(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-19
(54)【発明の名称】体内ネットワーク・システム
(51)【国際特許分類】
A61N 1/368 20060101AFI20240412BHJP
A61N 1/372 20060101ALI20240412BHJP
A61B 5/0215 20060101ALI20240412BHJP
A61N 1/39 20060101ALN20240412BHJP
【FI】
A61N1/368
A61N1/372
A61B5/0215 F
A61N1/39
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543010
(86)(22)【出願日】2022-04-26
(85)【翻訳文提出日】2023-09-01
(86)【国際出願番号】 EP2022060956
(87)【国際公開番号】W WO2022233633
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512158181
【氏名又は名称】バイオトロニック エスエー アンド カンパニー カーゲー
【氏名又は名称原語表記】BIOTRONIK SE & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Woermannkehre 1 12359 Berlin Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヒューゲリッヒ、ブルクハルト
(72)【発明者】
【氏名】キブラー、アンドリュー ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ク、ミン
(72)【発明者】
【氏名】ホマユン、ハビブ
【テーマコード(参考)】
4C017
4C053
【Fターム(参考)】
4C017AA08
4C017AB04
4C017AB10
4C017AC01
4C017EE15
4C053BB23
4C053BB24
4C053CC01
(57)【要約】
体内ネットワーク・システムは、第1の通信回路13を含む第1の植込み型医療機器1と、第2の通信回路23を含む第2の植込み型医療機器2とを備える。第1の通信回路13及び第2の通信回路23は、第1の植込み型医療機器1及び第2の植込み型医療機器2の植え込まれた状態で、第1の植込み型医療機器1から第2の植込み型医療機器2まで、及び第2の植込み型医療機器2から第1の植込み型医療機器1までの少なくとも一方で通信信号を伝送するための通信を確立するように構成されている。第1の植込み型医療機器1及び第2の植込み型医療機器2のうちの少なくとも1つは、第1の指向性の放射特性を用いた第1の構成状態と、第1の指向性の放射特性とは異なる第2の指向性の放射特性を用いた第2の構成状態と、第1の指向性の放射特性及び第2の指向性の放射特性とは異なる第3の指向性の放射特性を用いた第3の構成状態とで、通信信号の送信及び受信のうちの少なくとも一方を行うように構成されているアンテナ装置15を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の通信回路(13)を含む第1の植込み型医療機器(1)と、
第2の通信回路(23)を含む第2の植込み型医療機器(2)と
を備え、
前記第1の通信回路(13)及び前記第2の通信回路(23)が、前記第1の植込み型医療機器(1)及び前記第2の植込み型医療機器(2)の植え込まれた状態で、前記第1の植込み型医療機器(1)から前記第2の植込み型医療機器(2)まで、及び前記第2の植込み型医療機器(2)から前記第1の植込み型医療機器(1)までの少なくとも一方で通信信号を伝送するための通信を確立するように構成されており、
前記第1の植込み型医療機器(1)及び前記第2の植込み型医療機器(2)のうちの少なくとも1つが、第1の指向性の放射特性を用いた第1の構成状態と、前記第1の指向性の放射特性とは異なる第2の指向性の放射特性を用いた第2の構成状態と、前記第1の指向性の放射特性及び前記第2の指向性の放射特性とは異なる第3の指向性の放射特性を用いた第3の構成状態とで、通信信号の送信及び受信のうちの少なくとも一方を行うように構成されているアンテナ装置(15)を含む、
体内ネットワーク・システム。
【請求項2】
前記アンテナ装置(15)が、前記第1の構成状態では第1の通信面(C1、C4)に主に沿って、前記第2の構成状態では第2の通信面(C3、C5)に主に沿って、前記第3の構成状態では第3の通信面に主に沿って、通信信号の送信及び受信のうちの少なくとも一方を行うように構成されている、請求項1に記載の体内ネットワーク・システム。
【請求項3】
前記第1の通信面(C1、C4)及び前記第2の通信面(C3、C5)が、互いに対して垂直に方向付けられている、請求項2に記載の体内ネットワーク・システム。
【請求項4】
前記アンテナ装置(15)が、少なくとも3つのアンテナ要素(150~155)を備え、前記第1の構成状態では前記少なくとも3つのアンテナ要素(150~155)の第1の組を使用し、前記第2の構成状態では前記少なくとも3つのアンテナ要素(150~155)の第2の組を使用し、前記第3の構成状態では前記少なくとも3つのアンテナ要素(150~155)の第3の組を使用するように構成されている、請求項1から3までのいずれか一項に記載の体内ネットワーク・システム。
