(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-19
(54)【発明の名称】アンモニアを除去するためにパージガス流を処理する方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/58 20060101AFI20240412BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20240412BHJP
F01N 3/04 20060101ALI20240412BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20240412BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20240412BHJP
B63H 21/32 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
B01D53/58 ZAB
F01N3/08 A
F01N3/04
B01D53/78
B01D53/14 210
B63H21/32 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562857
(86)(22)【出願日】2022-04-26
(85)【翻訳文提出日】2023-12-12
(86)【国際出願番号】 GB2022051049
(87)【国際公開番号】W WO2022234250
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521358235
【氏名又は名称】エルジーイー アイピー マネジメント カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LGE IP Management Company Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】フェルバブ、ニコラ
【テーマコード(参考)】
3G091
4D002
4D020
【Fターム(参考)】
3G091AA04
3G091AA16
3G091AB09
3G091AB15
3G091BA13
4D002AA13
4D002AC10
4D002BA02
4D002DA01
4D002DA12
4D002EA02
4D002EA08
4D002FA01
4D002FA06
4D020AA10
4D020BA01
4D020BA08
4D020BB03
4D020BC01
4D020CB01
4D020CC01
4D020CC21
(57)【要約】
船舶上においてアンモニア含有パージガス流を処理するための方法が説明される。該方法は、少なくとも、(a)船舶のエンジンから前記アンモニア含有パージガス流を提供する工程と、(b)前記アンモニア含有パージガス流に水を収容している第1のタンクを通過させて、アンモニアが低減した排気ガス流を提供する工程と、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶上においてアンモニア含有パージガス流を処理する方法であって、少なくとも、
(a)船舶のエンジンから前記アンモニア含有パージガス流を提供する工程と、
(b)前記アンモニア含有パージガス流に水を収容している第1のタンクを通過させて、アンモニアが低減した排気ガス流であるアンモニア低減排気ガス流を提供する工程と、
を備える方法。
【請求項2】
(c)前記アンモニア含有パージガス流を前記水中に散気する工程
をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(d1)前記アンモニア低減排気ガス流を大気に排気する工程
をさらに備える、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
(d2)前記アンモニア低減排気ガス流をさらに処理する工程
をさらに備える、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
バッチプロセスの第1の段階を形成する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
(e)苛性アルカリ溶液を収容している第2のタンクを提供する工程と、
