることができ、また、屈折率調整剤の添加によれば、系全体における各原材料の屈折率がより整合しており、したがって系の透過率を高めることができる。ジルコニアモノマー分散液のメリットにより、調製される光学フイルムは、光学性能が良好である。
【国際調査報告】