【請求項5】
前記少なくとも3つのアンテナ要素(150~155)のうちの少なくとも1つが、電気信号を発する又は受信するための電極によって形成されている、請求項4に記載の体内ネットワーク・システム。
【請求項6】
前記電極が心臓内信号を感知するための感知電極によって形成されている、請求項5に記載の体内ネットワーク・システム。
【請求項7】
前記少なくとも3つのアンテナ要素(150~155)のうちの少なくとも1つが、磁気信号を発する又は受信するためのコイルによって形成されている、請求項4から6までのいずれか一項に記載の体内ネットワーク・システム。
【請求項8】
前記第1の植込み型医療機器(1)及び前記第2の植込み型医療機器(2)のうちの前記少なくとも1つが、筐体(10、20)を備え、前記少なくとも3つのアンテナ要素(150~155)のうちの少なくとも1つが、前記筐体(10、20)上に設置されている、請求項4から7までのいずれか一項に記載の体内ネットワーク・システム。
【請求項9】
前記第1の植込み型医療機器(1)及び前記第2の植込み型医療機器(2)のうちの前記少なくとも1つが、組織への固定を確立するための少なくとも1つの固定要素(160、161)を含む固定装置(16)を備え、前記少なくとも3つのアンテナ要素(150~155)のうちの少なくとも1つが、前記少なくとも1つの固定要素(160、161)上に設置されている、請求項4から8までのいずれか一項に記載の体内ネットワーク・システム。
【請求項10】
前記第1の通信回路(13)及び前記第2の通信回路(23)のうちの少なくとも1つが、初期段階において、前記第1の構成状態と、前記第2の構成状態と、前記第3の構成状態とのうちから構成状態を選択するために、前記アンテナ装置(15)の前記第1の構成状態と、前記第2の構成状態と、前記第3の構成状態とを用いて、通信信号の送信及び受信のうちの少なくとも一方を行うように構成されており、動作状態において、前記選択された構成状態を通信に使用するように構成されている、請求項1から9までのいずれか一項に記載の体内ネットワーク・システム。
【請求項11】
前記第1の通信回路(13)及び前記第2の通信回路(23)のうちの前記少なくとも1つが、前記初期段階において、前記第1の構成状態と、前記第2の構成状態と、前記第3の構成状態とのうちから構成状態を選択するために、前記アンテナ装置(15)の前記第1の構成状態と、前記第2の構成状態と、前記第3の構成状態とを順次用いて、通信信号の送信及び受信のうちの少なくとも一方を行うように構成されている、請求項10に記載の体内ネットワーク・システム。
【請求項12】
前記第1の植込み型医療機器(1)及び前記第2の植込み型医療機器(2)のうちの少なくとも1つが、心臓刺激機器である、請求項1から11までのいずれか一項に記載の体内ネットワーク・システム。
【請求項13】
前記第1の植込み型医療機器(1)及び前記第2の植込み型医療機器(2)のうちの少なくとも1つが、リードレス心臓刺激機器である、請求項1から12までのいずれか一項に記載の体内ネットワーク・システム。
【請求項14】
前記第1の植込み型医療機器(1)及び前記第2の植込み型医療機器(2)のうちの少なくとも1つが、皮下の心臓ループ・レコーダ又は血圧を測定するための生体センサである、請求項1から13までのいずれか一項に記載の体内ネットワーク・システム。
【請求項15】
第1の植込み型医療機器(1)の第1の通信回路(13)及び第2の植込み型医療機器(2)の第2の通信回路(23)を、前記第1の植込み型医療機器(1)及び前記第2の植込み型医療機器(2)の植え込まれた状態で、前記第1の植込み型医療機器(1)から前記第2の植込み型医療機器(2)まで、及び前記第2の植込み型医療機器(2)から前記第1の植込み型医療機器(1)までの少なくとも一方で通信信号を伝送するための通信を確立するために使用することと、
前記第1の植込み型医療機器(1)及び前記第2の植込み型医療機器(2)のうちの少なくとも1つのアンテナ装置(15)であって、第1の指向性の放射特性を用いた第1の構成状態と、前記第1の指向性の放射特性とは異なる第2の指向性の放射特性を用いた第2の構成状態と、前記第1の指向性の放射特性及び前記第2の指向性の放射特性とは異なる第3の指向性の放射特性を用いた第3の構成状態とで構成されているアンテナ装置(15)を用いて、通信信号の送信及び受信のうちの少なくとも一方を行うことと
を含む、体内ネットワーク・システムを動作させるための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、体内ネットワーク・システム及び体内ネットワーク・システムを動作させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種類の体内ネットワーク・システムは、概して、第1の植込み型医療機器と、第2の植込み型医療機器とを備える。体内ネットワーク・システム内では、植込み型医療機器は、例えば感知された心臓信号等に関する情報を交換するために、又は複数の植込み型医療機器の動作の調整、例えば1つの植込み型医療機器の作用を別の植込み型医療機器の感知信号によってトリガーするために、互いに通信するものとする。
