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特表2024-517067医療機器のシミュレーションのためのシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-19
(54)【発明の名称】医療機器のシミュレーションのためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/00 20060101AFI20240412BHJP
   G06F 30/20 20200101ALI20240412BHJP
   G06F 30/10 20200101ALI20240412BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20240412BHJP
   G01N 3/00 20060101ALI20240412BHJP
   G06F 119/08 20200101ALN20240412BHJP
   G06F 119/14 20200101ALN20240412BHJP
   G06F 111/04 20200101ALN20240412BHJP
   G06F 113/08 20200101ALN20240412BHJP
【FI】
G01N17/00
G06F30/20
G06F30/10 200
G06Q50/04
G01N3/00 R
G06F119:08
G06F119:14
G06F111:04
G06F113:08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560102
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(85)【翻訳文提出日】2023-10-23
(86)【国際出願番号】 US2022022842
(87)【国際公開番号】W WO2022212713
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】63/169,601
(32)【優先日】2021-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ケニヨン、ロス
【テーマコード(参考)】
2G050
2G061
5B146
【Fターム(参考)】
2G050AA02
2G050BA12
2G050DA01
2G050EA01
2G050EA04
2G050EB07
2G061AB02
5B146BA04
5B146DC05
5B146DJ03
5B146DJ11
5B146DJ14
(57)【要約】
予測温度応力時間クリープ係数を生成および/または検証し、医療機器を承認するか、または拒否し、線形機器モデルを使用して医療機器設計を検証し、かつ熱分析を使用して係数を生成するための機器および方法が本明細書に開示されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療機器のための加速試験パラメータを決定するための方法であって、
温度範囲を因子として、クリープひずみを応力の持続時間および応力量に関連付ける生のクリープ係数データを受信するステップと、
前記生のクリープ係数データに基づいて予測係数を生成するステップと、
前記予測係数を使用して、加速試験時間、加速応力、または加速温度のうちの1つまたは複数を生成するステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記加速試験時間は、基準クリープひずみ、基準応力、および前記加速温度に基づいて生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記医療機器の加速試験に基づいて加速試験クリープひずみを生成するステップと、前記加速試験は、前記加速温度、前記加速試験時間、および前記加速応力に基づいて行われ、
前記加速試験クリープひずみと前記基準クリープひずみとを比較することに基づいて、医療機器承認指示または医療機器拒否指示のうちの1つを出力するステップとをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記承認指示は前記医療機器を承認し、前記拒否指示は前記医療機器を拒否する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記医療機器の加速試験に基づいて加速試験クリープひずみを生成するステップと、前記加速試験は、前記加速温度、前記加速試験時間、および前記加速応力に基づいて行われ、
前記加速試験クリープひずみと前記基準クリープひずみとを比較することに基づいて、予測係数承認指示または予測係数拒否指示のうちの1つを出力するステップとをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記医療機器は、別の医療機器に対応する医療機器設計に基づいて製造され、前記生のクリープ係数データは、前記別の医療機器に基づくものである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記予測係数は、前記生のクリープひずみデータの三次元(3D)補間に基づいて生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記生のクリープひずみデータは、シミュレートされたひずみまたは経験されたひずみのうちの1つに基づいて生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
医療機器の予測係数を検証するための方法であって、
温度範囲を因子として、クリープひずみ値を応力の持続時間および応力量に関連付ける生のクリープひずみデータを受信するステップと、
予測係数を生成するステップと、前記予測係数は、基準クリープひずみに基づく加速温度、加速時間、および加速応力を出力するように構成されており、
前記基準クリープひずみに基づく前記加速温度、前記加速時間、および前記加速応力を受信するステップと、
前記加速温度、前記加速時間、および前記加速応力に基づいて行われた加速試験に基づいて、前記医療機器の加速試験クリープひずみを受信するステップと、
前記加速試験クリープひずみと前記基準クリープひずみとを比較することに基づいて、承認指示または拒否指示のうちの1つを出力するステップと、を含む方法。
【請求項10】
前記予測係数は、前記生のクリープひずみデータの三次元(3D)補間に基づいて生成される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
第1の持続時間、第1の応力量、および第1の温度に対する第1のクリープひずみが、前記第1の持続時間、前記第1の応力量、および第2の温度に対する第2のクリープひずみと異なる、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記基準クリープひずみは、基準温度、基準時間、および基準応力に対応している、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記基準温度が周囲温度であり、前記基準時間が前記医療機器の予想保管寿命であり、前記基準応力が予想応力量である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記承認指示は前記予測係数を承認し、前記拒否指示は前記予測係数を拒否する、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
医療機器設計を検証するための方法であって、
前記医療機器設計に基づく複数の医療機器関係を受信するステップと、前記複数の医療機器関係は、前記医療機器設計に関する電圧、電流、抵抗、トルク、速度、および力の関係に対応し、かつ複数の係数を含んでおり、
前記複数の医療機器関係に基づいて線形機器モデルを生成するステップと
前記複数の医療機器関係に関して、分布関数から前記複数の係数の各々に対してシミュレートされた係数値を受信するステップと、
前記シミュレートされた係数値および前記線形機器モデルに基づいて、電圧、電流、抵抗、トルク、速度、または力に関するシミュレートされた出力分布を生成するステップと、
前記シミュレートされた出力分布を閾値出力要件と比較するステップと、
前記シミュレートされた出力分布を前記閾値出力要件と比較することに基づいて、承認指示または拒否指示のうちの1つを出力するステップと、を含む方法。
【請求項16】
前記分布関数が、正規分布関数または正規分布関数の混合である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記シミュレートされた出力分布を前記閾値出力要件と比較するステップは、
最大分布値を最大閾値出力要件と比較すること、
最小分布値を最小閾値出力値と比較すること、または
ピーク分布値をピーク閾値出力値と比較することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記シミュレートされた出力分布は、1時間未満で実行された少なくとも1万回のシミュレーションに基づく、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記複数の医療機器関係は、物質の粘度に基づくものであり、前記物質の粘度は、熱分析に基づいて決定される物質温度挙動に基づいて算出される、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記複数の係数のうちの1つの係数は、流体経路制限分析に基づいて生成され、前記流体経路制限分析は、決定された粘度および決定された速度を因子として作用される力を出力する、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の態様は、機器特性のシミュレーションおよび/または劣化試験に基づいて、機器、例えば、自己注射器(auto-injectors)などの医療機器を設計および試験することに関する。より具体的には、本開示の実施形態は、自己注射器、ならびに品質および使用基準を満たす自己注射器および関連する部品を開発するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自己注射器などの様々な利用可能な医療機器は、複数の部品を含む。医療機器全体および/または複数の部品のうちの1つまたは複数は、多くの場合、医療機器がそれらの個別の寿命の持続時間にわたって許容可能な態様で動作することができるように、品質または使用基準を満たすことが必要とされる。品質または使用基準からの逸脱は、医療機器の準最適性能または故障をもたらし得る。しかしながら、医療機器設計を複数回の反復で試験し、品質または使用基準を満たすように機器および/またはその部品を更新することは、時間および/またはコストの制約により可能でない場合がある。従って、所与の設計を有する医療機器が1つまたは複数の品質または使用基準を満たすかどうかを判定する効率的な方法が必要とされる。
【発明の概要】
【0003】
