(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-19
(54)【発明の名称】動的タイヤモデルに基づくタイヤ摩耗率の推定
(51)【国際特許分類】
B60W 30/184 20120101AFI20240412BHJP
B60W 30/00 20060101ALI20240412BHJP
G01M 17/02 20060101ALI20240412BHJP
B60C 19/00 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
B60W30/184
B60W30/00
G01M17/02
B60C19/00 B
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023561085
(86)(22)【出願日】2021-04-07
(85)【翻訳文提出日】2023-11-14
(86)【国際出願番号】 EP2021059100
(87)【国際公開番号】W WO2022214175
(87)【国際公開日】2022-10-13
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512272672
【氏名又は名称】ボルボトラックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】レイン,レオ
(72)【発明者】
【氏名】ヘンダーソン,レオン
(72)【発明者】
【氏名】ステンブラット,ウルフ
(72)【発明者】
【氏名】アリカー,アディシャ
(72)【発明者】
【氏名】スブラマニアン,チダンバラム
【テーマコード(参考)】
3D131
3D241
【Fターム(参考)】
3D131BB03
3D131BB04
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3D241BA50
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3D241DC51Z
(57)【要約】
大型車両(100)の運動を制御するための方法であって、本方法は、大型車両(100)におけるタイヤ(150、160、170)の1つ以上のタイヤパラメータに関連する入力データを取得することと、入力データに基づいて、1つ以上のタイヤパラメータのうちの少なくとも一部を推定することと、タイヤモデルを構成することであって、タイヤモデルは、タイヤ摩耗率と車両運動状態との関係を定義し、タイヤモデルは、1つ以上のタイヤパラメータによりパラメータ化されるように、構成することと、車両運動状態を推定することと、タイヤモデル及び車両運動状態に基づいて、大型車両の運動を制御することと、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大型車両(100)の運動を制御するための方法であって、
前記大型車両(100)におけるタイヤ(150、160、170)の1つ以上のタイヤパラメータに関連する入力データ(561、562)を取得すること(Sb1)と、
前記入力データに基づいて、1つ以上のタイヤパラメータのうちの少なくとも一部を推定すること(Sb2)と、
タイヤモデルを構成すること(Sb3)であって、前記タイヤモデルは、タイヤ摩耗率と車両運動状態との関係を定義し、前記タイヤモデルは、前記1つ以上のタイヤパラメータによりパラメータ化される、前記タイヤモデルを構成すること(Sb3)と、
車両運動状態を推定すること(Sb4)と、
前記タイヤモデル及び前記車両運動状態に基づいて、前記大型車両の運動を制御すること(Sb5)と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記入力データ(Sb11)は、前記タイヤの1つ以上のパラメータを測定するように構成された1つ以上のセンサ(510)からの入力データを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上のタイヤパラメータは、タイヤ空気圧、タイヤ温度、タイヤ歪み、タイヤのGPS位置、天候、周囲温度、及び雨分類データのうちのいずれかを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記入力データ(Sb12)は、メモリ(565)から取得したタイヤ設計に関連するデータを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記タイヤ設計に関連するデータは、タイヤ公称寸法、タイヤ構造特性、タイヤ化学組成、タイヤ履歴のうちのいずれかを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
1つ以上の推定タイヤパラメータ(Sb21)は、タイヤ摩耗、タイヤ縦方向剛性、タイヤ横方向剛性、タイヤ転がり抵抗、タイヤピーク摩擦、タイヤ転がり半径、タイヤコンタクトパッチ特性、タイヤバランス特性、及びホイールアライメント特性のうちのいずれかを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
更新された入力データに基づいて、前記1つ以上のタイヤパラメータのうちの少なくとも一部を繰り返し更新すること(Sb22)を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記車両運動状態は、前記タイヤの各ホイールの縦方向ホイールスリップ(Sb31)を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記車両運動状態は、前記タイヤの前記各ホイールの横方向ホイールスリップ(Sb32)を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記車両運動状態は、前記タイヤの前記各ホイールの垂直荷重(Sb33)を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記車両運動状態は、前記タイヤの前記各ホイールの回転速度(Sb34)を含む、請求項1~10のいずれかの1項に記載の方法。
【請求項12】
前記車両運動状態に対応する前記摩耗率に応じて、ホイールスリップを制御すること(Sb51)を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記車両運動状態に対応する前記摩耗率に応じて、垂直荷重を制御すること(Sb52)を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記摩耗率に応じて前記車両のリフト可能なアクスルの設定を調整することにより、垂直荷重を制御する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記摩耗率に応じてホイール回転速度を制御すること(bS53)を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
設定された目標摩耗率に基づいて、前記大型車両の運動を制御すること(Sb54)を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
運動要求の履行を含む制約下でタイヤ摩耗率を低減させるように、前記大型車両(100)の1つ以上の運動支援装置を連携させること(Sb55)をさらに含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記大型車両(100)の停止距離を短縮させるように、前記大型車両(100)の1つ以上の運動支援装置を連携させること(Sb56)をさらに含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
プログラムコード手段を含むコンピュータプログラム(820)であって、前記プログラムがコンピュータ上で、または制御ユニット(700)の処理回路(810)上で実行されると、前記プログラムコード手段は、請求項1~18のいずれか1項に記載のステップを実行する、コンピュータプログラム(820)。
【請求項20】
プログラムコード手段を含むコンピュータプログラム(820)を保持するコンピュータ可読媒体(810)であって、プログラム製品がコンピュータ上で、または制御ユニット(700)の処理回路(810)上で実行されると、前記プログラムコード手段は、請求項1~18のいずれか1項に記載のステップを実行する、コンピュータ可読媒体(810)。
【請求項21】
連結車両(1)の許容可能な車両状態のスペースを特定するための制御ユニット(130、140、700)であって、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法のステップを実行するように構成される、制御ユニット(130、140、700)。
【請求項22】
請求項21に記載の制御ユニット(800)を備える、車両(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、大型車両の安全かつ効率的な車両運動管理を確実に行うための方法及び制御ユニットに関する。本方法は、複数の車両ユニットを備えたトラック及びセミトレーラなどの連結車両での使用に特に適している。しかしながら、本発明は、他の種類の大型車両、例えば建設機器及び採掘車両にも適用できる。
【背景技術】
【0002】
トラック及びセミトレーラ車両などの大型車両は、重い荷物を運搬するように設計されている。重い荷物を積載した車両は、停車状態でさらに上り坂の状態から発車して、様々な種類の路面で加速することが可能であり、最も重要なことは、常に制御された信頼性の高い方法で速度を低下させること、すなわち制動することが可能でなければならない。また、車両が、不必要なコンポーネントの摩耗なしに、エネルギー効率の良い方法で作動され得ることも重要である。この機能を達成するための重要な特性は、好適に設計されたタイヤのセットである。よって、好適に設計されたタイヤが高摩擦と低転がり抵抗の組み合わせをもたらす大型車両用タイヤの開発には、多くの労力が費やされてきた。好適に設計されたタイヤは、低摩耗率も有し、すなわち、機械的に耐久性があり、長期間持ちこたえる。
【0003】
路面摩擦と比較して、過度のホイールスリップは、過大なトルクがアクスルまたはホイールに加えられたときに生じる。過度のホイールスリップは、予測不能な車両挙動を生じ、またエネルギー効率の悪い動作も生じるため、望ましくない。
【0004】
GB2562308 Aは、ホイールスリップに関して論述し、ホイールに加えられ得る最大回生制動トルクを制限するための方法を提案している。コントローラは、タイヤモデルを用いて、各ホイールの利用可能な最大トラクションを特定し、このタイヤモデルに基づいて、各ホイールに加えるべき最大回生制動力を計算する。
【0005】
しかしながら、大型車両における車両運動管理のさらなる向上が、引き続き求められている。
【発明の概要】
【0006】