【0003】
この種類の植込み型医療機器は、例えば、ペースメーカ、植込み型除細動器、血圧を測定するための生体センサなどのセンサ機器、又は患者の皮下に植え込まれるループ・レコーダなどの記録機器であり得る。
【0004】
例えば、植込み型ペースメーカは、患者の皮下に植え込まれ得、電極を搭載するリードであって、ペースメーカ機器のジェネレータ・ユニットから患者の心臓の中に延在して、例えば心臓の右心室にペーシング作用を提供するリードを備え得る。或いは、植込み型ペースメーカ機器は、リードを備えず、ペーシング作用を提供するために患者の心臓の中、例えば右心室に直接植え込まれるリードレス・ペースメーカとして設計され得る。
【0005】
除細動器は、患者の心臓の中で、場合によっては生命にかかわる不整脈を監視及び治療するために働き得る。例えば、この種類の除細動器は、皮下に植え込まれ得、信号を記録するために、及び患者の心臓の中に刺激エネルギーを注入して例えば電気ショック(除細動)を提供するために心臓の中に延在するリードを備え得る。
【0006】
例えば、圧力センサ、流量センサ、温度センサ等のセンサ機器は、治療を提供する状況下での関連するパラメータの監視を提供するために、静脈などの血管の中に植え込まれ得る。
【0007】
例えば、ループ・レコーダは、皮下に植え込まれ、例えばECGなどの心臓活動についての情報を連続的に記録するために働く。ループ・レコーダは、そのメモリを連続的にループし、信号の特定の部分を保存し得、そのようにして、信号の分析及び診断の提供用の外部機器に、記録した信号を通信し得る。
【0008】
患者に植え込まれた医療機器は、医療機器の相互作用を可能にするために互いに通信し得ることが望ましい。例えば、ペースメーカ機器又は植え込まれたセンサ機器によって感知された信号は、そのような信号をループ・レコーダが記録し得るように、ループ・レコーダに送信され得る。さらに、ペースメーカ機器は、患者の心臓の中でのペーシング作用を制御する目的で、ペースメーカ機器と離れて植え込まれているセンサ機器の感知信号を考慮するために、センサ機器からの信号を受信し得る。
【0009】
通信を確立するためには、植え込まれた医療機器間で信号が交換され得るように、植え込まれた医療機器を互いにリンクさせる体内ネットワーク(IBN:intra-body network)を作成する手法が存在する。
【0010】
例えば、EP2327609B1号は、植え込まれた医療機器間で情報を交換するための、植え込まれた医療機器間の音響通信リンクを記載している。音響通信リンクは、植え込まれた医療機器間のワイヤレス通信を可能にするように確立されており、既存の通信リンクを改善するために、感度及び搬送周波数などの伝送パラメータが適合され得る。
【0011】
植え込まれた医療機器間のワイヤレス通信は、一般的に、音響的な無線周波数(RF:radio frequency)の変調された電場又は磁気信号を必要とし得る。ここでは一般的に、信号は特定の搬送周波数を用いて伝送され、伝送は1つの植込み型医療機器によって開始されて、別の医療機器によって受信される。1つの医療機器が信号を送信する場合、ここでは、他の医療機器が前記信号を確実に受信できるようにする必要がある。植込み型医療機器は、一般的には小型であり、したがって簡易化された処理回路のみを備え得るので、植込み型医療機器が通信を確立するための広範な回路を備えることができない場合には、信号は、機器のエネルギー貯蔵に過度な負荷をかけないために、消費電力の低いものあるべきである。
【0012】
米国特許第2010/0022836(A1)号は、植込み型機器又は不消化の機器などの体内機器用の多指向性送信機を開示している。その複数の多指向性送信機は、少なくとも2つの異なる方向に識別信号を送信可能なものである。
【0013】
米国特許第2011/0087114(A1)号は、植込み型機器であって、機器自体の方向を感知及び判定し、その元々の位置又は最適な位置からその植込み型機器が時間と共に離れてずれたか否かを判定することができる植込み型機器を開示している。
【0014】
米国特許第2016/0250483(A1)号は、患者の体内に植え込まれるように構成されている植込み型機器であって、通信周波数を調整するように構成されている制御部と、電気的に一般的な材料で形成されている筐体と、その筐体に接続されている絶縁カバーとを含む植込み型機器を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】欧州特許第2327609B1号
【特許文献2】米国特許第2010/0022836(A1)号
【特許文献3】米国特許第2011/0087114(A1)号
【特許文献4】米国特許第2016/0250483(A1)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、植込み型医療機器間での信頼性があり、さらに電力効率のよい通信を可能にする体内ネットワーク・システム及び体内ネットワーク・システムを動作させるための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