医療機器および/または設計を分析するための方法およびシステムが、本明細書に開示される。本開示の一実施形態では、医療機器の加速試験パラメータを決定するための方法は、温度範囲を因子として、クリープひずみを応力の持続時間および応力量に関連付ける生のクリープ係数データを受信するステップと、生のクリープ係数データに基づいて予測係数を生成するステップと、予測係数を使用して、加速試験時間、加速応力、または加速温度のうちの1つまたは複数を生成するステップとを含む。
【0004】
加速試験時間は、基準クリープひずみ、基準応力、および加速温度に基づいて生成される。方法は、医療機器の加速試験に基づいて加速試験クリープひずみを生成するステップと、加速試験は、加速温度、加速試験時間、および加速応力に基づいて行われ、加速試験クリープひずみと基準クリープひずみとの比較に基づいて、医療機器承認指示または医療機器拒否指示のうちの1つを出力するステップとを含む。承認表示は医療機器を承認し、拒否指示は医療機器を拒否する。方法は、医療機器の加速試験に基づいて加速試験クリープひずみを生成するステップと、加速試験は、加速温度、加速試験時間、および加速応力に基づいて行われ、加速試験クリープひずみと基準クリープひずみとの比較に基づいて、予測係数承認指示または予測係数拒否指示のうちの1つを出力するステップとをさらに含む。医療機器は、別の医療機器に対応する医療機器設計に基づいて製造され、生のクリープ係数データは、別の医療機器に基づくものである。予測係数は、生のクリープひずみデータの三次元(3D)補間に基づいて生成される。生のクリープひずみデータは、シミュレートされたひずみまたは経験されたひずみのうちの1つに基づいて生成される。
【0005】
本開示の別の実施形態では、医療機器の予測係数を検証する方法は、温度範囲を因子として、クリープひずみ値を応力の持続時間および応力量に関連付ける生のクリープひずみデータを受信するステップと、基準クリープひずみに基づく加速温度、加速時間、および加速応力を出力するように構成された予測係数を生成するステップと、基準クリープひずみに基づく加速温度、加速時間、および加速応力を受信するステップと、加速温度、加速時間、および加速応力に基づいて行われた加速試験に基づいて医療機器の加速試験クリープひずみを受信するステップと、加速試験クリープひずみと基準クリープひずみとの比較に基づいて、承認指示または拒否指示のうちの1つを出力するステップとを含む。
【0006】
方法によれば、予測係数は、生のクリープひずみデータの三次元(3D)補間に基づいて生成される。第1の持続時間、第1の応力量、および第1の温度に対する第1のクリープひずみは、第1の持続時間、第1の応力量、および第2の温度に対する第2のクリープひずみとは異なる。基準クリープひずみは、基準温度、基準時間、および基準応力に対応している。基準温度は周囲温度であり、基準時間は医療機器の予想保管寿命であり、基準応力は予想応力量である。承認指示は予測係数を承認し、拒否指示は予測係数を拒否する。
【0007】
本開示の別の実施形態では、医療機器設計を検証するための方法は、医療機器設計に基づいて複数の医療機器関係を受信するステップと、複数の医療機器関係は、医療機器設計の電圧、電流、抵抗、トルク、速度、および力の関係に対応し、かつ複数の係数を含んでおり、複数の医療機器関係に基づいて線形機器モデルを生成するステップと、複数の医療機器関係に関して、分布関数から複数の係数の各々に対してシミュレートされた係数値を受信するステップと、シミュレートされた係数値および線形機器モデルに基づいて、電圧、電流、抵抗、トルク、速度、または力に関するシミュレートされた出力分布を生成するステップと、シミュレートされた出力分布を閾値出力要件と比較するステップと、シミュレートされた出力分布を閾値出力要件と比較することに基づいて、承認指示または拒否指示のうちの1つを出力するステップとを含む。
【0008】
本方法によれば、分布関数は、正規分布関数または正規分布関数の混合である。シミュレートされた出力分布を閾値出力要件と比較することは、最大分布値を最大閾値出力要件と比較すること、最小分布値を最小閾値出力値と比較すること、またはピーク分布値をピーク閾値出力値と比較することを含む。シミュレートされた出力分布は、1時間未満で実行された少なくとも1万回のシミュレーションに基づく。複数の医療機器関係は、物質の粘度に基づくものであり、物質の粘度は、熱分析に基づいて決定される物質温度挙動に基づいて算出される。複数の係数のうちの1つの係数は、流体経路制限分析に基づいて生成され、流体経路制限分析は、決定された粘度および決定された速度を因子として作用する力を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】本開示の一例による、自己注射器の斜視図である。
図1B】本開示の一例による、図1Aの自己注射器の底面図である。
図1C】本開示の一例による、図1Aの自己注射器の側面図である。
図2】本開示の一例による、図11の自己注射器の分解図である。
図3A】本開示の一例による、クリープひずみプロファイルを特定するための図である。
図3B】本開示の一例による、クリープひずみ関係を生成するためのフローチャートである。
図3C】本開示の一例による、時間および応力を考慮した温度ベースのクリープ係数のチャートを示す図である。
図3D】本開示の一例による、予測温度応力時間クリープ係数(predictive temperature stress and time creep modulus)の図表を含む図である。
図4】本開示の一例による、線形機器モデルの部品を含む図である。
図5A】本開示の一例による、システムモデルを含む図である。
図5B】本開示の一例による、図5Aのシステムモデルへの入力を含む図である。
図6】本開示の一例による、図5Aのシステムモデルからの出力を含む図である。
図7】本開示の一例による、設計プロセスにおける図5Aのシステムモデルの役割を示す図である。
図8A】本開示の一例による、構造組立品の図である。
図8B】本開示の一例による、構造組立品の図である。
図9A】本開示の一例による、プランジャ応答を示す図である。
図9B】本開示の一例による、プランジャ応答を示す図である。
図10】本開示の一例による、熱分析を示す図である。
図11】本開示の一例による、流体経路制限分析を示す図である。
図12】本開示の一例による、落下試験分析結果を示す図である。
図13A】本開示の一例による、漏れ評価を示す図である。
図13B】本開示の一例による、生理学的モデルを示す図である。
図13C】本開示の一例による、針コアリング(needle coring)を示す図である。
図14】本開示の一例による製品ライフサイクルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書に組み込まれ、かつ本明細書の一部を構成する添付の図面は、様々な例示的な実施形態を示し、説明と共に、開示された実施形態の原理を説明する役割を果たす。図面は、本開示の別々の態様を示しており、適切な場合、別々の図面における同様の構造、構成要素、材料、および/または要素を示す参照番号は、同様にラベル付けされている。具体的に示されたもの以外の、様々な実施形態における構造、構成要素、および/または要素の様々な組み合わせが企図されており、本開示の範囲内にあることが理解される。
【0011】
本明細書には多くの実施形態が記載され例示されている。説明される機器および方法は、その任意の単一の態様にも実施形態にも、そのような態様および/または実施形態の任意の組合せおよび/または置換にも限定されない。さらに、記載された発明の態様および/またはその実施形態の各々は、単独で、または記載された発明の他の態様および/またはその実施形態の1つまたは複数と組み合わせて使用され得る。簡潔にするために、特定の置換および組み合わせは、本明細書において別々に説明および/または図示されない。
【0012】
様々な例示的な実施形態を示す添付の図面の付録は、本明細書に組み込まれ、かつ本明細書の一部を構成する上述の説明および図面とともに含まれる。
本明細書には多くの実施形態が記載され例示されている。本開示は、その任意の単一の態様にも実施形態にも、そのような態様および/または実施形態の任意の組合せおよび/または置換にも限定されない。本開示の態様および/またはその実施形態の各々は、単独で、または本開示の他の態様および/またはその実施形態の1つまたは複数と組み合わせて使用され得る。簡潔にするために、これらの組合せおよび置換の多くは、本明細書において別々に説明されない。
【0013】
特に、説明を簡単かつ明確にするために、図面の特定の態様は、様々な実施形態の概略的な構造および/または構築の方法を示す。周知の特徴および技術の説明および詳細は、他の特徴を不必要に分かりにくくすることを回避するために省略され得る。図面中の要素は、必ずしも原寸に比例して描かれておらず、いくつかの特徴の寸法は、例示的な実施形態の理解を高めるために他の要素に対して誇張されている場合がある。例えば、当業者であれば、断面図は原寸通りに描かれておらず、かつ異なる構成要素間の比例関係を表すものとして見なすべきでないことを理解する。断面図は、図示されたアセンブリの様々な構成要素を説明し易くするため、また、互いの相対的な位置関係を示すために提供されている。
【0014】
次に、添付の図面に示される本開示の例を詳細に参照する。可能である場合、同一または同様の部分を示すために、図面全体を通して同一の参照番号が使用される。本開示の実施形態は、液体薬剤物質、液体プラセボ、または用量の形態で調剤され得る他の液体等の任意のタイプの流体含有製品とともに使用され得る。以下の説明において、「約」、「およそ」、「実質的に」などの用語は、数値を説明する際に使用される場合、別段の指定がない限り、その値の+/-10%の変動を示す。
【0015】
本明細書で使用される場合、用語「備える(comprises)」、「備えている(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、またはそれらの任意の他の変形は、要素のリストを含むプロセス、方法、物品、または装置が、それらの要素のみを含むのではなく、明示的に列挙されていないか、またはそのようなプロセス、方法、物品、または装置に固有の他の要素を含み得るように、非排他的な包含をカバーすることが意図される。「例示的」という用語は、「理想的」ではなく「例」という意味で使用される。特に、「例」または「例示的」として本明細書で説明される実施形態または実装形態は、例えば、他の実施形態または実装形態よりも好ましいか、または有利であるとして解釈されるべきではなく、むしろ、実施形態が「理想的」ではなく、1つの「例」であることを反映または示すことが意図される。
【0016】
本明細書で使用される場合、「遠位」および「遠位に」という用語は、患者送達部位に比較的近いか、または患者送達部位の方向にある場所(または機器の部分)を指し、「近位」および「近位に」という用語は、機器の遠位の場所/部分とは反対側のユーザ端部に比較的近いか、またはユーザ端部の方向にある場所(または機器の部分)を指す。さらに、本明細書における「第1」、「第2」などの用語は、いかなる順序、量、または重要性を示すものではなく、要素、構造、ステップ、またはプロセスを他のものと区別するために使用される。さらに、本明細書における「1つの(a)」および「1つの(an)」という用語は、数量の限定を示すのではなく、参照される項目のうちの1つまたは複数の存在を示す。
【0017】