本開示の目的は、上述の問題のうちの少なくとも一部を軽減または克服する技法を提供することである。この目的は、大型車両の運動を制御するための方法により少なくとも部分的に達成される。本方法は、大型車両におけるタイヤの1つ以上のタイヤパラメータに関連する入力データを取得することと、入力データに基づいて1つ以上のタイヤパラメータのうちの少なくとも一部を推定することと、タイヤモデルを構成することと、を含む。タイヤモデルは、タイヤ摩耗率と車両運動状態との関係を定義し、タイヤモデルは、1つ以上のタイヤパラメータによりパラメータ化される。本方法は、また、車両運動状態を推定することと、タイヤモデル及び車両運動状態に基づいて大型車両の運動を制御することと、を含む。これは、存在する任意の他の制御目標に加えて、車両制御を最適化して、タイヤ摩耗を改善、すなわち低減できることを意味する。任意の所与の車両動作または車両操縦に関して、タイヤモデルからの出力に基づいて、タイヤ摩耗メトリックが評価され得、予測タイヤ摩耗率の観点から、様々な車両制御戦略及び/または車両操縦が相互に比較され得る。このようにして、車両の全体的なタイヤ摩耗は低減され得るため、有利である。タイヤ摩耗は、通常、横方向スリップなどの車両状態の非線形関数であることが、理解されよう。比較的小さな横方向スリップ減少により、大幅なタイヤ摩耗率減少が達成され得ることが多い。よって、車両制御にタイヤ摩耗率モデルを組み込むことにより、多くの場合、車両制御戦略をほんの少し変更して、タイヤ摩耗率の大幅な低減が達成され得るため、有利である。
【0007】
態様によれば、入力データは、タイヤの1つ以上の動作パラメータを測定するように構成された1つ以上のセンサからの入力データを含む。センサは、タイヤからリアルタイムデータを供給するように構成され得、これにより、タイヤ特性の変化に迅速に反応するタイヤモデルのリアルタイムで動的な適合が可能となる。よって、タイヤ特性が変化すると、タイヤモデルも変化するので、有利である。
【0008】
態様によれば、1つ以上の動作パラメータは、車両速度、ホイール回転速度、タイヤ空気圧、タイヤ温度、タイヤ加速度、タイヤ歪み、タイヤのGPS位置、天候、周囲温度、雨分類データ、垂直荷重、スリップアングル、ステアリングアングル、及び適用トルクのうちのいずれかを含む。よって、タイヤモデルは、多くの異なる動作パラメータに調整することができるので、有利である。
【0009】
態様によれば、入力データは、メモリから取得した、タイヤ設計に関連するデータを含む。異なる種類のタイヤは、異なる特性を有し得、低道路摩擦、高温、及び雨などの事象に対して異なる反応を生じ得る。タイヤ設計を考慮することにより、より正確なモデルが作られ得る。タイヤ設計に関連するデータは、例えば、タイヤ公称寸法、タイヤ構造特性、タイヤ化学組成、タイヤ履歴のうちのいずれかを含み得る。
【0010】
態様によれば、1つ以上の推定タイヤパラメータ(estimated tyre parameters)は、タイヤ摩耗、タイヤ縦方向剛性、タイヤ横方向剛性、タイヤ転がり抵抗、タイヤピーク摩擦、タイヤ転がり半径、タイヤコンタクトパッチ特性、タイヤバランス特性、及びホイールアライメント特性のうちのいずれかを含む。タイヤモデルにより、これらの異なるタイヤパラメータすべてを取り込むことができることは、有利である。これらのパラメータのうちの1つ以上に関する正確な情報を有することにより、効率的及び/または安全な車両制御が促進される。
【0011】
態様によれば、本方法は、更新された入力データに基づいて、1つ以上のタイヤパラメータのうちの少なくとも一部を繰り返し更新することを含む。よって、例えば、動作条件及びタイヤ状態に、いくら変化が生じても、タイヤモデルは最新状態に維持される。
【0012】
態様によれば、車両運動状態は、タイヤの各ホイールの縦方向ホイールスリップ、タイヤの各ホイールの横方向ホイールスリップ、及び/またはタイヤの各ホイールの垂直荷重を含む。よって、任意の車両動作及び/または車両操縦は、タイヤモデルを介して生成タイヤ摩耗に関して特徴づけられ得、これにより、タイヤ摩耗を改善するための車両制御最適化が可能となるので、有利である。
【0013】
態様によれば、車両運動状態は、タイヤの各ホイールの回転速度を含む。回転速度はタイヤ摩耗率に重大な影響を与え得るため、モデルの一部として回転速度を含めることにより、多くの場合、モデルのタイヤ摩耗率の予測精度が向上する。
【0014】
態様によれば、本方法は、車両運動状態に対応する摩耗率に応じて、ホイールスリップを制御することを含む。よって、タイヤ摩耗を低減させるように車両制御を最適化できるため、有利である。本方法は、また、車両運動状態に対応する摩耗率に応じて、垂直荷重を制御することを含み得る。例えば、タイヤの摩耗率を改善するように、リフト可能なアクスルの設定が操作され得るため、有利である。リフト可能なアクスルの設定が異なると、タイヤ摩耗率も異なる場合があり、リフト可能なアクスルの設定に関して摩耗率を予測することは時に難しい場合がある。タイヤモデルは、リフト可能なアクスルに適した状態の選択を簡潔化する。
【0015】
態様によれば、本方法は、摩耗率に応じて、ホイール回転速度を制御することを含む。よって、全体的なタイヤ摩耗を低減させるように、タイヤモデルからの出力に基づいて輸送ミッション計画が実行され得る。また、設定された目標摩耗率に基づいて、大型車両によるより短期間の運動、すなわち曲がり角での進め方、及び異なる操縦を行う時の速度などを、制御することも可能である。これらの最適化は、以前は実行することが非常に困難であったが、本明細書に開示されるようなタイヤモデルにアクセスすることにより、最適化が容易になった。
【0016】
態様によれば、本方法は、運動要求の履行を含む制約下でタイヤ摩耗率を低減させるように、大型車両の1つ以上の運動支援装置を連携させることを含む。大型車両は、多くの場合、運動支援装置を備え、これらは、異なる方法で連携して、同じ種類の車両運動を実現することができる。例えば、車両の旋回は、車両におけるホイールのうちのいくつかを、操舵することによる、及び選択的に制動することによる、両方の方法で、達成され得る。本明細書に開示されるタイヤモデルを使用して、異なる制御オプションから結果として生じるタイヤ摩耗を推定し、より大きなタイヤ摩耗に関連付けられた制御戦略と比較して、より小さなタイヤ摩耗に関連付けられた制御戦略が選択され得る。
【0017】
態様によれば、本方法は、大型車両の停止距離を短縮させるように、大型車両の1つ以上の運動支援装置を連携させることを含む。よって、本明細書に開示されるタイヤモデルを使用して、特定の制御行動から生成される制動力を予測することにより、より効率的に制動を行うことができる。例えば、おそらく一部のタイヤは、他のタイヤと比較してより大きな制動力を支持することができる。例えば経時変化などによる摩耗が原因で、大きな制動力を支持することができない場合がある他のタイヤと比較して、これらのタイヤには、より大きな制動トルクが割り当てられ得る。
【0018】
本明細書では、上述の利点と関連付けられた制御ユニット、コンピュータプログラム、コンピュータ可読媒体、コンピュータプログラム製品、及び車両も開示される。
【0019】
一般に、特許請求の範囲で使用されるすべての用語は、本明細書で明示的に別段の定義がない限り、技術分野における通常の意味に従って解釈されるものとする。「(a/an/the)要素、機器、構成要素、手段、ステップなど」へのすべての言及は、明示的に別段の記載がない限り、要素、機器、構成要素、手段、ステップなどの少なくとも1つの例を指すものとして、オープンに解釈されるものとする。本明細書に開示される任意の方法のステップは、明示的に記載されない限り、開示された順序で正確に行われる必要はない。本発明のさらなる特徴及び利点は、添付の特許請求の範囲及び以下の説明を検討すると明らかになるであろう。本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の異なる特徴を組み合わせて、以下に説明される実施形態以外の実施形態を作成できることが、当業者には認識されよう。
【0020】
例として挙げられる本発明の実施形態のより詳細な説明が、添付図面を参照して以下に続く。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図4】車両を制御するための制御アーキテクチャを示す図である。
【
図5】例示的な車両運動支援装置制御システムを示す図である。
【
図6A】例示的な方法を示すフローチャートである。
【
図6B】例示的な方法を示すフローチャートである。
【
図6C】例示的な方法を示すフローチャートである。
【
図7】センサユニット及び/または制御ユニットを概略的に示す図である。
【
図8】例示的なコンピュータプログラム製品を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
ここで、本発明の特定の態様を示す添付図面を参照しながら、本発明はより完全に以下に説明される。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具現化され得、本明細書に明記される実施形態及び態様に限定されるものとして解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的及び完全なものとなり、本発明の範囲が当業者に十分に伝わるように、例として提供される。説明全体を通して、同様の番号は、同様の要素を指す。
【0023】
本明細書に説明され、図面に示される実施形態に、本発明は限定されないことが理解されるべきであり、むしろ、添付の特許請求の範囲内で多くの変更及び修正が行われてもよいことが、当業者には認識されよう。
【0024】
図1は、大型車両100を示す。この具体的な実施例は、トレーラユニット120を牽引するように配置されたトラクタユニット110を含む。トラクタ110は、車両100の様々な機能を制御するように構成された車両制御ユニット(VCU:Vehicle Control Unit)130を備える。例えば、VCUは、ホイールスリップ、及び車両ユニット安定性などの制御を含む車両運動管理(VMM: Vehicle Motion Management)機能を実行するように構成され得る。トレーラユニット120も、任意でVCU140を備え、これは、トレーラ120における1つ以上の機能を制御する。1つ以上のVCUは、例えば無線リンクを介して、リモートサーバ150と通信可能に接続され得る。下記でさらに詳しく論述されるように、このリモートサーバは、ECUの様々な構成を実行するように、ならびに、車両100に備え付けられたタイヤの製造元及び種類に関するデータを提供するなど、ECU130に様々な形式のデータを提供するように、構成され得る。
【0025】
当然ながら、連結車両100は、1つ以上のドーリーユニット及び複数のトレーラユニットなど、さらなる車両ユニットも備えてもよい。
【0026】