(f)前記苛性アルカリ溶液を前記第2のタンクから前記第1のタンクの中に送って、得られた溶液と、ガス状のアンモニア流と、を提供する工程と、
(g)前記ガス状のアンモニア流を貯蔵タンク又は再液化ユニットに送る工程と、
をさらに備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
再生プロセスの第1の段階を形成する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
(h)前記得られた溶液を前記第1のタンクから前記第2のタンクの中に送る工程と、
(i)前記第2のタンク中の前記得られた溶液を加熱して、水蒸気流と再充填された苛性アルカリ溶液とを提供する工程と、
(j)前記水蒸気流を凝縮させて、液体水流を提供する工程と、
(k)前記液体水流を前記第1のタンクの中に送って、工程(b)の前記水を提供する工程と、
をさらに備える、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
再生プロセスの第2の段階を形成する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記アンモニア含有第1排気ガス流が窒素とアンモニアとを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記アンモニア含有パージガス流は、前記船のエンジンからのパージ用窒素排気ガス流から提供される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記アンモニア低減排気ガス流は、実質的にアンモニアフリーである、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
船舶上においてアンモニア含有パージガス流の処理及び再生を行うためのシステムであって、少なくとも、
(a)船舶のエンジンからアンモニア含有パージガス流を提供する工程と、
(b)前記アンモニア含有パージガス流に水を収容している第1のタンクを通過させて、アンモニアが低減した排気ガス流であるアンモニア低減排気ガス流を提供する工程と、
(c)随意で、前記アンモニア含有パージガス流を、スパージ用デバイスを介して前記水中に散気する工程と、
(d)前記アンモニア低減排気ガス流を大気に排気する工程、又は前記アンモニア低減排気ガス流をさらに処理する工程と、
(e)苛性アルカリ溶液を収容している第2のタンクを提供する工程と、
(f)必要な場合、前記苛性アルカリ溶液を前記第2のタンクから前記第1のタンクの中に送って、得られた溶液と、ガス状のアンモニア流とを提供する工程と、
(g)前記ガス状のアンモニア流を貯蔵タンク又は再液化ユニットに送る工程と、
(h)前記得られた溶液を前記第1のタンクから前記第2のタンクの中に送る工程と、
(i)前記第2のタンク中の前記得られた溶液を加熱して、水蒸気流を提供する工程と、
(j)前記水蒸気流を凝縮させて、液体水流を提供する工程と、
(k)前記液体水流を前記第1のタンクの中に送って、工程(b)の前記水を提供する工程と、
を備えるシステム。
【請求項14】
前記システムによってサイクルが提供されるように、工程(a)~工程(k)が繰り返される、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
工程(d)に代えて、前記アンモニア低減排気ガス流の酸スクラブ仕上げが行われる、請求項13又は14に記載のシステム。
【請求項16】
前記第1のタンクから大気の排気又はさらなる処理までの経路は、工程(d)における排気が完了すると閉止される、請求項13~15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
随意で、前記第1のタンクから前記貯蔵タンク又は前記再液化ユニットまでの経路は、工程(d)における排気が完了すると開放される、請求項13~16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
船のエンジンの排気ガス流のアンモニア分を低減させるための装置であって、
-水を収容している第1のタンクと、
-濃苛性アルカリ溶液を収容している第2のタンクと、
-前記第1のタンクと前記第2のタンクとの間の移送ポンプと、