上述したように、既存の自己注射器は複数の部品を含む。自己注射器全体および/または自己注射器の複数の部品の各々は、自己注射器の有用性を保証するために、品質基準または使用基準を満たす必要があり得る。自己注射器および/またはその部品が1つまたは複数の品質基準または使用基準を満たすかどうかの判定は、物理的な自己注射器および/またはその物理的な部品を試験することによって行うことができる。しかしながら、物理的な自己注射器を使用するそのような試験は、自己注射器の物理的バージョンに対する反復的な改良が、各反復のために新たな自己注射器を製造することを必要とし得るため、法外な費用および時間がかかり得る。代替的に、自己注射器および/またはその部品が1つまたは複数の品質基準または使用基準を満たすかどうかを判定することは、加速試験チャンバを使用すること、および/またはシミュレーションを生成することによって行われることができる。しかしながら、加速試験のための既存の技術は、クリープなどのパラメータを考慮していない。加えて、シミュレーションを生成するための既存の技法は、多くの場合、リソース集約的であり、かつ時間がかかる。
【0018】
従って、本開示は、完全な機器または機器の部品であり得る医療機器(例えば、自己注射器)のシミュレーションベースの試験の種々の実施形態に関する。具体的には、特定の実施形態によれば、所与の機器、部品、および/または材料に関してクリープ係数データが受信され得、かつ/または生成され得る。生のクリープ係数データは、温度、応力、および応力の持続時間に応じた所与の機器または部品に関するクリープひずみを含む生のデータを含み得る。クリープひずみは、ひずみ値及び/又はクリープひずみと温度、応力、及び応力の持続時間のうちの1つまたは複数との間の関係として表され得る。生のクリープひずみデータは、例えば、所与の温度で所与の応力に対して持続時間にわたって機器または部品が経験する、観察された(例えば、1つまたは複数のセンサを使用して)またはシミュレートされたクリープひずみに基づくものであり得る。自己注射器内の部品の配置は、例えば、経時的に印加される一定の応力または変動する応力をもたらし得る。例えば、自己注射器内のばねは、圧縮され得、かつ自己注射器の様々な部品に応力を加え得る。一実装形態によれば、生のクリープひずみデータを使用して、クリープひずみと温度、応力、および/または応力の持続時間との間の関係が生成され得る。
【0019】
同じ応力持続時間および同じ応力量に対するクリープひずみは、異なる温度に対して異なり得る。例えば、異なるクリープひずみ関係は、第1、第2、および第3の温度の各々に関して、ならびに応力の異なる持続時間および応力量にそれぞれ基づいて特定され得る。複数のクリープひずみ関係に基づいて、補間(例えば、3次元(3D))を使用して、予測温度応力時間クリープ係数(例えば、予測係数(predictive modulus))が生成され得る。予測温度応力時間クリープ係数を使用して、複数の任意の温度に対して応力および時間に応じたクリープひずみを出力し得る。予測温度応力時間クリープ係数は、加速劣化試験のための変数(例えば、温度、応力量、応力持続時間)を決定するために使用され得る。例えば、所与の機器または部品に対する予測温度応力時間クリープ係数は、所与の機器または部品に対する所与の応力量を伴う所与の温度での所与の持続時間(例えば、2年)の間のクリープひずみ値を特定し得る。所与の応力量は、所与の機器または部品によって経験される実際のまたは理論的な応力量に対応し得る。
【0020】
予測温度応力時間クリープ係数は、予想または経験されるクリープひずみを観察するための加速試験において使用され得る変数(例えば、時間、温度、応力)を特定するために使用され得る。変数は、選択されたクリープひずみ値、および/または温度、時間、および/または応力のうちの1つもしくは複数に基づいて決定され得る。従って、加速試験は、予測温度応力時間クリープ係数に基づいて特定された変数(例えば、時間量、温度、および応力量)を使用して行われ得る。加速試験は、加速試験の終了時にクリープひずみを決定し、クリープひずみを予想されるクリープひずみ(例えば、加速試験に関する時間量、温度、および応力量を選択するために使用したクリープひずみ)と比較するために、使用され得る。
【0021】
例えば、予測温度応力時間クリープ係数は、所与の部品に関する生のクリープ係数データを補間することに基づいて生成され得る。予測温度応力時間クリープ係数は、加速試験のために使用され得る加速試験温度(例えば、周囲温度よりも高い)において所与のクリープひずみを生成するための加速持続時間および試験応力量を特定するために使用され得る。加速持続時間は、部品が、例えば周囲温度で所与のクリープひずみを経験する持続時間よりも短くてもよい。
【0022】
部品の加速試験は、劣化チャンバを使用して、部品が試験応力量を経験する間に、特定された持続時間にわたって加速試験温度で実施され得る。劣化チャンバは、特性(例えば、温度)を人工的に操作することによって加速劣化試験を可能にする任意の適用可能なチャンバであり得る。加速持続時間の間の加速試験の終了時に、部品に関するクリープひずみが測定され、所与のクリープひずみと比較され得る。比較は、予測温度応力時間クリープ係数を検証するために、および/または試験の終了時における部品の観察されたクリープひずみが所与の(例えば、予想される)クリープひずみの閾値範囲内にあるかどうかを決定するために使用され得る。
【0023】
本明細書で適用される場合、「クリープ」または「クリープひずみ」は、固体材料が持続的な機械的応力の影響下で(例えば、緩慢に)移動するか、または(例えば、永久的に)変形する傾向を指す材料特性である。クリープひずみは、材料の降伏強度未満である応力に長期間さらされた結果として生じ得る。所与の材料におけるクリープひずみの深刻さは、熱および/または時間を因子として増大し得る。例えば、クリープひずみは、より低い温度での同じ応力と比較して、より高い温度で応力に曝された場合に、より増加し得る(例えば、温度の影響は、所与の材料の融点付近で最大であり得る)。別の例として、所与の材料に関するクリープひずみは、より短い期間と比較して、より長い期間にわたって同じ応力に曝されたときに、より大きくなり得る。従って、クリープひずみによる材料の変形速度は、材料の特性、曝露時間、曝露温度、および加えられた構造負荷に応じたものであり得る。
【0024】
クリープ閾値は、機器(例えば、自己注射器)および/または機器の1つまたは複数の部品に固有であり得る。機器および/または1つまたは複数の部品に関するクリープ閾値は、機器および/または1つまたは複数の部品の変形がもはやその所与の機能を果たすことができないレベルでの、またはそれに基づくクリープひずみ値であり得る。
【0025】
特定の実施形態によれば、シミュレーションコンポーネントは、医療機器の線形機器モデルを生成し得る。線形機器モデルは、医療機器の複数の部品間の関係に基づき得る。シミュレーションコンポーネントは、医療機器の決定または感知された属性に基づいて線形機器モデルを生成し得る。例えば、センサは、医療機器内の主ねじのトルクと軸力との間の関係を決定するために使用され得る。シミュレーションコンポーネントは、決定または感知された属性およびそれらの相互関係の一部または全部に基づいて、線形機器モデルを作成し得る。
【0026】
本明細書に開示される特定の実施形態に従って生成される線形機器モデルは、シミュレーション時間を最小化するために線形属性を含み得る。例えば、主ねじのトルクと軸力との間の関係は、軸力の変化がトルクにおける線形変化と一致するような線形属性であり得る。本明細書で適用される線形属性はそれぞれ、本明細書で一般に係数と呼ばれる変化量または「勾配(slope)」を有し得る。例えば、トルク対軸力比の係数は、C2+C3と呼ぶことができ、この値は、線形属性の勾配を示す。
【0027】
特定の実施形態によれば、シミュレーションコンポーネントは、医療機器および/またはその部品に関する出力(例えば、力、速度、電流トルク、電圧など)の分布を生成し得る。出力の分布は、医療機器またはその部品が入力のセットに基づいて経験し得るシミュレートされた出力であり得、かつ線形機器モデルを使用して生成され得る。入力は、線形機器モデルの係数に関する入力ならびに他の入力(例えば、薬剤粘度)の分布を含み得る。例えば、線形機器モデルは、所与の医療機器の複数の潜在的な力出力をシミュレートするために使用され得る。第1の事例では、係数の第1の分布は、供給電圧とともに線形機器モデルに適用され得、線形機器モデルは、反復シミュレーションにそれぞれが基づく複数のスカラー値(例えば、力値(force value)、速度値、電流値、トルク値、電圧値等)の分布を出力し得る。シミュレーションは、複数回(例えば、約数千回、約数万回、約数十万回、約200万回、約100万回~約400万回、約50万回~約500万回等)実行されて、各出力(例えば、力値、速度値、電流値、トルク値、電圧値等)に対応する出力スカラー値の分布が出力され得る。出力は、医療機器の所与の設計が1つまたは複数の品質基準または使用基準を満たすかどうかを判定するために使用され得る。代替的に又は追加的に、出力は、所与の医療機器の試験パラメータを決定するために使用され得る。
【0028】
自己注射器
本明細書に開示されるシミュレーションは、自己注射器または自己注射器の部品に基づくものであり得る。本開示の実施形態は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際出願番号第PCT/US2018/031077号の態様に加えて、かつ/または組み合わせて使用され得る。国際出願番号第PCT/US2018/031077号には、本明細書の図1A図2にも示される自己注射器2の例が開示されている。本明細書で企図されるシミュレーションは、他の適切な自己注射器に基づいて実行され得ることも企図される。自己注射器2は、組織係合面(例えば、底面)4を有するハウジング3を含み得、図1Bに示すように、針が組織係合面4を通して展開され、開口部6を介して格納され得る。起動スイッチ1409は、図1Bおよび図1Cに示されるように、組織係合面4上に配置され得、自己注射器2を起動するか、またはそれ以外の場合に自己注射器2を「準備完了」モードに入れるように構成され得る。また、タッチセンサ1410は、組織係合面4上に配置され得、自己注射器2のコントローラが、自己注射器2がユーザの皮膚上に配置されているかどうか(自己注射器が針を発射するか、それ以外の場合展開すべきであることを示す)、または起動スイッチ1409が不適切にトリガされたかどうか(自己注射器2の動作が停止されるべきであることを示す)を判断するのに役立つように構成され得る。接続ポート13は、自己注射器2のプログラミングを容易にするために組織係合面4上に配置され得る。自己注射器2は、携帯性およびユーザによる自己装着を可能にするのに適した任意の適切な寸法を有し得る。
【0029】
図2に示されるように、シャトル340(例えば、シャトルアクチュエータ)は、展開ギアを介してドライバ320を移動させるように構成され得る。シャトル340は、弾性部材(例えば、バネ)に連結され得る。
【0030】
接着パッチ12は、ユーザの身体(例えば、皮膚)に自己注射器2を固定するのに役立つように組織係合面4に結合され得る。
クリープ