1つの態様では、体内ネットワーク・システムは、第1の通信回路を含む第1の植込み型医療機器と、第2の通信回路を含む第2の植込み型医療機器とを備え、第1の通信回路及び第2の通信回路は、第1の植込み型医療機器及び第2の植込み型医療機器の植え込まれた状態で、第1の植込み型医療機器から第2の植込み型医療機器まで、及び第2の植込み型医療機器から第1の植込み型医療機器までの少なくとも一方で通信信号を伝送するための通信を確立するように構成されており、第1の植込み型医療機器及び第2の植込み型医療機器のうちの少なくとも1つは、第1の指向性の放射特性を用いた第1の構成状態と、第1の指向性の放射特性とは異なる第2の指向性の放射特性を用いた第2の構成状態とで、通信信号の送信及び受信のうちの少なくとも一方を行うように構成されているアンテナ装置を含む。
【0018】
さらに、第1の植込み型医療機器及び第2の植込み型医療機器のうちの少なくとも1つは、異なる方向に沿って通信信号を送信及び/又は受信することができるアンテナ装置を備える。このために、アンテナ装置は、第1の構成状態では第1の指向性の放射特性を使用し、第2の構成状態では第2の指向性の放射特性を使用する。この文脈での指向性の放射特性とは、概して3次元であるが、指定された方向に沿って又は指定された平面内で優先的に信号を送信及び/又は受信する指向性である電磁気アンテナ装置などのアンテナ装置用の放射パターンとして理解されるべきである。したがって、アンテナ装置は、指定された方向又は指定された平面内で、最大振幅で信号を送信し、受信時に最大感度を有する。
【0019】
アンテナ装置は第1の構成状態と第2の構成状態との間で切り替えられ得るので、異なる指向性の放射特性が使用され得る。したがって、アンテナ装置は、第1の構成状態又は第2の構成状態を用いることによって、特定の関連付けられた指向性特性で信号を送信及び/又は受信し得る。特定の他の植込み型医療機器との通信に適切な構成状態を選ぶことにより、他の植込み型医療機器との通信に適切な特定の指向性特性で信号を送信又は受信する構成状態が選ばれ得るという点で、信頼性のある通信が確立され得る。
【0020】
アンテナ装置は、少なくとも第1の構成状態及び第2の構成状態を用いて通信するように構成されている。しかしながら、3つ以上の構成状態も同様に利用可能であり得(例えば、第3の構成状態)、そのようにして、アンテナ装置は、植込み型医療機器との通信に別のさらなる構成状態も使用し得る。
【0021】
体内ネットワーク・システムは、少なくとも2つの植込み型医療機器を備える。しかしながら、体内ネットワーク・システムでは、3つ以上の植込み型医療機器も使用され得る。植込み型医療機器の特定の対間での通信のために、植込み型医療機器のうちの少なくとも1つのアンテナ装置の特定の構成状態が使用され得る。
【0022】
特定の植込み型医療機器内では、異なる植込み型医療機器と通信するためにアンテナ装置の異なる構成状態が使用され得、そのようにして、その植込み型医療機器は、複数の他の植込み型医療機器のうちの特定の1つと通信するために、利用可能な通信状態を選び得る。
【0023】
体内ネットワーク・システム内では、植込み型医療機器のうちの1つ(のみ)又はいくつかが、異なる構成状態を有するアンテナ装置を備え得、別の植込み型医療機器は、そのようなアンテナ装置を備えない。しかしながら、有益な実施例では、体内ネットワークの各植込み型医療機器が、他の植込み型医療機器と通信するための複数の構成状態を有するアンテナ装置を備える。
【0024】
追加的又は代替的に、第1の植込み型医療機器及び第2の植込み型医療機器のうちの少なくとも1つは、第1の指向性の放射特性を用いた第1の構成状態と、第1の指向性の放射特性とは異なる第2の指向性の放射特性を用いた第2の構成状態と、第1の指向性の放射特性及び第2の指向性の放射特性とは異なる第3の指向性の放射特性を用いた第3の構成状態とで、通信信号の送信及び受信のうちの少なくとも一方を行うように構成されているアンテナ装置を含み得る。
【0025】
1つの実施例では、アンテナ装置は、第1の構成状態では第1の通信面に主に沿って、第2の構成状態では第2の通信面に主に沿って、通信信号の送信及び受信のうちの少なくとも一方を行うように構成されている。通信面は互いに異なり、例えば、垂直な角度又は互いに対して傾いた別の角度で配置され得る。
【0026】
3つ以上の構成状態(例えば、3つの通信状態)が存在する場合、3つ以上の通信面(例えば、3つの通信面)が異なる構成状態に関連付けられ得、通信面は互いに異なり、特定の通信面がアンテナ装置の構成状態のうちの特定の1つに関連付けられている。
【0027】
このようにして、1つの実施例では、アンテナ装置は、第1の構成状態では第1の通信面に主に沿って、第2の構成状態では第2の通信面に主に沿って、第3の構成状態では第3の通信面に主に沿って、通信信号の送信及び受信のうちの少なくとも一方を行うように構成されている。
【0028】