-前記第2のタンクと前記第1のタンクとの間の凝縮器と、
-アンモニア貯蔵タンクと、
を備える装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶上においてアンモニア含有パージガス流を処理する方法、その処理及び再生を行うためのシステム、及びそのための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2018年の国際海事機関(International Maritime Organisation)の国際海運の温室効果ガス排出削減のための公約に続いて、アンモニア燃料船、又はアンモニア燃料によって駆動されるように適合されたエンジン(機関)が、ますます開発及び建造されている。
【0003】
一方では、低引火点燃料を燃料として動くエンジンを有する船(ship)及び船舶(vessel)については、規則によって、エンジンが意図的に又はトリップによって停止するときはいつでも、エンジンと、燃料バルブトレインの間の配管とを、典型的には窒素を用いてパージする必要がある。パージプロセス中、燃料の一部が、窒素のパージ流の中に蒸発し、したがって、この窒素と共に船舶から排気され得る。
【0004】
燃料がアンモニアである場合、アンモニアは有毒であるため、アンモニアガスの排出を最小限にすることが望ましい。これは、特に、乗組員の安全のためであり、エンジンが計画されていない時間に停止する場合(例えば、エンジントリップにより停止する場合)のためである。
【0005】
本発明は、係る問題の克服を支援しようとするものである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の態様及び実施形態を個別にも集合的にも概略的に示す図。
【
図2】時間に対する、アンモニアが低減した排気ガスにおけるアンモニアのモル組成のグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の一態様によれば、船舶上においてアンモニア含有パージガス流を処理する方法であって、少なくとも、
(a)船舶のエンジンから前記アンモニア含有パージガス流を提供する工程と、
(b)前記アンモニア含有パージガス流を、水を収容している第1のタンクの中に送って、アンモニアが低減した排気ガス流であるアンモニア低減排気ガス流を提供する工程と、
を備える方法が提供される。
【0008】
随意で、処理方法は、バッチプロセスの第1の段階であり、排気ガス流を処理し、船舶上における処理プロセスを再生するためのより一般的又は全体的なプロセスの第1の段階である。
【0009】
本発明のさらなる又は独立した態様によれば、該方法は、前述の請求項のうちのいずれか一項に記載の方法の工程をさらに備え、
(e)苛性アルカリ溶液を収容している第2のタンクを提供する工程と、
(f)前記苛性アルカリ溶液を前記第2のタンクから前記第1のタンクの中に送って、得られた溶液と、ガス状のアンモニア流と、を提供する工程と、
(g)前記ガス状のアンモニア流を貯蔵タンク又は再液化ユニットに送る工程と、
をさらに備える。
【0010】
そうした工程によって、全体的なプロセスの第2の工程、又は再生プロセスの第1の段階が提供されることが可能である。
本発明のさらなる又は独立した態様によれば、該方法は、
(h)前記得られた溶液を前記第1のタンクから前記第2のタンクの中に送る工程と、
(i)前記第2のタンク中の前記得られた溶液を加熱して、水蒸気流と再充填された苛性アルカリ溶液とを提供する工程と、
(j)前記水蒸気流を凝縮させて、液体水流を提供する工程と、
(k)前記液体水流を前記第1のタンクの中に送って、工程(b)の前記水を提供する工程と、
をさらに備える。
【0011】
これにより、全体的な処理方法の第3の段階、又は再生プロセスの第2の段階が提供される。
ゆえに、本発明のさらなる態様によれば、船舶上においてアンモニア含有パージガス流の処理及び再生を行うためのシステムであって、少なくとも、
(a)船舶のエンジンからアンモニア含有パージガス流を提供する工程と、
(b)前記アンモニア含有パージガス流に水を収容している第1のタンクを通過させて、アンモニアが低減した排気ガス流であるアンモニア低減排気ガス流を提供する工程と、
(c)随意で、前記アンモニア含有パージガス流を、スパージ用デバイスを介して前記水中に散気する工程と、