本明細書に開示されるように、自己注射器2などの医療機器は、医療機器に加えられた1つまたは複数の応力の結果としてクリープひずみを経験し得る。応力は、ばね、別の部品上の部品、プランジャ等によって作用されるような内部応力(例えば、シャトル340によって作用される応力)であり得る。所与の機器または部品のクリープひずみプロファイルを特定するための技法が、図3Aに示されている。クリープひずみ予測は、時間硬化モデルを構築するために使用され得、予荷重された部品上の応力場に適用され得、フィーチャ等の材料(例えば、プラスチック)撓みを予測するために使用され得る。物理的な機器上のクリープひずみは、チャート302に示されるように、異なるひずみ値に基づいて傾向線を決定するために分析され得る。チャート302は、イメージ304に示される所与の部品(例えば、シャトル340)に対して測定された別個のクリープひずみを、5つの別個の変化するひずみレベルでプロットしている。チャート302内の5つの傾向線の各々は、5つの別個のひずみレベルの各々を同じ持続時間にわたって適用することによって決定され得る。所与の傾向線に対応するひずみ量は、(302Aとラベル付けされている)式1を使用してプロットすることができる。
【0031】
【数1】
【0032】
式1において上記で開示したように、クリープひずみεは、第1の係数C、第2の係数C、時間t、および第3の係数Cに基づいて決定される。係数C、C、およびCは、本明細書でさらに説明されるような係数であり得る。
【0033】
所与の時間での、または経時的な部品に関するクリープひずみレベルは、部品上に重ねて示され得る。イメージ304において提供される例は、チャート302にプロットされたクリープひずみに対応する部品上に重ねられたひずみ点(例えば、チャート302にプロットされたクリープひずみ)を示す。イメージ304では、シャトル340の別個の領域で経験する別個の量のクリープひずみが、別個の陰影によって示されている。
【0034】
経時的に別個のひずみレベルで感知されたクリープひずみに基づいてチャート302にプロットされたクリープひずみを使用して、イメージ304に示された部品に関するクリープひずみプロファイル306が生成され得る。クリープひずみプロファイル306は、経時的な変位を示し、かつ部品が周囲条件にて自己注射器2内で使用されるときに部品に加えられるひずみに基づいて、イメージ304に示される部品が経時的に経験し得るクリープひずみに対応し得る。クリープひずみプロファイル306は、イメージ304に示される部品が、独立して、または自己注射器2の部品としてのいずれかで、使用基準および/または品質基準を満たすかどうかを決定するために使用され得る。
【0035】
開示される主題の別の実装形態によると、予測温度応力時間クリープ係数は、例えば、自己注射器等の機器または部品に対して生成され得る。図3Bは、加速劣化試験に使用することができる予測温度応力時間クリープ係数を生成するためのプロセス307を示す。プロセス307の1つまたは複数の態様は、本明細書でさらに開示されるように、コンピュータ、プロセッサ、メモリなどのうちの1つまたは複数を使用して実施され得る。プロセス307の307Aにおいて、クリープ係数データ(例えば、生のクリープひずみデータ)が、コンピュータ、プロセッサ、メモリなどによって受信され得る。クリープ係数データは、複数の温度に関する、応力の持続時間(例えば、時間)および応力量に関連するクリープひずみ値を含み得る。図3Cは、複数のクリープひずみ面310A、310B、および310Cを有するチャート308を示す。クリープひずみ面310A、310B、および310Cは、温度(例えば、T、T、およびT)を変化させたときの、応力の持続時間および応力量を因子とする、所与の機器または部品に関するクリープひずみの視覚的表現である。一実装形態によれば、生のクリープひずみデータは、本明細書で開示される技法に基づいて、機器または部品に関して(例えば、シミュレーションを使用して)予測され得るか、または(例えば、感知されたクリープひずみに基づいて)生成され得る。クリープひずみ面310A、310B、および310Cはそれぞれ、経時的な、かつ別個の応力量にわたる生のクリープひずみデータの視覚的表現を示す。生のクリープひずみデータを使用して、別個の温度(例えば、T、T、およびT)に関して、時間および応力を因子としてクリープひずみが決定され得る。例えば、面310Aで示される視覚的表現は、温度Tにおいて、各応力レベルが部品に加えられる時間量に基づいて、所与の部品が様々な別個の応力レベルで経験し得るクリープひずみの量を示す。
【0036】
プロセス307の307Bにおいて、補間(例えば、3D補間)が所与の機器または部品の生のクリープひずみデータに対して実行されて、所与の機器または部品に基づく予測温度応力時間クリープ係数が生成され得る。所与の機器または部品に基づいて生成された予測温度応力時間クリープ係数は、所与の機器または部品または1つもしくは複数の他の機器または部品(例えば、所与の機器または部品と同様の部品)について、(例えば、面310iを使用して視覚的に表されるような)個別の応力量、応力の持続時間、および温度に関してクリープひずみを特定するために使用される。
【0037】
一実装形態によれば、プロセス307の307Bにおいて実行される補間は、トライリニア補間(trilinear interpolation)であり得る。トライリニア補間は、3D正規格子上の多変量補間であり得る。トライリニア補間は、局所の軸に沿った直方体内の中間点(例えば、チャート308のx,y,z座標)における関数の値を、格子点上の関数データを用いて線形的に近似し得る。307Bで実行された補間を使用して生成された予測温度応力時間クリープ係数を使用して、任意の適用可能な温度Tに関する応力および時間に応じたクリープひずみが特定され得る。従って、温度、時間量、および応力に基づくクリープひずみを出力するために、生成された予測温度応力時間クリープ係数が使用され得る。代替的に、所与の時間量および所与の応力量に基づいて、所与のクリープひずみに到達するために必要とされる温度を出力するために、生成された予測温度応力時間クリープ係数が使用され得る。代替的に、所与の温度における所与の応力量に基づいて、所与のクリープひずみに到達するために必要とされる時間を出力するために、生成された予測温度応力時間クリープ係数が使用され得る。
【0038】
自己注射器2などの医療機器および/または医療機器の1つまたは複数の部品は、劣化に関して試験され得る。劣化は、材料劣化ならびにクリープひずみ劣化を含み得る。材料劣化(例えば、プラスチックが劣化する量)は、例えば、湿潤環境および乾燥環境のそれぞれにおける腐食および酸化のプロセスによって生じ得る。材料に対する水蒸気の経時的な影響を特定するために、材料劣化が試験され得る。材料劣化は、加速劣化チャンバを使用して試験され得る。加速劣化試験は、熱、湿度、酸素、日光、振動などの悪化した条件を使用して、所与の機器、部品、または材料の通常の劣化プロセスを加速するため実施され得る。加速劣化試験は、予期される応力レベルの長期的影響をより短い時間で判定するのに役立つように使用され得る。加速劣化チャンバ内で費やされた時間量に基づく材料劣化は、周囲条件を加速条件にマッピングするアレニウスの関係(Arrhenius relationships)に基づいて、周囲条件における時間量に相関され得る。しかしながら、クリープひずみ劣化に関してそのような関係は存在しない。
【0039】
プロセス307の307Cにおいて、変数が所与の機器または部品の加速劣化試験のために特定され得る。変数は、(例えば、所与の期間、所与の応力、および/または周囲温度にわたるクリープひずみを模倣するための)温度、時間量、および/またはひずみ量であり得る。図3Dは、本明細書で開示される技法による変数を特定するための図表312を示す。図表312は、307Aにおいて受信した生のクリープ係数データの補間に基づいて、307Bにおいて生成された予測温度応力時間クリープ係数の視覚的表現である。307Bにおいて生成され、かつ図3Dにおいて示される予測温度応力時間クリープ係数は、加速試験変数(例えば、温度、時間、応力)を特定して、基準温度TREFにおけるクリープひずみを模倣するために使用され得る。クリープひずみ面314は、TREFに関する予測温度応力時間クリープ係数の視覚的表現である。一例によれば、TREFは、周囲温度、または所与の機器または部品の使用および/もしくは保管に関連する温度に対応し得る。図3Dに示されるように、tSHELFは、例えば、所与の機器または部品の予想保管寿命に対応し得る。しかしながら、tSHELFは、任意の適用可能な持続時間であり得ることが理解されるであろう。目標点314Aは、基準クリープひずみに対応し得、例えば、温度TREFで、点314Aに対応する予想応力量を有する所与の機器または部品の目標保管寿命時間tSHELFに対応し得る。予想応力量は、例えば、保管中または動作中に機器または部品が経験する応力を検出するクリープひずみセンサに基づいて決定され得る。
【0040】
本明細書で説明されるように、加速試験は、所与の機器または部品がクリープひずみ品質基準を満たすかどうかを確認するために使用され得る。加速試験を使用して試験される機器または部品は、図3Cの307Aにおいてクリープ係数が受信され、それに基づいて、307Bにおいて予測温度応力時間クリープ係数が生成されるのと同じ機器または部品であり得る。代替的に、加速試験を使用して試験される機器または部品は、図3Cの307Aにおいてクリープ係数が受信される機器または部品と同様であってもよい。例えば、加速試験を使用して試験される機器または部品は、図3Cの307Aにおいてクリープ係数が受信される機器または部品と同じ設計に基づいて製造された機器であり得る。加速試験を使用して経験されたクリープひずみは、予想されるクリープひずみ(例えば、基準点314Aにおけるクリープひずみ)と比較され得る。
【0041】
説明したように、加速試験は、機器または部品に関する生のクリープ係数データ(例えば、図3Cに示すような)を受信することによって行われ得る。307Bで生成される予測温度応力時間クリープ係数(例えば、図3Dに視覚的に表されるような)が生成され得る。307Bで生成された予測温度応力時間クリープ係数を使用して、基準点(例えば、基準温度TREFに関する予測温度応力時間クリープ係数の基準点314A)に基づいて、加速温度、加速時間、および/または加速応力が出力され得る。
【0042】
加速試験は、予測温度応力時間クリープ係数を使用して決定された加速温度、加速時間、および加速応力を使用して実施され得る。加速試験は、加速温度および加速応力下で実施され得、所与の機器または部品が経験する加速試験クリープひずみは、加速時間後に決定され得る。加速試験クリープひずみは、(例えば、基準温度TREFに関する予測温度応力時間クリープ係数の基準点314Aにおける)基準クリープひずみと比較され得る。加速試験クリープひずみが基準クリープひずみの閾値クリープひずみ量内である場合、機器または部品が承認され得、かつ/又は予測温度応力時間クリープ係数が認証され得る。例えば、機器または部品を承認するか、または予測温度応力時間クリープ係数を承認する承認指示が生成され得る。加速試験クリープひずみが基準クリープひずみの閾値クリープ量内にない場合、機器または部品は拒否され得、かつ/または予測温度応力時間クリープ係数は認証され得ない。例えば、拒否指示は、機器または部品を拒否するか、または予測温度応力時間クリープ係数を拒否するように生成され得る。承認された機器または部品は、例えば、ユーザまたはプロバイダによる使用のために承認され得る。設計された機器または部品に関するクリープひずみを予測するために、認証された予測温度応力時間クリープ係数が使用され得る。指示に従って、予測温度応力時間クリープ係数を検証するための加速試験が、部品を使用して行われ得る。部品は、1つまたは複数の他の部品または複数の部品を有する機器と比較した場合、単純な部品であり得る。予測温度応力時間クリープ係数が限られた数の外部変数で検証され得るように、部品には、制限された応力点または応力点の変化があり得る。