1つの実施例において、アンテナ装置は、少なくとも3つのアンテナ要素を備え、第1の構成状態では少なくとも3つのアンテナ要素の第1の組を使用し、第2の構成状態では少なくとも3つのアンテナ要素の第2の組を使用するように構成されている。例えば、アンテナ装置は、3つよりも(はるかに)多いアンテナ要素、例えば5つ、6つ、10個以上、又はさらには20個以上のアンテナ要素を備え得る。通信のためにアンテナ要素の特定の組を選ぶことによって、体内ネットワーク・システム内で別の植込み型医療機器と信号を通信する(すなわち、送信及び/又は受信のうちの少なくとも一方を行う)ために、特定の指向性の放射特性が確立され得る。
【0029】
追加的又は代替的に、アンテナ装置は、第1の構成状態では少なくとも3つのアンテナ要素の第1の組を使用し、第2の構成状態では少なくとも3つのアンテナ要素の第2の組を使用し、第3の構成状態では少なくとも3つのアンテナ要素の第3の組を使用するように構成されている。
【0030】
1つの実施例では、少なくとも3つのアンテナ要素のうちの1つは、(主に)電気信号、特にRF信号若しくは変調電場信号を発する又は受信するための電極によって形成されている。
【0031】
そのような電極は、例えば、通信を確立するように単独で働く専用電極であり得る。別の実施例では、電極は、心臓内信号を感知するための感知電極であり得、そのようにして、感知電極は、信号の感知にも、体内ネットワーク・システム内での別の植込み型医療機器との信号の通信にも使用される。
【0032】
1つの実施例では、少なくとも3つのアンテナ要素のうちの少なくとも1つは、(主に)磁気信号を発する又は受信するためのコイルによって形成されている。したがって、別の植込み型医療機器との通信は、磁気信号を使用することによって確立され得る。
【0033】
1つの実施例では、アンテナ装置を有する植込み型医療機器は、筐体を備え、少なくとも3つのアンテナ要素のうちの少なくとも1つが、その筐体上に設置されている。そのアンテナ要素は、通信を確立するために働く専用アンテナ要素であり得る。しかしながら、筐体上に設置されたアンテナ要素は、それが、心臓内電気信号を感知するための感知電極である場合などでは、例えば心臓信号を感知するための追加の機能を同様に果たし得る。
【0034】
本明細書では、複数のアンテナ要素は、筐体上の異なる箇所に設置され得る。アンテナ要素の組を選ぶことによって、このようにして、アンテナ要素の組及び植込み型医療機器上のそれらの物理的な箇所によって判定されるように、異なる指向性の放射特性が確立され得る。
【0035】
1つの実施例では、アンテナ装置を有する植込み型医療機器は、少なくとも1つの固定要素を含む固定装置を備える。この種類の固定要素は、例えばニチノールなどの形状記憶合金材料で作られている例えば屈曲可能なタインの形状を有し、心臓内組織などの組織への植込み型医療機器の固定を確立するために、組織と係合状態にされ得る。別の実施例では、固定要素は、例えば心臓内組織などの組織に植込み型医療機器を固定するために、例えばねじの形状を有する。
【0036】
本明細書では、少なくとも3つのアンテナ要素のうちの少なくとも1つは、タイン又はねじなどの少なくとも1つの固定要素上に設置されている。本明細書では、例えば導電性材料から製作され得る固定要素が、全体としてアンテナ要素を形成し得る。別の実施例では、(例えば、電極の形状である)1つ又は複数のアンテナ要素は、固定要素上に設置され得、実質的に互いに独立して励起され得るように、互いに電気的に絶縁され得る。
【0037】
1つの実施例では、第1の通信回路及び第2の通信回路のうちの少なくとも1つが、初期段階において、第1の構成状態及び第2の構成状態のうちから構成状態を選択するために、アンテナ装置の第1の構成状態及び第2の構成状態を用いて、通信信号の送信及び受信のうちの少なくとも一方を行うように構成されており、動作状態において、選択された構成状態を通信に使用するように構成されている。
【0038】
1つの実施例では、第1の通信回路及び第2の通信回路のうちの少なくとも1つが、初期段階において、第1の構成状態と、第2の構成状態と、第3の構成状態とのうちから構成状態を選択するために、アンテナ装置の第1の構成状態と、第2の構成状態と、第3の構成状態とを順次用いて、通信信号の送信及び受信のうちの少なくとも一方を行うように構成されている。
【0039】
したがって初期段階において、例えば患者の体内での体内ネットワーク・システムの植込み型医療機器の植込みに続いて、植込み型医療機器間の初期通信が確立される。このために、植込み型医療機器は、別の植込み型医療機器との通信にどの構成状態が最適であるかを確立するために、利用可能な構成状態をスキャンし得る。最良の構成状態が特定されると、実際の動作中に、この選択された構成状態が特定の他の植込み型医療機器と通信するために使用され得、ここで異なる構成状態が、異なる植込み型医療機器との通信に選択され得、そのようにして、特定の構成状態が、特定の他の植込み型医療機器との通信に最適なものとして選ばれ得る。
【0040】
(例えば2つ又は3つの)異なる利用可能な構成状態のスキャンは、特に順次行われ、そのようにして、アンテナ装置は、別の植込み型医療機器と通信するのに最適な構成状態を特定するために、その異なる構成状態で順次使用される。
【0041】