(d)前記アンモニア低減排気ガス流を大気に排気する工程、又は前記アンモニア低減排気ガス流をさらに処理する工程と、
(e)苛性アルカリ溶液を収容している第2のタンクを提供する工程と、
(f)必要な場合、前記苛性アルカリ溶液を前記第2のタンクから前記第1のタンクの中に送って、得られた溶液と、ガス状のアンモニア流とを提供する工程と、
(g)前記ガス状のアンモニア流を貯蔵タンク又は再液化ユニットに送る工程と、
(h)前記得られた溶液を前記第1のタンクから前記第2のタンクの中に送る工程と、
(i)前記第2のタンク中の前記得られた溶液を加熱して、水蒸気流を提供する工程と、
(j)前記水蒸気流を凝縮させて、液体水流を提供する工程と、
(k)前記液体水流を前記第1のタンクの中に送って、工程(b)の前記水を提供する工程と、
を備えるシステムが提供される。
【0012】
本発明のさらなる態様によれば、
船のエンジンの排気ガス流のアンモニア分を低減させるための装置であって、
-水を収容している第1のタンクと、
-濃苛性アルカリ溶液を収容している第2のタンクと、
-前記第1のタンクと前記第2のタンクとの間の移送ポンプと、
-前記第2のタンクと前記第1のタンクとの間の凝縮器と、
-アンモニア貯蔵タンクと、
を備える装置が提供される。
【0013】
本発明の実施形態は、以下の添付の図面を参照して、例としてのみ説明される。
エンジンにおける燃料としてアンモニアを使用することは、以前から知られている。現在、空気から分離された窒素と、風力又は太陽エネルギーによる水電解によって生成した水素とを反応させることによって「グリーンアンモニア(green ammonia)」と称されるものが提供されることが可能である。グリーンアンモニアは、炭素を排出しないことにより、潜在的に化石燃料よりもより環境に優しいと考えられている。グリーンアンモニアは、また、貯蔵がより容易であり、標準の内燃機関において燃焼させることが可能であるので、海運業にとって水素よりも安価な燃料でもある。
【0014】
しかしながら、アンモニアは、また、比較的有毒であるとも考えられている。ゆえに、エンジンが意図的に又はトリップによって停止するときはいつでも、船の又は船舶のエンジン、及び燃料バルブトレインの間の配管を、窒素を用いてパージすることを要求する規則によって、アンモニア燃料の一部をパージ用窒素流の中に蒸発させること、ゆえに窒素と共に排気させることがある。アンモニアの排気は、その有毒性のために望ましくない。
【0015】
本発明の一例によって、船舶上においてアンモニア含有パージガス流を処理する方法であって、少なくとも、
(a)船舶のエンジンからアンモニア含有パージガス流を提供する工程と、
(b)アンモニア含有パージガス流を、水を収容している第1のタンクの中に送り、アンモニアが低減した排気ガス流を提供する工程と、
を備える方法が提供される。
【0016】
船舶は、船、運搬船等を含んでいる任意の海洋船舶又は航洋船舶であってよい。
エンジンの種類は、既存の若しくは標準の内燃機関、又はアンモニア燃料を使用するためにさらに開発されたエンジンであってよい。いくつかのエンジンは、また、アンモニアの混合物と追加の燃料とを使用することも可能であってよく、本発明は、全てのそうしたエンジンに及ぶ。パージ用ガス流は当該技術分野において既知であり、一般に、エンジン燃料の種類に対して不活性なものを含む1つ以上の不活性ガスを含む。エンジンの燃料の取替又は清潔を含む様々な理由のためにエンジン、ライン、タンク、配管等のガス又は液体をパージするためか、望ましくない蓄積を防ぐために、パージ用ガス流に、エンジン、ライン、タンク、配管等を通過させる。パージガス流に使用される最も一般的なガスは、窒素であるが、他のガスが使用されるか混合されてよい。
【0017】
本発明の方法は、船舶上においてパージガス流に、パージされるべき船舶のエンジン、随意でまた、関連する配管網及び燃料バルブトレイン間の配管も通過させて、得られたアンモニア含有パージガス流、すなわち蒸発してエンジン等からパージされる必要があるアンモニアを含んでいる得られたアンモニア含有パージガス流を提供する。
【0018】
本発明では、そうしたガス流は、水を収容している第1のタンクの中に送られて、アンモニアが低減した排気ガス流を提供する。水はアンモニアを溶解することが知られており、水を通過して水から出る得られたガスは、低減したアンモニア分を有し得、本明細書ではアンモニアが低減した排気ガス流(アンモニア低減排気ガス流)と称される。