【0043】
予測温度応力時間クリープ係数を使用した1つまたは複数の変数の特定が、本明細書でさらに開示される。図3Dに示されるように、基準点314Aにおけるクリープひずみは、Tクリープひずみ面313上の加速点313Aに対応し得る。Tiクリープひずみ面313は、任意の温度Tに対する予測温度応力時間クリープ係数の視覚的表現であり得る。従って、基準点314Aにおけるクリープひずみは、時間tSHELFよりも短い時間tAGEにおいて、加速温度Tにおいて、加速点313Aにおける線によって示される応力量において模倣され得る。
【0044】
一例として、基準点314Aは、3年の保管寿命tSHELFにおける基準クリープひずみに対応し得る。目標点314Aにおいて、クリープひずみの量は、目標点314Aにおける応力線によって示される応力量に基づくものであり得る。基準点314Aにおけるクリープひずみを模倣するために、予測温度応力時間クリープ係数を使用して、3ヶ月の加速時間tAGEにおける加速点313Aにおけるクリープひずみの量が、時間tSHELFにおける温度TREFにおける基準点314Aにおけるクリープひずみと同じになるように、加速温度Tが出力され得る。従って、加速温度Tにおけるクリープひずみ面313は、基準点314Aにおけるクリープひずみを模倣する加速点313Aにおける(例えば、3ヶ月の時間tAGEにおける)クリープひずみを有しているものと特定され、かつ予想され得る。クリープひずみ面313を使用して示される温度、応力、および時間変数に基づいて、所与の機器または部品は、加速点313Aにおける応力線および/または基準点314Aにおける応力線に基づいて決定された応力レベルで、温度Tにおいて時間tAGE(例えば、3ヶ月)の間、加速チャンバ内に配置され得る。別の例によれば、加速時間tAGEは、図3Dに示される予測温度応力時間クリープ係数によって出力され得る。加速時間tAGEは、基準点314Aにおける基準クリープひずみ、目標点314Aにおいて示される基準応力、および所与の温度Tに基づいて出力され得る。例えば、加速チャンバは、加速温度Tで動作するように構成され得る。基準点314Aにおける条件を模倣するために、図3Dの予測温度応力時間クリープ係数を使用して、基準点314Aにおける基準応力および加速温度Tを使用して、基準点314Aにおける条件を模倣するのに必要な加速時間tAGEが特定され得る。
【0045】
プロセス307の307Dにおいて、劣化試験は、加速劣化試験のために特定された変数に基づいて行われ得る。劣化試験は、時間tAGEの間にわたって温度Tに設定され、かつ加速点313Aおよび/または基準点314Aにおける線に基づいて決定された応力レベルに設定された加速劣化チャンバ内に所与の物品を配置することによって行われ得る。一例によれば、第1の医療機器は、307A~307Cで説明されるように、予測温度応力時間クリープ係数を決定するために使用され得る。307Dにおいて、第2の医療機器は、第1の医療機器を使用して決定された予測温度応力時間クリープ係数に基づいて劣化試験され得る。この例では、第1の医療機器は管理医療機器であり得、第2の医療機器は第1の医療機器の設計に基づいて製造され得る。第2の医療機器は、第1の医療機器を使用して確立されたパラメータに適合することを確実にするために、本明細書に開示される劣化試験を使用して試験され得る。代替的または追加的に、基準応力(例えば、計算された応力または応力場)と、予測温度応力時間クリープ係数とを使用して、劣化試験に対する1つまたは複数の変数が決定され得る。
【0046】
改善されたシミュレーションのための線形機器モデル
開示される主題の実施形態によれば、線形機器モデルを使用して複数のシミュレーションが生成され得る。シミュレーションコンポーネントは、複数のシミュレーションを生成し得、かつプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、メモリなどのうちの1つまたは複数を含み得るか、またはそれらであり得る。シミュレーションコンポーネントは、機器(例えば、自己注射器2)の線形機器モデルに基づいてシミュレーションを生成し得る。線形機器モデルは、シミュレーションコンポーネントによって生成され得るか、またはシミュレーションコンポーネントに提供され得る。線形機器モデルは、機器の複数の部品間の関係に基づき得る。
【0047】
複数のシミュレーションは、機器の部品間の関係に基づいて定義された機器の属性に基づき得る。複数のシミュレーションは、機器の物理的バージョンがどのように動作するか(例えば、所与の粘度を有する薬剤とともに機器を使用する場合、注射持続時間がどれだけ長いか)を出力し得る。複数のシミュレーションは、いくつかの別個の変数に基づいて複数の出力を生成するための実験計画法(DOE:design of experiment)を可能にし得る。複数のシミュレーションは、機器に関連付けられた1つまたは複数のスカラー値の分布を出力し得る。分布は、1つまたは複数の使用基準または品質基準と比較され得、かつ/または分布にわたって機器動作を保証するために機器を試験するために使用され得る。例えば、本明細書でさらに説明するように、シミュレーションは、自己注射器が経験する力の量の分布を出力し得る。力の量の分布は、バッテリ、電子制御、モータ/ギアボックス、主ねじ、カートリッジ、プランジャ、および流体経路等の機器の部品間の関係に基づいて行われるシミュレーションを使用して決定され得る。分布は、下限閾値から上限閾値までの範囲であり得る。従って、下限閾値または上限閾値を品質基準および/または使用基準と比較して、自己注射器が経験する属性(例えば、力)が許容範囲内であることを確実にし得る。代替的または追加的に、自己注射器の物理的バージョンは、属性の下限閾値または上限閾値での適合性(例えば、耐久性)を保証するために、属性の下限閾値または上限閾値(例えば、力の上限閾値)下で試験され得る。
【0048】
図1A図1Cに示すように、自己注射器2は、複数の部品を含み得る。部品のうちの1つまたは複数は、自己注射器2の1つまたは複数の他の部品と相互作用し得る。相互作用は、部品間の複数の関係を定義し得る。例えば、シャトル340は、力を伝達するためにギアボックスを使用するモータによって印加される力に基づいて移動し得る。モータは、バッテリおよび電子制御部品を使用して駆動され得る。モータの電圧は、モータおよびギアボックスが所与のモータ電流で動作して、所与のモータトルクを生成するように、電子制御を介してバッテリによって提供され得る。従って、バッテリおよび電子制御部品によって提供される電圧および電流は、モータ速度およびトルクに関連し得る。
【0049】
図4は、自己注射器(例えば、自己注射器2)に関する線形機器モデル402を共に形成する複数の関係412A、412B、412C、412Dを示す。線形機器モデル(例えば、線形機器モデル402)が本明細書に示されるが、線形機器モデルは、本明細書に開示される技法に従って適用され得る、(例えば、非線形システムの)線形化モデル、縮小モデル、および/または準線形機器モデル/準定常状態モデルを指し得ることが理解されるであろう。例えば、線形化モデルは、非線形システムの線形近似を作成することによって生成され得る。準定常状態モデルは、時間内の離散点を適用することによって非定常システムの動作を近似するために使用され得る。線形機器モデルは、開示されているように、1つまたは複数の係数に基づいて研究状態パラメータを予測し得る。線形機器モデルは、実験シミュレーションの大規模設計が、制限された計算リソースを用いて(例えば、モンテカルロシミュレーションを使用して)実行されるように、計算的に効率的であり得る。例えば、1万回を超えるシミュレーションが、(例えば、市販のコンピューティング機器を使用して)1時間未満で行われ得る。別の例として、200万を超えるシミュレーションが、(例えば、市販のコンピューティング機器を使用して)1時間未満で行われ得る。別の例として、約10万回のシミュレーションが30秒未満で行われ得る。
【0050】
関係412A、412B、412C、412Dの各々は、対応する部品がどのように動作するかを特徴付ける。例えば、関係412Aは、自己注射器のバッテリおよび電子制御と関連付けられる電圧および電流を定義する。関係412Aを以下の式2および式3に示す。
【0051】
【数2】
【0052】
関係412Bを示すチャートは、自己注射器のモータおよびギアボックスのモータトルクを考慮したモータ電流およびモータトルクを考慮したモータ速度を定義する。図示されるように、関係412Bがモータおよびギアボックスのモータ速度およびモータトルクを定義しているため、自己注射器のバッテリおよび電子制御に関する式2のモータ電圧Vmtrは、関係412Bに関連する(例えば、モータ速度は、モータ電圧Vmtrに依存する)。加えて、関係412Bのモータおよびギアボックスのモータトルクは、関係412Aの式2および式3のモータ電流(Amtr)に関連する。関係412Bにおけるモータ及びギアボックスのモータトルクは、関係412Cにおける主ねじのトルクに関連する。関係412Cにおける主ねじの軸方向力は、関係412Dのカートリッジ、プランジャ、および流体経路の流体力に関連する。関係412Dのカートリッジ、プランジャ、および流体経路の流体力は、関係412Bのモータおよびギアボックスのモータ速度によって影響される。従って、線形機器モデル402の関係412A、412B、412C、412Dの各々は、互いに関連しており、かつ自己注射器の動作をモデル化している。
【0053】
線形機器モデル402の線形関係412A、412B、412C、412Dは、対応する自己注射器を十分詳細にモデル化することができ、また、非線形機器モデルに対して実行されるシミュレーションと比較して、線形機器モデル402に基づくシミュレーションをより速い速度で実行することが可能となる。線形機器モデル402を使用してより高速なシミュレーションを実行することによって、自己注射器の動作および自己注射器の性能メトリックを決定するために必要とされる時間量が低減され得る。加えて、シミュレーションをより高速に実行することによって、電子コントローラを使用して自己注射器を制御する方法に関する決定もまた、より高速に決定され得、かつ/またはより大きな母集団が(例えば、モンテカルロ分析を使用して)研究され得る。
【0054】