車両100はホイールにより支持され、各ホイールはタイヤを備える。トラクタユニット110は、前部ホイール160と、後部ホイール170とを有し、前部ホイール160は、通常、操舵され、後部ホイール170のうちの少なくとも一対は、従動ホイールである。通常、トラクタ110の後部ホイールは、タグアクスルまたはプッシャアクスルに取り付けられ得る。タグアクスルは、動力供給されない最後方の駆動アクスルであり、フリーローリングアクスルまたはデッドアクスルとも称される。プッシャアクスルは、動力供給されない最前方の駆動アクスルである。トレーラユニット120は、トレーラホイール180に支持される。従動ホイール、及び操舵アクスルまでも備えたトレーラも可能である。
【0027】
トレーラ120における後部アクスルのうちの1つ以上及び/またはアクスルのうちの1つは、リフト可能なアクスルであり得る。引き込み可能なアクスルとしても知られているリフトアクスルは、保持するタイヤが路面に接触しないように、引き上げ可能なアクスルである。これにより、燃費が向上し、メンテナンス及びタイヤ摩耗が削減される。これは、車両の動的安定性機能を縮小または増大させることもでき、ならびに、車両荷重、どのアクスルがリフトされるか、及びアクスルがリフトされる運転状況に応じて、道路摩耗を増加または減少させることができる。
【0028】
トレーラ120における後部アクスルのうちの1つ及び/またはアクスルのうちの1つは、リフト可能なアクスルであり得る。引き込み可能なアクスルとしても知られているリフトアクスルは、保持するタイヤが路面に接触しないように、引き上げ可能なアクスルである。これにより、道路摩耗は増加するが、燃費が向上し、メンテナンス及びタイヤ摩耗が削減される。ホイールのうちの1つ以上には、例えば1つ以上のタイヤの法線力を調整するために、VCU130、140により制御され得るアクティブサスペンションも備え付けられ得る。
【0029】
ホイール上のタイヤは、車両100の挙動及び能力を決定する上で、主要な役割を果たす。好適に設計されたタイヤのセットは、良好なトラクション及び燃費の両方を提供するが、不十分に設計されたタイヤのセット、または過度に摩耗したタイヤは、トラクション及び燃費の両方を低減させる可能性が高く、不安定な連結車両を生じることさえあり得、当然ながらこれは好ましくない。
【0030】
本開示は、例えば車両速度及び垂直荷重などの所与の車両状態に関して、タイヤパラメータ及びタイヤ挙動をモデル化するソフトウェアのタイヤモデルに関する。車両100の制御を最適化するために、タイヤモデルは、VCUにより有利に利用され得る。例えば、本明細書に開示されるタイヤモデルを使用して、生成ホイール力とホイールスリップとの関係がモデル化され得、この関係により、直接的なトルク要求の代わりに、トルク生成装置からホイールスリップを要求することにより、VCUが車両をより良好に制御することが可能になる。トルク生成装置は、その後、より高い帯域幅制御ループが局所的に、すなわちホイール端部に近付いて実行されることにより、はるかに安定した生成ホイール力を維持することが可能になる。いくつかの例示的なタイヤモデルを使用して、車両状態に応じて、すなわち、特定の車両操縦または動作が過度なタイヤ摩耗を生じるか否かに応じて、タイヤ摩耗率の推定も行われ得る。本明細書で論述されるさらなる例示的なタイヤモデルは、タイヤ転がり抵抗をモデル化し、これにより、VCUは、タイヤ転がり抵抗を低減させるように車両制御を最適化し、よって、所与の輸送ミッションに関して、または単に1つの操縦に関して、エネルギー効率の増加を得ることができる。本明細書で論述されるタイヤモデルは、車両が作動されると、動的に更新されるように構成される。したがって、タイヤモデルは動的であり、静的ではないことが好ましく、これは、タイヤ特性が摩耗ならびに膨張圧及び温度の変動に起因して変化するので、タイヤモデルが、例えば全体的な運転シナリオ及び経時的なタイヤの状態に応じて、タイヤパラメータをより良好かつより密接にモデル化できることを、意味する。
【0031】
ここで、タイヤのいくつかの重要な特性、及び特性パラメータが論述される。これらのタイヤパラメータは、VCU130、140がタイヤの他の能力及び特性を特定できるタイヤパラメータとして、あるいは単に、様々な制御決定を最適化するためにVCU130、140が多かれ少なかれ直接使用できるタイヤ特性として、任意でタイヤモデルに含まれる。
【0032】
より高速で回転するタイヤは、トレッドゴムを回転軸から遠ざける遠心力が原因で、より大きな直径、すなわち、より大きな転がり半径を生じる傾向がある。この効果は、多くの場合、遠心成長と称される。タイヤの直径が大きくなると、タイヤの幅は小さくなる。過度の遠心成長は、タイヤの挙動に著しい影響を与え得る。
【0033】
タイヤのニューマチックトレールは、弾性材料タイヤが硬い表面上を転動し、旋回時のように水平荷重を受けることにより生じるトレール様効果である。タイヤのニューマチックトレールパラメータは、タイヤのコンタクトパッチの幾何学的中心の後方で、タイヤのサイドスリップの合力が発生する距離を表す。
【0034】
本明細書にてαで示されるスリップアングルすなわちサイドスリップアングルは、転動ホイールの実際の進行方向と、転動ホイールが向いている方向との間の角度である(すなわちホイール並進速度のベクトル和の角度である)。
【0035】
タイヤの緩和距離は、スリップアングルが生じてから、コーナリングフォースがその定常値に達するまでの遅延を表す、空気タイヤの特性である。通常、緩和距離は、タイヤが定常状態の横方向力の63%に達するのに必要な転動距離として定義されるが、他の定義も可能である。
【0036】
垂直剛性、または、ばね定数は、タイヤの垂直偏向に対する垂直力の比であり、車両の全体的なサスペンション性能に寄与する。一般に、ばね定数は、膨張圧と共に増大する。
【0037】
タイヤのコンタクトパッチすなわちフットプリントは、路面と接触しているトレッドの領域である。この領域は、摩擦により、タイヤと道路との間の力を伝達する。コンタクトパッチの縦横比は、ステアリング挙動及びコーナリング挙動に影響を与える。フットプリントへのタイヤトレッド及びサイドウォール要素の入り込み及び引っ込みにより、タイヤトレッド及びサイドウォール要素の変形及び回復が生じる。ゴムは弾性を有することから、このサイクル中に変形する。ゴムは、変形及び回復することにより、車両に周期的な力を与える。これらの変動は、タイヤユニフォミティと総称される。タイヤユニフォミティは、ラジアルフォース(半径方向力)バリエーション(RFV)、ラテラルフォース(横方向力)バリエーション(LFV)、及びタンジェンシャルフォース(接線方向力)バリエーションで特徴付けられる。製造プロセスの最後にフォースバリエーションマシンで、ラジアルフォースバリエーション及びラテラルフォースバリエーションが測定される。RFV及びLFVの規定範囲外のタイヤは、却下される。タイヤ工場で製造プロセスの最後に品質検査として、タイヤユニフォミティマシンを使用して、ラジアルランアウト(縦振れ)、ラテラルランアウト(横振れ)、及びサイドウォールバルジを含む幾何学的パラメータが測定される。
【0038】
タイヤのコーナリングフォースすなわちサイドフォースは、コーナリング中に車両タイヤにより生成される横方向の(すなわち路面に平行な)力である。
【0039】
転がり抵抗は、路面に接するタイヤの変形により生じる転動に対する抵抗である。タイヤが転動すると、トレッドは、接触領域に入り込み、車道に沿うように平らに変形する。変形するために必要なエネルギーは、タイヤ構造の膨張圧、回転速度、及び多数の物理的特性、例えば、ばね力及び剛性などに依存する。転がり抵抗は燃料消費の高い割合を占めることから、タイヤ製造業者は、トラックの燃費を向上させるために、転がり抵抗がより低いタイヤ構造を探求することが多い。
【0040】
乗り心地は、運転者または乗客が車両に乗っているときの全般的な体験に関連する。乗り心地は車両の挙動に依存し、そして車両の挙動はタイヤの特性に依存する。
【0041】
セルフアライニングトルク(SAT:Self-Aligning Torque)は、タイヤが転動するにつれてタイヤが生成するトルクであり、これは、タイヤを操舵する、すなわち、タイヤの垂直軸を中心にタイヤを回転させる傾向がある。
【0042】
タイヤモデルを使用して、所与のタイヤの特性、例えば上記の特性、ならびに他の特性を表すことができる。例えば、タイヤモデルを使用して、所与のホイールの縦方向タイヤ力Fxと、そのホイールの等価の縦方向ホイールスリップとの関係が定義され得る。縦方向ホイールスリップλxは、ホイール回転速度と対地速度との差に関係し、下記でより詳細に論述される。ホイール回転速度ωは、ホイールの回転速度であり、例えば毎分回転数(rpm)、またはラジアン/秒(rad/sec)もしくは度/秒(deg/sec)で表される角速度の単位で提供される。ホイールスリップに応じて縦方向(転動方向)及び/または横方向(縦方向に直交する方向)に生成されるホイール力に関するホイール挙動は、Hans Pacejkaによる「Tyre and vehicle dynamics」,Elsevier Ltd. 2012年,ISBN 978-0-08-097016-5に論述されている。例えば、ホイールスリップと縦方向力との関係が論述されている第7章を参照されたい。
【0043】
縦方向ホイールスリップλ
xは、SAE J670(SAE Vehicle Dynamics Standards Committee 2008年1月24日)に従って、以下のように定義され得る。
【数1】
ここで、Rは、有効ホイール半径(メートル)であり、ω
xは、ホイールの角速度であり、ν
xは、(ホイールの座標系における)ホイールの縦方向速度である。よってλ
xは、範囲が-1~1に定められ、路面に対してホイールがどの程度スリップしているかを定量化する。ホイールスリップは、本質的には、ホイールと車両との測定速度差である。したがって、本明細書に開示される技法は、あらゆる種類のホイールスリップ定義で使用できるように、適合され得る。また、ホイールスリップ値は、ホイールの座標系において表面に対するホイールの速度を考慮したホイール速度値と等価であることが、理解されよう。
【0044】
タイヤの横方向スリップは、タイヤが移動している方向と、タイヤが向いている方向との間の角度である。横方向スリップは、例えばコーナリング時に発生し得、タイヤ構造及びトレッドの変形により起こり得る。その名称にも関わらず、小さなスリップアングルには実際の滑動は必要ない。横方向ホイールスリップは、以下のように定義される。
【数2】
ここで、ν
xは、ホイール運動の縦方向速度成分であり、ν
yは、ホイール運動の横方向速度成分である。横方向タイヤスリップは、例えばHans Pacejkaによる「Tyre and vehicle dynamics」,Elsevier Ltd. 2012年,ISBN 978-0-08-097016-5に詳細に論述されている。
【0045】
横方向ホイールスリップλ
yは、任意で以下のようにも定義され得る。
【数3】
ここで、ν
yは、縦方向速度ν
xの方向に直交する方向で測定される(ホイールの座標系における)ホイールの横方向速度である。
【0046】
ホイール(またはタイヤ)がホイール力を生成するためには、スリップが発生する必要がある。スリップ値が小さい場合、スリップと生成される力との関係は略線形であり、比例定数は、多くの場合、タイヤのスリップ剛性が示される。