【0019】
随意で、第1のタンクは、アンモニアを含まない水を収容するか、僅少な量(すなわち、「微量(trace amount)」)のアンモニアを含んでいる水を収容する。
随意で、アンモニア含有パージガス流に、アンモニア含有パージガス流と水との間の表面積を増加させるために、ある形態の刺激(excitation)を用いるか、ある形態の刺激の下で第1のタンクの水を通過させる。液体流を通したガス流の刺激を達成するために、様々な手段及び装置が既知であり、様々な分散手段を含んでいる。係るやり方において刺激を達成する1つの普通の手段は散気であり、それは、排気ガス流の泡を生成させて、アンモニア吸収のために高い又はより高い表面積を生成させるように意図されたスパージ用デバイス、スパージ用手段、又はスパージ用「ヘッド(head)」を使用する。
【0020】
アンモニアが場合によっては周囲温度及び周囲圧力においてアンモニアフリーな水に溶解することが可能であることが知られている。吸収は、周囲圧力を超えるような高められた条件を用いて補助することが可能である。吸収によって、そのアンモニア分を90%以上含んでおらず、場合によっては95%超がアンモニアフリーであり、場合によって99%超がアンモニアフリーであることが可能なアンモニアが低減した排気ガス流が提供される。
【0021】
アンモニアが低減したガス流の99%超がアンモニアフリーである場合、アンモニアが低減した排気ガス流を大気に直接排気することが可能であることが可能である。ゆえに、本発明の方法によって、
(d1)アンモニアが低減した排気ガス流を大気に排気する工程
がさらに提供されることが可能である。
【0022】
これに加えて、又はこれに代えて、アンモニアが低減した排気ガス流は、1つ以上のさらなる処理プロセス又は工程によってさらに処理される。1つの既知のさらなる処理工程は、排気ガス流中のアンモニアをさらに捕捉又は回収することを意図したスクラバ処理の使用であり、特に酸スクラブ仕上げ工程としてのスクラバ処理の使用である。ゆえに、本発明の方法によって、
(d2)アンモニアが低減した排気ガス流をさらに処理する工程
がさらに提供されることが可能である。
【0023】
上記に概説し、説明した工程によって、プロセスの第1の段階が提供される。そうした工程は、アンモニア含有排気ガス流を処理するために必要とされる時間又は期間にわたって(すなわち、バッチプロセスとして)実施されてよい。
【0024】
得られたアンモニアリッチ(アンモニアが豊富)な水は、第1のタンクに残る。
本発明によって、
(e)苛性アルカリ溶液を収容している第2のタンクを提供する工程と、
(f)苛性アルカリ溶液を第2のタンクから第1のタンクの中に送って、得られた溶液と、ガス状のアンモニア流とを提供する工程と、
(g)ガス状のアンモニア流を貯蔵タンク又は再液化ユニットに送る工程と、
がさらに提供される。
【0025】
苛性アルカリ溶液は、当該技術分野において周知であり、典型的には1つ以上のアルカリを含んでいる。苛性アルカリ溶液の濃縮形態が好ましい。アンモニア放出のための苛性アルカリ溶液の所望の濃度は、当該技術分野において周知であり、本明細書ではさらに説明されない。
【0026】
第2のタンク中の苛性アルカリ溶液を提供する工程と、苛性アルカリ溶液を第2のタンクから第1のタンクの中に送ってその中のアンモニアリッチな水と混合する工程とによって、苛性アルカリ溶液は、第1のタンク中に溶解しているアンモニアのガス状形態における放出を提供して、ガス状のアンモニア流と、一般的により低濃度の苛性アルカリ溶液である得られた溶液とを提供する。
【0027】
第1のタンクと第2のタンクとの間、及び第2のタンクと第1のタンクとの間の溶液の通過は、当該技術分野において既知である1つ以上のポンプ等を含んでいる任意の適当な手段によって提供されてよい。随意で、適切なバルブ及び配管を使用して、1つのポンプが両方のタンク間の液体を圧送するための手段を提供することが可能である。
【0028】
ガス状のアンモニア流は、アンモニア燃料タンク等の適当な貯蔵タンクに戻るように向けられるか、アンモニア再液化ユニットに戻るように向けられるか、所望又は必要に応じてその両方に戻るように向けられることが可能である。係るやり方において、以前は排気ガス流と共に排気されていたアンモニアが現在は回収されている。
【0029】