1つの実施例では、第1の植込み型医療機器及び第2の植込み型医療機器のうちの少なくとも1つは、ペースメーカ機器又は除細動器などの心臓刺激機器である。
【0042】
1つの実施例では、第1の植込み型医療機器及び第2の植込み型医療機器のうちの少なくとも1つは、リードレス心臓刺激機器であり、リードレス心臓刺激機器とは電極を搭載するリードを備えない心臓刺激機器である。この種類のリードレス心臓刺激機器は、特に、患者の心臓の中、例えば右心室又は右心房に直接植え込まれ得る。
【0043】
概して、体内ネットワーク・システムの1つ又は複数の植込み型医療機器は、患者の皮下に、又は直接患者の心臓の中に植え込まれ得る。例えば、1つの実施例では、1つの植込み型医療機器が患者の心臓の右心室の中に植え込まれ、別の植込み型医療機器が右心房の中に植え込まれて、体内ネットワーク・システム内の心臓内植込み型医療機器間で、通信が確立される。
【0044】
1つの実施例では、第1の植込み型医療機器及び第2の植込み型医療機器のうちの少なくとも1つは、皮下の心臓ループ・レコーダ又は血圧を測定するための生体センサである。
【0045】
概して、体内ネットワーク・システム内では、例えば刺激機器、感知機器、記録機器、又はマーキング機器の形状である植込み型医療機器が、異なる構成状態を有するアンテナ装置を使用して、互いに通信し得る。
【0046】
別の態様では、体内ネットワーク・システムを動作させるための方法は、第1の植込み型医療機器の第1の通信回路及び第2の植込み型医療機器の第2の通信回路を、第1の植込み型医療機器及び第2の植込み型医療機器の植え込まれた状態で、第1の植込み型医療機器から第2の植込み型医療機器まで、及び第2の植込み型医療機器から第1の植込み型医療機器までの少なくとも一方で通信信号を伝送するための通信を確立するために使用することと、第1の植込み型医療機器及び第2の植込み型医療機器のうちの少なくとも1つのアンテナ装置であって、第1の指向性の放射特性を用いた第1の構成状態と、第1の指向性の放射特性とは異なる第2の指向性の放射特性を用いた第2の構成状態とで構成されているアンテナ装置を用いて、通信信号の送信及び受信のうちの少なくとも一方を行うこととを含む。
【0047】
追加的又は代替的に、アンテナ装置は、第1の指向性の放射特性を用いた第1の構成状態と、第1の指向性の放射特性とは異なる第2の指向性の放射特性を用いた第2の構成状態と、第1の指向性の放射特性及び第2の指向性の放射特性とは異なる第3の指向性の放射特性を用いた第3の構成状態とで構成されている。
【0048】
体内ネットワーク・システムについて上記で説明した利点及び有利な実施例は、本方法にも同様に等しく適用され、この点では上記を参照するものとする。
【0049】
本発明の様々な特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び図面に示した実施例を参照すると、より容易に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】患者に植え込まれた医療機器の体内ネットワーク・システムの概略図である。
【
図2】医療機器間のデータ通信のための通信リンクが間に確立されるものである2つの医療機器の概略図である。
【
図3】別の植込み型医療機器と通信するためのアンテナ装置を有するリードレス・ペースメーカ機器の形状であり、アンテナ装置の第1の通信状態における、植込み型医療機器の概略図である。
【
図4】アンテナ装置の第2の通信状態における、
図3の植込み型医療機器の概略図である。
【
図5】アンテナ装置の第3の状態における、植込み型医療機器の概略図である。
【
図6】アンテナ装置を有するリードレス・ペースメーカ機器の形状であり、アンテナ装置の第1の通信状態における、植込み型医療機器の別の実施例の概略図である。
【
図7】アンテナ装置の第2の構成状態における、
図6の植込み型医療機器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
続いて、本発明の実施例は、図面を参照して詳細に説明されるものである。図面では、同じ参照番号は、同様の構造的要素を示している。
【0052】
実施例は、本発明を限定するものではなく、単に例示的な実例を提示するものであることに留意されたい。
【0053】
図1を参照すると、植込み型医療機器1、2、3は、患者の体内で異なる機能を提供するために、異なる箇所で患者に植え込まれ得る。例えば、リードレス・ペースメーカ機器の形状である第1の植込み型医療機器1は、心臓H内にペーシング作用を提供するために、患者の心臓の右心室RVに植え込まれ得る。例えばループ・レコーダの形状である別の又は第2の植込み型医療機器2は、胸部の皮下に植え込まれ得、ループ・レコーダは、患者の体内で特定のパラメータを監視するために、信号を記録し、例えば外部機器と通信することができる。例えば圧力センサ、流量センサ、温度センサ等のセンサ機器の形状である別の又は第3の植込み型医療機器3は、血圧又は血流量などの特徴的なパラメータを感知するために、例えば血管に植え込まれ得る。
【0054】