図2を参照すると、タイヤ230(タイヤ160、170、180のうちのいずれかなど)には、縦方向力F
x、横方向力F
y、及び法線力F
zが加わる。法線力F
zは、いくつかの重要な車両特性を特定するための鍵となる。例えば、通常、F
x≦μF
zであり、μは道路摩擦条件に関連付けられた摩擦係数であることから、法線力は、ホイールにより達成可能な縦方向タイヤ力F
xを、かなりの程度まで特定する。所与の横方向スリップで利用可能な最大横方向力は、Hans Pacejkaによる「Tyre and vehicle dynamics」,Elsevier Ltd. 2012年,ISBN 978-0-08-097016-5に説明されるいわゆる魔法の公式(Magic Formula)により、表され得る。
【0047】
図2は、ホイールスリップに応じて達成可能なタイヤ力F
x、F
yの実施例を解説するグラフ200を示す。縦方向タイヤ力Fxは、小さいホイールスリップでは、略線形増加部分210を示し、その後、大きいホイールスリップでは、より非線形挙動を表す部分220が続く。取得可能な横方向タイヤ力Fyは、縦方向ホイールスリップが比較的小さい場合でも、急激に減少する。適用された制動コマンドに応じて取得可能な縦方向力を予測しやすく、必要に応じて十分な横方向タイヤ力を生成できる線形領域210において、車両動作を維持することが望ましい。この領域での動作を確保するために、例えば0.1ほどのホイールスリップリミットλ
LIMが、所与のホイールに課され得る。例えば0.1を超える大きなホイールスリップでは、より非線形の領域220が観察される。
【0048】
ホイール力は、線形領域では、以下のように、縦方向タイヤ力及び横方向タイヤ力の両方の剛性により、表され得る。
【数4】
ここで、wは、タイヤ摩耗を示すパラメータであり、αは、タイヤのスリップアングルであり、C
x及びC
yは、剛性の関数である。タイヤ剛性C
x及びC
yは、通常、摩耗w及び法線力F
zと共に増加する。上記の両関数は、タイヤパラメータ及び車両状態特性に依存するタイヤモデルを表す。関数C
x(・)λ
x及び/または関数C
y(・)αなどのタイヤモデル、ならびにタイヤパラメータw、F
zに関連する入力データを所与として、VCUは、生成ホイール力とホイールスリップとの正確な関係を取得することが可能である。この関係は、タイヤパラメータに応じて変化し、すなわち関係は、動的関係であり、経時的に、タイヤが摩耗するにつれて、及びタイヤの法線力F
zが変化するにつれて、更新される。
【0049】
この種のタイヤモデルは、実用的な実験、解析的導出、コンピュータシミュレーション、またはこれらの組み合わせにより、特定され得る。実際には、タイヤモデルは、タイヤパラメータでインデックス化されたルックアップテーブル(LUT)により、または多項式などを記述する係数のセットとして、表され得る。その場合、タイヤパラメータに基づいて係数のセットが選択され、次いで多項式は、タイヤ挙動と車両状態との関係を表す。
【0050】
対象の他のタイヤモデルは、代替的に、または補完的モデルとして、例えば車両速度及び垂直荷重に応じたタイヤ摩耗率、及び/または所与の車両状態に関するタイヤ転がり抵抗を推定し得、転がり抵抗は、所与のホイールに現在取り付けられているタイヤの特定のタイヤパラメータに依存する。
【0051】
図3は、いくつかの例示的なMSDによる、ホイール330を制御するための機能300を概略的に示し、ここではMSDは、摩擦制動機320(ディスク制動機またはドラム制動機など)及び推進装置310(電気機械または燃焼エンジンなど)を備える。摩擦制動機320及び推進装置310は、ホイールトルク生成装置の例であり、アクチュエータとも称され得、1つ以上の運動支援装置制御ユニット340により制御され得る。制御は、例えば、ホイール回転速度センサ350から取得された測定データと、レーダセンサ、ライダセンサ、ならびにカメラセンサ及び赤外線検出器などの視覚ベースセンサといった他の車両状態センサから取得された測定データと、に基づく。本明細書で論述される原理に従って制御され得る他の例示的なトルク生成運動支援装置は、エンジンリターダ及びパワーステアリング装置を備える。MSD制御ユニット340は、1つ以上のアクチュエータを制御するように構成され得る。例えば、MSD制御ユニットは、アクスルの両ホイールのMSDを制御するように構成されていることは珍しくない。例えば全地球測位システム、視覚ベースセンサ、ホイール回転速度センサ、レーダセンサ、及び/またはライダセンサを使用して車両ユニット運動を推定し、この車両ユニット運動を所与のホイールのローカル座標系に変換することで(例えば縦方向速度成分及び横方向速度成分に関して)、ホイール基準座標系における車両ユニット運動を、ホイールに接続して配置されたホイール回転速度センサ350から取得されたデータと比較することにより、ホイールスリップをリアルタイムで正確に推定することが可能になる。
【0052】
摩擦制動機320及び推進装置はどちらも、タイヤを含むホイール330を介して、路面と相互作用する。よって、タイヤ特性及び挙動特性は、摩擦制動機320及び推進装置310による様々な制御行動が、どのような車両運動を生成するのかに、影響を及ぼす。ソフトウェアベースのタイヤモデル380がシステムに含まれる。このタイヤモデルは、ホイール330に現在取り付けられているタイヤに関する情報、その特性、及び挙動特性を提供する。VMM360及び/またはMSD制御ユニット340は、タイヤモデルにより提供される情報を使用して、様々な制御割り当ての結果を予測する。つまり、VMM及び/またはMSD制御ユニットは、タイヤの特定の特質及び特性に応じて、制御行動を最適化することができる。
【0053】
第1の実施例によれば、VMM360は、ホイールスリップに応じて生成されるホイール力を予測するために、タイヤモデルからの入力を使用する。予測関数、すなわちスリップと力とのマッピングは、タイヤスリップ剛性特性、タイヤトレッド領域温度、タイヤ公称膨張圧、現在のタイヤ法線力、ホイール回転速度、タイヤ摩耗、及び道路摩擦係数など、現在のタイヤパラメータにより特定される。
【0054】
第2の実施例によれば、タイヤモデルは、次の操縦に関するタイヤのタイヤ摩耗率を、g/kmまたはg/sの単位で予測するように構成され、先と同様に、タイヤ摩耗率と車両状態とのマッピングも、現在のタイヤパラメータにより特定される。これにより、いずれも所望の大域的力生成を実現するが、著しく異なるタイヤ摩耗率に関連付けられ得る様々な制御オプションの中から、VMM機能360は選択を行うことが可能となる。
【0055】
第3の実施例によれば、タイヤモデルは、次の操縦、車両状態、及び車両構成に関して、タイヤのタイヤ転がり抵抗を予測するように構成される。これにより、いずれも所望の大域的力生成を実現するが、著しく異なるタイヤ転がり抵抗に関連付けられ得る様々な制御オプション及び車両構成の中から、VMM機能360は選択を行うことが可能となる。よって、VMM機能は、例えば、所与の運転シナリオで、リフト可能アクスルが地面から持ち上げられた場合、転がり抵抗及びタイヤ摩耗率の両方に関して有利であると判断し得る。
【0056】
第4の実施例によれば、タイヤモデルは、タイヤモデルにより予測される操縦中のタイヤの反応及び挙動に基づいて、次の操縦に関する車両の乗り心地メトリックを予測するように構成されている。先と同様に、これにより、VMM機能360は、安全かつ効率的な操縦と、乗り心地を反映する二次的目的とを遂行するための様々な制御オプション及び戦略の中から、選択を行うことが可能になる。よって、VMM機能360は、従来の車両と比較してより高い乗り心地レベルで作動するように、車両を制御し得る。
【0057】
タイヤモデルは、上述のように、ルックアップテーブルまたは他の種類の関数として実施され得る。タイヤモデルは、1つ以上のタイヤパラメータによりパラメータ化され、すなわち定義される。これは、タイヤの特性に応じて関数自体が変わることを意味する。上記で例示されたように、ホイールスリップと生成ホイール力との関係またはマッピング、及び/またはタイヤ摩耗率と、タイヤ垂直荷重、車両速度、及びホイールスリップなどの車両状態とのマッピングといった様々な関係が、タイヤモデルを使用してモデル化され得る。本開示は、タイヤモデル構造のいずれの特定の形態にも限定されないことが、理解されよう。むしろ、数多くの異なる種類の数学的及び/または実験ベースの関数及びマッピングが、タイヤモデルとして使用できることが、理解されよう。
【0058】
図4及び
図5も参照すると、交通状況管理(TSM:Traffic Situation Management)機能370は、例えば1~10秒程度の計画対象期間で、運転動作を計画する。このタイムフレームは、例えば車両100がカーブを通過するのにかかる時間に対応する。TSMが計画し実行する車両操縦は、加速度プロファイル及び曲率プロファイルと関連付けられ得、これらは、所与の操縦での所望の車両速度及び旋回を表す。TSMは、VMM機能360に対し所望の加速度プロファイルa
req及び曲率プロファイルc
reqを継続的に要求し、VMM機能360は、TSMからの要求を満たすように安全かつ堅調な方法で力配分を行う。
図3に示されるように、TSM機能370は、また、タイヤモデル380に基づいて車両操縦を決定し得る。例えば、TSM機能370は、例えばタイヤ摩耗及び/または転がり抵抗の点で同じ目的を達成する2つ以上の異なる操縦を比較し、次いで、これらの点で最も好ましい1つを選択し得る。
【0059】
所望の加速度プロファイル及び曲率プロファイルは、任意で、ステアリングホイール、アクセルペダル、及びブレーキペダルなどの通常の制御入力装置による大型車両のヒューマンマシンインターフェース440を介した運転者からの入力に基づいて、決定され得るが、本明細書に開示される技法は、自動運転車両または半自動運転車両にも同様に適用可能である。加速度プロファイル及び曲率プロファイルを決定するために使用される正確な方法は、本開示の範囲に含まれておらず、よって、本明細書でより詳細に論述されることはない。特に、交通状況管理ならびに/または輸送ミッション及びルート計画機能420は、リフト可能アクスルの上昇及び下降、ならびにサスペンションの調整など、車両の様々な特性を設定し得る。
【0060】
車両環境430に関するデータを提供するように構成されたセンサは、制御スタック400全体に入力を提供し、クラウドベース処理リソース410などのリモート処理リソースへの接続も、任意で制御スタックに含まれる。
図1のリモートサーバ150は、このタイプのクラウド層410に含まれ得る。
【0061】
VMM機能360は、約0.1~1.5秒程度の計画対象期間で作動し、加速度プロファイルareq及び曲率プロファイルcreqを、車両100の異なるMSDにより実行される車両運動機能を制御するための制御コマンドに継続的に変換し、MSDは、VMMに能力を報告し返し、次いでその能力は、車両制御の制約として使用される。この制御の精度は、本明細書で論述される高度なタイヤモデル380を使用して、改善される。
【0062】