アンモニアの回収によって、アンモニア含有排気ガス流を処理する方法の第2の段階が提供され、これに代えて、又はこれに加えて、本明細書に説明されているシステムの再生プロセスの第1の段階が形成される。
【0030】
本発明によって、
(h)得られた溶液を第1のタンクから第2のタンクの中に送る工程と、
(i)第2のタンク中の得られた溶液を加熱して、水蒸気流と再充填された苛性アルカリ溶液とを提供する工程と、
(j)水蒸気流を凝縮させて、液体水流を提供する工程と、
(k)液体水流を第1のタンクの中に送って、工程(b)の水を提供する工程と、
がさらに提供される。
【0031】
第2のタンク中の得られた溶液の加熱は、電気の、蒸気の、及び当該技術分野において既知の他の加熱手段を含む任意の適当な手段によって提供されてよい。
水蒸気流の凝縮は、任意の適当な凝縮器によって提供されてよく、凝縮器は、一般的に、液体水流を提供するために水蒸気流の温度を低下させるように意図された、それを通り抜ける凝縮流を有する。
【0032】
液体水流は、それゆえに、現在アンモニアを含まず、第1のタンクに戻して再使用する準備ができている一方で、第2のタンク中に残っている苛性アルカリ溶液も回収されており、次に必要とされる時に再使用する準備ができている。
【0033】
アンモニアフリーな水及び苛性アルカリ溶液の回収によって、アンモニア含有排気ガス流を処理する方法の第3の段階が提供され、これに代えて、又はこれに加えて、本明細書に説明されているシステムの再生プロセスの第2の段階が形成される。
【0034】
ゆえに、全体として、本発明によって、船舶上においてアンモニア含有パージガス流の処理及び再生を行うためのシステムであって、少なくとも、
(a)船舶のエンジンからアンモニア含有パージガス流を提供する工程と、
(b)アンモニア含有パージガス流を、水を収容している第1のタンクの中に送り、アンモニアが低減した排気ガス流を提供する工程と、
(c)随意で、アンモニア含有パージガス流を、スパージ用デバイスを介して水中に散気する工程と、
(d)アンモニアが低減した排気ガス流を大気に排気する工程、又はアンモニアが低減した排気ガス流をさらに処理する工程と、
(e)苛性アルカリ溶液を収容している第2のタンクを提供する工程と、
(f)苛性アルカリ溶液を第2のタンクから第1のタンクの中に送って、得られた溶液と、ガス状のアンモニア流とを提供する工程と、
(g)ガス状のアンモニア流を貯蔵タンク又は再液化ユニットに送る工程と、
(h)得られた溶液を第1のタンクから第2のタンクの中に送る工程と、
(i)第2のタンク中の得られた溶液を加熱して、水蒸気流を提供する工程と、
(j)水蒸気流を凝縮させて、液体水流を提供する工程と、
(k)液体水流を第1のタンクの中に送って、工程(b)の水を提供する工程と、
を備えるシステムが提供されることが可能である。
【0035】
本明細書に説明される工程のための連続した文字の配置の使用によって、工程のうちの1つ以上が代替的な順序において実施され得る順番が制限されない。
当業者は、システムによってサイクルが提供されるように、システムの工程(a)~工程(k)が繰り返されることが可能であることを理解することが可能である。
【0036】
随意で、工程(d)に代えて、アンモニアが低減した排気ガス流の酸スクラブ仕上げ工程が行われる。
随意で、第1のタンクから大気の排気又はさらなる処理までの経路は、工程(d)における排気が完了すると閉止される。
【0037】
随意で、第1のタンクから貯蔵タンク又は再液化ユニットまでの経路は、工程(d)における排気が完了すると開放される。
図面を参照すると、
図1によって、船舶(図示せず)上においてアンモニア含有パージガス流2を処理する方法であって、少なくとも、パージされている船舶のエンジン(図示せず)からアンモニア含有パージガス流2を提供する工程と、アンモニア含有パージガス流2を、水6を収容している第1のタンク4の中に送って、アンモニアが低減した排気ガス流を提供する工程と、を備える方法が示される。
【0038】
窒素等のパージ用ガス流による船舶上のエンジンのパージは、エンジンが意図的に又は意図的ではなく停止するときにエンジンからガスを除去するために、当該技術分野において周知である。除去されたガスが有害又は有毒でない場合、それは大気に直接排気されてよい。
【0039】