線形機器モデル402に示されるように、関係412B、412C、412Dの各々は、係数C1~C7に基づき得る。係数C1~C7は、自己注射器の線形属性の変化量または「勾配」に対応し得る。係数C1は、流体が押し込まれる針の制限量および/または主ねじのピッチなどの条件の組み合わせに基づいて決定され得る。C2+C3は、主ねじのトルクに対応し得る。C4は、モータ電流とモータトルクとの間の関係の勾配であり得る。C5は、無負荷トルクに対応するy切片であり得、従って、C5は、シャフトに負荷が加えられていない状態(即ち、内部摩擦、電気抵抗などに打ち勝っている状態)で、自己注射器のモータが回転するのに必要な電流量である。C6は、モータトルクとモータ速度との間の関係の勾配であり得る。C7は、入力電圧によってスケーリングされた無負荷速度であり得る。
【0055】
一例によれば、線形機器モデル402に基づいて生成されたシミュレーションは、関係412A、412B、412C、412Dに基づいて行列を生成することによって決定され得る。次に、シミュレーションコンポーネントを提供するために、行列が反転され得る。複数のシミュレーションは、本明細書でさらに開示されるように、係数C1~C7のうちの1つまたは複数などの変数を変更することに基づいて生成され得る。
【0056】
図5Aは、図4の線形機器モデル402を適用するシステムモデル構造を示す。線形機器モデル402は、供給電圧502、速度制御ループ出力510、電流制限ループ出力512、薬剤粘度503、および部品係数504を含む複数の入力を受信し得る。供給電圧502は、バッテリ(例えば、関係412Aに対応するバッテリ)または他の電圧発生器から出力された電圧であり得る。複数の部品係数504は、図4に関連して説明した係数C1~C7に対応し得る。速度制御ループ出力510および電流制限ループ出力512は、本明細書でさらに説明されるように、入力のランダムな組合せの関数に基づいて使用され得る。例えば、スカラー出力が閾値を超える場合、速度制御ループ出力510および電流制限ループ出力512の一方または両方を使用して、速度または電流のいずれかを個別のループを介して減少させて、所与のスカラー出力を閾値内に維持することができる。従って、速度制御ループ出力510および電流制限ループ出力512は、出力508が所与の閾値外であるとき、供給電圧502を調整するために使用され得る。電流測定精度506はまた、電流測定における分散を考慮するために入力がランダム化され得る。電流測定精度506は、本明細書でさらに説明するように、出力508のより現実的な分布をもたらし得る。
【0057】
1組の部品係数504は、生成されるシミュレーションごとに線形機器モデル402に適用され得る。各所与のシミュレーションに使用される部品係数504は、モンテカルロシミュレーションを使用して選択され得、ここで、モンテカルロシミュレーションは、各係数に関する(即ち、係数C1~C7に関する)値を出力する。モンテカルロシミュレーションは、意思決定において分布確率を考慮したコンピュータ化された技法であり得る。各シミュレーションに関する各所与の係数(即ち、係数C1~C7)の値は、対応する係数に関する潜在的な値の分布から選択され得る。確率分布関数は、係数のランダム値を選択するために、モンテカルロシミュレーションによって使用され得る。所与の係数に対する分布関数は、自己注射器におけるその係数の分散(例えば、材料特性、製造差、使用などによる分散)に基づいて決定され得る。ランダム値は、所与の係数ごとに重み付けされた分布曲線から選択され得る。例えば、図5Bは、シミュレーションが生成される自己注射器のモータに関するモータパラメータ402Aを示す。モータパラメータは、線形機器モデル402内の係数C4およびC5に対応し得る。左上のチャートは、モンテカルロシミュレーションがパラメータ402Aの左上のチャートに示される確率曲線に基づいて係数C4の値を提供し得るような、例えば、C4に対応し得る出力の分布を示す。従って、モンテカルロシミュレーションは、左上の分布チャートの縁の方に見られる値よりも、左上の分布チャートの中央の方に多く見られる係数C4の値を提供し得る。
【0058】
複数のシミュレーションの各シミュレーションは、各部品係数504に対して1つまたは複数の別個の値を使用し得る。例えば、約1万回から約200万回以上のシミュレーションにわたって、部品係数504の係数値の多数の組合せが線形機器モデル402に提供され得る。
【0059】
また、線形機器モデル402は、可能性のある薬剤粘度の分布曲線に基づくモンテカルロシミュレーションによって出力された薬剤粘度503の値を受信し得る。薬剤粘度の分布曲線は、別個の温度での薬剤特性に少なくとも部分的に基づいて決定され得る。線形機器モデル402への追加の入力は、図5Bの分布402Bに示されるようなねじ摩擦、ならびに図5Bのバッテリ電圧入力、流体経路抵抗入力、および電流測定入力402Cを含み得る。分布402Bに示されるねじ摩擦は、線形機器モデル402の係数C2およびC3に対応し得る。流体経路抵抗は、線形機器モデル402の係数C1に対応し得る。
【0060】
各シミュレーションに関する線形機器モデル402の出力508は、力値、速度値、電流値、トルク値、電圧値等のスカラー値を含み得る。例えば、図6は、力出力分布602および速度出力分布604を含む2つのスカラー値出力を示す。2つのスカラー値出力分布の各々は、図4および図5Aに示されるように、線形機器モデル402によって出力され得る。力出力分布602および速度出力分布604は、図6においてN=2e6によって示されるように、約200万回のシミュレーションに基づく。図6に示すように、力出力分布602は、最小力値602Aから最大力値602Bまでの範囲であり得る。
【0061】
一例として、力出力分布602は、線形機器モデル402が基づいている(例えば、自己注射器のプランジャを使用するときに加えられる力に基づいている)自己注射器によって示される力に対応し得る。力出力分布602のピークは、126N(ニュートン)であり得る。そのような126Nのピーク値は、従来の確率モデルによって示され得る。しかしながら、本明細書に開示される技術によれば、力出力分布602が提供され得るとともに、最大力値602Bが例えば200Nであることを示し得る。一実装形態によれば、(例えば、最大値または最小値が、小さい確率または無限小の確率を有する値に対応しないように)最大分布値または最小分布値(例えば、最大力値602B)は、確率閾値を超える値であり得る。確率閾値は、ある値であり得るか、あるいは平均値からの偏差の数に基づいて、または標準偏差以外の異なる統計的変動を使用して決定され得る。従って、自己注射器の1つまたは複数の部品は、126Nのピーク力値の代わりに最大200Nの力に耐えるように設計され得る。別の例として、速度出力分布604は、薬剤が自己注射器を介して注入される潜在的な速度の分布を示し得る。従って、速度出力分布604によって示される最低速度から最高速度までの範囲の速度が、自己注射器とともに使用するための許容可能な速度であることを保証するために、1つまたは複数の試験が行われ得る。
【0062】
開示される主題の実装形態によれば、機器設計または部品設計を承認するために、1つまたは複数の出力分布(例えば、出力分布602、出力分布604等)が使用され得る。出力分布(例えば、力の出力分布602)は、1つまたは複数の閾値出力(例えば、最大値、最小値、平均値等)と比較され得る。例えば、モデル402は、係数に基づいて、および自己注射器の設計に基づいて、機器モデルを生成するために使用され得る。機器モデルは、1つまたは複数の出力分布(例えば、出力分布602、出力分布604等)を生成するために使用され得る。
【0063】
機器モデルによって生成された出力分布は、1つまたは複数の閾値出力と比較され得る。機器モデルの出力が、1つまたは複数の閾値出力によって確立された境界内(例えば、範囲内、より低い、より高い等)である場合、自己注射器の設計は承認され得る。機器モデルの出力が、1つまたは複数の閾値出力によって確立された境界外(例えば、範囲外、より低い、より高い等)である場合、自己注射器の設計は拒否され得る。従って、本明細書で開示される技法を使用して、機器設計または部品設計の確率出力は、線形機器モデルに基づいて決定され得る。確率出力は、機器設計または部品設計を承認するか、または拒否するために、閾値出力と比較され得る。
【0064】
一実装形態によれば、機器モデルベースによって生成された出力分布は、設計に適用され得る。出力分布は、正規分布であり得るか、または1つまたは複数の混合分布であり得る。従って、最小出力分布および/または最大出力分布は、最小出力および/または最大出力に基づいて動作するように部品設計または機器設計を更新するために使用され得る。例えば、力出力分布602は、機器部品が作用することができる力に対応し得る。従って、機器設計は、最小の力、ピークの力、および/または最大の力を含む、出力分布における力の範囲に耐えるように更新され得る。
【0065】
代替的または追加的に、機器設計または部品設計は、1つまたは複数の出力分布に基づいて修正され得る。出力分布は、機器または部品へのフィードバックとして提供され得、設計更新は、1つまたは複数の目標閾値出力に基づいて生成され得る。例えば、部品の目標閾値の力ピークは、140~160ニュートンであり得る。第1の部品設計からの力出力分布(例えば、出力分布602)からのピーク出力力は、180ニュートンの力ピークを示し得る。従って、180ニュートンの力ピークは、第1の部品設計へのフィードバックとして提供され得る。第1の部品設計は、フィードバックに基づいて更新され得(例えば、形状、材料、機能等)、更新された分布が算出され得る。更新された分布は、約144ニュートンの力のピークを示し得る。従って、144ニュートン(即ち、約140~160ニュートンの目標閾値の力ピークの範囲の間)にピークを有する更新された分布に基づいて、フィードバックループが終了され得る。機器モデルは、力の分布に影響を及ぼし得る制御パラメータを調整するために使用され得る。例えば、機器モデルの1つまたは複数の係数が調整され得、調整により、修正された力出力分布がもたらされ得る。
【0066】
図7は、設計プロセスにおける図5Aのシステムモジュールの役割を示す。図7に示すように、図5Aのシステムモデルに対応するシステムモデル714は、制御パラメータ702、モータ性能704(例えば、試験に基づく)、薬剤温度、粘度などの熱モデル706のパラメータ(例えば、試験および/またはシミュレーションに基づく)、ねじ摩擦708(例えば、試験および/またはシミュレーションに基づく)、プランジャ摩擦710(例えば、試験および/またはシミュレーションに基づく)、流体経路抵抗712(例えば、試験および/またはシミュレーションに基づく)等を受信し得る。システムモデル714は、性能メトリック716(例えば、注入速度、モータストールマージン等)、制御方式評価718(例えば、速度制御ループ出力510、電流制限ループ出力512等)、構造組立品出力720(例えば、変形、剛性、ひずみを含む機械的出力)、およびプランジャ応答出力722(例えば、密封圧力、滑り力、変形、剛性、ひずみを含む機械的出力)を出力し得る。
【0067】