図5を主に参照すると、VMM機能360は、車両状態または運動推定520を行い、すなわち、VMM機能360は、多くの場合MSDに接続されているが必ずしも接続されているわけではない車両100に配置された様々なセンサ510を使用して、車両状態及び挙動を監視することにより、連結車両の異なるユニットの位置、速度、加速度、ヨー運動、法線力、及び連結角度を含む車両状態s(多くの場合ベクトル変数)を、継続的に特定する。
【0063】
運動推定520の結果、すなわち、推定される車両状態sが、大域的力生成モジュール530に入力され、大域的力生成モジュール530は、TSM370からの運動要求を満たすために生成される必要がある車両ユニットに対する必要な大域的力を特定する。MSD連携機能540は、例えばホイール力を割り当て、ステアリング及びサスペンションなどの他のMSDを連携させる。次に、連携MSDは共に、連結車両100による所望の運動を得るために、車両ユニットに対する所望の横方向力Fy及び縦方向力Fx、ならびに必要なモーメントMzを提供する。
図5に示されるように、MSD連携機能540は、ホイールスリップλ
i、ホイール回転速度ω、トルクT
i、及び/またはステアリングアングルδ
Iのうちのいずれかを、異なるMSDへ出力し得る。
【0064】
MSD連携機能540は、車両におけるタイヤのソフトウェアベースモデルを継続的に更新し得るタイヤモデル機能380により支援される。MSD連携機能540は、例えば、タイヤモデルを使用して、
図2に関連して論述されたようにホイールスリップと生成ホイール力との関係を特定し得る。また、別の実施例によれば、いずれもTSM370からの現在の要求を満たす複数の異なる制御オプション及び/または異なるMSD連携ソリューションを、MSD連携機能は決定し、その結果、転がり抵抗を低減させることによりタイヤ摩耗率の低減及び/または輸送ミッションのエネルギー効率の向上など、いくつかの二次的目的も改善し得る。この選択及び/または最適化は、最適化モジュール550により実行され得る。言い換えると、MSD連携を実行すると、多くの場合、付加的な自由度が利用可能になることが理解され、これは、多くの場合、大域的力の所与のセットを多数の異なる方法で取得できることを意味する。このようなMSD連携ソリューションはそれぞれ、タイヤモデル380に基づいて評価され得、タイヤモデル380は、タイヤ摩耗の低減及び/または転がり抵抗の低減をもたらすある特定のソリューションを優先し得る。
【0065】
タイヤモデルは、タイヤ摩耗、タイヤ垂直荷重、タイヤスリップ剛性などの1つ以上のタイヤパラメータによりパラメータ化される。これらのタイヤパラメータは、当然のことながら予め設定され得る。しかし、メモリ565から取得されたタイヤデータに基づいて、または1つ以上のセンサ510から取得されたタイヤデータに基づいて、タイヤパラメータが推定あるいは特定される場合、付加的な利点が得られ得る。タイヤパラメータ推定ソフトウェア(TYPRESSW)モジュール560により、タイヤパラメータは、推定され、または少なくとも定期的に更新され得る。
【0066】
通常、本明細書に開示される車両制御方法及び様々な例示的タイヤモデル380は、圧力センサ、トレッド摩耗センサ、温度センサ、振動センサ、及びリムベースセンサなどのタイヤベースセンサを含む入力信号に基づき得る。入力信号は、また、ホイール回転速度センサ、レーダセンサ、ライダセンサ、振動センサ、及び音響センサなどの車両100に配置された他のセンサから取得されたデータを含み得る。本明細書に開示される方法及びタイヤモデルは、また、無線リンクを介してリモートサーバ150などのリモート装置から受信した情報、ならびに運転者要求及び様々なアクチュエータ状態も、取得し使用し得る。
【0067】
TYPRESSWモジュール560への入力、また任意でタイヤモデル380への入力には、路面に対するホイール速度vx、ホイール回転速度ωx、タイヤ加速度、タイヤ空気圧、タイヤ温度、タイヤ歪み、タイヤのGPS位置及び天候データ、周囲温度、雨分類(雨センサ及び/またはワイパー速度などから取得)、垂直荷重Fz、スリップアングルα及び/またはステアリングアングルδ、及び適用トルク(推進トルク及び/または制動トルク)が含まれ得る。
【0068】
よって、VCU130、140などの車両制御ユニットは、メモリにタイヤモデル380を、例えばルックアップテーブルまたは数学的関数として格納するように構成され得ることが、理解されよう。タイヤモデルは、タイヤの現在の動作条件及びパラメータの関数として、メモリに格納されるように構成される。これは、タイヤモデルが、タイヤの動作条件及び全般状態に応じて有利に調整できることを意味し、つまり、タイヤの特徴を考慮しないモデルと比較して、より正確なモデルが得られることを意味する。メモリに格納されたモデルは、ホイールに取り付けられたタイヤの構造設計特徴及び化学組成に基づいて、分析的または実験的に特定され得る。また、制御ユニットは、現在のタイヤ動作条件に応じて選択された異なるモデルのセットにアクセスするように構成され得る。あるタイヤモデルは、法線力が大きい高荷重運転に適合され得、別のタイヤモデルは、道路摩擦が小さい滑りやすい道路条件に適合され得、以下同様に行われる。使用するモデルの選択は、選択ルールの所定のセットに基づき得る。
【0069】
よって、そのモデルは、例えば法線力または道路摩擦を入力パラメータとして取り入れるように構成され得、それにより、ホイールの現在の動作条件に応じたタイヤモデルが取得される。動作条件の多くの態様は、デフォルトの動作条件パラメータで近似され得るが、動作条件の他の態様は、より少数のクラスに大まかに分類され得ることが、理解されよう。よって、ホイールの現在の動作条件に応じたタイヤモデルを取得することは、多数の異なるモデルが、格納されている必要があること、または非常に細かく動作条件の変動を考慮できる複雑な分析関数である必要があることを、必ずしも意味しない。むしろ、動作条件に応じて選択される2つまたは3つの異なるモデルを使用すれば、十分であり得る。例えば、車両が重荷重を有する場合は、あるモデルが使用され、それ以外の場合は、別のモデルが使用される。いずれの場合も、タイヤ力とホイールスリップとのマッピングは、動作条件に応じて何らかの形で変化し、これにより、マッピングの精度は向上する。
【0070】
タイヤモデルは、また、車両の現在の動作条件に自動的にまたは少なくとも半自動的に適応するように構成された適応モデルとして、少なくとも部分的に実施され得る。これは、所与のホイールスリップ要求に応答して生成されたホイール力に関する所与のホイールの反応を常に監視すること、及び/またはホイールスリップ要求に応答する車両100の反応を監視することにより、達成され得る。適応モデルは、次に、ホイールからの所与のホイールスリップ要求に応答して得られるホイール力をより正確にモデル化するように、調整され得る。
【0071】
タイヤモデル380からの出力は、任意で、現在の状態推定とモデルパラメータとの2つのカテゴリにグループ化され得る。現在の状態推定は、瞬間的なタイヤ状態及びホイール状態の推定を表す。モデルパラメータは、共有された一般タイヤモデル定義に基づいて、現在の推定タイヤモデルの「係数」を取り扱う信号のグループである。タイヤモデル(複数可)は、例えば、現在のタイヤ状態及び車両運動特性を所与として見込むことのできる力、転がり半径、転がり抵抗、及び摩耗率を予測するために、VCU130、140により使用され得る。
【0072】
タイヤモデルは、幅広い種類のタイヤパラメータを、互いに独立させてまたは組み合わせて、モデル化するように、ならびにタイヤ設計、タイヤ状態、及び車両運動状態に応じた能力をモデル化するように、適合され得る。
[F
x,stat,F
y,stat]=f1(C
x0,C
y0,T
s0,P
0,F
z0,v
x0,T
s,P,F
z,v
x,w,λ
x,λ
y/α,μ,s
c)、
[σ
x,σ
y]=f2(σ
x0,σ
y0,T
s0,P
0,F
z0,v
x0,T
s,P,F
z,w,λ
x,λ
y/α,μ,s
c)、
R=f3(R
0,T
s0,P
0,F
z0,v
x0,T
s,P,F
z,v
x,w)、
M
rr=f4(T
s0,P
0,F
z0,v
x0,X
M,T
s,P,F
z,v
x,w,λ
x,λ
y/α,μ,s
c)、
【数5】
=f5(T
s0,P
0,F
z0,v
x0,X
M,T
s,P,F
z,v
x,w,λ
x,λ
y/α,μ,s
c)、
ここで、f1~f5は、関数であり、分析関数、数値近似、または単なるルックアップテーブルであり得る。上記の式では、
F
x,stat、F
y,statはそれぞれ、計算された縦方向定常力及び横方向定常力であり、
σ
x、σ
yはそれぞれ、瞬間縦方向緩和距離及び瞬間横方向緩和距離であり、
C
x0、C
y0は、公称条件でのタイヤの縦方向スリップ剛性及び横方向スリップ剛性であり、
σ
x,0、σ
y,0は、公称条件での縦方向緩和距離及び横方向緩和距離であり、
T
s,0は、瞬間構造タイヤトレッド領域温度であり、
T
sは、公称構造タイヤトレッド領域温度であり、
Pは、瞬間膨張圧であり、
P
0は、公称膨張圧であり、
F
zは、瞬間垂直荷重であり、
F
z,0は、公称垂直荷重であり、
v
xは、タイヤの実際の縦方向速度(対地速度)であり、
v
x,0は、公称縦方向速度であり、
wは、摩耗(0~100%)であり、0%は新品状態に該当し、
σ
x、σ
yはそれぞれ、瞬間縦方向緩和距離及び瞬間横方向緩和距離であり、
λ
x、λ
yは、瞬間スリップ値であり、
μは、瞬間摩擦推定値であり、
s
cは、瞬間離散状態表面条件であり、
Rは、計算された瞬間(自由)転がり半径であり、
R
0は、公称条件下での(自由)転がり半径であり、
M
rrは、転がり抵抗から計算されたトルクであり、
【数6】
は、タイヤの摩耗率(g/kmまたはg/s)である。
【0073】
例えば前述されたαまたはλyのように、横方向スリップの異なる定義に応じて、式を書き換えることもできることが、理解されよう。
【0074】
動的(瞬間)力も導出することができる。計算された静的力を緩和する、あるいは上記の式におけるλ
x、λ
yを、λ
x-dyn、λ
y-dynで置き換えることにより、計算された緩和スリップアングル(s
i,dyn)に静的力の式を適用する、少なくとも2つの択一的な方法が可能である。
【数7】
ここで、iは、xまたはy、すなわち縦方向または横方向のいずれかである。
【0075】
図6A~
図6Cは、上記の論述を要約して例示するフローチャートである。方法は、車両100内のVCU130、140により実行され得、または少なくとも部分的にリモートサーバ150により実行され得る。このVCUは、中央処理装置に実装されてもよく、またはいくつかのユニットに分散されてもよい。
【0076】
図6Aは、