しかしながら、アンモニアは、比較的有毒である。ゆえに、アンモニアを使用するエンジンのためのパージ用ガス流は、大気に直接排気されるべきではない。
本発明の一例では、アンモニア含有パージガス流2は、パージ用ガスであるパージ用ガス窒素と、アンモニアと、を含む。このガス流2に、第1のタンク4中のアンモニアフリーな水6を通過させて、その結果水6がアンモニア分を吸収することが可能である。アンモニア含有パージガス流2は、アンモニアが水6の中により良く溶解し、排気ガスはそのアンモニア分が「浄化される(cleaned)」ように、第1のタンク4の底部又はその近くの適当なスパージ用デバイス又はスパージ用ヘッド8を通して散気されて、当該技術分野において既知である手法において水6を通るアンモニア含有パージガス流2の通路を分散させることが可能である。
【0040】
水6から得られたアンモニアが低減した排気ガス流に、第1のタンク4を上に通過させて、それを適当なヘッダーパイプ10の中に送る。排気バルブ14の開放に続いて、得られたアンモニアが低減した又は場合によってはアンモニアフリーな排気ガス流は、当該技術分野において既知であり、本明細書においてさらに説明されない手法においてパイプライン12に沿って大気に排気されるか、必要であれば、続く酸スクラブ仕上げ工程等によってさらに処理されることが可能である。
【0041】
浄化される必要があるアンモニア含有パージガス流2の供給は、第1の段階として提供されることが可能である。係る段階によって、完全に又はほぼアンモニアフリーな排気ガスが大気に排気される工程か、必要である場合、続く酸スクラブ仕上げ工程に排気される工程が提供される。
【0042】
アンモニア含有パージガス流2の処理が停止するか、あるいは完了すると、排気バルブ14が閉止されることが可能である。
経時的に、第1のタンク4中の水6は、アンモニアリッチになると、さらにアンモニアを吸収することを可能にするために、取替又は浄化される必要がある。これは、典型的には「再生(regenerating)」と称され、処理方法の第2の段階であるか、タンク4中の水を再生するための再生プロセスの第1の段階であることが可能である。
【0043】
図1によって、苛性アルカリ溶液、随意で濃苛性アルカリ溶液を収容している第2のタンク20が示される。必要な場合、苛性アルカリ溶液22は、底部のパイプライン24と、ポンプバルブ26と、ポンプ28と、次のポンプバルブ30と、パイプライン32とを介して第1のタンク4の中に圧送されることが可能である。苛性アルカリ溶液22は、次いで、第1のタンク4中のアンモニアリッチな水6と反応して、吸収されたアンモニアを放出し、当該技術分野において既知である手法においてアンモニアガスを形成する。戻りバルブ16の開放によって、第1のタンク4中でこのように生成されたガス状アンモニア流は、ヘッダーパイプ10と、戻りバルブ16とを通じて放出されて、最初の戻りバルブ16の後の適切なバルブの使用によって、次いで、貯蔵タンク又は燃料タンク52に戻される、及び/又はパイプライン54を通じて再液化に送り出されることが可能である。係るやり方では、アンモニア含有パージガス流2によって提供され、水6によって吸収されたアンモニアは、完全に又はほぼ回収される。
【0044】
本明細書に説明される本発明の方法の第3の段階、又は再生プロセスの第2の段階では、第1のタンク4中の得られた溶液は、ポンプバルブ26及び30を閉止し、バイパスパイプライン40及び38における戻りバルブ36及び34を開放することによって、移送ポンプ28を介して第2のタンク20の中に戻されることが可能である。
【0045】
ゆえに、第1のタンク4から得られた溶液は、第2のタンク20の中に送られる。得られた溶液は、今度は、制御バルブ44を通じて蒸気流42によって加熱されることが可能である(そして、第2のタンク20から出る蒸気凝縮液流46が得られる)。第2のタンク20における得られた溶液の加熱によって、水蒸気流が提供される。その水蒸気流は、上向きに送られ、ヘッダーパイプ60を通過し、制御バルブ48を通過し、適当な水凝縮器50の中に送られて、凝縮される。係るやり方において回収された、アンモニアフリーかつ苛性アルカリフリーなそのように形成された液体水流56は、第1のタンク4の中に戻して提供されて、上述の工程(b)のための水(すなわち、アンモニア含有パージガス流2におけるアンモニアを吸収することが可能な浄化水)を提供して、アンモニアが低減した排気ガス流を配管10及び12を通じて提供することが可能である。