図8A図8Bは、本明細書に開示される実施形態による、シミュレートされた構造組立品の図表を示す。図表802、804、806、808は、有限要素法を使用して生成され得る。この有限要素法では、所与の部品(例えば、図表802の自己注射器)の幾何学形状は、より小さいセクションに分割され、応力場および変位場は、各より小さいセクションに対して応力および変位を数値的に決定することに基づいて、部品上に投影される。そのような部品は、構造組立品、スナップ、ねじ山、流体経路(例えば、流体経路屈曲部)等であり得るが、それらに限定されない。所与の部品の属性(例えば、応力、変位等)は、可塑性、非線形接触、超弾性材料等の要素に基づき得る。図表802は、各小セクションに対して応力が投影された自己注射器を示しており、全ての小セクションが組み合わされて自己注射器が構成される。図8A図8Bの図表は、図4および図5Aの線形機器モデル402の出力に基づいて生成され得る。例えば、図8Aの図表802は、200Nの最大力値602Bの効果を示す。
【0068】
図8Aに示されるように、図表802の自己注射器に対する最も高い応力は、より高い応力を示すように陰影が付けられたセクション802Aにおいて経験され得る。同様に、図表804の部品に最も高い応力がかかるのは、セクション804Aであり得る。図表804は、図表804の自己注射器を組み立てるときに加えられる力に基づいて(例えば、2つの部品が互いにスナップ留めされるときに力が発生するように、ガラスカートリッジをホルダに連結することに基づいて)生成され得る。同様に、図表806の部品に最も高い応力がかかるのは、セクション806Aであり得る。図表806は、自己注射器のプランジャを押すねじに基づいて生成され得る。同様に、図表808の部品に最も高い応力がかかるのは、セクション808Aであり得る。図表808は、図表808の自己注射器を組み立てるときに加えられる力に基づいて(例えば、図表804の部品を組み立てるのと同様に)生成され得る。
【0069】
図9Aおよび図9Bは、本明細書に開示される実施形態による、シミュレートされた構造組立品の図表を示す。図9Aおよび図9Bに示される図表は、接触(例えば、密封)圧力を評価し、ロッド-プランジャ相互作用を特徴付け、ピークひずみを検証し、システムモデルに対する流体圧力に応じた抗力(例えば、ガラスに対する抵抗量)を予測し、かつ/または同様のことを行うために使用され得る。図表900は、図8Aおよび図8Bを参照して開示される有限要素法を使用して生成され得る。図表900は、ガラス部品上のゴム部品の密封圧力を示す。密封圧力が対応する流体の流体圧力よりも低い場合、流体は圧力差の結果として漏れることとなり得る。図6の200Nの最大力値602Bは、図表900に示される密封圧力を生成するために使用され得る。従って、最小力値602Aまたは最大力値602Bのいずれかに基づいて漏れが発生する可能性があるかどうかを判定するために試験が実施され得る。
【0070】
図9Bは、200Nの力(即ち、図6の最大力値602B)でプランジャを押す効果を示すチャート902を含む。プランジャにかかる力によって、部品が互いに向かって引き寄せられ得るか、または互いから引き離され得る。図9Bに示すように、200Nの力によって、右側の部品が左側の部品に向かって押すこととなり得る。最大力は902Aで示されている。図9Bに示される部品の動作を維持するために、押しが押しの閾値量を超えるかどうかを判定するための試験が実施され得る。
【0071】
物質(例えば、薬剤)の粘度は、物質の温度の関数であり得る。開示される主題の一実装形態によれば、物質温度の挙動を決定するために、自由対流熱分析および/または強制対流熱分析が使用され得る。例えば、そのような熱分析は、物質の温度が変化する速度(例えば、低温環境から温暖環境に移動されるとき)を決定するために使用され得る。従って、物質(例えば、薬剤)の粘度は、熱分析を使用して推定され得る。推定は、物質が第1の環境から第2の環境に移動されるときに温度が変化する速度に基づき得る。物質を収容する医療機器または部品の温度、および/またはある温度の第1の環境から異なる温度の第2の環境への医療機器、部品、または物質の移動は、物質の粘度を変化させ得る。このような粘度の変動は、機器または部品の設計に影響を及ぼし得る。例として、比較的高い物質の粘度(例えば、比較的低い温度の結果として)は、機器または部品の機械的負荷を増加させ、注入の注入時間を短縮し、制御ループが作動する確率を変化させ得る(例えば、より高い粘度は、電流制限に到達する確率を増加させ得る)か、または同様のことが生じ得る。
【0072】
物質の粘度は、線形機器モデルへの入力であり得る。代替的に、1つまたは複数の温度が線形機器モデルに入力され得、線形機器モデルは、1つまたは複数の温度に基づいて物質の粘度を決定し得る。線形機器モデルによって出力される出力分布は、物質の粘度、および/または時間および/または温度を因子とする物質の粘度にさらに基づき得る。例えば、機器または部品の出力分布は、一定期間にわたる物質の粘度の変化に基づいて、一定期間にわたって調整され得る。物質の粘度の変化は、その期間にわたる(例えば、薬剤を低温環境から室温環境に移した後の)温度変化に基づき得る。機器または部品の出力分布は、温度および/または個別の物質の粘度に基づいて変化し得る。例えば、図6の力出力分布602は、潜在的な温度および/または個別の物質の粘度の範囲に基づいて修正され得る。力出力分布602は、例えば、温度および/または個別の物質の粘度に基づいて、より高い範囲またはピークおよび/またはより低い範囲またはピークを有し得る。機器および/または部品の設計は、修正された力出力分布602に基づいて認証され、かつ/または拒否され得る。
【0073】
一実装形態によれば、物質(例えば、薬剤)の温度挙動を決定するために、熱分析が使用され得る。熱分析に基づく温度挙動は、(例えば、物質が第1の環境から温度が変化する第2の環境に移動されるとき等、一定期間にわたって)物質の粘度を推定するために使用され得る。熱分析は、例えば、自由対流分析、強制対流分析などを含み得る。図10は、経時的な薬剤温度1012に対応する自由対流分析1010を示す。自由対流分析1010は、機器のウォームアップ中(例えば、冷蔵環境から室温に移動されたとき)の温度過渡(temperature transients)を評価するために使用され得る。一定期間にわたる自由対流分析1010に基づいて特定された薬剤温度1012は、薬剤粘度を通知し得る。自由対流分析1010は、周囲空気の循環量に基づき得、自由対流分析1010を介して示される分析は、所与の機器または部品における、またはその周囲における周囲空気の循環に基づく感度のより大きな理解を提供し得る。自由対流分析1010は、機器または部品と周囲条件との間の温度差に基づいて生成された空気の流れに基づくシミュレーションに少なくとも部分的に基づき得る。自由対流分析1010は、例えば、所与の機器または部品自体によって導入される温度勾配を超えて空気を移動させる外部影響がないときに使用され得る。図10に示される例によれば、薬剤温度1012は、線形機器モデル(例えば、線形機器モデル402)に入力され得る。代替的または追加的に、薬剤温度1012は、薬剤の速度に関連し得るため、制御ループ出力510として提供され得る。
【0074】
一実装形態によれば、感知された温度値は、機器または部品、またはそれを制御するために使用されるコントローラへの入力として提供され得る。温度値は、所与の機器または部品の内部または外部にある温度センサを使用して感知され得る。感知された温度値は、機器または部品に関する制御パラメータを調整するために使用され得る。
【0075】
一実装形態によれば、図4の係数C1は、流体が押し込まれる針の制限量および/または主ねじのピッチなどの条件の組合せに基づいて決定され得る。図11は、粘度およびプランジャ速度および/または流量を因子として作用される力に基づいて、結果として生じるチャート1112の勾配に基づいて係数C1を決定するための流体経路制限1110の分析を示す。例示的なチャート1112に示されるように、流体経路制限1110の分析を使用して、流体粘度およびプランジャ移動速度に応じたプランジャ反力を予測し得る。プランジャ力は、針形状、薬剤粘度、および/またはプランジャ速度の関数であり得る。流体経路制限1110の分析は、機器またはその部品に基づくシミュレーションであり得るとともに、機器の注入時間に関する原動力となり得る。
【0076】
機器または部品の出力分布は、流体経路制限1110の分析に基づいて決定された係数C1に基づいて変動し得る。例えば、図6の力出力分布602は、粘度および速度を因子として機器または部品のシミュレートされた力に基づいて特定された勾配(C1)に基づいて修正され得る。力出力分布602は、例えば、勾配(C1)に基づいて、より高い範囲またはピークおよび/またはより低い範囲またはピークを有し得る。機器および/または部品の設計は、修正された力出力分布602に基づいて認証され、かつ/または拒否され得る。
【0077】
図12は、シミュレーションされた落下試験結果1210、1212、1214を、チャート1216に示されるように時間に対する加速度を因子として示す。落下試験結果1210、1212、1214を予測するために使用される落下試験シミュレーションを使用して、所与の機器または部品の経時的な加速度および/または変形を予測することができる。そのような予測は、部品間の力、部品内の応力、および/または部品のひずみを抽出するために使用され得る。機器またはその部品にかかる力は、落下試験結果1210、1212、1214を使用して予測され得る。落下試験結果1210、1212、1214は、チャート1216に示されるように、経時的な加速度に基づいて衝突に対して生成され得る。落下試験結果1210、1212、1214に示される機器は、結果に基づいて承認または修正され得る。
【0078】
図13Aは、開示される主題の一実装形態による、部品または機器の漏れ評価1310を示す。例えば、漏れ評価は、機器または部品において使用されるルアー継手(Leur fitting)に対するものであり得る。漏れ評価は、部品または機器の潜在的な漏れをシミュレートするために実行され得る。そのような予測は、流体圧力が2つ以上の表面間の接触圧力を克服するかどうかを判定するために、反復分析を行うことに基づき得る。例えば、流体圧力浸透は、設計部品用に設計されたスリップ継手(slip fittings)における漏れのリスクを評価するために使用され得る。漏れ評価の結果は、スリップ継手などの継手の属性を修正するために使用され得る。
【0079】
図13Bは、部品または機器の生理学的モデリングを示す。定量的生理学的モデルは、生理系(例えば、身体、身体部分、組織1314等)の挙動を近似する数学的表現であり得る。生理学的モデル1312は、数学を使用することなく生理系を記述し得る。モデルは、真皮1318、脂肪層1316、および/または組織1314に適用され得る。生理学的モデル1312は、身体の(例えば、モデル組織1314の)生理機能をシミュレートして、流体の注入に対するその応答を予測するために使用され得る。
【0080】
図13Cは、針コアリングシミュレーション1320を示す。針コアリングシミュレーション1320は、針先端幾何学形状を精緻化し、例えば、コアリングリスクを低減するために、任意ラグランジュ・オイラー(ALE:Arbitrary Lagrangian-Eulerian)技法および/または平滑化粒子ガーキン(SPG:Smoothed Particle Galerkin)技法を使用して生成され得る。針コアリングシミュレーション1320は、例えば、ALE技法および/またはSPG技法を使用して、針コアリングの有限要素モデルとして使用され得る。本明細書に適用されるように、針コアリングとは、(例えば、針がクロージャ(closure)を穿孔するときに)針がクロージャから材料を除去することであり得る。このようなコアは、例えば、縦長の形状であり得る。針コアリングシミュレーション1320は、針性能をシミュレートし、機器または部品とともに使用される設計された針におけるコアリングを低減させるために使用され得る。1つまたは複数のシミュレーションが、針幾何学形状および/またはクロージャ材料選択を精緻化するために使用され得る。