図5も参照しながら、大型車両100の運動を制御する方法を示す。本方法は、大型車両100におけるタイヤ150、160、170の1つ以上のパラメータに関連する入力データ561、562を取得すること(Sa1)を含む。入力データ(Sa12)は、任意で、メモリ装置565から取得された、タイヤ設計に関連するデータを含む。入力データは、例えば、タイヤのブランド及び/またはモデル、タイヤの化学組成、タイヤ公称寸法、あるいはタイヤの他の構造的及び機械的な特質及び特徴に関連する構成データ562を含み得る。任意で、タイヤ設計に関連するデータは、タイヤ履歴も含み、これは、タイヤの挙動を変化させ得る任意の処置または事象がタイヤに起こったかどうかを示す。例えば、タイヤは、リトレッドが行われた場合があり、及び/またはタイヤの挙動特性に影響を与え得るやり方で修理が行われた場合がある。入力データは、さらに、1つ以上のセンサ510、実際のタイヤに接続して配置されたセンサ及び/または車両100に配置されたセンサの両方からのデータ561を含み得る。これらの任意のセンサ510は、タイヤの1つ以上の動作パラメータを測定するように構成され、1つ以上の動作パラメータは、車両速度、ホイール回転速度、タイヤ空気圧、タイヤ温度、タイヤ加速度、タイヤ歪み、タイヤのGPS位置、天候、周囲温度、雨分類データ、垂直荷重、スリップアングル、ステアリングアングル、及びタイヤ適用正/負トルクのうちのいずれかを含み得る。
【0077】
本方法は、また、入力データに基づいて、1つ以上のタイヤパラメータのうちの少なくとも一部を特定すること(Sa2)を含む。パラメータのうちのいくつかは、直接特定され得る。例えば、公称タイヤ空気圧は、タイヤ空気圧を測定するように構成された圧力センサから直接与えられ得る。タイヤの他のパラメータは、入力データに基づいて推定され得る。例えば、有効タイヤ転がり半径は、公称タイヤ寸法、タイヤ空気圧、及びタイヤ回転速度の組み合わせから特定され得る。タイヤ摩耗は、推定タイヤ摩耗率を積分することにより、または単純にタイヤ年数に基づいて、推定され得る。1つ以上の推定タイヤパラメータ(Sa21)は、任意で、タイヤ摩耗、タイヤ縦方向剛性、タイヤ横方向剛性、タイヤ転がり抵抗、タイヤピーク摩擦、タイヤ転がり半径、タイヤコンタクトパッチ特性、タイヤバランス特性、及びホイールアライメント特性のうちのいずれかを含む。
【0078】
次に、タイヤモデルが構成され(Sa3)、タイヤモデルは、例えば
図2に関連して前述されたように、ホイールスリップと生成ホイール力との関係を定義する。このタイヤモデルは、次に、1つ以上のタイヤパラメータによりパラメータ化される。分かりやすい例を挙げると、例えば、タイヤモデルは、単に、ホイールスリップと、タイヤのスリップ剛性パラメータから特定された生成力との関係の線形近似を含み得る。上記のように、本明細書に開示される技法の1つの重要な概念として、タイヤモデルならびに様々な推定タイヤパラメータ及び測定タイヤパラメータは、更新された入力データに基づいて、繰り返し更新され得ること(Sa22)が挙げられる。これは、新品のタイヤから、ほぼ摩滅して交換を必要とするタイヤへと、タイヤがライフサイクルを通して進行するとき、タイヤモデル及び様々なタイヤパラメータは最新に保たれることを意味する。その結果、タイヤモデルは、固定的に構成されたタイヤモデルと比較すると、より正確なものとなる。また、タイヤモデルは、不良設定に反応し、事前に設定されたデータと実際のタイヤ挙動との不一致を取り除く。
【0079】
いくつかの態様によれば、タイヤモデル(Sa31)は、
図2に関連して前述されたように、縦方向及び横方向におけるホイールスリップと生成ホイール力との関係を定義するように構成される。大型連結車両の異なる車両ユニットにわたり、より正確に所望の大域的力分布を生じるために、車両100のVMM機能は、このタイヤモデルを有利に使用して、MSDの連携を実行し得る。例えば、加速が所望される場合、VMM機能は、所望の加速の方向に所望の力を併せて提供するホイールスリップを生じるように、MSDを連携させ得る。タイヤモデル(Sa34)は、任意で、ホイールスリップと、推進ホイール力及び制動ホイール力の両方との関係、あるいは推進または制動のうちの1つのみとの関係を、定義するように構成される。
【0080】
他の態様によれば、タイヤモデル(Sa32)は、タイヤの転がり抵抗をモデル化するように構成される。これは、VMM機能は、MSD連携問題に対する様々なソリューションを、転がり抵抗に関して比較して、MSD連携問題に対する他のソリューションと比べて、より小さい転がり抵抗に関連付けられた1つのソリューションを選択できることを意味する。また、車両100が1つ以上のリフト可能なアクスルを備える場合、VMM機能は、アクスルを上昇させることが、転がり抵抗に関してより好ましい動作をもたらすかどうかを評価し得る。このように、VMM機能は、より低い転がり抵抗を達成することを目的に、車両制御を最適化または少なくとも向上させることができる。その結果、本明細書に開示される方法は、有利なことに、車両100の全体的な転がり抵抗を低減させる可能性がある。
【0081】
さらなる態様によれば、タイヤモデル(Sa33)は、例えば車両状態及び/または操縦に応じて、タイヤの摩耗率をモデル化するように構成される。よって、様々な車両制御機能は、タイヤ摩耗率を考慮し得る。つまり、異なるMSDにより所望の大域的力のセットを生成する1つ以上の実現可能なソリューションは、過度のタイヤ摩耗率をもたらすことから、破棄される場合がある。これは、例えば車両がコーナリングを行っている場合に起こり得、コーナリングでは、いくつかの制御割り当てにより、激しい摩擦が生じる。様々な車両状態及びタイヤパラメータに対するタイヤ摩耗率出力を含むタイヤモデルを組み込むことにより、高いタイヤ摩耗率に関連付けられた車両操縦を回避して、タイヤ寿命を延ばすことができる。
【0082】
タイヤモデル(Sa35)も、タイヤのセルフアライニングトルクをモデル化するように構成され得る。このセルフアライニングトルクは、時にMSD連携機能の構成要素である。よって、この重要な力について得策があれば、正確な車両運動管理の実行は容易になる。
【0083】
本方法は、また、ホイールスリップと生成ホイール力との関係に基づき、大型車両の運動を制御すること(Sa4)も含む。制御の実施例は、例えば上記の
図3及び
図4に関連して論述された。例えば、本方法は、運動要求の履行を含む制約下でタイヤ摩耗率を低減させるように、大型車両100の1つ以上の運動支援装置を連携させること(Sa41)を含み得る。これは、VMM機能が、車両100内の異なる車両ユニットに作用する大域的力及びモーメントの所望のセットをどのように生成するかについて、いくつかの可能なソリューションを有し得ることを意味する。次に、各ソリューションは、タイヤモデルによりタイヤ摩耗率に関して評価され得、過剰なタイヤ摩耗率を生じない1つのソリューションが選択され得る。このタイプの機能を使用して、限られたタイヤ摩耗率に関連付けられた制御ソリューションのみを選択するように、車両運動管理を制約することができる。この特徴を利用して、運転者が高いタイヤ摩耗率に関連付けられた車両制御を行うときに、運転者に警告信号を提供することもできる。この場合、運転者がタイヤに有害な操縦を行うと、キャビン内で警告灯、または可聴警報信号などの他の通知手段がトリガされ得、現在生じている高いタイヤ摩耗率について運転者に告知するメッセージが表示され得る。
【0084】
本明細書に開示される方法は、さらに、運動要求の履行を含む制約下でタイヤ転がり抵抗を低減させるように、大型車両100の1つ以上の運動支援装置を連携させること(Sa42)を含み得る。よって、タイヤ摩耗率の場合のように、いずれも所望の大域的力のセットを生成する様々なMSD連携ソリューションの中から、VMM機能は、選択を行い、許容可能な転がり抵抗、または最小転がり抵抗にまで関連付けられたMSD連携ソリューションに決定し得る。したがって、低減された転がり抵抗に関連付けられた制御割り当てを選択することにより、車両100のエネルギー効率は向上するので、有利である。
【0085】
いくつかの態様によれば、タイヤモデルを使用して、車両の停止距離が推定または予測され得る。よって、本明細書に開示される方法は任意で、大型車両100の停止距離を短縮させるように、大型車両100の1つ以上の運動支援装置を連携させること(Sa43)を含む。この連携は、リフト可能なアクスルを調節すること、及び/または例えば調節可能なサスペンションシステムなどにより、垂直荷重を変化させることを含み得る。この特徴を利用して、例えば燃費または他の形態のエネルギー効率をさらに最適化することができ、停止距離はある最大値未満に維持される。
【0086】
本明細書に開示される方法は、また、大型車両100の走行距離能力を向上させるように、大型車両100の1つ以上の運動支援装置を連携させること(Sa44)を含み得る。
【0087】
本明細書に開示される機能及び特徴の多くは、互いに独立してまたは組み合わせて実施され得ることが、理解されよう。特に、タイヤ摩耗率推定及びタイヤ転がり抵抗推定に関連する特徴は、タイヤ力推定に関する特徴とは独立して、または組み合わせて、複数の形式の出力データを出力できるより高度なタイヤモデルとして、実施され得る。
【0088】
図6Bは、大型車両100の運動を制御するための方法、特に車両運動状態に応じて車両における1つ以上のタイヤの摩耗率を推定するための方法を示すフローチャートである。例えば
図5も参照すると、本方法は、大型車両100のタイヤ150、160、170の1つ以上のタイヤパラメータに関連する入力データ561,562を取得すること(Sb1)を含む。摩耗率を特定するのに関連し得るタイヤパラメータには、例えばタイヤの化学組成及び機械構造、コンタクトパッチジオメトリ、ならびに膨張圧などが含まれ得る。本方法は、また、入力データに基づいて、1つ以上のタイヤパラメータのうちの少なくとも一部を推定すること(Sb2)を含む。上記のように、入力データは、タイヤパラメータを直接的に特定し得(例えばメモリに格納されたデータから取得され得る化学組成)、あるいはタイヤパラメータに間接的に関連付けられ得る。センサデータを使用して、例えば現在のタイヤのコンタクトパッチジオメトリが推定され得る。
【0089】
通常、1つ以上のタイヤパラメータは、タイヤ空気圧、タイヤ温度、タイヤ歪み、タイヤのGPS位置、天候、周囲温度、及び雨分類データのうちのいずれかを含み得る。タイヤ設計に関連するデータは、任意で、タイヤ公称寸法、タイヤ構造特性、タイヤ化学組成、及びタイヤ履歴のうちのいずれかを含む。
【0090】
本方法は、また、タイヤモデルを構成すること(Sb3)を含み、タイヤモデルは、タイヤ摩耗率と車両運動状態との関係を定義し、タイヤモデルは、1つ以上のタイヤパラメータによりパラメータ化される。よって、あるタイヤモデル構造を考えると、タイヤモデルは、まず、車両に取り付けられた所与のタイヤに適合するように調整され、すなわち、パラメータ化される。車両における異なるタイヤは、異なるタイヤモデルパラメータ化に関連付けられる可能性が高く、車両の異なるホイールに嵌められたタイヤが同じブランドの同じ種類であったとしても、これらは、異なる動作条件下にある可能性が高く、よって異なるタイヤモデルパラメータ化を有する可能性が高いことが、理解されよう。タイヤモデルは、現在または将来の車両運動状態とタイヤ摩耗率との関係を定義する。つまり、タイヤモデルは、車両運動状態とタイヤ摩耗率との関数またはマッピングとしてみなされ得る。
【0091】