【0046】
再生プロセスに続いて、第1のタンク4中のアンモニアフリーな水及び第2のタンク20中の苛性アルカリ溶液22の回収及び返送が提供され、上述のものと別のサイクルにおけるアンモニア含有排気ガスをさらに処理する準備ができている。
【0047】
ゆえに、プロセスが完了すると、サイクルが再び始まってよい。
必要とされるパージ及び選択された水量に応じて、100%のアンモニア回収率に近づくことが可能であり、99%超のアンモニア回収率が期待される。アンモニアが低減した排気ガス流の大気への直接排気に代わって、続く酸スクラブ仕上げが使用される場合、酸の消費量が比例して減少する。
【0048】
当業者は、上述の方法及び工程によって、船舶上においてアンモニア含有パージガス流の処理及び再生を行うためのシステムのための全体的なシステムであって、少なくとも、
(a)エンジンからアンモニア含有パージガス流2を提供する工程と、
(b)アンモニア含有パージガス流2を、水6を収容している第1のタンク4の中に送り、それに第1のタンク4を通過させて、アンモニアが低減した排気ガスをパイプライン10において提供する工程と、
(c)アンモニア含有パージガス流2を、スパージ用デバイス8を介して水6中に散気してアンモニア吸収を増加させる工程と、
(d)アンモニアが低減した排気ガス流を、パイプライン12を介して大気に排気する工程、又はアンモニアが低減した排気ガス流をさらに処理する工程と、
(e)苛性アルカリ溶液22を収容している第2のタンク20を提供する工程と、
(f)必要な場合、苛性アルカリ溶液22を第2のタンク20から第1のタンク4の中に送って、得られた溶液と、ガス状のアンモニア流とを提供する工程と、
(g)ガス状のアンモニア流を貯蔵タンク52又は再液化ユニットにパイプライン54を介して送る工程と、
(h)得られた溶液を第1のタンク4から第2のタンク20の中に送る工程と、
(i)第2のタンク中の得られた溶液を加熱して、水蒸気流を提供する工程と、
(j)水蒸気流をパイプライン60において凝縮させて、液体水流56を提供する工程と、
(k)液体水流56を第1のタンク4の中に送って、工程(b)の水6を提供する工程と、
を備えるシステムが提供されることを理解することが可能である。
【0049】
当業者は、システムによってサイクルが提供されるように、システムの工程(a)~工程(k)が繰り返されることが可能であることを理解することが可能である。
図1によって、また、船のエンジンの排気ガス流のアンモニア分を低減させるための装置であって、
-水を収容している第1のアンモニア吸収タンクと、第1のタンク中に存在するスパージ用デバイスと、
-濃苛性アルカリ溶液を収容している第2の再生タンクと、
-第1のタンクと第2のタンクとの間の移送ポンプと、
-第2のタンクと第1のタンクとの間の凝縮器と、
-アンモニア貯蔵タンクと、
を備える装置も示される。
【0050】
図2は、時間に対する、アンモニアが低減した排気ガスにおけるアンモニアのモル組成のグラフである。これは、上述の処理の第1の段階中の排気されたアンモニア分における減少を示している一例である。
図2は、以下のパラメータを用いて、
図1と関連して解釈されることが可能である。アンモニア含有パージガス流2は、1320kg/hの速度において、44mol%のアンモニアを含む組成(残りは窒素である)を有し、第1のタンク4の中に流れる。第1のタンク4は、5m
2の水6を収容する。システム自体における成り行き温度であると仮定される周囲温度は、25℃である。第1のタンク4における圧力は、制御バルブ14を使用して0.2MPa(ゲージ圧力)において維持されている。
図2は、時間に関して決まるパイプライン10(及び最終的にはパイプライン12)におけるアンモニアが低減した排気ガスのアンモニア分を示す。
【0051】
図2における0.275時間の計算期間にわたって、合計117.23kgのアンモニアが、アンモニア含有パージガス流2の一部として第1のタンク4に入る。水6を通過した後、0.46kgのアンモニアのみが水によって吸収されず、それゆえに、アンモニアが低減した排気ガス流の一部として(パイプライン10、最終的にはパイプライン12において)第1のタンク4を出る。ゆえに、116.77kgが第1のタンク4中の水6中に捕捉され、99.6%のアンモニア捕捉効率を表す。
【国際調査報告】