概して、患者に植え込まれた異なる医療機器1、2、3間には、データ通信があることが望ましい。医療機器1、2、3を共にリンクさせる体内ネットワーク・システムを確立することによって、この種類の通信をワイヤレスの形態で確立する手法が存在し、そのようにして、医療機器1、2、3間でデータが交換され得る。したがって、ループ・レコーダは、例えばセンサ機器のセンサデータ、又はペースメーカ若しくは除細動器のデータを記録し、例えば治療の作用を制御するためにペースメーカ若しくは除細動器にデータを提供し得る。
【0055】
データ通信を可能にするためには、医療機器1、2、3間の通信リンクを確立する必要がある。本明細書では、信号は、音響的な無線周波数(RF)の変調された電場又は磁気(誘導)信号の伝送などの特定の伝送技術と、PCM、FSK、PSK、QPSK、FM、又はAM変調等の特定の変調方式とを使用して変調された形態において交換される。具体的な伝送技術にかかわらず、伝送は概して、搬送周波数を採用することによって行われ、この搬送周波数は、信頼性のある通信リンクを確立するために、通信する医療機器1、2、3間で整合しなければならない。
【0056】
ここで
図2を参照すると、患者に植え込まれるべき医療機器1、2は、小さな造りを有し得、長期にわたって患者の体内に留まるために、消費電力が低く設計され得る。
【0057】
例えばリードレス・ペースメーカの形状である第1の医療機器1は、本明細書では、筐体10と、制御回路11と、刺激信号を発し感知信号を受信するための電極装置12と、第1の通信回路13と、例えば電池の形状であるエネルギー貯蔵部14とを備え得る。
【0058】
例えば圧力センサなどの植込み型センサ機器の形状、又はループ・レコーダの形状である第2の医療機器2は、筐体20と、制御回路21と、第2の通信回路23と、例えば電池の形状であるエネルギー貯蔵部24とを備え得る。
【0059】
通信回路13、23は、それぞれ、送信ユニット130、230と、受信ユニット131、231とを備える。通信回路13、23は具体的な伝送技術用に、すなわち、音響的な無線周波数(RF)の変調された電場又は磁気信号を送信し受信するために設計されている。また、通信回路13、23は、送信及び受信用の復調信号をそれぞれ変調して、伝送パラメータを最適化し、受信した信号を増幅させ信号を処理するように設計されており、この目的は、医療機器1、2の動作を分析し制御するための制御回路11、21に処理した信号を転送することである。
【0060】
概して、
図1に概略的に示す体内ネットワーク・システム内で、植込み型医療機器1、2、3間の通信は、通信リンクを用いて確立されるものである。例えば
図2を参照すると、通信リンクLは、例えば医療機器1、2のうちの一方の初期起動時に、又は医療機器1、2の不活動の長い継続時間の後に存在するスリープ・モードの後に、医療機器1、2間で確立されるものである。本明細書では、通信を確立しようとする医療機器1、2は、例えば他方の医療機器2、1に向かって、医療機器1が通信を確立しようとしていることを示すトリガー信号を発信し得る。
【0061】
体内ネットワーク・システムの植込み型医療機器1、2、3間の通信を可能にするためには、1つの植込み型医療機器1、2、3から送信された信号が、別の植込み型医療機器1、2、3によって十分な信号品質で受信され得ることが必要になる。このために、信号は概して、実質的に無指向の放射パターンを有するアンテナ、したがって信号をすべての方向に同様に送信するアンテナを用いて、1つの植込み型医療機器によって送信され得る。同様に、別の植込み型医療機器は、信号を無指向で受信するための無指向の放射パターンを有するアンテナを有し得る。しかしながら、エネルギー消費を低減するためには、指向性の方法で信号を送信及び受信することが望ましいので、本文書内では、指向性の放射特性を示すアンテナ装置を有する植込み型医療機器1、2、3を使用することを提案する。そのようにして、植込み型医療機器1、2、3の対間で指向性通信が確立され得る。
【0062】
ここで
図3から
図5までを参照すると、1つの実施例では、植込み型医療機器1は、植込み型医療機器1上の異なる箇所に物理的に設置されたアンテナ要素152、153を有するアンテナ装置15を備え得る。
【0063】
例えば、第1のアンテナ要素は、心臓内信号を感知するための感知電極として働く植込み型医療機器の筐体10の遠位端における電極によって形成され得る。別のアンテナ要素151は、筐体10の反対側の近位端における電極によって形成され得る。さらに別のアンテナ要素152は、植込み型医療機器1を植え込まれた状態で組織に固定するための固定装置16の固定要素160上に設置され得る。またさらに別のアンテナ要素153は、固定装置16の別の固定要素161上に設置され得る。
【0064】
例えば、固定要素160、161は、例えばニチノールなどの形状記憶合金から作られているタインなどの、屈曲可能なタインによって形成され得る。本明細書では、アンテナ要素152、153は全体として、固定要素160、161によって形成され得、固定要素160、161は、この目的のために導電性材料から作られ得る。別の実施例では、例えば電極の形状である1つ又は複数のアンテナ要素152、153は、各固定要素160、161上に電気的に絶縁された形態で設置され得る。そのようにして、固定要素160、161のアンテナ要素152、153の一方が他方から実質的に独立して動作し得る。