通常、車両運動状態は、車両速度、ホイール回転速度、タイヤ加速度、タイヤ垂直荷重、スリップアングル、ステアリングアングル、及び適用トルクのうちのいずれかを含み得る。車両運動状態は、また、任意で、タイヤの各ホイールの縦方向ホイールスリップ(Sb31)、タイヤの各ホイールの横方向ホイールスリップ(Sb32)、タイヤの各ホイールの垂直荷重(Sb33)、及びタイヤの各ホイールの回転速度(Sb34)のうちのいずれかを含む。
【0092】
本方法は、さらに、車両運動状態を推定すること(Sb4)、ならびにタイヤモデル及び車両運動状態に基づいて大型車両の運動を制御すること(Sb5)も含む。タイヤモデルは、様々な車両制御機能に使用され得る。例えば、所与の車両のタイヤ摩耗を低減させることが所望される場合には、タイヤ摩耗率に関して様々な制御オプションまたはMSD連携ソリューションが比較され得、許容可能なタイヤ摩耗率、または最小タイヤ摩耗率まで有する制御オプションが選択され得る。タイヤ摩耗率を低減させることを目的に、車両構成も特定され得る。例えば、車両が、1つ以上のリフト可能なアクスル、またはアクティブサスペンションシステムを備えると仮定し、アクティブサスペンションシステムにより、VCUは、異なるアクスルまたは、さらには個々のタイヤに対する垂直荷重を調整することが可能となる。この事例では、より高度のタイヤ摩耗を生じる構成に配慮して、タイヤ摩耗の低減をもたらす垂直荷重分布が選択され得る。よって、車両100のタイヤ摩耗は低減され得るため、有利である。
【0093】
態様によれば、1つ以上の推定タイヤパラメータ(Sb21)は、タイヤ摩耗、タイヤ縦方向剛性、タイヤ横方向剛性、タイヤ転がり抵抗、タイヤピーク摩擦、タイヤ転がり半径、タイヤコンタクトパッチ特性、タイヤバランス特性、及びホイールアライメント特性のうちのいずれかを含む。これらのタイヤパラメータを使用して、タイヤモデルは、所与のタイヤに適合するように「カスタマイズ」され得る。次に、このタイヤモデルは、所与のタイヤに適合するようにカスタマイズされていないより一般的なタイヤモデルと比較して、車両動作条件とタイヤ摩耗率とのより正確なマッピングを提供する。本明細書で提案されるタイヤモデルは、1つ以上のタイヤパラメータのうちの少なくとも一部について、入力データに基づいて繰り返し更新され得る(Sb22)ため、有利である。よって、タイヤ特性が時間と共に変化する場合、車両動作条件とタイヤの摩耗率との正確なマッピングを維持するために、モデルも変化する。
【0094】
車両動作状態に応じてタイヤモデルにより提供されるタイヤ摩耗率を考慮するように、車両制御が適合され得る方法には、多くの異なる実施例が存在する。タイヤ摩耗率は、現在の車両状態に関して特定され、すなわちタイヤ摩耗の観点から現在の車両状態がタイヤに与える影響の程度に関して特定され、あるいは将来の車両動作に関して予測され得る。例えば、車両が曲がり角に近づいていると仮定すると、曲がり角を通過するために、いくつかの異なるオプション、すなわち、制動により操舵する、操舵アクスルにより操舵する、またはこれら2つの組み合わせで操舵するというオプションが存在する。車両は、カーブを通る経路を選択することも可能であり得る。異なる制御オプションに関連付けられたタイヤ摩耗を特定するために、タイヤモデルが調べられ得、最小タイヤ摩耗率に関連付けられたオプションが選択され得る。タイヤモデルが例えば転がり抵抗に関連するデータも出力するように構成される場合、妥当な量のタイヤ摩耗を有し、同時に許容可能な程度の転がり抵抗を生じる制御オプションを見つけるために、この2つの選択基準の組み合わせが使用され得ることが、理解されよう。
【0095】
有利なことに、車両運動制御のためのホイールスリップ限界は、所定の許容可能な目標摩耗率に応じて設定され得る。よって、車両に危険な状況が生じない限り、車両をこの好ましいホイールスリップ限界以下で作動させることにより、タイヤ摩耗は大幅に低減され得る。
【0096】
本方法は、また、任意で、車両運動状態に対応する摩耗率に応じてホイールスリップを制御すること(Sb51)、例えば摩耗率に応じて車両のリフト可能なアクスルの設定を調整する、及び/またはアクティブサスペンションシステムの設定を調整することにより、車両運動状態に対応する摩耗率に応じて垂直荷重を制御すること(Sb52)のうちのいずれかを含む。本方法は、また、任意で、摩耗率に応じてホイール回転速度を制御すること(bS53)、設定された目標摩耗率に基づいて大型車両の運動を制御すること(Sb54)、及び運動要求の履行を含む制約下でタイヤ摩耗率を低減させるように、大型車両100の1つ以上の運動支援装置を連携させること(Sb55)、のうちのいずれかを含む。
【0097】
車両制御は、さらに、最大停止距離または少なくとも好ましい停止距離が要求される状況下で実行され得、すなわち車両は、指定された距離で完全停止できることが要求され得る。この場合、本方法は、大型車両100の停止距離を短縮させるように、大型車両100の1つ以上の運動支援装置を連携させること(Sb56)を含み得る。
【0098】
図6Cは、大型車両100の運動を制御するための方法、特に車両運動状態に応じて車両における1つ以上のタイヤの転がり抵抗を推定するための方法を示すフローチャートである。例えば
図5も参照すると、本方法は、大型車両100におけるタイヤ150、160、170の1つ以上のタイヤパラメータに関連する入力データ561、562を取得すること(Sc1)を含む。転がり抵抗を特定するのに関連し得るタイヤパラメータには、例えばタイヤの化学組成及び機械構造、コンタクトパッチジオメトリ、ならびに膨張圧などが含まれ得る。本方法は、また、入力データに基づいて、1つ以上のタイヤパラメータのうちの少なくとも一部を推定すること(Sc2)を含む。上記のように、入力データは、タイヤパラメータを直接的に特定し得(例えばメモリに格納されたデータから取得され得る化学組成)、あるいはタイヤパラメータに間接的に関連付けられ得る。センサデータを使用して、例えば現在のタイヤコンタクトパッチジオメトリ、現在の膨張圧などが推定され得る。
【0099】
通常、1つ以上のタイヤパラメータは、タイヤ空気圧、タイヤ温度、タイヤ歪み、タイヤのGPS位置、天候、周囲温度、及び雨分類データのうちのいずれかを含み得る。
【0100】
タイヤ設計に関連するデータは、任意で、タイヤ公称寸法、タイヤ構造特性、タイヤ化学組成、及びタイヤ履歴のうちのいずれかを含む。
【0101】
本方法は、また、タイヤモデルを構成すること(Sc3)を含み、タイヤモデルは、タイヤの転がり抵抗と車両運動状態との関係を定義し、タイヤモデルは、1つ以上のタイヤパラメータによりパラメータ化される。よって、あるタイヤモデル構造を考えると、タイヤモデルは、まず、車両に取り付けられた所与のタイヤに適合するように調整され、すなわち、パラメータ化される。車両における異なるタイヤは、異なるタイヤモデルパラメータ化に関連付けられる可能性が高く、車両の異なるホイールに嵌められたタイヤが同じブランドの同じ種類であったとしても、これらは、異なる動作条件下にある可能性が高く、よって異なるタイヤモデルパラメータ化を有する可能性が高いことが、理解されよう。タイヤモデルは、現在または将来の車両運動状態とタイヤ転がり抵抗との関係を定義する。つまり、タイヤモデルは、車両運動状態とタイヤ転がり抵抗との関数またはマッピングとしてみなされ得る。
【0102】
通常、車両運動状態は、車両速度、ホイール回転速度、タイヤ加速度、タイヤ垂直荷重、スリップアングル、ステアリングアングル、及び適用トルクのうちのいずれかを含み得る。
【0103】
車両運動状態は、また、任意で、タイヤの各ホイールの縦方向ホイールスリップ(Sc31)、タイヤの各ホイールの横方向ホイールスリップ(Sc32)、タイヤの各ホイールの垂直荷重(Sc33)、及びタイヤの各ホイールの回転速度(Sc34)のうちのいずれかを含む。
【0104】
本方法は、さらに、車両運動状態を推定すること(Sc4)、ならびにタイヤモデル及び車両運動状態に基づいて大型車両の運動を制御すること(Sc5)も含む。タイヤモデルは、様々な車両制御機能に使用され得る。例えば、所与の車両のタイヤ摩耗を低減させることが所望される場合には、タイヤ転がり抵抗に関して様々な制御オプションまたはMSD連携ソリューションが比較され得、許容可能なタイヤ転がり抵抗、または最小タイヤ転がり抵抗まで有する制御オプションが選択され得る。タイヤ転がり抵抗を低減させることを目的に、車両構成も特定され得る。例えば、車両が、1つ以上のリフト可能なアクスル、またはアクティブサスペンションシステムを備えると仮定し、アクティブサスペンションシステムにより、VCUは、異なるアクスルまたは、さらには個々のタイヤに対する垂直荷重を調整することが可能となる。この事例では、より高度のタイヤ摩耗を生じる構成に配慮して、タイヤ摩耗の低減をもたらす垂直荷重分布が選択され得る。よって、車両100のタイヤ摩耗は低減され得るため、有利である。
【0105】
態様によれば、1つ以上の推定タイヤパラメータ(Sc21)は、タイヤ摩耗、タイヤ縦方向剛性、タイヤ横方向剛性、タイヤ転がり抵抗、タイヤピーク摩擦、タイヤ転がり半径、タイヤコンタクトパッチ特性、タイヤバランス特性、及びホイールアライメント特性のうちのいずれかを含む。これらのタイヤパラメータを使用して、タイヤモデルは、所与のタイヤに適合するように「カスタマイズ」され得る。次に、このタイヤモデルは、所与のタイヤに適合するようにカスタマイズされていないより一般的なタイヤモデルと比較して、車両動作条件とタイヤ転がり抵抗とのより正確なマッピングを提供する。本明細書で提案されるタイヤモデルは、1つ以上のタイヤパラメータのうちの少なくとも一部について、入力データに基づいて繰り返し更新され得る(Sc22)ため、有利である。よって、タイヤ特性が時間と共に変化する場合、車両動作条件とタイヤの転がり抵抗との正確なマッピングを維持するために、モデルも変化する。
【0106】
車両動作状態に応じてタイヤモデルにより提供されるタイヤ転がり抵抗を考慮するように、車両制御が適合され得る方法には、多くの異なる実施例が存在する。タイヤ転がり抵抗は、現在の車両状態に関して特定され、すなわちタイヤ摩耗の観点から現在の車両状態がタイヤに与える影響の程度に関して特定され、あるいは将来の車両動作に関して予測され得る。例えば、車両が曲がり角に近づいていると仮定すると、曲がり角を通過するために、いくつかの異なるオプション、すなわち、制動により操舵する、操舵アクスルにより操舵する、またはこれら2つの組み合わせで操舵するというオプションが存在する。異なる制御オプションに関連付けられたタイヤ摩耗を特定するために、タイヤモデルが調べられ得、最小タイヤ転がり抵抗に関連付けられたオプションが選択され得る。タイヤモデルが例えば転がり抵抗に関連するデータも出力するように構成される場合、妥当な量のタイヤ摩耗を有し、同時に許容可能な程度の転がり抵抗を生じる制御オプションを見つけるために、この2つの選択基準の組み合わせが使用され得ることが、理解されよう。
【0107】