【0081】
図14は、本明細書で開示される技法による、シミュレーション主導型開発に関して実施される製品ライフサイクル1400を示す。製品ライフサイクル1400は、機器または製品のより良いおよび/またはより少ない物理的反復を生成するために使用され得、集中的な設計アイデア化に関して使用されることができ、仮想プロトタイプ化を提供し、設計の最適性を増加させ、設計の特徴付けを増強し、制限プロセスをサポートし、根本原因分析を改善し、再設計を加速し、かつ変更をサポートする。
【0082】
図14に示すように、製品ライフサイクル1400は、1402における発見およびアイデア化を含み得、それに続いて発明およびプロトタイプ化1404が続く。発明およびプロトタイプ化1404は、設計アイデア化1406、仮想プロトタイプ化1408、および設計最適化1411の反復を含み得る。発明およびプロトタイプ化1404は、本明細書に開示される技法を使用して実施され得る。例えば、線形機器モデル402は、仮想プロトタイプ化1408および設計最適化1411に関して使用され得る。前臨床試験が、1412において行われ、その後、臨床試験が、1414において行われ得る。制限の決定1416は、成功の予測1418および/または失敗の予測1420に基づき得る。製品発売1422は、市販後監視1424によって補完され得る。市販後監視は、再設計1426を可能にするために根本原因1428を特定することを含み得る。
【0083】
任意の適切なシステムインフラストラクチャが、本明細書に開示されるシミュレーションおよび/またはデータを生成するために導入され得る。開示されたシステムまたは方法のいずれも、コンピューティングシステムによって実行または実施され得る。必須ではないが、本開示の態様は、例えば、サーバコンピュータ、ワイヤレスデバイス、および/またはパーソナルコンピュータなどのデータ処理デバイスによって実行されるルーチンなど、コンピュータ実行可能命令のコンテキストにおいて説明される。当業者は、本開示の態様が、以下を含む他の通信構成、データ処理構成、またはコンピュータシステム構成を用いて実施され得ることを理解するであろう。インターネットアプライアンス、ハンドヘルドデバイス(携帯情報端末(「PDA」)を含む)、ウェアラブルコンピュータ、あらゆる種類のセルラーフォンまたはモバイルフォン(ボイスオーバIP(「VoIP」)フォンを含む)、ダム端末、メディアプレーヤ、ゲーム機器、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサベースのまたはプログラム可能な家庭用電化製品、セットトップボックス、ネットワークPC、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータなど。実際、「コンピュータ」、「サーバ」などの用語は、本明細書では、全体的に互換的に使用され、かつ上記のデバイスおよびシステムのいずれか、ならびに任意のデータプロセッサを指す。
【0084】
本開示の態様は、本明細書で詳細に説明されるコンピュータ実行可能命令のうちの1つまたは複数を実行するように具体的にプログラムされ、構成され、かつ/または構築された、専用コンピュータおよび/またはデータプロセッサにおいて具現化され得る。特定の機能などの本開示の態様は、単一のデバイス上で排他的に実行されるものとして説明されているが、本開示はまた、機能またはモジュールが、ローカルエリアネットワーク(「LAN」)、ワイドエリアネットワーク(「WAN」)、および/またはインターネットなどの通信ネットワークを介してリンクされる異なる処理デバイス間で共有される分散環境において実施され得る。分散コンピューティング環境では、プログラムモジュールは、ローカルメモリストレージデバイスとリモートメモリストレージデバイスとの両方に配置され得る。
【0085】
本開示の態様は、磁気的または光学的に読み取り可能なコンピュータディスク、ハードワイヤードまたは予めプログラムされたチップ(例えば、EEPROM半導体チップ)、ナノテクノロジーメモリ、生物学的メモリ、または他のデータ記憶媒体を含む非一時的なコンピュータ可読媒体上に保存および/または分散され得る。代替的に、本開示の態様の下でのコンピュータ実行命令、データ構造、画面表示、および他のデータは、伝搬媒体(例えば、電磁波(複数可)、音波など)上の伝搬信号上で、インターネットおよび/または他のネットワーク(無線ネットワークを含む)を介してある期間にわたって配信され得、かつ/または任意のアナログネットワークまたはデジタルネットワーク(パケット交換、回線交換、または他の方式)上で提供され得る。
【0086】
上記に列挙された特徴は、特定の実施形態の状況において説明されている。しかしながら、当業者であれば理解できるように、各実施形態の特徴および態様は、薬剤の制御された調製および/または送達を補助するのに適した任意の方法で、組み合わせられ、他の実施形態に追加され、実施形態から指し引かれる等がなされ得る。
【0087】
本明細書には、以下の項目が開示されている。
項目1. 医療機器のための加速試験パラメータを決定するための方法であって、
温度範囲を因子として、クリープひずみを応力の持続時間および応力量に関連付ける生のクリープ係数データを受信するステップと、
生のクリープ係数データに基づいて予測係数を生成するステップと、
予測係数を使用して、加速試験時間、加速応力、または加速温度のうちの1つまたは複数を生成するステップと、を含む方法。
【0088】
項目2. 加速試験時間が、基準クリープひずみ、基準応力、および加速温度に基づいて生成される、項目1に記載の方法。
項目3. 医療機器の加速試験に基づいて加速試験クリープひずみを生成するステップと、加速試験は、加速温度、加速試験時間、および加速応力に基づいて行われ、
加速試験クリープひずみと基準クリープひずみとを比較することに基づいて、医療機器承認指示または医療機器拒否指示のうちの1つを出力するステップとをさらに含む、項目2に記載の方法。
【0089】
項目4. 承認指示が医療機器を承認し、拒否指示が医療機器を拒否する、項目3に記載の方法。
項目5. 医療機器の加速試験に基づいて加速試験クリープひずみを生成するステップと、加速試験は、加速温度、加速試験時間、および加速応力に基づいて行われ、
加速試験クリープひずみと基準クリープひずみとを比較することに基づいて、予測係数承認指示または予測係数拒否指示のうちの1つを出力するステップとをさらに含む、項目2に記載の方法。
【0090】
項目6. 医療機器は、別の医療機器に対応する医療機器設計に基づいて製造され、生のクリープ係数データが、別の医療機器に基づものである、項目1に記載の方法。
項目7. 予測係数は、生のクリープひずみデータの三次元(3D)補間に基づいて生成される、項目1に記載の方法。
【0091】
項目8. 生のクリープひずみデータは、シミュレートされたひずみまたは経験されたひずみのうちの1つに基づいて生成される、項目1に記載の方法。
項目9. 医療機器の予測係数を検証するための方法であって、
温度範囲を因子として、クリープひずみ値を応力の持続時間および応力量に関連付ける生のクリープひずみデータを受信するステップと、
予測係数を生成するステップと、予測係数は、基準クリープひずみに基づく加速温度、加速時間、および加速応力を出力するように構成されており、
基準クリープひずみに基づく加速温度、加速時間、および加速応力を受信するステップと、
加速温度、加速時間、および加速応力に基づいて行われた加速試験に基づいて、医療機器の加速試験クリープひずみを受信するステップと、
加速試験クリープひずみと基準クリープひずみとを比較することに基づいて、承認指示または拒否指示のうちの1つを出力するステップと、を含む方法。
【0092】
項目10. 予測係数は、生のクリープひずみデータの三次元(3D)補間に基づいて生成される、項目9に記載の方法。
項目11. 第1の持続時間、第1の応力量、および第1の温度に対する第1のクリープひずみが、第1の持続時間、第1の応力量、および第2の温度に対する第2のクリープひずみと異なる、項目9に記載の方法。
【0093】
項目12. 基準クリープひずみは、基準温度、基準時間、および基準応力に対応している、項目9に記載の方法。
項目13. 基準温度が周囲温度であり、基準時間が医療機器の予想保管寿命であり、基準応力が予想応力量である、項目12に記載の方法。
【0094】
項目14. 承認指示は予測係数を承認し、拒否指示は予測係数を拒否する、項目9に記載の方法。
項目15. 医療機器設計を検証するための方法であって、
医療機器設計に基づく複数の医療機器関係を受信するステップと、複数の医療機器関係は、医療機器設計に関する電圧、電流、抵抗、トルク、速度、および力の関係に対応し、かつ複数の係数を含んでおり、
複数の医療機器関係に基づいて線形機器モデルを生成するステップと
複数の医療機器関係に関して、分布関数から複数の係数の各々に対してシミュレートされた係数値を受信するステップと、
シミュレートされた係数値および線形機器モデルに基づいて、電圧、電流、抵抗、トルク、速度、または力に関するシミュレートされた出力分布を生成するステップと、
シミュレートされた出力分布を閾値出力要件と比較するステップと、
シミュレートされた出力分布を閾値出力要件と比較することに基づいて、承認指示または拒否指示のうちの1つを出力するステップと、を含む方法。
【0095】
項目16. 分布関数が、正規分布関数または正規分布関数の混合である、項目15に記載の方法。
項目17. シミュレートされた出力分布を閾値出力要件と比較するステップは、
最大分布値を最大閾値出力要件と比較すること、
最小分布値を最小閾値出力値と比較すること、または
ピーク分布値をピーク閾値出力値と比較することを含む、項目15に記載の方法。
【0096】
項目18. シミュレーションされた出力分布は、1時間未満で実行された少なくとも1万回のシミュレーションに基づく、項目15に記載の方法。
項目19. 複数の医療機器関係は、物質の粘度に基づくものであり、物質の粘度は、熱分析に基づいて決定される物質温度挙動に基づいて算出される、項目15に記載の方法。
【0097】
項目20. 複数の係数のうちの1つの係数は、流体経路制限分析に基づいて生成され、流体経路制限分析は、決定された粘度および決定された速度を因子として作用される力を出力する、項目15に記載の方法。
【0098】
いくつかの項目が本明細書に提示されているが、そのような項目の複数の変形形態、および1つまたは複数の項目からの要素の組合せが可能であり、本開示の範囲内にあると企図される。さらに、当業者は、本開示の基礎となる概念が、本開示のいくつかの目的を実施するために他の装置、方法、およびシステムを設計するための基礎として容易に使用され得ることを理解するであろう。
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図14
【国際調査報告】