【0065】
別の植込み型医療機器2、3と通信する場合、本実施例においては
図3から
図5までに示す主電場Eの送信及び受信のための異なる指向性通信特性を有する異なる構成状態を確立するために、アンテナ要素152、153の異なる対が使用され得る。
【0066】
例えば
図3の構成状態では、アンテナ要素150、151が、信号Eの送信及び/又は受信に使用され、この構成状態のアンテナ装置15は、通信面C1に沿った主放射を有する指向性の放射特性を示す。これは、通信面C1内で、送信時に信号振幅が最大であり、受信時に感度が最大であることを意味する。
【0067】
図示の実施例では、
図3の構成状態における指向性の放射特性は、本明細書では回転対称であり得、そのようにして、
図3に示す通信面C1内で無指向性の送信及び受信が行われ得る。
【0068】
別の構成状態では、
図4に示すように、筐体10の近位端におけるアンテナ要素151と、固定装置16の固定要素160上にあるアンテナ要素152とが、組み合わせて通信に使用される。この構成状態では、信号は、通信面C2に沿って送信及び/又は受信され、通信面C2では、
図4に示すように、固定要素160が筐体10から向かって延在する側への指向性送信及び/又はその側からの指向性受信を達成する特定の指向性が得られ得る。
【0069】
別の構成状態では、筐体10の近位端におけるアンテナ要素151と、固定要素161のアンテナ要素153とが、送信及び/又は受信に使用され得る。
【0070】
さらに別の構成状態では、固定要素160、161上に設置されたアンテナ要素152、153が、通信面C3に沿った主送信及び/又は主受信用の指向性の放射特性を得るために、送信及び/又は受信に使用され得る。
【0071】
さらに別の構成状態では、アンテナ要素150から153までの3つ以上が、信号の送信及び/又は受信に組み合わせて使用され得る。
【0072】
他の植込み型医療機器2、3のうちの特定の1つと通信する場合、構成状態のうちの1つが選択され得、特にその構成状態は、特定の他の植込み型医療機器2、3への指向性信号送信又はその機器からの指向性信号受信を可能にするものである。構成状態の選択は初期段階に行われ得る。初期段階の間には、植込み型医療機器1は、利用可能な構成状態をスキャンし得、最も効率的な通信を可能にする構成状態を特定し得る。最適な構成状態が特定されると、その構成状態は特定の植込み型医療機器2、3とのさらなる通信のために選択され、そのようにして、後の動作において、通信が選択された構成状態を用いて確立され得る。
【0073】
動作中に通信品質の低下が検出された場合、例えば患者の体内での植込み型医療機器1、2、3のずれに対して調整する目的で、改めて最適な構成状態を特定するために、改めて初期段階が開始され得る。
【0074】
図3から
図5までの実施例では、アンテナ要素150から153までは、電気信号Eを主に送信及び受信するための電極の形状を有し得る。
【0075】
ここで
図6及び
図7を参照すると、別の実施例において、植込み型医療機器1は磁気コイルの形状のアンテナ要素154、155を備え得る。各アンテナ要素154、155は、例えば巻線によって形成されたコイル要素によって、又はプリント基板上に形成されたコイル要素によって形成され得る。アンテナ要素154、155は、筐体10内に設置され得、主磁場Mを生成する磁気信号を主に送信及び/又は受信するように構成されている。
【0076】
本明細書では、第1の構成状態(
図6)では、アンテナ要素154、155は、アンテナ要素154を用いた信号の送信及び/又は受信が、通信面C4に主に沿って確立されるように配置されている。それに対して、第2の構成状態(
図7)では、アンテナ要素154、155は、アンテナ要素155を用いた信号の送信及び/又は受信が、垂直な通信面C5に主に沿って確立されるように配置されている。得られる放射パターンは、本明細書では、各場合において回転対称であり得る。
【0077】
図6及び
図7の実施例における異なる構成状態を用いると、別の植込み型医療機器2、3に対して通信が確立され得、前に説明したように、例えば最適な構成状態が、初期段階に選ばれ得る。
【0078】
体内ネットワーク・システム内の植込み型医療機器1、2、3は、例えば、リードレス・ペースメーカ機器若しくは除細動器などの心臓刺激機器、例えば血圧を感知するための生体センサなどの感知機器、又はループ・レコーダなどの記録機器であり得る。
【0079】
概して、植込み型医療機器1、2、3は、患者の心臓の中、例えば右心室又は右心房に、完全に又は部分的に直接植え込まれ得る。別の実施例では、植込み型医療機器1、2、3は、患者の皮下に、完全に又は部分的に植え込まれ得る。
【符号の説明】
【0080】
1、2、3 植込み型医療機器
10、20 筐体
11、21 制御回路
12 電極装置
13、23 通信回路
130、230 送信ユニット
131、231 受信ユニット
14、24 エネルギー貯蔵部
15 アンテナ装置
150~155 アンテナ要素
16 固定装置
160、161 固定要素
C1~C5 通信面
E 主電場
H 心臓
L 通信リンク
M 主磁場
RV 右心室
【国際調査報告】