本方法は、任意で、車両運動状態に対応する転がり抵抗に応じてホイールスリップを制御すること(Sc51)、例えば転がり抵抗に応じて車両のリフト可能なアクスルの設定を調整する、及び/またはアクティブサスペンションシステムの設定を調整することにより、車両運動状態に対応する転がり抵抗に応じて垂直荷重を制御すること(Sc52)のうちのいずれかを含む。本方法は、また、任意で、転がり抵抗に応じてホイール回転速度を制御すること(bS53)、設定された目標転がり抵抗に基づいて大型車両の運動を制御すること(Sc54)、及び運動要求の履行を含む制約下でタイヤ転がり抵抗を低減させるように、大型車両100の1つ以上の運動支援装置を連携させること(Sc55)、のうちのいずれかを含む。
【0108】
車両制御は、さらに、最大停止距離または少なくとも好ましい停止距離が要求される状況下で実行され得、すなわち車両は、指定された距離で完全停止できることが要求され得る。この場合、本方法は、大型車両100の停止距離を短縮させるように、大型車両100の1つ以上の運動支援装置を連携させること(Sc56)を含み得る。
【0109】
図6A~
図6Cに関連して前述された方法ステップは、自由に組み合わせてもよいことが、理解されよう。
【0110】
図7は、VUC130、140のうちのいずれかなど、本明細書の論述の実施形態による制御ユニット700のコンポーネントを、いくつかの機能ユニットに関して概略的に示す。この制御ユニット700は、連結車両1に含まれ得る。例えば、記憶媒体730の形態のコンピュータプログラム製品に格納されたソフトウェア命令を実行することができる適切な中央処理装置(CPU)、マルチプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)などのうちの1つ以上の任意の組み合わせを使用して、処理回路710が設けられる。処理回路710は、さらに、少なくとも1つの特定用途向け集積回路(ASIC)、またはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)として設けられてもよい。
【0111】
具体的には、処理回路710は、
図7に関連して論述された方法などの動作のセットまたはステップを、制御ユニット700に行わせるように構成される。例えば、記憶媒体730は、動作のセットを格納し得、処理回路710は、記憶媒体730から動作のセットを取得し、制御ユニット700に動作のセットを行わせるように構成され得る。動作のセットは、実行可能な命令のセットとして提供され得る。したがって、処理回路710は、本明細書に開示される方法を実行するように構成される。
【0112】
記憶媒体730には、例えば磁気メモリ、光学メモリ、ソリッドステートメモリ、または、さらにリモート搭載メモリのうちの任意の単一のものあるいは組み合わせであり得る永続記憶装置も含まれ得る。
【0113】
制御ユニット700は、さらに、少なくとも1つの外部装置と通信するためのインターフェース720を備え得る。よって、インターフェース720には、アナログコンポーネント及びデジタルコンポーネントと、適切な数の有線通信用ポートまたは無線通信用ポートとを備えた1つ以上の送信器及び受信器が含まれ得る。
【0114】
処理回路710は、例えば、インターフェース720及び記憶媒体730にデータ及び制御信号を送信することにより、インターフェース720からデータ及びレポートを受信することにより、ならびに記憶媒体730からデータ及び命令を取得することにより、制御ユニット700の一般動作を制御する。制御ノードの他のコンポーネントならびに関連機能は、本明細書に提示される概念を不明瞭にしないために省略される。
【0115】
図8は、プログラムコード手段820を含むコンピュータプログラムを保持するコンピュータ可読媒体810を示し、当該プログラム製品がコンピュータ上で実行されると、プログラムコード手段820は、
図6A~
図6Cに示される方法を実行する。コンピュータ可読媒体とコード手段は、一緒に、コンピュータプログラム製品800を形成し得る。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大型車両(100)の運動を制御するための方法であって、
前記大型車両(100)におけるタイヤ(150、160、170)の1つ以上のタイヤパラメータに関連する入力データ(561、562)を取得すること(Sb1)と、
前記入力データに基づいて、
前記1つ以上のタイヤパラメータのうちの少なくとも一部を推定すること(Sb2)と、
タイヤモデルを構成すること(Sb3)であって
、前記タイヤモデルは、前記1つ以上のタイヤパラメータによりパラメータ化される、前記タイヤモデルを構成すること(Sb3)と、
車両運動状態を推定すること(Sb4)と、
前記タイヤモデル及び前記車両運動状態に基づいて、前記大型車両の運動を制御すること(Sb5)と、
を含
み、
前記タイヤモデルは、タイヤ摩耗率と車両運動状態との関係を定義することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記入力データ(Sb11)は、前記タイヤの1つ以上のパラメータを測定するように構成された1つ以上のセンサ(510)からの入力データを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上のタイヤパラメータは、タイヤ空気圧、タイヤ温度、タイヤ歪み、タイヤのGPS位置、天候、周囲温度、及び雨分類データのうちのいずれかを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記入力データ(Sb12)は、メモリ(565)から取得したタイヤ設計に関連するデータを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記タイヤ設計に関連するデータは、タイヤ公称寸法、タイヤ構造特質、タイヤ化学組成、タイヤ履歴のうちのいずれかを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
1つ以上の推定タイヤパラメータ(Sb21)は、タイヤ摩耗、タイヤ縦方向剛性、タイヤ横方向剛性、タイヤ転がり抵抗、タイヤピーク摩擦、タイヤ転がり半径、タイヤコンタクトパッチ特性、タイヤバランス特性、及びホイールアライメント特性のうちのいずれかを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
更新された入力データに基づいて、前記1つ以上のタイヤパラメータのうちの少なくとも一部を繰り返し更新すること(Sb22)を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記車両運動状態は、前記タイヤの各ホイールの縦方向ホイールスリップ(Sb31)を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記車両運動状態は、前記タイヤの前記各ホイールの横方向ホイールスリップ(Sb32)を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記車両運動状態は、前記タイヤの前記各ホイールの垂直荷重(Sb33)を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記車両運動状態は、前記タイヤの前記各ホイールの回転速度(Sb34)を含む、請求項1~10のいずれかの1項に記載の方法。
【請求項12】
前記車両運動状態に対応する前記摩耗率に応じて、ホイールスリップを制御すること(Sb51)を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記車両運動状態に対応する前記摩耗率に応じて、垂直荷重を制御すること(Sb52)を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記摩耗率に応じて前記車両のリフト可能なアクスルの設定を調整することにより、垂直荷重を制御する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記摩耗率に応じてホイール回転速度を制御すること(bS53)を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
設定された目標摩耗率に基づいて、前記大型車両の運動を制御すること(Sb54)を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
運動要求の履行を含む制約下でタイヤ摩耗率を低減させるように、前記大型車両(100)の1つ以上の運動支援装置を連携させること(Sb55)をさらに含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記大型車両(100)の停止距離を短縮させるように、前記大型車両(100)の1つ以上の運動支援装置を連携させること(Sb56)をさらに含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
プログラムコード手段を含むコンピュータプログラム(820)であって、前記プログラムがコンピュータ上で、または制御ユニット(700)の処理回路(810)上で実行されると、前記プログラムコード手段は、請求項1~18のいずれか1項に記載のステップを実行する、コンピュータプログラム(820)。
【請求項20】
プログラムコード手段を含むコンピュータプログラム(820)を保持するコンピュータ可読媒体(810)であって、プログラム製品がコンピュータ上で、または制御ユニット(700)の処理回路(810)上で実行されると、前記プログラムコード手段は、請求項1~18のいずれか1項に記載のステップを実行する、コンピュータ可読媒体(810)。
【請求項21】
連結車両(1)の許容可能な車両状態のスペースを特定するための制御ユニット(130、140、700)であって、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法のステップを実行するように構成される、制御ユニット(130、140、700)。
【請求項22】
請求項21に記載の制御ユニット(800)を備える、車両(100)。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0004】
GB2562308 Aは、ホイールスリップに関して論述し、ホイールに加えられ得る最大回生制動トルクを制限するための方法を提案している。コントローラは、タイヤモデルを用いて、各ホイールの利用可能な最大トラクションを特定し、このタイヤモデルに基づいて、各ホイールに加えるべき最大回生制動力を計算する。
US2019/001757 A1は、測定されたホイールスリップに基づいてタイヤ摩耗状態を推定するためのシステム及び方法を開示する。
US2017/113495 A1は、スリップ比率を使用してタイヤのタイヤ摩耗状態を分類するシステムを開示する。
US2016/159367 A1は、タイヤの最適スリップ比率を推定するシステムを開示する。
US2015/285712 A1は、道路状況を分類するためのシステム及び方法を開示する。
【国際調査報告】